【安価】進撃の虚尽(233)

安価失敗は安価下。

その日人類は思い出した

ヤツらに支配されていた恐怖を・・・

鳥かごの中に囚われていた屈辱を・・・・・・

********

『いってらっしゃい』

>>3

『―――>>3

>>5>>3!!起きて」

>>3「ん・・・・・・?」

半沢直樹

古美門研介

予想外の安価が来たので少し待ってくれ。時間はかかるが進めて行く。

『いってらっしゃい』

『半沢』

『―――半沢』

古美門研介「半沢!!起きたまえ」

半沢直樹「ん・・・・・・?」

古美門「見ろ、もうあんなところに太陽が沈んで来ている。もう帰らないと日が暮れてしまうじゃないか」

半沢「・・・・・・?あれ?」

半沢「古美門さん・・・あなた髪が伸びてませんか?」

古美門「愚問だね、伸びてるよ。いいか、人間の髪の毛ってのは毎日少しずつ伸びてるんだよ。伸びないやつなどいるものか。いるとしたらそいつはカツラかぶってるかハゲてるかサイヤ人だ」

半沢「そうですか」

古美門「そんなに寝ぼけるほど熟睡してたのか?」

半沢「いや、何かすごく長い夢を見ていた気がするんですが・・・」

古美門「・・・・・・!!」

半沢「何だったか思い出せないな・・・」

古美門「半沢。君はなぜ泣いておるのだ」

半沢「え・・・?」

半沢「言わないでくださいよ、誰にも。私が泣いていたとか・・・」

古美門「いくらだ」

半沢「はい?」

古美門「いくら出せるって聞いているんだ。僕は君の幼馴染ではあるけれど、それだけの関係で無報酬で言うことを聞くと思っ

たら大間違いだ!」

半沢「古美門さん、私の弱みを握ったのをいいことに私を強請るということですか」

古美門「強請るなんて人聞きが悪いなぁ。僕は取引しないかと言っておるのだ。君が僕の満足する額を出せるというなら、君が

泣いていたことは公言しない。だが出せないと言うなら、ハンネスさん辺りに言っちゃおうかなぁ~!?ん~!?」

半沢「・・・わかりました。いいでしょう。ハンネスさんに言いたければどうぞご自由に。だが、その報いは必ず受けていただき

ます。古美門さんが私のこづかいを奪うというのなら、私は必ずそれを取り戻し・・・いや、倍にして返して貰う。それでもいい

なら、好きにしろ!」

古美門「あはははははは!!・・・なかなか愉快ではないか。できるもんならやってみろ!勝つのは僕だ」

半沢「殺ってみろとおっしゃいましたね?」

スゥッ・・・

古美門「違う!薪を構えるなぁーーー!!!」

ハンネス「何やってんだ、お前ら」

半沢「これは・・・ハンネスさん」

古美門「ハンネスさんじゃありませんか。ナイスタイミングです。助かった!」

ハンネス「ん?何泣いてるんだ、半沢」

半沢「いえ、これは・・・って、ハンネスさん、こんな時間からお酒を召し上がっているんですか?」

ハンネス「お前らも一緒にどうだ?」

古美門「そんなカップ酒、私の口には合わないな。高級ワインを用意してくれたまえ」

半沢「古美門さん。そんなもの内地の人間しか飲めませんよ。それに、ハンネスさん・・・仕事は?」

ハンネス「おう!今日は門兵だ!一日中ここにいるわけだから、やがて腹が減り喉が渇く。飲み物の中にたまたま酒が混じって

いたことは些細な問題にすぎねぇ」

半沢「そんなことで、いざという時に戦えるんですか?」

ハンネス「・・・・・・いざって時って何だ?」

この後は

1、半沢・リーガルハイの登場人物が進撃のキャラに置き換わって登場し、展開する
2、半沢・古美門以外は進撃の巨人のキャラそのままで、展開する

どちらか見たい方>>16から>>20の間で多い方で書いていく

2

20前ですが既に2の方が多いので、2で行きます。

半沢「何言ってるんですか。決まってるでしょう。奴らが壁を壊して街に入って来た時ですよ!」

ハンネス「おい!半沢!急に大声出すんじゃねぇよ・・・」

古美門「ハッハッハ。半沢君は元気がよろしいな。だが、心配には及ばないぞ、今こうして駐屯兵団様が日が高いうちから酒を呷っているのも、来る日のための仕事のうちということだ。ヤツらが壁を壊すことがあったら、フラフラの頭と足でおとりになって我々を逃がすために時間稼ぎしてくださるに違いない!ヤツらの標的になりやすいように毎日毎日無駄に脂肪を肥やしてブクブク太るよう尽力されてて感涙ものだなぁ!いやぁ、素晴らしい自己犠牲精神だと思います。ブラボー!」

駐屯兵士「うるせぇぞ!古美門の小僧!・・・だがな、おとりはともかく、ヤツらが壁を壊すことがあったらしっかりやるさ。しかしな、そんなこと100年間で一度もないんだぜ」

半沢「そうやって安心してる時が危ないって言ってるんですよ」

古美門「おい、相手は酔っぱらいだ。酔っ払いと話すなんて時間の無駄だぞ。しかも頭が平和酔いしてるんだぞ、酒と平和でちゃんぽんしとる年中アル中野郎どもに話の通じる時は無いぞ。半沢、君も年中正義感酔いしてるアル中野郎だから言っても無駄だと思うが、一応幼馴染として忠告しておいてあげよう。もっと自分の時間を大事にしたまえ」

半沢「古美門さんは黙っててください」

古美門「うん!今僕も君のおかげで時間を無駄にした!」

ハンネス「まあ、確かに安心してる時が危ないってのはそうかもしれんが、兵士になれば壁の補強作業とかで壁の外をうろつくやつらを見かける機会があるんだが・・・ヤツらにこの50mの壁をどうこう出来るとは思えねぇんだ」

半沢「じゃあそもそも、ヤツラと戦う覚悟なんて無いと言うことですね?」

ハンネス「ねぇな!」

古美門「ほら見ろ!やっぱりおとりになるくらいしか使い道がないぞ!もう『駐屯兵団』なんて名乗るのはやめて『壁工事団』か、呼び間違えなくすむように『虫豚兵団』にでも改名したまえよ!」

半沢「・・・・・・・」

ハンネス「それも悪くねぇな」

ハンネス「しかしな、兵士が活躍する時ってのは、それこそ最悪の時だ・・・。オレ達が役立たずの『タダ飯食らい』ってバカにされてる時のほうがみんなは平和に暮らせてるんだぞ?」

半沢「私はその、平和が崩れた時に備えていない状態でいざ対応できるんですかと言ってるんですが、今が平和なら先のことを考えず呑気にしていて許される、それがあなたたち兵団なんですか」

ハンネス「そうは言ってもなあ・・・壁が崩されることなんて無いと思うぞ?」

半沢「それはあなたの個人的な見解ですよね」

ハンネス「あのなぁ、お前が言ってるのも個人的な意見だろうが」

古美門「半沢。君がこづかいを出せるなら、僕が壁が壊されるかもしれないという君の持論が勝つように、尽力してやってもいいぞ?」

半沢「だから、黙っててください」

古美門「後でお願いしてきても知らんからな!後悔したまえ!後悔したまえ!」

駐屯兵士「しかしまあ、ハンネスの言う通りだ。まったく・・・外に出ようっていう『調査兵団』の連中の気がしれねぇ・・・勝手に戦争ごっこに興じてろってな!!」

半沢「!!・・・一生壁の中から出れなくても・・・食事して寝ていれば生きていけますよ。でも・・・それじゃ・・・まるで家畜じゃありませんか」

古美門「うむ。なかなかいい喩えをするじゃないか。豚小屋から出ることも拒否して、脂だらけで大して旨くも無い肉になって精肉屋に並ぶのを待ってるだけの家畜だ!家畜とブーブー話しても話が通じるわけがないぞ!家畜臭くなるだけだ。匂いが移ってはかなわんから、行こう!半沢君!」

半沢「・・・・・・」

駐屯兵士「けっ・・・おかしなヤツらだな。あと生意気だ」

ハンネス「・・・!!まさか半沢・・・調査兵団に入りたいのか?」

********

古美門「半沢・・・調査兵団はやめたまえ」

半沢「なんですか、あなたも調査兵団をバカにするんですか?」

古美門「バカにするとかそういう問題じゃ―」

カンカンカンカン

半沢「調査兵団が帰って来たんだ。正面の門が開くぞ!英雄の凱旋だ!」

半沢「行きましょう、古美門さん」

古美門「行くって言ってないのに引っ張るな!引っ張るなー!!」

ザワザワザワ

半沢「くそっ、人垣で見えない」

古美門「あ、本当だ。見えないぞ。見えないものを見ても仕方ないな。帰ろう」

半沢「待ってください。ここに登れば見えますから」

古美門「なんで僕が付き合わないといけないんだ!」

半沢「あ・・・!見えた!・・・!!」

ザワザワザワザワ

半沢「・・・なんてことだ」

古美門「どうだ?半沢。君の見たいものが見えたか?どうせグロいんだろ?18禁だろ?僕は見ない!見ないぞ!」

半沢「め・・・目、口・・・腕が無い兵士が大勢・・・こ、こんなことが」

古美門「やーめーろおおお!怖いんだから実況しなくていい!バカぁ!」

民「これだけしか帰って来れなかったのか・・・」


民「今回もひどいな・・・」

民「100人以上で調査に向かったはずなのに・・・20人もいないぞ。皆食われちまったのか・・・」

女「ブラウン!ブラウン!!」

半沢「!!」

女「あの・・・息子のブラウンが見当たらないんですが、息子はどこでしょうか!?」

キース「・・・・・・!!ブラウンの母親だ・・・持って来い」

兵士「は、はい」

ガサッ

スッ・・・

ブラウンの母親「・・・・・・え?こ、この包みは・・・」

スルッ

ブラウンの母親「・・・・・!!う、腕・・・こ、これが・・・ブ、ブラウン・・・!?」

キース「それだけしか取り返せませんでした・・・」

ブラウンの母親「・・・うぅ・・・うぁ・・・うああああああああっ!!うああああああぁぁぁ!!」

半沢「・・・・・・」

古美門「・・・・・・」

ブラウンの母親「う・・・うぅ・・・。でも、息子は・・・役に立ったのですよね?何か直接の手柄を立てたわけじゃなくても!!息子

の死は!!人類反撃の糧になったのですよね!?」

キース「・・・もちろん―!・・・・・・・イヤ・・・」

キース「今回の調査で・・・我々は・・・今回も・・・!!何の成果も得られませんでした!!私が無能なばかりに・・・・・・!!ただいた

ずらに兵士を死なせ・・・・・・!!ヤツらの正体を突き止めることができませんでした!!」

民「ひでぇもんだな・・・壁の中にいれば安全に暮らせるのに・・・兵士なんて税金の無駄遣いだ」

半沢「・・・・・・!!」

民「まったくだ・・・これじゃあオレらの税金でヤツらにエサをやって太らせてるようなもんだなぁ」

半沢「・・・・・・」ブルブル

古美門「半沢、薪を構えるのはやめたまえ・・・行こう」

半沢「・・・・・・」

テクテクテク・・・

古美門「半沢、調査兵団に入りたいって気持ちは、変わったか?」

半沢「!!」

**********

半沢「ただいま」

グリシャ「おかえりなさい」

カルラ「遅かったのね、二人共」

半沢「イヤ・・・まぁ・・・色々あって・・・あれ?父ちゃん、今から出かけるの?」

グリシャ「ああ。2つ上の街に診療だ」

古美門「診療といえば、おじさん、出かける前に半沢の頭を診ていったほうがよろしいかと思われますよ。この朴念仁、冒険野郎に憧れてるのかどうか知らないが、毎回毎回命と金を壁の外に捨てに行く調査兵団に入りたいって言ってますよ!しかも重症だ!月刊マガジンの読みすぎだ!」

半沢「古美門さん!言わないでと言ったはず・・・!」

古美門「いや、言われてない。君は泣いてたことを言うなとは言ったが、調査兵団に憧れていて、尚且つ入りたいと思ってると

いうことを言うなとは、一言も、これっぽちも言ってないぞ!」

半沢「泣いてたことまで言いましたね!?」

古美門「!!・・・口が滑った」

カルラ「直樹!!」

カルラ「何を考えているの!?壁の外に出た人類がどれだけ死んだか分かってるの!?」

半沢「わかってるよ!」

グリシャ「直樹、どうして外に出たいんだ?」

古美門「そんなこと聞かなくてもわかりますよねぇ。半沢は溜まってるんですよ。外に出ても、ただ肥溜めの足しになるくらいしか芸の無い、能なしで人生諦めてる宿便どもと一緒に閉じ込められて、ストレスが溜まらないわけがありません。ストレスでブクブクに溜まったガスはもう、門から放出されて開放されるしかありません。だが、なぜかこの世界は年中便秘気味であるからして、調査兵団にでも入る以外放屁されるチャンスなんてないんですよ。こんな糞だまり臭い中我慢しながら平気な顔して暮らしてるほうがどうかしてる!このストレスは調査屁ー団で思いっきり放出するしかない!人間ってのは放屁を我慢して病気になり、便秘で死ぬこともあるのだから!そうだろ半沢?そうだよなぁ!?」

半沢「確かに古美門さんの言ってることもあながち間違ってはいませんので、否定はしませんが。ただ・・・私は外の世界がどうなっているのか知りたいという気持ちも強くありますから、私が世の中を批判しているだけと取られかねない、偏った妙な例えはやめていただきたい」

古美門「何を言っている。人間誰しも経験して共感できる、素晴らしくわかりやすい例えではないか。お前の気持ちをこれ以上親身にわからせる例えが他にあるか?あるなら言ってみろ!」

半沢「あなたみたいな問題人格者と一緒の家にいるとストレスが溜まって仕方ないので、家の外に出たい。という気持ちに近い。とでも言いましょうか?」

古美門「ナハハハハ!!わからなーい!そんな例えじゃ誰の共感も得られないぞ!ねぇ、おじさん、おばさん!」

カルラ「そ、そうね」

グリシャ「・・・・・・」

古美門「あれっ、なんで目をそらすんですか?おじさん?おばさん?なんで?なんで?」

グリシャ「直樹、気持ちはわかったよ」

古美門「え?わかったって、おじさん?」

半沢「父ちゃん、ありがとう。それに・・・調査兵団は多くの犠牲を出したけど、経験を重ねて来たんだ。ここで誰も続く人がいなかったら、今まで死んだ命が無駄になる」

古美門「今までもだが、これからも、だ。人が続こうが続くまいが関係ないと思うがね」

半沢「そうならないよう、次代のものが継いでいかないといけないっていってるんですよ。勝てないからと諦めたらそこで既に負け犬と同じです」

古美門「なるほど、確かに負け犬に存在価値は無いからな。負け犬は嫌いだ。ま、僕は?豚になるのも犬になるのもごめんだから?憲兵団に行かせてもらいますけどねぇー!」

半沢「古美門さん、あなた運動できましたっけ?憲兵団に入るには立体機動が必須項目なのはご存知ですか?」

古美門「憲兵団になるのに運動神経が必要だと思ってるのかねぇ?そんなもの!僕には必要ないのだよ!」

グリシャ「そうか・・・直樹は調査兵団、研介は憲兵団か・・・。船の時間だ。そろそろ行くよ」

ガタッ

カルラ「ちょっと・・・あなた!直樹を説得して!」

グリシャ「カルラ・・・人間の探究心とは誰かに言われて抑えられるものではないよ」

半沢「・・・!!」

古美門「カルラおばさん、私に任せていただければ、半沢君を説得してご覧にいれま」

グリシャ「・・・・・・直樹、帰ったら・・・ずっと秘密にしていた地下室を・・・見せてやろう」

半沢「ほ・・・本当に!?」

カルラ「あなた・・・」

グリシャ「じゃあ、行ってくる。二人共いい子にしてるんだよ」

古美門「いいなぁ~!僕も内地に行きたいなぁ~!」

カルラ「憲兵団に入れば内地に行けるけど、もし無理でもあなたは賢いから、内地でのお仕事にきっと付けるわよ」

古美門「そうでしょうとも!内地が僕のような人間を放っておくはずありませんからねぇ」

カルラ「そうね。直樹」

半沢「・・・何?」

カルラ「あんたは、駄目だからね。調査兵団なんてバカな真似―」

半沢「バカ!?バカだって!?俺には・・・家畜でも平気でいられる人間のほうが、よっぽどバカでマヌケに思えるけどな!」

ザッザッザ

カルラ「どこ行くの!!」

半沢「・・・・・・」

ザッザッザ

カルラ「・・・・・・!!直樹」

古美門「反抗期じゃありませんか、死にに行きたいなんて変わったやつだなぁ。僕はおばさんの意見に賛成ですよ」

カルラ「研介、あの子はだいぶ危なっかしいから・・・困った時は二人で助け合うんだよ」

古美門「・・・おばさん、その言葉、よろしければ一筆したためていただけますかね?」

*******

ヒュオオオオオオオオオオ

悪ガキボス「どうした異端者、悔しかったら殴り返してみろよ!」

アルミン「そんなことするもんか!それじゃお前らと同レベルだ!」

悪ガキボス「なんだと!?」

アルミン「僕が言ったことを正しいと認めてるから・・・言い返せなくて殴ることしかできないんだろ?」

アルミン「そ・・・それは!僕に降参したってことじゃないのか!?」

悪ガキボス「う・・・・・うるせぇぞ!屁理屈野郎!!」

半沢「やめろ!なにをしてるんですか?あなたたちは!」

ダッ

悪ガキたち「半沢だ!」

悪ガキ2「まずいよ!あいつ強いんだから・・・!」

悪ガキボス「うるせぇ!!こっちは3人いるし、今日は棒を持ってねえ!やるぞ!あの野郎今日こそぶちのめしてやる!」

悪ガキ1「ん?」

古美門「ふんふふんふ~ん♪」

悪ガキ2「あっ!古美門もいるぞ!」

悪ガキボス「古美門なんかクソ弱い半沢の腰巾着だろ!ほっとけ・・・」

古美門「あ~!マゾっ気君じゃないか!」

悪ガキ2「マゾっ気?」

悪ガキ1「なんのことだ?」

古美門「君のことですよぉ~君」

悪ガキボス「お、オレ!!?」

半沢「またあなたたちですか。今日こそはアルミンに土下座して謝罪していただきましょうか」

アルミン「いや、別に土下座は・・・」

半沢「いいえ。土下座させるべきです。二度と君に楯突かないように目にものみせてやるべきです」

古美門「やめたまえ!半沢!かわいそうな少年にそんな酷いことさせようなんて、鬼か君は。いいか?この彼は、鬱憤を晴らすために、アルミンをいじめてやろう!そう意気込んでつっかかったのにだ!口で言い負かされて、これっぽっちも反論できず、自分の頭の悪さを突きつけられたうえ、得意分野である殴り合いに持ち込もうとしたが失敗して、殴って見ろよといじめてるほうが、いじめられてるほうに、自分を痛めつけるよう懇願させられたんだぞ!?バカにしようとして、逆に自分がバカですって周りにバラされてしまったんだぞ!?か、かわいそうじゃないかあ~!」

半沢「そう言われるとそうですね」ウンウン

悪ガキボス「なにうなづいてんだよ!!俺はバカじゃねぇ!」

古美門「では、アルミンの話に反論できたし、反論していたら勝てたかもしれないのにしなかったということかね?なぜ反論しなかったのだ?反論でき論破できるというなら、そのようにして、このきのこ頭をギャフンと言わせてやればよかったんではないかね?」

アルミン「き、きのこ頭!?」

悪ガキボス「んなの殴ったほうが早ぇからだよ!!スッキリするしな!」

古美門「殴ったほうが早い!スッキリする!なるほど!!―アルミン!」

アルミン「な、なに?」

古美門「彼は、君を殴ったあと、なんて言った?」

アルミン「え?悔しかったら殴り返してみろって・・・」

古美門「悔しかったら!殴り返して見ろ!そう言ったんだな?」

アルミン「うん、そうだね」

悪ガキボス「それがなんだよ」

古美門「君は実はアルミンのことを好きで、さらに性癖から彼に殴られたくてたまらなかったんじゃないですかぁ~!?ということだよ!」

悪ガキたち・アルミン「はああああ!?」

半沢「・・・・・・(こいつは何言ってるんだ・・・)」

古美門「君は!アルミンがカッとなって殴りかかってくるのを期待して、夢物語のようなアルミンの話を否定し、バカにした。『お前ぇ~!女みたいにナヨナヨしやがって、なんだそのふわふわボブカットは!?男なら黙って角刈りにでもしてみろよ!いつも半沢に守ってもらってなっさけねー!やーいやーい!この女男!ヒロイン野郎!』」

アルミン「な、なんだよ!研介!そんなこと思ってたのか!?」

ポカッ

古美門「いてっ!叩くな!このきのこ頭!!しかし、見たか?このくらい言ってやればたいていカッとくるものだ。僕は今自らを犠牲にして証明してみせたぞ。だが。君は服でもなく、容姿でもなく、アルミンの話をバカにした。それがアルミンにとって特に大事なものだと知っているからだ!そこを突いてやればアルミンは何より怒りを抱くと知っているからこそ、そうした。よく観察されているよなぁ?いつも見てたのかなぁ?ストーカーなのかなぁ?」

悪ガキボス「違ぇよ!!!!気持ち悪ぃ!!」

悪ガキ2「そういえば、いつもアルミンを見かけたらいじめるぞって走って行くよね・・・」

悪ガキ1「そう言われると・・・」

悪ガキボス「ちがーーーーう!!!お前らまで何言ってんだーーーー!!」

古美門「だが、アルミンは手を出してこなかった。これではいかん。早く殴られたいのに!そしてスッキリしたいのに!そこで君は作戦を切り替えたんだ!先に殴って、殴り返させよう作戦だ!人間、やられたらやり返したくなる!そう思ったんじゃないかね!?人間ならそう思うよな?そうだろう!?」

半沢「倍返しだ!!」ウンウン

古美門「いいぞ!半沢!そうだ!倍返しだ!これでアルミンから殴ってもらえるんじゃないかと!期待したんだろぉ~!?このBLマゾっ気野郎!!」

悪ガキボス「違うううううう!!!!」

アルミン(あーあ・・・大変な人に捕まってしまったね。僕は静観しておくよ)

悪ガキ2「そうだったんだ・・・」

古美門「おい、なんだその目は。君はBLやマゾに偏見を持ってるのか?」

悪ガキ2「え!?いや・・・だって・・・なあ」

悪ガキボス「あ、ああ・・・」

古美門「僕は持ってないぞ。だから親しみと愛をこめて、彼のことをマゾっ気君とこれからも呼ぶぞ!声高々に!!朗々と!!」

悪ガキボス「やめてくれ!!違うってええええ!!!」

古美門「まあ、違うなら違うで思う存分、これからもアルミンをいじめればいいのだよ。周りに君が愛あって殴られたい故にアルミンを煽っているんだと思われたって、君が違うということをバカじゃないその頭があるんだから、遠慮せず論破してやればいいことだ。論破した相手も負けてカッとなったら殴ってくれるかもしれんぞぉ!良かったなあ!あ、マゾじゃないんだっけ?ナッハッハッハ!」

悪ガキボス「くうぅうぅぅぅぅ!!!殴り飛ばしてやる!!」

アルミン「あっ!研介!!危ない!!」

古美門「・・・・・・!!」

半沢「ふっ!!」

バシッ

悪ガキボス「あでっ!!」

アルミン(あっ!拳を棒で叩き落としたぞ!直樹、いつのまに棒を持ってたんだ!?)

古美門「せっかく丸腰でやってきたのに、半沢に棒探す時間与えるなんてバカだなぁ!」

アルミン「いや、もしかしなくても君が時間稼ぎしてたんだよね?」

古美門「まぁねぇ!」

半沢「さて、このまま殴られて全身土下座するか、もう二度とアルミンをいじめないと誓って自ら土下座して場を収めるか、どっちか選んでいただけますか?」

悪ガキボス「うるせえええぇ!!」

半沢「選ばないなら俺が選ぶぞっ!!!!」

アルミン「ま、待って!!直樹!もういいよ!」

半沢「よくない!こいつらは今までの分も償うべきだ!」

アルミン「いいんだって。研介にあれだけ言われたんだ。それに君たちが僕のために怒ってくれた。それだけで僕は嬉しかったし、すっきりしたよ。ありがとう」

古美門「よかったじゃないか、半沢。バカ相手に無駄に体力消費せずにすんで」

半沢「・・・お前ら、二度と俺たちの前に出てくるなよ」

悪ガキボス「・・・けっ!!行くぞ!!お前ら!」

悪ガキ2「あ、うん・・・」

悪ガキ1「・・・・・・」

ザッザッザッザ

悪ガキボス「なんで俺との距離開けるんだよ!!」

悪ガキ2「え?いや、別に・・・」

悪ガキ1「お、俺は偏見ないよ?・・・無いよ?」

悪ガキボス「だから違うってえーーーー!!!」

ザッザッザ

********

アルミン「それで―人類はいずれ外の世界に行くべきだって言ったら、殴られた。異端だって」

半沢「くそっ、外に出たいってだけでなんで白い目で見られるんだ」

アルミン「そりゃ・・・壁の中にいるだけで100年ずっと平和だったからだ。下手に外に出ようとしてヤツらを壁の中に招くことが起きないように、王政府の方針として、外の世界に興味を持つこと自体をタブーとしたんだ」

半沢「つまり王は慎重すぎるという話だな」

アルミン「そうなんだよ。でも本当にそれだけの理由なんだろうか?」

古美門「なぁにがタブーだよ。本当に王政府が壁の外と中を隔離したくて、100年間ヤツらに侵攻を許さずこれからも許さないであろう、この壁に絶対の自信があるのなら、わざわざタブーを公的に侵してる調査兵団なんて、解体してしまえばいいんだ。税金も食わないし、無駄死にもなくなる。だがしない。なぜだ?」

半沢「ヤツらから世界を守るためには、調査兵団の実戦に裏付けられた力が必要不可欠だと思っているからじゃありませんかね。はっきり言って、内地に集められた実戦経験のないエリート集団よりも、実戦経験を積んだ調査兵団の一般兵のほうが戦力になると私は思いますが」

古美門「それには僕も同意する。だが、僕が言いたいのはそうじゃない。調査兵団が無くなると困るのは王政府だからだ。壁の中で退屈してる愚民どもに、希望と夢を与え、外に行くとどうなるか知らしめ、税金ドロボウはここですよ!とわかりやすくアピールできるいい道具なわけだからな。調査兵団が凱旋して、明らかに人数が減っている、なにも成果が上がらない、バカでも一目みて、聞いて思うだろうなぁ、『ああ、また税金をドブに捨てたのか』ってね。その裏で王やら憲兵団様が倍の税金使って酔っ払って姉ちゃんのケツ追い回してたとしても、国民共は目の前のエサに夢中で、誰も気づかないだろうねぇ」

アルミン「調査兵団はスケープゴートってことか。研介は辛辣なこと考えるね。でもあながち間違ってないかもね」

古美門「王政府が外に出るのはタブーって言ってるのがミソで、調査兵団が失敗しても僕は出て行けっていってましぇーん!って言い逃れできるんだ。だいたい、人間は押すなって言われたら押したくなるし、開くなって言ったら開きたくなるんだから、出るなってのも興味持つなって言ってるのも、出てけ、興味持てって言ってるのと同じ事だと思わないかね!王政府はツンデレかコントしたいかどっちかだ!」

アルミン「それはまた極論だなあ・・・。僕にはそれだけで王政府が国民を扇動できるとは思えないよ」

半沢「古美門さんは王政府や憲兵団にも不満があるようですが、そんな憲兵団に行きたいんですか?」

古美門「夢では食っていけないからなぁ!お前みたいに起きてる癖にポワポワ夢なんか見てるヤツが、真夜中だろうが起きてて闇を覗き込んでるような奴らにいいようにされるんだよ!君こそ調査兵団なんてやめたまえ。僕はカルラおばさんの手前、君がバカなことをしたら止めないといけない立場だからな。何回も止めたぞ。止めたからなぁ」

アルミン「え?直樹は調査兵団に行きたいの?」

半沢「な、なんだ?アルミンもやめろって言うのか?」

アルミン「だって・・・危険だし、気持ちはわかるけど」

古美門「アルミン、もっと言ってやりたまえ」

半沢「私はしぶといのが取り柄ですからね。簡単には諦めませんよ」

アルミン「確かに、この壁の中は未来永劫安全だと信じきってる人はどうかと思うよ。100年壁が壊されなかったからといって、今日壊されない保証なんかどこにもないのに・・・」

ドォォォン!!!

半沢「!?」

古美門「わああああああ!?なんだ!?なんだぁ!?」

アルミン「!!」

半沢「なんだ?地震ってやつか?」

ザワザワザワ

アルミン「なんだろう、壁の方になにかあるみたいだ」

半沢「行ってみよう!」

古美門「ええっ!?僕は行かないぞ!行かないからな!あっ、待て!置いてくなぁー!」

タッタッタッ

アルミン「―――――!!」

半沢「アルミン、一体何が・・・!?」

アルミン「・・・・・・・」

半沢「何が見えるっていうんだ!?」

古美門「うわー!嫌な予感がするぞぉ~!!!」

バッ

ビキビキ

半沢「壁に手・・・!?あれは・・・巨人の手か・・・!?」

アルミン「そんな・・・!!あの壁は・・・ご・・・50m・・・だぞ・・・」

半沢「・・・・・・ヤツだ・・・巨人だ」

********

その日人類は思い出した―

ヤツらに支配されていた恐怖を・・・

鳥籠の中に囚われていた屈辱を・・・・・・・

**********

その日、突如として現れた超大型巨人は『壁』に穴を開け、シガンシナ区は無数の巨人に占領された。
そして同じ日に現れた鎧の巨人により、ウォール・マリアも破られ、人類の活動領域はウォール・ローゼまで後退した。
僕ら3人は、ハンネスさんに助けられ、ウォール・ローゼの中に逃げ込むことが出来たが・・・

アルミン(あの時、直樹の家に壁の破片が直撃して、助けに向かった直樹と研介の目の前でカルラおばさんは・・・)

アルミン(いや、このことは日記に書かなくても忘れない。書くのはやめておこう)

古美門「アルミン、日記かね?開拓地に来てから毎日畑耕してばっかで疲れてるのによくやるよ。あぁ~!こんな何もないところ大っ嫌いなんだ!僕は!もうヤダぁ~~!!」

アルミン「うん。毎日同じ繰り返しだと今日がいつかわからなくなりそうだしね。研介も日記つけなよ」

古美門「そうだな、付けよう。とりあえず今日の分はアルミン、君が代わりに付けといてくれたまえ」

アルミン「あのねぇ」

半沢「全く、俺らの半分も働いてないくせにこの人は・・・。確かに開拓地暮らしは楽じゃありませんけど、古美門さんはたまには煩悩を捨ててこういう場所で働いたほうが身のためになるんじゃないですか。泥にまみれて畑を耕し、種から精根こめて食料を作って、作る苦労とありがたさを身をもって体験すれば、あなたの人を食ったような物言いと上から目線の行動がちょっとはマシになるかもしれませんよ」

古美門「半沢!僕の台詞みたいなことを言うな!しかもちょっと真似しただろ!」

アルミン「はははは!似てたよ!・・・というか、聞いていいのかわからなかったから今まで何も言わなかったけど、二人って性格は普段そこまで似ていないけど、顔がそっくりだよね?」

半沢「それはたまたまだ。俺も初めて会った時に驚いた。不愉快だが」

古美門「不愉快なのは僕のほうだ!だいたい、僕はこんな執念深い頑固者じゃないし、顔も僕の方が男前でセクシーだろうが。似てるものか!アルミン、撤回したまえ」

アルミン「ええ~っ?似てるよ。怒った時はそっくりだし。僕ね、実を言うとどっちかわからなくなった時、直樹が右、研介が左って、髪の分け目で見分けてるんだ」

半沢「アルミン、こんな極度の横分けと一緒にしないでくれ」

古美門「人の髪型の真似しておいて侮辱しないでくれたまえ。謝罪を要求するぞ!中途半端な半わけ直樹の分際で生意気だぞ!」

半沢「この世のどこにあなたみたいな胡散臭いペテン師もどきの髪型真似したいと思う人がいると言うんですかね。なあ、アルミン?」

アルミン「僕にふらないで欲しいなぁ・・・」

古美門「いないとなぜ言える!?連れてきて取り囲んでグルグル回って、もうやめてくださいって言うまで目にもの見せてろうかぁ!?」

半沢「私は事実を申し上げてるだけです。どうせあることないこと吹き込んで、その辺の人に極度の横分けさせて連れてくるのは想像に難くない。なあ、アルミン」

アルミン「僕に火の粉を飛ばすのはやめてくれ」

古美門「あとな!半沢!君はいまや僕とふたりっきりの家族になったというのに、なんでずーーーーーーっと余所余所しく喋るのかなぁ?慇懃無礼って知ってるか!?いいかげん腹が立ってきたんだがねぇ!」

半沢「それは失礼いたしました。確かにあなたを養子に迎え入れた時から、私達は形式上家族ではありますが・・・個人的に距離を置かせていただきたいと常々思っておりますもので、なにとぞご理解いただきたい」

古美門「ハッハッハ。そうかそうか。君は気に入らない時は特に丁寧に話すよなぁ!!でも!奇遇だね。僕も君が嫌いだからこれからは私も、毎日あなた様には丁寧に話しかけて差し上げますよ!ふん!!不愉快だぁ!出て行け!」

半沢「お断りします」

古美門「じゃあ僕が出ていく!」

ダッダッダ

アルミン「あっ!研介!夜に外に出たら風邪ひいちゃうよ!もう!直樹もひどいよ!可哀想だ」

半沢「別にひどくない。すぐ帰ってくるよ」

ダッダッダ

古美門「うわああああああ!ざぶいいいいいい!!こごえるうううううぅぅぅ!!アルミン寒いぃぃぃ!!」

アルミン「研介、ほ、ほら毛布だよ。包まって」

古美門「うんっ!!あああああ、ざぶいいいいい!!」

半沢「ふー、全く、根性ないんですから」

古美門「うるさいっ!お前も外出てみろっ!お前のせいだ!バーカバーカバーカバーカ!」

半沢「うるさいですよ」フフッ

アルミン「ははは」

アルミン(あんなことがあったのに、二人は強いな・・・。でも・・・)

半沢「どうした?俺の顔に何かついてるか?」

アルミン「あ、いや・・・」

アルミン(直樹は、巨人の話になると、強い憎しみを抱いている目をする。僕は、直樹の折れない心の強さが、逆に身を滅ぼしてしまうことになるんじゃないかと・・・時々心配になるんだ)

古美門「アルミン、人のことまで心配してると自分が滅びるぞ」

アルミン「えっ?」

古美門「さぁーて!僕はもう寝るぞぉ~。寝るっ!」

アルミン「うん、そうだね。明日も早いし。寝ようか」

半沢「そうだな」

アルミン「おやすみ、二人共・・・」

*********

チッチチチ・・・

アルミン(ん?もう朝か・・・)

半沢「おはよう。まだ早いから寝てたらどうだ」

アルミン「いや、起きるよ。直樹は素振りしてたの?」

半沢「ああ」

アルミン「体力あるなあ。分けて欲しいよ・・・。ん?あれ?研介は?」

半沢「最近朝は教会に行ってるみたいだな」

アルミン「教会?ウォール教の礼拝に行ってるの?」

半沢「さあな。よくは知らないが、たぶんここからいなくなってる時はたまに内地にも出入りしてるようだが・・・」

アルミン「ええっ!?」

半沢「あいつ、悪い意味で人を利用するのは上手いからな」

アルミン「そっか。サボってても見逃してもらってたりしたのは、裏で何かしてたからか。ずるいなぁ」

半沢「俺は、アルミンもやろうと思えばあいつのやってることできると思うけどな」

アルミン「ぼ、僕にそんな度胸無いよ!」

半沢「そうか?」

アルミン「無理だよ。あんな能力ないよ。でも、僕にも彼みたいなことできるって思ってくれてなんだか嬉しいよ。ありがとう」

半沢「あると思うけどなぁ。でもあんなやつにならないでくれよ?二人いたら面倒見切れないからな。ははは」

アルミン「あははは」

古美門「楽しそうじゃないか」

アルミン「わぁ!いつの間に帰って来てたの!?」

古美門「今だ。さて、日記でも書こうかなぁ~」

アルミン「え?朝書くの?」

古美門「朝書いてはいけないという法はない!僕は書きたい時に書くのだ。サラサラサラっと・・・」

半沢(また何か企んでるに違いないな)

アルミン(研介はマイペースで変わらないなあ。振り回されるのは疲れるけど、開拓地で2年過ごさないといけないことを思うと、この明るい破天荒さがありがたいよ。ああ・・・早く、早く2年たってくれ。そしたら、僕らは訓練兵団に行けるんだ―)

**********

2年経って、辛かった開拓地での生活も終わり、僕たちは揃って訓練兵団に入団した。

研介は『開拓地に比べたらマシだが、結局田舎で貧乏で自然の中での生活なんて最悪だー』って言ってたけど、直樹はやる気満々で怖いくらいだ。
その入団式では芋を食べている女の子がいたり、憲兵団に入るために訓練兵になったって教官の前で堂々と言っちゃうやつがいたり、研介も変わってるけど、同じくらい個性的な人達がいたのでビックリした。

僕は上手く馴染めるだろうか。
そして、訓練兵としてやっていけるんだろうか・・・。

半沢「アルミン、日記か?」

アルミン「うん。なんかもう日課になっちゃってて。でも、ここでの訓練は相当厳しいって聞いたから、体力と時間無くなってあんまり書けなくなるかもしれないな」

半沢「明日は早速立体機動の訓練があるしな。早く寝て明日に備えよう」

アルミン「うん。僕、運動苦手だから不安で仕方ないよ。研介も不安でしょ?失敗すると開拓地送りだって言うしさ」

古美門「不安だと?なんでこの僕が不安がらないといかんのだ?あんなものブランコに乗るより容易いことだと思うがねぇ~!それよりまた3年も、質素な食事をして、むさい男共と共同生活を送らないといかんのが辛くてたまらないよぉ~やだやだ」

半沢「食事はあれでもマシになったじゃないですか。私はあなたは開拓地に戻ったらいいと思いますよ。運動神経無いんですから、兵士なんて向いてないんじゃないですか?」

古美門「誰があんな空気と土と惨めな老人たちしかいないとこに戻るか!!僕はああいう場所が一番嫌いだっ!若い女の子がいる訓練所のほうがマシだ!」

アルミン「根拠がないのに研介は自信満々で羨ましいよ。どこから来るんだろうね、その自信は」

古美門「それは僕に能力があるからだ。アルミン、君にも僕ほどではないが、ちびーっとあるぞ。このくらいっ、このくらいチビーっとだ。チビッとアルミンだ」

アルミン「あはは、ありがと」

半沢「アルミン、人格破綻者の戯言なんかに耳を傾けてると無駄に疲れるし時間も無駄だぞ」

古美門「お前には無い!チビッとも無い!!」

半沢「古美門さん、おやすみなさい。アルミン、おやすみ」

アルミン「お、おやすみ」

古美門「無いぞ!」

半沢「すぅーすぅー」

古美門「無いぞーーーーー!!」

ジャン「うるせーぞ!!古美門っつったか!この横分け野郎!」

古美門「うるさーーーーーい!!馬面あああああ!!!」

ジャン「な、なんだと!?」

アルミン「もう!やめてよ!研介!初日から敵を作るのはやめろ!ごめん、ジャン・・・だっけ。人格破綻してるけど、こう見えて、もしかしたらひょっとして悪い人じゃ無いかもしれないんだ。ごめん」

ジャン「なんだそりゃ・・・。けっ、どうでもいいけど、静かにしろよ」

古美門「いいだろう!見てるがいい!半沢!ジャン!誰もが何も喋れなくなるくらい静かになるよう、明日の立体機動訓練で度肝を抜いて差しあげようじゃないかぁ!!」

**********

翌日・立体機動姿勢制御訓練

アルミン(・・・なんて、研介、昨日は大口叩いてたっていうのに・・・)

古美門「・・・・・・」

アルミン「あ・・・あああ・・・」

古美門(あれっ・・・?)

ブラーン・・・

キース「何をやってる!古美門研介!上体を起こせ!!」

古美門(あれっ・・・何だこれ・・・こんなの・・・どうやって・・・嘘だ。嘘だぁ~!!!!!こんなはずあるかあああああ!!)

**********

半沢「古美門さん!練習してなんとか明日までにできるようにならないと、開拓地行きですよ。昨日大口叩いてたのはどこの誰だったか覚えてますか?」

古美門「・・・・・・」

アルミン「おーい、研介~、しっかりしなよ!」

古美門「開拓地送りなんていやだ。やだ・・・やだぁーーーーーー!!!」

ジャン「るせーーーーっ!!!」

古美門「僕はもう終わりだー、明日から開拓地送りだー、アルミィィィィン!!」

アルミン「大丈夫だよ。練習したらきっとできるよ、直樹がすごくうまいから教えて貰ったらいいよ」

古美門「半沢にぃ~?」

半沢「教えて差し上げても構いませんが」

古美門「半沢ねぇ。ほうほう・・・ははぁん」

半沢「教えて欲しいのか欲しくないのかどっちなんです」

古美門「いや、結構だ。君はきっと僕に教えたくてたまらないだろうが、丁重に辞退させていただくよ。君は僕が開拓地に行ってしまうのが寂しくてしょうがないだろうから、ものすごーく教えたいだろうがねぇ~!!」

半沢「教えなくてよくてホッとしましたよ」

アルミン「本当に仲いいね・・・。研介、諦めちゃダメだよ。まだなんとかなるって。僕でもできたんだ」

古美門「ありがとうアルミン。心強いよ。その言葉だけでできる気がしてきた。いや、できる!―じゃあ、とりあえず明日のために寝よっかぁ」

アルミン「えっ!?練習は!?」

半沢「開拓地に行きたいんですか?」

古美門「行きたいわけあるか!できると言ったらできるんだ!さっさと寝ろぉ!」

半沢「まったく・・・知りませんからね」

アルミン「僕・・・皆にコツとか聞いてきてみるよ」

半沢「ほっとけ、アルミン」

アルミン「嫌だ。僕は幼馴染3人、バラバラになるなんて・・・。今まで助け合ってきたんだ。これからも助けあおうよ」

古美門「半沢~、アルミンはいいこと言うな。カルラおばさんも、僕と君とで助け合えって言ってたよ」

半沢「母さんが?」

古美門「・・・・・・・」

ピラッ

半沢「この紙は?」

古美門「僕の宝物だ。・・・きっと君にとっても」

半沢「?」

古美門「読み給え。君にも関係するものだ」

半沢「俺に?」

カサカサ

『研介へ。困った時は直樹と助け合うこと。直樹のこと頼んだよ。 カルラ』

半沢「これは・・・」

古美門「カルラおばさんの形見になってしまったが・・・。半沢。君が持っていたまえ」

半沢「でも・・・これはあなた宛に書いてある。いいんですか?」

古美門「君の母さんが書いたんだ。君のものだ。いつか渡そうと思っていた。丁度いい機会だ。もう会えなくなるかもしれないしな」

半沢「古美門さん・・・」

アルミン「まさか、研介・・・。わざと開拓地に行く気なんじゃないよね?」

古美門「・・・・・・」

アルミン「ダメだよ!!そんなの!!」

古美門「アルミン。・・・僕は運動神経があまりよくないようだから、別の方面から上を目指したほうが向いてると思うんだよ」

アルミン「開拓地から上を目指すなんて、そんなの無理だ!いくら研介でも無茶だよ!」

古美門「僕が開拓地時代に、足繁く教会に通ってたのを覚えてるだろ?その時に作った人脈がある。だから心配しなくて構わない。僕は僕のやり方でこの世界で生きていける」

アルミン「ダメだよ・・・嫌だ」

半沢「古美門さん。考え直してくれませんか。私はあなたが好きではないが・・・それでも家族なんだ」

古美門「半沢・・・」

半沢「・・・家族だろ?」

古美門「もちろん、僕らは家族だ。だから、その手紙・・・カルラさんの形見でもあるが、僕との絆と思ってくれ。いつも、大事に持ってて欲しい。ケンカばかりで気が合わなかったが・・・楽しかったよ。・・・今までありがとう」

半沢「古美門さん、まだ諦めては・・・!!」

古美門「諦めるんじゃない。やり方を変えるだけだ。・・・わかって欲しい」

アルミン「でも・・・」

半沢「いや、アルミン・・・。古美門さん。わかった。あんたのしたいようにするといい。俺は止めない」

古美門「どうした、敬語使えよ。気持ち悪いなぁ。僕のほうが年上だぞ」

半沢「そうか?同じか俺が上じゃないか?それに、もう同期になったんだから歳は関係ない」

古美門「明日までかもしれんがな。僕はもう疲れた。寝かせてくれ」

半沢「ああ。おやすみ・・・」

アルミン「おやすみ・・・」

古美門「ああ」

半沢「・・・・・・・・・・」

アルミン「・・・・・・僕、やっぱり上手く出来てた人達にコツ聞いてくるよ」

半沢「俺も行こう」

アルミン「直樹・・・。うん!行こう」

*************

ジャン、コニー、ベルトルト、ライナー。
僕と直樹は立体機動姿勢制御訓練がうまかった人達に話を聞きに行った。

ジャンやコニーは真面目に答えてくれなかったけど、ベルトルトとライナーは話を聞いてアドバイスをくれた。
彼らも巨人の恐怖を目の当たりにしたそうで、他の訓練兵に比べると、少し大人に見えた。

アルミン(研介が起きたら、ライナーがベルトの調整を見直せって言ってたって教えてあげよう・・・)

古美門「スピースピー」

半沢「すぅすぅ」

アルミン(ははは。寝顔は本当にそっくりだな。さて、僕も寝よう・・・)

***********

半沢「アルミン、アルミン」

アルミン「ん・・・?」

半沢「朝だ。早く準備して集合場所に行こう」

アルミン「うん・・・。相変わらずきっちりしてるなぁ・・・。研介。起きて」

半沢「古美門さんは寝かせておいてやろう。まだ早いし、俺たちと一緒に行くのは辛いだろうから」

アルミン「そうかな・・・」

半沢「ああ。俺たちがあまり心配していると、プライドが傷つくといけない」

アルミン「そっか。直樹のほうが研介のことよく知ってるもんね。先に行って待ってようか」

半沢「そうしよう」

***********

キース「む?早いな。アルミン・アルレルトと・・・」

半沢「おはようございます、教官。半沢直樹です」バッ

キース「半沢訓練兵か。貴様は古美門訓練兵と似ているからまだどちらがどっちか判別が難しいな」

半沢「よく言われます」

アルミン「彼らは髪の分け目が逆なので、そこで判別がつけれると思います」

アルミン(あれっ?)

キース「なるほど。半沢訓練兵が右分けということは、古美門訓練兵は左分けということか。覚えておこう。整列しておけ」

半沢・アルミン「はっ!」

アルミン(・・・なんだろう、今、僕何か違和感を感じたような・・・)

**********

ジャン「お、半沢とアルミンか、早いな」

アルミン「おはよう、ジャン」

ジャン「古美門、お前らがいなかったから探してたみたいだぞ?」

アルミン「えっ。しまったな。やっぱり起こして一緒に来た方が良かったかもね」

半沢「すぐ来るだろ」

キース「後は古美門訓練兵だけか。やつが着き次第姿勢制御訓練を始めよう」

タッタッタ

古美門「はあはあ・・・!間に合った・・・!」

キース「来たか」

古美門「アルミン、先に来てたのか。起こしてくれたら良かったのに・・・。それに古美門さんも・・・」

半沢「古美門はあなただろ?」

古美門「え?」

アルミン「ごめん、研介。僕らと一緒にいて気を使わせたら悪いかなっ思って先に来たんだ」

古美門「アルミン?俺は半沢直樹だが?」

アルミン「えっ?」

半沢「おい、まさか俺ととって変わって試験を受けようって魂胆なのか?やめておけ、すぐバレるぞ」

古美門「いや、古美門さん、どういうことだ?これは・・・?」

半沢「だから、古美門はあんたじゃないか、プレッシャーで現実逃避してるのか?」

古美門「なに俺みたいな喋り方してるんだ・・・まさか古美門さん・・・」

キース「何をしている、古美門訓練兵、自分の位置につけ。すぐに試験をはじめるぞ」

古美門「教官。私は古美門研介ではありません。半沢直樹です!」

アルミン「ええっ!?」

ザワザワ・・・

キース「・・・確かに貴様らは顔がそっくりだから、ごまかそうと思えばできるんだろう。だが・・・アルレルト訓練兵!」

アルミン「は、はいっ!」

キース「見分けかたは?」

アルミン「・・・その・・・前髪が。半沢が右分けで・・・古美門が左分けです」

キース「だ、そうだが?」

古美門「そうです。私はいつも右分けに・・・(あれ?そういえば何か違和感が)」

半沢「今日もきっちり左分けが決まってるみたいだが?」

古美門「!!!!!」

半沢「・・・・・・ニヤリ」

古美門(やられたっ・・・!!!いつだ!?夜か!?夜のうちに俺の髪を固めやがったな!!!古美門!!!!)

半沢(やられたと思ってる顔だなぁ!その通りだよぉ~!!半沢~!僕らは家族なんだ助け合わないとなぁ~!!僕の再試験、頼んだよぉ)

古美門【半沢】(くっ・・・憎たらしい顔だ!ここは教官に訴えてズルをやめさせよう)

古美門【半沢】「教官。今日は分け目が違いますが、私が半沢直樹です。あちらの、私に成り代わっているほうが本当の古美門です。試験を受けるのは彼のほうです」

キース「なに・・・?」

半沢【古美門】「教官。彼は試験に受かる自信がないので、私に成り代わろうとしているんだと思います」

アルミン(ええっ!?どっちが本当なんだ?ええっと・・・よく見るんだ。僕ならわかるはずだ)

古美門【半沢】「いえ、私が半沢です」

半沢【古美門】「半沢は私だ。それに、あなたが古美門である証拠もある」

古美門【半沢】「証拠?」

半沢【古美門】「あなたのジャケットの内ポケットに、あなた宛の手紙が入ってるはずだ。私の母があなたに宛てた手紙だ。私があなたに渡した」

古美門【半沢】「!!!」

キース「持っているのか?」

古美門【半沢】「いえ・・・それは・・・(やられた・・・)」

キース「キルシュタイン訓練兵。彼の内ポケットを確認しろ」

ジャン「はっ」

古美門【半沢】(くそっ・・・!!古美門っ!)

ゴソゴソ

ジャン「あっ!ありました」

キース「ふむ・・・。確かに古美門宛となっているな。なぜ成り代わっているなどと妄言を吐いた?」

古美門【半沢】「いや・・・これは・・・」

アルミン(あっ・・・!あれは昨夜研介が直樹に渡してたんじゃないか!!じゃあ、あっちが直樹で、こっちで直樹のふりをしてるのが研介だ。間違いない。そうだ。何か違和感がと思ったら・・・髪のボリュームだ。直樹より研介のほうが長くて多い。ああっ!気にして見るとすぐわかるじゃないか!)

アルミン「・・・・・・」チラッ

半沢【古美門】(気づいたか。アルミン。君は賢いからなぁ。これで僕の入れ替わりは磐石になったぞ)

キース「しかし、精神的に適性が無い場合も開拓地へ行って貰うが・・・貴様はどうなんだ。自分が半沢であるなどと・・・」

アルミン「教官!」

古美門【半沢】「アルミン!?」

アルミン(ごめんね。直樹。でも僕は・・・3人で一緒にいたいんだ。僕は研介が一人開拓地送りになるのは嫌だ!)

アルミン「古美門が半沢を困らせるのは日常茶飯事のことなので、いつもの悪ふざけをしただけだと思われます。私は幼馴染でずっと一緒にいますが、古美門は頭も良く、判断能力もしっかりしており、兵士として問題になるようなことは無いと断言できます!」

半沢【古美門】「私もそう思います。古美門は今日の試験で、苦労ばかりで辛い思い出しかない開拓地送りになるかもしれないので、極度に緊張しており、私と話すことで緊張をほぐそうとしたのだと思われます」

古美門【半沢】(ああ、駄目だ。これ以上は・・・古美門のやつ・・・。アルミンまで利用しやがって。俺がここで否定したらアルミンまでなり代わりの共犯で開拓地送りになるかもしれないじゃないか。今回はあんたの策にはまってやるよ。だが。借りは倍返しだぞ、古美門!)

キース「気持ちはわからんでもないが、貴様はすでに兵士であるのだから、立場と場所をわきまえておけ。以後、発言と行動には気をつけるように」

古美門【半沢】「はい。申し訳ありませんでした!!二度といたしません」

ズザッ

半沢【古美門】「ああっ!!!」

古美門【半沢】(俺があんたということならな、負けることが大嫌いなお前の立場で土下座してやる。俺は痛くも痒くも無いからな。だが、お前は惨めな姿を訓練兵全員の前で晒したことになるんだ!!!)

半沢【古美門】「ぐぬぬぬぬっ!や、やめろぉぉ~!!そんなこと僕がするなんて・・・」

アルミン「お、落ち着いてっ!しょうがないよ!これはっ。痛み分けだよっ」コソコソ

半沢【古美門】「うぐうぐっ・・・ギギギ」

古美門【半沢】(悔しそうだな。やられたらやり返す。これが俺の流儀だからな!)フンッ

アルミン(はあ・・・。仲が良いんだか、悪いんだか。でも、これでなんとか3人揃って訓練兵でいられそうだ)

**********

保守ありがとう。端折るとこ考えてたので遅くなったが再開してく。
終わりは決めたので、長くなりそうだがなるべくサクサク行きたい。

訓練兵として、僕らは3年厳しい訓練に耐え抜いた。
僕は体力も運動能力も低くて、ついていくのがやっとだったが、直樹は持ち前の運動神経の良さと強い精神力があり、立体機動での正確で力強い刃の扱いも素晴らしく、同期の仲でもライナーと1、2を争う成績だった。

そして研介。
研介は・・・運動神経が関わる科目はことごとく上達せず・・・。
というか、はっきり言って卒業が危ぶまれるくらい下手くそだった・・・。
でも・・・。

アルミン(でも、僕らは今日!!3人共無事に訓練兵団を卒業する!!)

教官「本日、諸君らは『訓練兵』を卒業する・・・。その中で最も訓練成績が良かった上位10名を発表する。呼ばれたものは前へ」

アルミン(上位10名・・・。彼らは憲兵団へ行ける。研介は入ってないだろうけど、きっと直樹は入ってる!直樹は運動能力だけじゃなく、頭もいいから、首席でもおかしくないぞ!)

教官「首席・・・」

教官「半沢直樹!!」

半沢「よしっ!」

アルミン(やった!!!すごい!!すごいよ直樹!!)

教官「2番、ライナー・ブラウン!3番、ベルトルト・フーバー・・・」

アルミン「研介!直樹が首席だって!!やったね!」

古美門「良くないっ!なんで僕が首席じゃないんだっ!!」

アルミン「あはは、あの立体機動で首席だったらびっくりするよ」

教官「5番、古美門研介!」

アルミン「それに研介上位5番だって。卒業できただけでもギリギリなのに、5番に入ってるとかこれは奇跡的だよ・・・って・・・えっ!?5番!?研介が!?えええっ!?」

***************

半沢「古美門、5番おめでとう・・・一体どんなペテンを使ったんだ?皆ざわついてたぞ」

古美門「やあ、これはこれは首席様。いきなり失礼だな、君は。それにしても、なんで僕が5番なんだ。あの刈り上げ馬面より下じゃないからまだ良かったものの。まったく、僕が首席じゃないなんて、成績つけてるやつらは何を見ているのやら!どうなってるんだろうなぁ」

アルミン「いやいや、君の成績こそどうなってるんだ!?研介が成績良かったのって、座学くらいだろ!?成績評価の配分が高い立体機動がボロボロだったのにおかしいよ!?なんで!?」

古美門「座学の成績が良かったからじゃないかねぇ」

アルミン「それって、成績を補うために頭使って何か手を回したってこと?」

古美門「アルミン。君はいつから僕の言葉を深読みするようになったんだ」

アルミン「だって、それしか考えられないよ」

半沢「俺もそう思う」

古美門「失礼だな。お前たちは。まぁ~そうだけどねぇ~」

アルミン「なんでそんなこと・・・」

古美門「勝たなければ意味がないからだ。訓練兵のほとんどが憲兵団を志望していたんだ。上位10位に入ったものが勝つというなら、僕は僕にできるあらゆる手をつかい、同期でも容赦なく叩きのめして勝つ。憲兵団に行くため。それだけが全てだ。憲兵団に行けば巨人と戦うことなんてほぼ無いんだ。あそこでは立体機動なんて飾りでしかないからな」

半沢「それで、実際どんな汚い手を使って上位に入り込んだんだ?」

古美門「草の者を使ったんだよ」

アルミン「草の者?」

古美門「東洋における特殊部隊とでも言おうか。その仕事は諜報・暗殺・破壊活動などなど・・・」

半沢「スパイのようなものか」

古美門「ま、そういったところだな」

アルミン「じゃあ、研介はその草の者を使って、自分の成績をあげるように裏工作させてたってこと?でも、そんなことできるのかな?」

古美門「できるかできないかと言えば、実際僕がやってのけたのだからできる。もちろん、誰でもできるわけではないがね。ここだけの話だが僕以外にも同じようなことをしてたヤツがいるから、ある程度の能力があれば可能だよ、アルミン。まあ、そいつは僕と逆で、ある人物の成績をあげるために自分が工作していたわけだが」

アルミン「え?そんなことしてたやつがいるの?誰?」

古美門「それは言えないな。僕の協力者でもあるからね」

半沢「なるほど、誰かは知らないが、わざと他人の成績を上げるために工作してることをネタに強請って、自分にも協力するようにしたわけか。そういう他人の弱みをネタに何人か協力者を得ていたんだな」

古美門「おいおい、やめてくれたまえ。そんな言い方したらまるで僕が悪い奴みたいじゃないか。僕は彼らの秘密がバレないよう尽力し、時に必要な情報を与えることで、その報酬として協力してもらってたんだ。お互い利害が一致した関係だったんだ。何も後暗いことなんてないんだよ?」

アルミン(一体誰が研介に協力してたんだろう?全然気付かなかったよ・・・)

サシャ「あ!古美門先生ー!!」

タッタッタ

古美門「やあ、サシャ君。今日も無駄に元気がいいね。そんなに嬉しそうによってきても、僕らは誰も食べるものはもってないぞ。どうしたね?」

サシャ「ええっ!?食べ物もらいに来たんじゃありませんよ!」

アルミン「でもあったら貰ってたよね?」

サシャ「くれるものはいただきます」

半沢「ははっ・・・!サシャは面白いな」

サシャ「なんですか。もう。古美門先生はひどいですね。卒業のお祝い言いに来ただけですよ。直樹とアルミンも、卒業おめでとうございます。直樹はさすがの主席でしたね!」

半沢「ありがとう、サシャ」

アルミン「サシャ、君も成績上位者だったじゃないか。おめでとう」

サシャ「えへへ、ありがとうございます!あの、古美門先生!先生は憲兵団に行くんですよね?」

古美門「もちろんだ。上位に入って憲兵団に行かないバカなんて、こいつくらいだよ」

半沢「俺の勝手だろ」

サシャ「あの、私も憲兵団に行くので、古美門先生また一緒にお仕事がんばりましょう!!パンいっぱい食べたいです!」

古美門「あっ!バカ!半沢とアルミンがいるのに!この芋女!!」

サシャ「ああっ!すいません!つい・・・」

アルミン「えっ?もしかして草の者って・・・」

半沢「サシャだったのか?」

サシャ「いえ、あの・・・えっと・・・こ、古美門先生・・・」

古美門「もういい。君のようなバカが訓練兵団の3年間にバレないように努めただけで奇跡的だったんだ。それに、どうせこいつらとは兵団が違うようになるから、内地で勤める僕らにとって特に問題無い。だが、一緒に働きたいなら内地で僕の草だとバレないように気をつけてくれないと困るなぁ」

サシャ「ごめんなさい!気をつけますので!見捨てないでください!!」

アルミン「なんでそんなに研介にこだわるの?もしかして・・・付き合ってる?」

古美門「んなわけあるか!!僕がこんな芋と付き合うワケないだろ!」

サシャ「ひどいです!芋じゃありません!」

半沢「古美門、サシャが君のために働いてくれてたというのに、そんな言い草は無いだろう?サシャ、そんなやつの腰巾着みたいなことはやめたほうがいい」

サシャ「嫌です。古美門先生のお手伝いをすればいっぱいパンを食べさせてくれるので、離れたくありません」

古美門「そうだろう、そうだろう。君のその食事に対する熱意だけは尊敬に値するよ。内地に行ったらもっといいもの食べれるぞ。共に稼ごうじゃないか」

サシャ「はいっ!!私がんばりますよ!!」

古美門「そうだ、言っておくが、半沢、アルミン。もし君たちがサシャが僕の草だと誰かにばらした時は、サシャには悪いが彼女を解雇しないといけなくなるかもしれない。気をつけてくれたまえよ?サシャはこんなに僕と仕事したがっているのに、それが出来なくなったらかわいそうだからなぁ?」

サシャ「そうですね!私からもお願いします!!!このとおりです!!」

半沢「サシャが草の者じゃなくなって困るのは古美門だろ・・・。でも、サシャに頭を下げられたらどうしようもないな」

アルミン「そうだね。本当、研介はずるいよなぁ」

古美門「まあ、何か困ったことがあればいつでも相談したまえ。もちろん、報酬は弾んでもらうがね」

半沢「あんたには絶対相談しないし、関わるとロクなことがないから俺たちのことは忘れて新しい人生を歩んでくれて結構だ」

アルミン「あはは・・・僕も・・・あんまり相談はしたくないかな・・・」

古美門「なんだなんだ、冷たい奴らだな。ふん。後で頼んでも知らんからな!」

サシャ「では私はこれで!古美門先生!また後で会いましょう!!」

タッタッタ

アルミン「サシャも憲兵団か・・・。皆離れ離れになっちゃうね」

半沢「アルミンは・・・駐屯兵団か?」

アルミン「僕は・・・僕は調査兵団に行くよ」

半沢「!?」

古美門「アルミン、君は技巧の方に進む方がいいと思うがね。技巧の仕事なら巨人と戦うことも無いし比較的安全なところで暮らせるじゃないか」

半沢「俺もそう思う。教官も技巧を進めてただろ。アルミンは調査兵団には向いてないと思うぞ」

アルミン「いや、僕はもう決めたんだ」

古美門「アルミン、君は足手まといになる」

半沢「ほら、アルミンより足手まといになる古美門は、素直に憲兵団を目指してるんだ。アルミンも、自分を活かせる道があるんじゃないか?」

古美門「はーんーざーわー!!!僕は足手まといになるから憲兵団に行くんじゃないっ!違うぞ!違うからな!」

アルミン「そうだね。僕は皆より体力も技術もないよ。でも、それでも・・・・・・・死んでも足手まといにはならないよ!」

こうしてー
直樹と僕は調査兵団へ・・・。

研介は憲兵団へ。

僕らの道は分かたれた。・・・と思われた―


5年振りに超大型巨人が出現するまでは・・・。


************


=トロスト区=


カン カン カン カン カン

ジャン「うおおおおおお!!なんで今日なんだ・・・!?」

アルミン(本当に・・・なんで・・・また超大型巨人が現れたんだ。今日、この日に・・・。)

古美門・ジャン「明日から内地に行けた(っつー)のに!!」

古美門「真似するな!馬面!!」

ジャン「うるせぇ!!こっちのセリフだ!この極度横分け!!!」

半沢「こんな時に喧嘩は寄せ。落ち着くんだ、二人共」

ジャン「ちっ・・・!」

古美門「半沢・・・。僕は死ぬよ。こんな作戦、僕の力じゃ生き残れないよ。僕は顔と頭はいいが、立体機動が下手くそなんだああああ。うわああああん」

半沢「な、何弱気になってるんだ。あなたらしくないぞ」

古美門「巨人は僕の話なんて聞かないから、僕の範疇外の敵なんだよぉ!怖いんだよぉぉぉ!!半沢ぁ!戦闘が混乱してきたら僕のとこに来てくれよぉ!」

半沢「は!?」

半沢「何言ってるんだ、俺とあんたは別々の班だろ?」

古美門「混乱した状況下では筋書き通りになんていかないんだから、僕を守ってくれよ!家族だろ!」

半沢「・・・・・・」

イアン「半沢訓練兵!」

半沢「はっ!」

イアン「お前は特別に後衛部隊だ。付いてこい!」

半沢「わかりました!」

古美門「ちょっと待て!半沢!僕の命の危機だぞ!?なに素直に後衛に行こうとしてるのかなあああ!?」

半沢「悪い・・・古美門。あなたは俺の家族だが、ここは軍隊だ。俺の判断なんて関係無いんだ。避難が遅れている今、住民の近くには多くの精鋭が必要だからな・・・仕方ない」

古美門「そんなぁあ!僕が死んだらどうなるかわかってるのか?枕元に毎日立って分け目変えてやるからな!この薄情ものぉ!」

半沢「そうだな。俺は薄情かもしれない。だが、この状況下であなただけを守るより優先しなくてはいけないことがある。俺たちは兵士だ。同じ兵士であるあなたより、もっと弱いものを助けないといけないんだ。わかってくれ。だが・・・古美門、頼みがある・・・一つだけ・・・どうか・・・」

半沢「死なないでくれ・・・」

古美門「・・・・・・」

半沢「・・・・・・」

タッタッタ

半沢(・・・もしかしたらその辺の市民よりも古美門のほうが虚弱かもしれんが・・・)

古美門(死なないさ・・・僕は。こんなところで死んでられないんだ)

古美門「・・・・・・」

アルミン「研介!僕ら同じ班だ!一緒に行こ・・・」

古美門「死んでられないけど、半沢がいなかったら死んじゃうって言ってんだよおぉぉ!!!なんで置いて行くんだよ!!家族なのに!なんで置いて行くのかなぁ!!僕死んじゃう!」

アルミン「お、落ち着いてよ!研介!」

古美門「アルミン~僕はもうダメだよ。立体機動できなくて死んじゃうよぉ~ヨヨヨヨ」

古美門「そしてなんで僕が班長なんだよぉぉ!」

アルミン「君が成績5位だからに決まってるだろ!しっかりしてよ!」

トーマス「おい・・・研介どうしたんだ?班長だろ、指揮できるのか?」

古美門「うるさい!僕は好きでやってるんじゃないんだぞ!班長なんてやりたくないんだ!」

ミーナ「ねぇ・・・研介、大丈夫?心配なんだけど」

古美門(はっ!ミーナ!?ミーナも僕の班だったのか!忘れてた!)

古美門「ミーナ!大丈夫だ!僕に任せておけば何も心配することなんてないのだよ!この戦いが終わったら、二人で一緒に食事でもどうかな?憲兵団の力を使って内地でも一番いい部屋を用意しておくよ」

ミーナ「あはは・・・、考えとくからがんばって」

古美門「よーし!!僕がんばるぞ!!」

アルミン(サシャはダメでミーナはいいのか・・・それにしても立ち直り速いな)

古美門「行くぞ!!」

班員「おおおおおおお!!」

ビュッ

アルミン「あっ!あれは前衛の先輩たち・・・!僕たち中衛まで前衛に駆り出されている!?」

ミーナ「巨人がもうあんなに!」

トーマス「まだ殆ど時間が経って無いのに・・・前衛部隊が総崩れじゃないか」

アルミン(そんな・・・こんなあっけなく・・・。これじゃあまりにも・・・)

兵士「奇行種だ!!避けろっ!!!」

アルミン「こっちに突っ込んでくるぞ!!皆!避けるんだ!」

ミーナ「きゃあ!!」

ドォッ!!

アルミン「・・・!!!」

トーマス「うっ・・・!うっ・・・!うわぁ・・・クッ、クソッ!!」

アルミン(トーマスが・・・捕まった・・・。の、飲み込まれる・・・。助けなきゃ、助けないと・・・!!)

アルミン(か、体が動かない・・・)

ミーナ「トーマス!!!」

ナック「ミーナ!止すんだ!!」

ビュンッ

ミーナ「!!(あっ!!奇行種!!!)」

バクッ

ミーナ「あああああっ!!!」

アルミン(ああ・・・ミーナが・・・)

ミリウス「うおおおおおおお!!巨人たちが来るぞ!!」

アルミン(そうだ・・・研介、研介は・・・)

キョロキョロ

古美門「・・・・・・・」ブラーン

アルミン(ああっ!!!出発地点の屋根から逆さにアンカーでぶら下がってるぞ!!し、しかも頭でも打ったのか!?気を失ってる!?下手くそすぎるよ!しかも、あ、あんなとこいたら巨人の標的になる!!た、助けにいかないと・・・)

ナック「ぎゃああああああ!!!」

アルミン(助けに・・・いかないと・・・なのに)

ミリウス「離せえええ!!!うわあああ!!!」

アルミン(なんで・・・僕の体は動かないんだ・・・)

古美門「・・・・・・・」ブラーン

アルミン(あ・・・巨人が、巨人が研介に向かって歩いて行ってる。研介、食べられちゃう・・・。僕が助けなきゃ。研介・・・)

古美門「・・・ううん・・・ん?」

アルミン「研介!!!」

古美門「うわあああああ!!!!巨人だああああ!!!!ぼ、僕を食べても美味しくないぞ!!こっちに来るな!!やめろ!やめろ!!」

ズシンズシン・・・

古美門「く、くそ!アンカーどうやって抜くんだ、こうか!こうか!?うわあああ!!絡まったよおお!!わあああああ!!!こっち来るな!!うわあああああ・・・」

バクッ

アルミン(・・・え・・・。嘘だろ・・・)

アルミン(研介が・・・食べられた・・・)

アルミン「うわあああああああああああ!!!!」

****************

半沢「・・・・・・」

イアン「どうした?半沢」

半沢「いえ・・・、なにかスッとした気がしたので・・・いえ、気のせいです」

わああああああああああ

商会のボス「もっと荷車を押せ!!お前ら!!さっさとせんか!!」

兵士(なんてことだ・・・早く市民を避難させなくてはいけないのに!こんな荷車通るわけない・・・。だが、この人に逆らうと・・・)

市民「おい!あんた達!!荷車をどけてくれ!今がどういう状況かわかってるのか!?」

市民「それ以上押し込んでもその荷台は通れねぇよ!人を通すのが先だろ!!」

市民「なにやってんだ兵士!こいつらを取り押さえろ!」

兵士「し、しかし・・・」

商会のボス「やってみろ下っ端!俺はここの商会のボスだぞ!お前ら兵士がクソに変えたメシは誰の金で賄われた!?お前がこの街の兵士を食わす金を用意できるのか?」

兵士「・・・・・・・」

商会のボス「いいから押せ!!この積荷はお前らのチンケな人生じゃ一生かかっても稼げねぇ代物だ!協力すれば礼はする!!」

ズシン  ズシン ズシン ズシンズシン

市民「!!!」

市民「巨人だ!!!」

市民「すぐそこまで来てるぞ!!」

市民「うわああああああああ!!!」

ドォッドオッドオッ

精鋭の兵士「クッ!速い!!精鋭の私たちが追いつけないなんて!このままじゃ―」

半沢「・・・・・・・」

ヒュッ

精鋭の兵士(!?なっ・・・速いっ!?あれは・・・今期の首席の・・・半沢か!!きょ、巨人に追いついたぞ!!)

半沢(俺たちを無視して行くとは、奇行種か)

ズバッ

精鋭の兵士「やった・・・!!半沢が倒したぞ!!」

半沢「・・・・・・」

市民「・・・・・・!!」

半沢(なんだ?避難が遅いと思ったら、門に荷車が引っかかっているのか?どう見てもこの門を通すのは無理だろう)

半沢「何をしているんですか?早く避難しないと危険です。この荷車をどかしてください」

商会のボス「触るな!」

半沢「あなたの荷車でしたか。このまま門に詰まった状態だと避難が完了しません。一度引いてどかしていただけませんか?」

商会のボス「ふざけるな!この荷物を捨てろというのか!?誰が貴様らを養ってやってると思ってるんだ!!」

半沢「捨てろなど言っておりません。一度引いてくださいと言ってるんです。この荷台は門を通すには大きすぎます。一度引いていただき、荷物をまとめ直しましょう。その間に市民の方々に先に通って貰えば速やかに避難が完了しますので、どうかご協力いただきたい」

商会のボス「そんな事してる間に巨人が来るかもしれないだろうが!!先に通す!!」

半沢「このような大きな荷台ではいくら押したところで、到底通らないと思いませんか?無駄に時間が過ぎていくだけです。押す時間を小分けにする時間にあてたほうが現実的に荷物を門の中に運び入れることが可能になりますし、あなたがたが小分けにしている間に巨人が来たら、我々兵士がお守りいたしますのでご心配には及びません」

商会のボス「お前らがオレを守るのは当然だ!!だがな!先にここを荷物と一緒に通るのはオレたちだ!」

市民「その兵士の言うとおりだ!!荷物を小分けにすりゃいいじゃねぇか!」

市民「そうだ!その間にオレたちを通してくれ!!」

商会のボス「だまれ!!この荷物がいくらすると思ってるんだ!!!」

半沢「いいかげんにしろっ!!!」

商会のボス「!?」

半沢「その荷物がいくらかなんて、そんなこと知ったことではありません。どうでもいい。あんたのやってることは時間の無駄だ。くだらない茶番はさっさと終わらせてもらえませんか」

商会のボス「き、貴様!なんだその口のきき方は!タダメシ食らいが100年ぶりに役にたったからっていい気になるな!!」

半沢「金さえあればなんでもできると思ったら大間違いだ。どうせここで押し問答してる間に、あんたは巨人に食われて死んでしまうんだ。だったら、私が今ここであんたを始末したほうが効率が良くなると思いませんか?」

商会のボス「・・・・!!やってみろ!!俺はこの街の商会のボスだぞ!お前ら下っ端の進退なんざ、冗談で決めるぞ!?」

半沢「どうぞお好きにしていだいて結構。だが、やられたらやりかえす、それが私の流儀です。あなたが私をどうこうしたとして、私は必ずあなたを追い詰めて、今ここで市民たちが感じている恐怖と怒り以上の感情をあなたに味あわせてやるぞ。あなた、商売人なんでしょう?今まで先の見通しを上手くつけてやってきたんです。今どうすればいいか、わかりませんか?冗談を言える口があるうちに考えを改めていただきたい」

ジャキッ

商会のボス「・・・ふっ・・・」

半沢「・・・・・・」

商会のボス「・・・荷台を引け」

市民「!!!」

わああああああああ!!!

半沢(時間を無駄に食ったな。さ、俺は避難が完了するまで巨人の相手だ。・・・アルミンと古美門は無事だろうか・・・。撤退の鐘が鳴ったらイアン班長に頼んで前衛の様子を見に行かせてもらおう・・・)

**********

カン カン カン カン カン

アルミン(撤退の鐘だ・・・。本当なら、壁を登って帰れるんだ。でも・・・)

アルミン(ガスの補給所に巨人が群がってて、僕らはガスの補給ができない・・・)

ジャン「やっと撤退命令が出たってのに・・・ガス切れで俺たちは壁を登れねぇ・・・」

アルミン(・・・それに、研介が死んでしまった・・・。ミーナも、トーマスも、ナックもミリウスも・・・皆、皆死んだ。なんで、僕だけ無駄に生き延びたんだ)

コニー「イチかバチかあそこに群がる巨人を殺るしかねぇだろ!?俺たちがここでウダウダやってても同じだ!ここに巨人が集まる!」

アルミン(僕もこのまま死んでしまうのかな・・・。直樹は、直樹は無事なんだろうか・・・)

**********

半沢(中衛も前衛もないな、これは。こんなに巨人の進行が速いとは。アルミン、古美門・・・同期の皆は無事なのか?)

ヒュンッ

半沢「アニ!」

アニ「!」

半沢「無事だったか。良かった。怪我はないか?皆は・・・皆も無事か?」

アニ「ああ。心配してくれてありがと。私は大丈夫。生き残りは・・・ここに集まってるやつらでほとんどだよ」

半沢「そうか。・・・アルミンたちの班は見かけなかったか?」

ライナー「アルミンなら、あっちにいたぞ」

半沢「ありがとう、ライナー」

タッタッタ

半沢「アルミン!」

アルミン「!!」

半沢「怪我はないか?大丈夫か?」

アルミン「・・・・・・・」コクン

半沢「そうか。良かったよ。他の皆と・・・古美門は?」

アルミン「ううっ・・・」

半沢「!」

アルミン「僕たち・・・訓練兵34班―トーマス・ワグナー、ナック・ティアス、ミリウス・ゼルムスキー、ミーナ・カロライナ、古美門研介・・・以上5名は自分の使命を全うし・・・壮絶な最後を遂げました・・・」

サシャ「そんな・・・」

アルミン「ごめん、直樹・・・研介は巨人の標的になって・・・僕は何もできなかった。すまない・・・」

半沢「アルミン。お前に責任があるわけじゃない。さ、立つんだ。俺たちにはまだやることがあるだろ」

アルミン「やることって・・・」

半沢「マルコ、本部に群がる巨人を排除すれば、ガスの補給が出来て、皆壁を登れるな?」

マルコ「あ、ああ・・・そうだ。しかし、いくら首席のお前がいても・・・あれだけの数は・・・」

半沢「やってみよう」

マルコ「え・・・」

スッ

半沢「何を縮こまっているんですか!」

半沢「私たちは巨人と戦うために訓練兵になった。いつか巨人と戦って、死ぬ日が来るかもしれない。そういう覚悟はしてきたはずです。だが、あなた達は今、最後のあがきもせずにただ食われるのを待っている!」

半沢「このまま囮のようにここで巨人を引きつけて、それじゃまるでとかげのしっぽだ!」

兵士「だからって!この状況でどうしろっていうんだよ!ガスが無いんだ!」

半沢「ガスが無い?ガスならありますよ、目の前の、あの建物にたっぷりと!」

兵士「だから!あんなに巨人が群がってるとこに飛び込んでいくなんて、無理だって・・・無理だって皆思ってるんだよ!」

半沢「いや、やってやれないことはない。我々はそんなに弱くないはずです」

兵士「そりゃ、お前は主席だからな!けど、ここにいる大半はそんなに強くなんてないんだよおぉ・・・うっ、ううっ・・・。どうせ俺たちは囮になるだけだ」

半沢「私は、弱いものを切り落とそうなんて、思っていません。あなたが、あなたたちがあがいて、戦って生き残る覚悟があるというなら、私は全力で支援させていただきます。どんなことをしてでも守ります。だから、助かる可能性を諦めないでください」

兵士「できねぇよ!できるわけがない!」

兵士「そうだよ。無駄死にするだけだ!」

兵士「どうせ失敗するよ!戦うなんて無理だあああ!」

兵士「そうだ!無理だよ・・・!」

半沢「・・・・・・」

アルミン「直樹・・・」

半沢「どいつもこいつも・・・」

アルミン「!!」

半沢「甘えたこと言ってんじゃねぇぞ!!」

ライナー「!!」

ベルトルト「!?」

アニ「!!」

マルコ・ジャン「!!」

半沢「無理かどうかはやってみてから言うんだよ!!俺はひとりでも行くぞ!!!」

ヒュンッ

アルミン「直樹!!」

ジャン(いくらお前が主席でも・・・あの数は無理だろ・・・。ったく、あいつは古美門とは別方向にとんでもねぇバカだぜ!)

ジャン「オイ!!俺達は仲間に一人で戦わせろと学んだか!?お前ら!!本当に腰抜けになっちまうぞ!!」

ライナー「そいつは心外だな・・・」

マルコ「・・・はぁー・・・」

サシャ「や、やい。腰抜けー弱虫ーア、アホー」

兵士「あいつら・・・ちくしょう・・・」

兵士「やってやるよ・・・」

兵士たち「うおおおおおおおおおおおおおお!!!」

************

ヒュンッ

アルミン「直樹!!待って!直樹!!」

半沢「アルミン!」

アルミン「なにか、おかしくない?」

半沢「なんだ?」

アルミン「巨人の数が、少ない・・・いや、減っているみたいだ」

半沢「減っている?」

アルミン「うん。建物に張り付いている数は変わってないみたいだけど、市街をフラフラしてた巨人たちがいなくなってる」

半沢「それは進みやすくていいな」

アルミン「誰かが倒してる?」

半沢「・・・何?」

アルミン「誰かが誘導しているか、倒してるのかな?」

半沢「そんなこと・・・誰が・・・」

ジャン「お、おい!!あそこ!!」

半沢「!?」

アルミン「えっ!?」

ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアン

ライナー「な、なんだ巨人の雄叫びか!?」

マルコ「巨人が何かに群がってるな、一体何に・・・」

アルミン「・・・巨人だ・・・」

半沢「巨人?」

アルミン「一体の巨人に、ほかの巨人が群がってるんだよ!!」

ジャン「どういうこった?」

ライナー「よくわからんが・・・今がチャンスだ!補給所に皆で飛び込むんだ!!」

アルミン(さっきの雄叫び、どこかで聞いたことがあるような・・・、一体何が起こってるんだ?)

****************

僕らは、補給所に群がっていた巨人たちをなんとか撃退し、ガスの補給をすることができた。
後は補給所から脱出するだけだったけど―。

半沢「アルミン、早く逃げないと危ないぞ」

アルミン「う、うん。でも待って。巨人・・・」

ライナー「アルミン、さっきの向こうの方で巨人どもが群がってた巨人が気になるのか?」

アルミン「うん。ただの奇行種なのかもしれないけど、なんだか気になって」

半沢「巨人をおびき寄せる巨人・・・。確かに気になるが今は無事に脱出することを優先すべきだ」

ライナー「ああ。そうだな。だが、巨人に襲われるということは、使いようによってはこちらの武器になる巨人かもしれん。敵か味方か確かめることができれば・・・あいつがいたのはどの辺だった?」

ジャン「正気かライナー!!やっと・・・この窮地から脱出できるんだぞ!?」

アニ「たとえば、あの巨人が味方になる可能性があるとしたら・・・確かめてみる価値はあるかもしれないよ」

ジャン「ただ群がられてただけだぞ!?本気で言ってるのか!?」

アルミン「あ・・・!」

謎の巨人「ハーハッハッハッハッハ」

ドシン!ドシン!

アルミン「あの巨人じゃないか!?なんだ、あの動きは・・・スキップしたり、くるくる回ったり、なんだかとっても楽しそうにこっちにくるぞ!?」

半沢「それにどこかで見たような極度の横分けスタイルが気持ち悪いな」

巨人「!!!」ピタッ

ライナー「ん!?止まったぞ!?」

謎の巨人「オロロロロロロロロロロロロ!!!」

ゲボゲボゲボ

ジャン「うわあああっ!!あの巨人ゲロ吐きやがった!!きったねぇ!!!」

アニ「スキップに酔ったのかな?」

ベルトルト「さあ・・・」

ジャン「おい、あいつ、た、倒れるぞ!!!」

謎の巨人「・・・・・・」

ドオオオオオンッ

アルミン「ど、どうしたんだろう!?」

ライナー「死んだのか?」

半沢「いや、あれは・・・ちょっと待っててくれ」

ヒュンッ

アルミン「直樹!!そいつが引き連れてきた巨人がこっちに来てるのに!!危ないよ!!」

半沢「すぐ戻る!!!」

スタッ

半沢(すごい蒸気だ。暑い・・・。確か首のあたり・・・)

キョロキョロ

半沢「・・・これは・・・」

古美門「・・・・・・・・」

半沢(古美門!この巨人が倒れた時に、首の辺りで何かが動いた気がして来てみたら・・・。半身が巨人の中に埋まってるし、これは一体どういうことだ?)

アルミン「直樹!!早く!!」

半沢「!わかった!!アルミン!!」

半沢(とにかく、古美門を連れてここを脱出だ!)

*************

古美門「ああああ・・・巨人に食われてしまったのか。僕は。なんだってこんな臭くて狭くて暗いとこに!半沢ー!アルミンー!助けてくれー!うわああああん」

古美門(これでもうアルミンとも半沢ともお別れか。グリシャおじさんとももう会えないな・・・。あ、そういえばおじさんといえば、最後にあった時になんか変な注射打たれたなあ。あの時、開拓地でサボるために半沢と入れ替わって、分け目逆にしてたんだよなぁ)

古美門(おじさんは僕を半沢と間違えて注射したわけだが、今思ったらこれ訴えたら勝てそうだな。ここから帰ったらたんまりおじさんから賠償金を貰うとするか。・・・って、死ぬのになんでこんな時に思い出したんだ)

古美門(くそー、ムカついてきたぞ。僕は往生際が悪いんだ。こうなったら最後まで戦って、僕を食ったこいつの息の根を止めてやろうではないか!)

古美門(やられたらやり返す!いや・・・やられてなくてもやり返す!!誰彼かまわず八つ当たりだ!!)

*************

古美門「八つ当たりだ!!!」

アルミン「・・・研介?」

古美門「は・・・!?」

半沢「古美門!!!」

古美門(!?なんだ?なんで僕ら3人が兵士たちに囲まれているんだ?僕は巨人に食われたような気がしたが?)

アルミン「研介!ちゃんと体は動くか?意識は正常か?知ってることを全部話すんだ!きっとわかってもらえる!」

古美門「アルミン?」

兵士「おい、聞いたか?」

兵士「誰彼かまわず八つ当たりだって言ったんだ・・・」

兵士「ああ、確かに聞こえた。俺たちのことだ」

兵士「あいつは俺たちに八つ当たりする気だ・・・」

古美門「なーにを言ってるんですか、あなたたちは?」

スクッ

アルミン「研介!!だ、ダメだよ、わかるでしょ!?この空気!!皆の神経を逆撫でしちゃダメだ!」

古美門「逆撫で?」

キッツ「古美門訓練兵!意識が戻ったようだな!今!貴様らがやってる行為は人類に対する反逆行為だ!貴様らの命の処遇を問わせてもらう!!」

キッツ「下手にごまかそうとしたり、そこから動こうとした場合には―榴弾をブチ込む!!躊躇うつもりはない!!」

古美門「見たところ、駐屯兵隊長とお見受けしますが、私にも今の状況がはっきり言って飲み込めていません。私どもがしている行為とは一体なんのことでしょうか?」

キッツ「率直に問う!」

古美門「もしもーし?私の話聞いてますか?それとももしかしてお歳なんですかね?おーい!!!隊長さん!!!聞こえてますかぁ!?」

アルミン「だから、やめなって!!」

ガバッ

古美門「あっ!アルミンなにする!口を塞ぐな・・・モゴモゴ」

キッツ「貴様の正体はなんだ?」

古美門「モゴモゴ」

キッツ「人か?」

アルミン「!?」

キッツ「巨人か?」

半沢「!!」

古美門「モゴモゴ」

アルミン(なんてことだ。あの隊長は恐怖で話に耳を貸さないし、このままじゃ研介が殺されてしまう!いや、研介だけじゃない。僕も、直樹もだ!)

古美門「ええい!離せ!アルミン!」

アルミン「あっ!!ダメだよ!研介!君が喋ったら事態が悪化する!」

古美門「うるさいうるさい!アルミン、君はひっこんででくれたまえ!」

キッツ「どうなんだ!!」

古美門「結論から言いましょう!私は巨人ではありません!ご覧のとおり。ただの人間です」

キッツ「シラを切るつもりか!化け物め!!」

古美門「シラなど切っていませんよ。どこからどう見ても人間でしょうが。それともあなたには私が巨人に見えているんですか?言葉を喋って、あなたの話を聞いて、服も着ている172cmの平均的な私が巨人に見えると言うんですか?私が巨人ならあなたのほうがよっぽど巨人ですよ!」

キッツ「きょ、巨人が人間に化けているのかもしれない!」

古美門「化けているという根拠は?」

キッツ「大勢の者が貴様が巨人の体内から姿を現したのを見たんだ!!」

古美門「ほう?つまり、あなた方は、巨人の体内から出現した人間=巨人が化けた人間であると断定しているということですね?」

キッツ「な、なんだと!?」

古美門「私は存じませんでしたが、今までにそういった研究資料があったんですか?それと、巨人っていうのは人間を食べるんですよ。巨人に食われて、巨人の中で死亡するまでにそこから体外へ生還した状態だったとは思いませんでしたか?普通は倒れた巨人の体内から人間が出てきたら、そう思うんじゃありませんかね?なんで巨人が化けたと思ったのか、そこが疑問だなぁ」

キッツ「食われたなら腹から出てくるだろうが!貴様は首から出てきたんだ!」

古美門「あなた、巨人の中入ったことあるんですか?喉にひっかかってたのかもしれませんよね?まさか巨人本人でも、食べられたこともないのに、否定できませんよねぇ!?」

キッツ「ええい!!詭弁を並べおって!!これ以上貴様相手に兵力も時間も割くわけにはいかん!私は貴様らに躊躇なく榴弾をぶち込めるのだ!!」

リコ「彼の反抗的な態度は明らかです。おっしゃる通り兵と時間の無駄です」

兵士「今なら簡単です!」

兵士「奴が人に化けてるうちにバラしちまえば!」

半沢「やれるもんならやってみろ」

スッ

アルミン「直樹!!」

半沢「理解したくない恐怖から、一方的に俺達を殺すというならば容赦はしない。話を聞かずにただ殺すために動く低脳のバカどもは巨人と何も変わらない。この刃で切っても何も感じないだろう。やるならやれ!だが、倍返しだ!!」

アルミン「直樹!!人と戦ってどうするんだよ!話し合うんだよ!誰にも・・・なんにもわからないから、恐怖が伝染してるんだ!」

古美門「話し合ったじゃないか」

アルミン「君は煽ってるだけだよ!!」

キッツ「もう一度問う!貴様の正体はなんだ!」

古美門「煽ってるのはあっちだ、アルミン。あいつらはとりあえず僕を排除することで安心したいらしいぞ。人間でも巨人でもどっちでもいいんだよ、あいつらは」

アルミン「研介・・・」

古美門「だがなぁ!僕はここでへこへこ負け犬になるのはごめんだからな。僕は負け犬になるくらいなら人間もやめちゃうかもしれないねぇ!」

キッツ「どっちだ!!」

古美門「人間だ!!!!」



キッツ「・・・・そうか・・・悪く・・・思うな・・・」

スッ


半沢「古美門!アルミン!上に逃げるぞ!」

アルミン「まずい!!このままじゃ!!」

キッツ(撃てっ!!!)

バッ

アルミン(ああっ!!合図が出されてしまった!!僕らはおしまいだ!!榴弾に撃たれて・・・ここで死ぬんだ!!)

半沢「アルミン!!古美門!!(くそっ、突き飛ばしても・・・無駄か!?)」

ドンッ

アルミン「うわっ!!」

古美門「ぐわっ!!」

ズザザザッ

ザクッ

古美門「いだいっ!!!ブレードの破片で怪我し・・・」

カッ

半沢「!?」

アルミン「うわああっ!?」

キッツ「!!!??」

ドオオオオオオオンッ

キッツ(榴弾は直撃したぞ・・・。だが、今一瞬・・・何か大きな影が出現したような・・・)

ゴオオオオオオオオオオ・・・

兵士「ひっ・・・!!」

アルミン「えっ・・・こ、これは・・・」

半沢「こ、古美門・・・」

謎の巨人「・・・・・・・」

アルミン(な、なんてことだ。研介が・・・巨人になった・・・)

兵士達「うあああああああああああああああ!!!!」

*************

グリシャ「直樹、帰ったらずっと内緒にしていた地下室を・・・見せてやろう」

古美門(僕、半沢じゃないんだけど、おじさん気付いてないな。だが地下室は僕も気になっていたからこのまま半沢のふりをするか)

グリシャ「この鍵を肌身離さず持っているんだ。そしてこの鍵を見るたびに思い出せ、お前が地下室に行かなくてはならないことを・・・」

古美門「うん」

グリシャ「この注射のせいで今からお前に記憶障害が起こる・・・」

古美門「!?」

グリシャ「だから今説明しても駄目なんだ・・・」

古美門「おじさん!!待って!僕半沢じゃないんですよ!研介です!!」

グリシャ「直樹、注射が怖いからって、研介のふりするのはやめなさい」

古美門「違いますよ!本当に半沢じゃないんです!!」

グリシャ「すぐ終わるから大丈夫だ。それに、君達の違いは分け目でわかるんだからね」

古美門「いや、これは・・・あっ!!」

グリシャ「ちょっとチクッとするよ」

古美門「うわああああああああん!!違、違うって!!お、おじさああああん!!!」

**************


古美門「うわあああああ!!熱っ!!熱いっ!!なんだこの肉!気持ち悪いな!!腕を引き抜こう」

ブチブチッ

古美門(またおじさんの注射のこと思い出してしまったな。おじさんには絶対法廷で勝つぞ。医者だから報酬もたんまりだ!)

アルミン「研介!!」

古美門「よし、とれた・・・。おい、半沢!貴様のブレードの破片だな?怪我したじゃないか!!!どうしてくれるんだ!」

半沢「古美門・・・これは・・・」

古美門「半沢ー!ほら!ここだ!ここ・・・あれ?おかしいな、切ったはずなんだけど。あ、ほら!見ろ!血だ!血がついてるだろ、ここにぃ!」

半沢「・・・いや、それは・・・鼻血じゃないのか?出てるぞ」

古美門「鼻血?ああーっ!本当だ!アルミン!ちり紙!ちり紙!!」

アルミン「そんなものあるわけないだろ!しかも今そんなことどうでもいいよ!でも研介、顔色も悪いし呼吸も荒いから、明らかに体に異常をきたしてるよ!」

古美門「なにーっ!どうでもよくないじゃないか!僕が死んだら世界にとって大損失だぞ!とにかくすぐにちり紙だ!ちり紙が必要だ!」

半沢「いや、それより古美門が巨人化したことでこちらは敵としてみなされたと考えていい。このままでは3人とも殺されてしまう・・・アルミン」

アルミン「え?」

半沢「俺は、古美門を連れてここから逃げようと思う・・・」

アルミン「そんな・・・」

アルミン(最短時間で砲弾が装填されたとしてあと20秒ほどかかるだろうか。直樹はそれ以内にここから研介を連れて去っていくだろう・・・。僕を残して?僕は、きっと足手まといになる)

アルミン(僕は、いじめられてた時も二人に助けられてばかりで・・・僕が二人を助けたことなんてあっただろうか・・・)

半沢「お前はどうしたい?」

アルミン「・・・!!」

アルミン(付いていける自信が無い・・・助けられてばかりの僕が、対等な友人といえるだろうか。どうやって僕も一緒に行くなんてことが言えるんだ・・・)

アルミン「僕は・・・」

アルミン(もう・・・これで・・・3人が揃うこともないだろう・・・)

古美門「もちろん僕についてくるよな?アルミンがいないと不便だから一緒に来てもらわないと困るんだよねぇ」

アルミン「!・・・研介・・・」

半沢「古美門、あんたが決めるんじゃない。アルミンに聞いているんだ」

アルミン「そりゃ、僕も一緒に行きたいよ・・・でも・・・」

半沢「すまん、アルミン。そうじゃない。言い方が悪かったな。アルミンはどうすればいいと思うか聞きたかったんだ。古美門を連れて逃げる以外に道があれば・・・アルミンの判断にまかせたい」

アルミン「僕の?」

半沢「そうだ。もしアルミンが俺の考え通り、すぐに逃げた方がいいと思うならそうする」

アルミン「どうして?どうして僕にそんな決断を託すの?」

半沢「アルミン、お前は気付いていないようだが、お前は行き詰った時に正解を導くことができる。俺はそれに頼りたいと思ったからだ」

アルミン「いつそんなことが?」

半沢「色々あっただろ?5年前、お前がハンネスさんを呼んでくれなかったら、俺も古美門も巨人に食われて死んでいた」

古美門「立体機動試験の時、アルミンがとっさに僕をかばってくれたから今こうして3人でいるんじゃないのかねぇ?まあそんなの無くても僕は上手くやっていたとは思うがね!アルミン。君は、少し自分を過小評価しているフシがあるなぁ。君は僕らと腐れ縁なんだ。それだけでも大したもんだと思ってかまわんぞ」

半沢「そうだぞ、この人格破綻者と上手くやってけるやつなんてそうそういない」

古美門「半沢!勘違いするなよ?僕がお前ら小市民に合わせてあげてるんだぁ!」

アルミン(僕が勝手に思い込んでいただけだ。勝手に・・・自分は無力で足手まといだと。二人はそんなこと思って・・・いや、思ってるかもしれないけど。特に研介は思ってるかもしれない。けど。これは、僕に命を預けると言ってるんだ)

アルミン(そこまで言ってくれる二人は・・・僕がこの世で最も信頼している人間だ・・・!)

アルミン「僕が、説得してみせる」

古美門「ほほう」

アルミン「研介の巨人の力は兵団の元で計画的に機能させるのが有効なはず。僕が、研介の巨人が脅威ではないと、説得してみせる」

半沢「できるのか?」

アルミン「できないとは言わないよ。だって・・・無理かどうかはやってみないとわからない!!直樹の受け売りだけどね!やられたらやり返す!倍返しだ!」

古美門「ハーハッハッハ!アルミンが半沢化したぞ!やめたまえ!こんな暑苦しいのが二人もいたらかなわんからな!説得なら僕に任せたまえ」

アルミン「駄目だ。研介は当事者だ。目の前で巨人になってしまったし、君の口から何を言ってもムダだ。余計火に油を注ぐことになる!」

古美門「なんだ、アルミン?僕にはむかうのか?本当に半沢みたいだぞ?」

アルミン「ああ。言うよ。だって、これは僕だけじゃない。君たちの命もかかっているんだ。研介、君の屁理屈は相手を叩きのめす力があるし、もしかしたら彼らの心を折ることができるかもしれない。でも、ここは僕に任せてくれ」

古美門「そうかそうか、そんなに目立ちたいなら好きにすればいい。あの小心者の隊長を不安にさせて、榴弾に直撃されないように気をつけろたほうがいいぞぉ?今度は僕は助けてやらないからな?」

半沢「アルミン、古美門なりに心配してるんだ」

アルミン「うん。わかってるよ」

アルミン「必ず説得してみせる!二人は極力抵抗の意思がないことを示してくれ!!」

タッタッタ

古美門「半沢、お前アルミンと行って守ってやらないのか?死んじゃうかもしれんぞ?」

半沢「アルミンなら大丈夫だ。それに、俺はお前と瓜二つなんだ。俺が出て行って、あの隊長に俺とお前の判別がつくとは思えん。俺は出ないほうがいい」

古美門「そうだ、お前が僕に似てるのも僕がこうなった原因だった。よし、お前もおじさんと一緒に訴えるリストに加えておこう。たっぷり搾り取ってやるから覚悟しろ!」

半沢「やるならやってもいいが、顔が似てるので訴えるなら、俺も訴えていいってことだな。10倍返ししてやる」

古美門「しかし、アルミンは誰かさんの悪い影響を受けてるようだなぁ」

半沢「悪くないだろ?俺はあんたに似ないか心配だよ」


アルミン「彼は人類の敵ではありません!!!」

考えがまとまらないまま、僕は研介の戦術価値をキッツ隊長に説いた。

僕の声が、話がキッツ隊長に届いたかと言うと、おそらく彼はただ命乞いしているだけだと判断したのだろう。榴弾が打ち込まれようとした。

だが、そこに現われた南側領土の最高責任者・ピクシス指令の登場で僕達は一命を取り留めた。指令には僕の声が届いたんだ。

そして―僕は・・・二人の幼馴染を守ることができた。

*****************

それから・・・トロスト区に開いた穴を研介巨人が岩を使って塞ぐ作戦が実行された。

岩が重くて持てない!と、駄々をこねたり、途中で疲れてゲロを吐いたりする研介巨人をなだめすかしながら、なんとかトロスト区奪還はなった。

初めての人類の勝利。

そして研介は―

古美門「出ーしてくれー」

古美門「もうやだよー、こんな狭くて暗いとこ嫌だよー。夜に隣の牢から誰もいないはずなのにカリカリ音がするよー」

エルヴィン「それはネズミかもしれないな。やあ、古美門研介だね。こんなところに閉じ込めてしまってすまない。辛かっただろう」

古美門「フーンフフーン♪フフーン♪」

エルヴィン「ん?ヴァイオリンの真似・・・?」

リヴァイ「さっきまで泣き叫んでたくせに、ふざけたやつだな」

古美門「おやぁ?これはこれは調査兵団のエルヴィン団長と、リヴァイ兵長ではありませんか?私は全ー然辛くなんてありませんが?今、ヴァイオリンの練習で忙しいんですが、何か御用ですか?」

エルヴィン「今、君の身柄は憲兵団が受け持っている。先ほど我々に接触の許可がおりた」

古美門「そうなんですかぁ。こんな汚い地下牢に私のような人畜無害な少年を閉じ込めるなんて、憲兵団はよっぽど私が恐ろしいんですねぇ。まあ、私のようになんでもできる人間がいたらそりゃあ誰でも恐怖するに違いありませんがねぇ」

リヴァイ(なんだこいつ)

エルヴィン「この鍵は・・・君のものだね?」

チャラッ・・・

古美門「そういうことになってますねぇー。こんなことになってしまった今では迷惑だが」

エルヴィン「グリシャ・イェーガー家・・・君の家の地下に巨人の謎がある。そうだね?」

古美門「そのようですね。でも私はただの養子ですから、家のことは実子の半沢君に聞いたほうがいいかもしれませんよ?」

エルヴィン「いや、ここでは巨人化できる君の意志を聞くことが、今・・・優先すべきことだと判断した」

古美門「私の意志といいますと?」

エルヴィン「君の家を調べるためにはシガンシナ区ウォール・マリアの奪還が必要となる。破壊されたあの扉を塞ぐには君の『巨人の力』が必要となる」

古美門「私にその働きをする意志があるかどうかということですか」

エルヴィン「そうだ。やはり我々の命運を左右するのは巨人だ。君の意志が『鍵』だ。この絶望から人類を救い出す『鍵』なんだ」

古美門「鍵ねぇ。そうですか、僕が鍵。うーん、これは重要ですね。僕がいないと皆困っちゃいますよねぇ」

リヴァイ「オイ・・・さっさと答えろ横分け野郎。お前がしたいことはなんだ」

古美門「そうだなぁ!とりあえずぅー、憲兵団に入ってたんまり儲けて、内地の真ん中に自家用壁を作りたいってとこですかねぇ!」

リヴァイ「ほぅ・・・悪くな・・・いや、なんだって?」

古美門「これですよ、これ。」

スリスリ(指をこすり合わせる)

リヴァイ「・・・金か」

古美門「どっちが多く積めるかですよ。憲兵団かなぁ。だって調査兵団貧乏ですもんねぇ。僕、貧乏嫌いなんですよぉ~」

リヴァイ「憲兵団に行って無事で済むと思ってるのか?」

古美門「調査兵団に入っても前線で痛い目みるだけですからねぇ。まあ、憲兵団に行っても調査兵団に行っても死ぬなら、少しの間内地で豪遊して死んだほうが楽しいかもしれませんしね。ああー、でも僕のような貴重な人間が憲兵団に無駄に始末されるなんて勿体無いなぁ。調査兵団は喉から手が出るほど僕が欲しくてたまらないだろうになぁ」

リヴァイ「おい、エルヴィン、こいつここで始末してもいいんじゃないか?」

エルヴィン「いや、待て。なあ、研介」

古美門「なんです?」

エルヴィン「確かに君が言うように調査兵団は困窮している。だが、それは君が力を貸してくれることでどうにかなるかもしれない。君が壁を塞ぎ、領土を取り戻したなら。英雄だ。調査兵団の立場も良くなるだろう。その時の見返りは全て君に充てるとしようか」

古美門「ふーむ。なるほど、悪くないですね。でもぉ、憲兵団なら今すぐその倍のお金を積めるかもしれませんよねぇ」

リヴァイ「オイ」

古美門「なんですか?人類最強刈り上げ長殿」

リヴァイ「その金を憲兵団が出すと思うか?出したところでお前はすぐ始末されるだろうな」

古美門「そうですか?それは怖いですね。およよよよ」

リヴァイ「金じゃない。調査兵団のお前への見返りは金じゃなく・・。俺だ」

古美門「あなた?」

リヴァイ「お前は立体機動がクソみたいに下手糞なんだとな。運動神経も壊滅的な運痴野郎が憲兵団でひとり・・・口だけで上手く立ち回れると思ってるのか」

古美門「そんなのやってみないとわかりませんねぇ」

リヴァイ「巨人になれるってだけで、お前の命を狙うやつもいるだろう。俺ならお前ひとりくらい面倒をみてやれる。調査兵団で立体機動ができなかろうが関係ない。目的を果たすまで、俺がお前を死なせるようなことにはしない。それが見返りだ」

古美門「命の保証ですか。ふんふん。悪くないかもしれませんねぇ・・・兵長はなかなか交渉がお上手だ!ですが、私の働きで成功した作戦の報酬はきっちり私に還元してくださいよ、団長?」

エルヴィン「わかった。善処しよう」

リヴァイ「エルヴィン、コイツの世話は俺が責任を持つ。上にはそう言っておけ・・・」

古美門「ふんふん、僕の上長は人類最強かー!半沢より安心だな!やったー!やったぞー!」

リヴァイ(この横分け野郎、最初からこちら側に来る気だったんだろう。金と命の保証と、両方取り付けるのが目的だったに違いねぇ・・・。いや、もしかしたら命の保証だけが目的だったのかもしれんが。どっちにしろ汚ねぇやつだ)

リヴァイ(だが、この汚さが今必要なのかもしれんな・・・)

リヴァイ「おい、横分け。俺はお前を信用したわけじゃない」

古美門「・・・・・・」

リヴァイ「俺はお前を守るが、お前が裏切ったり暴れたりすればすぐに俺が殺す」

リヴァイ「上も文句は言えんはずだ。俺以外に適役がいないからな・・・」

リヴァイ「それでもいいんだな」

古美門「・・・兵士4000人分の兵力を持つ天才の元で働こうと言う時点で、地獄をみる覚悟はできてますよ。それができなければ黙って去るだけだ」

リヴァイ「悪くない・・・認めてやるよ。お前の調査兵団入団を・・・」

***********

しまった。ピクシス指令が現われて登場してる。すまん。

研介が地下牢に閉じ込められた頃、トロスト区奪還の報は内地にも伝わり、壁の中央は5年前のように混乱した。

巨人が人類の味方をしたという回紙の記事により、研介巨人の存在は兵団だけでなく、民衆の知るところとなり、すでに僕や直樹だけではどうにもできないところまで、話は大きくなってしまった。

そして―研介の処遇は審議所で決定されることとなる―・・・

************


古美門「トイレ!」

見張りの兵士「さっき行ったばかりだ」

古美門「さっきは小だ。今は大のほうがしたいんだ!トイレ!」

見張りの兵士「・・・・・・」

古美門「水が飲みたいなぁ~お水~!!水!!喉が渇いて死んじゃうかもなぁ~!僕が死んだら、君らも処罰されるかもしれないね」

見張りの兵士2「オイ、立場を弁えろ・・・化け物め」

古美門「・・・・・・」

古美門「よーし!!トイレも水も駄目なら、おとなしくしててもしょうがないな!巨人になって君らを食べちゃおうかなぁ!!僕は化け物らしいからねぇ!ここから出せー!!!」

見張りの兵士「!?」

見張りの兵士2「オイ、誰か呼んで・・・」

ハンジ「なんだ?なにを騒いでるんだ?」

古美門「!」

見張りの兵士「ハンジ分隊長。古美門研介が、巨人になると脅迫を・・・」

ハンジ「あはは。まあ、こんなとこに何日も閉じ込められたら逃げ出したくもなるよね」

古美門(調査兵団の人間か)

ハンジ「ごめんね、研介。待たせてしまって」

古美門「待ちくたびれてしまいましたよ。さっさと僕を連れ出してください」

ハンジ「ああ。ここから出られるよ。上手くいけば、もう戻らなくてすむ」

古美門「上手くいけば?」

ハンジ「・・・とりあえず、何も聞かずに私についてきてくれる?」

************

ハンジ「私は調査兵団で分隊長をやってるハンジ・ゾエ。そっちの彼は・・・」

ミケ「スンスン」

古美門「なんなんですか!やめていただけませんかね?気持ち悪いっ!僕の首の後を嗅ぐのをやめてくれぇ~!!」

ハンジ「・・・彼も同じ分隊長のミケ・ザカリアス。初対面の人の匂いを嗅いで、鼻で笑う癖があるけど、深い意味はないから気にしないでやって」

ミケ「フンッ」

古美門「いやぁ、なんだかすごく馬鹿にされた気分がしますよ。なんなんだ一体、なんなんだ」

ハンジ「まあ、こんなのでも分隊長を務めるほどの実力者ではあるんだ・・・って、無駄話してたらついたよ」

古美門「この部屋は?」

ハンジ「うん・・・説明は無い方がいいと思ってね。研介が思ってることをそのまま言えばいいよ」

古美門「私の思ってることですか?なるほど、ここは審議所か。僕はこれから異端審問にかけられるというわけですね。上手くいけば地下牢から出られるというのはそういうことですか。下手すりゃ一生地下牢暮らし・・・」

ハンジ「勝手だけど、私たちは君を妄信するしかないんだ」

古美門「全く、勝手ですねぇ。だが、僕は相手が誰だろうが、負けるのは大ッ嫌いだ。僕を亡き者にしようと思ってるやつらがいるのなら、最後まで戦って息の根をとめてやる」

ハンジ「ああ。私たちも君を守るために力を尽く・・・」

古美門「当たり前ですよぉ。調査兵団の皆さんにとって僕は大事な大事な兵力なんですから、命をかけていただきたい。僕はね、憲兵団だろうが、調査兵団だろうが、利用されていいようにされるなんてまっぴらごめんですよ。ですが、今僕が生きていくためにはあなた方の力が必要だ。僕が殺されそうになったら身を挺して守ってくださいよぉ!」

ハンジ「・・・そうだね、もちろんだ。なんでもするよ」

古美門「それを聞いて安心しました。ならば何も心配することはありません」

ハンジ「・・・・・・・」

古美門「―勝つのは私だ」

ギィィィィィィ

兵士「古美門研介、そのままゆっくり進み、中央の台座にひざまづけ」

古美門「ええっ~!?なんで僕は手錠をかけられたまま棒に固定されないといけないんですか?人権侵害だ!手が痛い!」

兵士「だまれ!化け物のくせに何が人権だ・・・」

ガチャン

古美門(・・・憲兵団のトップ、ピクシス指令に、エルヴィン団長、リヴァイ兵長・・・ふんふん、アルミンと半沢も来てるのか)

ザックレー「さぁ・・・始めようか」

古美門(3兵団のトップ、ダリス・ザックレー総統か)

ザックレー「古美門研介君だね?君は公の為に命を捧げると誓った兵士である・・・違わないかい?」

古美門「はい」

ザックレー「異例の事態だ。通常の法が適用されない兵法会議とする。決定権は全て私にゆだねられている」

ザックレー「君の生死も今一度改めさせていただく。異論はあるかね?」

古美門「ありません」

ザックレー「察しが良くて助かるな。今回決めるのは君の動向をどちらの兵団に委ねるかだ。その兵団次第で君の処遇も決定する。・・・憲兵団か、調査兵団か・・・」

ザックレー「では憲兵団から案を聞かせてくれ」

ナイル「憲兵団師団長ナイル・ドークより提案させていただきます」

ナイル「我々は古美門研介の人体を徹底的に調べあげた後、速やかに処分すべきと考えております。彼の存在を肯定することの実害の大きさを考慮した結果、この結論にいたりました」

ナイル「王族含めた有力者達は彼を脅威と認識しています。それに反し、彼を英雄視している商会関係者を筆頭とした民衆がいるのも事実です。双方の主張が平行線をたどれば、いずれ内乱が生じかねない状況です」

ナイル「彼の功績が実害を招いたのも事実。ですが、高度に政治的な存在になりすぎました。なので、せめて出来る限りの情報を残してもらった後、我々人類の英霊となっていただきます」

ニック「そんな必要は無い」

ナイル「!」

ニック「奴は神の英知である壁を欺き、侵入した害虫だ。今すぐに殺すべきだ」

古美門(あの妙ちくりんな格好はウォール教の司祭か)

ザックレー「ニック司祭殿、静粛に願います。次は調査兵団の案を伺おう」

エルヴィン「はい。調査兵団13代団長エルヴィン・スミスより提案させていただきます」

エルヴィン「我々調査兵団は古美門研介を正式な団員として迎え入れ、巨人の力を利用し、ウォール・マリアを奪還します。・・・以上です」

ザックレー「ん?もういいのか?」

エルヴィン「はい。彼の力を借りればウォール・マリアは奪還できます。何を優先すべきかは明確だと思われます」

ザックレー「そうか」

ブタ野郎「ちょっと待ってくれ!扉を開けるのか!?今度こそ全ての扉は完全封鎖するのではないのか?扉さえ頑丈にしてしまえばこれ以上巨人に攻められることは無いというのに・・・そこまでして土地が欲しいのか!?商会の犬どもめ!!」

古美門「何を持って、扉を封印すればこれ以上巨人から攻められないとおっしゃられるんですかねぇ?」

アルミン(研介!!駄目だよ!下手に喋ったら!!)

ブタ野郎「な、なんだ!?」

古美門「扉さえ封鎖すれば巨人の脅威は無くなると断言されたので、その根拠をお聞きしたいと思いまして」

ブタ野郎「出現した2回とも、超大型巨人は扉しか壊してない!それは扉以外は壊せないからだろうが!」

古美門「相手は知性を持っている巨人なんですよ?扉しか壊せないと思い込ませてる可能性もありますよねぇ。今度は空を飛んで入ってくるかもしれませんよぉ。それに、私たちが知ってる超大型巨人にはできないかもしれない。だが、できる超大型巨人が他にいないとも限りません」

古美門「鎧の巨人を知っていますか?あいつは体当たりで扉を突破できるんです、超大型鎧の巨人なんていたら、扉ごと木っ端微塵かも知れませんねぇ。大体、扉を頑丈にするのにどれだけ時間がかかると思ってるんですか。この百年、内側に多少落とし穴を掘ることくらいしかできなかった我々人類が、今まさに訪れている脅威を前にして、今すぐ何をどうできるっていうんです」

古美門「作業時間の問題もですが、封鎖するためにはまず、そちらの壁教の方々を説得しないといけませんよね。私は宗教についてあれこれ言うつもりはありませんが、彼らの教義によって、人類の防衛の砦である壁はロクに武装も補強もできない状況です。あなた、彼らを説得して扉を封鎖できるまで、巨人が待ってくれると思いますか?」

ブタ野郎「そ、そんなのは詭弁だ!大体、そんな巨人いるわけない!」

古美門「5年前、皆そう思っていましたよ。実際に超大型巨人が現われるまではね」

ザックレー「古美門研介、君の発言は許していないぞ」

古美門「これは失礼しました」

ブタ野郎「とにかく、調査兵団は出来もしない理想ばかり言って、我々を破滅に陥れるだけだ!これ以上お前らの英雄ごっこには付き合ってられない!」

リヴァイ「・・・・・よく喋るな、ブタ野郎・・・そいつも言ってるが、扉を埋め固めてる間に巨人が待ってくれる保証がどこにある?てめぇらの言ってる我々ってのは肥えるために守ってる友達の話だろ?土地が足りずに食うのに困ってる人間は、てめぇら豚共の視界に入らねぇと?」

ブタ野郎「わ・・・我々は扉さえ封鎖されれば助かると話しただけだ・・・・・・!!」

ニック「よさぬか!この不届き者め!」

古美門「いやあ、素晴らしいな!!醜くて!愚かで!!」

ニック「!?」

ブタ野郎「!?」

古美門「自分の欲望と、利益のためにのみ行動する。それが人間だ。ブタ野郎に壁教の司祭殿、あんたたちは真っ当な人間だぁ!ですがね。人間のままじゃあ巨人相手に戦えませんよ」

アルミン(人間のままでは・・・戦えない。そうだね。僕も、そう思うよ。僕らはこれから、巨人と戦うために人間を捨てる覚悟をしないといけないんだ)

ザックレー「古美門研介、発言は・・・いや、話を進めよう。君は、調査兵団を希望しているとのことだが?」

古美門「もちろんです。私はそこのブタ野郎や狂信者と違って、兵士として、人類のために僕の力を行使しようと思っています。それが出来るのは、その力を操る努力を放棄して、ただ恐れをなして消し去ろうとしている腰抜けで情けなくてバカの吹き溜まりの兵団ではありません」

ナイル「なんだとっ・・・!」

古美門「おっと。失礼。本当のことを言ったので、師団長がお怒りのご様子だ。申し訳ありません」

古美門「ともかく、私の力を恐れながらも武器として使う意思と、力があるのは調査兵団です。狭い地下牢で巨人を実験して何の成果が得られるんでしょうかね。どうやって変身するか?誰でも変身できるのか?知的巨人の弱点を探るため?そんなことだけ集中的に調べてどうするんです。調査兵団は憲兵団がしようとしている実験と平行して私の力を武器として使うことができるんです。開放された場所で。実戦で。これで憲兵団に引き渡すメリットがありますかね?」

ナイル「貴様を生かして野放しにしておくのは危険だ」

古美門「そうですねぇ。なにかあったら始末しなくてはならない。・・・しかし、あなたたちの誰がそれをできるんです?」

ナイル「・・・誰でもできる。憲兵団は精鋭ばかりだ」

古美門「巨人と実戦したこともない精鋭ばかりで、できるとおっしゃる!!訓練兵団ではさぞかし綺麗にハリボテの巨人を削がれてたことでしょう。ですが、ハリボテ相手の実力で知性巨人相手にどうこうできると思ってるなら、あなたの脳みそはカニミソ以下だ」

ナイル「こいつっ・・・!!」

リヴァイ「確かにそこのお喋り横分け馬鹿のカニミソ以下の脳みそををぶちまけられるのは俺くらいだ。憲兵団にそれができるとは俺も思わない」

古美門「僕はカニミソじゃないっ!!」

ザックレー「うむ。では、研介、君は調査兵団で巨人の力を兵士として使うと。だが・・・今回の奪還作戦の報告書に、巨人化直後に、半沢直樹目掛けて3度拳を振りぬいたとあるが、これは味方に対して攻撃したということだが。君は巨人の力を操ることが困難なのではないか?」

古美門「半沢に襲い掛かった・・・?」

アルミン(まずい。制御できなかった時のこと、研介は覚えてないんだ!!)

半沢(リコ班長、報告書に書いたのか。まずいな・・・)チラッ

リコ(しょうがないだろ、報告書にウソを書けっていうのか?この事実を隠すことは人類のためにならないんだよ)

ザックレー「半沢直樹は?」

半沢「はい。私です」

ザックレー「君が半沢直樹か。古美門研介が襲い掛かったのは事実か?」

リコ「ごまかさず答えないと研介のためにならないぞ」

半沢「はい、事実です」

ナイル「そら見ろ。無意識に味方に襲い掛かるような操れない力なんて、凶器でしかない」

半沢「いえ、彼が私に襲い掛かったということこそが、彼が巨人の力を操れるという証明になると思います」

アルミン(え?研介はあれ、無意識にやったんじゃないの?)

古美門「そうだな。僕はいちいちうるさい半沢にむかついていたからな!殴り飛ばしてやろうと思ったのに、上手く避けやがって!」

半沢「彼は普段、私に腕っ節ではかないません。なので、巨人化した時にここぞと私を狙ったんです」

ナイル「確かに、こちらで調べた資料によると、君たちは家族ではあるが、仲が良いとは言えず古美門が半沢につっかかってはよくケンカしていたとあるな・・・。だが、仲が悪いとはいえ、作戦中に重要任務についている仲間を襲うなんてやはりただの凶器でしか・・・」

半沢「それについては、巨人化とは無関係に、ただ古美門本人の人格に問題があるだけです。・・・このまま発言を続けてもよろしいですか?」

ザックレー「いいだろう」

半沢「では続けさせていただきます。私は幼馴染として、家族として、この古美門と長く暮らしてきました。なので私の経験から言わせていただきますと、彼を思い通りに操ろうとすることはほぼ不可能です。操っていると思わせて人を手玉にとるのが彼のやり方です。憲兵団の皆様の心身の為にも進言いたしますが、余計な荷物を背負い込んで色々なものを崩壊させられたくなければ彼の身柄を預かろうなんて自殺行為はおやめになったほうがよろしいかと存じます。巨人体の彼よりも、彼本来の人格こそが問題視すべき点です」

古美門「おい!半沢!お前僕の立場を悪くしたいのかよくしたいのかどっちなんだ!名誉毀損だ!僕ほどの人格者この世に2人といないぞ!だが僕を操れる人間がいないというのは正解だな。僕のように強すぎて敵がいないというのも空しいものだがな」

半沢「彼を管理下において協力してもらうには凡人ではとても不可能だということです。特に彼を管理する人数が多ければ多いほど、彼のペテンにはまりやすくなる。強い精神力と圧倒的な力を持った一人の人間が管理するのが理想的です。失礼ながら申し上げますが、そんな人物が憲兵団にいらっしゃるでしょうか?リヴァイ兵長以上に強い方がいらっしゃいますか?」

ナイル「・・・・・・」

古美門「おやおや~?どうしたんですか?いらっしゃらないなら話になりませんね」

ナイル「なるほど。調査兵団側も人間性に問題あり・・・ということを認めるということだな。どうですかね。彼のような根本的に人間性に疑問を感じる人物に、我々人類の命運・人材・資金を託すべきなのでしょうか?意識的に巨人を操れるのが事実であったとしても、彼の気まぐれで作戦が破綻する恐れがあります。調査兵団の作戦計画自体、バクチのようなものなのに、これでは夜の森で湿気た銃で狩りをするようなものです」

半沢「私は調査兵団所属ではありませんので、兵団の意見と思われては困りますね」

ザックレー「ふむ。どうかね。エルヴィン。君は古美門研介の人格についてどう判断している」

エルヴィン「はい。確かに彼は個性的で、自分の欲望に忠実な性格をしています。ですが彼の人格も考慮して、作戦を成功に導くために我々は力を尽くします。湿気ている銃が暴発するのを恐れていては狩りはできません。撃たなければ狩れない」

ナイル「銃口がこちらに向く危険性を考えるべきだ」

モブ市民「そうだ・・・こいつは子供の姿でこっちに紛れ込んだ巨人なのかもしれないぞ。凶暴な本性は隠すことができなかったんだ」

古美門「誰が凶暴だと?この温和な私のどこが凶暴なんだ、どこが。さっきから私を好き勝手に殺せだのなんだの議論してるあなたたちのほうがよっぽど凶暴じゃないですか」

ガチャンッ!

モブ市民「ひぃっ!」

ザワ・・・ザワ・・・

古美門「どうしました?私が襲いかかろうとしたとでも思ったんですか?」

ブタ野郎「・・・こんな、悠長に議論してる場合なのか?見ただろ?今目の前にいるコイツはいつ爆発するかわからない火薬庫のようなものだぞ。あんな拘束具なんか無意味だ」

古美門「ブタ野郎さーん、あなた随分被害妄想がお強いようですね。いいや、ブタ野郎だけじゃありませんよ。この壁の中の人類は揃いも揃って被害妄想ばかり強くて、現実から目をそらしたい弱虫野郎ばっかりだ。いつまでもそうしてればいいんです。そうして巨人の腹の中に入る日をのんびり待ってるいればいい」

ブタ野郎「なんだと・・・」

ナイル「こいつ・・・」

古美門「あなたたちは!」

古美門「見たくないものを見ず、自分が知らないものから目を逸らし、怖がってばかりで、その先に進もうとしない。巨人は確かに恐ろしい。その力を持つ私のことも恐ろしいでしょう。私だって、巨人は怖い。できれば戦いたくありません。巨人と戦うこともなく、この壁の中でゆっくり死んで行ければ幸せでしょう。できたかもしれません。壁さえ壊されなければ。ですが、壁は壊されたんです。次の壁もいつ壊されるかわからない」

古美門「戦いたくなくても、戦わなくてはいけない時が来ているんです。それが何故わからない。目の前に自分の命を狙う敵が迫っているのに、あなたたちは自分に刺さるのを恐れて、抜き身のブレードをつかもうともしていない。それで家族が、自分が、金が、守れるんですか?失うだけだ。今まで傷つきながら戦ってきた先人や、守るべき子々孫々に恥ずかしいと思わないんですか」

古美門「もし、誇りある生活を、今までの生活を取戻したいなら、見たくない現実を見なければならない。深い傷を負いながら前に進まなければならない。それが戦うことだ!愚痴なら墓場で言えばいい!!」

古美門「我々の生活を奪い、これからも奪おうとしている相手に一矢報い、奪われたものと踏みにじられたものを取戻すにはそれしかないんだ!戦って勝ち取ることなんだ!それ以外に無いんだ!!」

古美門「ですが、あんたらは怖いから戦いたくなんてないでしょう。だから、こうして戦うのが怖い腰抜けどもに、私が力を貸してさしあげると言っているんです!!戦うのが怖いなら、黙って僕に投資しろ!!!!!!」

ガチャンッ!!

モブ「ひっ・・・」

ナイル「銃を構えろ!!」

憲兵「はっ!」

古美門「はわっ!?ちょ、そんなのこっち向けて危ないでしょうが!?ひいっ!」

リヴァイ「チッ・・・!」

バッ

エルヴィン「おい、リヴァイ!?」

アルミン(ああっ!?リヴァイ兵長が研介のところに!?一体何を・・・)

バキッ

アルミン(うわあああああ!?蹴ったぞ!!)

古美門「ぐえっ!!!!」

リヴァイ(あと2,3発入れておくか・・・?)

古美門「」ガクッ

リヴァイ(・・・おい、あれで気を失ったのか。情けねぇ・・・が、まあいいか)

リヴァイ「これは持論だが。躾に一番効くのは痛みだと思う。こいつを教育するのに必要なのは『言葉』ではなく『教訓』だ」

ナイル「なんてことを・・・。危険だ。恨みを買ってそいつが巨人化したらどうする」

リヴァイ「何言ってる。お前らはこいつを解剖するんだろ?」

憲兵「ゴクッ・・・」

ナイル「・・・・・・」

リヴァイ「はっ・・・。こいつは知恵がある分やっかいだ。だとしても俺の敵じゃないが・・・お前らはどうする?こいつをいじめた奴らも良く考えたほうがいい。本当にこいつを殺せるのかをな」

エルヴィン「総統、ご提案があります・・・」

アルミン(・・・決まった。これで、研介は調査兵団の管理下に入るだろう・・・)



こうして、研介は調査兵団に身を置くことになった

リヴァイ兵長率いる調査兵団の精鋭班に配属され、巨人の力を実験しながら調査兵として生活することになったみたいだけど、思い切り蹴られたのもあって、何を言ってもビクともしないリヴァイ兵長のこと、研介は苦手みたいだ。

他の班員の人達と仲良くやれてたらいいんだけど・・・たぶん無理だろうな。

それから僕と直樹、104期の同期21名が調査兵団に入団。

サシャが「古美門先生といたらおなかいっぱい食べれますから・・・」って泣きながら言ってたのが忘れられない。

そして―僕らはまもなく第57回壁外調査へと出発することとなる。

**************

次回、女型戦

**  カラネス区 ** 

兵士「団長!間もなくです!付近の巨人はあらかた遠ざけた!!開門30秒前!!」

班長「いよいよだ!これより人類はまた一歩前進する!!お前達の訓練の成果を見せてくれ!!」

オオオオオオオオオオオオオ!!!

エルヴィン「進め!!!」

エルヴィン「これより、第57回壁外調査を開始する!!前進せよ!!!」

**************

ドドドドドドドドドドドドドドド

古美門「ぺトラさん、安心してください。巨人が現われてもこの僕が貴女のことをお守りしますので。そこで、どうですかね。これが終わったら一緒にお食事でも・・・」

ぺトラ「え?もう前も断ったでしょ。研介しつこいんだけど・・・」

オルオ「ああ!?研介、てめぇまた性懲りもなくぺトラのこと口説いてやがんのか!?てめぇはこの1ヶ月毎日毎日ぺトラのケツ追いかけまわしやがって。大体、いいか、クソ横分け。壁外調査ってもんはな『いかに巨人と戦わないか』に懸かってんだよ!」

ガチッ

オルオ「~~~~~~っ!!」

古美門「オルオさ~ん、乗馬中は喋らないほうがいいですよぉ?舌を噛みますからね!!あはははははは!!」

ガチッ

古美門「~~~~~~~~~~~っ!!!!」

ぺトラ「研介!!大丈夫!?」

グンタ「研介!!バカ!お前、それで巨人になるかもしれないから喋るな!」

エルド「研介!真面目にしろっ!!」

古美門「なんで僕ばっかり怒られないといけないんだぁ!」

全員「いいから黙れ!!!」

リヴァイ(やれやれ・・・)


***************

アルミン(長距離索敵陣形―――エルヴィン団長考案のこの陣形で調査兵団の生存率は飛躍的に伸びた)

アルミン(初列索敵班が巨人を発見次第、赤の信煙弾を発射。それを確認次第、他の班が同じようにして伝達。団長が進路を緑の信煙弾で示して、進路を決める。そうやって巨人を避けながら目的地を目指していく・・・)

アルミン(だけど、この対処法で通じるのは『通常種』まで―予測のつかない行動をする奇行種とは戦闘をしなくてはならない・・・)

ドオオオオオオオ

アルミン「!?(黒の煙弾!?奇行種か!!)」

ドシン! ドシン! ドシン!

ネス「俺達を無視して中央に向かってる!!チクショー、やるしかねぇか!」

ネス「シス!お前はうなじだ!!俺が動きを止める!!」

シス「了解!!」

ネス「まだ新兵をこいつに会わせたくねぇな・・・」

バシュッ

ネス(よし!!アンカーは踵に入った!このまま削いで地面とキスさせてやる!!!)

ネス「ふんっ!!!」

ザクッ

ネス「今だ!シス!!」

シス「はっ!!」

シス(いける!この角度ならうなじを一発で削げる!!)

ザクッ

ズシイイイイイイイイイイイイイン

ネス・シス「よしっ!!」

アルミン「やった!ネス班長!!」

アルミン(すごいぞ。調査兵団で生き残ってきた先輩たちはすごいな。彼らがいればなんとかなるかもしれない)

ズシン ズシン ズシン

アルミン「え?」

ズシン ズシン ズシン

アルミン(また奇行種か?煙弾を・・・なんだあれ!?速過ぎる!!!)

ドオオオオオオオオオ

アルミン(煙弾は撃ったが、なんだ!?僕のほうに向かって来るぞ!?)

ネス「シス!!!もう一回やるぞ!こいつをアルミンの方に行かせるな!!」

シス「はいっ!!」

バシュッ

アルミン(ネス班長・・・!!シスさん!!)

シス「おおおおお!!」

パシッ


シス「え」

グシャッ

アルミン「・・・・・・」

ネス「!?(シスがやられた!!?)」

ガシッ

ネス(しまった!ワイヤーを捕まれた!こんな動き・・・こいつ・・・)

ガクッ

ネス(しまった!ワイヤーを捕まれた!こんな動き・・・こいつ・・・)

ガクッ

ネス「は?」

ボスッ

アルミン(・・・地面に、叩きつけた・・・。あんな動き・・・人間が虫を捕まえて捨てるような、あんな動き・・・に、逃げるんだ!!!)

ドドドドドドドドドドドド

アルミン(あの巨人、ぼ、僕を追いかけてきてるのか!?)

アルミン「違うぞ」

アルミン「違う・・・奇行種じゃない!ネス班長教えてください。どうすればいいんですかヤツは!?」

アルミン「通常種でも・・・奇行種でもありません・・・ヤツは!!」

アルミン「『知性』がある!『超大型巨人』や『鎧の巨人』とか・・・研介と同じです!!」

僕も殺される―

班長たちを殺され、一人でこの女性の体型をした巨人相手に打つ手もない僕は死を覚悟したが、彼女―女型の巨人は僕の顔を確認しただけで、僕を殺さなかった。

そのすぐ後、僕はライナー、ジャンと合流。
ジャンの提案で女型巨人の足止め作戦を決行するも、大した時間稼ぎは出来ず、女型巨人は兵士たちを排除しながら、陣形中央目指して走り去った。

おそらく、研介を探して―・・・

***************

** 巨大樹の森 **


古美門「兵長!リヴァイ兵長!刈りあげ兵長!」

リヴァイ「・・・なんだ」

古美門「なんだって僕らの班だけこんな森に入ってくるんですか。右から何か来てるのに、これじゃ他の班に守ってもらえないじゃないですか。巨人の回避ができない!」

リヴァイ「わかりきったことをピーピー喚くな。もうそんなことできるわけねぇだろ」

リヴァイ「周りを見ろ。この無駄にクソデカイ木を・・・立体機動装置の機能を生かすには絶好の環境だ」

古美門「立体機動?索敵不能な巨人が現われたんですか?なんてこった・・・。奇行種?いや、違うな。ただの奇行種ぐらいなら、調査兵団の索敵が壊滅するような被害を出す前になんとかできるだろう。超大型巨人・・・鎧の巨人・・・もしくはそれに類する、知性持ち巨人が進行してきている?」

リヴァイ「・・・そこまでわかってるなら黙ってろ」

古美門「黙ってられませんよ!絶好の環境と言ったって、僕は立体機動ができないんだぁ!!!」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオ

ぺトラ「な・・・何の音!?」

オルオ「すぐ後からだ!」

エルド「右から来ていたという何かのせいか・・・?」

古美門「うわああああ!巨人だ!知性巨人が迫っているんだぁ!」

グンタ「ち、知性巨人だと?」

リヴァイ「お前ら」

全員「!!」

リヴァイ「剣を抜け」

リヴァイ「それが姿を現すとしたら・・・一瞬だ」

ドォッ ドォッ ドォッ

ドドドドドドドドドドドドド

ぺトラ「巨人!!!しかも速い!!」

オルオ「くっ・・・!一体何人殺しやがったんだ!?」

研介「ぎゃあああああああ!!出たーーーー!!!うわああ!殺される!」

グンタ「クッ・・・この森の中じゃ事前に回避しようが無い!!」

エルド「速い!!追いつかれるぞ!!」

ぺトラ「兵長!!立体機動に映りましょう!!」

古美門「いけません!立体機動は駄目!!駄目絶対!!」

ぺトラ「なんでよ!?」

古美門「そんなの僕が置いてけぼりになるからに決まってるでしょうが!!バカァ!でもぺトラさんが僕を抱えて飛んでくれるなら、僕がんばっちゃうかもなぁ!!」

ぺトラ「ほんっと、あんたいい加減にやめてくんない・・・?」

オルオ「研介てめぇ!いい加減ぺトラは諦めろ!立体機動する時は俺が抱えてやるよ!!」

古美門「いやだぁ~!!オルオさんは嫌だぁ!!」

ビュッ

ぺトラ「!!兵長!巨人背後から増援です!!」

古美門「やった!!皆がんばってくれたまえ!!」

増援兵士A「このっ!!うなじ削いでやるっ!!」

女型巨人「・・・・・・」

ドンッ!!

ズリリリリリリッ

グンタ「背中と木に挟んで潰しやがった!・・・ああっ!!」

増援兵士B「~~~~っ!!このっ!!」

女型巨人「・・・・・・」

グシャッ

エルド(今度は片手で一撃かよ・・・!!こいつ・・・!!)

ぺトラ「兵長!!指示を!!」

オルオ「やりましょう!あいつは危険です!!俺達がやるべきです!」

エルド「ズタボロにしてやる・・・」

古美門「はやく~!はやくやっちゃってください、エルドさん」

オルオ「リヴァイ兵長!!」

ぺトラ「指示をください!!!」

リヴァイ「・・・全員耳を塞げ」

キイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ

古美門「耳が!耳がああっ!!」

オルオ「音響弾!?」

リヴァイ「お前らの仕事はなんだ?その時々の感情に身を任せるだけか?」

リヴァイ「そうじゃなかったハズだ・・・。この班の使命はそこの横分け小僧にキズ一つ付けない様に尽くすことだ。命の限り」

古美門「その通りです!いやあ、全くその通り!!」

リヴァイ「俺達はこのまま馬で駆ける。いいな」

ぺトラ「了解です!」

古美門「よし、僕が逃げやすいように前のほうに出ましょうか」

エルド「研介!!歩調を乱すな!!横にぶれると速度が下がる!そのままの位置で最高速度を保て!!」

古美門「だって!なるべく前にでないと追いつかれますよぉ!?僕が死んだらどうしてくれるんだあああ」

ガチッ

古美門「~~~~~~~~っ!!」

ぺトラ「研介!何をしてるの!!乗馬中は黙ってなさい!巨人化したらどうするの!巨人化が許されるのはあなたの命が危うくなった時だけ!私達と約束したでしょ!?」

古美門「今だって十分危うくなってますよ!僕だけじゃない!ぺトラさんも!オルオさんも!皆命が危うくなっている!このままじゃ命が危うくなった時だけ巨人化して、ぺトラさんといちゃいちゃする約束も果せず死んでしまうかもしれませんよ!?」

ぺトラ「いちゃいちゃなんて約束してないでしょ!?」

リヴァイ「かまわんぞ。研介。お前は間違ってない。やりたきゃやれ」

古美門「ぺトラさん、兵長もいちゃいちゃしていいとおっしゃってます」

ぺトラ「兵長!!勝手にそんな許可を出さないでください!」

リヴァイ「そうじゃない。いちゃいちゃするかはお前らで勝手に話し合え。俺が言ってるのは巨人化だ」

ぺトラ「兵長!?」

リヴァイ「俺にはわかる。コイツは本物の化け物だ。『巨人の力』とは無関係にな。どんなに力で押さえつけようとも、どんな檻に閉じ込めようとも・・・コイツの意識を服従させることは誰にもできない」

続きは次回

リヴァイ「お前と俺達との判断の相異は経験則に基づくものだ。だがな・・・そんなもんはアテにしなくていい。選べ・・・」

リヴァイ「自分を信じるか、俺やコイツら調査兵団組織を信じるかだ」

リヴァイ「俺にはわからない。ずっとそうだ・・・。自分の力を信じても・・・信頼に足る仲間の選択を信じても・・・結果は誰にもわからなかった・・・」

リヴァイ「だから・・・まぁせいぜい・・・悔いが残らない方を自分で選べ」

古美門「・・・・・・・」

ぺトラ「研介」

ぺトラ「信じ・・・」

古美門「ぺトラさん、私は共同と名のつくものが全て嫌いだし、手に手を取ってパワーアップするのはパーマンが空を飛ぶ時だけです」

ぺトラ「パー?」

古美門「僕が信じるのは僕だけだ。人間やめます   ガブッ!!」

カッ

リヴァイ「総員!立体機動に移れ!!!」

ぺトラ「研介!!!!戦うなんて無茶よ!!」

オルオ「~~~っ!!!」

エルド「やりやがった!!このバカ!!」

グンタ「バカヤロウ!!」

研介巨人「ハーハハハハハハハハハハ!!!」

グンタ「なんてムカつく声なんだ」

ぺトラ「兵長!!どうすれば・・・」

研介巨人「ウワアアアアアアアアアアアア!!」

ドシン ドシン ドシン

オルオ「・・・逃げやがった・・・」

エルド「・・・あの野郎・・・」

女型「・・・・・・!!」

ドオオオオオオオオ

グンタ「まずい!女型のほうが足が速いぞ!!あれじゃすぐ追いつかれる!援護をしないと!兵長!!」

ぺトラ「兵長!!研介が追いつかれます!!」

リヴァイ「距離を保ちながら追いかけるぞ。だが、俺の指示があるまで女型に手は出すな。いくぞ!」

シュバッ

研介巨人「ウワアアアアアアアアアアアアアン」

ドシン ドシン ドシン

女型「・・・・・・!!!」

ドオオオオオオオオオオオオ!!!

オルオ「速い!!」

グンタ「!!」

エルド「女型が加速した!!」

オルオ「おい!!このままじゃ研介が追いつかれるぞ!!」

ぺトラ「け、研介ー!!!!」

リヴァイ「オルオ、ぺトラ!女型が研介を掴んだら同時に踵を狙え!」

オルオ「!」

ぺトラ「はいっ!」

エルド(そうか。両手が塞がった瞬間ならこちらに攻撃は来ない。そして腱を削ぐと同時に女型は研介に引っ張られて倒れるってことか!)

女型「・・・・・・!」

ガシッ

研介巨人「・・・・・・!!!!」

グンタ「研介を掴んだぞ!!!」

リヴァイ「オルオ!ぺトラ!!」

オルオ・ペトラ「おおおっ!!!!」

ズバッ!ズバッ!

グンタ(よし!!流石だ。息ぴったりだな!)

ぺトラ「やった!!」

オルオ「ぺトラ!さっさと体制立て直せ!こいつらは回復するんだ!」

ぺトラ「わかってるよ!足首なくなるまで削いでやる!!」

ズバッ ズバッ

女型「!!!」

グラッ

研介「ウワアアアアアアアアアアアン」

ズシン ズシン ズシン

ぺトラ「非力だけど、女型を引きずってる!がんばれ研介!」

エルド「いいぞ!研介!!そのまま引き倒してやれ!」

リヴァイ「エルド!グンタ!女型を研介から引き剥がすぞ!両肩の筋肉だ!」

エルド・グンタ「はいっ!!」

エルド(腕上げられなくなる程削いでやる!!)

ズバッ ズバッ

女型「!!」

リヴァイ「さて、うなじの中にいるやつとご対面だ。中で小便漏らしてねぇといいんだが・・・」

シュバッ

女型「・・・・・・!!!」

グンッ

リヴァイ「・・・・・・!」

スカッ

リヴァイ「この野郎・・・!前に・・・!」

オルオ「よし!!女型が倒れるぞ!ぺトラ!離れるんだ!」

ぺトラ「駄目!!このままじゃ研介が下敷きに!!!助けないと!!」

グンタ「いや、もう間に合わない!」

ドオオオオン

エルド「倒れたぞ!!!」

リヴァイ「チッ・・・わざと力を抜いたか(倒れてうなじへの刃を避けやがった・・・)」

エルド「ああっ!!」

グンタ「女型が!研介の首に!!」

女型「・・・・・・!!!」

ガブッ

研介「ウワアアアアアアアアア!!!!!」

ビリィィィィィ!!

ぺトラ「研介!!!!」

オルオ「研介が食われた!!」

リヴァイ「お前らは腱と肩を削ぎ続けろ!!俺が行く!!」

シュバッ

リヴァイ(どうせ食われても研介は生きてやがるだろう。クソ横分け小僧の作った隙だ。こいつのがら空きのうなじをパックリ開かせてもらおうか・・・)

女型「・・・・・・!」

グリンッ

リヴァイ「首を捻ってうなじは守るか・・・。だが、そりゃこっちにも都合がいい。口の筋肉削いで研介を回収させてもらう」

ザクッ ズバッ

リヴァイ「オルオ!女型の顎が外れたら、研介を回収しろ!」

オルオ「はいっ!」

ガゴンッ

オルオ(よし!口から研介が出てきた!!)

