百合「女子駅伝で走り終わった選手をハグする係になった」 (559)

百合「キマシタワー」

選手「ハァハァハァ・・・」

百合「ぎゅっ」

選手「ハァハァハァ」

百合「息が上がって真っ赤になった顔、火照った小さな身体、堪らん」ハァハァ

的な

はよ

はよよ

俺駅伝に詳しくないから書けないんだわ

ファッションレズの百合がガチな選手に迫られる展開しか思いつかんわ

誰かが書いてくれるまで落とさない

はよ!

選手「ありがとう、もう大丈夫・・・ハァハァ」

百合「ぎゅーー!!」

選手「も、もう大丈夫だよ・・・?」

百合(おへそサワサワ)

選手「にゃッ!?」

百合「ハァ~いい匂いだわ~」

選手「ハァハァ・・・」ギュッ

百合「!?」

選手「ハァハァハァ」ギュー

百合「え、ええ!? ちょ」

選手「脚がフラフラするの・・・しっかり支えてよ・・・ハァハァ」

百合「ンンーーーー!」

的なやつさぁ

俺の特技は途中で投げ出して誰かに押し付けることなの

いつもの貼っておきますねー

http://www.sports-neta.com/entry-images/long-distance-relay-angel-girl.jpg

選手「え!?ちょっ、どうしたの?」

百合「か、かわいい////」

選手「み、みんな見てるから、やm」

百合「じゃあ休憩所の個室行こっか////」

~個室の中~

百合「汗で蒸れていい匂い////」

選手「そ、そんなとこさわったら、んっ////」

百合(首筋ペロペロ)

選手「ひゃん/////」
(ち、力が入らにゃい・・・)

百合「あ、短髪ちゃんが来た! 短髪ちゃんもうすぐゴールだから頑張ってー!」

短髪(百合がいる……今区間1位だからこのままゴールすればいっぱい褒めてくれて……!!)ダダッ

百合「なな、なんでそんな場所でスパートかけるの!? ペース保ってペース!!」

短髪「うおおおおお!!」

実況「短髪選手謎のスパートでフィニッシュです! 見事区間1位で後続に繋ぎました!」

短髪「ハァ……ァ……ゆ、百合……」ヘナ…

百合「ナイスランだよ短髪ちゃん! よく頑張ったね!」ギュゥ

短髪(あぁ、百合めっちゃ良い匂いする……おっぱい当たって柔らかい……)

短髪「百合……私、区間1位取ったよ……」

百合「うん、すごいすごい……よく頑張ったね」ヨシヨシ

短髪「だから、私と付き合ってくれるって約束……」

百合「あ、ごめんね短髪ちゃん! 私今走ってるポニテちゃんのお迎えもしないといけないから行かなくちゃ!!」

短髪「へ?」

百合「短髪ちゃんしっかり休んでてね! すっごくカッコ良かったよ!!」

短髪「ちょ、待っ……」

短髪「待って百合!!」

百合「どうしたの短髪ちゃん? お水ならそこにあるけど……」

短髪「い、行かないで……」

百合「ふぇ?」

短髪「もう少しだけ、一緒にいて……」

百合「い、一緒にいてあげたいけどダメだよ……」

百合「ポニテちゃんめちゃくちゃ早いし、私次行く場所もよく分かってないから早めに行かないと……」

短髪「私が案内してあげるから、だから……」

百合「それこそダメだよ!? 短髪ちゃんはゆっくり休まないと!?」

短髪「うぅ、こんなのあんまりだぁ……百合を独り占めしてイチャラブ出来るって聞いたからこんなにも頑張ったのに……」

百合「ほ、本当にごめんなさい! 埋め合わせはちゃんとするから!」タタッ

短髪「あ、待って……行かないで……」

百合(ちゃんと全員にハグしないと先生に怒られちゃう……早く行かないと……)

短髪「百合ぃ……」

――――――――――――――――――――――――――――

実況「2区ランナーのポニテ選手! 凄まじいスピードでアスファルトを駆け抜けています!!」

ポニテ(百合とハグ百合とハグ百合とハグ百合とハグ百合とハグ)

実況「先ほどの短髪選手の魂を引き継いでいるかのような走りです!」

実況「2位との差はなんと3分12秒! こんなことがあり得るのか!?」

ポニテ(私が早くゴールすればするほど百合と一緒にいられる時間が増えるはずです……)

ポニテ(それに加え1位でゴールすれば、私は百合と結ばれて……!)

実況「ポニテ選手のペースがどんどん上がっています!! 一体どこまで速くなるんだ!!?」

ポニテ「待っててください百合っ……今行きますから……!」


百合「えーっと確かこの電車に乗って2駅、だったかな?」

百合「早くても1時間はかかるらしいから、今からなら普通に間に合うよね」

―――――――――――――――――――――――――――――――

ポニテ「はぁ……ぁ……!」

実況「ポニテ選手遂にゴールまで残り3キロ地点まで来ました!」

実況「区間記録を3分以上更新してのフィニッシュが予想されます!」

実況「この走りは女子駅伝の歴史に刻まれ続けることでしょう!」

ポニテ(百合はちゃんと待っていてくれるでしょうか……)

ポニテ(あの子方向音痴だから、もしかしたらフィニッシュしてもいないなんてことが……)

実況「どうしたんでしょうか!? ポニテ選手のペースが露骨に落ちています! これは何かのハプニングか!?」

ポニテ(きっとそうです……この前の予選会もそうでした……)

ポニテ(駅の乗り継ぎを間違えたとかでゴールしても百合がいなくて……)

ポニテ(いつもそうです……私だけいつも損な役回りで、きっとあの約束も何かの間違いで……)ヘナ…

実況「あーっと遂にその場に崩れ落ちてしまったァーー!! 一体彼女に何が起こったのか!!?」

続けよ

先生「おいコラァァァ!! なに止まってんだボケェェ!!」」

モブ「ポニテちゃん頑張って! まだゴールしてないって!!」

ポニテ「もういいんです……ゴールしても百合はいないんですから、私が走る意味なんて……」ポロ…

モブ「いきなり何言い出してるの!?」

実況「泣いています! ポニテ選手泣いています! 怪我でしょうか!? 一体何が起きているんでしょうか!!?」

先生「あのアホ……! なんでこのタイミングでネガ思考発動すんだよ……!」

モブ「前の予選会で百合が間に合わなかったの思い出してるのかも……」

先生「走れポニテ!! 百合ならちゃんとゴール地点で待ってる!!」

ポニテ「嘘です……去年の大会もそう言っていませんでした……」

先生「今回はちゃんと待ってるから走れ!!」

ポニテ「ここに連れて来てください……そうじゃないと走りません……」

先生「こんっのクソレズがぁぁ……!!!」

モブ「先生抑えて抑えて!!」

実況「ポニテ選手が止まったまま30秒が過ぎています……一体どうなるのでしょうか……?」

先生「おいコラポニテェェ!! テメェだけの大会じゃねーんだぞ!? いいから走れ!!」

ポニテ「アスファルトが冷たくて気持ち良いです……」フフ…

先生「チッ……おいモブ! 百合に電話繋げ!!」

モブ「今かけてます!!」


実況「1分が経過し、刻一刻と時間が過ぎています……! 区間記録大幅更新を目前にしてまさかのリタイアなのか……!?」

百合『はい、もしもし?』

モブ「あ、百合!? 今どこにいるの?」

百合『今は電車の中だけど……』

モブ「でで、電車ぁ!?」

先生「ハァ!?」

百合『他の人に迷惑だから切るね。たぶんあと5分もすれば迎えると思うから』

モブ「5分じゃ間に合わないよ!?」

百合『え、ななななんで!? ポニテちゃんそんなに速いの!?』

先生「おい百合テメェどういうことだ!? 短髪にハグしたらすぐにこっち来いって言ったろ!?」

百合『わ、私ちゃんとすぐに向かいましたよ……?』

先生「すぐに向かってなんで電車なんだゴラァァァ!!」

百合『ひぃぃぃ!?』

モブ「せ、先生落ち着いて!!」

ポニテ「ほら、やっぱりそうじゃないですか……どうせそんなことだろうと思ってましたよ……」

ポニテ「いつもいつも私だけ……」ブツブツ

実況「ポニテ選手呪詛を唱え始めています!! これはもうリタイアなのか!?」

先生「クッソ……! おい百合! 今ポニテに代わるから元気付けろ!!」

百合『ふぁ!? ポニテちゃんそこにいるんですか!?』

先生「お前のせいでアスファルトと結婚中だ!! とにかくなんとかして走らせろ! いいな!?」

百合『そそ、そんなこと言われても……てか今電車の中で……』

モブ「ポニテちゃん! 愛しの百合ちゃんだよ! はい!」

ポニテ「百合……?」

百合『へ、あ、えっと……ぽ、ポニテちゃん? なんかよく分かんないけど大丈夫……?』

ポニテ「私は極めて元気ですが……一体何の用ですか? 競走中に電話をかけてくるなんて極めて非常識だと思いますが」

百合『ご、ごめんなさい……』

ポニテ「それにその音……まさか電車の中ですか? 一体どういう神経をしていれば電車内で通話を……」

先生「そんなに元気ならとっと走れゴラァァァ!!!」

モブ「はは、こんな時でも相変わらずの豹変っぷり……」

百合『ほ、本当にごめんね? こんな非常識なことしちゃって……今すぐ切るから、ポニテちゃんは』

ポニテ「ま、待ってください!! 誰も切れなんて一言も言ってません!!」

百合『ご、ごめんなさい……』

ポニテ「あっ……ゆ、百合が謝るようなことでもありません……私こそ大きい声を出してしまって……」

先生「早く走れぇぇえええぇ!!!」

実況「ポニテ選手携帯にて誰かと通話している模様です!! 止まって2分近くになりますが走り出すことはあるのでしょうか!?」

百合『えっと、先生からポニテちゃんがアスファルトと結婚したって聞いたんだけど、どういうことなのかな……?』

ポニテ「アスファルトと結婚? 意味が分かりません。私は百合としか結婚は……」

百合『わ、私と結婚……?』

ポニテ「なんでもないです!! とにかく私は元気ですから、百合はゴール地点で待っていてください!」

百合『うん、分かった。ポニテちゃんあともうちょっとでゴールなんだよね? いっぱい応援して待ってるから頑張ってね』

ポニテ「はい!」

実況「ポニテ選手遂に立ち上がりました! その表情はさっきまでとはまるで別人です!!」

モブ「来た! 復活!!」

先生「はぁ……手間かけさせやがって……」

ポニテ「あの、百合……約束、覚えてますか……?」

百合『約束?』

ポニテ「もし区間1位でフィニッシュしたら、私と付き合って……」

百合『ごめんなさいポニテちゃん! そろそろみんなの視線が痛いから切るね!』

百合『とにかく頑張ってゴールしてね! いっぱいお祝いするから!」

百合『じゃあまた後で!』ピッ

ポニテ「……」

先生「おい、2位がすぐそこまで迫ってんぞ。このままだとお祝いも無しだ、さっさと走れ」

ポニテ「……今から最後尾に1分差付けられようと、1位以外でのフィニッシュはあり得ません」

先生「こっちは大会新記録狙ってんだよ、お前の順位なんざどうでもいいからさっさとタイム縮めろ」

ポニテ(待っていてください百合! すぐに行きますから……!!)ダダッ

実況「遂に! 遂にポニテ選手が走り出しました!! まるで短距離走のような凄まじいスピードです!!」

モブ「ポニテちゃんやっぱはやっ」

先生「あのムラっ気と性癖がなけりゃ本物の怪物なんだがなぁ……」

ポニテ(百合百合百合百合百合)

モブ「百合はどうするんですか? あの子の5分は推定15分ですよ?」

先生「今からこっちに来させたら次に影響が出る。今から電話して3区間目のゴールで待つよう言っとけ」

モブ「はーい……」ハハ…

――――――――――――――――――――――――――――――――――

実況「凄まじい! 凄まじいですポニテ選手!!」

実況「トラブルで3分間の遅れを出しながらもなお各校エースを置き去りにしています!!」

ロリ「ポニテちゃん相変わらず速いなぁ……あの子のあと走るってある意味プレッシャーだよ……」

ロリ「私あんまり速くないし、憂鬱だなぁ……」

実況「ポニテ選手残り1キロです! 拍手喝采の中アスファルトを駆け抜けて行きます!」

ロリ「うわ、もう来る……てか百合ちゃんいないけど大丈夫なのかな……?」

ロリ(この前の予選会でも百合ちゃんにハグしてもらえなくて死んでたけど……)

ロリ「まあ、私が考えてもどうしようもないか。むしろどうでもいいし」

実況「遂にゴールが見えました!! 大幅に区間記録を更新してのフィニッシュが予想されます!!」

ポニテ(百合!? 百合はどこですか!? 百合!!)

ロリ「うわ、来た……てか絶対に私のこと見てないしアレ……」

ポニテ「ロリ!! 百合はどこですか!?」

ロリ「あーっと、百合ちゃんならトイレ行ってるよー。もうすぐ帰って来ると思うー」

ロリ(フィニッシュ直前で倒れられても困るし、ごめんねポニテちゃん)

ポニテ「分かりました! ロリ、どうでもいいですがあとは任せましたよ!!」

ロリ「ポニテちゃんのそういうところ私嫌いじゃないよ」

実況「ポニテ選手フィニッシュです!! トラブルに苛まれながらも見事に走り抜き、ロリ選手に繋ぎました!!」

ポニテ「やりましたよ百合、区間1位です……これで私は貴女と結ばれて……」

ロリ(そういえば百合ちゃんそんなこと言ってたなぁ……)

ロリ(どうせ先生に言わされたことだろうし、普通に考えたら信憑性ゼロなのにどうして短髪ちゃんとポニテちゃんは信じちゃうかなぁ)

ロリ(まあそういう単純なとこってある意味羨ましくもあるけど……)

実況「次にバトンが渡ったのはロリ選手! 小さいながらも粘りのある堅実な走りで3区を走り抜けます!」

ロリ(何はともあれ私は私のやるべきことをやろう。こんだけ差開けててくれてたらまあ抜かれるなんてあり得ないし)


ロリ(……百合ちゃん、ゴールで待っててくれるかな)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

百合(2区はもういいから3区に行けって言われたけど、本当にいいのかな……?)

百合(確かに3区のゴール地点には早く着いたけど、ポニテちゃんにハグしてないし……)

百合(可哀相、だよね……? 予選会の時もハグ出来なくてポニテちゃんすっごく落ち込んでたし……)

実況「1位を走るロリ選手、短髪選手とポニテ選手が作ったリードを確実に守っています!」

百合(ロリちゃんが来るまでまだ時間あるし、先に電話で謝っとこう……)

百合「……」

百合「あ、ポニテちゃん携帯持ってなかったんだ」

百合(この前みたいにあとで謝ればいっか……)

百合(短髪ちゃんも大丈夫かな……置いて来ちゃったから心配だよ)

百合(無理してこっちに来なかったらいいけど……)

実況「あーっと!!」

百合「?」

実況「ロリ選手転びました! 転倒、転倒です!!」

百合「えっ……!?」

 
 
ロリ「いったぁ……」



実況「ポニテ選手に続きまたしてもハプニングです! ロリ選手立ち上がる事が出来るのか!?」

百合「ろ、ロリちゃん……!!」


ロリ(うっわ、膝から血出てるし……それに足首も、これ……)


実況「よろけながらも立ち上がり走り出しましたがとても辛そうです!」

実況「2位との差は大きく開いていますが、ロリ選手は無事4区にバトンを繋ぐことが出来るのか!?」

百合「あ、あわわわ……どうしよう、ロリちゃんが……」

妹「どうしたのお姉ちゃん? 顔真っ青だけど、一体何が……」

百合「大変だよ妹!! ロリちゃんが転んで怪我しちゃった!!」

妹「なっ……そ、それって大丈夫なの!?」

百合「わかんない……ロリちゃんは頑張って走り続けてるけど、すごく辛そうで……」

妹「うっわぁ、めっちゃ血出てんじゃん。止めた方がいいんじゃ……」

百合「そ、そうだよね!? 私行って来る!」

妹「待って待って! それは先生たちの仕事だからお姉ちゃんは……!」

百合「ロリちゃんが怪我してるのに見てるだけなんて出来ないよ!?」

妹「お姉ちゃん……」

百合「妹は次走らないとだから、ここで待ってて。私行って来る」

妹「……分かった。ロリ先輩のこと、よろしくね」

百合「うん、任せて!」

百合(待っててねロリちゃん、今行くから……!)


妹(お姉ちゃんのあんな顔、始めて見たかも……)

妹(ダメだダメだ。私は自分のことに集中しないと……)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ロリ「はぁ……はぁ……」

実況「ロリ選手、さかんに右足を気にしながらも走り続けています」

実況「残り3キロ地点でのトラブル。まだ棄権は宣言していませんが、それも時間の問題でしょうか……?」

ロリ(これキッツいなぁ……)

ロリ(膝擦りむいたのはまだしも、足首捻ったっぽいのがヤバい……)

ロリ(走れないレベルなら潔くリタイアするんだけど、この中途半端な感じがまた面倒くさくて……)

実況「後続にとってはこれ以上のチャンスは無いでしょう。これを機に大きく開けられた差を縮められることが出来るのか!?」

ロリ(あー、ドジ踏んじゃったなぁ……)

ロリ(短髪とポニテちゃんが速かったから油断しちゃったのかも……いや、他人のせいにするのは良くないんだけど)

ロリ(先生うるさいだろうなぁ。大会新記録本気で狙ってたっぽいし……あー、めんど。絶対に怒られる)

実況「ロリ選手賢明に足を庇いながらも走り続けます! なんて健気な姿でしょうか!」

ロリ(もう悲劇のヒロイン演じて大人しくリタイアしようかな、そうすれば私が責められることはないだろうし……)

 「ロリさん頑張ってー!」

 「頑張れー! 頑張れー!」
 
 「負けるなー! あともう少しだぞー!」

ロリ(うっざいなぁ……頑張れ頑張れって、じゃあお前らが走れよめんどくさい……)

ロリ(この痛みも辛さも分かんないくせに無責任な言葉かけんな鬱陶しい……)

 「ロリちゃん頑張ってー!!」

ロリ(どうせ私がこんなナリしてるから同情してるんでしょ……死ね、全員漏れなく地に這いつくばって死ね)

実況「ロリ選手走ります! 一緒に戦うチームのため、賢明に、賢明に走り続けます!!」

ロリ(とか今頃言われてるんだろうな……)

ロリ(そういうお涙頂戴みたいなの一番嫌いなのに……あー、もう本当に面倒くさくなってきたよ)

ロリ(別に誰のために走ってるわけでもないんだし、もうやめよ……)

実況「あーっと! 遂にロリ選手立ち止まってしまいました! 限界が来てしまったんでしょうか!?」

ロリ(心残りがあるとすれば、みんなに本気で申し訳ない、ってことくらいかな……)

ロリ(短髪とかポニテちゃんはまあアホだからいいけど、妹とか百合とかは真面目に頑張ってたし……)

ロリ(アイツとかは今年で最後だから、こういう結果になるのは……まあ最後って言うなら私もそうだけど……)

 「大丈夫か君!?」

 「もう走れないならこれ以上は……!」

ロリ(3年間の集大成がこれか……適当にやって来たことの報いなのかも……)

ロリ(個人的にはこういう終わり方も悪くない、かな……)

実況「頑張れ! 頑張れロリ選手! チームのためにも応援してくれる人たちのためにも、その足でゴールを……!」

ロリ「……すみません」

ロリ「もう走れないっぽいんで、棄権を……」


百合「ロリちゃん!!」


ロリ「え……?」

百合「大丈夫ロリちゃん!? わわ、こんなにも血が出て……!」

ロリ「百合ちゃん、どうしてここに……?」

百合「ロリちゃんのことが心配だから飛んで来たの!」

ロリ「そ、そっか。方向音痴なのによく来れたね……」

百合「コース逆走するだけだから……ってそんなことより!」

百合「ロリちゃん! もうこれ以上走っちゃダメだよ!」

ロリ「え……?」

百合「足首も真っ赤だし……二度と走れなくなっちゃったらどうするの!?」

ロリ「べ、別に私が陸上やってるのは趣味だし……走れなくなってもいいっちゃいいんだけど……」

百合「全然良くないよ!?」

ロリ「良くないって……ここで私が走らなかったら終わりなんだよ?」

ロリ「百合ちゃんは、私に走れって言わないの?」

百合「言わないよ! みんなだって絶対にそんなこと言わない! 大会なんかよりロリちゃんの足の方が大切に決まってるよ!」

ロリ「百合、ちゃん……」

百合「だから、もう走らないで……」

百合「私、ロリちゃんと一緒に走れなくなるなんて嫌だよ……」ギュ…

ロリ「わわっ」

百合「もう棄権しよ……? 先生は怖いし怒るかもだけど、私からも謝るから……」

ロリ「ゆ、百合ちゃん、あの、まだ競走中だしテレビとかにばっちり映ってる気がするから恥ずかしいんだけど……」

百合「あ、ご、ごめんなさい……」

百合「でもこうでもしないとロリちゃん走り出しそうだったから……」ギュ…

ロリ(……この子、なんでこんなにも良い子なんだろ)

ロリ(良い匂いするし)

実況「ロリ選手と謎の女の子が抱き合っています!? 一体何が起きているのでしょうか!?」

ロリ(みんなが好きになっちゃう理由分かるかもなぁ……)

モブ「百合ちゃん! ロリ先輩!」

百合「あ、モブちゃん……それに先生も……」

先生「おいロリ大丈夫か!?」

ロリ「あーっと……結構痛みますけど、ぶっちゃけるとまだ走れます」

百合「だからダメだって!?」

先生「ちょっと足見せろ」

モブ「うわ、すごく痛そう……」

ロリ「すみません先生、こんな初心者でもしないようなミスしちゃって……」

先生「陸上舐めてるからそうなるんだよボケナス」

ロリ「こんな時でも辛辣っぷりは相変わらずですね……」

百合「先生もうダメですよね!? ロリちゃん走れませんよね!?」

先生「耳元でキャンキャン喚くな鬱陶しい、それを決めんのは私らじゃなくてこのクソチビだ」

百合「そ、そんな……」

モブ「血のせいで派手には見えるけど、軽い捻挫ですよねこれ?」

先生「それでも走るのには相当な根気がいる。どうすんだ、ロリ」

ロリ「ど、どうするって……」

先生「走れないなら棄権しろ。走るならさっさと走れ、それだけだ」

ロリ「……」

百合「ロリちゃんダメ! 走っちゃダメだよ! 軽い捻挫かどうかなんて見るだけじゃ分かんないだろうし……!」

先生「棄権するなら早く宣言しろ、こんなとこで座り込んでたらもうすぐ来る後続に迷惑だ」

ロリ「……棄権しません。走れるんで」

百合「ろろ、ロリちゃん!?」

先生「最初からそう言ってろボケ……おら、さっさと走れ」

ロリ「言われなくても走りますよー……」

百合「だ、ダメだよロリちゃん! 行っちゃダメ……!」ギュゥゥ…

ロリ「ゆ、百合ちゃん? あの、離れて欲しいんだけど……」

百合「ダメだよ……どうして、そんなこと……」ウルウル

ロリ「あーっと、ほら、私あまのじゃくだから」

ロリ「頑張れって言われたら頑張りたくなくなるし……走るなって言われたら走りたくなっちゃうんだ」

百合「ロリちゃん……」

ロリ「だから、えっと……ゴールで先に待っててくれないかな?」

ロリ「私がフィニッシュした時……またハグしてよ」

百合「……」ウルウル

先生「おい百合、ロリもこう言ってんだ。そろそろ離れろ」

モブ「先にゴール地点で待ってよ? ね?」

百合「ロリちゃん、絶対に無理したらダメだよ……?」

ロリ「無理なんかするわけないよ。私の性格知ってるでしょ?」

百合「……」

先生「おい百合、行くぞ。これ以上はロリの邪魔だ」

百合「ちゃんとゴールしてね!? 私待ってるから!!」

ロリ「ありがと。すぐに向かうね」

実況「ロリ選手遂に走り出しました!! 怪我を堪えての必死の走り!」

実況「残り2キロ! チームメイトや監督の思いを背負い駆け抜けます!!」

ロリ(ちょっと休んだからかな……足、かなりマシになった気がする……)

ロリ(あそこまで差付けてもらっといて抜かれるのは嫌だから、ちょっと頑張ろうかな)


ロリ(百合も待っててくれるだろうし……ね)

すみません、10分ほど席外すんで保守お願いします……

再開

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

百合「ロリちゃん大丈夫かな……」

先生「まだ言ってんのかお前」

モブ「中継見てる限りじゃ元気に走ってるし、大丈夫だと思うよ?」

百合「でも……」

先生「心配するなら自分の心配しろ。お前4区目のゴール分かってんのか?」

百合「えっと……あそこですよね? ビルいっぱいあるところ」

先生「……モブ、お前コイツ連れて先に4区目のゴール向かっとけ」

百合「うぇえええ!?」

モブ「私は別にいいんですけど、ロリ先輩がゴールした時にいないのはまずいんじゃ……」

先生「走らせさえすればあとはどうでもいーんだよ。そっから先はこのアホの管轄だ」

百合「そ、そんなのってないですよ! 勝手にハグ係りに任命した上にそれって、横暴ですよ横暴!」

先生「知るか。お前のクソ方向音痴がなけりゃ全ては丸く収まることなんだよ」

百合「そんにゃ……」

先生「とにかく、私はロリを病院に連れてってから合流する。お前らは4区目のゴールだ、分かったな?」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

実況「ロリ選手遂に1キロ地点を通過しました!」

実況「仲間たちの思いに答えるため、怪我をした足を抱え妹選手の待つ4区地点に向かいます!」

妹(ロリ先輩すごい……これが3年生の気迫で……)

妹(ロリ先輩が怪我しながらあんなにも頑張ってるんだから、私も頑張らないと……!)

実況「もうゴールは目前です! 頑張れ! 頑張れロリ選手!!」

妹「……」

妹(ロリ先輩、なんであんなにも必死なのかな?)

妹(陸上は趣味って言ってたし、あんな怪我したら真っ先に棄権しそうなのに……)

妹(私があの人のことよく知らないだけかもだけど)

妹「……」

妹「もしかして、短髪さんやポニテさんみたいにお姉ちゃんのハグが目的で……」

妹(いやいや! ロリさんに限ってそんなことあり得ない……よね?)

妹「あの人そういう雰囲気全然ないし……いや、もしかしたら隠してるだけかもだけど……」

先生「ぶつくさ言ってねーで黙って待ってろボケ」

妹「な……も、もしかして声に出てました……?」

先生「もしかしなくても出てる、話しかけて来てんじゃねーのか思うくらいだ」

妹「げっ……」

先生「今まで面倒だから言わなかったけど、お前結構な頻度で心の声漏れてんぞ」

妹「……」

妹「な、なんで言ってくれなかったんですか……?」

先生「耳付いてんのか。今まで面倒だからって言ったろ」

妹「酷いです信じられません! それでも教師ですか!!」

先生「うっせえな。ほらもうロリ来るぞ、とっととスタート地点に着け」

妹「ってことは今までお姉ちゃんがどうのこうの言ってたの全部……」

実況「ロリ選手遂にゴールを捉えました! 後続に差を大きく埋められましたが未だトップは守っています!」

妹「わわ、ロリ先輩もう来てるし!?」

実況「バトンを受けるのは妹選手! 1年生ながら選抜された期待のホープです! 一体どんな走りを見せてくれるのか!?」

先生「気合い入れろよシスコンレズ! クソチビのケツはお前が拭け!」

妹「レズじゃねーよ!? てかその口の汚さいい加減にしてください訴えますよ!!」

ロリ「妹っ……! あとはお願いっ……!」

妹「せせ、先輩お疲れ様です! あとはゆっくり休んで!」

実況「ロリ選手フィニッシュです! 彼女は本当によく走り抜きました! どうか惜しみない拍手を彼女に!!」

ロリ「疲れた……もう無理痛い走れないっ……」ヘナ…

先生「お疲れさん。差はアホみたいに縮まったがトップ守っただけ褒めてやるよ」

ロリ「先生に、褒められたのとか……3年間で始めてかも……」キョロキョロ…

先生「あ、先に言っとくけど百合ならいねーぞ」

ロリ「え?」

先生「ほら、さっさとこっち来い。お前は今から病院だ」

ロリ「ちょ、ちょっと待ってくださいよっ……なんで、百合いないか、説明して……!」

先生「お前は座り込んだ時にハグしてもらったからもう十分だろ」

先生「ハグすらしてもらえずに死んでる奴もいるんだから我慢しろボケ、てか転んだくせに調子乗るな」

ロリ「あ、あり得な……」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

百合「良かったぁ……ロリ先輩、ちゃんとゴールして……」

モブ「だから言ったでしょ、軽い捻挫だから大丈夫だって」

モブ「それより今は妹ちゃんの応援しよ?」

百合「うん、それもそうだね」

百合「妹なら何かトラブルがない限りは大丈夫だと思うけど……」

モブ「ポニテちゃんもロリ先輩もトラブル続きだから侮れないね」

百合「うん、すごく心配……」

モブ「まあそう何度も面倒事は起こらないと思うけど……」

百合「とにかく今は4区のゴール地点に向かおう! あとどれくらいで着く?」

モブ「言あと5分くらい。全然余裕あるからゆっくり行けばいいよ」

百合「そっか。妹のお出迎え出来そうで何よりだよ」

モブ「あ、そうだ。私トイレ行くついでに飲み物買って来るから、百合ちゃんここで待ってて?」

モブ「すぐ戻るから」

百合「分かったー。あ、ついでにお水買って来といて!」

モブ「了解ー。百合は絶対にどっか行っちゃダメだからねー?」

百合「はーい」

モブ「知らない人に付いてっちゃダメだよー?」

百合「もう、子供扱いしないで!」

モブ「あはは」


百合「まったく、モブは失礼だなぁ……じっと待ってるだけなら誰でも出来るよ」ムス

百合「っと、妹はどうなって……」

実況「妹選手、1年生とは思えない安定感抜群の走りを見せています! これは来年以降も期待出来そうです!」

百合「うんうん、順調そうでなによりだね……」

百合「5区のランナーはエースの先輩だから、そこまで繋げばあとは……!」


短髪「百合……」

百合「ふぇ?」

短髪「ここに、居たんだね……探したよ……」

百合「たた、短髪ちゃん!? どうしてここにいるの!?」

短髪「百合がここにいるって聞いたから、走って来たんだ……」

百合「走って!?」

短髪「私、いっぱい頑張ったのに……ぐずっ、いなくなるなんて酷いよぉ」

百合「ほ、本当にごめんなさい短髪ちゃん……」

百合「でも走っちゃダメだよ……頑張ったあとだからこそいっぱい休まなきゃ……」

短髪「百合がいないから、全然休めなかったんだ……苦しくて、全然楽にならなくて」

百合「と、とにかくどこか休める場所に移動しよ? ここじゃ座る事も出来ないから……」キョロキョロ

短髪「それなら、すぐそこにある漫画喫茶に行こう……個室もあるからゆっくり休めると思うんだ……」

百合「ま、漫画喫茶の個室……? でも今は妹が走ってるし……」

短髪「大丈夫、そこから4区のゴール地点まではすぐそこだから……」

百合「あ、そうなんだ」

百合(それならすぐ駆けつけられるし、妹が来るまでなら大丈夫、だよね……?)

短髪「連れてってくれるよね、百合……」

百合「もちろん! 短髪ちゃんいっぱい頑張ったもん、それくらいお安い御用だよ」ニコ

短髪「ありがとう、すごく嬉しいよ百合……」

百合「ふふ、それじゃあ行こっか。私場所分かんないから案内してくれる?」

短髪「任せて。私がしっかりエスコートするから……」ギュ…

百合「よろしくね」

短髪「……」フフ…



モブ「お待たせー……ってあれ?」

まだやってたのかよwwww

>>130
そろそろ辛くなって来た

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

実況「妹選手危なげなく4分の1地点を通過しました!」

実況「このまま5区の先輩選手にバトンを繋げるのか!? エースの彼女にこのまま繋げられれば優勝はほぼ確実です!」


百合(プレッシャー凄いだろうけど頑張って妹……!)

短髪「……百合、着いたよ」

百合「ありがとう短髪ちゃん。ごめんね、疲れてるのにエスコートさせちゃって」

短髪「いいんだ、百合と一緒にいられるだけで疲れなんて吹き飛ぶから」

百合「もう、そんなこと言っちゃってー」

短髪「百合も移動が多くて疲れてるだろ? 2人で一緒にゆっくり休もう」

百合「うぅ、そんなこと言ってくれるの短髪ちゃんだけだよー……」ウルウル

短髪「百合のこと一番大切に思ってるのは私だからね……」

短髪「さあ、早く入ろう。予約してあるから部屋まですぐだよ」

百合「うん! それにしてもすごいね、こんなお城みたいな漫画喫茶、私始めて入るよ!」

百合「受付とか誰もいないし、やっぱ大きい場所は違うんだねー」

短髪「そうみたいだね……」

百合「廊下も長くて、部屋はいっぱいあって」

百合「こんな場所のどこに漫画が置いて……」

百合(……あるんだろう?)

短髪「百合、部屋に着いたよ。さあ入って」

百合「えっと……短髪ちゃん。ここって漫画喫茶、なんだよね……?」

短髪「ああ、漫画喫茶だよ。ここは個室ばかりの階で、漫画は3階にあるんだ」

百合「あ、そうだったんだ!」

百合「なんかホテルみたいで変だなー、って思ってたんだけど、そういう漫画喫茶だったんだね」

短髪「ホテルと漫画喫茶が一緒になったような場所だから、勘違いしてもしょうがないよ」

短髪「さあ、早く中に入ってゆっくりしよう」

百合「うん! まあでも、妹のペースを考えるとあと20分くらいしか居れないだろうけど」アハハ

百合「わー……すっごく綺麗な部屋……」

百合「すごいね短髪ちゃん! 最近の漫画喫茶ってこんなにも綺麗で……!」


ギュ…


百合「……短髪ちゃん?」

短髪「百合、ごめん……私、さっきまで走ってたから汗臭いよね……」

百合「そ、そんなことないよ……? 私女の子の汗の匂いって好きだし」

短髪「え、ホントに……?」

百合「う、うん、ホントだよ?」

短髪「じゃあお風呂入らなくてもいい……?」

百合「短髪ちゃんが気になるならお風呂は入った方が良いと思うけど……」

短髪「……私は入りたいけど、その間に百合がいなくなりそうで嫌なんだ」

百合「短髪ちゃんを置いていなくなったりなんてしないよー」

短髪「嘘だ。百合はさっき私を置いてどこかに行ったじゃないか」

百合「あ、あれはポニテちゃんが待ってたから……」

短髪「……それはつまり、百合は私とポニテならポニテの方が大切ってことなの?」

百合「どっちが大切とかはないよ……私にとっては2人とも大切な人で……」

百合「あ、電話……」

短髪「……」ガシ…

百合「え、っと……」

飯食ってるから帰って来なかったらすんません

はよ

寝て起きたら残っててビビった
風呂入ったら再開するんでもうちょっとだけ残しててください。7時くらいには書き始めます

短髪「出ないで、百合」

百合「え、でも……」

短髪「私は百合と2人きりでイチャラブ出来るって言われたからあんなにも頑張ったんだ」

百合「へ?」

短髪「だから今は私に対するご褒美の時間……それに余計な物が入り込むのはおかしいよ」

百合「あの、短髪ちゃん……私その話聞いてないんだけど……」

短髪「嘘だ。またそうやってはぐらかそうとして……もうその手には騙されない」

百合「だ、騙そうとなんかしてないよ!?」

百合「私は走り終わった人にハグしろって言われてるだけで、それ以外のことは何も……」

短髪「他のみんなにもそんな風にしてはぐらかしてるの?」

百合「え……?」

短髪「みんな百合のために頑張ってるのに、その気持ちを弄んで……」

短髪「ポニテなんて百合がいるから陸上をやっているようなものなのに、酷いとは思わないのか?」

百合「ち、違うよ……私は、そんなつもりは……」

短髪「無自覚ならもっとタチが悪い……」

短髪「思わせぶりなポーズだけでされて、肝心なことははぐらかされて……これ以上の地獄はないよ」

百合「……」

短髪「……自分の罪深さ、少しは理解出来た?」

百合「ご、ごめんなさい……私、頭悪いから……」

百合「まだ、その、頭の中ぐちゃぐちゃで……よく分かんなくて……」

短髪「少しずつ理解していけばいいよ」

短髪「みんなが百合に対してどんな気持ちを持ってるのか……それさえ理解出来ればあとは簡単な話だから」

百合「ゃっ……」

百合「え、えっ……? 短髪ちゃん……?」

短髪「まずは私の気持ち、教えてあげるね」

百合「な、何して、ちょ、待っ……」

短髪「百合……」チュ…

百合「っ~~~!!?」

短髪「好き、大好き……百合……」

百合「すす、ストップ! ストップだよ短髪ちゃん!!」

短髪「無理だよ……ずっと我慢して来たんだ、止まれるわけない……」

百合「ひゃっ、あっ……」

短髪(百合、やっぱりすごく良い匂いする……体も柔らかくて……)

百合「だだ、ダメだよ短髪ちゃん!? 私たち女の子同士なんだよ!? こんなこと、ゃっ」

短髪「百合だって走り終わった私たちにハグするんだ……これだってそれの延長みたいなもので……」

百合「ぜぜ、全然違うよ!?」

短髪「何が違うの?」

短髪「百合は私たちが好きだからハグする、私は百合が好きだからキスもするしそれ以上もする。同じことだよ」

短髪「それとも百合は私のことが好きじゃないの……?」

百合「た、短髪ちゃんのことは大好きだけど、こういう好きじゃ……」

短髪「好きに種類なんて無いよ。深いか浅いか、ただそれだけ」

百合「で、でもっ……」

短髪「……百合。君は何か勘違いしてないか?」

百合「え……?」

短髪「これは区間1位を取った私に対するご褒美……最初から百合に拒否権なんてないんだ」

百合「そ、そんな……」

短髪「今まで1位を取り続けてもハグだけで済まされ、恋心を弄ばれ……」

短髪「今まで溜まっていた分のご褒美とそれに対する償い。それが今、この時間だよ」

百合(た、短髪ちゃん……いつもと目の色が全然……)ゾク…

短髪「大丈夫。百合は目をつむって、じっとしてるだけでいいから……」

百合「ま、待って、まだ心の準備が、ちょ、や、ぁっ……」

百合「でで、電話!!」

短髪「え?」

百合「い、今も着信入ってるから、それだけ出てもいい……?」

百合「モブに声かけずにここまで来ちゃってるから、すごく心配してるだろうし……」

百合「それに事情も説明せずに急にいなくなってるから、もしかしたらここまで私のこと探しに来る、かもだから……」

短髪(ここを嗅ぎ付けられることはまず無いと思うけど……仮に見つかったら厄介だ)

短髪(まだレースの途中だから、先生は百合がいないのに気付いたら何をしてでも連れて来ようとするだろうし……)

短髪(それにみんなも私が抜け駆けしようとしてるのに気付いたら、それを妨害しに……)

百合「ダメ、かな……?」

短髪「……いいよ。電話に出て」

百合(やった……!)

短髪「その代わり、ここが気付かれないように上手く誤摩化してね」

短髪「もし百合が私を裏切るようなことしたら……優しくしてあげないから」

百合(何を!?)

百合「わ、分かった。短髪ちゃんの言う通りにするね……」アハハ

短髪「……」ジー

百合(どど、どうしよう……助けてとか言ったら絶対に短髪ちゃん怒るだろし……)

百合(でもこのままじゃ私の操が……いやそれよりも妹のフィニッシュに間に合わないのが……!)

短髪「……出ないなら続きするけど」

百合「で、出ます! 電話します!!」

百合(誰でもいいから助けて~~!!)ピッ

百合「も、もしもし……」

先輩『……百合か?』

百合「え……この声って……先輩ですか!?」

短髪(部長……?)

先輩『ああ、私だ。今どこにいる? 妹がもうゴールするぞ』

百合「うぇええ!?」

先輩『お前ハグ係とかいうのしてただろ? 間に合わなくていいのか?』

百合「えっと、間に合わないのはめちゃくちゃまずいんですが、その……」

先輩『迷子なのか? モブがお前が行方不明になったと騒ぎ立ててたが……』

百合「ま、迷子ってわけでもないんですが、その……」

短髪「……」ジトー

百合「えーっと、その……あはは……」

先輩『……モブが何十回と電話をかけていたらしいが、それに出られなかったこととお前の今の状況は関係あるのか?』

百合「は、はい……やむを得ない事情、みたいなのがありまして……」

短髪(嫌な予感がする……部長は鋭いから、早く止めないと気付く可能性が……)

短髪(でも今ここでいきなり通話を切ったらそれこそ……!)

先輩『……短髪とポニテもいなくなっているらしいが』

百合「!」

先輩『心当たりはあるか?』

百合「あ、っと、その……」

短髪(ダメだ! 気付かれる!)

短髪「百合! 電話を切って!!」

百合「へ……?」

短髪「早く!」

百合「で、でも……!」

先輩『はぁ……馬鹿者が……』

短髪「百合!!」

百合「ま、まだお話の途中だから、そのっ……」

先輩『百合、短髪に代われ』

百合「へっ?」

先輩『いいから』

短髪(くっ……! こうなったら携帯を奪って……!)

百合「た、短髪ちゃん! 先輩が電話代われって!!」

短髪「ななっ!?」

百合「ご、ごめんなさい……バレちゃった……」

短髪「そ、そんな……」

先輩『……おい短髪、聞こえてるか』

短髪「っ……」

先輩『耳が付いているなら返事をしろ。聞こえてるのか』

短髪「すみません部長! これには深いわけが……!」

先輩『今どこにいる?』

短髪「っ……よ、4区のゴール地点近くのラブ……じゃなくてビジネスホテルです」

先輩『そこからここまで何分くらいで着く?』

短髪「……走って大体10分ほどだと思います」

先輩『徒歩3分か。妹のゴールに間に合いそうで何よりだ』

短髪「うっ」

先輩『妹は遅く見積もってもあと5分ほどで着く。今すぐこっちに来い』

先輩『お前への説教は大会後のミーティングでだ』

短髪「あうぅぅ……」

先輩『もし妹の到着に百合が間に合わなかったら……どうなるか分かってるな?』

短髪「っ……」ゾク…

先輩『分かったらさっさとこっちに来い』ピッ

短髪「……」

百合「た、短髪ちゃん……? 先輩、なんて言って……」

短髪「あんまりだ……」

百合「へ?」

短髪「こんなのあんまりだ……やっと、やっと百合と結ばれると思ったのに、それなのに……」

百合「短髪ちゃん……」

短髪「こんなのって、ないよ……ぐずっ……うっ、うぅ……」

百合(私のせいで、こんなにも泣いて……)

百合「ごめんなさい……」ギュ…

短髪「っ……」

百合「私のせいで、辛い思いさせちゃって……ひぐっ、ごめんなさいぃぃ……」

短髪「なな……ど、どうして百合が泣くの!? 百合が泣くようなことなんて何も……!」

百合「だって……ぐずっ、短髪ちゃんのこと、泣かせちゃったからぁぁ……」

短髪「ちょっ、ゆ、百合っ」

百合「全部、私が悪いの……頭悪くて、方向音痴で、足も遅くて……どうしようもない、私が……」

短髪「ゆ、百合は何も悪くないよ! 全部勝手に暴走した私が悪いんだ!」

短髪「だ、だから泣き止んで……!」アワワ…


―――ガチャ


短髪「え……?」

百合「あ……」


ポニテ「……」


短髪「ななっ……!?」

百合「ポニテ、ちゃん……?」

ポニテ「……短髪、百合に何をしたんですか」

ポニテ「百合はどうしてそんなにも泣いているんです」

短髪(こ、このタイミングで……しかもよりによってポニテに……)

ポニテ「……説明してくれませんか?」

ポニテ「あなたたち2人がこんな場所にいる理由も含めて全部」

短髪(私を見る目が人間を見るそれになってないような……)

短髪(なんか殺気感じるし、あれ、私とポニテって友達だったよね……?)

短髪(いや私も逆の立場ならたぶん同じようになるんだろうけど……)

百合(ぽ、ポニテちゃんがこんなにも怒ってるところ、私始めて見て……)

ポニテ「……何も話さないということは、つまり、そういうことなんですね」

百合「わ、私たち何もしてないよ!? た、確かに短髪ちゃんとは危ないところまでは行ったけど……」

ポニテ「は?」

短髪(ちょ、百合っ)

百合「で、でも私キスくらいしかされてないから!!」

ポニテ「……短髪。親族に手向けるので、最期の言葉を聞かせてください」

短髪「ま、待って。落ち着いてポニテ。どうして私は死ぬ前提なの」

ポニテ「百合にキスしたんです、万死に値すると思いますが」

短髪「ば、バカを言っちゃいけないよ。キスなんて外国じゃスキンシップじゃないか」

ポニテ「ここは日本です。私の家は神社で朝昼晩みな和食です」

短髪「私の祖父はカトリックだ。和食は食べるが基本洋食だね」

百合(な、何の話……?)

ポニテ「抜け駆けは許さないと言ったはずですが。紳士協定もしっかり定めたはずです」

短髪「記憶に無いね。あと協定は破るためにあるものだと私は思う」

ポニテ「……どうやら私たちが分かり合うことはないようですね、元より分かり合う気も許す気もありませんが」

短髪「私こそ残念だよポニテ。百合を愛する者同士、君とは良い友人であり続けると思ったんだが」

百合「ふふ、2人とも喧嘩はダメだよ!? さっき走ったばっかなのにそんな……!」

短髪「百合、ここは私に任せて4区のゴール地点に向かって?」

短髪「妹のフィニッシュに百合がいなかったらきっと悲しむ。そして何より私はまだ死にたくない」

百合「短髪ちゃん……」

ポニテ「行かせませんよ百合。あなたには訊きたいことがたくさんあるんです」

ポニテ「あとまだハグしてもらってません。これだけは絶対に譲れないです」

百合「そ、そのことは本当にごめんなさいポニテちゃん……妹のお迎えが終わったらちゃんとしてあげるから……」

ポニテ「……それはつまり、私よりも妹の方が大切ということで」

短髪「百合、早く行くんだ。私もポニテと同じ人種だから分かる。今の彼女はすこぶる面倒くさい」

百合「わ、分かった……あの、短髪ちゃん、ポニテちゃんのことよろしくね……?」

短髪「うん、任せて」ニコ

ポニテ「どうしていつもこんな風に……私は短髪の魔の手から百合を助けに来ただけなのに、気付けば私が悪者に……」

百合「あ、あとでちゃんと埋め合わせするから! ポニテちゃんも短髪ちゃんもごめんなさい!!」ダダッ

ポニテ「待ってください! 百合! 百合!!」

短髪「落ち着きなって。あんまり必死なのは引かれるだけだよ?」

ポニテ「百合をこんな場所に連れ込んでおいてどの口が言ってるんですか!?」

短髪「自分がそういうこと出来ないヘタレだからって私に当たるのは良くないね」

ポニテ「あ、あなたと言う人は本当に……!」

短髪「さあ来るならかかって来い。私は通信空手で4段を取っている、そう簡単にはやられてあげないよ」クス

ポニテ「私は合気道4段柔道3段剣道初段です」

短髪「えっ」

ポニテ「百合の唇を奪った事実……絶対に許しません……」ユラ…

短髪「ちょ、ま、待って。落ち着いてポニテ。キスをしたのは唇じゃなくて首筋で……ぎゃあああああ!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

百合「お待たせしました!」

モブ「百合!」

先輩(間に合ったか……)

百合「心配かけさせて本当にごめんなさい!」

モブ「もう、いきなり消えて本当にビックリしたんだからね! 先輩から事情は聞いたけど……」

先輩「短髪はどうした?」

百合「あっと、たぶんポニテちゃんと一緒にいると思いますけど……」

先輩「アイツもか……まともにクールダウンもせずに動き回るなんて言語道断だぞ、まったく……」

モブ「あはは……」

百合「妹は今どの辺りで……?」

先輩「残り1キロだ。あと数分もせずに来るだろう」

先輩「たくさん褒めてやれ。1年ながら良い走りをしていた」

百合「せ、先輩が褒めてくれるなんて……私すごく嬉しいです!!」

先輩「お前のことを褒めたわけじゃないんだが」

百合「妹のことは自分のことみたいに嬉しいんで!!」

先輩「……そうか」

実況「妹選手残り500mです!! 負傷しながらも走り抜いたロリ選手の思いを継ぎ、賢明に走りました!」

実況「次のランナーはミス女子駅伝ことエースの先輩選手です!」

実況「女子駅伝は彼女のためにあると言われたほどの先輩選手、一体どんな走りを見せてくれるのか!? 区間記録の再更新はあるのか!? 注目が高まります!」

先輩「私の出番ももうすぐか……」

百合「先輩も頑張ってくださいね!私ゴール地点で待ってますから!!」

先輩「待っていてくれないと困るんだが……」

実況「あーっと遂に妹選手ゴールを捉えました!!」

百合「!」

先輩「来たか……」

実況「先輩選手にタスキを託すため、チームの思いを託すため、最後の力を振り絞り走ります!!」


妹「ハァ……ハァ……」


百合「妹ー!! もうすぐだよー! 頑張ってー!!」

妹(あ、お姉ちゃんだ……)

妹(道迷わなかったんだ……ってモブさんいたんだからそりゃそうだけど……)


百合「妹ー!!」


妹(あ、やっばい……ゴールした時にお姉ちゃんがいるって、これ思ったより嬉しいかも……)

妹(短髪さんとかポニテさんが最後にスパートける理由って、これだったんだ……)

妹(しんどくて、もう限界なはずなのに……力が沸いて来て……!)ダダッ

実況「妹選手ここに来てスパートです!! 凄まじい速さで先輩選手に迫ります!!」

先輩(妹もか……どいつもこいつも訳の分からんスパートを……)ハァ…

百合「い、妹!? ペース守ってペース!!」

妹(早く、お姉ちゃんに……ハグっ……!)

百合「妹!」

実況「フィニッシュです!! 妹選手ラストに凄まじいスパートをかけフィニッシュ!」

実況「先輩選手にタスキを無事渡しました! あとはキャプテンに全てを捧げます!!」

妹「はぁ……ん、あっ……」ヘナ…

百合「妹、よく頑張ったね……うん、よく頑張った……」ギュウ…

妹「おねえ、ちゃん……」ギュ…

百合「すごくカッコ良かったよ……私、妹が一生懸命走ってる姿見て、ぐず、感動しちゃって……」

妹(あぁ……お姉ちゃんの匂い……良い……)

妹(走り切ったのも相まって、すごい達成感……)

百合「うん、本当によく頑張った……あとはゆっくり休んでね、先輩のこと一緒に応援しよ……」

妹「うん……」ギュ…



モブ「美しい姉妹愛……」ウルウル

先生「妹が百合のケツ揉んでなかったらもっと絵になっただろうがな」

ロリ「それ言ったら台無しだと思います」

モブ「せせ、先生!? それにロリ先輩も!?」

百合「ふぇ……? ロリちゃん……?」

ロリ(バレた……)

先生「おいそこのシスコンレズ、いつまでも満身創痍なフリして抱きついてんじゃねえぞ。さっさと退け、後続の邪魔だ」

妹「ふ、フリじゃ……ねーし……」

百合「い、妹……でもロリちゃんも……」アタフタ

ロリ「……今は妹の介抱してあげて。私は元気だから」

百合「うん分かった……あ、ロリちゃん足は!? 大丈夫なの!?」

ロリ「無茶したせいで全治2週間が2ヶ月らしいけど、後遺症とかはないって」

百合「そうなんだ……良かったぁ」

妹「……お姉ちゃん、水」

百合「あ、待っててね! 今飲ませてあげるから……」


先生「今走ってるアイツは問題ないとして、そのあとが本当の勝負だな……」

モブ「アンカーですか?」

先生「ああ。あのアホは何やらかすか分かんねーからな」

モブ「先輩さん以上にある意味伝説残してますもんね……」ハハ…

百合「はい妹、お水だよ。いっぱい飲んで」

妹「もっと、こっち寄って……」

百合「え、こ、こうかな?」

妹「うん、そんな感じ……」サワ…

百合「い、妹……? あの、手が変な場所に……」モジモジ…

先生「おいコラ、しれっとセクハラしてんじゃねーぞ。さっさと百合から離れろゴミカス」

妹「どうしてあなたは女性なのにもっと慎ましい喋り方が出来ないんですか……訴えますよ……」

先生「訴えられんのはどう考えてもテメーだろうが」

百合「ふ、2人とも喧嘩しないで……」アワワ

ロリ(先生はみんなに辛辣だけど、妹は先生にだけ辛辣な気がする……)

モブ「あはは……」

先生「とりあえずお前ら全員車乗れ、5区のゴール地点に向かうぞ」

先生「エース様のお出迎えだ、あのクソレズ2人も呼び出しとけ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

実況「先輩選手凄まじい! 凄まじいです!」

実況「最長区間にも関わらず全力疾走のようなスピードでアスファルトを駆け抜けて行きます!」

実況「現在2位とのタイム差はなんと10分!! 妹選手から受け継いだリードをどんどん広げて行きます!!」

先輩(相変わらず殺風景な風景だ……)

先輩(前にも後ろにも誰もいない……逃げるように走る白バイクをひたすら追いかける……)

先輩(こうやって静かに走るのは嫌いじゃないが、スピードのせいで声援すらロクに聞こえないのは寂しいな……)

実況「先輩選手! まさにミス駅伝に恥じぬ走りを見せています!」

実況「彼女が去年作った区間新記録も大会新記録もあとは塗り替えられるのを待つのみ!」

実況「もはや世界にしか、いや世界にも敵はいないのかもしれません!」

実況「私たちは今、伝説の目撃者に……!」

先輩(そういえばアイツと始めて会った時もこんな感じだったな……)

先輩(静かで誰もいない場所で1人走っていた時、突然現れて……毎日数えきれないくらい私に抜かれ続けて……)

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

百合『ほっほっ……ほっほっ……』

先輩『……』

百合『ほっほっ……ほっほっ……』

先輩(……道は誰の物でもないが、今まで独占状態で使っていた場所に他人がいるのはどうも馴れないな)

百合『ほっほっ……ほっほっ……』

先輩(こんな時間にこんな場所で、本当に物好きなヤツだ……それを言うなら私もだが……)


先輩『……』タッタッタ

百合『!』

百合『っ~~~!!』ダダダ…

先輩(張り合いたくなる気持ちは分からんでもないが……)

先輩『……』タッタッタ

百合『あっ……』

先輩(流石に遅過ぎる……生まれ変わりでもしない限り、私に付いて来るのは無理だろう)

百合『……』シュン…

先輩(まあ、1ヶ月前の走ってるのか歩いてるのか分からん頃に比べたら進歩はしたと思うが……)

先輩(はぁ……ダメだ。このノロマを見かけるようになってから余計なことを考え過ぎてる……)

先輩(無心に、前だけを見て、腕を振って……)


百合(あの人やっぱりすごく速い……これで抜かれたの126回目だよ……)ハァ…

百合(追いかけようとしても2秒で置いてかれちゃうし……うぅ、同じ女の子だとは思えないよ……)


先輩『……』タッタッタ…


百合(でも、あの人の後ろを1秒でも長く走れるようになれば、私も……)

百合『ほっほ……ほっほ……』


先輩『……』タッタッタ…

 
  

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

先輩(ほぼ毎日……よく飽きないな)

百合『ほっほ……ほっほ……』

先輩(これで3ヶ月目……私が来る前に走っている時もあれば、気付いたら走っている時もある……)

百合『ほっほ……ほっほ……』

先輩(歳は私の4つ、5つ下くらいか……? 顔だけ見ればかなり幼く見えるが……)

百合『ふぅ……休憩……』フラ…

先輩(装いやランニングフォームからして陸上部には見えない……何か他の運動部か……?)

先輩(テニスシューズを穿いているが……)

百合『あの……』

先輩『!』

先輩『……』キョロキョロ…

百合『あ、ごご、ごめんなさい! 急に話しかけちゃって……!』

先輩『……わ、私か?』

百合『は、はい……』

先輩『……何か用か?』

百合『えっと、その……お水、飲みます……?』

先輩『は……?』

百合『いや、あのっ……いつも持って来てる水筒みたいなの、今日は持って来てなかったので……』

先輩(そんなことに気付いて……)

百合『そ、その! ごめんなさい忘れてください!!』タタッ…

先輩『あ、待っ……』

先輩『……』

先輩(一体なんだ、さっきのは……こんなこと、始めてで……)

先輩『ってアイツ……自分の水筒忘れて……』

先輩『……』

先輩『……百合?』

先輩(アイツの名前か……? 水筒に自分の名前を書く奴なんて始めて見たぞ……)

先輩『……』

先輩(ここに置いて行く訳にもいかないし、次会った時にでも返すか)

先輩(また明日来るだろうし、その時はまともな会話の1つくらいして……)

先輩(……いや、何を考えている。そんなことをする必要はない、すっと返して、それで……)

先輩『……はぁ』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

先輩『……』

ロリ『ねえ』

先輩『……なんだ』

ロリ『なんかここ2、3日不機嫌だけど、どうしたの? 上級生含めみんなビビリまくってるよ?』

先輩『私は至って普段通りだが』

ロリ『いやいやいや、明らかにおかしいよ。今まで皆勤だったのに2日連続で学校遅刻したりしてるし』

ロリ『それに何よりアンタが陸上部休むとか、なんかあった以外にあり得ないよ』

先輩『……心配をかけさせたようなら謝る。すまない』

ロリ『いや、事情を説明して欲しいんだけど……』

先輩『……』

ロリ『あっそ。そっちがその気なら別にどうでもいいけど……』

ロリ『ん? 何これ……こんなファンシーな水筒、アンタの趣味だっけ?』


先輩『!?』

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

百合『……』キョロキョロ…


先輩『……』


百合『……』ソローリ…

先輩『おい』

百合『ひゃああ!?』

百合『ってああ、あなたは……!?』

先輩『……』ギロ

百合『ご、ご……』

百合『ごめんなさい!!』ダダッ

先輩『は……?』

先輩『お、おいちょっと待て! どうして逃げる!!?』

百合『な、なんで追いかけて来るんですか!?』

先輩『お前が逃げるからだろ!!』

百合『逃げてないです!』

先輩『チッ……このノロマがっ……!!』ダッ

百合『ふぁ!?』


ガシ…


百合『あ、あわわわ……』

先輩『鬼ごっこは終わりだ……全部説明してもらうぞ』

百合『ごご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!』

先輩『……自分が何に対して謝ってるのか、まずそれを説明しろ』

百合『だ、だって……怒ってるから……』ウルウル

先輩『……私が何に対して怒っているのかは分かってるのか』

百合『えっ……? そ、それは、えっと……』

先輩『……』

百合『わ、分からないですごめんなさい……』

先輩『はぁ……』

百合『あうぅ……』

先輩『……お前、水筒をここに忘れた日から今までどうして私の前に姿を現さなかった』

百合『……』

先輩『毎日毎日、私が来る時には必ず居たくせに……何故だ、答えろ」

百合『それは、その……』

先輩『私がここでお前を待っていたことも知っていたんだろう?』

先輩『さっき、こそこそとこっちの様子を伺っていたのを見て確信した』

先輩『お前はここに来ていたのにも関わらず、私を避けて姿を現さなかったんだ。違うか?』

百合『っ……』

百合『……そう、です』

先輩『理由はなんだ?』

先輩『今までストーカーかと思うくらい私を追いかけ、ここで毎日走っていたのに……どうしてだ、答えろ』

百合『……は、恥ずかしかったから、です……』

先輩『……』

先輩『は……?』

百合『そ、それに、これ以上は迷惑だと思って……』

先輩(恥ずかしかった? 迷惑? 意味が分からない、なんだコイツは、一体何を言ってるんだ……?)

百合『だ、だから、その、水筒だけ返してもらって、それで……』

先輩『…………』

先輩『……すまない、今の説明じゃ何も分からなかった』

百合『えっ』

先輩『悪いがもう少し分かりやすく説明してもらえないか……?』

百合『ごご、ごめんなさい!! えっと、つまり、その―――』



先輩(話を要約すると……急に話しかけてしまい、奇異な目で見られたのが恥ずかしかった)

先輩(それに加え指摘したくせに自分も水筒を忘れるというドジを披露して、またそれも恥ずかしかった)

先輩(そんなことがあった矢先、ノロマな自分がここで走り続けては気も散るし迷惑だと思ったからもう来るのはやめようと思い、姿を現さなかった……)


百合『……』シュン


先輩(……ダメだ、やっぱり意味が分からない)

先輩(どうして3ヶ月間もしつこく来続けていたクセに、そんなくだらないことをきっかけに来なくなるのか、私には……)

百合『あ、あの……私、もうここには来ないですから……』

先輩『……だからどうしてそうなるんだ』

百合『だ、だって……迷惑になるから……』

先輩『はぁ……本当に鬱陶しく思っていたなら、お前が来始めて1週間の時点でとっくに練習コースを変えている』

百合『え……』

先輩『そしてそれをしなかったのは何故か……ここまで言っても分からないか?』

百合『……いいんですか?』

先輩『いいも何もここは私の物でもなんでもない。好きな時間に来ればいいし好きな時間に走ればいいだろ』

百合『……』

先輩『無論、私が走っていようと関係無い。付いて来たいなら勝手に付いてくればいいし休みたいなら好きに休めばいい』

百合『……』ウルウル…

先輩『!?』

百合『ありがとう……ぐずっ、ございますぅ……』

先輩(ほ、本当に意味が分からない……ここまで思考が理解出来ないヤツは始めてで……)

百合『私、ひぐっ……走るのが大好きで……』

先輩『え……?』

百合『あなたみたいに速く走れたら良いなって、すごく、憧れて……』

百合『だから、後ろ、走ってたら……私も速くなれる気がして……』

百合『いつか一緒に走れるくらい、速くなれたらいいな、って思って……』

先輩『……』

百合『だから、ぐずっ、すごく嬉しいです……』

百合『これからも一緒に走ってもいいんだ、って思うと、すごく……』

先輩(そうか……コイツは私と同じなのか……)

先輩(走るのが好きで、速くなりたいだけの……ただのバカ……)

先輩『……ふふ、あはは』

百合『へ……?』

先輩『そうか、お前もアホなんだな……道理で何考えてるのか分からん訳だ……くく、あはは……』

百合『あ、頭は悪いですけど……な、なんで笑って……』

先輩『お前、歳はいくつだ?』

百合『えっと……15、です』

先輩『15!?』

百合『は、はい……』

先輩(私の1つ下だと……? ってことは中3……)

百合『あ、あの、あなたは……?』

先輩『私は16……○○高校に通ってる陸上部の1年だ』

百合『じゅ、16!? 高校生!?』

先輩(そんなにも驚かれるようなことか?)

百合『私、てっきりどこかの大学生だと思ってて……』

先輩『実年齢より老けて見られることはよくあるが……』

百合『ふ、老けてだなんてそんな! すごく大人っぽくて、その……憧れます……』

先輩『そ、そうか』

百合『はい……』

先輩『……』

百合『……』

先輩(な、なんだこの雰囲気は……)

百合(1歳しか違わないのにすごいなぁ……カッコよくて……)

先輩『……は、話を戻すが」

百合(どこに戻すのかな……)

先輩『お前、中3ってことは今年で受験だろ。行く高校は決まってるのか?』

百合『えっと、決まって無いです……とりあえず近所のところに行こうとは思ってますけど……』

先輩『なら、その……私の高校に来ないか?』

百合『へ?』

先輩『私と並んで走れるくらい……速くなりたいだろ』

百合『それって……』

先輩『……ウチの陸上部に入れば、私からも色々教えてやる事が出来るだろうから、その……』

百合『行きます!』

先輩『!?』

百合『私、先輩がいる陸上部に入ります!!』

先輩『そ、そうか……』

先輩(自分で誘っておいてなんだが、こんな簡単に進路を決めていいのか……?)

百合『だから、えっと……私に速く走れる方法教えてください!!』

百合『先輩!』

先輩『……』

百合『……』

先輩『……まずはそのテニスシューズで走るのをやめろ、足を痛めるぞ』

百合『!?』

――――――――――――――――――――――――――――――――――

実況「先輩選手快速にアスファルトを蹴ります! 魔の5区と呼ばれる地域をまったく苦にしていません!」

実況「もう4分の3地点を通過しております! 2位が5区に差し掛かる今、間もなくフィニッシュです!」


モブ「ほ、本当にすごい……」

ロリ(陸上に人生捧げたヤツの走りってこんなにも違うんだな……)

百合「……」

妹「お姉ちゃん?」

百合「へ? な、なに?」

妹「さっきからぼーっとしてるけど、大丈夫……?」

百合「う、うん、大丈夫だよ?」

百合「いや、先輩めちゃくちゃ速いなー、って」アハハ

妹「うん、本当に速い……短髪さんやポニテさんも速いけど、それよりもっと……」

先生「いつもの2倍は飛ばしてる。帰って来た時は満身創痍だ」

先生「30秒くらいならくれてやるから、しっかり労ってやれよ」

百合「は、はい!」

ロリ「アイツは絶対に早く行けって言うだろうけどね」

モブ「それは確かに……」

百合「うん……だから、先輩はどっちがいいんだろう、って今もずっと考えてて……」

妹「あー……」

ロリ「置いていってあげればいいんじゃない? 労うなんて後からでも出来るし」

妹「でもあの、ゴールした直後にお姉ちゃんに抱きしめられるのは得も言えぬ快感で……」

百合「け、結局どうすればいいの……?」

先生「テメーの無い頭で考えろ。百合が出した答えならアイツは喜んで受け入れるだろ」

百合「そんにゃ……」

実況「先輩選手! 遂に残り1キロ地点です!」

実況「ギャラリーが盛大な拍手を彼女に送ります!」

実況「惜しみない歓声の中を威風堂々と駆け抜ける姿! まさに王者の行進と言って相応しいでしょう!!」


先生「チッ……アイツいくらなんでも飛ばし過ぎだろ……!」

モブ「ま、間に合うんですか先生……?」

先生「このクソみたいな渋滞を抜けりゃすぐなんだが……」

百合「せ、先生! 私ここから走って先に行きます!」

先生「は? 何言ってんだお前。お前のクソみたいな足でアイツのフィニッシュに追いつけると思ってんのか?」

百合「お、追いつきます!」

妹「だだ、ダメだよお姉ちゃん!? アンカーはお姉ちゃんなのに、そんなことしたら……!」

ロリ「いや、どっちにしろアイツが着くのに間に合わなかったらまずいでしょ」

先生「アホかクソチビ。どんなにトロくてもゴールしなきゃ何もかもが終わりなんだよ」

先生「途中でスタミナ切れで棄権、ってのが最悪のシナリオだ」

先生「それさえ避ければ大会新は確実なんだ、その確率を1%でも落とすような真似出来るかボケ」

百合「そんな……!」

ロリ(百合には今までの移動分の疲れもあるから、それを考えれば……)

先生(チッ……クソレズ共が百合のハグ無しでちゃんと走りさえすりゃ、こんな面倒なことには……!)

妹「……お姉ちゃん、ここは我慢だよ」ギュ…

百合「妹……」

妹「先輩だってお姉ちゃんがちゃんと走り切って、大会新記録出るのを望んでるよ……だから……」

百合「で、でも……」

実況「刻一刻とフィニッシュへと近付きます! 速い! 速いです先輩選手!!」

百合(先輩……)ウルウル

先生「……恨むなら自分のトロさとスタミナの無さを恨め」

先生「私だって本当なら行かせてやりてーよボケナスが……!」

妹(先生……)

ロリ「悔しいけど、ここでアイツのゴールを見るのがみんなのためで……」

 
 
ガンガンガン

 

モブ「……?」

先生「……おい、ガラス叩いてんのどこのクソガキだ。誰でもいいからぶっ殺して……」


短髪「百合!」

ポニテ「百合!」


先生「んなっ……!?」

百合「たた、短髪ちゃん!? それにポニテちゃんも!?」

短髪「百合! 車から降りて!」

ポニテ「状況はモブからメールで訊きました! 私たちが百合をおぶって走ります! だから!」

百合「うぇえええ!?」

妹「なな、何言ってるんですか!? さっき走ってたばっかなのに、そんな無茶なこと……!?」

先生「あーはっは! 見直したぞクソレズコンビ! 足がぶっ壊れても構わねえ、絶対に間に合わせろ!!」

 「「はい!!」」

百合「ちょ、まっ、そそ、そんなこと……!?」

先生「早く出ろトロ女ァ! そのクソレズ2人を信じろ!!」

百合「はは、はい!!」

妹「こ、こんなめちゃくちゃなことって……」

ロリ「確かに百合が走るよりあの2人に順番におぶられて行く方が速いだろうけど……」


短髪「百合! まずは私に乗って!!」

百合「のの、乗るってどうやって……!?」

ポニテ「めんどくさいです! 行きますよ百合!」ガバッ

百合「ひゃあ!? ここ、これってお姫様抱っこ……!?」

短髪「ちょっとポニテ! 流石に私の前でそれをやるのは認められないよ!」

ポニテ「うるさいです! あなたの出る幕なんてありません! 私が百合を送り届けますから黙って見ていてください!」


百合「ま、待ってポニテちゃ……きゃあああああ!?」


ロリ「はっや……」

妹「さ、流石ポニテさんです……」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

先輩「ハァ……ァ……!」

実況「先輩選手ここでスパートをかけています! 肩で息をし必死にアスファルトを蹴ります!」

実況「2位に付けた差はなんと20分弱!! 信じられません!!」

先輩(風が気持ち良い……)

先輩(燃えているように熱い体を冷やして……でもまた熱くなって……)

先輩(ふふ、こんな狂ったペース配分で走ったのは何年振りだろう……とっくに倒れててもおかしくない……)

先輩(でも、体が動く……勝手に前へ進む……)

先輩(アイツが待つ場所に吸い込まれるみたいに、体が……!!)


「せんぱーーーーい!!」


先輩(なんだ……? この聞き覚えのある、甘ったるい声は……)


「先輩!! 先輩!!」


先輩(百合、のか……? くく、そうか。遂に幻聴が聞こえるレベルにまで限界に……)

百合「先輩!!」

先輩「んなぁ!?」

実況「あーっとなんだあれは!? 先輩選手の横を謎の集団が並走しています!」

実況「あれは……ポニテ選手と短髪選手です!」

実況「しかもポニテ選手の腕の中には百合選手がいます!! 一体何が起こっているのでしょうか!?」


百合「先輩頑張って! あともう少しでゴールです!!」

先輩「お、お前……いやお前ら一体何をやって……!?」

短髪「ポニテ!いい加減に代わるんだ! ここまで来れば私の方が絶対に速い!!」

ポニテ「ふざけないでください! ここまで来ら私が最後まで百合の感触を楽し……じゃなくて最後まで送り届けます!」

百合「そ、その……色々あってこんなことになっちゃって……!」

先輩(クールダウンもせずにあろうことか人を担いで全力疾走をするなんて……)フラ…

百合「せせ、先輩!?」

実況「あーっと先輩選手ふらつきました!! これはまさか限界が来てしまったのか!?」

ポニテ「大丈夫ですか部長!?」

短髪「気を確かに持ってください! ゴールはもう少しです! 百合のハグ受けれないなんて一生後悔しますよ!?」

先輩「お、ま、え、らぁ……!!」

短髪「ひぃぃぃぃ!?」

ポニテ「どど、どうして怒っているんですか部長!? 私たちは褒められる義理はあっても責められる理由なんて……!」

先輩「お前ら2人とも後でまとめて説教だぁぁ! 今日という今日は絶対に許さんぞ馬鹿者どもがぁぁ!!」


短髪「な、何故だ……どうして部長は怒ってるんだ……?」

ポニテ「きっと百合を取られたと思って激昂して……!」

百合「絶対に違うから2人とも!!」

実況「先輩選手! 後輩たちと謎の並走をしながらフィニッシュへと向かいます!」

先輩「どうしてっ……お前らは類稀な才能がありながらっ……! それをドブに捨てるような真似をっ……!」

ポニテ「こ、怖いです! 満身創痍なのも相まって怖いです部長!!」

短髪「てかもう喋らないで前見てください! もうすぐゴールですから!」

百合「頑張ってください先輩!」

先輩(一体なんなんだこれは……)

先輩(こんなにも騒がしくてふざけたレース……生まれて始めてで……)

実況「先輩選手100m切りました! タスキを受ける百合選手は隣で走っています!!」

先輩(もう残り100……!?)

短髪「ポニテ飛ばして! このままじゃ先輩を待つ百合っていう構図が成立しない!!」

ポニテ「分かってます! でももう限界で……!!」

百合「お、降ろしてポニテちゃん!! 私自分で走る!」

短髪「ええええ!?」

ポニテ「な、何を言ってるんですか百合!? そんなこと……って、ちょっ……!?」

先輩「ゆ、百合!? お前何やって……!?」

百合「勝負です、先輩!!」ダダッ

実況「あーっとなんということだ!? さっきまで担がれていた百合選手が走り出しました!」

実況「これはまさに短距離走です! 先輩選手と百合選手の短距離走が始まりました!!」

先輩(こ、こんなデタラメなことがあっていいのか……!?)

百合「はっ……! はっ……!」

先輩「くっ、追いつかれる……!!」

短髪「百合ー! 頑張れー!!」

ポニテ「走って! 先輩に勝ってください!! 百合!!」

百合(先輩より速くゴールして、先輩を迎えるんだ……! 絶対に……!!)

先輩(今までずっとコイツの前を走って来たんだ……こんなふざけた勝負でも負ける訳にはいかない……!)

先輩(私はコイツの前を走り続ける……! これからもずっと、コイツの目標であり続けて……!!)

実況「デッドヒートです! 互いに一歩も譲りません!! 一体どちらが先にフィニッシュするのか!?」

百合(私、先輩に見てもらうんですっ……)

百合(先輩のおかげで速くなった……私の姿を……!)

実況「あーっと百合選手が先輩選手を抜いたぁぁーー!!」

先輩(まずい……! 離され……!?)

実況「百合選手どんどん加速します! 先輩選手との差がゆっくりと開いていく!!」

百合「はぁ……! はぁ……!!」

先輩(や、やめろ……行くな……)

先輩(動け、私の足っ……まだ追いつける、まだ抜ける……)

先輩(百合はまだまだノロマなんだ……私が前に居て、手を引いてやらないといけないんだ……)

先輩(だから、私はこんなところで……!)

先輩(アイツに負けたら、私は……!!)

百合(私、先輩にいっぱい恩返ししたいから……しないといけないからっ……だから……!)

百合「先に行きます! 先輩!!」

先輩「!」

先輩(ゆ、り……)

 
 
実況「フィニッシュです!!」

 
 
実況「百合選手、先輩選手からのタスキを受けるべく先にゴールすることが出来ました!」


実況「最終地点に姿が見えない時はどうなることかと思いましたが、無事アンカーの役目を果たせそうです!」

実況「3秒ほど遅れて、先輩選手もフィニッシュ!!」

実況「鬼神の如く走りを見せ、自身が持つ区間記録を大幅に更新してのゴールです!!」

実況「どうか彼女に、そして最後のタスキを受け継いだ百合選手に惜しみない拍手をお送りください!」



先輩「……」

百合「お疲れ様です、先輩……」ギュ…

先輩「ゅ……り……」

百合「先輩の言いたい事、分かります……でも、ごめんなさい」

百合「すぐ行きますから……ぐずっ、もう少しだけ、このまま居させてください……」ギュウ…

先輩「…………」

先輩(大会に出る時、百合はいつも私のあとにオーダーされていた……)

先輩(私のタスキを受け継いで、成長してもなおノロマな足でアンカーを走って……)

百合「先輩……」

先輩(私は自分をハグする時間、百合のスタートを遅らせるなんてことは決して許さなかった)

先輩(故に、私は今まで一度も走り終わったあと百合にハグされたことはなかった)

先輩(でも、今日始めて……)

先輩(ボロボロになって今、百合にハグされて……)

百合(先輩の体熱い……真っ赤になった顔も、素敵で……)

先輩(ダメだ……これは、まずい……)

先輩(この感覚を覚えてしまえば、私は……)

先輩「は、離れろ……」

百合「え……?」

先輩「今すぐ、離れろ百合っ……もう、十分だ……」

先輩「だから……私にお前の走り……見せてくれ……」

百合「先輩……」

先輩「1秒でも速く……ゴールしろ……」

先輩「チームのため……私のため……」

先輩「何より、自分自身のために……」

百合「っ……!!」

百合「……ひぐっ。はい……私、行きますっ……」

百合「百合、走ります!!」

百合「だから、先輩も……みんなと一緒にゴールで待っててください……」

百合「私にもハグ、してくださいね……? 約束ですよ……?」

先輩「あぁ……分かったから……」

先輩「早く行け……」

百合「……行って来ます、先輩」ニコ


実況「アンカー百合選手! 遂に先輩選手からタスキを受け継ぎ走り出しました!」

実況「先輩選手の、チームメイト全員の想いを乗せたタスキを胸にアスファルトを駆け抜けて―――」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

百合「はぁ……」

妹「どうしたのお姉ちゃん? 溜め息なんて吐いて」

百合「うん、なんか……終わっちゃったんだなぁ、って……」

妹「ふふ、感傷に浸るなんてらしくないね。いつもなら優勝だー、って飛び跳ねてるのに」

百合「なんでこんなにも切ない気分なんだろ……」

妹「先生に怒られなかったからじゃないの?」

百合「あ、それはあるかも」

妹「いつもなら汚い言葉でお姉ちゃんのこと罵りまくるのに。今日だけはよくやった、だもんね」

百合「なんか調子狂っちゃうよね……」ハハ…

妹「でもお姉ちゃん本当に頑張ったと思うよ? 自己新記録だったじゃん」

百合「それでも平均以下の以下タイムだけどね……」

妹「素直に喜ぼうよ。そのおかげで大会記録大幅更新なんだから」

百合「もしアンカーに私以外の人が走ってたら、もっと凄い記録が出て……」

ロリ「それは違うと思うけど」

百合「ロリちゃん……」

ロリ「……競走中はスルーしてたけど、その呼び方やめてっていつも言ってるよね」

ロリ「こんなナリでも一応年上だから」ジト

百合「ご、ごめんなさい……でもロリちゃんはロリちゃんだから……」

ロリ「はぁ……まあ百合ちゃんだったら別にいいけど……」

妹(この人も例に漏れずお姉ちゃんに甘いよなぁ……他の人は甘いとかのレベルじゃないけど)

ロリ「話を戻して……」

ロリ「短髪ちゃんとかポニテちゃんとか、百合と一緒に走るからあんだけ速く走れるみたいなもんだし」

百合「そんなこと……あるのかな?」

ロリ「いやないわけないよ」

ロリ「ポニテちゃんなんて百合がどうのこうの言い出して途中で倒れてたじゃん」

妹「そもそもお姉ちゃんがいなかったら陸上やってないレベルですもんね」

ロリ「そうそう。私らのチームの中で一番のキーマンは百合なんだから、もっと自分に自信持っていいよ」

百合「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど……」ハハ…

先生「あんまし百合を持ち上げんじゃねーぞクソチビ、付け上がったら面倒だろうが」

百合「先生……」

ロリ「持ち上げるも何も事実なんですから別にいいでしょ」

先生「アホか。このトロ女が人並みになるだけでもっと良い記録が出るんだぞ」

先生「優勝したからって現状で満足してもらっちゃ困るんだよ」

妹「そこは先生に心配してもらわなくても大丈夫です」

妹「お姉ちゃんは日々速くなることを目標に努力していますから」

先生「日々努力してなんでこんなにもトロいんだよ。部長様の指導を受け続けてこのトロさってある意味ギネスレベルだぞ」

百合「あ、あはは……私やっぱトロいですよね……足手まといですよね……」

妹「ちょっと! どんな神経してたらそんな酷いこと言えるんですか!?」

姉「お姉ちゃんに謝ってください! 訴えますよ!?」

先生「私は何回訴えられりゃいいんだよ」

姉→妹で

ロリ「ずっと気になってたんだけど、妹って先生にだけ辛辣だよね」

ロリ「なんか理由あるの?」

妹「お姉ちゃんに罵詈雑言を浴びせ続ける人に辛辣になるのは当たり前だと思いますが……」

ロリ「あ、なるほど……」

先生「シスコンレズが……」

妹「ちょっと!!」

百合「そういえば短髪ちゃんとポニテちゃんは……?」

先生「クソレズコンビなら部長様にありがたーい説教を受けてるよ」

百合(そういえば走ってる途中そんなこと言ってたような……)

ロリ「アイツ自分自身がオーバーワークで怪我したことあるから、その辺のことめちゃくちゃシビアだよね」

先生「部長の鏡みたいなヤツだよ。まさに部長様だ」

妹(この人、そういえば先輩さんには蔑称使わない……まあ当たり前か……)

百合「私、ちょっと様子見てきます」

ロリ「お説教部屋?」

百合「うん」

先生「物好きなヤツだな、レイプされてもしらねえぞ」

妹「お姉ちゃんにそんな汚い言葉聞かせないでください!!」

先生「お前そのうち私が百合と一緒にいるだけで文句言いだしそうだな」

百合「と、とりあえず行って来るね……」ハハ…

ロリ「もうすぐ祝勝会だから、早めに切り上げさせて来てね」

百合「分かった」

百合(優勝もして、大会新記録も出して、自己タイムも更新したのに切ない気分な理由……分かったかも)

百合(ポニテちゃんと短髪ちゃんがいないからだ……)

百合(公式戦が終わったあとはいつも、あの2人に追いかけられてるから)

百合(きっとそれが無かったから、私、寂しかったんだ……)

百合(だから、あの2人に会えば……このなんとも言え無い気持ちも……)


ガチャ…


ポニテ「え?」

短髪「あ」

先輩「なっ……!?」

百合(え、なに、これ……?)

百合(短髪ちゃんとポニテちゃんが、先輩のこと……押し倒して……)

ポニテ「ち、違います百合! 誤解です!!」

短髪「あ、ああ。ポニテの言う通りだ。百合、君は何かとても重大な勘違いをしている」

百合「…………」

百合「……2人とも、先輩に何してるの」

ポニテ「えっと、これはですね、その……」

短髪「部長が百合の……」

先輩「やめろお前ら!? 絶対に言うな!!」

百合「え……?」

先輩「言ったらタダじゃおかないぞ!!?」

百合(せ、先輩なんで泣きそうになって……)

短髪「いやでも……部長に怒られるより百合に嫌われる方がキツいですから……」

ポニテ「すみません、ここは心を鬼にさせて頂きます……」

先輩「た、頼むからやめてくれ……厳しく言い過ぎたのは謝る、だから……」ウルウル

短髪「いや、これとそれは別の話なので……ね?」

ポニテ「それに百合の部長への好感度が最近高過ぎたような気もしますので、ライバルとしてもここはやはり……」

百合「ら、ライバル……?」

先輩「お、お前らに人の心は無いのか……」

百合「えっと、その……先輩に何があって……?」

短髪「あのね、百合……実はね」

先輩「やめろ!」

ポニテ「部長、私たちにお説教している間しきりにもぞもぞしていましたので、怪しく思って身体検査をしたんですが……」

先輩「たた、短髪っ! ポニテぇええ!!」

短髪「その結果、服の中からこんなものが……」スッ

百合「えっ……嘘……」

百合「そ、それって……」


百合「私のユニフォーム……」ドンビキ…



終わり

支援ありがとうございました、お疲れ様でした
オリジナル始めてだったけど楽しかった

んじゃちょっと書きたい2人で短編を1つ

先生「……」スパー

 
モクモク…

 
 
先生「……」スゥ…


妹「……ちょっと」

先生「あぁ?」

妹「頭おかしいんですか」

先生「は? 何いきなり喧嘩売って来てんだお前」

妹「喧嘩売られるようなことしてるのはそっちだと思いますけど!!」

先生「何がだようっせえな!? いきなりキャンキャン喚き出してんじゃねえぞゴミカスぶっ殺すぞ!?」

妹「本当に分からないんですか!? タバコですよタ、バ、コ!!」

先生「タバコぉ?」

妹「ここ部室ですよ!? 陸上部の部室ですよ!?」

妹「なに白昼堂々ともくもくもくさせてるんですか頭おかしいんじゃないですか!?」

先生「はぁ? 何言ってんだお前。ここは顧問室だぞ?」

先生「私のために用意された部屋で私がタバコ吸おうが何の問題もねーだろうが」

妹「顧問室だろうと部室は部室です! 部員の出入りのある部屋でタバコを吸うなんて非常識です!!」

先生「知るかボケ。ニオイが嫌なら消えろ、二度とここに入って来るな」

妹「ここは資料室も兼ねているんです! 私のような部員が使うんですから金輪際タバコはやめてください!」

先生「資料や書類の持ち出しは制限してねーだろ。必要な書類があるなら好きなだけ持ち出せって言ってあんだろーが」

妹「そ、それは……そうですけど……」

先生「資料云々はお前らがここに留まらないといけない理由にはなんねーよ、よって禁煙は却下だボケナス」

妹「むむむ……!!」

先生「むしろここは用もなく居座ることのが禁止だ。分かったらとっとと消えろ、シスコンらしくお姉ちゃんと遊んどけ」

妹「本当に信じられません! どうしてあなたはそう口が汚くて人を傷つけるようなことをいつもいつも……!!」

先生(うっぜえ……マジでなんなんだよコイツ……前の大会以降私に突っかかりすぎだろ……)

妹「そもそも先生は教師としての自覚が無さ過ぎるんです! 本当に教員免許持ってるんですか!?」

先生「持ってるに決まってんだろーがとっとと死ね、じゃなくて出て行け」

妹「っ……!!」

妹「どうして軽く人に向かって死ねとか言えるんですか! 最低です!!」

先生(うっぜえ……小学校のセンセーかコイツは……)

妹「その教師らしからぬ金髪に不良みたいなダッサイジャージもあり得ません!」

妹「ちゃんと黒髪にしてスーツに着てください! 顧問がそんなんだと部のイメージが悪化します!」

先生「ふざけんなボケ。レズだらけな時点で部のイメージもクソもねーだろが」

妹「私はレズじゃありません!!」

先生「いや知らねーよ……」

妹「とにかく!」

妹「部のより一層なレベルアップを目指すなら、まずは先生自身が変わってください!」

先生「断る」

妹「断らないでください!!」

先生「なあ、お前そんなにも喚きっぱなしで疲れねーの……?」

先生「いや、マジで尊敬するレベルなんだけど……」

妹「誰のせいだと思ってるんですかーーー!?」

先生(百合はこんなのと四六時中一緒に居てノイローゼになんねえのか……私なら胃に穴空ける自信あるぞ……)

妹「金髪とジャージはまだしも、タバコだけは絶対にやめてください!」

妹「百害あって一理なしです! 先生の体にも良くないです!」

先生「んなこと1000も承知で吸ってんだよ、お前も一本やってみるか?」

妹「…………」

先生「いや、冗談だから」

妹「あなたって人は……!!」

先生(今本気で言葉失ってたな……)

妹「どうしてそんな酷い冗談が言えるんですか!?」

妹「心ですか!? 心が荒んでいるから酷いことも言えるし言っても何も感じないんですか!?」

先生(あぁ……そろそろマジで鬱陶しくなって来たな……)

妹「先生はおかしいです! タバコなんて吸うからそんな風に頭も心もおかしくなって……!」

先生「おい、クソガキ。そろそろ黙れ」

妹「えっ……?」

先生「テメェ誰に向かって頭おかしいやらほざいてんのか分かってんのか?」

妹「誰に向かってって……」

先生「お前は生徒で部員、私は教師で顧問」

先生「私が目上の人間だって認識吹っ飛んでんじゃねえのか? あぁ?」

妹「そ、それは……」

先生「タバコやめろ? ジャージがダサイ? ……あんまり調子こいてんじゃねえぞゴラ!! 」ガァン!!

妹「っ……!!」

先生「……身の程が分かったらとっと消えろゴミカス。お前らと一瞬たりとも対等になった覚えなんざねえぞ」

妹「…………」

先生(はぁ、ダッセェ……怒鳴って生徒ビビらせるような教師だけにはなりたくなかったんだが……)

妹「……」ウルウル

先生「……」

妹「ひぐ……うっ、うぅ……」

先生「は?」

妹「うぁぁ……うああああ……」ポロポロ…

先生「お、おい……お前何ガチ泣きして……」

妹「泣いてなんか……ひぐっ、いませんっ……」

先生「どう見ても泣いてんじゃねえか!? 」

妹「泣いてませんっ……」

妹「先生が、ぐずっ、本気で怖かったとか……えっぐ、そんなこと無いですからぁっ……!」

先生(ど、怒鳴られて泣くくらいならなんで喧嘩売ってくんだよ……マジで意味わかんねぇ……)

妹「うっ、うぅぅ……うぁぁ……」

先生「チッ……」

先生「あーもうめんどくせえな! 悪かったよ! 怒鳴って悪かった!!」

妹「謝るくらいなら……ぐずっ、最初から……!」

先生「泣きながら突っかかって来ようとすんな鬱陶しい! ほら、これで顔拭け」

妹(この人、ハンカチなんて持って……)

先生(ああ、今日で確信したわ……コイツ百合の妹だ……)

先生(面倒臭さのベクトルが違うだけで、いやより厄介な方向に向いただけで、間違いなく……)

妹「……臭いです」

先生「あぁ?」

妹「このハンカチ……ひぐっ、タバコ臭いですぅっ……!」ウワーン

先生「だーもう! そんなもん渡して悪かったな!! 」

妹「どうして、こんな臭いの吸うんですかぁ……」

先生「毎日毎日お前みたいなクソガキ相手にしてるとストレス溜まるんだよ……」

妹「……」ウルウル…

先生「お、お前みたいな、だ。お前のことじゃねえ」

妹「……先生は、私のこと嫌いですか」

先生「……」

先生「あ?」

妹「嫌いですか……?」

先生「……何かと突っかかってくるし細かいことぐちぐちうっせえーしキャンキャン喚くし鬱陶しいし」

先生「ハッキリ言って大っ嫌いだよ」

妹「なんでそこまで言うんですかぁぁ……!!」ウワーン

先生「はぁ!?」

妹「そこは普通、嘘でも嫌いじゃないって言うところじゃないですかぁぁぁ!!」

先生「嘘吐いたらお前キレるだろーが!?」

妹「こういう時の嘘は別なんですっっ!!」

先生(な、なんだよコイツ……面倒くさすぎるだろ……!?)

妹「ぐずっ……うぅ、うぁああ……」

先生「あぁ……もうマジで勘弁してくれ……」

先生「私が悪かった、心の底から謝る……」

先生「だから泣き止んでくれ……それで、私の前から消えて……」

妹「……許して欲しいですか」

先生「許してくださいお願いします」

妹「……私の気が済むまでハグさせてください」

先生「は?」

妹「そうしたら、許してあげます……」

先生「…………」

妹「……なんですか、その目。訴えますよ」

先生「いや、その……」

先生「お前、まさかとは思うけど私のこと……」

妹「……」

先生「お、おいっ。無言で近付いて来るな怖……」

妹「……」ギュゥ…

先生「ひっ……!?」ゾク…

妹(意外と胸大きい……ふかふか……でも)

妹「やっぱりタバコ臭いです……タバコやめてください」

先生「ふ、ふざけんな……お前それ、どう考えても自分の趣味趣向だろ……」

妹「悪いですか」

先生「悪いに決まってるだろボケ!? お前やっぱりレズじゃねえか!?」

妹「違います、たまたま好きになった人が女の人だっただけです」

先生「それをレズって言うんだよ! てか離れろ! もうとっくに泣き止んでるだろ!?」

妹「泣き止んでもまだ気は済んでません」

先生「お、おいコラ、何しれっとケツ揉んでんだお前。ぶち殺すぞ」

妹「すみません、つい癖で……」

先生「癖でじゃねーよゴミカス!? とっとと離れろ!!」

妹「離れません!」

先生「おい!!」

妹「先生がタバコやめるって誓ってくれるなら離れてあげます! それまでは一生離れません!!」ギュウ…

先生「だからケツを揉むな!!?」

妹「タバコやめてください! やめてくれたら私もやめますから!」

先生「ふざけんなボケ! タバコやめるなんざテメェを受け入れるくらいあり得ねえんだよ!」

妹「そそ、それってつまりタバコをやめさせれたら先生は私のことを……!?」ギュゥゥ…

先生(ま、マジで誰か助けて……)



終わり

今度こそ終わりです
脇に居たこの2人の絡みが思いがけず好きでした

お疲れ様でした

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