古泉「涼宮さんを楽しませるネタが枯渇しました」(128)

喫茶店

キョン「旅行でいいじゃないか。それで喜ぶだろ」

古泉「何度も同じことをして、あの涼宮さんが満足すると思いますか?」

キョン「まあ、確かにな」

古泉「あとは貴方とのデートぐらいしかないのですが……」

キョン「バカヤロウ」

古泉「では、早急に考えましょう。みなさん、涼宮さんを退屈させないためのイベントを考えてきてくれましたか?」

みくる「はぁーい。ちゃんと考えてきましたぁ」

長門「……」コクッ

古泉「では、朝比奈さんから」

みくる「はい。えっと、みんなで動物園に行くってどうですか?」

キョン「ああ、いいですね。動物園」

みくる「可愛い動物を見たらきっと涼宮さんもはしゃいじゃうと思います」

古泉「主にどんな動物を見ますか?」

みくる「えっと……えっと……ゴリラとか?」

キョン「……」

みくる「あれ、キョンくん。ゴリラってこの時代にいないの?」

キョン「いますよ。なんせ、最強の霊長類ですからね」

みくる「よかったぁ」

ハルヒ「夏の動物園とか臭いからイヤ」

みくる「……」

古泉「却下ということで」

キョン「朝比奈さん、まだ案があるんですよね?」

みくる「も、勿論です。次は……水族館です」

キョン「あー、涼しげでいいですね」

古泉「ええ。少し都市部に出れば有名な水族館もありますからね」

みくる「そこで色んなお魚とかを見つつ、スケッチするってどうですか?」

キョン「素晴らしいですね。中学生の夏休みを思い出しますよ」

古泉「ありましたね。そういう宿題」

キョン「だろ?」

みくる「ペンギンショーとかもあるみたいなので、見たいな~なんて」

ハルヒ「魚を見て何が楽しいの?」

みくる「……」

古泉「……却下ということで」

長門「デラックスパフェ」

キョン「すいませーん。デラックスパフェ一つください」

古泉「朝比奈さん。まだ、考えてきた案がありますよね?」

みくる「……」

キョン「自信持ってください!!たまたま、ダメだっただけですから」

みくる「キョンくん……ほんと?」

キョン「本当ですよ!何を言ってるんですか!!ほら、次のアイディアをお願いします!!」

みくる「うんっ。私、負けません!!」

古泉「では、お願いします」

みくる「次は美術館見学でもしようかなって」

キョン「あー、それもいいですねー。いやぁ、流石は朝比奈さん。娯楽も知的ですね」

みくる「えへへ」

ハルヒ「みくるちゃん。好きな画家とか彫刻家とか誰でもいいから一人、芸術家の名前を挙げてみて」

みくる「……ピ、ピカソ?」

ハルヒ「……」

古泉「却下ということで」

長門「……」ソワソワ

みくる「……すいません……芸術のことはよくわかりません……」

キョン「いや!!何を言っているんですか!!画家の名前を知らなくても絵画を楽しむことはできますって!!」

古泉「ええ。絵とは心で見るものですから」

みくる「キョンくん……」

ハルヒ「それで楽しいの?」

みくる「……」

古泉「次の案を」

みくる「もういいです……。何を言っても却下されると思うので……」

キョン「朝比奈さん……」

古泉「……」

店員「お待たせしました。デラックスパフェです」

長門「待ってた」

古泉「では……僭越ながら、私の考えたものを発表させていただきます」

キョン「お、がんばれ」

長門「……」パクパク

古泉「では、一つ目。ピクニックです」

キョン「意外と普通だな」

古泉「まあ、一つ目ですから。とはいえ、この季節に敢行するのは自殺行為でしょう。暑いですから」

キョン「確かにな」

古泉「なので、少し遠方に行こうかと思います」

キョン「涼しい場所でピクニックか」

古泉「場所は北海道です」

キョン「すげえな。もう観光旅行だけど」

古泉「一面の花畑でシートを広げ、お手製のお弁当をみんなで食べる。いいじゃないですか」

ハルヒ「遠い」

キョン「古泉!!ダメじゃないか!!」

古泉「申し訳ありません」

みくる「……」

長門「さくらんぼ、譲渡する」

みくる「いりません……」

古泉「では、二つ目。フィッシングです」

キョン「釣りか。川か海か?」

古泉「海でやりましょう。クルーザーを所有している知人もおりますし」

ハルヒ「興味ないわ」

