結衣「あかりの抱き心地が忘れられない」 (117)

~七森中学~

京子「あっ、ノートの提出忘れてた!」

結衣「ちゃんと出してこいよ、せっかく期限に間に合ったんだから」

京子「それじゃ、ちょいと行ってきまーすっと」バタバタ

結衣「はぁ、どうして京子はこうも落ち着きが……」

結衣「……」ポツーン

結衣「……暇だな」ボーッ

結衣「…………」モフモフ

結衣「…………、あかり」ボソッ

結衣「よっ……と」ムギュッ

ちなつ「日直のお仕事手伝ってくれてありがとう、あかりちゃん」ニコッ

あかり「どういたしましてだよぉ」ニコッ

ちなつ「あっ、日誌出してくるから、先に部室行ってて?」

あかり「うんっ」

………

あかり「あれっ、ちょっと戸が開いてる……」

あかり「京子ちゃん、結衣ちゃん?」ヒョコッ

結衣「……本当は本人をこうして……」ギーュッ

結衣「いや、やっぱりあかりの前だとどうしても……」ブツブツ

結衣「でも、こっちから積極的にならないとダメなのかな……」

結衣「…………」ゴロゴロ

あかり「……結衣ちゃん?」ヒョコッ

結衣「わっ……」ビクッ

あかり「結衣ちゃん、座布団を抱っこしてどうしたの?」

結衣「え、えーと、これは……」ドキドキ

結衣「た、ただ暇だったから何となく……」

結衣(ごまかしても仕方がない……よな)

結衣(聞かれてさえいなければこの場はそれで……)

あかり「そ、そうなんだぁ」

あかり「あっ、結衣ちゃん」

結衣「ん?」

あかり「入ってくる前にちょっと聞こえちゃったんだけど……」

あかり「あかりがどうかしたの?」

結衣(き、聞かれてた……///)カアァ

あかり「わっ……、結衣ちゃん! 顔が真っ赤だよぉ!」

結衣「うっ……///」カオマッカ

あかり「熱でもあるの?」ズイッ

結衣(わっ……、あかりの顔がこんなに近く……///)ドキッ

あかり「ちょっとおでこを……」スーッ

結衣「……///」プイッ ムギュッ

あかり「ゆ、結衣ちゃん! 座布団に顔を当ててもダメだよぉ!」

………

京子「いやー、職員室に行ったらまさかちなつちゃんに会えるとは……」

京子「これは運命を感じるなー!」

ちなつ「はぁ……、もうどっと疲れが出てきましたよ」

ちなつ「こんな時は結衣先輩に早く癒していただいて……」

チョ、チョットユイチャン! ホ、ホットイテクレ!

京子「ん、何か部室が騒がしい……」

ちなつ「今部室にいるのは……、結衣先輩とあかりちゃんのはず……」

京子「あの二人が騒がしくしてるなんて珍しいなぁ……」ガラッ

あかり「ゆ、結衣ちゃん! 今日はなんだか変だよぉ!」アタフタ

結衣「な、何でもないから!///」カオマッカ

ちなつ「何……、これ……」

京子「な、なんだこの珍妙な光景は……」

京子「……あのー、もしかしてお二人さんのいい所……、邪魔しちゃった?」

結衣「どっ、どこをどう見たらそう見えるんだ!」

ちなつ「はい?」カチン

ちなつ「……あかりちゃんが結衣先輩に迫って……」

ちなつ「結衣先輩が抵抗してる……?」

ちなつ「ま、まさかあかりちゃん、力ずくで結衣先輩の純潔を……」ブツブツ

京子「おおぅ!? ちなつちゃんから黒いオーラが!?」

京子「結衣、あかり! ちょっとストーップ!」

………
……

~帰り道~

ちなつ「……」グッタリ

あかり(きょ、今日は何がなんだか……)

