真美「私のプロデューサーはガミガミ姉ちゃん」 (82)


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社長「わかった?」

尾崎「……わかりません」


尾崎(わかるはずがない)


尾崎「別のアイドルをプロデュースしろって、どういうことですか?」

社長「そのままの意味よ」

尾崎「私は、絵理のプロデューサーです」

社長「ええ」

尾崎「彼女は今からが大事な時なんです。それを、大事なプロデュースをやめろだなんて」

社長「あら、私は絵理のプロデュースをやめろだなんて言ってないわよ?」

尾崎「え?」


社長「水谷絵理。ネットからリアルの業界へ転身、そして大成功を納めたスーパーアイドル……」

社長「日高愛、秋月涼と並んでアイドルアルティメイト出場を果たした、名実ともに、日本中が認めるアイドルよ」

社長「彼女はこれからも我が876プロをこれからも支えてくれる、頼もしい逸材。絵理の将来性は、当然私もわかっているつもり」

社長「彼女をネットの世界から拾い上げ、大成させた貴女の手腕もね」


尾崎「なら……」

社長「これからの絵理の仕事は大きいものばかり。ええ、わかっているわ」

尾崎「……でしたら、何故……」


社長「簡単よ。絵理の仕事はもう、軌道に乗り始めたってこと」


社長「あなたも前から気付いていたんじゃない? 最近の絵理のプロデュースが、順調に行き過ぎていることに」

尾崎「……はい」

社長「それは良いことよ。だからこそ現状を守りたくなる気持ちも、理解できる」

尾崎「……しかし、あの子はまだまだ危なっかしくて……目が離せないんです」

社長「でもね、ずっとそのままじゃ後々困るのよね……876プロは、基本的にセルフプロデュースなんだから」

尾崎「!」

社長「これからは絵理自身にも、自分の仕事を管理できるようになってもらわないといけない。尾崎さんと絵理を引き離したいわけではないけど」

尾崎「……営業が軌道に乗っている今こそが、絵理がセルフプロデュースに慣れる好機、ですか」

社長「そういうこと、理解が早くて助かるわ」


社長「自らの売り込む事や仕事を選ぶこと、先方と相談すること……まだまだ消極的な部分の消えない絵理には必要なことよ」

尾崎「……はい」

社長「これを期に、絵理はさらに成長できるはず」


尾崎「……そうですね。私も最近、絵理の傍にいてもやることが無く、焦っているところでしたから」

社長「それはあなたの力不足じゃないわ。彼女に仕事が来ている証拠なんだから」

尾崎「はい」


尾崎「……わかりました。私は絵理のプロデュースを補佐し、平行して新しいアイドルをスカウト。絵理のように、プロデュースしていけば良いんですね?」

社長「うーん、そのことなんだけどね」

尾崎「?」

社長「実はもう、プロデュースするアイドルは決まっているのよ」

尾崎「は、はあ……? どういうことですか?」

社長「旧友の頼みなのよ。ここへ行って、引き受けてくれないかしら。話はもう、先に通しちゃった」


尾崎「……この事務所は」


社長「頼んだわよ、尾崎玲子さん。あなたの手腕なら、彼女をスーパーアイドルにすることも夢じゃないと、私は信じているわ」


[765アイドルプロダクション]


尾崎(……何故こんな、876よりも大きなプロダクションに、私が……?)


真美「えー!? 社長、それ本当!?」

高木「もちろんだとも。876プロの旧友が、協力してくれるらしくてね」

小鳥「良かったわね、真美ちゃん!」

真美「んっふっふ……真美の専属プロデューサーかぁ~、社長たちもようやく、私の魅力に気付いてくれたんだねぃ?」

高木「我が765プロも安定期に入ったからね。ここでひとつ、アイドル諸君のステップアップを図ろうというわけなのだよ」

真美「……」


真美「……ねえ、社長。それって、兄ちゃんじゃ駄目なの?」

高木「ンンッ、彼も忙しい身の上だからねぇ。一度に多くのアイドルを見ることはできても、どうしても隅々までは手が回りきらなくなってしまう」

小鳥「どうせやるなら、集中してプロデュースしてあげたいものね。だから、真美ちゃん専属のプロデューサーをお呼びしたってことなのよ」

真美「兄ちゃんを真美の専属……は、駄目だよね」


真美(他の皆もいるもんね。……それに)


高木「すまないね、真美君。向こうのプロデューサーと活動することもあって、少しの間、彼とは離れ離れになる時間が多いかもしれないが……」

小鳥「……」


真美「んっふっふ~、そんなの全然ヘーキだよ! だって真美、これから本格的にデビューできるようになるんでしょ?」

真美「この最高のチャンス、逃す手はないっしょー!」


高木「うむうむ、そのいきだ、真美君!」

小鳥「新しいプロデューサーさんはひとまず試用として一ヶ月、真美ちゃんと付きっきりでいてくれるわ」

高木「そのまま彼女で続けていくかどうかは、経過を見守りながら決める事になっているよ」

真美「え? 彼女、って?」

高木「ん?」

真美「真美のプロデューサー、女の人なの?」

高木「うむ。実績もある優秀な人だと聞いているよ。なにせあの水谷……」


「社長ー、876プロからのお客様ですよー」

高木「おおっと、早速来てくれたようだ! どうぞどうぞ、入ってくれたまえ!」

小鳥「あ、じゃあ私、お茶を淹れてきますね」

真美「もう来るんだ!?」


ガチャ


尾崎「失礼します」


真美(!)

尾崎(ん? この子は確か、双海亜美……?)

真美(うわあ、キレーな人! デキる大人の女、って感じだよ~!)


社長「よく来てくれたね、尾崎君! 石川君から話は聞いているよ、敏腕プロデューサーだとね」

尾崎「とんでもありません。全てはアイドル本人による力です」

社長「ははは、いや、謙遜は良い、と言いたいところだが……私もプロデュースの経験がある以上、その答えは嫌いになれないなぁ。実に頼もしい限りだよ」

尾崎「ありがとうございます。……私に、765プロのアイドルを一人、プロデュースしてほしいとのことでしたが」

社長「うむ。早速その本題に入ろうか。尾崎君にプロデュースしてもらいたいのは、彼女……」


真美「……」

尾崎「……ああ」

真美「!」

尾崎「双海、亜美さん?」

真美「あうっ、やっぱそっちかぁ……」

尾崎「え?」

社長「ははは……いや、実は彼女はだね……」

riolaキタコレ

双子と尾崎Pとか
期待せざるをえない

ゴミスレと

早く書くんだよ!オルァあくしろォ!


尾崎(……まさか、双海亜美が双子だったなんて)


尾崎(妹の双海亜美、そして姉の双海真美)

尾崎(最初からデビューしていたのが亜美で、真美は途中から亜美名義で代理出演していた、と)

尾崎(理由は“一人でずっとやるのは疲れるから”、か。最初は本気のデビューではなかったのね)


尾崎(今は亜美の方は竜宮小町としてトリオを組み、その知名度と個性を増しているけど……)

尾崎(歌やレッスンが大きく絡んでくるとなれば、そうそう入れ替わり戦法は通用しない)

尾崎(亜美もアイドルの仕事に本気で取り組むようになって……それはいいんだけど)

尾崎(そうして、真美だけが取り残された、と)


尾崎(……随分と、難しい境遇の子ね)


高木「今ではちゃんと、双海真美君としてデビューしているんだ。双海亜美とは違う、個人としてね」

尾崎「それは……初耳です」

高木「つい最近、しかも小規模の発表だったからね。竜宮小町もまだ、個人にスポットライトが当たるグループでもないから、耳に入っていないのも無理はない」

尾崎「何故大きく発表しないのです? これから少し間を置いて、時期をずらしてサプライズのように公表すれば、序盤から話題性は一気に……」

高木「それはだね……」


真美「そんなのヤだよ!」

尾崎「!?」

小鳥「ちょ、ちょっと真美ちゃん」

真美「あ……ごめんなさい」


尾崎「……どういうことです?」

高木「……うむ」

真美「……」


高木「……デビューも、出来る限り亜美君に遅れを取りたくないのだそうだ」

尾崎「……ああ。わざと遅らせると、その分実力や経験に差がついてしまう、と?」

真美「うん! うん! だって亜美はもう、ステージの上で踊れてるんだよ? それじゃあ真美も、うかうかしてらんないじゃん」

尾崎「なるほどね」


尾崎(双子だものね。片方が売れていて、もう片方が息を潜めているなんて、嫌なんでしょうね)

尾崎(まあ、詳しい彼女の心情はともかく……)


尾崎「では、今のデビューのまま彼女を売り込んでいくと。765さんは、そういう方向で?」

高木「うむ。私としても、彼女の意志を尊重するつもりだよ。是非、その方向でお願いしたい」


尾崎(……難しい立場の子だけど、あの双海亜美の姉。亜美のいる竜宮小町はこれから伸びていくグループだろうし……)

尾崎(素質は十分ね。育て甲斐はあるわ)

尾崎(亜美と同じタイプなら、876プロのあの子達と仕事がかぶることも少ないでしょう)

尾崎(絵理と競合しないなら、彼女を思い切り売り出せるわね)


尾崎「お任せください、高木社長」

高木「おおっ、引き受けて、もらえるかい!」

尾崎「まだ経験の浅い若輩者ですが、こんな私でよろしければ、是非」

高木「うむうむ! 君にはティン! と来るものがあるからね! 期待しているよ!」

尾崎「ティ……? は、はあ、よろしくお願いします」


真美「わーい! じゃあ真美、これからちゃんとしたデビューができるんだね!」

小鳥「良かったわね、真美ちゃん!」


尾崎「……それじゃあ、改めまして、双海真美さん」

真美「え?」


尾崎「私の名前は尾崎 玲子。担当してる絵理のプロデュースと兼任だけど、これから一ヶ月間、よろしくお願いね」

真美「う、うん! うんうん!」


真美「私、真美! 双海 真美だよ! 亜美に追いつけるように、頑張るからね!」

期待


尾崎(双海真美と握手を交わし、私達はアイドルとプロデューサーの関係となった)

尾崎(年齢は13歳。まだまだ小さい、絵理よりずっと若い子供だ)

尾崎(でもそれが逆に良い方へと転んだのか、彼女は初対面の私に対して臆することもなく、明るく話しかけてくる)


尾崎(初めて絵理と出会った頃のような不安は無かった)

尾崎(内に篭りがちな面もなさそうだし、全くどうしようもないほど苦手とする分野もない、とのことだ)


尾崎(どんなアイドルをプロデュースすることになるのかと懸念していたけれど、思っていた以上に仕事はしやすそうだ)


尾崎(頑張っていこう。社長に認められるために、そして私自身を高めるために)

尾崎(そしてもちろん、この小さなアイドル、双海真美のためにも)


尾崎(双海真美のプロデュースが決定したことを報告すると、876プロの社長は喜んだ)

尾崎(そして何故か、絵理もそのことを喜んでいた)


絵理『尾崎さん、最近暇そうだったから……やり甲斐、ある?』


尾崎(どうやら、絵理には私の焦りも筒抜けだったらしい)

尾崎(……絵理の後押しがあるなら、私も心置きなく、真美のプロデュースに専念が出来る)


尾崎(もちろん絵理を放置するわけではない)

尾崎(絵理にはセルフプロデュースに慣れてもらうため、しばらく一人でやってもらうことにはなるけど……)

尾崎(わからないこと、不安なことがあればその都度私の方に連絡をかけることになっている)

尾崎(完璧に一人で営業からレッスンまでこなしていた秋月涼という先輩もいるし、心配はないだろう)


尾崎(……でも今にして思えば、社長も秋月涼には随分と冷たかったわね)

尾崎(今更すぎるけど、ホント彼がかわいそう)

尾崎(一時は業界全体を敵に回して、それでもスーパーアイドルになってしまうのだから、よほどの素質があったって事よね)


貴音「それで、食というものは生きていたものを刈り取った末の恵みであるので……」

美希「ほぇー、じゃあ、おにぎりも?」

貴音「もちろんです。白米も元を正せば稲穂。それを刈り取った末の恵みであることを忘れては……」


ガチャ


真美「おっはー!」

美希「真美、おはようなのー」

貴音「おはようございます、双海真美。今日は、一段と上機嫌ですね」

真美「もっちろんだよー!」

貴音「もしや、それは専属のプロデューサーが決まったことに由来するのでしょうか?」

真美「うんうん! お姫ちん、よくわかってるねぇ!」

美希「そういえばハニーも言ってたの。真美に新しいプロデューサーさんがつくんだって」

貴音「真、良きことですね」

真美「んっふっふー、今日から真美は本気になっちゃうよー!」

おざりんはいつ876に所属したんだ


春香「なになに、何の話?」

真美「おはよーはるるん! 真美専用のプロデューサーができたっていう話だよー」

美希「専用?」

春香「今日からだっけ?」

真美「うんうん! 今日から新しいプロデューサーさんと猛特訓するんだー!」

貴音「まずはレッスンから、ですね」

美希「頑張ってなの。美希はソファーで寝かせてもらぁふぅ……」

春香「うわ、もう寝ちゃった」

真美「朝になったばっかりだよー、ミキミキー……」


律子「こら美希ー! あんたこれからボーカルレッスンでしょうが!」

美希「あふぅ!?」

真美「うひゃぁ、りっちゃん居たんだ!?」

春香「あれ? 竜宮小町の皆はもう出かけていったけど……」

貴音「秋月律子殿は、同伴されないのですか」

律子「これから来るプロデューサーさんと一度顔合わせがしたくてね、ここに残ってるのよ。竜宮とは後で現地で合流するわ」

真美「なるほどー」

美希「担当が律子じゃない分、真美は亜美よりも恵まれてるの」

律子「美希ぃー? 今なんか言ったー?」

美希「ううん。何も言ってないよ、律子……さん」

春香(でも真美のプロデューサー、大丈夫かなぁ……? 振り回されないかどうかが心配だよ……)


ガチャ


尾崎「おはようございます」


尾崎(小さな扉を開けてみれば、765プロの錚々たる顔ぶれが一度に見渡せた)

尾崎(天海春香、星井美希、四条貴音……そして、双海真美。それぞれが今最も注目されているアイドル達だ)

尾崎(彼女たちはまだまだ伸びるだろう。この事務所のアイドルは十名ほどいるけど、どれもハズレはない)

尾崎(そして事務所の奥にいるのは……秋月律子)


律子「おはようございます、尾崎プロデューサー! お待ちしておりました!」

真美「おっはろーございますっ!」

春香「お、おはようございます!」

貴音「おはようございます」

美希「おやすみなの」

尾崎「初めまして。プロデューサーの尾崎玲子です。ああ、皆さんはそのまま、楽にしててください」

律子「美希は起きなさい」

美希「あふ」


春香(……すごく綺麗な人だねー! 現役のアイドルみたい!)

貴音(とても頼りになりそうな方ですね、真美)

美希(ハニーよりも頼りがいがあるの)

真美(えっへへー……ていうかまだ真美も、尾崎さんのことよく知らないんだけどね)


律子「いつも涼がお世話になってます。そちらで迷惑かけてませんか?」

尾崎「いえ、彼はもう立派な876プロのアイドルですよ。こちらこそ、765プロさんにはお世話になりました」

律子「あはは……気にしないでください、あれくらいの事……その、まあ、その代わりというわけではないのですが」

尾崎「ええ、双海真美さんのプロデュース、こちらで責任をもってやらせていただきます」

真美(わわわっ、責任もたれちゃったよ!)

尾崎「必ずトップアイドルにしてみせますので」

真美「トップアイドル!? やった!?」


春香(あのプロデューサーさん、すごいやる気だね)

貴音(あとは真美のやる気が持続するかどうか、ですね)

春香(うーん……そうだね。亜美と真美は甘えるとどんどんサボっちゃうタイプだし……)


尾崎「ところで真美」

真美「ん? なになに?」

尾崎「挨拶はちゃんと“おはようございます”にしてもらうから」

真美「えっ」

尾崎「返事は?」

真美「はっ、はいぃ!」


美希(あの人、律子と同じ雰囲気なの)


律子「ふふふ、真美をどうぞお好きに、尾崎さん流に教育しちゃってくださいー」

尾崎「お任せください」

真美「あわわわ……」

尾崎「トップアイドルに相応しい女性にしてみせます」


春香(……大丈夫、みたいだね……)

貴音(別の懸念も、生まれてしまったようですが……)

真美(このプロデューサーさん、なんか怖そうな感じだよー……!)


尾崎「さて、まずは真美」

真美「はい」

尾崎「……そこまでかしこまらなくても。下手にペースを崩すのも良くないだろうから、自然体でいいわ」

真美「了解っ! 姉ちゃん!」

尾崎「ね、姉ちゃん?」

真美「うん、だって、姉ちゃんでしょ? 兄ちゃんも、兄ちゃんって呼んでるし」


尾崎(あの……つまり、どういうことなんです……?)

律子「うちのプロデューサー殿も、兄ちゃんって呼ばれてるんですよ」

尾崎(ええ、大丈夫なんですか、それ)

律子「あはは……まぁ、成り行きといいましょうか……」


尾崎(ここはガツンと言ってやらないと駄目ね)

尾崎(無いとは思うけど、営業先に変な印象を与えるかもしれない)


尾崎「あのねぇ真美……あまり外では、そういう誤解を招く呼び方は良くないわ」

真美「えー」

尾崎「私は呼ばれ方にこだわりはないけど、せめて……」

真美「じゃあおざりん!」


尾崎「おっ……おざ? りん?」

真美「うん! 尾崎さんだから、おざりん! 可愛いでしょ!」

尾崎「お、おざりんはちょっと……それならまだ姉ちゃんの方がいいわ」

真美「んじゃけってーい! よろしくね、姉ちゃん!」

尾崎「ええ……」


尾崎(結局、“姉ちゃん”になってしまった……)

尾崎(ここのプロデューサーも、似たような経緯をたどったのかもしれないわね……)


尾崎(……本当に、口の聞き方だけは最重要課題になるかも……初めて相手にするタイプ、わからないわね)


律子「尾崎さん、これです。ここに、真美のこれまでのレッスンの経歴や、営業のデータが入ってます」

尾崎「お預かりします。後ほど、詳しく見させてもらいますね」


真美「えーっ、りっちゃんそんなの持ってたの?」

律子「もちろんよ。真美だけじゃなく、皆の仕事の履歴もしっかり保存してあるからね」

真美「わーお……じゃあ今まで働いてきた時間とかもわかっちゃうんだ?」

律子「今までサボってきた時間もね」

真美「うぐっ、それは知りたくない……」

尾崎「大丈夫よ、真美。これからはサボるサボらないじゃない。サボらせないわ」

真美「ね、姉ちゃん、言い方が恐いよ……」


尾崎(サボるだなんて、セルフプロデュース主体の事務所に居たアイドル達から見れば有り得ない事だもの、当然よ)


尾崎(とりあえず、資料はあとで見てからスケジュールを考えるとして……)

尾崎(……あとは、本人の意気込みの確認ね)


真美「ねえ、姉ちゃん」

尾崎「なに? 真美」

真美「真美、はるるんや亜美みたいな、チョー人気のアイドルになれるかな」

尾崎「……」

真美「頑張れば、真美みたいに楽しいアイドルになれるのかな……」


尾崎(明るい振る舞いから、一気に不安そうな表情に変わった)

尾崎(未知を前にした13歳の、相応の小さな姿がそこにあった)

尾崎(それは13歳の少女の、余裕のない怯えた姿ではあったけど)

尾崎(遥か先へ続く道を正面に見据え、逃げようとしない……強い姿だった)


尾崎(……そう、気合は十分なのね)

尾崎(なら、私から言うことは何も無い)


尾崎「言ったでしょう、真美。私が必ずあなたをトップアイドルにする」

真美「! ホン……」

尾崎「でも、なれるかどうかはあなたの頑張り次第よ」

真美「うん! 真美、がんばるよ!」

尾崎「あなたがトップアイドルを目指す限り、私はあなたの力になるわ」

真美「うん、うん! なれるなら、真美、今まで生きてきた中で一番頑張ってみせるから!」


尾崎(……よし)

尾崎(一からのプロデュース、絵理以来ね……久しぶりだけど……)


尾崎(本気、出してみるか)

(真美が真美みたいなアイドル目指すのは誤字ですよね)

(*・∀・)φ マチガエタワ

アイドルになる前に一人前のレディーになれということですね


尾崎(765プロから876プロへ戻り、真美の資料を閲覧する)

尾崎(極秘の資料なので、家に持ち帰るのはご法度だ)

尾崎(今日の帰りは遅くなりそうだけど、気にせずじっくり、目を通していこう)


尾崎(……活動は疎ら。今は人気のアイドル、妹の双海亜美と比べると、その差は歴然としていた)

尾崎(真美のソロによる本格的なレッスンや営業はつい最近になってから。それまでは亜美との共同の活動……)

尾崎(竜宮が売れてからも仕事量には変わりはない。これは意外だった)


尾崎(真美の“亜美の手は借りない”という意識が反映されているのか……)

尾崎(それとも、ファンに“亜美と真美なら、竜宮の亜美”という意識が反映されているのか)


尾崎(……本当に、難しいわね)


尾崎(なるほど、集中的に行ってはいないみたいだけど、レッスンは欠かしていないようね)

尾崎(これは一度、実際にレッスンの様子を見るべきかもしれない)

尾崎(すぐにスタジオを借りて、間近で実力を見るべきか)


尾崎(……でも、いくらか推測はできる)

尾崎(双海亜美と真美は、竜宮誕生の前まではひとつの存在としてアイドル活動をしていたのだから……)

尾崎(この期間の実力はほとんど同ということだ)

尾崎(なら、ある程度は亜美の資料を参考にできる)

尾崎(直接真美のレッスンを見れば速いんだけど、今はもうちょっと、よく調べてみよう)


ガチャ


涼「ただいまもどりました」

愛「ただいまー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

絵理「尾崎さん、ただいま」


尾崎「あら、みんなお帰り」

絵理「何を見てるの?」

尾崎「ああ、これ? 新たにプロデュースすることになった、双海真美さんの資料よ」

涼「ああ……双海、真美? 亜美ちゃんじゃなくて?」

絵理「亜美ちゃんと真美ちゃんは、双子。真美ちゃんは、亜美ちゃんのお姉ちゃん」

愛「へー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 初めて知りました!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


涼「絵理ちゃんと一緒にプロデュースするんですよね?」

尾崎「ええ、二人くらいならなんとか手も回るし、やってみせるわ」

絵理「尾崎さん。調子、どう?」

尾崎「ん、そうね……絵理とは全く違うタイプの子だから、売り込み先が今までとは違ってくるだろうけど」

絵理「難しそう?」

尾崎「いえ、難しいというよりは、面白いわね。絵理と正反対のタイプのアイドルを同時に育てるんだもの」


絵理「……ふふ」

尾崎「? なによ」

絵理「尾崎さん、楽しそう」


絵理(よかった)


尾崎(翌日、私は765プロへ真美を迎えにいってから、レッスンスタジオへと向かった)

尾崎(当然、営業やレッスン共にお金は765プロから出されるけど、無駄遣いはできない)

尾崎(最低限の設備……とは言わないまでも、規模の小さなスタジオにて、彼女の実力を見ることにした)


尾崎(その光景は、ちょっとしたオーディション会場のような雰囲気がある)

尾崎(向かいに立つ真美の表情も、どこか緊張して固くなっている)


尾崎「これから今の真美の実力を確認するわ」

真美「今までどおり、やれば良いんだよね?」

尾崎「ええ。本番でやるような気持ちで、私に見せて頂戴。」

真美「うん、頑張るよ!」


尾崎「……えっと、別にこれで、真美の力が低いから見放すだとか、そういうことは無いからね」

真美「ほんと?」

尾崎「ちょっと確認したいだけだもの。リラックスしてやりなさい」

真美「よ、よぉーし……」


尾崎(逆に上がっちゃったかしら?)

愛ちゃんうるさい

三件隣のスレまで聞こえてきたんだが愛ちゃんだったのか


真美「たりらん♪ たりあ♪ むてきん♪」


尾崎(良い動き)

尾崎(13歳とは思えないわね)

尾崎(でも気取らず、元気で伸びやかな動きは、やっぱり歳相応の若い活力に満ち溢れている)


尾崎(絵理が癒やすアイドルだとしたら、真美は元気にさせるアイドルかしら)

尾崎(ダンスの才能は絵理以上にある。年齢を考えれば、これからも更に伸びていくはず)


尾崎(表情には硬さもない)

尾崎(歌に気になる箇所はあるけど、最初の絵理ほどではない)


尾崎(……へえ、過去の資料よりも、ずっと成長してるじゃない)


真美「……ふう」


真美(やりきった! 今のは絶対、全力出せたっしょ!)


真美「姉ちゃん姉ちゃん! 今の真美、どうだった?」

尾崎「すごいじゃない、真美。聞いていた以上で驚いたわ」

真美「えへ、えへへ~」

尾崎「特にダンスね。資料や過去のステージを見ただけだから偏った印象かもしれないけど、比べるとかなり上達してるように見えたわ」

真美「うん! 真美、ダンスだけは自信あるんだー!」

尾崎「大抵は真美くらいの歳の子は歌だけとか、踊りだけとか、どちらかだけのアイドルが多いのよね」

真美「そーなの?」


尾崎「ええ。普通は顔が良くて、あと何かひとつっていうだけ。それでも十分ではあるんだけど、真美はダンスが出来て、他の分野もそこそこ伸びている。珍しいわ」

真美「うお、べた褒めだね……真美ってそんなに、すごい?」

尾崎「そこに胡座をかかなければね。子供の成長って早いから、油断しているとすぐに追いつかれるわよ」

真美「ゆ、油断なんかしないよ! 毎日一人でも、頑張ってるもん!」

尾崎「偉いじゃない」

真美「!」


尾崎(私はずっと昔、いつか誰かにそうしたように、真美の頭を優しく撫ぜた)

尾崎(ワアワアうるさかった真美はそれだけで大人しくなり、犬のように小さくなってしまった)


真美「……姉ちゃん」

尾崎「きっと、いえ、絶対に。貴女ならトップアイドルになれるわ」


尾崎(それは、絵理とはまた違った角度からの展望だけど)

尾崎(それだけに、真美の才能がよくわかる)

尾崎(……応えてみせよう。765プロや、876プロの期待に)

尾崎(久々に、血が滾ってきたわ)


尾崎「明日から新メニューでのレッスンよ、真美」

真美「新メニューですと!?」

尾崎「私の中での方針は決まったわ。あとは詳しいレッスンや、営業のスケジュールを決めていくだけ」

真美「ぉおお……もうそんなに……やり手だね、姉ちゃん」

尾崎「忙しくなるけど、ついてこれるかしら? 真美」


真美(……真美を、認めてくれる人)


真美「とーぜんっしょ! どんなスパルタな特訓でも、がんがんきちゃってよ!」


尾崎(センスに任せる部分は大きいけど、それが彼女の力を大部分を支えているといっても過言ではない)

尾崎(下手な下地作りは逆効果ね。小難しいビジュアルレッスンは抜きに、ダンスとヴォーカルに力を注いでいきましょうか)

尾崎(この二つが武器。ダイナミックに踊りながらも、息を切らさずに)

尾崎(溢れるほどの元気を、見る人にも分け与えるようなアイドル)

尾崎(そのためには、真美自身がタフでなくてはならないわ)

尾崎(少々厳しいレッスンが多くなるけど……やってもらいましょう)


尾崎(平行して、知り合いに売り込んで……)

尾崎(絵理のプロデュースで開拓したツテがあるから、頼めば喜んで食いついてくれるでしょう)


尾崎(……うん)

尾崎(上手くいきそう)



カタカタ


尾崎(……今日の真美は期待以上だった。やっぱり、まだまだ伸びる時期なのね)

尾崎(向こうのプロデューサーが双海亜美を竜宮に入れた理由もなんとなくわかるわね。あれは息の長いユニットになりそうだわ)


尾崎(……今、この業界はCGプロによって、大幅に勢力図が書き換えられている)

尾崎(大人数のプロデューサーと大人数のアイドル。70年代の環境を一社で再現しようという大胆な試みは、社会全体を動かしてしまった)

尾崎(そんな数の戦いの中でも生き残っているのが、莫大な資金力を持つ961プロ。そして我が876プロや、765プロだ)


尾崎(今は夜空も眩いアイドル時代。アイドルが生き残るためには、平凡な輝きでは星屑の海の中で霞んでしまう)


尾崎(……私も、輝く前に叢雲に霞んでしまった星のひとつだけど)

尾崎(隠れてしまった星だからこその確信がある)


尾崎(双海真美……あなたは、絵理と同じ)

尾崎(必ず輝ける)


真美「さあ笑顔になろう……♪ もっと明日を好きになれる様に……♪」


亜美「あれ? おーー、珍しい歌だね、真美!」

真美「うん、ちょっと思い出してねー」

亜美「良い歌だよねー♪ 亜美も覚えてるよー」

真美「んっふっふー♪ 真美達にとって、この歌が始まりみたいなものだもんね」


亜美「でもどうしてまた、この曲を歌ってたの?」

真美「え? うーん……」

亜美「うんうん」


真美「なんと、なく?」

亜美「がくぅー」


真美(……なんでだろ、真美にも、わかんないや)


貴音「そう……らぁめんに含まれるちゃぁしゅう、これはまさに、我々が命を刈り取った証に他ならないのです」

美希「へぇー、じゃあ、炭火焼き鳥おにぎりもそうなの?」

貴音「もちろんです。食に垣間見える肉は、すなわち我々の業そのもの。その事実を受け入れ、感謝する事こそが……」


ガチャ


尾崎「では、行ってきます」

律子「あ、はーい。いってらっしゃーい」

真美「んじゃ、いってくるねぃん!」

貴音「ご健闘を、真美」

美希「なのー」


バタン


律子「最初はやっていけるか不安だったけど……なんだかんだで、うまくいってるみたいね」

貴音「近頃の真美は溌溂としていて、見ているこちらも力が湧いてくるようですね」

美希「ミキ的には、あれ、頑張りすぎだと思うけどな」

貴音「そうでしょうか? 本人は、とても楽しそうに日々を過ごしているようですが……」

美希「あれじゃ律子につきっきりなのと何も変わらないの。そんなのごめんなの」

律子「聞こえてるわよぉー」

美希「なんでもないの」


貴音「ところで律子殿、今日は、他のプロダクションとの合同練習があるということでしたね」

律子「ええ、同じステージに立つから、その時のちょっとしたダンスのリハをね。人数も多いから、内容の割には時間かかるわよ」

美希「……下手な子に合わせてやるの、ミキ、やっぱり嫌い」

律子「仕方ないわよ、そういう番組構成なんだから」

貴音「そうですよ、美希。それに、後輩に指導をするのは先輩としての役目です」

美希「律子が増えたの~~……」


真美(よっ、ほっ……)

真美(ここで、最後の……ターンッ!)


キュッ


トレーナー「うん、全体的に安定してきたわね。上出来よ」

真美「へへーん! あと少しやれば、もう完璧っしょー!」

トレーナー「そうね……そうだけど、プロデューサーさんが変わってから大分ハードになったでしょ」

真美「うん、まぁ……時間もめっちゃ長くなったし、何より毎日どっかにお出かけするようになったしねー」

トレーナー「怪我をしないようにこっちでセーブはしてるけど、疲れを溜めすぎるとミスから大怪我につながったりもするわ」

真美「大丈夫だって! 確かに姉ちゃんは厳しいけど、ダンスとか歌が上手くなるの、楽しいもん」

トレーナー「……ふふっ、真美ちゃんがそう言うなら、大丈夫かな?」


真美「姉ちゃん、そろそろこっちに戻ってくる頃かなー」

トレーナー「そうね、あと少しで……二人のプロデュースも、楽じゃないわよね」

真美「そうなの?」

トレーナー「そういうものよ」


~♪


絵理「これが、私の新曲……」

尾崎「どうかしら? 今までとは違った絵理を、ファンに見せられるわよ」

絵理「こういう声の出し方……得意かも?」

尾崎「ええ、そう思って選んでみたんだけど……どうかしら?」

絵理「いいかんじ」

尾崎「良かった。絵理自身の曲への思い入れが大事になるから、安心したわ」


絵理「……他のアイドルに負けないよう、頑張る」

尾崎「近頃、競争が激しいものね。頑張っていきましょう」


絵理「あ……そういえば、尾崎さん、そろそろ真美ちゃんの所へ行く時間?」

尾崎「ん、もうこんな時間なの……ごめんなさい絵理、中途半端で申し訳ないけど」

絵理「私は大丈夫……真美ちゃんのところ、行ってあげて?」

尾崎「本当にごめんなさい、できれば私も……ああ、とにかく行かなきゃ、それじゃあね、絵理」


バタン


絵理「……尾崎さん、大変そう」

絵理「……♪ これ、良い曲♪」

えりかわ


ガチャ


尾崎「すみません、遅れてしまいました」

真美「姉ちゃん!」

トレーナー「いえいえ、スタジオも離れていますから、仕方ありませんよ」

真美「そうそう、たった数分だもん。気にしすぎだよー」

尾崎「……フォローされるのは嬉しいけど、立場上甘んじるわけにはいかなくてね」

トレーナー「あはは」


真美「じゃあ遅れた罰として、姉ちゃんに何か買ってもらおっかなぁ~」

尾崎「……仕方ないわね。遅れたのは私が悪いし。まぁ、お菓子とか……そのくらいだったらいいけど」

真美「わーい!」


ブロロロ


真美「それでね、その時の兄ちゃんが“えっ、マレーバクじゃなかったのか?”って言っててさー」

尾崎「へえ、あの人にそんな一面もあるのね」

真美「うんうん、普段は暑苦しいんだけどね、どこか天然から、ついついいじりたくなっちゃうんだよー」

尾崎「でも彼だってあなたの上司のようなものなんだから、親しき仲にも礼儀ありって事を……」

真美「あ! ねえちゃんねえちゃん! コンビニあったよ!」

尾崎「えっ?」

真美「ああもう、過ぎちゃったよ~」

尾崎「あら……じゃあ、次の所を探すしかないわね」

真美「全くぅ、姉ちゃんも大概、天然ですなぁ」

尾崎「く……絵理にだってそんなことを言われたこと無いのに……」


「いらっしゃいませ」

「あっあっぇーい」


真美「えっと、あとこれとね~」

尾崎「ちょっと真美、ひとつって言ったじゃない」

真美「ええっ、でも喉が乾いてるんだもん、こっちはノーカンでいーじゃん!」

尾崎「……ダンスの後だけど……うーん」

真美「ねえちゃんねえちゃん、何かお菓子買ってよー」


尾崎(純粋な目で求められても……困るわ)

尾崎(あまりこの年頃の子を甘やかすのは良くないし……)


尾崎「……真美、あなたはもう中学生になるんでしょう? おねだりはそろそろやめなさい」

真美「えー、良いじゃん。飲み物のついでにおーねがいー」

尾崎(わ、わがままを通させたくはないけど……だけど、さすがにここで渋るのも、ケチなだけかしら)


尾崎「……しょうがないわね。じゃあ、ひとつだけだから。わかった?」

真美「わーい! おざっす!」

尾崎「おざっすはやめなさい、買ってあげないわよ」

真美「ごめんなさい」

尾崎「そういう時だけ素直ね……ひとつだけよ」

真美「うん! ありがと、ねえちゃん!」


尾崎(……はぁ、なんて純粋な笑顔。小悪魔ね)


真美「んーとね、んーとね」


尾崎(真美が選んだ飲み物はピルクル。私は適当なカフェラテを選んだ)

尾崎(今、彼女は中華まんのケースの前で悩んでいる)

尾崎(まるで小動物の入ったケージをじっと見つめる子供みたいな、あどけない仕草だ)


真美「んー……」


尾崎(レッスン中の真美は、踊りや歌の内容とはそぐわないほどの気迫に満ちている)

尾崎(流れる曲は明るい子供向けでも、彼女の目つきはいつだってプロのそれだ)

尾崎(こういうオフの時間に見せる真美の年相応な姿が、仮の姿にも見えてしまう)


真美「じゃあ、あんまんにする!」

尾崎「それでいいのね?」

真美「うん! あ、レジの姉ちゃん、一番おっきいあんまん選んでね?」

「え? あ、はぁ、かしこまりました」

尾崎「こーら、困らせるような事を言わないの。どれも同じなんだから」


尾崎(けど、真美の色々な一面を見る中で、彼女に向いていそうな仕事もわかってきた)

尾崎(そろそろレッスンだけでなく、本格的な営業の方にも力を入れなくちゃ)

何てことだ!このスレはあんまんお断りだったのか!


尾崎「前座もガヤもバックダンサーも、ひとまずは全て蹴る。今日は、CM撮影に出てもらうわよ」

真美「おー……ってえええ!? CMぅ!?」

尾崎「企業のサイズは度外視して、あくまでイメージ重視で選んだわ。真美に合う企業、商品をね」

真美「おお……真美、テレビに流れるんだ……ってゆーか、いきなりそんなおっきいの、大丈夫かな」

尾崎「放映の規模はさすがにわからないから、期待しないで。ただ、真美個人を売り出す足がかりにしていくつもりよ」

真美「……真美、一人だけの……」


尾崎「最初は、モニターに流れるあなたの姿を見て、双海亜美と勘違いする人もいるかもしれない」

尾崎「けど今はネット社会。どんな小さなCMでも、ファンは必ずそれをピックアップして、見ていてくれる」


尾崎「そして竜宮小町のより洗練されたファンであれば、その短い広告を見て、すぐに違和感を感じ取るはずよ」

尾崎「“これは双海亜美なのか?”……ってね」


真美「……んっふっふ~……なんか、悪戯を仕掛けてるみたいだね!」

尾崎「いわば、時間差で効いてくるちょっとした話題作りね。それだけに、軽視はせず本気でやってもらうわ」

真美「任せてよ姉ちゃん! そのショーヒンを大ヒットさせちゃうくらいの演技、やってみせるからね!」

尾崎「……できれば、真美の方がヒットしてほしいんだけどね」

真美「そっちはとーぜんだよ~」


尾崎「今日はモデルをやってもらうわね。相手が絵理贔屓の所で助かったわ」

真美「もでる……? アイドルなのに?」

尾崎「ちょっとしたファッション誌ね。キッズファッション専門のじゃないけど、逆にそっちのほうがイメージは良さそうだから、大人向けにしておいたわ」

真美「大人向け! むふふ、真美もようやく、姉としての力を発揮する時がやってきたわけですなぁ~?」

尾崎「けどポーズやファッション自体は大人びているわけでもない、子供らしいものよ」

真美「えー……」

尾崎「そういう路線で売っていくの。ああもう、時間がないわね。車の中で説明するから、早く乗って!」

真美「え? あ? おわわわ、引っ張らないでよー!」


尾崎「新曲ができたから、ひとまずレッスンの割合を増やすわね」

真美「え? 新曲? 真美の!?」

尾崎「当然じゃない。ちょっと前に頼んでいたのができたらしいから、挨拶ついでに今から……」


真美「あわわわわわ……」

尾崎「……なに? もしかして自分用の曲、初めてなの?」

真美「う、うん。だって今まではずっと、亜美と一緒のやつだったから……」

尾崎「ああ……真美の本当の意味で初めての曲っていうのは、これになるのね」

真美「ま、また覚えなきゃ! で、でも今度は亜美もいないし……うあうあ~」

尾崎「そう緊張しないで。これまでの双海亜美の曲から離れて、新たなイメージを作るチャンスよ。さあ、車に乗って」

真美「わわわ、だから引っ張らないでってばぁー!」


尾崎「ちょっと真美! 勝手に他の衣装着ちゃ駄目でしょ!」

真美「え~……だって真美のと同じところにかけてあったし、着れそうなサイズだっ……」

尾崎「言い訳無用! 向こうの人が迷惑してるんだから、謝りにいくわよ!」

真美「えぇー! ちょっとくらいっ!」

尾崎「そのちょっとで留め具がふたつ外れちゃってるのよ! いいから、行く!」

真美「うあー! わ、わかったから引っ張らないでー!」

尾崎「引っ張られるより早く歩く!」


尾崎「お台場にできた新しい施設のレポートの仕事、拾ってきたわよ。時間は短いけど、真美らしさを発揮する良い機会になると思う」

真美「おおっ、すごいアイドルっぽ……いけど、あれ、姉ちゃん、今日って確かレッスンの日じゃ……」

尾崎「何言ってるの、レポート自体は暗くなる前に終わるんだから、その足でスタジオに入れるわよ」

真美「え、ええっ!? それってチョー忙しくない!?」

尾崎「まごまごしてるとレッスンの時間がなくなるわよ、さあ、早く車に乗って」

真美「そ、そそそ、そんなぁ……今日はレッスン前に亜美と一緒にゲーム……」

尾崎「私だって絵理の方へ行かなきゃいけないんだから、お互い様よ。さ、乗った乗った」

真美「うあっ!? ちょ、姉ちゃん、引っ張らないでとは言ったけど、押すのもやめてよー!」

尾崎「ちゃんとシートベルト締めなさいね、最近やってないの、気づいてるわよ」


真美「うう~……ガミガミ姉ちゃん……」

尾崎「なぁーにか、言った?」

真美「なんにも言ってないよぅ」

活動が充実してるようでなにより

( *・∀・)キットワータシガイチバーン♪ デモアナターモソコソコカモー♪


キュッキュッ、キュッ


真美「~♪」


真美(歌と、ダンスを、両立するのって……)

真美(て、テンポがゆっくりなら簡単だけど……)

真美(速いと、難しすぎる!)


キュッ


トレーナー「うん、まぁ、今のところはこれくらいかしら」

真美「……っぶはぁー! 疲れた!」

トレーナー「どう? とりあえずひと通り踊ってみて、新しい曲は難しい?」

真美「んあ~……ダンスが激しすぎて、歌に息を使えないよ……」

トレーナー「厳しいわよね、この手の曲だと」

真美「んふふ、でも、最初の時と比べたらぜんぜん平気だよ!」

トレーナー「そうね、真美ちゃん、とっても上手くなったわ」


真美「えっへへ~、姉ちゃんも褒めてくれるかな」

トレーナー「尾崎さん……そうね、ここまでくれば、一段落ってところだし」

真美「プロデュースしてる、絵理おねえちゃんよりも、ダンスだけなら負けてないと思うんだー」

トレーナー「絵理って、あの水谷絵理さん?」

真美「うん! ねえちゃん、よく話に出すからね」

トレーナー「ふふ、そうね……まぁ、二人はかなり気色の違ったアイドルだから、簡単には比べられないけど……」

真美「ねえちゃん、早く来ないかな~♪ ……あ、そうだ、今のうちに亜美にメールしとこーっと!」


ポパピ ピピ


真美「夢になる♪ 愛になる♪ ほら、何だってホントになる……♪」


トレーナー(最近、忙しいけど……尾崎さんにはなついてるみたいね)

トレーナー(悪戯っ子だから心配してたけど、良かった)


社長「765プロから聞いてるわよ。双海真美のプロデュース、なかなか順調にいってるみたいじゃない」

尾崎「はい。少々やんちゃなところはありますけど、真面目に取り組めば実に優秀な子です」

社長「向こうの人も、双海真美が活躍し初めて喜んでいたわ。わざわざこっちにまで、何度もお礼の電話をくれたんだから」

尾崎「絵理とは違ったアイドルですからね。二人の仕事が被らない分、やりやすさを感じています」


社長「早速、向こうから一ヶ月だけじゃ足りないっていう話が出てるんだけど……」

尾崎「え、もうですか?」

社長「まあ、即答するのもあれだから、返事はまだ返してないけどね」

尾崎「はあ……一応私は外部なので、ギリギリまで待ってください。もちろん、真美のプロデュースが嫌というわけではないですが」

社長「もちろんそのつもりよ」

尾崎「ありがとうございます。預かっている身分なので、慎重にやらせてください」

社長「それが一番ね」


尾崎(……社長から好評価を得た。もちろん、765プロからも)

尾崎(この短期間で、随分と仕事の幅も広がったし、沢山の信頼関係も築けたように感じる)

尾崎(普段取ったことのない仕事も取って、またひとつ、売り込む選択肢が増えた気もするし……)


尾崎(……もっと、努力しないと)

尾崎(今の絵理はすごい。けど、私がそれを更に伸ばせるようにならなくちゃ、私は胸を張って絵理のプロデューサーを名乗れない)

尾崎(……頑張ろう)


絵理「君のハートを 揺らしたくって……♪」

絵理「ウラハラ言葉 クロスさせる……♪」


尾崎(うん、こっちの曲もいい感じ)

尾崎(絵理の声質にマッチした良い曲だわ)

尾崎(ダンスも激しいものではないし、最初から問題点らしい問題点も見つからない)

尾崎(順調すぎて、逆に怖いくらい)


尾崎(……逆に、真美もこのくらいのハマり具合が来てくれるといいんだけど、そうもいかないかしら)

尾崎(あの子の素質を十分に活かしたような、ダンスや……歌)

尾崎(それはつまり、素質だけで抜け通れるような甘いものではなくて……)

尾崎(厳しいレッスンの先にある、努力によってつかむことのできるもの)

尾崎(最初から完璧に、歌とダンスを両立できるアイドルなんていないのだから)


絵理「きっといまなら あっとおどろく おおきな夢がかなう……♪」


尾崎(真美が目指すものは、基礎能力ありきの元気なアイドル)

尾崎(流行りのCGプロや絵理とは違った、もっと正統派な、王道のアイドル)

尾崎(それだけに、競争相手は多い……)

尾崎(……真美にも、頑張ってもらうしか、ないわね)


貴音「以前私は、食は命を摘み取った証であると言いましたね」

美希「うん」

貴音「私は長い間、それを正しいものと思い、食の文化を受け入れてきました……ですが」

美希「うん」

貴音「料理の中には、料理でありながらにして命があり、自らの意志を持つものもある……食には、まだまだ私の知らない世界があるのですね」

美希「うん?」

貴音「私も探し続ければ、ややもすれば、生けるらぁめんとも出会えるかもしれませんね」

美希「助けて春香ー、貴音が壊れたのー」


春香(面倒くさそうだし、聞かなかったことにしよう)


春香「真美、今日もすぐ出発なんだね」

真美「うん、レッスンがふたつあるんだー」

春香「ふたつ、わぁー大変だね……あ! 前に真美が出てたCM、見たよ!」

真美「えっ、ホント!? 真美どーだった!? 良かった!?」

春香「真美らしくって、すごく良かったよ!」

真美「ありがとうはるるーん! なかなか皆と会えないから、こういう話がなかなかできなくて……」


「真美ー! 出発するわよー!」

真美「うぁああ、もう行くんだー……」

春香「ふふふ、行ってらっしゃい、真美っ」

真美「うん、またね、はるるん」

貴音「ご武運を、真美」

美希「なのー」

真美「うん、いってくるねー!」


愛「それで、みちるさんにかじられた所がウニューって!!!!!!!!!!!」

涼「あはは……」

愛「そしたらバヒューンって飛んでいって、窓ガラスをドバァーンって破って逃げちゃったんですよー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

涼「そ、そうなんだ……愛ちゃんの話も、よくわかんないなぁ……」

愛「もうびっくりしましたー!!!!!!!!!!!!!!」

涼「ま、まぁまぁ、愛ちゃん……絵理ちゃんが集中して聴いてるから、ちょっとボリュームさげて……」

愛「あっ……」


絵理「ふんふんふん、ふんふん……♪」


愛「……そうでしたね、新曲覚えるのに集中してるのに……ごめんなさい」

涼「あ……いやいや、そこまで落ち込むことはないと思うけど……」

成長していく姿っていいものだよね

先輩食われとる


絵理「どうしたの?」

涼「あ、絵理ちゃん。ごめんね、集中できなかったかな」

絵理「ううん。丁度、聴き終わったところだから……」

涼「そっか。うん、あまり話らしい話もしてないんだけどね。最近の絵理ちゃん、調子良いなって思って」

絵理「そう?」

愛「はい……すごく……活き活きしてるっていうか……」

涼「あ、愛ちゃん、なんかそれ今にも死んじゃいそうだよ! 無理しなくてもいいから!」

愛「はーい!!!!!!!!!!!!!!」

涼「うわぁっ!?」


絵理「ふふ……尾崎さんの、おかげ?」

涼「え?」

愛「尾崎さん、ですか?」

絵理「うん。尾崎さん、楽しくやれてるみたいだから」

愛「でも最近、尾崎さんの姿見てないですよね」

絵理「うん。でも、頑張ってる、証拠?」

涼「社長も、なんだかごきげんみたいだしね。二人同時プロデュース、上手くいってるみたい」

愛「そっか!!!!!! 尾崎さんの調子が良さそうだから、絵理さんも調子が良いんですね!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

絵理「うん♪」

涼(前々から思ってた事ではあるんだけど、なんだか、絵理ちゃんの方が保護者みたいなんだよね……)

(餅*・∀・)セクシーゾーン♪

~♪


尾崎「……うーん」

トレーナー「……どうですか」

尾崎「悪くはないけど、弾んでるわね」

トレーナー「そう、ですね。けど、この踊りではそれも仕方ないかと」

尾崎「……んー」

トレーナー「改善できそう、ではあるんですけどね」


尾崎(妥協点を決める、か。難しいところね)

尾崎(さすがの私でも、いつまでも果てしなく技量を追い求めさせようとは思わない)


尾崎(けど真美には伸び代がある)

尾崎(伸び代がある以上は、伸ばす努力は必要ね)


尾崎「真美、良いかしら」

真美「えっ? ……真美、なんか、変だった?」

尾崎「ちょっと気になる所があったから、一旦見てちょうだい」

真美「見るって?」

トレーナー(あれっ、尾崎さんが踊るの?)


尾崎「まず曲、ここ、出だしだけど、歌の抑揚で身体をオーバーに動かさないように……」


キュッキュッ


真美「わっ!?」

尾崎「こう……え、何?」

真美「姉ちゃん踊れるの!?」

尾崎「……今更? そりゃあ、少しくらいなら踊れるわよ。歌いながら完璧には厳しいかもしれないけど」

真美「す、すごいすごい! 本物のアイドルみたいだったよー!」

トレーナー(私も初めて知った)


尾崎「音なしでゆっくり、歌を入れてやるとすると……」

真美「うんうん」

尾崎「~♪」

タンタンッ タンッ

真美(わあ、姉ちゃん歌も上手だ……)

真美(テンポはゆっくりだけど、しっかりダンスもできているし……)

真美(……なんだろう)

真美(どこか、懐かしい感じ)


尾崎「わかった?」

真美「へっ?」

尾崎「は?」

真美「……よくわかんなかったから、もっかい! あと一回で完ぺきに覚えるから!」

尾崎「ええ、じゃあよく見てなさいね」

トレーナー(……ふふ、仲良いわね)

まみかわ

riolaフラグきた


真美(……今日の姉ちゃん、すごかったなぁ)

真美(歌も上手だったし、ダンスもすごかった)

真美(両方を普通のテンポでやるのは無理って言ってたけど、そんな風には見えなかったなぁ)


亜美「どしたの真美ー」

真美「ん? んー、ちょっと考え事ー」

亜美「もしかしてー、尾崎プロデューサーのこと?」

真美「うん」

亜美「ねえねえ真美、尾崎さんって、どんな人なの? 今日もきかせてよー」

真美「良いよ、っていっても、まだまだ真美もよくわかってないんだけどね」

亜美「わかる範囲でいいからー!」

真美「うむうむ、心して聞くがよい」

亜美「ははぁー」

続きまだー?

まだかな

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