麻子(昼休みに、私と二人っきりになりたい)
麻子(そして来てみたら、いきなりこれか…)
麻子「…おい沙織」
麻子「いくら男に縁がないとはいえ、その冗談は趣味が悪いぞ」
沙織「冗談じゃないんだってばー!」むすー
私の目の前で困り顔を浮べる彼女の名は、武部沙織
私、冷泉麻子とは小学校からの付き合いで、一般に言う幼馴染の関係だ
麻子「私と二人っきりで昼食なんて、なんだと思えば」
麻子「そんなくだらんジョークを聞かせるために、私を呼んだのか?」
麻子「お前のせいで、貴重な睡眠時間が無駄になったぞ」
麻子「寝る…罰として枕になれ沙織…」Zzz…
沙織「寝ないでよまこぉー!」ゆさゆさ
沙織「みぽりんと華に心配されちゃってるし…」
沙織「こんなこと相談できるの、麻子くらいしかいないんだよ!?」
沙織「こういう色恋沙汰は…みんなに話すの恥ずかしいし…」モジモジ
沙織「まして相手は女の子だし…」
麻子(だから幼馴染の私になるのか)
麻子「で、本当なのか?」
沙織「ホントだよー…私がこんな冗談言うと思うー…?」
麻子「思わんな」キッパリ
沙織「でしょ?」
麻子「誰に告白されたんだ、戦車道で一緒の一年か?」
沙織「うんや、全くの初対面」
『武部先輩!私と付き合ってください!一目惚れでした!!』
沙織「……なんて言われちゃった」
麻子「モテモテだな」
麻子「さすがモテ道の達人、沙織さんだ」
沙織「女の子にモテても意味ないよー…」ドヨーン…
麻子「まあ、相談には乗ってやる」
沙織「ありがとまこぉー…一人で抱え込むには重すぎる問題だよー…」ぎゅう
口に出して言うには恥ずかしいが、沙織は母性というか、面倒見の良さが魅力だ
その告白した一年は、沙織にそういうものを感じとったに違いない
麻子(女子高ではめずらしくないことなのか?)
麻子「返事はいつの予定だ?」
沙織「金曜の放課後…」
麻子「今日じゃないか、唐突だな」
沙織「おととい告白されてずっと悩んでたんだよ…」
麻子「もっと早く相談しろばかもの」
沙織「ううっ」
沙織「ごめんなさい…」くーん…
麻子「今日は戦車道の練習もないし、即行か」
麻子「もちろん断るんだろ?」
沙織「当然だよ!」ピシャリ!
沙織「でも…なんか可哀想だし…」
沙織「失恋ってつらいものらしいから…」
麻子(相変わらず他人への思いやりは人一倍強いな)
麻子(碌に恋愛もしたことがないくせに)
麻子「そういう半端な優しさがその娘を傷つける、と私は思うんだがな」
沙織「うぐっ!…はいその通りでしゅ…」しょぼーん…
麻子「キッパリ断って来い」
沙織「わ、わかった」
沙織「そうだよね!そういう無意味な優しさが一番ダメなんだよね!」
沙織「よし!ちゃんと断わりくれてくる!!」
麻子「良かったな、悩みが晴れて」
麻子(恋愛とかよくわからんし、適当に言っただけだがまあいいか)
キーンコーンカーンコーン♪
沙織「あっ!」
沙織「もうこんな時間~?授業に遅れちゃうよ~」
麻子「がんばれよー」
沙織「麻子も授業じゃん!」
沙織「ほら、行くよ!」
麻子「相談に乗ったんだから見逃せ」
沙織「それとこれとは別!」
麻子「うるさいやつめ…」
渋々沙織に応じて私は教室へ向かった
~放課後~
zzz…
麻子「ハッ!寝ていたか…」
麻子(沙織のせいで昼寝ができなかったからだ)
麻子(もう返事も済んでるかな…)メルメル
件名:無題
どうだった?
-数分後-
ニャーニャー♪
麻子「さすが沙織だな、返ってくるのが早い」
件名:ごめんお願い麻子
今日麻子の家に寄っていい?
麻子(…しくじったな沙織のやつ)
件名:無題
かまわん
今から私も帰るとこだから一緒に行くぞ
~麻子の家~
沙織「ほんっとごめん!!断れなかった!!!」
麻子「…アホ」
沙織「だって、だって!」
沙織「断ろうとしたら泣きそうになってたし…」
沙織「なんかうやむやになっちゃって…」
沙織「保留ってことにしてもらっちゃった…」
ずーん…
麻子「…アホ」
麻子「こういうのは長引かせると、後々面倒になるぞ」
麻子「…次はちゃんとやれよ、沙織」
沙織「いやそれなんだけどさー」
麻子「ん?」
沙織「お友達からの関係ならOKしてもいいかなー…」
沙織「なーんて…」
麻子「は?」
沙織「実はさ麻子」
沙織「私、嬉しかったんだよね、告白されて」
おい
沙織「初めてだったし…面と向かって好きって言われるの…」
何を言ってるんだ
沙織「相手が女の子でも好意をもたれるのは、悪い気しないもんなんだね」
沙織?
沙織「だからお友達くらいならいいかなって、可愛い娘だったし…」
・・・・・・・
沙織「って麻子?聞いてる?」
麻子「…ぇれ」
沙織「え?麻子?」
麻子「帰れ沙織」
沙織「ちょっ…な、なに?なんで怒ってるの麻子?」
麻子「帰れ」
沙織「ご、ごめん麻子のアドバイス無駄にしたのはもちろん悪いって思ってるよ?」
沙織「で…でもそんなに怒らなくても…」
違う、そうじゃないんだ沙織、多分
麻子「いいから帰れ」
沙織「…………わかった…ごめんね麻子、私帰るよ…」
パタン…
――――――――――――――――――ーー……
麻子(なぜあそこまで取り乱した…?)
麻子(沙織にあんな態度とるつもりなんてなかった…)
麻子(くそっ…どうして…)
ニャーニャー♪
麻子「…メールか」
件名:ごめんね麻子
今日は相談に乗ってくれてありがとう麻子
気悪くさせてごめんね
おやすみ、明日は休みだからゆっくり休んでね
麻子「…」
麻子「謝るのは私のほうだ沙織…」
沙織があんなこと言うなんて思いもしなかった
不愉快だった、無性に不愉快だったんだ
小学生の頃からずっと一緒だった
恋愛のことばっかで、だけど男にはちっとも縁がなくて
そして友達思いで、私を甲斐甲斐しく世話する沙織
そんな沙織が離れていきそうで
見ず知らずの一年に沙織を取られるかもしれなくて
麻子「明日謝るか…」
麻子(今日は寝れそうに無いな…)
~翌朝~
ピロピロリーン♪
沙織「あれっ?こんな早い時間からメール?」
沙織「誰だろ…」
沙織「麻子から!?」
たったったっ!ガラッ!
麻子「沙織か」
沙織「一体どうしたの麻子!?」
沙織「今朝の7時だよっ!?」
沙織「そんな時間に麻子がメールで『たすけてくれ…』って!」
沙織「麻子!大丈夫なの麻子!?」
麻子「大丈夫じゃない…昨日の夜からずっと寝てない…」ぐたー…
沙織「麻子が寝てないってやばいじゃん!?」
沙織「病院いかないと!!」
麻子「沙織」
沙織「な、何麻子?どこか痛いの?」
麻子「心配するな…ただの不眠だ」
麻子「昨日はすまなかった…」
沙織「…ああ、あれね…」
沙織「別にいいよ、気にしてないって!」
沙織「もしかしてそれで眠れなかったの?」
麻子「ああ…まあそうだな…」
麻子「これしか思いつかなかったんだ」
沙織「え?」
麻子「お前を私の傍にとどめる」
麻子「そんな安心感を得るのは、な」
沙織「?なに言ってるの麻子?」
麻子「沙織、よく聞け」
麻子「私は沙織が好きだ」
沙織「へ?」
麻子「聞こえなかったか?沙織が好きだと言ったんだ」
沙織「ちょっ…ええええ!?」
沙織「う、うそっ…?」
麻子「嘘じゃない、もちろん例の一年生と同じ意味だ」
麻子「嬉しいか?」
沙織「そそそりゃ嬉しいけど!!!」
麻子「あの一年生に言われるよりも、か?」
沙織「ど、どうしてそんなこと聞くの麻子!?」
麻子「沙織が好きだからだ」
麻子「お前が帰ったあと眠れなかった」
麻子「お前が告白を受け入れるようなことをほのめかしたからな」
麻子「私は嫉妬したんだ」
沙織「~~ッ////」
麻子「ずっと布団に篭って一晩中この感情について考えた」
麻子「そして考えた末が…この感情は恋愛感情という結論以外に答えはなかったんだ」
沙織「ッ~~~~////!!!!」
麻子「沙織、私と付き合え」
麻子「私はお前をよく知ってる」
麻子「いつも恋愛の話ばっかりだが、本当は誰よりも繊細で純情なんだ」
沙織「や…やめてよまこ…/////」
麻子「沙織のことを誰よりも知ってるのはこの私だ」
麻子「見ず知らずの一年なんかに渡してたまるか」
沙織「まこ…」
麻子「沙織は私のものだ、誰にも渡さない」
沙織「」プシュー…
麻子(思った通りこういう押しに弱いんだな)
沙織「あの、そその…ほ本気なの…ま麻子さん?」
麻子「なんでさん付けなんだ…」
麻子「本気に決まってるだろ」
麻子「私がこんな冗談言うと思うか?」
沙織「思わない」キッパリ
麻子「だろ」
麻子「でだ、返事は?」
沙織「えーと…しばらくの間待ってもらっても…」
麻子「私は一年ほど甘くないぞ」
麻子「この場で言え」
沙織「じ、じゃあ…よ、よろしくお願いします…////」
麻子「OKということか?」
沙織「そ、そういうこと…かなっ////」
麻子「そう…か…これで…心置きなく……眠むれ…る………」Zzz…
沙織「ま、麻子!?寝ちゃった…」
――――――――――――――――――ーー…
麻子「んー…」
沙織「あっ、起きたんだ麻子」
沙織「おはよ」
麻子「おはよう…もう夜のようだが」
沙織「あはは、あの後ずっと麻子ってば寝てたんだよー」
麻子「そうか…」
沙織「憶えてる?」
麻子「うっすら、とな…」
沙織「忘れてたら私ショックだよー」
麻子「不眠状態だからできたような行動だったな…」
麻子「良かったのか?」
沙織「んー?」
麻子「私とお前はすでに幼馴染だ」
麻子「一年のように友達からって訳にはいかないんだぞ」
沙織「…そだね」
沙織「でも麻子とならいいかなって」
沙織「麻子に告白されて私、本当に嬉しかったから」
麻子「…そうか」
麻子「なんだ…その…これからよろしくな沙織…」
沙織「うん、よろしく!」
沙織「今日泊まっていい?」
麻子「ああ」
沙織「久しぶりに一緒に寝ちゃう?」
麻子「…寝ちゃう」
今日の布団は、いつもより温かかった
~数日後~
麻子「ちゃんとできたか?」
沙織「もちろん!今度はちゃんと断ったよ!」
沙織「やっぱり可哀想だったけど…」
沙織「でも私には麻子がいるから!」
麻子「…」
沙織「なに麻子ー?もしかしてテレてるのー?」ニヤニヤ
麻子「そ、そんなことはない」
沙織「ほらっ!練習いこ麻子!」
沙織「みんな待ってるよ!」
ぎゅう
麻子「わかっている…」
ぎゅう
優花里「西住殿、なんか最近武部殿と冷泉殿って妙に親しくないですか?」
みほ「そう?」
みほ「武部さんと冷泉さんが仲良いのはいつものことだと思うけど?」
優花里「そうですが…」
優花里「なんか以前より二人っきりでお見かけすることが多いというか…」
優花里「さっき手とかつないでたような…?」
みほ「えー?気のせいだと思うよー?」
華(あのお二人からただならぬものを感じますわ…!)
麻子「沙織」
沙織「なーに麻子」
麻子「ずっと一緒にいような」
沙織「うんっ」
私の目の前で笑顔を浮べる彼女の名は、武部沙織
私、冷泉麻子とは小学校からの付き合いで、一般に言う幼馴染の関係だ
そして私の恋人である
_, -――‐- .,_
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|::::|:: :: : |:::-┼:ト人 : :: :: :: ∧:∧: : .|i: : .|
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|::∧:::::::::::::ド ̄ _ イ.: :: :/:/ 以上だ
|:::r‐┐:: :: ∨\ .イ ::::/l/| 沙織は私の嫁な
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|: | ¦:「|_ノ\〈 |┐ \::: |:::::::::::|
|: | ∨ | ハ>‐<| \ ::::::::::|
/:∧ ヽ 〉 \:..†.:| i ト :::::::|
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_ノ: / /\__/: :/ :ハ
/: : : :ノ  ̄:::::く7イ:ノ
〈: (/:人 (,,⌒> /: / 付き合ってもこういうところはちっとも変わらないんだからー!
/ 《r'Tニ/て:_:,_ノ: : :\
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〈 / _,人__У::::::::::::: ∨ / // '/ i::.::.:,゙/ /
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\、\ ⌒'、::::::::::::::::::/V // 〈/7 :.:/ / 無理なものは無理だ
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