妹「そこにいたのお兄ちゃんだったんだ、私てっきり」(220)

妹「ジョニーデップかと思った」

妹「お父さんかと思っちゃった」

兄「……え?」

妹「もう、ヒヤヒヤしちゃったよ」

兄「お前……そこに、倒れているの、誰だ?」

妹「誰って、何言っているのお兄ちゃん」

兄「そこで血塗れになってんの、誰だって聞いてんだよ!」

妹「やだなあ。忘れちゃったの?私たちを産んでくれた、大切なお母さんだよ♪」

兄「う、あああ……」

妹「だからお父さんじゃなくて良かったって言ったんだよ」

妹「お兄ちゃんなら……私に免じて、このこと黙ってくれるもんね?」

兄「うわああああああーッ!!!」



兄「……うああああっ……あ?」

兄「眩しい、太陽……夢か」

兄「くそっ、朝っぱらから最悪な夢見ちまった……」

妹「お兄ちゃん朝だよーっ!ってわ、珍しい。ちゃんと起きてる!」

兄「おう。おはよ」

兄(こんな妹が、母さんを殺すわけないよな……)

妹「早く一階に下りてきてっ。今日の朝ごはんは私が作ったの!」

兄「お前が?母さんはどうしたんだよ」

妹「え?」

兄「え?」

妹「何の話?」

兄「いや、だから……なんで母さんが、朝飯を作っていないんだ?」

妹「え?」

兄「お、おい」

妹「何の話?」

兄「…………」

妹「お兄ちゃん?」

兄「あ、いや……なんでもない。ご飯、食べようか」

妹「も~、変なお兄ちゃんっ」

妹「それでねっ、友達がその答え違うって言うの!」

兄「ああ……」

妹「いやいやこの子割り算も出来なくなったのかって、みんなで笑っちゃってさあー!」

兄「……」

妹「それでねそれでね……。あり、お兄ちゃんどうしたの?何か元気ない」

兄「あっ、いや、別に」

妹「もしかして、私とご飯食べてもつまんない?」

兄「そんなことないよ」

妹「そうっ。よかったあ~!でも悩んでいることがあったら、何でも言ってね!」

妹「それじゃ、お先に行ってきます!もう、高校生は遅くていいなぁ~」

兄「はは……気をつけてな」

兄「……よし、行ったか」

兄「ふざけんなよ、一体何がどうなってんだ」

兄「昨日のは夢じゃなかったのか?あいつが、母さんを殺し――」

兄「……そんなわけないよな。そうだ、何かケンカしたのかも。だから朝だってあんな態度してたんだ」

兄「とりあえず、父さんに確認してみよう」

prrrrr prrrr

兄「もしもし、父さん?」

父『なんだ?こんな朝早く。学校はどうした』

兄「あ、えっと、まだ家出てなくてさ。それで、母さんのことなんだけど」

父『ああ、母さんなあ。びっくりだよ、何も言わずに友達と旅行だなんて』

兄「え?」

父『なんだ、妹から聞いてないのか?俺もあいつから聞いて……ったく、旅行くらい俺も目をつぶってやるのに』

兄「旅行……そっか。旅行、ね」

父『どうした?』

兄「ううん、それで、何泊だって言ってた?」

父『それが期間が決まっていないらしい。これも妹から聞いた話だが、相当ストレス溜まっていたのかなあ』

兄「…………」

父『帰ってきたら、暖かく迎えてやろうな』

兄「うん、そうだね」

兄「それじゃ、切るよ」

兄「…………」

兄「いくら何でも信じられない。あの母さんが何も言わず旅行?温厚な母さんが?」

兄「それも、妹だけに告げて行っちゃうなんて……」

兄「もし、もしも昨日見たことが本当なら、俺だけじゃない。父さんだって危険だ」

兄「情報を集めなきゃ。まずは妹の部屋に行って、調べてみよう」

兄「なんか目ぼしい物が見つかればいいけど……」

兄「ここか。そういや入るのは久々だな」

兄「あいつ自分の部屋に入られるの嫌ってたし……しばらく見ない間に、女の子っぽくなったもんだ」

兄「とりあえず引き出しを漁ろう。悪いとは思うけど、命を取られるよりマシなはず」

兄「学校の教科書や、筆記用具……うーん、普通の物しか見当たらないな」

兄「あっ。何だこれ、日記帳?」

兄「そうだ、これに昨日のことや周辺のことが書いてあれば……」

兄「よし、さっそく、」

妹「お兄ちゃん?」

兄「え?」

妹「お兄ちゃん――何してるの」

兄「あっ、いやっ、お、お前なんでここに!学校はどうしたんだよ!」

妹「教科書忘れたから、取りに来たんだけど。お兄ちゃんこそ、私の部屋に入って何してるの」

兄「いや、これは……ほら、貸してた漫画本、読みたくなっちゃって」

妹「ふうん。いいけど、早くしないと遅刻するよ」

兄「あっ、ああ、そうだな!よし、学校に行こう!」

妹「お兄ちゃん」

兄「……なんだ?」

妹「ううん、いってらっしゃい」

兄「はあ、はあ、はあ……!」

兄「くそっ、慌てて飛び出してきちまった」

兄「何であいつ、あのタイミングで……本当に忘れ物か?」

兄「でも、へへ。おかげで日記帳は手に入れられた」

兄「家にいるよりも、学校の方が安全かもしれないな」

兄「今から行っても遅刻か……まあ、いいや。友達に相談してみよう」

兄「妹は……うん、ついてきてないな」

兄「急ごう!」

妹「……」

兄「よし、到着」

兄「すみません、遅刻しましたー」

先生「まったく。早く席に着きなさい」

兄「はい、すみませーん」

友達「お前が遅刻なんて珍しいな」

兄「……まあ、ちょっとな」

友達「でも羨ましいぜ~。俺も妹が欲しかったあ」

兄「なんだよ。藪から棒に」

友達「えっ、だってお前、妹と登校してきたじゃん」

兄「…………」

兄「え?」

友達「あれ、違うの?」

兄「あ、いや……本当に?」

友達「ああ。お前が校門入ったとき、手ぇ振ってたし。そういやお前振り向きもしなかったけど、ありゃひどくないか?」

兄「…………」

友達「なんだよ?」

兄「いや……ほら、授業中だぜ。教師に当てられても知らないぞ」

友達「へいへいっ。変なやつだな」

兄「…………」

兄「……読んでみよう」

8月1日
今日もお母さんにぶたれた。信じられない。

兄「母さんが暴力……?そんなまさか」

8月2日
お兄ちゃんもお父さんも、まるで気づいてくれない。みんなお母さんに騙されてる。

兄「…………」

8月3日
最低な女だ。あの女に、お兄ちゃんもお父さんも。おかしい、こんなのはおかしい。

8月4日
駄目だ。もうこの家族は終わりだ。みんな騙されてる。私のことなんか誰も見てくれない。

8月5日
おわりだおわり。おわりおわりおわりおわり

8月6日
あああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああ

8月7日
死ね。みんな死ね。いや、私が終わらせる。みんな終わらせてあげる
おわりだおわりだおわりだやったやったもうくるしまずにすむんだやった

8月8日
きょうはおかあさんのめいにち

兄「何だよ……これ」

兄「え……あ?どういうことだ……」

兄「うわ、うわあああああ!!」

先生「どうした!」

兄「あ……ああ、あああ……す、すみません」

先生「大丈夫か?顔色悪いぞ」

兄「ちょっと……保健室、行ってきます」

兄「はっ、はっ、はっ」

兄「動悸が激しいままだ……気分が悪い」

兄「昨日のことは、見間違いなんかじゃなかったんだ。夢でもない」

兄「俺が友達と遊んで帰って、家に入ったら……暗い部屋に、妹と……」

兄「う、あああ。あああああ」

兄「俺は気絶したのか?それで自分の部屋にまで、そうなのか?」

兄「わかんねえ。何もわかんねえよ。俺殺されちゃうのか?妹に?」

兄「ああ、うあああああああああ!」

友達「おい!」

兄「え……お前、どうして……」

友達「様子がおかしかったから、嘘ついて抜け出してきたんだ」

友達「どうしたんだよ。保健室に行くんじゃなかったのか?こんな階段でへたりこんで……」

兄「た、たすけてくれ」

友達「え?」

兄「俺、殺されるかもしれない……助けてくれ!妹に殺されるかもしれないんだ!」

友達「落ち着け!……屋上に行こう。そこで話を聞かせろ」

兄「ああ……くそっ、震えがとまんねえよお……」

兄「……っていう、わけで……」

友達「お前も、お前の母親同様、殺されるかもしれないのか」

兄「ああ……俺、怖くて。どうしようもなくて」

友達「そりゃ、目の前で母親がそんなになってるの見たら、誰でもそうなるさ」

兄「俺、どうしたらいいのかな……」

友達「とにかく家に帰るのはまずいだろ。父親は無事なんだな?なら連絡を取って……」

兄「もし、もう殺されてたら!」

友達「大丈夫だ!会社に行ってんなら、誰かが止めてくれる」

友達「それに、人殺しって言っても、相手は女子中学生だ。いざとなりゃ何とでもなる」

友達「ひとまずは……証拠を集めるのが、先決だろ」

友達「んでも心配だなあ」

兄「え?」

友達「いや、お前のことももちろんだけどよ、俺の妹、お前んとこと仲良かったじゃん」

兄「あ、ああ……そうだよ!危ない!」

友達「だから落ち着けって。少なくとも学校の中じゃ平気だ」

友達「それに、日記を見せてもらった限り、ターゲットは家族に向けられてる。下手なアクションは取らない方がいい」

兄「そう、だな……。でも、もう付き合わないようにした方が」

友達「その辺は上手くやっとくよ。なに、自慢の妹だ。今まで何度も俺を救ってくれたし」

兄「……俺は、どうしようか」

友達「今日はうちの家に来い。父親は、何とかして家に帰らないようにしてもらえ」

放課後

友達「まあ上がってくれよ」

兄「ああ、さんきゅ」

友達「そういや妹さんには帰らないこと伝えたのか?」

兄「いや、まだ……夜になったら、メールしとくよ」

友達「おう。それがいい」

妹「なに?お兄ちゃんお泊りでもするの?」

兄「ああ、今日は友達の家に泊まって――え?」

友達「っ!!」

兄「お、お前……なんでここに」

妹「お邪魔してます」

友達「……どういうことだ?」

友妹「どうも何も、私が友達を家に呼んでたらおかしい?」

友達「ああ、遊びに来てたのか」

兄「…………」

妹「どしたのお兄ちゃんっ。カラスが豆鉄砲くらったような顔して!」

友妹「もう、それを言うなら鳩でしょ?」

妹「あれえ、間違えちった~!」

妹「そーだっ!せっかく四人集まったんだし、みんなで遊ぼうよ!」

兄「え?」

友妹「あ、それいいかも。いいでしょ、兄ちゃん」

友達「……駄目だ」

友妹「どーしてっ?」

兄「お、俺と友達は大事な話があって」

友達「Hなビデオの鑑賞会をするからだ」

友妹「やー、サイテー!」

兄「えっ……なんで?」

友達「言ったろ。本人がいるんだ。自分が気づいたことも、俺に話したことも伝わらない方がいい」

友達「そういうわけで、俺の部屋いくから。入ってくんなよ!」

友妹「入ったら何されるかわかんないし!いいよ、二人で遊んでよっ」

妹「……うん。そうだね」

兄「大丈夫なのか?」

友達「妹のことか。大丈夫だって。何かあったら俺がくい止める」

兄「……一階に、いるんだよな」