京子「いやぁ、まさか結衣とあかりがそういう関係だったとは……」

結衣「何勝手に決め付けてるんだ……」

京子「いやだって、結衣も満更でもなさそうな感じに見えたし……」

京子「嫌よ嫌よも好きのうちってやつかなぁと?」ニシシ

結衣「う、だ、だから何度言えば……///」

あかり「あ、あかりは何のことだか……」

京子「ふむ、二人だけの秘密の遊び……」

ちなつ「…………、結衣先輩が違うって言ってるんだから……」ギロッ

あかり・京子「ひぃっ!?」ビクッ

~結衣宅~

結衣「……で、なんで当たり前のように家に上がり込んでるんだ」

京子「いやぁ、今日の件についてもう少し詳しくお聞きしたいなぁ、と」

結衣「だから、あかりに恥ずかしいところを見られたからつい……」

京子「ふーん?」

結衣「本当にそれだけだよ」

京子「……あんなに顔を真っ赤にしてたのに本当にそれだけなのかな?」ジーッ

結衣「……」

京子「……」

京子「えへへ……、結衣ちゃん大好きだよぉ♪(高音)」ボソッ

結衣「~~~///」プイッ

京子「おおっ! 真っ赤になった!」

京子「やっぱり結衣……、あかりに見られたからあんなに恥ずかしそうだったのか!」

結衣「う……///」

京子「でも、あかりのことが気になってるなら普段からもっと話しかけたりすればいいのに……」

結衣「……」

京子「結衣?」

結衣「あかりとの距離の取り方がちょっと……、わからないんだ」

京子「え?」

結衣「前に家で京子の原稿を手伝った時があっただろ?」

京子「ああ、あったね」

結衣「京子とちなつちゃんが寝てた時、あかりと話をしてさ」

京子「どんな話をしたの?」

結衣「ごらく部を作って、三人目はあかりにするって決めた日のことだよ」

京子「ふむふむ」

結衣「その時、あかりが飛びっきりの笑顔を見せてくれて、その……」

結衣「嬉しいと同時に、恥ずかしかったというか……」

京子(何なんだこの目の前にいる乙女は……)

結衣「でも……」

京子「?」

結衣「私はこれまでにあかりに何を出来ていたのかって同時に不安にもなって」

結衣「ちなつちゃんはあかりが中学生になってからきっと一番一緒の時間が多いし」

結衣「京子はあかりをよく話題に引き入れて、目立たない扱いをしてしまったことを陰で後悔していることも知ってる」

結衣「でも、私は……」

京子「はい結衣。そこでストップ」

京子「お互いに遠慮がちというか……」

京子「そういう所は妙に似てるんだから……」

結衣「?」

京子「私から見ればさ、結衣とあかりの関係って小さい頃からあまり変わってないと思うよ」

結衣「え……」

京子「ああ、もちろん良い意味でだよ?」

京子「結衣ってあかりと話してる時、どんな気持ち?」

結衣「そうだな……、安心感がある、かな……」

結衣「あかりが優しいのは分かりきってることだけど、聞き上手に徹してくれるというか……」

結衣「今日だって振り返ってみれば私の様子を心配してくれてたし……」

京子「じゃあ私と話している時は?」

結衣「うーん、時々突飛なことを言い出して不安なこともあるな……」

京子「それじゃ、もっと小さい頃に遡ってみて?」

結衣「うーん、放っておけないというか……」

結衣「いつトラブルに巻き込まれるかという不安もあったかな……」

京子「私といると退屈しないね?」

結衣「良くも悪くもな」

京子「それじゃ、あかりはどう?」

結衣「あかりは……。あっ!」

京子「ほらね? 今と変わらないでしょ?」

京子「結衣ってあかりと一緒だと、雰囲気が柔らかくなるんだよ」

京子「あかりは小さい頃は結衣の後ろについて走り回って」

京子「そして今はお互いに気を配ってごらく部を支えてるんだよ」

結衣「うん……」

京子「でも……、学年が一つ違ってしまったのはあかりにとっては大きいかもね」

結衣「え?」

京子「私達に綾乃や千歳みたいに、中学生になってからの友達も増えて」

京子「自分が知らない世界ができたように感じてるのかも……」

結衣「でも……、それが嫌だからあかりを絶対に迎えてあげるって決めてたんじゃないか」

京子「うん……、だからさ、結衣があかりにちゃんと伝えてあげなよ」

京子「あかりは結衣が振り返ってくれることをきっと待ってるよ」

結衣「うん……」

京子「さっ、そうと決まったらあかりに電話!」

結衣「え?」

京子「結衣、あかりとこのままギクシャクした感じにはなりたくないでしょ?」

結衣「そ、それは……」

京子「二人で話す機会を作らなきゃ、何も始まらないぜ~?」

結衣「……、今日はやたらに親切だな?」

京子「えー、私はいつでも親切だぞ?」プー

結衣「いや、いつ口止め料にラムレーズン奢れとか言われるかと……」

京子「えっ……」

京子(ま、何だかんだであかりの隣にいることが多いから……)

京子(やっぱり、わかっちゃうんだよね……)

京子「あ、そうだ結衣」

結衣「何?」

京子「以前あかりがカメラを持ってきた時があったよね」

結衣「ああ」

京子「あの時どうしてあかりを抱き締めたの?」

結衣「う……///」

京子「私あの時バリエーションをつけろとしか言ってなかったよ?」ニヤニヤ

結衣「……///」カオマッカ

京子「距離を縮めようと抱き締めたはいいけど」

京子「後から思い出してドキドキするようになっちゃった、ってとこ?」ニシシ

結衣「……///」プシュー

京子「うわっ……、図星か……。耳まで赤くなっちゃってる……」

~土曜日~

結衣(公園で待ち合わせをして、買い物に行って家でご飯を食べて……)

結衣(我ながら無難というか……)

結衣(でもまともに電話もできなくて)

結衣(京子に用意してもらったセリフをそのまま読み上げるみたいになっちゃったし……)

結衣(あかりに変に思われてないかな……)

あかり「結衣ちゃん?」ヒョコッ

結衣「わっ……」ドキッ

あかり「あっ……、いきなり話しかけてごめんね、結衣ちゃん」

結衣「いやいや、ボーッとしてた私が悪いから」

あかり「えっと……、今日は遊びに誘ってくれてありがとう、結衣ちゃん」ニコッ

結衣(うっ、やっぱり……、ドキドキするな……)ドキッ

結衣「うん……、この間のお詫びをしたくてね」

あかり「えっ?」

結衣「ほら、あかりは私の心配をしてくれていたのに」

結衣「一方的に突っぱねるみたいな態度とっちゃって……」

あかり「そんな……、あかりもこっそり見るみたいなことしちゃって……」

あかり「ごめんね、結衣ちゃん」ペコリ

結衣「なんか私達……、謝ってばかりだな」

あかり「うん、そうだねぇ」

結衣「もうその話はここで……、終わりにしようか」クスッ

あかり「うんっ」ニコッ

結衣「お昼まで大分時間もあるし……、少し散歩でもしようか」

あかり「うん」

………

あかり「もうすっかり寒くなってきちゃったねぇ」

結衣「うん」

結衣(でもあかりが隣にいると妙にぽかぽかするというか……)

結衣(やっぱり、私はあかりが……)

結衣(あかりとの距離を縮めるといっても……)

結衣「……」ソーッ…

あかり「……」アッカリアッカリ

結衣(いきなり手を繋ぐなんて、変に思われちゃうかな……)サッ

結衣(やっぱりちゃんと声を掛けてから……)

結衣(いや、たかだかそれだけのことで何をこんなに慎重になって……)

結衣(抱き締めた時みたいに思い切って……)ソーッ

コツン

あかり「?」

結衣(しまった……、強く当てるみたいに……)

結衣「あっ、ごめん、あかり……」

ギュッ

結衣「!」

あかり「結衣ちゃん、今日はもうお互い謝るのは禁止にしよ?」ニコッ

結衣「……うん、そうだな」ギュッ

結衣(私の気持ちも案外……、あかりに見透かされてるのかな……)

あかり「えへへ、結衣ちゃんの手、あったかいなぁ」ギュッ

結衣「ふふっ、あかりこそ」

結衣(隣でドキドキさせてくれてるんだから、当然だよ)クスッ

………

結衣「ちょっと座って休もうか」

あかり「うんっ」

結衣「あっ、何か飲み物でも買って……」

あかり「あっ、あかりが行くよぉ」

結衣「いやいや、今日遊びに誘ったのは私だから」

あかり「そんな……、あかりが誘ってもらったんだから」

結衣「……、二人で行こうか」クスッ

あかり「うん」クスッ

結衣「えっと……、あかりはお茶でいいかな?」

あかり「うんっ」

結衣「それじゃ私はコーヒーを……」

あかり「いいなぁ……、結衣ちゃんはコーヒー飲めて……」

あかり「あかりはどうしても子供っぽくて……」

結衣「コーヒー飲めたら大人っぽいなんてそんな大袈裟な……」

結衣「あかりはいつも一生懸命で優しいから、変に考えなくたって時間が経てば立派な大人になれるよ」

あかり「そ、そうかなぁ……」

結衣「うん。私が保証する」

あかり「うん……、なんだか自信がついてきたなぁ……」ニコッ

あかり「はぁ……、やっぱり温まるなぁ」ホッ

結衣「なんかあっという間に寒くなってきちゃったな……」

あかり「……」ジーッ

結衣「?」

結衣(あっ、あかり、コーヒー見てるな……)

結衣「……、一口飲む?」

あかり「えっ、いいの?」パアァ

結衣「ふふっ、あかりはわかりやすいからね」クスッ

あかり「それでは……」

結衣(あっ、あかりと間接……)ドキドキ

あかり「よ、よーし……」ソーッ

結衣(もうちょっと……、もうちょっとであかりの唇が……)ドキドキ

あかり「えいっ」クイッ

あかり「う……、やっぱりまだ……」ケホッ

あかり「結衣ちゃん、コーヒー返すね……」

あかり「あれっ? 結衣ちゃん、どうして真っ赤になってるの?」キョトン

結衣(これにあかりが口をつけて……)

結衣(いや、たかがコーヒーの回し飲みくらいで何をドキドキして……)

結衣(……、やっぱりあかりだからなのかな……)ボーッ

結衣(前だって、後から思い出すとすごくドキドキして……)カタン

あかり「あっ、ゆ、結衣ちゃん!」アタフタ

結衣「?」

あかり「コーヒー落としちゃってるよぉ!」

結衣「あ……!」

結衣「あっ、あかり、コーヒーかかったりしなかった!?」

あかり「うん、大丈夫」

結衣「そっか……、良かった」ホッ

結衣「でも参ったな……、買い直さないと」

あかり「はいっ、結衣ちゃん」スッ

結衣「え?」

あかり「お金がもったいないから、このお茶どうぞ」ニコッ

結衣「でも、あかりの分が……」

あかり「ううん、あかりはもう体温まったから大丈夫だよぉ」

結衣(今日はお互いに遠慮しなくなるために作った日……、だからな)

結衣「ありがとう……、でも寒くなってきたらまたちゃんと言ってね?」

結衣「遠慮なんてしなくていいんだから」

あかり「うんっ」

結衣(よし、今度は落とさないように……)ソローッ

あかり(結衣ちゃん……、熱いの苦手だったかなぁ?)

あかり「……」

結衣「あかり、どうしたの?」

あかり「あっ、何だかちょっと小さい頃を思い出して……」

結衣「?」

あかり「ほら、京子ちゃんがジュースとかお菓子を落としちゃったりした時とか……」

結衣「ああ、そんな事もあったね」クスッ

あかり「お菓子をもらった時は『これはおやびんが!』ってあかりは譲らなくて」

結衣「そして『隊員は隊長の言う事を聞くものだ!』って私は譲らなくて」

あかり「でも結局……」

結衣「うん、京子が泣いちゃった時のためにとっておいたりね」

あかり「何だか懐かしいなぁ、って思って」クスッ

結衣「うん……」クスッ

結衣「あっ、もういい時間だな」

あかり「そろそろ買い物に行く?」

結衣「うん、そうだね」

あかり「それじゃ、行こっか」

結衣(そういえばあかりと並んで歩いたことなんて、これまでそんなになかったな……)

結衣(でも、これからは……)

~スーパー~

結衣「あかりは何食べたい?」

あかり「えっと、結衣ちゃんが好きなものでいいよぉ」

結衣「……」ジトーッ

あかり「結衣ちゃん?」

結衣「それじゃ私も、『あかりが食べたいものなら何でも』」

あかり「えっ……、それじゃ決まらないよぉ」

結衣「あかりはいくらわがままになっても足りないくらいなんから」クスッ

結衣「今日はあかりが何を言っても、私は受け入れるつもりだよ」

あかり「それなら……、オムライスでいい?」

結衣「はい。了解」ニコッ

あかり「あっ、作るのあかりにも手伝わせてね?」

結衣「うん、わかった」

結衣(ゆっくりしてなって言っても、きっとあかりは譲らないだろうな)クスッ

~結衣宅~

結衣「さて、一緒にご飯作ろうか」

あかり「うんっ」

結衣「それでは……」トントン

あかり「わっ……、結衣ちゃんやっぱり手慣れてるなぁ……」

結衣「いやいや、最初は失敗ばっかりだったし……」

結衣「あかりだって、絶対すぐに上手くできるようになるよ」

あかり「……なんだか結衣ちゃん……、本当に大人って感じだなぁ……」

結衣「そんなことないって」

結衣「でも聞きたいことがあれば、またいつだって出来る限りこうやって教えてあげるから」

あかり「うん……、ありがとう、結衣ちゃん」ニコッ

………

結衣「さて、完成っと……」

結衣「あかりが手伝ってくれたから、早く済んだよ」

あかり「えへへ……、そう言ってもらえると嬉しいなぁ」

結衣「さて、冷めないうちに早く食べようか」

あかり「うんっ」

あかり「それでは、いただきます!」

結衣「いただきます」

結衣「……うん、美味しい……」

あかり「……、あっ」

結衣「どうしたの?」

あかり「いや、あかりが切った材料と結衣ちゃんが切った材料を比べちゃうと……」

あかり「やっぱりあかりは下手だなぁ、って思って……」クスッ

結衣「そうやって自分をすぐに低くなんか見ないの」

結衣「今日のあかりの手際なんて、一人暮らしを始めたばかりの頃の私よりもいいくらいだったよ」

あかり「そ、そうかなぁ……」

結衣「それに今下手だって、いつか絶対に上手くなれるんだから」

結衣「もっと自信を持ちなよ」

あかり「うん……」ニコッ

結衣「……」ジーッ

あかり「結衣ちゃん、どうしたの?」

結衣「い、いや……、何でもない」

あかり「?」

結衣(やっぱり……、あかりが笑いかけてくれる度にドキドキする……)

