P「真にストレッチマフラーかけたら人生がメチャクチャになった」(214)

P「なぁ、ホントにやるのか?」

真「モチロン! へへっ、まさかプロデューサーがプロレス好きだなんてなぁー」

P「でも、男と女だぞ? 体格差もあるし……やめといた方がいいと思うけど……」

真「あれ、もしかして逃げるんですか?」

P「に、逃げるわけじゃないって。ただ、ほら、地力の差ってのがさ」

真「そういうのは勝ってから言ってください。
  まぁ、プロレスが好きなだけのプロデューサーにボクが負けることは、万に一つもないでしょうけど!」

P(あ、コイツ調子に乗ってるな)

P「……分かった。ただし、やるなら一つ条件がある」

真「はい、なんでしょう?」

P「真はアイドルで女の子だから、俺は当然跡が残るような技が掛けられない。
  そうすると技は基本的に関節技になるだろう。だから、関節技で20カウント取ったら俺の勝ちにしてくれ」

真「なんでもどーぞ! ま、黙って技をかけられるほどボクは甘くないですけどね!」

P「そうだな。じゃあ簡易リングを作るか」

真「へへっ、やーりぃっ! じゃあボク、仮眠室からマット持ってきますね!」

P「ああ、頼んだ」

小鳥「やってきました765プロ特設リング! 相対する男女の視線で火花が散り、今まさに、会場は熱狂寸前!!」

小鳥「勝ってくるぞと勇ましく残したファンに背を向けて、挑んで歩くは女の花道!!
    赤コーナー!! 現役アイドルにして765プロ無差別級チャンプ!! 菊地、真ぉぉぉ~~~~~!!!!」

真「1ラウンドで沈めてあげますよ!」

小鳥「物凄い気合ですねぇ!」

小鳥「対して、青コーナー!! 男の子には意地がある! 負けられない勝負、掴みたい栄光がここにある!!
    765プロ所属、挑戦者!! プローデューサぁぁぁーーーー!!!」

P「……ふっ……ふっ……よしっ!」

小鳥「入念なストレッチ、関節技のチョイスに期待がかかります。
    実況は私音無小鳥! そして解説は秋月律子さんで行っていきます!! まもなく、ゴングです!!」

P「じゃあ律子、ゴング頼んだな」

律子「……無茶しないでくださいよ。真、本当に強いですからね」

P「いいよいいよ。なんとかなるって」

律子「はぁ……無茶ばっかりするんだから……」

小鳥「いやぁ、わくわくしますね、解説の律子さん!!」

律子「小鳥さんも調子に乗りすぎです、じゃあ行きますよ……」

     カァァァ――ン!!

真「……シッ!!」

       ドゴォ!

小鳥「おおっと、まずは真ちゃんから仕掛ける! ボディに一撃、かなりきつそうですねー……」

律子「真は空手をやってますからね。単純な打撃ほど、威力は高いですよ」

小鳥「成程。さぁプロデューサー、どう動く? ……と、  こ  れ  は  ぁ !?」

P「うっ……ゲホッ……!」

小鳥「一発目からもろに入ってしまったかぁ!? 非常に苦しそうです!」

律子「狙った位置が上手かったですね。真の場合Pの顔を狙うと上方向に打撃を行うことになるから、どうしても威力が落ちてしまうんです。
    ですが、その体格差を逆に利用して、丁度目の前の位置にある喉ちょっと下に渾身のストレートを叩き込んだわけです」

小鳥「さぁ、息も絶え絶えプロデューサー、ここからどう……ああっとぉ!?」

真「ダッシャぁぁぁああああ!!!」

        タタタタタッ!
                       ドゴォンッ!

小鳥「よろめいたプロデューサーに追いうちのドロップキック!! これはキツい!!」

―――

たるき亭店主「……なんか上が騒がしいな……」

P「ぐぅ……」

真「あれ、どうしたんですか? 体格差がどうとか、性別がどうとか言ってましたよね?」

小鳥「挑発だぁぁぁ~~~~!!!! 真ちゃんが挑発行為! 今の彼女の振舞いから、誰がアイドル時の彼女の姿を想像できるでしょう!?」

P「げほっ、げほっ!!」

小鳥「しかし、プロデューサー、立ち上がれません! やはりダメージが大きかった!!」

律子「あちゃー、やばいですね。格好の的ですよ、あれは……」

真「じゃあ、次の一発で決めますよ!!!」

      ズダンッ!!

