ほむら「さやか、あなた……まどかを殺すつもりね」(1000)

さやか「……あいつは生きてちゃ駄目なんだ。
    まどかには、事故に遭って死んでもらわないといけない!
    そういう運命だったんだよ!」

ほむら「ふざけないで!まどかは生きてる、このまま生き続ける!」

さやか「……もうこれ以上話しても無駄だよ。
    本当はほむらを説得したかったけど……無理みたいだね」

ほむら「当たり前でしょう……。まどかを殺すなんて、そんなこと、許せるはずがない。
    どうしても行くと言うのなら……
    私があなたを、今すぐ殺してあげるわ。美樹さやか」




数日前

まどか「それでね、ほむらちゃん。さやかちゃんったら……」

ほむら「そう。ふふっ、あの子らしいわね」

私は、まどかと2人で下校していた。
話題は、他愛も無いことばかり。
ほんのひと月前まで……こんな日が来るなんて思ってもみなかった。

いや、違う。
この日々は、私が常に心の中に思い描き続けてきた、理想の日々。

そう、私たちはひと月前……ワルプルギスの夜を越えた。

さやか、杏子、巴さん。
3人で力を合わせ、ワルプルギスの夜を倒した。
まどかはもちろん契約なんてしていない。
契約しないと、約束してくれた。

ほむら「そうだわ、まどか。今週末、何か予定はあるかしら」

まどか「今週末?ううん、特に何もないけど。どうしたの?」

ほむら「もし良かったら、映画を見に行かない?チケットが3枚あるの」

まどか「わっ、行きたい行きたい!あと1人は誰?」

ほむら「まだ決めてないわ。まどかの誘いたい人で良いわよ」

まどか「うーん……。あ、だったらマミさんで良いかな?」

ほむら「あら、意外ね。てっきりさやかと言うものと思っていたけど」

まどか「確かね、マミさんがこの映画見たいって言ってたような気がするんだ。
    だからせっかくだしマミさんを誘ってあげた方が良いかなって」

ほむら「そう。なら巴さんを誘ってみましょう」

あの夜を越えてからひと月。
見滝原の魔法少女4人は、全員うまくやれている。
そこにまどかを入れて、放課後や休日は5人で楽しく、日常を過ごしている。
巴さんの家でお茶会もするし、今度は5人揃ってお出かけしようかなんて話も出てる。
夢にまで見た幸せな日常を、私は長い戦いの果てに得ることが出来た。

だから私は……多分、油断していたんだと思う。

ほむら「そうだわ、チケットを渡しておくわね」

そう言って、カバンから映画のチケットを取り出した、その時。
強い風が吹いた。

ほむら「あっ……!」

まどか「!大変、チケットが!」

チケットを取り出したのはちょうど、信号を渡り終えたとき。
そしてチケットは、ちょうど今渡り終えた横断歩道の方へ飛んで行った。

  ,'.:       〃 ,:1  ,  __/  // /         } ,     ',
__彡ァ       乂_ノ :!  ,′ ./ ̄/7=‐.、__ノノ     ,'∧      '
.. /            /i::, {  彳ア:::抃<     ( (、__,/'  i     }
 ,'/リ.,   ,イ  ./`¨´i.|:∧. 、 .c弋匕Z_         >、_`ヽ、」     ,'
_彡'厶イ./iヽ,′   |:::∧ {?Y//             ア:::抃、 |    /
       / i|:::{:     `(( .?Y .))       ‘     弋匕Zっ    /
     /  ∨:、     }}_口_{{     ,_-‐- 、      / //
.    i.|   ∨:\ .γ´,...-‐-ミメ、 └‐―-、、、    .辷´五ニ=一、
.    ヾ、   \,:´,´./ ,.-‐-、.刈ハ.     `~    /          \
-‐…‐-'_ヾ   / l l. {::::::::::::} l l≧:.. ___.... -‐=¬=-、― _....___〉

  /¨,-‐… 7 . 八圦 `‐-‐' ,' 厂`Y   /        `ヾ´/////

. /  {    /.Y¨Y .ゞ.,`=‐-‐ 彡.1辷7―‐-/               ∨―‐- 、
. !   ',     /  !:::::::::`¨ニ¨´::::::|// `ヽ/                 ∨   .〉
. | >'´`ヽ:. /.i⌒i:::::::::::::::::::::::::::::::|/⌒) (  , -―-         j   ./

\! .Уヽ   (./ ./:::::::::::::◯:::::::::::::!  / ∧/ , -‐-、. \        〈‐‐-、 j
. /   ヾ .〈  ヾ::::::::::::::::::::::::::::::! 入 _〈_/    \ \       ∨_)'
――――「お菓子が脂肪を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない!!」

テレビアニメ「脂肪少女まみか☆デブガ」の登場人物で、力士。愛称は「デミ」。(「マブ」のタイプミスとの説も)。
デブという設定は当初から明らかにされていなかったが、
その見事な肢体のパンパン張りと肉の垂れ下がり、直ぐに発砲する高血圧特有の気性の荒さ、そして腹の太さに痛々しいまでの厨二病っぷり、肥満のヲタクファンからは「同胞ではないか」と言われていた。
好きな物は三食のケーキ。特技は三食ケーキ。三食ケーキ。デブ☆ニナーレ。無限の間食~ハラヘッタラ・マミサン・オヤトゥー・インフィニータ~。

とっさに駆け出したのは、まどか。
信号はまだ青だった。
だから、安全のはずだった。
そのこともきっと、私を油断させてしまっていた。

それから、私の目は風で飛ばされたチケットに釘付けになってしまっていた。
だから気付くのが遅れた。

まどか「……ほっ、良かったぁ。ほむらちゃん、チケット捕まえ……」

ほむら「ッ!?まどか、」

その後の言葉が私の口から出ることはなかった。
“危ない”“車が”そんな言葉を叫ぶより早く、
私の目の前でまどかは……大型トラックに撥ねられた。

ほむら「いっ……いやぁあああああああッ!!まどかぁあああああああッ!!」

わき目もふらずまどかの元へ駆け寄る。

ほむら「まどか、まどかまどかまどかぁああ!!ぅあああああああ!」

足元が真っ赤に染まっていく。
すぐにソウルジェムを取り出し、魔力で治療する。
しかし、この手の魔法は私の得意分野ではない。
そうだ、さやか、さやかに連絡を取らなければ……!

 『おかけになった電話は、現在電波の届かないところに……』

ッ……!
だったら、巴さん、巴さんは……

 『お留守番サービスに接続いたします……』

ほむら「なんで、なんでッ……!」

もう仕方がない。
私がやるしかない……!
見て分かるけれど、私の治療魔法なんかでなんとかなるような怪我じゃない。
それでも、やるしかない……!

トラックの運転手は青ざめた表情でどこかに電話をかけている。
野次馬が集まってくる。
誰かが私に声をかける。
でも、そんなのに構っている暇はない。
今はとにかく、まどかを治す。
まどか、まどか、まどかまどかまどかまどか……

QB「無駄だよ、ほむら」

“無駄”
その言葉に、ほとんど無意識に反応して、声の方向に顔を向ける。
少し離れて見ている野次馬から1歩こちら側に近いところに、そいつは居た。

QB「それ以上やっても魔力の無駄使いだよ。もうやめるんだ」

ほむら「ふ、ふざけないで!やめられるわけないでしょう!?
     まどかが危ないのに、このままじゃ死んじゃうかも知れないのに!!」

QB「死んでるよ」

ほむら「…………え」

QB「まどかはもう死んでる。それ以上体を治療したところで、彼女が生き返ることはない。
  鹿目まどかの人生は、たった今終わってしまった」

ほむら「な……何を、何を言って……」

QB「認めたくない気持ちも、わからないわけじゃない。だけどこれは事実だ。
  そもそも、そんな状態のまどかを見て生きていると判断する方がどうかしてるよ」

ほむら「……嘘よ、嘘、そんなの、嘘……」

男「お、おいキミ、大丈夫か……」

ほむら「助けなきゃ、まどか、助けなきゃ、まどか、まどか、まどか……」

男「もうすぐ救急車と警察が来るから……えっ!?」

「と、飛んで行ったぞ!」
「嘘だろ、おい……」
「ま、幻でも、見たのか……?」

QB「やれやれ……。こんな大勢の前で魔法を使うなんて、どうかしてるよ」




さやか宅

さやか「ただいまーっと」

帰宅の挨拶はなんとなくするけど、別に誰か居るわけじゃない。
大体あたしが帰るのが一番早いんだしね。

いやぁそれにしても、今日も恭介のヴァイオリン良かったなぁ。
やっぱあたしのためだけに演奏してくれるっていうのが格別に……。
ってあれ、携帯電源切れて……あ、そっか。
演奏中だから電源切ってたんだった。

さやか「……ん?ほむらから着信だ、珍しいな」

かけ直してみるか、と思ったと同時に、インターホンが鳴った。

さやか「っと。はいはーい、今出ますよー」

さやか「……ほむら?」

インターホンに映っていたのは、確かにほむらだった。
でもその顔はどことなく雰囲気がおかしくて……

さやか「どうしたの、ほむら。何かあった?」

ほむら『!さやか、今家に1人!?入れてちょうだい、早く!』

さやか「えっ、わ、わかった。はい、どうぞ。上がってきて」

やっぱり何かあったらしい。
いつもあんなに冷静なほむらがあんなに取り乱してるなんて、一体何が……。

ほむら「さやか!」

さやか「どうしたのよ、そんなに慌てて……ッ!?」

インターホンでは顔しか映らないから、わからなかったけど……
部屋に上がってきたのは、ほむらだけじゃなかった。
ほむらの両腕には、もう1人、ぐったりとして動かない……

さやか「ま、まどか……うぅッ……!」

それは確かにまどかだった。
でもその姿は、胃の中身が込み上げて来てしまう程の……。

さやか「な、なに、なんで……?」

ほむら「さやか、お願い!まどかを治して!あなたの魔法で、この子を治してあげて!!」

さやか「ッ……」

そうだ、今はごちゃごちゃ考えてる暇はない……。
理由なんかどうでも良い。
とにかく、まどかが大変なんだ。
こんな時こそ、あたしの魔法の出番じゃないか……!

ワルプルギスの夜との戦いの時だって、
これ程じゃないにしてもみんなの酷い怪我をたくさん治したんだ!

ほむら「すごい……すごい!どんどん、治っていく!」

さやか「ちょっと黙ってて!集中してるから……!」

あれだけ惨い状態だったまどかの体は、どんどん元通りになっていく。
そうして、ついに……。

さやか「……な、治ったぁ……!」

ほむら「治った?治ったの?まどか、これで治ったの?良かった、良かったぁ……!」

さやか「それで……説明してくれる?一体何があったのよ?」

QB「交通事故に遭ってしまったんだよ」

ほむら「ッ……!」

QB「やっぱりここに居たんだね、ほむら」

さやか「キュゥべえ!ってか、交通事故……!?それであんな酷い怪我になるもんなの!?」

QB「それは不運としか言いようがないね。
   即死はともかくとして、あんな酷い状態になるなんて滅多にないことだよ」

さやか「……え?」

QB「それにしても流石だね、さやか。遺体の損壊をここまで修復できるなんて。
  君の魔法は回復魔法というより修復魔法に近いものなのかもしれないね」

さやか「ちょっ……あ、あんた何言ってんの!?冗談にしちゃ笑えなさ過ぎるよ!!」

QB「?何かおかしなことを言ったかい?」

さやか「そ、即死だとか遺体だとか!ふざけないでよ!
    それじゃまるで、まどかがもう……!」

QB「だから、そう言ってるじゃないか。まどかはもう死んでるよ。
  そこにあるのはもうまどかじゃない。まどかだった、ただの肉のかたま」

 パァン

ほむら「黙りなさい……」

さやか「ッ……!!」

あたしは、声が出なかった。
ほむらがキュゥべえを撃ったからじゃない。
いや、もちろん突然の発砲にも驚いたけど、
キュゥべえに代わりがいくらでも居ることは知ってる。
だから、声が出なくなるほどのことじゃない。

あたしが硬直してしまった理由は……ほむらの異様な雰囲気だった。

ほむら「黙りなさい、黙りなさい、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ」

もう動かなくなったキュゥべえに向かって何度も何度も発砲し、
弾が切れても引き金を引き続ける。

さやか「ほ、ほむらあんた……」

ほむらは、キュゥべえの言っていることを否定している。
……というより、拒絶している……。

あたしは、ゆっくりと、ベッドに寝ているまどかに近付く。
そして、チラリとまどかを見た。

こうして見ると、本当にただ寝ているだけにしか見えない。
でも、よく見てみると……呼吸していれば多少上下するはずの胸が、まったく動かない。
それに寝息も聞こえない。

そっと、口元に耳を近づける。
首と手首に、手を当ててみる。

さやか「……ぁ、ぁあ、ああぁあああ……!」

ほむら「……さやか?」

もう、決まりだ。
まどかの呼吸は、心臓は、止まっている。
ということはつまり、そういうことだ。
そういうことなんだ……。

さやか「まどか、まどかぁ、まどかぁ……!
     まどかまどか、まどか、まどかぁああ!!」

さやかはそのことに気付いてしまった瞬間、もう何も考えられなくなった。
頭の中に浮かび上がるのは、たった1つの事実。

“鹿目まどかは死んだ”

さやか「うぁあああああああ!うああああああああああああああ!!」

ほむら「……っひ……っ……ぅ……ぅくっ……ぁ、あああ、あぁぁああああああ!
    あぁあぁあああああぁああああああッ!!」

ついに、ほむらの表情が崩れた。
まどかの親友であるさやかの、心の底からの悲痛な叫びが、
感情のないキュゥべえから淡々と告げられた事実よりも、より残酷に、
まどかの死が事実であることをほむらの心に刻み付けた。

綺麗に“修復された”まどかの遺体にすがって、2人は声をあげて泣き続けた。




さやか「……ねぇ、ほむら。これから、どうする……?」

ほむら「…………」

さやか「やっぱさ……病院に届けたりとか、した方が良いのかな……?
    それで多分、まどかの家族に、連絡が行ったりして……」

ほむら「……私がやるわ」

さやか「え……」

ほむら「私が、まどかの体を預かる。後は、私に任せて。
     あなたはもう、休んでちょうだい。魔力もかなり使ってしまったでしょう?」

さやか「で、でも……」

ほむら「……まどかの体を綺麗にしてくれて、ありがとう。それじゃあね、さやか」

さやか「あ……」

翌朝、学校

あの後、ほむらはまどかを抱きかかえて、1人で出て行ってしまった。
止めてもあんまり頑なに言うから任せちゃったけど、いろいろ面倒じゃないのかな……。

……もうまどかの家に連絡は行ったのかな。
行ってるよね、たぶん。
それできっと、今朝のHRでそのことについてお知らせがあって……。
仁美、きっと悲しむだろうな……。

あ……駄目だ、考えただけで、また、涙が……。

ほむら「おはよう、さやか」

さやか「!ほむら……」

ほむらの様子は……いつものほむらと、何も変わらなかった。
……あんなことがあったのに、もう平気なフリができるんだ。
あたしと同じくらい……ううん、あたしよりもっと、まどかのこと大好きだったのに。

ほむら「?どうかしたかしら。私の顔に何か付いてる?」

さやか「あ、ううん。……すごいね、ほむらはさ」

ほむら「……いつまでも落ち込んでなんていられないもの」

その時、教室の扉が開いて早乙女先生が入ってきた。

和子「みなさん……席についてください。HRを始めます」

やっぱり……いつになく重い雰囲気だ。
この空気を察してか、教室に一気に緊張感が増す。
そして、早乙女先生が真剣な表情で口を開いた。

和子「まず初めに、大切なお話があります。
   昨日から……鹿目さんがお家に帰っていないそうです」

…………え?

和子「美樹さん、志筑さん、それから暁美さん。
   あなたたちは、鹿目さんと仲が良かったですね。3人とも、何か聞いたりしていませんか?」

仁美「い、いえ……。昨日は喫茶店で解散してから、まどかさんとは連絡していませんわ」

ほむら「私も、何も知りません」

さやか「……!?」

和子「美樹さんはどうですか?」

さやか「えっ、いや、あの……ご、ごめんなさい。あたしも、何も……」

和子「そうですか……。何か、ほんの些細なことでも良いですから、
   心当たりのある人はすぐに言ってくださいね」

休み時間

さやか「ほ、ほむら、どういうこと!?
     昨日あの後、病院に連れて行ったんじゃなかったの!?」

ほむら「…………」

さやか「黙ってないで答えなさいよ!まどかは今、どこに居るの!?」

ほむら「まどかの体は今、鮮度を保ったまま保存してある」

さやか「は、はぁ!?なんで、そんなこと……」

ほむら「決まっているじゃない。あの子を生き返らせるためよ」

さやか「ッ!?い、生き返らせ……!で、できるの!?」

ほむら「えぇ、できるわ」

ほむら「もちろん、方法は簡単じゃない。今はそのための準備中なの。
    だから言ったでしょう?いつまでも落ち込んでなんていられないって」

さやか「ほ、本当にできるんだね!?本当にまどか、生き返らせられるんだね!?
     あたしに出来ることってある!?何か、手伝えるようなことって……!」

ほむら「気持ちは嬉しいわ。でも大丈夫、私1人で出来るから」

さやか「そ、そう?もし何かあったら、すぐに言ってね!あたしなんでもするからさ!」

ほむら「えぇ、ありがとう。……そろそろ教室に戻りましょう。休み時間が終わるわよ」

さやか「あ、うん!」

まどかを、生き返らせる!?
そんなことができるなんて!

確かに、ほむらはかなりのベテラン魔法少女だ。
そんな方法を知っていても不思議じゃないのかも!
すごいすごい、あたしは完全に諦めてたのに、ほむらは違ったんだ。
やっぱりほむらは、すごい奴だ……!




さやか宅

QB「やぁ、さやか。ちょっと良いかい」

さやか「キュゥべえ……。勝手に入って来ないでよね。何しに来たのよ」

QB「ちょっと訊いておきたくてね。さやか、君は本当に、
  ほむらがまどかを生き返らせることができると思っているのかい?」

さやか「……何よ、出来ないって言うの?」

QB「そうだよ。一度完全に死んだ者を生き返らせることなんて、ほむらには不可能だ。
  もっとも、契約の祈りで生き返らせることは可能だけどね。
  それは魔法じゃなくて奇跡なんだから。
  でも、死者を生き返らせることのできる魔法なんて、僕の知る限りでは存在しないよ」

さやか「へー。魂をソウルジェムに変えることはできるのに?
    魂を元に戻すことはできないんだ?」

QB「それとこれとは話が別だよ。だってそんなことが出来たら、
   魔法少女の周りでは死者が出ないなんてことになるよ。魔法少女も含めてね」

さやか「じゃあ何!ほむらが嘘ついてるって言うの!?」

QB「そうは言ってないさ。ただ、ほむらが何か勘違いをしている可能性もある。
  そのことを頭に入れておいてくれ。今日の用事はそれだけだよ。じゃあね、さやか」

さやか「っ……」

……何よ、勘違いって。
本当は生き返らせる方法なんてないのに、あるものだと勘違いしちゃってるってこと?
まどかの死を受け入れたくないあまりに?
確かに、あり得ない話じゃないけど……。

……明日、もう一度ほむらに訊いてみよう。
それで、できたらその“まどかを生き返らせる方法”について詳しく訊いてみよう。

翌朝、学校

仁美「さやかさん、なんだか元気がありませんわね。
   やっぱり、まどかさんのことで……?」

さやか「あぁ……うん。まぁ、ね」

仁美「私も、まどかさんが心配なのは一緒です。
   でもどうか、体調を崩したりなさらないでくださいね。
   まどかさんだけでなくさやかさんにまで何かあったら、私……」

さやか「……大丈夫だって!あたしは平気だし、きっとまどかもすぐ戻ってくるよ!
    何か事件に巻き込まれたとも限らないんだしさ、案外ひょっこり……」

ほむら「おはよう、みんな」

さやか「あ、」

“おはよう”
その言葉は、一瞬で喉のところで止まった。
ほむらのすぐ後ろから現れた人影を目にした瞬間……言葉が詰まった。

まどか「おはよう、さやかちゃん、仁美ちゃん!」

さやか「ッ……!」

仁美「ま、まどかさん!無事だったんですのね!」

女生徒1「まどかちゃん!もー、心配したんだよー?」

女生徒2「どうしちゃったの?あ、もしかして、ぷち家出ってやつ?」

女生徒3「でも良かったあ、なんともないみたいで」

まどか「えへへっ、ごめんねみんな。心配かけちゃって」

さやか「あ、あっ……」

まどか「?さやかちゃん?」

ほむら「安心しすぎて声も出ないみたいね」

まどか「そっか……。ごめんね、さやかちゃん。心配してくれて、ありがとう」

さやか「うっ……まどか、まどかぁあああ!」

まどか「きゃっ!」

あたしは思わず、まどかに抱き付いた。
まどかの肌は柔らかくて、あったかくて。
2日前に学校で会った、元気なまどかそのものだった。

仁美「まぁ……。さやかさん、本当にまどかさんのことが心配でしたのね」

さやか「ぐすっ……もう、心配かけてくれちゃってさ!嫁の帰りが遅いと夫は怒るんだぞ!」

まどか「えへへっ、ごめんなさい」




さやか「本当にやってくれたんだね、ほむら!でも、いつ生き返ったの?」

ほむら「昨日の夜よ。私の家に無断外泊していたということにして、まどかのご両親に2人で謝ってきたわ。
    その関係で昨日はあなたに連絡できなかったの」

さやか「そっか……。それで、まどかは事故のこととか、覚えてないんだよね?」

ほむら「正確には覚えていないわけじゃないわ。
     事故にはあったけれど怪我はなくて、少し気を失っていた、ということになってるの」

さやか「なるほどね……。それにしてもキュゥべえの奴、思わせぶりなこと言って!」

ほむら「キュゥべえ?……また何か吹き込まれそうになったのね」

さやか「うん。やっぱりあいつは信用できないわ。
     こっちもある程度は割り切って付き合っていくつもりだったけどさ」

ほむら「そうね。あいつは所詮インキュベーター。あいつの言葉に耳を貸してはいけないわ」

さやか「ま、それはともかくとして……。ほんっとに良かった!ほむら、ありがとう!」

ほむら「お礼には及ばないわ。さぁ、もう戻りましょう。まどかが待ってるわよ」

帰り道

さやか「やっぱりさ。昨日の夜、結構怒られちゃったんじゃないの?
    まどかママ、そういう心配かけるのとか怒りそうな感じじゃん」

まどか「う、うん。すごく怖かったよね」

ほむら「えぇ、とても。まどかがあの人の血を引いてるとは思えなかったわ」

さやか「あははっ。性格はどっちかと言うとお父さん似かもね」

まどか「そうかな?でも、将来はわたしもママみたいな、
     かっこいい女の人になれたらなーって思ったりして」

さやか「ほっほーう?つまりまどかが働いて、さやかちゃんは専業主夫ですかな」

まどか「もう、さやかちゃんってば」

杏子「おっ?よー、3人揃ってご帰宅かい?」

ほむら「!杏子」

さやか「そういうあんたは何してんの?」

杏子「見りゃわかんだろ?たいやき食べてる」

さやか「いやそうじゃなくて……」

まどか「これからどこかに行くの?マミさんの家?」

杏子「まーね。マミの奴が、クッキー食わせてくれるって言うからさ」

ほむら「これからクッキーを食べるのにたいやきを食べているなんて……」

杏子「別にたいやきの1個や2個、なんの問題にもならないよ」

さやか「あんたが太らないのが不思議だわ……。
    あたし最近ちょっと太ってきたからなぁ。ジョギングでもしようかなー。
    家からこの辺まで走ればちょうど良い感じの距離になりそうだし」

杏子「ジョギングは別に構わないが、この辺はやめた方が良いかもよ?」

まどか「?どうして?」

杏子「なんか最近そこの道路で酷い事故があったらしくてさ。
   まぁ元々、事故の起きやすいとこだったみたいだけど……。
   詳しいことは知らないが、最近のやつは結構悲惨だったらしいぜ?」

ほむら「…………」

さやか「……それって……事故にあった人、どうなったの?」

杏子「さぁね。言ったろ?詳しいことは知らないってさ。でもなんか噂は立ってるよ。
   どう見ても即死だったとか……死神が死体を持ち去ったとか」

まどか「し、死神……!?」

杏子「ま、単なる噂だけどねー。で、噂が噂を呼んで、この辺におばけが出たとか出ないとか。
   消えた死体が動き回ってるとか動き回ってないとか……」

まどか「や、やめてよぉ杏子ちゃん。怖いよぉ……」

杏子「ははっ!なーんてね、冗談さ冗談。
   でもま、事故が起こったのは本当らしいから気をつけなよ?
   確か、ちょうどあそこの辺り……」

と、杏子が目線をやったその瞬間。
まさにその方向から車のタイヤと路面の擦れる音が聞こえた。

さやか「えっ!?い、今の……」

まどか「まさか、また事故……!」

杏子「おいおい……。いくら事故多発現場って言っても2日連続で起きるかよ」

ほむら「……行ってみましょう」

音がした辺りまで行くと、そこにはブレーキの後と、そして……。

さやか「……猫、か……」

ほむら「……市役所に電話しておきましょうか」

杏子「猫には悪いが、もの食いながら見るもんじゃないな……見なきゃ良かった」

まどか「う、うん。やだな……晩ご飯、喉通らなかったらどうしよう……。
    ねぇ、早く行こうよ……あんまり近くに居たくないよぉ」

さやか「……ん……?」

ほむら「さやか、どうかした?」

さやか「あ、いや……。そんじゃ、あとは市役所に任せて、あたしたちはもう帰ろう」

杏子「だな。んじゃ、あたしはマミんちだからあっちだ。じゃあね、3人とも」

まどか「あ、うん。バイバイ、杏子ちゃん!」

まどか宅

まどか「ただいまー」

知久「おっ、今日はちゃんと帰ってきたね」

まどか「も、もう、パパってば。そのことはもうたっぷり叱られたよぉ……」

知久「あはは、ごめんごめん。もうすぐ夕飯できるから、着替えておいで」

まどか「はーい。あれ、たっくんは?」

知久「ん?その辺に居ないかい?さっきまですぐそこに居たのになぁ。
   寝室かどこかに居るんじゃないかな」

まどか「たっくん?ただいまー、たっくーん」

タツヤ「……あぅー……」

まどか「あ、居た居た」

タツヤ「ねっちゃ……?」

まどか「もー、どうしたの、たっくん?そんなとこに隠れて」

タツヤ「……パパー!」

知久「わっ。どーしたタツヤ。何か怖いものでも見たかー?」

タツヤ「うー……」

まどか「……たっくん、どうしたんだろ?」

知久「そう言えば、今朝もこんな感じだったなぁ。
    さっきまではなんともなかったんだけど……」

まどか「ふーん……。ま、いっか。それじゃわたし、着替えてくるねー」

知久「ん?あぁ、うん」

翌日

さやか「おっはよー、3人とも!」

まどか「もー、遅いよさやかちゃん!」

さやか「むむっ、まどかだって最後に来ることよくあるクセにぃ」

ほむら「でも、今日はまどかが一番だったみたいよ」

仁美「えぇ。私が来た時には、もう来てましたわ」

まどか「えっへん!」

さやか「な、なにぃー!おのれまどかめぇ、小癪な奴め!
    そんな生意気な奴はー……こうしてやるー!」

まどか「わっ、きゃはははは!さやかちゃ、くすぐった、きゃはははは!」

ほむら「また始まったわ……」

仁美「うふふ、楽しそうで良いですわね」

さやか「んー?えぇのんか、ここがえぇのんかー?」

まどか「ちょっ、や、やめ、さやかちゃ、きゃはは!やめ、やめてって、ばぁ!」

さやか「ぐはぁ!?」

仁美「まぁ、まどかさんが反撃だなんて珍しい」

さやか「い、っつぅ~……ま、まどかぁ。
     あんた今の、本気だったでしょ……割りとマジで痛かったぞぉ……」

まどか「もう、さやかちゃんが悪いんだからね!」

ほむら「その通り、自業自得よ」

さやか「く、くそぉう……いててて……」

昼休み

さやか「さー、お腹ぺっこぺこだー!いっただっきまーす!」

まどか「いただきまぁす」

仁美「あら、暁美さん。お弁当の中身がちょっと……」

ほむら「え?」

仁美「なんというか、可愛らしくなってません?なんとなく、なんですけど」

ほむら「あ、それは……最近、お弁当の本を買って、練習を……」

さやか「なん、だと……?これがギャップ萌えという奴か……!」

まどか「すごーいほむらちゃん!
     ねぇねぇ、ほむらちゃんのおかず、1つ貰っても良いかな!」

ほむら「えっ?それは構わないけれど、でも……あまり自信がないから……。
    美味しくないかも知れないし……」

まどか「そんなことないよぉ!」

ほむら「でも……」

まどか「うーん……。あっ、だったら、わたしの苦手なおかずをあげる、っていうのはどうかな!
    ほむらちゃんはわたしの嫌いなものを食べてくれるから、
    そのお礼にわたしがほむらちゃんのお弁当を味見してあげるの!」

さやか「あははっ、考えたねまどか。でもあんた、別に嫌いなものなんてないじゃん!
   
仁美「それにまどかさんのお父様の作るお弁当ならどのおかずも一級品ですわ」

まどか「そんなことないよ?さっき食べてみたけど、これあんまり美味しくなかったから」

さやか「えっ?」

まどか「だからこれあげるね、ほむらちゃん。はい、どうぞ!」

ほむら「ありがとう、まどか……」

放課後

まどか「さやかちゃん、帰ろー」

さやか「あぁ、うん。そうだ、あのさ!公園にアイスの出店が出来たの、知ってる?
    結構美味しいんだってさ!今日行ってみようよ!」

まどか「わっ、良いね!行ってみよう!」

さやか「よっし、じゃあ決まりね!ほむらと仁美も行くでしょ?」

ほむら「えぇ、構わないわ」

仁美「すみません……私今日はお稽古があるので、お先に失礼しますわ」

さやか「ありゃ、そうなんだ。じゃー仕方ないね。また今度行こ、仁美!」

仁美「えぇ。ぜひ誘ってくださいね」

公園

さやか「うっひゃー、まぁ予想はしてたけど、結構並んでるねぇ」

ほむら「それも、ほとんど小さな子どもか家族連れね」

まどか「きっと、それだけ美味しいってことだよ!」

さやか「そうだね。まぁ時間はあるし、並んでみますか」

まどか「どのくらい時間かかるかなぁ?」

ほむら「そうね……列は確かに長いけれど効率よく仕事を回してるみたいだし、
     この様子だと10分程度で順番が回ってくるでしょうね」

さやか「そっか。そのくらいなら余裕だね」

まどか「えへへっ、楽しみだね」




さやか「へへー、さやかちゃん、2段にしちゃいましたからねー!」

まどか「わっ、すごーい!」

ほむら「よくそんな状態で上の段が落ちないわね」

さやか「正直ハラハラもんよ。あんたたちの1段アイスでさえ、
     結構大きいからギリギリのバランスで成り立ってる感じするのに……」

まどか「だ、だよね。もしこれで誰かにぶつかられたりしたら……」

子ども「きゃははは!こっちだよー!はやくはやくー!あうっ!」

まどか「きゃっ!?」

さやか「ぶ、ぶつかられおった!」

ほむら「アイスも……落としてしまったわね」

子ども「いたたた……ぐすっ」

さやか「あっちゃー、こけて怪我しちゃってるじゃん」

まどか「……もう!何するの、危ないでしょ!」

子ども「ひぐっ……!」

さやか「!」

まどか「ちゃんと前見て走らないと!何考えてるの!?周りの人の迷惑になるんだよ!
    ほら、あなたのせいでわたしのアイスが落ちちゃったんだよ!」

子ども「ご、ごめん、なさい……ぅええぇん……!」

まどか「泣いたら許されると思ってるの!?子どもだからって、そんなの……」

さやか「ま、まどか、落ち着いて。相手はさ、ほら、こんなちっちゃい子どもなんだし……」

まどか「さやかちゃんまで、何言ってるの!?
     子どもだから何しても許されるなんて、そんなの絶対おかしいよ!
     わたしのアイスが落ちちゃったんだよ!?こんなのあんまりだよ!酷すぎるよ!」

さやか「わ、わかったよ。アイスならほら、あたしのを1段あげるからさ、ほら、ね?」

まどか「ほんと!?わーい、ありがとうさやかちゃん!」

さやか「……!?お、おう……」

ほむら「まどか、良かったら私のアイスも食べても良いわよ。まだほとんど口を付けていないから」

まどか「わあっ、良いの?ほむらちゃんもありがとう!」

子ども「ひっく、ぐすっ……」

さやか「キミ、大丈夫?怪我は……擦り傷か。ほら、絆創膏あげるから。
     ちゃんと水で綺麗にあらってから貼るんだよ?」

子ども「う、うん……おねえちゃん、ありがとう」

まどか「えへへっ、アイス美味しいね。ほむらちゃん、さやかちゃん」

ほむら「えぇ、そうね。とっても美味しいわ」

さやか「……あのさ、まどか。さっきのは、ちょっと酷いんじゃない……?」

まどか「えっ?」

さやか「あんなちっちゃい子が怪我したのに、あんた、自分のアイスのことしか考えてなかったでしょ?
    それで、半べその子にあんなに捲くし立てて……。大人気ないって言うかさ」

まどか「だって……悪いのはあの子だよ?悪いことしたら、ちゃんと叱ってあげなきゃ」

さやか「そりゃまぁ……確かに、あの子の不注意だったけどさ。それにしたって……」

ほむら「まどかの言う通りよ。まどかは何も責められるようなことはしてないわ」

さやか「……はぁ。わかった、もう良いよ。ほら、アイス溶けちゃうよ」

翌朝

まどか「おはよう、さやかちゃん!」

ほむら「おはよう」

さやか「ん、おはよ。……あれ?ほむら、あんた手どうしたの?」

ほむらの右手には、包帯が巻かれていた。

ほむら「これは……昨日、ちょっと怪我をしてしまって」

さやか「それは見てわかるよ。だから、なんで怪我したのかって」

ほむら「……良いじゃない、別に。それより早く行かないと遅刻するわよ」

さやか『……魔法で治さないのも、何か理由があるわけ?』

ほむら『関係ないわ。魔力の無駄使いを避けるために自然治癒に任せているだけよ』

さやか「…………」

なんだろう、ほむらは何か、隠してる……?




