雪だるま娘「メリークリスマス!」 (19)
男「は?」
雪「だから、メリクリですって!」
男「あの……部屋、間違えてませんか?」
雪「いえ、ここで合っていますよ」
男「どちら様ですか?」
雪「昨日あなたが作った雪だるまです!」
男「訳の分からないことを……」
雪「これを見れば分かります。はい」
男「これは……昨日僕が雪だるまに巻いたマフラー……」
雪「ね?」
男「しかし……どうして君がそんなのものを?」
雪「だってあなたが昨日私の首に巻いていったじゃないですか」
男「じゃあお前は元雪だるまだとでも言うのか?」
雪「だから最初からそう言ってるじゃないですか」
男「そんなわけあるか!」ダッ
雪「あっ、男さん!待ってくださいよう」
男「雪だるまが……無い……」
雪「はぁ、はぁ……男さん足速いです……」
男「まだ雪もちらついてるんだ……一晩であんな雪玉が溶けるわけがない……」
雪「信じて、もらえましたか?」
男「……お前は本当に雪だるまなんだな?」
雪「……はい!」パァ
男「…………寒いから、いったん家に戻ろうか」
雪「はい」
男「うん、君が元雪だるまだというのは信じた」
雪「本当ですか!」
男「雪だるまをわざわざ移動させるほどの暇人がいるとも考えにくいしな。となると……」
雪「と、なると?」
男「いったいどういうミラクルが起きたら、雪だるまは人間になるんだ?」
雪「あ、それはですね。かみさまが私を人間にしてくれました」
男「神様ねえ」
雪「赤い帽子と服を着けた、白いおヒゲのかみさまです」
男(サンタクロースじゃないか!)
雪「君と男君への、クリスマスプレゼントだって。……ところで、クリスマス、って何でしょうね」
男「君知らないで言ってたの!?」
雪「だってそのかみさま、去り際に『メリークリスマス!』って叫んでいったので……」
男「そう……」
雪「ところで、どうしてあんな夜中に雪だるま作ってたんですか?」
男「だって……いい歳して雪だるま作ってる男とか見られたら恥ずかしいじゃん」
雪「でも夜中に雪だるま作ってる男とか不審者ですよ?」
男「うっ……」
雪「まあ、作りたくなるものですよね。私は作られる側ですが」
男「ところで、君はいつまでここに居るの?」
雪「さあ……行くあてもありませんし。雪だるま風に言えば、溶けるまで、ですかね?」
男「ふうん」
雪「あ、なんですかその『僕興味ないですよ』オーラは」
男「別にそんなつもりじゃ……」
雪「ところで、ご飯食べませんか?お腹すいちゃいました」
男「雪だるまでも腹は減るのか」
雪「今は人間ですっ!」
男「悪い悪い。……何もないから、外に食べに行くか」
雪「やったー!」
男(なんだか子供みたいな奴だ)
雪「私、ハンバーグかオムライスがいいです!」
男「じゃあファミレスだな」
雪「ん~、美味しいです!」モグモグ
男「それは良かった。なあ、一つ聞いてもいいか?」
雪「ん、なんですか?」
男「雪だるまって、みんなそういう感じなのか?」
雪「そういう感じ、とは」
男「何というか……ほら、君は僕が雪だるまを作っていたとき、僕のことを見てたんだろ?」
雪「そうですね」
男「雪だるまは、みんなそういう風に心とか精神みたいなものを持っているのか?」
雪「……うすぼんやり、です。私だって、かみさまに出会う前に、どういう風に外を見ていたのかはわからないんです」
男「……」
雪「私だけが特別なのか、それとも雪だるまにはみんなうっすらと意識があるのか。不思議ですね」
男「そうだな……」
雪「もしかしたら、真心を込めて作ったときだけ、何かが宿るのかもしれませんね」
男「真心、か」
雪「……ごちそう様でした!」
男「……おう、腹いっぱいになったか」
雪「はい!」
男「それなら良かった。帰りにケーキでも買ってくか?」
雪「ケーキ!食べたいです!」
男「はいはい。そんなに目ぇキラッキラさせなくても分かるから」
雪「チョコレートケーキ……モンブラン……」
男(可愛いな)
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