蛍「そうですか?でもお兄さん結構格好良いと思いますけど。先輩たちのお兄さんだけあって」
夏海「またまたー。ほたるん何企んでるの?あ、もしかして明日の給食のプリン狙い?無駄無駄。兄ちゃんそんなお世辞言われたくらいじゃすぐ見破っちゃうから。現に私鼻で笑われたことあるし」
蛍「あるんだ……」
夏海「うんうん。変に鋭いとこあるからねー。メガネのくせに」
蛍「メガネは関係ないと思いますけど……」
夏海「ま、残念だったね、ほたるん。だから明日のプリンは諦めなー。兄ちゃんのプリンは私がちゃんと正々堂々強奪してやるから。……あ、一口くらい分けたげようか?れんちょんにもあげる約束しちゃったし」
蛍「いえ、それはいいです。っていうか先輩が狙ってたんですね。プリン」
夏海「あ、そう?いらないんだ」
蛍「はい。それと別にお世辞のつもりでもなく、普通に整ってる顔してるなーと思ったわけですし」
夏海「はぁ?何?ほたるんもしかして視力悪かった?兄ちゃんのメガネ貸そうか?」
蛍「いえ、私視力はそこそこいいですけど。あと、そこはお兄さんのメガネなんですね」
夏海「それじゃあちょっと美的感覚が常人と違うとか」
蛍「それもないと思いますけど……」
夏海「…」
蛍「…」
夏海「そ、それじゃあ頭がちょっと変な人とか……」
蛍「酷いですよ!?私に対してもだけど、それ以上にお兄さんに!」
夏海「あっはっは、ごめんごめん。言い過ぎたか~」
蛍「もー……身内が褒められてそこまで否定するのもどうなんですか?」
夏海「…」ジー
蛍「……な、なんですか?先輩。そんな私の顔じっと見て……」
夏海「……ほたるん」ジロジロ
蛍「は、はい!?何でしょう先輩!いきなり声2オクターブくらい低くしちゃって!!」ビクッ
夏海「もしかして……もしかしてだけどさ。勘違いだったら悪いんだけど」
蛍「は、はい……」タジタジ
夏海「……兄ちゃんに惚れた?」
蛍「それはないです!!ええ、無いです!!絶対に!!無いっていうのに命懸けれます!」
夏海「あ、そう?」
蛍「はい!!!」
夏海「…」
蛍「…」
夏海「その曇りなき真っ直ぐな眼、信じよう」
蛍「ほっ」
夏海「いやぁ、ほたるんがいきなり変なこと言い出しちゃったもんで私もびっくりしたよ」
蛍「す、すみません。ほら、ちょうど二人で掃除してて、先輩見てたらなんとなく思っただけですので……」
夏海「ん~。そうだねぇ。真面目に考えてみたらまあ、確かに兄ちゃん、この夏海ちゃんの兄貴だけあってまあそこそこ、多少はイケメンじみたところがあるとかないとか言えなくもないわけではないかなーとか思うことも吝かではないという気がしなくもないわけではないが」
蛍「随分長い葛藤がありましたね」
夏海「でも中身があれじゃあなー。ありゃ一生モテることは無いでしょ」
蛍「そうですか?確かにこっちじゃ同年代がいないのであれですけど、卒業して都会の方に行ったら普通に女の子にモテるんじゃ。器用ですし。気も効きますし。なんだかんだ付き合いも良いですし」
夏海「……は?」
蛍「ひっ!?」ビクッ
夏海「…」
蛍「…」ドキドキ
夏海「……はは、まあ、ほたるんはこっち来てまだ日が浅いからね。兄ちゃんの見た目に騙されちゃうのもしゃーないっちゃしゃーない」
蛍「あの、私、春にこっち来てもう秋ですけど……」
夏海「兄ちゃん無口だし影薄いから理解するのに時間かかるんだよなー!!」
蛍「あ、はい!すみません!私じゃまだまだお兄さん理解するには経験不足でした!!」
夏海「まあ、仕方ないってほたるん。ほたるんはこっち来てまだ日が浅いからね。それより何の話してたっけ?」
蛍「……あ、え、えっと。お、お兄さんが都会の方に行ったらモテるんじゃないかってことを否定されたところですけど」
夏海「ああ。そこまでだっけ。そりゃそうでしょ。あんな無口で影薄い男、モテるわけないじゃん。私ら家族でさえわかんないとこアリアリなわけだし?」
夏海「「いつだったかなんておもむろに人差し指空に向けたと思ったら、そこに一筋の光が射し込んできて、無数の鳥たちが集まってきたりしてさぁ」
夏海「あと、猛吹雪で皆が凍える中、兄ちゃんのメガネだけ一切曇らなかったなんてこともあったし。いや~あれは伝説だった」
蛍「それはなんだかよくわからないけど凄いですね……」
夏海「ま、つまり兄ちゃんを理解できる人間なんて、幾ら人がいっぱいいる都会とかでも、いるはず無いってことだよ。私ら家族でも全然理解しきれてないんだから」
蛍「はあ……でも、そういうミステリアスなところに惹かれる人もいるんじゃ……」
夏海「あ?」
蛍「ひっ!?」ビクッ
夏海「ほたるん……」
蛍「い、いえ!冗談です!そんなわけないですよね!?ミステリアスとか何考えてるかわかんなくて気持ち悪いだけですもんね!?」
夏海「え……ほたるんそんなこと思ってたの?さすがに兄ちゃん可愛そうだし本人の前では言わないであげてね……」
蛍「褒めてもけなしても駄目って、どうしろって言うんですか!?」ガーン
夏海「あははは、冗談冗談」
蛍「はぁ……変な話題出すんじゃなかった」
夏海「ほたるん、心配してくれてたんだよね?兄ちゃんあのとおりだし、将来嫁の貰い手無いんじゃないかって」
蛍「男性って貰い手が無いじゃなくて貰う方なんじゃ……あ、いえすみません。話の腰折る気はないです」
夏海「でも、心配しなくて良いって。今や時代が時代だし?そりゃ田舎は独身にはちょっと風当たり辛いことも多いけど、その辺は許されてしかるべきだと思うんだよね」
蛍「あ、結婚できないの前提です?」
夏海「兄ちゃん、家事とかは結構できるし、料理はめっちゃ上手いから。まあ、生涯実家暮らしでも特に問題はないでしょう」
蛍「それは……」
夏海「だから、さ?ほたるん」
蛍「は、はあ……先輩?……夏海先輩?」
夏海「余 計 な こ と 考 え て く れ な く て い い か ら ! !」♯
蛍「…」
蛍「ぴぃいいいいいいいいいいい!!?」
蛍(なんかすっごい怒ってるううううう~~~~~~~~!!?)
その頃のねぇねぇ
一穂「……くぅー……くぅー……」
夏海「たっだいま~」ガラッ
雪子「あら、おかえり夏海」
夏海「あれ?母ちゃんどっか行くの?」
雪子「これから町内会の集まり。帰ってくるの9時過ぎになるから小鞠と晩御飯食べときな」
夏海「そっか、今日は月に一度の集まりだっけ」
雪子「あっためて食べれるもん冷蔵庫に入ってるから。あと鍋に味噌汁入ってるから。沸くまで温めるんじゃないよ。出汁の風味飛ぶ」
夏海「はいよー」
雪子「足りなかったら兄ちゃんに適当になんか作って貰いな。あと……」
夏海「はいはいはーい。全部わかってるって行ってら~。ごゆっくり~」
雪子「…」ジトー
夏海「な、何さ……」タジ
雪子「なーんか嬉しそうな顔しとるねぇ……」
夏海「そ、そんなこと、な、なーっすよー!?」
夏海(やべ、声裏返った)
雪子「……ま、いいけど」
雪子「あ、そうだ。富士宮さんとこも一緒に行くし、このちゃんも後でうちに来るから。一緒にご飯にしな」
夏海「あ、マジで?このみちゃんも来るんだ。そしたら兄ちゃんと姉ちゃんも混ぜて、この間買ったゲームしよーっと」
雪子「母さん居ないからってずっとゲームばっかしてるんじゃないよ?」
夏海「はーい」
雪子「ったく、返事だけはいつもいいんだから」
夏海「それより、早く行かなくって大丈夫?遅刻したらうるさいんじゃないの?」
雪子「おっと、それもそうやね。それじゃあ母さん行ってくるから。ちゃんと宿題もするんよ?」
夏海「はーい!わっかりましたー!!」
雪子「しとらんかったらげんこつやからね」
夏海「…」
雪子「返事!!」
夏海「は、はい!!」ビクッ
その頃のねぇねぇ2
一穂「くぅー……くぅー……うへへへ。やきいも~……」ジュルリ
夏海「~♪」
小鞠「ただいまー。あー疲れた……って、夏海。どうしたの?そんなスキップなんかして居間で舞い上がっちゃって」
夏海「あ、姉ちゃんー。遅かったねー」
小鞠「ん。れんげに付き添って一緒に駄菓子屋寄ってたからね」
夏海「んふふ、そりゃ勿体無いことしたね。この素敵空間を味わう時間を損なったとか」ニヘラ
小鞠「うあ、笑顔気持ち悪。何があったのさ」
夏海「今日はうちら自由の身ですぜ」
小鞠「へ?自由?」
夏海「今日は鬼のいぬ間に魂の洗濯ってね。さあ今日は目一杯ゲームして遊ぶぞー!」
小鞠「何言ってんの。ゲームばっかしてたらまたお母さんの雷落ちるよ」
夏海「何言ってるのは姉ちゃんの方だって!今日は母ちゃん、町内会の集まりで夜まで帰って来ないんだって!」
小鞠「そういえばもうそんな時期だったか」
夏海「このみちゃんも後でうちにご飯食べに来るって言うしさ!」
小鞠「ああ。じゃあやっぱりあの靴このみちゃんのだったんだ」
夏海「え?このみちゃん?いや、まだ来てないと思うけど」
小鞠「いやいや、あったよ?見慣れない靴。このみちゃん新しい靴買ったって言ってたしね~」
夏海「ありゃ、いつの間に。もしかして私が踊ってるうちに来ちゃってたか」
小鞠「どれくらい踊ってたんだか」
夏海「いやあ、かれこれ20分は……」
小鞠「アンタのほうが時間無駄にしてんじゃん!!」
夏海「あっはっは、これは盲点」
小鞠「アホか。あ、あとお兄ちゃんも帰ってきてたけど、ご飯のこと伝えてるんだろうな」
夏海「Oh……」
小鞠「お前なぁ~」
夏海「あっはっは、ごめんごめん。そしたら兄ちゃんとこのみちゃん探そうか」
小鞠「お兄ちゃんは多分自分の部屋だとして、このみちゃんが居間に来てないってことは台所かなぁ。ほら、いっつもおかず何品か持ち寄ってくれるでしょ」
夏海「私らの部屋かもよ?」
小鞠「ああ。たまに私らが帰ってきたらアンタの部屋でゲームやってたりするしね」
夏海「それじゃあ私、部屋見てくるよ。ついでに兄ちゃんにも母ちゃんいない話伝えてくる」
小鞠「じゃあ私台所見てくるから」
その頃のねぇねぇ3
一穂「うへへ……もう食べられない……」ゴロン
夏海「それにしても、たっのしっみだな~」
夏海「新しく買ったゲーム、チームプレーできるんだよね」
夏海「兄ちゃんとお金出しあってデパートで買ったやつ。すっごい面白いし」
夏海「姉ちゃんの腕前はお察しだし、兄ちゃんもそこそこの腕前ではあったけど、2人で対戦して見た結果ウチの方が強かったし」
夏海「このみちゃんはまだやったことないはずだから、そんな強いわけないし」
夏海「これはなんとかして兄ちゃんとウチでチーム組んで、姉ちゃんフルボッコしかないでしょう。このみちゃんには悪いけど」シシシシ
夏海「っと、なんとか言ってるうちにウチの部屋の前に着いてしまったのでした。このみちゃんいるかな?」
夏海「おーい、このみちゃーん」ガラッ
夏海「…」
夏海「あちゃ、ハズレか」
夏海「それじゃあ台所の方かな?まあ、あっちは姉ちゃんいるし任せようか」
夏海「それじゃあ兄ちゃんの部屋行って母ちゃんいない話伝えとこ」
夏海「ついでに今のうちにゲームの話も示し合わせとこーっと」ニマニマ
夏海「ふんふふんふふ~♪」テクテク
夏海「おーい、にいちゃーーん」ガラッ
夏海「……あれ?」
卓「」
夏海「あれ、兄ちゃん?」
卓「?」
夏海「何やってんの?」
卓「」ヒラヒラ
夏海「あー。宿題やってたんだ」
卓「」コクコク
夏海「そっかー」
卓「」シッシ
夏海「なんだよ邪険にすんなよー」
卓「」ゴメンゴメン
夏海「まあいいや。宿題やってるなら。その代わり早く終わらしといてよね」
卓「?」
夏海「ああ、今日母ちゃん集会だからさー」
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