まゆり「まゆしぃね、ほんとはクリスちゃんのことうらやましいよ…」 (99)

タタタタタッ…ガチャ

まゆり「トゥットゥル~♪おはよーう!オカリンオカリン!これね、レイヤーのふぶきちゃんから…」


ダンッ!!


紅莉栖「だからッ!私はあんたの助手じゃないと言っとろーが!」

岡部「朝っぱらからキャンキャンとうるさいぞクリスティ~ンナッ!この俺は徹夜明けで疲れているのだ、黙って朝飯を買ってこい!」

紅莉栖「うるさいのはどっちだ!徹夜明けで疲れてるのは私も同じよ!というかあんたは大して働いてないでしょ!」


まゆり「…………ッ、」


岡部「俺はお前の実験に付き合わされたのだ、本当は打ち切ってもよかったところをお前が勝手に徹夜に持ち込んだのではないか!」

紅莉栖「はあ!?誰のためにやってるのかわかってる!?よくそんなんでラボの……って、あら、まゆり」


まゆり「えっへへ~、クリスちゃん、オカリン、トゥットゥル~♪」

岡部「おお、まゆりか。今日は随分と早いな」

まゆり「………、二人とも朝から仲良いねえ~。」

岡部「ハッ…何を馬鹿なことを言っているのだまゆりよ、夜通しこの実験大好きッ娘に振り回されてうんざりしていたところだ」

紅莉栖「それはこっちの台詞よ、夜通し口ばっかりで役に立たないこいつにうんざりしてたところよ」

まゆり「……二人ともツンデレさんだねえ、まゆしぃには二人がお似合いだってわかっているのです♪」

紅莉栖「へあっ!?ほ、ほんとに何言い出すのよまゆりってば、私はただ…っ、」

まゆり「えっへへ~、いいんだよお、クリスちゃん♪なんだかんだ言って、いっつも二人でガジェットさん作ってるもんね」

岡部「じ、助手が我がラボの開発に協力するのは当然のことだからな!」

紅莉栖「だから助手ってゆーな!」

岡部「と言うことでじょぉしゅぅよおぉ~、朝飯をかっ…」



まゆり「本当に仲良しさんだよね、オカリンと紅莉栖ちゃん。紅莉栖ちゃんのおかげでラボはすっごく賑やかになったもんね」プルプル…


岡部「……まゆり?」


まゆり「最初はオカリンとまゆしぃの二人だけだったのにね。その頃はすごく静かだったのに…」

まゆり「オカリン、今はすごく生き生きしてるよね」

まゆり「まゆしぃ、わかってるんだ」

紅莉栖「ちょっと、まゆり?どうしたの?」

まゆり「……グスッ…まゆしぃね、クリスちゃんのこと大好きだよ」

まゆり「……本当だよ…」


岡部「おい、まゆり…」

ドサッ
ダッ…ガチャ、バタン


まゆり(まゆしぃ、嫌な子だ……)

まゆり(でも、まゆしぃは……)

岡部「まゆり………ん?これは…『うーぱまんじゅう』?」

紅莉栖「まゆり、これを届けにきたのね」

岡部「……………」

岡部(あいつは前からしきりに自分がラボの役に立てないと気にしていたからな…)

岡部「助手よ、お前はもうホテルに帰って休め、俺は少し出てくる」

紅莉栖「ええ…」


紅莉栖(きっと私が、あの子の居場所を奪ってしまったのね…)

紅莉栖(でもまゆり、あなたは私以上に岡部にとって大切な存在のはずよ)

紅莉栖(でも…きっと、そういうことじゃないのよね……)

タッタッタッタッ…

プルルルルル…ガチャ
「トゥットゥル~、まゆしぃでーす」

岡部「まゆりっ、」


「今電話に出られません~…ご用の方は、メッセージをどうぞ~♪」

岡部「留守電か……」




ダル「おっ?オカリーン、どしたん?僕これからラボで昨日攻略しきれなかっ」

岡部「おいダル、まゆりを見なかったか?」

ダル「え?まゆ氏?まゆ氏ならさっきすれ違ったお」

岡部「どこへ行くと言っていた?」

ダル「どこも何も、オカリンと牧瀬氏の朝飯買いに行ったんしょ?」

ダッ…

ダル「ちょ、なんなんだお、意味不なわけだが」

岡部「くっ…どっち方面に行ったのかすらわからんしな…」ハァハァ…


岡部「い、息が、切れ、て、きたぞ…」ハァ、ハァ…


岡部「あいつはああ見えて俺よりも足が速いからな…しかし…」

岡部(あいつがわざわざ朝早くからラボまでまんじゅうを届けにきたのなら…)


