シンジ「へえ、ミサトさんってそういう事言うんですか……」(189)

ミサト「何が言いたいのかしら?」

シンジ「貴方は随分と上から目線で僕に語りかけているようですが」

シンジ「本来僕と貴方では僕のが立場は上なんですよ」

ミサト「どういうこと?」

シンジ「作戦部長なんて言えば大層立派なご身分に聞こえますが」

シンジ「あなたは所詮雇われの身分、代わりなんていくらでもいるんです」

シンジ「それに対して僕はどうでしょう?替えのきかない初号機パイロット」

シンジ「そしてネルフ司令の息子だ………そうです、あの男の息子なんですよ」

シンジ「組織トップの息子と雇われの貴方……どっちが上かはもうお分かりですよね?」

ミサト「くっ………」

シンジ「本当なら貴方は僕にタメ口をきくことも許されない立場なんです」

シンジ「それをしっかり自覚してください」

ミサト「分かったわ………」

シンジ「分かったわ?」

ミサト「………分かりました」

シンジ「よろしい、これからは常に敬語でお願いしますね」

ミサト「………」

シンジ「返事は?」

ミサト「はい……」

シンジ「あーそうそう、今後僕は一切この家の家事や雑用はやりませんので」

シンジ「これからはアスカと二人で頑張ってください」

ミサト「そんなあっ!?」

シンジ「何を驚いているんです?あたり前のことでしょう……」

シンジ「どこに社員の生活の面倒を見る社長の息子がいますか?」

シンジ「それと同じ事ですよ」

シンジ「分かりましたか?」

ミサト「………分かったわ」

シンジ「敬語」

ミサト「はい………」

シンジ「ちなみに僕は貴方達の作った食事は食べませんので、僕の分は気にしないで下さい」

ミサト「それじゃあシンジ君はどうすr………」

シンジ「シンジ君?何です、その呼び方は?それが目上の人に使う言葉ですか?」

ミサト「はっ、もっ、申し訳ございません!」

リツコ「エヴァは実戦兵器なのよ。何事にもバックアップが用意されているわ。もちろんパイロットもね」

シンジ「全く……貴方はマトモな日本語も使えないのですか?」

シンジ「まあ今回は特別に許してあげますが、次からは気をつけてくださいね?」

ミサト「はっ、ハイ」

シンジ「これから僕を呼ぶときは若様と言いなさい、いいですね?」

ミサト「はっはい、わ……若様」

シンジ「やれやれ……不出来な部下の教育は大変だな……」

シンジ「ああそう、僕の食事についてですがこれからは僕専属のシェフが作ってくれるので」

シンジ「貴方はなんの心配もしなくていいです、身の回りの世話も使用人を雇ったので問題ありません」

ミサト「さ、左様でありますか……」

>>11
ゼルエル戦でレイもダミープラグも拒否られてましたよねwww

>>13-14
まぁ、新劇で2号機凍結されたときはまだそんなことなかったんだろうしなぁ

ゲンドウ「息子が反抗期で手が付けられないんだけど質問ある・・・っと(カタカタ」

シンジ「おっといけない………実は僕これから綾波と食事に行く予定がありますので」

シンジ「車を出してください」

ミサト「えっ?」

シンジ「何を驚いているのです?若様のお出かけですよ、部下の貴方がついて来ないでどうするのです」

ミサト「はっ、はあ!たっ!直ちに車をご用意させて頂きます!」

シンジ「仕事が遅いですね、本来なら僕が出掛けると言った時点で車を動かさねば」

ミサト「もっ、申し訳ございません」

シンジ「もういい、早く車を用意してきなさい」

ミサト「ハハッ!」

シンジ「やれやれ、一体父さんは部下にどんな教育をしてきたんだ?」

シンジ「こんな礼儀も知らぬ小娘を重役に使うなんてどうかしてるよ」

車中

ミサト「若様……まずはどこに向かえばよろしいのでしょうか?」

シンジ「綾波を迎えに行くのでまずはあの団地まで……」

ミサト「かっ、かしこまりました」

しばらくして、団地前

シンジ「綾波を呼んでくるのでここで待機していてください、いいですね?」

ミサト「はい……」

スタスタスタ………

ミサト「はぁ………どうしてこんなことになっちゃったの?」

ミサト「シンジ君………使用人を雇ったとか言ってたわね………」

ミサト「もう、家族ごっこも何もないわね………」

スタスタスタスタ

シンジ「さあ、綾波乗って」

レイ「ええ……」

シンジ「それじゃあ車を出してください」

ミサト「目的地はどちらまで?」

シンジ「そういえばまだ言ってませんでしたね……新横浜市の新帝國ホテルまでお願いします」

ミサト「新横浜っ!?……おっ、お言葉ですがパイロットである若様を無断で連れ出すわけには……」

シンジ「雇われ部下の貴方に僕の行動を制限する権利はありませんよ……」

シンジ「第一横浜なんてここからそう遠くは無いでしょう、いざとなればすぐ戻ってこられます」

シンジ「さあ、分かったら早く出発してください……急がないと予約した時間に遅れてしまいます」

ミサト「はっ、はあ……」

車中

シンジ「―だから心配しなくても綾波の苦手な肉は出ないよ」

レイ「そう、よかったわ」

シンジ「僕がそういう気配りを忘れるわけ無いだろ?」

レイ「そうね」

ミサト「………(なに、この居づらい空気は?)」

プルル、プルルル!

