P「今日は2時30分からTHE iDOLM@SCLETERか・・・」 (69)

~事務所~

小鳥「すごいですね、竜宮小町!この前デビューが決まったー、なんていってたらあっというまに忙しくなってきましたよ」

律子「まだまだですよ、これからもーっと忙しくなるように力入れていきますから!」ムキキッ

小鳥「気合入ってますね!」ムキキッ

律子「せっかく掴んだチャンスなんだから無駄にはしたくないです。やるからには、全力でやりますよ!」ムキョッ

小鳥「わー、律子さんナイスバルク!」ムキョキョッ

横線で2分割されたホワイトボードの前で、律子と音無さんが6分割された腹筋を見せながら何やら傍目には物騒な会話とポージングを繰り広げている。

ホワイトボードの上半分は律子プロデュースの新ユニット『竜宮小町』の予定で埋まっており、下半分の残りのアイドル用のスペースは依然空白が目立っている。

その下半分を担当している俺のスケジュール帳も現状スペースを持て余し気味なわけで。

んー・・・どうしたもんかなぁ・・・

小鳥「凄いですよね律子さん!プロデューサーさんもそう思いませんか?」

P「え?・・・あ、ああ、律子の腕の見せ所だよな」

律子「スーツだから上腕二頭筋は見せられませんよ?」

そういう意味じゃないんです律子さん。

小鳥「はっ!?そうだわ、竜宮小町が売れたら・・・」

小鳥「くたびれたソファを新調して!」

うん。

小鳥「冷蔵庫も大きいのに変えて!」

うん。

小鳥「ビルの外壁に上級者コースを設置して!」

うん?

小鳥「テレビも最新型に変えて!それからそれから・・・!」

キタキタキター!
カスミちゃんもマッチョなのかな?

律子「そんなぬるいこと言ってちゃダメです!どうせなら自社ビル、それも地下に専用トレーニングジムつきぐらいは目指さないと!」

小鳥「きゃー!律子さんかっこいー!ね、律子さん凄いですよね!」

P「そ、そうですね!は、は、はっはっは、うわっはっはっはっは!!」

なんか盛り上がってるのでとりあえず合わせて笑っておこう。

亜美「必殺!ケムリ爆弾!」ボンッ

P「うわっ!なんだこれゲホッゲホッ」

真美「セットOK!退避ー!」

煙が晴れると、なぜか俺は椅子に縛られていた。

P「おい亜美、一体これは」

亜美「おーっと、動かないほうがいいよ兄ちゃん!まずゆっくり上を見てごらん?」

P「なんだこれ・・・金ダライ?まさか・・・」

真美「そして下を見ると並べたドミノが!これの意味するところはつまり・・・」

俺動く→ドミノ倒れる→ピタゴラスイッチ的機構→金ダライ落下

亜美「くっくっく、ちなみに動かなくても時間経過で落ちるんだなこれが」

真美「必ず殺すと書いて必殺・・・真美たちは約束をたがえたりしないのさ」

これだけのものを一瞬でセットする手際といい、この前の発火スポンジといい、本当にめちゃくちゃだなこいつら・・・

P「っていうか何すんだよいきなり!」

真美「だって兄ちゃん、悪役みたいな笑い方してたから制裁を」

P「さっきの亜美のほうがよっぽど悪役っぽいだろ・・・」

金ダライ何トンあるんだろう

あずさ「おはようございます~」ヒョコッ

窓からあずささんが顔をのぞかせた。やはり俺以外は皆窓から出勤するらしい。

ちなみにここは9階であり、命綱は無いが外壁にはボルタリング用の足場が取り付けてあるため彼女たちには安全だ。

律子「わー、あずささん髪切ったんですか、凄く似合ってますよ!でもよく思い切りましたねこんなにバッサリ・・・」

あずさ「はい、こっちのほうが三人並んだ時にバランスがいいかなって・・・それにこの方が若く見えるって言われたんですよ~」

そう語るあずささんの顔はまさに喜色満面という感じで、新しいスタートを切るという気持ちもあるのだろう、嫌々断髪したようには見えなかった。

P「竜宮小町本格始動か・・・こっちも頑張らないとなぶっ」ゴンッ!

気合いを入れた俺に更に喝を入れるように、落下した金ダライが脳天を直撃した。

 

この番組は

P「今日は0時00分からTHE iDOLM@SCLETERか・・・」

から始まる一連の話の続きとなっていますが

とりあえず筋肉だということだけわかっておけばなんとかなるかもしれません


 

~CM~

THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST!

第4弾 LOVE&PEACE!

好評発売中!

~CM~

でも目が行くのは髪型ではなく結局筋肉

 

     第六話  先に増えるとい

                    う
                    筋
                    肉

 

吉澤「さて、竜宮小町は秋月律子プロデューサーの企画なんだね?そしてメンバーは双海亜美君と水瀬伊織君、三浦あずさ君か・・・」

午後、早速竜宮小町は社長の友人でもある吉澤記者からインタビューを受けていた。巨体に囲まれても平然としているあたり、肝が据わっている人だ。

吉澤「ふむ、この三人を選んだ理由は?」

律子「あずささんは歳で選びました」

あずさ「あの、その言い方はちょっと・・・」

吉澤「年長者を一人入れようと、そういうことだね?」

律子「亜美の家は医者なので医学的なトレーニングの方法を教えてもらえるかと」

亜美「それ亜美である必要あんの?」

律子「そして伊織の家は水瀬財閥ですので、その権力を最大限に利用し」

伊織「ちょっとレコーダー止めなさい」

      , ‐、 ,- 、
     ノ ァ'´⌒ヽ ,
   ( (iミ//illi))) | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

     )ノ`リ・ω・ノ( l   うっうー!
 _, ‐'´  \  / `ー、_  _ノ            
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

{ 、  ノ、    |  _,,ム,_ ノl
'い ヾ`ー~'´ ̄__っ八 ノ

 ヽ、   ー / ー  〉
   `ヽ-‐'´ ̄`冖ー-く

しょゆ

伊織「あんたさっきから何言ってんの?歳だ家だ権力だ、悪魔に魂でも売ったわけ?」ヒソヒソ

律子「あのねぇ、あずささんが暴れたら大変だからこの3人にしました、なんて言えるわけないでしょ。他にインパクトのある嘘で上塗りして誤魔化すしかないのよ」ヒソヒソ

伊織「あれじゃまだ本当の理由のほうがマシよ!」ヒソヒソ

吉澤「あー・・・えーと、うん、まあ要するにバランスってことにしておこう」

社長「すまんねぇ気を遣わせて」

吉澤「この程度慣れてるから構わんよ」

やよい「わー可愛いー!竜宮城のお姫様みたーい!」

そうやよいが評するのは、取材終了後早速事務所に届いた竜宮小町の新衣装、その名もパレスオブドラゴン。

海をイメージさせる青を基調とした色に、ミニハットやイヤリングなどの小物を合わせた一式だ。

まあ小物と言っても衣装のサイズからして俺より大きいわけで。必然的に小物も中物ぐらいまでスケールアップしている。

今は竜宮小町の三人が衣装サイズの調整を行っているため仮に着ている。

春香「あれ、律子さんの衣装は?」

律子「あのね、私はプロデューサーでしょ?着るのは三人だけよ」

美希「いいなー、美希もこういうの着てみたいなぁ・・・」

律子「うわ大変、もう出なきゃいけない時間!ごめん皆急いで着替えて!プロデューサーはちょっと外に出ててください!」

P「ああわかった。えーと、春香ドア開けてくれ」

いくら情欲を掻き立てられない筋肉ボディといえど、女性の生着替えを見るのはよろしくないので、着替えの時は外に出る。

春香に頼んでるのは別に横着してるわけじゃなく、扉が重くてまだ自力では開けられないからだ。窓から出るのはもっと嫌だ。

絶壁の影に隠れればいいじゃない!

少し時間が経った後、次に中からドアが開けられたときにはすでに律子たちの姿はなかった。どうやらいつも通り窓から出勤したらしい。

P「今気づいたんだが、みんないつも窓から出るならなんで扉が重いんだ?使わないだろ?」

響「エレベーターが直ったらちゃんとそっちから入るぞ?壊れてるから窓から入ってるだけで」

春香「重かったら開け閉めするときにも鍛えられていいですよねプロデューサーさん!」

明らかに扉の使い方を間違えている。俺たちみたいな人のために普通の扉をつけるという発想はなかったのだろうか。

P(・・・ああ、普通の扉だったら伊織が壊すとか言ってたな・・・)

もともと来客など無いに等しい事務所だったのだ、当然の選択だったのだろう。

P「そういえば、今日律子たちはどこに行くんですか?」

小鳥「ええと、たしかアミューズメントミュージックの打ち合わせですよ」

P「ええ、あの歌番組に出られるんですか!?」

小鳥「もともと、その番組でのデビューを前提としたプロジェクトでしたからね。あんな人気番組に出られるなんて、夢のようです」

アミューズメントミュージック、略してAMとは、もう10年ほど続いている音楽番組だ。

若手大手を問わず充分な実力を備えた歌手やアイドルを毎週数組呼び、スタジオで歌わせることで人気の長寿番組である。

一方で、この番組が開始した10年前は筋肉系アイドルは色物として扱われることが多かった。

最近でこそようやく少しずつ筋肉系も認められてきたが、そう言った経緯と番組の路線から、筋肉系の長い不遇の時代においてAMに出場した筋肉系アイドルはいなかったのである。

つまり竜宮小町が筋肉系アイドルとして初出場の栄誉を勝ち取ったのだ。

ほしゅ

小鳥「他にもレコード店でミニコンサートや雑誌の取材、握手会(要手加減)にラジオ出演・・・わぁ、オフが一日もなくなっちゃいましたね」

P「はぁ・・・なんか、随分差がついちゃったな・・・」

小鳥「え?」

P「あ、いえいえ何でもないです・・・」

とはいうものの、俺は内心焦りを抱いていた。

プロデューサーとしては先輩だが歳はずっと下の律子が、新しいユニットを組むや否やスケジュールが仕事でぎっしりで、有名番組にも出演。

かたや俺は9人もアイドルを見ているのにスケジュールはスッカスカ。

まさにアイドルとして輝かんとしている竜宮小町と比べて、うちのアイドルたちはというと・・・

春香「ほらみて、このプロテイン評判いいよ」

雪歩「ホントだ、甘くて粉っぽくないんだって」



真「ここでこう、右を合わせて・・・」

響「自分ならまずダッキングしてから合わせるぞ」



やよい「牛乳の残りが20リットル切ってますー」



どいつもこいつも筋肉的ではあるがアイドル的ではない。これでは何かが違う。

真美「ねーねー兄ちゃん、亜美の代わりに真美と腕相撲しよー?左手対両腕でいいからさー」

こんなんじゃ・・・こんなんじゃ・・・

P「ダメだーーーーーー!!!!」

俺も駄目だと思う

P「皆、ちょっと聞いてくれ!」

たまらずアイドルを緊急招集。ホワイトボード前に結集させる。

P「あ、ごめんちょっと威圧感あるから一歩下がって・・・うん、そう。えーっとだな・・・」

P「もうわかってるとは思うけど、俺も律子や竜宮小町に負けないぐらいにみんなをプロデュースしたいと思っている。だからみんなも頑張ってくれ!」

皆「・・・・・・?」

P「・・・あれ、みんなノリ悪いじゃないか。ほらいつもみたいにムキムキー!とかやっていいんだぞ?」

貴音「ですがプロデューサー、そう闇雲に頑張れとだけ言われましても・・・」

真美「そうだよ、頑張りたくても真美たち全然お仕事ないんだもん」

響「自分、何かやることさえあればプロデューサーの言うとおり頑張るぞ」

だよねー、と口々に言ってくるアイドルたち。確かに一理ある。

P「よ、よし、まずは俺が全力で仕事を取ってきてやるからな!頑張るぞ皆!765プロファイトー!いっぱーつ!」

皆「い、いっぱーつ・・・」

律子たちに負けないためにはとにかく仕事の数だ。基本は足で稼ぐしかない。最近の階段登りのおかげで少しは体力に自信も出て来た。

P(俺が営業かけまくって、スケジュール真っ黒にしてやるからな!)


春香「ねえ、なんかプロデューサーさんおかしくない?疲れてるのかな・・・」

真「いやあ、元気は有り余ってそうだけど・・・」

P「えー、携帯に手帳、ハンカチちり紙、忘れ物なし・・・と。よし行くか」

春香「プロデューサーさん!」

P「どうした春香?」

今から営業に出発というところで、いきなり呼び止められた。

春香「あの、これどうぞ!」

P「クッキー?」

そういって差し出されたのは綺麗にラッピングされたお手製のクッキーの袋だった。

春香「甘いものは脳をリフレッシュさせるんですよ、今朝作ってきたクッキーです!」

P「ああ、ありがとう、後で食べるよ・・・しかしクッキーか、春香たちのことだからまたプロテインかと思ったよ」

春香「入ってますよ?たっぷりと」

本当に君たちは期待を裏切らないね。

春香「それじゃお先に失礼します!」

そういって春香は窓からひらりと身をひるがえし、壁をつたって降りて行った。もう見慣れた光景だ。

P「じゃあ今度こそ行くか・・・って、うわっ」

気が付くと背後に美希がいた。さっきまでいなかったはずなのに相変わらず素早い。

美希「ねえプロデューサー、どうして美希は竜宮小町じゃないの?」

君だとあずささんの攻撃を全部避けちゃうから被害防止にならないだろう?だからだよ。

美希「きっと律子・・・さんが美希のこと好きじゃないから、竜宮小町に入れてくれなかったんだよね・・・」

だが本当のことを言えばさっきの律子の嘘が無駄になるから言わなかった。美希の口は絶対に軽いからだ。

P「うーん、つまりだな、ええと・・・ん?ああごめん電話だ」

仕事用の携帯に電話がかかってくる。今の俺には一本たりとも無駄にできない着信だ。

P「まあ少なくとも、美希ももう少し真面目なところを見せればいいんじゃないかな?・・・はいもしもし、はい、筋肉系ならたくさんいます。むしろそれしかいません」

大人らしい、回答にならない回答を投げて電話に出る。だが美希はまだ話しかけ続けてきた。

美希「真面目になれば美希も竜宮小町の衣装を着て歌ったり踊ったり戦ったりできるの?」

P「ん?まあそうなるんじゃないかな、でも今電話中だからまたあとで・・・ああすいませんこちらの話で・・・殺陣ですか?頑張れば大抵のものは・・・」

美希「ホントに?わかったの、じゃあ美希頑張るね!」

P「はい、それではよろしくお願いします・・・ん、美希?もうどっか行ったのか、相変わらずだな・・・」

ついでで話してたから美希がどういう話をしてたかあまり覚えてないが、まあ変なことは言ってないだろう。

それより今は仕事だ。待ってろよみんな!

                 _
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         ,. :´: : : : : : : : : : : : : 、: : : :\r‐-,: : : :.',

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       l: : :/: :,イ//: ,.ィ:/ //  _   !: : :}l: : : : :.:| 何いってんだコイツら・・・
      {: : :l: / / _/イ /イ / 、__/ `   | : / !: : : : :.|
       ∨_{/ ___     ____  }:/ |: : : : : {
       { ,ハ   弋(ソ       弋(ソ   /'ハ !: : : : : l
       ∨ム        ,        /-,./ j: : : : : :{
        ヽ八           u  /- ' / : : : : 八
          込、    r‐ っ     ,イ:/  /: : :イ: /  \
          ヽ: >        <,イ  /: / j:/
          / 从| `  ´ |{/l/、  /イ   /
         /  、 ヽ|      |/  }、
        ,.ィ{  ̄\´      `/  /`ヽ、
       /:::::l \ 、 `ヽ、   / イ / /:::::::ヽ
        /:::::::j   `ヽ、  ヽ-/ // イ::::::::::::}

その日から俺の奮闘が始まった。

テレビ局などを巡り、業界の人に挨拶をして、なんとか資料やCDを受け取ってもらう。

もちろん現物を見たほうがインパクトが強いので1、2人ほど引き連れて行く。

最初はその迫力にギョッとする人も多いが、少し話してもらえれば普通の女の子だということをわかってもらえるようだ。

もっとも、その『少し話す』ことが無名事務所の売込みでは難しいのだが。

大抵は社交辞令の礼で終わり、挨拶一つでスルーなんてザラだ。中には格闘家やバラエティ芸人と勘違いしたままで去られてしまう場合もある。

『筋肉系は色物』というレッテルはいまだ業界には根深く残っているようだというのを強く実感した。

だからといって弱音を吐いてもいられない。朝から晩までアイドルを引き連れ売り込み、挨拶、仕事の振り分け・・・出来ることは手当たり次第に何でもやった。

P(律子は凄いな、こんな状況からAMの仕事をとってくるなんて・・・)

一瞬どうすればいいのか訊ねてみようかとも思ったが。

P(最近、律子忙しくて事務所でもなかなか会えないからな・・・聞くのはやめておこう)

それは多分、本当の理由ではないのだろうと俺は薄々勘付いていたが・・・あえて見ないふりをした。

孤軍奮闘を続けて数日後の夜。俺は一人で事務所でスケジュールの組み立てを行っていた。

とはいえ懸命の営業もむなしく、依然スケジュールは思ったほど埋まってはいなかった。

と、ふいに事務所のドアがゴゴゴと開き、律子が入ってきた。俺と違って実に生き生きとした顔だ。

P「お疲れ様。珍しいじゃないかそっちから入ってくるなんて」

律子「ええ、夜は足場が見えにくいですし、たまにはいいかなって。それにここだけの話、私他の皆と違ってあんまり腕力派じゃないんで・・・」

P「そうか、こんな夜遅くまで大変そうだな」

律子「いえそんな・・・でも、今頑張らないと、ですよね」

P「ん・・・ああ、そうだな・・・」

例えるならそれは二隻の帆船。

今まさに順風を受けている律子は、さらに帆を張る努力も怠らずにグングン前へと進んでいく。

一方俺はほぼ無風の中、ひたすら独りオールで漕いでいるような状態だ。速度の差は歴然でも、せめて漕がなければまるで進まない。

とにかく今は仕事を・・・仕事を・・・仕事を・・・

~事務所~

小鳥「う、うーん・・・この仕事結果はちょっと・・・」

貴音「ええ、私も、こういったクイズ系番組であれば響のほうがよいと思ったのですが・・・無表情無回答では番組的によろしくないと言われてしまいました」

千早「我那覇さんというより、答えるのは大抵ハム蔵ですけどね」

貴音「他にも技巧派のやよいが腕相撲大会に行ったり、男性が苦手の雪歩がレースクイーンの仕事だったり」

小鳥「ええ、さっきレース場に穴が開いたという連絡があったわ・・・」

千早「最近のプロデューサー、何か焦っているというか・・・空回りをしているような印象です」

貴音「私も同意見です。ですがプロデューサーも私たちを思って行動してくださってるのですから」

小鳥「そうだけどねぇ・・・あら、電話だわ。はい、765プロです・・・」

小鳥「・・・え、えええ!?すいません、すぐに確認します!」

貴音「どうされたのですか?」

小鳥「ちょっと待って、スケジュール・・・ああ、本当だわ!大変よ、響ちゃんの仕事が被ってるわ!」

デパートの屋上でイベントの打ち合わせをしていると、音無さんから連絡が来た。

小鳥『大変ですプロデューサーさん、イベント制作会社の方から連絡が来て、殺陣をやるアイドルが一人来てないがどうなってるんだって・・・』

P「それ響が出るやつでしたよね・・・すみません、ダブルブッキングです!響は今こっちの現場にいます!」

この前美希と話しながら設定した仕事だ。見た目運動能力の高そうな響ならいけると思って入れた仕事だが、注意が散漫になっていたからスケジュールを確認してなかった・・・!

小鳥『どうしましょう、誰か手の空いてる子に代わりに行ってもらいましょうか?』

P「お願いします!」

            ノヘ,_
    ,へ_ _, ,-==し/:. 入
  ノ"ミメ/".::::::::::::::::. ゙ヮ-‐ミ

  // ̄ソ .::::::::::: lヾlヽ::ヽ:::::zU
  |.:./:7(.:::::|:::|ヽ」lLH:_::::i::::: ゙l   いぇい!
 ノ:::|:::l{::.|」ム‐ ゛ ,,-、|::|:|:::: ノ   道端に生えてる草は食べられる草です!

 ヽ::::::人::l. f´`  _  |:|リ:ζ    畑に生えている草は美味しく食べられる草です!
 ,ゝ:冫 |:ハ、 <´ノ /ソ:::丿
 ヽ(_  lt|゙'ゝ┬ イ (τ"      ホント 貧乏は地獄です! うっう~~はいたーっち!!!

       r⌒ヘ__>ト、
      |:  ヾ   ゞ\ノヽ:    __  .      ri                   ri
      彳 ゝMarl| r‐ヽ_|_⊂////;`ゞ--―─-r| |                   / |
       ゞ  \  | [,|゙゙''―ll_l,,l,|,iノ二二二二│`""""""""""""|二;;二二;;二二二i≡二三三l
        /\   ゞ| |  _|_  _High To

~事務所~

小鳥「というわけで、誰か代わりに・・・」

美希「ねえねえ、それ美希が行ってもいいの?」

小鳥「え、ええ、もちろんいいけど・・・」

千早「珍しいわね、美希が自分から仕事に行くって言い出すなんて・・・滅多にトレーニングルームにも行かないのに」

美希「それは千早さんもじゃなかったっけ?まあとにかく、美希ちょっと頑張ることにしたの!」

P(人間誰しもミスはある、なんて言葉はあるけどこれはやっちゃダメだよなぁ・・・)

ダブルブッキングなんて、仕事の責任だけでなく俺個人の業務管理能力にまで疑問を持たれてしまう。

代わりが行くからまだマシとはいえ・・・いやしかし美希だ、やはり些かの不安は残る。

P「・・・はぁ・・・まあ、あちらには美希が行ってくれることになったから」

不安そうにこちらを眺める2体の巨人にそう伝える。

春香「あの、プロデューサーさん、そっちの現場に行った方がいいんじゃないですか?」

響「こっちはハム蔵と自分で何とかできるぞ、な、ハム蔵!」

ハム蔵「ジュッ」

春香「あ、あれぇ?私は?ねえ私は?」

P「しかし・・・そういわれてもやっぱり・・・」

責任者兼保護者である俺がそうおいそれと現場を離れていいものなのか・・・何かあったら俺が対処しないといけないのに・・・

春香「ダメですよ、プロデューサーさん。プロデューサーさん一人で頑張りすぎですよ!」

響「そうそう、向こうに行かなきゃいけないんでしょ?急いで急いで!」

そういうと春香と響は俺の両腕両足をつかんで持ち上げた。

春香「大丈夫、私たちを信用してください!」

そのままズンズンと出口・・・ではなくなぜか外側、屋上の縁へ歩いていく。そこには備え付けの避難器具があり、

P「え?これ避難用のスロープだよね?まさか俺これで降りるの?相当怖いよ?ここ7階だよ?」

春香「大丈夫、日本の技術を信用してください!」

P「『私たち』って日本人のことだったの!?それ言葉の意味変わってきああああぁぁぁぁ・・・」ズザザー

~イベント会場~

真「あの、もう少しであと一人来ますから!」

監督「いいよもう遅いから。その子だけのためにリハを通しでやる時間なんてないよ」

美希「遅れてごめんなさいなのー!」ドスドス

監督「君ねえ、今更来てももうすることないからね!」

真「ああ、どうしよう・・・監督さん完全に怒ってるよ」

美希「真くん、今日やるのってお芝居の殺陣のやられ役のシーンだよね?美希に段取りだけ教えて!」

真「う、うん」

真「まず登場して主役の人を囲む、それで左の人から順に斬りかかっていくんだけど、6回ぐらい斬って避けてを繰り返すんだ。本気に近いスピードだけど斬る方向は決まってるから、まずそれを・・・」

美希「ううん、そこはいらないの。出番と立ち位置とやられるタイミング、あとあるならセリフだけ教えて。美希一回で覚えるから!」

真「ええ!?模造刀とはいえ当たるとただじゃすまないよ!いくら美希でも・・・」

美希「絶対大丈夫だから大丈夫なの!美希頑張るから!」

P「あー痛え・・・無茶するよなアイツら・・・っとそれどころじゃない、タクシー!」

何とか無事に屋上から降りれた俺はすぐさまタクシーを呼び止め乗り込んだ。が、

P(くそ、何でこんな時に限って渋滞してるんだよ・・・)

遅々として進まない車の中で時間だけが一定の速度で進んでいくのをただ焦れてみていることしかできない。

思えば最近の俺はずっとこんな感じだった。ただ気持ちがはやるばかりで、しかし前にはほとんど進まず、そのことにまた焦りを募らせる。

その結果がダブルブッキングであり、今のこの状況だ。

P「何やってんだよ俺・・・」

焦るばかりで手持無沙汰なので、ひとまず持ち物を整理を行おうと鞄を開けると、見覚えのある小袋が入っていた。

P(これ、春香のクッキーだ・・・)

貰ってから何日が経っていたのだろうか。粉々にこそなっていなかったが、当然かなり砕けていた。

食べる暇も無く、貰ったことを思い返すこともせずただ走り回っていたこの数日。

P「私たちを信用してください、か・・・」

改めて考えてみれば何のことはない。俺は一段高みから保護者面してただけで、その実彼女たちと正面からムキ合って、もとい向き合っていなかったのだ。

それで彼女たちに合った仕事を用意しようだなんて、何という傲慢。何という怠惰。

俺はこれから彼女たちとしっかり向き合い、理解し、信頼を築いていかなければいけない。

そして今出来ることといえば・・・



P「すいません、ここで降ります」

ここから会場まではまだかなり距離があるが、進まないタクシーに乗っているよりは走ったほうが速いはず。

毎日9階までの往復をしているおかげで多少は足に自信も出て来たところだ。

とにかく今は一刻も早く、真と代理をしてくれた美希の元へ・・・

走って走って、途中何度も休みながら会場についたのは夜の帳が降りようとしているころだった。

やはり階段登り程度ではまだそこまで体力がついていなかったようだ。脇腹が軋む。

当然イベントも終わっており、真と美希はなにやら監督の人に言われているようだった。

P「すいません、765プロのものです!この度は申し訳ありませんでした!」

叱られているのではないかと思い、慌てて間に入る。過失は俺にあるのだから、怒鳴られるならばそれは俺で有るべきだ。


しかし、帰ってきたのは意外な反応だった。

監督「いやー助かったよ!美希君だっけ?彼女凄いねぇ!ま、遅刻は困るけどまた頼みたいと思ってるよ。それじゃあね」

予想外に上機嫌で立ち去っていく監督。

真「凄かったんですよ美希!一回も合わせてないのに猛スピードの刀を全部避けて、なおかつ演技も完璧でした!」

美希「このくらい何てことないの!でもプロデューサーが凄いって思ってくれるなら美希にもっといっぱい仕事入れてほしいな♪」

P「・・・ああ、そうだな。二人ともありがとう。今度はぴったりの仕事探してくるからな!」

~翌日、事務所~

俺はまた机でスケジュール帳とにらめっこをしていた。

相変わらず空白の多いスケジュール帳だが、もはや焦って手当たり次第に仕事を埋め込む必要はない。

まずは彼女たちのいいところを見つけ、それを生かす仕事を探してくるのがプロデューサーなのだから。

もちろん何とか運送とか何とか建設とかの連絡先は常に手帳に忍ばせているが・・・まあ念のためだ。どうしても立ち行かなくなった時は彼女たちの筋肉に頼らせてもらおう。

雪歩「はいプロデューサー、プロテインです」

飲み物を入れてくれる雪歩。男でも俺はある程度苦手じゃなくなってくれたようだが、しかし飲み物としてそのチョイスはどうなんだ。

P「いやぁ、今はお茶のほうが嬉しいかな・・・なんて・・・」

雪歩「そ、そうですよね、私が選んだプロテインなんてプロデューサーの口には合わないですよね・・・こんな私なんて、穴ほっ」

P「いやーうれしいなー!ちょうど今日全力ダッシュしたからタンパク質が欲しかったんだよー!」ゴキュゴキュ

また事務所に被害など出すわけにはいかないので一気飲みする。わお、バニラ味。すんごい甘ったるい。

春香「そして私からは、じゃじゃーん!お砂糖とプロテインたっぷりのドーナツです!」

君たちは俺を豚にでもしたいのかね?

小鳥「あ、プロデューサーさん昨日はお疲れ様でした」

P「ああ、いえ・・・あの、音無さん、すいませんでした!なんか俺ここのところ変に焦ってたり、くだらないプライドみたいなもので誰にも頼ろうとしないで、もう少しで大変なことに・・・」

小鳥「大丈夫ですよプロデューサーさん、結果的に何も悪くなってないし、プロデューサーさんはまた一つ大きくなれた・・・それでいいじゃないですか」

P「はい・・・ありがとうございます。あと」

小鳥「?」

P「この山盛りのドーナツ処理していただけないでしょうか」

もうタンパク質がとか砂糖がとかそういうレベルじゃなく、物理的にデブになるだけの物量を持ったドーナツタワーを音無さんに押し付け、俺はまた事務仕事に戻るのだった。

夜、AMの放送があるのでみんなで事務所のテレビ前に集合する。

P「あ、悪いけどもう少し屈んでくれないかな、後ろから全然見えないんだけど」

真美「兄ちゃんが小さいんだよー」

亜美「んっふっふー、なんなら宙に吊ってもいいんだよ、兄ちゃん?」

宙に吊られたくはないので、椅子の上に立つことで妥協した。

            ノヘ,_
    ,へ_ _, ,-==し/:. 入
  ノ"ミメ/".::::::::::::::::. ゙ヮ-‐ミ

  // ̄ソ .::::::::::: lヾlヽ::ヽ:::::zU
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 ノ:::|:::l{::.|」ム‐ ゛ ,,-、|::|:|:::: ノ   道端に生えてる草は食べられる草です!

 ヽ::::::人::l. f´`  _  |:|リ:ζ    畑に生えている草は美味しく食べられる草です!
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司会者『それじゃあ曲の紹介をお願いします』

伊織『りゅ、竜宮小町でSMOKY THRILLです!』

ざっと出演者一覧を見る限り、やはり筋肉系なアイドルなどは他に出ていない。

また、筋肉系であることに対してもう少しなにかツッコまれるかと思ったがその手の質問もなかった。

P(お茶の間向けとはいえ、そう言う路線は取らない音楽番組ということか)

ただ純粋に歌と踊りを魅せるための舞台。AMとはそういう場なのだった。

ふと横を見ると、律子が緊張した面持ちで画面を見ていた。

P「おいおい、録画だからそんなに緊張しなくても」

律子「そ、そうなんですけどね・・・やっぱりこう、意識すると心臓が大胸筋を突き破りそうに・・・」

小鳥「まあまあ、きっとプロデューサーさんもそのうち律子さんの気持ちがわかりますよ」


そして、小さなテレビの中の大きな舞台で竜宮小町の初ステージが始まった。

P(・・・すごい・・・)

テレビに映っているのは、いつも肉弾戦を繰り返したり妙なトラップと力技で俺を恐怖に陥れる、筋肉で巨体のいつもの三人ではなく

そこにいたのはまさしく『アイドル』だった。

歌も踊りも笑顔も、ビジュアル面に強いインパクトを与える筋肉もすべてを使い、

時に可愛らしく、時に力強く、時に妖艶に、三人がそれぞれにその姿を魅せていた。

この放送を見た後で、果たして誰が彼女たちを色物だなどと呼べるだろうか。

かつて、ある一人の筋肉系女性アイドルがいた。

一般的に想起される『可愛らしさ、女性らしさ』と反する『筋肉』という性質から真っ当な扱いなど受けないと思われていたが

彼女は一曲でそれらの前評判を捻じ伏せ、二曲で人気を盤石のものとし、三曲で芸能界のカリスマへと上り詰めた。

しかし彼女は突然引退、彼女に迫るほどの総合的な実力を持たなかった他のアイドルたちは、芸能界で生き残るために仕方なく歌や踊りではなくその突出した筋力こそを強くアピールし始めた。

強いことより派手なこと、上手い事より面白いこと・・・そうして筋肉系アイドルたちは、いつしか色物として扱われていくようになっていった。

以上が、音無さんの語るざっくりとした筋肉系アイドル史である。

小鳥「・・・ですけど、これで風向きも変わるかもしれませんね」

律子「ええ、これで筋肉系の子たちだって何も変わらないんだってわかってくれたはずです。業界全体の底上げになるかもしれませんよ」

P「そうか・・・このために律子は頑張ってたんだな」

律子「はい、私の時はまだ不遇の時代でしたから・・・なんて、これは甘えですかね。とにかく世間に一発見せつけてやりたかったんです」

小鳥「律子さん、竜宮小町の子たちだけじゃなくて皆に色々アドバイス聞いてましたもんね、どうしたらいい感じに魅せられるかって」

律子「あはは、結構長いことやってますけどいっぱい気付いてないことがあってびっくりしましたよ。でも、そんな魅力を知らないままなんてもったいないじゃないですか。だから会議もいっぱいして、みんなで考えていったんです」

P「そうか、みんなで、か・・・」

例えるならそれは二隻の帆船。

今までの俺は他のみんなが心配そうな顔をしているのにも構わずとにかくオールで漕ぐことだけを考え、

律子の船は受けた風をうまく生かすため、みんなで協力して帆を張っていたのだ。



P「俺も、負けないように頑張るよ。みんなのいいところを引き出して伸ばしていけるように」

律子「その意気ですよプロデューサー、でも私たちも簡単には負けませんからね?」

P「はは、お手柔らかにな・・・あと、これからいろいろ相談すると思うけど、よろしく頼む」

律子「ええ、私の方も何かあったら頼りにさせてもらいますからね」

P「もちろんだとも・・・一応言っておくが、力仕事以外で頼むよ」

小鳥「大丈夫ですよ、みんなで進んでいきましょう」

次回のTHE iDOLM@SCLETERはー?

自分、我那覇響だぞ!

次回はなんと液体金属のロボットが未来の人類軍のリーダーを殺すために過去へと・・・

ってうわー!これは自分が見てる映画だー!

もう一度やりなおしていい・・・?

次回、『大好きな技、大切な力』を

お楽しみにー!

☆NOMAKE

~用語集4~

・アミューズメントミュージック

全国放送番組(一部地域を除く)、通称AM
お堅いわけではないが正統派音楽番組
ディレクターの意向により、ネタ感があったり一時流行りだったりといったゲストはほとんど出演することがない
竜宮小町が出ることが出来たのは社長の人脈もあるが、番組の責任者も気に入ってくれたため
「夜放送してるのにAM」というギャグを千早の前で話したら10分ほど笑いが止まらなかったようだ

という感じで六話おしまいです
Pの成長(物理ではない)の話は筋肉解決が出来なくておもちろくないね
事務所の牛乳大タンク
小鳥さんはモノシリデスヨ

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