照「どうして処女じゃないんだ!」 (85)

あのインターハイから早5年。
相変わらず、父と母の仲は険悪だ。
しかし、私たちももう両親の諍いに巻き込まれるほど子供ではない。
咲が高校を卒業したのを期に、私たちは二人きりで会うようになった。

昔は、仲の良かった妹だ。
息苦しい両親の存在が無い安堵感。
両親に隠れて会っているという背徳感。
それも手伝って、私たちは驚くほど短い時間で親密さを取り戻した。

月に2回ほどの密会。
そう、いつも通りの、少し刺激的でなによりも穏やかな時間。

照「じゃなかったの…?」


ホテル ドラゴン&ドラゴン

休憩 5000円
宿泊 10000円



咲「ね?入ろ?」

照「でも、ここは…」

咲「……」ジワアッ

照「っ!そうだよね、咲も歩き疲れたよね?」

照「別にやましいことは無いし、入ろうか」

咲「……」コクン

ーホテル受付ー

照(うわ…部屋ってこんなに種類があるんだ…)

咲「……」ソワソワ

照「なにか、希望ある?」

咲「…なんでもいいよ」

照(なんでもいいが一番困る…)

照(でも、ここは私が姉としての余裕を見せないと)

照「じゃあ、ここで」ポチッ

咲「うん」

ーホテルの部屋ー

照(部屋、適当に選んだけどこれは…)

照(なんだろう、ムーディというかアダルティというか)

照(…まずい。姉妹で入るところじゃなかった)

照「えっと、暗いね?」

咲「…そうだね」

照「大丈夫?」

咲「うん」

照「……」

咲「お姉ちゃん、暑くない?」

照「えっ、どうだろ?」

咲「あはは、自分のことなのに分からないの?」

照「…うん」

咲「変なのー」ペタッ

照「ひぁっ」ビビクン

咲「やっぱり暑そう」

照「そ、そうかな」

咲「服、脱がせてあげるよ」サワッ

照「!!いいよ自分で脱ぐ」

咲「でも…」スルッ

照「ちょ、咲、どこ触って…」

照(まずい)

咲「やっぱり汗かいてるよ」スルスル~

照「ぅあっ」

照(まずいまずいまずいまずいまずい)

咲「お姉ちゃん…」

照(この雰囲気はまずい!)

照「咲」ギュッ

咲「んっ」

照「ダメだよ。こんなことしちゃ」

咲「…へ?」

照「咲は冗談のつもりなのかもしれないけど」

照「こんなところで、そんな態度とったら何されても文句言えないよ?」

咲「……」

照「咲は、無防備すぎ」

咲「…されもいいから、してるんだよ?」ボソッ

照「え」

咲「ううん。されたいから、してるの」ギュッ

照「咲…?」

咲「気づいてよ、お姉ちゃん…」ウワメヅカイ

照「!!」

咲「……」フアンゲ

照「…気づいた」グッ

咲「きゃ!」

照「気づいた。私の気持ちに」スルスル

咲「ひゃ…お、お姉ちゃん?」

照「ん」チュ

咲「んむっ」

照(咲に気づかせてもらうなんて、お姉ちゃん失格だな)

咲「ん…んむっ…んんん!」

照(だからせめて)

咲「っはぁ…ん…ぁ…んんっ」

照(今はリードさせて?)

