エレン「何だ…夢か」(591)

*11巻の嘘予告を元ネタに妄想します。
*現代パロと訓練兵時代をエレンが交互に行き来するパラレル物語です。
*結末は考えないで見切り発進します。どんな結末にするか自分でも現時点では分かりません。
*基本エレミカです。でも展開次第では他カプが入り乱れる可能性有り。ご注意。
*期待されれば、いつでもお色気展開は挟んでいくので宜しく!!

訓練兵時代。

エレン=イェーガーは、今日も立体機動の訓練を無事に終えて、男子寮に帰還した。

アルミン「ふー…今日の訓練もクタクタだよ…眠い…」

体力のないアルミンは既に眼が落ちかけている。

それを支えるようにして、エレンは言った。

エレン「だな…今日のはいつもよりノルマが多かったし、他の奴らもバテてるみたいだ。俺もさっさと飯食って風呂入って寝たいわ」

アルミン「だね……明日は幸い、雨が降りそうだし…多分、座学の授業の変更になるだろうね」

エレン「夕方から天気が微妙だったもんな。その方がいいな」

そんな風にしゃべりながら、エレンは着替えて食堂へ向かった。

いつもの風景。いつも光景。

ミカサも合流して、一緒に食事を取って、それぞれ、風呂に入って……

エレン「んじゃ、おやすみ」

アルミン「おやすみーエレン」

エレン「ZZZZZZ」

アルミン「ZZZZZZ」

そして彼らは、規則正しく眠りについたのだった。











三笠「江蓮…起きて、江蓮、遅刻する」

エレン「ん……? (もうそんな時間か)」

エレンは目が覚めた。

エレン「んー? って、おいおい、男子寮にまで起こしに来るなよ! ミカサ! 勝手に入ってくるなよな!」

三笠「? 何を言ってるの? 江蓮。早くしないと学校に遅刻する」

エレン「は? 学校? 訓練の間違いだろ? 何言って……」

そこでエレンは初めて、ミカサの様子がおかしいことに気づいた。

普段、着ている服と全く違う。

ミニスカートに、白いハイソックス。ベストにリボン、肩からさげた鞄。

見たことのない格好に、エレンは戸惑った。

エレン「おま、なんつー格好してんだよ! 足出しすぎじゃねえか?」

三笠「? これは制服。別に規則違反しているわけじゃない。もっと短い子もいる」

エレン「はあ? そんなんだとパンツ見えるだろうが! もっと長いスカート…いつものロングスカートにしろよ」

三笠「江蓮、さっきから、変。熱でもあるの?」

エレンは自分の体温を確認したが、別に熱があるような感覚はない。

エレン「いや、熱はねえな。つか、ここどこだ? 男子寮じゃねえな? アルミンは何処行った?」

三笠「有民は先に学校に行ったと思う。江蓮が寝坊するから悪い」

エレン「え…あー! もう8時過ぎてる! やべえ! 訓練に間に合わねえ!!」

訓練はいつもだいたい朝の7時から始まるので、大幅に遅刻だ。

エレン「キース教官に懲罰喰らっちまう! まずい、どうしよう!?」

三笠「8時半までに学校につけば間に合う。急ごう、江蓮。早く制服に着替えて」

エレン「分かった! (制服どこだ?!)」

エレンはいつもの訓練服を探すが、どこにも見当たらず焦る。

エレン「制服どこだよ?!」

三笠「? 目の前にあるじゃない。ほら」

三笠はそう言って、壁にかけてあった学ランをエレンに手渡した。

エレン「? なんだこの黒い服。これじゃねえだろ」

三笠「? これが制服。男子は学ラン……」

エレン「はあ? 訓練兵は茶色のジャケットだろ? これじゃねえよ」

三笠「………エレン、やっぱり変。病院に行こう。おじさんの診療を受けよう」

エレン「はあ?! つか、父さん、いるのか? 行方不明だったのに、見つかったのか?! 一体、いつ!?」

三笠「………………(どうしよう。江蓮が支離滅裂な事を言ってる)」

三笠はさすがに混乱した。どうしたら、いいのかと。

温泉の人か

そんな三笠の様子に、さすがにエレンも異様な空気を感じた。

エレン「なあ……ミカサ、おまえの名前、聞いていいか?」

三笠「三笠……だけど」

エレン「俺の、名前は?」

三笠「江蓮……」

エレン「合ってるよな。でもなんだ? この違和感は」

エレンはなんとなく、奇妙に感じた。

エレン「イントネーションも合ってるし、いつもと同じ筈なのに、なんか変だな」

エレンはそこで自分の周りをキョロキョロ見渡した。

畳の部屋に襖で仕切られたその部屋は、まさに和風の部屋だった。

エレン達が暮らしてきた世界の部屋とは全く違う。

テーブルというより、ちゃぶ台がある。

そして数冊の雑誌。別冊マガジンと書かれた分厚い本。

それ以外にも、ジャンプやサンデーと書かれた週刊誌も転がっている。

決定的だったのは、それらの本に書かれた「文字」がエレンには全く読めなかったこと。

エレン(え……何これ、なんて書いてあるんだ?)

おかしい。こんな文字は自分達の暮らす世界では使わなかった。

エレン(どういうことだ? 俺は、壁の外の世界にでもいるのか?)

幸い、目の前の彼女の言葉は聞き取れるし、会話も出来るけれど……

エレン(もしかして、そうなのか?)

と、エレンは直感的に思った。

エレン(いや、待て……これは夢の可能性もある)

エレンはその可能性を潰すべく、自ら頬を叩いた。

エレン「いたい……(ヒリヒリする)」

三笠「江蓮! 一体何を……」

エレン「いや、今、夢見てんじゃねえかと思って」

三笠「? 何を言っているの?」

彼女はミカサにそっくりだが、ミカサではない気がする。

いや、でもミカサに瓜二つなわけで……

>>5
いえーす!
なんか、もやもやと思いついたものが出てきたので見切り発進だけど書いてみます。
三笠とミカサ、両方出てくるので宜しくです。

エレンは仕方なく、立ち上がって、自ら三笠に抱きついてみた。

三笠「江蓮……?! (朝から、何を?!)」

エレン「うん…匂いも同じ、感触も同じ。胸囲もほぼ同じ……腹筋はどうだ?」


ペロン……


エレンは不躾に三笠の服を捲り上げて腹筋を確認した。

すると、若干、本物のミカサよりも腹筋が薄かったので、エレンは「やっぱ、こいつはただのそっくりさんだ!」と結論づけた。

エレン「腹筋はあるけど、ちょっと薄いな。うん、やっぱお前はミカサじゃねえ……ふごおおおお?!」

その直後、三笠によるグーパンが決まったのは、言うまでもない。










エレンは三笠に信じてもらえるかどうか分からないが、自分は『江蓮』ではない事を三笠に説明した。

エレン「つーわけで、俺は『巨人のいる世界』いるエレン=イェーガーっていう人間で、お前のいう『江蓮』とは別人なんだ。なんでこうなってるのか、分かんねえけど」

三笠「そう……(腹見られた…ショック)」

三笠はもう、遅刻するのを覚悟の上でエレンの話を聞くことにした。

エレン「もしかしたら、お前のいう『江蓮』と俺が入れ替わったのかもしれねえな。ここはちなみに、どんな世界なんだ?」

三笠「どんな…と言われても。日本の東京の××区としか言えない」

エレン「ニホン? トウキョウ? やっぱ分かんねえな。知らねえ……」

エレンは首を傾げて記憶を引っ張り出そうとするがダメだった。

そんな地名は聞いたことがない。

エレン「どうやったら元の世界に帰れるんだ? まいったな…見当がつかん」

三笠「帰るの? でも、そしたら江蓮と入れ替わるの?」

エレン「さあ? そこまでは分からねえな。でも、どっちにしろ、俺はミカサ達のいる世界に帰らねえといけねえし」

三笠「両方いなくなったら、どうしよう……(ズーン)」

エレン「ああ? ああ…そうか、そういう可能性もあるのか。うーん…困ったな」

エレンは頭を悩ませた。この先、一体どうしようかと。

エレン「うーん、とりあえず、このままずっとここに篭るわけにもいかねえな。その『江蓮』って奴がやってた生活を俺が代わりにやってやるよ」

三笠「本当?」

エレン「だって俺、江蓮とそっくりなんだろ? なら俺がやるしかねえじゃねえか」

三笠「ありがとう…(ニコッ)」

エレン「別にお礼を言われるようなことじゃねえよ。えっと、三笠、これから暫く世話になると思うけど、頼むぞ。分からんこと、いっぱいあるから、俺に教えてくれ」

三笠「うん…!」

そしてエレンの、東京での生活が始まったのだった。

遅刻しまうだろうと思いながらも、エレンは三笠と一緒に「学校」に行ってみることにした。

勿論、学ランを着て、鞄も持って。

有民「あーやっと来た! 遅かったね。まだ先生来てないからセーフだよ!」

三笠「それは幸運。良かった…」

幸い朝のHRにはギリギリ間に合ったようである。

エレン「俺の席、どこ?」

三笠「私の前。有民の右隣」

有民「? (変なこと言ってる)」

エレン「とりあえず、何か分からんことあったら、三笠に丸投げするからな。頼んだぞ」

三笠「うん、任せて(`・ω・´)キリッ」

有民「え? (珍しい。江蓮が三笠を頼るなんて…)」

この時点でお気づきだろうが、有民はアルミンにそっくりの人物である。

そしてチャイムが鳴り、先生と呼ばれる人物がやってきた。


木巣「職員会議が長引いて遅くなった。すまない。では、朝のHRを始める」


エレン(キース教官にそっくりだな! やっぱ、この世界、顔見知りの奴らに似ているのが集まってるみたいだ)

木巣先生は、朝の連絡事項を述べた後、簡単なお話を終えて、

木巣「では、学級委員長」

三笠「はい、起立!」

ガタガタ……

三笠「礼」

頭下げる、一同。

三笠「着席ー」

ガタガタ……

という、よく分からない動作をクラス全員でやった。

エレン「(小声)今の、なんだ?」

三笠「朝の挨拶みたいなもの。先生の話が終わったら、皆でやる」

エレン「へー(敬礼みたいなもんかな)」

そしてエレンの学園生活一日目が始まった。

一時間目は国語だった。しょっぱなから、エレンのピンチである。

エレン「三笠、教科書どれだ」

三笠「これ…(自分のを見せる)」

エレン「この青い表紙のやつだな。サンキュ」

カバンの中から出して、パラパラ見てみるが……

エレン(読めない…)

全く読めない言語にどう対処したらいいのか。

授業の開始を不安な気持ちで待っていると……

入ってきたのは、眼鏡の若い女性の先生だった。

理子「今日は源氏物語の続きいくよー」

エレン(うーん、この眼鏡の人、どこかで見覚えがあるような)

実は、駐屯兵団に所属するリコと同じ顔の人が国語の先生をやってるのだが、この時点のエレンはまだ、彼女と直接の面識はなかった。

ただ、たまにハンネスさんと会話をしている光景を見たことがあるような、なかったような、うろ覚えだったのである。

エレン(まあいいや。とりあえず、言ってることは理解出来るから聞いて覚えよう)

幸い、国語は全て一度、先生が本文を朗読してくれるので、教科書の文を読まなくてもなんとなく、授業の内容は把握できた。

そんな真剣なエレンの様子に驚いたのは有民だった。

有民(江蓮が真剣に授業聞いてる…珍しい。明日、雨でも降るのかな)

普段の江蓮は、授業中、興味のない科目は居眠りすることもしばしばだ。

江蓮は英語や体育は真面目にやるが、どちらかと言えば国語は苦手な方だったので、8割は寝ている。

なのに今日に限って真面目に授業を聞いている。何か、様子が変だと思った。

理子先生にあてられても、すらすら質問に答える江蓮に、有民はびっくりしている。

エレン(ほっ…なんとか質問に答えられたぞ。簡単な問題で良かった)

普段、座学でもっと難しい理論や質問に慣れているエレンにとって、この授業は楽な方だと思った。

そんなこんなで、思ったより無事に一時間目の授業を乗り切ったので、エレンはひと安心したのだった。

有民「江蓮! 君、今日は一体どうしたんだい?」

エレン「え…えーっと」

有民「まるで昨日とは別人みたいだ。何か、変なものでも食べたの?」

エレン「あーえっとな、アルミン。ちょっと、説明しときたいことがあるんだが」

有民「なんだい?」

エレン「ここじゃ話はしにくいから、廊下でいいか? 三笠も一緒に」

そしてエレンは三笠に説明した内容を、有民にも同じように説明したのだった。

有民「…………」

エレン「にわかには信じられないのは分かってる。けど、俺はお前らが知ってる『江蓮』って奴じゃない。名前は『エレン=イェーガー』って言うんだ」

有民「なるほど」

有民は納得した顔をした。

有民「今日、国語の授業ですらすらと回答したのも、それが原因なんだね。君は「家賀江蓮」ではなく、「エレン=イェーガー」なんだね」

エレン「? 名前が逆になってるのか? もう一人の俺は」

有民「日本では名前が後にくるのが普通なんだ。ということは、君はヨーロッパやアメリカ圏の江蓮なのかもしれないね」

エレン「? ヨーロッパ? アメリカ? どこだそれ」

有民「後で詳しく説明する。休み時間は短いし、お昼になったら三人でもっと詳しい話をしよう」

有民はそう言って、とりあえずそこで話を打ち切ったのだった。

そしてお昼休みになると、エレンと三笠と有民の三人は、弁当を持って外の中庭のベンチでお昼をとることにした。

昼食を取りながらもっと詳しい話を聞くと、有民は「2、3質問していい?」と聞いた。

エレン「ああ、いいぜ」

有民「その、君の元の世界にも、三笠や僕に似た人間がいるってこと?」

エレン「そうだな。見た目はそっくりだ。三笠の場合は腹筋が若干違うって程度で、声も背丈も匂いも胸の大きさもほとんど同じだ」

有民「(何故胸の大きさまで比べたのかは聞かないでおこう)ええっと、だったら僕たち以外にも、似た人間はいるのかな?」

エレン「さあな。そこまではまだ分からん。けど、もしかしたらいるかもしれねえな。他の奴らの顔、ちゃんと見てねえからまだ分からん」

有民「そうなんだ。言葉は分かるけど、読み書きは一切ダメなのも本当?」

エレン「ああ…さっきの授業も、必死に聞いてたのもそのせいだ。黒板の文字、さっぱり分からんかったからな」

有民「だったら、この文字も読めない?」

有民はそこでスマホを取り出して適当な文字を見せた。

エレン「全然読めん……つか、なんだコレ?」

有民「スマホだよ。こうやって、触ると電話出来るんだ。ネットもできるよ」

エレン「電話? ネット? なんだそれ」

有民「……どうやら冗談を言ってる顔じゃないみたいだね」

この時代、携帯電話やネットの存在を知らないなんて、異常とも言える。

>>13
訂正
有民「(何故胸の大きさまで比べたのかは聞かないでおこう)ええっと、だったら僕たちや先生以外にも、似た人間はいるのかな?」

先生、が抜けてました。すみません。

有民「異世界のエレンと江蓮が入れ替わった。そう考えるしかないのかな…」

エレン「じゃねえの? ここに『江蓮』がいねえなら、そう考えるのが自然だと思うが…」

有民「うーん。なんていうか、あまりに突拍子のない話だから、なあ。記憶喪失とかの方がまだ信じられるんだけど……」

エレン「そう言ってもな…俺だって本当は、早く元の世界に戻りたいんだが」

有民「そうだね。君の話を聞く限り、君は軍人の、まだ見習いみたいなものなんだよね? 自衛隊みたいな」

エレン「ああ。軍人だ。まだ、一年目の新人だけどな」

有民「年は、僕らと変わらないみたいだね。13歳なんだよね?」

エレン「ああ。15歳になったら卒業だ。そしたら実際に巨人と戦うことが出来るようになるんだ。俺は巨人を駆逐して、外の世界に旅に出るのが夢なんだ」

有民「そっか…君はやっぱり、江蓮とそっくりだね」

エレン「ん?」

有民「江蓮もね、夢を持ってるんだ。いつか、狭い日本を出て、世界中を旅したいっていつも言ってる。そのせいで、英語と体育の成績だけはいいんだけど…他がちょっと、ダメだったりするんだ。なんか、似てるって今、思ったよ」

エレン「そうか……やっぱ、俺と似てるのか。だろうなあ」

自分と同じ顔をしているのなら、きっと同じようなことを考える奴なのだろうと思った。

三笠「エレンも外の世界に行きたいの?」

エレン「そりゃな! その為に俺は頑張ってるし。なんだよ……こっちの三笠も反対すんのか?」

三笠「そりゃ反対する。江蓮は世界中……戦争の起きている地域も行きたいと言っている。真実を自分の目で見たいと言うから……」

エレン「……………」

危ない橋を渡ろうとするのは、同じであるらしい。

エレン「戦争……やってるのか? こっちの世界は」

昔、聞いたことがある。

人類が巨人に追い詰められる前の大昔、人間同士で戦った歴史があると。

もしかして、自分は過去の世界に飛ばされたのか?

と、この時、エレンは思ったが、

三笠「日本では、ない。遠い地域の話。でも、戦争が起きているのは事実」

エレン「人間同士で戦うのか……まあ、そういうこともあるだろうな」

エレンは、苦い過去を思わず思い出した。

脳裏によぎるのは、残してきたミカサのことだ。

彼女を助ける為に、エレンは戦った過去がある。

あれが、大規模なものになれば、それは「戦争」と呼ぶのだろうと。

そう、理解している。

三笠「でも危ない地域に自ら行くなんて良くない。私は何度も止めている……」

有民「まあまあ、三笠落ち着いて。今はまだ、中学一年なんだし。将来のことなんてまだ分からないよ……江蓮も、途中で気が変わるかもしれないし」

エレン「いや、それはねえと思うぞ」

エレンは即座に否定した。

エレン「男が一度決めたことは、そう簡単には曲げられねえよ。そうだな……それがそいつの夢だっていうなら、もし、俺が元の世界に戻れなかったら、そいつの意志を俺が継いでやるよ」

三笠「エレン!」

エレン「ま、あくまで、戻れなかったらの話だけどな。つか、戻る方法、あんのかな…正直、何も手が思いつかねえんだけど」

有民「そうだね……君は元の世界に戻るべき人だ。どうにか、手を考えないとね」

有民は三笠の様子がおかしいのに気づいていたが、ここではあえて触れなかった。

今はそれより、エレンのことが優先だ。




キーンコーンカーンコーン……



有民「あ、もうお昼休み終わりだ。この話はとりあえず、保留だね。エレン、いろいろ大変だろうけど、江蓮として、学校生活を代わりに送ってくれないか。分からない事は僕たちがちゃんとフォローするから」

エレン「ああ! こっちのアルミンも頼りにしているぜ!」

三笠「…………」

三笠はだんまりを決めていたが、エレンは彼女に「いくぞ!」と声をかけた。

三笠「え……」

エレン「ほら、さっきの部屋に戻るんだろ? 一緒に行くぞ」

三笠「う、うん……」

江蓮と全く同じ動作に既視感を覚え、混乱する三笠だった。

三笠(本当に、このエレンは、江蓮ではないの…?)

持っている雰囲気や仕草、口調、目つき、匂い、背丈、髪の長さ……挙句、考え方まで同じだ。

それらの全てが、江蓮と全く同じだったから、三笠は混乱している。

そんな彼女の心情を知らず、エレンは手を引いて教室に戻る。

エレン「いくぞ、ほら! 遅れたらまずいんだろ?」

三笠「う、うん……」

いや、やっぱり違う。

こんな時、手を引いてくれるような江蓮ではない。

江蓮は、人前では、手を繋いだりしない。

恥ずかしがって、そんな事はしない。

有民「わお……久しく見るよ、江蓮が三笠の手を引いてるみたいだ」

有民がびっくりしたようにいう。すると、エレンは「いっけね」と手を離した。

エレン「悪い。なんか、気が抜けたわ。周りにからかってくる奴がいねえって思ったら、ついな」

普段のエレンも実は、ミカサにそういう事はしない。

しかしここでは、周りに冷やかされる対象(ライナー、コニー、サシャなど)がいないことに気が緩み、つい三笠の手を取ってしまったのだ。

有民「あ、なるほど……って事は、エレンも向こうの世界では、三笠の手を取ったりしないんだ」

エレン「周りがうるせえからな。いつも、キャーキャーからかわれて面倒くさいから、ミカサとは距離置くしかねえんだよ」

有民「(江蓮と全く同じこと言ってる…でも、今のも女子に遠目に見られたかもしれないんだけどね)そうか、だったら気をつけないとね」

エレン「ああ…悪かったな、三笠」

三笠「ううん…別にいい」

三笠は一瞬だけだったけど、久しぶりに江蓮の手を握ったような錯覚を覚えて嬉しかった。

有民「次は確か、体育だったよ。男子はバスケ、女子はバレーだったかな。着替えて体育館に急ごう」

エレン「お、体を動かすのか? 着替え持ってきてたっけな」

三笠「エレンの分は私がいつも持ってきているので大丈夫」

エレン「お、おう…(こっちの三笠も抜かりねえな。すげえ)」

そんなわけで、午後は体育の授業である。

そんなわけで、見切り発進で現代パラレルのクロスオーバーみたいな話です。
この先の展開はまだほとんど考えてないので、
なんか要望があれば出来るだけ盛り込んでいこうと思います。
リクエストがもしあれば↓にどうぞ( ^ω^)_凵 どうぞ

体育は男女分かれての授業だった。

エレンは1組所属で、2組の男子と合同の授業だった。

雀「おー江蓮! 今日こそてめえを叩きのめしてやるぜ!」

エレン(こいつは間違いなくジャンだな……)

隣のクラスにジャンがいた。あと、マルコにそっくりな奴もいる。

エレンはそんな風に思いながら、有民にゲームのルールを聞いていた。

有民「とにかく、ボールをつきながら移動して、ボールを投げて、あのかごをくぐらせれば、点数が入るゲームだよ。一度止まったら、足の軸を動かさないで避けながら動くしかない。味方にパスを回しながら、敵をかわしていくんだ」

エレン「ふむふむ……」

エレンはとにかく、ゲームの様子をじっくりと見た。

そこでボールを付きながら進むことを「ドリブル」といい、一度ドリブルして止まって、またドリブルするのは反則だということは学習した。

エレン「そんなに難しそうなゲームじゃなさそうだな」

雀「おい、無視すんなよ! 江蓮! 今日こそは三笠を賭けて勝負しろ!」

エレン「……は? (まさか、こっちのジャンもミカサが好きなのか?)」

エレンは面倒くさそうな表情で雀を見た。

エレン「お前……相手にされてないのによく頑張るよなあ」

雀「うがっ…! う、うるせえ! いいから勝負だ! 受けるのか、受けねえのか?!」

エレン「言っとくが、俺はそこそこ運動神経はいいぞ?」

雀「知ってるよ! だからこそ、勝ちてえんだよ!」

エレン「分かった。三笠のことは賭けられないが、勝負だけなら受けてやる」

雀「くっ…まあいい。とにかく次のゲームで勝負だ!」

雀、丸虎を含む青チーム、エレン、有民を含む赤チームがバスケットを始めた。

エレン(とにかく、ドリブルってやつで敵陣地にある程度切り込む!)

エレンは速攻で動いた。その俊敏な動きに雀も一瞬、目を奪われる。

そしてエレンはドリブルを続けながら、味方と敵の位置を把握して、一番遠い有民に一度パスを回した。

有民「わわわ! (パスが来ちゃった!)」

有民は急にパスがきたので驚いたが、なんとか受け取ると、

エレン「有民! こっち!」

すぐさまエレンに戻して、エレンはそのままボールを投げて、まずは先取点を取った。

そのなめらかな連携プレイに、雀も驚きを隠せない。

雀「くっ……やるじゃねえか。けど、こっちも負けねえ!」

攻守入り乱れる好ゲームに、徐々に観客が集まってくる。

ゲームに参加していない(待機中)の女子が徐々に男子のゲームに注目し始めたのだ。

三笠(エレン……頑張れ)

当然、三笠はエレンを応援していた。雀、合掌。

沙謝「お、江蓮は相変わらず、うまいですねー!」

由美瑠「ククク……雀も負けてねえじゃねえか」

栗素多「どっちも頑張れー!」

2組の女子もわいわい見学しているようだ。

エレン(ちょっと慣れてきたな……よし、ここは思い切って…)

エレンは遠くからボールを放ち、3Pシュートを決めた。

その瞬間、湧き上がる歓声!

三笠(かっこよすぎて濡れる…)

三笠はエレンの大活躍ぶりに感動していた。雀、再び合掌。(チーン)

外野女子1「江蓮君、結構カッコよくない?」

外野女子2「うん、分かる! 私、結構タイプかも! 体育の時、だけだけど!」

三笠(ギロッ)

その瞬間、三笠はついつい、外野の女子を睨んでいた。

三笠(あとで駆逐する……)

と、物騒なことを考えなら。

単独ではここまでいい動きは出来なかっただろうが、エレンはそこそこ運動神経は良い方だったので、有民との連携プレイを駆使してうまく適応していた。

初めてのプレイにしては上出来と言えた。

エレン(ふーなんとか終わったー)

結果は、赤チームの勝利だった。

有民「すごいね、エレン! 君は江蓮よりも、頭がいいのかい? こんな風にうまく連携プレイが出来たのは初めてだよ!」

エレン「あ…そうなのか? いや、俺も見よう見まねだったし、あんまり深く考えて動いてはねえんだけど…」

頭を使って体を動かすことは、立体機動訓練の時に散々やらされるので、自然とそういう動きをしていたエレンだった。

有民「いや、いつもより周りをよく見てたというか、すごく冷静なプレイだったよ。いつもだったら、試合前に雀と口喧嘩して、そのままミスを誘発することも多いのに」

エレン(ああ……そういう事か。それなら分かる)

確かに、本当のジャン相手だったら、そうなっていたかもしれない。

しかし目の前のジャンはジャンであってもジャンではないので冷静でいられたのだ。(*洒落じゃないよ!)

エレン「お、次は三笠の方もゲームするみたいだな。あっちは何やってんだ?」

有民「バレーだよ。三笠はすごいからね。見ごたえあるよ」

男子のゲームが終わった頃に女子の次のゲームが始まった。

三笠「いきます……(バシッ!)」

三笠の弾丸ジャンピングサーブに、相手チームは誰一人動けなかった。

エレン(まあ、想像はついたけど、やっぱり三笠はすげえな)

もうほとんど三笠一人で点数を取っていたようなものだった。

一方的なワンサイドゲームであっと言う間に終了してしまう。

三笠(エレン……見てくれただろうか)

三笠はついつい、エレンを探す。すると、エレンはちょいっと手を上げて振った。


キュン……


もう、これだけで生きていけると思った三笠だった。

三笠(はっ…いけない、今のエレンは、江蓮ではないのに)

まるで浮気をしているような錯覚に落ちて(*江蓮と三笠はつきあっていません)三笠は罪悪感を覚えた。

三笠(で、でも…エレンの方も、正直、かっこいいというか、ああ…私、どうしたらいいの?)

頭の中が混乱してくる三笠だった。

そんなわけで、体育も無事に終了し、最後の午後の授業がやってきた。

ラストは英語である。

エレン(やべえ……これは聞いててもわけが分からん)

エレンの再び、ピンチだった。

エレン(国語、ってやつは聞いてれば分かったけど、英語っていうのは、何言ってるかさっぱり分からんぞ)

初めて聞く言語にエレンは戸惑いを隠せない。

英語は調査兵団所属のオルオにそっくりな教師が教えていた。

織尾「ではこの問題を…家賀君、英語で答えて」

エレン「ええっと……」

まずい、どうしよう。

三笠「(小声)Yes,I can(イエス、アイキャン)」

エレン「イエス、アイキャン……(助かった、三笠!)」

織尾「んー? 発音がいつもより下手くそだな。家賀。お前、英語しか取り柄ないのにどうした? それじゃ外国に行くのは夢のまた夢だぞ?」

一同はクスクス笑っていた。

エレンはどうしようもなくて、俯くしかなかった。

そんなこんなで、どうにかこうにか一日を終えたエレンと有民と一緒に下校した。

有民「お疲れ様。どうだった? 学校生活は」

エレン「どうもこうも…とにかく英語って授業だけは、どうにもならん。早急に手を打たねえと、馬鹿にされるってことは分かった……(ズーン)」

有民「うーん。確かに英語は知らない人から見たら、いきなり聞いても訳わからないだろうね」

エレン「まあ、こっちにいる間にどうにか頑張るさ。マスターするしかねえ」

有民「うん。僕も協力するから、大丈夫だよ」

エレン「助かるよ、有民…」

その時、遅れて全力疾走でエレン達の元にやってきた三笠だった。

三笠「はあ…はあ…」

エレン「うおっ…どうした三笠」

三笠「振り切ってきた……」

エレン「え?」

三笠「部活の勧誘……全部振り切ってきた(ぜえぜえ)」

有民「まだ続いているの? いい加減しつこいね。もう6月に入ってるのに」

三笠「ぜえぜえ……はあはあ……どこの部も、まだ私を諦めてくれない。私は、どこにも所属する気はないのに」

エレン「ん? なんか勧誘されてるのか? 三笠」

有民「えっと、ね。授業が終わった後、それぞれの集まりがあって、体育の授業の時にやったゲームあるでしょ? ああいうのが好きな人達が放課後に集まって、活動をしているんだ。三笠は運動神経がいいから、どの部活もずっと勧誘し続けているんだよ」

エレン「ふーん、どっか入らねえのか?」

三笠「私は、江蓮の傍にいると決めた……ので、一緒に帰宅すると決めている」

ここでのエレンは「江蓮」で間違いない。

彼女は江蓮に合わせて生活しているのだ。

エレン「勿体ねえな。運動神経いいんだから、さっきのバレーとかいうのに入ればいいんじゃねえの?」

三笠「でも…そうすると、エレンと一緒にいる時間も自由に取れなくなる」

エレン「そこは遠慮しなくてもいいんじゃねえの? 三笠の自由にしろよ」

三笠「? 自由にしているつもりだけど」

いかん、いつものループ口論になる。

と、予感した有民は二人の間に割って入った。

有民「江蓮も特に部活に入ってなかったからね。三笠は入るなら、江蓮と同じところって、ずっと言ってたんだ。だから、江蓮が入ってない以上、三笠も入らなかったんだよ」

エレン(また、こんな感じなのか…)

既視感を覚えてエレンは参ったなと思った。

エレン「あーだったら折角だから、俺もどこか入ってみるかな……」

三笠「え? エレン、部活に入るの?」

エレン「おう。明日、いろいろその「部活」ってやつを紹介してくれよ。なんかいいのがあったら入ってみる」

有民「でも…いいのかな? 江蓮の許可なく……」

エレン「江蓮が戻ってきたら、本人に聞いて見ろよ。嫌だったらそこで辞めるだろ」

有民「………それもそうか。そうだね」

有民はあっさり納得した。

有民「じゃあ、僕はここからこっちの道だから。また明日ね!」

エレン「おーまたな!」

そしてエレンと三笠は自宅に一緒に帰り着いた。

エレン「…………俺の家って、改めて見ると結構でかいな」

医者の息子なので、住宅は恵まれていたようだ。

他の家に比べると一回り大きいのがよくわかる。

三笠が普通に我が家に入ろうとしたので、エレンは聞いてみた。

エレン「あ、やっぱり一緒に住んでんのか」

三笠「? そうだけど……」

エレン「こっちの三笠も、やっぱりその……両親は」

三笠「私が9歳の時に亡くなった。家に強盗に入られて……殺された」

エレン(やっぱりか)

三笠「その後、私は誘拐されたけど……エレンが携帯で居場所を見つけて、私を助けてくれた。エレンは私の命の恩人」

エレン(ここも、一緒か)

三笠「それ以来、私はおじさんの養女になった。私と江蓮は義理の兄妹になったの」

エレン(………通りで、一緒だと思った)

三笠がミカサに瓜二つなのは、境遇が同じだったからか。

妙に納得して、エレンはうーむと思った。

エレン「つーことは、一緒に暮らしてるってことは……部屋は……」

三笠「部屋は別。私の部屋は、江蓮の隣」

エレン「そっか……そりゃ良かった」

ちょっとほっとするエレンだった。

そして夕食時、エレンはドキッとした。

迦楼羅「ただいまー」

エレン「母さん…!」

夕食の買い物から帰ってきた。

母親が生きている。こちらの世界の母は、まだ生きていたのだ。

思わず、突進するようにハグをするエレンだった。

迦楼羅「? どうしたのよ、江蓮。急に」

エレン「母さん…! 母さん…! 生きてて良かった…!」

迦楼羅「? 何馬鹿なこと言ってるの。母さんは生きてるわよ?」

エレン「母さんー!! (号泣)」

迦楼羅「おかしな子ね……今日はあんたの好きな、チーズハンバーグよ。三笠、手伝ってくれるわね」

三笠「はい、おばさん」

迦楼羅「江蓮、ちゃんと宿題やった? 夕食までには済ませておくのよ」

エレン「ああ! ちゃんとやるよ!」

迦楼羅(いつもと違ってやけに素直ね…変なの)

迦楼羅は不思議に思いながら台所に立つのであった。

そして家族の団らんを得て、夜になると幸せな気持ちで布団に戻るエレンだった。

エレン(この世界も、案外悪くねえな……母さんは生きてるし、父さんもいるし、三笠だっているし、有民もいる。巨人もいないし、平和に暮らして生きている)

ずっとここにいたくなるような、そんな居心地の良さを感じてしまった。

エレン(でも、ダメなんだよな。俺は元の世界に帰らなきゃならねえ……巨人のいる世界に、あいつらを残してはおけねえし)

エレンは複雑な心境で、いろいろ考え込みながら瞼を閉じた。





その日の夜、雨が再び降り始めた。





エレン「ん………」

アルミン「エレン、起きて。もう朝だよ」

エレン「あともうちょっと……」

アルミン「早くしないと、朝ご飯食い損ねるよ。サシャが全部食べちゃうよ?」

エレン「それはまずい! (がばっ)」

エレンは、目が覚めた。

いつもの、光景が飛び込んできて「あれ?」と思った。

エレン「アルミン…?」

アルミン「? どうかした?」

エレン「いや、なんだ……そうか、アレはやっぱり、夢だったのか」

アルミン「夢?」

エレン「ああ。なんか、ここじゃない世界に俺達がいて平和に暮らしてる夢だった」

アルミン「いい夢じゃないか。良かったね。僕も出てきたの?」

エレン「ああ…ミカサとアルミンとジャンと、キース教官と……あと、チラッとサシャとユミルとクリスタも出てきたような気がする」

アルミン「へえ~豪華なメンバーだ。いいなあ」

エレン「あんまり居心地が良かったから、戻れなかったら困ったかもな」

アルミン「ん?」

矛盾していることを言っているエレンにアルミンは首を傾げた。

アルミン「居心地が良かったならいいんじゃないの? 悪い夢よりいいよ」

エレン「いや、そういう意味じゃねえ。なんていうか、巨人もいないし、平和過ぎて……現実に戻りたくないような、そんないい夢だったんだ」

アルミン「ああ…なるほどね」

この現実より、夢の方が良かったという意味か。

アルミン「そういうこと、よくあるよ。僕も昔、クリスタに看病される夢を見た時は「夢なら覚めないでくれ!」って必死に思ったものさ。結局、夢だったけど」

エレン「へえ~クリスタが看護婦か。全身、拭いて貰ったとか?」

アルミン「なんで分かった…?」

エレン「なんとなくだ。裸の自分を拭いて貰ったとか、そんなんだろ? (ニヤリ)」

アルミン「まさにその通り(`・ω・´)キリッ あの夢は、一生の宝物だね」

アルミンがそんな風に言って笑う。エレンも釣られて笑ってしまった。

エレン「ま、でも夢で良かったのかもな。うん……現実に戻らねえと」

エレンは気合を入れ直して、着替えて食堂に向かった。

いつものように、ミカサと合流する。

エレン(じーっ)

ミカサ「? どうしたの? エレン」

エレン「いや、すまん。ちょっと、いいか?」

ミカサ「?」

その時、念の為にミカサにハグしたエレンだった。

ミカサ「(ポッ)急にどうしたの?」

エレン「いや、やっぱりこのサイズで合ってるな。悪い、腹筋見せてくれ」


ベロン……


食堂でいきなり、ミカサの服を捲ってみせたので、アルミンもびっくりした。

アルミン「エレン? 何やってるの」

ミカサ「……? (エレンが変)」

しかし従順なミカサは抵抗するわけでもなく、服を捲られている。

エレン「わりっ…ちょっと、再確認したくなっただけだ。もういいぜ」

朝からミカサの腹筋を確認してどうすんだ? と思ったアルミンだった。

エレン「いやな、やっぱミカサはこの腹筋じゃねえと、ミカサじゃねえって思って。夢の中のミカサはもうちょい、腹筋が薄かったんだ。やっぱこっちの方がいいなと思って」

ミカサ「夢…? 夢の中に、私が出てきたの?」

エレン「そうそう。でも、腹筋だけは違ってた。だからそっくりさんみたいなもんだな」

ミカサ「へえ……そっくりさん、ね」

アルミン(あれ? 何故か分かんないけど、ミカサが嫉妬してる)

普通、ここは喜ぶポイントなのではなかろうか。

なのに何故かミカサは嫉妬している。何故だろう?

エレン「ああ、夢の中のミカサも可愛かったぞ。まあでも、こっちの方がいいけどな、俺は」

ミカサ「そう……(なら、よし)」

アルミン(あ、もう機嫌治った)

ミカサの機嫌はエレン次第なので、くるくる変わる。

それはアルミンにとっては見慣れた日常だった。

そしてエレンはその日、倉庫の掃除中、ある「ボール」を偶然発見する。

エレン「お…これ、バスケットってゲームをした時に使ったボールに似てるな」

丁度いい大きさ。バウンドもする。

エレン「これあれば、バスケ出来るかもしれねえな。網ないかな…」

虫を捕獲する時に使う網が二つ、倉庫の中にあった。

もうほとんど網が破れていて、網としては使えない。

エレンはそれを見ていいことを思いついた。

訓練が終わった夕方、夕食前の少し空いた時間に、エレンは一人で何やら画策していた。

アルミン「エレン、何やってるの?」

エレン「おう! アルミン、丁度良かった。線作るの手伝ってくれ」

アルミン「何を作ってるの?」

エレン「バスケットコートだよ」

アルミン「バスケットコート?」

エレン「今日、朝から夢を見たって言っただろ? そん時に遊んだゲームを再現しようと思ってな。アルミン、ワイヤーで囲って、地面に差してくれ」

アルミン「こうかな? (グサッ)」

エレン「ああ、まあこんなもんかな。記憶の限りでそれっぽく再現してみたぜ」

エレンは使っていないワイヤーをうまく使用してコートっぽい線を引いた。

そしてゴールのかごは網の先端を破って木にくくりつけ、ゴールっぽくしてみる。

エレン「このボールをバウンドさせながら移動して…あのかごを潜らせるんだ。そしたら点数が入る。そういう遊びを、夢の中でやったんだ。結構面白かったから、またやってみたいと思ってな」

アルミン「へえ~」

エレン「暇な奴いねえかな。おい、コニー! ライナー!」

エレンは休憩していた二人を呼んだ。

コニー「なんだよ」

ライナー「呼んだか?」

エレン「ちょっとの時間でいいからさ、二人もやってみねえか?」

そこでエレンはだいたいのルールを説明して、四人で遊んでみることにした。

ジャン「……あいつら、何やってんだ?」

ボール遊びをしているエレン達を見つけてジャンは言った。

マルコ「さあ…? 遊んでいるんじゃないかな?」

ジャン「けっ…のんきな奴らだな。おい、エレン! お前達、なにやってんだよ」

エレン「バスケだよ! ジャンもやるか?」

ジャン「はあ? なんで無駄に汗掻かなきゃならねえんだよ。もうすぐ夕食だってのに」

ライナー「いや、でも結構、この遊び、楽しいぞ。はまる」

コニー「ああ! 意外と面白いぜ!」

アルミン「確かに楽しいけど…僕はもういいかな。ちょっと疲れちゃった」

ライナー、コニーチーム対エレン、アルミンの2対2でバスケをしていたが、アルミンはスタミナ切れになったようだ。

エレン「そっかー…おい、ジャン、おまえこっち入れよ!」

ジャン「はあ? (°д°) なんでエレンと組まなきゃなんねーんだよ。嫌に決まってるだろ」

エレン「そっか…他に暇な奴いねえかなあ……(キョロキョロ)」

ユミル「何やってんだ? さっきから」

エレン「お、ユミル! お前、暇か? バスケで遊ばねえ?」

ユミル「はあ? (°д°) 別に暇じゃないんだけど」

ユミルもジャンと同じような顔で呆れた。

クリスタ「で、でも…なんか面白そうだよ。ユミル」

ユミル「クリスタもやるなら、やってもいいけど?」

クリスタ「じゃあ、やる! 私、エレンのチームに入ればいいのね?」

エレン「そうだな。女子だし、ハンデつけてやろうぜ。いいよな? ライナー、こっちは3人で」

ライナー「ああ、丁度いいハンデだな」

そして今度は5人でわーわーいいながらバスケで遊んだのだった。

その様子に遅れて気づいたミカサは、ジャンに聞いた。

ミカサ「ジャン、エレンは一体何をやっているの?」

ジャン「なんか、バスケとかいうボール遊びをやってるみてえだぜ」

ミカサ「そう……(何故、私を誘ってくれない?)」

こっそりしょげるミカサだった。

エレン「……あ、ミカサ! お前、暇か? 一緒にやらねえか?」

ミカサ「やる! (`・ω・´)」

ジャン「ミカサがやるなら俺もやろうかな~♪」

現金な奴である。

エレン「マルコはどうする?」

マルコ「僕もいいなら」

エレン「ベルトルトー! そこで座ってないで見てないで、こっちにこいよ!」

ベルトルト「いいの? (声かけられなかったから、見てたけど)」

エレン「いいって、これで、ええっと…俺とライナーとコニーとジャンとマルコとベルトルトの6人が男子、女子がユミルとクリスタとミカサか。女子あと一人入ってくんねえかな」

コニー「サシャ呼んでこようか?」

エレン「おー頼むわ」

そしてサシャも加わり、くじ引きをしてチームを決めて本格的なバスケが始まったのだった。

エレン「俺とミカサとサシャとジャンとマルコがこっち、ライナーとコニーとベルトルトとユミルとクリスタがそっちか。まあいい感じに分かれたかな」

ジャン(エレンと一緒なのは気に食わねえが、ミカサと同じチームだから良しとする)

アルミン「僕は暇だから審判でもしようかな」

エレン「お、頼むわ。アルミン、ボールを真ん中で真上に投げてくれ」

アルミン「はい」


ポーン……


ジャンとベルトルトのジャンプ対決になったが、案の定、ジャンは競り負けた。

ジャン(さすがに高さじゃベルトルトには勝てんわ…)

ライナー「ベルトルト、パスだ!」

ベルトルト「はい! (ヒュ)」

ミカサ「させない! (バシッ)」

ミカサがパスカットをして、うまくさばいた。

ミカサ「エレン! (愛のパス!)」

エレン「よっしゃ! 助かった!」

エレンはボールを奪い返して、陣形を見た。

この位置だと、一旦マルコに戻したほうがいいなと判断した。

エレン「マルコ! (ヒュ)」

マルコ「うわ、びっくりした!」

エレン「パスは何回でも回していいから! じっくり攻めてくれ!」

マルコ「了解!」

マルコの中で、計算が始まる。

マルコ(うん……さっき見てた限りだと、こういう場合は、無理せずに)

マルコは一度ジャンに回し、ミカサに回し、エレンが受け取り、そしてサシャに回す。

高速パスの応酬に、ライナーもベルトルトも間に合わず、反応できたのはコニーだけだった。

コニー「くそっ…させるかよ!」

サシャが動いた直後をパスカットした。

しかしそのこぼれ球を、読んでいたマルコが拾う。

マルコ「そうくると、思ってたよ!」


バシュ…!


まずは1ゴール! 先制点を決めたマルコだった。

コニー「くそー! カットしたのに読まれた!」

エレン「さすがマルコ! やっぱ頼りになるぜ!」

マルコ「いやあ…たまたまだよ」

ジャン「いや、今のはマルコのフォローが良かったぜ!」

アルミンはエレンチームに2の数字を地面に書いた。

アニ「………何やってるんだ?」

その時、遅れてその騒ぎに気づいたアニがやってきた。

アルミン「バスケっていう遊びを皆でやってるんだ」

アニ「へえ……」

アルミン「アニ、暇なら点数つけるの手伝ってくれない? 僕はエレン達の方をやるから、ライナーチームを任せてもいいかな?」

アニ「別にいいけど……」

アルミン「一回ゴールを決めたら、2点ずつ加算するんだ。あのワイヤーで区切った線より遠い位置からゴールが決まったら、3点になるから注意してね」

アニ「ふーん。分かった」

そしてアニとアルミンによる審判で試合は続行した。



ライナー「まずは落ち着いて1本入れていくぞ」


ダムダムダム……


ライナー(さっきは安易なパスをしてミカサに読まれた。だったらここは…)

意外性をつくため、クリスタに(愛の)パスを放つ。

クリスタは「きゃあ!」と驚いて弾いてしまった。

こぼれ球を、ユミルが慌てて拾う。

ユミル「ちょっとライナーさんよ、手加減しろよ、馬鹿か!?」

ライナー「す、すまん……」

クリスタ「いいって! ライナー、ごめんね!」


キュン……


ライナーは思わずときめいてしまった。

ユミルは一歩ひいて、陣形を見た。

ユミル(ミカサのパスカットは最も要注意だ。だからエレンとミカサの間は抜けない……ってなると、やっぱりここは、サシャとジャンの間をいく…!)

ダムダムダム…

ユミルが内側に切り込むと、ジャンとサシャが同時に動いてプレッシャーをかけた。

ユミル(くっ…突破は無理か…だったら!)

その直前、後ろのクリスタにパスを回し、クリスタはコニーに即座に回した。

そして、コニーはなんと、3Pシュートを放ったのだ。

エレン「げっ…!」


シュパッ…


コニー「いえーい! 俺、やっぱ天才!」


アニ(3点…と)

地面に3の字を書くアニだった。

そんな感じで、エレンチームはマルコを司令塔にミカサとジャンがシュートを決めていき、エレンとマルコ、サシャは主にパスを回して攻撃した。

ライナーチームは外からコニーが、内側からライナーが得点を決めていき、なかなかのシーソーゲームになっていた。

しかし時間は刻々と過ぎてしまい、そろそろ夕食の時間になってしまった。

アルミン「どうする? 皆、ここでもうやめるかい?」

エレン「どっちが勝った?」

アルミン「ええっとね、30対29で、エレン達が1点差で勝ったよ」

エレン「よっしゃあああ!! (ガッツポーズ)」

ライナー「くそ……あと、1分もあれば、勝てたのにな」

アルミン「まあ、しょうがないよ。今回はエレン達の勝ちだね」

ミカサ(愛の勝利…!)

ミカサがグッと拳を握っていた。

サシャ「ああ…いつもよりお腹が減ってしまいましたー」

エレン「だなーいつもより動いて腹減ったな~」

アルミン「コートは片付けなくてもいいの?」

エレン「あ、またどうせ明日もやるだろうから、そのままでいいよ」

コニー「だな! 今度はメンバー入れ替えてやってもいいな!」

エレン「ああ! また俺が勝つけどな」

コニー「なにおう! 今度こそ、俺が勝つかんな!」

わいわい言いながら、帰宅する一同だった。

そして今日も無事に終えて、布団に入るエレンだった。

エレン「ZZZZZZZ」

エレンが寝ている間、再び雨が降る。

その雨音に導かれるかのように、エレンは目覚めた。





エレン「ふあああ……よーねたわ」

三笠「おはよう。江蓮。今日は早いのね」

エレン「おー……って、あれ?」

また、見覚えのある光景だった。

エレン(また、この間の夢の続きかな? これは)

三笠「今日は部活を見に行くって言ってたでしょう? 朝練習をやってるとこも多いから、早めに出て見学に行こう。どの部活にする?」

エレン「そうだなーというか、どんな部活があるのかをまず知らんのだが」

もう二回目なのでそこまで違和感もなく、エレンは馴染んだ。

ここは夢の世界なのだと思うと、安心して楽しんでいられると思ったのだ。

三笠「そうね…主なのはやっぱり「バスケ」と「野球」と「サッカー」かしら。個人競技なら「陸上」「水泳」などもある。体を動かさない文化系だと「吹奏楽」「書道」「演劇」「天文」などもある。数えれば結構、いろんな部活があると思う」

エレン「とりあえず、その中から朝から活動している部を見学してみっか」

と、いうわけで小休止。
>>41の方、どの部活を見学に行きますか?

間違えたwwww
>>43の方、お願いします。
どの部活を見学に行く?
(ここで選んだ部活にエレンと三笠が入ることになると思います)

ミカサがバスケ部に入ったらどんな姿勢からでもシュートを決めてコートのどこからでもスリーを決めてどんなプレイスタイルでも難なくこなしそう

テニス部なら大地を抉ってそうだ

うお、すまん

じゃあ男女両方あるバスケ部で

>>44
じゃあこのままバスケ部に入るルートで進めますねー。ありがとう。

と、いうわけで早速、早めに家を出て、学校に行くことになったエレンだった。

アルミンには前もって「携帯」の「メール」で先に学校に行くことを伝えておく。

エレン「へー便利なもんがあるんだなあ」

三笠に携帯の使い方を教えて貰いながら学校に到着すると、既に体育館には人の気配があった。

エレンと三笠が体育館を覗いてみると………

エレン(お…ライナーとベルトルトがいる! あいつら、バスケ部だったのか)

長身の二人にはぴったりの部活だと思ったエレンだった。

そして、もう一人……

エレン(うおおおお?! 人類最強のリヴァイ兵長まで、いる! すげえ!)

ちなみにリヴァイはバスケ部のキャプテンで3年生だった。

顧問はエルヴィン先生(数学)の先生(*女子部も兼任してます)だった。

女子の方のキャプテンはハンジだったが、この時点ではエレンはまだ面識はない。

飯時「あ、三笠だ! やった! もしかして、入部してくれる気になったの?!」

三笠「まだ、見学だけです(`・ω・´)」

飯時「そう言わず、是非入っておくれよ! 君が入れば、今年はバスケ部最強世代と言われるよ? 男子に理倍、女子に三笠ってね! 双璧を成すことになると思うよ?」

エレン「この方は?」

三笠「バスケ部の女子のキャプテン。飯時さん。ちょっと変わった人……」

エレン(三笠に変わってるって言われるって、よほどだぞ)

飯時「あら、この子は? 男子の方の入部希望者?」

エレン「いえ、まだ見学だけなんですけど……ちょっと、迷ってて」

飯時「どうぞどうぞ! ( ^ω^) 是非、練習風景を見ていってね!」

そして体育館の端っこに座り、エレンはバスケ部の猛練習を見ることになった。

エレン(おお……やってることは、俺達の体力作りと似てるな)

まずは前後ダッシュ。反復横とび。シュート練習、そしてミニゲーム。

特にレイアップシュートの練習は、基本に忠実で、美しいとさえ思った。

エレン(さすが、リヴァイ兵長……綺麗だ)

基本に忠実なプレイに魅せられる。

エレンは、リヴァイのそのプレーに感動して、即座に決めた。

エレン「俺、バスケ部入るわ!」

三笠「え? もう決めたの?」

エレン「ああ! 俺は、リヴァイ兵長とバスケをする! あの人を目標にする!」

三笠(………なんですって)

三笠はカチンときた。あのチビが……? エレンの目標…?


ゴゴゴゴ……


理倍「?」

嫉妬の視線に気づいてはてなを浮かべる理倍だった。

エレン「三笠も入るか? 女子の方に」

三笠「私は男子バスケ部のマネージャーになる(`・ω・´)キリッ」

飯時「ちょっと…それやめてよ! 宝の持ち腐れもいいところだよ?!」

エレン「そーだぞ、お前、俺より運動神経いいんだから、女子の方で頑張れよ」

三笠「でも…私は…エレンを応援したい…」

理倍「言っとくが、マネージャーなら既に足りてるからこれ以上は要らないぞ」

そこで現れたのは、美奈(ミーナ)と阪奈(ハンナ)だった。

理倍「女子マネージャーがこれ以上増えても、困る。お前は女子部の方に入ればいいだろ」

三笠「でも…!」

美奈「男子部員が目的で入るなら、お断りします。一応、うちは全国を目指してる部なので、マネージャーと部員の恋愛は禁止されてますよ」

阪奈「そうですよ。(私の彼は、野球部なので問題ないけどね)」

同じ部活同士の恋愛は禁止なのだ。(他の部活の場合はOK)

何故なら、いろいろとゴタゴタがあった場合、部の全体の空気が悪くなるからである。(*よくあることです)

三笠(しょぼーん……(´・ω・`))

三笠はすっかり落ち込んでしまった。

三笠「………分かりました。私も女子のバスケ部に入ります」

苦渋の決断だったが、仕方なかった。

エレン「おう! 良かった! 一緒に頑張ろうぜ三笠!」

エレンがそう言うと、三笠の表情は少しだけ明るくなった。

三笠「ちなみに、バスケ部の女子と男子でつきあうのは…?」

飯時「あ、それは大丈夫だよ。ちなみにこいつ、一応、私の彼氏なんで」

くいっと指差した先にいたのは、勿論、理倍だった。

エレン「え…キャプテン同士で恋人なんですか?」

飯時「まあねーま、普段はあんまりそういう空気ないけど、一応ね」

理倍「なんだ、その言い草は。一応じゃねえだろ」

理倍の眉間に皺がよる。

飯時「あはは! だってさーもう、3年近く付き合ってるからね。1年の時からつきあってるから、既に新鮮味はなくなってますよ。ま、それでもこいつは確かに頼りになるし、いいキャプテンだから、安心していいよ。えっと、君の名前は?」

エレン「エレン=イェーガーです!」

三笠「違う、エレン……」

エレン「あ、しまった。家賀江蓮です!」

飯時「ん? 間違えて逆に言ったの? 面白い子だね」

理倍「そっちの女は……」

三笠「赤間三笠です」

理倍「赤間、か。よし、新しい戦力になると、飯時がずっと言ってた奴だな。てめえの力で、全国までいけ」

三笠「(ムカッ)言われなくとも」

飯時「よーし、早速入部届け持ってくるから、ちょっと待てってねー」

そして飯時は、ぴゅーっと駆け出していったのだった。

有民「へーってことは、二人共、遅れてバスケ部に入ったんだ」

エレン「まあな! やってみたら結構面白かったし、やってみたくなってな」

三笠「私は、エレンの傍にいると決めたので」

有民「うん、なかなかいいんじゃない? 特に三笠は、ぴったりだと思うよ」

エレン「だよな。なんかもう、入ったらすぐ活躍しそうだよな」

三笠(…………本当はマネージャーの方が良かった)

ちょっとだけ、悔いが残る三笠だったが、仕方がないと諦めた。

そんな感じで途中経過を昼休みにいつものように外でご飯を食べながら報告していると………

雀「よ、よう! 三笠!」

と、隣の組の雀が絡んできた。

雀「なあ……三笠、お前、野球部のマネージャーやらねえか?」

三笠「やらない……(既にバスケ部に入ったし)」

雀「そう言わず、一回だけでいいから野球部に見学に来いよ。俺、三笠に活躍するとこを見せたいんだ」

三笠「ごめんなさい。雀……私、今日からバスケ部に入ったので、無理」

雀「へ…? なんで?! 帰宅部じゃなかったのかよ?!」

三笠「エレンがバスケ部に入ったので、私も一緒に女子バスケの方に入った」

雀「てめえええこのくそおおおおお!!」

雀は思わずエレンに掴みかかった。

雀「おま、部活には入らん! 英語の勉強が優先とか言ってたじゃねえか!」

エレン「あ? そうなのか? (やっべ、そうだったのか)わり! 気が変わったんだ」

三笠「雀! エレンに乱暴はやめて!」

雀「ちっ…! (手を離す)」

エレン「ジャン………雀は、何部なんだ?」

雀「野球部だよ! 一応これでも、一年でキャプテンなんだぞ!!」

エレン「へーすげえなあ。他に誰がいんの?」

雀「子煮(コニー)と富蘭津(フランツ)だな。子煮が三塁手で4番で、富蘭津は捕手で2番だ。俺は1番で投手でキャプテンなんだよ! すげえだろ?!」

エレン「いや、分からん。俺、野球詳しくねえもん」

雀「Σ(゚д゚lll)ガーン……」

エレン「ふーん、ま、その野球ってのも、面白そうではあるな。そっちはそっちで頑張れよ」

雀「くそおおおおおお…! (三笠がいないんじゃ、やる気が……)」

三笠「エレンはすぐ決める。他の部を見てから決めても遅くなかったのに」

エレン「だって、リヴァイ兵長のシュートみたら、やっぱ、憧れるだろ普通」

三笠「理倍……兵長?」

エレン「(しまった)あ、いや、とにかく、俺は理倍さんについていくって決めたんだ。野球はいつか、機会があればやってみたいとは思うけどな」

雀「だったら、兼部しろ。バスケ部と野球部を」

エレン「無茶言うなよ……そんな時間ねえだろ」

雀「くそおお……だったらせめて、練習試合くらいは見に来てくれよ…応援しに来てくれよ」

エレン「ああいいぜ! 今度いつやんの?」

雀「明日の日曜日……うちの学校のグラウンドでやる」

エレン「明日か……まあ、特に予定もないし、いいかな? あ、でもバスケ部の練習とかぶったら、見に行けねえぞ? 確認しないと分からんな」

雀「そっか……午前中にやるから、空いた時間だけでもいい。見に来てくれ」

しくしく泣きながら、退散する雀だった。

そんなわけで、今日の放課後から早速、部活を始めるエレンだった。

理倍「お前、初心者だってな。適正見るから、暫くボールをついてみろ」

エレン「はい…!」

理倍「もっと低くだ。腰を落とせ(グッ)」

腰を押し込まれるように落とされて、中腰になったエレンは結構、これ、きついな、と思った。

理倍「その状態で10000回ドリブルしろ」

エレン「え……10000回? (ゼロ、一個多くないっすか?)」

1000回なら、まあ訓練でもよくあるけど、10000回は初めてやる。

理倍「10000回だ。終わったら、お前も練習に参加させる。カウント誤魔化すなよ。ちゃんとこっちは見てるからな。監督が」

得瓶(エルヴィン)がこっちを向いて椅子に座って、手を振って、カウンターを左手に持って計測していた。

エレン「分かりました……(まあ、まずはやってみるか)」

そしてエレンはダムダムダム……と、同じ姿勢でドリブルを始めたのだった。

理倍「遅い! そんな速さじゃ、今日中に終わらねえぞ!」

エレン「は、はい! (こうか?!)」

速度をあげると、スポッとボールが抜けてしまった。

エレン「あれ?! 何で抜けた?!」

理倍「今度は速度が強すぎる。速すぎず、遅すぎず、だ。ドリブルの、一番やりやすい速度を自分の体の感覚で覚えろ」

エレン「はい…!」

そして結局、その日は一日中、ドリブル練習で終わってしまったエレンだった。

練習が終わり、部員が理倍の元に集まる。

エレン(明日も練習あんのかな)

エレンがそんな風に思っていると……

理倍「明日は、午前中だけオフになる。午後から練習試合やるから、レギュラーは準備しとけ。補欠もな。あと、残った奴らは応援しろ。以上だ」

バスケ部員「「「はい!!」」」

理倍「あと、家賀とか言ったか。お前、残っておけ」

エレン「はい!」

理倍に残されて、エレンは緊張した。

他の部員は片付け作業に入っている。

理倍「今日一日、お前の適性を見てみたが……正直、微妙だった」

エレン「え……」

理倍「他の学校の中堅クラスのバスケ部なら、充分通じるだろう。だがうちは、仮にも全国を目指しているバスケ部だ。お前くらいのレベルだと、3年間、レギュラーを取れずに終わる可能性も十分にある。それでも、続けるか?」

エレン「はい! (当然だ!)」

理倍「ほう…何故だ」

エレン「何故……と言われても」

理倍「お前は何の為にバスケを始めた?」

エレン「やってみたいと、思ったからです!」

理倍「だから、何故やってみたいと思ったんだ?」

エレン「それは………なんか、すかっとしたからです!」

理倍「ほう……」

エレン「えっと、つまり……楽しかったからです!」

理倍「ふむ……」

理倍は困ったなと思った。

理倍「理由はそれだけか」

エレン「はい!」

理倍「だったら、お前には入部は勧めん。今日限りで退部しろ」

エレン「へ…?」

思わぬ言葉にエレンは愕然とした。

エレン「な…何故、ですか?」

理倍「ここは、そういう「楽しむバスケ」を目標にしているわけじゃないからな。あくまで「勝つバスケ」を目標にしている。お前がそれでも、才能があるなら引き止めるが、見た感じ、ちょっと運動神経が良いくらいだ。中の上ってとこか。その程度の奴らなら、他にもゴロゴロいるからだ」

エレン「つまり、戦力外通告ってことですか……」

理倍「簡単に言えばその通りだ。うちの学校は、他にも部活はたくさんある。そっちでレギュラーとって、活躍する手もあるぞ」

エレン「嫌です!」

エレンはその時、はっきりと自分の意思を通した。

エレン「まだ、俺はバスケを始めたばかりです! だからまだ、できます! やらせてください!」

理倍「…………本当にいいんだな? 試合には出られないかもしれねえぞ?」

エレン「仮にそうだとしても、俺はまだ、諦めません! 俺は、根性だけは自信があります!」

理倍「ほう……言ったな。だったら、明日は一日中、ボールを触って、生活してみろ。どんな時も、手から離すな。便所の時も、風呂の時もな」

エレン「ボールを、ですか」

理倍「とにかくバスケはボールに慣れる事と、ドリブルが出来ること。この基本をしっかり出来ねえと話にならねえ。シュートは別の奴が代わりに打つ事も出来るが、パスが出来なきゃコートにいる意味はねえ。ボールを一個、貸出しとくから、やってみろ。一回、落とすごとにグラウンド1周走ってもらう。自己申告、誤魔化すなよ」

エレン「はい!」

理倍「お前がどこまでやれるか、見せて貰うぞ」

そう言って、理倍は少しだけ微笑んでいたのだった。

そんなわけで夜、家に帰ってからもエレンはボールに触り続けた。

迦楼羅「あら、江蓮、あなたバスケを始めるの?」

エレン「ああ…面白いから、やってみることにしたんだ」

迦楼羅「ふふ…男の子らしくていいわね」

母親に褒められて少しだけ有頂天になるエレンだった。

三笠「エレン……楽しそう」

エレン「まあな!」

リビングでボールを回転させて指の上にのっけたり、回したり頭の上に乗せたりして遊んでいる。

三笠「すっかりはまってる……(ちょっと寂しい)」

エレン「三笠はどうだった? バスケ、楽しいか?」

三笠「まあまあ……」

エレン「そりゃ良かったな! 勧めた甲斐があったぜ」

三笠「エレンは楽しいそうね」

エレン「そうだな…この感覚は、初めて立体機動が出来た感覚と似てるな」

空中を回転したり、一連の動作を体に染み込ませるまでに時間がかかった。

それでもなんとか努力の甲斐あって、エレンは立体機動を習得したのである。

三笠「立体機動?」

エレン「(しまった、またいらんこと言った)気にすんな! つまり、結構はまってるってことだ」

三笠「そう……(いいなあ)」

三笠は体を動かすのは好きだが、だからと言ってそれに夢中になれるかと言えばNOだった。

所謂、器用貧乏タイプだったのである。

エレン「風呂入る時も離すなって言われたからな~頭の上にのせるしかねえか?」

三笠「?!」

三笠は、ボールになりたいと心底思った。





そして今日を一日無事に終えて、エレンは布団に潜る。ボールを抱いて。

エレン(ふああ……結構、一日疲れたなあ……確か前回は、こうやって寝たら、また元の世界に戻ったんだよな)

前回の事を思い出しながら安心して眠るエレンだった。

エレン(待ってろよーミカサ、アルミン……ZZZZZ)





その日の夜は、雨は降らなかった。





三笠「エレン…起きて。今日は雀の試合を見に行くんでしょう?」

エレン「あ? もうそんな時間……? (あれ?)」

元の世界に戻っていない。あれ?

前回は、ここでアルミンが出てきたのに。

エレン「なんでだ?」

三笠「何が?」

エレン「いや、だって、前回はここでアルミンが起こしに来ただろ?」」

三笠「まだ……寝ぼけてるの?」

エレンは青ざめた。まさかとは思うが……



エレン(元の世界に、戻れなくなったのか?)



そう思い、血の気が引いた。

エレン(落ち着け…落ち着け…もしかしたら、何か、別の要因があって、帰れなかっただけかもしれねえ)

エレンは必死に鼓動を鎮めた。

ブルブル震えているエレンに、三笠は思わず駆け寄る。

三笠「エレン? どうしたの? 具合悪いなら休む?」

エレン「いや、大丈夫だ。(とりあえず、落ち着こう。今日も一日、様子を見るんだ)」

とりあえず、そう結論づけて、布団から起き出すエレンだった。

ボールは、一回、畳の上に落ちてしまったが。

エレン「あ……(しまった)」

今のは、カウントするべきか。

エレン「……ま、仕方ねえな」

とりあえず、一回分、減点である。

気を取り直して、着替える。学校に行く準備を整える。

三笠「今日はおばさん、お弁当作ってないから、お昼は適当に買って食べて、だそう」

エレン「ん? 分かった。行く途中でなんか買い物していくか」

エレンは三笠と学校に行く途中でコンビニに寄った。

水色と白の建物の中には朝早くから学生達がうろうろしている。

店の中に入ると、エレンは両目を大きく見開いた。

エレン「なんだこれ……こんなにたくさん商品がある店、初めて見た」

三笠「? コンビニなら、これくらい当たり前だけど」

エレン「ここ、コンビニっていうのか。すげーなんか、いろいろあってどれ選べばいいのか全然分からんぞ」

三笠「江蓮はいつも、牛乳と焼きそばパンを買っていた。たまにカロリーメイト(チョコレート味)も追加したりする」

エレン「お、おう…じゃあ俺も同じもの買うわ」

三笠に買い物を頼んで会計を済ませる。

美味そうなそれを見ていると、ちょっと一口齧ってみたくなった。

エレン「その、カロリーメイトってやつ、食っていいか?」

三笠「どうぞ」

エレン「どれどれ……美味い!! ∑(*´д`*)」

なにこれ、最高すぎる。美味すぎる。

三笠「そう? 普通だと思うけど」

エレン「これが普通って、どんな基準だよ! やべえ! もう一本食いてえ!」

三笠「そう? なら追加して買ってくる」

三笠はエレンに頼まれて、もう一回コンビニで会計してきた。

朝飯を食べたくせに、デザート感覚でひと箱開けるエレンだった。

エレン「美味かった…マジで美味かった。こんなもん、毎日食えるなら幸せだろ……」

三笠「カロリーメイトは、そんなに美味いものでもないと思うけど」

エレン「これが美味くないなんて、どんだけ贅沢な舌してんだよ! もっと美味いものあるのか?」

三笠「うん……私は、このプリンとか好き」

エレンは透明な器に入ったそのプルプルした黄色い物体に目を奪われた。

エレン「た、食べていいか?」

三笠「どうぞ。スプーンもある」

ミカサは蓋を外してエレンに渡した。

エレン「いただきます!」

そして訪れた美味な味に、エレンの体は完全に(別の意味で)イった。

三笠「エレン?! 大丈夫?!」

エレン「……は?! ここは何処か? 天国か?!」

三笠「ここはコンビニの店の前。エレンは死んでない。生きてる」

エレン「そうか…このプリンって食べ物、危険すぎるな。美味すぎて、昇天しかけたぞ」

三笠「そ、そんなに美味かったの…? (100円くらいのプリンなのに)」

エレン「ああ! こんな贅沢なもん、毎日食えるなら………」

正直、ずっとここに住んでもいい気がしてきた。

と、一瞬言いかけて、やめた。

エレン(いやいやいや、ダメだろ。それは、ダメだ)

誘惑を払いのける。それは、まるでミカサやアルミンを裏切る行為だからだ。

三笠「コンビニの食べ物は、安い上に美味い。でも、私はおばさんの手料理が一番好き」

エレン「ああ…それは、そうだけど」

そこは鉄板である。それは前提の話である。

三笠「でも、おばさんもそう毎日、料理ができるわけじゃない。本当は私が昼ご飯を作っても良かったんだけど……江蓮が「そんな女房みたいな真似すんな」って言うから」

エレン「あー(気持ちは分からんでもない)」

どうやら、江蓮は自分と全く同じような行動をしているようである。

エレン「まあ、でも、いいんじゃねえか? コンビニっていう店で買える食べ物でも俺は充分満足したぞ」

三笠「でも、栄養が偏るのは否めない。エレン、今度の日曜日は私にお弁当を作らせて欲しい」

エレン「………料理、自信あんのか?」

三笠「勿論!」

ミカサも料理は上手だった。なら、きっと三笠も上手いのだろう。

エレン「うーん……どうすっかな」

エレンは三笠にお弁当を頼む? 頼まない?
>>61の方、どうぞ( ^ω^)

*ちょっと安価待ちで休憩いれます。

頼むwww

>>61
了解しました。では、お弁当を頼むルートで続けます。

エレンは「ま、いっか」と思った。

どうせこっちの世界では、元の世界のあいつらにからかわれる心配もない。

だったら、ちょっとくらいイチャイチャしようが構わないだろう。

エレン「ああ、いいぜ。三笠に任せる」

三笠「本当? おかずは何がいい?」

エレン「そうだな……肉があればなんでもいいや」

三笠「お肉中心のお弁当ね。分かった。頑張る!」

急にウキウキし始めた三笠を見ていると思わずキュンとなってしまった。

エレン(やべえ……こっちの三笠も可愛いなあ)

エレンが内心、うっかりデレデレしていると……


チャチャチャチャーチャーチャチャチャチャーチャー♪


突然、携帯電話が鳴り出した。

慌てて電話に出るエレンだった。

エレン「ボタンどれだっけ?」

三笠「このボタン…」

エレンの携帯はガラケーだった。ちなみに三笠と同じ色と同じ会社だった。

エレン「はい、もしもし?」

有民『あ、エレン? 今、どこにいる?』

エレン「ええっと、コンビニってとこにいるみたいだが」

有民『そうなんだ。あのね、今日の雀の野球の試合、僕、急な用事が出来て見に行けなくなったんだ。ごめん、二人で行ってきてもらえるかな? おじいちゃんが、今朝、ギックリ腰になっちゃて』

エレン「まじか……急性腰痛だな。分かった。あれ、結構きついらしいからなー」

有民『うん、そうなんだ。ごめんね。今、両親も仕事で出てていないし、僕ひとりしか家にいないから、外に出れなくなってしまったんだ』

エレン「いいよ! ゆっくり看病してやんな」

有民『本当、ごめんね! 雀の応援、頑張ってね!』

そう言って電話が切れてしまった。

エレン「なんか、有民のおじいちゃんが急性腰痛になったみたいだ」

三笠「そう……そっちをお見舞いに行ったほうが」

エレン「んーでも、行ってもかえって気を遣わせるだろうから、やめた方がいいと思うぜ。俺、何度か急性腰痛の患者さんをみたことあっけど、本当、辛そうだったからなあ」

三笠「そう……でも一応、今日の用事が終わったら、有民の家に寄ってみた方がいいかもしれない」

エレン「そうだな。行くなら夕方にしよう。んじゃ、二人で雀の試合見に行くか」

そして学校に到着すると、学校のグラウンドには既に雀達がアップを始めていたが……

その雰囲気は物々しかった。

雀「どうすんだよ! 捕手がいないんじゃ、試合になんねーのに」

子煮「仕方ねえだろ。富蘭津の奴、登校途中で事故に遭って右手負傷したって言ってんだし……今日の試合は中止するしかねえよ」

雀「8人じゃ野球出来ねえもんな…」

エレン「おい、どうしたんだ? お前ら」

ベンチ裏にこっそりやってきたエレンは、何やら気配を感じて首を突っ込んだ。

雀「江蓮! 三笠! すまん、おまえら、助けてくれないか?」

エレン「何かあったんか?」

子煮「実は、メンバーが怪我しちまってよ、急遽メンバーが足りなくなったんだ。今日の試合だけでいいからさ、江蓮、どっかポジションはいってくんね?」

エレン「はあ? 俺、ルール全く知らねえぞ」

子煮「やりながら教えるからさ! 頼む! この通り!!」

エレン「でも……(今日は、バスケボールの課題があるんだが…)」

エレンはこの時も欠かさずボールを頭の上に乗せたり、腕の間に潜らせたりしていた。

こいつを離すわけにはいかないので、どうしたものかと悩む。

三笠「その練習は、女子ではダメなの?」

雀「えっ……そ、それは……」

三笠「エレンは課題があるので、今日はふたつの事を出来ない。だから私が代わりに出てもいい。女子でも良いなら」

雀「そりゃ、そうしてもらえるなら助かるけどよ…」

子煮「三笠には男装させようぜ! 胸は、さらしをきつめに巻いてつぶせば、それっぽく見えるだろ」

三笠「そうね。生憎、私の胸の大きさは、誤魔化せないほど大きくはない」

雀「………本当にいいのか? 三笠」

三笠「エレンが出来ないときは私がやる。それでいい」

雀「江蓮……(チラリ)」

エレン「三笠がいいなら、それでいいさ。怪我だけはすんなよ」

そして急遽、三笠を加えた男子野球部は練習試合を始めたのだった。

雀「ポジション、どうする?」

子煮「三笠なら、いっそ投手やらせてみるのも有りだと思うぜ。捕手は雀、お前がやれよ」

雀「はあ?! 俺、捕手やったことねーぞ?!」

子煮「でも、一番野球に詳しいのは雀だろ? まあ、俺がやってもいいけどさ。捕手って頭使うポジションだから苦手っちゃ苦手なんだよね」

雀「だよなあ……仕方ねえか、今日の俺は、三笠の嫁だ!」

開き直って、捕手の防具をつける雀だった。

エレンはベンチ裏でその様子を見ている。

部員ではないが、ここで見てていいと雀に言われたからだ。

エレン「へーなんか、いろいろ防具付けるんだな」

雀「ああ。これつけとかないと、死ぬからな」

そう言って全ての防具を付け終えると、試合を始めた雀達だった。

審判「プレイボール!」

審判の合図で遂に試合が始まった。

三笠は投球練習の時に雀にこう言われていた。

雀『とにかく、ボールを届かせることだけに集中してくれ。ワンバンは出来るだけ避けたい。コントロールは二の次でいいから、思いっきり投げろ』

雀はこの時点で、女子の三笠の実力は男子の素人程度にしか思っていなかった。

とにかく打たせて取る。そういう方法で考えていたのだ。

しかし、雀はこの時、自分の認識が間違っていたことを知る。

第一球を投げた。直後、



ひゅごおおおお!!!!



ズバン!!!!




まるで高校生の投げるような速球に、雀は受け取るだけで精一杯だった。

雀(じょ、女子の投げる速度じゃねええええええ?! Σ(゚д゚lll))

審判「ストラーク!!」

しかもコントロールの良さのおまけ付き。

雀(どうして三笠は男子じゃなかった?!)

正直、もし三笠が男子だったら入部してくれれば甲子園行けると思った雀だった。

雀(いや、男子だったら俺がBLになっちまう。だからいいや、仕方ねえ)

邪な思いを振り払い、ミットを構えるジャンだった。

その後の後続も見事に三球三振。バッチリ切って抑えた三笠だった。

エレン「へーなるほど、野球って、こういうゲームなのか」

ベンチ裏で野球を実際に見て、ウズウズし始めたエレンだった。

雀「次は、こっちの攻撃の回だ。これを9回繰り返して、得点を競い合うゲームなんだよ。バスケより、高度に頭使うし、体力も持久力もいるスポーツなんだぜ」

エレン「むっ……バスケよりっていうのは、言いすぎじゃないか?」

エレンが思わず反論すると、

雀「いや、野球の方が頭を使うスポーツだね! バスケはどっちかっていうと、反射神経と、体格で決まるスポーツだからな」

エレン「そうなのか?」

雀「ああ! バスケは、背が高い奴が圧倒的に有利なスポーツだからな。その点、野球は体の大きさだけじゃ決まらない。勿論、大きい方が有利な部分もあるが……バスケに比べれば、その差は少ないと思うぜ」

エレン「ふーん……だから雀は野球を選んだのか?」

雀「それだけじゃねえけどな……(本当は、三笠を甲子園に連れて行きたかったんだけど)」

雀は内心の呟きを心うちに止めた。願いはもう、潰えたのだから。

雀「とにかく、野球は面白いんだよ! だからやってるんだ。文句あるか?!」

エレン「いや、ねえよ。それは俺も同意するさ」

雀「お、おう…(珍しいな。江蓮が反論しねえ)」

エレン「ただ、バスケ部の理倍さんには、それじゃダメだって言われた。勝つ為にやってるから、そういう気持ちだけで入る奴はダメだって。お前はどう思う?」

雀「はあ? まあ、そりゃ勝ちたいさ。俺も。でも、だからと言って、やりたい奴をそんな理由で追い出すのはなんか間違ってねえか?」

エレン「俺もそう思ったんだが……まあ、いいや。今は。試合に集中しようぜ」

雀「お、おう……(俺の番がきそうだな)」

今日は3番打席で打つことになっていた雀はネクストサークルに移動した。

そんなこんなで、練習試合は、なんと雀達のチームが勝ってしまった。

雀と子煮の活躍で2点取り、三笠がなんと、完全試合をやってのけたのである。

相手の監督はハンカチを噛んで「あの子は誰だ?! ノーマークだった!」と騒いでいる。

子煮「やべえ……急いで三笠を帰らせろ。女子だってバレたら、もっと気が狂っちまうぞ!」

そう言って、相手の監督が三笠を捕まえる前に退散したエレンと三笠だった。

エレン「すげえ…三笠、お前本当にすごいな! 格好良かったぞ!」

三笠「(*´д`*)本当?」

エレン「ああ! おまえ、本当、女にしとくには勿体無いよなあ」

三笠「ガーン…(゚д゚lll)」

エレンの何気ない一言に、微妙に傷つく三笠だった。

三笠「男の方が……良かったのかしら(ズーン)」

エレン「え、いや、そういう意味じゃねえよ? ほら、もし男だったら、もっといろんなとこで活躍出来ただろうって意味だ。今の三笠が女であることにはかわりないし、女でいることを否定してるわけじゃねえよ」

三笠「でも……でも……男だったらとか、はよく言われる……ので」

エレン「それだけ、三笠がすごいってことなんだよ! 俺は、そういうすごい三笠を尊敬してんだぞ」

三笠「え…そうなの?」

エレン「ああ! 正直言えば、悔しいけど、な。勝てねえって思うけど、それが三笠なんだし……その……そこは胸張っていいとこだからな」

三笠「うん……ありがとう」

小さく微笑んだ三笠に、うっかりキュンキュンしてしまったエレンだった。

エレン(……なんか本当に、ミカサを相手にしている気分だ)

なんか雰囲気がそっくりなせいで、ミカサには悪いが、こっちの三笠にも萌えている自分がいる。

そんな風に邪なことを考えていたら、ついボールを落っことしてしまった。

エレン「二回目かー!」

やっちゃった。うっかり。

エレン「あーもう、失敗しちまった。午後に会う時、滅茶苦茶怒られそうだな…とほほ」

三笠「その時は、私も謝るので気にしてはいけない」

エレン「いやいやいや、その必要はねえからな。三笠、昼飯食ったら、一緒に体育館に移動するぞ」

三笠「うん……」

そんな風にいろいろ話しながら、とりあえず、いつもの中庭のベンチで飯を食うことにした。

中庭に移動すると、そこには………

飯時「おや、三笠、江蓮、二人もここで食べるの?」

エレン「はい……あれ、そこで寝てるのは理倍さんですか?」

飯時「うん。昼飯を食べたら寝ちゃった。ごめん、少し寝かせてやってくれない?」

エレン「は、はあ……(うおおおお…寝顔初めて見た)」

貴重なシーンにエレンもついつい息を殺してしまった。

ベンチで仰向けに寝転がっているのは理倍だった。

ジャージ姿でグーグー寝ている。

エレン「……これじゃここで食うわけにはいかねえな」

三笠「たたき起こしてもよいのでは? どうせ午後から試合あるんでしょう? (構える)」

エレン「やめとけって! 三笠!」

飯時「いやはや、その通りなんだけどね。試合は2時からだし、起こすのは30分前でいいよ。ギリギリまで寝かせてあげて」

エレン「だってよ。ほら、三笠、いくぞ」

三笠「そんな…キャプテンが怠慢してていいんですか?」

チクリとイヤミを言うと、飯時は「んー」と曖昧に笑った。

飯時「朝の6時から10時まで4時間ほとんど休憩なしで体動かしてたからねー。一応、怠慢ではないよ」

エレン「え……でも、午前中は練習ないって……」

飯時「それは全体練習はない、って意味だよ。個人練習は別に禁止してないよ? 単に午前中はバレー部が練習試合に体育館を使うってだけで、それ以外の運動は各自でやってる奴も多いから」

エレンはその瞬間、いかに自分が甘い認識だったのかを知った。

そういう事なら自分も自主的にランニングでもすれば良かったと反省する。

飯時「あ、でも江蓮、君はまだ勝手に個人練習に入っちゃダメだからね。君はそれ以前の問題だから」

エレン「え……」

飯時「新人は、ボールに慣れるのが最初の課題なの。基礎体力より、まずお箸を持ってご飯を食べられるようにならないと、でしょ?」

つまり、今はまだそういう段階らしい。

エレンは少しだけ、しょげてしまった。

エレン(そういや、立体機動ん時も、とにかくミカサは「慣れるしかない」って言ってたな)

ミカサはとにかく慣れるのが早かった。

コツをつかむのが早すぎて、常人の速度では追いつけない才能の持ち主だ。

エレン(うん…今はこいつを長時間触って、慣れるしかねえな)

ボールを愛おしそうに掴んでいるエレンを見て、再び三笠は「ボールになりたい」と嫉妬していた。

理倍「ん……」

そうやっていろいろ話していたら、理倍が起きてしまった。

理倍「今、何時だ……」

飯時「今? 12時過ぎたくらいだね。2時間くらいは寝たかな」

理倍「ちっ……うっかり寝すぎたな。つか、食ってからすぐ寝るもんじゃねえな。気持ち悪い……」

飯時「あらら……それはいけなかったね」

理倍「寝ちまったもんはしょうがねえ……午後の試合までまだ時間あるな。飯時、付き合え」

飯時「ちょっと、オーバーワークでしょ! っていうか、私、お昼まだだよ?! 食べさせてよ!」

理倍「なんで俺が寝てるあいだに食ってしまってねえんだよ」

飯時「あんたが膝の上に頭のせて寝るからでしょうが! 全く……」

理倍「さっさと食え。10分以内に」

飯時「横暴過ぎるwwwww」

笑いながら飯をパクパク食べ始める飯時にエレンはツッコミを入れるべきか悩んだ。

エレン(一応、これでも付き合ってる恋人同士なんだよな…?)

