貴音「さばいばるげえむ?」(175)
「はぁ!はぁっ!」
草の茂った林の中を全力で走る。
後ろからは、私を追いかける者達の足音。
「いおりーん!どこだー!」
疲労でもつれそうになりながらも、一心不乱で逃げる。
「な、なんで。私がこんなことを・・・!」
・・・
P「みんなにサバイバルゲームをやってもらう事になった」
一同「サバイバルゲーム?」
P「そうだ、新企画でな。ミリタリー系アイドルを発掘してみようという試みだ」
伊織「また、訳のわからないことを・・・」
亜美「まぁまぁ、いおりん!」
真美「ゲームっていうくらいだし、面白そうで、いいじゃん!」
伊織「はぁ、全く・・・」
律子「(小声で)勝ったチームには一日プロデューサーを好きに出来る権利をあげるからやる気出しなさい」
一同「!?」
一同「早く説明してください!サバイバルゲームってなんなんですか!?」
P「う、うん、今からその説明も兼ねてルールを説明する(なんで急にやる気出したんだ?」
P「まずは、サバイバルゲームの説明から・・・(割愛)」(基本的なルールはウィキ等を参照してください)
P「というわけだ。今回使用するエアガンは射程も精度も非常に実銃に近い物を使用するぞ。当たってもそんなに痛くないので安心してくれ」
律子「随分ご都合主義的なエアガンですね・・・」
P「新技術だそうだ、俺もよくわかってない」
律子「まあ、アイドルに危険がなければいいんですけど」
P「あとは、ナイフアタックとホールドアップは基本的に認める。ナイフはゴム製の物を使ってくれ」
P「ホールドアップに関しては、背後から銃口を突きつけられた段階でホールドアップになる。」
P「ホールドアップによって捕虜にされたアイドルには捕虜にした側が罰ゲームを課すことが出来る。」
亜美「ほほう・・・それは」
真美「楽しみですなあ」
律子「全く、あんたたちは・・・」
P「というわけだ、開始は一週間後だ。各自、ルールなんかの細かいところは確認しておいてくれ」
P「エアガンもこちらで準備するので、希望があるなら早めに言っておいてくれ」
・・・
当日
春香「ここが、サバゲーフィールドですか!」
真「思った以上に広いですねえ」
P「ああ、ほぼ正四角形の形になって、一辺が約1kmだ」
美希「そんなに歩くの大変なの」
響「草がすごい生えてるぞ!」
貴音「東京から1時間程度の場所にこのように自然豊かな場所があるとは・・・」
P「とりあえず、フィールドの説明をするぞ。今俺達がいるのがセーフティエリア。ここから、右に行った隅にBフラッグがある」
P「その対角線上にAフラッグだ。それぞれのフラッグの手前には中央に向けて大きめのバリケードがある。そこにはM2機関銃が一門設置してあるので、各自自由に使ってくれ」
P「AフラッグからBフラッグの対角線上は比較的薄いブッシュが続いている。ちょうど中央あたりは広場のような形になっている。」
P「A、Bフラッグの無い頂点の対角線上を区切って、Aフラッグ側をAフィールド、Bフラッグ側をBフィールドとする。」
P「そして、A、Bフラッグが無い隅には二階建ての大きな建物が設置されている。セーフティに近い側がD拠点、遠いほうがC拠点だ。これもまた、それぞれ中央にかけては薄いブッシュになっていて、比較的見晴らしがいい。」
P「その他の場所は濃いブッシュになっていて、各地に塹壕やバリケード、小屋がある。」
P「最後に、AフラッグとC拠点がある側の辺が北だ。方角もわかっていたほうが色々と便利だろう。」
P「フィールドの説明はこんなものだ。あとで時間をあげるから、自分たちでも確認しておいてくれ」
P「ちなみにチームわけだが・・・」
律子「チーム分けはくじ引きで決めるわ。一人ずつ前に出てきてくじを引いてちょうだい」
結果
Aチーム:真美、響、やよい、春香、美希、あずさ
Bチーム:貴音、雪歩、真、伊織、千早
雪歩「四条さんと同じチームでよかったですぅ」
千早「高槻さんと敵になるなんて・・・」
春香「美希、一緒にがんばろうね!」
美希「正直だるいの」
春香「み、美希!?」
律子「じゃあ、一時間後にゲームを開始するから。着替え、作戦会議なんかはその間に済ませてちょうだい」
律子「いい忘れていたけど、ゲーム時間は無制限よ。どちらかが全滅するか、フラッグを取る間でゲーム続行だから」
P「あと、俺達はセーフティエリアから各地に設置された監視カメラをモニターしているから、ゾンビ行為なんかしたらすぐバレルぞ」
律子「じゃあ、解散」
Aチーム
真美「亜美とは別々になっちゃったか~」
あずさ「まぁまぁ、たまにはいいじゃない」
響「ようし、絶対勝つさー!」
春香「響ちゃんヤル気十分だね!」
響「当然さー!なんたって真と敵だからな!どちらがスポーツ系アイドルか決着を付けるぞ!」
春香「ははは・・・」
美希「ミキ、めんどくさいから寝てていい?」
春香「美希はもっとやる気出してよ・・・」
やよい「うっうー!初めてやるゲームですけどみんなで遊ぶのは楽しそうです!」
あずさ「そうね、みんなで協力して楽しんで勝ちましょう」
Aチーム一同「(そして、プロデューサーを一日・・・・!)」
Bチーム
伊織「やるからには勝つわよ!」
亜美「お、ぉぉう・・・ヤル気十分ですなあ」
伊織「当然よ、こんな訳の分からない企画をしたバカをとっちめてやるんだから!にひひっ!」
真「まあ、やるからには勝ちたいよね!」
貴音「さばいばるげーむ、初めてやる競技ですが、やるからにはなんばーわんを目指したいものです」
雪歩「まず作戦を立てましょう!」
千早「萩原さん、なんだかすごく張り切ってるわね」
ふぇ…ブッシュってなんだよぉぉ
あとめんどくさいからフィールドを絵に書いてくれ
雪歩「お父さんにコツを教わって来ました!」
伊織「我に策あり」
亜美「いきなり軍師っぽく!?」
伊織「まずは、二人づつ3組に分かれましょう。二人で行動してれば、一人が攻撃されてるのをもう一人が援護したりできてより安全だわ」
雪歩「伊織ちゃん、すごいですぅ。お父さんにも同じ事を言われました!」
伊織「新堂にこのことを話したら詳しく教えてくれたのよ。いろいろ聞いたけど半分以上専門用語ばかりで理解できなかったわ・・・」
真「伊織の家の執事って一体・・・」
貴音「あまり詮索しないほうが良いかもしれません。」
>>15
茂みのことです。
ちょっと絵書いてきます
真「そ、そうだね」
伊織「とにかく、割り振りを決めましょう。」
・・・
伊織「こんな感じでいいわね」
A分隊:貴音、真
B分隊:伊織、亜美
C分隊:雪歩、千早
伊織「A分隊は基本的にフラッグの防衛、B分隊はセーフティ側にある拠点、D拠点の占拠を目指して侵攻するわ」
超ざっくりですが。あとは各所にバリケードがあると考えていただけると助かります
千早「C分隊は?」
伊織「C分隊は、中央の広場近くを中継してC拠点を目指してちょうだい」
雪歩「分かりましたぁ」
亜美「それにしても、これだけ広いとそれぞれ連絡取るのも大変そーだよねー」
伊織「それに関してわ、この伊織ちゃんがとっておきのものを用意したわ!これよ!!」
千早「これは・・・」
貴音「無線機・・・ですね!」
伊織「そうよ、この無線機を各分隊に一つづつ渡すから、これで連絡を取り合いましょう」
伊織「基本的にはこんな感じよ。作戦と呼べるような上等なものじゃないけど、何も決めないよりはマシでしょ」
真「そ、そうだね!さすが伊織だよ!」
伊織「・・・あんた、理解できたんでしょうね?」
真「だ、大丈夫だよ!とりあえずフラッグを守っていればいいんだろう?」
伊織「・・・まあ、そうね。お願い。とりあえず、以上。あとは始まってから考えればいいわ」
・・・
P「Aチームの方は全く作戦も何も建ててない・・・」
律子「春香が作ってきた、お弁当とクッキー食べてましたし、完全にピクニック気分ですね。」
P「まあ、そういうのもサバゲーの良さではあるけどな」
律子「そういうものなんですか?」
P「そういうもんだ。さて、そろそろ両チームフラッグ周辺に集まりはじめたな」
律子「そうですね。って、貴音!?」
P「これは・・・ミニスカポリス?」
律子「怪我しなきゃいいけど・・・」
P「まあ、本人も自覚あるのか、タイツはいてるし大丈夫だろう。」
P「それにしても、黒タイツ、ミニスカポリス姿の貴音・・・エr、凛々しいな!」
律子「何を言おうとしたかについては、触れないでおきます」
P「ありがとうございます」
律子「他の、メンバーは特に様子もなく迷彩服ですね。」
P「このフィールドで借りれるやつですね。真が銃持ってないのと、雪歩が抱えてる長いバッグが気になるな・・・」
律子「まあ、そんな危険なことはしないでしょう。」
>>9
いきなり6対5とは…
P「そうだな。それにしても、貴音はやはりニューナンブか。当然といえば、当然だが」
律子「一日署長でかなり気に入ってましたからね」
P「亜美はMP5kを二挺か・・・亜美らしいな・・・」
律子「特に二挺持ちの部分が、ですね」
P「雪歩は、バッグにしまってるからわからない、と。千早が持ってるのはP90か」
律子「なんか、変な形ですね」
P「伊織は・・・SCAR-Lか。なんか、妙に装備充実してるな。」
律子「なんか、手榴弾のようなもの持ってましたよ」
P「トルネードですか?あんな高いものをよく・・・これが財力か・・・」
P「次はBチームを・・・って」
律子「美希がカメラにめちゃくちゃ近づいてぴーすしてますね・・・」
P「おい、美希!それじゃあ、みんなの装備が見れ・・・」
律子「プロデューサー殿、開始まであと30秒ですよ」
P「仕方ない、Aチームの装備は始まってから見るか」
・・・
Aフラッグ周辺
春香「美希!そろそろ始まるよ!」
美希「もー、せっかくハニーに美希の可愛い迷彩服姿でアピールしてたのに」
あずさ「あらあら、あとにしましょうね」
美希「は~い・・・」
やよい「なんだか緊張してきました!」
響「う~、自分もだぞ」
真美「んっふっふ~♪いやあ、楽しみですなあ」
春香「真美は楽しそうだね。そういえばさっき亜美と話してたけどなんだったの?」
真美「ヒミツ!」
春香「ふーん?(なんだろう」
・・・
Bフラッグ周辺
伊織「いよいよね・・・みんな、準備はいい?」
真「バッチシだよ!」
貴音「万全です。」
雪歩「はいですぅ」
千早「大丈夫よ。それにしても、萩原さんそのバッグには何が入ってるの?」
雪歩「あとで教えるよ」
千早「そう、楽しみだわ」
亜美「・・・」
P「5、4、3、2、1・・・」
律子「スタート!」
ピヨー!
伊織「行くわよ!」
亜美「了解~♪」
雪歩「行こう、千早ちゃん」
千早「ええ」
貴音「で、私達は」
真「ここで待機だね・・・」
・・・
Bフラッグから西へ400m B分隊
伊織「ふっ・・・ふぅ・・・」
思った以上に息が上がる。草が風でそよぐ音一つひとつに神経をすり減らされる。
敵がいるんじゃないかと考えると足が重く、心臓は鈍く、痛いほどに鼓動している。
体は汗まみれで、額から流れた汗が目に入って沁みる。
亜美「ん~、誰も居ないね~」
亜美がのんきな声を出し、キョロキョロ周りを見ながらのんきに私の後ろを歩いている。
伊織「ちょっと、亜美!もっと緊張感持ちなさいよ。私の背後はあんたに任せてるんだから!」
亜美「はいは~い♪」
全くわかってなさそうだ。ただ、亜美ののんきな調子で多少は気が紛れた。
別に、弾に当たっても死ぬわけでは無いのだ。そこまで緊張する必要も無いだろう。
そう考えた、直後、横の茂みの奥から、草を掻き分け進むような音が聞こえた。
思わず、身を屈め、銃を構える。亜美も気づいたらしく、同様に銃を構え、屈む。
茂みは静まりかえっていて、人のいるような気配はない。
風が吹いて、草木がざわめく。
風が汗まみれの体を冷やす。
亜美「なんだ~気のせいか~」
と言いながら亜美が立ち上がった瞬間、茂みの中から耳を裂くような発砲音が二つ。
亜美「うわ!うわわ!?」
伊織「亜美!」
撃たれた、亜美は素早く身を屈めながら、近くのバリケードの裏に隠れる。
ほっとしたのもつかの間、再び発砲音
恐怖で、身をかがめたまま動けなくなる。
頭が混乱して、冷静な判断ができない。
亜美の入ったバリケードに逃げ込む?それとも前方にあるバリケードまで走る?
はぁはぁと自分の息遣いがうるさい。
どのくらいたっただろうか。
動けず縮こまっていると再び、茂みから音がする
伊織「い、いやああああ!」
亜美「いおりん!?」
恐怖で思わず発砲する。練習した構え方もへったくれもない、ただ銃を茂みの方向へ向けて撃つ。
カチン、カチン
ボルトが交代したまま、動かなくなる。引き金を引いても弾が出ないのに、私は引き金を弾き続けていた。
亜美「い、いおりん。弾切れだよ。」
伊織「はぁはぁ・・・え、ええ」
亜美に言われて正気に戻る。
2歳も年下の亜美になだめられる自分が情けなくなった。
どうやら、茂みにいた敵は去ったようだった。
亜美「多分、真美だよ」
バリケドードから身をかがめながら出てきた亜美は言う
伊織「え?なんで分かるのよ」
亜美「だって、こっちが二人だってわかったから逃げたんっしょ?てことは、相手は多分一人。んで、真美は亜美と同じ装備だから発砲音が二つしたことも説明つくっしょ」
亜美の冷静さな分析に開いた口が塞がらなかった。
普段はおちゃらけてイタズラばかりする子なのに何故こんなに冷静なのだろう
他のアイドルが二挺持ちの可能性を見落としているが、私よりよっぽど冷静だ
伊織「・・・行くわよ」
亜美「え、いおりん?ちょ、まってよ~」
亜美の冷静さと自分を比較して惨めな気持ちになったのを隠すように早足で、私はD拠点を目指した。
その後は、敵との遭遇もなく、D拠点の目の前まで無事到達した。
貴音『ザザ-こちらは以上ありません』
伊織「そう、わかったわ」
貴音にさきほどのことを伝え、状況を確認したが、どうやら問題は無いようだ。
伊織「じゃあ、とりあえず、D拠点を確保しましょうか」
亜美「中に誰もいないといいけどね~」
伊織「・・・そうね」
先ほどの襲撃を思い出して、身震いした。
伊織「でも、さっきみたいな失敗はしない・・・」
小さな声で一人呟きつつ、装備の確認。
プレートキャリアーにはグレネードが三つ、SCARのマグは一本消費したので残り三本。
セカンダリのグロックのチャンバーもチェックする。セカンダリのマグは装填されている物を含め、三本。
伊織「亜美、装備の確認しておきなさいよ」
亜美「了解です、いおりん隊長!」
先ほどの襲撃も意に介さず、亜美は元気なままだった
亜美「あーっ!」
亜美が突然大声をあげる。
それに驚いた私は思わず銃を構えていた。
伊織「ど、どうしたの!?」
亜美「カロリーメイト落とした!」
本当に気の抜けた子である。
伊織「カロリーメイトなんてどうでもいいじゃないの・・・」
亜美「あー、いおりんカロリーメイトバカにしたなあ?カロリーメイトはスタミナ回復できて美味しい、スネークも大満足のお菓子なんだぞ!」
伊織「す、スネーク?」
何をいっているのか分からない亜美を無視しつつ、バリケードから顔をだし、拠点の様子を伺う。
あれだけ騒いだにも拘わらず、拠点から誰かが顔を出す様子はない。
中には誰も居ない様だった。
伊織「亜美、行くわよ」
亜美「了解~。そのグレネードの出番ですな?」
伊織「ええ」
事前に伝えてある突入方法はこうだ
まず、ドアを小さく開け、そこからグレネードを投げ込む。
炸裂を確認したあと、私が一階を、亜美が二階をクリアリングする。
クリアリング後は、拠点二階と拠点周辺に分かれ、監視、制圧を続けるというものだ。
ドアの前まで前進する。中から反撃の様子はない。
伊織「行くわよ」
亜美「あいさー!」
ドアを小さく開け、ピンを脱いたグレネードを素早く投げ込む。
拠点の中で炸裂音が響き渡るのを確認すると、素早くドアを開け、銃を構えながら内部を確認する。
伊織「亜美!」
亜美「あいさー!」
私の掛け声に応じた亜美は二階へと上がる。
銃を構えながら一階をクリアリング。
特に誰か居る様子もない。
伊織「ひとまず、安心ね・・・」
ほっと一息ついた私は、亜美の様子を確認しようと二階へと上がりはじめる。
階段の途中上から話し声が聞こえる
伊織「亜美・・・?」
階段を静かに上がりつつ、二階の様子を息を殺しながら伺う
真美「亜美もこっちのチームにきなよ。そっちみたいに作戦とかかたっ苦しいの無いしさ!」
亜美「んー、確かにサクセンとかセーアツとか面倒くさいかも・・・」
真美「真美と亜美で楽しく、サバゲーして勝っちゃおうYO!」
亜美「そうしようかな!亜美が裏切った分、勝つ確率上がるし!」
伊織「え?」
思わず声が漏れた
亜美「あ、いおりん!?」
真美「亜美やっちゃおう!」
亜美「んっふっふ~♪了解~!」
亜美「んっふっふ~♪了解~!」
亜美が言い終わる前に私は階段を駆け下りていた。
ドアを蹴り開け、とにかく走る。
亜美「まてー!いおりーん!」
後ろから亜美が銃を撃ちながら追いかけてくる
私はジグザグに走りながら茂みの中に飛び込んだ。
茂みに飛び込んである程度走ったところでバリケードを発見したので、ひとまず隠れる。
亜美「あれ~?いおりん逃げ足速いなあ~」
亜美の声が随分遠くから聞こえる。
気づかないうちに距離を稼いでいたようだった。
亜美「真美~、一緒にいおりん探すの手伝ってー!」
真美「おっけー!」
拠点の二階、テラスから真美が返事をしているようだった。
伊織「とりあえず、貴音たちに連絡しなきゃ・・・!」
無線を取り出し、貴音に連絡を取る
伊織「た、貴音!亜美が、亜美が裏切ったわ!」
貴音『なんと!?わかりました、すぐ向かいます!』
伊織「ちょ、ちょっと貴音!?・・・切れてる」
伊織「すぐ向かうって、位置わかってんのかしら・・・」
貴音は報告してから、すぐにD拠点の近くまでやってきた。
伊織「たか・・・」
呼びかけようとした次の瞬間、貴音がD拠点に向けてメガホンを持って叫ぶ。いつの間に持ってたのよ・・・
貴音『亜美!あなたはすでに包囲されています!おとなしく投降しなさい!!』
伊織「た、貴音!?」
素っ頓狂な貴音の行動に驚く。
ていうか、そもそも亜美そこにいないから!
貴音『田舎のおふくろさんも泣いていますよ!裏切りなどという卑劣な行動はやめてでてくるのです!』
亜美「ん、お姫ちん?」
真美「なになに?あれ、お姫ちん!」
私を探していた亜美と真美が貴音の横の茂みから出てくる
貴音「亜美!あなたはびーちーむのめんばーなのですよ!それを裏切りなど・・・外道です!」
亜美「でも、亜美真美と一緒にサバゲーしたいし・・・」
真美「亜美よ、貴音を撃って我々の仲間になったという証を見せるのだ!」
亜美「ま、真美・・・んふ♪ごめんね、お姫ちん」
亜美が貴音へと銃を構え、撃った
乾いた発砲音がしてすぐ、ドサリという音をたて、貴音が倒れた。
伊織「た、貴音!」
思わず叫んで立ち上がった私はSCARを落としてしまう。
立ち上がった私を見つけた亜美と真美。
亜美「あ、いおりんそんなところにいたんだ!」
真美「よし、亜美!いおりんも片づけちゃおう!」
亜美「了解~!」
再び私は全速で逃げ出した。
貴音が、貴音がやられた!
伊織「と、とりあえず、伝えなきゃ!」
走りながら、震える手で無線機を取り出し、雪歩へと伝える
伊織「貴音が亜美にやられたわ!」
雪歩『あ、亜美に!?どういうことなの伊織ちゃん!』
伊織「亜美が裏切ったのよ!!」
雪歩『・・・分かった。伊織ちゃん。今自分が何処は知ってるかわかる?』
伊織「え、そ、そんなのわかるわけ・・・!」
雪歩の今まで聞いたこともないような低いトーンの声に驚きながら、そう言いかけていた私は中央の広場へと続く道へと出た
伊織「い、今中央広場へ繋がってる道に出たわ!」
雪歩『分かった。じゃあ、そのまま中央の広場まで亜美をおびき寄せて。そしたら、横の茂みの方へ逃げこんで。あとはこっちで何とかする』
伊織「ちょ、ちょっと!そ、そんなこと出来るわけ!あー、もう!やってやるわよ!」
正直自身はなかった、広場へと続く道を走れば、途中に遮蔽物は殆ど無い。
薄いブッシュの中では、逃げる私の背中を亜美と真美が見つけ、撃つことは容易いだろう。
それでも、ここでハンドガンだけで亜美と真美の二人と対峙するよりは勝算が高いと考えた。
真美「あ、いおりん!広場のほうに逃げてる!亜美!いけえ!」
亜美「あいあいさー!」
後ろから陽気な二人の声が聞こえる。その陽気な声が今はただ恐ろしかった。
発砲音とともに銃弾が横を掠めていく。
何も考えず、ジグザグに走りながらただ中央の広場を目指した。
亜美と真美も走り続けているためか、追いつかれる様子もなく、弾にも当たらなかった。
広場へと逃げ込んだ私は、広場横の小さな小屋の後ろに隠れた。
伊織「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ!」
走り続けた私は吐きそうになりながらも息を整えようと空気を吸い込んだ。
汗でびっしょりになった服が気持ち悪い。
小屋の影に隠れていると亜美達が広場へとやってきた。
亜美「あれ~、いおりん確かにこっちにきたよね?」
真美「うん、絶対そーだよ。ちょっと真美あの小屋の方見てくるね!」
亜美「了解~。にしてもここだけバリケードもほとんど無いし見晴らしいいね~」
真美「いおり~ん!どこだ~!」
近づく真美の足音に恐怖を覚えながらも、私はホルスターからグロックを引きぬく。
立ち上がることもできずに、ただ、グロックを両手に持って真美の足音が近づくのを聞いていた。
・・・
C拠点 C分隊
千早「それにしても萩原さん。すごい技術ね」
雪歩「そ、そんなこと無いよ。ちょっとだけお父さんに教えてもらっただけで・・・」
千早「(萩原さんのお父さんは一体何者なんだろう・・・)」
千早ちゃんは私のことを買いかぶりすぎだよ。ただちょっと得意なこととお父さんに教えてもらった技術を使っただけなのに・・・
今回の銃の扱いも全然自信無いし・・・
そういえば、伊織ちゃんからの連絡が遅いなあ。
雪歩「それにしても、伊織ちゃんからの連絡遅いなあ。そろそろD拠点を制圧しててもおかしくない頃なのに・・・」
千早「そうね。何かあったのかも・・・」
雪歩「まさか、伊織ちゃんに限って・・・」
その時、無線から呼び出し音が鳴る。
慌てて無線機をとり、応答する。
伊織『貴音が亜美にやられたわ!』
状況がよくわからなかったので思わず聞き返してしまった。
雪歩「あ、亜美に!?どういうことなの伊織ちゃん!」
伊織『亜美が裏切ったのよ!』
その言葉を聞いた瞬間、頭に一気に血が上るのを感じた。
それとは裏腹に、意識は明確に、判断はより冷静になった。
四条さんを、四条さんを・・・許せない
雪歩『・・・分かった。伊織ちゃん。今自分が何処は知ってるかわかる?』
千早「(は、萩原さんの雰囲気が変わった!?)」
伊織『い、今中央広場へ繋がってる道に出たわ!』
丁度いい
雪歩「・・・分かった。伊織ちゃん。今自分が何処は知ってるかわかる?」
伊織『ちょ、ちょっと!そ、そんなこと出来るわけ!あー、もう!やってやるわよ!』
無線機から聞こえる伊織の声を無視しながら、私はバックを広げ、準備に取り掛かった。
千早「そ、そのバッグ、スコップが入ってただけじゃないのね・・・すごい銃・・・」
隣で何かが喋っているが、気にせず続ける。
千早「(明らかに、さっきの無線を受けたあとから雰囲気がおかしい。なんだか・・・怖い)」
千早「わ、私、周りを警戒しておくわね!」
バッグからM82を取り出し、バイポッドを展開する。テラスにプローンマットを広げ、狙撃体制を取る。
雪歩「絶対に、絶対に許さない・・・」
風は・・・無い。スコープ越しに広場を覗く。
まだ、伊織ちゃんは到着していない。
案外、グズのようだ。
ふぅ、と息を吐き、呼吸を整え、スコープを覗き続ける。
中央の広場には、中継した際、罠を仕掛けておいた。
本当は単に教わった知識を使いたかっただけだったのに、思わぬ形で役にたった。
構造は簡単なもので、落とし穴の中に縄でつくった無数の輪があり、落ちた者が抜け出しにくくなっているだけの物だ。
伊織ちゃんが広場に到着し、そこにある小屋の方へ向かった。
まもなく、亜美と真美が広場へやってきた。伊織ちゃんを探しているようだ。
雪歩「亜美・・・ッ!」
グリップを握る手に思わず力が篭る。だが、まだだ。まだ撃ってはいけない。
四条さんを殺した罪は、しっかりと贖ってもらう必要がある。
雪歩「そろそろ・・・かな・・・」
引き金に指を添える
・・・
広場、亜美真美
それにしても、広いなあ。
背の低いバリケードが二つあるだけ、他には何もない
亜美「真美~いおりん見つかった~?」
真美「まだだよ~!ていうか、亜美も手伝ってよ!」
真美の不満を挙げる声が聞こえる。
亜美「はいはい~、ん?」
地面に何か落ちていて、光っている。
亜美「なんだろう?」
何が落ちているのか確認しようと、前へ一歩踏み出す
ズボッ
亜美「え、何!?」
間抜けな音をたてた地面が亜美の足を吸い込む
真美「亜美!?って、ただの落とし穴じゃん!」
けらけらと笑いながら真美が亜美の方を指さす。
恥ずかしい。でも、ただの落とし穴にしては、深い。それに何かが足に絡まる。
亜美「ちょ、真美ー!笑ってないで助けてー!なんか足に絡まって抜けないYO!」
真美「亜美隊員は間抜けですなあ。すぐいくよ~」
真美がいてよかった・・・一人だと抜け出せなかったかもしれない。なんかすごい足に絡みついてるし・・・
真美「にしても、誰だろ。ゆきぴょんかな。穴掘るの得意だs」
そう言いながら近づいていた真美が、着弾音とともに地面に倒れた。
少し間を置いて、発砲音が響いた
亜美「え・・・?」
何が起きたのか分からない
亜美「ま、真美?」
真美の返事はない。
亜美「え、え?」
亜美「真美いいいいいいいいい!!!」
顔の横を弾丸が掠め、地面に着弾する。
亜美「ひっ・・・!」
再び、遅れて発砲音が聞こえた。
・・・
C拠点、雪歩
雪歩「ポケットの中にはビスケットがひとつ♪」
間抜けが罠に引っかかった。
ようやくだ
雪歩「ポケットを叩けば・・・」
ほら、きた。同じ間抜け面のおさげ。
ケラケラ笑いながら、穴に落ちた間抜けを助けようと近づいているのがスコープ越しにしっかりと見える
雪歩「ビスケットが二つ♪」
ようやく、復讐できる。
ゆっくり、冷静に引き金を引く。
M82から12.7mmの弾丸が放たれる。
あたりに轟音が響き、壁がビリビリと共鳴する
放たれた弾丸は正確に真美の頭部に命中する。
頭に弾を受けた真美が地面へと倒れる。
それを見て亜美が叫んでいる
不思議と心が踊る。
もっと、もっと苦しめなきゃ。
四条さんに泣いて詫びるくらい。ううん、もっともっと後悔させてやる・・・!
間抜け面の少し横、当たらない程度に狙いを定め、再び引き金を引く。
狙い通り、当たらない程度に、でも、確かに撃たれたとわかる近さで外す。
狙撃される恐怖のあまり、亜美は泣き始めているようだった。
雪歩「ふふ・・・泣け・・・もっと泣け!!」
再び、引き金を引く。
・・・
広場、亜美
怖い怖い怖い怖い怖い
助けて、誰か助けてよ!
いやだ、いやだよ、真美みたいに撃たれたくない!
目から気づかないうちに涙が溢れていた。
亜美「助けてよぉお!」
再び、至近距離を弾丸が掠め、地面に着弾する。
遅れて、発砲音。
亜美「もぅ、もうヤダよぉお・・・・」
恐怖のあまり、亜美は失禁してしまった。
小水が、亜美の下着を汚す。
失禁した情けなさ、恐怖で亜美は冷静さを失っていた。
亜美「もうやだ、やだやだ!誰か、誰でもいいからたすけてえええええええええ!」
あずさ「あらら~、ここはどこかしら。あら、亜美ちゃん?」
亜美「あ、あじゅしゃおねえちゃん・・・?」
・・・
C拠点、雪歩
雪歩「ふふ、ふふふっ・・・」
恍惚とした表情で雪歩はスコープを覗きながら、亜美の姿を眺めていた。
雪歩「天罰だよ、四条さんを殺した・・・ふふっ」
雪歩は復讐を完遂した達成感と弱者をいたぶる快感の中で冷静さを欠いていた。
亜美が広場の端の茂みにいるあずさと会話しているのを雪歩は見逃していた。
・・・
広場、あずさ
落ち着いた亜美ちゃんは私に状況を説明した。
亜美「ど、どっからか狙撃されてそれで、・・・」
あずさ「あらあらまぁまぁ。でも、亜美ちゃんと私は敵同士だし・・・」
亜美「もうやだよぉ、早く助けて!パンツ替えたいよぉ!」
あずさ「パンツ?」
亜美「う・・・いや、あの・・・」
亜美は思わず赤面する。
あずさ「・・・」
罠から見ても、どうやら狙撃してるのは雪歩ちゃんかしら。
とりあえず、Bチームの人達ね。それに・・・これはやりすぎだわ
あずさ「わかったわ。どうやら、亜美ちゃんはAチームの協力者と見てよさそうだし。」
あずさ「それに、真美ちゃんの仇は取らないとね・・・」
亜美「あずさお姉ちゃん!」
とりあえず、着弾跡から見ても、方向はC拠点のほうね。
あずさ「無事にたどり着けるかしら?」
一人、呟きながらあずさは茂みへと姿を消した。
・・・
C拠点、千早
千早「(なんだか、萩原さんすごく・・・怖いわ・・・)」
C拠点の周りで歩哨を行なっていた、千早はそんなことを考えていた。
千早「それにしても、萩原さんが派手な音をたてて狙撃していた割りには、誰も来ないわね・・・」
千早は大きなあくびをしつつ、一人、ぼうっとしながらつぶやいていた。
その時、茂みをかき分けながらあずさが飛び出してきた
千早は気が緩んでいたせいもあって、反応できず
あずさ「あら、千早ちゃん。動かないで?」
にっこりと笑顔を作るあずさ、その目は全く笑っていない。
素早い動きで、スリングでたすきがけするように持っていた二挺のMP40を構える。
スリングはあずさの豊満な胸に挟まれ、よりその胸を強調するような形であった。
千早「あ、あずささ・・・くっ!」
あずさ「?」
首をかしげるあずさに連動してその強調された豊満な胸が揺れる。
これが決定的だった。
千早「む・・・」
あずさ「む?」
千早「胸なんて飾りです!エライ人にはそれがわからないんです!!」
胸囲の格差に怒りが頂点に達した千早はその胸に向けて弾丸を放とうと、手に持っていたP90を構えるが、遅い
発砲音が鳴り響き、千早が地に伏す
千早「胸、胸なんて・・・」
あずさ「だから、動かないでって言ったのに」
あずさ「さてと・・・」
千早の胸に弾丸を叩き込んだあずさは、C拠点のテラスへ
あずさ「お仕置きね♪」
とつぶやき、にっこりと、冷たい視線を向け、歩を進める。
・・・
C拠点、雪歩
パァンと乾いた発砲音が響く。
雪歩はその発砲音で冷静さを取り戻し、即座に立ち上がる。
雪歩「千早ちゃん!?」
襲撃を受けたんだ!早く助けに行かなきゃ・・・
横に置いてあった、MP5に手を伸ばそうとした瞬間
「動かないで、雪歩ちゃん」
背後から声が聞こえ
ごりっ
堅く、冷たいものが頭部へと押し付けられる。
雪歩「そ、その声は、あずささん!?で、でもどうやって背後へ・・・」
あずさ「テラス、ジャンプしたら縁に手が届いたからそのまま登ってきたのよ、ふふ」
ころころと笑いながらあずさは雪歩へと銃を突きつけている。
雪歩「ど、どうするつもりなんですかぁ・・・?」
涙声になりながら雪歩はあずさへ問いかける
あずさ「あら、別にどうもしないわよ。ただ、捕虜になって罰ゲームを受けてもらうだけよ」
冷たい声であずさは言う
雪歩「ばば、罰ゲーム!?」
あずさ「ちょっとおいたが過ぎたようね、雪歩ちゃん」
・・・
セーフティエリア
P「あ、あずささんこえええ・・・」
律子「やっぱり普段怒らない人が怒ると怖いですね・・・」
あずさ『プロデューサーさん、捕虜はどうすればいいんですか?』
P「あ、ああ。雪歩にセーフティにくるように伝えてください。あと、罰ゲームの内容も」
あずさ『わかりました~♪』
律子「一体どんな罰ゲーム何でしょうね・・・」
P「う、う~ん。正直、あずささんの考える罰ゲームとか想像もつかないな・・・」
ーしばらくしてー
雪歩「う、うぅ・・・怖かったです・・・」
P「まあ、雪歩の狙撃も十分怖かったけどな」
律子「で、罰ゲームの内容はなんて言ってたの?」
雪歩「ひっ、あ、あの・・・ステージで・・・ライブって・・・」
P「ん、普通だな。全然罰ゲームって感じが・・・」
雪歩「男性客だけの、ステージで、水着を来てライブって・・・・!!」
律子・P「あー・・・」
雪歩「こ、これどうしてもやらないとダメなんですかぁ?」
P「ま、ルールだからな!」
律子「残念だけど・・・ルールだから」
雪歩「う、うぅううう、あ、穴を掘って埋まってますぅ!!」
P「こ、こら雪歩!」
律子「さて、続きを・・・」
P「お、おい、律子!止めるの手伝えって!うわ、もう5m近く掘ってる!?」
・・・
C拠点、あずさ
あずさ「ふぅ、雪歩ちゃんへのお仕置きも済んだし、どうしましょう」
雪歩を降伏させたあずさはC拠点の二階から広場を眺めていた。
あずさ「あ、そういえば亜美ちゃん助けてあげないと」
そう考えながら、自然と頬が緩む。
敵兵を倒した満足感と、亜美のことを考えていたあずさは完全に油断していた。
「ごめんね、あずささん」
気づいた時には、すでに遅かった。
後ろから忍び寄った黒い影はあずさの背中を斬りつけていた。
・・・
広場、伊織
伊織は雪歩の狙撃を小屋の影から見守っていた。
伊織「終わった・・・の?」
亜美の様子を伺おうと広場に目を向けると、亜美は未だに落とし穴から抜けだせずにいた。
伊織「・・・亜美、やっぱりあんたのこと許せないわ」
伊織はこの戦場で初めて、人に向け引き金を引いた。
放たれた弾丸は亜美の肩に命中し、亜美はそのまま地面へと倒れ。動かなくなった。
伊織「・・・はぁ」
危険が去り、疲労が一気に体を支配する。
小屋にもたれかかり、空を見上げる。
空は青く、澄み渡っていた。
・・・
C拠点、真
真「間に合わなかった・・・か」
床に崩れ落ちた、あずさを見下げながら、真はつぶやく。
無線を受けて突然走り出した貴音に置き去られた真はBフラッグの防衛を行なっていた。
だが、伊織と雪歩の無線を聞いた真は直感的に、雪歩に危険が迫るのではないかと感じ、C拠点を目指していたのである。
到着した時、C拠点を拠点手前に倒れた千早を発見し、拠点内からの発砲音を聞く。すべてを察した真は屋内に侵入し、あずさを背後からナイフで切りつけた。
真「Bフラッグに戻らないと・・・」
真は貴音とともにA分隊に分担されていたが、無線を持った貴音が戦死したため、伊織との通信手段を持っていなかった。
そのため、本来の任務である拠点防衛に専念するべきだと判断したのである。
階段へと振り向こうとした瞬間、さっきを感じ取った真は前方へと転がり込む。
空を切る音とともに先ほどまで真の首があった空間をナイフが切り裂く。
響「さすが真、すごい察知能力さー!」
室内には、いつの間に忍び込んでいたのか、タイトな黒い衣装に身を包んだ響の姿があった。
真「響・・・!?」
前転から素早く受け身を取って立ち上がった、真は響へと視線を移していた。
真は右手にナイフを持ち、大きく前に突き出す様にして構える。
響「さっき、あずさを見かけて様子を見てたら、なんか拠点制圧しちゃうし。大丈夫かな、と思ってたら真がいたから勝負しにきたぞ!」
対して、響のナイフは二本持つ。
左手は軽く肘を曲げ、相手の攻撃を受け止めるため、逆手に持って構える。
右手に持ったナイフは脇腹に抱えるようにして持ち、体を反り、相手から攻撃を受ける面積を狭く保っている。
互いの距離は2m、真は目を細め、意識を集中させる。
響「おしゃべりはなしか?自分、寂しいぞー・・・」
そう言いながらも、対して落胆した様子も見せない響は、口の端を大きく吊り上げ、ニヤリと笑う。
猿倉って寝落ちしてた。まさか、スレが残ってるとは・・・保守感謝!
円を書くように、互いに牽制しながら距離を徐々に縮めていく。
室内は蒸し暑く、真の頬には汗が流れる。
汗が、顎の先から離れ、床に落ちた。
瞬間、響は大きく前進するようにして、真へと迫る。
その動きに釣られた真は、響の左手首を狙って、ナイフを突き出す。
響は真のナイフの動きを見切り、左手に持ったナイフで横へ受け流しつつ、右手に抱えるようにして構えていたナイフを真の腹部めがけ、素早く突き出す。
その動きを目で追っていた真は身を捩りながら、ナイフを避け、その流れでバク転しながら響が右手に持っていた、ナイフを蹴り上げる。
思わず、ナイフを手放した響は真と距離を取り、左手のナイフを右手に持ち替える。
真は素早く、体制を立て直し、響と正対する。
響「・・・やっぱり真は、すごいさー。自分じゃあ、やっぱり勝てないかな」
不敵な笑みを崩さない響のこめかみには一滴の汗が流れていた。
真は響の言葉には応じず、先ほどと同様にナイフを構え、一瞬の隙も見逃すまいと意識を再び集中させる。
響「(これは、使いたくなかったんだけどなあ・・・)」
響は左手に持っていたナイフを失った。
にも拘わらず、先程と同様、右手に持ったナイフを脇腹に抱えるようにして構え、左手を前に出す。
・・・
セーフティエリア
律子「さっきのナイフ蹴りあげた時点で、真はナイフに触れてるからアウトなんじゃ・・・」
P「熱い展開なのでありです。幸い、ふたりとも怪我はないようですし。」
律子「まあ、プロデューサー殿がそういうならいいんですけど・・・にしても、響は戦術、真は身体能力、って感じの戦いになってますねコレ」
P「ああ(それにしても、響の持ってるナイフ・・・)」
・・・
C拠点、真
響と正対した状態のまま、真は全く動けなかった。
一本ナイフを失ったにもかかわらず、同様の構えを取る響の策が読みきれずにいたからだ。
静かに、両者が動かないまま、時が過ぎる。
夏の暑さが二人を襲う、外では蝉たちがけたたましく鳴いていた。
真は響の不審な行動、これを時間稼ぎと判断した。
後詰めが来る前に短期で決戦すべきだと判断し、真は響との距離を詰める。
対して、響は深く、構えた姿勢を崩さず、真を迎え撃つ形を取る。
互いの距離が、真の必殺の間合いに入った瞬間、響の左腕を目掛け、真は大きく踏み込む。
響「真、勝ったぞ!」
真の振ったナイフが響を切り裂く瞬間
響の深く構えていたナイフから、真目掛けて刃が放たれる。
大きく踏み込んでいた真に刃を避ける余裕はない。
真はナイフを振りぬくと同時に床へと崩れ落ちた。
しかし、振り抜かれたナイフは響を切り裂いており、響も同様に、床へと崩れ落ちた。
・・・
Bフィールド、Bフラッグから北西400m地点、伊織
疲れた体に鞭を打ち、Bフラッグへと走る。
無線で呼びかけても応答しないことから考えて、C分隊は全滅、でも、拠点には真が残っているはず。
そう考えた、伊織は侵攻を諦め、フラッグの防衛と、真との合流を目指した。
・・・
広場、春香、美希
春香「ま、真美・・・!やられてる・・・」
美希「あふぅ、春香早くフラッグ取ってゲーム終わらせるの」
倒れた真美に焦って駆け寄る春香とは対照的に美希はのんきにあくびをしながら言う。
春香「美希・・・そうだね。早く終わらせよう・・・」
美希と春香は広場から茂みに入り、Bフラッグを目指した。
・・・
Bフラッグ、伊織
息を切らせながらBフラッグに到達した伊織は、あたりを見回し真の姿を探す。
しかし、真の姿はない。
伊織「真・・・」
伊織はただ一人、フラッグの周りを見渡し、思案を巡らせた。
フラッグ手前にはバリケードがある。ここに真がいないということは多分、残っているのは私だけだ・・・
伊織は自らの装備を確認する。
残っているのは、グレネードが二つ、SCARのマガジンが2つ、あとはグロックとそのマガジンが3つだ。
相手の残存兵力は未知数だが、少なくとも二人以上はいるだろう。そう考えた伊織はフラッグ周辺にトラップを仕掛け、迎え撃つことを考え、準備を始めた。
・・・
Bフラッグより北西100m、春香、美希
春香「美希、フラッグだよ!フラッグ!」
美希「見ればわかるの」
茂みの中から顔を出し、バリケードの様子を伺いながら春香はいう。
美希は春香の言葉を適当に流しつつ、あたりを見回す。
美希「(フラッグ周辺にしては敵がいる様子がないの・・・これは・・・)」
美希は天性の勘から危険を感じ取っていた。
春香「敵いないみたいだね」
美希「・・・うん。でも、一応」
美希は抱えていたM60をバリケードに向けて乱射し始める。
けたたましい発砲音とともに大量の弾丸が発射されバリケードに着弾する。
春香「み、美希!?」
美希「ホント サバゲーだぜなの! フゥハハハーハァー」
春香「うわぁ・・・」
美希「(そんなドン引きされると傷つくの・・・でも、こんな挑発にも乗ってこないってことは本当に誰も居ないの・・・?)」
美希は引き金から指をはなしつつ思う。
そんな美希をよそに、春香はすでにフラッグを手に入れたつもりでいるようだった。
春香は、立ち上がり、フラッグの方向へと歩き始める。
美希「春香、何かあるかもしれないの!」
春香「え、あ!きゃあ!」
春香は体勢を崩し、前のめりに倒れこむ。
美希「春香!!」
倒れた春香に美希が駆け寄る。しかし、春香が転んだ周辺にトラップが仕掛けられている様子はない。
春香「えへへ、転んじゃった」
はにかみながら笑顔で春香はいう。
美希「・・・もう、春香は開けたところでも歩いてればいいの。転けだろうし」
呆れた美希が言うと春香は
春香「それもそうだね、敵いないみたいだし」
そう言いながら、ブッシュ薄い中央へと続く道へと出る。
美希「春香、冗談なの」
ほとほと呆れた様子で美希が言うと春香は驚いたように
春香「え、冗談だっったの!?」
美希「(そりゃそうなの)」
あまりにも緊張感のない春香を見みながらそう考える。
春香「勝ったらプロデューサーさんにこの前覚えたパンプキンプディングを食べてもらうんだ~」
美希「春香、それ死亡フラグ・・・」
そう言いかけた瞬間、美希は春香の前方にあるワイヤーに気づく。
美希「春香、止まるの!」
美希が春香に向かって叫ぶがすでに遅く、春香の足はワイヤーに引っかかっていた。
春香「え?」
間の抜けた声を挙げた瞬間、グレネードの破裂音とともに大量の土煙があがる。
美希「春香!」
土煙が晴れると、春香は地面に仰向けに転がっていた。
美希が春香に駆け寄ろうと、茂みからでた瞬間、Bフラッグの方から爆音と共に大量の弾丸が降り注ぐ。
美希が最後に見たのはバリケードに設置されたM2を放つ伊織の姿だった。
・・・
Bフラッグ、バリケード、伊織
あんな即席のトラップに引っかかるなんて・・・さすが春香ね
伊織「にしても・・・」
春香の横で倒れている、美希を見ながらつぶやく。
伊織「美希まで一緒に倒せるなんてね。結構あっけなかったわね」
そう言いながら、ホルスターからグロックを引き抜き、バリケードを降りようと振り返るとそこにはやよいの姿があった。
伊織「や、やよい・・・!?」
やよい「伊織ちゃん・・・」
やよいの手にはM1911が握られていた。
やよい「もう、終わりにしようよ・・・私は、伊織ちゃんと戦えない・・・」
やよいは目に涙を溜めながら言う。
伊織「やよい・・・」
伊織「でも、あんたにも一緒に戦った仲間がいるんでしょう。最後まで戦いなさい!」
伊織の脳裏には一緒に戦い、倒れていた者たちの姿が浮かんでいた。
やよい「・・・そう、なら仕方ないね!」
そう言いながらやよいは手に持っていた。M1911を伊織に向けて構える。
伊織「・・・っ!!」
遅れて伊織もグロックを構え、引き金を引く。
発砲音は一つだけ。伊織のグロックの銃口からは硝煙があがっていた。
伊織「やよい!なんで撃たなかったの・・・!」
グロックを投げ捨て、崩れ落ちるやよいを抱きかかえながら伊織はやよいに問う。
やよい「だから・・・伊織ちゃんとは戦えないっていったでしょ・・・」
伊織に抱えられたやよいはそうつぶやくとがっくりと項垂れ、目を閉じた。
伊織「やよい、やよいいいいいい!」
・・・
ゲーム終了後
P「いやあ、お前たち凄まじい演技力だったな」
律子「これだけ演技力があるならドラマとかの仕事もどんどんやっていけそうですね」
真美「倒れたまま、死んだ演技とかチョー大変だったYO!」
貴音「真、さばげぇとは面妖な競技なのですね」
P「まあ、本来は死んだマネとかしなくてもいいんだが・・・」
千早「(萩原さんのあれは絶対演技とかじゃ・・・)」
真美「それにしても、あの狙撃にはチョーびっくりしたよ!」
あずさ「(小声で)亜美ちゃん、早く下着替えてたほうがいいんじゃないかしら?」
亜美「!?」
真「いやあ、響とのナイフ戦は燃えました!」
響「真の身体能力には驚かされたぞ!」
春香「私全然活躍してない・・・」
美希「春香はいつもどおりだったの」
春香「美希!?」
伊織「やよい、最後のって・・・」
やよい「へへ~、やっぱ伊織ちゃんと戦うなんて出来なかったよ」
伊織「もう、バカね・・・さて、プロデューサーを一日どういうふうに使うか考えなきゃね!」
真「へへ~、何にしようかなあ」
貴音「あなた様、私はらぁめんが・・・」
P「え、え?何の話だ!?」
千早「そういえば、萩原さんは?」
律子「ああ、雪歩なら・・・」
・・・
観衆「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
雪歩「ひぃいいん、プロデューサーさぁん・・・助けてくださいぃ!」
おわり
猿食らって寝落ちしたり、、後半適当だったりすみませんでした。
駄文長文に付き合ってくれた方々ありがとうございました。
それにしても、ワイワイガヤガヤくんずほぐれつなギャグテイストのSSにするはずだったのにどうしてこうなった・・・
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