結衣「オレンジ」 (48)
ちなつ「ゆ、ゆいせんぱい…///」
結衣「どうしたの、ちなつちゃん」
ちなつ「えっとその…きょ、今日は夕日がとてもきれいですね!///」
結衣「う…うん、そうだね///」
ちなつ「……///」
ドクン ドクン
ドクン ドクン
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結衣「……」チラッ
ちなつ「……っ」
結衣(ちなつちゃん……)
結衣「日が暮れるのもすっかり早くなったね…」
ちなつ「はい…///」
結衣(夏も気づいたらあっという間で、受験ももうそろそろか……)
>>2
夏が過ぎるのも
です。すいません
ちなつ「ゆい先輩……」
結衣「ちなつちゃん?」
ちなつ「これからも、ずっと……ずっと隣に居ていいですか///」
結衣「……もちろんだよ」
結衣「これからもずっと一緒だって約束したじゃないか」
ちなつ「せんぱい大好きです」エヘヘ
4カ月前……
――――――――――――――――――――――――――――――――
5月の下旬頃
陸上部に所属していた結衣は中学校生活最後の大会に向け、
放課後は毎日のように日が暮れるまで練習に励んでいた。
――――はじまりはそんなある日のこと
結衣(今日も部活疲れたな…)
結衣(でも受験生だから家帰ったら勉強もしないといけないんだよなぁ…)ツライ
………………………
…………………
結衣(そういえばさっきから私の目の前を歩いてるピンクの髪の子誰だろう)
結衣(普段見掛けない子だし……)
フワフワ
結衣(でもこの子すごくかわいい髪型してる)
結衣(二つに結んだ髪の毛がとてもフワフワしていて…)ウットリ
結衣(きっと顔もかわいいんだろうけど……こっち向かないかな)
ササッ
結衣(あれっ、いきなり走って行っちゃった……)
結衣(何だったんだろう)
次の日
結衣(あっ、昨日の子……また私の目の前を歩いてる)
チラッ
結衣(あっ……)
「///」
結衣(また昨日と同じように走って行っちゃった……)
結衣(でも一瞬目が合ったような気がするけど、気のせいかなぁ)
そして次の日も、その次の日も……………………………
結衣(よし、今日こそは思い切って声掛けてみよう)
結衣(なんだかすごく緊張するな………)
結衣「ねえ……君」
ちなつ「……」ビクッ
結衣(あっ……固まった)
ちなつ(は、話しかけられちゃった、どどどっ…どうしよう……)ドキドキ
結衣「最近いつも帰り道一緒になるけど、どこの部活……」
タタッ
結衣「あっ、ちょっと……」
ちなつ(なんで、なんで逃げちゃうの…せっかく先輩から声掛けてもらったのに…)
ちなつ(なんで、なんで……)
ちなつ「…うぅ……」
ちなつ「…ぐすっ……」
――――――――――――――――――――――ー
ザァザァ
結衣「今日は雨で部活も中止かぁ…」
結衣「顧問の先生も今日は身体休めとけって言われたし」
ザァザァ
結衣「ん……あれ」
ちなつ「……」
ちなつ「モシヨケレバイッショニカエリマセンカ モシヨケレバイッショニカエリマセンカ モシヨケレバイッショニ…」ボソボソ
結衣「…君はたしか……」
ちなつ「せんぱっ///」ハッ
結衣「私これから帰るところなんだけど、君は誰かと待ち合わせていたりする?」
ちなつ「イ、イイエ///」
結衣「それじゃ君も今帰るところ?」
ちなつ「ハッ、ハイッ///」
結衣「よかったら一緒に…」
ちなつ「あっ、あのぉ……私、吉川ちなつっていいますっ」
結衣「吉川…ちなつ……ちなつちゃん?よろしくね。私は…」
ちなつ「はいっ、陸上部の船見結衣先輩です!」
結衣「えっ…私の名前知ってるの」
ちなつ「はい、もちろんです……船見先輩は運動神経もよくて、クールでカッコいいって、私の周りでは評判です///」
結衣「そうだったんだ……」
結衣(それにしてもこの子、さっきからずっとこの場所に……もしかして、、、)
結衣「もしもの話だけどさ、私のことを待ってたりした…なんてことは……」
ちなつ「……///」
結衣「ご、ごめん変なこと聞いちゃって、、、」
結衣「そんなわけな…」
ちなつ「はいっ!」
結衣「えっ…」
ちなつ「そうなんですっ、私は船見先輩のことをずっと待っていたんです!///」
―――――――――――――
―――――――――――
キーンコーンカーンコーン
結衣「ちなつちゃん」
ちなつ「あわわわっ、船見先輩っ///」
結衣「わざわざ待っててくれてありがと」
ちなつ「そ、そんなとんでもないですっ、ただ私が先輩を待っていたいからで……///」
結衣「私も、ちなつちゃんと帰れて嬉しいからさ///」
ちなつ「ありがとうございますっ!」
結衣「じゃあ行こっか」
ちなつ「はい…///」
結衣(何から話せばいいのかな……)
ちなつ(船見先輩と二人並んで歩けるなんて夢みたい///)
結衣「ちなつちゃんって、けっこう恥ずかしがり屋さんだね……」
ちなつ「えっ、はぃ……どういうところがですか」
結衣「もちろん私も人のことは言えないんだけどさ…」
結衣「私がちなつちゃんに初めて声を掛けた時に、ちなつちゃん走って行っちゃったよね」
ちなつ「はぃ……あの時は申しわけありません…」
ちなつ「私でしたら、どうしても素直になれなくて……」ウルッ
結衣「気にすることないよ。あの時は突然声掛けられて、きっとちなつちゃんびっくりちゃったんだなって……」
ちなつ「おかしな子だとか思わなかったですか……?」
結衣「全然思ってないよ」
ちなつ「よかったですぅ……」
………………
………………
ちなつ「先輩を一目見たときから……気づいたときには先輩に夢中になっていたんです。それで少しでも先輩に近づきたいと思って……」
結衣「それで私の部活が終わるまでずっと一人で待っててくれたんだ……」
ちなつ「はい……でもいざ先輩に声かけようと思ったら、なんて言ったらいいのかわからなくなってしまって」
結衣「そんな、ふつうに声掛けてくれてよかったのに」
ちなつ「でも……もし断られたらどうしようって…。だって面識もないのにいきなり一緒に帰ろうだなんておかしいじゃありませんか」
結衣「ちなつちゃんは心配しすぎだよ。大丈夫、私はちなつちゃんの願いならどんなことでも聞いてあげるから」
ちなつ「……///」
結衣「ち、ちなつちゃん?」
ちなつ「はっ、はいっすいません。少しぼーっとしちゃって……」
………………
………………
ちなつ「あの……もしよかったら手繋いでもらえませんか……///」
結衣「手……」
ちなつ「まだ出会ってからそんなに経っていないのに、やっぱりいやですよね……恥ずかしい…ですよね」
ギュッ
ちなつ「ふぇっ……」
結衣「ごめんね、少し汗かいちゃってるかもだけど///」
ちなつ(先輩の手の感触……なんだかとても安心する……)
ちなつ「…うっ……ぐすっ…」ポロポロ
結衣「ちなつちゃん泣いてるの?何か辛いことでも」
ちなつ「うれしいんです」
結衣「ちなつちゃん……」
ちなつ「まるで夢でも見てるみたいだなって……」
結衣「夢なんかじゃないよ……」
ちなつ「えっ……」ドキッ
結衣「今私がここにいる…それで、これから先もちなつちゃんと一緒に居たいから」
ちなつ「えへへ///」テヘッ
結衣(ちなつちゃんの笑顔……今初めて見れた///)
――――――――――――――――
――――――――――――
ちなつ「今日も部活おつかれさま」
結衣「いつもありがとう、ちなつちゃん」
ちなつ「思う存分先輩成分をいただかないとっ」ムギュ
結衣「今日もちなつちゃんのおかげで頑張れたよ」ナデナデ
ちなつ「やん…もう先輩ったら」
………………
………………
結衣「ごめんね、いつもよりも部活遅くなっちゃって」
ちなつ「いいですよ、大会も近いんですし。たしか2週間後の火曜日でしたよね」
ちなつ「私は応援に行きたくても行けませんけど、授業受けながら結衣先輩の健闘を祈ってますっ!」
結衣「ありがとう。励みになるなぁ」
ちなつ「わぁ、一番星みーつけたっ」
結衣「本当だ、すごくきれいだね」
ちなつ「あっちにも、わぁそっちにもお星様出てきたぁ」
結衣「でもちなつちゃんが最初に見つけた星が一番輝いてるね」
ちなつ「あの星、私と結衣先輩だけの星にしましょうよ!」
結衣「そうだね、あの星が私とちなつちゃんが今日という日を一緒に帰った証にしよっか」
ちなつ「それいいですね!なんだかロマンチックですっ」
結衣「もしも私たちが離れ離れになっても、あの星がある限り、私たちは繋がってるって……」
ちなつ「でも離れ離れになんか絶対なりませんからね!」
結衣「まあそれもそうだね」クス
ちなつ「結衣先輩……大好きです」
結衣「私も大好きだよ……ちなつちゃん」
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7月になり、部活も引退し、周りは受験に向けて忙しくなった。