傍から見ると、あまりそういう雰囲気に見えない。親友同士と言った方がしっくりくるのだが。

三笠はどうでもいい風に理倍を見つめている。

エレン「えっと、俺達は別んとこで飯食ってきます」

理倍「ん? ああ……家賀、お前、下の名前なんだったか」

エレン「江蓮です」

理倍「江蓮か。江蓮、昨日から今までの間で、何回ボール落とした」

エレン「………2回です」

理倍「ほう……まあまあだな。でも、あと1回落としたら、ドリブル10000回追加するからな」

エレン「はいいいいいい! (酷いプレッシャーだ!!)」

理倍「ここ以外だったら、雨さえ降らなきゃ屋上も結構、飯を食うのにはいいところだぞ。鍵は開いている筈だから、行ってくるといい」

エレン「あ、ありがとうございます!」

手をヒラヒラさせて送り出す理倍を尻目に、エレンは早速屋上に行ってみた。

エレン「おおおおおお……!」

ドアは何故か開いていたので、そのまま入ってみると、エレン達以外には誰もおらず、眺めも最高だった。

エレン「すごい…これが、この世界…!」

たくさんの家々が並んでいる。シガンシナとは全く違う景色に、エレンは胸を躍らせた。

はしゃいでいるエレンを見ると三笠も微笑んだ。

三笠「あのあたりが、私達の住む家……」

エレン「お、あそか! 結構遠いな! でもなんとか見える!」

視力はそこそこいいエレンはなんとか肉眼でそれを確認した。

三笠「この街は、とてもいい場所。東京の中では、田舎の方かもしれないけど、私は好き」

エレン「これで田舎だって?! ちょっと待て。田舎っていうのは、もうちょい森とか川とかがある場所のことを言うんだぞ? ここはシガンシナ区より家並みが多いじゃねえか!」

三笠「シガンシナ区? そんな区、東京にあったかしら?」

エレン「(しまった、またいらんこと言った)ええっと、とにかくここは都会だって話だよ。俺がいたところは、こんなに人も建物も多くなかった」

三笠「そうなんだ……」

エレンが違う場所を眺めているのを見て三笠はなんとなく寂しさを覚えた。

顔は江蓮だけど、言ってることはやはり時々違う。

知らない人、だから。

自分の知ってる「江蓮」ではないから。

だけど、どうしてだろう。

彼を見ていると、江蓮とさほど違わないようなそんな錯覚に陥る。

無邪気な、瞳。活発な行動。そして、優しさ。

江蓮が持っていたものを、エレンも持っているような気がする。

だから、惹かれてしまう。そんな自分がいる。

三笠(………これは、浮気になるのだろうか)

後ろめたい気持ちもある。だけど、自分の気持ちに嘘は付けなかった。

決定的に違うのは「記憶」だけなのだから。

エレン「飯食おうぜ! あ、でもどうやって食おうかな」

ボールを持ったままだと、牛乳はともかく、パンは食べづらい。

カロリーメイトやプリンは片手でもいけたが(プリンは容器を三笠が持ってくれたのだ)パンは、袋を破って、かぶりつかないといけないので、どうやって食べればいいのだろう。

三笠「食べさせてあげる……」

エレン「え?!」

三笠「片手じゃパンは食べにくいでしょう?」

エレン「まあ…そうだけど」

それじゃ練習にならない気がするが……

エレンが止める前に、三笠はいそいそとパンの透明袋を開けてしまった。

三笠「エレン、あーん」

エレン「…………」

どうしよう…?

そりゃ食うしかないだろ

>>76
本当に、いいんですね? うふふ……了解しました。
ではまた続きは明日ノシ

折角、袋から出してくれたので、エレンはそれに応えるようにかぶりついた。ぱくっと。

右手でボールを持ちながら、口はうまうまと焼きそばパンを喰らい続ける。

エレン(んー! これも最高にうめえ!)

所謂、パンエレ状態なのだが、その表情は明るかった。

三笠はまるで雛鳥に餌を与えるような感覚を覚え、キュンとしてしまった。

三笠(か、可愛い……)


もぐもぐもぐもぐ……


長い焼きそばパンを、一気に食べ尽くす。

しかしそのペースが早すぎたのか、エレンが「んぐっ」と苦しそうな顔をした。

三笠「あ、ごめんなさい(押し込みすぎた…)」

思わず中身が飛び出て零しそうになる。

それをおっとっとと、支えるようにしたせいでエレンはつい、右手のボールの存在を忘れ、それを前に零してしまった。

エレン(あ…やっべ!)

ボールをつい、追いかける。

その瞬間……


ドシーン………


バランスを崩して、三笠ごと前倒しに倒れてしまった。

床はコンクリートだ。そのまま倒れたら、頭を打つ。

それを避けるべく、咄嗟にエレンは空いた右手をミカサの頭の後ろに入れて支えていた。反射的に。

その結果、どうなったかと言えば……

エレン(いっ……!)

丁度、コンクリートと三笠の頭に右手を挟んでしまった形になった。

激痛が、走ったのだ。

三笠「エレン! (バッ)」

三笠はすぐさま起き上がり、エレンの状態を気遣う。

三笠「エレン、大丈夫? 今、変な音が……!」

エレン「た、大したことねえって……」

三笠「嘘! 顔色悪い! 手、見せて! (グイッ)」

エレン「うがっ……!」

右手の甲は青くなっていた。内出血を起こしているようだ。

エレンの状態に三笠はすっかり青ざめてしまった。

三笠「これは良くない……エレン、今すぐ病院に行こう! おじさんのところに行こう!」

エレン「いいって! こんなの、氷で冷やしてテーピングしておけば……」

三笠「それは勿論、するけど! あ、まずは保健室! そっちが先だった!」

三笠も混乱しているようだ。エレンをすぐさま保健室に移動させると、幸い、保健医は保健室にいた。

今日は体育館で丸一日、練習試合があるので一応待機しててくれてたらしい。(普段は日曜日はいない場合が多い)

保健医煎是「あら……どうしたの? 怪我?」

三笠「はい! 右手の甲を強く打ってしまって……」

保健医煎是「腫れてるわね。とりあえず、氷で冷やします。触って痛む?」

エレン「いっ……!」

保健医煎是「うーん……ただの打撲かしら? でもこの感じだと、少し酷いかもしれないわ。10分程度冷やしても痛みが全くひかないようなら、病院でレントゲンとりましょうか」

エレン「え…でも、この後、試合が……」

保健医煎是「レギュラーの子?」

エレン「いえ…違いますけど、その応援が……」

保健医煎是「手を怪我してるのに他人を応援している場合じゃないでしょ。うーん、腫れが酷くなってきたね。こりゃ骨折の可能性もあるかもよ?」

エレン「えええええ∑(´Д`;)」

そんなやわな体ではないと自分では思っていたが、骨折していたら確かに応援どころではない。

エレン「わ、分かりました……一応、病院行きます。親父のところに行きます」

保健医煎是「お父さん? あ、もしかして君、家賀先生の息子さん?」

エレン「はい……」

保健医煎是「そうだったの。だったら安心ね。うん、連絡入れとくから、今すぐ病院に行きましょうか」

三笠「私も、一緒に……」

エレン「いや、お前は午後練習あるだろ。いいよ、俺一人で行くから」

三笠「絶対、嫌!」

エレン「おま、我が儘言うなよ!!」

三笠「私もさっき、ちょっと頭打った! 念の為、検査する!」

保健医煎是「あら? そっちの子も頭打ったの? というか、どういう状況だったの?」

三笠がかくかくしかじか、簡単に説明すると、

保健医煎是「なるほどね。だったら一応、あなたも病院に行ってきてもいいと思うわ。頭の衝撃は後から症状が出ることも少なくないの。念の為、検査しておきましょう」

三笠「はい!」

エレンについていける口実が出来て喜ぶ三笠だった。

そんなわけで結局、二人はエレンの父親、家賀外科内科病院にお世話になることになってしまった。

病院内で偶然、エレンは有民の姿を見つける。

有民「あれ? エレン、三笠、どうしたの?」

エレン「実は……かくかくしかじか」

有民「あっちゃーそれは災難だったね。今日はお互いついてない日だね。僕はおじいちゃんの付き添い。結局、しばらく家賀先生のとこで入院してお世話になる事になったよ……」

家賀内科外科病院は、所謂町に昔からある個人の病院だった。

外科と内科、両方やっているので、いわゆる「なんでも屋」のような病院なのだった。

入院施設も一応、ひと通り揃っているので、こういう緊急の患者さんがよく訪れるのだ。

有民「でも……バスケを始めたばかりで右手怪我したら、どうしようもないね。というか、ボールは? いつも持ち歩けっていう課題が出てたせいでそうなったんでしょ?」

エレン「あ……しまった、屋上に置き忘れてきたかも」

三笠「……多分、置き忘れてきた」

有民「あーあ……だったら。僕、一旦、家に戻るし、ついでに学校寄ってこようか? ボールも取ってくるよ」

エレン「面倒かける……」

有民「いいって! それじゃまたね!」

そうして有民は先に病院を出て行った。

そして結局、親父に診てもらうことになったエレンだった。

エレン「父さん……どうだ? 状態は」

具理者「うーん……結論から言おうか。骨折はしてないが、ヒビは入ってるみたいだね」

レントゲンの写真を見ながら、具理者は言った。

具理者「ここ、中指のラインわかるか? ほんの少しだけど、ヒビが入ってる。くっつくまで、しばらく右手はあまり動かさない方がいいな」

エレン「そんな……Σ(゚д゚lll)」

具理者「三笠の方は幸い、どこにも異常はなかったよ。まあ、名誉の負傷ってことで暫くは我慢するしかないな」

エレン「ああ……仕方ないな」

エレンは不幸中の幸いだと思った。

エレン「折れてないなら、まだマシだ。ちょっと痛いけど…我慢できないほどじゃねえし」

具理者「でも無理は禁物だよ。バスケを始めたばかりで辛いだろうけど、治るまでは部活動も休んだ方がいいかもしれないよ」

エレン「いや、それは出来ねえよ。これくらいで休むわけには……」

具理者「エレン、ダメだよ。休みなさい。せめて3日は、右手を使っちゃダメだよ」

エレン「うっ……左手だけでやっても、ダメか?」

具理者「練習メニューにもよるけどね。とにかく、今はちゃんと治さないと後々響くよ。診断書書くから、部活の先輩達にもちゃんと事情を話しておきなさい。いいね? まずは3日。その後、状態をみて徐々に練習に戻りなさい」

エレン「……はい」

こういう時の親父の判断に間違いはない。

渋々頷くしかないエレンだったのだった。

病院に戻ってきた有民はエレンの状態を聞いて「あらー」と微妙な顔になった。

バスケのボールを渡しながら、困ったね、という表情だ。

三笠は、とにかく待合室で座って落ち込んでいる。

有民「まあでも、骨折までいかなくて良かったね。暫く不自由になるだろうけど、しょうがないね」

その時、三笠がゆらりと立ち上がった。

三笠「私がエレンの右手になる………」

エレン「え? (ドキッ)」

三笠「責任もって、エレンの右手になる! 全部、私が代わりにやる!!」

エレン「はあ? Σ(゚д゚lll) な、ななんあ…何言ってんだよ?! (そんな卑猥なこと病院で叫ぶんじゃねえ!)」

有民もうっかり、真っ赤になっている。

しかし当の本人は全くそんなつもりはない。

三笠「だって私のせいでエレンに怪我させた……だから……(グスン)」

エレン「だああもう! 泣くなって! 泣くような事じゃねえんだから! それにまだ、左手がある! だから大丈夫だって!」

三笠「でも授業のノートとかどうするの?」

エレン「どのみち、俺はまだ文字が読めんし、板書は出来ねえよ。もうこの際だから、両利きになれるように左手使って頑張るからさ。三笠はあんまり落ち込むな、頼むから」

三笠(グスン)

エレン「もう試合終わってるかもしれんけど、一旦学校に戻ろう。バスケ部の先輩達に事情を話さないといけないからな」

三笠「分かった」

エレン「じゃあ、有民、ここでお別れだ。またな! おじいちゃん、お大事に!」

有民「エレンもね! お大事に!」

そう言って、エレンは有民とここで別れて学校に戻ったのだった。

学校に戻ると試合はまだ続いていた。

ゲームは攻守入り乱れた、接戦となっていたのだ。

男子の方のレギュラーは、キャプテンの理倍は当然として、現在コートに出ているのは、三毛(ミケ)、軍太(グンタ)、雷名(ライナー)、部瑠都瑠都(ベルトルト)だった。

エレン(すげえ…ライナーとベルトルト、試合出てんのか)

その動きの差を間近で感じて少し悔しさを覚えるエレンだった。

第4クオーター、後半戦。

理倍の活躍は加速した。

まるで手品のようになめらかな動きでボールをさばき、雷名にまわす。そして、

ダンクシュート、なるものを、ここでエレンは初めて目にする。

エレン(やべえええええ! ライナーかっけえええ!!)

男から見ても男に惚れる瞬間だった。

部瑠都瑠都は、守備を専門としているようだ。

ゴール下を守り、理倍に回す。

理倍は一度落ち着いて、状況をよく確認すると、軍太に回して、三毛にシュートを決めさせた。

そこで、試合終了。

接戦だったが、最後は逃げ切って勝ったようだ。

続いては、女子の練習試合だ。

三笠はすぐさま飯時に呼ばれて、ベンチに入っていった。

三笠は既にスタメンではないがベンチ入りメンバーになっていたのだ。

エレン(…………)

エレンは、その差を感じてまた、少しだけ悔しい思いをした。

まあ、でも仕方ない。

三笠が怪我しなかっただけでも上等だと思おう。

理倍「おい、江蓮……お前、どこ行ってたんだ」

その時、理倍はエレンの姿を見つけて声をかけた。

エレン「すんません! あの……実は」

エレンは自分の不慮で右手の甲にヒビが入ってしまった事、練習には参加できなくなった事、そして診断書を理倍に見せながらそれらを説明したのだった。

それらを聞き終えると、理倍は突然、意地悪そうに口角を釣り上げた。

エレン「?」

理倍「いや、お前、ラッキーな奴だと思ってな」

エレン「え? (アンラッキーの間違いじゃ)」

理倍「右手を負傷したおかげで、左手中心の生活を強いられるからな。俺は、お前がもう少し上達してから、それを指導しようと思ってたんだが……まあいい。手間が省けた」

エレン「え? え?」

理倍「これはチャンスだ。右手が治るまで、こっちの練習は参加しなくていい。その代わり、今度は左手だけでボールに触り続けろ。一気に次の段階に進むぞ」

エレン「え……まだ、ボール触り続けるんですか?」

理倍「当たり前だ。というより、むしろここからが本番だ。バスケは感覚的に、両利きになるくらいで丁度いいんだ。左手のハンドリングを一気に鍛えるぞ」

理倍はニヤニヤしている。実に嬉しそうだ。悪巧みをしているような笑みだ。

理倍「難易度は3倍になるけどな。頑張れよ、新人」

エレンは、何だか嫌な予感しかしなかった……。

そんなわけで、今度は左手で触り続ける練習を続行である。

すると、右手の時とは全く違い、何度も何度も、ボールを落としてしまった。

エレン「うわ……これ、案外、難しいな」

利き手とは逆の手でボールを触り続けるというのは、感覚的に慣れなかった。

しかしエレンはそれを続けた。他にすることがなかったからだ。

右手はちゃんとテーピングして必要以上には動かさないようにしている。

自宅に戻ってからも、とりあえずそれを繰り返していたエレンだったが……

三笠「大丈夫? 痛くない?」

三笠がそーっと、エレンの部屋を覗いている。

エレン「ああ。薬飲んでるし、今は痛みもひいてるからな」

三笠「そう……(しょんぼり)」

エレン「だからそう、落ち込むなって。あれはどう見ても事故みたいなもんだろ。ミカサに怪我がなくて良かったじゃねえか」

三笠「うううう………」

エレンはあぐらをかいて、太ももの上にボールをのせると「こっちこい」と三笠を呼んだ。

エレンは三笠が落ち込んでいるので、彼女の頭をポンポン優しく撫でてあげた。

これをすると、だいたい気分が落ち着くことをエレンは知っている。

三笠「エレン……?」

エレン「こうすると、少し落ち着くだろ? 暫く撫でてやるよ(左手だけど)」

三笠(ドキドキ……)

>>.86
訂正

エレン「だからそう、落ち込むなって。あれはどう見ても事故みたいなもんだろ。三笠に怪我がなくて良かったじゃねえか」

変換ミスです。すみません。

>>86
訂正の訂正

エレン「だからそう、落ち込むなって。あれはどう見ても事故みたいなもんだろ。三笠に怪我がなくて良かったじゃねえか」

リンク繋がってなかった。あかん、集中力が切れかけてるわ。

こんな風に撫でられるのは一体、いつぶりだろうか。

今より小さい頃は、よくこうやって撫でられた気がするけど……

三笠(気持ちいい……)

不思議な安心感に包まれて、三笠は別の意味で涙が出そうになった。

懐かしさがこみ上げて、くる。

三笠「エレン……本当に、ごめんなさい」

エレン「だから、もういいって。そんなに罪悪感持つ必要ねえからな。つか、こんくらいの怪我は、あっちじゃよくある事だし」

三笠「あっち…?」

エレン「訓練の途中で死ぬ奴だっているんだ。怪我なんて、皆しょっちゅうやってるよ。骨折しなかったのは、幸いな方なんだよ。だから、俺はそこまで気にしてない。こっちの世界じゃ、怪我はそんなに大げさにする事なのか?」

三笠「それなりに……」

エレン「だとしても、治るから。こっちの世界は食いもんも豊富だし、多分、早く治るんじゃねえかな? そうだ、肉! 肉一杯食わせてくれ! そしたら早く治る!」

三笠「本当? だったら、おばさんにも頼んでみる」

エレン「ああ! 母さんに暫くは肉中心の飯を頼んでくれ。それでチャラにしようぜ? な? 三笠」

三笠「でも…それじゃ私の気がすまない」

エレン「お前も本当、頑固だな! あーもう、どうすりゃいいんだか」

要は三笠の罪悪感を拭う、何かをしないといけないようだ。

エレン(右手になるって……あ、いかん。変なこと思い出した)

病院での一幕に、うっかり赤面したのはエレンだけではない。

ああいう言い方をすると、だいたい男はいやらしい意味で妄想してしまうのだ。

エレン(…………いやいやいや、ダメだぞ? 三笠に変なこと頼んだら)

つい理性と格闘するエレンだった。

三笠「………?」

エレンが何故か赤面しているのに気づいて小首を傾げる三笠だった。


ドキ………


エレン(まずい、やっぱ可愛い……)

普段は眉間に皺を寄せる方が多いのだが、たまに首を傾げることもある。

三笠の、疑問を感じる時の仕草は本当、ツボなのだ。小首を傾げる時のその仕草に何度萌えたか分からない。

エレン(ダメだって……夢の中だって分かってるけど、三笠に手だしたら、ミカサに会った時に合わせる顔がねえじゃねえか)

絶対、正気でいられない自信がある。

だからエレンは必死に深呼吸した。落ち着け、俺、と。

三笠「でも、お風呂はどうするの? 左手で洗ったら、ボールはどうするの?」

エレン「頭の上にのせるしかねえな。あと、股のあいだに挟むか」

三笠「(本気でボールに嫉妬しそう)あの……背中とかなら、洗ってもいいのでは」

エレン「あ、いやだから、なんでそう、献身的にやろうとするんだ。三笠、俺をそんなにダメ人間にしたいのか?」

三笠「そ、そんなつもりじゃ……Σ(゚д゚lll)」

エレン「だったら、過保護も程々にしてくれ。お前に甘えすぎると、油断する俺、何も出来なくなるダメ人間になっちまうからな」

三笠「(´・ω・`)……………………」

エレンは本当、三笠がミカサと全く同じ行動を取ろうとするので、何だか変な感覚だった。他人とは思えない。そんな感じ。

>>90
訂正
エレン「だったら、過保護も程々にしてくれ。お前に甘えすぎると、油断すると俺、何も出来なくなるダメ人間になっちまうからな」

と、が抜けてました。脱字です。

エレン「あーもう、この話は、もうおしまい! 俺、先に風呂入ってくるけどいいよな?」

三笠「うん……気をつけて」

エレン「大丈夫だって! んじゃまた後で!」

エレンはボールを持って、風呂場に向かった。

そしてボールを頭にのせたり、腕の中に挟みながら器用に体を洗っていく。

この世界の風呂は、向こうの世界の風呂よりよほど使いやすい。

石鹸もいい匂いがするし、シャンプーなんて代物まである。

初日に触った時は「すげえええ」と思いながらもこもこ頭を洗ったものだ。

泡を落として湯船に入る。

窓の外は、雨が降っていた。

エレン「雨か……」

そう言えば、最初、この夢を見る前、アルミンと会話したことをふと思い出した。



アルミン『だね……明日は幸い、雨が降りそうだし…』

エレン『夕方から天気が微妙だったもんな。その方がいいな』



しかし実際起きてみると、結局朝は雨が降っていなかった。

夜に降って、そのまま雨雲は通り過ぎたようだったのだ。

エレン「…………アルミン、どうしてっかな……ミカサも、大丈夫かな」

向こうの幼馴染を思い出してエレンは困っていた。

ここでの生活は居心地がいいけど、やっぱり会えないのは寂しい。

会いたい。二人に。

そんな風に思いながら、瞼を閉じていたら………

睡魔が襲ってきたのだった。















アルミン「エレン! エレン……!」

アルミンに揺り起こされた。なんだ? 一体。

エレン「んー? どうしたアルミン」

アルミン「エレンこそ! なんかうなされてたけど大丈夫?」

エレン「え…?」

目が覚めると、そこはいつもの男子寮だった。

ただ、まだ朝は来ていない。夜のようだ。

アルミン「眠ってから一時間くらいしてからかな……急に唸り始めて、起こしてもなかなか起きなくて…悪夢でも見てるのかなって、思って起こしたんだけど、大丈夫?」

エレン「ああ…大丈夫だ。大丈夫……(ズキッ)」

その時、覚えのある痛みが右手の甲に走った。

エレン「え……?」

まさか、と思った。

そして、すぐさま確認する。

アルミン「わああ?! なんで右手の甲が腫れてるの? 寝てる時、なんか刺さったのかな? (でも、刺し傷ないよね? どうして怪我したんだろう?)」

エレン「………………」

どういう事だ?

あれは、夢じゃなかったのか?

わけが分からず、エレンは戸惑う。






その傷は、夢で見た右手の甲の怪我と、全く同じだった。

アルミン「………………なるほど、そういう事か」

アルミンはエレンの説明を一通り聞いて納得したようだった。

エレン「信じてくれるのか……?」

アルミン「その、奇妙な手の甲の傷を見たら、とりあえずは信じるしかないよ。だって僕は覚えてる。エレンは確かに、寝る直前までは怪我なんてしてなかった。僕が見逃すはずはないよ」

エレン「だよな……」

エレンはアルミンに夢の話を一通り話した。

夢の中では、こことは全く違う世界があった事。

そこには巨人はいない、平和な世界があった事。

そして、そこでは……自分だけが「異端者」である事。

エレン「アルミン、俺が寝ている間とか、そのもう一人の「江蓮」がこっちに来てるってことはなかったか?」

アルミン「いや、それはなかったよ。あれば僕が気づくはずだ。もしくはミカサが」

エレン「だよな……ますます分からねえ。一体、俺はどうなっちまったんだ…?」

眠るのが急に怖くなった。全く理由がわからない。

何故、こんな現象が起きるのか……。

アルミン「でも困ったね。睡眠を取らずに生活するわけにはいかない」

エレン「そうなんだよな……」

訓練兵にとって睡眠は食事の次に大事なものだ。

それを疎かにするわけには行かない。

アルミン「何が条件になってソレが発動してるのか全く分からないけど……戻ってこれたってことは、「戻れた原因」も何か必ず有る筈だよね」

エレン「ああ……きっと、そうだ」

アルミン「だったら、寝るしかないんじゃないかな。何度か繰り返して、条件を自力で見つけ出す以外に方法はない気がする」

エレン「でも……」

正直言って、怖かった。

あの世界に行くと、こっちに戻れなくなるような気がして。

アルミン「怖いのは分かる。でも、寝ないわけにはいかないよ、エレン。人間は、睡眠をとって生きる動物だ。僕が力になれるか分からないけど……エレンが寝ている間、手を繋いで寝てみるからさ」

エレン「本当か? 絶対、離すなよ」

アルミン「布で縛って固定しよう。あ、その前にエレンの右手の甲もテーピングしておかないとね」

そう言って、アルミンは救急箱を取り出してエレンの手に包帯を巻いた。

アルミン「これでよし。もしエレンが朝になっても起きなかったら、叩き起こしてあげるから、もう一回寝てみよう。エレン」

エレン「ああ……頼んだぞ。アルミン!」

そしてエレンは再び瞼を閉じてみたのだった。















エレン「はっ……!」










うたた寝をしていた。風呂の中で。

それに気づいて、エレンは慌てて顔をあげた。

エレン(やっぱり、異世界に来ちまった……)

戻れたのは短い時間だったらしい。

エレン(…………眠ること、でこっちに来ちまうのか)

だから、夢だと思っていた。

けれど、だとするとあの「怪我」の説明がつかない。

何かがおかしい。でも原因が全く分からない。

こんな不安感、初めての経験だ。

エレン(どうすりゃ、いいんだ……)

何が発動条件で、戻れる条件なのか。

注意深く、探るしかない。

エレンはその時、ふと、風呂の仕切りがほんの少しだけ開いていることに気づいた。

隙間から、こっそり覗いている視線に気づく。

エレン「三笠、何こっち見てんだよ。覗くなよ」

三笠「だって…エレンが遅いから、心配になって」

エレン「ちょっとうっかり、風呂の中で寝てただけだって。そう長い間、入ってないだろ?」

三笠「エレンにしては、長風呂だと思ったの」

エレン「悪い。いろいろ考え事してたんだよ。もうあがるから、三笠も部屋に戻っておけよ」

三笠「……本当に大丈夫?」

エレン「しつこいぞ! いいから部屋戻れって!!」

エレンがつい、声を荒げて言うと、三笠はびくっと怯えてしまった。

三笠「ご、ごめんなさい………」

そのあまりの震えようにエレンはしまった、と思った。

エレン「大丈夫だから……すまん、声、荒げるつもりはなかった」

機嫌が悪くなっていたのだ。つい、つい。

エレン「俺は大丈夫だから………(あれ?)」

そう言いながら、立ち上がろうとした、その直後、


グラ……


湯船から立ち上がった瞬間、急に目眩がした。

立ち眩みだ。長い間、座っていたりして、急に立ち上がるとたまに起きる現象だ。

エレンが急にふらついたので、三笠は咄嗟に風呂場に突入して、エレンを支えた。

三笠「エレン…! (二時間も、風呂に入ってるから!)」

エレンの体を見ると、全身が赤くなっていた。

どう見ても長風呂のせいである。

ボールは湯船に浮いている。

エレンは、ハッと我に返った。

三笠の服が、びちょびちょになっている。自分のせいで。

エレン「あ……悪い! つか、おい!」

裸をモロに見られてしまった。というか、触られている。

三笠に全身を抱きしめられている。

エレンはその状況に気づいた瞬間、下半身が反応してしまった。

ビクン、と。

三笠から、離れようとしたのだが、体に力が入らない。

長く風呂に入りすぎたせいで、体が熱すぎるのだ。

エレン「くそ……のぼせたのか」

明らかに、そうである。

三笠「エレン! その……まずは、風呂の縁に座れる?」

エレン「ああ……(よいしょっと)」

三笠「タオル、とってくるから、待ってて!」

結局は、こうなってしまった。

なんだろう。この運命的な感覚は、いつもエレンに訪れる。

エレン(………また、迷惑かけちまった)

もう、世話をされる側になるのはこりごりなのに。

そう思いながらも、ここに三笠がいてくれて良かったとも思う。

バタバタと、三笠が戻ってくる。

三笠「はい、これで体を拭くから、じっとしてて!」

全身を、拭われてしまう。三笠も服がびちょびちょなのに……。

自分のことは棚にあげて、いつもこうなる。

この母親のような包容力に、いつもイラつくし、感謝してしまう。

そして、邪な感情も、膨れ上がってしまう。

エレン(だから、ダメだって……)

三笠はミカサではない。というか、それ以前に家族だから。

ミカサだろうが、三笠だろうが、手を出してはいけない。イケナイのだ。

なのに、下半身は、いつも正直で。

ここでもし、三笠にツッコミを入れられたら、弁明なんて出来ない。

エレン「もういい。三笠、お前も着替えろよ。服、濡らしてごめん…」

三笠「え? あ……(ドキッ)」

どうやら、今になってようやく気づいたようだ。

さっと、胸元を隠して恥ずかしそうにする三笠に、エレンの理性も、正直、しんどかった。

エレン(我慢我慢我慢我慢我慢………)

両目を閉じる。もう、催眠術に近い感じだ。

三笠「ご、ごめんなさい。気づかなった。き、着替えてくる……」

ささっと風呂場を出て行った三笠を見送って、今度こそゆっくり立ち上がった。

もう、目眩はしない。体が少し冷えたからだ。

エレン(……………)

こういう時、右手が使えないのほど、不便だなと思ったことはなかった。

エレン(いっそ、左手もマスターするか)

挑戦するしかない、と思ったエレンだった。

エレンの左手の挑戦、読みたい方、手あげて~
(*誰もいなかったら、この後のシーンはカットします)

ノからレベルアップ
ノシ

>>99
>>100
ありがとう! 二人のためにカットはなしで続きを書きます!

体をしっかり拭き直し、着替えてボールを左の手で抱えながら階段をあがる。

自分からみて右側が自分の部屋、左側が三笠の部屋だった。

エレンはふすま越しに三笠に話しかける。

エレン「三笠、着替えたか?」

三笠「う、うん……」

エレン「俺、自分の部屋に戻るから。この後、お前は風呂入っとけ。俺は自分の部屋でやりたいことあっから、開けないでくれ。いいな」

三笠「うん。分かった……」

一応、釘を刺しておく。途中でもし部屋に入られたら困るからだ。

そしてエレンは敷きっぱなしだった自分の部屋の布団の上にあぐらをかき、右腕でボールを挟んで、左手でいつもの自慰行為に挑戦してみる事にした。

罪悪感はあるけれど、オカズはさっきの濡れ濡れ三笠で充分イケる。

もう一度、思い出してみる。さっきの、感触を……

エレン(うっ……!)

途端、ギンギンに下半身が動き出した。

正直、隠れてミカサで抜いたことは何度もある。

だから、三笠で抜くことも簡単だと思った。

しかし妄想は十分でも、手の技巧の差は歴然だった。

凄く、やりにくい………

エレン(こりゃ時間がかかりそうだな…)

幸い息子の大きさと形は本来の自分と全く同じものだったので、その点は問題ない。

自分の気持ちいいポイントは知っている。だから、そこを中心に自分をコントロール出来るが、左手だとどうしても拙くて、うまく出来ない。

エレン「はあ………はあ……」

三笠の体温と、そして照れた瞬間の赤い顔。

思い出すとその先を、感じたくなる。

妄想で、その続きを思い浮かべてみる。

あの場面でもし、自分が追い返さなかったら……

きっと………

三笠『エレン……大丈夫? あっ……』

そのまま風呂の壁まで追い詰めて、鏡を背にして閉じ込めたら……

三笠『エレン? 本当に大丈夫なの? 目眩はもう治ったの?』

エレン『いや、まだ治ってない』

三笠『だったら、座って。体を冷やさないと……』

エレン『そうじゃねえ…三笠のせいだ』

三笠『え?』

エレン『三笠のせいで、目眩すんだ。いつも、クラクラするんだよ』

三笠『ガーンΣ(゚д゚lll)』

エレン『だから、ちょっと治すの手伝って』

三笠『て、手伝う! どうすれば、いいの?』

エレン『じっとしてて……』

エレンは、びしょびしょの三笠の胸元に手を忍ばせた。

三笠『あっ……何、するの? 胸を触るの?』

エレン『いいから……じっとしてろって』

三笠『あああっ…でも、そこは…あん…や……気持ちいい』

乳首を探して、コリコリ弄る。

ビクン、ビクンと、体を震わせる三笠にキスをする。

三笠『んー……』

キスと同時に胸を弄る。尻にも手を忍ばせて、立ったまま、追い詰める。

三笠『あ……エレン…その…あんっ……ああっ』

エレン『ここ、気持ちいいんだな?』

三笠『うん…! はあ……はあ…ああん!』

ビクビク体を痙攣させる三笠を支えながら、好きなように触る。

尻に忍ばせた手を前に移動させて、女の最も敏感な部分を探す。

濡れた服の上から、擦ってみる。すると、三笠は大きく体を跳ねさせた。

三笠『いやっ……そこは…ダメ! やめて! エレン!』

エレン『嘘つけよ……気持ちいいくせに』

三笠『気持ちいい…けどっ……! いや…ダメ…ああん!』

一際いい声で鳴き始める三笠にエレンは口角を持ち上げた。

エレン『風呂ん中だと声が響いていいな……』

三笠『はっ……そうだった…近所に、聞こえちゃう…』

エレン『ま、いいけど? 俺は別に、な』

三笠『ダメっ……隣の人に合わせる顔が……ああん!』

エレン『三笠…だったら、声は我慢してみろよ』

三笠『う、うん……ッ……ん…はあ…』

声を殺そうとするせいでよけいに色っぽく乱れ始めた三笠にエレンは調子に乗った。

濡れた三笠の服のボタンを徐々に外し始めたのだ。

三笠『エレン! な、何を……』

エレン『ここでヤリたい……』

三笠『ダメ……! 私達は、兄妹だから、そんなことしちゃ……』

エレン『血の繋がった兄妹じゃねえんだから、いいじゃねえか』

三笠『でも…! あっ……』

いや、本当はイケナイんだけど。それは重々承知で妄想する。

エレン『三笠の胸…可愛いな…まだ、手の平サイズだけど……どんどん大きくなるように、俺がこれから毎日揉んでやるよ』

三笠『あああっ……エレン! そんなこと、しなくても…! 自分で、するから!』

エレン『ん? なんだよ、自分で揉んでるのか? 俺の為に』

こくこく頷く三笠が本当に可愛かった。

三笠『私は、まだ、発展途中なので……努力次第では、もう少し、大きくなる予定…だから! あっ……』

エレン『ばーか、だったら俺に協力させろよ。毎晩、揉んでやるよ。こうか?』



もみもみもみもみもみもみ……



三笠『ああっ……!』

小さな胸だったが、その感度は良好だった。

しっとりした肌触りに手がくっつきそうな錯覚を覚える。

エレン『三笠……そろそろ、全裸になってもらえるか?』

三笠『ほ、本当に、するの?』

エレン『ん? 嫌か? どうしても、ダメならここでやめてもいいけどな』

三笠『……………』

そこで三笠は一度、答えを考えて、俯いて、キョロキョロして、

上目遣いで、言った。

三笠『…………………して、下さい』








エレン「………あ」

しまった。今の妄想で、イってしまった。

エレン(本当はもうちょい先まで妄想したかったが……)

いや、今日はここでやめておこう。

というか、今の妄想を、さっき現実にしなくて良かった。

一歩、道を踏み外せば、今の妄想を現実にしてしまう自信がある。

変な自信だけど。

出てきた白いものをちり紙(というか、ティッシュ)で拭き取って掃除すると、エレンはすっかり脱力した。

エレン(………………うん、実行しなくて良かった)

正直、ちょっと危なかったかもしれない。

この世界はもしかしたら、夢であって夢じゃないかもしれないから。

夢だと開き直ってたら、多分、突き進んでた可能性がある。

そしたら、もしかしたら、三笠を泣かせていたかもしれない。

いや、それ以前に。

こっちの三笠とそういうエッチなことをしたら、ミカサに対する裏切り行為になりはしないだろうか?

エレン(どうなんだろ……)

ミカサと三笠は同じではない。でも、瓜二つなのは、本当で。まるで双子のように思う。

エレン(もしかしたら、三笠の方も同じように感じてるかもしれねえな)

自分がこうなのだ。三笠ももしかしたら、同じように感じているかもしれない。

エレン「はあ………もう一回寝たら、ちゃんと元の世界に戻れるんかなあ」

勝利条件が全く分からない。ギャンブルをしているような感覚だった。

エレンが困った表情で天井を見上げていると、突然、携帯が鳴った。


チャチャチャチャーチャーチャチャチャチャーチャー♪


電話の相手は有民だった。

エレン「なんだ? なんか用かな」

エレンが出ると、そこは意外な声が聞こえた。いや、同じ声だけど。

エレン「もしもし?」

アルミン『うわっ…声が聞こえる! すごい! エレンの言ったとおりだね!』

エレン「ん? 有民だよな? どうした? 何かあったんか?」

アルミン『あ、違う違う! エレン! 僕だよ! アルミン! 僕も何故か、君の夢の世界に一緒に入れたみたいなんだよ!』

エレン「はあ?! (;゚Д゚) ちょ……つーことは、今、有民じゃなくて、アルミンなのか?!」

傍から聞くと意味不明な会話だが、彼らはだいたい理解した。

アルミン『うん! エレンがさっき、説明した時に言ったでしょ? 「携帯電話」っていう、キラキラした板みたいなので、声を飛ばせるって。自分の部屋を漁ってたら、鞄の中から出てきてさ。適当に弄ってたら電話が繋がったんだ。すごいね!』

アルミンの適応能力の高さに唖然とする。

エレンはびっくりして話を聞いていたが、アルミンは『今からそっちに行ってもいい?』と言い出した。

エレン「え、でも…場所分かんねえだろ?」

アルミン『建物の特徴を教えてくれれば、自分で探すから! 家の前で待っててくれよ!』

エレン「分かった! じゃあ、家の前で待ってる!」

アルミン『電話はつないだままにしといて! 今から家を出てみるよ!』

そしてアルミンは本当に、エレンの家に着いてしまったのだった。

アルミン「意外と近いとこに住んでたね! 徒歩で200mってとこじゃないかな?」

エレン「まさか、アルミンまでこっちの世界に来れるとは思わなかったぜ」

アルミン「うん……正直、賭けだったけど、手を繋いで一緒に寝たらもしかしたらって、思ってね。でも……これでエレンの言ってたことが本当だって分かったよ」

エレンは雨の中、思わずアルミンに抱きついた。

一人ぼっちで知らない世界で寂しかったのだ。

アルミン「うはっ……なんか、服装も変な感じだよね。僕達の普段着ている服より着心地いいし、なんていうか、オシャレな感じがするよ」

アルミンはエレンの私服姿をみてそう思った。

黒いTシャツに青ジーンズという、ごく普通の格好だったが、アルミンから見れば充分オシャレに見えたのだ。

アルミンは長袖の白いTシャツに赤い長ズボンというスタイルだった。

エレン「とにかく、いったんうちにあがれ。今日は母さん、夜遅くなるって言ってたし、父さんも帰り遅いから、ゆっくり話せる」

アルミン「じゃあ遠慮なく。お邪魔しまーす」

アルミンはエレンの自宅にお邪魔した。

アルミン「うわあ……すごく広いおうちだね」

自分の家より倍近くあるリビングと台所に感動した。

掃除も行き届いていて、ちゃんと生活しているのが分かる。

アルミン「この大きな椅子に座ってもいい?」

エレン「ああ、なんか飲み物持ってくる」

エレンは冷蔵庫の中から冷やしたお茶を出してアルミンに出した。

アルミン「すごい! 冷えてる! というか、その大きな箱は何?」

エレン「冷蔵庫っていうらしい。食べ物や飲み物を冷やして保管できる箱みたいだ」

アルミン「すごいね! ちょっと一回、分解して仕組みを見てみたいくらいだよ!」

アルミンは初めてのこの世界に感動と興奮を覚えている。

エレンが初めてここに来た時は、アルミン程はしゃげなかった。

というか、戸惑いの方が大きくてそれどころではなかったのだ。

アルミンは冷たいお茶を飲みながら、部屋の中をキョロキョロしていたが、一旦落ち着くと、本題を切り出した。

アルミン「で、だ。理由はいまいち良く分からないけど、エレンはここで今、生活してるんだよね。状況を一回、整理してみようか」

アルミンは何か書くものない? と言い出したので、エレンは自分の部屋からノートとペン類を全部持ってきた。

アルミン「おおっ…なにこれ? 書きやすいね…ぜんぜん引っかからないや。持って帰りたい…」

エレン「それ、シャープペンっていうらしい。消しゴムもあるから消せるぞ」

アルミン「うわっ…消せるんだ! 便利だね! こりゃいいや。えっと、まず、エレンは僕達の世界で眠ると、こっちの世界に来てしまう」

アルミンはその相関図をノートにメモしてみた。

アルミン「で、こっちの世界でも寝ると、僕達の世界に戻れる。けど、一回だけ戻れなかった日もあったんだよね?」

エレン「ああ。正直、戻れなくなったのかと思ったけどな。その後、風呂でうたた寝したら、また元の世界に戻れたんだ」

アルミン「うたた寝する前に、何かなかった? 気になることとか、思い出したこととか」

エレン「んー……あ、そう言えば」

エレンはその時、雨の存在を思い出した。

エレン「風呂場から見える窓の外の景色、見てたな。雨降ってるなあと思って。んで、最初にこっちに来る時も、確かアルミンと雨が振りそうだなとかそういう話をした記憶を思い出した」

アルミン「だったら、この『雨』が、キーワードになりそうだね」

アルミンはそう言って、『元の世界』と『異世界』の間に『雨』というキーワードを差し込んで書いた。

アルミン「うーん、状況を聞いてみると、もしかしたら、エレンが眠っている間に『雨』が降ると、交互に行き来している……と考えた方がいいかもしれないね」

エレン「えっ……そ、そうなのか?」

アルミン「うん。まだ可能性の話だけど、その可能性はあると思う。多分、戻れなかった時は、外で雨、降ってなかったんじゃないかな」

エレン「ああ……そういえば、そうかもしれない」

記憶を引っ張り出すと、そうだったかもしれない気がしてきた。

アルミン「どこかに、天気を記録した記事とかないかな…新聞とかない?」

エレン「あるにはあるが、文字が全く読めないんだ。どうもこっちの世界は、俺達の使う文字と全然違うみたいだぜ」

アルミンにそう言いながらエレンは今日の新聞紙を引っ張り出した。

アルミンはそれを受け取って「本当だ」と思った。

エレン「せめて文字が読めれば、こっちでの生活も楽になるんだけどなあ」

アルミン「……………」

しかしその時、アルミンは何故かそれを食い入るように見つめていた。

アルミン「エレン、鏡ない?」

エレン「え?」

アルミン「ちょっと、気になる事がある。鏡を貸してほしい」

エレンはドキッとした。アルミンの表情がいつもと違ったからだ。

所謂、超集中モードに入っているのが分かる。

エレン「分かった! ちょっと探してくる!」

そしてエレンは洗面所から手鏡を探し出してアルミンに手渡した。

アルミン「これは……!」

そこで、アルミンは気づいたのだった。

アルミン「鏡文字だ……」

エレン「鏡文字?」

アルミン「鏡に映った文字を見て。全部綺麗に読めるから」

エレンは鏡を覗き込んだ。

すると、アルミンの言う通り、鏡を通すと全ての文字がすらすら読めたのである。

エレン「えっ……なんだこれ? 全く気付かなかったぞ」

アルミン「まるで、ここは鏡の中の世界みたいだ。どういう事なんだ?」

自分達の生きる世界とはまるで正反対の世界。

だから、文字も正反対になっているのだろうか。

エレン「でもこれで、鏡を使えば全部読めるなら……」

アルミン「ああ、天気の記録も読める。エレン、ここの地域は何て言うんだ」

エレン「東京っていう町らしい。えっと、こんな感じの文字だった」

エレンは見よう見まねで教えてもらった「東京」の字を教えた。

すると、アルミンは天気の記事を見つけて「やっぱり」と言った。

アルミン「天気の記事、載ってる。エレン、ここでの今日は何日だい?」

エレン「えっと、6月9日だったかな」

アルミン「前の日の夜は雨の確率、10%以下になってる。やっぱり、雨は降ってなかったと考えるべきかもしれないね」

エレン「ってことは、今日も雨降ってるから……今夜は向こうの世界に戻れるのかな」

アルミン「恐らくね。ねえエレン、今夜はこっちに泊まってもいい?」

エレン「え、でも、家にいなくていいのか?」

アルミン「家には誰もいなかったんだ。もしかしたら、僕には家族がいないのかもしれない」

エレン「いや、こっちのアルミンにはちゃんと家族いるぞ。おじいちゃんは急性腰痛で入院しちまってるけど、両親は仕事で出てるって言ってた」

アルミン「え……そ、そうなんだ。うわ、なんか嬉しいなあ」

エレン「うちも母さん、生きてるし、正直、こっちの世界は居心地良すぎて困るくらいなんだよな」

アルミン「なるほど。エレンの言ってる意味、分かったよ」

その時、アルミンのスマホが鳴った。

アルミン「あわわ……どうするんだっけ? こうだったかな?」

とりあえず、電話に出てみると、それはアルミンの母親だった。

アルミン「母さん?! うん……うん、分かった。父さんも、だね。あのね、今日、エレンの家に泊まってもいい? ありがとう!」

アルミンは両親と会話できたようだ。

思わず、涙が溢れる。

アルミン「あのね、エレン……僕の両親、弁護士をやってるんだって。今、ちょっと手の離せない案件があるから、今夜は事務所を帰れないって、弁護士ってどんな職業か知らないけど、二人共、生きてる……」

アルミンは嬉し過ぎて鼻水が止まらなかった。

そんなアルミンにエレンはちり紙(ティッシュ)を渡す。

エレン「良かったな。今夜はうちに泊まってけ。一緒に寝ようぜ」

アルミン「うん……(グスン)」

三笠「あら? 有民、来てたの」

その時、風呂上がりの三笠がリビングにやってきた。

アルミン「あ、お邪魔してます……(本当にミカサにそっくりだ)」

三笠「? 別に遠慮なんてしなくていい。うちに泊まりにきたの?」

アルミン「うん、まあ、そんなとこ」

アルミンは迷った。自分のことを話すべきか。

すると、エレンは首を振った。

エレン「今は話さなくていい。とりあえず、今日は………」


ぐう……


その時、何故かアルミンの腹が鳴った。

アルミン「ご、ごめん。何も食べてなかったみたいだ。お腹空いちゃってる」

三笠「冷蔵庫にあるものでいいなら、何かご飯を作ろうか?」

アルミン「あ、お願いします!」

三笠「ん……野菜炒めでいい?」

アルミン「なんでもいいよ」

エレン「あ、俺もついでに食おうかな」

三笠「そうね。ちょっと小腹が空いた」

現在、夜の10時半だった。

ちょっと摘みたい、そんな時間である。

そんなわけで、三笠の手料理初披露である。

ワクワクしながら待っていると、有り合わせのものだけで野菜炒めが出来た。

三笠「ご飯は、昨日の残りしかないけど……足りなかったら、コンビニで買ってくる」

アルミン「いや、おかずだけでも十分だよ! うわあ…美味しそう」

エレン「いただきまーす!」



むしゃむしゃもぐもぐ……


エレン&アルミン「「うめええええ!!!!」」

ハイテンションで食べている二人を見ていると、三笠もつい、笑みが溢れた。

三笠「子供みたい」

アルミン「あ、ごめん……ついつい……(こりゃ、エレンが帰りたくないっていう意味、わかるよ)」

エレン「あー三笠の手料理、初めて食べたけどさすがだなー」

三笠「…………いつもの江蓮だと、『ちょっと塩辛い』とか言って、いつも味にダメだしするけど」

エレン「はあ?! Σ(゚д゚lll) ちょ、こんな贅沢なもん食って文句言うなんて信じられん!!」

三笠「クス……エレンは、江蓮より、優しい。あんまり優しいと、私も調子に乗ってしまう」

エレン「ん? 別に三笠は調子に乗ってねえだろ?」

三笠「そんな事ない。油断すると、ダメ……(クスクス)」

三笠とエレンのいい雰囲気にアルミンは「ん?」と思った。

なんていうか、なんて言えばいいのか、その………。

アルミン(なんだろう、この……変な感じ)

ええっと、感覚的に言うなら……

アルミン(ああ、そうだ。カップルの会話に聞こえるのか)

雰囲気がまさにそれに近い。まさかとは思うけど………

アルミン(いや、有りうるな。充分有りうるよ。エレンなら、こっちのミカサにも惹かれて当然だ)

元の世界のミカサが聞いたら嫉妬で怒り狂うかもしれないが……

アルミン(僕は何も見なかったことにしよう)

アルミンは男の友情を優先する事にした。

エレン「あー食った食った! こりゃ来週の日曜日の弁当も期待できそうだ、うん」

三笠「お肉中心のお弁当……何がいいかな。ハンバーグ、唐揚げ、鳥の照り焼き…いろいろある」

エレン「あー何でもいいって。つか、俺、食いすぎて太ってきてねえかな」

三笠「いや別に……食べてもその分消費してるから大丈夫だと思う。育ち盛りだし」

エレン「そっか……ま、部活で消費出来るようになれば、また元に戻るよな、うん」

エレンと三笠はすっかりこっちので生活の会話をしている。

アルミン「そう言えばエレン、さっきから持っているその茶色い大きなボールはなんだい?」

エレン「ああ、バスケのボールだよ。この間、教えただろ? ライナー達と一緒に遊んだあれだよ。正式にはこの大きめのボールを使ってゲームをするんだ。俺、こっちの世界でこのゲームで活動する「バスケ部」ってとこに所属したんだよ。んで、課題でずっとボールを触っておけっていう」

アルミン「ああ…成程ね。だからさっきから膝の上に乗せてたのか」

リビングで飯を食べている時も、エレンはボールを離さなかったので不思議に思っていたアルミンはやっと納得した。

その二人の会話に違和感を覚えた三笠だった。

三笠(今の会話……何か、変)

三笠はどうも有民の様子が変だと思った。

さっきから、いつもと立場が逆転しているように見える。

いつもだったら、エレンが有民に質問攻めをするのに、当たり前の質問を、有民がエレンにしているのだ。

アルミン「あ、皿はどうしたらいい? そっちで洗えばいいのかな?」

エレン「あ、いいって、俺がやっとくし」

アルミン「いや、悪いよ。僕が洗うよ。僕が言い出して作って貰ったんだし」

三笠(……………おかしい)

有民が気を遣っている。ここも変だと思った。

いつもだったら、ここは三笠に全て任せる。自分達は旧知の仲なのだ。

それくらいの暗黙のルールはある。

三笠(まさか………)

思ったのは、有民も、入れ替わった、という事。

三笠は、自身の女の勘を信じた。

三笠「有民、ちょっと取って欲しいものがあるのだけど」

アルミン「ん?」

三笠「リモコンが、机の上にあるから、テレビをつけて欲しい」

アルミン(リモコン? テレビ? なんのことだろう)

アルミンは咄嗟に対応出来ず、困った。

その様子を見て、エレンは「これか?」と代わりにそれを取った。

しかしそれはテレビのリモコンではなく、ブルーレイの方のリモコンだった。

なのに、

アルミン「あ、それか。エレン、ありがとう」

有民が、そう言ったので確信した。

ボロボロと、涙を流す。

エレン&アルミン「「?!」」

三笠「有民まで……入れ替わった……」

エレンは三笠のその言葉で、事がバレたのに気づいた。

三笠「どうして……何で……また、入れ替わった……」

エレン「あ、いや……三笠……あのな……」

三笠「私だけ……残されて……うわああああ」

急に泣き出した三笠を見てエレンもどうしたものかとオロオロした。

エレン「三笠! 泣くな! あのな、悪かった。あの…その…」

三笠「うわあああ……! どうして? また、一人…? あああ……」

喪失感に泣き喚く三笠にエレンは咄嗟に三笠を抱きしめた。

三笠はまた、一人ぼっちになる恐怖に怯えている。

それは重々分かっているので、エレンは胸が痛んだ。

だけど、どうしたらいいか分からない。

アルミン「ごめん……先に言えば良かったね」

エレン「いや、多分、こうなるのは避けられなかった。だから言わなかったんだ。俺がいなくなって、有民の方までいなくなったら、三笠は………」

顔は同じでも知らない他人と接しているような感覚がまた、きたのだ。

三笠見れば戸惑う以外に何も出来ないだろう。

嗚咽を繰り返す三笠にアルミンは言った。

アルミン「次はもう、僕はこの世界にこない方がいいかもしれないね。三笠がこんな風になるんじゃ、僕は長居出来ないよ」

エレン「そうだな……無理させてすまなかった。三笠には俺から説明しとくから、アルミンは先に風呂入っててくれ。二階の右隣が俺の部屋だから、先に上がっててくれ」

アルミン「うん。分かった」

>>115
訂正
三笠から見れば戸惑う以外に何も出来ないだろう。

から、が抜けてました。

そしてエレンは三笠をなんとか落ち着かせると、二人きりで事の次第を説明した。

エレン「三笠、よく聞いてくれ。向こうのアルミンのおかげで、謎が少し解明できた。どうやら俺は、雨の日に寝ると、こっちの世界とあっちの世界を行き来出来るみたいなんだ」

三笠「雨の日…限定なの?」

エレン「アルミンが言うにはな。ただ、俺の感覚から言えば、向こうとこっちを交互に行き来してるから、俺が向こうに戻っている間に、こっちの世界の「江蓮」が復活する可能性もある」

三笠「………エレンが向こうの世界にいる間は、こっちの江蓮は眠ってるだけじゃないの?」

エレン「ううーんと、俺もややこしくて良くは分かってねえんだけどさ。とにかく、今回、アルミンがこっちに来れたのは、向こうの世界で寝る時に、俺と手を繋いで寝たからだ」

三笠「手を繋いで?」

エレン「ああ。何でそうなるのか理屈は分かってねえけど……とにかくそれで成功したんだ。今夜は雨だから、俺は一度向こうの世界に戻れるし、戻ってる間にもしかしたら、こっちの江蓮が戻ってくるかもしれねえだろ? だから希望を捨てるなよ」

三笠「…………」

三笠は混乱する頭の中で考えた。

どうして、こうなってしまったのかを。必死に考えた。

だけど、何も思い当たらない。

エレン「次、俺がこっちに来る時はアルミンは連れてこない。だから多分、きっと元の有民が帰ってくるから安心しろ。不安にさせて悪かった」

ぎゅっと、三笠を抱きしめる。

すると、三笠の方もエレンを抱きしめた。

三笠「うん……分かった。あのね、エレン」

エレン「ん?」

三笠「その話が本当だとすると、私が、そっちの世界に行くことは出来ないのだろうか」

エレン「え……?」

三笠「知りたいの。エレンがどんな世界で生きてきたのかを。全く知らない事が、悔しいの」

エレン「でも……成功するか分かんねえぞ」

三笠「いいの…一度だけでいい。一緒に手を繋いで寝れば、行けるのならば」

エレンは迷った。

それはきっと、元の世界のミカサを犠牲にする選択だ。

どうしたらいい? どうしたら………

ここで選択肢です。
ここ多分、お話の重要な分岐点になりそうな気がする。
三笠を連れて元の世界に戻るか否か。

どっちにしよう? >>119-121の方の多かった方にします。

連れて行く

おおお?!
よし、では三笠さんは失敗ルートで続きを書いていきます。

一人では決められない。

エレンはとりあえず、アルミンが戻ってきてから考えようと思った。

エレンは三笠と連れて自分の部屋に戻るとアルミンを待った。

そして、アルミンが戻ってきてからさっきの話をしてみたのだった。

アルミン「そうだね……試せることは全て試した方がいいかもしれない」

三笠「では、三人で手を繋いで寝るのね」

アルミン「そうだね。ちょっと狭いけど、やるしかないね」

三人は円陣を組んだ。そして狭い布団に互いに押し込むように川の字になって寝る。

雨の音を聞きながら、三人はほぼ同時に静かに瞼を閉じる。







そして……次に目が覚めると………







エレン「……はっ!」

朝がやってきていた。いつもの見慣れた男子寮の天井。

エレンは飛び上がり、横に眠るアルミンを見た。

アルミンはまだ眠っている。

エレン「アルミン! 起きろ! アルミン!」

アルミン「ん……はっ! エレン!」

アルミンも驚いた表情だった。

アルミン「無事に戻ってきたみたいだね。手は痛むかい?」

エレン「ああ…右手の骨のヒビはそのままだ。三笠は……どうなったんだろう」

アルミン「早速、会いに行こう。会えばすぐ分かると思うよ」

エレンとアルミンはすぐさま着替えて、食堂へ向かった。

すると先に席についてご飯を確保しているミカサの姿が見えた。

エレン「ミカサ!」

いつものミカサを目に入れて、エレンは突撃した。

ミカサ「エレン、いつもより少し遅かったのね」

エレン「すまん、寝坊した。………えっと」

エレンはどうしたものかと思った。確認するには、どうしたらいいのか。

アルミンに視線をやると、アルミンは言った。

アルミン「ごめん、ミカサ。ちょっと質問していい?」

ミカサ「何?」

アルミン「今、僕たちが住んでいる場所を言って」

ミカサ「? ここは訓練兵の宿舎。104期生の訓練所だけど……」

どうやら、三笠はこっちの世界には来れなかったようだ。

エレン「ダメだったか……」

ミカサ「え? 何が?」

きょとんとしているミカサ。無理もない。

アルミン「と、いうことはこの現象は、一方通行のものとみて間違いないみたいだね。エレンが向こうに行くことは出来ても、向こうからこっちに来ることは出来ないのか」

江蓮がこっちに来ていない以上、その可能性の方が高いと内心思っていたアルミンだったが、一応これでそれが確定したので、納得した。

ミカサ「? 二人共、一体何の話をしているの?」

アルミン「ごめんミカサ……ちょっとこの話は、長くなるから今は言えない。夜、空いた時間に必ず話すから、それまで待っててくれないかな」

ミカサ「? うん、アルミンがそう言うなら」

ミカサは不思議に思いながらも一応頷いた。アルミンが言うなら仕方ない。

しかしその時、ミカサはすぐにエレンの右手の甲の怪我に気づいた。

ミカサ「エレン! その手の怪我、何?! (ガタッ)」

椅子を引き、立ち上がるミカサ。

ミカサ「一体、どこで怪我したの?! これじゃ今日の訓練は出来ない……」

エレン「悪い……(どうしよう、なんて言い訳すればいいんだ)」

アルミン「エレンが寝ぼけて、寝返りした時に、壁に右手の甲をぶつけてしまったんだ。丁度、壁が腐ってる部分に当てちゃって、木の破片が刺さったんだよ」

ミカサ「まあ…なんて運の悪い」

アルミンのナイスな嘘にエレンは内心感謝した。

ミカサ「でもこれじゃ何も出来ない。分かった。治るまでは私がエレンの右手になろう(`・ω・´)キリッ」

エレン「?!」

また同じことを言い出したので、エレンはすぐさま右手を引いた。

エレン「よ、よけいな事すんなって! 左手あるから、大丈夫だっつの!!」

三笠の時より激しく抵抗するエレンだった。無理もない。

だって、こっちのミカサは………

ミカサ「ダメ。私が、エレンの右手になる。これはもう、決定事項(`・ω・´)キリッ」

エレン「何で決定事項なんだよ! 何の権利があるんだよ?!」

ミカサ「はい、あーん、エレン(*パンエレ準備)」

エレン「人の話を聞けえええ!」

こんな感じで、だいたい強引なのである。

正直、若干こっちの方が酷いと思ったエレンだった。

エレン「くそっ……あっちのあいつはもう少ししおらしかったのに」

ミカサ「ん?」

その瞬間、ミカサはピクっと耳を動かした。

エレンは自分がまずい事を言ったのに気づいてすぐさま「いやなんでもねえけど」と誤魔化したが……

ミカサ「あっちのあいつって……誰のこと?」

エレン「な、なんでもねえって言ってるだろ?! 気にすんなよ」

ミカサ「無理。一度聞いた事をなかった事にする事は出来ない」

エレン「ああもう……別にいいだろ? 大した話じゃねえんだよ」

ミカサ「言わないと、このままエレンの口にパンを突っ込む」

エレン「(口の前で手をクロス)いい加減にやめろ! つか、周りがニヤニヤして見てんだろ?!」

近い席に座っているコニーとサシャがヒューヒュー言っている。

コニー「よ! ご両人! いつも熱いね~」

サシャ「エレンも、もうちょっと素直になったらいいと思いますよ?」

エレン「いや、だからこれは……! ああもう、時間ねえのに、ミカサ、ふざけんのもいい加減にしろ!!」

ミカサ「(むーっ)………」

ミカサは不機嫌なまま、エレンのパンを自分の方に口に入れた。

エレン「あー! 俺の盗るなよ!」

ミカサ「えへんかわふい(エレンが悪い)」

エレン「くっ……もういい! 今日はスープだけで我慢してやる!」

ズズズ……とまずいスープを喉に押し込む。

エレン(やっぱ、食糧事情は向こうの方が良かったなあ…)

と、ついつい涙目になるエレンだった。

向こうでついた傷がこっちでもついたままってことは
向こうで食ったメシはこっちに戻っても腹の中にあるってことだ
向こうで腹一杯メシ食って栄養つけとけ

そして夜になり、ミカサは男子寮を訪れた。

夕食を食べ終えて寝るまでの少しの時間を使い、アルミンはエレンと一緒にミカサに事情を説明したのである。

三人は周りに誰もいない廊下の片隅でその話をしていた。

アルミンの説明に初めはきょとんとしていたミカサだったが……

ミカサ「つまり、エレンが雨の日に寝ると、異世界に行ってしまうの?」

エレン「感覚的はそんな感じだな」

ミカサ「……夢、ではないのね?」

エレン「夢、にしてはリアル過ぎるんだよ。俺一人なら、夢かもしれんと思うけど、手を繋いで一緒に寝たら、アルミンもその世界に行けたんだ」

アルミン「うん。それは間違いないんだよ」

決定的だったのは、手の怪我が原因だが、あまりよけいな心配をさせたくなかったエレンは嘘を訂正しなかった。

それを話したら、ミカサがますます心配してしまうと思ったからだ。

ミカサ「……では、朝言った『あっちのあいつ』とは、私にそっくりな私のような存在、で間違いないのね」

エレン「ああ……」

ミカサ「だったらどうして朝の時にそう言わなかったの?」

アルミン「ごめん…周りに人が一杯いたし、話がややこしくなると思って」

ミカサ「ふー…で、その『あっちのあいつ』というのは、私よりしおらしいわけなのね」

エレン「うっ…(なんか、根に持ってやがるな)」

ミカサ「ふーん……それで、エレンは向こうの私に似た誰かと、イチャイチャしてきたわけなのね」

エレン「ばっ……別にイチャイチャしてねえし!!」

ミカサ「私はエレンには聞いてない。………アルミン、どうだったの?」

アルミンは「何で僕にふるんだよ!!」と内心思ったが、ミカサの視線が怖くて逃げられなかった。

>>126
まあだいたいそんな感じです。
エレンに肉食わせてあげたかったんです…!(笑)




脳内リプレイで確認してみよう。




エレン『あー三笠の手料理、初めて食べたけどさすがだなー』

三笠『…………いつもの江蓮だと、『ちょっと塩辛い』とか言って、いつも味にダメだしするけど』

エレン『はあ?! Σ(゚д゚lll) ちょ、こんな贅沢なもん食って文句言うなんて信じられん!!』

三笠『クス……エレンは、江蓮より、優しい。あんまり優しいと、私も調子に乗ってしまう』

エレン『ん? 別に三笠は調子に乗ってねえだろ?』

三笠『そんな事ない。油断すると、ダメ……(クスクス)』



ぶっちゃけると、グレーゾーンな気もするが……

アルミンは男なので男の味方をした。

アルミン「え? 別に普通だったけど。ただ、一緒には暮らしているみたいだったね」

エレン(よ、よけいなこと言うなよアルミン!)

アルミン(だって、事実なんだろ?! そこは誤魔化さない方がいいよ!)

視線だけで会話するエレンとアルミンだったが、その様子にミカサはますます「ふーん」とした表情になった。

ミカサ「そう。それはまあ…仕方ない。向こうの私が、私と似ているのであれば、それは予想の範囲。同じような境遇でエレンの家に養女になっているのでしょうね」

エレン「あ、ああ……まあ、そんな感じだったんだよ」

ミカサ「でもだったら何故、さっきからエレンは私と目を合わそうとしないの?」

エレン(ギクッ)

ミカサ「何か、やましいことがあるに違いない。エレン、言って」

エレン「な、なんでそんな話になるんだよ?! つか、俺とお前は家族で、別に恋人同士じゃねえんだぞ? なんでそこまで詮索されなきゃいけない」

エレンは正論の矢を放った。まさにその通りである。

しかし今のミカサにそれは通じなかった。

ミカサ「ではその、もう一人の私の方が、私より可愛かった……とか?」

エレン「え……」

いや、まあ、確かに可愛いのは可愛いけれど。

どっちが可愛いかと言われると、同じ顔にそれをいうのは難し過ぎる。

ミカサ「どうなの? (ズイッ)」

エレン「同じ顔なんだから、どっちが可愛いかとか選べねえよ」

ミカサ「そんな事はない。それを言ったら、双子の人も同じ理屈になる」

エレン「あ…そっか。いや、待て! そもそも、そんな議論をする方がおかしいだろうが!」

ミカサ「そう? まあ……そうかもしれない。でも、気になる」

エレン「気にするなって!」

ミカサ「気になる(更に接近)」

もう、キスが出来そうな距離まで詰め寄られてエレンは降参した。

エレン「分かった、お前の方が可愛い! 向こうの三笠より、可愛いから!」

エレンはやけくそ気味にそう叫んだ。

するとようやくミカサは機嫌が良くなったらしい。

ミカサ「分かった。だったら、いい。向こうの私には、負けたくない」

アルミンは複雑な心境でそのやりとりを見つめていた。

アルミン(僕としては……正直、エレンが揺れ動いているようにも見えたけどね)

アルミンの洞察力を舐めたらいけない。だいたい合ってることの方が多いのだから。

アルミン(まあ、気持ちは分からないでもない。僕ももし、エレンの立場で似たような状況だったら……うん、向こうのクリスタにも会ってみたいって思うな)

男なので。そこは男なので許してもらいたい部分である。言わないけど。

エレンはほっとした表情でミカサを見ている。

エレン(こりゃ、一回だけ三笠で抜いたなんて死んでも言えねえ…)

やましさの原因はそこにあった。本当、すんませんでした。としか言えない。

エレン(だってしょうがねえだろ…俺、男の子だもん!!)

心の中で変に開き直るエレンだった。

ミカサ「で、そっちの私はこっちの世界に来れなくて、こっちから行くことしか出来ないのね」

アルミン「ああ、それは実験済みだ。向こうのミカサはこっちに来れなかったよ」

ミカサ「………もし、来ていたらその間、私はもう一人の私に、自分の体を奪われていた事になってたのね…(エレンとの時間を盗られるなんて、恐ろしい)」

エレン「まあ……そうなるな。悪い」

ミカサ「ううん、そこは謝らなくていい。アルミンの判断だったのだし、やるべき事だったのだと思う。でも、つまりこれって、エレンが向こうのエレンの体を乗っ取ってるって事になるのかしら」

ミカサの指摘にアルミンも頷いた。

アルミン「あ……確かに感覚的にはそうなのかもしれない。入れ替わりじゃなくて、寝ている間だけ、もう一人のエレンの体を乗っ取って動かしているのだとしたら……」

エレン「つまり、向こうの江蓮の体を俺が勝手に使ってるってことか?」

アルミン「その可能性はあるかも。ただ、急にこんな事態になったわけだから、まだ分からない事の方が多い。寂しいだろうけど、次の雨の日はエレン一人で向こうの世界に行ったほうがいいかもしれないね」

ミカサ「私も一緒に行ってはダメだろうか」

エレン「お前は女子寮にいないとダメだろ。男子寮で一緒に寝てるとこバレたら、懲罰問題になるだろが」

ミカサ「うう…それもそうね」

アルミン「原因が分かるまでは何度か繰り返すしかないよ。エレン、頑張って。もし、起きれなくなったら僕達が死ぬ気で起こすから」

エレン「ああ…頼りにしてるぜ」

エレンは二人を安心したように見つめ返した。

>>131
訂正

エレン「ああ、それは実験済みだ。向こうのミカサはこっちに来れなかったよ」

セリフ間違えた。アルミンではなく、エレンのセリフです。
口調がちょっと違うからすぐ分かっただろうけど、一応訂正。












しかしそんな風に気合を入れた時に限って、なかなか雨が降らなかった。

もう一週間も雨が降らず、大地が乾き始めている。

エレンは時折、窓の外を見ては雲の様子を何度も見る癖がついてしまった。

エレン(あーあ。向こうの飯、また食いてえなあ。三笠、どうしてっかな)

三笠を連れて来れなかった事を少しだけ悔やみつつ、でも連れて来なくて正解だったのかなとも思った。

三笠はいくら運動神経がいいとは言え、こっちのミカサに比べれば天と地の差がある。

精神的にもきつくて厳しい訓練について来れるかどうか、心配だ。

そんな感じで、エレンが遠くを見ているのを見て、ミカサは急に不安になった。

ミカサ「エレン……また、空を見てる」

エレン「え?」

ミカサ「そんなに気になるの? もう一つの世界が」

エレン「いや…そういうわけじゃねえけど……」

向こうの世界で手の甲を怪我してしまったエレンは治るまでは立体機動の訓練だけはお休みして、それ以外の訓練は通常通りこなした。

一週間もすると、だんだん手の感覚は戻ってきた。骨がくっつけば治りも早い。

適度にグーパーを繰り返し、エレンは「もうそろそろ大丈夫だろう」と判断しているのだが。

エレン「そろそろ、立体機動の訓練に戻りてえなって考えてたんだよ」

エレンは微妙に嘘をついた。向こうの世界が気になっているのは本当だが、それをあまりミカサに悟られたくなかった。

しかしこればかりは天に任せるしかない。

ミカサ「エレン、怪我を甘く見てはいけない。今のエレンはきっと、まだ治りかけ。治りかけが一番危ない。おじさんも昔、言ってた」

エレン「そーだけどさ。一週間も立体機動してねえと、感覚が鈍って怖いんだよ」

ミカサ「一度覚えたことはそう簡単には忘れない。せめてあと3日は休んだほうがいい」

エレン「んーやっぱそうなんかな。親父も昔、人間の回復のサイクルは3日ずつって言ってたもんな」

つまり、3の倍数で人間の周期は巡っているという説である。

根拠はないが、まずは3日、そして3週間、3ヶ月など、節目で人間の体は変わると言われている。

どこからそういう説が出てきたのかは分からないが、確かに風邪をひいたらだいたい3日で治るので当たっているのかもしれない。

ミカサ「そうそう。だからあと3日は用心しよう、エレン」

エレン「まあしょうがねえか……」

エレンは元の世界に戻ってからも、空いた時間にボールの左手のハンドリングを続けていた。

右手が治ったら、またライナー達と遊ぶ気マンマンだったのである。

そんなわけで、ボールを回転させて指の上にのせるのは簡単に出来るようになった。

ミカサ「エレン……それ、すっかりお気に入りね」

エレン「まあな。ミカサもやってみるか?」

ミカサ「いいの?」

エレン「ああ。勿論だ。こうやって、手の上で回転させて、すっと指を中心に持ってくるんだ」

廊下の角で説明する。エレンの説明通りやってみるミカサだったが、さすがに一発では出来なかった。

ミカサ「意外と難しい…」

エレン「慣れねえとすぐには出来ねえかもな。回転の速度が速いほうが安定するぞ」

ミカサ「こう? (クルクルクル…)あ、出来た」

コツを教えたら一発だった。さすがミカサである。

エレン「そうそう! やっぱうまいな、ミカサは」

ミカサ「ふふ…これ、楽しい」

エレン「だろ? ボールがもう一個あればいいんだけどな。そしたら皆で回して遊べるけど」

ミカサ「そもそも何故このボールが倉庫にあったのだろう?」

エレン「さあ? 卒業生の忘れ物じゃねえの?」

ミカサ「ふむ……まあ、そうかもしれない」

卒業時に私物を忘れていく訓練兵も結構多い。その内の一つなのだろう。

ミカサ「……ちょっと、遊んでもいい?」

エレン「ああ、いいぜ」

ミカサは何か思いついたのか、頭に乗せたり腕の上を転がしたり、綺麗にボールを使って踊り始めた。

所謂、新体操のような動きをしたのだ。

エレン「おっ……なんか今の、動きがなめらかで綺麗だったなあ」

ミカサ「そ、そう?」

エレン「ああ……ボールっていろんな遊び方が出来るんだな。今の、すごく良かったぜ」

エレンに褒められて有頂天になるミカサだった。

コニー「あー! ミカサがボールで遊んでる! 俺にも遊ばせろよ!」

その時、コニーに見つかってしまい、ミカサはちょっと困った。

ミカサ「エレン…いいの?」

エレン「ああ、いいよ。コニー! パンクだけはさせるなよ! これ、一個しかねえからな!」

コニー「分かった! 気をつける!」

ミカサからボールを受け取ると、早速サシャを連れてまたバスケットコートに遊びに行ったコニーだった。

すっかりバスケが定着してしまったようである。

エレン「うーん、倉庫の中にもっとボールがあればいいんだけどな。もう一回、探してみようかな」

ミカサ「それだったら、私も手伝う」

エレン「お、助かるわ。んじゃ、二人で倉庫の中漁ってみようぜ」

そして二人はキース教官の元へ行き、鍵を借りてもう一度倉庫の中を漁ってみた。

何が出るかな~何が出るかな~♪
卒業生の忘れ物、何が出てくるか>>137>>138の方、お答え下さい。
*勿論、ボール以外でもOKです。

野球道具一式

バスケボール

了解しました!
というか、だんだん進撃側も部活始めちゃってる感じですね(笑)

エレン「お? これはもしや……」

向こうの世界の雀達がやっていた野球道具によく似た道具が一式出てきた。

エレン「やっぱりそうだ! ちょっと形が違うけど、似てる! これ、野球の道具だな」

ミカサ「野球? 野球って何?」

エレン「この小さくて硬いボールを投げて、この木の棒で打って、取って投げて点数を競い合うゲームだな」

ミカサ「バスケより複雑そうね」

エレン「ああ! でもなんとなく、ゲームのやり方は向こうの世界で見てきたから、だいたい分かるぞ。向こうの雀と子煮がすごくうまくて、三笠も早い球を投げて格好良かったぜ」

ミカサ「そう……(すごく嬉しそうなエレン)」

まさに男の子顔をしているエレンにちょっとだけ、嫉妬するミカサだった。

(*嫉妬の対象は勿論、野球道具一式です)

エレン「お、バスケボールがもう一個あった! ラッキー! これでまたハンドリング出来る!」

エレンは左手でバスケボールを回しながら、とりあえずめぼしいものはこれだけかな、と思った。

エレン「漁ればまだまだ出てくるかもしれんが、今日はとりあえずこれだけでいいや。今日は皆に野球を教えてやるか!」

そういうわけで、エレンは再び皆を集めて、空き地をちょっとだけ改造し、草野球をやってみることにした。

エレン「みんな、集まったか?」

コニー「エレン、今度はなにして遊ぶんだ?」

エレン「野球ってゲームをやる! えっと、誰かこの真ん中のここに立ってボール投げる役をやってくれ」

コニー「んじゃ、俺やってやるよ」

エレン「助かる。んで、それをキャッチする役がいるんだが……ライナーが一番いいかな。コニーのボールを取ってくれ」

ライナー「ほう。分かった」

エレン「で、コニーが投げたボールを木の棒で打つ役を……ミカサ、頼むわ」

ミカサ「了解」

エレン「だいたいの目安を説明する。ストライクゾーンっていうのがあって、肘から膝までの高さと、横はこの二つの四角っぽい線の間だな。ライナーの正面部分と言っていい。その四角の間に投げて、3回投げられたら、コニーの勝ち。その間に、ミカサが打ったらミカサの勝ち。ストライクゾーンに入らない球は3回までしか投げちゃダメだ。それ以上は「フォアボール」っていって、それも投げる側が負けになる」

コニー「ほうほう。要は3回、棒に当てないように綺麗に真ん中に投げ込めばいいんだな」

エレン「そうそう。だいたいそんな感じ」

エレンの説明は、所謂「ワンナウト勝負」に近い説明だったが、それが基本である為、間違ってはいない。

エレン「俺、審判やるからちょっとやってみようぜ」

と、いうわけで、エレンの審判の元、ワンナウト勝負が始まったのだった。

ジャン「なんだあ? またエレン達が変な遊びやってんぞ?」

もうバスケは飽きたのか? なんて思いながらジャンはその様子に首を突っ込んだ。ミカサも参加していたからである。

マルコ「みたいだね。また参加しようかな」

マルコも乗り気であった。前回が結構、面白かったからである。

ジャン「おいエレン! 俺達も参加していいか?」

エレン「おーもちろんいいぜ! 今度はジャンが打ってみろよ」

ミカサと打席を代わり、ジャンは木の棒を持った。

コニー「ジャンが相手か……負けねえぞ! 打てるもんなら、打ってみろ!」

ジャン「この棒を振り回して、当てればいいんだよな?」

エレン「そうだ。3回空振りしたら、ジャンの負けだからな」

ジャン「3回も振っていいなら当てることぐらい出来るだろ」

第一球……投げた!

ズパン!

エレン「ストラーク!」

ジャン「はあ? なんだそれ」

エレン「ストライクゾーンに入ったら、こう言うんだよ。3回ストライクに入ったら、ジャンの負けだぞ」

ジャン「ほう、上等じゃねえか」

ジャンは一度、棒をくるりと回して構え直した。

ジャン「こい! 今度は打ってやる!」

しかし第二球目も…

ブン…!

今度は空振りだった。

ジャン「くそー! 当たらねえ! かすりもしねえ?!」

コニー「ククク……俺の魔球は打てねえだろ」

さっき、散々、ミカサに打たれたのでだんだんコツを掴んできたコニーだった。

ジャン「くそおおお?! 絶対当ててやる!」

次で最後になるか…?

第三球目……

ヒュッ…

ズパン!

エレン「ストライーク! バッターアウト!」

コニー「やった! 俺の勝ち! (ブイ!)」

ジャン「くそおおおお!! なんで当たんねえんだ?! もう一回勝負しろコニー!!」

すっかり頭に血がのぼって冷静さを失うジャンだった。

ミカサ「ジャン、棒の回し方が雑すぎる。もっと、腰をこう…」

ミカサがコツを教える仕草がちょっとだけエロくて、ジャンは思わず赤面した。

ジャン「こ、こうか? (くいっ)」

ミカサ「そうそう。下半身を軸にする感じ。上半身はあまり力を入れなくていい」

ミカサにコツを教えて貰ったジャンは、次こそは打つ! と構えた。

ジャン「こい!」

コニー「んじゃ、いくぜ!」

ヒュッ…

コッ…!

ジャン「かすった!」

エレン「ファール!」

ジャン「当たったじゃねえか!」

エレン「今のは、この線の外に出たからダメだ。線の内側の範囲で打たないと、外に出たボールは全部ファールっていうんだよ」

ジャン「ちっ……そうかよ! まあ、今のは中途半端だし、いいか」

ジャンはもう一回、構えた。

ヒュ~ん…

パン!

しかし、今度も空振りした。

コニーが急に遅い球を投げてタイミングがずれたのである。

ジャン「ちょ…今の球、なんだよ! 遅すぎるだろ?!」

コニー「わりわり! ちょっとすっぽ抜けたわ」

ジャン「真剣に投げろよ!」

コニー「おーけー! 次は、すごいの投げてやる!」

コニーは最後の球を力いっぱい投げた!

ヒュゴオオ!

ズパン!!

エレン「ストライーク! バッターアウト!」

ジャン「くそおおお! またか?!」

エレン「おい、ジャン。次はマルコに代わってやれよ。お前ばっかやってたら待ってるマルコが可哀想だろ」

ジャン「お、おう…マルコ! 敵を取ってくれ!」

マルコ「出来るかなあ?」

しかしマルコはどうもバッターは不向きなようで、あっさり三振してしまった。

マルコ「これ難しいね~」

ジャン「だろ?! なんで当たんねえんだ?!」

コニー「でもさっきミカサはバンバン打ってたよな」

ジャン「まじでか。やっぱミカサはすげえんだな」

ミカサ「? そうだろうか。そんなに難しくはなかったけれど」

エレン「うーん、ミカサはコツを掴むのが早いからな。他になんかコツねえの?」

ミカサ「あえていうなら……ボールの落下地点をなんとなく予測することかしら」

ミカサは打席に立って、説明を始めた。

ミカサ「この辺にボールがくる、と感じるまでに一瞬、間がある。ボールがコニーの手から離れた瞬間にそれを予測して、棒を合わせる感じ」

ジャン「へえ……コニーが投げた直後をよく見るのか。見るポイントが逆だったのか」

ミカサ「ボールが来てから反応しても遅い……ので、くる前に軌道を予測する」

ジャン「なるほどな……まあ出来るか分からんが、もう一回やってみよう」

すると、今度は驚くようにバンバンボールが当たるようになった。

ジャン「本当だ! 今度は当てやすくなったぞ! すごいなミカサ!」

コニー「ああもう、俺、投げるの飽きたんだけど!」

さっきから同じことを繰り返してバテたコニーだった。

コニー「次、誰か代わってくれよ! 俺も打ちてえんだけど!」

ジャン「分かった分かった。俺が代わってやるよ」

ライナー「だったらこっちも交代頼む。俺も打ってみたくなった」

マルコ「なら俺が取るよ。代わる」

そんな感じで交互に交代しながら、バッティングの練習に励む一同だった。

すると、あっと言う間にボールがなくなり、散らばったボールを回収するはめになる。

エレン「もうボールないから、打った球回収すんぞ!」

そしてなんだかんだであっと言う間に昼の休憩が終わってしまった。

コニー「なんか、バスケより俺、こっちのほうが好きかもしれん」

ジャン「ああ! なんかこう、スカッとしたよな!」

コニーとジャンはブンブン棒を振り回す動作をしている。すっかり気に入ったようだ。

ライナー「俺はバスケのほうが好きだな。まあ野球も悪くはないが」

マルコ「俺もどっちかと言えばバスケかな」

エレン「お? 実は俺も」

ライナー「エレンもか。手の怪我が治ったら、またやろうな」

エレン「ああ! 皆でまたやろうぜ!」

そんな感じですっかり皆、球技に夢中になっていた。

ミカサだけ、おいてけぼりな感じであったが、皆が楽しそうにしているので自然と笑みが溢れる。

エレン「ミカサはどっちが好きだった?」

ミカサ「うーん……よく分からない」

ミカサは何でも出来る故に、その熱がない。

器用貧乏な部分があるので返事に困った。

エレン「そっかあ…よし、今度向こうの世界に行ったら、ミカサも好きになれる遊びを探してくる」

ミカサ「え……そんなの、いいのに」

エレン「だってよ、ミカサはそんだけ運動神経いいのに、楽しめないって損だろ? 多分、探せばあると思うぜ? ミカサが気に入る遊びもきっと」

ミカサ「…………」

そんな事より、本心を言えば向こうの世界には行って欲しくなかった。

もう一人の自分に夢中になるエレンを、送り出したくなかったのだが。

ミカサは本心を言えなかった。

目を輝かせているエレンが自分の為に動こうとしているなら尚更。

ミカサ「うん…分かった。でも無理はしないで」

そんな風に苦笑いするしかなかったのだった。






そして、ミカサの願いも虚しく、その時は訪れた。






エレン「ん…………」

エレンが目を覚ますとそこは男子寮の天井ではなかった。

エレン「お…一週間ぶりにこっちにきたか」

そして、横を見てみると…

エレン「あれ?」

手を繋いだまま、寝ている三笠と有民がいた。

エレン「……………」

前回から時が進んでいないのか?

しかし、外を見ると朝になっている。

エレン「おい、三笠、有民、起きろ」

とりあえず二人を起こしてみる。

三笠「ん……江蓮?」

寝ぼけた声で起きる三笠にエレンは「エレンだけどエレンじゃねえよ」と言った。

すると意味を理解した三笠は残念そうに言った。

三笠「どうやら……失敗したみたいね」

エレン「ああ……どうも俺がこっちの世界に来れるだけの一方通行らしい。ごめんな。向こうに連れて行けなくて」

三笠「ううん。出来なかったのなら仕方ない」

有民「ううーん……あれ? 僕なんで江蓮の部屋で寝てるの?」

遅れて目覚めた有民にエレンも声をかける。

エレン「有民、大丈夫か? 実はな」

そしてエレンは少しの間だけ、向こうのアルミンがこっちに来たことを伝えた。

その間の記憶は、どうやら有民には全くないらしい。

有民「ごめん……全く覚えてない。そうか…やっぱりそういう事だったのか」

三笠「……どういう事?」

有民「僕も、その可能性は考えてたんだ。つまり、江蓮はエレンに体を乗っ取られている。イタコのような状態になってるんじゃないかって」

三笠「魂を憑依させてるってこと?」

有民「そんな感じかな。別の世界のエレンの魂が、江蓮の体を動かしている……まあ、あまりに突拍子がないし、信じにくい事ではあったけど、僕自身がそれに似た行動を起こしたのなら納得できる」

こっちの有民もアルミンと同じく頭の回転は早いようだ。

有民「だとすれば……もしかしたら、江蓮自身が、エレンを呼んだのかな」

エレン「俺が俺を呼んだ? 何の為に」

有民「そうなんだよね。目的が分からない。何か手がかりが掴めればいいけど……」

そう言って、有民はため息をついた。

有民「江蓮には悪いけど、ちょっと今からこの部屋を家探ししてみようか。何か手がかりを残してるかもしれない」

エレン「ああ……日記とかあれば、何か分かるかもしれないもんな」

そういうわけで、三人で江蓮の部屋の中をいろいろ探してみることにした。

江蓮の部屋の中にあったのは、漫画雑誌、旅行雑誌、英語の教材、教科書等など。

とくに英語関係の本が沢山有り、本当に海外に憧れを持っているのが良く分かる。

有民「BON JOVIとかビートルズ関連の洋楽も多いね……江蓮、趣味が結構渋いんだよね。昔の洋楽好きだからなあ」

エレン「そうなのか。音楽が好きだったのか?」

有民「うん、歌うのより演奏が好きだった。ギターも持ってたはず、ほら押し入れにちゃんと片付けてる。昔は三笠が歌って、江蓮が演奏したりしてたよね。最近はしてなかったけど」

下手の横好きで続けていたようだ。丁寧に保管されている。

有民「うーん、他にめぼしいものがないね。ノートパソコンもあるけど…さすがにパスワードまでは知らないから開けられないよなあ」

エレン「パスワード…なんか、キーワードがあれば開けられるのか? その箱」

有民「パソコンは普通、そうだね。なんか適当に入れてみてもいいけど」

そう言いながら有民は江蓮の部屋のちゃぶ台の上にあったノートパソコンを起動させた。

有民「ああ…やっぱりパスワードしてるな。うーん、何かあるかな。誕生日とか入れてみるか」

しかしダメだった。その程度では開かないようだ。

エレン「うーん……もしかしてだけど、さ」

エレンはその時、思いついた言葉を言った。

エレン「自分の誕生日じゃなくて、三笠の方の誕生日なんじゃないか?」

有民「え? 三笠の? なんで?」

エレン「いや、なんとなく、だけど」

有民「うん、じゃあ試しに入れてみるよ」

すると案の定、パソコンが開いた。

有民「え……嘘……なんで?」

普通は、自分に関する何かをパスワードにすることが多いのに。

それが分かった瞬間、エレンはかすかにこの現象の原因に近づいた気がした。

エレン(まさか……だけど……)

思い当たる節は自分にもある。

だからこそ、今、三笠の誕生日が閃いたのだが。

エレン(もし、本当にそうだとしたら、解決させるのはちょっと厄介だぞこれ…)

エレンが嫌な予感がしてならなかった。

>>145
エレンは嫌な予感がしてならなかった。

「が」と「は」を間違えました。

だからエレンはとりあえず、三笠を部屋から追い出すことにした。

エレン「悪い、三笠。ちょっとの間、席外してくれねえか」

三笠「え? 何故……」

エレン「今から江蓮の秘密を探ることになるかもしれん。三笠に知られていい秘密じゃないかもしれないから、一応、席を外してて欲しいんだ」

三笠「そんな……江蓮が私に隠し事をしているの?」

エレン「その可能性はある。っていうか、もしかしたらエロいのが沢山出てくる可能性もある。そうなったら、江蓮が憤死するから、ここから先は男同士で探りたいんだ」

三笠「ああ、なるほど……それなら仕方ない」

そういう類だったら確かに恥ずかしいと思い、三笠は部屋を出て行ってくれた。

そして有民はパソコンの中身をカタカタ…と漁ってみた。

有民「エロ画像ねえ…まあ有りうるかな。でも、もしそうならこの僕が探せない筈はない。お、怪しいの発見♪」

有民はちょっとワクワクしながらデータを検索している。

するとそこから出てきたのは………

有民「…………………………………」

確かに予想通りエロ画像が出てきた。しかし、有民は言葉を失った。

エロはエロでも、三笠のエロ画像ばかりが出てきたのだ。

有民「えっと……………」

しかも中にはどうみても、アイコラ(画像を編集してエロい格好をさせたりする)の三笠もいて、ちょっとやばい画像も沢山出てきたのだ。

有民「……………………いや、僕もなんとなく、そんな予感はしてたけど」

これは酷い。

と、有民も思ってしまった。

有民「うん、二人の関係はちょっと怪しい雰囲気を感じることもあったし、正直、そういう可能性を疑った事がないといえば僕も嘘になるよ。でも、これは……」

あまりにも酷い。

と、いう言葉をかろうじで飲み込んだ有民だった。

エレン「………………………………」

自分の分身だから、正直言ってこの展開は予想できた。

故に、結論も導き出せる。

エレン「他に、何かないか?」

有民「待って……あ、もっと下のフォルダにもう一個ある」

有民はそのデータを開いてみた。すると……

そちらのデータは先ほどのデータに比べたら大分健全だった。

幼い頃の江蓮と三笠が写っている写真が沢山出てきたのだ。

大切に保管していたのだろう。

しかし何故、こっちをもっと奥深く隠していたのか……。

有民には理解出来なかった。

有民「普通、逆だよね。隠したい方を奥に隠すのに、なんで健全な写真が奥にあったんだろう?」

エレン「いや、江蓮にとっては、こっちの方が健全じゃねえんだよ」

有民「え? どういう事?」

エレン「つまり、そういう事だ。多分、相当前から、江蓮は三笠を好きだった。その気持ちをここに隠していたんだろ」

その気持ちは非常に良くわかる。事実、自分も同じような気持ちで悩んでいるからだ。

でもだからと言って、そのせいで現実逃避をしていい理由にはならない。

エレン「江蓮は逃げたんだ。現実から、目を背けた。そして助けを求めたんだ。別の世界の、自分に」

有民「え……まさか、ってことは……江蓮は自分のカラに引きこもって、君に江蓮という人間を丸投げしちゃったってこと?」

エレン「俺にはそうとしか考えられない。くそっ…そりゃ、気持ちは分かるけどよ! 痛いほど分かるけど! 一体、何があったって言うんだよ!!」

エレンは江蓮に対して憤慨した。

エレン「こっちの世界の俺はそんなに不甲斐ない奴なのか?! 江蓮がいなくなって一番悲しんでるのは、三笠じゃねえか! お前自身が、一番大事な奴を守らなくてどうすんだよ!!」

有民「エレン、落ち着いて! まだそうとは決まってないよ! あくまで憶測だから!」

歯をギリギリさせて怒るエレンに有民は困った。

有民「多分、江蓮の身に何かあったんだよ。引き篭らないといけないような、何かがあったんだ。他にも何か手がかりがないか、探してみるよ」

すると出てきたのは、電子ブックの履歴だ。

近親相姦物がほどんどだったので、有民は思わず「うわあ」と呟いた。

有民「うん…江蓮…君の裏側を勝手に知ってごめん…」

もう謝るしかないと持った有民だった。

有民「どこかに日記とか残してないかな……やっぱ無理かな」

ツイッターも、始めてすぐにやめているようだ。

ミクシィ等のソーシャルネットワークも入っていないようだし、ブログも残している形跡もない。

ここまでか……そう、有民が思ったその時、

有民「あれ? これは……」

テキストデータではなく、まさかのエクセルデータだった。

そっちの方に、江蓮はどうやら日記のようなものを残していたのである。

有民「あった! まさかのエクセルデータだけど、こっちに何か書き残してるよ」

普通はテキストデータといえば、メモ帳かワードである。

エクセルもなくはないが、こっちは主に表処理計算のソフトなので、こちらで作ってるということは、なかなかの渋い趣味をしていると言える。

有民は恐る恐るそのデータを開いてみた。

それには、読むのに辛い毎日が書かれていたのだった。

そのデータのタイトルは………


「三笠が可愛すぎて生きるのが辛い」


と、あった。




有民「……(タイトルからしてアレだけど、ツッコミを入れるのは後にしよう)」

有民は気を取り直して読み進めた。





4月8日

今日は中学校の入学式だった。

三笠は新しい制服に身を包み、今日も可愛かった。死にたい。



有民(いきなりブラックな日記だなあ……というか、可愛いのに死にたいって何なんだろう?)

その感覚が分からず、有民は首を傾げた。

エレン「おい、なんて書いてあるか読んでくれないか」

有民「ああ…ごめんね。朗読しながら進めるね」



4月9日

今日は実力テストだった。

相変わらず英語以外は平均並みしか分からない。

決して馬鹿ではないけれど、医者の息子なのにこの成績はまずいと思う。

有民がちょっと羨ましい。さすが両親共に弁護士。頭の出来が違う。

三笠も頭がいい。三人の中で俺が一番頭が悪い。

でも、どうしても興味の薄い科目は苦手なんだ。

何か、興味の持てるきっかけが欲しいなあ。



有民「この日は別に普通の日記だね。というか、江蓮こんなこと思ってたんだ」

エレン「気持ちは分からんでもない……」

だいたい似たような関係だと思ったエレンだった。



4月10日

体力測定があった。女子のブルマーが眩しい。

三笠の足、のびたな。今は背丈同じくらいだけど、

このままだと抜かされそうで怖い。でも足は綺麗なので舐めたい。

ジレンマだ。



有民「なんだろう……結構、淡々としてるけど、そのせいでよけいにエロく感じるよ」

エレン「足はいいよな。足は」

何故か江蓮に共感するエレンだった。

4月11日

今日も三笠は部活動勧誘から逃げている。

部の先輩たちも懲りないもんだ。三笠はいつも俺についてくる。

俺と同じところに入りたいらしい。

でも俺も特に入りたいとこないんだよな…。

というか、三笠自身がやりたい事なさすぎてちょっと心配だ。

あいつ、歌上手いから、合唱部とか入ればいいのに。

……俺がギター弾いてるとたまに歌いに来るけど、それで満足してるみたいだ。





有民「あ、家ではギターひいてたんだね。学校ではひかなくなってから心配してたんだ」

エレン「ギターって、さっき言ってたやつか」

有民「そうそう。三笠は本当に歌うまいよ。でも二人でセッションしてたら、皆でからかい始めてね。それで江蓮、学校じゃギターを弾かなくなったんだ」

エレン「へー」




4月12日

三笠が早速上級生から告白されていた。2秒で断ったらしい。

そんなひでえ即答すんなよ、と言ったら、

「私は江蓮を優先したい」と言い出した。やめろ。死にたくなる。





有民「また、出てきたね。あまりいい心理状態じゃなさそうだ」

エレン「………気持ちはよく分かるけどな」

江蓮は苦しんでいるようである。

4月13日

明日は日曜日なので少しだけ夜更かししようと思う。

有民が教えてくれたサイトを巡ってたら、エロサイトもついでに見つけてしまった。

誘惑に勝てなかった。父さん、母さん、ごめんなさい。

三笠に似ているアイドルや女優を見つけると、勝手に右手が動いてしまった。

生きててごめんなさい。




有民「そうか…アイコラ画像は僕のせいだったのか。江蓮ごめん…! (合掌)」

エレン「なあ、そういうエロい絵って探せるのか? お金はいらないのか?」

有民「その辺の詳しいことは後で説明するよ」



4月14日

今日は母さんも父さんも家にいない。

ちょっと遠出すると言って、俺と三笠を残して出かけてしまった。

正直言って、こういう時が一番、生きてて辛い。

三笠と二人きりで一晩過ごすのは、とても怖い。

三笠は毎日キレイになる。日を重ねる程に、美人になっていく。

手がつけられないほどに。多分、将来は女優だってやれる。

隣のクラスの雀は既にメロメロだ。

なんか学校じゃいつも三笠に貢いでるのを見かけるし。

……いつまで俺は、あいつの家族でいないといけないんだろう。




エレン「………だんだん暗くなってきたな」

有民「だね。こんなに江蓮、悩んでたんだ」

ここまで酷い状態とは知らなかった有民は罪悪感を覚えていた。

すいません。気がついたら朝になってた…もう寝るわ。
しばらく江蓮のブラック日記編が続きます。暗くてすまぬ。
ではまたノシ

4月15日

今日は月曜日。朝礼があった。

打栗鼠校長先生の話は、物凄く簡潔で、スピーチの長さが5分もなかった。

珍しい。小学校じゃ、15分を超える事がほとんどだったのに。

(しかも面白くないし、無駄な話が多い)

周りの奴らは別の意味で感動していた。俺も同意する。

この校長先生は、案外悪くない先生かもしれん。



4月16日

クラスの奴らとも徐々に馴染んできた。

俺は1組で、三笠、有民と一緒のクラス。

小学校の頃からの知り合いは、割とバラけたんだっけ。

2組に雀、丸虎、子煮、沙謝、由美瑠、栗素多

3組に雷名、部瑠都瑠都、亜似

4組に美奈、阪奈、富蘭津、都増、撒母耳(サムエル)、斗夢

4組が一番多いかな。

ま、俺は三笠と有民が一緒だったから良かったけど。

まだ知らない奴も多いから、ちょっとずつ慣れたい。



4月17日

母さんが体調崩した。風邪ひいたらしい。

今日は三笠が代わりに飯作った。超うめえ。

けど、あんまりうまいうまい言ったら、あいつが笑うから、

わざと「しょっぱい」って言った。

あいつの笑うとこみると、可愛すぎて襲いたくなる。

最近、特に下半身がやばい。

だから嘘ついた。ごめん。



エレン「………ああ、なるほどな」

ちょっと合点がいったエレンだった。

4月18日

母さんの体調が大分良くなった。良かった。

やっぱり母さんにはいつも元気で居て欲しい。

でも、普段は素直にそう言えない。本当は、愛してる。

……俺ってちょっとマザコンかもしれん。

いや、父さんも勿論、好きだけど。

三笠と母さんは、気が合うみたいでよくしゃべってる。

俺にはよく分からん会話をしてる時もある。

たまに、三笠が母さんと重なる時がある。

これって、まずいよなあ。多分。




4月19日

今日も三笠は可愛いのでまた告白された。今度は同級生だった。

誰だっけ? 名前知らんけど。今度は5秒で断ったらしい。

いや、俺は秒数の話をしているんじゃないんだけどな。

三笠に言っても理解してくれないのでもう諦めた。



4月20日

明日は日曜日なので、また夜に夜ふかしできる。

一人でお楽しみをしようとしたら、三笠が急に部屋にやってきた。

……たまにこれがあるから油断できん。

パソコンにパスワードつけとこう。

パスワードは、三笠の誕生日でいっか。

多分、意外と盲点になるだろ。



4月21日

今日は家族四人で外で飯を食いに行くことになった。

父さんのいきつけの店で、偶然半寝素さんに会った。相変わらず、酒臭かった。

あれで一応、警察官だっていうから、世の中良く分からない。不良警官にしか見えない。

三笠はまた、何を食べたらいいのか分からず、ずっとメニューと睨み合っていた。

仕方がないので俺と同じメニューにしたらしい。

……もうずっと、俺の色に染まっておけ。

4月22日

雀がまた、三笠を勧誘していた。

野球部のマネージャーにしたいらしい。

なんか「甲子園」に連れて行きたいとかなんとか言ってた。

それって凄く難しいことなんじゃないか、と雀に言ったら、

三笠がいれば不可能はないって言ってた。

いや、三笠が試合に出れば、そりゃ甲子園行けそうだけどな。

三笠は女子だからな。男装して出るわけにもいかんし。

あいつ、絶対、タッチの読みすぎだろ。多分。




4月23日

俺は有民がいるけれど、三笠は俺達が傍にいれない時はほとんど一人だ。

俺はそれが怖くて三笠に「クラスの女子の中にも友達作れよ」って言ったら、

「要らない」って即答された。こええ。

三笠のこういうとこ、本当、困る。

小学校の時の知り合いの、沙謝くらいなもんだぞ、

三笠に自分から絡んでくれるのは。

くそ……沙謝が2組にいっちまったのは痛手だった。




4月24日

5月に入ると体育祭があるらしい。今年は5月12日だったかな。

その後にすぐ中間テストって、鬼だと思ったが、まあ仕方ない。

三笠は短距離走、中距離走、長距離走、リレー、ほとんどの参加種目に出ることになった。

正直言って、女子が全部三笠に押し付けたようなもんだ。

あんま酷いから「出来ねえ分は断ってもいいんだぞ」って言ったら、

三笠は「出来るから大丈夫」って言った。

なんでそんなにはりきってるのかさっぱり分からん。

結構、テンションあがってる。

そんなに走るの好きなら陸上部入ればいいのに。

そしたら生足拝みに毎日応援しに行くぞ。

4月25日

三笠の陰口を叩く女子を発見した。

三笠が美人でモテるから調子乗ってるとかなんとか。

アホかと思った。そんな事いう前に、お前鏡で自分の顔ちゃんとみろと言いたかった。

三笠とお前を比べて、100人中、100人とも三笠を選ぶだろと思った。

男は言っとくが、努力してねえ女には見向きもしねえよ。

三笠のぷるぷるお肌は一日で出来たもんじゃねえ。

あいつの努力の賜物なんだ。俺は知ってる。

……あー三笠のほっぺプニプニしてえ。



4月26日

今日は三笠じゃなく、有民が告白されてた。

「付き合わねえの?」って聞いてみたが、答えはノーだった。

どうやら、有民には別に好きな子がいるっぽい。

なんとなく、相手は分かってるけど俺はそれ以上聞かなかった。

昔、金髪が好きだと言ってたので、多分、あの子だろう。

あーあ、有民が羨ましい。勿論、幸せになって欲しいけどな。



4月27日

明日は日曜日なのでまた夜更かしする。

エロサイト巡りが楽しすぎてやばい。

でもあんまりやってると、バレた時が怖いので程ほどにする。

最近、子煮もこういうのに興味出てきたみたいで、

しきりに俺に貸し借りを頼んでくる。

でもエロ本を学校に持っていく勇気はまだ出ない。

有民に何かいい手がないか、今度聞いてみよう。




4月28日

連休を利用して小旅行に行くことになった。

場所は××温泉だ。父さん母さん、温泉好きだから。

部屋に備え付けてある家族風呂に入ることになったけど、

正直言って、修行僧のような気持ちになるしかなかった。

三笠、またちょっとだけおっぱい大きくなったな。

毎日揉んで大きくしてると言っていたが、本当なのだろうか。

手伝いたい。いや、マジで。でも出来ない。我慢だ。

4月29日

温泉楽しかったな。なんだかんだで。

三笠の成長も見れたし。一緒に風呂に入るのはさすがに出来なかったけど。

俺は父さんと久しぶりに風呂に入れてゆっくり親子の会話が出来た。

父さんは毎日忙しいけど、休みの日は出来るだけ、

家族サービスをしてくれる。いい親父だと思う。尊敬している。

俺もこんないい父親に、いつかなりたい。




4月30日

4月ももう終わりか。あっという間だった。

体育祭に向けての練習が徐々に増えてきた。

俺は騎馬戦とパン食い競争、あと仮装競争に出る。

有民は何故か、臨時で放送部に体育祭の助っ人を頼まれたらしい。

有民、ナレーションうまいもんな。

放送部に誘われてるっぽいけど、入るの迷ってるみたいだ。





5月1日

ゴールデンウィーク、どこ行く? の話題で持ちきりだった。

でもうちは、この間温泉に行ったばかりだから、

多分、もう何処にも行かないだろう。父さん、忙しそうだし。

でも四日も家でゴロゴロするのも何だし、

三笠と有民誘って三人でどっか行きてえなあ。



5月2日

有民はゴールデンウィークは、実家に帰省するらしくて遊べないらしい。

残念だ。あとはもう三笠とどこかに行くくらいしかない。

三笠にその事を言ったら即答で「行く!」と言った。

なんかもう、犬がしっぽふって興奮しているようにしか見えない。

くそう。ハグしたくなる。でも出来ない。

やったらやばい。そのまま押し倒す自信がある。

…………出かけるのは、人目につくとこにしよう。

5月3日

とりあえず、買い物にでも行くことにした。

俺は大型の本屋で英語の教材を追加して買った。

ヒアリングだけは毎日やってる。耳で慣れて頑張っている。

いつか俺は海外に行く。絶対。その為に英語は必須だ。

英語をある程度マスターしたら、今度はそれ以外の言葉も学びたい。

中国語、韓国語、あとドイツ語も挑戦したいと思ってる。

三笠は料理の本を何冊か買ったっぽい。

これ以上、いい嫁になってどうするつもりなんだろう。



帰りに満員電車に遭遇してしまった。

三笠を守りながら電車に乗ったけど、大丈夫だったんかな…。

もし痴漢とかに遭っても、あいつ言わなさそうで怖いんだよな。

顔真っ赤にしてたし。萌えたけど。

正直、俺が痴漢になりかけたけど。俺は我慢した。

この程度の誘惑に屈してたまるか。俺は三笠を守る。

…………いや、本当はいろいろ危なかったけどな。うん。




5月4日

三笠が昨日買った料理の本を見ながら夕食を作っていた。

早速、試してみたくなったらしい。

今日は「たらこスパゲティ」とかいうやつだった。ちょっとオシャレな料理だ。

ピリ辛で美味い。くそう。腕を上げやがった。

三笠の料理はハズレがない。でも言わない。

言うとすっごく喜ぶ。喜ぶと押し倒したくなる。つか、もういろいろやばい。

……俺、日に日に三笠のこと好きになってる気がするなあ。




5月5日

連休にだれてきた。

こういう時は、部活に入ってた方が良かったかなと思う。

でも、特に入りたい部がなかったんだよな…。

唯一、ちょっとだけ興味あったのはバスケ部だったけど、

うちは全国優勝を目指している強豪校だから、

入部テストで入れるか自信がなかった。素人だし。

入れて貰えなかったら傷つくし……ヘタレだな、うん。言い訳、乙って感じだ。

まあ、帰宅部生活でも、悪くはないけどな。自由に時間使えるし。

束縛されるのは元々苦手だから、まあいいか。


今日は三笠と一緒にテレビ見たりしてだらだら過ごした。以上。



5月6日

今日はちょっとだけ真面目に家で勉強した。

三笠に教えて貰いながら、分からんところを復習する。

三笠は有民についで頭がいい。

三笠のご両親は、外交官だったそうだ。

強盗事件に巻き込まれたのも、それが何か関係しているのだろうか。

謎は永久に闇のままだけど、掘り起こさないほうがいいかもしれない。

今は、三笠が無事に生きているだけでいい。

5月7日

連休がやっと終わった。

有民の実家は、おじいちゃんの家系がドイツ人だ。

GWにちょとだけ、ドイツに帰省してきたらしい。

まあ、所謂クオーターだな。有民は。だから瞳の色も青い。

ちなみに俺もちょっとだけドイツの血が混じってるらしい。

有民程は、顔に出てないけどな。

ドイツのソーセージをお土産に貰った。やっぱ美味い。



5月8日

体育祭も間近に迫ってきた。皆バタバタ忙しい。

応援団の練習が放課後も聞こえる。

三笠も調整の為にちょっとだけ放課後に走っているようだ。

俺もついでにそれを見学した。生足最高。

今夜のオカズはこれで決まりだ。




5月9日

体育祭は赤団、青団、黄団に分かれて競い合う。

うちの中学校は5クラスしかない普通の規模の中学校だから、

(他の中学では多いところは10クラスとかもあるらしい)

くじ引きで毎年、団をバラけて学年ごちゃまぜで競い合う。

俺は三笠と別の団になってしまった。

俺が赤団、三笠が青団、有民が黄団だった。

全員キレイにばらけてしまい、

それが決まった時は三笠はすっかり落ち込んでいたが、

俺が「青色似合うぞ!」と褒めたらちょっと機嫌が良くなった。

まあ、空いた時間は出来るだけ三笠の青団にこっそり潜入しておこう。

でないと、悪い虫がつきまくる。うん。

俺のとこには来るなよ。雀も赤団だからな。

5月10日

体育祭までもうすぐだ。

何やら、女子が騒がしい。誰それが体育祭の時に告白するだの、

そういう噂話で盛り上がっている。

まあ、俺には関係ないけど、三笠への告白がまた増えるんだろうな…

と思うとちょっとだけ憂鬱だ。



5月11日

明日の体育祭には父さんはこれないけど、母さんは来てくれるようだ。

お弁当の下ごしらえに気合を入れてくれている。

あんま無理すんなよ、と言いたいけど、張り切ってるし、まあいいか。

三笠もついでに一緒に張り切っているようだ。



5月12日

さて、今日は体育祭だったわけだけど……

結構いろんな事があったな。

まず、アレだ。

雀が遂に体育祭の後に三笠に告白したんだが、10秒で振られた。

今までで最高記録だ。くそ、それはそれでムカつく。

ちょっとだけ悩んだ素振りの三笠を見て、思わず心臓が跳ねた。

俺の恋心も相当重症だなと思ったぜ。

そして驚くことに、今度は俺の方も別の女に告白されたんだ。

クラスの子だけど……まあ、たまに話す程度の、ちょっと可愛い子って感じ。

席が近いこともあってたまに話してた程度だったのに、

まさか告白されるとは思わなかった。

でも、俺も三笠と同じくその場ですぐ断った。

そしたらちょっとだけ泣かれて……泣き止ますのが大変だった。

いや、好かれて悪い気はしないけどな。でも、

俺には三笠がいる。告白をこっそり覗いてる三笠の視線もあったし、

断る以外の選択肢はなかったんだ。



三笠がその日の夜、ちょっとだけ表情が暗かったのは多分、気のせいじゃない。

ダメだ。考えたらダメだって思うのに。

あいつがヤキモチ焼いてるのかな…って考えると口元がにやけて止まらない。

でも同時に、もやもやが募る。

性欲が最近、ますます酷くなってる気がする。

俺、いつかこのままだと、三笠を襲っちまうんじゃないかって。

自分が一番、怖い。

5月13日

振替休日で今日はお休みだ。

三笠は相変わらず表情が暗かった。昨日のことを引きずっているようだ。

だから俺はなんとか機嫌を取りたくて、リビングにいる三笠に、

「マッサージでもしてやろうか?」と言った。

昨日の疲れが残っているだろうと思って言ったのだが、

今思うと、これが大きな間違いだった。

三笠は二つ返事で「お願い」と頼んできたけれど、

今思うと、肩を揉むくらいでやめとけば良かったんだ。

だけどその時の俺はつい…ムラムラしちまって、

三笠の足をまず、触ってしまった。

脹脛は柔らかくて、しっとりしていた。

乳酸が溜まっている感じではなかったけれど、

それでも血行を良くしておくには間違いない。

俺は三笠の柔らかい筋肉を丁寧に揉んでいった。

そして誘惑に勝てなくて……太ももまで触ってしまった。

正直言って、その時、母さんも買い物に出てたし、

二人きりだったのに、何であんなことしちまったんだろうって思う。

でも、俺は止まれなかった。

そのまま手を上の方にのばして、

尻の方も、ちょっとだけ触っちまったんだ。



その瞬間の三笠の顔は多分、一生忘れない。

戸惑ったような、でも恥ずかしいような。

真っ赤になって、俺を見た。

その瞬間、俺は後悔した。やっちまったと、思った。

そして直後、母さんが買い物から帰ってきた。

俺は、慌てて自分の部屋に戻った。




いかん。俺、最近、本当に変だ。

去年はここまで酷くなかったのに、日を追うごとに、やばくなってる気がする。

なんか、三笠に触りたくて堪んねえ。でも、

これ、父さん母さんにバレたら、どうなるんだろう。

そこで一旦、有民は休憩を入れた。

喉が渇いてきたから、ちょっと水分補給をしに下に降りていった。

その間、エレンは江蓮の部屋で待っていた。

正直言って、この江蓮という人間の境遇に自分を重ねて見てしまう。

エレン(はあ……こっちの江蓮も相当苦労してるみてえだな)

気持ちは本当に良くわかる。分かるけども。

エレン(俺だって、解決させる方法があるなら聞きてえよ)

エレンは天井を見上げた。自分だって、ミカサ相手に苦労しているのに。

ミカサと三笠。二人同時に相手になんて、到底できない。

エレン(参ったな……気持ちが分かるだけに、解決策も思い浮かばん。俺だって、何もかも放り出して逃げたくなることはある。でも……)

それが出来なかったのは、やはり巨人への恨みがあったからだ。

エレンを形成する一部と言っても過言ではない。

それがあったから、エレンは理性を保っていたとも言える。

有民「お待たせ。続きを行こうか」

有民が戻ってきたので、再開する。

5月14日

昨日の事を反省して俺は三笠と距離を取った。

すると三笠はやけに「どうしたの?」と聞いてきた。

お前こそ、どうしたの? だよ。つか、昨日のこと忘れたんかな。

そう思い、俺が自分から「昨日はごめん。悪かった」と謝ると、

「何が?」と言い出した。ちょっと待て。

俺は、つい怒鳴ってしまい、「覚えてないのかよ?!」と詰め寄ったら、

「だから何が?」と惚けやがった。

俺はもういい、と思って三笠から離れたら、

ますます「江蓮、何を怒っているの?」ときたもんだ。

くそ……なんかよけいにムカついたから、もう一回、三笠の尻を触ってやった。

んで、「尻触ったこと、謝ってんだよ。悪かったな!」って、

逆ギレ気味に言ったら、三笠の奴、真っ赤になって……


「え? だって、マッサージ、してたんでしょう?」


と、きたもんだ。

あいつ、俺がわざと尻触ったこと、気づいてなかったんだ…。

あれはあくまで「マッサージの一環」だと思ってたんだ。どんだけ純粋なんだよ。

そのせいでますます罪悪感が募ってきて、俺は再び謝った。

すると「別にそれくらいで怒らない。家族なんだし…」と照れたように言い出してきた。




いかん。もう、三笠が可愛くて生きるのが辛い。

5月15日

あれから俺の体はおかしくなった。

自分で抜くのは、一週間に一度やれば十分だったのに、

アレをきっかけにして、もう毎日ヤっても足りないくらい、性欲が一気に膨れ上がってきた。

毎晩抜くのは、さすがにちょっと異常なんじゃないかって気がしてきた。

でもこんなこと、誰にも言えなかった。

他の奴らがどんな周期で抜いてるかなんて、有民にも聞けない。

聞いたらきっと軽蔑される…。




有民「江蓮! そんな事ないよ! 一日一回抜くのは、そんなに変な事じゃない! 割と普通だよ! 僕だって、二日に1回は抜いてるよ!」

エレン「だよなあ……俺、調子いい時は一日3回でもいけるからな」

この辺は個人差があるので、男性による。

ただ十代の頃の性欲は、結構激しいものがあるので、この時の江蓮が悩んでいたのも無理はない。



5月16日

三笠の洗濯物がリビングに積んであった。

母さんが取り込んで、そのままにしてあったのだろう。

慌てた気配がある。いつもの母さんらしくない。

俺は、三笠の下着を目に入れて、つい、それを触ってしまった。

白い、パンツと、ブラジャー。

誰もいない事をいいことに、匂いを嗅いでしまった。

変態だと自分でも思う。でも、一度やってしまうと、もう収まらなかった。

もう、誰に軽蔑されてもいい。いや、三笠にだけは、ダメだけど。

俺はそっとそれを自分の部屋に持ち帰った。

5月17日

三笠の下着はいいオカズになった。

でも、一度それに触れてしまうと、次はもっと欲しくなった。

俺は三笠のいない隙に三笠の部屋に入って、三笠の制服の匂いを嗅いだ。

とくにリボン。首元の匂いが一番、心地よかった。

持って帰りたくなったけど、さすがに制服はまずい。

俺は三笠の押入れを探った。

三笠は俺みたいに布団を敷きっぱなしにはしないので、

その都度、布団を押入れに仕舞う。

だから布団に顔を突っ込んで、匂いを嗅いだ。

三笠の匂いが残っている。楽しかった。

今日はとりあえず、ここまでにした。



5月18日

明日は日曜日だ。でも俺はもう、エロサイトだけでは満足出来なくなっていた。

だから、俺は三笠の写真を使って、アイコラという編集に挑戦してみることにした。

画像の処理は、ネットで調べればフリーの編集ソフトもあったし、なんとなく、使い方は分かった。

スキャナーは親父に頼んで買ってもらった。

というか、プリンターと一緒の奴だけど、親父に言ったら、

「そういえばパソコンはあるのにプリンターがなかったな。うっかりしてたよ」

と言って、別に疑われもしなかった。良かった。

それから俺は、三笠の写真を加工しまくった。

本当、ごめん。俺、多分、最低なことしてる。

でも、現実の三笠に手出すわけにもいかないし、これで発散させるしかないんだ。



5月19日

部屋の掃除をしていたら、昔の写真がたくさん出てきた。

ちょっと色あせてて、がっかりしたけど、この頃は幸せだったな、と思う。

この頃は純粋に三笠が好きで、こんなやましい感情なんてなかったのだ。

でも、このままアルバムに保管していたら、いつか劣化してしまう。

それが怖くて、俺は写真をパソコンの方にも残しておくことにした。

アイコラエロ画像の下にこっそりと隠しておく。

これはこれでバレたら恥ずかしいからだ。




5月20日

中間テストの結果が返ってきた。相変わらず英語だけは良かった。

他の教科は、まあ平均点ってところだ。

有民は数学と英語で満点とってた。

他の教科もほとんどミスがなくて、学年トップだった。

有民も将来、弁護士になればいいと思う。

その頭脳を是非生かして欲しい。

5月21日

雨が降った。そのせいで洗濯物が乾きにくい。

室内干しをしているせいで、ついつい三笠の下着に目がいってしまう。

でもそれがバレるわけにはいかないので、必死に我慢した。

その代わり、どんな下着をつけているのか記憶する。

今日、干してあったのは、ピンク色の可愛い下着だった。

やばい、妄想したら、また勃ってきた。抜こう。





5月22日

今日もまた、三笠に告白してきた奴がいた。

三笠は安定の5秒で断った。つか、いい加減にしてほしいもんだ。

こんだけ即答して断ってるのに、うじゃうじゃ告白する奴が増えてるのは一体何なんだろう。

……三笠がキレイになってるせいか。はあ。



5月23日

今日から女子は水泳の授業が始まるらしい。

ちょっと早い気もするけど、うちの中学は贅沢にも屋内プールがあるので、問題ない。

三笠のスクール水着か……くそ、見たい。けど、男子は外でサッカーなので見れない。

なんで合同で水泳の授業やんねえのかな。小学校までは一緒だったのに。

三笠の水着姿か……もう少し夏になったら二人でプール行こうかな。うん。

5月24日

休み時間の教室で、誰と誰がくっついただの、いろいろ噂話をしている男子がいた。

そのうちの一人が「なあ、なんで赤間は誰とも付き合わねえの? 誰か好きな奴いんのか?」と不躾に聞いてきた。

俺は「さあな」と誤魔化した。

そう言えば、三笠とそういう話は一度もしたことがない。

三笠は俺のこと、家族として好きなんだと思うけど、

たまに本当にそうなんかな? と疑う時もある。

もし、異性として俺のことを好きだったら……と思うと、

また股間が動いてしまうのであまり考えないようにしてはいるのだが。

そいつが「せめて一回、ヤらせてくんねえかな」と下品なことを言い出したので俺は反射的にそいつを殴ってしまった。

その後は、いつもの喧嘩だ。

雀ともよくやる喧嘩を、今日は珍しく別の奴とやってしまった。

三笠には後で怒られたけど、雀にその事を後で話したら「グッジョブ」と言われた。だよな。

俺は悪いことしたつもりはねえ。当然の報いだ。



5月25日

今夜は何をするか。

アイコラのネタがなくなってきたので別のサイトを見ていたら、

偶然にもエロ小説のサイトを見つけた。

そこは主に「近親相姦物」を扱っていて、うっかり俺はそれを読んでしまった。

まあ、血の繋がっている兄妹がヤってるのが多いこと、多いこと。

姉弟ものもあったけど、俺のツボだったのはやっぱり兄妹のやつだった。

ってか、世の中には「妹萌え」なる言葉があるらしく、

俺はその感情と、自分のこれが非常に似ているような気がしてぞっとした。

いかん。あんまり深く考えるとダメだ。

三笠は家族。一番近いのは妹。よく姉に間違われることも多いけど。

あいつは、守るべき存在なんだ。

5月26日

また、両親が不在の魔の日曜日がやってきた。

俺はいっそのこと、有民の家に逃げようかなと思ったけど、

三笠を一人家に残して置くのは気が引けた。

だから逆に有民を家に呼んで三人で勉強した。

健全な日曜日だった。有民には感謝するしかない。




5月27日

三笠が裸で体重計を睨んでいる場面とうっかり遭遇してしまった。

偶然だ。本当、偶然だったんだ。悪気はない。

あいつの裸を見るのは温泉旅行以来だが、あの時に比べて少し太った感じだった。

多分、本人も気にしているのだろう。

だから、「見ないで!」と怒られてしまった。

くそ……見ないわけねえだろ。つか今くらいで丁度いいし。

きっと触ったらぷにぷにするに決まってる。

触りたい。触りたい。もうやばい。また勃ってきた。

毎日が戦争だ。股間との戦いだぞ。くそ…

5月28日

三笠が昨日の体重を気にして減量を始めたようだ。

つか、あと3キロくらい太って欲しいんだけどな。俺としては。

きっと胸の方も大きくなるし、触り心地も良くなるのに。

だから俺は、帰りにコンビニ寄って、自分の食いかけの肉まんを三笠にやった。

あいつは俺の残したものだけは、絶対食う。なんでか知らんけど。

…………ダイエットは諦めるらしい。よっしゃ、勝利。

今後も食いかけの肉まん食わせて太らせてやろう。




5月29日

三笠への部活動勧誘がしつこい。まだ諦めてないらしい。

特にバスケ部、バレー部、あたりの球技系の部の先輩達は、

三笠に何度も交渉しているようだ。

俺としては、もし三笠が部に入るなら新体操部に入って欲しい。

ボールとか、リボンとか、エロいからな。

……雀に借りたタッチの影響が出てるな。自分でもよく分かる。

なんかもう、幼馴染系の漫画読むと泣けてくるんだ。自然と。



5月30日

今日は何故か栗素多に「ベルばら」を押し付けられた。

由美瑠には「天使禁猟区」とかいう漫画を押し付けられた。

なんか最近、女子がやたら漫画を学校に持ってきては回し読みしてる。

本当はいけないけど、休み時間にこっそり読んでる奴も多い。

どっちも絵柄が独特で、ちょっととっつきにくいけど、

ベルばらは結構歴史の勉強になるし、

天使禁猟区の方はその…実の兄妹の恋愛ファンタジー漫画だった。

由美瑠の奴、俺にどうさせたいんだろう……。勘ぐってしまうじゃねえか。

古い漫画読んでるな女子どもw
これなら男子はマーダーライセンス牙とか男塾読んでるじゃないかw

5月31日

5月ももう最後だ。またあっと言う間に月日が経ってしまった。

今度は雀に「おおきく振りかぶって」という漫画を借りた。

あいつ、最近やたら野球漫画を勧めてくる。

「俺にも野球部に入って欲しいんか?」って聞いたら、

「お前じゃねえ、三笠にだ」と言い出した。

要は俺が野球部に入れば一緒に三笠も入るだろうという魂胆らしい。

………ぜってー入ってやんねえと思った。

まあ、おおきく振りかぶっては面白いから読むけどさ。




6月1日

6月に入って雨の降る日が増えそうな気配だ。

洗濯物を室内干しする日が増えてきた。

今日の三笠のパンツは水色だ。いいな。水色もいい。

三笠の下着はあまり柄物はない。無地が多い。そこもまたいい。

………そろそろ前回盗んだパンツを元に戻しておいた方がいいかもしれない。



6月2日

日曜日だ。今日も雨が降った。

だから家の中で英語の勉強してたら、

下で何か叫び声が聞こえてびっくりして下に降りた。

すると、三笠がうっかり料理中に手を火傷してしまったらしい。

ケーキ作ってたみたいだけど、本当、馬鹿だ。

三笠が火傷するならケーキなんかいらん。

水で手を濡らしてる三笠を見てたら、なんか急にまたムラムラしてきた。

台所に立つ三笠は正直、エロ過ぎる。

だからつい、後ろから顔を覗かせて「大丈夫か?」って言ったら、

一応「うん」と答えたので安心した。

思ったより酷い火傷ではなかったけど……

一応、患部は暫く冷やしておいた。

触ってみたけど、膨れてはいなかった。軽度の火傷のようだった。

三笠の手を触ったら、何故か三笠は頬を赤らめた。

恥ずかしそうにしていた。それに釣られて、俺もムラムラした。

だから、つい……なんかもう、我慢できなくて、キスをしたくなった。

でも直後、母さんが買い物から帰ってきた。

毎回思うけど、俺、母さんいなかったら何回三笠抱いてるんだろうと思う。

>>172
わざと昔の作品読んだりしませんでしたか?
自分の学生時代がそんな感じだったんです。すんませんwwww

6月3日

雨が続く。だからついつい漫画を読んでしまう。

今度は子煮に「ダイヤのA」とかいう野球漫画を借りた。

野球漫画ばっかだな。本当、あいつら野球好きだな。

俺は代わりにCDを貸してやった。洋楽とかが中心だけど。

あんま趣味合わないかもしれんが、

子煮は「英語わからんけど曲かっけー!」と言ってたので良いか。




6月4日

ベルばらと天使禁猟区を読み終わったので返却したら、

次は「ラストゲーム」と「コータローまかり通る!」とかいう漫画の1巻を渡してきた。

続きは今、別の奴に回ってるらしいが、次から次へとよくまあこんなにお勧め漫画が出てくるもんだ。

つか、どっちも内容が幼馴染系の漫画だった。

ラストゲームは少女漫画だったけど、コータローの方はなんていうか、ヒロイン結構可愛かったな。

つか、主人公、幼馴染のパンツ盗んでた。同士がいてほっとした。

コータローの方はすごい古い漫画らしい。

由美瑠、あいつ絶対、年誤魔化してるな。本当はきっと同世代じゃない。




6月5日

梅雨に入ったせいでジメジメしている。

今日も一日、微妙な天気だった。

たまに晴れたけど、ちょっとすっきりしない。

曇ったり晴れたり雨降ったりの繰り返しだ。

そのせいで、傘があったのにも関わらず、帰る時に濡れてしまった。

三笠の足元が随分ずぶ濡れてて可哀想だった。

先に風呂に入らせた。俺はその間、体を拭いてリビングでテレビを見ていた。

……今夜は雷も鳴るかもしれないらしい。嫌だな。






6月6日

漫画ばっかり読んでたらちょっと勉強がおろそかになってきた。

まずい。ちょっとそろそろ本腰入れて勉強しないと。

そう思い、俺はその日の夜、父さんの部屋にこっそり入った。

父さんの部屋には医学書関連の本がたくさんあるので、

理科系の情報はうちの方が教科書よりいっぱい載ってる本がある。

だから資料を読ませて貰おうと、父さんの部屋に入った。

でも、それが間違いだった。

俺はこの日をきっと、一生恨むことになる。

この時見つけた「それ」を俺は、一生恨むだろう。

俺は、ある本に挟まった、「写真」を見てしまった。

若い母さんが、子供を抱いている姿を。

父さんではなく、違う男と一緒に写ってる写真を。

6月6日(続き)

俺は一瞬、意味が分からなかった。

抱いている子供は多分、俺なんだと思う。

でも、だったら何で、父さんではなく、別の男が写ってたのか。

その男の顔に見覚えはあった。

と、いうか、その人物しか思い当たらなかった。

三笠の父親だ。

何故、三笠の父親とうちの母さんが一緒に写ってるのか。

何がどうなっているのか、分からなかった。

俺は好奇心に勝てず、父さんの部屋の中に他に手がかりがないか探した。

すると、今度はもう一枚、

今度は三笠の両親と多分、三笠の小さい頃と思われる三人の写真があった。

こっちの写真は、まあ分かる。

三笠を引き取った際に、一緒に持ってきて、

父さんが管理してたのだとしたら辻褄は合う。

でも、だとしたら………

俺は、それ以上先に踏み込むべきか悩んだ。

すると、その日、珍しく早く帰ってきた父さんが部屋にやってきた。

俺は我慢できず、父さんにその二枚の写真を突きつけた。

父さんは凄く驚いた顔をしていたけれど、

何か諦めたような顔で俺に言った。真実を話すと。

そこで聞いた話は……




俺と父さんは、実の親子ではないということだった。

つまり、俺の本当の父親は三笠の父親で、

俺と三笠は半分だけ、血が繋がっている、本当の兄妹だった。

いや、この場合、一ヶ月だけ早く生まれた三笠が姉になるのか。

でもそんなことはどうでもいい。

とにかく俺は、それを知ってしまった。

詳しい話をきくと、三笠の父親はどうやら二股をかけてたらしく、

ほぼ同時期に、三笠の母親とうちの母さんを孕ませてしまい、

でも結局、結婚したのは三笠の母親の方で、

つまり、俺の母さんは振られたんだそうだ。

その母さんを献身的に支えたのが、今の親父で、

父さんは全てを知った上で、母さんと結婚したらしい。

6月6日(続き)

俺はそれをきいて何処か納得している自分に気づいた。

俺と母さんはそっくりだけど、俺と親父はあまり似てない。

性格も顔立ちも似てないので親子に見られないことも多かったのだ。

でも俺はその事を知った瞬間、絶望的な気持ちになった。

今までは、血が繋がってないから、三笠にムラムラすんのは仕方ねえって、

心のどこかで言い訳してた。でも、

本当に半分だけ血が繋がっているなら、もう、絶望的だ。

日本で結婚するのは当然無理だし、

俺は今まで、血の通った肉親に欲情を抱いていたことになる。

俺は本気で死にたくなった。

こんなこと、有民にだって言えない。

三笠にはもっと言えない。

俺は、一体どうしたらいいんだ。





6月7日

俺は、この日の記憶が曖昧であまり思い出せなかった。

とりあえず、学校には行った。でも、授業の内容なんて一言も思い出せない。

ただ、義務的に飯を食って、風呂入って、テレビ見て、

音楽聴いて、そして布団に入った。

けど、眠れなかった。だから今、こうしてパソコンを開いている。

誰か、助けてくれ。

俺は一体、どうしたらいいのか。

もういっそのこと、誰か、



俺のことを駆逐してくれ。





日記はそこで終わっていた。

エレンが異世界に訪れたのは6月8日のことだから、

それ以降、江蓮はエレンに自身を受け渡したことになる。

有民は勿論、エレンもしばらく言葉が出なかった。

こんな重い現実を、どう受け止めたらいいのか全く分からなかったのだ。

すいません。時間軸訂正します。
読み直したら、一日ずれてた。
エレンが異世界に来たのは、7日だったので、訂正して再投下。


6月6日(続き)

俺はそれをきいて何処か納得している自分に気づいた。

俺と母さんはそっくりだけど、俺と親父はあまり似てない。

性格も顔立ちも似てないので親子に見られないことも多かったのだ。

でも俺はその事を知った瞬間、絶望的な気持ちになった。

今までは、血が繋がってないから、三笠にムラムラすんのは仕方ねえって、

心のどこかで言い訳してた。でも、

本当に半分だけ血が繋がっているなら、もう、絶望的だ。

日本で結婚するのは当然無理だし、

俺は今まで、血の通った肉親に欲情を抱いていたことになる。

俺は本気で死にたくなった。

こんなこと、有民にだって言えない。

三笠にはもっと言えない。

俺は、一体どうしたらいいんだ。






俺は、この後の記憶が曖昧であまり思い出せなかった。

ただ、義務的に飯を食って、風呂入って、テレビ見て、

音楽聴いて、そして布団に入った。

けど、眠れなかった。だから今、こうしてパソコンを開いている。

誰か、助けてくれ。

俺は一体、どうしたらいいのか。

もういっそのこと、誰か、



俺のことを駆逐してくれ。





日記はそこで終わっていた。

エレンが異世界に訪れたのは6月7日のことだから、

それ以降、江蓮はエレンに自身を受け渡したことになる。

有民は勿論、エレンもしばらく言葉が出なかった。

こんな重い現実を、どう受け止めたらいいのか全く分からなかったのだ。

とりあえず、今日はここまでー。
続きはまた今度ノシ

きになる…江蓮と三笠、エレンとミカサでちゃんと幸せになってほしい…

はよ

>>180
自分でも最後がどうなるか決めずに書いてますので……
幸せになれるような結末を江蓮には選んで欲しいですね。

>>181
遅刻遅刻~(パン咥え登校)
すんません、遅れました!

ちょっとずつ再開します!

エレン「……だから、逃げたのか」

エレンは身が凍るような思いで呟いた。

もし自分が同じように、ミカサと半分血が繋がってたらと思うと……

その恐怖は想像できる。だから、納得してしまった。

深いため息をついた。有民も。

有民「これじゃ引き篭りたくなるのも分かるな」

江蓮の精神的なショックを想像して、有民もゾッとした。

普段の江蓮と三笠の仲を知っているからよけいに。

エレンは考えた。ここから先、自分の進むべき道を。

やれる事は、何かないか。必死に考えた。

エレン「……有民、頼みがある」

有民「な、何…?」

エレン「この日記続きを俺が江蓮の代わりに書いてやりたいんだが、俺はこの箱を使えない。口頭で伝えるから俺の代わりに書いてくれないか」

有民「ああ…それくらいならお安い御用だけど。でも……どうして?」

エレン「なんとなく、だな。いや、それで問題を解決出来るとは思ってねえけど、ここで江蓮の日記を終わらせたくねえって今、強く思ったんだ」

有民「なるほどね。いいよ。エレンが書きたい事を、僕が代わりに入力してあげる」

有民は両手をキーボードの上にのせてスタンバイした。

エレンは6月7日から日記の続きを紡ぎ出した。

エレン「初めまして、俺の名前はエレン=イェーガーだ」

有民(カタカタカタカタカタカタ…………)

そしてそのデータは、新しい情報が追加されていったのだった。





6月7日

初めまして、俺の名はエレン=イェーガーだ。

この日の朝から、何故か突然、「家賀江蓮」として生きることになってしまった。

初めはただの夢の中の世界だと思っていたけれど、どうもそうじゃない事が分かった。

何故なら、この世界で怪我したら、元の世界に戻っても、怪我が治っていなかったからだ。

詳しい事はここでは省略するが、とにかく今の自分は、エレン=イェーガーとしての人生と、

「家賀江蓮」としての両方の人生を生きることになってしまったようだ。

6月7日(続き)

正直言って、二人分の人生を生きるのは大変だ。

労力が二倍になるし、こっちの異世界に来ると、元の世界の人達とは会えないし、寂しくもある。

でも、こっちの異世界にも、元の世界の人達と、同じ背格好と顔をした、瓜二つの人達が沢山いるようだ。

そのうちの二人、有民と三笠には感謝している。

二人がいなかったらと思うと、きっと俺はもっと混乱して、

とてもここでは生きてはいられなかっただろうと思う。



江蓮に伝えたい事は山ほどある。

そちらの事情は残されたメッセージを読んだのでだいたいのところは分かった。

俺はお前の力になれるか分からねえけど、

暫くはこのまま江蓮としての人生を生きようと思う。

この文を書いているのは実際には6月10の朝になるんだが、

あえてここからスタートさせる。だから、

この日にあった事をもう少し書かせてもらうぞ。



この日は国語という授業や、体育、英語など、いろんな勉強をした。

この世界の言葉は聞き取って、会話をする事は出来るが、

文字が全く読めなかったのでとても苦労したよ。

そんな自分を、有民と三笠は助けてくれた。

二人には本当に感謝することしか出来ねえな。



こっちの世界には、死んだ母さんとそっくりな人間がいた。

俺は思わず抱きついたよ。

こっちの世界では、母さんは生きてるんだな……正直言って、羨ましい。

俺の母親は「巨人」と呼ばれる化物に食われて死んじまった。

俺の生きる世界は、こっちと比べると過酷で地獄のような場所だから、

本心を言えば、こんな平和な世界に生きる「家賀江蓮」を憎みたい程羨んでいる。

境遇の違いを恨んでも仕方ねえって思うけど、

やっぱり俺と比べると、江蓮は幸せだと思うぜ?

こっちはうまいもんだっていっぱい食えるし、平和だし、

何より「巨人」がいない世界なんだから。



だから俺はもう少し、ここに残ろうと思う。

元の世界と、異世界の二刀流になるけど、

江蓮がいないんじゃ、俺が代わりにやっとくしかねえもんな。


とりあえず、このまま次の日も続けて書いていくぞ。

6月8日

俺はこの日、部活とかいう集まりに入るべく見学した。

最初に見学したバスケ部にそのまま入ることにした。

三笠もこの日に一緒に女子バスケ部の方に入ったよ。

男子の方にはリヴァイ兵長(俺達の世界の英雄みたいな人だ)にそっくりなキャプテン、

俺と同期にそっくりなライナーとベルトルトがいてびっくりしたわ。

バスケのルールは6月7日の体育の授業の時に、有民にだいたい教えてもらった。

俺のいる世界には、こういう玉遊びをする習慣はねえから、すごく新鮮だった。

今じゃすっかり夢中になってる。

ボール回すのも大分慣れたし、このまま暫くバスケを続けようと思う。



この日そう言えば、ジャンにそっくりな奴に明日の試合を見に来て欲しいと頼まれた。

ジャンとコニーとフランツの三人は野球部に入ってるみたいだな。

俺はこの時、まだ野球の存在を知らなかったけど、

次の日に実際見てみたら、結構楽しかったぞ。

だから元の世界に戻った時に、皆でやってみたら、案の定、

俺の世界のジャンとコニーが野球にはまっちまった。

やっぱこっちとそっちは世界がリンクしてんだなって思ったよ。

そういう意味では、俺がバスケを選んだのも必然だったのかもしれねえな。

江蓮、本当はバスケやってみたかったんだろ?

入部テストはドリブル10000回だった。

最初、ゼロが一個違うと思ったけど、10000回であってたぜ。

でもまあ、なんとか頑張ったよ。適性はイマイチだったみたいだが、

根性でどうにかするから心配するな。

俺はいずれ試合に出させてもらえるようにこのまま頑張るからな。

6月9日

この日は午前中はバスケの練習はなかった。

午後から練習試合が入ってたし、午前中は他の部が部屋を使うから、

そういうスケジュールになったみたいだ。

俺は午前中、雀の野球の試合を見に行った。

そしたら何やらもめてて、どうやらメンバーに怪我人が出てしまい、

人数が足りなくなってしまったようだ。んで、助っ人として、三笠がボールを投げる事になった。

本当は俺がやっても良かったんだが、俺はリヴァイ兵長から『ずっとボールを触っておけ』という課題が出てたから、加勢できなかったんだ。


三笠はすごかったぞ。練習試合で一人も打たせなかった。

雀が言うには、『完全試合』とかいうのをやっちまったらしい。

そのあとは、相手のチームの監督が三笠を狙ってきたので、慌てて退散したよ。

三笠は女だし、バレたら気を狂わせちまうと思ってな。


んで、リヴァイ兵長……えっと、こっちだと理倍さんか。

理倍さんに勧められて、屋上で三笠と昼飯を食うことにしたんだが、今、思うと、俺も気が緩んでたんだと思う。

ボールのハンドリングのせいで、片手しか自由に出来なかったから、三笠が「はい、あーん」ってしてくれたんだ。

甘えずに、ちゃんと自分で食えば良かったんだけどな。

おれはついつい、それに甘えてかぶりついてしまった。

そのせいで俺は、ボールは落っことすわ、三笠を押し倒すわ、散々な目に遭ってしまったんだ。

床が硬かったから、三笠の頭が危ない! と思って、咄嗟に頭を庇ったら、右手の甲の骨にヒビ入っちまって、怪我した。

まさか骨までイってるとは思わなかったけどな。三笠は無傷だったのが、せめてもの幸いだった。


その後は大変だった。

俺が怪我したせいで、三笠は『右手になる!』とか言い出してきてな。ちょっとうっかり、エロい妄想しちまった。

いや、三笠がそういうつもりじゃねえのは重々承知だ。でもうっかりそういう意味で捉えちまってな。

分かるだろ? 俺だって男なんだ。男同士なら分かる筈。


まあ、いろいろあって、とりあえず三笠も落ち着いたんだが、

俺はその日の風呂の中で、うたた寝しちまって、その時に一瞬だけ元の世界に戻った。

俺の世界のアルミンが起こしてくれたんだ。

んで、その後にもう一度、今度はアルミンも連れて、こっちの世界に来た。

どうやら俺と手を繋いで寝ると、世界を一緒に行き来出来るみてえだ。

と、そん時は思って、今度は逆は出来ないかと思って試してみたんだが……

結果はダメだった。俺はこっちの世界に来れるけど、そっちから俺の世界には来れないみたいだ。



今、わかってるのはこんくらいだ。

今日は6月10日の朝になるから、ここからまた、俺の異世界生活を再開させる。

江蓮、お前が戻ってくることを信じてるからな。その時の為に、

俺はこの記録を続けていくぞ。有民と一緒にな。では、また。





有民「こんな感じでいいかな?」

エレン「ああ、これで江蓮が戻ってきた時に状況が分かりやすいだろ。説明しやすくなったかな」

有民「十分だよ。とりあえず、もう時間だから、今日も学校に行かないとね。僕は一度、家に戻るね」

エレン「ああ、ありがとな、有民」

有民「いえいえ! じゃあまたね!」

エレンは有民を自宅に帰らせると、三笠に声をかけた。朝飯を食って学校に行く準備をする為に。

三笠「もう終わったの? 原因は分かったの?」

エレン「あーだいたいな。ちょっと込み入った話になるから、詳しい事は後にしてもいいか? とりあえず、学校に行かなきゃならねえだろ?」

三笠「……そうね。分かった。学校で話しましょう」

そしてとりあえず、学校に向かうエレン達であった。





文字は手鏡を使えば読める事が分かったエレンは、こっそりそれを使いながら授業を受けた。

そして昼休みになると、エレン、三笠、有民の三人は今日は屋上で飯を食べながら詳しい話をする事にした。

ここから他の人間に話を聞かれる可能性が低いからだ。

エレン「あー……」

しかしどこからどうやって話せばいいか悩む。有民も困っているようだ。

エレン「三笠、この話を聞いたら、多分お前、相当ショックを受けると思うぞ。心づもり出来るか?」

三笠「構わない。どんな事でも受け止める」

エレン「……分かった。じゃあ話すぞ」

エレンは有民と目を合わせて確認を取り、三笠に事情を話し始めた。

エレン「まず一番大事なのは……江蓮は三笠の事が大好きだという事だ」

三笠「えっ……(ポッ)」

エレン「好き過ぎて、ちょっとヤバイ状態だったみたいだぞ。女として、見てたから」

三笠「お、女として……? (ドキドキ)」

エレン「ああ……家族なのに女として見てたんだ。すごく葛藤してた。手、出したくて堪らなくて、ずっと我慢してたみたいだ。その記録が沢山残ってた」

三笠は全身真っ赤になった。乙女の表情をしている。

三笠「本当に…? それは、本当なの?」

有民「うん、間違いないよ。江蓮は三笠を家族としてではなく、女性として愛していたんだよ」

ボボボとますます赤くなる三笠だった。

満更でもないその反応に、有民は何処か「やっぱり両思いだったのか」と悟った。

でもだとしたら、ここから先に伝える事はもっと残酷になる。

>>187
訂正
ここなら他の人間に話を聞かれる可能性が低いからだ。

か、と、な

の打ち間違いです。

三笠「そ、そんな……嬉しいけど、ダメ。私達は、家族……血は繋がってなくとも、家族……」

エレン「いや」

そこで、エレンは、否定した。

エレン「どうやら、そうじゃないらしい。江蓮と三笠は父親同士で繋がった、半分だけ血の繋がった姉弟だった」

三笠「え……?」

有民「その事実を6月6日の夜に知ってしまった江蓮は、かなり自暴自棄になってしまったようだよ。そのせいで………現実から逃げてしまったんだ」

三笠「……血が、繋がってる? そんな……では、私の父は………」

三笠はショックだった。

それは自分の母に対する裏切りであるし、同時に、今の養父母である迦楼羅に対して、どういう気持ちを持てばいいのか分からない。

エレン「ほとんど同時期に二股かけてたらしい。二人の女性を孕ませて、結婚したのが三笠の母の方で、江蓮の母の方は、捨てられたらしい。父さんは全てを承知で今の母さんと結婚した。という記録が残ってた」

三笠「そ、そんな…!」

では今まで、迦楼羅はどんな気持ちで自分の面倒を見ていてくれたのだろう。

その心中を思うと、三笠は涙が出そうになった。

三笠「そんな……ことって……」

三笠は困り果てた。

昼の食事は終わっていたけれど、もし食べる前だったら、それ以上胃に入らなかっただろう。

というか、ちょっとムカムカしてきた。

吐き出しそうになるのを、気合で堪える。

エレン「…! (しまった、飯の時に言わん方が良かった)」

エレンも動揺していたのでそこまで配慮が出来なかった。

家に帰ってからゆっくり話すべきだったと後悔したが、しかし三笠がどうしても早く知りたいと急かしたので、昼休みに話すことにしたのだ。

三笠「江蓮……江蓮……うわああああああああ…!!!」

何より傷ついた江蓮のことを思うと、涙が止まらない三笠だった。

一通り泣かせ、落ち着くまでじっと待つエレンと有民だった。

三笠「……………ごめんなさい。もう大丈夫」

それでも三笠は気丈に振舞った。

涙を自力で止めると、赤い目のまま二人と向き直った。

三笠「つまり江蓮が現実逃避をしたせいで、代わりに今の『エレン』がやって来てしまったのね」

エレン「恐らくな。そんな感じだ。だから、江蓮はきっと、まだここにいる」

そう言ってエレンは江蓮の胸……自分の心臓を軽く叩いた。

まるで敬礼をするように。心臓を捧げるように。

エレン「今はただ、引き篭っているだけだと思う。どうにかしてここから出してやらねえと……」

有民「…………」

二度と出てこない。そういう可能性もある気がした有民だったが、それは言わなかった。

そんな残酷な事は言えなかった。

エレン「殻を破ってやらねえと。いや、自力で破らせねえといけねえな。でないと、こいつの『江蓮』としての人生が終わっちまう……」

エレンはそれだけはさせたくなかった。

エレンは心の中で、江蓮に語りかける。


現実と、戦え……と。


エレン「俺に出来ることは、この世界で『江蓮』として代わりに生きる事だけだが……どうにかして江蓮を復活させてやりたいんだ」

有民「ああ……勿論だよ。このまま諦めるわけにはいかない」

三笠「でも、一体どうすれば……」

見当もつかず、三人は悩む。

何か突破口があればいいのだが……。

エレン「俺達だけじゃ、何も思い浮かばねえな。この件は一旦、保留にしよう。俺が元の世界に戻って、向こうのアルミンとミカサにも相談してみるわ」

有民「そうだね。ところで向こうの僕って、どんな感じなのかな」

エレン「ん? ほとんど変わらねえな。背格好も声も性格も同じだ。頭良いトコとか、機転が利くところとか」

有民「へ~(不思議な感じだなあ)」

エレン「まあ、あえて違いを言うなら………向こうのアルミンの方がもうちょい筋肉ついてるって感じかな。俺達の世界は毎日体育があるようなもんだし、皆、ガタイはそれなりにいいぞ」

有民「え……あ、そっか。軍人なんだったね」

エレン「そうそう。罰を食らうと5時間くらい走らされたりするし、飯抜きで」

有民「5時間?! 飯抜き?! ちょっと……それは酷すぎるよ」

エレン「俺達の世界じゃそれが普通なんだ。そういう意味じゃ、こっちの部活ってやつに入って正解だったな。多分、学校の生活だけじゃ体を動かし足りねえよ」

有民「そうだね。そう言えば、左手のハンドリング、随分うまくなったね。エレン」

エレン「ああ。向こうに戻ってる間も一週間くらい、毎日触ってたしな。手の甲の怪我もほとんど治ってきてるし、今日から部活に戻れるかもな(くるくる…)」

エレンは右手をグーパーさせた。

自分達の世界で一週間を過ごしたおかげで、もう大分怪我が治っているのだ。

有民「へえ! 向こうの時間の流れと、こっちの流れは同じじゃないんだ。ますます不思議だね」

エレン「みたいだな。要は雨の降ってる時にしか世界を行き来出来ねえから、元の世界でも雨降らねえと、こっちに来れないみたいなんだ。そのせいだな」

有民「なるほど……」

有民はますます不思議に思った。

有民「向こうの僕と、直接会話が出来ないのが残念だ。是非会ってみたかったよ。いろいろ気が合いそうだ」

エレン「それを言ったら、俺だって江蓮に会ってみたいぞ。なんか他人に思えないしな」

三笠「私も…もう一人の自分に会ってみたい」

有民「エレンにさ、向こうに戻る時に、何かを持たせたら、それを向こうに運べないかな」

エレン「ん?」

有民「ちょっと実験してみたいんだけど、ダメかな? 僕と三笠でもう一人の自分に手紙を書いて渡すから、それをエレンに持って行って欲しいんだ」

エレン「おーいいかもな! 早速、今夜やってみるわ」

有民「折角だから三人で写真も撮ろう! 僕が現像しておくから」

エレン「写真? さっきの箱の中の絵みたいなやつか?」

有民「そうそう。あ、僕が撮るから、三人で顔を寄せようか。ハイチーズ(パシャ☆)」

そしてエレンはその日の夜、その手紙と現像した写真を小さく折り畳んで手に握って、眠ってみた。




その日の夜は、雨が長く降り続いた……。










エレン「…………は!」

目の前にアルミンの顔があった。

アルミン「エレン! おかえり! おはよう!」

少し遅かったが、無事に目覚めたエレンを見てほっとしたアルミンだった。

エレン「良かった……元に戻れたな」

アルミン「どうだった? 原因は何か掴めたかい?」

エレン「実は………かくかくしかじか」

アルミン「ええええええええ?! Σ(゚д゚lll)」

アルミンは物凄く驚いた。その偶然もそうだけど、内容に口をパクパクさせた。

一通りちょっと長い説明を聞き終えると、アルミンは非常に複雑な表情になった。

アルミン「それは……本当……なんというか、引き篭りたくなるのも分かる気がするけど……でも、解決策、ないんじゃないのかな」

エレン「いや、ある。つか、俺が何とかして解決させてやる。でないとこの現象がずっと続いちまうし、下手したら今度は俺がこっちに戻れなくなる可能性もある。そうなる前に、なんとしても、もう一人の俺を蘇らせる!」

アルミン「うん……そうか、その可能性もゼロではないね」

ずっと元に戻れる保障なんて何処にもない。

もしエレンが異世界から帰って来れなくなったら、非常に困る。

だから当然、アルミンも協力する事にした。

アルミン「そういえばエレン、その手の中の紙切れはなんだい?」

エレン「あ、向こうの有民と三笠の手紙だよ。こっちに持って来れたみたいだな」

エレンはその紙切れを広げてアルミンに手渡した。

アルミン「読めない……あ、鏡が要るんだったね。ちょっと待ってて」

アルミンは手鏡をスタンバイしてもう一人の有民からの手紙を読んだ。

もう一人の僕へ



初めまして。僕の名前は在例都 有民(アルレイト・アルミン)です。

そっちの僕はアルミン=アルレイトでいいのかな? 多分。違ってたら、ごめんね。


今回は本当に困ったことになった。

今頃エレンから事情を聞いていると思うけど、

僕達もこれからどうすればいいか、全く分からなくてお手上げ状態だ。


とりあえず、今分かっている事を整理するよ。


こっちのエレン、つまり「家賀江蓮」は精神的なショックのせいで、

自分を内側に殺してしまった。内に引き篭ってしまった。

そのせいで、そっちの世界の「エレン」が代わりに江蓮として生きる事になってしまった。


雨の日に行き来出来るのは、恐らく例の件を知った時、

雨が降っていたからだと思われるよ。


こっちは今、『梅雨(つゆ)』と言って、雨が非常に多く降る時期なんだ。

恐らく、あと一ヶ月くらいはこの状態が続くと思うから、

エレンがそっちに戻ることに関してだけ言えば、

アクシデントがない限りは大丈夫だと思うから、安心して下さい。


ただ、梅雨が終わると、『夏』がやってくるから、今度は雨が少なくなる。

僕としては、夏が来るとエレンがそっちに戻りにくくなると思うから、

出来るだけ早く問題を解決したいと思うんだ。


とても面倒をかけるけど、力を貸してほしい。

もう一人の僕の知恵も借りたいんだ。

何か気づいたことがあったら、その都度エレンに話して下さい。

宜しくお願いします。



有民より


P.S.

そっちは栗素多にそっくりな子いる?

一応確認したいのでこっそりエレンに教えて下さい。

アルミン「うはあ! なんか変な感じだけど、僕っぽいね! 手紙でやりとり出来るなら、便利だね! よし、後で僕もお返事書くよ! あれ? もう一枚ある……おお!」

そっちには折り畳んだ写真があった。エレン、有民、三笠で写っている。

アルミン「向こうの僕だ。本当、そっくりだね。三笠を見るのは2回目だけど、へーこっちと全然格好が違う。どこでこれ、描いてもらったの?」

エレン「いや、これ、絵を描いて貰ったわけじゃねえんだ。何て言うか、そこにあるものを鏡みたいに写して、そのまま絵にする機械がある。「カメラ」っていうらしいんだが、それを使うと「写真」っていう絵が出来る。2秒くらいで絵が作れるらしくて、しかも何枚も同じ絵を複製する事も可能らしい」

アルミン「2秒だって?! へー……なんかもう、僕らの世界と比べると技術が桁違いだね。……すごいや」

エレン「三笠の分の手紙もある。ミカサにも読ませてみようぜ。急ごう」

そしてエレンは朝食時にミカサに三笠の手紙を渡して読ませてみた。

ミカサ「………」

エレン「なんて書いてた?」

ミカサ「えっと…読み上げていい?」

エレン「頼む」

ミカサは手鏡を使いながら小さな声でエレンとアルミンに聞かせてあげた。

もう一人の私へ



初めまして。私の名前は赤間三笠です。

そちらの私はミカサ=アカマ、で合ってるかしら?

有民が言うには、名前の順が逆になってるそうですが、違ってたらごめんなさい。


今回、とても大変な事態が起きてしまいました。

そのせいで、そちらのエレンにはとても迷惑をかけてしまっています。

本当にごめんなさい。


「エレン」はとても優しい人です。江蓮とよく似ています。

普段の江蓮よりも、もっと優しいくらいです。

彼はこんな大変な事態になっても、もう一人の江蓮を助けようとしてくれています。

本当にエレンには感謝するしかありません。


江蓮が元に戻るまでは、そちらのエレンに私達の世界に来て貰うことになりそうです。

私はどうにかして、江蓮を元に戻したい。

彼を助けたいので、どうか協力して下さい。


我が儘言ってごめんなさい。

もう一人の私に迷惑かけます。

本当に、ごめんなさい。





P.S.

迷ったけど、フェアじゃないと思ったので話しておきます。

エレンが一度、こっちのお風呂でのぼせたので、私が、介抱しました。

裸を見ちゃった……ので、謝っておきます。

多分、逆の立場だったら、私も隠されると嫌なので……。

でも正直、ちょっとドキドキしました。

エレンはとても格好良いですね。





ミカサ「………エレン? どういう事? これ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


エレン「えっ……いや、その……?! (なんでそれバラす?! 三笠?!)」

余計な事まで書かれていたので、エレンは非常に焦った。

ミカサの目の色が暗い。黄昏より暗い。

ミカサ「この間、妙に目を合わせないと思ったら……やっぱり向こうの私とイチャイチャしてきたんじゃない………<●><●>イライラ」

エレン「不可抗力だ!! 長風呂したせいで、のぼせたんだよ! だから…その…((((;゚Д゚))))」

ミカサ「でも、裸見ちゃった……とある、ので、きっと、じっくり見られたんでしょう…? 介抱したっていうくらいだから、肌をタオルで拭ってくれたんでしょう? その女に触られたんでしょう? <●><●>じーっ」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


こえええええええ……

と、エレンは心底思った。ここで返答を間違えると命が危ない。

エレン「だとしたら、俺が被害者! わざとじゃない! 本当! 信じてくれ!」

アルミン(うわあ……修羅場になっちゃった)

エレンの焦り方を見れば絶対これ、黒だと思ったアルミンだった。

もうここから逃げたい、と思った。

ミカサ「本当? エレン、実は向こうの私も結構気に入ってるんじゃないの? <●><●>疑惑の目」

エレン「いやいやいやいやいや! 俺はこっちのミカサの方が100倍上だと思ってる! あっちの三笠は料理作るの上手いし、可愛いけど、こっちのミカサの方がすごいからな!」

ミカサ「(ピクッ)へえ……向こうの手料理、食べてきたのね(キラーン☆☆)」

アルミン(エレン、君って、本当、お馬鹿……)

アルミンは顔を覆った。自滅している。事態はますます悪化している。

ミカサ「それはエレンから頼んだの? いつ、何を食べたの? どんな料理を食べたの? どんな格好で、どんな風におもてなしをされたの? どんな感想をその女に言ったの? その女はそれを聞いて喜んだりしなかったの? <●><●>疑惑の目再び」

アルミンは「まるで現場を見てきたのか」と思った。ミカサの尋問が絶妙過ぎる。

エレン「そ、それは……アルミンが、夜、腹減って頼んだから! なあアルミン!」

アルミン「(こっちに爆弾投げないでよ!!)ええっと……うん! 僕が向こうの三笠に頼んだ。だからエレンはついでに食べただけだよ?」

とにかくアルミンは努めて冷静にミカサに説明したが効果はなかった。

ミカサ「どんな料理だったの…? <●><●>嫉妬の目」

アルミン「や、野菜がたっぷりの、お肉が混ざった、炒め物だったよ……うん、まあ、こっちじゃなかなか食べられない料理だったよ。仕方ないよ! 食糧事情が違うんだ! きっと!」

エレン「そうだ! そうなんだよ! 向こうの世界には食糧が沢山あって、こっちみたいに困ってねえから! だから三笠の料理は美味かったんだよ!」

ガタガタブルブル手を取り合って震えるエレン&アルミンだった。

ミカサ「そう……それなら仕方ない。でも、ずるい。そんなに楽しい世界なら、私も一緒に行ってみたい」

エレン「でも、一緒に手を繋いで寝るわけには……」

ミカサ「こっそりやればバレないのでは?」

エレン「バレるわ! 一発で! (こっちには男子寮にジャン達だっているんだぞ)」

ミカサ「むう…ずるい。というか、この、もう一人の私、どうみてもエレンに惹かれてるみたい。憎らしい……」

エレン「えっ……(ドキッ)」

ミカサはその瞬間のエレンの反応を見逃さなかった。

エレンもどうやら満更ではないらしい。

チッ……と内心舌打ちしたい気持ちでミカサは続けた。

ミカサ「文面を読めば誰だって分かる……。と、いうより、もう一人の私がエレンに惹かれない筈がない。絶対そのうち、本性を出してエレンを……くっ! (きっと手篭めにするにするに決まってる)」

エレン「おいちょっと待て。今、何を想像した?」

ミカサ「別に……(プイッ)」

エレン(………)

エレンは思わず半眼でミカサを睨んでいた。

アルミンは気を取り直して、

アルミン「えっとね……まあとにかく、そのもう一人の江蓮を助け出せば、もうエレンは向こうの世界に行かなくていいわけだから、なんとかしようよ。ミカサ、何か意見はあるかい?」

と言うと、ミカサも少し落ち着いて考えて言った。

ミカサ「そもそも、ひとつよく分からない事がある」

ミカサはその疑問を口にした。

ミカサ「もう一人の江蓮は、何故、もう一人の私……赤間三笠と血が繋がっている程度のことで、自分のことを、エレンに引き渡してしまったの?」

エレン「え?」

アルミン「え?」

二人は同時にミカサを見た。

エレン「いや、これ……引き篭るだろ。自殺してもおかしくねえぞ。そんくらいショックだろ」

ミカサ「そうかしら? だって血が繋がってるからと言って、それで今までと何が変わるの?」

エレン「そりゃ、変わるだろ。手出せないし、子供だって……」

作れない、と言いかけたエレンを遮ってミカサは言った。

ミカサ「血が繋がっていようがいまいが、三笠が三笠であることに何も変わりないのでは? 私がもし、今のエレンと血が繋がってても……特に何も変わらない気がするのだけども」

エレン(えええええ……)

エレンは傷ついた。微妙に。

いや、傷ついている場合ではないのだけども。

ミカサ「元々、兄妹……この場合は姉弟かしら? で、そういうエッチな事はしてはいけないのは常識的には分かっているけど、でも、それは当人同士の場合にもよる。ケースバイケースで対応するべきでは?」

エレン(え…?)

ミカサの柔軟な発言に、エレンは一瞬、期待してしまった。

それは両想いなら、兄妹でもヤっちゃっていいという考え方にも聞こえる。

エレン「お、お前……じゃあミカサは、もう一人の俺…江蓮ともう一人の三笠がヤっちゃっても問題ねえと思うのか?」

ミカサ「言わなきゃバレない(`・ω・´)キリッ」

アルミン「いやいやいや、ダメだよミカサ! それは人の道を外れるよ?!」

ミカサ「外れてもいいと思う。というより、それは外野がとやかく言う問題ではない。本人同士が惹かれあっているのなら、それはもう、本人同士が話し合うべき事。ヤリたいなら、ヤレばいいと思う」

エレン(………お前、それって)

エレンは赤面していた。

それは、ミカサがもしOKさえすれば、エレンもミカサと性交出来ると言ってるようなもんである。

エレン(いや、ダメだからな! 今はとにかく、今はダメだからな!)

エレンは必死に気持ちを落ち着かせた。

自分の場合は、彼らとは違う理由でそういう関係にはなれないのだから。比べている場合ではない。

取り敢えず、自分の事は棚上げにして、

エレン「でも多分、問題はそこ、なんだよな。江蓮にとって、ヤるかヤらないか。その問題があるから、現実から逃げ出したんだ。もう、耐え切れないんだよ。三笠を前にすると、自分を抑えられねえんだ。でも、倫理的にアウトだから……ジレンマに苦しんでる」

ミカサ「ヤってもいいと思うけど(`・ω・´)」

エレン「おま、無責任なこと言うなよ……」

ミカサ「でも他に解決方法もないと思うけど」

アルミン「ひとつ、手を思いついたけど」

その時、アルミンは口を挟んだ。

アルミン「だったらいっそ、エレンが向こうの三笠に手を出してみたらどうだろう?」

エレン「え?」

ミカサ「え?」

アルミン「それで三笠がエレンに取られてしまう……と感じて、向こうの江蓮がエレンを止めに来る……って展開にはならないかな?」

エレン「……危なすぎる賭けだろ、それ」

アルミン「危ないね。下手したら血の雨が降るね」

ミカサは既に戦闘モードの顔になっている。

ミカサ「絶対、ダメ。それは私が許さない<●><●>カッ」

エレン「わーってるよ! やらねえよ! そんな事……いくら三笠でも、それは拒否してくるだろ」

アルミン「いや、分かんないよ? 案外のってくれるかもしれない」

ミカサ「アルミン!!」

ミカサはアルミンに詰め寄った。

ミカサ「他に、ないの? アルミンならきっと、他にいい方法を思いつく!」

アルミン「うーん……そうしたいのは山々だけど、今、思いついたのはそれくらいしかないよ。要は向こうの江蓮を覚醒させる何かがないと」

エレン「覚醒させる……か」

エレンは考えてみた。もし自分が逆の立場なら、どうすれば戻ってこれるかを。

エレン「アルミンの言う通り、向こうの三笠が必要なのかもしれん」

ミカサ「エレンまで!! まさか、本当に……」

エレン「いや、向こうの三笠に手は出さねえよ。そうじゃなくて……向こうの江蓮と俺との違いを考えてたんだ」

アルミン「違い?」

エレン「ああ。決定的に違うのは、向こうの江蓮はまだ、大事な人を失った経験がないってことだ。向こうの世界では母さんも生きてるし、その喪失感を江蓮は知らずに生きてきた。だからまだ、分かんねえんだと思うんだ。失うことの怖さを」

自分の中で、三笠がどれだけ大事な存在なのかを。

エレン「だから、それが分かれば……江蓮の中で三笠がどれだけ大事な人間なのか再認識出来れば、江蓮も元に戻れるんじゃねえかなって気もすんだけど……うーん、具体的にはどうすればいいんだか」

アルミン「それって、向こうの江蓮にもっと、三笠の存在を意識させるって事?」

エレン「平たく言えばそうだな」

アルミン「でも、今は意識が戻ってないからどうしようもないんじゃ…」

エレン「そうなんだよな。でも、そこを何とかしねえと……」

その時、ピンときた。

しかしその為にはハードルがある。

エレン「……アルミン、やっぱ俺、ミカサと一緒に一度、向こうに行ってみるわ」

アルミン「え? いいの?」

エレン「うーん、これが成功するかどうか分かんねえけどな。でも多分、やってみる価値はある気がする」

ミカサ「本当? では私も一緒にエレンと寝れるのね?」

ミカサは素直に喜んだ。一緒に寝るのは久しぶりだからだ。

エレン「やるしかねえな。でもどうすっかなー…ジャンにバレたら、絶対突っ込まれるし」

アルミン「うーん……(;´д`)」

アルミンは考えた。誤魔化す方法を。

アルミン「ベタだけど……僕とミカサが入れ替わって変装……は、無理か。身長差が有り過ぎる」

エレン「あ、入れ替わりか。そっか、その手もあるか。うーん…」

ミカサ「あ、では、サシャとエレンを入れ替えて、エレンを女子寮に連れてくるのはどうだろうか? サシャは身長がエレンとあまり変わらない。確か、168センチだと言っていた」

エレンは170センチなので確かに背格好は近いと言える。

アルミン「あ、それいいかもね! ぱっと見なら誤魔化せるかも!」

エレン「布団めくられたらアウトだけどな……まあサシャならパンを恵んでやれば、協力してくれるかもしんねえし、いいかもな」

アルミン「じゃあ僕達のパンをちょっとずつちぎって、サシャに交渉してくるよ」

コニーの傍で雑談をしていたサシャに近づいて、アルミンは早速交渉してみた。こそこそと。

すると、サシャは二つ返事でOKした。

サシャ「私とエレンが入れ替わり? ふふふ……何だかドキドキしますね。いいですよ。一晩だけなら。いつにしますか?」

アルミン「出来れば、夜に雨が降ってる時がいいんだけど」

サシャ「(くんくん…)この感じだと、今夜あたりに降り出す可能性は高いと思いますよ」

アルミン「鼻でわかるんだ」

サシャ「山育ちなので、天気には敏感なんです。では、今夜雨が降ったら、こっそり男子寮に忍び込めばいいんですね? エレンに変装して行きますね! エレンも私の格好して下さいよ!」

アルミン「了解! それっぽくして女子寮に送るよ」




そしてエレンはこっそりサシャと入れ替わり、ミカサと手を繋いで寝ることになったのだが……

女子はエレンを見つけるなり「なんだなんだ?」と騒ぎ出した。

即行、バレてしまったのである。

アニ「……何やってんの? エレン」

呆れたように言ったのはアニだった。

気だるげに、面倒くさそうな視線をよこす。

エレン「……やっぱ、バレるか」

アニ「バレないと思う方がおかしいと思うけど? 何、こっち来てんの?」

エレン「悪い。一晩だけ、見逃してくれ」

サシャの格好をしたエレンがアニや他の女子に拝み倒す。

一同は戸惑い、お互いを見合う。

アニ「はあ? 無理に決まってるでしょ。チクってくる…(スタスタ)」

ミカサ「アニ! お願い! 一生のお願い! 今夜だけ、見逃して! エレンと一緒に寝たいの!」

アニ「(またミカサの我儘か……にしても珍しい。エレンはミカサに甘いけど、こういう我儘はいつもなら通さないのに)……ダメ。庇ったら、私達も連帯責任になる」

ミカサ「そこをなんとか…パンをあげるから!」

アニ「ここにサシャがいないのは、パンで買収したせいか。言っとくけど、それ相応の理由がないと、私達を口止めすることは出来ないよ? ただ見逃せっていうのは、あまりに虫が良すぎるんじゃないかい?」

エレン「……(どうする? 話すべきか? でも、信じて貰えるとは思えねえ)」

ユミル「まあまあ、アニ、そうカッカすんなって。何か人に言えない事情があるんだろ? エレン、一晩くらいなら、私はいいよ。ミカサとエッチなことしないならな」

エレン「ああ、それは絶対、約束する。ただ、一緒に手を繋いでミカサと寝たいだけなんだ」

アニ「なっ…! (赤面)あんた、そんな事言えるようなキザな男だったの…?」

女子一同は、ちょっと照れている。

正直言って、そういうのに結構、女子は憧れるのだ。

エレン「?」

エレンはしかし意味を分かっていない。無理もないが。

アニ「……ったく、この借りは大きいからね。後でいつか、絶対返してもらうから、女子全員に。いいね」

エレン「ああ! 勿論だ!」

ミカサ「では、そろそろ…エレン」

そしてエレンはミカサと一緒の布団に入って、眠りに落ちた。





雨はしとしとと降り続いた……。

…と、いうわけで遂にエレン&ミカサが現代に行っちゃいます。
後日、エレンとミカサが現代でデートする予定なので、
二人に行ってもらいたい場所があれば、下に書いておいて下さい。
この時点ではデートプラン、まだ白紙なので。

具体的な地名より、施設名の方が助かります。
ボーリング、とか、カラオケとか。そんな感じで。

今日はこの後、予定があるので続きはまた少し間空くと思います。
それまでに、よろしくです。ではまたノシ

おつ
施設じゃないがミカサにも美味しいもの食わせたいな
あとなんかクレープとかケーキとかの甘いもの

>>203
クレープと、チョコバナナにしてもいい?
クレープ屋なら、チョコバナナもある筈。多分。

水族館行ったらどんな反応するのか気になる。

アクセ屋とか女モノ売ってるとこ行ったら女らしいとこが見れたりして

テレビでアイドルをみてアイドルの真似とかしちゃうミカサがみたい

ランジェリーショップとかにいってわたわたする二人をみたい

テレビにびっくりするだろうな

おお…なんかいつの間にかいろいろ案が増えてる。
みんなありがとう…!
エレミカパートが長くなりそうだけど、頑張る!
今日からまた、ちょっとずつ再開していくよ!













エレン「………は!」

エレンは目覚めた。日付は6月11日の朝になっていた。

エレン「よし、こっちに来れたな。ミカサはどうなった?」

アルミンの時は成功したので恐らく大丈夫だとは思うが念の為、エレンはすぐさま三笠(ミカサ)を起こしに行った。


ガラ……


エレン「ミカサ! 起きろ!」

ミカサ「ん……あ、エレン?」

ミカサも目覚めた。ミカサ=アッカーマンとして。

ミカサ「………ここ、何処?」

見慣れない景色に戸惑う。キョロキョロしている。

エレン「もう一人の三笠の部屋だ。無事にこっちに来れたな。良かったー……」

エレンはミカサを抱きしめた。ミカサはまだ戸惑っているようだ。

ミカサ「ここがエレンの言ってた異世界ね。私はここで何をすればいいの?」

エレン「そうだな……とりあえずそれを説明する前に、こっちの有民に会いに行こう! 学校行くぞ!!」

朝飯を食べる為に下に降りると、そこには迦楼羅がいた。

迦楼羅「あら、今日は早いわね。二人共。朝ごはん、もう少し待ってて頂戴。今、出来るから」

ミカサ「おばさん……!」

ミカサは、涙が出そうになった。

迦楼羅「ん? どうしたの? 三笠、頭ぐちゃぐちゃよ? 女の子なんだから、シャワーでも浴びて整えてきなさい。エレン、あんたは顔洗いなさい」

エレン「ああ! 洗ってくる!」

エレンはミカサを引き連れて、洗面所に移動した。

迦楼羅(最近の江蓮はちょっと素直ね。嬉しいわ。うふふ)

江蓮(エレン)の後ろ姿を見つめて微笑む迦楼羅だった。

エレン「えっとな、基本的には風呂の使い方は同じだ。けど、シャンプーとか、ちょっと違うところもある。俺が説明すっから、よく見とけよ」

そう言って、エレンはシャワーの使い方をミカサに教えた。

ミカサは目を丸くしていた。

ミカサ「すごい……何だか高性能……」

シャワーの水の勢いに驚いてしまう。

エレン「だな! 使いやすいだろ? とりあえず、シャワー浴びとけ。その間に必要な着替えは俺が持ってきてやるから。下着の色は適当でいいよな?」

ミカサ「エレンに任せる」

エレン「んじゃ、一回部屋戻るわ。なんかあったら、すぐ俺を呼べよ!」

ミカサ「うん」

そしてミカサはシャワーをなんとなく使ってみた。

勢いよく出るお湯に、おっかなびっくりしながら。

ミカサ(すごい…勢いよく出る。私達のシャワーと全然違う。ちょっとしか出ないから、こっちの方がすごい…)

ミカサはシャワーの違いに感動しながら、体を洗った。

そしてエレンが用意してくれたタオルで体を拭き、下着を着る。

しかし制服の奇妙な形に一度、首を傾げた。スカートが極端に短い。

ミカサ(こ、こんなスカートをはくの? ちょっと恥ずかしいけど)

慣れないミニスカートに戸惑いながら、ミカサは制服に着替えた。

そしてリビングに戻る。

ミカサ「エレン、これでいいの…? (もじもじ)」

慣れない感じで制服を着こなすミカサに、エレンは朝っぱらから下半身がフル稼働しかけて悶絶した。

もじもじが可愛すぎる……。

ミカサ「え、エレン…?」

エレン「いや、普通にしとけって。もじもじすんなって」

ミカサ「だって、いつものロングスカートより、スースーするから」

ミカサが照れているのを見て、エレンは鼻血が出た。不覚にも。

迦楼羅「江蓮! あんた、朝から何やってんの! もう!」

それにすぐ気づいた迦楼羅はティッシュをやった。

迦楼羅「本当、鼻血の多い子ね! 困ったもんだわ! またどうせ鼻くそほじったんでしょ?」

エレン「ほじっ……………ほじった。ごめん」

ほじってない、と言えば、迦楼羅に真実を追求されそうで怖かったので誤魔化したエレンだった。

迦楼羅「ったくもう、あんたもう、中学生よ? 小学生じゃないんだから、鼻ほじりはもうやめなさい! いいね!」

エレン「……はい」

エレンは赤面しながら頷くのだった。

ミカサ「エレン……とても素直ね(クスクス)」

エレン「し、仕方ねえだろ。俺だって、後悔してんだ」

死ぬ間際に母の前で素直になれなかった最期の時を思い出す。

エレン「もう、後悔したくねえから、こっちじゃ素直になってんだよ。出来るだけ、な」

ミカサ「その方がいいと思う。エレン、ご飯食べよう」

エレン「ああ、そうだな」

そして食卓につくエレンとミカサだった。

ミカサ「おいしい…この土色のスープ」

エレン「味噌汁っていうらしい。うまいだろ?」

ミカサ「うん、ゆで卵も美味しい。このねばねばしたの、何?」

エレン「納豆って言うらしい。かき混ぜてから、白いご飯の上にのっけて食べるんだ」

ミカサ「分かった」

ミカサはねばねばと格闘しながら食べた。

ミカサ「変な味………不味くはないけど、ちょっと食べるのに苦労する」

口元がねばねばでいっぱいだった。ちょっと朝からいやらしい。

エレンは思わずまた、赤面した。

エレン「口、拭きな。紙やるから(ドキドキ)」

ミカサ「う、うん…(フキフキ)」

ティッシュで口元を拭き、ミカサはまごまごしながらも全部綺麗に食べた。エレンも完食する。

エレン「ごちそーさまでした! 母さん! 今日も美味かった! あんがと! 学校行ってくる!」

迦楼羅「いってらっしゃい。車に気をつけるのよ!」

エレン「はーい!」

そしてエレンとミカサは家を出たのだった。

ミカサ「お、大きい……Σ(゚д゚)」

ミカサは外に出て今居た家がとても大きいことに気づいた。

エレン「まあな。いい暮らしさせて貰ってるよ。父さんのおかげだ」

ミカサ「おじさんもいるの?」

エレン「こっちの親父も毎日忙しいみてえだけどな。其の辺は、行方不明になる前とほとんど変わんねえみたいだ」

ミカサ「あれは………もしかして有民(アルミン)?」

有民がこっちに向かって歩いてきた。

有民「エレン! 三笠! おはよう! どうだった? 手紙は届けられたかな?」

エレン「ああ! うまくいったぜ! あとすまん、俺の判断だけど、一回向こうのミカサをこっちに連れて来た」

有民「え?! そうなの? あ、初めまして。在例都有民です。よろしく」

ミカサ「こちらこそ宜しく。私はミカサ=アッカーマンです」

有民「アッカーマン? ちょっとだけ名前が違うね。だとすると、発音の関係でそうなったのかな? まあいいや、こっちに来るのは初めてでしょ? 印象はどうだい?」

ミカサ「なんだか不思議な感じ。まだちょっと夢を見てるみたい」

エレン「だろうな。俺も最初はそんな感じだった。慣れるまでは大変だけど、まあ大丈夫。俺も有民もついてるからな!」

有民「うん! なんでも頼っていいからね!」

ミカサ「ありがとう。やはりこっちの有民も頼れるいい男なのね」

有民「え? いやだな……そんな……ははは(〃ω〃)」

エレン「いや、その通りだ。有民のおかげでいろんな事分かったしな。そうだ、俺達のアルミンから手紙預かってたんだ。読んでやるから聞いてくれ」

エレンはその場で朗読した。アルミンからの、有民への手紙である。

もう一人の僕へ



初めまして。お手紙ありがとう。

僕の名前はアルミン=アルレルトです。

「ル」と「イ」がちょっとだけ違うみたいだね。

一文字違いの僕に会えないのは残念だけど、

代わりにエレンに手紙を託すので読んで下さい。



そちらはとても大変な事になっているようだね。

事情は全部エレンから聞きました。

そちらの世界の「江蓮」を再び呼び起こすには、

多分、とても大変な荒療治が必要になると僕は思う。



僕がまず思いついた方法のひとつは、エレンが三笠に手を出すこと。

そうすれば、もう一人の江蓮がきっと止めてくれるんじゃないか…と思ったけど、

この方法はリスクが有りすぎるから、エレンにもミカサにも却下されたよ。

ま、これはどうしようもない時の、最後の手段にしよう。



そしてもうひとつ、エレンが言うには、

『今より江蓮に三笠を意識させること』で、

もしかしたらうまくいくかもしれないという事。


一見、矛盾しているように見えるけど、

要は、江蓮の心の中で、三笠がどれだけ大きな存在か、再認識させるんだ。

その為の方法として、エレンはミカサをそっちの世界に連れて行くことにしたみたい。

うまくいくか分からないけど、健闘を祈るよ!



BY アルミン


P.S.

栗素多にそっくりなクリスタ……かどうかは分からないけど、

こっちのクリスタの似顔絵を描いておきます。

とっても可愛い子だよ!

そして手紙の端にちょこっと描かれたクリスタの絵に有民は、

「やっぱり女神がいる!」と興奮していた。

アルミンの絵が結構、上手だったからだ。

エレン「と、いう訳なんだ。ちょっと実験みてえになるけど、一回、ミカサをこっちに呼んだんだ。三笠には悪いとは思うけど、後で謝るからさ。大目に見てくれ」

有民「勿論いいさ! 試せる事は何でも試そう! で、具体的にはこれからどうするの?」

エレン「あー……」

エレンはその時、ちょっと恥ずかしそうに言った。

エレン「まあ、正直これで、うまくいくかどうかは分かんねえけど……俺とミカサで、イチャイチャしてみるわ」

有民「ん? イチャイチャ?」

ミカサ「? どういう事? エレン(嬉しいけど)」

エレン「ああ、まあ、つまりだな。ちょっと、こっちの俺達が、擬似的に江蓮と三笠の代わりにイチャイチャしてみる。俺の中に江蓮がいるなら、これで何か反応するんじゃねえかって、思ってな。その可能性に賭けてみる」

ミカサ「な、なるほど! アルミンの案を、私でやるって事なのね! (それなら良い!)」

エレン「ま、そういう事だ。だから俺とミカサは、普段通り、こっちの世界で生活してみる。有民はちと寂しくなるけど……すまねえな」

有民「仕方ないよ。僕のことは気にしないで(ニコッ)」

エレン「つー訳で、今日も一日、頑張っていくぞ!」

ミカサ&有民「「おー!」」

三人は円陣を組んで気合を入れたのだった。

学校に着くと、何故か三笠……今はミカサだが、女子バスケ部の先輩に絡まれてしまった。

二年女子「ちょっと赤間さん! 朝練来れないなら、ちゃんと連絡しないとダメじゃない! メールとか電話とか、いくらでも連絡できるでしょ! 無断で休まないでよ!」

ミカサ「えっ……えっ……(オロオロ)」

二年女子「全く…いくら期待の新人だからって、ずっかけてもらっちゃ困るんですけど?! (ズイッ)」

エレン「すんません! 今朝こいつ、体調悪くて、来るのが遅くなったんです! 連絡ミスは俺の責任です! だから本当すんません!」

教室に押しかけてきた女子バスケの先輩にエレンはすぐさま対応した。

ミカサはまだ、こっちの生活を何も分かってない。

エレンの真摯な対応に、向こうも渋々引き下がった。

二年女子「……放課後は? 出られそうなの?」

エレン「はい、もう大丈夫だと思います!」

二年女子「ならいいわ! 今度からはちゃんとしてよね! (ピシャン!)」

勢いよくドアを閉めて先輩は帰っていった。

今のは恐らく二年の先輩だろう。名札のカラーが違った。

どうやら一年は緑、二年は青、三年は赤色の名札をしている。

エレンは取り敢えずほっとしたが、ミカサはむっとしている。

ミカサ「なんなの? あの女……削ぐ(シャキーン☆☆)」

エレン「ちょ……ブレードないのにブレード構えるポーズすんな! 今のはバスケ部の先輩だよ。この世界の三笠は女子バスケ部に入ってるんだ。だから、朝から練習しているんだよ。今日はそのことすっかり忘れてたから……わりい。俺のせいだ。連絡しとかないといけなかったんだ」

連絡、連携ミスは命取りになる事を訓練で叩き込まれているエレンは素直にその非を詫びた。

所謂、超体育会系の人間なので慣れているとも言う。

ミカサ「そうなの……それは面倒ね」

ミカサは眉間に皺を寄せて言った。

ミカサ「私はその、この間エレンとやったバスケをしないといけないのね」

エレン「そうだな。面倒だけど、頼むわ」

ミカサ「問題ない。エレンの頼みなら、必ず完遂する」

キリッと気合を入れるミカサだった。

その後の授業はエレンと有民の協力の元、問題なく進んだ。

唯一困ったのは、英語の授業だったが、幸運にも今日の三笠(ミカサ)は先生に当てられなかったのだ。

その分、エレンに負担がきたが、有民のおかげでクリア出来た。

そして放課後、ミカサは初めて他人とバスケをする事になった。

体育館で男子と女子が半分ずつ面積を分け合って練習している。

エレンはコートの隅でドリブルだけやっていた。

左手でずっと10000回のノルマをこなしている様だ。

ミカサははてなを浮かべていた。何故エレンだけ、差別されているのか。

腑に落ちない。エレンは気にするなと言っているが……。

飯時「三笠! もう大丈夫なの? 朝調子が悪かったんだって? 無理はしないでね!」

ミカサ「はい…」

とりあえず、頷く。知らない人間ばかりで少し心細かったが、ミカサはミニゲームに参加した。

ミカサ(大丈夫。ルールはだいたい分かってる。まずは状況を見る。訓練でやっていることを応用すればいい……)

ミカサの天舞の才はステージを変えても変わらなかった。

三笠も凄かったが、ミカサはそれを更に上回る。

長距離3Pシュート、でたらめな守備範囲、動きの先読み……

あげればキリがないが、ミカサのプレイは男子と遜色ない。

その圧倒的な実力に女子は勿論、男子部員も見蕩れてしまう程だ。

エレン(ま、当然っちゃ、当然か。ミカサにしてみれば、ガキの遊びと変わんねえだろうな)

ミカサはしかもほとんど汗を掻いていない。

これでもまだ、手加減してプレイしているのだ。

エレン(やっぱ、すげえなミカサは……)

エレンはちょっぴり嫉妬しながら、それでも誇らしいような思いでニヤニヤしながらドリブル練習に励むのだった。

エレンの視線に気づいて、ミカサも微笑み返しをする。

しかしその様子を快く思っていない女子もいた。

ミカサにレジュラー枠を取られた先輩である。

二年女子1(なにあいつ……男子に色目使いながらプレイしてる……)

いくら実力があるからといって、そんな不純な気持ちでプレイはして欲しくなかった。

二年女子2(仕方ないよ。赤間、男子並みにうまいもん)

二年女子3(まあね……でも、正直言って、ムカつく)

二年女子4(飯時先輩のお気に入りだしね……)

ミニゲームを観戦しながら、ひそひそと噂話をする二年女子だった。




ミカサは無事に部活動を終えると更衣室で着替え、エレンと一緒に帰ろうとした。

しかしその時、陰でこそこそ話すその声を聞いてしまった。

エレンを待っている間に、二年女子の陰口を聞いてしまったのである。

二年女子1「なにあの動き……人間技じゃないよね」

二年女子2「赤間の奴、何やらせても出来るんでしょ? なんでバスケ部入ってきたんだろうね、今更。ちょっと迷惑だよね。うちら、新体制に入ってやっと慣れてきたところだったのに」

二年女子3「散々断っといて、今更入ってくるんだもんね。こっちはやりづらいよ……」

二年女子4「あれでしょ? 後から入ってきた男子…家賀だったっけ? あの子が男バス入ったから、くっついてきたんでしょ? 元々は男子のマネージャー希望してたらしいよ。でもあっちで断られたから、女子バスケに入ったって話らしいよ」

二年女子1「やっぱりそうだったんだー…うわあ…ひくわー…」

夜なので、昼間よりも声が響いている事に彼女らは気づいていないようだ。

二年女子2「っていうか、何でよりによって、バスケ部選ぶのよ、家賀って子。あいつ、絶対レギュラー無理でしょ? ドリブルやらされてる時点で気づけって話よ。一年は基礎体力から入るのに、あの子だけでしょ? ドリブルやらされてるの」

二年女子3「なんか、ど素人らしいから、それ以前の問題らしいよ」

二年女子4「素人がうちの男子バスケ部入るなって話だよ。せめて小学校でやっておけよって感じ」

二年女子1「多分、あっちはあっちで別の意味で迷惑してそう……男子は女子より強いしさ。本当、赤間と家賀の性別が逆だったら良かったのに!」

二年女子2「本当だよー! あいつら、性別逆の方がいいって! 絶対!」

二年女子3「言えてる言えてる」

ケラケラ笑っている女子をこっそり見つめながら、ミカサの目は暗くなっていた。

そしてわざとその女子達のあいだを通り過ぎる。

ミカサの気配に遅れて「あ……」と気づいた女子一同だったが、時既に遅し。

ミカサ「………」

ミカサは無言で立ち去った。

軽蔑する価値もないと思ったからだ。くだらない。

女子一同「……………………」

その態度にかえって恐怖を感じる女子一同だった。

エレン「おーミカサ! 待たせたな! 帰ろうぜ!」

ミカサ「…………」

ミカサが少し不機嫌だったので、エレンは首を傾げた。

エレン「どーした? 何かあったのか?」

ミカサ「別に…」

エレン「嘘つけよ。お前、機嫌悪くなったり、誤魔化したい時、ほんの少しだけ目線下げる癖あるだろ」

(*進撃の巨人5巻参照。ジャンに問い詰められる時と、その前にリヴァイ兵長に対する怒りでそれっぽい動作をしています)

ミカサはくいっと顔を上げた。

ミカサ「もう大丈夫。大した事ではない」

エレン「……やっぱ何かあったんじゃねえか。あれか? 先輩か、他の女子がなんか陰口叩いてたんだろ」

ミカサ「何故分かったの?」

エレン「大方俺の方の陰口だろ? お前いつもそうだろ。自分のことは平気でも、俺のことに関する事……俺が馬鹿にされたりするといつも機嫌が悪くなる。多分、俺が入部してんのをあんま良く思ってないか、笑ってる奴がいたんだろ? それくらい予想つくさ」

ミカサ「……エレンは何故、バスケ部に入ったの?」

エレン「ん? そりゃ面白かったからに決まってるだろ。楽しいぜ? 玉遊び」

ミカサ「でも今日はずっとボールをついているだけだった……」

エレン「あれが基礎らしいからな。俺、素人だし。もう少し慣れるまでは、ずっとドリブルとハンドリングの反復練習だな。全体練習にはまだ、参加できねえんだ」

ミカサ「そう……それでも楽しいのね」

エレン「勿論だ! 俺が自分で選んだ部だしな。こんなの普段の訓練の苦労に比べれば、楽な方だぜ」

ミカサ「そう……(いいな。私は別に楽しくなかった)」

点を決めても、パスをしても、あまり楽しくなかった。

知らない人とプレイをしたからというのもあるが、元々ミカサはエレンがいなければあまり意味がない。

幸いなのは、今日のプレイをエレンが見ていてくれた事くらいか。

エレン「…………なんか、無理させちまったみたいだな」

ミカサ「え? そんな事ないけど」

エレン「気遣うなって! ま、暫くは我慢してくれ。本題は、ここからなんだ」

ミカサ「本題……あ」

そう言えば、イチャイチャするとか言っていた。

ミカサはついついポッと赤くなる。

ミカサ「そ、そう言えばそうだった。あの…エレン…これから、どうするの? (デート? デートをするのよね?)」

エレン「そーだなー…俺も正直、ノープランなんだが……まあ、カップルっぽいことを擬似的にしてみようぜ」

カップルと言えば、思い浮かぶのはアレしかない。

ミカサ「で、では、キスを……?! <●><●>くわっ!」

エレン「いやいや、そこまでせんでいいわ! なんかそうだな……ミカサ、腹減ってねえか?」

ミカサ「そうね。少しすいたかも」

運動したせいでお腹は少しすいている。

エレン「だったら、ちょっとコンビニに寄ろう。なんか好きなもん買ってやるから、一緒に食べようぜ」

そしてエレン達はまたローソンに入った。

ミカサはきょとんとしている。商品の数が多すぎて、目を回しているようだ。

エレン「(俺と全く同じ反応してんな)ミカサ、今、何食べたい?」

ミカサ「とりあえず、食べられたら何でもいい……」

エレン「俺もそんなに知ってるわけじゃないからな……まあいいや。またカロリーメイトとプリンを買おうっと」

前回、三笠と一緒に食べた物と同じものを購入するエレンだった。

エレン「これ、超うめえんだぜ? 食ってみろよ」

パッケージを外して、ミカサに食わせてみる。

黒っぽい四角い棒状のものをじりじろと見つめてミカサはそのままぱくっといった。

ミカサ「(サクッ)……おいしい」

ポッと赤くなって言うミカサにエレンも喜んだ。

エレン「だろ? 安いしうまいし、最高だよな、これ!」

コンビニの前で二人してうまうま頬張る。

食べかすがついてしまうくらい、ぺろりとあっと言う間に食べてしまった。

エレン「このプリンってやつも美味いんだぜ? 食ってみろ」

透明なカップと匙を渡す。

ミカサはどうやってこれ開けるんだろう?

と一瞬迷っていたので、蓋は簡単にめくれることを伝えた。

すると、簡単に開けられたので、ミカサはそれに感動していた。

ミカサ「プルプルしてる……んっ……!」

喉を通っていくまろやかな快感に、ミカサは一瞬、身悶えた。

ミカサ「何これ…甘い…美味しい……ああん!」

エロい声をあげちゃうミカサに、エレンはちょっとびっくりした。

エレン「おいおい、声、出てんぞ」

ミカサ「あ、ごめんなさい。つい…もっと食べてもいい?」

エレン「勿論いいぜ……(こいつなんか急にエロくなったな)」

プリンを食べるミカサを見ていたらついついドキドキしてしまったエレンだった。

>>224
訂正

黒っぽい四角い棒状のものをじろじろと見つめてミカサはそのままぱくっといった。

じりじろ、になってた。じろじろ、です。

ちょっとこの後、出かけるので、一旦ここで区切ります。
続きはまた今度。またねーノシ

>>.221
今更訂正

ミカサの天賦の才はステージを変えても変わらなかった。

漢字の変換ミスだー。
てんぶって入れちゃったせいで間違えた。ただしくは「てんぷ」の才です。

>>221
訂正の訂正

ミカサの天賦の才はステージを変えても変わらなかった。

漢字の変換ミス。てんぶ、ではなくてんぷ。

支援&期待

>>229
ただいまですー! ありがとうー!
今日は出来れば区切りのいいとこまで一気にいけるように頑張る。

ミカサ「んー! 美味しい…! (´∀`)」

プリンの底の方まで綺麗に食べ終わったミカサは満足そうに笑った。

ミカサ「エレン……ありがとう。こんなに美味しい物を私に食べさせてくれて…」

エレン「(ドキッ)お、おう…そんな大した事じゃねえよ。でも良かった。これでちょっと腹もたまっただろ? なんか行きたいとこねえか?」

ミカサ「……特には」

エレン「参ったなあ。俺、こういう時、どういう風にしたらいいか全然分からんぞ……」

時間もそう多くあるわけではない。

現在夜の7時半くらいだ。あまり遅くなると、迦楼羅も心配するだろう。

ミカサ「二人で何処かに行きたいの?」

エレン「ああ…まあ…俺達がイチャイチャしていれば、もう一人の江蓮がなんか反応すんじゃねえかって思ったんだけど」

今のところ、それらしい変化はない。

ミカサ「なるほど…イチャイチャが足りないのかもしれない。ではもっとイチャイチャしよう、エレン(`・ω・´)キリッ」

エレン「(気合入ってるなあ)……取り敢えず、違うところに移動すっか」

エレンはミカサの手をひいて、夜の街並みを歩いた。

途中で小さな商店街に遭遇した。

そこにはクレープ屋があった。チョコバナナも売っている。

エレン「なんだろこれ…これも甘い匂いするな」

ミカサ「食べてみる?」

エレン「腹に入るか?」

ミカサ「私は余裕……エレンは?」

エレン「俺も超余裕。よし、食べてみるか!」

エレンはどっち先に食うかなと迷ったが、取り敢えず、チョコバナナを選択してみる。

ミカサはクレープを選んだようだ。

エレン&ミカサ「「せーの!」」

二人同時にかぶりつく。

エレン「あめえ! プリンとまた違った甘さだ…これ」

ミカサ「こっちも美味しい……中に果物が挟まってる。白いクリームも美味しい」

エレン「次、交換してみるぞ、ミカサ」

ミカサ「うん!」

クレープとチョコバナナを交換する。

また同じような反応をするエレンとミカサだった。

しかし、ミカサがチョコバナナを食う姿は……

ちょっとイケナイ図に見えなくもない。

エレン「うっ…! (しまった、なんかまたエロい)」

視覚的な刺激というか、攻撃に、エレンは怯んだ。

ミカサは無自覚に溶け始めたチョコレートを地面に落とさないように掬い舐めている。

その仕草がまるで、ナニかを舐めている図と重なって見えてしまう。

エロい。これはエロい。

エレン(いかん、ちょっとこれ失敗した!)

妄想のせいで心臓が高鳴りすぎて赤面するエレンに、ミカサは気づいて「どうしたの? エレン」と覗き込むように聞く。

エレン「(プイッ)な、なんでもねえ! そのチョコバナナ、もう一回食いてえから、返してくれるか?」

ミカサ「どうぞ」

そしてもう一回、またお互いのものを交換して今度は最後まで食べるエレンとミカサだった。

これは俗に言う「間接キス」に入るのだが、彼ら二人にはそういう知識というか、概念がない。

通りすがりの男子学生はそれを横目に入れると「リア充死ね!」という視線を送っていたが、エレンとミカサは全く気づいていなかった。

エレン「………」

今夜は雨の降る気配がない。

もしかしたらもう一日、こちらに滞在する事になるかもしれない。

長引けば長引くほど、元の世界に戻りづらくなるな、とエレンは感じてしまっている。

クレープとチョコバナナを食べ終えて、空を見上げながらエレンは言った。

エレン「幸せだな…」

ミカサ「え?」

エレン「こういう毎日、幸せだよな。こんな贅沢知っちまったら、あの過酷な日常に帰るのが億劫になってくるぜ」

ミカサ「そうね…でも…」

エレン「ああ、分かってる。こっちの世界は骨休みする程度にしか考えてねえよ。だから……」

エレンは思い切ってミカサの手を握った。細道に引っ張り込む。

エレン(絶対、江蓮を蘇らせなきゃなんねえ)

そう思って、エレンは路地裏にミカサを連れ込んだ。

人気の少ない暗闇の中でエレンはミカサと二人きりになった。

ドキドキする。

街の音は、聞こえる。ガヤガヤと。

サラリーマンの団体や、学生の足音も聞こえる。

喧騒を背景にして、エレンはミカサに近づいた。

ミカサは目を丸くしている。

ミカサ「エレン? え…その…まさか…本当に?」

エレン「んーわりぃ。さっきはいいやって思ったんだけどさ、気が変わった。やっぱキスしてみたくなった」

ミカサ「え……す、するの? ここで? (ドキドキ)」

エレン「ああ……やっぱそんくらい揺さぶりかけねえと、もう一人の江蓮は出てこねえんじゃねえかと思ってな」

ミカサ「エレンと、キス……(ポーッ)」

エレン「嫌なら、いいんだ。こんな形でするのはミカサも不本意だろうし」

ミカサ「遠慮せずにどうぞ(`・ω・´)キリッ」

エレン「(頼もしいなミカサは……)じゃあ、ちょっとだけするからな。目を閉じててくれ」

エレンは触れるだけの軽いキスをするつもりで、甘ったるい匂いを嗅ぎながら、唇を近づけた。



が………!!



エレン(あれ…?)

あと数センチのところで、それ以上何故かミカサに近づけなかったのである。

エレン(おかしい…なんか、近づいても、体が勝手に反発する)

まるで見えない力に押されるように、唇に触れない。直前でずっとお預け状態だ。

あまりにキスが遅いので、ミカサは目を開けた。

ミカサ「どうしたの? エレン、キス、しないの?」

エレン「いや、してえんだけど、これ以上、顔を近づけらんねえ」

ミカサ「え? ………あ! 本当だ! 何故?!」

まるで透明な板に遮られるかのようだ。

というか、どうやら、キスをしようとすると、自分以外の力が作用しているような……

ミカサ「もしかして、これって、もう一人の江蓮と三笠が抵抗しているのかしら」

エレン「あ、なるほど。これ以上近づけないって、お互いの理性が止めてんのか……だったら、どこまでがOKで、どこからがダメか、ちょっと調べてみんぞ」

ミカサ「う、うん……」

エレンは考えた。とりあえず、胸もみもみはいけるかどうか、試す。

エレン「うおっ…! おっぱいはOKか! なんでだ?!」

ミカサ「あん…! (ビクン)」

エレン「ぎゃあああああ!! (いてええ!)」

ミカサが喘いだ直後、右手に電流が走った。

エレン「くそっ…やっぱりダメか。尻は……」

ミカサ「いやん…(ビクン)」

エレン「うぎゃあああ!? (またか!)」

どうやらミカサが喘ぐと、それに合わせて理性が復活してストップがかかるようである。

エレン「うーん、これじゃあイチャイチャしようにも出来ねえな。参ったな」

ミカサ「声を我慢してみようか?」

エレン「出来るのか?」

ミカサ「頑張ってみる」

エレン「んじゃ、やってみるぞ? (もみもみ)」

ミカサ(プルプル…)

エレン(お、さっきより揉める。……ハッ!)

エレンはその時、自分の下半身がすっかり元気になっている事に気づいた。

そして直後、やっぱりまたビリビリがくる。

ミカサ「……やっぱりこれでもダメなのね。他の部分も試す?」

エレン「いや、もうこの辺でいい。(正直、すまんかった。もう一人の俺…)」

エレンはすっかり反省して、ふーっと息をついた。

エレン「とりあえず、新しい事が分かったな。なんか俺達がイチャイチャしようにも、もう一人の江蓮が納得してねえ事は出来ねえみたいだぞ」

ミカサ「頑固ね……」

エレン「まあ…もう一人の俺、だからな。其の辺は仕方ねえ」

そして夜、ご飯を食べて、風呂に入り、布団に入ると、ミカサはエレンの部屋に訪れた。

エレン「ん? ミカサ、お前の部屋は隣だぞ?」

ミカサ「エレン、イチャイチャの続き、しよう」

エレン「え?」

ミカサ「イチャイチャの醍醐味といえば、一緒に寝ること! (キラーン☆☆)

エレン「えっ…!? あ、そうか。それもそうか……」

多分、最も優れたイチャイチャは一緒の布団で寝ることだ。

それに勝るイチャイチャはない気もする。

エレン「えっと…その…でも、触るとまた、ビリビリがくるかもしんねえから……少しだけ離れて寝るぞ?」

ミカサ「手は繋いでてよい?」

エレン「それは大丈夫だった。まあ…うん、じゃあ一緒に寝るか」

エレンは明かりを消して、ミカサと一緒に同じ布団に潜った。

ミカサの顔を見ているとほっと安心する。

エレン「今日は疲れただろ? ミカサ……」

ミカサ「ううん。私は大丈夫」

エレン「明日も多分、まだこっちにいることになるかもしんねえけど……頼んだぞ」

ミカサ「雨が降らない限り、こっちにいないといけないのよね?」

エレン「ああ。今夜の降水確率は10%くらいだったからな。多分、今夜は戻れない。明日もこっちの世界にいる事になると思う」

ミカサ「ふふふ……エレンと一緒に居られるならどこでもいい」

心底嬉しそうにミカサは言った。

>>235
ワンシーン、挿入し忘れ。訂正して再投下



エレンは一度深呼吸した。気持ちを落ち着かせる。

エレン「取り敢えず、今日はここまでにしょう。家に帰ろうぜ。ミカサ」

ミカサ「うん…」

二人はいつもの手の繋ぎ方で、家に帰ろうとしたが……

エレンは気を取り直して、握り方を変更した。

俗に言う「恋人繋ぎ」をしてみる。ぎゅっと。

エレン(ふー…こっちはOKか。徐々に攻略していくしかねえかな)

と、そんな風に思いながら、家路についたのだった。




そして夜、ご飯を食べて、風呂に入り、布団に入ると、ミカサはエレンの部屋に訪れた。

エレン「ん? ミカサ、お前の部屋は隣だぞ?」

ミカサ「エレン、イチャイチャの続き、しよう」

エレン「え?」

ミカサ「イチャイチャの醍醐味といえば、一緒に寝ること! (キラーン☆☆)

エレン「えっ…!? あ、そうか。それもそうか……」

多分、最も優れたイチャイチャは一緒の布団で寝ることだ。

それに勝るイチャイチャはない気もする。

エレン「えっと…その…でも、触るとまた、ビリビリがくるかもしんねえから……少しだけ離れて寝るぞ?」

ミカサ「手は繋いでてよい?」

エレン「それは大丈夫だった。まあ…うん、じゃあ一緒に寝るか」

エレンは明かりを消して、ミカサと一緒に同じ布団に潜った。

ミカサの顔を見ているとほっと安心する。

エレン「今日は疲れただろ? ミカサ……」

ミカサ「ううん。私は大丈夫」

エレン「明日も多分、まだこっちにいることになるかもしんねえけど……頼んだぞ」

ミカサ「雨が降らない限り、こっちにいないといけないのよね?」

エレン「ああ。今夜の降水確率は10%くらいだったからな。多分、今夜は戻れない。明日もこっちの世界にいる事になると思う」

ミカサ「ふふふ……エレンと一緒に居られるならどこでもいい」

心底嬉しそうにミカサは言った。

エレン「……そっか。でも、あんま無理はすんなよ。なんか気づいたり、変な事があったらすぐに俺に言えよ」

ミカサ「うん…分かってる」

ミカサは頷いた。エレンの肩に顔を寄せる。

エレン「ん? (なんだ? 甘えてんのか?)」

ミカサ「エレン……」

エレン「どうした?」

ミカサ「ひとつだけ……伝えておきたい事がある」

エレン「ん? 何だ?」

ミカサ「これは私の勘、なのだけども……もう一人の三笠は、本当は女子バスケ部に入りたくなかったのでは?」

エレン「え?」

ミカサ「今日一日、ゲームをやってみたけど、あまり楽しくなかった。点はいっぱい入れられたけど、すごく孤独で……不安な感じだった。エレンが見ていなければ、途中で止めたと思う」

エレン「あー……」

少し、そんな予感はしていた。

というより元々、男子バスケ部のマネージャーの方を、三笠は希望していた。

江蓮(エレン)の為に妥協して入ったようにも見えた。

ミカサ「私は強い……ので、戦力として期待されるのは分かる。きっと、もう一人の三笠もそうだった筈。でも……ライナー達と遊んだ時のような楽しさは全くなかった。私が、知らない人とやったから、というのもあると思うけど……それを差し引いても、やっぱり三笠は我慢していたのでは? と思う」

エレン「そうだな。ちょっと話の流れというか、勧誘に押し切られて入ったのかもしれねえな。俺の傍に居たいから、俺につられて入ったようなもんだしな」

ミカサ「やはりそうだったのね。それなら仕方ないけれど……」

エレン「だったらミカサ、今の部を辞めて、他のところに入りなおしてみるか?」

ミカサ「いえ、そこまではしなくていい。私はここに居る間だけの話だから。我慢する。でももう一人の三笠の方は……ずっとこれを続けるのはあまり良くないかもしれない」

エレン「あーだな。それも、そうだ。やっぱ、三笠(ミカサ)自身が、好きになれる活動をしたほうがいいよなー」

エレンは考えた。ミカサが好きになれる何かを見つければ、三笠もそれを好きになるのではなかろうかと。

エレン「元々、俺もそのつもりだったし、ミカサの好きなもん、探すか。明日はちょっと、二人共、部活を休ませて貰おうぜ」

ミカサ「いいの?」

エレン「俺の方はまだ、ハンドリングとドリブルだけだし、大丈夫だろ。明日は放課後、部活動巡りすっぞ」

そう言って、エレンはにっこり笑ったのだった。







その日の夜は予報通り、雨が降らなかった。







そんな訳で事情を話すと、飯時は少し残念そうな顔をしたが、納得してくれたようだった。

飯時「まあ元々、無理に来て貰ってたようなもんだしね……うん、バスケ以外に何か楽しめるものがあったら、それは仕方ないね。向き不向きは誰にでもあるし、運動神経だけで、全てが決まるわけじゃないからねー。いいよ。今日は一日、三笠はオフって事で。他の部も見学に行ってきな」

エレン「ありがとうございます! (一礼)」

飯時「本当は手放したくないんだけどねー…(涙)ま、兼部という形でも受け付けるからさ。気が向いたら、こっちにも顔出してね」

と言って、判事は三笠(ミカサ)を送り出してくれた。

他の女子の目もあったけど、ミカサは少しほっとしていた。

エレン「とりあえず、どこから行く? 有民に借りたパンフレット見てみるぞ」

エレンはパラパラと部活動紹介のパンフレットを広げた。

江蓮達が通う学校には様々な部活動があった。

体育系はバスケ、野球、サッカー、陸上、水泳、器械体操、新体操、バレー、テニス(硬式&軟式)、ハンドボール、バドミントン、剣道、柔道、空手、合気道、弓道、卓球、フィギュアスケート、馬術、登山があった。

この順番で載っていたのは、どうやら創設の古い順という事らしい。つまりバスケ部が一番最初に部として発足したということだ。

そのおかげだろうか、一番大きいのはバスケ部で、以下は部員数がほどほどのところもあれば、少数の部もある。

文化系は吹奏楽、書道、演劇、天文、合唱、美術、料理、手芸、茶道、放送、ロボット、漫画&アニメ、パソコンがあった。

こちらも同じく創設が古い順に書かれている。

エレン「たくさんあるなあ……お、料理部ってのもあるぞ。ここ行ってみるか?」

ミカサ「そうね……ちょっと行ってみたい」

というわけで、一件目は料理部を見学するミカサとエレンだった。

ミカサ「お、美味しそう…」

ケーキやお菓子類を作っていた。家庭科室に甘い匂いが部屋中に漂う。

箆虎「あら、新入生? 入部希望かしら?」

優しそうな雰囲気の女性の先生がいた。

彼女は将来、リヴァイ班に属する事になるぺトラと同じ顔をしていた。

彼女はここでは家庭科の先生である。ちなみに織尾先生とは同期で、犬猿の仲らしい。

エレン「いえ、取り敢えず見学したくて来ました」

箆虎「あら、そう? それならお菓子食べていきなさい。今、焼きあがったところよ」

そう言ってくれたのはクッキーだった。お茶まで用意してくれる。

エレンはそれを頂きながらミカサと小声で話した。

エレン「ここ、案外良さそうじゃねえ? ミカサ、料理好きだろ? 菓子作ってくれるなら、俺、毎日食ってやるぞ」

ミカサ「本当…? (どうしよう。ここにしたいかも)」

その時、2組の栗素多と沙謝、由美瑠の三人がエレン達に気づいた。

栗素多「あ! 三笠だ! どうしたの? 見学に来たの?」

沙謝(もぐもぐ←試食中)

由美瑠「珍しいな。前に誘った時は、断ったのに。気が変わったのか?」

ミカサ「? どうして断ったの?」

由美瑠「え? いや、江蓮がなんか急に不機嫌になったから、やめとくって…大分前に言ってたが、覚えてないのか?」

江蓮が不機嫌? どういう事だろう?

ミカサ「そう…エレン、どう思う?」

思い出したのは江蓮の日記の記録だった。

三笠の料理の腕が上がることに対しては、困っていたようにも感じ取れた。

エレン「うーん、あ、もしかしてアレだ。三笠の料理の腕が上がると、ついつい食べすぎて「美味い」って言いそうになるから、「美味い」って言ったら、三笠が喜ぶから、江蓮は困ったのかもしれねえな」

ミカサ「? 意味が分からない」

エレン「あーつまり、もう一人の三笠が喜んじまうと、可愛すぎて襲いたくなるから、だろうな。その気持ちは分からんでもない……」

ミカサ「え? そうなの? (ドキッ)」

エレン「(ギクッ)あ、いや、俺の話じゃねえよ? もう一人の江蓮の話だ。……多分、そういう事だろうな」

エレンは誤魔化した。自分の事はごにょごにょと。

由美瑠「? 何訳わかんないこと言ってんだ?」

エレン「気にしないでくれ。悪い、邪魔したな。ミカサ、他のとこも見てみるか」

由美瑠「お、おい……! (なんだよ、全く)」

はてなを浮かべたまま、二人を見送る由美瑠達だった。

ユミルの当て字が一番馴染んでるな

エレン「次は……あーそういや、もう一人の三笠は歌上手いって言ってたな。ミカサ、お前もたまに鼻歌歌ってただろ? 歌う部に入ったらどうだ?」

ミカサ「こっちの歌、全く知らないので……それはどうかと」

エレン「歌なんて、聞きゃどうにかなるだろ?」

ミカサ「そう……それもそうね。ではそちらも見に行こう」

というわけで、合唱部を見に行くミカサ達だった。

音楽室で練習があっていた。10人くらいの人数で腕を組合い、並んで歌っていた。

肉「おや? 入部希望の方ですか? どうぞ……我々と一緒に歌いましょう! 三人の女神を讃えましょう!」

ミカサ(ぞわっ…!)

しかし何故か良く分からないが、ミカサはその担当男性教師に対し、あまりいい印象を抱かなかった。

ぶっちゃけると、ちょっと気持ち悪い。生理的に受け付けない感じだった。

申し訳ないが、ここはすぐさま退散する。

エレン「? どうしたミカサ」

ミカサ「ごめんなさい。ここはやめる」

エレン「え? 何で?」

ミカサ「なんとなく、あの教師が受けつけられない。多分、もう一人の三笠も、そのせいで入らなかったのだと思う」

エレン「そっかー…そういう事もあるか。なら、しゃーねえな。次、どこ行く?」

エレンは有民に借りたパンフレットを再び広げながら悩んだ。

エレン「んー…後は空手とか柔道とか見てみるか? これは俺達のやってる対人格闘術に近いみたいだぞ?」

ミカサ「……それは、元の世界で散々やっているので、別にやらなくてもいい」

エレン「あ、そうか……やるなら違うやつの方がいいか」

エレンはもっと頭を悩ませた。さて、次は何処に行こう?

>>240
当て字でいうと、箆虎さんが一番苦戦したです。
さすがに女性で「屁」の字は使いたくなかったけど、
「ぺ」の変換で、最初に出るのは屁なんですよ(笑)

あと、ニックさんは肉にしました。すみません(笑)

>>238
他に見に行きたい部活動があれば、書いてください。
あと何箇所か見に行きます。
一応、ミカサが入るもう一つの部は既に決めてますが、
他の部で、なんか見てみたいのあれば、書いてみます。

>>244の方、どうぞ( ^ω^)

おもしろいです

テニヌ部がみたいな

なら、硬式の方ですね。了解しましたー。
>>244の方、>>245の方のを代わりに書きますね。すみません。

すみません、今日は一旦ここまでにします。
部活動見学リクエスト、あと2箇所くらいまでなら受け付けます。
ではまた明日ノシ

とりあえず、ここままで締め切ります。
テニヌ、とわざわざ指定してるくらいなので、特別ゲスト出す(笑)

とりあえず、一回外へ出てみることにしたミカサ達は、その歓声に耳を奪われた。

女子1「キャー!!」

女子2「××様よ!! ××様が来てるわー!!」

エレン「なんだ? 誰か有名人でも来てんのか?」

目をやると、そこには人だかりが出来ていた。

女子に囲まれたスター(?)のような人物が、歩いている。

ハーフかクオーターか。外国の血が混ざったようなイケメンだ。

鋭い両目と、泣きボクロが特徴的だ。

エレン「………女子の歓声、すげえな。あ、なんかコートっぽいところに入ってくぞ」

ミカサ「………」

とりあえずちょっとだけ興味がそそられたエレンは、そっちの方に目を向けてみた。すると、

××様「俺様がわざわざ一日だけ特別にコーチに来てやったんだ。てめえら、覚悟は出来てんな? あーん?」

先程のイケメンが男子テニス部員に向かって、ラケットを突きつけている。

××様「早速、ボレー練習行くぞ!! おらああああ!! (ポンポンポンポン)」

その先程女子にキャーキャー言われていた男が、球出しを始めた。

物凄い速さと量だ。男子はついていくだけで精一杯のようだ。

××様「おらおらどうした?! その程度でへばってるようじゃ、全国なんざ到底無理だぞ? 俺が現役の頃は、こんなもん、ウォーミングアップにもならん量だったのに、根性ねえな、最近のガキどもは」

男子部員達「「「ぜーはーぜーはー…」」」

××様「女子の方もまとめて面倒みてやるぞ! 誰か、やりたい奴はいるか?! コートに入れ!」

見た目はイケメンなのに、指導はスパルタだった。

女子部員は怯えきって誰もコートに入らない。

××様「ちっ……つまらんな。もういい。ここにも次世代のプロテニスプレイヤーはいなかったな……邪魔したぜ」

そう言って、そのイケメンコーチはコートを去ろうとした。

その時……

ミカサ「………はい、これ」

ミカサはボールを拾っていた。沢山そこら中に転がっていたからだ。

片付けを手伝っている。

そしてその時、他の部員のこぼれ球が、ミカサに向かって飛んでいく。

男子部員((危ない…!))

硬球は当たると当然痛い。顔に向かって飛んでいった。

球に当たる…!

と、皆が顔を覆ったその時、


パシッ……!


ミカサ平然と眉一つ動かさず、それを素手で簡単に受け止めたのだった。

××様(ピクッ)

その様子を見ていたそのイケメンは、ミカサに興味を示した。

××様「おい、そこの女……」

ミカサ「? 私の事でしょうか?」

××様「そうだ。お前もテニス部員か?」

ミカサ「いえ……見学に来ただけです」

××様「ちょっとお前、コートに入れ。実力を見てみたい」

ミカサ「え? でも……」

××様「いいから、入れ。俺を待たせるな」

ミカサ「…………」

いいのだろうか? と戸惑うミカサに他のテニス部員は「いいよ!」と送り出した。

ミカサは渋々コートに入った。制服のままで。

××様「今から俺様が打つ球を、ラケットに当てるだけでいい。やってみろ」

ミカサは見よう見まねでラケットを構えて、球を待った。




ドン………!!!!!




先程のボレーの10倍は速い球がきた。

当然だ。イケメンはサーブを放ったのだ。しかも超高速の。

しかしミカサにはその球筋が見えていた。故に、ラケットに当てるくらいのことは、出来たのだ。

それを見て、満足そうに男は言った。

××様「お前、テニス歴は?」

ミカサ「……今日、初めてこれ(ラケット)を握りました」

××様「やっと、みつけたかもしれねえ」

イケメンはニヤリと笑った。その仕草が決まる。

××様「お前、女子プロテニスプレイヤーになれ。俺が指導してやる」

ミカサ「お断りします」

××様「?!」


ざわっ……

空気が凍った。氷の世界になった。

まさか、即答で断るとは誰も予想しなかったのだ。

××様「何故だ? テニスは嫌いか?」

ミカサ「いえ……それ以前の問題で……私は、その、テニスとやらを全く知りません……ので」

××様「これから知ればいい。俺様が全て教えてやる。だから、俺と一緒に来い!」

ミカサ「お断りします」

氷の世界、二回目である。チーン……

××様「が、頑固な女だな……お前、才能あるぞ。俺様が言うのだから間違いねえ。お前なら、世界を取れる。四大スラム制覇も夢じゃねえぞ」

ミカサ「……その四大スラムとやらに興味はない……ので」

××様「くっ……勝てば、金を稼げるぞ? 富を築き上げることが出来るし、有名になれるぞ?」

ミカサ「それも、全く興味ありません」

××様「だったら、何なら興味あるってんだ」

ミカサ「私の興味は……エレンだけです」

その時、ミカサは後ろの端っこで見学していたエレンの方を見た。

ミカサ「私の生活の中心は、エレンにあるので……他は割とどうでもいい感じです」

××様「くっ……! (既に恋人がいるのか。こういうタイプは、恋人次第だからな……)」

エレン「おいおい、ミカサ……それがダメだから、お前の好きなもん探そうって話になったんだろ。そう、そいつを邪険にせんでも……取り敢えず、ちょっと打ってみたらどうだ?」

ミカサ「……エレンがそう言うなら、そうしよう(`・ω・´)キリッ」

ミカサはもう一度、ラケットを構えた。

そしてミカサはそのイケメンとしばしの間、ラリーを続けた。

その男は、その中で、確信した。

やっぱりこいつは本物だと。

××様(くそっ……ダイヤの原石だってのに、本人にテニスの興味がねえなら、どうしようもねえな)

ミカサは淡々とラリーを続ける。

言っておくが、このイケメンとラリーを続けられるということ自体、奇跡と言って良い。

何故なら彼は、一世を風靡した、元プロテニス選手なのだから。

彼は、テニスをする人間なら知らぬ者はいないと言っても過言ではない。

彼の名は、跡部景吾。若くしてプロ選手となったが、その現役期間は短く、今は次世代の選手の発掘に力を注いでいるらしい。

跡部様「ちっ……もういい。お前は確かに素晴らしい選手だが、球に熱がこもってねえ。機械的にはこなすことは出来ても、それでは生きてるとは言えねえ。お前自身が熱を感じられるものでねえと、意味がねえな……」

ミカサ「………」

跡部様「だが、お前はその才能を枯らすなよ。テニスには縁がなかったが、他に絶対、何かある筈だ。お前の蕾を咲かせる、場所が必ず……な」

そう言って、そのイケメンはコートを後にしたのだった。

すると、そのイケメンの後ろに長蛇の列が出来る。

女子がサインを貰いに並び始めたのだ。

エレンはそのサインに応える彼の様子を見ながら呟いた。

エレン「……いい人みたいだな。見た目よりも」

ミカサ「そうね。テニスも悪くないと思ったけど……」

エレン「けど?」

ミカサ「エレンがさっきから、別の女子の短いスカートをチラチラ見ていたので、ちょっとイラっとした」

エレン(ギクッ!)

ミカサ「それさえなければ、入っても良かったけど」

エレン「すんませんでした……」

エレンは何故か、深々とミカサに謝ってしまったのだった。

エレンは再びパンフレットを広げた。

エレン「うーん、体動かすものは逆に向いてねえのかな……」

バスケ、テニス、ときてダメだったので、今度は文化系の中からもう一度、見てみる事にした。

エレン「この『手芸』ってのなんだろ? 手で芸をするっていうくらいだから、手を動かすのかな? なんか作るのか?」

字をそのままの意味で捉えたエレンは、それにちょっと興味が出てきた。

エレン「取り敢えず、手芸部行ってみようぜ」

エレンがそう言うので、ミカサもついて行った。その先は……

第二家庭科室には三人の女子生徒が居た。

女子部員1「布足りる?」

女子部員2「ギリギリ……あ、ミシン糸、なくなっちゃった。白糸残ってる?」

女子部員3「もう残ってない! ベージュで代用して!」

女子部員2「まじでー…もう、間に合うんかなー。演劇大会まで、あと一ヶ月切ったのに…残り10着あるんでしょ? 誰よ。この脚本書いたの……って、私だったか。(ゝω・)テヘペロ」

女子部員1「自分でノリツッコミしてどうする……しょーがないよ。予算少ないもん! 自分達で全部揃えるしかないし、衣装は作るしかないよ。……はあ。眠いー」

エレン「あのー」

何だかとても忙しそうだ。

でも声をかけるわけにはいかず、エレンは三人の女子に声をかけた。

女子部員1「はい! あら、どなた? (可愛い男の子ね!)」

女子部員2「もしかして新入部員とか? 入部希望? (攻めなの? 受けなの? どっちなの?)」

内心、腐女子的な思考(笑)を考えている女子部員の心情は知らず、エレンは言った。

エレン「いえ……見学させて欲しいんですけど……」

女子部員1「まじか! Σ(゚д゚lll) よっしゃ! 人手が増えた! もう一着行こう! 前進せよ!! (ビシッ)」

誰の物真似か分からなかったが、ここの女子達は三人とも明るくて人が良さそうに見えた。

エレン「あの、もう一着って……」


女子部員2「あ、私達、メインは演劇部なんだ」

女子部員1「でも衣装は全部、手芸部の予算で作らせてもらってるの」

女子部員3「演劇部の部費だけじゃとてもお金が足りないからね」

エレン「はあ……」

女子部員3「そうなの! 今、とても人手が欲しくて……君達、ミシンは触れる?」

NGワードがどれか全く分からず突き止めるのに苦労した…。

意味不明すぎる。
たまに変なのがひっかかるみたいだ。

エレン「いや、俺は触ったことないです」

ミカサ「私は、足踏みなら少しだけ…」

女子部員1「まじで? Σ(゚д゚) まさかの足踏み派?! 助かるわ! あの、今から一着だけ、手伝ってくれる? そんなに難しいものではないから!」

ミカサ「私でよければ……」

女子部員2「よし、今日はもう一着行けるね! 皆、もう一頑張りよ!」

ファイオー! と円陣を組む女子三人だった。




エレンは型紙に沿って布に線を書いていく作業を担当し、断裁とミシンで縫う作業は女子四人で行った。

人海戦術とはよく言ったもので、三人から五人に増えただけでその作業速度は格段にあがった。

あっと言う間にもう一着、仕上がったのだった。

女子部員1「やったー! 残り9着よ! 君達のおかげで、少し助かったよ! 本当にありがとう! 君達、演劇部に入らない?!」

ミカサ「いえ、私は手芸が……」

女子部員1「手芸のみ? いや、でも、もったいないよ! 特にあなた、美人だし、女優に向いてるよ? うちの看板女優になってほしいなあ」

ミカサは戸惑っていた。

どうやらここは手芸中心ではなく、演劇部の補佐的な部であるらしい。

手芸のみの活動では、いけないのだろうか…。

エレン「うーん、ミカサは普段の表情がちょっと硬いのが唯一の欠点だからなあ。セリフ覚えるのとかは、出来そうだけど、皆の前で演技とか出来るか?」

ミカサ「……多分、あんまりうまくは出来ないと思う」

エレン「だよなあ。美人なのは俺も認めるけど、手芸だけでよくねえか?」

ミカサ(! エレンが美人って言ってくれた……嬉しい。じーん…)

女子部員1「いや、表情が硬いのは別にうちでは欠点にはならないよ! むしろ、特技だよ! ステータスだよ! 希少価値だよ!」

女子部員2「そうそう! いろんな個性が集まってくれた方が台本書きやすいしね。表情が豊かな役は別の人がやればいいんだし」

女子部員3「手芸部も勿論人が欲しいけど、演劇部はもっと欲しいんだよね。今、全部で六人しかいないから、結構いろいろギリギリなんだ。役者四人、裏方二人という、綱渡り操業だし……」

エレン「え? 役者四人? でも今、残り9着って……」

女子部員2「一人で二役以上、やるんだよ。衣装チェンジで演技を変えてやれば、それくらいはやれなくないよ。かなりドタバタだけどね。でも人数少ないせいで、どうしてもヒロインとヒーロー役がね……何て言うか、華がなくてね…(とほほ)」

女子部員3「そういう意味では、美人な子に入ってきて貰えると非常に助かるの! 私らは自分でいうのもなんだけど、モブ顔だし、裏方の方が向いてるしね。主役級の子が欲しいのよね~」

ミカサ「………」

そんなことを言われても…。

非常に困るミカサだった。

エレン「うーん、どうしても両方入らないとダメですか?」

女子部員1「いや、手芸だけでも充分助かるけどね! でもうちらは、両方入ってくれると嬉しいよ!」

女子部員2「ね!」

ミカサ「………」

エレン「どうする?」

ミカサ「少し、考えさせて欲しい。その演劇部も、一応見てみたいと思う」

エレン「そっか。それもそうだな。練習、見せてもらうか」

女子部員1「お? ちょっと興味出てきた? んじゃ、部室に案内するよ!」

女子部員2「こっちはうちらが続けておくから、いいよ」

女子部員1「んじゃ、よろしく! 案内は私がしてあげよう」

とりあえず、すぐには決められないので、答えは保留にすることにしたミカサだった。

次は、演劇部の見学である。

演劇部の部室に入ると、眼鏡の男子が三名ほどいた。

そのうちの一人が、何故かブリッジをして、カサカサ動いていた。

まるで虫のような動きをして、気持ち悪い。

ミカサ「?!」

エレン「?!」

エレンとミカサは同時に面食らった。

その男子は、ミカサのパンツをうっかり見てしまったようで、真っ赤になって潰れた。

男子部員1「し、失礼しました! いや、今のは柔軟ですから! けして怪しい者ではありませんよ?!」

充分、怪しさ大爆発である。

男子部員2「だからもうやめろって言ったのに。オメガやり過ぎんなよって言ったのに。部外者が見たらビビるだろ」

男子部員1「いやしかし! 体は常に動かさないといざという時に困るので……すみません。私が劇部の部長です。入部希望の方ですか? ささ、どうぞどうぞ」

ミカサ「……(オメガって何だろう? 今の技の名前かしら?)」

勝手に自分達でつけた名前、らしい。

由来は「Ω」の字に似ているからだ。そのまんまだ。

男子部員1「初心者の方でも、親切丁寧に教えますよ! あなたのような美しい人に出会えて私は幸せだ……あの、携帯とメルアド教えて下さい(`・ω・´)」

ミカサ「え……えっと…」

いきなり良く分からないことを言われて戸惑うミカサにエレンは割って入った。

エレン「ミカサ、ダメだ。そういうのは「個人情報」って言って、簡単に人に教えちゃダメだって、有民が口酸っぱくして言ってたぞ。だから、教えるな」

ミカサ「了解した(`・ω・´)」

男子部員1「そんな…! Σ(゚д゚lll) 既に彼氏持ちでしたか……とほほ。まあ、当然ですよね……」

ミカサ「か、彼氏ではないのだけど…(ドキマギ)」

エレン「別に彼氏じゃねえよ。家族なんだ」

男子部員1「なんと! 既に恋人以上でありましたか! これは失礼しました! ではでは、二人の門出を祝って、一曲、演奏いたしましょう……」

エレン「ちょっとまてええええ!!! Σ(゚д゚lll)」

エレンは思わずツッコミを入れた。

エレン「なんか勘違いしてるだろ?! 俺達は、義理の兄妹……なんだよ!!」

男子部員1「なんですと?! 禁断の愛、でしたか…なんとまあ、萌える設定。私、大好物ですよ、そういうの」

ダメだこいつ。早く何とかしないと。

エレンは本題に戻ることにした。

エレン「あの…練習はしてないんですか?」

男子部員1「今は、ちょっと休憩してたところです。また、再開しますよ。あと五分後に。時間を小刻みに決めて、やってるんです」

ミカサ「では少しだけ待たせて貰おう」

男子部員1「すみません……その間に少しお話しましょうか。お茶、お願いしするよ、クリスティーヌ」

エレン「ん? (変な名前だな)」

女子部員1「OK! ちょっと売店で買ってくるわ」

ミカサ「案内してくれた方、クリスティーヌって言うんですか?」

男子部員1「いえ! 今のは彼女の役の名前です。公演が終わるまでは、お互い、役の名前で呼び合うルールなんですよ。私はセバスチャンですが」

エレン「へーじゃ、本名はここでは使わないんですね」

男子部員1「たまに、お互いの本名を忘れちゃうこともありますけどね。役名の方の呼び名が定着して」

ミカサ「確かに……そうなりそう(クスクス)」

エレン(ミカサがウケてる。可愛いなあ)

男子部員1「おお! なんと愛らしい方だ! ダメだ! 人のものなのに、心ときめく! あなたはなんて罪深き人なんだ!」

ミカサ「ええ? え?」

男子部員2「おい、セバス! お前、役に入り込み過ぎだぞ! 困ってんだから、程ほどにしろよ!」

男子部員1「は…! 失礼しました! ついつい…あまりに可愛らしいので。お、そろそろ時間ですな。では、読み合せに戻りましょう!」

そして彼ら男子三名だけの、稽古が始まったのだった。

エレン(すげえ…同じ人が演技してるのに、全員、全部違って見える)

お話は、セバスチャンが主人公のようだった。

セバスチャンが何度も何度も美しい人に恋をしては、振られていく。コメディ劇だった。

その脚本は、どうやら彼らの完全なオリジナル劇らしい。

ミカサ「クス…セバスチャン、可哀想」

エレン「なんか…誰かに似てる気がしなくもねえけど…」

思い当たるのは、ジャン=キルシュタインだった。

この不憫っぷりは、非常に彼に似ている気がする。

いつも黒髪の女性に恋をしては、振られていくのだ。無理もない。

エレンはそう思うけど、ここでは口には出さなかった。

男子部員1「……とまあ、こんな感じです。どうですか? 一度、読み合せに一緒に参加しませんか?」

ミカサ「どうしよう…」

エレン「いいんじゃね? その美しい黒髪の女性役、やってみるよ」

ミカサ「うん、やってみる」

ミカサは体験入部してみることになった。

ミカサの演技は、思っていたより酷くはなかった。

少し緊張していたけれど、端役だったし、無事に参加できたようだ。

男子部員1「おお! なかなかうまいじゃないですか! 何よりあなたは声が色っぽい! 可愛らしい! 素敵だ! ずっと聞いていたい声ですよ!」

ミカサ「そ、そんなこと……ない(〃ω〃)」

男子部員1「いかん、萌えてキタ━(゚∀゚)━! 正統派の萌えキャラですなあ!! あ、そう言えばまだ、お二人のお名前をお聞きしてなかったですね。お名前は…」

ミカサ「ミカサ=アッカーマンです」

エレン「ばか! 逆だ!」

ミカサ「あ…赤間三笠です」

エレン「俺は家賀江蓮だ」

男子部員1「ふむふむ。赤間と家賀ですね。ちなみにお二人はどちらが受けで、どちらが攻めですか?」

>>268
訂正
エレン「いいんじゃね? その美しい黒髪の女性役、やってみろよ」

エレンはやりません(笑)こっちが正しいセリフです。

エレン「は?」

ミカサ「?」

男子部員2「馬鹿! 一般人にそんなこと聞くなよ! セバス!! お前、アホだろ?!」

男子部員1「いやしかし、重要なことなので! お二人はどちらが下になる方なのか、気になるではありませんか……」

エレンは、今の一言でなんとなく意味を理解した。

エレン「だから、俺達は違うっつってんだろ?! 恋人同士じゃねえんだって!!」

男子部員1「本当でありますか? いやしかし、先程、赤間殿の演技を見守る家賀殿の暖かい視線はどう見ても、恋人のそれにしか見えないわけでありまして……」

ミカサ「………」

ミカサは何も言えない。

エレン「違うっつってんだろ!! いい加減にしろよお前!! 殴るぞ!!」

男子部員1「そうでありますか……いやはや、残念であります。では私セバス、赤間殿に、告白してもよろしいので?」

エレン「は…! 好きに……しろ…よ!」

ツンデレ、のツンがキタ━(゚∀゚)━!

と、女子部員1ことクリスティーヌは身悶えていた。

男子部員1「では早速! 赤間殿! 私とお付き合いをお願いしたい!」

ミカサ「ごめんなさい(2秒即答)」

男子部員1「ぐはああああ! 振られ記録、最速更新…!」

ゲラゲラ笑う、周りだった。




……と、まあ、そんな感じで、いろいろ楽しかったが、若干一名、問題の人物がいるので、ここもやめておくことにしたエレンとミカサだった。

エレン「はあ…なかなか決まんねえな……ミカサ、なんか興味あるの、ねえか?」

ミカサ「うーん…」

特にないので返事に困る。

エレン「やっぱ多すぎて逆に選びにくいよな。もういっそ、俺の好みで見ていっていいか?」

ミカサ「うん。それで構わない」

エレン「よし! だったら水泳部に行こう! (確か水着見れるんだよな、ここ)」

ミカサ「……水泳部? 水着、持ってきてないけど」

エレン「借りればいいじゃねえか。多分、予備くらいあるだろ」

ミカサ「そう…それもそうね」

と、いうわけで、屋内プールに移動するエレン達だった。





エレン(おおお……水着の女子がたくさんいる!)

ちょっとだけデレているエレンに、テニス部の時と同じく、イラッとするミカサだったが、口には出さなかった。

女子部員「あら? 見学? 水泳に興味あるの?」

ボインの女子部員に、エレンはうっかりドキドキした。

こんな巨乳、元の世界では見たことない!!

お目にかかれない!!

エレン「は、はい! 興味あります!! (ドキドキ)」

ミカサ(イラッ)

エレンの興味はどう見ても、違うところにいっていた。

食い入るように大きな胸を見ているエレンの耳を引っ張り、ミカサは無言で退散した。

エレン「?! 何すんだよ!! ミカサ! (お前の水着、まだ見てねえのに!!)」

ミカサ「もう十分でしょう? 堪能したんじゃないの?」

エレン「何がだよ?! つか、耳痛いんだけど?!」

ミカサ「痛いように引っ張ってる(グイグイ)」

エレン「離せよ!! くそ! 何だよ……何が気に入らないんだ?」

ミカサ「全部(`・ω・´)」

エレン「ひでええなおい! Σ(゚д゚lll) やってもないのにそう言うなよ!」

ミカサ「やらなくても分かる。……不毛」

エレン「だから、何がだよ?! くそ……泳いでるミカサを見てみたかったのに」

ミカサ「……それは嬉しいけど、エレンが見学に来る度に、他の女子に目移りする部活はちょっと……」

エレン「(ギクッ)……そっか、じゃあ、ここもやめよう」

エレンは男として非常に残念だったが、ここも諦めたのだった。

エレンは再びパンフレットを広げた。

ミカサはどうやら、あまり露出の多い部活は好みではないらしい。

エレン(困ったなあ……でも俺としてはやっぱり、ちょっとくらいお色気要素が欲しいんだが)

エレンはそんな風に考えながら他の部の紹介を見てみる。

すると、ひとつ目に付いた写真があった。新体操部である。

エレンはその時、江蓮が三笠に入って欲しいと書いていた部活を思い出した。

確かあれも「新体操部」だった気がする。

エレン(もしかして、これ、エロいのか?)

日記には「エロい」と江蓮が書いてた気がする。だったらここもいいかもしれない。

エレン「次は新体操部、見てみるか」

ミカサ「新体操部?」

エレン「もう一人の江蓮が、三笠に入ってくれたら嬉しいって日記に書き残してた部活だ。どんなのか詳しくは分からんが、一応ここも見ておこうぜ」

ミカサ「分かった」

そしてバスケ部が使う体育館とは違う、もう一つの体育館で、ミカサは初めて新体操というものを目に入れることになる。

エレン(こ、これは…!)

確かにエロい。何がエロいかって、ユニフォームがエロい。

体の線にぴったり沿った青いレオタードに身を包み、ボールやリボン、棒(棍棒のこと)、大きな輪、などなどを使って綺麗に舞っている。

しかし時折、ダイナミックな動きも混じるし、見ていて迫力があった。飽きない。

エレン(すげえ! これは……確かにミカサがやったら似合いそうだ)

転がってきたボールを受け取り、ミカサは女子部員に手渡した。

女子部員「あら、入部希望者? 新体操に興味あるの?」

ミカサ「ちょっとだけ……」

ミカサは頷いた。その先輩と思われる女子はすごく優しそうだった。

女子部員「とりあえず、体の柔らかさをみてもいい? 新体操には必須だから」

ミカサ「はい…」

ミカサはぐにゃあと前屈をしてみせた。

両手が地面にぴったりついている。まだ余裕があるようだ。

女子部員「すごい! 柔いね「! 股わり出来る?」

ミカサ「簡単です」

ぐにゃああ……

女子部員「背面反らしは?!」

ミカサ「余裕です」

ぐにゃああああ……

女子部員「これは期待できる! 理子先生! 期待の新入部員ですよ!!」

担当の教諭が手招きされてこっちに近づいてきた。

確かこの先生は国語の授業の時に会った気がする。

理子「ほう…それは嬉しいな。とりあえず、レオタードに着替えて体験入部してみるか?」

顧問の先生と思われる理子先生はミカサに質問する。するとミカサはあっさりそれに同意した。

その後、エレンは見てしまう。

ミカサの綺麗な、舞を。

ボールを滑らせて、自由自在に気高く舞うミカサを。

エレン(そういやあいつ、元の世界でもちょっとだけ、ボールと一緒に踊ってたな)

まさかそれと同じことが出来る部活が存在するなんて、知らなかった。

ミカサはちょっとだけ嬉しそうだ。

口角が上がっているのがわかる。

エレン(そっか、あいつ……踊るのが好きなのか)

これは新しい側面だ。エレンは今まで気付かなかった。

嬉しい。新しいミカサを知れたから。

(*BGMはタッチでどうぞ)

才能と、熱が、一致したその瞬間、

ミカサは輝いた。美しく、花弁が開いていく。

蕾が……ゆっくりと……。

エレンは無意識に拍手していた。

感動で、体が勝手に動いてしまったのだ。

その拍手に気づいてミカサは笑った。

もう、心は決まったようだ。

ミカサ「エレン…私…(はあはあ)」

エレン「ああ…もう、これで決まりだろ?」

ミカサは頷いた。どうやら今度こそ、ミカサの好きなものが見つかったようだ。

ミカサ「私、踊るのが、好きみたい」

のちに人は語る。

彼女の踊りは人の心を捉えて離さない、まるで狩人のような、圧巻のパフォーマンスだと。

彼女のパフォーマーとしての才能の種が、ここから植えられたのだった。

エレン「だなあ。俺も知らんかった。そういう才能があったんだな。ミカサに」

ミカサ「私も知らなかった……」

ミカサは自らの高揚感を隠しきれなかった。

ミカサは公式でアイドルやってる(嘘予告だけど)ので、
踊る部活に入ることになりました。
フィギュアスケートと迷ったけどね。
でも動き的には新体操の方がミカサには似合いそうだと思い、
こっちになりました。

リクエスト、皆さんありがとうございました!
跡部様は特別出演です。
だって、テニスじゃなくて、テニヌってあったから(笑)。
他、演劇部とかはオリジナルで書きました。
モブキャラが癖の強いキャラになってしまった。

まだ出てない進撃のモブメンバーもいるけど、
機会があれば、いろんな場面でどんどん出していきますよ。

理子「どう? 入部してみる? うちは割と自由な部だよ。兼部も大丈夫だし、来れる時に皆個人練習をして、私が面倒見てるから。毎日来ないといけない部ではないよ。目安としては週に3~4回ってところかな。……取り敢えず、入ってくれるならこっちとしては嬉しいけど」

ミカサ「……あの、でも…」

いつまでこっちの世界に居れるか分からないのでミカサは迷ったが、エレンは頷いた。

エレン「いいって。こっちに居る間だけでも、やってみろよ。俺も嬉しいぞ。うん。(レオタード姿可愛いな(*´д`*))」

ミカサ「では、入ります!」

その日から、ミカサの新しい毎日がスタートしたのだった。




その日の夜も、雨が降らなかった。




6月12日。

その日も滞在することになってしまった二人は、今日は天気が微妙だったので、教室でお昼休みに有民とお弁当を食べながら、いろいろ経過を話していた。

有民「へえ…! じゃあ結局、ミカサは新体操部に入ったんだ。バスケ部はもう辞めたの?」

ミカサ「いえ、バスケ部は助っ人で入ることにした。メインを新体操にして、試合の時にはバスケ部にも加勢する。それで暫く様子を見ようと思う」

有民「そっか……実は僕も、前から丸虎に誘われてた放送部に入ることにしたよ。大分迷ってたけど、熱心に誘って貰ったし、やってみる事にしたよ」

ミカサ「放送部とは一体?」

有民「えっと……皆の前で文章を読み上げるのが主な活動だね。今、教室で音楽が流れてるでしょ? お昼の放送も放送部が担当しているんだ。明日から僕も当番で、お昼に放送部に入るから……もし明日もここに居れたら、聞いて行ってよ」

エレン「おう! もちろんだぜ!」

ミカサ「楽しみにしてる……」

有民「ありがとう! (こっちの二人と話していると、たまに入れ替わってることを忘れそうになるよ)」

表情や笑い方、会話の間の取り方まで、同じなのだ。つい錯覚しそうになる、有民だった。

でもたまに突拍子もない質問をしてくる時もあるので、これが現実だと思い知る。

エレン「そういや、有民。聞きてえことがあったんだ」

有民「何? (ちゅー…)」

エレン「こっちじゃ、男女が付き合う時にどういう場所に行くのが普通なんだ?」

有民(ぶーっ!!!!)

思わずラブホテルを連想して飲んでいた牛乳を吹き出しかけた有民だった。

有民「え? それってどういう意味? で、デートスポットって意味で聞いてるんだよね?」

好意的に解釈すると、エレンは「そんな感じだ」と言ったので、ほっとした有民だった。

エレン「なんか……今の俺がミカサとイチャイチャしようとすると、直前で体が勝手に反抗してくるんだ。手出そうとすると、手がビリビリ痺れて何も出来ん……よほど三笠に手を出さんよう、理性が働いているらしい。無意識でも、もう一人の三笠を守ろうとしてんだな。もう一人の江蓮の奴は。すげえよ、本当」

有民「へえ……(江蓮が反応してるのか。これは希望が見えてきたのかもしれない)

エレン「だから、このままもう少し揺さぶりをかける。だからまあ、平たく言えば、今度機会がある時に、ミカサと二人でデートみたいな事をしてこようと思うんだ」

有民「なるほど…それなら、いくつかリストを作ってあげるよ。あ、でも……電車の使い方とか分かんないよね」

エレン「電車? なんだそれ」

有民「デートの前に、一通り遠出する時に必要な知識を僕が教えるよ。今日は三人で一緒に帰ろう。二人の部活が終わる頃に、僕の方も活動終わると思うし、いいよね」

エレン「おう! もし俺の方が遅れたらごめんな」

ミカサ「いつもありがとう、有民」

有民「いいって! じゃ、放課後に少し時間が許す限り遠出してみようか」








そんなわけで、部活終了後に三人は再び集まって、電車を使用してみることにした。

有民は路線地図を二人の前に大きく広げてみせる。

しかしその、まるで血管のように複雑な線の絡み合いにエレンとミカサは眉間に皺を寄せるのだった。

エレン「これ……どうやってみたらいいんだ?」

有民「習うより慣れろ、だね。山手線で一周しながら、だいたいの東京の主要な街を紹介するよ!」

有民はそう言って、東京の街並みを一通り紹介し始めた。

有民「新宿、渋谷、品川、東京、上野、池袋。この六つの駅を覚えれば、とりあえずは何とかなるかな。新宿、渋谷、あと池袋あたりは滅茶苦茶人が多いから、初めてのデートにはあんまりお勧めしないね。絶対、迷子になるよ。行くとしたら、どういう場所に行きたい?」

エレン「そうだなー……そこまで遠出しなくてもいいんだが……最初はやっぱり、ミカサと一緒に楽しめそうな場所がいいな」

有民「だとしたら、それなりの規模の遊園地か、水族館、動物園、公園とかがいいかな。あまり迷子にならなさそうな場所を、僕の方でリストアップしておくよ」

エレン「おう! 助かるぜ」

そして有民の電車の使い方や路線の説明が一通り終わると、自分達の街に帰ってきたのだった。

有民「……と、まあこんな感じで、電車を乗り換えて移動するのが、僕達の生活の基本なんだ。一度迷っても、とりあえずどこかの線に乗れば、戻ってくるのはそう難しくないよ。ぐるぐる同じところを歩くことの方が多いかもしれないけど……」

エレン「これは、一日じゃとても全部見れねえな」

有民「そうだね。僕もさすがに全部の駅に降りたことはないし、主に使う駅しか覚えてないけど。今日はもう遅いから、この辺で切り上げよう。あ……雨降ってきたみたいだ」

駅の外に出てみると、ポツポツと小雨が降り出してきた。

折りたたみ傘を広げながら有民は言った。

有民「でも、少し希望が見えてきたね。エレンの意思に反して、体が勝手に動いたって事は、内にいる江蓮はまだ死んでない証拠だ。……きっと、元に戻るよね」

エレン「ああ! きっと大丈夫だ!」

そう言って笑うエレンの笑顔が、とても眩しく見えた有民だった。







その日の夜は………………






エレンは目覚めた。

きっと、男子寮の方に戻れたと思ったのだが、

天井は、見慣れぬ真っ白なもの。

エレン(戻って……ねえ?)

外の天気は雨だ。昨日の夜から確か8時を過ぎたあたりから、降り出したのを覚えている。

夜の雨は降り続いた筈だ。外の様子は、一度止んだ気配はない。安定した降り方だ。

エレン(……マジか)

恐れていた事が遂に起きてしまった。

エレンはすぐさま、ミカサを起こしに行く。

すると、先に起きてミカサは布団の上で正座して待っていたようだ。

ミカサ「エレン……これは……」

エレン「すまねえ……俺にも良く分からん。何が原因か分からんが、元の世界に戻れなくなったみたいだ。ミカサ、今、俺の知ってる、ミカサ=アッカーマンだよな?」

ミカサ「ええ…私は、ミカサ=アッカーマン。エレン=イェーガーの家族」

エレンは反射的にミカサの手を取った。手が冷たい。案の定。

緊張で手が冷え切ってしまっている。

エレン「……少し、握っとくぞ。暖かくなるまでな。とにかく落ち着こう。事態は悪くなっちまったが、悲観している場合じゃねえ。今は、気をしっかり持て」

ミカサ「私は大丈夫。エレンの方こそ、大丈夫?」

エレン「正直、大丈夫とは言えねえけど……でも、俺は一人じゃねえから、大丈夫だ。有民にも相談しねえと……」

ミカサ「その前に、どうしてこうなったか、考えた方がいいのでは?」

エレン「そんなの、考えても分かんねえよ! ………俺は、元の世界に戻りてえのに!」

ミカサ「本当に……?」

その時、ミカサはぐさりと突き刺した。甘い、言葉を。

ミカサ「エレンは私より、こっちの世界に馴染んでいる。だからもう、前程、ここの生活に戸惑っていない………違う?」

エレン「……!」

エレンは、唾を飲み込んだ。

ミカサ「………エレン、もう一度聞く。本当に、元の世界に戻りたいの?」

エレン「アルミン一人残して、ここにいるわけにはいかねえだろ!!」

ミカサ「今、アルミンは関係ない」

ミカサはその返事で確信した。今度のこの現象は、エレン側に原因があると。

ミカサ「エレン……あなたは本当は、徐々にこっちの生活に染まり始めている。「家賀江蓮」として生活していくうちに「エレン=イェーガー」としての自分を失い始めている………違う?」

グサリ、ともっと奥深く突き刺さった。言葉の刃が。

エレンはすぐには反論出来なかった。間をおいて、吐き出す。

エレン「………でも、それは……だって、しょうがねえだろ! 寝たらこっちに勝手に来ちまうし! 眠らないで、人は生きてはいけねえ!!」

ミカサ「そうね。エレンの言う通り。でも……エレン。私もこっちに実際に来てみて分かったの。こっちの世界はあまりにも……私達にとっては、甘美すぎる」

エレン「………!」

思い出すのは、買い食いした食べ物。母親の作る、朝ご飯、弁当、夕食。

厳しい訓練もない、毎日。巨人の恐怖に怯えなくていい緩んだ生活。

それら全てが、二人にとっては甘過ぎた。

エレンが何も言えずに俯いているので、ミカサは続けた。

ミカサ「……私はエレンが異世界に行けなくて、ボールを回していた頃、とても不安だった。何度も何度も空を見ていたあの頃のエレンは、まるで、調査兵団の凱旋を待ちわびて、見に行く時の小さい頃のエレンのようだった。エレンは、未知の物への探究心を抑えられない。だからきっと、この異世界でも、一人で生きていける。……多分、私がいなくても」

エレン「!!」

ミカサ「もしかしたら、戻ってこなくなるかもしれないと、漠然と思っていた。だから、怖かった。だから、一緒についていきたいと思ったの。ついていかなきゃ、きっと、離れ離れになるって、思ったから」

エレン「……………」

ミカサ「私は、エレンの傍に居られれば、正直、どっちでもいい。元の世界でも、今の、この異世界でも、生きていける。エレンは……どっちの世界で生きたいの?」

エレン「そんなの………!」

元の世界に決まってるだろ!

と、すぐに言えない自分に気づいて、エレンは戸惑った。

エレンにとって、この世界は居心地が良すぎる。

何よりまだ、母親が生きているのだ。

家もあるし、友達だっている。元の世界との多少の違いはあるが、それは時間が解決するだろう。

だからこそ、こっちに長くいれば居る程、危ないと何処かで思っていたのだ。

骨休みが骨休みではなくなる。そんな予感がしていたのだ。

エレンは、どうしていいか分からず、再び項垂れた。

胸が痛い。心臓が痛い。

ミカサ「………迷っているのね?」

エレン「……そうだな。今はもう、迷ってる。こっちの世界の楽しさに馴染んで、いっそこっちでずっと暮らすのも悪くねえって、思い始めてるよ」

エレンは本心を吐き出した。それは嘘偽りない言葉だった。

エレン「でもそれじゃ、今度は俺が……「エレン=イェーガー」としての人生が終わっちまう。俺はまだ、巨人への恨みを完全に忘れたわけじゃねえ」

ミカサ「………」

ミカサの本心を言えば、エレンの気持ちが変わるのなら、それはそれで良いと思っていた。

この世界には巨人がいない。エレンも危ない事をしないだろうと思う。元の世界に比べれば、の話だが。

しかしエレンは首を左右に振った。

エレン「俺は……この胸の痛みを忘れて生きるなんて出来ねえよ。でも……こっちの食糧事情とか、母さんが生きてる事とか、元の世界と比べたら、心が揺れてんのも、事実だよ。俺は……俺は……どっちを選べばいいんだ」

ミカサは黙ってエレンを見つめていた。

これ以上は、何も言えない。

エレン「俺は一人なんだ。二人分の人生を生きる事が、そもそも間違ってたんだ……くそ! もう一人の江蓮! いい加減、復活しろよ! このままだと、本当にお前……死んじまうぞ! 俺に自分の人生を取られて悔しくねえのかよ!!」

エレンの叫びは、虚しく部屋に響いた。

それでも、何も変化が起きない。

エレン「……もう、江蓮は戻ってこねえのかな」

ミカサ「そもそももう一人の江蓮は既に逃げ出した。逃げた人を追うような真似は、してもあまり意味がないかもしれない」

エレン「でも、江蓮が戻れねえなら、俺も元の世界には……」

ミカサ「エレン、その前提がもしかしたら、間違っているのかもしれない」

エレン「え?」

ミカサ「この問題はどうも、異世界の江蓮側だけが原因ではない気がするの」

エレン「どういう意味だよ」

ミカサ「つまりエレン、あなたの方にも、原因があるんだと思う」

エレン「俺の方……だって?」

思い当たるフシがなく、戸惑うエレンだった。

エレン「……ミカサ、もう少し詳しく言ってくれ」

ミカサ「これはただの、女の勘なのだけども……」

ミカサは一度そこで何故か視線を横に逸らしてから言った。

ミカサ「エレン自身も何か、異世界の江蓮に似た、ものを、隠してない?」

エレン(ギクッ)

ずばり当てられて肩が震えるエレンだった。

ミカサ「ほら、やっぱり……エレンは私のこと、好きなんでしょう?」

エレン「は、はあ? ま、まあ…そりゃ好きだけど。それは家族として当然のこと……」

ミカサ「そうじゃなくて、」

ミカサは少しイラついたように言った。

ミカサ「私のこと、女として、好きではないの?」

エレン「好きじゃねえ」

即答に少しだけ傷つくミカサだった。

ミカサ「嘘……。たまに私の胸、見てるくせに。お尻や足だって、好きなくせに」

エレン「自意識過剰だな、おい! いつ俺が、お前の体を舐め回すように見たって言うんだよ!」

ミカサ「……舐め回すように見てたのね」

エレン「(ギクギク)見てねえ! ぜーんぜん見てねえし! 言いがかりだぞ! それは!」

傍から見ると、「バレバレですよ!」とツッコミを入れたくなるような反論だったが、エレンは頑なに認めなかった。

ミカサ「それはいつの事だか、言ってもいいの? 本当に」

エレン「あーどうぞ! どうせ勘違いだろうけど!」

ミカサ「いつもよりちょっとだけノルマが多かった立体機動の訓練の日、あの日エレンは訓練中、私の下から遠目で私のお尻、チラチラ見てたでしょう?」

エレン(ぶーっ!!!!)

確かアルミンがバテバテになって男子寮に帰還したあの日の事だ。

エレンはアルミンを支えながら帰ったのでよく覚えている。

ついうっかり、ちょっとだけ心の癒しに見ちゃっただけなのに、なんで知ってる…? というか気づいてんの?

エレンが真っ赤になってオロオロキョロキョロしていると、ミカサはニヤッと笑った。

ミカサ「私がエレンの視線に気づかない筈がないでしょう? まあ…エレンも男の子だから、ついうっかり、という事はあると思う。でも、それが何度も続けば……私だって、疑いたくもなる」

じーっと見つめられてエレンは何も言えなくなった。

ミカサ「私がこっちの世界に来た時、こちらの世界の短いスカートをはいて出てきた時、エレンは何故か急に鼻血を出した。私が納豆を食べている時も、良く分からないけど顔が赤かった。プリンを食べてる時も。チョコバナナを食べてる時は、それよりもっと赤かった。私が機嫌が悪いと、すぐに察してくれた。私が演技をしていたら、優しく見守ってくれた。それらの全ての理由を、今、私に説明出来るの?」

エレンは黙秘を貫いた。

ミカサ「エレン……あなたも本当は異世界の江蓮と同じように、私から逃げているのではないの?」

エレン「…………」

エレンはひたすら黙秘した。

ミカサ「また……だんまり。この話になると、いつもこうなる」

エレン「だって、違うからな」

ミカサ「……他に好きな人でもいるの?」

エレン「いや、いねえけど」

ミカサ「……」

エレン「つかそれより、お前の方はどうなんだよ。ミカサは俺の事ばっか言うけど、お前は俺の事、男として好きなのか? 家族として、ではなく」

ミカサ「……両方ね」

ミカサは奇妙な答えを言った。

ミカサ「どちらもある、のが正しい答え」

エレン「……なんじゃそりゃ、意味わからん」

ミカサ「だって、エレンがはっきりしないのが悪い」

エレン「はあ? 俺のせいだって言うのか? そんなの責任転嫁だろ。お前の方こそ、はっきりしろよ」

ミカサ「だからそれは私は……エレン次第だと言っている」

エレン「ん?」

ミカサ「エレンが望むなら、どちらでも良いの。……ただ、私は傍に居られればもう、それでいいのだから」

エレン「……ミカサ」

ミカサの表情が陰ったのを見てエレンはつい、呟いてしまった。

ミカサはそれを遮るように。

ミカサ「どんな形でもいいの。家族でも、恋人でも。エレンが家族として私と居ることを望むなら、それでいいし、恋人として望むなら、そうなる覚悟はある。でも……今のエレンは家族と言いながら、恋人のようにたまに、私を優しく見ているから、私も、心が、定まらない」

エレン「…………」

ミカサ「私の勘違いなら、それでもいい。そういう事にしておく。けれど……この問題と、もう一人の江蓮との問題が、全く繋がってないとは、私には思えない」

ミカサは、ずいっと、少しだけ、エレンの方に近づいた。

心臓が高鳴る。だけど言わずには居られなかった。

今、ここで言わなければ、一生、聞けないと思ったからだ。

ミカサ「エレン……正直に言って。あなたは、私のこと、どう思ってるの?」

エレン「………」

その時、エレンの口が勝手に開きかけた。



『好きだ……』



エレン(……?!)

声が、聞こえる。

自分のようで、自分でない、別の声。

もう一度、聞こえる。



『俺は、ミカサの事が、好きだ』



エレンは思わず自ら口を塞いだ。

エレン(ちょっ…! 待て! 勝手に口、動かすなよ! 誰だ…誰だよ、今の! まさか!?)

その、まさかだった。

江蓮が今、口を勝手に開こうとしたのだ。

エレン(てめえ! 目覚めてんなら、出てこいよ! 何、中途半端な事してんだよ! つか、勝手な事すんな!)



江蓮『…………好きだ』



エレン(人の話、聞けよ!)



江蓮『好きだ好きだ好きだ好きだ好きだ……』



エレン(?! 本当、マジでやめてくれ! Σ(゚д゚lll) ここで告白とかしたら、今まで耐えてきたのが水の泡になる! 勘弁してくれええええ!!)




江蓮『…………代わりに告白してやろうと思ってな』



エレン(こらああああ!! くそっ…もう一人の俺のくせに知能犯だな!)



江蓮『いいじゃねえか、別に。そっちの俺はミカサと血が繋がってないんだろ? 見てたぜ? お前の様子はこっちも、テレビを見るような感覚で分かるんだ。俺と違ってヤリたい放題のくせに、何遠慮してんだよ』



エレン(そっちとこっちじゃ、事情が違うんだよ! 俺はミカサに手出す気も、告白するつもりもねえから!)



江蓮『よく言うぜ……擬似的にイチャイチャして俺に揺さぶりかけようとしてたくせに。おまけにお前、俺の方の三笠にまで手出すか迷ってただろ?』



エレン(それは……あの時は、その、仕方ねえだろ!! あの状況じゃ、耐え切った俺を褒めろよ!!)



江蓮『当然だろうが。手出したら本気で殺すぞ、てめえ(イラッ)』



エレン(そんだけ元気あんなら、こっちに戻ってこいよ! もう心の傷も癒えただろ?! つか、こうやって会話できるなら、俺もう用無しだろ?! 元の世界に戻るわ! 帰らせろ!!)



江蓮『まだダメだ。帰らないでくれ。もう少しだけ、時間をくれ』



エレン(嫌だ! 俺は帰りてえんだ! さっきは迷ってるって言ったけど、それはこの状況に慣れてきたせいなんだよ! 今ならまだ、間に合う! 傷の浅いうちに元の世界に戻らせてくれ!)



長引けば長引くほど、不利になることを感じているエレンは江蓮に頼み込んだ。



江蓮『……もう、俺の代わりに俺として生きてもいいぜ? お前なら、俺の残りの人生をくれてやってもいい』



エレン(貰っても困るわ! 他人に預けんな! 自分の人生だろうが!)



江蓮『…………三笠が可愛すぎて生きるのが辛いんだ』



エレン(それは俺だって同じだっつの!!!!!)



エレンと江蓮は心の中で口論を続けた。




エレン(俺も、生きるのは辛いわ! ミカサに何度、手出したくなったかもう覚えてもいねえよ! でも、あいつは家族だし、何より、俺達の世界には「巨人」がいるし、人類は存続の危機に差し掛かるかもしれんのに、自分のこと、どーこう言ってる場合じゃねえんだよ! そっちはいいよな! 巨人いなし平和だし! 俺だってこっちで暮らして行きたいわ!)



江蓮『……別にいいぜ? このまま生活しても』



エレン(本当はそうしたいさ! でも決めた! やっぱり俺は元の世界に戻る!)



江蓮『なんで……』



エレン(俺は、俺の現実と戦う! いや……戦わなきゃいけないからだ! だから……お前もお前自身の、世界と戦え……!!!!)



江蓮『!!』



エレン(お前の気持ちは痛い程分かる! でももう、好きだって自覚したんなら、昔には戻れねえ! なかった事には出来ねえんだよ! お前の選ぶ道がどんなに過酷だとしても、三笠が生きてるならそれでいいじゃねえか! 一緒に生きていけばいいだろ!)



江蓮『でも……』



エレン(でもじゃねえ!! つか、それ以前にお前、三笠とちゃんと向き合えよ! 血の繋がってることで動揺してんのは、三笠も同じだろうが!!)



江蓮『!!』



自分のことばかりに気を取られてその事に気付かなかった江蓮だった。



エレン(あいつ、泣いてたぞ! 俺と有民の前で、目真っ赤にして泣いてたんだ。俺達は何も出来なかった。見ている事しか出来なかった。本来ならそれを慰めるのは、江蓮、お前の役目だろ?! 三笠を一人ぼっちにして、あいつを傷つけてんのは、お前だろうが!!)



江蓮『分かってる。それは分かってる……!』



エレン(分かってるなら、尚更戻ってきてくれよ! 頼むから、戻って来てくれ!! こんな歪な形、いつまでも続けられるわけがねえ……俺だって、辛いんだ。だから……!)









ミカサ「エレン…? どうしたの…?」

エレンの様子が尋常ではないのに気づき、ミカサは青ざめていた。

さっきから白目を向いてプルプル震えているからだ。

エレン「悪い、ミカサ、今、話しかけないでくれ」

ミカサ「え? (まだ白目だ)」

エレン「もう少しで江蓮が戻れるかもしれねえ……あいつの声だけ、頭の中に響いてるんだ」

ミカサ「! そうなの?!」



エレン(江蓮…!!)



江蓮『…………』



エレン(くそ、だんまりかよ! 何か言えよ!)



しかしそこでエレンは諦めた、頭がガンガンしてきたからだ。

金づちで叩かれているような目の周りの痛みと、頭の圧迫感に耐え切れず、そのまま前のめりに倒れ込んだ。

ミカサ「エレン…!!」

エレンの目は元に戻った。

エレン「……はあ、くそ! もう少しだったのに」

もう、声は聞こえなくなっていた。

ミカサ「エレンが突然、白目になったからびっくりした。私のせい……」

エレン「いや、ミカサのせいじゃねえ。つーか、ミカサのおかげで江蓮を引っ張り出せた。やっぱ、江蓮もまだ迷ってんだよ。だったらこのまま、揺さぶってやる!!」

エレンは決意した。もうこうなったら、江蓮との一騎打ちだ。

エレン「俺がミカサと、とことんイチャイチャして、擬似的な幸せを見せつけてやる! お前も、三笠とそういう未来を選ぶ事が出来るってことを、あいつに伝えてやる…!」




エレンの目は、本気だった。

………と、いうわけで、ここで一旦区切ります。
ちょっと続きは間があくと思います。
出来るだけ早く帰ってきたいけど、ちょっと、時間かかるかもしれん。
先に謝っておきます。ごみんね。

あ、デートプランは、

1.>>205
2.>>206
3. >>208
4.>>209
5.>>210

の以上でいいですかー?

もうちょい受け付けますので、↓にどうぞ。
戻ってくる前に、お願いします。

もうええやん

ラブホ行かんかい

>>289
ワロタwwwwwありがとう。では行かせて貰います。

まじかw 期待

エレンおせミカサがいいならいいじゃない

ベタだけどゲーセンでプリクラとか

>>291
多分、ラブホは最後の方になるかも?
まだちょっとちゃんと書いてないので、書きながら調整します。

>>292
応援あざーっすwwww

>>293
いいですねー。ゲーセンも。エレン、太鼓の達人やりそうだな。
ミカサと一緒にやりそう。



あ、ちなみにどうでもいい話ですが、
エレン→原作のエレン
江蓮→アニメのエレン

くらいのイメージ感覚で書いてます。
アニメの方のエレン、若干(?)ヘタレやからね。

はよはよ

>>296
ではちょっとだけ……続けます。あまり長くないけど。

言っといてなんだけど好きな時でええんやで(´・ω・`)

朝から恋人繋ぎで登校してきたエレンとミカサの二人を見て、有民は驚いた。

あまりにナチュラルだったから。

有民「えっと………あ、そっか。江蓮に揺さぶりかける為、だよね」

一瞬、目的を忘れた有民はそれを思い出して納得した。

にしてもすごく自然で、しっくりくる。

なんていうか、握り方に慣れているように見えたのだ。

エレン「有民、学校に行きながらでいいけど、ちょっと話しておきたいことがある」

エレンの真剣な表情に有民は少し緊張した。

有民「うん……なんだい?」

エレン「どうやら俺達、元の世界に戻れなくなったみてえだ」

有民「えっ?!」

エレン「でも、その分収穫はあった。今まで引き篭ってたもう一人の江蓮の声が俺の中で聞こえた。あいつはまだ、生きている。間違いなく。あいつと少し話し合ったよ。江蓮はまだ迷ってるみてえだ。だから、こっちに戻す可能性はまだ残っている」

有民はそれを複雑な気持ちで聞いていた。

事態が悪化しているのか、好転しているのか、判断がつかなかったからだ。

エレン「だから、もっとあいつに揺さぶりをかけてやる。今日からちょっと……見ててうぜえって思うかもしれんが、俺、本気でミカサとイチャイチャすっから。有民は見守ってて欲しいんだ」

有民「ああ……そういう事ならお安い御用だけど」

というより、そんなのはもう既に見慣れている。

普段の江蓮と三笠も他人の前ではしないだけで、有民の前ではそれなりに仲は良かったのだから。

有民「えっと、取り敢えず、恋人繋ぎのまま学校まで行くんだね?」

ミカサ「恋人繋ぎ?」

有民「うん。今やってるその繋ぎ方は『恋人繋ぎ』って言うんだよ。あれ? ミカサの方は知らなかったの?」

ミカサ「知らなかった……(ポッ)」

エレン「ああ。まずはこれで、公然とイチャイチャする」

有民(これが他の知人や友人にバレたら、江蓮が戻ってきた時、本人大変だろうな)

ほんの少しそんな事を思った有民だったが、背に腹は代えられないと思い、覚悟した。

有民「分かった。今日から、もっと本気出すってことだね。あの……ところで、江蓮と会話出来たって事は、もしかして今の僕とエレンの会話も、江蓮に伝わってるのかな?」

エレン「多分な。分かってるって本人は言ってた。テレビ見てる感覚で見てるって言ってたぜ。……テレビって何だ?」

有民「あー…それは学校が終わってから説明するよ。そっか。じゃあテレビ中継するみたいな感じで、江蓮にここでメッセージを伝えようかな」

ごほん、と有民は咳払いをして、準備した。

有民「江蓮……聞こえるかい? 僕だ、有民だ」

テレビカメラを前にする気分で有民は言った。

有民「君は独りじゃないからね。必ず、僕が力になるから。だから……諦めないでくれよ。「家賀江蓮」としての、人生を。僕は君を待ってるからね」

エレンはその直後、ポロポロと勝手に涙が出てきた。自分の意思に反して。

エレン「うお……? 何だ? 何で泣いてんだ?」

ミカサ「もう一人の江蓮が泣いているのでは?」

エレン「なるほど……あ、手が勝手に動く」

エレンの右手が動いた。有民の手を取ると、指先で「ごめん」という三文字を手のひらに書いたようだ。

有民「クス……謝る事じゃないよ。江蓮。でも良かった。全く反応してなかった頃に比べれば、少しは江蓮も落ち着いてきたのかもしれないね。時間はかかるかもしれないけど、うん。希望は見えてきたように思うよ」

エレン「だな。よし、今日も一日、頑張るぞ!」

おー! と円陣を組む三人なのであった。





学校に着くと、エレンはパッと手を離してしまった。

ミカサ「?」

エレン「げっ……江蓮の奴、分かってて抵抗してやがる……」

再び手を繋ごうとすると、ビリビリがきた。

どうやら学校では、恋人繋ぎはNGらしい。

エレン「なんだよ! 本当こいつ、俺と同じ思考してやがる…! Σ(゚д゚lll)」

エレンも知人のいる(アルミンを除く)場面では、決してミカサとは手を繋がない。

恋人繋ぎなら、尚更だ。

エレン「ちっ……分かったよ。学校じゃ勘弁してやるよ。家に帰ったら、覚えとけよ」

>>298
本当は一気に投下する方が好きなんですけどね。
ちょっと、今、別件抱えてるので、それ終わったらこっちに戻りますよ。

今日は短いけど、ここまでで。またね(´∀`)ノシ

>>275
また間違えてた。
この日から日付が6月12日ではなく、6月13日です。

結構、時間軸が重要になるのに間違えてばかりですみません。
有民に経過報告するシーンは13日になります。

時間軸が混乱しないように、表を作っておきます。(*自分の為に)
先に作っとけば良かった! と思いましたが、
書き始めた当初から行き当たりばったりで書いてるせいで、
ミスが多発してます。すみません。

多分、こんな感じで進んでいるので、もし混乱したらここで復習してね!

6月6日(水)
江蓮が衝撃の事実(三笠と半分血が繋がってる事)を知る。
精神的ショックで引き篭る。

6月7日(金)
エレンが江蓮として現代に呼び出される。

6月8日(土)
部活見学。朝練やってた男子バスケ部に即決。
雀に翌日、野球の試合を見に来て欲しいと頼まれる。

6月9日(日)
午前中、練習試合野球観戦。
昼飯時、三笠を庇って、エレンは右手の甲に骨のヒビ入る。

6月10日(月)
一週間ぶりくらいにエレンが現代に戻る。
現代の時間は前回からそのまま続行。
江蓮の日記を発見。エレンが江蓮の事情を知る。
三笠にもお昼休みにその事を伝える。
写真と手紙を持って、エレンは元の世界に一時帰還。

6月11日
エレン、ミカサが現代に到着。
それぞれが部活動に参加。買い食い初体験。
キスは江蓮の意思に阻まれる。

6月12日
今度はミカサの部活動巡り。
新体操部に新たに加入する。

6月13日
有民にお昼休みに経過報告。
江蓮(エレン)→男子バスケ部
三笠(ミカサ)→新体操部、女子バスケ部
有民(アルミン)→放送部

6月14日
エレン、目覚めるが元の世界に戻れなくなる。
しかし江蓮との会話が可能になる。


今のところ、こんな感じで進んでいます。多分。
いろいろ訂正しながら進んでますが、すみません。
自分、結構おっちょこちょいなので、いろいろ間違えます。
気をつけます!

今日のお昼は有民が放送の担当日だ。

エレンとミカサは二人だけで机をくっつけて、一緒に教室でお弁当を食べる。

いつも思うが、母さんの弁当は美味い。

ハンバーグやエビフライにパクパク食いつきながら、エレンはミカサと話していた。

ミカサ「エレン……イチャイチャは?」

エレン「ん?」

ミカサ「はい、あーん(卵焼きスタンバイ)」

エレン「あ、そうだったな……(口を開ける)」


ざわっ……


その二人の様子に周りの生徒はびっくりしていた。

男子1「お、おい、見ろよ。あの江蓮が、三笠に遂に…!」

男子2「遂に三笠が江蓮を手懐けた…! あの反抗しまくってた江蓮が…!」

男子3「明日は台風が来るぞ! やばい!!」

普段の江蓮がどんな態度を取っているのかだいたい想像がつくエレンだった。

しかし今は気にしないで食べる。周りにコニーやライナーがいないと思うと、気は楽だ。

ミカサ「美味しい?」

エレン「おう! うまいな! (もぐもぐ)」

ミカサ「明日は私もおかずを作りたい」

エレン「ん? そっか、そうだな。明日はミカサにも頼もうかな」

ミカサ「ありがとう。エレン……」

周りの男子は泣いていた。どうもこれは、どうも、確定のようだ。

男子4「くっ……! あいつら、どう見てもシスコンの域を超えているだろ」

男子5「ああ……羨ましい!!」

エレン(そういや、この「はい、あーん」は抵抗してこねえな。何でだ?)

江蓮の方が口を閉ざすかもしれないと思ったのだが、意外にも普通に食べられた。

エレン(おーい、江蓮? はい、あーんは別にいいのかよ?)

江蓮『………食べないと、午後の部活の時に体が持たんだろ』

エレン(ああ…気遣ってくれたんか。ありがとな)

江蓮『別に……この程度なら、いいさ。もう…諦める』

一瞬だけ、また白目を向いたエレンにミカサはびっくりしている。

ミカサ「エレン、もう一人の江蓮と会話する時は前もって言って。ちょっと怖い……」

エレン「あ、悪い悪い……」

そんな風に会話をしていたら、教室に音楽が流れてきた。

有民の声も一緒に聞こえてくる。

有民『本日から金曜日のお昼の担当をする事になりました。一年一組、在例都 有民(アルレイト・アルミン)といいます! 皆さん、宜しくお願いします! 早速ですが、本日はリクエストソングを頂いてますので、一っ曲かけたいと思います。ももいろクローバーで『いくぜ! 怪盗少女!!』です! どうぞ!』

アップテンポな曲が流れてきた。

元の世界では全く聞いたことのないリズムの早い曲だ。

エレン「へー……こんな曲があるんだな」

ミカサ「♪」

ミカサはどうやらこの曲を気に入ったようだ。曲が終わると、

ミカサ「笑顔と~歌声で~世界を~照らしだせ♪」

エレン「え? もう覚えたのか?」

ミカサ「サビが頭の中をぐるぐる回るので……」

エレン「おお……確かに覚えやすい曲かもなあ」

こんなのが流行ってるのかと、エレンが不思議な心地で聞いてしまった。

有民『一年三組ハンドルネーム、小さな巨人さんからのリクエストでした! この曲はまだ、ももいろクローバーZに変わる前の、無印時代の彼女達の初期の歌ですね。今でも彼女達の代表曲ですね! 僕もライブ映像を見たことがありますが、とても元気になれる楽しい映像でした! 続きましては……Linked Horizonで『紅蓮の弓矢』です! どうぞ!』


チャチャチャチャーチャーチャチャチャチャーチャー♪


エレン「ん? この音、なんか聞いたことあるぞ? あ! 俺の携帯の音と同じだ!」

イントロの部分が江蓮の携帯と同じメロディである事に気づいたエレンだった。

エレン「おーなんかこっちはさっきの可愛い曲と違ってかっけえ感じだな」

ミカサ「そうね」

そんな感じで他にもいくつかのいろんな曲が流れて、楽しいお昼休みを過ごせた二人だった。

昼休みが終わる直前、初めての放送を終えて有民が教室に帰ってきた。

有民「一回だけ噛んじゃった……恥ずかしいー!」

エレン「え? 噛んだっけ? どこを?」

有民「ももくろの紹介の時に「一曲」って言うところ。ちょっと微妙に噛んだ……」

エレン「全然気付かなかったぜ。いや、すげえうまかったぞ、有民」

ミカサ「とても素敵だった。有民。また頑張って」

有民「うん……(今日から滑舌の特訓だ)」

そして今日も一日授業を終えて、それぞれ部活動に向かう。

エレンはまたドリブルばかりしていたが、ふと、理倍がエレンの変化に気づいて近寄った。じっと見ている。

エレン「?」

理倍「お前、急にうまくなったな。コツを掴めてきたみたいだな。よし、今日からシュート練習以外のメニューに参加しろ」

エレン「いいんすか?!」

理倍「ああ、ついてこい」

そしてエレンはこの日から、ようやく他の部員と合流して、練習する事になったのだ。

エレン「宜しくお願いします!」

ダッシュ、反復横とび、往復ダッシュ……

とにかく沢山走らされた。その様子を理倍はまたじっと見ている。

理倍「…………」

エレンの動きに注目している。

その視線には気づいていたが、エレンは気にしない。

見られるのは慣れているからだ。

キース教官の視線に比べれば、なんて事はない。

理倍は何かに気づいたようで、エレンに話しかけた。

理倍「お前、持久走のタイム、だいたいでいい。いくつだ」

エレン「へ? (わからん。元の世界の記録でいいのかな)」

江蓮の方のタイムを知らないので、エレンは代わりに自分の世界で測った記録を言った。

エレン「えっと……100キロで6時間超えるくらいっすけど(*兵站行進の記録を思い出してます)」

理倍「………は? 誰がそんな極端な記録を言えと言った。普通、持久走つったら、10キロくらいだろうが」

エレン「(10分の1でいいのか)えっと…単純に計算して36~40分くらいっすかね」

理倍「……まあ、計算で言えばそうだろうが……お前、息が切れてねえな。全然」

エレン「へ? 余裕っすよ、こんくらい」

理倍「何か、他のスポーツをしていたのか? 陸上とか」

エレン「えっと……(立体機動のことをスポーツって言うのも変だな)」

エレンは言い淀んでいる。なんと言うべきか……。

エレン「あ、バク転とか逆立ちとか、器械体操はやってました!」

こういう説明の方がいいだろうと思い、そう答えると理倍は納得したようだ。

理倍「なるほど。まあいい。どうやら俺の見込み違いだったようだな」

エレン「へ?! (また何かやらかしたのか俺?!)」

理倍「いや、悪い意味じゃない。いい意味で、だ。俺が間違っていたようだな。江蓮、お前、今度の日曜日の遠征練習試合のベンチメンバーに入れ」

エレン「えええ?! まさか、もう試合出られるんすか?!」

理倍「嫌なのか?」

エレン「いえ…そうではないんですけど」

迷った。次の日曜日はミカサとデートをするつもりでいたからだ。

今、バスケの活動をしているのはおまけみたいなもので、今は、江蓮を引っ張り出す方が重要だ。

というか、こんなに早く試合が出来る機会が巡ってくるとは思わなかった。

エレンが迷っているのを見て、理倍は言った。

理倍「まあ、いきなり出ろと言われても困るか。今から試しにミニゲームをしよう。その結果次第で、決めるのでもいいだろう」

エレン「そ、そうっすね」

そしてエレンは部活動加入後、初のミニゲームをする事になった。

理倍が突然、一年生の実力をみると言い出したので、レギュラーや二年生は動揺したし、エレンの方を睨んでいた。

当然の結果だが、ミニゲームが始まっても、エレンはなかなかパスを貰えなかった。

つまり完全にハブられてしまったのである。

しかしエレンは焦らなかった。

まずはじっくり様子を見て、とにかく動いた。走り続けたのだ。

パスは貰えなくても、バスケにはいくつかボールを奪うチャンスはある。

ひとつはパスカット。もう一つは、ゴールから溢れた球を拾うこと。リバウンドだ。

この二つは技術的にも体格的にも難しかったので、エレンはもう一つの方法を取った。

そう、コートから溢れそうになった球をひたすら追いかけ、拾ったのである。

エレンが遂にボールを取った瞬間、エレンはドリブルを使って切り込んだ。

その動きに目を奪われたのはレギュラーの方だった。

エレンはインサイドに切り込んだが、シュートはしなかった。

それよりもシュート確率の高い先輩にパスを回したのである。

……結果、ゴールが決まった。

エレンは自分では一度もシュートをしなかった。

周りにうまく回して補佐に徹した。

すると次第にメンバーは心を開き、エレンにもパスを回し始めたのだった。

その日のゲームでは、エレンは一度もシュートをしなかったが、それでも充分、活躍したと言えるだろう。

誰の目から見ても、それは明らかだった。

理倍「おい、江蓮。お前何故、自分でシュートをしなかった」

エレン「へ?」

理倍「何故、一度もシュートにいかなかったのかと聞いている」

エレン「いや、何故と言われても……そのほうがゲームに勝てると思ったので、としか」

理倍「ほう……(悪くない)」

エレンの答えに理倍は感心した。

普通、バスケをする人間は自分で点を入れたくて活躍したくて入る奴がほとんどだ。

理倍「自分のシュートより、勝利を望むのか」

エレン「当然っすよ。相手チームをぶっ倒したいから、戦うわけですし。自分よりシュートがうまい奴が居たら、そいつに出来るだけ譲りますよ。自分しか打てない場面なら自分で行くしかないっすけど……今のゲームの中で、そういうのはなかったですし」

エレンは軍隊で生活しているので、役割分担を理解して機能的に動くことを叩き込まれている。

特に上官の命令は絶対だし、チーム戦で望む時は指揮官の命令は従わなければならない。

だからこの場合、最も機能的な動きは、パスを回して、シュートの上手い奴に打たせる事だとエレンは判断したのだ。

エレンが元の世界で初めて皆でゲームをした時も、指揮官役に向いているマルコを中心に動いたのもそのせいだ。

理倍「ふむ…お前、それでバスケをやって本当に楽しいのか?」

エレン「はい! やっぱ勝ちたいっすから! 相手チームをぶっ倒してこそっすよ!」

理倍「……悪くない」

理倍はどうやら考えを改めて、心が決まったようだ。

理倍「江蓮、お前は後半に使う。次の練習試合、出ろ」

エレン「え?! (本当か…弱ったな)」

理倍「どうした? 不服か?」

エレン「いえ…そういうわけじゃないんですけど」

理倍「なんだ? デートの予定でも入ってたのか?」

エレン(ギクッ)

理倍「だったら、デートはキャンセルしろ。と言うより、彼女の方に試合に見に来て貰え。それくらいの融通のきかん女なんかと付き合っても意味ないぞ」

エレン「いえ、それは大丈夫です」

むしろ融通ならいくらでもしてくれるだろう。

ミカサの事だから、喜んでついて来てくれそうだ。

理倍「まあ…月三回は日曜日に練習試合を入れているから、バスケ部と付き合いを両立させるのは難しいかもしれんがな……それは入った時に覚悟を決めるべき事だ。怪我の具合が悪いようなら俺も無理は言わんが、見たところ、もうほとんど治ってるようだしな。問題ないだろ」

エレン「……(向こうで一週間過ごしたおかげだけどな)」

理倍「まあ、決めるのはお前次第だが。試合に出るなら、後半から使っていく。お前の持久力は、結構使えそうだしな。出ないなら、別の奴を出すが」

エレン「……いえ、出ます」

エレンはそこで返事をした。イチャイチャデートは別の日に回そう。

そう判断したのだ。

理倍「そうか。では日曜日、6月16日の他校遠征について来い。朝10時にこの第一体育館前に集合だ。いいな」

エレン「はっ…! (敬礼のポーズ)」

エレンはつい、敬礼をとってしまった。癖になっているのだ。

理倍「? 何だそのポーズは?」

エレン「はっ……いえ、何でもありません!」

エレンはついついわたわたした。元の世界の癖が抜けていないのだ。

理倍「変な奴だな……お前は」

そう言いながらも、理倍は江蓮(エレン)を気に入ったようであった。



そんなわけでデートが出来る日曜日が試合で埋まってしまった事を、エレンはミカサに伝えた。

有民とも一緒に帰りながら、どうしよう…と悩む。

有民「うーん…そういう話なら、そう焦らなくてもいいんじゃないかな? 次の週はお休みあるんでしょ?」

エレン「ああ…月の初めから第三週までの日曜日は全部、練習試合が入ってるらしい。ミカサとデートするとしたら、6月23日の日曜日になるな」

ミカサ「それは仕方ない。大丈夫。きっとあっと言う間にその日はやってくる。それにエレンが試合に出るなら、私もとても楽しみ」

有民「うん! 僕もだよ。どこの中学校と対戦するの?」

エレン「えっと……何処だったかな。確か>>313中学校ってところだったかな」

中学校の名前を自由に決めて下さい。どうぞ( ^ω^)ノ
もう眠いので寝ます。またねノシ

けんぺい中

>>313
平がなでいいのかな?
憲兵中ってことですよね。意味は。
了解しましたー!

聞いたことのあるその名前に有民も頷いた。

有民「へえ……けんぺい中か。あそこは確か、上流階級の子が通う学校だったなあ」

エレン「へーそうなのか」

有民「元華族の家系の子とか、代々続く大企業の息子とか…そういう特権階級の子供が通ってる中学校だよ。最近は、特待生も取り入れているらしいけど、この辺じゃ一番古い学校に入るんじゃないかな」

エレン「うちとは違うんだな」

有民「うん。うちはどちらかというと進学に力を入れてる学校だね。江蓮もそうだけど、医者や弁護士、大学教授、外交官…そういうインテリ系の家系の子が結構集まってる印象はあるよ」

エレン「ああ…通りで教科書の種類が多いと思った」

国語、数学、理科(第1、第2)、社会(歴史、地理)、英語、家庭科、音楽、保健体育、美術などの計11種類の教科書があるので、エレンは自分の世界より大変だなと思っていた。コニーがこっちに来たら、目を回すのではなかろうかと思う。

有民「そうだね。中学校に入るとぐんと種類が増えるね。教科書を持ち帰るだけで毎日筋トレになりそうだよ」

エレン(……何冊か置いてきたとはいえねえ)

エレンはつい面倒臭くなって、宿題の出ていない強化は学校に置いてきてしまっている。

その辺の完成は、普通の中学生と同じだった。

有民「でも将来の事を考えると、頑張らないといけないしね。特に僕は……これくらいしか取り柄がないし」

エレン「? 何言ってんだ? 有民には、沢山取り柄があるだろ?」

有民「え? そんなにないよ。僕は頭使うことくらいしか特技がないからね」

ミカサ「そんな事はない。有民……私達のアルミンと同じく、沢山いいところがある」

有民「え? ええ? 例えばどんな?」

ミカサ「こんな面妖な事態になっても、パニックにならずに冷静に適応しているところ。普通なら、こんな風に平成ではいられないと思う」

>>316
訂正

エレンはつい面倒臭くなって、宿題の出ていない教科は学校に置いてきてしまっている。

その辺の感性は、普通の中学生と同じだった。


漢字の変換が二箇所ミスった。

>>316
訂正2
ミカサ「こんな面妖な事態になっても、パニックにならずに冷静に適応しているところ。普通なら、こんな風に平静ではいられないと思う」

もうひとつ変換ミス。すんません。

有民「え? うーん……そうかなあ? いや、これでも僕、一応、びっくりはしているよ? でも、そんな事言ってても、問題は解決しないと思うし……」

ミカサ「そこ、がいいところ。有民は問題を簡単に投げ出さない。それに立ち向かう適応力と冷静さを持っている。私達はそれに何度助けられたか分からない」

ここでのミカサはアルミンと有民、両方のことについて言っている。

エレン「それと、面倒見がいいところも、だな。俺達だけじゃない。クラスの皆も、有民に頼ってたじゃねえか。勉強以外でも分からんところを教えたりしてたし…平等つーのかな。あんまえこ贔屓もしねえし」

有民(多分それは根っこの部分が八方美人なだけだと思うけど)

有民は苦笑いするしかない。

有民「そっか……ありがと。ちょっと嬉しいね」

エレン「あ、でも悪いところもあるぞ? そうやって、ちょこっと誤魔化すとこ! まあ…向こうのアルミンも同じ事するけどな。こっちがどんだけ褒めても素直に受け取らねえんだよ」

有民(……バレてるのか)

有民はちょっと驚いた。まさかバレてるとは思わなかったのだ。

ミカサ「私達が何度褒めても、アルミンもいつも苦笑いする…。どうすれば、伝わるのか…」

有民「……………」

こればっかりはどうしようもない気がする。

有民は褒められれば褒められる程、調子に乗らないように自分を律してしまう性格なのだ。

つまりそれだけ、物事を客観視する性格と言える。

有民「僕よりも、エレンの方がよほど適応能力があるんじゃない? 今では大分、こっちの生活に慣れてきたでしょ?」

エレン「……ちょっと慣れすぎて怖いくらいだけどな。あんまり長くこっちにいると、元の世界に戻れねえかも…って、ちょっと思ってた事もある」

有民「え? それはまずいね」

エレン「いや、今は大丈夫だ。もう一人の江蓮と話せるようになってからは。その不安も全部消えた。あいつさえ戻ってくれれば、俺はちゃんと元の世界に帰るさ。その辺はもう大丈夫」

有民「そっか……じゃあやっぱり、江蓮次第って事なんだね」

エレン「ああ……あいつは今、迷ってるみてえだからな。でも…俺、思うんだけど、もう一人の江蓮がここまで引き篭っちまった理由って、本当に三笠との血の繋がりだけなのか?」

有民「え?」

エレン「いやな、確かに血が繋がってる事は、ショックだとは思うんだが……それでも、二人で一緒に生きていく事は、出来るだろ? 子供は作れねえかもしれんが、結婚だけなら出来るんじゃねえのか?」

有民「いや、出来ないよ。日本じゃ無理だ」

有民は悲痛な表情を隠さずに言った。

有民「他の国でも、血の繋がった兄妹で結婚出来る国は、僕も聞いた事がない。調べればあるかもしれないけど……」

エレン「じゃあ有民、調べてみてくれよ。それでもう少し大きくなって金貯めて、その国に移住すれば、江蓮の問題は解決出来るんじゃ……」

江蓮『それは俺も考えたさ』

エレンは突然、また白目になった。

江蓮『でも問題はそこじゃねえんだよ』

エレン(じゃあ何が問題…)

江蓮『お前も、今、言ったじゃねえか。「子供は作れねえかもしれねえ」って。だったら、知ってるんだろ? 近親者同士で子供を作った場合のリスクについては』

エレン(あーうん。昔、父さんに聞いた事がある。血が濃すぎると、確か、生まれつき障害を持った子が産まれる可能性が高くなるって)

江蓮『知ってるなら、分かるだろ。それを知った上じゃ、俺は三笠とのあいだには一生、子供を作れねえよ。……つまり分かるだろ。俺は三笠に女の幸せの一部を与えてやれないって事なんだよ』

エレン(あ…お前、そっちをむしろ悩んでたんか)

江蓮『当たり前だろ! あいつは母性の塊みたいな女なんだ。分かるだろ? それがどういう意味か……』

エレン(まあ、ちょっと落ち着け、江蓮)

エレンは一度、両目を閉じた。

子供を作れないという意味では、エレンもその気持ちは理解できた。

エレン「確かに将来を考えると、三笠は可哀想かもしれん。お前も子供作れねえなら、将来が心配かもしれん。でもな…俺は思うんだ。何もかもが全てうまく選択なんて、そうそうねえぞ? 生きてれば)

江蓮『…………』

エレン(何かを成す為には、何かが犠牲になる。それは誰だって同じだと思うんだ。俺だって……本心を言えば、間違ってるって選択をしてんのかもしれんと思う時もある。でも、自分の気持ちに嘘はつけねえし、やっぱりミカサの事、好きだから、あいつを出来るなら危険な目に遭わせたくねえと思ってる。けど、ミカサ自身は絶対嫌だって、言って、俺についてくるんだ。皆、そういう譲れないもん、持ってるから、いろいろ問題は起きるけど……それは多分、三笠も同じだと思うぜ?)

江蓮『……それは』

エレン(俺は、三笠と一度、本心を話し合った方がいいと思う。今すぐじゃなくていい。もう少し、落ち着いてからでもいい。だから、その時が来たら、お前も勇気出せよ)

江蓮『……分かった』

そしてエレンは目を開けた。

ミカサ「大丈夫? エレン。もう一人の江蓮は…」

エレン「ああ…以前よりは落ち着いているみてえだな。江蓮が引き篭ってた理由はどうも、子供についての問題の方だったみたいだ」

有民「あー…」

エレン「多分、結婚は出来なくても、二人でひっそり生きていく事は出来ると思う。江蓮と三笠ならな。でも…そうすると、三笠の方に少し犠牲になって貰わねえといけねえ。それが申し訳なくて仕方ねえ……って感じだったな」

有民「…………」

江蓮らしい考えだな、と有民は思っていた。

ミカサ「? 何が申し訳ないの?」

エレン「江蓮と三笠の場合、血が濃くなるから、子供は作れねえって話だよ。もし作ったら、障害のある子が出来る可能性があるんだよ」

ミカサはそれは初耳だった。

ミカサ「そう……なら、作らなければいいのでは?」

エレン「いやだから、それが三笠に対して申し訳ねえって江蓮は思ってるって話で……」

ミカサ「? 何故、申し訳ないの?」

いかん、話がループしとる。

エレン「……ミカサ、人の話聞いてたか?」

ミカサ「聞いていた。でも、良く分からなくて。ごめんなさい」

エレン「あーもしかして、ミカサは別に将来、子供はいらねえとか、か?」

ミカサ「欲しくないわけじゃないけど……エレンを守ることが出来なくなるのであれば、要らない」

エレン「………」

こっちはこっちで問題だ…と思ったエレンだった。

ミカサ「つまり、三笠の方に「子供は要らない。江蓮と二人だけで生きていく」という覚悟があれば、問題は解決するのね」

エレン「……平たく言っちまえばそうなるな、多分」

ミカサ「…………」

ミカサは少し考えた。そして自分もエレンの真似をしてみるが、三笠には声が届かないようだ。

ミカサ「私も、もう一人の自分と会話が出来ればいいのだけど……ごめんなさい。呼びかけても、反応がないみたい」

エレン「あーそれは仕方ねえよ。俺も何で会話出来るようになったのか、良く分かってねえからな。たまたま、出来るようになった気もするし」

ミカサ「……この問題は、すぐには解決出来るようなものではない気がする」

有民「そうだね。二人にとっては、一生の問題だ。もう少し、時間が必要だと思う。今日のところは、一旦、保留にしよう」

エレン「そうだな…有民、いつもありがとな!」

有民「いいよ。むしろ、あんまり力になれなくてごめんね……」

ミカサ「有民! そんな事、言ってはダメ」

エレン「そうだぞ! 有民! いつも頼りにしてんだからな!」

そして三人はそこで分かれ、それぞれの家に帰宅したのだった。




その日の夜は、雨が降らなかった。




6月15日

エレンは目覚めた、いつものように、ご飯を食べて、ミカサと有民と一緒に学校に行き、部活をして、家に帰る。

その様子を、テレビを見るような感覚で江蓮は見守っていた。

江蓮(…………)

江蓮が引き篭った理由は、実はもう一つあった。

彼は今まで尊敬していた父親と、血の繋がりがないという事実に対しても、ショックで心の整理がつけられなかったのだ。

江蓮は、父が好きだ。本当に尊敬しているのだ。

なのに、自分の恋敵の子を、具理者は自分の子として育ててきた。

今までどんな気持ちでいたのだろうと思う。

父親ともう一度、顔を合わせる事も、怖かった。

今まで通りの態度を取れる自信なんてなかったのだ。

江蓮(俺は父さんになんて顔をすればいいんだ)

理想を言えば、このままエレンを巻き込んで、ずっと内側に引き篭っていたいくらいだった。

でも、江蓮はもう気づいていた。自分の変化を。

少しずつ、元に戻ろうとする、自分を。

そうだ。人はそう簡単には死なない。

傷ついても、生きようとするのだ。

生きたいと思う本能は、そう簡単には無くならない。

でも、生きるという事は、選ぶという事だ。

自分の人生を、自分で決める事なのだ。

江蓮『……………』

江蓮はその時、ふと、三笠が好きだと言っていた洋楽のメロディを思い出していた。

BON JOVIの「LIVI'N ON A PRAYER」だ。

江蓮が洋楽にはまりたての頃、この曲をパソコンで流していると、必ず一緒に三笠は鼻歌を歌っていた。

江蓮は「何でこの曲好きなんだ?」と聞くと、三笠は「とても素敵な愛の歌だから」と答えた。

だから江蓮は日本語訳を調べた。その内容は、愛する二人が必死に支え合って生きている、その生き様を歌詞にしたものだった。

江蓮は「よく耳で聞いただけで内容が分かったな」と聞くと、三笠は「いえ、意味は半分も分かってなかったけれど、なんとなく、そんな気がしたの」と答えていた。

感性とは素晴らしい。この頃から、三笠には音楽の才能があったのだろう。

だから江蓮はギターを手に取った。歌に出てくるトミーのようには成れないけれど。

一緒に、三笠と歌う事ぐらいなら、出来るだろうと、コードを覚え、下手くそなギターをかき鳴らしたのだ。

あの頃を思い出すと、胸が痛くなった。

自然と涙が溢れ出てくる。

本当は三笠に会いたい。

こんなに長く、三笠と離れるのは、江蓮も初めての経験なのだ。

江蓮『ちくしょう……』

江蓮は羨ましくて仕方なかった。もう一人の、エレンを。

自分よりもはるかに大人である、エレンを。

彼の言う通りなのだ。本当は、三笠と向かい合わなければいけないのに。

もうこれ以上、自分の気持ちを隠して生活なんて、出来ない。

きちんと三笠に自分の本心を伝えた上で、これから先のことを、決めなければいけない。

そういう時点に来ているのだ。

三笠がどんな風に自分の事を思っているのか、はっきりと聞いた事はない。

いっそ、振ってくれるなら、それはそれでいいと思う。

でも、もし、両想いだった場合はもう……

お互いに覚悟を決めるしかない。

壁を越えるのが怖い。

今までのように居られない事が、怖い。

でももう、ここでずっと怯えている場合じゃないのだ。

有民の言葉を思い出す。

待っていると。有民は言っていた。

三笠もきっと、同じだろう。

待っているだろう。自分の事を。

なのに…。

江蓮(なんで俺は、この部屋から出られないんだ……)

江蓮の心の部屋には、テレビだけがあった。

他に繋がるものは何もない。

ドアのない暗闇の部屋に閉じ込められて、江蓮はずっと、泣き続けた。

今日はここまで~続きはまた明日。またねノシ

6月16日。遠征練習試合の当日の朝。

ミカサ「ふむふむ……(なるほど、こうするのか)」

エレンが起きて下に降りると、ミカサは既に起きていて、台所でお弁当のおかずを沢山作っていた。

エレン「お? なんか美味そうなものがいっぱいあるなあ! これ、全部ミカサが作ったのか?」

ミカサ「(こくり)料理の本が沢山あったので、見よう見真似で作ってみた。知らない食材が沢山あって、楽しかったので、あえて、初挑戦のおかずにしてみた」

エレン「ほほう!」

エレンはひょいっと一口、つまみ食いをした。ちくわとかまぼこの煮物だ。

エレン「お! これ、うめえ! なんだ?! 魚っぽい味がするのに、歯ごたえは魚じゃねえ?!」

ミカサ「ちくわとかまぼこの醤油煮という料理らしい。お弁当に入れる定番メニューと書いてあった」

チョイスが渋いな! と江蓮はちょっとだけ思った。

エレン(? なんで渋いんだ?)

江蓮『いや、なんか、俺がまだ幼くて、ばあちゃんが生きてた頃、そういう茶色系の弁当をよく食ってたからな』

エレン(へー)

一瞬だけ、エレンがまた白目になったが、ミカサはもう慣れてしまっていた。

元に戻ると、エレンは他のおかずに目を向けた。

エレン「他には……この黒いのなんだ?」

ミカサ「昆布巻きというらしい」

エレン「(ひょいパク)うま! なんかこう…濃い味だけど、美味い!」

すっかりおふくろ系(和風)のお弁当が出来上がっている。

エレンは文句の一つも言わず、パクパクそれらを朝ご飯のおかずに食べた。

エレン「食ったことねえ味ばっかだな! ん~! 弁当も楽しみになってきたぞ! ミカサ、ありがとな!」

ミカサ「ううん、いいの。エレンが喜んでくれるなら」

ミカサはお玉を持ったまま笑っていた。

朝からキュンキュンしまくりである。

エレン(はーっ萌える。やっぱ、エプロンしてる女の子は可愛いよな(*´∀`*))

江蓮『…………』

本当なら今日は、三笠の方にお肉中心の弁当を作って貰う予定だったのだが。

江蓮はその事を少しだけ残念に思ったし、三笠に対して申し訳なく思った。

お弁当のおかずのチョイスが、三笠とは全く違ったので、当然だが三笠とミカサはやはり違うんだな、と思ってしまった。

エレン「この芋、うめえ! 俺達の食う芋と味が全然違う!」

ミカサ「それは里芋と言うらしい。皮を剥く時に少しねばねばして苦戦した。不思議な芋だった。こちらはさつま芋。すごく甘い芋らしいから、デザートになるように甘辛く煮てみた」

エレン「どっちもうめえええ! いろんな芋があって面白いな! (ワクワク)」

江蓮『……………』

江蓮は複雑な心境で二人のやりとりを見守っている。

ミカサ「あとこの……ミートボールというのだけは、三笠が私に作り方を教えてくれた」

エレン「え?」

江蓮『?!』

そこには、皿の上にのった山盛りのミートボールがあった。

エレン「…ってことは、今日からミカサも三笠と話せるようになったのか?」

ミカサ「(こくり)お弁当を作っていたら、途中で突然、声が聞こえてきた……ので、どうやら、今日のお弁当は元々、三笠がエレンに作る約束をしていたらしい。………エレン、後でちょっと詳しい事を聞かせて欲しいのだけども? <●><●>じーっ」

エレン「(ギクリ)えっと…あとでな! 試合終わってからにしてくれ! あ、時間! 遅刻するとまずいから、俺、先に家、出るわ! じゃな! (玄関までダッシュ!)」

ミカサ「チッ……逃げたか」

ミカサは舌打ちしたが、まあとりあえず「今」は気にしない事にしておく。

ミカサは両目を閉じた。声が聞こえてきたからだ。

三笠『……ごめんなさい。言うべきか、迷ったのだけども。どうしても、約束を破りたくなかった……ので』

ミカサ(それは構わない。エレンはお肉も大好き。けれど、エレンは食べた事のないものはもっと好き。珍しいものが大好き。なので、そちらを優先させて貰った。そういう意味では、他のおかずも手伝ってくれて感謝している)

三笠『……あなたもエレンが好きなのね』

ミカサ(当然。エレンは私の命の恩人。そして大事な家族だから)

三笠『私と同じね。でも、ひとつだけ違うのは、血が繋がってない事だけ……』

ミカサ(……厳密に言えば、それは違う)

ミカサはお弁当を詰める手を一度止めて言った。

ミカサ(私と三笠はそれ以前に、生きる世界が違う。三笠の生きる世界は、私のいる世界より、はるかに平和。美味しいものが沢山ある。巨人もいない。だから、私はあなたがとても羨ましい……)

三笠『私は、血の繋がっていないあなたの方が羨ましい……のだけれども』

ミカサ(ならお互い様ね。これはもう、どうしようもない事。互いを羨んでも意味がない。………不毛)

三笠『………そうね』

お弁当を詰める手を再開させた。

今日は有民の分も含めて三人分のお弁当が必要だから、多めに詰めていく。

ミカサ(それより、これからあなたはどうするの? 江蓮は三笠の事が好き。女性として、愛している事が分かった今、あなたはこれからどうするの?)

三笠『当然、一緒に生きる。……子供は諦めるしかない。私はそれでいい』

ミカサ(さすがもう一人の私。迷いなどない。そこも私と同じなのね)

三笠『……あなたの場合は諦めなくてもいいのでは?』

ミカサ(私もエレン次第。エレンが危険な世界に行くのであれば、ついて行くし、そうでなければ、内地で二人で暮らして、子供を産んで育ててという選択をしてもいいと思っている。でも多分、エレンは内地には留まらないので、仮にそういう関係になれたとしても、私もあなたと同じように、子供は諦める選択になると思う)

三笠『……何だかそちらも複雑な状況みたいね』

ミカサ(仕方がない。でも、それが私の決めた人生……なので)

お弁当は完了した。

後は後から有民と合流して、エレンの試合を応援しに行くだけである。

三笠『……待って』

ミカサ(?)

三笠『折角なので、今日は少しだけおしゃれをして行きたい。一度、私の部屋に戻って欲しい』

ミカサ(おしゃれ? おしゃれをする道具をあなたは持っているの?)

三笠『少しだけ……あと、江蓮は女の子らしい格好が好きなので、今日はスカートで行きたいと思う』

ミカサ(了解した。エレンも同じなので、問題ない)

そしてミカサは出かける前に、少しだけ、いつもよりおしゃれをして家を出たのだった。

眠いので、寝ます。続きはまた今度ノシ
おやすみなさい。


続き待ってるよ

有民と待ち合わせしてけんぺい中に向かう。

有民はミカサの格好を見て「おお!」とちょっとだけ頬を赤らめた。

有民「今日は何だか可愛いね! 気合入ってるなあ。良く似合ってるよ!」

ミカサ「ありがとう。三笠が服を決めてくれた」

有民「へーそうなんだ。うん、バッチリだよ!」

今日のミカサは薄い緑色のシンプルなワンピースに、白っぽいカーディガンを羽織った、女の子らしい格好だった。

足元も可愛い。踝までの茶色のブーツ。長く歩くことを想定して今日はブーツにしたのだ。

有民の方は白い長袖Tシャツに黒い長ズボンというシンプルな格好だった。

Tシャツには格好いい英語のロゴが入っている。

二人は早速、電車を使ってけんぺい中の近くの駅まで移動した。

しかし駅を降りて学校まで歩いていると、突然、男二人組に話しかけられてしまう。

明らかにナンパだった。

有民(………)

出来るだけ男らしい格好をしてきたのに、これだ。

有民と三笠の二人で歩くと、8割の確率でこうやってナンパに遭ってしまう。

両方共、女の子と認識されて間違われてしまうのだ。三笠がスカートの時は尚更だ。

有民「……いこうか、ミカサ」

こういうのは無視するのに限る。

しかし男達は「待てよ」と乱暴に有民の肩を掴んだ。

男1「そんなに邪険にするなよ! なあ? 一緒にご飯を食べに行こうぜ~♪ 君達になら、いくらでも美味しいものおごってやるし!」

男2「ああ! (俺、黒髪な!)」

男1「(俺は金髪の子で!)この辺、美味しい店、いっぱいあるんだよ。俺達この辺り詳しいからさ……」

ミカサは男達をじろりと睨んで言った。

ミカサ「私達、急いでいるので、試合に間に合わなくなるので、離して下さい」

男1「試合? 何処かに見に行くの? 俺らも一緒に行ってもいい? 飯はその後でいいからさ~♪」

有民(あっちゃー……もう、ミカサのドジっ子……)

いらん情報を相手に与えてしまった。

ミカサ「ダメ。今日はあなた達に構っている暇はない。これ以上、絡むなら、それ相応の対処をする」

男1「ん? なんだよ………うわっ……?! (ドシーン!)」

男の一人が、宙を舞った。

ミカサが腕を掴んで捻って、足を蹴って男の体をひっくり返したのだ。

その技術にもう一人の男は目を丸くする。

有民(今だ……!)

その隙をついて、有民とミカサは一緒に走り出した。

途中でタクシーを見つけたので、有民は素早くそれに乗り込む。そして車を走らせる。

有民「はあはあ……ミカサ、無茶させてごめん」

ミカサ「いえ…ああいう奴らは実力行使をするしかない……ので、時間が勿体ないし、ああするしかなかった」

お弁当が崩れたかもしれないと思い、ミカサはちょっとだけ中身を確認した。

しかし走った距離が短かったおかげか、思ったより崩れていなかった。ほっとする。

有民「……ごめんね。僕がもっと男らしい外見なら、こんな風に変に絡まれなくても済むんだけど」

ミカサ「? ………ああ! あいつらは、私ではなく、有民と一緒にご飯を食べたかったのね」

有民「いや、そう言われると、違うと言いたいところだけど……うーん、多分、半分は当たってるのかな」

一人はミカサを見ていたが、もう一人は明らかに有民狙いだった。有民はつい、落ち込んでしまう。女の子と勘違いされていたのだろう、と。

有民「はー…こういう時は、自分の背丈とか、顔を呪いたくなるよ。毎日牛乳だけは欠かさず飲んでいるんだけどなあ」

ミカサ「有民、親から貰ったものを、そんな風に言ってはダメ。私は有民の外見も含めて好き。だから、必要以上に自分を卑下しないで」

有民「………うん」

有民はまた苦笑いをするしかなかった。

そんな有民にミカサはまたムッとした顔になる。

ミカサ「有民。有民があの時、すぐ一緒に逃げてこの車に乗り込んでくれたおかげで振り切れた。そういう発想は、私にはない。走って逃げる事しか、思いつかなかった。有民のおかげで、お弁当の被害も最小限に済んだ。だからそれ以上落ち込まないで」

有民「…………………」

有民は非常に複雑な気持ちでミカサを見返した。

有民「ミカサは優しいね、本当に」

ミカサ「え?」

有民「でも、僕だって本当は……君達を守りたいんだ。足手まといになったり、僕のせいで面倒事に巻き込まれるのは、本意じゃない。………僕だって一応、男だから」

その瞬間、有民は男らしい顔つきになった。

ミカサはそれを黙って見つめている。

有民「………という訳で、落ち込まないというのは、僕にとっては無理な話なんだ。ちょっとだけ、落ち込ませてよ」

ミカサ「……分かった。そこまで言うのなら仕方ない」

そして二人は学校に着くまでの間、黙って移動したのだった。







そして二人がけんぺい中に到着すると、そこは沢山の人が集まっていた。

体育館中に人が集まって、溢れ出そうな勢いだ。

丁度、今から練習試合が始まるところらしい。

有民とミカサは、二階の観客席に座ってエレン達バスケ部員を探した。

緑色のユニフォームを着てベンチに座っている。

背番号は4番が理倍、5番が三毛、6番が軍太、7番が絵瑠度、8番が雷名、9番が部瑠都瑠都、10番にエレンが入っていた。

有民「いきなり10番か! 期待されているみたいだね!」

ミカサ「? そうなの?」

有民「えっと…バスケだと、4番はだいたいキャプテンが着るユニフォームで、以下が実力順か、ポジションの役割分担で入ることが多いらしい。1年で10番なら、充分期待されていると言えるよ」

ミカサ「ならエレンの出番はあるのね」

有民「きっとあると思うよ。後半に出るかもって言ってたからね」

そして練習試合が遂に始まった。

面白い

ゲームはなかなかのシーソーゲームになっていた。

前半は理倍、三毛、絵瑠度、軍太、雷名が主に動き、途中で部瑠都瑠都が雷名と交代したりしていた。

前半戦は互いに様子を見て全力を出し切っていない。

理倍に至っては息すら切れていなかった。

点数差は、けんぺい中が50点、エレン達の学校、調査中が42点と、8点差で負けていたが、理倍は落ち着いていた。

理倍「向こうのチームで注意しとかんといかんのは、キャプテンの丸露くらいだ。他の奴らはそう警戒しなくていい。いつも通り、巻き返すぞ!」

男子部員「「「はい!!」」」

理倍「江蓮、お前は軍太と交代だ。後半戦、いくぞ!」

エレン「はい!」


ピーッ……!


合図が入って、後半戦がスタートした。

初の舞台にエレンは高揚した。

こんなに沢山の人に見られながらプレイをするのは初めての経験だ。

緊張しないと言えば嘘になるが、それ以上にエレンはワクワクした。

元々、度胸があるという意味で心臓は強い方なので、いい意味でテンションが上がってきたのだ。

理倍、三毛、雷名、部瑠都瑠都、エレンの五人で後半戦がスタートした。

部瑠都瑠都のジャンプボールでボールをキープした。

早速、ゲームが動き出す。

雷名、三毛、理倍、そして雷名に戻って、まずは2点。6点差に縮める。

ミカサはエレンの動きばかり見つめていた。

とにかくエレンがシュートを決めるところが見たかったのだ。

しかしエレンはシュートどころか、ボールにすらなかなか触れなかった。

相手チームのパスルートを邪魔ばかりして、プレッシャーをかけ続ける。

そして零れたルーズボールを拾い、すぐさま理倍に回す。

ミカサ「どうして?! エレン、シュートはしないの?」

有民「いや、今のはいい判断だったよ」

今、理倍は完全にフリーだった。3Pを決めたのだ。

これで3点差までに縮まった。

ミカサ「くっ……あのチビ、エレンの活躍を横取りして……(ギリギリ)」

有民「ミカサ……バスケはチーム戦だからね。だからシュートのうまい人がシュートをするのは、当然だから」

ミカサ「それは分かってるけど…でもエレンの活躍をもっと見たい……」

エレンは走った。またルーズボールを奪う。

ルーズボールが出る度に、エレンはそれを全て自分のチームに持っていく。

それはとても地味なプレーであったが、塵も積もれば何とやら。じりじりと追いついていき、遂には同点まで巻き返したのだ。

丸露(くそっ…今日はルーズボール出過ぎだろ?! 皆、何してんだよ!!)

通常、ルーズボールは一試合にそう何回も出るものではない。

しかし今日に限って言えば、その回数が多過ぎた。

それはエレンがずっと、パスルートの間に入って、プレッシャーをかけ続けたせいでもあるが、何よりエレンが滅茶苦茶走り続けたせいもある。

正直、「うぜええええええ!!!」と言いたくなるようなエレンの動きに、相手チームは体力を奪われてきたのだ。

そのせいで集中力が切れて、またボールが零れる。

エレンの活躍はとにかく地味だった。

シュートはまだ、一本も打ってないのい、相手チームは「なんかやりにくい」と感じていたのだ。

エレン(すげえ…楽しい!!)

エレンの表情は明るかった。こういう人の嫌がるプレイは、実は大好きだったりする。

悪い顔でプレイを続ける。ボールを持ってパスを出そうとした、その時!

理倍「江蓮! 行け!」

理倍はその時、シュートを打て! と合図した。

この瞬間、エレンはびっくりしたが、理倍の目はOKを出していた。

エレンは頷いた。

そして、シュートを打った…!

ミカサ「エレン…!」

しかし…!



ガコッ…!



やっぱり外れた! リバウンドになる!

その時!!

なんと160センチしか背丈のない理倍が、リバウンドボールをそのままゴールにねじ込み、ダンクシュートを決めたのだ。

その瞬間、体育館中が轟いた。

理倍のファンの女の子は、キャーキャー黄色い悲鳴をあげまくっていた。

エレン(なんつージャンプ力だ! すげえかっこえええ!!)

はっきり言って、人間技ではない。

ゴールの位置は、3.05mの高さにあるのだ。

単純に計算して、理倍は1.35m以上ジャンプした事になる。

小学生の身長分くらい飛んだようなものだ。

身長のある雷名や部瑠都瑠都が決めるのならまだしも、160センチでダンクを決められるのは理倍くらいだろう。

丸露「くそっ……カッコつけやがって…!」

しかし今の一撃は効いた。明らかにムードごと奪われてしまった。

理倍の一撃が決定打になり、試合はそのままエレン達、調査中が勝った。逃げ切ったのだ。

試合が終わると、何故かエレンは皆に「ナイスミス!」と頭をポンポン叩かれた。

エレン「何でミスったのに褒めるんすか?!」

理倍「お前なら絶対外すと思ったからだ」

エレン「どういう信頼っすか?! まあ、理倍さんが代わりに決めてくれたから良かったものの……」

雷名「ははは……今のは、外すのが正解なんだよ。あの時、キャプテンは助走体勢に入ってたからな。ダンクを決める為に」

エレン「えっ……そうだったんすか。でも、何故…?」

理倍は汗を拭きながらきっぱり答えた。

理倍「後半で逆転して、ダンク決めた方が、相手チームの心をへし折れるからに決まってるだろ」

エレン「ええええΣ(゚д゚lll) そんなとこまで計算して動いてたんすか……」

理倍「当然だ。ゲームには流れがあるからな。観客も味方につけた方が試合も有利になるんだ。ただ点数を入れていけばいいってもんでもない」

エレン「へー……」

理倍「そういう意味じゃ、今日のMVPは江蓮だな。お前は今日から『ルーズボールボーイ』と呼んでやろう」

エレン「……なんかそれ、格好いいのか悪いのかよく分かんないんですけど」

雷名「まあいいじゃないか、それとも「シュートミスの江蓮」と呼んだ方がいいか?」

エレン「それは絶対嫌だ!!! Σ(゚д゚lll)」

ゲラゲラ笑う男子部員一同だった。

その様子を江蓮も見ていた。

部外者として、見守っていた。

青春の一ページに、自分はいない。

本当ならその場所には、自分がいたかもしれないのに。

江蓮(違う……)

自分は選ばなかったのだ。

入部テストで落とされるかもしれないと思って、バスケ部の門を叩かなかった。

しかし、エレンは自分とは違い、その門をあっさり叩いた。

一度拒絶されても、自分の意思を曲げずにバスケを続けたのだ。

元々、持久力はあったから、その点は有利だったのだろう。

しかしそれ以外の知識や技術的な意味では、自分よりはるかに初心者だったのだ。

それでも文句一つも言わず、エレンは練習した。

陰口を叩かれても、全く気にしないで。怪我をしても、不貞腐れる事もなく。

その結果が、今日という日なのだ。

だからこれは、エレンが自分で手に入れた青春の一ページなのだ。

だから、そこに自分はいない。

エレンだからこそ、そこに立てたのだ。

江蓮はその時になって初めて、自分の人生を人に譲るという事が、どういう事かを理解した。

変わるのだ。全てが。他人に未来を決められてしまう。

そこに自分の意思は反映されないのだ。

今までは、江蓮とエレンの思考が似ていたから、そこまで強い違和感はなかったが……

けれど、これは違う。

もう、江蓮ではなく、エレンがここで生きていると言っても遜色ない。

江蓮(……………)

その時、江蓮の心の部屋に変化が起きた。

突然、テレビしかなかったその部屋に、透明なドアが現れたのだ。

キラキラ光っているそれに触れると、ドアは淡い光を放ち、大きな数字を刻み始めた。

とんどん、その数字は減っていく。

まるで時限爆弾のそれのように、時間が削り取られていく。

江蓮(……まさか!)

血の気が引いた。

この数字がなくなる前に、この部屋から出なければ……

もしかして二度と、元に戻れないのかもしれない。

一旦、休憩いれます。
>>329
>>334
ありがとう! やる気でるよ!
もりもり続き考えていくよ! (`・ω・´)

http://i.imgur.com/XAziJUE.jpg

>>340
なんか変なの貼られちゃった…。嫌がらせ?
他の方は、みちゃダメだよ。
見ないほうがいい。

死ぬとかそういうのじゃないんかいww
最悪の一年てwwそんなに嫌でもないw
あとあの人は演出が怖い?だけで
実は結構美人だったりする
少なくとも俺のタイプではないが
ってどうでもいいかそんなこと

>>343
見ないほうがいいって注意したのにwwww
本当、なんなんだろ? これwwwww>>340

意味不明で笑ったけど、ちょっと気持ち悪いwwwww

その時になって初めて、江蓮の心が震えた。恐怖した。

必死にドアを叩く。叩く。叩く。ドアノブを開けようとする。

しかし、びくともしない。外に出られないのだ。

江蓮『くそっ…!!』

開け!! 開け!! 開け!!

こじ開けようとするが、ドアは江蓮を拒み続ける。

江蓮『俺をここから出してくれ!! この狭い暗闇の部屋から出してくれ!!』

エレン(……ん?)

その時、エレンは江蓮の叫びに気づいた。

ただ、その声はいつもより遠く、ところどころ、声の詳細が分からない。

エレンは両目を閉じて、汗を拭きながら、隅っこに座った。

今はコートの片付け中だ。邪魔にならない位置に移動する。

エレン(どうした江蓮? 何かあったのか?)

江蓮『……!! ……!! ……!!』

エレン(なんか叫んでるのは分かるが、声がはっきりしねえな……どうしたんだ?)

いつもと全然違う様子にエレンも違和感を覚えた。

理倍はその時、部員全員に向かって、今から昼休憩に入ることを伝えた。

午後は昼飯を食い終わったら、今日はそのまま解散すると言っている。

学校に戻る奴は学校のバスを利用出来るし、ここで分かれたい奴は自由にしていいと言っていた。

エレン(やった! 昼飯だ! ミカサの弁当が食える!)

腹が減っていたエレンは、江蓮の異変に気づかないまま、ルンルン気分で体育館を出た。

そしてミカサ、有民と合流する。

有民「エレン! 後半良かったよ! 初勝利おめでとう!」

エレン「おう! 初試合にしては上出来だよな! 俺!」

ミカサ「あのチビがシュートを決めたのは気に食わないけど、エレンは凄かった。格好良かった」

エレン「おいおい! Σ(゚д゚lll) 理倍さんを悪く言うなよ。むしろあの人がいたおかげで、勝てたようなもんだろ」

ミカサ「そんな事はない。あのチビはもっとエレンにシュートを打たせるべき。1回しか打たせなかった。……憎い」

エレン「まあその内、シュートも決めるようになるから、そんなカッカすんなって! それより俺、腹減った! 早速昼飯にしようぜ!」

ミカサ「そうだった! はい、お弁当(*´∀`*)」

そしてワイワイ言いながら、三人で昼飯を食う様子を、江蓮はテレビを通じて見ていた。

テレビに食らいつくように接近してもう一度叫ぶ。

江蓮『エレン!! 俺の声が聞こえねえのか?! 返事をしてくれ!! 頼む!!』

エレンは再び両目を閉じた。

エレン(……? やっぱり細部が聞こえねえな。なんか、ザーザーいって、雑音が混じってて、聞き取りにくい。江蓮、もう少し大きい声でしゃべってくれよ)

江蓮『さっきからやってる!! まずい事になった!! 早くここから出ないと、もうお互い、元に戻れねえかもしれねえ!! 嫌な予感がするんだ!!』

エレン(んー……やっぱダメだな。何でだ? 何で江蓮の声がはっきり聞こえないんだ?)

エレンがもぐもぐしながらずっと両目を閉じているので、有民は不思議がった。

有民「どうしたの? エレン」

エレン「いや、さっきから、江蓮の声が遠いんだ。雑音が混じってて聞き取りにくい。『まずい!!』とか『早く!!』とか急かしてるっぽい声が聞こえるんだが、何言ってんのか、よく分からん」

ミカサ「えっ……」

有民「それは、まずいね。多分」

直感的に二人はその事態に嫌な予感が走った。

有民「もしかしたら、江蓮の方に何かあったのか……デートを延期してる場合じゃないかも。午後ってこの後、練習あるの?」

エレン「いや、理倍さんが言うには、午後はそのまま今日は解散するって言ってた」

有民「だったら、午後からデートをした方がいいかもしれない。僕の考えたデートスポットリスト、メールに書いてメモってたから、そっちに今から転送するね」

エレン「お、おう……」

有民からメールを受け取り、とりあえずリストを見た。

有民のおすすめの一番上には「水族館」関連の情報が載っていた。

エレン「おー水族館って何だ? 魚が見れるのか?」

有民「うん、人も他のデートスポットと比べれば、だけど、そこまで多くないだろうし、見るとこは沢山あるし、最初のデートにはお勧めするよ。途中で雨が降っても、館内だから問題ないしね」

エレン「分かった! じゃあ早速午後からミカサと一緒に行ってみるわ!」

有民「もし迷子になったらすぐ連絡してね。迎えに行くから」

エレン「おう! そうならないように気をつける!」

と、いうわけで、遂にエレンとミカサの現代デートが始まるのだった。

午後から有民と分かれ、二人だけで電車を乗り継ぎ、エレンとミカサはその場所を訪れた。

まずは一軒目の水族館。東京タワー水族館に訪れてみた。

約900種類、5万匹の鑑賞魚を生息別に分類、展示しているそうで、それぞれのコーナーで異なったBGMが流れていた。

エレン「おーここが有民が教えてくれた水族館か……」

中に入ると、人はそこそこ賑わっていた。珍しい魚が沢山展示されている。

エレン「おお! 可愛い! 赤いのとか黄色いのとか、青いのもいるぞ! ミカサ、こっちこっち! (手招き)」

ミカサ「本当だ…」

見たことのない小さな魚が沢山泳いでいた。可愛い。

海水熱帯魚のコーナーに食いつくように鑑賞する二人だった。

ミカサ「こんな小さな魚、元の世界じゃ見たことない…」

それも其の筈だ。熱帯魚は海に住む生き物だから。

エレン「ああ、こっちにはもっと変なのがいるぞ!」

エレンはどんどん奥に突き進む。今度は北・南アメリカの熱帯魚の方のコーナに移動した。

その後も、アフリカ、アジア・オセアニアの熱帯魚、金魚、日本庭園と続く。

主に熱帯魚がメインの水族館だったが、二人はとても満足気な顔で館内を見終えたのだった。

ミカサ「楽しかった…全部、綺麗だった…」

エレン「ああ! ミカサ、お土産買おうぜ! これとかよくねえか?」

金魚のぬいぐるみっぽいそれを手に取ったエレンがニヤニヤしている。

ミカサ「うん…可愛いと思う。お揃いで買おう」

そして二人は次の水族館へと移動するのであった。




二軒目はしながわ水族館を訪れた。

ここは先程の水族館より大きな規模の施設だった。人も多い。

入って左側に移動して案内通りに見ていく。

最初は「東京湾に注ぐ川」「東京湾の干潟と荒磯」「品川と海」「潮の満ち干と生物」というテーマでくくられた展示があった。

エレンとミカサはその中にあった「海」というキーワードに反応した。

エレン「おお! こっちの世界には海があるのか! すげえ! 実物見てみてえ!!」

ミカサ「でも、海は遠いのでは…?」

エレン「うーん、まあそうかもしれんが……後で時間が余ったら、有民にも聞いてみようぜ!」

そしてエレンとミカサは次の生物に心を奪われる。

ペンギンランドが、そこにはあったのだ。

エレン「かわ……∑(°д°)」

ミカサ「可愛い…(*´∀`*)」

ペタペタ……ペタペタ……

エレン「なんか、歩き方が可愛いな」

ミカサ「赤ちゃんと同じくらい可愛い」

ついついデレデレしてしまう二人だった。

その奥に進むと、今度はイルカとアシカのスタジアムが見えた。

エレン「お? なんか人が沢山集まってるな! 見てみるか!」

そこではイルカとアシカのショーが行われていた。

エレンとミカサは生まれて初めて見るその奇妙な形をした生き物にすっかり夢中になった。

まるで三日月のような形に円な瞳が愛らしい。

しかも頭も良いようで、飼育員の言う事をちゃんと聞いている。

水中をジャンプしたり、跳ねたり飛んだり、何でも出来るようだ。

エレンとミカサは自然と拍手をしていた。

エレン「すげえ! 今、なんか返事してたぞ!? あいつら、人の言う事わかるのか?!」

キュキューンとたまに声っぽい音が聞こえるので恐らく鳴き声なのだろう。

エレン「面白いな……くそー! 持って帰りたいくらい可愛いぜ!」

ミカサ「同感……(*´∀`*)」

その奥には、海に似せて作った大きな水槽があった。

そこには500tの大水槽があり、約80種類1500尾もの魚たちが優雅に泳ぎ回っていた。

エレン「これが………海の中、なのか」

エレンは自然とそれを見つめながら涙を流していた。

感動で、暫く何も言えなかったのだ。

エレン「これ……アルミンにも見せたかったぜ」

海の中を再現した巨大水槽の中をじっと見つめた。

感無量としか、言いようがなかった。

エレン「俺達の世界にも、同じものが本当にあるのかな……」

俄かには信じられなかった。けれど、アルミンは「ある」と言っていたのだ。

海には塩が含まれていて、そこには沢山の「魚」も生きていると。

エレンがずっとその場に立ち尽くして涙を流しているので、周りの人は不思議がっていた。

ミカサ「エレン、そろそろ次に行こう」

エレン「ああ……そうだな。地下にもまだ見るものあるんだっけ?」

ミカサ「うん……」

ミカサはそんなエレンの様子を少しだけ複雑そうな顔で見つめていたのだった。




地下のトンネル水槽を通り、クラゲの世界を堪能し、クイズコーナーや珍しい魚コーナー、アマゾン川の魚等のコーナーを通り抜け、再びアシカと遭遇する。

もう一度イルカを見終わって、そしてシャークホールと呼ばれるサメのコーナーに来ると、その迫力に圧倒された。食われそうで怖い。

エレン「海にも人間を食う生き物がいるのか……」

ミカサ「みたいね。人間だけじゃないけど、危険な生物と書いてある」

エレン「水中じゃ立体機動は使えねえし、海に潜る時は気をつけねえとな」

ミカサ「………」

そして最後はアザラシ館に立ち寄り、たいだいのところを見終わると、エレンはほくほくとした顔で館内を出たのだった。

エレン「最初のところよりこっちの方が面白かったな! 見るものいっぱいあったし」

ミカサ「そうね。でもその分、人も多かった」

エレン「だな……人に酔わなかったか?」

ミカサ「そうね…少しだけ。外の空気を吸って気分を変えたい」

エレン「だな……ちょっと休憩入れてから別のところに移動するか」

自販機で飲み物を買って近くの公園に移動した。

しながわ区民公園という場所らしい。

丁度足を休める東屋もあり、エレンとミカサはそこで一休みした。

今日の天気は曇り空。今すぐ雨が降る気配はないが、折り畳み傘は念の為に必要な気配だ。

エレン「えーっと次は……アクセサリーショップか。ん………ぶっ!!」

ミカサ「? どうしたの?」

エレン「いや、何でもねえ! (よけいな事まで書きやがって!!)」

有民のメモメールには「婚約指輪とか作りたい場合はこっちの店のほうがいい」というメッセージの下に、値段は高いが、そういう店も一応ある旨を記載していたのだ。

エレン(別にそういうのはいいって……普通の可愛いアクセサリーでいいだろ。なんか適当に。うん。ミカサに似合いそうなの探そう)

そう思いながら咳払いをするエレンだった。

駅の近くまで一度戻ると、エレン達は商品を見て回ることにした。

NGワードにまた苦戦した。「こもの」っていう言葉がダメだった。
何故だ?!

一軒目の店の中には、飾り以外にもブーケと呼ばれる造花があった。

店員さんに話を聞いてみると、それは花嫁が結婚式の時に使うもので、結婚式が終わると、参列者に向かって投げるものらしい。

受け取った人は、次の花嫁になれるという迷信がある。

エレン「へー……」

そんなエピソードを聞いたからには、ミカサが反応しないわけがない。

ミカサ「エレン、投げて!」

エレン「男の俺が投げてどうするんだよ! Σ(゚д゚lll)」

ミカサ「………では、それを欲しい。買おう」

エレン「え……まあ、欲しいなら買うけどさ」

エレンは財布を出した。ブーケを持ってご満悦のミカサだった。

エレン(…………本当は花嫁衣装の方が必要なんだけどな)

今はまだ無理なので、諦めて貰うしかない。

女性の店員「あら、将来の為に買っておくんですか? 気が早いですね……ふふ」

ミカサ「はいっ! (`・ω・´)」

エレン「………」

違うと言いたいところだったが、否定するのも可哀想なので黙っておくエレンだった。

女性の店員「でしたら、一緒に指輪を買われたらどうですか? 中学生でも買える値段のものもありますので」

値段を見たが、確かに1000円からの安い金属の指輪もあった。

しかしエレンはそれに興味を示さなかった。そんなものは今、買うものじゃないからだ。

エレンはその時、胸元が寂しいのに気づいた。

いつものミカサはマフラーをしているので違和感があったのだ。

エレン「ミカサ……ペンダント、買わねえか?」

折角なのでここで胸元のアクセサリーを購入しようと思った。

ミカサ「エレンが決めてくれるなら何でもいい(*´∀`*)」

エレン「(かつてないほど上機嫌だな)そうだな……」

エレンはミカサに似合いそうな紫色の宝石のような飾りがついたそのペンダントを購入することにした。

エレン「これでいいんじゃね? うん……今の衣装に良く似合ってる」

薄い色でまとめた衣装にひとつだけ濃い色をアクセントに入れる。

色彩感覚は、エレンの方がミカサよりセンスがあると言えるだろう。

ミカサ「嬉しい……ありがとう、エレン」

エレン「いいって。……って、泣くなよおい! Σ(゚д゚lll)」

泣くような事じゃないのに、ミカサは嬉しすぎて泣き出してしまったのだ。

ミカサ「だって…だって…!」

泣きじゃくるミカサを女性の店員さん達に見られてニヤニヤされて恥ずかしいエレンだった。

エレン「ああもう……(〃ω〃) すみません。これ、つけたまま会計していいですか?」

女性の店員「勿論いいですよ。7890円になります」

エレン(それなりの値段だな。まあ、所持金考えればこれで妥当だろ)

そんなわけで、プレゼントを貰って嬉し泣きするミカサを連れて店を出たエレンだった。

このあとは順番が前後しますが、
ゲームセンターに向かいます。ごみんね。

あと、東京で街中でテレビ見れるとこってあんまり知らない。
東京在住ではないので。
電化製品店で偶然見ちゃう感じでもいいかな?

今度は少し移動して、ゲームセンターに行くことにした。

有民曰く「東京レジャーランド」という江東区にあるアミューズメントパークは、評判がそれなりにいいらしい。ネット情報だが。

電車を乗り継いで、残りはタクシーという乗り物を利用してエレンとミカサはそこに訪れた。

エレン「おおおおおお?! ((((;゚Д゚))))」

エレンは中に入るなりその騒音と人の多さと機械の多さに面食らった。

何か良く分からないものが沢山、設置されている。

ガヤガヤガヤガヤ音がうるさい。

ミカサはちょっと顰めっ面をしている。

騒音に慣れていないので、音に酔いそうだった。

ミカサ「ごめんなさい…エレン…ちょっとここは……私には、苦痛かも」

エレン「そ、そっか……ちょっと音がひでえもんな。うん、出ようか」

エレンはミカサを気遣ってすぐ外に出ようとしたが、エレンは後ろ髪を引かれているのは目に見えていた。

一度外に出てからミカサは考えた。

ミカサ「耳栓、ないかしら? ちり紙で耳を塞げば音を小さく出来るかも」

エレン「あ、そういう事なら買ってくる。コンビニ行けばあるだろ」

そしてエレンはコンビニでポケットティッシュを買うとそれを小さく契ってお互いの耳に詰めたのだった。

二度目の来店。今度は先程よりも音に苦痛を感じなかった。

ミカサ「うん、これならいい。音が小さくなった。全く聞こえないわけじゃないし、大丈夫」

エレン「お互いの声も聞こえるもんな。よし、何かやってみるか」

そこでエレンは「太鼓の達人」というゲームに目をつけた。

エレン「おお! 音に合わせて叩いてる! すげえ! 楽しそう!」

人のプレイを観察しているだけでも楽しめた。曲は「自由の翼」だった。

一人でガンガン叩いている。エレンの学校の制服と似た格好をしたその学生は、ドンドン叩いて高得点を叩き出していた。

順番が空いたので次はエレンとミカサもトライしてみる。

エレン「えーっと、どうするんだろ? 文字が読めんから面倒だな」

ミカサ「とりあえず、叩いていけばいい。何でも挑戦が大事」

エレン「だな! よし、これでいいか!」

エレンが選んだ曲は……

>>358だった。

自由の翼が来たらやっぱり次は紅蓮の弓矢やろ

難しそうですけどねwwwでは、紅蓮の弓矢で。

エレンが選んだのは『紅蓮の弓矢』だった。

特徴的なイントロが始まり、すぐさま曲が始まった。

チャッチャチャチャーチャーチャーチャーチャー♪ 

エレン「あ、この曲はお昼の放送で聞いたやつだ! いけるか?!」

しかしテンポがかなり早くて追いつけない。初見で高得点を出すのは至難の業に見えたが……

ミカサは難なくそれに追いついていた。

ノーミスではないが、かなりいい感じに進んでいる。

エレンは完全に置いていかれてしまった。

エレン「ああ! Σ(゚д゚lll) くそう! ミカサに負けた!」

ミカサ「ふふっ……これ、私、結構得意かもしれない」

エレン「みてえだな……くそう! 俺も負けねえぞ! 次はこの曲だ! (つっても、文字読めてねえから適当に他の選ぶ! >>361)」

なんか会いたすぎて震えてる曲

流れてきた曲は『会いたくて会いたくて』という曲だった。

チャチャーチャーチャーチャーチャーチャーチャーチャーチャチャ♪

先程の曲よりはテンポは早くないが、これはこれで難しかった。


会いたくて~会いたくて~震える~♪


その歌詞が流れてきた瞬間、ミカサの目から勝手に涙が溢れてきた。

ミカサ「え……?」

そのせいでミカサの手は止まり、代わりにエレンの成績が伸びてきた。

エレン「よっしゃおいついた! (←集中して気づいてない)」

エレンが画面に夢中になってミカサの手が止まってることに気づいていない。

エレン「やった……勝った! どうだ! ……ミカサ?」

エレンが横を見ると、ミカサは涙が止められなくて、困っていた。

エレン「な、なんで泣いてるんだよ!」

ミカサ「分からない…分からないの…多分、もう一人の三笠の方が泣いているんだと思う。この曲のせいで」

エレン「え? え? なんでだ? 何か、そういう歌詞だったのか?」

ミカサ「私には分からない。でも、三笠が泣いているのは分かる」

エレン「困ったなあ……あ、あと一曲だけいけそうだけど…最後どうする? あんま泣かせる曲すると、可哀想だな。ミカサ、代わりに選んでいいぞ」

ミカサ「と、言っても、私もどの曲がいいのかは分からない」

エレン「うーん、こう、明るくなれる曲がいいよな…泣き止ませられるような……なんかないかな? >>363にしてみるか?」

朝から更新きてる!乙!

再安価、>>365
曲が決まらんので、お願いします。

すまん安価か。
B'zのウルトラソウルで。

サンクス! いや、ごめんね! こっちこそ。
最近は、朝も更新してたりするから、たまには朝も見てねん。よろしく!

チャーチャーチャチャチャーチャチャチャチャチャー!!

エレンが選んだのは『ウルトラソウル』だった。アップテンポな格好いい曲だった。

エレン「お? これは……なかなか難しい…ぞ!」

ミカサ「そうね!」

サビまでが結構早い。あっと言う間に、その音は来た。


結末ばかりに気を取られ~この瞬間を楽しめない~メマイ♪


エレン「夢~じゃない~あれもこれも~♪」

ミカサ「その手でドアを開けましょう~♪」

エレン「祝福が欲しいのなら~♪」

ミカサ「悲しみを知り~独りで泣きましょう~♪」

エレン&ミカサ「「そして戦うウルトラソウル!!」」

その歌はまるで、応援ソングに聞こえた。

江蓮はその曲の状況がまるで自分と重なって聞こえ、ゆっくりと立ち上がる。

江蓮『エレン……エレン……聞いてくれ』

エレン(お? 今度はさっきより聞こえやすいな。まだ雑音が消えたわけじゃねえが…)

江蓮『頼みがある。二人のデートがだいたい終わってからでいい。最後だけ、俺の行きたい場所に行ってくれないか』

エレン(お? 勿論、いいぜ? 何処に行きたいんだ?)

江蓮『それは、後で伝える。今はお前らが楽しめばいい』

エレン(俺達は充分、楽しかったぜ? 何なら今からそこに向かってもいいぞ?)

江蓮『…………分かった。なら、携帯を貸してくれ』

エレンは太鼓の達人を終えた後、携帯を取り出した。

そして有民に用件をメールに書いて送る。

エレン(何書いたんだ?)

江蓮『後で説明する。有民の返事を待ってくれ』

そして有民のメールには、それを了解した返事と、それについての情報が載っていた。

江蓮『有民、さすがだな。仕事早い……助かる』

ミカサ「江蓮と話してるの? エレン」

エレン「なんか、江蓮が有民にメール送ってたみてえだ。良く分からんが……最後に江蓮の行きたい場所があるらしい。どうする? ミカサ、他に何かやりたい事あるか?」

ミカサ「……あれ」

ミカサはプリクラをチラチラ見ていた。

ミカサ「写真、撮れる機械ってあれのことかしら? 写真が撮れるなら、あれだけやっていきたい」

エレン(江蓮、いいか?)

江蓮『ああ、構わん』

そしてエレンとミカサはプリクラの機械の中に入ってみた。

その狭い空間の中で密着していると、ついつい邪な気持ちがモヤモヤしてくる。

エレン(ちかっ……狭いし、これって密室とほとんど変わらなくねえか?)

エレンがそう思うのも無理はない。

エレンが入ったのは旧式のプリクラで最新式の物ではなかったからだ。

最近の奴はもっと広く、大人数の団体でも撮影が可能だ。

ただ、そちらはどうしても人気があって人が使っていることが多い。

エレンが入ったプリクラ機は昔のタイプだったので、利用者も少なく、空いていたのだ。

『フレームを選んでね!』

エレン「うお! びっくりした! なんか勝手にしゃべったぞ?」

江蓮『機械に人口音声を入力してしゃべらせる事も出来るんだ』

エレン「ってことは、これ、中に人が入っててしゃべってるわけじゃねえのか」

江蓮『ああ……フレームは適当でいいよな。俺が選んでやるよ』

江蓮が右手を動かしてポチポチ何やら代わりにやってくれている。助かる。

江蓮『目線、そのへん……勝手にシャッター切るから、適当に笑っとけ』

エレン「お、おう……」

エレンは白目をやめて画面の上の方を見た。

エレン「あのあたりを見とけってさ」

ミカサ「あの辺?」

エレン「そうそう」

そして、ハイチーズの声と後に『これでいい?』の確認。

エレン「げっ……俺、変な顔してるな」

ミカサ「私も…顔が怖い」

エレン「撮り直すか」

一度キャンセルして、二度目。ハイチーズ!

エレン「……またダメだ。なんでだ? なんかうまくいかねえな」

ミカサ「私もダメ…」

エレン「次で最後らしいけど、やるか?」

ミカサ「うん」

ハイチーズ!

そして出来上がったプリクラは……

エレン「今までで一番最悪な顔だな! 撮り直した意味がねえ!!」

ミカサ「本当……でも、いい。これはこれで記念にしよう、エレン」

エレン「まあな……時間もあんまねえし、妥協すっか」

そんな感じで、初めてのプリクラは微妙に失敗したが、それでも二人はそれを持ち帰る事にしたのだった。

『アレンジタイムは3分間だよ!』

エレン「ん? なんだ? なんか、出来るのか?」

ミカサ「ペンがある。これで何か書き込めるのでは?」

エレン「ええっと、じゃあ日付と時間と……」

ミカサ「ハートマークを書いちゃおう。えい」

エレン「おい! Σ(゚д゚lll) 何勝手にハートマークを囲ってるんだよ! 恥ずかしいな!」

ミカサ「だって、見本にそういうのが貼ってある」

エレン「……確かに。つか、カップルで写ってるのが多いな」

エレンはちょっとそれに驚いていた。

エレン(俺達も、傍から見ればそういう風に見えるのかな?)

充分見えている。大丈夫。

エレン「…………あああ! もう時間過ぎちまった! もしかして、ハートマーク残ったまま出てくるのかな」

そして出てきた写真は、とても小さなものだった。

エレン「あれ? 有民のくれた写真より随分サイズが小さいな。これであってるのかな?」

ミカサ「多分、合ってると思う。あそこにも、同じサイズの写真が貼ってある」

ミカサが指差した先には、プリクラコンテストのようなものがあった。

ここでプリクラを撮った人達が記念に一枚、残していくのだろう。

その数は、凄まじいものがあった。

ミカサ「折角なので、私達も一枚、ここに残しておこう」

エレン「えええ……(ハートマークで囲ってるのにか?)」

ミカサ「嫌なの?」

エレン「嫌じゃねえけど……」

ミカサ「けど?」

エレン「なんか、惚気けてるようにしか見えねえんじゃ……」

ミカサ「それの何が悪いの? (ドヤ顔)」

エレン「…………………ま、いっか。一枚だけ、残しておくか」

エレンは考えるのが面倒臭くなって、そこに記念の一枚を残していったのだった。

エレン(………………)

プリクラ機の中で結構、密着したのでまだドキドキしている。

エレン(落ち着け……落ち着け………)

あれくらいの密着で動揺している場合じゃない。

ミカサの方は普通だったのに、自分だけ意識してどうする。

ミカサ「エレン、次はどこに行くの?」

エレン「ああ……ちょっと待ってくれ」

江蓮『このまま一度駅に戻ってくれ。電車乗り継いで「秋葉原」まで移動する』

エレン「わかった。えっと、一度、駅まで戻るぞ。なんか秋葉原ってところに行きたいらしい」

ミカサ「分かった」

江蓮の指示で秋葉原に行くことになった。

電車を乗り継いで、そこに移動すると、人が一気に増えた気がした。

というか、なんか、熱気に溢れている。

オタクの聖地なので、それっぽい男達が沢山街の中を歩いていた。

エレン「で、どこに行けばいいんだ?」

江蓮『……コスプレ衣装を買う』

エレン「コスプレ? なんだっけそれ」

江蓮『女の子がいろんな格好に変身することを言うんだ。俺の好みは……>>371だから、それを買いに行く』

また安価取ってすまん
コスプレと言ったらベタもいいとこのメイドさんしか思い付かんかったよ…

えっと、江蓮さんは隠れて三笠のアイコラ作ってたくらいなので、
三笠に着せます。ただ、江蓮自身も一緒に着てもいいです。
何も安価がなかったら、無難にお医者さんと看護婦とかでもいいかな?
初エッチにいきなりコスプレって、上級者な気もするが(笑)
エレンとミカサの状態でも一回、着替えさせます。

メイドさんなら、江蓮→ご主人様風の貴族服 三笠→メイド服
医者なら、江蓮→白衣 三笠→看護婦

………一応、最終確認。
ちょっと続きは間空きそうだから、多かった方にしてもいい?
この小説読んでる方は、どっちが好みかね?

>>371
あ、メイド服でも充分いいんだけど、
文面見たらなんか、消化不良な感じだったから、
一応、自分の案も載っけてるだけだから、もし不快だったらすまぬ。

いや、ここ、大事な場面だからね!
悩んでるんだよ! マジで! (笑)

医者と看護婦に2票入ったwwww
じゃあそっちで続き書くわwwww

江蓮が白衣とナース服を買いに行くと言い出したのでエレンは両目を閉じて首を傾げた。

エレン「え? 白衣とナース服を買いに行くって? 親父のとこにいけばそれくらい貸してくれるんじゃねえのか? 腐る程あるだろ」

江蓮『いや、親父には頼れない。……深い理由があるんだ』

エレン「ふーん……なら仕方ねえのかな。分かった。じゃあ移動するか」

エレンは迷子にならないようにミカサと手を繋いで移動した。

するとその途中で大型の電気店を目に入れた。巨大なテレビが安売りしている。

テレビには今流行りのAKB48や、ももいろクローバーZ、西野カナ、嵐、関ジャニ∞、SMAP、B'z、他にもいろんなアーティストが音楽番組に出演している画面が映っていた。どうやら特番をやっているようだ。

ミカサはふとそれを立ち止まって見ている。

どうやらももくろが『いくぜ! 怪盗少女』を歌うらしい。

ミカサ「これ……お昼の放送で聞いた曲ね。すごい、絵が動いている!」

エレン「ああ……すごいな。これ、どういう仕組みなんだ???」

江蓮『テレビカメラを通じて、いろんな場所に映像を飛ばせるんだ。電波を使って』

エレン「電波? 映像? ちょっと待ってくれ。意味が良く分からないんだが」

江蓮『あー……分からないなら仕方ねえな。要は、テレビカメラがあれば、映像を通じて世界を繋ぐことが出来るような機械だな」

エレン「世界を繋ぐ………」

その時、エレンはピンときた。

エレン「なあ、それを使えば、俺達、元の世界に戻れねえかな?」

江蓮『……いや、どうかな? そもそも俺達のこの現象は偶発的に起きたものだと思うし、テレビは「画面」という越えられない壁がある。お互いの様子を見たり聴いたりする程度しか出来ないぞ』

エレン「そっか……いい方法だと思ったんだがな。すまん」

江蓮『いや、いいさ。それよりさっきから、ミカサがテレビ画面を見ながら踊りを完コピしているせいで、人が集まってきてるぞ』

エレン「え、あ、本当だ!!」

目を閉じてるせいで、エレンの方は気付かなかった。

江蓮はエレンの目を通じて世界を見ているわけではないので(第三者的な視線です)ミカサの様子を見ていたのだが、このまま続けさせると騒ぎになりそうだったので、やめさせた。

周りには、ももくろの踊りを完コピしているミカサを見て、携帯で動画を取ろうとするヲタどもが集まり始めていた。

エレン「ミカサ! 踊るなって! 人が見てるぞ!」

ミカサ「………は! ついつい、ごめんなさい。見てたら一緒に踊りたくなって」

ミカサが踊りをやめると何故か周りから拍手喝采が起きた。

ヲタ男「いいぞ~姉ちゃん! うまかったぞ!!」

ヒューヒューとからかわれて、一礼して急いで退散するエレンとミカサだった。

>>380
訂正

目を閉じて江蓮と会話していたせいで、エレンの方は気付かなかった。

あんまり長く会話してると、白目剥いてるエレンになるので、
気持ち悪いので、江蓮と会話する時は出来るだけ目は閉じてます(笑)。
たまに書き忘れtますが、すみません。

そんな訳で、コスプレショップの中に入ると、エレンとミカサはまた目を丸くした。

エレン「なんだここ…?! 服が沢山あるぞ?! しかも変なのも結構ある…」

エロいのからマニアックな衣装まで勢揃いである。

制服系も取り揃えてあり、なんと、そこにはエレン達が普段着ている、訓練服に似た物もあった。

エレン「お? 俺達の着てる服と同じやつもあるじゃん!」

ミカサ「エレン、さっきのももクロの衣装も置いてある。欲しい……」

エレン「いいぜ! 買っていこう! 赤色にするか?」

ミカサ「勿論」

本題から脱線してももクロの衣装を買い出すエレンだった。

エレン「あ、やっべ! ナース服買いに来たんだった。手荷物増えてきたなー…」

ミカサ「大丈夫。これくらいなら問題ない(ひょい)」

エレン「ミカサが持てるならいいか……悪いな」

ミカサ「全然構わない。むしろ楽しい(*´∀`*)」

買い物は女の至福の時間である。荷物が増えても全く問題ないミカサだった。

むしろ限界ギリギリまで買い物したいとさえ思っている。

エレン「ナース服と白衣だったよな。あれ? なんか、思ってた服とちょっと違う」

エレンがそう思ったのも無理はない。

何故ならそこに置いてあった白衣とナース服はコスプレ用で、業務用とは全く別物だからだ。

エレン「やけに丈が短いつーか、こんなナース服は見たことねえな」

ナース服といえば膝が隠れる位のロングスカートである。

しかしコスプレ用のナース服はミニスカが普通だったりする。

逆に白衣の方は、少し丈が長めに作られていた。聴診器とセットで販売している。

エレン「まあいいや、これで合ってるだろ。会計してくるわ」

エレンは白衣とナース服を購入してミカサの元に戻ってきた。

また両目を閉じて江蓮に問いかける。

エレン(これでおしまいか? あとは家に帰ればいいんだな?)

江蓮『………今日は家に帰らなくていい』

エレン(え?)

江蓮『有民にはさっき、アリバイも頼んだ。有民に連絡する時に、母さんにも有民の家に泊まるっていう嘘メールを送ったし、今日は家に帰らなくていい』

エレン(家に帰らないなら、今日はどこで寝るつもりなんだよ?)

江蓮『ラブホテル』

エレン(ラブホテル? なんだそれ?)

初めて聞く名前にエレンも戸惑う。

江蓮『……セックスする為に泊まる、専用のホテルがあるんだよ』

エレンはその時、手荷物を全部地面に落としてしまった。

エレン(セックスって、なんだ? もしかして、性交の事か?)

言葉の雰囲気で何となく意味を読み取ってしまったエレンはそう問いかけた。

すると案の定、江蓮は答えた。

江蓮『ああ。セックスは、性交の事だ』

エレン(それって、えっと……今日、その……お前は、俺達にヤレって言ってるのか?)

ミカサは不思議そうにエレンを見つめながら落とした手荷物を全て拾った。

エレンは顔を真っ赤にしている。

江蓮『…………それはラブホテルに着いてから考える』

エレン(いやいやいや、到着したら俺だって、理性持つか分からんぞ! いいのかよ、それで!!)

江蓮『俺達の代わりにヤってくれるなら、それはそれで構わない』

エレン(アホかああ!! つか、ちょっと待ってくれ!! 心の準備が……!!)

エレンがさっきから全身真っ赤になってオロオロしているので、ミカサは困っている。

ミカサ「エレン、どうしたの? もう一人の江蓮が無茶な事を言ってるの?」

エレン「………」

エレンは少しだけ目を開けて言った。

エレン「………江蓮がラブホテルに行きたいって、言ってる」

ミカサ「ラブホテル? 普通のホテルとどう違うの?」

エレン「………エロい事が出来るホテルの事を、ラブホテルって言うらしい」

ミカサ「………そう。それってつまり、もう一人の江蓮の方に覚悟が決まったって事かしら?」

エレン「そ、そうなのかな…? あ、そっか。ラブホテルに着いてから、お互いにもう一人の江蓮と三笠に交代しちまえばいいのか」

ミカサ「…………そう、うまくいくかしら?」

エレン「い、いかないかもしれないが、でも、多分、江蓮の方に覚悟が決まったのは間違いねえ。行くしかねえんだろうけど……」

今度はエレンの方になかなか決心がつかなかった。

その時、ミカサの方も、三笠の声が聞こえてきた。

三笠『ちょっと待って…! 今日の私、下着までは気合入れてないのだけども!』

ミカサ(え?)

ミカサは慌てて両目を閉じた。

ミカサ(そう? 普通の、シンプルな白い下着だったのでは?)

ミカサの感性でいえば、それで十分な気がしたが、三笠は拒んだ。

三笠『せめて、せめて初めての時くらい気合を入れさせて欲しい!! あの、ランジェリーショップに行かせて! お願い!!』

ミカサ(そう。分かった)

ミカサは目を開けた。

ミカサ「今度は三笠の方が『ランジェリーショップ』という場所に行きたいと言っている。ラブホテルの前に言ってもいいだろうか?」

エレン「あ、ああ! 三笠がそう言ってるんじゃ、しょうがねえよな!!」

エレンはほっとした。すぐに決意出来なかったので、時間稼ぎに好都合だと思ったのだ。

ミカサ「では、行こう。エレン」

そしてエレンとミカサはランジェリーショップを探した。

秋葉原の街並みは本屋や喫茶店などが多かったが、ランジェリーショップもちゃんとあった。

先程のコスプレ専門の店とは違うアダルトな雰囲気の、女性専用の下着が沢山売ってあるお店があった。

エレンとミカサは店内に入った途端、その鮮やかな下着の数々に、同時に赤面した。

そして一度、店の外に出て確認する。

エレン「ちょっと待て。ここで間違いないのか?」

ミカサ「でも、下着専門店って書いてある……間違ってはないと思うけど」

エレン「なんか、俺達の知ってる下着と全然、違うんだが……」

ミカサ「そうね。こんなに布の面積が狭い下着、初めて見た」

そこにはTバックや紐パンも含めた、セクシーな下着も取り扱っていたのだ。

ミカサ「本当にここでいいのだろうか? エレンはこういう下着、好きなの?」

エレン「いやいやいや! 俺は普通ので十分だから! こんな際どいのはむしろ、無理だ!!」

ミカサ「そう。ではもう少し違う店も見てみよう。ここはちょっと、違う気がする」

エレン「だな! 普通のでいい。普通のを探そう!」

そして二軒目に立ち寄ってみた。

その下着屋は先程のようなアダルトな雰囲気ではなく、フリル系を多く取り扱った下着屋だった。

エレン「こっちはさっきのよりマシだけど……」

それでも男子が入っていくのには少々勇気がいる場所だった。

こちらは若い女性が多い。十代が多く訪れていた。

ミカサ「エレンはどれが好き? 白? 水色? ピンク?」

エレン「えっと………白、かな」

ミカサ「では、これなどどうだろう?」

フリルの多めの、可愛い下着を手に取ったミカサを見て、エレンは視線を逸らした。

ミカサ「エレン、ちゃんと見て」

エレン「いや、無理だって。その……恥ずかしいだろうが」

ミカサ「でも、本番は素肌に着るので、この程度で恥ずかしがっては……」

エレン「今、ここでそんな事言うなよ! くそっ……(ヤバイ、なんか興奮してきた)」

エレンは堪らず前傾姿勢になりそうになる。

そして慌てて店の便所を店員さんに聞いて、その場を逃げ出してしまった。

ミカサ「…………」

ミカサは独り取り残されてしまった。

しょんぼりである。

ミカサ(やはり、今着ている白い下着でいいのでは? エレンの反応を見る限り、こういうのは必要ない気がするけど)

三笠『それは………そうなのかもしれないけど、だったらせめて新品の下着にしたいの』

ミカサ(そうね。エレンが便所に行ってる間にこっちで会計を済ませましょう)

ミカサは飾りが少なめの、白い下着を新しく買うと、それを会計したのだった。

エレンが少し遅れて戻ってきた。ミカサは先に購入したことを告げると、エレンは心底ほっとしたようだった。

エレン(よかった。選べって言われたらどうしようかと思ったわ)

さすがにそれは出来ないエレンだった。

ミカサ「では、そのラブホテルという場所に向かいましょう(`・ω・´)キリッ」

エレン「うっ……」

時間帯は既に夕方を過ぎていた。実は少しだけお腹が減っている。

エレンは時間を先延ばしにする為に「悪い、何か食べてから行かねえか?」と言った。

ミカサ「ご飯を食べたいの?」

エレン「ああ。大分、あちこち移動したからな。腹も減ってきたんだよ」

ミカサ「そう。どこかにお店があればいいのだけれど」

エレン「なんか、食いてえな。何を食べるか…」

エレンとミカサは迷っている。

エレンとミカサの現代での食事、ラストチャンスです。
最後に食べさせてあげたいメニューを決めて下さい。

私も晩御飯を食べてくるので、戻ってきた時に、多かった案にします。
エレンとミカサに、最後に何を食べさせる?
(*ちなみに所持金はエレンが沢山持ってるので高級な食事でも可)

元の世界で食べれなさそうだから和食

やっぱ肉系だろ

>>389>>390の案を足して「しゃぶしゃぶ」にしていいですか?
他に案がなければ、しゃぶしゃぶにします。

エレン「肉……やっぱ、肉食いてえなあ……」

腹を空かせながら、歩いていると、そこには「しゃぶしゃぶ屋」と肉の絵(写真)が掲げられた店があった。

エレン「肉発見!! 肉料理食えそうだぞ! ここにしようぜ!」

ミカサ「うん…(美味しそうなお肉…)」

肉の写真に釣られて、二人は店内に入った。

店員「いらっしゃいませーお二人様でしょうか?」

エレン「はい!」

店員「禁煙席にご案内致しますね。少々お待ちください」

外見で中学生だと判断された二人は、禁煙席に案内された。

和風の個室に案内され、店員さんに説明を受ける。

店員「こちらは初めてのご来店でしょうか?」

エレン「はい!」

店員「こちらではメインのお肉を牛肉、豚肉、鶏肉、お好きなものを選んで貰って構いません。料金の方はコース別になっておりまして、一人前が3000円、5000円、10000円の三種類のコースになっております。お野菜の方はこちらのお任せになります。どちらのコースにいたしますか?」

エレンは財布と相談して、3000円のコースを頼むことにした。

店員「畏まりました。メインのお肉はどちらになさいますか?」

エレン「えっと……牛肉でお願いします!!」

ミカサ「私も同じもので」

店員「畏まりました。では少々お待ち下さい」

そして店員さんが一度引っ込むと、暫くしてから、お肉と野菜のセット。としてお湯の入った鍋をテーブルの上に置いた。

ガスコンロに火がついて、その場で説明が始まる。

店員「こちらのだし汁にお肉や野菜をくぐらせて、お召し上がり下さい」

エレン「くぐらせる…?」

店員「しゃぶしゃぶは、初めてでございますか?」

エレン「は、はい…」

店員「では、見本を見せますので…」

外国人相手に説明する事も多いので、店員は慣れた手つきで実演してみせた。

エレン&ミカサ「「おおおお……」」

店員「色が変わったら、すぐあげてください。タレやポン酢、ごまだれなどございますのでお好きなお味でお召し上がり下さい」

エレン「わ、分かりました」

というわけで、早速、しゃぶしゃぶ初体験である。

だし汁に、薄く切った牛肉をくぐらせる……。

薄いピンク色が、火を通って色が変わる。

タレにつけて、食べる。まずは胡麻だれ。

エレン「うまい! 風味があって、コクがあって、ふあああ……不思議な味がする!」

ミカサ「エレン、こっちの黒いタレも、美味しい」

エレン「マジか! よし、次はこっちにしよう!」

ミカサ「ポン酢も甘酸っぱくて美味しい!!」

エレン「三種類も味が楽しめるなんて、なんて贅沢だ!!」

ミカサ「お野菜も潜らせてみる。この白いの、土色のスープの中にも同じものがあった気がする」

エレン「豆腐だな。豆を加工した食べ物だって、有民が前に言ってたぜ」

エレンはこちらに来てからの分からないことは全て有民に聞いて教えて貰っていた。

メールの使い方の練習も兼ねて、いろいろ有民に聞いていたのである。

なので、ミカサよりも知識は豊富だった。

ミカサ「美味しい……幸せ……」

じーん……

甘美な食事に、ミカサもついついうっとりしてしまう。

エレン「だなあ……食事に関して言えば、こっちの世界は圧倒的過ぎる。肉をちょっとだけ持ち帰りたいくらいだぜ」

ミカサ「手紙の時のように、あの要領で運べないかしら?」

エレン「だよなあ…っつても、寝る時に手の中に入れられるくらいの肉なんてないしなあ」

ミカサ「………そうね。ちょっとそれは無理かもしれない」

もし持ち帰れたら、アルミンにも是非食べさせてあげたかった。非常に残念である。

そしてエレンとミカサはガツガツとしゃぶしゃぶを食い尽くした。

3000円コースなんて、あっという間だった。

エレン「あー食った食った! (ゲフッ)」

ミカサ「エレン、お腹が膨れてる」

エレン「しょうがねえだろ! こっちに来てからついつい食い過ぎちまうんだよ!」

ミカサ「向こうの世界じゃ、満腹感なんて味わった事があまりない」

エレン「全くねえ、の間違いだろ。ミカサ……お前も本当はちょっとだけ、こっちでの暮らし、いいなって思ってないか?」

ミカサ「ほんのちょっとどころではない。本当は永住したい。でも……」

でも、ここには大事な人が足りない。

ミカサ「ここにはアルミンがいない。エレンの言った通り、アルミンを残してこのままここにいるのは、私も嫌」

エレン「だよなあ……それにこの世界は、俺達の世界じゃねえからな」

最後の贅沢を味わい尽くして、エレンとミカサは苦笑した。

これが最後になる予感は既にしている。

恐らく、ラブホテルに行けば、きっと。

お互いに元の状態に戻るような気がしているのだ。

エレン(………さーてと、そろそろ、帰るか)

散々引き伸ばしたが、そろそろ覚悟を決めねばなるまい。

ただ、問題は……ラブホテルに着いてから、どのタイミングで戻るか、だ。

エレン(ま、その辺は行ってみねえと分からんか)

エレンはミカサを連れて会計を済ませて、店を出た。

次はいよいよ、最後の目的地へ移動する。

しかしこの時、エレンとミカサは知らなかった。

東京という街の恐ろしさを。

圧倒的人口の量が織り成す、地獄を。

知っている者ならば、極力それを避けるように行動を起こす。

しかし今の彼らには、それを避ける「知識」を持っていなかった。

故に、その偶発的な現象に巻き込まれてしまったのは、仕方ないだろう。

夕方から夜にかけての、帰宅ラッシュという地獄に……

エレンとミカサは遭遇してしまったのである。




最初は、普通の状態だった。

しかし駅を重ねるにつれて、どんどん電車の中の人が増えていく。

エレンは「おいおい、人が増えすぎてねえか?」と思ったが、

容量の限界以上の人間は乗り込まないだろうと、タカをくくってしまったのだ。

しかし東京という街は、違う。

限界以上どころか、まるでおにぎりの米のようの人を電車の中に押し込むのである。

エレンはその圧倒的な圧力に戸惑い、咄嗟に壁際に移動しようとしたが、

身動きすらままならない状態になってきた。

エレン「ミカサ…大丈夫か? 苦しくねえか?」

ミカサ「私は大丈夫…だけども…」

手荷物もあるし、さすがのミカサもこれだけの人の波に押されては、動けなかった。

エレンと重なるように体を密着させるしかなかった。

エレンは必死に、空いた手でミカサを支えた。流されないように。

手荷物はエレンよりミカサの方が持っているので、ミカサ自身はあまり動けないのだ。

第2の波が来た。人はまだまだ増え続ける。

波がきたせいで、エレンとミカサは壁際に押しやられるように移動させられた。

ミカサを壁際にして、エレンが防護壁のようになる。

ミカサ「エレン!」

エレンの咄嗟の判断で何とか潰れずに済んだが、エレンは苦しそうだった。

ミカサ「立ち場所、逆にしたほうが…」

エレン「馬鹿! 動けるかよ、こんな密集で! じっとしてろ!」

ミカサ「……ごめんなさい」

エレン「謝るなって……(顔、近けえ……)」

息がかかる程の距離だ。

身長の差があまりない二人なので油断すると、キスしそうになる。

エレン(………ミカサの体が、密着してる)

こんな時なのに、ドキドキしてムラムラしてくる自分が嫌になった。

エレン(……………)

左手は手荷物。右手は自由。

右手だけなら、動かせる。

エレン(………今、何考えた、俺)

一瞬だけちらついた煩悩を振り払う。

エレンは必死に両目を閉じて何も考えないようにした。

このシーン書きたくてこの物語を書き始めたと言っても過言ではない! (`・ω・´)キリッ
続きは、選択肢で行きます。

1.右手で尻を触る
2.右手で太ももを触る
3.右手でおっぱい触る
4.右手で膝の裏側を触る
5.右手で背中を触る

以上の中から選んで下さい。
今回は触らないという選択肢はないです(笑)

まあ、そこはお話の分岐でしか教えませんwww
5番いきまーす!

右手の手の平は今、ドアのガラスについている。

ミカサをこれ以上、押し潰さないように壁を作っているのだ。

しかし、それもあっけなく潰れる。

反対側から、第3の波が押し寄せてきたのだ。

エレン(こうなってくると、息するのもきついな)

こんな風に箱に押し潰されるような経験は生まれて初めてだ。

エレン(…………)

エレンは壁を作るのを諦めて、右手を背中に回してミカサを思い切って抱きしめた。

ミカサ「エレン?」

エレン「悪い。壁を作っておこうと思ったけど、これ以上は無理だ。腕が痛え……背中の方に右手を入れさせてくれ」

ミカサ「うん、構わない」

エレンの辛そうな顔を見ていると拒否など出来なかった。

いや、それ以上にミカサ自身も、我慢の限界に来ていた。

ミカサ(こんなの……あと何分、我慢すればいいの?)

両手が塞がってさえいなければ…いなければ…!

自分がエレンを守る壁を作れたのに、と思うと歯痒くて仕方がない。

エレン(…………ミカサの匂い、いいな)

鼻腔を擽る甘い匂い。汗と混じって、エレンの嗅覚を刺激する。

クラクラ、してくる。深く息を吸えばかえって、酷くなる。

しかし、浅い息をすると息苦しくなるというジレンマにエレンは悩まされた。

エレン(……………ダメだって)

あと、何分くらいだろう。降りる駅まで、耐えたい。

しかし理性は、また、揺らぐ。右手を動かしたくなってくる。

エレン(…………)

エレンは指の先だけ、動かした。ピクリと、ほんの少しだけ。

ミカサは何も反応しない。

エレン(…………)

気づいているのかいないのか分からないが、また、少しだけ、指先を動かした。

今度は、ちょっと気づいたようだ。

ミカサ「エレン?」

エレン「ん? ああ……くすぐったかったか。悪い」

ミカサ「腕が辛いの? あっ………」

その直後、ミカサがほんの少しだけ、顔を赤らめた。

ミカサ「ご、ごめんなさい。何でもないの。気にしないで」

エレン「………俺が指、動かしたせいか?」

ミカサ「ちょっとだけ、くすぐったかった……」

ムラムラは、加速した。

エレン「これ、くすぐってえのか? (ぴく)」

ミカサ「あっ……」

丁度、背筋のあたりを服の上から指先でなぞっただけなのだが、ミカサはまた、声を出しそうになっていた。

この密着した感覚がよけいに興奮を呼ぶのか、ミカサも普段より敏感になっているようだ。

ぴく……ぴく……

エレンの悪戯は止まらない。

ミカサは少しだけ涙目になっていた。

ミカサ「エレン……あの……ちょっと……」

エレン「ん?」

ミカサ「なんで、そんな悪戯するの? くすぐったい……のに」

エレン「うん……悪い」

エレンはそこで悪戯を止めた。

エレン「ミカサの反応見てたらつい、やりたくなっちまって」

ミカサ「えっ………」

ミカサはそこでかあっと顔を赤らめた。

ミカサ「私の、反応を、見て、楽しかったの?」

エレン「平たく言えばそうだな」

ミカサ「…………」

ミカサは俯いて、続きを言った。

ミカサ「だったら、もうちょっとだけ、してもいい……」

エレンは、生唾を、飲み込んだ。

急に最悪感がこみ上げてくる。

エレン「いや、悪かったって。今のは、冗談だから。もうしねえって」

ミカサ「…………しても、いいのに」

エレンはまた、唾を飲み込んだ。

エレン「ミカサ、あの、その……俺な、今、ちょっと暇だったから、つい、遊んだだけなんだ。本気にするなって」

ミカサ「エレンになら、されてもいい」

ミカサの誘惑の呟きを聞かなかった事にすれば良いものを……

エレンの耳はしっかりと、それを捉えてしまった。

ミカサ「もっと……触って」

エレンは、本気になりそうになった。

エレン「ミカサ、でも…ほら、もうすぐ目的地に着くしな、悪かったって」

ミカサ「エレン………」

その時、ミカサはエレンの肩に顔を埋めた。

ミカサ「エレン………」

甘えた声で誘惑してくるミカサに、エレンは揺らいでいる。



ドクン……ドクン……



右手は、もう一度、動き始めた。

ミカサが可愛すぎて生きるのが楽しすぎる…
展開楽しみだ!

江蓮はエレンの様子を感じ取っていたが、止めなかった。

やってることは痴漢になるのだろうが、ミカサの方がOKを出しているし、第一、この状態では理性が吹き飛ぶのも無理ねえと思った。

下半身は既にスタンバイ状態だ。

最後までやろうとしたらさすがに止めるが、ちょっと触るくらいなら、もう止めないと決めた。

しかし意外にも、エレンは江蓮の予想を裏切った行動に出た。

エレンはミカサの左手の手荷物を奪ったのだ。




ミカサ「エレン?」

エレン「手、きついだろ。俺が持つから」

ミカサ「エレン……でも」

エレン「いいから。交代で持つぞ。次の駅で降りる。そこからは徒歩で移動しよう」

ミカサ「………触りたかったのではないの?」

エレン「さっきのは、冗談だって言っただろ? 悪かったって」

どうしても、エレンは誤魔化すつもりらしい。

それに対してミカサはすごく不満な顔になった。

もう少しだったのに、という表情だ。

>>406
このシーン書くために書き始めたと言っただろう?(笑)

今度はミカサの左手が自由になりました。
ミカサはこの後、エレンのどこを触るか決めて下さい。

1.左手で尻を触る
2.左手で太ももを触る
3.左手で胸を触る(乳首込み)
4.左手で思い切って服の上から股間を触る
5.左手でズボンのチャックを下ろす

以上の中から選んで下さい。
(*ミカサの方がひでえという文句は受付不可(笑))

4番いきまーす!

こんなことしたらエレンさんの理性が崩壊してしまうwww

2

エレンのどこか安心したような表情とは対照的に、ミカサは鋭い目つきになった。

空いた左手を前の方に少しずつ移動させ、恐らくこの辺にソレがあるだろうと思われる位置に手を持っていく。

ソレに触れた瞬間、エレンの方は激しくビクンと痙攣した。

エレン「ちょ……ミカサ! 左手、股間に当たってるんだが…!」

ミカサ「当ててんのよ(どや顔)」

エレンは混乱した。何故か、ミカサの顔が怖い。

非常に怖い…!!

エレン「おい、ちょっと……あ…馬鹿っ…触るなって…はっ……!」

先程まで熱が篭っていたそこは呆気なく復活した。

固さがビンビンに復活してエレンは困り果てる。

折角、自重したのに、ミカサ自身が刺激を与えるのなら意味がない。

エレンはせめて声だけは出さないように堪えたが……

ミカサの刺激は絶妙で、先の方はすっかりぐしょぐしょになってしまった。

エレン「おまえ……どういうつもりで……」

ミカサ「エレンが誤魔化すから悪い」

ミカサはすねたように言い放った。

ミカサ「こんなに固くしてる癖に……興奮してる癖に……逃げようとするから」

エレン「そりゃ、こんなところに刺激与えれば、誰だって…はっ…!」

ミカサ「触る前も、少し立ち上がってた。さっき、私で遊んでた時も既に、そういう状態になりかけてたんでしょう?」

エレン「…………」

エレンは返事をしなかった。それが悔しくて、ミカサは刺激を続けた。

そして、次の駅のドアが開いたが、あっと言う間に人は流れて、また入り、二人は結局その駅で降りれなかった。

降りるつもりなら、ちゃんと出口付近に前もって移動しておかなければ、無理だ。

>>411
すんませんwwww早いもんがちですwwww
エレンさん、既にいろいろヤバイwwwwww

エレン「ミカサ、もうやめろ! 本気でまずい……この状態じゃ、電車から降りれなくなる!」

ミカサ「……………エレンが認めるまで、やめない」

ミカサは少しだけ怒っていた。いつも逃げようとするエレンに対して。

この間の質問に対する返事だって、まだ貰ってない。

ミカサはそれが悔しくて堪らなくて、エレンの股間を優しく刺激し続けた。

エレンは抵抗出来なかった。両手に荷物を抱えていたのもあったが、その快楽が、思っていた以上に甘美で、飲まれそうになった。

エレン「はあ…はあ…はあ…」

このままだと、イカされる。そうなったら、本当にまずい。

こんな場所で、イカされたくない。

そう思って、エレンは唯一の自由な部分で、ミカサに反撃した。

ミカサ「……!」

エレンは、ミカサの唇を奪ったのだ。

主導権を取り返さないと、とんでもない事になると思い、咄嗟の手段に出た。

エレンは、無我夢中で貪った。とにかくミカサの左手の動きを封じたかったのだ。

ミカサ「ん………」

二人は無言でしばし唇の快楽に溺れた。

ミカサの左手は、次第に力を失っていった……。

それが、二人の理性の崩壊の合図だった。

二人は、もう、何も考えずに、周りに人がいることも忘れて唇を重ねた。

手荷物は床に落としてしまい、自由な手を滑り込ませて、エレンはミカサに触った。

右手は乳首を探し、左手は尻の方に手を伸ばし、ミカサの気持ちいい部分を探す。

ミカサ「あ……エレン……」

小さく喘ぐその声を塞ぐ。周りの音も認識できないくらい、エレンはミカサに夢中になった。

ガタンガタン……電車は揺れる。

その揺れに合わせながら、エレンはミカサに体重をかける。

押し潰されそうな程の苦しさを、幸せにミカサの体も跳ねた。

ビクビクと、小さな痙攣を繰り返している。

服の上からだけの、愛撫だったが、それでも十分、ミカサの体は濡れた。

エレンを感じて、体中が痺れている。

もう、誰に見られてもいい、とさえ思った。

本当はこんな事、しちゃいけないのは分かってる。

だけど、一度火がついたそれを、止めることは出来なかった。





後ろのドアが開くという、物理的な妨害以外は。





エレンは人の波に押されつつも、咄嗟に手荷物を回収した。

幸い、すぐに気づいたので、忘れ物はなかったが………

駅のホームに足をつけた直後、我に返った。

今、自分がしでかした事を、思い出して、地面に埋まりたくなる。

ミカサ「エレン……」

ミカサは蒸気していた。あんな風に情熱的に触れられた後では無理もない。

ミカサ「エレン……行こう。ラブホテルへ」

このまま行ったら、最後まで絶対ヤってしまう。その自信しかないエレンだった。

ミカサ「………エレン?」

エレンは蹲ったまま動けなかった。

必死に言い訳を考えている。

そして、思いついた。起死回生の、言い訳が。

エレン「すまねえ、ミカサ……」

ミカサ「え?」

エレン「い、今のは、もう一人の江蓮が、暴走したせいだ。お、俺の意思で触ったんじゃねえ…!」





江蓮(ええええええ……Σ(゚д゚lll))





そこでその言い訳使うかあ? と思ったもう一人の江蓮だったが、まあ、仕方ねえかと諦めた。

エレンがそう言い張ってしまえば、ミカサも疑いの余地はないからだ。

ミカサ「そ、そうだったの?」

エレン「ああ! 最初の悪戯の時から、勝手に動いちまって、止められなかったんだ。悪い。だから、謝ったんだよ!」

ミカサ「……そう」

ミカサはしゅん…とした。エレン自身が触りたくてやったわけじゃなかったのか、と反省する。

ミカサ「ではもう一人の江蓮は、その……もう一人の三笠に対する、裏切り行為をしたわけね(最低……)」

江蓮(してねえよ!! Σ(゚д゚lll))

困った事になった。どうしよう。俺、浮気してねえのに。

浮気したみたいな扱いになってしまってる。

エレン「お、おう! 最低だな! 俺だって、困ったんだぜ! やめろって言ってんのに、ぜーんぜん言う事聞いてくれねえし?」

エレンは嘘をつきまくっている。江蓮はさすがに、ちょっとムカついた。

なので本当に、右手を勝手に動かして、エレンの頬をぶん殴ってやる。

エレン「ぐはああ! (何故殴る!?)」

江蓮『自分の胸に聞け』

江蓮は一度だけ仕返しすると、ため息をついた。

江蓮『全く……黙って見守ってやった結果がこれかよ。アダで返しやがって。途中で止めてやれば良かったな、おい』

エレン(あ、そっか! 止めようと思えば、江蓮が止められたんじゃねえか! なんで止めなかった?!)

江蓮『…………いや、将来の為の参考にしようかと思って』

エレン(おいいいいい!!! それ以前に、さっさと交代してくれてもよかったんだぞ?!)

江蓮『まあもういいじゃねえか。さっさと次行くぞ。ラブホテルはすぐそこだ。駅出たら、近くにあるから、とっとと行ってくれ』

エレン(ラブホテル着いたら、交代してくれよ! 絶対だぞ!!)

江蓮『………はいはい(多分な)』

まだ、確証があるわけではなかったが、江蓮は頷いた。

もう覚悟は決まっている。

エレンはドキドキを何とか無理やり鎮めると、駅を出て江蓮の指示通りにラブホテルを見つけた。

その外観は、なんというか、普通のホテルより高級な感じだった。

おしゃれなその建物に、本当に入っていいのだろうかとエレンが悩んでいると、恐らく、カップルと思われる男女が先に中に入っていった。

江蓮『昔、父さんが母さんと若い頃によくこのラブホテル利用してたって、聞いたことあってな。なんでか知らんが、割引券をくれたことがあったんだ。だから俺はここしか、ラブホテルを知らん』

江蓮はそう言って、とりあえず適当な部屋を選んで、中に入っていった。

鍵は空いていた。中に入ると、とても綺麗なダブルベッドの部屋があった。

緑色の落ち着いた内装と、白い壁。可愛い絵もかけられている。

外の景色が見えないのが難点だが、空調も整っていて、休むのには丁度いい。

エレンは先程の失態を思い出してしまい、ミカサを直視出来なかった。

こんな状態で二人きりになって、何もしないでいられる自信はない。

エレン(もういいだろ。俺達を、さっさと、元の世界に戻してくれ)

江蓮『その前に多分、必要な事がある』

江蓮は言った。大事なことを。

江蓮『俺はまだ、三笠に自分の本当の気持ちを伝えてねえんだ。俺が、今、ここで三笠に気持ちを伝えれば、ミカサを通じて、三笠にも伝わる筈だよな?』

エレン(ああ、多分な)

江蓮『だったら、ここで告白させてくれ。この間の続きを、今度は俺の言葉として、言わせて欲しいんだ』

もう眠い。すまぬ。体力の限界…。
電車でエロス、書いてて超楽しかった…。
読んでる方、協力してくれてありがとう…。

ではまた続きは、一回寝てから。また書くね。またねノシ


これが毎日の楽しみになってる…
ゆっくり休んでね!

おつ
続きも楽しみにしてる

>>420
毎日寒くて体力が奪われる…((((;゚Д゚))))
ああ嫌だ。冬は嫌いだーが、頑張るよ。

>>421
ありがとう。あともうちょっとで終わるから、最後まで宜しくお願いします。

エレン(告白って……ちょっと待て。そんな事したら、ミカサが俺の言葉と思って勘違いするんじゃ……)

江蓮『しても別にいいだろ。どうせほとんどバレてんだし』

エレン(いやいやいや! 待て待て待て! そうかもしれんが、認めたら天と地の差が……)

江蓮『ごちゃごちゃうるせえ奴だな。多分、今回の一連は、俺が三笠から逃げたのが一番の原因の筈だ。だったらもう、逃げるわけにはいかねえじゃねえか』

エレン(………お前、急に男らしくなったな。前は随分、うじうじしてたのに)

江蓮『なんか、吹っ切れたんだよ。お前のおかげでな』

江蓮はエレンを見ていたら、自然と前向きになれたのだ。

江蓮『それにもうあんまり時間もねえのかもしれねえ………』

エレン(え?)

江蓮『いや、こっちの話だ。気にするな』

ガラスのドアのカウントダウンはもう、大分数字が減っている。

これがゼロになった時、果たしてどういう結果が待っているのか。

分からないが、あまりいいものではなさそうな気がする。

江蓮『だから、口を少しの間、譲ってくれ。俺の意思で話すって前もって言えば、大丈夫だろ』

エレン(そうか……分かった)

エレンは、仕方なく頷いた。

エレン「ミカサ、聞いてくれ」

ミカサ「何?」

ベッドに座って待っていたミカサがエレンの方を見た。

エレン「もう一人の江蓮の方が、もう一人の三笠に対して、伝えたいことがあるらしい。聞いてやってくれないか? ここから先は、江蓮に口を動かしてもらう」

ミカサ「………………分かった」

そして江蓮は、口の意思を少しだけ借りた。

エレン『三笠、聞こえるか。俺だ。江蓮だ。同じ名前でややこしいが、この「現代」に生まれた方の家賀江蓮だ』

ミカサ「………」

エレン『まずは、謝らせてくれ。なんかこんな妙な事になっちまって……原因は、俺が逃げたせいだ。お前一人を残して、現実から目を背けたくて。親父から、三笠と血が半分繋がってるって話を聞いた後、俺、頭の中が訳分かんなくなって……パニックになっちまって。本当に、死にたくなっちまって………』

ミカサ「………」

エレン『そのせいで、気がついたら、自分ではない別の自分が、俺の体を動かしてた。その間、俺はずっと引き篭ってた。心の内側みたいな世界で、テレビだけ見て、ぼーっとしちまって。それで、異世界のエレンが、俺の代わりに生きてくれるなら、それでもいいやって思っちまった。でも、実際そうなってみたら、だんだん……それが嫌になった。自分勝手だって、自分でも分かってる。でも、俺はやっぱり、この世界に未練があるし、何より、三笠。お前と一緒に生きたいってことが、やっと分かったんだ』

ミカサ「………」

エレン『正直言って、こんな事を言ったら、それは間違ってるって、他人は言うかもしれねえ。俺は三笠を、幸せにしてやれないかもしれない。でも……勝手だと言うのは分かってても、もう自分の気持ちに嘘は付けねえ』

ミカサ「………うん」

エレン『俺は三笠……赤間三笠を好きなんだ。家族としてではなく、女性として、愛してる。だから…………』

ミカサ「………」

エレン『だから…その……俺の事、どう思ってるか、教えてくれ』

ミカサ「………」

ミカサは自然と涙を零していた。勿論、三笠の方も、だが。

ミカサ「嬉しい。家賀江蓮。あなたはとても、男らしい人ね」

エレン『三笠に伝わったのか?』

ミカサ「うん……伝わったみたい。さっきからずっと泣いてる」

エレン『そうか……じゃあ……返事は………」

ミカサ「イエス、ミートゥー以外にないみたい」

はい、私もです。それ以外の答えなど、初めから三笠は持っていなかった。

それが分かった瞬間、江蓮は力が抜けた。緊張が、抜けたのだ。

これで、問題はクリアできたはずだ。

さあ、開け。江蓮はガラスのドアをこじ開けようと、もう一度手にかけた。

しかし…………

江蓮『あれ……?』

まだ、それだけでは、開かなかった。

江蓮『え? なんで? 俺の問題は解決したのに、なんで、開かないんだ?』

江蓮はてっきり、自分が三笠に告白すればこの奇妙な状態も消えるのだとばかり思っていた。

しかし、実際は何も変わらなかった。だとすれば……一体何が……。

江蓮『ああああああ?! まさか、もしかして…!』

その時思い出したのは、エレンの方の問題だ。

江蓮『エレン、お前、まだ一度も、ミカサに自分の気持ち、伝えたことねえんだよな?』

エレン(え? ああ。ねえよ)

江蓮『もしかしたら、俺だけが原因じゃねえのかも。お前も告白しねえと、問題が消えねえんじゃねえか?』

エレン(はああああ?! Σ(゚д゚lll))

エレンは心の中で絶叫した。

エレン(ふざけんな!!! なんで俺も巻き込まれて告白する必要が!!)

江蓮『俺はてっきり、自分が告白すれば問題が解決出来ると思い込んでた。でも、ミカサも言ってただろ? この現象の原因は、俺達二人、両方にあるんじゃないかって』

エレン(うぐっ……確かに)

江蓮『だったら、やるしかねえじゃねえか………エレン、やれ!』

エレンは、心底困り果てた。

エレン(いやだがしかし、俺がミカサに告白したら、きっとミカサは……ごにょごにょ)

江蓮『ああもう面倒くせえ奴だな!!! じゃあ俺がエレンって事にして、俺が代わりに告白してやるから!!』

エレン(それだけはやめてくれえええΣ(゚д゚lll))

江蓮『だったらさっさとお前も、告白しろ!! 急げ!!』

江蓮に急かされてよろよろと動き出したエレンだった。

エレン「………………あのさ、ミカサ。汗掻いてねえか?」

ミカサ「え? (今、どっちのエレンなの?)」

前もって言ってもらわないと、厳密に区別をつけるのは非常に難しかった。

江蓮なのかエレンなのか。さすがのミカサも、ちょっと判断に困る。

エレン「先にシャワー浴びてくれないか? 俺、ミカサが入ったあとに、汗流すからさ」

ミカサ「う、うん……」

エレン「着替えは、さっき買ったナース服に着替えて欲しい。ちょっと見てみたいし」

ミカサ「……分かった」

とりあえず、時間稼ぎをして精神を落ち着かせるエレンだった。

江蓮『…………このヘタレが』

エレン(お前にだけは言われたくねえわ!! 本当、ちょっと待ってくれ。心臓バクバクなんだが)

江蓮『ふん……どうなっても知らんぞ』

江蓮の方は、この先の展開を読めていた。

シャワーを浴びた後に超ミニスカナース服に着替えたミカサが戻ってきた。

エレンのイェーガーが即座に立体機動に移ったのは言うまでもない。

エレン(やべええええ……ナニコレエロい)

鼻血を吹き出す寸前でかろうじで堪えた。

いかんいかんいかんいかんいかん。

告白する前に、野獣に変身しそうになる自分がいる。

ミカサ「次、どうぞ……」

エレンは白衣セットを持ってダッシュでシャワー室に逃げ込んだ。

ミカサ「…………」

ミカサは複雑な心境でそれを待った。ベッドに座って足をバタバタさせる。

ミカサ(いいな……もう一人の、三笠が羨ましい)

あんな風にはっきりと、気持ちを伝えてくれる江蓮がカッコ良かった。

うっかり、江蓮の方に惹かれそうになった自分がいる。

三笠『ダメだから!! 江蓮は私のもの…!!』

もう一人の三笠がふーふー言っている。それは分かっているのだが。

ミカサ(分かってる。でも、江蓮はいい男。時間はかかったのだろうけど、ちゃんと自分で、はっきりと意思を伝えた。それに比べて、こっちのエレンは……はあ)

ミカサはちょっとだけ泣きたい気分だった。

ミカサ(エレンも、私のこと、好きなのだろうか…?)

怪しいと思ったことは何度もある。数え切れない程に。

でも、エレンは口を割らない。態度ではとても大事にしてくれるのに。

何度、優しくされただろう。何度、慰めてくれただろう。

何度、気遣ってくれただろう。何度、助けてもらったのだろう。

何度………。

もう、数えるのは、面倒になるくらい、エレンの記憶が沢山ある。

それら全てが、ミカサにとっての大切な思い出だった。宝物だった。

ミカサ(本当に家族としての『好き』だったら、こんな風に悩まない)

本当は自分自身でも分かっている。

自分の『好き』は、家族の域を超えていると。

前は、両方なんて言ったけど、あれは自分の心を守る為の予防線だ。

もし、破損した場合の、予備のブレードと同じようなものだ。

だからミカサは、本当ならば……エレンと恋人同士になりたいと願っている。

それが、とても難しい事だと分かってはいても。

エレン「わ、悪い。待たせた…」

ミカサ(ドキン……)

白衣に、黒縁メガネ、聴診器。三種の神器に着替えたエレンを見たミカサは頬を赤らめた。

今度はエレンではなく、ミカサの方が鼻血を出しそうになっている。

鼻を押さえて必死に堪えるミカサだった。

エレン「…………………」

ミカサ「…………………」

エレン「…………………」

ミカサ「…………………」

エレン「何か言ってくれよ」

ミカサ「かっこいい……(〃ω〃)」

エレン「そっか…(〃ω〃)」

ミカサ「その白衣、ちょっと丈が長めね」

エレン「ミカサの方は逆に短めだけどな。似合ってるぞ」

ミカサ「……(〃ω〃)」

エレン「……(〃ω〃)」

ああもう早くせんか!!

と、外野から野次が飛びそうな空気だった。

エレンはその時、周りを見た。気を落ち着かせるために。

すると、秋葉原で見かけたテレビと似たようなものがそこにあった。

恐らくこれもテレビなのだろう。

家のリビングにあったものよりは小さいが、エレンはリモコンを手にとって電源をつけた。

空気を変えるために。

しかし………

AV女優1『あああん……駄目……そこは…やめてえええ! イっちゃう…!』

エレン「?!」

即座にチャンネルを変える。

AV女優2『教師の私に向かって……何するの?! やめなさい!! 集団で、卑怯よ!』

また、チャンネルを変える。

AV女優3『お兄ちゃんになら、何をされてもいいの……』

またまたチャンネルを変える。

AV女優4『こんな、電車の中で……やめて下さい。社長おおお……あああん』

どこのチャンネルにしてもエロい番組ばかりだった。

何故だ。いつもなら普通の番組だってある筈なのに。

エレンはちょっとパニックになりかけていた。

ミカサは「エレン、もういい。消して」と止めた。

ミカサ「それとも見たいの? 他の女が喘ぐところを<●><●>じーっ」

エレン「ちがっ…! 俺は、その、空気を変えようと、なんか面白いもんねえかなって思って!」

ミカサ「空気を変える? その必要はない」

そう言って、ミカサはエレンの手を引いて自分の方に引き寄せた。

二人共、ダブルベッドの上でバウンドする。

エレン「あっ……(ミカサの体温が…胸が…息が…)」

ドキドキする。もう、下半身はスタンバイOKだ。

>>430
きめえええええええ

>>431
それは言わないでwwwwww
自分が一番わかってるwwwww

エレン(いやいやいやいや、スタンバイしている場合じゃねえから!!)

冷静に自分にツッコミを入れるエレンだった。

ミカサ「エレン………」

エレン「な、なんだよ」

ミカサ「胸が……苦しい……」

エレン「え?」

ミカサ「ううっ……」

その時、急に苦しみだしたミカサを見て、エレンは慌てた。

エレン「どうした?! ミカサ! 落ち着け。まずは、深呼吸だ!」

ミカサ「息が出来ない……苦しい……はあはあ」

エレン「どうしたんだ?! まさか、何か体に変化が……悪い。ちょっと服を脱がせるぞ!」

エレンは本当にミカサが急に具合が悪くなったのかと思い、ミカサの服の前を緩めた。

そして脈や、熱などの様子を見たが……確かにいつもより早く感じた。

呼吸も急に荒くなった。汗も酷い。

エレン「どうしよう……何か、病気だとしたら……俺じゃ治せない」

ミカサ「エレン」

その時、ミカサはぐっと自分の方にエレンを引き寄せた。

ミカサ「エレンなら、この病を治せる」

エレン「へ?」

ミカサ「私の体に……それを注射すれば、治る」

そう言ってミカサは、エレンの高ぶったものを、そろりと撫でたのだった。

そこで初めて、エレンは一連のそれがミカサの演技だったのだと知る。

エレン「dsのfんsfんslんgfls;…?!」

ベタなイメージプレイにエレンの羞恥心は頂点に達した。

エレン「おまっ……馬鹿!!! こんな時に、なんて…!!」

ミカサ「こういうのがしたくて、この衣装を買ったのではないの?」

江蓮『まあその通りだが』

エレン「まあその通りだが……って、そうじゃねえええ!!」

うっかり江蓮に釣られて肯定してしまったエレンだった。

エレン「今の、違うからな! 今のは江蓮のせいだから!」

ミカサ「………もう、どっちでもいい」

ミカサは我慢の限界だった。

ミカサ「私も、もう限界……体が火照って辛い……エレンがしてくれないなら、もう一人の江蓮でもいい。お願い。私と、体を繋げて」

江蓮『へー……』

その時、江蓮の方は悪い顔になった。

江蓮『そういう事なら、ちょっとだけ』

エレン(はあああ?! ちょ…待て!!!)

その時、江蓮はエレンの手の主導権を奪った。

感覚的には、丁度テレビゲームをやっているような感覚で、江蓮はエレンを操作する。

すると、つまりどういう事が起こるかというと……

エレン(あっ……ミカサの体に…俺の手が…勝手に…!)

触覚は全てエレンへ伝わり、動かす感覚だけは、江蓮が支配するという不思議な状態になったのだ。

江蓮はエレンの代わりにミカサの体を触っているが、触っている感覚だけはエレンに伝わっているので、エレンからしてみれば、拷問に近かった。

エレン(ちょっと待て!! 江蓮…! それは、やめろ!! お前、なんで?!)

江蓮『お前がグズグズしてるからだろ。いいから、とっとと、先にヤッちまえ。俺達は後からでもいいから。お前が体を動かさないなら、俺がこのまま、ミカサの乳首を弄るぞ?』

エレン(それはやめろおおおお!!!)



パアン……!!



エレンはキレた。その瞬間、エレンの中にあった理性も飛散した。

ミカサ「………エレン?」

エレン「………」

エレンは何度も唇を舐めた。口の中はカラカラだ。

水分が飛んでいくのが分かる。緊張は、頂点に達している。でも、

誰かに奪われるくらいなら、いっそ、自分で言ってやる。

エレンは、その時、決意した。

もう、逃げないと。

エレン「ミカサ………」

ミカサ「ん?」

エレン「一度しか、言わないからな」

ミカサ「うん……」

エレン「俺は………ずっと………多分、初めて会った、あの日から……」

ミカサを救出した幼き日の記憶が戻る。

エレン「いや、もっと後だったか? 最初は違った気がするが…」

ミカサ「エレン?」

エレン「ああもう、どうでもいいや。とにかく、だ」

エレンは、やっと、口に出した。

エレン「俺は、ミカサの事が……」









好きだ。









その、言葉が「鍵」となった。

エレン側の「好き」ともう一人の江蓮の「好き」が重なり、

ガラスのドアの数字の崩壊がストップし、ガラスの向こうに、もう一人の自分が現れる。

江蓮「!」

エレン「!」

回転ドアのように変化したガラスのドアを見て、互いに頷きあった。

そして、二人同時に、ドアを通る。

三笠と、ミカサも同じように、元の場所へ帰っていく。

次に目を開けた瞬間、江蓮は自分が元の世界に戻ってきたことを実感した。

目の前には、三笠がいる。

江蓮「三笠……赤間三笠……か?」

三笠「江蓮……家賀江蓮……なのね?」

長い間、離れ離れになっていた魂がようやく再会した。

三笠は自然と涙を零して、江蓮を抱きしめた。

三笠「良かった……戻ってきてくれた……」

江蓮「ごめん………遅くなった。ただいま、三笠」

三笠「おかえり……江蓮」

そして二人は暫くの間、ずっとずっと、熱い抱擁を続けたのだった………










アルミンは心配していた。

エレンとミカサが手を繋いで眠って異世界に旅立ってから丸一日経っている。

二人が全く目覚める気配がないので、さすがに女子寮の女子のメンバーも全員心配していた。

無理やり起こそうとすると、ビリビリとした静電気のようなものが反撃してきて、触れない。

自然に起き出すのを待つしかないが……

もしこれ以上、眠りが続くのであれば、キース教官に報告しない訳にはいかなかった。

ジャン「なあ……アルミン。その異世界ってところに飛ばされるには、エレンと手を繋いで寝ればいいのか? 今から一緒に手を繋いで、寝てみたらダメなのか?」

ジャンはそう言ってアルミンに問いかけるが、

アルミン「それが出来るなら僕がやってる。多分、途中から手を繋いでも無理だよ。静電気が激しくて触るのも無理だし」

ジャン「手袋して、触っても無理か」

アルミン「やってみたけどね。ダメだった」

アルミンは考えつく限りの事をやっていたが、何も出来なかった。

今、エレンとミカサの体は淡く発光しているようにも見える。

ユミル「……ったく、そんな大事だったんなら、先に言えっての」

クリスタ「本当だよ……このまま二人が戻らなかったらどうしよう」

アニ「…………」

アニはもっと必死に止めれば良かったと後悔していた。

サシャ「エレンとミカサ……もう丸一日、何も食べずに寝てますよね。何か、美味しいものを用意して匂いを嗅がせたら起きたりしないですかね?」

アルミン「どうだろう? (向こうの世界で美味しいものいっぱい食ってれば、空腹感はないだろうね)」

アルミンは食糧事情についてはさすがに詳しく説明しなかったが、その手はまだ使っていなかったなと思った。

アルミン「ダメ元でもいいから、それもやってみようか。サシャ、食料庫から何でもいいから盗んできてくれる?」

サシャ「了解しました!! (ビシッ)」

背に腹は代えられないので、サシャの行動を誰も止めなかった。

心配しているメンバーは皆、エレンとミカサの寝顔を見つめている。

ライナー「しかし……自分と全く同じ顔、背格好の奴がいるもうひとつの世界か。俄かには信じられないな」

コニー「だなあ……でも、アルミンは行ってきたって言ってるし、証拠もあるから信じるしかねえんじゃねえの?」

証拠というのは、向こうの有民と三笠の手紙と写真の事だった。

あの奇妙な文字と絵を見れば、疑えなくなる。

コニー「俺達の使ってる文字を鏡に写した字……なんて、まるで鏡の中の世界みてえだな」

アルミン「うん。まさにその通りだね」

アルミンはそれ以外にもいくつかに気になる点があった。

そう。一番最初に気になったのは、西暦だ。

カレンダーには2013年という途方もない数字が載っていたからだ。

アルミン(まさか、あれは未来……僕達の未来の世界だとしたら、彼らは僕らの「子孫」なのだろうか)

タイムトラベルは、小説などではよくある話だが、実際に経験するなんてありえない。

しかし、あの世界の「技術」はこの世界のものよりはるかに進んでいた。

冷蔵庫もそうだが、写真の技術なんて、こちらでは聞いた事がない。

絵を残す場合は、肖像画家に依頼するのが普通だからだ。

それに、何より、今、エレンとミカサのこの状態だ。

触るとビリビリ、くる。これは、最初は何か分からなかった。

アルミンは古い文献を調べ倒し、これが「静電気」に近いものであるということを突き止める。

アルミン達の世界には「電気」を使用して生活するという概念がない為、初めは「電気」というものがイマイチ理解出来なかったが、その古い書物には、昔はそういう道具を使って生活をしていたという記述があった。

アルミン(それとも……あれは「過去」の世界なのか。どちらにしても、わからない事だらけだ)

アルミンは歯痒さを隠しきれずにエレンとミカサを見守った。

アルミン(とにかく今は、二人が目覚めることを祈ろう。僕に出来る事はそれしかないのだから)

その時、アルミンの願いに応えるかのように……

先に目を覚ましたのは、エレン。

次いですぐにミカサが目を覚ましたのだった。

アルミン「エレン! ミカサ!」

エレンがゆっくりと起き上がる。ミカサも一緒に。

エレン「あれ……ここは……アルミン? 皆…?」

アルミン「良かった……やっと目覚めた。丸一日、寝倒してたんだよ、二人共」

エレン「丸一日?! そんな……(向こうじゃもっと長い時間、居たのに)」

時間の感覚がやはりずれている事に気づき、エレンは戸惑ったが、丸一日程度なら、助かったと思った。

ジャン「おい、お前ら、大丈夫なのか?! 意識はちゃんとしてるのか?!」

ミカサ「大丈夫。心配いらない……」

ミカサは少しだけ呆けた顔でいる。

無理もない。エレンに告白された直後に元の世界に戻ってきたのだから。

しかしエレンはミカサの視線に気づかず、アルミンやコニー、ライナーに質問攻めされていた。

アルミン「今回は随分長く向こうに行ってきたね。もう問題は解決したのかい?」

エレン「ああ。多分な。もう向こうの世界に行くことはないと思うぜ」

コニー「げーまじかよ!! 知ってたら俺、一緒に行きたかったぜ!」

ライナー「ああ、俺もだな。もう一人の自分がどんな奴なのか見てみたい」

エレン「すまねえ。言っても信じてもらえるかどうか、微妙だったし、それに連れて行けるって分かったのは、アルミンがそれを試したおかげだ。俺一人で行き来してた時は、ただの夢だと思ってたんだよ」

ライナー「まあ、そうだろうな。でも、夢じゃないと分かったのは、夢の世界で怪我をしたせいだったんだろ。その怪我がそのまま引き継がれて、目覚めた時に残ってたから、疑い始めたって……」

エレン「ああ。そうだな。右手の甲の怪我は、実はそれが原因だったんだ。嘘ついててすまん」

ミカサ「えっ……そうだったの? エレン」

今の今までアルミンの嘘を信じていたミカサはぎょっとしていた。

ミカサ「なんでそんな嘘を……」

エレン「うっ……言ったら、お前心配するだろうが」

ミカサ「するに決まってる!! ああもう…終わった事だから良いけれど、今度からそんな風に誤魔化さないで!」

エレン「………悪い」

エレンはバツが悪そうに謝ったのだった。

マルコ「で、その問題っていうのは、一体なんだったんだい? 俺達、アルミンから其の辺の詳しい事情を聞いてないんだけど」

アルミンは二人の問題にも関わるので、それを話すのは二人が戻ってきてからにしようと思っていた。

なので一同は、興味津々にエレンを見ている。

エレン「あー……向こうの世界の俺は、な」

そしてエレンは語りだした。今回の不思議な物語のあらすじを。

それを聞いて、涙したのは、意外にも、大勢いた。

ライナー「いい話だな……ハッピーエンドでまとまったんだな」

エレン「一応な」

エレンはその説明をするにあたって、ひとつだけ嘘をついた。

その嘘を、ミカサは不機嫌に聞いているが、あえてここでは突っ込まなかった。

コニー「つまり、エレンはもう一人の江蓮って奴の為に、体を動かしてやりに異世界にいってたわけか? これで合ってるよな? 多分」

エレン「そうだな。感覚的にはそんな感じだった。もう一人の俺は、最初は随分落ち込んでたみたいだったしな」

ジャン「………なあ、エレン」

その時、ジャンは一応、確認した。

ジャン「そのもう一人の江蓮と三笠の血が半分繋がってたって事は……お前らも実は繋がってるって事は、ねえよな?」

エレン「はあ? あるわけねえだろ。俺は9歳の時に初めてミカサと会ったんだぞ。俺の父さんも、ミカサの母親の検診の為に……」

しかしその時、エレンはちょっと口を閉ざした。

エレン「………………」

ミカサ「エレン?」

エレン「いやいやいや、ある訳ねえよな。それは、あったら困るぞ」

ミカサ「どうしたの? エレン」

エレン「でも、いや、ちょっと待て。疑ったらキリねえよ? うん。俺は父さんを信じるぞ」

ジャン「…………なんか思い当たることあるのかよ」

エレン「いや、ねえよ。全然ねえ!」

ジャン「嘘つけ! お前、今、何か考えただろ?!」

ジャンはニヤニヤ悪い顔をしながら問い詰める。

ジャン「ははーん、さては、アレだ。もしかして自分の父親が、ミカサの父親になってる可能性はねえかとか、思ったんだろ? もう一人の江蓮とは逆だったら、どうしようとか、思ったんだろ?!」




チーン……



エレンが反論しなかったので、場は凍りついてしまった。

クリスタ「ジャン! 言っていい事と悪いこと、あるわよ!! 謝りなさい!!」

ユミル「だな……今のはちょっと、頂けねえ」

アニ「……死ね」

ジャン「!? 嘘だよ! じょ、冗談に決まってるだろ?! 単に俺は、反対の世界って聞いたから、ちょっと思っただけで、本当にそうとは限らない……」

エレン「…………父さん、あんまり家には居なかったんだ」

その時、ぽつりと漏らした一言が場を更に凍らせた。

エレン「医者だから、いろんな家に往診に行ってた。帰りが遅くなる事なんて、いつもの事だ。帰らない日だって珍しくない。後、俺の父さんと、ミカサのご両親は元々、親交があった。母さんがたまに泣いてる日、あったし……まさかとは思うけど」



チーン……



ジャンのせいでまるで葬式のような空気になってしまった。

エレン「事実を確認しようにも、父さんは今、行方不明だし……手段がねえ」

アルミン「だ、大丈夫だよ! エレンとミカサの顔をよく見てよ! 似てないから!」

エレン「向こうの二人だって、顔は似てなかったぜ?」


ズーン……


アルミンのフォローは空回りした。

ミカサ「エレン。……もし、そうだったとしても、私は別に構わない」

エレン「ミカサ……」

ミカサ「血が繋がっていようともいなくとも、私達が家族である事には変わらない。違う?」

エレン「………」

ミカサは何があってもブレねえなと思ってしまったエレンだった。

エレン「そうだな。あいつらも、同じ結論を出したもんな」

ミカサ「そう。だから何も問題ない。これから先も、ずっと一緒にいよう」

エレン「…………」

エレンはそこでノーコメントだった。

ミカサ「……エレン?」

エレン「いや、その……あいつらは、両思いだったわけだからな。そりゃそうなるんだろうけど、俺達は、ちょっと違うだろ?」

ミカサ「……は?」

エレン「俺は、確かにミカサの事、好きだけど、それはあくまで家族として……」

ごにょごにょまた言い出したエレンにミカサの怒りはふつふつと湧いてきた。

ミカサ「エレン、あなたは……この期に及んでまだ言うの?」

エレン「な、何をだよ?」

ミカサ「だってエレンも、言ってくれたのに。私のこと、好きだって」

エレン「………ああ、言ったなあ。でも、恋人としてなんて、俺、一言も言ってねえよ?」

その瞬間、ミカサの瞳に鬼が宿った。

ミカサ「え~~~~れ~~~~ん~~~~~~?」



ゴゴゴゴゴゴ………



アルミン(まずい!)

コニー(げげっ!)

ライナー(いかん!)

ベルトルト(これは逃げないと!)

ユミル(夫婦喧嘩に巻き込まれるぞ!)

クリスタ(あわあわ…止めなきゃ…!)

ユミル(諦めろ! クリスタ! ミカサの怒りは既にマックスだ!!)




一同((((総員、退避!!!!!))))




ミカサが動き出す前に、部屋の中の住人は全て一目散に逃げていった。

サシャ「あれ? 皆さんどうしたんですか? パン盗んできましたよ…? うがあああ?!」

サシャが遅れて部屋に戻ると、顔面に枕が激突した。バタンキューである。

サシャはその場で気絶した。無理もない。

今、女子寮の枕を投げまくっているのは、ミカサだったからだ。

ミカサの投げた枕を喰らえば、気絶するのも無理はない。

ミカサ「エレンの馬鹿!!! 初めて会った日から、好きだって、言ったくせに!!!!!」

エレン「おま…ちょ…枕、投げんな!!! お前が投げたら、枕が破損する!!!」

エレンは逃げた。とにかく逃げた。ひたすら逃げた。

怒りに狂ったミカサはもう、猛獣のようだった。

ミカサ「何で何で……いつもそうなの?! 私だって……もう一人の三笠みたいに、はっきり言われたい!! エレンから、好きって、愛してるって言われたいのに!!!」

エレン「ちょ…おま、ベッド!! それはベッド!! 持ち上げようとすんな!!!!」

女子寮が破壊されていく。みしみしと音が、たっている。

本気でまずいと思ったエレンはミカサにタックルをかました。

しかし、その程度ではミカサは動かない。

石像のように、ビクともしなかった。

エレン(うそーーーーん……)

エレンは男としてちょっとだけ傷ついた。

ミカサ「エレン……あの時、の「好き」は絶対、そういう意味じゃなかった。私だって、いくら、私だって、それくらいの事は、分かるんだから…!!!!」

ボロボロボロボロ泣き出すミカサに、エレンも困った。どうしよう。

アルミン「あーあー泣かした…」

アルミンがポツリと呟いた。ドアの外で様子を見ているらしい。

よく見るとアルミンだけではない。

他のメンバーも安全地帯でミカサとエレンの喧嘩を見守っている。

エレン「ちょっとお前ら! 見てないで助けろよ! このままだと、ミカサが女子寮を全部、破壊するぞ?!」

アルミン「いやだって……エレンが悪いし」

マルコ「だよねえ……」

ユミル「自応自得だろ」

クリスタ「もう、認めちゃいなよ! エレン!」

エレン「お前ら…無責任なことばっか言いやがって…!」

ミカサは本気でベッドを一人で持ち上げようとしているので、さすがにそれはやめろと言って、エレンは枕を持たせた。

すると、今度もまた枕を投げてくる。

エレン「ちょ…これ以上暴れるなって! とにかく落ち着け! 頼むから!!」

エレンはオロオロし続けた。これ、どうやったら止められるの?

エレン「アルミン! ミカサをどうやったら止められるんだこれ?!」

アルミン「自分の胸に聞きなよ……」

アルミンは面倒くさそうに答えた。

ジャン「……………」

ジャンはエレンが羨ましい反面、今のミカサにはちょっとだけ引いていた。

泣きながらミカサは暴れる。というか、今度は布団まで投げ始めた。

エレン「うわああ!?」

布団に体を覆われて、身動きが取れなくなる。前が見えない。

その上に、ドシンと何かが乗っかる。

ミカサ「エレン……あなたは、いつも逃げる。だから、今度こそ……はっきりさせる」

エレン「な……何を……」

ミカサ「エレンが本当のこというまで、私はここから動かない。布団の中で一生を過ごして」

アルミン(それはもはや拷問だよミカサあああああ?!)

だんだんヤンデレ化してきたミカサにツッコミを入れるアルミンだった。

エレン「…………………………」

ミカサ「ずっと布団の中で過ごすといい。フン…………」

しかしその時、エレンは自分の手を動かした。

相手に見えないなら、好都合だと思って。

右腕をそろーっと、下のほうから、ミカサの尻のあたりに持っていく。

間に布団はあるけれど、そろそろと、尻を撫でていく。

ミカサ「えっ……あっ……?」

布団は、せんべい布団を想像して頂きたい。

彼らの使う布団は、現代の我々の使うものより貧相だ。

故に、布団越しで相手に触っても、十分感触は伝わる。

ミカサ「あっ……ちょっと…エレン? あん……!」

その瞬間、ジャンは鼻血を吹き出して倒れてしまった。

ミカサが布団の上(正しくは布団に包まれたエレンの上だが)で蒸気し始めたからだ。

ミカサ「エレン! 何するの…やめて…ああ!」

スリスリスリスリ……エレンは止めない。

エレン(だって、ミカサに上に乗られたら、触らないわけねえだろ)

周りには顔が見られてないし、追求されても「見えないから偶然触っただけだ」と言い張る事が出来る。

だからこれは、むしろエレンにとっては好都合だった。

ミカサ「ああ……エレン……やっ…気持ちいい…や…そんな風に…撫でないで…皆、見てるのに…」

エレン「え? 俺、どこ触ってるのかよくわかんねえんだけど? (大嘘)」

ミカサ「ああん! (わかってるくせに!)」

まるで騎乗位のエッチを生で見るかのような状態に一同はついつい食い入るように見入ってしまった。

マルコ「ちょっと…ミカサ、エロ過ぎるよ?!」

アルミン「うーん……これはちょっと…(僕としては罪悪感があるけど見ちゃうな)」

コニー「うほおお?! 何あいつら、ここでヤっちゃうわけ?!」

ライナー「けしからん。実にけしからん」


さわさわさわさわ……


ミカサ「いやああ…エレンの意地悪…!! はあ…ああ!」

エレンはミカサが自らどくまでは止めるつもりはない。

ミカサは限界まで頑張っていたが、遂には諦めてくたっと崩れ落ちた。

そしてようやく顔を出すエレンだった。

すっかり性感帯を弄られてぐったりしてるミカサを放置して、エレンが布団からのそのそ出てくる。

そんなエレンに対して一同は「この女たらし野郎め」といった顔で呆れていた。

ちなみにジャンは途中で鼻血を出して気絶してしまっていた。



エレン「俺、男子寮に帰るわ。後のこと、宜しくな」



女子一同は全員「なんて酷い男だ!!」と思ったが、何も言い返せなかったのだった。

この後、江蓮と三笠側の初エッチのターン入れてもいいけど、
別にいらないならカットしてもいい。

読みたい人の数による。読みたい人、お手をあげてノシ

このままエレミカのターンで

ごめん…睡魔が襲ってきた……
続きは多分、明日になりそう…仮眠取る。
早く起きたら、夜中に続き書く…ちょっと分からないけど。
とりあえず、江蓮三笠サイドを書いたとしても、
またエレミカサイドには戻るので安心してぐだしあZZZ

おつ
毎度投稿時間見て思うが>>1の活動してる時間帯が謎だ…体気をつけてな

>>450
訂正
ユミル「自業自得だろ」

読み直して気づいたwww漢字変換ミスすんませんww

>>459
活動時間はかなりバラバラです。
夜中に起きてることも多いですけど、早朝の時もある。
あんまり定期的にではなく、書けるときに書く派なので、よろしくね。

では、ちょっとだけ江蓮三笠編続けます。
>>455さんは、ちょっとだけ待っててね。










江蓮は少し落ち着くと、三笠の目元を拭うようなキスをした。

暫く言葉にならないで近くで見つめ合っていたが、ようやく顔を離して言葉を漏らした。

江蓮「三笠……ごめんな。俺、お前のことが……好きで」

三笠「私も、好き………だから、いいの」

止められない思いが溢れて、二人は自然と唇を重ねた。

しっとりと濡れた互いの唇から雫が漏れる。

三笠「ん……ん……はあ」

江蓮「はあ……ん………」

江蓮はもう我慢できずに乱れた三笠の服をもっと脱がしにかかった。

三笠「あ………江蓮……江蓮……先生…」

しかしその時、三笠がノリノリでそんな事を言ったので、ぶっと吹き出した江蓮だった。

江蓮「三笠、お前……」

三笠「こういうのが、好きなんでしょう? (クス)」

江蓮「いや、まあそうなんだけどさ……ノリノリだなあ。意外に」

三笠「だって、江蓮先生は……名医だもの。私の病を治せるのは、あなただけ」

そんな事を言われたら、やらないわけにはいかなかった。

江蓮は首から下げた聴診器(おもちゃ)を使って、三笠の胸の中に直接入れて、心音を聞くフリをする。

江蓮「心音を聞かせて貰うぞ。うん……音が酷いな。これは重症だ。早急に手当が必要だ」

聴診器の先を乳首の先に持っていく。先を擦るように上下させていく。

三笠「あん……!」

江蓮「ココが、少し固くなっているな。念入りに治療する必要があるな(コリコリ)」

三笠「あああん! 江蓮先生…! (ビクンビクン)」

聴診器の先で乳首を弄られてあっと言う間に気持ちよくさせられてしまう。

江蓮「では治療を始めよう。出来るだけ動かないように。いいね?」

三笠「はい…江蓮先生」

江蓮先生というフレーズに何故かいい気持ちになった江蓮はニヤニヤしながら唇を乳首の方に持っていった。

甘噛みを繰り返し、吸い上げて、舐めて、また甘噛みを続ける。

じりじり焼け付くような甘い快感が襲いかかり、三笠は全身をビクンと震わせる。

江蓮はそれを押さえつけながら、何度も何度も、三笠の乳首を責めていった。

三笠「あああん…! 江蓮先生! お上手…!!」

江蓮「三笠君もなかなか上手だぞ」

三笠「ありがとうございます……江蓮先生…あああん!!」

先生と看護婦というシュチュエーションにすっかりはまっている二人だった。

江蓮は乳首を責めながら聴診器を下の方にも使っていった。

脇腹から腹、そしてその奥の方までなぞる様に金属部分を当てていく……。

少しひんやりしたそれは、三笠の体温を奪い、少し暖かくなっていた。

茂みの部分に触れられると、一度ビクンと大きく震える三笠だった。

三笠「あ……そこも、診られるのですか?」

江蓮「ああ。念の為、な。そろそろ注射の準備に取り掛かろう」

そして江蓮は聴診器を外して、今度は下の方に右手を滑らせた。

江蓮は三笠のパンツの中に手を突っ込んでいる。

江蓮「……大分濡れているな。まずは指を入れてみる。痛かったらちゃんと言うように。いいね」

三笠「はいっ……!」


ぬちゃ……


江蓮は少しずつ、慎重に中指を挿入してみた。

三笠「うっ…! (ビクン)」

江蓮「ダメか……もう少し治療を続ける必要がありそうだ」

三笠「江蓮先生…でも…」

江蓮「焦ってはいけないよ。三笠。慎重にいくからね」

三笠「はい……」

実は江蓮はこの時、少しだけ親父の口調を真似してした。

小さい頃、お医者さんごっこをしていた時も、つい、父親の口調の真似をしてしまっていたので、ここでも自然とそうなっていたのだ。

江蓮は思い切って顔を下げて、三笠の足を広げさせて少し持ち上げ、パンツの上からそろりそろりと刺激した。

三笠「あ……! (胸より、気持ちいい!)」

股を大きく広げているせいで羞恥心が高ぶる。

なのに、気持ちよさは酷くなって、ガクガク震える。

こんなに濡れているのに、何故、指を入れただけで痛かったのか。

処女だから、なのだろうか。

三笠(早く…早く入れて欲しいのに…)

思うように体が受け入れてくれなくて焦る三笠だった。

そんな涙目の三笠を見て、江蓮は苦笑する。

江蓮「なんだよ……そんな物欲しそうな目で見るなって。焦るなよ。じっくり味あわせてくれよ」

素に戻って江蓮が言うと、三笠は「だって…」といじけた。

三笠「早く、江蓮と繋がりたい……」

江蓮「時間はたっぷりあるから、大丈夫だって。もっと楽しませろよ(すりすり)」

三笠「あん…! (ビクン)」

江蓮は三笠のパンツの上から指で何度も触っていた。

じわりじわりと、新品の白いパンツが汚されていく。

その眺めを至近距離で見つめて興奮する江蓮だった。

江蓮「新品の下着なのに……こんなに汚しちまって……」

三笠「あああん!」

江蓮「白い下着なのに台無しだぞ。このパンツは、後で俺のにするからな」

三笠「えっ……ほ、欲しいの?」

江蓮「記念の下着だし……ダメか?」

三笠「江蓮が欲しいのなら……あげる(〃ω〃)」

もう好きにして欲しいと心の底から思った三笠だった。

下着で思い出したが、江蓮はその件について一応謝っておこうと思った。

江蓮「三笠、そういえば謝っておきたい事がある」

三笠「え?」

江蓮「俺、前に一度、三笠の下着を自分の部屋に持ち帰って、オカズにして抜いたことあるんだ。後で元には戻したけど………」

三笠「…………」

江蓮「俺、そういう性癖、あるんだ。ごめん……やっぱ引く、か?」

三笠「ううん。それなら、お互い様」

その時、三笠は照れくさそうに言った。

三笠「私も、実は………似たような事、した事ある。江蓮に隠れてだけど」

江蓮「え…? 俺のパンツ、使ったのか?」

三笠「もっと酷いかも……」

江蓮「なんだよ! 気になるだろ! 言えよ!」

三笠「怒らない? 絶対、怒らない?」

江蓮「怒らない。だから、言えって!」

三笠「江蓮の敷きっぱなしの布団の中で、自分でしたこと、ある」

江蓮「…………へ?!」

それを聞いて、江蓮の家賀の角度が更に急なものになった。

江蓮「い、いつだよ………」

三笠「江蓮がお風呂に入ってる時、とか。リビングでテレビ見てる隙とか……いろいろ」

江蓮「ななな……」

三笠「引いた?」

江蓮「いや、引くつーか、何て言うか……」

そんな盲点をつかれているなんて夢にも思わなかった。

三笠「私も、江蓮の匂いが好き………嗅いでいると、興奮する。江蓮も同じであるのなら、嬉しい」

江蓮「お互いに匂いフェチじゃしょうがねえな……」

ククク……と笑い出してしまう江蓮だった。

江蓮「よし、十分、三笠の汁がついたし、このパンツは一度脱がすぞ」

三笠「うん………」

新品の下着はすっかりぐしょぐしょだった。

それをゆっくりと剥がして、遂にそことご対面する江蓮だった。

江蓮「………初めて、見た。こんな風になってるのか……(じーっ)」

三笠「江蓮、あんまりじっくり見ないで…」

中から透明な汁が溢れ出ている。その中を覗き込むように、江蓮はしっかり観察している。

江蓮「いや、無理。こんな面白いもん、見ないわけにはいかん」

本音を言うなら写真に撮るか、スケッチをしておきたいくらいだ。

しかしその時間は惜しいので脳内に激写しておくことにする。

江蓮「ちょっと、舐めてみていいか?」

三笠「えっ……直接、舐めるの?」

江蓮「当たり前だろ。いくぞ?」

ずいっと、顔をもっと近づけて、江蓮は三笠のあそこを舐め舐めし始めた。

三笠「ひゃ……江蓮……ダメッ……ああああ!!!」

ビクビク…!! ビクンビクン!!

痙攣が、突然激しくなった。

江蓮「うわっ…びっくりした。なんだ? 痛いのか?」

三笠「違うけど……はあはあ……刺激が…強くて…はあはあ」

江蓮「そんなに気持ちいいのか? 気持ち良すぎるのか?」

三笠「うん……正気を保てない……」

江蓮「なら、続ける」

三笠「?!」

三笠「やっ……! 江蓮……そこ……ダメえええ!!!」

江蓮は内心「ダメじゃないくせに」と思いながら、そこをじゅるじゅる吸って舐めて責め続けた。

江蓮の舌先が、踊るように下から上に何度も何度も何度も、動く。

チロチロと緩急をつけて、三笠の弱いところを、責め立てる。

その度に、三笠の胸は上下して、衣服は乱れ、顎は反り返り、暴れていた。

三笠「ああん……ああ…あああ!」

このままずっと、やられたら、多分、イカされる。

三笠「いや…ダメ…江蓮……いやっ…あああ! イキそう…! やだっ…あああ!!」

江蓮「そうか? じゃあ、一回休憩しようか」

その時、江蓮はすっと、イク直前で顔を離した。

三笠「はあ…はあ…はあ…」

それにほっとした反面、ちょっと残念な気持ちでいる三笠だった。

三笠「はあ…はあ…」

江蓮「顔、真っ赤だなあ…三笠。可愛い」

三笠「江蓮は、余裕……」

江蓮「いや、そうでもねえよ? これでも結構、いっぱいいっぱい」

三笠「でも、顔、赤くない」

江蓮「いや、そっちの話じゃなくて、下半身の方な」

触ってみる? と手を誘導する江蓮だった。

服の上からでも十分わかるその形に三笠はおっかなびっくりだった。

三笠「わっ……大きい…」

江蓮「おい、誰と比べてるんだよ」

三笠「ちがっ……そういう意味じゃなくて……」

江蓮「わかってる。嘘だよ。うそうそ」

江蓮はそう言って、三笠の頬にちゅっとした。

江蓮「三笠は他の男の味なんて、知らないもんな。俺が初めてだもんな」

三笠「うん………江蓮が初めて………あ」

江蓮「ん?」

三笠「何でもない」

江蓮「………おい、何だよその言い方は。何か隠してるのか?」

三笠「ち、違う……」

三笠が視線を逸らしたのでムッとした江蓮だった。

江蓮「まさか俺以外の男の息子を見たとか……」

三笠「…………ごめんなさい」

江蓮「! 誰だ?! 誰のを見たんだ?!」

三笠「…………もう一人の、エレンの方」

江蓮「………………」

そういや、そうだったなあと思い出した江蓮だった。

江蓮「ん? 待てよ? でも、あいつは俺の体を動かしてただけで、中身が別人だっただけで、三笠が実際見たのは、俺の体じゃねえのか?」

三笠「…………そうとも言い切れないかもしれない」

三笠はその時、気づいた事を言った。

三笠「ひとつだけ、気になった事があった」

江蓮「何?」

三笠「江蓮ともう一人のエレンの、瞳の色」

三笠はその気づきを、初めて口にした。

三笠「エレンの瞳は、ほんの少しだけ黄色がかった灰色だった。江蓮は、緑ががった、灰色。本当に良く見ないと、違いが分からないと思うけど、江蓮の時と、もう一人のエレンの時は、瞳の色だけ、違ってた」

江蓮「えっ……そうだったんか。お前、よく気づいたな」

江蓮は自分では全く気付かなかった。

三笠は頷いて、

三笠「なので、もしかしたら、肉体ごと入れ替わったのかと、思ってた。でも、やっぱりそれは物理的に考えにくいから、違うのかと思ってた。私には、本当のところは分からないけど、でも、どっちにしろ、江蓮の意識の時ではなく、もう一人のエレンの時に、それが勃ってるところを見てしまった……ので、ごめんなさい」

江蓮「あー…あれはもう不可抗力だから、いいよ。というか、あの時、襲われなくて本当良かったわ。今思うと」

江蓮は心底ほっとしていた。

あの場面で、そういう流れにならなくて本当に良かったと今では思う。

三笠「うん。なので……満員電車の時、エッチな事、したのはもう一人のエレンの方だって、気づいてた。だから、私も止めなかった」

江蓮「ああ、そっか。よく考えりゃあの時、三笠の方も止めようと思えば止められたんだよな。ククク……あいつら、気づいてないのかな。馬鹿だなあ……」

三笠「もう一人のミカサは、エレンの事を盲目的に信じてるところがあるみたい。でも、あの嘘は、ちょっといくら何でも酷いと思った……(クスクス)」

江蓮「だよなあ! 俺、勝手に悪者にされちまったし」

三笠「でもちょっと羨ましかった。私も本当はあんな風に……されても良かったと思ってたから」

江蓮「ん?」

三笠「覚えてる? 私達も、似たような事、あった」

江蓮「あーそうだったな。ゴールデンウィークに、あったな」

思い出したのは、5月3日の事だ。

よくよく後で考えてみれば、ゴールデンウィークに電車で出かけること自体、危ないよなと思った。

人ごみに遭遇する確率が高い日に何でわざわざ出かけたんだろと、今では思う。

でもあの時は、多分、何でも良かったのだ。三笠と出かけられさえすれば。

三笠「あの時、江蓮の手がお尻に当たってて……すごく興奮した」

江蓮「え……マジか」

三笠「うん……ちょっと擦れただけで、濡れて……はしたない状態になってた」

江蓮「くそおおお…! そうと知ってれば、もっと触ってたのに!」

過去に戻りたいと思ってしまった江蓮だった。

三笠「あの時だけじゃない。ま、マッサージをしてくれた時だって……脹脛を触られてた時に既に、体が反応してたけど、我慢してた。太ももまでは何とか、堪えたけど、お尻に触られたら、もうダメだった」

江蓮「そうだったのか」

三笠「うん……前日に江蓮が告白されたの知って、ショックだったし、でも、江蓮が私を気遣ってくれたのも嬉しかったし……本当は私も、ずっと前から、江蓮の事、家族としてじゃなく、男の人として、好きだった」

江蓮「…………そっか。遅くなって、ごめんな」

三笠「ううん。いいの。今、こうして、江蓮がここにいてくれるから」

三笠は蒸気した顔で江蓮に伝える。

もう一度、見つめ合う。

吐息が、重なる。

三笠「寂しかった……」

江蓮「俺も……」

二人は手を取り合った。

江蓮の右手は再び三笠の乳首を責め立てた。

三笠「あああ……江蓮! もっと…! もっと…! して!」

江蓮「こうか? (コリコリ)」

三笠「はああん! いい……あああ!! 気持ちいい…あああっ…!」

三笠の股の間から再び汁が溢れていく。

もう大分、濡れただろうか。

ベッドに備え付けてあるコンドームを手にとって、江蓮は封を切った。

暫く三笠を放置して、先にそっちを装着しておく。

そして、乳首への愛撫を再開させる。

何度も何度も、そこに刺激を与えて、三笠の体を柔らかくする。

二度目の挑戦。今度は案外苦労せずに、三笠のあそこに指が一本、入った。

2本目も……うん、いける。

江蓮「三笠、そろそろ……試しに入れてみてもいいか?」

三笠「うん……お注射…して下さい。江蓮先生」

その設定、まだ覚えてたのかよ! と自分がやりだした癖に思ってしまった江蓮だった。

江蓮「…………」

でも、正直に言えば江蓮先生と呼ばれるのは悪くない。興奮する。

江蓮のスイッチが、再び入る。

江蓮「………足をもう少し広げて」

三笠「はい……(ぐいっ)」

江蓮「もっとだ。もっと、大きく広げなさい」

三笠「は、はい……」

限界ギリギリまで股を広げて三笠は待った。

江蓮「(じーっ)…………(グイッ)」

三笠「うっ…!」

指が入ってきた時よりも数段大きなものが、そこにミシミシと侵入してきた。

三笠が青ざめて震えているが、江蓮は構わず、押し込んだ。

三笠「はああっ……!」

痛みで動けない。全く、動けなかった。

三笠が痛みを堪えているのは表情を見れば一目瞭然だった。

けれど、江蓮はその行為を途中で投げ出すことはしなかった。

とりあえず、ゆっくりと更に押し込んでいく。

三笠「あああ……あああ…」

ずぶずぶと、押し込まれていくのが分かる。

辛い。苦しい。痛い。

だけど、ここを乗り越えなければ、江蓮とは繋がれない。

その意地が、三笠を支えた。

江蓮の目は、鋭くなった。

半端な動きは、かえって痛みを助長させる。

行くなら一気に奥深くまで、一度貫いた方がいい。そう判断したのだ。

注射をする場合のコツを、昔、年配の看護婦さんから聞いたことがある。

相手の腕を、粘土だと思いなさい、と。

残酷なセリフだが、そうすれば緊張もなくスムーズに針を刺せるのだそうだ。

相手が人間だと思うから、なまじ失敗する。

残酷に、だけと動きは最小限に。

やるべき事をやるのが、彼らの仕事なのだから。

だから、江蓮はここで中途半端な事はしなかった。

とにかく一度、最後まで、自分のものを三笠の中に押し込んだのだ。

江蓮「………入ったな」

三笠「うん………(痛い……)」

江蓮「痛いよな(中、すげえ締め付けてる)」

三笠「い、……ちょっとだけ痛い」

江蓮「嘘つくなって。相当痛いんだろ? まだ動かないからな。少し休憩する」

なりきりセックスはやってる本人達以外から見たら苦笑もんですわ

>>475
見られたら憤死確実wwwww
でも、医者とナースコスプレになっちゃったから、仕方ないwww

本当、すんませんwwwww

三笠「はあ……はあ……」

江蓮「………」

どれくらいじっとしていただろうか。

10分程度はそのままだったろうか。

江蓮はふと思いついたように、三笠のナース服の前ボタンを全て外しにかかった。

三笠「あっ……」

前のブラジャーもホックを外されて、全部を奪われてしまう。

江蓮の方は、下半身だけ裸で、白衣はまだ着たままだ。

三笠「江蓮……上、脱がないの?」

江蓮「どっちがいい? 三笠が脱いで欲しいなら、脱ぐけど」

眼鏡がちょっとずれてきている江蓮に、三笠は言った。

三笠「………眼鏡は外して」

江蓮「ああ。ちょっと邪魔になってきたな(スッ)」

三笠「……!」

いや、そうではなくて。今の、すごくいい。

江蓮「? どうした?」

三笠「今の、すごく良かった」

江蓮「へ?」

三笠「眼鏡を外す瞬間が、格好良すぎる……(プルプル)」

江蓮「へー……じゃあ、もう一回やるか」

また眼鏡をかけて、もう一回外す。ただそれだけなのに、三笠はプルプル萌えていた。

三笠「はあはあ(*´∀`*)」

江蓮「………そんなにいいのか?」

三笠「イイ!! キュンとくる!!」

江蓮「そういうもんか? でもこれ、伊達眼鏡なんだよな。度が入ってるわけじゃねえし、俺も目は悪くないからなあ」

三笠「……たまに伊達眼鏡をかけてくれればいい」

江蓮「そうか? まあ、三笠がそういうなら、するけど。もう外していいよな?」

三笠「うん……(うっとり)」

十分堪能したので三笠は頷いた。

江蓮「白衣もちょっと熱くなってきたな。やっぱ脱ぐか」

江蓮は白衣を脱ぎ捨てて、中のTシャツだけになった。

汗が染み込んで色が少し変色している。

それをみたら、ますます興奮してしまった三笠だった。

汗の染み付いたそれから漂う匂いにクラクラする。

すると、三笠の体に変化が起きた。きゅっと、締め付ける力が強くなった。

江蓮「うお? なんだ? なんか急に、感覚が……」

まるで、三笠の方から動いたような感覚が伝わってきた。

腰は動かしていないのに。

江蓮「………そろそろ、少しずつ動かしてもいいか?」

三笠「うん…」

江蓮は一度、深く息を吸い込んで気合を入れ直した。

腹筋に力を入れる。前に動きをつける。

三笠はほんの少しだけ顔を歪めたが、最初の頃のような痛みはなかったので、堪えた。

痛みに慣れてきたのかもしれない。

江蓮は本当に少しずつ、ゆっくりと、前後運動を始めた。

痛みは残っているが、その奥の方に、何か別の感覚が重なってきた。

痛いのに、気持ちいい。

その不思議な感覚に、脳みそが揺れる。

神経の回路が、全身に伝え始める。

新しい、感覚を。

三笠(こんなの、初めて……)

痛みを乗り越えた先に、その感覚はあった。

一度味わうと、中毒になってしまう程のそれは、三笠の体を犯し始めた。

三笠「ああ……ああっ……!!」

襲いかかってくる、快感。

目の前が真っ白になる、感覚。

先程、イカされそうになった時よりもはるかに大きな波が、きた。

三笠「ああ……あああああああ!!!!」

ブルブル震え始める三笠に気づいて、江蓮は一度、動きを止めた。

江蓮「三笠? 大丈夫か? きついのか?」

三笠「つ、続けて……(ぜーぜー)」

江蓮「でも、なんか今、絶叫あげてたし…」

三笠「いい! 続けて! お願い!」

江蓮は少し戸惑ったが、三笠が言うなら信じようと思った。

今度は速度を少し上げる。

三笠「はあん!! もっと…もっと…激しく…して!!」

江蓮「いいのか…? 本当に」

そりゃ願ったり叶ったりだが、江蓮は心配した。

でも、三笠はもう、今は痛がっていない。

三笠「いい……もっと…して」

江蓮の中の、何かがまた、崩壊した。

ごくりと、唾を飲み込んだ。

今までは三笠が可愛すぎて生きるのが辛いと思ってたけど……

訂正しよう。今度からは、

「三笠が可愛すぎて生きるのが楽しい」

という生き方にしようと。

そう、強く思った瞬間だった。

江蓮「三笠っ…! (グイッ)」

三笠「江蓮…! (ギュッ)」

グイグイと、繰り返す。腰の動き。加速していく。

三笠「はああ……ああああ!! あああああああ!!!」

そして三笠は初エッチにして初めての、イクという感覚を知った。



ビクン…ビクビクビク……



体が大きくしなって、弓なりに一度、揺れる。

三笠がイクと同時に、江蓮の方もイキたかったのだが……

そう、うまくいくほど、江蓮も技巧があるわけではない。

まだまだ余裕があってイクまでには遠く及ばない。

なので、江蓮はまだ腰の動きを止めなかった。

三笠「江蓮…?」

江蓮「ごめん……俺、まだイってない」


グイグイ……


三笠「はあん! ま、待って…! そのまま続けたら…あああっ」

冷えた筈の熱がまた、復活する。

三笠「江蓮……江蓮…ああっ…あああっ」

二回目のそれは、一度目よりはるかに辛かった。

頭の中が酸素不足でクラクラするし、何より、股が少し痛い。

ドロドロの股に卑猥な音が擦れる。

ぴちゃぴちゃと、何度も何度も……

江蓮「はあ……はあ……」

江蓮の方もやっと、絶頂に近づいてきた。

腰の動きを更に激しくする。

三笠「あああっ……江蓮!」

三笠「三笠っ……!」





ドピュッ……





江蓮の中にあったものが弾けて、コンドームの中で飛散した。

江蓮「はあ…はあ…はあ…」

江蓮は一度自分のものを抜くと、それを縛ってゴミ箱に捨てた。

気がつくと、少量ではあるが血が流れていた。

どうやら、三笠の処女膜が敗れたようだ。

江蓮「あ、やべえ…しまった。バスタオル、敷いておくの忘れてたわ」

ベッドのシーツに染みが残ってしまいそうだ。どうしよう。

三笠「すぐに洗えば落ちるのでは…?」

江蓮「え……このでかいベッドのシーツカバーを外すのか?」

三笠「今すぐなら、多分、落ちる。ちょっと待ってて…(よろよろ)」

江蓮「馬鹿! 無理すんなって!」

江蓮は止めた。三笠に風呂に行くように勧める。

江蓮「血が止まるまで、風呂に移動しとけ。血のシミは、俺が何とかしとくから、シャワー浴びとけ」

三笠「う、うん……(よろよろ)」

江蓮「ああもう、やっぱ俺が連れてくから!」

江蓮は三笠を支えて風呂場まで移動した。

そして風呂場の椅子に座らせておくと、ベッドの血のシミの部分を濡れたタオルを使って、シミ抜きをした。

江蓮「参ったな…あんま落ちねえな。やっぱ、水道で洗い流すしかねえか」

江蓮は仕方ないので、一度ベッドカバーを外した。そしてそれを洗面所で水で洗い落とす。

江蓮「お、今度は落ちた。あとは……干しておく場所がねえか。どうすっかなー」

頭を悩ませる。その時、江蓮は部屋に確かハンガーがあった筈と、思い出して、それにひっかけておくことにした。不格好だが仕方がない。

>>481
訂正
どうやら、三笠の処女膜が破れたようだ。

変換ミスだー。

血がついたのは一部分だけだったので、部屋干しでも暫くすれば乾くだろう。

江蓮は三笠の様子を見に風呂場に戻った。

江蓮「俺が片付けておいたから。三笠、大丈夫か?」

三笠は椅子に座ったままぼーっとしている。うとうとしているようだ。

江蓮「…………」

そんな三笠を見ていたら、二回目の勃起をしてしまった。

あっと言う間に復活する自分にちょっと情けなさを感じる。

しかし三笠の疲労を考えると、これ以上は頂けない。

何より初めてのエッチなのだし、あまり無理はさせたくなかった。

江蓮はぼーっとしている三笠に、お湯だけのシャワーを浴びせて汗を流させると、自分の方の汗も一緒に流した。

そしてぱぱっと、バスタオルで雫を拭って、ベッドに戻る。

パンツは、最初にはいていた普通の白い下着を履かせてやる。

江蓮の方は面倒くさがったので、そのまま裸でベッドに戻った。

ベッドのシーツカバーはないが、まあ寝るのには支障はない。

江蓮「少し寝ようか。三笠、お休み」

三笠「うん……おやすみ、江蓮」

江蓮も少し疲れが出たのか、瞼を閉じると自然と眠ってしまった。

三笠もほとんど一緒に眠りについてしまった。







そんな幸せそうな二人の様子を、知る者がそこに一人だけ、いた。






エレン「何だ…夢か」

エレンは目が覚めた。何だか幸せな夢を見た気がする。

江蓮と三笠がイチャイチャしている夢を見たのだ。

エレン(…………)

外は雨も降ってないし、何よりもう、江蓮の体に入って江蓮として生きた訳でもないのに、どうしてその様子が分かったのか。

ただ、夢の中では自分は空気みたいな存在で、声を出すことも、物に触れることも出来なかった。

謎は深まるばかりだが、それはともかく、彼らを祝福したいと思う。

心の底からおめでとうと、言いたい。

そんないい気分でエレンは目覚めたのだが…………。

エレンは、隣にいる人物に、ギョッとした。

アルミンではなく、ミカサがそこに寝ていたからだ。

アルミンは横にいない。何故だ。

何がどうなって、こうなっているのか理解出来ず、エレンはそっとベッドから出ようとするが……

ミカサ「おはよう、エレン」

エレン(ギクッ)

エレンは反射的に肩を震わせた。

ミカサはエレンが起きるまで待っていたようだ。

エレン「お、おはよう、ミカサ。アルミンは、どこだ?」

ミカサ「今日だけアルミンは、女子寮の私のベッドで寝ている」

エレン「はあ? よくそんなことが出来たな。つか、バレたら……」

ミカサ「大丈夫。今回ばかりは女子全員の了承と、男子の方の了承も得ている」

エレン「えっ……」

何か、非常に嫌な予感がした。

するとミカサはにんまり笑って言った。

ミカサ「エレンが昨日、私にした事、忘れたとは言わせない。エレンから直接、謝罪をさせる為に皆、協力してくれた」

エレン「ばっ…! だってああでもしねえと、お前、どかなかっただろう!!」

ミカサ「そうだとしても、私はエレンに辱められた。責任を取って欲しい」

エレン「……………悪かったよ。ごめんなさい」

ミカサ「そんな薄っぺらい謝罪じゃダメ」

エレン「他にどうしろって言うんだよ!!」

ミカサ「元々の発端は、エレンが認めないから。私に好きって言った事。ちゃんと認めるまで許さない」

エレンは頭を抱えた。あーうーと唸り続ける。

ミカサの隣には、他の男子だって寝ているのに。

なんだってこいつはこういうこと、するかね? とエレンは思った。

ミカサ「エレン……?」

エレンがやっぱり時間稼ぎをしようとするので、ミカサは急かした。

ミカサ「それとも、あの時は仕方なく、言ったの? 嘘をついたの?」

エレン「いや、嘘は言ってねえよ。俺はミカサの事、好きだからな」

ミカサ「その好きは、本当に家族愛だけ…? ほんのちょっとでも、私を女として見てくれたこと、ないの?」

エレン「うーん……(;´д`)」

ミカサ「そんなに私は魅力がないの? 確かにクリスタやアニのように体が小さいわけでもないし、私は他の男より強いし、髪だって黒いし、胸だってそんなに大きいわけでもない。外見的な要素で言えば、劣っているかもしれないけれど……」

エレン「いや、それはない。お前が外見的な部分で他の女に負けてるとは思ってねえよ」

ミカサ「えっ……」

その時、ミカサの心臓は少しだけ跳ねた。

エレン「むしろ、美人なんじゃねえのって、思ってるけど」

ミカサ「ほ、本当…? (〃ω〃)」

エレン「ああ。でないと、他の奴らがミカサに注目しねえだろ」

ジャンがそのいい例である。

ミカサ「では何故、エレンは……」

エレン「…………お前さあ」

そこでエレンは困ったように言った。

エレン「俺にばっかり、そういう事いうけどさ。お前自身はどうなんだよ」

ミカサ「え? その話は前にも………」

エレン「本当か? あの答えが、本当にそうだって言うなら、俺はお前に本心を伝える気はねえよ?」

ミカサの方が唾を飲み込む番だった。

ミカサ「………………」

エレン「はっきりしねえのは、お互い様だと思ってたんだけどな、俺は」

ミカサ「は、はっきりすれば、答えてくれるの…?」

エレン「………さあ? それはどうだろうな?」

ミカサ「ずるい!! それじゃ、もし私がそう言ったとしても、もし、違ったら、私の方だけ……」

エレン「俺はその覚悟がねえんなら、やめとけって言ってるんだよ」

ミカサ「………!」

エレン「そもそもおかしい話だろ。ミカサ、お前、自分の意思じゃなくて、何で俺の意思に合わせようとする」

ミカサ「だって、それは……!」

エレン「俺はずっと待ってるんだけどな」

ミカサ「えっ………」

エレンはそう言って、ミカサを真剣に見つめた。数十秒だけ。

そしてごろんと、向きを変えて今度こそ、ベッドから出る。

エレン「さーて、今日も訓練頑張るかー。朝飯食いに行くぞー」

ミカサ「待ってエレン! 今のはどういう……?!」

エレン「その話はもうオシマイ。さっさとアルミン迎えに行くぞー」

ミカサ「エレンーーーー??!!!」





隣で寝ていたコニーは思った。

あいつら、俺より馬鹿なんじゃねえの? と。

コニー「ククク………この話、皆にも広めるべきだよな」

と、悪い笑みを浮かべながら。

数十秒は長いでござるな

コニーが朝からいろいろ言いふらしたせいで、エレンの評判は女子の間で失墜した。

ミカサ以外の女子は夕食時、食堂で集まって、ひそひそと噂話をしていた。

クリスタ「女の方から告白させようとするなんて、最低!! 男なら、ちゃんと言いなさいよ!!」

ユミル「全くだ。エレンは女たらしの上に、最低の野郎だな。ミカサも厄介な男に惚れやがって……」

アニ「あいつは女の扱いを全く分かってないね」

サシャ「エレンの方から告白しないんですか? 何故ですか? ミカサがパンをくれないからですか?」

ミーナ「違うよ。サシャ。エレンはね、ずるい男なの。パンをあげるって言ったのに、約束を破ってパンをくれないような、そんな男なのよ」

サシャ「それは最低です!! ミカサが怒るのもわかります!!」

ハンナ「ううう…何とかしてあげたいけど、あのエレンだもんね。絶対、折れないよね」

ミーナ「だよね。ミカサも何でアレがいいのか……」

女子一同の意見を言わせて貰うなら、ミカサ程の美人が何故、エレンに執着しているのか理解出来なかった。

彼女らはミカサとエレンが何故義理の兄妹の関係になったか、詳しい経緯まではこの時点では知らない。

ミーナ「まあ、エレンの顔はね、悪くないのは認めるよ? でも、ミカサだったらさ、もっと上の男でも落とせるよね。絶対」

ユミル「それは分かる。でも本人にその気はないからな」

ミカサは今日もエレンとアルミンと一緒に食事をとっている。

傍から見ると、その表情は少しだけ思い悩んでいるようにも見えた。

>>488
一分は長いと思ったので、20~40秒くらい見つめ合ってます。
結構長いかな? 意味深なシーンですwwwww
エレンさん、酷い男だな、本当にwwww

そんないじらしいミカサを見ていると、女子全員、エレンを殴りに行きたい気分になってきた。

ユミル「なんか、ねえのかな。エレンの本心を聞けるような方法」

クリスタ「本心を聞く…?」

ユミル「ああ。だって、あいつ、絶対ミカサの事、好きだろ。家族としてじゃなく、女として。でないと、説明つかないことが多すぎる」

ハンナ「そうね……ミカサも相当、エレンの事好きだけど、傍から見てればエレンも負けてないよね」

エレン自身は気づいていないようだが、女子の観察眼を舐めてはいけない。

滲み出る優しさが示すそれは、明らかに家族のものを超えているように見えるのだ。

普段のエレンはツンツンしていているように見えるが、ふとした時に出ているそれを、女子は見逃さない。敏感な生き物だから。

アニ「自白剤でもあれば、吐かせられるんだろうけどね」

ミーナ「物騒な! でも、ある意味それくらいやらないと無理かもね」

クリスタ「自白剤は無理でも……お酒や催眠術で本音を吐かせる事は出来ないかな?」

さらりと恐ろしい事を言い出したクリスタに女子一同は一瞬、びっくりした。

ユミルは特に驚いた。

ユミル「クリスタ……お前、恐ろしい事、考えるな」

クリスタ「え? あははは……ごめんごめん。ついつい。ミカサが可哀想だから、ね」

人を救うことに関してだけ言えば、クリスタのパワーは凄まじいものがある。

ユミルはクリスタの闇の部分を垣間見た気がしてちょっとだけ引いたが、確かにそれくらいやらないと、エレンの本音を引き出すのは難しいかもしれないと思った。

ユミル「まあでも、クリスタの意見も一理あるな。エレンは力技に出たミカサに対してすら誤魔化すような男だからな。何でそこまでして頑に逃げるのか知らんが………」

エレン側の事情を知らないのでユミルも首を傾げる。

ユミル「今回ばかりはちょっと……私ですらミカサのこと、可哀想だって思えるからなあ。ま、ほっとくしかねえんだろうけど」

クリスタ「そんな?! 二人の事、放ってはおけないよ!!」

ユミル「いや、下手に手出してよけいに拗れる可能性もあるだろ? そうなった時の責任は持てないぞ。私は」

ミーナ「うっ……同感かも」

ハンナ「そうね。力になりたいけど、でも、今ですら酷いのに、もっと酷くなったらって思うと……」

アニ「そうだね。うちらはこうやって噂話をするくらいしか出来ないだろうね」

クリスタ「ううう……ミカサあ……」

歯痒さにクリスタは涙目になった。

そんな皆の様子をサシャはきょとんとした表情で見つめる。

サシャ「? 皆さん、どうしてそんなに暗い顔なんですか?」

ミーナ「だって…ミカサの力になりたいけど、何も出来ないんだもん」

サシャ「ミカサの力になりたいんですか? だったら、素直にそう、ミカサに言えばいいんじゃないんですか?」

クリスタ「でも、その方法が何も何も思い浮かばなくて……」

サシャ「その方法を考えるのは私達じゃないと思いますよ? ミカサ自身がどうしたいか、それが大事なんじゃないんですか?」

サシャの至極当たり前な意見に、一同はハッとした。

クリスタ「そうだよ……なんでそれに気づかなかったんだろ」

ユミル「まさか芋女に指摘されるとはなあ……」

サシャ「うっ…まだその事、覚えてるんですかあ…いい加減、忘れて下さいよ」

ミーナ「同期であの事件を忘れられる子はいないよ、サシャ。諦めて」

サシャ「そんなあ……Σ(゚д゚lll)」

ハンナ「でも、サシャの言う通りだね。私達がどうこう言う前に、ミカサが今、どうしたいのかが大事だよ」

皆は一斉に、立ち上がった。アニは除いて。

ユミル「ん? アニはいかないのか?」

皆がミカサのもとへ行こうとするが、アニだけは席を立たなかった。

アニ「私はパス。もう、大丈夫なんじゃない?」

そう言って、一人だけ個人行動を取るところがアニらしいと思ったユミルだった。




夕食が終わった直後、ミカサが女子の集団に拉致された。

その物々しい雰囲気にエレンは嫌な予感がする。

エレン「アルミン……」

アルミン「……僕は何も言わないよ」

エレン「ううっ……何か今朝からずっと女子の視線が冷たいような気がするんだが」

アルミン「自業自得じゃない? ミカサのお尻触ったんだし」

エレン「し、仕方ねえだろ! ああでもしないと、ミカサから逃げられなかったんだし!」

アルミン「うーん。気持ちは分からなくもないけどね。でも、『初めて会った日から、好きだ』ってどこの恋愛小説のセリフだよとツッコミたくなるんだけど? 僕としては」

エレン(ギクギク)

エレンの肩が大げさに揺れてアルミンも苦笑した。

アルミン「まあ僕は、ね。エレンの事を少しは分かってるつもりだから、エレンがそれだけ頑なに認めようとしないのも分かるけどね。でも、多分、傍から見たら今のエレンは「たらし野郎」とか「女こまし」とかろくな姿に見えてないと思うよ?」

エレン「………もう、周りになんと思われようがどうでもいい」

エレンはすねたように呟いた。

エレン「ミカサが中途半端でいるうちは、俺も踏み込まん。俺一人のせいにされても困るわ」

アルミン「僕は逆に、エレンさえ決めてしまえば全部うまくいくと思うんだけど?」

エレン「だから、それじゃダメなんだって。それは、俺が嫌なんだよ」

アルミン(本当、どっちも頑固だなあ)

アルミンは一応、二人の間の中立な立場を出来るだけ保っていた。

だからどっちも応援しないし贔屓もしてはいけないと思っているが……。

アルミン(本音を言えばさっさとくっついてくれた方が心配事も減っていいんだけどね)

と、心の中でだけ思うアルミンだった。

ミカサはその日の夜、女子寮の中で女子に囲まれて作戦会議に参加させられていた。

しかしミカサ自身はすっかりしょんぼりしている。

クリスタ「ミカサ、今のミカサの素直な気持ちを聞かせて。私達、応援するから!」

ミカサ「私の気持ち…?」

クリスタ「嘘偽りない、本心を教えて欲しい。そうすれば、きっと、エレンなんて、すぐ落とせるから!」

ミカサ「エレン……なんて? (ピクッ)」

クリスタ「あ、いや、違う! エレンを、落とす! だから。だって、ミカサはエレンの事が好きなんでしょう?」

ミカサ「私は………」

ミカサはエレンの言葉を何度も反芻してその意味を考えた。






エレン「俺にばっかり、そういう事いうけどさ。お前自身はどうなんだよ」

エレン「本当か? あの答えが、本当にそうだって言うなら、俺はお前に本心を伝える気はねえよ?」

エレン「はっきりしねえのは、お互い様だと思ってたんだけどな、俺は」

エレン「俺はその覚悟がねえんなら、やめとけって言ってるんだよ」

エレン「そもそもおかしい話だろ。ミカサ、お前、自分の意思じゃなくて、何で俺の意思に合わせようとする」

エレン「俺はずっと待ってるんだけどな」





エレンは何を言いたいのだろう。

まるで、ミカサの方から告白すれば、受け入れると言っているようにも聞こえる。

でももし、それが間違いだったとしたら……。

ミカサ(嫌だ…怖い……エレンと離れるのは怖い……)

もしも絆が壊れてしまったらと思ったら、怖い。

ミカサにとってそれだけ、エレンは大事な人なのだ。

ミカサ「私は……エレンの家族……」

それが心の中にあるから安心出来た。だけど……

ミーナ「だーかーらーそうじゃないでしょ? ミカサ! ミカサは、エレンの事をちゃんと、男の人として好きなんでしょう?」

ミカサ「………両方」

ハンナ「それはないから! 異性としての好きと、家族愛は全く別物だから!!」

ミカサ「別物…なの?」

ユミル「普通はそうだな。男女の間のそれと、親子や兄弟愛は別物だ。稀にそういう関係でも恋愛関係になったりするが、一度恋愛感情が芽生えたら、それはもう家族愛とは呼べないだろうな」

ミカサはその時になって初めて、エレンが微妙な顔をした理由が分かった気がした。

ミカサ「あっ………」

答えを間違えたのだ。だから、エレンも。

ミカサ「ああ……」

と、いうことは、本当の気持ちを伝えてもいいのだろうか。

でも、伝えて、それでもし、エレンが拒否したら。

今度こそ立ち直れない。

ミカサが震えているのを見てクリスタが支えた。

クリスタ「ミカサはどうしたい? エレンとどういう関係になりたいの?」

ミカサ「私は……本当は………」

ミカサは絞り出した。溢れ出た気持ちに嘘はつけなかった。

ミカサ「エレンが好き……男の人として……好き……恋人になりたい……」

ミカサの一途な思いの丈を聞いて一同は感動した。

サシャ「おおおお……だとしたら、やることは一つじゃないですか! それをエレンにちゃんと伝えましょう!」

ミカサ「でも…それはダメ…!」

サシャ「何故ですか?」

ユミル「ばーか。そこはエレンの方から言わせないとダメなんだよ」

クリスタ「そういう事よ。うふふふふ(・∀・)」

ミーナ「でないと、女の腕がすたるのよ」

ハンナ「やっぱり、肝心なところは男の人に決めて欲しいものだしね」

アニ「……………」

アニは外野でその様子を見守っていたがノーコメントだった。

ユミル「だったら、やる事は一つだな」

クリスタ「そうね」

ミカサ「え? 私は何をすればいいの?」

ハンナ「一番効果的なのは、アレだと思うよ」

ミーナ「アレね。アレするしかないわ」

ミカサ「アレ…? アレとは一体…」

女子一同「「「押してダメなら引いてみな作戦よ!!」」」

女子の心がひとつになった瞬間だった。

この女性陣はいつも的の外れた答えを導き出すな

エレン「………………………………」

それ以降、数日間、あからさまに避けられた。

エレンは、ミカサから、避けられていた。

いや、散々尻を触った挙句、問題もうやむやにしたから、そうなるのも分かるけど。

だからと言って、ここまで徹底的に避けなくてもいいんじゃねえか?

と、エレンはちょっとだけ傷ついて落ち込んだ。

夜、男子寮に戻った後、ベッドの上で落ち込むエレンにアルミンは言った。

アルミン「……………うん。むしろ、こうならなかった今までの方がおかしかったんだよね」

エレン「そんな……」

アルミン「いくらミカサが優しくても、限界があると思うよ。この状態が嫌なら、諦めて折れた方がいいと思うけど」

エレン「……………………」

エレンはそれでも、首を縦に振らなかった。

エレンが微妙な表情で悩んでいたその時、意外な人物が男子寮に現れた。

アニだ。

アニがエレンを呼んでいるという珍しい光景に、周りの男子もざわめいている。

アニ「エレン、ちょっと時間いいかい? 今」

エレン「え?」

アニ「そんなに時間は取らせない。少し話したい事があるだけど」

エレン「あ、ああ……二人きりで、か。アルミンがいたらまずい話か?」

アニ「そうだね。出来れば、席を外して貰えると助かるけど」

アルミン「……………内密な話かい?」

アニ「そうだね。でも、アルミンも聞きたいなら一緒でもいいけど」

アルミン「もしかして、ミカサに関する事かな」

アニ「ああ。察しの通りだね。私が個人的にエレンに聞きたくてこっちに来た」

アルミン「……………僕は同席しないよ」

アルミンは遠慮した。もし必要なら後でエレンから聞けばいい。

アニ「じゃあ、エレン借りてくね」

そう言って、アニとエレンは男子寮を出て外の空気を吸いに行ったのだった。

>>497
的はずれな答えを出さない女性が一人だけいますよ。
安心して下さい。

アニ「…………………なんか、面倒な事になってるみたいだね」

エレン「………………」

アニ「自業自得だとは思うけど……エレン、今回の件をどう思ってるんだい?」

エレン「…………俺のせいだと思ってるけど」

アニ「そういう事じゃなくて……今、ミカサがエレンを避けてるっていうのは、他の女子の陰謀だから。ミカサ自身は、あんたの事、避けたいとは思ってないよ。これっぽっちも。むしろ、抵抗してるんだけど、うやむやに他の女子がミカサを連れ去ってる。ミカサも間に立たされて、オロオロしてるんだよ。皆が変な風に一致団結しちまったもんだから、引くに引けなくて困ってるのが真相だ」

エレン「えっ…そうだったのか」

アニ「はあ……なんていうか、ああいう時の女子のノリって、私、ちょっと苦手なんだよね。あんたらは、来るべき時がくれば、自然とくっつくつもりなんだろ? 皆、短気過ぎるんだよ。恋愛の長さは人によってそれぞれ違うのに、両想いが判明したらすぐ、くっつけたがる。多少強引な手を使ってでも」

エレン「はははっ……アニが恋愛観を話すなんて意外だなあ」

アニ「………蹴られたい?」

エレン「冗談だよ!!! いや、本当、悪い。なんか、気遣わせちまって、すまん」

エレンは本気で落ち込んだ。

アニにまでフォローされるとは思わなかったのだ。

アニ「全く……そもそも、エレンもエレンだが、ミカサもミカサだよ。あんたの言ってる事、嘘だってことくらい、分かんないのかね。照れくさいだけなんだろ? 本当は」

エレン「…………」

お察しの通りで申し訳ないエレンだった。

アニ「まあ、気持ちは分からなくもないけどね」

アニはため息をつきながら言った。

アニ「私は他の女子達の意見より、多分……エレン寄りの考えだから」

エレン「え?」

アニ「はっきりさせるのが怖いって思う気持ち、分かるよ。曖昧な時間に浸かっていたいっていう……甘えなのかもしれないけれど」

エレン「…………」

アニ「だから私は、無理に関係をはっきりさせなくてもいいと思う。あんた達は今のままで、いいんじゃないの?」

エレン「それが言いたくてわざわざ来てくれたのか?」

アニ「まあね」

アニの意見は、エレンとっては素直に嬉しかった。

アニ「ただ、今の騒ぎはどうにかしないと……これ以上長引くと、あんまり良くないと思ってね。正直、今の他の女子のノリに私はついて行けないし面倒臭いから、あんたの方でどうにかして欲しいんだよ」

エレン「うー……でも、そうなると、やっぱり俺の方から言わないといけなくなるんじゃねえのか?」

アニ「それは知らないよ。私の考える事じゃない。だいたいあんた、あんな風に皆の前で女の尻を触っておいて、それでも許してくれる女なんて、ミカサ以外いないからね。あたしだったら、金蹴りかましてぶん殴って、男のソレを再起不能にしてやるところだよ」

エレン「お、おう……」

アニと将来付き合う男性は大変だなあと思ったエレンだった。

アニ「とにかく、今の問題はミカサよりも……むしろ周りの女子の方だ。女子達が納得出来る材料をエレンが持ってこないと、いつまでもこの状態が続くと思ってた方がいい。あんた、私とサシャ以外の女子全員、敵に回したようなもんだからね」

エレン「え………サシャ、も味方なのか?」

アニ「サシャは、なんか本能で生きてるような奴だから、ミカサに「エレンに自分から告白したらどうですか?」って言ってるんだけどね。多分、私はサシャが一番正解なんだと思うけど、他の女子は「エレンの方から言わせなきゃ気が済まない」っていう空気になってる」

エレン「げげげ………」

なんかもう、事態がおかしな方向に転がってきた気がする。

エレン「なんでそうなるんだよ……」

エレンはじわっと涙目になった。

アニ「女は告白されたい生き物なんだよ。基本的にはね。でも、ミカサの場合はそうじゃないと思うけど」

エレン「それはミカサが男っぽいって言いたいのか?」

アニ「そうじゃないよ。まだ気づかないの? 今、一番弱ってるのは、ミカサなんだよ。それくらい、察しろよ。あんた、本当、女の扱いがなってないね」

エレン「…………ミカサが弱ってる?」

アニ「エレンとまともに会話出来なくて、もう五日経ってる。そろそろ、ミカサも限界なんじゃない?」

エレン「……………」

アニ「あんたが望むなら、手助けくらいはしてやってもいい。私の言いたことが分からないなら、あんたは本当のクズ野郎だよ」

エレン「アニ、頼みがある」

そこでエレンは気づいた。今、一番すべきことを。

エレン「………俺を今から、ミカサに会わせてくれ」

アニは「それで正解」と答えたのだった。

そしてエレンはこっそりアニと一緒に女子寮の方へ向かった。

手筈ではアニが一度、女子の目を盗んで、ミカサを外に連れ出してくれる事になっていた。

エレンは女子寮の窓から見えない死角の位置に隠れて待っている。

アニが無事にミカサを連れてきてくれたようだ。

ミカサ「アニ……話ってなに? 二人きりで話したい事って……」

アニ「ああ、ちょっと会わせたい奴がいてね。いいよ、こっち来な」


こそ……


エレンはバツの悪そうな顔でミカサの前に姿を現した。

ミカサ「エレン……!!!」

即座にミカサは犬のようにエレンに飛びついてしまった。

それを確認してアニは片手をあげた。

アニ「じゃあ後は二人でごゆっくり」

アニはその場をスタスタと去った。

ミカサはぎゅうううううとエレンを捕まえている。

ミカサ「エレン……エレン…うわあああん!!」

エレン「馬鹿っ…泣くなよ! 皆に気づかれる! しーっ! しーっ!」

ミカサ「はっ…そうだった。いけない」

ミカサはキリッと気合を入れて泣き止んだ。

エレン「はあ………なんか久しぶりな気がするぞ。ミカサと抱き合うの」

ミカサ「うん……ごめんなさい。何だか事態がおかしな方向に転がっちゃって、皆が私の行く手を阻んでくるの」

そう言われればよくよく考えたら、ミカサが避けているというよりは、

ミカサを他の女子に回収されているような状態だったなと、エレンは思い直した。

ちょっと自分も冷静じゃなかったな、とエレンは思ってしまった。

エレン「アニからだいたいの事情は聞いた。まあ元々悪いのは俺だけどな。うん……なんかもう、いろいろすまんかった」

ミカサ「ううん。いいの……はあはあ……エレンの匂い久しぶり……」

エレン「(完全に犬化しとる)ミカサ、そんなに嗅ぐなって。きたねえだろ」

ミカサ「ダメ……エレンを補充する。もう枯渇寸前だった……はあはあ」

そんな興奮しているミカサを見ていると、外だというのに変な気分になってきた。

エレン「あのさ……ミカサ………」

ミカサ「ん?」

エレン「……やっぱ、ダメだ。いかんいかん。ここは外だ」

ミカサ「どうしたの?」

エレン「何でもねえ。なーんでもねえ。気にするな」

ミカサ「うん。じゃあ気にしない」

ミカサの反応がいつもと違った。……あれ?

エレン「どうした? ミカサ」

ミカサ「何が?」

エレン「いや、いつもなら、俺がこう言うと、気になって返してくる癖に」

ミカサ「うん。気になるけど、気にしない事にした」

エレン「え?」

ミカサ「だって、今はこれで十分だから」

そう言って、ミカサは満足した顔を見せたのだ。

ミカサ「私はやっぱりエレンが好き。だから、今はこうしていられるだけでいいの」

すりすりすりすりしているミカサを見ていたら、悩んでいるのが馬鹿らしくなった。

ミーナ「あー! ちょっと、ミカサ! なにやってるの?!」

その時、うっかりミーナに逢引の現場を見つかってしまった。

ミカサ「エレンを補充している」

ミーナ「ええええΣ(゚д゚lll) それじゃダメだって、散々言ったのに!」

ミカサ「もういいの。ごめんなさい。あの時、私が言った事は忘れて欲しい」

そう言って、ミカサはミーナに微笑みかけた。

ミカサ「私はやっぱり、こうする事にした。今が一番、幸せ……なので、もう、例の件はどうでもいい」

ミーナ「えええええΣ(゚д゚lll) それでいいの?! ミカサ、本当にいいの?!」

ミカサ「いい! だからもう、今この瞬間を邪魔しないで!!」

がるるるる……と獣みたいに威嚇するミカサにミーナはちょっとがっくりした。

ミーナ「なんなのもう……ミカサって、本当、頭いいのか悪いのか」

クリスタ「あーあー……でも、なんか、結局……」

ユミル「ああ。あいつらはあのまんまが一番いいのかもな」

二人が幸せそうなので、もうこれ以上、外野は何も言わない事にする。

サシャ「あれ? やっぱりミカサ、自分から告白したんですか?」

ハンナ「(;´д`)うーん………もうしてるようなもんだよね。アレじゃ……」

サシャ「じゃあいいじゃないですか。シンプルで。エレンも満更じゃないみたいですよ? ほら」

エレンはニヤニヤしたり、ハッと我に返って不機嫌なふりをしている。

その様子がちょっと憎たらしくてムカつく女子一同だった。アニは、除くけれど。

アニはミカサとエレンを引き合わせた後すぐに、ベッドに戻ってグーグー先に寝る事にしたのだ。

ユミル「鼻の下伸びてんなあーエレンの奴……全く、本当、ずるい男だよ。あいつは」

クリスタ「あれで、まだはっきり言わないって……ああイライラするうう!」

ミーナ「もう…今度、ミカサを泣かしたら、本気でエレン、許さない」

ハンナ「でも、エレンとミカサだからしょうがないのかもね……」

サシャ「そうですよ。今、幸せそうだから、いいと思いますよ、私も」

エレンとミカサはもう、外野は気にしないで二人の話をしていた。

ミカサももう、この間の件の怒りはすっかり忘れているようだ。

ミカサ「エレンは、寂しかった?」

エレン「お、おう…当たり前だろ。俺だって、ミカサと話したかったからな」

ミカサ「ふふ……私も、話したかった。エレンの言った事、私なりに一生懸命考えたから」

エレン「俺が言った事?」

ミカサ「うん。おかげで私は自分の本当の気持ちに気づいたの。今は言えないけど、いつかは、言うから。待ってて欲しい」

エレン「…………自分の本当の気持ちに気づいたのか?」

ミカサ「うん。でも……今は言えない。その時じゃないから」

エレン「ふーん。でも、気づいたんだよな?」

ミカサ「うん…………エレン?」

エレン「だったら、言うよ。今、ここで」

そこで、エレンは皆が見ているのにも関わらず、ミカサと唇を重ねた。







クリスタ「えっ……」

ユミル「おおっ?! (ガタッ)」

ミーナ「へ……」

ハンナ「嘘…」

サシャ「あらー…」

その他女子1「まじで?」

その他女子2「今、見た?」

その他女子3「見た見た見た!」





えええええええええ?!




と、一斉に女子は大騒ぎだった。



アニ(うるさい……)

早く寝かせてくれと思っているのはアニだけだった。

エレン「お前らも、これで満足したか? もう、ミカサの邪魔すんなよ」

そんな風に言い捨てて、さっさと男子寮に帰っていくエレンを、

見つめながら、ミカサは呟いた。




ミカサ「………今のは」




今、確かに聞こえた。

ミカサにだけにしか聞こえない声で。エレンの本心が。

本当に小さな声だったけれど。





エレン『その言葉を、ずっと待ってた。明日から、覚悟しとけよ』





と、いうエレンの声を。




ミカサは立てなかった。腰が抜けて何も出来なかった。

そしてとりあえず、両頬を叩く。夢でない事を確認する。





ミカサ「これって、夢じゃない……よね?」





ミカサの呟きに、覗いていた女子達は一緒に無言で頷いてみせた。直後、

ミカサ「うう~~~ん………(バタン)」

ミカサは興奮しすぎてそのまま昇天してしまったのだった……。





次の日から、どんな二人の関係がどうなったかは、

……………続きは夢の中で。





(エレン「何だ……夢か」 おしまい☆)

温泉の話より長くなった…か? あんまり変わらないか?
現代パートでアニが全く出てこなかったので、
せめて進撃パートで出番出してあげたくて、
最後の方にちょっと出番増えました。
私の中のアニのイメージ像があんな感じ。
アニが出てきたせいで、エレアニ期待した人がもしいたらすんません。

エロパート、思ったより入れられなかったけど、
それ以外の要素も書いてて十分楽しかったので良かったです。

エレミカでエロの新作という事で、リクエストを受けて、
「どうしても、エレミカで電車でエロス書きたい」発作が起きて、
この物語書き始めた。後悔はしていない(`・ω・´)キリッ
電車エロスパート、もうちょっと長く書いても良かったけど、
皆の選択肢が意外とサクサク進んだのでああなった。ごめんね。

ではでは、とりあえず、ここで終わります。
おまけは今のところ考えてないけど、どこかおまけ的部分、
読みたい箇所あったら書きますよ。何かある?
何もなければこのままお仕舞いにします~。

おつおつ
今回も面白かった


正直一番読みたいのはミカエレの後日談だがそんな感じでもないので現パロの方の二人のその後が見たいかね

すごくよかった!終わるのさみしいぜ…
現代えれみかもみたいがエレミカのいちゃいちゃもみたい…

>>507
ありがとう! 前回の温泉の時も読んでくれた方ですね!
いつもありがとうございます!

>>508
書き終わる時は達成感もありますが、寂しさもありますね。
そういう風に言ってもらえるエレミカを書けて私も幸せです。

現パロの後日談、やっぱり後で書きましょうかね。
江蓮と親父の二人、まだちゃんと解決してないし。
今後について話し合う二人の場面は書こうと思います。

エレミカの方は、多分、書いてもあまりいつもと変わらない日常風景?です。
それでもいいなら、後で書きたいと思います。

両方共、ちょっと待っててね。

(おまけその①江蓮三笠編後日談)


江蓮「父さん……今日は帰りが早かったね」

ある日の日曜日の夜、いつもより早く帰ってきた父親を江蓮はリビングで迎えた。

具理者「ああ。今日はいつもより患者さんが少なかったからね」

江蓮「そっか……なあ、父さん。今日、話したい事があるんだけど、時間ある?」

具理者「ん? うん。そうだな。いいよ」

具理者は江蓮の横に座った。

この間の件に関する事だろうと予測して、心づもりをする。

江蓮は「出来れば母さんと三笠も同席して話したいんだけど」と言った。

具理者「………三笠にも、伝えたのかい?」

江蓮「当然だろ。あいつにも知る権利はある」

具理者「そうか……そうだな。そういう時が来てしまったんだな」

具理者は何処か遠い目になってそう言った。

具理者「母さんはまだ買い物に出ている。三笠は部屋にいるのかな?」

江蓮「ああ」

具理者「では母さんが帰ってきたら、リビングに集まろう。久々に家族会議をしないといけないな」

そう言って、具理者は台所に行って高級な酒を用意した。

江蓮「酒飲んで話すような事じゃないよ。父さん……」

具理者「私の分ではない。母さんの分だよ」

そう言って、優しそうな顔をした父親に、江蓮は「ああ、父さんは本当に母さんの事が好きなんだ」と実感した。

そして母親である迦楼羅の帰宅を待って、家族全員がリビングに集まったのだった。

江蓮「父さん……母さん……まず、俺達、報告しないといけない事がある」

江蓮はそう言って、両親の前で頭を深々と下げた。

江蓮「ごめん…とうさん、母さん。俺達、付き合うことにした」

迦楼羅「え?」

具理者「…………」

江蓮「俺、三笠の事が好きなんだ。家族としてではなく、女として。異性として、愛してる。だから……」

迦楼羅「なに、馬鹿なことを言ってるの?! 江蓮…あなたは、三笠の兄なのよ! 血は繋がってなくとも……」

江蓮「その件についても、父さんから事情は聞いた。母さん、俺達、半分だけ血が繋がってるんだろ」

迦楼羅「……!!」

迦楼羅は一度、具理者の方を見た。具理者は頷いた。

迦楼羅「あなた……どうして……?」

具理者「すまない。私のミスだ。君と三笠の父親の写ってる写真を、江蓮に見られてしまったんだ」

迦楼羅「あ、あなた……まさか、あの時の写真をまだ持って……!」

具理者「捨てようと思ったよ。何度も。でも、出来なかった。すまない」

迦楼羅「ああああ………なんて事を……」

迦楼羅はその場で崩れるように泣き出してしまった。

それを慰めながら、具理者は言った。

具理者「江蓮、本気なんだな?」

江蓮「ああ。本気だ。俺達、血の繋がってる事実を知る前から、お互いに惹かれあってた。両思いだっていうのが分かったのは、血が繋がってる事を知った後だったけど、それでも、気持ちは変わらなかった。だから、もう……俺達は自分の気持ちに嘘はつかないことにしたんだ」

具理者「そのせいで、三笠に負担がかかる事も承知の上で言ってるんだな?」

三笠「はい」

そこで、江蓮の代わりに三笠が答えた。

三笠「負担は承知の上。それでも私も、江蓮が好き………なので」

具理者「………江蓮、三笠、二人共まだ若い。中学生だ。そういう時期は、一番近い人にそういう感情を持つ事も珍しくない。将来、気持ちが変わる可能性だってある。それでも、付き合うと言うんだね?」

江蓮「…………ごめんなさい」

江蓮には謝罪する事しか出来なかった。

江蓮「父さん、母さん、ごめんなさい。でも俺は、三笠と一緒に生きていきたい。三笠無しじゃ、生きていけない。それくらい、好きなんだ」

三笠「私も……」

具理者「…………」

具理者は一度、両目を閉じた。

具理者「二人がそういうつもりなら、一緒に暮らしていくことはもう出来ないね。江蓮、その覚悟はあるか?」

江蓮「……どういう意味だよ」

具理者「近親者同士でつきあってるなんて、世間にばれたら、母さんが傷つくし、私だって、医者としての立場もなくなる。私達は家族として一緒に生きていけなくなるという事だよ」

江蓮「………家を出てけって言ってるのか?」

親子の縁を切られる覚悟はしていたが、実際そうなると、やはり重くのしかかった。

具理者「そうだ。江蓮。今のお前に、三笠を抱えて二人だけで生きていく覚悟はあるのかい?」

江蓮「……………」

中学生を雇ってくれる場所なんて、この世の中、そうそうない。

芸能人ならともかく、普通の子供が金を稼ぐとしたら、相当の苦労を伴う。

現実的に考えて、それは無理だと思った。

江蓮「無理だ。今の俺には、三笠を養う事は勿論、自分の食い扶持を稼ぐ事すら出来ねえ」

具理者「………良く分かってるね。もしそこで「出来る」なんて意地を張るようだったら、私は本当に親子の縁を切るつもりだったよ」

具理者は努めて冷静に言った。

具理者「今、二人に必要なのは自立する為に必要な知識。そして体づくりだ。学生のうちに出来る限り、体を鍛えて、そして将来、社会の中で生きていける知識を身につけること。それは学校の勉強だけじゃない。人づきあいや、友人関係。人間関係を築くための方法を学ぶということだ」

江蓮「…………」

三笠「…………」

具理者「勿論、恋愛だって必要だ。恋愛をする事で人は大きく成長するからね。でも、恋愛は危険な部分もある。それに溺れて、他の事が疎かになってしまっては、本末転倒だ。分かるな?」

江蓮「それは……そうだけど。じゃあやっぱり、父さんは反対するのか?」

具理者「親の立場としては、しないわけにはいかないんだ。江蓮、世の中はそんなに甘くはないんだよ」

江蓮「…………」

具理者「でもひとつ安心したよ。江蓮、君はちゃんと現実を見る事が出来る子だ。夢に溺れて無謀な選択はしなかった」

江蓮「だって、それは……」

具理者「そこは江蓮、君のいいところだ。だからこそ、本当は分かっているだろう? 今、三笠とつきあう事は、現実的には出来ないってことは」

江蓮「……………」

具理者「私は、少し時間が必要だと思うんだ」

具理者は江蓮と三笠を同時に見て言った。

具理者「今、二人はお互いにお互いを好き合っている事が分かったばかりだから、強烈に惹かれあって、他の事が見えにくくなっている。それは恋愛すれば誰でも経験する事なんだ。通過点と言ってもいい。でも、これも時間が過ぎていくと、気持ちが薄れてしまう事もあるんだよ」

江蓮「そんなの…ありえねえよ」

具理者「皆、最初はそう言うんだよ。勿論、全部が全部そうとは言い切れない。何年経っても、いつまでも愛し合うカップルも世の中には沢山いる。だけど、それと同じくらい、愛が冷めて別れるカップルもいるんだよ」

三笠「…………」

想像すると涙が出てきてしまう三笠だった。

具理者「恋愛は、ふとした事が切っ掛けで壊れたりする事もある。だから大事にしないとダメなんだ。二人が今より大きくなって、それでもお互いが好きだと思えるのなら……その時はもう、私は反対しないよ」

迦楼羅「あなた!」

迦楼羅は青ざめた。涙を堪えきれずに。

迦楼羅「だめよ! 絶対、ダメ!! この子達には、この子達の人生がある! それをこんな事で、ふいにしては……!」

江蓮「母さん、俺は人生をダメになんかしない」

そう、江蓮は言い切った。

江蓮「自分の人生は自分で責任を持つ。だから……」

迦楼羅「あんたはまだ子供だから、そう思うだけよ!! 冷静になりなさい!! 江蓮!!」

江蓮「…………そうだよ。俺はまだ、子供だよ」

江蓮はそこで反論しなかった。

江蓮「子供だから、出来ることに制限があるのも分かってる。出来る範囲内でしか、自由がない事も分かってる。でも、俺だっていつまでもずっと、子供のままじゃない。時間さえ経てば、いつかは大人になるんだ。そうなった時、自分の人生に後悔するような選択だけはしたくねえ。だから三笠の事は、俺は諦めねえ……たとえ何年かかっても」

迦楼羅「江蓮……」

江蓮「俺は、母さんが俺を産んでくれて良かったと思ってる。下手すら、俺、もしかしたらこの世に産まれてなかったかもしれないんだろ? 母さんが、産むって選択してくれたから、俺はここにいるんだろ? 母さんだって、後悔したくなかったんだろ?」

迦楼羅「……………」

迦楼羅はそれ以上、何も言えなくなってしまった。

江蓮「母さんには本当に申し訳ないって思ってる。けど、人を好きになるって気持ちが止められない事は、父さんも母さんも、理解してくれるって、思ってたんだけど」

具理者「ああ。そういう意味では私達は大先輩だよ、江蓮」

江蓮「だったら……」

具理者「でも、大先輩だからこそ、分かる事もある。人の気持ちは、変わる事もあるって事を私達は知っている」

具理者はその写真をもう一度見せた。

残酷な記録だが、三笠の父親と、迦楼羅の写真だ。

具理者「私は三笠の父親の友人だった。そして彼を通じて、私は迦楼羅と知り合った。だがあの当時は既に、迦楼羅は三笠の父親である彼と婚約同然の関係だった」

江蓮「…………」

具理者「私は自分の気持ちを胸に封印した。二人を祝福しようと思っていたんだ。そんな時だ。結婚直前になって、あいつは婚約破棄をすると言い出した。新しく別の女を好きになってしまったと、私に言ってきたんだ。私は目の前が真っ暗になったよ」

三笠「…………」

具理者「もう、あの当時は本当に修羅場だった。迦楼羅はその当時、既に妊娠していたし、何より向こうも妊娠していた。私は三笠の父親であるあいつを……ぶん殴ってやったよ。これからどうするつもりなんだって。そしたらあいつは、三笠の母親の方を選ぶと言ってきた。結局、迦楼羅はあいつに捨てられたんだ」

壮絶な過去に、江蓮と三笠は何も言えなかった。

具理者「私は男としてあいつを許せなかった。しかし迦楼羅は子供を堕ろすという選択肢は選ばなかった。医者の立場から言わせてもらえば、迦楼羅の腹の状態から堕胎するには、かなり危険な状態だった。遅すぎたんだ。何もかも。だから、迦楼羅は江蓮、君を産む決意をした。初めは一人で育てる覚悟だった。だけど私はそんな彼女を放ってはおけなかった。3年だ。彼女の心を開かせるには、それだけの年月がかかったんだ」

江蓮「母さん……」

迦楼羅はもう、具理者を止めずにずっと話を聞いている。

迦楼羅「ええ。事実よ。全て。ごめんなさい。江蓮。今まで黙っていて…」

江蓮は首を横に振った。

江蓮「大変だったんだな…父さんも母さんも」

具理者「ああ。そうだな。私達は、それから暫くは三笠の家とは絶縁状態だった。しかし、ある日偶然、ある場所で再会してしまった。その時、小さかった江蓮、君が、三笠の家族の方にも懐いてしまってね。特に…父親である彼に」

江蓮「……全然覚えてねえ」

具理者「まだ小さかったからね。江蓮も、三笠も。それ以来、私達は少しずつ話し合うようになって、お互いの事を水に流そうという事になった。何より江蓮、君の本当の父親は、三笠の父親だ。あいつも江蓮の事を少しは気にかけていたらしい。私としてはあまり面白くはなかったが、それでもやはり、江蓮は三笠と会うとすごく嬉しそうにしていたしね。複雑だったが、私も渋々それを見守るしかなかったんだよ」

三笠「………」

具理者「しかし悲劇はまだ終わらなかった。彼はその時、何かの事件に巻き込まれている様子だった。守秘義務があるから、当然私は詳しい話は聞かなかったが、そのせいでいろいろ危ない目に遭っていたらしい。そして、あの強盗事件が起きた」

三笠「…………」

具理者「真相は闇の中だが、そのせいで二人は亡くなってしまった。残されたのは三笠だけだったが……」

三笠「おじさん……」

三笠はその時、涙を浮かべていた。

三笠「おじさんから見たら、私は……憎い存在じゃないの? おばさんも……私の両親のこと、憎んでないの?」

迦楼羅「…………三笠には、罪はないわ」

迦楼羅はそう言って微笑んだ。

迦楼羅「産まれてくる子には何も分からない事だもの。責任は全てそれを行った大人にあるの。三笠は何も悪くないのよ?」

三笠「でも……でも……」

迦楼羅「悪いとすれば、それは当時の私達が一番、悪いのよ」

迦楼羅は若い頃の自分を思い出していた。

迦楼羅「認めたくなかったのよね。現実を。彼の気持ちが離れてしまった事を当時はなかなか認められなかったの。彼があなたのお母さんを選んだのも、ちゃんと理由があるんだと思うわ」

三笠「でも……」

迦楼羅「三笠、人生にはそういう事もあるってことを、知りなさい。愛は永遠ではないし、変化する事もあるの。今、江蓮が三笠を愛している状態も、ずっと続くとは限らない。世界は、残酷なのだから」

三笠「……………」

江蓮「脅すような事、言うなよ、母さん!!」

迦楼羅「あんたは黙ってなさい。これは女同士の話なの」

江蓮「うっ……」

江蓮は押し黙ってしまった。

迦楼羅「三笠。あなたは優しい子だから、江蓮についていって、傷ついても我慢しそうで怖いわ。江蓮に愛想が尽きたらさっさと捨てて、別の優しい男に乗り換えなさい。いいわね?」

江蓮「ちょっと母さん! 息子をそこまでコケにしなくても……」

迦楼羅「何言ってるの。三笠は美人なんだから、あんたなんかより、よっぽどいい男を捕まえられるに決まってるでしょうが」

江蓮「ううう……(言い返せない)」

三笠「でも、江蓮よりいい男なんて、いない……」

しかし三笠は困ったように言った。

三笠「江蓮は世界で一番、格好いいので……」

迦楼羅「あらあら。欲目って怖いわ……まるで昔の自分を見ているみたい」

具理者「今はそういう時期だからね。これが3年も経つと、変わるんだよ。色褪せて見えるんだよ。三笠」

江蓮「父さんまで! ちくしょう……そんなに言うなら、3年後、見てろよ!!」

江蓮はその場で立ち上がった。

江蓮「3年後って言ったら、丁度高校一位年生だな。その時に俺は、今よりも三笠を大事に出来るようにいい男になってやるから!!」

具理者「……具体的には?」

江蓮「えっと……そうだ! まずは成績を今よりあげてやる! そして、バスケ部も全国制覇してやる!!」

具理者「ふふ…いい心がけだ。目標を掲げたからには、達成して見せるんだぞ、江蓮」

江蓮「当然だ! 今以上に俺は頑張るからな!!」

具理者「そういう事なら、江蓮。江蓮は三笠より先に家を出て、修行に出なさい」

江蓮「え……? どこで?」

具理者「そうだな……まずは学校の寮にお世話になりなさい。他人と一緒に暮らす事がどういう事なのか、江蓮は学んでくる必要がある」

江蓮「どっちみち、俺はもう三笠とは一緒に暮らせないんだな」

具理者「そうだね。高校に進学する頃になったら、またその先を話し合おうか、江蓮」

江蓮「ああ、分かったよ。父さん」

そして江蓮は深々と頭を下げた。三笠も一緒に。

江蓮「父さん、母さん、ありがとう……」

と、言って。

それを見て具理者も迦楼羅も複雑な心境で答えた。

具理者「私達はまだ、認めた訳じゃないよ。まずは様子見だ。二人の気持ちが本物かどうか、試させて貰うからね」

江蓮「はい…」

三笠「はい…」

具理者「よし、今日はもう、出前でもとろう。母さん。ピザと寿司をお願いするよ」

迦楼羅「はいはい」

そう言って、電話に向かう迦楼羅だった。

江蓮は夕飯を食べた後、早速、荷造りを始めた。

学校の寮に入るなら、私物を整理しなければならない。

自宅から学校までの距離が近くても、寮を利用している生徒は少なくない。

江蓮の通う中学校は希望者は誰でも寮に入れるシステムになっている。

何故なら、進学にも力を入れているので、通学時間も勉強に充てたいと思う生徒も少なくないからだ。

江蓮は家を出る事に対して不安はなかった。

寮生活をしているのは、結構いるからだ。

知っている奴だけでも、雷名、部瑠都瑠都、亜似の三人は確か寮で暮らしていた筈。

きっと、寮生活の中でも新しい友達が出来たりもするだろう。

そんな江蓮の様子を少し寂しげに見つめる視線があった。三笠である。

江蓮「ん? どうした三笠?」

三笠「もう荷造りするの? 手続きしても、すぐに入れる訳じゃないのに」

江蓮「準備しておく事に越したことないだろ?」

三笠「……多分、一週間くらいかかるよね?」

江蓮「いや、そんなにはかからんと思うぜ? 雷名は手続きして3日で入れたって言ってたし」

三笠「そう…じゃあ江蓮と一緒に暮らせるのもあと3日なのね」

江蓮「そうだな……あ、三笠。俺がいない間、俺の部屋、時々でいいから掃除しててくれよ」

三笠「それは言われなくとも、するつもりだった」

三笠は既に寂しそうにしている。

三笠「土日は帰ってきてね。夜は江蓮と一緒にご飯食べたい」

江蓮「んー…勿論、出来るだけそうするけどさ。なんだよ……もう既に涙目じゃねえか」

三笠「だって……帰ってきたかと思ったら、また離れ離れ…」

江蓮「今度は学校で毎日会えるだろ。もう、引き篭ったりなんかしねーから」

三笠「うん……」

三笠は江蓮の部屋に入った。

敷きっぱなしの布団の上にちょこんと座る。

江蓮「……………」

ムラムラしてきた。つい、うっかり。

江蓮「三笠、用がないなら部屋に戻れ。父さん母さん、下で二人共まだ起きてる」

三笠「いや……ここにいる」

江蓮「一体何しに来たんだよ。俺、今、忙しいんだけど?」

三笠「知ってる。でも、嫌」

江蓮「もう我儘な奴だな……本当に何しに来たんだよ」

三笠「江蓮とお話したくてきた」

江蓮「お話? なんの話だよ」

三笠「…………………亜似、いるから」

江蓮「へ?」

三笠「亜似とは浮気しないでね」

江蓮「Σ(゚д゚lll)何だよ突然! 意味分からん事言うなよ!!」

三笠「だって、亜似も寮暮らし…」

江蓮「三笠、あのな、男子と女子は、隣同士だけど、別々の宿舎だからな。そんなに接点ないと思うぞ? よけいな心配するなよ」

三笠「でも……(じーっ)」

江蓮「疑り深い奴だなあもう。だいたい俺、そこまで亜似と仲良くもねえぞ? 疑うなら、沙謝とか栗素多や由美瑠達の方がよほど……」

三笠「へー……そっちの方と浮気する気なんだ」

江蓮「しねえから!!!! なんかさっきから刺のあるいい方するなあ……さっきの話のせいか?」

三笠は先程のヘビーな話にすっかり落ち込んでいるらしい。

大人の事情という奴を垣間見て、不安になっているようだ。

江蓮が、浮気しやしないかと。

三笠「私の父は、浮気した。という事は、江蓮にもその遺伝子は流れてる」

江蓮「それはお互い様だからいいっこ無し! だいたい、なんで両思いなったばかりなのに浮気を疑われなきゃならん」

三笠「おばさんが、世界は残酷だと言ったから……」

江蓮「母さんもよけいな事いいやがって……」

江蓮は片付ける手を止めて言ってやった。

江蓮「だいたいそれを言うなら俺の方が心配なんだぞ」

三笠「どうして?」

江蓮「中学入ってから、三笠、何回告白されたか覚えてねえのか?」

三笠「でも、全員5秒くらいで全部断ってる」

江蓮「雀だけは10秒かかっただろ?」

三笠「……そうだったかしら? 覚えてない」

江蓮はちょっとだけ、ざまあと思った。

江蓮「……とーにーかーく、俺の方は、三笠以外の女に告白された数は、片手で数えて足りる程しかねえ……というか、今のところ一人しかいねえの。三笠は小学校から合わせたら、50人くらい告白されてるだろうが。どう考えても、三笠の方が危険だろ? 俺の方が浮気を疑いたくなるわ」

三笠「そんなあ……酷い。あんなに即答で断ってるのに疑うの?」

江蓮「疑われたくないなら、俺の方も疑わないでくれよ。お互い、浮気はしない。約束な」

指きりげんまんのポーズを取る江蓮だった。

今日はここまでーまたねノシ

三笠「分かった」

江蓮「指きりげんまーん」

三笠「嘘付いたら……」

そこで、三笠は言った。

三笠「嘘付いたら、江蓮のパソコンを私にみーせる」

江蓮「?!」

三笠「指切った♪」

江蓮「おい、ちょっとまて! それじゃ俺だけ損してる!!」

三笠「じゃあ私が嘘付いたら、私のパソコンもみーせる♪」

江蓮「お、おう……そういや、三笠もパソコン買ったのか? いつの間に」

三笠「ふふ……ノートパソコンを貰った」

江蓮「何だよ……買いに行くなら言えよなー俺も一緒に見に行ったのに」

三笠「ふふ……私のは、おじさんのお古。おじさんが新しいの買ったから、古いのを貰ったの」

江蓮「あ、なるほど……そういう事か」

三笠「これで、私もパソコンで遊べる。江蓮、いろいろ教えてね」

江蓮「俺もそんなに詳しいわけじゃねえからな。有民の方が詳しいぞ」

三笠「じゃあ三人で遊べるね。チャットとか、してみたい」

江蓮「そうだな。いずれは出来るようにしような」

三笠「…………そう言えば、有民が江蓮のパソコン見た時に言ってたけれど」

江蓮(ギクッ)

三笠「江蓮はとっても、エッチだと聞いた。どれくらいエッチなの?」

江蓮「ど、どれくらいって、そりゃこの間、教えただろ? あれくらいエッチなんだよ」

三笠「そう……でも、あれだけじゃない気がするのだけど」

江蓮「え? ど、どどどどういう意味だよ」

三笠「例えば……もっとエッチな格好とか……」

江蓮「そ、そりゃあ……エッチな格好は好きだが?」

ドキドキ。

まずい。あんまりこういう話題を続けると、その気になってしまう。

下には両親がいるのに。起きてるのに。

下には両親いるのに、やっちまうか?
いやいや、いかんて。それはダメだって。

江蓮さんの葛藤を、どうするか決めて下さい。

1.下に両親起きてるから、三笠をなだめて部屋に帰らせる
2.三笠に別のコスプレさせてそれを眺めるだけにする
3.男の子なので我慢出来ません。三笠とヤっちゃう。

意見が多かったものにします。
3になった場合、三笠は一切声出せないから。
それだけは先に言っておきます。

皆、自分に正直wwwww
じゃあ3ルートで書いていきます。
ID変わってるっぽいけど、>>1本人なので気にしないでね。

3.男の子なので我慢出来ません。三笠とヤっちゃう。ルート。





江蓮(でもなあ…寮に入ったら、きっと今より三笠とイチャイチャ出来なくなるよな)

加えて学校では今まで通り、の態度を取らなければならない。

交際している事が世間にバレたら、両親に迷惑がかかってしまう。

そうなったら、最悪、中学校をバラバラに転校させられてしまうかもしれない。

いや、もっと酷い時は今度こそ、親子の縁を切られてしまうかもしれない。

問題はまだ、山積みなのだ。だから……

江蓮(今のうちに、ヤっちゃうか?)

両親がもし、2階にあがってきたらどうする?

江蓮は一応、麩の反対側につっかえ棒を差し込んで、鍵の代わりにした。

三笠「江蓮? 何してるの?」

江蓮「部屋の鍵の代わり。これで、こっち側からは開けられない。反対側からは開けられるけど、これで開けないで欲しいっていう意思は伝わるだろ」

三笠「え……? 何で鍵をかけるの?」

江蓮「今から、ちょっとエッチな事するから」

三笠「え? (ドキッ)」

江蓮「もう部屋には帰さないからな。俺の部屋に来るから悪いんだぞ、三笠」

三笠「うん……私は、悪い子」

クスっと笑う小悪魔三笠に江蓮の下半身は即座にスタンバイOKになった。

実は三笠もそういう展開を望んで江蓮の部屋に来たのだ。

江蓮の両目は細くなった。

江蓮「三笠、タオルを噛んでくれないか?」

三笠「タオルを? あ、声を聞かれるとまずいから?」

江蓮「そうそう。タオルあったかなー…」

三笠「はい、これ…(スッ)」

江蓮「……持ってきてたんか。何だよ。準備がいいな。そのつもりでこっちに来たんか?」

三笠「(ゝω・)テヘペロ」

江蓮「……全く、本当三笠って」

可愛いよな。

と思いながら、そのタオルを受け取って、三笠の口を塞ぐように縛ってやった。

三笠「……………」

江蓮「ごめんな。でも、こうしないと、ヤレないし」

三笠(フルフル)

タオルで口を塞がれているのに三笠の表情は明るかった。

頬が赤く染まっている。期待で満ちた表情だ。

そんな三笠を見ていたら、江蓮の方も我慢出来なくなった。

敷きっぱなしの布団の上で、江蓮は三笠をゆっくり押し倒した……。

しかし、その時……。


トントントン………


2階に上がってくる誰かの足音が聞こえた。

江蓮(ドキッ)

三笠(ドキッ)

トントントン…………

しかしその足音が、部屋に入ってくる事はなかった。

今の感じは、多分、親父の方だ。

部屋に戻って何かを取りにいった。そんな感じの足音だった。

江蓮(もう、こないよな……)

心臓がバクバクいっている。

やはり両親がいるのにヤってしまうというのは、スリルがある。

だからよけいに興奮してしまう。

江蓮は足音が消えたのを確認してから、三笠を服の上から触った。

乳首は既に立ち上がっていた。

江蓮「お? もう興奮してんのか?」

三笠(こくり)

江蓮「さっきの、びびったもんな。俺も正直、興奮してる」

二重の意味で興奮する。バレたら、ヤバイけど、そのせいでよけいに嵌る。

三笠は声を出せないまま、身を捩り涙目になっていた。

江蓮「気持ちいいか?」

三笠(こくこく)

三笠の声が聞けないのだけが残念だけど、これはこれで興奮する。

江蓮は三笠の服の上から乳首を触って、服の擦れる音にも神経を使いながら、極力音を立てないように、三笠に触れた。

それは三笠も分かっているので、出来るだけ抵抗しない。

痙攣を堪えるように快楽を受け入れている。

その様が、異常にエロかった。

江蓮(いかん、鼻血が出そうだ……)

かあっと興奮が一気に高ぶったせいで、鼻の気配に気づいた江蓮は、ティッシュを用意した。

鼻に先に詰め込んでおく。

三笠「?」

江蓮「鼻血出たら、三笠を汚すだろ? だから先に予防しとく」

三笠「………(こくこく)」

三笠は成程と思った。

江蓮「三笠……もう少し触るからな」

江蓮はそう言って、優しく優しく、三笠の髪に触れて、首筋に唇を寄せた。

汗の匂いが少し分かりにくいけど、その分、舐めて汗の味を味わう。

美味い。しょっぱいけど、美味いと感じる。

三笠「…………(江蓮の舌が……ああ……)」

今日の江蓮は特に舌を使っているようだ。

顎の下や耳の傍を何度も舌を這わせて、三笠の反応を楽しんでいるように見える。

江蓮「三笠……三笠……」

耳元に何度も聞こえる江蓮の声に打ち震える。

この声をずっと聞いていたいとさえ思った。

江蓮は三笠の服をゆっくり剥ぎ取っていった。

ブラジャーは、今日は薄い桃色だった。

江蓮は小さくガッツポーズをする。桃色もOKである。

というか、正直に言えば、よほど変な下着じゃない限り、江蓮はだいたいOKである。

ブラジャーとパンツだけの格好にした後に、江蓮は三笠の体に舌を這わせた。

三笠は、ピチピチと魚のように跳ねる。くすぐったい。

三笠「…………(舐められてる…)」

江蓮の舌先が体をなぞる度に、三笠の体が捩れた。

舌と指先の動きが怪しく這い回る。江蓮の右手は、パンツへ向かった。

当然、下着は脱がさないまま上から擦り続ける。

三笠「……! (そこ……やっぱり気持ちいい…)」

じわっと、滲み出るその愛液を吸収するまで、江蓮は何度もそこを責める。

下着がそれのせいで汚れてしまう様は何度見ても興奮する。

江蓮がじっとそこを眺めている。

そして顔をそこに近づけて下着の上からキスをする。

三笠(あっ……江蓮の息がかかって…!)

ビクン……

もう、早くして欲しい。

今日は何だか、すごく焦らされている気がする。

口を開けられたら、早くしてって言えるのに、言えない。

おねだりも出来なくて、三笠はついつい股を閉じてしまう。

すると、どうなるか。

当然、太ももの間に江蓮の顔が挟まった。

江蓮「うおっ…びっくりした…」

まあ、この姿勢も悪くないけど、これじゃ続きが出来ない。

江蓮「三笠、足開いてくれ」

三笠(フルフル)

江蓮「ん? どうした? どうして欲しい」

三笠(じーっ)

江蓮「ああ……もう、早くして欲しいって? ぷっ……三笠はせっかちだなあ」

三笠(じーっ)

江蓮「じゃあ、下着脱がすぞ? 足をちょっとあげるからな」

パンツを脱がして、またそこを正面から眺める。

江蓮(写真に撮りてえ……)

と、言ったら怒られそうなので、言わないが。

江蓮(ではでは……)

江蓮はがっつり、また舌を使って、そこを責め立てた。

三笠「んーんん!!」

しかし、その直後、三笠のバウンドが激しくなった。

江蓮「わわっ……三笠、暴れ過ぎだって!」

三笠(だって…)

江蓮「んー……ちょっとここは刺激が強すぎるか。よし、じゃあ……今日はここ以外の場所だけ触っていくか」

三笠(それはそれで嫌だ…)

今日はここまでーノシ

会えなくなるんだから写真とればいいのにとか思ったりなんかしてないんだからね!

>>536
いや、学校では普通に会えますよwww
土日にしか家で会えないだけで。
ちょっと距離を置いて様子を見るのが、具理者さんの目的なので。
全く会えないとか、そういうのではないです。

江蓮は嫌われたくないから自重しているだけですよwwww
ただ、三笠は多分、撮られても怒らないとは思います(え

江蓮は三笠の不満げな表情に気づいていたが、あえて意地悪をした。

だって仕方ない。そこを責めると、三笠が激しく暴れるからだ。

江蓮は指を体全体に滑らせてひたすら三笠を焦らし続けた。

三笠(ああああっ……なんか……前より、気持ちいい……)

最初のエッチの時より、江蓮のテクニックがあがっている気がする。

恐らく江蓮の方も二回目ということで、前回より余裕が出てきたのだろう。

加えて両親に秘密のエッチしているということで、興奮が二倍になっている。

三笠を暴れさせず、かつ三笠を気持ちよくしなければならないので、自然と動きは丁寧に優しくなっていた。

三笠(ああっ……触って欲しい…あそこを…早くっ…!)

しかし肝心な場所には触れてくれない。

種火のような熱がじわじわと続いている。

一気に燃え尽きたい気持ちを、無視される。

江蓮のペースに支配されて、三笠は体を震わせた。

我慢させられている感じに………夢中になる。

三笠(ああん……江蓮……もっと…もっと触って…!)

江蓮はその時、ふと、思いついた。

江蓮「…………………」

ただ、ちょっとそれをやるかどうか迷う。

三笠「?」

江蓮「確か、押し入れにあったような……」

江蓮は一度三笠から離れて押し入れの中から、絵の具道具を取り出した。

小学生の頃に使っていた水彩絵具の筆。

中学校でも美術の授業はあるが、週に一回しかないので、道具は全部学校に新しい道具を置いている。

これは小学校の頃の筆だが、触って確認した。乾いていて、問題ない。

ちゃんと保管をしていたので、汚くもない。

江蓮は、その太い筆の先を、三笠の体に沿わせてみた。

三笠(あん…!)

こちょこちょと、筆で擽るように遊んでみる。

その度に、びくんびくんと、三笠の体は面白いように跳ねた。

江蓮「おお……これはなかなかいいな」


こちょこちょ………


三笠(ああん……! やだっ……それ……ああん!!)

乾いた筆の先で5分ほど遊んだだろうか。

その度に三笠は体をくねらせて、弱い快楽に耐えていたが、そろそろ飽きてきたので江蓮は筆を横に置いた。

そして三笠のあそこにそっと触れてみる。

江蓮「うおおお? なんか、前より量が全然違う!」

愛液がどっぷりと溢れ出ていて、手で掬える程の量になっていた。

こんなに大量に液が出てくるとは思わず、思わず一口味見する。

江蓮「ほうほう……なるほど」

何が成程なのか分からないが、江蓮はひとつ学習した。

女の体は焦らして焦らして焦らした方が、愛液が沢山出るってことを。

三笠は意識が朦朧としていた。全身が痺れているような感覚だった。

力がまるで入らない。そんな彼女を抱きしめて、江蓮は囁いた。

江蓮「そろそろ、入れてもいいか?」

三笠はこくりと、頷いた。

江蓮は親に内緒で買ったコンドームの箱の封を切って新しいものを一枚取り出した。

江蓮は前回のゴムよりもっといいものを買った。

少々高い買い物だったが、安物でするより、高いものでヤった方がもっと気持いいのではなかろうかと思ったのだ。

江蓮は装着を完了させて三笠の足を大きく広げさせる。

前回のように一気に中に入れた。しかし今度は前回のような、圧迫感が薄かった。

三笠も全く痛がっていない。

江蓮「あれ? 三笠、痛くねえのか?」

三笠(こくり)

江蓮「……………前回は慣らすのが足りなかったのかな。ごめんな」

三笠(フルフル)

江蓮「回数こなしていけば、三笠が痛くないエッチが出来るようになってくると思うから。俺、頑張るからな」

三笠(ポッ)

江蓮は三笠の奥に進んだ。三笠は顎を反りあげて、その力に耐えた。


グイグイグイ……


三笠(あん……ああっ……声、出せない……)

三笠の口から溢れている涎がタオルに染み込んでいく……。

腰の動きもあまり激しくは出来ない。音が響いたら困るからだ。

江蓮「はあ……はあ……はあ……」

一気に駆け上がりたい気持ちを抑制しながら、江蓮は三笠の腰を揺らした。

ゆっくり、ゆらゆらと、揺られる。ゆりかごのような速度で。

三笠(はあ……もっと…激しくして欲しい…!)

三笠の方も自分から腰を揺らした。中を締め付けて、どんどん、その快楽を追っていく。


ぐちゅ……

ぐちゅ……

音が、卑猥に小さく響くその部屋の中で、江蓮は少しずつ力を加えた。

腰の力を強める。もうそろそろ、いいだろうか。

しかし、その時……


トントントン………


再び誰かが階段を上がってくる音が聞こえた。

江蓮(ま、まずい…!)

今度は先程より肝が冷えた。この姿をもし見られたら一発アウトだ。

江蓮はすぐさま布団を被って自分と三笠の姿を隠した。

最悪、麩を開けられたらこれで誤魔化すしかない。

江蓮は暫く動きを止めて様子を見た。

そして……


トントントン……


足音は去っていった。

江蓮は深く息を吐き出した。危ない危ない。

江蓮(さっきから、何で父さん、階段行ったり来たりしてんだ?)

まさか、感づかれているのだろうか。やはり止めた方が良かったのだろうか。

でも、挿入までしておいて、ここでイカずに止めるなんて出来ない。

多少強引だったが、江蓮は腰の動きを強くした。

もう、一気にいこうと思って。

三笠(ああああっ……くる……もう…無理……!!!)

三笠はその直後、絶頂を迎えてしまった。ぐぐぐっと、締め付ける力が激しくなる。

江蓮(おおおおっ……これはっ……!)

堪えていたものを一気に引き抜かれるような感覚だった。

塞き止めていたものが一気にきて、江蓮も三笠に少し遅れてほぼ同時に絶頂を迎えた。

江蓮「はあ……はああ……あー………」

二回目の方が、ハラハラした。正直、こういうセックスは癖になるとまずいと思う。

もっと酷いスリルを欲しがる自分が生まれてきそうで、江蓮は自分が怖くなった。

三笠のタオルを外してやると、タオルがベトベトだった。

外した直後の、三笠の顔が、すごくエロくて。

江蓮の息子はもう一回、復活した。

江蓮「…………………」

三笠「はあ……はあ……最初のより、気持ちよかった」

江蓮「そ、そうか……それは良かった」

三笠「でも、江蓮、まだ収まってない。一度、イったんでしょう?」

コンドームの先には白い液体が留まっている。

江蓮「………イったけど、すぐ元に戻っちまった」

三笠「……そう」

三笠はそれにそっと触れた。


ビクン………


江蓮「お、おい……」

三笠「口で、してもいい?」

江蓮「えっ……いや、でも……」

三笠「江蓮も、口をタオルで縛れば大丈夫」

江蓮「………今度は俺の番ってわけか」

三笠「タオル、してもいい?」

江蓮は頷いた。そして唾液のついたタオルをそのまま使用する事にする。

三笠はそっとコンドームを外した。

そしてそれを縛ってゴミ箱に入れると、自分の両手をそっとそこに添えた。

江蓮「待ってくれ。一応念の為、布団かぶせていいか?」

三笠「……そうね」

三笠は布団に隠れるようにした。

江蓮は自分で自分の口を縛るようにタオルを後ろで縛った。

そして、両腕で自分の体を支えるような姿勢になる。

江蓮「………! (うお……三笠の口ん中、気持ちいい)」

いきなりがぶっといった三笠の口の中は温かくて、しっとりしていた。

江蓮(うーん、これは……結構きついな)

声が出せないというのは、意外としんどいと思った。

快楽を外に放つ事が出来なくて内側に溜まっていく感覚がある。

江蓮「ん………」

息をうまく吐き出せないから、息苦しい。

そのせいで、体がまた熱くなってきた。

三笠もきっと熱いだろうが、布団を被せておかないと万が一の時が怖い。



ねちょ……

ペロペロ……


先端を舌先でつっつくように舐めている。

ぶるっと、体が震えた。

また、深く喉の奥に入っていく。

あそこがどんどん固くなっていく。

睾丸の裏側に手が添えられた。そのあたりも触られると堪らなくなる。

江蓮(ん……あああっ………)

ぐっと、快楽の波が大きくなった。

ぐわっとくる、大きな波に、一度、やばいと思ったが、

その直前で、三笠の口が離れた。

どうやら、ちょっと疲れたらしい。小休止しているようだ。

三笠「はあ……はあ……はあ……もう一回」

まるで、水泳の息継ぎのようだ。

息を止めて、進んで、また吐き出して、呼吸を挟む。

クロールのリズムに近い形で、三笠は江蓮のそこに奉仕した。

唾液はべちょべちょに散らかっていて、ぬるぬるしている。

そろそろ口を離さないと、三笠にもかかってしまうし、布団も悲惨な事になるだろう。

江蓮は三笠と同じく、足を使って三笠を挟んだ。

三笠「江蓮…?」

それをやめろ、という合図として受け取り、布団から出て顔を上げた三笠だった。

三笠「もういいの? まだイってないのに」

江蓮(こくり)

三笠「出してもいいのに。飲むから」

江蓮(フルフル)

三笠「どうしても、ダメ?」

江蓮(こくり)

三笠「どおおしても、ダメ?」

江蓮(こくこく)

三笠「こんなに、硬いのに」

江蓮(ビクン!)

三笠「あともうちょっとで出るでしょう?」

江蓮(こくり)

三笠「じゃあ、私が口で出してあげる……」

江蓮(フルフルフルフル)

三笠「どうしてそんなに嫌がるの?」

江蓮は布団を顎で示した。

三笠「布団、汚すかもしれないから?」

江蓮(こくり)

三笠「私が全部飲み込んじゃえば問題ない…」

江蓮(フルフルフルフル)

もう面倒臭くなって、江蓮はタオルを外した。

江蓮「もういいって。後は手で出すから。ティッシュとってくれよ」

三笠「むー」

江蓮「飲ませるのはまた今度な」

三笠「なら仕方ない」

三笠は渋々折れて、ティッシュの箱を取った。

江蓮はそれを何枚か取って、自分の陰茎に被せた。

来るべきソレに備えて上下に擦る。

江蓮「……一緒に、手を添えてくれるか?」

三笠「! うん!」

三笠は嬉しそうに右手を添えた。

そして一緒に、絶頂まで導く。


シコシコシコシコ……


江蓮「はあ…はあ……うっ………!!!


ドピュ………!!!


飛び出たそれの匂いが部屋に残る。

イカ臭いその匂いに、三笠は少しだけ酔ったような気分になった。

三笠「はあ………江蓮のイった顔、じっくり見れた」

江蓮「え? ああ、そうか…前回はあんまり余裕なかったもんな」

三笠「うん。とてもセクシーだった。もう一回見たい」

江蓮「えええ? マジか。まあ…出来なくはねえけど」

三笠「じゃあ見せて。江蓮が自分でしてるとこ、観察したいから」

江蓮「そっか……」





そんな感じで、その日の夜は、

江蓮がもう一度だけイって、二人は営みを終えた。

すっかり夜遅くまでイチャイチャしたせいで、眠くなってきた。

二人はそのままの格好で布団の中で眠りについた。

互いの体温を感じながら、幸せな眠りについたのだった…。

(ここからエレミカサイドの方に少し戻ります)





エレンはミカサに避けられていた。今度は、他の女子のせいじゃない。

ミカサ自身が、エレンを避けているという奇妙な事態に、エレンも落ち込んでいた。

アルミンは「あらら…」といった風に困っている。

エレン「……………」

いつもなら朝から一緒に飯を食うのにここ数日、ミカサはサシャを捕まえて二人で食べていた。

エレンはその様子をじーっと睨みつけている。

アルミン「そんなに睨むと、ミカサが戻りづらいから止めなって、エレン」

エレン「だってよ………やっと、やっと、ここまできたっていうのに」

アルミン「僕はむしろこうなるだろうと思ってたよ。前々から」

エレン「くっ………」

アルミン「暫くは様子を見るしかないよ。エレンもそう焦らずに……」

しかしエレンは悔しがっていた。折角、折角、ここまできたっていうのに。

エレン「あいつ、覚悟しろって言ったのに……!」

そう。実はミカサはあれ以来、エレンの顔をまともに見れなくて、照れすぎてエレンと距離を取ってしまうようになったのである。

所謂、意識し過ぎてテンパってる真っ最中なのだ。

今日はここまでノシ
( ´ ▽ ` )ノ

サシャ「ミカサ、エレン達と一緒に食べなくていいんですか?」

ミカサ「……………」

ミカサは罪悪感はあったが、首を縦に振った。

今はエレンと目が合っただけで、もう体中が痺れて何も出来なくなるのだ。

周りの女子もまさかミカサがここまで豹変するとは思わず、互いに見やって困っている。

ハンナ「ミカサ、折角に両思いになったのに勿体無いよ。照れくさいのは分かるけど……」

ミーナ「うーん……しかしミカサがここまで乙女になるとは思わなかった」

ユミル「ああ。今までが今までなだけにな」

クリスタ「そうね。今までは、周りがどう言おうと、エレンにべったりだったのに……」

アニ(まあ、今までは本当の意味で『恋』じゃなかったんだろうね)

アニはその場で何も言わなかったが、なんとなく察していた。

というか、これが正常な状態なのだ。恋をすれば、その相手を意識してうまく会話すら出来なくなる。

今のミカサは本当の意味でエレンを男性として意識しているという証拠だ。

それを考えると、今までエレンがミカサに対して行っていた行動もわかる気がするアニだった。

要は、ミカサがエレンを男性として認めるまでは自分の気持ちを伝えまいと思っていたのだろう。

今まではミカサはエレンに対して異常に過保護だった。

それは逆に言えば、男として認めていないととも言える。エレンはそれが嫌だったのだろう。

だから、ミカサの追求から逃げていたのではないかと推察する。

ミカサは皆より先に食べ終わるとヨロヨロしながら食堂を出て行った。

それをエレンは察知して、席を立ってミカサを追いかける。すると、びくっと反応してミカサは早歩きで女子寮に帰っていった。

ユミル「………本当、いつまで続くんだ? この状態」

ミカサの様子がおかしくなってから既に3日が経っている。

エレンの我慢もそろそろ限界かもしれない。

クリスタ「アルミンと少し相談してみない?」

ハンナ「……そうね。アルミンなら、何かいい手段を思いつくかも」

女子達はまだ食堂に残っていたアルミンを呼んだ。

呼ばれたアルミンは、察して席を移動した。

ユミル「なあアルミンよ。この状態について、どう思う?」

アルミン「うん。予想通りって感じ?」

クリスタ「そうなの? アルミンには予想出来てたの?」

アルミン「僕が何年二人と一緒にいると思ってるの。それくらい分かるよ」

ミーナ「じゃあアレをどうにかする方法もアルミンなら分かるんじゃ……」

アルミン「はあ………いや、どうもしなくていいんじゃない?」

ミーナ「えええっ放置しておくの?」

アルミン「うん。というか、ごめん。ちょっとここでだけ、ニヤニヤさせてもらっていい? ( ̄∀ ̄)」

アルミンは遂に笑いを堪えきれず女子の前で顔を崩した。

どうやらさっきからずっと顔の筋肉を堪えていたらしい。

クリスタ「もうアルミン! 笑ってる場合じゃないよ!」

アルミン「ごめんごめん……でも、だって……ククク……」

ユミル「笑いたくなる気持ちは分からんでもないが、あの状態が続いたら、エレンが爆発しそうだぞ?」

アルミン「ん? エレンが爆発? まあ、そうなったとしても僕は知らないよ」

クリスタ「むーアルミンって意外と薄情なのね」

アルミン「それは心外だなあ。僕はこの上なく二人を応援しているよ。二人がこうなって、一番嬉しいのは多分、僕なんだから」

ずっと待ち望んでいた展開が遂にやってきたのだ。

頬が緩むのくらい大目に見て欲しいと思うアルミンだった。

クリスタ「でも………」

アルミン「大丈夫だって。エレンは元々、ミカサが自分の事を男として認めるまでは、絶対自分から、本心を伝えないって決めてたんだ。それがどういう意味か分からない?」

ハンナ「………つまり、片思い歴はエレンの方が上ってこと?」

アルミン「ハンナ。さすが。正解だ」

ミーナ「えええ? そうだったの?! ちょっと待って。私、てっきりミカサの方が先にエレンの事、好きになったんだと思ってたけど違ったの?!」

アルミン「違うよ。エレンのほうが先。エレンはとっくの昔にミカサを女性として意識してたよ。ずっと否定してたのは、ミカサがあんな調子で過保護に接していたから。男としてのプライドがあったんだろうね。ミカサの方の気持ちをちゃんと確認出来るまではエレンはテコでも動かないつもりだったんだよ」

ユミル「……あー成程。そういう事か。だったら、私達がした事は、よけいな事だったんだな……悪い」

今更になるが、ちょっとだけ罪悪感を持ってしまうユミルだった。

エレンの方から告白させる作戦なんて、無意味だったのだ。

エレンの方がとっくの昔に、ミカサをそういう意味で見ているなら、いずれ何もしなくてもそうなっただろう。

アルミン「いやいや、よけない事とは僕は思わないよ。だって皆の視点から見れば、怒りたくなるのも分かるもの。エレンの態度は客観的に見ればミカサを弄んでいるように見えてもおかしくないからね」

ミーナ「でも……だとしたらエレンには悪いことしちゃったね」

ハンナ「そうね。後で私達、謝った方がいいかしら?」

アルミン「あーもう別にいいんじゃない? エレンは気にしてないと思うけど」

ハンナ「そうかなあ……」

ミーナ「ううう……エレン、女たらし野郎なんて思ってごめんなさい」

ハンナ「女こましの最低野郎だと思ってごめんなさい」

クリスタ「ちゃんとエレン側の事情を聞かなかった私達、悪かったと思うわ」

つい、カッとなったせいで女子も行動を起こしてしまったのだ。今更ながら反省する。

そんな女子の反省具合を複雑な心境で見守るアニだった。

サシャ「エレンには後で皆でパンをちぎって分けてあげればいいんじゃないんですか?」

ミーナ「そうね。今回ばかりはそうしましょう。私達の罪悪感の為に」

クリスタ「せめてものお詫びね」

アルミン「うーん。まあ、皆がそう言うなら仕方ないかな。( ̄∀ ̄)ニヤニヤ」

ユミル「おい、アルミン。まだ顔が緩んでいるぞ」

アルミン「え? ああ……ごめんごめん。ついついね。今、二人がどんな状態になってるかと想像すると……」

アニ「エレンがミカサに抵抗されてる頃なんじゃないの?」

アニがそう口を挟むとアルミンは「ん?」とした顔になった。

アニ「私がミカサの立場なら……暫くは口も聞けないだろうし、触ってきたら蹴り倒すかもね」

アルミン「へー…アニって意外と乙女だね」

アニ「…………普通じゃない?」

ハンナ「いや、そこは蹴り倒したらダメだよアニ……」

ミーナ「そうだよ! そこは頑張って受け入れて!」

アニ「ふーん、あんた達は受け入れるんだ」

ハンナ「そ、そりゃあ……迫って来られたら、ねえ?」

ミーナ「う、うん……」

ハンナとミーナは顔を赤くして頷き合っている。

クリスタ「でも……エレンの方から迫ってる状態って、あんまり想像出来ないかも」

ユミル「ミカサが押し倒す様は容易に想像出来るけどな」

ハンナ「あ、でも、この間、ミカサのお尻触ってた時は、ちょっとそれっぽくなかった?」

ミーナ「あれがもしかして、エレンの本性なのかな…(ドキドキ)」

そんな感じでアルミンが女子に囲まれてわいわいやっていると、それに嫉妬したライナー達が近寄ってきた。

ライナー「なんだ? アルミン。女の園に囲まれやがって。何話してるんだ?」

アルミン「ああ…エレンについてだよ。皆で噂してたんだよ」

コニー「ほほう。遂にあいつら、くっついたんだよな。でも、最近のミカサの様子ってなんか変だよな?」

コニーは察しがいいので気づいているようだ。

ミーナ「うん……エレンは遂に認めたよ。でも今度は、ミカサの方が意識し過ぎておかしくなっちゃって……エレンから逃げてるの」

ライナー「はははっ……立場が逆になっちまったみてえだな。まあいいんじゃないか? 今までが今までだったんだ。ミカサも追いかけられる立場を経験してもいいと思うぞ」

コニー「へー不思議なもんだなあ。ミカサ、折角待ち望んだ展開になったんじゃねえのかよ」

ユミル「世の中、そううまくはいかないらしい。まあこうなった以上は、そっとしとくしかねえんだろうな。今度こそ」

クリスタ「そうだね………後はエレン次第ってとこかしら」

うんうんと頷き合う一同だった。

その様子を遠くから見つめて、ふてくされているのは当然ジャンだった。

リア充爆発しろと、思いながら。

ミカサは逃げた。ひたすら逃げた。

覚悟をしろと言われてから既に3日経っているのに、まだ体が抵抗する。

ミカサ(おかしい……体が意思に反して逆の行動を取ってしまう…!)

本当はこんな事したくないのに。エレンの傍にいたいのに。

エレンに見つめられると心臓が爆発しそうになって、距離を取ってしまう自分がいる。

呼吸が荒くなって息もうまく出来ない。自分を自分でコントロール出来ないなんて、おかしい。

今までこんな経験、したことなかった。

ミカサ(私はあの日から、完璧にコントロール出来るようになった筈なのに)

忌まわしき過去の記憶が蘇る。あの日から自分は変わってしまった。

そう思っていたのに。なんて様だろう。

ミカサ(エレンが格好良すぎてまともに目を合わせられないなんて……!)

エレン「おい!!! ミカサ!!! 待てってば!!!」

キレ気味の声でようやくエレンがミカサに追いついた。

廊下の端っこに追い詰めて、エレンはミカサを捕まえた。

エレンと真正面から視線が合うと、ミカサの顔は全部赤く染まった。

もうそれはもう、完全に沸騰したお湯の如く。

ミカサ「あっ………」

エレン「いい加減にしろよな。俺だってもう、我慢の限界なんだけど」

ミカサは既に涙目だ。

それを見てエレンもぐっと言葉に詰まる。

エレンは視線を少しだけ逸らして言った。見つめ合うと会話もまともに出来ないから。

エレン「何だよ……お前、こういう展開を望んでたんじゃなかったのかよ」

ミカサ「だって……その……エレンが………」

エレン「認めたら認めたで、俺達ちぐはぐじゃねえか。どっちにしろダメなんじゃねえか」

ミカサ「ち、違う……! その、私は……」

ミカサが真っ赤になって体を震わせる様が可愛すぎてヤバイ。

エレンはこの場ですぐキスしたくなる衝動を必死に抑えていた。

エレン「……何?」

わざと、ぶっきらぼうに返す。

ミカサ「私は……嬉しい……のだけども……体が言う事……きかなくて……」

エレン「勝手に逃げちまうって? まあ俺も散々逃げてた訳だし、気持ちも分からんでもないが、それにも限度があるだろ」

ミカサ「ううう………」

エレン「これで分かっただろ? 今までと全然、違うだろ? 認めるってことは、そういう事なんだ。俺が今までミカサの追求から逃げてた理由もこれで分かっただろ?」

ミカサ(こくこくこく)

エレン「だったら少しは俺の方にも譲歩してくれ。でないと……何の為に俺達、遠回りしたのか意味が分からん」

ミカサ「で、でも………」

エレン「…………そんなに俺の事、好きなのか?」

ミカサ「好き……」

エレン「俺も好きだよ。つか、多分、俺の方が先だと思う。俺、本当にずっと待ってたんだぞ」

ミカサ「ご、ごめんなさい………」

エレン「別に謝らんでいいけどさ………もうちょっとどうにかなんねえか? この状態」

ミカサはエレンとしゃべってるだけで、本当に緊張でプルプルしているのだ。

あうあうあう。

ミカサがオロオロしている様は見ていて可愛いが、もうこっちもいろいろいっぱいいっぱいだ。

エレン「俺はどうしたらいい? もういっそ、この間の件はなかった事にした方がいいのか?」

ミカサ「そ、それはダメ……!」

エレン「じゃあどうすればいいんだよ!! 俺は嫌だぞ、ずっとこのまんまなのは」

ミカサ「そ、それは………」

エレンは待った。辛抱強く。ミカサの気持ちが少し落ち着くまで。

ミカサ「私は……」

でもミカサ自身も答えが出なかった。

これはもう、慣れるしかないとは思うのだけど。

ミカサはどうしたらいいのか分からなかった。



カンカンカンカン………



食事の時間が終わった。次は訓練の準備に入らなければならない。

エレンは深々とため息をついた。

エレン「はあ……仕方ねえ。一旦、保留にしよう。でも夕食はせめて一緒に食ってくれよ。サシャも同席でいいからさ。頼むぞ、ミカサ」

ミカサ「う、うん……分かった」

エレン「じゃあな。また後で」

そう言ってエレンはミカサの頭をくしゃっと撫でて去っていった。

その感触ですら、ぽーっとなってしまうミカサだった。

そんな訳で、今のエレンにちょっとずつ慣れるべく、ミカサは行動を起こした。

夕食にはサシャも同席していたが、離れて飯を食う事だけはエレンが拒否したので、ミカサも頑張っている。

エレンは出来るだけミカサの方を見ないように気をつけていたが、それでも時々は気になって見つめてしまう。

すると、ミカサはハッとまた赤くなって俯いてしまうのだった。

その様子をアルミンは笑いを堪えながらスープを飲んでいる。

アルミン(やばい…ナニコレ楽しすぎる)

腹筋が鍛えられそうだ。いや、本気で。

堪えるのが辛い。いつまでこの状態が続くのだろう。

サシャ「………あれ? ミカサ、パン残すんですか? 貰ってもいいですか?」

エレン「ダメだ。ミカサ、ちゃんと食べろ。明日が持たねえぞ」

サシャ「エレンには聞いてません。ミカサ、食欲ないんですか?」

ミカサ「えっと……その………た、食べる……!」

慌ててパンを詰め込むミカサ。案の定、喉に詰まった。

そのテンパり具合にエレンも驚く。

エレン「何やってんだよ?! ミカサ!! ああもう!!」

席を立って、ミカサの背中をさすってやる。水を飲ませて落ち着かせる。

ミカサ「(ごっくん)ご、ごめんなさい……」

エレン「ったく……噛まずに一気に押し込んで食えるのはサシャくらいなもんだぞ」

サシャ「失礼ですね! まあ、出来ますけど」

アルミン「それなら失礼じゃないんじゃあ……」

アルミンのツッコミは空に消えた。

アルミン(あれ…?)

ミカサは今、エレンに触られているのに拒否していない。

というか今、お互いに見つめ合っているのに、ミカサは動揺していない。

アルミン「ミカサ、もう大丈夫?」

ミカサ「うん。もう飲み込んでしまったので」

アルミン「いや、そうじゃなくて、エレンの方」

ミカサ「………Σ(゚д゚lll)」

そして我に返ってまたかああっと赤面するミカサだった。

エレン「アルミン!!」

アルミン「え? あ、しまった! ご、ごめん……」

今のは言わない方が良かった。折角、ミカサが元に戻りかけたのに。

余計なことをしてしまってアルミンは口を手で押さえた。

ミカサ「だ、大丈夫………た、多分………」

ミカサはまだ顔を赤くしているが、エレンを全く見れない訳ではないようだ。

ミカサ「わ、私もいつまでも、この状態は良くないと思う…ので、が、頑張る」

エレン「……………はあε=(・д・`*)ハァ…」

エレンはため息を付くしかなかった。

こんな事になるんだったら、前の方がよほど良かったのかなと思いながら。

自分の席に戻って、エレンは残りのスープを飲み干すのだった。

そんなエレンの憂鬱な表情にアルミンも苦笑するしかなかった。

能天気なのはサシャだけだ。

サシャ「……あ、そう言えばエレン。本当に良いんですか?」

エレン「何が?」

サシャ「女子の皆がお詫びにパンを少しずつあげるって話です。要らないなら、私が代わりに貰ってあげても……(^q^)」

エレン「何でサシャが貰う事になるんだよ……つか、別にこの間の事、俺は怒ってねえし、罪悪感を持つ必要もねえよ。あの状況になったから、俺も決心ついたようなもんだしな」

サシャ「そうですか……これから二人は恋人になるんですよね」

エレン「そのつもりだけど」

サシャ「でしたら、これから先が大変ですね。卒業するまでは子供も作れませんし」

エレン「……………………」

サシャの言ってる意味はエレンも正しく理解している。

いや、それ以前に子供を作るつもりはないが。

サシャ「いずれは二人で結婚式をあげるつもりなんですか? そしたら私も呼んで下さいね。ご馳走食べにいきますから」

アルミン「サシャ、気が早すぎるよ」

サシャ「えへへへ……村でも結婚式を挙げる時だけは、豪華なご飯が食べられましたからね」

エレンは複雑な心境でサシャの話を聞いていた。

だから、あえてそれに対して答えなかった。

エレン「もう、俺、寮に戻るわ」

アルミン「あ、だったら僕も戻るよ。もう食べ終わったしね」

四人はもう夕食を食べ終わったのでそれぞれ食器を片付けた。

ミカサはまだ、少しぼーっとしているようだが……

エレン「じゃあな、ミカサ。ちゃんと寝ろよ」

それだけは伝えて、エレンはミカサ達と分かれたのだった。

しかしミカサの態度はなかなか改善出来なかった。

その状態が一週間も続くとさすがのエレンも戸惑いを見せた。

やはりまだ、時期尚早だったのか。

そう思い直して、エレンはミカサを呼び出して、話し合う事にした。

夕食後、寝る前の少しの時間を使って、エレンは人気の少ない宿舎の裏側でミカサに今の胸の内を話す事にした。

エレン「やっぱりやめよう。ミカサ」

ミカサ「え?」

エレン「もう、やめよう。俺達、恋人同士になるのはやめようぜ」

ミカサ「えっ………」

その瞬間、ミカサの全身から血の気が引いた。

ミカサ「それは嫌……ダメ……!」

エレン「でも今の状態ってさ、前よりダメだろ。俺達、最近、全然触れ合ってねえ。これじゃあお互いに認める前の方がよほど触れ合ってただろうが」

ミカサ「そ、それはそうだけど……」

エレン「俺も悪かったよ。焦ったんだよな。正直に言えば。勢いで言っちまって……もうちょっと時間をかけるべきだったって反省してる」

ミカサ「そんな事、言わないで……」

ミカサはまた涙目になった。

ミカサ「なかった事にしないで……」

エレン「でもミカサ、この間からずっと泣いてばかりじゃねえか。俺、ミカサを泣かせたいわけじゃねんだけど」

ミカサ「そうだけど……でも……」

エレン「もういいよ。一度、リセットしてもいい。俺はミカサにそういう意味で触らねえし、見ないように気をつけるさ。だから……」

ミカサ「嫌!! 私は、嫌……エレン、私を捨てないで!!」

エレン「捨てるなんて一言も言ってねえだろ!! 俺は、ただ……」

その時、ミカサは捨て身の覚悟でエレンに抱きついた。

体はまだ震えるくせに、エレンを離したくなかったのだ。

それを感じて、エレンも力なく抱きしめ返す。

エレン「ミカサ………」

すごくいいところだけど、ここで一旦切る。
ちょっと眠くなってきた。起きたらまた続きを書きます。
おやすみノシ

いつも、そうだ。

ミカサは無理をする。

本当は、そうさせたくないのに。そうさせているのは、自分で。

不甲斐なさと愛しさが混じり合って、エレンは両目をきつく閉じた。

その時、ミカサが小さな声でエレンに言った。

ミカサ「怖いの……」

エレン「怖い?」

ミカサ「し、幸せ過ぎて……怖いの……だから、体が震えるの……」

ミカサは怯えているのだ。

ミカサは強いけれど、強いからこそ、幸せに弱い。

それが壊れることを極端に恐れるのだ。

無理もない。悲惨な過去を乗り越えてきたのだから。

ミカサ「どうすれば、この震えが止まるのか……分からない。エレン……助け……」

その瞬間、ミカサの唇を塞いだ。

エレンの理性はもう、限界だった。

ミカサの震えを承知の上で、エレンはミカサにキスをした。

もう、待てなかったのだ。

ミカサ「ん………エレン……あっ」

背中に悪戯をする。あの時のように。

ミカサ「待って……あっ……ああん!!」

その反応は、あの時の比ではなかった。

顔を真っ赤にして、まるで体が宙に浮くような浮遊感の中で、ミカサはエレンを感じた。

ミカサ「ああああ……ん……ん」

外なのに、声を止められない。

エレンも容赦しない。ミカサの背中をずっと摩って、唇に触れながら、片方の手は胸に触れる。

ミカサ「エレン……ん……」

抗議の声を無理やり塞ぐ。もう、無理やり慣れさせるしかないと思ったのだ。

愛撫を続ける。暗闇の中で、星と月明かりだけが頼りのその世界で。

エレンはミカサに告げた。

エレン「ミカサ………」

ミカサ「な………何? (はあはあ)」

エレン「俺、嘘ついてた。この間の事」

ミカサ「え?」

エレン「背中、触った時のこと。アレ、本当は俺が触った。あの時の続きを、ここでしてもいいか?」

ミカサ「えええっ?!」

エレン「それが出来ないっていうなら、もう本当にやめよう。ここで決めて欲しい」

ミカサ「そ、それは………」

エレン「俺も、ミカサと同じだよ」

エレンも自分の震えを隠さずに言った。

手の震えをミカサに見せる。

ミカサ「あっ……」

エレン「分かるか? 俺も油断するとすぐ震えるんだよ。精一杯、虚勢張ってんの」

ミカサ「そ、そうなの…?」

エレン「ああ……だから、震えてもいいから、俺にミカサを触らせてくれよ」

ミカサはその時、少しだけ安心した。

同じなら、いいと思って。

ミカサは弱々しく頷いた。

その合図を見て、エレンはもう一度、キスをした。

舌を入れる方の、熱いキスを。


くちゅ……


ミカサ(あ……舌が、入ってくる…)

ぶるっとまた、体が震える。背中に回された手が怪しく動き回り、乳首への愛撫が再開される。

ミカサ(ああっ……!)

あの時の続きが出来る。

あの時のアレが、嘘で良かったと、ミカサは心底思った。

エレンが自分の意思で触ってくれた事に喜びを感じる。

ミカサ「ああっ……んぐ……」

エレン「悪い。声は少し落としてくれ」

ミカサ「んー……(難しいな)」

声を抑えるのがとても大変だった。だけど、仕方ない。

エレン「はあ……はあ……」

火のついたエレンの行動は早かった。

もう、服をたくし上げて、ミカサの乳首を直接触る。

ミカサ「あっ……」

服の上からの愛撫より、強い刺激がビリビリくる。

下半身の方から、液体が溢れる感覚が襲う。

体が濡れる感覚を、味わう。

あの時の、比じゃない。

ミカサ(あああっ……エレンの手が、息が……体温が…!)

外の空気はひんやりしているのに、体が熱いせいで、それが気にならなくなってきた。

乳首の先を指の先で摘んで弄っている。少し痛いくらいの刺激に堪らなく身を捩った。

何度も引っ張られて、痛い。痛いのに気持ちいい。

ミカサ「ち……乳首……ばっかり……」

エレン「え? あ、やべ……やり過ぎたか?」

ミカサ「ち、違うけど……エレン、好きなの?」

エレン「乳首が? そりゃな。ここが嫌いな男なんていねえよ」


コリコリ……ピシピシ……


ミカサ「あっ…! (ビクン)」

乳首と背中の愛撫を一緒にすると、ミカサの体がもっと跳ねた。

エレン「乳首も反応いいけど、背中も弱いのか。ミカサ」

ミカサ「ううっ……」


つつつ………


ミカサ「ああん!」

背筋を触られると自然と仰け反ってしまうミカサだった。

エレン(服を脱がしてえなあ…)

でも外だしなあ。脱がすとさすがに寒いよなと思う。

ミカサを風邪ひかせたくないので、そこはさすがに自重する。

その代わり、何度も何度も、服の中に手を突っ込んで、手の摩擦も含めてミカサの体を温めてやる。

ミカサ「あったかい……エレンの…手…」

エレン「ん? まあな。男の方が体温高いもんな」

ミカサは油断するとすぐ体を冷やしがちなので、精一杯温めてやる。

長いスカートをたくしあげて、パンツをずりおろし、そこに直接触れてみる。

ミカサ「ひゃあっ……! (ビクン)」

エレン「おお……ちゃんと濡れてるな。よしよし」

ミカサ「だ…ダメ…そこは、そこは……(もじもじ)」

エレン「ん?」

ミカサ「そこは……汚いところ…だから」

エレン「別に汚くねえよ。全然、そう思わねえ」

ミカサ「でも……あう…(ビクン)」


ぬるぬるぬる……


ミカサ「あっ……ダメ…エレン…そこ…あん!」

エレン「んー……それより寒くねえか?」

ロングスカートをたくしあげているので、寒いのではないかと思ったエレンだったが、

ミカサ「むしろ熱いくらい……ああ……ああ!」

ブルブル震えて快楽に耐えるミカサが可愛い。ヤバイ。

エレン「今日はミカサのイクところまでやってみるか?」

ミカサ「え? ええ?」

エレン「寒くないならこのままココ、擦るからな」

エレンは中指の動きを少しだけ早めた。

ミカサ「あっ……ああああっ…ダメ…」

ミカサの柔い抗議を、キスで殺した。

二人の中の盛り上がりは、どんどん楽園へ向かっていた。

このまま続ければ十分、繋がれる。

そう、何処かで甘く思っていた。その時……





カサッ………





足音がした。

誰かがくる。その気配がした。

エレンは慌てて手を外してミカサから少し離れた。

現れたのは、キース教官だった。

キース「………? 何をしている。アッカーマン、イェーガー」

ミカサ「…………」

エレン「…………」

キース「そろそろ、就寝時間だぞ。早く宿舎に戻れ。今夜は少し冷えるぞ」

エレン「はっ…!」

まだ、時間は過ぎていなかったようだ。

危なかった。

もし、就寝時間を過ぎていたら、注意だけは済まなかっただろう。

キース教官は注意だけしてその場を去っていった。

どうやら就寝時間の前に見回りをしているようだ。

ミカサ「…………」

エレン「……もう、大丈夫だよな?」

ミカサの震えは自然と止まっていた。

ミカサ「う、うん……」

中途半端に熱を放置されて残念そうな顔になるミカサだったが……

エレンはそんな彼女の頬にキスをして言った。

エレン「もう、逃げるなよ。続きはまた、今度な」

そしてエレンの方が先に男子寮に帰っていった。

ミカサはその直後、腰が抜けたようにペタンと座り込んでしまったが……

ヨロヨロと立ち上がり、何とか自力で女子寮に帰っていったのだった。

(ここからまた、江蓮三笠パートに戻ります)




そして江蓮は目覚めた。朝勃ちしている。

江蓮(なんかすげえエロい夢見た気がするんだけど…)

記憶が断片的すぎてはっきりとは思い出せなかった。

ただ、ロングスカートの三笠が喘いでいたような気もするが、

それを触っているのは自分ではなかったような気がする。

所謂、カップルのイチャイチャ現場を見ちゃった感じの、そんな夢だった。

江蓮(もしかして……あれが向こうのエレンの世界だったりするんかな?)

でも、ところどころぼんやりしている。

はっきり覚えているのは、ロングスカートをたくしあげているあの場面。

江蓮(ロングスカートか。結構いいな…)

横で眠る三笠を見つめながらうっかりそう思ってしまう江蓮だった。

江蓮「起きろ、三笠。もう朝だぞ。今日は月曜日だから、少し急ぐぞ」

三笠「ん…もう朝?」

江蓮「ああ……学校行くぞ」

三笠はむにゃむにゃ言いながら起き上がった。

三笠「あ…江蓮、そこが勃ってる」

江蓮「毎日こんなもんだよ。あ、そっか。朝のコレ、見たことねえのか」

三笠「初めて見た……抜くの?」

江蓮「抜くときもあるし、放っておけば収まるときもある。朝はあんまり時間ねえから、放っておく方が多いかな」

三笠「そうなの…」

三笠はじーっとそこを見つめている。

江蓮は困ったように言った。

江蓮「じ、か、ん。朝は時間を無駄に出来ねえだろ。朝練習もあるんだし、続きはまた今度な」

三笠「………そうね。ご飯食べましょう」

三笠を宥めながら江蓮は朝の準備をした。

お互いに制服に着替えて三笠と一緒に下に降りると、珍しく、母がまだ起きてなくて、代わりに父が朝御飯を用意していた。

江蓮「あれ? 母さんは? まだ寝てるの?」

具理者「ああ……昨日ちょっと無理させちゃったからな」

江蓮「え?」

具理者「まだベッドで寝てるよ。今日は父さんの飯になるが、すまないね」

江蓮「……………」

父の様子がにこやか過ぎてテカテカしていた。

なんとなくそれで全てを察した江蓮だった。

江蓮「父さん、昨日何回か、2階を行き来してたのって……」

具理者「ん? ああ……大人には大人のテクニックがあるんだよ。江蓮。その話はまた今度、詳しくしてやろう」

その返事でなんとなく全容が分かった気がした江蓮だった。

三笠「…………?」

三笠の方はまだ、良く分かっていないようだが、単純に迦楼羅を心配しているようだった。

具理者「そうだ。二人には、言っておかないといけないね」

三人で朝食を食べながら、具理者は言った。

具理者「もしかしたら、家族が増えるかもしれないよ」

江蓮「え?」

具理者「母さん、妊娠4ヶ月目に入ったようだ。このまま順調に行けば今度こそ、子供が生まれるかもしれない」

江蓮「ほ、本当かそれ!!」

具理者「ああ。新しい家族を迎える事になりそうだ。このまま順調にいってくれれば…」

実は迦楼羅は、江蓮を出産してから何度か流産を経験している。

一度目の出産の時に大分無理をしたせいで、二度目の妊娠がしにくくなっていたのだ。

しかし具理者は辛抱強くその時を待っていたのだ。

三笠「妹が増えるの?」

江蓮「弟のほうがいいな!」

三笠「えー妹がいい」

具理者「ふふ……それは生まれてからのお楽しみにしよう」

江蓮「……父さん、本当は分かってるんだろ?」

具理者「うん。でも教えない。楽しみにしときなさい」

江蓮「ちぇー(´ε`;)」

江蓮はちょっと残念だったが、仕方ないかと思った。

江蓮「父さん。家族が増えたら、俺の部屋を赤ちゃんにあげてくれ。俺、どうせ土日にしか帰らないし。部屋足りないだろ?」

具理者「ああ……そうだな。暫くは江蓮の部屋を借りる事になるかもしれないが、そこは心配しなくていい。実は今、もう少し大きな新しい家を建てようと思って計画を立てているんだ」

江蓮「へ……? 家を立て直すのか?」

具理者「いや、この家は潰さない。別の土地に新しい家を建てるんだ」

江蓮「この家、どうすんだよ。貸し出すのか?」

具理者「………ふふ。江蓮、鈍いな。まだ分からないのか」

江蓮「?」

具理者「江蓮、君がちゃんと目標を達成したら、この家は江蓮に譲ろうと思っているよ」

江蓮「へ……?!」

具理者「全国制覇と、学業のアップ、だったね。達成できたらの話だけど、男が一度誓った約束だ。それなりの報酬は用意するよ」

江蓮「ちょっと待ってくれよ父さん。それは……あまりにもでかすぎないか、その……報酬が」

具理者「そうか? まあそうかもしれないが、達成出来なかったら、人に貸出してもいい。江蓮、未来は君次第だよ」

未来は君次第。

そう言った具理者の期待に沿わないわけにはいかなった。

江蓮はパクパクと朝御飯を食べ終えて、席を立った。

江蓮「御馳走様でした!! 三笠、学校行くぞ!!」

三笠「あ、待って…江蓮!!」

パタパタ……

急いで家を出ていく二人を見つめながら具理者は笑っていた。

そしてのそのそとようやく迦楼羅が寝室から出てきた。

迦楼羅「あなた……ごめんなさい。あの子達はもう学校に行ったの?」

具理者「ああ。ご飯は私が用意しておいたよ」

迦楼羅「そう……」

具理者「今日は一日、ゴロゴロしておきなさい。必要ならそのうち家政婦さんも雇おう」

迦楼羅「あなた…それはやめて。あなたは私をどれだけ甘やかすつもりなの」

具理者「妊婦が意地を張るもんじゃないよ。迦楼羅。いいかい? 君は私に甘えてもいいんだよ。ずっと昔からそう言ってるじゃないか」

迦楼羅は、目頭が熱くなった。

涙腺が緩みやすくなっているのはホルモンバランスのせいだと、自分に言い聞かせて。

具理者は食べ終えた皿を片付けて、迦楼羅を寝室に戻してやった。

具理者「昨日の君は素直で可愛かったのに……」

迦楼羅「あっ……」

さわ……

大人の時間が、また始まる。

迦楼羅「あなた、今日は仕事は……」

具理者「うん。午後からだよ。今日は午前中はお休みにさせて貰ってる」

そして具理者はもう一度、迦楼羅に絡みついた。

迦楼羅は、両目を閉じて昨日の事を思い出す。

久々に酷く乱された、熱い夜を思い出して体が震えてしまった。

具理者「あとちょっとだけ、続きをしようか、迦楼羅」

具理者はとても楽しそうに笑って眼鏡を外してキスをしたのだった。






そして月日は流れ……

ジョジョは───ッ!

>>574
???
スレチかな?
ジョジョは出てこないぞ?(笑)

江蓮はひたすら努力した。学業も、部活も。

本気になって取り組んだおかげで、その年の夏になんと、本当にバスケ部は全国優勝を果たした。

その功績は勿論、理倍の力があったおかげだが、江蓮の影の活躍もあった。

理倍は決勝の試合が終わった後、一年生の立役者、雷名、部瑠都瑠都、江蓮の三人に労いの言葉を伝えた。

理倍「お前ら、よく頑張ったな。来年も全国に行けよ」

三人「「「はいっ…!!」」」

そしてその日の夜に祝賀会が行われた。場所は近所のファミレスだった。

女子の部員も混じっての宴会状態になった。

その中で女子バスケ部員が何名か、江蓮に近寄って声をかけた。

女子部員1「江蓮君、すごいね! 入部した時はこんなにやる子だと思ってなかったけど」

女子部員2「本当だよ! 大出世だよね。ドリブルから始めた子がレギュラー取るなんて思わなかった」

江蓮「あ、はあ………」

レギュラーに選ばれたのはもう一人のエレンのおかげだったが、その後、江蓮もエレンと負けないぐらい努力した。

その甲斐あって、何とかレギュラー落ちは免れ、スタメンではないが、交代要員としてベンチに入れる位置を保ったのだ。

飯時「そうだねー。今ではバスケ部のキーパーソンだもんね。良かったね理倍」

理倍「ああ……掘り出し物だったな。江蓮は」

江蓮「ど、どうも……」

理倍「来年は俺達はいなくなるが………頑張れよ」

江蓮「は、はい……」

理倍にしごかれるのもこれでおしまいになるのかと思うと少しだけ寂しい気持ちになる江蓮だった。

女子部員1「ねえねえ江蓮君って、どんな子がタイプ?」

江蓮(ぶーっ)

女子部員2「気になる気になる」

江蓮「た、タイプって言われても……」

突然そんな事を言われても……。

頭に浮かぶのは三笠の事だけだった。

江蓮「普通っすよ。可愛い子は好きですし……」

女子部員3「他には他には?」

江蓮「料理がうまい子がいいです」

女子部員1「まじかー私アウトだー!」

飯時「ぷっ………今更江蓮につばつけようって思っても、遅いって」

女子部員2「え? じゃあもう彼女いるの? 誰? 誰?」

江蓮「え! いや、いないっすけど……」

学校では、三笠との付き合いは秘密にしている。

だが飯時はニヤニヤしていた。

言わないけど。飯時はだいたい気づいている。

女子部員3「そう? 怪しいなー……最近、江蓮モテてるって聞いたけど?」

江蓮「へ?! 俺、別にモテないっすよ?!」

女子部員3「嘘ー……私の友達、江蓮可愛いって言ってたよ?」

江蓮「そ、そうなんすか?」

雷名「はははっ……江蓮、今、モテ期に入ったんじゃねえか? 羨ましい奴め」

江蓮「そ、そんなわけねえよ……(ごくごくごく)」

ドリンクを飲んで誤魔化す江蓮だった。

しかし江蓮の言い分とは裏腹に、江蓮は徐々にモテ始めた。

やはり全国大会で優勝した事が大きな転機となったのだろう。

雷名、部瑠都瑠都もそうだったが、江蓮も徐々に女子からの声援を受けるようになり、三笠はほんの少しだけ、しょんぼりする日々が増えてきたのだった。

クリスマスの時期になると、その告白の数も少し落ち着いたが、三笠の心配は今でも絶えない。

江蓮「おい三笠……そうふてくされるなって」

やりとりは電話での物が自然と増えた。

江蓮は寮の自分の部屋で勉強をしていたが、その手を止めて三笠と話している。

三笠『そうだけど……はあ』

江蓮「学校の終業式は20日だし、冬休みは家でゆっくりしたいしな。クリスマスイブは予定空けとけよ。二人でゆっくりしようぜ」

三笠『部活はいいの?』

江蓮「クリスマスイブは、昼は部活あるけど夜は空いてるよ。ケーキ食わせてくれよ。三笠の料理も食べたいんだ」

三笠『分かった……作って待ってるね』

江蓮「ああ。楽しみにしてるからな。あ、でも火傷はするなよ。ケーキは買ってきてもいいからな」

三笠『もう失敗はしない……多分』

江蓮「三笠は変なところでドジするからな。心配だから、ケーキは店で買っておいてくれ。いいな」

三笠『むー』

江蓮「それより、お前進路希望、どうした? 調査書は終業式までに出さないといけないだろ」

三笠『……まだ出してない』

江蓮「俺も、まだ迷ってるんだよな。出来れば三笠とも同じとこ行きてえけど、学力もうちょい上げないとってところなんだよな」

今は中学一年だが、二年生に上がるとぐんと勉強のレベルも上がる。

二年生になるとクラス替えもある。学力と進路希望に合わせて振り分ける制度になっているのだ。

なので冬休みが終わると、すぐさま進路面談が始まる。

その前の調査書を冬休み前までに提出しないといけないのだ。

三笠『私、自分でも何がやりたいのか分からない』

江蓮「そうかー…俺はとりあえず、海外に行ければ何でもいいけど、それ以外のことはまだ漠然としてんだよな」

江蓮は将来、日本ではなく海外に住みたいと思っているが、その為に何が一番必要で、何が向いているのかまでは自分でも良く分かっていなかった。

江蓮「三笠は有民と同じくらい、頭いいから選択肢はいろいろあると思うぜ。今度、有民とも一緒に進路を考えてみよう」

三笠『そうね。有民ならきっと、いいアドバイスをくれそう』

江蓮「ああ。きっとな……」

三笠『ねえ、江蓮……』

江蓮「ん? どうした」

三笠『おばさん……そろそろ出産予定日なの』

江蓮「ああ……そう言えばそうだったな。母さん、元気にしてるか?」

三笠『うん。大丈夫だと思う。でもクリスマスイブと予定日が近いから、大丈夫かなって』

江蓮「あーもしそうなった時は母さん優先だな。仕方ねえ」

三笠『うん。私もそう思う……』

その時よぎった思いを封印して三笠は暫く黙った。

江蓮「……ん? どうした三笠?」

三笠『江蓮に会いたい』

江蓮「ぶっ……何だよいきなり……」

三笠『ごめんなさい。たまにこうなるの』

江蓮「嬉しいけどさ……そういう我儘は。でも、もう外出が出来る時間じゃねえよ」

三笠『知ってる……クリスマスイブまで我慢する』

江蓮「俺も我慢する。愛してるよ、三笠」

そして江蓮は電話を切った。勉強にすぐに戻れない。

気持ちがすぐには切り替われなくてちょっと困る。

江蓮(はー……将来か)

現実はほんの少しずつ、彼に迫っていた。








そして約束の3年後はあっと言う間に訪れた。








江蓮は成長した。背丈も昔に比べると大分伸びて大人びたものになった。

中学校の卒業式。今日からまた、大人への階段をひとつ登る。

卒業式を無事に終えて教室を出た江蓮と三笠は、双子の赤ちゃんを抱えて卒業式に来ていた母と父の姿を廊下で見つけて駆け寄った。

江蓮「父さん、間に合ったのか」

具理者「今日は特別に休ませて貰ったよ。江蓮、卒業おめでとう」

江蓮「ありがとう。父さん」

満面の笑みを浮かべる。江蓮は既に進学を決めている。

4月からは進撃高校に通う事になる。三笠と同じ高校だ。

特待生を受けて無事に合格した。なので大分安く通えるのだ。

具理者「この後はささやかなお祝いをしよう。皆で食事に行こうか」

江蓮「あ、父さん。その前にちょっと待ってくれ」

江蓮は有民を呼んで写真撮影を頼んだ。

江蓮「折角だから、皆で写真を撮りたいんだ。いいかな? 父さん」

具理者「構わないよ」

有民「じゃあ皆、撮るよ~寄って寄って!」

有民以外にも、他の家族も沢山記念撮影をしているようだ。

その中に混じって、家賀家も記念撮影をする。

有民「いくよ~はい、チーズ☆」



パシャ…



出来た写真には家族六人の素敵な笑顔が写った。

思い出の一枚になった。

江蓮「ありがとう、有民」

有民「いいって! 今度は僕も撮りたいから、三人一緒に写ろう」

具理者「では今度は私が撮ろう」

はい、チーズ☆

三人は肩を組合って写真を撮った。

幸せな瞬間を切り取って、有民も満足だった。

有民「ありがとうございました」

具理者「いいよ。有民君、これからもうちの息子と娘を宜しくな」

有民「はい……勿論です」

その時、双子の赤ちゃんがぐずり始めた。

迦楼羅「あらあら…どうしたの?」

具理者「人ごみに疲れたのかな。そろそろ移動しようか」

江蓮「有民、ごめんな! 俺達先に帰るから!」

有民「うん、いいよ! 僕もおじいちゃんのところにもどるね!」

三笠「またね、有民」

有民「またね!」

具理者の車に乗って移動する。

昼の食事は、とある中華料理屋で食べることになった。

少しお値段の高いそのお店は具理者の馴染みの店の一つだった。

江蓮は食事を取りながら、父親にその大事な話を切り出した。

江蓮「父さん………」

具理者「ん?」

江蓮「俺、約束通り、頑張ったよ。だから今日から正式に…三笠との事、認めて貰えないかな」

具理者は迦楼羅と一度目を合わせて柔らかく答えた。

具理者「ああ……江蓮。確かに君はよく頑張ったね。でも……」

江蓮「でも……?」

具理者「高校を卒業した後はどうするつもりだい?」

江蓮「その件も合わせて報告したいと思ってた」

江蓮は決めていたその決意を具理者の前に差し出した。

江蓮「高校を卒業したら、本当の意味で家を出たい。留学したいと思ってる」

具理者「江蓮はいずれ必ず海外に行くと言ってたね。具体的にはまずどこに行こうと思ってるんだい?」

江蓮「まずはヨーロッパ圏。有民のおじいちゃんの実家を頼ろうと思ってる」

具理者「その話は有民君とは既についているのかな?」

江蓮「ああ…有民はいいと言ってくれた。俺達三人、高校を卒業したらまずはドイツに行ってみようと思ってる」

具理者は少し考えた。

そして思っていた案を江蓮に提示してみる。

具理者「江蓮、私としては出来れば……海外でもいいから大学を出て欲しいと思ってる」

江蓮「でも、そんな金は自分では用意出来ないし」

具理者「江蓮、そこは遠慮するところじゃない。二人分の学費くらい、父さんはちゃんと用意してるから頼りなさい」

江蓮「でも、父さん、俺は…!」

具理者「舐められたものだな。私はこう見えても結構、稼いでいるんだよ? 江蓮」

江蓮「それは知ってるけど……」

具理者「行ってきていいと親が言ってるんだ。海外の大学で、学んで来なさい。日本では味わえない世界を勉強してくるんだ」

江蓮「でも……でも……」

具理者「江蓮、三笠、二人が頑張って学費の安い進学校に進んでくれたのは嬉しいけれどね。親の出番までは奪わないで欲しいな」

江蓮「…………いつか、必ず返すから」

江蓮はそこで、絞り出すように言った。

江蓮「俺は絶対、父さんのしてくれたこと、返すから……」

涙ながらに、江蓮は言った。有り難さを噛み締めながら。

そんな息子の成長を暖かく見守る迦楼羅だった。





そして江蓮と三笠の新生活は始まった。

具理者と迦楼羅、そして新しく生まれた双子の弟と妹の四名は新居に引越し、江蓮と三笠は今まで通りの家に住む事になった。

別居という形を取ったのは、具理者なりの配慮だった。

これで迦楼羅は子育てに専念出来るし、子供達は自立を促すことが出来る。

家事仕事は三笠がいるから心配もいらないだろう。

新居は旧居から歩いて1分もない近所だ。何かあればすぐに顔は見せられる。

江蓮はベランダで空を見上げた。春の風を感じながら。

あの時、あの日、感じたあの時の、不思議な体験を思い出す。



江蓮(もう一人のエレン……あいつ、今、どうしてっかな……)



最近は夢でも様子を見る事が出来なくなった。

呼びかけても当然、声も聞こえない。

あの日あの時、彼のおかげで、自分の人生を諦めずに済んだ。

彼には感謝してもし足りない。

もう一人の自分が、無事でいる事を願うしかない。



江蓮(エレン……お前も、もう一人のミカサと、幸せになれよ)





そう願いながら江蓮は、

遠い遠い空の彼方を眺めていたのだった。









(今度こそ、おしまい☆)

終わる終わる詐欺ばっかりしてる気がするので、
今度こそ、ここで終わります(笑)

ミカサって、両思いになったらなったで、
パニクりそうだなと思って、ああなったの。
きっと、立場が逆転するでえ……ニヤニヤ。

江蓮と三笠の方は、
高校生にして既に新婚のような生活に突入します。
んで、最終的には海外でひっそり二人で暮らすのではないかと。
そんな結末を妄想しました。

ではでは、ものすごく長い妄想でしたが…
ここまでお付き合い下さって、ありがとうございました。


この後は暫くは別のSSを完結させてきます。
ヴァルキリーのやつとかいろいろ放置しているので…。

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