春香「はるかはさいみんじゅつをおぼえた!」 (72)

P「催眠術?」

春香「はい!」

P「覚えたのか?」

春香「はい!」

P「いつ?」

春香「最近です」

P「どうやって?」

春香「んもう……質問が多いですね」

P「まぁ信じてないからな」

春香「えーひどい」

P「で、どうやって覚えたんだ?」

春香「学校の図書館に本があったんです。 それを借りて」

P「へぇそう」

春香「……本当ですよ?」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385898223

P「一応信じてみるとして、一体誰に試したんだ?」

春香「いえ、誰にも」

P「だったら覚えたかどうか分からないじゃないか」

春香「だからプロデューサーさんで試すんじゃないですか」

P「えーひどい」

春香「大丈夫ですって! 失敗したって死ぬわけじゃないんですし」

P「う~ん」

小鳥「コホン……まぁまぁプロデューサーさん、付き合ってあげても……」

P「自分が実験台ではないから、そんなことが言えるんですよ小鳥さん」

小鳥「それは認めますけど……」

春香「なんなら小鳥さんでもいいですよ」

小鳥「嫌です!」

春香「即答ですね」

小鳥「えへへ」

P「…………」

春香「はいプロデューサーさん、ここに座ってください」

P「はいはい」

春香「ではコレをよく見て――」

P「ちょ、ちょちょちょっと待て!」

春香「なんですか?」

P「ソレでやるのか? その振り子で」

春香「そうですよ」

P「お前、それはないだろう」

小鳥「ぷふっ、それって志村けん?」

P「は?」

春香「え?」

小鳥「いや、ギャグが……」

春香「え?」

P「は?」

小鳥「……なんでもないです。 忘れてください」

P「しっかし、今時振り子で催眠術なんて……」

小鳥「古典的ではありますよね」

春香「読んだ本が古いんだからしょうがないじゃないですかぁ」

P「そんな古い本を見て、よく参考にしようと思ったな」

春香「催眠術が出来たら、私も個性のあるアイドルになれるかなぁ……なんて」

P「春香……」

春香「……そんな悲しい顔しないでください」

P「催眠術を覚えたのは、春香なりに考えてのことだったんだな」

春香「いや……冗談ですよ? ただ楽しそうだったので……」

P「よし! 俺、協力するよ! いや、ぜひ協力させてくれ!!」

春香「そ、そうですか……それはどうも」

P「さぁ春香、座ったぞ!」

小鳥(もう催眠術にかかってるみたいな聞き分けの良さ……)

P「なんですか小鳥さん?」

小鳥「いーえいーえ」

春香「では……この振り子をよーく見てくださいね」

小鳥「振り子の先が50円玉なのには何か理由があるの?」

春香「本では5円だったんですけど、金額高いほうが効きやすいかと思いまして」

小鳥「関係あるのかしら?」

春香「多分ないです」


春香「では気を取り直して……この振り子をよーく見てください」

P「ジーーーーー」

春香「口で言わなくていいです」

P「あっはい」

春香「いいですか~片時も目を離さないでくださ~い」

P「…………」

春香(なんか胸元見られてるみたいで恥ずかしいな……)

