竜華「一巡先が見えるようになった」(477)

セーラ「マジでか」

竜華「マジやで」

泉「すごいやないですか!」

浩子「いつの間に生死の境を彷徨ってたんで?」

竜華「えっ……いつやろ、寝てる間にかな」

浩子「はあ。つまりぐっすり眠って起きたら身についてたと」

竜華「うん」

怜「不思議なこともあるもんやなー」

セーラ「ほな、早速見せてもらおうかい」

泉「卓の準備できてますよー」

竜華「えっ、雀卓?」

浩子「他になにがあるんで」

怜「あー……」

竜華「誰が麻雀のことだと言った……?」

セーラ「は」

竜華「うちは確かに一巡先が見えるようになったと言った……しかし!
    だーれもそれが麻雀のことだとは言ってないんやー!」

セーラ「えばるな!」

泉「えー。なんすかそれ……」

浩子「じゃ、なんの一巡先が見えるように?」

竜華「ババ抜き」

セーラ「ば、ばばぬき」

泉「えーと……それはあの、同じ数字が二枚になったら捨てれるトランプのゲームの」

竜華「そや」

泉「……なんで?」

竜華「さあ?」

怜「なんでやろなあ」

泉「えー……」

浩子「……とりあえず、試してみましょか?」

竜華「もちろんトランプ持ってきたで!」

セーラ「準備ええな」

竜華「カード切ってー、配ってー、よし!」

泉「雀卓を囲んでババ抜きをする麻雀部レギュラー……ああ、周りの部員たちの目線が冷たい」

怜「これってどう回るんやったっけ」

浩子「カード引いたら反対の人に取られる感じで」

竜華「順番決めや!じゃーんけーん、ほい!」

セーラ「さっきからテンション高いわ、竜華」

泉「早く能力使いたくて仕方ないんちゃいます」

セーラ「もー、とっとと終わらせようや」

竜華「はい一組目早速捨てれた!さあさあ、はよ取って!」

セーラ「あーもう、うるせー。……ほんとに一巡先見えとるんか?」

竜華「ふっふ、それは終わってみればわかることやな」


――――――

浩子「終わってまいましたな」

セーラ「竜華、何位?」

竜華「三位……」

怜「めちゃくちゃフツーやん」

泉「じゃ、これは部長のお茶目だったということで」

竜華「ちょ、ちょ、待って!」

セーラ「まーだなんかあるんか」

竜華「ホントに一巡先は見えてたんやって!ただ、見えた通りにやってたらこうなって……」

怜「一巡先が見えたら、それを変えるように動かんと意味ないわ」

竜華「ど、どーやって?」

怜「……取るカードを変えるとか、取られる前にカードを入れ替えるとかいろいろあるやろ」

竜華「ああ、なるほど!」

泉「……じゃ、またやるんですか?」

竜華「あたりまえやろ!」

セーラ「えー……」

―――――

竜華「ぎゃー!裏目った!」

セーラ「ダメダメやん」

竜華「うううう……」

浩子「ところで、園城寺先輩はこれの一巡先は見えへんのですか?」

怜「あー、無理やわ。うちのは麻雀だけに限られとるみたい」

泉「それが正しいんやと思いますけど、麻雀部としては」

竜華「ええと、これ取られるとセーラが上がってまうから、ええと……」

セーラ「おーい、はよ引かせろや」

竜華「急かすなー!」

セーラ「えー?」

―――――――

竜華「やった、二位!」

怜「まずまずやな」

泉「えー?一巡先が見えるのに二位ー?」

竜華「別に怜も毎度毎度一番ってわけでもないやろ!」

泉「はあ、まあ、確かに……」

セーラ「じゃーもうええやろ。ほら、トランプしまえや」

竜華「もう終わりー!?あ、あと一回!な!な!」

怜「こら部長」

浩子「そろそろ止めとかんと、監督来た時に怒られるで」

竜華「うううむむ……」

怜「明日の休み時間にでもクラスメイト誘ってやればええやん。な?」

竜華「うー……」

セーラ「やーっと終わった」

竜華「うう、トランプ……」

怜「あんまええとこ見せれんかったなあ」

竜華「一巡先が見えても、それを生かすのって難しいわ。何気に怜はすごいことやってたんやなあ」

怜「麻雀とババ抜きじゃできることも大分違うけどな。まあ、もっと褒めてくれていいで」

竜華「せやなー、もっと練習せんといかんわ」

怜「だから部長」

浩子「個人的にはその能力の生かし方よりも、なんでいきなりそんなもんを使えるようになったかが気になるんやけど」

竜華「えー?でもなあ、ほんまに心当たりないんやけどなあ。昨日なんかあったっけ?」

怜「いつも通りやったなあ」

浩子「うーん、データ不足か。ま、何かわかってもババ抜き限定の能力じゃあ大したことないわな」

竜華「あ、ババ抜きを馬鹿にしよったな!」

怜「竜華だって、今までも別にババ抜きに思い入れあったわけやないやん」

竜華「う……」

泉「せめてもっと広く、トランプゲームで使えるとかならすごいんですけどねえ」

竜華「あ、ジジ抜きでもいけるで!」

セーラ「もうそれはええやろ。麻雀やろうや」

怜「せやな」

竜華「ひ、ひどい……くっ、ババ抜きと麻雀に何か関係はないんか!?」

浩子「ないですわ」

竜華「…………」

~~~数日後~~~

竜華「おーい、みんな!なんとウチ、また新たな能力に目覚めてしまったで!」

怜「らしいで」

セーラ「お、おお。今度こそ麻雀なんか?」

竜華「いや、違うけど」

泉「じゃあもう座っててください。部活始まってるんで」

浩子「言うなあ一年」

竜華「そんなこと言わんで聞いてやー!」

怜「面目ないなあ部長」

セーラ「じゃ、言ってみいや。聞くだけ聞いたる」

浩子「あんまりくだらんと買い出し行かせますよ」

竜華「ふっふっ……聞いて驚けや、なんと!ジェンガの一巡先が見えるようになったんや!」

セーラ「俺コーラ」

浩子「うちオレンジ」

泉「カフェオレで」

怜「ウーロン茶」

竜華「な、なんでー!?凄うない?凄うない?」

セーラ「くだらなさなら、ババ抜きとどっこいどっこいやん……」

竜華「いやいや、今度のはすごいんやって!これならゲームの性質上、確実に負けへん!」

浩子「ついでにゲームの性質上、絶対に一番になれへん」

竜華「……!!!!!」

怜「今気付いたんか」

泉「メンバーの中で、一人だけ負けになるゲームですしね」

セーラ「それに、得意な奴なら一巡先なんて読めへんでも強いやろ」

怜「ついでに崩したらうるさいし、ここでやるんはまずいんちゃうかなあ」

竜華「せ、せっかく自慢してやろ思って持ってきたのに……」

浩子「わざわざ重いもんを御苦労です」

竜華「…………」

セーラ「あーあ、すっかりいじけてしもうた」

泉「麻雀部なのに全然関係ない能力に目覚めるほうが悪いですわ」

浩子「前はババ抜き、今度はジェンガ……一見何の関係もないように見えますが」

セーラ「見えますが?」

浩子「……データ不足や」

セーラ「なんやそれー」

怜「一巡先が見えるってことくらいやな、共通してるのは」

浩子「一巡先と言えば園城寺先輩やけど。ホンマに心当たりは?」

怜「うーん……」

竜華「あーあ、これなら世界狙える思ったんやけどなー……」

泉「部長もいつまでいじけとるんですか。席ついてくださいよ」

竜華「うー……」

怜「またババ抜きでもやろか?」

セーラ「こら怜、余計な事を!」

竜華「あ、それなんやけどな。ジェンガの一巡先が見えるようになってから、ババ抜きの方は見えんようになってしもうたんや」

怜「え、そやったんか」

浩子「新しい能力に目覚めたというより、上書きみたいなもんなんかな」

竜華「普通にババ抜きするんでも構わんけど?」

怜「だから部長が何言ってるんや」

竜華「じゃあジェンガ!」

怜「論外」

竜華「ううう……!」

~~~数日後~~~

竜華「おーい、みんな!なんとウチ、またも新たな能力に目覚めてしまったで!」

怜「らしいで」

セーラ「またかい、もうこれ何度目や?」

浩子「三度目やな」

泉「……で、それは麻雀とは?」

竜華「もちろん全く関係あらへん!」

セーラ「開き直るなや」

泉「で、今度はなんなんですか」

竜華「あ!聞いてくれるんか!?」

セーラ「聞かせるまでしつこいやろ、絶対……」

竜華「ふっふー、なんとな、なんとなー」

セーラ(うぜえ)

竜華「なんとっ!ジャンケンの一巡先や!」

泉「……グーチョキパーの、あれですか?」

竜華「せや!」

浩子「それ、ホンマならかなり凄いんやないですか」

セーラ「前のに比べればやる機会も多いやろうしな」

竜華「さあ、誰かこのウチに挑む命知らずはおらんかー!?」

怜「ほな私が」

浩子「元祖一巡先 対 ニワカ一巡先の対決やな」

竜華「ふふふ、いくら怜が麻雀に強い能力を持ってるとしても……このじゃんけん特化のウチには勝てへんで!」

セーラ「……自分で言ってむなしくならんのやろか?」

竜華「いくで、怜!」

怜「こいや、竜華!」

「「じゃんけんぽん!じゃんけんぽん!じゃんけんぽん!」」

竜華「三戦全勝!」

怜「負けたー」

セーラ「おー。……竜華!じゃーんけーん」

竜華「ポン!……勝った!四勝!」

泉「じゃんけんっ」

竜華「ポン!……しゃあ、五勝!」

浩子「……さーいしょーは」

竜華「チョキ!へへ、六勝や!」

浩子「む。ひっかけにも対応してくるとは……」

竜華「すごいやろ!すごいやろ!」

セーラ「……うーん、確かにこれは文句なしにすごいわ」

竜華「せやろ!せやろ!」

泉「うん、すごいですわ。……で、麻雀とは何の関係が?」

竜華「え。……いや、すごいやろ?」

浩子「確かにすごい。で、麻雀とは何の関係が?」

竜華「……麻雀とは何の関係もあらへんけど、すごいやろ?」

怜「うんうん、竜華はホンマにすごいわ。麻雀とはなんの関係もないけど」

竜華「…………」

セーラ「さーて、麻雀しよか。麻雀部らしく」

浩子「せやな。麻雀部らしく麻雀せんとな」

泉「ここはジャンケン部じゃないですもんね」

怜「よーし、一巡先を読む力、見せたるでー」

竜華「…………」

―――放課後、竜華の家―――

怜「おじゃまします」

竜華「おー」

怜「喉乾いたわ。お茶飲んでもええ?」

竜華「んー」

怜「今日のセーラはえらい調子よかったなあ、ちょっと危なかったわ」

竜華「へー」

怜「……竜華は、今日はえらいこじんまりしてたな」

竜華「せやなー」

怜「……まーだ拗ねてるんか」

竜華「拗ねてへんわー!」

怜「まあええやん、実際ジャンケンに絶対勝てるってのは便利やと思うし」

竜華「……例えば?」

怜「え。……えーっと、そやなー、あ!あっちむいてホイで一方的に攻撃できる!」

竜華「……他には?」

怜「皆で分けてあまったお菓子を絶対奪える!……あと、他にもなんとなくジャンケンで争うような細かい事には有利やし」

竜華「……そう、せいぜいそんなところやんな……」

怜「まあまあ、そう気を落とさんと……」

竜華「はあーあ。今度のはめちゃめちゃすごい能力やと思ったのになー。じゃんけん、じゃんけん、じゃんけんかー……あ」

怜「竜華?」

竜華「そ、そうや、ジャンケンといえばこれを忘れとった……野球拳!」

怜「や、やきゅーけん。……まさか」

竜華「ふ、ふふ、ふふふ、ふーふふふふふ……!」

怜「いや、私、今はそーいう気分やないんで……」

竜華「まあまあ、まあまあまあ!大丈夫やって、パパっと終わらせるから!」

怜「いや、そーいう問題やないんで……」

竜華「まあまあまあまあ!ちょっと私が一方的な展開になるだけやから!」

怜「いや、そーいうアレはちょっと……」

竜華「やーきゅーうー、すーるならー♪」

怜「あ゛ー、聞いてないわこいつ」

竜華「こーいうー具合にしやしゃんせー♪アウト!セーフ!よっよいーのよい!……しゃーっ!」

怜「あー……」

―――――

竜華「ふふふ、もう後がないなあ、怜ィ……」

怜「流石にずるいやろ、これ……」

竜華「何を言うんや、正当な野球拳のルールに乗っ取ったまで!さーて残り一枚、さくっと剥いたるかー」

怜「……待ちいや、竜華」

竜華「へ」

怜「ここまでずっと竜華に有利やったんや、こっから先くらい私有利のゲームでもええよな?」

竜華「ふーん?まあ別にかまわへんよ、もう勝ちは頂いたようなもんやしなー」

怜「あ、そういうこと言うと……まあええわ」

竜華「それで、なにするつもりなん?パンツ一丁の怜さん」

怜「くっく、それはもちろん……脱衣麻雀に決まってるやろ」

竜華「うお……」

怜「ん、怖いんか?まさか麻雀部部長ともあろうものが、麻雀勝負から逃げたりはせんよな?」

竜華「ふ……そっちこそええんか、麻雀なんて勝負の長引きそうなん選んで。一思いに負けて素っ裸になった方がよかったんやないか」

怜「何言うとるんや、竜華。この脱衣麻雀、裸になった程度では終わらせんよ……」

竜華「え」

怜「点数を毟れるだけ毟って、それはもうものすごいことをするで。果たして明日、竜華は自分の足で歩いて学校行けんのか心配やな……!」

竜華「じょ、じょーとーやないか……!」


―――――

怜「ロン。ザンク」

竜華「早っ!……あれ、ひょっとして早さが命の二人打ちやと、一巡先見るんてものすごいずるい……」

怜「はよ脱げや、三千九百点分」

竜華「あの、怜さん……?」

怜「ま、別に何枚脱いでもえーよ。どうせ最後には丸裸やしな……」

竜華「ひ」

怜「ロン。七千七百」

竜華「え」

怜「ロン。三千九百」

竜華「ちょ、」

怜「ロン。二千九百」

竜華「ま」

怜「ツモ。一万二千」

竜華「が」

怜「ロン。二千九百」

怜「ロン。千五百」

怜「ロン。二千」

怜「ツモ。九千六百」

竜華「………あー……・・・・・・・・・」

~~~翌日~~~

怜「はよー」

竜華「……よー」

泉「ちっす」

セーラ「おー。……なんや竜華、えらい疲れた顔しとるな」

竜華「え、そうかな?はは、ははは」

浩子「精も根も尽き果てたってカンジですわ」

怜「ま、大目に見たってや」

泉「へ?」

竜華「ははは、はは、は、あー……」

セーラ「しっかりせえよ、竜華がそんなんやと調子上がらんわ」

泉「そうそう、いつもの無駄な騒がしさを見せたってください」

竜華「え。うち、そこまで毎日うるさくしとる?」

浩子「うるさいってほどやないけど、ムードメーカーとして大事なんは確かです」

竜華「そ、そーか。じゃー今日も気合入れていかんとな!……そうや、また今日もテンション上がる話題があるんやった!」

泉「ま、まさか?」

竜華「そのまさかや!なんと今日もまた別の能力を開花させてしまったんやで!」

セーラ「昨日ジャンケンに変わったばっかりやん……」

浩子「二日連続とは。なかなか気まぐれな能力やな」

泉「それで、今度はどないなもんで?あ、麻雀関係じゃないのはわかってるんで言わなくていいです」

竜華「テトリス!」

セーラ「……まーた妙なんが来たな」

竜華「妙なんとは失礼やな……たしかにちょっと変かもしれんけど」

怜「ちょっとどころやないで、たぶん」

泉「ていうかテトリスって、元から次来るんがわかってるんやありません?」

浩子「あ、確かに」

竜華「そ……その上の表示を見なくても、パッと頭に浮かぶんやで!よそ見してミスする心配なし!」

セーラ「そのフォロー、さすがにキツうないか?」

竜華「うっ」

浩子「ま、ハズレ能力やな。たまにはこんなこともありますて」

泉「たまにというか、今までの全部そんなんですやん」

竜華「あ……あまりこの能力を舐めちゃイカンで!」

怜「無理せんほうがええよ」

竜華「無理しとらんわー!」

セーラ「どう使うんや、そんなもん」

竜華「一巡先は無意味でも……二順先を見れば十分使える!」

泉「た、確かにそうかもしれませんけど……」

浩子「慣れへんことをするもんじゃあ」

竜華「えーい、証拠見せたるわ!」

泉「わ、今は懐かしきゲームボーイカラー」

怜「こんなもん学校に持ってきて、見つかったら怒られるやろうな」

竜華「あんまり怖いこと言わんといて!とにかくスイッチオン!」

セーラ「……なんも映らんけど」

泉「壊れてるんちゃいます?」

竜華「あれー?おかしいなあ……あ、きっと電池切れや!ちょっと買ってくる!」

泉「……行ってしまった」

怜「まーた部長のサボりかい」

竜華「ただいまー」

セーラ「はや」

竜華「廊下は走るなーて怒られてしもうた。三度も」

怜「そりゃそうやろなあ」