シンジ「おっと、電話だ……ちょっと待っててね綾波」

レイ「ええ」

ミサト「………(電話?一体誰からかしら?)」

シンジ「もしもし、僕です……どうしましたか?」

シンジ「ほう、例の件上手く行きましたか……それはそれは良かった」

ミサト「………(例の件?)」

シンジ「ええ、今日一番のグッドニュースですよ……上出来です」

シンジ「実行者には後で褒美を与えましょう………」

シンジ「それじゃ、僕はまだ用事があるので……失礼します」

ツーツーツー

ミサト「わ………若様、今の電話の相手は?」

シンジ「貴方には関係のないことです、気にしないでください」

ミサト「はっ、はあ……」

しばらくして

ミサト「若様、目的地に到着いたしました」

シンジ「運転、ご苦労様です……では僕は綾波と食事に行ってきますので」

ミサト「私はどうすれば……」

シンジ「僕達が戻ってくるまでここで休憩していてください………帰りの運転もありますのでね」

ミサト「しかしそうすると若様の警備が………」

シンジ「ご心配なく、既に信頼出来る諜報部員をホテル内に手配しておいたので」

ミサト「さ、左様でございますか……」

シンジ「じゃ、行こうか綾波」

レイ「ええ……」

スタスタスタスタ

ミサト「行っちゃった………二人共制服で………」

ミサト「…………」

ミサト「…………暇ね」

ミサト「…………」

ミサト「…………」

ミサト「………少しくらい車を離れても大丈夫よね?」

ミサト「どうせ、あの子たちしばらく戻ってこないでしょうし」

ミサト「よし!そうと決まったらお散歩タイムよ!」

数分後

ミサト「……って言っても高級ホテル付近うろついても何もないのよねえ」

ミサト「これからどうしよ……」

ミサト「ん?あそこにあるのは本屋さん?」

ミサト「丁度いい、あそこで時間潰しましょっか………」

書店内

ミサト「さ~て何か面白い本あるかしら?」

数分後

ミサト「上司への正しい言葉遣い講座………目上を立てる方法………戦国大名と家臣……」

ミサト「なんで私、さっきからこんな本ばっかり読んでいるんだろ?」

ミサト「はあ………シンジ君に感化されすぎね私」

さらに暫くして

ミサト「あら、もうこんな時間?………そろそろ車に戻りますか……」

駐車場

シンジ「どこに行ってたんです?葛城三佐」

ミサト「えっ?」

シンジ「食事を終えて車に戻ってきたらなんという事でしょう、貴方が居ないじゃありませんか」

ミサト「も、申し訳ございません………てっきりまだ戻られないものと思い……」

ミサト「その……近くの書店の方に………」

シンジ「ほう、持ち場を無断で放棄してほっつき歩いていたというのですか」

シンジ「見上げた精神ですね………とても軍出身の人間とは思えない行動ですよ」

ミサト「申し訳ございません………しっ、しかしながら……」

ミサト「わ、若様は私にここで待機していろとは命じておりませんので………」

ミサト「この件で私が一方的に責められるのは些か不本意であります………」

シンジ「上司に口答えですか…………大層なご身分ですね、葛城軍曹」

ミサト「ぐ、軍曹っ!?」

シンジ「要人の車を運転するものが車から命令なしに動いていいとでも?」

ミサト「そっ、それはー……」

シンジ「まあ確かにここで待機していろとしっかり言わなかった僕にも責任はありますが………」

シンジ「この程度のこと普通ならいちいち言わなくてもわかると思うんですがねえ」

ミサト「もっ、申し訳ございません……」

シンジ「全くですよ、これで僕が急いで戻ってきたり緊急の用事があったりしたらどうしたんでしょう?」

ミサト「は、配慮が足りませんでした………」

シンジ「一ヶ月降格です、今月いっぱい軍曹として頑張ってください」

ミサト「そ、それはあ……あんまりではありませんか若様!?」

シンジ「何寝ぼけたことを仰っているのです?この失態は重大ですよ!」

シンジ「ドライバーが車から離れたら何かあった時脱出できないでしょう!?」

シンジ「これがどれほど問題か貴方はわからないんですかっ!?」

シンジ「本来なら更迭モノの失態を犯しているんですよ!自覚してください!」

ミサト「も、も、も、も、申し訳ございませんっっっ!(シンジ君………起こると怖いのね……)」

シンジ「………一ヶ月です」

ミサト「えっ?」

シンジ「一ヶ月軍曹として働き、反省が十分と判断したら三佐に戻します」

シンジ「いいですね?」

ミサト「はっ……はい!……わっ、若様の寛大な精神に心より感謝いたします!」

シンジ「よろしい、では帰りの運転もお願いしますよ」

ミサト「はっ、ははあっ!」

それから一ヶ月、葛城軍曹は必死の思いで職務にあたった。
ネルフの仕事はもとより若様より与えられる命令も確実にこなしその忠義を示した。
本来免除されていた戦闘訓練にも参加させられ厳しい特訓も強いられた。
リツコ「遅いわ葛城軍曹!何をやっているの!?」ミサト「も、申し訳ございません赤木博士っっ!」
そして、一ヶ月が過ぎた………

シンジ「葛城軍曹の頑張りを認め三佐への復帰を許可する」

ミサト「有難き幸せでございます」

シンジ「今後はこういう失態の無いよう、より気を引き締めて職務に当たるように」

シンジ「よろしいですね?」

ミサト「ははあっ!」

シンジ「それでは下がって結構、葛城三佐」

ミサト「ははっ、ではこれにて失礼致します」

ミサト「はあ………なんとか三佐に戻れたー………」

リツコ「あら、仕事は終わったの?軍曹さん」

ミサト「知ってて言ってるんでしょ………やれやれ、これでもうリツコにこき使われる心配もないわね」

リツコ「三佐に戻ったからといってまた手を抜かないで頂戴ね」

ミサト「そんなことしないわよ……もう軍曹は嫌だし……」

ミサト「…………ねえ、ところでひとつ気になることがあるんだけれど」

リツコ「何?」

ミサト「副司令はどこに行ったの?ここ最近ずっと見ていないんだけれど……」

リツコ「…………」

ミサト「リツコ?」

リツコ「副司令は…………亡くなられたわ………」

ミサト「なんですって!?」

ミサト「ちょっとそれどういうことよ!?」

リツコ「ちょうど今から一ヶ月前よ………副司令、一人で階段を降りるときに踏み外して………」

ミサト「周りに人はいなかったの!?」

リツコ「落ちたときは誰もいなかったみたいね、ただ後頭部強打による即死だから人がいても助からなかったでしょうね」

ミサト「なんてことなの………」

リツコ「今は一応私が副司令代理を務めているけど、数日後には後任が決まるらしいわ」

ミサト「後任って………一体誰よ?」

リツコ「さあ、私も知らないわ」

ミサト「碇司令はなんて?」

リツコ「いつも通り、問題ない………それだけよ」

ミサト「大丈夫なのかしら、この組織………」

数日後

シンジ「皆さんどうも、サードチルドレンの碇シンジです」

シンジ「さて皆さんも既に御存知でしょうが先日副司令が不慮の事故で亡くなられました」

シンジ「突然の訃報に僕も非常に驚きました……ネルフ上層部の中では司令より親しみやすい人柄ゆえ」

シンジ「大勢の職員に慕われていたと聞きます、副司令の死はネルフにとって大きな痛手といえるでしょう」

シンジ「僕もネルフに関わるものとして非常に残念に思います」

ネルフ職員1「シンジ君……まだ若いのにしっかりしてるなー……」

ネルフ職員2「それにくらべてあの髭司令ときたら」

ネルフ職員3「いっそのことシンジ君が司令になってくれればいいのにな」

ネルフ職員4「ハハハ、そりゃいいね」

シンジ「さて副司令の後任ですが、今までずっと赤木博士に代理をしていただいていましたが」

シンジ「赤木博士も多忙ゆえ兼任が困難と判断し今後は僕が初号機パイロットと掛け持ちで」

シンジ「副司令になることに決定しました」

ザワ・・ザワ・・・ザワ・・ザワ・・・

ミサト「なんですってっ!?」

ミサト「ちょっとリツコ!あんたもこれ知ってたの!?」

リツコ「さ、さあね……わ、私も知らなかったわ……」

ミサト「嘘おっしゃい!ホントは知ってたんでしょ!?」

リツコ「こんな嘘ついてどうするのよ?」

ミサト「クッ!……(あのシンジ君が副司令ですって!?一体どうなっているというの?)」

シンジ「それから現在私の父である司令は体調を崩しております」

シンジ「そのため司令の体調が回復するまでの間、僕が司令も担当することとなります」

ザワ・・ザワ・・・

ネルフ職員3「冗談が事実になっただと……?」

ネルフ職員1「ネルフはどうなるんだ!?」

ミサト「なんてこと……なんてことなの………」

リツコ「…………」

数日前

シンジ「知ってますよ、リツコさんが父さんと寝てること………」

リツコ「何が言いたいの、シンジ君?」

シンジ「ちょっと頼みたいことがあるんです」




リツコ「司令の食事に薬を盛れですって!?」

シンジ「貴方ならできるでしょう?」

