ドラえもん「ノビタサンオチャガハイリマシタ」 (106)

…ありがとうドラえもん」

のび太は限界を感じていた

20××年、ロボット工学の分野ではもう、野比のび太の名前を知らないものは居ない

源静香と大学で運命的な再会、そして交際を続け結ばれた

彼はドラえもんの望む『立派なのび太君』になったのだ

しかし、ドラえもんが居ない

元々、高校の時にのび太は気付いていた

ロボット産業の限界、低迷を

確かにロボット産業は発展の一途を辿り、彼が二十歳を過ぎる頃にはあらゆる分野での

ロボット従業員の採用が盛んに行われていた

しかし、反発は起きた

雇用問題に対する意見や、一向に慣れないロボットによる接客は所謂『コミュニケーションを主とするロボット』の発展を大きく妨げた

のび太はその時、気付いた

あぁ、ドラえもんは違う未来から来たんだ

勿論、賢明なのび太は自分のその発想が侘しい、なんとも他人任せな発想だとも気付いた

ドラえもんを知っているのは僕たちだけだ

だったらドラえもんを作れるのも僕たちだけじゃないか

海外に留学し、生物学を学んでいた出木杉やのび太と同じ大学で経済を学んでいるスネ夫に声をかけ、のび太は動き出した

まず、解決すべき

いや、解決出来ずとも触れておきたい問題を提起した

「みんな、ドラえもんって一体何だったんだと思う?」

この質問に二人は沈黙する

それは一つにドラえもんと言う単語自体、あの日を境に何故か誰も発さなくなり

何か夢を見ていたのは自分だけだったのではという気持ちになっていった

それが、殊更にのび太の口から発せられた事に何とも言えず、不思議な気持ちになっていたからだ

そしてもう一つは
恐怖だった

のび太が言う『ドラえもん』と言う言葉

確かに昔の自分だったら理由も無くほほが緩み、わくわくしていた

あの不思議なポッケからは美味しいもの、楽しいもの、不思議なもの

何でも出てきた

夏休みはドラえもんとワクワクハラハラの大冒険

裕福なスネ夫にとってそれは得難いものだった

その冒険の話を目を輝かせ、賢明に話してくれるみんな

勉強に忙しく過ごす出木過にとってこの時間がどれほど嬉しかった事か

しかし、彼等は知った

色々な事を知ったのだ

ドラえもんが見せてくれた美しいもの、楽しいもの、素晴らしい人格者達やその理念、思想

それらだけではないこの世界の悲しい部分

人は人を騙し、傷つけ、殺す

その事を知った

だからこそドラえもんが輝いても見えるし、また同時に恐ろしくてたまらないのだ

テンポよくて好き

「…あれは、ごめん彼は…多分、間違いだったんだと僕は思うよ」

重い空気を破り最初に意見したのはスネ夫だった

「…と言うと」

出木杉が問いただす

「そうだな、君たち二人にこの分野の話をするのも気が引けるが…あり得ないだろうあんなロボット」

「…」

のび太は依然黙ったままだ

「僕らが二十歳頃に起きた、あの運動…『非人格非平等』運動。あれがあったからとは言わないが、ドラえもんの生産はなし得ないと僕はあの時悟ったよ」

>>11
ごめんこれ昼間立てたんだけど
途中で急な呼び出しくらって中途にしちゃったやつの張り直しだから途中までしかないんで途中から遅くなります;

「確かにあの運動によって所謂、人工知能をもったロボットはその生産、運用を大きく制限され、『人間よりも完璧なコミュニケーションロボットを作ってはならない』と言う何ともお粗末な法律が制定されたね」

「そうだろう、出木杉君。そこで黙っているのび太には悪いが僕はあれは…失礼、彼は何かの間違いだったと思っているよ」

「…君はドラえもんに会いたくないのか?」

黙っていたのび太が口を開いた

「会いたいかだって?馬鹿なこと聞くなよのび太」

「どうなんだよ」

「…会いたいさ。会いたいに決まっているだろう!?僕は…僕はなぁ!
ドラえもんに会ったから、ドラえもんに色んなものを見せてもらったから!
父さんの会社を何も考えずに継ぐんじゃなくて!
世界の辛い思いをしている子供達に!
僕たちが体験した素晴らしい青春を少しでも味わってもらいたくて!ボランティア団体の設立を…!!」

「スネ夫君、落ち着いて」

興奮し、息も絶え絶えに叫ぶスネ夫を出来杉がなだめる

「…ごめんスネ夫」

「こっちこそムキになって悪かったよ」

決まりが悪そうに謝り合う二人に出来過ぎが切り出した

「実はね、のび太君。僕もスネ夫君の意見には概ね賛成なんだ」

そう言うと、出来杉は鞄からタブレット端末を取り出した

「これを見てくれないか」


「…え」

二人は息を飲んだ

「出来杉君これって…」

「あぁ。驚いただろう?あの頃の僕らが住んでいた地域の記録写真さ。何て言っても量が膨大だからね、集めるのには本当に苦労したよ。だからこそこの写真はとんでもない事実を写しているんだ。いや、正確には写していないと言った方が正しいのかな」


「こんな馬鹿なことって!!!」

スネ夫とのび太はその膨大な量の写真を次々にスクロールしていく

そこにはご近所さんやいつもの空き地、更には人の写真に映り込んだのび太達の姿まであった

しかし、無かった

ドラえもんの姿だけは無かったのだ

のび太は何故か怒りに似た感情を持った

「何だって言うんだ!!こんな誰が撮ったかも分からない写真に居ないからって…居ないからって」

「…じゃあのび太君、君はドラえもんと写真に映ったことがあるのかい?」

「それは…航時法に引っかかるからダメだってドラえもんが」

「成る程。でもだよ?彼の道具でタイム風呂敷と言うものがあったね、それで包んだものの時間を操作出来るという道具だ」

「…そうなんだ、それは僕も引っかかっていた。タイムパトロールと言うものがあり、航時法と言うものがあるにしては、ドラえもんの道具には『時間を操作するもの』が多すぎるんだ」

「ここで一つの仮説を僕は唱えたい。『彼は未来からは来ていない』」

出来杉のその発言にのび太とスネ夫は驚きの色を隠せず、スネ夫は理解しきれないその提案に説明を求める

「それはどう言う意味なんだ出来杉君、まさか写真が無いからって
彼の存在自体を無かったことにしようって言うのか?
それは余りにも短慮だし思いやりに欠けた暴論だぞ!」

「…スネ夫、出木杉君の話を聞こう。忘れたのか?彼は誰よりも強くて、誰よりも賢くて、誰よりも優しい出来杉君だぞ」

のび太はスネ夫をなだめ出木杉のその瞳をじっと見つめる

「ありがとうのび太君。それにスネ夫君、君のその熱意があったこそ僕はこんなにもとんでもなく、恥ずかしい話が出来るよ」

「ふん、ドラえもんが居ないだの言ったら只じゃおかないからな!ジャイアンに言いつけてやる!」

「それは困るな…だって彼今は」

「世界統一総合格闘技、最多ディフェンシングチャンピオンだよ」

「本当にすごいな彼は…でも僕はドラえもんの存在を否定する訳じゃないんだから
よしてくれよ?
…さて、話を戻そう。
僕がこの暴論ともとれる仮説を立てたのにはいくつかの理由がある
まず一つにさっきの話だ
彼は写真に写りたがらない、ないし映らないのではないかという事
君たちは聞いた事があるかい?
写真に撮られると魂が取られると言う話を」

「聞いた事はあるけれど…そんなのは昔の迷信で
人形やそう言った人間に近い形の物には魂が宿りやすいとされていて
当時写真をみた日本人があまりにもそっくりだから
そっちに魂が宿ってしまいうのではと考えただけだよ
まさか未来から来たドラえもんが…」

大昔の迷信を唱える出来杉に、さっきまでとは打って変わりのび太は疑り深く意見する

出来杉はのび太のその疑いの目をじっと見つめ返す

「そう、だからこそだのび太君。
そもそも彼の道具の中にはカメラを原型にしていたものがあっただろう?
だったら彼がそういった、思想や信仰めいた理由から写真に映りたがらない事はあり得ないんだ。
とすれば必然的に後者の『映らない』という理由が当てはまらないかい?」

