姉「あなたの娘を連れてきたわ!」 娘「……」 男「……」(504)


男「これは……どういうことでござるか」

娘「……」

姉「最近はやってるんでしょ!?こういうの!」

男「こ、こういうのってどういうのでござるか姉上」

姉「一人暮らしの冴えない男の家に、突然娘と名乗る女の子が!みたいな!」

男「ああ、アニメとかのあれでござるか……」

姉「そう!さすがは男!詳しいわね!」

娘「……キモい」ボソッ


男「お、お主……拙者の娘なのでござるか?」

娘「……(ブンブンブンブン!)」

男「全力で首をふられてるのでござるが」

姉「な、何いってるの娘ちゃん!さっき段取り話したでしょ!」ボソボソ

娘「こんなに気持ち悪い喋り方するとは聞いてない……」ボソボソ

姉「ちょっ、ええー?困るわよぉーそんなこと言われてもぉー」

姉「……チェンジ」ボソッ

男「……」

男「あの……姉上。ちょっとこっちいいでござるか?」チョイチョイ

姉「え?あ、ああうん……どしたの?」

男「どこで拾ってきたんでござるかあの子……元あった場所に戻してきて欲しいんでござるが」

姉「な、なんてこと言うの!?女の子を犬か猫みたいに!この調教願望!」

男「ええー……」

娘「……ねえ」

男 姉「「……え?」」

娘「何でそんな気持ち悪い喋り方なの」

男「ド直球にもほどがあるでござるよ」

姉「いーい娘ちゃん。このおじちゃんはねー?き、も、お、たって言う人種なのよ!」

娘「きも……お?」

男「変な言葉を教えないで下され姉上」

姉「深夜にやってる女の子がいっぱい出てくるアニメを見てニヤニヤするのが仕事なの!」

娘「……キモい」

姉「そうでしょうそうでしょう!」

男「もう二人とも帰ってほしいのでござるが……」

姉「言われなくとも私は帰るわ!ニートの男と違って暇じゃないんだもんっ!」

男「えっ……ほんとにこの子は置いていくんでござるか」

姉「そうよ!詳しい事情はあとで話すわ!娘ちゃんのことお願いね!
  あなたはキモオタだけど良識はあると信じてる!手だしたら殺すわよ!」

娘「……」

男「姉上……まさかこの子、姉上の隠し子──」

姉「馬鹿言わないでよ!私は処女よ!!」

バタン!

男「ええー……」

娘「……」ジーー

男「……」ゴクリ

娘「……」ジーー

男「えーっと……む、娘ちゃん……だったでござるな?」

娘「……」コクン

男「い、今……いくつでござるか?」

娘「じゅうにさい」

男「(幼稚園の年長さんぐらいだと思ってたでござる……)」

男「姉上……その、さっきのお姉さんとはどういった関係なんでござるか?」

娘「……ときどき、うちに来てた。おねえさんて呼ばないとおこるおばさん」

男「うわあ。それだけじゃちと情報が足りないでござるな……」

男「その……どうしてこの家に連れてこられたのかはわかるでござるか?」

娘「……」

男「?」

娘「……っ」ウルッ

男「えっ、ちょ」

娘「お……お……おかあさんが……いなくなった……」

男「い、いなくなった!?って……じょ、蒸発ってことでござるか?」

娘「……」ブンブンブン

娘「仕事中の……事故で……乗ってた船が……テンプクして」

男「……あー」

娘「ゆくえ、ふめい……だって」

男「……」

男「それはつらいことを聞いてしまって……すまなかったでござる……」

娘「……」ブンブン

娘「おかあさん……友達いなかったから。おば……おねえさんが引き取り人?になった」

男「なるほど……」

娘「そしたらおば……おねえさんが」

男「本人がいないときはおばさんでいいでござるよ」

娘「……おばさんが。頼りになる人のところに連れていってあげる……だから心配いらない、って」

男「それがココだった……と?」

娘「……」コクン

娘「しょうじきいって……あてがはずれた」

男「正直な子でござるなー」

男「なるほど、事情はつかめたでござる……
  こんな大事なことを女の子に説明させる姉上にはあとで文句を言うとして」

娘「?」

男「ぶっちゃけた話をすると……あのおばさんも全然知り合いいないんでござるよ。
  拙者たちと話すときは普通でござるが、知らない人と話すのがとにかく苦手で……」

娘「……わたしがはじめて会った時もすごく挙動不信だった。かんぜんにふしんしゃだった」

男「だからまー……なんというか……拙者が頼れるというよりは
  あの人には拙者くらいしかまともに頼れる人がいないというか……」

娘「……なんてこった」

娘「もっと……パパーとか、ダイキチーとか、おいたんーみたいなノリをそうぞうしてた」

男「あ、あの……娘ちゃん?何を言ってるのでござるか?」

娘「きもおた……年いくつ?」

男「きも……さ、30でござるが」

娘「……まじ?」

男「な、なんでござるか?」

娘「……へやに女の子の人形がいっぱいあるのに、30?」

男「フィギュアは大人のたしなみでござるからな!コポォ」

娘「……」

姉30以上で処女かよ

男「まあ、ちょっと大きめの可愛いフィギュアが増えたと思えばすむ話でござる
  狭い我が城ではござるが、こんなとこで良ければ歓迎するでござるよ!」

娘「いきなりフィギュアにたとえてくるしんけいがすごい」

娘「しかし……せにはらはかえられない。しばらくお世話になります。よろしくきもおた」

男「うむ、よろしくでござるよ!あと、できれば拙者のことはパパーと……」

娘「ところできもおた。さっそくだけどはなしがある。ちょっとここ正座して」

男「はい。なんでしょう」スッ

娘「きもおたのこと、きもおたきもおたと言いながら
  じつはわたしもアニメやまんがは軽くたしなんでいる」

男「ほほう」

娘「だからこのてんかいがなにをいみしているのかなんとなくわかる」

男「ふむふむ」

娘「ようするにこういうこと。……来たばっかりのころはツンツンしていたむすめ」

男「ツンツンというよりは冷ややかに拒絶されてる感じでござるが」

娘「さまざまなこんなんを協力してのりこえることでしだいにはぐくまれるきずな」

男「あるある」

娘「そしてさいしゅうてきにはデレるわたし」

男「自分でデレるとか言った」

娘「パパぁ、パパぁ!いっしょにおふろはいろうよ!あらいっこしよー!
  え!?いいじゃんべつにーいまはおやこなんだしー!えへへ!」

男「つづきはよ」

娘「パパ……わたしいいよ。パパになら……
  わたしのすべてを……パパにもらってほしいの」

男「支援」

娘「ねる」

男「ちょっ、おいふざけんな!睡眠代行はよ!続きオナシャス!!」

娘「おちついて」

男「……ハッ!いかんいかん」

娘「まあだいたいこんなかんじになるのがきもおたの理想のはず」

男「まあ、そうなるんならうれしいとは思うでござるが、理想とまでは……」

娘「でもげんじつはそんなにあまくないっ!」ビシッ

男「!?」ビクッ

娘「ここでむすめからのしょーげきはっぴょー」

男「おお?」

娘「わたしには彼氏がいるのだ。きもおたよ」

男「へ、へえ」

娘「……」

男「……?」

娘「へえ……って。そ、それだけ?」

男「ま、まあ……娘ちゃんくらい可愛い年頃の女の子なら彼氏くらいいるでござろうな……」

娘「か、かわ……」カアァァァ

娘「いいの?むすめに彼氏がいても」

男「ええ?い、いいも何も……それは拙者が決めることではないでござるし」

娘「ふつうこういうのはものがたりのちゅうばんかららすとにかけてもってくるはなしでしょ」

男「そう、なんでござるか?」

娘「とつぜんむすめと称しておしかけた女の子が
  次のしゅんかん彼氏もち発言をするなんてなかなかない」

男「……言われてみればそんなアニメは見たことないでござるな」

娘「ほんらいならもっと驚いたり空気読めよてきなかんじをだしてもいいとこ」

男「はあ……」

娘「つまりなにがいいたいのかというとだな、きもおたよ」

男「はい」

娘「わたしにデレをきたいしようなどとおもうなよ!ということ」

男「>>32でカアァァァとかいうオノマトペが出てるのはあれはデレではないのでござりますか」

娘「ばかにするな。デレとはそんなにあさいものではない。
   このていどでデレとはかたはらいたし」

男「ははあ」

娘「どんなに愛情いっぱいにつくそうと、わたしの心は彼氏からなびくことはないのよ」

男「一途なのでござるな」

娘「それでもいいのか?きもおたよ」

男「いや……なびくも何も、一応拙者はこれから娘ちゃんの父親代わりなんでござろう?」

娘「う、うん……おばさんからはそうきいてるよ」

男「だったら彼氏と拙者がはりあったりするのはおかしいのではござらんか?」

娘「……」

男「むしろその彼氏殿と協力して、これからの娘ちゃんの未来を明るいものにしてゆかなくては!」

娘「……あ」

男「む?」

娘「あのおばさんが言ってたいみがちょっとわかった。きもおたはしゃべり方ほど中身はきもくない」

男「それは誉め言葉と受け取ってもいいのでござるかな……」

娘「……」コクン

~それからどした~

男「えー……何ぶん突然のことで、ベッドが拙者のぶんしかないでござる
  今日は娘ちゃんがそこで寝てくだされ。拙者は床でねるゆえ」

娘「……わかった。こんかいはあまえられる」

男「ははは」

ボフッ

娘「…………」

娘「ごめんやっぱパス。このベッドなんかくさい」

男「え!?」

娘「サクマドロップにはいってるすーすーする白いはずれ味のにおいがする」

男「拙者の体臭がメンソール系だったなんて衝撃の事実なのでござるが……」

娘「わたしこっちのおしいれのなかでねるからいい」

男「……ま、まあ娘ちゃんがそれでいいのなら」

娘「おやすみきもたくん」

男「おやすみなさいでござるドラえむすめちゃん」

娘「……Zzz」



男「(ふー……やれやれ。とんでもないことになったでござる)」

娘「スーッ……スーッ……」Zzz

男「(こんなちっちゃい子にまで恋人がいるというのに拙者はいまだに素人童貞……くぅっ!)」

娘「ん……んん……」

娘「おかあ……さん……グスッ」Zzz

男「……」

男「今はそんなことどうでもいいでござるな……」

~すうじつご~

娘「……」モグモグモグ

男「うまいでござるか?」

娘「……」コクン

男「なにぶん男の料理でござるから、娘ちゃんの口に合うか心配してたのでござるが
  今のところ文句がないということは、大丈夫そうでござるな?」

娘「ふつーにうまい」モグモグ

男「普通くらいでござるか」

娘「おかあさんが作るのよりうまいくらいにはうまい」

男「Oh……」

娘「きもおたよ」モグモグモグ

男「ん?なんでござるか?」

娘「今日はむすめはでかけるよ」

男「ほほう。一体いずこへ?」

娘「ふつうはむすめくらいの年だと学校とかいくんだよ?」モグモグ

男「そりゃあ知ってるでござるが……転入手続きも昨日拙者がすませたし。
  でも今は春休みでござろう?」

娘「うん」モグモグモグ

娘「今日はなきもおたよ。むすめは彼氏のもとへゆくのだ」

男「ほほう」

娘「ほほうって……あいかわらずきもおたは空気よめないリアクションをするね」

男「えーっと……こういう時は『信じていた俺の娘が……!』とか言うんでござったか」

娘「そう。ちゃんと教えたでしょ」モグモグモグ

男「いまいちピンとこないんでござるよなー」

娘「……まあいい。とにかくそういうわけだから。
  あとつけてきたりとかしないでよね。したらおんわなむすめでもおこるよ」

男「温和……?いやまあ、今日はちょうど用事もあるしそんなことはしないでござるが」

娘「……そんなこととはなんだ。そしてようじってなんだ」

男「え?」

娘「まさか……おんなか。おんななのか」

男「女……?まあ確かに相手は女でござるが」

娘「……なんだと」

男「ほらほら、こぼしてるこぼしてる」フキフキ

娘「む、むぐう……やめろお」

男「しっかり甘えてくるでござるよ。拙者には甘えられずとも、彼氏どのになら甘えられるでござろう?」

娘「……う、うん」カアァァァ

男「……フフフ。それじゃあ拙者はもう行くでござるからな。
  あ、食器はながしにおいといてくれれば拙者が洗っておくので」

娘「……いい。それくらいは私でもできるよ」

男「……そうでござるか?じゃあ任せるでござる!いってくるでござるー!」

娘「いってらっしゃい」

ガチャッ バタン

娘「……なんだよ。もうちょっとしんぱいしてくれてもいいのに……」ポツーン

娘「……おんなってだれだろう」

~もわーん~

男「うっ……!し、しばらく来なかっただけでここまでの惨状に……!」

男「あねうえー!あーねーうーえー!いるんなら返事をしてくだされー!」

ガラガラガラッ

男「うおっ!?」

姉「うーん……その声は……男ちゃん……」

男「ゴミの山から出てこないで下され姉上……なんで数日でこんなに部屋を汚せるんでござるか」

姉「ちがうのよぉー……汚そうなんていうつもりはないのよー?
  でもなぜか片付けないと汚れていっちゃうのよねぇー……」

男「いや、片付けないから汚れるんでござるよ姉上……」

男「はあ……とりあえずいつものごとくこの汚部屋の掃除にかかりますかな……」

姉「ああん!いつもありがとう男ちゃん!ほんとに愛してるー!ご褒美にあたしの処女あげちゃう!」

男「そんなものは明日のもえないゴミと一緒に捨てるでござる」

姉「ひ、ひどい!?」

~ゆーがた~

男「フーッ……これでやっと前に片付けた時の状態に戻ったでござるな」

姉「ねーねー男ちゃーん!この髪型どう?ほら、金髪ツインテールー!
  べっ、べつに男ちゃんのことなんか興味ないんだからねっ!」

男「姉上……姿が見えないと思ったら何遊んでるでござるか
  それにいくら綺麗とはいえその年でツンデレごっこは痛す」

姉「なにか言った?」

男「サー!なにも言っておりません!サー!」

姉「フンッ。なによ……ちょっといきおくれてるだけじゃない……ブツブツ」

姉「……ねえ、男ちゃん」

男「む?」

姉「あれから娘ちゃんの様子はどーお?」

男「うーむ……男の拙者から見る限りは落ち着いて見えますが……」

男「なにぶん年頃の女の子ですからなー。デリケートな部分はなんとも……」

姉「……そっかー。ごめんね、あの子をおしつける形になっちゃって」

男「姉上の奇行にふりまわされるのには慣れてるでござるよ。でも……」

姉「でも?」

男「本当にあの子は何なのでござるか?一体どうして拙者の家に……」

姉「……そうよねえ。そりゃあそこを話さないと納得できないわよねえ……」

姉「あの子のお母さんが私の知り合いで、その人が海難事故で、っていうのは聞いた?」

男「……ええ。そのあたりのことは、娘ちゃんから聞きましたが」

姉「その私の知り合い……あの子のお母さんっていうのはね……男ちゃんもよく知ってる人なのよ」

男「……むむ?」

姉「男……落ち着いて聞いてね。
  むかし家がとなり同士で、貴方と仲の良かった幼馴染ちゃん。覚えてる?」

男「!」

男「……もちろん覚えてるでござる。忘れるわけがないでござろう」

姉「あの子のお母さんっていうのはね。その幼馴染ちゃんのことなのよ」

男「なっ!そ、そんな……ということはあの子は……」

姉「ええ。年齢的にも、あの事件のときに幼馴染ちゃんに出来た子に間違いないでしょうね」

男「そんな……。ハッ!じゃ、じゃあ幼馴染ちゃんは……!?」

姉「……残念ながら。生存の可能性は絶望的、といわれたわ……」

男「………………」

男「幼馴染ちゃんは……彼女は人一倍幸せになる権利があったはずでござる」

姉「……」

男「長いこと会えてなかったでござるが、それでも彼女の幸せだけはいつも願っていたのに……」

姉「彼女は幸せだったのよ、男。少なくとも死ぬ前のひとときだけでもね
  あんなに可愛い我が子と一緒に暮らしていたんだから……」

男「……」

姉「私はこんなだから、あなたがつらい気持ちになるのはわかっていたけど他に頼れる人がいなかったの
  それにあなたなら……あの子のことを大事にしてくれるってわかっていたから」

男「……幼馴染ちゃんの子供なら、拙者の子供も同然でござる」

男「ようやく姉上の真意がつかめたでござる。了解した。あの子のことは拙者が立派に育ててみせるでござる!」

姉「……うん。男ちゃんならそういってくれるって信じてたわ!」



男「それじゃ、また来週にでもくるでござるよ
  それまではまた出来るだけ部屋を汚さないでくれると助かるでござるが……」

姉「任せておきなさい。大船よ!」

男「……はあ。では、またでござるよ姉上」

姉「ええ。またね!男ちゃんっ!」

ガチャッ バタン

姉「……ごめんなさい男。私はまだ、あなたに全てを話したわけじゃないの……」


~帰り道~

男「はあ……いきなりヘヴィな話を聞いて気分も重いでござる……」

男「さっさと家に帰って晩御飯の支度でも……ん?」

男「あれは……」

娘「──」

彼氏「──」


男「(おおう……あの道の向こうにいるのは……あれは娘ちゃん)」

男「(ということは、あの時の話からして隣にいるのが彼氏どの……でござるか?)」


彼氏「──でよぉ。──ってんだぜ?参るよなぁ?ハハハ!」

娘「プッ……アハハハ!それ、ほんと?」


男「(頭は金髪で、耳にはデカいピアス……
  何だか娘ちゃんの姿から想像していた彼氏どののイメージとは若干違うでござるな)」

男「(……それにしても、娘ちゃん。彼氏にはあんな風に屈託なく笑うんでござるなあ……
   ちょっとは嫉妬しろと娘ちゃんには言われたでござるが、確かにこれは悔しいものが……)」

男「(……あとをつけるなと釘をさされた手前、こうしてみているだけでも危ないでござるな
   さっさと退散するでござる……)」

彼氏「──んじゃあ、また今度遊ぼうぜ!今度はうち泊まりに来いよ!待ってっからさ!」

娘「……うん!きっと行くからね!……体には、気をつけてね?」

彼氏「心配すんなって!工事現場のバイトもやっと慣れてきたとこ──」

娘「じゃあね……!でんわす──」

彼氏「ああ。お前も新しい家で頑張んだぞ。また──」



男「(Oh……聞こえてしまったでござる。彼氏と泊まりがけ……)」スタスタスタ

彼氏「──おい、待てよてめえ。さっきからこっちジロジロ見てやがったなぁ?」

男「お、おおう!?」

彼氏「目つきがキメェから気づいちまったんだよ
    アイツに何か用でもあったのかよ。ああ?」

男「そ、その例のアイツはどちらへ……?」

彼氏「帰らせたよ。ジロジロこっち見てるオッサンがいるのに気づいたからな」

男「ホッ……そうでござるか……
  (とりあえずつけてたとか言って怒られる心配は消えたでござるな)」

彼氏「なに安心した顔してくれてやがんだてめえ?話が全然進んでねえぞコラ」

男「あ、ああ失礼……拙者あの子の『未成年後見人』とやらにあたる者でござる」

彼氏「み、ミセイネン……?
    ……もうちょっとわかる言葉で喋れやコラァッ!」

男「……も、申し訳ない。要するに現保護者代わりといったところでござるよ」

彼氏「……はあ?ってことはまさか……今アイツの暮らしてる家の家主か!?」

男「いかにも。まあ家主といってもアパートでござるが」

彼氏「おいおいおい聞いてねえぞ……なんでこんなキモいオッサンの家なんかで……
    おば……おねえさんが自分ちで養ってくれるんじゃなかったのか……?」ブツブツ

男「あ、あのぉー?」

彼氏「……てめえ。他に一緒にすんでる奴はいんのか。彼女とかよ」

男「へ?い、いや……あいにく独り者なもので。拙者と娘ちゃんだけでござるが……」

彼氏「……マジかよ。最悪じゃねえか。完全に『据え膳』ってヤツじゃねーかよ……
    何でそんな危険地帯にアイツを……何がおねーさんだあの野郎ふざけやがって……」ブツブツ

男「……あの。いまおそらく彼氏どのが心配されているようなことにはならないでござるから」

彼氏「信用できるか!いかにも素人童貞ですってな顔してやがる癖に!」

男「うぐっ……!」グサッ

彼氏「……ん?ちょっと待て。てめえ今なんつった?」

男「は?え、ええと、だから心配されているようなことにはならないと……」

彼氏「そのちょっと前だ!ちょっと前!オレのことなんて呼びやがった!」

男「……?」

男「えっ……その、彼氏どの、と……」

彼氏「………………」

男「………………?」

男「お名前を知りませぬゆえ、娘ちゃんの彼氏どのなので
  彼氏どの、とお呼びしたのですが……馴れ馴れしかったですかな?」

彼氏「………………なるほど。そういうことかよ」

男「……???」

彼氏「要するに、アイツがてめえを警戒してるってことだ」

男「は……はい?一体何を言って……」

彼氏「てめえは娘に信用されてねえってことだよ……保護者さん?」

男「……どういう意味でござるか」

彼氏「……なんだよ。そういう顔も出来んじゃねーか……」

彼氏「いいか、オレはな……アイツの彼氏なんかじゃねえんだよ」

男「……なっ!?」

男「まさか……ただのセフレとか言うんじゃないでしょうな!?」

彼氏「てめえはそっちばっかりか……ちげーよそうなんじゃねえ
    オレとアイツは恋人なんてチャチな関係よりもっと深いもんで結ばれてるんだ」

男「……!?」
    

男「ま、まさか……!?」

男「(ハッ!彼氏どのの左手薬指に、指輪が……ということは……!)」

男「ケッコンを前提とした……お付き合い。いわゆる婚約者!?
  そんな……12歳の女の子捕まえて……ロ、ロリコ」

彼氏「おいてめえ今を言おうとした!!
    どう見てもオレよりてめえのほうがロリータコンプレックス患ってそうだろうが!」

男「ち、ちがうんでござるか……?」

彼氏「何を見てそう判断したのかは聞かないでやるが……全然ちげえ」

男「……なるほど。やっと拙者にも飲み込めてきたでござる
  ようするに彼氏どのは彼氏どのではなく、娘ちゃんのご兄弟……とかいうことでござるか?」

彼氏「……あーそうだよ。チッ、気づくのがおせえんだよ」

男「なーんだそうでござったか!娘ちゃんが彼氏がいるなんて何度も言ってたものだからてっきり」

彼氏「そう言っとけばてめえが変な気おこさねえと思ったんだろ、アイツ
    ……こうしててめえのツラ見ると、アイツの判断は賢明だったと思うがな」

男「くっ……。ま、まあ警戒されるのも無理はないでござるよ
  むしろそれくらいの防衛意識があるほうが心強いというもの!」

彼氏「……ああ。オレもそう思う。兄弟のオレが言うのもなんだがアイツは可愛いからな」

男「うんうん。そうでござるな」

彼氏「……すっっっげー、可愛いもんな」

男「うんう……ん?」

彼氏「ハァー……なんであんなに可愛いんだろうなあマジで。あれは天使だよ!天使!」

男「あの……あれ?」

彼氏「ちょっと突き放すような口調だから誤解されやすいけどよ。すっげー優しいんだアイツ!
    さっきもオレが工事現場でバイトはじめたって言ったら、今度腹巻編んでくるね、とか言ってよ!」

男「は、はらまき……」

彼氏「可愛いと思うだろ!?なあ!?」

男「え、ええ。そりゃあーもう……」

彼氏「……てめえ。仮にも保護者だろ。どういう目で娘のこと見てやがるんだ!ああ!?」

男「ええー……いやそういう可愛いではなくてですな……」

彼氏「んだぁコラ!?可愛くないとでも言うつもりかテメエ!!」

男「理不尽でござる……」

男「そ、それにしてもお兄様。いくらなんでも兄が妹を可愛がるにしてはちょっと過剰では……
  あまり拙者のことどうこう言えませんぞ。一緒にお泊り☆とか……ちょっとどうかと……」

彼氏「…………いさまじゃねえ」

男「ん?え、なに?」

彼氏「お兄様じゃねえっつってんだよ!!」

男「……は?……えーっと、それはどういう
  ああ、お兄様じゃなくて兄貴だ!とかそんなあれ」

彼氏「オレは……オレは……女だ!!!」

男「……ん?」

女「こんなナリしてるけどオレは女なの!!
  そんでもって、アイツとは腹違いの姉妹(きょうだい)なの!!お兄様じゃねえ!!」

男「………………」

男「はああああああああああ!?」

彼氏あらため女「な、なんだよ!?そんなに驚くことねえだろうが!」

男「え、いや、だって……ええ!?金髪にピアスだし……!」

女「きっ……金髪にピアスしてる女がそんなに珍しいかよ!ああ!?」

男「工事現場でバイトしてるし……こ、声だって男みたいだし……」

女「しょうがねえだろ!ここは収入いいんだよ!お、女友達は女の子なんだから
  メイド喫茶にしろ、とか言うけどよ……あっ……あんな格好するなら土にまみれてたほうがマシだ!!」

男「は、はあ……」

女「あと……このハスキーボイスは自分じゃ気にいってんだ!
  おかーさんも『女ちゃんの声は渋くてステキね』……ってほめてくれたんだぞっ!」

男「……そ、そうだったんでござるか。はー……驚いた
  なるほど……たしかに言われて見ればどことなく娘ちゃんにも似ているような気もするし……」

女「うっ……な、なんだよ。何見てんだよ!」

男「それに……中性的な美人?ボーイッシュ系?って感じがしますな……」

女「び、美人って……そんなこと言われたことねえぞフカシこいてんじゃねえ!」

男「(……誉められるのに弱いのも娘ちゃんに似てる)」

男「……ん?これで一件落着……なわけないでござる!
  娘ちゃんの姉!?そ、それってどういうことでござるか!?」

女「……は?どういうことって……そのまんまの意味だよ。何なんだよ」

男「ということは……女ちゃんも幼馴染ちゃんの娘!?」

女「い、いきなりちゃん付けかよコイツ……って、なんでその名前を!?
  お、おまえ……おかーさんのこと知ってんのか!?」

男「……知ってるも何も、拙者と幼馴染ちゃんは生まれた時からの付き合いだったでござる
  家が隣どうしだったし、小さい頃は毎日暗くなるまで公園で一緒に遊んでたでござるよ」

女「そ、そうだったのか……!あ、いや。言われてみればそうだよな
  アイツが引き取られるくらいなんだから、それくらいのつながりはあって当然だ……」

女「そうか……おまえが……いや、あ、あんたが……おかーさんとおさななじみ……」

男「うむ、そうでござる。懐かしいでござるなあ……
  彼女が引っ越したっきりそのままになってしまったでござるが……」

女「……おかーさん。オレが一人暮らしするようになってからはあんま連絡とってなかった
  まさかあんなことになるなんて……くそっ、オレと違ってアイツはまだ小さいんだぜ……」グスッ

男「女ちゃん……」

男「……」ナデナデナデ

女「っ!?
  ……な、ななな!なにしやがる!?」

男「あ、ああ……す、すまんでござる。つい……
  なんだかうつむいた姿が娘ちゃんとだぶってしまって……」

女「…………んだよ。オレとアイツが似てるわけねーだろ……」

男「いやいや、そんなことないでござるぞ」ニコニコ

女「………………///」

男「ちょ、ちょっと調子にのりすぎたでござるな。申し訳ない」

女「……別にいいよ」ボソッ

男「んむ?」

女「それよりあんた、もういい時間だぞ。アイツもそろそろ家についてんじゃねえのか
  さっさと帰ってやれよ。心配してるかもしれねーだろ」

男「ああ。そうでござったな……急いで帰らねば。
  女ちゃんはどうするんでござるか?」

女「オレはこの近くのボロアパートに一人で住んでんだ。
  ……ほんとに近くだから別に心配しなくていーぞ」

男「そ、そうでござるか……」

女「アイツの……妹のことよろしく頼むぜオッサン
  くれぐれも言っとくが……アイツの『親父』になってやってくれよ?」

男「……もちろん拙者もそれを望んでるでござるが。一体どうしたでござるか?」

女「手出すなってことだよ!……カマトトぶんじゃねえよ気持ちわりい
  なんかの手違いで『旦那』にクラスチェンジするようなら、タダじゃおかねえぞ」

男「あ、ああ。そういう……心配しないで下され。拙者、三次ロリにはあまり興味がないゆえ」

女「……な、なんか意味はわからねえが業の深そうなフォローだな」

男「ではでは!娘ちゃんとこれからも仲良くしてやってほしいでござるよー!」

女「ハッ、てめーに言われなくたってオレたちはずっと仲良しだ!」ベー

男「はっはっは!」




女「おかー……さん……」

(幼馴染「女ちゃん女ちゃん。これはねー。私が女ちゃんのパパからもらった指輪だよー!」)

(幼女「ゆび……わ?」)

(幼馴染「そうともさ!すっげーちっちゃい頃にもらってさー。そん時ゃスッカスカではまりもしなかったけどネ!」)

(幼女「……きれい」)

(幼馴染「君のパパはすっげー優しいんだけどどっか抜けててねー
      全く……指輪買うんならサイズくらい調べろってんだよ、なあ?」)

(幼女「?」ニコニコ)

(幼馴染「まーとにかく。このパパの指輪を女ちゃん、君にあげゆ!
      今はまだスッカスカではまんないだろうけどさ、いつか大きくなってはまる頃には……)」

(幼馴染「きっと君は色んな悲しいこととか、泣きたくなることに出会うはずだ。
      そんな時はこの指輪を見て元気を出しな!これには君のパパとママの愛情がこもってる!)」

(幼女「よく……わかんない。でもありがとう。大事にするねおかーさん!)」

(幼馴染「フフフッ。いい子だねー女ちゃんは。……いいかい女ちゃん。
      君のおとーさんは見た目は良くなったけど、それに負けないくらい優しい人だったんだよ)」

(幼馴染「君もいつか大きくなって、誰かと恋をしたくなったら……
      見た目が悪くても優しい人。君のおとーさんみたいな人を好きになりなさい!」)

(幼女「うん……わかった。おかーさん。えへへ……」)



女「おかーさん……」

女「ハハ……まさかな」

~それからどした~

娘「……おそい」

男「申し訳ないでござる」

娘「……わたしのばんごはんは」

男「い、今から大急ぎで作るゆえ、待っていてほしいでござるよ!」

娘「……むう、しかたない。むすめはいまたいそうキゲンがいい
  だからとくべつにゆるす」

男「ははーっ」

男「……彼氏どのとのデートが、よっぽど楽しかったみたいでござるな?」

娘「……まーね。わたしの彼氏はやさしいからね。きもおたのいちまんばいは」

男「ははは……そーでござるか」

娘「いちおくばいかもしれないね」

男「ほほう」

娘「ぎゅーってね。だきしめてくれたりもするからね」

男「なんと」

娘「……むう」

男「……?」

娘「ちゅ……ちゅーとかも、したりするんだぞ。ラブラブなんだぞ」

男「あ、ああー!
  く……くそうっ!信じていた俺の娘が……っ!」

娘「うんうん。それでいい(ニコニコ)
  ……ふふふ、くやしいか。きもおたよ」

男「そうでござるな。本音を言えば少々くやしいでござる
  彼氏どのを超えるとは言わぬまでも、いつか並び立つくらいにはなりたいものでござるなー」

娘「……?」

娘「どした……?きもおた
  あの……そんなにくやしがらなくてもね……いいよ?」

男「……フッいやいやいや。そうはいかんでござるよ!」

娘「???」

~ねるとき~

娘「あのね……きもおた」

男「んむ?どしたでござるか」

娘「ほ、ほんとはね……むすめには彼氏はいなくてね……」

男「……」

娘「あの……か、かわりにおねーちゃんがいるのだ」

男「ほほう!」

娘「彼氏がいるっていうのはうそなのだ。……おこる?」

男「そう言えば、拙者が変な気をおこさないと思ったのでござろう?
  それくらいの自己防衛は当然のことでござるよ。むしろ誉めてあげたいくらいでござる」

娘「あ……その……ち、ちがうよ
  ちがうけど……ごめんなさい」

男「うむ。許す!」

娘「……おやすみなさい。きもおた」Zzzz

男「おやすみなさいでござる……」Zzzz

~すうかげつご~

娘「おきろきもおた。朝ごはんつくれ」

男「うう……希望は?」

娘「あまいたまごやき」

男「ラジャー」


トントントントン……

男「学校は楽しいでござるかー?」

娘「うん。友達できた。ひとりだけ」

男「はは。友達は数じゃないでござるからな!拙者は学生時代友達いなかったけど!」

娘「後半のせいでいいセリフがだいなしだな」

男「一緒に遊ぶときはうちにつれてきてくれてもいいでござるからな」

娘「……そんなともだちを売るようなマネはできない」

男「どういう意味でござるか……」

娘「それじゃあいってくる。るすはまかせたぞ。じたくけいいびん」

男「……い、いってらっしゃいませでござる」

ガチャッ バタン

男「……さて、こっちも出かけるとしよう」




女「……おーい!こっちだこっち!」

男「すまぬ……ちょっと遅くなってしまったでござる」

女「別にいーよ。オレがはやく来すぎただけだ」

男「娘ちゃんの朝ごはんを作っていたら、つい……」

女「はは、すっかり主夫だなあアンタ。ま、それくらいでなきゃアイツは任せられねえ」

男「それじゃあ、今日も幼馴染ちゃんの小さかった頃の話を……」

女「あ、ああ。よろしく頼むぜ!」

…………

~ゆーがた~

女「うお、もうこんな時間か……」

男「すっかり話し込んでしまったでござるな……」

女「さすがにドリンクバーだけでファミレスに朝から夕方まで粘ってたら店員の視線が痛いな」

男「はははは…………はッ!?」

女「ん?どした……おと……」

まどのそと

娘「…………」ジーーーーー

男 女「「!?」」ビクッ

~みせのなか~

娘「……なんでおねーちゃんときもおたがいっしょにいるの」

女「あ、いや……娘!こ、これはだな……」

男「拙者と女ちゃんは以前お会いしてから、何度かこうして会ってるのでござるよ」

女「(バカてめー!そのまんま言ってどうすんだよ!)」

男「(え……?)」

娘「……信じていた、私のきもおたが……」

男「わ、私の……?」

女「おかーさんの昔話をちょっとだけな、その……ねーちゃんが聞きたくってだな
  コイツにワガママいって付き合ってもらってたんだよ!」

娘「……つきあって……?」

女「ちっがーう!!そういう意味じゃねえ!!」

娘「どうして私をなかまはずれにしたの……?」

女「ううっ……!ち、ちがうんだよぉ娘~!ねーちゃんがお前を仲間外れになんてするわけ……」アワアワ

男「娘ちゃんには……お母さんの話をするのはまだ時期がはやいと思ったのでござるよ」

娘「……」

娘「わたしもおかーさんの話、聞きたい」

女「へ、平気なのか?かーさんのこと思い出して……つらくねーか?」

娘「……だいじょうぶ。それよりふたりにほっとかれるほうがかなしい」

女「う、うう、うおおお……ごめんな。ごめんな娘ぇええええ!」

男「申し訳ないでござる……」

娘「うむ。ゆるす」

男「……それじゃあ、どこから話そうかな……」

娘 女 「「わくわく……」」

男「これ、幼馴染ちゃんにあげるよ」

幼馴染「なに……これ。指輪?どうしたの?これ」

男「ためてたおこづかいで買った」

幼馴染「こ、こんな高そうなものいただけないよ!」

男「そんな悲しいこと言うなよー……露天商で買ったからいまさら返品きかないんだよ!」

幼馴染「で、でも……悪いよ、そんな」

男「俺を助けると思ってさ!ほら、つけてあげる!」

幼馴染「う、うん。その……ありがとう男くん」

男「へっへ……って、あれ?」スカッスカッ

幼馴染「……スッカスカだ」

男「う……うっそだろお!?」

幼馴染「……ハハッ。男くんのことだからそんなことだろうと思ったよ……」

男「さいあくだ……半年ぶんのこづかいがパーだ……絶対似合うと思ったのに……」

幼馴染「……そんなに悲しそうな顔しないでよー。まだ私成長期なんだしさ!」

男「ううう……どーして俺はいつもこう大事なとこでトチるんだ……」

男「……などということがあったのでござるよ」

娘「……しょうげきのじじつ」

男「はは、そうでござろう?拙者と娘ちゃんの母上がそんなに仲が良いとは─」

娘「むかしのきもおたは……しゃべりかたがふつう!」ピシャーン

男「……そこでござるか」


女「………………」

娘「……?おねーちゃん、どした?」

男「む?」

女「そんな、まさか……いや……そうとしか考えられねえ」

娘 男 「「?」」

女「な、なあ男!お前がおかーさんにプレゼントした指輪って……どんなんだった!?」

男「ええー?で、デザインまではちょっと……記憶にないでござるなあ」

女「そんなこと言わずに思い出してくれよ!頼むからっ!」

娘「……?」

男「むー……とにかくあの頃の幼馴染ちゃんの指にはスッカスカだったことしか……あ!」

女「お、思い出したのか!?」

男「うむ。ひとつだけ、思い出したことが……」

女「な、何だよ!何でもいいから言ってみてくれ!」

男「そのとき買った露天商のにーちゃんが……名前を掘るサービスをやってたでござる
  だからその指輪の裏側に、拙者と幼馴染ちゃんの頭文字を……ほったような」

女「……!!!」

娘「……おねーちゃん?」

男「いったいどうしたのでござるか女ちゃん……」

女「……これ」スッ

男「む……?それは、左手薬指につけていた指輪でござるな……」

女「裏側んとこ、見てみろよ……『O_O』……オレはてっきり顔文字かなんかだと思ってたんだが」

男「なっ……!そ、そそ、その指輪は!?」

女「男と、幼馴染の頭文字……OとOって意味だったんだな……これ」

男「ど、どうしてその指輪を女ちゃんが……」

女「これはかーさんの形見の指輪なんだ!オレがもってちゃ変か!?」

男「そういう意味じゃないでござる!何で拙者があげた指輪なんかが……
  そんな大切な……形見だなんて……」

女「当たり前だろ……おかーさんが言ってたんだ。これはオレの……
  ママと……パパの愛情がこもってるって!」

男「ママと……ぱ、パパ?」

女「最初に会った日からそんな気がしてた。
  やっぱりあんたがオレのおとうさんだったんだ!」

娘「……!?
  そ、そうなのおねーちゃん!?」

女「ああ。おかーさんが嘘いうはずねえよ!
  それにオレのパパは顔は悪いけど、優しい人だったって言ってた……」

娘「(……きもおたとおなじだ)」

女「あんたが……あんたがオレのおとーさんだったんだな!なあ、そうだろ!?」

男「せっしゃが……女ちゃんの……父親?
  そして、母親は……幼馴染ちゃん……」

女「ハハ……夢みたいだ。本当に会えるなんて……」

男「女ちゃん……」

女「オレ……その、あ……いや、わ、私……」




娘「(おねーちゃん……きもおたのむすめだった)」

娘「(わたしとおねーちゃんは……ちちおやがちがうっておばさんが言ってた……)」

娘「(わたし……きもおたのむすめじゃなかった)」

娘「(わたしだけ……ほんとのかぞくじゃなかった……)」


(男「……幼馴染ちゃんの親は、俗に言う『ヤクザ』とかいわれる人たちらしかった」)

幼馴染「漫画やアニメだとさー……親がヤクザだったりすると
     娘をちょ~かあいがって、顔の割に優しいパパッ!
     なーんてことになるもんだけど、現実は甘くないやね~……ハハハ!」

(男「幼馴染ちゃんはそういって何でもないようにして笑ってたけど、顔によく変なあざができてた」)

幼馴染「ねえ、男くん……私と一緒に、どっか遠ーいとこで暮らさない?
     男くんと一緒なら別にどこだっていいんだーあたし……雪国でも南国でも、橋の下だっていいよ」

(男「幼馴染ちゃんが一度だけ、冗談めかして言ったセリフ……
   あとになってそれが冗談なんかじゃなかったと気づいた時には、すべてが遅かった……」)


クラスメイト「ねえ知ってるー?C組の幼馴染ちゃんって子、妊娠したらしいよ」ヒソヒソ

クラスメイト「ええ!?それってマジ!?あたしらまだ14だよ!?なんだってそんな……」ヒソヒソ

クラスメイト「なんでもー……父親がヤクザで、犯されて子供ができちゃったんだって!」

クラスメイト「うっわー……最悪じゃんそれ」

クラスメイト「でもあの子、おろさないっていってるらしいよ。絶対産む!って……」

クラスメイト「えー!?無理でしょそんなの……おろせばいいのに」

クラスメイト「ねー……」

ごめん。俺も書いててつらくなってきた・・・いざ書いてみると思ったよりキツい
幸せになる予定なんだけど・・・SSとかで扱っていいもんなのかなこれ・・・

(男「姉の話だと、幼馴染ちゃんは妊娠3ヶ月だって聞いた。
   3ヶ月前……ちょうど俺の誕生日を二人で祝った辺りの頃だった」)

幼馴染「……」

(男「いろんな陰口を叩かれてたけど、それでも幼馴染ちゃんは学校を休まなかった
   でも……その頃から俺とあまり話をしてはくれなくなった」)

(男「もしかしたらあの日……二人でシャンパンなんかもちよって騒いだあの日……
   俺が寝こけてたあの日……起きたらいつのまにか幼馴染ちゃんが家に帰ってたあの日……)」

(男「あの日、帰ってきたばかりの幼馴染ちゃんに……父親と呼ぶのも憚られるようなゲス野郎が。
   そう考えると、夜も眠れなかった」)


(男「幼馴染ちゃんが『家庭の事情』とやらで引っ越していったのは、その後まもなくのことだった)」

~すうじつご~

ガチャッ もわーん

男「……姉上、いるでござるか?姉上」

ガサッ

姉「んあー?……Oh!男ちゃんじゃない!もしかして部屋片付けにきてくれたのー!?キャホーイ!」

男「それもあるでござるが……ちょっと今日は聞きたいことがあって来たのでござる」

姉「ききたいことー?ふむ、いいでしょう!あたしに答えられることなら何でも聞きなさいっ!」

男「幼馴染ちゃんのこと……についてでござるが……」

姉「……あ、あー。そ、そういう系の話ね!ちょ、ちょっと待って!すぐに着替えてくるから!」ダッダッダッ

男「……ふう」

(男「あのファミレスでの問答があってからというもの……拙者の周りは上へ下への大騒ぎだった」)

娘「おねーちゃんもむすめだったんだか、おねーちゃんもわたしたちといっしょにくらすべき」キリッ

女「え、えええー!?い、いいよそんな!おとう……こ、だって急にこられたら迷惑だろうし……」チラッ

男「……む?拙者は別にかまわないでござるぞ。大きめの可愛いフィギュアが増えたと思えば」

女「か、かわ……!?」カアァァァ

娘「むすめをフィギュアにたとえてくるしんけいがすごい」

女「あ、あの……その……!ま、まだそういうのは……や、やめとく……
  まだ心の準備ができてねーし……その……あれだ……」

娘「むう……ざんねんだ」

男「ねえ」

女「……うう」

(男「女ちゃんがうちで暮らすなんて話が出てみたり……
   何となく今までより娘ちゃんと距離を感じるようになってみたり……」)

姉「……お待たせー。それで、幼馴染ちゃんについて聞きたいことって……何かな?」

男「単刀直入に聞くでござる。あの事件……
  幼馴染ちゃんが妊娠して、引っ越していった件について……」

姉「……やっぱり、その話になるわよね」

男「拙者はずっと、あれは幼馴染ちゃんがあのゲス野郎の……父親の手によって汚されて
  そのせいで幼馴染ちゃんが妊娠して……それをもみ消すために一家で引っ越したんだと思ってたでござる」

姉「当時、あの界隈でながれた噂話ではそうなっていたわね」

男「でも……事実とは違ったんでござるな
  そしてそれを……姉上。当時からあなたは知っていた」

姉「……」

姉「ええ、そうよ。あのとき何がおこったのか、私は全て知っている」

姉「あなたが幼馴染ちゃんと仲が良かったように、私も幼馴染ちゃんとは仲良しだったわ。
  だってあなたが幼馴染ちゃんとお隣どうしってことは、当然私と幼馴染ちゃんもお隣どうしってことだもん」

男「姉上と幼馴染ちゃんが仲良しだったなんてことは、拙者だって知ってるでござるよ」

姉「いいえ、男。あなたは知らないのよ。私と幼馴染ちゃんがどれくらい仲良しだったのかあなたは知らない」

姉「あの事件が起こるだいぶ前から……私は幼馴染ちゃんから色んな相談をもちかけられていたわ」

姉「どうすれば親から暴力をふるわれなくなるのか、親との縁を切るにはどうすればいいのか
  女が子供を産めるようになるのはいつからなのか……とにかく、色んなことをね」

男「それって……」

姉「私はそのつど必死で調べて、自分なりの答えを幼馴染ちゃんに示し続けた
  ……あのときの経験があったからこそ、今の仕事にもつけたようなものね」

男「せ、拙者にはそんな相談……一度も……」

姉「あのねえ男ちゃん。そんな相談男ちゃんにできるわけないでしょう?
  幼馴染ちゃんが当時だれのことが好きだったのかなんて、鈍感なあなたにだってわかるはずよ」

男「……」

姉「私は答えたわ。適齢やリスクや確率なんかを度外視すれば、
  女が子供を産めるのは「初潮~閉経まで」……つまり、今のあなたはもう子供が産めるわよって」

男「!」

女「ただし、こうも言ったわ。14歳未満の妊娠死亡率は、20代女性の5倍よ……ってね」

姉「幼馴染ちゃんはいつもおびえていたわ。いまは暴力をふるわれているだけですんでるけど
  いつ父が私にそういった行為におよぼうとするかわからない。時間の問題だ……って」

男「くっ……!」

姉「だから幼馴染ちゃんは……そんな父親に……されるくらいなら、
  多少強引にでも、例え嫌われてもいいから好きな人と……ってね」

男「つまりそれは……お、俺?」

姉「そうよ男ちゃん。『ゲス野郎』でも『拙者』でもなく『俺』……あなたのことね!
  あなたの誕生日……幼馴染ちゃんが持ってきたシャンパンを飲んだわね?」

男「……あのシャンパンは、幼馴染ちゃんが持ってきたものだったんだっけ」

姉「あのシャンパンに……お姉ちゃん謹製の超強力催淫+睡眠剤が仕込まれてたっていったら驚く?」

男「……なっ!?」

姉「渡したのはもちろん私。だけど効果を説明して納得したのは幼馴染ちゃんよ
  あとのことは……もう言わなくてもわかるでしょう?」

男「……俺が寝てるあいだに、その……俺と幼馴染ちゃんは……いたした、のか?」

姉「いたしてなきゃー妊娠なんてしないでしょ?
  確かに催淫剤こそ飲んでたにしても一発命中とはねー……」

男「……なんでそんなことを今まで黙ってたんだよ!俺だって事情を聞いてたら……」

姉「協力、した?いいえあなたは協力なんかしないわ。あの頃の自分になってよく考えてみなさい」

男「…………うっ」

姉「14歳のあなたは、いくら14歳の幼馴染ちゃんに事情の説明をされたって
  幼馴染ちゃんを妊娠させることに承諾したりなんか絶対しなかったはずよ」

(幼馴染「ねえ、男くん……私と一緒に、どっか遠ーいとこで暮らさない?
      男くんと一緒なら別にどこだっていいんだーあたし……雪国でも南国でも、橋の下だっていいよ」)

男「(そうだ……あの言葉を冗談だなんて一笑に伏した俺には
   もし事情を聞いてたら、なんていう権利はない……)」

姉「でもね、男ちゃん。あなたが後悔する必要はないのよ。幼馴染ちゃんのしたことは
  それくらい世間一般の常識や倫理観といった価値観からはかけ離れたものだったんだもの」

姉「つまるところ、あなたはとんでもなーく愛されていたってことよ……簡単に言うならね
  あの子にとってあなたとの子を成すことが、これから生きていく為に必要なことだ、って思わせるくらいには」

男「……幼馴染ちゃん」

姉「……あとは大体あなたの知っての通りよ。彼女は自らの思惑通りめでたく妊娠。
  周りの制止もきかずに頑なに産むの一点張り。学校は退学、親はあらぬ疑いをかけられて逃げるように引っ越した、と」

>>男「フィギュアは大人のたしなみでござるからな!コポォ」

>>男「……俺が寝てるあいだに、その……俺と幼馴染ちゃんは……いたした、のか?」

男、変わりすぎww

姉「もう時効だなんていうつもりはないわ。
  私がしたことはそれくらいとんでもないこと……文字通り人の一生を左右するようなね」

男「まだもう一つ、腑に落ちないことがある」

姉「……ん?なあに?もうこれ以上叩かれたってほこりなんか……」

男「昔、ねーちゃんは言ってたよな
  娘ちゃんの年齢からいっても、娘ちゃんはあの事件のときに出来た子だ、と……」

姉「え、ええ。それが…………あっ!」

男「ずっとそれがひっかかってたんだ。幼馴染ちゃんがもし生きていれば俺と同じ30歳のはず
  娘ちゃんの年齢は12歳で、幼馴染ちゃんが妊娠したのは14歳の時……これだと計算が合わない」

姉「し、しまった。ば、ばれたか……ええそうよ。あの事件のときに産まれた子は娘ちゃんじゃない
  でも、勘違いしないでね?それは何も、娘ちゃんが幼馴染ちゃんの子供だということが嘘ってわけじゃないのよ」

男「わかってるよ。娘ちゃんは娘ちゃんで、ちゃんと幼馴染ちゃんの娘だけど
  それとは別に……幼馴染ちゃんにはもう一人娘がいた……それこそが件の幼馴染ちゃんの子供だってことだろ」

姉「……驚いた。そこまでお見通しだなんて。口調が戻ったら知能指数まであがったの?男ちゃん」

男「……実は種あかしをすれば簡単な話なんだよ。その幼馴染ちゃんのもう一人の娘……
  いや、俺と幼馴染ちゃんの娘か。俺は最近会ってるんだよ。その子に」

姉「なっ!?……ええ!?……マ、マジ?」

男「……マジ」

姉「……ちぇっ、何よそれ聞いてないわよー。私の苦労は何だったのよ……
  幼馴染ちゃんはあなたの子を産んでる!って衝撃の事実を話したあとに
  実は違う男の人の子も産んでるんですけどねー!なんて言ったらショックうけると思って黙ってたのにさ……」

男「……そうやって言葉にして改めて現実をつきつけられると、かなりショッキングなんだけど」

姉「あ、ああっ!?ご、ごめんね!?で、でも……だからって、
  いまの娘ちゃんがあなたの娘であることは変わりないはずよね?」

男「……ああ、それくらい言われなくたってわかってるよ。幼馴染ちゃんの娘であることに変わりはないし
  ちゃんと幼馴染ちゃんは……あれから人を愛することが出来たってことだもんな」

姉「Oh……おねえちゃんちょっと濡れたわ」

男「まあ、それをぬきにしても娘ちゃんは可愛いですし!コポォ」

姉「Oh……」

~それからどした~

男「それじゃ、俺はそろそろ帰るよ。色々話聞かせてくれてありがとな」

姉「愛する男ちゃんのためなら朝飯前よっ!今日聞いた話なんか気にせずに
  その子たちとは今までどおり接しておあげなさいね!」

男「ん……わかってる。んじゃまたな」

姉「今度はその子たち二人とも連れてきなさいね~!待ってるから~!」

ガチャッ バタンッ


姉「……はー。ほんとごめんねえ男ちゃん……」

姉「お姉ちゃん、まだ男ちゃんに言ってない秘密……あるのよねえ」

姉「我ながら、なんてミステリアスな女なのかしら……ふぅ」

もわーん

姉「……ところで、この部屋だれが片付けるの……?」

ガチャッ

男「ただいまー」

娘「きもおた……おかえりなさい」

男「ん、ただいま!……留守番おつかれさま」

娘「さっきまでね、おねーちゃんきてたんだよ
  きもおたのことまってたよ……いれちがいだったけど」

男「ありゃそっか。残念……まあ、女ちゃんとはまた今度3人でゆっくり会おうな」

娘「……」ジリッ

男「……?どした?あとずさりなんかして」

娘「おまえ……きもおたちがう。にせもの!」ビシッ

男「……は?」

娘「きもおたをどこにやった!ほんもののきもおたは『~しような』
  なんてさわやかなしゃべりかたしない!もっとべとんべとんしゃべる!」

男「べ、べとんべとん……?」

娘「あと……ござるとか言う!せっしゃとか!おまえきもおた違う!ふつおた!」

男「オタってことは変わらないのか……」

男「いかん……そういえばねーちゃんと喋ってからなんか調子が変だ……」

娘「ううー……」

男「(普通の口調になった途端警戒される俺って……)」

男「あ、あー……ゴホン!た、ただいまでござるよ!娘ちゃん!」

娘「……!?」

男「今日は拙者の得意料理のオムライスでござるぞー!
  拙者のぶんのオムライスにも特別に娘ちゃんがケチャップ文字を書く権利を与えるでござるよ!」

娘「……きも、おた!」

男「ドゥフッ!そうでござるよー!あなたのきもおたでござるぞー!」

娘「わーい!きもおた!きもおたー!ちゃんとキモーい!」ピョンピョン

男「フォカヌポォ」

~つぎのひ~

娘「おいおきろ。きもおた」

男「ん、んんー……あと、五分……」

娘「じかんにそくばくされないじんしゅのくせに、あと5ふんとはなまいきな」

男「……ムニャムニャ」Zzzz

娘「……ぱ、パパ、おきて」ボソボソ

男「……パパ?」ガバッ

娘「!?」ビクッ

男「娘ちゃん……いま誰か拙者のことを可愛い声でパパぁって起こさなかったでござるか?」

娘「……の、のうないお花ばたけのはなしをされてもこまる」

男「う、うーん……?夢でござったか。残念……ここはなんとしてでも夢のつづきを」

娘「ふざけるな。おきろきもおた。さっさとごはんつくれ」

男「おおう、すまんでござる。ご飯以外の学校に行く準備はできてるのでござるか?」

娘「……さすがようびとかんけーないせいかつをしているいきもの。きょうはにちようだぞ」

男「Oh」

娘「きょうはふたりでおねーちゃんちにおでかけする日だよ」

男「え……!?しまった、約束の日って今日でござったか!?」

娘「……きもおたはアニメにでてくるこどもの授業参観とかをへいきでブッチするおやだな」

男「うっ……拙者の一番嫌いな子供を悲しませる大人でござるか!これは猛反省せねば……!」

娘「わかったらさっさときがえてごはんつくって。きょうは3人でいっぱい遊ぶんだから」

男「うむ……そうでござるな!3人なかよく遊ぶでござる!」

娘「おいしゃさんごっことかきたいしないでよ」

男「……さすがに娘とおいしゃさんごっこは拙者でもハードル高いでござるよ」

~おんなのいえ~

ピンポーン

?「は、はーい!い、今あける!」

ガチャッ

女「いらっしゃーい愛する妹よぉーー!
  そしてえーと、そ、その……お、おとーさん……」モジモジ

娘「…………おねー、ちゃん?」

男「…………女、ちゃん?」

女「なっ、なんだよ!二人してかたまって……」

娘「おねーちゃん……そのかみどした?
  なんでスーパーサイヤ人のへんしんといた?」

男「髪……染めるのやめたんでござるか」

女「う、うう……そ、そうだよ地色に戻したよ
  ……なんか変かよ」

娘「へん……っていうか……」

男「……年相応になって、すごく可愛らしいでござるなあ」

女「なっ!か、か、かわわわ……!」

女「も、もうこれからは変にツッパったりすんのやめようと思ったんだよ
  可愛い妹もいるし……お、親父の目も……あることだし?」モジモジ

男「お、おおう……拙者が親父なんていわれてもいまだにピンとこないんでござるが」

娘「しっかりしなさいきもおた。おねーちゃんをなかせたらゆるしませんよ」

男「はいでござる」

女「……と、とりあえず中入れよ、おと……親父も。……せまいけどさ」

娘「だいじょうぶ。ものであふれてるぶん、きもおたんちのほうがせまい。わたしがほしょーする」


~しつない~

男「へー。ここが女ちゃんの部屋でござるかー
  なんか女の子らしい雰囲気の部屋でござるな!ぬいぐるみとかあって!」キョロキョロ

女「あっ、あんまジロジロ見んじゃね……ない、わよ……」

娘「ほとんどおねーちゃんのてづくりだよこれ」

男「な、なにぃ!?」

女「あっ!ば、ばか言うんじゃねえ!」

男「(……言われてみると、縫い方が粗いのとか古くてボロボロになったぬいぐるみもあるでござるな……)」

女「そ、その……おかーさんが裁縫得意だったんだよ……知ってるだろうけどさ
  それで小さい頃習ってたから……忘れないようにと思ってときどき作んだよ。ガラじゃねーけどよ」

娘「そんなことないよおねーちゃん。かわいくてにあってるよ」

女「うおおおぉそんなこと言ってくれるのはお前だけだよ妹よぉおおお」スリスリスリスリ


男「(……くたびれた変なオッサンと優しい笑顔のおねーさんのぬいぐるみが仲良く並べて置いてある)」

女「……それがたぶんこの中じゃ一番古いやつだなー。おかーさんと……その
  こんな感じなのかなーと思ってつくった、おとーさんのぬいぐるみだ……」

男「……女ちゃん」

娘「フフン。こっちにはなかよし姉妹のぬいぐるみもあるよ」

男「……」ナデナデナデナデ

女「……なっ!ちょ!?おい何だ突然!」

男「いや……すまんでござる。何だかむしょーにこうしたくなって……」ナデナデナデ

男「ドゥフッ!娘ちゃんもー!」ナデナデナデ

娘「……///」モジモジ

女「う、うう……や、やめろよ恥ずかしいなあ……」

時間に束縛されない人種が目覚めました

                  ____
          ____ ..::/     \  おはようございますw
        /     \  ─    ─\      ___
今沖田w /  ─    ─\ ⌒  ⌒  ヽ     /      \
     /    ⌒  ⌒  ヽノ(、_, )ヽ    |  / ―   ―  \
    |       ,ノ(、_, )ヽ    |-=ニ=-   / /   ⌒  ⌒   ヽ
     \     -=ニ=-   /:.      <  |     ,ノ(、_, )ヽ     |
    ノ            \⌒ ̄ ⌒⌒~ \    -=ニ=-    /
   ~⌒ ⌒ ̄⌒ ⌒ ̄ ⌒⌒~         >        <

                   \    /⌒ ⌒ ̄⌒ ⌒ ̄ ⌒⌒~

    ――      l   ‐┼― ‐┼― _l_ヾ
       ー―  ト―  | ⌒  rー、    | |
   ―‐―       l    / ー  _ノ  / J

          | ̄ ̄|  ーヽ-〃 ヽ_ノ   ‐┼―
          |二二|   _ヽ  γ、ノ`ヽ   | ⌒
          |__|  (_ ,   lノ ヽ_ノ   / ー‐

男「……おぬしたち二人は、幼馴染ちゃんの幸せ……おぬしたちのおかーさんの夢でござるよ」ナデナデ

娘「ゆ……め?」

女「な、何だよ。それ……」

男「昔、幼馴染ちゃんは言ってたでござる」


(幼馴染「あのねー男くん。あたしさー最近幸せについて本気だして考えてみたりしてんだー」)

(男「ふーん……?」)

(幼馴染「あたし……思うんだー
      『幸せになるためならどんな苦しい目にあったっていい。べつに死んだって構わない!』って!)」

(男「……苦しい目にあったり死んじまったりするのは、
   全然幸せじゃないだろ?なんか矛盾してねーかそれ……」)

(幼馴染「チッチッチッ。わかってないなー男くんは。……あたしはね、もしあたしが死んじゃって
      いなくなったあとの世界だって、あたしの好きな人たちが笑ってないと嫌だなーって思ったのさ!」)

(幼馴染「あたしの夢は、あたしが好きな人たち皆が笑ってることだ!って気づいた。
      だから、そのためなら私は死んでもいいやってこと!あ、もちろん簡単に死んじゃったりはしないぜ!?」)

(幼馴染「悩んで悩んで、精一杯もがいて苦しんで、これ以上もうやりようがない……ってくらいに頑張って
      それでもダメなら……私には、そのときの覚悟があるってことなのさ」

(男「……。なんか、のんきな顔してる割に難しいこと考えてんだな、幼馴染ちゃん」)

(幼馴染「のんきな顔とは失敬な!男くんだって面白い顔のくせに!」)

(男「おい!そっちのほうが失敬だろうが!!」)


男「……まあ、そんなわけで幼馴染ちゃんは、自分が死んじゃったあとのことまで心配するような
  なんとも不思議な中学生だったのでござるよ」ナデナデ

女「……おかーさん、そんなこと……言ってたのか……」

男「その頃はまだ女ちゃんたちなんてお腹にもいなかった頃でござるが……
  もしかしたら幼馴染ちゃんは、何か予感みたいなものを感じてたのかも知れんでござるなー」

女「……」

娘「……」

男「あ……そ、その、すまんでござる。せっかくの楽しい空気がしめっぽくなってしまったでござるな!
  つまり……二人にはそうやって笑っててほしいってことでござるよ!」

女「……わかったよ。あんがと、おとうさん」

娘「わたしも、もっとわらうようにする」

男「……うんうん」ナデナデナデ

女 娘 「「……///」」

~いっぽーそのころ~

?「もうすぐ、あの人が死んで1年になろうとしているわねえ」

??「ほんとだねー。はやいもんだぁー」

?「……寂しくなったりはしないの?」

??「んー……正直いうと、寂しいよ。すっごく会いたい
    でも、なんたってもうすぐだからね。大きなご褒美のためならこれくらいは我慢できるよ」

?「……忘れられてたりして」

??「な!?そ、それはないって!絶対ない!ないと思う!ないんじゃないかな……まちょと覚悟はしておく」

?「……フフフッ」

??「ちぇー、いじわるだなー相変わらず……」

~さらにすうかげつご~

女「いってきまーす」

娘「いってくるぞ」

男「ほいほい。いってらっしゃいませでござるー」

ガチャッ バタン

男「ふー、さてと。久しぶりに部屋に一人しかいないわけだし
  ここは溜まったものをはきだすために全力でオ……」

男「……オ、大掃除をするでござるぞー!
  溜まったほこりをホウキではきだして……はあ」

ピンポーン

男「……ん?こんな時間に一体だれでござるか……?」

男「はいはーい」ガチャッ


幼馴染「よっ!元気してた?あたしあたし!」


男「…………」

バタン

男「………………」

?「うおーい!門前払いってどーゆーこと!?ねえちょっと!おーい!」ドンドンドン!

男「………………な、なんでござるか。今の幻覚は」

?「男くーん!あたしだよあたしー!ねえー聞こえてるんでしょ!?
  ……ちょっ、コラはやく開けろ!こちとら人目についたらやばいんだよっ!」ガンガンガンガン!

男「拙者には『あたし』なんて知り合いはいないでござる!お引取り願うでござる!」

幼馴染「あなたの幼馴染ちゃんだよー!おいコラふざけんな!開けろっての!」ズガズガズガズガ!

男「…………ッ!」

ガチャッ!

幼馴染「うおおおおあああ!?」

ドサッ…… ガチャッ

幼馴染「ふぃー……やっと入れてくれたね。男くん」

男「これは……何の冗談でござるか。それとも白昼夢とかいうやつでござるか……」

幼馴染「いや……れっきとしたあなたの幼馴染ちゃん、実物本人だよ」

男「……幼馴染ちゃんは、仕事の途中に……船が事故で転覆して……」

幼馴染「生存の可能性は極めて絶望的……ってやつだねえ」

男「行方不明で……死体がでなくて……手続きもすませて」

幼馴染「そのへんのこといつも男くんがやってくれてたんだってねー……いやー
     ほんっと君には頭あがんないよ。私なんかに好かれたばっかりにめちゃくちゃだねえ。ごめんねー」

男「海難事故で……1年がたったから……死亡扱いだって言われて……」

幼馴染「うん、そうだよ……。だからあたし、今死人なんだー」

男「…………はい?」

幼馴染「あーその、ゾンビとか幽霊ってわけじゃないよ?あくまで社会的に……ってやつね
     戸籍の名前んとこにバッテンってされるあれ?」

男「……何が何だかさっぱりわかんねー」

幼馴染「……詳しい話は、可愛い我らが娘っこたちが帰ってきてからにしようか」

~ゆーがた~

ガチャッ

女 娘 「「ただいまー」」

女「帰る途中に娘いたから拾ってきたよおとーさん」

娘「ひろわれたー」


幼馴染「よっ!お帰りー!元気してた?あたしあたし!」



女 娘 「「…………」」

バタン

幼馴染「リアクション一緒かよオイー!!」

男「……仕方ないにもほどがある」

男 女 娘 「「「死んだように……見せかけた……!?」」」

幼馴染「うむ!まあぶっちゃけて言うとそういうことだよー!」

男「いやいやいやいやいや……そう簡単に人1人死んだことにはできねーだろ……」

幼馴染「このアイデアを聞いたときはそりゃあたしだって同じこと思ったさ!
     だけど発案者が絶対イケる!任せとけ!って言うもんだから……」

女「はつ……あんしゃ、って……?」


ガチャッ

姉「はーいお邪魔しまーす!……って、あれ?もう顔合わせと説明はすんだのかな?
  みんなのお姉ちゃんですよー!」

男「てん……めえかゴラぁああああああああ!!!!」

姉「ひ、ひぃいいいい!?」

女 娘 「「!?」」ビクッ

幼馴染「お、おおう……男くんがキレてるの久しぶりに見るよ……」

男「いちから順を追って説明しやがれ!こととしだいによっちゃタダじゃおかねえぞ!!」

姉「ま、待って待って待ってー!話を聞いてよ男ちゃーん!」ガクガクガクガク

女「お、おとーさん……」

娘「いつものきもおたじゃない……」



幼馴染「あたしの親……まあ、君たち二人にとってはおじーちゃんとかだね
     その人らってーのが、もうちょーーータチ悪いんだこれが」ナデナデナデ

女「ふぁ……」

娘「おじーちゃん……たち?」

幼馴染「そ!ヤークーザ!って言って娘ちゃんはわかるかな……もーとにかく最悪なしつこさでね
     男くんとの子供なんか絶対産ませないーって、すんげー追いかけまわされたりしたのさ」

幼馴染「もうこうなったら自力で産んじまうか!……なんて考えてた時にね
     そこのおば……おねーさんから連絡もらって。『私がなんとかするから心配すんな!』……って」

姉「ね!?ね!?だからー!あたしは悪くないのよー!善意の使者なのぉおお!」ガクガクガク

幼馴染「そっからはあっという間だったよ。おねーさんに紹介された病院で女ちゃんを産んでー
     おねーさんに借りてもらった部屋に住んでたよ。その頃のことは女ちゃん覚えてる?」

女「う、うん……小さかったからおぼろげだけど……」

幼馴染「ま……結構キッツい条件づけもされてたんだけどねー。一番キツかったのはやっぱ……
     『男くんと連絡とっちゃいけませーん』ってやつかなー」テレテレ

男「……いや、テレテレとか言われても……」

姉「しょーがなかったの!あなたのご家族さん関係がご丁寧に男ちゃんの周りもはってて!
  男ちゃんに会いに行こうなんてもんなら即見つかってまた軟禁状態よ!」

幼馴染「マ、マジ……?うわー、それじゃ結構ヤバかったのか……」

姉「……え?ちょっと。あなたまさか……男ちゃんに会いに来たりしてないでしょうね!!??」

幼馴染「ピーピピュ~ピー♪」

娘「あの……おかーさん」

幼馴染「おおう、娘ちゃん!なんだいなんだい?おかーさんだよ!相変わらずかーいいねえ!」ナデナデナデ

娘「おかーさんが生きてたってことは……あたしの、おとーさんもいきてるの?」

幼馴染「…………ん?」

娘「おかーさん、前いってたよ。娘ちゃんのおとーさんは遠いところにいるんだよ……って
  アニメとかまんがだと、子供にそういう言いかたするときはたいてい死んでる。だからてっきり」

幼馴染「おおう……そういや娘ちゃんアニメとか漫画けっこう好きだったもんね
     変な誤解させちゃったなー……あれはそのまんまの意味だったんだけどなー」

娘「じゃ、じゃあやっぱりいきてるんだ!いまどこにいるの?どんなひとなの?」

幼馴染「いや……ま、まあ……どこにいる……つーか……なんつーか」チラッ

男「…………ん?」

姉「……………………ちょっと。
  ちょっとちょっとちょっと待ちなさい幼馴染ちゃん。ねえ!あんた!まさかっ!」

娘「……やっぱりいいや、聞くのやめる」

幼馴染「……お?いいのかい?実のおとーさんのことなのに……」

娘「わたしのおとーさんは、そこにいるきもおた……でいい。ほかのはいらない」

男「む、娘……ちゃん!」ジーン

幼馴染「…………はあ。そんなこと言われたら答えるわけにはいかないじゃんか」

娘「え……だ、だから……もういいよ。聞きたくない」

幼馴染「いーや!娘ちゃんは聞かなきゃダメだね。聞いたほうがいい!
     だって……あんたのおとーさんってのも、そこにいる男くんだよ」

なんという幼馴染…

「「「……はああああああ!!!???」」」

姉「え……っ。ってことは……えっ!?えええ!?
  お父さんが違うっていう話は嘘で……両方とも父親は……男ちゃん、なの?」

幼馴染「イエース!!」ビシッ

姉「そ、そんな……まさか私までだまされてるなんて……
  仕事先で関係をもった人のあいだに出来た子だって……幼馴染ちゃん言うから……」

男「ちょ、ちょっと待て!いくらなんでもおかしいだろ!
  幼馴染ちゃんと最後に会ったのは引っ越していく前だし、そもそも俺は素人童貞だぞ!」

幼馴染「コンニチハー。デリヘルヌッキーマウスデース」(裏声)

男「……なっ!?そ、そ、そ、その声は……まさか……!?」

娘「ヌッキー……え?何?」

女「ぎゃあああ!おかーさん!何の話してんのかわかんないけど娘も聞いてんだよ!」

幼馴染「えー……信じないと思ってもってきました、こちら。このメイクで顔面をー……ポポンっと
     おまけにこのヨレヨレウィッグをー……ほいっ!」

男「……ま、間違いない……!その……67点くらいの微妙な顔だち!」

幼馴染「……わざとやってるとはいえその評価はムカッときますな」

男「あのとき俺が……脱!童・貞!させてもらった(と思っていた)
  あの……あの……!えーっと、名前なんだっけ」

女「オッサーナでーす☆」

男「お……お……オッサーナちゃんッ!!」

女「ひさしぶりぃっ!男くんっ!げんきしてたぁー?プリッ!
  いやー……正直、2回も男くんの童貞もらえるなんて最高にハッピーだったよあたし……」ハァハァ

姉 女 娘 「「「お……おっさーなちゃん……」」」ドヨーン

娘「おねーちゃん、どうていってなに?」

女「ひ、ひぃっ!アンタは知らなくていいの!知らなくてっ!」

男「ば、馬鹿な……ずっと童貞だと思ってたら幼馴染ちゃんとやってた、って時でもあんなに驚いたのに
  やっと童貞捨てた!と思ったらその相手も幼馴染ちゃんだったというのか……!?」

幼馴染「いやーあれはほんっとに偶然でね……あまりにも男くんの顔が見たくなって
     我慢できなくなって昔の男くんちにフラフラーっと行ってみたら……
     男くんまだ暮らしてる!それどころか中から変な声が……」

幼馴染「あ、あ、あ、あの、あの、も、ももも、もしもももしもし!
     あのぼ、ぼく、その、今から、お、おね、おねがいしたいんですけどーッ!」(鼻をつまみながら)

男「おい!それ俺のマネだっていうのか!!」

幼馴染「必死にどもりながら電話をする男くんの声……
     電話口に聞こえるデリ……だのヘル……だのいう不穏なフレーズ
     そのときあたしは全てを理解した……そして、体に電撃が走ったのよッ!」

幼馴染「狂おしいほどに愛する想い人が……あろうことか!デリで!ヘルで!
     貴重な『おみゆく』を吐き出そうとしておられる……そんなことは断じてあってはならねー!」

男「……お、想い人……」カアァァァ

姉「………………。
  ちょっと、二人はおねーさんと一緒にこっち行ってましょうねー」

姉 娘 「「…………コクン」」 スタスタスタ

幼馴染「すぐに近所のドンキでウィッグとメイク道具を買い……
     男くんちにやってきた42点くらいの名も知らぬおなごを全力で追い払い……」

男「……おい」

幼馴染「そ、そんでもって……そんでもってッ!
     こ、ココ、コココ……近藤さんに……ヘアピンでプツリ……と細工をほどこしィッ!」

男「……あああ!そうだよ!俺ちゃんと!ゴム……した!
  あんとき、つけてあげるねー☆とかいって……童貞ゆえになすがままにされたけど、まさか……」

幼馴染「…………ッ!」グッ

男「いや……そんな男らしい顔で親指立てられても……」

幼馴染「まあ……そんなこんなで……いたしたわけですよ私は!
     人生二度目の春のひとときを謳歌したわけですよー!」

男「は、春……なのか」

幼馴染「フッ……まぁ真夏の夜の夢のようでもあったがね」ニヤッ

姉「…………幼馴染ちゃん」

幼馴染「むむ……姉御!戻ってこられたんですかい!?」

姉「二人は向こうの部屋に置いてきたけどね……
  全くしてやられたわ。私もうかつだった。幼馴染ちゃんがこんな……
  恩を仇で返すようなことは絶対にしないとタカをくくっていたから、盲点だったわ」

男「ね、ねーちゃん……ちょ、そんな言い方は」

幼馴染「いいんだよ男くん!……姉御の言うことはもっともすぎて鼻血もでないくらいなんだ。
     あんなにお世話してもらったのに、あたしは姉御との約束をやぶったんだからね」

男「幼馴染ちゃん……」

姉「……私は、男の身に危険が及ぶことは絶対に許しはしない
  だからあなたと男がくっつくことを誰よりも反対したし、あなたに色々ひどいこともした。だからなの?」

男「なっ……ねーちゃん!?それほんとなのか!?」

幼馴染「アッハッハ……あぶないヤクザの娘と、かーいい弟がくっつこうとしてたら
     そりゃー全力で止めるのがいいお姉ちゃんってヤツだよ。おねーさんは何も間違ってない」

幼馴染「あたしはただ、自分の信じる幸せってやつに全力疾走してみただけなんだ
     そのあたしの幸せには、男くんが絶対必要だったってだけ……人の都合なんて考えない独りよがりだよ」

姉「一歩間違えれば、ここにいる皆が傷ついていたのよ。わかっているの?」

幼馴染「……返す言葉もないです。我ながら、ほんとにバカだなーと思います。
     でも、あたしは……最後には皆が笑ってる自信があった。悲しませない自信があった」

幼馴染「その私が思い描いてる幸せな風景にたどり着くためなら……私は死んだっていい!
     ……まあ、ほんとに死んじゃうとは思わなかったけどね。えへへ……」

(幼馴染「あたしの夢は、あたしが好きな人たち皆が笑ってることだ!って気づいた。
      だから、そのためなら私は死んでもいいやってこと!あ、もちろん簡単に死んじゃったりはしないぜ!?」)

(幼馴染「悩んで悩んで、精一杯もがいて苦しんで、これ以上もうやりようがない……ってくらいに頑張って
      それでもダメなら……私には、そのときの覚悟があるってことなのさ」

男「(そうか……そういうことか。結局幼馴染ちゃんは、
   最初っから一人で、俺たちが今いるココに向かって走り続けてたのか)」

男「(確かに幼馴染ちゃんの身勝手に振り回されて今の状況になってるのは事実……
   でも、幼馴染ちゃんが行動を起こさなければ、今の状況には絶対にならないのも事実なんだ)」

幼馴染(享年30)
男(無職30)二人の子持ち

幼馴染「おねーさん……あなたの可愛い弟さんを振り回して、ほんとにごめんなさい。
     それと……私の可愛い娘を、男くんのところに連れてきてくれてほんとにありがとう」

姉「………………」

姉「………………はぁ、参ったわ。完敗よ。
  私には、今の男ちゃんの持ってる幸せに勝るほどのものを与える自信はないわ。あなたの勝ちよ」

幼馴染「いやいやいや……勝ちとか負けとかそんな……あたしの好きな人たちってのには
     とーぜん姉御だって入ってるんですぜ!?」

姉「…………フフッ、そうだったわね」



幼馴染「で…………男くん!」

男「ん、おお!?な、なんだよ」

幼馴染「……ご感想は?」

男「か、感想……?いや……感想も何も……
  とにかくすげーよお前……ねーちゃんじゃねーけど参った」

幼馴染「やっぱり……迷惑だった……かい?」

娘「…………」 女「…………」 ジーーー

男「…………いや、逆だよ。こんないい子たちを俺なんかに……ほんとにありがとう」

幼馴染「…………ッ!」パアァァァ

幼馴染「そうか。そっかぁー……ハハ!良かった……ほんとに良かった……グスッ」

女「おかーさん……良かったね」ナデナデナデ

娘「おつかれさま。おかーさん」ナデナデナデ

幼馴染「う、う゛うう……おまえだぢいい!ありがとう!ありがとぉおおお
     最高だよぉお!死んだ甲斐があっだよぉおおおお!」ダキッ!

女「うんうん……すごいよおかーさんは。バラバラだった家族が1つに戻っちゃったよ」

娘「おとーさんがきもおたで……おかーさんが生きてて……
  おねーちゃんといっしょで……なんだか……夢みたい……」

男「……はは」

~いつか~

女「いってきまーす」 娘「いってくる」

幼馴染「うおおお!行ってくるぜ!ダーリンッ!」

男「はいはーい。いってらっしゃい!今日の夕飯はすき焼きだよー!」

♀×3 「「「ウオオオオーッ!!」」」 ダダダダッ

ガチャッ バタンッ


男「……さてと。今日も主夫業がんばるとするかなー」

姉「うーん……男ちゃーん」

男「うお、ねーちゃん……起きたのか」

姉「うんー……すき焼きーってフレーズが聞こえて……」

男「そ、そうか……」

姉「ねえ……男ちゃん……」

男「んー?」

姉「結局……あの『ござる』口調ってなんだったの?」

男「………………」

おしまいです

途中ヤバかったけどコメントのおかげでなんとか完走っぽいとこまでいけました
色々変なとこ多いでしょうが笑って許してね!ほんとにお付き合いありがとー!

A「と言う夢を見たのでござるがwwwwwww」
B「オゥフwwwww某もA氏のような夢をみたいでござるwwwwwww」

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