友達「冷静になれ。俺たちの目的は証拠を集めて警察に訴えることだ」

兄「でも、あいつが母さんを……!」

友達「日記を見た限りじゃ、あの子もひどい仕打ちにあってたんじゃないのか?」

兄「……わからない。俺の前では、本当に優しい母さんだったから……」

友達「何にせよ、人殺しは駄目だ。で、どうする?お前の家に行くか?」

兄「証拠……。うん、行ってみよう」

妹「あれ?お兄ちゃんたちどこ行くの?」

兄「やっぱり、俺んちに行くことにするよ……」

友妹「なによ。来たばっかじゃない」

友達「一階にお前らがいたんじゃ、おちおちDVDも見られねえよ」

友妹「やー、きもっ。けがらわしー」

妹「……あの、」

友達「うん?」

妹「何をしに行くんですか?」

友達「何って……言ったろ。DVD鑑賞だよ」

妹「へえ……。見つかるといいですね」

友達「え?」

妹「うちのお兄ちゃんもそういうの隠しているので。あはは」

兄「な、なに言ってんだよ」

妹「もう、バレてないと思ったの?私の千里眼は伊達じゃないんだから~」

友達「はは、ありがとう。それじゃ行ってくるよ」

友妹「鍵閉めてってよぉー」

パタン

兄「ふう……どうにか抜け出せたな」

友達「…………」

兄「どうした?」

友達「……まずいな」


    ∧_∧

    ( ^ア^ )     ∧_∧
   /    \    ( ^ア^ ) < おい、俺のアフィブログに転載するからさっさと雑談始めろ養分共
__| |    | |_   /    ヽ、
||\  ̄ ̄ ̄ ̄   / .|   | |
||\\        (⌒\|__./ ./
||  \\       ~\_____ノ|

兄「まずいって。何が」

友達「お前が話したこと。まず部屋に忍び込んだのが見つかった時点で、釘は刺されていた」

友達「今日家を離れて俺んちに泊まることにより、お前が何を考えているのかが確信的なものとなったはずだ。そしてまた俺に話したことも八割がたバレる」

友達「今日わざわざ遊びに来たのも、その行動を見越してだろう。それで、今日の終わりに確信するはずだった事実がさっき明らかになっちまった」

兄「俺がお前に相談したことも……か?」

友達「ああ。すると当然、このまま俺たちを放ってはおかないだろう」

兄「どうすんだよ!?」

友達「……ひとまず、二手に別れよう」

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兄「二手に?」

友達「ああ。あえて迎え撃つってのも悪くないが、相手はどんなものを持っているか分からない」

友達「もし二人ともやられれば、その時点でゲームオーバーだ」

兄「じゃあ人気のあるところへ逃げるんだな」

友達「ああ。なるべく安全な場所だ。急げよ、でも走るな。いいか、あくまで何かを買ってから家に行く。そのために別れた。そうしとくんだ」

兄「もうバレてるのに、意味あるのか?」

友達「疑念を少しでも持たせられるならその方がいい。それじゃ、また連絡する」

兄「ああ、気をつけろよ……」

兄(一人か……)

兄(友達は……大丈夫だよな。狙われているのは俺だ。あいつにまで被害は及ばない)

兄(急いで、わざとらしくないように……)

兄「…………」

兄(友達、もう行っちゃったかな)

兄「ちょっと振り返って……ん?」

ささっ

兄「今、誰かが隠れた……よな」

兄(つけられてる……?)

兄「…………」

兄(間違いない。よく聞けば、俺に合わせて足音もする)

兄「くそっ……」

兄(早歩きにすれば、その分相手も歩調を速めてくる……!)