小鳥「あ、あれはまさか!!」

真「せーのっ!!!」

        くるっ……

               バゴォンッ!!!

小鳥「顔  面  直  撃  ィ ィ ィ  !!  膝をついたプロデューサーに、情け無用のローリングソバット!!!
    側頭部にクリーンヒット!! 脳震盪で試合終了コース一直線の無慈悲技です!!」

律子「足って言うのは単純に腕の三倍以上の力を持っていますからね。それに加速がつけば、シャレにならないダメージでしょう」

小鳥「説明を聞くだけで痛みが走るような技です……さすがに勝負は決まってしまったか……」

小鳥「……っ?」

律子「……おや……」

真「あ、あれ……?」

小鳥「あれは、まさか……掴んでいる!? 真ちゃんの足を、プロデューサーさんが掴んでいる!?」

真「な、なんで……今のが入れば、完全に……」

P「……いいこと教えてやるぞ、真……」

             シュッ!

真「へ、ひゃあっ!?」

小鳥「油断大敵事故一発! 足払いが決まった! これには思わず真ちゃんも体勢を崩します!!」

         ぐいっ!!    ガシィッ!!

P「プロレスに必要なのは打撃力じゃない!!」

小鳥「すかさず足を取って、真ちゃんの体勢を固定!? こ、これは、まさか……」

P「衝撃を受け切る覚悟と、相手を黙らすフィニッシュホールドだ!!!」

           ギチギチギチギチィィィ……

真「う、うぐっ!? 痛たたたたたたたたた!!!」

小鳥「カウントスタート!! さて、見たことないですけど、あの技は一体……」

律子「へぇ、珍しい技を使いますね」

小鳥「知ってるんですか? 解説の律子さん!」

律子「ストレッチマフラーホールドですね。あれはかなり痛いですよ」

小鳥「威力は太鼓判! さあ、真ちゃんはこの大技から抜け出せるか!?」

真「痛つつつつ! こ、このっ!!」

P「フンッ!」

              メギィッ!

真「たっ! ゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔゔ!?」

P「まさかタップはしないよな? 人の頭に蹴りかましておいて」

小鳥「ここぞとばかりに挑発が入ります、いやぁ、やっぱり根に持ってたんですねぇ」

律子「しかし、案外抜けられませんね、真……このまま決まってしまうんでしょうか」

真「ぐっ、ぐぅぅ……!!! うっ!? うぅぅぅ……!!!!」

P「……3、2、1」

        カンカンカン!!

小鳥「いやぁ、時間にして数分足らずですが、非常に泥臭い試合でしたね!」

P「まぁ、関節決められるかどうかの勝負だったんで」

律子「鼻血出てますよ、ほら」

P「どうもどうも」

真「……ま、けた……」

P「だから体格差とかあって無理って言っただろ。ほら、立てるか?」

真「足が、なんかギチギチいってます……それと、力が入りません」

P「……あー、悪かった。挑発されて、ちょっと強くかけ過ぎちまったかも……」

真「……ボク、こういう形で負けたの、初めてかもしれません……すごく痛いです……」

P「だからごめんって。今度お詫びするから、それで許してくれ、な?」

真「お詫び……? なんで、勝ったプロデューサーがお詫びなんか……」

P「いや、その……こんなことになったのだって、俺に責任がないわけじゃないだろ?
  それに、水に流すには俺が折れるのが一番だし。なんでも言ってくれ、出来る限りでお詫びするから」

律子(最初から挑発に乗らずにそうやってご機嫌とりしてればよかったのに……)

真「そうですか……分かりました。じゃあプロデューサー、ボクと結婚してください」

P「……は?」

真「ボク、ずっと夢だったんです。ボクより強くて、それでいて優しい人と結婚するの!」

P「えっ」

真「だ、だから!! えっと、ボクと、結婚してくれますか?」

P「……いやいやいや、えっ!? どうしてそうなった!?」

真「だ、だって……やっぱり、ボクだって女の子だから……その、強くて優しい人がいいし……」

P「そこじゃなくて、どうして今そういうことを言ったの!? そういう流れじゃないって思うんだけど……」

真「出来る限りのことなら、何でもしてくれるって言ったじゃないですか!!」

P「出来る限りにも限度がある! その辺はもう少し、俺の事も考えて……そうだ、今度可愛い雑誌のモデルオーディションに」

真「……ボクじゃ、駄目ですか?」

P「だ、だから……その……物事には順序があってだな……それに、ほら、真は765プロのアイドルだし……」

小鳥「問題ないですよ」

P「いや黙っててくださいよ!」

真「……プロデューサー、ボクのこと、嫌いですか?」

P「嫌いじゃない、けど……」

真「じゃあ好きなんですね! 結婚しましょう!!」

P「律子助けて! 真が壊れた!!」

律子「壊した、の間違いでしょ。小鳥さん、仕事に戻りますよ」

小鳥「えぇ~~~!? もう少し見ていたいですぅ……」

P「おいていかないで! 小鳥さんでもいいから、助けて!!」

真「やっぱりお互いに愛しあってない者同士の結婚なんて駄目ですよねぇ~!
  えへへ、でも、プロデューサーかぁ~……うん、ボク、いい家庭が築けそうな気がします!」

P「真、落ちつけ! と、とりあえず俺の話を聞け!! なっ!?」

真「あっ……ご、ごめんなさい……」

真「ボク、やっと理想の男性に巡り合えたから、ちょっと興奮しちゃって……
   そうですよね……イキナリ結婚なんて、ちょっと無茶、でしたよね……」

P「分かってくれたか?」

真「はい!! まずはプロデューサーの御両親に挨拶に行って、それからですよね!!!
  いつがいいですかね? ボクとしては、出来れば、早い方が……」

P「あぁ……駄目だ……分かってない……」

真「そうだ、プロデューサーって結婚式和風と洋風どっちがいいですか?
   ボク、ウェディングドレスが着たいんですけど」

P「もうやだ……誰か助けて……」

―――

P「……真、足の方は異常ないでしょうけど、違和感が消えるまでは仮眠室で寝とくよう言っときました」

小鳥「あれ、プロデューサーさん? 帰って来たんですか?」

P「来ちゃ悪いですか」

律子「というより、よく仕事に戻って来れましたね」

P「……『家族を養うために働かなきゃ』って言ったら、ニコニコしながら送り出してくれた」

小鳥「あらま」

律子「それはそれは、お熱いことで」

P「……なんとかなりませんか? もう、なんていうか、キツいんですけど……」

小鳥「あんな可愛い子がお嫁さんになってくれるって言ってるんだから、受ければいいじゃないですか
    っていうか、どこに拒否する要素があるのか、お姉さん理解できませんよ」

律子「これが美希あたりなら、年齢のこともあるし止めますけど……真はもう結婚出来る歳ですし」

P「そこをなんとか! 諭してやってくれないか!? 頼む!!」

律子「惚れた腫れたは当人同士の問題です。部外者の私が、真の気持ちを否定することなんてできませんよ。
    あとはお二人で話し合ってください。はい、これ残ってた書類です」

P「……」

P「……これは、夢……そうだ、夢なんだ……たかがプロレス一回で俺の人生がこんなに変わるはずがない……」

    ふらっ……

律子「あれ、どこに行くんですか?」

P「……なんか、熱出てきた気がする……書類は処理済ましておくから、早めに帰っていいか?」

律子「……まぁ、無理に止める理由はありませんね」

P「ありがとう……今日はゆっくり休ませてもらうよ」

律子「あ、そうだ。ついでに真を送って行って貰ってもいいですか?」

P「えっ」

律子「ほら、もう外も暗いですし。それに、負けて心が弱ってるところを一人で帰すのも……なんだかちょっと怖いじゃないですか」

P「で、でも、だな……今、真に会うのは……」

律子「今日のうちに話を付けておいた方がいいと思いますよ。明日、皆が居る前であれだと、それこそ業務に差し支えますし」

P「……」

律子「じゃあ、早退の手続きはこっちでやっておきますから、真のこと、お願いしますね」

小鳥「送り狼になっちゃ駄目ですからねー」

P「……」

―――

真「えへへ~♪」

      ぎゅーっ

P「ま、真……腕掴むの、やめてくれないか?」

真「えーっ!! いいじゃないですかー、子どもが産まれたらイチャイチャなんて出来なくなっちゃうんですよ?」

P(駄目だ……まだ頭の中が茹だってる……)

真「でも、でも……嬉しいなぁ……! ボク、ずっと前からこうやって、好きな人と腕組んで歩いてみたかったんです」

P「……意外と乙女チックだよなぁ、お前……」

真「あれ、今頃気付いたんですか?」

P「レッスンあがりにプロデューサーに向かって喧嘩吹っ掛けてくるような奴が乙女チックだとは思わないだろ……」

真「アハハ! ボクだって女の子ですから! 恋愛にも興味ありますし、夢だっていくつもありますよ」

P「……そうか」

真「そうですよ。だから、もう少し……こうやっててもいいですか?」

P「……駄目って言ったら?」

真「ちょっと寂しいですね」

P「……だったら、もう少しだけな」

真「いいんですか!? じゃあ、もう少し強く抱きついちゃいますね!」

       ぎゅーっ!