古泉「……」

キョン「古泉」

古泉「で、では三つ目です。クラッシックコンサートがありまして、それをみなさんで鑑賞しませんか?」

キョン「おお。いいかもな。俺、全然クラシックとかわからないけど」

古泉「音楽に予備知識などいりません。聴いて楽むことができればいいのですから」

キョン「たまにはそういう余暇の過ごし方もいいな」

ハルヒ「興味ないわ」

古泉「……」

キョン「……」

長門「口をあけて」

みくる「はむっ」パクッ

キョン「こ、古泉。まだあるんだよな!?」

古泉「ええ、勿論です。この程度、想定の範囲内ですから」

ハルヒ「……もういいわよ」

古泉「え……」

ハルヒ「すいません。デラックスパフェください」

店員「はーい」

キョン「……」

長門「全部、あげる」

みくる「ありがとうございます」

古泉「はぁ……」

キョン「どうすんだよ?」

古泉「やはり、貴方とのデートしか……」

キョン「バカヤロウ」

長門「次、これ」

キョン「え?ああ。すいませーん、マンゴーパフェ一つ!」

ハルヒ「……」

長門「……」ソワソワ

古泉「次は貴方から」

キョン「俺か。よし」

ハルヒ「マンゴーパフェも追加で」

店員「はーい」

キョン「おほん。えー、朝比奈さんの自宅で遊ぶってどうですか?」

みくる「ぶふっ?!」

キョン「朝比奈さん?!大丈夫ですか?!」

みくる「ご、ごめんなさい……えっと……私の家で遊ぶってどういうことですか?」

キョン「文字通り、遊ぶんですよ」

みくる「どんなことをするんですか?」

キョン「テレビゲームとか」

みくる「ありません」

店員「お待たせしました。マンゴーパフェ二つにデラックスパフェでーす」

長門「待ってた」

ハルヒ「待ってたわ」

キョン「じゃあ……俺が持って行きますよ」

みくる「はぁ……それなら、キョンくんの家で遊んだほうが……」

キョン「いや、朝比奈さんの家で遊ぶことに意味があるんですよ!!」

みくる「どういうことですかぁ?」

キョン「突っ込まれると困るんですけど……」

古泉「ようは、朝比奈さんの家に行きたい。そういうことですよね?」

キョン「ま、まぁ……な」

ハルヒ「あ?」

みくる「ひっ」

ハルヒ「みくるちゃんの家なんて何も面白くないわ」パクパク

長門「……」パクパク

古泉「ダメみたいですね」

キョン「ちっ……」

キョン「なら、長門の家はどうだ!?」

長門「……」

キョン「長門の家は広いしなー」

長門「……」

キョン「いや。つまらなくないぞ。というか、長門さえよければ、俺たちで部屋の大改造してやってもいい。ちょっとしたぬいぐるみを置くだけで可愛くなるぞ?」

長門「……」

キョン「遠慮するなって」

長門「わかった」

キョン「よし」

ハルヒ「……」

古泉「ちょっと」

キョン「なんだよ?」

古泉「長門さんとアイコンタクトだけで会話しないでください」

キョン「え?してたか?」

古泉「貴方は……」

ハルヒ「……」ジーッ

キョン「なんかダメっぽいな」

長門「そう……」

ハルヒ「……」ジーッ

古泉「(睨まれてますよ)」

キョン「(分かってるよ)」

ハルヒ「……」ジーッ

キョン「じゃあ、古泉の家はどうだ?」

古泉「申し訳ありません。遠慮しておきます」

キョン「テメぇ!!」

古泉「僕よりもやはり貴方の家がいいと思いますよ?妹さんもいらっしゃいますし」

キョン「だけど、それじゃあ楽しめないだろ?結構な頻度で俺の家を使ってるんだし」

みくる「わ、私はキョンくんのお家でも構いませんよ?」

長門「私も」

ハルヒ「……」ジーッ

キョン「でもな、ハルヒがどういうかだけど……」

ハルヒ「……」ジーッ

キョン「古泉、どう思う?」

古泉「……却下ですね」

キョン「だろ?」

ハルヒ「……え?」

キョン「あー、じゃあ、お手上げだな」

ハルヒ「……っ」バシッ

キョン「ってーな!!なにしやがる?!」

ハルヒ「……」

キョン「こいつ……」

古泉「はぁ……八方塞ですか」

みくる「どうしたらいいんでしょうか……」

長門「……」

キョン「長門、なんかあるのか?」

長門「ある」

古泉「聞かせてください」

みくる「ごくりっ」

キョン(朝比奈さん、息を飲む音を口に出すなんて、可愛いなぁ)

長門「花火大会」

キョン「花火大会?」

長門「今度、ここで大きな祭りがある」

キョン「長門。焼きそばか?それともたこ焼きか?」

長門「……」

キョン「わたあめ?あるぞ。定番だからな」

ハルヒ「人ごみは嫌」

古泉「却下のようですね」

長門「……」

キョン「長門、怒るなって」

長門「怒ってない」

長門「なら、涼宮ハルヒは抜きで祭りに参加することを提案する」

古泉「……!!」ガタッ

みくる「ひっ?!」

キョン「長門!!!」

ハルヒ「……」

長門「涼宮ハルヒはまた別の方法で愉悦を得てもらえばいい」

ハルヒ「……」

キョン「(古泉!!)」

古泉「(まだ大丈夫です……閉鎖空間は確認されていません……)」

みくる「あ、あの……長門さん、やっぱりみんなで楽しんだほうがいい、かなって……」

長門「……」

キョン「長門、朝比奈さんは当然のフォローをしているだけだ」

長門「そう」

古泉「涼宮さん、何か飲み物は?」オロオロ

ハルヒ「……」

キョン「長門、落ち着こう。な?」

長門「私は正常。涼宮ハルヒが異常」

ハルヒ「……」

キョン「長門!?どうしちまったんだ?!」

古泉「涼宮さん。見てください。このスプーンを曲げてみせます。ワン、ツー、スリー、まっがーれ」グニャ

みくる「わ、わー、すごーい」パチパチパチ

長門「祭りは?」

キョン「だから、みんなで……」

ハルヒ「人ごみは嫌い。聞こえなかったかしら、有希?」

長門「……」

ハルヒ「……」

古泉「フォークも曲がりますよー。ワン、ツー、スリー、まっがーれ」グニャ

みくる「す、すずみやさーん、見てください。スプーンとフォークがぁ、グニャグニャですよー」オロオロ

長門「全ての提案を却下する権限はあっても、個人の行動を束縛する権限は貴方にはない」

ハルヒ「……」

キョン「長門!いつものお前はそんな感情的じゃないだろうが」

長門「感情的なのは涼宮ハルヒのほう。私は至って冷静」

キョン「……」

ハルヒ「私は団長なのよ?」

長門「……」

ハルヒ「団員の行動を決定する権利があるわ」

長門「県立の高校で作られた部活動の長。貴方の肩書きはそれだけ」

ハルヒ「それで十分でしょ?」

長門「……」

古泉「このカードは……星マークです」

みくる「わ、わー、すごいー。あたりましたー。涼宮さん、超能力ショーみてください。た、たのしー」

ハルヒ「私が行かないって言ったら、全員行かないの。わかる?」

長門「理解不能」

ハルヒ「……有希。いつから、そんなに反抗的になったの?」

長門「私は全員の意見を代弁しているに過ぎない。これは総意」

キョン「お、おい……」

ハルヒ「総意……?総意ですって?」

長門「そう」

ハルヒ「ふんっ。何言ってるの、そんなことあるわけないでしょ、キョン?」

キョン「え……」

ハルヒ「どうなの?」

キョン「……」

ハルヒ「キョン……」

古泉「はい、親指が離れたり、くっついたりしますよー」スッスッ

みくる「きゃー。ふしぎー」

ハルヒ「もういい。私、帰る」

キョン「おい!」

ハルヒ「うるさい!!今日はキョンのおごりだから!!」

キョン「……古泉?」

古泉「バイトがありますので。失礼します」

キョン「……」

みくる「……」

長門「……」パクパク

キョン「長門。どうしてあんなこと言っちまったんだ?」

長門「……」

みくる「キョンくん。でも、あの……長門さんは、間違ったことは言ってませんでしたし……」

キョン「そうですけど。ハルヒに対してあれは……」

みくる「そうですね……。まずいですよね……喧嘩は……」

キョン「とりあえず、出ましょうか?」

みくる「そうですね。この後、どうしますか?」

キョン「何かいい案はないか考えましょう」

みくる「じゃあ、キョンくんのお家にお邪魔してもいいですか?」

キョン「それは勿論」

みくる「やったぁ。長門さんもご一緒にどうですか?」

長門「いく」

キョンの自宅

妹「キョンくぅん、おかえりー」

キョン「よう。元気だったか?」

妹「うん」

みくる「お邪魔します」

長門「……」

妹「どうぞー」

キョン「部屋に言っていてください。飲み物、用意しますんで」

みくる「おかまいなく」

長門「……」

妹「あれー?ハルヒちゃんは、いないのー?」

キョン「いないぞ」

妹「ふーん」

キョン「お待たせしました」

みくる「はい」

長門「……」

キョン「さて、どうしましょうか」

みくる「やっぱり、謝ったほうがいいですよね」

長門「……」

キョン「悪いのはハルヒだって?でも、長門にも非はあるぞ?」

長門「……」

キョン「だって、あんな直接的に言ったら誰だって言葉が強くなるって」

長門「……」

キョン「そうだ。まあ、長門が正論だったことは認めるけどな」

みくる「キョ、キョンくぅん……?」

キョン「どうしました?エアコン、きついですか?」

みくる「あの……テレパシーで会話するのはやめてください……仲間外れみたいで……」

キョン「何を言っているんですか?」

みくる「長門さんとそんな言語を用いずにコミュニケーションをされると、私が仲間外れみたいじゃないですか……」

キョン「……長門。俺たち、そんな超能力めいたことしてたか?」

長門「……」

キョン「ほら、朝比奈さん。長門もしてないって言ってますよ?」

みくる「言ってません!!」

キョン「え?」

みくる「長門さん……何も喋ってませんよ?」

キョン「そうですか?顔を見れば……」

みくる「顔って……」

長門「……」

キョン「わかった。花火大会は考えるから」

みくる「キョンくん。こっちを向いてください」

キョン「はい?」

みくる「……」ジーッ

キョン「な、なんですか……?」

みくる「……わかりました」

キョン「何がです?」

みくる「涼宮さんがどうして不機嫌だったのか」

キョン「不機嫌だったんですか?いつもと変わらないと思いますけど」

みくる「長門さんと仲が良すぎませんか?」

キョン「え?」

みくる「言語を使わずに意思疎通なんて熟年夫婦じゃないんですから、やめて」

キョン「そういわれましても」

みくる「そういえば涼宮さん、長門さんと同じものを注文してましたよね?」

キョン「確かに」

みくる「長門さんの真似がしたかったんじゃないですか?」

キョン「まさか」

みくる「思い返せば、最初のほうやけに口数も少なかったですし……」

キョン「たまたまでしょう」

みくる「そうかなぁ……」

長門「……」

キョン「だよな」

みくる「……あの、涼宮さんでなくても妬いちゃいます」

キョン「え?」

みくる「と、とにかく、涼宮さんとも言葉を用いずに会話してください、キョンくん」

キョン「そんなの無理ですよ!」

みくる「そうしないと……そうしないと……きっと、大変なことが起きます」

キョン「長門」

長門「……」

キョン「ああ。お前の力が必要だ」

長門「……」

キョン「できるか?」

長門「……」

キョン「サンキュー、長門」

みくる「だめかも……」

キョン「じゃあ、今からハルヒを呼びましょうか」

みくる「だめー!!」ギュッ

キョン「あ、朝比奈さん?!」

みくる「今から呼んじゃだめです、キョンくん」

キョン「ど、どうして……?」

みくる「私たちがいるってわかったら、禁則事項が禁則事項で禁則事項です」

キョン「わ、分かりました……」

みくる「はぁ……」

キョン「じゃあ、明日か明後日ぐらい来るように約束をしてみますよ」

みくる「お願いします」

長門「……」

みくる「……」ジーッ

長門「なに?」

みくる「……いえ……」

キョン「お、ハルヒか。明日、俺の家にこいよ。そうそう。え?朝から?昼からでも……お、おう。じゃあ、朝からな。待ってるぜ」

翌日

ピンポーン

妹「はぁーい」ガチャ

ハルヒ「おはよう。妹ちゃん」

妹「あー、ハルヒちゃんだー。わーい」

ハルヒ「相変わらず、あんたは可愛いわねぇ」ナデナデ

妹「えへ、ありがとー」

ハルヒ「キョンは?」

妹「まだ寝てるよー?起こしてこようか?」

ハルヒ「なにやってんのよ……あいつは……。いいわ。私が起こすから」

妹「おねがーい」

ハルヒ「……」スタスタ

妹「あ、そーだ。みくるちゃんも来るってキョンくん言ってたっけ」

妹「まだかなー?」

ピンポーン

妹「あ!」

みくる「おはよう」

妹「おっはよー」ギュッ

長門「……」

古泉「おはようございます」

妹「もうハルヒちゃんきてるよー」

みくる「え……!?」

古泉「まだ8時ですよ……」

長門「……」

妹「キョンくん起こしにいったよ?」

みくる「大変っ」

古泉「急ぎましょう。今日こそは全力で涼宮さんを楽しませるのです」

みくる「は、はい」

長門「……」

キョン「すぅ……すぅ……」

ハルヒ「キョン」

キョン「ん……?」

ハルヒ「起きた?」

キョン「すぅ……すぅ……」

ハルヒ「……」

ハルヒ「おきろぉぉぉぉ!!!!!」

キョン「うわぁ!?」

ハルヒ「目は覚めた?アンタがどうしてもって言うから、遊びにきてやったわよ?」

キョン「ハ、ハルヒ……?!まだ、8時じゃねーか!!」

ハルヒ「朝からこいって言ったじゃない」

キョン「俺は言ってねーだろ!!」

ハルヒ「ほら、飲み物はまだー?」

キョン(最悪の目覚めだ……)

ハルヒ「文句あるの?」

キョン「くそ……常識ってもんがないのか……。無いんだよな……」

みくる「キョンくん、キョンくん」

キョン「朝比奈さん、来てたんですか!長門も!あと、ついでに古泉も」

古泉「ついでですか」

みくる「涼宮さんがこんなにも早くくるとは思ってませんでした」

キョン「長門、事前に教えてくれよ」

長門「訊かれてないから」

キョン「そうだよな。訊かれてないよな」

みくる「とりあえず、これを」

キョン「これは……イヤホン?」

古泉「超小型のマイクもついています。それでこちらといつでも会話ができます」

キョン「目立つだろ」

長門「心配ない。涼宮ハルヒはあなたの些細な変化には気がつかない」

キョン「どうして?」

長門「舞い上がってるから」

みくる「とにかく、あの、これで随時涼宮さんの考えていることを伝えますから」

キョン「それで本当にハルヒの機嫌は直るんですか?長門を許すんですか?」

古泉「理論上は」

キョン「心配だぜ……」

長門「……」

キョン「ああ。信頼してるぜ、長門」

長門「任せて」

古泉「……」ジーッ

キョン「見つめんな。気持ち悪い」

みくる「……」ジーッ

キョン「朝比奈さん、なんですか?そんなに見つめられると……その……」

みくる「はぁ………長門さんが羨ましいです……」

古泉「右に同じ」

キョン「長門、二人は何が言いたいんだ?」

長門「聞かない方が良い」

キョン「ハルヒー、持ってきたぜ」

ハルヒ「おっそいわね」

キョン「あのな―――」

長門『ありがとうと言う意味』

キョン「……」

ハルヒ「何よ?」

キョン「い、いや……どういたしまして」

ハルヒ「はぁ?」

キョン「(長門、確かな情報なんだろうな?)」

長門『問題ない』

キョン「……」

ハルヒ「ふんふーん」

長門『隣に座れと言っている』

キョン「(マジでか?!)」

長門『マジ』

キョン「ハルヒ、隣に座るぜ」

ハルヒ「な、なんでよ!?バッカじゃないの?!」

長門『座ってもいいという意味』

キョン「よっと」

ハルヒ「なんでこの部屋をもっと有効に使おうとしないの?!暑さで脳みそ腐ったんじゃない?!」

キョン「……」

ハルヒ「キョン!!聞いてるの?!」

キョン「いや……じゃあ、やめるけど」

ハルヒ「そ、そうしてよ……。あんた、臭いし」

キョン「なんだと……?」

長門『離れて欲しくないのに、どうしてこんなことしか言えないの。と、自己嫌悪している』

キョン「や、やっぱり、隣に座る」

ハルヒ「な、なんでよ……?」

長門『もしかして、こいつ、私のことを狙ってる?と疑っている』

キョン「(それ、どう対処したらいいんだ……!?)」

古泉『別に変な意味はないと言っておきましょうか』

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「な、なによ?」

キョン「別に変な意味はない」

ハルヒ「はぁ?」

古泉『ただ、隣にいたいだけだ』

キョン「ただ隣にいたいだけだ」

ハルヒ「バカじゃないの」

長門『そこまでいうなら、いいか。と言っている』

キョン「悪いな」

ハルヒ「ふん……」

キョン「……」

ハルヒ「……」

長門『もしかしてこいつ、私のことが好きなの?と勘違いしている』

キョン「(どうしたらいい?)」

みくる『あの、キョンくん。涼宮さんに今、好きな人はいるかって聞いてみてください』

キョン「なあ、ハルヒ?」

ハルヒ「なによ?」

キョン「今、好きな人とかいるか?」

ハルヒ「いないわよ。何言ってるわけ?」

キョン「いや……」

長門『やっぱりキョンは私に惚れている。と結論付けた』

古泉『俺にはいるんだ』

キョン「俺にはいるぜ?」

ハルヒ「ふーん」

キョン「……」

ハルヒ「……誰よ?」

キョン「え?」

ハルヒ「興味は全然ないけど、そこまで言ったんならいいなさいよ』

長門『告白だ、どうしよう。顔、赤くなってないわよね。と錯乱している』

キョン「……」

ハルヒ「ほら、早く」

古泉『秘密に決まってるだろ』

キョン「秘密に決まってるだろ」

ハルヒ「はぁ?!ここまで言っておいて、何言ってるのよ?!団長命令よ、言いなさい」

長門『早く私を好きといえー。ちゃんと付き合ってやるわよ。子どもは男と女両方ね。という意味』

キョン(どういうことだよ?!)

ハルヒ「おら。いえ」

キョン「……」

みくる『キョンくん、秘密だ。言えない。お前に言ったら問題になるって言って』

キョン「秘密だ。お、お前に言ったら問題になる」

ハルヒ「なによ。ソコまで言っておいて。情けないわね」

長門『それは本心』

キョン(腹立つな……)

古泉『まぁまぁ。では、次の段階に進みましょう』

ハルヒ「なんかゲームでもしましょうか」

キョン「……」

長門『今、目を合わせられない。なんとかして誤魔化さないと。と焦燥に駆られている』

みくる『キョンくん。こっちを見ろって言ってください』

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「な、何よ……」

キョン「こっちを見ろ」

ハルヒ「嫌よ」

長門『それは本心』

古泉『俺、お前の考えてることなら何でも分かるんだぜ?』

キョン「お、俺、お前の考えていることならなんでも分かるんだぜ?」

ハルヒ「何言ってんのよ。アンタは超能力者なの?」

みくる『お前、限定のなって言ってください』

キョン「……お前、限定のな」

ハルヒ「バ、バ、バカじゃないの……」

古泉『何か好きな単語を思い浮かべてみろ』

キョン「じゃあ、何か一つ好きな単語を思い浮かべてみろよ。当ててやるから」

ハルヒ「ふん。そんなのできるわけないしょ?まあ、いいわ。やってみなさいよ」

長門『ハイウェー・ヒプノーシス』

キョン「ハイウェー・ヒプノーシスだな」

ハルヒ「……」

キョン「違ったか?」

ハルヒ「……違うわ。全然、違うから。思い浮かべたのは、えーと……ハンバーガーだし」

キョン「そうか」

キョン「(長門、違うって言ってるぞ)」

長門『大丈夫。そっちが嘘』

古泉『じゃあ、もう一回してみましょうか』

キョン「よし、ハルヒ。もう一回だけチャンスをくれ」

ハルヒ「い、いいけど……」

長門『こいつは本物だ。と驚愕している』

ハルヒ「はい。どうぞ」

長門『相思相愛』

キョン「相思相愛」

ハルヒ「……!!」

キョン「当たりか?」

ハルヒ「……」

長門『もしかして、本当に想いが通じてるの?と思い始めている』

古泉『ああ、その通りだ』

キョン「ああ。その通りだ」

ハルヒ「え……」

長門『もしかして心を読まれているの?と戦慄している』

みくる『そうだ。お前の心は丸裸だー』

キョン「そうだ。お前の心は丸裸だ、ハルヒ」

ハルヒ「う、うそ……ホントに……?じゃあ……昨日の喫茶店での私の心も読み取ってたの……?あ!?だから、今日、私を家に呼んだのね?!」

キョン「え……と……」

ハルヒ「キョン……そういうことだったのね……」

キョン「あの……」

ハルヒ「ちょっと!!待って!!今、心を真っ白にするから!!まだ覗かないで!!」

キョン「……」

ハルヒ「すぅぅ……はぁぁ……」

キョン「……」

ハルヒ「ふぅぅ……。よし、もう心は真っ白よ。何を考えているのか分からないでしょ?」

長門『私がキョンのことを―――』

みくる『それはいっちゃだめです!!』

古泉『それを言うときっと全てが終わってしまう』

キョン「(おい、どうした?)」

古泉『いえ。何でもありません。ああ、本当だわからない、と答えましょうか』

キョン「ああ。確かに分からないな」

ハルヒ「で、でしょ?あ、あんたなんかに負ける私じゃないもの!!」

キョン「そうだな」

ハルヒ「……」モジモジ

キョン「(次はどうしたらいい?)」

長門『私の気持ちを知っているくせに意地悪……と、言っている』

古泉『とりあえず様子を見ましょう』

キョン「……」

ハルヒ「……」

長門『私から言ったほうがいいかなぁ。私がキョンのことを好―――』

みくる「だから、ダメです」

キョン「(いや……朝比奈さん。いくら俺でもそこまで言われたら、分かります)」

みくる『キョンくん……?』

古泉『なんと……』

ハルヒ「……」モジモジ

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「な、なに?」

キョン「子どもは男と女一人ずつ欲しいのか?」

ハルヒ「な……!?」

長門『はい。そうです。と言っている』

みくる『キョンくん!!ダメです!!』

古泉『いけません!暴走はよくない!!』

キョン「どうなんだ?」

ハルヒ「え……いや……なんの話よ……?」

長門『まだ朝なのに。と戸惑っている』

キョン「目を見ろ」

ハルヒ「あ、あぁ……」

長門『ギョーザを連呼してる』

キョン「ハルヒ……ギョーザなんて関係ないだろ」

ハルヒ「ま、待ちなさいよ!!キョン!!妹ちゃんもいるのよ?!いきなり入ってきたらどうするのよ?!」

長門『それは本心』

キョン「別にそこは問題じゃないだろ」

ハルヒ「問題でしょ!!」

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「は、はい……」

長門『ここで私は女になります。お父さんお母さん、ごめんなさい。と言っている』

みくる『キョンくん!!』

古泉『吉とでるか凶とでるか……』

キョン「がんばれよ。できる限りに応援はしてやるよ」

ハルヒ「え……?」

長門『現在、涼宮ハルヒの思考は真っ白』

キョン「まさか、お前に好きな人がいるとはな。同じクラスか?それとも先輩か?」

ハルヒ「……」

キョン「そこまで人を好きになれるって幸せなことだと思うぜ?」

ハルヒ「……」

長門『涼宮ハルヒの思考は現在、読み取り不能』

みくる『あー……』

古泉『凶でしたか』

ハルヒ「……」

キョン「どうした?」

ハルヒ「安心したわ。やっぱり、ただのペテンだったのね」

キョン「……」

長門『ふざけんな。このやろう。と言っている』

ハルヒ「何も分かってないじゃない」

みくる『キョンくん!!』

古泉『あの……』

ハルヒ「大方、さっきのは心理トリックね。私をコントロールして思い浮かべる単語を選ばせたってところでしょ?」

キョン「まぁな」

長門『言えるわけねーんだよ。古泉。と言っている』

古泉『え?』

長門『茶番は終わりだ。十分、ハルヒも楽しんだだろ。と言っている』

みくる『それは……』

古泉『ですが、どうやって収拾をつけるのですか?あの雰囲気でこのまま無いもなかったとするには……』

ハルヒ「ガッカリね……」

長門『期待した私に。と言っている』

キョン「ハルヒ」

ハルヒ「……なによ?」

キョン「行こうぜ。動物園」

ハルヒ「……」

キョン「水族館も美術館も。ピクニックは本気で嫌がってたな?」

ハルヒ「何いってんのよ……」

キョン「悪かったよ。お前がパフェを頼もうとしていること気づかなくて。それで不機嫌になってたんだろ?」

ハルヒ「……違うわよ」

キョン「そうなのか?」

ハルヒ「なんで私がそんな幼稚なことで臍を曲げなきゃならないのよ?!」

キョン「なんだ。てっきりそうかと思ってたんだが」

ハルヒ「ホントに何も分かってない」

キョン「そうだな。これでも多少はお前のこと理解しているつもりだったんだが」

ハルヒ「ふんっ」

キョン「……」

ハルヒ「明日」

キョン「え?」

ハルヒ「明日、行くからね」

キョン「おう」

ハルヒ「ふん……仕方なくなんだからね」

キョン「花火大会も行こうぜ」

ハルヒ「分かってるわよ!」

キョン「よかった。素直じゃないからな、お前」

ハルヒ「私ほど自分に正直な人間はいないけどね」

キョン「はいはい」

ハルヒ「キョン、ゲームするわよ」

キョン「よっしゃ」

ハルヒ『ちょっと!!キョン!!そこ違う!!』

キョン『どうでもいいだろ』

ハルヒ『よくな―――あー!!!』

みくる「あの……」

古泉「どうやら我々は余計なことをしたのかもしれませんね」

長門「……」

みくる「キョンくん。初めから涼宮さんのことわかっていたんですね」

古泉「ええ……」

キョン『で、ハルヒ?』

ハルヒ『なによ?』

キョン『お前の好きな奴って誰だ?』

ハルヒ『……』

キョン『すごく気になるなんだが』

ハルヒ『うっさい!!』

長門「……」

ハルヒ『あんたこそ、好きな人がいるんでしょ?!言いなさいよ?!』

キョン『言ってもいいなら』

ハルヒ『やっぱ言うな!!』

みくる「……」

長門「……」

古泉「どうされたのですか?」

みくる「……別に」

長門「なんでもない」

古泉「んふ」

キョン『じゃあ、次のゲームで負けたら発表ってことにするか』

ハルヒ『何いってんのよ?!勝手に決めんな!!』

キョン『じゃあ、謎のままでいいのか?』

ハルヒ『いいわよ。謎にしておいたほうがいいこともあるわよ』

キョン『そういうと思った』

長門「……」

翌日 動物園

キョン「……」

ハルヒ「遅い!!罰金!!」

キョン「朝比奈さん、今日も暑いですね」

みくる「はい」

長門「……」

キョン「長門、おはよう」

古泉「おはようございます」

キョン「おう」

ハルヒ「キョン!!」

キョン「はいはい、買ってくる」

ハルヒ「全く」

キョン「結構するなぁ……」

みくる「キョンくん。半分出しますぅ」

キョン「そんな、いいですよ。朝比奈さん」

みくる「キョンくーん。象さんですよー」

キョン「ああ、大きいですね」

ハルヒ「キョン!!キリン!!」

キョン「おう」

ハルヒ「……」

長門「あっち」

キョン「ペンギンショーまではまだ時間があるから」

長門「そう」

古泉「向こうに鳥類のエリアがあるのですが」

キョン「勝手にしろ」

みくる「キョンくん、キョンくん。こっちに大きなネコさんがいますよ」

キョン「それは豹ですね」

みくる「あ、そうなんですか?恥ずかしい……」

ハルヒ「キョン!!オラウータン!!!」

キョン「おう」

みくる「キョンくん、ふれあいコーナーってなんですか?」

キョン「ああ。動物と触れ合えるんですよ。ここでは馬を触れますよ」

みくる「へぇー、噛まないですか?」

キョン「人間に慣れているでしょうからその心配はないですよ」

みくる「そうなんだぁ」

長門「あっち」

キョン「だから、ペンギンショーはまだだって」

長門「……」

キョン「嘘じゃねえよ」

古泉「向こうに爬虫類エリアがあるのですが」

キョン「勝手に行ってろ」

ハルヒ「キョン!!」

キョン「おう」

ハルヒ「……」

キョン「次、行くか」

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