さやか「…………」

なんか、昨日から気になることが多いなぁ。
まどかの様子と言い、ほむらの怪我と言い……。
……あたしの気にしすぎなのかなぁ。

仁美「……やかさん、さやかさん?」

さやか「えっ……あ、あぁごめん。何、どうしたの?」

ほむら「次は体育でしょう。もうみんな更衣室に行ってしまったわよ」

さやか「あ、そ、そっか!ごめんごめん、ボーっとしちゃってたよ」

まどか「もしかして、体調悪いの?保健室、連れて行こうか?」

さやか「だ、だーいじょうぶだってぇ!
    ちょっと昨日夜更かししちゃってさ!寝不足気味なだけだよ!」

まどか「そう?だったら良いんだけど……」

ほむら「ほら、早く着替えなさい。置いて行くわよ」

さやか「はやっ!もう着替えたの!?さてはあんた、制服の下に体操服着込んでたわね!」

ほむら「えぇ。それがどうかしたかしら」

さやか「ひ、卑怯者ぉ!今までそんな準備したことなかったじゃん!」

ほむら「用意周到と言って欲しいわね。さ、行きましょうまどか」

さやか「げえ!まどかまで!」

まどか「えへへっ。じゃあねさやかちゃん、先に行ってるね!」

さやか「くそぉう、せっかくの体育なのにまどかにセクハラもできないとは不覚……。
     こうなったら、仁美に……」

仁美「残念ですが、お喋りしてる間に着替え終わってしまいましたわ」

さやか「お、おのれ……」

口では残念そうなことを言いながらも、心の中ではちょっと安心してた。
昨日のまどかはちょっと変だったけど、
こうして会話をしてみると、いつも通りのまどかだったから。

昼休み

ほむら「まどか、今日もお弁当のおかず、食べてもらっても良いかしら?」

まどか「え?うん良いよ。でもほむらちゃんの方からお願いされるなんて、ちょっと意外かも」

ほむら「昨日あの後練習したから、味見してもらいたくて……」

さやか「練習って、おかず作る練習?」

仁美「もしかして、その手の怪我はその時に……?」

ほむら「あ……。えぇ、実は……包丁で、ちょっと」

さやか「えっ。じゃあ今朝、怪我の理由をはぐらかしたのは……恥ずかしかったから?」

ほむら「…………」

さやか「な、なぁーんだもう!変にごまかすから何かと思えば!
    それにしても、料理で手を切る不器用なクール美少女か……。
    どんどん萌え要素が追加されていきますなぁ!」

ほむら「……だから言いたくなかったのよ」

放課後

さやか「さーて、今日はカフェで何食べようかなー。
    体育でカロリー消費したし、お稽古の仁美の分まで食べちゃいますからね!」

ほむら「まさか、2人分食べる気?」

まどか「もう、さやかちゃんってば。太っちゃうよ?」

今日1日通して意識してみたけど、やっぱりいつも通りのまどかだ。
昨日のまどかは……まぁ、まどかだってああいうこともあるだろう。
深く考えすぎだよね。
ほむらの怪我だってあたしの考えすぎだったんだし……もう気にしないでおこう。
まどかがいつも通りなんだから、あたしもいつも通りにふざけよう!

さやか「なに~?嫁が夫に口答えするんじゃなーい!こうしてくれるわー!」

まどか「きゃっ!もう、やめてってばさやかちゃん!きゃははは!」

さやか「えぇい、抵抗するんじゃない!ほれほれー!」

まどか「きゃははは!やめっ、さやかちゃ、あはははは!」

いつも通りのまどかとの、いつも通りのじゃれ合い。
……の、はずだった。
でも……

まどか「さやかちゃ、きゃはははは!やめて、……やめてッ!!」

さやか「えっ……!?」

一際強い、まどかの拒絶の声。
それはじゃれ合いなんかじゃなく……本気の怒鳴り声だった。

さやか「ぁ……ご、ごめん、まどか。でも、なんで……」

まどか「やめてって言ったよね?どうして嫌がってることするの?
     そんなに人の嫌がることをして楽しいの?わたしをいじめて楽しいの?」

さやか「そ、そんな、つもりじゃ……」

まどか「酷いよさやかちゃん、酷いよさやかちゃん……酷いよ!さやかちゃんッ!!」

突然まどかは手を振り上げて、

さやか「ぁぐっ!?ま、まどか……!?」

まどか「酷いよ!酷いよ酷いよ酷いよ酷いよ!!」

さやか「ま、待っ、痛ッ!ほんと、痛い、待って、まどか、痛いって!」

ま、待って、これ、ほんと痛い……!
パシパシ叩くとか、ポカポカ叩くとか、そういうのじゃない!
拳で思い切り……殴りつけてきてる……!?

ほむら「まったく……自業自得ね」

さやか「いや、ほむら!み、見てないで、痛ッ!と、止めて!
     これほんと、まどか、ストップ!やめて!まどか!やめてぇ!」

ほむら「……?まどか、もうそのくらいにしてあげて。さやかも反省したでしょうし」

そのほむらの声で、ぴたりとまどかの動きは止まった。

まどか「…………」

さやか「っ……ま、まどか、あんた……」

まどか「ひぐっ……ぐすっ、ぅえぇえええん……!」

……な、なに……?
今度は急に、泣き出し……

ほむら「……!さやか、謝りなさい」

さやか「なっ、え……」

ほむら「謝りなさい!……可哀想に、まどか。
     もう大丈夫よ、あなたをいじめる人は居ないわ……」

まどか「うぇええええん……ほむらちゃぁん……!」

な……何がなんだか、わからない。
あたしがいつ、まどかをいじめたって……?
あんなの、今まで何回もやってきたおふざけじゃん……。
それなのに、いきなりまどかがキレて、かと思ったら、泣き出して……。

ほむら「……何をしているの、さやか。早く謝れと言っているでしょう……!」

さやか「えっ、あ……ご、ごめん、まどか……」

わけがわからないまま、ほむらの迫力に押されて謝ってしまった。
……すると。

まどか「ううん、良いよ!わたしの方こそ、叩いたりしちゃってごめんね、さやかちゃん!」

さやか「……は……?」

まどか「さ、早く行こ?カフェ、行くんだよね?」

ほむら「えぇ。ほら、行くわよさやか」

さやか「あっ、え、あ……う、うん」

何、今の……。
まさか、嘘泣き……?
いや、違う。
あれは多分……本気で泣いてた。

でも、感情が突然切り替わった。
感情の切り替えが早いとか、そういう問題じゃなくて、一瞬で、切り替わった。
それこそ、スイッチを切り替えるみたいに……。
怒ったかと思えば突然泣き出して、泣いたと思えば突然にっこり笑う。

ど……どうしちゃったんだよ、まどか……。




まどか「じゃあね、ほむらちゃん、さやかちゃん。また明日ー」

さやか「うん……また明日」

ほむら「ばいばい、まどか」

さやか「……あのさ、ほむら」

ほむら「何かしら」

さやか「まどか……どうしちゃったの?」

ほむら「?何が?」

さやか「いやだから、今日のまどかだよ。突然怒ったり、泣いたり……」

ほむら「あれはあなたのせいじゃない。あなたがまどかの嫌がることをしたからでしょう?」

さやか「た、確かにそれはそうだけどさ。
    でもあんなの、今までと変わらないただのじゃれ合いじゃん!
    そりゃまぁ、前にもやりすぎてちょっと怒られちゃった時はあるけど、
    でも今日のは、全然違った!あんな、本気で怒って、殴ってくるなんて……!」

ほむら「……まどかにも、そういう時もあるわよ。体調が優れなかったのかも知れないわ」

さやか「う……でも、今まではそんなの……」

ほむら「あなた……何が言いたいの?」

さやか「……じ、事故のことがさ、何か影響してるんじゃないの……?」

ほむら「いいえ、そんなことはないわ。事故の影響なんて、何もない。
    体はあなたが戻したし、魂は私が戻した。完全に元通りにね。
    それとも何?あなたは今の状況に不満があるの?まどかが生き返ったというのに」

さやか「い、いや……問題ないなら、良いんだよ。そうだよね、生き返ったんだから、
    些細なこといちいち気にする必要なんて、ないんだよね……」




ほむらと別れ、1人で家に向かう。

確かに、昨日と今日のまどかは変だった。
でも……うん、感情が不安定な日なんて、まどかにだってある。
うん、そうだ、だから、そんなこと気にする必要なんて、何も……。

杏子「でさ、お化けが出るとか、その死体が動き回るとか……」

マミ「もう、佐倉さん。あんまり怖がらせないで!」

さやか「あ……マミさんに、杏子」

杏子「おっ?よー、偶然だね」

マミ「こんにちは。美樹さんはこれから帰宅?」

さやか「うん、まぁ。2人は、もしかしてパトロールですか?」

マミ「えぇ、一応軽くね。まぁ、ほとんどお散歩みたいなものだけど」

さやか「そうですか……」

杏子「ん?どうしたさやか、なんか元気ないじゃんか。
   いつもなら“あたしも行くー”とか言って付いて来ようとするくせに」

さやか「あー、まぁ……ね」

マミ「どうしたの?何か悩み事?」

さやか「……いえ、そんな大したことじゃないです。気にしないでください」

まどかのことなんて、相談できるはずない。
下手に相談して、あのことを知られたりなんかしたら……

杏子「もしかして、まどかのことか?」

さやか「なっ……!?」

杏子「なんだ、図星かよ」

マミ「鹿目さんが、どうかしたの?」

さやか「あ、い、いや……。っていうか杏子、あんたなんでそんなこと……!」

杏子「んー?いや、なんとなくさ。こないだあんたたちに会った時、
   まどかの様子がちょっと変だったような気がしたから」

さやか「こないだ、って。あの、猫の事故の時……?」

マミ「猫の事故……?気になるわね、詳しく教えてくれる?」

杏子「えーっと、一昨日、だったか?さやかとまどか、あとほむらの3人に会ってさ」

杏子「その時、猫が車に轢かれて死んじゃってるの見たんだよ」

マミ「まぁ……可哀想に」

杏子「そう、あたしもグロいもん見ちまったと思ったのと同時に、
   さすがに可哀想だなとも思ったさ。このあたしですらそうなんだ。
   だったら、まどかだったらどう感じると思う?」

マミ「それは……心を痛めるでしょうね。もしかしたら、泣いてしまうこともあるかも」

さやか「……あっ……!」

杏子「気付いたか。まどかなら、まぁ泣かないまでも、猫が死んじまったことを
   心の底から哀れむと思うだろ?ただでさえ猫好きみたいだし。
   だけど……そうじゃなかった。あいつ、その時なんて言ったと思う?
   晩飯食えなかったらどうしよう、
   あんまり近くに居たくないから早く行こう、って言ったんだ。
   それも、本当に嫌なものを見たって感じにさ」

マミ「それ、本当……?だとしたら、確かに鹿目さんらしくはないわね」

杏子「だろ?まぁちょっとしたことだが、それが気になってさ。
   だから、さやかが何か悩んでるんだとしたら、まどか関連かなと思ったんだ」

さやか「…………」

そうか、あの時ふと覚えた違和感の正体が、やっとはっきりした。
そうだよ、まどかは本当に優しい子なんだ。
猫が車に轢かれたりなんかしたら、気持ち悪いと思うより先に可哀想と思うような子なんだ。
それなのに、確かにあの時のまどかは……。

よく考えたら、それだけじゃない。
次の日の朝あたしがじゃれ付いた時、まどかは珍しく反撃してきた。
それだけならまだ分かるけど……あれも、本気で殴ってきてた。
怒って本気で殴るならまだしも、悪ふざけで痛みが後を引くくらい強く殴るなんて、
今までのまどかからは考えられない。

それに、お昼のお弁当の時だってそうだ。
まどかはほむらに、“自分の苦手なものをあげる”と言って、おかずを1つ渡してた。
ほむらに遠慮させないための嘘だと思ったけど……。
まどかはそのおかずを、はっきりと“美味しくない”と言った。
たとえ嘘でも、自分の親が作ってくれたお弁当を“美味しくない”なんて、まどかが言うはずない。
一生懸命作ってくれたお弁当を悪く言うなんて、考えられない。

それもこれもみんな、体調が悪かったから?
感情が不安定な日だったから?
まどかにだってそんなこともある?

わからない……でもなんていうか……
感情とか、そんなレベルの話じゃ、ないような気がする……。
……わからない……わからない……。

杏子「おい、さやか……?」

マミ「大丈夫?顔色が悪いわよ……」

さやか「ご、ごめんなさい。あたし今日はもう帰りますね……さよなら!」

翌朝

さやか「…………」

一晩考えたけど……多分、そうだ。
まどかの違和感には……事故が関係してるんだ。
事故の影響で、それでちょっとおかしくなっちゃってるんだ。
体は間違いなく、頭も完璧に治したはずだから、たぶん何か、別の原因で……。

早くほむらにそのことを伝えないと。
もしかしたら、生き返らせた方法に問題があったのかも知れないし……。

もう少しでいつもの待ち合わせ場所。
……というところで、ふいに後ろから声をかけられた。

マミ「美樹さん、今ちょっと良い……?」

さやか「えっ……?」

杏子「話がある。安心しな、学校に間に合う程度には手早く済ませるからさ」




さやか「……それで、話って言うのは」

マミ「あのね……。鹿目さんのことなんだけど」

さやか「!ま、まどかが、どうかしたんですか?」

マミ「その……鹿目さんね、病院に連れて行った方が良いと思うの」

さやか「病院!?な、なんで……!」

杏子「昨日さ、あいつがマミの家に来たんだよ」

さやか「……え」

杏子「その時のあいつ……どう考えてもおかしかった。あれは異常だよ」

昨日、マミ宅

まどか「えへへ、こんにちは、マミさん」

マミ「鹿目さん!突然どうしたの?何か用事?」

まどか「あ、いえ。特に用事があるってわけでもないんですけど……。近くを通ったから、つい」

マミ「そう……。まぁ、とりあえず上がって?」

まどか「はい、おじゃまします」

杏子「ん?なんだ、誰かと思えばまどかか」

まどか「こんにちは、杏子ちゃん」

マミ「ちょうど今からお茶とケーキを食べようと思ってたの。
   すぐ用意するから、座って待っててね」

ほむら「無限月読だ」

仁美「分かるってばよ…」

マミ「はい、どうぞ」

杏子「おー、美味そう!」

まどか「わ、ありがとうございます!いただきまーす」

杏子「いっただっきまーす!うめぇー!」

まどか「ん~、美味しい~!杏子ちゃんのケーキも美味しそうだね!どんな味するの?」

杏子「あん?駄目だぞ、これはあたしんだ。やらないからな!」

まどか「えー、杏子ちゃんのケチー」

マミ「ふふっ、佐倉さん、いじわる言ってないで一口くらいあげても良いんじゃない?

