―廊下―
キョン(もうすぐクリスマスか。なんかやけに校内で男女が目に付くな。これは、あれか。いつもの光景なのに、時期が時期だけに目線がそういう奴らばかりに向いちまうだけか)
キョン(こういう現象、なんか名称があったようななかったような……。どうでもいいか)
キョン(俺も朝比奈さんみたいな人と二人っきりで聖夜を過ごしてみたいもんだね。ま、今年は妹と一緒にクラッカーを鳴らすようなことにはならないだけマシか……)
鶴屋「キョーンくんっ!」
キョン「鶴屋さん。どうも」
鶴屋「今から部活かい?」
キョン「ええ。部活じゃないですけどね」
鶴屋「ふーん。ねえねえ。今、時間ある?話したいことがあるんだけど、いっかな?」
キョン「ええ。大丈夫ですよ。部室に行っても適当なことして時間を無駄にするだけですからね。それに鶴屋さんのために時間を使うのはとても有意義なことですよ」
鶴屋「あたしを煽ててもなにもでないからねっ」
キョン「いえいえ、本心ですよ」
キョン(鶴屋さんみたいな人と過ごす聖夜も良いだろうな。一晩中会話が途切れそうにないし、楽しそうだ)
鶴屋「話なんだけどさっ。キョンくんはクリスマス、なにするのー?」
キョン「クリスマスはSOS団で鍋を突くことになってますけど。朝比奈さんから聞いてませんか?」
鶴屋「それって25日でしょ?イヴはどっかな?」
キョン「悲しくなるようなことを聞かないでくださいよ……」
鶴屋「それって、暇ってことかい?!」
キョン「恥ずかしながら」
鶴屋「なら、あたしと付き合ってくんないっ?」
キョン「……は?」
鶴屋「クリスマスイヴはあたしと過ごそーよっ」
キョン「えっと……」
鶴屋「あたしじゃだめ?」
キョン「いや、大変光栄なんですけど……。どうして、俺なんですか?鶴屋さんならもっと良い人がいると思いますけど」
鶴屋「あたしはキョンくんがいいと思ったんだけど?」
キョン「……」
キョン(なんだこれ……?どうなってやがる……。あの鶴屋さんがイヴを俺と過ごしたいだと?そんなことありえるのか……?)
鶴屋「キョンくんっ。ダメにょろ?」
キョン「イヴは何をするんですか?買い物とかですか?」
鶴屋「んー。あたしん家かキョンくん家で遊ぶっ!っていうのはどう?きっとたのしいよー?」
キョン「それは楽しそうでね。凄く。ハルヒとか朝比奈さんも呼ぶんですよね?」
鶴屋「呼ばないよ?」
キョン「へ?」
鶴屋「あたしとキョンくんだけっさ。あ、もしかしてあたしと二人は嫌かいっ?」
キョン「いえいえ、そんな滅相もありません!」
鶴屋「なら、オッケーねっ。よっし、イヴはキョンくんと一晩中あそぶっさーっ!!」
キョン「ま、待ってください」
鶴屋「なに?」
キョン(出来すぎている。こんな都合のいい展開があるわけない。仕込みだ仕込みのはずだ。物陰にハルヒとかがドッキリのプラカードを持ってるに違いない……!!)
鶴屋「キョンくん、やっぱり……あたしじゃ、ダメにょろ?」
キョン(かわいい……!)
鶴屋「キョンくんが嫌なら……仕方ないけど……」
キョン(いつもの元気な鶴屋さんじゃないのがとびきり怪しいが……それでもこの可憐で麗しい鶴屋さんも素敵だ……)
鶴屋「キョンくん、ダメっかな?」
キョン「えっと……。保留でいいですか?」
鶴屋「保留?キープってことだねっ!うんうん。それでもいいっさ!!」
キョン「キ、キープなんて違いますよ!!ほら、ハルヒのことですからイヴも何かのイベントをするかもしれませんし!!」
鶴屋「ハルにゃんのほうが優先かぁー」
キョン「鶴屋さん、違うんですよ!!そうじゃなくてですね……!!」
鶴屋「なら、どういうことかなっ?」
キョン(素直に鶴屋の要望を聞き入れて、どっかの脳内花畑野郎に笑われるのは癪に障る……。しかし、万が一、いや、億が一、鶴屋さんが本気だとしたら、俺は最低な男になっちまう)
鶴屋「キョンくん、嫌なら嫌でいいよっ!こっちも無理に頼んでるのは承知の上だしねっ!」
キョン「……と、とりあえず保留でいいですか?」
鶴屋「オッケー!!なら、あたしと過ごす気になったらメールしてっ!!あ、でも、キョンくんの声を聞きたいから、電話のほうがいっかな!!」
キョン「は、はい」
鶴屋「それじゃ、キョンくんっ!バイバイにょろ~!!」タタタッ
―部室―
キョン「……」
ハルヒ「えーでは、クリスマス当日のことなんだけどー。みくるちゃんには約束通り、ミニスカサンタになってもらうから!!」
朝比奈「ひぇ~?!あれ、本当にきるんですかぁ!?」
ハルヒ「トナカイでもいいわよ?そのときはあたしがサンタになって背中に乗ってあげるから」
朝比奈「どっちもいやですぅ……」
ハルヒ「あとは鍋をするための材料も調達してこないとね。有希、何か鍋に入れたいものでもある?!」
長門「大根」
ハルヒ「大根ね。おっけー!!有希のために大量の大根を入れるわよ!!」
古泉「んふっ。楽しくなりそうですね」
キョン「なあ、ハルヒ。ちょっと聞きたいことがあるんだが」
ハルヒ「なに?あんたも大根欲しいわけ?それなら有希に言いなさい」
キョン「クリスマスの前日はなんかやるのか?」
ハルヒ「前日ってイヴのこと?別に何も予定はないわよ。クリスマス鍋パーティーの準備に追われることになるしね」
キョン「そ、そうか……」
朝比奈「え……」
長門「……」
古泉「涼宮さん、イヴは何も予定がないのですか?」
ハルヒ「ないわよ?本番は25日だもの。24日はただの平日じゃないの」
キョン(これは助かる。つまり、鶴屋さんの申し出を憂いなく受け入れることができるぜ)
キョン(って、待てよ。いや、こんなに物事が上手くいくのはやはり怪しいぜ。ハルヒの策略か……?)
朝比奈「そうですか……イヴはなにも……」
ハルヒ「なに、キョン。イヴに予定でもあるわけ?」
キョン「あ、いや、別に。聞いただけだ」
ハルヒ「あっそ」
キョン(もう少し探りをいれてみて、何もなければ鶴屋さんと約束をするか)
長門「……」
古泉「んふ」
朝比奈「……よしっ」
キョン(ああ、悪戯じゃありませんように……)
ハルヒ「それじゃ、今日はここまでよ!!解散っ!!」
キョン(早速、鶴屋さんに―――)
長門「……」スッ
キョン「ん?長門?なんだ、この栞は?」
長門「……」スタスタ
キョン(何か書いてあるが、幾何学模様でわからん……。『私はここにいる』ではなさそうだが……)
朝比奈「キョ、キョンくん……」モジモジ
キョン「なんですか、朝比奈さん?」
朝比奈「キョンくん、イヴはお、お時間ありますか……?」
キョン「え……?」
朝比奈「……も、もし……よければ……あの……わ、わたしと……その……うぅ……」
キョン「朝比奈さん、もしかして……イヴを俺と……?」
朝比奈「……」コクッ
キョン「……古泉!!!」
古泉「はい!なんでしょうか!!僕をご指名ですか?!ありがとうございます!!」
キョン「近いんだよ!!息がかかる!!無駄に良い香りがするから気持ち悪いんだよ!!」
古泉「それで、僕になにか?」
キョン「俺の周りで不可解なことが起こっている」
古泉「と、いいますと?」
キョン「24日という大事な日を俺と過ごしたいって女性が二人も現れやがった」
古泉「それは誰と誰でしょうか?」
キョン「朝比奈さんと……鶴屋さんだ……」
古泉「……んふっ。そうですか」
キョン「そうですかって……」
古泉「どちらも貴方にはそれなりの好意を抱いている。不思議がることでしょうか?」
キョン「朝比奈さんはまあ……一緒にいた時間も長いし、奇跡としてありえるかもしれん。だが、鶴屋さんはおかしいだろ」
古泉「そうですか?朝比奈さんが貴方のことを色々と話しているうちに、気になってきた。そうも考えられます」
キョン「だからってな、こんな夢物語をはいはい信じるほど、俺は単純じゃない」
古泉「まさか、誰かの罠とお考えですか?それは朝比奈さんと鶴屋さんの両名に失礼ではないでしょうか?」
キョン「ハルヒの仕業という可能性を捨てきれないんだよ」
古泉「涼宮さんの?それはないでしょう。逆なら十分考えられますが」
キョン「逆ってなんだ?」
古泉「言うまでもありません。事前に朝比奈さんと鶴屋さんと交渉し、イヴの日は予定が入っていることにしろと頼むわけです。そうなればあなたの選択肢は必然的に狭まる」
キョン「……」
古泉「イヴは一人孤独に過ごすか、僕と蜜月をともにするか、あるいは妹さんと戯れるか……といったところでしょう」
キョン「二番目の選択肢も無いがな」
古泉「そこで涼宮さんが「なら、あたしと過ごすわよ。感謝しなさい」と貴方を誘う。哀れに思ったからいう口実もできますしね」
キョン「いやいや。朝比奈さんか鶴屋さんと約束して、当日になったらドッキリプラカードを持ったハルヒがいるかもしれないだろうが」
古泉「ですがそれは、涼宮さんにとって全く面白くない展開なのですよ?」
キョン「どういうことだ?」
古泉「あなたが他の女性に、それも近しい相手に靡いてしまったことになりますからね。あの涼宮さんがそんな身を削るような遊びをするとは思えません」
キョン「どうしてあいつの身が削れるんだよ。削れるのは俺の心だろうが。そのときばかりは俺も閉鎖空間生み出したいね」
古泉「おや、何も気づいていないのか。それともわざとなのか……。それはここで言及はしないでおきましょう」
キョン「ふんっ」
古泉「ともかく僕が断言しましょう。そのような悪戯を涼宮さんはしません」
キョン「なら……」
古泉「朝比奈さんも鶴屋さんも、本物ということですね」
キョン「……」
朝比奈「……キョンくぅん。古泉くんと24日を過ごすんですかぁ?」
キョン「え?!そ、そんなわけないじゃないですか?!」
古泉「僕は大歓迎ですよ!!荒川さんや森さんも一緒に甘い一時を過ごしませんか?」
キョン「寄るな!!気色悪いんだよ!!」
古泉「残念、早々にふられてしまいましたか」
キョン「貴様は初めから選択肢にねーよ!!……森さんと一緒に過ごすのは魅力的に聞こえるけどな」
朝比奈「うぅ……やっぱり、わたしじゃぁ……」
キョン「朝比奈さん!?あ、いえ、今のは言葉の綾で……!!」
朝比奈「いいんです……。キョンくんは優しいし……かっこいいし……私なんかじゃ……釣り合いが……」
キョン「な、なんでそんなことを言うんですか?むしろ俺のほうが朝比奈さんには不釣合いですよ」
朝比奈「キョンくん……ありがとう、気遣ってくれて……うれしい……」
キョン(かわいい……)
朝比奈「……あの……キョンくぅん……24日は……」モジモジ
キョン「えっと……」
朝比奈「ダメ……ですかぁ……?」ウルウル
キョン「す、すこし、時間をもらえませんか?」
朝比奈「は、はい。あ、あの、もし、一緒に過ごしてくれるなら……で、電話を……くださいっ」
キョン「も、勿論ですとも」
朝比奈「そ、そそそ、それじゃあ、キョンくん!!またあしたっ!!」
キョン「は、はい、お気をつけて」
古泉「朝比奈さんをキープするとは、貴方も罪な人ですね」
キョン「う、うるせえ」
古泉「しかし、僕としましては、涼宮さんと共に24日を過ごして欲しいところなのですが」
キョン「なに……」
古泉「涼宮さんはああいっていましたが、本心では貴方とイヴを過ごしたいと願っているはずですから」
キョン「本当にそう思ってるなら、俺の首根っこ押さえつけて、過ごそうとするだろうよ」
古泉「前にも言いませんでしたか?涼宮さんはああ見えて、意外と照れ屋なのですよ?―――ともかく、一考してください。よろしくお願いします」
―キョン宅―
キョン(はぁ……どうする……)
キョン(鶴屋さんと朝比奈さんはよく一緒にいる友達だ。片方とだけ約束をしたら、後に軋轢を生むんじゃなかろうか……)
キョン「……って、俺がそんなことを考えるのもおこがましいか」
キョン「だけど、返事はしないとな……」
キョン「はぁ……どうすっかなぁ……」
妹「キョンくぅーん」ガチャ
キョン「なんだ?シャミセンか?ほら、もってけ」
妹「シャミもそうなんだけど、そろそろクリスマスだよね?」
キョン「そうだな。サンタに願い事はしたのか?良い子にしてないとこないぞ」
妹「ねえ、ねえ。キョンくん。イヴは家にいるの?」
キョン「え?まだ、わからん」
妹「今年はね、キョンくんとイヴに遊びたいなー」
キョン「はぁ?なんでだ?クリスマスにも遊ぶだろ?」
妹「だって、この前テレビで好きな人と過ごすのがイヴの過ごしかただっていってたもん。だからね、イヴはキョンくんと過ごしたいなぁ」
キョン「……すまん。なんだって?」
妹「だぁかぁらぁ、イヴはキョンくんと一緒がいいーのっ」ギュッ
キョン「お前、何が欲しいんだ?」
妹「へ?」
キョン「生憎だが欲しいものがあるなら、俺じゃなくて―――」
妹「キョンくん、あたしと過ごすのいやなのー?」
キョン「そうは言ってないが」
妹「なら、いいでしょー?あそぼー!!」
キョン「……」
キョン(おかしい……。こんなに甘えてくる妹は久しぶりだな……)
キョン(これでお兄ちゃんと言うものなら……)
妹「おにいちゃぁん」
キョン「……考えとく」
妹「わぁーい!!ありがと、キョンくん!」
キョン(やっぱり、何かがおかしい……のか?)