P(さて、どうやって真を落ちつかせるべきかな……律子も言ってたけど、このまま明日はヤバすぎる……)

真「……ねぇ、プロデューサー」

P「……なんだ?」

真「……ボクのこと、好きですか?」

P「……」

真「その……嫌い、だったら、言ってくださいね? ……ボク、その……そういうのに疎くて……
   あ、でも! 本とか読んで勉強はしてるんですよ!? でも、実際に、自分がこんな風なことするのは……初めて、だから……」

P(あ、駄目だ……この子意外と可愛い……)

真「だから、その……なんて言うか……プロデューサーはボクのこと、どう思ってるんですか!?
   そこだけ、ハッキリ教えてください!! もし、嫌いなら……ボクも諦めがつきますし……」

P(嫌いです!! なんて心にもないこと言えれば、どれだけ楽か……それに、嫌いなんて言ったら、真が事務所やめかねないしなぁ……)

真「……好き、ですか?」

P「……嫌いじゃない。うん、嫌いじゃない……」

真「もう! さっきからそればっかりじゃないですか!!
  いいですか、プロデューサー!? ボクは、好きですか? って聞いてるんです!!」

P「……嫌いじゃない、です」

真「……ちぇっ、プロデューサーの、イジワル」

P「じゃあ真は、俺のこと好きなのか?」

真「へっ? 好きですよ? これ以上ないくらい大好きですけど」

P「えっ」

真「でも確かに、あのストレッチマフラーもきましたねー! もう、バッチリボクの好みって言うか、運命の人に出会えたっていうか!」

P(……顔色一つ変えずに大好きだなんて……やばい、惚れそう……)

真「そりゃあ、もし嫌いな人だったら結婚してなんて言いませんよ!
   プロデューサーが好きで、その上ボクより強かったから、ボクは結婚したいって思ったんです!!」

P「……うん」

真「……ちょっぴり、グッと来ました?」

P「……正直、かなりグッと来た」

真「じゃあ、結婚しちゃいますか?」

P「……い、いや……それは……まだ……」

P(このままじゃヤバい……俺の方が流されちまう……ここは一旦体制を立て直さないと……)

P「と、とりあえず! 事務所では結婚とか、そういう話は禁止だ!」

真「嫌ですか?」

P「ああ、事務所でされると困るし嫌だ」

真「そうですか……じゃあ、こうやって二人きりの時だけにしますね!」

P「ああ、頼む。じゃあ、さっさと帰るぞ」

真「えーっ、もうですか!?」

P「夜遅くに出歩いてたら危ないだろ。ほら、家どっちの方だ?」

真「んーっと……あっちです」

P「よし、あっちだな」

―――

――― P家前

P「……」

真「あ、ここです! ここ!」

P「……えっ?」

P「……」

真「あれ、プロデューサー? 入らないんですか?」

P「いや……ここ、俺の家……」

真「はい! 今日からお世話になります!」

P「いやいや、な、なんで……?」

真「結婚を前提にお付き合いするわけですから、出来るだけ時間は共有したいなぁって……えへへ。
  あ、心配しないでください! その……婚前交渉とか、そういうのは……えっと……ボク、頑張りますから!!」

P「……」

P(落ちつけ……ここを超えられたら、おそらくそのまま一気に同棲とかが始まりかねない……なんとかして、真を追い返さなきゃ……)

真「プロデューサー? どうしました?」

P「……真、着替えとかは……?」

真「え? 急なことなんで持ってきてないですけど」

P「ないのか? ないよな!? いやあ残念だ!! ということで、今日は素直に家に帰ってくれ!! な!?」

真「んー、大丈夫だと思うけどなぁ。ほら、今日着てる分もあるし、いざとなったらプロデューサーの下着借りちゃいますし!」

P「現役アイドルが下着二日使い回しとか男の下着穿くとか言うな! 夢が壊れるだろ!」

真「……だったら、必要な物は後で取ってきます。それなら、一緒に住んでもいいですよね?」

P「だ、駄目だ! 今日は、その……部屋が散らかってるし!」

真「大丈夫です! 片付けるの手伝いますよ!」

P「いや、真には見せられないようなゴミとかもあるから、な!?」

真「……それって、どういうゴミですか?」

P「いや、それは、その……」

真「まぁいいや。とりあえず、立ち話もなんなんで、家に入って話しましょうか!」

P「だから待てって! 話を聞いてくれよ!」

真「駄目です! あ、鍵貸してください!!」

           むぎゅっ

P「わっ!? お、おい、真!? いきなり抱きつくな!!」

真「どこに隠してあるんですか~? ほら、出すなら早いうちがいいですよー!」

                 むぎゅっむぎゅっ!

P(助けて……誰か助けて……!!)

―――

真「へえ、キチンと整理整頓されてる。ちょっと意外だなぁ」

P「……お茶飲んだら帰れよ」

真「えーっ!!」

P「えーじゃない! 明日も早いんだし、さっさと帰って寝ろ!」

真「うわっ、エッチな本がある……見てもいいですか?」

P「やめろ、真。そういうのは、見つけたとしても見ちゃ駄目だ」

真「でも、その……今晩の予習をしておきたいし……」

P(……どうやっても、ソッチ系に行こうとする運命からは逃れられないのか……)

真「……」

       ぺらっ…… ぺらっ……

P(やっぱり、ここは一発、ガツンと言って、分からせるべきか……)

真「……わっ、嘘……うわ、うわー……」

P「……ちょっといいか、真」

真「ひゃ!? は、はい!?」

P「とりあえず、俺の話を聞いてくれるか?」

P「いいか、真。俺たちはアイドルとプロデューサーだ。だから、今はまだ、お前が望んでるような関係にはなれないんだ」

真「だったらボク、アイドルやめます」

P「えっ」

真「来る途中、ずっと考えてたんです。アイドルやめてプロデューサーのお嫁さんっていうのも、結構いいかなぁって……へへ」

P「い、いや、でも……その……そういうのってそんな簡単に決めることじゃないだろ……もっと考えて……」

真「結局、考えても答えが出ない問題ですし。どっちも取る、なんてのは、いくらボクでも無理だって分かりますからね。
  だから、プロデューサーが立場が気になるっていうんなら、ボクがアイドルをやめて、ずっと支えていってあげますよ!!」

P「真……」

真「とりあえず、明日も仕事があるし、今日はそろそろ寝ましょう! お布団敷きますね!!」

P「……いや、待て、待て待て。いいこと言ったような雰囲気で流そうったってそうはいかないぞ」

真「……駄目ですか?」

P「駄目だ」

真「……んー、じゃあ、結婚はもう少し先でもいいです! よし、じゃあ寝ましょう!」

P「無理やり流そうとするな。俺はお前にアイドルをやめてほしくない。
  だから、もし、それでも真がアイドルをやめるっていうんなら、俺は真の事を軽蔑するし、やっぱり真とは付き合えない」

真「……そっかぁ……」

P「だから、もう少し真は、自分の身をそんな安売りしないで……」

真「分かりました!」

P「……は?」

真「じゃあ恋人から始めましょう!! そういうことでいいですよね?」

P「……」

P「えっ」

真「見ててくださいね、いつか、アイドルしながらプロデューサーと結婚出来るようになりますから!!
  その時までは、恋人同士ってことで!」

P(おかしい……思ってたのと違う……)

真「んー、でも、恋人同士かぁ……あれ? 恋人同士でも一緒に住んだりしますよね?
  だったら、やっぱり今日からここに住んでも大丈夫、っと」

P「えっ!? いや、大丈夫じゃないと思うけど……」

真「そうだ! 恋人同士なら、いっぱいデートとかしましょうね! 二人で手を繋いで公園に行ったり、休みの日は暗くなるまで一緒にジョギングしたり!!」

P「なにそれキツそう……じゃなくて、一緒に住むとかそういうのは」

真「えへへ、それじゃあ、恋人ってことで……ふつつか者ですが、よろしくお願いしますね、プロデューサー!」

P(駄目だ……人の話をやっぱり聞いてない……)

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