恭介「理想の女性? うーん、決闘者かな」(282)
腕が治った上条恭介を追跡する美樹さやか。
公園で志筑仁美と落ち合う恭介。
さやかは物陰に身を潜め、二人の会話に耳を傾けるのであった――。
さやか「…はぁ? 恭介の奴、今、なんて言ったの…?」
仁美「決闘者(デュエリスト)…ですか?」
恭介「実は入院中、音楽だけ聞いてるのも何だからアニメでも観ようと思ったんだけどね」
恭介「親が持ってきたのが、遊戯王シリーズだったんだ」
恭介「昔再放送ちょっと観てたし、カードも少し遊んでたから懐かしいなーと思って観てみると」
恭介「思いの外ハマっちゃってさ」
恭介「やっぱ自分でもカードを触りたくなってきちゃうんだよね」
恭介「でもせっかくデッキを作っても、」
恭介「僕の近場には、あんまり決闘者がいないんだ」
恭介「彼女が決闘者なら一緒に遊べるなと思って」
仁美「そういうことでしたの…」
恭介「志筑さんはどう? やっぱり遊戯王とか、子供っぽいとか思っちゃう?」
仁美「そんな事はありませんわ。実は私も少しは嗜んでおりますもの」
恭介「そうなのかい!?」
恭介「意外だなぁ…」
恭介(志筑さんのような人が”少々嗜んでる”って言うと)
恭介(相当のレベルが期待できちゃうよな)
恭介「一番お気に入りのデッキとかあるかい?」
仁美「そうですわね…。愛着のあるデッキやコンボはたくさんありますが…」
仁美「一番となると悩みますわ…」
恭介(やっぱり、たくさんデッキ持ってるんだ)
恭介(志筑さんと付き合えば、いろんなカードの動かし方が見られて楽しいだろうなあ)
杏子「何じーっと聞き耳立ててんだよ、ボンクラ」
さやか「きょ、杏子…!?」
杏子「このままだと仁美に恭介取られるぞ。いいのかよ」
さやか「えっ!? いや、だって、仁美が告白してる時に私が出ていくってのも変でしょ…!?」
杏子「恭介は決闘に飢えてるって言ってんだろ」
杏子「お前も遊戯王カードなら家に何十枚だか持ってたじゃねぇか」
杏子「私も決闘者だって割り込めよ」
杏子「お前が恭介にオンナとして注目される機会は、今しかねーぞ」
さやか「持ってるって…そりゃあるけど、小学生の頃恭介と遊んでた時のだよ…?」
さやか「今のカードとか全然知らないし…」
さやか「やり込んでそうな仁美とは全然…」
杏子「バカ」
どんっ
さやか「うわあ、押すなぁっ!!」
恭介「さやか!?」
仁美「さやかさん!?」
さやか「うげぇ!!」
さやか(き、気まずい所に混ざっちゃったじゃん…!!)
さやか「え、えーっと…あの、その……」チラッ
杏子(行け、さやか!!)グッ!
杏子(お前も自分が決闘者だと宣言しろ!!)
杏子(決闘者だと名乗ってしまえば、もう揉め事は決闘でしか解決しなくなる!!)
杏子(チャンスが生まれんだぞ!!)
さやか(他人事だと思って好き勝手言うなあ…!!)
恭介「あの、さやか?」
仁美「さやかさん?」
さやか(けど、ええい、ヤケだっ…!!)
さやか「ちょ、ちょっと待ったぁ!! は、話は聞かせて貰った!!」
恭介「何をだい?」
さやか「恭介! 実はね! 私もね、決闘者なんだよ!!」
恭介「!?」
仁美「!?」
さやか「ついでに言うとね、」
さやか「というか、ついでに言うようなことじゃないけどね、」
さやか「私は、恭介の事が好き! 大好き…!!」
さやか(って何言っとんじゃ私はぁぁぁぁ!?)
さやか(緊張したせいか、物凄い状況で告白してるぞ!?)
仁美「…」
恭介「…」
恭介「待ってくれさやか。君が僕を好きだったなんて初耳だ」
恭介「君が決闘者だったなんてことにはもっと驚きだ」
恭介「君と遊戯王の繋がりは、僕と一緒に小学生の頃遊んでたぐらいだと思ってたのに」
恭介(もっと早く言ってくれれば病院で飽きるほど決闘出来たってことじゃないか!!)
さやか「へ、へへん。そういう訳なのだよ、お二人さん!!」
さやか(どういう訳だよっ…!!)
杏子(よく言ったぞさやか!)
杏子(後は仁美の出方を待って…)
杏子(その後はあたしが出ていけばいい)
仁美「…」
仁美「さやかさん」
さやか「何、仁美」
仁美「貴方は本当に決闘者なのですか」
さやか「お、おう。カードくらい持ってるよ」
さやか(今じゃ多分役に立たないのばっかだろうけど)
仁美「…上条君、お聞きになりましたか」
仁美「さやかさんは決闘者だそうです」
恭介「ああ、聞いた…」
仁美「私の気持ちは、先ほど貴方に伝えた通りです」
仁美「しかしさやかさんも貴方に想いを伝えてしまった…」
仁美「本来ならばどちらの気持ちを汲んでお付き合いするかは、上条君に権利があります」
仁美「でも……」
杏子「”二人が決闘者だと明かした以上はその限りではないッッッ!!”」
杏子「そうだよな、お三方」ズイッ
さやか「杏子っ!」
仁美「貴方は、さやかさんのお友達の佐倉杏子さん!!」
恭介「どういう事だい、佐倉さん」
※既に知り合いということにします※
杏子「どうしたもこうしたも無いだろ。二人の決闘者が一つの商品を欲しくなった」
杏子「んで、互いに名乗りを上げてしまった…」
杏子「なら結果の出し方、取るべき道は決まってる」
杏子「恭介。お前も決闘者の端くれなら分かるだろ?」
恭介「…」
恭介(そうだ…)
恭介(佐倉さんの言うことには一部の間違いも無い)
恭介(僕は、決闘者として、強い決闘者を彼女にしたいと公言してしまった)
恭介(そして僕にアプローチをかけてくれた女の子が二人居て、二人共が決闘者だ…)
恭介(もう僕に、選択の権利は無くなってしまってるんだ…)
恭介「分かったよ…」
恭介「僕は、カードの導きに従う。それが決闘者の義務だ」
恭介「そういうことだろう?」
杏子「いい顔になったじゃねぇか」
仁美「私もカードの齎す運命に従います。さやかさんも宜しいですね?」
さやか「ええっ…?」
さやか(なんか、ちょっと何言ってるか分からなくなってきた…)
さやか(その場その場のノリをアドリブで乗り切るのは限界っていうか…)
さやか(どうすりゃいいのよ杏子!?)
杏子(はぁ? まだ腹括ってねーのか?)
杏子(お前は堂々と、仁美相手に決闘を申し込めばいいんだよ)
杏子(勝てば恭介が手に入る。そういうお膳立てをしてやったんだろうが)
さやか(!!??)
恭介「さやか?」
仁美「さやかさん? どうなんですか?」
さやか「ふ……」
恭・仁「「ふ?」」
さやか「ふははははははははははははっ…!!」
さやか「わ、私だって、そりゃあもう、望むところですよ!!」
さやか「見滝原最強の決闘者さやかちゃんが、仁美を倒して恭介をモノにしちゃいますよ!!」
さやか「あはははははははははははははは!!!」
恭介「決闘者らしい気合が入ってるね、さやか」
仁美「強敵の予感がしますわ!」
さやか(……もう、本当にヤケだよ)
杏子「決まりだ。じゃあ勝負は明日の夕方」
杏子「決闘は市内のカードショップ『宝嶋(たからしま)』で行う」
杏子「時間は午後六時でいいな」
杏子「ジャッジはあたしが務める」
杏子「ああ、さやかの連れだからって、さやかに甘い判定とかはしないから信用してくれ」
仁美「ええ。佐倉さんの人間性は信用しています。宜しくお願いしますわ」
杏子「よし。基本ルールは公認大会と同じでいいな」
仁美「ではマッチ戦、サイドは有りで15枚までで」
仁美「禁止・制限も同様で宜しいですか?」
杏子「ああ」
恭介(志筑さんとさやかの決闘かあ。面白い決闘が見られるといいなあ)
さやか(なんか、知らない単語とかガンガン飛び交ってるんだけど、大丈夫か私)
※
解散した一同。
とりあえず、さやかは杏子とマミのマンションへと向かう。
さやか「けど意外だよ」
杏子「あん?」
さやか「杏子って遊戯王に詳しいんだ。あれ本格的にやるとお金かかるんでしょ?」
杏子「別に好きで詳しくなった訳じゃねーよ」
杏子「マミの奴が付き合ってくれって言ってるから、遊んでやってるだけだ」
杏子「遊んでやるって言ったら、デッキはあいつがただでくれたからな」
杏子「たまには二人で大会に顔出したりもしてるんだぜ」
さやか「ふーん」
さやか「マミさん遊戯王やってるんだね。アドバイス貰えるといいなあ」
杏子「その為に行くんだからな」
杏子「まあ、後は……あいつも誘うか」
さやか「あいつ?」
杏子「ほれ、あいつ」
※
杏子の指さす先は、夕暮れの似合う公園であった。
リボンを付けた黒髪の少女が、小さい男の子と遊んでいる…。
ほむら「さあ問題です」
ほむら「タツヤがほむらお姉さんとシンクロした場合、出てくるモンスターは何でしょう?」
タツヤ(…)
タツヤ(ほむら=ふぉみゅら、 ”タツ”ヤ=どらごん…?)
タツヤ(…!!)
タツヤ「しゅーてぃんすたーどらごん!!」
ほむら「そうだね。その通りだよ」
ザッ…。
その時、二人に歩み寄る、別中学の制服姿があった。
???「ご機嫌よう、暁美さんに可愛いお弟子さん。今日もここにいらしたのね」
タツヤ「!!」
タツヤ「ほむねぇ、でゅえるー、でゅえるー!」
ほむら「違うわよタツヤ」
ほむら「相手に決闘を申し込む時は、こういう風にするのよ。よく見てなさいね」
ふぁさっ ←スタイリッシュに髪をかきあげる音
ジャキンッ ←自作デュエルディスク・セット音
ドンッ☆ ←高橋先生風ドヤ顔効果音
ビシッ!! ←相手を思いっきり指さす音
チャラッチャー♪チャラッチャー♪ ←何処からともなく流れ始める『みらいいろ』
http://www.youtube.com/watch?v=dss1fctw97i
ほむら「”歴史を放っておけば世界は滅びる…”」
ほむら「”私はその絶望的な未来を変えるためここにきた”」
ほむら「”私は時空を越え、最善の歴史を探し求める…”」
ほむら「”歴史上のあらゆる可能性を検証し、それを実行するッッ!!”」
織莉子「…!」
織莉子「”最善の歴史ですって…?”」
織莉子「”貴方のやっている事はただの破壊です”」
織莉子「”誰にでも、自分の未来を生きる権利はある”」
織莉子「”人の命を踏み台にする未来など、私は認めないッッ!!”」
ほむら「美国織莉子!!」
織莉子「暁美ほむら!!」
ほむ・織莉「「決闘だッッッ!!!」」
タツヤ「でゅえるだ~っ!!」
さやか「何やってんの転校生…」
杏子「あいつは暇さえあればここであのチビッ子に決闘教えてんのさ」
さやか(って、転校生も決闘者かよ!!)
さやか「…あの他校の人は?」
杏子「ほむらのライバルだってさ。たまにああやって決闘してるよ」
杏子「二人とも顔合わせるとあんなノリになるんだよな」
さやか(互いの意識が強いのか、確かにあの二人のテンション、普通じゃない…)
杏子「お~い」
織莉子「あら佐倉さん」
ほむら「何かしら杏子。人の決闘中に割って入るのはマナー違反よ」
杏子「いいから来い。ちょっと相談があんだよ」
ほむら「…私にサレンダーしろと。決闘者にサレンダーを要求することがどういうことか」
織莉子「………」スッ
ほむら(向こうがサレンダーした!?)
ほむら(私に用事が出来たと見て、気を利かせてくれたというの!?)
織莉子「勘違いしないでね。私もそろそろ帰らないとキリカがお腹を空かせているから」
織莉子「では暁美さん、また今度。坊やもね」
ほむら「ええ…、お疲れ様」
タツヤ「おりねぇ、ばいばーい!」
ほむら(あの女に借りを作ることになってしまったなんて…)
杏子「向こうが降りてくれて良かったじゃねーか」
杏子「坊主の親も迎えに来たみたいだしな。行くぞほむら」
ほむら「はあ。分かったわよ。相談だったかしらね」
ほむら「何の相談かは知らないけど、行くのはどうせ巴マミのところでしょ?」
さやか「うい」
※
――マミ宅到着。
マミ「…で」
ほむら「美樹さやかが上条君を賭けて志筑仁美と決闘することになったと」
さやか「まあ、成り行きで…」
さやか「あ、と言っても、戦績は超重要なんで!!」
さやか「お二人のお力を借りれればなぁ、と思いまして…」
さやか「仁美はけっこう強い!…と思います」
マミ「勿論、いいわよ。後輩の恋がかかってるんだし」
マミ「それに趣味の時間を分かち合える人が増えるのは歓迎だわ」
ほむら「私は正直、美樹さやかの恋がどうなるかなんて知ったこっちゃ無いんだけど」
ほむら「私が協力しなかったからという理由で円環されても目覚めが悪いわ」
ほむら「一応協力してあげるわよ」
さやか「おお、やったあ!!」
マミ「まず美樹さん、どの程度まで遊戯王を知ってるの?」
マミ「そこを聞いておかないことにはアドバイスも出来ないわよね」
さやか「とりあえず基本的なルールと融合召喚くらいまでは…」
マミ「ああ、シンクロ、エクシーズとかが分からないのね」
さやか「そうそう! 白いのとか黒いのとかあるらしいじゃないですか、最近!」
ほむら「エクシーズはともかくシンクロ召喚も登場したのはけっこう前なのにね」
マミ「やっぱり融合以前とシンクロ以後の知名度って、大きな差があると思うわよ」
マミ「gxでテーマになった融合自体は、原作からあるでしょう」
マミ「一方5d'sやzexalから新登場したシンクロやエクシーズは、その作品からだもの」
マミ「dm時代に一度辞めた人が仮に戻ってくる場合、gx時代とそれ以降では
戻ってきやすさが全然違うんじゃないかしら」
さやか「まあ、私がその通りですよ」
杏子「で、どうすんだ? シンクロ、エクシーズから教えんのか?」
マミ「まずそこを教えないと話にならないでしょうね」
マミ「その後でデッキのカテゴリーについて説明して」
マミ「美樹さんのプレイスタイルに合ってそうなのをチョイスするべきじゃないかしら」
さやか「お願いします~!!」
※シンクロ召喚、エクシーズ召喚の説明シーンは割愛します※
マミ「だいたい分かったかしら?」
さやか「はい!つまり融合デッキは今はエクストラデッキという名前になっていて、」
さやか「融合モンスターだけでなく、シンクロモンスターとエクシーズモンスターも入る!」
さやか「シンクロモンスターは、チューナーモンスターとそれ以外のモンスターをリリースして、」
さやか「エクシーズモンスターは、同じレベルのモンスター2体を重ねて特殊召喚できる!」
さやか「デッキによってそれらを上手く使い分けて勝負を掴めってことだよね! 簡単簡単!」
ほむら「美樹さやかのくせに意外と理解が早かったわね」
杏子「まあ、このくらいはさやかでもすぐ覚えられるレベルだったってことだろ」
さやか「何を!?」
マミ「こらこら、喧嘩しないの」
ほむら「まあ、次はデッキ選びに入る訳だけど」
ほむら「一番重要なのは環境を知ることだと思うわ」
さやか「環境?」
ほむら「今のテーマの使用率や、そのデッキ内容の傾向とでも言えばいいのかしらね」
ほむら「カードゲームの強さなんて相対的なものだから、」
ほむら「今の環境下でどんなデッキの使用率が高いのかを調べておくことは大切なのよ」
ほむら「遭遇率の高い、強いデッキに何の対抗策も持たずに戦いを挑むのは無謀の極み」
ほむら「自分がどんなデッキを使うにしろ、環境トップ組への対策は必須になる」
杏子「環境つってもなー」
杏子「ぶっちゃけ今ってあれじゃん」
杏子「【甲虫装機(インゼクター)】」
杏子「これの時代だろ」
ほむら「そうね。まあ必ずしも【甲虫装機】一強という訳ではないのだけれど」
ほむら「今の決闘環境は【甲虫装機】を中心に回っていると言っても過言ではないわ」
ほむら「それは【甲虫装機】に有利な【hero】の使い手が急増し」
ほむら「【甲虫装機】の餌食になるデッキが激減し」
ほむら「各デッキのサイドも【甲虫装機】意識に偏ってるところから明らか」
ほむら「今、時代を【甲虫装機】抜きで語ることは決してできない…」
ほむら「いえ、むしろ大【甲虫装機】時代そのもの!」
杏子「ほむらもゼクラー(【甲虫装機】を愛用している人を見滝原ではこう呼ぶ)だよな」
ほむら「ええ。見る?」
マミ「……」
さやか(あれ?なんだか急にマミさんの顔つきが…?)
【ほむゼクター!】
メイン:40 エクストラ:15 サイド:15
モンスター18枚
『甲虫装機 ホーネット』×3枚 『甲虫装機 ダンセル』×3枚
『甲虫装機 センチピード』×3枚 『甲虫装機 グルフ』×3枚
『甲虫装機 ギガマンティス』 『ダーク・アームド・ドラゴン』
『カードカー・d』×3枚 『エフェクト・ヴェーラー』×2枚
魔法12枚
『大嵐』『精神操作』『死者蘇生』『月の書』
『強欲で謙虚な壺』×3枚 『闇の誘惑』『禁じられた聖槍』
『サイクロン』×3枚 『おろかな埋葬』
罠10枚
『神の宣告』『神の警告』×2枚
『激流葬』×2枚 リビングデッドの呼び声』×2枚
『サンダー・ブレイク』×2枚
exデッキ15枚
『no.12 機甲忍者クリムゾン・シャドー』『no.16 色の支配者ショック・ルーラー』
『no.17 リバイス・ドラゴン』『no.30 破滅のアシッド・ゴーレム』
『no.61 ヴォルカザウルス』『インヴェルズ・ローチ』
『ヴェルズ・ナイトメア』『セイクリッド・トレミスm7』 『ダイガスタ・エメラル』
『ラヴァルバル・チェイン』『虚空海竜リヴァイエール』『甲虫装機 エクサスタッグ』
『始祖の守護者ティラス』『迅雷の騎士ガイアドラグーン』『発条機雷ゼンマイン』
サイドデッキ15枚
『スノーマン・イーター』×2枚 『ライトロード・ハンター・ライコウ』×2枚
『ライオウ』×2枚 『冥府の使者ゴーズ』
『自立行動ユニット』×2枚 『禁止令』×2枚 『オーバー・スペック』
『マインド・クラッシュ』×2枚 『転生の予言』
ほむら「まあ、別に珍しくもない普通の【甲虫装機】なんだけどね」
ほむら「サイドはわんことか雪だるまとか、対ヒロビ意識を強くしてるわ」
さやか「たまに出てくる言葉だけど、サイドって何?」
杏子「サイドデッキ。公認大会は三回戦なんだけど、二回戦目以降に使える予備カードだ」
杏子「一回戦で相手の使うデッキを知ることができるだろ?」
杏子「二回戦目以降は、自分は15枚まで用意出来るサイドデッキとカードを入れ替えて、
相手に相性の良い組み換えにすることが出来る」
さやか「じゃあヒロビは?」
杏子「【heroビート】ってデッキがあんだよ」
杏子「さっきほむらも言ってた、インゼクに相性が良いデッキだ」
ほむら「後はミラー戦意識の『自立行動ユニット』」
ほむら「若干古い感もあるけど、なんだかんやで便利よ」
さやか「ミラー戦って?」
杏子「同じテーマ同士で戦うミラー・マッチの事だ」
杏子「【甲虫装機】は今使用率が高いからな」
杏子「自分以外の【甲虫装機】に当たった時、有利に戦えるように手を打つってことだ」
さやか「んー、けどこの【甲虫装機】って、やっぱモンスターは知らない名前ばっかりだなあ」
さやか「なんか虫ばっかりで気持ち悪いし」
ほむら「気持ち悪い言うな。火器で戦ってるとこに親近感を見出したのよ私は」
さやか(自分の武器は弓のくせに)
さやか「で、これ、強いの?」
ほむら「ええ。伊達に環境トップと言われていないわよ」
杏子「強い。つーか、チート? ボンヤリしてたら、気がついたら負けてる、みたいな」
ほむら「多分次はがっつり規制されるでしょうし、今が華のような気もするけどね」
マミ「うおおおおおおおあああああああああああああああああああああああッッッ!!」
さやか「マミさん!?」
さやか「転校生、マミさんの様子がおかしくなった!!」
ほむら「放っておきなさい。軽い発作だわ」
さやか「ええっ!?」
ほむら「【甲虫装機】を目の敵にしている人の症状よ」
マミ「私が…私達が……私とこの子達が、何をしたって言うのよ!?」
マミ「セットカードが…セットカードがホネに食われる!! 門も食われる!!」
マミ「次元はやめて!! くらやミラーやめてぇ!!」
マミ「悪いのは虫なのよ!! 何故私達までこんな目に遭わなきゃならないの!?」
マミ「スキドレを積んだら、レイヴンを抜かなきゃしょうがないじゃない!!」
マミ「おまけにそのスキドレが来なきゃ、死ぬしかないじゃない!!」
マミ「いやあああああああああああああ!! 私のグラファが除外されたああああああ!!」
マミ「トランス・デーモン……トランス・デーモンはどこぉ…?」
杏子「うっせーなー。インゼク出る前までは散々暴れたんだからもういいだろー」
杏子「つっても当時はtg代行が首位だったかな?(うろ覚え」
ほむら「今でもたまに役には立ってるわよ?」
ほむら「大会とかじゃ邪魔なヒロビ潰してくれるから」
さやか(何を話しているのかさっぱり分からない…)
ほむら「巴マミのデッキは【暗黒界】なのよ」
さやか「【暗黒界】?」
ほむら「闇属性、悪魔族で固まったデッキ」
ほむら「【暗黒界】のモンスターは手札から墓地に捨てられることで様々な能力を発揮するの」
ほむら「特に近年ストラクで出た新カード群は超強力で、前環境ではトップクラスにいた」
さやか「ストラク?」
杏子「ストラクチャーデッキの略な。1000円で売ってる構築済みデッキだ」
杏子「【暗黒界】のストラクチャーデッキは、歴代でも特に強い、と言われる」
杏子「3箱買ってちょこっといじればすぐ一線級のデッキになる」
ほむら「…んだけどね。これがまあ、なんというか」
杏子「別に弱くなった訳じゃねぇんだけどな」
ほむら「ええ。色々と気の毒なことになったのよ」
さやか「??」
ほむら「例えば『暗闇を吸い込むマジックミラー』という永続罠カードがあるわ」
ほむら「これはフィールド上と墓地に存在する闇属性モンスターの効果を永続的に無効にするの」
ほむら「今、環境トップの【甲虫装機】を対策しようと思えば手軽な一枚よ」
ほむら「【甲虫装機】のモンスターは全部闇属性モンスターで、」
ほむら「フィールド上と墓地で強力な効果を発揮することが強みだから、」
ほむら「これ一枚貼られただけで、【甲虫装機】は身動きが取れなくなる場合が多い」
ほむら「当然闇属性以外の属性を使ってる人はサイドデッキに入れる」
ほむら「二回戦目から戦いを有利に進めるためにね」
さやか「あ…、何となく分かった」
さやか「マミさんの【暗黒界】は墓地で強い効果を使う闇属性だから…」
ほむら「ついでにメタられちゃうのよ。ああ、メタるってのは、対策するって意味ね」
ほむら「他にも墓地へ行くべきカードが全部除外されちゃう『マクロ・コスモス』とか、」
ほむら「墓地のカードを除外しちゃう『d・dクロウ』とか」
ほむら「とにかく共通の弱点カードが多い!!」
ほむら「おまけに直接対決では相性の問題で【暗黒界】は【甲虫装機】にとても弱い」
ほむら「【暗黒界】が【甲虫装機】に勝とうと思えば、フィールド上のモンスターカードの
効果を無効にする『スキルドレイン』が必須になるんだけど、」
ほむら「でもこれだと【暗黒界】側は強力な『魔轟神レイヴン』の効果が使えないから、」
ほむら「満足な力を発揮できないまま戦わざるを得ない」
ほむら「まあ、スキドレ入れないでサンドバッグにされるよりはマシだから入れるんだけど、」
ほむら「今ひとつ戦績は微妙ね」
ほむら「そんなこんなで、前環境で隆盛を誇った【暗黒界】はすっかり落ちぶれちゃってるのよ」
ほむら「デッキパワー自体はあるから、次の改訂で【甲虫装機】が規制されれば
勢いを盛り返すんじゃないかとも言われてるけどどうなることやら」
ほむら「他の環境トップ級には【聖刻龍】【ラヴァル】【ラギア】【hero】なんかがあるわね」
ほむら「【六武衆】【ドラグニティ】【リチュア】もエクシーズ登場で強化されたし」
ほむら「【カラクリ】【インフェルニティ】なんかもやっぱり強い」
さやか「なんかややこしそうだなぁ…。昔に比べて種類凄く多くなってない?」
ほむら「テーマも増え続けているもの」
ほむら「でも、敵を知り己を知れば百戦危うからず」
ほむら「どんなデッキにも弱点はあるから、そこを突けば崩せる」
ほむら「逆に敵をよく知らずに戦いを挑んでもまともには勝てないわ」
ほむら「今回はあまり時間が無いようだから、しっかり覚えるのは無理かも知れないけど」
ほむら「まず美樹さやかには、どのデッキがどんな動きをするのか、だいたい頭に入れて欲しいの」
ほむら「実際にデッキが動いているところを見てれば、使いたいデッキが決まることもあるしね」
マミ「…そうね。習うより慣れろという諺通り、カードに慣れることが大切よ」
杏子「あ、マミが起きた」
マミ「とりあえずデッキは色々あるから、今から回してみましょう」
マミ「美樹さんはそれを見て、使いたいデッキがあったら作ればいいわ」
さやか「はい!」
※
そして、色々あって翌日の放課後。
見滝原市内のカードショップ『宝嶋』。
杏子「えーと、店の人の許可は取れたからな」
杏子「そんじゃこれから」
杏子「『遊戯王デュエルモンスターズ非公認大会 上条恭介杯』を始めんぞ」
杏子「優勝者は上条恭介を得ることができる」
杏子「各選手、準備は?」
仁美「1番、志筑仁美です。準備完了していますわ」
さやか「2番美樹さやか。いつでもオッケー…!!」
マミ「美樹さん大丈夫かしら。すごく肩に力が入っているわ」
ほむら「無理も無いけどね。ここまで来たらやるしかないわ」
ほむら「それに、まさかあんなデッキをチョイスするなんて…」
ほむら「あれだけ止めたのに」
マミ「あんな、なんて言ってはダメよ暁美さん」
マミ「確かに美樹さんのデッキはあまり環境に沿ったデッキでは無いかも知れない」
マミ「でも使いたくもないデッキを使っても仕方がないのよ」
マミ「美樹さんが使いたいと言うのなら、どう使うかをアドバイスしてあげるのが友人でしょう」
マミ「そして美樹さんは想いに沿ってデッキを完成させた」
マミ「後は信じるしかないわ」
マミ「美樹さんの決闘者としての素質…生まれ持った運命力(デステニー・パワー)を」
マミ「きちんと手が来れば、あのデッキは勝てる」
ほむら「…そうね」
ほむら(ただし、相手の妨害が一切無いという前提なのだけれど)
杏子「商品も、準備は良いな?」
恭介「ああ、いいよ」
杏子「お前は勝った方と付き合う。分かってんな?」
恭介「勿論」
恭介(早く決闘始まらないかなぁ)
恭介(どんな決闘になるのか楽しみで、気になって夜眠れなかった)
恭介(女の子が遊戯王やってるイメージ自体あんまり無いし)
恭介(どういうデッキ使うのか興味湧くよね)
恭介(うちのクラスに二人も女の子の決闘者がいたのには驚きだよ)
さやか「じゃあ、」
仁美「決闘開始の宣言をして下さい、佐倉さん」
杏子「決闘開始ぃぃぃぃぃぃぃぃッッ!!」
さやか「じゃーん、けーん…」
仁美「ぽんっ…!」
さやか:グー
仁美:パー
さやか「くー、なんかいつも仁美にはジャンケンで負けるなあ」
仁美「では私が先攻を頂きますわ」
仁美「ドローフェイズ、ドローッ!」
1ターン目
仁美ライフ8000/さやかライフ8000
仁美フィールド:カード無し
さやかフィールド:カード無し
仁美手札6/さやか手札5
仁美「スタンバイフェイズを経て、メインフェイズへと移行致します!!」
さやか「オーケーオーケー。何もないよ、どうぞ」
仁美「私は手札から魔法カード、『強欲で謙虚な壺』を発動します!!」
――『強欲で謙虚な壺』
通常魔法
自分のデッキの上からカードを3枚めくり、
その中から1枚を選んで手札に加え、
残りのカードをデッキに戻す。
「強欲で謙虚な壺」は1ターンに1枚しか発動できず、
このカードを発動するターン自分は特殊召喚できない。
ほむら「安定の初手強謙ね」
恭介「いや、けどあれはただの『強欲で謙虚な壺』じゃない!!」
マミ「米版1stシクッですって!?」
マミ「欲しい…」
さやか「えっ?何?そんな凄いの?」
仁美「ただのサーチカードですわ」
仁美「審判さん。海外版カードですが、対戦者に日版テキストの提示は必要でしょうか?」
杏子「ああ、一応頼む。さやかは初心者だしな」
杏子「しかし身内決闘でもわざわざ別にテキスト持ってくるなんて流石だな」
仁美「淑女決闘者(レディ・デュエリスト)の嗜みですわ」
仁美「では、どうぞさやかさん。こちらが日版テキストになります」
さやか「ふーむふむ。ああこれか、マミさん家のどのデッキにも入ってた奴ね」
ほむら「そう。今やどんなデッキにも積まれてる『強欲で謙虚な壺』」
ほむら「なんでもかんでも剛謙剛謙」
ほむら「面白みに欠ける話よね」
ほむら「手札の安定性が上がる以上私も使ってしまうけど…」
マミ「こればっかりはしょうがないわよ」
マミ「手札事故は全てのデッキに起こり得る危機だもの」
マミ「その可能性を減らす為に、打てる手は打っておくことは正しいわ」
仁美「では処理に入りますが宜しいですか?」
さやか「何も無いよ」
さやか(ただのサーチカードにあの三人ってばオーバーリアクションだなぁ)
仁美「では、デッキの上からカードを3枚めくりますわ」
1枚目『カードカー・d』(効果モンスター)
2枚目『サンダー・ブレイク』(通常罠)
3枚目『サイクロン』(速攻魔法)
恭介「…すご」
マミ「『カードカー・d』も米1stシクって…」
ほむら「」
さやか「えっ!? ちょっと、そんな凄いカードばっかりなの!?」
仁美「いえ。ただのドローソース、フリーチェーンの破壊罠、魔法罠破壊の速攻魔法ですわ」
さやか「ああ、『サイクロン』は分かるけどね」
仁美「こちらが日版テキストになります」
さやか「どれどれ~?」
ほむら(ただのじゃないでしょう、ただのじゃ!! このブルジョワめ!!)
マミ(私もああいうカードばかりでデッキ組んでみたいわぁ)
恭介(あそこまでレアリティにこだわるなんて、志筑さんは凄いなぁ!流石だよ!)
仁美「私は『カードカー・d』を手札に加えます。そのまま通常召喚!」
――『カードカー・d』
効果モンスター
星2/地属性/機械族/攻 800/守 400
このカードは特殊召喚できない。
このカードが召喚に成功した自分のメインフェイズ1に
このカードをリリースして発動できる。
デッキからカードを2枚ドローし、このターンのエンドフェイズになる。
この効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。
さやか「なーんだ、ただのレベル2モンスターじゃん」
仁美「召喚無効はありますか?」
さやか「無い」
仁美「召喚成功時、何かありますか?」
さやか「無いってば!」
仁美「では私はカードを1枚セット。その後に、『カードカー・d』の効果発動!」
仁美「私は『カードカー・d』をリリースし、2枚ドロー。そのままターン・エンドです」
さやか「うしっ。私のターンッ! ドローッ!!」
2ターン目
仁美ライフ8000/さやかライフ8000
仁美フィールド:モンスターゾーン 無し
魔法罠ゾーン 伏せ一枚
さやかフィールド:カード無し
仁美手札6/さやか手札6
さやか「さーて、さやかちゃん、バリバリ頑張っちゃいますからねー」
仁美「…」
仁美(さて…、さやかさんのデッキは果たして何なのでしょうか)
仁美(今の環境、【甲虫装機】が本命と言えますが…)
仁美(csでも【hero】【ラヴァル】【ラギア】などの使用率も非常に多くなっていますし)
仁美(それぞれのデッキのプレイングも洗練されてきています)
仁美(とにかく油断しないよう…)チラッ
仁美の手札
『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』『甲虫装機 ダンセル』『甲虫装機 グルフ』
『大嵐』『招集の聖刻印』『招集の聖刻印』
仁美(次のターンで、仕留めさせて頂きます…!!)
仁美(私のデッキの力、ご覧に入れて差し上げましょう!!)
仁美(ちなみにデッキの全容はこんな感じですわ)
【志筑流混沌装機 龍蟲連舞(しづきりゅうカオスゼクター りゅうちゅうつれまい)】
メイン:40 エクストラ:15 サイド:15
モンスター23枚
『エメラルド・ドラゴン』『エレキテル・ドラゴン』『カードカー・d』×2枚
『甲虫装機 ダンセル』×3枚 『甲虫装機 ホーネット』×2枚
『甲虫装機 グルフ』×2枚 『甲虫装機 センチビード』×2枚
『甲虫装機ギガマンティス』
『聖刻龍-シユウドラゴン』×3枚 『聖刻龍-トフェニドラゴン』×3枚
『カオス・ソルジャー-開闢の使者-』
『レッドアイズ・ダークネス・メタルドラゴン』×2枚
魔法14枚
『大嵐』『おろかな埋葬』『強欲で謙虚な壺』×3枚 『死者蘇生』
『招集の聖刻印』×3枚 『ブラック・ホール』『サイクロン』×3枚 『月の書』
罠3枚
『サンダー・ブレイク』×3枚
エクストラ15枚
『発条機雷ゼンマイン』×2枚 『甲虫装機 エクサスタッグ』『甲虫装機 エクサビートル』
『no.61 ヴォルカザウルス』『no.25 重装光学撮影機フォーカス・フォース』
『no.30 破滅のアシッド・ゴーレム』 『セイクリッド・トレミスm7』×2枚
『聖刻龍王-アトゥムス』×2枚 『フォトン・ストリーク・バウンサー』
『迅雷の騎士ガイアドラグーン』×2枚 『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』
サイド15枚
『エフェクト・ヴェーラー』×3枚 『ライオウ』×2枚 『オーバー・スペック』
『リビング・デッドの呼び声』×2枚 『神の宣告』『神の警告』×2枚
『激流葬』×2枚『マインドクラッシュ』×2枚
仁美(平時はバックがほとんど無い1kill型デッキです)
仁美(サイドチェンジを行えばバックの厚い通常の【甲虫装機】になりますわ)
ほむら「…入っていると思う? 志筑仁美の手」
マミ「入ってるわね」
マミ「あれは決闘者特有の、勝利を確信した顔だわ」
マミ「バックを破壊し、場を蹂躙し、ヴェーラーやdクロを受けても尚突き進み」
マミ「相手のライフポイント8000を根こそぎ奪い去ることを確信した決闘者の顔よ」
マミ「志筑さんのあの手札六枚は…まさに美樹さんにとっては終焉を告げる鐘…」
マミ「鳴り終える頃、美樹さんの命(ライフ)は終わる」キリッ
ほむら(またこいつは変な言い回しを…)
恭介「…」
恭介「…巴先輩って詩人なんですね」
ほむら(!?)
マミ「えっ? そ、そうかしら?///」
恭介「とても決闘者らしくて良いと思います」
マミ「喜んで貰えて嬉しいわ、ふふ」
マミ(私の独り言を気に入って貰えるなんて、初めて!)
ほむら(巴マミの独り言を気に入る人なんて初めて見るわ)
ほむら(音楽家のセンスってこうなのかしら?)
マミ「あの、良かったら、私の考えたシンクロモンスターの口上も聞いて貰える?」
恭介「喜んで」
マミ「”霞の谷に照臨せし雷(いかづち)の神よ、今その怒りをもって賊を穿て!!”」
マミ「”天に轟け! シンクロ召喚! 霞の谷の雷神鬼ィィィッ!!”」
マミ「…」ドヤァ…
恭介「おお~っ!」パチパチパチ
マミ「ふふっ…」更にドヤァ…
ほむら(こら上条君。貴方は美樹さやかと志筑仁美のどっちかに貰われるのに)
ほむら(なんでそこで巴マミと和んでるのよ!)
ほむら「そんな事より美樹さやかでしょう」
マミ「あっ、そうだった」
マミ「美樹さん大丈夫かしら…」
ほむら「まったく…」
さやか「んー…」ドキドキ
ほむら(手札をまじまじを見つめて切り出そうとしない)
ほむら(事故ってやる事が無くて困っている顔ではないわね)
ほむら(どちらかと言えば、出来ることが多くて何から取り掛かるか悩んでいる顔)
ほむら(と言っても、そのデッキでやる事なんて1つか2つしか無いでしょうに)
ほむら(悩んでないでちゃっちゃと行きなさい)
ほむら(どうせ順番が違うだけで辿り着く場所は同じなはず)
ほむら(回すだけ回して及ばなければもうそれまでなんだから)
ほむら(そういう意味では、美樹さやか向けのデッキではあるのかしら)
さやか「うーん…」ドキドキ
ほむら「…」
マミ「…」
さやか「よしっ…! 勝利への道は開かれた!! ファイナル・ターンッッ!!!」
恭介「ええっ!?」
仁美「なんですって!?」
ほむら「事故は無く、出来る事が幾つかある。なら初戦は勝ちの目があるわね」
マミ「多分、プレイミスが無ければ。後は…」
ほむら「志筑仁美の場のセットカード次第か…」
杏子(ファイナル・ターン宣言!?)
杏子(マジかよ…)
杏子(…ってそれ別のカード・ゲームじゃなかったか?)
恭介「まさか、ワンターン・キル!?」
さやか「行くよ仁美!! これで、終わりだぁぁ!!」
仁美(なんですの、この気迫は…!)
さやか「スタンバイ、メインッ!!」
仁美「何もありませんわ…」
さやか「なら私は、手札から魔法カード、『融合賢者』を発動ッッ…!!」
――『融合賢者』
通常魔法
自分のデッキから「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
さやか「何もチェーンが無ければ、私は『融合』カードを持ってくるよ」
仁美「…ええ、何もありません」
さやか「じゃあ手札から『融合』カードを発動!!」
――『融合』
通常魔法
手札・自分フィールド上から、融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を
エクストラデッキから特殊召喚する。
仁美「チェーンはありませんわ」
仁美(融合ですって…!?)
仁美(さやかさん、貴方は何をしようとしてらっしゃいますの!?)
仁美(今時、『融合』だなんて…!)
仁美(【hero】ならばそのようなものを使わなくても『ミラクル・フュージョン』がある…)
仁美(では、さやかさんは何を…!? まさか、【サイバー】!?)
さやか「私は手札の『カオス・ソルジャー』と、『融合呪印生物-闇』を墓地へ!!」
――『カオス・ソルジャー』
儀式モンスター
星8/地属性/戦士族/攻3000/守2500
「カオスの儀式」により降臨。
――『融合呪印生物-闇』
効果モンスター
星3/闇属性/岩石族/攻1000/守1600
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。
その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。
フィールド上のこのカードを含む融合素材モンスターを生け贄に捧げる事で、
闇属性の融合モンスター1体を特殊召喚する。
仁美「―――――!!!」
仁美「その組み合わせは!!」
さやか「融合デッキ…じゃない、エクストラデッキから、決められたモンスターを特殊召喚する!!」
マミ「無事出たわね。美樹さんのデッキのエース・モンスター」
ほむら「ええ」
恭介「あれは…!!」
※
――遡って、昨日の夜。マミ宅。
さやかは一通り環境トップのデッキの説明を受け終え、
自らが使うデッキの選択に入っていた、のだが……。
さやか「んー…」
杏子「何時までも悩んでないでさー、パパッと決めちまえないのかよ」
マミ「まあ、決闘者にとってデッキの選択は大事だから」
ほむら「かと言ってあまり時間は無いわよ」
ほむら「志筑仁美との戦いは明日の夕方でしょう」
ほむら「早くデッキを作って、手に馴染ませないといけないわ」
ほむら「今は選択の速さも必要よ」
さやか「そりゃ分かってるんだけどさぁ…」
さやか(やっぱ今ひとつ、今のデッキってピンと来ないなあ)
さやか(説明された事、実はほとんど理解出来てないや)
さやか(そりゃ、これから少しずつ覚えていけば馴染んでいくんだろうけど)
さやか(少なくとも明日の、恭介を賭けた仁美との決戦で)
さやか(昨日今日知ったカードで勝てるとは思えないし…)
さやか(それに………)
さやか(…)
さやか「ねぇ」
ほむら「決まった?」
さやか「そうじゃなくってさ…。決闘って、どうしても最近のカードじゃないと勝てないってもん?」
ほむら「何が言いたいの?」
さやか「古いカードって、絶対に勝てない?」
マミ「そうでもないわよ」
マミ「【ガジェット】なんか原作終盤に出てきた古いカードだけど、」
マミ「エクシーズが出たお陰で今だって立派に一線級のデッキだし」
マミ「【hero】だって新しいとは言えないけどエクシーズの登場で最強レベルに達してるわ」
マミ「これらのデッキは、昔のデッキに今のギミックが加わって大幅に強化されているわ」
マミ「昔のカードでも、新しいカードの登場で使い道が幾らでも増えるのは遊戯王の常ね」
マミ「美樹さんは、どうしてもこれを使って勝ちたいっていうのがあるの?」
さやか「実は……ゴニョゴニョ…」
マミ「ええっ、それ!?」
さやか「無理…ですかねぇ?」
マミ「美樹さん、あのカードに思い入れがあるの?」
さやか「えっと…」
さやか「小学生の頃、恭介の家で遊戯王の再放送観てたんですけど」
さやか「アニメオリジナル回に出てきたあれがあまりにもカッコ良くって恭介が興奮して」
さやか「なら、あたしがあれを使いこなしたデッキを作ってやるって約束して」
さやか「頑張って3枚集めたんですけど…」
ほむら(理由はどうあれ当時小学生の女の子がゲームの付録をよく3枚も集めたわね)
杏子(なんだっけ? 知らねーカードだな)
さやか「でも他のパーツがあんまり集まらなくて」
さやか「時間かけてる間に恭介も私も決闘から離れていったんですよね」
さやか「それ、思い出しちゃって」
さやか「今度の決闘が、恭介の見てくれる決闘なら…」
さやか「恭介を得られる、あるいは恭介を諦めなければならない決闘なら…」
さやか「私は、あれを使いたいんです」
さやか「私があれを使っているところを恭介に見て貰いたい」
さやか「今後はシンクロやエクシーズを使っていくことになっても」
さやか「明日の決闘だけは…!!」
マミ「美樹さん…」
ほむら「愚かね」
さやか「!?」
ほむら「仮にあれを組んだとして」
ほむら「まったく戦えないとは言わないわ」
ほむら「回った時の1ターンの展開力と、1kill可能な高い攻撃力は馬鹿に出来ない」
ほむら「でも、所詮あれはファンデッキよ」
ほむら「ツッコミ所満載の弱点が腐る程ある」
ほむら「日々の娯楽としての決闘で使うのならともかく」
ほむら「貴方の人生を左右する一大決戦で使うデッキでは断じて無い」
ほむら「勝つ為に手段を選んでいては勝てるものも勝てない」
ほむら「さあ、現実を受け入れて【甲虫装機】を組みなさい」
ほむら「余りパーツならどっさりあるから、提供してあげるわ」
杏子(こいつ、さり気なく自分の好み推しやがったぞ)
杏子(つっても本当に安いし強いからなあ、【甲虫装機】)
杏子(…けど実はただゼクラー仲間が欲しいだけだったりして)
さやか「ううっ…やっぱダメかぁ…」
マミ「…」
マミ「そんな事無いわ、美樹さん」
さやか「!?」
マミ「組みましょう、貴方の、上条君への想いの篭ったそのデッキ」
ほむら「巴マミ何を言うの!?」
マミ「暁美さん、貴方の言うことは正しいわ」
マミ「今、あれを使って勝つのは簡単とは言えない」
マミ「初戦を初見殺しで勝てたとして」
マミ「二回戦以降徹底的にメタられて何も出来なくなる可能性も高いわ」
ほむら「そうよ。下手をすれば相手の『ライオウ』一枚で死ぬ…!!」
マミ「でも…多分、美樹さんが今から現環境デッキを組んだとしても」
マミ「使いこなせるようになる時間は無いわ」
マミ「仮に志筑さんと【甲虫装機】や【聖刻龍】同士で戦ったとして」
マミ「やっぱり、美樹さんの不利は否めないんじゃないかしら?」
マミ「出来ることの多いデッキは、考えられるプレイング・ミスも多い」
ほむら「…」
マミ「その点、あのデッキはある種単純明快ではあるわ」
マミ「決闘の流れに完全に身を任せ…」
マミ「渾身の一撃を相手に叩き込むことだけを良しとする無二念の奥義」
マミ「元々、志筑さんと美樹さんの経験量が違うんですもの」
マミ「多少のギャンブル…というか、思い切りは必要じゃない?」
マミ「現実的な読み合いも大事だけれど」
マミ「真っ直ぐな想いを勝利という形に組み上げるのも決闘者の生き様だわ」
ほむら「…なら勝手にすれば良いわ」
ほむら「私はもう、何も言わない」
マミ「じゃあ美樹さん。デッキを作りましょうか。そのカード、今はある?」
さやか「いやあ、家ですよ…? 取って来ましょうか?」
マミ「今はいいわ。どの道あれはエクストラデッキのカードだしね」
マミ「それよりメインの方が重要」
マミ「使えそうなカードはだいたいうちにあったはずなんだけど…」ごそごそ
さやか(ダンボール箱3つ、カードでぎっしり埋まってる)
さやか(それに今まで気付かなかったけど、本棚にずらっと並んでるの、全部ファイル!?)
さやか(マミさんも相当だなあ…)
さやか「ちなみに…譲って貰えるカードって幾らぐらいのもんなんですか…?」
マミ「だいたい余ってるノーマルカードだから、プレゼントということでいいわよ」
さやか「マジすか!?」
マミ「美樹さんの決闘者の門出としての、お祝いよ」
さやか「ありがとうございます!! じゃあ今回だけは、お世話になります!!」
杏子「あー、そっか。予算の問題とかもあんだよな」
ほむら「そうね。エクストラデッキにかけられるお金があまり無かったという意味なら」
ほむら「美樹さやかのデッキの選択は間違ってなかったかも知れないわね」
※
―――現在。恭介杯会場。
さやか(そうして組み上げたこのデッキ!)
さやか(見ていて下さいマミさん!! 使いこなして見せます!!)
さやか(そして恭介、今こそ私はあんたとの約束を果たす!!)
さやか「来い!! 融合モンスター、『究極竜騎士』!!」
――『究極竜騎士(マスター・オブ・ドラゴンナイト)』
融合・効果モンスター
星12/光属性/ドラゴン族/攻5000/守5000
「カオス・ソルジャー」+「青眼の究極竜」
このモンスターは融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードを除く自分のフィールド上のドラゴン族モンスター1体につき、
このカードの攻撃力は500ポイントアップする。
仁美「攻撃力5000…!!」
さやか「へぇ、仁美でもこの子出されるとびっくりするんだ」
さやか「古いカードではあるけど、やっぱりまだまだこの子も活躍出来るのかな、へへっ」
恭介「…!!」
恭介(『究極竜騎士』だ…!!)
恭介「そういえば、小学生の頃だった…。僕の家でさやかと遊戯王の再放送を見ていて…」
――うっわ、すごい! 『カオス・ソルジャー』と『青眼の究極竜』が合体した!!
――そんなに凄いの? きょーすけ
――凄いなんてもんじゃないよ、さやか! もの凄いんだよ!!
――ふーん、じゃああたしが、かっこよく使ってる所見せてあげる!
――えっ、さやか持ってるの!?
――持ってないよー。でもきょーすけに見せるためにデッキ作ってあげる
――騎士を率いるさやかちゃんのかっこよさに、惚れるがよい!!
――楽しみにしてるよ、さやか!!
恭介(…そんな事も、あったな)
恭介(さやかとの思い出は物心ついた頃からいっぱいあるけど)
恭介(忘れてしまった事もたくさんあって)
恭介(これも、僕は今思い出した…)
恭介(なのに、さやかはずっと覚えていたのか…!?)
恭介(あの約束を果たすために、あえて志筑さんのガチデッキにあのデッキで…!?)
恭介(さやか…君って奴は……)
さやか「よぉしっ…! 特殊召喚成功!! この調子で行くぞ!!」
さやか「私は更に、モンスターを通常召喚!!『マンジュ・ゴッド』!!」
――『マンジュ・ゴッド』
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1400/守1000
このカードが召喚・反転召喚に成功した時、
自分のデッキから儀式モンスターまたは
儀式魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
仁美「…召喚無効は無し、召喚成功時にも何もありません。効果起動までどうぞ」
さやか「『マンジュ・ゴッド』の効果発動!! 『カオス・ソルジャー』を手札に加える!!」
さやか「更に手札から『融合回収』を発動!!」
仁美「チェーンはありません…」
――『融合回収(フュージョン・リカバリー)』
通常魔法
自分の墓地に存在する「融合」魔法カード1枚と、
融合に使用した融合素材モンスター1体を手札に加える。
さやか「私の墓地から『融合』と『融合呪印生物-闇』を手札に加えるよ」
さやか「更に手札から再び『融合』発動!!」
仁美「どうぞ…通します」
さやか「いでよ、二体目の『究極竜騎士』!!」
さやか「フィールド上に特殊召喚!!」
さやか「この子は自分フィールド上に存在する自身以外の【究極竜騎士】以外の
ドラゴン賊モンスター一体につき、攻撃力500アップ!!」
さやか「二体の『究極竜騎士』の攻撃力はそれぞれ5500だぁ!!」
仁美「くっ…」
仁美(まずいですわ…)
仁美(まさかあんなレトロなワン・ショット型のデッキを使ってくるなんて)
仁美(『究極竜騎士』の二体の攻撃力合計は11000…!)
仁美(『マンジュ・ゴッド』の攻撃力1400と合わせれば12400ダメージ…!!)
仁美(通れば私の8000のライフが軽く消し飛びますわ!!)
仁美(しかし、場の伏せはまだ使えません…)
仁美(メインフェイズ1の間に使ってしまうと、更に手を重ねられる…)
仁美(バトルフェイズに移行してからでないと安心して使えませんわ!!)
仁美(こんな奇襲を許すなんて…)
仁美(こんな事が…!!)
さやか(…)
さやか(まだ私の手には、魔法カードの『龍の鏡』がある)
――『龍の鏡』(ドラゴンズ・ミラー)
通常魔法
自分のフィールド上または墓地から、
融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、
ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)
さやか(これを使って墓地の『カオス・ソルジャー』と『融合呪印生物-闇』を除外すれば…)
さやか(『究極竜騎士』をもう一体場に出すことが出来る)
さやか(既にオーバーキル圏内に仁美を捉えている以上、必要無い…かもしれない)
さやか(もし仁美の伏せカードがミラフォのような攻撃誘発系大量破壊罠なら…)
さやか(それは危機こそ呼びはしても、メリットは無い)
さやか(けど…さっき『強欲で謙虚な壺』で見えた『サンダー・ブレイク』)
さやか(少なくともあれが仁美のデッキに入ってることは間違いない)
さやか(あれが既に一枚伏せられていたとしたら、どう?)
さやか(もしここでもう一体出さないと、攻撃出来る『究極竜騎士』は一体だけになる)
さやか(その場合のダメージはマンジュと合わせても6400止まり、仁美に届かない…)
さやか(もし仁美にターンを回すと、私は生きて帰って来られない気がする)
さやか(予感が、ある…)
さやか(でも、あれがミラーフォースだったら…)
さやか(三体の『究極竜騎士』が全滅めつめつめつめつめつめつめつめつ…………)
さやか(間違いなく次のターン、死ぬ…!!)
さやか(ああっ、もうっ…!! どうすりゃいいのよ!? 行くべきなのかぁ!?)
恭介「さやか…?」
マミ「…どう出るのかしら、美樹さん」
ほむら「…」
ほむら(まだ展開出来る手段が残ってそうな顔ね)
ほむら(美樹さやかの残り手札は1枚)
ほむら(…『龍の鏡』か)
ほむら(なら使ってしまいなさい、美樹さやか)
ほむら(『究極竜騎士』を二体並べさせて貰った時点で、)
ほむら(少なくともあれが準制限カード『激流葬』で無いことはほぼ確定している)
ほむら(そして現環境においては、攻撃誘発系の『聖なるバリア-ミラー・フォース』よりは、)
ほむら(フリー・チェーン系単体除去罠の方が優先される傾向にある)
ほむら(だいたい『サンダー・ブレイク』『鳳翼の爆風』『強制脱出装置』の3種)
ほむら(志筑仁美のデッキの内容はまだ見えては来ないけれど)
ほむら(彼女のデッキの米版『カードカー・d』を見る限り、彼女は相当時流に敏感だわ)
ほむら(なら、【甲虫装機】やトレミスが跋扈する今の環境でミラフォをメイン投入するかしら?)
ほむら(そこに気付きなさい、美樹さやか…!)
ほむら(…)
ほむら(と言いたいところだけど)
ほむら(まだ美樹さやかは今の環境を肌で感じ取れていない)
ほむら(むしろミラフォを最強の罠だと扱っていた頃のイメージが強いんじゃないかしら)
ほむら(昔かじっていた人は、ミラフォへの幻想が特に強い)
ほむら(今の環境下、ミラフォなんてホーネットの餌でしかないというのにね)
ほむら(米版『カードカー・d』から分かる、)
ほむら(志筑仁美の決闘者の在り方も読み取れていないでしょう)
ほむら(ここの読み合いは勝敗を分かつところだというのに)
ほむら(…だから環境を知ることは大事なのよ)
マミ「美樹さん、まだモンスターを展開させるつもりかしら?」
マミ「志筑さんの手に『冥府の使者ゴーズ』、」
マミ「『バトル・フェーダー』や『速攻のかかし』がある可能性だってあるわよ」
マミ「幾らそれしか無いデッキだからって、1ターンに全部使うのもどうかと思うけど…」
ほむら「ある可能性もあるけれど…」
ほむら「仮に手札にゴーズ、かかし、フェーダーがあってしまえば、志筑仁美の返しは確定する」
ほむら「志筑仁美にターンを渡せば美樹さやかは終わる」
ほむら「それなら最初から美樹さやかは詰んでいることになる」
ほむら「考えても無駄な局面」
ほむら「ゴーズ、かかし、フェーダー、それに『トラゴエディア』の無いことに賭けるしかない」
ほむら「ここはギャンブルだわ」
マミ「…うん、そうね。その通りだわ暁美さん」
マミ「最初に、あのデッキはその一点に特化していると言ったのは私だったわね」
マミ「…」
マミ「ここは、決闘の神のご加護があることを祈るしかないわね…」
さやか「ん~!! よし、決めた!!」
ほむら(『龍の鏡』を使う?)
マミ(それとももう攻める?)
さやか「私は、手札から通常魔法『龍の鏡』を発動ッッ!!」
ほむら「!!」
マミ「!!」
仁美「!!」
さやか(どうせ手札はこれ1枚なんだ!! 次のターンに残しておいても仕方がないっしょ!!)
さやか(来るなら来いミラー・フォース!!)
さやか(ここは、攻める!! さやかちゃんの率いる騎士達にはそれしか無いのだぁ!!)
さやか「魔法発動にチェーンは!?」
仁美「…通します。『究極竜騎士』特殊召喚成功時にも、何もありません」
さやか「じゃあ遠慮無く!」
さやか「私は墓地の『カオス・ソルジャー』と『融合呪印生物-闇-』を除外!」
さやか「私の場に『究極竜騎士』を特殊召喚する!!」
恭介「凄い…!! 1ターンの間に、『究極竜騎士』が3体!!」
恭介「『究極竜騎士』の効果で、その1体の攻撃力は6000に!!」
恭介「全部通れば19400ダメージだ!!」
さやか「は、ははははははは!! すごいぞー、かっこいいぞー!!」
さやか(…マジで伏せカードがミラー・フォースだったらどうしよう)
さやか「バ、バトルフェイズに移行ぉ!!」
さやか(頼みます神様!! 攻撃通して!!)
仁美(…さやかさんの場に、『究極竜騎士』が三体)
仁美(私の伏せカード『月の書』で一体攻撃を封じたとしても)
仁美(無理ですわね…)
仁美(それにしても、なんという思い切った構築)
仁美(さやかさんらしい、勢いのあるデッキですわ)
仁美(流石ですわ、さやかさん)
仁美(場に揃った3体の『究極竜騎士』のなんと凛々しく雄々しいこと)
仁美(勝ち目も無いのにこの美しい光景に水を指すというのも、決闘者としての品性に欠けますわね)
仁美(『月の書』は使わないでおきましょう…)
仁美(ただし、二戦目はこうはいきませんわよ)
さやか「攻撃宣言!! 行け3体の『究極竜騎士』!! ついでに『マンジュ・ゴッド』も!!」
さやか「まずは『マンジュ・ゴッド』の攻撃!!」
仁美「攻撃宣言時、ダメージ・ステップ共に何もありませんわ」
仁美ライフ:8000→6400 ピピピッ
さやか「これでトドメだッッ!!」
さたか「『究極竜騎士』三体の攻撃!!」
さやか「さやかちゃんソォォォォドッッ!! トリプルアタァァァァァァックッ!!」
仁美「……攻撃宣言時、ダメージ・ステップ共に、何もありませんわ」
仁美(本当は一体ずつ確認しなければいけないのですけど)
仁美(ここで指摘するのも野暮ですわね)
仁美(良い攻撃でしたよ、さやかさん)
仁美ライフ:6400→マイナス11600 ピーッ!!
杏子「よし、一回戦終了な。仁美のライフがゼロになった」
杏子「第一回戦の勝者はさやかだ」
杏子「んじゃ続いて二回戦やるぞ」
杏子「互いに、サイドチェンジを行なってくれ」
仁美「分かりましたわ」
さやか「はいはーい」
さやか(といっても私に入れ替えるカードなんか無いんだけどね)
さやか(私のサイドデッキはお守りみたいなもんだし)
ほむら「美樹さやか、勝ったわね」
マミ「ええ、やったわ」
ほむら(まあ、本当の問題はここからなんだけど)
ほむら(美樹さやかのデッキはあれ用に尖らせるだけ尖らせてあるから、)
ほむら(基本的にサイドチェンジなんか無い)
ほむら(下手にカードを入れ替えたら事故るだけのデッキ)
ほむら(だからあのまま行って貰うしか無い)
ほむら(まったく、なんて融通の効かないデッキなのかしら)
ほむら(志筑仁美はサーチカードを徹底的に潰してくるわよ…)
ほむら(美樹さやか相手には役に立たない『大嵐』や『サイクロン』を全部抜いて、ね)
マミ(…でも、それにしてももったいない)
マミ(せっかくあんな素晴らしいモンスター展開をしたのに)
マミ(攻撃技のセンスが城之内君並じゃないの!!)
マミ(『究極竜騎士』のアニメの攻撃技の名前は”ギャラクシー・クラッシャー”、)
マミ(ゲームでは”ギャラクシー・クラッシュ”なのよ!)
マミ(ならせめて、美樹さんも”ギャラクシー”をつけないと!!)
マミ(そうね…)
マミ(『三重連銀河破砕剣(トリプル・ギャラクシー・クラッシャー・ソード)』というのはどうかしら)
マミ(いや待って、他に何か…)
マミ「うーん…」
ほむら(この巴マミの深刻そうな顔は深刻なこと考えてない顔ね)
恭介「”さやかちゃんソード、トリプルアタック”かぁ。さやからしい元気な名前でいいなあ」
杏子「あ~。じっと見てなきゃいけない審判もしんどいな。喉渇いたからジュース飲もっと」
※
さやか「あー、ちなみに私のデッキはこれね」
【羽ばたけ! さやかちゃんナイト軍団!!】
メイン:40 エクストラ:8 サイド:5
モンスター19枚
『カオス・ソルジャー』×3枚 『青眼の白龍』×3枚
『マンジュ・ゴッド』×3枚 『センジュ・ゴッド』×2枚
『融合呪印生物-闇-』×3枚 『沼地の魔神王』×3枚
『神竜ラグナロク』×1枚 『デブリ・ドラゴン』×1枚
魔法21枚
『融合』×3枚 『融合賢者』×2枚 『融合回収』×2枚 『龍の鏡』×3枚
『トレード・イン』×3枚 『サイクロン』×3枚 『死者蘇生』『高等儀式術』
『大嵐』『おろかな埋葬』『月の書』
exデッキ×8枚
『究極竜騎士』×3枚 『青眼の究極竜』『竜魔人 キング・ドラグーン』×2枚
『氷結界の龍 グングニール』『ブラック・ローズ・ドラゴン』
サイドデッキ×5枚
――内緒♪
さやか「さっきも言った通りサイドはただの飾りのお守りなんで置いといて、」
さやか「デッキコンセプトは、とりあえず『究極竜騎士』で押せ押せ」
さやか「他のことはどうしても『究極竜騎士』出せない時にやる」
さやか「シンクロ召喚はまだいいかなーって思ってたんだけど、」
さやか「転校生がさ、」
さやか「”ふん…、勘違いしないで。ゴールドシリーズ買ったらいっぱい出ただけよ”、」
さやか「”その頭の悪そうなデッキでもこのくらいは使えるでしょう?”、」
さやか「…なんて可愛くないツンデレ発言と共に、グングちゃんをくれたのだった」
さやか「縁が金色のグングニールって綺麗だよね。デブリで沼地を釣って出すんだよ?」
さやか「コスト切った時にヴェーラー飛ばして来る奴は死ねばいいと思う」
さやか「あとマミさんが気前良く『ブラック・ローズ・ドラゴン』をくれてさ」
さやか「こっちは英語版のシークレット・レアで、これも綺麗なんだよね」
杏子「ちなみに外で海外版カード使う時は、仁美みたいに日版デキスト持っていけよ」
杏子「一応公認大会じゃルールの範疇なんだが」
杏子「これはジャッジ云々以前にマナーの問題だかんな」
杏子「普段遊んでる身内同士なら問題無いにせよ、」
杏子「知らない人と決闘した時に、相手が知らないカードだったら困らせちゃうだろ?」
バイトの少年「君も、店内で飲食はマナー違反だよ佐倉さん」
杏子「誰だっけお前。『まどマギ』レギュラーキャラにこんな奴いたかぁ?」ポリポリ ズズーッ
中沢「…一応、名有りキャラなんだけどね。何故ゲームじゃ名前消されたのかな…」
中沢(ついでにお店の決闘スペースで声張り上げて技名叫ぶのもマナー的にどうかと思うけど)
中沢(盛り上がってるところに水差すと嫌われるからなぁ…)
中沢(…よく見たら可愛い子ばっかりの中で男上条一人なんだよな)
中沢(いいなー……)
中沢「はぁ…」
※
――そして何事も無く、サイドチェンジ時間終了。
杏子「んじゃー、ぼつぼつ始めるか」
杏子「一回戦負けた仁美に、先攻後攻を決める権利がある訳だけど」
杏子「どっちがいい?」
仁美「先攻でお願い致します」
杏子「分かった。さやか、お前後攻な」
さやか「うすっ」
さやか「互いのデッキを…」
仁美「カット・アンド・シャッフル!」
さやか「続いて手札を五枚ドロー!」
仁美「そして私の、ドローフェイズ、ドローッ!!」
1ターン目
仁美ライフ8000/さやかライフ8000
仁美フィールド:カード無し
さやかフィールド:カード無し
仁美手札6/さやか手札5
仁美「一回戦同様、『強欲で謙虚な壺』を発動しますわ」
さやか「オーケー」
仁美「では、デッキの上から3枚を確認しますわ」
1枚目『ライオウ』
2枚目『カードカー・d』
3枚目『強欲で謙虚な壺』
仁美「あら」
杏子「あっ」
ほむら「終わったわね」
マミ「美樹さん…」
恭介「さやかェ…」
さやか「えっ? ええええっ?? どうしたの皆!?」
仁美「手札に加えさせて頂くのは、『ライオウ』です」
仁美「そのまま通常召喚!!」
さやか「こっちから発動するもんは何もないから、好きにやっていいよ」
さやか(けど、なんだっけコイツ)
さやか(これも米版のシークレット・レアだからなあ)
さやか(英語の成績の悪いさやかちゃんには分からないのであった)
さやか(てへっ)
さやか(まあ、攻撃力1900なら押しつぶして進めばいいんじゃないかな)
ほむら「呑気な顔してるわねあいつ」
ほむら「自分のデッキがどういうデッキで」
ほむら「相手に何出されたのか分かってないのかしら」
マミ「て、手札に『融合』と融合素材モンスターが揃っているのよ、きっと!」
マミ「だって暁美さん、美樹さんに、」
マミ「『ライオウ』の効果はチェーンを組む特殊召喚に打てないことは教えたでしょう?」
ほむら「えっ? 私は『ライオウ』で死ぬとは言ったけど詳しい説明はしてないわよ」
マミ「…」
マミ「じゃあ」
ほむら「貴方が教えてあげてないのなら、慌てるのは今からなんじゃないかしらね」
仁美「私は魔法罠ゾーンにカードを2枚セットし、ターン・エンドですわ」
さやか「私のドローフェイズ、ドローッ!!」
2ターン目
仁美ライフ8000/さやかライフ8000
仁美フィールド:モンスターゾーン『ライオウ』
魔罠ゾーン 伏せカード2枚
さやかフィールド:カード無し
仁美手札3/さやか手札6
さやか「スタンバイ、メイン…っとその前に」
さやか「仁美、そのモンスターの日本語版テキスト確認させて貰っていい?」
仁美「勿論ですわ。どうぞ」
さやか「どれどれ」
――『ライオウ』
効果モンスター
星4/光属性/雷族/攻1900/守 800
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いにドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事はできない。
また、自分フィールド上に表側表示で存在するこのカードを墓地に送る事で、
相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし破壊する。
さやか「…」
さやか「えっ?」
”お互いにドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加える事はできない。”←
さやか「これって…」
さやか「………」
ほむら「事の重大さに気付いたようね」
ほむら「顔が青くなってきてるわ」
ほむら「さやかってほんと馬鹿」
さやか「へい、ジャッジ」
杏子「ん?」
さやか「あれが出てる時って…このカード、使えないの…?」
杏子「んー…」
杏子(下手なこと言うと助言になっちまう可能性があるからなあ…)
杏子(こういう時はどうしたらいいんだ?)
仁美「佐倉さん、ルールに関する質問なら、答えて頂いても構いませんわよ?」
杏子「そうか、ありがとな仁美」
杏子「さやか、『ライオウ』が出ている時はそいつの効果を使うのは無理だ」
さやか「じゃあこの部分で…」
”相手モンスター1体の特殊召喚を無効にし破壊する。”←
さやか「こっちのカードも無効にされたりする?」
杏子「いや、そいつらは無効化されねーんだな、これが」
さやか「…分かった、ありがとう」
杏子「んー? 理由っつーか、仕組み聞かなくていいのか?」
杏子「多分、お前は理解できてねーぞ」
さやか「今はいいや…。とりあえず、こっちが止められないって分かれば」
杏子「そうかい」
さやか「じゃあ、改めて、メインフェイズ!」
さやか「私は手札から、『大嵐』を発動!!」
仁美「!!」
――『大嵐』
通常魔法(制限カード)
フィールド上に存在する魔法・罠カードを全て破壊する。
仁美(私の伏せカード、『神の警告』と『マインドクラッシュ』が壊されますわ!!)
仁美(まずいですわ…)
仁美(例え私の手に返しがあったとしても)
仁美(ここでもしまた『究極龍騎士』を出され…)
仁美(『融合回収』でもう1体出されるか『閃光の双剣-トライス』でも装備されれば)
仁美(このターンで決着を付けられてしまいますわ!!)
仁美(…)
仁美(やるしか、ありませんわね)
仁美(黙っていてやられるくらいならば)
仁美(この状況から勝ちに行かねば)
仁美(私も、賭けに出なければ!!)
仁美「さやかさんの『大嵐』発動にチェーン!」
仁美「私の場の罠カード、『マインドクラッシュ』を発動します!!」
仁美「『神の警告』は破壊して頂いて構いませんが、こちらのカードの処理はさせて頂きます!」
さやか(『マインドクラッシュ』!?)
―――『マインドクラッシュ』
通常罠(準制限カード)
カード名を1つ宣言して発動する。
宣言したカードが相手の手札にある場合、
相手はそのカードを全て墓地へ捨てる。
宣言したカードが相手の手札に無い場合、
自分は手札をランダムに1枚捨てる。
さやか(こんなカードを使うって事は…仁美は私の手札が分かってるってこと!?)
仁美(さやかさんの現在の手札を知っている訳ではありません)
仁美(『ライオウ』がある限りサーチは出来ないのですから、100%当たる打ち方は出来ない)
仁美(ですが、推理する事は出来ます。それだけの情報はもう出ているのですから)
マミ(『マインドクラッシュ』は本来、相手のサーチカード使用直後に打つのが理想とされるわ)
マミ(そうすれば必ず相手の手札を減らすことが出来るからよ)
マミ(逆に手札に何があるか分からない状態で打つのはやや無謀)
マミ(【暗黒界】みたいに、効果で自分の手札を捨ててメリットのあるデッキならともかく)
マミ(通常のデッキなら、自分の手札を墓地に落とされるのは痛すぎる)
マミ「今の『大嵐』で志筑さんは美樹さんに1枚アド(アドバンテージ)を稼がれた」
マミ「もしここでマイクラを外せば、更にアド差は広がってしまうのに…」
ほむら「推理の当てはあるんでしょうね」
ほむら「志筑仁美は、理詰めで考えて、」
ほむら「美樹さやかにアドを稼がれる事を防ぐつもりよ」
ほむら「…貴重な手札を捨てる覚悟で」
ほむら(…)
ほむら(志筑仁美…。お嬢様ながら、なかなか踏み込みの強い決闘者だわ)
さやか「じゃあ仁美が私の手札にあるカードを当てるんだよね」
仁美「はい。カード名を1つ宣言します」
仁美「宣言後、さやかさんは手札を公開し、そのカードがあれば全て墓地に捨ててください」
仁美「仮に外せば、私はランダムに手札1枚を捨てさせて頂きます」
さやか「いいよ…」
さやか「で、カードの名前は?」
仁美「………」
仁美(推理のポイントは、先ほど佐倉さんにさやかさんが言った言葉)
仁美(さやかさんは、佐倉さんに『ライオウ』下で手札のカードが使えるか聞いていた)
仁美(1つはサーチについて)
仁美(つまり、さやかさんの手札にはサーチカードが1枚以上存在する)
仁美(さやかさんのデッキ内のサーチカードは、先の戦いで判明しているだけで2種類)
仁美(『融合賢者』と『マンジュ・ゴッド』)
仁美(デッキ編成的に、更に可能性があるのは…)
仁美(『センジュ・ゴッド』『ソニック・バード』『沼地の魔神王』『アームズ・ホール』)
仁美(この辺りでしょう)
仁美(しかし、『ライオウ』がフィールド上にある時、これらのカードは意味を成さない)
仁美(ならばこの6種は宣言するには値しません)
仁美(さやかさんが佐倉さんに尋ねた2つ目は、『ライオウ』の特殊召喚の妨害能力について)
仁美(『ライオウ』は相手のモンスター特殊召喚を無効にし破壊する能力を持ってはいますが)
仁美(『死者蘇生』『融合』『龍の鏡』等のチェーンを組む効果には使用出来ませんわ)
仁美(これらのカードの中で、さやかさんが最も手札に持っていそうで…)
仁美(かつ、伏せカードの無くなった私のフィールドを驚異に晒す可能性があるカードは…)
マミ「それは『融合』カード」
マミ「やはり、美樹さんの手札には既に『融合』が…!?」
ほむら「そう考えるのが自然でしょうね」
ほむら「美樹さやかはデッキに『融合』を3枚積んでいて、手札に来る可能性は最も高い」
ほむら「それに志筑仁美にしてみれば、仮に美樹さやかの手に『融合』が存在してなくても良いはず」
ほむら「既に『融合』サーチカードの『融合賢者』『沼地の魔神王』を潰している時点で、」
ほむら「美樹さやかが能動的に『融合』を手札に加える手段は無い」
ほむら「後は手札に『融合』があって叩き落とせればそれで良し、」
ほむら「仮に無かったなら、それは美樹さやかに融合モンスターによる攻撃手段が無いということ」
ほむら「『死者蘇生』『龍の鏡』は今の段階じゃ特に意味も無いしね」
ほむら「志筑仁美は、十中八九『融合』カードを宣言する」
マミ「じゃあ、美樹さんの勝利は…」
ほむら「…」
ほむら(メタられてるのに、初手『大嵐』に恵まれて、手札次第じゃどうにかなりそうな試合)
ほむら(勢いはまだ死んでない、流れは変わっていない)
ほむら(けど美樹さやかがこの試合を落とすと、間違いなくこのツキの流れは変わる)
ほむら(3回戦にもつれ込まれるのは危険過ぎる…)
ほむら(なんとか、この試合をモノに出来ないかしら)
ほむら(なんとか…)
仁美「宣言カード名は―――、『融合』ですわッ!!」
マミ(来た!!)
ほむら(来てしまった!!)
さやか「…」
仁美「では、さやかさん。手札の確認をさせて頂きますわ」
さやか「いいよ。はい」
仁美「えっと…」
さやかの手札:『カオス・ソルジャー』『沼地の魔神王』
『死者蘇生』『高等儀式術』『融合賢者』
仁美「―――――えっ!?」
仁美「……」
仁美(『融合』カードが、ありませんの!?)
マミ「ああっ!!『高等儀式術』!!」
ほむら「そっちだったか!!」
杏子(そうだ)
杏子(さやかがサーチを潰されたと言ったのは『融合賢者』と『沼地の魔神王』)
杏子(この2枚までは仁美も当てれたろうな)
杏子(が、もう1つの質問のカードの正体については仁美は見誤った)
仁美(なんて事…)
さやか「残念だったね仁美。じゃあ、ランダムに一枚墓地へと捨ててもらうよ」
仁美「はい…」
仁美「ではさやかさん、私の手札をランダムに1枚選んで下さい」
さやか「オーケー!」
仁美(くっ……)
仁美(…今のさやかさんの手札で、ワンターン・キルされることは無い…)
仁美(でも、仮に”あのカード”が落とされると)
仁美(次の私のターンでは立て直し不可能…)
仁美(この決闘、私は、負ける………)
仁美(上条君……)
恭介「さやかも志筑さんもやるなあ」
マミ「これで志筑さんの手札は2枚になる」
マミ「次のドロー・フェイズを入れても3枚よ」
ほむら「美樹さやかはあの手札から1killは無理だけど」
ほむら「それでも志筑仁美のライフは結構削れる」
ほむら「これ以上に運が味方してくれれば、勝ち切れる」
ほむら「さあ美樹さやか。志筑仁美が一番落とされて困るカードを落とすのよ!」
ほむら「この流れを維持し続けなさい!!」
さやか「んじゃー、これ落としてね」
ポイッ(捨てる音
仁美「あっ」
パサッ(墓地にカードが落ちる音)
杏子「あっ」
恭介「あっ」
マミ「あっ」
ほむら「あっ」
さやか「えっ? どうしたの皆?」
仁美の手札からランダムに捨てられたカード:『甲虫装機 ホーネット』
仁美(…………)
仁美(た…)
仁美(助かりましたわ~~~~~~~~~~ッ!!!)
仁美の手札:『甲虫装機 ダンセル』『聖刻龍-トフェニドラゴン』
仁美(もう…乗り切りましたわよね!?)
仁美(危機は去ったんですのね!?)
仁美(次のターンまでの命を、私は繋ぎましたわ!!)
仁美(ダンセルさんが落とされたらどうなっていたか…)
仁美(本当に良かった…!!)
恭介「志筑さん、もの凄くほっとしてるなあ」
恭介「今までずっと、冷静を保ってはいたけど実はテンパってたんだろうな」
ほむら「あー、終わったかしら」
ほむら「今のがこの試合のターニング・ポイントだったわね」
ほむら「あの様子だと絶対あるでしょ、ダンセル」
ほむら「まあでも、あのデッキでここまでやれただけでも上出来よね、うん」
マミ「ちょっと暁美さん、まだ3回戦があるのにそういう事言わないの」
さやか「こら外野!! 何で諦めムードなのよ!!」
さやか「マミさんも、それ全然フォローになってないよ!!」
さやか「まだ私のターン中なんだぞ!!」
杏子「なあさやか…、恭介を取られても、絶望なんかすんなよ」
杏子「世界の半分は男なんだ、新しい出会いくらいあるって…」
杏子「仮に男が見つからなくても…あたしが慰めてやるからさ、だから…」
杏子「明日もし君が壊れても… http://www.youtube.com/watch?v=xhbv-loq7yc」
さやか「審判もうるさい!!」
さやか「気が散るなあ! 私は儀式魔法カード、『高等儀式術』を発動!!」
――『高等儀式術』
儀式魔法(制限カード)
手札の儀式モンスター1体を選び、そのカードとレベルの合計が
同じになるようにデッキから通常モンスターを墓地へ送る。
その後、選んだ儀式モンスター1体を特殊召喚する。
さやか「チェーンは!?」
仁美「ありませんわ」
さやか「私は手札から『カオス・ソルジャー』を選択!!」
さやか「『カオス・ソルジャー』のレベルと同じになるよう、バニラを墓地へ送る!」
さやか「『青眼の白龍』をデッキから墓地へ!」
――『青眼の白龍』
通常モンスター
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2500
攻撃・守備が最高の、なかなか手に入らない超レアカード。
ほむら「…あれ? 昨日貴方があげたのって彫像版じゃなかった?」
マミ「確かそうよ」
恭介「さやかが家に帰ってから自分のと入れ替えたんじゃないですか?」
恭介「さやか、昔のスターターbox版3枚持ってて気に入ってましたから」
マミ「確かにデザインは初期版こそが至高だわ」
マミ「私はそれ以上にバンダイ版の禍々しいデザインが好みだけど…」
ほむら「確かに、原作初期のラスボスっぽい雰囲気を出してるのはあれよね」
恭介「それにしても…、最後まで諦めないさやかの戦う姿勢は格好良いな」
恭介「ダンセルがあると分かっていても、ホーネットが落ちていても、最後まで諦めない」
恭介「最後まで可能性を信じて戦い抜く気だ」
恭介「病室で、腕が治らないと腐っていた僕とはえらい違いだ…」
恭介「さやかの生き様が、この決闘には現れている!!」
ほむら(いえ、多分【甲虫装機】の恐ろしさをあんまりよく分かってないだけだと思うけど…)
ほむら(そういう意味では、美樹さやかの生き様が決闘にそのまま表れてると言えるかもね)
ほむら(…本当は昨日、ダンセルとホーネットの組み合わせについても教えたはずなんだけどね)
ほむら(あんまり多くのデッキに関してゴチャゴチャ言い過ぎちゃったもんだから)
ほむら(逆に1つも頭に残らなかったか…)
さやか「たかだか虫一匹落としたくらいで調子に乗らないでよね、仁美!!」
さやか「手札から儀式モンスター、『カオス・ソルジャー』を特殊召喚!!」
仁美「召喚成功時まで通しますわ」
さやか「更に手札から魔法カード『死者蘇生』を発動!!」
――『死者蘇生』
通常魔法(制限カード)
自分または相手の墓地に存在するモンスター1体を選択して発動する。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
さやか「私は、墓地へ落とした『青眼の白龍』を特殊召喚!!」
さやか「どうだ仁美!!」
さやか「『融合』なんか使わなくたって、攻撃力3000のモンスターを2体並べたよ!!」
さやか「バトルフェイズに以降!! 『カオス・ソルジャー』で『ライオウ』を攻撃!!」
仁美「攻撃宣言時、ダメージステップ共に発動カードはありません!!」
仁美「くっ…!『ライオウ』が…!!」
仁美ライフポイント:8000→6900 ピピピッ
さやか「続いて、『青眼の白龍』で攻撃!!」
さやか「青き龍は勝利を齎す!! ダイレクト・アタックッ!!」
仁美「う…ッ!!」
仁美ライフポイント:6900→3900 ピピピッ
マミ「”青き龍は勝利を齎すが、赤き龍が齎すのは勝利ではなく勝利への可能性…”」ボソッ
恭介「また懐かしい所から台詞持ってきたなあ、さやかは」
恭介(あれは一緒にビデオ借りてきて観たんだったかな)
マミ「青と赤は眼の色でしょとか、ツッコむ人は野暮だと思うの」
マミ「私はああいう台詞、凄く好きよ」
マミ「『青眼の白龍』と『カオス・ソルジャー』が轡を並べてるってのもロマンよね」
恭介「そうですね」
恭介「『カオス・ソルジャー』のオリジナル版テキスト見ると本当思います」
マミ「”b.w.dと同等の能力を持つ最強の戦士。”」
マミ「…このルビは出来れば儀式版にも入れて欲しかったわあ」
恭介「『青眼の白龍』との直接対決も見たかったですよね」
マミ「そうね。究極龍との合体も良いけど、一騎打ちも見たかったわね」
さやか「攻撃はここまで。メインフェイズ2へ移行――…」
さやか「…」
さやか(ライオウが消えた今、私はサーチカードを使用出来る…)
さやか(次のドローでの無駄ヅモを無くすために)
さやか(デッキ圧縮は出来るだけやっておくべきだってことぐらい、私も分かってる!)
さやか「手札の『融合賢者』を発動し、デッキから『融合』をサーチ!」
仁美「…どうぞ。妨害系カードはありません。動かれるだけ動いて下さい」
さやか(ここで『沼地の魔神王』も効果発動―――といきたいけど)
――『沼地の魔神王』
効果モンスター
星3/水属性/水族/攻 500/守1100
このカードを融合素材モンスター1体の代わりにする事ができる。
その際、他の融合素材モンスターは正規のものでなければならない。
また、このカードを手札から墓地へ捨てる事で、
デッキから「融合」魔法カード1枚を手札に加える。
さやか(融合素材にも、『融合』にもなるこの子の使い道は広いから)
さやか(このターンには使わず温存した方がいいよね)
さやか「私のターンはここまで! ターン・エンド!!」
仁美「では、私のターンですわ。ドローッ!!」
3ターン目
仁美ライフ3900/さやかライフ8000
仁美フィールド:カード無し
さやかフィールド:モンスターゾーン『カオス・ソルジャー』『青眼の白龍』
魔法罠ゾーン カード無し
仁美手札3/さやか手札2
仁美(サーチカードばかりのそのデッキで『ライオウ』を打ち破りましたか。流石ですわ)
仁美(流石、私の親友にして、恋のライバル)
仁美(で、あればこそ)
仁美(貴方は、全力で叩き伏せます!!)
仁美「私は手札から、『聖刻龍-トフェニドラゴン』を特殊召喚!!」
――『聖刻龍-トフェニドラゴン』
効果モンスター
星6/光属性/ドラゴン族/攻2100/守1400
相手フィールド上にモンスターが存在し、
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
このカードは手札から特殊召喚できる。
この方法で特殊召喚したターン、このカードは攻撃できない。
このカードがリリースされた時、
自分の手札・デッキ・墓地からドラゴン族の通常モンスター1体を選び、
攻撃力・守備力を0にして特殊召喚する。
恭介「ええ!? 志筑さんの墓地にさっき落ちたのはホーネットだったのに!?」
恭介「まさか…【甲虫装機】と【聖刻龍】を合体させているのか!?」
恭介「そんなデッキがあるのか…」
ほむら「…成程」
ほむら「トフェニドラゴン、シユウドラゴンの流れは、ダンセルと召喚権を食い合わない」
ほむら「両デッキの展開力を合わせた強力なデッキという訳ね」
ほむら「墓地が溜まった頃には開闢、カオサラも出せそうだし」
ほむら「その分普通の【甲虫装機】よりもバックは薄いでしょうけど…」
ほむら「そのピーキーさも、愛着の要因にもなるかしら」
ほむら(それにしても、身内に他にゼクラーがいた事は嬉しいわ)
ほむら(今度志筑仁美とは【甲虫装機】の格好よさについて語り合ってみましょう)
ほむら(♪)
マミ(あら、暁美さんがこんなににこやかに笑うなんて珍しいわね)
マミ(美樹さんがもう負けそうだっていうのに)
恭介「さやか頑張れ! 志筑さんも頑張れ!!」
仁美「さやかさん。トフェニドラゴン特殊召喚に対して何かありますか?」
さやか「…何も無い」
さやか(召喚権を使わずレベル6モンスターを出した!? なんてデッキなのよ!!)
仁美(驚くのはこれからですわ、さやかさん!!)
仁美「私は、『甲虫装機 ダンセル』を通常召喚!!」
――『甲虫装機 ダンセル』
効果モンスター
星3/闇属性/昆虫族/攻1000/守1800
1ターンに1度、自分の手札・墓地から「甲虫装機」と名のついた
モンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。
このカードに装備された装備カードが自分の墓地へ送られた場合、
デッキから「甲虫装機 ダンセル」以外の
「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。
また、このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、
装備モンスターのレベルは3つ上がる
さやか「転校生も持ってた【甲虫装機】のトンボ兵隊!!」
仁美「先程の『マインドクラッシュ』は明らかにプレイング・ミスでした…」
仁美「そして、落とされていたのがこの子であったなら、私は負けていたでしょう」
仁美「ですがこの子は手札に生き残り、こうして召喚された」
仁美「その運気に乗り、私はこの試合を制します!!」
仁美「『甲虫装機 ダンセル』効果発動!! 墓地の『甲虫装機 ホーネット』を装備!!」
――『甲虫装機 ホーネット』
効果モンスター
星3/闇属性/昆虫族/攻 500/守 200
1ターンに1度、自分の手札・墓地から「甲虫装機」と名のついた
モンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。
このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、
装備モンスターのレベルは3つ上がり、
攻撃力・守備力はこのカードのそれぞれの数値分アップする。
また、装備カード扱いとして装備されているこのカードを墓地へ送る事で、
フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
さやか「トンボがハチを装備した!?」
仁美「『甲虫装機 ホーネット』の効果発動ですわ!」
仁美「『甲虫装機 ホーネット』を墓地へ送ることで、さやかさんの場の『青眼の白龍』を破壊!」
さやか「はあ!?」
仁美「続いて『甲虫装機 ダンセル』の効果発動!!」
仁美「装備されていた甲虫装機モンスターが墓地に送られた場合、」
仁美「ダンセル以外の甲虫装機モンスターを特殊召喚出来ます!!」
仁美「任意効果ではありますが、テキストが”場合”ですので、タイミングは逃しません!!」
さやか「えっ…? 何? どういう事? タイミングって何?」
杏子「あー、お前そこまでは知らなかったか」
杏子「まあ、分からないなら気にしなくていい、うん」
杏子「試合中に1から説明出来るようなことでもねーしな」
さやか「…分かったよ。とりあえず気にしないでおく」
仁美「私はデッキから、『甲虫装機 センチピード』を特殊召喚します!!」
――『甲虫装機 センチビード』
効果モンスター
星3/闇属性/昆虫族/攻1600/守1200
1ターンに1度、自分の手札・墓地から「甲虫装機」と名のついた
モンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。
このカードに装備された装備カードが自分の墓地へ送られた場合、
デッキから「甲虫装機」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。
また、このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、
装備モンスターのレベルは3つ上がる。
さやか「また虫だよ…。ねえ仁美、これってなんなの?」
仁美「ムカデさんですわ」
仁美「召喚時何も無いようでしたら、『甲虫装機 センチビード』の効果発動です!」
仁美「墓地の『甲虫装機 ホーネット』をセンチビードに装備します!!」
仁美「そして『甲虫装機 ホーネット』の効果でホーネット自身を墓地へ送り、」
仁美「さやかさんの場の『カオス・ソルジャー』を破壊します!!」
さやか「そんなぁ!?」
仁美「『甲虫装機 センチビード』は、装備していた甲虫装機モンスターが墓地へ送られた場合、」
仁美「甲虫装機モンスターを1枚手札に加えることが出来ます!」
仁美「私は『甲虫装機 ダンセル』を手札に加えますわ!!」
さやか「なんつーコンボだ……。割るだけ割って手札補充してるよ…」
さやか「ねぇ!! これおかしくない!? 性能おかしいんじゃないのぉ!?」
さやか「こんなの絶対おかしいよ!!」バンッ!
ほむら(それは貴方の台詞じゃないわ)
ほむら(それに、これは昨日の夜貴方にも説明したはずのコンボよ)
仁美「ですが、これも無敵という訳ではないのですよ?」
仁美「現にcsでは【甲虫装機】使用者の数は減少傾向にあるのです」
さやか「な、なんで…?」
仁美「あまりに強過ぎる為に次規制されるだろうと考えた見切り派の方々の増加」
仁美「そしてあまりに強力過ぎる為に、他の皆さんが必死になって虫対策をしているものですから、」
仁美「【甲虫装機】よりは対策の手薄になった他のデッキを使ったほうが勝てるという理由で、」
仁美「【甲虫装機】を使う方たちが減ったのです」
さやか「…そういえば、昨日転校生も似たようなこと言ってたな」
さやか「ってぇ!! 結局それって、今は【甲虫装機】が最強って事じゃん!!」
仁美「まあそうですけど、正規のルールには則っていますからね」
さやか(けど、なんか納得いかない…!!)
ほむら「美樹さやかなら、どの時期に遊戯王やってても多分同じこと言ってたでしょうね」
ほむら「何時だってエグいコンボはあったでしょ」
ほむら「『処刑人―マキュラ』を『愚かな埋葬』で墓地に送った挙句、」
ほむら「『強欲な瓶』『八汰烏の骸』『無謀な欲張り』で無限ドローしまくってエグゾ完成とか」
ほむら「『黒い旋風』三枚でアド稼ぎまくった挙句『ダーク・ダイブ・ボンバー』でワンキルとか」
ほむら「『高等儀式術』三枚時代の『e-hero ダークガイア』とか」
ほむら「『生還の宝札』があって『馬頭鬼』準制限、『異次元からの埋葬』三枚時代のアンデとか」
ほむら「あの辺に比べたらまだ【甲虫装機】の4アド稼ぎって大人しいと思うんだけど」
マミ「暁美さん、それは、あまりに極端な例え方なんじゃないかしら…」
恭介「やっぱり【甲虫装機】の動きは凄い!!」
恭介「このメチャクチャさが遊戯王って感じがするなあ!!」
さやか(けど私のライフは8000そっくり残ってる!!)
さやか(幾ら展開してっても、甲虫装機モンスターは、効果は強いけど攻撃力自体は大したことない…)
さやか(なんとか、次のドローで『カオス・ソルジャー』を引ければ、ワンチャンスはある!!)
仁美(さやかさん、まだチャンスはあるとお思いなんですね)
仁美(ですが、貴方に次のターンはありません!!)
仁美「私は、場の『聖刻龍‐トフェニドラゴン』をリリースし―――」
さやか「えっ? 通常召喚したのにリリース?」
仁美「『聖刻龍‐シユウドラゴン』を特殊召喚します!!」
――『聖刻龍‐シユウドラゴン』
効果モンスター
星6/光属性/ドラゴン族/攻2200/守1000
このカードは自分フィールド上の
「聖刻」と名のついたモンスター1体をリリースして手札から特殊召喚できる。
1ターンに1度、このカード以外の自分の手札・フィールド上の
「聖刻」と名のついたモンスター1体をリリースする事で、
相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。
このカードがリリースされた時、
自分の手札・デッキ・墓地からドラゴン族の通常モンスター1体を選び、
攻撃力・守備力を0にして特殊召喚する。
さやか「【聖刻龍】か…」
さやか(…多分昨日マミさん達に教えて貰ったデッキの中にもあったと思うけど)
さやか(ほんと昨日はいろんなデッキ教わったせいで1つ1つのこと全然覚えてないんだよなぁ…)
さやか(どっちかってとデッキ作る方に神経行ってたし)
さやか(どんな感じの動きするんだったっけ…)
仁美「リリースされた『聖刻龍‐トフェニドラゴン』の効果発動!」
仁美「デッキから、通常のドラゴン族モンスター1体を、攻撃力守備力0で特殊召喚します!」
仁美「私はデッキから『エメラルド・ドラゴン』を特殊召喚!!」
――『エメラルド・ドラゴン』
通常モンスター
星6/風属性/ドラゴン族/攻2400/守1400
エメラルドを喰らうドラゴン。
その美しい姿にひかれて命を落とす者は後を絶たない。
さやか「レベル6のドラゴンを特殊召喚!?」
さやか「…でも、攻撃力も守備色も0ってどうすんの」
仁美「こうするのですわ」
仁美「私の場には、レベル6のドラゴン族モンスターが2体」
仁美「私は『聖刻龍‐シユウドラゴン』と『エメラルド・ドラゴン』をオーバーレイ!!」
仁美「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!!」
さやか「シユウとエメラルドを重ねた!?」
さやか「これって……エクシーズ召喚!?」
仁美「その通りですわ」
仁美「エクシーズ召喚ッ!!」
仁美「来なさい! エジプトに君臨せし神々の王よ!!」
仁美「『聖刻龍王-アトゥムス』!!」
――『聖刻龍王-アトゥムス』
エクシーズ・効果モンスター
ランク6/光属性/ドラゴン族/攻2400/守2100
ドラゴン族レベル6モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、
デッキからドラゴン族モンスター1体を選び、
攻撃力・守備力を0にして特殊召喚する。
この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。
ほむら「アトゥムスって確かラーの事なのよね」
マミ「聖刻はエジプトのヒエログリフの事だから」
マミ「【聖刻龍】の龍達は皆、エジプトの神様の名前なのよ」
マミ「シユウドラゴンはシュウだし、セテクドラゴンはセトだしね」
マミ「そして暁美さんの言う通り、アトゥムスはラーよ」
ほむら「本家ラーと違って優秀な効果よね」
マミ「あら、『ラーの翼神竜』だって面白いカードじゃない」
マミ「昔はよく次元デッキで使ったわよ」
ほむら「面白いだけでしょう?」
ほむら(そう言えば、結局【三幻神】でまともに実用範囲内って結局オベリスクだけだったわね)
ほむら(ラーは論外だし)
ほむら(散々騒がれたオシリスにしても、結局効果耐性が無いせいで微妙な性能…)
ほむら(いや、性能の是非はともかく、4枚使う手間にはまったく見合ってないというか)
ほむら(あれなら2枚で同じことが出来る強者ワンフーでいいじゃんっていうか)
ほむら(オシリスにも耐性付けてくれても良かったんじゃないのかしらね)
仁美「アトゥムスの効果!」
仁美「オーバーレイ・ユニットを1つ使い、デッキから任意のドラゴン族モンスターを、」
仁美「攻撃力守備力0で特殊召喚します!!」
仁美「私はレダメさんを特殊召喚!!」
――『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』
効果モンスター
星10/闇属性/ドラゴン族/攻2800/守2400
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するドラゴン族モンスター1体を
ゲームから除外し、手札から特殊召喚できる。
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に手札または自分の墓地から
「レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン」以外の
ドラゴン族モンスター1体を特殊召喚できる。
仁美「さやかさんのチェーンが何も無ければ、そのままレダメさんの効果発動ですわ!!」
仁美「今しがたオーバーレイ・ユニットで墓地へ送った、」
仁美「『エメラルド・ドラゴン』を特殊召喚!!」
仁美「続いてカオス・エクシーズ・チェンジッ!!」
仁美「ランク6『聖刻龍王-アトゥムス』の上に、『迅雷の騎士ガイアドラグーン』を特殊召喚!!」
――『迅雷の騎士ガイア・ドラグーン』
エクシーズ・効果モンスター
ランク7/風属性/ドラゴン族/攻2600/守2100
レベル7モンスター×2
このカードは自分フィールド上のランク5・6のエクシーズモンスターの上に
このカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
恭介「ガイアドラグーンだ!!」
マミ「上条君はガイアドラグーンが好きなの?」
恭介「ガイアドラグーンが…っていうか、ガイアの系譜が好きなんですよ」
恭介「『暗黒騎士ガイア』『竜騎士ガイア』『疾風の暗黒騎士ガイア』『大地の騎士ガイアナイト』」
恭介「『地天の騎士ガイアドレイク』に、さやかが使った『カオス・ソルジャー』、」
恭介「そして『究極竜騎士』、『カオス・ソルジャー開闢の使者』」
マミ「そう言えば『カオス・ソルジャー』も変身前は『暗黒騎士ガイア』だものね」
マミ「『暗黒騎士ガイア』がocgで出たのはvol.1、そうとう前だけど…」
マミ「あれからガイアの血脈は、その魂と共に絶えることなく受け継がれている」
マミ「ノーマル、融合、効果モンスター、シンクロ、エクシーズと…」
マミ「遊戯王ocgの歴史の流れの象徴と言ってすら良い、素晴らしいシリーズだと思うわ」
恭介「僕もそう思います」
仁美「更に! レベル3のダンセル、センチビードもオーバーレイ!!」
仁美「『no.30 破滅のアシッド・ゴーレム』特殊召喚!!」
――no.30 破滅のアシッド・ゴーレム
エクシーズ・効果モンスター
ランク3/水属性/岩石族/攻3000/守3000
レベル3モンスター×2
自分のスタンバイフェイズ時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除くか、
自分は2000ポイントダメージを受ける。
このカードのエクシーズ素材が無い場合、このカードは攻撃できない。
このカードがフィールド上に存在する限り、自分はモンスターを特殊召喚できない。
仁美のフィールドのモンスター
『レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン』:攻撃力0
『no.30 破滅のアシッド・ゴーレム』:攻撃力3000
『エメラルド・ドラゴン』:攻撃力2400
『迅雷の騎士ガイア・ドラグーン』:攻撃力2600
さやか「嘘でしょ……」
さやか(私のターンの終わり、私の場には攻撃力3000のモンスターが2体いて…)
さやか(仁美の場にはカードが無く、手札は2枚しかなかった…)
さやか(でも仁美のターンに入ると)
さやか(私のモンスターは全滅して、仁美の場には5体のモンスター…)
さやか(しかも、私がワンターン・キルされる状況)
さやか(決闘の速度が、カード1枚当たりの力が、)
さやか(私と仁美ではあまりにも違いすぎる…!!)
仁美「では――、バトルフェイズ。『迅雷の騎士ガイア・ドラグーン』の攻撃!」
さやか「う…」
さやかライフポイント:8000→5400 ピピピッ
仁美「『no.30 破滅のアシッド・ゴーレム』の攻撃!!」
さやか「ぐっ…!」
さやかライフポイント:5400→2400 ピピピッ
仁美「『エメラルド・ドラゴン』の攻撃!!」
さやか「うわあああああああああっ!!」
さやかライフポイント:2400→0 ピーッ!!
杏子「…2回戦終了だ」
杏子「勝者、仁美」
杏子「これで1対1だから、3回戦で決着になる」
杏子「悔いの無いサイドチェンジを行いなよ」
※
さやか「……………………………」
さやか「………………………」
さやか「…………………」
さやか「……………」
さやか「………」
さやか「……」
さやか「」
恭介「さやか、どうしてしまったんだ」
恭介「志筑さんはサイドチェンジを始めているのに」
恭介「さやかはさっきから何も喋らず、ずっと動かない…」
ほむら(身をもって思い知ったようね、)
ほむら(現環境カードの力を)
ほむら(やはりカードの性能は、説明よりも実体験して始めて心に刻まれる)
ほむら(1戦目のような、勢いで強運を掴み取る流れは去っている)
ほむら(美樹さやかは己が敗北を予感しているわね)
マミ「美樹さん…」
さやか(勝てないよ…)
さやか(これこそ、奇跡でもない限り勝てないよ…)
さやか(やっぱりこのデッキじゃ無理なんだ…)
さやか(私は手札を3枚使ってモンスターを1体出すのに)
さやか(仁美は実質手札1枚からこっちのカード2体を破壊して、攻撃力3000を出してくる)
さやか(しかも私のデッキはサイドチェンジが無い)
さやか(もう無理だよ…)
さやか(このままじゃ仁美に恭介取られちゃうよお…)
さやか(誰か助けてよぉ……)
パサッ。
さやか(…)
さやか(これは…)
さやか(私のサイドデッキ…)
さやか(と言っても、これ入れる訳にはいかないし…)
さやか(私のデッキにはまったく噛み合わないし…)
さやか(でも…)
さやか(でも………もしかしたら…)
さやか(恭介ぇぇ………私を助けてえ……)
マミ「…? 美樹さんが虚ろな瞳でサイドチェンジを始めたわ」
マミ「いえ、そもそも美樹さんのデッキ、サイドデッキなんかあったかしら」
ほむら「昨日の段階では無かったわよ」
ほむら「美樹さやかのデッキはピーキー過ぎるから、下手なサイドチェンジは事故の元」
ほむら「そう言ったし、本人も理解してたはずだけど」
ほむら「けど、家に帰って作ったのかも知れないわね」
ほむら「まあ、無いよりはあった方が良いことは確かだしね」
マミ「でも、あんな心が何処かに行ったような状態でデッキを組み直して、大丈夫なのかしら…」
マミ「第一、何を入れているの?」
ほむら「対【甲虫装機】なら『暗闇を吸い込むマジックミラー』『スキルドレイン』辺りが鉄板だけど」
ほむら「美樹さやかが自宅にそんなカード置いていたとも思えない」
ほむら「一体何が…?」
※
杏子「終わったか? なら互いのデッキを」
さやか「カット…アンド」
仁美「シャッフルですわ」
杏子「んじゃあ、互いにドローしてくれ。先攻後攻の決定権は、負けたさやかにある」
さやか「うん…」
杏子「さやか、お前が先攻でいいか?」
さやか「うん…」
仁美(先の決闘は、さやかさんに相当のプレッシャーを与えたようですわね)
仁美(親友を追い詰めることは心苦しいですが…)
仁美(決闘において手を抜くことは相手に対して最大の侮辱)
仁美(互いに全力で戦いの結果を求め、その結末と運命に従うのが決闘者)
仁美(さて、私の手札は…)
仁美の手札:『甲虫装機 ダンセル』『聖刻龍-シユウドラゴン』『聖刻龍-シユウドラゴン』
『招集の聖刻印』『おろかな埋葬』
仁美(素晴らしい手札ですわ)
仁美(まるで決闘の神の寵愛を受けているかのような)
仁美(さあ、どう来ます? さやかさん!)
さやか「…」
仁美「あの…さやかさん?」
さやか「…」
仁美(さやかさん、まだドローすらしていない!?)
さやか「…」
杏子「さやか、早くドローしろ」
杏子「お前がショック受けてることは分かるし、」
杏子「負けて恭介取られるのが怖いってのも分かる」
杏子「それにあんま野暮なこと言うのは好きじゃないが、」
杏子「過剰な遅延行為は仁美に失礼だろ」
杏子「ジャッジキるぞ」
さやか(ダメだよ…。引けないよ…)
さやか(私のデッキじゃ仁美に勝てない…)
さやか(そう思ったらデッキがあんな遠くに見えて…)
さやか(どんなに手を伸ばしても届かない…)
さやか(ダメだよ…やっぱり私…)
――「大丈夫だよ、さやかちゃん」
さやか(!?)
さやか(誰…!?)
さやか(杏子や仁美の声じゃない、よね…)
さやか(誰かいる…)
さやか(目に見えない誰かが…)
さやか(でも…なんだろう、この暖かい…っていうか、懐かしい感じ…)
――「さやかちゃん、カードを引こう」
――「さやかちゃんも分かっているんでしょう」
――「仁美ちゃんに勝つ為には何をするべきか…」
さやか(何をするべきかって…)
さやか(仁美は私の戦術への対策を立ててきてる)
さやか(私の勝つ道なんて…それこそ、初手であれを引くくらいしか…)
――「じゃあ尚更、ドローは必要だよね」
――「手を伸ばして、カードを引こうよ」
――「あの子達は皆、さやかちゃんの手が迎えに来てくれることを待ってるんだよ」
さやか(迎えに来るのを待ってるって…)
――「本当だよ。私は、あの子達の声に導かれて降りて来れたの」
――「”さやかちゃんに勝って欲しい”」
――「そうあの子達は言ってるの」
――「本来なら、私がさやかちゃんと会うのは、さやかちゃんのジェムが汚れきった時なんだけど」
――「今日は、あの子達…さやかちゃんがデッキに入れた5枚のカードの精霊の意思で、」
――「再びこの見滝原に降り立つことが出来た」
――「そういう形だから、さやかちゃんはまだ私のことは思い出せないみたいだけどね…」
さやか(いや、何言ってるか分かんないし)
さやか(そもそもあんた誰…?)
さやか(あんたが誰なのか、私には分からない…)
さやか(でもなんだろう、分かりそうな気はする…)
さやか(少なくとも敵とか嫌な奴じゃない…)
さやか(仁美とかマミさんとか杏子とか並に…ううん、もしかしたらもっと近しい感じを…)
さやか(でも思い出せない…!!)
――「私の事は今はいいよ」
――「それよりも思い出して欲しいのは、あの5枚へのさやかちゃんの気持ち」
さやか(そっち?)
――「うん。どう? あの子達はさやかちゃんにとってどんなカードなの?」
さやか(あれは…私にとっては、宝物のようなカード)
さやか(私が一番最初に手にしたデュエルモンスターズのカード)
さやか(恭介が大事にしてたんだけど、私にくれて…)
さやか(私もとても大事にしてた)
さやか(だから今日、お守り代わりにとサイドに入れて…)
――「とっても大事なんだね。あのカードが。そして、上条君の事が」
さやか(…うん)
さやか(恭介が何と思ってようと、私は恭介の事が好き)
――「上条君だって、きっとさやかちゃんの事は好きだよ」
さやか(そうなのかな…)
――「恋になるかどうかは、これからかも知れないけど、さやかちゃんの事は大事にしてるはず」
――「でなきゃお気に入りのカードをあげるなんて事ないよ」
――「あのカード達にはね、」
――「さやかちゃんと上条君の”キズナパワー”が含まれている」
――「その力が精霊としての意思を持って私を呼んだ」
――「さやかちゃんがあの子達を想うように、あの子達もさやかちゃんを想ってる」
――「二人を、この決闘で結びつけたいって、少なくともあの子達は思ってるの」
――「だからこれから起こる事は、運命であり必然」
――「カードの形をした、さやかちゃんと上条君のキズナのピース5つ」
――「それを私は、私とさやかちゃんのキズナの鎖で繋いであげる」
――「だから、後はさやかちゃんがドローしさえすればそれは形になるの」
――「それでも勇気が出なくて、」
――「どうしても一人でドロー出来ないのなら、私が一緒に引いてあげるから」
さやか(…どうして?)
――「えっ?」
さやか(仮にあんたの言うことが本当だとして、カードに意思があったとして)
さやか(あんたが私に手を貸す理由は何?)
――「それは…」
――「いつでも その笑顔 救われてきた僕なんだ♪
http://www.youtube.com/watch?v=ujfvc3ebpvq」
さやか(…)
――「いや、冗談抜きでだよ?」
――「仁美ちゃんも大事なお友達だけど」
――「私はさやかちゃんの笑顔には数え切れないくらい救われてきたから、」
――「今はちょっとだけさやかちゃんを贔屓したいの」
――「ってのじゃ、説得力無いかな…?」
さやか(…ぷっ)
――「さ、さやかちゃん?」
さやか(いやあ、なんとなくそうじゃないかと思った)
さやか(あんたが何処の誰かは分かんないけどさぁ)
さやか(細かい理由なんてない、あんたは単純に私の事が好きなんじゃないかってさ!)
――「ウェヒヒヒ、そういうリアクション取ってくれるさやかちゃんが好きだよ私」
さやか(私もあんたと話してると和んでくるわー)
さやか(よーし)
さやか(勇気も湧いてきた。ドローするよ、私)
さやか(一緒に引いてくれるんだっけ? 誰かさん)
――「うん!」
さやか「…うん。行こうか」
仁美(さやかさんの目に、光が戻った…!?)
さやか「お待たせ仁美。じゃあドローするからね」
仁美「はい、お願いします」
さやか「まず1枚目…」
スッ…
杏子「…なんだ?」
マミ「美樹さんの手に、うっすらと誰かの手が重なっているような…?」
ほむら「…………」
ほむら(そういう事ね)
ほむら(貴方は美樹さやかにだけサービスし過ぎなのよ)
ほむら(まったく…)
さやか「…」
スッ、スッ、スッ、スッ…
恭介(1枚も見ずに5枚をドローし終えた)
恭介(それにしてもどうしたんだ、今のさやかは)
恭介(不利なことが分かってるはずなのに、まったく肩に力が入ってない)
恭介(もの凄く穏やかに、自然な所作でカードを引いていく)
恭介(まるで勝つことが分かっているかのような)
恭介(最高の運命と最良の手札を、自ら呼び込んでいるような顔)
恭介(…綺麗だ)
恭介(今のさやかは、凄く綺麗で、かっこいい)
恭介(自らの勝利以外何も信じていない、素晴らしい決闘者だ…!!)
マミ(それにしても何なのかしら)
マミ(美樹さんがドローする程に、美樹さんの後ろに何かを感じるわ)
マミ(何処かで覚えがあるような懐かしい存在感…)
杏子(なんだよあれ…。幻とかじゃねぇんだよな?)
ほむら(……………まどか)
さやか(ドローし終えた)
さやか(あんなに遠かったカードが、あっさり引けた)
さやか(あんたのお陰かな?)
――「…」
さやか(どしたのさ、急に黙り込んで)
――「ちょっと寂しいかなって…」
――「さやかちゃんに名前呼ばれなかったことほとんど無いし」
――「あんた、としか呼ばれないでいると」
――「やっぱ調子狂うっていうか」
さやか(じゃあさっさと名前教えなさいよ)
――「さあ!一緒に手を開こう、さやかちゃん!! ウェヒヒヒヒ」
さやか(…分かったわよ、たく)
仁美「ではさやかさん、準備が出来ましたら、ドローフェイズをお願いします」
さやか「あー、うん。それなんだけどさ」
仁美「はい?」
さやか「私の最初の手札なんだけど―――――――……」
――10年後。上条邸。
さやか「仁美にエグゾディアを晒した時には、その誰かさんはもう消えてた」
さやか「あんたが来たのは、その直後だったんだよ」
qb「あの日は別の町に行ってたからね…」
qb「膨大な精神エネルギーの爆発を感じて、慌てて戻ってきた時には全てが終わってたし」
qb「でもあれが、宇宙の歴史を変える事は確信していた」
qb「あれは一種のビッグ・バンとも言える現象だったからね」
qb「あの日、宇宙中に住む各文明の人々の心の中に、」
qb「初手エグゾディアを完成させる君と、その背後に写る神々しい”何か”の姿が焼き付けられた」
qb「以降宇宙は、決闘で燃え上がってる」
さやか「そうだね」
さやか「地球も例外じゃない」
さやか「世界中の人が、何をするにも決闘決闘」
さやか「人の心の毒から発生する魔獣は、完全に消滅した」
さやか「決闘をすればいつでも心が晴れて、そんなものが生まれてる暇が無い」
さやか「私達にしたって、ソウルジェムが濁ることなんか無い」
さやか「決闘さえすればジェムの汚れだって簡単に落ちる」
qb「僕の仕事も完全に変わったからね」
qb「魔法少女を増やす仕事は無くなって、」
qb「今は宇宙中の文明に決闘を流行らせるために活動してる」
さやか「そりゃー、魔獣がいなくなったら魔法少女使ってエネルギー回収も出来ないもんねぇ?」
qb「随分引っ掛かる言い方をされた気もするけど、まあそういうことだよ」
qb「新たな感情エネルギー源は決闘者の闘気」
qb「”僕と契約して決闘者になってよ!”ってカードを渡し広めるのが今の僕の仕事なのさ」
さやか「決闘者の闘気をエネルギーに変換してそれを集めるか…。よくやるよね」
qb「実は、僕達の星の文明では更に研究が進んでいてね」
qb「『モーメント』という装置を作ってて、宇宙中で起こっている決闘の闘気を、」
qb「僕らを介さず直接吸収してエネルギーに転換させることが出来るようになるんだ」
qb「これが完成すればエネルギー集めはぐんと楽になる」
qb「宇宙の破滅を救うばかりか、宇宙中の文明が更に豊かに暮らせるようになる」
qb「実は地球の偉い人にも、プロジェクトの参加を呼び掛けるようにまでなってるんだよ」
さやか「地球でも決闘づくしの生活で、どこまでも豊かになれるのか。凄いね~」
qb「まあね」
qb「ところで、他の皆は元気にしてるのかい?」
さやか「あれ? マミさんや杏子のとこにはまだ行ってないの? 久々の地球でしょ」
qb「地球には、近くの星系に行く際に寄っただけだからね」
qb「全ての発端となった君のところにくらいは、顔を出そうと思っただけさ」
qb「すぐに行かなくちゃならないんだよ」
さやか「他の皆は………」
※
――決闘世界大会会場
マミ「ティロ・フィナーレッッ!!」
対戦者「うわああああ!!」
対戦者ライフ:0 ピーッ!!
アナウンサー「決まりました! 巴選手の華麗な逆転劇!!」
アナウンサー「これで巴選手、決勝進出です!!」
アナウンサー「流石は三年連続優勝者!」
アナウンサー「決闘界のクイーン、その力は衰えを見せません!!」
マミ「最初からクイーンが全力でかかれば、一瞬よ」
マミ「クイーンの決闘は、エンター・テイィメントでなければならない…」
マミ「クイーンは一人。この私よ…!!」
マミ「ふっ…」ドヤァ…
さやか「マミさんはプロ決闘者になった」
さやか「毎日お茶の間に華麗な姿を届けてくれる」
さやか「やっぱりマミさんは格好いいよね」
さやか「結婚はまだだけど…早くいい人見つかるといいよね」
※
――宗教法人『決闘教』総本山
杏子「さー、寄ってけ見てけ、入信していけ!」
杏子「うちはなー、人間は決闘さえすれば幸せになれるっていう宗教だ!!」
杏子「朝から晩まで決闘すれば、死後まで待つこたねぇ、人は救われる!!」
杏子「それから、カード買うならうちでにしなよ!」
杏子「うちは宗教法人だから税金とは無縁だ!」
杏子「色々経費が節約出来る分、町の店より安いぜ~~!!」
ゆま「決闘する者は救われる~!!」
さやか「杏子はどっからか拾ってきた魔法少女の娘と、実家の教会跡地に新興宗教を立ち上げた」
さやか「それなりに入信者は多くて潤っているらしい」
さやか「…その実体は、非課税のカード屋みたいになってるけど」
※
――いつもの夕暮れの公園。
流れっぱなしの『clearmind』
http://www.youtube.com/watch?v=5ridiartdlq
タツヤ「『シューティング・スタードラゴン』の効果を発動する!!」
タツヤ「自分のデッキの上からカードを5枚めくる!」
タツヤ「このターンこのカードはその中のチューナーの数まで、」
タツヤ「1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる!!」
タツヤ「一枚目『ジャンク・シンクロン』!」
タツヤ「二枚目『ガスタ・イグル』!!」
タツヤ「三枚目『クイック・シンクロン』!!」
タツヤ「四枚目『ガスタ・ガルド』!!」
タツヤ「五枚目『エフェクト・ヴェーラー』!!」
タツヤ「チューナー・モンスターは5枚! だから五回連続攻撃が可能になる!!」
タツヤ「一回目は、織莉子姉さんを攻撃する!!」
織莉子「攻撃宣言時、罠カード『次元幽閉』発動!!」
織莉子「『シューティング・スター・ドラゴン』は除外されるわ!!」
ほむら「ならばチェーン、速攻魔法『禁じられた聖槍』を発動!!」
ほむら「タツヤの『シューティング・スター・ドラゴン』はこのターン、」
ほむら「このカード以外の魔法、罠カードの影響を受けない!!」
タツヤ「助かるほむ姉!!」
ほむら「行きなさいタツヤ!!」
ほむら「今日こそあの女の息の根を止めるのよ!!」
織莉子「くっ――、このままでは…!!」
織莉子「『シューティング・スター・ドラゴン』の攻撃を連続で受け、負ける…!!」
キリカ「おっと、チェーン発動、カウンター罠『神の宣告』だ!!」
キリカ「私のライフは半分になるが」
キリカ「『禁じられた聖槍』の効果は無効となり、」
キリカ「『シューティング・スター・ドラゴン』は『次元幽閉』の効果で除外される!!」
タツヤ「げぇっ!?」
ほむら「持っていたかッ!!」
織莉子「キリカ…ありがとう」
キリカ「へっへーん、こんくらい余裕!」
さやか「転校……いや、ほむらは、10年かけてあの男の子をすっかり弟子にしていた」
さやか「今じゃライバルの人とのタッグデュエルにハマっているらしい」
さやか「大学を出た後、ほむらがどうやって生活費稼いで生きているのかは地味に謎だ」
※
さやか「仁美は実家の事業を更に拡大させた」
さやか「今や志筑財閥の若き総帥」
さやか「あの後、ひょっとすると仁美との仲が険悪になるかもなんてちょっと怖かったけど、」
さやか「別にそんな事はなくて、今でもちゃんと交友は続いてる」
さやか「大人になった仁美ってすげぇ美人なんだよね」
さやか「仁美を見てると、外見年齢が歳相応に変わるってのは、ちょっと羨ましい」
さやか「魔法少女には無縁なもんだからね」
さやか「本人にそう言ったら、贅沢な悩みだって怒られちゃうんだけどさ(笑)」
さやか「そして恭介は…」
さやか「私と恭介はあの後…」
※
――10年前、上条恭介杯終了後。
さやか「……」
恭介「……」
さやか「……」
恭介「……」
さやか(気まずい…!!)
さやか(一応、ルールの上では私は恭介の彼女になったけど!)
さやか(やっぱ恭介の気持ちとか、まったく考えないってのもマズいよね!?)
さやか(とにかく、話し合わないと!! 全てはそれからだ!!)
さやか「あの、恭介」
恭介「な、何だいさやか」
さやか「ちょっと、ゆっくり出来るところで話をしようか」
恭介「ああ……」
――市内の喫茶店。
恭介「正直、驚いたよ」
恭介「君が僕の事を好きだったなんて…」
恭介「どう君の気持ちに応えたらいいのか分からなくて、困惑してるんだ」
恭介「一体何時から、僕の事を…?」
さやか「…恭介とはさ、ずっと一緒だった訳じゃん」
さやか「小学校に上がるくらいの頃には……もう、好き…だった」
恭介「そう、か」
さやか「うん…」
さやか「恭介は、私の事どう思ってた? ただの幼馴染で、友達?」
恭介「…分からない」
さやか「えっ!?」
恭介「いや、悪い意味では取らないで欲しいんだ」
恭介「さやかの事は大事だ、とても大切だよ」
恭介「物心付いた頃から一緒にいたし」
恭介「互いの良い所も悪い所も良く知ってる仲だろう」
恭介「さやかは僕にとっては空気と同じで、傍にあって当たり前のものっていうか…」
恭介「もの凄く近しい、近し過ぎる存在だから」
恭介「なんていうか、今更友達とか幼馴染みたいなありきたりな表現にしたくないんだ」
恭介「そう考えるとさやかは僕の何なんだろう、ってね」
恭介「いや……思い当たるフレーズが、無い訳じゃないか…」
恭介「……」
恭介「”…友達以上かな、それも少し違うか”」
恭介「”絆という言葉が相応しい”…」http://www.youtube.com/watch?v=hpcuysemybw
さやか「!!」
恭介「僕にとってはさやかは唯一無二の”さやか”だからさ」
恭介「ずっと大事に想ってはいたけど」
恭介「恋人にするとか、結婚するとかって発想はまったく思い浮かんでは来なかったんだ…」
さやか(そんな…)
さやか(私はちゃんと恭介に好感を持たれていたのに)
さやか(距離が近すぎて、想いが強すぎて異性として意識されてなかったなんて)
さやか(そんな…)
さやか(…)
さやか(じゃあ…私、恭介と幼馴染なんかじゃない方が良かったかな…)
さやか(逆に言えば、恭介にとって私は何時までも”さやか”なんだ…)
さやか(私はもっと、普通の男女として、接したいのに…)
さやか(そんな特別な関係でなんて、なくていいのに…)
さやか(なんだよこれ…)
さやか(仁美に勝って恭介を手に入れても…)
さやか(私の気持ちが恭介の心とこんなにすれ違ってるんじゃ…虚しいだけだよ…)
さやか(泣きたい……)
恭介「…でも、それも今日までの話だと分かった」
さやか「えっ…?」
恭介「今日のさやかは、今までに僕が見たことない輝きを持ったさやかだった」
恭介「僕は、さやかと互いの事をよく知り合っていると思っていたけど…」
恭介「自惚れていたんだろうな」
恭介「まだ僕たちの間には未知の開拓がたくさんある」
恭介「僕は、さやかと付き合って…もっとよく、さやかを知っていきたい」
さやか「じゃあ…!!」
恭介「キッカケはさやかと志筑さんとの決闘だったけど…」
恭介「僕も、決闘者の女の子が彼女になってくれるなら誰でも断る理由は無かったけど」
恭介「今の僕は、さやかと付き合いたいと思ってるよ」
恭介「僕は、さやかがいい」
さやか「きょ…」
さやか「恭介ッッッッ!!」
ちゅ~~~~~っ!
※
――そして再び10年後、上条邸。
さやか「私は高校、大学へと進学したけど、恭介はすぐプロの世界へ飛び込んだ」
さやか「恭介はあれから今までずっと、天才ヴァイオリニスト決闘者として、」
さやか「世界中のオーケストラ決闘者達を相手に戦っている」
さやか「私はその妻だ」
さやか「結婚したのは私が大学卒業した春」
さやか「子供はまだいないけど、とても幸せ」
qb「皆、充実していて何よりだね」
qb「ところで、例の超的存在の確認は、暁美ほむらにしたのかい?」
さやか「あんたがほむらから聞いたっていう、”鹿目まどか”かどうかって話?」
さやか「聞いてないよ」
qb「気にならないのかい?」
さやか「確かに、ほむらは”あいつ”について何か知ってる風だった」
さやか「けど多分、あいつの事は他人から聞くようなもんじゃないんだと思う」
さやか「少なくとも、私だけは、答えを知ってる人から、」
さやか「あいつについての答えを教えて貰っちゃダメって気がするんだよね」
さやか「あいつの態度からすると」
さやか「あいつに一番近いのは、私でないといけない」
さやか「その私がほむらに聞いて分かった風な口聞いても、あいつは喜びやしないでしょ?」
qb「そうか」
qb「そういえば美樹さやか」
qb「最近僕らの研究では、宇宙は一枚のカードのように成り立ってるって事になってるんだ」
さやか「カード?」
qb「宇宙は表面と裏面で成り立ってて、」
qb「さやかの見たものは表宇宙の柱なんじゃないかって説があるんだけど――…」
qb「おっと、そろそろ時間だ」
qb「じゃあ、僕はそろそろ行くよ」
さやか「うん、じゃね」
さやか「…」
さやか「うーん、今日もいい天気!」
さやか「さて、お洗濯と掃除を済ませて、その辺の奥さんと井戸端決闘でもしよっかな!」
―完―
(と言いつつ少しだけ続きます)
【なんちゃって次回予告!!】
さやか「宇宙が滅亡の危機だって!?」
ほむら「エネルギーは足りてるんじゃなかったの?」
qb「原因はそっちじゃない」
qb「というか、エネルギー不足以外の様々な要因が絡まって、」
qb「宇宙は今や誕生以来の危機に瀕している!!」
qb「事情に精通している、イオで知り合った星の住民を、協力者として連れてきた」
qb「さあ、皆に事情を説明して欲しい」
キモイルカ「やあ、僕は木星の衛星イオに文明を築いているドルフィーナ星人!」
ほむら(実在してたの、こいつ…)
――木星人登場!!
※
キモイルカ「宇宙は、命を育む優しい闇の世界だった」
キモイルカ「僕らはこれを『静寂の闇』と呼んでいる」
キモイルカ「偉大なる宇宙の支柱、『静寂の闇』の女神と呼べる存在によって、」
キモイルカ「この宇宙は安定を保っていた」
キモイルカ「しかし先だって…、『静寂の闇』の女神は、『常世の闇』の神によって敗れた」
キモイルカ「決闘によってね」
――露になる新事実!!
※
qb「全ての発端は、僕らの文明が築いていた『モーメント』が事故で爆発した事から始まる」
qb「そのショックで、『静寂の闇』を破壊する『破滅の光』が発生してしまった」
qb「『破滅の光』とは、『静寂の闇』を破壊へ導く宇宙の超常現象の1つだ」
qb「知的生命体に乗り移り、寄生された生命体は本能のままに破滅を望み、行動する」
qb「宇宙の人々は今、『破滅の光』に乗り移られた人間によって苦しめられている」
キモイルカ「しかし危機はそれだけでは収まらなかった」
キモイルカ「この混乱に乗じて、」
キモイルカ「常日頃から、僕らの宇宙を侵略しようと考えていた外部の驚異が動き出した」
キモイルカ「それが『常世の闇』だ」
qb「宇宙が一枚のカードのように、表と裏で成り立っていることは話したね」
qb「僕らの表宇宙『静寂の闇』は、命を育む優しい闇の世界なんだけど」
qb「その裏側、」
qb「全てを闇に還そうという裏宇宙の邪悪な闇が『常世の闇』、」
qb「それを司る神の名を『ダークネス』という」
――敵の正体!!
※
ダークネス「ふふ、こちらが混迷を極めし今ならば、容易く来ることが出来たわ」
まど神「…!!」
ダークネス「さあ『静寂の闇』を司る支柱よ。我の前に屈するのだ!!」
まど神「…命を産み、静かに育み、穏やかに見守ることが私の使命」
まど神「私は、皆のお母さんとして、皆を守る」
まど神「表宇宙の皆を苦しめる貴方を、私は許さない!!」
まど神「絶対に貴方の侵略は止めて見せる!!」
まど神「『静寂の闇』の十二の次元は私が守る!!」
ダークネス「ならば取る手段は1つ!!」
まど神「分かってる!!」
ダークネス・まど神「「決闘だッッ!!!」」
――神々の戦い!!
