伊織「この人形……やっぱり変よ……」(124)
―収録終わり 楽屋―
伊織「あら……?」
無い……
置き忘れ……?
そんなこと……
亜美「おつかれーいおりん……どしたの?」
伊織「……あの、いつも抱いてる……」
亜美「あ、うさちゃんのぬいぐるみ!……あれ?無いね?」
伊織「そうなのよ……。置き忘れる……はずはないと思うんだけど」
亜美「大事にしてるもんねー」
あずさ「あら?どうしたの?」
亜美「あ、何か、うさちゃんのぬいぐるみがどっか行っちゃったらしいよ」
あずさ「あらあら~、大変!探さなくっちゃ!」
伊織「そ、そう?じゃあ手伝って貰おうかしら」
亜美「おっけー!」
伊織(その後、3人で部屋の隅から隅まで探したけれど、見つからなかった……)
あずさ「う~ん、無いわねえ……」
亜美「事務所にあったりとか?」
伊織「確かにテレビ局には持ってきたわ」
伊織「あ、私はもう少し探すから、二人は先に行ってて」
律子「どうしたの?」
伊織「あ、えっと、うさちゃんが……」
律子「……あ、ぬいぐるみの」
伊織「そうなのよ……大切なものだから、どうしても見つけないと」
律子「わかった。私も探しとくわ」
律子「あ、それから。ファンからの贈り物が届いてたから、ほら」
伊織「……人形……?」
律子「カワイイ人形でしょう?」
伊織(西洋人形かしら……。随分古いわね……。正直気持ち悪いんだけど……)
伊織「あ、うん。そこに置いといて。私うさちゃんを……」
律子「駄目よ!!」
伊織「ひっ」
律子「ファンの人が折角贈ってくれたものをないがしろにするなんて許さないわこんなにかわいいんですもの
ほらしっかり抱いて肌身離さずに持ち歩くのよほらかわいいかわいい似合ってるかわいいかわいい」
伊織「り、律子?」
律子「許さない許さない許さない許さない……」
伊織「わ、分かったわ。ほら、抱いてればいいんでしょ?」
律子「……」
伊織(律子、疲れてるのかしら……)
伊織(今日はスタッフの人に頼んで、もう帰ろうかしら)
―次の日 事務所―
亜美「おっはよー……うっ……」
あずさ「あらっ……」
伊織「何よ……」
亜美「その人形……どうしたの……?」
伊織「何か、ファンからの贈り物らしいんだけど……」
あずさ「ア、アンティークな雰囲気ね」
伊織「……無理しなくていいわよ」
亜美「もうぶっちゃけるけどさー、それ、持ってないほうがいいと思う」
あずさ「そうね~、飾ってる分にはいいんだけど……」
伊織「でも、持ってないと律子が怒るのよね」
亜美「えー、なんでー?」
伊織「こっちが聞きたいわよ」
伊織(まったく、律子ったらどうしたのかしら……?)