私も夏期講習を受けたりと、日々の勉強で忙しい毎日だった。
それでも休みの日にはちなつちゃんと会った。それが私にとって何よりも励みになった。
ちなつちゃんはいつも私を応援してくれた。そして私を元気づけてくれた。
夏が終わり、秋になり、そして気づいたら冬が訪れていた。
本格的な受験シーズンに入り、一層忙しさと精神的な疲労はピークに達した。
それでも、私は決して心が折れることはなかった。
その頃になると、ちなつちゃんからメールが来ることはなくなっていた。
2月に私立受験が終わり、3月に本命の高校を受験。
結果は、見事合格した。
その日私はちなつちゃんといつもの帰り道の別れ道で会う約束をした。
ちなつちゃんは私の合格を聞いてとても嬉しそうな顔をした後、少し不安げな表情を見せた。
そこで私たちは、これからのことを真剣に話し合った。
絞り出した答えは、「別れる」ということだった。
もちろん二人とも別れる気なんてまっさらなかった。
この先私たちに降りかかる様々なしがらみを考えての結果であった。
それでも、私はあのときの決断を後悔することはなかった。
こんな私と一緒に居てくれてありがとう。今でもそう伝えたいと思っている。
―――――今でも思い出す、二人並んで歩いた帰り道……いろんなことがあったね
ちなつ「女の子どうしだから、女の子どうしだからって……」
結衣「ちなつちゃん?私はただクラスの子にそう聞かれて」
ちなつ「女の子どうしだったら好きになっちゃだめなんですか……」
ちなつ「じゃあ何なの、私たちのは遊びなんですか……そんなの……そんなの……うぅっ…」
ちなつ「もういいです、先輩なんか……」グスン
スタスタ
結衣「待ってちなつちゃ……」
結衣(私の何がいけなかったんだよ……)
結衣(なんだか最近ちょっとしたことでぎくしゃくしちゃうし、悲しいけど、さめちゃったのかな……)
結衣(って、何考えてんだろ私……)
――――愛とか、恋とか、どれも私にとってはわからない感情で、
――――ただ一つ言えることは、
――――どうしようもないくらい君が好きだということ
結衣「ちなつちゃん!待って」
――――そして私は君を追いかけ駈け出した。
私は前を行こうとするちなつちゃんの細い腕を、ぎゅっと握りしめて引きとめた。
結衣「……ごめん、ちなつちゃん」
結衣「私、ちなつちゃんのこと何も考えてなかった。ちなつちゃんがどうして悩んでいるのかとか、何も考えてあげられなかった……」
結衣「ごめんね……私最低だね」ポロポロ
結衣「誰がなんて言おうと、私たちは私たちだよね……」
ちなつ「もう泣かないでくださいよ、先輩らしくないですよ」
結衣「ちなつちゃん……」
ちなつ「謝らなければいけないのは私のほうです……」
ちなつ「私ったらいつもいつも結衣先輩を振り回してばかりで、もうとっくに嫌われているんじゃないかって……」
ちなつ「だから、だから心配で……」
結衣「もういいんだよちなつちゃん」
…………ちなつちゃんが落ち着くまでずっと抱きしめてあげるから…………
ちなつ「先輩……」
結衣「ちなつちゃん……」
チュッ
このときも、きっとあの一番星は私たちを優しく見守ってくれていたんだろうな……
―2年後―
京子「いや~、結衣を初めて見たときはコイツ絶対病んでるだろって思いましたよー」エヘヘー
結衣「はいはい、かってに言いたいだけ言ってろ」
京子「なんだよ~そんなに機嫌悪くして、今となっては笑い話じゃんかよ」
京子「まっ、今日は結衣んちに泊めさせてもらうから、たくさん話聞かせてもらうもんねーだっ」
京子「あっ、ラムレ」
結衣「買っておいた」
京子「結衣様~~~」
結衣「全く、まだ出会ってから1年ちょっとだっていうのに世話が焼けるな……」
結衣「あ、一番星……」
結衣(ちなつちゃん、私はちゃんと頑張ってるよ……)
京子「おお、結衣どうしたー?」
結衣「いや、なんでもないよ」
京子「それにしても今日は星が綺麗だなー」
結衣「……」
京子「……」
結衣「私の初恋……聞きたい?」
京子「うん!」
おしまい
以上、甘い甘いオレンジでした♪♪
ここまで読んで下さった皆さん本当にありがとうございます
尚GReeeeNさんの「オレンジ」が元ネタとなっております
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