音無「最近また寒くなってきたな」(251)
音無「そうは思わないか?」
岩沢「いやまぁ、そりゃ確かに最近はまた急に寒くなってきたけれど…。
アンタの配属部隊って最前線だろ? こんな屋上なんかでダラダラしてるとゆりに怒られるよ」
音無「日向から朝報告があって、今日は一日休みだってさ。
ゆりのヤツも新しいオペレーションを思案しているようで、何か色々大変らしい」
岩沢「なるほどね」
音無「お前だって屋上でギター弾かずにゴロゴロしていていいのか?」
岩沢「こっちも報告があって、前線が動かない以上は陽動も無意味だって事でガルデモもお休みさ。
ま、記憶無し男と同じ暇人ってワケ」
音無「なんか辛辣な言い方だなオイ……」
岩沢「で、そんな暇人のアンタは暇人に何か用でもあるの?」
音無「別に。ただ屋上で缶コーヒーでも飲もうと思ったら先客がいた。それだけさ」
岩沢「ふぅん」
音無「お前はこんな人気の無い所で何してたんだ?」
岩沢「新曲のネタ探し。NPC同士でもくっついてりゃラブソングでも考えてたかもね」
音無「NPCでも恋人同士になる事なんてあるのか?」
岩沢「さぁね。どこまでも人間くさく出来てるから、そういう傾向もあるんだろうけれど。
実際に見たのは片手で数えるくらいかな」
音無「へぇ、興味深いな。そいつらって今でも校内にいるのか?」
岩沢「そういえば、アタシが見た事があるカップルって次に見かけた事ないな」
音無「……」
岩沢「どうしたの? 急に考え込んだ顔してさ」
音無「…もしかして、だが」
音無「案外お前が見たのって、俺たちと同じ類の人間だったかも知れないぞ」
岩沢「成仏したってワケ?」
音無「ああ。俺たちの知らない所で誰かが誰かに救われてる、なんて出来事があってたら良いな」
岩沢「……記憶無し男」
音無「ん?」
岩沢「いいね、いいフレーズ言ってくれるじゃないか!『知らない所で誰かが誰かに救われてる』。
ヤバい、創作意欲がグングン湧いてきた!」
音無「……俺、ちょっと良いこと言ったような気がしたけれど気のせいだったのかな」
岩沢「そういや記憶無し男と二人で喋るのって珍しいかも知れない」
音無「そうか?」
岩沢「どうせ今日ヒマなんだろ? それなら新曲作成でも手伝ってよ」
音無「俺が!? でも楽器なんて触ったことも無いし、それこそガルデモの誰かと一緒にやった方がいいんじゃ…」
岩沢「いいんだよ、先入観なく聞いてくれた方が曲のデモ作る前では丁度いいし。
それにこうして珍しい組み合わせで居るんだから、世間話で終わるのも勿体ないだろ?」
音無「そ、そんなもんか?」
岩沢「そんなモンさ」
音無「まぁ暇だったし、一日の予定が出来たと思えば丁度いいか…」
岩沢「決まりだね。じゃあギター取ってくるからここで待ってて」
音無「はいはい」
音無「どんだけバタバタしながら行くんだ、アイツ」
音無「ま、ギター持ってくるまで時間もあるし、買ってきた缶コーヒーでも飲んで待ってるか」
カシュッ ……ズズッ
音無「……冷てぇ。ホットコーヒーの余韻も何もあったもんじゃないな」
音無「俺も、生きていた頃はこうして一人で屋上で缶コーヒー飲んでたっけか」
音無「先輩も、後輩も、友達も、…家族もいない。そんな人生だったけれど」
音無「この世界でなら意味が見出せるのかな」
音無「…なんて、ノスタルジックな気分になるのもこの寒い季節特有か」
音無「………ん?」
音無「何か遠くから聞こえてきたぞ」
< ――――すわぁぁぁぁぁぁん! ――っとなっし ――すわぁぁぁぁぁん!!
音無「……余韻も何もあったモンじゃないな」
直井「うぉっとなっしさぁ~ん! おはようございます♪」
音無「ああ、おはよう」
直井「屋上に居るなんて珍しいですね。
ひょっとして愚民の相手に疲れ果てたので屋上からヤツらを見下ろして『この愚民共め』と悦に浸っているんですか!
まさか気晴らしの方法まで同じなんて…なんという奇遇!?」
音無「いや、嬉しそうなところ申し訳ないが俺にそんな歪んだ癖なんてない。
というかお前たまに屋上から見下ろしていると思ったら、そんな事やっていたのか…」
直井「あ、もちろん光輝を背負う音無さんが視界に入ったら頭を垂れていますのでご安心を」
音無「安心できる要素がどこにも見当たらない!?」
音無「はぁ…直井はまたどうして屋上なんかに?」
直井「あ! そうなんです、聞いてくださいよ音無さん~!
今日はいきなり生徒会長がですね…」
天使「…私がどうかしたの?」
音無「うおぅ!? い、いきなり登場されるとさすがに驚くな」
直井「いや、その、す、素晴らしい運動を立案してましたので…。
生徒会副会長の身としては率先して執り行うべきだと思いまして…」
天使「そぅ、ありがとう」
直井「ふ、副会長として当然の事を言ったまでです」
天使「私もしっかり行なうから、副会長も『校内ゴミなしスマイル運動』を頑張ってくれると嬉しいわ」
直井「勿論ですとも! 一・生・懸・命! 頑張ります!」
音無「返事が半分ヤケクソに聞こえなくもないな…」
直井「……そんなワケで公務というか雑務を申し付けられたんです」
音無「か、かなでに悪気があってやってるわけじゃない…というかあいつの事だし善意100%でやってる運動だと思うぞ」
直井「はぁ……神である僕がなぜ愚民どもに笑顔を振りまかなければならないんだ……」
音無「ま、まぁ生徒会の仕事なら仕方ないだろ。どうせならしっかり頑張ってこい」
直井「はい! 欝然たる力を秘める音無さんに激励されるなんて光栄です!」
音無「お…おぅ、そうか」
直井「では、しっかりと公務に励んできます」
音無「ああ。頑張って来い」
音無「アイツもアイツで大変なんだな……」
音無「さて、岩沢を待っている間は暇人って事に変わりない」
音無「こういう時間をどう過ごすかって地味に難しいんだよなぁ」
音無「生きている頃はバイトやら勉強やら…見舞いやらで日々があっという間だったから
ボーっとする時間とは無縁な生活していたよな」
音無「でもまぁ、こうしてボーっと出来る時間は嫌いじゃない」
ガチャ
音無(屋上のドアが開く音? って事はようやく来たのか)
音無「おい、岩沢。 せめて何時頃ここに来るか先に伝えてくれ、よ……」
入江「へ?」
音無「……ん?」
入江「あ、音無先輩」
音無「あ、ガルデモのドラムの…入根? いや、関江か」
入江「い、入江ですぅ…」
音無「すまん、冗談だ」
入江「タチの悪い冗談ですよぅ……。
NPCでも私としおりんを混ぜて覚えている人いるんですから」
音無「それは尚更すまなかったな」
入江「い、いえいえ~。 そ、それよりも音無先輩はここで何をされていたんですか?」
音無「ああ。 岩沢を待ってるんだよ」
入江「岩沢先輩ですか? それでしたらA棟の空き教室に向かっていましたよ~」
音無「何でも今日はここで作曲するんだそうだ」
入江「ええ~。 こんな寒いところでですか?」
音無「その台詞はまんま岩沢に伝えてやってくれ…」
音無「入江の方こそ屋上に何の用事があるんだ?」
入江「あ、そうだった~。先輩、しおりん見かけませんでした?」
音無「関根か? うーん、少なくとも今日は見かけてないな」
入江「そっか~。じゃあ別のところ探してみることにします」
音無「ああ。もし見かけたら探していた旨を伝えておくよ」
入江「はい、よろしくお願いします~」
音無「ついでにお前も岩沢の曲作成を手伝ってくれれば有り難いんだけどな」
入江「あ、じゃあしおりん見かけたらちょこっとだけ参加してもいいですか?」
音無「おぅ、きっと岩沢も喜ぶぞ」
入江「そう言ってもらえるなら嬉しいです~。それじゃあ私はこの辺りで」
音無「ああ。気をつけてな」
ガチャッ …バタン
音無「まさかの珍客だったな。そんなに喋った回数も多くないヤツだったから尚更だ」
音無「どれ。どうせ待ちぼうけしているなら、屋上から見える景色でも堪能してみるか」
音無「……ん? あそこは、正門か。 なんか見知ったヤツが二人で登校してきているぞ」
Angel beats!のキャラクター 【>>18】 【>>20】
ゆり
遊佐
>>!8 >>20
音無「あれは……ゆり? それと、遊佐か?」
音無「何か喋っているみたいだけれど全然分からん……」
―――
ゆり「うーっ、寒い…」
遊佐「今日は一段と冷え込みますね」
ゆり「だいたい死んでからも四季を感じるってどういうことなの!
季節柄なんて全部春か秋でいいのよ、もぅ!」
遊佐「ゆりっぺさん、その理不尽な要求は一体誰に向けて放っているんでしょう?」
ゆり「決まってるじゃない、この世界のどこかに居る神様に向けてよ!」
遊佐「…なるほど」
遊佐「ゆりっぺさん、今日は特に何も動きは無いのですか?」
ゆり「ええ。戦線メンバーもよく頑張ってくれているからね。たまの休みも必要でしょ」
遊佐「なるほど」
ゆり「それに今日寒いし。昨日あんまり眠れなくて夜更かししちゃったし。
そんでいざ目が覚めたらお昼前になっちゃってるし、まぁ今日は頑張らなくてもいいかなーって」
遊佐「そちらが本音でしたか」
ゆり「遊佐さん、今日の予定は?」
遊佐「天使の動向を探りつつ、各戦線メンバーの現状をチェック。
それが終えたら詳細をまとめてゆりっぺさんに提出しようかと」
ゆり「相変わらずの働きぶりね」
遊佐「……暇の持て余し方が分からないだけなので」
ゆり「でも働きすぎは問題よ。むしろ今日は羽を伸ばすことに比重をおきなさい。
言っておくけれどこれはリーダー命令なので撤回付加ね」
遊佐「……善処します」
遊佐「ゆりっぺさん」
ゆり「どうしたの?」
遊佐「どうすれば羽を伸ばせるのか教えて頂ければ有り難いです」
ゆり「へ!?」
ゆり(むぅ……これはどうするべきなのかしら?)
ゆり「えーっと、つまりヒマの潰し方を教えればいいのかしら?」
遊佐「はい」
ゆり「かと言って私も時間の潰し方ってあんまり分からないのよね……」
遊佐「とりあえず学内を散歩でもして過ごしてみます」
ゆり「いやいや、遊佐さんの場合なら本当に散歩だけして1日終わりそうな気がして仕方ないわ。
仕方ないわね、こういう時は暇つぶしのプロフェッショナルを呼んでみましょう」
遊佐「暇つぶしのプロ……?」
ゆり「戦線メンバーに渡してある連絡用携帯端末で……」
遊佐「そのプロの方は戦線内に居るんですか」
ゆり「まぁ彼なら一任しても大丈夫でしょう。呼び出すからちょっと待っててね」
遊佐「了解しました」
< prrrrrr prrrrrr
ゆり「あーもう! なんで出ないのよ!」
遊佐「ゆりっぺさん、まだ2コール目です」
< prrrrrr prrrrrr
ゆり「…4コールでも出ない、か。 これは厳しい罰が必要なようね」
遊佐「ゆりっぺさん、まるで暴君です」
< prrrrr prr ガチャッ ……ゆりっぺ?
ゆり「ようやく出たわね! 電話取るのおっそいわよ、このすっとこどっこい!」
< 開口一番になんで怒られてんの俺!? ホワァァァァァァイ!?
遊佐「この声は…」
日向「ったく、何なんだよホント…耳元で怒鳴られる身にもなってくれってんだ」
ゆり「おはよう、日向くん」
日向「もう昼前だけどな」
ゆり「あぁん?」
日向「…おはよう」
ゆり「ねぇ日向くん、貴方にしか出来ない相談事があるの。
良かったら乗ってくれないかしら?」
日向「ゆりっぺからの頼みごと!? 嫌な予感しかしねぇなオイ…」
ゆり「失礼ね。可憐な女の子の頼みごとくらいサクッと受ける男の度量みせなさいよ」
日向「可憐な女の子は電話口でドスの利いた声なんて出さねーよ!!」
日向「はぁ…で、用事って何よ?」
ゆり「日向くん、いつも暇を持て余しすぎている貴方にしか頼めないわ。
その無駄で不毛極まりない時間の使い方を遊佐さんにレクチャーしてくれない?」
日向「すっげぇ! 褒めている要素皆無なのに頼みごとだけしっかりしてやがる!」
ゆり「照れるから褒めなくてもいいわよ」
日向「一寸たりとも褒めてねぇよ! 剛胆すぎるわ!」
ゆり「うるさいわねぇ…とりあえず本人に代わるから後はヨロシク~」
日向「五月蝿くしてんのは誰のせいだっつうの……」
遊佐「……日向さん?」
日向「おぅ、遊佐か。おはよう」
遊佐「おはようございます」
日向「ゆりっぺから話は聞いたけれど、マジで暇つぶしの方法知りたいのか?」
遊佐「はい。是非とも」
日向「…ま、ゆりっぺなら兎も角、遊佐からの頼まれごとってのは珍しいからな。
いいぜ、俺で良かったら付き合うぜ!」
遊佐「ありがとうございます」
ゆり「なによー。私だとダメなのに遊佐さんならいいっていうの!?」
日向「日頃の行いってのを振り返ってみれば考える間もいらねぇだろ…」
遊佐「では早速暇つぶしのプロフェッショナルに学んできます」
ゆり「ええ、学んできなさい。彼が普段どれだけ自堕落に過ごしている奇跡のダメ人間かを…」
日向「せめてアンタら電話を切ってからそういう話をしなさいよ!」
―――
音無「なんか知らんが校門前で賑やかだなぁ」
音無「電話口の相手が反論してるってのが手に取るように分かるぞ」
音無「……ん?」
< prrr prrr prrr
音無「携帯端末にメールか。 どれどれ、相手は…」
From:日向
【件名】
ちょっと聞きたいんだが
【内容】
お前ってさ、いつもヒマな時ってどうやって時間潰してんだ?
音無「……いきなりどうしたんだ、日向?」
音無「とりあえず内容にだけ返信しておこう」
To:日向
【件名】
Re:ちょっと聞きたいんだが
【内容】
眺めのいい場所で適当に過ごしているよ。
音無「送信、っと」
音無「しかして、いきなりワケの分からないメールを送ってきたな。
もしかして暇なのか?」
< prrr prrr prrr
音無「返信早いな、こりゃ暇人確定か」
音無「レスポンスが早いってことはメールの内容は短文か」
From:日向
【件名】
Re:Re:ちょっと聞きたいんだが
【内容】
あんがとな!参考にさせてもらうぜ!
音無「……参考?」
音無「ま、いいか。何かあったらまた連絡来るだろうし」
音無「それにしても…地味に待たせるな、岩沢のヤツ」
音無「『ここで待ってろ』と言われて40分くらい経過したが」
音無「流石に心配になってきたし、探しに行くか。はたまた屋上で待っているか」
音無「さて、どうするか……」
①待っていても仕方ないし、学園内を探してみる
②ま、そのうち来るだろ。もうしばらく待ってみよう
③どこに居るのか所在をメールで聞いてみるか
【>>50】
ksk
3
>>50
音無「そういやさっき日向からメール来ていたな」
音無「…ふと思ったんだが、これで岩沢に連絡取れるんじゃないか?」
音無「なんでもっと早く考え付かなかったんだ、俺!?」
音無「そもそも日向からメール来なければ考え付かなかっただろうし、この件は感謝しておくか」
―――
日向「ぶへぇっくしょい!」
遊佐「日向さん、風邪ですか?」
日向「いや、どっかで誰かが『日向くんかっこいいー!』って噂でもしてるんだろ」
遊佐「……そうですね」
日向「その哀れみを含んだ目を止めてください、俺が悪ぅございましたァ!」
―――
音無「思い返したらアイツに連絡するの初めてか」
音無「俺は前線、あっちは陽動部隊で共通点も少なかったしな」
音無「こうして絡むってのも珍しいのか…?」
音無「ま、いいや。簡素にこれでいいだろ」
【件名】
無題
【内容】
今どこにいるんだ?
音無「送信送信、っと」
まともなABSSはホント久しぶりだ支援
音無「さて、岩沢本人だけではなくメールまで待つことになったワケだが」
音無「うん、アレだ」
音無「……暇だ」
< prrr prrr prrr
音無「おっ! なんだ、思ったよりも返事が早いじゃないか」
音無「どれどれ、『もうすぐ着く』的な内容だといいんだけれど」
From:ユイ
【件名】
しっつもーん!
【内容】
先輩、うっす!(≡゚∀゚≡) 今日ひなっち先輩と一緒ですか!?( ´ω`)σ
音無「岩沢以外のヤツから連絡とは予想外だった……」
(≡゚∀゚≡)
音無「とりあえず返信だな」
【件名】
無題
【内容】
今日は一緒じゃない。
期待に副えなくて悪いな。
学園内には居るから、探してみるといいんじゃないか。
音無「送信、っと」
【件名】
あざーっす!
【内容】
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン
音無「凄い返事が返ってきた……」
音無「ついでに岩沢のことを聞いてみるか」
【件名】
無題
【内容】
岩沢見てないか?
音無「送信、っと」
< prrr prrr prrr
音無「お、返事早いな」
【件名】
Re:
【内容】
ギター担いでどこかに向かってましたよー(≡゚∀゚≡)
音無「……『ありがとう』、っと」
音無「とりあえずこっちには来ているみたいだな」
音無「……はぁ、寒みぃ」
< prrrrrr prrrrrr
音無「……電話?」
音無「はい、もしもし」
< 悪いな、遅くなって
音無「……そう思っているならコーヒーくらい奢ってもいいんじゃないか」
< 記憶無し男の財布を貸してくれたら考えてもいいかな
音無「……全く」
音無「軽口叩いているヒマがあれば早く来てくれよ、岩沢」
岩沢「いや、もう少しだけ待ってくれ」
音無「どうかしたのか?」
岩沢「ネタを見つけたんだ」
音無「何の?」
岩沢「新曲の」
音無「…そりゃユイが聞いたら喜びそうなフレーズだな」
岩沢「今度の曲は凄いことになるよ、なんてったって…」
音無「?」
岩沢「天使の恋を題材にするからね」
音無「ハァ!?」
岩沢「聞いて驚け、記憶無し男」
音無「もう充分驚いているんだが」
岩沢「今から数十分前、屋上に向かう途中で天使の姿を見かけたんだ」
音無「……なぁ、その話長くなりそうか? 温かいところで喋らないか?」
岩沢「いいから聞けって。普段なら気にも留めないところなんだけれど、今日のアタシは気が乗って」
音無「乗って?」
岩沢「尾行してみたんだ」
音無「どんな気の乗り方だよ!?」
岩沢「いや、もしかしたら何か新しいネタでもあるかなと思ってさ」
音無(新曲作成のために尾行とは、想像以上の音楽○チだな…)
岩沢「で、だな」
音無「はいはい」
岩沢「天使がどういう行動をしているのかついて行ってみたら…!」
音無「?」
岩沢「校舎裏で男と会っていたんだ!」
音無「!?」
音無「か、かなでが男と校舎裏で…!?」
岩沢「ああ、これは紛れもない事実だ」
音無「あ、あのかなでが…本当なのか!?」
岩沢「記憶無し男。事実は小説よりも奇なり、だ。 By ビリー・ジョエル」
音無「いや、それっぽく言っても流石に最後のは嘘だろ」
岩沢「冗談はさておき…驚け、記憶無し男」
音無「こ、これ以上の驚愕することが待っているのか!?」
岩沢「その待っていた男というのが、だな…」
音無「……」ゴクリ
岩沢「音無LOVE男だったんだ」
音無「……は?」
岩沢「いや、だからアイツだよ。生徒会副会長の」
音無「直井、か?」
岩沢「ああ、そんな名前だったか」
音無「はい、解散解散。早く屋上に来いよ、待ってるから」
岩沢「急につれなくなったな」
音無「そりゃあの二人は生徒会の会長と副会長だし、一緒にいて当然だろ」
岩沢「……言われてみれば」
音無「それに、今日は何やら生徒会で美化作業っぽいのも行なってるみたいだし。
校舎裏に居たのも、多分掃除用具を出していたんだろ」
岩沢「そういえば竹箒やちりとりを手に持っていた気がする」
音無「……むしろその構図で、彼氏彼女の事情と勘繰ったお前の発想が凄げぇよ」
岩沢「もしかしたらあるかも知れないだろ、竹箒とちりとり持ってデートに行くカップルも」
音無「居てたまるかそんなモン!」
岩沢「なんだ、無駄な時間使っちゃったな」
音無「そういうなって、どうせ今日ヒマだったんだし良い時間つぶしが出来たじゃないか」
岩沢「ま、そう思う事にしておくよ」
音無「ああ、それがいい」
岩沢「アンタも大分待たせちゃったね」
音無「構わないさ。どうせヒマだったんだし」
岩沢「暇人同士で良かったよ、ホント」
音無「全くだ」
音無「……なぁ、岩沢」
岩沢「何?」
音無「付き合うのもいいけれど、もう昼も近いし温まる意味合い兼ねて食堂に行かないか?」
岩沢「ああ、もうそんな時間? それじゃあ食堂でご飯食べてからにしようか」
【in 食堂】
音無「…なぁ」
岩沢「なに?」
音無「NPCの視線が痛いんだが」
岩沢「ああ、そりゃきっと気のせいだよ」
音無「そっか、それならいいんだが」
ヒソヒソ……ヒソヒソ……
(岩沢さんの彼氏かな?)
(やだ、なんか格好良くない?)
(俺の、俺の岩沢さんに彼氏がいたなんて……!)
(岩沢さんの対面にいる男、月夜の晩だけと思うなよ)
(音無すわぁぁぁん! 悪辣たる天使にこき使われて大変でしたー! でも僕頑張ってますよー!)
音無「ほら絶対気のせいじゃないって! しかも最後あたりなんか凄い聞き覚えある声がしたぞオイ!」
岩沢「全く。 静かにご飯くらい食べなよ、記憶無し男」
< おっとなっし、さぁぁぁぁ~ん♪
音無「ん?」
直井「音無さん、今日二度も会えるなんて奇遇ですね! これはきっと運命にも似た何かでしょう!
午前中に蓄積された疲労も、白日の如き気概を漂わせる音無さんと共に居られるだけで癒えてしまいます!」
音無「は、はは…お疲れさん」
直井「ん?」
岩沢「よっ」
直井「なんだ、愚民。気安く僕に話しかけるんじゃない」
岩沢「音無LOVE男は相変わらずだね」
直井「らぶお!?」
岩沢「そういえばアンタ、天使と校舎裏で何していたの?」
直井「なっ……貴様、見ていたのか」
岩沢「ん? まぁね、たまたま居合わせただけ」
音無(ホントは尾行していたんだけれどな……)
岩沢「見ていたのか、とは意味深だね」
直井「全く、神の笑顔をあそこまで安く売ることになろうとは…」
音無「ああ、『校内ゴミなしスマイル運動』だったか」
岩沢「それにしても人気の無い校舎裏で何していたのさ?」
音無「そりゃ確かに気になるな」
直井「あー…掃除です」
岩沢「本当は?」
直井「なんだ、しつこいぞ貴様! 神が掃除だと言ったら掃除に決まっているだろう!」
音無「まぁまぁ、岩沢。直井にも話したくない理由があるんだろ」
直井「お、音無さぁぁぁん~……!」
岩沢「で、何してたの?」
直井「さっきの会話の流れを聞いていなかったのか貴様…!?」
岩沢「いいじゃない、減るものじゃないし」
直井「愚民と話すだけで俗物さが纏わりつく。すなわち神の気品が減っていくんだ」
音無「…こりゃもう話さないとグイグイ来そうだな。
なぁ、直井。話せる部分まででいいから話してみないか?」
直井「あ、え、お、音無さんが言うなら…」
岩沢「さ、話してみて」
直井「言っておくが貴様に話すわけじゃない、その辺りは勘違いしないように」
音無「で、校舎裏で何していたんだ?」
直井「…………ぉ……ぅ、 ……す」
岩沢「ん?」
音無「ち、小さくて聞こえなかった。もう一回頼む」
直井「で、ですから、天使に言われて……その、わ、笑い顔の練習を、させられていたんです」
岩沢「営業マンなの、あんた?」
直井「貴様はしばらく口を謹んでおくべきだ」
音無「な、なんでまたそんな練習を」
直井「話せば長いのですが…」
岩沢「いいよ、どうせ私たちもヒマしていたし」
直井「だから貴様には聞いていないと何度言ったら…」
音無「まぁまぁ。聞くだけなら出来るから話してくれよ」
直井「コホン、実はですね…」
―――
天使「直井くん、笑い方がぎこちないわ」
直井「そ、そうでしょうか?」
天使「もっと笑ったほうがいい」
直井(無表情の貴方が言っても説得力が…いや、何も言うまい)
天使「良かったら、笑い顔の練習に付き合うわ」
直井「あ、い、いえ、大丈夫です! 全然大丈夫ですから!
ほら、笑顔もこのとおり!」
天使「また笑顔が引きつってる」
直井(このタイミングで笑顔とか無理に決まって言うだろう…)
天使「…ちょっとこっちに来て」
直井「え、あ、ちょっと、待ってください、まだ掃除の業務が……!」
天使「大丈夫。元から学園にゴミなんて滅多に落ちていないから」
直井「それじゃあ掃除する意味ほとんど無いじゃないですかぁぁぁぁぁぁーーー!」
―――
直井「と、いうワケです」
岩沢「話すと短いね」
直井「貴様はあれか、神へ挑戦状を叩きつけまくっているなら受けて立とうじゃないか」
音無「まぁまぁ。何にせよ色々大変だったんだな」
直井「労いのお言葉、誠に有難う御座います…音無さぁぁ~ん♪」
天使「…結弦?」
直井「!?」ビクッ
音無「お、かなで。お前も昼食か」
天使「……ちょっと遅くなったけれど、今から食べるわ」
音無「丁度いいや、一緒に食おうぜ。お前らもいいだろ?」
直井「え!? お、音無さんがそう仰るならば」
岩沢「天使と昼食か。ふふっ、ゆりが聞いたら卒倒しそうだね」
天使「そうだ。直井くん、これを」
直井「え、あ、あの、これは…?」
岩沢「うわっ、これってまさか……」
音無「見ているだけで辛味が伝わってくる麻婆豆腐だな……」
天使「清掃活動を手伝ってくれたお礼よ」
直井「そ、それなら他の生徒会の連中にも…」
天使「みんな普段お弁当だから、彼らには別の形で還元するわ」
直井「あ、いえ、僕は生徒会副会長として当然の事をしただけですので、これは受け取れま…」
天使「……?」
直井「……有り、難く、食べさせて、頂きます!」
音無(直井、苦労しているんだな……)
音無「じゃあ俺はA定食」
岩沢「アタシは肉うどん」
天使「二人のも美味しそうね」
音無「そ、そっちのマーボー豆腐も凄いな…」
直井「………」
岩沢「凄い汗かいているぞ、お前」
直井「集中しているんだ、邪魔をしないでくれ……」
音無(こうしてゆっくり時間が流れていくのも、悪くない)
音無(…平和だなぁ)
< グァァァァァー! シ、シタガ…モエテイル……ッ
< オイシイ?
< ウワァ…アレタベタラ ウタエナクナリソウ…
音無(…うん、平和だ)
目が覚めても残っていたら、ダラダラと続きを。
保守や感想のレスは励みになります。感謝!
ひとまず乙
朝までまだ長いぜ…
これでいいのか?
新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内
新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内
【in 屋上】
音無「……で、またここか」
岩沢「寒いね」
音無「なぁ、岩沢。空き教室ならいくつかあるんだし、そこで作曲しないか?」
岩沢「分かってないね、記憶無し男。
今日みたいな天気の良い日は青空の下のほうがいいのさ」
音無「まぁ確かに風は強いが、天気は良くて気持ちいいな」
岩沢「だろ? こんな日に音楽の神様は降ってくるんだよ……」
音無「なんか真顔で凄いこと言い出したぞオイ!」
岩沢「さって、それじゃあ早速ギターのチューニングでもしようかな」
音無「……ふと思ったんだが」
岩沢「ん?」
音無「お前は今から作曲に励むんだろ?」
岩沢「そのつもりだけど?」
音無「その間、俺はどうすればいいんだ?」
岩沢「ああ、まぁ適当に過ごしててよ」
音無「それだと結局俺はヒマなんじゃないか?」
岩沢「……」
音無「……」
岩沢「……」
音無「……」
岩沢「……おぉ」
音無「何その『思いもしなかったぞそんな事』みたいなリアクション!?」
岩沢「全く、そういう問題点は最初から言ってくれると助かるんだけど」
音無「…あれ? 全面的に俺が悪い流れになってる?」
岩沢「う~ん。 そうだな、それじゃあ適当に歌詞のフレーズでも考えてよ」
音無「『適当』のハードル高すぎないかそれ!?」
岩沢「それっぽい言葉を足していけば、もしかすると名曲が出来るかも知れないだろ。
曲が完成した暁には一番に聞かせるからさ、なんでもいいからネタ頂戴」
音無「うーん、そう言われても…」
岩沢「何なら誰かに今の心境でも聞いてみれば?」
音無「誰か、ねぇ……」
①それじゃあ、TKにでも送ってみるか
②日向に事情を話して手伝ってもらうか
③俺が何か案でも出してみるか
【>>140】
2
>>140
音無「まぁ、当てが無いわけじゃない。 ギターでも弾きながら返事待ってろ」
岩沢「お、誰に聞くつもり?」
音無「日向だよ」
岩沢「……人選間違っているようが気がするんだけれど」
音無「……深く考えちゃ負けだと思ってる」
【件名】
Re:ちょっと聞きたいんだが
【内容】
実はだな、 《かくかくしかじか以下省略 ってワケなんだ。
何か適当にフレーズ考えてくれよ
音無「送信、っと」
岩沢「よっし。チューニングも終わったし、本格的に始めようか」
岩沢「~~♪ ~~♪」
音無「……」
岩沢「~~♪ ~~♪」
音無「……」
岩沢「~~♪ ~~♪」
音無「……」
岩沢「…記憶無し男、じろじろ見られると集中できないんだけど」
音無「ああ、すまん。 手持ち無沙汰だと視線の置き所にも困るもんでな」
岩沢「そっか。そりゃ仕方ないね。 ま、聞き流す感じで今はボーっとしていればいいよ」
音無「そう言ってくれるのは有り難い」
< prrr prrr prrr
音無「っと、良いタイミングで返信来たな」
音無「日向、なんか良さ気な単語かフレーズを頼むぞ!」
【件名】
無題
【内容】
任せとけって! 俺にかかればあっという間に名曲の完成だぜ。
『泣かしたこともある 冷たくしても尚 寄り添う気持ちさえあれば別に心配ないのさ』 なんてどうだ!
音無「思いっきり『いとしのエリー』からのパクリじゃねぇかコレ!?」
音無「だ、だか本当に親切で送ってくれて偶然一致したかも知れないし…ちょっとカマかけてみよう」
音無「と、とりあえずこれを返事にして」
【件名】
Re:
【内容】
いいフレーズだな。
『俺に言わせれば君が最後の女性』 って続けばロマンチックな感じになりそうだ。
音無「送信、っと」
< prrr prrr prrr
音無「返ってくるの早すぎるだろ!?」
音無「……見てみるか」
【件名】
Re:Re:
【内容】
おお、いいねぇ音無!
その後は『マイラヴ』とか『ソー・スウィィィィト』みたいに続けようぜ!
音無「すまん岩沢、人選ミスだった」
岩沢「……いきなり何を謝っているんだか」
音無「やっぱ無理だろ、いきなりフレーズなんて言われても分からないぞ」
岩沢「難しいもんかな。アタシなんて寝ているときに歌詞と曲が浮かんだりするけれど」
音無「ポール・マッカートニーみたいな曲の作り方しているのか、お前……」
岩沢「それで出来たのが『my song』」
音無「マジかよ!?」
岩沢「いや、冗談」
音無「……うん、なんとなく分かってた」
音無「そういやさ、今日みたいな日って戦線の皆は何して過ごしているんだろう」
岩沢「~~♪ …どうだろうね」
音無「ガルデモの連中はどんな過ごし方してるか知ってるか?」
岩沢「関根と入江は食堂でよく喋っているし、ひさ子は男連中と麻雀。
ユイは学園内を走り回ってる感じかな」
音無「そうなのか」
岩沢「そうなのさ」
音無「で、お前はこうしてギターを弾いている、と」
岩沢「ご名答。 ~~♪ ~~♪」
音無「他の連中、一体何しているんだろうか」
Angel beats!のキャラクター
【>>156】 【>>160】
ksk
ksk
入江
小休止失礼、しばらく後に再開します
ほ
も
っ
ほ
ようやく帰宅。
所用で時間かかりそうなので、書ける時間が大分削られる予感。
これ以上待たせるのも申し訳ないから落としちゃってください。
久々のAngel beats!SSはやはり楽しかったです。
では解散!
私待つわ
ほ
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