教師「少年、お前昨日どこにいた?」 (52)

少年「……昨日はまっすぐ家に帰りました」

教師「そうか? 昨日の夕方にお前によく似た生徒が繁華街にいたけど……気のせいか」

少年「もしかしたら……いや、なんでもないです」スタスタ

少年「……」キョロキョロ
少年「ねえ裏、出てきてよ」

裏少年「なんだよ表、学校で呼び出すなんて珍しいな」

少年「昨日、繁華街に行った? 先生が僕に似た人を見たって」

裏少年「昨日は……行ってねえよ。それよりお前、今日はあの上級生にいじめられなかったか?」
裏少年「いじめられたらいつでも呼べよ、俺が代わりに戦ってやるから」

キンコンカンコン

少年「今日は会わないといいな……」テクテク

上級生A「おい待てよてめえ!」

少年「っ!」ビクッ

上級生A「こないだはよくもやってくれたな!」

少年「え、えと……なんのこと……」

上級生A「しらばっくれんな! 金貸せって言ったらボコボコにしてきたじゃねえか!」

上級生B「大人しそうな奴だと思ってたのにな……てめえみたいな奴にやられたなんて噂が立ったら、俺たちの面目丸潰れだ」

少年「それは、僕じゃなくて……」オドオド

上級生A「じゃあ誰だってんだよ!」

裏少年「……俺だよ」ドカッ

上級生A「うぐっ」

裏少年「てめーらが弱いからな、俺一人で充分勝てるんだよ」ドスッ
裏少年「分かったらさっさと帰れよ、てめーらに勝ったなんてクソみたいなこと言いふらすかってんだ」

上級生A「くそ……覚えてろよ!」

上級生B「なんだあいつ、いきなり雰囲気変わって……まるで二重人格じゃねえかよ」

裏少年「……まるで、じゃなくてまさしくそうなんだけどな」
裏少年「おら表、終わったぞ」

少年「あ……ありがとう裏。怖かった……」

裏少年「あのな、ビビる必要ねえよ。俺とお前、同じ体使ってんだからお前だって勝てるんだよ」

少年「む、無理だよ僕は……」

裏少年「ふーん。まあ確かに俺が出てる間、完全に消えちまうくらいだもんな」

少年「裏は僕が出てるときも、どこかで見てるんだよね」

裏少年「まあな」

少年「僕は駄目だよ、裏が助けてくれるときは怖くて……いつも記憶がなくて……」
少年「でも、ちゃんと戻ったらこうして裏が助けてくれたって分かるから安心だよ」

裏少年「……そうかよ」

ザワザワ

教師「席つけー。日直、朝の会」

キリーツ レーイ

少年「そういえば、裏」

裏少年「なんだよ」

少年「僕、昨日どうやって家に帰ったっけ」

裏少年「……どうしたんだよ急に」

少年「昨日……ううん、最近何だか記憶がなくて……学校出てから家に着くまでの記憶が」
少年「もしかしたら裏が出てて、何か知ってるんじゃないかなって」

裏少年「……わりーけど、知らねえな」

少年「そっか……」

ヒソヒソ

女子A「少年くん、また独り言だよ」

女子B「なんか気味悪いよね……ぱっと見少しおとなしいだけの普通の人なのに、いつも一人でボソボソ言ってて」

教師「……」

キンコンカンコン

教師「最近、繁華街でうちの生徒らしき学生を見かけたと連絡があった。そういうとこには行くんじゃないぞー」

ハーイ

教師「じゃあ終わり! 気を付けて帰れよ!」

ザワザワ

少年「今日はちゃんと、覚えてるといいな」

教師「……少年」

少年「はい? ……あ、また僕に似た人が繁華街にいるって話ですか?」

教師「いや、そうじゃなくて。この前三年生に囲まれてなかったか? まさかいじめ……」

少年「ああ、それなら大丈夫です。裏が……」
少年「いや、もう解決しました。僕のことを守ってくれる人のおかげです」

教師「友達か?」

少年「もっと身近で大切な人です。もしよかったら先生にも会ってほしいなあ」
少年「じゃあまた、さようなら」

教師「お、おう」
教師「……不思議っつーか、変わった生徒だよな……」

少年「でね、その時さ」

裏少年「あー、大丈夫だって。お前が知ってることは俺も全部知ってるから」

