男「おっ、幼馴染さん」(114)

幼馴染「何かしら」

男「さっき先生がこのプリント渡しておいてって…」

幼馴染「あら、ありがとう」

男「あっ、あの…」

幼馴染「他に何か用があるのかしら?」

男「いっ、いやなんでもないよ…」

幼馴染「そう」

男「…」

幼馴染「よかったら、家にこない?」

男「エースコン

誤爆

幼馴染「男君」

男「なっ、何?」

幼馴染「放課後暇かしら?」

男「うん!週番の仕事があるけどそれが終わったら暇だよ!」

幼馴染「あら週番なの。それなら先生にも会うわね」

男「…?」

幼馴染「さっきのプリント先生に渡してきてくれないかしら。委員会で今から忙しいから」

男「うん…」

プリキュアの時間クル!
落としてください

幼馴染「……」

男「あ、あのさ」

幼馴染「何?忙しいっていったでしょ」

男「高校に入ってから、変わったよね」

幼馴染「言いたいことはそれだけ?」

男「いや、その…」

幼馴染「…早く行きなさいよ」

男「ん……ごめん」

―ガラッ

幼馴染「……」

幼馴染(変わった、か)

幼馴染(変わるしかなかった、の間違いだけどね――そんなことはどうでもいい)

幼馴染(私も早く行こう)

男「失礼します」

先生「おー、お前か」

男「プリントを預かってきました」

先生「ああ、さっきのか」

先生「相変わらず仕事が早いな」

男「数字ばっかりでしたが何のプリントですか?」

先生「今季会計の見積もりと、生徒への統計の結果だ、まぁお前にはわからんだろう」

男「はい、さっぱりです」

先生「普通こういうプリントは先生が持って行くんだけどな、お前とあいつの仲だから預けても問題ないと思ったんだ」

男「あいつは……唯の幼馴染ですよ」

先生「そうだったな、すまないすまない」

男「では失礼します」

先生「人間変わるものとは言うが、お前も変わったな」

先生「いや……言うまい、お疲れさん」

男「はい、失礼しました」

男「さて、帰ろうかな」

友「よう、まだ居たのか?」

男「先生に頼みごとされちゃって」

友「……まだやってるのか?いい子ちゃんゴッコ」

男「ごっこじゃないよ」

友「今更何を言う気もないけどよー、お前本当にそれでいいの?」

男「何の事?」

友「はぁ……せめてよー、俺の前では普通にしてくれねーかな?調子狂うんだわ」

男「これが普通だけど」

友「これでも――かっ!」

―パシッ

男「……急に殴ろうとするのはよくないよ」

友「こっちは変わらずいい反応してるな、それにその眼」

友「とてもいい子ちゃんには見えねえけどなあ?」

男「……」

友「ま!何があったのかは知らねーけどよ」

友「今のお前は腐ってる」

男「どういう意味?」

友「そのまんまだよ、生きてる感じがしねーっていうか、ゾンビみたいなもん?」

男「そうかもね、僕自身もよくわからないんだ」

友「うわああああ、僕だってよ!僕!やめてくれ悪寒が!」

男「流石にこれはまずいかな?」

友「いや、素で気持ち悪い」

男「そっか…」

友「前みたいにとは言わないけど、少しくらい普通の高校生(笑)っぽくてもいいんじゃね」

男「普通ってなんだろうね」

友「それ俺に聞くぅ?!」

男「ごめん、聞く相手間違えたよ」

友「それはそれでショックだな」

友「んじゃ帰るか!」

男「うん」

友「うあぁぁぁぁ、一言一言が気持ち悪い」

男「あはは、少ししたら慣れるよ、きっと」

友「ぜってー慣れねぇ!これだけは無理だ」

男「でも…こんな風になっても、君は僕の隣を歩いてくれるんだね」

友「ま、付き合いなげーしな」

友「お前のことよく知ってるし!そんな事しなくても悪い奴じゃねーってことも!」

男「ありがとう」

友「おうよ!お前にならハジメテあげちゃってもいいぜ!もうないけど」

男「生徒会室の横だから静かにした方がいいよ」

友「余裕よゆ――ブヘッ」

会長「煩いぞ」

男「すみません」

会長「……またお前達か」

友「相変わらずウザさ100%っすね、会長サン」

会長「人間的にウザいお前よりはマシだ」

友「あんだと?」

男「やめなよ」

友「チッ…」

男「御迷惑をお掛けしました、失礼します」

友「じゃーな」

会長「ふん……」



会長(狂犬が……その羊の皮、俺が剥がしてやる)

幼馴染「何かあったんですか?」

会長「例の二人だ」

幼馴染「……」

会長「どういう風の吹き回しかは知らんが、最近の狂犬は大人しい」

幼馴染「そうですね」

会長「お前は何も知らないのか?」

幼馴染「はい」

会長「ふむ、幼馴染だから何か掴んでいると思ったが、そうでもなかったか」

幼馴染「私達は『唯の』幼馴染ですから」

会長「なるほど、それはすまなかった」

幼馴染「先程の話の続きですが、この会計について……」

幼馴染(唯の…、か)

―私は本当にそれでいいのだろうか?

――



友「にしてもよー」

男「なに?」

友「さっきもチラッと見えたけどやっぱりラブラブなんだろーなー」

男「……」

友「お前としてはどうなのよ?そこらへん」

男「いや…あいつはあいつだから、僕が干渉するところじゃないよ」

友「生徒会長が交際!なんて話を聞きまくるからよー」

男「校内でも色んな人が話してるよね」

友「あいつは男子から人気あるし、会長サンは女子から人気だし」

友「幼馴染のお前としましては?どうなのかなーと思って」

男「どうもしないよ、特に」

男「ほんとうに、何も……」

友「……」

友「……ゲーセンよっていかね?」

男「あ、えっと…」

友「いいから来いって!たまには息抜き毒抜きも必要だろ!」

男「う、うん」

友「それと――お前が何考えるのかは知らんけど、俺でいいなら話せよ?」

男「ありがとう…」

友「ま、答えになるかはわからねーけどな!」

友「それじゃ行くべ!」



友「やべ、こんな時間」

男「ほんとだ」

友「早く帰らねーと寮閉められちまう」

男「寮長さん怖いからね」

友「んじゃまた明日な!」

男「うん、じゃーね」

男(ちょっと遅くなったな)

男(早く帰ろうっと)

男(ん、あれは幼馴染?)

男(一人?いや男と一緒?)

男(会長サンではないな?誰だ?)


幼馴染「結構です、やめて下さい」

 「そんなつれねーこと言わないでさー、な?ちょっと遊ぼうって言ってるだけじゃん」

男(ナンパか…)

男「ねえ」

 「あんだあ?」

幼馴染「!」

男「嫌がってるじゃん、離してあげなよ」

 「うるせーよクソガキが、てめぇには関係ねーだろうがよ」

男「ナンパならその子じゃなくても他にも一杯いるでしょ?」

 「俺はこいつがいーんだよ、散れよシッシッ、ほら姉ちゃん行こうぜ!」

幼馴染「やめて下さい!」

男「……」

 「んだぁてめぇ…どけよ」

男「いやですって言ったら?」

 「ぶっとばすぞコラァ…あ?」

男「どうぞ御自由に」

 「んな死ねや」

―ガッ

男「殴りましたね」

 「てめぇがどかねーからだろうが!オラぁ!」

男「先に殴ったのはあなたですよね」

 「れがどうかしたかああああ」

男(こういう直線的な奴はっと)

 「はっ?」

男「足元がお留守ですよ」

―パシュッ

 「うおっ――――うぁぁぁ…膝っ!膝があぁぁぁ!」

男「あちゃ、膝から落ちちゃった」

男「ほら、帰るよ」

幼馴染「……なんで」

男「ん?」

会長「そこで何をしている!」

幼馴染「!」

 「うぁぁぁぁ…うぁぁぁぁ……」

会長「これはどういうことだ?」

幼馴染「……」

男「僕が、やりました」

会長「やっと本性を現したか、この狂犬が!」

幼馴染「待ってください、これには」

会長「五月蠅い、被害者が居て加害者が居る、それ以上何があるんだ?」

男「すみません」

会長「救急車を呼べ、被害者を病院に運ぶぞ」

会長「それと、貴様」

男「…はい」

会長「この件は学校に報告させてもらう、楽しみにしておくんだな」

男「……」


     『下記の者を3日間の停学処分とする』

     3年○組   ○○ ○○

     事由  昨晩商店街にて乱闘騒ぎを起こし
          通行人に全治1ヶ月の重傷を負わせた為

―――――――――――――――――――――――――

幼馴染(どうしよう……)

幼馴染(会長には伝えたはずなのに……)

幼馴染(なんでこんなことに……)

幼馴染(どうして……)

男(停学かー…久し振りだ)

男(前は1年前だったかな)

男(そういえば、前はどうして停学になったんだっけか?)