スネ夫は度肝をぬかれ分かりやすく驚きの表情を見せ、のび太はただじっと黙り出来杉を見つめた

「続けるよ。だとすれば、『何故映らないのか』
論ずるべき点はそこになって来るだろう」

「…単純に考れば、未来の道具による効果。またはドラえもんにはもともとそういった機能が備え付けられていると言う事になるね」

のび太は応える

「そう、のび太君が言った通りまず考えうる理由として秘密道具の使用が考えられる。
しかし、果たしてそんな事があり得るのだろうか。
彼が出す未来の道具には石ころ帽子と言う存在自体を気迫にする道具があったね。
僕は正直、あの道具には特に危機意識を持たざるを得ない。
使い方を間違えればそれこそ果てしなく悪用する方法はあるからだ。
しかし、すれすれのモラルとして
存在自体は希薄になるがそれは人間の意識下であり存在が消える訳ではない
という縛りがあったはずだ。すなわち監視カメラや映像には記録される。
しかしだ、今仮定されている記録媒体から姿を消す道具。
これを石ころ帽子と併用すれば恐ろしい事になる。
果たしてそんな道具が使用を認められるのだろうか。」

「…」

次は完結させてね

「確かにあってはならない道具だ…」

のび太に続きスネ夫もその出来杉の話に夢中になる

「まぁ、彼の道具の中には地球破壊爆弾なんて言う恐ろしい名前の道具もあったが
僕はそれは所謂ジョーク商品ないし、独裁スイッチの様な
機知にとんだ反戦的であったり抑止力的な威力の伴わない道具であったのだろうと推測するよ。
理由は、言うまでもないね。
彼の居た未来は理想の未来そのものだった。」

「…となればだ。」

のび太は話を締めくくりに入った

>>38
さっきは申し訳ないです

所々誤字があるけど
脳内補正しておく保守

「ドラえもんの本来から備わった機能か!」

スネ夫はもうすっかり出来杉の思い切った、しかし要所を押さえたその仮説の虜になっていた

「そう!しかしそれもちょっと違うんだスネ夫君。何故なら…」

「道具の製造、使用が認められない以上そんな機能のついたロボットの開発は不可能だろうね」

「その通りだのび太君。それではその機能のついたロボットに石ころ帽子をかぶせれば良くなってしまうからね。
ここで僕の仮説は大きな山場を迎える事になる。
『ドラえもん』はロボットでは無いだ」

「…!!」

>>41
すまん
これでも早く書こうと頑張ってるんで…

「…出来杉君、それはあまりにも」

スネ夫は出来杉の余りにも突飛な話に着いていけなくなっていた

「確かにそう思うかもしれない。
僕らはあまりにも彼をロボットとして思い出を築き過ぎた。
しかしだ、彼は本当にロボットだったのだろうか。
現に、僕たちの世代ではどうもドラえもんの様なロボットの製造に辿り着く見込みすら立たない。
『ドラえもんはロボット』この実は根拠の乏しい前提こそ最も疑ってかかるべき点なのではないだろうか」

「確かに面白い話だ。しかしだよ、出来杉君それだとどうにも納得いかない部分がある。
セワシ君だ。」

「そうだよ!元々ドラえもんはセワシ君が未来からのび太を再教育する為に!」

「その話は僕も何度か聞いているよ。でもね、やっぱりそれもおかしいんだ。
のび太君、彼は本当に君の子孫なのだろうか。
まず疑わしいのはその名前だ。『セワシ』おかしくないか?」

「?良くある名前とは言わないが特別変わった名前じゃぁないだろう。
だったら野比のびたの方が…あ」

「…」
のび太は沈黙する

「そうスネ夫君も気付いたようだね。
のび太君の家は代々名前に『のび』を家訓がある。
これは疑うに充分だと僕は考える」

「そして第二に疑うべき点は、『彼は何故やって来ない』かだ。」

「…確かに」

「何故、彼は僕らが大人になった途端にやって来なくなった。
もし本当に彼がのび太君の未来を憂いていたのならば、
成功した彼を一目見に来ても良いはずじゃないかな。
せめてドラえもんが帰ったあの日、彼は来るべきだった」

出木杉が話を進めるうちにのび太とスネ夫は悪寒の様なものが体に走るのを感じていた

「…そろそろ結論をお願いしたい。出来杉君。
『ドラえもんはロボットでは無かった』
確かにその点においては成る程、道理のある可能性として十分な話だ。
でもだよ、僕らはまだ結局
『ドラえもんが何だったのか』についてこれっぽっちも話を進められていないんじゃないかな」

「そうだねのび太君。でももうちょっとだけつきあって欲しいんだ。
大事な事だからね。
『ドラえもんが何だったのか』
まずこの言葉を正したい。
『ドラえもん』とは何か
正しくはこうなのではないだろうか」

「…出来杉君、それじゃあ、まるでまだドラえもんが居るみたいに聞こえるぞ」

スネ夫が慎重に聞き返す

「そうだよ。僕はそう言ったつもりだ。」

「そんな馬鹿な!だってドラえもんは僕らが中学を卒業したあの日、未来に帰って行ったじゃないか。」

噛み付いたのは意外にのび太ではなくスネ夫だった

「あぁ。僕も覚えているよ。でも思い出して欲しい、彼の帰り方を。
彼は僕らが剛田君の家で開いていたお別れパーティの時、消える様に帰っただろう?」

「そうだよ。のび太と二人でお別れすると心配になって帰れなくなるからのび太がみんなに囲まれている時安心して帰りたいって」

「のび太君。ドラえもんは君に初めて会った時、どうやって来たかな?」

「僕の机の引き出しから、タイムマシーンに乗ってだ…」

「…あ」

スネ夫もその不可思議なドラえもんの行動に気付いた

「そう、おかしいんだ。彼はあんな風に未来に帰れなかったはずだ。
少なくともタイムベルトを巻く必要があった。
…さて、ここで話を少し戻そう。
彼が何故写真に映らないかだ。」

「…ドラえもんはモナド
…つまり、限りなく実体がないんだろう?」

のび太はその重い口を開いた

「!!流石のび太君。ぼくがこの結論に至までにどれだけ時間がかかった事か…
でも、のび太君だからこそ早急に至る結論なのかもしれないね…」

「…?」

スネ夫は二人の会話を不思議そうに聞く事しか出来ない

そんなスネ夫を見かねてか、出木杉は続けた

「つまりだスネ夫君。ドラえもんはもしかしたら神様みたいなものだったんだ!」

「え?それってどういう…」

「良いかい?この地球上には大きな、それはとてもとても大きなエネルギーが流れ続けている。
海流であったり、気流であったり、まだ人間が認識出来ていないものだってた沢山あるだろう。
そしてその流れは平衡状態じゃない事がほとんどなんだ。
一カ所にエネルギーが密集する事もあれば、スカスカな所もある。」

「雨が沢山降る所があれば、降らない所がある様にだね」

「そう、その通り。そしてさっきのび太君が言ったモナドこれを説明するのは、僕よりものび太君の方が肯定的に話せそうだね」

「のび太に聞くのも癪だけど仕方ないか…」

「なんだよスネ夫、君だって聞きたいくせに…
まぁ良いや、モナドって言うのは、現実に存在するものを構成しているものへと分析していくと、それ以上分割できない状態
簡単に言えば延長の無い実態なんだ。つまり構成されたものじゃないから部分を持たない。でも、属性としては存在する。
そう言うものなんだ」

「それが出木杉の話と…いや、ドラえもんと何の関係が?」

「良いかい?この世界には僕たちの知らないエネルギーが流れ続けているかもしれないと、さっき出来杉君は言ったね?それがもし『ドラえもん』を生み出す為のエネルギーだとしたら?」

「『ドラえもん』と言うのは…人類いや、地球の意志で生み出される実体のない限りなくポジティブな属性としての存在だったとしたら?」

「…そんな馬鹿な」

「確かに馬鹿げているね。でも僕は出来杉のこの話にピンときてしまっているんだ。
ドラえもんには友達が居た。ドラえもんズという友達がね。
彼等は世界中のあちこちに居た。
彼等もまたエネルギーの散逸構造から発生したモナド。属性としてのドラえもんだったとしたら」

「成る程、合点が行く」

「だろう?だからこそ僕は思うよ。『ドラえもん』は今も
この世界の何処かで昔の僕たちの様な子供達に
素晴らしい何かを教えるため
奇麗な何かを見せるため
素敵な出会いを与えるために
存在しているんだとね」

「そうだね。のび太君、僕が言いたかった事を
とても奇麗に、優しく、暖かく言ってくれて本当に嬉しいよ
でも一つ忘れているよ?」

「うん。セワシ君の事だね、分かってる。
でもそれも粗方検討は着いてるんだ。
多分セワシ君が神様で、どの子供に『ドラえもん』を託すか
見に来ているんじゃないかな」

「成る程。それなら辻褄が合うね!
何てったって当時ののび太君は
世界で一番『ドラえもん』が必要だっただろうからね!」

「確かにのび太は世界一バカでのろまだったもんな!」

「もう二人とも酷いじゃないか…ドラえもーーーーーーーーーん!!!」

終わり

え?

>>97
ごめん
眠くてこれが精一杯です…

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