キョン(朝比奈さんに鶴屋さんに妹か……。無難なのは妹だな……。とか考える自分は恨めしい)
キョン「……まぁ、いいか。もう寝る」
ピリリリ……ピリリリ……
キョン(誰だ……こんな時間に……。ん?知らない番号だな……)
キョン「もしもし?」
『もしもし?キョン?』
キョン「え?はぁ……誰ですか?」
『ボクの声を忘れてしまったのかい?少し寂しいな。とはいえ、電話の声は機械を通しているために多少のノイズが入る。正確な声の判別は難しくなるのは当然のことだよ』
キョン「……お前、佐々木か?」
『そうだよ。久しぶりだね、キョン』
キョン「どうして……」
『さあ、どうしてだろう。ボク自身もよくわからないけれど、キョンのことが気になってね。色んな伝手を借りてこうして君の声を聞いているところなんだ』
キョン「……お前もクリスマスがどうのって言い出すつもりじゃないだろうな?」
『この時期はそれぐらいしか話題がないと思うけど。他にあれば聞こうか』
キョン(これはもう疑う余地はないな……。因果律が何かの拍子に狂いやがったに違いない……!!)
キョン「悪い、佐々木。また電話をかける。もう寝るところなんだ。返事はまた後日……」
『そうか……。分かったよ。良い返事を期待しておこう』
キョン「あ、あぁ……」
『おやすみ』
キョン「……」ピッ
キョン「朝比奈さんに鶴屋さんに妹に……佐々木か……」
キョン「おいおい……俺は今、人生の絶頂期にいるのかもしれない……」
キョン「いや……それはないか……。どっかのバカがおかしなことを仕出かしただけの話だ。これは夢だ。幻想だ」
キョン「……こんなときは、長門だな。あいつならこの事態についてなにか知ってるはずだ」
キョン(とはいえ、長門に頼るのは気が引けるな……。あいつにばかり負担をかけるのも……)
キョン(だが、このまま放置していいことでもないような気がするし……。すまない、長門。また力を貸してくれ)ピッ
キョン「―――もしもし、長門?」
『なに?』
キョン「訊きたいことがある」
『……』
キョン「俺の周りでおかしなことが起こっている気がするんだが、何か知っているか?」
『貴方の環境情報が改竄されている』
キョン「どう改竄されたんだ?」
『特定人物との情報凝着力が強まっている』
キョン「なんだそれは?」
『特定の人間が積極的に貴方と関わろうとしている』
キョン「その情報なんとか力の所為で朝比奈さんや鶴屋さんが一緒に居たがってるってわけか?」
『そう』
キョン「それは放っておくとどうなる?」
『害はない。ただし、情報凝着により多少のイレギュラーが発生する恐れがある』
キョン「どんなイレギュラーだ?」
『私一人で修復できるレベル。問題はない』
キョン「なあ、俺に近づこうとする人間はどれぐらいいるんだ?」
『私も含めて9人』
キョン「……9人?多すぎないか?というか、長門も含まれてるのか?!」
『貴方との情報共有量が多いものが選出されていると思われる』
キョン「情報共有量?一緒にいた時間が長い奴ってことか?」
『共有時間の優劣ではなく、交わした情報の密度による』
キョン「違いがわからん。長門よ、今後俺に関わろうとしてくる奴らは誰だ?わかるか?」
『把握しているのは人数のみ。接触を試みる人物については5人までしか詳細を伝えることができない』
キョン「9人中5人までは名前が分かってるんだな?」
『そう』
キョン「とにかく、その5人を教えてくれ」
『分かった』
キョン(5人か……まぁ……朝比奈さん、鶴屋さん、佐々木、妹、長門の5人か……?)
『涼宮ハルヒ、古泉一樹―――』
キョン「待ってくれ」
『なに?』
キョン「ハルヒはいい。だが、何故古泉がいる?異性だけじゃないのか?」
『男性は古泉一樹のみ。安心して』
キョン「……まぁいい。古泉はもうお断りしたからな……。心配はないだろう」
『……』
キョン「続けてくれ」
『朝比奈みくる、朝倉涼子―――』
キョン「長門なりの冗談なんだよな?」
『冗談ではない』
キョン「何故消えたはずの朝倉がリストにいるんだよ?!」
『それだけ強力な情報凝着が貴方の周囲に起こっているため』
キョン「死人も蘇るのか……。あと一人は、長門。お前だな?」
『そう』
キョン「鶴屋さんや妹、あと……俺の昔の知り合いもそうなんだよな?」
『貴方に接触してきたのなら、そういうことになる』
キョン「あと一人は誰なんだ……。黄緑さんじゃないよな?」
『それは分からない』
キョン「その情報なんとか力は弱くなってくれないのか?」
『時間がかかる』
キョン「どれぐらいだ?」
『7日程度』
キョン(クリスマス当日までかよ……!!)
『それが最短。短くはできない』
キョン「わかった……。だが、できるだけ早めに頼むぞ。なんか、怖くなってきたからな」
『善処する』
キョン「……最後に一つだけいいか?」
『なに?』
キョン「朝倉は俺を殺そうとするのか?」
『その可能性は低い。情報凝着は貴方との情報共有量を増やすことを主とする。自ら情報共有を消滅させるような行動はまず取らない』
キョン「そ、そうか……。一先ず、安心だな」
『そう』
キョン「長門、ありがとな。何も分からない状況ではなくなったから、少しだけ落ち着いたぜ」
『……』
キョン(さてと、長門が7日と言ったからには7日間、つまりはクリスマス当日まで、9人が積極的に関わろうとしてくるわけか)
キョン「あ、いや、古泉はもう違うから8人か」
キョン「ハルヒ、朝比奈さん、長門、朝倉、鶴屋さん、俺の妹、佐々木……そして、まだわからない誰か」
キョン(やれやれ……。傍からみればハーレムだが、誰か分からない奴と朝倉、そしてハルヒが怖すぎる)
キョン(ハルヒはまだいいが、朝倉はトラウマだからなぁ……)
キョン「いきなりナイフで刺されるのは御免蒙りたい」
キョン「それに……結局、誰かとはイヴを過ごさねばならんっぽいな……」
キョン「誰がいい……」
キョン(無難にいけば妹だな。まず波も立たない。鶴屋さんも朝比奈さんも納得してくれるはずだ)
キョン(佐々木がどこまで迫ってくるかは謎だが、あいつは他校にいるし、接触してくる頻度は最も低いし、電話程度のやりとりだけで7日間を過ごせる)
キョン(長門も心配はない。あるとすれば、ハルヒと朝倉、そして容疑者Xぐらいか……)
キョン(ハルヒはハルヒでまぁ、聞き分けはいいし……そこまで心配はしなくても……。なら朝倉が……)
キョン「って、何を考えてるんだ、俺は。これじゃあ丸っきり遊び人みてーじゃねーか」
キョン「……もう知るかっ」
キョン(クリスマスイヴは妹と過ごす。それでいい。それが平和だ。多分っ)
―翌日 放課後―
キョン「……さてと」
ハルヒ「行くわよ、キョン」
キョン「おう」
ハルヒ「……ねえ、キョン?」
キョン「なんだ?」
ハルヒ「鍋パーティーの前日なんだけど、あんたどうせ暇でしょ?」
キョン(来たか……)
ハルヒ「色々と買出しもあるから男手が必要なのよ。協力してくれるわよね?」
キョン「ハルヒ、悪いがその日は家に帰らなきゃならないんだ」
ハルヒ「どうしてよ?」
キョン「妹がどうしてもその日に家でパーティーがしたいって言っていてな」
ハルヒ「妹ちゃんが?イヴに?」
キョン「ああ。だから、悪いが24日は早めに帰る。悪いな」
ハルヒ「そう。妹ちゃんがそういってるなら、仕方ないわね」
―廊下―
ハルヒ「……」スタスタ
キョン(ハルヒのやつ、もっと食い下がるかと思ったが、あっさりしてたな。……いかんいかん、どうして少しガッカリしてんだよ、俺!!寒さで脳細胞が冬眠に入ったか?!)