結衣・あかり「ごちそうさまでした」

結衣「さて、片付けを……」

あかり「あっ、あかりも一緒にするよぉ」

結衣「ふふっ、ゆっくりしてて、なんて言っても無駄だよね?」

あかり「ありゃ、結衣ちゃんはあかりの事なら何でもお見通しかぁ……」

結衣「おいおい、何年幼馴染をやってると思ってるんだ」クスッ

あかり「えへへ……」テレテレ

結衣「…………」

結衣「あかり、ちょっと……」

あかり「なぁに?」

結衣「片付けが終わったら……、あかりに話したいことがあるんだ」

あかり「?」

………

あかり「えっと……、お話したいことって?」

結衣「あかり、以前家に泊まって京子の原稿を手伝った日の事、覚えてる?」

あかり「うん」

結衣「あの時、ごらく部を作った日のことを話したよね?」

あかり「うん……、すっごく嬉しかったなぁ、結衣ちゃんと京子ちゃんがあかりを待っていてくれたなんて……」

結衣「うん……。その時あかりが喜んでくれて改めて、私達二人にとってあかりはかけがえのない存在だって思ったんだ」

あかり「そっかぁ……」テレテレ

結衣「絶対にあかりを待つって決めた理由は……、まだ話してなかったよね」

あかり「う、うん……」

結衣「いつも言っていることだけど……、あかりはとっても良い子だ」

結衣「人に気付かれないことだって一生懸命で」

結衣「どんな時だって、他の人を気遣ってくれて」

結衣「そしていつも笑顔で……、周りを元気づけてくれる」

結衣「そんなあかりと出会えて友達になれて」

結衣「私と京子は小さい頃から今だって、あかりにたくさん力を貰っているんだ」

あかり「うん……、そんなに風に思ってもらえてるなんて、とっても嬉しいなぁ」ニコッ

結衣「でも……、あかりは頑張っている裏できっとたくさんの事を我慢してきたと思うし」

結衣「私達が先に中学生になった時は無理して笑顔を作って私達を送り出してくれていたと思う……」

あかり「……うん」

結衣「ババ抜きをするとすぐ、表情に出ちゃうような子なのにね」クスッ

あかり「う……///」

結衣「でも私達二人にとってあかりは悲しい顔なんか似合わない、元気いっぱいな子で」

結衣「そんなあかりとまた毎日出会いたいから」

結衣「あかりが私達二人から遠く感じるのが嫌だから」

結衣「だから……、あかりを絶対にごらく部に迎えてあげるって決めたんだ」

あかり「うん……」

結衣「でも、そう決めていたはずなのに……」

結衣「あかりと過ごす時間が少なかったのは悪かった、って思ってる」

あかり「そ、そんなことないよぉ」

結衣「あかりにごらく部を作った日の話をしてから」

結衣「これまであかりと一緒に過ごせなかった時間を取り戻したくて」

結衣「でも、何度後悔しても過ぎちゃった時間は戻せなくて」

結衣「だから今日……、あかりに気持ちを伝えて新しい一歩を踏み出していこう、って決めたんだ」

あかり「うん……」

結衣「そして、後悔する中で気づいたんだ」

結衣「あかりが傍にいてくれると、ドキドキするけど、安心して」

結衣「あかりに触れられると、体が何だかくすぐったくなって」

結衣「あかりを突き放してしまったと思うと胸が締め付けられて」

結衣「でもそれは今に始まったことじゃなくて」

結衣「本当は小さい頃からずっと変わっていなかったんだって」

あかり「ゆ、結衣ちゃん……?」

結衣「私は誰よりも一番あかりが好きなんだ、ってようやく気付けた」

結衣「だから……、あかりにはずっと私の隣にいて欲しい!」

あかり「え、え……?」

結衣(私の気持ちはこれで全部……)