咲「ぷはっ…お、ねえちゃん…」

照「咲…さわるよ?」

咲「う、うん…」

照「……」フニフニ

咲「ひぁっ///」

照「やわらかくて、気持ちいい」フニフニ

咲「うぅ…は、恥ずかしい…」

照「恥ずかしくないよ」ペロッ

咲「ぅあっ///」

照「ん…れろ…んんんっ」モミモミ

咲「ひゃっ…や…それ…」

照「さき…さき…」ギュッ

咲「っ!…んん…」

照「んー…んむっ…っちゅ…」モミモミ

咲「お、お姉ちゃん…」

照「んっ…んんんっ」ギュゥッ

咲「お姉ちゃん!」

照「…なに?」

咲「も、もう少しやさしく…」

照「!!」パッ

照「ご、ごめん!!」

咲「いいよそんなに…」

照「ううん。つい夢中になってて」

照「ごめんね。咲だって初めてなのに、そんな風にされたらこわいよね?」

照「私、お姉ちゃん失格だ…」シュン

咲「大丈夫だよ、気にしてないから」ニコッ

照「咲…」

咲「それに私、初めてじゃないし」

照「…え?」

咲「だからそんなに…」

照「咲は、初めてじゃないの?」

咲「う、うん…」

照「……」

咲「……」

照「そ、そうだよね。咲ももう二十歳だし、初めてのわけないよね」

照「こういうことは、田舎の方が早いっていうし」

照「私が麻雀漬けだったときに、咲はもう大人になってたんだ…」

咲「そ、そんなんじゃ…」

照「お姉ちゃんだからリードしなくちゃ、なんて」

照「リードされるのは私の方ばっかりだね…」

咲「お姉ちゃん…」

照「…どうして」

照「どうして処女じゃないんだ!」

照「どうして処女じゃないんだ!」ガバッ

照「……」ダラダラ

照「夢か…」ホッ

淡「うるさい!!」バタン!

照「あ、あわい…どうしたの?」

淡「どうしたのじゃないよ!テル、うるさい!」

照「ご、ごめん。寝言で」

淡「寝言が隣の部屋まで聞こえてくるってなんなの!!」

照「ごめん…」

淡「白糸台の寮はあれですか!?今流行りの脱法シェアハウスですか!?」

照「本当にごめん…こわい夢をみて」

淡「…へ?今なんて?」

照「こわい夢」

淡「あははは!こわい夢!高校生にもなってこわい夢!」

照「うっ…」

淡「あはは…バカらしくなっちゃった…おやすみテルー」

照「えっ…」

淡「こわい夢なんて、また寝れば忘れるよ。じゃぁねー」パタン

照「なんだったの…」

照「また寝れば…か」

照「……」スヤァ

--------
----


咲「ひっ…」ジワァ

照「……」

咲「ごめんね…ごめんね…」グスグス

照「…咲が悪いわけじゃ、ないけど」

咲「ううん。私が悪いの」

照「違うって」

咲「私はずっとお姉ちゃんのことが好きだったのに、それを、認めたくなくて」

咲「自分を試すようなことをして、本当の気持ちに気づいたの」

咲「きっと、これは、自分に嘘をついた天罰なんだ…」

照「咲…」

咲「ごめんなさい…ごめんなさいお姉ちゃん…」ワァアアン

照「……」ギュッ

咲「!」

照「…ごめんね。謝るのは私の方だった」

咲「お姉ちゃんは、悪くないよぉ…」

照「ううん、悪いのは私」

咲「違うよ、私だよ」

照「ううん、私」

咲「……」

照「……」

咲「…くすっ」

照「じゃあ、お互い様で」

咲「うん!」

照「…ねぇ、咲の初めての人ってどんな人?」

咲「えっ、いいよそんな話」

照「聞きたい」

咲「えー…」

照「教えて」

咲「う、うーん…優しい人?だったかな…?」

照「そっか、よかった」

咲「う、うん…」

照「いくつのとき?」

咲「じ…十四歳…」

照「…早いね」

咲「…ごめんなさい」

照「ううん、責めてないよ。どのくらい付き合ってたの?」

咲「えっ」

照「……」ニコニコ

咲「えーと、付き合ってたわけじゃ…」

照「…ん?」

咲「もう!この話はやめにしよ!」

照「…付き合ってない人と、するの?」

咲「もうこの話はやめって…」

照「答えて」

咲「…うん」

照「そうなんだ…」

咲「だって、だってお姉ちゃんが振り向いてくれるわけないって!」

照「!!」

咲「…あの時は、そう思ってたから」

照「……」

咲「お姉ちゃんは、私にずっと孤独でいろっていうの…?」

照「っ…」

咲「……」フルフル

照(…最低だ)

照(最低だ。昔の私)

照(あの時、私が咲のそばを離れなかったら、咲は辛い思いをしなくて済んだのに)

照(時間を戻したい)

照(あぁ…どうして)

照「どうして処女じゃないんだ…」

照「どうして処女じゃないんだ…」ガバッ

照「……」

照「また同じ夢…」

尭深「あの~先輩…」カチャッ

照「!?た、尭深か…」

尭深「あの、声、隣まで聞こえてますよ」

照「うっ、また…ごめん」

尭深「もし、勘違いだったら申し訳ないんですけど『処女』がどうのって…」

照「!!い、言ってない!!」

尭深「そうですか…すみませんでした」

照「いい、別に」ダラダラ

尭深「では、おやすみなさい」カチャッ

照「あぁ、おやすみ」

照「びっくりしたぁ…」

照「そんなに聞こえるなんて、やっぱりここ脱法シェアハウスなんじゃ…」

照「……」

照「…寝よう」

照「今度こそは、いい夢が見られますように」スヤァ

--------
----


咲「……」

照「…ごめん。今の、忘れて」

咲「…お姉ちゃん。今度は私がしてあげる」ギュ

照「えっ」

咲「ん…んむっ」チュッ

照「ん…ん…」

咲「ぷはっ…昔の話は、やめよう?」

照「……」

咲「ね?」

照「…うん」

咲「えへへ、はりきっちゃうなぁ」

照「…咲、おじさんくさい」

咲「だって、ずっと、ずぅっとこうしいなって思ってたんだよ?」スルスル

照「…っあ」

咲「お姉ちゃん…」サワッ

照「っ!!咲、そこは…」

咲「わっ…ぬれてる…」ヌルヌル

照「ひぁっ…///」

咲「お姉ちゃんのそんな声、初めてきいた…」ヌプヌプ

照「ぅあっ…さき…本当そこは…」

咲「嬉しいなぁ」ツプッ

照「んんんっ!!」

咲「んっ…お姉ちゃん…」ペロッ

照「!?」

咲「ちゅ…れろっ…んんむっ…」

照「や…さきっ…きたな…」

咲「ちゅ…じゅるるっ…」

照「ーーーー!!!」ビビクン

咲「…っはぁ」ハァハァ

照「はぁ…はぁ…」

咲「…お姉ちゃん、かわいい」ギュウッ

照「……」

咲「大好きだよ、お姉ちゃん」

照「…触らないで」

咲「えっ…」パッ

照「…!ごめん。そんなつもりじゃ…」

咲「う、うん」ホッ

照「咲、上手だね」

咲「ふぇ!?///」

照「…それは、初めての人に教わったの?」

咲「…え?」

照「その人にも、同じことしたの?」

咲「ど、どうしたのお姉ちゃん…?」

照「ごめんね…こんなことが言いたいわけじゃないのに…」

照「気持ちよかったよ、ありがとうって言いたいのに」

照「くだらないことばっかり気になっちゃって…」

照「ごめんね、お姉ちゃん失格だね」

咲「そんな…」

照「本当にごめんなさい…」

照(過去は変えられない。分かってはいるのに)

照(どうして…)

照(どうして処女じゃないんだ!!)

照「どうして処女じゃないんだ!」ガバッ

照「……」

照「もうやだ…」グスン

菫「照!何時だと思ってるんだ!!」バタン!!

照「ひっ…菫…」

菫「廊下を挟んで斜向かいの私の部屋にまで聞こえてくるとは何事だ!!お前は声優の卵か!?あぁん?」

照「ご、ごめんなさい…寝言を言ってたみたいで…」

菫「は?寝言?」

照「はい…」

菫「なるほど、嘘をついている目ではないな…ということはあれか、この寮に欠陥が…まさか脱法シェアハウス!?」

照「そうですそうです、きっとそうです」

菫「しかし、随分と鬼気迫る声だったが、どんな夢を見ていたんだ?」

照「えっ、それは…」

菫「答えろ」

照「実はその…かくかくしかじか」

菫「っ!///お前!そんなAVみたいな夢を…」

照「え、菫ってAVとか見るの?」

菫「へ?」

照「うわぁ…」

菫「なんで私が変態みたいになってるんだよ!!」

照「ひっ…」

菫「…こほん。お前、そんな夢で動揺してちゃ情けないぞ」

照「でも…」

菫「もし、そんなことが本当に起きたらどうするんだ?」

菫「同じ台詞を、実の妹に吐くのか?」

照「それは…」

菫「処女か処女じゃないかにこだわるのはな、自分に自信が無いからだ」

菫「よく考えてみろ、本当に失うのがこわいものはなにか」

菫「そうすれば、経験の回数など気になりはしない」

照「菫…!」

菫「分かったなら、さっさと寝ろ」

照「さすが、AVを見腐ってるだけある…」

菫「見腐ってない!」クワッ

照「ひっ…」

菫「今度、起こしたらただじゃおかないからな」バタン

照「こわい…」

照「…よし、今度こそ」

照「……」スヤァ

--------
----


照「……」

咲「…分かったよ」

照「…なにが?」

咲「今日のことは、忘れて」

照「…は?」

咲「私が、お姉ちゃんと一緒にいて幸せでも」

咲「お姉ちゃんが辛いなら、意味がないよ」

照「え、え、何言ってるの咲…?」

咲「できれば、今までどおり普通の姉妹でいたいけど」

咲「それも辛いなら、もう会わない方がいいかもね…」

照「なにそれ…」

咲「さようなら、お姉ちゃん」

「よく考えてみろ、本当に失うのがこわいものはなにか」


照「!!」

照(そうだ、本当に失うのがこわいものは…)

照「咲!」ギュッ

咲「!?」

照「咲、違う。分かったの」

咲「え、え、なにが?」

照「本当に失うのがこわいものが」

咲「???」

照「私、咲を失うのがこわい」ギュゥッ

咲「!!」

照「私、こわかった。咲に経験があるって知って、もう、お姉ちゃんとして尊敬してもらえなくなるんじゃないかって」

照「私には、なかったから」

照「私は、咲のお姉ちゃんという立場を、咲に尊敬される立場を」

照「失うのがこわかった…」

咲「お姉ちゃん…」

照「でも、本当に失うのがこわいのは咲、咲自身」

照「やっと分かった」

咲「私も…」

照「咲」

咲「は、はい」

照「私の、そばにいて」

咲「…はい」

照「…ありがとう」

咲「…うん」

照「咲」チュ

咲「んっ」

照「さっきの続き、しよう?」

咲「うん!」

照「さき…さき…」レロッ

咲「んっ…おねえちゃ…」

照「…やっぱり咲、上手い」ジトー

咲「ち、ちがうの!それ!」

照「?」

咲「私、お姉ちゃん以外にこんなこと、したことないの!」

照「っ…!///」

咲「だから、だから…」

照「元からの才能なんだね…」

咲「…え?」

照「下手くそなお姉ちゃんでごめんね…」

咲「そ、そんなこと言ってないよー!」

照「もういい、私ネコになる」

咲「な、なに言ってるの///」

照「嘘」サワッ

咲「ひゃっ」

照「最初は様子見。これから打点があがるの」クチュクチュ

咲「んぁっ…ちょ…そんな…」


「グォオオオオオオオ!!」


照「!?なんの音!?」

「グォオオオオオオオ!!」

照「なんの音!?」ガバッ

「グォオオオオオオオ!!」

照「夢じゃない…」

照「一番、いいところで…」

照「…許さない」バタン!

照「淡、尭深、菫…」

淡尭深菫「……」

照「やっぱり、この音の主は…」

淡尭深菫「……」コクン

照「せーの」

淡尭深菫「誠子!うるさい!!」

誠子「…ふぇ?」


カン!

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