男(まぁいいや……学校行かなくてもいいし二度寝しよっと)

男(……)

男(…すぅ)

――



その日は雨が降っていた

いつも通りの場所に少し早く着いて彼女を待っている

付き合い始めてから二週間が経ったが、特に進展も無いままだった

男(普通の恋人ってどんな感じにしてるんだろうな)

そんなことを考えてみるが、これといったものはない

男(まぁ今はこのまんまでもいいかな)

男(ん、来たかな)

男「おーい」

そんな俺の声が聞こえたのか聞えなかったのか、彼女は俺とは反対方向へ歩き出す

男「あれ…?」

彼女の歩み寄った先に居たのは自分の知らない男、そして重なる二人の唇

血の気が引いていくのを感じると同時に、俺は走り出していた

そこから先の記憶は客観的なもので、彼女と手を繋いで歩き出した男を殴り倒し

顔の原型が無くなるほどに殴り続けていた

彼女に頬を叩かれて気付いた時、歩道に横たわっている男の顔は血塗れだった

女「最低……最低……」

大粒の涙を零しながら、それだけを呟く彼女の姿を見た時

遠い世界の住人とも思えるくらいの距離を感じた

―その日を境に、俺は壊れ始めた

毎日といっても過言ではない乱闘騒ぎ

校内では狂犬と罵られ、警察にも何度か世話になり

その積み重ねがまずかったのだろう、仕舞には1ヶ月の停学処分を言い渡されていた

友「よーっす!」

男「んだよ、またフケてきたのか」

友「いやー五月病ってやつだなこれ、面倒で面倒で体が動かねーよ」

男「んなこと言ってたら俺は常時五月病じゃねーか」

友「その通りだ」

男「うははははは」

停学処分と言われても自由気儘に、やりたい事だけをしていた

友「お前停学いつまでだっけ?」

男「さーな?学校が来いって言うまで行かなくていいんじゃね」

友「それもそうだな」

男「ま、面倒だし丁度いいわ」

幼馴染と同じくらい付き合いのあったこいつは俺の事が心配だったのか、本当に面倒だったのか

よく俺の所に時間を潰しに来ていた

友「あー、やべえ、そろそろあいつ来るんじゃね?」

男「居留守しようぜ」

友「それ面白いな」

―ピンポーン

友「ほら噂をすれば」

男「停学になってからほぼ毎日来るとか、あいつは暇人か!」

友「お前の事が心配なんだよ、ひゅー!お熱いね!」

男「やめろよ…俺とあいつはそんなんじゃねぇ」

友「どうだろうな?傍から見てたらそうとしか思えないけどな!」

男「うっせぇ」

友「まぁ、夫婦で仲良くやってくれよ」

 「誰と誰が夫婦だって?」

友「そりゃこいつと、おま――え?」

幼馴染「へぇ、面白い事いうね」

男「おう、どこから入って来たんだよ」

幼馴染「玄関、鍵開けっ放しだったよ」

男「勝手に入って来たら不法侵入だぞ、っと」

幼馴染「いつもこんな下らない事話してるの?」

男「いや、今のはこいつが勝手に言ってただけだ」

幼馴染「口縫い付けちゃおうか、ね?」

友「いや、やめてください、ごめんなさいマジもう言いませんから」

幼馴染「よしよし!」

男「んで何しに来たんだよ」

幼馴染「停学になってる人の面倒みるのも委員会のお仕事なので!」

男「ああそういえば入ってたな、俺を停学処分にする為に存在してるところに」

幼馴染「これでも軽くなるように頑張ってるんだよ!相手方にも問題があるとか調べたりしてるし…」

友「捏造の間違いじ――おピゃっ!」

幼馴染「はい、そこ不審なこと言わないの、私はそんなことしないから」

幼馴染は基本的に不真面目な俺達二人の面倒を見ていたとも言える

少しだけ煩く感じる事もあったが、そんな心遣いが嬉しかった



――あの日までは

 「お勤めご苦労さんっすー!」

男「苦しゅうない!」

 「また今回は派手にやらかしたなー」

男「いつもこんなもんだろー」

友「ちーっす!」

男「おう、今日は早いんだな」

友「愛しのマイダーリンが来ると聞いちゃ俺も早起きするしかないだろ」

男「おまえなら来てくれると思ったぜ……」

友「ああっ!ダーリン!」

幼馴染「はーいそこ、朝から気持ち悪い事しないの」

男「なんだいたのか」

幼馴染「停学明けはまず職員室でしょ、ほらさっさと行ってくる」

男「へいへい……」

友「それじゃまたあとでな!」

男「ちーっす!!1」

先生「ちーっすじゃねえだろコラぁ!失礼しますだろーが!」

男「まぁまぁかたい事いいなさんなって」

先生「ったく、少しは反省したのか?」

男「いえ、まったく!」

先生「ったくよー、お前ももう少し大人になれよ」

男「朝っぱらから職員室でビール飲もうとしてる先生に言われたくないっすね」

先生「これは自宅に持って帰って飲むんだ」

男「非常階段で飲むなら呼んでくださいよ、俺も付き合いますから!」

先生「だーれがてめえなんか呼ぶか!」

男「つれねぇなあ」

先生「委員会の子もお前の事心配してたんだぞ、あんまり迷惑かけるなよ」

男「誰?」

先生「ほら、お前ん家の近くに住んでるとかいう……」

男(……幼馴染か)

男「失礼しゃーしたー!」

男「ま、いつも通りだわな」

幼馴染「ねぇ」

男「さってと、授業フケますかね」

幼馴染「どこいくの?」

男「コンビニでも行ってこようかと」

幼馴染「私も行っていい?」

男「いい――って!お前何時からいた!」

幼馴染「あんたが職員室出た時から」

男「何か言えよ!」

幼馴染「言ったよ!」

男「ったく、しゃーねーなー、何買ってきたらいいんだよ?」

幼馴染「ちょこ」

男「へいりょーかい」

―ガシッ

男「あ?」

 「どこへ行く?」

男「てめぇに言う必要ねーだろ」

幼馴染(ちょ、ちょっと!)

男(あんだよ)

幼馴染(この人副会長だよ!)

男(だからなんだよ)

幼馴染(流石に停学明けでこの人に問題ばれたらまずいよ!)

男(知るか)

副会長「君もこんな屑と一緒に行動するのはやめろ、君まで低能に見られてしまうぞ」

幼馴染「すみません……」


男「――おい」

副会長「なんだ」

男「俺の事をどうこう言うのはかまわねーけどな、こいつの事一緒くたにすんじゃねーよ」

副会長「屑と一緒に行動するような奴は屑と相場が決まっている、私はそれを注意したまでだ」

幼馴染「でも、でもっ!こいつにもいいところはあるんです!今はちょっと道外してるだけで……」

副会長「今?ちょっと?低能がうつったのか?道を外した時点でゴミだ、それくらい理解しろ」

――グッ!

幼馴染「だめ!やめて!」

男「これ以上こいつの事悪く言うな、お前の綺麗面凹ませるぞ」

副会長「やはり暴力か、これだから屑は困る!もっと人間として立派に生きることができないのか!この屑が!」

幼馴染「すみません、こいつにはよく言って聞かせるので……」

幼馴染「あんたも離しなさい!」

男「チッ…」

副会長「ふん…、今日の所は見逃してやる、だがな…」

副会長「屑と一緒に居る人間もまた屑として見られる、それをよく覚えておくといい」

男「まだ言うかてめぇ…」

幼馴染「だめ、今は抑えて……お願い」

副会長「悔しかったらまともな人間になってみろ!ゴミ虫が!」

副会長「それではまた後日、生徒指導室で会おうか」

副会長「はははは」

幼馴染「よく抑えた!偉い偉い!ぱちぱちぱち!」

男「あーまじ気分わりぃ」

幼馴染「でも良かった、また停学になったらどうしようかと……」

男「そん時は自宅警備でもしてるさ」

幼馴染「そんなこと言わないでよ、これでも一応心配してるんだから……」

男「なんでお前が湿っぽくなってるんだよ」

幼馴染「だってーぇ…」

男「あ゛ー、わかったわかった、学校では問題おこさねー様に頑張るから」

幼馴染「じゃあ私は見守ってる!ずっと傍にいるよ!」

男「なんだその気持ち悪いのは」

幼馴染「あ、授業始まるから行くね!それじゃまた後で!」

男(ずっと傍にいる、か)

――それから『暫く』の間、俺は問題を起こさなかった

友「今日はどうするよ?」

男「ああ、あいつと待ち合わせてる」

友「最近熱いっすなあ、俺の入る隙間ゼロじゃねーっすか」

男「ちげーよ、行動を監視するとかでよく一緒にいるだけだ」

友「それはその、裏側に事情とか私情があってだな」

男「まぁそんなわけで先行くわ」

友「んじゃまたなー」

男「おう、すまねーな」

男(……30分か、少し長引いてるのかもな)

男(まぁ委員会だからそういう時もよくある、か)

男(待ちますかねぇ)

 「ねぇねぇ聞いた聞いた?」

 「えっ、なになにー?」

 「隣のクラスの子が言ってたんだけどー、副会長さんと補佐の人、できてるらしいよー!」

 「え、マジでー!あの綺麗な人でしょ?お似合いだよねー!」

 「生徒会室でキスしてるの見たとかいう話もあるらしいよ!」

 「きゃっ!大胆!」


頭の中が真っ白になっていく、何も考えられない

あいつと副会長が?何故?

俺が屑だから離れて行ってしまったのか

いや、あいつは一緒に居てくれると言っていた

ついに愛想尽かされてしまったのか、副会長の事が好きだったのか?

男(やめろ、考えるな、考えちゃいけない)

男(俺は今まで通りにしていればいい、それが俺にとってもあいつにとっても最善)

男(俺がもっとまともな人間になれば、こんな卑屈な考え方をしなくてもいいはずだ……)

走り出していた、あてもなく

何時の間にか降り出した雨に打たれながら、一人で

>>18の一文

男「高校に入ってから、変わったよね」

男「進級してから、変わったよね」

ということにしてくだしあ

時系列がおかしくなっちまいますだ

それから俺は幼馴染を避けるようになった

言うまでもないが、副会長とできているという噂によるものが大きい

俺のような人間が近くに居てはいけない、離れていなければ…

今まで毎日のように会っていたのが嘘のように、大きな溝が出来た瞬間だった

男(これでよかったんだ、これで……)

お互いに話す事も無くなり、自然と距離は離れていく

その後、進級した幼馴染は副会長に、副会長は会長になる

俺と幼馴染とは同じクラスになったものの、会話する事もない単なるクラスメイトの一員だった

やはり、美男美女のカップルで委員会のツートップというだけで新入生や学校中の生徒からの注目度も高い

周りの発言が悔しかった

幼馴染を失って気付いたことは、あいつが俺にとって大切な存在だったという事

俺に残ったのは唯一つだけ、成長した自分を見て欲しいという謂わば願望のようなもの

――その日、俺は変わることを決心した

それが友の言う『いい子ちゃんゴッコ』始まりだった

ごめん、書いといてあれだけど最高に眠い

――



男(…何時だろう)

男(大分ゆっくり寝た気がする)

男(って!外暗い)

男(これは眠れそうにないな……)

男(ん、玄関に人影?)

男(幼馴染?何してるんだろう?)

男(停学の事で何か言いに来たのかな……)

男(また迷惑かけちゃったな……)

男(忙しいだろうし、早く帰してあげないと)