兄「急げ。人気のある場所。店、店、店……っ!」

兄(でも、これで友達は安全ってことだ。俺だけが狙われている、間違いない)

兄「よし、着いた!」

兄「店の中にいれば安全なはず……おっ、電話だ」

兄「もしもし」

友達『安全な場所に来れたか?』

兄「ああ、なんとか。でもつけられているっぽい」

友達『マジかよ……絶対そこを動くなよ。何があるか分からない』

兄「おう。そっちは、大丈夫か?」

友達『へへ、おかげで無事……お前の家に来れたぜ』

兄「え?」

友達『悪いな。気づかれないように、鍵を拝借させてもらった』

兄「お、お前!」

友達『安心しろよ。敵はお前をつけているんだろ?だったら俺も大丈夫だ』

兄「でも……!」

友達『それより忘れたか。あくまで俺たちは買い物をしに来たんだ。つけられているなら尚のこと、変に表情を変えるな』

兄「わ、分かってるけど……」

友達『ならその状態のまま、聞いてくれ。いいものを発見した』

兄「え?」

友達『お前、朝、妹に作ってもらったんだろ?それは食卓に立たせないためだろうし、だったら凶器はその辺に隠している可能性が高い』

友達『普通は部屋かと思うし、お前だってそう考えた。命拾いしたな、もし勘が良かったらやられてたかもしれないぜ』

兄「そ、それで見つかったのか!?」

友達『おう。血だらけのナイフ。これがあれば十分だろ』

兄「そっか……。よかった」

友達『安心すんのはまだ早い。いいか、危険なのはお前の方なんだからな』

兄「ああ……。でも、周りに人はたくさんいるし、大丈夫だよ。そっちこそ、早く家から出た方がいい」

友達『だな。気をつけろよ。家出て安全を確保したら、俺の方からそっちに向かう』

兄「了解。それじゃ、また」

兄「…………はあ」

兄(っと、変に表情を変えちゃ駄目なんだっけ)

兄(でも安心した……。なんとか、俺も父さんも助かることができた)

兄(友達のおかげだな。事が済んだら、好きなだけおごってやろう)

兄「…………っ」

兄「まだ、俺をつけてるのか」

兄(今は人の多いデパートの中……)

兄(いくらなんでも、こんなところで荒い真似はできない)

兄(だとすれば――捕まえることだって、出来るんじゃないか?)

兄「危険なら助けを求めて……よし、やれる」

兄(友達に助けられたまんまでいられるか……!)

兄「…………」

兄(そこを曲がって……で、この角を右に行くと見せかけて、)

兄「ここだっ!」

?「ひゃあっ」

兄「逃げられないぞ!観念し――え?」

?「ちょ、やめてくださいよぉ」

兄「うそだろ……?」

友妹「いたた……」

兄「どうして、妹じゃないんだ……!?」

兄「おい!!」

友妹「す、すみません」

兄「なんで君が……!どういうことだよ!」

友妹「妹ちゃんが兄ちゃんたちを追いかけてみようって言い出して、楽しそうなんで参加しちゃって」

兄「君は、俺をつけてきたってわけか……?」

友妹「はい。あはは、バレてました?失敗ですね」

兄「ってことは……」

兄「友達の方には、妹が……?」

友妹「はい、そうなります」

兄「ちくしょうッ!!!」

兄「つながれ、つながれ……ッ!」

prrrrr prrrr

兄「頼むよ。生きていてくれ……!」

友妹「あの、どうかしたんですか?」

兄「君の兄貴が、殺されそうになっているんだ!!」

友妹「えっ、はい?どういうことですか!?」

兄(ああクソッ。こんなときに余計なことを……俺は何やってんだ……!)

prr ガチャ

兄(つながった!)

兄「もしもし、もしもし!」

友達『……おう』

兄「大丈夫か?!無事か!?」

友達『どうしたんだよ、そんなに慌てて……』

兄「俺をつけていたやつが! 妹じゃなくて、」

友達『ああ、今度海行きてえよなあ~』

兄「え?海?」

友達『どこまでも泳いでいってさ、見えなくなるまで……逃げていけよな』

兄「何言ってんだよ、お前」

友達『俺は泳げそうもないわ。ったく、お前の妙な冗談に付き合うんじゃなかった』

兄「え……?」

友達『妹が家族を殺すだぁ?ありえねえだろ、フツー。ま、勝手に深追いして付き合ったのは俺なんだがよ』

友達『やっぱお前の言う通り、冗談だったわ』

兄「どういう意味、何言ってんだよ!」

妹『あーあ』

兄「おまえ……」

妹『お兄ちゃんって良い友達を持ったよねえ』

兄「どういう、ことだ……」

妹『この人、最後の最後までお兄ちゃんは私の意図に気づいていないよう振舞うんだもん』

妹『どうせ死ぬんだから、私の注意を逸らしても無駄なのにね』

兄「おい!あいつは!あいつはどうした!!代われよ今すぐ!!」

妹『あはは、ごめん。ナイフ背中に立てた状態だったから、刺したらすぐ死んじゃった』

兄「な……うそ……」

妹『嘘じゃないよお兄ちゃん。あっはは、聞いて』

妹『もう私、三人も殺しちゃった』

兄「は……三人……?」

妹『お母さん、お父さん、そしてお兄ちゃんの友達』

兄「なっ……父さんは会社に行って……」

妹『お父さんの分も朝食作ってあげたんだ。私特製毒薬入りの』

兄「なに……!?」

妹『そういえば、お兄ちゃんも美味しそうに食べてたよねえ』

兄「ッ」

妹『あはは、大丈夫大丈夫。いくら私でも二人分の毒薬は用意できないって』

兄「お前……自分がしてること、分かってんのか……!」

妹『わかってるよ?これからすることも』

妹『早く帰ってきて、お兄ちゃん』

ガチャリ

兄「…………」

友妹「あの、大丈夫ですか?何があったんですか、今の誰ですか?」

友妹「殺したとか、物騒な言葉が聞こえてきたんですけど……」

兄「……行かなきゃ」

友妹「えっ?」

兄「君のお兄さんが死んだのは、俺の責任だ。俺だけ逃げていられるか」

友妹「説明を、してくださいよ。一体何がどうなってるんですか!」

兄「知ってるか……?俺の妹って、人殺しなんだ」

妹とはいったい・・・うごご

兄「家族全員、殺そうとしてるんだぜ」

友妹「え……?」

兄「笑えるよなあ。何年付き合ってきたと思ってんだ。てめえに感謝の気持ちとかはねえのかよ」

兄「ざっけんな。俺はもっと、楽しく、平和に、毎日を送っていくつもりだったんだ……」

兄「あいつだって、死ぬつもりなんてなかったんだ……!」

友妹「…………」

兄「……ごめん。君の兄貴を奪ったのは俺だから、どんな罰でも受けるよ」

兄「どうせこの命だって……」

友妹「……ありませんか?」

兄「え?」

友妹「私にできること、ありませんか?」



妹「おかえりっ、お兄ちゃん!」

兄「ただいま」

妹「ちゃんと帰ってきてくれたんだねっ!どこか遠いところに行っちゃうかと思った!」

兄「妹一人置いて……友達も、両親も置いて、逃げることはできないよ」

妹「えへへっ。優しいなあ。私のお兄ちゃんだ」

妹「私も最初の場面を見られたとき、焦ってたんだけどさ。お兄ちゃんだから、安心した」

妹「だってお兄ちゃん、優しいもん!」

兄「お前は……優しくないな」

妹「え?そうかな?」

兄「ああ、酷くて、怖い」

妹「ちょっとぉ、それ実の妹に言うセリフーっ?」

兄「……どうするつもりなんだ」

妹「何が?」

兄「みんなを殺したこと、お前だってバレないとは思っていないだろ。事件はいずれ明るみに出る」

妹「そうだね。そしたら私捕まっちゃう。でも、大丈夫だよ?」

兄「……」

妹「お兄ちゃんを殺して、私も死ぬから」

兄「……そうか」

妹「あはは。一度このセリフ言ってみたかったんだよね~」

兄「じゃあ、もう終わるんだな」

妹「うん。フィナーレだよ。私とお兄ちゃんで飾ろう」

兄「……ごめんな」

妹「え?」

兄「日記読んだ。母さんに酷いことされてたんだろ?気づけなくて、ごめん」

妹「あはは、何それ。命乞いのつもり?」

兄「父さんも知っていたら、きっと謝ると思う」

妹「だから、そんなこと言っても無駄だって。私が憎くないの?」

兄「ああ、憎いよ。殺したいほど憎い」

妹「ふーん。だから後ろ手に、ナイフなんか隠しているんだ」

兄「まあな。はい殺されに来ましたじゃ、締まらないだろ」

妹「そうだね。じゃあ勝負する?でも負ける気はしないなあ。だってお兄ちゃん優しいし」

妹「いざとなったら、きっと躊躇うよ」

兄「お前は兄貴のことをよく知っているんだな」

妹「うん、大好きだもん」

兄「そっか。俺も好きだけどな、お前のこと」

妹「殺したいほど憎んでいるのに?」

兄「ああ、殺したいほど憎んでいるのに」

妹「それじゃ終わろう。喋ってるだけじゃ物語は進まない」

兄「そうだな。やっぱストーリーには動きがなくっちゃ」

妹「いくよ。言っとくけど、私はもう三人経験しているから。躊躇なんてない」

兄「ああ。俺は一人も殺してないから、多分躊躇う」

妹「なにその余裕……気に食わないなァ」

妹「お兄ちゃんが悪いんだから……私が悲しんでいるのに気づかないで、笑っていて」

妹「一度リセットしないといけないんだ。ゲームの選択肢間違えちゃったら、お兄ちゃんもやり直すでしょ?」

兄「いや、俺はセーブ地点からやり直すよ」

妹「そう。興味ないけど……ねッ!」

ざくり

悲しみの

兄「う、ぐぐぐ、あああああああああ!!!」

妹「……」

兄「痛い、痛い、痛い!うっがああああ痛いッッ!!」

妹「……なんで」

兄「あぐうぐぐぐぐぐっあああああああ!!!」

妹「何で抵抗しないの!?」

兄「あっぐ……うう、が。言っただろ……俺は殺したいほど憎んでるって……」

兄「殺そうなんて、思っちゃいねえ……」

妹「意味分からないよ!自殺しに来たの!?」

兄「だからそれじゃ、締めくくれねえって……おら、手、離せ」

妹「なに、何なの……何なのよこれ!!」

兄「そんで、俺が自分のナイフも持って……」

兄「いってえ……。お前も甘いなあ。一発で殺せるようにしとけよ」

妹「なに?それで私を殺そうっての?いいよ、やってみなよ!!」

兄「だから殺す気はねえっつってんだろ!」

妹「じゃあ何なの、お兄ちゃんは何がしたいの……ッ!!」

兄「……お前の友達に怒られたんだ」

兄「家族を殺すのに、躊躇わない、悲しまない人はいないって」

兄「思い出せば……そうだな。母さんをやった時だって、お前は今みたく泣いていた」

妹「……っ」

兄「友達をやった時も、そうだったんだろ?電話したとき、お前はあいつが俺のために演技したっつってたが、」

兄「違うな。お前のためだよ。お前を救ってほしいって、あいつは思ったんだ」

妹「何をわけわかんないこと……!!」

兄「時間を稼いで、逃げて……お前を助ける手段を探せって、あいつは言いたかったんだと思う」

兄「俺を逃がしたいだけなら、そう言えば済むだろ。あいつはお前のことを、冗談で終わらせたかったんだ」

妹「はあ?自分を殺すやつのことを考えてたなんてありえるはずないでしょ!」

兄「あいつは自分の妹を信頼していた。そしてそいつが作った友達のことも、信頼していた」

妹「ありえないありえないありえない!!ふざけないでよ!!」

兄「ま、そうだな……。今となっちゃ聞けないし、俺の身勝手な妄想かも」

兄「でも、こうして死にそうになって思うよ」

妹「……」

兄「俺はお前の兄貴なんだから……助けなきゃなあって」

妹「携帯?一体何をするつもり……!」

兄「……もしもし、つながってるか?」

友妹『ええ、もう、いいんですね』

バタン

妹「ッ!?」

妹友「妹ちゃん!!」

警察「動くな!武器を捨てろ!」

妹「チッ、警察を用意して……!」

兄「誰が捨てるかバーカッ!!」

妹「え?」

兄「てめえらこそ一歩でも動くなよ!この女を殺すぞ!」

兄「俺はもう三人も殺しているんだ!!こいつくらい何でもねえんだよ!!!」

そして3年の月日が経った


妹「ガンダムつくろう!?」

兄「おおいいぜ」

妹「大好きお兄ちゃん!!」


おしまい

妹「なに、言っているの……?」

警察「やはりこの家の父を殺したのも君か!」

兄「ああ!毒物でやったら楽勝だったぜ!!」

兄「しっかしこの女信じられねえ!殺そうとしたら逆に俺を刺してくるなんてな!」

兄「たまたま向けたナイフがもう刺さると思うなよ!!これで終わりだ!!」

警察「やめろォ!」

妹「お兄ちゃん……」

兄「あっ、くそ……血を出しすぎて、目眩が……」

友妹「今です!捕らえてください!」

警察「よし、もう武器は預かった!抵抗するな!!」

兄「ちっ、くそ……!」

妹「お兄ちゃんなんで!なんでよ!!意味わかんないよ!!」

兄「……」

妹「待って!殺したのは私だから!お兄ちゃんを傷つけたのだって、」

兄「ああくそ!!こんなときにまで兄を庇おうってか!?健気なこったな!」

兄「最後の最後までうざい妹だ!!」

警察「こらやめろ!貴様も死にたくないなら口を開くな!」

兄「俺は優しくなんかないんだ!!いいか、くそがき、今度会ったら!」

警察「止めろと言っている!!」

兄「……!」

妹「おにい、ちゃん……」

警察「ほら、行くぞ。……出血多量か。病院まで持つか……!」

兄「…………」

妹「お兄ちゃん!お兄ちゃん!ごめんなさい、ごめんなさい!!」

妹「おにいちゃあん!!」

友妹「妹ちゃん」

妹「なんで!なんであんなことしたのよお!お兄ちゃんはなにもしてないのに!」

友妹「あの人が、そうしてほしいって。私に、こうしてほしいって……」

妹「ふざけないでよ、ふざけんなああ!」

友妹「言ってたよ、お兄さん……。今度会うときは……幸せな家族で、妹をもっと想いたいって」

妹「やだ!やだよぉ!!こんなのいやだああああ!!!」

妹「こんなの……!いやだよお兄ちゃん……」



友妹「お兄さん、亡くなったって」

妹「…………」

友妹「悲しまないの?」

妹「……もう、涙が出ないから」

友妹「ふうん」

妹「……私、あなたのお兄さんも……」

友妹「何言っているのよ。兄ちゃんを殺したのは、あの人でしょ」

友妹「だから私は、あなたの下を離れない。……そう、約束もしたから」

妹「……ありがとう」

友妹「行こう」

妹「うん」

妹「お兄ちゃん……。私のお兄ちゃんは、ずっとお兄ちゃんだよ」

妹「ずっとそこに、私のそばにいたの、やっぱりお兄ちゃんだったんだね」

END

おつ、面白かった

妹「お兄ちゃん、今日休みだったの?」

兄「いや、外回りの営業中。忘れ物取りに来たんだ」

妹「何忘れたの?取ってきてあげるよ」

兄「いや、いい。それよりお前こそ学校は?」

妹「そんなことどうでもいいじゃん」

兄「よくないが…ってそこにいられたら玄関に上がれないんだが」

妹「だから取ってきてあげるって」

兄「…お前何か隠してるのか?まあいい、どいてくれ」グイ

妹「…そっち行かないほうがいいと思うよ」

兄「え?」スタスタ

兄「!」

妹「だから言ったのに」クスクス

兄「お前……そこに、倒れているの、誰だ?」

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