シンゲキロンパ (848)

???(その日 僕たちは思い出した)




???「エクストリーーーーーーーム!」

???「これってまさに…絶望だよね!」




???(ヤツに支配されていた恐怖を…)




???「アーッハッハッハッハッハ!!」




???(鳥籠の中に囚われていた屈辱を…)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1385881950

アルミン(まずはオーソドックスに自己紹介から始めたいと思う。
     僕の名前はアルミン・アルレルトだ)

アルミン(外見は、ご覧の通り、どうしようもないほど平均的な普通の男子…)

アルミン(中身の方も同じ…いや、普通の子よりも弱虫で、
いつも親友に助けられてばかりいる)

アルミン(そんな弱虫の僕は、今…)

アルミン(兵団の訓練所という似つかわしくない場所に立っている訳だけど…
     これには理由があるんだ)

アルミン(今から2年前、超大型巨人と鎧の巨人の出現によって、
僕たちは故郷を失った)

アルミン(親友の母親は巨人に食われ…
僕の家族も、壁内の口減らしのために殺された)




???『駆逐してやる!!』

???『この世から…一匹残らず!!』




アルミン(かつて親友がそう誓ったように…)

アルミン(僕も強い意志を持って、訓練兵団への入団を決めた)

アルミン(そして…)

???「ただいまより、第104期訓練兵団の入団式を行う!」




アルミン(そう…今日この日こそ、待ち望んでいた兵士への第一歩なのだ)

アルミン(正直不安はある。軟弱な僕が、
     生き地獄とよばれる過酷な訓練に耐えられるのかどうか…)




???「私が運悪く貴様らを監督することになった…」




アルミン(でも、もう決めたんだ。自分の心で決めたんだ)

アルミン(僕は親友の…)









アルミン(親友…の…)















PROLOGUE

ようこそ絶望兵団







???「アルミン!?」




アルミン(あれ…)




???「アルミン!しっかりして!」




アルミン(おかしいな…眠っちゃってたのかな)

アルミン(じゃあ今のは…夢?)




???「アルミン!大丈夫!?私がわかる!?」




アルミン(誰かが僕を呼んでる…この声は…)

アルミン「ミカサ…?」




アルミン(僕が名前を呼ぶと、“その人”の顔がパッと明るくなった)




ミカサ「アルミン!よかった!」

アルミン「…えっと、ミカサ…だよね?」

ミカサ「? 何を言ってるの。もしかしてまだ意識が…」

アルミン「意識?」

ミカサ「あなたは今まで気絶していた。私も…ついさっき目が覚めた」

アルミン「気絶?僕だけじゃなくてミカサも?」

ミカサ「うん」

アルミン「おかしいな…たしか僕は入団式にいたはずだけど…」

ミカサ「私も同じ。急にめまいがして、気がついたらここにいた」




アルミン(訳がわからない…やっぱり夢じゃなかったのかな)

アルミン(…そう、たしかに僕は…入団式にいたはずなんだ)

アルミン(それなのに、その最中に二人同時に気を失うなんて…
     あり得るんだろうか)

アルミン(…“二人同時”?)




アルミン「ねえ、ミカサ…エレンは?」

ミカサ「…わからない。この部屋にいるのは、私とあなただけ」




アルミン(僕は周囲を見回した)

アルミン(かなり大きな部屋だ。簡素なテーブルやイスがたくさん並んでいる)

アルミン(…集会場だろうか?)




ミカサ「あっちに扉がある。とりあえずここから出よう」

アルミン(扉を開けると…)




???「おっ、また新しいやつが来たみたいだぜ」

???「君たちも入団志願者…だよね?」




アルミン(10人ほどの男女が、こちらに顔を向けた)




アルミン「えっ…じゃあ君たちも?」

ライナー「まあな。俺はライナー・ブラウンってんだ」

ベルトルト「僕はベルトルト・フーバーだよ。よろしくね」

アルミン(見上げるような長身に、ガッシリとした体格…
     まさに“兵士”と呼ぶにふさわしい、そんな外見の二人だった)




ライナー「そちらさんの名前も教えてもらっていいか?」

アルミン「ん?…ああ、ごめん。僕はアルミン・アルレルト。
     シガンシナ区の出身なんだ」

ベルトルト「えっ、シガンシナ区って…」

アルミン「うん…超大型巨人と鎧の巨人の襲撃を受けた地区だよ。
     僕とここにいるミカサは、間一髪で逃れてきたんだ」

ミカサ「…どうも」

ライナー「そうか…そいつは大変だったな」

アルミン「うん…」

ベルトルト「…」

ライナー「…ん?そういえば、お前らの他にも
     シガンシナ区出身の奴がいたような…」

ミカサ「!」

アルミン「そ、その人って…」

ライナー「ああ、名前は確か…」

???「ミカサ…?アルミン…?」




アルミン(その時,不意に誰かが声をかけてきた)

アルミン(聞き慣れた声だ。間違えるわけがない)




ミカサ「エレン!」

エレン「やっぱりそうだよな!?お前らだよな!?」

ライナー「なんだ、知り合いだったのかよ」

ミカサ「エレン、怪我はない?私がわかる?」

エレン「だからわかるっつってんだろ…ていうか」

エレン「ミカサ…お前いつの間に髪切ったんだ?」

ミカサ「?」

エレン「それにその頬の傷…怪我してんのはお前じゃねえか」

ミカサ「さっきから何言ってるの。私は髪なんか切って…」

アルミン(そう言ったミカサは、自らの指で髪を梳いて…)

アルミン(そこで手を止めた)




ミカサ「…あれ?」




アルミン(そして、確かめるように何度も何度も、同じ動作を繰り返す)

アルミン(しかし…)

ミカサ「…おかしい」

エレン「は?」

ミカサ「私は髪なんか切ってない」

エレン「いやいや,実際に短くなってるじゃねーか」

ミカサ「…きっと誰かに切られた。私が気絶してる間に」

エレン「気絶?お前らもか?」

アルミン「えっ,じゃあエレンも…!?」

ライナー「エレンだけじゃないぜ。ここにいる全員がそうだ」




アルミン(僕は改めて,その場にいる人たちを見た)

アルミン(訓練兵団への入団志願者…それは間違いないはずだ。
     なぜなら彼らは皆,訓練兵専用の制服を着ていたから)

アルミン(それはもちろん,僕やエレン,ミカサだって同じだ)

???「不可解な点はまだあるだろ」




アルミン(新しい声だった。そばかすの女性から発せられたものらしい)




ライナー「まだあるって…何だよ,ユミル」

ユミル「わからないのか?今来た2人を含めてもたったの12人なんだぞ?
    他の連中はどこに行ったんだよ」

ベルトルト「…確かに。入団式には,ざっと見ても100人以上いたはずだよね」

???「みんな別の場所にいるんじゃないかな?」

???「さっき他の場所を見て回ったけど,人気はなかったよ」

???「よくわかんねーけど,これって入団試験なんじゃねえの」

???「入団試験!?そんなの聞いてないぞ!」




アルミン(…いや,違う。これは入団試験なんかじゃない)

アルミン(そもそも異常なんだ。入団式の最中に,12人が同時に気を失うなんて)

ライナー「一体何がどうなってるんだ?」

エレン「別にいいんじゃねえか?結構似合ってるしよ」

ミカサ「…まあ、エレンがそう言うなら」

???「あれっ…ていうか,私の芋がないんですけど!」




アルミン(みんな混乱していた。頭の整理ができていなかった)

アルミン(そんな中で,僕の胸中に渦巻き始めていたのは…)

「キーン,コーン… カーン,コーン…」




アルミン(とてつもなく嫌な予感)




???『あー、あー…! マイクテスッ、マイクテスッ!』

???『大丈夫? 聞こえてるよね?』

???『えーっ,ではでは… 入団志願者のみなさん!』

???『これから入団式を再開しますので,至急,訓練所に集まってください!』

今日はここまで

― 訓練所 ―




???「…なあ、訓練所ってここでいいのか?」

???「間違いねーよ。ご丁寧に看板まで出てただろうが」

???「で、でもよ…さっき入団式やってた場所とは明らかに違うような…」

???「…」

???「どんなところが違うと思う?」

???「…?えーっと…」

アニ「アニだよ。アニ・レオンハート」

コニー「あ、ああ…よろしく。俺はコニーだ」

アニ「じゃあコニー、もう一回聞くけど、どんなところが違うと思う?」

コニー「えっ…えーっと…」

アニ「…」

コニー「…ふいんき?」

アニ「…」

アルミン「…屋内」

コニー「え?」

アルミン「決定的に違うのはそこだよ。さっき入団式をやっていた場所は外だったのに、
     ここはどう見ても建物の中だ」

コニー「建物の中?そうは感じねーけど」

ユミル「どんだけ鈍いんだよお前…」

ライナー「だがまあ、コニーがそう感じるのも無理はないだろ」

ユミル「あん?」

ライナー「下は地面だ。ちゃんと土がある。それに…」

???「広すぎるよね、ここ。空がないことを除けば、
    屋外だと言われても全然違和感がないよ」

ユミル「…何が言いたいんだ、クリスタ」

クリスタ「だ、だからさ…そんな大きな施設、壁の中にあったかなって…」

アルミン(その言葉に、誰もが押し黙った)

アルミン(もちろんそれは、その疑問に答えられなかったからじゃない)




ユミル「…なあ、いい加減に回りくどい言い方はやめないか」

クリスタ「…」

ユミル「お前らだって気づいてるんだろ?これは入団式なんかじゃない」

ライナー「…」
    
ユミル「私たちはな…【よからぬ事】に巻き込まれてるんだよ」

???『人聞き悪いなぁ』




アルミン(何の前触れもなく、その声は聞こえてきた)




ミカサ「さっきの声…!」

エレン「クソッ、どこだ!どこにいやがる!」




???『ここだよ』




アルミン(それは場違いなほど明るい声…)




???「ふざけた真似しやがって…!」

???「隠れてないで出てきなさいよ!」




???『うぷぷ…ちゃんと集まってくれたみたいだね。
    それじゃあ、さっそく始めよっか!』

~♪
~♪


~~♪
~~♪


~~~~♪
~~~~♪




ポヨヨーン




???「ハロー!ナイストゥーミーチュー!」

???「ボクが運悪くオマエラを監督することになった…」




モノクマ「モノクマなのだっ!」

今日はここまで

アルミン(…やっぱり、僕は夢を見ているんだろうか)

アルミン(軽快な音楽とともに壇上から現れたのは…)




クリスタ「え…?ヌイグルミ…?」

モノクマ「ヌイグルミじゃないよ。ボクはモノクマだよ」

コニー「ク…クマだ!クマが喋ったぞ!?」

モノクマ「だからさぁ…クマじゃなくて…」

モノクマ「モノクマなんですけど!しかも、監督教官…って、あれ?」

???「…ねぇジャン、私疲れてるのかな?
    白黒マスコットの幻覚が見えるんだけど…」

ジャン「…安心しろ。オレにもちゃんと見えてるから」

モノクマ「はぁ…予想はしてたけど、その使い古されたリアクション…
     テンション下がるなあ」




アルミン(それは場違いなほど明るい声…
     それは場違いなほど能天気な振る舞い…)

アルミン(僕の抱いていた不快感は
     いつの間にか、底知れぬ恐怖へと変わっていた)




エレン「ど…どうなってんだ!?なんで人形が動いてんだ!?」

モノクマ「あー、それはですね」

モノクマ「ボクには、立体起動装置を手掛ける技巧班も真っ青の
     遠隔操作システムが搭載されてて…」

モノクマ「…って、夢をデストロイするような発言を
     させないで欲しいクマー!!」

コニー「???」

アニ「…結局人形だって認めてるじゃない」

モノクマ「じゃあ、進行もおしてるんで、さっさと始めちゃうナリよ!」

???「キャラがブレてない…?」

モノクマ「ご静粛にご静粛に…えー、ではではっ!」

モノクマ「これより、記念すべき入団式を執り行いたいと思います!」

モノクマ「まず最初に、これから始まる
     オマエラの訓練兵生活について一言…」

モノクマ「えー、オマエラのような才能溢れる兵士のタマゴは、
     “人類の希望”に他なりません!」

モノクマ「そんな素晴らしい希望を保護する為、オマエラには…」

モノクマ「“この施設内だけ”で、共同生活を送ってもらいます!」

モノクマ「みんな、仲良く秩序を守って暮らすようにね!」

エレン「は…?」

モノクマ「えー、そしてですね…
     その共同生活の期限についてなんですが…」

モノクマ「期限はありませんっ!!」

モノクマ「つまり、【一生ここで暮らしていく】のです!
     それがオマエラに課せられた訓練兵生活なのです!」

ジャン「…い、今なんつった?」

クリスタ「一生…?ここで…?」

モノクマ「あぁ…心配しなくても大丈夫だよ。
     予算は豊富だから、オマエラに不自由はさせないし!」

???「ほ、本当ですか!?やっぱり食糧も豊富なんですね!?」

???「ウソでしょ…?」

モノクマ「ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!」

ジャン「な、何だよそれ…」

モノクマ「あ、ついでに言っておくけど…
     外の世界とは完全にシャットアウトされてますから」

モノクマ「だから、巨人に好き放題やられた外の世界の心配なんて、
     もう必要ないからねっ!!」

アルミン(一方的にまくし立てるモノクマに、
     僕たちはあっけにとられていたが…)

アルミン(“その一言”を聞いた瞬間、全員がピクリと反応した)




エレン「…ちょっと待て」

モノクマ「はい?」

エレン「巨人の心配はない…お前はそう言ったのか?」

モノクマ「うん、そう言ったよ」

バン!




エレン「ふざけんな!さっきから聞いてりゃふざけたこと言いやがって!」

モノクマ「ふざけてないよ?ボクはいつだって大真面目だよ」

エレン「オレは巨人をぶっ[ピーーー]ために訓練兵団に志願したんだ!
    今すぐここから出しやがれ!」

モノクマ「だからさぁ、ここにいる限り外の世界の心配はいらないんだって。
     もう巨人なんかに怯えることないんだって」

エレン「オレは…オレは駆逐しなきゃならねえんだ!
    オレの目の前で大事なもんを奪いやがったあいつらを!」

モノクマ「あー、はいはい。そういう
     『悲劇的な目に遭った俺カッケー!』的な不幸自慢はいいから」

エレン「…っ!!てめえええええええええええええええええ!」

ミカサ「エレン、落ち着いて」

エレン「止めんじゃねえよミカサ!お前だって…」

ミカサ「落ち着いて」

エレン「…っ」

モノクマ「…うぷぷ、危なかったねイェーガーくん。
     監督教官であるボクへの暴力は規則違反ですよ」

ユミル「…規則?」

モノクマ「ていうかさぁ、ちゃんとクマの話は最後まで聞こうね。
     肝心な部分はここからなんだから」

ライナー「…何だ。言ってみろ」

モノクマ「うん、あのね…」

モノクマ「ぶっちゃけた話、ない訳じゃないよ。ここから出られる方法…」

ベルトルト「本当に…?」

モノクマ「監督教官であるボクは、この施設から出たい人の為に、
     【ある特別ルール】を設けたのですっ!」

モノクマ「それが『卒業』というルール!!」

モノクマ「では、この特別ルールについて説明していきましょーう」

モノクマ「オマエラには、施設内での“秩序”を守った共同生活が
     義務付けられた訳ですが…」

モノクマ「もし、その秩序を破った者が現れた場合…
     その人物だけは、施設から出て行く事になるのです」

モノクマ「それが『卒業』のルールなのですっ!」

ユミル「その“秩序を破る”ってのは、何を意味するんだ?」

モノクマ「うぷぷ…それはね…」




モノクマ「【人が人を[ピーーー]事】だよ…」




アルミン「こ、[ピーーー]…ッ!?」

モノクマ「殴殺刺殺撲殺斬殺焼殺圧殺絞殺惨殺呪殺…殺し方は問いません」

モノクマ「『誰かを殺した訓練兵だけがここから出られる…』
     それだけの簡単なルールだよ」

モノクマ「最悪の手段で最良の結果を導けるよう、せいぜい努力してください」

アルミン(ゾワリとした…)

アルミン(『誰かを殺した訓練兵だけがここから出られる』
     その言葉を聞いた途端…)

アルミン(猛烈な寒気が、足元から背中を通り、
     頭のてっぺんまで一気に駆け上がっていった)




モノクマ「うぷぷ…こんな脳汁ほとばしるドキドキ感は、
     鮭や人間を襲う程度じゃ得られませんな…」

モノクマ「さっきも言った通り、
     オマエラは言わば“人類の希望”な訳だけど…」

モノクマ「そんな“希望”同士が殺し合う、
     “絶望”的シチュエーションなんて…」

モノクマ「ドキドキする~!」

ジャン「な、何言ってんだ!?殺し合うって…なんだよ!」

モノクマ「殺し合いは殺し合いだよ。辞書ならそこらに…」

クリスタ「そうじゃなくて!どうして私たちが殺し合わなきゃいけないの!?」

コニー「そ、そうだ!よくわかんねーことばっかり言うなよ!
    さっさと家に帰せ!」

モノクマ「…ばっかり?」

コニー「…!」ビクッ

モノクマ「ばっかりってなんだよ、ばっかりって…
     ばっかりなんて言い草ばっかりするなっての!」

アニ「…」

モノクマ「ホントに物分かりの悪い連中だよ」

モノクマ「何が帰してだ。
     同じ事を何度も何度も何度も何度も…」

モノクマ「いいかい?これからは、この施設が、
     オマエラの家であり世界なんだよ?」

モノクマ「殺りたい放題、殺らして[ピーーー]から、
     殺って殺って殺って殺りまくっちゃえっつーの!!」

アルミン(…無茶苦茶だった)

アルミン(僕たちは兵士になりたくて集まったんだ。それなのに…)

アルミン(いきなり気を失わされ、訳のわからない空間に閉じ込められ、
     挙句の果てには仲間同士の殺し合いを強いられる…)

アルミン(とても現実として受け入れられる事ではなかった。
     本当に夢を見ているのではないかと、錯覚しそうになるほど…)




ミカサ「…」

エレン「…ッ」




アルミン(誰もがこの状況に黙り込んだ、その時)

メール欄にsaga(さが)で殺すとか書けるようになるよ

ムシャリ




アルミン(何の前触れもなく、その音は聞こえてきた)




モグモグ




モノクマ「!」

エレン「…!?」

今日はここまで


>>51
ありがとうございます

モノクマ「…キミ、何やってんの?」

???「…?」キョロキョロ




ムシャリ




モノクマ「キミだよキミ!キミに言ってるんだよ!
     誰なんだよキミは!」

サシャ「ウォール・ローゼ南区、ダウパー村出身!!
    サシャ・ブラウスです!」

モノクマ「…サシャ・ブラウスさん、今キミが右手に持っているモノは何?」

サシャ「『蒸かした芋』です!調理場に丁度頃合いのものがあったので!つい!」

モノクマ「…よくわからないんだけど、どうしてキミは今芋を食べたの?」

サシャ「…?それは、『何故人は芋を食べるのか』という話でしょうか?」




アルミン(それは場違いなほど明るい声…
     それは場違いなほど能天気な…)

ジャン「お、おい!お前ちゃんと話聞いてたのかよ!
    今はそんな場合じゃねえだろ!」

サシャ「そんな場合ですよ」

ジャン「あぁ…!?」

サシャ「ちゃんと話も聞いてましたよ。
    私たちはここに閉じ込められた。出ていきたければ人を殺せ…」

サシャ「そういうことですよね?」

ジャン「そ、そうだけどよ…」

サシャ「それなら簡単じゃないですか。一生ここから出なければいいんです」

ジャン「なっ…!?」

サシャ「さっき言ったように、この芋は調理場から持ってきたんですけど…
    そこには芋だけじゃなくて、あらゆる食材がたくさんありました」

サシャ「しかもよく見てみると、それらの食材は外部から定期的に、
    自動的に供給されるみたいなんです」

サシャ「それだけでもう…万々歳じゃないですか」

ユミル「…信じられないね。食糧不足に悩む壁内で、
    どうしてそんなことが可能なんだ」

サシャ「それを言ったらこの建物だってそうですよ。
    こんな大規模な施設、見たこともなければ聞いたこともない」

サシャ「でも、それは確かに存在するんです。
    今私がかじっているこの芋のように…」




ムシャリ




エレン「ここでの暮らしを受け入れろってのか!?
    そんな家畜みたいな生き方を…!」

サシャ「それでも鬼畜よりはずっとマシですよ。
    私利私欲のために人を殺めるような…鬼畜よりは」

エレン「…!!」

サシャ「仲間同士で殺し合うなんて…そんなの間違ってます」

アルミン(…てっきり、能天気で自分勝手な子だとばかり思っていたけど)

アルミン(まるっきり逆だったのかもしれない)




エレン「…ッ」




アルミン(おそらく、彼女だけがわかっていたんだ)

アルミン(彼女だけが“今の状況”をよく理解していたんだ)




モノクマ「…」

モノクマ「…気に入らないなぁ」

サシャ「えっ」

モノクマ「気に入らないよ“オマエ”」




アルミン(それは今までとは違う、ドスの聞いた声だった)

アルミン(その奥底に憎悪が見え隠れするような…そんな声)

モノクマ「…」




アルミン(モノクマはしばらく考えるような素振りを見せた後)

アルミン(独り言のように呟いた)




モノクマ「…よし、決めた」

サシャ「…?」

モノクマ「今回の見せしめは…“オマエ”だーっ!!」

今日はここまで

アルミン「…見せしめ?」




アルミン(背筋が凍りつくのを感じた)

アルミン(見せしめ、見せしめ、ミセシメ…)




アルミン「危ないっ!逃げて!」

サシャ「えっ」




アルミン(でも、僕がそう叫んだときにはもう…)

アルミン(何もかもが手遅れだった)









モノクマ「召喚魔法を発動する!
     出でよ!グングニルの槍ッ!!」







ドスッ




アルミン(まるで時が止まったようだった)

アルミン(モノクマの合図とともに、どこからともなく槍が飛来し…)

アルミン(寸分の狂いもなく、“それ”のど真ん中を貫いたのだ)




サシャ「…え…あ…」





アルミン(誰一人として、身動きがとれなかった)

アルミン(その場にいる誰もが目を奪われてしまった)

アルミン(“それ”を貫いたまま地面に突き刺さる槍に…)

モノクマ「ふぅ~!危なかったねブラウスさん!」

サシャ「…え…えっ…」

サシャ「今の…は…?」

モノクマ「ボクに感謝してよね!キミを助けてあげたんだよ!
     あの忌々しい“悪魔の根っこ”からさ!」

サシャ「悪魔の…根っこ…?」

モノクマ「じゃがいもっていうのは恐ろしい食べ物だよ。
     どんなに痩せた土壌でも生えてくるし、その芽には毒がある」

モノクマ「おまけに、大昔は邪神召喚の儀式に使われていたんだとか…
     まあこれは今思いついたんだけどね」

アルミン(いつの間にか、モノクマは明るい口調に戻っていた)

アルミン(でもなぜだろう…さっきの憎悪が消えたように感じないのは)




モノクマ「きっとブラウスさんは、“悪魔の根っこ”にそそのかされて、
     あんなおかしな事言っちゃったんだよね?」

サシャ「え…あの…私は…」

モノクマ「そうだよね?」

サシャ「え…あ…」

モノクマ「でももう大丈夫!諸悪の根源はボクがやっつけておいたから!」




アルミン(顔面蒼白のサシャは、そのままゆっくりと視線を移動させる)

アルミン(地面に刺さり、小刻みに揺れ続ける黒い槍…)

アルミン(その刃には、“先ほどまで彼女がかじっていた物”の無残な姿があった)









プロローグ

ようこそ絶望兵団


END







生き残りメンバー 12人




【ミカサ・アッカーマン】
【ライナー・ブラウン】
【ベルトルト・フーバー】
【アニ・レオンハート】
【エレン・イェーガー】
【ジャン・キルシュタイン】
【コニー・スプリンガー】
【サシャ・ブラウス】
【クリスタ・レンズ】
【アルミン・アルレルト】
【ミーナ・カロライナ】
【ユミル】

今日はここまで

続きは月曜日に

■ 兵団規則 ■


1 訓練兵達はこの施設内だけで共同生活を行いましょう。
 共同生活の期限はありません。

2 夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。
 夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

3 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。
 他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。

4 この施設について調べるのは自由です。
 特に行動に制限は課せられません。

5 監督教官ことモノクマへの暴力を禁じます。
 
6 “物体X”の破壊を禁じます。

7 仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
 自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。

8 なお、兵団規則は順次増えていく場合があります。

― 食堂 ―




エレン「クソッ!何が“規則”だ!」




アルミン(エレンは舌打ちをして、手帳をテーブルに叩きつけた)




???「やっぱり、悪ふざけじゃなさそうだね…」

サシャ「…」

アルミン(僕たちはあの後、“訓練兵手帳”と記された
     革張りの手帳を渡された)




モノクマ『訓練兵手帳はここでの生活に欠かす事の出来ない
     必需品だから、絶対になくさないようにね!!』

モノクマ『それと、表紙の裏側に自分の本名が記載されてるから、
     ちゃんと確認しておいてね』

モノクマ『単なる手帳以外の使い道もあるんでね…』

モノクマ『ちなみに、その訓練兵手帳は完全耐火性で、
     火にかけても燃えない優れ物!』

モノクマ『耐破性も抜群で、
     10トンくらいの引張応力なら平気だよ!』

モノクマ『詳しい“規則”もここに書いてあるんで、
     各自、じっくりと読んでおくよーに!』




アルミン(モノクマはそう言って、僕らの前から姿を消した)

アルミン(唖然とする僕らを残して…)









CHAPTER 01

イキキノレ

(非)日常編







ライナー「ようお前ら、もう集まってたのか」

ベルトルト「待たせてごめんね」




アルミン(ライナーとベルトルトが現れたことで、食堂には12人全員が揃った)

アルミン(ちなみにこの食堂は、僕とミカサが最初に倒れていた場所だ)




ジャン「おせーよ。待ちくたびれて誰か殺すかと思っちまった」

アルミン「ジャン!!」

ライナー「おい、冗談でも言っていいことと悪いことが…」

ジャン「へいへい、悪かったよ。それよりさっさと始めようぜ」

今日はここまで

アルミン(しばらくジャンを睨みつけていたライナーだったが…)




ライナー「…なら、遅刻した俺たちから報告させてもらう」




アルミン(ため息を吐いた後、気を取り直して切り出した)




ライナー「訓練所で話し合った通り、俺とベルトルトは地面の何ヶ所かに
     穴を掘ってみた。で、その結果なんだが…」

ベルトルト「結論から言うと、穴を掘っての脱出は無理そうだよ」

エレン「無理って…なんでわかるんだよ。掘り進めてみなきゃわかんねえだろ」

ライナー「3メートルほど掘ったところで、金属質のものにぶち当たったんだ」

コニー「金属質ってなんだ?」

ライナー「どこを掘っても同じだった。おそらく、
     地下3メートル付近に【巨大な鉄板】か何かが敷かれているんだろうな」

ベルトルト「まあ、数ヶ所掘っただけだから確かなことは言えないけど…
      もう少し続けてみるよ」

ミカサ「…無意味だと思う。こんな大がかりな事を企む黒幕に、
    そんな抜け目があるとは考えられない」

ユミル「だな。時間と労力の無駄使いってやつだ」

クリスタ「じゃあ次は私たちから。私とユミルは
     この食堂と調理場を調べてみたんだけど…」

ユミル「どうやら、芋女の言ってたことは本当だったらしい。
    調理場には食糧が充実してた」

ユミル「少なくとも食うのには困らなさそうだったな。ただ…」

ベルトルト「ただ…?」

ユミル「芋がなかった」

サシャ「…っ」

クリスタ「…きっとモノクマが撤去したんだろうね。
     気にすることないよ、サシャ」

ライナー「寄宿舎の方はどうだった、ミーナ?」

ミーナ「けっこう立派な建物だったよ。大浴場なんかもあったし…」

ジャン「それと手帳に書いてある通り、全員分の個室も用意してあったぜ。
    夜はそこで寝ろってことなんだろうな」

コニー「俺も見に行ったけどよ、ベッドがスゲーふかふかだったぞ!
    俺はいっつも弟たちと寝てたから、一人部屋なんて夢みてえだ!」

アニ「…あんたはもっと危機感持ちなよ」

ミカサ「私たち3人は倉庫に行ってきた」

ライナー「倉庫なら俺たちも行ったな。穴を掘るための
     つるはしやショベルはそこから持ってきたんだ」

エレン「ああ、本当に何でも揃ってたぜ。訓練道具はもちろん、
    生活用品、衣類、工具、お菓子、それに…」

アルミン「薬品類…医療用のものから毒薬まで」

クリスタ「ど、毒薬…!?」

アルミン「種類もいろいろあったよ。即効性のあるものから
     遅延性のあるもの、さらには混ぜ合わせるタイプとかね」

ユミル「…そいつはまた物騒だな」

コニー「俺とアニは適当に散歩してたぞ」

アニ「…それはあんただけでしょ。
   私はちゃんとこのフロア全体を見て回ったよ」

ミカサ「どうだった?」

アニ「わかってはいたけど…相当広かったね。
   寄宿舎や倉庫のような建築物の他に、林まであったよ」

ジャン「おいおい、林って…ここは建物の中なんだろ?」

アニ「そう…それがこの施設の特徴なんだよ。
   言ってみれば、【屋外をそのまま建物で囲った構造】をしているんだ」

ライナー「他には何かあったか?」

アニ「鍵がかかっていて開かない場所がいくつか。それと…」

コニー「?」

アニ「施設の壁…このフロアの末端だね、そこに【赤い扉】があった」

エレン「…! まさか出口か!?」

アニ「さあね。どっちにしろ、そこも施錠されていたよ」

ライナー「…これで一通りの報告は終わったようだな」

ベルトルト「そうだね。とりあえず、今までの情報をまとめてみようか」








  施設の特徴


・ 地下3メートルに巨大な鉄板?

・ 屋外をそのまま建物で囲った構造




  施設内の場所


・ 訓練所
 
・ 食堂・調理場(食糧が充実)

・ 寄宿舎(大浴場、各々の個室がある)

・ 倉庫(訓練道具、生活用品、薬品類などが充実)

・ 林

・ 赤い扉(出口?)

・ その他、鍵のかかっている箇所

ユミル「へえ…わかりやすいじゃねえか。やるもんだな、ベルトルさん」

ベルトルト「えっ、そうかな…ははは」

アルミン「…でもこうして見てみると、
     僕たちを一生この中で過ごさせるっていうのは本気みたいだね」

ミーナ「そうだよねー…
    食べ物は豊富みたいだし、ちゃんと寝泊りする場所もある」

ジャン「おまけに生活用品や医薬品まで完備ときた。
    本当に巨人の脅威がないのなら、案外ここでの暮らしも快適かもな」

エレン「…ちょっと待てよ」

ジャン「あ?」

エレン「ここでの暮らしが快適…?本気で言ってんのか」

ジャン「当たり前だろ。巨人の心配も食糧の心配もしなくていい。
    憲兵団にすら入らずにそんな生活ができるなんて最高じゃねえか」

エレン「…ああ,そういえばお前は,内地で快適な生活を送るために
    憲兵団に入るとか言ってたヤツか」

ジャン「そうさ。そのためなら訓練兵団でのむさ苦しい生活も覚悟してたが,
    どうやらそんな心配も無用みたいだな」

エレン「…ジャン」

ジャン「あ?」

エレン「内地に行かなくても,お前の脳内は“快適”だと思うぞ?」

今日はここまで

ミカサ「やめなさい」

アルミン「エレン!」




アルミン(僕の親友に欠点があるとすれば,それは“短気”なところだ)

アルミン(近所のガキ大将に喧嘩を売られた時,
     どんなに安い挑発でもエレンは真に受けて,殴りかかっていったっけ)

アルミン(でも今は…)

ジャン「オレが頭のめでたいヤツだと…そう言いたいのかエレン?」

エレン「…」

ジャン「それは違うな…オレは誰よりも現実を見てる」




アルミン(ジャンはそう言うと自分の手帳を取り出し…)

アルミン(近くにあった燭台に掲げた)




ジャン「見ろよ…本当に火にかけても燃えないらしいぜ。
    それにいくら力を入れても破けない…どうなってんだこりゃ」

エレン「…何が言いたいんだ,ジャン」

ジャン「考えてもみろよ。“燃えない紙”だぞ?
    “破れない紙”だぞ?信じられると思うか?」

エレン「…」

ジャン「でもな,それは確かに燃えないんだ。破れないんだ。
    これが一体何を意味するのか…お前にはわかるか?」

エレン「…」

アルミン「…黒幕の言っていることは本気,でもそれだけじゃない。
     【それを実行できるだけの力を持っている】ってことだよね?」

ジャン「そうだ…おそらく王制府レベルのな」

サシャ「ま,まさか…今回の一件には王政府が関わっていると!?」

ジャン「それくらいしか考えらんねえだろ。規模のでかい施設,食糧の大量調達,
    オレたちの知らないような先端技術…王制府が仕組んだことなら辻褄が合う」

クリスタ「でも,もしそうなら…なおさら不自然じゃない?
     どうして壁の中のトップが,たかだか12人の訓練兵のためにそこまでするの?」

ミーナ「ましてや『殺し合いをしろ』だもんねー…
    莫大な資源をつぎ込んでるのに全然割に合ってないっていうか」

ジャン「んなこと知るかよ…だがな,黒幕の思惑が何であろうと,これだけは十分わかった」




ジャン「オレたちは…アイツに逆らえない…」

アルミン(場が静まり返った)

アルミン(黒幕の言っていることは本気であり,それだけの力があり,
     僕たちはそれに逆らえない…)

アルミン(それは最初から見えていた事実だったのかもしれない。
     でも,だからこそ…)

アルミン(僕たちは“その先”を考えるのが怖かったんだ)




ジャン「見ろ…お前のせいでお通夜になっちまった」

エレン「それで?」

ジャン「はぁ?話聞いてたか?」

エレン「『逆らえないと思うから諦める』ってとこまで聞いた」

ジャン「…」

エレン「なぁ…諦めて良いことあるのか?」

エレン「あえて希望を捨ててまで現実逃避する方が良いのか?」

今日はここまで

ジャン「…じゃあどうすんだ。誰か殺すのか?」

エレン「…!」

ジャン「お前が言ってるのはそういう事だぞ。ここから出たいんだろ?」

エレン「…」

ジャン「…綺麗事ばっかり言いやがって」




ガシッ




ジャン「現実逃避してんのはどっちだよ!
    テメーは自分の希望のために誰かを犠牲にすんのか!ああ!?」

アルミン「ジャン!!」

ユミル「…お前もさっき殺すとか言ってたじゃねえか」

ジャン「本気なワケねーだろ!そんなこともわかんねーのかこのブス!」

クリスタ「もうやめて!!」




ジャン「…!」

クリスタ「こんなの不毛だよ!
     今ここで言い争ったって何にもならないでしょ!?」

ユミル「…」

クリスタ「きっとみんな疲れてるんだよ…頭がいっぱいになってるんだよ。
     そんな状態で無理したって何も良いことないよ」

エレン「…」

クリスタ「ねっ?今日はみんなよく頑張ったよ」
     
クリスタ「夜も更けてきたし…おなかいっぱい食べて,
     みんなでお風呂に入って,ふかふかのベッドでゆっくり眠ろ?」

クリスタ「そうすればきっと…良い考えだって浮かんでくるよ」

アルミン(…涙を浮かべながら訴える彼女に,一体誰が反論できただろう)

アルミン(それまで熱くなっていた二人も,ようやく落ち着きを取り戻したようだった)




エレン「オレには夢がある…」

ジャン「あ…?」

エレン「巨人を駆逐してこの狭い壁内の世界を出たら」

エレン「…外の世界を探検するんだ」

アルミン「エレン…」

エレン「だからオレはここから出る。殺し合いなんて死んでもやらねえ。
    あのふざけた人形の中身を引っぱり出して,鼻っ柱を叩き折って…」

エレン「絶対に…ここから出てやる」

モノクマ「ふむふむ,それで?」

エレン「…クリスタの言う通りだ。今ここで熱くなっても仕方ねえ。
    まずは英気を養って…」

モノクマ「養って?」

エレン「…!!」

コニー「うわああああああああああ!?クマが出たあああああああ!」

モノクマ「だからさぁ…クマじゃなくて…」

モノクマ「モノクマなんですけど!しかも,監督教官…って,あれ?」

アニ「…何しに来たの」

モノクマ「…何しに来たの,じゃないよ!」

サシャ「…!」ビクッ

モノクマ「ボクは…ボクはねぇ…」

コニー「…?」




モノクマ「ボクは怒ってるんだよっ!!」

今日はここまで

ミーナ「お、怒ってる…?」

モノクマ「そうだよ!激おこプンプン丸なんだよっ!」

ユミル「…殺し合いが起きないことに腹立ててんのか?
    あいにく私たちはそんなに暇じゃ…」

モノクマ「そうじゃない!
     …まあ確かにそれもムカつくけど、そうじゃなくて!」

モノクマ「ボクが怒ってるのはオマエラに対してだよ!
     ライナー・ブラウンにベルトルト・フーバー!」

ベルトルト「え…?」

モノクマ「オマエラさあ、この外のあちこちに穴掘ったでしょ!」

ライナー「それがどうしたんだ」

モノクマ「何開き直ってんの!ちゃんと元に戻しなさいよ!」

ベルトルト「いや、でも流石にそこまでの時間はなくて…」

モノクマ「そんなのオマエラの都合でしょーが!とにかく穴を塞ぎなさい!
     ヤリ逃げなんて許さないんだからね!」

ミカサ「“この施設について調べるのは自由です。 特に行動に制限は課せられません。”
    …兵団規則にはそうあったはず」

ライナー「ミカサの言う通りだ。俺はその一項を確認したからこそ、
     ああいう行動に踏み切ったんだ。何も問題はないはずだぞ?」

モノクマ「ムキーッ!そうやっていちいち規則で縛らないと行動できないの!?
     まったくこれだからゆとり世代は!」

ベルトルト「…わかったよ。ちゃんと戻すよ。それでいいんでしょ?」

モノクマ「そう!投げやりな返答が気に入らないけど、
     最初から従っていればいいんだよ!」

モノクマ「大体、外が穴だらけだったら危なくて訓練できないでしょーが!」

アルミン「ちょっと待って」

モノクマ「ん?」

アルミン「訓練?今訓練って言ったの?」

モノクマ「はい、言いましたけど?」

ユミル「…まさかとは思うが、私たちに
    兵士としての訓練をさせるってことじゃないだろうな」

モノクマ「何言ってんのさ。そのまさかだよ。
     だってオマエラは兵士になりたくてここに集まったんでしょ?」

ジャン「…なあ、言ってることメチャクチャじゃねえか?
    オレたちを一生ここに住まわせる気なら、兵士になんてなる必要ねーだろ」

ミカサ「そもそも兵団というのは巨人に対抗するために組織されたもの。
    本当に巨人の脅威がないのなら、巨人を殺すための訓練なんて意味がない」

モノクマ「まあまあ旦那、そうカタイこと言わずにさぁ。
     だって訓練しなかったら、もはや“訓練兵”じゃないじゃん」

サシャ「た、確かにそうですけど…」

モノクマ「とにかく、明日から訓練始めるから!
     今日は各自しっかりと休んで体調を整えておくよーに!以上!」




ポヨヨーン

アルミン(モノクマはそう言って、再び僕らの前から姿を消した)




クリスタ「ねえ、今のってどういう事なのかな」

ジャン「…そのままの意味だろ。どうやらアイツは明日から、
    オレたちにきっつい訓練を強いて虐めるつもりらしい」

コニー「な、なあ…よく状況が呑み込めてねーんだけど…
    結局アイツは殺し合いをさせたいのか?訓練をさせたいのか?」

アニ「さあね。でも今日はもうご飯を食べて休もう。
   クリスタも言ったけど、これ以上考えたって良い結果は出ないよ」

ライナー「…だな。今日はいろんな事がありすぎた」

今日はここまで

アルミン(こうして僕たちの長い一日は終わった)

アルミン(食事と入浴を済ませた僕は、そのままベッドへと倒れ込み…)

アルミン(それと同時に目を閉じた)




アルミン「…」




アルミン(眠かった訳じゃないけど、
     ただ、ものすごい疲労感だった)

アルミン(まるで1日中ぶっ通しで、
     紙芝居を見せ続けられたような疲労感…)

アルミン(自分がフィクションの世界に
     放り出されてしまったような錯覚…)




アルミン「…当たり前だ」

アルミン「いきなり、こんな状況に巻き込まれて、
     簡単に受け入れられる訳ないじゃないか…」




アルミン(このまま眠ってしまって…)

アルミン(目が覚めたら全部夢だった…
     なんてオチはどうだろう?)

アルミン(オチとしては最低だけど、
     でも最高だ。それが1番いい)

◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「整った設備、優しそうなモノクマ先生。
     そんな中でこれからの日々がスタートを切ると思うと…」

モノクマ「ボクはとても誇らしく、嬉しくてなりません」

モノクマ「今日は私たち入団志願者の為にこのような素晴らしい式典を
     執り行っていただき、誠にありがとうございました」

モノクマ「訓練兵団の一員としての自覚を失う事なく、
     それぞれ、新しい自分の理想を目指して…」


モノクマ「明日からの生活を、送っていく事を誓いますっ!」









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『オマエラ、おはようございます!
     朝です、7時になりました! 起床時間ですよ~!』

モノクマ『訓練兵諸君は、訓練場に集合してくださーい!』







CHAPTER 1 

DAY 2




アルミン(朝…らしいな…
     天気がわからないから確かめようもないけど…)




アルミン「…」




アルミン(夢オチだなんて…そんなに上手くいく訳ないか)

今日はここまで

― 訓練所 ―




ベルトルト「おはようアルミン…」

アルミン「ちょっ…二人とも大丈夫!?目が死んでるよ!」

ライナー「あー…」

ジャン「…徹夜で穴埋め作業やらされてたらしいぜ。ご苦労なこった」

クリスタ「ごめんね…私も手伝いたいって言ったんだけど、
     モノクマが許してくれなくて…」

ライナー「気にすんな…お前にそう言ってもらえただけで十分だ…」

サシャ「おはようございます…」

ユミル「遅えぞ芋女。お前が最後だ」

サシャ「だって…朝ごはんも食べてないんですよ…?」

ミーナ「昨日の夜がっつり食ってたじゃん…」

サシャ「それとこれとは別ですよ…
    昨日の夜中も食堂に行ったのに閉まってたし…」

エレン「お、おい!あれだけ食って
    さらにつまみ食いしようとしてたのかよ!」

サシャ「ああ…おなかが減って力が…」

モノクマ『やあ』




ミカサ「!」




モノクマ『いやぁ、実に清々しい朝です!
     訓練にはもってこいの日和ですな!』




ユミル「…おい、こっちはお前と遊んでる時間はないんだ。
    隠れてないでさっさと出てこいよ」




モノクマ『もう、ノリ悪いなぁ…まあいいや。
     それじゃあ、さっそく始めよっか!』

~♪
~♪


~~♪
~~♪


~~~~♪
~~~~♪




ポヨヨーン




モノクマ「いやぁ、実に清々しい朝です!
     訓練にはもってこいの日和ですな!」


ミーナ「…それさっき聞いた」

モノクマ「もう、ノリ悪いなぁ…まあいいや。
     それじゃあ、さっそく始めよっか!」

ジャン「…それもさっき聞いたぞ」

モノクマ「まあまあ旦那、そうカタイこと言わずにさぁ。
     だって訓練しなかったら、もはや“訓練兵”じゃないじゃん」

アニ「…」

モノクマ「…オマエラって本当ノリ悪いよね。
     そこは普通さ、『それは昨日聞いた』ってツッコミを…」

ユミル「いいからさっさと始めろ」

モノクマ「ショボーン…それじゃあ、訓練についての説明をしまーす…」

モノクマ「オマエラにはこれから、
     血沸き肉躍るコロシアイ生活を送ってもらう訳ですが…」

モノクマ「それと同時に、50日間の訓練生活も送ってもらいまーす…」

モノクマ「オマエラ…1位目指して頑張ってくださーい…」

ジャン「…は?」

サシャ「な、何ですか…?50日間って…」

モノクマ「だって…流石に一生訓練し続けろってのも辛いでしょ…」

モノクマ「それにオマエラみたいなシラケ世代は…
     期間を設けてやらないとすぐにブーたれるし…」

ミカサ「ねえ、その訓練っていうのは強制?」

モノクマ「はい…?」

ミカサ「兵団規則には訓練参加に関することが書かれていない。
    つまり訓練を受けなくても、罰を受けることにはならないはず」

モノクマ「そうですね…アッカーマンさんの言う通りです…
     訓練は強制ではありません…あくまで自由参加です…」

コニー「? なんだそりゃ。
    それじゃあ、今ここに集まってる必要ねーじゃんか」

モノクマ「あります…大いにあります…」

ユミル「…馬鹿馬鹿しい。解散だ解散」

ベルトルト「ライナー、部屋に行って休もう…」

ライナー「ああ…」

モノクマ「あの…だからですね…」




モノクマ「クマの話は最後まで聞けって言ってるでしょーが!!」

サシャ「…!」ビクッ

モノクマ「全くオマエラはよォ…
     反応が予想通りすぎて絶望してんだよこっちは!あァん!?」

ミーナ「ちょ、ちょっと…キャラがブレブレだよ?」

モノクマ「ったくよォ…そんな蜂蜜みたいに甘ったれた事も言うと思ってなァ…
     こっちはご褒美まで用意してやったっつーのによォ…」

クリスタ「…ご褒美?」

モノクマ「そう!50日間の成績上位1名には、
     とんでもねえビッグなサプライズが用意してあんのさァ!」

モノクマ「それがなんと!【願いを一つだけ叶えられる】ってやつだァ!」

ライナー「なんだと…?」

モノクマ「あ、でもなァ!【空を自由に飛びたい】とか【世界旅行に行きたい】とか、
     そんな非現実的なことは受けつけねェからなァ!」

モノクマ「あくまでも、このオレができる範囲内のことを頼みやがれェ!」

ジャン「な…何言ってんださっきから…」

モノクマ「例えば…そうだなァ…」




モノクマ「【ここから全員で出たい】とか【ボクの処刑をしたい】とかね?」

アルミン「…えっ」

モノクマ「ひゃっほうううう!ボクってすごく太っ腹じゃない?
     それだけオマエラには頑張ってほしいってことだよ!」

ベルトルト「ね、ねえ…今のって本気なの?」

モノクマ「当たり前じゃん!クマに二言はありません!
     1番っていう数字にはそれだけ重みがある、権利があるんだ!」

ユミル「…なあ、お前は一体何がしたいんだ?
    それなら50日間耐えればここから出られるってことじゃねえか」

サシャ「そ、それどころか…訓練が自由参加なら…」

ライナー「誰か一人が訓練に参加して他の全員がサボれば、
     自動的にそいつが1位になるな…」

ミーナ「何それ…メチャクチャ楽勝じゃん」

モノクマ「…ああ、違う違う」

コニー「…?」

モノクマ「【願いを一つだけ叶えられる】っていうのは、
     命がけのゲームを勝ち残った場合の話ね」

ミカサ「命がけの…ゲーム?」

モノクマ「成績1位の人に与えられるのはそのゲームへの挑戦権だよ。
     それに勝つことができたら、【願いを一つだけ叶えられる】の」

ライナー「何だそりゃ…」

モノクマ「うぷぷ…それにオマエラ、随分喜んでるけどさぁ…」




モノクマ「もし、【裏切り者】が1位獲っちゃったらどうすんの?」

クリスタ「…え?」

モノクマ「サボるのは別に構わないよ?でもさ、オマエラに
     訓練を任された人が【裏切り者】だったらどうすんの?」

ジャン「…何…言ってんだ…?」

モノクマ「ネタばらしするとさぁ、
     実はオマエラの中には【裏切り者】がいるんだよ」

コニー「は…?」

モノクマ「そして仮にその【裏切り者】が1位を勝ち取った場合…」

モノクマ「【自分だけここから出たい】とか【自分以外を処刑してほしい】とか、
     そんな事言うかもしれないよねー!」

エレン「ふざけんな!!」

モノクマ「は?」

エレン「そんな訳ねえだろ!オレたちの中に…そんなヤツはいない!」

モノクマ「いやいや…じゃあ逆に聞くけどさ、
     どうして【裏切り者】がいないなんて言い切れるの?」

モノクマ「互いの素性を何も知らないクセに」

エレン「…ッ!」

モノクマ「【裏切り者】はいるんだよ、確実に。
     そしてそいつはね…オマエラのことを耽々と狙っているんだよ」

ユミル「…誰なんだよ、その【裏切り者】ってのは」

モノクマ「そんな事、ボクの口から言える訳ないじゃーん!」

ライナー「…まあそうだろうな。
     そこまでバラしたら【裏切り者】の意味がない」

ベルトルト「いや、待って。そもそも今の発言が本当だとは限らないよ。
      だっていきなり【裏切り者】がいるだなんて…」

モノクマ「うぷぷ…信じる信じないはオマエラの自由だよ」

モノクマ「ボクの話を信じて訓練に励むのも自由!
     ボクの話を信じず裏切り者に出し抜かれるのも自由!」

モノクマ「そして1位を獲れる自信がない人は、
     誰かを殺してここから出ていくのも自由!」

モノクマ「全てはオマエラの自由だーっ!」

アルミン(…とてもじゃないけど、頭が追い付かなかった)

アルミン(僕たちの中に…裏切り者がいる…?)

アルミン(…いや、だとしても…)




モノクマ「じゃあとりあえず、今言った内容を規則に加えておくから、
     各自ちゃんとメモを取ってね!」

■ 兵団規則 ■


1 訓練兵達はこの施設内だけで共同生活を行いましょう。
  共同生活の期限はありません。

2 夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。
 夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

3 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。
 他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。

4 この施設について調べるのは自由です。
 特に行動に制限は課せられません。

5 監督教官ことモノクマへの暴力を禁じます。
 
6 “物体X”の破壊を禁じます。

7 仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
 自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。

8 訓練兵達は50日間の訓練を行います。
 訓練への参加は強制ではありません。

9 訓練の総合成績が一番優秀だった者には、
 “ファイナルデッドルーム”への挑戦権が与えられます。

10 なお、兵団規則は順次増えていく場合があります。

サシャ「ファ、ファイナル…デッドルーム?」

モノクマ「命がけのゲームの会場だよ。そこで勝てば、
     オマエラは自分の希望を手にすることができるんだ」

ミーナ「その命がけのゲームっていうのは…【裏切り者】もやるの?」

モノクマ「もっちろん!そうしないと不公平でしょ?」

ユミル「なら…そのゲームってのは何をするんだ?」

モノクマ「それは後々のお楽しみってことで…
     あんまりいっぺんに言ってもツマラナイからね」

アニ「…」

モノクマ「うぷぷ…ボクからは以上だよ。
     訓練は午後からやるから、参加したい人はまたここに集まってね」




ポヨヨーン

今日はここまで

アルミン(…もういっそ思考停止してしまえば、どんなに楽だろうか)

アルミン(次から次へと迫りくる事象に、
     僕たちの頭はパニックを起こしかけていた)




コニー「ははは…なんかもう…全然わかんねえや」

サシャ「…」

ミカサ「…」

ジャン「裏切り者…って言ったのか…?
    オレたちの中に…いるって…?」

アルミン(【裏切り者】…)

アルミン(考えもしなかった、考える余裕すらなかった、その可能性…)

アルミン(僕たちの思考と体は…
     その可能性にすっかり絡め取られていた)

アルミン(恐怖と不安が、ゆっくりと浸透していき…
     全身を支配していく)

アルミン(あたりに漂った重い空気が、
     容赦なく、僕の頭や肩にのしかかる)

アルミン(その重みに耐えるだけで…精一杯だった)

アルミン(そんな重苦しい空気…)

アルミン(それを打ち破ったのは…
     彼女の無愛想な一言だった)




アニ「それで、これからどうする気?」

アニ「このまま…ずっと、にらめっこしている気?」

アルミン(彼女のトゲのある言葉は、
     その場の全員に向けられていた…)

アルミン(だけど、そのトゲが…
     僕らを現実へと引き戻した)




アニ「私は訓練に参加するよ」

エレン「…!」

アニ「【裏切り者】がいようがいまいが関係ない…
   どちらにしても、自分の命運を他人に託す気はないからね」

ミーナ「…」

ライナー「…そうだな。今はそんなことで頭を悩ませている場合じゃない」

ライナー「殺し合いなんぞやらずにここから出れるっていうなら…
     俺は自分にできることをやるだけだ」

今日はここまで

― 食堂 ―




ミカサ「…」モグモグ

アルミン「…ね…ねえ、ミカサ」

ミカサ「…」モグモグ

エレン「…おいミカサ、せめてもっと旨そうに食えよ」

ミカサ「…」モグモグ

アルミン「ねえ、本当にどうしたの…?
     まるで獲物を狙っているような目だけど…」

ミカサ「…それは逆」ゴックン

エレン「は?」

ミカサ「いつ誰がエレンを襲ってくるかわからない」

ライナー「それはねえよ」




アルミン(見上げるとそこには、昼食のトレイを持った
     ライナーとベルトルトが立っていた)




ミカサ「…」

ライナー「おいおい、そんな怖い顔で睨むなって。
     兵団規則にもあっただろ?」

ライナー「“仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
     自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。”」

ライナー「つまり今誰かを襲ったところで何もメリットはない…
     かえって規則違反で罰を受けちまうんだから全くの無意味だ」

ミカサ「…」

ベルトルト「ま、まあまあ…そんな理屈以前に、
      僕たちには誰かを殺そうなんて考えは微塵もないからさ」

ベルトルト「…隣、座ってもいいかな」

ライナー「…」モグモグ

ベルトルト「…」モグモグ

エレン「…なあ」

ライナー「ん?」モグモグ

エレン「やっぱりお前らも…訓練に参加するのか?」

ライナー「ああ」モグモグ

エレン「…そうか。結局みんなやるんだな」

アルミン「…」

ライナー「? どうしたアルミン、お前までそんな顔して…」

アルミン「いや、なんていうか…」

アルミン「…腑に落ちないんだよ」

ベルトルト「え?」

アルミン「モノクマは昨日、僕たちにこう言ったよね」




モノクマ『えー、そしてですね…
     その共同生活の期限についてなんですが…』

モノクマ『期限はありませんっ!!』

モノクマ『つまり、【一生ここで暮らしていく】のです!
     それがオマエラに課せられた訓練兵生活なのです!』

ライナー「…ああ。そしてここから脱出する条件として、
     仲間の誰かを殺せと言ってきた」

アルミン「うん。それなのにモノクマは、今日になっていきなり…」




モノクマ『オマエラにはこれから、
     血沸き肉躍るコロシアイ生活を送ってもらう訳ですが…』

モノクマ『それと同時に、50日間の訓練生活も送ってもらいまーす…』




アルミン「…本当に殺し合いをさせたいのなら、
     訓練生活なんて逆効果だよ」

アルミン「みんなが訓練に参加すればそれだけ殺人の機会も減るし、
     疲弊してしまえばそれを実行するだけの気力もなくなる」

アルミン「それどころか…」

モノクマ『【ここから全員で出たい】とか【ボクの処刑をしたい】とかね?』




アルミン「自分で設定した“卒業”というルールを無視するかのように、
     わざわざ別の脱出方法を提示した…」

アルミン「これは明らかに悪手だよ。そんな事を言ったら、
     誰かを殺してここから出ていこうとする人なんていなくなってしまう」

ベルトルト「…現に僕たちは、
      その望みに賭けて訓練に参加しようとしているからね」

ライナー「…」

アルミン「モノクマはどうして…あんな事を言ったんだろう」

ライナー「…俺は思うんだがな」

アルミン「…?」

ライナー「あいつの…モノクマの真の目的は
     仲間同士で殺し合わせることじゃなくて…」

ライナー「俺たちに…訓練を受けさせることじゃないのか?」

エレン「…何だって?」

ライナー「殺し合いという間違った選択肢に惑わされずに訓練に励む…」

ライナー「それを狙った入団試験だと…そうは考えられないか?」

ミカサ「…この期に及んで何を言っているの?これが入団試験?」

ライナー「そう考えれば辻褄も合ってくるだろ。
     アルミンの言うような、殺し合いをさせるには不利な提案も…」

ライナー「【裏切り者】という存在を示唆してまで、
     俺たちに訓練への参加を促したのも…ある程度までは納得がいく」

ミカサ「そんなの回りくどすぎる。クリスタも言ったけど、
    たった12人の訓練兵のためにやるような事じゃない」

アルミン「…」




アルミン(…モノクマは一体何を考えているんだ?)

アルミン(殺し合いが狙いじゃないのか?
     もしこれが入団試験でもないのだとしたら…)

アルミン(本当の目的は…もっと他のところにあるのか?)









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『えー、施設内放送でーす。
     午後1時になりました』

モノクマ『さあオマエラ、決断の刻でございます。
     熱血モノクマ先生の教えを乞いたいという人は…』

モノクマ『今すぐ訓練所に…出てこいやぁ!』







今日はここまで

― 訓練所 ―




~♪
~♪


~~♪
~~♪


~~~~♪
~~~~♪




ポヨヨーン




モノクマ「いやぁ、実に清々しい朝です!
     訓練にはもってこいの日和ですな!」

ユミル「…」

モノクマ「うぷぷ…結局全員参加してくれるんだね!
     まったくもう、みんなしてツンデレなんだから!」

サシャ「…」

モノクマ「…まあいいや。それじゃあ、
     さっそく訓練を始めましょー!!」

モノクマ「…と、言いたいところなのですが」

ミーナ「…まだ何かあるの?」

モノクマ「うん、ボクはオマエラに
     すっきりとした気持ちで訓練に臨んでもらいたいから…」

モノクマ「訓練を始める前に、
     オマエラの心配を解消してあげようと思って」

クリスタ「…?」

モノクマ「実を言うとね、ボクは嬉しくて仕方がないのです!」

モノクマ「“このままではコロシアイが起こらないんじゃないか”…
     そんな心配をしてくれるオマエラが、愛おしくて仕方がないのです!」

ジャン「…誰もそんな心配してねーよ」

モノクマ「でも安心してね!【コロシアイは100%起きる】から!」

モノクマ「なぜならオマエラはそういう生き物であり…
     これからボクが提示する“あるモノ”に、必ず喰いつくはずだから!」

コニー「“あるモノ”?」

モノクマ「もし誰にも気づかれずに殺人を成功させたクロが現れた場合、
     卒業記念品として…」








モノクマ「【巨人に関する重大なヒミツ】をプレゼントしまーす!!」







エレン「…!!」

モノクマ「いやっほうううううううう!出血大サービスー!!」

ライナー「ま、待て!巨人に関する…重大な秘密だと!?」

モノクマ「あっ、一応言っておくけど…“うなじを切り取ったら死ぬ”とか
     “夜間の活動は極端に鈍い”とか、そういう当たり前の事じゃないからね」

モノクマ「もっとこう…【巨人の存在そのものに関わること】だから」

ベルトルト「なっ…!」

アニ「…」

モノクマ「もちろん嘘や冗談なんかじゃないよ?」

モノクマ「その証拠にほら…ボクはこうして、
     巨人の脅威からオマエラを守ることができている訳で」

ユミル「…まさか、このバカでかい施設に
    ヤツらが攻め込んで来ないのは…」

モノクマ「うぷぷ…その通り」

モノクマ「ボクがヤツらのヒミツを握っているからー!!」

アルミン(もう…何回目だろうか)

アルミン(この異常な生活に放り込まれてからというもの…
     僕たちは驚きの連続だった)

アルミン(…もちろん、悪い意味で)




モノクマ「今朝も言ったけど、信じる信じないはオマエラの自由だよ」

モノクマ「別にボクは絶対にコロシアイをしろと言っている訳でもないし、
     絶対に訓練に参加しろと言っている訳でもない…」

モノクマ「ルールさえ守ってくれれば、どう動くかはオマエラ次第なんだ」

ミカサ「…」

モノクマ「とりあえず、ボクが言いたかった事はこれでおしまい!
     もうゴチャゴチャとした説明は何もないから…」

モノクマ「ヘイユー!ヤっちゃいなヨ!
     自分の好きなこと殺っちゃいなヨ!」

エレン「…ッ!」

モノクマ「というわけで…訓練開始~!!」

今日はここまで

CHAPTER 01 

DAY 02




モノクマ「まずはオマエラの適正を見るよ!」

モノクマ「方法はいたってシンプル!
     両側の腰にロープを繋いでぶら下がるだけ!」

モノクマ「全身のベルトで体のバランスを取ってね!
     これが出来ないヤツは囮にも使えないよ!」

クリスタ「これってもしかして…立体機動の?」

モノクマ「そう!これはまだ初歩の初歩だけど、
     この段階から立体機動の素質は見て取れるんだ!」

モノクマ「ちなみにこの出来も成績に反映されるから、
     適性検査だからって気を抜かないよーに!」

アルミン(通常、人間と巨人の間には圧倒的な戦力差が存在する)

アルミン(仮に生身の人間が巨人の前に放り出された場合、
     その人間が生き残る確率はゼロと言っていいだろう)

アルミン(しかしそんな巨人に対して、兵士は立ち向かわなければならない。
     歴然たる力の差があっても、市民のために心臓を捧げなければならない)

アルミン(そこで、兵士が巨人と対等に渡り合うために
     開発されたのが…この“立体機動”と呼ばれる技術だ)

アルミン(この技術と特定の装備を用いることで、兵士は
     立体的で高速な機動力を獲得し…)

アルミン(上手く扱えば、巨人の弱点である
     うなじ部分へ斬りつけることもできる)

アルミン(でもこの技術…)




コニー「ぐっ…」プルプル




アルミン(口で言うほど簡単なものじゃない)





ジャン「ふんッ…!」プルプル

クリスタ「…っ」プルプル




アルミン(立体機動を可能にする為には、全身に張り巡らされた
     固定ベルトを利用して、細かい体重移動を行わなければならない)

アルミン(強靭な体力と脚力、空間把握能力、
     そしてパニックに陥らない為の精神力…その全てが要求されるのだ)





ミカサ「…」プラーン




アルミン(したがって、この適正検査は初歩の初歩…)

アルミン(この程度の姿勢制御ができない者に
     立体機動などこなせる訳がない…)

アルミン(…それがモノクマの言い分だった)




モノクマ「うぷぷ…まったくブレがないね」

モノクマ「何をどうすればいいかすべてわかるんだろうね…
     素質っていうのはそういうものだよ」

アルミン(やがて、一通りの結果を見終えたモノクマは…)

アルミン(僕たちにこう言った)




モノクマ「ふぅ~!このクラスはできる人が多いねぇ!」

モノクマ「ボクなんかは体型のせいで中々苦労したクチだけど、
     オマエラはみんな優秀で心強いよ!」








モノクマ「ただ一人を除いては」





ギギ…ギギ…




エレン「…!!」








モノクマ「うぷぷぷぷ…これも素質っていうものなんだろうね。
     人並み以上にできることがあれば…」

モノクマ「人並み以上にできないこともある!」








エレン「…は…?」




ジャン「…」プクク

コニー「…」ニヤニヤ




エレン「…な…な…」

エレン「…なんだよ…これ…」

今日はここまで

CHAPTER 01 

DAY 03




ミカサ「基本通りにやればできるはず。
    上手くやろうとか考えなくていい」

ミカサ「上半身の筋肉は固く、下半身は柔らかく」

ミカサ「前後のバランスにだけ気を付けて。
    腰巻きと足裏のベルトにゆっくり体重を乗せる」

アルミン「落ち着いてやればできるよ。
     運動苦手な僕だってできたんだから」

エレン「…今度こそできる気がする。
    上げてくれアルミン!」

アルミン「いくよ」




キリキリキリキリキリキリ




ガン




エレン「!?」ブンッ




ゴッ













『オイ…あいつ確か…』

『巨人を皆殺しに…言ってた…』

『それがあの初歩の…既に死にかけ…』

『本当かよ…あんなことも…』

『あいつ…一体どうやって巨人を…』

『さぁな…しかしこのままじゃいずれ…』

『役立たずに食わせるメシなんか…』



ミカサ「エレン!」

エレン「…!」

アルミン「気にしても仕方ないよ。
     明日できるようになればいいんだから」

アルミン「それよりちゃんと食べて
     今日失った血を取り戻そう」

エレン「…」




エレン「なんだ…さっきの…」

アルミン「え?」

エレン「…! あ、ああ…悪い。こっちの話だ」

ミカサ「…」

エレン「…明日…」

エレン「明日できなかったら…
    オレ……どうすりゃいいんだ…」

アルミン「だから今は悩んでも仕方ないって…」

エレン「情けねえ…こんなんじゃここから出るどころか…」

エレン「奴らを…根絶やしにすることなんか……」

ミカサ「もうそんなこと目指すべきじゃない」

エレン「…は!?」

アルミン「え?」

ミカサ「向いてないのなら仕方ない。
    ようやくできる程度では無駄に死ぬだけ」

ミカサ「きっと夢も努力も徒労に終わる」

エレン「な…何だって…?」

ミカサ「兵士を目指すべきじゃないと言っている。
    ここから出た後は、生産者として人類を支える選択もある」

ミカサ「何も命をなげうつことだけが戦うことじゃない」

エレン「お…お前なあ…」

エレン「オレは…あの日あの光景を見ちまったんだぞ…?
    そんな理屈で納得できると思うのか?」

ミカサ「…でも、その覚悟の程は関係ない」

エレン「は? 何でだよ。言ってみろ」

ミカサ「兵士になれるかどうか…
    一番になれるかどうか判断するのはエレンじゃないから…」

エレン「う…」

アルミン(そこから、エレンはすっかり黙り込んでしまった)

アルミン(手元の皿に視線を落とし、
     急かされているようにスプーンを口元に運ぶ)




ミカサ「それに…」

アルミン「…?」

ミカサ「一位は私が獲る」

エレン「…」

ミカサ「私がいる限り、【裏切り者】を一番にはさせない。
    エレンもアルミンも…私が無事にここから出す」

アルミン「ミカサ…」

ミカサ「そして私は…エレンだけ
    開拓地に戻れと言ってるんじゃない…」

ミカサ「ここから出たら私も一緒に行くので…
    だから…」





ガンッ




ミカサ「!」

エレン「…ッ」

アルミン「エ、エレン…?」

エレン「…それじゃあ…」




エレン「それじゃあ駄目なんだッ…!」




ダッダッダッダッ




アルミン「ま、待ってよ!エレン!」

今日はここまで

― 寄宿舎 ―




コニー「コツだって?」

コニー「悪ぃけど俺…天才だから
    “感じろ”としか言えん」

ジャン「オレは逆に教えてほしい」

ジャン「あんな無様な姿晒しておいて
    正気を保って保っていられる秘訣とかをよぉ…」

エレン「お…お前ら
    人が頭下げて頼んでるのに…」

ライナー「う~ん…姿勢制御のコツか…」

エレン「頼む!」

ライナー「すまんが…ぶら下がるのに
     コツがいるとは思えん」

ライナー「期待するような助言はできそうにないな…」

エレン「…ッ!」




ダッダッダッダッ




アルミン「エ、エレン!待ってってば!」

アルミン(エレンを追いかけようとした時だった)




ベルトルト「…アルミン」

ベルトルト「ずっと気になってた事があるんだけど…」

アルミン「え…?」

ベルトルト「二人は…シガンシナ区出身だって言ったよね」

アルミン「うん…そうだけど…」

ベルトルト「じゃあ…巨人の恐ろしさも知ってるはずだ」

ベルトルト「なのに…どうして兵士を目指すの?」

アルミン(僕は思わずベルトルトを見た)

アルミン(僕を呼び止める声やその表情には、
     どこか焦りを含んでいるように思えたのだ)




アルミン「えーと」

アルミン「僕は…直接巨人の脅威を
     目の当たりにしたわけじゃないんだ」

アルミン「開拓地に残らなかったのも…」

アルミン「あんなめちゃくちゃな奪還作戦を強行した
     王政があることを考えるとじっとしてられなかっただけで…」

ライナー「…」

アルミン「体力に自信は無いし、
     自分に何かできることがあるか…わからないけど…」

アルミン「この状況を黙って見てることなんて…できないよ」

ベルトルト「…」

アルミン「…まあ今となっては、
     兵士になれるかどうかすら怪しい状況だけどね」

アルミン(僕の返答を聞いたベルトルトが
     何を思ったかわからないが…)

アルミン(やがて伏し目がちになって、こう呟いた)




ベルトルト「そ、そっか…」




アルミン(この呟きを聞いたとき…
     この時点で、僕は立ち去ってよかったのかもしれない)

アルミン(エレンを追いかけてよかったのかもしれない)




アルミン「…」




アルミン(しかし僕にはできなかった)

アルミン(心のどこかで“何か”が引っかかっていたからだ)

アルミン「…そういえば、
     僕にも気なってたことがあるんだけどさ」

アルミン「聞いてもいいかな?
     二人はどこ出身なの?」

ベルトルト「えっ…」

ライナー「…」

アルミン(僕の質問を受けた二人は、何故か動揺しているようだった)




アルミン「? どうしたの」

ベルトルト「…」




アルミン(…ただ出身を聞いただけ。
     何もおかしなことは聞いていないはず)

アルミン(それなのに何故…?)

ライナー「…」

ベルトルト「…」




アルミン(やがて二人は神妙な面持ちで目配せをし…)

アルミン(意を決したように頷いた)





ライナー「…怪しまずに聞いてくれるか」

アルミン「…?」

ライナー「実はな、俺たちには…」




ライナー「記憶がないんだ」



アルミン「え…?」

ライナー「俺とベルトルトには、
     この施設に連れて来られるまでの記憶が一切なかった」

ライナー「自分の出身はもちろん、家族の名前や
     小さい頃の思い出なんかが全部…抜け落ちてしまっているんだ」

アルミン「き、記憶が…ない?」

ベルトルト「唯一覚えていたのは自分の名前と、
      日常生活や壁の中についての知識…」

ベルトルト「それと、“自分は兵士にならなきゃいけない”っていう…
      異様な使命感だけなんだよ」

アルミン(突然の告白。そしてあまりにも衝撃的な内容…)

アルミン(しかし、それを聞いてもなお…
     僕の中の“違和感”は拭えなかった)




アルミン「で、でもちょっと待って…」

アルミン「確かベルトルトはあの時…」

ライナー『まだあるって…何だよ,ユミル』

ユミル『わからないのか?今来た2人を含めてもたったの12人なんだぞ?
    他の連中はどこに行ったんだよ』

ベルトルト『…確かに。入団式には,ざっと見ても100人以上いたはずだよね』




アルミン「ライナーだって…」




エレン『気絶?お前らもか?』

アルミン『えっ,じゃあエレンも…!?』

ライナー『エレンだけじゃないぜ。ここにいる全員がそうだ』

ライナー「あれは…断片的に思い出していたんだ。
     あいつらの話を聞いてるうちに…ちょっとずつな」

アルミン「じゃあもう既に…いくつかの記憶は取り戻してるの?」

ベルトルト「うん。でもそれら全てがなんだか曖昧で…
      そうだったような気もするし、違うような気もするし…」

アルミン「…」

ライナー「それに話を聞くとどうも…俺たち以外には
     全員記憶があるらしいんだ」

ベルトルト「だから記憶のない者同士、
      ライナーとは妙に息が合っちゃってね」

アルミン「そうなんだ…僕はてっきり、
     二人は古くからの友人だと思っていたんだけど」

ライナー「…信じられねえのはわかる。
     だから俺たちも言い出せなかった」

ライナー「特に【裏切り者】の存在が示唆された今…
     真っ先に怪しまれるのは俺たちだろうからな」

アルミン「…」

ベルトルト「でも、信じてほしいんだ。
      僕たちは【裏切り者】なんかじゃない」

ベルトルト「そもそも、記憶がほとんどない状態なんだ…
      裏切るも何もないよ」

アルミン「…」









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『えー、施設内放送でーす。
     午後10時になりました』

モノクマ『ただいまより“夜時間”になります』

モノクマ『間もなく食堂はドアをロックされますので、
     立ち入り禁止となりま~す』

モノクマ『ではでは、いい夢を。
     おやすみなさい…』







ライナー「…と、もうこんな時間か」

アルミン「…」

ベルトルト「…ねえアルミン、
      虫のいい頼みだっていうのは承知してる。だけど…」

アルミン「…わかってる。この件は誰にも言わないよ」

ライナー「…すまねえな」

アルミン「とにかく今日はもう休もう。
     明日の訓練も早いんだしさ」

ベルトルト「うん…おやすみ」

アルミン(二人と別れた僕は、そのまま自室へと戻り…)

アルミン(ベッドに倒れ込んで目を閉じた)




アルミン「…」




アルミン(妙に頭が冴えていた)

アルミン(決して頭の整理ができていた訳じゃない…
     それでも僕は冷静だった)

アルミン「…」




アルミン(あの時の“違和感”はまだ拭えない)

アルミン(その正体が何なのかも…僕にはわからない)




アルミン「…」




アルミン(そして、何よりもわからなかったのは…)




アルミン「…どうして僕は…」

アルミン「あの二人に攻撃的な感情を抱いたんだろう…」

◆ モノクマげきじょう ◆




モノクマ「『人生』はクソゲーです」

モノクマ「まず、セーブ&ロードがありません。
     この時点でもう駄目です」

モノクマ「そしてプレイヤーは常に、
     やたらと多い選択肢に頭を悩ませなければいけません」

モノクマ「もちろん、セーブ&ロードがないので、
     間違った選択をしても元には戻せません」

モノクマ「救いようのないクソゲーです」

モノクマ「そしてもし、間違った選択をしたせいで
     誰かを死なせてしまったら…」

モノクマ「そのプレイヤーは、涙を流しながら
     コントローラーを握り締めることになるでしょう」

モノクマ「美し過ぎるグラフィックも相まって、
     その絶望感はより生々しさを増すでしょう」

モノクマ「うぷぷ…」


モノクマ「ボクが何を言いたいのか…オマエラならわかってくれるよね?」

今日はここまで

CHAPTER 01 

DAY 04




アルミン「うぅ…」




アルミン(最悪の目覚めだった)

アルミン(結局あの後は、あれこれ考え続けたせいで
     なかなか寝付けず…)

アルミン(ようやく夢の中に堕ちたのは、
     午前3時をまわった頃だった)

アルミン「えーっと…今は…」




アルミン(壁に掛けられた時計を確認する)




アルミン「えっ、もう8時!?」




アルミン(しまった…完全に寝坊してしまった)

アルミン(いつもなら7時にモノクマの“声”が聞こえてくるはずだけど…
     それすら聞き逃してしまったのか)

アルミン「ま、まずい!遅刻だ!」




アルミン(昨日まで抱えていた“違和感”は
     どこかに引っ込んでしまっていた)

アルミン(そんな事を考えている場合ではなかった)




アルミン「早くみんなと合流しないと…!」

ガサゴソ

カチャカチャ




モノクマ「どうしたの、そんなに慌てちゃって」

アルミン「決まってるだろ!遅刻しそうだから急いでるんだ!」

モノクマ「遅刻しそうっていうか、もう完全に遅刻ですけど」

アルミン「そ、そりゃそうだけど…」




アルミン「…って…」




モノクマ「?」

アルミン「うわああああああああああああああああ!?」

アルミン「モ、モノクマ…どうしてここに!?」

モノクマ「どうしてって…決まってんじゃん。
     キミがあんまりお寝坊さんだから起こしに来てあげたんだよ」

アルミン「…!」

モノクマ「あらやだ、あんた目ヤニ付いてるわよ!
     ほらこっち来なさい!お母さんが取ってあげるから!」カーッ ペッ

アルミン「や、やめろ!きたない!」

モノクマ「おとなしくしなさい!まったくあんたって子は!
     遅刻は問答無用で減点だって、あれほど言って聞かせたでしょ!」

アルミン(最悪の目覚めだった)

アルミン(寝不足で体がだるい上に、訓練には遅刻をし…)

アルミン(挙句の果てには、ヨチヨチ歩きのヌイグルミに
     羽交い絞めを受けている)

アルミン(…こんな朝を誰が想像しただろうか)




アルミン「は、離せっ…離せったら!」

モノクマ「…」

アルミン(僕は決死の抵抗を試みた)

アルミン(すると…)




バッ




アルミン「!?」




アルミン(両肩を捉えていた力が急に消え…)




ガツン!




アルミン(僕は勢い余って、ベッドの角に頭をぶつけてしまった)

アルミン「痛っっ…!急に離すなよ!」

モノクマ「…離せって言ったり、離すなって言ったり、
     本当にワガママだなあ」

アルミン「何をっ…!」

モノクマ「でもまぁいいや!今はそれどころじゃないし…」

モノクマ「何よりボクはとっても機嫌がいいので、
     今回は特別に許してあげま~す!」

アルミン(全く悪びれる様子のないモノクマに腹を立てていたとき…)

アルミン(僕の中に“違和感”が生じた)




アルミン「…ねえモノクマ」

モノクマ「ん?」




アルミン(それは、昨晩あの二人に抱いたものとは別の…)

アルミン(もっと不吉な“違和感”だった)

アルミン「どうしてここにいるの?」

モノクマ「はぁ?話聞いてなかったの?
     ボクは寝坊助のキミを起こしに…」

アルミン「そうじゃなくて…訓練はどうしたの?
     みんなを見てなくていいの?」

モノクマ「訓練?そんなのやってませんけど」




アルミン(膨らむ“違和感”)




アルミン「…さっきさ、『今はそれどころじゃない』って言ってたよね?」

モノクマ「うん、言ったね」

アルミン「それに…どうして機嫌がいいの?何かいい事でもあったの?」

モノクマ「うん、あったよ。とってもいい事」









モノクマ「コ・ロ・シ・ア・イ」







アルミン(思考が停止した)

アルミン(それはほんの一瞬だったけど…
     僕にとっては永遠にも感じられる時間だった)




アルミン「…今…何て…?」

モノクマ「だーかーらー…」








モノクマ「コ・ロ・シ・ア・イ !!」







アルミン(コロシアイ…コロシアイ…コロシアイ…)

アルミン(頭の中で無機質に鳴り響く単語…)




アルミン「ウソだ…」

モノクマ「ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!」

アルミン「そんなのウソに決まってる…
     だって…訓練が始まってからまだ3日も…」

モノクマ「ていうかさぁ、仮にそんなウソをついたとして、
     ボクに一体何の得があるの?」

アルミン「…!!」

モノクマ「うぷぷぷぷ…でも、本当に驚きだよね…」

モノクマ「まさか“アイツ”が最初の犠牲者になるなんて!」

ガタン




アルミン(モノクマの言葉を聞き終わらないうちに、
     僕は部屋から飛び出していた)




モノクマ「いってらっしゃーい!
     ちなみに場所は【訓練所】だからねー!」




アルミン(心臓が一気に跳ね上がる)

ダッダッダッダッ

ハァ ハァ




アルミン(ウソだ…)




ハァ ハァ




アルミン(ウソに決まってる…!)








ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!








アルミン(誰かの雄叫びが聞こえる…この声は…)




アルミン「ミカサ…?」

― 訓練所 ―




ガヤガヤ ガヤガヤ…
ザワザワザワザワ…




ミカサ「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」




ライナー「ミカサ!落ち着け!」




ドゴッ




ライナー「オゥ…ッ!?」

ベルトルト「ライナー!」

ジャン「おい、早く誰か取り押さえろ!」

アルミン「ミカサ…?」

ライナー「…! ア、アルミン、無事だったのか!」

ジャン「何処ほっつき歩いてたんだ!」

アルミン「ご、ごめん…ついさっき目が覚めて…」

ユミル「…呑気なもんだな」

アルミン「え…?」

ユミル「見ろよ、あれ」









アルミン(ユミルが指差した先…)

アルミン(僕はその光景を、一生忘れることができないだろう)















アルミン「エレン!!!!」















CHAPTER 01

イキキノレ

非日常編







今日はここまで

アルミン(まずはオーソドックスに自己紹介から始めたいと思う。
     僕の名前はアルミン・アルレルトだ)

アルミン(外見は、ご覧の通り、どうしようもないほど平均的な普通の男子…)

アルミン(中身の方も同じ…いや、普通の子よりも弱虫で、
     いつも親友に助けられてばかりいる)

アルミン(そんな弱虫の僕は、今…)

アルミン(兵団の訓練所という似つかわしくない場所に立っている訳だけど…
     これには理由があるんだ)

アルミン(今から2年前、超大型巨人と鎧の巨人の出現によって、
     僕たちは故郷を失った)

アルミン(親友の母親は巨人に食われ…
     僕の家族も、壁内の口減らしのために殺された)




???『駆逐してやる!!』

???『この世から…一匹残らず!!』




アルミン(かつて親友がそう誓ったように…)

アルミン(僕も強い意志を持って、訓練兵団への入団を決めた)

アルミン(そして…)

???「ただいまより、第104期訓練兵団の入団式を行う!」




アルミン(そう…今日この日こそ、待ち望んでいた兵士への第一歩なのだ)

アルミン(正直不安はある。軟弱な僕が、
     生き地獄とよばれる過酷な訓練に耐えられるのかどうか…)




???「私が運悪く貴様らを監督することになった…」




アルミン(でも、もう決めたんだ。自分の心で決めたんだ)

アルミン(僕は親友の…)









アルミン(親友…の…)







???「アルミン?」




アルミン(あれ…)




???「アルミン、しっかりして」




アルミン(おかしいな…眠っちゃってたのかな)

アルミン(じゃあ今のは…夢?)




???「アルミン、大丈夫?私がわかる?」




アルミン(誰かが僕を呼んでる…この声は…)

アルミン「ミカサ…?」




アルミン(僕が名前を呼ぶと、“その人”は呆れ顔で溜息をついた)




アニ「…なに寝ぼけてんの。アニだよ」

アルミン「…えっ」

アニ「もしかしてまだ意識が…」

アルミン「意識?」

アニ「あんたは今まで気絶してたんだ。もうかれこれ5時間だよ」

アルミン「5時間?じゃあ今は…」

アニ「午後1時」

アルミン「…もしかしてアニは、ずっと僕の傍に?」

アニ「私が来たのはついさっきだよ。
   それまではクリスタがあんたを看てた」




アルミン(訳がわからない…やっぱり夢じゃなかったのかな)

アルミン(…そう、たしかに僕は…)

アルミン(…僕は…)

アルミン(…)




アルミン「ねえ、アニ…エレンは?」




アルミン(僕はアニを見た)

アルミン(その整った顔からは、全く思考を読み取ることができない)

アニ「…」




アルミン(アニはしばらく何かを躊躇った後…)

アルミン(静かにこう告げた)








アニ「死んだよ」







今日はここまで





アルミン「うわああああああああああああああああああああああ!!」




ダッダッダッダッ




ガシッ


アニ「どこに行く気…?」

アルミン「決まってるだろっ!
     エレンを! エレンを! エレンを!!」

アニ「…さんざん確かめた。
   エレンは間違いなく死んでいたよ」

アルミン「イヤだっ! 僕は行くっ!!」

アルミン(僕はアニを突き飛ばそうとした)

アルミン(すると…)




ガン




アルミン「!?」ブンッ




アルミン(急に視界がぐるりと反転し…)




ゴッ




アルミン(気が付くと僕は、床に叩きつけられていた)

アルミン「痛っっ…!な、何を…!」

アニ「アルミン…頼むから、あんたまで
   私に手を掛けさせないでよ」




アルミン(そう言ったアニの顔は、先ほどまでの無表情ではなく…)

アルミン(とても苦しそうに歪んでいた)




アルミン「…アニ? それは…」

アニ「ミカサにやられた」

アルミン「…!」

アニ「まったく、とんでもないバケモノだよ…あいつは。
   私とミーナの二人がかりでやっと縛り付けたんだから」

モノクマ「そうそう!すごい見世物だったよね!」

モノクマ「猛獣を押さえつける二人の女兵士!
     さながら情熱の国の闘牛ショーを見ているようだったよ!」

アルミン「…!!」




アルミン(いつの間にか部屋の片隅に佇んでいた“そいつ”は、
     今朝と何も変わっていなかった)

アルミン(憎たらしいほど変わっていなかった)




アニ「…よくもやってくれたね」

モノクマ「うぷぷ…それは違うよ」

モノクマ「だって、やってくれたのはオマエラの方じゃーん!!」

モノクマ「ボクはちゃんと言ったはずだよ?」




モノクマ『今朝も言ったけど、信じる信じないはオマエラの自由だよ』

モノクマ『別にボクは絶対にコロシアイをしろと言っている訳でもないし、
     絶対に訓練に参加しろと言っている訳でもない…』

モノクマ『ルールさえ守ってくれれば、どう動くかはオマエラ次第なんだ』




モノクマ「つまり、今回の事件はね…」

モノクマ「オマエラの中の誰かが自分で考えて、
     自分の意志でやった事なんだよっ!」

アルミン(頭が混乱していた)

アルミン(僕らの中の誰かが…自分で考えて…)

アルミン(僕の…親友を…?)




モノクマ「うぷぷぷぷ…ていうかさぁ、
     そんな風にボクに突っかかってる暇ないんじゃないの?」

モノクマ「もう時間はほとんど残されてないんだよ?」

アルミン「時間…?」

モノクマ「おやおや、キミはどこまでクマの話を…」

モノクマ「…ああそっか!気絶しててあの場にはいなかったんだっけ!」

アルミン「一体何の…」

モノクマ「じゃあレオンハートさん、
     アルレルトくんに例のモノ見せてやって!」

アルミン(モノクマに言われてアニが取り出したのは…)

アルミン(彼女の訓練兵手帳だった)




アニ「…」




アルミン(アニは無言で手帳を開き…)

アルミン(とある1ページを僕の前に広げてみせた)

■ 兵団規則 ■


1 訓練兵達はこの施設内だけで共同生活を行いましょう。
  共同生活の期限はありません。

2 夜10時から朝7時までを“夜時間”とします。
  夜時間は立ち入り禁止区域があるので、注意しましょう。

3 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。
  他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。

4 この施設について調べるのは自由です。
  特に行動に制限は課せられません。

5 監督教官ことモノクマへの暴力を禁じます。
 
6 “物体X”の破壊を禁じます。

7 仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
  自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。

8 訓練兵内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、
  訓練兵全員参加が義務付けられる兵団裁判が行われます。

9 兵団裁判で正しいクロを指摘した場合は、
  クロだけが処刑されます。

10 兵団裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、
  クロだけが卒業となり、残りの訓練兵は全員処刑です。

11 訓練兵達は50日間の訓練を行います。
  訓練への参加は強制ではありません。

12 訓練の総合成績が一番優秀だった者には、
  “ファイナルデッドルーム”への挑戦権が与えられます。

13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。

14 なお、兵団規則は順次増えていく場合があります。

アルミン(それは兵団規則だった)

アルミン(僕が知っている規則よりも
     さらに新しい項目が追加されている)

アルミン(中でも気になったのが…)




アルミン「兵団…裁判……?」

モノクマ「そう!兵団裁判!」

アルミン「誰かを殺した人間は…すぐに卒業できるんじゃないの?」

モノクマ「うぷぷ…うぽぽぽぽ…」

モノクマ「…ぶひゃっひゃっひゃ!!」

アルミン「な、なんで…笑ってるんだよ…」

モノクマ「うぷぷ…だってさ…」

モノクマ「甘い…甘過ぎるッ!」

モノクマ「人を殺しただけで、簡単に出られると?」

モノクマ「そんなの大甘だよ! デビル甘だよ!
     地獄甘だよっ!!」

モノクマ「むしろ…本番はこれからじゃん!!」

アルミン「本番…?」

モノクマ「では、ここで…!!
     『卒業』に関する補足ルールの説明を始めます!!」

モノクマ「『誰かを殺した者だけが卒業出来る』という点は、
     以前、説明した通りですが…」

モノクマ「その際に、守っていただかなければならない約束が
     あったよね?」

アルミン「本番…?」

モノクマ「では、ここで…!!
     『卒業』に関する補足ルールの説明を始めます!!」

モノクマ「『誰かを殺した者だけが卒業出来る』という点は、
     以前、説明した通りですが…」

モノクマ「その際に、守っていただかなければならない約束が
     あったよね?」

アニ「規則の7条目の項目だね…」




7 仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
  自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。




アニ「自分が殺人を犯したクロだと、
   他の訓練兵に知られてはならない…」

アニ「その点を言ってるんでしょ?」

モノクマ「そう、ただ殺すだけじゃ駄目なの。
     他の訓練兵に知られないように殺さなければならないの!」

モノクマ「で、その条件がクリア出来ているかどうかを
     査定する為のシステムとして…」

モノクマ「殺人が起きた一定時間後に、
     『兵団裁判』を開く事とします!」

モノクマ「兵団裁判は、殺人が起きた数時間後に開催されます!」

モノクマ「兵団裁判の場では、
     殺人を犯した“クロ”と…」

モノクマ「その他の訓練兵である“シロ”との対決が
     行われるのですっ!!」

モノクマ「兵団裁判では『身内に潜んだクロは誰か?』を、
     オマエラに議論してもらいます」

モノクマ「その結果は、兵団裁判の最後に行われる
     “投票”により決定されます」

モノクマ「そこで、オマエラが導き出した答えが
     正解だった場合は…」

モノクマ「秩序を乱したクロだけが“おしおき”となりますので、
     残った他のメンバーは共同生活を続けてください」

モノクマ「ただし…もし間違った人物を
     クロとしてしまった場合は…」

モノクマ「罪を逃れたクロだけが生き残り、
     残ったシロ全員が“おしおき”されてしまいます」

モノクマ「その場合、もちろん共同生活は強制終了となります!」

モノクマ「以上、これが兵団裁判のルールなのですッ!!」

アルミン「さっきから連呼している“おしおき”って…」

モノクマ「そう!この規則でいうと処刑ってやつだね!」

モノクマ「電気イスでビリビリ! 毒ガスでモクモク!
     ハリケーンなんちゃらで体がバラったりってヤツだよ!」

アルミン「つ、つまり…」

アルミン「犯人を当てれば、犯人だけが殺されるけど…
     もし犯人を外せば…」

アルミン「僕ら全員が処刑される?」

モノクマ「賢いチンパンジーだね!
     さりげなく自分が犯人じゃないとアピる小技もグッド!」

アルミン(混乱した頭にムチを打つ)

アルミン(ダメだ…考えるのをやめるな)

アルミン(考えろ…考えろ…)




モノクマ「わかってると思うけど…ボクは本気だよ」

モノクマ「逆らう訓練兵は…ハチの巣になったり爆発させられたり、
     生き埋めにされたり溶かされたり……エトセトラ」

モノクマ「そんな風になりたくなかったら…
     オマエラは、施設の規則にしっかりと従う事ッ!!」

アルミン(考えろ…考えろ…)

アルミン(正面から向き合え…状況から逃げるな)

アルミン(僕が今やるべきことは…)




モノクマ「…もうゴチャゴチャとした説明はしないって言ったのに、
     またずいぶんと喋っちゃった」

モノクマ「でもとりあえず、兵団裁判についての細かい説明は
     これでおしまい!」

モノクマ「残り少ない時間をフルに使って、
     有意義な捜査をしていってね!」

モノクマ「では後ほど、兵団裁判でお会いしましょう!」




ポヨヨーン

アニ「…これでわかったでしょ?」

アニ「今あいつの死を悲しんでる余裕はないんだ。
   ここで正解を見つけなければ、私たちは…」

アルミン「わかってる」

アニ「え…?」

アルミン「犯人は僕が見つけてみせる。
     エレンを…僕の親友の命を奪った人間は…」

アルミン「必ず…僕が追いつめてみせる」

アルミン(心に火がともる)

アルミン(その火は僕の中で静かに燃えはじめ…)

アルミン(確固たる決意を僕に抱かせた)




アニ「…」





アニ「…ふふっ」




アルミン「…えっ」

アニ「…いいね」

アニ「それでこそアルミンだ」




アルミン(見間違いだろうか)




アニ「…期待してるからね」




アルミン(その時、ずっと表情を見せなかったアニが…)

アルミン(ほんの少しだけ…僕に微笑んだ気がした)









―  捜 査 開 始  ―







今日はここまで

アニ「まずはこれを渡しておくよ」




アルミン(そういってアニが差し出したのは…)

アルミン(一冊の黒いノートだった)




アルミン「これは?」

アニ「モノクマから全員に配られたものだよ。
   あんたの分も貰っておいたんだ」

アルミン「えっ…」

アニ「あいつが言うには…」

モノクマ『これはボクがまとめた死体に関するファイル。
     その名も…』

モノクマ『…ザ・モノクマファイル!!』

モノクマ『まぁ、結局のところオマエラは素人さんな訳だし、
     死体を調べるって言っても限度があるでしょうから…』

モノクマ『代わりに、ボクが死亡状況や死因っぽいのを
     まとめておいてやったの!』

モノクマ『えっ? そういうお前は、
     どうやって死因なんかを調べたんだって?』

モノクマ『一部始終を見てたから、一目瞭然なのだっ!!』

ジャン『な、なら…お前は…
    あいつが殺された瞬間を見てたっていうのか!?』

ミーナ『そのとき現場にいたの!?』

モノクマ『うぷぷ…まあ、そういう事にしておこうかな』

ライナー『…? ずいぶん含みのある言い方だな』

アニ『じゃあ、あんたは知ってるんだね?
   エレン・イェーガーを殺した犯人を…』

モノクマ『モチロンですともっ!!』

モノクマ『じゃなきゃ、兵団裁判のジャッジを
     公正に下せないでしょ?』

アニ『そう、ジャッジは公正に下されるんだね。
   それを聞いて少しだけ安心したよ…』

アルミン「つまり、このファイルには…」

アルミン「エレンが死んだときの状況が記されてる…?」

アニ「誰がやったかまでは書かれていなかったけどね…」

アニ「有力な情報もそれなりにあるから、
   目を通しておいて損はないよ」




アルミン(確かに…現場に向かう前に、
     事件の詳細を頭に入れておいた方がいいかもしれない)

アルミン(まずはこのファイルを見てみよう)

■ モノクマファイル 1 ■


被害者はエレン・イェーガー。
死亡時刻は午前1時半頃。

死体発見現場となったのは訓練所の一角、
立体機動の適性検査を行った場所。

被害者はそこにあった姿勢制御訓練の装置で、
半ば宙吊りの状態で死亡していた。

死因は頭部への打撃による頭蓋内圧の上昇。
その他、身体に目立った外傷は見られない。

アニ「…どう?」

アルミン「うん、これは確かに有力な情報だね」




【モノクマファイル 1】




アルミン(でも、これを見る限りだと…)

アルミン(今回の事件って…)




アニ「とにかく…
   まずは現場となった“訓練所”に行こう」

アニ「あそこを調べない限り…何も始まらないからね」

今日はここまで

― 訓練所 ―




クリスタ「アルミン!もう大丈夫なの!?」

アルミン「うん…」

アニ「あんたが行ってから間もなく目を覚ましたんだ」

アルミン「クリスタ…色々とありがとね」

クリスタ「そんなの気にしなくていいよ!
     だって…あんな事があったら…!」

アルミン(クリスタはそう言って涙を浮かべる)

アルミン(こんな状況でなければ、
     その姿に魅了されない男性はいないだろう)




アルミン「…それで、エレンは?」




アルミン(クリスタは泣きそうな顔になった)




クリスタ「まだあの状態…」

クリスタ「降ろしてあげようって言ったんだけど…
     現場の保存が第一だからって…」

アルミン「…うん、それでいいよ。その方が助かる」

クリスタ「ごめんなさい…」

アニ「謝るようなことじゃないよ。
   それより早くエレンのところに行こう」

アルミン(僕たちはそのまま訓練所の片隅…
     事件現場となった装置の設置場所に向かった)




ドクン




アルミン(鼓動が早くなる)

アルミン(できれば見たくない)




ドクン




アルミン(でも、見なければならない)

アルミン(見なければ道は開けない)

― 訓練所(事件現場) ―




アルミン「…っ」




アルミン(エレンは相変わらずそこにいた)

アルミン(今朝に見た光景と何も変わらずに…)

アルミン(無残な抜け殻となって、エレンはそこにいた)




アルミン「…うっ」




アルミン(吐き気とともに様々な感情が押し寄せる)

アルミン(悲しみ、怒り、恐怖、憎悪…)

アルミン(そして…とてつもない絶望)

アニ「…アルミン」




アルミン(気が付くと、アニが僕の目を覗き込んでいた)




アニ「…」




アルミン(…わかってるよ)

アルミン(今はそんな場合じゃない)

アルミン(もうほとんど時間は残されていないんだ)

クリスタ「…これってやっぱり、事故だったのかな」




アルミン(突然、クリスタが独り言のように呟いた)




アルミン「…え?」

クリスタ「だってあの恰好…あれってどう見ても、
     【姿勢制御の訓練中の事故】だよね…?」




アルミン(クリスタはエレンに目を向ける)

アルミン(モノクマファイルにあった通り…
     エレンは腰から宙吊りになって、頭を地面に接触させていた)

アニ「モノクマファイルによると、
   死亡した時刻は午前1時半頃だったね」

クリスタ「うん…だからエレンは、
     夜中にこっそり練習しようとして…」

クリスタ「それで…頭を打って死んじゃったんじゃないかな」

アルミン「…」

クリスタ「そうとしか考えられないよ。
     だって…私たちの中に殺人犯がいるなんて…」

クリスタ「どうしても信じられないよ…」




【クリスタの証言】



今日はここまで

ライナー「アルミン」

アルミン「…! ライナー、ベルトルトも…」

ベルトルト「身体の方は大丈夫?」

アルミン「うん、おかげさまでね」

ライナー「…こういう時は何て言えばいいのかわからないんだが」

ライナー「その…気の毒だったな」

アルミン「…」

アルミン「二人はここで何をやってるの?」

ベルトルト「えっ…」

ライナー「俺たちか?俺たちはまぁ…“見張り役”ってやつだな」

アルミン「“見張り役”?」

ライナー「現場を荒らされない為に監視する人間のことだ。
     犯人に証拠を隠滅されたら、手詰まりになりかねないからな」

アルミン「それで…二人がその役目なの?」

ベルトルト「最初はライナーが一人で買って出てくれたんだけど…
      ユミルが『こいつが犯人だったらどうするんだ?』って言い出してね」

アルミン「…」




アルミン(現場の見張りには二人以上の人間が必要…確かに理には適ってる)

アルミン(だけどこの二人は…)

アニ「共犯者の可能性がある…」

アルミン「…!」

アニ「見張り役を二人にすれば証拠を隠滅される心配はなくなる。
   ただし、それは単独犯の場合…」

アニ「この二人が共犯していたら話は別…そう言いたいんでしょ」

アルミン「なっ…なんでわかるの!?」

アニ「エスパーだから」

アルミン「は!?」

アニ「…なんてね」

ライナー「お、おいおい…いきなり何言ってんだ!?」

ベルトルト「僕たちがそんな事するわけない!
      第一、見張り役を二人にしようと提案してきたのはアニじゃないか!」

アニ「落ち着きなよ。私はあんたらが共犯してたなんて思ってないから」

アルミン「え…?」

アニ「これは【単独犯】の仕業だよ。
   共犯者がいたっていう線は限りなく薄いだろうね」

アルミン「…? どうして言い切れるの?」

アニ「“兵団規則”だよ。
   あれを熟読すれば、誰だって察せると思うけどね」




【兵団規則】



アニ「…と、話が逸れたね」




アルミン(アニはそう言うと、宙吊り状態のエレンの隣に屈んだ)




アニ「早く始めよう。アルミン、こっちに来て」

アルミン「…」コクッ

アルミン(アニの真似をするように、エレンの隣に屈む)

アルミン(そして、僕はエレンの死体にそっと手を触れてみた…)




アルミン「…」




アルミン(医学の本で読んだように、
     彼の手や首の脈を確かめてみたのだが…)




アルミン「………………」

アルミン「本当に…死んでる……」

アニ「モノクマファイルによると、
   致命傷となったのは頭部への打撃だったね」




アルミン(アニに促されるようにエレンの頭部を確認する)

アルミン(しかし、伸ばした手がエレンの髪に触れた瞬間…)

アルミン(僕は思わず腕を引っ込めてしまった)




アルミン「…!!」




アルミン(ベトリという嫌な感触。
     手にこびり付いたドス黒いタール…)

アルミン(それが“血”であると理解するまで、
     またしばらく時間が必要だった)

アルミン「…っ、落ち着け…」




アルミン(考えてみれば当たり前の事だ)

アルミン(アニが言ったように、致命傷となったのは
     頭部への打撃…)

アルミン(つまり、髪が血で濡れていたからといって、
     何も不自然ではない…)




アルミン「…」




アルミン(…あれ?でも待てよ…)

アルミン(髪に…血…?)




【血で濡れた髪】



アルミン(…少し状況を整理してみよう)




クリスタ『うん…だからエレンは、
     夜中にこっそり練習しようとして…』

クリスタ『それで…頭を打って死んじゃったんじゃないかな』




アルミン(クリスタはさっき、
     これは殺人ではなく事故であると主張していた)

アルミン(別にそれ自体は不自然な発想じゃない)

アルミン(現にモノクマファイルを始めて見た時…
     僕だってその可能性を考えたのだから)

アルミン「…」




アルミン(…もし、これがクリスタの言うように事故なのだとしたら)

アルミン(エレンは空中でバランスを崩し、
     そのまま地面に頭をぶつけて死んだ事になる)

アルミン(だとすると…)

アルミン「ねえアニ…ちょっと手伝ってもらっていいかな」

アニ「? いいけど」




アルミン(僕たちはエレンの身体に手をかけた)




ライナー「! おいおい、勝手に現場を荒らすんじゃ…」

アルミン「大丈夫、すぐに終わるから」

アニ「ていうか、そんなに心配なら注意して監視してなよ」

ライナー「…」

アルミン(僕たちはそのままエレンの身体を持ち上げ…)

アルミン(宙吊りの状態のまま、頭が置かれていた位置を少しずらした)




ベルトルト「…!」

アルミン「これは…」




アルミン(そうして姿を現した、エレンの頭の下にあったもの…)

アルミン(それは【地面から突き出た大きな石】だった)

アルミン「…すごく歪な形をしてるね。
     エレンの血もべっとり付いてる」

アニ「間違いない…エレンはこれで頭をぶったんだ」




アルミン(僕やミカサと一緒に訓練をした時も、
     エレンはバランスを崩して頭をぶつけていた)

アルミン(それにも拘わらず無事だったのは、
     ぶつけた先が平らな地面だったからだ)

アルミン(クリスタが言うように、
     エレンが夜中に練習をしていたのなら…)

アルミン(暗い中でこの石を見落としてしまっても不思議じゃない)

アルミン(そして、あの勢いでこの固い石に頭を突っ込んだら…
     絶対にただでは済まないだろう)




【地面から突き出た大きな石】



ベルトルト「ちょ、ちょっと待って!これはおかしいよ!」




アルミン(ベルトルトが声を張り上げる)




ライナー「…そうだな。これはどう考えてもおかしい」

アニ「何がおかしいの」

ライナー「覚えてるか?今から大体3日前…
     ここに連れて来られた初日の夜のことだ」

モノクマ『オマエラさあ、この外のあちこちに穴掘ったでしょ!』

ライナー『それがどうしたんだ』

モノクマ『何開き直ってんの!ちゃんと元に戻しなさいよ!』

ベルトルト『いや、でも流石にそこまでの時間はなくて…』

モノクマ『そんなのオマエラの都合でしょーが!とにかく穴を塞ぎなさい!
     ヤリ逃げなんて許さないんだからね!』




ライナー「モノクマからああ言われた俺たちは、
     徹夜で穴埋め作業をさせられた…」

ライナー「それはお前らも知ってるよな?」

アルミン「…うん」

ライナー「で、そもそも何故そんな事をさせられたかなんだが…」

モノクマ『大体、外が穴だらけだったら危なくて訓練できないでしょーが!』




アルミン「…そういえば、確かにそんな事を言ってたね」

ライナー「ああ…つまりアイツが穴を塞がせた理由は、
     【訓練所の安全性を確保する為】だったんだ」

アニ「回りくどいよ。つまり何が言いたいの」

ベルトルト「穴を塞いだ後、僕らは訓練所を隈なくチェックさせられたんだ。
      訓練に支障をきたすものが他にないか…徹底的にね」

アルミン「…なるほど、なんとなくわかってきたよ」

ライナー「そうだ…地面から飛び出してる石なんてあったら、
     間違いなく俺たちが見つけているはずなんだ」

ベルトルト「そうでないと、モノクマにつべこべ言われるからね」

アニ「…」

ライナー「大体、この場所は昨日まで散々使われてただろ?
     その時に誰も気付かないなんて…流石におかしいと思わないか?」




【ライナーとベルトルトの証言】



今日はここまで

アニ「…」

アルミン「…? アニ、どうしたの?」

アニ「…ねえアルミン」

アニ「私も手伝ってくれない?」

アルミン「えっ?いいけど…」

アルミン(アニはそう言うとエレンに向き直り…)

アルミン(腰に付いた金具を外し始めた)




ライナー「! お、おいおい!いくらなんでもそれは…」

アニ「大丈夫、すぐに終わるから」

ライナー「お前らさっきもそう言ってただろ!」

アニ「いちいちうるさいね…
   現場の保全にこだわり過ぎてたら何もできないでしょ」

アニ「今見つけた石だって、そのせいで見落としてたじゃない」

ライナー「…」

アニ「それにこれは…どうしても必要な事なんだよ」

アルミン(アニはそのまま金具を外すと、
     食い入るように目を走らせた)




アニ「…」

ライナー「…」

アニ「…ねえライナー」

ライナー「…な、何だよ」

アニ「あんたって姿勢制御上手かったよね」

ライナー「…お前ほどじゃないけどな」

アニ「ちょっと私に見せてくれない?」

ライナー「はぁ?今はそれどころじゃ…」

アニ「…」

ライナー「…わ、わかったよ」




アルミン(無言の圧力に負けたライナーは、
     しぶしぶ隣の装置に向かっていった)

アルミン(自分の金具にロープを付け、
     脇にいたベルトルトに声をかける)




ライナー「…いいぞ、上げてくれ」

ベルトルト「いくよ」




キリキリキリキリキリキリ




アルミン(ベルトルトが困惑した様子でクランクを動かす)

アルミン(やがてライナーの足が浮き、その巨体が空中で静止した)




ライナー「…」




アルミン(いつの間にかライナーも集中していた)

アルミン(隅々まで神経を張り巡らせ、しかし余計に力むことなく、
     空中でピタリとその肉体を止めている)

アルミン(…改めて見ると、やっぱり凄いな)

ライナー「…これでいいか?」

アニ「うん、ありがとう」




アルミン(アニの返事を聞いたベルトルトは、
     再びクランクを回してライナーを降ろした)




アニ「じゃあ、今度はこっちでやってみて」

ライナー「はぁ?まだやる…」

アニ「…」

ライナー「…」




アルミン(アニがそう言ってライナーに差し出した物…)

アルミン(それは、先ほど外したエレンの金具だった)

アルミン(ライナーは不服そうに金具を付け替える)

アルミン(そして、そこにロープを繋ぐと、
     ベルトルトに向けて目で合図をした)




ベルトルト「いくよ」




キリキリキリキリキリキリ




アルミン(前の動作を繰り返すように、
     ベルトルトがクランクを動かす)

アルミン(その時だった)




ガン




ライナー「!?」ブンッ




ゴッ

アルミン(僕は目を疑った)

アルミン(お手本のように姿勢を維持してみせたライナーが…)

アルミン(今度は一瞬で地に額を打ったのだ)




ベルトルト「ライナー!」

ライナー「な…なんだこりゃ…!?」




アルミン(そして僕は気付く)

アルミン(宙で反転した身体、地面に向かって突っ込む頭、
     ロープに吊られて逆さになるライナー…)

アルミン(それらはまるで…)

アニ「…なるほどね」

ライナー「お、おい!一体どうなってるんだ!?」

アニ「やっぱりあんたでも無理だったか」

ライナー「む、無理も何も…
     こんなの【1秒だってもたない】ぞ!?」




アルミン(…どうやら間違いなさそうだ)

アルミン(アニが確かめたかったのは…)




【アニの実験】



今日はここまで

アニ「そしてもう一つ」

ライナー「ま、まだ何かやるのか!?」

アニ「そうじゃなくて…そこ見なよ」




アルミン(アニが示した先…
     そこはエレンが吊り下がっている装置だった)




ベルトルト「…! 確かに、今のライナーの状態って…」

アニ「だから、そうじゃなくて…」

ベルトルト「えっ?」

アニ「そこだよ、そこ」

アルミン(アニはエレンに近づき、ある一点を指し示した)




アニ「さっき見つけた石の脇…血が飛び散ってるでしょ?」

ライナー「それがどうしたんだ?その石に頭ぶつけたんだから、
     何も不思議じゃないだろ」

ベルトルト「…いや、ちょっと待って」

ライナー「?」

ベルトルト「この血痕…四角だよ」

ライナー「…は?」

ベルトルト「血痕が途切れてるんだ。その形が…四角なんだよ」

ライナー「四角…?途切れてる…?」

アニ「…ねえアルミン、これってどういう事だと思う?」

アルミン「…」




【途切れた血痕】



アルミン(クリスタの証言、兵団規則…)

アルミン(血で濡れた髪、地面から突き出た大きな石…)

アルミン(ライナーとベルトルトの証言、アニの実験…)

アルミン(そして、途切れた血痕…)




アルミン「…」




アルミン(必死に動揺を抑えて得た手がかり…)

アルミン(繋がる気がする…一つに…)

アルミン(でも…)




アルミン「…」




アルミン(まだ…足りない)




アニ「…決まりだね」

アルミン「…えっ」

アニ「今度はあそこに行こう」

― 倉庫 ―




アルミン「…? サシャ?」

サシャ「ひいっ!?」

アルミン「おわっ!…ぼ、僕だよ、アルミンだ」

サシャ「な、何もやってませんから!」

アルミン「え?」

サシャ「私やってませんから!!」

アニ「…まだ何も言ってないんだけど」

アルミン(次に僕たちが訪れたのは倉庫だった)

アルミン(てっきり誰もいないと思ってたけど…
     思わぬ先客がいたのだ)




アルミン「それにしても奇遇だね…サシャもここの捜査に?」

サシャ「え…ええ、まあ…ハハハ…」

アニ「…へぇ、じゃあ聞くけど」




アニ「昨日の夜は何をやってたの?」







アルミン(…え?)




サシャ「…!!」

アニ「昨日の夜は何をやってたの?」

サシャ「…何をって…
    …何を…言ってるんですか…?」

アニ「昨日の夜…それも、かなり遅くに…
   あんたは寄宿舎から出て行ってるよね?」

サシャ「そ、そんな…まさか…」

サシャ「見てたんですか…!?」





アルミン(…え?)




サシャ「…ハッ!しまっ…」

アニ「…」

サシャ「ち、違うんです!違うんですよ!」

アニ「何がどう違うの?」

サシャ「本当に違うんですって!
    何だったらジャンに聞いてみてくださいよ!」





アルミン(…え?)




アニ「なんでそこでジャンが出てくるのさ」

サシャ「とにかく!私は違いますから!
    ジャンに聞けばわかりますから!」

サシャ「私は…何もやましい事なんてやってませんから!!」




ダッダッダッダッ




【サシャの証言】



今日はここまで

アニ「…どう思う?」

アルミン「どう思うって…」




アルミン(いきなりすぎて何が何だか…)




アルミン「寄宿舎を出て行くサシャを見たっていうのは本当なの?」

アニ「ウソだよ。鎌をかけたんだ」

アルミン「それにしても…アニには確信があるように思えたんだけど」

アニ「まあね」

アルミン(アニは入り口付近から何かを取り出す)

アルミン(それはヒモで綴じられた紙の束だった)




アニ「これ見てみなよ」

アルミン「…?」

物品 ショベル、つるはし

名前 ライナー・ブラウン

持出 DAY 01 11:54
返却 DAY 02 06:45   


物品 工具セット

名前 ジャン・キルシュタイン

持出 DAY 03 19:25
返却 DAY 04 00:20


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 04 00:20
返却 DAY 04 13:48

アルミン「これって…」

アニ「部屋で手帳を見せたでしょ?
   規則の13条目…新しく追加された項目だよ」




13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。




アルミン「じゃあ、これが…」

アニ「ここで言うところの“管理表”だね」




【倉庫の物品管理表】




アルミン(なるほど…これなら確かに理解できるかもしれない)

アルミン(サシャが寄宿舎を抜け出した理由も、
     アニがその事実を知っていた理由も…)

アルミン(そして、サシャがあんな事を言った真意も…)




アルミン「…どうやら、詳しく話を聞かなきゃいけない人がいるみたいだね」

アニ「うん、まあ…」

アニ「そうしたいところなんだけど…」

アルミン「?」









「キーン、コーン… カーン、コーン」




モノクマ『えー、ボクも待ち疲れたんで…
     そろそろ始めちゃいますか?』

モノクマ『お待ちかねの…』

モノクマ『兵団裁判をっ!!』















モノクマ『ではでは、集合場所を指定します!』

モノクマ『施設のフロア末端にある、
     赤い扉にお入りください』

モノクマ『うぷぷ、じゃあ後でね~!!』







アルミン「…!!」

アニ「どうやらここまでみたいだね」

アルミン「そんな…!僕はまだ…」

アニ「仕方ないよ。そもそも、
   あんたにはロスタイムがあったから」




アルミン(ロスタイム…そうだ)

アルミン(僕があそこで気絶なんかしなければ…)

アルミン「くそっ!」




アルミン(はがゆい気持ちを抱えながら、僕は倉庫から出ようとした)




アニ「待って」

アルミン「…?」

アニ「最後に…これを渡しておくよ」




【訓練成績】



アルミン「…? これは?」

アニ「モノクマに頼んだらね…くれたんだ」

アニ「昨日までの訓練成績、それを全員分まとめたものだよ」

アルミン「訓練成績…?なんでそんなものを…」

アニ「ちなみにこの成績表、モノクマに頼んだのは
   私が初めてじゃないらしいよ」

アニ「昨日の夜…エレンにせがまれて渡したみたいなんだ」

アルミン「えっ!?」

アルミン(慌てて成績表に目を落とす)

アルミン(アニの言った通り…そこには全員分の訓練成績がまとめられ、
     付けられた点数によって順位が示されていた)




アルミン「…」




アルミン(特に不自然な点は見られない)

アルミン(おそらく…昨日までの訓練に参加した者であれば、
     その順位は極めて妥当だと答えるだろう)

アルミン(…何だ?)

アルミン(アニが言うように、この成績表をエレンが欲したのだとすれば…
     その理由は何だ?)

アルミン(アニはどうして…これに目を付けたんだ?)




アニ「行こう…ここまで来たらやるしかない」

アニ「逃げ道なんてどこにもないんだ」

アルミン「ねえ、アニ…」

アニ「…前にも言ったけど」




アニ「あんたには…期待してるから」



今日はここまで

― 赤い扉 ―




アニ『施設の壁…このフロアの末端だね、そこに【赤い扉】があった』

エレン『…! まさか出口か!?』

アニ『さあね。どっちにしろ、そこも施錠されていたよ』




アルミン(初日の報告会でアニが言っていた赤い扉…)

アルミン(今や11人となった僕らは、
     鍵の開いた扉を開けて中に入っていた)

コニー「ん?兵団裁判ってのはここでやるのか?」

モノクマ「そんな訳ないじゃん!!」

サシャ「ひいっ!?」

モノクマ「裁判所はここじゃないよ。もう少し進んだ先」

クリスタ「あの金網の扉のことを言ってるの…?」

モノクマ「そうそう。んじゃ、さっさと全員乗り込んじゃって」

アルミン(モノクマに促され、
     次々と金網の扉に入っていく訓練兵達…)

アルミン(僕はさっきから、
     その中の一人が気になって仕方なかった)








ミカサ「…」







ジャン『ミ…ミカサ…!?』

ミカサ『…』

ミーナ『え、なんで!?ちゃんと縛っておいたはずなのに…』

ミカサ『自分で解いた』

ライナー『…どうやって、ってのは聞かない方がいいんだろうな』

ミカサ『今朝は取り乱してしまって悪かった。私はもう大丈夫』

アルミン『ミ、ミカサ…本当に…』

ミカサ『私はもう大丈夫』

アルミン『でも…』

ミカサ『アルミン』

アルミン『え…?』




ミカサ『今は感傷的になってる場合じゃない』



アルミン(ミカサはああ言っていたけど…)




ミカサ「…」




アルミン(…ダメだ。考えたって仕方ない)

アルミン(本人が大丈夫だと言っている以上、
     僕が何か言ったところでどうしようもないんだ)

アルミン(それに今は…)

パンパン




アルミン(気を引き締めるように、自らの頬を両手で叩く)

アルミン(そうだ…今はそんな場合じゃない)

アルミン(ここで真実を言い当てなければ…
     僕たちもエレンの後を追うことになるんだ)




アルミン「行こう、ミーナ」




アルミン(僕は傍らにいた人物に声をかけ、
     金網の扉へと足を踏み出した)

ミーナ「…」

アルミン「…? ミーナ?」

ミーナ「…ごめんね、アルミン」

アルミン「えっ…」

ミーナ「私があの時…エレンを止めていれば…」





アルミン(…え?)




ミーナ「実はね…私、エレンに会ってるの」

ミーナ「あれは確か、昨夜のモノクマアナウンスがあった後…
    午後10時半の前だったかな」

アルミン「…!!」

アルミン(午後10時半の前…)

アルミン(ライナーとベルトルトの話を聞いた後、
     僕が部屋に戻った時間帯…!)




アルミン「そ、それで…エレンは何か言ってた!?」

ミーナ「うん、何て言うか…」

ミーナ「普通じゃなかったよ…」

ミーナ『エレン…?』

エレン『! ミーナか』

ミーナ『どうしたの?そんなに怖い顔して…』

エレン『…オレは』

ミーナ『え?』

エレン『オレはもう、あいつの御守にはなりたくないんだ…!』

アルミン「“あいつの御守にはなりたくない”?」

ミーナ「うん…確かにそう言ってた」

アルミン「それで、その後は?」

ミーナ「わかんない…そのまま怖い顔してどこかに行っちゃったから…」

アルミン「…」




【ミーナの証言】







エレン『それじゃあ駄目なんだッ…!』




アルミン(もしかして…)




モノクマ「おいコラ!そこの二人!」

アルミン「!」

モノクマ「何イチャついてんのさ!
     そういうの見せつけられると腹立つんだけど」

アルミン「ごめん…今行くよ」

ミーナ「て、ていうか!そういうのじゃないから!」

モノクマ「顔真っ赤にして言われたって全然説得力ないよ?」

ミーナ「…!」

モノクマ「あーもう余計にムカつく!よし決めたぞ!
     オマエラをおしおきする時は爆発させてやる!ってか爆発しろ!」

アルミン「縁起でもないこと言わないでよ…」

アニ「…ねえ、いつまで無駄話してるの」

モノクマ「ああ、メンゴメンゴ!全員乗ったね!
     それじゃあ出発しましょーか!」

コニー「ん?ここでやるんじゃないのか?」

モノクマ「だから、こんな狭苦しい場所でやる訳ないじゃん…えいっ」




ポチッ

ガコン




コニー「!?」




ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ




ジャン「な…なんだ…!?」

ベルトルト「部屋が…動いてる!?」

モノクマ「いやっほうううううううう!」




モノクマ「上へ参りまーす!!」



今日はここまで

ウィィィィィィィィン




アルミン(僕たちが入った小部屋は、そのままゆっくりと上昇していった)

アルミン(ゴウン、ゴウンと耳障りな音を響かせながら…)




ユミル「…昇降機か」

クリスタ「え?」

ユミル「壁の上に馬や物資を載せるために作られた装置のことだ。
    多分これもその一種だろう」

ウィィィィィィィィン




アルミン(僕らの不安な気持ちをよそに、
     小部屋はどんどん上へと昇っていった…)




ユミル「…」

サシャ「…」

ミーナ「…」




アルミン(誰も何も話さない)

アルミン(重苦しい静寂…)





クリスタ「…」

ライナー「…」

ベルトルト「…」

ジャン「…」

ミカサ「…」




アルミン(そして…)



― 裁判場 ―




モノクマ「にょほほ! いらっしゃ~い!」

モノクマ「どう、これって、
     いかにも裁判場って感じじゃない?」

モノクマ「某Hクラスのリアルな再現性じゃない?」

ジャン「どこがだ…悪趣味な空間だぜ…」

モノクマ「はいはい、じゃあオマエラは、
     自分の名前が書かれた席に着いてくださいな」

モノクマ「ハリーアップ、ハリーアップ!!」

アルミン(モノクマに言われるまま、
     僕らは、指定された席へと向かった)




アルミン「…」




アルミン(一同が、円状に陣取るように配置された席…)

アルミン(みんなの顔が、
     ぐるりと見回せるようになっている)




アニ「…」

コニー「…」




アルミン(互いの緊張感が、互いへと飛び火し…)

アルミン(その場の空気は、
     一気に重苦しいものへと変化していった)









アルミン(そして、幕は開く…)




アルミン(命がけの裁判…)

アルミン(命がけの騙し合い…)

アルミン(命がけの裏切り…)

アルミン(命がけの謎解き…命がけの言い訳…命がけの信頼…)




アルミン(命がけの…兵団裁判……)















兵団裁判 開廷!







今日はここまで

モノクマ「まずは、兵団裁判の簡単な説明から始めましょう!」

モノクマ「兵団裁判の結果は、オマエラの投票により決定されます」

モノクマ「正しいクロを指摘出来れば、クロだけがおしおき。
     だけど…もし間違った人物をクロとした場合は…」

モノクマ「クロ以外の全員がおしおきされ、みんなを欺いたクロだけが
     晴れて卒業となりまーす!」

ライナー「…ちょっと待て」

モノクマ「はい?」

ライナー「議論の前に聞いておきたいんだが…あれってどういう意味だ?」




アルミン(ライナーの指差した先には、空いた席に立てられた顔写真があった)

アルミン(エレンの写真だ。大きなバッテン印が描かれている)




モノクマ「死んだからって、仲間外れにするのは可哀想でしょ?
     友情は生死を飛び越えるんだよ」

ユミル「じゃああれは何だ?私たちは12人なのに、どうして席が16もあるんだよ」

モノクマ「深い意味はないよ。16人収容可能な裁判所ってだけ」

モノクマ「では、くだらない前置きはこれくらいにして、
     とっとと始めちゃってくださいな!」

コニー「始めるっつってもよ、何を話し合えばいいんだ?」

ユミル「…ルール聞いてたのか?」

アニ「事件の状況を照らし合わせて、誰が殺人犯かを議論する」

アニ「もし当てることができれば犯人は処刑され、
   外せば犯人以外が処刑される…そういうことだよ」

ジャン「んなもん全部…テメーの仕業だろ、モノクマ」

モノクマ「ボクはそんな事しないよっ! それだけは信じてっ!!」

モノクマ「規則違反をされない限りは、
     ボクは自ら手を下したりしません」

モノクマ「この訓練兵生活の趣旨に反するような事は
     決してしませんッ!」

モノクマ「ボクって、クマ1倍ルールにはうるさいって
     サファリパークでも有名だったんだから!!」

アルミン(ついに始まった兵団裁判…)

アルミン(開廷早々に混沌となる裁判場…)




ガヤガヤ ガヤガヤ…
ザワザワザワザワ…




アルミン(そこに最初の一石を投じたのは…)

アルミン(あの人だった)





ミカサ「犯人ならもう判っている」




アルミン「…え?」

ミカサ「犯人はあなた達以外には考えられない」

ミカサ「そうでしょう?」








ミカサ「ライナー、ベルトルト」







ライナー「…!!」

ベルトルト「なっ…何を言っているんだ!
      僕たちはそんな…」

ミカサ「とぼけたって無駄。私は聞いている」

ライナー「なに…?」

ミカサ「私は…昨日の夜に聞いている」




ミカサ「あなた達が【裏切り者】だという証拠を!!」











―  議 論 開 始  ―




▶【兵団規則】







ミカサ「私は聞いている」

ミカサ「その二人は昨日の夜に…」

ミカサ「自分たちは記憶喪失だとアルミンに打ち明けていた」

ライナー「…!!」

ミーナ「記憶喪失…?」

ミカサ「そんな都合のいい話…ある訳がない」

ミカサ「つまりそれこそが、二人が裏切り者であるという証拠…」

ミカサ「【二人が共謀して】エレンを殺したという何よりの証拠!」

ベルトルト「ちょ…ちょっと待ってくれ!」

ユミル「なあ、一体何の話をしてるんだ?」




アルミン(ミカサ…やっぱり冷静じゃない)

ミカサ「私は聞いている」

ミカサ「その二人は昨日の夜に…」

ミカサ「自分たちは記憶喪失だとアルミンに打ち明けていた」

ライナー「…!!」

ミーナ「記憶喪失…?」

ミカサ「そんな都合のいい話…ある訳がない」

ミカサ「つまりそれこそが、二人が裏切り者であるという証拠…」

ミカサ「【二人が共謀して】








それは違うよ!







アルミン「ミカサ、ちょっと待って。
     二人が共謀したっていう線はかなり薄いと思うよ」

ミカサ「…何を言うの…アルミン…」

アルミン「兵団規則だよ。あれを思い出して欲しいんだ」




7 仲間の誰かを殺したクロは“卒業”となりますが、
  自分がクロだと他の訓練兵に知られてはいけません。

8 訓練兵内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、
  訓練兵全員参加が義務付けられる兵団裁判が行われます。

9 兵団裁判で正しいクロを指摘した場合は、
  クロだけが処刑されます。

10 兵団裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、
  クロだけが卒業となり、残りの訓練兵は全員処刑です。




アルミン「ここでいう“クロ”っていうのは殺人犯…
     つまり実際に殺人を行った人物だと定義づけられているよね?」

ミカサ「それがどうしたと言うの。今回はその二人がクロだっただけ」

アルミン「いや…人を殺すってことは、
     その人に致命傷を与えるってことなんだ」

アルミン「特殊なケースを除けば、
     人が死ぬ致命傷っていうのは一つだけなんだよ」

ミカサ「…よくわからない。何が言いたいの」

アルミン「つまり、致命傷が一つだけだということは、
     それを与えた人間も一人だけということになる」

アルミン「だって…二人以上の人間が同時に一つの致命傷を与えたなんて、
     なんだか不自然じゃない?」

コニー「?? なあ、さっぱり話についていけてねーんだけど…」

アニ「つまりこういうことだよ。
   被害者が一人だった場合、殺人犯も一人だけ」

アニ「ミカサが主張するように、その二人が共謀していた場合…」

アニ「殺人を実行したのはどちらか一人だけで、
   もう一人はそれ以外…現場工作なんかを手伝ったってことになる」

アニ「兵団規則に当てはめてみると、殺人を実行したのがクロ、
   その手伝いをしたのがシロってことになるんだよ」

サシャ「…すみません、私もよく理解できません」

アルミン「要するに、現場工作なんかを手伝ったところでシロはシロなんだ。
     殺人を犯していない限り、クロにはなり得ないんだよ」

ユミル「…なるほどな。卒業できるのは実行犯であるクロだけ」

ユミル「つまり共謀して手伝ったところで、
    クロじゃない方には何の得にもならないってことか」

クリスタ「と、得にならないどころか…」

ミーナ「他のメンバーと一緒に殺されちゃうんだから、それこそ大損だよね…」

アルミン「これが二人が共謀していないっていう根拠だよ」

アルミン「…どうかな、ミカサ?」

ミカサ「…っ!」

モノクマ「うぷぷ…なかなかやるねぇ、アルレルトくん」

モノクマ「規則の条文からそこまで導き出せるなんて、
     とんだダークホースが現れたものですなぁ!」

ジャン「ちなみに確認しておくけどよ…
    今言ったように、共犯者の可能性は省いていいんだな?」

モノクマ「うん、省いていいよ」

モノクマ「今回の事件に【共犯者はいません】。
     オマエラが見つけるべきはクロただ一人…それだけなのです!」

今日はここまで

モノクマ「では、無事に疑問を解消したところで、
     とっとと再開させちゃってくださいな!」

コニー「ちょ、ちょっと待てよ!疑問ならまだあるぞ!」

モノクマ「はい?」

クリスタ「ライナーとベルトルトが記憶喪失…
     確かにそう言ってたよね?」

ライナー「…!!」

クリスタ「ミカサ…どういう事なのか、
     もう一度説明してくれないかな」

ミカサ「…」

アルミン「ミカサ…」

ミカサ「…」

アニ「ミカサ、話して」

ミカサ「…」

ミカサ「…昨日の夜」

ミカサ「あれはそう、モノクマの“声”が聞こえてきた時間…
    午後10時ごろだった」

アルミン『え…?』

ライナー『俺とベルトルトには、
     この施設に連れて来られるまでの記憶が一切なかった』

ライナー『自分の出身はもちろん、家族の名前や
     小さい頃の思い出なんかが全部…抜け落ちてしまっているんだ』

アルミン『き、記憶が…ない?』

ベルトルト『唯一覚えていたのは自分の名前と、
      日常生活や壁の中についての知識…』

ベルトルト『それと、“自分は兵士にならなきゃいけない”っていう…
      異様な使命感だけなんだよ』

ミカサ「エレンを探していたとき、
    その二人とアルミンが一緒にいるのを見た」

ミカサ「気になったので…物陰から様子を伺っていたら、
    二人がアルミンにそんな話をしていた」




アルミン『そうなんだ…僕はてっきり、
     二人は古くからの友人だと思っていたんだけど』

ライナー『…信じられねえのはわかる。
     だから俺たちも言い出せなかった』

ライナー『特に【裏切り者】の存在が示唆された今…
     真っ先に怪しまれるのは俺たちだろうからな』

ミカサ「そして二人は…」

ミカサ「アルミンに口止めもしていた…!」




ベルトルト『…ねえアルミン、
      虫のいい頼みだっていうのは承知してる。だけど…』

アルミン『…わかってる。この件は誰にも言わないよ』

ライナー『…すまねえな』




ミカサ「これが二人を怪しいと思う根拠」

ミカサ「確かに共謀していた線は薄いかもしれない…
    でもだからと言って、二人への疑惑が晴れたわけじゃない!」

ベルトルト「ミ、ミカサ!だから僕たちは!」

ミカサ「黙れ!二人のどちらかが勝手に動いたか、
    自らの犠牲を覚悟で手伝っていた可能性もある!」

アニ「…なるほどね。それぞれの言い分は理解できたよ」

ベルトルト「アニ、信じてくれ!僕たちは誓って…」

アニ「で、この話を聞いた上でみんなに確認するけど…」

コニー「?」

アニ「この中で…」




アニ「その二人のように、自分の記憶がない人はいる?」



今日はここまで

ミーナ「えっ…」

サシャ「記憶…ですか?」

アニ「そう。他にいる?」

コニー「俺はあるぞ。父ちゃんや母ちゃん、
    兄弟の名前だってちゃんと言えるし」

ジャン「右に同じだ」

クリスタ「私も…小さい頃の記憶、あるよ」

アニ「…そっか」




アニ「やっぱりみんな気付いてないんだね」







アルミン(…え?)




モノクマ「ボクもあるよ。付き合ってた雌ネコの性癖とか、
     サポートセンターのお姉さんの3サイズだってちゃんと言えるし」

ユミル「お前には聞いてねえよ」

モノクマ「ていうかさぁ、なんだか話逸れてない?」

モノクマ「今議論してるのは『イェーガーくんを殺したのは誰か』であって、
     『裏切り者は誰か』ではないんだよ?」

ミーナ「別に逸れてないでしょ。この中に裏切り者がいるんだとしたら、
    そいつが殺人犯だって考えるのが自然なんじゃないの?」

モノクマ「自然?何が自然なの?無農薬栽培か何か?」

モノクマ「短絡的だなあ。実に短絡的。
     そうやって思考停止するから、今時の子どもは学力不足なんて言われるんだよ」

アニ「…ずいぶん突っかかってくるんだね。
   それ以上触れられたら不都合な事でもあるの?」

モノクマ「キミの方こそ。そういうあからさまな話題転換って、
     いかにも犯人がやりそうな戦略じゃない?」

コニー「…ってことは、まさかアニが!?」

アニ「…」

アルミン「ちょ、ちょっと待って。
     そんな事で犯人を決めたら、それこそ短絡的だよ」

アルミン「まずはさ…既にわかっている事から話し合ってみない?」

クリスタ「既にわかっている事…?」









―  議 論 開 始  ―



▶【モノクマファイル 1】
【クリスタの証言】
【兵団規則】







アルミン「悔しいけど、モノクマの言う事にも一理あるよ」

アルミン「今僕たちが見つけ出すべきなのは裏切り者じゃない…」

アルミン「エレンを殺した犯人なんだ」

ミーナ「だからさ、単純に【裏切り者=殺人犯】なんじゃないの?」

アルミン「そんな風に考えてたらキリがないよ」

アルミン「もっと地に足を付けて…わかっている事から考えてみよう」

コニー「けどよ…ただでさえ今回の一件はわからない事だらけなんだぜ?」

コニー「むしろ、【わかってる事なんて一つもない】って」




アルミン(確かに…今回の事件にはわからない事が多過ぎる)

アルミン(でも、まったくわからないって訳でもないはずだ)

アルミン「悔しいけど、モノクマの言う事にも一理あるよ」

アルミン「今僕たちが見つけ出すべきなのは裏切り者じゃない…」

アルミン「エレンを殺した犯人なんだ」

ミーナ「だからさ、単純に【裏切り者=殺人犯】なんじゃないの?」

アルミン「そんな風に考えてたらキリがないよ」

アルミン「もっと地に足を付けて…わかっている事から考えてみよう」

コニー「けどよ…ただでさえ今回の一件はわからない事だらけなんだぜ?」

コニー「むしろ、【わかってる事なんて一つもない】








それは違うよ!







アルミン「いや、わかってる事ならあったはずだよ」

コニー「え?」

アルミン「モノクマファイルだよ。コニーだって貰ってるよね?」

コニー「黒い冊子のことか?胡散臭くて読むのやめたけど」

ジャン「…難しい語句が多くて、の間違いじゃないのか?」

クリスタ「けど…コニーが言いたい事もわかるよ。
     だって、モノクマから渡された物なんだし…」

モノクマ「コラーッ!どこまで疑り深いんだよチミは!」

モノクマ「そもそもさぁ、あのファイルは
     ボクの親切心の塊なんだよ?」

ユミル「…そういうところが胡散臭いんだよ」

モノクマ「あのねぇ…あのファイルはね、
     いわば兵団裁判をスムーズに進める為の潤滑剤なんだ」

モノクマ「議論が滞ったとき…ちょうど今のような状態のときに、
     助け舟としてオマエラを支えてくれる存在なんだ」

モノクマ「冷静に考えてみなよ。
     ボクがそんなキーアイテムに不正を施すと思う?」

サシャ「すみません…冷静に考えてみても、
    不正を施す光景しか浮かばないんですが…」

モノクマ「ショボーン…そこまで言われちゃったらぐうの音も出ないよ…」

モノクマ「じゃあ好きにすれば…好きに疑って、間違った結論に達して、
     みんなで仲良く処刑されちゃえば…?」

サシャ「い、いじけないでくださいよ!」

ライナー「…だが、これはモノクマの言う通りだろう。
     信じない事には何も始まらないんじゃないか?」

ミカサ「裏切り者が何を言う…!」

ライナー「そう思うならそれでも構わん。
     ただな…これだけは言っておくぜ」

ライナー「エレンの仇をとりたいのなら、もう少し頭を冷やせ」

ミカサ「何をっ…!!」

アニ「ミカサ、落ち着いて。このままじゃ話が進まないよ」

ミカサ「…ッ」

アニ「…議論を戻そう。ここからは、
   モノクマファイルが正しいという前提で考えていくよ」

アニ「あのファイルによると、この事件を語る上では欠かせない、
   ある重要な情報が記されていたね」

コニー「ある重要な情報…?」

アニ「アルミンならわかってるでしょ?」

アルミン(アニの言う重要な情報とは…)




▶【エレンの死因】
【エレンの性別】
【エレンの好物】








これだ!







アルミン「それって、エレンの死因だよね?」

アニ「そう。モノクマファイルによると、
   エレンの死因は頭部への打撃による頭蓋内圧の上昇…」

アニ「これは実際に捜査した所見とも一致するんだよ。
   エレンの身体には、頭部以外の外傷は見られなかった」

ユミル「私も確認したが、それは間違いない。つまり…」

ライナー「少なくともその点においては、
     モノクマファイルにある内容が嘘ではないということだな」

アルミン(エレンの死因は頭部への打撃によるもの…)

アルミン(これだけで何かが決まる訳じゃないけど…
     それでも、これは間違いなく重要な情報だ)




アニ「エレンの死因…これが一つ目」

コニー「ん? まだあんのか?」

アニ「重要な情報はもう一つあった…」

アニ「…そうだよね、アルミン?」

アルミン(もう一つの重要な情報とは…)




【犯人の名前】
【犯人の性別】
▶【エレンの死亡時刻】








これだ!







アルミン「エレンの死亡時刻…だよね」

アニ「その通り。モノクマファイルには死因の他に、
   死亡時刻が午前1時半頃だと明記されている」

コニー「それって夜中じゃねーか!」

ミーナ「今更!?」

ジャン「でも、それがどうしたんだ?
    そんな事もうわかり切ってるっつーか…」

アニ「わかり切ってるなら…わかるでしょ?」

ジャン「は?」




アルミン(アニは何を言おうとしているのか…)

アルミン(わかる気がする…何か…)

アルミン(何か閃きそうだ…)









―  閃 き ア ナ グ ラ ム 開 始  ―









  イ  バ  ア  リ


  ア  バ  イ  リ


  ア  リ  イ  バ








  ア  リ  バ  イ








そうか わかったぞ!







アルミン「そうだ!アリバイだ!」

サシャ「ア…アリバイ?」

アルミン「エレンの死亡時刻は既にわかっている…」

アルミン「ということは、その時間帯のみんなのアリバイを確認すれば、
     犯人も絞り込めるんじゃないかな!?」

クリスタ「そっか…死亡時刻っていうのはつまり、
     エレンが殺された時刻ってことだもんね」

ユミル「その時間帯にアリバイのない人間が必然的に怪しくなる…
    そういうことか?」

今日はここまで

アニ「まあ、怪しいとまでは言い切れないけど…
   参考にはなると思うよ」

ベルトルト「でも、それって夜中の1時半だよね。
      そんな時間のアリバイがある人なんているの?」

コニー「だよなあ…俺なんか部屋で爆睡してたし」

ユミル「私はあるぞ」

コニー「え?」

ユミル「私とクリスタはあの夜一緒に過ごしてたからな」

ジャン「はあ!?」

ライナー「い、一緒って…クリスタと寝たのか!?」

ユミル「ああ。『ユミル怖いよ一緒に寝て』って、
    涙目になって頼まれたもんで」

クリスタ「頼んでないっ!ユ、ユミルの部屋で話し込んでたら
     うっかり寝ちゃっただけでしょ!」

ライナー「なんて羨ま…」

アニ「…」

ライナー「…じゃなかった。それって規則違反じゃないのか?」





3 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。
  他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。




ベルトルト「個室以外で寝る事は禁止されてたけど…
      他人の個室で寝る事までは禁止されてなかったから…」

ベルトルト「だから、問題ないって事なんじゃないかな」

モノクマ「うん、問題ないね」

モノクマ「男女の寝泊りなら色々と言いたいところだけど、
     ユミルさんはああ見えて女の子だし…」

モノクマ「…ハッ!もしかして二人はそっち系なの!?
     闇夜に咲く一輪の百合だったり!?」

ユミル「いちいちうるさい野郎だな…」

コニー「つーかお前らって、そんなに仲良かったっけ?」

ユミル「何言ってんだ。私とクリスタはずっとラブラブだったろ」

クリスタ「ラ、ラブラブって…」

ミーナ「でも、これではっきりしたね。
    少なくともその二人にはアリバイがあった…」

ジャン「逆に言うと、他は全員アリバイなしってことか…
    全然絞れてねえな」

ユミル「いや…そうでもないぞ」

ジャン「あん?」

ユミル「確かに、私とクリスタ以外に
    アリバイのあるヤツはいない…」

ユミル「だが一人だけ…
    “不自然に”アリバイのないヤツがいたんだ」








ユミル「そうだよなぁ? 芋女」

サシャ「…!!」







今日はここまで









―  議 論 開 始  ―




【クリスタの証言】
【ライナーとベルトルトの証言】
▶【サシャの証言】
【ミーナの証言】







ベルトルト「不自然にアリバイがない…?」

ユミル「昨日の夜、私の部屋にいたのはクリスタだけじゃない」

ユミル「【そいつもいた】んだよ…途中までな」

ミーナ「え…?」

ライナー「サシャは部屋に泊まらなかったのか?」

ユミル「話の途中でそいつは【急に部屋を出て行った】んだ」

ユミル「行き先を聞いても口を濁すだけだった」

ユミル「どう考えても怪しいよなぁ?」

サシャ「ち、違いますよ! 私は…」

サシャ「私は【倉庫に行ってた】んです!」

コニー「倉庫…?真夜中にか?」

ユミル「そいつはまた苦しい言い逃れだな…ならはっきりと言ってやろうか」

ユミル「お前はエレンを殺しに行っていた。【倉庫なんかには行ってない】」

ユミル「そうなんだろ? 芋女さんよぉ!」

サシャ「だ、だから違いますって!」




アルミン(サシャは本当に言い逃れをしているんだろうか?)

アルミン(もしそうだとしたら…あんな事を言うだろうか?)

ベルトルト「不自然にアリバイがない…?」

ユミル「昨日の夜、私の部屋にいたのはクリスタだけじゃない」

ユミル「【そいつもいた】んだよ…途中までな」

ミーナ「え…?」

ライナー「サシャは部屋に泊まらなかったのか?」

ユミル「話の途中でそいつは【急に部屋を出て行った】んだ」

ユミル「行き先を聞いても口を濁すだけだった」

ユミル「どう考えても怪しいよなぁ?」

サシャ「ち、違いますよ! 私は…」

サシャ「私は【倉庫に行ってた】んです!」

コニー「倉庫…?あんな時間にか?」

ユミル「そいつはまた苦しい言い逃れだな…ならはっきりと言ってやろうか」

ユミル「お前はエレンを殺しに行っていた。【倉庫なんかには行ってない】








それは違うよ!







アルミン「待って、サシャは確かに倉庫に行っていると思うよ」

ユミル「お前まで何言ってんだ…
    どう見てもそいつの言動は怪しいだろ」

アルミン「じゃあ、【証人がいる】としたら?」

クリスタ「証人…?」

サシャ「そ、そうですよ!私には証人がいます!」

ユミル「へぇ…じゃあ言ってもらおうか」

ユミル「その証人ってのは誰なんだよ?」









―  人 物 を 指 名 し ろ  ―











【ミカサ・アッカーマン】
【ライナー・ブラウン】
【ベルトルト・フーバー】
【アニ・レオンハート】
【エレン・イェーガー】
▶【ジャン・キルシュタイン】
【コニー・スプリンガー】
【サシャ・ブラウス】
【クリスタ・レンズ】
【アルミン・アルレルト】
【ミーナ・カロライナ】
【ユミル】








これが僕の答えだ!







アルミン「証人はジャンだよ」

ジャン「…!!」

ライナー「ん…?なんでここでジャンが出てくるんだ?」

アルミン「実は捜査のとき、昨日の夜中のアリバイを
     サシャに問い詰めたんだけど…」

アルミン「こんな事を言ってたんだ」

サシャ『本当に違うんですって!
    何だったらジャンに聞いてみてくださいよ!』




アルミン「本当に言い逃れをするつもりなら、
     こんなウソをつくはずないよ」

アルミン「だってそんなの…
     ジャンに確認すれば一発でわかっちゃうからね」

ベルトルト「確かに…」

ユミル「そいつがそれほどの間抜けだったら話は別だがな」

サシャ「だ、だから違いますよ!私は無実潔白ですから!」

サシャ「ねっ?そうですよね、ジャン!」

ジャン「…」

サシャ「…? ジャン?」

ジャン「何言ってんだ」

サシャ「…はい?」

ジャン「オレは昨日の夜…お前なんかと会ってねえぞ」




アルミン(…え?)



今日はここまで









―  議 論 開 始  ―




【モノクマファイル 1】
【血で濡れた髪】
【地面から突き出た大きな石】
▶【倉庫の物品管理表】







ジャン「オレが証人?笑わせんな」

ジャン「オレは昨日の夜、【サシャとは会ってない】」

ジャン「それなのにどうしてオレが…」

ジャン「サシャが倉庫にいたことの証人になるんだ?」

サシャ「な…何言ってるんですか!」

サシャ「ジャンと私は昨日の夜中に…」

サシャ「【倉庫で会ってる】じゃないですか!」

コニー「え?ジャンまで倉庫に行ってたのか?」

ジャン「そいつが言ってることはウソだ!信じるんじゃねえ!」

サシャ「ど、どうしてそんなウソつくんですかぁ!」




アルミン(わからない…)

アルミン(どうしてあの人はあんなウソを…?)

ジャン「オレが証人?笑わせんな」

ジャン「オレは昨日の夜、【サシャとは会ってない】








それは違うよ!







アルミン「ジャン、今の発言は…おかしいよ」

ジャン「な…何がおかしいんだよ!」

アルミン「僕たちは別に【サシャに会ったかどうか】を
     聞いているんじゃない…」

アルミン「【サシャが倉庫に行ったことを証言できるかどうか】を
     聞いているんだ」

ジャン「…!!」

アルミン「実際に会わなくても…サシャが倉庫に行くのを
     見聞きしたってだけでも、十分証人になり得るはずだよ」

アルミン「それなのに、まるで君は…」

ジャン「そ、そんなのこじつけじゃねーか!
    それだけでオレを疑うってのかよ!」

アルミン「もちろん…それだけじゃないよ。
     決定的な証拠だってあるんだ」

ジャン「なっ…!!」

ユミル「何なんだ?その決定的な証拠ってのは」

アルミン「これだよ。ちょっと見てくれるかな」

物品 ショベル、つるはし

名前 ライナー・ブラウン

持出 DAY 01 11:54
返却 DAY 02 06:45  


物品 工具セット

名前 ジャン・キルシュタイン

持出 DAY 03 19:25
返却 DAY 04 00:20


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 04 00:20
返却 DAY 04 13:48

ミーナ「…? 何これ?」

アルミン「【倉庫の物品管理表】だよ」




13 倉庫から物品を持ち出す際は、
  管理表に必要事項を記入しましょう。返却時も同様です。




クリスタ「そういえば…兵団裁判のルール説明を受けたとき、
     みんなでメモを取ったけど…」

ベルトルト「確かに、こんな規則もあったね。
      新しく追加されたんだっけ?」

ライナー「この管理表なら俺も書かされたな…
     このショベルとつるはしは穴を掘ったときに借りたやつだ」

モノクマ「そうそう。こうすれば物品紛失の防止になるでしょ?」

モノクマ「本当はね、こんな当たり前の事まで
     ルールで縛りたくなかったんだけど…」




ミカサ『“この施設について調べるのは自由です。 特に行動に制限は課せられません。”
    …兵団規則にはそうあったはず』

ライナー『ミカサの言う通りだ。俺はその一項を確認したからこそ、
     ああいう行動に踏み切ったんだ。何も問題はないはずだぞ?』

モノクマ『ムキーッ!そうやっていちいち規則で縛らないと行動できないの!?
     まったくこれだからゆとり世代は!』




モノクマ「どうやらオマエラは、縛らないと何もできない
     ドМ世代のようだから…」

モノクマ「ボクも心をドSにしたってわけ!」

ユミル「だが待てよ?この表によると…」




物品 工具セット

名前 ジャン・キルシュタイン

持出 DAY 03 19:25
返却 DAY 04 00:20


物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 04 00:20
返却 DAY 04 13:48




ユミル「ジャンが物品を返却した時間と
    芋女が物品を持ち出した時間が…」

ミーナ「本当だ!同じだよ!」

アルミン「そう…これが決定的な証拠だよ」

アルミン「物品の返却と持出が同じ時間である以上、
     二人は倉庫で顔を合わせているはずなんだ!」

ジャン「…っ!!」

ユミル「ちなみに聞いておくが…
    この表に虚偽の記載をした場合はどうなるんだ?」

モノクマ「そんなの決まってんじゃん!
     規則違反でおしおきだよ!」

モノクマ「ウソを書いた場合も、何も書かなかった場合も…」

モノクマ「初日のお芋さんと同じ運命を辿る事になりまーす!」

サシャ「…!」ビクッ

ベルトルト「つまり、この表に書かれているのは本当の事で…」

ライナー「ジャンとサシャは間違いなくこの時間…
     午前12時20分に倉庫にいたってことか!」

ジャン「ぐっ…!」

コニー「でもよ…なんでお前らはそんな時間に倉庫にいたんだ?」

ミーナ「それにその物品名…」

ミーナ「ジャンの借りた【工具セット】は使い道がわからないし、
    サシャの借りた【詰め合わせスペシャル】に至っては何の事だか…」

アニ「そう…問題はそこだよね」

サシャ「あっ…こ、これはですね…」

アニ「ねえジャン…」




アニ「あんたはその【工具セット】で、
   エレンの金具を弄ろうとしたんじゃないの?」



今日はここまで

クリスタ「えっ…?」

ジャン「…!!」

アニ「エレンが装着していた腰のベルトを
   よく調べてみたんだけど…」

アニ「そこの金具には、こじ開けたような跡があったんだ」

ベルトルト「こ、こじ開けたような跡だって…?」

アニ「おそらくあれは工具を使った跡…」

アニ「この施設で工具が入手できる場所は倉庫、
   そして倉庫からそれを持ち出したのはジャンのみ…」

アニ「これらの情報を併せて考えれば、
   誰がそんな跡を付けたのかは明白だよね」

クリスタ「ちょ、ちょっと待って。
     どうしてジャンはエレンの金具をこじ開け…」

ジャン「…っ」

クリスタ「…まさか」

ミーナ「ジャンがエレンの金具に細工をしたせいで、
    エレンは姿勢を保てずに頭を打って死んだ…」

ミーナ「つまり今回のクロは…」

ジャン「ち、ちげえ!それは誤解だ!」

ユミル「何が誤解なんだ?そもそもなんでお前は、
    サシャと会ってないなんてウソをついたんだよ」

サシャ「そ、そうですよ!
    おかげで変な疑いかけられたじゃないですか!」

ジャン「…確かにオレはサシャと会った。
    その事についてウソをついたのも認める」

ジャン「でもなぁ!だからって、
    サシャへの疑いまで晴れる訳じゃねえぞ!」

サシャ「えっ!?」

ジャン「こいつを見てみろよ!」




物品 詰め合わせスペシャル

名前 サシャ・ブラウス

持出 DAY 04 00:20
返却 DAY 04 13:48




ジャン「この物品名を見ろ!【詰め合わせスペシャル】だぞ!?」

ジャン「一体何が入ってたんだ!そこには工具とか、
    殺人道具まで詰め込まれてたんじゃねえか!?」

サシャ「そんな訳ないじゃないですか!だからあれは…」

アニ「…ジャン、そんな言いがかりは
   ますます怪しく見られるだけだよ」

ジャン「うるせえ!そこに工具が入っていた可能性がある以上、
    こじ開けたのがオレだとは断定できねーだろ!」

アルミン「いや、それはないと思うよ」

ジャン「あぁ!?」

アルミン「サシャが持ち出した物に
     工具が入っていたとは考えられないんじゃないかな」

アルミン「あの【詰め合わせスペシャル】っていうのは、
     そういう代物じゃなかったはずだよ」

ジャン「テメーまで何言ってやがる!
    それなら何が入ってたってんだよ!!」




アルミン(サシャが持ち出した物…【詰め合わせスペシャル】)

アルミン(その正体は多分…)









―  閃 き ア ナ グ ラ ム 開 始  ―









  べ  も  の  た


  た  の  べ  も


  た  べ  の  も








  た  べ  も  の








そうか わかったぞ!







今日はここまで

アルミン「あれはきっと…食べ物だったんだよ」

ジャン「は…!?」




サシャ『だって…朝ごはんも食べてないんですよ…?』

ミーナ『昨日の夜がっつり食ってたじゃん…』

サシャ『それとこれとは別ですよ…
    昨日の夜中も食堂に行ったのに閉まってたし…』

エレン『お、おい!あれだけ食って
    さらにつまみ食いしようとしてたのかよ!』

サシャ『ああ…おなかが減って力が…』




アルミン「サシャってほら、すごく食い意地が張ってたでしょ?
     夜中に食堂に行こうとするほど…」

サシャ「うぐっ…」

アルミン「でも夜時間は食堂に入れない。それでサシャは、
     倉庫で食糧を探すことを思いついたんじゃないかな」

ユミル「食い物探しに行ってたのかよ…
    だったら、なんであの時そう言わなかったんだ?」

サシャ「だって…食い意地張ってるとか思われたくないですし…」

ミーナ「いや、手遅れだと思うよ」

ジャン「ちょ、ちょっと待て!
    それが食い物だったなんて単なる憶測…」

ムシャリ




モノクマ「もふもふ…
     何これ…うまいもんだなぁ」




モグモグ




コニー「ぎゃああ! クマが肉食ってるぅぅぅぅぅ!!」

ライナー「…いや、それって普通じゃねえか?」

サシャ「ちょ、ちょっと!
    それ私の【詰め合わせスペシャル】じゃないですか!」

モノクマ「生まれて初めて食べたよ。
     なんて言うかその…野生の頃を思い出す味だ」

サシャ「ひ…酷い!あんまりですよ!
    そのお肉は最後に食べようと思ってたのに!」

モノクマ「うるせえなぁ。オマエラの議論があんまり退屈だから、
     おつまみでも食べないとやってらんねーんだよ」

モノクマ「おっと! つい野性的な一面が出ちゃったよ。
     さっきのお肉の影響かしら?」

アニ「ちなみに聞いておくけど、
   その【詰め合わせスペシャル】に工具は入ってる?」

モノクマ「工具?そんなのある訳ないじゃん」

モノクマ「ドングリしか食べないブタの薫製肉とか、
     メタボリックなガチョウの肝臓で作ったソースとか…」

モノクマ「これはそういう珍味の詰め合わせなの!!」

ベルトルト「ということは、やっぱり工具を持ち出したのって…」

クリスタ「ジャン…だけ…?」

ジャン「…!!」

ミカサ「ジャン…あなたがエレンを…?」

ジャン「だ、だから、それは誤解だ!」

ユミル「だったら説明しろよ。
    お前は何の為に【工具セット】なんか持ち出したんだ?」

ジャン「そ…それは…!」

コニー「っていうか思い出したぞ!確か初日の夜に…」

ガタッ

ガラガラ…




ジャン『…おい』

エレン『あ?』

ジャン『悪かったな』

エレン『…?』

ジャン『別にあんたと喧嘩したかった訳じゃないんだ。
    ただ、俺は正直者なんでね』

ジャン『思ったことはすぐ口に出しちまう。
    それでよく顰蹙も買うが…悪気があってやってるんじゃない』

エレン『いや、別に謝らなくてもいいっつーか…
    突っかかったのはオレの方なんだからよ』

ジャン『そうか…』

エレン『…』




スッ




ジャン『…これで手打ちにしようぜ』

エレン『ああ…』




パシッ

ジャン『…』




ミカサ『…』




ジャン『…!』

ミカサ『?』

ジャン『い、いや…すまない。
    見慣れない顔立ちだったから…』

ジャン『その…とても綺麗な黒髪だ』

ミカサ『…どうも』

ジャン『あ、あのっ…』




ミカサ『エレン』

エレン『な…なんだよ』

ミカサ『すぐ感情的になるのはやめた方がいい。
    でないと、いずれ足をすくわれる』

エレン『ぐっ…そういうお前はもう少し感情的になれよ。
    いっつも無愛想な顔しやがって』

ミカサ『エレンがそう言うなら努力しよう』

エレン『ったく…ほら、早く寄宿舎に行くぞ』

ミカサ『うん』




ジャン『…!』

コニー『…』




ズリ




コニー『いッ!!』

ジャン『…』

コニー『オ…オイ!!お前 何 人の服で手ぇ拭いてんだ!?』

ジャン『…』

コニー『何拭ったんだお前…』

コニー『…!?』




ジャン『人との…信頼だ…』



コニー「あの時は何の事かわからなかったけど…」

コニー「まさかお前は…ミカサに振られた腹いせに…」

ジャン「そんなセコい理由で殺す訳ねーだろうが!!」

ミーナ「な、なら…アレが理由?」




モノクマ『【巨人に関する重大なヒミツ】をプレゼントしまーす!!』




ミーナ「【巨人に関する重大なヒミツ】…
    もしかして、それを手に入れる為に…」

ジャン「…ッ!!」

ジャン「ふざけんじゃねえ!!」

サシャ「ひいッ!?」

ジャン「どいつもこいつもわかってねえ!
    何もわかっちゃいねえ!」

ジャン「なら百歩譲って、オレがエレンの金具を弄る為に
    工具を持ち出したとしようか!?」

ジャン「でもなぁ、それならいつ細工するんだ!?
    金具はあいつが肌身離さず持ち歩いてたんだぞ!」

ジャン「まさか本人の目の前で堂々とやった…
    なんて馬鹿な事言うヤツはいねえよなぁ!?」

サシャ「そ、そんなの…
    エレンが寝てる時に部屋に忍び込んだんじゃ…」

モノクマ「無理無理。寄宿舎の個室には
     ピッキング防止加工が施してあるから…」

モノクマ「そこのドアをこじ開けるなんて、
     某三代目の怪盗さんでも不可能だよ!」

ミーナ「それなら一体どうやって…」

ジャン「だから言ってんだろ!
    オレがエレンの金具を弄るなんてできっこねーんだ!」

アルミン「…本当にそうかな?」

ジャン「あぁ!?」

アルミン「エレンに気付かれずに金具に細工をする機会…
     本当に全くなかったのかな?」

ジャン「話聞いてたのか!金具はあいつが常に…」

アルミン「持ち歩いていたね。今の僕らだってそうだ」

アルミン「でも一度だけ…」

アルミン「エレンが個室以外で金具を外して、
     一時的にその場から離れる機会が…あったはずだよ」

ジャン「デタラメ言うんじゃねえ!そんなもんある訳ねえだろ!」




アルミン(ここで引く訳にはいかない)

アルミン(全ての真実を明らかにする為にも…!)









―  マ シ ン ガ ン ト ー ク バ ト ル 開 始  ―







今日はここまで

ジャン「オレが【工具セット】を持ち出したのが夜の7時25分!
    そしてそれを返却したのが12時20分!」

ジャン「その間たったの5時間だ!たったの5時間だぞ!?」

ジャン「そんな時間で何ができる!
    どうすればエレンに気付かれずに細工できる!」

ジャン「オレたちは常に金具を持ち歩いている!
    それから目を離すのは寝る時ぐらいだ!」

ジャン「でもモノクマは言ってたよなぁ!?
    個室のドアをこじ開けて侵入するのは不可能だってよ!」

ジャン「就寝は個室以外では禁じられてる!
    つまり寝てる隙を狙うには部屋に忍び込むしかねえんだ!」

ジャン「それができねえ以上、エレンの金具に細工できるチャンスなんて
    一時たりともねえだろうが!」

ジャン「エレンが個室以外で金具を外して
    一時的にその場から離れる機会があったァ!?」

ジャン「よくもまぁそんなデタラメが言えたもんだなァァ!!」









ジャン【そんな機会ある訳ねえ!エレンの金具に細工できる時間なんてある訳ねえ!!】








【大浴場】








これで証明するよ!







アルミン「機会ならあったはずだ!大浴場だよ!」

ジャン「!!」




ライナー『寄宿舎の方はどうだった、ミーナ?』

ミーナ『けっこう立派な建物だったよ。大浴場なんかもあったし…』




アルミン「僕たちは夕食後に、
     女子、男子の順で大浴場を利用していたよね?」

クリスタ「う、うん…まだ3日しか使ってないけど、
     もう習慣みたいになってたね」

コニー「汗まみれで寝るのはイヤだからなぁ。
    風呂なんてあそこくらいしかねーし…」

ベルトルト「そうか…!入浴時はさすがに金具を外すよね」

ユミル「脱いだ衣服と一緒に放置してたな。
    まさかそこを狙って…」

ライナー「待てよ?確か昨日の晩、お前は…」




ガララッ




ライナー『ん?もう上がるのか?』

ジャン『あ、ああ…なんか逆上せちまってよ…』

コニー『は?少ししか浸かってなかったじゃねーか』

ジャン『う…うるせえ!とにかくオレは逆上せたんだ!
    一足先に出てるからな!』

ライナー「一人だけやけに早く、風呂から上がってたよな?」

ミーナ「じゃ、じゃあ…その時に…」

ジャン「ぐっ…!」

アニ「さっきも言ったけど、
   金具には工具でこじ開けられたような痕跡があった」

アニ「この施設で工具が入手できる場所は倉庫、
   そして倉庫からそれを持ち出したのはジャンのみ…」

アニ「そして一人だけ早く大浴場を後にしたというなら、
   エレンの金具に近づける機会もあったはず」

ジャン「…ッ!!」

アニ「ジャン…もう言い逃れはできないよ」

ミカサ「…ジャン」

ジャン「…っ!?」

ミカサ「許さない…あなただけは…」

ジャン「ち、違う!それは違う!
    だから誤解だって言ってんだろ!」

ユミル「往生際が悪いぞ。さっさと投了しろ」

ジャン「だからオレは…!」








ジャン「オレは…あいつの金具を直そうとしただけなんだ!!」







今日はここまで

クリスタ「えっ?」

コニー「は…?」

ジャン「…っ」

ライナー「じゃあ何だ…お前はエレンの金具に細工した訳じゃなくて、
     もともと壊れていた物を直そうとしたと?」

ジャン「…そうだよ。結局無理だったけどな」

ユミル「ちょっと待て。それなら何故そう言わなかったんだ?」

ジャン「言える訳ねえだろ…」




ジャン『オレは逆に教えてほしい』

ジャン『あんな無様な姿晒しておいて
    正気を保って保っていられる秘訣とかをよぉ…』

エレン『お…お前ら
    人が頭下げて頼んでるのに…』




ジャン「オレはあいつが嫌いだった」

ジャン「理想論ばかり並べて現実を見ようとしない…
    そんなバカ丸出しのあいつが鼻について仕方なかった」

ジャン「それに…」チラ

ミカサ「…」

ジャン「なのに…なのによ…」

ジャン「オレがそんなあいつの金具を直そうとしてたなんて…
    言える訳ねえだろうが…!!」

ライナー「おいおい…あんなに怪しい言動しておいて今更…」

ミーナ「そ、そうだよ!まさか今の話信じたりしないよね?」

アニ「ジャンの言ってる事は本当だと思うよ」

ミーナ「えっ…?」

アニ「アルミン、あんたならわかるんじゃない?」

アルミン(ジャンは本当の事を言っている)

アルミン(その根拠は…)




▶【2日目のエレン】
【2日目のジャン】
【2日目のコニー】








これだ!







アルミン「確かに、ジャンは本当の事を言ってると思う」

アルミン「だってエレンの金具は…2日目の時点で壊れていたんだから」

ライナー「なに…?」








エレン『…は…?』




ジャン『…』プクク

コニー『…』ニヤニヤ




エレン『…な…な…』

エレン『…なんだよ…これ…』

ミカサ「じゃああれは…エレンが出来ていなかった訳じゃなくて…」

アルミン「うん。エレンの金具だけに不備があったんじゃないかな」

ミカサ「…!!」

アニ「ジャンが工具を持ち出したのは3日目の夜…」

アニ「なのに2日目の時点でその状態だったってことは、
   ジャンが細工をしたせいであんな風になった訳じゃないんだよ」

ユミル「待てよ。それでも2日目の時点で
    金具に不備があったと言い切れるのか?」

サシャ「そ、そうですよ!エレンの金具だけなんて不自然ですし、
    単にエレンが下手なだけだった可能性も…」

アニ「ないよ。見てごらん」




カチャカチャ




クリスタ「それって…」

アニ「エレンの金具だよ」




カチャカチャ

カチッ

アニ「エレンの金具には確かにこじ開けられた痕跡があった」

アニ「でもその中には…細工をした跡は見つからないんだよ」

ユミル「…?」

コニー「いや、そんなん見せられたってわかんねーよ。
    中の仕組みが複雑すぎて…」

モノクマ「あーもうっ、めんどくさいなぁ!」

モノクマ「レオンハートさんの言う通りだよ!
     イェーガーくんの金具には初めから欠陥があったの!」

モノクマ「って、ぎゃああああ!認めちゃったー!
     監督教官の責任問題だよ!記者会見で何て言おう…」

ジャン「な、なら、お前は…」

ジャン「お前はオレが犯人じゃないとわかってて、
    オレをあんなに追いつめたってのか!?」

アニ「あんたが犯人だなんて一言も言ってないよ」

ジャン「なっ…!」

アニ「私は一つ一つの事実を明らかにしたかっただけ。
   不確定要素を一つでも省きたかっただけ」

ジャン「て、てめぇ…」

アニ「…ふぅ。それじゃあ始めようか」




アニ「ここからが本題だよ」



今日はここまで









―  議 論 開 始  ―




【クリスタの証言】
▶【ライナーとベルトルトの証言】
【サシャの証言】
【ミーナの証言】







アニ「ジャンが細工をしていないのなら…」

アニ「どうしてエレンは死んだんだろうね」

コニー「ちょ、ちょっと待てよ!」

コニー「俺はまだ納得した訳じゃねーぞ!」

モノクマ「もー!何度言えばわかるのさ!」

モノクマ「イェーガーくんの金具には【最初から欠陥があった】んだって!」

ミーナ「あんたの言う事なんて信じられないよ!」

サシャ「じゃあ、やっぱりジャンは細工をしてて…」

サシャ「それで姿勢を崩したエレンは、【たまたま地面から突き出ていた石】に…?」

ジャン「だから違うっつってんだろ!!」




アルミン(あれ…? あの人の発言っておかしいよな…
     僕の知っている情報とは明らかに矛盾するぞ…)

アニ「ジャンが細工をしていないのなら…」

アニ「どうしてエレンは死んだんだろうね」

コニー「ちょ、ちょっと待てよ!」

コニー「俺はまだ納得した訳じゃねーぞ!」

モノクマ「もー!何度言えばわかるのさ!」

モノクマ「イェーガーくんの金具には【最初から欠陥があった】んだって!」

ミーナ「あんたの言う事なんて信じられないよ!」

サシャ「じゃあ、やっぱりジャンは細工をしてて…」

サシャ「それで姿勢を崩したエレンは、【たまたま地面から突き出ていた石】








それは違うよ!







アルミン「あの石ってさ…最初からあった物なのかな」

サシャ「え?」

アルミン「あの場所は昨日まで、僕たちも使ってたんだよ?」

アルミン「思い出してみてよ。姿勢制御の訓練で、
     あんな場所に石なんてあった?」

ユミル「…言われてみれば、確かに妙だな」

ユミル「あんなに危ない物があったら誰か気付くはずだ。
    でも私の記憶では…」

クリスタ「…うん、そんなのなかったよ」

アルミン「それにこの事は、あの二人が言っていた事とも矛盾するんだ」

アルミン「…そうだよね? ライナー、ベルトルト」

モノクマ『オマエラさあ、この外のあちこちに穴掘ったでしょ!』

ライナー『それがどうしたんだ』

モノクマ『何開き直ってんの!ちゃんと元に戻しなさいよ!』

ベルトルト『いや、でも流石にそこまでの時間はなくて…』

モノクマ『そんなのオマエラの都合でしょーが!とにかく穴を塞ぎなさい!
     ヤリ逃げなんて許さないんだからね!』




ライナー「アルミンの言う通りだ。知っての通り、
     俺たち二人は訓練所の穴埋め作業をさせられたんだが…」

ベルトルト「ついでに危険物のチェックもしたんだよ。
      訓練に支障をきたすものが他にないか…」

ベルトルト「それこそ、地面から石なんか突き出ていないか…徹底的にね」

ユミル「つまり、それならあんな石を見逃すはずがない…
    そういうことか?」

ベルトルト「うん。姿勢制御装置の真下にあるようなものなら、尚更ね」

コニー「え?それっておかしくねえか?」

アニ「そう、おかしいんだよ」

アニ「あるはずのない場所に石が突き出ていた…
   これは一体どういう事だろうね?」









―  議 論 開 始  ―




【モノクマファイル 1】
▶【血で濡れた髪】
【地面から突き出た大きな石】
【倉庫の物品管理表】







コニー「な、なんだかよくわかんなくなってきたぞ…」

コニー「なんで【あるはずのない場所に石があった】んだ…?」

ジャン「…まさか、あの石は最初からあった訳じゃなくて」

ジャン「【誰かが仕組んだもの】だってのか!?」

ミーナ「だ、誰かが仕組んだって…それじゃあ…」

ミーナ「あの石を【装置の真下に埋めて】…」

ミーナ「【エレンが頭を打って死ぬようにした】の!?」

サシャ「ひ…酷い!鬼です悪魔ですっ!」




アルミン(いや…そんなに生易しいものじゃない)

アルミン(これはもっと悪意に満ちてる…!)

コニー「な、なんだかよくわかんなくなってきたぞ…」

コニー「なんで【あるはずのない場所に石があった】んだ…?」

ジャン「…まさか、あの石は最初からあった訳じゃなくて」

ジャン「【誰かが仕組んだもの】だってのか!?」

ミーナ「だ、誰かが仕組んだって…それじゃあ…」

ミーナ「あの石を【装置の真下に埋めて】…」

ミーナ「【エレンが頭を打って死ぬようにした】








それは違うよ!







アルミン「違う…エレンはあれに頭を打って死んだんじゃない」

ミーナ「ち、違うって…
    だってエレンの死因は頭部への打撃によるものでしょ?」

ライナー「まさかモノクマファイルの内容を疑うのか?
     でもあれに書かれているのは事実だって…」

アルミン「…髪」

ライナー「え?」

アルミン「エレンの髪が…血で濡れていたんだよ」

ジャン「それがどうしたってんだよ。
    死因とも一致するし、石にだって血が付いてたんだろ?」

クリスタ「姿勢を崩したエレンがその石に頭を打った。
     そう考えるのが自然だと思うけど…」

アルミン「それならどうして髪が血で濡れるの?」

クリスタ「えっ?」

アルミン「エレンが姿勢を崩した姿はみんなも見てるよね?」

エレン『…は…?』




ジャン『…』プクク

コニー『…』ニヤニヤ




エレン『…な…な…』

エレン『…なんだよ…これ…』








アルミン「あの時のエレンはどうなってた?」

ライナー「どうなってたって…そりゃ盛大な転びようだったな」

ベルトルト「ビックリしたよね。いきなりクルンと回ったと思ったら、
      顔から地面に向かって勢いよく…」

ベルトルト「…あれ?でもそうすると…」

アルミン「そう…額や顔にケガをするはずだよね。
     少なくともエレンはそうだったよ」

アルミン「それなのにどうして…髪が血で濡れていたの?」

ライナー「…!!」

アルミン「それなのにどうして…」

アルミン「エレンの後頭部に…あんな傷があったんだよ…!」

サシャ「後頭部…!?」

アニ「血で濡れていたのは後頭部の髪だったんだ」

アニ「そして確かに、額には傷があったけど…
   後頭部にはそれよりも大きな、もっと深い傷があった」

ジャン「な…なんだって…!?」

アニ「つまりこういう事だよ」




アニ「エレンはあの石に頭をぶって死んだんじゃない。
   あの石で頭をぶたれて死んだんだ」

アニ「金具に細工とかせせこましい話じゃない…
   もっとシンプルな、明確な殺意をもった人間の犯行なんだよ」



今日はここまで

ミカサ「…!!」

サシャ「な…な…」

ジャン「エレンは殴られて死んだってのか!?
    頭をぶつけた訳じゃなくて…」

アニ「そうだよ」

ライナー「だ、だが…それならどうして、
     あの石が地面から突き出てたんだ?」

アニ「簡単なことさ。エレンを殴り殺した後、
   犯人は凶器の石を地面に埋めたんだよ」

アニ「エレンが頭をぶつけたと見せかける為にね」

アルミン「…さっきアニも言ったけど、
     エレンの額には傷があったんだ」

アルミン「だからこういう事だと思う。
     エレンが姿勢を崩して地面に額を打った後…」

アルミン「その上から…犯人がエレンをめがけて
     石を振り下ろした」

ミカサ「…ッ!」

ジャン「ウ、ウソだろ…そんな事やった人間が…」

ジャン「この中に…いるってのかよ!?」

アルミン(僕たちは互いの顔を見回していた)

アルミン(困惑した表情を浮かべる者、
     怒りのまなざしを向ける者…)

アルミン(でも、この中に一人いるはずだ)

アルミン(ウソの仮面を被った人間が…)

モノクマ「うぷぷ…やっと議論も本筋に入ってきたみたいだね」

モノクマ「でもさあ、誰がクロなのか早く決めてくれないかな?
     ボクが飽きたら時間切れになっちゃうんだよ?」

ベルトルト「そう言われても…」

ミーナ「凶器や殺し方はわかったけど、肝心の犯人が不明のままだよね…」

クリスタ「そんな…それじゃあ…」

サシャ「は、破滅です!もう私たちはおしまいですよ!」

アニ「落ち着きなよ」

サシャ「落ち着いていられますかぁ!
    ここで犯人当てなかったら私たち殺されるんですよ!」

モノクマ「で、出たー!さりげなく犯人じゃないとアピる小技!
     ベリィグーッド!」

サシャ「ち、違いますよ!私は食い意地が張ってるだけで!」

アニ「だから落ち着きなって。
   犯人につながる手がかりならもうあるから」





アルミン(…え?)




アニ「アルミン、私たちはエレンの金具を使って実験をしたよね?」








アニ『…』

ライナー『…』

アニ『…ねえライナー』

ライナー『…な、何だよ』

アニ『あんたって姿勢制御上手かったよね』

ライナー『…お前ほどじゃないけどな』

アニ『ちょっと私に見せてくれない?』

ライナー「ああ…あれのことか」

アニ「あそこに隠されてるよ。犯人につながる手がかりが」

ベルトルト「えっ?」

アニ「アルミン…よく考えてみて」

今日はここまで









―  閃 き ア ナ グ ラ ム 開 始  ―









  う  き  ゃ  り  ょ  く  し  ょ


  き  ょ  り  し  ょ  う  く  ゃ


  き  ょ  う  り  し  ょ  ゃ  く  








  き  ょ  う  り  ょ  く  し  ゃ








そうか わかったぞ!








アルミン「そうか!【協力者】がいたんだ!」

コニー「え?この事件に共犯者はいないって…」

アルミン「共犯者じゃなくて【協力者】だよ!」




エレン『…今度こそできる気がする。
    上げてくれアルミン!』

アルミン『いくよ』




キリキリキリキリキリキリ




アルミン「あの姿勢制御訓練は一人じゃできない…」

アルミン「誰かにクランクを回してもらわないと、
     宙に浮き上がることはできないんだ!」

サシャ「じゃ、じゃあ…
    エレンは夜中に一人で訓練をしていた訳ではなくて…」

ライナー「それを手伝った人間がいるってことか…?」

アルミン「うん、そういう事だよ」

コニー「ん?だったら何でその【協力者】ってのは、
    エレンの訓練を手伝ったって言わなかったんだ?」

アニ「言う訳ないでしょ。だってその人間こそが犯人なんだから」









―  議 論 開 始  ―




【モノクマファイル 1】
【兵団規則】
【血で濡れた髪】
【地面から突き出た大きな石】
【倉庫の物品管理表】
▶【訓練成績】







コニー「は…!? なんだって!?」

ジャン「【協力者が犯人】だと…?」

サシャ「い、一体誰なんですか!早く挙手してください!」

ユミル「アホか、挙げる訳ねーだろ…」

コニー「じゃあどうすんだよ…」

コニー「誰が手伝ってたかなんて【目星つかねえ】ぞ…?」

サシャ「や、やっぱり破滅です!おしまいですよぉぉ!!」




アルミン(そうか!だからアニは…!)

コニー「は…!? なんだって!?」

ジャン「【協力者が犯人】だと…?」

サシャ「い、一体誰なんですか!早く挙手してください!」

ユミル「アホか、挙げる訳ねーだろ…」

コニー「じゃあどうすんだよ…」

コニー「誰が手伝ってたかなんて【目星つかねえ】








それは違うよ!







アルミン「いや…目星ならつくと思うよ」

コニー「えっ…?」

サシャ「ほ、本当ですか、アルミン!?」

アルミン「うん…」

アニ「…」

アルミン「みんな、ちょっとこれを見てくれるかな」

名前          PT

ミカサ・アッカーマン  10
ミーナ・カロライナ   10
アニ・レオンハート   09
ライナー・ブラウン   09
ベルトルト・フーバー  09
ユミル         09
ジャン・キルシュタイン 08
コニー・スプリンガー  08
サシャ・ブラウス    07
クリスタ・レンズ    07
アルミン・アルレルト  06
エレン・イェーガー   00

サシャ「…? 何ですかこれ」

アルミン「みんなの訓練成績だよ。昨日までのね」

ジャン「は…?そんなもんが何の役に立つんだよ」

アニ「よく考えてみて」

アニ「エレンは夜中に姿勢制御の練習をしようとした。
   そしてその為には、誰かに手伝ってもらう必要があった」

アニ「…ここまではいいよね?」

ライナー「ああ…それがどうしたんだ?」

アニ「仮にあんたがエレンだったとしたら、
   練習の手伝いはどんな人に頼む?」

ライナー「どんな人って…そりゃ頼みやすそうな奴とか、
     姿勢制御が抜群に上手かった奴とか…」

アニ「…」

ライナー「…え?」

ベルトルト「ま、まさか…」









―  人 物 を 指 名 し ろ  ―











【ミカサ・アッカーマン】
【ライナー・ブラウン】
【ベルトルト・フーバー】
【アニ・レオンハート】
【エレン・イェーガー】
【ジャン・キルシュタイン】
【コニー・スプリンガー】
【サシャ・ブラウス】
【クリスタ・レンズ】
【アルミン・アルレルト】
▶【ミーナ・カロライナ】
【ユミル】








これが僕の答えだ!







アルミン「君だよ…ミーナ」

ミーナ「…!!」

アルミン「君こそがエレンの訓練の協力者…」

アルミン「そして、エレンを殴り殺した犯人なんだ」

ミーナ「な…な…」




ミーナ「何言ってるの…アルミン…?」



今日はここまで









―  議 論 開 始  ―




【クリスタの証言】
【ライナーとベルトルトの証言】
【サシャの証言】
▶【ミーナの証言】







アルミン「君は訓練の成績がトップだった」

アルミン「だから、エレンが練習の手伝いを頼むとしたら…」

アルミン「君だと考えるのが自然なんだ!」

ジャン「おい…【ミーナが犯人】ってマジなのか…!?」

ミーナ「ち、違う!私はやってない!」

ミーナ「そもそも、訓練成績だけで疑われるのなら…」

ミーナ「【同点だったミカサだって怪しい】じゃない!」

ミカサ「私がエレンを殺す訳ない!!」




アルミン(確かに、トップだったのはミーナだけじゃない)

アルミン(だけどエレンは…)

アルミン「君は訓練の成績がトップだった」

アルミン「だから、エレンが練習の手伝いを頼むとしたら…」

アルミン「君だと考えるのが自然なんだ!」

ジャン「おい…【ミーナが犯人】ってマジなのか…!?」

ミーナ「ち、違う!私はやってない!」

ミーナ「そもそも、訓練成績だけで疑われるのなら…」

ミーナ「【同点だったミカサだって怪しい】








それは違うよ!







アルミン「いや…いくら同点だったからって、
     エレンがミカサに頼んだとは考えられないよ」

ミーナ「な…なんでよ!エレンとミカサは幼馴染だったんでしょ!?」

ミーナ「私なんか知り合ってまだ3日だったんだよ!?
    練習の手伝いを頼むとしたら、私より仲の良かったミカサだよ!」

アルミン「違うよ。だってその根拠は…
     他でもない君が言ってたじゃないか」

ミーナ「…!?」

ミーナ『エレン…?』

エレン『! ミーナか』

ミーナ『どうしたの?そんなに怖い顔して…』

エレン『…オレは』

ミーナ『え?』

エレン『オレはもう、あいつの御守にはなりたくないんだ…!』

アルミン「“あいつの御守にはなりたくない”」

アルミン「エレンがそう言っていたのなら…
     その“あいつ”ってミカサの事だったんじゃないかな」

ミカサ「…!」








ミカサ『私がいる限り、【裏切り者】を一番にはさせない。
    エレンもアルミンも…私が無事にここから出す』




エレン『それじゃあ駄目なんだッ…!』



アルミン「つまり…エレンはミカサの世話になる事を嫌っていたんだ」

アルミン「そう考えれば、ミカサに頼むなんてあり得ないんだよ!」

ミーナ「…!!」

アルミン「それに君も言ったよね?」




ミーナ『私なんか知り合ってまだ3日だったんだよ!?
    練習の手伝いを頼むとしたら、私より仲の良かったミカサだよ!』




アルミン「それなら逆に聞くけど、
     どうして“知り合ってまだ3日”だった君が…」




エレン『オレはもう、あいつの御守にはなりたくないんだ…!』




アルミン「エレンからあんな事を打ち明けられたんだよ!」

ミーナ「…っ」

アルミン「ねえミーナ、本当のことを教えてよ」

アルミン「本当は…あの証言には続きがあったんじゃないの?」








エレン『オレはもう、あいつの御守にはなりたくないんだ…!』

エレン『あいつに守られるんじゃなくて…オレがあいつを守ってやりたいんだ』

エレン『だから…』

エレン『頼むミーナ!オレの練習に付き合ってくれ!!』







今日はここまで

クリスタ「ミ、ミーナ…本当なの…?」

ミーナ「は…はは…何よそれ…」

ミーナ「憶測よ…そんなのただの憶測じゃない…」

サシャ「憶測にしては、なかなか説得力があったような…」

ミーナ「…!」キッ

サシャ「ひいっ!? す、すみません!!」

ミカサ「憶測だろうと、そうでなかろうと…
    一つ確認しておく事がある」

ミカサ「ミーナ…あなたは本当に、
    エレンから練習の手伝いを頼まれたの?」

ミーナ「そ、そんな怖い目で見ないで…」

ミカサ「質問に答えて。頼まれたの?」

ミーナ「…!」




ミーナ「た、頼まれたよ…」



ミカサ「…!!」

ジャン「じゃあ、やっぱりテメーが…!」

ミーナ「ちょ、ちょっと待って!」

ミーナ「確かに頼まれたし、実際の練習にも付き合ったよ!
    だけどそれだけなんだって!それ以上はやってない!」

ライナー「…本当か?」

ミーナ「本当だよ!どうして信じてくれないの!?」









―  議 論 開 始  ―




【クリスタの証言】
【ライナーとベルトルトの証言】
▶【アニの実験】
【サシャの証言】
【ミーナの証言】







ミーナ「確かに私は【練習の手伝いを頼まれた】」

ミーナ「そして実際に【練習にも付き合った】」

ミーナ「だけどそれだけ!私はやってない!」

アニ「練習に付き合ったのはいつ?」

ミーナ「…【夜中の1時過ぎ】だよ」

コニー「ん?エレンの死亡時刻って【午前1時半頃】だったよな?」

ユミル「へぇ…一致するじゃねえか」

ミーナ「違う!練習に付き合ったって言っても、私はクランクを回しただけ!」

ミーナ「【あとは自分でやるって言われた】から、私は寄宿舎に戻ったんだよ!」

ライナー「…なーんか不自然じゃねえか?」




アルミン(…)

ミーナ「確かに私は【練習の手伝いを頼まれた】」

ミーナ「そして実際に【練習にも付き合った】」

ミーナ「だけどそれだけ!私はやってない!」

アニ「練習に付き合ったのはいつ?」

ミーナ「…【夜中の1時過ぎ】だよ」

コニー「ん?エレンの死亡時刻って【午前1時半頃】だったよな?」

ユミル「へぇ…一致するじゃねえか」

ミーナ「違う!練習に付き合ったって言っても、私はクランクを回しただけ!」

ミーナ「【あとは自分でやるって言われた】








それは違うよ!







今日はここまで

アルミン「…つまり、ミーナはこう言いたいんだね?」

アルミン「君はエレンに練習の手伝いを頼まれた。
     そして、その手伝いというのはクランクを回す事だった」

アルミン「だからクランクを回した後、
     用が済んだ君は寄宿舎に戻った」

ミーナ「そ、そうだよ!だからそう言ってるでしょ!」

アルミン「そっか、それなら…」

アルミン「やっぱり君の言ってる事はおかしいよ」

ミーナ「な…何がおかしいのよ!」

アルミン「だって、それなら…
     どうやってエレンを降ろすつもりだったの?」

ミーナ「…!!」

アルミン「クランクを回すのは最初だけじゃないんだよ?
     練習の終わりにも回さないと、その人は宙吊りになったままだ」

アルミン「それなのに君は…
     その状態でエレンを放置したっていうの?」

ミーナ「それは…」

サシャ「つ、つまり…こういう事ですか?」

サシャ「最初だけクランクを回して、
    エレンを宙吊りのまま放置して…」

サシャ「それで頭を打って死ねば上出来だったけど、
    エレンはまだ生きていたから…」

サシャ「それで…トドメを…」

ミーナ「ち…違う!違う違う違う!」

ミーナ「そうじゃない!私はエレンにこう言われたの!」




キリキリキリキリキリキリ




エレン『よっと…ありがとな、ミーナ』

エレン『少しキツいが…今回は上手くいけそうだ。
    オレはこの状態でどれくらい保つのか試してみる』

エレン『だから一旦戻ってていいぞ。
    しばらくしたら、また降ろしに来てくれ』

ミーナ「私はそう言われたから寄宿舎に戻った!」

ミーナ「だけど…その後、クランクを回しに
    エレンのところに行ったら…」




ギギ…ギギ…




エレン『…』




ミーナ「エレンは死んでたんだよ!!」

ミーナ「私のせいだと思った!」

ミーナ「私がエレンを見ていればこんな事にはならなかった!
    私がちゃんと見ていなかったせいで、エレンは事故で死んでしまった!」

ミーナ「ずっとそう思ってたよ!今の今まで!
    だから言い出せなかった!もしかしたら私がクロなんじゃないかって!」

ミーナ「だけど、エレンの後頭部には傷があったんでしょ!?
    だったらこういう事だよ!」

ミーナ「私が寄宿舎に戻っている間に、エレンは誰かに殴り殺された!
    きっとそうだよ!そうとしか考えられな…」





ライナー「…!」

ベルトルト「…!」




ミーナ「…?」

ミーナ「な、何よ…なんでそんな目で見てんの…?」

アニ「…ミーナ」




アニ「墓穴を掘ったね」



今日はここまで

ミーナ「は…!? な…何よ墓穴って!」

アニ「ライナー、話してあげて」

ライナー「あ、ああ…」




アニ『…なるほどね』

ライナー『お、おい!一体どうなってるんだ!?』

アニ『やっぱりあんたでも無理だったか』

ライナー『む、無理も何も…
     こんなの【1秒だってもたない】ぞ!?』

ライナー「俺はアニに言われて、エレンの金具で
     姿勢制御をやってみたんだが…」

ライナー「結果は惨敗。宙に体が浮いた途端、
     地面に思いっきり頭を打っちまった」

ミーナ「そ、それがどうしたってのよ!
    エレンの金具には不備があったんでしょ!?当たり前じゃない!」

アルミン「そう、エレンの金具には不備があったんだ。
     だからこそあり得ないんだよ。君がさっき言った内容が」

キリキリキリキリキリキリ




エレン『よっと…ありがとな、ミーナ』

エレン『少しキツいが…今回は上手くいけそうだ。
    オレはこの状態でどれくらい保つのか試してみる』

エレン『だから一旦戻ってていいぞ。
    しばらくしたら、また降ろしに来てくれ』




アルミン「君が主張するエレンの発言内容はこうだ」

アルミン「これはどう見ても、クランクを回して宙に浮いた後の
     発言だよね? でもそれはおかしいよ!」

ライナー『む、無理も何も…
     こんなの【1秒だってもたない】ぞ!?』




アルミン「成績上位のライナーだって、
     1秒も姿勢を保つことができなかったんだ!」

アルミン「だからあり得ないんだよ!
     エレンがそう言ったという事自体がね!」

ミーナ「…!!」

アニ「エレンの金具に細工がなかったのは知っての通り…
   そしてジャンは金具を直せなかったと言っていた」

アニ「つまり、あんたが練習に付き合ったっていう
   【夜中の1時過ぎ】にも、金具はあの状態だったってことさ」

クリスタ「…それならエレンも、
     ライナーみたいにすぐ頭を打ったはずだよね」

ライナー「ああ…宙に浮いた瞬間に頭を打ったんだから、
     目の前にいたミーナが気付かない訳がない」

ミーナ「…ッ!」

アルミン「それなのに君は、
     そんなエレンを放って寄宿舎に戻ったっていうの?」

アルミン「そもそもクランクを回すだけなら、
     わざわざ成績トップの君に頼んだりするかな?」

アルミン「『オレはこの状態でどれくらい保つのか試してみる』?」

アルミン「まさか、エレンが地面に頭を打った状態で
     そんな事を言った…なんて言わないよね?」

ミーナ「…ッ!」

アルミン「君がなぜそんなウソを言う必要があったのか…
     考えられる答えは一つしかない」

アルミン「君がエレンを殺したクロだからだよ!!」

ジャン「お、おいアニ…」

ジャン「オレをあそこまで追いつめて金具の件を話し合ったのは、
    全てこの為だったのか…!?」

アニ「さあね。でも、これでもう言い逃れはできないよ」

アニ「そうだよね? ミーナ」





ミーナ「…」




ユミル「…反論なしか?」

ライナー「だったら、これで決まりだな」

コニー「信じらんねえ…なんでだよ…」




ミーナ「…」




コニー「なんでエレンを殺しちまったんだよ!!」





ミーナ「…ふっ」




サシャ「…!?」ゾクッ

ミーナ「ふっ…ふふふ…」

ミーナ「ふふふふふふ…」








ミーナ「アッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」







ジャン「な…何だよ…なんで笑ってんだよ…」

ミーナ「だっておかしいじゃない…
    寄ってたかって私を犯人扱いしてさぁ…」

ミーナ「さっきまでジャンをいじめてたと思ったら、今度は私?」

ミーナ「誰かが怪しいと言えば、
    それに便乗して無実の人間を叩き始める…」

ミーナ「…はっきり言ってあげようか?」




ミーナ「クズだよあんたらは!!」



ライナー「無実だと…?まだ認めないつもりか」

ミーナ「認める訳ねーだろ!真っ白なんだよ私は!」

モノクマ「…ねえ大丈夫?キャラがブレブレだよ?」

ミーナ「うるさい!あんたは黙ってろ!」

アニ「ミーナ、いい加減に諦めなよ。
   私たちはちゃんとした根拠があって叩いてるんだ」

アニ「エレンの練習に付き合ったっていう事実がある以上、
   あんた以外がクロだとは考えられないんだよ」

ミーナ「だーかーらー!その事実自体が間違ってるんだって!」

コニー「…は?」




ミーナ「私はエレンの練習に付き合ってないっつーの!!」



クリスタ「…!?」

ミーナ「そうよ!私はエレンの練習には付き合ってない!
    それどころか、エレンからも頼まれてない!」

ジャン「な、何言ってんだ…?お前さっき…」




ミーナ『た、頼まれたよ…』




ミーナ「あれはミカサに脅されてそう言っただけ!
    そう!あれは誘導尋問!あんなの証拠にならない!」

ユミル「おいお前…言ってる事が無茶苦茶だぞ」

ミーナ「無茶苦茶なのはどっちだよ!!
    無茶苦茶な論理押し付けて人を貶めてんのはどっちだよ!!」

ミーナ「私が成績トップだったから手伝いを頼まれたァ!?
    何なのそれ!妬み!?僻み!?」

ミーナ「そんなの当てつけもいいトコでしょ!
    点数から見れば、他のヤツらだって大差ない!」

アルミン「…まず、ジャンとコニーはあり得ないよ。
     あの二人はエレンからの依頼を断ってる」




コニー『コツだって?』

コニー『悪ぃけど俺…天才だから
    “感じろ”としか言えん』

ジャン『オレは逆に教えてほしい』

ジャン『あんな無様な姿晒しておいて
    正気を保って保っていられる秘訣とかをよぉ…』

エレン『お…お前ら
    人が頭下げて頼んでるのに…』

アルミン「同じ理由から、ライナーとベルトルトも候補から外れる」




ライナー『う~ん…姿勢制御のコツか…』

エレン『頼む!』

ライナー『すまんが…ぶら下がるのに
     コツがいるとは思えん』

ライナー『期待するような助言はできそうにないな…』

エレン『…ッ!』

ミーナ「じゃあユミルは!?」

ユミル「…さっきも言ったが、
    あの夜は部屋でクリスタと過ごしてたんだ」

クリスタ「それとサシャもね。間違いないよ、エレンは来てない」

サシャ「わ、私は途中で抜けましたけど、
    それは【詰め合わせスペシャル】を取りに行ったからでして…」

サシャ「それはその…ジャンに聞けばわかるはずです」

ジャン「…ああ」

ミーナ「だったら…残りはアニとアルミン!
    あんたらのどっちかがエレンの手伝いを頼まれたんだ!」

ライナー「おいミーナ…」

ミーナ「うっさい!だってそうでしょ!?
    アニは次点でトップだったんだし、アルミンはエレンの幼馴染!」

ミーナ「どっちが頼まれたとしても不思議じゃない!!
    だから、私だけが疑われる理由なんてない!!」

アニ「…やれやれ、そう来たか」

コニー「お、おいアニ…」

アニ「まさかここまで抵抗されるとは思わなかったよ。
   それに正直言うと…もうネタ切れなんだよね」

サシャ「ネ、ネタ切れって…」

アニ「確かに無茶苦茶だけど…ミーナの言う事にも一理あるよ。
   私の推理の根幹は、【協力者=クロ】ってところにあるからね」

アニ「ミーナが【協力者】だと疑う根拠は【訓練成績】だけ。
   私やアルミンが【協力者】じゃないという事も証明できない…」

アニ「そして『私が協力者だ』っていう発言を撤回された以上、
   もうミーナを追いつめる材料は残ってないんだよ」

ベルトルト「ちょっと待って。
      誰が【協力者】かどうかはモノクマに聞けば…」

モノクマ「言う訳ないじゃん」

ベルトルト「…だよね」

ミーナ「だから言ってるでしょ!
    私を疑うのなんて見当違いなんだよ!!」

ジャン「ど、どうすんだよ…このままじゃ泥沼だぞ…」

アルミン「…それは違う」

クリスタ「え…?」

アルミン「追いつめる材料ならまだ残されてる」

アルミン「それも…決定的な材料がね」

アニ「…!」

ミーナ「いい加減に…してよ…」




ミーナ「いい加減にしろよこのもやしが!!」











―  マ シ ン ガ ン ト ー ク バ ト ル 開 始  ―







今日はここまで

ミーナ「そんなに私を犯人にしたいの!?
    だったら言ってやるよ!あんたらの推理がいかに穴だらけであるか!」

ミーナ「まず【協力者】候補!あんたらは都合のいい理由並べて
    勝手に除外していったけど、本当にそう言えるの!?」

ミーナ「ジャン、コニー、ライナー、ベルトルトの四人は
    “エレンの頼みを断った”って理由で外してるよね!?」

ミーナ「でもさァ!その後で『やっぱり練習に付き合うよ』って言えば
    いくらでも成立するんじゃないの!?」

ミーナ「サシャだって完璧なアリバイがある訳じゃない!」

ミーナ「【詰め合わせスペシャル】を持ち出したのが午前12時20分!
    犯行時刻までは1時間以上も余裕がある!」

ミーナ「つまり、ジャンの証言があるからって、
    容疑者候補から外れることはないんだよ!!」

ミーナ「アルミンとアニに至っては論外!論外中の論外!!」

ミーナ「自分が【協力者】じゃないことを証明できないクセに、
    狂ったように難癖をつける!」

ミーナ「あんたらが私を疑う理由は“訓練成績がトップだったから”ァ!?
    笑わせんじゃねーよ!!」









ミーナ【怪しい人間は他にもいる!!私だけが疑われる理由はどこにもない!!】








【訓練兵手帳】








これで証明するよ!







アルミン「そこまで言うなら…君の訓練兵手帳を見せてよ!」

ミーナ「!!」

アルミン「僕の考えた通りなら、それでハッキリするはずだ!」

アルミン「君が本当にクロなのかどうかがね!!」

ライナー「ちょ、ちょっと待て…
     なんでここで訓練兵手帳が出てくるんだ?」

アルミン「それが決定的な証拠だからだよ!」

サシャ「手帳が…ですか…?」

クリスタ「でも、どうして?
     その手帳ならみんな持ってるはずだけど…」

アルミン(確かに手帳は全員が所持している)

アルミン(でも、ミーナが犯人だとしたら…
     彼女の手帳には明らかに他の人と違う点があるはずだ)

アルミン(その根拠は…)




【血で濡れた髪】
【地面から突き出た大きな石】
▶【途切れた血痕】








これだ!







アルミン「覚えてるかな?エレンの金具を使って実験をしたとき、
     地面に途切れた血痕を見つけていたよね?」




ライナー『…は?』

ベルトルト『血痕が途切れてるんだ。その形が…四角なんだよ』

ライナー『四角…?途切れてる…?』

アニ『…ねえアルミン、これってどういう事だと思う?』

アルミン『…』

アルミン「エレンが殴られた際に飛び散った血痕が
     四角に途切れていた…」

アルミン「あの時はそれが何を意味するのかわからなかったけど…
     あれはもしかして、そこに手帳があったって事じゃないかな!?」

ミーナ「…っ!!」

アルミン「そう考えれば形状も大きさも一致する!」

アルミン「おそらく犯人は、そこに手帳を落とした状態で
     エレンを殴ってしまった…」

アルミン「だから犯人の手帳には、
     途切れた分の血痕が残ってるはずなんだ!」

ユミル「なるほど…もしそれで本当に血が付いてたら、
    決定的な証拠になるな」

コニー「でもよ…そんなに大事な証拠なら、
    とっくに処分しちまってるんじゃねーか?」

アルミン「いや、それはないよ」




モノクマ『ちなみに、その訓練兵手帳は完全耐火性で、
     火にかけても燃えない優れ物!』

モノクマ『耐破性も抜群で、
     10トンくらいの引張応力なら平気だよ!』




アルミン「あの手帳は燃やしたり破いたりすることができない…
     それはジャンだって確認してるはずだよ」




ジャン『見ろよ…本当に火にかけても燃えないらしいぜ。
    それにいくら力を入れても破けない…どうなってんだこりゃ』

サシャ「そ、それなら…この施設のどこかに隠したって可能性も…」

アニ「…いや、それもないと思うよ」




モノクマ『うぷぷぷぷ…ていうかさぁ、
     そんな風にボクに突っかかってる暇ないんじゃないの?』

モノクマ『もう時間はほとんど残されてないんだよ?』

アルミン『時間…?』

モノクマ『おやおや、キミはどこまでクマの話を…』

モノクマ『…ああそっか!気絶しててあの場にはいなかったんだっけ!』

アニ「エレンの死体を発見したとき、アルミンとミカサ以外の全員は
   訓練兵手帳を取り出していたよね?」

ベルトルト「うん…モノクマに新しい規則をメモさせられたんだっけ」

アニ「私はその時に見たけど…
   ちゃんと全員手帳を持っていたよ」

ミーナ「…!!」

ユミル「おい、それは確かなんだろうな?」

アニ「間違いないよ。だってあの場面でメモを取らなかったら、
   逆に浮いてしまうからね」

ライナー「…だったら、少なくともあの時点で
     手帳は隠されてないってことか」

アニ「そう。そして私の予想では…」

ミーナ「…っ!!」

アニ「今もまだ…持ってるんじゃないの?」

今日はここまで

クリスタ「えっ…!?」

サシャ「ミ、ミーナ!そうなんですか!?持ってるんですか!?」

ミーナ「ハハハ…何よ…
    全員が手帳を持ってるのを…見た…?」

ミーナ「だったら…そういうあんたはどうなのよ!?
    あんたの方こそ血が付いた手帳を隠したんじゃないの!?」

アルミン「アニの手帳に血なんてなかった!
     それは僕が確認してるよ!」




モノクマ『…ああそっか!気絶しててあの場にはいなかったんだっけ!』

アルミン『一体何の…』

モノクマ『じゃあレオンハートさん、
     アルレルトくんに例のモノ見せてやって!』

ミーナ「な、なら…それなら、アルミンとミカサは!?」

ミーナ「二人はあの場にはいなかった!
    手帳を取り出すところも目撃されてない!」

ミーナ「そもそも、血痕が途切れた場所に手帳があったなんて、
    それこそ憶測じゃない!!」

アルミン「そうだよ。僕は血痕の形状と大きさから推理しただけだ。
     何の根拠もないただの憶測…」

アルミン「でも、それが憶測かどうかは…
     今ここで手帳を見せ合えばわかる事だ!!」

サシャ「て、手帳を見せればいいんですね? それで全部終わるんですね!?」

ユミル「ああ…誰が【協力者】なのか議論し続けるよりも、
    有意義で確実な方法だ」

ベルトルト「手帳に付いた血が現場の血痕と一致すれば、クロ確定。
      血が付いていなければ、アルミンの間違い…」

ライナー「どちらにしろ情報になる。ここで確認しない意味はないな」

ミーナ「み、見せないよ…手帳なんて…見せないから…」

アニ「なぜ拒否するの? あんたがシロなら、
   身の潔白を証明する絶好の機会でしょ?」

ミーナ「認めない…そんな推理、認められない!!」

アルミン「…あくまでも抵抗するんだね」

ミーナ「当たり前だろーが!!あんたの推理は間違いだらけ!
    手帳が証拠だなんて馬鹿げてる!」

アルミン「それなら…もう一度、事件を振り返って、
     君の犯行のすべてを明らかにするよ」

アルミン「それで…終わりにしよう……」

ミーナ「だ・か・ら!
    何が終わりだってんだよッ!!」

アルミン「…ミーナ、君がなんて言おうと、
     すべての謎はもう解けてるんだ…」




アルミン「今回の事件の答えは、これだ!」











―  ク ラ イ マ ッ ク ス 推 理 開 始  ―















―  推 理 を 完 成 さ せ ろ  ―







今日はここまで


次は長めに投稿します

Act.1


【姿勢制御ができずに焦っていたエレン】



(エレンは何を思いついた?)



【懇願するエレン、快く受け入れる犯人】




Act.2


【夜中に訓練所で待ち合わせた二人】



(その後何が起きた?)



(それを見た犯人は何をした?)




Act.3


(犯人が行った偽装工作とは?)



(犯人の犯した重大なミスとは?)








【手帳に飛び散った血痕】
【凶器を埋める犯人】
【バランスを崩すエレン】
【エレンに訓練成績表をせがまれるモノクマ】
【エレンに石を振り上げる犯人】







Act.1


【姿勢制御ができずに焦っていたエレン】



【エレンに訓練成績表をせがまれるモノクマ】



【懇願するエレン、快く受け入れる犯人】




Act.2


【夜中に訓練所で待ち合わせた二人】



【バランスを崩すエレン】



【エレンに石を振り上げる犯人】




Act.3


【凶器を埋める犯人】



【手帳に飛び散った血痕】








犯人は、君なんだ!







アルミン「じゃあ、最初から事件を振り返ってみるよ…」




Act.1


【姿勢制御ができずに焦っていたエレン】




アルミン「“ファイナルデッドルーム”への挑戦権を得る為に、
     僕たちは全員で訓練に励むことにした」

アルミン「その命がけのゲームに勝つことができれば、
     この施設からの脱出も夢ではないからだ」

アルミン「そうして始まった訓練だけど、エレンだけは
     大きく出遅れるハメになってしまった」

アルミン「エレンの金具には不備があって、
     最初の適性検査を上手く通過できなかったからだ」

アルミン「金具の欠陥に気付かなかったエレンは、
     センスがないからできないと思い込んでしまった」

アルミン「努力家のエレンは夜中に練習することを考えたけど、
     一人ではできないという事情があった」

アルミン「姿勢制御の練習を行うためには、
     誰かにクランクを回してもらう必要があったからだ」






【エレンに訓練成績表をせがまれるモノクマ】




アルミン「そこでエレンはある事を思いついた」

アルミン「『どうせ手伝ってもらうんだから、
     一番上手かった奴に教えてもらおう』」

アルミン「そう考えたエレンはモノクマから訓練成績表を受け取り、
     リストの中で一番優秀だった人物に目を付けたんだ」







【懇願するエレン、快く受け入れる犯人】




アルミン「エレンから頼まれたその人物は、
     快くその依頼を受け入れた」

アルミン「きっとすごく嬉しかっただろうね。エレンはそれまで、
     ジャンやライナー達にことごとく助言を断られてたから」

アルミン「だけど、その時のエレンは知る由もなかった」

アルミン「その人物こそが今回の事件の犯人だったんだ」

Act.2


【夜中に訓練所で待ち合わせた二人】




アルミン「当初の予定通り、二人は真夜中の訓練所で落ち合った」

アルミン「日中はあまり練習する時間がないし、
     何よりエレンは他人に見られることを嫌ったからだ」

アルミン「そうして練習を始めた二人だけど…
     ほどなくして大ハプニングが起きてしまった」







【バランスを崩すエレン】




アルミン「クランクを回して宙に浮いた途端、
     エレンは大きく体勢を崩してしまったんだ」

アルミン「エレンの額に傷があったことから、
     おそらく顔面から地面に突っ込んでしまったんだろうね」

アルミン「そうして無防備となったエレンの頭上に…」






【エレンに石を振り上げる犯人】




アルミン「犯人は用意していた石を叩き込んだんだ」

Act.3


【凶器を埋める犯人】




アルミン「そうやってエレンを殺害した犯人は、
     偽装工作に取りかかった」

アルミン「エレンを殴った石の面を上にして、
     半分だけを地面に埋める…」

アルミン「こうすることによって、あたかもエレンが
     石に頭をぶつけて死んだように見せたんだ」







【手帳に飛び散った血痕】




アルミン「だけど犯人は、そこで重大なミスに気付いてしまった」

アルミン「実は犯人は手帳を地面に落としていて、
     エレンを殴った時に飛び散った血が付着してしまったんだ」

アルミン「慌てた犯人は急いで手帳を拾い上げた」

アルミン「現場に血の付いた自分の手帳が残されていたら、
     言い逃れなんてできないからね」

アルミン「だけど僕に言わせれば、犯人の犯したミスはそれだけじゃない」

アルミン「犯人にとってのもう一つのミスは、
     地面に付いた血痕をそのままにしてしまった事だ」

アルミン「おかげで地面には不自然に途切れた跡が残り、
     結果的にそれが大きなヒントを与えてしまったんだよ」

アルミン「もちろん、そこにあったのが手帳だとは言い切れない。
     さっきも言った通り、僕は形と大きさから推理しただけだからね」

アルミン「だけどそれは…
     この場で全員が手帳を見せ合えばハッキリする」

アルミン「僕の推理が正しいのか、君の言ってる事が正しいのか…
     それは今この場で決着が付けられるんだよ」









ミーナ「…っ」

アルミン「そうだよね? ミーナ・カロライナ」







一時中断します

アルミン「…何度も言うけど、君が手帳を見せてくれればハッキリする事なんだ」

アルミン「正直に言うとね…外れてほしいって思ってるよ。
     この推理は間違ってて、君の手帳に血なんて付いてないって…」




クリスタ『うん…だからエレンは、
     夜中にこっそり練習しようとして…』

クリスタ『それで…頭を打って死んじゃったんじゃないかな』

アルミン『…』

クリスタ『そうとしか考えられないよ。
     だって…私たちの中に殺人犯がいるなんて…』

クリスタ『どうしても信じられないよ…』




アルミン「僕だってそう思いたい」

アルミン「エレンが事故で死んだって言うなら、それでもいいよ。
     だってその方が…まだ救いがあるから」

ミーナ「…ッ」

アルミン「だから…君の手帳を見せてよ。
     血なんて付いてない、きれいな手帳を僕に見せてよ」

ミーナ「だ…だから…」

ミーナ「私の…手帳に…血なんか…」




バッ




ミーナ「!!!」

ミカサ「…」

ミーナ「か、返してッ!! 私の手帳!!」

ミカサ「アルミン…これは…」









アルミン「血だ……」







モノクマ「うぷぷぷ…」

モノクマ「議論の結論が出たみたいですね。
     では、そろそろ投票タイムといきましょうか!」

モノクマ「オマエラ、お手元のスイッチで投票してくださーい!」

モノクマ「あ、念の為に言っておくけど…」

モノクマ「必ず、誰かに投票するようにしてくださいねっ!!
     こんなつまらない事で、罰を受けたくないでしょ?」

アニ「………………」

モノクマ「…はいッ! では張り切って参りますよ!!」

モノクマ「投票の結果、クロとなるのは誰か!?
     その答えは…正解なのか不正解なのかーーッ!?」

モノクマ「さあ、どうなんでしょーーッ!?」









WHO IS FOUND GUILTY?

MONOKUMA




V O T E


【ミーナ・カロライナ】
【ミーナ・カロライナ】
【ミーナ・カロライナ】


GUILTY







モノクマ「あらら! 大正解っ!!」

モノクマ「今回、エレン・イェーガーくんを殺したクロは…」

モノクマ「…ミーナ・カロライナさんでしたー!!」

ミーナ「………………」




ミーナ「……はい?」




ミーナ「ちょ、ちょっと…待ってよ……」

アルミン「ミーナ……」

アルミン「本当に、ミーナが…」




アルミン「エレンを…殺したんだね…?」



クリスタ「そ…そんな……」

ミーナ「ち、違う…」

ミーナ「そうじゃ…ない…」

ユミル「…おい。まさか、まだ認めないつもりか」

ミーナ「違う…違うんだって…」

ミーナ「私は…私は…!」

CHAPTER 01 

DAY 03




エレン『悪いなミーナ…こんな遅くに付き合わせちまって』

ミーナ『それは言わない約束でしょ。ほら、もっとシャキッとする!』

エレン『いでっ…わ、わかったよ…』

ミーナ『まったくもう、初日の威勢はどこに行っちゃったわけ?』

エレン『んなこと言われたって仕方ないだろ…』

エレン『あんな…カッコ悪いとこ見せちまったらよ…』

ミーナ『…あのね、エレン』

エレン『?』

ミーナ『誰にだって得意不得意はあるんだよ。それはあって当たり前なの。
    エレンの場合は、人並み以上に姿勢制御ができないってだけ』

エレン『そんなにズバリと言うなよ…』

ミーナ『でもね…だからこそ良いと思うんだ。人間ってそういうものだし、
    足りないものを互いに補うからこそ前に進める』

ミーナ『仲間ってさ…そういうものじゃない?』





エレン『………………』




ミーナ『…な、何よ』

エレン『いや…お前ってそういう青臭い事言うヤツだったっけ?』

ミーナ『ちょっ…青臭いって何よ!それに私たち知り合ってまだ3日でしょ!?』

エレン『あ、ああ…そういやそうだったな…』

ミーナ『まったく…ほら、さっさと行くよ』

― 訓練所 ―




ミーナ『じゃあ回すよ』




エレン『………………』




ミーナ『…こ、今度は何?』

エレン『いや、なんつーか…』

エレン『昼間に思いっきり頭ぶつけちまったから、そのトラウマが…』

ミーナ『もう!やる前からそんな弱気でどうするの!』

ミーナ『私もついてるから大丈夫だよ!ねっ?』

エレン『お、おう…なんかすまねえな』

ミーナ『…じゃあ、今度こそいくよ』

エレン『ああ…頼む』




キリキリキリキリキリキリ




ガン




エレン『!?』ブンッ




ゴッ







ミーナ『………………』

ミーナ『…え?』




エレン『………………』




ミーナ『え…ちょっ…』

ミーナ『エレン!?』





エレン『………………』




ミーナ『エレン、大丈夫!? しっかりして!』




エレン『………………』




ミーナ『…! よかった、生きてる…!』




エレン『………………』





ミーナ『で…でもどうしよう…』

ミーナ『早く誰か呼んで…い、いや、その前に手当てを…』





モノクマ『うぷぷ…』




ミーナ『!?』




エレン『………………』




モノクマ『うぷぷ…うぽぽぽぽ…』

モノクマ『…ぶっひゃっひゃっひゃ!!』

今日はここまで

ミーナ『モノクマ…!?』

モノクマ『はーい、モノクマでーす』

ミーナ『な…なんであんたがここにいるの!?』

モノクマ『それはこっちの台詞だよ』

モノクマ『知り合ってまだ3日なのに逢引とは、
     なかなか隅に置けませんなぁ』

ミーナ『ち、ちがっ…これはそういうのじゃなくて!』

モノクマ『顔真っ赤にして言われたって全然説得力ないよ?』

ミーナ『…!』

モノクマ『いや~、それにしてもどういうプレイなんでしょうな』

モノクマ『出来の悪い訓練兵と鬼教官!ドジって宙吊りになった訓練兵に、
     教官がおしおきと称してあんな事やこんな事を…』

ミーナ『…ハッ』




キリキリキリキリキリキリ




モノクマ『でも、まさか君が教官役とはね!
     カロライナさんってアレなの? 意外とSっ気あったり…』

モノクマ『…って、何やってんの?』

ミーナ『見てわかんないの!?エレンを降ろしてるんだよ!』

モノクマ『えーっ、つまんないの!
     ボクの事は気にしなくていいから続きを…』

ミーナ『ふざけてないで手伝って!!』





キリキリキリキリキリキリ




ミーナ『待っててエレン…!』

ミーナ『もう少しだから…!』




キリキリキリキリキリキリ




モノクマ『…』




モノクマ『キミはじつにばかだな』

ミーナ『…!?』

モノクマ『あっ、ごめん。聞こえちゃった?
     じゃあハッキリ言ってあげるよ。キミは絶望的にバカだ』

ミーナ『なっ…バ、バカって何よ!』

モノクマ『だってさあ、それってもったいなくない?』

ミーナ『えっ…』

モノクマ『もったいないでしょ。今ってかなりチャンスだと思うんだけど』

ミーナ『チャンス…?何を言ってるの?』

モノクマ『まったまたぁ~!とぼけちゃってぇ~!決まってんじゃ~ん!』









モノクマ『ここでイェーガーくんを殺すんだよ』







ミーナ『なっ…!?』

モノクマ『およ?どうしたの?ボク何か変なこと言った?』

ミーナ『馬鹿なこと言わないで!私が人殺しなんてする訳ないでしょ!』

モノクマ『人殺しなんてしない?
     兵士になるのに、そんな甘っちょろい事言ってるの?』

ミーナ『それとこれとは別よ!私は自分のために仲間を殺したりしない!』

モノクマ『…ふーん、自分のため、ねぇ』

ミーナ『…?』

モノクマ『そうじゃないと言ったら?』

ミーナ『は…?』

モノクマ『あのねぇ、カロライナさん。ボクが言った事忘れちゃったの?』

モノクマ『もし誰にも気づかれずに殺人を成功させたクロが現れた場合、
     卒業記念品として…』

モノクマ『【巨人に関する重大なヒミツ】をプレゼントしまーす!!…って』

ミーナ『…!!』

モノクマ『?』

ミーナ『そ、そんなの…信じられるわけないじゃない!
    人類がずっと探し求めてたものを、どうしてあなたが知っているのよ!』

モノクマ『うぷぷ…なんでだろうね』

ミーナ『それに…仮に【重大なヒミツ】が本当に存在したとしても、
    あなたが約束どおり教えてくれるとは限らないでしょう!?』

モノクマ『ボクは本気なんだけどなぁ…ま、そう思うならそれでも構わないよ』

モノクマ『でもさぁ…本当かどうかなんて、この際どうでもいいと思うんだよね』

ミーナ『は!?』

モノクマ『少しでも可能性があるのなら、それに向かって突き進むべきじゃない?
     それが人類の仇…巨人に関することなら尚更だよ』

ミーナ『…!』

モノクマ『調査兵団だっけ?その人たちってさ、巨人に対抗する術を見つけるために、
     わざわざ危険な壁外へと繰り出してるんだよね?』

モノクマ『実に立派だよねぇ。見つかる保障なんてどこにもないのに、
     自分の命を投げ打って人類に貢献しようとしてるんだもの』

ミーナ『…』




ミーナ『…ははは』




モノクマ『?』

ミーナ『あんたの魂胆はわかってるのよ…
    そうやって私に揺さぶりをかけて、エレンを殺すように仕向けてるんでしょ?』

モノクマ『…』

ミーナ『さっきも言ったけどね…私は仲間を殺す気なんてないから。
    あんたの思い通りになんて、絶対させないから』

ミーナ『大体、殺し合いなんかしなくても方法があるじゃない』

ミーナ『“ファイナルデッドルーム”…
    そこでのゲームに勝てば、何でも願いを聞いてくれるんでしょ』

モノクマ『…』

ミーナ『エレンに聞いたけど、現時点で私は成績トップなんだよね?』

ミーナ『このままいけば挑戦権だって獲得できる。
    そうしたら私はそのゲームに勝って…願いを言ってあげるよ』

ミーナ『【巨人に関する重大なヒミツを手に入れて、
    あんたを処刑した上で、全員でここから脱出する】…ってね』

モノクマ『…』

ミーナ『じゃあ、そういう事だから。
    手伝う気がないなら、早くどこかに行って』

モノクマ『…』








モノクマ『ぶっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!』







ミーナ『…!?』

モノクマ『いやあ、実にブラボー!心に響く名演説!
     もし王政が投票制なら、ボクは間違いなくキミに入れるだろうね!』

モノクマ『でもざんねーん!王政は腐った世襲制なのです!』

ミーナ『い、いきなり何言ってんの…?』

モノクマ『そして残念なお知らせがもう一つ!』




モノクマ『キミは重大な勘違いをしていまーす!!』



今日はここまで

ミーナ『勘違い…?』

モノクマ『“ファイナルデッドルーム”だよ。
     キミはそのルールを取り違えているね』

ミーナ『な、何が違うのよ…
    あんたは確かに願いを叶えてくれるって…』

モノクマ『そう、命がけのゲームに勝ち残った場合は、
     【願いを一つだけ叶えられる】の』

モノクマ『“一つだけ”叶えられるの』

ミーナ『…!!』

モノクマ『うぷぷ…おわかりいただけたかな』




【巨人に関する重大なヒミツを手に入れて、
 あんたを処刑した上で、全員でここから脱出する】




モノクマ『キミがさっき提示したこの願い…』

モノクマ『これには三つの願いが含まれているので、
     受け付けることができないのです!』

モノクマ『えっ? ちゃんと一つにまとまってるから
     大丈夫だろうって?』

モノクマ『ボクにそんな屁理屈は通じませーん!』

モノクマ『ですので、こう分けるのが正解です』




【巨人に関する重大なヒミツを手に入れる】
【あんたを処刑する】
【全員でここから脱出する】




モノクマ『この中の一つであれば、問題なく受け付けることができます』

モノクマ『ではもし、それぞれの願いが受け入れられた場合は、
     どんな事が起こるのでしょうか?』





【巨人に関する重大なヒミツを手に入れる】




モノクマ『この願いが受け入れられたとしましょう』

モノクマ『その場合、キミは巨人の根幹に関わる
     重大な情報を得ることができますが…』

モノクマ『それを活かすチャンスは永遠に訪れないでしょう。
     なぜならキミは、この施設内で一生を終えるからです』





【あんたを処刑する】




モノクマ『この願いが受け入れられたとしましょう』

モノクマ『その場合、キミは愛されマスコットNo.1のボクを
     殺すことができますが…』

モノクマ『この施設から出ることはできません』

モノクマ『それどころか、管理者が不在になるので、
     いずれ食糧の供給もストップし…』

モノクマ『キミはこの中で悲惨な最期を迎えるでしょう』





【全員でここから脱出する】




モノクマ『この願いが受け入れられたとしましょう』

モノクマ『その場合、キミは仲間と共に
     この施設から脱出することができますが…』

モノクマ『その先に待っているのは絶望です』

モノクマ『そしてキミは、絶望の底で
     こんな事を思いながら死んでいくでしょう』

モノクマ『“あの施設を出るのは間違いだった”ってね』

ミーナ『な…何よそれ…』

ミーナ『脱出した先に待っているのが絶望…?
    あの施設を出るのは間違いだった…?』

モノクマ『“なんで?”って顔してるね』

ミーナ『当たり前じゃない!
    こんな所、出られるのならさっさと…』

モノクマ『突然ですが、ここでクイズです!』

ミーナ『…!?』

モノクマ『調査兵団だっけ?その人たちってさ、巨人に対抗する術を見つけるために、
     わざわざ危険な壁外へと繰り出してるんだよね?』

モノクマ『実に立派だよねぇ。見つかる保障なんてどこにもないのに、
     自分の命を投げ打って人類に貢献しようとしてるんだもの』

ミーナ『な、何なのよ…次から次へと…
    ってか、それさっき聞いたし…』

モノクマ『さて、そんな人類の希望である調査兵団ですが…』

モノクマ『彼らは今、どんな事になっているでしょうか?』

ミーナ『は…?』

モノクマ『次の三つからお選びください!』









【全滅した】
【全滅した】
【全滅した】







ミーナ『………………』




ミーナ『……はい?』




モノクマ『次の三つからお選びください!』

ミーナ『ねぇ…これってどういう…』

モノクマ『次の三つからお選びください!』

ミーナ『じょ、冗談にも限度ってもんが…』

モノクマ『次の三つからお選びください!』









▶【全滅した】
【全滅した】
【全滅した】







モノクマ『あらら! 大正解っ!!』

モノクマ『そうです!彼らは全滅してしまったのです!』

モノクマ『人類最強と呼ばれた男も、変人と呼ばれた分隊長も…』

モノクマ『みんなもういないのでーす!!』

ミーナ『な…何言って…』

モノクマ『そしてなんと!調査兵団だけでなく…』









モノクマ『人類の大半が死滅してしまいましたー!!』







今日はここまで

ミーナ『…!!』

モノクマ『“そんな馬鹿な”って顔してるね』

ミーナ『さ、さっきから…何言って…』

モノクマ『順を追って説明するとね、こういう事なんだ』

モノクマ『845年、突如として現れた超大型巨人と鎧の巨人により、
     人類はウォール・マリアを失いました』

モノクマ『その後しばらくは何事もなく平和でしたが…』

モノクマ『ある日再び、超大型巨人と鎧の巨人が出現し、
     今度はウォール・ローゼとウォール・シーナも破られました』

モノクマ『その結果、人類のほとんどが巨人に喰い殺されましたとさ』

ミーナ『ウソでしょ…?』

モノクマ『ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!』

ミーナ『そんなのウソに決まってる…
    だって…私がここに連れて来られる前は…』

モノクマ『ローゼもシーナも無事だったって?』

ミーナ『そ、そうよ…私たちが気を失ってる間に
    そんな大惨事が起こったっていうの?』

ミーナ『あり得ない…そんな短期間で二つの壁が破られて、
    人類が滅亡するなんて…』

モノクマ『“短期間”?』

ミーナ『…?』

モノクマ『うぷぷ…キミはまだ勘違いをしているようだね。
     勘のいい人ならとっくに気付いてると思ってたけど』

ミーナ『な、何の話…?』

モノクマ『いいかい?オマエラはね…』









モノクマ『数年間の記憶がまるっと抜け落ちているんだよ!』







ミーナ『…!?…!?』

モノクマ『ぐへへへ、混乱してる混乱してる』

ミーナ『は…?え…?』

モノクマ『でもさ、そう考えると色々と繋がってこない?』

モノクマ『そもそもオマエラが目を覚ました時、
     自分の体に違和感を覚えなかった?』

モノクマ『髪の長さが変わっていたり、
     身に覚えのない傷があったり…』

モノクマ『目線の高さが変わっていたり、
     あんなトコやこんなトコが成長していたり…』

モノクマ『オマエラが“気を失った”のだってそうだよ。
     入団式の最中に体験したという例のめまい…』

モノクマ『要はね、あそこは“記憶の結合点”だったんだ』

モノクマ『オマエラはあそこからの記憶がすっぽり抜け落ち、
     そして今に至るという訳なのです』

モノクマ『その間なんと数年。つまりその期間内で、
     さっき言った大惨事が起きてしまった…という事なのでした』

モノクマ『そう、あれぞまさに…』




モノクマ『“人類史上最大最悪の絶望的事件”!!』



ミーナ『ウソだああっ!!』

モノクマ『ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!』

ミーナ『そんな訳ない!変な事ばっかり言わないでよ!』

ミーナ『だって私は…訓練兵団に入団したばかりで、
    すぐにこの施設に連れて来られたはず!』

モノクマ『それは、キミがそう思い込んでるだけだよ』

ミーナ『あり得ない!そんなの信じられる訳ない!』

モノクマ『“信じたくない”だけでしょ?』

ミーナ『いい加減にしてっ!!』

モノクマ『うぷぷ…ていうかさぁ、
     なんだか急にムキになってない?』

ミーナ『…!!』

モノクマ『という事は、やっぱりあるんじゃないの?』

モノクマ『“自分の記憶が抜け落ちているかもしれない”…
     そう思える心当たりがさ!』

ミーナ『…っ!』

モノクマ『では、ここで話を戻しましょう』

モノクマ『ボクは先ほど、キミが提示した三つの願いを
     それぞれ検証した訳ですが…』




【巨人に関する重大なヒミツを手に入れる】
【あんたを処刑する】
【全員でここから脱出する】




モノクマ『結果は全てダメダメでしたね。
     どの願いを選んだとしても、明るい未来なんてありませんでしたね』

モノクマ『しかし、そんなキミに朗報です』

モノクマ『これからボクが提示する“ある事”をすれば…』

モノクマ『【巨人に関する重大なヒミツ】を手に入れた上で、
     ここから出ていくことができます』

モノクマ『その“ある事”とはズバリ…これでーす!』





ゴロッ…




ミーナ『何…これ…?』

モノクマ『石』

ミーナ『そ、そうじゃなくて!それが一体何だって…』

モノクマ『まったまたぁ~!とぼけちゃってぇ~!決まってんじゃ~ん!』








エレン『………………』







ミーナ『い、イヤよ!そんなの絶対にイヤ!』

モノクマ『いやいや、イヤとかそういう問題じゃなくてさ…』

モノクマ『もはやキミに選択肢なんてないと思うけど』

ミーナ『なっ…!?』

モノクマ『だってキミは、この施設で一生を過ごしたくないんでしょ?
     一刻も早くここから出ていきたいんでしょ?』

モノクマ『だけど外は地獄だよ?
     【巨人に関する重大なヒミツ】を知っているならともかく…』

モノクマ『何も知らない状態で出ていったら、
     訳もわからずに死んでしまうのがオチだよ?』

モノクマ『それにボクは“人類の大半が死滅した”って言ったけどさ、
     全滅しちゃった訳じゃないんだ』

モノクマ『驚異的な侵攻から逃れて奇跡的に生き延びた人たちがね、
     少数ながらいるんだよ』

ミーナ『え…!?』

モノクマ『だけど、いつまでもつのかなぁ?
     それも時間の問題じゃないかなぁ?』

モノクマ『まぁボクとしては…希望にすがり付くような
     見苦しい連中なんて、さっさと死んでもらった方がいいけどね』

モノクマ『だけどもし、キミが生きて【巨人に関する重大なヒミツ】を
     持ち帰ったとしたら…どうなると思う?』

ミーナ『…!』

モノクマ『残った人類と力を合わせて、
     【巨人に関する重大なヒミツ】を最大限に活かせば…』

モノクマ『シーナ、ローゼ、マリアの奪還はもちろん…』




モノクマ『巨人そのものを葬り去ることだってできちゃうかもよ?』



ミーナ『…!! そんな夢みたいな話が…』

モノクマ『あるんだよ!そんな夢みたいな話が!』

ミーナ『で、でも…やっぱり…』

モノクマ『信じられない?それならこれはどう説明するのさ?』

モノクマ『どうしてこの施設には巨人が攻め込んで来ないの?
     どうしてボクは巨人の侵攻を食い止められているの?』

モノクマ『何度も言うけどね…その答えは簡単だよ』

モノクマ『ボクがヤツらのヒミツを握っているからー!!』

モノクマ『という訳で…はいっ、石!』




ズシッ




ミーナ『…!!』

モノクマ『ちょっと重いだろうけど大丈夫!
     イェーガーくんの頭は地面にあるから、適当に振り下ろせば死ぬよ!』

ミーナ『ちょ、ちょっと待って…!』

モノクマ『ほらほら、早くしないと目を覚ましちゃうって!』

ミーナ『できないよ!私には…』

ミーナ『私には…こんな事…!』

モノクマ『…カロライナさん』

モノクマ『ボクはたいして長く生きてきたわけじゃないけど…
     一つだけ確信してることがあるんだ』

モノクマ『【何かを変えることができるのは、
     大切なものを捨てられる人だけだ】ってね』

ミーナ『…!!』

モノクマ『わかるかい?これは自分のためじゃないんだ。
     人類のためにやるんだよ』

ミーナ『人類の…ため…?』

モノクマ『そうさ。キミがその手を血で染めることによって、
     人類は大きな手がかりを得られるんだ』
     
モノクマ『訓練兵11人の命と全人類の命運…どっちが重いかは
     火を見るより明らかだよね?』

ドクン




モノクマ『もしキミがやらないのなら、他の誰かがやるかもしれないね』
     
モノクマ『人類のために、手を汚すのをためらったキミの代わりに、
     自ら殺人の罪を背負うんだ』




ドクン




モノクマ『そんなことさせちゃっていいの?キミが仲間を大切に思うなら、
     むしろ率先してやるべきなんじゃないの?』

ドクン




ガシッ




モノクマ『そう、それでいいんだよ』

モノクマ『言ったでしょ。オマエラはそういう生き物だって』




エレン『………ううっ』

エレン『ミー…ナ…?』




モノクマ『殺りたい放題、殺らして殺るから…』

モノクマ『殺って殺って殺って殺りまくっちゃえっつーの!!』









ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!




ブンッ







今日はここまで

CHAPTER 01 

DAY 04




アルミン(それは一瞬の出来事だった)




ミーナ「!!」




アルミン(雄叫びを上げたミカサがミーナに飛び掛かり…)

アルミン(その攻撃を間一髪、ミーナが受け止めたのだ)

ガシッ


グギギギギ…




ミカサ「なぜ…そんな話を信じたの…?」

ミーナ「くっ…うぐっ…!」

ミカサ「なぜそんなデタラメを真に受けたの…?
    なぜそれがウソだと疑わなかったの…?」

ミカサ「なぜそんなどうでもいい事で…」




ミカサ「エレンが…殺されなければならなかったの…!!」



ミーナ「どうでもよくなんか…ないッ!!」




バッ




ミカサ「…!」

ミーナ「じゃあ聞くけど!あんたには心当たりがないの!?」

ミーナ「“自分の記憶が抜け落ちているかもしれない”…
    そう思える心当たりが、あんたにはないっていうの!?」

ミーナ「私にはあった!」

ミーナ「自分の身長が伸びてる、見覚えのないホクロがある、
    気を失う前よりも身体がガッシリしてる…」

ミーナ「絶対におかしいと思った!でも考えないようにしてた!
    考えるのが怖かったから!」

ミーナ「私はずっと…見て見ないフリをしてたんだよ!!」

ミーナ「だけど、モノクマの話を聞いたとき…」

ミーナ「私にはもう、それが真実としか思えなくなった!」

ミーナ「考えるのを避け続けてきた真実…
    それをモノクマはズバリと言ってのけたんだよ!」

ミカサ「…」

ミーナ「それに…」

ミーナ「あんな事…言われたら…!!」

スカッ




ドサッ




ミーナ『できないよ…私にはできない…!』ポロッ…

ミーナ『私は…人殺しなんかじゃない…!』ポロポロ

モノクマ『…やれやれ。まさかここまでのヘタレだったとは』

ミーナ『なんで私にこんな事させるの…?』ポロポロ

ミーナ『なんでこんな残酷な事させるのよ!!』ポロポロ

モノクマ『“なんで”?』

モノクマ『言ったでしょ、カロライナさん。
     君にはもう選択肢なんてないんだよ』




エレン『ミー…ナ…?』

エレン『なんで…泣いてんだ…?』




モノクマ『仕方ないなぁ…それならもう少しだけ、
     そのちっぽけな背中を押してあげるよ』









モノクマ『キミの家族の話だ』







ミーナ『…!?』

モノクマ『厳格な父親のジーン・カロライナさん、
     優しい母親のニーナ・カロライナさん』

モノクマ『お祖母ちゃんのアンナ・カロライナさん、
     いたずら好きな弟のクリス・カロライナくん』

モノクマ『キミは彼らを少し煩わしく思いながらも、
     本当は好きで好きでたまりませんでしたね?』

モノクマ『突然ですが、ここでクイズです!』

モノクマ『そんな理想ともいえる家族に恵まれたキミですが…』

モノクマ『彼らは今、どんな事になっているでしょうか?』

ミーナ『…!! や、やめて…』

モノクマ『次の三つからお選びください!』

ミーナ『やめてええええええええええ!!』

今日はここまで









【生きている】
【生きている】
【生きている】







ミーナ『!!』

モノクマ『うぷぷ…安心した?
     そう、キミの家族はまだ生きているんだよ』

ミーナ『えっ…!?』

モノクマ『さっきも言ったよね。希望にすがりついて生き延びてる
     見苦しい連中がいるって…』

モノクマ『その中にはね…キミの家族もいるんだよ』

ミーナ『ほ…本当に!?みんな無事なの!?』

モノクマ『うん。でもね、これもさっき言ったけど…』

モノクマ『いつまで生きていられるだろうね?』

ミーナ『!?』

モノクマ『キミはトロスト区の出身だったよね?
     いわゆるウォール・ローゼの囮区域…』

モノクマ『そして壁の中には、住んでる地区に対する
     根強い差別があるみたいじゃん?』

ミーナ『何が…言いたいの…?』

モノクマ『生き残った連中ってのはね、
     ウォール・シーナの人間がほとんどなんだ』

モノクマ『まあ当たり前だよね。一番奥の富裕区だし、
     巨人の侵攻に備える時間もあったはずだから』

モノクマ『ではそんな中で、身分を隠したキミの家族が
     トロスト区出身だとバレてしまった場合…』

モノクマ『彼らは一体どうなってしまうでしょーーか?』

ミーナ『!!』

モノクマ『まあ、言わなくてもわかるよね』

ミーナ『そ、そんな… そんな些細な事で…』

モノクマ『些細だけど深い問題だよ。ストレスMAXな状況下では、
     そういう事が争いの火種になったりするんだ』

モノクマ『それがわかっているからこそ、現にキミの家族は
     身分を偽っている訳でして』

ミーナ『…っ!』

モノクマ『うぷぷ…しかし皮肉ですなぁ。
     人類が巨人に立ち向かわなければいけない時に…』

モノクマ『人類同士の“コロシアイ”が勃発するかもしれませんなぁ!』





エレン『ミーナ…』

エレン『一体…何の話を…』




モノクマ『このまま巨人が人類を喰らい尽くすか』

モノクマ『それとも人類が共喰いを始めるか』

モノクマ『どちらにしろ時間の問題だよ』

ミーナ『………………』




エレン『おい…ミーナ…』




モノクマ『もう一度、冷静に考えてみなよ』

モノクマ『50日も訓練してる暇あるの?
     その先に彼らを救う未来はあるの?』

モノクマ『キミに迷ってる時間なんてあるの?』

モノクマ『何度でも言うけどね…』




【エレン・イェーガーを殺す】
【エレン・イェーガーを殺す】
【エレン・イェーガーを殺す】








モノクマ『“オマエ”に選択肢なんてないんだよ!!』







一時中断します

ガシッ


グギギギギ…




ミカサ「ふざけるな…!!」

ミーナ「…ッ!」

ミカサ「家族がいるのはあなただけじゃない…!」

ミカサ「自分の家族を救うために、
    他人の家族を犠牲にする理はない…!!」

ミーナ「ぐッ…!」

ミカサ「よくも…よくも…!」




ミカサ「よくも私の家族をーーーーーーーッ!!」







モノクマ「スターーーーーーーーップ!!」




ミカサ「…!!」

モノクマ「コラー、ケンカはいいけど、
     周りが引いちゃうようなハードなケンカはダメー!」

ミーナ「…っ」

モノクマ「ほら、みんなの顔を見てみなさいよ!」

モノクマ「ドン引きを通り越して、
     アホみたいにポカーンとしちゃってるじゃん!」

アルミン(モノクマのその言葉が合図になったかのように…)

アルミン(僕らの喉に堰き止められていた戸惑いが、一気に口から溢れ出した)




ジャン「お、おい… 何だよ今の話!?」

ユミル「調査兵団が…全滅しただと…?」

サシャ「う、ウソですよね!?
    壁が全部破られたなんて、冗談ですよね!?」

クリスタ「どういう事…? 人類が…死滅…?」

コニー「俺の村は…家族はどうなったんだ!?
    父ちゃんは!?母ちゃんは!?サニーとマーティンは!?」





モノクマ「シャラーーーーーーーップ!!」




コニー「…!!」

モノクマ「うるせぇなあ。どいつもこいつもギャアギャアと…
     これ以上ボクの野性的な部分を目覚めさせないでくれる?」

アニ「…」

モノクマ「それとね、己の名誉の為に言っておくけど…」









モノクマ「ボクはカロライナさんにそんな事言ってないからね?」







ミーナ「………………」




ミーナ「……はい?」




モノクマ「ボクはそんな事一言も言ってないよ。
     ついでに言うと、昨日の夜カロライナさんとも会ってないから」

ミーナ「な…な…」

ミーナ「何言ってんの…あんた…!?」

モノクマ「要するに、今のは全部…」








モノクマ「カロライナさんがでっち上げた作り話なのーー!!」







アルミン(…もしも“絶望”という感情を体現するとしたら)

アルミン(今の彼女の表情が、一番それに近いかもしれない)




モノクマ「それにしてもさ…よくそんな言い訳しようと思ったね。
     そんなのボクがいれば、すぐにウソだってバレるのに」

ミーナ「な…な…何…言ってんのよ…」

ミーナ「あんたが私に言ったんじゃない!
    あんたの話を聞いたから私は!!」

モノクマ「じゃあ、証拠は?」

ミーナ「は…!?」

モノクマ「ボクが事件現場にいたっていう証拠はあるの?
     ボクがそんな話をしたっていう証拠はあるの?」
     
モノクマ「あるなら今すぐ見せてくれる?」

モノクマ「血の付いたキミの手帳みたいにさ!!」

ミーナ「証拠なんて…ある訳ないじゃない…」

モノクマ「ま、当然だよね。そんな事実ないんだから」

ミーナ「酷いよ…卑怯だよ…あんた…!」

モノクマ「キミにだけは言われたくないよ」

モノクマ「自分だけ助かればいい。他のヤツなんかどうでもいい。
     そんな自己中心的な動機で殺人に及んだばかりか…」

モノクマ「自分を正当化させる為にボクに濡れ衣を着せて、
     挙句の果てには家族まで引き合いに出すなんて…」

モノクマ「…はっきり言ってあげようか?」




モノクマ「クズだよ“オマエ”は!!」



コニー「…なぁ、さっきから…全然訳わかんねえぞ…」

コニー「ウソだって言うのか…? 今の話が全部…?」

ミーナ「ち、違う!それだけは違う!私は本当に…!」

モノクマ「はいはい。狼少年がいくら吠えたところで
     説得力なんかないから」

ミーナ「全部あんたが…!!あんたが…ッ!!」

モノクマ「…まぁ、いいや。言いたい事は色々あるけど…」

モノクマ「いい加減に始めよっか。みんな待ってるんだしさ」




アルミン(ミーナの顔が凍りつく)




ミーナ「は、始めるって…何を…」

モノクマ「はぁ?そんなの決まってんじゃん」








モノクマ「お・し・お・き !!」







ミーナ「お、おしおきって…!」

ミーナ「しょ、処刑……?」




9 兵団裁判で正しいクロを指摘した場合は、
  クロだけが処刑されます。




ミーナ「ちょ、ちょっと待ってよ!」

ミーナ「私は…あいつに唆されて…」

モノクマ「仮にそうだとしても、
     キミがイェーガーくんを殺したのは事実でしょ?」

モノクマ「ボクが唆したからって、
     踏みとどまらずに実行しちゃったのはキミでしょ?」

モノクマ「だったら罰を受けなきゃ!秩序を乱した者にはペナルティ!
     それが社会のルールなんだから!」

ミーナ「…!!」

モノクマ「アッカーマンさんも安心してね!」

モノクマ「こういうクズは、できるだけ苦しめて殺してあげるから!!」

ミーナ「や、やめて…」

モノクマ「今回は成績優秀だったミーナ・カロライナさんの為に、
     スペシャルなおしおきを用意させて頂きましたぞっ!!」

ミーナ「みんな…信じてよ!」

ミーナ「私は人類の為に!!みんなの代わりに!!」

モノクマ「では張り切っていきましょう! おしおきターイム!」








ミーナ「イヤだぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああ!!」















GAME OVER




カロライナさんがクロにきまりました。
おしおきをかいしします。







今日はここまで

――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――
―――――――――
――――








???「うわぁ…」

???「クッ…クソ!!」

???「ト…トーマス!!」




ゴクン




バキバキ




???「ま…!!」

???「待ちやがれ!!」

???「よせ!単騎行動は――」

???「エレン!!」

???「下にも1体――」

エレン「うッ!!?」




ドゴオオオオオ








エレン「………………」







???「そんな…エレンが…」

???「足が…」

???「お…おい!やばいぞ!止まってる場合か!」




グググ




???「来るぞ!かかれッッ!!」

???「…!? 何ボケッとしてんだ!アルミン!」




アルミン「………………」




???「ミーナ、お前もだ!早く立体機動に…」




バキッ




???「うわあああああああああああああ!!」

ミーナ「…!!」

ミーナ「な…何これ…?」




バキッ


バキバキ




ミーナ「何…なのよ…」

ミーナ「一体何がどうなって…」

ドゴオオオオオ




ミーナ「!?」




ガラガラガラ…




ミーナ「ううっ…痛ッッ…」

ミーナ「…ッ?」









ミーナ「!!!!」







//: : : : : : : l :、: : : | \:|ヽメヽ: : : : : :ミ‐-        ヽ

 ∥/ : : : i: |: |、:|\: ト  /=、Y: : : : : : :ミi i         }
  {: |: : : : |: |: | \ リ、ノ 佖) |:|、:.:.:.:.:.:.:.:} {         |
  |/l: : : : ∨lヘ_、ー、`  ゞ''゙゙i:| il:.:.:.:.:.i:.| ゙,        i i
  i| ∨:.:.:.:.ヾ{ ( 佖), '、  ヽ‐-ミヽ|ヽ:l、:|ノ 丶       ノ 、
  ヽ 》:.:.:.:.:.\ー''゙ ノ、,,__ノ   ヽヘ リ リ    \
    {:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ 〈   ン´, ゙̄ 乂  、,___>

    ∨:.:.:.ヽ:.:.ト\ \/´ー''´  ノ     ノ___i
    人:.:.i:.|\| ヽ`ー----=='゙ __,,/´    ゙、
      ヽ|ヾ リ、       ̄ ̄ヽ            '、
           \         \           \









ま  る  か  じ  り




席次不明

ミーナ・カロライナ 処刑執行







アルミン(その場の全員が立ち尽くしていた)

アルミン(誰も言葉を発せなかった)

アルミン(この世のものとは思えない、その光景を目の当たりにして…)

アルミン(そこにはもう一人の僕がいた)

アルミン(死んだはずのエレンがいた)

アルミン(そして…)




イヤダァァァァァァアアアアァァァァアアア!!




アルミン(今まさに巨人の餌食になろうとしているミーナがいた)

今日はここまで

ガキィィン…ガキィィン…




アルミン(両手でがっしりとミーナを捕らえた巨人は、
     その眼前で何度も歯を噛み合わせる)

アルミン(機械的に、一定のリズムを保って…)

ガキン…ガキン…ガキン…

ガキ ガキ ガキ…




アルミン(やがてそのリズムは徐々にテンポを上げ…)




ガキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ !!!!




アルミン(最終的には、信じられないスピードになるまで
     巨人のアゴが加速した)

ギャアァァァァァァアアアアァァァァアアア!!




アルミン(開閉するアゴに向かって、
     ゆっくりとミーナが進んでいく)

アルミン(巨人の歯が噛み合わさる度に、
     その歯先から火花が散る)

アルミン(そして火花が散る度に…
     ミーナの泣き顔が照らし出される)

ギャアァァァァァァアアアアァァァァアアア!!




アルミン(僕は以前、似たような光景を見ていた)

アルミン(そう…あれは幼い頃に、
     両親が見せてくれた手回し式の機械…)

アルミン(名前は確か…)









アルミン(ミンチ肉製造機)







モノクマ「いやっほうっ!!」

モノクマ「アドレナリンがぁーーー染み渡るーーーッ!!」




アルミン(気が付くと巨人が消えていた)

アルミン(もう一人の僕も、足をもがれたエレンもいなくなっていた)

アルミン(そして、さっきまでミーナがいた場所には…)




アルミン「…!!」




アルミン(真っ赤にテカった“何か”があった)

モノクマ「ぐへへ…やっぱりこの瞬間は格別ですなあ」

モノクマ「さっきまでピチピチだった女の子が
     グチャグチャのお肉になっちゃうなんて…」

モノクマ「頭がフット―しそうだよおっっ」

クリスタ「いやああああああああああああ!!」

サシャ「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

モノクマ「あらあら、もったいないよブラウスさん!
     せっかく胃袋に詰め込んだ【詰め合わせスペシャル】が!」

サシャ「オエエエエエエエエエエエエエッ!!」ビチャビチャ

モノクマ「もう、ただでさえ貴重なお肉だっていうのに…」

モノクマ「まぁいいや、じゃあまた作ってあげるよ!
     ちょうど“新鮮な食材”もできたばかりだし…」









アルミン「いい加減にしろッッ!!!!」







アルミン「全部…お前のせいじゃないかッ!!」

モノクマ「にゃぽ…?」

アルミン「お前が僕たちを閉じ込めたから…」

アルミン「お前が殺人を強要したから…」

アルミン「お前がミーナを追いつめたから…」




アルミン「だからこんな事になったんじゃないかああッ!!」



今日はここまで

アルミン(僕は無我夢中で、
     モノクマに飛び掛かった)

アルミン(だけど…)




アニ「やめておきな…」




アルミン(そんな僕の腕を…アニが強く掴んだ)

アルミン(強く…跡が残りそうなほど強く……)

アニ「今はやめておきな…」

アニ「今はまだ…その時じゃない」

アルミン「………………」

アルミン「…クソッ!!」

モノクマ「あー、ドキドキ。
     ぶん殴られるのかと思っちゃった。だけど…」

モノクマ「命拾いしたなぁ! オイッ!!」

モノクマ「それにしても、アルレルトくんはどうしちゃったのかな?
     いきなりあんな大声出して、キミらしくもない…」

モノクマ「あっ、もしかしてイェーガーくん?
     イェーガーくんの霊が乗り移っちゃったとか?」

アルミン「…ッ!!」

アニ「…ねえ、モノクマ」

モノクマ「はいはい、何でしょう?」

アニ「一つ聞いておきたい事があるんだけど」

モノクマ「はにゃ?どうしたの改まって」









アニ「どうしてあんな風にしたの?」







モノクマ「…へ?」

アニ「…どうしてあんな風にしたの?
   爆発させるんじゃなかったの?」




モノクマ『あーもう余計にムカつく!よし決めたぞ!
     オマエラをおしおきする時は爆発させてやる!ってか爆発しろ!』




モノクマ「…あー、アレね」

モノクマ「気が変わったの」

アニ「…最初からこうするつもりだったんじゃない?」

モノクマ「…? ずいぶん変なところで突っかかってくるんだね」

アニ「………………」
     
モノクマ「でもまあ、わかったよ。そこまで言うなら…」




モノクマ「いずれ爆発させてあげるよ」




ベルトルト「どういう意味…?」

モノクマ「うぷぷ…まぁ、そのうちわかると思うよ」

ユミル「…私からも聞きたい事がある」

モノクマ「おやおや、今日はみなさん熱心ですね。
     できればその情熱を普段の訓練にも…」

ユミル「さっきお前はこう言ったよな?」









モノクマ『ボクはカロライナさんにそんな事言ってないからね?』








モノクマ「はい、確かに言いましたね」

ユミル「それは間違いないのか?
    本当にお前は…ミーナを唆していないんだな?」

モノクマ「だから言ってるじゃん。そんな事実はないって」

モノクマ「ボクはあんな事一言も言ってないし、
     昨日の夜カロライナさんとも会ってないよ」

ユミル「だったら…あれはウソなんだな?」

モノクマ「ん? あれって?」

ユミル「ミーナの話に出てきた…
    調査兵団が全滅したとか、壁が全部破られたとか…」

ユミル「あれも全部…ウソってことでいいんだな?」

モノクマ「………………」









モノクマ「いや、あれは本当だよ」







ユミル「………………」




ユミル「…あ?」




モノクマ「話が少々ややこしくなってしまっているようだね。
     要するにこういう事さ」

モノクマ「ボクがカロライナさんの殺人を促したという事実はありません。
     あれは全て、彼女がでっち上げた苦しい言い訳です」

モノクマ「しかしながら…」




モノクマ「調査兵団が全滅したこと」

モノクマ「人類の大半が死滅したこと」

モノクマ「全ての壁が破られたこと」

モノクマ「そして、オマエラが数年間の記憶を失っていること」








モノクマ「それらは全部、本当のことでーす!!」







今日はここまで

ユミル「…!!」

ライナー「な…なんだと…!?」

モノクマ「ふぅ…思い切って言ったらスッキリした。
     やっぱり、記憶喪失ネタなんて時代遅れですよね…」

モノクマ「実は世界が滅亡してましたーなんて、
     ありきたりな設定でイヤになりますよね」

モノクマ「そんなネタを物語終盤まで引っ張るなんて、
     恥知らずな卑怯者のする事ですよねー」

コニー「ちょ、ちょっと待てよ!
    お前の言ってる事…全然わかんねーぞ!!」

モノクマ「やだなあ、ニワトリ並の脳みそなの?」

モノクマ「つまりですね、“カロライナさんがボクに唆された”
     っていうのはウソだけど…」

モノクマ「“カロライナさんが話した内容自体”はホンモノなの!!」

アルミン「ウソだッ!!」

モノクマ「ボクはウソつきじゃない!その自信がボクにはある!」

アルミン「だったら…だったらどうして、
     ミーナはその事を知っていたんだよ!」

モノクマ「さあね。テキトーに練った設定が
     たまたま当たってたんじゃない?」

アルミン「そんな都合のいい話がある訳ないだろ!!」

アルミン「やっぱりミーナが言っていた事は本当だったんだ!
     ミーナはお前に唆されたから…エレンを…!!」

モノクマ「…あのねえ、アルレルトくん。
     何度も同じ事言わせないでくれる?」

モノクマ「仮にそうだとしても、
     イェーガーくんを殺したのはカロライナさんでしょ?」

モノクマ「ボクに唆されたからって、
     踏みとどまらずに実行しちゃったのはあの女でしょ?」

モノクマ「だからさぁ、わかる?」




モノクマ「ボクを憎むのはお門違いなんだよ!!」



アルミン(…今まで、こんな気持ちになったことはなかった)

アルミン(こんなに誰かを憎いと思ったのは、
     生まれて初めてだった)

アルミン(もしかしたら…本当に乗り移ったのかもしれない)

アルミン(エレンの無念が… 怒りが…)

サシャ「も、もう…嫌ですよ……」

サシャ「こんな事…これからも続けなきゃいけないんですか…?」

サシャ「もう嫌ですよ…!!」

モノクマ「それが嫌なら…」









モノクマ「きっぱりと、“外の世界”との関係を断ち切って、
     ここでの一生を受け入れるんだね」

モノクマ「オマエラに、それが出来たらの話だけどね…
     うぷぷぷぷ…」















モノクマ「うっひゃっひゃっひゃ!
     ぶっひょっひょっひょっひょ!!」







アルミン(その日 僕たちは思い出した)




モノクマ「エクストリーーーーーーーム!」

モノクマ「これってまさに…絶望だよね!」




アルミン(ヤツに支配されていた恐怖を…)




モノクマ「アーッハッハッハッハッハ!!」




アルミン(鳥籠の中に囚われていた屈辱を…)









第一章

イキキノレ


END







生き残りメンバー 10人




 【ミカサ・アッカーマン】
 【ライナー・ブラウン】
 【ベルトルト・フーバー】
 【アニ・レオンハート】
×【エレン・イェーガー】
 【ジャン・キルシュタイン】
 【コニー・スプリンガー】
 【サシャ・ブラウス】
 【クリスタ・レンズ】
 【アルミン・アルレルト】
×【ミーナ・カロライナ】
 【ユミル】









To Be Continued







今日はここまで


次の章までは時間が空きます

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