オルオ「研介っ!!!」

ガシッ

オルオ「うげっ!!なんだこれっベトベトじゃねぇか!!クソッ!」

リヴァイ「オルオ!そのまま先に行け!」

オルオ「はい!」

リヴァイ「俺たちも行くぞ」

グンタ「えっ!?こいつは置いて行くんですか!?このままうなじを開いてやれば・・・!」

リヴァイ「腱と肩を削いだが、寝ている状態では脚は動く。うなじは地面側だ。ブレードの予備と時間を考えてもここで回復するこいつをやるのは難しい・・・行くぞ」

ぺトラ「そんな!もう少しなのに!」

エルド「いや。兵長の言う通りだ。こんな体勢の巨人のうなじを削ぐのは危険だ。こいつがおとなしいうちに行くぞ、ぺトラ」

ぺトラ「わかりました」

リヴァイ「行くぞ」

全員「はいっ!」


****************

オルオ(それにしたって、こいつ連れてどこまで行けばいいんだ・・・。こんな状態で進んでたらガスが切れるぞ)

モブリット「こっちだ、オルオ!」

オルオ「モブリットさん?」

モブリット「それは研介だな。どうした?」

オルオ「巨人に変身して、追いかけて来た知性巨人に食われたんです。でも救出しました」

モブリット「そうか。巨人とリヴァイ兵長たちは?」

オルオ「おそらく巨人を討伐しているんだと・・・」

ハンジ「いやいや。違うよ」

シュバッ

オルオ「ハンジ分隊長」

ハンジ「オルオの後から追いかけてくるよ。巨人はまだついて来てないみたいだね。だろ?ミケ?」

ミケ「・・・・・・」スンスン

オルオ「巨人は腱を削いだので・・・でもすぐ回復すると思います」

ハンジ「そっかそっか」

オルオ(なんでこの状況で焦らないんだ)

ハンジ「研介は気を失ってるのかな?うん、まあいいや。研介は私達が預かるよ」

オルオ「はあ・・・」

ハンジ「モブリット。研介を連れて行って手当てしてくれる?」

モブリット「わかりました」

シュバッ

オルオ「・・・・・・それで俺たちは何を・・・」

ハンジ「ここで待っていればいいよ。巨人は研介を探してるみたいだから、追いかけてくるだろう。リヴァイはここまでの案内役だ。君達にはこれからひと仕事頼むよ」

オルオ「・・・ひと仕事?」

**************

リヴァイ「おい、お前ら俺より先に行け」

エルド「はいっ」

ぺトラ「え?兵長はどうなさるんですか?」

リヴァイ「少し巨人と離れすぎた。俺は少し速度を落として進む」

グンタ「そんな、追いつかれたら危険です!」

リヴァイ「心配ない。行け」

エルド「兵長の命令に従うんだ。・・・行くぞ!」

グンタ「・・・ああ」

ぺトラ「はい」

ぺトラ(兵長・・・)

リヴァイ(研介はもう着いただろうが・・・)

ズシン・・・ ズシン・・・

リヴァイ「来たか。まださっきみたいに速くは走れねぇか・・・」

リヴァイ「おい、てめぇの目的は研介みたいだが・・・。残念だったな。貴様はここで足止めさせてもらう」

チャキッ

リヴァイ「そいつの中でどんな面してるのか、見せてもらおうか」

ヒュンッ

リヴァイ「手足ごと削いじまうかもしれんがかまわんだろ?」

女型「・・・・・・!」

ダッ

リヴァイ(よし、トロいが走りだした。このまま後から追いかけていくか)

ヒュンッ

リヴァイ(それにしても大分回復してきたな。なるべく弱っておいてもらいたいが)

****************

ハンジ「じゃあ、いいね。研介!さっき話した通りに巨人を誘導するんだ」

古美門「了解です」

ハンジ「なんだかな~、らしくないよ?誘導嫌なの?疲れてるの?怖くてももっとらしくしないと!!ほらほら!!」

古美門「わかってます。何回練習させるんですか。疲れますよ。怖いわけじゃないですからね。僕に任せたまえ!これでいいですかねぇ?ハンジさん!」

ハンジ「いいよいいよ!その調子だ!」

ドシン ドシン ドシン

ミケ「来たぞ!」

ハンジ「よっしゃ!よーし!!研介!頼んだよ!!行って来い!!」

古美門「任せたまえ!」

シュバッ

古美門「おーい!!美人の巨人さん!こっちですよぉ!僕のこと追いかけてるんでしょう!?僕の胸に飛び込んでおいでなさーい!!」

女型「・・・・・・!」

ググッ

古美門「はっはっは!もっと手を伸ばさないと僕には届かないよ!」

オルオ「バカ!飛ばれたら届くだろ!!」

シュバッ

ガシッ

古美門「オルオさん!」

オルオ「てめぇは立体機動できないんだから手間かけさせるな!」

ヒュンッ

古美門「おーい!巨人のお姉さん!捕まえてごらんなさーい!!」

女型「・・・・・・・」

ドシンッ ドシンッ ドシンッ

ハンジ「ちょっと走りが速くなってきたね。オルオ!ミケに交代だ!」

オルオ「はい!ミケ分隊長!」

ミケ「よし!」

ガシッ

古美門「お願いしますよ」

ヒュンッ

女型「・・・・・・」

ドシンッ ドシンッ ドシンッ

ハンジ「ミケ!女型の走りが回復し始めてる!アンカーで飛びながらどんどん研介を渡して運ぶんだ!!」

ミケ「わかった」

ヒュンッ

ミケ「エルド!!」

エルド「はいっ!」

ガシッ

エルド「落ちるなよ!!」

ヒュンッ

エルド「グンター!!」

グンタ「おおっ!!つかまれ!研介!」

古美門「グンタさん!」

ガシッ

女型「・・・・・・!」

ドドドドッ

ハンジ(よしよし、もうちょっとだね。もうちょっと。がんばれ~!皆!!!)

グンタ「ぺトラ!!!落とすなよ!!」

ヒュンッ

ぺトラ「研介!!!」

古美門「ぺトラさん!」

ガシッ

ぺトラ「うぐっ・・・!!!(重いっ!!)」

古美門「大丈夫ですか!?」

ぺトラ「大丈・・・!!ああっ・・・!!!」

ズルッ

古美門「うわああああっ!!!落ちるうううう!!!」

グンタ「ああっ!!ぺトラ!!研介!!」

ぺトラ「しまった・・・!!研介!!」

女型「・・・・・・!!!」

ドドドドドドドドドッ

ぺトラ「研介!!!」

グンタ「駄目だ!!ぺトラ!!研介は落ちても大丈夫だろ!!女型が突っ込んで来るぞ!!!避けろ!!!」

ぺトラ「!!!」

グンタ「ぺトラー!!避けろ!!!」

ぺトラ「くっ・・・!!!」

ヒュバッ

グンタ「それでいい!!!」

古美門「わああああああ!!」

女型「!!!」

バッ

ぺトラ(女型が研介を受け止めようと手を出したっ・・・!!落ちて無事でも握りこまれたらまずい!早く逃げて!!)

ハンジ「ひょおおおうう!!!いい姿勢だあああああああ!!!!女型の巨人!!!」

古美門「女型の巨人、生憎だが俺に助けは必要ない。悪いな」

女型「!!??」

古美門「立体機動は得意だからな」

シュバッ

古美門「ハンジさん!!」

ヒュンッ

女型「!!!」

ハンジ「目標、体勢を崩して減速!!エルヴィン!!今だよ!!」

エルヴィン「撃てっ!!!」

ドドッ ドドドッ

ドドドドドドドッ

女型「!!!!」

ハンジ「やった!!!!!」

リヴァイ「かかったか」

ヒュンッ

ハンジ「あ、リヴァイなんで巨人の後からきてるのさ、遅いよ」

リヴァイ「女型の気を散らしてたんだ。知性巨人だからかうなじを気にしてる。後から狙ってやれば前にいるお前らとこっちとで、意識が分散されるだろ」

エルヴィン「リヴァイ、そして皆もよく誘導してくれた」

ハンジ「ぶっつけ本番にしてはなかなかいい演技だったよ、直樹にぺトラ」

半沢「全く・・・古美門の真似はもうごめんですよ。大体なんで間違えるんですかね・・・。顔はともかく、かもし出す雰囲気が似てない、絶対似てないのに」

ぺトラ「演技が上手かったんだよ。でも作戦だったとはいえ、直樹の手を離した時は心臓が潰れるかと思いましたよ」

ハンジ「いやいや、君達のお陰でうなじが丸見えの姿勢で罠にかけられていい感じだよ。さっさと開けてしまおうか」

リヴァイ「そうだな」

シュタッ

リヴァイ「さて、丁寧に掘り出してやりたいところだが、お前の本体の大きさがわからねぇからな・・・。手足は切断しても大丈夫か?また生えてくるんだろ?」

女型「・・・スゥゥゥゥゥゥ」

エルヴィン「!?」

ミケ「エルヴィン・・・!女型の様子が・・・!!」

ハンジ「研介!!!出番だよ!!!」

研介巨人「ハーッハッハッハ!!!」

ドシン ドシン ドシン

ハンジ「研介!女型の口を手で塞ぐんだ!!」

ガバッ

女型「キィアア・・・アグッ・・・!!!!?」

モゴモゴ

研介巨人「ハッハッハッハッハ」

ガシッ

ハンジ「わあああ!!研介巨人が私の言うこと聞いてくれたよー!!!見た!?見た!?」

モブリット「ええ・・・見ましたよ。見ましたから!!落ち着いてくださいよっ!!!」

エルヴィン「よし、研介巨人はそのまま女型を抑えていてくれ!これより女型巨人の本体を回収する!!」

ハンジ「よし!!作業にとりかかれ!!巨人達が集まってくる前に終わらせるぞ!」

ザクッ ザクッ

エルヴィン「切れ目からピッチフォークを入れて、肉をゆっくり持ち上げるんだ」

グググッ

メリメリッ

モブリット「ああっ・・・!!」

オルオ「人が・・・」

ぺトラ「嘘でしょ・・・」

エルド「女の子だ・・・」

ハンジ「人間が入ってる・・・!研介と同じだ!!!すごい!すごいぞ!!」

半沢「・・・・・・」

リヴァイ「・・・おい、どうした?直樹。ボーっとして」

半沢「・・・そんな・・・まさか」

ハンジ「よし、研介。片手で口を塞いだまま、片手でこのまま中身全体を取り出してくれ」

研介巨人「ハッハッハッハッハ」

ガシッ

半沢「なんでなんだ・・・」




半沢「アニ・・・」




アニ「・・・・・・」

アニ父『この世の全てを敵に回したっていい』

アニ父『この世の全てからお前が恨まれることになっても・・・』

アニ父『父さんだけはお前の味方だ』

アニ父『・・・だから約束してくれ』


アニ父『帰ってくるって・・・』



アニ「・・・・・・っ!!」

シュウウウウウウウウウウウウウウ

研介巨人「ウワアアアアアアアン!?」

ハンジ「!?」

オルオ「なんだ!?」

エルヴィン「!!」

ぺトラ「蒸気がっ・・・!!」

半沢「ぐっ・・・!」

シュウウウウウウウウウウウウ・・・・・・

ハンジ「どうなった!?」

ミケ「・・・これは」

リヴァイ「なんだこれは」

ぺトラ「水晶・・・?」

オルオ「研介が引き出したからか?この中に閉じ込められてるのがこの巨人の中身か・・・」

リヴァイ「・・・・・・どいてろ、オルオ」スッ

リヴァイ「あれだけ殺しておいて眠り姫とはいいご身分じゃねぇか」

キィーンッ

ザクッ

リヴァイ「・・・チッ」

研介巨人「ウワアアアアアアアアアン!!!」

ドタドタッ

エルド「ブレードが折れたっ!?・・・そして研介に刺さった・・・」

グンタ「研介っ!大丈夫か?」

ハンジ「ううん、傷ひとつついてないね。なんなんだろうこの材質は」

エルヴィン「・・・立体機動装置を装備しているな」

ハンジ「!!」

リヴァイ「兵士か」

モブリット「調査兵団では見たことないな・・・憲兵団?駐屯兵団?」

エルヴィン「直樹」

半沢「・・・!」

エルヴィン「彼女に見覚えは?」

リヴァイ「・・・どうなんだ」

半沢「・・・私の・・・」

エルヴィン「・・・・・・」

半沢「・・・私の、同期です。名前は・・・アニ・レオンハート・・・」


*****************

第57回壁外調査は、超大型巨人、鎧の巨人と同じように知性を持つ巨人・・・女型の巨人の本体捕獲に成功。
彼女はワイヤーで固定され、地下深くに幽閉された。

だが本体であるアニ・レオンハートが104期訓練兵であったこと。

巨人を討伐するための組織内部に裏切り者がいたということ。

このことから、調査兵団はアニ以外にも裏切り者がいる可能性を考慮して、今回の捕獲作戦成功をごく一部のものだけが知るところとし、壁外調査を引き上げた。

僕がそれを知ったのは、ハンジさんがアニの身辺調査を終えて、ライナーとベルトルトとアニの関係を尋ねに来た時だった。

ライナーと仲が良かった直樹は信じたくないようだったけど、僕らはこの後、ウォール・ローゼの上で真実を知ることとなる・・・。

*******************

ライナー「研介、話があるんだが」

古美門「君が僕に話があるなんて珍しいな。まあ、それはいいだろう、で?いくら払えるんだね?」

ライナー「いや、そういう相談じゃないんだが」

古美門「そうか。じゃあ聞く必要は無いな。僕は金にならない話をむさくてごつくてマッチョな男とする時間は無いんだよ、悪いねぇ。僕はその時間をクリスタと話す時間に当てるから、君は半沢か壁か、いつも君の後について歩いてるベルナントカ君とでも話してるが良い」

ライナー「いやいや、待てって。お前なぁ・・・!いいから聞け。いいか、俺たちは5年前・・・壁を破壊して人類への攻撃を始めた」

グググッ・・・

古美門「痛い痛い!ライナー!バカ力で僕の腕を掴むのをやめろ!」

ベルトルト「ラ、ライナー!」

ライナー「俺が鎧の巨人で、ベルトルト・・・こいつが超大型巨人ってやつだ」

ベルトルト「な・・・・・・何を言っているんだライナー」

古美門「ああっ!ライナー!お前~!!手が、汚れてるじゃないか!僕のジャケットが黒くなったぞ!?どうしてくれるんだ!ほら!ここ!手形がついたぞ!!弁償してくれるんだろうなあ!?君の宿舎に領収書送りつけてやるからな」

ライナー「なぁ・・・研介、聞いてるか?」

古美門「さっき言ったろ!僕は金にならないのに君みたいな暑苦しいむさくるしい男の話なんか聞きたくもないんだよ!言いたいことがあるなら後でじっくり読んでやるから文書にしたためて僕の部屋に届けさせておけ。ただし僕が読んでやるのは3行までだからな。それ以上書いても無駄だからなぁ」

ベルトルト「そ、そうだよ。ライナー。後にしよう。その話は後・・・今はいいじゃないか」

ライナー「いや、しかしベルトルト。研介が俺たちと来てくれれば俺たちはもう壁を壊したりしなくても済むんだぞ」

ベルトルト「ラ、ライナー!」

古美門「おお、かわいそうに。無防備な状態で巨人に襲われたからなあ。しかも飲まず食わずで徹夜だろ?ライナーは疲れているんだ。ベルトルト、君が彼の話を聞いてあげたまえ。たぶん寝ててもずっと話し続けるぞ。いいか、ライナー。僕に妄言めいたことを二度と話しかけてくるんじゃないぞ。僕はカウンセラーじゃないからな。君らもかわいそうだが君らに付き合わされる僕はもっと可哀想だぞ。何度言ってもわからないようだから今まとめて言うぞ。ライナー、君は僕に話しかけるな。黙っていろ。口を開けるな」

ライナー「妄言?妄言だって?」

ベルトルト「・・・僕だってカウンセラーじゃないよ・・・」

ライナー「俺は・・・なにかおかしなことを研介に言ったか?」

ベルトルト「う、うん。おかしなことだよ。ライナー、研介の言うとおり君は疲れてるんだよ」


ライナー「・・・・・・」

ベルトルト「・・・ライナー」

ライナー「あ、ああ・・・」

ライナー「そうだな。俺は、何を考えているんだ・・・。研介に正体を明かして一緒に来いだなんて、ははは・・・俺は本当におかしくなっちまったのか?」

ベルトルト「ライナー、も、もういいよ。い、行こう」

古美門「元からおかしかったかもしれないから安心しろ。ベルトルト、君はライナーをなんとかしたまえ」

ライナー「きっと・・・ここに長く居すぎてしまったんだな。バカなやつらに囲まれて・・・3年も暮らしたせいだ」

古美門「それはこちらの台詞だよ。バカに囲まれてたのは僕だ!」

ライナー「俺たちはガキで・・・何一つ知らなかったんだよ。こんな奴らがいるなんて知らずにいれば・・・俺は・・・こんな半端なクソ野郎にならずにすんだのに・・・」

ライナー「もう俺には・・・何が正しいことなのかわからん・・・」

ライナー「ただ・・・俺がすべきことは自分のした行いや選択した結果に対し、戦士として」

ライナー「最後まで責任を果たすことだ」

ビキビキビキ

古美門「おいおい、煙たいな!ゴホゴホ!目にしみるうう!!」

ライナー(そんな煙じゃないはずだが・・・)

ベルトルト「ライナー・・・やるんだな!?今・・・!ここで!」

ライナー「ああ!!勝負は今!!ここで決める!!」

古美門「うわあああああ!!!襲われる!!助けて!!ぺトラさん!!オルオさーーーーーーーーーん!!!」

オルオ「おおおおお!!」

ぺトラ「研介から離れて!!」

ライナー「!!」

ベルトルト「っ!?」

ザシュッ

ライナー「うッ・・・あ!!」

ボトッ

古美門「うわああああああああ!!ライナーの腕が落ちたあああ!!なんてことするんですか!オルオさん!!あっ、腰が抜けた!立てない!ぺトラさんの抱っこが無いと立てない!!」

オルオ「うるせぇ!下がってろ!(ちっ、ガードしやがったか!)」

ベルトルト「あぁ?あああ」

ビュッビュビュビュッ

ぺトラ(くそっ!避けられた!首は深く切れたけど・・・)

ベルトルト「うああああああああああああああああああああああ!!!!」

エルド「研介!!逃げろ!!」

グンタ「こっちだ!」

古美門「腰が抜けてるって言ってるでしょうがあああ!」

ライナー「ベルトルト!!」

ベルトルト「!!(ライナー!!)」

カッ

エルド「ぐっ!!」

オルオ「ぐあああああ!」

ぺトラ「きゃああああ!!」

グンタ「くそっ!!なんて衝撃だ!!近付けないっ!」

半沢「・・・あれは・・・!!」

アルミン「超大型巨人と・・・鎧の巨人だ・・・!!(やっぱりあの2人は・・・!!)」

半沢「あれは、ライナーと、ベルトルトなのか?そんな・・・信じられん」

アルミン「そ、それより、直樹!研介だ!女型は研介を狙っていたんだ!ライナーたちから研介を遠ざけないと・・・!」

***********************

・・・と

僕が言葉を発した時にはすでに、鎧の巨人は気を失った研介を手に、壁外に向かってウォール・ローゼを滑り降りていて、超大型巨人もユミルと、立体機動装置を奪う為の兵士を口に含んだ後、すぐに壁外へその身を躍らせ、落下の衝撃と同時にその体を一気に蒸発させた。

その熱のと風圧で、鎧の巨人を追いかけて壁の下にいた僕らは一時再起不能になるダメージを受けた。

熱風が少し収まると同時に超大型巨人の残骸からユミルを抱えたベルトルトが現われ・・・研介を握った鎧の巨人の背に乗り去っていったんだ・・・。

それから5時間余りが経過して―

僕らは、調査兵団は研介奪還の為鎧の巨人たちを追いかけていた―

************************

ベルトルト「やっとここまで来たんだ!!研介を連れて、帰る!!」

ベルトルト「故郷に帰るんだ!!」

古美門「スヤスヤ・・・うーん、アニ・・・そんな、僕は君のそのクールなまなざしが好みだ・・・ムフフ」

ベルトルト(こいつ・・・本当は起きてるんじゃないのかな・・・。ムカムカするよ、本当に)

アルミン「ベルトルト!」

シュタッ

ベルトルト(アルミン!!)

アルミン「・・・・・・(研介、怪我はなさそうだ。よかった)」

ベルトルト(アルミンは直樹と研介と幼馴染で仲が良かったな。直樹と研介・・・似てないようで、二人は似てる。勝ちへの執念、あらゆる手を尽くし勝ちにくる、そんなやつらだ。アルミン・・・彼らと一緒にいたアルミンも・・・)

ベルトルト「・・・・・・(だけど、切りかかってくるなら僕は負けない!)」

アルミン(僕だと、ベルトルトとやりあっても無駄死にするだけだ。この局面を変えるには・・・)

アルミン(何を・・・何を捨てればいい?僕の命と・・・他に何を捨てれば変えられる!?)

アルミン(他に何を・・・)

ドクン

古美門『草の者を使ったんだよ』

ドクン

半沢『他人の弱みをネタに何人か協力者を得ていたんだな』

アルミン(弱み・・・。研介は訓練兵達の弱みを握って、それを利用していた・・・)

アルミン(ベルトルトの弱み・・・)

アルミン(でも、僕に、僕にそんな・・・研介みたいなことが・・・)

半沢『俺は、アルミンもやろうと思えばあいつのやってることできると思うけどな』

アルミン(直樹は昔そう僕に言った。僕には研介のようなことができると)

アルミン「いいの?二人とも・・・仲間を置き去りにしたまま故郷に帰って・・・」

ベルトルト「・・・・・・!?」

古美門「ムニャ、もっと蹴ってくれたまえ・・・」

鎧の巨人「!!」

古美門『ハーハッハッハ!アルミンが半沢化したぞ!やめたまえ!こんな暑苦しいのが二人もいたらかなわんからな!』

アルミン(直樹の・・・相手が誰であろうが倍返ししてやるというところ)

アルミン「アニを置いて行くの?」

アルミン(僕は・・・ずっと、二人が僕に合わせてくれているんだと思ってたけど)

アルミン「アニなら今・・・極北のユトピア区の地下深くで―」

アルミン(そうじゃなかったんだ)

アルミン「拷問を受けてるよ」

********************

僕らは―

全然違っていたようで、同じだったんだ。

僕たち三人は―

最初から、似ていたから一緒に居たんだ。


[完]

力尽きてしまって最後駆け足になったが、以上で終わりです。
保守ありがとう。安価焦ったけど楽しかったよ。

力尽きてしまって最後駆け足になったが、以上で終わりです。
保守ありがとう。安価焦ったけど楽しかったよ。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2023年06月15日 (木) 15:53:52   ID: S:5NJmh5

面白すぎる 続きも書いて欲しい

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