※
さやか「あ、あんたは…、まどかッッ!!??」
ほむら「まどか!!」
マミ「鹿目さん!?」
杏子「まどか!?」
まどか「ご…ごめん皆。私、負けちゃった」
さや・ほむ・マミ・杏「「「「どういう事!?」」」」
キモイルカ「『静寂の闇』の女神、鹿目まどかは、命を育む偉大な存在ではあったんだけど、」
キモイルカ「決闘はヘタクソだったんだ…」
まどか(だ、だって、私は遊戯王なんて生前さやかちゃんとちょっとやっただけだったし…)
まどか(勢い任せに戦ってはみたけど、ちょっと無理があったかなって…)
キモイルカ「だから『ダークネス』との決闘に破れ、」
キモイルカ「その神としての力を喪ってしまった」
キモイルカ「今の彼女は、ただの魔法少女だ…」
qb「僕を含め、皆に鹿目まどかに関する記憶が蘇えったのはそのせいか」
――鹿目まどかの帰環!!
※
まどか「皆、本当にごめんなさい」
さやか「私こそごめん、まどか!!」
さやか「私……なんであんたのこと、忘れてたんだろ…」
マミ「私も…、鹿目さんのことを忘れてたなんて…」
杏子「あたしも忘れてた…けど、今全部思い出したぜ!!」
杏子「あんたとあたし達の、歩んできた道をな!!」
ほむら「まどか…、導かれる前にこうして貴方に会えるなんて!!」
まどか「皆、怒ってないの…?」
qb「皆、とりあえず宇宙の話はどうでもいいみたいだ」
qb「再会出来たことを喜んでいるようだね」
qb「僕には理解できない感情だけど」キュップイ
qb「さて、今は宇宙中の決闘者が戦い続けて、宇宙の崩壊をかろうじて防いでいる」
qb「しかし宇宙の破滅は時間の問題だ」
qb「僕らは一刻も早く、まどかの失われた力を取り戻し、」
qb「再び彼女に宇宙の柱になって貰わなければならない」
キモイルカ「それには『ダークネス』を倒す必要があるんだ!!」
まどか「でも、私、決闘はヘタだから…」
まどか「お願い、皆には私と一緒に戦って欲しいの!!」
qb「ただ単純に『ダークネス』を倒せばいいってもんじゃない」
qb「『破滅の光』の驚異もあるし」
qb「『モーメント』が吹っ飛んだせいで、宇宙のエネルギー問題も再発してきた」
qb「人々が不安に陥ったから、当然また魔獣も現れてくる」
qb「これら全てを対処しつつ、『ダークネス』を倒さないといけないんだよ」
さやか「つまり私達は」
マミ「前まで通り魔獣と戦ってエネルギーを集めながら」
杏子「『破滅の光』に取り付かれた奴とも戦いながら」
ほむら「『ダークネス』も倒さなければならないと…」
まどか「そ、そうなんだよ…」
まどか「今度出た魔獣は、決闘者の絶望から生まれているから、決闘でじゃないと倒せないし…」
まどか「ううう……」
まどか(やっぱり皆怒るかなぁ…)
qb(あまりに唐突に多くの事を頼み過ぎてるからキレられても無理はないね)
まどか(言っとくけど最初の原因はqb星の人達なんだからね!?)
さやか「って事はさあ、ねえ?」
ほむら「ええ」
マミ「そういう事ね」
杏子「そういう事だな!」
まどか(あれ?)
まどか(皆、思いの外悪い顔はしてな―――)
ぎゅうっ!
まどか「さ、さやかちゃん!?」
さやか「またまどかと一緒に戦えるってことじゃ~~ん!!」
まどか「ええっ!?」
さやか「ん~、久々のこの感触! 我が嫁は相変わらず可愛いのぅ!!」
さやか「安心したまえ! このさやかちゃんが協力してあげよう!!」
ほむら「ずるいわ美樹さやか…!! 私だってまどかに抱きつきたいのに!!」
ほむら「まどか!! まどかぁぁぁ~~~!!」ぎゅむっ
まどか「ほむらちゃん!?」
ほむら「また貴方と一緒に戦えるなら…敵はなんだって構わないわ!!」
ほむら「一緒に敵を倒しましょう!!」
マミ(…うずうず)
杏子「お前もまどかに抱きつきたいなら行けばいいじゃん」
マミ「い、いえ…、ここは皆のお姉さんとして、取り乱すことなく再会シーンを過ごさないと…」
杏子「あんま無理すんなよ」
マミ「…ああ、ダメ、でもダメッ…!! 我慢できない!!」
マミ「鹿目さぁぁぁぁんッッ!!」
まどか「うわあ、マミさんまで!?」
マミ「ごめんなさいね、鹿目さん!! 鹿目さんのこと、忘れたくて忘れてた訳じゃないのよ!!」
マミ「その証拠に、その証拠に!!」
マミ「今私、とっても、鹿目さんの事抱きしめたいって思ってるのぉぉぉ!!」
さやか「ちょ、マミさん先輩なんだから自重して下さいよ! 今親友の私がまどかと…!!」
ほむら「遠慮しなさい巴マミ。まどかとは一番の友達の、この私が…!!」
まどか「ちょっとちょっと、喧嘩しないでよぉ!!」
マミ「鹿目さぁん!!」
杏子「何時まで経っても中坊時代のまんまだなこいつら」
杏子「いい歳なんだから少しは落ち着けっての」
qb「そういう君も、再会が嬉しいんだろう?」
qb「無理して涙堪えちゃってさ」
杏子「だまれ」
qb(宇宙の驚異に絶望するどころか再会したことの喜びに満たされるなんて)
qb(まあ、宇宙を救う決闘者ならこのくらいポジティブじゃないと困るけどね)
まどか「皆、協力してくれるの!?」
ほむら「当たり前でしょう。私は貴方の一番最高の友達なのよ。手伝うに決まってるわ」
まどか「ほむらちゃん!」
さやか「親友の私を差し置いて行くなんて許さんぞ~!!」
まどか「さやかちゃん!!」
杏子「協力してやるよ」
まどか「杏子ちゃん!!」
マミ「しょうがないわね。また5人で暴れてみる? ふふっ」
まどか「マミさん!!」
――再び結集する五人組!!
※
???「話は全て聞かせて頂きましたわ」
マミ「貴方は…」
まどか「仁美ちゃん!?」
さやか「仁美!?」
仁美「ご機嫌よう、皆さん。そしてお久しぶりですまどかさん」
仁美「その戦い」
仁美「我が志筑財閥が全面的に支援させて頂きます」
仁美「金銭面、物資面、他あらゆる事柄について…」
仁美「必要とあらば、国連主要国や他の財界人にも協力を要請しますわ」
仁美「どうぞ、存分に戦って下さい」
ほむら「こういう時に力のある友人がいるのは助かるわね」
杏子「色々話が早くなるからな」
――パトロン現る!!
※
???「けれど、戦うにしても戦力増強は必要ではないかしら?」
まどか「あ、貴方達は…!!」
織莉子「ご機嫌よう」
キリカ「やっほー」
ほむら「美国織莉子!! 呉キリカ!!」
ほむら「復活したまどかを害そうと言うの!?」
織莉子「勿論私の中にも、かつての鹿目まどかとの因縁が蘇えってきたわ」
ほむら「!!」
まどか「織莉子ちゃん、私は…!!」
織莉子「分かっているわ」
織莉子「今の貴方は、世界を滅ぼす邪神の雛ではないということ」
織莉子「今の貴方はこの宇宙、『静寂の闇』を支えるべき柱――」
織莉子「今回は貴方を神の座へ帰すことが、世界を救う唯一の方法なのでしょう?」
織莉子「腕の立つ決闘者は一人でも多く必要ではないかしら…?」
キリカ「まどろっこしい事言ってないで、さっさと協力してやるって言えばいいじゃん」
織莉子「…///」
織莉子「ど、どう、この話を受ける用意があって?」
織莉子「鹿目まどか…いえ、鹿目さん、暁美さん」
ほむら「こいつらを受け入れるかは、まどかに任せるわ」
まどか「うん!」
まどか「じゃあよろしくね、織莉子ちゃん、キリカちゃん!」
ゆま「キョーコ、私も行く!!」
杏子「おっしゃ来い。人手は多い方がいいからな」
―――集いし、新たな仲間達!!
※
――鹿目家。
詢子「それが、あたしらが唐突にあんたの事を思い出した理由か…」
まどか「…うん」
まどか「ごめんね。黙ってて…」
まどか「でも必要だったと思ったから…」
知久「世界の為に、体と心を捧げるなんてそんな事が…」
詢子「馬鹿みたいな話だが信じるしかないんだろうな」
詢子「まどかの身体が、中学生のままってのを見せられるとな」
まどか「…」
まどか「パパもママも、こんな私を、もう娘として見られない…?」
知久「何を言うんだまどか」
知久「まどかは永遠に、パパとママの娘だよ」
知久「たとえ神になろうと悪魔になろうと、だ!」
詢子「そうだぞ」
詢子「ここはお前の家族のいる、お前の家なんだ」
まどか「パパ、ママぁ…!!」
詢子「よし…。今夜は家族の絆を確認する為に、決闘だ!!」
知久「そうだね。家族決闘をしよう、まどか」
まどか「えっ?」
タツヤ「bgmは『明日への道~going my way!!~』だ。
http://www.youtube.com/watch?v=uo69qxhafk0&feature=related」
タツヤ「いいな姉貴。絆、繋げ」
まどか「タツヤ!!」
知久「タツヤはゴッズ系の曲が好きだなあ」
タツヤ「ほむ姉が好きなんだよ…」
詢子「いいじゃんゴッズ系。家族の絆を噛み締めながら、決闘スタンバイ!!」
知久「まどかとママ、タツヤとパパのタッグマッチでいいかな」
まどか「…」
まどか(ダークネスに負けて良かったなんて思っちゃいけないんだろうけど…)
まどか(でもなんだろう)
まどか(家族とまた遊べるって、凄い幸せだよ…!!)
まど・タツ・知・詢「「「「決闘だッッッ!!!」」」」
――家族の絆!!
※
恭介「…何故、闇に自らを沈めるような真似を?」
闇中沢「お前には分かるまい」
闇中沢「栄光と幸せの中にいるお前には」
恭介「幸せって、お前にだって和子さんが…。何時だって結婚出来るんだろ?」
闇中沢「やめてくれよ」
闇中沢「和子が今幾つか知って言っているのか?」
闇中沢「流石にもう、あれは無理だ」
恭介「…愛に年齢など関係無い、男なら弁えていて当然のことだ」
闇中沢「何時になっても外見がjcのままの、ロリ嫁を貰ってるお前には分からないんだよ!!」
闇中沢「俺だって、魔法少女の嫁が欲しい!!」
闇中沢「鹿目さんが、暁美さんが、巴先輩が、佐倉さんが、ついでにお前の美樹さんも欲しい!!」
闇中沢「もう、”どっちでもいいかと”が口癖の妥協男じゃない!!」
闇中沢「俺は全てのものを手に入れる男になる!!」
闇中沢「闇の力を得たこの俺こそが、万物を支配する地球の王となるのだ!!!」
恭介「…心の闇に欲望が肥大させられているのか」
恭介「その無様な姿は見ていて偲びない」
恭介「友人として、僕の【デミスガイア】で奏でてやろう。お前へのレクイエムを」
闇中沢「来いや、上条!!」
闇中沢「勝つのは俺の【アドバンスド宝玉獣】だ!!」
闇中沢「お前を倒し、魔法少女達の所へたどり着いて見せる!!」
恭・中「「決闘だッッ!!!」」
―――男の戦い!!
※
さやか「あ、あいつらは!?」
杏子「聞いたことがある」
杏子「この戦いのドサクサに紛れて暗躍してる謎の決闘者集団だ」
杏子「構成員の人数は七人」
杏子「主にナンバーズをよく使う決闘者を襲ってるんだとか…」
杏子「なあ、」
杏子「”ナンバーズ狩りのプレイアデス”…!!」
サキ「ほう…」
サキ「知っているならば話が早いな」
サキ「君たちに決闘を申し込む」
サキ「私の【セイグリッド】で、」
サキ「狩らせて貰おう、貴様らの魂(ソウルジェム)ごと!!」
杏子「さやかは下がってな。あたしがやる」
さやか「大丈夫なの!?」
杏子「任せときなって」
杏・サキ「「決闘だッッ!!!」」
――謎の第三勢力!!
※
マミ「大変よ!!」
さやか「え!? ほむらが!?」
マミ「そう、『破滅の光』に取り憑かれてしまったの!!」
タツヤ「何て……言ったんだ、ほむ姉…」
光ほむら「聞こえなかったの?」
光ほむら「貴方なんて所詮、私にとってはまどかの代用品でしかなかったと言ったのよ」
光ほむら「貴方、どうして自分が私に構って貰えていたのか考えたことある?」
光ほむら「私が、見ず知らずの男の子を何の考えも無しに10年も面倒見る訳ないでしょ?」
光ほむら「まさか、本気で弟扱いされてると思ってた?」
光ほむら「まどかのいない世界で」
光ほむら「まどかのいない寂しさを紛らわせる為のオモチャとして貴方は貴重だった」
光ほむら「まどかの面影を残していた、それだけが貴方の存在意義だったのよ」
光ほむら「でももう貴方はいらない」
光ほむら「本物のまどかが!!」
光ほむら「私の一番の友達が帰ってきてくれたのだから…!!」
光ほむら「二度と神の座へなんか還さない!!」
光ほむら「まどかは、永遠に私のものになるのよ!!」
タツヤ「…姉貴が神に戻らないと、宇宙が滅ぶんだぞ!!」
光ほむら「かまわないわ!!」
光ほむら「私はまどかと共に宇宙を破滅させる!!」
光ほむら「それでこそ、私は永遠にまどかと共にいられるの!!」
光ほむら「真実は『破滅の光』の中にこそ存在する!!」
光ほむら「さあ、どきなさいタツヤ!! 私はまどかと決闘するの!!」
まどか「…どいてタツヤ」
まどか「ほむらちゃんは、私が止める」
まどか「ほむらちゃんには、今までいっぱいお世話になったから…」
まどか「私が決闘に勝って、ほむらちゃんの中にある、」
まどか「『破滅の光』を取り除く…!!」
まどか「私を一番の友達って言ってくれるほむらちゃんは、私が元に戻さないと!!」
タツヤ「…」
タツヤ「悪い姉貴」
タツヤ「ここは、どけない」
まどか「!?」
タツヤ「俺とほむ姉が最初に出会うきっかけが、」
タツヤ「ほむ姉が俺に接してきてくれた理由が、」
タツヤ「俺が姉貴の弟だった…という理由だったとしても、」
タツヤ「俺とほむ姉との思い出の全てが偽物だったとは、俺は信じない」
タツヤ「小さい頃から決闘を教えてくれたり」
タツヤ「お風呂に入れてくれたり、ご飯作ってくれたり、遊びに連れてってくれたり」
タツヤ「自転車に乗れるようにしてくれたり、逆上がりが出来るようにしてくれたり、」
タツヤ「ほむ姉は父さんや母さんに負けないくらいたくさん世話を焼いてくれた」
タツヤ「ほむ姉の笑った顔とか怒った顔とか泣いた顔とか、いっぱい見てきたけど」
タツヤ「俺に向けてくれた全ての感情が作り物だったなんて、俺は認めない」
タツヤ「それに、姉貴は一回、ほむ姉に恩返しは終わらせてるんだろ」
タツヤ「俺はまだなんだぞ」
タツヤ「ここは俺に譲って欲しい」
まどか「…」
まどか「…よく言ったね」
まどか「行って来なさい、男の子」
まどか「頑張ってね」
タツヤ「ありがとな、姉貴」
織莉子「…」
織莉子「私が行こうかとも思いましたが」
織莉子「ライバルとして私が倒したいのは、あくまでもいつもの暁美さん」
織莉子「ここはお弟子君にお任せしましょうか」
タツヤ「織莉子姉さんもありがとう」
タツヤ「さあ決闘だ、ほむ姉」
タツヤ「俺がその光の檻から、あんたの心を引きずり出す!!」
タツヤ「今日この戦いを、」
タツヤ「俺のあんたからの卒業決闘にする」
タツヤ「これからは弟子としてではなく、弟としてでもなく―――!!」
光ほむら「はっ!」
光ほむら「一度も決闘で私に勝てたことの無かった貴方が何を言うの!?」
光ほむら「笑わせてくれるわね!!」
光ほむら「でもいいわ…」
光ほむら「まどかを喰らう前の前菜として、遊んであげる」
光ほむら「来なさいタツヤ」
光ほむ・タツヤ「「決闘だッッ!!!」」
――師弟の戦い!!
※
ダークネス「よもやここまで戦い抜いて来るとはな…」
ダークネス「だが神の力を失った貴様に我を止めることなど出来ぬ」
まどか「確かに今の私には神の力は無い…」
まどか「けど、私はそんなものが無くても貴方と戦える!!」
まどか「だって私は、仲間の力を借りてここに立っているから!!」
まどか「さやかちゃん!!」
さやか「おう!」
まどか「ほむらちゃん!!」
ほむら「まどか…!」
まどか「マミさん!!」
マミ「ええ!」
まどか「杏子ちゃん!!」
杏子「ああ!」
まどか「それに、ここに来てない、」
まどか「他の場所で戦っている皆の力も含めて!!」
まどか「『静寂の闇』を守りたいと願う、宇宙に住む全て決闘者の人達が、」
まどか「”私達”全員の”キズナ☆パワー”が、」
まどか「絶対に貴方を倒してみせる!!」
ダークネス「良かろう。その絆の力とやらを見せてみるがいい」
ダークネス「そちらは5人で構わぬ。代わりに我は初期ライフを40000貰うぞ」
まどか「行こう、皆!」
まどか「これが最終決戦だよ!!」
まど・さや・ほむ・マミ・杏・ダーク「「「「「「決闘だッッッッ!!!」」」」」」
――最後の戦いの行方は!?
※
10年前の美樹さやかの活躍によってばらまかれた運命の火種はようやくその花を咲かせた。
足掛け4年に及ぶ、まどかを神へ還す為の大いなる戦いの幕が開ける。
――決闘脳。
――奇声。
――顔芸。
――闇堕ち。
――光の波動。
――待ち受ける数々の理不尽と超展開。
決闘者達の戦いはこれから始まる!!
――次回に続く!!(嘘)――
これで終わりです。
もしここまで読んで下さった方がいたらありがとうを言いたい。
では。
おやすみなさい。
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