P「…………まだぁ?」

春香「静かに」

P「あっはい」

春香「えー私が三つ数えますと……プロデューサーさんは眠ってしまいます」

小鳥「ベタね」

春香「静かに」

小鳥「あっはい」

P「…………」


春香「では……………………ワン



   …………………………………………ツー





   …………………………………………………ジャンゴ」


春香「……ぐぅ」


P「おっ?」

小鳥「んっ?」

P「ちょ……おい、春香?」

小鳥「春香ちゃーん?」

春香「すぅ……すぅ…………」

小鳥「完全に寝ちゃってます」

P「自爆するとは……手法がベタなら結果もベタですね」

小鳥「春香ちゃんらしいです」


春香「プロ……さんは………私のことが好きで好きでたまらなく……むにゃむにゃ」

P「……おい」

春香「ぁん……ちょ、ちょっと……がっつきすぎ…………ふふふっ」

P「こんなとき、どういう顔をすればいいんでしょう? 小鳥さん」

小鳥「笑えばいいと思いますよ」

P「あはは……」

小鳥「おほほ……」

春香「ぐふふ……」

P「とはいえ、春香が読んだ本は効果があったわけですね」

小鳥「えぇまぁ」

P「そして春香は間違いなく、催眠術を習得したと」

小鳥「そうですね。 ただ、本来とは違う形ではありますけど」

P「逆に器用ですけどね」

小鳥「確かに」


春香「…………」

P「どうします?」

小鳥「せっかくなんで、寝かせときましょうよ」

P「そうですね、起こさないように……よいしょ」ヒョイ

春香「ZZzz……」

P「ソファーでいいか……」

小鳥「いいなぁ……お姫様抱っこ」ボソッ

P「はい?」

小鳥「いーえいーえ」

【1時間後】

春香「う、うぅ~ん」

小鳥「おはよう春香ちゃん」

P「よく寝たな」

春香「ふぁ~ぁ…………おはようごz………あれ?」


春香「…………」


春香「どーして私が眠ってるんですかっっ!!」

P「一時間越しのノリツッコミ」

小鳥「頂きました」

春香「ちょ、ちょっともう一回! 今度は本を見ながら……」ガサゴソ

P「えー」

春香「えーじゃない! ほら、そこに座って!!」

――――――
――――
――

春香「ぐぅ……」

P「やっぱりか……」

小鳥「春香ちゃん可愛い」

春香「……早ちゃんは私のことが好きで好きでたまらなく………ぐふっ」

P「おーおー涎を垂らしおって」

小鳥「ジュルリ……」

P「アンタもかいっ!」

春香「千早ちゃんは私の犬にな~る……犬になぁ~るぅ~」

P「個性が欲しいとか言ってるけど、むしろ灰汁が出てきた気がする……」

春香「千早ちゃん、ワンは? はいワン!」

小鳥「…………」


春香「すぅ……すぅ……」

P「まいったなぁ……また1時間ぐらいしないと……」

小鳥「ふむふむ……ほぉほぉ」ペラッ

P「ん?」

小鳥「催眠術ブームとかありましたから、その時の本みたいですねコレ」ペラペラ

P「なるほど、だからちょっと古いんですね」

小鳥「……私、やってみます」

P「え?」

小鳥「春香ちゃーん?」

春香「…………」

小鳥「想像してくださ~い……貴女は今、深ぁ~い海の中に居ますよ~」

小鳥「とてもリラッ~クスして、すぅ~っと心を開いていきま~す」

P「喋り方なんとかなりません?」

小鳥「こういう感じにって書いてあるんですもの」

春香「…………」

P「効いてるんですかね? これ」

小鳥「本によると、これで暗示にかかり易い状態になってるそうです」

P「へぇそう」

小鳥「あとはどんな暗示をかけるか……ですね」

小鳥「うぅ~ん、どうしよっかなぁ」

P「あんまりヒドイのはやめてくださいね」

小鳥「もちろんです」

春香「…………」

小鳥「えーっと……あら?」

P「なんですか?」

小鳥「いや、あの……ホワイトボード見てたんです」

小鳥(そっか……もうすぐ千早ちゃんが来るのね)

小鳥「…………」

小鳥「…………そうだ」

P「思いつきました?」

小鳥「ふっふっふっ」

P(うわぁ……すっげぇ悪い顔してる)

小鳥「はるかちゃ~ん」

P(心配だなぁ)

小鳥「私が三つ数えると……春香ちゃん、貴女は目を覚まします」

春香「…………」

小鳥「目を覚ました貴女は……」

小鳥「千早ちゃんにチューしたくて堪らなくなります!」

P「えぇ!? ちょ、ちょっと――」

小鳥「イチ、二の、さ……んぐっ!」

P「いろいろダメですってば小鳥さん!」

小鳥「んんー! ふぇをはあひへふあふぁい(手を離してください!)」

P「だが断ります!」

小鳥「…………レロレロ」

P「うわっ!」バッ!

小鳥「いちにのさんっ!」

P「あっ!」

小鳥「んふふっ……手のひらって、舐められるとくすぐったいでしょ?」

P「びっくりした……」

千早「ふぅ……」

千早(少し早く着きすぎてしまったわ)

千早「…………」

千早(今日は……誰か事務所に来ているのかしら?)

千早(最近はみんな忙しくて、なかなか顔を合わせることが出来ないし)

千早「…………」

千早(そういえば、最後に春香の顔を見たのは……?)

千早(そんなに前ではなかったはずだけれど……)

千早(もう何年も会っていないような気さえしてしまうわ)

千早「春香……」


千早「…………」


千早(来てるといいわね)


ガチャ

千早「おはようごz――」


ブチュー


千早「んっ!? ンンーーーーーーッ!」

春香「んちゅ……んっ……」

千早「……ぷはっ! ちょ、ちょっと春k……んむっ」

P「…………」

小鳥「いいわよいいわよ! その調子!」カシャカシャカシャ

P「一眼レフ、買ったんですか?」

小鳥「金利手数料は負担してくれましたよ、タカタさんが」

P「あぁそう」


春香「ひはやひゃん……んっ………ちゅぷ」

千早「」


千早(誰か……助けて…………)

春香「んっ……ふぅ………ちゅ…………」

千早「」ビクッビクッ

P「釣りたての魚みたいになってる……」

小鳥「あぁダメ……また涎が………」

P「そろそろ助けてあげたほうが良くないですか?」

小鳥「ジュル……もう……しかたないなぁ~」

春香「千早ちゃん……千早ちゃん………あむっ」

小鳥「どうどうどう……」

春香「フーッ! フゥー!」

P「こっちは盛りのついた猫みたいになってるな」

小鳥「私が手を叩くと、貴女は眠ってしまいますよ……はいっ」パン

春香「すーすかぴー」

小鳥「では……次に手を叩くと…………」

千早「貴女には音無さんがずぶ濡れに見えてしまうわ」

小鳥「……へ?」

千早「濡れたままの服を着ていると、風邪を引いてしまう」

春香「…………」

千早「だったらどうするか……分かるわね? はいスタート!」パン

春香「ふぁ~あ…………ん?」

小鳥「あっ、やば……」

春香「た、大変!! 小鳥さん、脱いで脱いでー!」

小鳥「ピヨーーーーー!!」


春香「ほらほら早く!」

小鳥「ちょ、やめ………くすぐったいw」

春香「ほら、こんなに濡れてる……」

小鳥「いやんっ! なんか卑猥ぃー」

春香「暴れないのっ」

小鳥「ソ、ソコは……ぁ………ヤダ」


P「…………ゴクリ」

小鳥「ち、千早ちゃん! 謝る! 謝るからぁ!」

千早「…………」

小鳥「ほんの出来心でやっただけなの! だから許してぇー」

千早「私も出来心ですから、我慢してください」

小鳥「後生ですからぁ!」

千早「知りません」


小鳥「は、春香ちゃんもねっ、落ち着いて……でないとホントに濡れ――」

春香「フーッ! フゥー!」

小鳥「やーーーーん!!」

P「…………」

小鳥「プロデューサーさんもジッと見てないで助け………っていうか見ないでぇーーー!!」

P「あっ、すんません!!」


バタン!

P「ふぅ……」

P「いや、この『ふぅ……』は賢者モードとかそういうことじゃなくて――」

P「って誰に言っとるんだ俺は」

千早「何ですか? 賢者って」

P「あのな、男がイッ……ぎゃあ!」

千早「すぐそばで叫ばないでください」

P「あ、あれ? 二人は?」

千早「そのままですよ」

P「いいのか? 開放してやんなくて」

千早「音無さんにはしばらく反省していただきます」

P「そ、そうか……」

千早「もちろんプロデューサーも含め、あとで経緯を説明していただきますから」

P「……はい」

小鳥「春香ちゃんストップ!」

春香「ガルルルル……」

小鳥「うなり声をあげないの!」

春香「もう……なんですか?」

小鳥「ほら、よく見て? 濡れてなんかいないでしょ?」

春香「…………」

小鳥「ね?」

春香「んなことはどうでもいいですから、早く脱いでください!」

小鳥「な、なんか目的が脱がすってことにシフトしてきてない!?」

春香「ほ~れほ~れ」

小鳥「こ、こら! 引っ張っちゃダメ!」

春香「よいではないかーよいではないかー」

小鳥「あぁ~れぇ~」

小鳥(は、早く催眠を解かないと……)

小鳥「え、えと……私が三つ数えると、貴女は眠ってしまいます!」

小鳥「はいイー、アール、サn――」


ブチュー


小鳥「くぁwせdrftgyふじこlp」

小鳥(なんですとーーー!!??)


春香「んっ……ちゅ………」

小鳥「ちょ、ちょっと待っ……んっ………はるかちゃ……」

小鳥(もしかして、さっきの催眠がヘンな風に残っちゃったの?)

春香「……んふふっ」

小鳥「ふぁ……や、やだぁ」

小鳥(キスしながら脱がしにかかるなんて……)

小鳥(……も、もうダメ)

春香「すぅ……すぅ……」

小鳥「はぁ……やっと眠ってくれた」

小鳥「もう少しで快楽に身を任せてしまうところだったわ……」

千早「で、一体どういうことなんですか?」

P「どういうことって……」

小鳥「こういうこと」


春香「うぅ~ん……三つ数えるとぉ……むにゃむにゃ」


千早「まったく分かりません」

P「そう言われたってなぁ」

千早「催眠術だということは分かります」

千早「問題は、誰が春香に催眠をかけたのか……です」

P「だから……」

小鳥「こういうことですよ」


春香「プロ……さんは………私のことが好……なるぅ……」

千早「……え? 春香が自分で自分に催眠を?」

P「本人はそんなつもり無かったんだけどね」

小鳥「結果的にはそういうことになるわ」

P「まだ覚えたてらしくてな、俺で試してたんだが……」

小鳥「自分がかかっちゃったの」

千早「そもそも春香はどうして催眠術を?」

P「どうも、自分の個性の無さを気にしてたらしい」

小鳥「そんなことないと思うんだけど……」

千早「催眠術なんて覚えなくても、春香には春香の良さがあるのに……」

P「そうだな……すぐに暗示にかかってしまうほど純粋なところとか」

小鳥「自爆しちゃうドジなところとか」

千早「仮にも異性の前で、あられもない寝姿を晒してしまうところとか」

春香「ぐぅぐぅ」

P「それはアレだ、俺を異性だと思ってないんだろう」

小鳥「あんな寝言を洩らすことからして、それはないと思いますよ」

春香「はぁ……」

P「どうした? 目を覚ましてからずっとその調子だな」

春香「…………」

P「何をそんなに落ち込んでるんだ?」

春香「だって……結局、催眠術は成功しなかったじゃないですか」

P「厳密には失敗とは言わないだろうけど」

春香「私が予想していた結果とは大きく異なります!」

小鳥「まぁそうね」

春香「あっ、そうだ小鳥さん……ごめんなさい」

小鳥「え? 何が?」

春香「なんか私……すっごく失礼なことしちゃってたみたいで……」

小鳥「いいのよ気にしなくて。 ちょっとビックリしたけど、嫌じゃなかったわ」

P「……ゴクリ」

小鳥「そこ、思い出さない」

P「あっはい」

春香「千早ちゃんが来てたのも知らなかったなぁ」

千早「寝ているのと同じだもの……しょうがないわよ」

春香「あれ……どうしたの千早ちゃん? 顔が赤いよ?」

千早「いや、その……」

春香「???」

千早「春香は、何も覚えていないの?」

春香「えっ……私、千早ちゃんにも変なことしちゃったの?」

千早「え、えぇ……まぁ」

春香「そっか……ごめんね千早ちゃん」

千早「いいのよ気にしなくて……私も、そんなに嫌じゃなかった……かも」

小鳥「そうなの!?」ガタッ

P「そこ、身を乗り出さない」

小鳥「フーッ! フゥー!」

千早「…………」

春香「ねぇ千早ちゃん」

千早「なにかしら?」

春香「私、千早ちゃんに何したの?」

千早「そ、それは……その」

小鳥「春香ちゃん、写真見せましょうか?」

春香「えっ? 写真なんてあるんですか!?」

小鳥「ちょっと待ってね」ガサゴソ

千早「あぁ、あれはプロデューサーに消してもらいました」


小鳥「」


小鳥「えぇーーーー!!!!」


小鳥「なんということを……」

P「当然です」

小鳥「オーマイガッ!」

小鳥(なぁんて……撮った時点で自宅のパソコンに転送済みなんだけど)

千早「というか……」

P「どうした?」

千早「春香は自分で催眠術にかかり、眠ってしまったわけでしょう?」

春香「うん、そうみたい」

千早「その後に音無さんが暗示をかけ、春香が私にキ……」

春香「き?」

千早「いや……えっと……つ、つまり! 私が言いたいことは……」

P「小鳥さんも催眠術を習得している……だろ?」

千早「えぇ……春香に比べ、正しい形でマスターしているかと」

春香「…………」

小鳥「は、春香ちゃんが特別、暗示にかかり易かったんじゃないかしら?」

小鳥「それほど素直でイイコってことよねきっと!」

春香「お気遣いありがとうございます」

小鳥「いや、別に気遣いとかそーいうんじゃなくて」

小鳥「多分、私は関係ないんだと思います」

P「……と言いますと?」

小鳥「あの時の春香ちゃんなら、誰でも催眠術をかけることが出来たんですよ」

小鳥「現に千早ちゃんだって、暗示をかけたんですし」

P「つまり小鳥さんが催眠術を使えるようになったのではなく」

P「春香が誰の暗示にもかかってしまう状態にあった……と?」

小鳥「そんなとこです」

P「俺は小鳥さんが覚えたと思いますけどね」

小鳥「……と言いますと?」

P「催眠術というのは、如何に相手の潜在意識の扉を開くかによると思うんです」

P「そのためには、相手をリラックスさせなくてはなりませんよね?」

小鳥「えぇ」

P「そこなんですよ。 それこそ、小鳥さんにピッタリではないですか」

小鳥「あの……おっしゃりたいことがまったく見えてこないんですけど」

P「まぁ聞いてください」

P「俺もアイドル達も、業務を行う上で大小さまざまなストレスを感じているわけです」

小鳥「はぁ」

P「俺で言うと、例えば局のプロデューサーやお偉いさんと接したりだとか」

P「例えばアイドル達を売り込むために、飛び込みで営業を行ったりだとか」

P「そういう時は、胃がキュウキュウと締め付けられるような思いなわけです」

小鳥「そうですよね、わかります」

P「片やアイドル達は俺以上のストレスを感じているはずです」

千早「そうでしょうか?」

P「俺のように、客先と接する際のストレスに加えて……」

P「テレビ、ラジオといった媒体に出演すること自体が、ストレスだったりするじゃないか」

春香「あそっか」

P「あと外出するときは見つからないようにコソコソしなきゃなんないし」

P「アイドルであることは、それだけ大変なことなんだよ」

春香「でも、夢だったんですから……とっても楽しいですよ」

P「そうやって自ら望んで入った世界だとはいえ、多くのエネルギーが要る」

P「朝から雑誌のインタビュー、午後はテレビの収録、その合間にブログの更新」

P「そんな具合に一日の予定を終えたときには、俺もアイドル達も疲れ果てているわけです」

小鳥「お察しします」

P「ですがそんな疲れも、事務所に戻ると消え去ってしまいます」

小鳥「えっ? どうしてですか?」

P「あなたですよ」

小鳥「わ、わたし?」

P「どんなに疲れていたとしても、小鳥さんの笑顔と優しい声を聞けば……」

P「まるで心が洗われるような気持ちになるんですよ」

小鳥「そうですかぁ?」

千早「分かるような気がします」

春香「今考えると……なにか嫌なことがあっても、事務所に居るときは忘れてる……」

春香「それはきっと小鳥さんが居てくれるからなんですね」

千早「そうね、音無さんにはそういう力があるのかもしれないわ」

小鳥「みなさんちょっと大げさじゃないですか?」

小鳥「私はただのしがない事務員でして……」

P「何をおっしゃいます……ちぃっとも大げさじゃないですよ」

P「一人暮らしと同じようなもので、帰って誰も居ないと寂しいじゃないですか」

小鳥「はい」

P「だから小鳥さんが事務所で待っていてくれるという、ある種の安心感はとても大きい」

P「そのお陰で、俺たちは毎日を乗り切れているのです」

小鳥「お上手ですね」

P「いやいやマジですよ」

小鳥「またまたぁ」

P「本当ですってばー」

P「それほど小鳥さんの癒し効果が大きいってことですよ」

千早「きっと、音無さんの人となりがそうさせているんですね」

P「そう……さっき千早が言ったように、小鳥さんにはそういう力がある」

小鳥「えー?」

P「小鳥さんの人を癒す力と、催眠術とが絶妙にマッチしたんですよ」

千早「音無さんには元々、催眠術の才能があったわけですね」

小鳥「私は偶然だと思うけど……」

春香「だったらやってみなくちゃわからない! もちろん実験台はプロデューサーさんで!」

P「あぁそうだな。 小鳥さん、俺で試してみてください」

春香「……むぅ」

P「どったの?」

春香「私の時はあんなに嫌そうだったのに、小鳥さんの時はずいぶん乗り気なんですね」

小鳥「あらら」

P「変なところでジェラシーさんだな春香は」

春香「もういいですぅーだ! 私は千早ちゃんに催眠術を……」

千早「嫌よ」

春香「……ぐすん」

千早「ま、まぁ少しくらいなら」

春香「えへへ」

小鳥「うぉっほん! では、いいですか?」

P「はい」

千早「いいですよ」

P「あれ? 春香はどうしたんだ?」

千早「となりの部屋で眠っています」

P「ってことはまた自爆したのか?」

千早「えぇ」

P「あはは……春香も新しい特技が出来てよかったな」

千早「そう思いたいです」


ガチャ


春香「……はぁ」

小鳥「あら? もう起きてきたの?」

春香「さっきから何度も寝てますから、目が冴えました」

春香(せっかく千早ちゃんに催眠術をかけるチャンスだったのに……)

小鳥「では改めまして……プロデューサーさん」

P「はい」

小鳥「いいですか? 貴方の意識は現実世界から切り離され、強い眠気が訪れます」

小鳥「身体の力が抜けて、瞼がぐぅ~んと重たくなります」


春香「……ぐぅ」


千早「は、春香?」

小鳥「千早ちゃん、起こしてあげて」

千早「あっはい……春香、起きて!」

春香「……ふぇ?」

小鳥「大事なところなんだから、起きてないと」

春香「す、すみません」

千早「プロデューサーは……ぁ」

P「すぅ……すぅ……」

小鳥・春香「ぃやった!」

春香「ねぇねぇ小鳥さん! どうしますどうします?」

小鳥「うん……落ち着きましょうか」

春香「はい、小鳥さん」

千早「で、どうするんですか?」

小鳥「まだ眠らせただけだから、もう少し待って」


P「…………」

小鳥「はいプロデューサーさん、貴方は今、理性の扉の前に居ますよー」

小鳥「その奥には、貴方の本音や本心がびっしりと詰まっています」

P「…………」

小鳥「ではその扉を開けちゃいましょう」

P「…………」

春香「これ、効いてるのかな?」

千早「むしろプロデューサーは聞いているのかしら」

小鳥「多分大丈夫だと思うけど……」

P「…………」

小鳥「私が三つ数えると貴方は目を覚ましますが……」

小鳥「これから貴方が話す言葉は全て、嘘偽りの無いものです」

P「…………」

小鳥「では……アインツ、ツヴァイ、ドライ」


P「はっ!?」


春香「あっ起きた」

小鳥「おはようございます」

P「おはようございます小鳥さん。 今日もお綺麗ですね」

小鳥「んなっ……」

P「どうかしました?」

小鳥「い、いえ……なんでも」

千早「…………」

千早「お、おはようございます」

P「やぁ千早、会えて嬉しいよ。 今日はイイことがありそうだ」

千早「あっ……わ、私も……その………」

P「いや、千早の可愛い顔が見れたことが既にイイことだな」

千早「ありがとう……ございます」

P「こちらこそありがとう」

千早「は、はい」


春香「プロデューサーさん! 」

P「おっ……なんだ春香か」

春香「……」ワクワク

P「……」

春香「…………」

P「…………」


春香「………………」

春香「ちょっと」

P「なんだ?」

春香「なんだって、なんだじゃないですよ! 何か言うこと無いんですか?」

P「あっ、あるある!」

春香「でしょう?」

P「うん」

春香「……それで?」

P「明後日の番組収録だけど、入りは午後からに変更な」

春香「あっそうですか、わかりま…………ちがぁーーう!」

P「こら、大きな声を出すんじゃない」

春香「ちょっと小鳥さん! どぉーいうことですかぁ!!」

小鳥「私に言われても……」

春香「うぇーーーん、千早ちゃ~~ん!!」

千早「『千早、会えて嬉しいよ』だなんて………ふふっ」

春香「……もうみんな嫌い」

春香「はぁぁぁぁ~~~」

小鳥「春香ちゃん、落ち込むのはまだ早いわよ」

春香「だって……」

小鳥「今のはちゃんと質問したわけじゃないから、本音が出難かっただけよ」

春香「二人だと出やすいんですね。 どーせ私なんて……」

小鳥「待ってってば……たぶん、半分眠ってるような状態じゃないとダメなのよ」

P「何の話ですか?」

小鳥「いや、えーっと……私が三つ数えると、貴方が眠ってしまうという話です」

P「へ?」

小鳥「ウノ、ドス、トゥレス」


P・春香「……ぐぅ」


千早「はるか!」

春香「はっ!? ギリギリ危なかった」

千早「ギリギリアウトだったわよ」

春香「結局、何をするんですか?」

小鳥「見てて」

小鳥「プロデューサーさん、私の声が聞こえますか?」

P「はい」

小鳥「では今から貴方に質問をします」

P「はい」

小鳥「その質問には正直に答えてください」

P「はい」

小鳥「ではプロデューサーさん、貴方にとって……千早ちゃんはどんな存在?」

千早「えっ」

春香「えっ」

小鳥「自分がどういう風に思われてるか、知りたいと思わない?」

春香「まぁ……そうですね」

小鳥「こんなチャンス滅多にないんだから」

千早「でも、催眠術でそんなことが可能なんでしょうか?」

小鳥「ほら、よくUFO特番とかで催眠術を使ったりする場面あったじゃない?」

春香「UFOとくばん?」

小鳥「アブダクションされた人に催眠術をかけて……」

小鳥「宇宙人の手によって消去された、誘拐時の記憶を引き出す……っていう」

小鳥「そんな感じで、理性によって隠されたプロデューサーさんの本音を引き出すの」

春香「ねぇねぇ千早ちゃん、UFO特番って知ってる?」ボソ

千早「いえ……知らないわ」ボソ

P「…………」


小鳥「もう一度聞きます。 貴方は千早ちゃんをどう思うかしら?」

P「千早は……ひとつのことに捉われやすく、思い込みも激しい」

P「その上頑固で、一度こうと決めたらなかなかその考えを曲げようとしない」

P「アイドルとしての活動の中で、それが長所でもあるし短所でもある」

千早「……悔しい気もするけど、事実ね」

小鳥(あれ? なんか話が真面目な方に行っちゃった……)

P「俺が千早に一番言いたいのは……仕事に対して食わず嫌いをしないでほしいということ」

千早「食わず嫌い?」

P「千早は歌が大好きで、歌の為に生きていると言っても過言ではない」

P「だからそれ以外の仕事に対して、必要性を見出せないかもしれない」

小鳥「どうかしら?」

千早「べ、別に……」

P「しかしその必要性の見出せない仕事によって、何か少しでも得る物があったなら……」

P「その経験が歌に繋がっていくと俺は思う」

千早「…………」

P「だから自分が嫌いだと思っている仕事でも、試しに少しくらいはかじってほしい」

P「それでどうしても食べれないようなら、それはしょうがない」

P「ただ……嫌いな食べ物でも、笑顔で『おいしい』と言わなくてはならないこともある」

P「そのことだけは頭に入れておいてほしい」

小鳥「ですって」

千早「……はい」

小鳥「アイドルの活動についてはこのくらいにして……」

小鳥「個人的に千早ちゃんをどう思っているか、聞かせてください」

P「千早は……その長くまっすぐな髪が魅力的だ」

千早「か、髪?」

P「振り返り際にさらりと靡くその様は実に優美で、シャンプーの香りが鼻をくすぐり……」

P「肩にかかった髪を下ろす仕草は、大人びた性格にマッチして……」

P「俯いて、下に垂れた髪が隠す横顔は哀愁すら感じて……」

春香「プロデューサーさん、なんか目が怖い」

P「あぁ……その美しくしなやかな髪を麺つゆに浸してズルズr……」

千早「……は?」

P「じゃなくて……洗いたての髪をドライヤーの優しい風で乾かしてあげたい」

千早「そ、それくらいなら……別に私は構わないですけど……」

小鳥「…………」

春香「…………」

小鳥・春香(私も髪伸ばそうかなぁ)

小鳥「それじゃ、春香ちゃんはどうですか?」

P「今はアイドル多様化の時代」

P「だからこそ我が765プロにも、たくさんアイドルが居るわけだ」

P「その多様化の中で、アイドルという言葉の持つ意味が多くなった」

小鳥(また語りだしちゃった……)

P「そんな枝分かれしたアイドルの定義の中、俺は……」

P「俺は春香こそ、正統派アイドルの流れを汲む女の子だと思う」

春香「正統派アイドル……」

P「どこにでも居そうな、でもどこにも居ない」

P「高嶺に咲く花のように可愛らしくも、身近な親しみを感じるような……」

P「しかしその道はいわば王道で、先人達が通った道」

P「悪い言い方をすれば、すでに飽きられている路線かもしれない」

P「何をやっても二番煎じだと言われるかもしれない」

千早「……確かにそうね」

春香「う、うん」

P「だが俺は春香の特別な部分を多く知っている」

P「知っているからこそ、春香なら頑張れると思うし」

P「今よりももっと活躍できると確信している」

春香「…………」

P「春香には春香のままでいてほしい」

P「春香の良さは、その自然体なところなんだ」


春香「うぅ~ん……褒められてるんでしょうけど、なんかよくわかんないです」

小鳥「つまり頑張れってことよ、多分」

小鳥「ですよね、プロデューサーさん?」

P「……ぐぅ」

春香「あれ? ちょ、ちょっと!」

P「う~ん……」

春香「プロデューサーさんっ! まだ個人的な意見を聞いてないですっ!」

小鳥「では、個人的にはどうですか?」

P「春香は照れたときの顔がすんげぇ可愛い」

春香「……うへへぇ」

小鳥「ストレートに来たわね」

P「例えば転んでしまって、打った箇所をさすりながら照れ笑う表情とか」

P「例えば手作りのお菓子をみんなに振舞って、評判が良かったとき……」

P「皆が夢中で食べている中、一人小さく『やった』と呟いた表情とか」

千早「……よく見てますね」

P「あぁ……ダンスレッスンで汗をかいたあとの春香のリボンをムシャムシャ……」

春香「……は?」

P「じゃなくて……リボンをほどいて、タオルでワシャワシャと汗を拭いてあげたい」

春香「ふふっ、それじゃ私が小さな子供みたいじゃないですかぁ」

小鳥「…………」

千早「…………」

小鳥・千早(私もリボン着けようかしら)

アイドルに調味料の人か?

千早「プロデューサー、音無さんのことはどう思っているんですか?」

小鳥「私はさっき聞いたじゃない。 癒しがどうとか……」

春香「あれは素面だったじゃないですか」

P「小鳥さんは……みんなと同じアイドルだと思う」

小鳥「えっ」

P「もちろん、頭に『765プロの』という言葉を付けなくてはならないが」

春香「あぁ、そういうことですか」

P「春香達アイドルが、ファンにとっての清涼剤であることと同じように」

P「小鳥さんは俺や765プロ所属のアイドル達にとっての清涼剤なんだ」

P「これをアイドルと言わずして、何をアイドルと言うのか!」

千早「段々とプロデューサーの人格が変わっているようです」

小鳥「う、うん……」

P「現場で嫌なことがあっても、事務所では小鳥さんが待っていてくれる」

P「僕にはまだ帰れる場所がある……こんなに嬉しいことはない……とこうなる」

小鳥「…………」

P「小鳥さんは、俺が気付けないようなアイドル達の変化にも目を配ってくれる」

P「そして時に友人として、時に保護者として、彼女達の心のケアをしてくれる」

P「むずかしい年頃の女の子達がアイドルとしての活動を続けられるのは、小鳥さんのお陰だ」

千早「確かに異性には言い難いような悩みや相談事が必ずあります」

春香「そんなときは小鳥さんが相談にのってくれるから、助かりますね」

小鳥「お役に立てているのなら、嬉しいことだわ」


P「もちろん、本業の事務についても忘れてはならない」

P「お茶汲みや電話応対から、経理や必要書類の作成、その他諸々……」

P「そういったことを一手に引き受けてくれるから、俺はプロデュース業に専念できるんだ」

P「俺もアイドルの皆も、自分達の活動が小鳥さんの苦労の上に成り立っていることを理解し……」

P「縁の下に隠れがちな小鳥さんの活躍を称え、感謝しなければならない」

千早「……そうですね」

春香「小鳥さん、いつもありがとうございます!」

小鳥「そ、そんな……私の力なんて名前の通り、雀の涙ほどしかないです」

春香「個人的にはどうなんですか?」

P「結婚したい」

小鳥「あっそう…………えぇっ!?」

P「……と言ってくるような男が、今まで居なかったことが不思議なくらい素敵な方だ」

小鳥「……なぁんだ」

P「小鳥さんは、年下の俺にも敬語を使ってくれる」

P「ごくたまにその敬語が崩れる時があるんだが……それがいい」

P「何か質問したときに『はい』じゃなくて『うん』って言っちゃったときとか」

P「『ボールペン知らない?』って言った後に『あっ……知りません?』って言い直すときとか」

P「距離感が縮まったり離れたりするそのもどかしさがなんとも……」

春香「さっきから、ちょっとマニアックな感じが……」

P「あぁ……小鳥さんのインカムに白ワインで煮込んだチーズを絡めて……」

小鳥「……は?」

P「じゃなくて……インカムに直接、愛の言葉を囁きたい」

小鳥(あっ、それいいかも)

小鳥「さっ、そろそろ催眠を解いてあげましょう」

春香「えーもうですかぁ」

小鳥「あまり長いこと催眠状態だと身体に障りそうじゃない」

千早「確かにそうですね」

春香「ってあれ? プロデューサーさん?」

小鳥「あら? どこに行ったのかしら?」

千早「あそこに居ます。 電話……しているみたいですね」


P「もしもし律子か? うん……おつかれ」

P「いや特に用事は無いんだけど……律子の声が聞きたくなったんだ」

P「からかってる? そんなわけないじゃないか」

P「俺はいつも律子のことを考えてるんだぞ」

P「あぁ……律子のおさげ髪に、小麦粉、溶き卵、パン粉をつけて……」

P「じゃなくて……おさげ髪に針金を仕込む作業を手伝っ――もしもし?」

P「あれ? もしもーし」

P「…………切れた」

P「やっぱりメガネにしとけばよかったかなぁ」

P「律子のメガネに卵黄を塗って、180℃のオーブンに……」

P「じゃなくて……メガネをそっと外して、優しく口付けを……」

小鳥「アン、ドゥ、トロワ!」

P「……ぐぅ」

小鳥「この色魔め」

千早「早く元に戻しましょう」

小鳥「そうね。 何をしでかすか分からないわ」

小鳥「えーっと……私が最後に三つ数えますと、貴方は催眠状態から脱します」

小鳥「その間の一切の言動や想いは全て忘れて、とても清々しく目を覚ましますよ~」

小鳥「では……イチニトサンハイ!」

P「……はっ!?」

小鳥「おはようございます」

P「おはようございます小鳥さん。 今日もまた一段とお綺麗ですね」


小鳥「…………あれ?」

小鳥「ま、まだ催眠にかかってるんですか?」

P「えっ? 何のことですか?」

小鳥「いや……なんでもないです」

P「ってあれ? 今何時?」

春香「えぇっと……2時半ぐらいです」

P「いけねっ! 今日3時から約束があるんだった!」

P「俺、ちょっと出てきます!」

小鳥「えぇっ!? ちょ、ちょっとぉー」


バタン!


千早「行ってしまいましたね」

小鳥「とりあえず、催眠は解けた……のかしら?」

春香「『何のことですか?』って訊いてましたし、大丈夫ですよ」

小鳥「そ、そうよね」

春香「でも、なんだか惜しい気もしますね」

小鳥「惜しいって?」

春香「残りのみんなのことも聞いてみたかったなぁーって」

千早「そうね、あの人がどんな危険思考の持ち主なのか知っておく必要があるわ」

春香「私たちであの調子だもんね」

小鳥「確かに興味深いけど……またの機会にしましょう」

春香「えー」

小鳥「ほら、あまり一遍に聞くともったいないじゃない?」

春香「そうでもないですけど」

小鳥「ダーメ。 どうせプロデューサーさん居ないし、また今度」

春香「は~い」

小鳥「さて、仕事に戻りましょう」

小鳥「二人はゆっくりしててね」

春香「何か手伝いましょうか?」

小鳥「そんな……悪いわ」

千早「せめてコーヒーでも……」

小鳥「いいのいいの、座ってて」


バサッ


小鳥「……ってあら? 書類が落ちちゃったわ」

千早「拾います」

春香「あっ、こっちにも!」

小鳥「ごめんなさいね」

春香「いいんですいいんです、座っててください」

小鳥「うふふっ」

千早「元々何枚ありましたか?」

小鳥「全部で6枚。 私は2枚持ってるわ」

千早「えぇっと、私が1枚持ってますから……」

小鳥「あっホント? それじゃ、春香ちゃんが3枚持ってたらいいのね」

千早「えぇ」

春香「ちょっと待ってください! 多分あると思います」


春香「うんと…………イチ…………ニィ…………」


小鳥「あっ! ちょ、ちょっと待っ――」

春香「…………サン!」





春香「……ぐぅ」

小鳥「…………」

春香「すやすや」

小鳥「やっぱり寝ちゃった」

千早「春香の将来が、ほんの少し心配になってきました」


春香「んふぅ……プロ……さんは……私としたくて堪らなく……」


小鳥「ちょ……」

千早「良かったですね……春香が催眠術を完全に覚えていなくて」


春香「いやっ! そんな……繋がったままコブラツイストだなんてぇ」

小鳥「…………」

千早「…………」


小鳥「ねぇ千早ちゃん……春香ちゃんって個性無いかしら?」

千早「むしろ個性の塊です」


春香「あらまがフットーしそぅれす……ふふふっ」

END

お粗末さまでした

>>50
No

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