男「お前が俺…?」女「アンタが私…?」(204)
男「いやー、今日もバイト疲れたなー…」
男(横の奴、誰だ?ここらへんじゃ見ない顔だな)
女「はぁ、今日もバイト疲れたぁー」
女(横の人誰かな?新しく引っ越してきた人?)
男「ただいまー…と、その前に鍵、鍵っと」
女「あれー?鍵、鍵…あ、あった」
男「ん?」
女「ん?」
男「あ、ここは俺の家ですよ?」
女「あのー…家間違えてませんか?」
男「えっ」
女「えっ」
女「いや、ちゃんと表札にも私の名前があるじゃないですか」
男「いや、俺の名前じゃないか」
女「えっ」
男「えっ」
男女「…え?」
女「えっと…お名前は?」
男「◆●◆●です、そっちは?」
女「奇遇ですねー、私も◆●◆●なんです」
男「いやー、面白いですねぇ」
女「性別どっちでも使える名前ですしねー」
男女「「で、あなたの本当の家はどこにあるんですか?」」
女「いや、だから私は…」
男「だから、この家はさぁ…」
男「ま、いいや。とりあえず上がって。話を聞こうじゃないか」
女「上がってって…まるで自分の家みたいに!」
男「いや俺んちじゃん!」
女「ここは私の家よ!」
男「…まぁ上がって」
女「…はぁ、紅茶?コーヒー?」
男「コーヒー。ってなんで俺んちのコーヒーの位置知ってんの?」
女「私の家なんだから当たり前でしょ」
男女「…えっ」
女「とりあえず名前を紙に書いてみる」サラサラ
男「わかった」サラサラ
◆●◆●
男「…漢字まで、一緒だな…」
女「…え、えぇ…」
男「じゃあアレだ!身分証だ!学生証でもなんでも、住所が書いてある奴なら決着がつくだろ!」
女「それもそうね」
〇〇町〇〇、〇〇丁目〇〇番〇〇号
男女「…」
男「ちょっと、その学生証よく見せて」
女「いいわよ、その代わりそっちの学生証も見るわよ」
男女「…」
男「け、血液型は?」
女「O型」
女「ア、アンタの誕生日は?」
男「7月22日」
女「私と一緒だ…」
男「なんなんだよ、コイツ…」
女「こっちのセリフよ!」
男女「そうだ!幼馴染に聞いてみよう!!」
幼馴染「あ、二人ともおはよぉ~」
男「な、なぁ幼馴染!こんな奴の顔なんか見たことないよな!?」
女「こんな奴、幼馴染は知らないわよね!?」
幼馴染「…え??」
男「ほら見ろ!お前のことは知らないってよ!」
女「何言ってんのよ!私と幼馴染が何年の付き合いだと思ってんのよ!」
幼馴染「え~、あなた達は、二人で一つでしょ~?喧嘩でもしたの~?」
幼馴染「でも、自分同士で喧嘩って変かもね~」
男女「…は?」
男「俺とコイツが、なんだって?今日はいつものボケに突っ込む余裕はないんだよ!」
幼馴染「二人で一つなんだって~。え、二人ともどうしちゃったの?」
女「二人で一つって何よ!」
幼馴染「何よって言われても~…」
幼馴染「二人は一つの人間なんだよ~、私もそれ聞いたときビックリしちゃった」
幼馴染「DNAも何から何まで一緒なんだからすごいよね~」
男女「…」
自宅
男「…」
女「…」
男「…なぁ」
女「…何よ」
男「幼馴染の言ってたこと、本当なのかなぁ」
女「…でも、これだけ特徴が重なってたら流石に…」
男「明日病院で血液見てもらうか?」
女「でも明日は学校のテストよ?」
男「なんでそれを知っ……まぁいいか…」
男女「はぁ…」
男「お前は本当に俺なのか?」
女「ふざけないでよ…私は私よ…」
男「いわゆる、あれだ、ドッペルゲンガーだ!」
女「性別違うわよ?」
男「ぐっ…」
女「とりあえず、ご飯でも作りましょうか」
男「俺は風呂でも洗ってくる」
女「はい、できたわよ」
男「おう、風呂もすぐに沸くから」
男「風呂洗ってたら、急に指が割れた。いってーな、この季節はアカギレとか多いよな」
男女「…いただきます」
男「ん…」パク
男「味付けも完全に俺だ!」
女「その様子だと湯加減の好みも一緒ね」
女「ところで、私も料理中、ミスって指切っちゃって…いてて」
男「あ、ちょうど俺もその位置にアカギレが…」
男女「…!?」
女「…いや、まさかね…」
女「た、試しに指切ってみて?」
男「は?やだよ!」
女「私が切ってもいいけど、予想が正しかったらアンタにもその傷がフィードバックするかもね」
男「…わかったよ!包丁は駄目だ、カミソリ貸せ!」
男「指でいいんだよな…痛っ…」ピシッ
女「つっ…!?」ズキンッ
女「……指から血が…」
男「なんなんだよぉぉぉぉぉお!!」
男「はぁ、もう一人の俺よ、これからどうするんだよ」
女「その呼び方やめてくれない?」
男「とりあえず、明日の学校だな」
女「そうね…」
男「まぁ何食わぬ顔で、互いに知らない生徒同士で振る舞えばなんとかなるかな?」
女「そうするしかないでしょ?」
女「お風呂、先に入るわね」
男「あぁ、先に入れ、俺」
女「その呼び方やめてってば!」
翌日
男「あ、お前も制服持ってたんだ」
女「私もアンタの学ランにビックリしたわよ」
男女「行ってきまーす!」
幼馴染「あっ二人とも~、学校遅刻しちゃうよ~」
男「あぁ、悪いな。このバカが遅れて…」
女「ごめんなさい、このアホが遅くて…」
男「あ?」
女「あ?」
学校
男(他人の振り他人の振り)
女(赤の他人赤の他人)
男「…なんでお前まで俺の教室に来るんだよ!」
女「仕方ないでしょ!私の教室もここだもん!」
男「ぐっ…まぁいい、席に座ろうか」
女「えぇ」
男女「………」
男女「…えっ」
女(椅子が…)
男(1セットのみ…二人なのに)
男「やっぱりか!この学校に在籍してるのはどちらか一方なんだよ!つまり俺だ」
女「私も昨日までここに通ってたのよ!?合格発表で受験番号もあったし!」
友「どうしたんだ?お前ら、いつもはその椅子に半分ずつで座ってるじゃないか」
男女「なんやて!?」
授業中
ギュウギュウ
女「アンタ椅子陣取りすぎよ!!」ヒソヒソ
ギュウギュウ
男「お前の尻がデカすぎるんだよ!」ヒソヒソ
ギュウギュウ
女「なんですって!?」ヒソヒソ
男「お前こそ!」ヒソヒソ
女(男の子ってこんなにゴツゴツした体なんだ…)ギュウギュウ
男(女の子の体って、こんなに柔らかいのか…)ギュウギュウ
女(なのに…)
男(何故だろう…)
男女(全っ然、興奮しねぇ…)
男「お前、胸ないくせに!」ヒソヒソ
ギュウギュウ
女「痩せ気味のアンタに言われたくないわよ!」ヒソヒソ
ギュウギュウ
男「――――!!」ヒソヒソ
ギュウギュウ
女「――――!!」ヒソヒソ
ギュウギュウ
幼馴染「あんなにくっついて、仲いいなぁ、あの二人…あれって一種のナルシズムだよね」
放課後
男「今日は疲れる授業だったな…」
女「えぇ…」
男「つーか、なんでこの下駄箱も一つだけなんだよ、不便不便」ガチャ
ピラリッ
女「あっ手紙だ!」
男「わ、本当だ」
『◆●先輩へ』
男「…」
女「…」
男女「どっちの◆●先輩ですか?」
自宅
男「さて…この封筒をどうするか」
女「あ、アンタが開けなさいよ!」
男「いや、ここは公平にジャンケンだろ」
男女「ジャンケンポイ」
男「うしっ!」
女「ぐっ…」
女「仕方ないわね、開けるわよ」
男「あぁ、渡した側からの名前で、性別がわかるしな」
女「なになに…『入学式の時に先輩を学校で見て…」
…
女「『体育館裏に来てください!』……終わり」
男「…名前は?」
女「以上、匿名希望さんからのお頼りでした」
男「性別わからんかったか…」
翌日
教室
男「え?俺が待ち合わせ場所に行くのか?」
女「だって私は昼休み忙しいし」
男「携帯でネットやってるだけじゃねーか」
女「でも、丸い字使ってたから女の子だとは思うよ」
男「確かにな」
体育館裏
男「一応来てみたはいいが……」
ザッ
?「あっお待ちしておりま……した……」
男「お、お前は…!!」
つづく
♂後輩「あ、…◆●先輩!?なんでこんなところに!?」
男「お前が手紙で呼んだんだろが」
♂後輩「いや、呼んだのは女の方の先輩で…」
男「ムッキィィィイッ!!手紙にそれを書いとけやぁああ!!」
男「ちょっと待て、お前があの丸く可愛い字を書いたのか?」
♂後輩「あ、はい。◆●先輩…あ、女の方のね、あの先輩も女の子だから、可愛い字の方が、と」
男「お前、女の子にわざわざ合わせたのか?」
♂後輩「な、何かいけないんですか?」
男「女の子にがっつく痛い男子にありがちなこと…メールで絵文字を多用!」
♂後輩「」ギクッ
男「行ったこともないのに『あー合コンしてぇ~』とか言っちゃう!」
♂後輩「」ギクッ
男「SNSでキラキラの写メを晒しちゃう!」
♂後輩「ぐぁあああ!」
男「メール?違う。カラーペン?違う!漢なら…恋文は筆で書かんかい!」
♂後輩「は…はい!」
…
男「戻ったぞ」
女「あ、どうだった?OKした?」
男「男子生徒で、お前に告白する予定だったんだと」
女「はは、ないない、それはない」
男「…はぁ……なんで女生徒じゃないんだよ…くそったれ」
男「俺たちってさ、二人で一つなんだろ?」
女「そうらしいわね」
男「合体とかすんのかな?」
女「合体?自分と?うわー…それじゃオナn」
男「ちげーよ!すぐエロに走るのは男女共通のパーソナリティなのか…」
男「合体したら、一人の人間になるよな」
女「うん、そうね」
男「その人間の性別は男なのか女なのか、どっちかなって」
女「あー…」
放課後
女「あちゃー…雨が降ってるわね」
男「傘持ってきてよかった」
女「あら、アンタ…いや、私にしては準備がいいのね」
男「傘の中にいれて欲しい?」
女「えぇ」
男「入れて欲しい?」
女「えぇ」
男「挿入れて欲しい?」
女「自分の分身に言葉責めして楽しい?」
男「悲しい」
男「うわっ土砂降りだ!」
女「冷たーい!!」
男「走るぞ!」
女「えぇ!」
…
自宅
男「いやー…雨キツかったな…体中ビショビショだ」
女「へっくしっ」
男「なんだ風邪引いたのか。しょうがない奴だなぁ、本当におま゛…ブェックシュンッ!!」
女「…」ズズ
男「…」ズズ
女「フィードバックね…ごめんなさい」
男「…いや…もういい…」
翌日
男「熱だ……」
女「同じく……」
男「何度…?」
女「38.5…」
男「俺と同じだ…」
男「…」
女「…」
男「なんか…お粥か何か作らねぇと…」フラフラ
女「無理しないで…」
男「あぁ…」フラフラ
女「手伝うわ…」フラフラ
男「お前は寝とけ…」フラフラ
女「アンタが悪化したら私にもとばっちり来るんだから、手伝って早く終わらせましょう…」フラフラ
男「…じゃ葱切って…」フラフラ
女「わかった…」ザクザク
ピッ
女「痛っ…」
男「おい、俺の指に切り傷が浮かんできたけどお前大丈夫かよ…」フラフラ
男「できた☆……」フラフラ
女「わーい☆……」フラフラ
男「熱いから気をつけろよ…」
女「えぇ…」
男「はい、あーん☆……」
女「あーん…」パク…
女「はい、あーん☆……」
男「あーん…」パク…
男女「…自分同士で何やってんだろ…」
ピンポー…ン
男「はーい☆……」
幼馴染「お邪魔しま~す、二人とも見事にダウンしてるねぇ~」
女「何の用かしら…」
幼馴染「わーお、見張り役になんてこというのさ」
男「見張り役……?」
幼馴染「あ、あー…。まぁ、それはともかく、二人ともダウンしてるんだから看病しにきたよ~ろくなもん食べてないでしょ、二人とも」
男「神様や……」
女「恩に着るわ……」
幼馴染「神様…ねぇ~。じゃあ看病はじめますかぁ~」
幼馴染「はい、体拭くよ~」
女「ありがとう…」
男「俺は?」
幼馴染「駄目、つーか嫌~」
幼馴染「そうだねぇ~二人は、一人の人間だから男の方の◆●も拭いてあげるよ~」
男「やった~☆……」
幼馴染「~♪」
幼馴染「二人で一つって、これほど不便なこともないよね~」
男「周りがそういう扱いにしてるんじゃないか」
女「そうよ、少し前までは私しかいなかったのに、なんでコイツが」
幼馴染「それは、この『るつぼの世界』に来ちゃったから二人が出会っても仕方ないよね~」
男女「はい?」
幼馴染「でも、まぁ確かに不便だよね~」
幼馴染「どっちかが怪我したらもう片方も傷負うし、今の熱だってそうだしね~」
幼馴染「一人の人間に合体した方が楽ってのもよくわかるよ~」
女「それは…まぁ、」
男「うーん確かに…」
翌朝
男「今日もいい朝だ…!!」
女「快調ねー!」
男「本当、幼馴染には感謝だな」
女「つきっきりで看病なんて…本当にありがとう」
幼馴染「あはは~別にどうってことないよ~、二人が治ってよかったよ~」
男「しかし、そう考えるとこの体は本当に不便だな」
女「他方の傷や病気がフィードバックするなんて…ねぇ?片方が死んだら…」
男「やめろ想像もしたくない」
幼馴染「早く学校に行こうよ~」
学校
先生「では、これから抜き打ちテストを始める」
男「何ぃっ!?」
女「なんと」
先生「紙が回ったところから始めていっていいぞー」
男「先生、こっちに紙が1枚足りません」
先生「何を言っとる、生徒一人に用紙は一枚だ」
女「だから、こっちにも…」
先生「ど、どうしたんだお前たち?お前たち二人で、一人の生徒じゃないか」
男「…な、なるほどっ…」
女「そ、そう…ですよね…」
昼休み
「テストどうだったー?」
「抜き打ちとか聞いてねーし」
ワイワイガヤガヤ
男「はぁ…」
女「はぁ」
幼馴染「どうしたの~?」
男「う~ん、二人で問題用紙解いてると、どっちが自分の回答なのかわかんないんだ」
女「筆跡も瓜二つだものね。一人でテストをやれたらどんなに気が楽なことか」
幼馴染「でも、普通の人の感覚だと、テストで協力プレイなんて羨ましい限りだよ~」
男「なんだかなぁ、これだと本当に合体した方が気が楽そうだ」
女「フィードバックもないしね」
幼馴染「ふ~ん」
放課後
女「あ、また手紙入ってる」
男「お、今度はアイツ、達筆で書いて来たんだろうな」
女「いいえ、丸文字…しかもまた名無し…」
男「はぁ…あのアホ後輩め」
自宅
男女「ジャンケンポイ」
女「よしっ」
男「くそっ…!」
女「ということで、アンタがその後輩に説教しに体育館裏に行くのは禁止!」
女「代わりに私が正々堂々と告白を受けに行きますので」
男「けっ…」
女「あー…カッコいい子だったらいいなぁ~…」
男「面食いめ」
女「アンタも同じ立場になったら『可愛い子だといいなぁ~』って言うでしょう?」
男「当たり前だろ」
女「ほら見たことか」
女「いい?私とアンタは一つの人間なんだから、考えてることはお見通しなのよ」
男「そっくりそのままそのセリフ返すぞ」
翌日
体育館裏
女「あ、待っててくれたの?」ニコ
女(…あれ…?)ニコニコ
♀同級「あれ?男の方が来るかと思ってたけど」
女(あれれ~?)ニコニコニコ
♀同級「まあ、別にいいか!」
女(べ、別にいいの!?)
女「ま、待ってて、すぐにアイツ呼んでく――」
グイッ
♀同級「どこ行くの?私は◆●◆●に用があるんだよ?」
女「だ、だからそれは男の方で」
♀同級「…え?な、何言ってるの?◆●◆●は◆●◆●じゃない」
♀同級「今ここで言わせて…私は◆●◆●が大好き…」
女「だ、だから私は、ごめんなさい、ソッチの趣味は…!」
♀同級「ソッチ?◆●◆●にソッチとかコッチとかあるの?」
♀同級「◆●◆●は◆●◆●じゃない。本当にどうしちゃったの!?」
女「う、…え、あ…だ、だからぁ…」
…
女「はぁ…」
男「お、戻ってきたか」
女「えぇ…逃げてきちゃった」
男「逃げる?何かあったのか?」
女「私、なんだかよくわからなくなってきちゃったわ。◆●◆●って人間が」
男「俺だって…よくわからねーよ。◆●◆●=俺って感じだったのに、お前が来てから俺=◆●◆●=お前みたいな」
女「同じ◆●◆●なら…もう、一つになっちゃいたいわ…」
バサッ
女「!?」
男「!?」
男「お、お前…羽!羽が!!背中から!!」
女「え?」
女「羽?…え!?何よコレ!?」
幼馴染「えへへ~~」トコトコ
幼馴染「◆●◆●」ポンポン
女「幼馴染…!?」
幼馴染「おめでと」ボソッ
女「え?」
男「お、おいおい…」
女「…え?」
自宅
女「……」
男「…作り物、じゃないんだよな、それ」
女「知らないわよっ…そんなの!」
男「う…」
男「でもこれ、片方の羽しか生えてないよな…左の羽しか生えてない」
女「…そうね…」
男「お前に心当たりはないんだな?」
女「当たり前よ…」
男「そっか…明日、学校はどうする?」
女「休む…」
男「クラスメイト達の目もあるしな…それにしても奴ら、女の子から羽が生えたってのに、ノーリアクションだったな…なんでだろ」
女「ねぇ…」
男「ん?」
女「…私、◆●◆●よね?他の誰かになんかなってないわよね?」
男「当たり前だろ、俺とお前は同一人物の◆●◆●だ」
女「…そう…ありがとう」
男「今日はもう寝ろ。俺だったらそうする」
女「じゃあ…そうするわ…」
翌日
学校
男「ふぁ~あ…」
幼馴染「おはよ~」
男「おう、おはようさん」
幼馴染「あれ~?女の方の◆●◆●は~?」
男「あ、あぁ…アイツならまた風邪ぶり返したんだよ」
幼馴染「それはおかしいな~、フィードバックの関係で、君にも発症する筈なんだけど~」
男「うっ…」
幼馴染「くすくす…まぁいいや、もうすぐ授業が始まっちゃうよ!」
授業中
先生「~つまり、この公式では…~」
男(アイツとギュウギュウ押し合ってた椅子って、こんなに広かったんだ)
男(いや~、一人って気楽だなぁ~)ハァ…
男(でもアイツが戻ってきたら、また気楽じゃなくなるんだ)
男(じゃあアイツが戻って来なければいいのか?…それはなんか、違うよなー…)
幼馴染「…」ニコニコ
昼休み
幼馴染「ねぇね」
男「ん?」
幼馴染「◆●◆●と言う人間は、なんなんだろうね」
男「俺は、お前が何者かって言う方が知りたいけどな」
幼馴染「え、私?」
男「はい」
幼馴染「私は◆●◆●の同僚であり後見人であり仕立て屋だよ?」
男「…ん?」
幼馴染「『神様や…』って言われたときはドキッとしたねぇ~、まぁ私は確かに神様なんかじゃないけど~」
男「はい?」
幼馴染「話を変えるよ~」
幼馴染「女の方の◆●◆●はね、翼が生えてるでしょ~?」
男「あぁ」
幼馴染「あの子の心の痛み、理解できる~?ショックの度合いとか~」
男「全然わからない」
幼馴染「君は学校に来て、あの子は来ないもんね~、君とあの子は同一人物なのにわからないの~?」
男「あぁ」
幼馴染「わかりたい~?」
男「うん」
幼馴染「一人の◆●◆●になれば、わかるかもよ~」
男「『わかるかもよ』っていうか、『絶対わかる』よね」
幼馴染「一人の◆●◆●になってみる~?」
男「できるのか?」
幼馴染「信じる者は救われる~!私は信じる者をいっぱい救ってきたしね」
幼馴染「信じる者は救われるって言うけれど、◆●◆●はその信心を実現する側の、つまり救う側の人間だけどね」
男「一人の人間に、合体かぁ…」
男「…なりたいな……」
バサッ
幼馴染「うんッあの子は左の羽だったから、君には右の羽が生えたみたいだね!」
幼馴染「じゃ、一つになりましょ~!大丈夫、互いの体は磁石のように引っ張られるから、流れに身を任せて~」
上空
バサッ
男「なんじゃこりゃぁあああ!?飛んでる!俺飛んでる!?つーか飛ばされてる!?」
バサッ
女「アンタ…!?」
男「お前…うわわっ吸い寄せられる!」グイッ
女「キャッ!?」グイッ
幼馴染「合体開始~」
右羽を生やした男と、左羽を生やした女は、見えない糸にひかれるように上空に舞い上がり、ある高度にて、互いの羽を持つ者同士が出会った。
そして、離れたところで同じく両羽を持った幼馴染が右の手、左の手を交差させた。
その手に対応する「片翼」達は磁力にひかれあうように、ぶつかりあい、そこを中心に辺りをまばゆい光が包んだ
――――――
男「俺たちってさ、二人で一つなんだろ?」
女「そうらしいわね」
男「合体とかすんのかな?」
女「合体?自分と?うわー…それじゃオナn」
男「ちげーよ!すぐエロに走るのは男女共通のパーソナリティなのか…」
男「合体したら、一人の人間になるよな」
女「うん、そうね」
男「その人間の性別は男なのか女なのか、どっちかなって」
――――――
幼馴染「あの時、君たちはこんな会話してたよね~」
幼馴染「お答えしましょう、君たちが合体したらね~?男でも女でもなく…」
幼馴染「両性具有の天使ちゃんになっちゃいま~す!」
幼馴染「ね?◆●◆●」
◆●◆●「…うん、確かに天使。羽生えてるし輪っかあるし」
幼馴染「…もう私の人材引き抜きも佳境を迎えたみたいだし~、ネタバレしちゃうね?」
◆●◆●「ネタバレ?」
幼馴染「ん~と、君はこの世界で違和感を感じなかった?『なんでこんな奴といきなり共同生活なんだー』とか」
幼馴染「『なんで周りの奴らは自分たちを二人で一つのように扱うのかー』とか」
◆●◆●「あー、はいはい。それは確かに」
幼馴染「それはね、この世界が私の作った面接会場だからだよ?」
◆●◆●「ん?」
幼馴染「仮に女の子がいた世界をA、男の子がいた世界をBとしましょう。つまりその二つは◆●◆●に関するパラレルワールド同士なわけ」
◆●◆●「はいはい」
幼馴染「女の子を受け入れるAの要素、男の子を受け入れるBの要素を軸に『◆●◆●は二人で一つ』という要素を加えたのが」
幼馴染「この世界、Cで~す」
◆●◆●「なんと」
幼馴染「だから私は君の看病をする時、見張り役を名乗ったわけ」
◆●◆●「ん?」
幼馴染「簡単に言えば、A、B二つの世界で同時に二つの◆●◆●の監視やってたのね~」
幼馴染「一方は女の子の監視、もう一方は男の子の監視~」
幼馴染「そりゃもう、幼いころからず~~~~っと、ね☆」
◆●◆●「なるほど」
幼馴染「説明終わり~、質問ある?」
◆●◆●「これから◆●◆●は何者になるの?」
幼馴染「天使~、信心を実現するサラリーマンだよ~。私みたいに人事の仕事でもいいけど?」
幼馴染「君はもう完全な存在だよ~おめでと~!」
◆●◆●「確かに一人ってすごく気楽…」
幼馴染「でしょ~?」
◆●◆●「…でもさ、それって普通のことじゃない?」
幼馴染「ん~?」
◆●◆●「いや、だってバカ♂後輩も、♀同級も、一人の人間じゃん」
幼馴染「うん」
◆●◆●「いま、◆●◆●が一人になってもそんなに偉いことじゃないね」
◆●◆●「それに、この体不便だよ」
幼馴染「え?」
◆●◆●「だって、今までなかった所に穴が空いて、生理来たりして大変だろうし」
◆●◆●「今までなかったところに立派なモノが生えてきても、ポジショニングしなきゃいけないし」
幼馴染「はぁ~」
◆●◆●「やっぱり別々でいいや」
幼馴染「本当にいいの?」
◆●◆●「だって元々の住む世界が違うんだからさ」
女「同姓同名でも、嗜好とか、何から何まで一緒でも」
男「その後の振る舞い次第で個性なんか変えられるからね」
幼馴染「そっか」ニコ
………
幼馴染「二人には、野暮なことしちゃったかな~?」
男「楽しかったよ、俺の性格って端から見たらあんなのなんだって」
女「そうね」
幼馴染「んじゃ、世界の扉は開いたよ!こっちが男、こっちが女の元々いた世界だよ~」
男「…じゃ、お別れだな…俺!」
女「元気でね…私!」
男女「ありがとさん、幼馴染」
幼馴染「別に感謝されることしてないんだけどね~」
男「まぁあ…そろそろ行くよ、それじゃ!」
女「さようなら!」
………
朝
通学中
男「やべ!遅刻!やっべーよ」タッタッタ
男「幼馴染ー?学校行くぞー!まだ寝てんのかー?」
男「仕方ねぇなアイツ…」
男「ん?」
男「なにこの張り紙…アイツ、引っ越ししたの!?…いや、待てよ…」
男「…ぉ……」
男「………あぁ、そうだった……」
男「元気でな、幼馴染。頑張れよ、向こうの俺」
おわり
投稿ラノベ
春日ヘヘヘヘ
ありがとさにー
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません