~TRACK01:結衣~
■繁華街歩道■
あかり「ほらぁ、早くしないと遅れちゃうよぅ」
結衣「大丈夫だって、それより手を引っ張るな!」
あかり「だって結衣ちゃん、遅いんだもん!」
わたしはこのコが嫌いだ
控えめのようでいて人を振り回すし
こうやって、すぐ人にふれてくる
結衣「ほら、十分間に合っただろ」
あかり「ぜぇぜぇ、あのまま・・・ぜぇぜぇ、歩いてたら」
結衣「わかったから、息整えなよ」
あかり「はひ・・・ぜぇぜぇ」
わたしはこのコが嫌いだ
自分の体力も分かってないくらいトロいし
なにより
わたしの想いに気付いてないから嫌いだ
■映画館喫茶室■
あかり「やっと落ち着いたぁ」
結衣「十分時間みてるから、問題ないって言ったじゃん」
まったく
あかりを慌てさせないために、余裕もって出てきたっていうのに
あかり「だって映画の前にお茶したかったんだもん」
結衣「はいはい、アイスティでいいんだよね」
あかり「うん、シロップ2つね」
結衣「わかってるって」
あかり「だから結衣ちゃん好き♪」
くぅ
無神経にそゆこと言う、あかりは嫌いだ
結衣「お待たせ」
あかり「わ~い♪」
結衣「ほい、シロップ2つ」
あかり「結衣ちゃんはなんにしたの?」
結衣「わたしはカフェオレ」
ほんとは同じのにしようと思ったけど、やめた
すっごくバカみたい、わたし
あかり「わ!ちょっと飲ませて!」
な、なに言ってんのあかり
間接キスになっちゃうじゃん!
結衣「や、やだよ、自分の飲みなよ」
あかり「え~?ケチぃ」
結衣「ケチとかと違うし」
そうだよ
ケチとかいう問題じゃないよ
ドキドキするじゃんか
あかり「ええええ?あかりには飲ませたくないってこと?」
わ、話題変えないと
持たない
結衣「あかりはちょっと猫舌なんだよね、大変だな」
あかり「うん、熱いのどうしても遅くなっちゃう」
結衣「わたしとの時は、ゆっくり飲めばいいよ」
わたしとの時って、ちょっと強調しちゃった
あかり「じゃ、そのカフェオレ飲まして♪」
まだ言うかっ
結衣「それとこれとは話が別!」
あかり「ふ~んだ」
結衣「ふ~んだじゃないよ、氷解けちゃうよ?」
わたし、顔赤くなってないかな
あかり「そういえば、映画館も久しぶりだね~」
結衣「あんまり面白そうなの、やってなかったしね」
なんてウソ
意識しすぎて誘えなかったんだ
一人で映画観るの、意外に切なかった
あかりはどうなのかな
誰かと来てたりしないよね
あかり「この映画は絶対観たかったんだ」
聞いてみようかな
結衣「相手がわたしで良かったの?」
あかり「え?」
結衣「あ、彼氏と観たいとかじゃない、普通」
そうだよ
普通はそうなんだよ
あかり「そんなことないよ、結衣ちゃんと観たかったんだもん」
ちくしょう
優しいけど、友達としてだよね
当たり前なんだけど
だけどさ
結衣「え~?寂しいな、それ」
なんだろ
なんでわたし、こんな自虐的になってんの?
あかり「あ、そろそろ行こっか、10分前から入れるよ」
結衣「そ、そうだね」
情けない
■劇場内■
あかりの手
どうしても意識する
いきなり握ってみようかな
もしかして、握り返してくれるかも
いや
そんなことないよね
気持ち悪がられるだけ
あかりに気持ち悪いとか言われたら
わたし、どうなっちゃう?
でも
でもさ、近付けてさわるくらいなら
だって手を繋いできたんだし
そうだよ
全然問題ないじゃない
ぴとっ
結衣「!?」
結衣「ご、ごめん!」
あ、反射的に謝っちゃった
さわる前に手を引っ込めちゃうって
心のどっかで思ってたのに
不意打ちだよ、こんなの
あかり「こ、こっちこそ」
どう思ったかな
あかりは、どう思ったかな
結衣「気持ち悪いよね、はは」
あかり「気持ち・・・悪い」
!?
そうだよね
そうなんだろうけどさ
あれ?
いまあかりの声だった?
もしかして聞き間違いかも
そんな訳・・・ないか
結衣「ほ、ほんとにごめん」
もう消えたい
■映画館ロビー■
あかり「・・・・・・」
あかり、さっきから黙ったままだ
うぅ
この沈黙には耐えられないよ
結衣「どうした?気分でも悪くなった?」
あかり「そ、そんなことないよ、あはは」
無理してる
謝らなきゃ
さっきのこと、謝って許してもらわなきゃ
結衣「あの、さっきのことだけどさ」
あかり「ごめん結衣ちゃん、やっぱり調子悪いみたい」
あかり「先に帰るね!」
結衣「あ!」
やだよ
行かないでよ、あかり
そんな顔したままいなくならないでよ
でも、でもさ
わたしの足、言うこと聞いてくれないや
■結衣自宅■
プルルルルル
頼む、あかり出て
あかり『はい、もしもし』
良かった、出てくれた
結衣「あ、あかり」
あかり『・・・結衣ちゃん』
結衣「その、大丈夫だった?」
あかり『うん、心配かけてごめんね』
結衣「そ、そっか」
あかり『・・・・・・』
結衣「あの、さ」
だめだ
言葉が出て来ない
あかり『結衣ちゃん』
結衣「な、なに?」
あかり『もう遅いから、また明日』
結衣「そうだね、おやすみ、はは」
あかり『・・・意気地なし』
!?
見抜かれてる
わたしが臆病で、謝りも出来ないのが
見抜かれちゃってる
もう
だめだ
明日、どうやってあかりと顔を合わせればいいのか
わからない
終わっちゃった
こんなことで終わっちゃうこともあるんだね
こんなちっぽけなことで
結衣「こうしてわたしの恋は終わりました・・・か」
わたしは枕に顔を押し付けて
泣いた
~TRACK02:あかり~
■繁華街歩道■
あかり「ほらぁ、早くしないと遅れちゃうよぅ」
結衣「大丈夫だって、それより手を引っ張るな!」
あかり「だって結衣ちゃん、遅いんだもん!」
わたしは今日、浮かれてた
結衣ちゃんと久しぶりの映画
学校でも一緒にいられるけど、こういうのは特別
わたしの中ではデートだったから
もちろん、結衣ちゃんは知らない
わたしのこんな気持ち
結衣「ほら、十分間に合っただろ」
あかり「ぜぇぜぇ、あのまま・・・ぜぇぜぇ、歩いてたら」
結衣「わかったから、息整えなよ」
あかり「はひ・・・ぜぇぜぇ」
失敗しちゃった
手を繋げて、テンション上がっちゃったよぅ
結衣ちゃん呆れてないかな
うぅ
■映画館喫茶室■
あかり「やっと落ち着いたぁ」
結衣「十分時間みてるから、問題ないって言ったじゃん」
あかり「だって映画の前にお茶したかったんだもん」
だって
その方がデートらしいもん
結衣「はいはい、アイスティでいいんだよね」
あかり「うん、シロップ2つね」
結衣「わかってるって」
わかってるって、なんかいいよね
だから言っちゃおうかな
もう
言っちゃえ
あかり「だから結衣ちゃん好き♪」
結衣「お待たせ」
あかり「わ~い♪」
結衣「ほい、シロップ2つ」
あかり「結衣ちゃんはなんにしたの?」
結衣「わたしはカフェオレ」
ちょっと試しに言ってみたりして
あかり「わ!ちょっと飲ませて!」
結衣「や、やだよ、自分の飲みなよ」
あはは
やっぱり無理だったよ
あかり「え~?ケチぃ」
結衣「ケチとかと違うし」
あかり「ええええ?あかりには飲ませたくないってこと?」
ちょっとスネてみたりして
結衣「あかりはちょっと猫舌なんだよね、大変だな」
あれれ
話を反らされちゃった
あかり「うん、熱いのどうしても遅くなっちゃう」
結衣「わたしとの時は、ゆっくり飲めばいいよ」
じゃあ
遠慮なく話を戻しちゃえ
あかり「じゃ、そのカフェオレ飲まして♪」
結衣「それとこれとは話が別!」
ちぇ
あかり「ふ~んだ」
結衣「ふ~んだじゃないよ、氷解けちゃうよ?」
あんまりしつこくしても、しょうがないよね
あかり「そういえば、映画館も久しぶりだね~」
前に結衣ちゃんと来て以来だから
いつだっけ
結衣「あんまり面白そうなの、やってなかったしね」
あかり「この映画は絶対観たかったんだ」
もちろん結衣ちゃんとだよ
結衣「相手がわたしで良かったの?」
あかり「え?」
なに?
なに言ってんの?結衣ちゃん
結衣「あ、彼氏と観たいとかじゃない、普通」
そ、それはそうなんだろうけど
いま言わないでよ
いまは結衣ちゃんとデートなんだよ?
あかり「そんなことないよ、結衣ちゃんと観たかったんだもん」
結衣「え~?寂しいな、それ」
寂しいなんて、なんで言うの?
やめてよ
どうしよう、話題変えなきゃ
そうだ
あかり「あ、そろそろ行こっか、10分前から入れるよ」
結衣「そ、そうだね」
■劇場内■
結衣ちゃんの手
すっごく意識しちゃうよ
握ってくれないかな
ずっと結衣ちゃんの方に手を置いてるんだけどな
でも
彼氏とかじゃないもんね
無理だよね、あはは
だ、だけどさ
万が一ってあるじゃんね
もう少し
もう少しだけ、結衣ちゃんの方に伸ばしてみようかな
ぴとっ
あかり「!?」
結衣「ご、ごめん!」
え?
なんで謝るの?
やっぱりこういうの、変なことなの?
あかり「こ、こっちこそ」
結衣「気持ち悪いよね、はは」
!?
いま
いまなんて言ったの?
あかり「気持ち・・・悪い?」
結衣「ほ、ほんとにごめん」
お願いだから
何回も謝らないでよ
気持ち悪いなんて思わないでよぅ
■映画館ロビー■
あかり「・・・・・・」
どうしよう
気持ち悪いって思われてる
どうすればいいんだろう、うぅぅ
結衣「どうした?気分でも悪くなった?」
あかり「そ、そんなことないよ、あはは」
嫌われたくない
結衣ちゃんに嫌われたくないよ
結衣「あの、さっきのことだけどさ」
!!!
あかり「ごめん結衣ちゃん、やっぱり調子悪いみたい」
あかり「先に帰るね!」
逃げよう
いまは少しでも早く、逃げよう
でないと
泣き顔・・・見られ・・・ちゃうよ
■あかり自宅■
あぁ
今日の朝は、あんな幸せな気持ちだったのにな
急降下しちゃったよ
プルルルルル
あ、電話
お姉ちゃん・・・はお風呂か
あかり「はい、もしもし」
結衣『あ、あかり』
!!!
あかり「・・・結衣ちゃん」
結衣『その、大丈夫だった?』
あかり「うん、心配かけてごめんね」
結衣『そ、そっか』
結衣『あの、さ』
どうしよう
言葉が出て来ない
なにか言わなきゃ
なにか
あかり「結衣ちゃん」
結衣『な、なに?』
あぅ
涙が出てきた
声で泣いてるってわかっちゃう
また
気持ち悪がられちゃうよぅ
あかり「もう遅いから、また明日」
結衣『そうだね、おやすみ、はは』
逃げた
また逃げちゃった
あかり「わたしの意気地なし」
わたしは大声で泣いた
お風呂から出てきたお姉ちゃんの慌てぶりからすると
すっごい泣き方だったんだろうって思う
こうして
バカなわたしの初恋は終わった
~TRACK03:二人~
■あかり自宅■
あかり「はぁ」
学校行くのがこんなに憂鬱になるなんて
思わなかったよ
さぼっちゃおうかな
さぼりなんてわたしのキャラじゃないけど
あはは
あかり「いってきます」
ガチャ
あかり「!?」
結衣「おはよう」
あかり「結衣ちゃん、どうして」
結衣「謝ってもらいに来た」
あかり「え?」
結衣「わたしは意気地なしなんかじゃないから」
結衣「いまから、それを証明する」
あかり「意気地無しって、え?」
結衣「いくら嫌われても、いくら気持ち悪く思われて言う」
あかり「な、なにを?」
結衣「あかりのことが好きだ」
あかり「!?」
結衣「たとえこれで避けられたって、口を聞いてくれなくなったって」
結衣「この気持ちは譲らないから」
あかり「・・・・・・」
結衣「・・・・・・」
あかり「・・・すごいね」
結衣「え?」
あかり「すごい勇気だよね、さすがわたしのおやびんだよ」
結衣「・・・あかり」
あかり「でもね」
あかり「意気地無しって、わたしに言ったことなんだよね、あはは」
結衣「な、なにぃぃぃぃぃ!?」
あかり「だから謝らないもん」
結衣「う・・・謝りなよ」
あかり「やだよ、逆にこっちが謝って欲しいくらいだもん」
結衣「なんでさ」
あかり「だって、わたしの言いたいこと、み~んな言われちゃったから」
結衣「は?それってどういう・・・」
あかり「さぁ結衣ちゃん、学校いこ♪」
結衣「待ってあかり、いまのどういう意味!?」
あかり「さぁ?」
結衣「ちょっと、あかりぃぃぃぃぃ!」 おしまい
あかり「ちゃんちゃん♪」
あかり「どうだった、どうだった?この紙芝居!」
結衣「どうだったって」
結衣「長いよ、京子なんか寝ちゃってる」
京子「zzz」
あかり「ひどい!?」
ちなつ「あかりちゃんがヒロインぶってて、すっごくムカツク」ぼそぉ
あかり「ちょっとぉ!そゆことは心の中だけで言ってよぉ!」
ちなつ「ちっ」
あかり「舌うちまでっ!?」
京子「むぅ、うっさいなぁ・・・人が寝てるのに」
あかり「京子ちゃん、紙芝居!あかり紙芝居やってたんだよ!?」
京子「あ~、そうだっけぇ・・・おやすみ」zzz
ちなつ「わたし口直しに飲み物買って来ます」
あかり「ちょっとぉぉぉ!」
がくっ
結衣「まぁまぁ、わたしはちゃんと見てたから」
あかり「うぅ、やっぱり優しいのは結衣ちゃんだけだよぉ」
結衣「それはそうと」
あかり「ん?」
結衣「ずいぶん内容きわどいじゃない」
結衣「バラしちゃうかと思ってヒヤヒヤしたよ」
あかり「だって、最近さぁ」
結衣「わかったよ、映画連れてけってことだろ?」
あかり「ちゃんと手も繋いでね」
結衣「わかった、わかった」
あかり「えへへ、だから結衣ちゃん好き♪」
END
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