少年「そうだけど、裏と話がしたいんだよ」

裏少年「ったく、いつも一緒にいるのによ」

少年「あはは」
少年「そうだ、じゃあ逆に裏が知ってて僕が知らなそうな話してよ!」

裏少年「えっ……」

少年「それならあるでしょ? 僕は裏が出てる時のこと知らないし……」

裏少年「それは……その」

ブロロロ…プップー

男「おーい!」

裏少年「!」ビクッ

少年「……何だろうあの車。僕に向かって声かけてるのかな?」

男「無視しないでよ、俺だよ俺」

少年「えと、あの、あなたは……っ!」ガク

裏少年「……何の用だよ」

男「そんなつれないこと言わないでよ、俺と君の仲じゃない」

裏少年「無理矢理しておいて、よくも……」

男「はいはい、そんなこと言ってもやらせてくれるんでしょ……写真、撒かれたくないよね?」

裏少年「……っ」

男「ほら早く乗って、いつものホテル行こうよ」

裏少年「……いつか絶対、ぶっ殺してやる!」

バタン ブロロロ…

少年「ん……あれ?」パチリ
少年「僕、どうやって家に帰ったっけ」

裏少年「……普通に帰ってきて、そのまま寝たんだよ」

少年「そうなの? 全然覚えてないや……痛っ!」

裏少年「おい!」

少年「なんだろ、体が痛いような気がする。寝違えたのかな」

裏少年「そうだよ、きっと」

少年「うーん……?」

数日前

男「あの子いいね、大人しそうで可愛い顔してて……少し乱暴すればすぐ従順になりそう」
男「ねえねえ君!」

少年「……僕ですか?」

男「うん、ちょっとこっち来て付き合ってよ」グイ

少年「え、ちょ、待って……っ」ガク

裏少年「てめえ離せよ、何の真似だ」

男「あれ、何か雰囲気変わった?」

裏少年「いいから離せ、どうせやましいことでもするつもりだろ」

男「あーバレたか……だったら手荒にいってもいいか」

ガツン

裏少年「っ……!」ドサッ

男「さー一緒にホテル街行こうねー」

ブロロロ…

裏少年「あ、っ……!」

男「あー良かった良かった。君いいね、気に入ったよ」

裏少年「てめ……ぶっ殺してやる……」

男「その乱暴な言葉遣いも、見た目とギャップがあっていいねえ」パシャ

裏少年「な……何撮って……」

男「男の子なのに野郎に乱暴された証拠写真、ばら撒かれたくないよね?」

裏少年「ぐっ……」

男「言うこと、ちゃんと聞いてね?」

裏少年「このクソ野郎……!」
裏少年(駄目だ、表がこんな奴の餌食になっちゃ駄目だ……俺が、しっかり守ってやらないと……)

少年「……」ボー

教師「おい、大丈夫か?」

少年「あ、先生……おはようございます」
少年「何だか最近寝不足で……それに体も疲れてて」フラッ

教師「っと、危ないぞ……そんなに寝てないなら、保健室行って寝てこい」

少年「いいんですか? ありがとうございます……」フラフラ

裏少年「表、お前大丈夫か?」

少年「裏……なんだろ、頭ははっきりしてるのにどこかふわふわするんだ」
少年「裏はそんなことない?」

裏少年「俺は特に……体はもともとお前のもんだしな」

少年「失礼します……先生いないな。寝ていいかな」

裏少年「いいだろ、寝ろよ」

少年「うん、おやすみ……」スースー

裏少年「……やっぱ、こいつに負担かかってんだな……」
裏少年「でも俺が止めたら、あの男が何をするか……」

『……て、…………』

少年(……誰かの声がする)
少年(でも僕は保健室で寝てて……じゃあきっと、夢なんだ)

男『ほら、もっと腰上げて』

シコシコ

男『いいよ、その顔。悔しそうなのに気持ち良さそうで……』

少年(誰だろう、この人。どこかで見たような……)

裏少年「……っ、うぐ、あっ!」

少年(……裏?)

男『ねえ、ほんと頼むから入れさせてよ。お願い』

裏少年『だ、駄目だ……! そんなこと……!』
裏少年『そんなことしたら、あいつの体がっ……傷つくから……!』

少年(あいつって、僕のこと?)
少年(何をしてるんだろう。この夢、何なんだろう……)