竜華「とにかく新しい電池に入れ替えて、スイッチオーン!……ついた!」

泉「おー、なつかしい画面」

竜華「さっそく見せたるわ、新しい一巡先を見る力を!」


竜華「いくで……!ダブル、二順先―――!!」



セーラ「ゲーム機に向かって大ゴマで啖呵切る麻雀部の部長がいるらしい」

怜「世も末やな」

×順
○巡

竜華「見えたッ!『¬』や!」

怜「……それで、どないするん」

竜華「こーしてこーして……ほら、早速一ライン消えた!」

浩子「ふつーにやっててもそうなりますわ」

竜華「ま、まだまだこれから!ダブルは続けて……えい、ほ、とう、そりゃ!……ぎゃー!」

怜「あ、しくった」

泉「どう積もうか考えて、操作ミスしちゃ世話ないですやん」

竜華「うう……テトリスって、こんな難しいゲームやったっけ……」

セーラ「ただ竜華がヘタクソなだけやろ」

浩子「確かに、このソフトのハイスコアひどいもんやな」

泉「よくデータ生きてましたね。そっちのほうがすごいな」

竜華「…………」

竜華「な……なーにがテトリスや、こんなん麻雀とはなーんも関係あらへんやないかー!」

泉「ひい、逆切れした」

怜「だから無理するな言うたのに」

竜華「下級生に八つ当たりしたる!特打ちやー!」

モ部員A「わー、なんか来た!」

モ部員B「カモにされるで、逃げろー!」

竜華「またんかー!」


セーラ「……なかなか斬新な教育方法やな。そういうことにしておこう」

泉「前から思ってたんですけど、なんであの人が部長なんです?」

セーラ「……一応、面倒見とかはええからな、信頼もあるし……あとそれ、竜華の前で言ったらアカンで」

怜「はー、まったく困ったもんや」

浩子「部長はあれがええんですよ、きっと……ところで園城寺先輩」

怜「なんやフナQ」

浩子「これで部長の能力発現は合計四回、しかも昨日からは二日連続なわけですが……まだなんか思いつくことないですか?そのきっかけとかについて」

怜「あ、あー、あー……その、なくはないんやけど……」

浩子「え、ホンマですか。詳しく教えてください」

怜「えー。いや、でもなあ……」

浩子「そうもったいぶらずに、頼んますよ」

怜「んー……まあ、その、な……」

浩子「はい」

怜「そのー、アレをー、アレでー、アレしてー」

浩子「全然わかりませんわ。何をどうするんやって?」

怜「つまりやなー、アレというか、ナニをどうするていうか、そのやなー」

セーラ「なに、なんのハナシ?」

泉「どしたんです」

怜「なんのはなしというか、ナニのハナシというか」

浩子「部長に能力が目覚めたキッカケがわかったそうや」

セーラ「えー、ホンマに!?」

泉「で、で、それはどういう」

怜「どういう言われてもなあ、つまりやなー」

浩子「これ以上引っ張らんでくださいよ」

セーラ「はよせーやー」

怜「んー、つまりは、幸せのコウノトリさんが能力を授けてくださったんやろうなー。……これ以上は私の口からは言えへん」

泉「へ?……あ、ああ……」←察した

浩子「はあ、へえ……ほお……」←察した

セーラ「え?え?」←ちんぷんかんぷん

浩子「江口先輩、ちょーっとこっちへ」

セーラ「お、おう?」

ゴニョゴニョゴニョゴニョ

セーラ「…………」←察した

怜「ま、まあ、そういうことやな、うん」

セーラ「い……いくらなんでもそれは、やりすぎちゃうんか……?」

怜「へ?ちょ、フナQ、何言うたん」

浩子「まあ、あることないことを」

怜「ないことは言わんでえーやろ!?」

浩子「いやあ、本当にないこととは限りませんので」

怜「く、何言うたかわからんのに否定できへん……」

泉「えーっ……」

浩子「とにかく、これで方法はわかりましたわ」

怜「え、何が?」

泉「先輩方がただならぬ関係だったってことですか?」

浩子「それは前からわかってたやろ」

セーラ「能力は幸せのコウノトリが届けてくれるっちゅーことか?」

浩子「それ信じてたんかい。そうやなくて、部長に麻雀関係の能力を身につけさせる方法や」

怜「え。そんなんわかったんか」

浩子「あー、まあ。……つまり単刀直入に言いますと、園城寺先輩。部長としこたまアレコレやりまくってください」

怜「へ」

浩子「二度も言わせんでください」

怜「二度も聞きとうないわ。……ホンマに?」

浩子「名付けて『数撃ちゃそのうち引き当てるやろ作戦』!」

泉「ひえぇ……」

セーラ「うっわー」

怜「えー……」

浩子「園城寺先輩、これは大事なことなんです。打倒白糸台を掲げる我々千里山一同、戦力はあるにこしたことはない」

怜「あー、まあ」

浩子「そして、要の部長に強い能力を与える可能性があるなら試さんわけにはいかんのです」

怜「んー、ああ……」

浩子「さあ、愛の力で白糸台を倒しましょうや!」

怜「はあ……」

セーラ「うわー、すごい聞こえはいいこと言っとる」

泉「なんやコワイですね」

怜「でもウチ、病弱なんやけど。そない毎日がっつかれたら倒れてまうわ。竜華ってあー見えてあーやから」

浩子「そうなったら元も子もないですし、とにかく倒れんことを第一に頼んます。インターハイまでになんとかなればええわけやし」

怜「はあ、またえらい難しい注文やな……まあ、頑張ってみるわ」

泉「ところで、その部長は今どこに?」

セーラ「んーっと……あ、あそこの卓や。下級生相手に大人げない事やっとる」

怜「よっぽど悔しかったんかな、テトリス」

浩子「園城寺先輩、『その憤りを私の体にぶつけてもええんやで?』くらいのこと言ってきてくださいよ」

怜「死ぬわ」

セーラ「し、死ぬほどなんか」

浩子「腹上死とかやめてくださいよ、ホンマに」

泉「自分が焚きつけたくせに……」

怜「女同士でも腹上死ってありえるんやろか?」

浩子「さあ、なくはないんとちゃいます」

泉「……大丈夫なんかな、この部活……」

このまま終了まで一直線か、別の能力ネタで引き延ばすかどっちがええかな
後者なら途中寝落ちするけど

トキと寝れば誰でも能力貰えるんか!?

>>147
コウノトリさんが運んでくるので愛が無ければならない

ほどほど引き延ばして終わらせる
落ちたらごめんぬ

何、起きるまで保守し続けることも厭わんよ

そもそも千里山一軍は怜のハーレムみたいなもんだよ

寝てしまったのか・・・

起きてよぉ!


あかん・・・そろそろ俺も寝てまいそうやで

おはようさん、保守やねん
次はキンクリはなしやで・・・?

怜「りゅーかのふとももで絞殺されたい…」
竜華「な、何言うてるの!?うちがそないな…怜のこところっ…そないなことせーへん!!」
怜「それじゃあ死ぬほどふとももに挟まれたい…」
竜華「死んだらあかーん!!」
怜「ふとももソムリエとして本望や…」
竜華「あかーん!!」

>>139から

~~~数日後~~~

浩子「そんで、今日はどんな能力が」

竜華「神経衰弱や!」

泉「またトランプですか」

竜華「で、でもこれはババ抜きよりは強いで!一巡もカード先に見れるんやから」

セーラ「あー、確かになかなか便利やな。はい解散」

浩子「そんじゃ園城寺先輩、頑張ってください」

怜「おー」

竜華「うう、最近みんなが冷たい」

怜「しゃーないやろ、麻雀と関係ない能力見せられても反応に困るんやもん」

竜華「……怜ー、神経衰弱やらへん?」

怜「やらへん」

竜華「うう」

―――放課後―――

竜華「あー、結局一回も神経衰弱できへんかった」

怜「部活でやろうとすんのはまずいやろ。みんな麻雀やりにきてるんやから」

竜華「あーあ、次からはクラスのみんなでも誘ってやるかなー。部のみんなとやりたかったなー」

怜「そうそう、部活中じゃなければ私も付きあってやれるから」

竜華「……あ、えっと、怜?怜の家あっちやけど……今日もウチ来るん?」

怜「だめかな」

竜華「だ、駄目なんてことあらんよ、うちも怜が来てくれるんは嬉しいんやから。……でも、最近毎日あんな……」

怜「あんな?」

竜華「あんなこと……ごにょごにょ……してばっか……ちょ、こんなとこで抱きつかんで」

怜「……竜華は、私とするの、嫌?」

竜華「!!!!!!」

竜華(えぶりでぃはろう、煩悩……さようなら、理性!)

竜華「全然嫌やないです!大好きです!」

怜「そか、よかった」

―――

竜華「今日はオセロの一巡先やー!」

―――

竜華「今日はぷよぷよ!」

―――

竜華「マインスイーパ!」

―――

竜華「ウノ!」

――――――

セーラ「なかなか出んなあ、麻雀」

泉「もう諦めたほうがええんじゃ?」

浩子「うーん……確かに、このままじゃ園城寺先輩の身が持たへん」

怜「私は大丈夫や。やめろ言われても個人的な欲望の為に続けさせてもらうで」

浩子「そ、そーですか」

怜「それに最近、えらい調子いいんよ。この体力なら一晩でも二晩でもぶっ続けで竜華を……ふふふ」

泉「ひー」

竜華「……いくつかの高校の県予選のデータ、もろてきたでー」

怜「おかえり」

浩子「ども御苦労さんです。……あれ、部長。なんや顔色悪くないですか」

竜華「へ?そーかな」

セーラ「言われてみればそうかもしれん」

怜「今日、あんまり元気なかったような気もするなあ」

竜華「だいじょぶだいじょぶ、ヘーキやって!」

泉「代わりに園城寺先輩は調子ええみたいやし。部長の体力吸い取ってるんちゃいますかね、なーんちゃって」

怜「ふむ……?」

~~~翌日~~~

怜「なんと今日は、私が新たな能力に目覚めてしまいました」

セーラ「なんと」

浩子「それは」

泉「ホンマですか?」

怜「おお。名付けて『リューカブースト』!」

セーラ「またえらい直球できたな」

怜「その名の通りやな。竜華に力を分けてもらって、二巡先三巡先を見ても倒れんよーになったんや」

泉「……ひょっとして、部長が園城寺先輩の膝の上で息も絶え絶えなのは……」

竜華「……………………」

怜「ちょっとやりすぎてしもた」

泉「め、めちゃくちゃ危険な能力なんじゃ……」

浩子「で、その力はいったいどのように?」

怜「そやな、簡単に言うと竜華とアレをあーしてこーしてそーして」

浩子「あ、もういいです、なんとなくわかったんで……」

セーラ「えー?全然わからん」

浩子「江口先輩、ちょっとこっちに」

ゴニョゴニョゴニョゴニョ

セーラ「ひ、ひ、ひえぇ……」

怜「えらい恐ろしいものを見る目向けられてるんやけど。まーたフナQ変なこと吹き込んだんちゃうか」

浩子「さあ、うちも詳しく聞いたわけやないんで憶測妄想願望混じりですけど」

怜「……まあええわ、たぶんだいたいあってるから」

泉「え、ええええ……」

浩子「でも、このままやと部長が使いものになりませんな」

泉「使いものどころか、ふつーに死にそうに見えるんですけど……」

セーラ「ボロ雑巾やん」

怜「とりあえず、あっちに寝かせといてやろか」

竜華「と、ときー、うちを一人にしないでぇ……」

怜「大丈夫やって、すぐそこにいるから」

竜華「う、うう……がくり」

泉「し、死んだ」

怜「キゼツしただけや、大げさな」

浩子「まるで気絶するくらいは日常茶飯事とでも言いたげですやん」

怜「ははは」

浩子「否定せんのですか」

セーラ「……ど、どんな恐ろしいことやっとるんや、おまえら……」

泉「あ、でもこれでちょうど四人になりましたね。卓も一つ空いてますよ」

セーラ「ひでえ」

怜「よーし、それじゃあお披露目させてもらうわ。最初から飛ばしてくで」

泉「おおっ」

浩子「一巡先を読まれるだけでも苦労すんのに、それ以上とか止められるんやろか」

セーラ「よ、よーし。燃えてきたわ」

怜「ダブル!二巡先――――!」

――――――

セーラ「うあー、止めれんかった」

泉「早さじゃかないっこないですわー」

浩子「半荘やってもまだ体力余ってるカンジですか」

怜「そうやな、何度か三巡先を見るか、二巡先見て東場やりきるくらいはできそうや」

セーラ「まーだこれ続けられるんかい。たまらんなあ」

浩子「ただ、一つ問題を上げるとすれば」


竜華「…………」


怜「この力の陰に、尊い犠牲があったことを忘れてはならんのやな……」

竜華「死んどらん、まだ死んどらんよー……がくっ」

泉「それにしてもすごいですよ!これならインハイも楽勝!」

セーラ「楽勝ってことはないやろうけど、いい線行けるんは確かになってきたな」

浩子「部長をパワーアップさせるつもりが思わぬ怪物を生んでしまった。ま、結果オーライやな」

怜「でも、これやともし大将戦までもつれたらマズいんちゃうかなあ」

セーラ「あ」

浩子「……確かに」

泉「あの状態じゃあ、とても卓にはつけないですよね」

セーラ「よーするに、大将戦までにどっか飛ばせばええんやろ?」

浩子「簡単に言うけどなあ」

怜「……先鋒で私が頑張って、一気に削り取れればええんやけど」

泉「そのためには?」

浩子「そのためには……」


竜華「…………」

最中も書いてええんやで?
ええんやで?

~~~翌日~~~

セーラ「ほらほら、ペースが落ちてるでー!イッチニ!イッチニ!」

浩子「目標タイム越えんと、また一周追加ですよー」

竜華「ぜー、はー、ぜー、はー……な、なんで?なんでウチはこんなことしとるん……?」

セーラ「無駄口叩く暇があるなら走れー!」

竜華「ひー!」


泉「部長も災難ですねー、いくら体力つけるためだからって夏のグラウンド走る羽目になるとは」

怜「まあ、これもインハイのためやからな」

泉「……体力たっぷりもらって速攻片をつけるって作戦はええと思いますけど、どうせなら園城寺先輩の体力底上げしたほうが早いんじゃ……?」

怜「病弱やからな、私。代わりに竜華に頑張ってもらわんと」

泉「えー?」

竜華「ぶ、文化部なのにー。なんで運動部に混じって、こんな……」

浩子「残り一周!」

セーラ「ここでラストスパートや!」

竜華「む、無理、もうこれ以上は限界……」

セーラ「きばれー!」

竜華「むりやー!」


泉「あーあ、無茶しちゃって。先輩……先輩?」

怜「…………」


泉(……真剣な表情だ。園城寺先輩も必死に応援してくれてます。頑張ってください、部長!)

怜(竜華の胸が揺れている。ほどよいボリューム、感触抜群の胸が。……ああ、夏を感じる……)

怜「……あれっ」

泉「どしたんです」

怜「……ま、まずい!!」

泉「え、ちょ」


竜華「ぜー、ぜー、はー、はー」

浩子「はい、お疲れしたー」

セーラ「体力ないなー、竜華は」

竜華「こんの、野性児と、一緒に、すんなや……」

浩子「……あれ、向こうから来んの園城寺先輩やないか」

セーラ「どーしたんやろ」

怜「中止ー!竜華のスタミナ増強作戦中止やー!」

竜華「え」

セーラ「へ」

浩子「はい?」

セーラ「なんでや、せっかくえーとこなのに」

竜華「と、怜。もしやうちのためを思って……」

怜「このまま竜華が走りこみを続けたら、せっかくの完璧なバランスが崩れてまうやろ!」

竜華「え」

セーラ「へ」

浩子「はい?」

怜「細すぎず太すぎずの弾力あるふともも!」

竜華「ひゃ」

怜「白さを保ちながらも血色のいい健康的な肌!」

竜華「きゃ」

怜「ハリと瑞々しさたっぷり、ふくよかなおっぱい!」

竜華「わー!」

怜「これを……これを捨てるんは、全人類!……もとい、私にとっての大きな損失や!」

竜華「え、えええ……」

怜「竜華は、このままが……このままがええんや……!」

浩子「でも、そしたら体力つける作戦はどないすんです」

怜「私がやる!」

竜華「えー!?」

怜「元々私の能力を高めるためのこと、自分で頑張るのがスジってもんやろ」

竜華「だ、だめだめ、絶対駄目!怜にそないな無理させられへん!」

怜「何言うとるんや、最近は調子もええし、ちょっと走るくらいヘーキやで」

竜華「そっちこそ何言うてんの、そーやって油断して怪我したりまた倒れたりしたら!」

怜「うー!」

竜華「がー!」

>怜「うー!」

>竜華「がー!」

かわいいw

セーラ「珍しいな、あの二人が喧嘩するなんて」

浩子「お互いを思いやる気持ちがそうさせるんやな。美しい友情です」

泉「ゆ、ゆうじょー……?今更なにを……?」

浩子「しっ、どんなに『あの二人って絶対デキてるよなー』思うてもあくまで友情ということにしておく、これがこの業界のお約束や。
    あんまり露骨だと売れへんねん、悲しい事にな……」

泉「は、はあ……」


怜「私がやる!」

竜華「うちがやる!」


セーラ「このままやとなーんも進まんで」

浩子「妥協案を考えないかんな」

怜「私がー!」

竜華「うちがー!」

浩子「はいはいお二人さん、ストーップ」

怜「……?」

浩子「園城寺先輩、あくまで体力つけるためのトレーニングなんや。筋トレとかせん限り、それほどガッチリ筋肉がつくゆーこともあらへん」

怜「そ、そーなんか」

浩子「室内でやるようにすれば日に焼ける心配もないやろ。どっかの部活がルームランナー持ってたはずやし、それを借りればええ」

怜「へー……」

浩子「んで部長。確かに園城寺先輩は病弱やけど、運動はしといたほうがええんちゃいます。幸い今調子よさそうやし、できる時にやっといたほうが」

竜華「う、うーん……」

浩子「逆にずっと籠りきりのが体に悪いですわ。部長と一緒に特訓するようにすれば無理させる心配もないやろ」

竜華「確かに……」

浩子「さあ、頑張って体力つけて、打倒白糸台達成しましょうや!」

「「おー!」」


泉「なんだかなー……」

―――その翌日から、打倒白糸台の為の過酷なトレーニングが開始された!


浩子「ルームランナー二台借りてきました。早く走るんやなく、一定のペースで長く続けることを心がけるように」


竜華「ふー、はー」

怜「ぜー、はー」

竜華「ふー、はー」

怜「ぜー、はー」

竜華「……大丈夫か、怜?無理しとらんか?」

怜「はっ、はっ……別に、これくらい、なんでもないわ……」

竜華「そーか?心配やな……こんなん慣れてへんやろ?ほんまに無理せんほうがええでー」

怜「…………」

竜華「ふー、はー」

怜「……ひっひっふー、ひっひっふー」

竜華「ぶっ!?え、あ、と、た、ほっ、わ!ぎゃー!」ゴロゴロゴロ

怜「……勝った」

―――過酷なトレーニングが……

浩子「お二人ともあんま運動慣れてないやろうし、疲れ残さんようにするんが大事です」


竜華「怜ー、マッサージしたるからおいでー」

怜「えー?絶対マッサージにかこつけていかがわしいことするつもりやろ。騙されんよ」

竜華「す、するかー!」

怜「え、しないん?じゃ、こっちから」

竜華「わー!わー!……この、えーい、やりよったなー!」

怜「きゃ」

――――――

浩子「はー?筋肉痛が抜けんでトレーニングできない?二人揃ってなにしとるんですか」

竜華「は、はははは」

怜「うっうっ、竜華が嫌がる私を無理矢理……」

竜華「だー!?」

―――過酷な……

浩子「最終調整を兼ねた合宿の日取りが決まりましたで。ま、どちらかといえば休憩の意味が強いんかな」


竜華「って、なーんでうちと怜だけ別の部屋やねーん!?」

怜「廊下の奥の階段挟んだ角部屋、一組の布団に枕が二つ、これ見よがしに置かれたティッシュ……こんなコッテコテの始めて見たわ」

竜華「こ、こ、これは……いわゆる『据え膳』っちゅーものでは……」

怜「せ、せやろな……」

竜華「…………」

怜「…………」


泉「先輩ー、露天風呂めっちゃ景色えーですよ!あとでみんなで……あ、到着早々いきなりとは。失礼しました、ごゆっくり……」


竜華「…………」
怜「…………」


「いずみー、あいつらはー?」

「ほっときましょーやー。それより露天風呂すごい景色ですよー」

「ほー。江口先輩、もちろん浴衣は来てくれるんやろうな?」

×来て
○着て

すこし外す
ごめんぬ


今頃こっちもティッシュが必要になる展開を書いてるんかと思うと高まってくるな!

―――そんな辛く過酷で地獄のような特訓の日々を乗り越え、ついに全国の舞台へと赴く日がやって来た!


竜華「いよいよやな」

怜「うん」

セーラ「ここまで来たら、あとはなるようになれや!」

浩子「まだ会場にも着いてへんのに、気ぃ早いんちゃいます」

セーラ「え、えーやろ、別に!」

竜華「特訓の成果、見せたろな!」

怜「おお!」

泉「特訓……?」

浩子「ただイチャついてただけのように見えるんは、きっと気のせいや」

泉「はあ……」

――――――

怜「うー、やっぱバス苦手やー」

竜華「大丈夫か、怜?次んとこで休憩のはずやから……」

怜「ひざまくらー」

竜華「車ん中で変な体勢で寝とったら、逆に疲れるんやない?」

怜「じゃー、肩かして……」

竜華「しゃあないなあ」


泉「……船久保先輩」

浩子「どした」

泉「部室とかならあんま気になりませんでしたけど……こういうとこでやられると、結構キツいっすね」

浩子「あー?ああ、あの二人な……」

泉「『頼むから余所でやれやー!』って言いとうなりません?」

浩子「甘いわ、一年……」

泉「へ」

浩子「他の部員たちを見てみい」

泉「え……?こ、これは……!」

浩子「まるで気にしてへんやろ」

泉「そ……それどころか、生温かく見守ってニヤニヤしてる人までいる始末ですやん……」

浩子「他の一年もとっくに慣れた頃やで?レギュラーのくせに不甲斐ない」

泉「うう、すんません。あれ、なんで私謝ってんの……」

浩子「しかしどうやら水面下では、怜竜派と竜怜派の血で血を洗う争いが繰り広げられているそうや。レギュラー争いよりアツいとかなんとか」

泉「うわあ、すごいどうでもいいっすね」

浩子「気にするもんはすんごい気にするんや、他で言ったらアカンで。……ま、真実は本人のみぞ知るってとこやな」

泉「……今更、変なこと聞いていいっすか?全国大会の会場へ向かうって時に言うのも変な事なんですけど」

浩子「言ってみい」

泉「……なんでこの学校、全国二位になれたんでしょう」

浩子「……アレが特殊なだけで、ホントはもっとカッチリした学校なんや、きっと……」

セーラ「ぐー、ぐー」

―――――

竜華「きゅーけーやー。うちお手洗い行ってくるけど、怜は?」

怜「んー、ちょっと風に当たりたいわ」

竜華「そか、じゃあ後でな」


江セーラ「ぐー。ごー」

泉「いつまで寝とるんでしょ」

浩子「顔にラクガキしたろうかな」

泉「やめたげてくださいよ、会場まで消す場所ないですやん」

浩子「だからやってみたいんやろ」

泉「ひでえ」

セーラ「う、うーん?」

泉「あ、おはようございます」

浩子「ち、起きたか」

セーラ「……なんやー?」

―――

怜(すずしい)


穏乃「あれ、制服の子がいる」

玄「私たちみたいだね!」


怜(あー、風が気持ちえー)


穏乃「な、なんかフラフラしてない?」

玄「大丈夫かな……」


怜(おー。あー……うわったったった)


穏乃「た、倒れた!」

竜華「怜ーっ!」

穏乃「へ」

怜「……あ、竜華。どしたん」

竜華「……へ」

こ、この場面は・・・

力尽きて寝てたらキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!

穏乃「…………」

竜華「…………」

怜「あれ、どちらさんで?」

穏乃「え。えーとお」

竜華「そうやなくて、今倒れたやろ?大丈夫?」

怜「ぼんやりしてたら、ついフラッとしただけやで」

竜華「えー……」

怜「……あ、ホットドッグ」

穏乃「へ」

怜「竜華、酔いが治ってきたらお腹すいてきたわ」

竜華「はあ、じゃあ買ってきたるわ……」

怜「ありがとな」

憧(じ、自由な子だなー)

穏乃「ムニャムニャムニャムニャムニャムムニャ」

憧「なにいってるかわかんないよあんた」

穏乃「浜松名物うなぎパン!」

ですぜ>>1の旦那

怜「おいしい」

竜華「うん」

穏乃「それで、えーと、大丈夫なんですか?」

怜「なにが?」

竜華「あー、お騒がせしてごめんな」

怜「いつも騒がしいのは竜華のほうなのになあ」

竜華「こいつ、ホットドッグの恩をもう忘れたんか」

怜「忘れた」

憧「……なんか、大丈夫みたいね」

玄「ところで、なんで制服なんですか?」

竜華「これ?学校の部活で移動中やから……あれ、そろそろ行かんとまずいかも」

憧「部活……?」

>>309
漫画じゃホットドッグにしか見えへんやん!しゃーないやろ!
なーにがうなぎパンや!うまそう!

×ホットドッグ
○浜松名物うなぎパン

モブキャラが何食っててもええねん!

セーラ「おーい!バスもうすぐ出るでー!」

怜「あ、セーラ」

竜華「もう行かんと。楽しかったで!」

怜「ほな」

穏乃「ばいばーい」

セーラ「おーい!おーい!」

竜華「うるさいわー、そんな叫ばんでも聞こえるって!」

セーラ「体がなまってしゃーないんやー!」

竜華「じゃー会場まで走れー!」

セーラ「そうする!」

竜華「アホかー!」

怜「元気やなー」

セーラもけっこう可愛い

―――

竜華「着いたー」

怜「つかれたー」

セーラ「えー、前とおんなじホテルかー。つまんねー」

浩子「そらしゃあないわ」

泉「おお、デカい……」

竜華「なあ、怜。一緒に東京観光とかせえへん?」

怜「えー。ええけど、疲れて動きとうないわ」

浩子「そもそも、今日はもうホテルから出られませんて」

竜華「じゃあ明日!明日な!」

怜「んー」

竜華「……って、まーたうちと怜は二人部屋かい!?」

怜「おお」

浩子「うちが監督に進言しときました。できる後輩を持って幸せですな」

竜華「ううっ、この、余計なことを……ナイスやっ……!」

セーラ「どっちやねん」

怜「最近欲望に忠実になってきたな、竜華」

浩子「元からやないんですか」

怜「そうかも」

セーラ「今日はもう各自解散ってことでええんか?」

浩子「ええ、んで明日は自由行動やな。一回戦のビデオは見とくことになるやろうけど、それまでは」

泉「お疲れでしたー」

竜華「おー」

~~~翌日~~~

セーラ「東京見物やー!」

泉「おー!」

浩子「……で、あの二人は」

泉「『ちょっと今外出とか無理』だそうで」

セーラ「ま、予定通りやな」

浩子「なにしてはったんやろな」

泉「気にしてあげないでください」

セーラ「じゃ、三人でいこかー」

泉「楽しみだなあ、東京」

浩子「田舎モン丸出し」

泉「大阪モンと言って下さい!」

――――――

セーラ「あー、ホテルん中涼しい。エラい外暑かったなあ」

泉「園城寺先輩、外出なくて正解だったかもしれないすね」

浩子「むしろ部屋ん中の方が熱い事になってたり」

セーラ「……あ、ありうる」

浩子「よっしゃ、突撃や」

泉「ひー、野次馬根性!」

セーラ「みょーなとこ見えても知らんで!」

                ,. '"´ ̄ ̄`丶、
                /         丶
              /           ヽ
              l :.          :;. l   なんと・・・なんと言う良スレ・・・
               l ::. `' ‐ --  --‐ '" :, l   一切の無駄が無く・・・
            /ヽ,' ,.ミ二、‐-‐_二彡、', レヽ スレであることすら主張せず・・・
            l久lシ、'=ェ.ェぅ、 ,r'、ェ.ェ=ミッlヘi'l  ただ・・・・・・ただここに在る・・・・・・
            | f,l '"`゙  ゙'´l !`゙   ゙´"l(、,l  良くぞ創ってくださいました>>1殿
            l J,l   ,rィリ l ミヽ   ,h }l   スレッドは今ここに極まりました
             l'ーl   〃゙'^;-;^'ヾ',  ,lーリ   もはや前スレ・過去スレなど小賢しきもの・・・・・・
          _, ィ`"l   i∠ニニヽ,}  ,ト:く  このスレは世のあらゆる物に優れております・・・・・・
        , ィ":./::::::::丶 ,l ヾ`二´ソl, ,イi::::::::丶、
    ,. ィ"´: : :ノ::::::::::::::l゙トゝ、    ノ‐'/リ:::::::::::ヽ`丶、

  , ィ" : : : : /{i::::::::::::::::::lヽ ノ7ー一r'{ / /::::::::::::::::ト、: :`丶、
/: : : : : : / :. ll::::::::::::::::::::l丶'"    ` / /:::::::::::::::::::}: ヽ: : : : `丶、
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泉「ついに部屋の前まで来てしまった」

セーラ「まさかこんな真昼間から、なあ……?」

浩子「一年、先入って様子見てくるんや」

泉「こん中は戦場かなんかですか!?」

セーラ「油断は死を招く……かもしれん」

泉「あ、カギかかってるかも……開いてる」

浩子「突撃ー!」

泉「ぎゃー、押さんでください!」


「「「わーーっ!」」」

竜華「ちょ、なんやねん!怜が起きてまうやろ!」

怜「元々起きてたり」

竜華「あ、そうなん」

泉「……ふつーの膝枕ですね」

浩子「なんや、ガッカリ」

セーラ「俺は信じてたで!」

竜華「はー?」

怜「……カギかけんわけないやろ」

浩子「あ、やっぱり」

竜華「なんのハナシー?」

セーラ「べっつにー」

泉「……あれ、先輩達、髪ちょっと濡れてません?シャワー浴びてたんですか」

竜華「ああ、さっき。やっぱあっついわー」

怜「なー」

浩子「ふーん」

セーラ「ふーん」

泉「ふーん」

竜華「な、なんやの、その変な反応」

浩子「いや、わかりやすいなあ、と」

竜華「は……」

怜「で、結局なにしにきたん?」

浩子「そうそう、野次馬はもののついでです」

セーラ「うそつけ」

浩子「今日の一回戦の試合、動画と牌符見とかないかんのですわ」

泉「うちらシードでしたもんね」

竜華「じゃ、じゃあ残りの二日、試合までずーっとカンヅメ……」

浩子「そうなります」

竜華「そんなあ、怜と東京見物ー!」

泉「自業自得ですわ」

セーラ「こっちのブロック、どこが勝ったんやっけ?」

竜華「えー、待って!そういうの聞かんで見た方が楽しい!」

怜「何言うとんのや、この部長は……」

竜華「東京見物できんかったぶん、こういうとこで楽しまな損やろ!」

怜「何言うとんのや、この部長は……」

竜華「二度も言わんといて!」

なんかハワイに新婚旅行に行ってホテルの中にずっといたことに通じるものがあるな

―――

『阿智賀女子学院先鋒・松実玄!』

竜華「あー!この子!」

怜「サービスエリアで会った子やな。出場校やったんか」

竜華「なんちゅー偶然……これって運命……?うちこの子応援するで!」

泉「へ」

竜華「がっんばーれがっんばーれク・ロ・ちゃん!負っけるーな負っけるーなア・チ・ガ!イエーッ!」

セーラ「あ゛ー、竜華の悪いクセが出たな」

泉「な、なんすかそれ」

セーラ「なんちゅーんやっけ……ミーハー?違うか?」

泉「はあ……」

怜「…………」

泉「ひ」

怜www

浩子「……園城寺先輩にいぢめてもらいたいが為にワザとやってるんちゃうか、って説がウチの中で濃厚なんやけど。どないでしょ?」

セーラ「知らんがな」

―――――

『大将戦終了!阿智賀女子学院、二回戦進出です!』

竜華「やったああーーー!おめでとーーー!」

セーラ「うるせー」

怜「……ま、今は思いっきりはしゃがせといてやろうや」

泉(どっちに言ってるんやろ。部長か、阿智賀か)

セーラ「とにかくこの阿智賀ってのは、うちらの敵やなさそうやしな」

浩子「それってフラグ……まあええか」

~~~二回戦当日~~~

セーラ「おーい、起きとるかー?」

泉「もう出ますよお」

怜「おはよ」

セーラ「お、怜。調子はどうや」

怜「ふっふっふ、カンペキやな。もう誰にも負ける気せーへんわ」

泉「……この無駄にテンションの高い感じ、まさか……」

竜華「~~~---○×☆◆□@・・・・・・」

セーラ「あ、やっぱり竜華が死んどる」

怜「やりすぎてしもうた。てへ」

セーラ「てへやないわ」

浩子「なにやっとるんですかー」

セーラ「あ、フナQ!ちょ、こっちきて竜華運ぶの手伝ってや!」

泉「うう、背ぇ高いから重い」

怜「この胸が悪いんや、この胸がー!」

泉「ぶっ倒れた人相手にセクハラせんでください!」

浩子「恐ろしいワザやな、リューカブースト。ていうか今日はまだ二回戦なんやし、ほどほどにって言いませんでした?」

怜「竜華のほうから誘ってきたんやもーん」

浩子「やもーん、やないですよ」

セーラ「まあええんやないか?ここで大将戦まで持ってかれるようじゃ、この先思いやられるわ」

浩子「……ふむ、確かに」

泉「おーもーい……園城寺先輩、責任とって運んでくださいよお」

怜「しゃーないな。よいしょ」

泉「うそお、んな軽々と」

怜「一度する側にまわってみたかったんや、お姫様ダッコってやつ」

浩子「うーん、アンバランス」

怜「……あ、駄目や、重い」ポロッ

竜華「おうっ」ドサッ

泉「ぶ、ぶちょおーー!」

セーラ「あー。誰か担架持ってこい、担架!」

竜華「”#$%&’()・・・・・・・・・・」

落とすなwwwww

―――会場、千里山控室―――

セーラ「いやー、まさか担架で人運びながら会場入りする羽目なるとはなあ」

泉「シード校ってのもあって、えらい目立ってましたね」

浩子「まあイロモノ揃いの全国や、担架くらい大したことない」

セーラ「さーて、中堅までに終わってくれるかなーっと」

浩子「そこまで制服嫌なんか」

泉「似合ってますのに、もったいない」

セーラ「うるせー!」

泉「あれ、どこいくんです」

セーラ「トイレや、トイレ」

―――――

セーラ「ただいまー」

怜「おかえりー」

セーラ「……へ、怜?試合は?」

怜「終わったでー」

セーラ「……うっそお」

泉「なんかよおわからんことやってました、実況ドン引きですよ」

浩子「解説のプロはなんやええこと言ってましたな」

竜華「う、うーん、怜のふとももの感触……」

セーラ「あ、起きた」

竜華「はっ!試合は!?」

怜「「終わったでー」

竜華「……うっそお」

セーラ「さー、帰ろ帰ろ」

泉「担架を運ぶだけの簡単なお仕事でした」

竜華「ま……まって、まだ指一本も動かせんのやー」

セーラ「金縛りみたいやな。こわっ」

浩子「あー、担架どこやったかな」

竜華「そういや、うちの他にはどこが残ったん?」

怜「阿智賀や」

竜華「へー」

泉「あれ、反応薄い」

浩子「もう飽きたんやない?」

泉「ミ、ミーハー……」

浩子「とにかくこの後部長はぐっすり休んで、準決までに体力を戻しといてください」

竜華「無茶言うなあ……」

怜「なーんか私、元気がありあまって仕方ないんやけど」

竜華「え」

セーラ「……これ以上無茶させんなや。後で四人で卓囲んで、二巡先でも三巡先でも好きなだけ見たらええやん」

怜「ちぇー」

竜華「ほ」

泉「じゃ、行きますか」

竜華「あれ、ひょっとしてうち、このカッコで外でるん?」

セーラ「歩けんのやからしゃーないやろ」

怜「私がお姫様ダッコしたろか」

竜華「なにそれ、めっちゃされてみたい」

浩子「そっちのが恥ずかしくないんか」

泉「……頭打っても知りませんよ」

―――準決勝前日、怜と竜華の部屋―――

竜華「はー、今日も疲れたっと……」

怜「テレビとにらめっこ、ってのが一番辛いな。こう、じーっと」

竜華「走ってたほうがまだええわ。……にしても、最近ホンマに調子よさそうやな、怜」

怜「ま、これも竜華のおかげやわ」

竜華「そう?怜も結構頑張ってるやん。それを見てご褒美くれたのかもしれんで」

怜「ご褒美なあ。誰がくれるんや、そんなもん」

竜華「え。えーと、カミサマ?」

怜「……知らない人から物貰っちゃいけません言われとるんや。どうせくれるなら、竜華からがええなあ」

竜華「そっか、ご褒美。うーん、何がええかな」

怜「優勝した時にでもくれればええから、考えといてや」

竜華「ん、じゃあとっておきの考えとく」

怜「期待してるで」

竜華「あー、朝も早かったからもう眠いわ」

怜「何言うとんの、夜はこれからやで?」

竜華「うわー、その台詞似合わんなあ」

怜「……じゃ、竜華が言うてみい」

竜華「今夜は寝かさねーぜ、ふっへへ」

怜「ただのオッサンやん」

竜華「あー、こういうしんみりした雰囲気苦手やー」

怜「じゃ、脱衣麻雀でもやろか?それか野球拳」

竜華「こういうしんみりした空気は貴重やから大事にしたいんやー」

怜「ワガママやなー」

竜華「……な、怜」

怜「ん」

竜華「勝とうな、明日」

怜「今更言われんでもわかっとるわ」

竜華「へへ、そうやな」

怜「それに、竜華の力を貰って戦うわけやから。無様な戦いはできんし」

竜華「えー、あんまり怜に気負うてほしくないんやけどなあ」

怜「なんやそれ。勝ってほしいんか負けてほしいんか、どっちなん?」

竜華「なんでもええよ。勝てば嬉しいし、負ければ悔しいけど、怜と一緒に戦えるんでもう嬉しいしな」

怜「どーせなら勝ちたいやろ」

竜華「うん。……白糸台かあ」

怜「あーあ、強敵やなー」

竜華「はあーあ……」

でもトリプル連発中は怜も上がってたし、でもまぁ勝てるかと言われたら微妙か

怜「…………」

竜華「…………」

怜「考え始めると、どうしても暗くなるなあ」

竜華「こればっかりはどうしようもないわ……」

怜「よーし、とってもきもちいいことして、天国に連れてってやるわー」

竜華「あー、しんみりした雰囲気が、台無し!」

怜「似合わんよ、竜華にそういう雰囲気は」

竜華「え、そ、そーお?……ていうか、怜に似合いすぎてるんや」

怜「病弱っ子やからなあ」

竜華「……最近はそうでもないわな」

怜「じゃ、竜華がしんみりした雰囲気を吹き飛ばしてくれたんやな」

竜華「なんかうち、空気読めないやつみたい」

怜「それも間違ってはないなあ」

竜華「ひどい!」

怜「おかげで助かってる、言うとるんや」

竜華「そか。じゃ、もっとひっついてカンペキにどっか吹き飛ばしたらなあかんな」

怜「頼むわ」

竜華「……明日、頑張ろうな」

怜「……うん」


――――――――――

~~~翌日~~~

セーラ「よ」

泉「おはよーっす」

浩子「今日も調子よさそうやな」

怜「ん」

竜華「…………………」

セーラ「あらら、担架の用意できてるで」

泉「二回連続でこんな入場したら、何事や思われるでしょうね」

浩子「今更やわ、そんなん」

セーラ「……っしゃ、行くか!」

泉「はい!」

浩子「ほな」

怜「…………」

――――――

怜『…………』

玄『…………』

煌『…………』

照『…………』

――――――

泉「始まりましたね」

セーラ「おお」

浩子「これもまた、園城寺先輩の能力の弊害やな。一番応援してやりたいはずの部長が寝てるしかないんやから」

竜華「…………」

泉「部長……」

セーラ「へーきやろ。怜が言うてたで、『控室で見てもらわんでも、同じ席に座って戦ってるから大丈夫や』て」

泉「へー、いいこと言いますね」

浩子「珍しく?」

セーラ「一言余計や!」

セーラ「……頑張ってほしいな、怜には」

浩子「ええ」

泉「……でも、相手はあの宮永照……いくら園城寺先輩に力があっても、この局でどっか飛ばすんは無理があるでしょうね」

セーラ「ま、そらしゃーないやろ。でも忘れたんか?これは団体戦や」

浩子「後ろにうちら三人が控えとる」

セーラ「そーいうこと!呑気に寝てる部長に勝ちをプレゼントするんは、一体だれになるやろーな」

泉「江口先輩は制服着とうないんでしょう?私が決めてきますよ」

浩子「はー、相変わらず言うなあ一年」

セーラ「おー、その意気や!」


――――――

『Aブロック準決勝先鋒戦、試合開始です……!』

―――

竜華(う、うーん?ここどこやろ?)

竜華(うっかり寝過したような気が……はよ起きんと……)

竜華(あれ。い、いたたた。体中痛い……)

竜華(ついでに頭も痛い……どーなってんねん……ていうか、ていうか、)


竜華「……怜!」

怜「りゅ、竜華」

竜華「へ」

セーラ「あ、竜華!目ぇ覚めたんか」

泉「部長……」

竜華「は」

浩子「……すんませんでした、部長」

竜華「え?」

『さて、大将戦の舞台にはすでに三校集まっていますが……千里山の姿だけが見えません!
 規定時間にはまだ少しの余裕があるとはいえ、どうしたのでしょうか!?』

竜華「……えー!」

怜「あ、急に立ち上がったりしたら、」

竜華「うわっ!わー!……あいたっ!」

怜「ほらみい……」

竜華「う、ううん……た、たいしょーせん……?」

セーラ「……すまん、削りきれんかった」

泉「なんとか二位につけてはいるんですけど……一位の白糸台との差は……」

浩子「……面目ない」

竜華「そ、そーか……あっ、ていうか、大将戦!このままじゃ失格やん!」

浩子「今、補欠の方を出すよう申請してるとこです」

竜華「ほ、補欠!?なんやそれ!うちがいるやろ!」

セーラ「何言うとんのや、そんな状態で」

竜華「うっ」

泉「とにかく、今は賭けてみるしか……」

竜華「よーいしょっと」スクッ

セーラ「…………」

浩子「…………」

泉「…………」

怜「……えい」ツン

竜華「うわぁ!おっ!とっ!たあ!……あー……」

怜「ほら倒れた」

竜華「ちょっと立てたやろー!」

セーラ「ほんまにちょっとだけやん……」

泉「無理せんでくださいよ。これ、いつも部長が園城寺先輩に言ってる台詞ですけど」

竜華「そーいうこと言うと怜は無茶するやん。だからうちも無理する!」

怜「なんて失礼な」

さすがに補欠が勝てるほど淡はもちろん新道寺の部長と穏乃は弱くない…

シズはどうだろ。

竜華「部長が部活で無理しないで、いつ無理するっちゅーんやー!」

セーラ「そんで体壊したら、それこそ元も子もないやろ!……これもいつもは怜に言ってる台詞やな」

浩子「まるでいつもとは真逆の立場やな。今も膝枕してんのは園城寺先輩のほうやし」

怜「最近多かった気がするわ、この体勢」

竜華「……いつもと逆の立場……」

怜「……竜華?」

竜華「ああ、そうや。行ってくる。大将の仕事、きっちりやってこなアカンからな」

セーラ「人の話聞いてたんか?もうこの状況、無理する必要なんて……」

竜華「勝てる見込みはある!」

怜「……竜華」

竜華「勝てる、絶対!それなのに諦めたら、同じ負けでも悔しさ段違いや!」

怜「…………」

竜華「信じてや。無理はするかもしれんけど、変な馬鹿はやらかさないから」

怜「……心配やわ、竜華はアホやから」

竜華「えー!?」

泉「ま、そのとーりですけど」

浩子「アホというか、抜けてるというか」

セーラ「『信じて』って言葉、竜華が使っちゃいかんよなあ」

怜「確かにな」

竜華「ひどすぎる。ここはフツー応援してくれる場面やないの……」

セーラ「だって、なあ?」

浩子「まあ」

泉「うんうん」

竜華「死人に鞭打つなや……死んでへんけど」

セーラ「はーあ。……ま、そのアホについて来たうちらも大概っちゅーこっちゃ」

浩子「なんだかんだで部長ですし。なんだかんだで」

泉「尊敬したくない部分の方が多いんですけどね!」

怜「やーい、竜華の阿呆」

竜華「ここはひっくり返してちょっといいこと言う場面やん……なんでまだ罵倒続けるんや……」

泉「人望やないですか?」

怜「そういう星の元に生まれてきたと思って」

竜華「ちぇっ、もうええわ……行ってくるわ……あーあ、なんやこれ……」

怜「竜華!」

竜華「あー?」

怜「……頑張って」

竜華「お……おー!任せときやー!」


泉「一言でひっくり返った。相変わらずチョロい」

セーラ「怜におまかせやなー」

たまらんなぁ。

>>413の下から二行目は
×泉○浩子
のつもりやったけどどっちでもえーですわ

―――ステージ扉前―――

竜華「ほな、行ってくるわ」

怜「ん。……しっかりな」

竜華「怜にここまで心配かける日が来るとはなあ」

怜「だって心配なんやから、しょうがないやろ」

竜華「少しはうちの気持ちわかったか」

怜「……少しは」

竜華「はいはい、もうそれでええわ。……じゃ!」

怜「ん」

竜華「あー、そうそう」

怜「……まーだなんかあるんかい」

竜華「さっきええもん借りてしもうたからな。後で必ず返すからなー!」


『あーっと、千里山大将、清水谷竜華!ここでようやく登場しました!』


怜「……なんやろ、借りたもんて」

しずをばかにすんなし

まさにふいたら倒れそうな竜華

姫子「…………」

穏乃「…………」

淡「…………」

竜華「……すんません、えらい遅れてしもて」


竜華(あー。だるい。疲れた。死にたい……死にそう…………だーれが死ぬかー!うちは病弱ちゃうで!いや病弱だけど怜は死なんで!
    ……はーあ、 ……なーに考えてるんやろ)

竜華(ていうか、うち以外みんな一年二年やん。はー、すごいな、他の高校の人材。うちんとこは大丈夫かなー。
    大丈夫やろー。うん、たぶん、大丈夫かなあ……)

竜華(あーあ、こんな卓でうち一人ぼっこぼこにされたらハズいなー。どないしよ。もう面上げて生きていけへんわ。
    怜に養ってもらおーかなー。……ひえー、自分で思っといてなんやけどひっどいクズやなー。気をつけんといかんなー)

竜華(はー、怜は大丈夫かなー。控室帰るまでに倒れたりしてへんやろか。……そんな心配してどないするんや、そもそも今倒れそうなのはこっちやーって
    なーんかこれも病弱アピールみたいで嫌やなー。倒れそうやわー、今にも倒れそうやわー)

竜華(あれー、んーと、今うちなにしてたんやっけ?)


《淡「ロン。五千八百」》


竜華(……これ切ったらアカン、と)

《・・・・・・・・・》

竜華(あー、これ、すっごい疲れるわ。怜はすごいなあ、こんなんずっと続けてたんやなあ)

《・・・・・・・・・》

竜華(ひえー、頭痛くなってきた。思い出すなあ、テトリス……)

《・・・・・・・・・》

竜華(今二巡先とか見よう思たら一発で倒れるやろうなー……)

《姫子「ツモ。千・二千」》

竜華(どないすればええんやったっけ?えーっと、こっち切ってみるか?)

穏乃「ポン!」

竜華(おー、運ええなあ。あー、でもどないしようかなあ……)

《・・・・・・・・・》

竜華「……リーチ」

泉「え」

浩子「お」

セーラ「あ、あれって」


『リーチ一発ツモ。裏一つ……二千・四千』

怜「……竜華」

――――――――

竜華(これ、気分ええなあ……ちょっと疲れるけど。ま、うまく決まれば疲れも吹っ飛ぶんかな……)

怜『それ大事なもんなんやから、後でちゃんと返してもらわな困るで!』

竜華(……怜の心の声が聞こえてきた気がする。うわあ、本格的にビョーキやな、うち……)

怜『竜華のビョーキは元からやないかな』

竜華(でも、どうやろ。怜の幻聴がいつも聞こえるゆーんは、実はかなり素敵なことやないやろか?)

怜『自分でもかなりヤバいこと言ってる自覚あるんか?』

竜華(……やめやめ。早く終わらせて、怜の生身の声聞きたいわ)

怜『そうそう、それでええよ』

竜華(あー、なんだか楽しくなってきた。怜と同じ、一巡先の世界かー。怜と同じ目線で、怜と同じことをして、怜といっしょに……そんで、怜と……)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

竜華「な、あれ覚えてるか?」

怜「なんや、あれって」

竜華「約束したやろー。怜に頑張ったご褒美あげるて」

怜「ああ、全国大会のときの。……でも、それは……」

竜華「ええやん別に。頑張ったご褒美なんやから」

怜「んな適当な」

竜華「じゃーいらないんか、ご褒美」

怜「貰えるもんは貰っときたいわ」

竜華「が、がめつい。まあええわ、何が欲しい?」

怜「え、竜華がとっておきの考えとく言うてたやん」

竜華「……そやったっけ」

怜「自分で言って忘れんなや」

竜華「ご、ごめん……」

怜「それじゃ、自分で貰えるもん決めてええんかな」

竜華「あ、あんまり高いもんは勘弁してほしいなあ……」

怜「竜華が欲しい」

竜華「へ」

怜「一番欲しいんて言うたら、やっぱ竜華や」

竜華「はあ。……そんなもんでええなら、あげるけど」

怜「軽っ」

竜華「え、なんで?」

怜「あんなあ……まあええわ。それじゃ今度は、私が竜華にご褒美あげるわ」

竜華「そらまたなんで」

怜「頑張ったご褒美なんやろ?竜華だって頑張ったやん」

竜華「……まっ、確かに自分で言うのもあれやけど、うん、すごい頑張ったな、うち!」

怜「また調子に乗って。そんで、何が欲しいん?」

竜華「怜!」

怜「お約束やな」

竜華「お約束も何も、一番欲しいのって言われればそりゃ、怜やなあ」

怜「ふーん、じゃああげるわ」

竜華「おお、貰ってしまった……」

怜「失くしたらアカンで?」

竜華「お、これでも貰った物を大事にするんはちょっと自慢なんやで。前に怜に貰ったちっさい髪留めあるやろ、あれな……」

怜「あっ、そういえば」

竜華「……まだ話の途中なんやけど」

怜「元々竜華は私のもんやったんやから、それをまた改めて貰うってのも変な話やんか」

竜華「えー?」

怜「そういうわけやから、なんかちょーだい」

竜華「あー!んなこと言うなら、怜だって元々うちの……」

怜「今の今まで私は私のもんでしたー、残念やったなー」

竜華「ちょ、ずるいで!あ、待て、こら、怜!」

怜「言ったそばから手放してもうてどーすんねん」

竜華「だったらそっちこそ自分のもん手放してもうてるやろ!」

怜「……あ、確かに」

竜華「ふっふっふ、観念してこっちに来るんや」

怜「手つきがヤラシいから嫌やー」

竜華「あー!もう、こらー!」

怜「ふふ、あははは!」






おわり

試合そっちのけww

おつやねん!
しかし怜竜SSは肝心なとこキンクリやから高まったモノをどうしたらええか困るで・・・!

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