そこまでは、普通だった。
まどかの様子も特におかしいところはなく、いつも通りのあたしたちの知ってるまどかだった。
だけど……突然だった。

まどか「そうだよ杏子ちゃん。ちょっとくらい良いでしょ!」

杏子「なッ!?」

まどかは……あたしのケーキを、素手で掴みやがった。

マミ「か、鹿目さん!?」

まどか「ん……なーんだ。思ったより美味しくなかったよ」

そして手で掴んだケーキを一口食べ、そう言い捨てたと思ったら……。
今度は、手にまだ残っていたケーキを、横にあるゴミ箱に捨てた。

杏子「ッ……てめぇふざけんじゃねぇ!殺すぞ!!」

まどか「きゃっ!き、杏子ちゃん!?」

突然まどかが普段だったら言わない事を言い出したんだ…

まどか「でもこんなにたくさんケーキを食べたら太っちゃうかも」

マミ「その分運動すれば」

まどか「マミさんみたいにだけはなりたくないなー」

杏子「!?」

マミ「」

マミ「だ、駄目よ佐倉さん!落ち着いて!」

杏子「放せマミ!一度ぶん殴らなきゃ気がすまねぇ!!
   マミのケーキを捨てやがって!!ぜってー許さねぇ!!ふざけんな!!」

マミ「い、良いから、とにかく落ち着いて!」

杏子「くっ……!まどかてめぇ……なんでそんなことしやがった……!」

まどか「だ、だって……美味しく、なかったんだもん……」

杏子「……ッざけやがって!!美味しくなかっただぁ!?
   そんな理由で捨てたってのかよ!あぁ!?」

マミ「か、鹿目さん、どうしてしまったの……?あなた、そんな子じゃなかったはずよ……」

まどか「……よくわかんないけど、怒らせちゃったみたいですね。
    今日はもう帰ります。さよなら、マミさん、杏子ちゃん」

杏子「待ちやがれてめぇ!!……くそ!なんなんだよ、ちくしょう!!」




さやか「う、うそ……」

杏子「その後多少落ち着いてマミと話し合ったんだが……。
   どう考えても、あのまどかは普通じゃなかった」

マミ「魔女に操られているというわけでもなかったし……。
   それで、何か精神を病んでるんじゃないか、っていう結論になったの。
   美樹さんも鹿目さんのことで悩んでるみたいだったから、やっぱり何かあるんじゃないかって」

さやか「そ……それは……」

マミ「心当たりとか、ない?」

さやか「……ご、ごめん。何も、わからない……」

マミ「……そう」

杏子「おい、さやか。あんた……」

さやか「も、もう遅刻しちゃうから!あたし行くね!
    何かあったら連絡します!それじゃ!」

そんな……思ってたより、ずっと酷い……!
もう、絶対間違いない!
事故のせいだ、事故で、まどかおかしくなっちゃったんだ!
それも、明らかにどんどん酷くなってる、悪化してる……!
は、早く、なんとかしないと……。

さやか「お、おはよう……」

まどか「あ、さやかちゃん!今日はどうしたの?寝坊?」

仁美「なかなか来なかったので、先に行かせてもらいましたわ」

さやか「あ、う、うん。ごめんね」

ほむらは……もう席に着いてる。
急いでほむらに、相談しなきゃ……!




ほむら「……それで?あなたは何が言いたいの?」

さやか「な、何がって……絶対おかしいじゃん!普通のまどかじゃないよ!」

ほむら「何もおかしなことなんてないわ。まどかだって完璧じゃない。
     少しくらいマナーがなっていないこともあるでしょう。大げさに騒ぎすぎよ」

さやか「な、なんで……!」

ほむら「あなた、何が不満なの?まどかは生き返った。
    こうして私たちの元へ帰ってきた。それだけで十分でしょう?」

さやか「ふ、不満とかじゃなくて……」

ほむら「事故のことで不安なのは分かるけれど、
    間違いなく、まどかの体は完璧に治ってる。脳に障害があるなんてこともない。
    まどかがおかしくなる理由なんて、どこにもないじゃない」

さやか「いや、でも……!だ、大体どうやってまどか、生き返らせたのよ!
    魔法で生き返らせたって言ってたけど、もしかしたら、そこに何か問題が……」

ほむら「やり方は何度も確認したし、間違えてなんかいない。問題があるはずない。
     あなたが些細なことまで気にしすぎなのよ。
     ……話は済んだわね。私はもう行くわ」

さやか「ちょ、ちょっと……!」

そんな……ほむらは、あたしの話を信じてない。
マミさんと杏子の話を、信じてない……!
でも、でも!
まどかが変なことは確かなんだ!
なのに……!

い、一体、どうしたら……!

(やり方…?)

昼休み

まどか「いただきまーす」

ほむら「いただきます」

さやか「…………」

こうして見ると……本当に、普通のまどかだ。
でも、突然おかしくなるんだ。
何かがきっかけで、まどかは、普通のまどかじゃなくなる。

何も考えずに、何にも気付かずに接することが出来たら、あたしも楽なのに……。
でも、そんなの……。

ほむら「今日は、これを味見してもらっても良いかしら」

まどか「もちろん!それじゃあわたしは何をあげようかなー……」

ほむら「あ、そのおかず、美味しそうね」

まどか「!駄目だよこれは!」

あたしは、その瞬間を見ていなかった。
自分のお弁当に目を落として、2人の会話だけを聞いていたから。
でも、突然聞こえた。
まどかの慌てたような声の直後に……鈍い音と、呻くような一瞬の声。
あたしが反射的に顔を上げると、そこには……

ほむら「ッ……ぁ、ぐ」

さやか「なっ……ほ、ほむら!?」

両手で顔を覆うほむら。
そして手の隙間からは、血が垂れていた。
すぐにわかった。
ほむらはまどかに顔を殴られて、鼻血を出したんだと。

つまり…公共事業だってばよ?
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYt8utBww.jpg

さやか「ま、まどか、あんたなんてことを……!」

そう責めようとした瞬間、まどかは……思っていたのと違った反応をした。

まどか「ち、血が……!ほむらちゃん!」

慌てた顔ですぐほむらに近付き、顔を寄せる。
……ちゃんと、心配してる……?
これだと本当に、運悪く手が強く当たってしまい、友人に怪我をさせてしまった子の反応だ。
杏子から聞いた様子とは、少し違う。

ほむら「ほ……保健室に、連れて行ってもらえるかしら……」

まどか「う、うん。ほむらちゃん、行こう?」

さやか「あ、あたしも……」

ほむら「あなたは、待っていて……すぐ、戻ってくるから……」

そうして、ほむらとまどかは行ってしまった。
……待っててって言われてもなぁ。
やっぱ心配だし……。

でも……ちょっとだけ安心というか、拍子抜けした。
杏子から聞いたまどかの様子だと、
たとえほむらに怪我させたとしてもなんとも思わなさそうだけど。
さっきのまどかは、ちゃんとほむらを心配してたみたいだ。
いや、まぁそれが普通なんだけどさ……。

……それでもやっぱり、鼻血が出るほど強く殴っちゃうって言うのは変だ。
なんていうか、まどかは加減ができなくなってる。
だからさっきみたいに、“ついうっかり”で怪我をさせちゃうんだ。

……駄目、やっぱ心配だ。
追いかけよう。

一瞬まんかれあ?だかのゾンビ思い出した

保健室へと向かい、教室なんかの賑やかな場所を離れていく。
この辺りは、生徒はほとんど通らない。
それこそ、保健室に用事でもない限りは。

そうやってしばらく誰もいない廊下を急ぎ足で歩き、角を曲がったところで……

さやか「っ!?」

あたしは思わず、角に身を隠してしまった。
曲がった瞬間に見えたのは、一瞬だったけど確かにまどかとほむらの2人だった。
でも……何か様子が違った。

顔だけそっと出し、2人の様子を伺う。

まどか「……良いよね、ほむらちゃん……?」

ほむら「えぇ、今なら、誰も居ないから……」

2人は廊下に立ち、そして向き合っている。
それは良いんだけど……なんていうか、距離が近い。

その時、まどかが手をゆっくりと上げて、ほむらの顔に添えた。
そのままほむらの後頭部に両手を持って行き、自分の顔をほむらの顔に近付け……。

え、何、まさか、き、キス……?
女の子同士とか、今ほむらの顔血まみれとか、むしろ鼻血出てる最中とか、
他にもいろいろツッコミどころはあるけど……。

あたしの頭が混乱してる間にも、2人の顔の距離はどんどん縮まって行き、
そして……

まどか「……れろ、ぴちゃ、ぺちゃ、れろ、れろ……」

まどかは、ほむらの顔を……舐め始めた……。
いや、違う……顔に付いた血を、舐め始めた……!?

百合好きだけどこれは別ジャンル

まどか「ぁむ、ぷちゅ、ぴちゃ……」

ほむら「ん……」

音だけ聞くと、ディープキスか何かをしてるようにも聞こえる。
でも、そうじゃない。
まどかは、ほむらの、血を……

まどか「ちゅ……ずる、ずりゅ、ずちゅうう……」

さやか「っ……!?」

な、なに?
あれってまさか……!
鼻に吸い付いて……鼻血を、吸い取ってる!?
それだけじゃない、鼻の穴にまで舌を入れて、執拗に舐めまわして、
ほむらの血を、一滴も逃すまいと、全部全部、飲み干そうと……!

まどか「ずりゅ……ぴちゃ、んむ……ぷぁ」

ほむら「……もう、満足した?まどか」

まどか「ん……ほんとは、もうちょっと……でも学校だし、我慢するよ」

ほむら「そう、すごいわ、良い子ね……。
     それじゃあ今日は、家に帰ったら少し多めにあげるわね」

まどか「ほんと!?ありがとう、ほむらちゃん!」

な……何……?
家に帰ったら、何をあげるって……?

ほむら「そろそろ、戻りましょうか。さやかが心配してしまうわ」

まどか「うん、そうだね。さやかちゃん心配性だから」

ッ……!
やばい、こっちに来る!
急いで屋上に戻らないと!

屋上

まどか「ただいま、さやかちゃん」

ほむら「ごめんなさい、心配をかけたわね。もう血は止まったから大丈夫よ」

さやか「そ、そっか!良かった!」

ほむら「さぁ、早くお弁当を食べてしまいましょう。お昼休みが終わってしまうわ」

まどか「わ、大変!急がなきゃ!」

あたしが見てたことは、気付かれてないみたいだ……。
それにしても……さっきのは、一体なんだったんだろう。

最大限、本当に精一杯好意的に解釈しようとしたけれど……無理だ。
鼻血を止めるためにあんな方法を取るなんて聞いたことないし、
それに、ほむらとまどかが、仮に“そういう関係”だったとしても、顔の血を舐めるとか、
鼻血を直接吸いだして飲むとか、そんなの、どう考えてもおかしすぎる。

そして、1つ分かったことがある。
ほむらはまどかがおかしいことに気付いていなかったんじゃない。
おかしいのを分かっていて、受け入れていたんだ。
だったらもう、ほむらに何を言っても、意味がない……?

あそこまでおかしな行動を許容している以上、たとえどんなことをしようと、ほむらは受け入れるだろう。
“まどかが生き返っただけで十分”とか言って……。

一番気になるのは、ほむらが言ってた“帰ったらあげる”何か。
あの文脈だとまるで、鼻血なんかよりもっとたくさんの血をあげる、というように聞こえた……。
しかも、“今日は少し多めに”とも言ってた。
ってことは、昨日も、同じように……?

まどか「?さやかちゃん、お弁当食べないの?もうあんまり時間ないよ?」

さやか「あ……あはは、ごめん。なんか、食欲ないんだ。
    さ、先に教室戻ってるね。2人はもうちょっとギリギリまで、ご飯食べてなよ」

放課後

まどか「さやかちゃん、帰ろ!」

さやか「あー、ごめんまどか。あたし今日、ちょっと用事があってさ。
    急ぐから、それじゃまたね!」

まどか「あっ……行っちゃった」

ほむら「志筑さんも習い事で帰ってしまったし……私たちも帰りましょうか」

まどか「うん、そうだね。……ほむらちゃんの家、行っても良いよね?」

ほむら「えぇ、もちろん」

まどか「じゃ、早く行こう!わたしもう我慢できないよっ」

ほむら「ふふっ、まどかったら。そんなに焦らなくても、私は逃げたりしないわ」

学校を出て、すぐにあたしは対象を限定したテレパシーを送る。
その相手は……。

さやか『どうせ近くに居るんでしょ!早く返事して!』

QB『珍しいね、まさか君の方から話しかけてくるなんて。何か用かい?』

さやか『話があるの。ちょっと来てくれる?』

QB『何か急ぎの用みたいだね。わかったよ。すぐに追いつくから、そのまま歩いててくれ』

さやか『……あんたのそういうとこだけはほんとありがたいわ』

QB『そうかい』




QB「それで?何の用だい?」

さやか「まどかが変になっちゃった理由、教えてよ!
     あんたなら知ってるんじゃないの……!?」

QB「変も何も、アレはまどかじゃないんだから、君の知ってるまどかと違うのは当然だろう?」

さやか「……え……?」

QB「最初から言ってるじゃないか。“死者を生き返らせることなんてできない”って。
  アレはまどかなんかじゃないよ。外見はまったく同じだけどね。
  
さやか「ま……まどかじゃ、ない……?」

QB「あの体に入っているのはまどかの魂とはまったく別物だ。
   まどかの魂の代わりになる物を入れて、体を動かしているだけに過ぎないのさ」

QB「まぁ、最初は上手くまどかを再現できていたみたいだけどね。
  でも、君も気付いてるんだろう?本物のまどかとずれ始めていることに」

さやか「……!」

QB「初めは言われて気付く程度の些細な違和感から始まるんだ。
  そして次第にその違和感が膨れ上がり、すぐに違和感なんて表現じゃ済まなくなる。
  明らかに異常、本人とまったく別人どころか、人間としてもおかしくなっていく。
  当然だよね。だってもう、人間じゃないんだから」

さやか「そんな……!な、なんでそんな、これからのことまでわかるのよ!
    まだ分からないでしょ!?も、もしかしたら、治るかもしれないでしょ!?」

QB「君たちはいつもそうだね。そして、いつも最後には後悔するんだ。
  やっぱりあんなこと、するべきじゃなかった、ってね」

さやか「いつも、って……」

QB「何度も見てきたよ。君たち人類が、死者を生き返らせようと悪戦苦闘する様子を。
  でも、いつも同じだ。みんな同じ過程を辿っていく。
  そして今の君たちも、彼らと同じ道を辿っているんだよ」

さやか「っ……」

QB「とは言っても……結末は場合によって違う」

さやか「け……結末?」

QB「生き返った死者をもう一度殺したり、逆に殺されたり、心中したり。
  殺せないまでも、監禁や拘束に行き着くのがほとんどだね。
  なんせ、最終的には殺すか拘束するかしないと手が付けられなくなる」

さやか「ッ……そん、な……」

QB「まぁ、どういう結末を選ぶかは君たち次第だ。
  僕としては早めに手を打っておいた方が良いとは思うけどね。
  言っておくけど、異常性が膨れ上がる早さはかなりのものと考えた方が良い。
  これまでのアレの様子を見ると、周りをごまかせる段階を数日中には超えてしまうはずだよ」

さやか「っ……キュゥべえ、今から、ほむらの家に行って……!」

QB「僕がかい?まぁ、どちらにしろそうするつもりだったから構わないよ。
  でも、ほむらの家に行って何をすれば良いんだい?
  わざわざ頼むということは、何かして欲しいことがあるんだろう?」

さやか「2人が家で何をするのか見て、すぐあたしに教えて欲しい。
    ……多分、ほむらはまどかに何かをあげると思うんだ」

QB「何かというのは?」

さやか「多分……血か、何か。でも、確信が持てないからさ」

QB「なるほど……過去にもそういう例はあるからね。わかった。じゃあ、行って来るよ。
  その代わりと言うのも変だけど、今後どうするか早めに考えて置いてくれるとありがたいな。
  僕だって、魔法少女をみすみす死なせるわけにはいかないからね。
  ほむらを救うにはどうすれば良いか、よく考えておいてくれ」

さやか「っ……わかった、考えとく。それじゃ待ってるからね。頼んだよ、キュゥべえ」

さやか宅

さやか「……はぁ……」

まさかキュゥべえなんかに頼む羽目になるなんて……。
でも、仕方ない。
あいつの言うことが本当なら、あんまり悠長にしてられる時間はないんだ。
今は出来るだけ早く事態を把握して、対処法を考えないと……。

QB「……さやか」

さやか「!キュゥべえ!」

思ったよりずっと早い。
まだキュゥべえと分かれてから1時間経ったかも分からないくらいなのに……!

さやか「ど、どうだった!?ほむらと、まどかは、何を……!」

QB「参ったよ、さやか。アレが異常性を帯びていくことは分かっていたけれど……。
  まさかほむらまであんなにおかしくなってしまっているなんて」

QB「ほむらの異常性はアレに匹敵……いや、ある意味ではそれ以上かも知れない」

さやか「っ!?何それ!どういうこと!?」

QB「君は、ほむらがまどかに何かをあげるはずだ、と言ったよね。
  確かに、君の言った通りだった。ただし、血ではなかったよ」

さやか「っ!な、何だったの……」

QB「ほむらが差し出したのは、肉だ」

……肉……?
そうか、鼻血で足りないとなれば、もっと生々しい、たとえばそう、生肉か何かを……。
でも、それだけじゃあほむらは異常とまでは……

さやか「ま、まさか!生きた動物の……!」

QB「間違ってはいないね。彼女が差し出したのは……ほむら自身の肉。人肉だよ」

さやか「…………え」

QB「彼女は、自分の肉をその場で切り取って食べさせていたんだ」

さやか「なっ……え、は……?」

何、肉を、切り取って、え?
ほむらが、自分の、ほむらの、肉を、食べさせ、ほむらの……。

QB「それも、どうやら今日が初めてと言うわけじゃないらしい。
  恐らく昨日も、もしかしたら数日前から続けていたのかも知れないね」

さやか「そ……そんな、わけ……。だ、だって、今日、普通、だったし……」

QB「きっと、痛みを消して魔法で血を止めていたんだろう。
  もっとも、君くらいの回復能力があればそんな工夫をする必要もないんだろうけど」

さやか「じゃ、じゃあ、傷痕は残ってるってこと!?まさか、あの手の包帯……」

QB「手?彼女が切り取っていたのは腹部辺りの肉だよ。
  普段は衣類で隠れるから、その部位を選んだんだろう。
  ただ、かなり深くまでくり抜いていたようだから、傷痕はしっかり残っていたよ。
  ほむらの回復力では完治に時間がかかるはずだ」

腹部って……でもそんなの、着替えてるところなんかを見られればすぐに……。
ッ……まさか……!

