司令官「これが自動防衛システム……?」 (24)
― 基地の通路 ―
司令官「この基地に自動防衛システムを構築しろ、と言ったはずだが?」
技師「構築しましたが?」
司令官「司令室の扉の前に立ってるのがそうなのか?」
技師「システムの端末です」
司令官「どう見ても、その……」
端末01「……」
司令官「子供に見えるのだが」
技師「子供……? 基地内での運用や汎用性を追及したらあのサイズのヒト型になったん
ですよ」
端末01「……」
司令官「……」(緊張の面持ちでこっち見てるように見えるのだが)
技師「ま、機械とはいえ心血注いで開発した私にとっては可愛い子供のようなものですがねw」
端末01「あ……あいでぃーかーどと、にんしょーこーどを、おねがいします」
技師「こうして読み込ませて、IDは*******だ」
司令官「……」(緊張の面持ちで差し出されたIDカードを受け取って、手帳開いて認証コードと照合してるように見えるのだが)
端末01「おっけーです」
技師「よーしいい子だ」
端末01「エヘ……」(///)
司令官「……いい子だ、ってのは?」(顔が赤くなったように見えるのだが)
技師「あ、聞かれちゃいましたかw
開発段階では音声の認証エラーが多かったんですけど、学習繰り返して精度が上がっていくのが、子供の成長を見守ってるみたいで嬉しくてね」
司令官「そ……そうか」
技師「さて、と」ぽふ
端末01「うきゃー♪」(///)
司令官「今のは……?」(端末の頭に手を載せた? 端末は更に照れた?)
技師「静脈認証システムです、頭部にセンサーがあって、ここに乗せた掌の血管で認証するんですよ。
プログラムにバグがあって、カードや認証コードをパスしたあとの掌を乗せてくれってアナウンスが出ないし他のアナウンスもたどたどしいんですがね」
司令官「えっと……うきゃー、ってのは認証パスした音なのか?」
技師「うきゃー? 確かに今のがそうなんですが、もうちょい似せた発音できませんかね」
司令官「……」
技師「あ、じゃあ先入りますんで、再びロックかかったら司令も今の要領で認証してください」
司令官「お…おう」(端末が焦りながら鍵開けて、丁寧に礼してるように見えるのだが。そして技師が通ったらまた焦りながら施錠して、ビシ! と姿勢正したように見えるのだが)
端末01「あ、あいでぃーかーどと、にんしょーこーどを、おねがいします」
司令官「……」(期待の面持ちで両手をこっちに差し出してるように見えるのだが)
端末01「……」シュン
司令官「……」(なにやら落ち込んだように見えるのだが)
技師『司令、何やってるんです? モタついてるうちに節電モードになっちゃったじゃないスか。カードかざしゃすぐ読み取りモードに復帰しますから』
司令官「……」(確かに、かざして認証コードを告げたら、パァ、と表情をほころばせ嬉々として読み取りと照合を開始し始めたように見えるが)
端末01「お、おっけーです」
司令「……」
端末01「……」ジッ
司令「あ、バグで次のアナウンスが出ないんだったな」ぽふ
端末01「……」不満そうに見上げる
司令「……?」(おかしいな、技師と同じように掌を頭部に乗せたが)
技師『司令、何やってるんです? 私と同じようにやってくださいって』
司令「……」(同じようにやってるはずだが……もしかして、本当に同じようにやらないとダメなのか?)
― 司令室 ―
技師「ようやく入れましたね、さ、仕事しますか」
端末「……」キョロキョロ ウロチョロ
司令官「おや? さっきまで入り口にいたはずなのに」
技師「何言ってるんです? 端末なんだから同型機がたくさんあるんですよ。あれは巡回モードの機体です」
司令官「そ、そうなのか……」(確かに、腕章? の番号が違うな。アレは3号機か)
司令官「……って、私の椅子に端末が座り込んで寝てるんだが」
端末02「……」Zzz
端末01「……」期待のまなざし
司令「よ……よーしいい子だ」ボソッ
端末01「エヘ……」(///)
司令「これから掌か? エヘ、てのが静脈認証システムONの合図なのか?」ぽふ
端末01「うきゃー♪」(///)
司令官「……」(毎回毎回、ここ通るたびにコレをやるのか……!?)
技師「寝る? ああ、スリープモードですね。ちょっと調べてみますか」頬のように見える箇所をツンツン
端末02「ふにゃ……?」パチクリ ゆっくりと物理的に立ち上がる
技師「よし、起動したな。さて、と」ベロン
司令官「ちょ、な、何をしている!?」(端末の衣服を無造作にはだけさせた!?)
技師「何って、行動のログを見るため操作盤を出すんですよ。そのために対人戦闘を想定した装甲ユニットを開いたんですが?」
司令官「……そ、そうか」(装甲ユニット……? ユニクロあたりで売っていそうな普通の子供服にしか見えないのだが)
端末02「……」(///)
司令官「……」(医者に聴診器を当てられるときみたいに自ら肌着を捲り上げたように見えるのだが。そんでもって少々恥らっているように見えるのだが。
そして、操作盤とやらはどこにある?)
技師「さて、と」ツンツン
端末02「ひゃん!?」ピクッ
司令官「ちょ、ちょっと待て! ドコ触ってる!」
技師「ドコって、ただのタッチパネルですよ」
司令官「今の声と身じろぎは」(タッチパネル? ただの、子供の平坦な胸板にしか見えんのだが)
技師「声と身じろぎ? あー、これはノイズです」
司令官「ノイズ?」
技師「電装系の素材に粗悪なものが紛れちまいましてね、操作盤イジると音声系や各部のアクチュエーターにノイズが流れるんです。構造上そんなに危険な動作は起こりえないんで、定期点検のときに部品交換で対応しますよ」
司令官「そ、そうか」
技師「さて、と」ツンツン
端末02「ふぁっ!? やんっ!?」ピクッ ピクッ
技師「なるほどなるほど」ツンツン
端末02「んっ! ひぅっ!?」ビックンビックン
技師「なるほど、把握」
司令官「わかったなら、さっさとその……装甲ユニットを閉じたまえ」
技師「……? 了解」
端末02「はふぅ……」(///)
司令官「……」(ただの排気音だろう、ただの)
技師「原因はバグですね。巡回ルートの設定が甘くて司令の席に引っかかってるうちに、次の指示貰えなくなってスリープに移行した模様です」
司令官「こんなんで役に立つのか?」
端末達「……」シュン
司令官「……」(ううっ……、何だこの罪悪感は)
技師「まだ試験段階なんですから無茶言わんでください。ちゃんと直しますよ」
端末03「しんにゅーしゃけーほー!!」ガンガンガンガン
司令官「なんだ?」(プライパンをお玉で叩いてる!?)
技師「警報ですよ、誤動作だと思うけど念のためにモニターに出させてください」
司令官「お、おう、警報の出た箇所の監視カメラを!」
オペレーター「了解! ……これは!?」
端末04『あやしいやつ、でてけー!!!』 ポカポカポカ!
敵『えっと……』 オロオロ
端末05『ここは入っちゃダメー!!!』 グイグイ
敵『何なんだコイツら』 オロオロ
司令官「敵の工作員を叩いたり服のすそとかベルト掴んで引っ張って……」
技師「まだ試験段階ですから、火気管制やマニピュレータによる近接戦闘のプログラムはロックされてるんです。機能を大幅に制限された中ではアレが精一杯なんですよ!」
敵『クソ!』ゴン!
端末04『うぇえ~ん!』
司令官「泣いてる!」
技師「変に凝った表現しなくていいです。ダメージの警報ですよ。あのくらいの打撃では機能に支障はないです」
司令官「しかしあのままではまずいだろ、警備兵をあのエリアに動員だ!」
オペレーター「ダメです、他のエリアで手一杯です!」
技師「手こずってますけど、あのエリアは防衛システムに任せておけばいいです。機械なんだから直せば……司令?」
― 侵入されたエリア ―
端末04「えーん!」
端末05「かえれかえれー!」
敵「いったい何なんだコイツら。この基地を一般人に見学させてるのか? ……ん?」
ドドドドド
司令官「ウチの子に何さらすんじゃボケェ!」
敵「ぐはぁ!」
端末04「あ、しれいだー♪」
端末05「わるいやつやっつけろー♪」
司令官「このやろこのやろこのやろ!」
敵「くっ…! 火器の使用は禁じられていたが仕方ない」
パァン!
このSSまとめへのコメント
コレ>29まで続いてたぞ、作者の発言は>34まであった。