少年「……」パチリ

教師「目ぇ覚めたか。調子はどうだ?」

少年「先生……うん、大丈夫です。ありがとう」

教師「4限目には出ろよ」

少年「うん……先生、僕のためにわざわざ来てくれたの?」
少年「ありがとう」

教師「いいんだよ、これくらい。じゃあ教室でな」

バタン

裏少年「……あれがお前の先生ね」

少年「あ、裏。おはよう」

裏少年「俺もよく寝たよ」

少年「……あの、夢」
少年「ううん、なんでもないや」

少年「……」

裏少年「最近、変な上級生が絡んで来なくなったな」

少年「……うん」

テクテク

少年(あの夢は、もしかしたら本当に起こったことなのかもしれない)
少年(でもそしたら、なんで裏は僕に何も言ってくれないんだろう)
少年(やっぱりただの夢? それとも、裏が隠し事をしてるのかな)

裏少年「表? 何かあったか?」

少年「え、ううん何も」

裏少年「……あのさ、お前は俺がいてどう思う?」

少年「いきなりどうしたの」

裏少年「いや、何か聞いておきたいなと思って」

少年「……すごく頼もしいし、楽しいし嬉しいよ」
少年「僕がクラスでいじめられてたとき、初めて裏が僕の中に出てきたんだ。そして僕に殴りかかろうとしてきた子を返り討ちにして……」

裏少年「あん時はその後が大変だったな」

少年「でも、そのおかげで僕はいじめられなくなったよ。裏がいてくれたから、僕は……」

裏少年「分かった、ありがと。いざ聞いてみるとなんか恥ずかしいな」

少年「……ねえ裏、裏は僕に……」
少年「……やっぱりなんでもない。早く家に帰ろうか」

ブロロロ

男「やあ、今日もよろしくね」

裏少年「……」

男「今度はどんなプレイしようか?」

裏少年「黙れ変態」

男「だってさ、挿入させてくれないとはいえ、俺専用の肉便器ショタをゲットしたわけだよ? 嬉しくて仕方ないんだよ」
男「とりあえず、いつものホテルに行くか!」

裏少年「……っ」

裏少年「気持ち悪ぃ……」フラフラ
裏少年「もうこんな時間だ……早く帰って寝ないと、表の体に影響が……」

教師「……おい、少年! お前少年だろ!」

裏少年「っ! やべ……」

教師「逃げるな、待て!」ガシッ

裏少年「しまった、くそ……」

教師「やっぱりお前、繁華街に出入りしてたのか」

裏少年「……見逃してくれよ」

教師「いや、それは……なんか、お前いつもと雰囲気違うな」

裏少年「えっ?」

教師「何か訳でもあるのか? 先生でよければ聞かせてくれないか」

裏少年「……」

裏少年「……俺は、少年じゃねえ」

教師「え?」

裏少年「俺は少年の双子の兄弟で、違う学校に通ってる。あんたとは何の関係もない……ちょっと違うけど、そんなとこだ。だから離せよ」

教師「そうか、少年にそんな血縁が……でも、そうだとしても離せないな」
教師「君も、何か問題抱えてるような顔してる。そんな生徒を放っておけないぞ、例え自分の教え子じゃなくてもな」

裏少年「……」

教師「家まで送るよ、少年の家は確か……」

裏少年「いい、帰れるから」スルッ
裏少年「それとこのことは少年には無関係だから、明日学校で会っても黙ってて欲しい。頼むから」

教師「あ、ああ……分かった」
教師「じゃあ繁華街の出口まで一緒に行くか。見送らなきゃ安心できないからな」

教師「じゃあ、本当に気をつけて帰れよ!」

裏少年「分かってる」

テクテク

裏少年「……あの教師、初めて会話したな」
裏少年「いつも表が出てるから……」
裏少年「なんだよ、俺のことまで気にかけるのかよ……」
裏少年「……」
裏少年「駄目だ駄目だ、俺は表を守るために生まれたんだ。ちょっと気に入ったからって、表の世界にでしゃばったら駄目なんだ」

キンコンカンコン

少年「……裏、なんだか調子悪い?」

裏少年「ちょっとだけな……疲れた」

少年「僕が知らないところで何かしたの?」

裏少年「いや、気にすんな……少し休めば治るから」
裏少年「悪いけど、ちょっと寝るわ。留守にするから喧嘩売られないようにな」スースー

少年「……」

教師「おう少年、今日は体調良さそうだな」

少年「先生……あの、ちょっと聞きたいんだけど」
少年「僕、最近何かおかしかったりしませんか?」

裏少年「んー……よく寝た」

少年「おはよう、裏」

裏少年「おう、おはよう」

少年「……裏さ、先生に会ったでしょ」

裏少年「えっ」ドキッ

少年「先生に聞いたら、僕の兄弟に会ったって……隠してほしいって言われたらしいけど、無理やり聞いたんだ」

裏少年「それは、その……」

少年「あのね、いいんだ。裏が先生と話したりするのは、僕も嬉しい」
少年「でも、もし裏が僕に内緒でつらいこととかしてるなら……それは嫌なんだ。もしそれで裏がいなくなったりしたら……」

裏少年「……心配すんな、大丈夫だよ」
裏少年「俺はいなくなんないよ。表が俺に助けを求める限り、いなくならない。そのために生まれたんだからな」

少年「……あはは、なんかかっこいい」

裏少年「だろ? だから誰よりもまず、俺を頼れよな」

裏少年「……ところで、何で俺があの教師と会話すると嬉しいんだ?」

少年「だって、裏にも先生を会わせたかったんだ」

裏少年「どうして?」

少年「先生いい人でしょ? 僕先生大好きなんだ。だから」

裏少年「え……っ?」

少年「好きな人に会わせたいって思うの、普通のことだよね?」

裏少年「お前……あの教師のこと好きなのか?」

少年「うん、いい人だよ」

裏少年「そっか……だよな、いい奴だ……」
裏少年「……」

教師「寄り道しないでまっすぐ帰ること、以上!」

ザワザワ

教師「っと……少年、ちょっとおいで」

少年「なんですか?」トコトコ

教師「もし、困ったことがあったら先生にいつでも電話しなさい。この番号にかけるんだぞ」ピラ

少年「え、あ……」

教師「お前の兄弟にも、番号伝えてくれないか? 気にせずかけてこいって」

少年「うん、分かった。ありがと先生」
少年「やっぱり先生はいい人だね、僕好きだよ」

教師「えっ?」

少年「じゃ、さよなら」スタスタ

教師「……あー、ドキッとした。やっぱり少し変わってるな」

少年「裏にもか……忘れないように、手に書いておこうっと」キュキュ
少年「これで裏がいつ来ても伝えられるな」
少年「……」
少年「最近、裏が昼間に寝ること増えたな。疲れてるのかな……」

ブロロロ…

少年「……あ」

男「おーい、おーい!」

少年「あの人……そうだ、保健室の夢で見た人だ!」
少年「じゃああの夢は……本当に……っ」ガク

裏少年「……危なかったじゃねーかクソが!」

男「ねえねえ、今日こそ生挿入させてよ」

裏少年「んなもん絶対しねえ……っ!」ビクン

男「いやあキツい口調で感じてるのもいいね、かわいい」
男「でもいつもと同じヌキ方も飽きてきたんだよな……」ブイイイイ

裏少年「やっ、あ……くっ!」ビクンビクン

男「まあ充分可愛いんだけどね」ペロペロ

裏少年「うう……」グタッ

男「あれ、力入らない? そんなにオモチャ気持ちよかった?」
男「……これはチャンスだな」

グイ

裏少年「え、や……何す、っ」

男「抵抗できないうちにブチこんじゃおう」

裏少年「ち、ちょっと待てよ! 約束が……」

男「こんな据え膳前にして約束もクソもあるか!」メリメリッ

裏少年「っぐ、やめ、裂ける……っ!」
裏少年「あ、あんま痛くすると……あいつが……」

男「君さ、しょっちゅうあいつあいつって気にしてるよね。誰のこと?」メリメリメリ

裏少年「あ、あぐっ……!」ガク

少年「……え、あ、何……」

少年「っ、痛い……!」

男「ん? 何か雰囲気変わった?」メリメリ

少年「いた、痛いっ! 助けて!」
少年「なんで僕、こんなこと……!」

男「へー入れると人格変わるのか。いいねそういう演出も」
男「ほーら入るぞ入るぞ」ズブブ

少年「ひぎ、あ、ああっ!」
少年「た、助け……誰か、誰か……!」

ブルルル ブルルル

少年「っ!」ビク

男「っち、こんなときに電話かよ……いいよ構わず続けよう、ね?」

少年「……!」ガバッ

男「あ、ちょっ……」

少年「ええと、ゼロキュウゼロ……」ピポパポ

男「っ、この野郎電話を! 返せ!」

少年「ニーゼロ……先生お願い出て!」

男「やめろ、このクソガキ!」ガシッ ボカッ

ガチャ

教師『はいもしもし?』

少年「!」

少年「先生助けて、お願いだから!」

教師『……少年か、今どこだ?』

少年「わかんない、ホテルみたいな部屋……っ!」ガバッ

ブチッ ツーツー

男「よくもやってくれたな……」

少年「……っ」

男「まあホテルみたいだけじゃ、折角の助けも来ないだろうけどよ……初めてのプレイなのに水差しやがって」
男「そんなに乱暴にしてほしいなら、してやるよ!」

少年「あ、やだ、やめてっ!」

バタンッ

教師「待てこの変態野郎!」

少年「先生!」

男「は……なんで……!」ダッ

教師「待て! 逃がさねえ!」

ガシッ ドカッ

男「」

教師「ふう……大丈夫か少年、怪我は?」

少年「平気……先生こそ、どうしてこんなに早く」

教師「ヤマ張ってたんだよ。ちょうどパトロール当番だったし、ロビーの人とは何度もやり取りしたことあるし、それにこないだ会った兄弟がいたのもこの辺りだしな」

少年「それでここが……」

ドヤドヤ

教師「おっと、少年ちょっと隠れてろ」

ザワザワ

従業員「こいつがうちを、児童ポルノに使ってた奴ですか」

教師「警察に突き出したいですけど、被害者がいることですし……俺は生徒の安全を第一にしたいのですが」

従業員「いいですよ、先生には見回りでお世話になってるし、ここは私が突き出します」
従業員「さ、皆さん道開けてください。性犯罪者運びますから!」ズルズル

教師「……もういいぞ」

少年「終わった……んですか?」

教師「ああ」

少年「……っう、わあああ」ボロボロ

教師「よしよし、怖かったな」ポンポン
教師「でももう大丈夫だ。先生と一緒に帰ろうな」

少年「……っ、はい」

教師「ご両親や、あの兄弟だって心配してるぞ?」

少年「……あ、れ?」
少年「そういえば裏……どうしてあんな急に入れ替わったの?」

シーン

少年「え、裏……裏?」
少年「なんで、何で返事してくれないの?」

教師「うら?」

少年「僕の兄弟……じゃなくて、あれはもう一人の僕なんです。僕の中に出てきてくれた、もうひとつの人格で……」
少年「今まで呼んだらすぐに来てくれたのに、何で……どうして……?」

教師「お、落ち着け少年!」

少年「……もしかして、僕が裏じゃなくて先生に助けを求めたから?」
少年「違うのに、僕は裏を頼らなくなったんじゃないのに……」
少年「どうしよう、僕……先生、僕、裏が……!」

教師「落ち着け! とりあえず、今日は帰ろう……二重人格ってことは、あいつはお前の中にいるんだよな?」
教師「今は少し待つんだ。待って、駄目だったらまた考えればいい」

しかし、いくら待っても裏は二度と現れなかった。
僕はまた一人になってしまった。
けれど今度は、先生が助けてくれた。クラスから浮かないように、みんなの中に入れるように手助けしてくれた。
そのおかげで、僕はクラスに馴染めるようになった。

月日が過ぎ、僕は学校を卒業した。
先生は今は違う学校に異動している。僕も進学し、新しい毎日を過ごしている。

裏にはもう二度と、会えないかもしれない。
そう思い始めた頃、僕はある夢を見た。

少年「……裏」

裏少年「久し振りだな、元気してたか?」

少年「うん……裏も、大きくなったね」

裏少年「まあな」

少年「……何で、あれから出てきてくれなかったの?」

裏少年「あんとき俺、恥ずかしい話だけど気絶してたんだわ」
裏少年「そんですぐ出てこられなくて」

少年「でも、それなら目が覚めてからでも」

裏少年「その後、いろいろ考えてさ……俺はお前を守るために生まれたのに、肝心なとこで守れなかったなって」
裏少年「その上お前があの教師の手助け借りて、クラスに馴染もうとしてるの見たらさ……俺、いらねーなって分かったんだ」

裏少年「思えばお前がクラスから浮くようになったのも、俺がいじめっこ殴ってからだったよな」
裏少年「その噂が広まって、クラス替えしてもなんとなく疎遠にされてよ」
裏少年「かと思えば変な不良ばっか寄ってくるし……俺のせいで、お前が間違った方向に行ってるんじゃないかと思った」

少年「そんなことない、裏は僕にとって……」

裏少年「ありがとな、でももう俺はいらない。それは確実だろ?」

少年「……正直、分からない。でも僕にとって裏は、大切な存在だよ。今でもずっと」
少年「元はと言えば、僕が呼んだから裏は来てくれたんだ。裏のせいじゃない、僕のせいだよ」

裏少年「……俺たち、二人で一つみたいなもんだよな」

少年「うん」

裏少年「……よかった」
裏少年「そろそろ行くわ。元気でな」

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