そうか、今までそんなこと一度もなかったのに、
この前の体育でほむらは、体操服を制服の下に着込んでた!
あれは、お腹を見られないためだったんだ……!
ということは、あの時にはもう既に……

QB「何か心当たりがあったみたいだね」

さやか「っ……ていうかあんた、ほむらが自分を傷つけてるところ、黙って見てたの!?」

QB「ほむらがまどかに何をあげるのかを見たら、すぐに教えてくれと言ったのは君じゃないか。
  それに、ほむらは魔法少女だ。時間はかかるけれど、
  あの程度の傷なら綺麗に治せるよ。命に関わるような怪我じゃない」

さやか「こ、このッ……!」

QB「ただし、命に関わるのも時間の問題かもしれない。
  このままだと何が起こるか分からないからね。
  ほむらが正常であると確信を持てるならこのまま魔力切れを待つところだけど、
  今のほむらは何をするか分からない。だから、こうして急いで君の元に情報を届けに来たんだよ」

さやか「っ……!!」

分かってた、こいつがこういう奴だということは、分かってた。
だから今はこいつに怒りをぶつけるんじゃなくて……

QB「……電話なんか取り出してどうするつもりだい?」

さやか「うるさい!あんたはもう出てってよ!」

QB「やれやれ……」

さやか「お願い、ほむら、お願い……!」

何回かのコール音が続き、そして……

ほむら『……何かしら』

さやか「!ほむら!良かった……!」

ほむら『?どうしたの、用事は何?』

さやか「あ、その……い、今、家に1人……?」

ほむら『えぇ。さっきまでまどかと一緒だったけれど。今は1人よ』

……まどかと一緒だったことを隠そうともしない。
普通、あんなおかしなことをしたら出来るだけ隠そうとすると思うけど……。
もしかして、ほむらにはもう、
自分のしていることがおかしいかどうかも分からないのかも……。

ほむら『……さやか?』

だったら、もう電話なんかで何を言っても無駄なのかも知れない。
ほむらを説得するなら……直接だ。

さやか「ほむら……今から、会える?」

ほむら『今はちょっと、難しいわね。夕飯の支度を始めたところだから』

さやか「ゆ、夕飯って、何……!?」

ほむら『……?焼き魚だけど、どうして?』

さやか「あ、いや……肉料理とかじゃないんだね。なら良いんだよ……」

さやか「じゃあ今日はもう、家に1人なんだね?
    どこにも出かけないし、誰も家に来る予定はないんだね?」

ほむら『えぇ、まぁ』

さやか「……そっか。じゃあ、ほむら。明日学校で会おう、約束だよ?
    話があるから、絶対来てよ?」

ほむら『?話があるなら今話せば良いじゃない』

さやか「直接話したいの!わかった?」

ほむら『……分かったわ。それじゃ、もう切るわね』

さやか「うん……それじゃ、また明日」

……普通にしか思えない……。
電話越しだと、いつものほむらにしか、聞こえない……。
やっぱり……直接会わないと駄目だ……それで確認しないと、駄目なんだ……!

ごめん、ちょっと席外すお
1時間ちょいで戻るから保守してくれると嬉しい

何故あんあんとデブデブに話さないのか さやかは周りが見えなくなるのが早いな

>>288
さやかってほんとバカだよね

>>290
バカとか糞アマとかペチャパイなんて言うなよ!
http://beebee2see.appspot.com/i/azuYvom2Bww.jpg

なんかいきなり臭くなったぞこのスレ…

腹減ったな

翌日

ほむらはちゃんと、学校に来た。
ぱっと見、その様子はやっぱり、いつものほむらだ。
でも、この服の下は……。

ほむら「……それで、話って何?」

さやか「あ……うん。昨日さ……まどかがあんたの家に行ったんだよね?」

ほむら「えぇ、来たわね」

さやか「2人で、何したの?」

ほむら「何って……。軽く何か食べながらちょっとお喋りを……」

さやか「何かって、何よ」

ほむら「……別に良いじゃない、何だって」

さやか「良いから答えて。あんたまどかに、何を食べさせたの?」

ほむら「……ただのお菓子よ。それがどうかしたかしら」

さやか「……!」

ほむらは、自分のしたことを隠してる……。
ということは、まだ自分のやってることが異常だという自覚があるってこと……?
それなら、説得できるかもしれない!

さやか「ご……ごめん、ほむら。あたしね……全部知ってるんだ。
    昨日、ほむらの家で何があったのか、あんたがまどかに、何を食べさせたのか」

ほむら「何のことかしら。あなたが何を言ってるのか分からないわ」

さやか「やめて……もう、ごまかさないで。ほむらのこと、心配してるんだよ……!」

ほむら「何を心配することがあるの?何もないじゃない」

さやか「これ以上続けたら、あんた、どうにかなっちゃうよ!
    お願いだから、もうあんなこと、やめてよ……!」

ほむら「だから、あなた何を言って……」

さやか「っ……じゃあ、その服捲ってみなさいよ!そのお腹、傷だらけなんでしょ!?
    あたしの言ってることがおかしいってんなら、その服捲って証明してみなさいよ!
    もし何もなかったら、その時は全部あたしの勘違いってことにしてあげるからさ!!」

いつまでもごまかそうとするほむらの態度に、ついに耐え切れなくなった。
あたしはほむらに詰め寄り、そして、一気に服を捲りあげた。

ほむら「っ……!」

さやか「ほら!こんなに傷だら、け…………え?」

服の下にあったのは……
肉を切り取った後どころか、染み1つ無い、真っ白で綺麗な素肌だった。

ほむら「……あなた、どういうつもり?」

さやか「あ、いや、だって……」

まさか魔法で治した……?
いや、キュゥべえも言ってた通り、回復魔法が得意でないほむらには、
あまりに酷い怪我はそう簡単には治せない。
いや、でも、治せないというわけじゃない。
でも、治すのはかなり難しい……。
でも、でも、でも、でも……。

ほむら「さやか……あなた、少し疲れてるんじゃないかしら」

さやか「えっ……?」

ほむら「まどかを呼んでくるわね。保健室に連れて行ってもらいましょう。
     私も付き添うから。肩を貸しましょうか?」

さやか「えっと……あっ……」

そう言って差し伸べたほむらの右手には、まだ包帯が巻かれていた。

……お腹の、酷い怪我を治せるなら、あんな手の怪我なんて真っ先に治してるはず。
だったら本当に、ほむらは自分の肉を切り取ったりなんて、してなかった……?

でも、キュゥべえは……。
……またあたしは、あいつの言葉に踊らされた……?

わからない。
わからない。
今はとにかく、頭が混乱してる。
ほむらの言う通り……一度保健室で休んだ方が良いのかも知れない。

まどか「さやかちゃん、大丈夫?ほら、もうすぐ保健室だよ、頑張って」

ほむら「まったく……世話がやけるわね」

さやか「……ごめん。ありがとう、まどか、ほむら……」

そう言えば、ここ数日ろくに寝てなかった。
とりあえず、今は、ゆっくり寝ることにしよう。




さやか「……ん……」

結構ぐっすり寝ちゃってたみたい。
時間は……。

さやか「っ!も、もう放課後……!?」

養護教諭「あら、ようやくお目覚めね。もう大丈夫?
      ずいぶん疲れがたまってたみたいね。何回か起こそうとはしたんだけど……。」

さやか「あっ、えっと……す、すみません」

養護教諭「特に大きな問題はないと思うけど、
      もしまた何かおかしなことがあったらすぐ病院に行くのよ?」

さやか「は、はい。ありがとうございます」

帰り道

さやか「……ふー……」

休んだおかげで、頭の重さは取れた。
気持ちも落ち着いた。
とりあえずほむらは……少なくとも、体は心配なさそうだ。
事実、ほむらは全然、怪我なんてしてなかった。
単純だけど……安心しちゃった。

と、その時。

さやか「!魔力反応……この近くだ」

結界がすぐ近くにある。
しかも、もしかしてこの反応……中でもう誰か戦ってる?
えーっと、この魔力パターンは……わかった、マミさんと杏子だ!

さやか「よーっし!待ってて!今助太刀に行くよ!」

  _、_     オッス!オラ・・・
( ,_ノ` )
  [ ̄]'E ズズ
.    ̄


  _、_     ・・・ゴクッ
(  ◎E



  _、_     ………プスゥー
( ,_ノ` )
         ガチャ
    [ ̄]'E
..   

使い魔「ケケケケケ!」

杏子「ちっ!鬱陶しいな、数が多い!」

魔女「オオオオオオオオオオ!」

マミ「魔女の相手もしなくちゃいけないのに……ちょっと厄介ね。
   せめてあと1人居れば随分楽なんだけど……」

さやか「さやかちゃん登場!マミさん、杏子!助太刀に来たよ!」

杏子「さやか!へっ、タイミングが良い奴だぜ!」

マミ「助かったわ、美樹さん。一気に片付けちゃいましょう!」

さやか「おっけー!任せてください!」

デブデブ!




杏子「今だ、マミ!」

さやか「マミさん、やっちゃって!」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

魔女「ギャァアアアアアアアアア……!」

杏子「ふー、手こずらせやがって」

マミ「無事終わって良かったわ。2人とも、お疲れ様」

さやか「お疲れ様です!」

マミ「美樹さんが来てくれなかったら、ちょっと危なかったかもしれないわね」

さやか「いやー、そんなそんな。
     あたしが居なくてもマミさんならあんな魔女くらい倒せましたって」

マミ「ふふっ、ありがとう。でも暁美さんの件もあるんだし、油断はできないわ」

さやか「え……?ほむらが、どうかしたんですか?」

杏子「なんだ、あいつから聞いてないのかい?まぁ、プライド高そうだしねぇ」

マミ「実はね、昨日……暁美さん、魔女にやられそうになったのよ」

さやか「きっ……昨日!?昨日の、いつ頃ですか!?」

マミ「確か、夜の8時か9時くらいだったと思うわ」

さやか「……!」

あたしが電話したのは、確かまだ6時くらい……。
じゃああの後、ほむらは……!

さやか「く、詳しく聞かせてもらっても良いですか?」

マミ「えぇ、構わないわよ」




前日、夜

杏子「おーいマミー。もう帰ろうぜー?そこまでやんなくても大丈夫だってー」

マミ「駄目よ、最近はまた魔女に魅入られる人が増え始めたみたいだし。
   しっかりパトロールしなくっちゃ」

杏子「まー確かに交通事故とかあって最近物騒だけどさぁ。
   でも魔女の仕業って決まったわけじゃないじゃん」

マミ「交通事故じゃなくて……。っ!見つけた、反応よ!」

杏子「うぉ、マジだ。へー、探してみるもんだね」

マミ「多分、この辺りのはずなんだけど……」

杏子「んー……おい、あそこじゃないか?」

マミ「!そうみたいね。それじゃ、行きましょうか」

杏子「あぁ、いっちょやってやろうじゃん!」

佐倉さんと2人、結界に入る準備をする。
そして、いざ開こうとしたその時だった。

マミ「え……?」

杏子「お、おい。結界が消えてくぞ!」

マミ「……どうやら、魔女が倒されてしまったみたいね」

杏子「はぁ!?でも、魔法少女の魔力なんて……いや、確かにほんの少しあったな。
  でも気のせいかと思ったよ、あんなちっさい魔力反応……」

そうするうちに結界は完全に消滅し、そして、現れた人影は……。

ほむら「…………」

マミ「暁美さん……!」

杏子「あんたか。どういうつもりだよ?あれだけ魔力を抑えながら戦うってのは……」

佐倉さんの言葉は、そこで途切れた。
言い終わる前に……暁美さんが突然倒れた。

杏子「お、おい!?ほむら!どうしたんだよ!?」

ほむら「うっ……はぁ、はぁ……」

マミ「いけない……魔力を使いすぎてる。暁美さん、このグリーフシードを使って!!」

杏子「ちっ!抑えてたんじゃなくて、切れかけだっただけかよ……!
    ッ!?おいマミ!見ろ、こいつ血まみれだぞ!!」

マミ「ひ、酷い怪我……!待っててね、すぐに治すから!」

杏子「それにしても、ほむらがここまでやられるとはね……。
    よっぽど強い魔女だったみたいだな」

ほむら「……ぁ、巴さん、杏子……」

マミ「良かった、目を覚ましたわ」

杏子「よぉ。ソウルジェムは浄化しといたよ。腹の怪我も今、マミが治してる」

ほむら「……ごめんなさい、ありがとう……」

マミ「良いの、困った時はお互い様よ。
   ……はい、治ったわ。お腹の他に怪我をしてるところはない?」

ほむら「えぇ……大丈夫よ」

杏子「ん……?あんた、手は良いのかい?
   包帯なんか巻いてさ。ついでに治してもらいなよ」

ほむら「……良いの。手は、大丈夫。ありがとう2人とも。それじゃあ、さようなら」




さやか「お……お腹の、傷……?」

マミ「えぇ。本当に、酷い怪我だったわ。暁美さんがあれほどの傷を負うなんて……」

さやか「そ、それって、どんな傷でした!?」

マミ「え?えっと……1つ1つの傷は大きくないんだけど、結構深くて。
   何箇所も、まるで穴が空いたみたいに……。かなり鋭い攻撃だったみたい」

杏子「なんていうか、切り取られたって感じだったよな。刃物か何かでさ」

さやか「そ、それ、治したんですか!?ぜんぶマミさんが、綺麗に!?昨日の夜!?」

マミ「え?えぇ、ちゃんと痕が残らないように綺麗に治したはずよ」

さやか「っ……そ、ソウルジェムは、穢れはどのくらい溜まってたの!?」

マミ「かなり溜まっていたわ……。余程の激戦だったんでしょうね」

杏子「にしても、1匹倒すのにあんなに魔力使うかねぇ?
   あれじゃあまるで、戦う前からずっと溜め込んでたみたいじゃんか」

マミ「でも、暁美さんほどの子がソウルジェムの浄化を怠るなんて考えられないわ」

杏子「ま、そりゃそうだけどさ。あいつをそこまで追い詰めるほどの魔女か……。
   いっぺんくらいはそいつの面拝んでみたいね、ははっ!」

マミ「こら、不謹慎よ。今度のケーキ、抜きにしちゃおうかしら」

杏子「わわっ!うそうそ!冗談だってジョーダン!」

……これだけ聞くと、確かに、ほむらが魔女と激戦を繰り広げたようにしか、聞こえない。
でも……あたしはキュゥべえから聞かされてしまってる。
ほむらが魔女と戦う前に、家で何をしていたか……。

……切り取られたような、お腹の怪我……戦う前から、魔力を消費……。

や……やっぱり、そうだったんだ。
ほむらは、やっぱり、自分を傷つけて。
それをごまかすために、魔法を使って、ソウルジェムに、穢れを……。
ま、間違いない、全部、辻褄が合う……!

ど、どうする?
もう、マミさんと杏子に、全部話す……?

な……なんて……?
実はまどかは死んでて、あれはまどかじゃなくて、
ほむらが自分の肉をまどかに食べさせてて……なんて、そんなの……。
い、言えるわけないよ……。

……い、今はそんなことをごちゃごちゃ考えてる暇はない。
それよりも、何よりも、ほむらだ。
今のほむらは、何をするか分からない……!

マミ「あ……そう言えば美樹さん、鹿目さんのことは病院に……」

さやか「あ、あたし、ほむらの様子が心配だから見てきます!さよなら!」

杏子「おい、さやか!……はぁ、また行っちまいやがった」

ほむホーム

ほむら「……さやか?」

さやか「ほ、ほむら……家、入れてくれる……?」

ほむら「別に構わないけれど……どうぞ、上がってちょうだい」

さやか「お、お邪魔します……」

家の中には、誰も居なかった。
今日は、まどかは来ていないみたいだ。
いや、それとも、もう……?

