御坂「……?(誰よアイツ……見ない顔ね……)」(464)

スレ立て代行です

(学園都市 とある公園)

??「いやー、ここが学園都市か。やっと着いたぜ」

自動販売機(バチッ!、ジーガー…、ゴトン)

??「ってーと、とりあえずどこ行きゃいいのかね…お?なんか新年早々自販機にケリ入れてる人が…」

御坂「…」

??「あの人は確か…。おーい!!」

御坂「…?(誰よアイツ…見ない顔ね…)」

??「いやいや、そこにいらっしゃるのは学園三位の能力者、(超電磁砲:レールガン)こと御坂美琴さんではないでしょうか?」

御坂「だったら何よ…サインならお断りよ」

??「いやいや、おれも運がいい。学園に来ていきなり会えるとはねえ…」

御坂「(何よ、ファンか何か?シカトするに限るわね…こういうのは)」

??「いやどうも、おれは詠矢…詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)ってもんだよろしくなー」

御坂「(はいはい無視無視。相手するとロクな事無いわ)」

詠矢「あ、おいおい、どこ行くんだ!(って…会えたはいいがどうするかね…あ、そうだ!)…ちょいと御坂さん」

御坂「…」

詠矢「それ犯罪だろ?」

御坂「…」

詠矢「電流を操作して自動販売機を誤作動させ、金を払わずに商品を手に入れる。普通に窃盗だよな?」

御坂「…」

詠矢「いいのかねえ、学園第三位の能力者とあろう人が、小銭ケチって窃盗なんて」

御坂「…」

詠矢「あんたは強くて、その振る舞いを周囲が容認してるのかも知れないが、こう公然と…」

御坂「うっさいわねぇ!!どうせもいいでしょそんな事!」

詠矢「いや、よくないっしょ。刑法的に」

御坂「だいたい、アンタに何の関係があるのよ!!」

詠矢「俺が関係してようがいまいが、それが犯罪であることは事実」

御坂「(ビキッ…)何よ、喧嘩売ってるワケ?(バチッ)」

詠矢「…まあ、そんな感じかな」

御坂「…いい度胸ねぇ…。じゃあ、お望み通り私の電撃で躍らせてあげるわ(バチッ)」

詠矢「ちょちょ!ちょっと待って!」

御坂「何よ!今更逃げれるとでも思ってんの!?」

詠矢「いや、違う。ちょっと離れただけ。5メートルも有れば十分かな」

御坂「?何言ってんの?私の能力知らないの?」

詠矢「いや、知ってる知ってる。ちゃんと調べてきた。超強力な発電能力だよな?」

御坂「知ってるなら、無駄だってわからない?…もういいわ、死んでなさい!!(バチバチッ)」」

詠矢「大丈夫、空気は絶縁体だ。ここまでは届かない」

御坂「…?(あれ、おかしい、電撃が飛ばない)」

詠矢「ごく近い距離なら、空気中でも放電現象が起こる場合は有るけど、これぐらい離れてればまず大丈夫」

御坂「…!?(あれ、あれ、何度やっても飛ばない!!…電気はちゃんと起きてるのに!)」

詠矢「(お、効果アリ…かな?)」

御坂「…アンタ…なんかやったわね…」

詠矢「多分…ね」

御坂「能力…者…」

詠矢「そうなるかな」

御坂「…なんか、アンタ嫌な雰囲気ね。その軽口、後悔させてあげるわ!!…!!(最大級の電撃を!)」

詠矢「お…電圧を上げてるのかな?それはいい判断だ。空気の絶縁限界を超える約300万V/mが有れば空気中でも電子雪崩が起こって雷を起こすことが出来る。但し!!」

御坂「さっきからゴチャゴチャうるさいわね!!でも…これでっ!!(バチッ!…バリバリ!)

詠矢「空気中に放電された電気は、一番近くにある電気抵抗の少ない物質に向かって流れる。この状況では、恐らく…」

自動販売機「(バチッ!!…ガガ…。プツン)」

御坂「えっ!?電撃が…」

詠矢「窃盗に器物破損が追加…か」

御坂「なによ…これ…どういうこと!?アンタ何したのよ!!」

詠矢「いや…もういいんだ、十分使えることわかったし」

御坂「はあ?」

詠矢「ご協力ありがとうございました。そんじゃまた」

御坂「ちょっと、アンタみたいな得体のしれない奴、このまま逃がすとでも思ってんの?」

詠矢「あ、いやいや、ゴメンゴメン。怒らせたのは謝るからさ…」

御坂「うるさいっ!!電撃が飛ばないならこれよ!!(チャキ)」

詠矢「おっと、そのコインはレールガンですな!。えーっと、どうだっけかな(ポチポチ)」

御坂「…ナニ携帯なんか見てるのよ…」

詠矢「いや、うろ覚えなもんで…。と、電気伝導体の二本のレールの間にこれまた伝道物質を配置し、回路を形成して荷電することよってローレンツ力を発生させて打ち出す…。てことは…レールはどこにあるんだ?」

詠矢「あ、おいおい、どこ行くんだ!(って…会えたはいいがどうするかね…あ、そうだ!)…ちょいと御坂さん」

御坂「…」

詠矢「それ犯罪だろ?」

御坂「…」

詠矢「電流を操作して自動販売機を誤作動させ、金を払わずに商品を手に入れる。普通に窃盗だよな?」

御坂「…」

詠矢「いいのかねえ、学園第三位の能力者とあろう人が、小銭ケチって窃盗なんて」

御坂「…」

詠矢「あんたは強くて、その振る舞いを周囲が容認してるのかも知れないが、こう公然と…」

御坂「うっさいわねぇ!!どうせもいいでしょそんな事!」

御坂「はい?レール?」

詠矢「うん。安定した加速を行う為には、かなり長いレールが必要となる。コインは恐らく鉄をクロムメッキしたものだろうから弾丸としては使えるけど、砲身が無いのが問題だな」

御坂「…空気中の物質をプラズマ化して、加速レールとする…簡単な話よ」

詠矢「…え?空気をプラズマ化…いや、それなら伝導体にはなるけど飛散しちゃうし、空中に固定する方法がないと…」

御坂「関係ないわよ。今までだってそうやって来たし、何も問題ないわ」

詠矢「(ヤベ、居直った。もしかしてヤバイ?)。いや、だからですね…原理が…」

御坂「うるさいっ!!死っねえええええぇぇ!!(ビシュゥゥゥゥ…ン!!!)」

詠矢「どおうわっ!!ヤバイヤバイ、ヤバイってマジで!」

御坂「へえ…上手く避けたわね…(さすがに威力は落としたけど、ホントに上手く避けた…)」

詠矢「(撃ちやがった…。論証が弱かったか?。ってーと、別の切り口が必要だな…)」

御坂「…さあて、アンタの能力、詳しく聞かせてもらいましょうか?それとも…消し炭になりたい?(チャキ)」

詠矢「そういやあ、そろそろ昼時だけど…御坂サン、腹減ってないか?」

御坂「…あんたバカじゃないの?何の関係があるのよそんなこと!!」

詠矢「御坂サンが発電を行っているとして、電気を発生させてるのは体細胞だ。だとすれば、発電のために大量のエネルギーが必要になる。細胞活動のエネルギーは糖。血中の糖だ。空腹時は危険だぞ…」

御坂「…(あれ?なんか、体が…)」

詠矢「急激な血糖値の低下は発作を引き起こす。具体的な症状としては、大量の冷や汗、動悸、振戦、譫妄!!」

御坂「(冷や汗が止まらない…、何で急に…た、立ってられない!)(ガクッ)」

詠矢「いや、いろいろゴメン。えーっと…さっき盗ってたジュース、あ、あったあった。『黒豆サイダー』?。ま、糖度高そうだからこれ飲めば多分回復するよ」

御坂「ちょ…っと…待ちなさ…」

詠矢「んじゃ、失礼しまっす」

白井「お姉さま!!お姉さま!!」

御坂「く…黒子…っ…」

白井「どうなさいましたの!?真っ青ですわよ!!」

御坂「ちょっと…それ…取って…」

白井「(缶ジュース?)は、はい、こちらですの?」

御坂「(プシッ)…(ゴクゴク)」

白井「…(ハラハラ)」

御坂「…ふう、ちょっと落ち着いた…」

白井「どうなされましたの?」

御坂「なんか変な奴に合って…、最初は追っ払ってやろうと思ったんだけど…」

白井「ま、まさか…お姉さまを退けたと?」

御坂「いや、そうじゃないんだけど…。なんかゴチャゴチャうるさい奴でさ、話聞いてるとなんか調子出なくって」

白井「少なくとも、お姉さまから逃げおおせたのは確かなようですわね。何かの能力者…ですの?」

御坂「そうみたい…。はぐらかして、詳しくは分からなかったけど…」

白井「それは見過ごせませんわね…。黒子がたまたま通りかかったからよかったものの…」

御坂「なんか、ヤな感じの奴だったわね。強さは感じないんだけど…なんていうか、掴みどころの無い感じ…」

白井「これは、ジャッジメントとして対応する必要がありますわね。お姉さま、相手の特徴は覚えていらして?」

御坂「うん、それは覚えてる…。黒縁メガネで、眉毛が太くて…」

白井「支部で詳しくお聞きします。移動しましょう」

(ジャッジメント177支部)
初春「(ヨメヤ ソラキ)ですか…。在学者の名簿にはありませんね…(カタカタ)」

白井「しかし、自分から名前を名乗るとは大胆なお方ですわね」

御坂「聞いてもいないのに勝手に名乗ったのよね…。背格好からして、多分高校生ぐらいかなあ…」

初春「ダメです。中等部、高等部含めて検索しましたけどヒットしませんね」

白井「能力者なら、学園のバンクに登録があるはずですのに…まさか偽名?」

御坂「偽名なら、もっと普通の名前にするでしょうし…あ…そういえば」

白井「何か思い出されまして?」

御坂「学園に来ていきなりアタシに会ったって言ってた…もしかして…」

白井「学園都市に初めて来たと…初春!転入者名簿ですわ!」

初春「はい!!(カタカタ)あ、ありました!(詠矢空希 高等部1年)2日前に転入届が受理されたばかりです。また正式に生徒名簿には登録されてなかったみたいですね」

御坂「やっぱり高校生か。えーっとなになに…レベル0、無能力者。ただし学園での正式な測定は未実施…」

白井「外部での簡易検査では、能力は検出されなかったようですわね…」

御坂「なーんか、ますますよくわかんないわね」

白井「なんにせよ、お姉さまに危害を加えたことは事実。捨て置けませんわ…居場所さえ分かれば…」

初春「…あの…」

白井「何ですの?」

初春「転入者名簿に顔写真があります。これを監視カメラの記録と照合すれば…」

白井「足取りが分かりますわ!流石ですわね初春」

初春「はい!ありがとうございます!では早速(カタカタ)、第7学区の、170号カメラの記録と照合できますね…5分前のログです」

白井「そこなら、ここのすぐ近くですわね…。私なら一瞬ですわ」

御坂「じゃあ、アタシも一緒に行くわ。このままじゃ気が済まないし!…って…と…(グラッ)」

白井「いけません!お姉さまはまだ本調子ではありませんわ。ここは黒子が…その殿方をひっ捕らえて、お姉さまの前に引き出して差し上げますわ!」

初春「それに、これはジャッジメントとしてのお仕事でもありますから、御坂さんはどうか休んでて下さい」

御坂「…わかった、今回ばかりはおとなしくしといたほうがよさそうね…」

白井「どうかご自愛下さいませ。では初春、正確な位置をお願いしますわ!」

初春「はい!」

(第7学区 路地裏)
店主「はーい、かけそばお待ちどう!」

詠矢「うーい、どうもー。(これからいろいろ物入りだろうし、節約しとかないとなあ)(ズルズル)」

詠矢「(しかしかけそば一杯じゃ腹膨れねえなあ、おにぎり食っちまうかなあ)(ズルズル)」

詠矢「(でもおにぎりまで買っちゃうと牛丼の方が安いんだよなあ)(ズルズル)」

詠矢「(腹減ってたから勢いで入っちまったけど、やっぱ牛丼屋探せばよかったかなあ)(ズルズル)」

詠矢「ごちそうーさまー」

店主「あい、まいどー」

詠矢「さて…転居申請だっけか。どこ行きゃいいのかな(ポチポチ)」

白井「ちょっと、そこのお方…」

詠矢「あ、はい?俺のことっすか?」

白井「詠矢空希…ご本人に間違いございませんこと?」

詠矢「ええ、まあ…間違いございませんが…どちらさん?(お、結構かわいいじゃねえの。中学生ぐらいかね…)」

白井「ジャッジメントですの!!(ビシッ)」

詠矢「ジャッジメント…えーっと、確か、学園内の治安維持に努める学生で構成された組織…だったかな」

白井「お分かりなら話は早い…。ジャッジメントの権限にてあなたを拘束します!」

詠矢「でーっ!!て、なんですかいきなり容疑者ですか!(流石にいろいろマズかったかな、さっきのは…)」

白井「あなたにはいろいろとお伺いしたいことがあります。素直に同行して頂けませんか?」

詠矢「…」

白井「…お答えなさい!」

詠矢「…俺の容疑は?」

白井「は?」

詠矢「俺が拘束されるのは何の容疑だって聞いてるんだよ」

白井「…いえ、まだ罪状が確定したわけではありませんが…」

詠矢「容疑者じゃなけりゃ、任意同行にすらならねえだろう。不審者への職質レベルなら、従う必要はねえよな…」

白井「いえ、あなたにはお姉さまに危害を加えたという疑いがありますわ!」

詠矢「お姉さま?って…もしかして、えー…あの第三位の人かな」

白井「そうですわ。ご本人の証言から、先ほどお姉さまと関わったのはあなたであることは明白!」

詠矢「そりゃ関わったかもしれんが、俺はあの人には指一本触れてない。因果関係が成立するか?」

白井「何らかの能力を使われたと、ほのめかしていませんのこと?」

詠矢「どうだったかなあ…。それに、俺はレベル0、無能力者だぜ?」

白井「あなた…いろいろと面度なお方ですわね」

詠矢「昔から理屈っぽい性格でねえ。友達いねえんだこれがまた…」

白井「聞いてせんわそんなこと…。いずれにせよ、素直に従わないのはやましいことがある証拠!」

詠矢「いやー、権力側の人間っていつもそう言うんだよねえ」

白井「(イラッ)、では、同行していただけないと?」

詠矢「とりあえず、今の段階では『やだね』だ」

白井「では、力ずくですわね。やはりあなたを野放しには出来ません!!」(シュン!!)

詠矢「(消えた…?)…!!(って、いきなり目の前に!)」

白井「はっ!!(ガシッ)せいっ!!」

詠矢「(襟首と袖を!投げる気か…!!)よっと!(ババッ)」

白井「…!(引き手を切った!!体を裁いて釣り手も!!)…」

詠矢「あぶねえあぶねえ。テレポーターさんか…ちょっと離れさせてもらうぜ」

白井「やりますわね…、わたくしの捕縛術から簡単に逃れるとは…」

詠矢「一応心得はあるもんでね。さあ、どうする?いくら瞬間移動が出来ても、拘束するには俺を組み伏せる必要があるぜ?」

白井「他に方法はいくらでもありますわわ!いきますわ…」

詠矢「あーちょっと待ってくれ!!」

白井「…なんですの」

詠矢「テレポーターってさあ、瞬間的に位置を移動するわけだよな?」

白井「そうですわよ。それが何か?」

詠矢「転移先の物体はどうなるわけ?分子の重複とか起こらないのかな?」

白井「問題ありませんわ。わたくしの転移は…!(そういえばお姉さまがおっしゃってましたわ『ゴチャゴチャうるさい奴』と。まさか能力と何か関係が…)」

詠矢「えーっと、どう問題ないのかな?」

白井「…答える必要はありませんわ。あなたのご質問には何か別の意図を感じます」

詠矢「(あ、気付かれたか…。ま、しょうがない)いやあ、単なる好奇心だけどね」

白井「ご質問なら後で支部でゆっくりと。但し、わたくしの質問に答えて頂くのが先ですけど…(シュン)」

詠矢「…(また消えた、今度はどっから来る!)・・・どあっ!(上かっ!!)」

白井「(よし、倒しましたわ!。後は針で拘束!)…ふっ!!」

詠矢「(な!針!どっからあんなもん、投げる気か!)…!!(ゴロゴロ)」

白井「(キイン、タスタスタス)…!(針が地面に!転がって逃げた…)」

詠矢「…よいしょっと・・・。っとにあぶねえなあ…。手裏剣か。投げた…訳じゃなさそうだな」

白井「…」

詠矢「投げただけじゃ、金属の針がアスファルトに刺さるわけねえ。地面に向かって転移させた、ってとこか」

白井「あなた…何者ですの…」

詠矢「ただの理屈っぽい高校生ですよ」

白井「なら今のはどうやって避けたと…」

詠矢「いや、偶然あんたの手に針が見えたんでね。投げられるかと思ったんで転がって逃げた。そんだけさ」

白井「…たったそれだけのきっかけで…」

詠矢「だが、今のでわかった。テレポーターがどうやって転移先を指定しているか」

白井「…」

詠矢「指定先は『座標』だな。物を投げるのと同じ。『どの位置に向けて転移する』と指定して物体を送り込んでいる。俺が回避行動を取って針を避けられたのが証拠」

白井「それが…どうかしましたの?」

詠矢「座標なら、対抗する方法はある。要するに、狙いを定めさせなければいい(ザッ)常に動きまわってる対象には、当てにくいはず!(ダッ)」

白井「く…!(どういうことですの!針が当たらない…。この状態では細部を狙って拘束するのは無理ですわ!)…仕方ありません!多少の怪我は覚悟して頂きます!」

詠矢「しかも、銃弾や投擲と違って到達点までの軌道がない。つまり!!」

白井「(方向転換する瞬間なら、動きが止まはず。直接体に針を!)…そこっ!!(シュン)」

詠矢「相手に近づいても、流れ弾に当たる心配はねえ!一旦狙いをつけさせれば、距離を詰めた方が有利!!(ザッ)」

白井「(まさか!いきなりこっちに向かって!外したっ!!)…!」

詠矢「どっせい!!上段正拳!!」

白井「…!!(ダメ!演算が間に合わない!!)」

詠矢「…」

白井「…」

詠矢「あー…」

白井「…え?…(寸止め?)」

詠矢「殴るつもりはなかったんだわ。忘れてた…」

白井「…(ガシッ)…(シュン)」

詠矢「のごあっっ!(なんだ、いきなり頭から落ちた!?)」

白井「…(キイン)…(タスタスタス)…ふう、拘束完了ですわ」

詠矢「ひでえなー、転移した対象の方向まで変えられるのか。受け身とれねえっての…」

白井「手こずらせてくれましたわね…」

詠矢「いやー、ゴメン。悪気はなかったんだけどねえ。『論証』に入るとつい熱くなっちまって」

白井「では、おとなしくご同行して頂けると?」

詠矢「はいはい、転がされて、一張羅の袖口を縫い付けられて抵抗する気力もございません。どこなりとお連れ下さい」

白井「最初からおとなしくそうおっしゃっていれば…。とりあえず、あなたの能力、手短にご説明いただけます?」

詠矢「すいません、せめて立って話したいんですがー」

白井「口まで拘束した覚えはございません。そのままでどうぞ」

詠矢「うわ地味にひでえ」

白井「で、なんですの?あなたの能力。お姉さまの言った通り、あなたの言葉を聞いてると調子が狂いましてよ?」

詠矢「ふっふっふ…よくぞ聞いてくれました!。俺の能力はなあ!『論証を立てることによって、相手の能力を変質させる力』だ!」

白井「変質?まさそのような能力が…」

詠矢「いや、今日俺は確信に至った。この能力は間違いなく有る。そして、おれはこの力をこう名付けた。絶対反論(マ ジ レ ス)と!!!!」

白井「最低のネーミングセンスですわね…」

詠矢「あ、ダメかな?でも気に入ってるんで変えねえぞ」

白井「ご自由に…。ですが、もしその力が本当なら、かなり特殊な能力ですわね。まさか、パーソナルリアリティに干渉する力…?」

詠矢「はい?ぱーそなる・・・りありてぃ?

白井「そういえば、学園に来られたばかりでしたわね。ご存知無いでしょう。ご心配無くとも、カリキュラムの中で習いますわ」

詠矢「はあ…ソウナンデスカ。楽しみにしときます…」

白井「では、連行致します。よろしいですの?(ガシッ)」

詠矢「えー、あ、そうか。転移するんですな。接触者と同時転移も可能とは便利ですなあ」

白井「わたくしはレベル4ですのよ。これくらいは朝飯前」

詠矢「あ、でもでもさあ!」

白井「なんですの…行きますわよ…」

詠矢「こうやって、移動するときに、おれだけ上空に転移させられるとさあ」

白井「え?・・・(シュン)」

詠矢「死ぬしかないよなあ…(シュン)」

ジャッジメント177支部)
白井「(シュン)」

初春「あ、おかえりなさい!どうでしたか?」

御坂「結構時間かかったわねえ…、て、黒子1人なの?」

白井「へ?…1人?」

初春「あれ、もしかして取り逃がしちゃったとか…」

白井「あ………」

御坂「…?」

白井「あ…あわあわわわわわわわわ!置いてきてしまいましたわ!!」

初春「置いてきたって…どういうことですか?」

白井「た、確かに接触して転移しましたの!でもわたくしだけが戻ってきたということは!どこかに…」

御坂「まさか、黒子の能力が暴発したっていうの?…え、じゃあ、置いてきたってどこに?」

白井「え…、どこと申されましても…あ!上空ですわ!」

御坂・初春「上空!?」

詠矢「あー、おれ落ちてるなあ…」

詠矢「うわこれどうしょうもなくね?…」

詠矢「…」

詠矢「……つまんねえ人生だったなー……」

おわり

いろいろと申し訳ありませんでした。
次からはSS速報でやります。
お目汚し失礼しました。

絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた

これは、ニュース速報vipに投下された【御坂「……?(誰よアイツ……見ない顔ね……)」】というスレタイで投下されたSSの続きです。
前作はこちらに↓
(注釈)
・禁書のSSです
・オリキャラメインです。勝手に設定した能力者が出ます。
・原作は読んでません。細かい設定はよくわかりません。
・アニメは全話見ました。
・キャラが崩壊してるかも知れませんがご容赦を

では、早速初めさせて頂きます。

絶対反論(マジレス)こと詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)は落ちていた。

それは比喩的表現ではなく、ただ真っ当な「落下」である。

地面まで数秒。その落差を計測する余裕などなかったが、それが殺意を持った高さであることは容易に想像できた。

「……つまんねえ人生だったなー……」

彼の命脈は既に尽きていた…かに見えた。

時間は数秒ほど遡る

打止「おかいものっ!おかいものっ!とミサカはミサカはうれしさのあまりお出かけの目的を連呼してみたり!」

一方「ったく、っせーな…。食料の買出しに行くだけだろーが…」

打止「でも一緒にお出かけはそれだけで楽しいんだよ?なんてミサカはミサカは素直に同意を求めてみたり!」

一方「ケッ…ナニ言ってやがんだ…。いいから静かにしやがれ!」

ショッピングモールに向かう橋の上を歩く少女と、それを追う学園第一位能力者の青年。青白い首筋をもたげて、なんとなく空を見る。

一方「しっかし…腹立つぐれえいい天気だな…あ?」

青年の視界、つまりは上空に何かが写った。そしてそれはすぐに人の形をしていることに気づく。

だが、形より圧倒的に重要なことは、それが自然落下してくるということだ。前を小走りに進む少女の頭上に。狙い済ましたように。

一方「ちょ…なんだアレは!!…あぶねえっっ!!!」

青年は走る。だが杖が必要な足は付いていかず、上半身だけが先行する。半ば飛び掛るような状態で、なんとか少女の頭上に手をかざすことが出来た瞬間、落下物が彼の腕に触れた。

一方「っつ!!…!」

彼の能力「ベクトル変換」が発動する。落下物は水平に弾き飛ばされ、橋の欄干を通り越し、水柱を上げながら水面に叩きつけられた。

打止「ひゃあっ!!とミサカはミサカは驚きを隠せないでいたり・・・」

一方「なンだ……?」

詠矢「(あれ、俺まだ意識あるな)」

詠矢「(なんかものすごい衝撃を感じたんだが)」

詠矢「(感じたってことは生きてるんだよな?)」

詠矢「(そうだ、確か水に落ちたんだ)」

詠矢「(えーっと、つまり今水中にいるわけで)」

詠矢「(…取り合えず浮上しないと死ぬ!)」

詠矢「ぶわっ!」

詠矢「あぶねえ、せっかく命拾いしたのにまた死ぬとこだった!」

一方「なンだテメェは!!自殺ならヨソでヤレやァ!!!!」

詠矢「えー、なんと言うか。事故なんですよ」

一方「ンだぁ?…事故だと?」

詠矢「事情を説明すと簡単なようなややこしいような…」

詠矢「とにかく、助かったよ。あんたも何かの能力者なのかな?」

詠矢「確か俺は橋の上に落下するはずだった」

詠矢「だが気づいたら川に落ちてた」

詠矢「突風が吹いたとかそんなチャチなレベルじゃなく、俺の体は弾き飛ばされてる」

詠矢「なら、やっぱり何かの能力によって助けられたと考えるべきだよな」

詠矢「というわけで、ありがとう。助かったよ」

一方「……なンかゴチャゴチャ回りくどい奴だな」

打止「…(ジー)」

一方「どしたぁ?」

打止「…(オカイモノ)」

一方「アア、そうだったな…」

詠矢「あー、なんか用があるなら行ってくれ。後は自力でなんとかするから」

一方「言われ無くてもそうすらァ…。じゃあな飛び降り野郎…おら、行くぞガキ…(スタスタ)」

打止「…(ペコリ)…(スタスタ)」

詠矢「行っちまったか…」

詠矢「ていうかあの顔どっかで見たことあるような…」

詠矢「…まあいいか、そのうち思い出すだろう」

詠矢「さあて、これからどうするかな」

詠矢「取り合えず位置検索か(ポチポチ)」

詠矢「あ…」

詠矢「完全水没、だよな…。携帯が…電源も入らねえ…」

詠矢「水没じゃ保障対象外だよなあ…。か…金が…」

詠矢「しょうがねえ、適当に地図見ながら歩くか」

詠矢「取り合えず置いてきた荷物を回収しねえとな」

詠矢「さっきのソバ屋どこかな」

詠矢「フロ屋も探さねえとな…(トボトボ)」

詠矢「あ、そうだ、俺は連行される所だったんだよな」

詠矢「嫌疑がかけられてるんなら、ちゃんと出頭しとかないとな…」

詠矢「これ以上ジャッジメントと事を構えるつもりもないし」

詠矢「とはいえ、何処に行ったもんだか…」

詠矢「その辺の人に聞いてわかるかな?」

詠矢「…不審者扱いされるのがオチか」

詠矢「あのツインテールの娘、名前ぐらい聞いとけばよかったな」

詠矢「さあて、どうするかな…」

嘆いたって始まらない。取り合えず俺は歩きながら考えることにした。

都市の案内板を頼りに、どうにか元の場所に戻った俺は荷物を回収することに成功した。

フロでも入りたかったがあいにく銭湯は見つからず、ネットカフェのコインシャワーで体を流すと、
万が一にと持ってきた私服に着替える。
水に落ちたときの打ち身で体のあちこちが軋む。まったく落ち着ける状況ではなかったが、考える
時間だけは十分に確保出来た。

俺は思考に結論を出し、一番近くにある図書館へ向かった。

第七学区 図書館)
白井「探しましたわよ…詠矢さん」

詠矢「お、いいタイミングだねえ。ちょうど一冊読み終わったとこだ」

白井「まるで見つかるのを待ってたかのような口ぶりですわね」

詠矢「そう、その通り。自分で出頭しようと思ったんだけど…」

詠矢「何処に行ったらいいかも分からなくてね」

詠矢「今日最初に会ったときも」

詠矢「俺をピンポイントで見つけてたろ?」

詠矢「だから、そちらさんには何らかの位置検索の方法があると考えた」

白井「変な所には頭が回りますわね…」

白井「確かに、監視カメラの記録であなたの姿を追跡しましたわ」

詠矢「やっぱそうか。ならここで待ってて正解だったな」

詠矢「図書館の中なら監視体制はバッチリだろうし」

詠矢「ついでにいろいろと情報を仕入れられるしな」

白井「ま、ご無事で何より…」

白井「そのご様子ですと、特に危険な場所に転移したわけでもなさそうですわね」

詠矢「それがそうでもなくてさ。気づいたら空中だっんだよ」

詠矢「これがまた結構な高さでさ。マジで死ぬかと思ったぜ」

白井「え…?ではそこからどうやって…」

詠矢「いや、なんか能力者の人が偶然通りかかってさ」

詠矢「多分念動系か何かだと思うんだけど」

詠矢「弾き飛ばして川に落としてくれたんだわ」

白井「たまたま?能力者に助けられたと…?」

詠矢「たまたま。運が良かったってことになるのかな」

詠矢「まあ、どっちかっていうと悪運になるんだろけどね」

白井「そうでしたの…。でも、わたくしもその悪運に感謝しないといけませんわね」

白井「危うく殺人犯になるところでしたわ」

詠矢「まー、基本俺が余計なこと言ったからだからな…以後自重するよ」

白井「そうしていただけると助かります」

(ジャッジメント177支部)
白井「こちらですわ…(ガチャ)」

詠矢「まいどどーも」

御坂「あ…!」

詠矢「あ……」

御坂「アンタ……さっきはよくもやってくれたわね!!(バチッ)」

詠矢「や、やめろって…!だから怒らせたのは謝るからさ…」

御坂「…謝ってすむ問題かしら?…(ビリバチッ)」

白井「お、お姉さま。支部で電撃はちょっと…」

初春「や、やめてください!パソコンが!!」

詠矢「……」

詠矢「……わかった…確かにそうだ。謝ってすむ問題じゃないかもな」

詠矢「俺も腹は括った。御坂サンの気の済むようにしてくれ」

御坂「…え?」

詠矢「まあ、正直俺も、副作用まで誘発出来るとは思わなかった」

詠矢「だが、御坂サンを危険な状態にしたことは事実だ」

詠矢「だから、煮るなり焼くなり、好きにしてくれ」

御坂「…アンタ、いきなり居直るなんてどうゆうつもりよ!」

白井「そんな勝手な言い分が通ると思ってらっしゃいますの!?」

詠矢「どうもこうもねえさ。俺はただ謝りたいだけだ」

詠矢「それでも許されねえってんなら」

詠矢「そっちの気の済むようにしてもらうのが一番いい」

詠矢「俺は一切の抵抗はしない。もちろん『論証』もだ」

御坂「…」

詠矢「…さあ。いいぜ」

御坂「…」

初春「…(ハラハラ)」

白井「…あ、あの…まさか、お姉さま?」

御坂「…」

白井「お姉さま!!」

御坂「…(ガシッ)」

詠矢「(腕を…?)」

御坂「…!(バチッ!!)」

詠矢「ぎゃうぁ(ビクンッ)!!!…ッつつ…」

白井「…!」

初春「…!」

御坂「フン…いいわ、このくらいで許してあげる」

詠矢「このくらいって十分痛いんですけど…(ビクビク)」

御坂「気絶しない程度に抑えといたわよ。アンタには聞きたいことがあるし」

詠矢「それは…ご配慮の程痛み入ります…(ビク)」

詠矢「まあ、これで済ましてもらえるなら安いもんだわな」

詠矢「でもなあ御坂サン」

御坂「……何よ」

詠矢「窃盗はよくねえよな?刑法的に」

御坂「…」

詠矢「一応反省しといたほうがいいんじゃねの?」

白井「窃盗?…なんの話ですの?」

御坂「え?…あ…えっと…」

白井「お姉さま…まさかまた…」

詠矢「また…って…常習犯だったのか?」

御坂「…え…って……、た、たまたま小銭が無くて、ちょっと面倒になったから……つい…」

白井「……」

詠矢「……」

御坂「…悪かったわよ…、もう二度とやらない…」

白井「本当ですの?」

御坂「本当だってば…」

白井「そうおっしゃるなら大目に見ますけど…、常盤台のエースともあろうお方が…浅ましい真似は謹んで下さいまし!」

御坂「だから、やらないって言ってるじゃない!もう…」

詠矢「えーっと…、まあ、ジャッジメントの人が大目に見るってんだから、俺がこれ以上何も言うことはねえな」

詠矢「じゃあ、この話は終わりってことで…」

白井「そうですわね…では、本題に移りましょうか」

白井「改めて自己紹介ですわ。わたくしはジャッジメントの白井黒子と申します。詠矢さん、あなたにいくつかお聞きしたいことがあります」

詠矢「なんなりと…。答えられることは答えるぜ」

白井「では、まずあなたの能力について…」

詠矢「名前は絶対反論(マジレス)…。能力者に対して、論証を立てることによってその能力を変質させる…」

詠矢「さっき説明した通りだね」

白井「もう少し詳しくお願いします」

詠矢「っても…。俺にもよくわかってない部分も多いんだけどな」

詠矢「お二人さんと手合わせしたことで、かなり理解出来た」

御坂「…ていうと?」

詠矢「論証が完全じゃなくても、変質は発生する」

詠矢「ハッタリでも何でも構わない。相手が俺の言うことをある程度認めた時点で、能力が発動するみたいだな」

御坂「でも私の場合、電撃が撃てないって認めた訳じゃないわよ?」

詠矢「まあ、その辺は度合いの問題でさ」

詠矢「完全に認めなくても、対象の心の中『あれ、そうだっけ?』ってレベルのわずかな引っかかりでも作れれば」
詠矢「変質は一定の効果を生む」

白井「…確かに、わたくしもあなたの言葉を聞いてから転移の精度が落ちましたわ」

詠矢「どっかで俺の言葉が引っかかって、能力の精度が落ちたんだろう」

白井「…厄介な能力ですわね…。やはり、パーソナルリアリティに干渉する力…」

詠矢「いや、それはどうかな?」

詠矢「さっき図書館で一通りのことは調べたんだけど」

詠矢「能力者ってのは、パーソナルリアリティ…『自分だけの現実』を観測して」

詠矢「物理的には起こり得ない超常現象を引き起こす…だっけか?」

白井「そうですわ。学園の能力者は全て個別の現実を持っています」

白井「その現実は能力者によって千差万別…」

詠矢「俺はついさっきまでそんなことは知りもしなかった」

詠矢「そんな状態で、いきなり干渉する力を得るってのもねえ…」

詠矢「ただ言葉による暗示によって、能力を出させないようにしてるのかもしれないし」

詠矢「解釈としてはどうとでも取れるわな」

御坂「何よあんた。人の能力についてはどうのこうの文句付けるくせに」

御坂「自分の能力は全然適当じゃない」

詠矢「いいんだよ、俺は適当で」

詠矢「同じ能力を持った奴が表れない限り、俺の能力が『論証』される事は無いわけだからな」

白井「なんて自分勝手な…」

詠矢「パーソナルリアリティなんてそもそも自分勝手なもんだ」

詠矢「自分の思いだけで、物理法則だって簡単に捻じ曲げちまうんだからな」

御坂「そういっちゃえばそうだけどさ…なんか釈然としないわね…」

詠矢「ま、能力についてはこれぐらいだな。俺だって知らないことは話せない」

到着→「いやー、ここが学園都市か。やっと着いたぜ」
挨拶→「いやどうも、おれは詠矢…詠矢空希(ヨメヤ ソラキ)ってもんだよろしくなー」
拒否→「だったら何よ…サインならお断りよ」
     「とりあえず、今の段階では『やだね』だ」
無視→「(はいはい無視無視。相手するとロクな事無いわ)」
疑問→「いいのかねえ、学園第三位の能力者とあろう人が、小銭ケチって窃盗なんて」
否定→「いや、よくないっしょ。刑法的に」
確認→「(お、効果アリ…かな?)」
感謝→「ご協力ありがとうございました。そんじゃまた」
謝罪→「あ、いやいや、ゴメンゴメン。怒らせたのは謝るからさ…」
     「いやー、ゴメン。悪気はなかったんだけどねえ。『論証』に入るとつい熱くなっちまって」
検索→「おっと、そのコインはレールガンですな!。えーっと、どうだっけかな(ポチポチ)」
危機→「どおうわっ!!ヤバイヤバイ、ヤバイってマジで!」
転換→「(撃ちやがった…。論証が弱かったか?。ってーと、別の切り口が必要だな…)」
離脱→「んじゃ、失礼しまっす」
蕎麦→「はーい、かけそばお待ちどう!」
節約→「うーい、どうもー。(これからいろいろ物入りだろうし、節約しとかないとなあ)(ズルズル)」
ロリ→「ええ、まあ…間違いございませんが…どちらさん?(お、結構かわいいじゃねえの。中学生ぐらいかね…)」
ぼっち→「昔から理屈っぽい性格でねえ。友達いねえんだこれがまた…」
反体制→「いやー、権力側の人間っていつもそう言うんだよねえ」
避難→「あぶねえあぶねえ。テレポーターさんか…ちょっと離れさせてもらうぜ」
偶然→「いや、偶然あんたの手に針が見えたんでね。投げられるかと思ったんで転がって逃げた。そんだけさ」
攻撃→「どっせい!!上段正拳!!」
忘却→「殴るつもりはなかったんだわ。忘れてた…」
確信→「いや、今日俺は確信に至った。この能力は間違いなく有る。そして、おれはこの力をこう名付けた。絶対反論(マ ジ レ ス)と!!!!」
最低→「最低のネーミングセンスですわね…」
待望→「はあ…ソウナンデスカ。楽しみにしときます…」
死亡→「死ぬしかないよなあ…(シュン)」
諦観→「うわこれどうしょうもなくね?…」
絶望→「……つまんねえ人生だったなー……」

詠矢「他に何か質問あるかい?」

白井「一通り能力に関しては理解できましたわ。ではお言葉に甘えて、もう一つ…」

詠矢「どうぞ」

白井「学園都市に来られた目的は?」

詠矢「まず第一に、自分の能力をちゃんと確かめる為」

詠矢「さっき説明した通り、俺の能力は能力者がいないと確かめようが無いんでね」

詠矢「んで次に、この能力で出来る事を探すため」

詠矢「以上二点です」

白井「意外と真っ当な理由ですわね…」

詠矢「そんなもんだよ。別に野心とか野望とかねえし…」

御坂「その割には、いきなり突っかかって来たわね…」

詠矢「いや、だからアレはゴメンって。『マジレス』を試すには、能力者と戦うしかなかったもんで…」

詠矢「その辺は白井サンも改めて謝るよ」

白井「その話はもうよろしいですわ。こちらも少し強引過ぎましたし…」

御坂「でもさあ、あんたどうやって自分の能力に気づいたの?」

御坂「能力者に会わないと解りようが無いじゃない」

詠矢「あ、それ説明してなかったな。なかなか鋭いね御坂サン」

詠矢「実は俺、能力者に会ったのは御坂さんが初めてじゃないんだ」

詠矢「俺の近所に、学園都市で能力開発してた奴がいてね」

白井「まあ、どちら様ですの?」

詠矢「白井サンも知らないような低レベル能力者らしいんだけどね」

詠矢「で、そいつが帰省で家に帰って来た時に、なんかつまんないことで言い合いになってさ」

詠矢「話の流れで、相手の能力を変質させちまったんだよ…」

御坂「それで自分の能力に気づいたわけね」

詠矢「そうなんだ。変質はすぐに収まったんだけど、もしかしたらって思ってね」

詠矢「で、ここに来た目的、につながる訳ですよ」

白井「一応、話の筋は通ってますわね」

詠矢「信じるか信じないかはそちらさんの自由だけどね。嘘は言ってねえよ」

詠矢「さて、尋問は以上かな?終わりなら…帰らせてもらっていいかい?」

白井「そうですわね…事情聴取はこれぐらいですわね…」

白井「初春、調書の方はよろしいですの?」

初春「はい、バッチリです…(カタカタ)」

詠矢「へえ、そっちの娘、初春サンっていうのか」

詠矢「俺は詠矢空希ってもんだ。よろしくなー」

初春「あ、はい…どもです…(ペコリ)」

白井「では、今日はこれでお引取り頂いて結構です。但し!」

白井「次に出頭をお願いすることがあったら、素直に従うように」

詠矢「へいへい」

詠矢「じゃ、部屋に荷物が届くころなんで」

詠矢「そろそろ帰らせてもらうわ。んじゃ…あっと、白井サン」

白井「なんですの?」

詠矢「俺にも一つだけ聞きたいことがあるんだけどさ、いいかな?」

白井「答えられることなら答えますわ」

詠矢「白井サンの能力。射程はどれくらいなんだい?」

白井「…お答えするのは少し躊躇しますわね」

詠矢「俺のことを信用出来ないのも無理は無いと思うが…」

詠矢「どうしても確認したいことがあってね。頼むよ」

白井「ま、よろしいですわ。わたくしの空間移動の射程は最大81.5m…」

詠矢「当然、直線距離だよな…。なるほど…81.5mか…」

白井「なんですの?」

詠矢「いや、まだアレだな…。話すにはまだ立証が足りないかな…」

白井「…」

詠矢「んじゃ、皆さんまたなー」

御坂「またって…もう会いたくないんだけど…」

詠矢「まあ、そう言いなさんな。縁があればまた会うさ」

詠矢「そんじゃまた」

佐天「(ガチャ)やっほー、こんにちわー。遊びに来たよー!」

詠矢「…」

御坂「…」

白井「…」

初春「…」

佐天「…」

佐天「(え…何この空気…)」

初春「…あ…佐天さん…こんにちわ…」

佐天「うん…こんちわ…初春」

詠矢「…んじゃ、入れ違いで失礼するわ」

佐天「えっと…あなた…は…?」

詠矢「容疑者だよ…(ニヤリ)」

佐天「…へ?」

詠矢「…」

佐天「…?(行っちゃった)」

佐天「初春、今の人は?」

初春「ちょっと、事情を聞いていた人…ですね。なんか特殊な能力者みたいで…」

佐天「へえ…能力者…なんだ」

初春「レベルは0みたいなんですけど」

佐天「…ふーん…」

白井「……」

白井「本当レベル0なのかどうかは、本格的な検査を待つ必要がありますけど…」

御坂「どうしたの黒子?さっきからなんか考えてるけど・・・」

白井「あの方がわたくしに聞いたこと、少し気がかりですわね」

御坂「黒子の能力の射程の話?」

白井「ええ、なぜあの情報が必要だったのか…。何も裏が無ければよろしいのですが」

御坂「さあ…何考えてるわかんないヤツだし。確かに気にはなるわね」

白井「…本当に、何も無ければいいのですが…」

(学生寮 自室)
詠矢「ふう、荷解きはこんなもんかな」

詠矢「やっぱ荷物は少なめにして正解だな」

詠矢「しかし学生寮って言うから、もっとみすぼらしい部屋を覚悟してたんだが」

詠矢「なかなかどうして、立派なモンじゃねえの」

詠矢「ベットもでかいしな…よっと(ゴロン)」

詠矢「(しかし、初日からいろいろあったなあ…)」

詠矢「(流石にちょっと疲れたかな…)」

詠矢「(考えることも増えたしな)」

詠矢「……」

詠矢「(白井サンの転移の射程は81.5m…)」

詠矢「(俺が飛ばされた橋の上は、それよりはるかに離れた場所だった)」

詠矢「(このことが何を意味するのか…)」

詠矢「(俺が、絶対反論の定義を)」

詠矢「(能力の『変質』だとあえて言った理由)」

詠矢「(ある一点の可能性を考えて、だったが・・・)」

詠矢「(まだ立証する根拠が足りないな)」

詠矢「(だが、もしかすると、もしかするかも知れんねえ…)」

詠矢「(まあ、いいや。また今度考えよう)」

詠矢「(ねむ…)」

詠矢「……」

詠矢「……」

詠矢「ん…」

詠矢「あれ…?寝ちまったのか?」

詠矢「うわ、もうこんな時間じゃねえか…」

詠矢「今日中に携帯を変え行くつもりだったのに」

詠矢「まあ、いいか。明日にすれば…」

詠矢「しかし…腹減ったな…」

詠矢「時間も時間だし当然か」

詠矢「今からなんか作るのも面倒だな…」

詠矢「コンビニでも行くか…」

店員「ありがとうございましたー」
詠矢「やっぱコンビニ来ると高く付くなあ」
詠矢「安いスーパー探して、ちゃんと自炊しねえとな」
詠矢「あー腹減った…先に唐翌揚げ食っちまうか(ムグ)」
詠矢「(モグモグ)…」
詠矢「(モグ)…あれ?」
詠矢「寮はどっちだっけか?」

詠矢「えーっと…」

詠矢「うわ…完全に迷っちまったな…」

詠矢「携帯無いといろいろ面倒だなー」

??「ハァ…ハァ…くそっ!!」

詠矢「…?なんか人の声が…?誰かいるのか?」

??「うわっ!…(ドサッ)」

詠矢「?(路地から人か…)。おい、アンタ大丈夫か!?」

??「来るな!!巻き込まれるぞ!!」

詠矢「巻き込むって何の話だよ…ってなんだ、あちこち怪我してるし」

詠矢「これは…火傷か?…まあとりあえず病院行こう。肩貸すぜ…よいしょっと」

??「マズイ追いつかれたか!?。とにかく逃げないと!」

詠矢「へ?なんかヤバイの?…あれ…なんか…熱い?」

??「伏せろ!!」

詠矢「…!!!」

路地の奥から、空間を嘗め尽くすように赤い波が近づいてくる。それは猛烈な熱を伴った炎だ。

詠矢「…!お、おい。なんだありゃ!」

??「くそっ!!(キュイーン!!)」

詠矢「なっ!炎が…消えた!?」

??「……」

詠矢「…こりゃあんたの言うとおり、逃げるのが正解かね」

詠矢「とりあえず…そうだな、あっちのビルの影にでも隠れよう」

詠矢「上手くいけばやり過ごせるかも知れねえ」

??「いや、あいつらの狙いは俺なんだ。通りすがりの人を巻き込むわけにはいかない」

詠矢「…面白いじゃねえの。そんな台詞、リアルで聞けるとは思わなかったぜ」

詠矢「というわけで、ちょいと関わらせてもらうぜ?」

??「え?って…あんた、何考えてんだって…おい!!」

詠矢「はいそうと決まったらとっとと走る!!」

詠矢「…ふう…少し落ち着いたか…」

詠矢「ここは路地からも死角になってる。そうそうは見つからないだろう」

??「…あんた…どうゆうつもりだ…」

詠矢「面白そうだから関わらせてくれって、さっき言わなかったか?」

??「面白くなんかねえよ!これは冗談で踏み込んでいい世界じゃない」

??「相手はこっちの命なんかなんとも思ってないんだ」

詠矢「生きるか死ぬかってんなら、アンタも同じだろ?それを解った上で、俺だけを逃がそうとした」

??「……」

詠矢「そんな人を、見捨てて逃げたくはねえな」

??「…あんた…」

詠矢「そういうこった。ま、数が多い方が生存確率も上がるぜ」

詠矢「とりあえず、情報を整理しようか」

詠矢「まずは自己紹介からだな。俺は詠矢、詠矢空希ってもんだ…よろしくな」

??「…俺は上条…当麻…だ。よろしく」

詠矢「上条サンねえ…了解」

詠矢「で、順番に行こう。まずはさっきの炎だが…」

詠矢「火炎放射器って訳でも…なさそうだな…」

上条「ああ、そうだ。あれはそんなもんじゃない」

詠矢「じゃあ、やっぱ発火系の能力者かな?」

上条「いや、それも違うんだ。あれは『魔術』だ」

詠矢「…『魔術』!?…って要するに『魔法』のことなのか?」

詠矢「そんなもん実在するのかよ」

上条「ああ、実在する。科学とはまったく概念の違う力だ」

詠矢「はー…またいきなりな話だな。流石の俺も思考が止まるわ…」

詠矢「まあいい。今そこに突っ込むのは時間の無駄だ。丸呑みにするとしよう」

上条「俺も魔術に関してはあんまり詳しい訳じゃ無いんだ。そうしてくれると助かる」

詠矢「お互い、話が早くていいな。それともう一つ、気になることがな…」

上条「言いたいことは大体わかる。やっぱ説明しといたほうがいいか…」

詠矢「じゃあ、あの消えた炎、やっぱりあんたの『力』なのか?」

上条「俺はレベル0の無能力者だ。ただ…」

上条「この右手には、あらゆる異能を打ち消す力が宿ってるんだ」

詠矢「打ち消すって…能力者の能力もか?」

上条「そうだ。『あらゆる異能』ってのは、魔術も能力も含んでる」

上条「この右手で触れさえすれば、全て打ち消すことが出来ちまうんだ」

詠矢「はー、そりゃまた…。なんとも問答無用な能力だな」

詠矢「ま、おかげで命拾いしたわけなんだが…」

詠矢「(右手がどうやって異能の力を見分けてるのか)」

詠矢「(触れる、とは言っても、厳密な効果範囲は何処から何処までなのか)」

詠矢「(なんとも『論証』しがいのありそうな能力だねえ…)」

上条「じゃあ、俺も聞いていいか、えっと…」

詠矢「俺のことは詠矢でいい」

上条「そっか。じゃあ詠矢、お前こそ何者なんだ?」

上条「この状況で、まるで緊張感もねえ。それどころか楽しんでるように見える」

上条「まだわかってねえんじゃないのか?相手は本気なんだぞ…」

詠矢「こんなことは初体験でね。まだ臨場感が足りないのは事実。だが、状況は理解してるつもりだ」

詠矢「それとな、俺にとって知識と経験はそのまま力になる」

詠矢「誰だって、成長を実感してるときは楽しいもんだろ?」

上条「…どういうことだ…全然わかんねえよ」

詠矢「そらそうか。俺の能力説明してねえもんな」

詠矢「俺も能力者だ。が、上条サンと同じレベル0。能力の名は絶対反論(マジレス)」

詠矢「能力に対して論証を…」

詠矢の言葉をさえぎるように、空中に次々と火の玉が浮かぶ。その数は、あっと言う間に目で追える限界を超えた。

上条「くそっ!もう見つかったか!」

詠矢「なんだ、これ…これが敵の攻撃か?」

上条「そうだ、コイツがヤバイんだ…逃げるぞ!!」

詠矢「いかにも襲ってきそうだしねえ…おうさ!」

火の玉は躊躇無く彼らに襲い掛かり、次々と炸裂する。

詠矢「うおっ!!爆発とかシャレになってねえぞ!」

上条「だからヤベエつったろ!!」

詠矢「(今のところ逃げ回ってれば何とかなるが、この手数、いずれ追い詰められるな)」

詠矢「なあ上条サン、敵の数は何人かわかるか?」

上条「多分、四~五人、そのうち一人がこの魔術を使ってる魔術師だ」

詠矢「よし、大した数じゃねえな。ならこっちから攻めに出よう」

上条「そりゃ俺だってそうしたいけど…。逃げるので精一杯だろ!!」

詠矢「確かにまあ…うおっ!!(ドドドドドッ)」

上条「詠矢!俺の後ろに!!」

詠矢「たのむ!!」

上条「こなくそっ!!(キュイーン)大丈夫か!」

詠矢「…いや、助かったぜ。ありがとさん」

詠矢「しかし…このままじゃジリ貧だ。どうしたもんか…」

上条「なんか手があるのか?詠矢」


詠矢「…上条サン。敵の人数が解ってるってことは、一旦相手と接触したんだよな?」

上条「ああ、攻撃が始まってからしばらくして、何人かに囲まれたんだ」

上条「その中の一人が、炎の魔術を撃ってきて…」

詠矢「なるほど…つまり。奴らには接触する必要があったってことか…」

詠矢「さっきからのこの火球の攻撃、散発的過ぎると思ってたんだ」

上条「この攻撃は奴らの決め手にはならないってことか」

上条「実際、逃げ回ってればなんとかなるわけだからな」

詠矢「そう、その通り。これは敵を追い詰める手段に過ぎない」

詠矢「逆に言えば、こっちが消耗する前に、やっぱり打って出る必要があるな」

詠矢「…」

上条「なんだよ、急に黙って」

詠矢「…上条サン、酷いこと言っていいか?」

上条「なんだ…?」

詠矢「囮になってくれ」

上条「…はい?」

(空き地)
路地を抜けた奥にある少し開けた場所。鉄骨が組み上がっただけの建設中のビルと、その資材が並べられている。
その中央に一人立つ青年、上条当麻である。

上条「…さあて」

上条「さあ、魔術師、もう弾切れか!?。俺はここにいるぞ!!」

??「……」

影からにじみ出るように現れる5体の人影。それは、ちょうど星形になるように上条の周囲を取り囲む。

魔術師「ついに観念したか。上条当麻」

上条「あきらめてなんかいねえよ。ちょっと追いかけっこに飽きただけだ!」

魔術師「逃げるのをやめたのなら同じこと…。生きて帰れると思うなよ」

上条「やっぱりそうか…」

魔術師「…ん?」

上条「俺を殺したいのなら、さっきの魔術でやればいい」

上条「わざわざ姿を見せたってのは、そうする理由があるからだ」

魔術師「ハッ、何を言うかと思えばその程度の事か。それがわかったとろで何になる」

魔術師「どの道お前の命が尽きることには変わりはないわ!」

上条「どうかな…お前に俺が倒せるか?」

上条「その炎じゃじゃあステイルの足元にも及ばないぜ!」

魔術師「あのイギリスの魔術師か…。結構、私が劣るというのなら…逃げおおせてみることだな!」

魔術師「……」

魔術師が詠唱を始めると、周囲の兵らしき者が、懐から得物を取り出す。

兵A「…(シャキン)」

兵B「…(シャキン)」

兵C「…(シャキン)」

兵D「…(シャキン)」

上条「(なんだ、武器が変形して伸びた?3mぐらいないか?どうするつもりだ…)」

魔術師「[ピーーー]っ!!」

上条「うわっ!!」

魔術師の両手から放たれる一条の炎。それは扇状に広がり、あっという間に上条を包み込む。

上条「…!!(キュイーン)…」

上条「(くそっ!。この炎!!。確かに威力はステイル程じゃないが…」

上条「(効果範囲が広すぎる…。右手じゃ消しきれねえ!!)」

兵A「…(ザッ)」

兵B「…(ザッ)」

兵C「…(ザッ)」

兵D「…(ザッ)」

上条「(距離を…詰めてきやがる…。ダメだ、身動き取れねえ!!)」

詠矢「(ザッザッザッザッ)うりゃあ!!中段蹴りぃ!!」

兵B「…なっ!!」

何処からとも無く走ってきた詠矢の蹴りが、振り返ろうとした兵の脇腹に見事に命中した。


兵B「…ぐあっ!!…ゲフッ…(ガクッ)」

詠矢「よし、一人無力化…」

魔術師「なんだと!!伏兵か!」

上条「(…魔術が弱まった…集中が途切れたか?今なら抜けられる!)」

上条「…っ!!(ゴロゴロ)」

魔術師「しまっ…た!!」

詠矢「上条サン、大丈夫か!」

上条「ああ、おかげさんでなんとか…」

上条「あと、解ったぜ、奴らの狙いが…」

詠矢「狙い…ってーと?」

上条「魔術の攻撃は、俺を押さえ込むための手段でしかない」

上条「火球や炎で動きを封じて、あの長い武器で範囲外から攻撃するつもりだ」

詠矢「なるほど…魔術では上条サンを倒せないと初めから解ってたんだな…」

詠矢「あの武器…ハルバードってヤツかな…。しかしセコイ作戦だなあ」

魔術師「……」

詠矢「そこまで解れば話は早い。要するにだ」

詠矢「周りのザコを倒せば、その作戦は成立しなくなる!」

詠矢「上条サン、あの偉そうなヤツは後回しだ。あと一人引き受けるから、残りは頼むぜ!(ザッ)」

上条「勝手にノルマ決めるなよ!まったく…(ザッ)」

上条「さあて…悪いが、しばらく眠っててもらうぜ」

兵D「…(ガシャン)」

上条「…(武器を放した…まさか!)」

兵D「…!(ヒュッ)」

上条「とっ…とととっ!!(ザザッ)」

兵D「なにっ!!避けた、だと!?」

上条「懐から短刀か…あっぶねえ。もうちょっと気づくのが遅かったらヤバかったな」

兵D「貴様、いったい…!」

上条「黙ってろ!(ドカッ)」

兵D「…!!(ゴロゴロゴロ)…(ガクッ)」

詠矢「(うわ、吹っ飛んだよ。すげえパンチ力だな…)」

詠矢「さあて、こっちも負けてられねえな」

魔術師「やらせんぞ…」

魔術師「やらそんぞーーーーー!!!(ゴオッ)」

上条「うわっ!!!」

詠矢「また炎か!。上条サン!!」

上条「…!!!(キュイーン)…」

詠矢「(ダメだ、炎の効果範囲が広すぎて消しきれてねえ)」

詠矢「(あれが有る限り、まだ相手の有利は覆らない…)」

詠矢「(イチかバチか、やってみるか…)」

詠矢「おい、そこの魔法使い!!」

魔術師「…私は魔術師だ!」

詠矢「この際どっちでもいい!」

詠矢「魔術だか何だか知らないが、炎を起こしてることには変わりないな」

詠矢「それだけ膨大な火を起こすには、それ相応の可燃物が必要だ」

詠矢「しかもこれだけの範囲に広がるということは」

詠矢「可燃物は気体か液体のはず」

詠矢「見たところ、あんたはボンベもタンクも持ってるようには見えない」

詠矢「そんな大量の可燃物、どっから調達してるだ?」

魔術師「…ハハッ…」

魔術師「ハーッハハハハ!!愚か者め!!」

詠矢「…なんだ?」

魔術師「これは魔術!可燃物など必要ないわ!!」

魔術師「独自の原理によって生み出される力だ。科学側の前提など関係あるものか!!」

詠矢「な…なんだと!そんなインチキがあるか!」

詠矢「可燃物が必要ねえなんて…じゃあその炎は『燃焼』じゃ無いってのか!」

魔術師「同じ事を何度も言わせるな!。これは純粋な『魔術』の炎だ!」

詠矢「(くそっ!。やっぱりダメか。魔術を論証するには情報が少なすぎる)」

詠矢「(最初の計画通りザコを倒して…)」

魔術師「おっと…お前にも動かれては困るのでな…(スッ)」

詠矢「…!!炎と火球を同時に!」

詠矢「うわっ!!(ドカドカドカッ)」

上条「詠矢ー!!」

詠矢「(ぐっ…やべえ…逃げ回るのにも限界が…)」

詠矢「(諦めるな、諦めるなよ…何か手があるはずだ…)」

魔術師「さあて、仕上げといこうか…」

魔術師「上条当麻…。貴様の首と右腕、貰い受ける」

兵A「…(ジャキン)」

兵C「…(ジャキン)」

詠矢「上条サン!!」

魔術師「…死して我がローマ正教の礎となれ!!」

詠矢「…」

詠矢「…あ?」

詠矢「…お前今なんて言った?」

魔術師「なんだと…?」

詠矢「ローマ正教っていやあ、十字教の一派だよな?」

詠矢「あんたら宗教関係者なのか?」

詠矢「っていうか、風体からして僧侶だよな?」

魔術師「…?」

詠矢「僧侶がなんで炎なんか撃ってるんだよ」

詠矢「僧侶が使えるのは回復と補助、あと風系の攻撃呪文だけだろうが」

詠矢「世間の常識ひっくり返してんじゃねえよ…」

魔術師「お前は何を言ってるんだ」

詠矢「それに…神ってのは慈愛と許しの象徴だよな?特に一神教はそうだ」

詠矢「その神の使徒である聖職者が、人を傷つけることしか出来ない攻撃魔法を」

詠矢「平気で使ってるんじゃねえよ」

魔術師「な…なんだと…。これは、その教えを守るために」

魔術師「神が我々に与えて下さった力だ!!」

詠矢「じゃあ何か?おまえんとこの教義には」

詠矢「『目的のためには手段は選ぶな』とか」

詠矢「『邪魔なヤツは抹殺してかまわない』とか」

詠矢「書いてあるってのか?」

詠矢「だとしたらその宗教ってのは」

詠矢「どんでもねえ邪教だなあ!!」

魔術師「な、何を言う!ローマ正教の教義は…!!?」

魔術師「(…なんだ、魔術が…安定しない!!。炎が…消え…る…!)

詠矢「…!?(ちょっとまて、今のはキレてぶちまけただけだぞ)」

詠矢「(これでも効果あるのかよ!?)」

上条「炎が…?弱く…」

詠矢「上条サン!なんだかよくわからんが今だ!」

上条「わかった!!…(ザッ)」

魔術師「あ…慌てるな。詠唱の再構築を…」

上条「遅え!!」

魔術師「…く…そっ…炎よ!(ゴオ)」

上条「この程度…かき消せる!(キュイーン)…弾けろっ!(ドカッ)」

魔術師「ぐふぁぁぁっ!!!(ゴロゴロゴロ)……(ガクッ)」


上条「はあっ…はあっ…」

詠矢「…やったな…上条サン」

詠矢「さあて…残りはあんたらか?」

兵A「…(ガシャン)…(ササッ)」

兵C「…(ガシャン)…(ササッ)」

上条「逃げたか…」

詠矢「正直、助かるな…これ以上はキツイわ…」

上条「休んでるヒマねえぞ。結構な騒ぎになっちまった」

上条「すぐにアンチスキルが来る」

詠矢「なるほど…こっちも退散したほうがよさそうだな」

上条「詠矢、お前も寮生か?」

詠矢「ああ。そうだそうだ、ちょうど迷ってたところなんだわ」

上条「よし、じゃあとりあえず寮まで戻ろう。話はそれからだ」

詠矢「うい、賛成。案内してくんなー」

以上となります。

すいません、禁止ワードに気づ来ませんでした。
当該箇所は「燃えろっ!!」にしておいて下さい。

それではまた。

おはようございます。
何とか書きあがりました。
投下します。

(窓のないビル)
理事長「わざわざ君のほうから来るとは珍しい」

理事長「なんの用だね?」

土御門「ちょっと確かめたいことがあってな」

土御門「単刀直入に言おう。ヤツの能力…どう見る?」

理事長「新たに発見された原石のことかね?」

理事長「…君こそ、既に対象に接触したようだね」

土御門「ああ、ちょっと前になるがな」

土御門「まさかカミやんに先を越されてるとは思わなかったが…」

土御門「話によれば、魔術にも効果を発揮したらしいぜ?」

理事長「こちらでも情報は掴んでいるさ」

理事長「既に、レベル5である御坂美琴の能力を抑えた実績も有る」

土御門「へえ…あのレールガンをねえ…」

土御門「そこまで知ってて放置してるってのは…何か考えでもあるのか?」

理事長「いや…わからんさ」

土御門「なに?」

理事長「私とて、全てを知っているわけではない。全てを予想できるわけでもない」

理事長「特に彼の能力は未知数で不確定だ。どんな可能性を持っているかもわからない」

理事長「今の段階で、下手に介入するわけにもいかないのでね…」

土御門「だからといって、このままってわけにもいかんだろ?」

理事長「それはわかっている」

理事長「今まで通り監視を続ける。必要とあればこちらからも動く」

土御門「開発部の方で不穏な動きも出ている」

土御門「手遅れにならなきゃいいがな…」

とある街角)
佐天「…」

詠矢「…(さて)」

佐天「…」

詠矢「…(歩いてはいるが)」

佐天「…」

詠矢「…(話すことねえなあ)」

佐天「…」

詠矢「…(空気が重い)」

佐天「…」

詠矢「…(どうしたもんか)」

佐天「…あの」

詠矢「…はいっ!?(ビクッ)」

佐天「そこ左です…」

                /ミミミミヽヽミミヽヽノノノノノム、

                  lミミミ>―――‐、_, ―、≦ミミi!!
                  lミ彡:ヽ   =ー-= ̄ヽリト
                 l/:;厂  , ==、_` ̄´ __, -、L!
                / ̄ヽ:ノ   , -、`  ´,-、  {、  お! 虚 カ ス ゥ ー !(笑)
                 l    {     /・\ /・\  レ′
               ヽ  l      ̄     ̄   !
             / ヽノl       (_人_)  l
          / ̄:::::::::::l l       \   |  人__
         /::::::::::::\:::::\\        \__| /::::::::::::::\_
        /::::::::::::::::::::::::\ri:\\          /:::::::::::::::::::::::::::::\

じゃあちょっと経緯書くわ

俺は今、中学3年の15歳です
2ちゃんねるを見るのが好きなのだが、特になんJのまとめブログが好きだった。
だからなんJ用語をバンバン学校でも使ってたんだ
特に俺が好きなのが『○○ンゴwwwwwwww』というネタだ
最初は失敗した奴に『片岡ンゴwwwww』とか『田中ンゴwwwwwwww』って感じで言いまくってた
でも、俺は知らなかったんです

それが、悪口だということを。

褒めるときも『吉村ンゴwwwww』ってやってた
まとめブログしか見てなかったから、なんJ自体を見たことはなかった
でも、周りになんJを知ってる人はいなかったから、最初はバレなかった

でも、俺の友達軍団が『○○ンゴwwwww』について調べてしまった
でも、なんJまで辿りつけないと、俺は思った

でも、あっさりとたどり着き、俺はにわか野郎の汚名を挽回した

詠矢「あ、はいはい…」

詠矢「…」

佐天「…」

佐天「…えっと…」

詠矢「ん?次はどっちに曲がるのかな?」

佐天「じゃなくてですね…」

佐天「自己紹介、してなかったですね…」

詠矢「ああ、俺もそうか…」

詠矢「俺は詠矢、詠矢空希ってもんだ、よろしくなー」

佐天「佐天、涙子です…。よろしくです!」

詠矢「お、元気な声出たねえ」

佐天「あはは・・・、実はですねえ」

佐天「詠矢さんって怖い人なんじゃないかって思ってたんですよ」

詠矢「俺が?」

佐天「白井さんと御坂さんの話を聞く限りでは…そんな感じで」

詠矢「…どんな風に伝わってるのかすごく気になるんですが」

佐天「でも、意外と話しやすい人なんですねえ」

詠矢「ああ…そいつはどうも…ありがとう」

佐天「で…能力者…なんですよね?」

詠矢「そうだね…」

佐天「レベルは0だけど、すごい能力だって…」

詠矢「あのさあ?」

佐天「は、はいっ!」

詠矢「喉渇いてないかな?」

佐天「え…?」

詠矢「ちょいと軽く運動したんでね。ちょうど自販機もある。何がいい?」

佐天「い、いえいえ!私が買います!」

詠矢「いや、でもさすがに女の子に買わせるのもねえ…」

佐天「いーえ、せめてこれぐらいは奢らせて下さい!!」

詠矢「んー、じゃあお願いしちゃうかな…。あ、俺は普通のコーヒーでいいよ」


佐天「はい!じゃあ(チャリン)…えっと(ゴトン)…これで…」

詠矢「うい、どうもー(プシッ)」

佐天「私も何か…(チャリン)…(ゴトン)」

詠矢「じゃあ、話の続きだね」

詠矢「俺は能力者ではあるが、正真正銘レベル0だよ」

詠矢「こないだ、正式な測定ってやつを受けたんだけど」

詠矢「やっぱり数値は検出されなかったよ」

佐天「でも、実際に効果はあるんですよね…」

詠矢「うん。効果は間違いなく有るね」

詠矢「ただ、効果と測定される数値との間にどんな関係が有るのかは」

詠矢「俺にはわからんしね…」

詠矢「レベルってのは目安みたいなもんだし、俺にとっちゃ結構どうでもいいんだよ」

佐天「…」

佐天「…私もね、レベル0なんですよ」

佐天「学園に来て…能力開発とか、自分なりに頑張ってるつもりなんですけど…」

佐天「全然数値が上がらなくて…」

詠矢「…」

詠矢「大変なんだねえ…」

詠矢「俺は、気が付いたら能力を持ってたからなあ…」

詠矢「なんの努力もしてないし…なんか悪いな。能天気で」

佐天「いえいえ、そんなつもりで言ったんじゃ…(アセ)」

佐天「ただ、私と同じレベル0で」

佐天「確かな力を持ってるって、どんな人なのかなあって…」

佐天「ちょっと興味があって…」

詠矢「…」

詠矢「…うーん…」

詠矢「ちょっと質問いいかな?」

佐天「はい、なんですか?」

詠矢「能力開発ってやったこと無いんだけど…」

詠矢「具体的に何やるのかな?」

佐天「投薬とか、電気刺激とか…。あと普通に勉強もします」

佐天「能力に対して知識を深めることも必要らしくて…」

佐天「でもやっぱり、パーソナルリアリティの獲得には、イメージトレーニングが重要ですね」

詠矢「なるほどねえ…それは解るな」

詠矢「やっぱり能力って、感情や精神から強い影響を受けるみたいだしね」

詠矢「イメージは重要だわな」

佐天「そうなんですよ。私はあんまりその辺が得意じゃなくて…」

詠矢「んー…そうだなあ…」

佐天「…?」

詠矢「佐天サン。レベル0とはいえさ、能力の種類とか起こせる事象とかは解ってるのかな?」

佐天「はい、それは…」

佐天「実は私、前にある事件に関わって…」


佐天「一時的に能力が上がったことがあったんです」

詠矢「へえ…そんときに、有る程度確認できたってことか」

佐天「はい…。風を起こす能力なんですけど…、でも力の形を見たのはそれっきりなんですよね」

詠矢「へえ…風ねえ…」

詠矢「じゃあ、俺の天敵になるぞ」

佐天「へ?…そうなんですか?」

詠矢「ああ、俺の能力は、相手の耳に声が届かないと効果がないんだ」

詠矢「風を生む能力ってのは定義が難しいが、恐らく空気か気圧を操作する能力だろう」

詠矢「どっちにしろ、そんな能力者にとって音を遮断することなんて簡単だろうし」

詠矢「声が届かなきゃどうしようもない、俺としちゃお手上げになるね」

佐天「あー、確かにそうなりますねえ」

詠矢「『風』ってよりは『空気の操作』って考える方が効果が広がるな」

詠矢「空気の位置を動かして密度を下げれば気圧も操作出来る」

詠矢「気圧の低下による水の沸点の低下、気化熱による凍結とかコンボも可能だし」

詠矢「単純に顔の周りに真空を作って相手を窒息させたりも出来るな」

詠矢「違う速さの風を作って、任意に揚力を生み出すとかどうだろうか」

佐天「ナルホド…少し考えれば出来ることは色々広がりますねえ」

詠矢「イメージさえ出来れば、意外とやれることは多いと思うんだよね」

詠矢「そうやって、得た能力で何しようとか考えると楽しいだろ?」

詠矢「無邪気にそういうこと考えるのも、トレーニングになったりするんじゃねえのかなあ」

佐天「うーん…そうですねえ…風が操れたら…」

佐天「空とか飛んでみたいですね…気持いいだろうなあ」

詠矢「いいねえいいねえ。そんな感じ」

佐天「あと、風って言えばやっぱり初春の…あ…」

詠矢「…なんだ?」

佐天「いえ、ナンデモアリマセン…

佐天「ああ、でも、実際に風を操るって、どんなふうにやるんでしょうね?」

佐天「具体的なイメージが湧かなくて…」

詠矢「どうなんだろうねえ…」

詠矢「自然の風は気圧差から生まれるものだけど…、イメージしにくいわな」

詠矢「そしたらさあ…こう、空気をつかんでぶん回す感じでどうよ?」

佐天「つかんで…回す…ですか…むむ…」

佐天「目を閉じた方が集中しやすいですよね…ん…」

佐天「(つかんで…回す…、引っ張ったり投げたりもアリかな…)」

佐天「…」

詠矢「…(さあて…、どうかな)」

詠矢「…ん…?(何の音だ?)」

詠矢「…(風音?)」

突如、不自然な風が吹く。それは少女を中心に渦を巻き、集束し、やがて霧散していく。

佐天「…?(ヒュゴゴゴ)…(ヒュ-)」

詠矢「…(消えた…か。だが、今のは確かに!)」

佐天「…あれ…なんか風が…?」

佐天「え!?、まさかそんな急に…?」

佐天「気のせい、ですよね…やっぱり…はは・・・」

詠矢「来たぜ、佐天サン…」

佐天「何がですか?」

詠矢「君のおかげでようやく立証が出来た。ありがとう」

佐天「・・・?あの、話が見えないんですけど…」

詠矢「俺も、自分能力を模索してる最中なのさ。その答えの一つが今出たんだ」

佐天「…は、はあ…出来ればもう少しわかりやすくお願いします…」

詠矢「絶対反論(マジレス)には別の使い方があるんだ…つまり…」

白井「お取り込み中失礼します」

詠矢「…あ…?」

詠矢「…こいつは白井さん、お久しぶり…」

白井「お久しぶりですわね…」

佐天「あ、白井さんじゃないですか。どうしたんですか?」


白井「先ほど、事件がありまして…その対応ですわ」

白井「状況からして、ただの能力者同士の喧嘩だったのですが…」

詠矢「あ…もしかして…」

白井「倒れていた男に供述を取ってみると」

白井「能力の制御がどうのとか、ゴチャゴチャうるさい奴がいたとか…証言が取れまして」

白井「まさかと思って周囲を捜索していたのですが…」

詠矢「…大当たりだねえ…」

白井「そのようですわね」

白井「まさか、佐天さんまで関わっていようとは、思いもよりませんでしたが…」

佐天「あの、もしかして詠矢さんが疑われてるんですか?」

佐天「だったら違います!詠矢さんは私を…助けてくれたんです!」

白井「それはわかっていますわ佐天さん」

白井「あの不良共は、このあたりでは有名な札付きでしたし」

白井「佐天さんがからまれていたことも」


白井「先に手を出したのが向こうであることも、目撃者の証言からも明白です」

詠矢「そこまではっきりしてるんなら、俺に何の用だい?」

詠矢「もしかして用があるのは佐天サンの方とか?」

白井「いいえ、ご用件は詠矢さんにです」

白井「容疑が無いとはいえ、加害側からは証言を取っておく必要があります」

白井「それとは別に、詠矢さんに確かめたいことがありますので…」

白井「支部まで出頭願えますこと?」

詠矢「俺に…ねえ…。どうするかねえ…」

白井「悩む必要はございませんわ」

白井「わたくしが申し渡した約束、もうお忘れですか?」

詠矢「…ああ…次に出頭を…だな」

白井「思い出していただければそれで結構ですわ」

白井「では、まいりましょうか?」

詠矢「うい、素直に了解だ。んじゃ、ここでお別れだ佐天サン」

詠矢「送っていけなくてゴメンな?」

佐天「いえ、そんなことは…」

詠矢「じゃ、縁があればまたな…」

佐天「はい…えっと、いろいろとありがとうございます!」

詠矢「うーい。こっちこそありがとう」

詠矢「んじゃ行きますか。白井サン」

白井「では参りましょう…今回も『徒歩』ですわよ?」

(ジャッジメント177支部)
白井「では、調書はこれぐらいでいいでしょう」

詠矢「結構簡単に済んだねえ…」

白井「ええ、状況は既に把握しておりますので」

白井「では、ここからが本題です」

白井「初春、これ以後の記録は必要ありません。手を止めて下さい」

初春「あ、そうなんですか?じゃあ…わかりました」

詠矢「なんだい、またあらたまって…」

白井「あなた相手に、回りくどい話は無駄でしょう」

白井「詠矢さん、わたくしに隠してることはございませんか?」

詠矢「…質問の意味がよくわからんが…?」

白井「では、わかるように、わたくしが気づいた事をお教えしましょう」

詠矢「…気づいた?」

白井「転移の暴発の後、川に落ちたとおっしゃいましたね?」

白井「最初にお会いした路地裏から、わたくしの能力の射程、81.5m…」

白井「その範囲を、地図上で調べてみましたの」

白井「…もうお分かりですか?」

詠矢「ああ…何が言いたいかはわかった…」

詠矢「範囲内には、川なんか無かったってことか」

白井「ええ、その通りですわ」

白井「あなたは、わたくしの能力の限界を超えて転移したことになります」

白井「限界値というものは、能力開発の過程で、綿密な計測のものとで確定します」

白井「いくら暴発したとはいえ、何かの間違いや勢いで超えてしまうものではありません」

白井「ですので…必然的に、原因はあなたの能力ということになります」

詠矢「…さすが白井サン…鋭いね…。全部正解だよ」

白井「わたくしの転移限界を知ろうと拘ったのも、そのせいですね」

詠矢「ああ…そいつも正解だな…」

詠矢「能力を実感してから、ずっと考えていたことなんだけどね」

詠矢「俺は能力の定義を『抑制』とは言わず、あえて『変質』と言った…」

詠矢「自分で自分の可能性を潰しちまわないようにな」

白井「ではやはり、絶対反論(マジレス)は、能力の増幅も可能だと…」

詠矢「間違いなく可能だな…。具体的なやり方もなんとなくわかった」

詠矢「否定して思い込ませれば抑制出来るんだから」

詠矢「新しい可能性を指摘し、それを肯定して思い込ませれば増幅が可能だろう」

白井「…また、とてつもなく厄介な能力になりましたわね」

詠矢「そうかい?能力の増幅なんて、使い勝手いいしさ」

詠矢「能力開発に苦労してる人もいるみたいだし、すげえ需要あると思うんだけどねえ」

白井「詠矢さん、あなたはこの学園都市の実情をご存知無さ過ぎます」

白井「絶対能力進化(レベル6シフト)…というのをご存知ですか?」

詠矢「レベル6?…能力のレベルって5までじゃなかったか?」

白井「その存在しないレベル6を作り出すための実験…」

白井「この学園都市の最終目的の一つでもあります」

詠矢「なんか、聞いただけでヤバそうな話だな…」

白井「いまだに、この実験に絡んで暗躍している者がいるという話です」

白井「実際に、私が関わった事件もあります」

詠矢「そういう連中からしてみれば、俺の能力は…魅力的だろうな」

白井「恐らく…そう映るでしょうね」

白井「そのことを解っていただいた上で、あなたにお願いがありますの」

詠矢「忠告ならわかるが…お願いかい?」

白井「ええ…、もしあなたに実験を望む者たちから接触があっても、一切関わらないで頂きたいのです」

詠矢「…なぜ白井サンがそんなことを願うんだい?」

詠矢「理由を聞かせてくれる助かるね」

白井「レベル6シフト実験…それで、とても悲しい思いをした人がいますの」

白井「そのかたに、もう一度同じ思いをして欲しくない…」

詠矢「まあ俺も、ハナから面倒ごとは願い下げだし」

詠矢「白井サンに頼まれるまでもなく、そんな話が来てもこっちからお断りだね」

白井「ならよろしいのですが…ご理解頂いて感謝します」

詠矢「いやなに、別に俺は何もしてない」

詠矢「色々と教えてもらってこっちが礼を言いたいぐらいさ」

詠矢「…さて、話は終わりかな?」

白井「ええ、お話したいことは以上ですわ」

白井「お帰り頂いて結構です」

詠矢「うい…。じゃああっさり帰るぜ」

詠矢「またなー」

初春「…ほんとにあっさり帰っちゃいましたね」

初春「じゃあ、私も帰ります」

白井「お疲れさま…。あら初春、パソコンの電源が入ったままですわよ?」

初春「あ、いいんですよ。実験に参加中なんで…」

白井「実験?」

初春「ええ、ネットワーク上の余剰演算力の活用実験だそうで…」

初春「ネットワーク上に存在するパソコンやゲーム機の余った処理能力を利用して」

初春「どこまで高い演算能力が確保出来るかって実験です」

白井「…ちょっと胡散臭いですわね…。チェーンメールの類ではありませんの?」

初春「いえ、私も最初はそう思ったんですけど…」

初春「学園の開発部から正式な通達みたいで…」

初春「ツリーダイヤグラムには遠く及ばないみたいですけど」

初春「また天気予報が当たるようになればいいなって…」

白井「そうでしたの…なら仕方ありませんわね…」

初春「じゃあ、お先に失礼します」

初春「あ、ちょっと気になったんですけど、あの詠矢って人…」

初春「あれで、ホントに理解してくれたんでしょうか?」

白井「恐らくは大丈夫かと…、考えのない人物では無いと思いますので…」

白井「それに…」

初春「…?」

白井「あの方は、わたくしを傷つけようとはしなかった。やろうと思えば出来たにも関わらず…」

白井「その点では、最低限の信頼を置いてもよろしいかと思います」

初春「…へえ…」

白井「なんですの?」

初春「いえいえ、なんでも…」

(とあるコンビニ)
詠矢「ありがとうございましたー」

詠矢「ふう、そろそろ上がりかな?」

詠矢「最後に揚げ物でも用意しとくか…よっと」

詠矢「…(お、誰か来た)…いらっしゃいませー」

佐天「こんにちわー!!」

詠矢「お、佐天サンじゃねえの。しばらくぶり…」

佐天「しばらくって、一週間も経ってないですよお」

佐天「ここでバイトしてるって聞いて、ちょっと寄ってみました!」

詠矢「おうおう、そうかい。まあなんか買っていってくんな」

佐天「いえいえ買い物じゃなくてですね、ちょっとお伝えしたいことが」

詠矢「ん?なんだい?」

佐天「こないだ、また能力の検査をやったんですけど…」

佐天「レベルは相変わらず0のままなんですけど…数値はかなり上がったんですよ!」

詠矢「…へえ…そうなんだ…そいつはよかった…」

佐天「…あれ?あんまり喜んでくれないんですね…」

  /      ノノ)ノ ̄ ̄リノ\    .'、
. │   / (  ,二、ヽ  /,二、ノ゙
  i⌒'リ .|  `'く . ) , 〈 .く. .)ヽ

  |(.ヽ|ノ.    `二.ノ. _ .'、ヽ二 _ 〉   えっ?私の年棒低すぎ・・・?
  . \_,イ \      /_)ソう)、(´|.|/
  (J ||      />'ヽノ`/-')´_| ト,

 .ヽフ |.\    ノ ノ`./`/ .ノ>)´1 ||
  `ーァ.|  \  }rく ノ /` ノ .ノ´{ .|.'、
   ´/.\   \'、   ' / 〈  | .|/
 _,, -く   \   .'、      |  /


佐天「きっと、詠矢さんのアドバイスのおかげだと思うんですけど…」

詠矢「なあ佐天サン、ちょっとお願いなんだけどさ?」

佐天「…なんですか?」

詠矢「こないだ、俺が能力についてどうこう言った事さ、誰にも言わないで欲しいんだよ」

佐天「えっ?…どうしてですか?」

詠矢「なんかさ…同じ様に能力が上がるんじゃないかって人が来るとさ」

詠矢「面倒だろ?いろいろと…」

佐天「…面倒…なんですか…」

詠矢「こないだのも単なる偶然だと思うし…変に期待されても迷惑だから」

佐天「…詠矢さん…そんな言い方って…」

詠矢「…ま、とりあえずそういうことでお願いしとくよ」

佐天「……はい」

上条「うわっと!…わりい、遅れた!」

詠矢「おお、上条サン待ちくたびれたぜ。早いこと準備してくれ」


佐天「…」

上条「アレ…なんでせうかこの空気は?」

詠矢「つーわけで佐天サン、俺今日は上がりだから…またどっかでな」

佐天「あっ…あの!!」

詠矢「んじゃ、奥で着替えるか…」

佐天「…」

上条「…???」

佐天「…帰ります」

上条「……」

上条「…俺も着替えるか…」

(とある街角 夕刻)
詠矢「さあってと…いつもの通り見切り品漁りコースか…」

詠矢「…」

詠矢「(しかし、さっきは驚いたな。いきなり佐天サンが来るとは)」

詠矢「(まあ、ああ言っておけば、俺のことを誰かに話したりもしないだろ)」


詠矢「(もうちょっと言葉を選べばよかったかもしれんが…)」

詠矢「(色々とヤバイみたいだし、なるべく話が広がらないようにしとかないとね)」

詠矢「(…いろいろと心は痛むけど…まあしょうがない)」

詠矢「(放置すると、彼女自身を巻き込む可能性も出てくるしな)」

詠矢「…ふう…」

詠矢「…なんか飯作るのも面倒だな…」

詠矢「どっかで牛丼でも食って…」

詠矢「…!?(シュン)」


詠矢「うおっ!!(ドガシャッ)」

詠矢「いてて…?なんだ…ここは?」

詠矢「カウンター…テーブル…椅子…。喫茶店かどっかか」

詠矢「この時間に照明も付いてねえ…定休日か潰れた店舗ってとこだな…」

詠矢「いや、問題はそんなことじゃない」

詠矢「なんでいきなりこんな所にいるかって事だ…」

??「あーら、いらっしゃい」

??「っても、店員でもなんでもないんだけど」

詠矢「…こいつは…ずいぶんと刺激的なお姉さんだねえ…」

??「それは誉めてもらってるのかしら?」

??「面倒だろうから、名前は名乗っておくわ」

??「私は結標ってもんさ。アンタを連れて来いってお達しでね」

詠矢「…ついに来たか…。まあ、来て欲しくは無かったけどな」

結標「悪いけど一緒に来てもらうよ」

詠矢「答えは一つ。既に決まっている」

詠矢「とりあえず、今の段階では『やだね』だ」

以上となります。

それではまた。

こんばんわ。
かなり難航しましたが、なんとか書きあがりました。
投下します。

(とある施設)
冥土帰し「やあアクセラレーター。わざわざすまないね」

一方「ったく…なンだってんだ急に呼び出しなんてよ…」

冥土帰し「開発部からちょっと実験の依頼でね」

一方「実験ン?」

冥土帰し「ああ、君にとっても悪い話ではないようだ」

冥土帰し「悪いが、頼まれてやってくれないかね」

一方「そいつは、実験の中身を聞いてからだ」

一方「俺は俺の判断で決める」

冥土帰し「まあ、君ならそう言うだろうね…」

研究者「では、説明は私からしましょう」

一方「なンだテメエは?」

研究者「私は開発部の者です」

研究者「今回の実験は開発部が主導しておりまして」

研究者「私はその責任者となります」

一方「へえ…そうか…。で、その責任者様が俺に何の用だ?」

研究者「あなたに、新たな演算環境をご用意しました」

一方「演算環境、だと?」

研究者「ええ、ネットワーク上の余剰処理能力を利用した」

研究者「擬似的な並列演算装置の実験ですよ」

研究者「この学園都市には、膨大な数のパソコンや処理装置が存在します」

研究者「それらをネットワーク上でつなぎ合わせれば」

研究者「ミサカネットワークにも引けを取らない演算能力を得ることができます」

一方「おいおい、引けを取らないってことは」

一方「大して変わらねえって事じゃねえか…」

一方「そいつを使うことで、俺に何のメリットがあるってンだ?」

研究者「この都市には、ネットワークの死角がほぼ存在しません」

研究所「地下であろうと移動中であろうと、安定した演算環境が確保できます」

研究者「そしてもう一つ、これを…」

一方「ンだ?その懐かしのデザインのヘッドフォンは…」

一方「お偉い研究者さんってのは、アンティーク趣味でもあんのか?」

研究者「いえ、これは端末です。あなたのチョーカーに付いているものと、ほぼ同じ機能を持ちます」

研究者「思考波とのやり取りを必要としないため、高い汎用性を持つ装置です」

研究者「バッテリーも、既存のリチウム電池を使うことが出来ました。交換も容易です」

一方「なるほどねえ…。それなりに魅力的な謳い文句だが…」

一方「世の中、美味い話ってのはなかなかねえもんだ…。テメエらをどうやって信用しろってんだ?」

研究者「そうですね、確かに信用は置けないかもしれません」

研究者「ただ、これも我々なりに考えた結果です」

研究者「あなたとミサカネットワークを切り離すことが出来れば」

研究者「彼女たちに害が及ぶ可能性が下がるはずです」

研究者「あなたとしても、より行動に自由が生まれるのではないでしょうか?」

一方「…」

一方「…この実験が上手くいけば…、あのクソガキのお守りもお役ゴメンってワケか?」

一方「面白いじゃねえか…。試してみるのも悪くねえ」


一方「おい、さっさとそいつをよこせ…」

研究者「どうぞ…。ヘッドフォンのように頭に被って頂ければ結構です」

研究者「装着した後、ケーブルをそこの端子につなぎなおして下さい」

一方「ここか?」

研究者「ええ、それでいいです」

一方「最後に確認しとくが…」

研究者「なんでしょう?」

一方「下手な真似したら…、テメエら全員、天国にも地獄にも行けねえように」

一方「塵一つ残さず消し潰してやるからな…覚えとけよ」

研究者「…もちろん…わかっていますよ…」

研究者「では、回線を開きます」

職員A「…(カタカタ)」

職員B「…(カタカタ)」

一方「…ん…がっ!!(キィン)」


冥土帰し「どうした…アクセラレーター」

研究者「学園第一位の能力者も、意外と甘いようで…」

冥土帰し「なんだって?」

研究者「今、彼の演算は我々の手にある」

研究者「そこから、思考に介入することは容易なのですよ」

冥土帰し「まさか…そのためにこの実験を!?」

冥土帰し「おい、アクセラレター!アクセラレター!!」

一方「…」

研究者「申し訳ありません。彼の信頼を得るために、あなたの名を利用させて頂きました」

研究者「お引取り願いたいところなのですが…」

職員C「…(ジャキ)」

職員D「…(ジャキ)」

冥土帰し「…銃か…またずいぶんと準備がいいものだね」

研究者「口外されてもいささか困るもので。しばらく我々と行動をともにして頂きます」


冥土帰し「…これは、学園都市への明確な反逆行為だ…」

冥土帰し「こうまでして、君たちが望むものとは何かね?」

研究者「ご説明の必要も無いかと思いますが…?」

研究者「神の道へ至る扉の鍵が、集まりつつあるのですよ」

研究者「それがいかに不確定であったとしても…」

研究者「可能性は一つずつ潰していく…それが科学者というものでしょう?」

(とある喫茶店)
結標「『やだね』って…要するに拒否するわけね?」

詠矢「ああ、理由も告げずにただ来いって」

詠矢「そんなもん素直についていくと思うか?」

結標「知らないわよ、理由なんて…」

結標「悪いけど、私だって細かい事情は聞かされてないのよ」

詠矢「話にならんな…。もっかい戻ってだな、その指示したって奴に…」

結標「…(シュン)」

詠矢「(ドスッ)ぐあっ!!…(な、なんだこれ…フォークが肩に…)」

結標「こっちだってガキの使いじゃ無いのよねえ」

結標「面倒なんで、大人しく付いてきてくれない?」

詠矢「(…これ抜かねえと)んっ…んぎぎぎぎっ!!(ザスッ)…痛ってーな」

詠矢「転移能力者…か。いきなり仕掛けるとは容赦ねえなあ…」

詠矢「しかし…いーのかね?」

結標「なによ…」

詠矢「どんな人間でも考えてからそれを実行するまでブランクがある」

詠矢「それがどんなに短い時間でも、その瞬間に俺の体の位置が移動する可能性はあるわな?」

詠矢「肩口を狙ったなら心臓や肺、頚動脈も近い。脳もそう遠くないな…」

詠矢「転移能力者が座標を指定して物体を送り込んでるのは知ってるぜ」

詠矢「何かの間違いで俺が[ピーーー]ば、アンタの仕事は果たせなくなる」

詠矢「いや、それよりも…」

結標「…?」

詠矢「アンタに人殺しになる覚悟があるのかい?」

結標「…!!(しまった、コイツの話はを聞いては…!!)」

結標「…貴方の話は聞かないわ!!(シュン)」

詠矢「…(今だ!)…(ザッツ)…」

詠矢は後ろに飛びのく。直後、足があった位置に転移してきたフォークが、そのまま床に落下する。

結標「なっ…!! どうして…!?」

詠矢「肩にあててビビらした後は、足を狙って動きを止める…」

詠矢「狙う場所は一番面積の広い大腿部…読めるぜ?」

結標「やるじゃないの…じゃあコイツはどう?!(シュン)」

結標が懐中電灯を一振りすると、周囲の椅子やテーブルが次々と詠矢の上空に送り込まれる。

詠矢「うおっ!!(ドカッ)…っと(ドカッ)…!!(ドカドカッ)」

詠矢「…くっ…(何とか避けれたか…)」

詠矢「(さて、どっかに隠れて視界から…)うおっ!!(キイン)…(タスタスタス)」

結標「避けきれたと思った?甘いわねえ!!(シュン)」

詠矢「そりゃ…ここじゃフォークは、売るほどあるもんなあ…」

詠矢「っと!!…とり合えず、視界から…消えないとねえ!!」

足元を狙い、床に刺さるフォークを避けつつ、詠矢はカウンターの裏へと体を滑り込ませた。

結標「…ちっ!」

詠矢「(視界外への転移は、さっきの論証でやりにくくなっているはず)」

詠矢「(正確な位置を確認出来ない状況では、俺を殺してしまう可能性が格段に上がるからな)」

詠矢「(ここに隠れてればしばらくは安全だが…、さてこっからどうするか…)」

結標「出てきなさい!どれだけ逃げても隠れても、私の座標転移(ムーブポイント)からは逃れられないわ!」

詠矢「なるほど…。接触を必要としない転移か…厄介だな…」

詠矢「だが、自由すぎる能力ってのも逆に難しい…」

詠矢「形のはっきりしてるものは、転移の指定もやりやすいだろうが…」

詠矢「気体や液体、もしくは飛散した粉末なんかはどうかな?」

結標「…聞かないって言ってるでしょう!!(シュン)」

先ほどと同じように、椅子やテーブルをカウンター裏の上空に転移させる。

詠矢「…がっ!(ドカドカッ)…(ドシャ)」

詠矢「…」

結標「…(仕留めた?)…」

結標「…ねえ…」

結標「返事しなさいよ…潰れちゃった?…」

結標「大人しくするなら、助けてあげなくもないわよ?」

詠矢「…」

結標「…」

詠矢「…運動し、飛散していく物質の全てを指定し、転移させることは難しい。いや出来ないだろうな…」

結標「…なっ!!」

詠矢「つまりは、こういうことだ!!(バッ)」

カウンターを乗り越え、詠矢は姿を現す。その手には…。

結標「(消火器!!)」

詠矢「うりゃ!!(バシュゥゥゥウ)」

結標「ひっ!…(シュン)」

詠矢「ムリだって。全部消しきれるわけねえだろ!!(バシュゥゥゥウ)」

結標「…っ!きゃあぁぁぁあ!!(バシュゥゥ)」

詠矢「(よしっ!ここで集中が途切れる、一気に距離を詰めて!)…どっせい!(上段回し蹴り!)」

結標「んっ!!」

詠矢「(ズルッ)あっ…!!(軸足が!)…(くそっ!浅い!)」

結標「がっ!!…痛ったい…わね!!(シュン)」

詠矢「(消えた!!)…(どこだ!)」

結標「…(シュン)」

詠矢「…(後ろか!!)」

結標「…ふっ!!(ブン)」


突然、背後に現れた結標は、手に持った懐中電灯で詠矢の頭部を一閃する。

詠矢「…がふっ!!(ゴッ)…」

結標「…女の…顔…蹴り飛ばすなんて…いい根性してるわね…ウッ(ゴホッ)」

詠矢「そりゃ、お互いさまでしょうが…」

詠矢「しかし、自己転移って手があったんだな…。すっかり忘れてたぜ」

詠矢「…ん?それじゃあ…なんで消火器を向けられたときに逃げなかったんだ?」

結標「…(ゴホゴホッ)」

詠矢「自己転移は使えない、もしくは使いたくない理由でもあるのかな?」

詠矢「そういやあ…ずいぶんと具合悪そうだな…」

結標「っさいわねぇぇええ!!」

結標「あんた本気でムカツクわ!!!ぶっ壊してあげるわよ!!(シュンシュン)」

詠矢「よ、あぶねえっての!!(ドカドカッツ)…(キイン)…(タスタスタス)」

詠矢「(無茶苦茶しやがるなあ)…(だが雑な攻撃は逃げ回ってればなんとか…)よっと」

結標「(また…カウンターの裏に)…もおいいわ、上にはあんたの死体を持って行くことにする…」

結標「…!(ブン)」

詠矢「うおっ!!」

一呼吸置いた後、結標大きく腕を振るうと、大量の机と椅子が上空に現れる。

それらは轟音とともに落下し、カウンターとその周囲を完全にを押しつぶした。

結標「…どう?今度こそ本当に潰れた?」

結標「…」

結標「…ああ、無理もないわね。死んじゃったら返事できないもの…」

結標「そうね、死体は確認しておかないと…(シュン)」

山となっている机や椅子を転移で排除すると、結標は押しつぶされたカウンターの裏を覗き込む。

結標「…(居ない?)…どこへ…?…あっ!」

彼女の目に写ったのは、カウンターの奥にづづく厨房、さらにその先にある外側に開け放たれた勝手口だった。

結標「まさか…逃げた…!?って…どこへ…?」

結標「まだそう遠くへは行ってないはず…追えば十分…」

逃走経路を確認しようと、彼女は勝手口まで進む…が、直後。

詠矢「うりゃ!!(ドカッ)」

裏に隠れていた詠矢は、絶妙のタイミングと渾身の力を持って扉を蹴り飛ばした。

結標「がっ!!(バンッ)」

全く予期していない攻撃に、結標の左半身は扉に強く打ちつけられた。

結標「…っつ…くぁ!!」

詠矢「よっ…と」

結標「…な…(組み付かれた!)…(首を…!)」

詠矢「逃げようったって無駄だぜ。今絞めてるのは頸動脈」

詠矢「脳貧血の進行する状態で、演算なんぞ出来るわけねえよなあ!!」

結標「……!!」

詠矢「悪いな…。そのまま逃げようかと思ったんだが」

詠矢「転移能力者相手に、足で逃げ切れる自信が無かったもんでね…」

詠矢「しばらくオヤスミしといてくれ」

詠矢「(寝かせて…気道確保…)っと…」

詠矢「んじゃ…な。『またな』無しだ」

(とある路地、夜半)
詠矢「まったく…ひでえ目に合ったなあ…」

詠矢「病院行きたいんだが…、この傷、どう説明すりゃいいんだ?」

詠矢「間違いなく事件性が疑われるよなあ…」

詠矢「このナリじゃ、人目に付くとマズイ…。どっかでしばらく休んでジャッジメントに駆け込みかな…」

詠矢「白井サン…アドレス聞いときゃよかったなあ…」

??「…(スッ)」

??「…(スッ)」

詠矢「…?(何だ?囲まれてないか?)」

詠矢「(なんか道の前後を塞がれたんだが)」

詠矢「(ヤバイ雰囲気しかしねえな)」

詠矢「えーっと、もしかして俺になんか用ですかね?」

職員A「唐突で申し訳ありません。我々は学園都市技術開発部のものです」

職員B「少しご協力をお願いしたいのです」

詠矢「えー…って、まさかの連チャンのお誘いですか?」

詠矢「カンベンしてくださいって…」

職員A「いかがでしょう?ご同行願えますか?」

詠矢「…少なくとも、理由ぐらいは教えてもらえるんですかね?」

職員B「ある実験に参加していただきたいのですよ」

詠矢「あーもう…予備情報どおりの話で泣けてくるねえ…」

詠矢「悪いけど、ちょいと約束がありまして…。丁重にお断りさせて頂きます」

職員A「そうですか…。ですが、こちらとしてもそれで引き下がるわけにもいきませんので…(ジャキ)」

職員B「…(ジャキ)」

詠矢「…(銃!?)…(おいおい、シャレになってねえぞ…)」

職員A「どうですか?お気持ちは変わりませんか?」


詠矢「…(って、選択する余地ねえだろ、この状況は)」

職員B「我々としては、貴方の『能力』がどうしても必要なのですよ」

詠矢「……」

詠矢「俺の能力を知ってて銃口を向けるとはいい度胸だな…」

職員A「?」

職員B「?」

詠矢「俺の能力は絶賛進化中なんだよ。さっきの戦闘でまた一段と強くなった…」

詠矢「いまや絶対反論(マジレス)は、能力者意外にも高い効果を発揮する…」

詠矢「俺の一言で、誰にでも強い暗示を与えるんだ…。あんたら、その立ち位置じゃあ…」

詠矢「俺が逃げたら同士討ちだぜ?」

職員A「なっ…!」

職員B「なに?」

詠矢「なーんてね…」

詠矢「(と、ひるんだスキに逃げる!!)」

職員A「しまっ…た!!」

職員B「くそっ、追え!逃がすな!!(ダッ)」

詠矢「(とり合えずまいた、かな?)」

詠矢「(しかしなんなんだあいつらは、街中で銃なんぞ持ち出して)」

詠矢「(まだ諦めたとは思えないな…)」

詠矢「(コイツは逃げ切れないかもな)」

詠矢「(よし)…(今のうちに)…(ポチポチ)…(うっしゃ)」

職員C「いたぞ、こっちだ!」

詠矢「(おいおい、新手かよ…俺一人にどんだけ用意してんだよ!)」

詠矢「くそっ!(ダッ)」

職員A「…(ザッ)」

職員B「…(ザッ)」

詠矢「(マズい…追い込まれてるな…。数で来られるとどうしょうも…)」

詠矢「(いや、諦めるな…どっかに活路が…)」

??「…(キュイーン)」

詠矢「うわっ!!(何だ?地面が急に…隆起した!)」

詠矢「(ドサッ)…(ゴロゴロゴロ)…っつ…何だ急に…」

研究者「てこずらせてくれるね」

研究者「絶対反論(マジレス)の詠矢空希君…」

詠矢「…流石に…ここまでか…な?」

研究者「先に言っておくが、私は能力を持たない一介の研究者だ」

研究者「論証しようとしても無駄だよ」

研究者「それにだね…」

職員A「…(ジャキ)」

職員B「…(ジャキ)」

職員C「…(ジャキ)」

詠矢「(これは、手でも上げといたほうがよさそうだな)…(スッ)」

研究者「いくら君でも、炸薬によって弾丸が発射される原理を否定することは出来まい」

詠矢「…おっしゃる通りで…。なんの物理法則にも抵触してねえもんな…」

詠矢「で…実験の、お手伝いでしたっけか?」

研究者「ああ、彼の論証をお願いしたい」

詠矢「…彼?」

研究者「そうだ、学園第一位の能力者…。神への道にもっとも近い人物だ」

研究者「さあ、こちらへ…」

一方「…」

詠矢「ま…まさか」

詠矢「あんたは…あの時の!!」

以上となります。
次回で完結となる予定です。

また禁止ワードを踏んでしまいました。申し訳ありませn。

それではまた。

おはようございます。
だいぶ時間が空いてしまいました。申し訳ありません。
書きあがった分を投下します。

(操車場跡地)
詠矢「(さて、まずは状況を理解しよう)」

詠矢「(俺は小物臭い研究者風の男に拉致された)」

詠矢「(目的はレベル6シフト実験で間違いないだろう)」

詠矢「(肩の傷は応急処置を受けた。腹減ったといったらカロリーメイトくれたな)」

詠矢「(だが全快とは言いがたい。全力で活動することは無理だろう)」

詠矢「(で、今現在の場所ですよ)」

詠矢「(見るところだだっ広い、古戦場ですかって雰囲気の廃墟だね)」

詠矢「(構造物や残骸を見るに、鉄道関係の施設跡かな…)」

詠矢「(そこに、命の恩人さんと二人っきりってワケだ)」

研究者『では、ルールを説明しよう』

詠矢「うわっ!どっから音出てるんだ?」

研究者『君の正面に対峙しているのは、学園第一位の能力者、一方通行(アクセラレータ)だ』

研究者『彼の頭部に装着している端末に、マイクとスピーカーが搭載されている』

研究者『彼に向かって話せば、我々と通常に会話することが出来る』

詠矢「(端末?…ああ、なんかいかにも『悪の組織の洗脳装置』って感じだね)」

詠矢「ナルホド…要するに普通に話しかけろってことですな…」

詠矢「でも、なんて呼べばいいのかね?面識はあるんだけどロクに話したことなくてな」

詠矢「アクセラレターだから、略してアクセラサンとか?」

詠矢「…なんかマツダの車みてえだな」

詠矢「まあいいや、適当に第一位サンとでも呼んどこう」

研究者『…説明の続きいいかね?』

詠矢「…根本的に納得いってませんが…、お聞きしましょうか…」

研究者『我々の最終目的はレベル6を創造することにある』

研究者『君の力で、アクセラレータの能力を増幅し』

研究者『その高みに彼を導いて欲しい』

詠矢「…おいおい、俺の能力知ってるのか?」

詠矢「適当にツッコミを入れて、他人の能力を変質させるだけだぞ?」

詠矢「そんな大それた事、出来るわけねえだろ?」

研究者『我々は、学園の能力者に関して全て把握している』

研究者『君の能力にも早くから注目し、調査させてもらっている』

研究者『実際に、君に関わって数値が上昇した人物からの証言も取れている』

詠矢「なっ…、どっからその話を!!」

研究者『数値計測を担当した係員からだ。あまり明確な情報ではなかったが…』

研究者『我々が君の能力に対して立てた推論を裏付けるには、十分な証拠だったよ』

詠矢「(そうか…、佐天サン、俺と合う前に話しちまってたか…)」

詠矢「(てーことは…、ヤバイないろいろと)」

詠矢「…」

研究者『沈黙の肯定…と言ったところかな?』

詠矢「よく調べてますねえ…。まあ、実例が有る分、否定は出来ないっすね」

詠矢「だが、実例が有るってだけで、なんの裏付けもない能力です」

詠矢「そんなもんに、研究者サンの人生賭けてもいいんですかね?」


研究者『構わんさ…。我々とて既に後には引けない』

研究者『たかが私の存在一つ、賭けてもいい実験だと思っている』

詠矢「…狂信者ですねえ…」

研究者『科学、というものにはね、魂を売る価値はあるのだよ』

詠矢「(…ダメだ、説得は聞きそうにねえな)」

詠矢「じゃあ…ついでに聞きますが、俺に拒否する権利は無いっすかね?」

研究者『拒否するのは構わないが、気持ちが変わるまで痛い思いをすることになる』

詠矢「そいつはカンベンだな…」

研究者『なら素直に従ってくれたまえ』

研究者『あまり強情を張るようだと…我々としては』

研究者『君に動いてもらえるよう、他に手を考えなければならない』

研究者『聡明な君なら、これ以上は説明しなくともわかるだろう?』

詠矢「…なるほどね」

詠矢「わかりました…やりゃあいいんでしょ?」

詠矢「どうなるかわかりませんけど、やるだけやってみますよ」

詠矢「ただ、最初にしっかり抗わせてもらいますよ」

詠矢「思いつく限りやってみないと、後で論証に実が入りませんので…」

研究者『好きにしたまえ…』

研究者『ただ、逃げるのは不可能だぞ』

研究者『この封鎖地区は隔壁で取り囲まれている。普通の人間が乗り越えら得る高さではない』

研究者『範囲内には、監視カメラが数箇所配置してある』

研究者『君は常に監視下であることを忘れないでもらいたい』

詠矢「へいへい…よく理解できました…」

詠矢「んじゃ…早速!!(ダッ)」

突然、弾かれたように走り出すと、詠矢は一気に相手との距離を詰める。

詠矢「(恐らく、この端末が元凶…コイツを取れば!!)」

一方「…(スッ)…(キィン)」

詠矢「…うわっ!!(ブワッ)…!!!(ゴロゴロゴロ)…くっそ…(思いっきり吹っ飛ばされた)」

詠矢「なんの…もっかい!!…(ダッ)」

一方「…(キィン)」

詠矢「がはっ!!(なんだ、いきなり腹に衝撃が!!)…ぐがあっ!!(ゴボッ)」

研究者『空気のベクトルを操作して衝撃波を作り出した』

研究者『見事に命中したようだね』

詠矢「…な、なんだよ…静止してるものも操作出来るのか…」

詠矢「そんなもんベクトル変換って呼ぶんですかね?」

研究者『運動量も含めてベクトルなのだよ…』

詠矢「(何だよそれ…。そんなモン単なる念動じゃねえか)」

詠矢「(いや、ベクトルって言葉使ってるってことは)」

詠矢「(下手すると電磁波や光も含まれる…。念動よりはるかに範囲が広い)」

詠矢「要するに、全てのエネルギーを方向や量も含めて操作出来る能力って…ことか…(ゴホッ)」

詠矢「流石第一位…壮大な能力だねえ…」

研究者『理解は出来たかね?なら、実験に移ってもらおうかな』

研究者『彼の能力は、今のところ接触が条件となっている』

研究者『その制限を外す方向で論証してみてくれ』

詠矢「…さあて」

詠矢「(第一位サンは明らかに自由意志を奪われた状態だ)」

詠矢「(つまり、この実験はそもそも望んでないってことだ)」

詠矢「(命の恩人に、仇を返すわけにもいかねえんだが…、今の状態では打つ手がねえ)」

詠矢「(どうする?ここは考えどこだぞ…)」

詠矢「…」

詠矢「…うし…やってやろうじゃねえか!」

研究者『ようやくやる気になってくれたかね』

詠矢「俺の能力でどこまでのことが出来るのか…その上限を試すまたとない機会だからな…」

詠矢「神の道ってのを、開いてみるとしますか!」

詠矢「ただし、論証の手順はこっちで決めさせてもらうぜ?」

研究者『ああ、それは構わないよ』

研究者『今のアクセラレータは、他人の言葉を受け入れやすい状態になっている』

研究者『どのような論理でも、君の能力は最大限に発揮されるだろう』

研究者『さあ、共に、神が生まれる瞬間に立ち会おうじゃないか…』

詠矢「了解…じゃあ早速いきますか」

詠矢「…さあて、第一位サン」

詠矢「あんたの能力は接触が前提らしいが」

詠矢「既にそんな制限は無いも同然じゃねえか?」

詠矢「さっき、俺を捕まえるとき、地面を隆起させてたよな?」

詠矢「そんとき、地面に直接手を触れているようには見えなかった」

詠矢「しっかり靴を履いて地面に立っていたわけだ。だが、それが接触って言えるのか?」

一方「…」

詠矢「その状態ってのは、単にあんたが『接触した』と自覚していたに過ぎない」

詠矢「そうなると、前提なんて限りなく曖昧なもんだ」

詠矢「第一位さんが認識する限り、その範囲は無限に広がっていく」

一方「…(ピク)」

詠矢「おお…反応あるねえ…」

詠矢「第一位サンもなんかノって来たんじゃねえの?」

詠矢「俺もだんだん楽しくなってきたなあ…」

詠矢「んじゃ続けるぜ?」

詠矢「そもそも、大気や地面を動かせるってんなら」

詠矢「そいつら全ては、連続してるといっても過言じゃない」

詠矢「大気が途切れているのは一部の密閉された空間だけだ」

詠矢「地面は、完全に水の上にある浮島意外、全て地表として繋がっている」

詠矢「水だって同じさぁ。水道の蛇口だって、浄水場から河川、さらに海まで繋がっているぜぇ!」

詠矢「この地上すべて!、すなわちこの世界すべて!、あんたの影響が及ばない場所は殆どねえ!!」

一方「…(ゴゴゴゴゴゴ)」

詠矢「全てのエネルギーを統べる能力。まさに神の力と呼べるんじゃねえかなぁ!!」

(とある施設)
職員A「…被験者の数値、上昇を続けています」

研究者「よし、いいぞいいぞ…このまま順調に行けば…」

冥土帰し「愚かな…、こんなことをしていったい何になるというのだね?」

研究者「わかりませんよ。わからないからこそやるんです」

研究者「レベル6は、全くの未知の領域です。その向こう側を見るための実験なのですよ!」

冥土帰し「(駄目だ…彼らはただレベル6を創造することだけに取り付かれている…)」

冥土帰し「(アクセラレータ、すまない。これは私の不手際だ…)」

冥土帰し「(彼らの真意を見抜くことが出来なかった…)」

冥土帰し「(今はただ…あの詠矢という人物に賭けるしかないのか…)」

職員B「実験場の大気と地面から強い振動が検知されています」

研究者「そうか…。アクセラレタータの力が、周囲の環境に影響を与え始めた証拠だ…」

研究者「引き続き計測を続けろ!」

職員B「はい!」

詠矢『じゃあさあ?』

職員が作業に取り掛かろうとした直後、モニター越しに詠矢の声が響く。

詠矢『次の段階に行くかい?』

詠矢『第一位サンの能力が、実際にどれくらいの範囲に影響を与えられるか…試してみねえ?』

研究者「…?」

詠矢『とりあえず、そうだなあ…。この地面の下の大陸プレートでも、盛大に引っぺがしてもらいましょうか…』

研究者「…なんだと?」

詠矢『震度も計測できないような壮絶な地震が起こるなあ…、流石に日本も滅亡かな?』

研究者「…回線を開け…」

研究者「おい、いったいどうゆうつもりだ!」

研究者「そのまま安定して能力の上昇を導くんだ。余計なことは言うな!」

詠矢『…神が行う、最も壮大で厳粛な行為ってのは、何だと思います?』

研究者「…?」

詠矢『破壊と…創造ですよ…』

研究者「…なに?」

詠矢『だからあ…神の力を得た証拠に、世界を滅ぼしてもらおうってことですよ!』


詠矢『今の第一位サンなら、地震も、津波も、台風も思いのままだ』

詠矢『あ、面倒だったら自転を急停止させてもいいかな』

詠矢『世界中が、一斉に同じ方向に吹っ飛ぶなあ…』

詠矢『どうせ地球自体に干渉できるだろうから、重力とか止めてみるとかね』

詠矢『どうなるか想像もつかないけどねぇ…へへっ』

研究者「な…なんだと!気でも狂ったか!」

詠矢『そりゃまあ…お蔭さんでねぇ…。こんなバカ壮大な論証…正気じゃやってられませんよぉ!!』

研究者「そんなことをすれば、お前も無事では済まないぞ!」

詠矢『あ?なんですか?いまさらビビリましたかぁ?』

詠矢『研究者さんが魂売ってるって言うもんで…俺も命ぐらい賭けてみようかと思いましてねぇ』

詠矢『まあ…実際に賭けるのは全人類の命になっちゃいますけどねえ…』

職員A「被験者の数値、さらに増大しています!」

職員B「振動も更に増大!。地面に亀裂と剥離が発生しています!」

研究者「…?(ゴゴゴゴゴ)…ここまで…振動が…」

研究者「まさか…本気で…」

詠矢『さあ、第一位サン、イメージを広げるんだ!全てを認識するんだ!』

詠矢『もはや世界のすべてはあんたのものだ!!』

詠矢『いいねえ!最高に楽しいねえ!!』

研究者「(おかしい…調査によれば彼はもっと思慮深い人間のはずだ…)」

研究者「(こんな、全てを滅ぼすような行動をとるはずが無い…。まるで何かに酔っているようだ)」

研究者「(まさか…自分の能力に呑まれて…?)」

詠矢『大地と大気が震えてるねえ…』

詠矢『絶対反論(マジレス)と一方通行(アクセラレータ)が共振し合ってるのかねぇ!』

研究者「…(ゴゴゴゴゴゴ)…!」

職員A「…数値は今だ上昇を続けています!…あの…」

研究者「なんだ?」

職員A「このままでは…下手をすると…」

研究者「判断は私がする…黙っていろ…」



職員A「はい…」

研究者「…!(ゴゴゴゴゴゴゴ)…(ガガガガガガガ)」

職員A「…!」

職員B「…!」

研究者「…」

研究者「……くっ!」

研究者「…外部からの音波を遮断するよう、被験者に指示しろ」

研究者「それで、絶対反論(マジレス)の効果を防げる」

職員A「しかし、それでは我々の指示が被験者に…」

研究者「端末のスピーカーから直接伝えられる。遮断するのはあくまで外部の声だ」

職員A「わかりました!(カタカタ)」

研究者「その後、彼を徹底的に痛めつけて黙らせろ。殺しても構わん」

冥土帰し「殺す…?なぜそこまでする必要がある!!」

研究者「うるさい!さっきの論証を見ていただろう!」

研究者「今もうちに始末しておかないと…我々の身が危ういのだよ!!」

(操車場跡)
詠矢「さあ、頑張ってくれよ、第一位サン!!」

一方「…」

詠矢「(なんだ…反応が薄いな…)…あれ?(周囲の振動が止んだ?)」

一方「…(ガッ)…(キュイン)」

アクセラレータが地面を踏みつけると、その体は一気に加速し、詠矢に向かって突進する。

詠矢「なっ!!(ドカッ)」

大雑把に放たれたアクセラレータの拳が、詠矢の胴体に命中する。

詠矢「…!!ぐおっ!!(ゴロゴロゴロ)…(ドシャッ)」

詠矢「くっ…!!あぁ(いってえ…んでもって速ええ…)」

詠矢「よいしょっと…。ひでえな、第一位サン。いきなり殴ることねえだろ!」

一方「…」

詠矢「(聞いてない…、いや効いてないって言うべきか?)」

詠矢「(音を遮断したな…)」

詠矢「(あのオッサン、小心者ぽかったからなあ)」


詠矢「(派手にビビらせてやればどっかで引くと思ったんだが)」

詠矢「(意外と早く折れたな)」

詠矢「(その上、俺を攻撃してきたってことは)」

詠矢「(実験は半ば諦めたって感じかね)」

詠矢「(さあて、もうひと頑張りだ)」

詠矢「こっからは…俺の全力を持って…逃げる!!(ダッ)」

詠矢「つーか俺ここんとこ逃げてばっかりだなあ!(ダダッ)」

一方「…(スッ)」

アクセラレータが静かに地面に手を置く。すると無数の岩塊が切り出され、それはそのまま詠矢に向かって飛翔する。

詠矢「うおぉおっ!(ドカドカドカッ)」

詠矢「なあんか、避けるのだけは得意になっちまってねえ!!」

詠矢「この程度ならなんとか…よっと!(ドカドカッ)」

一方「…(キュイン)」

詠矢「うおっ!!(一瞬で、目の前に!)」


再び無造作に振るわれた拳が、詠矢の頭部に命中する。

詠矢「がっ!!(ドカッ)…い…ぎ…(ガクッ)」

詠矢「(あの細い腕で、なんて威力だ…)」

詠矢「(しかもあんな適当なパンチが…反応も出来ないスピードで…)」

詠矢「…そうだよな…、ベクトル変換なら、身体能力も何もかも思いのままだな」

詠矢「能力ってのは…、人が普通に積み上げる努力を、軽く追い越しちまうんだなあ…」

詠矢「なんか…心が折れそうになるねえ」

詠矢「ま、俺は諦めねえ…けどな!(ダッ)」

一方「…(スッ)…(キュイーン)」

詠矢「意外とワンパターンだな!ギリギリだが…避けれるぜえ!(ドカドカドカッ)」

一方「…」

詠矢「いよっと!(ドカッ)…まだまだっ!!(ドカドカッ)

一方「…」

一方「……(キュイーン)」

詠矢「なっ!!地面が!!(ズサッ)…(ゴロゴロ)…っきしょ…」


一方「…(シュン)」

転倒した詠矢の傍に、アクセラレータがその能力で一気に距離を詰める。

詠矢「しまっ…!!がはあっ!!(ゴッ)…(バキッ)」

勢いに任せた相手の拳が、詠矢の腹部に突き刺さる。

詠矢「(うおっ!!どっか折れたっ!!)」

骨折の場所を確かめる暇も無く、アクセラレータの攻撃が次々に繰り出される。

詠矢「がっ!」

詠矢「いぎっ!」

詠矢「…っ!!!」

ほぼ全身をくまなく殴打され、最後に止めとばかりに、振りかぶった拳が詠矢の顔面に命中する。

メガネが吹き飛び、破片が皮膚を切り裂く。

詠矢「…が…あっ…(ドサッ)」

詠矢「(あー…ヤベえ…痛み感じなくなってきた…)」

詠矢「(えっと…全身打撲、骨折は恐らく肋骨…、ついでに顔面から出血…)」

詠矢「(視界は…なんとか確保…眼球は無事、かな?)」

詠矢「よっ…と(ゴロン)。仰向けになるのが精一杯か…」

詠矢「…流石に死ぬのかね?」

一方「…」

詠矢「どうせ聞こえてねえんだろうけど…」

詠矢「俺は命乞いをするつもりはねし、あんたらの言うことを聞くつもりもない」

詠矢「可能性は消えてないから…な…」

一方「…」

詠矢「…?」

詠矢「お…」

詠矢「ハッ…ハハッ…」

詠矢「来たぜ…可能性が!!」

(とある施設)
研究者「…なんだ…何を笑っている」

モニター越しに写る詠矢の顔には、不適な笑みが浮かんでいた。

研究者「なぜこの状況で笑える…?」

職員B「……あ…?」

職員B「…3番カメラに…人影が…」

研究者「何?…なんだと?」

研究者「ここには誰も入って来れないはずだぞ!」

職員B「で、ですか確かに写っています!」

研究者「どこだ…ええい、拡大しろ!!」

職員B「はい!」

研究者「…あれは…まさか…まさか!!」

研究者「上条…当麻!!」

以上となります。
予想とは違って終わりませんでした。まだ少し続きます。

それではまた。

こんばんわ。
遅くなりましたが書き上がりました。投下します。

(操車場跡)
上条が、空間から突如現れた。すぐ隣には白井黒子がいる。
詠矢の正確な居場所が分からなかったせいか、二人が現れたのは少し離れた場所だった。

上条「詠矢!!大丈夫か!!」

白井「詠矢さん!ご無事ですか!?」

詠矢「タイミングバッチリだな…お二人サン」

詠矢「いい感じでピンチだ…」

一方「…」

上条「なっ…アクセラレータ!お前何やって…!!」

一方「…(スッ)…(キュイーン)」

上条「うおっ!!(風が!!)」

白井「くっ…!(ヒュゴゴゴゴ)」

詠矢「第一位サンは操られてるんだ…、頭に被ってる装置を外して…くれ」

詠矢「上条サン、あんたなら『触れる』はずだ…」

上条「わかった!!っても…風が…(キュイーン)…(くそっ、近づけねえ!!)」

白井「…接近できれば、よろしいのですね?」

上条「…ん?どうするんだ?」

白井「あなたを傍まで飛ばします。あとは何とかしてくださいまし!」

上条「お、おう!って…ちょっとま…」

白井「…(ガシッ)…(シュン)」

上条「(シュン)おわっ…ととと…(ザッ)」

一方「…!」

アクセラレータは拳を振り上げる。それは明らかに上条の頭部を狙っていた。

上条「こんのぉ!!、目ぇさませ!!(ガッ)」

一瞬の隙を見逃さず、カウンター気味に伸ばされた上条の右手が、アクセラレータの頭に届く。

一方「…!!」

上条「こいつだな?…こんなもんっ!!(キュイーン)…(ガシッ)!!」

上条の右手が、頭部の端末を引き剥がし、同時に接続されていたケーブルを引き抜いた。

一方「…が、あぁぁああっ!!」

一方「…(ガクッ)…(ドサッ)」

詠矢「…よし…これでたぶん…大丈夫だ…」

上条「詠矢!これでいいのか?」

詠矢「ああ、流石上条サン…よくやってくれた…」

上条「っていうかお前、ひでえ怪我じゃねえか!」

詠矢「ああ…まあ、そうなんだよなあ…もうあんまり感じねえんだが…」

上条「おい、それってマズイんじゃねえのか?しっかりしろ!」

詠矢「あー、骨折してるんで動かさないでくれ…。救急車呼んでくれると助かるんだけど…」

上条「ああ、わかった!」

白井「(シュン)…詠矢さん…。また随分な有様ですわね…」

詠矢「まー、なんとか…生きているよ…」

研究者『(ジーッ)…(ガガッ)…なぜだ!!』

投げ捨てられた端末から、研究者の声が響く。

研究者『なぜだ、なぜここにいる!。幻想殺し(イマジンブレイカー)の上条当麻!!』

白井「わたくしがお連れしました…」

研究者『お前は…ジャッジメントの白井黒子だな?』

研究者『確かに、お前の能力ならここに入ってくることも容易だが…』

詠矢「へー、お二人さんとも結構有名…なんだねえ…」

研究者『そんなことはどうでもいい!!なぜこの場所に来たかと聞いてるんだ!』

詠矢「いやいや、別に難しいことじゃねえさ…」

詠矢「俺が呼んだんだよ、助けてくれってな…」

研究者『なに?いったいいつの間に…』

詠矢「あんたらに捕まる前さ。上条サンにメール打っといたんだよ」

詠矢「『なんかヤバイ事に巻き込まれてる。助けてくれ』」

詠矢「『ジャッジメントの白井黒子って人が協力してくれるはずだ』ってね」

詠矢「御坂サン絡みで、もしかすると知り合いなんじゃねえかと思ってな…まあバクチだったけどさ…」

研究者『…たったそれだけの情報で…ここまでたどり着いたというのか?』

白井「ジャッジメントの捜査能力を舐めないで頂きたいですわ…」

白井「既にこういう事態は想定済みでしたし」

白井「こちらには別ルートの情報もありましてね…(ピピピピピ)あら…お姉さまですわ」

御坂『ああ、黒子?近くまで来てるんだけど…そっちはどう?』

白井「ええ、予想通り、実験場はここでしたわ…」

御坂『そう、じゃあ私もそっちに行くわ…』

白井「では、今からお迎えに…」

御坂『いーわよ…、入り口ぐらい自分で…作るから!』

御坂「(キイン)…(ビシュゥゥゥン)…!!!」

御坂の放ったレールガンは、操車場跡地を取り囲む隔壁を易々と貫通し、人がゆうに通れる穴を穿った。

詠矢「お?…まさか御坂サン?派手な登場だねえ…」

研究者『御坂美琴まで!!…なぜだ!!』

詠矢「そういえばそうだな…。何で御坂サンが?」

御坂「別にアンタを助けに来たわけじゃないわよ…」

御坂「いきなりアイツから、黒子の連絡先を教えてくれって言われたときは…」

御坂「何のことかと思ったけど…ね…」

打止「アクセラレータ!!とミサカはミサカは急いで駆け寄ってみたり!(タタッ)」

御坂「この子が私のところに来たから…すぐに理解できたわ…」

御坂「アクセラレータが居なくなったって…。ネットワークにも繋がっていないってね…」

研究者『…』

上条「…詠矢からの連絡」

御坂「この子からの捜索願い…」

白井「そしてネットワーク上の余剰演算実験とレベル6シフト…」

白井「これらの情報をつなぎ合わせれば、この場所を特定するのは難しくはありませんでしたわ…」

研究者『き…貴様ら!』

詠矢「…なんだか一部…わからんとこもあるが…、どっちにしろ…俺の悪運も相当なもんだな…」

詠矢「あの短時間で、これだけのメンバーが集まるんだからなあ…」

上条「それは違うぜ」

上条「お前が最後まで諦めずに手を打ったから…。俺に助けを求めてくれたから…」

上条「俺たちはここに辿り着くことが出来たんだ。運なんて簡単なもんじゃねえよ!」

詠矢「…」

詠矢「…ははっ…そうかもな…お褒め頂いて光栄だねぇ…」

白井「…さて」

白井「既に決着は着きました。どこのどなたか存じ上げませんが…」

白井「素直に投降することをお勧めしますわ」

白井「既にアンチスキルにも通報してあります」

白井「あなた方の居場所を突き止めるのも、時間の問題でしょう」

研究者『…』

御坂「そうねえ…」

御坂「一番ヤバイ奴が、復活したみたいだし…」

一方「ん…あ…」

打止「あ、まだ起きちゃダメだってミサカはミサカ心配してみたり!」

一方「…(ザッ)」

おぼつかない足取りで進むと、アクセレータはさっきまで自分の頭にあった端末を拾い上げる。

一方「テメェら…約束…覚えてンだろうなあ…。あぁ!?」

研究者『…!』

研究者『い、いいのか…こっちには人質が…』

一方「…あ?…なんだ?あの医者のことか?」

一方「面白いねえ…爆笑もんだぜ…」

一方「この俺に、人質なんて…通用すると思ってンのか?」

研究者『…なっ!!』

一方「お約束通り…全員残らずブチ殺しにいってやっから…首洗って待ってろやぁあ!!!」

一方「…!!(キイン)」

アクセラレータは怒りのままに地面を踏みつけると、その体は宙を舞い、何処かへと飛び去っていく。

上条「おい!お前[ピーーー]って…ダメだろそんなの!!(ダッ)」

上条「あっ…白井!後のことは頼む!(ダダッ)」


打止「まってよー、アクセラレータ!、とミサカはミサカは届かない思いを叫んでみたり!(タタッ)」

御坂「…あら…みんなまとめて行っちゃったわね…」

御坂「じゃ、私も帰ろうかな…」

白井「あら、お姉さまもですの?」

御坂「まあね…。あの子の依頼は果たせたわけだし、私がここに居る理由はもう無いもの…」

御坂「じゃあ黒子、先に寮に帰るけど…」

御坂「あんたはそこのケガ人の世話があるから、遅くなるでしょう?」

御坂「寮監には私から説明しとくわ」

白井「…お気遣い感謝しますわ。お姉さま…」

御坂「じゃ…ね」

詠矢「…」

白井「…」

詠矢「…」

白井「……」


白井「詠矢さん?大丈夫ですの?」

詠矢「ん…ああ…まあ…なんとか…」

詠矢「あ…そうだ白井サン…」

白井「何ですの?」

詠矢「約束守れなくて…ゴメンな?」

白井「…え?」

詠矢「流石に、全く関わるな…ってのは無理だったが…」

詠矢「レベル6…実験は…何とか…阻止したぜ…」

白井「…詠矢さん…あなたまさか…」

白井「そのために…こんな…!」

詠矢「まあ…約束…だし…ねえ」

詠矢「…」

詠矢「…あ…」

白井「…?」

詠矢「…ねむ……」


詠矢「…」

詠矢「…(ガクッ)」

白井「詠矢さん?」

白井「…詠矢さん!?」

白井「詠矢さん!!詠矢さん!!」

(とある病院)
詠矢「…ん」

詠矢「…ん?」

詠矢「…(見上げれば…見知らぬ天井…)」

詠矢「あ…っと…どこだ?。まあ…病院か…。定番通りベットの上…だね」

冥土帰し「やあ、目が覚めたかね?」

詠矢「あ、ども…。えっと…」

黄泉帰り「僕は医者だよ。君の治療を担当させてもらった」

詠矢「そうなんですか…そいつはありがとうございます…」

詠矢「お、あれ…?痛みとかないですね…。骨折なんてすぐ直るわけないのに…」


冥土帰し「僕の全力を持って治療させてもらったよ。体のほうはもう問題ないはずだ」

冥土帰し「頭を強く打ってるから、念のためしばらく入院してもらうがね…」

詠矢「はー、流石学園都市のお医者さんだ…すごいっすねえ…」

黄泉帰り「いや、君もなかなかのものだよ」

詠矢「俺が…っすか?」

冥土帰し「僕はね、あの研究者に軟禁されていたんだ」

冥土帰し「モニター越しに、君の事は見ていよ」

詠矢「あー、そうなんですか…ちょっと恥ずかしいっですね」

冥土帰し「論証…というのか…かなり特殊な能力のようだが…また無茶をしたものだね」

詠矢「まあ、無茶でもないんですけどね。あの論証じゃあ、大事には至らないだろうと思ってましたので…」

冥土帰し「ほう、何か確信があったのかね?」

詠矢「そりゃまあ、俺だって死にたくないですから…」

詠矢「論証の前提が『認識できる』って事にしといたんで」

詠矢「そんな広い範囲に影響は出ないと思ってました」


詠矢「一個人が認識できる範囲なんてたかが知れてますから。全世界を巻き込むようなことは恐らく出来ないだろうって」

冥土帰し「…なるほど…、論旨の中に、既に限定条件が含まれていたわけだ」

詠矢「そういうことです。まあ、相手を引かせるのが目的でしたから」

詠矢「世界をー、とか、人類がー、とか、派手に吹きましたけどねえ…」

冥土帰し「…すべて計算ずくだったということかね…」

冥土帰し「やはりなかなかのものだよ…君は」

冥土帰し「…そうだ、君の渡すものがあってね…受け取ってくれたまえ…」

詠矢「え?って…メガネと…スマホ?」

冥土帰し「あのジャッジメントの女の子が回収してくれていたみたいだね」

詠矢「ありがとうございます!いやー、これは最後にメール打った後、その辺に投げ捨てたんで…」

詠矢「まさか戻ってくるとは思いませんでした…って…あれ?これ新品じゃないですか?」

冥土帰し「ああ、こちらで用意して、データを移し変えておいたよ」


冥土帰し「今回の件は僕の不手際があってね…出来る限りのことはさせてもらうよ」

詠矢「えーっと、まあ…よく解りませけど遠慮なく…ありがとうございます」

冥土帰し「気にすることはないよ…おっと(プルルルル)内線だ…」

冥土帰し「(ガチャ)はい、僕だ…何かね?…ほう…」

冥土帰し「詠矢君、君に面会のようだ…通してもいいかね?」

詠矢「え、俺にですか?…はい…いいですよ」

冥土帰し「わかった…では、案内してくるよ…」

詠矢「(面会って…誰だろ?…もしかして…)」

土御門「やあヨメやん、大変だったにゃあ」

詠矢「…」

詠矢「…ここはコケていいとこですか?」

土御門「…?」

詠矢「だってこの展開だったら、来るのは女の子でしょうが!!」

土御門「…ヨメやん、現実はそう甘くないんだぜい」

土御門「で、どうだい体の方は?」


詠矢「信じられない速度で回復したよ。そちらのお医者さんのおかげでね」

土御門「なら良かった…。実は、ヨメやんに話があってな」

土御門「来てもらいたいとこがあるんだが…」

詠矢「…なんだよ…またあらたまって…。体の方は大丈夫そうなんだけど…(チラッ)」

冥土帰し「しばらく安静にしておいた方が、といいたいところだが…」

冥土帰し「短時間出歩く分には問題ないよ」

詠矢「あ、許可が出ちゃいましたか…じゃあどうしますかねえ…」

土御門「ちょっと合ってもらいたい人がいるんだけどにゃあ…」

土御門「あ、そうそう、待望の女の子も来てるぜい」

詠矢「…女の子?」

結標「…」

詠矢「あ…えっと…その節はどうも…」

詠矢「結び目サン…だっけ?」

結標「結標よ!!まったく…」


結標「あなた、小難しいこと言う割には、あんまり頭良くないんじゃないの?」

土御門「まあまあ、その辺にしとけ結標」

詠矢「お二人さん…お知り合いってことか…」

土御門「結標は仕事の同僚なんだぜい」

詠矢「仕事…ねえ…まあ、色々ツッコミたい所はあるが…丸呑みしとくわ…」

結標「だいたいねえ、あなたが素直についてくれば」

結標「こんな面倒なことにはならなかったのよ?」

詠矢「……はい?」

土御門「その辺もまとめて説明するにゃあ。どうだい、来てくれないか?」

詠矢「そこまで引っ張られたら行かんわけにいかんでしょ…」

土御門「よし、じゃあ決まりだ。早速行こうぜヨメやん」

(窓の無いビル)
理事長「よく来たね、詠矢空希君…」

理事長「私は学園都市の統括理事長、アレイスター・クロウリーだ」

詠矢「…あー…ども…」

詠矢「…(浮いてる…しかも逆さに)…」

詠矢「あの、大丈夫ですか?頭に血上ったりしません?」

理事長「君に心配してもらう必要はないよ」

理事長「それとも、私まで論証して見せようという魂胆かね?」

詠矢「いえいえいえいえいえ、滅相もございません…」

詠矢「(やろうと思えば突っ込みどころ満載なんだけどねえ…。やめといたほうがいいだろうな)」

詠矢「えーっと…土御門サン。まだ用件を聞いてないんだけどさ…」

土御門「そうだったな…。統括理事長がヨメやんに話があるそうだ」

詠矢「…なるほど。えー、では、拝聴させて頂きます」

理事長「うむ…。君の能力について、一つ忠告があってね」

理事長「論証によって対象の能力を変質させる…極めて特殊な能力だ」

理事長「未知の領域を多く残した能力ともいえる反面…」

理事長「その効果は不確定で、そして不安定だ…。『増幅』については…特にね」

詠矢「…不確定なのは自覚ありましたけど…不安定…ですか…」

理事長「そうだ、むやみに増幅の能力を使えば、どんな影響や反動が出るかも解らない」

理事長「暴走する可能性もある」

詠矢「…」

理事長「そういった、多くの危険をはらむ増幅の論証は、自重してもらいたのだ」

詠矢「…えーっと…まあ」

詠矢「なんというか、意外と普通に忠告なんですね…」

詠矢「ま、理事長サンからの直々のお願いなら、聞かないわけにもいかないでしょうし…」

詠矢「俺もいろいろとヤバイと思ってたところですので…。素直に承ります」

理事長「理解が早くて助かるな…」

理事長「この学園都市には、既に中止されているレベル6シフト実験を企てるものがまだいる」

理事長「私と君が接触したことを知れば、彼らも手を出しづらくなるだろう」

理事長「今回のような件に巻き込まれることは、恐らくもうないだろう…」

詠矢「あ…もしかして…。結標サンが迎えに来た理由って…」

土御門「技術部に不審な動きがあったことは掴んでいた」

土御門「先回りして、ヨメやんを保護しようと回収に行った…らしい」

詠矢「らしいって…土御門サンは知らなかったのかい?」

土御門「結標が直接組織から指示を受けていたらしくてな…。俺は聞いていなかった」

詠矢「じゃあ、さっき言ってた、素直に来てればってのは…」

理事長「君といち早く接触する為に、組織を通じて彼女に動いてもらった」

詠矢「先に接触してれば…、あの研究者も手を引いていたかも…ですか?」

理事長「それでも彼らが実験を強行した可能性も捨てきれないが…」

理事長「中止する可能性も高かっただろうね」

詠矢「…」

詠矢「…いやいやいやいや」

詠矢「なんか俺が悪いみたいな空気ですけど。そりゃ違うんじゃないですか?」

詠矢「そりゃ、案内役の人にちゃんと事情を話とかないと…」

詠矢「俺だって素直に着いてけないっすよ」

詠矢「ただでさえレベル6実験の話を聞いてて、こっちは警戒してるんですから」

理事長「…」

土御門「ははっ…アレイスター。今回ばかりは、お前の秘密主義が裏目に出たようだな」

土御門「ヨメやんの言ってることはもっともだぜ?」

理事長「…そのようだな」

詠矢「…まあ…済んだことですので別にいいですけどね」

詠矢「こっちは、恩人に恩を返せたかなと思ってるんで、結果オーライですし」

理事長「そういってくれると助かる…」

理事長「私からの話は以上だ。君が納得してくれればそれでいい…」

詠矢「はい、まあ…納得はしました」

詠矢「ただ、こっちからも一つお願いが」

理事長「なんだね?」

詠矢「俺の『増幅』の力なんですが…」

詠矢「どうしょうもなくヤバくて、それを使わざるを得ない状況になったとき」

詠矢「俺の判断で使わせてもらっていいですか?」

理事長「…それはどんな状況かね?」

詠矢「まあ…かっこつけるわけじゃないですけど…」

詠矢「自分の命とか、この学園都市とか、俺の周りの人たちとか」

詠矢「守りたいものを守らなきゃいけないとき…ですかね?」

理事長「…いいだろう…その時点での判断は君に任せるよ」

理事長「ただ…この学園で私の目が届かない場所はない。そのことを忘れないようにね」

詠矢「わかりました…、ありがとうございます…」

土御門「ヨメやん…言ったねえ…」

詠矢「いや、蒸し返えさんでくれ…かなり恥ずかしいんだから…」

土御門「話は終わったようだな。アレイスター」

理事長「ああ。引き上げてもらって構わないよ」

詠矢「んじゃ、失礼しまっす…」

(とある街角)
結標「…(シュン)」

詠矢「っとと…」

土御門「…よ」

詠矢「ふう…さて、どうするかね」

土御門「解散かにゃあ?」

結標「仕事も終わりだし…いいんじゃないの?それで」

詠矢「んーそうさな」

詠矢「まあ病院もそう遠くねえみたいだし。歩いて戻るか」

詠矢「んじゃ…二人ともまたなー」

詠矢「…(テクテク)」

詠矢「…(ふーむ)」

詠矢「…(ようやく考えがまとまり出したな)」

詠矢「(恐らく…理事長サン最初から俺と接触する気は無かったんだろう)」

詠矢「(俺を連れて来るつもりなら、面識のある土御門サンを使いに出すほうが確実だ)」

詠矢「(わざわざ結標サンを使うのは無理がある…)」

詠矢「(となると、あえて実験をを止める気はなかった…ってことになるな)」

詠矢「(俺の能力では、レベル6が生み出せないことを見越した上でね…)」

詠矢「(実験が失敗に終われば、次に同じ事を考える奴は居なくなる)」

詠矢「(抑止としては、より効果が高いから…ってとこだろうな)」

詠矢「(まあ、いまさら確認も出来んし、口外する意味もねえから)」

詠矢「(この考えは俺の頭の中にしまっとくか…)」

土御門「…ヨメやん…考え事かにゃあ?」

詠矢「うをわっ!!びっくりしたぁ!」

詠矢「あれ、土御門サン、解散じゃなかったっけ?」

土御門「そりゃ、まだ治療中のヨメやんが心配になってねえ」

詠矢「あー、そりゃどうも…」

土御門「それより…随分と考え込んでいたみたいだけど?」

詠矢「いやいや…まあ、色々とあったんで、整理をね…」

土御門「整理…ねえ…」

詠矢「そうそう…」

土御門「それだけか?」

詠矢「…まあ」

詠矢「…あんまり突っ込まんでくれい」

土御門「…」

土御門「…ははっ」

土御門「そうだな、そうしとくか」

詠矢「…すまんね」

土御門「なあヨメやん」

詠矢「お、おう!なんでい」

土御門「病院まで送ってくぜい」

詠矢「…いやー、実は場所がよくわからなくてねえ」

詠矢「助かるぜ土御門サン」

(とある中学校)
佐天「…はあ」

下校時間はとうに過ぎた夕暮れ。佐天涙子は、下駄箱で靴を履き替えながら小さくため息をつく。

佐天「(詠矢さん…あれから会えてないなあ…)」

佐天「(あのコンビニに行っていないし…どうしちゃったんだろ)」

佐天「(会って何するってわけでもないけど…)」

佐天「(あのままっていうのもなあ…)」

佐天「…はあ…」

初春「…どうしたんですか佐天さん」

佐天「あ…、初春」

初春「なんだか最近元気ないですねえ」

佐天「えー、っと…そうでもない…よ?」

初春「そうなんですか?ここんとこ支部にも来ないですし…」

佐天「確かに行ってないなあ…。支部…?」

佐天「(そうだ、ジャッジメントなら…何か知ってるかも)」

佐天「初春。あの…さあ。詠矢さんって人、知ってる?」

初春「詠矢さんですか?はい、知ってますよ」

初春「何度かお会いしましたね。お話したことは殆どないですけど…」

佐天「やっぱりそうなんだ…。えーっと…さあ…」

佐天「今何してるのか…知らないかなあ…って…」

初春「詠矢さんですか?…確か…入院されてたみたいですよ?」

佐天「へっ、入院?どして!?」

初春「事件に巻き込まれて…大怪我されたとか…」

佐天「大怪我!?って…だっ…大丈夫なの!!」

初春「えっと、詳しいことは機密事項なんで話せないですけど…」

初春「確かもう退院されたとかで…大丈夫だと思いますよ?」

佐天「…あ…そうなんだ…。よかった…」

初春「っていうか佐天さん…、お知り合いだったんですか?」

佐天「あ…ああ、うん…ちょっとね…へへ…」

初春「…あ、佐天さん、もしかしたら…もしかして…(ニヤニヤ)」

佐天「なによその顔は…」

佐天「なんとなく言いたいことわわかるけど」

佐天「そういうのじゃありませんから!」

初春「えー、ほんとですかぁ?…」

初春「でもどっちにしろ、もう普通に学校行かれてるんじゃないですか?」

佐天「そうか…退院してるんだもんね…(またコンビニ行けば会えるかな)」

初春「あ…(ジリリリリ)予鈴鳴りましたね、ほんとに帰らないと…」

佐天「あ、ほんとだ。じゃ、とりあえず帰ろっか」

あわてて校庭に出る二人。小走りで校門に向かう。

詠矢「お、ちわす」

校門を抜けた瞬間、二人は突然声をかけられる。

佐天「あっ!…詠矢…さん?」

初春「…どもです…」

振り向くと、壁に背を預けた詠矢がそこに立っていた。

詠矢「いやどうも。ストーカーみたいな真似して悪いね」

詠矢「ちょいと佐天サンに話したいことがあってねえ」

詠矢「白井サンから学校の場所を聞いといたんだ」

初春「…えーっと…私は支部に寄らないといけないので」

初春「お先に失礼しますねー(ソソクサ)」

佐天「ちょっと!!初春!」

詠矢「…お邪魔だったかな?」

佐天「え?いえ…そんなことは…」

佐天「実は…私も会いたいなーって、思ってたとこなので…」

詠矢「へえ、そいつなうれしいねえ…」

詠矢「んじゃ、ここじゃなんだし、場所変えようか」

佐天「はい、わかりました…」

とある公園)
詠矢「ここならいいかな」

詠矢「んじゃ、あんまり時間取らせるのもアレなんで、手短に」

詠矢「さて…どっから話したもんかな…」

佐天「…」

詠矢「こないださ、佐天サンを突き放すような言い方しちゃったけど」

詠矢「ちょいと俺の方に事情があってさ」

詠矢「あんまり人と関わっちゃいけない状況でね…。佐天サンにも距離を置いてもらう必要があったんだ」

詠矢「細かいことを説明する訳にもいかなくてね、あんな言い方しちまった」

佐天「…詠矢さんの能力の事…ですか?」

詠矢「まあそうなんだけど…。詳細を話すと佐天サンに必要の無い情報を与えちゃうからねえ」

詠矢「知らないほうがいいよ」

詠矢「まあ、いずれにせよ…」

詠矢「佐天サンが俺に、一定の信頼を寄せてくれていたとしたら」

詠矢「俺のあの言葉はそれを裏切るものだったろう…、佐天サンを傷つけてしまったかもしれない」

詠矢「それは謝りたいんだ…」

詠矢「ゴメンな?」

佐天「…」

詠矢「まあ、何も気にしてないっていうんなら…」

詠矢「自意識過剰のキモイ奴、ぐらいで思ってくれていいからさ…」

佐天「…」

佐天「あの…」

佐天「わたし…難しいことはよくわからないですけど…」

佐天「詠矢さんは、わたしのことを気にかけてくれたんですよね?」

詠矢「…へ?」

詠矢「…いや…そういうことじゃない…けど…?」

佐天「初春に聞きました、何か事件に巻き込まれてたって」


佐天「それで、大怪我したって…」

詠矢「…」

佐天「もしかして私が巻き込まれるんじゃないかって…そう思って…」

詠矢「…」

詠矢「えーっと…ええとね?」

詠矢「その…断じてそうゆう事ではない…と思うんだが…?」

佐天「…ふふっ…いいですよ、じゃあ…」

佐天「私がそう思うのは自由でしょ?」

詠矢「…まあ、それはそうだけど…」

佐天「いいんですよ、それだけで…私は…」

佐天「嬉しいんです!」

詠矢「…そうなんか…、まあ、それが一番佐天サンにとって」

詠矢「一番納得できるんだったら、それでも…」

佐天「もう…また難しいこと言って…」

佐天「いいんです!こういうのは」

佐天「理屈抜き、なんですよ!」

詠矢「…」

詠矢「……」

詠矢「ははっ…そうか、『理屈抜き』か…そいつは…」



詠矢「論証出来ねえな…」

>詠矢「ははっ…そうか、『理屈抜き』か…そいつは…」
>詠矢「論証出来ねえな…」
いいなこれ

以上です。
これでこの話は完結となります。

長い間ありがとうございました。

めっちゃ眠い

あ^^コテです^^

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