リツコ「貴方……自分が何を言ってるのかわかってるの!?」

シンジ「わかってなかったら、こんな事しませんよ」

リツコ「お断りよ!貴方に協力することはできないわ!」

シンジ「へえ、そうですか……まあそういうと思ってましたよ」

シンジ「でもこれを聞いたら考えは変わるんじゃないですか?」

カチッ

レコーダー「あっ……んっ……はぁん……」

レコーダー「クッ……出すぞっ……」

リツコ「それはっっっ!?」

シンジ「諜報部の知り合いに頼んで父さんの部屋に盗聴器を設置したんです」

シンジ「まあまさか寄りによってこんなモノが聞けるとは思ってませんでしたが……」

リツコ「貴方……どうかしてるわよ………」

シンジ「褒め言葉です」

シンジ「どうします?これでもやっぱり協力する気にはなれませんか?」

リツコ「もしもここで断ると言ったら?」

シンジ「この音声が大音量でネルフ本部に流れることになります」

シンジ「それから………貴方の大切な後輩がちょっと危険な目に合っちゃうかもしれませんね」

リツコ「マヤに手を出す気っ!?」

シンジ「あなたが断ったらね………」

リツコ「…………」

シンジ「あんな髭を庇って自分や大切な後輩を不幸にしたくないでしょう?」

シンジ「それにあの男に協力したって貴方は幸せにはなれませんよ」

リツコ「…………薬の種類はこっちで選んでよろしいかしら?」

シンジ「ええ、その変のことはプロにお任せします」

再び時間は戻って

リツコ「…………(この事を知ったらミサトや加持君はなんていうかしら?)」

シンジ「赤木博士……こんな所にいたんですか」

リツコ「しんz………司令代理ですか……」

シンジ「父さんの様態は?」

リツコ「順調に悪化しています………あくまで病気に見えた形でね………」

シンジ「司令代理から代理という言葉が外れるまでもう少しですかね……」

リツコ「ええ、遅くとも来月には貴方は正式に司令となれるでしょう」

シンジ「さすがは赤木博士だ………貴方ならノーベル賞も夢じゃありませんね」

リツコ「それは買いかぶり過ぎでしょう?」

シンジ「癪に障りましたか?お世辞じゃなくて本音で言ったんですがね」

シンジ「エヴァの開発からマギのメンテナンスまで一人でやれる人なんて貴方くらいだ」

シンジ「東洋の三賢者と呼ばれた僕の母や貴方の母君でもここまでは出来ないでしょう」

リツコ「それは言いすぎですよ、司令代理」

リツコ「まあ……褒められて悪い気は致しませんが………」

シンジ「司令が褒めたんです、部下は素直に喜べばいいんですよ」

リツコ「申し訳ありません、今まであまり仕事を評価されたことがないので……」

シンジ「なんと……やはり父はひどい上司だったのですね、これほど優秀な部下を揃えておいて」

シンジ「一つも評価しないなんて………でも安心してください」

シンジ「これからのネルフでは仕事に見合った報酬と評価が与えられます」

シンジ「優秀な人間はありとあらゆる富と名誉を得られるでことしょう」

リツコ「左様ですか……(シンジ君はネルフをどうするつもりなのかしら?)」

シンジ「おっとついつい、話し込んでしまいましたね」

シンジ「僕は今から色々仕事があるのでこの辺で失礼します」

リツコ「そうですか……」

シンジ「あっ、そうそう一つ言っておくことがありました」

リツコ「なんでしょう?」

シンジ「綾波にはもっと優しくしてあげてください」

リツコ「それは………命令ですか……?」

シンジ「いえ、これはあくまでお願いです」

シンジ「………それじゃ、こんどこそ失礼します」

スタスタスタ

リツコ「……………」

リツコ「………碇新司令ね」

そして一ヶ月後

シンジ「本日より亡き父に代わり司令となりました碇シンジです」

シンジ「不慣れな職務ゆえ至らないことも有るかも知れませんがどうかよろしくお願いします」

ネルフ職員たち「おおおおおおおおおっ!