幼馴染「……」

男「どうしたの?」

幼馴染「まず一つ言わせて」

男「なに?」

幼馴染「ごめんっ!!」

男「えっ?」

幼馴染「昨日のは、確かに相手に怪我させちゃったけど、相手も殴ってきてたし正当防衛の上で起きた事だから説明のしようはあったと思って」

男「仕方ないと思うよ、結果的に相手も重傷になっちゃったし」

幼馴染「でもっ!それじゃあんただけが悪いみたいじゃない!」

男「一度腐ったものは、元通りにならないってことなのかな」

男「今更まともな人間になろうと努力したって、だめってことなんだろうね」

幼馴染「……」

男「迷惑かけてごめんね、あと態々ありがとう、遅くならない内に帰った方がいいよ」

男「僕と一緒だと君の印象も悪くなるから……」

幼馴染「…何それ?」

男「屑と一緒だと、屑になっちゃ――」

幼馴染「何それ!馬鹿じゃないの!」

男「!」

幼馴染「散々心配させといて…一杯考えさせておいて…、まともに口もきいてくれなくて…」

幼馴染「挙句それ?なによ!なんなのよ!」

男「ちょ、ちょっと…」

幼馴染「こっちは会長とできてるって噂までされて!でもあんたは私から逃げるようにしてたし……」

男「噂までされてって……」

幼馴染「もしかして…あんたまで信じてたわけ?」

男「……」

幼馴染「会長とは付き合ってないよ……」

男「そっか……だけど」

男「進級してから僕の事避けるようにしてたよね…」

幼馴染「嫌がることしたくないから…、私が近くにいると嫌なのかと思って……」

幼馴染「だから私も変わろうと思った、前みたいじゃなくて、唯の幼馴染であるようになろうと……」

男「……」

幼馴染「でも進級してからずっと、変わっていくの見てたよ」

幼馴染「言葉遣いも直して、ちょっと行き過ぎて気持ち悪いけど」

男「やっぱり?」

幼馴染「一時期に比べるとそれくらいの変化があったってこと!」

幼馴染「あんだけ嫌がってた学校行事への参加もちゃんとするし、先生の言う事もちゃんと聞く、授業にも出る」

男「それだけ聞くと普通の学生のような気がしてきた」

幼馴染「なんでさ…」

男「え?」

幼馴染「なんで私から離れて行っちゃおうと思ったのよ……」

幼馴染「なんで私が悲しい事に気付かなかったのよ……」

幼馴染「寂しかったよ、辛かったよ……」

男「ごめんね…」

幼馴染「こんなに好きなのにどうして伝わらないのよ…」

男「は、え?」

幼馴染「うるせー!好きで悪いかこのやろー!私はあんたの事が好きなんだよ!ばーかばーか!」

男「全然雰囲気ないなあ」

幼馴染「…あんたは、どうなのよ」

男「どう応えたらいいの?」

幼馴染「聞くなばかああああああ!」

男「うん、ごめんね」

男「言う必要もないくらい、そう何にも例えられないくらい」


――大好きだよ

停学明け後日

怪我をさせた相手側からの謝罪もあり、俺の行動は行き過ぎたとはいえ正当な理由があったということが明らかになった

相手が謝罪に来た理由は、幼馴染による根回しが大きかったと言える

病院へのお見舞いを欠かさずに行っていたらしい、どんな説得があったのかは聞かないでおこう

会長の目は光っているものの、前のようなゴミを見るような目ではなくなってきた

「その程度で満足するなチンピラが!」とのこと

屑からチンピラに昇格したのは大きな進歩なのかもしれない

でも、ここで立ち止まってはいけない

もっと先に進めるように成長しなくてはいけない

繋がることのできた大切な人を守るために

――数ヶ月後、街は白く覆われていた

幼馴染「ね、この後どうするの?」

男「そうだなあ、晩御飯食べて寝るかなあ」

幼馴染「うわあ、私の事視野に入れてないスケジュール」

男「添い寝でもしてくれるの?」

幼馴染「ば、ばか!そういうのじゃなくて……」

男「あはは、冗談だよ」

幼馴染「せっかくクリスマスなんだし…なんかこう」

男「じゃあ先に渡しておくよ、これ」

幼馴染「なあにこれ?」

男「結婚指輪」

幼馴染「はあああああ!?」

男「までの繋ぎ」

幼馴染「なんだびっくりしたあ……繋ぎって事は結婚するってこと?」

男「うん、なんかちょっと照れ臭いな……」

幼馴染「ちょ、ちょっと待って!」

男「おっ、幼馴染さん」

幼馴染「は!はうい!」

男「結婚して下さい」

幼馴染「………はぃ」



そして、二人は静かに唇を重ねた

おわり










くそ、いつもならメインヒロイン死なせるのに!!!!!1
ハッピーエンドにしちまった

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom