咲「お姉ちゃんなんていらない」(175)

咲「いらない」

照「な、何を言い出すんだ……」

咲「私は和ちゃんがいれば幸せだよ」

照「和……あの全中王者の原村和か……」

咲「うん」

照「だ、だがあの子は性格悪そうだしやめておいた方がいいんじゃないか?」

咲「おっぱいがあるもん」

照「えっ」

咲「ともかくお姉ちゃんなんていらないから」

照「そんな……」

咲「ちょっと和ちゃんのところに遊びに行ってくるね」

照「い……行ってらっしゃい」


照「くそっ、咲め……いきなりいらないだなんて何があったというんだ?」

照「……ハッ! もしかして原村和に脅されているんじゃ……」

照「よし。後を尾けよう」

照「くっ、何だこの鬱陶しい木々は……こんな辺鄙なところで待ち合わせをしているのか?」

照「む……開けたところに出たな」

照「咲はあそこか。原村和も居るようだな」


咲「和ちゃん、会いたかったよ!」

和「よく来てくれました咲さん」

咲「当然だよ」

和「ふふ、すっかり私の虜なんですね」

咲「うん、和ママ!」


照「!?」

和「少し待っていてくださいね」ヌギヌギ

咲「うん!」


照(何だ……?原村和のやついきなり服を……なっ、胸をさらけ出した!?)

照(ま、まさかこいつら……)


和「はい、ママのおっぱいですよ」

咲「わーい!」フニフニ


照「!!?」

咲「柔らかくて気持ちいいよぅ♪」フニフニモミモミ

和「ああ……咲さんかわいいです……」

咲「えへへ~」フニュフニュ

和「好きなだけ甘えてくださいね」

咲「うんうん! ままー、ぱふぱふしてー」

和「はい」パフパフ

咲「わーい、幸せ~♪」


照「……」

照(な、何だこれは……悪夢でも見ているのか……?)

照(私の咲があのような……)


咲「和ママ大好きー♪」フニフニ

和「私もですよ、咲さん……」ナデナデ


照「ううっ……」クラッ

照(し、しかしもし万が一これが現実だとしたら……)

照(むぅ……確かに私の胸では満足させられそうにないな……)

照(……帰ろう)

照「ただいまー……って今は誰も居ないか」

照「くそっ、どうしてああなった!」

照「せっかく咲が『お姉ちゃんと一緒がいい!』と言うから長野に戻ってきてやったのに」

照「ふぅ……どうしたものかな」

照(胸か……)

照(白糸台の誰かに相談してみるか……でも誰に……?)

照(まあ、あいつしか居ないな)プルルルル

照「……と、いうわけで胸を大きくする方法を教えてくれないか」

淡『どぉーしてよりにもよって私なんですか、先輩!!』

淡『胸なら弘世先輩か渋谷先輩の方が圧倒的に大きいでしょうに!』

照「菫は馬鹿にするだけだから論外。渋谷もいまいち何考えてるか分からないから却下」

照「それにあいつらは大した努力もせずに大きくなったタイプだろう」

淡『まあ……渋谷先輩にいたってはお茶しか飲んでない気もしますしね』

照「だからきちんと努力をしているお前に相談したのだ」

淡『だ、誰が努力なんか……ほんのちょっとしかしてないですって……』

照「十分だ」

淡『そうですね。胸を大きくする方法といえばやっぱり……』


咲「ただいまー」


照「あっ、咲が帰ってきたから切るぞ。またな」

淡『ええーっ!? そんな……』プツッ


照「おかえり、咲」

咲「ただいま。いらないお姉ちゃん」

照「うっ……い、いちいちいらないを付けることも無いだろう……」

咲「だっていらないし」

照「それより、随分と早かったんだな」

咲「うん。ただ前に置いてった忘れ物を取りに行っただけだから」

照(忘れ物か。なるほどな……)

照(咲のやつ、母さんと離れたあの日から母へ甘える心を忘れてしまっていたんだな……)

咲「どうしたの?」

照「あっ……いや、何でもない」

咲「そっか。ちょっと出かけてくるね」

照「えっ、またか?」

咲「うん。それじゃ行って来るよ」

照「あ、ああ。行ってらっしゃい」

照「やっぱり気になって尾行してしまっているが……」

照「今度はどこだ? どんどん人通りの少ない場所に向かっているぞ」

照「むっ、ここは……公園か。随分と寂れた公園だな」

照「ベンチに座った……誰かを待っているのか……?」

照「ん? 誰か来たぞ……」


咲「あっ、お母さーん」


照「!?」

照(今『お母さん』って言ったぞ!!)

照(母さんが来てるのか!? ここに!?)

美穂子「ふふっ。元気にしてたかしら、咲」

咲「うんうん、お母さんの事を考えるといつも元気になれるんだ!」


照(いや、あれは風越の福路選手!! しかし『お母さん』とは……)

照(ま、まさか……原村和だけでなく福路さんまでも……!?)


咲「お母さん、おっぱい触らせてー」

美穂子「あらあら……咲は相変わらずね」

咲「えへへー」


照「うっ……」クラッ

咲「お母さんのおっぱいが幸せすぎるから仕方ないよぅ♪」フニフニ

美穂子「こらっ。しわが寄るから服越しは駄目だと言ったでしょう?」

咲「だっておっぱい……」

美穂子「慌てちゃ駄目よ……ほら」スッ

咲「わーい! お母さんの生おっぱいだー!」スリスリ

美穂子「ふふ、そんなに頬ずりして……」

咲「えへへ、だってお母さんのおっぱい大好きなんだもん♪」スリスリモミモミ

美穂子「もう。おっぱいじゃなくてお母さん自身はどうなの?」

咲「だいしゅきだよぅ……♪」ムニュムニュ


照(こ、これは……何ということだ……)

照(咲の奴うらやま……じゃなくてここまで重症だとは……)

咲「もう我慢できない……お母さん、ミルクちょーだい……」チューッ

美穂子「あっ……だ、駄目よ咲。ミルクは出ないわ……」

咲「やだ! お母さんのミルク飲むの!」チューチュー

美穂子「んん、やめなさい咲……ああっ」

咲「だめー。ミルク出してよー」レロレロチュパチュパ

美穂子「あんっ……もう、咲ったら……舐め方がいやらしいわ……」

咲「気持ちよくなったらミルク出るかなって思って……」

美穂子「残念ながら出ないわよ。ごめんなさいね」

咲「そっか……んーん、だいじょぶだよ」

咲「私はお母さんの赤ちゃんだから、お母さんも幸せにしてあげるの!」モミモミ

美穂子「はぁっ、ん……ふふっ、おっきな赤ちゃんだこと」ナデナデ

咲「えへへー♪」ペロペロフニフニ


照(心が折れそうだ……)

照(くそっ。どうして私がこんな光景を覗き見ていなければならないんだ……?)

照(いや、そもそもどうして私はこんな奴の姉として生まれたんだ……)

照(こんな妹いらない……そうだ。妹なんていらないじゃないか!)

照(咲が私をいらないと言ったように、私も咲などいらん!)


咲「お母さーん……おっぱい枕してー……」スリスリ

美穂子「あらあら、眠くなってきたのかしら?」ナデナデ

咲「うん……」ウトウト


照(くっ。馬鹿馬鹿しい、帰ろう)

照「ただいま……」

照「やっぱり私に妹など居なかったんだ……」

照「そうだ、東京に帰ろう。白糸台のみんなも待ってくれているはずだ」

照「そうと決まれば早速みんなにその旨を伝えないとな」ピッ

照「……」プルルルル


淡『もしもし』

照「……ふええーん! 咲と離れたくないよ淡ー!」

淡『なっ……知りませんって!!』

ごはんだー

淡『で、今度は何があったんですか?』

照「咲のやつが風越のキャプテンをお母さんにしておっぱい飲んでねんねしようとしてたんだ……」

淡『意味が分かりません。落ち着いてください』

照「あの馬鹿、風越のキャプテンの胸を揉んだり頬ずりしたり吸ったりして甘えていたんだ!!!」

淡『うわ……もしかして先輩、物陰に隠れてそれをジッと見てたんですか?』

照「まあ、そうだが」

淡『宮永先輩の変態……』

照「えっ、そ、そうなのか!? 変態は向こうの方じゃないのか!?」

淡『そういう性癖の人も居るでしょうに。わざわざ覗いてる先輩がおかしいんです』

照「マジでっ……」

照「いや……で、でもでも人気がないとはいえ公園という公共の場だったんだぞ……」

淡『うーん……まあ多少は先輩の気持ちも分からないではないかもしれない雰囲気が漂いかねませんが』

照「分かるのか分からないのかどっちなんだ……」

淡『ふむ、そうですね。包容力を身に付ければいいんじゃないですか?』

照「いや、あいつ絶対胸しか見てないぞ! 優しそうですぐに親しくなれそうな胸の大きい人を騙してるんだ!」

淡『そ、そんな決め付けなくてもいいでしょう。妹さんだって本当に先輩を嫌いになったわけではないと思いますし』

照「む……」

淡『ただ宮永先輩は性格的にもクールなタイプなので、胸もそうかもしれませんが甘えづらかったんじゃないですか?』

照「確かにそういうところはあったかもしれんな」

淡『だからですね、先輩は胸は多少控えめかもしれませんが、それでも甘えたくなるような包容力を持てばいいと思うんです』

照「なるほどな。しかし包容力とはどうやれば身に付くものなのか……」

淡『ふっふっふ、それに関しては少し助言が出来ますよ』

照「本当か!?」

淡『実は私の母親がですね……』


咲「ただいまー」


照「あっ、咲が帰ってきたから切るぞ」

淡『えっ!? ちょ、ちょっと……』プツッ


照「おかえり」

咲「あっ、いらないお姉ちゃんまだ居たんだ」

照「まだ居たとはどういう意味だ!?」

咲「いや、そんなに家に引きこもってて楽しいかなって思って」

照「むぅ……」

咲「そんな事より出かけてくるから」

照「はっ? もう5時過ぎだぞ」

咲「うん。お父さんは何日か居ないみたいだし適当にご飯食べておいて」

照「……まあ分かった。それでどこに行くんだ?」

咲「ちょっと鹿児島にね」

照「そうか、気をつけ……鹿児島!?」

咲「明日まで帰ってこないから。それじゃ」トテトテ

照「おい!」


照「鹿児島……? 急にどうしたと……あっ」

照「……まさか永水!? あの化け物おっぱい校か!!」

照「こ、これはまずい……」

咲「……」スタスタ


照(変装して何とか気付かれずに一緒の飛行機に乗れたが……)

照(本当に鹿児島に来るとはな)


初美「お待ちしておりましたー」

咲「あっ、初美おばちゃん久しぶり」

初美「誰がおばちゃんですか!! ほら、行きますよー」

咲「えへへ」


照(あの子は確か薄墨初美といったか……案内役か?)

照(しかし思ったより人が多いな……これならバレずには済むだろうが……)

照(……あれ、二人はどこだ? まずい、見失ってしまった!)

照(おそらくこっちの方に行ったはずだが……だがこの先は立ち入り禁止だ)

照(くっ。目的地は永水女子の近辺だろうし、道はよく分からんが何とかがんばるか)


初美「あっ……駄目ですよーこんなところで……」

咲「えー、なんで?」


照「ん?」

照(今のは咲と薄墨さんの声だな。まさかこの立ち入り禁止の先に……?)スタスタ

照(居た! こんなところでいったい何を……)


咲「初美ママー♪」スリスリ


照(何……だと……?)

初美「ん……さっきはおばちゃんでしたのに、今度はママですかー……」

咲「うん! ママ大好き!」プニプニ

初美「ひゃっ! も、もう……私の胸はぺったんこですけどそれでもいいんですかー?」

咲「うん……初美ママはいろいろと柔らかいから好きだよー……」スリスリスリ

初美「まったく、宮永さんってば甘えん坊なんですからー」

咲「えへへー♪」

初美「褒めてませんよー」ナデナデ


照(何でもありなのかこいつは……)

咲「初美ママのお胸……」ペロペロ

初美「ひぁっ……な、舐めるのは禁止ですよー!」

咲「やだっ! ママのお胸を堪能するの!」チュパチュパ

初美「はぁ、んっ……本当に仕方のない人ですねー」ナデナデ

咲「わーい♪ なでなでされながらお胸ぺろぺろするの幸せだよぅ」

初美「はは、宮永さんの胸好きにも困ったものですよー」ナデナデナデ

咲「えへへ……ママー……♪」スリスリ


咲「ふぅ……それじゃそろそろ永水に向かおうか」

初美「はい、そうですねー」


照(切り替わり早っ)

初美「ただいまですよー」

咲「こんばんはー」

霞「あら……」

小蒔「久しぶりですね、宮永さん」

咲「霞ママに小蒔お姉ちゃん!」

春「こんばんは」

咲「あっ、はるるちゃんもこんばんはー」


照(小蒔『お姉ちゃん』だと!?)

照(なるほど、咲はああいう姉が理想なのか……確かに包容力はありそうだな……)

照(滝見さんがどういう立ち位置か分からんがまあいいか)

咲「はるるちゃん、膝枕!」

春「はい」スッ

咲「わーい」


照(珍しいな、胸じゃないのか)


春「……」ファサッ

咲「あっ、はるるちゃんのおっぱいだー!」モミモミ

春「相変わらず甘えんぼさん」ナデナデ

咲「うん♪」フニフニ


照(やっぱり胸か……)

霞「私たちも準備は出来ているわよ」

小蒔「いつでも甘えてくださいね」

咲「わーい! ママとお姉ちゃんの生おっぱいだー!」

霞「あらあら……」

咲「みんなのおっぱいふにふにー」フニュフニュ

小蒔「うふふっ。今日はいっぱい甘えていいんですよ」ナデナデ

咲「うん……幸せだなぁ。夢みたい……」フニフニモミモミ

霞「ところがどっこい、これが現実よ」パフパフ

咲「わぁ~、ママのぱふぱふ幸せー♪」スリスリ


照(もう見ていられない……いっその事このまま乗り込むか?)

照(いや、永水の方々も合意の上だ。みんな楽しそうにしている……)

照(何かいい案はないか……?)

照(くそっ、どうしたらいい……助けてくれ、淡!)

(プルルルル)

照「!?」

照(電話か、こんな時に誰だ……)

『着信 淡』

照(淡……何というタイミングだ。咲たちには気付かれてないだろうな)スッ


咲「ママのおっぱいー♪」チューチュー

霞「あぁっ……こらっ。そんなに吸っては駄目よ……」ナデナデ

咲「えへへ~♪ 今度は小蒔お姉ちゃんの~」チュパチュパ

小蒔「んぅ……ふふっ、咲ちゃんが幸せそうで嬉しいです……」ナデナデ


照「くぅっ……」クラッ

照(ま、まあとりあえず気付かれてはいないみたいだな)ピッ

照「もしもし、どうした淡」

菫『菫だが』

照「げえっ 何故菫が……」

菫『お前淡に何かしたのか? 傷ついてるぞあいつ』

照「えっ、なんで?」

菫『宮永先輩が言いたい事言わせないままに電話を切るって』

照「そうだったか……それはすまないことをしたかもしれないな」

照「ん、もう8時じゃないか。どうしてこんな時間にお前が淡の携帯を使ってるんだ?」

菫『えっ……あ、ああーそれはだな……』

淡『ねえ、宮永先輩はもういいから続きしようよ……』

菫『ちょ、淡は黙ってろ!』

照(ああ、淡も一緒なのか……続き?)

淡『何でさー。もう宮永先輩の事はいいってば……菫お姉ちゃん……』

照「お姉ちゃん!?」

菫『ば、馬鹿!』プツッ

照「おい!? おい!!」ツー、ツー


照(何ということだ……淡、お前までも……)

咲「うゅ~……おっぱいがいっぱいでしあわ……ん?」

咲「今誰かの声が聞こえたような」スタスタ


照(やばい、気付かれた!! 急いでこの場を離れないと!!)スタコラサッサ


咲「……」キョロキョロ

咲「……気のせいか」


照(何とかやりすごしたようだな……)

照(しかし急に冷静になりすぎだろう。ノータイムでこちらに向かってきたぞ)

照(とりあえず家に帰って体勢を立て直そう……)

照「何とか帰れた……もう深夜じゃないか……」

照「私はどうしたらいい……頼みの綱の淡も咲と似た状況のようだし……」

照「くっ。とりあえず渋谷か亦野に相談だ!」

照「まずは渋谷から……」プルルルル


尭深『はい』

照「渋谷か、久しぶりだな」

照「……ん? 今日は珍しくお茶を飲んでいないようだな」

尭深『今作業中だから』

淡『作業なんて酷いよ尭深ママー……』

尭深『ごめんね淡ちゃん。なでなで』

淡『わーい♪』

照「……」プツッ


照「……もうおしまいだ」

照「い、いやいや落ち着け私! まだ亦野が居る!」プルルルル


誠子『もしもし? 急に電話なんて何かあったんですか?』

照「うむ。少し困った事があってな」

淡『誠子パパ、電話?』

菫『こらっ、淡。パパは仕事の電話だから静かにしてなさい』

照「……」プツッ


照(照……なんか悪い事したのかな……)

照(というか何だあいつら、全員同棲してるのか……)

照「うぅ、万策尽きた……もうゴールしてもいいかな……」グスッ

照(人は手首切っただけで死ねるんだろうか……あっ、そういえば首吊りは実はそこまで苦しくないとか聞くな……)

照「……って、何を考えてるんだ私は!!」

照「まずい……このままでは本気で命を断ちかねない……」

照「どうしてこうなった……もうおしまいなのか……」

照「いや、照ちゃんはまだまだ諦めないぞ。もし神がいるのなら前に向かうものを好きでいてくれるはずだ」

照「だが少し……今日は疲れたな……」

照「……ZZZ」

照「ZZZ……」


照「……はっ!?」

照「朝……? そうか、ついつい寝てしまっていたようだな」

照「今日はどうしようか……どうすれば咲を救える……?」

照「咲だけではなく白糸台の連中も……いや、あいつらはまあいいや」

照「むぅ……いい案が思い付かんし相談できる相手も居ない」

照「……とりあえず気晴らしに散歩にでも行って来よう」トテトテ

照「……はぁ」

照(風が冷たいな。もうそろそろ冬だから仕方ないか)

照(ううっ。冷たいだけじゃなくて風強いぞ……)

照「くっ……今日は風が騒がしいな……」


怜「せやけど、この風少し泣いとるで」

照「……!? だ、誰だ!!」

怜「久しぶりやな、チャンピオン」

照「キミは千里山の……確か名前は、園城寺さんだったか」

怜「おー、覚えとってくれたんか? 光栄やわ」

照「どうして大阪代表の園城寺さんがここに居る?」

怜「なんや変な夢見てもうて……宮永さんに会いに来たんや」

照「……私に?」

怜「ああいや、ちゃうねん。妹さんの方や」

照「咲にか」

怜「せや。その宮永咲さんにウチの竜華を取られる夢を見たんやけど……」

照「まさかその子は胸が大きいのか!?」

怜「えっ……ま、まあそうやな。なかなかのもんやで」

照「そうか。それは危険だ……」

怜「もしかしておっぱいが関係あるんか?」

照「うむ」

照「……と、いうわけなんだ」

怜「なるほどな。まあウチは竜華の太ももさえ守れればそれでええんやけど」

照「えっ、それでいいのか?」

怜「ほんで、妹さんはどこに居るんや?」

照「鹿児島だ」

怜「鹿児島……遠いなぁ」

照「今日には帰って来るそうだ。今日は一人で長野に来たのか?」

怜「いや、竜華も一緒や。旅行に行きたい言うて無理やり引っ張ってきたからな」

照「そうか。ともかく今は咲は居ないから二人で観光でも楽しんでくれ」

怜「そうしとくわ。またな」

照(園城寺さんか……これは思わぬ助っ人になりそうだ)

照(しかしまだまだ助けが欲しいな……)

照(思い出せ……長野……)

照(清澄……竹井久は使えるか……?)

照(龍門渕……優秀な人材は居そうだが私と咲の問題のためだけに動かせる自信がない)

照(風越は駄目だし、鶴賀は……加治木ゆみの分析力はなかなかのものらしいが……)

照(ふむ、とりあえず竹井久を当たろう)

照「確かこの辺に麻雀部の連絡網が……あった」

照「竹井久の家にかけることになるが問題なかろう」プルルルル


久『はい。竹井です』

照「もしもし、宮永です。久さんは……」

久『久は私ですけど……宮永って、もしかして咲のお姉さんかしら?』

照「うむ、その通りだ」

久『私に何の用?』

照「実は咲の事で相談があって……」

久『相談?』

照「……というわけなんだ」

久『あっはは、そういえば和に甘えまくってる現場を何度か見たことあるわ』

照「そうなのか?」

久『うん。まあ確かに、お姉さんとしては心配なところかもね』

久『でも私にもたまに懐いてくるけど、咲ってかわいいからついつい甘えさせちゃうのよね~』

久『しかしまさか永水にまで行ってるとは思わなかったわ。よっぽど甘えるのと胸が大好きみたいね』

久『ふふっ。本当にかわいい子……』

照(くっ、竹井さんも咲サイドの人間か……)

照「ところで、加治木ゆみの電話番号は知っているか?」

久『ええまあ……ゆみがどうかしたのかしら?』

照「咲を救うためにあの人の分析力が欲しい。教えてもらえないだろうか」

久『ふーん、なるほどね。いいわよ』

照「ふむふむ……うむ。助かった、礼を言う」

久『いえいえ、どういたしまして』

照「それでは失礼する」

久『はい。またお話しましょう』ピッ


照「なかなかいい人だったな。それだけに咲が甘えてきても受け入れているようだが」

照「ともかく加治木ゆみの電話番号は手に入った。あとは何とかして力を借りるだけ……」

照「クールだが面倒見のいい性格と聞いたし何とかなるだろう」プルルルル


ゆみ『もしもし、加治木ですが』

照「ああ。私は宮永照という者だが……」

ゆみ『宮永照、だと……?』

ゆみ『どうして全国王者が私に?』

照「いや、今日は麻雀と関係のない極めて個人的な用事なんだが……」

桃子『ゆみせんぱーい! 誰と電話してるっすかー?』

ゆみ『うおっ!? 急に抱きついてくるなモモ……』

照(あっ……この人も駄目かも……)

ゆみ『すまない。病気の後輩が居るものでな』

照「……病気?」

桃子『病気って何っすか!?』

ゆみ『ぐっ……大事な電話中なんだから落ち着け! さもなくばここから出て行ってもらうぞ!』

桃子『はい、ごめんなさいっす……』

ゆみ『本当にすまないな』

照「い、いや別に構わんが……それより東横さんが病気と言ったか?」

ゆみ『む……病気ではないのだが……そうだな、病的といった方が正しかったか』

ゆみ『好かれるのはもちろん嬉しいが、こいつは度々度が過ぎてしまうんだよ』

桃子『うう、すみませんっす……』

照「なるほど……度が過ぎる、まさにそれだ」

ゆみ『……? 何を言っている?』

照「実は咲が……」

照「……といったようにいろんな人に甘えまくっているんだ」

ゆみ『そ、それはもう仕方ないのではないか?』

照「そんな……私は加治木さんの分析力を評価している。加治木さんなら或いはと思って……」

ゆみ『そう言われてもな……』

桃子『リンシャンさん、超甘えんぼさんっすからねー』

ゆみ『うむ……』

照「!?」

ゆみ『あれでかわいいから困ったものだな。あの甘え上手は天性のものだと思う』

桃子『そうっすね。この私ですら先輩に甘えるリンシャンさんを受け入れてしまうっす』

桃子『それに私自身もリンシャンさんを甘えさせちゃうことがあるっすし……』

照「……わかった、諦めよう」プツッ


照「終わった……私の人生……」

照「まさか清澄や鶴賀も駄目とは……この調子だと龍門渕も怪しいな……」

照「どうなってるんだあいつは!! そこまで甘えててどうして私に甘えられない!?」

照「もう不貞寝してやる……」

(プルルルル)

照「うおっ、電話か」ピッ

照「もしもし」

淡『宮永せんぱぁ~い……ぐすっ……』

照「……淡? どうしたんだ急に……泣いているようだが大丈夫か?」

淡『大丈夫じゃないですよー……』

照「一体何があったんだ?」

淡『実はですね……』


咲「ただいまー」


照「あっ、咲が帰ってきたからまたな」

淡『ええっ、先輩!!? こらっ!鬼、悪魔、お姉ちゃん!』プツッ

照(……なんだお姉ちゃんって)


照「おかえり、咲」

咲「……」

照「……咲?」

咲「あっ、粗大ゴミが喋っただけかと思ったらお姉ちゃんか」

照「粗大ゴミが喋っても何も感じないのかお前は……」

照「なあ、咲」

咲「なぁに?」

照「私に甘えてみないか?」

咲「えっ……」

照「そ、その……胸とかも触らせてやるぞ?」

咲「何それ、気持ち悪いよ」

照「えっ」

咲「胸を触らせてあげるなんて言ってくる姉がこの世界のどこに居るのさ……」

照「し、しかしだな……」

咲「そういうのはえっちなゲームや漫画の中だけの話でしょ。変な冗談はやめてよ」

照「……すまない」

咲「わかればいいんだよ。それじゃ、私出かけてくるから」

照「またか!?」

咲「うん、今回はちょっと散歩してくるだからすぐ帰ると思うよ」

照「そうか……」

咲「行って来ます」スタスタ

照「うむ。行ってらっしゃい」


照(散歩だと? 怪しい……)

照(尾行せずにはいられないな)

咲「……」トテトテ

照(また人気のないところへ……)

照(こんなところに一体何が……む、あれは!)


竜華「怜ー こっちやー」

怜「ま、待ってや竜華……」


照(まさか園城寺さんたちが狙いか!)


竜華「もう、はようせんと日が暮れてまうでー」

怜「ちょ、ちょっと休憩……」

竜華「またか? 仕方あらへんなぁ」

怜「ふぅ……やっぱり竜華の膝枕は落ち着くわ」

竜華「まったく、怜の方から旅行に誘ったくせにそのザマかいな」

怜「はは、すまんな」


咲「ふふっ……」トテトテ

照(まずい、逃げろ園城寺さん!)


咲「こんにちはー」

怜「おや、アンタは……」

竜華「宮永咲!? なんで……って、ここ長野やったな」

咲「そうだよ。ここは私の家からも比較的近いし」

怜「それで、わざわざウチらに話しかけてきて何の用や? 竜華の膝枕なら絶対渡さへんで!」

竜華「なんでそないに敵対的なん!?」

咲「安心して園城寺さん。私は清水谷さんのおっぱいにしか興味ないから」

竜華「お、おっぱい!?」

怜「そうか。それを聞いて安心したわ」

竜華「いやいや、安心する場面やあらへんやろ!」

怜「よっしゃ、竜華のおっぱいはくれてやるわ。好きにしてええで」

咲「さっすが園城寺さん、話が分かるぅ」

竜華「な、なな何やこの流れ!!」


照(……園城寺さん助っ人じゃなかった)

咲「さて、それじゃ清水谷さんおっぱい出して」

竜華「ちょ……どうしてそうなるんや! こないな場所や無理やって!」

咲「ああ、おっぱいといっても母乳じゃなくて胸を出してって意味だから……」

竜華「どっちにしたって無理やわ!!」

怜「竜華。たまにはサービス精神も必要やで」

竜華「なんで怜はそっちの味方なん……?」

怜「そら楽しいからや」

竜華「た、楽しいって……アンタなぁ……」

咲「ほらー、私も愉しくなりたいから早く……」

竜華「いやそれいかがわしい意味やろ!」

咲「うん。おっぱいをふにふにして気持ちよくなりたいの」

竜華「うわ……」

咲「はぁ、仕方ないなぁ……」

竜華「た……助かったんか……?」

咲「清水谷さん、ネコ好き?」

竜華「へっ? まあかわいいし好きやけど」

咲「ネコってすり寄るのが好きだよね」

竜華「確かによくすり寄ってくるけど、それがどうしたんや?」

咲「……にゃー♪」スリスリ

竜華「ひっ……な、何するんや!?」

咲「すり寄るのが大好きなネコちゃんだにゃー!」スリスリスリ

竜華「ひゃっ……胸にすり寄るネコなんて聞いたことあらへんわ!」


照(もうやだこの妹……)

咲「竜華ちゃーん♪」フニフニ

竜華「うう……助けてや、怜……」

怜「うん、こないな竜華もありやな」

竜華「ええー……もうほんま勘弁してや……」

咲「そろそろお胸ぺろぺろしたいんだけどにゃー……」

竜華「な、何言うとるんアンタ!?」

怜「ほら、早く胸出さへんと服が汚れてまうで」

竜華「えっ? ええーっ!?」

咲「竜華ちゃんのお胸……」

竜華(うわっ。宮永さん、目が本気やわ……)

竜華(確かに今ここで服を無茶苦茶にされるんは困る……)

竜華(せやけど……ううう……)

竜華「ああもうー! 分かったわ、好きにしぃ!!」ガバッ

咲「わーい♪竜華ママー!」モミモミペロペロ

竜華「はぅっ…… ま、ママって……ネコはどないしたんや?」

咲「知らない。ママ大好きー」チュパチュパ

怜「宮永さん、ええなぁ……ウチも竜華のおっぱい……」ペロペロ

竜華「ひゃっ!? あ、アンタは膝枕だけやなかったんか……んんっ……」

怜「ええやんか、片方余っとるんやし……」チューチューモミモミ

竜華「んうっ、両方同時はアカンて……ああっ……」


照(すばらっ……いやいや何だこの光景は……)

咲「ふぅ……良かったよ、竜華ママ」

怜「良かったで」

竜華「うう……もうお嫁行かれへんわ……」

怜「安心してや、竜華にはウチが居るやろ」

咲「私もにゃー」

竜華「アンタら……って、またネコに戻っとるやないか」

咲「にゃ?」

竜華「はいはいかわいいかわいい」

咲「えへへー♪」

竜華(まったく、敵わんわこの子……)

咲「ねえ園城寺さん、電話番号教えてもらえないかな」

怜「ん、ええけど」

咲「やった! 今度こっちから遊びに行くからね」

竜華「ま、まさかさっきみたいなんをまたやるつもりやないやろな……」

咲「えへへ」

竜華「何やその笑いは!!」


照(むっ、そろそろ仕舞いか……)

照(一足先に戻らないと)トテトテ

照「ただいま……ふぅ」

照「咲め、初対面のはずなのになかなか攻めるじゃないか……」

照「最初はみんなさっきの清水谷さんのような反応なんだろうな」

照「それがいつの間にか風越や永水のように……くっ、何という奴だ……」

照「分かったぞ。お前のそのやり方真似させてもらおう」

照「そうだ、何か言われても引かずに強引に押せば良かったんだ」

照「フッ……早く帰って来い。咲」

咲「ただいまー」

照「おかえり、咲」

咲「……って、どうしてお姉ちゃん上半身裸なの!?」

照「お前を満足させるためさ……ほら」ギュッ

咲「や、やあっ! 離して!」

照「好きなだけ甘えていいぞ」ギューッ

咲「やだっ!!お姉ちゃんやめて!」ジタバタ

照「どうした? お姉ちゃんに甘えたいんだろ?」

咲「やめてってばお姉ちゃん!!そんなお姉ちゃんなんか……嫌いだよ!!」

照「!!」

咲「まさかお姉ちゃんがこんな事するなんて……」

照「さ、咲……?」

咲「お姉ちゃんの事信じてたのに……」グスッ

照「おい……?」

咲「……」

照(参ったな、こういう時どうしたらいい……)


咲「ごめんねお姉ちゃん……」

照「はっ?」

咲「私、お姉ちゃんを追い詰めすぎたみたい」

照「何を言っている……?」

咲「お姉ちゃん最近私を尾行してたでしょ」

照「ば、馬鹿を言うな。どうして私がそんな……」

咲「ううん、分かってるの。分かっててやったの」

照「分かっててやった……?」

咲「うん……ああいう風に甘える姿を見せればお姉ちゃんが困るかなって」

照「見せ付けるためにやってたのか!?」

咲「うん。ただお姉ちゃんを困らせるためだけに」

照「な、何故そんな……」

咲「お姉ちゃんが悪いんだよ。二ヶ月前の事覚えてないの?」

照「二ヶ月前……?」

照(何かあったっけ……)

咲「覚えてないんだね……私が相談したこと……」

照「相談……?」

咲「やっぱり覚えてないんだ。私が胸小さいことで悩んでたの」

照「ああ、そういえばそんな事もあったような」

咲「あの時お姉ちゃん言ったよね。『お前は胸などなくてもいいんだ』って」

照「む……確かに言ったかもしれんが……」

咲「私、傷ついたんだよ……?」

照「そんなことで……いや、そうだったのか。無神経な事を言ってすまなかった」

咲「それで、胸に笑うものは胸に泣くって事でお姉ちゃんを困らせてあげようと思ったの」

照「な、なるほどな」

照「しかし随分と甘えるのに慣れていたようだが……」

咲「まあ、二ヶ月かけて準備したからね」

照「……それは本当に私を困らせるためだったのか?」

咲「えっ……」

照「私には本気で楽しそうに見えたんだが」

咲「そ、それは……ほら、和ちゃんたちのお胸って柔らかくて気持ちいいしつい……」

照「やっぱり楽しんでたんだな……」

咲「えへへ。だって幸せなんだもん……」

照「ふっ」ギュッ

咲「わわっ。な、何?」

照「だったら、実の姉に甘えてもいいんじゃないか?」

咲「お姉ちゃん……」

咲「ごめんねお姉ちゃん……」グスッ

照「泣くな、謝る必要などないさ」

咲「……こんな私を許してくれるの?」

照「許すも何もない。私に非があったのだろう?」

照「私は今安堵しているんだ。咲に嫌われていなかったと分かって……」

咲「そっか……お姉ちゃん大好き……」

照「もうお姉ちゃんいらないなんて言うなよ?」

咲「うん……」

照「分かればいい。よしよし」ナデナデ

咲「えへへ……」

(ピンポーン)

咲「あっ……」

照「誰か来たようだな。少し待ってろ……っと、服を着ないとな」


照「はい」

淡「うわあああ照お姉ちゃぁぁーん!」

照「なっ……淡!? お前どうしてここに……」

淡「みんな酷いんだよ! 家族ごっこはもう辞めようって!」

淡「私たち本当の家族じゃなかったんだあぁぁうわああああん!」

照「お、落ち着け」

咲「……『照お姉ちゃん』ってどういうこと?」

照「!?」

淡「照お姉ちゃん、白糸台に戻ってきてよー」ギューッ

照「は、離せ淡」

咲「あはは、仲良さそうだねお姉ちゃ……照さん……」

照「どうして名前で呼ぶんだ!?」

咲「東京の暮らしに慣れちゃったんだろうし……私の他に妹作っててもおかしくないよね……」

照「いやそれはおかしいだろう!? 冷静に考えろ!」

咲「姉妹水入らずで楽しんでね……ぐすっ……」スタスタ

照「えっ……ど、どこに行くんだ咲!」

咲「奈良の旅館……」

照「奈良!?」

咲(ごめんねお姉ちゃん。でもね……)

咲(私にはまだ食べなきゃならないおもちがあるんだ)トテトテ


照「待ってくれ、咲!!」

淡「照お姉ちゃーん……」


咲(必ず帰ってくるから――)

咲(松実姉妹、それとついでに姫松の愛宕妹さんと上重さんのおもちを食べた後で!)


―完―

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