ネルフ職員1「まさか本当に司令になるとは!」

ネルフ職員2「お父さんが死んだってのになんて立派なんだ!」

ネルフ職員3「というか先代よりよっぽどいいな!」

ネルフ職員4「碇司令万歳っ!」

ミサト「ほんのちょっと前まで私が上官だったっていうのが嘘みたいね」

リツコ「全くね……」

ミサト「これからネルフは……いや世界はどうなるのかしら……?」

リツコ「さあ、検討もつかないわ」

ミサト「新司令は何を考えているの?」

司令執務室

シンジ「加持君、例の件どうなっている?」

加持「委員会の音声記録はバッチリです……バックアップも無数にあるのでゼーレも簡単には動けませんよ」

シンジ「貴方にはいつも苦労をかけていますね……」

加持「いやいや、司令のお陰で新人を知れたんです……このくらいどうってことありませんよ」

シンジ「そういってもらえるとこっちも助かります」

シンジ「そうだ貴方に褒美を出すのを忘れていましたね」

加持「褒美?とんでもない!ゼーレの連中を黙らせられれば俺はそれで十分ですよ」

シンジ「いや、前回出すといったんだ……こういうケジメはつけないと」

加持「はあ……し、司令がそこまで仰られるなら……」

シンジ「褒美はこれです」

加持「これは……指輪……?」

シンジ「総額1500万円の超高級指輪です」

加持「はあ……しかしこう言ってはなんですが男に指輪は……」

シンジ「それを貴方の意中の女性に渡してはいかがでしょうか?」

加持「意中の女性に?」

シンジ「ええ、それこそが司令からのプレゼントです」

加持「なるほど………ハハッ、こりゃあ一本取られましたな」

加持「分かりました、この指輪有りがたく頂かせてもらいます」

シンジ「幸運を祈って待っていますよ」

加持「こちらこそ、この報酬に見合った吉報を届けて見せますよ」

数日後

日本国首相「これがネルフから送られたきたテープです」

レコーダー「人類補完計画がうんたらかんたら、死海文書がうんたらかんたら」

アメリカ大統領「オーマイゴット!ゼーレは許しておけないヨ!」

フランス大統領「すぐに国連による対ゼーレ討伐軍を編成しましょう!」

日本国首相「その暁には我が国の戦略自衛隊も全面協力いたします!」

国連軍「秘密結社ゼーレよ!貴様らの企みはすべてわかっている!」

国連軍「抵抗は無駄だ!今すぐ降伏しろ!」

キール「なんという事だ!このままでは我らの計画が!」

キール「ええい!アメリカ支部のエヴァを動かし国連軍を殲滅するのだ!」

ゼーレ幹部「駄目です!すべてのネルフ支部が我らの敵に回っております!」

ゼーレ幹部「ゼーレ側についた各国ネルフ幹部は既に拘束されておりネルフはもう使えません!」

キール「こんな事なら量産型の建造を早めておくべきだった!」

キール「よりによって碇の息子がネルフを乗っ取るとは………」

兵士1「キール・ローレンツを発見!拘束しろ!」

兵士2「了解!」

キール「バカな!もうここまで来たというのかっ!?」

兵士1「おら!撃たれたくなかったら大人しくしろ!」

キール「ぐぬぬ……」

シンジ「そうですか、連中はほぼ壊滅ですか」

シンジ「とはいえまだ残党は結構いるでしょう、今後も引き続きお願いします」

シンジ「………後は使徒だけか………」

シンジ「加地君、使徒は残り何体いるのですか?」

加持「奪った死海文書によるとこのようになっています」

シンジ「まだそれなりにいるようですね……」

シンジ「でも折角連中を潰せたんです……ここで負けるわけには行きません」

加持「ええ……こっちもできる限りネルフをサポートするつもりです」

シンジ「諜報部には期待していますよ」

それからしばらくして……

日向「パターン青!使徒です!」

ミサト「おいでなさったわね!」

シンジ「僕自ら出撃します、代理指揮は頼みましたよ葛城三佐!」

ミサト「了解!碇司令の御武運をお祈りしています!」

整備班「司令自ら御出陣じゃー!者ども気合を入れろーっ!」

整備班「おおおおおおおおおおっっ!」

リツコ「こんなに士気が高いの初めて見たわ」

ミサト「発進ッッ!」



マヤ「パターン青消滅!使徒殲滅に成功しました!」

シンジ「これでまた一つ片付いたか……」

青葉「しかし順調に使徒も倒せていってるしこりゃもう俺たち敵なしじゃないか」

日向「いやでもまだ使徒は残っているんだし油断しちゃダメだ」

シンジ「そうです、まだまだ気を抜いてはいけませんよ」

青葉「し、司令っ!?」

シンジ「いやいや皆さんご苦労様でした」

シンジ「今日の勝利も皆さん全員の協力あってのことです、司令としてお礼を言わせてもらいます」

日向「いやいやそんな……とんでもない、僕達はあくまで職務を行っただけで……」

シンジ「でも一人ひとりのそういう気持ちが大事なんですよ」

シンジ「仮にみなさんが投げやりな態度で職務にあたっていたら僕たちはねずみにすら勝てません」

シンジ「ネルフ全体で皆が協力したからこそ我らは強大な使徒に勝つことができたのです」

日向「皆で……協力か………」

マヤ「ところで司令はなぜここに?」

シンジ「おっと、本題を忘れるところでした」

シンジ「葛城三佐、例のものを」

ミサト「はっ!」

日向「例のもの……?」

ミサト「みんなこれを見て頂戴!」

青葉「これは………お酒ですか……」

ミサト「そう!これは今日の戦勝祝いで飲むお酒よ!」

ミサト「ネルフ職員なら誰でも参加自由だからみんなじゃんじゃん飲むのよーっ!」

ネルフ職員たち「おおおおおおお!」

シンジ「ちなみにお酒がダメな人のためにジュースやお茶などもたくさん用意しています」

シンジ「普通では飲めない世界中の珍しいお酒やジュースもあります!是非参加してください!」

ミサト「飲み物以外では箱根の温泉旅館から来ていただいた板前さんに作って頂いた宴会料理や」

ミサト「司令行きつけのホテルレストランのシェフが作った高級料理もあるわ!みんな飲んで食いまくりなさい!」

ネルフ職員達「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

宴会中

「ではここであっしが一発芸をやってみせやしょう!」

「おっ!待ってました待ってました!」

「倒せ~敵を~守れ~街を~未来をおおおおおおおおおおおおおお!奇跡の~♪」

シンジ「皆さん、楽しんでいるようでこっちもうれしいですよ」

加持「しかしこれまた粋な計らいですな、司令」

シンジ「仕事をした部下を労うのはあたり前のことでしょう」

加持「しかし世の中それが出来ないお偉いさんもいっぱいいるわけで」

加持「それが出来る司令はやはりすごい人だ」

シンジ「そりゃあ褒めすぎですよ………」

加持「ちょっと酔い過ぎたかな……ハハッ」

ミサト「くわじぃ~っっ!!」

シンジ「お姫様のお呼びですよ?」

加持「そのようだな………ちょっと行ってきますね」

シンジ「後、もう一息で終わり………そしたら……」

こうしてネルフは絆を深めながら次々と使徒を倒していった。
その姿はかつて碇ゲンドウが司令を務めていた頃とはうって代わり
職員一人ひとりが生き生きと自信を持って職務に当たる理想的な組織であった。

そしてしばらくの時間が流れた……

シンジ「使徒もついにあと一体か……」

シンジ「ダブリス………いったいどんな使徒だ?」

ミサト「司令、司令に会いたいという少年がいるのですが……」

シンジ「僕に……?どんな少年ですか?」

ミサト「渚カヲルと名乗っています………聞き覚えは?」

シンジ「いや無いな………まあいいその少年にあってみよう」

ミサト「よろしいのですか?刺客の可能性も……」

シンジ「もちろん護衛は付けますよ」

カヲル「初めまして、碇シンジ君」

ミサト「司令を君付けで呼ぶとは大層なご身分ね渚カヲル君!」

シンジ「まあまあ落ち着いて、彼は部外者ですから構いませんよ」

カヲル「さすがはシンジ君、心が広いね」

シンジ「君はなんの用があってここに来たんだい?」

カヲル「単刀直入に言おう………僕をネルフで雇ってくれないか?」

シンジ「君を雇うだって?」

カヲル「そう、僕がネルフに入ればきっと力になれると思う」

シンジ「面白いことを言うね、ネルフで何をやりたい?」

カヲル「エヴァパイロットかな」

シンジ「エヴァパイロット志願者か………君みたいなのは初めて見たよ」

カヲル「だろうね」

ミサト「あんたねえ、さっきから好き勝手言ってるみたいだけどそんなのが通ると思ってんの!?」

ミサト「司令!こんなヤツとっとと追い出してやりましょうっ!」

シンジ「分かった……君を採用しよう」

ミサト「司令っ!?何を考えているんですかっ!?こんな得体のしれない奴を雇うなんて」

シンジ「今のネルフは最終決戦に向けてフル稼働中だ、やる気のある人材はどんどん入れるべきだよ」

ミサト「しかしですねえ……だからといってこのようn」

シンジ「これは決定事項です……貴方に口出しする権利はありません」

ミサト「クッ………」

カヲル「碇シンジ君………君は好意に値するよ」

シンジ「こちらこそ、活躍を期待しているよ渚カヲル君」

カヲル「では今日のところは失礼します、それでは」

ミサト「司令!あの判断はどういうつもりです!?いくらなんでも納得できません!」

シンジ「貴方が納得しようがしまいが組織には関係ありませんよ」

ミサト「なっ!?……私はですねえここの事を思って言っているんですよ!それなのにその言い方は……」

シンジ「彼は使徒です、そう最後の使徒ダブリスです」

ミサト「なんですって!その根拠は!?」

シンジ「男の勘ってやつですかね」

ミサト「ふざけないでください司令!」

シンジ「まあまあそう怒らないで、ちょっとした冗談ですよ」

シンジ「彼の外見、見ればわかるでしょう……銀色の髪と赤い瞳」

ミサト「確かにあれは普通じゃないわね……」

シンジ「そしてネルフにもいるでしょう、赤い瞳の少女が」

ミサト「まさか……」

シンジ「ええ、綾波レイもまた特殊な出生の少女です」

ミサト「じゃあレイも使徒だっていうの!?」

シンジ「う~んその辺の説明はちょっと難しいですね」

シンジ「ただ我々が戦っていた使徒とは似て異なる存在だと思いますよ」

ミサト「そんな………」

シンジ「ああ、だからといって綾波を嫌ったり虐めたりしないでくださいよ」

シンジ「彼女にはなんの罪も悪意もありませんから」

ミサト「今更嫌うなんてできないわよ………」

シンジ「まあとにかくこのへんから推測して彼、渚カヲルは使徒で間違いありませんよ」

ミサト「って!それなら尚更彼を入れたのは危険じゃないですか!?」

シンジ「大丈夫ですよ……彼はしばらくは大人しくしているはずです」

ミサト「何を根拠にっ!?」

シンジ「彼は使徒ですよ、その気になれば今そこで僕を殺すこともできた」

シンジ「でも彼はそれをしなかったんです……つまり彼はここに危害を加えるつもりはないんですよ」

ミサト「まあ確かにそれはそうですが………しかしやはり油断しては」

シンジ「もちろん油断はしていませんよ、ただ僕にちょっと試したいことがあってね」

ミサト「試したいこと?」

シンジ「まだ秘密です………まあとにかくここは僕に任せて三佐は気長にビールでも飲んでてくださいよ」

ミサト「はっ……はあ……」

数日後

シンジ「おっともうこんな時間だ……風呂でも入るか」

大浴場

カヲル「ふんふんふ~ん♪」

シンジ「やあ、君は渚カヲル君じゃないか」

カヲル「やあ、シンジ君」

シンジ「できれば司令って呼んで欲しいんだけどな」

カヲル「おっと失礼、確かに組織のトップに君付けはまずかったね、非礼を詫びるよ」

シンジ「いや分かってくれればいいさ」

カヲル「ふんふんふ~ん♪」

シンジ「第九か……どこで覚えた?」

カヲル「昔、親に買ってもらったレコードを聞いて以来のお気に入りさ」

シンジ「レコードか、いい趣味だね……(親ねえ……)」

カヲル「歌はいい、リリンが生み出した文化の極みだよ」

シンジ「そんなに歌が好きなら今度ボクのレコードも貸そうか?」

カヲル「それは本当かい?嬉しいねえ」

更に数日後

ミサト「それでさっきからずっと音楽鑑賞?」

リツコ「そう、かれこれもう2時間くらいね……しかもよりによってレコード音源よ」

ミサト「随分レトロ趣味ね」

カヲル「これはなんていう歌だい?」

シンジ「東京節……明治・大正期の歌だよ」

カヲル「日本の古い歌か………」

ミサト「………(司令は何を考えているの?)」

カヲル「これは?」

シンジ「ウルトラマン……日本の古いテレビ番組だよ」

カヲル「凄い!まるで本当に怪獣がいるみたいな迫力だ!」

シンジ「何がすごいってこんな映像を50年も前に作ったことだよ」

カヲル「50年前だって!?」

シンジ「こっちのゴジラは白黒でさらに古いけどもっとお勧めだよ」

ミサト「今度は特撮鑑賞、何がしたいの?」

リツコ「………(あらあのDVDは地球防衛軍に海底軍艦じゃない原子怪獣現わるもあるわ……後で見ようかしら)」

カヲル「ああ……ゴジラ……君はなんて悲運な運命なんだ………」

シンジ「………」

リツコ「………(芹沢博士の最後は泣けるわね……私もあんな立派な科学者になりたいものだわ)」

さらに数日後

青葉「いつからかずっと使徒が来てないな……どうしたんだ?」

マヤ「こう静かだと逆に怖いです」

日向「二人してフラグ立てるなよ……」

ブーン!ブーン!ブーン!

日向「ほら!言ったじゃないか!」

青葉「何が起きたんだっ!?」

マヤ「そんな!?ネルフ本部内からパターン青!」

日向「なんだって!?」

シンジ「ついにこの日が来てしまったか………」

シンジ「総員第一種戦闘配置!」

本部地下

カヲル「ヒトとシト……似て異なる存在、結局分かち合うことはできないのさ」

カヲル「さあ始めよう……」

日向「エヴァ弐号機と零号機が起動!」

ミサト「なんですって!?レイとアスカは!?」

青葉「どちらも本部内にいます!」

ミサト「どういうことなの?」

シンジ「初号機を出してください……いよいよ最後の時が来たんです」

ミサト「最後の時……」

整備班「初号機発進準備を進めろー!」

整備班「最終決戦だ!いくぞー!」

整備班「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

本部地下

カヲル「この感覚、ついに来たか……」

カヲル「さあ行け、しもべ達よ」

シンジ「零号機に弐号機!……邪魔だ退けよっ!」

シンジ「クソおおおおお!」


シンジ「どうしてだ!どうしてだよカヲル君!どうしてこんなことをするんだ!?」

カヲル「僕たちは似て異なる存在だ……2つの種族が同時に存在してはいけない」

カヲル「残るのはどちらか一つのみ………そういうことさ」

シンジ「君が何を言っているのか分からないよ!」

カヲル「分からない……そう、それでいいんだ」

カヲル「僕たちは分かり合っちゃいけないのさ」

シンジ「分かり合っちゃいけないだと………」

カヲル「そう、僕達は分かり合えないのさ」

シンジ「ふざけるなよッッ!!」

カヲル「何が言いたいんだい?」

シンジ「分かり合えないとか言うならじゃあなんで僕達に接触を図ったんだ!?」

シンジ「どうして人間の音楽を聞くんだ!?どうして人間の作った映像で感動するんだ!?」

シンジ「分かり合えないなんて言うなら最初からこんな事するなよッッッ!」

カヲル「そ、それは………」

シンジ「そんなのって……自分勝手じゃないか………」

シンジ「使徒が人間に接触を図ろうとしたことは何度かあった……」

シンジ「君以外にも人に興味を示した使徒はいた……」

シンジ「本当は君たちだって分かり合いたいんじゃないか?」

カヲル「………」

カヲル「そうか………僕達は分かり合いたかったのか……」

シンジ「そうだよ……僕たちは争う必要なんて無いんだよ……」

カヲル「ありがとうシンジ君、君は大切なことを教えてくれたね」

シンジ「そうさ……だから僕達と一緒に………」

カヲル「でももう遅い」

シンジ「なんだって!?」

カヲル「ここに来てしまったからね」

日向「目標及びエヴァ初号機、ドグマ内に侵入!」

ミサト「なんですって!」

リツコ「まずいわね……」

カヲル「サードインパクトが始まる……もう誰にも止められないよ」

シンジ「それはどうかな?」

カヲル「何が言いたい?」

シンジ「君はそこにあるモノをどう認識している?」

カヲル「どうもこうも、これこそがアダムだと……」

シンジ「君はひとつ勘違いをしている」

カヲル「なんだと……?」

シンジ「そこにあるのはリリスだ」

カヲル「馬鹿なっ!それじゃあ本物のアダムはどこにっ!?」

シンジ「還るべき場所に還したよ」

カヲル「なんだって!?それじゃあサードインパクトは……」

シンジ「今起こすのは無理じゃないかな」

カヲル「フフフ………そうか、そういうことだったのか………」

カヲル「どうやら僕はここまでのようだ」

シンジ「どういうことだよ?」

カヲル「インパクトが起こせない以上、僕が生きる意味はもうない」

カヲル「僕を殺してくれないか?」

シンジ「なんでだよ!どうしてそうなるんだよッッ!?」

カヲル「さっきも行ったじゃないか……2つの種族が同時に存在してはいけないと」

シンジ「どうしてだ!?誰がそう決めたんだよ!?……僕は絶対に君を殺さないよ」

カヲル「僕にとって生と死は同価値なんだ……君が気にすることはないよ」

シンジ「そこまで殺して欲しいのか?」

カヲル「ああ……それこそが最良の選択だ……」

シンジ「だが断るよ」

カヲル「君も食い下がるね」

シンジ「君こそ一つ大事なことを忘れてるよ」

カヲル「忘れていること?」

シンジ「僕はネルフの司令だ、そして君はエヴァのパイロットだ」

シンジ「どっちが偉いかお分かりだろう?」

カヲル「それがまだ通用するとでも?」

シンジ「当たり前だ、僕達はヒトとシトである前に上司と部下なんだ」

シンジ「上司に逆らいあまつさえ命令する生意気な部下はしっかり教育しないといけない」

シンジ「それが組織のトップたる僕の勤めなんだ」

カヲル「断ると言ったら?」

シンジ「罰として君を生きたサンプルとして研究させてもらうよ」

シンジ「生きた使徒のサンプルなんて願ってもない研究材料だしね」

カヲル「どう転んでも君が得するってわけか……」

シンジ「組織のトップは常に利益を出すことを第一に考えているんだ」

シンジ「またこれで一つ人間社会のことを学んだね」

カヲル「僕の完全敗北って言うわけか………」

シンジ「そういうこと、さあ分かったら下らないストライキは終わりにして職務に戻るんだ」

カヲル「しかし僕を生かせば君たち人間に影響をおよぼすかもしれないぞ?」

シンジ「その時はその時でまた考えばいいさ」

カヲル「そう都合よくいくと思うかい?」

シンジ「ああ、いくね……なんたって僕には優秀な部下がいっぱいいるから」

数日後

シンジ「というわけで特務機関ネルフは全ての任務を無事成功させることになりました」

シンジ「今日、我々人類の平和が保たれているのは諸君ら職員一同の努力と勇気が全てであり」

シンジ「また僕が司令とパイロットを兼ねて生き残ることが出来たのも職員一同のお陰であります」

シンジ「このことに僕は特務機関ネルフ総司令として深く感謝の意を述べたいと思います」

職員大勢「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!」

シンジ「本当にありがとう!」

ネルフ職員たち「ネルフ万歳!碇司令万歳!うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

シンジ「それでは僕はこれから日本政府に報告に行くので失礼します」

車中

シンジ「まだ納得行きませんか?使徒を生かしたことを」

ミサト「ええ、私はまだ……」

シンジ「まああなたの場合は無理もないです……経緯が経緯ですしね」

ミサト「本当なら使徒を自分の手で殺したかった………今もそう思っている自分がいます」

シンジ「なら殺しますか?」

ミサト「えっ?」

シンジ「多分、渚カヲルは抵抗せず素直に殺されてくれると思いますよ」

ミサト「もし私が彼を殺したら司令はどうされますか?」

シンジ「組織として必要な処分を貴方に下すだけです」

ミサト「必要な処分?」

シンジ「組織内部の人間への不当な理由による殺傷又は殺人……死罪も十分ありえますね」

ミサト「死罪ね………使徒を殺せるならそれも有りかもしれませんね」

シンジ「そんなに使徒が憎いんですか」

ミサト「当たり前じゃないですか!父の敵ですよ!」

シンジ「そう怒らないで……運転に集中してください」

シンジ「僕は貴方のその憎しみを否定するつもりはありません」

シンジ「人間なら誰しもが持ち得る感情ですから」

シンジ「でもあなたの言ってることは理にかなってないんです」

ミサト「どういうこと?」

シンジ「綾波レイの話は覚えていますか?」

ミサト「彼女が普通の人間じゃないって話でしょう」

シンジ「そうです、彼女はどちらかと言うと僕らより渚カヲル寄りの存在です」

シンジ「さてここで僕が綾波レイは使徒だから殺せと命令したら貴方どうします?」

ミサト「いくら司令でも聞けない命令はあるわよ」

シンジ「ええ、それこそ僕の望んだ回答です」

シンジ「ここであなたが「喜んで殺すわ」なんて言ったら僕があなたを殺していましたよ」

ミサト「当たり前でしょ……レイはずっと戦ってきた仲間なんですから」

シンジ「なら渚カヲルも仲間です……一緒に戦ってきたわけではありませんがね……」

シンジ「絆はこれからだって作れるはずですよ」

ミサト「難しいこと言ってくれるわね」

シンジ「もちろん直ぐにそれを感情で理解しろとは言いません、ただ頭には入れておいて欲しいです」

シンジ「憎しみの感情を捨てろとはいいません……」

シンジ「でもそれを乗り越えないと憎しみがまた新たなる憎しみを生むんですよ」

シンジ「そして皮肉にも人はそうやって争いを積み重ねてきた………」

シンジ「憎しみの連鎖を断ち切るなら早い方がいい、そう思いませんか?」

ミサト「そうね………」

シンジ「まあゆっくり、時間をかけてやればいいんですよ……戦いは終わったんですしね」

ミサト「ネルフはこれからどうなるのかしら?」

シンジ「組織の縮小は免れないでしょうね……でも解散はないと思います」

シンジ「いつ何が起こるかわかりませんからね……それにこれまでの戦いで培った経験を」

シンジ「他の災害救助現場などで応用できるでしょうし………暇になることはないと思いますよ」

ミサト「司令はどうされるおつもりで?」

シンジ「これからゆっくり考えます……なのでまだなんとも言えませんね」

ミサト「そうですか……」

シンジ「おっと、そろそろ官邸につきますね」

シンジ「まあまだ色々ありますが焦らずのんびりといきましょう」

シンジ「では、また報告が終わったら会いましょう」

バタン

ミサト「………」

ミサト「………これからどうしましょう?」

ミサト「まいっかゆっくり考えれば♪」

その後、碇シンジと特務機関ネルフはその活躍から後世まで語り継がれることとなる。
日本政府からはその功を評価され、第3新東京市一体をネルフ共和国として特別自治されることが許された。
ネルフ共和国は小さい国土ながらも発展し世界に多大な影響を与え続けた。
碇シンジはその初代大統領として天命尽きるその日まで共和国を統治し続けた。
晩節を汚すことなく最後まで理想の統治者で合った彼はノーベル平和賞など様々な賞を受賞し99歳でこの世を去った。
彼の死が報じられた時、ネルフ共和国はもちろん世界中の人間が涙したという。
その後ネルフ共和国は100年近く存続した後、地球連邦と名を変え新たな世を創りだしたが
皮肉にもそれは碇シンジの望んだ平和で分かち合う世界ではなかった。
人と人は永遠に分かち合えないのか?我々人類はその答えをまだ知らない。

                                       完

以上で終わりです。
ご鑑賞有難うございました。

ちなみにネルフ共和国は公式ゲーで出てきます。
ではさようなら

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