越前「魔法少女……?」(362)

越前「ここが見滝原市っスか?」

大石「なかなか良さそうな環境だね」

菊丸「それにしても、いきなり強化合宿とはなー」

乾「この見滝原市で行われる、中学選抜を集めた強化合宿……かなりの人数になるらしい」

不二「凄いね。立海や氷帝とかはもう来てるのかな?」

手塚「みんな、この合宿中に少しでも強くなれるよう精進しよう」

まどか「テニスの合宿?」

仁美「はい。近くの施設で中学選抜の強化合宿が行われているそうです」

さやか「女子の間で話題になってるよ。凄いイケメンが揃ってるって」

まどか「そういえば聞いたことあるような……」

さやか「ねぇ、せっかくだし今日の帰りにちょっと覗いてみない?」

まどか「うん、私はいいよ」

仁美「ごめんなさい、今日はお稽古がありまして……」

さやか「そっかぁ、残念。じゃあまどか、二人で行こうか」

放課後

さやか「どんな人達なのかなぁ」

まどか「全国から集められるくらいだから、きっと凄く上手いんだろうね」

さやか「テニスならあたしもちょっとやったことあるよ。こう見えても結構上手いんだから」

まどか「そうなんだ。さやかちゃん運動得意だもんね」

さやか「いっちょ一番強い人に挑戦してみようかな。案外勝っちゃったりするかも!?」

まどか「あはは。あ、あれかな?」

さやか「さーて、どんなテニスを……」



ま・さ「」

さやか「な、何あれ……あたしの知ってるテニスじゃない……」

まどか「こんなの絶対おかしいよ……」

さやか「何でテニスで人が吹き飛んだり分身したりしてるの……ホント同じ中学生?」

まどか「……さやかちゃん、挑戦するの?」

さやか「無理無理! CDショップでも寄って帰ろう!」

まどか「うん……中学テニスのトップって凄いんだね……」



越前(コートを探してたら道に迷った……)

越前(というかココって、どう見ても街中じゃん……)

越前(合宿所はどっちか……ん?)

QB「……」

越前(猫? 見たことない種類だけど……)

さやか「くっそー、何なのよあの転校生! ていうかそれ何!?」

QB「……」グタァ

まどか「わかんない。わかんないけど……この子、助けなきゃ!」

さやか「……あれ……」

まどか「変だよ、ここ……道がどんどん変わっていく!」

さやか「な、何よこれ!?」



越前(ありゃ……あの猫、見失っちゃったか……)

越前(仕方ない、合宿所を探し……)

越前(…………!)

越前(何だこれ……道が……!)

まどか「い、一体何が……」

さやか「わからない……あ、誰かいる」

越前「……すいません、これ、何かのアトラクションっスか?」

さやか「いや、あたし達もサッパリ……!? あれは……」



使い魔「…………」ゾロゾロ

越前(ゆ……幽霊? いや……)

まどか「さ、さやかちゃん……」

さやか「あたし達、悪い夢でも見てるんだよね!?」

越前「……二人とも、ちょっと下がってて」

まどか「な、何を……」

越前「よっと」ドン!!

さやか「つ、ツイストサーブ!? まさか君、あの合宿の!?」

ドゴォォォォォン!!

使い魔「ギャアアアアアアアア!!」

まどか「す、凄い……」

越前「まだまだだね」

使い魔「…………」ゾロゾロ

さやか「ま、まだ来る!」

越前(くっ……数が多すぎる)

越前(どうすれば……)

ドォォォォォォン!!

越前「!?」

マミ「危なかったわね。でももう大丈夫」

マミ「その制服、あなたたちも見滝原の生徒みたいね。そちらの男の子は……違う学校かしら?」

さやか「あ、あなたは……」

マミ「そうそう、自己紹介しないとね……でもその前に、一仕事片付けちゃっていいかしら?」

マミ「それじゃ越前くん、気をつけてね」



越前「…………」

越前「魔法少女、ねぇ……」

ほむら「あなた、ちょっといいかしら?」

越前「……誰、あんた?」

ほむら「私は見滝原中学2年、暁美ほむら」

ほむら「巴マミから大体の話は聞いたでしょう? 私も彼女と同じ、魔法少女よ」

ほむら「そして……あなたからは、私たち魔法少女と近しいものを感じる」

越前「……青春学園中等部1年、越前リョーマっス」

ほむら「どうしてこの見滝原に? この近くの学校じゃなさそうだけど」

越前「中学テニスの強化合宿が今やってて、それで……」

ほむら「あぁ、あの噂の……」

ほむら(越前リョーマ……今までのループでは存在しなかった人物……)

ほむら(完全なるイレギュラーな存在……この時間軸は一体……)

越前「あ、一つ聞きたいことがあるんスけど」

ほむら「何かしら?」

越前「合宿所って、どっちの方っスか?」

不二「あ、越前帰ってきたね」

桃城「ずいぶん遅かったな。どこをほっつき歩いてたんだ?」

大石「道にでも迷ったのかい?」

越前「……多分、信じてもらえないと思いますけど……」

手塚「何かあったのか? 言ってみろ」

越前「実は……」

菊丸「あははははははっ! 何だそれ、魔法少女って! 魔女って!」

宍戸「漫画の読みすぎじゃねえのか?」

伊武「馬鹿らし……」

真田「そんな世迷言を呟くとは……たるんどる!」

越前(……ま、こーなるよね……)

手塚「越前」

越前「……うっす」

手塚「グラウンド50周だ」

乾「ずいぶん厳しいね、手塚」

手塚「当然だ。道に迷って遅れただけでなく、あんな言い訳を」

乾「なるほどね。でも、もしそれが本当のことだったら?」

手塚「まさか……お前は魔法少女だの魔女だのを信じているとでも?」

乾「そうとは言ってない。でも、手塚もこの見滝原市に来てから感じているだろう」

乾「この街は何か……不穏な空気がするって」

手塚「……乾、今日の練習はもう終わりだ。部屋に戻って体を休めろ」

乾「あぁ、そうするよ」



乾「蓮二……越前の話、どう思う?」

柳「……今の俺には、詳しいことはわからないが……」

乾「あぁ、そうだな……越前の話が真実にせよ虚構にせよ……」

乾「この見滝原で何かが起こっている確率……96%」

数日後

大石「手塚、いるか!?」

海堂「さっき、腕の検査をしに病院へ行ったっス」

不二「何かあったのかい?」

大石「その検査に必要な紙を忘れて行っちゃったんだ」

河村「手塚にしては珍しいミスだなぁ」

大石「越前、すまないが今から手塚を追いかけてくれないか?」

越前「……わかりました」

手塚(忘れ物をしてしまったか……)

手塚(仕方ない、戻るしか……む!?)

GS「…………」ズズ・・・

手塚(な……何だこれは!?)

手塚(こんな異様な物がなぜ病院に……しかも、誰も気付いていない……)

手塚(この中、道が続いている……どうする?)

手塚(とにかく、これは危険な物には違いない……誰も気付かないならば……)

QB「さやか、大丈夫かい?」

さやか「うん、今のところは……でも、いざとなったら頼むかも」

QB「僕はいつでもいいから、願い事は決めておいて……ん、誰か来たね」

さやか「マミさんかな……え!?」

手塚「女の子……?」

さやか「だ、誰ですか!?」

手塚「青春学園中等部3年、手塚国光。テニスの合宿で、この見滝原に呼ばれて来た」

さやか「み、見滝原中学2年、美樹さやかです……って、青春学園ってまさか越前くんの?」

手塚「越前を知っているのか?」

さやか「あ、はい……先日ちょっと……」

まどか「さやかちゃん、無事でよかった!」

マミ「そうね、それと……手塚くん。突然こんなことに巻き込まれて驚いてるだろうけど……」

手塚「越前から話は聞いていたが……まさか魔法少女や魔女が本当に実在したとは……」

さやか「でも、マミさんが来たからには安心だね!」

手塚「巴、よろしく頼む」

巴「えぇ……それにしても……」

手塚「?」

巴(本当に私と同い年なのかしら……)

ほむら(くぅっ……まずい……)

ほむら(今までの時間軸では、場合によっては巴マミはここで……)

ほむら(何とかしてこの拘束を解かないと……)

ズバァァン!!
ドサッ

ほむら「……っ! て、テニスボール!?」

越前「暁美さん、大丈夫っスか?」

ほむら「え、越前リョーマ……なぜここに」

越前「病院の方に用事があったんで……暁美さんは、ここで何を?」

ほむら「そ、そうだわ! 急がないと巴マミが!」

越前「巴さん? あの人も来てるんスか?」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

ドォン!!

さやか「やったぁ!」

手塚「……いや、まずい!」ダッ

QB「て、手塚! 何を!」



シャルロッテ「……」ギュルッ

マミ「……え」

さやか「危ない!」

マミ(だ、駄目……もう、避け……)

シャルロッテ「……?」グンッ

マミ(え……魔女が、方向を変えた?)

マミ「……! な、何これ……! 竜巻!?」



手塚「…………」ゴゴゴゴゴ・・・

まどか「ま、魔女が……手塚さんの方に、吸い寄せられて!?」

さやか「まさか、あれが噂の……手塚ゾーン!?」

手塚(ラケットは、決して人を傷つけるためにあるのではない……)

手塚(だが、ラケットを振るうことで誰かを助けられるのならば……)

シャルロッテ「…………」グワッ

手塚(俺は、戦おう!)

ドゴォン!!

シャルロッテ「……!」

QB「ば、馬鹿な!? ラケットで魔女とやり合う気かい!?」

シャルロッテ「…………」ギロッ

手塚「さすがに、俺の打撃で倒すことはできないか……」

手塚「だが……時間は十分に稼げた。そうだろう、巴」

マミ「えぇ。ありがとう、手塚くん」

シャルロッテ「!?」

マミ「ティロ……フィナーレ!」

ドォォォン!!

ほむら「巴マミ!」

まどか「ほむらちゃん! それと……越前くん!?」

越前「部長……こんなとこで何を?」

手塚「あぁ……ちょっとな」

ほむら「まさか……このお菓子の魔女、あなたが!?」

手塚「いや、倒したのは巴だ。ただの人間である俺が魔女に勝てるはずがない」

マミ「でも手塚くんがいなかったら、私がやられてたわ。本当にありがとう」

ほむら(越前リョーマだけでなく、彼も魔女と戦っていた……)

ほむら(このテニス部員達は、一体……)



乾「……気になってつけてみれば、こんなことになっているとはな」

柳「さすがに驚いたが……面白いデータが取れたな、貞治……」

越前「さて……魔女のこと、もっかい皆に伝えますか?」

手塚「……やめておこう。信じてもらえるか分からないし、肝試し気分で出歩く奴も出かねない」

越前「暁美さん達、あんなのとずっと戦ってきたんスよね、一人で」

手塚「…………」

越前「……ちょっと、心配っスね」

手塚「今回はたまたま役に立てたが……俺達の力では、彼女達の足を引っ張るだけだ」

手塚「俺達はテニスをやるために来た。決して魔女退治に来たわけではない」

手塚「これ以上は、関わるべきではないだろう」

越前「……そっスね」

ほむら(越前リョーマ……手塚国光……)

ほむら(彼らの力は、もしかしたらこのループを打破する力に……)

ほむら(でも……彼らはテニスをしに来ただけ。戦いに誘うのは難しい……)

さやか「あ、これこれ。青春学園って今年の全国優勝校だよ」

まどか「うわぁ……越前くんも手塚さんも凄いなぁ」

ほむら「何見てるの……テニス雑誌?」

まどか「うん。テニス部の中沢くんから借りたんだ」

さやか「決勝はシングルス3、ダブルス2を落としてからの大逆転! カッコいいなぁ」

ほむら「へぇ……ん?」

ほむら「……ダブ、ルス……? そうか、もしかしたら……」

中沢「えっと……何で巴先輩と試合を?」

マミ「暁美さん、私テニスなんてやったこと……」

ほむら「心配ないわ。私の予想が正しければ、最低でもいい勝負くらいは出来るから」

さやか「でも中沢って、テニス部の2年生エースだよ?」

まどか「マミさんは初心者みたいだし、とても……」

ほむら「…………」

マミ「え、えっと……よろしく、お願いします……」

中沢「何だか知らないけど……いきますよ、巴先輩!」



審判「ゲームセット、ウォンバイ巴! 6-4!」

マミ「うそ……勝っちゃった……」

中沢「そ……そんな……」

ほむら(やっぱり……)

マミ「わざわざ呼び出してごめんなさい、手塚くん、越前くん」

手塚「構わないが……何の用だ?」

ほむら「手塚国光……あなた、今日はテニスの調子がずいぶん良かったりしなかった?」

越前「確かに部長、今日はゾーンや零式ドロップのキレが上がってましたね」

手塚「あぁ。合宿の成果が早くも出たものだと思っていたが……」

ほむら「それもあるかもしれないけど、それ以上に大きい原因があるわ」

ほむら「それは……魔法少女と一緒に、魔女と戦ったことよ」

手塚「……どういうことだ?」

ほむら「ダブルスのパートナーは、お互いの技やスタイルを覚え……自らも使えるようになる」

ほむら「あなたと巴マミは昨日、共に……いわばダブルスを組み、魔女と戦った……」

ほむら「その影響で、あなたの魔法の力も強くなり……今日、調子が向上したのよ」

越前「でも俺ら、魔法なんか使えないけど……」

ほむら「いえ、あなた達のテニスは常人には不可能……はっきり言って、魔法そのものよ」

マミ「そして私も、たぶん手塚くんの影響を受け……テニスが上達したわ」

ほむら「巴マミは全くの初心者だったけど、今日テニス部のエースに勝利を収めた」

手塚「全くの初心者が、経験者に……!?」

ほむら「これでハッキリしたわ。私達と共に戦うことで、あなた達はテニスが強くなる」

ほむら「だから一緒にダブルスを組んで、魔女と戦ってほしいの」

マミ「暁美さんは越前くん。そして私は……手塚くんと」

手塚「……しかし、俺は大した戦力になるとは思えない。巴にメリットがなさすぎるだろう」

マミ「いいのよ。手塚くんは私を助けてくれた……その恩返しができるなら、ね」

マミ「それに……やっぱり仲間がいると、心強いもの」

手塚「……越前」

越前「俺は……それで強くなれるっていうなら、やりますよ」

手塚「そうか……そうだな、なら……よろしく頼む、巴」

越前「お世話になるっス、暁美さん」

ほむら「えぇ、こちらこそ。越前リョーマ」

さやか「合宿所の様子を見に来たけど、やっぱり越前くんも手塚さんも凄いなぁ……」

さやか「あたしも……魔法少女になったらあの中の誰かと組むのかな……」

ヒューン・・・・

さやか「魔法少女、かぁ……やっぱり怖い……」

ヒューン・・・

さやか「でも……恭介……」

ヒューン・・

さやか「あたしは……」

ゴンッ!!

さやか「あだぁっ! な、何!? テニスボール!?」

さやか「だ、誰! あたしにボールをぶつけた不届き者は!」

切原「だ、大丈夫か!?」

切原「すまねぇ、飛びすぎちまって……」

さやか「あ、あんたねぇ……あれ? もしかして立海大付属の人?」

切原「え、俺のこと知ってんの?」

さやか「うん、この前ちょっとわけあってテニス雑誌を読んでね。ちょっと見覚えあったから」

さやか「王者って呼ばれてる学校で、2年生でレギュラーなんて凄いじゃん」

切原「王者、か……今年は、決勝で負けちまったけどな……」

切原「来年こそは優勝する気だが……その前に、卒業する先輩達を倒さねぇと……」

さやか「先輩達……確か、ビッグ3とか呼ばれてる強い人達がいるんだっけ?」

切原「あぁ。入院してた幸村部長も無事復帰できたし、俺も今以上に強くならないとな……」

さやか「……! ねぇ、あんたはその幸村部長って人に勝ちたいんだよね?」

切原「ん、まぁな」

さやか「もしさ……たとえばの話、なんだけど……」

さやか「その人の病気が絶対治らなくて、でもあんたは治すことが出来て……」

さやか「でも治したら……化け物と戦わなくちゃいけない、ってなったら、どうする?」

切原「はぁ?」

切原「意味が全くわからねぇが……まぁ、治すんじゃねえかな」

さやか「治す、の……?」

切原「やっぱり、幸村部長を超えるのは俺の最大の目標だからな」

さやか「でも……化け物と、戦うことになるんだよ?」

切原「ははっ、化け物となんざ部活で毎日戦ってるさ」

切原「それに……人知れず街を守る正義の味方って感じで、何かカッコいいじゃんか」

さやか「正義の……味方……」

切原「さてと、そろそろ戻らないと真田副部長にどやされちまう。そんじゃな」

さやか「……ちょっと待って!」

切原「あん?」

さやか「あたし、見滝原中学2年、美樹さやか。あんたは?」

切原「立海大付属中学2年、切原赤也だ」

さやか「……もしかしたら、また会いに行くかも。近いうちに、ね」

切原「お、なんだなんだ? 俺のファン宣言かぁ?」

さやか「そんなんじゃないっ! 調子に乗んな!」

まどか「さやかちゃん、魔法少女になったんだね……」

マミ「美樹さん……後悔、ないのね?」

さやか「はい。魔法少女にならなかったら、恭介だけでなくまどかも仁美も助けられませんでしたし」

越前「じゃあ美樹さんも、これからパートナー探しっスか?」

手塚「何なら青学から誰かを紹介してもいいが。強くなれると聞いたら、皆飛びつくだろう」

さやか「あ、それなんですけど……実はもう、心当たりがあるんです」

さやか「てなわけでよろしくね、切原」

切原「……マジかよ」

さやか「3人の化け物を倒すんでしょ? ならあたしとダブルス組めば、強くなれるよ」

マミ「切原くん……無理することはないわ、危険なことには違いないから」

切原「……でも、魔女と戦うことでテニス強くなれるんスよね?」

手塚「うむ、それは保証しよう」

切原「そうか……ならいいぜ美樹、お前とダブルス組んでやんよ」



杏子「新しい魔法少女が、誕生したのか?」

QB「うん。それも君達みたいなパートナーも確保してあるみたいだ」

杏子「ふん、そんなら先輩としてちょっくらご挨拶に行かねーとな」

杏子「あんたも、行くんだろ?」

???「あぁ。どうやら……知り合いも関わってるみたいだしな」

マミ「手塚くん! 手塚ゾーンを!」

手塚「わかった!」ゴゴゴゴゴ・・・

さやか「よし、使い魔が集まった! いけぇ、切原!」

切原「ヒャーッヒャッヒャッ! 赤く染めてやんよぉーっ!」ドゴォ!!

マミ「本体は任せて! ティロ・フィナーレ!」



まどか「すごいすごい! みんな、息ピッタリだよ!」

さやか「へへへ……あたしもだいぶ、板についてきたかな」

手塚「暁美と越前も一緒に来てくれれば、より頼もしかったのだがな」

さやか「見滝原の平和は、この正義の味方さやかちゃんが守っちゃいますからね!」

杏子「正義の味方? 甘っちょろいこと言ってんじゃねーよ」

さやか「だっ、誰!?」

マミ「……彼女は佐倉杏子。魔法少女よ」

杏子「久しぶりだなぁマミ。相変わらず他人のための戦い、なんてお遊びやってんのか?」

杏子「言ったろ? 魔法ってのは、自分のためだけに使うもんだって」

切原「巴さん、何なんですかこいつは!」

マミ「かつては私の弟子だったわ。もっとも……私達とは相容れない考えの持ち主だけど」

手塚「……そのようだな。だが、それよりも……」

手塚「なぜ、お前がこのような考えの少女と行動を共にしているんだ」



跡部「アーン?」

手塚「跡部よ」

杏子「跡部の知り合いか。こいつは数日前に出くわしてな」

杏子「使い魔に喰わせようとしたんだが、返り討ちにしちまいやがって。ったく、意味わかんねぇ」

さやか「使い魔にって……どういうこと!?」

杏子「決まってんだろ。使い魔が人間を喰えば、グリーフシードを孕む魔女になるからな」

まどか「えっ!」

切原「てっ、てめぇ! 跡部さんっ、何でこんな奴に協力してんすか!?」

跡部「俺様はテニスが強くなるために協力してるだけさ。杏子の考えなんざ、どうでもいい」

杏子「こいつとはまだ数回魔女を狩っただけだが、そこそこ強ぇしグリーフシードも取り合いにならない便利な奴だぜ」

杏子「そんなわけで、さやかだっけ? あんたみたいな甘ちゃんに出しゃばられると迷惑なんだよね」

さやか「何よ、やろうっての!」

切原「いいぜ、受けてやんよ!」

跡部「ちょうど近場のコートが空いてる。ついてきな」

審判「ゲーム美樹・切原ペア、3-0!」

まどか「やった! さやかちゃんも切原くんも凄い!」

マミ「そうね……このまま行けるかしら、手塚くん」

手塚「……いや」



杏子「へぇ……ちったぁやるみたいだな」

跡部「もう十分楽しんだか、杏子よ」

杏子「あぁ、いいぜ……お前の眼力(インサイト)、見せてやりな」

手塚「始まる……跡部の、世界が」

さやか「さぁ、このまま……」

ドンッ!!

切原「……っ!」

さやか「い、いきなり氷柱が……反応できない!」

跡部「俺様の眼力(インサイト)は、反応できない死角に氷柱を生み出す」

跡部「そこを突けば……テメェらは絶対に返せねぇってわけさ」

跡部「おい、さやかっつったか……テメェは、何のために魔法少女になったんだ?」

さやか「そ、そんなこと……あんたに関係ないでしょ?」

跡部「フン、当ててやるよ……男だろ?」

さやか「!?」

切原「なっ……そうなのか、美樹!?」

跡部「正義の味方になるとか、ただのこじつけだ……要はその男に、振り向いてほしいだけだろ?」

さやか「そ、そんなこと……」

跡部「隠しても無駄だ。俺様の俺様の眼力(インサイト)は、心の死角だって丸見えさ」

まどか「こ、心まで……手塚さん、そんなことって出来るんですか!?」

手塚「いや、少なくとも以前の跡部にはそこまでの力はなかった」

手塚「佐倉杏子……彼女と共に戦うことで、俺達のように跡部も進化したということか……」



審判「ゲーム佐倉・跡部ペア、5-3!」

「「「「「勝つのは杏子! 勝つのは跡部! 勝つのは杏子! 勝つのは跡部!」」」」」

杏子「さぁ、もう後がねぇぜ」

さやか「わ、私は……」

マミ「手塚くん、もう止めないと!」

手塚「……いや、待て」



切原「……ふざけんじゃねえ」

杏子「あ?」

切原「他人のための願いは身を滅ぼすだぁ? 勝手に決めてんじゃねーよ」

切原「願いなんざ関係ねぇ。美樹は、戦ってんだ……全然知らない、他の誰かを守るために」

切原「自分のために他人を犠牲にするテメーなんかより、よっぽど立派だろうが!」

杏子「……他人のための力は、自分のためにはならねぇよ」

切原「だから、勝手に決め付けてんじゃねえ!」

杏子「事実だ! そいつだって、いずれは身を滅ぼすに決まってる!」

切原「そんなことは、俺がさせねぇ!」

杏子「なっ……」

切原「美樹は……俺の、パートナーだ! お互い支え合うのが……ダブルスってもんだろ!」

さやか「き……切原……」

切原「だから、その美樹を傷つけるような奴は……容赦しねぇ!」

切原「ヒャーッヒャッヒャッ! テメーも赤く染めてやんよぉーっ!」ドゴォッ!!

杏子「ぐぅっ……な、何だ、このパワーは!」



審判「ゲーム美樹・切原ペア、5-5!」

さやか「切原……絶対、勝とうね!」

切原「当然だ!」

跡部「へぇ……面白くなってきたじゃねえか」

跡部「さぁ、大詰めだ。いくぜ」

ドシュゥッ!!

杏子「!? だ、誰だ!?」

越前「ちーっす」

ほむら「その勝負、そこまでよ」

切原「せ、青学の! テメェ、どういうつもりだ!」

越前「いや、俺は暁美さんに付き合ってるだけなんだけど……」

杏子「……あんたも、魔法少女か?」

ほむら「この勝負はここまでよ。これ以上やると、お互い体を壊しかねない」

ほむら「特に……切原赤也、あなた相当無理してるでしょう?」

さやか「そ、そうなの……切原」

切原「……ちっ」

さやか「ったく、何なのよあいつ!」

越前「……そんなひどい奴なの?」

さやか「そうよ! もう、絶対許さない!」

手塚「……それはどうだろうな。ただの悪人とは俺には思えない」

さやか「て、手塚さん! 何言ってるんですか!」

手塚「俺は短い付き合いとはいえ、ある程度巴のことを知ったつもりだ」

手塚「そんな巴の弟子だったならば……ただの悪人に、なるはずがない」

マミ「て、手塚くん……」

越前「それに……跡部さんはちょっと変わってるけど、悪い人じゃないと思うっスよ」

ほむら「…………」



柳「……貞治」

乾「あぁ……今回も、いいデータが取れた。だが……」

柳「悲劇の可能性も、孕んでいる。何とかせねば……」

杏子「ちくしょう! なんだあいつら、マジでムカつくな!」

跡部「たいそうご立腹じゃねーか、杏子よ」

杏子「当たり前だ! あいつら、言ってもわからねぇし……」

跡部「ムカつく理由はそれだけか?」

杏子「……どういう意味だ?」

跡部「杏子……お前がそう思うのは、あいつが以前の自分と被って見えるからだろう?」

杏子「……何で、お前がそれを知ってんだ?」

跡部「当然だ。パートナーのことはよく見える」

跡部「それに、忘れたのか? 俺様の眼力(インサイト)の前では……何も誤魔化せねぇって」

杏子「……ちっ。とんだパートナーを選んじまったな……」

手塚「さぁ、今日も油断せずに行こう」

切原「ん、どうした美樹? 巴さんも、何だか顔色が悪いっスけど」

マミ「…………」

さやか「……別に」

まどか「マ、マミさん……さやかちゃん……」

マミ「……行きましょうか」

切原「な、何だ一体……」

まどか「…………」

手塚「鹿目……何か、知ってるのか?」

まどか「はい……実は昨晩、さやかちゃんと杏子ちゃんが……」



手塚「そんなことが……!」

切原「そ、それって……ゾンビにされたようなもんじゃねえか!」

まどか「だから、二人ともショックを受けて、それで……」

手塚「……何と、いうことだ……」

越前「……それ、マジ?」

ほむら「えぇ、本当のことよ。魔法少女の本体は、このソウルジェム」

越前「……暁美さんは、それで平気なんスか?」

ほむら「もう、諦めてるわ。私はまどかを助けられれば、それでいいの」

越前「嘘でしょ……あんた、強がってるだけだ」

ほむら「……何で、あなたにそんなことがわかるの?」

越前「わかるよ。だって、暁美さんは俺のパートナーなんスから」

ほむら「……話を続けるわ。ソウルジェムは心の歪みと共に濁っていく」

ほむら「そして、完全に濁りきった時、魔法少女は……」



柳「魔法少女は魔女になる……と、お前は言う」

ほむら「!?」

越前「先輩方?」

乾「頼みがある……データ収集のためグリーフシードをひとつ、譲ってもらえないだろうか?」

柳「それと、ソウルジェムも見せてほしい」

切原「くそっ! どうにかなんねぇのかよ!」

マミ「き、切原くん、落ち着いて!」

杏子「マミ……お前は、大丈夫なのか?」

マミ「大丈夫じゃないわ……でも、今は美樹さんが……」

まどか「さやかちゃん……グリーフシード、真っ黒だった……」

手塚「……もう、美樹は限界に近い……どうすれば……」

切原(俺は……何にもできねぇのか)

切原(このまま壊れていく美樹を、ただ見ているだけしかできねぇってのかよ……)

切原(ちくしょう……!)

柳「赤也……困っているようだな」

切原「あ……柳先輩」

柳「美樹さやかのこと……大体わかった」

切原「せ、先輩も魔法少女のことを知ってるんスか!?」

柳「あぁ、貞治と共に調べてな。いくつかわかったことを教えよう」

柳「美樹さやかの願い……それと、魔法少女と、魔女のことを」

切原「そ、そんなことが可能なんスか……?」

柳「そちらの方は貞治が取り掛かっている。暁美ほむらから得たグリーフシードのおかげで、研究は順調だ」

柳「だが……それでも、間に合う確率は32%といったところだろう」

切原「…………」

柳「美樹さやかが魔女になってしまっては、全てが終わる。だからそれまで、時間を稼いでくれ」

切原「……俺に、出来るんスか?」

柳「出来るとしたら、パートナーであるお前だけだ。頼んだぞ、赤也」



切原(……美樹……)

切原(……いや、諦めてたまるか! 絶対に美樹を、魔女になんかさせねぇ!)

切原(俺は美樹を助ける! でもあの様子じゃ、もう俺が何を言っても……)

切原(……俺が、何を言っても……)

さやか「確かに私は何人か救いもしたけどさ……その分、恨みが溜まって」

杏子「さ、さやか……」

さやか「誰かの幸せを願った分、誰かを呪わずにはいられない……魔法少女って、そういう仕組みだったんだね」

杏子「おい、さやか!」

さやか「あたしって、ほんと……」



恭介「待ってくれ、さやか!」

さやか「え、きょ、恭介!?」

切原「悪ぃ、美樹……上條恭介は、俺が呼んだんだ」

マミ「美樹さん、よかった!」

さやか「み、みんなも!? 何で!?」

恭介「さやか、聞いたよ……魔法少女のこと、全部」

さやか「う、嘘……」

恭介「すまない、知らなかったよ……さやかが、こんなことになってるなんて……」

恭介「全部、僕のために……こんな目に……」

さやか「恭介……」

さやか「でも……恭介は、嫌だよね……こんな体の、あたしなんか……」

恭介「そんなことはない!」

さやか「!?」

恭介「魔法少女とかどうでもいい! 僕は、決してさやかを見捨てたりなんかしない!」

さやか「きょ、恭介……」

恭介「だから……これ以上、自分を傷つけないでくれ……」

さやか「でも……こんな体の、あたしなんか、愛して……」



柳「愛してくれないでしょ……と、お前は言う」

乾「待たせたな、みんな」

杏子「だ、誰だお前ら!」

切原「柳先輩!

手塚「乾……」

跡部「なんだ、お前らも絡んでたのか?」

越前「先輩方が来たってことは……」

ほむら「そう……完成したのね」

乾「あぁ。暁美のソウルジェムとグリーフシードのおかげで何とかな」

柳「魔力傾度、構成成分、水分含有度……解析は全て完了した」

乾「そして作り上げた、この超特性乾汁を飲めば……」

乾「魔法少女の魂が、ソウルジェムから肉体に戻る確率……100%」

さやか「!!!!!」

マミ「そ、そんなことが……」

乾「嘘かどうか……試してみるといい」スッ

杏子「よ、よし……じゃあ、あたしが……」

杏子「ぐぇっ、まずっ! で、でも食い物は粗末には……」

柳「……全部、飲んだな。ソウルジェムはどうだ?」

杏子「……ない……あ、あたし……本当に、普通の体に……」

マミ「……嘘……」

さやか「あ、あたし……これで……」

切原「や……やったな、美樹!」

乾「……よし、4人とも全員飲んだな」

ほむら「みんな無事に治ったのはいいけど……味の方はもうちょっと何とかならなかったの」

マミ「うぅ……まだ口の中が気持ち悪いわ……」

越前「諦めた方がいいっスよ」

さやか「ねぇ、恭介……」

恭介「…………」

さやか「あ、あたしね……」

切原「……ちょっと待った、美樹」

さやか「切原、何?」

切原「こうなった以上、俺ももう隠しておくわけにはいかねぇ」

切原「なぁ、美樹……魔法少女のこと上條恭介にバラしたの、恨んでるか?」

さやか「え……いや、いいよ。隠しておこうとはしてたけど……」

切原「心配すんな。上條恭介は何も知らねぇ」

さやか「……は?」

切原「あいつは……魔法少女のことも、魔女のことも、何一つ知らないまんまさ」

さやか「き、切原、何言ってるの?」

さやか「恭介は、そこに……」



仁王「プリッ」

さやか「へ?」

切原「俺の先輩の仁王雅治って人だ。変装とか得意でさ、この人」

仁王「よろしゅうな」

さやか「…………」

切原「乾汁が完成するまで時間を稼ぐ必要あったけど、俺じゃどうしようもねぇから……」

仁王「ほな、俺は帰るで。後はゆっくり話し合ってな」

さやか「…………」

切原「かといって上條恭介を関わらせるのは、美樹が嫌がると思ったんで……」

さやか「…………」

切原「わけを話して、協力してもらって……あ、あの……美樹……さん?」

さやか「…………」

切原「もしかして……怒ってらっしゃいます?」

さやか「……当ったり前でしょこのバカああああああああああああああ!」

まどか「き、切原くん……大丈夫?」

切原「だ……ダメ、かも……」ピクピク

越前「まだまだだね……」

さやか「ふんっ、女の子の気持ちを弄んだ罰よ」

マミ「美樹さん……切原くんも、あなたのためにやってくれたのよ?」

さやか「……わかってますよ、そんなこと」

さやか「切原……本当にありがとね。あんたがいなかったら、あたし……」

さやか「あんたがパートナーで……本当によかった」

切原「!」ドッキーン

切原「べ、別にいいよ! 当然のことだし!」



越前「一件落着っスね」

ほむら「えぇ……これで残る関門は……」

ほむら「ごめんなさい、こんな夜遅くに」

手塚「いや、気にしないでくれ」

さやか「みんなは……明後日に、帰るんだよね」

跡部「あぁ。そして明日、ワルプルギスの夜っていう魔女が来るんだろ?」

マミ「……本来、これは私達の問題。あなた達には全く関係のない話よ」

ほむら「だけど……お願い。できることなら……明日、一緒に戦って」

切原「……はっ、何をいまさら」

手塚「心配ない。言われなくとも、こちらは全員そのつもりだ」

跡部「史上最強の魔女か……面白そうじゃねえか」

乾「ふむ……いいデータが取れそうだ」

柳「及ばずながら、力になろう」

まどか「みんな……ありがとう」

越前「だから言ったでしょ、暁美さん。絶対に協力してくれるってさ」

ほむら「それじゃ、みんな……明日、頼むわね!」

マミ「ごめんなさいね、送ってもらって」

手塚「いや、当然のことだ。夜に女子を一人歩きさせるわけにはいかない」

マミ「ふふっ。私なら魔法少女だから心配ないけどね」

マミ「ねぇ……手塚くんは、これから先どうするの?」

手塚「予定としては、プロを目指してドイツへ旅立つつもりだ」

マミ「プロかぁ……凄いね、手塚くんは。将来をしっかり見据えてるんだ。私なんて何も……」

手塚「何も考えてないということは、考える必要がない……様々な未来が待っているということだ」

手塚「俺達はまだ中3だ。これからじっくり考えていけばいい」

マミ「そう、ね……私達、これから未来が大きく広がってるんだよね」

マミ「そんな未来があるのも……手塚くんがあの時、助けてくれたからかな?」

手塚「……巴……」

マミ「手塚くん……明日、絶対勝ちましょうね。お互いの、未来のために」

手塚「……あぁ、そうだな」

杏子「お前、怖くねぇのか? ワルプルギスの夜が」

跡部「アーン? 杏子、お前ビビってんのか?」

杏子「そういうわけじゃねえけど……別にお前が戦う理由はねぇだろ」

跡部「でも、お前にはあるんだろう? だったら、俺様も戦わなきゃな」

杏子「……パートナー、だからか?」

跡部「それだけじゃねえ……庶民の暮らしを守るのも、王(キング)の務めだぜ」

杏子「キングって……はぁ、死ぬかもしれねぇってのによくやるよ」

跡部「死なねぇよ。俺様が負ける姿が、想像できるか?」

跡部「ほら、聞こえるだろう……俺達を、讃える声が」


「「「「「勝つのは杏子! 勝つのは跡部! 勝つのは杏子! 勝つのは跡部!」」」」」


杏子「……あぁ、聞こえるよ」

跡部「明日も、特等席で見せてやるよ……俺様の王国をな」

杏子「へっ……頼りにしてるぜ、王様!」

さやか「ねぇ、切原。あたしね……恭介に、告白したよ」

切原「……そ、そうか……それで……」

さやか「フラれちゃった。仁美っていう、あたしの友達と付き合ってるよ、今は」

切原「……そいつは……残念だったな」

さやか「うん……でも、もやもやが取れてスッキリした気分なんだ」

さやか「こんな気持ちになれたのも……切原のおかげだね。本当に、ありがと」

切原「い、いいって! そんなしおらしい美樹を見てると、調子狂うぜ!」

さやか「ま、しばらくは失恋のショックもあるかもしれないけど……新しい恋にでも期待しようかな。あはは」

切原「そうか……へへっ、何なら代わりに俺なんかどうだ?」

さやか「……いいの?」

切原「いっ!?」

さやか「なーんてね! ドキッとした?」

切原「みっ……美樹、テメェーっ!」

さやか「あははっ! 明日がんばろーね、切原!」

パコーンパコーン・・

越前「暁美さん、いきなりテニスに誘うなんてどうしたんスか?」

ほむら「……そんな気分だったのよ」

越前「ふーん……ねぇ、あんたは何回もワルプルギスの夜と戦ってきたんでしょ?」

ほむら「……えぇ。正直私一人の力じゃ、どうしようもないわ」

ほむら「でも……今回は、魔法少女が全員揃っている絶好の機会。絶対に勝つわ」

ほむら「それもこれも……全部、あなたと出会って始まったのよね」

越前「…………」

越前「6-0と……俺の勝ち。テニスの方は、まだまだだね」

ほむら「……初心者なんだから、少しは手加減しなさいよ」

越前「嫌っス」

越前「暁美さん……明日、俺らが組む最後のダブルスなんスよね」

ほむら「……そうなるわね」

越前「あんたと過ごした期間……危ない目にも遭ったけど、楽しかったよ」

ほむら「そうね……私も、楽しかったわ」

越前「また機会があったら、一緒に魔女退治行ってもいいよ……暁美さん」

ほむら「……ほむらでいいわ」

越前「……ほむらさん。明日、頼りにしてるっスよ」

ほむら「こちらこそ……リョーマ」



柳「明日、全てが終わる」

乾「勝率……現段階では測定不能。どちらに転ぶか、俺もわからない」

まどか「いえ、勝ちますよ……絶対!」

ほむら「ついにこの時が来たわね……」

越前「これが最後の戦いっスね」

マミ「みんな、覚悟はいいかしら」

手塚「あぁ、いつでも大丈夫だ」

杏子「跡部、調子はどうだ?」

跡部「問題ない。俺様の劇場の開幕だ」

さやか「跡部さん、ホントにブレませんね……」

切原「この人はこういう人だ。気にするだけ無駄だぜ」

柳「鹿目まどか……わかっているな」

まどか「はい……私、絶対に契約しません! みんなを信じてますから!」

乾「……来たぞ!」



ワルプル「アハハハハハハハハ!!」

乾「最後の試合……開始だ」

跡部「最強の魔女だろうと例外はねぇ……俺様の眼力(インサイト)の前ではな!」

跡部「俺の打球の方から攻撃しろ! そこが奴の死角だ!」ドゴォッ!!

杏子「サンキュー、跡部!」

マミ「みんな、いくわよ!」ドンドン!!

切原「赤く染めてやんよぉーっ!」ドゴォッ!!

跡部「俺様の突いた死角は、反応も反撃もできねぇ……スケスケだぜ!」



まどか「あ、あの……柳さんと乾さんは……」

柳「この戦いは、今まで苦難を共にした……魔法少女とテニスプレイヤーのもの」

乾「もはや俺達の入れる領域じゃあない」

まどか「は、はぁ……」

ワルプル「アハハハハハハハハ!!」ドドォッ!!

