千早「ちょっと相談したいことがあるのだけど……」 (57)


千早「律子、ちょっといいかしら」

律子「あら千早じゃない、何か用?」

千早「実は、律子にちょっと相談したいことがあるのだけど……」

律子「千早が私に相談?……珍しいこともあるものね」

千早「迷惑、だったかしら?」

律子「そんなことはないけど、どうして私に?相談ならプロデューサーにした方が…」

千早「それはそうなのだけど、この相談は律子にした方が良い答えをもらえるかと思って」

律子「ふむ、そんな風に言われたら断るわけにはいかないわね……いいわ、聞いてあげる」

千早「ありがとう、助かるわ」


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律子「それで、相談っていうのは?」

千早「実は、春香のことで少し……」

律子「春香がどうかしたの?」

千早「私、ひょっとしたら……春香に嫌われたのかもしれないわ」

律子「あなたは一体何を……あれ、何この感じ…これデジャヴってやつかしら」

千早「最近、春香が私に対してイジワルばかりしてくるのよ」

律子「……千早」

千早「何かしら、律子」

律子「そんなことは絶対ありえないから、安心しなさい」

千早「律子、私はまだ何も話していないのよ?そんな風に適当にあしらわないで頂戴」


律子「聞かなくても分かるわよ、あなたの考えすぎよ」

千早「律子、話も聞かないでどうしてそんな風に言い切れるのかしら?」

律子「どうして、って言われてもねぇ…あなたと春香よ?そんなことあるはず無いじゃない」

千早「私だってそう思いたいわよ、でも不安で不安でしょうがないのよ」

律子「だから考えすぎだってば」

千早「お願いよ律子、そんなこと言わずに、せめて話だけでも聞いてちょうだい」

律子「あぁ、もう!面倒くさいわねぇ……分かったわよ!聞いてあげるから話しなさい」

千早「ありがとう律子、それでね…実はこの間、こんなことがあったんだけど…」

――――――
――――
――


春香「千早ちゃんおはよーっ!」

千早「おはよう春香……あら、その包みは何かしら?」

春香「これ?よくぞ気付いてくれました!知りたい?中身なんなのか気になる?」

千早「まぁ、気になるといえばなるけれど」

春香「ふふーん、聞いて驚きなさい!なんと、これは」

千早「でも、どうせクッキーでしょう」

春香「ズコーッ!」

千早「……どうやら図星だったみたいね」

春香「ひ、ひどいよ千早ちゃん!先に言わないでよっ!」

千早「ご、ごめんなさい」


春香「しかも何だよ!『どうせ』って、そんな言い方しなくてもいいじゃん!」

千早「そ、それは悪かったわね……謝るわ」

春香「うぅー…どうせ私なんて、クッキーばっかり作ってくるワンパターンな女なんですよぅ」

千早「そこまでは言ってないじゃない……」

春香「どうせ私はお菓子作りしか取り柄の無い普通の女の子なんですよぅ」

千早「だからそこまで言ってないじゃ」

春香「ふんだ、千早ちゃんのバカ!バーカ、バーカ!」

千早「……」

春香「ふーんだっ!もう千早ちゃんなんか知らないもん!」


千早「ねぇ、春香」

春香「つーん」

千早「春香ってば」

春香「何かな千早ちゃん!」

千早「もう、いつまでも怒ってないで、いい加減機嫌を直してよ」

春香「別に怒ってないもん!春香さん怒ってないもん!」

千早「いつまでもそんな脹れっ面していたら、可愛い顔が台無しよ?」

春香「か、かわいい!?千早ちゃんいきなり何言い出すのさっ!」

千早「でも事実なんだからしょうがないじゃない」

春香「そっかぁ、嬉しいなぁ、えへへ……って、いやいや!そんなんじゃ流されないからね!」


春香「それで、何か用かな千早ちゃん?」

千早「えっと、その……春香、クッキー作って来たのよね?」

春香「うん、そうだよ」

千早「だからね……その」

春香「何々?どうしたの千早ちゃん?」

千早「あの……その、出来ればクッキーを……」

春香「千早ちゃーん?言いたいことがあるならハッキリ言ってよー」

千早「もう春香ってば、本当は分かってるくせに」

春香「そんなことないよ、春香さんは察しが悪いからちゃんと言ってくれないと分からないよー?」

千早「で、出来ればそのクッキー……食べたいかなぁ、なんて」


春香「……ふーん」

千早「その……だ、ダメかしら?」

春香「そっかそっかー、千早ちゃんは春香さんの作ったクッキーが食べたいんだね!」

千早「えぇ、そうよ、だからその…もしよかったら」

春香「でもあーげないっ!」

千早「えっ」

春香「あげないもん」

千早「……」

春香「あげないもん」

千早「…………えっ?」


春香「千早ちゃんにはクッキーあげない」

千早「は、春香……?」

春香「千早ちゃんさっき春香さんのクッキーを『どうせ』なんて言ったからダメ、あーげないっ!」

千早「あれは、その……本心で言ったわけじゃ」

春香「でも春香さんはすっごく傷ついたもん」

千早「だ、だからそれについてはちゃんと謝ったじゃない……」

春香「だーめっ、許さないもん」

千早「は、春香……」

春香「ふーんだ、千早ちゃんになんか絶対クッキーあげないもん」

千早「は、春香ぁ……」


春香「ふふっ、なーんてねっ!冗談だよっ!」

千早「えっ?」

春香「ゴメンね千早ちゃん、本当は怒ってないけどちょっとだけ意地悪したくなっちゃった!」

千早「ほ、本当に怒ってないの……?」

春香「怒ってないよ、驚かせちゃったかな?ゴメンね!」

千早「もう、春香ってばヒドイわ……本気で驚いたんだから」

春香「むー…千早ちゃんだってヒドイこと言ったくせにぃー」

千早「だからそれはちゃんと謝ったじゃ…」

春香「いいよ許してあげる!ほら千早ちゃん、クッキー食べよっ!」

千早「……えぇ、そうね、いただくわ」


――――――
――――
――

千早「ということがあったのよ」

律子「あっそう……」

千早「ねぇ、ひどいと思わないかしら?」

律子「思わないわよ」

千早「律子……あなた、気は確かなの?」

律子「正常よ、むしろあなた達の仲の良さを再確認させてもらったわ」

千早「律子、ワケの分からないことを言わないでちょうだい」

律子「ワケが分からないのはこっちの方よ」


千早「いいこと律子、よく考えてみなさい?」

律子「なぜ私が諭されているような立場になるのよ」

千早「春香は、怒ってもいないのに怒ったフリをして、私を不安がらせたのよ?」

律子「確かにそうかもしれないわね」

千早「つまり春香は演技をして私を騙したのよ」

律子「随分とイヤらしい言い方をするわねぇ……」

千早「私、春香を怒らせたんじゃないかって凄く不安になったわ……」

律子「まぁ、気持ちは分からなくもないけど」

千早「これが悪質なイタズラでなくて、何だと言うの!?」バンッ

律子「茶目っ気たっぷりじゃない、あとうるさいから机叩かないでちょうだい」


千早「律子……あなた、随分と考え方が前向きなのね」

律子「逆になぜあなたはそんなにも捻じ曲がった考え方になるのよ」

千早「律子も同じ立場になってみればきっと分かるわ」

律子「とは言え、春香も17にもなって随分と子供じみたことをするのね」

千早「そうでしょう?仮にも私よりもお姉さんなのに……」

律子「確かに、その点に関してはもう少し大人になってもらいたいわねぇ」

千早「まぁ、でも…」

律子「ん?」

千早「脹れっ面の春香もアレはアレでとても可愛かったわ」

律子「あぁ、そうですか……」


千早「それにしても、楽観的な律子には今一つ、話がうまく伝わらなかったようね」

律子「さっきから私が間違っている前提で話を進めないでくれるかしら」

千早「そんな律子も、この後の話を聞けばきっと分かってくれるはずだわ」

律子「まだあるの?もう既にお腹いっぱいなんですけど」

千早「これは、さっきの話の続きなのだけれど」

律子「あぁ、二部構成なのね」

千早「二人で一緒に春香のクッキーを食べようとするところから話は始まるのだけど」

律子「はぁ……仕事に戻りたい」

――――――
――――
――


春香「ちーはーやーちゃん!それじゃあクッキー食べよっか!」

千早「えぇ、そうね」

春香「今回はねー、結構自信作なんだよ!」

千早「そうなの?楽しみね」

春香「ふふーん、ささやかだけどお茶会ですよ!お茶会っ!」

千早「もう春香ってば、はしゃぎ過ぎよ」

春香「それじゃあクッキーをお皿に広げてっと…じゃじゃーん!どうかな千早ちゃん!」

千早「いつものことだけど凄いわね、とっても上手に出来てるわ」

春香「ホントに?えへへぇ……嬉しいな」


千早「それじゃあ、どれからいただこうかしら」

春香「あっ、ちょっと待って千早ちゃん!」

千早「何かしら、春香」

春香「千早ちゃんはどのクッキーが食べたい?」

千早「どれって……そうね、それじゃあ…これかしら」

春香「これ?これだね!それじゃあ……ふふっ」

千早「……?」

春香「はいっ、千早ちゃん!あーん」

千早「……はい?」


春香「どうしたの千早ちゃん?ほら、あーんってば」

千早「あの、春香……?」

春香「千早ちゃん、あーんだよ?ほらほら、口を開けてよ」

千早「……」

春香「……千早ちゃん、クッキー食べないの?」

千早「食べるわよ」

春香「じゃあどうぞ、はいっ!」

千早「いえ、だからその……春香」

春香「ん、何かな?」

千早「これは一体、何の真似なのかしら?」


春香「何って、分からないかな?」

千早「分からないわよ」

春香「春香さんが、千早ちゃんにクッキーを食べさせてあげようじゃないか!」

千早「遠慮するわ」

春香「えっ?」

千早「えっ」

春香「……なんで?」

千早「何でって、子供じゃないんだからクッキーくらい一人で食べられるわよ」

春香「ダメだよ!春香さんは千早ちゃんにクッキー食べさせる係なんだからっ!」

千早「そんな係無いわよ」


春香「えぇぇーっ!いいじゃん千早ちゃん、堅いこと言わないでよっ!」

千早「クッキーくらい普通に食べさせてちょうだい」

春香「そんなこと言わずにさぁー、別にそんなに大したことじゃないんだし!」

千早「でも、やっぱりそういうのって、ちょっと恥ずかしいわよ…」

春香「大丈夫だよ、女の子同士なんだからっ!」

千早「そうは言っても」

春香「むぅー、千早ちゃんの意地っ張り!そんなこと言う子にはクッキーあげません!」

千早「ちょっと春香!?」

春香「どうしても食べたかったら、春香さんに食べさせてもらう以外に道は無いんだよ?」

千早「春香、そういうのちょっとズルイわ…」


春香「ほらほら千早ちゃーん、観念しなよー」

千早「もう、分かったわよ……一枚だけよ?」

春香「よしきたっ!それじゃあ千早ちゃん、あーんして?」

千早「あ、あーん……」

春香「ほいっ」

千早「はむっ……」サクサク

春香「どうかな?どうかな?」

千早「……」モグモグ

春香「どうかな千早ちゃん?お味の方はどうですかな?」

千早「お、美味しいに決まってるじゃない……」


春香「ホントに?やたっ!」

千早「当たり前じゃない、春香のクッキーを不味いだなんて例え嘘でも言えないわよ」

春香「そっかぁ、そこまで言ってもらえるなんて嬉しいなぁ……えへへぇ」

千早「それじゃあ、あとは普通に食べてもいいのよね?」

春香「えっ、ダメだよ?」

千早「一枚だけって言ったわよね?」

春香「私、別に一枚だけでいいなんて了承した覚えはないけど?」

千早「そんな屁理屈が通用すると思ってるの?」

春香「思ってるよ!」

千早「えぇぇぇー……」


春香「ほら千早ちゃん、次のクッキーはどれがいいのかな?」

千早「春香、お願いだから普通に食べさせてちょうだい」

春香「……むぅ」

千早「どうしたの春香?」

春香「千早ちゃんは、私にクッキー食べさせてもらうの、イヤなの?」

千早「えっ?」

春香「そっか…そうなんだ、千早ちゃんはきっと私のこと、鬱陶しいとか思ってるんだ」

千早「ちょっと春香、いきなり何を……」

春香「いいんだ千早ちゃん……そうだよね、春香さん面倒くさいよね」

千早「は、春香……私そんなこと、一言も言ってないじゃない」


春香「クッキーくらい普通に食べたいよね、ごめんね無駄に絡んだりしちゃって」

千早「ちょっと、春香ってば……」

春香「ごめんね迷惑かけちゃって……」

千早「そ、そんな…迷惑だなんて」

春香「あっ、私のことは別に気にしなくていいから!遠慮しないでクッキー食べてね!」

千早「気にするなって言われても、そんな……」

春香「私ってホントに空回りばっかりだよね、ははっ……何やってんだろうね」

千早「……」

春香「……ぐすっ」

千早「……っ!?」


春香「あれれ、おかしいな……何で春香さん、涙なんか流しちゃってるんだろう」

千早「ち、ちょっと春香……何も泣くことないじゃない」

春香「そうだよね、全部春香さんの自業自得なのに泣くだなんておかしいよね……ぐすっ」

千早「は、春香ぁ……」

春香「ご、ごめんね千早ちゃん、すぐに泣き止むから……ぐすっ」

千早「……っ!は、春香!」

春香「……何かな、千早ちゃん?」

千早「あ、あーん……」

春香「……千早ちゃん、何してるの?」


千早「何って、春香にクッキー食べさせてもらおうかなって」

春香「ふぇ……?」

千早「何だか急に春香にクッキーを食べさせてもらいたくなっちゃったのよ、妙な話だけど」

春香「……千早ちゃん、いいの?」

千早「いいも何も、今の私を見れば分かるでしょう?」

春香「……」

千早「ほら、早くしなさい、早く私に春香のクッキーを食べさせてちょうだい」

春香「えへへ…しょうがないなぁ千早ちゃんは、そこまで言うなら食べさせてあげよっかな!」

千早「まったくもう、調子がいいんだから……」

春香「それじゃあはい!千早ちゃんどーぞっ!クッキー召し上がれっ!」


――――――
――――
――

千早「ということがあったのよ」

律子「へぇー」

千早「これは流石にヒドイわよね?」

律子「ヒドイわね、二人のバカップルっぷりが」

千早「律子……あなたはこの期に及んでまだそんなワケの分からないことを」

律子「何なの?さっきから、ノロケ自慢でもしたいの?」

千早「律子、私は真剣なのよ?真面目に聞いてちょうだい!」バンッ

律子「こんな話真面目に聞いてられるか!」


千早「大体何なのよ、春香のあの態度……あんな態度取られたら戸惑うに決まってるじゃない」

律子「そりゃまぁ、確かにそうよね」

千早「あざと過ぎるのよ!ワザとかっ!」

律子「ぶっちゃけたわね」

千早「絶対分かっててやってるわよ、春香ってばヒドイわ……」

律子「まぁ、そんな態度取られたら普通は邪険には出来ないわよねぇ…ワザとかどうかはさて置き」

千早「でも……例えワザとであろうとなかろうと」

律子「ん?」

千早「涙目の春香は、すっごく可愛かったわ……」

律子「はいはい、よかったわね」


千早「というワケよ律子、これで分かってくれたかしら?」

律子「何も分からないわよ」

千早「……」

律子「……」

千早「律子……あなた、バカなの?」

律子「なぜ私がそこまで言われなきゃならない」

千早「これだけ話してもまだ分からないの!?春香のイタズラの悪質さが!」

律子「悪質どころか、あなたと仲良くしたがってるようにしか見えないわよ」

千早「律子、あなたはもう少し人を疑うことを覚えた方がいいわ」

律子「だから何があなたをそこまで疑心暗鬼にさせるのよ」


千早「なぜ……なぜ分かってくれないの律子!?どうして律子には分からないの!?」

律子「分かってたまるか」

千早「そう……そういうことなら分かったわ」

律子「何も分かってないわよね?」

千早「次の話はとっておきよ、これを聞けば幾ら律子でも納得するはずだわ」

律子「もう十分だっての、勘弁してよマジで」

千早「あれは、この間私の家で春香と一緒に勉強をしていた時のことなんだけど」

律子「勝手に話し始めてるし……あぁ、もう胸焼けしそう」

――――――
――――
――


千早「……」カリカリ

春香「……」カリカリ

千早「……」ペラッ

春香「……むぅ」ペラッ

千早「……」カリカリ

春香「……ねぇ、千早ちゃん」

千早「どうしたの春香?」

春香「どうして私たちは今、勉強なんてしているんだろうね」

千早「どうしてって……バカだからじゃないの?」

春香「ふごっ!?」ガンッ


千早「春香、人様の家の机に頭を打ち付けないでくれるかしら?」

春香「ごめんごめん……じゃなくて!千早ちゃん、バカは言い過ぎなんじゃないかな!?」

千早「ちょっとした冗談よ」

春香「むぅー……千早ちゃんひーどーいーっ!」

千早「それにしても……お互い勉強に追われるだなんて、難儀なものよね」

春香「まったくだよ、学生とアイドルの両立ってホントに大変だよねー」

千早「忙しいのは嬉しいことだけど、勉強の遅れを取り戻すのも一苦労だわ」

春香「ホントだよー、あーもうー!勉強ヤダーっ!めんどくさーいーっ!」

千早「無駄口を叩いている暇があったら、ペンを動かしなさい」

春香「ふぁい……」


千早「……」カリカリ

春香「……むぅー」

千早「……」ペラッ

春香「……ねぇ、千早ちゃん」

千早「何かしら?」

春香「飽きた」

千早「飽きたって……まだ初めて1時間も経ってないじゃない」

春香「そうだけど…」

千早「そもそも私の家で勉強したいと言い出したのは春香の方じゃない」

春香「それはそうなんですがね……」


千早「だったら黙って勉強しなさい、私だってやる以上はちゃんとしたいのよ」

春香「はーい……」

千早「……」カリカリ

春香「……」カリカリ

千早「……ふむ」カリカリ

春香「……よっし、千早ちゃん!」

千早「今度は何?」

春香「千早ちゃんの似顔絵書いてみたよっ!どうだっ!」

千早「……春香、あなたやる気はあるのかしら?」

春香「実は全然無いんだな、これが」


千早「だったらどうして勉強したいだなんて言い出したのよ……」

春香「実は勉強っていうのは口実で、千早ちゃんの家でお泊りしたかっただけなんだよね」

千早「何よそれ」

春香「でも普通に言っても千早ちゃん、オッケーしてくれそうになかったからさ」

千早「別にそんなことはないと思うけれど」

春香「だからさ、まぁこういう真面目な理由があれば千早ちゃんも首を縦に振ってくれるかと思って!」

千早「なるほどね、そういうことだったのね」

春香「そういうことなのだ、分かったか!」

千早「それで春香は私の家に来て何をしたかったのかしら?」

春香「別に、特にこれといってやりたい事があるわけじゃないけど」


千早「そう、なら折角だし勉強をしましょう」

春香「よしきた!……えっ?」

千早「……」カリカリ

春香「あれ……あれれ?」

千早「……ふむ」カリカリ

春香「ねぇねぇ千早ちゃん」

千早「何?」

春香「ここはさ、『だったら折角だし遊びましょう』的な流れになるのが正解なんじゃないかな?」

千早「ならないわよ」

春香「えぇぇー」


千早「春香、私だって一応勉強の遅れを取り戻したいという思いがあるのよ」

春香「なるほど」

千早「だからまぁ、一度勉強をすると決めた以上はちゃんとやりたいのよ」

春香「うん、千早ちゃんらしいね」

千早「というわけで春香、勉強をしましょう」

春香「そうかそうか分かったよ……って、納得できるかー!」

千早「もう、さっきから何なのよ……」

春香「千早ちゃん、何考えてるの!?せっかくのお泊り会なんだよ!?」

千早「お泊り会って何よ」


春香「ここはさ、二人で夜通し女の子トークをしたり、遊び倒す流れなんじゃないのかな!?」

千早「そんな流れ無いわよ」

春香「えぇぇー!千早ちゃんは何でそんなに冷めてるのさー」

千早「逆に春香は何でそんなに必死なのよ」

春香「だってさ、最近私たち結構忙しかったじゃん?」

千早「まぁそうね、いいことだとは思うけれど」

春香「こんな風に二人でゆっくり出来る時間なんて中々無かったしさ」

千早「そうね」

春香「だからさ……こうしてお泊り出来るってなって、すっごくテンション上がっちゃって」

千早「子供じゃないんだから……」


春香「それを何だよ、さっきから勉強勉強って……」

千早「それは、そもそも春香が勉強しようって言ったからじゃ」

春香「それはそうだけどさ……春香さん一人で舞い上がっちゃって、バカみたいじゃん」

千早「……」

春香「いいよいいよ、大人しく勉強してますよーだ」

千早「何よその言い方……」

春香「ふんだ、千早ちゃんのバカ、鈍感」

千早「……」

春香「千早ちゃんの……バカぁ」


千早「……春香」

春香「……何かな、千早ちゃん」

千早「実は私、今とても映画が見たい気分なのよ」

春香「……映画?」

千早「えぇ、事務所の皆が進めてくれた映画が沢山あって、借りたものの中々ゆっくり観る機会が無くて」

春香「……それで?」

千早「えっと、その……それで、もしよかったら一緒に映画でも見ない?」

春香「ふぇ?」

千早「や、やっぱり勉強ばかりっていうのもよくない気がするのよ…その、息抜きも必要でしょう?」


春香「千早ちゃん……」

千早「まぁ、その……あくまでも私が映画を見たいからであって、春香が勉強したいっていうなら」

春香「そ、そんなことないよ!春香さん映画見たい!めっちゃ見たいっ!」

千早「そう?なら、一緒に映画を見ましょう」

春香「うんっ!えへへ……千早ちゃんと一緒に映画観賞だぁ」

千早「どれを見ようかしら、春香は何かリクエストある?」

春香「何でもいいよ!春香さん、千早ちゃんと一緒だったら何でもいい!」

千早「映画を観終わったらちゃんと勉強よ?一応、それが名目なんだから」

春香「分かってるってば!だから早く!一緒に映画見ようよー!」

千早「まったくもう……さっきまで落ち込んでたくせに、調子がいいんだから」


――――――
――――
――

千早「……ということなのだけど、どうかしら律子?」

律子「ヒドイわね」

千早「そう、ようやく分かってくれたのね」

律子「どこからどう見てもバカップルそのものよ」

千早「……律子、あなたの目は節穴なの?」

律子「私、絶対間違ってないと思うんだけど」

千早「あなたのそのメガネは飾りなの?だったらそんなもの捨ててしまいなさい!」

律子「ここまで私が責め立てられる理由が一切理解できないわ」


千早「私の勉強をことごとく邪魔するだなんて、タチが悪すぎるわよ春香っ!」

律子「確かにそれはどうかと思うけど」

千早「そうでしょう?これは幾らなんでもやり過ぎだと思うのよ」

律子「でも、それであっさり折れるあなたも大概よ」

千早「だって考えてもみなさいよ律子」

律子「何をよ」

千早「あんなに愛くるしい顔で、構ってくださいアピールをしてくるよの?」

律子「あぁもういい、そっから先は言わなくていい、大体予想出来るからいいわよ」

千早「あれで構うなという方が無理ってものよ!」バンッ

律子「こっちが机叩きたい気分よ」


千早「どうして、どうして春香はこんなに私にイタズラばかりしてくるのよ……」

律子「そんなの、ちょっと考えれば分かることじゃない」

千早「そうよね…やっぱり私、春香に嫌われてるのよね」

律子「だから何でそっち方面にしか解釈出来ないのよ、あなたは!」

千早「問題はどうして春香が私を嫌うのかどうかよ……」

律子「だからそんなこと、絶対ありえないって言ってるでしょうが」

千早「どうして、どうしてよ春香……私には心当たりがまるで無いわ」

律子「面倒くさいわねぇ…だったらもう春香に直接聞きなさいよ」

千早「……春香に?」


律子「そんなに気になるなら、もう春香に直接聞きなさい」

千早「直接って……そんなこと聞いて答えてくれるとも思わないけど」

律子「だからと言って、このまま放っておくわけにもいかないでしょうが」

千早「それは、そうかもしれないけど……」

律子「だったらハッキリさせなさい、こんな状態じゃ仕事に支障が出るかもしれないわ」

千早「そうね……分かったわ、覚悟を決めるわ」

律子「どうせ結果は目に見えているんでしょうけどね」

千早「えぇ、例え玉砕すると分かってても、退くわけにはいかないものね」

律子「もうツッコむ気力すら湧いてこないわ」


千早「ふむ……そろそろ春香が帰ってくる時間ね」

律子「そうね、スケジュール的にはそろそろね」

千早「あぁ……どうしよう、今になって恐くなってきたわ」

律子「大丈夫よ、だから落ち着きなさい」

千早「でもね、律子……」


ガチャ


春香「ただいま戻りましたー!」

千早「春香、私のどこが気に入らないっていうのよ!?」

春香「へっ?」

律子「はいはい、さっさと仲直りして仲良く帰りなさい」


春香「ち、千早ちゃん?いきなりどうしたの……?」

千早「ねぇ春香、あなた私のことが嫌いなの?」

春香「えっ?いやいや、千早ちゃん何言ってるのさ」

千早「最近、私に対してイタズラばかりしてくるわよね!?」

春香「そんなことしてないと思うんだけど……」

千早「だったらあの数々の行いは何なのよ!どう説明するっていうの!?」

春香「えっと、あの……千早ちゃん?」

千早「ちゃんと納得のいく説明をしてちょうだい!お願いよ春香っ!」

春香「あのぉー……律子さん、これは一体どういう状況なんでしょう?」

律子「さあ?」


春香「えぇっとさ……千早ちゃん?」

千早「……何よ」

春香「何でそんな風に思ってるのか分からないけど、私は千早ちゃんのこと好きだよ?」

千早「……本当に?」

春香「当たり前じゃん、私が千早ちゃんを嫌う理由なんて一つも無いよ」

千早「嘘じゃないのね?」

春香「うん、だって私、千早ちゃんといるだけですっごく幸せな気持ちで胸がいっぱいになるもん」

千早「私もよ…春香といるだけで、とても幸せな気持ちで胸がいっぱいになるわ」

春香「えっ……いっぱいでそれなんだ」

千早「張っ倒すわよ」


千早「だったら普段のアレはなんなのよ……どう説明するっていうのよ」

春香「あれはさ……だって、その…ほら」

千早「何よ」

春香「千早ちゃん、あぁでもしないとちゃんと構ってくれないんだもん……」

千早「そんなことないわよ」

春香「あーりーまーすーっ!」

千早「ないわよ」

春香「あるよ!それが証拠に、千早ちゃんの方から全然構ってくれないじゃんか!」

千早「……あなた、ひょっとして私に構って欲しかったの?」

春香「だからそう言ってるじゃん!こんなこと、恥ずかしいのにワザワザ言わせないでよ…」


千早「なんだ……そんなことが原因だったのね」

春香「そ、そんなことだなんてヒドイ!私にとっては大事なことなのに!」

千早「しょうがないわね……そこまで言うなら構ってあげるわ」

春香「えっ、ホントに?」

千早「えぇ、寂しがり屋の春香のために、ちゃんと構ってあげるから感謝しなさい」

春香「あれれ、何で立場逆転してるのかな?おかしくないかな?」

千早「それじゃあ手始めに一緒に帰りましょう、春香はもうお仕事終わって帰るだけなのよね?」

春香「うん…それはいいけど、千早ちゃん、律子さんと何か話していなかった?」

千早「その件に関してはもう解決したわ」

律子「…………」


千早「それじゃあ春香、帰りましょう」

春香「うんうん、ところで千早ちゃん、今日千早ちゃんのお家行ってもいいかな?」

千早「えぇ、いいわよ」

春香「やった!いっぱい遊ぼうねー!」

律子「……」

千早「それじゃあ律子、今日はありがとう……それじゃあまた」

春香「律子さんお疲れさまでしたー!また明日っ!」

律子「……」


ガチャ バタン


律子「いや、うん……分かってはいたけど敢えて言うわ……何よこれ」




おわり

はい、というわけで美希誕が書けなかった気晴らしに書かせていただきました、はるちはわっほい

ちなみに
春香「ちょっと相談したいことがあるんですけど……」の続き的な感じで

ありがとうございました

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