亜美「じゃあ、亜美達一足先に行ってるね?」
伊織「ええ、私もすぐ行くから」
prrrrrrrr
伊織「……電話よー?誰もいないのー?」
伊織「……仕方ないわね」
伊織「はい~、765プロです!」
『……』
伊織「あの?もしもし?」
『……』
伊織(無言電話かしら?全くもう……)
『……』
ガチャ
―ラジオ収録―
伊織「流石に、この人形抱いて収録はできないわね……」
伊織「外に置いておきましょう……」
亜美「……なんで外に置くのさ……?」
伊織「え?」
亜美「抱いててあげればいいじゃん、かわいいんだから」
伊織「ちょ、ちょっと、あんたさっき……」
亜美「ほらこんなにかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい」
伊織(これ……律子と同じ……)
伊織「わ、わかったわよ……」
―収録終わり―
伊織(何かこの人形、本当に気味悪いわ……)
伊織(悪いけど、ここに置いてっちゃいましょう……)
あずさ「伊織ちゃん?」
伊織「な、何?」
あずさ「今、そのお人形をここに置いてっちゃおうとしてるように見えたけど?」
伊織「うっ……、あ、あずさには関係ないでしょ?」
あずさ「……」ピクッ
伊織「な、何よ……」
あずさ「駄目よ!!!」
伊織「ひいっ」
あずさ「駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目駄目」
伊織(もう……何なのよ……)
伊織「こんなの絶対おかしいわよ……」
伊織「結局、どこにも置いてこれなかったわ」
P「おーい、おはよう」
伊織「何だかあんた見るのも久しぶりな気がするわね」
P「お前ももう売れっ子だからなあ」
P「……あれ?うさちゃんどうしたんだ?」
伊織「それがその……○×テレビに持って行ったときどこかに行っちゃって……」
伊織「ずっと探してるんだけど……」
P「ふーん、じゃあ俺も探しとくよ」
P「うさちゃんを持ってない伊織は何かしっくり来ないからな」
P「しかし、うさちゃんの代わりがこの西洋人形か……」
P「うーん……」
伊織「……何も言わなくていいわよ……」
人形「……」
prrrrrrrrrrrr
P「おっと、電話電話っと」
P「お電話ありがとうございます。765プロです」
『……』
P「あれ?あのー、もしもしー?」
『…………』
P「うーん?」
『………………よ…………』
P「はい?」
『……………行くよ…………』
ガチャ
P「切れちゃった」
伊織「何?どうしたの?」
P「いや、何か妙な電話でさあ」
伊織「無言電話?」
P「ああ……いや、最後に何か言ってたな……」
伊織「(何か……?)
―次の日―
小鳥「はい、はい、分かりました。お大事にしてくださいね」ガチャ
伊織「どうしたの?」
小鳥「プロデューサーさん、風邪で寝込んでるんだって。凄い熱らしくて動けないって」
伊織「え……?」
小鳥「心配ねー」
伊織「べ、別にあんなの何か心配じゃないわよ!タダの風邪でしょ?」
小鳥「へえ……」
伊織「な、何よ?」
小鳥「じゃあ…………なの……じゃって……わね……」
伊織「……?」
小鳥「じゃああんなの死んじゃっていいわよね?」
小鳥「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」
伊織「ちょ、ちょっと小鳥!」
小鳥「……」
小鳥「ピヨ?あ、あら、伊織ちゃん、どうしたの?」
伊織「……プロデューサーが、風邪で休むって……」
小鳥「あら、大変ね!」
小鳥「社長ー!プロデューサーさんがー!」
伊織(何コレ……絶対おかしいわよ……)
prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
伊織「!!」ビクッ
伊織「ちょ、ちょっと小鳥、電話ー!」
伊織「仕方ないわね……」ゴクリ
伊織「……はい、765プロです」
『………………』
伊織「また?ちょっとあんた、いい加減にしなさいよ!」
『…………て………』
伊織「な、何?」
『…………』ガチャ
伊織「……」
伊織(胸騒ぎがするわ……)
―Pの部屋―
伊織(来ちゃった……)
運ちゃん「えーっと、1890円です」
伊織「はい。あ、あの、少しここで待ってて貰えます?」
運ちゃん「ええ、あんまり遅くならなきゃいいですよ」
伊織「ありがとうございます~。あ、荷物置いて行きますね」
伊織(さすがにこの人形は置いて行きましょ)
運ちゃん「はーい」
ピンポーン
伊織「……出ないわね」
ガチャ
伊織「鍵、開いてるじゃない」
伊織「入るわよ~?」
伊織「うわ……汚い部屋ね、まったく……」
P「う~ん……」
伊織「あ、起きたわね?」
P「うわっ……、伊織……、何でここに?」
伊織「まあ、ちょっとね……お見舞いに……」
P「そ、そうか。わざわざ済まないな」
伊織「べ、別に心配してたわけじゃないんだから!」
伊織「そ、それにしても、昨日は元気そうだったのに、自己管理がなってないわね」
P「面目ない」
P「ちょっとな……笑うなよ」
伊織「何よ?」
P「昨日、人形に……食われる夢を……」
P「で、今朝起きたら高熱が……」
伊織「……」
P「まあ多分明日には……」
P「!?」
P「あ……あ…………」
伊織「どうしたの?具合でも悪いの?」
P「あ、あそこ……」
伊織「あそこって……」
伊織「!!」
P「に、人形が……人形が……」
伊織「あ……あの人形、どうしてここに……」
人形「……」
伊織「……」
P「……」ガタガタ
伊織「……ごめんなさい……持って帰るわ……」
伊織「あのっ……お大事にね……」
P「伊織……」
prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
P「け、ケータイか……」
P「は、はい」
『…………わたし……を……』
P(あの時と同じ!)
―外―
運ちゃん「お帰りなさい、早かったですね?」
伊織「あの、ちょっと聞きたいんだけど……」
運ちゃん「はい?」
伊織「この人形、私、置いて行かなかったかしら」
運ちゃん「はあ?あ、そういえば、置いて行きましたね?」
運ちゃん「あれ?でも、今……?あれ?」
伊織「……まあいいわ。元の765プロまでお願いします」
運ちゃん「うーん……?」
―事務所 今日の仕事終わり―
伊織(絶対変だわ、この人形……)
伊織(お祓いでもしてもらおうかしら……)
prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
伊織「ひいっ!」
伊織「だ、誰か、電話よー!」
伊織「例によって誰もいないのね……」
prrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr
伊織「は、はい、765プロ……」
P『伊織か?』
伊織「プ、プロデューサー……?」
伊織「うっ……ぐすっ……」
P『伊織、ど、どうしたんだ?』
伊織「最近、変なことばっかり起こって……もういやぁ……」
P『な、泣くな伊織!そう、その人形なんだけどな』
P『どうもいわくつきの人形らしいんだ』
伊織「……いわくつき?」
P『ああ、有名な呪いの人形らしい。すぐに呪いを解かないと大変なことになる』
P『いまから、俺の言うとおりにしてくれ』
伊織「わ、わかったわ……」
伊織「えーっと……」ガサゴソ
伊織「これね?蝋燭……」
伊織「あと、洗面器に水っと……」
伊織「えーっと、鏡は……私の手鏡と……」
伊織「全部揃えたわよ」
P『ああ、おつかれさま』
P『じゃあ、そいつらをな、会議室の四隅に配置して……』
伊織「人形は?」
P『ん?……ああ、蝋燭の近くに置いてくれ。お前の私物、ハンカチとかの上に乗せてな』
伊織「……できたわ……」
P『よし、じゃあ、そのまま夜12時まで会議室にいるんだ。誰か来ても絶対に開けちゃ駄目だぞ』
P『いいか?絶対にだ』
伊織「……あの……」
P『どうした?』
伊織「私のケータイにかけなおしてくれないかしら……?」
伊織「その……会議室に電話無いでしょ?一人じゃ怖くて……」
伊織「あんたの声、聞いてれば、ちょっとは気がまぎれるから……」
P『ん?ああ……お安い御用さあ』
―会議室―
伊織「うう……」
伊織「これって、電気とか付けちゃダメなの……?」
P『伊織、頑張れ!』
伊織「わかったわよ……」
伊織「もうすぐかしら……?」
23:25
伊織「あと30分くらいね……」
P『ああ、あと30分だ!』
ドンドンドン!
P「伊織!!ここか?開けてくれ!!伊織!!」
伊織「ふぁ!!!」
P『来たな……いいか、絶対開けるなよ!』
伊織「分かったわ!」
P「伊織!だ、誰かと話してるのか?」
伊織「は、早く消えなさいよ偽者!!」
P「偽者?い、伊織!そいつは俺じゃないんだ!」
P「信じてくれ!」
ドンドンドン!!
伊織「か、会議室の扉はこないだ直したばかりで頑丈なんだから!」
伊織「あんたなんかに開けられるわけないでしょ?」
P「伊織っ!頼む、信じてくれ!」
P『伊織、奴の言葉を聞くな!』
ドンドンドン!!!
P「ゴホッ!ゲホッ!か、風邪がぶりかえして……」
P「た、頼む……伊織……俺を、信じて……」
伊織「……」
P『伊織!』
コブラ「おっと待ちなよ」
偽P「き、貴様は……」
コブラ「年端もいかねぇ女の子を怖がらすなんて、いい趣味じゃねぇな」バシュ
偽P「ぎゃあああああああ」グシャ
コブラ「女の子にはもうちょっとやさしくしなよ」
終わり
伊織「ねえ……」
P「な、何だ?」
P『どうした?』
伊織「私、あんたのことが好き……愛してる」
伊織「どう?私と付き合ってくれる?」
P「……」
P『当たり前じゃないか!誰よりも愛してるよ!』
P「……すまん伊織、俺にはできない……」
P「だって、言ったじゃないか!トップアイドルになって、お父さんやお兄さんを見返すって!」
P「今は律子がプロデューサーだけど、俺はお前がトップに上り詰めるまで、ずっとサポートする」
P「だから、それまでは付き合えない!スマン!」
伊織「……全くもう……馬鹿なんだから……」
P?『お、おい伊織?どうしたんだ?』
P?『止めろ、止めてくれ!』
伊織「……」ガチャ
伊織「入っていいわよ……プロデューサー」
P「い、伊織……!」
伊織「……何であんたがうさちゃん抱いてるわけ?」
P?『畜生ー!!!!!うさぎの人形め!!!」
P「伊織……良かった……」
フラッ
伊織「ちょ、ここで倒れないでよ!」
伊織「プロデューサー!!」
―後日談―
P「ど、どうだった……?」
伊織「うん、霊能者の先生、もう大したものは感じないけど、一応あの人形預かってくれるって」
P「よ、良かったー……」
P「もうあれ見るたび怖くて怖くて……」
伊織「で、あんたの方は?」
P「ああ……」
P「あの人形を送ってきたファンは、確認できなかった。律子も知らないそうだ」
伊織「そう……」
P「これからは、もっと厳しくプレゼントのチェックをしないとな」
伊織「で、あんたの方は?」
P「ああ……」
P「あの人形を送ってきたファンは、確認できなかった。律子も知らないそうだ」
伊織「そう……」
P「これからは、もっと厳しくプレゼントのチェックをしないとな」
あ、ミスった
P「あの時な……」
伊織「うん」
P「変な電話かかってきて」
P「わたしを伊織ちゃんのところまで連れて行ってって……」
P「で、その後気を失って……」
P「気づいたらうさちゃん抱いてたんだよ」
伊織「うさちゃん……」
P「で、物凄い胸騒ぎがして、とりあえず事務所まで行ってみたんだよ」
P「きっと、うさちゃんが、お前を守りに来てくれたんだな……」
伊織「うん……」
伊織「さて、行きましょうか」
P「おう」
伊織「レッスンスタジオまで直接行ってちょうだい?」
P「おう、やる気だな」
伊織「ええ」
伊織「だって、トップアイドルになったら、あんた付き合ってくれるんでしょ?」
P「ぶふっ!!い、伊織、アレはだな……」
伊織「にひひ!すーぐトップアイドルになっちゃうんだから!見てなさいよ!」
―後日談2―
霊能者「ああは言ってはみたけど……」
霊能者「あの人形からは、まだまだドス黒い波動を感じる」
霊能者「大体、アレが伊織さんにやらせようとしたのは」
霊能者「悪質な呪いの類……」
霊能者「早く除霊しないと……大変なことに」
霊能者「……!!!!」
霊能者「い、いない!!」
冬馬「何だこりゃ?きったねー人形だな」
人形「……」ニヤッ
終わり
メモ帳に間違って上書きしちゃってどうしようかと思った
響のより支援が付いている……
さすがいおりん……
読んで下さった皆さん、ありがとうございました
正直ドア開けたとこでバケモノみたいなPが居て後ずさりするけど事務所の中が真っ暗になってて
落ちてる電話をとってPにかけようとするが電話からも人形の声が聞こえて絶望の表情を浮かべるいおりんの後ろにデカイ顔が口開けてて暗転してEND…
みたいな話かと思ってたから安心した乙!
おっと、忘れてた
話の原型はトワイライトシンドロームというゲームの一篇
「テレフォンコール」という話から思いつきました
が、改造に改造を重ねたので面影はほとんどありません
機会があったらやってみてね
>>120
そういうのも考えたけど、俺はいおりんでバッドにはできん
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