まどか「ビルの破片が! 危ない!」

手塚「任せろ!」ゴゴゴゴゴ・・

乾「手塚ゾーンで集めただと!? あれでは手塚が……!」

手塚「越前、百錬自得の極みだ!」

越前「うっす!」タンッ

まどか「か、返した!?」

柳「あれは百錬自得の極み……かつて戦った相手の技を使えるようになる状態」

乾「なるほど、不二の……スマッシュを無効化する羆落としで、ビルの破片を返したのか」

柳「そこまで出来るようになるとは……魔法少女とのダブルスで得たものは、計り知れないな」

越前「まだまだだね」

それ無我じゃね?

>>244
ごめん間違えた 無我の境地だ

まどか「みんな、凄く息が合ってる……」

乾「これは、間違いない……4組とも全て同調(シンクロ)している」

柳「お互いの動きが手に取るようにわかる……本当にいいコンビだ」

まどか「じゃ、じゃあこのまま……」

柳「……いや、そろそろ……」



使い魔「キャハハハハハハハハハ!!」ゾロゾロ

乾「魔女の反撃が、始まる」

さやか「使い魔!?」

杏子「くっ……こいつら、強ぇぞ!」

手塚「さすがは最強の魔女……使い魔の強さも他の魔女のものとは比べ物にならない」

マミ「でも、このくらいなら何とか対処できなくは……」



「「「「「「キャハハハハハハハハハ!!」」」」」」ゾロゾロゾロゾロゾロ

ほむら「なっ!?」

マミ「そ、そんな……なんて、数なの……」

越前「これは……20、30……いや、もっと……」

跡部「くっ……この強さでこの数は、さすがにきついぜ……」

さやか「どっ、どうするの!?」

杏子「くそっ……やるしかねぇが……」

使い魔「キャハハハハハハハハハ!!」ドガッ

さやか「きゃっ!」ズザッ

切原「さやか、危ない!」

使い魔「アハッ!!」ブンッ

ほむら「まずい!」

まどか「さ、さやかちゃーん!」



スカッ



さやか「!?」

使い魔「アハ・・?」ブンッ ブンッ

さやか「は、外した……?」

ほむら「な、何してるのこの使い魔……虚空に武器を振り続けて……」

手塚「これは……」

切原「ま、まさか!?」



幸村「お望みなら、視覚以外も奪おうか?」

切原「ゆ、幸村先輩!」

幸村「待たせたね……みんな」

跡部「幸村……なぜここに?」

柳「俺と貞治がわけを話して呼んでおいた。きっと、力になってくれると思ってな」

幸村「おっと、呼ばれたのは俺だけじゃないよ」

手塚「何だと?」



銀「一式波動球!」

田仁志「ぬうううううう! ビッグバン!」

真田「侵略すること火の如し!」

大石「青春学園中テニス部6名、参加させてもらう!」

幸村「立海大附属中テニス部6名、同じく」

忍足「氷帝学園中テニス部7名もや!」

白石「四天宝寺中テニス部6名、忘れんといてや!」

木手「比嘉中テニス部5名、お待たせしました」

橘「不動峰中テニス部3名、共に戦おう」

千石「山吹中テニス部……阿久津を加えて4名だな」

観月「その他もろもろ7名、よろしくお願いします」



真田「総勢44名、新たに参戦する!」

不二「使い魔は僕達に任せて……」

阿久津「あのデカブツをブッ倒せ、チビ助!」



越前「みんな……」

ほむら「あなた達……お願い、任せたわ!」

マミ「いける……いけるわよ、みんな!」

手塚「あぁ、このまま油断せずに行こう!」



まどか「やった……テニス部の人達のおかげで、また形勢逆転した!」

柳「あぁ、このままいけば……」

乾「だが、一つ気になることがある……」

柳「あぁ、あの舞台装置……なぜか上下が逆に……」



ワルプル「アハハハハハハハ!!」グルン

まどか「は……反転した!?」

ワルプル「アハハハハハハハ!!」ゴォッ!!

切原「ぐぅっ!」

さやか「な……何て力なの……」

QB「よく頑張ったよ、君達は」

まどか「キュゥべえ!?」

QB「あれが本気のワルプルギスの夜……その力は想像を絶する」

QB「最初から、君達のかなう相手じゃなかったんだ。間違いなく、全員殺されるね」

まどか「そ……そんな……」

QB「だからまどか、僕と契約して……」



ほむら「諦めちゃダメ!」

まどか「ほ、ほむらちゃん!」

ほむら「試合は最後の最後まで勝負はわからない……そうでしょう、リョーマ」

越前「……えぇ、そっスね。ほむらさん」

ほむら「たとえ相手が遥かに強くても……絶対に諦めない。それを、私は学んだ」

ほむら「わずかに残った最後の重火器……時を止めて全て、ワルプルギスの夜に叩き込む!」

ほむら「いくわよ!」





ドゴォォォォォン!!

杏子「やったか!?」

跡部「……いや」

ワルプル「アハハハハハハハ!!」

マミ「む……無傷ですって……」

QB「ここまでだね。これにてゲームセット、ウォンバイワルプルギスの夜さ」

ほむら(そんな……もう、勝てないの……)

ほむら(ここまで、ここまで来たのに……結局、まどかを救えないの)

ほむら(戦うのって……魔法少女って……)

ほむら(こんなに……辛かったっけ)



越前「ねぇ……諦めるの?」

ほむら「リョ、リョーマ……」

越前「鹿目さんを助けるんスよね。それなら、もっと頑張ってくださいよ」

越前「そのために……魔法少女になったんでしょ?」

ほむら「…………」

ほむら(そういえば……魔法少女になった時は)

ほむら(まどかに守られる私から、まどかを守れる私になるって張り切ってたわね)

ほむら(他のみんなと協力して……色々工夫して、戦って……)

ほむら(役に立った時は……本当に嬉しくて……)

ほむら(……あ)

ほむら(なんだ……)



ほむら「魔法少女って、楽しいじゃない」



カッ!!

さやか「なっ、何!?」

マミ「暁美さんの体が……光って……!」

QB「こ、これは……まさか!?」

ズガァッ!!

ワルプル「!!」

切原「な、何だ……今の閃光。暁美の攻撃か!?」

マミ「そんなはず……暁美さんの力は時を操るだけ……あんな攻撃は……」

QB「いや……もう、そんな常識は暁美ほむらには通用しない」

QB「彼女は……目覚めたんだ。最強の……天衣無縫の極みに」

杏子「天衣無縫の……極み……?」

乾「天衣無縫の極み……それに目覚めた者に敵はない」

柳「テニスにおいても半ば伝説となっているが……魔法少女の世界にも存在したとはな」

まどか「で、でもほむらちゃんは何でいきなり……」

QB「本来……天衣無縫の極みなんて、どの魔法少女も持っていたものさ」

さやか「……どういう、こと?」

QB「君達も最初に魔法少女になった時は、ワクワクしたものだろう」

QB「だが、いつしか戦いに追われ、ある者は絶望し……そのときめきを失っていった」

QB「暁美ほむらは……その時の心を取り戻したみたいだね」

QB「そのきっかけは間違いなく、まどかと……越前リョーマ、彼さ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「どんどんいくわよ!」ドガガガガッ!!

杏子「す、すげぇ……」

跡部「圧倒的じゃねえか、あいつ……」

QB「でも……いくら天衣無縫の極みとはいえ、彼女一人で本気のワルプルギスの夜を倒すのは難しい」

乾「……確かに、その通りだ」

まどか「そ、そんな……」

QB「結局、運命は変えられないということさ」

柳「……それはどうかな」

QB「何だい、まさか暁美ほむらが勝てるとでも」

乾「いや、彼女がワルプルギスの夜を撃破できる確率はせいぜい20%……」

QB「だったら……」

柳「だが……それはあくまでも天衣無縫の極みに目覚めた者が、彼女一人ならばの話だ」

QB「何だって!」

乾「そう、もし彼女と同調(シンクロ)している彼も、目覚めたとしたら……」



ほむら「リョーマ……行けるわね!」

越前「当然」

カッ!!



乾「ワルプルギスの夜を撃破できる確率……100%」

ほむら「ねぇ、リョーマ。戦いながら聞いて」

越前「……何スか?」

ほむら「あなたは……何で、テニスをしているの? 楽しいから?」

越前「なのかな……あと、強い奴らを倒していきたいしね」

越前「テニスでは……誰にも負けたくないんで」

ほむら「……ふふっ。やっぱりあなたは、カッコいいわね」

ほむら「例えるなら……テニスの王子様、ってところかしら」

越前「……いきなり何言ってんスか。それより、トドメいきますよ」

ほむら「……えぇ!」

ほむら「ティロ・フィナーレ!」ドンッ!!

マミ「あ、あれは私の!?」

手塚「無我の境地で、模倣したのか!」

跡部「だが、なぜ上空に……そうか! あれは……ただの、弾代わりってわけか!」

ほむら「リョーマ! あなたとのダブルス、楽しかったわよ!」

ほむら「その手で……決着を、つけなさい!」

越前「うっす!」

QB「越前リョーマが……上空に、飛んだ!?」



越前「サムライドライブ」



ズガァァァァァァァン!!

ワルプル「ア・・ア・・」バチバチ・・

越前「ワルプルギスの夜……」

ワルプル「アアアアアアアアアアアア!!」



ドガァァァァァァァン!!



越前「まだまだだね」

越前「じゃ、俺はこれで……」

ほむら「えぇ……本当に、ありがとうね」

越前「いいっスよ、楽しかったしテニスも強くなれたし」

ほむら「リョーマ……あなたはこれからもテニスを続けるんでしょう?」

越前「そのつもりだけど……」

ほむら「なら、よかったわ。遠く離れてても……活躍は耳にするでしょうから」

越前「群馬と東京じゃ電車一本だし、遠くっていうほど遠くないスけどね」

越前「そろそろバスに戻らないと」

ほむら「そう……」

越前「ほむらさん……次会う時は、1セットくらい取れるようになってて下さいよ」

ほむら「……ふふ、難しそうね」

越前「当然。それじゃ、また……」

ほむら「えぇ、きっとまた会えるわ。さようなら、リョーマ」

越前「……ほむらさんも、お元気で」



ほむら「……またね、リョーマ……」

ほむら「素敵な素敵な……テニスの、王子様」

3年後

まどか「えっと……ここで待ってればいいんだよね」

さやか「うん、そのはずだけど……」

バラバラバラバラ

ほむら「あ、来たわね」

マミ「ヘリでお迎えとは、相変わらずやることが派手ね」



杏子「久しぶりだな、みんな!」

跡部「待たせたな、乗れ。決勝に遅れちまうぞ」

さやか「ユニフォーム似合ってんじゃん、杏子」

ほむら「今はあの名門、氷帝学園高等部の女子テニス部のエースなんでしょう?」

マミ「でも驚いたわ。跡部くんが佐倉さんを引き取ったって聞いた時は」

跡部「乗りかかった船ってやつだ。それより、手塚の様子はどうだ?」

杏子「月一の文通、今でも続けてるんだろ?」

マミ「うん、相変わらずドイツで頑張ってるみたい」

まどか「手塚さんなら、きっとプロになれるよね!」

跡部「さて……そろそろ着くぞ」

まどか「うわぁ……さすがに高校全国大会の決勝ともなると、凄い会場だね」

マミ「今年はどちらが勝つのかしら……昨年優勝の立海か、準優勝の青学か」

さやか「そんなの、王者立海の連覇に決まってるっしょ!」

ほむら「そうかしら。手塚さんがいないとはいえ、今年こそは青学が優勝すると思うわよ」

杏子「はは、お前らは相変わらずだな」

跡部「む……選手入場、始まったな」

さやか「あ、赤也だ!」

まどか「越前くんも……柳さんも乾さんも、みんな元気そうだね!」

幸村「あ、彼女達も来たみたいだね」

柳「赤也……何か美樹さやかに言っておかなくていいのか?」

切原「え? い、いや別に……」

さやか「おーい、赤也ーっ! 聞こえるーっ!?」ブンブン

仁王「お、向こうから手を振って……」

さやか「優勝したら、膝枕してあげるねーっ!」

切原「なっ……」

柳生「ほう……これは頑張らなくてはいけませんね、切原君」

切原「さ、さやかの奴……何て恥ずかしいこと……」

真田「フン……たるんどる!」

ジャッカル「まぁまぁ……」

丸井「こういうのも、面白いんじゃない?」

菊丸「あっちはいいなぁ、華やかで……」

乾「越前、お前も対抗したらどうだ?」

越前「そんなこと言われても……」

ほむら「リョーマぁ!」ブンブン

大石「あ、噂をすれば……」

ほむら「優勝したら、デートしてあげるわよーっ!」

越前「……っ!」

不二「へぇ……」

桃城「かぁ~っ、あんな可愛いコと……羨ましいぜ!」

海堂「……けっ」

越前「……まったく、あの人は……」

まどか「さ、さやかちゃんもほむらちゃんも、凄いね……」

マミ「ふふ……楽しそうで、何よりじゃない」

杏子「ははっ、そうだな」

跡部「お、始まるみたいだな」

ほむら「青学、がんばれーっ!」

さやか「立海、負けるなーっ!」



「それでは、これより高等学校テニス全国大会団体戦決勝を始めます!」

「両チームとも、整列してください!」

「礼!」



「「「「「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」」」」」



END

これにて終わりです。
恋愛要素を混ぜるかは悩みましたが、イケメン×美少女×中学生という組み合わせを考慮して盛り込みました。
お付き合いいただきありがとうございました。

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