小鳥「愛妻弁当…か」(128)

小鳥「『意中の男性の心と胃を鷲掴み!余り物で作れるお弁当特集』」

小鳥「ふーん…」

小鳥「著者、私より年上なのに未婚だ」

小鳥「当てになるのかしら」

小鳥「ものは試しよね」

小鳥「ここはひとつ、騙されたと思って…」


アリアッシター


小鳥「……ふむふむ」ペラ

小鳥「目次と値段以まともな事が書いてない」

小鳥「これを書いた人が独身の理由がわかったわ」

小鳥「うーん」

小鳥「でも、思い人の胃を掴むというのは悪くないかも知れない」

小鳥「プロデューサーさん……」


小鳥「よし、やるのよ音無小鳥!」

小鳥「さっそく明日から作りましょう!」

~朝~


小鳥「うー、だるい」

小鳥「いつもより一時間早起きだ…」

小鳥「さ、やりましょー」


小鳥「あー、テンション上がらない」

小鳥「いやいや!」ブンブン

小鳥「プロデューサーさんのため、私はやらなきゃいけないのよ!」

小鳥「おー!」

小鳥「~♪」トントン


小鳥「いたっ」

小鳥「うぅ、指切った……」

小鳥「絆創膏を…」


小鳥「ああっ、お肉が焦げた!」


小鳥「 ひゃあ!お鍋が吹きこぼれてる!」



ピヨー!!

小鳥「……できた!」ゼェゼェ


小鳥「まともな部分をかき集めたら一人分しかなかったけど」

小鳥「ま、私はコンビニでもいいか」

小鳥「食べてくれるかなぁ……」


小鳥「ヤバッ、そろそろ行かなきゃ」

小鳥「行ってきます!」

~事務所~

小鳥「…予定より早く着いちゃった」

小鳥「ま、早めに仕事でもしておきますか」


カタカタ


小鳥「いつもより、頭が冴えてる気が…」

小鳥「恐るべし早起きパワー」


ガチャ


千早「おはようございます」

小鳥「あら、千早ちゃんおはよう」

千早「…?」

千早「音無さん…指、怪我したんですか?」

小鳥「ぎくっ」

小鳥「ええ、ちょっと料理中に……ね?」

千早「……」

小鳥「でも大丈夫!仕事には差し支えないわ!」

千早「……」

小鳥(そそるけど!そのジト目はやめて!)

千早「……音無さん」

小鳥「はひっ?」

千早「頑張って下さいね、応援していますから」

小鳥「へ?」

千早「え?プロデューサーに作って来たんじゃないですか?」

小鳥「あの、その、ええと…」

千早「やっぱり」

千早「今日はプロデューサーは私の営業に同行すると言っていたので」

千早「もう少しで事務所に来ますよ」

小鳥「そ、そう……」

小鳥(なんか意外…もう少し食いつくかと思ったのに)チラ


千早(他のアイドル達なら嫉妬したかもしれないけど)

千早(音無さんなら仕方が無いわよね…)チラ

ガチャ


P「おはようございます」

小鳥「!!」ビクッ

千早「おはようございます」

P「音無さん?どうしたんですか?」

小鳥「いえいえ何でもないです!はい!」

小鳥「おはようございます!」

P「はは、朝から元気ですね」

小鳥(どうやって渡そうかな……)

P「早速だけど、千早」

千早「はい」

P「余裕を持って現地に着きたいから、そろそろ」

千早「そうですね」

千早「その前に、音無さんが渡したい物があるそうです」チラ

小鳥「っ!!」

P「…?そうか、じゃあ先に車に乗っててくれ」

千早「わかりました」


バタン

小鳥(緊張してきた……)

小鳥(なんて言えばいいんだろう)

P「音無さん?」

小鳥「は、はい!?」

P「大丈夫ですか?」

小鳥「そ、そりゃもう!」

P「それは良かった」

P(ん?指に絆創膏してる)

小鳥「あの、プロデューサーさん」

P「はい」

小鳥「今日の、お昼ご飯はどうするんですか?」

P「今日は自分で弁当を作ったんですよ」

小鳥「っ…」

P「たまには早起きするもんですね」

小鳥「そう、でしたか……そうですね」

小鳥(そんなに何もかも都合よく行く訳ないか…)


P「……」

P「あ、しまったなぁ」

小鳥「へ?」

P「せっかく作った弁当、家に忘れてきたみたいだ」

小鳥「そう、なんですか?」

P「仕方が無い、コンビニで適当に買うしかないな」

小鳥「…あの!」


ゴソゴソ


小鳥「これ!受けとって下さい!」

P「お弁当、ですか?」

小鳥「プロデューサーさんのために作りました」

小鳥「見栄えも良くないですし、美味しくないかもしれません」

小鳥「でも、私なりに精一杯頑張って作ったつもりです」

P「音無さん…ありがたく頂きます」

小鳥「はいっ!」

小鳥「後日感想を聞かせて下さいね?」

P「ええ、では行って来ます」

小鳥「行ってらっしゃい」


バタン


小鳥「……」

小鳥「はぁ、緊張した...」

~車内~

P「お待たせ」

千早「いえ」

千早「……」

P「あぁ、これか?音無さんが作って来てくれたんだ」

千早「そうなんですか」

千早(ちゃんと渡せたんですね、音無さん......)

P「しかし、俺の弁当どうしようか」

千早「私が貰っておきます」

P「ん、そうか」

P「自分用に作ったから雑だぞ?」

千早「構いませんよ」


千早(プロデューサーの手料理…最初で最後だろうなぁ)

千早(私の作ってきた弁当、後でバレないように捨てておかなきゃ)

千早「プロデューサー」

P「うん?」

千早「しばらくの間、こっちを見ないで下さい」

P「……わかった」

P(カーステレオの音量、上げとこう)


~♪


千早「……っ…」ポロポロ

千早(絶対に、幸せになって下さい…音無さん)

~事務所~

小鳥「……はぁ」

小鳥(仕事が手に付かない)


カタカタ


小鳥「食べてくれたかなぁ……」

小鳥「……」

小鳥「お腹すいてきたな……」

小鳥(きっと、千早ちゃんも)

小鳥「うーん…そうよね、きっと」


小鳥「……よし、決めた!」

小鳥「プロデューサーさんにメールしておこう」


小鳥「これで良し!」

小鳥「さ、お昼ご飯食べに行こう」

~営業先~

P「さ、昼ご飯食べようか」

千早「…はい」

P「っと、ちょっと待った」

P「音無さんからメール?」

千早「…」

P「……マジか」

千早「どうしました?」

P「こんなメールが来てた」


From:音無さん

ごめんなさい
さっき渡したお弁当、賞味期限がかなり過ぎてる物があるので
食べずに捨てちゃって下さい

ps
千早ちゃんがお弁当を持ってるので
良ければそっちを貰ってね?



P「……って」

千早「なっ……」

千早(何してるんですか!音無さん!)

千早「ん?私にもメール?」


From:音無さん


幸せになるのよ!
お姉さんは千早ちゃんを応援してるからね!!



千早「音無さん……」

千早「ほんと、お人よしなんだから…」

千早「プロデューサー」

P「うん?」

千早「音無さんのメール、嘘だと思いますよ」

P「そうだろうなぁ」

P「でも、千早も弁当作って来てくれたって言うのは本当だろう?」

千早「……はい」

P「じゃあ、それも貰うよ」

P「腹減ってるんだ、ひとつじゃちょっと足りないから」

千早「はい…あまり出来は良くないですけど」

P「ん、ありがとう」

千早「では」

P「いただきます」

千早「いただきます」

P(まず千早のからだな…)



P「うん、美味しいよ」

千早「そう、ですか…よかったです」

P(次は音無さんの)


P(うん、これも美味い)

P(後でお礼しておかないと)


千早「プロデューサーのお弁当、お肉ばっかりですね」

P「うっ…」

千早「栄養が偏っちゃいますよ」

P「ついつい自分の好きなものばっかり入れちゃうんだよなぁ」

千早「だったら……」

P「うん」

P「これから、出来れば毎日俺に弁当を作って来てくれないか?」


千早「おと…え?」

P「駄目か?」

千早「何で私なんですか?」

千早「音無さんだって……」


P「好きだから」

P「他の誰でもなく、千早の事が好きなんだ」

千早「…!!」

P「毎日、千早の手料理が食べたい」

P「それだけだよ」


千早「ズルい…ですよっ!」

P「そうかもしれないな」

千早「…っく…うぅ…」

P「千早の気持ちを、教えてくれないか?」

千早「はい…」


ぎゅっ


千早「……好きです」

P「うん」

千早「ずっと、ずっと好きでした」

P「うん」

~夕方、事務所~


ガチャ


P「ただいま戻りました」

千早「戻りました」

小鳥「…!」

小鳥「ふふっ、お帰りなさい」

小鳥「……手を繋いで、お似合いのカップルですね?」

P「はは、まぁ……な?」

千早「…うぅ、恥ずかしい」

P「そうだ、弁当美味しかったですよ」

小鳥「へ?メール見ませんでしたか?」

P「それが、食べ終わった後に見まして……」

小鳥「お腹壊しませんでしたか?」

P「いいえ、ちっとも」

P「本当に美味しかったです、ありがとうございました」


小鳥「ふふ、プロデューサーさんのお墨付きを貰ったのなら大丈夫ですね」

小鳥「これで、いつ好きな人が出来ても作ってあげられます!」

千早「……」

P「……少し席を外しますね」


バタン


千早「音無さん……」

小鳥「どうしたの、千早ちゃん?」


千早「ごめんなさい」

千早「そして…ありがとうございます」

小鳥「…!」

千早「私なんかの為に…」

千早「私なんかより、ずっと!」

小鳥「……ていっ」


ビシッ


千早「いたっ!」

小鳥「甘いわね~千早ちゃん?」

千早「…?」

小鳥「他の誰でもない、千早ちゃん"だからこそ"私は応援したのよ?」

千早「音無さん…」

小鳥「千早ちゃんにはプロデューサーが」

小鳥「プロデューサーには千早ちゃんが必要なの」

小鳥「だからっ、これは…運命なんだからっ……」

千早「音無、さん…」

小鳥「うぅ……笑顔で、見送るしかっ…」


小鳥「ごめん、なさいね」

小鳥「泣くつもりじゃ、なかったんだけど」

千早「音無さんっ……うぅっ」


ギュッ


小鳥「ほらほら、千早ちゃんも泣かないの」

千早「はいっ…」

小鳥「さ、もうすぐプロデューサーさんも帰って来るし」

小鳥「だから、ね?」

千早「……」コクッ

小鳥「ん、よろしい」

千早「音無さん」

小鳥「はい?」

千早「絶対に、幸せになりますから」

小鳥「きっとなれるわ、あなたたちなら」

千早「はい」


小鳥「さ、あの人が外で待ってる筈だから、家まで送ってもらいなさい?」

千早「はい、ではまた明日」

小鳥「ええ、また明日」


バタン


小鳥「さて、と」

prrrr

小鳥「あ、もしもしあずささん?」

小鳥「今日ちょっと飲みに行きませんか?」

小鳥「…やった!律子さんも!?」

小鳥「いいですねぇー!」

小鳥「じゃあすぐに仕事終わらせますよ!」

小鳥「"何があった"って?」

小鳥「ふっふっふ、なんと幸せカップルのプロデュースを!」

小鳥「私プロデュースの才能アリですかね?」

小鳥「……えっ、ない?」

小鳥「ちぇっ」

小鳥「いいですよーだ!これからたっぷり愚痴を聞いてもらいますから!」


fin

蛇足とは思いつつ
>>63
あたりから分岐


千早「だったら、音無さんに頼めば作って貰えますよ」

千早「今日のお弁当だって、頑張って作ったみたいですし」

P「指、怪我してたもんな」

千早「気付いてましたか」

P「そりゃあ、な」

千早「だったら尚更です」

千早「そんな甲斐甲斐しい人は、そう居ませんよ」

P「それを言うなら千早もだろう」

千早「…私は自分用に作っただけですよ」

P「…そうか」

千早「そうです」

千早「さ、後は私一人で大丈夫ですから」

千早「行ってあげて下さい」

P「え?」

千早「お弁当の感想ですよ!」

千早「善は急げです」

千早「音無さん程のいい女性が、いつまでも独り身だと思わない事です」

P「そうだな」

千早「それに、女性を待たせるのは男性として良くないです」

P「ああ」

P「じゃあ、俺は行くよ」

千早「はい、後の事は心配しないで下さい」

P「大丈夫、信じてるから」


タタタ


千早「大好きでした、プロデューサー」ボソッ

千早(さよなら、私の初恋)

~事務所~


小鳥「……もう夕方になるわね」

小鳥「手を繋いで帰って来たりして」

小鳥「そうなったら、笑顔で迎えられるかなぁ…」


バタン


P「音無さん!」

小鳥「ひゃあ!?」

小鳥「びびびっくりした!」

小鳥「あれ、千早ちゃんは?」キョロキョロ

P「千早は現場に残ってます」

小鳥「へ?」

小鳥「何で置いて来たんですか!」

P「いや」

小鳥「担当アイドルを現場に置き去りとは!」

P「千早に背中を押されたんですよ」

P「早く言ってこいって」

小鳥「何を、ですか?」

P「今日一日で言いたいことが山ほどできましたよ」

小鳥「え…」

P「弁当、とても美味しかったです」

P「これからも毎日、俺にあなたの手料理を食べさせてくれますか?」

小鳥「それって…」


P「好きです、俺で良ければ付き合ってください」

P「今すぐ、じゃなくてもいいです」

P「お返事、待ってま……うぉ!?」


ギュッ


小鳥「私も、私もあなたが好きです」

小鳥「ずっと、好きでした」

P「音無さん……」


小鳥「毎日、お弁当作ってきますから」

P「ええ、お願いします」

~駅~


千早「帰りの電車は、と」

千早「あれ?」


あずさ「~♪」


千早「間違いない、あずささんだ」

あずさ「家はどこだったかしら?」

千早「こっちですよ、あずささん」

あずさ「あら、千早ちゃんも迷子?」

千早「違いますっ!」

あずさ「助かったわ、千早ちゃんのお陰で」

千早「いえ、それほどでも」

あずさ「ところで、何か悲しい事でもあったの?」

千早「え?」

あずさ「目、赤いわよ?」


千早「……実は」



あずさ「なるほど…ねぇ」

千早「そうなんです」


ナデナデ


千早「ひゃ!?」

あずさ「よく頑張ったわね?」

あずさ「もう我慢しなくていいのよ?」

千早「あずさ、さんっ…」



あずさ「落ち着いた?」

千早「はい、だいぶ」

千早「今度こそ、笑って祝福できそうです」

あずさ「ええ、そうね」

あずさ「好きな人の幸せだもの、笑って祝福しなくちゃね」

千早「はいっ」

~翌日~

P「みんなに報告があります」

小鳥「私たち」

P「付き合い始めました」


春香「」
雪歩「」
真「」
美希「」
伊織「」
亜美「」
真美「」
響「」
貴音「」
やよい「」
律子「」



千早「…みんなフリーズしてる」

あずさ「あらあら♪」

あずさ「音無さん」

小鳥「はい?」

千早「お幸せに、ね?」

小鳥「もっちろんです!」

小鳥「ね?」

P「ええ、小鳥さん」



fin

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