ほむら「それで、何の用?まさかまた、お腹を見せてくれなんて
     おかしなことを言うつもりじゃないでしょうね?」

さやか「……ううん、やめとくよ。
    だって、怪我は昨日、マミさんに治してもらったみたいだし」

ほむら「…………」

さやか「あのさ。お腹の傷、原因は何だったの?」

ほむら「魔女にやられたのよ。巴さんからそう聞かなかった?」

さやか「あぁ……うん。聞いたよ」

ほむら「魔女にやられたなんて、情けなくて言い出せなくて……。
     昼間は、あなたは傷を治してくれようとしていたのよね、ありがとう。
     でも大丈夫よ、もう治ったから心配しないで」

さやか「……じゃあさ、あたしはあんたのその、手の怪我を治してあげるよ」

ほむら「その必要はないわ」

さやか「……なんで?」

ほむら「このくらい、わざわざ治してもらうまでもない」

さやか「そんなこと言わないでさ。ほら、見せて」

ほむら「大丈夫よ。あなたの魔力をこんなことに使わせるわけにはいかないわ」

さやか「そんな傷、ちょちょいのちょいだよ。だからほら、治させてよ」

ほむら「だから、大丈夫だって」

さやか「やっぱ治療担当としてはさ、怪我させっぱなしだと気になるのよ。
     だから、ね。包帯取って、見せて……」

そう言って、ほむらの右手に手を伸ばした、その瞬間。

ほむら「大丈夫だって言ってるでしょうッ!?」

突然声を荒げたほむらに、あたしの手は思い切り払いのけられた。
そしてほむらは、包帯を巻いた右手を胸の中に抱え込むようにして、あたしを睨みつける。

さやか「……あんた、その右手、なんで怪我したんだっけ?」

ほむら「料理中に、包丁で怪我をしたと言ったはずよ……」

さやか「……おかしいと思うべきだったんだよ。
    指ならまだしも、あんたの怪我の箇所は“手”。
    手を包丁で、しかもそんな広範囲を包帯で覆うくらい傷つけるなんて、普通考えられないってさ」

ほむら「……仕方ないでしょう、不器用なんだから」

さやか「まー、そうだね。確かに不器用にもなるかもね。……左手で包丁使えばさ」

ほむら「っ……!」

さやか「あんた、右利きでしょ?包丁で切っちゃうとしたら、普通左手だよね。
    なのになんで、右手を怪我するわけ?」

以外に鋭いさやさや

さやか「どうやってそこを怪我したのか、今からちょっと再現してみせてよ。
    別に本物の包丁使わなくたって良いからさ。
    どんな風に怪我したのか、今すぐ教えてよ。
    どんだけドジっこなのって話だよね、ほんと!
    利き手を間違えて料理しちゃいましたってか!萌えか、そこが萌えなのかー!」

ふざけて見せるあたしと対照的に、ほむらはこっちを睨み続ける。
……しかし、ふいに諦めたように表情を和らげ、胸に抱え込んでいた右手を放した。

ほむら「……わかったわ」

さやか「!」

ほむら「包帯、取れば良いんでしょう?」

……正直、この包帯の下に何があるのか、あたしは何の想像もできていない。

ただ、マミさんの治療を拒否したという話と、今のあたしに対する態度から、
何か核心的なものであるということが、何となくわかっただけ。
だから今更ながら、あたしは少し、緊張していた。

ほむら「…………」

ほむらは、ゆっくりと、包帯を取っていく。
そして、右手の大部分を覆い隠していたものが全て取り払われ、
そこに見えたものは……

さやか「は……歯型……?」

歯型と言うと軽く聞こえるかもしれないけれど、それはれっきとした傷痕だった。
歯の形に深々と肉を抉った、傷痕。
冗談で軽く噛んで付けたようなものじゃない。
それは明らかに……何者かが肉を喰いちぎろうとして付けた傷に他ならなかった。

そして傷痕の並び方から、この傷をつけた動物は……。

ほむら「犬に噛まれてしまったの」

さやか「な、何言ってんのよ。どう見ても、それ……」

ほむら「野良犬に噛まれてしまったの」

さやか「ッ……嘘つくなよ!!どう見ても……どう見ても、人の歯型じゃん!」

ほむら「…………」

さやか「まどかに……まどかに噛まれたんでしょ!?」

ほむらは、答えない。
ただ黙って、その傷痕をじっと見つめ、左手で優しく、撫でている。

さやか「や、やっぱ、治した方が良いって、それ。
    見て分かるよ、かなり深いでしょ、その傷……」

ほむら「その必要はないわ」

さやか「な、なんでよ!自然治癒に任せたら何日かかるかわからないじゃん!魔法で治した方が……」

ほむら「だって、勿体無いじゃない」

さやか「も、勿体無いって……。そんな傷治す魔力なんて、たかが知れてるよ!
    魔力のことなんか心配する必要なんて……」

ほむら「?あなた、何を言ってるの?」

さやか「は……?あ、あんたこそ何言ってんのよ!
     だから、そんな傷くらい簡単に治せるから、魔力が勿体無いとかそんなこと……」

ほむら「違うわ。この傷を治すのが勿体無いと言ってるの」

ほむら「だって、まどかが付けた傷なのよ?まどかがその口で付けてくれた傷なのよ?」

……一瞬、ほむらが言ってることの意味が理解できなかった。
何?
勿体無いのは、魔力じゃなくて……?
傷?
傷を治すのが、勿体無い?
なんで?
まどかが付けた傷だから?
……なんで?
なんでまどかが付けた傷だと、勿体無くて治せないの……?

混乱するあたしを尻目に、ほむらはまた、左手で傷痕を撫で始める。
そして……今度はその左手で傷痕を圧迫し始めた。
じわりと、血が滲み始める。
あぁ、やっぱり傷口はかなり深いんだなと、混乱する頭の片隅であたしは冷静に思った。

ほむらは右手をゆっくりと口元に運んでいき、血の滲んだ傷痕を舐め……

ほむら「……痛いわ、まどか。ふふ……とても、痛い……。
    見て、こんなに血が出てる。痛いわ……ね、まどか、ね……」

何か、呟いてる。
本当に小さな、まるで傷に語りかけているような、そんな声で、ほむらは呟いてる。

ほむら「…………」

ふいに顔を上げ、ほむらがこっちを見た。
その表情は……とても穏やかなもの。

ほむら「この傷はね……まどかが、生きてる証なの。
     この傷を見るたび、痛みを感じるたび、私はまどかが生きてると実感できる。
     この傷に、まどかを感じるの。ふふっ……見て、まどかの口、こんなに小さいのよ。
     あなた知ってた?とても可愛らしい、小さな口をしてるの。
     それから、ほら見て?この歯型には、奥歯の痕がないの。
     まどかは口が小さいから、私の手が口の奥まで入らなかったのよ。
     それでも一生懸命、私の肉を喰いちぎろうとして、こんなに深くまで歯を突きたてて。
     そんなまどかの可愛らしさと頑張りが、この傷痕から伝わってくるのよ。
     良いでしょう?まどかの歯に付けられた傷なんて持ってるの、世界中で私だけよ。
     私だけに刻み付けられた、まどかの一部。ふふっ……うふふふふ、ふふふふふふっ」




その後のことは、あまり覚えてない。
自分の足で歩いて家まで帰ったのは分かるんだけど……。

キュゥべえの言ってたこと、今更になってやっと分かった。
ほむらは、まどか以上におかしい。
おかしくなってる。
まどかが生き返ったという夢に溺れてる。

どれだけまどかがおかしくなっても、今のほむらは全部受け入れる。
それも、仕方なく受け入れるんじゃなくて、嬉々として受け入れる。

どうしたら、ほむらを元に戻せる……?
会話は……なんとか、ギリギリ成立するみたいだから、なんとかして、説得を続ける?

でも、説得って言ったって、具体的にまどかをどうするべきなのか、
あたしの考えもまだまとまっていないのに……

QB「どうするべきか、考えてくれたかい?」

さやか「……キュゥ、べえ……」

QB「やれやれ。その様子だと、まだ考えはまとまっていないようだね」

さやか「ど、どうすれば良いの……!?どうすれば……!」

QB「一番単純な解決策としては、アレを殺してしまうのが良いだろうね。
  何度も言うけど、アレはまどかじゃない。
  まどかの形をしたものを殺すのは抵抗があるかも知れないけど、
  アレを殺したところで罪の意識に苛まれることはないよ。まどかはもう交通事故で死んでるんだから」
 
さやか「で、でも、それは……そうだ!あのまどかと契約して、
    その祈りで本物のまどかを生き返らせるって言うのは!?」

QB「僕だってそれが出来れば良いとは思うよ。でも無理だと思うな。
  アレは自分こそが本物の鹿目まどかだと思い込んでいる。
  そういう風に作られてるんだからね。
  たとえば君は、今いきなり“君はニセモノの美樹さやかだ”と言われて、
  それを信じられるかい?無理だろう?それと同じだよ」

まんまんペロペロ!!!!!

さやか「じゃ、じゃあ、じゃあ……!」

QB「殺すのが無理なら、もう諦めてアレをまどかだと思い込むしかないだろうね。
  “事故をきっかけに、鹿目まどかは変わってしまった”ということにして」

さやか「っ……」

あの、おかしなまどかを、受け入れて生きる、ということ?
ほむらの血を飲んだり、肉を食べたりする、まどかを?
事故のせいで変わってしまったんだって、言い聞かせて……?
変わってしまったけどあれはまどかなんだ、って……?

QB「とりあえず、僕なりの意見を述べさせてもらった。今日はこれで失礼するよ。
  参考程度に考えておいてくれ。かなり悩んでるみたいだけど、
  本当にそろそろ時間がないと思ったほうが良いよ。じゃあね、さやか」

誤爆した

それだけ言い残し、キュゥべえは出て行った。

あのまどかの、おかしなところ……。
そこだけに目を瞑れば、大丈夫……?

……普段話してる分には、ほとんど今まで通りのまどかなんだから……?
普段は、喋り方も、表情も、事故に遭う前の、まどか、なんだから……

杏子『おい、さやか!聞こえるか!』

さやか『っ!?き、杏子!?』

杏子『今すぐ降りて来い、話がある!』

外に出ると、杏子が1人。
すごく真剣な顔をして、立ってた。

さやか「な、何、話って。どうしたの?」

杏子「……こいつに、見覚えはないか」

そう言って杏子が取り出したのは、1本のリボンだった。
ピンク色の……これ、もしかして

さやか「ま……まどかの、リボン……?」

杏子「ちっ!やっぱそうか……。いや、でもまだそうと決まったわけじゃ……。
   たまたま同じリボンだって可能性も……」

さやか「ちょ、ちょっと、どういうことよ?なんであんたがまどかのリボン持って……」

杏子「うるせぇよ!まだまどかのって決まったわけじゃないだろうが!!」

さやか「っ……!」

杏子「あ、悪い……。その、なんだ、……」

さやか「……説明、して。お願い……」

杏子「……先に言っとくが、まだ、これがまどかのって決まったわけじゃないからな」

さやか「分かってるって!だから、早く!」

杏子「これ……拾ったんだよ」

さやか「拾ったって、どこで……?」

杏子「いや、拾った、ってのはちょっと違うな。持ってた、って言った方が良いか……」

さやか「持ってた?だ、誰が……?」

杏子「…………」

……こんなに歯切れの悪い杏子は珍しい。
一体、何をそんなに迷ってるのか……。
誰がこれを、持ってたって言うの……?

しばらく俯き気味に考えた後、決心したように杏子は顔を上げた。

杏子「通り魔の、被害者だ。通り魔にやられた男が、このリボンを握ってた」

さやか「……は……?と、通り魔……?」

杏子「今日もさ、パトロールしてたんだよ。ただし今日は、マミとは別行動でね。
   最近は魔女に魅入られて事件を起こす奴が多いからってんで、手分けしたんだ。
   そん時に、見つけたんだよ。ナイフで刺されて、倒れてる男をね」

杏子「で、そいつが握ってたのがこのリボンだったってわけだ」

さやか「ちょ、ちょっと待ってよ!それじゃまるで、犯人が……」

杏子「だから、まだ決まったわけじゃねえって!
   もし犯人がまどかだとすれば……あいつは、もう何人も人を刺してることになっちまう」

さやか「なっ、何人も……!?」

杏子「言ったろ、“最近魔女に魅入られて事件を起こす奴が多い”って。
   魔女に魅入られて、ってのは、あくまでマミの推測だ。
   こいつを推測抜きで、事実だけ言えば……“通り魔事件が多発してる”んだよ」

さやか「……!」

杏子「ここ最近、通り魔にやられた人間が何人も病院に運ばれてる。
   死人が出てないのが不幸中の幸いだけどさ。
   まぁ、犬や猫なんかは、殺されてるのも何匹か居るが……」

杏子「あたしは、まどかが連続通り魔事件の犯人だなんて考えたくない。
   だが……もし明日、まどかのリボンが変わってたりすれば、その可能性は高い」

さやか「ッ……」

杏子「……なぁ、さやか。最近のあいつは、どうなんだよ」

さやか「えっ……あ、あいつ?あいつって……?」

杏子「ごまかすな。まどかの様子はどうなのか訊いてるんだ。答えなよ」

さやか「ぁ、え、え、っと、それは……」

杏子「……ちっ。まぁ今は答えなくて良いさ。
   ただし……明日、まどかのリボンが変わってたらあたしにすぐ言いなよ。
   このことは、マミにも言ってない。
   確定もしてないのに変に心配かけたくないからね。当然、ほむらにも言うんじゃねえぞ」

さやか「っ……う、うん。わかった……」

(捕まえようとしても)無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァー!!!!

ま、まどかが、人を何人も、刺した……?
犬や猫を、何匹も殺した……?

普通なら、絶対に、絶対に考えられない。
被害者がまどかのリボンを持ってたって、たとえ名前付きのハンカチを握ってたって、
絶対に何かの間違いだって、言いきれる。
そう、普通のまどかなら……。

でも今……正直あたしは、まどかが犯人に違いないって、思ってしまってる。
杏子はまだ、まどかが犯人だとは思いたくないみたいだけど……。
でも、正直……。

い……いや、駄目だ。
まだ、決まったわけじゃないんだから。
そう、明日。
明日になればわかる。
明日、まどかのリボンがいつもの、ピンクのリボンなら……。

翌朝

仁美「あら、まどかさん。今日はいつもとリボンが違いますのね。
   最近はずっとピンクのものを付けてらしたのに」

まどか「うん……。あのリボン、1本なくしちゃって。どこかに落としたのかなぁ?」

さやか「……!!」

リボンなんて、イメチェンとか、洗ってるとか、そんな理由がいくらでも変える。
だから、たとえ今日まどかのリボンが変わっていたとしても、
特にまどかが犯人だと決め付けるような証拠にはならないと思ってた。
でも……今はっきりと言った。
1本なくした、と。

まどか「ねぇさやかちゃん、わたしのリボン拾ったりしてない?」

さやか「ッ……い、いやー、ちょっとわかんないなぁ。でもそのリボンも可愛いよ!」

まどか「そう?えへへっ、ありがとう、さやかちゃん!」

ほむら「…………」




さやか『杏子!近くに居るんでしょ?聞こえてる!?』

杏子『あぁ、聞こえてるよ。で、どうだった?』

さやか『まどかのリボン……変わってた……!』

杏子『……くそっ!最後の望みが絶たれちまったか』

さやか『さ、最後の望み……?でも、まだ確定ってわけじゃないんでしょ!?』

杏子『言いたかないが、ほぼ確定だよ……。
   昨日刺された奴が、犯人の姿を一瞬だけ見たらしい。中学生くらいの女の子だったとさ』

さやか『……やっぱり、そう、なんだ……』

杏子『……その言い草じゃあ、まるでハナからまどかを疑ってたように聞こえるけど?』

さやか『あっ……そ、それは、その……』

杏子『もう良いよ、隠すな。心当たり、あったんだろ?』

さやか『っ……』

杏子『それで、どうするよ。マジで病院に連れて行くか?いや、警察か……?』

さやか『……ごめん、杏子。ここは、あたしに任せてくれない……?』

杏子『はぁ?あんた何言って……』

さやか『お願い。お願い、だから……』

杏子『……わかったよ。ただし、ヘマすんじゃねえぞ。何かあったらすぐ言えよな』

さやか『うん。ありがと、杏子』

QB「……考えはまとまったみたいだね、さやか」

さやか「うん……」

あのおかしなまどかを、“事故で変わった”ということにして、受け入れる……。
それは駄目だ。
絶対に駄目だ。
あいつを放っておいたら、誰かが犠牲になる。
そんなことになったら、たくさんの人が悲しむし、迷惑がかかる。
まどかの家族だって……。

まどかのことを知ってる人にとって鹿目まどかは、
優しくて、思いやりがあって、可愛くて、誰にだって好かれるような、すごく良い子なんだ。

なのに、このまま放っておいたら、みんなにとってのまどかが、異常者になってしまう。
本当は違うのに、本当のまどかは良い子なのに。
異常者で犯罪者の鹿目まどかとして記憶されて、まどかの家族は、異常者の家族に……。

……そんなこと、させない。
まどかの人生を、異常者として終わらせたりなんかしない。

まどかは、みんなに愛されたままのまどかで人生を終えるべきだ。
みんなに愛されたまま、天国に行くべきなんだ。
あんなおかしな奴なんかに、まどかの人生を穢されてたまるか。
まどかを穢されてたまるか。
まどかは、あたしが守る。

だから、決めた。
あたしは……まどかを殺す。

誰の手も汚させない。
たとえニセモノのまどかであっても、命には変わりない。
だけどあたしは、まどかの人生を守るために、人を殺す。

あいつを殺す。
事故に見せかけて、殺してやる。

事故死、それがまどかの運命だったんだ。
あの日まどかは、事故で死んだ。
優しくて、可愛くて、あたしの大好きだったまどかは、事故で死んだ。

不幸な事故なら、悲しみは最小限で済む。
だから、まどかには事故で死んでもらう。

ほむら「さやか……こんなところで、何をしているの?」

さやか「……ほむら」

ほむら「もう授業が始まるわ。まさか、サボる気かしら」

さやか「……もうさ、終わりにしようよ」

ほむら「?何を?」

さやか「やっぱりあんなこと、するべきじゃなかったんだ」

ほむら「あんなこと?あなた、何を言ってるの?」

さやか「あんたもさ、気付いてるはずだよ……。
    間違ってたんだよ。あんなこと、しちゃ駄目だったんだ」

ほむら「……何を言ってるのか分からないわ」

さやか「もう、ごまかすなよ……!あんたは責任感じてるのかも知れないけど、あれは事故だ!
    ほむらは悪くない!そういう運命だったんだよ!」

ほむら「何を言ってるのか、分から……」

さやか「まどかはもう死んだんだ!死んだ人間は生き返ったりはしない!!
    あれはもうまどかじゃないんだよ!目を覚ませよ、ほむらぁあ!!」

ほむら「……あなた、本当に何を言ってるの?まどかは生き返ったじゃない」

さやか「あんた、まだそんなっ……!」

ほむら「あなたも知ってるでしょう?まどかは生き返ったわ。
    まどかは前みたいに私に優しい言葉をかけてくれる。笑いかけてくれる。
    仲良くしてくれる。前よりもっと仲良くしてくれる。
    前なんかより、もっと、もっと、仲良くしてくれる。
    私に抱きついてくれるし、もっとすごいことだってしてくれるわ」

さやか「すごいこと!?自分の肉を食べてくれるのが、すごいこと!?
    そりゃすごいね、確かにすごい!だけど普通じゃない!!まどかはそんなことしない!!
    人間の肉を食べもしないし、人を刺したりもしない!!動物を殺したりもしない!!」

ほむら「あなたにまどかの何がわかるの!?まどかは私のことが大好きなの!
    私の何もかもを欲しがってくれる!血も、肉も、ぜーんぶ欲しがってくれるわ!!
    あなたは知らないでしょうけど、まどかはそれほど私のことが大好きなの!!
    最近はちょっとスリリングな遊びも覚えて、前より活発で、溌剌としてるのよ!!
    あなたの知っているまどかがどんなのか知らないけれど、
    私はあなたの知らないまどかをたくさん知ってるの!!
    まどかのことを、知ったような口を利かないでちょうだい!!」

もう魔女の肉でも詰めとけよ

さやか「……もう良い、よく分かったよ」

ほむら「待ちなさい。どこへ行くつもり?」

さやか「早退する。先生には気分が悪いから帰ったって言っといて」

ほむら「さやか、あなた……まどかを殺すつもりね」

さやか「……あいつは生きてちゃ駄目なんだ。
    まどかには、事故に遭って死んでもらわないといけない!
    そういう運命だったんだよ!」

ほむら「ふざけないで!まどかは生きてる、このまま生き続ける!」

さやか「……もうこれ以上話しても無駄だよ。
    本当はほむらを説得したかったけど……無理みたいだね」

ほむら「当たり前でしょう……。まどかを殺すなんて、そんなこと、許せるはずがない。
    どうしても行くと言うのなら……
    私があなたを、今すぐ殺してあげるわ。美樹さやか」

はい>>1いただきましたー!

ぶっちゃけ魂ってなんなんだろうな。
記憶も喜怒哀楽も脳の電気信号がもたらすものでしかないのに。

さやか「……ふーん?ていうかさ、あんたなんでそんなに、このまどかにこだわるわけよ?」

ほむら「どういうこと……」

さやか「巻き戻せば良いじゃん、時間。
    時間停止は使えなくても、巻き戻すのは使えるんじゃないの?
    あたしはこのまどかを殺す。あんたは別の時間軸のまどかと、またやり直せば良い」

ほむら「じ……冗談じゃないわ!
    私がこの幸せを手に入れるためにどれだけの思いをしてきたと思ってるの!?
    時間を巻き戻したとして、もう二度と上手く行かないかも知れない!
    上手く行くより先に私の心が磨り減ってしまう!!
    私の気持ちも知らずに馬鹿げたことを言わないで!!
    もう私にとって、この時間軸が全てなの!!このまどかだけが、私の全てなのよ!!」

さやか「……悪かったよ、ごめん。でも……それはあたしも同じだ。
    あたしにとっては、この世界のまどかが全て。
    だから、この世界のまどかを、守りぬく。まどかの人生を、守りぬく」

ほむら「な、何を言ってるの……?それじゃあなんで、まどかを殺そうとするの……!?
    あなたが本当に何を言ってるのか、わからない……。
    さやか、あなたどうしてしまったの……!?まどかの親友のあなたが、どうして……!」

……本当に、ほむらには分かってないんだ。
あれをまどか本人だと信じて疑わない。
どんな異常な行動も、全て受け入れる。
それも、異常だと認識せずに……。

もうほむらには、何を言っても届かない。
とにかく帰ろう。
そして、計画を練ろう。

さやか「じゃあね、ほむら」

ほむら「…………」




さやか「うっ……」

な、なに……?
あたし、なんで屋上なんかで倒れて……。
ッ……!
そうか、ほむら……!
あいつに気絶させられたんだ!

……殺されなかっただけ、マシか……。
きっとほむらの目には、あたしが正気を失ってるように見えたんだろう。
あいつは、自分がまともなつもりなんだ。
だから、あたしが正気を取り戻すことを信じて、
とりあえずは殺さないでおいた……そんなとこか。
でも……

さやか「……手錠、ね」

それも、ご丁寧に魔力で強化されてる。
おまけに、ソウルジェムが手元にない。
あたしの意識があるってことは100m以内にはあるんだろうけど……。

まぁ、手錠してくれたのも優しさかもね。
拘束されてなかったらたぶんソウルジェムがないことに気付かずに動き回って、
100m圏内から出ちゃってるだろうし。

はは、なんでだろ。
あたし、やけに冷静だ。
身動き取れないのに、なんでこんなに落ち着いてるんだろ。
本当は一刻も早く、まどかを殺さなくちゃいけないのに……。

さやか「……良かった」

ふいに、口から漏れた言葉。

……何が?
何が良かったって……?

あ……そっか。
あたし、まどかを殺さずに済んで、安心してるんだ。

……分かってる。
こんな、今だけ身動きが取れないからって、まどかを殺さずに済んだわけじゃない。
でも、少なくとも今だけは、まどかを殺さなくて良い理由がある。

あれは、ニセモノだ。
まどかなんかじゃない、あれは、残虐で、異常な、ニセモノなんだ。
分かってる。
それは分かってるのに……。

……殺したくない。
いやだ、あたし、まどかを殺したくない……。
いやだ、いやだよ……。

なんで……なんで死んじゃったの……?
なんで死んじゃったんだよ、まどか、まどかぁあ……。

さやか「っ……ぅく……ぇっ……ぅぇえ……」

杏子「ちっ……。結局、ヘマしてんじゃねえか」

さやか「っあ……」

マミ「はい、あなたのソウルジェム。このちょうど真下の教室にあったわ」

さやか「な、なんで、2人とも……なんで、来ちゃったの、なんで……」

2人が来た、ということは、ここから自由になる……。
いやだ、自由になったら、まどかを、殺さなきゃいけない……。
やだよ、いやだ……。
あたし、いやだ、いやだ……。

杏子「バカ。1人で抱え込むなっての。何にも成長してないじゃん、あんた」

マミ「1人で頑張るだけじゃどうにもならないってこと、私たちは知ってるはずよね?
   でも、みんなで協力すればどんな困難だって乗り越えられる。
   それが暁美さんが長い旅の末に至った答え。私たちが教わった答え。でしょう?」

さやか「で、でも……」

杏子「うるせぇよ。ごちゃごちゃ言ってないでさっさと話しやがれ、ボンクラ」

さやか「……うっ……あ、あたし、まどかを……まどかが……うぁぁあああああ……!」

まて、これは公明の罠だ

知ってるかい?

絆とは、罪びとや家畜を縛る縄が語源なんだぜ?




杏子「……そうか。そんな、ことが……くそっ」

マミ「……っ、く……ぇうっ……ぐすっ……」

杏子「おい、自分から偉そうに訊いといて泣いてる場合かよバカ」

マミ「だ、って……か、鹿目さんが……そ、そん、なの……」

杏子「死んじまった奴のことを今更なに言ってもしょうがねえだろ!
   今はそれより、その生き返った偽まどかとほむらのことだ!!
   このままだとほむらが危ないんだぞ!!
   まどかだけじゃなく、ほむらまで死んじまっても良いのかよ!?」

さやか「で、でも……ほむらを助けるには、もう、まどかを、殺すしか……」

杏子「まどかじゃねえ、偽まどかだ。間違えんな」

杏子「良いかボンクラ。あんたは言葉じゃ理解してるようだが、まだ足りてねえ。
   だからもう一度、はっきり言っといてやる……。
   死んだ人間は二度と帰っちゃ来ないんだよ!二度とだ!!死んだらそれでおしまいなんだよ!!
   どれだけ大切だろうが、身近だろうが、愛していようが、死んじまったら二度と会うことはねえ!!
   友達だろうが親だろうが兄弟だろうが、死んだ人間は生き返らねえ!絶対にだ!!
   もしそんな方法があれば……とっくの昔にあたしが試してる!!
   だけど、そんな方法はありゃしない!死んだ人間は、二度と生き返らねえんだよッ!!」

さやか「っ……!」

杏子「……だから、あたしたちが今から殺すのは、まどかじゃない。
   人ですらない。魔女にも劣る、ただの化け物だ。
   まどかのフリをした、ただの、化け物なんだよ……!」

みらい「うんうん」
里美「そうそう」

マミ「……佐倉さんの、言う通りよ……。死んだ人は、決して帰っては来ない」

さやか「マミ、さん……」

杏子「へっ、意外に早い立ち直りじゃんか。もうちょいかかるもんかと思ったよ」

マミ「後輩が頑張ってるのに、先輩の私ばかり泣いてちゃいられないもの……!」

杏子「そうかい。よろしく頼むぜ、先輩?
   さやか……あんたも一度は覚悟したんだろ?まどかの人生を守るためだ、って。
   あんたは正しい。間違っちゃいない。
   あんな化け物に、これ以上まどかの体を使って好き勝手させてたまるかってんだ」

さやか「……っ……うん、うん!そうだよ、そうだ……!
    あれはまどかの体なんだ!
    これ以上、まどかの体も人生も、穢させてたまるか……!」

マミ「そうと決まれば……早速探しに行きましょう。鹿目さんのニセモノを」

杏子「となると、まずはまどかの家だな」

マミ「……ご家族が心配だわ。早く確認しましょう」

……言われるまで気付かなかった。
そうだ、ほむらもだけど、まどかの家族だってかなり危ない立場だったんだ……!

さやか「だ、だったら直接行くよりも、電話した方が早いよ!」

携帯を取り出し、まどかの家に電話をかける。
……お願い、どうか無事で……

詢子『……はい、鹿目です』

さやか「……!あ、もしもし!ま、まどかのママですか!?」

詢子『おー、さやかちゃんか。どうしたの?』

既に感染済みだったりしてな

今北産業

>>694
まどかが
ほむほむを
ほむほむする

























(物理)

マミ「……良かった、ご家族は無事みたいね」

杏子「問題は、偽まどかが居るのかどうかだが……」

さやか「その、今まどかは居ますか?」

詢子『ありゃ、聞いてないの?今日はほむらちゃんの家に泊まるんだってさ。もう行ってるよ』

さやか「なっ……!?」

詢子『……あのさ、さやかちゃん。まどか、学校じゃどんな感じだい?
   なーんか変なんだよ、最近帰りが遅かったりさ。家での様子も違和感あるし……。
   やっぱ親としちゃ、心配なわけでさ。反抗期、なのかなぁ……』

さやか「っ……ま、任せてください!まどかのことは、あたしに任せてください!」

詢子『おっ、おぉ……ははっ、頼もしいね。ありがとう、さやかちゃん』

さやか「そ、それじゃ、切りますね!失礼します!」

マミ「それで、どうだった?」

さやか「あいつ、ほむらの家に居る……!今日は泊まるって!」

杏子「っ……!くそっ、まずい!急ぐぞ!」

マミ「えぇ!」

もうほむらの家に居て、しかも泊まる……!?
嫌な予感しかしない。
どうかお願い、この予感、外れていて……!

    ___
   /_ _\
  / 辷>/ヽ辷>ヽ

  /Yミ彡^^ミ彡u|
  ヒ/ヽ/~~~ヽY ハ ディヒヒ
  |川ヒェェェェハノイノ
  |\  ̄ ̄ //
 _/ミヽ ̄ ̄ ̄/

7 \ミ\ミ/ />-、
// ̄\_ 彡/\|\
 _/二)_) | |< ヽ
//二)(| ミ| || |
`/二)  ̄) |匚|| |
ヽ__ノГミ| || |
/|  |ミ(二(二ヽ |
 |  | ミヽ (二ヽ|
 |  |彡_| (二ヽ
 |  | (____ノ

>>701
今のところそこまで直接的な表現があるわけじゃないけど
グロ的な意味でのホラーな話だから苦手なら避けた方がいいかもね




マミ「もうすぐね……どうか、間に合って……」

もうすぐでほむらの家に着く。
と、その時、進行方向から向かってくる、白い影が見えた。

QB「!良かった、ちょうど君たちを呼ぼうと思ってたところだったんだよ」

杏子「キュゥべえ!?あんたまさか、ほむらの家に居たのか!?」

QB「そうだ。それが、かなりまずいことになってる」

さやか「ま、まずいことって何よ!」

QB「説明してる暇はない。直接見てもらったほうが早いよ!
   ただ、慌てて部屋に入って下手に刺激するとあまり良くないかも知れない。
   慎重に行ってくれると助かるよ」

>>704
充分直接的だろうが!!
いいかえんんいしろ!!

QBもビビる程かよ




ほむらの家に着いた。

そっと、ドアノブに手をかける。
鍵は……開いてる?
でも、部屋の中は真っ暗だ。

さやか「……ほんとに、中に居るの……」

杏子「しっ!何か聞こえる……」

マミ「それに、臭いが……」

玄関を入り、廊下の先のリビングに目を凝らす。
……何か、動いてるのが見える。
いや、よく聞くと、声も……

 「んっ……ぁ、あっ……ん……」

 「えへへっ、ほむらちゃん、とっても美味しいよ」

百合ックスか!
ようやく百合ックスか!

頼む!百合ックスであってくれ!

間違いない、今聞こえたのは、まどかの声だ。
たぶん、もう1人はほむら……。

杏子『……おい』

さやか『うん……』

マミ『迷ってる暇はないわ……行きましょう!』

マミさんの合図と同時に、意を決して全員で走ってリビングへ向かう。
そして、明かりを点けると、そこには……。

まどか「ぐちゅ、じゅる……ぐちゃ、がりっ、んむっ……」

ほむら「……ぁ……ん、あ……」

ほむらに覆い被さり、真っ赤なほむらのお腹に顔を寄せ……
直接ほむらの肉を咀嚼するまどかの姿があった。

まどか「……あれっ、マミさん、杏子ちゃん、さやかちゃん?みんなどうしたの?」

ェ゛エ゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛
!!!!!!

713 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] :2012/11/18(日) 01:35:50.93 ID:uv+DJYWhO (6/7) [携帯]
勃起した

723 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [] :2012/11/18(日) 01:38:45.98 ID:uv+DJYWhO (7/7) [携帯]
ちんこ萎えた

マミ「ひっ……!?」

杏子「うぐっ……!」

さやか「うっ……おえぇえっ……!」

手すら使わず、口どころじゃない、顔中を赤黒く染めて……。
その顔でこっちを見て、にっこりと笑う、偽まどか。
あたしは耐え切れず嘔吐してしまう。

ほむら「ぅ……ぇ、う……」

QB「……喉が食い破られている。まるで肉食獣の狩りだ。
  それにしてもこんな状態で意識を保っていられるなんて、すごい精神力だよ、ほむらは」

マミ「い、意識が、あるの……!?あの状態で……!」

QB「体と魂が分離しているからこそだ。ただ、痛覚は消していないようだね。
  理由は分からないけれど、本来なら発狂してもおかしくはないレベルの痛みに
  ほむらは自ら耐えようとしている。わけがわからないよ」

    /\___/ヽ   ヽ
   /    ::::::::::::::::\ つ
  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::| わ
  |  、_(o)_,:  _(o)_, :::|ぁぁ
.   |    ::<      .::|あぁ
   \  /( [三] )ヽ ::/ああ
   /`ー‐--‐‐―´\ぁあ

さやか「……!」

あたしには分かる……。
ほむらは、痛みを通してまどかを感じているんだ。
この痛みこそがまどかが生きている証だと、全ての痛みを受容して、
それすら喜びに変えているんだ……!

杏子「て、めぇえ!!ほむらから離れやがれ!!」

まどか「きゃっ!?」

偽まどかは、杏子の槍をかわし、ほむらから離れる。
……普通の人間には避けることなんて不可能な速さだったはずなのに。

杏子「さやか、ボーっとすんじゃねえ!さっさとほむらを治しやがれ!!」

さやか「……!う、うん!」

  /\___/\
/ ⌒   ⌒ ::: \
| (●), 、(●)、 |

|  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |
|   ト‐=‐ァ'   .::::|
\  `ニニ´  .:::/
/`ー‐--‐‐―´´\




       ヽ|/

     / ̄ ̄ ̄`ヽ、
    /         ヽ
   /  \,, ,,/    |
   | (●) (●)|||  |
   |  / ̄⌒ ̄ヽ U.|

   |  | .l~ ̄~ヽ |   |
   |U ヽ  ̄~ ̄ ノ   |
   |    ̄ ̄ ̄    |


       ヽ|/

     / ̄ ̄ ̄`ヽ、
    /         ヽ
   /  \,, ,,/     |
   | (●) (●)|||   |
   | ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |  
   |  ト‐=‐ァ'   .::::|   
   \ `ニニ´  .:::/

   /`ー‐--‐‐―´´\

マミ「佐倉さん、援護するわ!」

杏子「あぁ、頼む!」

まどか「や、やめて!酷いことしないで……!」

マミ「それ以上、鹿目さんの口を使って喋らないで!」

まどか「ひっ!?」

杏子「!銃弾を避けやがった……。おいマミ、見た目に騙されんじゃねえぞ。
   間違いなくこいつは化け物だ……!」

マミ「顔中を暁美さんの血に濡らしてる見た目のどこに、
   騙される要素があるって言うの……!」

杏子「……違いない!」

まどか「……えへ、えへへへへ、きャはははハハはは!!
     マミさんと杏子チゃんと遊べるなンテ!!そレハとっても嬉シいなって!!」

まどか「……えへ、えへへへへ、きャはははハハはは!!
     マミさんと杏子チゃんと遊べるなンテ!!そレハとっても嬉シいなって!!」



うわあああああああああああああああああああああああああ!!
こわいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!(´;ω;`)

さやか「……酷い……!」

ほむらを治しながら……あたしは言葉を失った。
最初は気付かなかったけど、ほむらの怪我は、お腹と喉だけじゃない。
両腕と両脚の付け根が、包丁で何度も何度も突き刺されてる……。
その後に多分……口で、食い荒らされてる……!
まるで、身動きを完全に封じるためみたいに……。

やっぱりあいつ、まどかなんかじゃない……!
狂った化け物だ……!

ほむら「ゃ……て……」

さやか「ほむら!ま、まだ喋っちゃ駄目だよ!喉治してる途中なんだから!」

ほむら「ゃめ、て……なおさ、なぃ、で……せ、っかく、まどか、が……」

さやか「ッ……黙らないと、喉だけは放置してやるわよ!良いから黙って、治させなさい!!」

おりっちいいいいいいいいい!!キリカちゃあああああああん!!ゆまちゃああああああああん!!!あすみいいいいいいいいいん!
早く来てくれえええええええええええええええええ!!

さやかちゃん精神は治せないのよ

まどか「アぐっ!?」

人間を越えた速度で動き回っていた偽まどかだが、ついにその足をマミの銃弾が捉えた。

マミ「……やっと当たったわね」

まどか「ひっ……い、痛イヨぉ……タ、助けテ、ママぁ、パパぁ……」

杏子「ちっ……わかっちゃいるが胸糞悪いぜ。さっさとトドメ刺させてもらうよ」

そう言い、杏子は槍を振り上げる。
このまま真下に振り下ろせば、まどかモドキの頭は2つに割れるだろう。
そうして絶命させた後は、さやかかマミの魔法で遺体を修復すれば良い。
その後は最初の予定通り、“友達が突然倒れた”とでも言って病院に運び込めば、
突然の心臓麻痺か何かと言う形で決着が着く。

杏子「じゃあね、化け物」

しかし……杏子の槍は、振り下ろされることはなく、床へと落ちた。

杏子「ぐっ……!?て、てめぇ……!」

ほむら「…………」

>>776
本編で自分の精神治してないだろ

やっぱ精神操作はあすみんだな

ぬほぬほ……

一瞬を細かく刻むような銃声。
しかし、その一瞬で、3人の魔法少女は同時に戦闘不能となった。
3人とも、両手両脚を打ち抜かれていた。

マミ「あ、暁美、さん……!?」

さやか「ほ、むら、あんた……!!」

ほむら「……さすが、2人は回復が早いわね。もう傷口がふさがり始めてる。
    あなたたちは、こっちの方が良いかもね」

そう呟くと同時に、ほむらは盾から……ショットガンを取り出し、
さやかとマミの四肢を打ち抜いた。

杏子「て、てめぇえ……!」

ほむら「……可哀想に、まどか。大丈夫よ、あなたをいじめる人はもう居ないわ」

まどか「ほ、ほむラチゃァアあん……!」

ほむらは膝を着き、まどかモドキを抱きしめる。
そして、頭を優しく撫で……

ほむら「っ……!」

偽まどかは、頭を撫でられながら、ほむらの肩に噛み付いた。

まどか「がりっ、ぐちゅ、ぐむっ……ぷぁ、肩も美味しイね、ホむらちャン!」

ほむら「ふふっ……ありがとう、まどか……」

マミ「暁美、さん……どうして……!」

杏子「ッ……おかしいとは、聞いてたが……!これほどかよ、ほむらァ!!」

さやか「ほむら、お願い!目を、目を覚まして……!」

あたしたちの声なんか聞こえていないみたいに。
偽まどかはゆっくりとほむらを押し倒し、そして、馬乗りになって、にっこりと笑う。

まどか「ねェ、ほムラチゃん。わタしネ、試シテミたいこトがあっタンだ」

ほむら「何、まどか?」

まどか「ほむらちゃンノソウルジェムって、どンな味がスるのカなって。えヘへっ」

ほむら「……良いわよ、食べてみる?」

QB「それは駄目だ、やめるんだほむら。入れ物はいくら壊れても修復できるけど、
  ソウルジェムを破壊されればおしまいだ。君は死ぬつもりなのかい?」

ほむら「まどかに食べられて死ぬのなら構わないわ」

そうしてほむらは変身を解き……ソウルジェムを差し出した。

おほふ!!!!!!!!!!!

爆笑してる俺おかしくないよね?

さやか「ほ、ほむら!駄目、やめてぇ!」

杏子「くそっ……!おいキュゥべえ、止めろ!やめさせろ!」

QB「……僕には無理だ。ほむらが自分で選択したのなら、仕方がないよ。残念だけどね」

マミ「駄目、やめて、暁美さん!やめてぇええ!!」

まどか「わっ、ありガトウほムラちゃん!とッテモ美味しそう!」

偽まどかはほむらの手からソウルジェムを受け取り……口に入れた。
……次の瞬間。

まどか「っ……!?げほっ、げほっげほっ……!」

突然、偽まどかはソウルジェムを吐き出て、涙目になり咳き込み始めた。

杏子「!ほ、ほむら!あんたまさか!」

マミ「ソウルジェムに、何か細工を……!?」

>>802
(引き笑)

お?

奇跡と言うのは
起らないからこそ奇跡と言う。

そうか、実はほむらは正気だったんだ。
そして従順なフリをして、何かソウルジェムに細工をして偽まどかに飲ませたのか!

……あたしも、そう思った。
でも……違った。

ほむら「ど、どうしたの!まどか、大丈夫!?」

まどか「げほっ、げほっ……うン。ちョッと、噛まズニ飲み込みそうニなっチゃッタ」

ほむらは……本気で、偽まどかを心配してる。
やっぱりほむらは、おかしいままだった。

もう、駄目なの……?
この手足さえ回復すれば、早く、早く回復してよ、早く……!

ほむら「もう……気を付けなさい、まどか。喉を詰まらせたりしたら大変だわ」

まどか「けほっ、えへへっ、ごメんね。まだ涙ガ止マンないや、けほっ、けほっ」

さやか「っ……」

少しでも早くソウルジェムを味わいたいのか……
まだ少し涙目で咳き込んだまま、偽まどかは再びほむらのソウルジェムを手に取った。

さやか「もう……、奇跡も魔法も無いんだよ……」

さやか「どうせ私なんか……

そうしてそのまま、口に運び……

まどか「けほっ、けほっ……けほっ、アれ……けほっ」

ほむら「……まどか?」

まどか「お、オかシイな。咳が、けほっ、なカなか……な、涙モ……」

偽まどかの咳は、まだおさまらない。

いや、それだけじゃない。
咳こそ軽いものの……その目はもう、涙目なんてものじゃなかった。

浮かんだ涙は零れ落ち、溢れるように頬を伝い、
ぽたぽたといくつもの雫をほむらの顔に落とす。

ほむら「…………まど、か……?」

まどか「けほっ、けほけほっ……ァ、ァアアアアアアア!もう!モうもウもうモウもウ!!」

突然、偽まどかは叫びだし……そして、咳き込みながらソウルジェムを口に含んだ。

杏子「っ!あいつ、無理矢理にでもソウルジェムを食うつもりだ!」

マミ「駄目、今度こそ、噛み砕かれる……!」

さやか「さっ……させるかぁああああ!!」

あたしはずっと、魔力を右足一本に集中させていた。
そのおかげで、他の手足はまだまだだけど、右足の穴だけはふさがりつつある。
そして、この早さなら、ギリギリ……

さやか「間に合えぇええええッ!!」

遂に、完全にふさがった!
それと同時に、右足一本を思い切り踏み込む。
そして跳躍し……偽まどかに体ごとぶつかった。

まどか「ぃギャぁっ!?」

杏子「!ソウルジェムを吐き出した!」

マミ「さすが美樹さん!これで私も、攻撃できるわ!」

振り返るとそこには、右手を構えるマミさんが。
そうか、マミさんは右手だけを集中して治してたんだ!

マミ「一撃で仕留めるわよ……!食らいなさい!」

まどか「……!」

やった、完全に決まった!

ほむらは変身して、慌てて立ち上がる。
きっとまだ、偽まどかを守るつもりなんだろう。
でも、今のほむらには時間停止はない。
偽まどかを射線から外す余裕なんて、あるわけない!

ほむら「っ……」

マミ「なッ……!?」

え……ほむら、何、してるの……?
手を伸ばして、まさか……!
偽まどかを射線から外せなくても、手だけでも射線に入れて、銃弾から守ろうと……!?

このタイミング……マミさんはもう、射撃を止められない。
つまり、銃弾は間違いなく発射される。
そして、間違いなく銃弾はほむらの左手を……左手……?

まずい、ほむらの左手には、ソウルジェムが!
このままだと、ほむらは……!

 パァン

マミ「……はっ……はっ……は……」

さやか「あ、当たらな、かった……」

杏子「今の……」

ほむら「……ぇ……あ……」

まどか「…………」

銃弾は、ほむらのソウルジェムには当たらず、綺麗にまどかの頭を射抜いた。
ほむらが、射線に入れなかった?
いや……違う。
ほむらは間違いなく、射線に入っていた。
発砲直後のマミさんの反応からも、それは分かる。
じゃあ、どうして……?

……見間違いでなければ……ほむらの手を射線から外したのは……。

ほむら「………………まどか……」

……普通なら、考えられない。
だって、いくらなんでも速すぎる。
でも……あの瞬間を、確かにあたしたちは見た。

ほむらの手が射線に入り、マミさんの銃弾が発射される、その直前。

偽まどかは……両手で、ほむらの手を取った。
そして、手の位置を胸のあたりまで下げて……
困ったような、悲しいような、嬉しいような、そんな笑顔を浮かべて。
そして、一言、言った。

   「ごめんね」

杏子「あんたら、さっきの、見たか……?」

マミ「……えぇ……」

さやか「……見間違えじゃ、ない、のかな……」

QB「?みんな何か見えたのかい?」

杏子「……ははっ、なんだかな。もう一度、神様って奴を信じみたくなっちまったよ」

ほむら「ま、どか……まどか、まどかぁあ……。
    ごめんね、ごめんね……私……本当に、ごめん、ごめんなさい……!
    ごめんなさい、ごめんなさい……ぅぁ、ぅあぁああ……うぁあああああああん……!」

さやか「……ほむら……」




しばらくほむらは大声で泣いて、泣いて、泣いて……やっと、すすり泣きになって。
小さな声で、一言、呟いた。

ほむら「……落ちてきたの」

さやか「……え……?」

ほむら「私のソウルジェムを食べようとして、咳き込んだ時……
    あの子の涙が、私の、ソウルジェムに、落ちてきたの……。
    ……あの子……泣いてた……。助けてって、泣いてた……」

杏子「…………」

ほむら「……私が、間違ってた……。
    私はただ、ただ……まどかを、苦しめて……っく、うぅ……!」

マミ「……そうね。あなたは、間違ったことをしてしまったわ。
   でも、あまり自分を責めすぎないで。
   鹿目さんはきっと、あなたを恨んだりなんかしてないから……」

……わかってる……。
まどかは、そんな子じゃない。
はっきりと思い出した。
さっきの、最後のまどかの顔と、言葉で、私ははっきり思い出した。

多分、最後の瞬間のまどかは……本物の、まどかだった。
ニセモノなんかには、あんな難しい笑顔、作れっこない。

私が間違ってしまったのが悲しくて、
でも、それほど自分のことを大切に思ってくれてたのが嬉しくて。

それで、色々な感情が混ざり合って出た言葉が、「ごめんね」なんだ。
なんというか、すごくまどからしい。


  ほむらちゃんが守ってくれた命をなくしちゃって、ごめんね。
  悲しい思いさせちゃって、ごめんね。
  ほむらちゃんに間違ったことさせちゃって、ごめんね。
  みんなに迷惑かけて、ごめんね。

  映画、一緒に行けなくて、ごめんね。

ほむら「……まどかは悪くない。悪いのは……全部、私」

さやか「え……?」

ほむら「まどかが私を恨まなくても、それじゃあ私の気がすまないわ。
    だから私は、一生をかけて、罪を償う。
    時間も巻き戻さない。私が死ぬまで、あの子の人生を守り続ける。
    それが私に出来る、まどかに対する唯一の償いだから」

マミ「暁美さん……!」

杏子「……へっ。ようやく、正気に戻ったみたいだな」

ほむらの声と表情は、とても悲しそうに見えたけど、決して暗いものではなかった。
悲しそうだけど、どこか穏やかで、それでいて力強い……上手く言えないけど。
憑き物が落ちたという表現がぴったりの、そんな顔。
ほむらはやっと……ほむらに戻ったんだ。

ほむら「でも歯形は記念に残すわ」

おい、時間巻き戻さないのか




マミ「……映画?私と一緒に?」

ほむら「えぇ。あなたがこの映画を見たいと言ってたと聞いたから」

マミ「まぁ、どうしてそれを?私、確かこの話は……あっ」

ほむら「……本当は、まどかと3人で行く予定だったの」

マミ「……そうだったの。だったら、予定通り行きましょうか。鹿目さんと、3人で。
   どっちが鹿目さんの隣に座る?」

ほむら「まどかの隣は譲れないわね」

マミ「あら、私だって。それじゃあ、鹿目さんの隣をかけて勝負でもしましょうか」

  ふ、2人が両端に座れば良いんじゃないかな

ほむら&マミ「……2人が両端に座れば良いのよね」

ほむら「あら」

マミ「……いやだわ、どうしてこんなことに気が付かなかったのかしら」

ほむら「2人同時に気付くというのも……ふふっ」

マミ「それじゃ、早速行きましょうか」

ほむら「待って。その前に、まどかを迎えに行かないと」

マミ「あ……お墓参りね。本当に、毎日行ってるのね。大変じゃない?距離もそう近くはないし……」

ほむら「魔女の多い日なんかはあまり無理はしないようにしてるから、大丈夫。
    まどかの町を守るのも、私の役目ですもの」

マミ「そう、なら良いの」

ほむら「さぁ、行きましょう。映画の時間に間に合わなくなってしまうわ」

 えへへっ、楽しみだな





    おしまい

間を空けて座るとか迷惑な奴等やな


最後のほむほむの選択以外は良かったよ
最後以外は。

付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ

上にも出たけど、ペット・セメタリーとかぬ~べ~のゴーレムを元にしたお

そういえばそうだ



生き返らせた方法の明記はよ

まさかのマミほむ〆とか
さやかバイバイ乙

よく見たら14時間もSS書いてたのな

そもそも時間操作の魔法は転校からワルプル戦の間までしか使えない
ワルプル戦を超えた時点で時止めも遡行も出来なくなってる

ペット・セメタリー
ゴーレム

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom