長門「あなたはFA権を取得した」(101)

みくる「この名簿にはSOS団全員の名前が載っています。」

みくる「ああ、ここちょっと消えてますね…キョン君という雑用係がいたんですけど…」

みくる「俺はSOS団を出ることは無い、SOS団が好きだと皆の前でさんざん語っていました…」

みくる「でも結局、悲しいけど出ますと言って、泣く泣く出て行きましたよ。」

1ヶ月前…

長門「あなたはFA権を取得した。」

キョン「はあ?」

長門「FA権とは、フリーエージェント権のこと。所属チームとの契約を解消して自由に契約を結ぶことが出来る権利のことで…」

キョン「いや、それは知っている。プロ野球とかのアレだろ?」

長門「そう、あなたは権利を行使する?」

キョン「待ってくれ、話が全く見えんのだが…」

長門「あなたがSOS団に登録されて数ヶ月が経過した。必要日数を満たしたため、あなたはFA権を取得した。
    権利を行使すれば、あなたはSOS団との契約を解消し、自由に契約を結ぶことが出来る。」

キョン「そんな話は聞いたことが無いぞ!」

長門「…この制度は以前から存在している。現に私と朝比奈もFA権を行使し、SOS団に移籍してきた。」

キョン「初耳だぞ…古泉は?」

長門「古泉一樹はSOS団の生え抜き。」

キョン「そんな設定があったのか…」

長門「そう。」

キョン「ハルヒ的にはアリなのか?」

長門「アリアリでお願いする。」

キョン「ひょっとしてこれもハルヒの力か?」

長門「違う、自由競争社会の力。」

キョン「ああ、そう…」

キョン「自由に契約とは言うが、一体どこと契約するんだ?」

長門「SOS団と改めて契約を結ぶことも可能。他にもあなたの移籍を希望するチームは複数存在する。」

キョン「チームって…野球部とかサッカー部とか?」

長門「違う。佐々木団、スケット団、HTT、ヒゲ部etcが獲得を希望するものと考えられる。」

キョン「佐々木団以外は全く知らんのだが。」

長門「そう…では佐々木団への入団を推奨する。能力を発揮するには自分に合う環境を選ぶことが大切。」

キョン「いや、だからそれはアリなのか。」

長門「アリアリでお願いする。」

長門「もちろん行使せずにSOS団に留まることも可能」

キョン「そうか」

長門「そう」

キョン「…長門よ、ちょっといいか?」

長門「?」

キョン「FAだかなんだか知らんが、俺はSOS団を出るつもりはないぞ」

長門「なぜ?これはあなたのキャリアアップにも繋がる。」

キョン「なぜって…これでも俺はSOS団が結構気に入っているんだよ。」

長門「しかし今のあなたは雑用。新しいチームでは待遇も改善されるものと思われる。」

キョン「確かに時には腹が立つこともあるし、色々大変な目にもあったけどな。」

キョン「これでも結構楽しんでるんだぜ?」

キョン「俺は朝比奈さんの入れてくれたお茶が好きだ…。もちろん、お前と一緒に図書館へ行くのも好きだ。
     古泉とのボードゲームも、まあ悪くはない。」

キョン「ハルヒの我侭も慣れれば楽しいもんだ。」

キョン「フラフラするよりは、どーんと構えて一つの部で学生生活を終えるほうがいいだろ」

長門「そう。」

キョン「だから俺はFA権の行使はせんぞ!」

長門「…そう。」

ガチャ

ハルヒ「話は聞かせてもらったわよ、キョン」

キョン「ハ、ハルヒ!?」

ハルヒ「あんたがしおらしいこと言っているのを聞いたら気分が悪くなったわよ」

キョン「うるせえ」

キョン「…ん?お前、俺がFAを取得したことを知っているのか?」

ハルヒ「はあ?当たり前でしょ?あんたをSOS団に登録した時から計算してるわよ!」

キョン「俺だけが知らなかったのか…」

ハルヒ「はあ?自分のことでしょ?本当にバカキョンね!」

キョン(どこの世界の部活にFAなどという代物が存在するんだ)

ハルヒ「ふんっ…まあ、あんたの殊勝な心がけは褒めてあげるわ!」

ハルヒ「まあ、あんたがFA権を行使したところで獲得するチームはないでしょうけどね」

キョン「確かに俺はそんな器じゃないだろうな」

ハルヒ「よく分かってるじゃない…。ま、まあ!あんたがこれからもSOS団にいたいって言うなら契約してあげるわよ!///」

キョン「はいはい、ありがとうよ」

ハルヒ「し・か・た・な・く!だからね!」

キョン「へーへー」

古泉「どうやら、涼宮さんはご機嫌のようですね」ズイッ

キョン「顔がちか…いたのか」

古泉「口ではあんなことをおっしゃられていますが…ここ最近は閉鎖空間の発生頻度が高くなっていました。」

古泉「もちろん、あなたのFA権行使を心配してのことです。」

キョン「お前もFAのことを知っていたのか…」

古泉「おや、ご存知ではなかったのですか?てっきりそ知らぬ顔で涼宮さんをじらしているものかと…」

キョン「そんなことをして何の得になる。」

古泉「んふっ…とにもかくにも、あなたが残留宣言をしてくださったおかげで助かりました。これで深夜の神人狩りからも解放されます。」

キョン「そんな事態になっているのにどうして声をかけなかったんだ?」

古泉「あなたにへそを曲げられて、移籍に踏み切られでもしたら困りますからね。」

キョン「俺がそんなことをするとでも?」

古泉「FA権行使は選手人生を左右する重大な問題ですから…」

キョン「選手って、何の選手だ。」

古泉「いかに温厚なあなたといえど、そこに口を出されてはご不快でしょう。」

キョン「無視するな。」

古泉「とにかく、あなたの英断に感謝しますよ。」

キョン「仮に俺がFA権を行使するとしても、ハルヒの力でなんとでもなるんじゃないか?」

古泉「…FA権は絶対不可侵の権利です。たとえ、涼宮さんといえどもね。」

キョン「そんなに凄いものなのか。」

古泉「はい、凄いです。人生が変わってしまいますからね…こう考えると、変化を好まない貴方であれば、行使しないのも当然かもしれませんね。」

古泉「我々機関の任務の1つに、あなたのSOS団との契約更新を実現することがありました。」

古泉「あなたがFA行使の意思を明らかにすれば、実力行使に出ることも考えていましたよ。」

キョン「物騒だな…。というか、FA権ってそんなに重要なものだったんだな。」

古泉「我々も必死ですから。」

キョン「そういえば、お前はSOS団の生え抜きらしいな?」

古泉「んふっ私は生粋のSOS戦士ですから。」

キョン「朝比奈さんと長門が移籍組とはな…そんな事情があったとは。」

古泉「この業界は移籍が活発ですからね…長門さんは業界で旅人と呼ばれています。」

キョン「業界ってなんだ。」

ハルヒ「ちょっと2人とも!何をこそこそ話してるのよ!」

キョン「ああ、悪い…ちょっとな。」

古泉「んふっ申し訳ありません。」

ハルヒ「それじゃ、キョンの残留も決まったことだし、今日からまた活動を頑張っていくわよ!」

古泉「仰せのままに」

長門「…」

みくる「空気でしゅwwwwwwww」

キョン「やれやれ…」

キョンの残留宣言から一夜明けて…

キョン「昨日はとんでもない話を聞いてしまった…」

キョン「SOS団も意外とドライな関係の上に成り立っていたんだな。」

森「おはようございます」

キョン「っと、森さんじゃないですか。おはようございます。」

キョン「SOS団では借金(おごり)から始まっていた」

森「あなたの残留宣言のおかげで昨日は安眠できました。」

キョン「いえいえ、お役に立てて何よりですよ。」

森「涼宮さんの精神状態は完全に安定しています。しばらくは閉鎖空間が発生することも無いでしょう。」

キョン「そうですか、それはそれは…。それにしても、ハルヒもつまらないことを気にするんですね。」

森「つまらないこと、ですか…」

キョン「ええ、俺が他へ移るかどうかなんて、どうでもいいことでしょう。」

森「うふふ…そうですね。…あ。」

キョン「どうしました?」

森「いえ…キョンさんのことですから、心配は無用と思いますが…」

キョン「?」

森「くれぐれも残留宣言を撤回することはないよう…お願いします。」

キョン「ああ、それなら心配は要りませんよ。」

キョン「どうせ、行くアテなんてありませんからね。」

キョン「僕自身SOS団を出て行く喜びもあった」
キョン「ここにいたら自分がダメになると思った」
キョン「いなくなって初めてその存在の大切さみたいなものに気づくんじゃないですか」
キョン「ずっと最下位のチームにいて、そのまま指導者になっていいのか」
キョン「団員でいいというだけなら、このチームに残っていた」
キョン「久しぶりに部活をしていて嬉しいという感情を思い出した」

森「そうです…ね。」

キョン「俺を欲しがるチームなんてないでしょう。ただの雑用ですしね。」

森「…SOS団は、私たちはキョンさんのことを必要としています。」

森「あなたを欠いてしまっては事が上手く運びませんからね。」

森「そのことをお忘れなきように…お願いします。」

キョン「あ、ありがとうございます。」

森「それでは、何かあれば古泉にお申し付けください。」

キョン「はは、ありがとうございます。」

森「良い一日を(ニッコリ」

キョン(俺が必要、ねえ…)

教室にて
キョン「おっす」

国木田「キョン、おはよう」

谷口「おいおい聞いちゃったぜ?キョーン?」

キョン「なんだ朝っぱらから気持ち悪い」

谷口「お前、SOS団に残留するんだって?」

キョン(なんだ?FAはそこまで一般的なものなのか?)

キョン「そうだが」

谷口「お前、バッカだなあ~。わざわざあんなキチガイ女の団に残留するなんてよ!」

谷口「俺なら即移籍だぜ!」

キョン(こいつもFA権を取得したのか?)

キョン「お前はFA権を取得して、行使したのか?」

谷口「あったり前だろ!」

国木田「違うよ、キョン。女の子目当てで入った家政部を除名されたんだよ。今はただのフリーだよ。」

谷口「ちょwwwwwwwwwwww」

キョン「トライアウト頑張れよ。」

そして放課後…

古泉「おや、おはようございます」

キョン「もう放課後だぞ」

みくる「キョン君、こんにちは☆」

キョン「どうも朝比奈さん」

みくる「今、お茶を入れますね☆」

キョン「今朝、森さんにも礼を言われちまったぞ。」

古泉「機関一同、あなたには感謝していますから。」

キョン「ああ、残留撤回はするなと念押しされたよ。そんなに心配することじゃないだろうに。」

古泉「…そうですか。それは何よりです。」

キョン「ん?」

古泉「んふっ…あなたのことは信頼していますよ。」

キョン「気持ち悪いな…。」

みくる「キョン君お茶です☆」

キョン「ありがとうございます。」

みくる「…」ジー

キョン「…?どうかしましたか?」

みくる「なんでもありましぇえ~ん☆」

ハルヒ「遅れてごっめーん!!!!!!!!!!!!」

キョン(相変わらずうるさい奴だ)

ハルヒ「キョン!早速だけどあんたにはやってもらうことがあるわ!」

キョン「はあ?なんだ?」

ハルヒ「皆の前でちゃんと残留宣言をしてもらうわよ!」

キョン「は、はあ?」

ハルヒ「昨日有希に話していた内容をもう一度ここで披露しなさい!」

キョン「な…なぜそんなこっぱずかしいことをせにゃならんのだ!」

古泉「おやおや…恥ずかしい内容なのですか?」

キョン「いや…ちが」

みくる「ふえ~☆」

ハルヒ「いい!?キョン!あんたが正式に残留宣言をすることで、FA市場にも影響を与えるのよ!」

ハルヒ「ちゃんとプレスも呼んであるから、ここでしっかり宣言しちゃいなさい!」

キョン「ちょ…」

古泉「いやあ、楽しみですねえ。」

みくる「キョン君ファイトでしゅう~」

キョン「ぐ…」

キョン「…」

キョン「お、俺はSOS団が好きだ。」

キョン「俺は朝比奈さんの入れてくれたお茶が好きだ…。もちろん、お前と一緒に図書館へ行くのも好きだ。
     古泉とのボードゲームも、まあ悪くはない。」

キョン「ハルヒの我侭も慣れれば楽しいもんだ。」

キョン「SOS団での毎日が…楽しいんだ。」

キョン「正直なんでこんなくだらない活動をしているのかと思ったこともある。」

キョン「でも…振り返ってみれば不思議といやな気持ちはしない。」

キョン「今では、この団に入ってよかったと思ってる…。」

古泉「…」

ハルヒ「…」

みくる「…」

キョン「なんていうか、さ…」

キョン「あの時ハルヒに声をかけてよかったと思ってるんだ。」

ハルヒ「な、何言ってるのよ!」

古泉「ほほう…」

キョン「こうやって毎日を送れるのもハルヒのおかげだからな。」

ハルヒ「///」

キョン「まあ、なんだ、だから、その…これからもよろしくな。」

古泉「…」

ハルヒ「…」

みくる「…」」

キョン「ど、どうだった?」

古泉「いやあ、驚きました。なかなかの名演説でしたよ…ええ。」

みくる「キョン君かっこいいでしゅ☆」

キョン「そ、そうか?」

ハルヒ「ま、まあバカキョンにしては上出来ね!」

キョン「お、おう」

古泉「これで晴れてあなたはSOS団との契約更新に向けて前進したわけです。」

古泉「これからもよろしくお願いしますよ…」

キョン「おう」

みくる「キョン君よろしくね☆」

キョン「はい!」

ハルヒ「じゃあ、プレスには撤収してもらうわよ!」

キョン「ハルヒよ、これからもよろしくな。」

ハルヒ「わ、分かってるわよバカキョン!!!!!!!!!!!///」

キョン「うるせえ。」

古泉「まあしかし、これで懸念は全て解決されましたね。」

ハルヒ「そうね…SOS団はこれからも世界を盛り上げるために活動を続けるわよ!」

ハルヒ「苦しいことも悲しいことも、全員の乗り越えるの!」

ハルヒ「メンバーは1人たりとも欠ける事を許さないわ!」

ハルヒ「私たち全員が揃ってこそのSOS団だもの!」

キョン「ハルヒ…」ジーン

古泉「涼宮さん…」ジーン

みくる「しゅじゅみやしゃん…」ジーン

ハルヒ「う…///じゃ、じゃあ全員揃ったことだし、いつものミーティングを始めるわよ!」

ハルヒ「皆で地道に努力を続けましょう!」

キョン(ハルヒも良い事言うじゃないか…ふふっ)

キョン(全員揃ってSOS団か…)

キョン(全員揃って…)

キョン(…ん?)

キョン「長門はどうした?」

ハルヒ「…」

キョン「…まだ長門が来てないぞ。」

古泉「…」

キョン「ははっあいつが一番最後とは珍しいこともあるもんだな。」

みくる「…」

キョン「なあ?」

ハルヒ「…」

古泉「…」

みくる「…」

キョン「…え?」

某月某日

キョン「…本日、FA宣言を行使する書類を提出させていただきました」

キョン「俺は(グスッ)…SOS団が、大好きなので…」

キョン「辛かったです」

キョン「環境を変え、自分自身、主人公として前に進みたかったです…」

キョン「辛いです…(グスッ)」

キョン「FAなんて無ければよかったのに…」

キョン「俺が喜んで出て行くのではないということを、理解して欲しい…グスッ」

長門は去り、そしてキョンも残留宣言を撤回しFAを宣言した

超大物の宣言に揺れるFA市場…

キョンの移籍先は?

長門の移籍先は?

果たしてSOS団に未来はあるのか…


次回「熱いぜ!SOS団!」にご期待ください!


熱いぜは死亡フラグ

まさか支援してもらえるとは思わなかった

誰か続き書いてくれ

じゃあの

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