あかり「わわっ、顔……、熱っ……///」カアァ

結衣「あかりの……、答えを聞かせて?」

あかり「え、えっと……、結衣ちゃん」

結衣「何?」

あかり「あかりの気持ちを……、お話しさせて?」

結衣「うん……」

あかり「あかりも結衣ちゃんが傍にいてくれると気持ちがふわふわして」

あかり「結衣ちゃんがあかりの事を褒めてくれる度に自信がついて」

あかり「結衣ちゃんがあかりの事を見守ってくれているんだって思うとすっごく安心する……」

あかり「でも……」

結衣「?」

あかり「本当に……、あかりでいいの?」

あかり「結衣ちゃんはいつも京子ちゃんと一緒で……」

あかり「京子ちゃんを守る為に髪を切って、どんどんしっかりしていって……」

あかり「きっと、京子ちゃんもそんな結衣ちゃんに応える為に変わっていって……」

結衣「……、どうして自分から一歩下がろうとするの?」

あかり「あ、あかりはそんな……」

ギュッ

あかり「わっ……、ゆ、結衣ちゃん……」

結衣「私があかりから遠く感じるなら……」

結衣「何千回だって、何万回だって、こうして抱き締めるから」

あかり「……」

結衣「あっ、ご、ごめん、ちょっと取り乱した……」

あかり「結衣ちゃん……、すごくドキドキしてる?」

結衣「うん……、今日はあかりと会ってからずっとドキドキしてた」

結衣「私がこうなるのは……、あかりだけだよ」

あかり「うん……」

結衣「あかりもすごく……、ドキドキしてるね」

あかり「うん……///」

結衣「では改めて……」

結衣「あかりの答えを、聞かせてほしいな」

あかり「うん……」

あかり「結衣ちゃんは小さい頃からずっとあかりの憧れで……」

あかり「でも、先に中学生になっちゃった時は悲しくって」

あかり「きっと、結衣ちゃんが高校生になった時もまた同じことを繰り返すんだって思ってた……」

あかり「でも、結衣ちゃんはあかりに気持ちを伝えてくれて……」

あかり「あかり今、すごくドキドキしてる……」

あかり「あかりの気持ちと結衣ちゃんの気持ち、きっと今は同じだと思う……」

結衣「うん……」

あかり「だから、あかりも……」

あかり「結衣ちゃんが大好きです。ずっと結衣ちゃんの隣にいさせてください」ニコッ

結衣「うん……、私を好きになってくれてありがとう、あかり」ギュッ

あかり「うん……///」ギュッ

結衣「……」フー

あかり「結衣ちゃん、どうしたの?」

結衣「いや、なんだかすごく安心して力が……」ホッ

あかり「そっか……」クスッ

結衣「ふぁっ……、安心したからかな……、ちょっと眠く……」

あかり「お昼ご飯食べた後だもんね」

あかり「あかりも、ちょっと……」

結衣「少し……、お昼寝でもしよっか」

あかり「うんっ」

結衣「あっ、少し布団冷たいな……」

あかり「うん……、でも……」

あかり「二人一緒ならずっと暖かいよねぇ」ニコッ

結衣「うん……」ニコッ

あかり「……」

結衣「あかり、どうしたの?」

あかり「いや、何だか夢みたいで……」

結衣「?」

あかり「目が覚めたら、目の前に結衣ちゃんがいない、なんて……」

結衣「……」グイッ

あかり「あっ……///」

ギュッ

結衣「これでも……、夢だと思う?」

あかり「……、ううん……///」

あかり「……」スースー

結衣(寝ちゃった……、かな?)

結衣(これまで私とあかりは気を遣いあって……)

結衣(今日だって、ふとしたことでお互いに分けあって)

結衣(きっとそういうのが、私たち二人には合ってるんだろうな)クスッ

あかり「……」スースー

結衣(……、まだ度胸がなくてごめん、あかり)

チュッ

あかり「ん……」ムニャ

結衣(いつかあかりが起きてる時にも出来るようにするから……)

結衣(これからはいつだってどこだって、ずっと一緒だよ……)ギュッ



おしまい

ヘタレ結衣さん書きたかったけどなんか長ったらしくなってしまった
京子とチーナ放置はマズかったと思うけど脳内補完頼んます
では

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