鶴屋「やぁやぁ、キョンくん!!」
キョン「鶴屋さん……どうも」
ハルヒ「……」ギロッ
鶴屋「キョンくん、どう?決めてくれたかいっ?」
キョン「申し訳ありません、鶴屋さん。24日は妹にせがまれて、家でパーティーをすることになったんです」
鶴屋「あちゃー、そうなのー?」
キョン「なのでイヴは申し訳ありません」
鶴屋「んー。なら、仕方ないっさ。ごめんよ!!キョンくんを困られちゃったみたいでっ!!」
キョン「いえいえ。誘ってくれただけでもいくら感謝してもし尽くせませんよ」
鶴屋「そこまで言ってくれると嬉しいねっ。それじゃあねっ!!」タタタタッ
キョン(少し悲しそうな顔をしてたな……。心が痛む……。本当に申し訳ありません、鶴屋さん)
ハルヒ「キョン。行くわよ」
―部室―
朝比奈「え……そうですか……」
キョン「本当にすいません。朝比奈さんからの折角のお誘いだったのに」
朝比奈「そ、そんな!顔をあげてください!私は全然気にしてないですから!」
キョン「朝比奈さん……」
古泉「この分だと、涼宮さんのお誘いもお断りしたのですか?」
キョン「ああ」
長門「……」ペラッ
古泉「長門さんも?」
キョン「まぁな」
古泉「んふっ。では、僕が―――」
キョン「てめえはもう戦力外通告しただろうが」
古泉「冗談はさておき、では少し不可解ですね」
キョン「不可解だ?」
古泉「何故、閉鎖空間が発生しないのでしょうか。割と世界の危機もあり得るほどの特大なものが発生してもおかしくないはずですが」
キョン「妹っていう盾があるからじゃないか?」
古泉「なるほど。それもあるかもしれませんね。それと、先ほど貴方が説明してくれました情報凝着の強化という情報環境の改竄。これは何故起こったのか」
キョン「そんなの知るか。ハルヒの頭を割ってみれば片鱗ぐらいはつかめるんじゃねーか?」
古泉「涼宮さんの目的が不明瞭すぎると思いませんか?」
キョン「何が言いたい?」
古泉「この状況は言うなれば貴方がモテにモテる状況です。涼宮さんはどうしてそのようなことを願ったのか」
キョン「だから、俺に訊くな。あと顔が近いんだよ」
古泉「これは僕の憶測ですが、涼宮さんは今、貴方を試しているのではありませんか?」
キョン「試す?」
古泉「様々な誘惑に屈することなく、クリスマスまで過ごせるのかどうかを」
キョン「……」
古泉「100点の答えは『涼宮さんとイヴにデートをする』ですが、恐らく涼宮さんの中では『妹と過ごす』も模範解答としてあるのでしょう。故に閉鎖空間が発生しなかった。どうでしょうか?」
キョン「だから、知らん」
古泉「んふっ。もし、朝比奈さんや鶴屋さんを選んでいたら……大変でしたね……」
キョン「顔が近いって言ってるだろうが」
古泉「ともかくです。あなたはクリスマス当日まで色々なトラップを掻い潜らなければならないわけですね」
キョン「はた迷惑だな」
古泉「まぁ、今の調子を保つなら問題はないと思います。がんばってください」
キョン「はいはい」
キョン(トラップにかかった瞬間、世界破滅か?全く、冗談じゃないぜ)
朝比奈「キョンくん、お茶です」
キョン「どうも、頂きます」
ハルヒ「―――おっまたせー!!!いやー、ちょっと手間取っちゃったわ!!」
キョン「何を持ってきた、何を」
ハルヒ「もみの木よ。見てわからないの?」
キョン「どっから持ってきたんだよ?!」
ハルヒ「クリスマスツリーは必須でしょ?キョン、頭大丈夫?」
キョン「だからどこで手に入れたんだよ……」
ハルヒ「さー、飾り付け始めるわよー!!」
キョン「聞けよ!!」
ハルヒ「―――それじゃ、今日はここまでね。最後の人、鍵おねがーい」
キョン「はぁ……やれやれ……」
長門「……」スタスタ
キョン「……あ、長門」
長門「……」
キョン「この栞は何の意味があるんだ?」
長門「……いずれ分かる」
キョン「お守り、みたいなものか?」
長門「捨てないで」
キョン「捨てねえよ」
長門「なら、いい」
キョン「……」
キョン(無駄なものじゃないのは確かみたいだな……)
キョン「帰るか」
キョン(自宅でも飾り付けしないとな……)
―キョン宅―
妹「ジングルベール、ジングルベール♪鈴が~?」
キョン「なるー」
妹「ちゃんと歌ってよ、キョンくん」
キョン「悪かったね。飾り付けに専念してて、音程を合わせるのが苦痛なんだよ」
妹「そっか、ならしょーがないかぁ」
キョン「理解が早くて助かる」
妹「ねーねー、キョンくん」
キョン「どうした?」
妹「ヨミキチが25日に来るって。キョンくんにも会いたいって言ってたよ?」
キョン「そうか」
妹「あってあげないのー?」
キョン(ヨミキチか……。最後の一人の可能性もあるが、積極的な接触とは言わないな、今のところ……)
キョン「25日はハルヒたちと鍋パーティーだからな。残念だが、会えん」
妹「そっかー。でもイヴはあたしと一緒だよね、キョンくんっ?」
>>75
訂正
ヨミキチ→ミヨキチ
―自室―
キョン「つかれた……」
キョン(ミヨキチか……。いやいや、そこまでいけばもうなんだ……ハルヒのバカやろーだぜ)
キョン(妹と同類だからな……)
キョン(まぁ、朝比奈さんよりは大人っぽいが)
ピリリ……ピリリ……
キョン「非通知……。佐々木か?―――はい、もしもし?」
『キョンくん。久しぶり』
キョン「……」
『もしもし?』
キョン「すいません、誰ですか?」
『忘れちゃった?朝倉りょ―――』
キョン「……」ピッ
キョン「……さてと、寝るか」
キョン(ああ、神様……どうか何も起こりませんように……)
―翌朝―
妹「キョンくん、あさー!!」
キョン「ん……?さむっ……」
妹「キョンくん。ケータイ、さっきからずっと鳴ってるよ?」
キョン「なんだと……?こんな朝から……?」
キョン「んー……」ピッ
『おはようございます』
キョン「はい……どうも……」
『クリスマスイヴの予定はどうなっていますか?』
キョン「イヴですか……?妹と……すごしますが……?」
『そうですか。分かりました。朝早くに申し訳ありません』
キョン「いえ……」ピッ
キョン「ふわぁぁ……」
妹「キョンくぅん、顔あらいにいこー!」
キョン「そうだなぁ……」
―通学路―
キョン「……今朝の電話誰からだったんだ……?」
キョン「最後の一人か、あれ……?森さんっぽかった気もするが……」
キョン「まぁ、もう妹と過ごすことを貫いていればどうにでもなるな……」
谷口「よっ!!キョン!」
キョン「谷口か。どうした?」
谷口「キョン。そろそろだな」
キョン「冬休みか」
谷口「ちげーよ!!イヴに決まってるだろ!!イヴに!!」
キョン「イヴは妹と過ごす」
谷口「かぁーっ。お前、本気で言ってるのかよ?!」
キョン「仕方ねーだろ。毎年恒例なんだからよ」
谷口「俺みたいに女と過ごさないとか、青春の無駄遣いだぜ?!」
キョン「ああ、そうかい」
キョン(残念だが、谷口。俺はやろうと思えば6人の美女と過ごせるんだよ……。しないだけでな)
―共同玄関 靴箱―
谷口「涼宮と一緒じゃ、ま、無理な話だけだな」
キョン「うるさい」ガチャ
キョン「……ん?」
谷口「どうした?」
キョン「いや。なんでもない。行こうぜ」
谷口「でもまぁ、朝比奈さんや長門有希と一緒なのは少し羨ましいけどなぁ。そこに鶴屋さんも加われば、もう彼女もちの俺も嫉妬の嵐だぜ!!」
キョン(靴箱に手紙は良い思い出がないからな……。朝比奈さんから貰った手紙も朝倉の一件でチャラだ)ペラッ
キョン(放課後……教室で待ってます……)
キョン(これ、朝倉だよな……。名前ないし……。だが、きちんと便箋に入れているなら、朝倉じゃないのか……?)
キョン(考えても仕方ないか)
谷口「おい、キョン!!聞いてるのかよ?!」
キョン「ああ、聞いてる。さっさと別れろ。その女はきっと宇宙人か何かだ。いつか血を吸われるぞ?」
谷口「てめえ!!なんだとぉ?!」
キョン(問題はない。妹と過ごす。これさえ言っていれば……どうにでもなるっ)
―教室―
キョン「……」キョロキョロ
ハルヒ「なに、キョロキョロしてんのよ?殺し屋にでも狙われてるわけ?」
キョン「いや。ゾンビがいないかと思ってな」
ハルヒ「ゾンビですって?なに、バイオハザードでも起こったの?」
キョン「そんなところだ」
ハルヒ「アホか」
キョン(朝倉はいないか。クラスに溶け込んでいたらどうしようかと思ったぜ)
ハルヒ「ねえ、キョン。あたし、考えたんだけど」
キョン「何をだ?」
ハルヒ「24日、あんたの家に行くわ」
キョン「……は?」
ハルヒ「24日、あんたの家に行くわって言ったのよ。妹ちゃんとパーティーするんでしょ。仕方ないから参加してあげるわよ」
キョン「な、なんで、そうなる?!」
ハルヒ「何でも何も別にいいでしょ?なんか不都合でもあるわけ?」
キョン「不都合はないが……」
ハルヒ「はい、決定ね」
キョン「待てよ。次の日の準備はどうするんだ?」
ハルヒ「勿論するわよ。あんたの家にぜーんぶ、置いておくからぁ」
キョン「てめえ、俺に全部運ばせるつもりかよ?!」
ハルヒ「いいじゃない。平団員なんだから」
キョン「お前なぁ」
ハルヒ「あたしも居るんだから、いいでしょ?」
キョン「ん?お前も一緒に運ぶのか?」
ハルヒ「そう言ってるでしょ」
キョン「……」
ハルヒ「……」
キョン「それなら、いいぞ」
ハルヒ「ふんっ」プイッ
キョン(24日はハルヒと妹とのパーティーか……まぁ、いいか)
―廊下―
キョン(そういえば佐々木に連絡しておかないとな……)
キョン「えーと……」
鶴屋「キョーンくんっ!!」ギュッ
キョン「つ、鶴屋さん?!」
鶴屋「ねえねえ、イヴなんだけどさ、キョンくんは妹ちゃんと過ごすんだよねぇ?」
キョン「え、ええ……そうですが?」
鶴屋「あたしも混ぜてくれないっかな?」
キョン「は?」
鶴屋「やっぱり、キョンと一緒にいたくて。ダメにょろ?」
キョン(既にハルヒがいる……。ここは断るほうが賢明だ)
キョン「鶴屋さん、それは―――」
朝比奈「鶴屋さん、早くしないと次の授業が始まりますよ?」
キョン「朝比奈さん……」
朝比奈「キョンくん……鶴屋さんとなにを……」
鶴屋「お、みくる。ごめんよー」
朝比奈「い、いえ……」
キョン「……」
朝比奈「鶴屋さん……?」
鶴屋「ちょっと、キョンくんと交渉をねー。イヴに家にいってもいいかなって」
朝比奈「そ、そそそ、そうなんですかぁ?!」
キョン「え、ええ……まぁ……」
朝比奈「それなら……私も……い、行ってもいいですか!?キョンくん!!」
キョン「それは……流石に……!!」
朝比奈「鶴屋さんはよくて……私は……だめなんですかぁ……?」ウルウル
キョン(まずい!!何を言っても朝比奈さんが泣く!!)
鶴屋「ちょっと、キョンくん。みくるを泣かせたら許さないよっ!!」
朝比奈「いいの……。きっとキョンくんは鶴屋さんと……つ、るや……さんとぉ……」
鶴屋「み、みくる……ごめんよ……」オロオロ
キョン(ここで二人を招待するのはいいが、ハルヒはどう思うんだ……。ハルヒ、これがお前の仕掛けた罠だとしたら、相当性質が悪いぞ……)
キョン「あ、あのですね……朝比奈さん、まだ鶴屋さんを家に招待するなんて言ってないですから」
朝比奈「え?ほんとぉ?」
キョン「はい。妹にも一応、許可を貰ってから正式に招待しますので」
鶴屋「そっかぁ。妹ちゃんの許可がいるのかぁー」
キョン「一応、妹が主催者なんで」
朝比奈「分かりました」
キョン「明日には返事をしますので」
鶴屋「まってるっさー、キョンくんっ!!」
朝比奈「ごめんなさい、見っとも無い所を見せて……」
キョン「いえいえ。即答できない俺が悪いんです」
朝比奈「いえ、私が我侭をいったから……」
キョン「違いますよ、俺が全部……」
鶴屋「みくる、いくよーん」
朝比奈「あ、はーい。キョンくんっ、またあとでね」
キョン(まずい……底なし沼にはまってないか……俺……)
―昼休み 部室―
古泉「どうかしたのですか、こんなところに呼び出して……んふっ、いいでしょう。僕も覚悟を決めます」
キョン「なんの話だ。俺が聞きにきたのは現状がどれぐらいヤバいかってことだよ」
古泉「涼宮さんを自宅に招待することは決定してしまった。そのあと鶴屋さんと朝比奈さんが戦列に加わったわけですね?」
長門「……」
キョン「ああ」
古泉「んふっ。ちょっとしたサスペンスですね」
キョン「やっぱり、断ったほうがいいか」
古泉「それが最も正解に近いでしょう。涼宮さん以外の方とは約束を交わさないほうが身のため、いえ、世界のためです」
キョン「……長門。訊きたいことがある。今の状況を修復したとして、9人に7日間の記憶は残るのか?」
長門「情報凝着により生じた行動とその記憶は不完全な状態ではあるが残る」
キョン「不完全?」
長門「夢を見るのと同義の意識レベル。ただし、自我の強い者はその限りではない」
キョン(ハルヒや長門はヤバいのか。あと鶴屋さんも鮮明に残りそうだな……)
古泉「夢オチで済むのなら気は楽ですね」
キョン「そのオチまで持っていくのが難しいんだろうがよ」
古泉「そうですね……。それに気になったのですが、涼宮さんが貴方の家に行くと言った途端、鶴屋さんと朝比奈さんが同じことを言ったのも気になりますね」
キョン「……俺もそれは思った。こうなってくると残りも家に来ると言い出すんじゃないか?」
古泉「イヴの夜に次々と押し寄せてくる女の子ですか……。これはこれは、もうホラーの領域ですね」
キョン「楽しんでるんじゃーよ!!」
古泉「まあ、大半の者には記憶は曖昧な形でしか残らないようですから、特に問題もないと思います。ただ、そこに涼宮さんがいれば話は別ですね」
キョン「……」
古泉「一撃で世界が消える可能性もあり得ますから」
キョン「ハルヒを招待しないって手もあるな」
古泉「それも結末は変わらないでしょう」
キョン「手詰まりかよ?!」
古泉「涼宮さんとデートをすれば解決です。家にいるから恐ろしい目に遭うのですから」
キョン「家にいないって選択か……。ハルヒの力じゃ……どうしようも……」
古泉「あるいは涼宮さんに交渉してみるのも手ですね。ほかにも女の子が来るけど、いいか?と。案外許してくれるかもしれませんよ?」
キョン「そんなこと言えるか!!」
古泉「では、涼宮さんとデートをするしかありませんね。そのままネオン街へ消えていくのがベターです」
キョン「ふざけんな」
古泉「大真面目なのですが」
キョン「……長門はどう思う?」
長門「涼宮ハルヒに交渉してみるべき」
古泉「ほう?」
キョン「許してくれるのか?」
長門「可能性は高い」
古泉「根拠はあるのですか?」
長門「情報凝着の性質上、対象者に危害を加えることはまず考えられないから」
古泉「しかし、相手はあの涼宮さんです。一般論や常識を軽々と貫く例外を生み出す人ですよ?」
長門「……」
キョン「長門……信じていいんだな?」
長門「確実ではない。ただ、成功率は高い」
てす
書けるなら書く
古泉「僕個人としましてはあまり好ましいことではありませんね。余計なリスクが伴います」
長門「……」
キョン「まあ、長門が言うんだから世界が崩壊するようなことにはならんだろうさ」
古泉「だといいのですが。とはいえ、僕も貴方に一任するしかないのですが」
キョン(要は大勢で集まって楽しむほうがいいってハルヒを思わせればいいだけの話だろ)
キョン(鶴屋さんや朝比奈さんを見る限り、断っても積極的に関わろうとしてくるなら説得なんて難しいわけだし)
キョン(ハルヒに承諾を貰ったほうが遥かに面倒がない、はずだ)
長門「……」
キョン(長門の助言もあるし、きっとなんとかなる……)
キョン「……はぁ」
古泉「おや、どうしたのですか?」
キョン「いや、なんかこう……修羅場を回避しようとしているみたいでな。気分が良くない」
古泉「見方によっては浮気相手の存在を容認してもらおうとしているわけですからね」
キョン「嫌な言い方するな。そんなんじゃない」
古泉「んふっ。分かっていますよ。冗談ですっ」
―教室―
キョン「ハルヒ、ちょっといいか?」
ハルヒ「なによ?」
キョン「イヴの日のことなんだがな、ちょっと話しておきたいことがある」
ハルヒ「だからなに?」
キョン「……お前のほかにも招待したい人がいるんだ」
ハルヒ「誰?」
キョン「朝比奈さんと鶴屋さんだ。今のところはな」
ハルヒ「……」
キョン「でも、ほら、人数が多いほうが楽しいだろ?遊びにも幅が出るし、パーティーは大人数でするほうが盛り上がるし」
ハルヒ「……」
キョン「だから、その二人を呼ぼうと思うんだが……」
ハルヒ「……別にいいわよ」
キョン「お、おう……そうか」
ハルヒ「みくるちゃんと鶴屋さんでしょ?別に問題はないわ。その二人だけ?」
キョン「まあ、あくまでも今のところはなんだ。まだ増えるかもしれん」
ハルヒ「増えるっていっても有希と古泉くん辺りでしょ?」
キョン「そ、そうだ……その辺りだ……」
ハルヒ「なら、二日連続でパーティーになっちゃうわね。買出しも行かないと……。キョン、明日ぐらい必要なものを集め始めなさいよ?」
キョン「何を集めれば良い?飾りつけはもう思ってるぞ?」
ハルヒ「バカ?食べ物や飲み物がいるでしょうが」
キョン「それなら人数に合わせて買うつもりだったさ。心配するな」
ハルヒ「分かった。いい?全部、あんた持ちだからね?あんたが招待したんだから、当然でしょ?」
キョン「はいはい。承知の上だ」
ハルヒ「ふふーん。良い心がけね。感心感心」
キョン(はぁ……内心緊張していただけに、こうもあっさり行くとなんか腹が立つな。つっても、こいつから「二人っきりのほうがいいわ!」なんて可愛い台詞はきけないだろうがな)
ハルヒ「なによ?文句でもあるわけ?」
キョン「いや、ない」
ハルヒ「25日の準備も怠るんじゃないわよ?いいわね?そっちがメインなんだから」
キョン「言われんでもわかってる」
―放課後 部室―
キョン「古泉、どうだ?」
古泉「閉鎖空間は確認されていません。涼宮さんも世界も至って平穏です」
キョン「そうか……」
古泉「しかし驚きですね。あの涼宮さんがまさか側室を認めてしまうとは」
キョン「元からハルヒはなんとも思ってないってことだろ」
古泉「そんなはずはないのですが。何はともあれ、これで堂々と他の女性も呼べるわけですから、一安心ですね」
キョン「まぁな」
古泉「おや、なにやらご不満そうですが。涼宮さんから嫉妬が欲しかったのでしょうか?」
キョン「殴るぞ」
古泉「しかし、僕も不満なのですよ。今回に関しては」
キョン「戦力外通告を受けたからか?」
古泉「それも大いにありますが、別のことです。涼宮さんの行動と思考が今までとまるで違うように思えるのです」
キョン「……」
古泉「最初から我々とイヴを過ごすつもりならば、涼宮さん自らが舵取りをしていたことでしょう。ですが、今回は貴方が家でイヴを過ごすことを聞いてから予定を変更した。涼宮さんにしては受動的です」
キョン「夏休みのこともある。あいつが人の意見を聞いてから強引に割り込んでくるのは今に始まったことじゃないだろ」
古泉「確かにそうですが」
キョン「ま、なんにせよこれで朝比奈さんが泣くことはないし、鶴屋さんも笑顔でいてくれる。妹も喜ぶ。何も問題はないな」
古泉「ところで、僕も参加してもよろしいですか?イヴの夜、貴方の家にお邪魔したいのですよ、んふっ」
キョン「来るなら手土産ぐらいもってこいよ」
古泉「元よりそのつもりです」
キョン「……」チラッ
キョン(そろそろ行くか……。教室で俺を待っているのは誰だ……。本命は朝倉だが、まだ見ぬ9人目の可能性もあるな)
キョン(それにしても、佐々木はともかく朝倉が俺の家に来るとなると一大事件になりかねない)
キョン(朝倉だけは水際で止めたい)
長門「……」
キョン(最終手段として長門の力を頼むことになるかもしれないな。いや、朝倉相手なら確実か……)
キョン(ハルヒもまだ来ないし、一足先に面倒事をやっつけておくか……)
キョン「ちょっと出かけてくる。ハルヒが来たら適当に言い訳しておいてくれ。小言程度で済むようにな」
古泉「分かりました。お気をつけて」
―教室―
キョン「……」ガラッ
黄緑「……どうも」
キョン「貴方でしたか」
黄緑「はい」
キョン「もしやと思いますが、イヴがどうのって話じゃないですよね?」
黄緑「イヴの話です」
キョン(9人目か……。予想はしていたな。だが、俺と黄緑さんにはそれほど交友はないんだが。寧ろ全くないぞ?どうなってる、長門よ)
黄緑「長門さんと二人で居たほうがいいです」
キョン「……え?」
黄緑「イヴの日は長門さんと二人きりで居たほうがいい、と言いました」
キョン「長門と……?何故ですか?」
黄緑「今から4日後、つまり24日はあなたの情報凝着力が最も強大になる日です。その日に一つの場所に留まろうとすれば、膨大な情報が重なりあい、我々でも予期できない事態が起きると考えられます」
キョン「そんなこと長門は一言も言っていませんが」
黄緑「涼宮ハルヒという存在だけでも情報統合思念体はその全てを把握できていない。そこに数々のイレギュラー因子が接触すれば、最悪の事態も考えられます」
キョン「……」
黄緑「ですが、貴方と24日を長門さんと共に過ごすなら問題はありません。長門さんなら情報凝着を緩和することもできますから」
キョン「それで他の連中とは出会わないように一日を過ごせってことですか」
黄緑「はい」
キョン「それなら長門が真っ先にその提案をすると思いますが」
黄緑「長門さんは一度深刻なエラーを発生させました。彼女の行動には常に矛盾が孕んでいると思ってください」
キョン「ま、待ってくれ!!あれはもう!!」
黄緑「情報統合思念体も長門さんを信用してはいません。今はまだ」
キョン「……」
黄緑「どうか、長門さんと一緒に」
キョン「長門と一緒に居てもいいですが、貴方の言うとおり長門が何かのエラーを起こしているなら、むしろ危険なんじゃないですか?」
黄緑「そのための私です。長門さんが情報凝着緩和以外の行動を起こそうとした場合、即座にその異常動作をとめます」
キョン「長門はもうあんなことしないって言ってますよ」
黄緑「絶対ではありません。一度、起こしてしまったのですから」
キョン(ここに来て、新しい選択肢かよ。これはどっちが正解なんだ……くそっ……誰か教えてくれ……)
―部室―
ハルヒ「遅い!!罰金!!死刑!!」
キョン「悪かったな。色々あったんだよ。あといきなり罰を上げるのはよしてくれ。心臓に悪い」
ハルヒ「クリスマスまで時間がないのよ!?分かってる?!」
キョン「ああ、分かってるって」
朝比奈「(キョンくぅん?)」
キョン「(なんでしょうか)」
朝比奈「(イヴの件はどうなりましたか?)」
キョン「(ああ。大丈夫です)」
朝比奈「え!ホントに!?わーい!!」
キョン「あ、朝比奈さん、喜んでくれるのはありがたいですが、今は……」
ハルヒ「みくるちゃん?ミーティング中に私語をするなんて、ずいぶんと偉くなったわねぇ……?」
朝比奈「ひっ」ビクッ
ハルヒ「これは躾しなきゃだめねー?みくるちゃーん?」
朝比奈「ひぇぇぇ!!」
ハルヒ「胸をもんであげるわ!!これで巨乳を通り越して魔乳になればいいのよ!!!」モミモミ
朝比奈「そ、そんなのいやですぅ~!!やめてぇぇ!!」
キョン「……」
古泉「何かありましたか?」
キョン「……また今度話す」
古泉「明日は不思議探索ですし、そのときまでに考えを纏めてもらえればありがたいのですが」
キョン「ああ。できるだけやってみる」
長門「……」
キョン(長門……。お前にはお前なりの考えがあるのか……?)
長門「……」
ハルヒ「おらおらおらおら!!」モミモミ
朝比奈「くすぐったいですぅ!!」
キョン「やめろ」
ハルヒ「そうね。こんなことをしている場合じゃなかったわ。鍋パーティーの際、色々なゲームをしようと思ってるのよ。あたしがもういくつか考えてあるけど、意見があれば終わってから聞いてあげるわ」
キョン「つまり、聞く気はないんだろ?」
―キョンの部屋―
キョン(長門に訊いて見るべきか……。いや、時間はないんだ。聞いてみよう)
ピリリリ……
キョン「佐々木……そうだ……まだ佐々木と話すべきことを話してなかったな。―――はい」
『キョン。答えは出たかい?』
キョン「なんのだ?」
『焦らしても僕は喜ぶだけだよ?』
キョン「知らん。あとそんなことを恥ずかしげも無く言うな』
『イヴの日は僕と一緒に過ごしてくれるかどうかって話だよ』
キョン「……悪い。佐々木。イヴの日は無理だ」
『……理由を聞かせてくれるかな?』
キョン「話せないって言ったら、怒るか?」
『いや。理由を言えない事はよくあることだからね。ただ、大体の察しがつくのが残念でならないけど』
キョン「……で、断っておいてなんだが、質問したいことがある」
『僕は今、相当拗ねているから正直に答えるかどうかわからないよ?それでもいいなら、どうぞ』
黄緑じゃなくて喜緑さんだからな
ぶち殺すぞ(´・ω・`)
キョン「俺の携帯番号をどうやって知った?」
『伝手だと言ったはずだけど』
キョン「その伝手はなんだ?」
『答えたらイヴは一緒にいてもいいのかな?』
キョン「……」
『……』
キョン「分かった。何も聞かん」
『非常に残念だ』
キョン「なら、質問を変える。お前は俺のことが急に気になったみたいなこと言ってたよな?」
『その通り。この時期にこんな気持ちになるなんて想像もしてなかったけど』
キョン「誰かに俺の携帯番号を聞いてからそう思ったとかじゃないよな?」
『それは違うな。僕が欲したから手に入れた。一連の物事は逆順で発生してはいない』
キョン(佐々木を唆した奴でもいるのかと思ったが、違うか。やっぱり情報凝着って奴が働いた所為なんだな……)
『話は終わりでいいのかい?』
キョン「ああ。悪かったな。また、この埋め合わせはどっかでさせてもらうぜ」
キョン「……これで、良かったんだよな」
キョン「……って、喜緑さんの言うことが正しいなら、どっちにしろ24日には佐々木はこの家に来ちまうのか……?」
キョン(いやいや、そのときは長門を呼んで、SOS団メンバーと鶴屋さん以外はこの家に寄せ付けないようにすればいいだけのはなしじゃねーか)
キョン「……そうだ。別に長門と二人っきりでなくてもそれぐらいはできるだろうよ」
キョン(だが、それができないから喜緑さんはわざわざ二人でいるように進言してきたのか?)
キョン「やっぱり、長門に訊くしかないか―――」
ピリリ……ピリリ……」
キョン「非通知……か」ピッ
『キョンくん。今、何してたの?』
キョン「誰だ」
『酷いなぁ。忘れたの?朝倉涼子よ?』
キョン「……何の用だ?」
『この前、いきなり切ったでしょ?もういじわるっ』
キョン(なんだ、この妙に甘ったるい声は……。本当に朝倉か……)
『ねえ、ねえ、キョンくん。イヴは私と一緒に過ごさない?バニー姿でお持て成しぐらいはしてあげるけど……』
キョン「どうしてバニーだ?」
『好きなんでしょ?涼宮さんもしてたし』
キョン「俺の趣味じゃない」
『ふぅん。なら、ネコミミがいい?それとも幼稚園児スタイル?婦警とかも―――』
キョン「朝倉、何がしたいんだ」
『貴方と一緒にイヴを過ごしたいだけ』
キョン「お前のコスプレは後ろ髪を引かれるが」
『なら、いいでしょ?おねがいっ』
キョン「……できん」
『ひどい。私のこと嫌いなの?殺そうとしたから?あのことならイヴの日に一晩中謝るから』
キョン「そこまでする目的を言え」
『目的は貴方の傍に居たいから』
キョン「それだけか」
『うんっ。それだけ』
キョン「だが、やっぱり朝倉とは一緒にいられない。悪いがな。他をあたってくれ」
『……そう』
キョン(悪寒が……?!)ゾクッ
『それじゃあね、キョンくんっ』
キョン「あ、おい。朝倉!?」
キョン「……」
ピンポーン
キョン「……こんな時間に客か?」
キョン「そうだ、長門に電話を―――」
妹「キョンくぅーん」ガチャ
キョン「なんだ?勝手に入ってくるんじゃありません」
妹「お客さんだよー」
キョン「誰だ?」
妹「えっと、あさくら、りょーこっていってたー。キョンくんと話がしたいんだって」
キョン「……」
妹「今、玄関のところにいるよー?」
キョン「……」
『開けてくれない?この時期は寒いの』
キョン「何しにきた?」
『話をしにきたの、貴方と』
キョン「なんの話だ」
『イヴのこと』
キョン「今、断っただろ」
『私は諦めらない』
キョン「……」
『開けて』ピンポーン
キョン「……」
『ねえ、開けてってば』ガチャガチャガチャ
キョン「おい、帰ってくれ」
『仕方ないなぁ……よいしょ』ガチャン
朝倉「あーあ、開いちゃった。こんばんは、お邪魔します」
キョン「……!!」
朝倉「どうしたの?部屋まで案内してくれないの?玄関でお話しする?立ち話はあまり好きじゃないけど……。貴方がそれを望むなら……」
キョン(これはどうしたらいい……。長門が来てくれるのか。この家まで。今、まさに全速力で向かっているのか、長門よ)
朝倉「みてみて。このマフラー、可愛いでしょ?さっきつい買っちゃったの。これだけ長いと二人で一緒に使えるわよ?嬉しい?」
キョン「恋人用のマフラーじゃねえか……」
朝倉「だって、イヴに一緒に過ごすならこれぐらいは必要でしょ?互いの体温で温めあうものなんでしょ?」
キョン(絞殺されかねん……)
朝倉「手袋もセーターもお揃いの買ってきちゃった。着てみてっ」
キョン「や、やめろ!!」
朝倉「……」
キョン「と、とにかく帰ってくれ。長門を呼んでも……良いんだぞ……」
キョン(我ながらなんて情けない台詞だ)
朝倉「その電話機で?いいわよ。でも、長門さんに通じるかしら……」
キョン「なに?」
朝倉「同じ失敗を何度もすると思う?私が今日までここに来なかったのは、貴方の家の周辺に以前とは比較にならないほど強固な情報封鎖を施していたからなの。この意味、わかる?」
キョン「やばいってことぐらいはわかるな」
朝倉「今、この空間には誰も入り込めない。元からいる貴方の家族は別ね」
キョン「……たのむ……帰ってくれ……。お前とはイヴは過ごせないんだ」
朝倉「うん、それ無理っ。だって私は、貴方と一緒に居たいんですもの」
キョン「……!!」
朝倉「ね、キョンくん?部屋に行きましょ?」
キョン「こっちに来るな!!」
朝倉「どうして逃げるの?」
キョン「お前にはもう二度も殺されかけたからな!!」
朝倉「二回目は私じゃない私のはずよ?関係ないわ」
キョン「お前にとってはそうかもしれないがな、襲われた身としてはそんな風に考えられないんだよ」
朝倉「私と居るのって嫌?なら、ネコミミつけてみるね。これで可愛くなったでしょ?」
キョン「関係ないって!!そんなの!!」
朝倉「どうしてもダメっていうなら……。私は貴方の肉体が傍にあればいいし……」モジモジ
キョン(長門!!たすけてくれー!!!)
朝倉「じゃ、いくねっ」ダッ
キョン「ぐっ!?」
朝倉「きょーんくーん、ぎゅっとしてー」
パリィィン!!
朝倉「え……?」
長門「……」
キョン「長門!!」
喜緑「捕獲しました」
キョン「喜緑さんまで……?!」
朝倉「ど、どうして……!?この情報封鎖を突破することなんて貴方たちが力を合わせても……」
長門「外側からの解除は不可能だったが、当該ポイントへのアクセス許可を事前に申請しておいた」
朝倉「事前に……?まさか、空間連結の出口をキョンくんに持たせていたの?」
長門「そう」
朝倉「そんな……」ガクッ
キョン(まさか、あの栞か……。あの栞がある場所になら長門は瞬間移動できるってことでいいのか?)
キョン「長門、助かったぜ」
長門「応援に来たわけではない」
キョン「え?」
喜緑「朝倉涼子の独断専行を止めに来ただけです」
キョン「独断専行だと?」
長門「……」
朝倉「なにを言っているのかしら。私が彼と二人っきりで過ごしても結果は同じになるはずでしょ?」
喜緑「貴方の力では迫り来るイレギュラーに対応できません。それは長門さんの役目です」
朝倉「私でもできるわ。1日キョンくんを守ることぐらい」
喜緑「できないから言っているのです。それに……」
キョン「え?なんでしょうか?」
喜緑「……貴方の周囲にいるイレギュラー因子。彼女の脅威に対抗できるのは長門さんだけですから」
キョン「誰のことだ?」
朝倉「長門さん、私に任せて。立派にキョンくんとイヴを過ごしてみせるわっ」
長門「許可できない。諦めて」
キョン「……待ってくれ。朝倉は敵って訳じゃないのか?」
長門「今回、朝倉涼子は貴重な戦力。24日、貴方の情報凝着力が我々の予想を上回らないとも限らない」
朝倉「だから、私がキョンくんと一緒に……」
喜緑「ダメです」
朝倉「キョンくぅん……」
キョン「……部屋で話そう。ここにいると妹にも気づかれる」
長門「心配はいらない。私たちの会話は一切届かないようになっている」
キョン「立ち話もなんだし、ま、上がっていってくれ」
朝倉「うれしいっ」ギュッ
キョン「うわっ?!」
長門「離れて。怯えている」グイッ
朝倉「そんな……」
喜緑「では、お言葉に甘えてお邪魔します」
キョン(これ、俺の部屋が宇宙人の秘密基地みたいにならないか……?)
キョン(ハルヒが知ったら狂喜乱舞して心臓発作起こしそうだな)
―自室―
キョン「問題の情報凝着力ってやつだが、長門なら緩和できるんだろ?それなら、緩和しつつ、この家でパーティーしても大丈夫なんだろ?」
長門「問題はない」
キョン「なら、24日はこの家でパーティーしとこうぜ」
喜緑「涼宮さんの力がイレギュラー因子によって突如発動した場合、長門さんでも止めることはできません」
キョン「だから、緩和してくれるならそのイレギュラーも俺の家には来ないんじゃないんですか?」
朝倉「力を断つことはできないの。飽く迄も緩和。この場所に留まっていれば必ずイレギュラー因子は訪れる」
キョン「それは誰だ?まだ現れてない9人目か?」
喜緑「佐々木さんです」
キョン「佐々木?」
喜緑「涼宮さんと佐々木さんがイヴという日にこの空間で出会うことは非常に危険なんです」
キョン「何故ですか?」
朝倉「きっと急進派としてはとても嬉しいことが起こるの」
キョン「ああ、なるほど。そりゃ危険だな」
朝倉「でしょ?だから、貴方にはここに居てほしくない。それが喜緑さんの考え。でも、長門さんは貴方がこの空間に居ても問題はないという考えなの」
キョン「長門、問題ないってどうして言い切れるんだ?」
長門「対象をこの周囲1キロ圏内に入れさせないようにするから」
キョン「な……」
喜緑「広域情報封鎖ですか。突破される可能性もゼロではないはずです」
長門「朝倉涼子のようにはならない」
朝倉「私だって時間をかければ空間連結からのアクセスも遮断できたわ。想定してなかっただけなの」
キョン「……」
喜緑「許可はできません。長門さん、24日は彼と二人でどこかに身を潜めていてください」
長門「そうすることで涼宮ハルヒに不信感を抱かせてしまうと、今後の監視調査に支障が出る」
朝倉「心配なら私がキョンくんの傍に……」
キョン「長門……」
長門「……」
キョン(長門、俺の家でパーティーがしたいっていうのか。それとも俺と二人っきりにはなりたくないっていうことなのか。後者じゃないことを信じたいが……)
長門「……」
キョン(ハルヒたちとパーティーをするか……長門とイヴを過ごすか……ああ、どっちも魅力的だね……。ん……ちょっと待てよ。なんか引っ掛かるぞ……)
喜緑「結論はでませんか。今日はこれで―――」
朝倉「私は帰る家がないから、キョンくんの家でお泊りしないと」
長門「朝倉涼子を敵性と判定」
キョン「……待ってくれ」
喜緑「なんでしょうか?」
キョン「長門、特定の空間に対象を入れさせないことができるんだよな?」
長門「できる」
キョン「それは確実ではないんですよね?」
喜緑「はい」
キョン「朝倉は時間をかければ誰も侵入できない空間をつくれるんだよな?」
朝倉「うんっ。できるわ」
キョン「喜緑さん、なら別にパーティーをしてもいいですよね?」
喜緑「どうしてですか?」
キョン「なら三人で壁を作れば鉄壁じゃないですか。二重三重の壁でも突破される危険性があるんですか?」
喜緑「……」
キョン「それでも絶対とは言えないが、ハルヒの力もその壁を認知して尚且つ心の底から壊そうと思わないと壊れないはずだし」
キョン「三人の力ならどうってことないと思うんですが」
喜緑「……」
キョン「長門、俺の考えはダメか?」
長門「ダメではない」
朝倉「むしろ、完璧な模範解答かな」
キョン「よし。それで頼むよ、長門」
長門「分かった」
喜緑「長門さん?」
長門「……」
喜緑「分かりました。その方法を取りましょう」
キョン(俺でも思いつけたのにこの三人が思いつけなかったってあり得るのか……?)
朝倉「おやすみなさい」モゾモゾ
キョン「長門、朝倉をベッドから引き摺り出してくれ」
長門「了解」
―翌日 駅前―
ハルヒ「キョン!!ちゃんと不思議をみつけてきなさいよ!!サンタの帽子とかサンタのヒゲとか!!」
キョン「お前こそ、サンタの格好をした店員を襲ったりするんじゃねーぞ」
ハルヒ「ふんっ」
朝比奈「では、またお昼に」
長門「……」
古泉「都合よく、僕とペアになれましたね」
キョン「都合よくね……」
古泉「それで、考えは纏まりましたか?」
キョン「長門たちが全部請け負ってくれるみたいだ」
古泉「長門さん……たち?」
キョン「長門と喜緑さん、そしてゾンビ朝倉だ」
古泉「おやおや。モテますね。羨ましい限りです」
キョン「まあ、これで解決だ。何も心配はいらねーよ」
古泉「昨日の出来事を詳しく教えてもらえますか?」
古泉「―――なるほど、イレギュラー因子のためにそこまで」
キョン「ああ。鉄壁の防御だろ?」
古泉「引っ掛かりますね」
キョン「何にだ?」
古泉「貴方が女性陣にモテるようになったのは、涼宮さんの能力によるものです」
キョン「そうだろうな。どうしてそんなことをしたのかは分からんが」
古泉「一つの仮説としては貴方がイヴに特定の女性と一緒に過ごさないか心配になったから。どんな誘惑にも負けずクリスマス当日を迎えることができるか、という試練を設けた」
キョン「ああ、本当に迷惑だな」
古泉「どうやらこの仮説は間違っていたようです」
キョン「なに?」
古泉「この仮説通りに涼宮さんが想い、貴方に試練を設けたというなら、長門さんたちは全力でその試練をサポートするはずです」
キョン「してるじゃねーか」
古泉「僕にはイレギュラー因子との接触を避けようとしているだけのように思えます。そんなことをしなくても涼宮さんと貴方を二人っきりにさせてホテル街に送れば、付け入る隙はなくなります」
キョン「どういうことだ?」
古泉「対応がズレているのですよ。今回の一件、涼宮さんと貴方が一緒にイヴを過ごせば丸く収まります。件の情報凝着も涼宮さんが完膚なきまでに押さえ込んでくれるでしょう」
キョン「……」
古泉「押さえ込むのも可笑しい言い方ですね。そもそも涼宮さんが起こしたことですから、目標以上の成果が出た時点で涼宮さん自身が静めてくれる。そう思いませんか?」
キョン「そうだな……」
古泉「今までも涼宮さんは満足すれば奇怪な現象を正してくれていました」
キョン「シャミセンやら秋に咲く桜か」
古泉「まあ、あれはフィクションということを強く自覚させた結果でもありますがね。それでも涼宮さんは一般的な考えの持ち主です」
古泉「ファンタジーの世界にのめり込んでいても、喉元を過ぎればリセットをする。切り替えの早いかたでもありますからね」
キョン「ならよ。ハルヒはなんのために俺をモテさせたんだ」
古泉「先の一件。長門さんによる世界改変……」
キョン「その話は片がついた」
古泉「貴方がモテるようになったのは涼宮さんの力ではないとしたら、どうでしょうか?」
キョン「……は?」
古泉「んふっ」
キョン「長門がやったって言うのか?」
古泉「可能性はあります。彼女たちが何故貴方の家でのパーティーを避けようとするのかを考えれば、そのような事実もあるのではないでしょうか?」
キョン「それこそ動機がないだろ。何のためにそんなことをしたんだよ」
古泉「それは分かりません。ですが、涼宮さんが素直に貴方の言うことを聞いたことも僕はずっと気になっていましたので」
キョン「……」
古泉「あれは朝比奈さんと鶴屋さんを許容したのではなく、単純に貴方と傍にいることで満足していたからではないでしょうか?」
キョン「バッカ!!あいつはそんな女じゃねえよ!!」
古泉「無論、涼宮さんには似つかわしくない感情です。ですが、長門さんによる情報凝着の改竄がもたらした現象なら……」
キョン「……」
古泉「鶴屋さんも朝比奈さんもあなたの傍にいたいからこそ、積極的に、多少強引に迫った。朝倉涼子も然り」
キョン「お前の考えが合っていたとして、それをした所為で余計な危険性を孕んだイレギュラーまで呼び込んだんだぞ?長門たちがそんな無駄なことをするか?」
古泉「彼女たちほど自制している存在はこの世にないと僕は思っています」
キョン「自制?」
古泉「長門さんは深刻なエラーによってその自制が効かなくなってしまった。故に起こってしまったのが先の一件です」
キョン「それと何の関係がある?」
古泉「分かりませんか?情報凝着を高めることで貴方の傍にいても問題のない状況を作り出したわけです。貴方の身を守るため、また情報凝着の影響で離れられないという理由付けも出来上がります」
キョン「自制できてねーじゃねえか」
古泉「長門さんはパーティーを望んでいたのですよね?」
キョン「……」
古泉「そして喜緑さんはその逆……。おや、知らぬ間に動機が見えてきましたね」
キョン「喜緑さんが勝手にやったことなのか」
古泉「少なくとも長門さんは嫌がっているのですよ。それは貴方と傍にいることを嫌がっているのではなく」
キョン「自制できないとボスに思われているのが嫌ってことか」
古泉「喜緑さんは長門さんに溜まっているエラーを消そうとしているのかもしれませんね」
キョン「……」
古泉「んふっ。申し訳ありません。全ては僕の妄言です。長々と失礼いたしました」
キョン「……古泉、俺はどうしたら良いと思う?」
古泉「それは貴方が決めることです。僕が決めて良いことではありません」
キョン「……」
古泉「イヴまで時間はありません。真相を究明することよりも、貴方の行動を決定するほうがいいでしょう。真相も25日になれば彼女が語ってくれるはずです」
キョン「そうだな」
古泉「では、いきましょう。不思議を探しに」
―午後 駅前―
ハルヒ「キョン!!デートじゃないんだからね!!!」
キョン「分かってる」
ハルヒ「ちゃんと探しなさいよ!!トナカイの角とか!!空飛ぶソリとか!!!」
キョン「見つけたらすぐに連絡してやるよ」
ハルヒ「ふんっ!!よろしくっ!!」
古泉「では、後ほど」
長門「……」
キョン「……行きましょうか」
朝比奈「あ、はぁい」
キョン「……朝比奈さん」
朝比奈「なんですか?あ、イヴの日なんですけど、やっぱりプレゼントを用意したほうがいいのかなーって鶴屋さんとも―――」
キョン「俺の話を聞いてくれませんか」
朝比奈「は、はい。どうぞ」
キョン「ありがとうございます」
朝比奈「情報凝着……ですか」
キョン「はい。その所為でここ数日の俺はモテています」
朝比奈「そ、それは……」
キョン「朝比奈さんにも鶴屋さんにも影響があったと思います」
朝比奈「でも、私の気持ちは……」
キョン「朝比奈さんのお気持ちはよくわかります。しかし、今の感情は一種の吊り橋効果みたいなものです」
朝比奈「そんなこと……私は……だって……キョンくんと一緒に居たいって……ずっと……」
キョン「朝比奈さん……」
朝比奈「キョンくぅん……わたし……本当にキョンくんが……わたし……うぅ……」
キョン(かわいい……)
朝比奈「キョンくんと……ぐすっ……わたし……」
キョン「落ち着いてください。その苦しい気持ちを長門も味わっていると思うんです」
朝比奈「長門さんが……?」
キョン「あいつだって言いたいこともやりたいことも山ほどあると思うんです。だから、クリスマスの日は長門に一番楽しんで欲しいと俺は考えています」
朝比奈「どうするの?プレゼントとかデートとか?」
キョン「それを朝比奈さんに相談しようと思いまして」
朝比奈「はぁ……。でも、涼宮さんとも相談したほうがいいんじゃ……」
キョン「ハルヒには言えません。言えば、長門の心労が無駄に増えるだけですから」
朝比奈「そうですか?」
キョン「なんかありませんかね、長門が腹を抱えるぐらい面白いことって」
朝比奈「長門さんがお腹を抱えることって……うーんと……えーと……パソコンとかでしょうか?」
キョン「パソコンをクリスマスにプレゼントはちょっと高価すぎますね」
朝比奈「ですねー……。なら、やっぱりキョンくんがデートしてあげればいいんじゃぁ」
キョン「は?」
朝比奈「きっと長門さんも喜ぶはずです」
キョン「いや、長門はイヴに俺の家でパーティーをしたいって言っているんですよ。二人きりにはなりたくないんですよ」
朝比奈「それは建前。本音は別だと思うな。私だって……本当は……」
キョン「状況が状況だけにデートはできないと思うんですが」
朝比奈「……キョンくん。私に考えがあります」
キョン「はい?」
―夕方 駅前―
ハルヒ「それじゃ、みんな!!月曜日に学校でね!!」
朝比奈「はい」
古泉「ええ、さようなら」
長門「……」コクッ
キョン「じゃあな」
ハルヒ「ちょっと、キョン!!」
キョン「なんだ?」
ハルヒ「イヴの日、来る人数は増えたの?」
キョン「変わらん。SOS団と鶴屋さんと妹だ」
ハルヒ「あっそ。分かったわ。楽しみねっ!」
キョン(何をするつもりなんだか……)
長門「……」
キョン「長門、ちょっといいか?」
長門「……」コクッ
キョン「―――以上が古泉の仮説だが、間違ってるところはあるか?」
長門「ない」
キョン「やっぱり、お前の……いや、喜緑さんの仕業なのか?」
長門「情報統合思念体の考え。それは私のことでもある」
キョン「そうか……」
長門「そう」
キョン「佐々木の件はもう大丈夫なのか?」
長門「心配はいらない。涼宮ハルヒが対象と出会う可能性は限りなく低い」
キョン「そうか。ありがとよ、いつも」
長門「礼はいならない。これが役目」
キョン「長門、俺ん家でのパーティー楽しんでいってくれ。まあ、何か食って、ゲームして、とかぐらいだけどな」
長門「……」コクッ
キョン「あと、プレゼントも考えてるから。楽しみにしててくれ。お前が喜んでくれるかどうかはわからないが」
長門「……」
キョン「話はそれだけだ。また月曜な」
キョン(朝比奈さんの作戦は実行したいな。朝比奈さんだけにあまり期待しないほうがいいかもしれないが)
佐々木「キョン」
キョン「え……?」
佐々木「久しぶりだね」
キョン「お前……」
佐々木「ここにいたら会えるような気がしたんだ。何となくなんだけど」
キョン「何か用か?」
佐々木「僕がここにいることはキョンにとって不都合なのかい?」
キョン(残念だけど、その通りだ。佐々木)
佐々木「イヴは誰と過ごすのかな」
キョン「気になるのか?」
佐々木「何故かね。僕自身らしくないって自覚はあるんだけど、どうしても知的好奇心が背中を押す。いや、違う。これは嫉妬かもしれない」
キョン「佐々木……」
佐々木「キョンと一夜を共にする相手がとても気になるんだ。当日、見に行ってもいいかな?」
キョン(それは無理だ。お前じゃ宇宙人の壁は越えられないからな)
佐々木「……ダメなのか?」
キョン「ああ……悪いな」
周防「―――」
キョン「……?!」ビクッ
佐々木「あ、ごめん。今、行くから」
周防「―――」コクッ
キョン「今のは?」
佐々木「僕の知り合いなんだ」
キョン「そ、そうか」
佐々木「それじゃあ、キョン。また」
キョン「あ、ああ……」
周防「―――」
キョン(佐々木も変な奴とつるんでるんだな……)
キョン(にしても、佐々木から会いに来るとはな。やっぱり、当日はなんかあるかもしれないな……)
―24日 キョン宅―
妹「キョンくぅーん」ギュゥゥ
キョン「こら、離れなさい」
妹「もうすぐ、みんなくるのー?」
キョン「ああ。だからお皿とか出しておかないとな」
妹「キョンくん、だっこしてー」
キョン「甘えるんじゃありません」
キョン(今日は朝から妹がべったりだ。悪い気はしないが、あまり見られたくはない光景だな)
妹「キョンくぅん、いじわるしないでぇ」
キョン「意地悪じゃない」
妹「おにいちゃぁん」
キョン「しょーがねーなぁ。5分だけだぞ」ヒョイッ
妹「わぁーい!!キョンくんだいすきぃー」ギュゥゥ
キョン(イヴとはいえ昼過ぎだからまだいいが、これが夜だったらぞっとするな……)
―――ピンポーン
古泉「んふっ。どうもお邪魔します」
キョン「なんだ、古泉か」
森「私もいます」
キョン「森さん!?」
森「何か?」
キョン「(古泉、どういうことだ?!)」
古泉「(手土産を用意しろと言ったのは貴方ではないですか)」
キョン「森さん
>>281
投下ミス
古泉「んふっ。どうもお邪魔します」
キョン「なんだ、古泉か」
森「私もいます」
キョン「森さん!?」
森「何か?」
キョン「(古泉、どういうことだ?!)」
古泉「(手土産を用意しろと言ったのは貴方ではないですか)」
キョン「(森さんなのかよ)」
森「あの、ご迷惑でしたか?」
キョン「いえいえ!!そんなことは!!」
森「よかった」
キョン(9人目は森さんか。いつかの電話もあったしな……)
古泉「それにしても仲がいいのですね?」
キョン「うっせえ」
妹「キョンくぅーん」ギュゥゥ
古泉「あれから長門さんはどうなっていますか?」
キョン「とくに変化はないな」
古泉「そうですか。よかったです」
キョン「何がだ?」
古泉「んふっ。いえ、僕が余計なことを言ってしまったがために長門さんが思い詰めていたらと少し後悔をしていました」
キョン「大丈夫だ。長門だったその辺は理解してるはずだ」
古泉「……僕は貴方ほど信頼はされていないでしょうから」
キョン「そんなことないだろ」
古泉「貴方が羨ましいです、本当に」
キョン「……」
古泉「是非とも長門さんたちとも仲良くなれる秘訣をじっくり教えてもらいたいものですね……」
キョン「顔を近づけるな!!」
森「あの、私はなにをしたらいいでしょうか?」
キョン「ああ、えっと……寛いでいてくれればそれで」
森「そうですか?お掃除ぐらいならしますけど……」
―――ピンポーン
妹「あたしがでるー」
森「私も行きます」
キョン「古泉」
古泉「なんでしょう?」
キョン「今日は長門を楽しませようと思ってる。だから……」
古泉「多少のことには目を潰れ、ですか?いいでしょう。普段なら涼宮さんを優先させるところですが、僕も長門さんには色々とお世話になっていますからね」
キョン「それは全員だな」
古泉「ええ。その通りです」
妹「キョンくぅーん、ハルにゃんがきたよー」
キョン「よう、ハルヒ」
ハルヒ「……」
キョン「なんだ?」
ハルヒ「なんで、森さんがいるわけ?増えてるじゃない」
森「……っ」ビクッ
古泉「申し訳ありません。森さんがどうしても参加したいと言うものですから」
森「え……」
ハルヒ「森さん、イヴなのにいいの?こんな駄目な奴の家で時間を浪費して」
キョン「なんだ、その物言いは。おい」
森「え、ええ。私としてはこの日に一人で居る時間のほうが苦痛なので……」
ハルヒ「そう……。なら、いっか。たのしみまっしょい!!」
森「は、はい」
キョン「全く……あいつは……」
古泉「でも、やはりいつもの涼宮さんではないですね」
キョン「そうか?」
古泉「もう少し突っ込んで訊いて来ると思いませんか?」
キョン「かもしれないね」
妹「キョンくぅん、だっこぉ」
キョン「恥ずかしいからダメだ」
ハルヒ「……」
朝比奈「―――どうも、こんにちは」
鶴屋「やっほーい!!」
キョン「朝比奈さん、鶴屋さん」
鶴屋「へぇー、ふぅーん。キョンくん家の匂いってやっぱいいね!」
キョン「な……!?」
ハルヒ「鶴屋さん、ようこそ!」
鶴屋「ハルにゃーん!!いやーきちゃったよー!!」
キョン「一気に賑やかになったな」
朝比奈「キョンくん、長門さんは?」
キョン「それがまだなんですよ」
朝比奈「そうですか。あの準備はできてますから、キョンくんが指示をだしてくださいね」
キョン「本当にいいんですか?」
朝比奈「はい。大丈夫っ。私もこれぐらいはさせて。長門さんにちゃんとしたお礼ってしたことがなかったから」
キョン「助かります」
キョン(長門が一番遅いっていうのも気になるな……。なんかあったんじゃないだろうな……)
妹「キョンくぅん」ギュゥゥ
キョン「離れろって」
古泉「長門さん、遅いですね」ギュッ
キョン「手を握るな!!」
鶴屋「ほんとだねー。もう集合時間は過ぎてるのにさ」ギュッ
キョン「鶴屋さん……あの……そんな自然に腕を絡ませてこないでください……反応に困ります」
朝比奈「キョンくん、わ、わたしもいいですかぁ?」ギュッ
キョン「確認と同時じゃないですか……」
キョン(この状況、日付が変わるまで続くのか……?)
森「……」
キョン(あれ、森さんはなんともないのか?)
ハルヒ「ハルヒダーイブ!!!」ドガッ
キョン「いってぇな!!なにしやがる!!」
ハルヒ「……」プイッ
キョン(長門、早くきてくれ……)
―――ピンポーン
妹「あ、有希ちゃんきたー!!」テテテッ
ハルヒ「やっと来たのね。全く」
古泉「これでイヴパーティーが始められますね」
鶴屋「はやくあそぶっさー!!」
朝比奈「……」
キョン「朝比奈さん、そんなに緊張していたらバレますよ?」
朝比奈「ご、ごめんなさい……」
妹「キョンくぅーん。有希ちゃんじゃなくて、りょーこちゃん来ちゃったけどー?」
キョン「……!?」
古泉「それはまずいですね」ガタッ
ハルヒ「……リョーコ?」
キョン「ハルヒ、あのな……!!」
朝倉「キョンくん、きちゃったっ」ヒョコ
キョン(長門はどうした……長門は……)
ハルヒ「朝倉涼子?!なんでここにいるのよ?!カナダに行ったんじゃないの?!」
朝倉「久しぶり、涼宮さん」
キョン「(朝倉!!お前がきてどうするんだ!!)」
朝倉「(それが私たちのつくった情報封鎖の障壁が次々に破壊されて、大変なのよ。それで長門さんもがんばってるんだけど、もうすぐ佐々木さんはここまで来ちゃうわ)」
キョン「(なに?!)」
ハルヒ「……ちょっと、キョン。説明してくれるんでしょうね?」
キョン「あ、えっと……」
朝倉「年末だし日本に帰ってきたの。それでね、キョンくんの家でクリスマスパーティーがあるからって聞いて来たの」
ハルヒ「誰から聞いたのよ」
朝倉「長門さんだけど」
ハルヒ「……有希なら仕方ないわね」
キョン「(朝倉……佐々木とハルヒは会わせないようにしたほうがいいんだよな?)」
朝倉「(私としては二人を会わせてどのような情報爆発が起こるのか見てみたいのだけど)」
キョン「お前……!!」
―――ピンポーン
森「長門さんがいらっしゃったのではないですか?」
ハルヒ「あたしが出るわ。全く、団長のあたしを待たせるなんて有希を叱らないと」
キョン「待て、ハルヒ!!俺が行くから、お前は団長らしく座ってろ」
ハルヒ「え、そう?」
キョン「……」スタスタ
キョン(長門が居ない所為なのか。それとも誰かがこの状況を願ったのか……)
キョン(どちらにしてもハルヒにだけは……)ガチャ
佐々木「やあ、キョン。来てしまったよ」
キョン「佐々木。悪いが今は友達が大勢来ててな」
佐々木「それは分かってる。玄関に並べられている多様な靴を見ればね」
キョン「そういうわけだから、佐々木。この埋め合わせは今度……」
佐々木「すぐに帰るよ。だから、キョンの友人を僕に紹介してくれないかな?」
キョン(それはまずい。そんなことして喜ぶのは宇宙の中で朝倉だけだ)
佐々木「どうしてもダメなのかい?」
長門「―――許可できない」
キョン「長門……!!お前、ボロボロじゃないか!!何があった?!」
長門「問題ない。肉体の修復は既に始まっている」
佐々木「キョン、彼女は?」
キョン「長門っていって、俺の仲間だ」
佐々木「仲間……か。良いものだね、仲間は」
長門「……」
喜緑「周防九曜の所為でここまで突破されるとは……」
キョン「喜緑さんまで……」
佐々木「僕は嫌われているみたいだね、キョン」
キョン(少なくとも宇宙人勢にはな……)
長門「日付が変われば、ここに来たことを貴方は忘れる。だから、涼宮ハルヒに会っても意味はない」
佐々木「涼宮、ハルヒ……?」
長門「そう」
佐々木「なるほど……」
キョン(何を納得したんだ……?)
佐々木「……益々会ってみたくなったよ。キョン、ごめん」
キョン「まて!!」
佐々木「……」スタスタ
キョン(どうする……ここで佐々木とハルヒを出会わせたら、朝倉が歓喜することになるだけ……。何が起こるかは知らんし、興味もないがまた長門が苦労を背負い込むことになるのはダメだ)
キョン(今日は長門を労うために俺は準備してきたんだぞ……!!また俺は……!!)
長門「……」
キョン(これ以上……長門に何かさせるなんて……あっていいわけがない。―――予定とは随分違うが仕方ない)
キョン「―――朝比奈さーん!!!」
佐々木「え?」
長門「……?」
朝比奈「は、はぁーい!!キョンくんっ!!今行きまぁす!!」テテテッ
キョン「お願いします!!」
朝比奈「分かりましたっ」
キョン「佐々木!!目を瞑れ!!酔うぞ!!」
佐々木「なにを―――」
キョン「ん……」
長門「……」
キョン「長門……よう……。ここは……?」
長門「図書館」
キョン「いつのだ?」
長門「貴方と初めてここへ来た日。時刻は17時06分。私と貴方は既に外へ移動している」
キョン「そうか……成功したんだな……。朝比奈さんに感謝しないと……」
長門「……」
キョン「そうだ、佐々木はどうした?」
長門「向こうのソファで寝かせた」
佐々木「すぅ……すぅ……」
キョン「悪いことしちまったな……」
長門「あの状況では不可避。仕方ない」
キョン「気遣ってくれてるのか。サンキュ」
長門「……」
長門「……どうしてここへ?」
キョン「ん?色々考えて、長門が一番心休まる場所はここしかないって思ってな」
長門「時間移動をしなくてもここに来ることはできたはず」
キョン「いや、朝比奈さんがこうしたほうがいいって言ってな」
長門「……」
キョン「長門、これ。1日早いがクリスマスプレゼントだ」スッ
長門「……」
キョン「本にしようかとも思ったんだが、朝倉が俺の家に来たとき「寒い」とか行ってたから、お前もそう感じるのかと思って手袋とマフラーにした」
長門「……」
キョン「普段、暑そうにも寒そうにもしないからそういうことを気にしたこと無かったんだが……やっぱり、寒いものは寒いのか?」
長門「……」コクッ
キョン「そうか。なら、身に付けてくれ。って、今は5月だから、つけるなよ?元の時間へ戻ってからだ」
長門「……」コクッ
キョン「朝比奈さんが来るまでは動けないな……。本でも読んどくか?」
長門「……」コクッ
佐々木「すぅ……すぅ……」
キョン「悪いな、佐々木。こんなことしちまって」
佐々木「うぅん……きょん……」
キョン「……」
朝比奈「キョンくんっ。ごめんなさい、待った?」
キョン「朝比奈さん。どちらへ?」
朝比奈「予定外の人まで時間移動させちゃったから、ちょっと怒られちゃいました」
キョン「申し訳ありません。俺の勝手な行動の所為で」
朝比奈「いえ。涼宮さんと佐々木さんの邂逅はまだ危険だったみたいで、その点は褒められました」
キョン「そうですか」
朝比奈「佐々木さんは私に任せて、キョンくんは長門さんのところに行ってあげて」
キョン「はい。では、よろしくお願いします」
朝比奈「うんっ。あ、こっちにいられる時間は30分だけだから。時間厳守でお願いします」
キョン「分かりました」
朝比奈「……」
長門「……」
キョン「よっ。長門、何の本読んでるんだ?」
長門「……」スッ
キョン「面白いか?」
長門「ユニーク」
キョン「本が好きなんだな」
長門「割と」
キョン「そうか」
長門「……」
キョン(俺もなんか適当に……)
長門「……栞」
キョン「え?」
長門「栞、持っている?」
キョン「栞ってこれか?長門がワープするために必要なやつだろ。―――ほら、ちゃんと持ってるぜ?」
長門「……」
キョン「そういえば、これにも幾何学模様が描いてるよな。『私はここにいる』じゃないよな?」
長門「ない」
キョン「なんて書いてあるんだ?」
長門「……」
キョン「言語化できないってやつか」
長門「……に」
キョン「え?」
長門「……また、図書館に」
キョン「そうか……」
長門「礼を言わないといけない」
キョン「良いんだよ。礼をし足りないのはこっちのほうだからな」
長門「貸し出しカードのこともある」
キョン「あれは長門が動こうとしないから」
長門「……」
キョン「どういたしまして。これぐらいなんでもないけどな、ホントに」
キョン「―――そろそろ時間だ。行こうぜ、長門」
長門「……」コクッ
キョン「なあ、一つ聞いてもいいか?」
長門「なに?」
キョン「情報凝着を改竄した理由ってほかにもあるのか?」
長門「……情報統合思念体の謝礼」
キョン「謝礼?」
長門「貴方には迷惑をかけたから、その謝礼」
キョン「すげーな、ありがとうって伝えてくれ」
長門「わかった」
キョン(でも、時間が迫るとこう名残惜しいな……。もう朝比奈さんや鶴屋さんが露骨なスキンシップをしてくることはないのか……)
長門「……」ギュッ
キョン「長門?どうしていきなり手を……」
長門「情報凝着力が強まっている所為」
キョン「なら、仕方ないな」
―キョン宅―
朝比奈「無事に帰って来れました」
キョン「よかった」
長門「……」
喜緑「みなさん、おかえりなさい。とはいっても一瞬の出来事でしたけど」
キョン「すいません、喜緑さん。佐々木をお願いできますか?」
喜緑「はい。責任をもってご自宅に届けます」
キョン「ありがとうございます」
喜緑「いえ。こちらこそ長門さんをよろしくお願いします」
キョン「へ?」
喜緑「ふふ……」
佐々木「うぅん……きょん……ぼくはぁ……」
キョン「どういう意味だったんだ……」
朝比奈「キョンくん、行きましょう。涼宮さんが怒っちゃいます」
キョン「そうですね。早いとこ戻りましょう」
ハルヒ「―――それじゃあ、クリスマスイヴパーティー、はじめるわよ!!!」
ハルヒ「かんぱーい!!!」パァァン!!!
朝比奈「ひゃぁ?!」ビクッ
森「……」ビクッ
キョン「なんでクラッカーを鳴らすんだよ。アホか」
ハルヒ「別になんでもいいじゃない。グラスを鳴らすのもクラッカーを鳴らすのも」
キョン「驚くだろうが」
妹「キョンくぅん、だっこー」
キョン「……」
妹「おにいちゃん」
キョン「我侭だなぁ」ヒョイ
妹「わぁーい」
鶴屋「おにいちゃーん!!あたしもだっこしてにょろー!!あはははは!!」
キョン「鶴屋さん?!何を言ってるんですか?!酔ってるんですか?!」
ハルヒ「……」
古泉「お兄様、次は僕を」
キョン「黙れ。消えろ。森さんを置いて帰れ」
朝比奈「え?え?キョンくんをおにいちゃんって呼べばいいんですか?」
キョン「朝比奈さんまでのらないでください」
朝倉「兄さん、私も抱っこして」
キョン「あのな……」
長門「にーにー」
キョン「長門?!」
ハルヒ「ハルヒダーイブ!!!」ドガッ
キョン「いってぇなぁ!!」
ハルヒ「あたしはお兄ちゃんとか言わないんだからね!!」
キョン「ああ、結構だ」
妹「キョンくんの妹増えちゃったね」
キョン「……こんなにも妹はいらん」
キョン(特に古泉。妹じゃないし)
ハルヒ「おーさまだーれだっ!!はい、あたし!!」
朝比奈「ひぇぇ」
ハルヒ「それじゃあ、二番の人が四番の人に本気ビンタ!!」
鶴屋「二番と四番ってだれにょろ?」
森「二番は私です」
古泉「四番です」
森「い、いいのですか?」
古泉「お手柔らかにお願いします」
森「……っ」パァンッ!!!
古泉「ぐっ……?!」
鶴屋「うわ……良い音……」
ハルヒ「ちょっと!!古泉くん大丈夫?!」
森「も、申し訳ありません、つい力が……」
古泉「ん、んふっ……森さんも長門さん同様……ストレスを発散させたほうがいいでしょうね……」
森「すいませんっ!すいませんっ!」
追い付いた④
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
実は、ネタレスしたら代行の話を持ちかけられたのが始まりでした
本当は話のネタなかったのですが←
ご厚意を無駄にするわけには行かないので流行りのネタで挑んでみた所存ですw
以下、まどか達のみんなへのメッセジをどぞ
まどか「みんな、見てくれてありがとう
ちょっと腹黒なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」
さやか「いやーありがと!
私のかわいさは二十分に伝わったかな?」
マミ「見てくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」
京子「見てくれありがとな!
正直、作中で言った私の気持ちは本当だよ!」
―数時間後―
キョン「長門、飲み物いるか?」
長門「……」コクッ
キョン「ほらよ」
長門「……」ゴクッゴクッ
キョン「長門も今日は泊まっていくか?」
長門「……」
キョン「遠慮はしなくていいぞ。ハルヒに朝比奈さんに鶴屋さんまで泊まることになったからな。こうなったら長門もついでに泊まっていけって感じだ」
古泉「では、僕も泊まって行きましょうか」
キョン「お前はさっさと帰れ。森さんを置いてな」
古泉「連れないですね」
朝倉「キョンくん、私も泊まってもいいかしら?」
キョン「ダメだ。お前、明日には消えるんだろ?ハルヒや鶴屋さんの前で消えられたら困るんだよ」
朝倉「もう少し貴方の傍にいたいのに……」
キョン「勘弁してくれ」
ハルヒ『みくるちゃんにドーン!!!』
朝比奈『うぇぇぇ!?』
妹『わーい!わーい!!』
鶴屋『いーねぇ!!みくる!!かわいいよぉ!!』
キョン(明日も学校あること、女性陣は覚えてるんですかね……)
キョン(妹はきちんと寝かしつけほしいね)
古泉「それでは、また明日」
キョン「おう」
朝倉「またね。キョンくん。涼宮さんとお幸せに」
キョン「ああ」
森「本日はとても楽しかったです。このお礼はまた後日に必ず」
キョン「そんな、いいですよ」
長門「……」
キョン「長門も帰るのか?」
長門「……」コクッ
キョン「そうか」
長門「これ、性能を早く試したいから」
キョン「手袋とマフラーか。どうだ?」
長門「快適」
キョン「そりゃ良かった」
長門「……」
キョン「長門。9人目って結局誰だったんだ?森さんか?それとも喜緑さんか?」
長門「……私」
キョン「え……?」
長門「……もう一人の私が9人目。彼女も貴方に会いたがっていた」
キョン「そうか……。図書館で会ってたんだな。もっと気の効いたこと言えればよかったな」
長門「大丈夫。傍に居ることができただけで満足だと感じている」
キョン「なら、先日朝早くにかかってきた電話はなんだったんだ……」
長門「それは喜緑江美里。貴方の24日の予定を聞き、行動方針を決めていたから」
キョン「あれは喜緑さんか……。ということは森さんもミヨキチも違ってたのか……。分かると少し気落ちするな……」
頑張れ
長門「……」
キョン「また、明日な。長門」
長門「……」
キョン「どうした?」
長門「よかったら」スッ
キョン「……え?」
長門「クリスマスプレゼント」
キョン「……サンキュ」
長門「……」コクッ
キョン(もうすぐ今日が終わるな……)
キョン(明日になればいつもの俺になっちまうわけか……。今が人生の絶頂期であることをそのときに痛感するんだろうな……)
キョン(いや、今も十分楽しいし、これ以上は望めないか)
キョン「長門のプレゼントは……」
キョン「……また分厚いハードカバーだな……。ありがとよ、長門。じっくり読ませてもらうぜ」
キョン(さ、寝るか)
―翌日 通学路―
ハルヒ「ふわぁぁ……」
キョン「眠そうだな」
ハルヒ「……どうしてあたしたちキョンの家で寝てたわけ?制服も取りに帰らなきゃならないし……もう朝からバタバタしちゃったじゃない……」
朝比奈「そうですねぇ……」
ハルヒ「パーティーをしていたような気もするんだけど……
鶴屋「……」
キョン「鶴屋さん?」
鶴屋「昨日のことはなかったことにしておいたいいの?」
キョン「できればお願いします」
鶴屋「んー」
朝比奈「鶴屋さんは覚えてますかぁ?」
鶴屋「ぅんや!なーんにも!!あっははははは!!いやーもうびっくりぎょうてんあめあられだねっ!!!」
朝比奈「ですよねー」
ハルヒ「パーティーをしててそれから……。あーもう!!今日は鍋パーティーをするんだから!!みんな気合入れなさい!!」
―部室―
キョン「よ、長門。……お前は覚えてるよな?」
長門「……手袋とマフラー、今日もつけてきた」
キョン「おぉ、そうか」
長門「暖かい」
キョン「そりゃ嬉しいね」
長門「……」
キョン「長門、ありがとよ」
長門「情報凝着力を強めたいとき言って」
キョン「いや、遠慮しとく。確かに少し寂しいけど、俺はもう十分楽しいからな」
長門「そう。……私も」
キョン「そろそろ、ハルヒが来るな。鍋の用意でもしておくか」
長門「……」
ハルヒ「―――はぁーい!!それじゃあクリスマス鍋パーティはっじめるわよー!!!」
END
○○○
○ ・ω・ ○ がおー
○○○
.c(,_uuノ
○。 ○
ミハックシュ ○ o ○
ミ `д´∵° 。 o ○
.c(,_uuノ ○ ○ ○
>>1 ○○○○
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∧∧ ○
( ・ω・) ○ ○
.c(,_uuノ ○○○○○
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