プルルルルル…

フェイリス「きょーま?フェイリスだにゃん!朝からどうしたニャ?」

岡部「すまんな、フェイリス。今日まゆりはメイクイーンのシフトに入っているか?」

フェイリス「まゆしぃなら今日は朝から入ってもらってるニャ!今日はイベントがあって忙しいんだニャ~、フェイリスも封印されし究極の…」

岡部「助かったぞフェイリス!」

フェイリス「ニャニャッ!?」

ガチャリ


岡部「まゆりのことだ、バイトを休んだりはしないだろう、メイクイーンの近くにいるはずだ……」

ラボができたばかりの頃。
ラボには俺とまゆりしかいなかった。

何をするわけでもなく。
特別な会話があるわけでもなく。

ただ、まゆりはいつもラボに居た。
ただそこに居た。

まゆりは、そういう存在だ。

その存在の大切さは、今でも変わらない。

岡部「まゆりは、あのままの方が良かったと言うのか…?」

ダルがラボメンになり、そして紅莉栖がラボメンになり。
時が経つにつれ、ラボの中でも、俺の中でも紅莉栖の存在は確かに大きくなっていった。
でもそれはまゆりも……

岡部「そうだ、まゆりも賑やかになったラボでいつも楽しそうにしていた……」

岡部「やはり、あいつにはラボの役割としての自信がないのだな…」

メイクイーンの近くのどこか



まゆり「まゆしぃ、ラボが賑やかになって、オカリンも楽しそうになって、本当に嬉しいんだよ…」

まゆり「そのはずなのに……」


まゆり「でもまゆしぃ、オカリンと二人だけのラボも好きだったんだ……まゆしぃが人質でいられる時間が、ずっと…」

まゆり「ずっと続いてほしかったのかもしれないね…」


そうしたら、安心だから。

今よりオカリンが寂しそうでも、
今よりオカリンが寂しそうなら、

まゆしぃはずっと人質でいられる。



まゆり「でもそんなの、本当にオカリンのこと大事だったら、そんなの、違うんだよね……」

まゆり「まゆしぃは必要ないんだよね…もう、人質じゃなくっても、」

岡部「そんなことはないぞ」


まゆり「……オカリン…」

岡部「お前は自分が役に立たないだとか、ラボに不要だとか馬鹿なことを考えているようだが、それは全く杞憂というものだな」


まゆり「…オカリンはいつも、まゆしぃのことを見つけてくれるよね。昔から、まゆしぃが苦しいときはそばにいてくれる」

まゆり「まゆしぃのこと、大事に思ってくれてる」


岡部「その通りだ。助手は確かに今じゃラボになくてはならない存在だ。だがなまゆり、お前だってなくてはならない存在なんだ」

岡部「お前はただ、ラボに居てくれればそれでいいんだ」




まゆり「………そういうことじゃないんだよ」

岡部「む?」

まゆり「まゆしぃね、クリスちゃんのこと大好きだよ」

まゆり「でも、ほんとはクリスちゃんのことうらやましいんだ…」

まゆり「オカリンはきっと、クリスちゃんが難しいことたくさん知ってて、ラボの役に立てるからだって思うよね」

まゆり「まゆしぃは馬鹿だからなんにもわからない、ラボの役に立てない」

まゆり「だからだって、思ってるんだよね」


岡部「あ、ああ…」


まゆり「違うよ」

まゆり「まゆしぃね、わかってるんだよ。オカリンにはクリスちゃん、クリスちゃんにはオカリン」

まゆり「二人がお互いをどう思ってるかって」


岡部「…………」

まゆり「まゆしぃを大事に思ってくれてるのと、まゆしぃをラボに居ていいって思ってくれてるのと、違うよね。クリスちゃんに思ってる気持ちは、まゆしぃのとは違うよね」

まゆり「オカリンがまゆしぃに思ってくれてる気持ちはね、まゆしぃが欲しい気持ちじゃないんだよ」

まゆり「どうしてかな?まゆしぃが難しいことが何もわからないからなのかな?クリスちゃんみたいに、大人っぽくないからなのかな?」

岡部「…………」

まゆり「だって、だってまゆしぃは昔からオカリンと一緒にいるのに。クリスちゃんよりずっと、オカリンのこと知ってるのに」

まゆり「どうして、まゆしぃじゃダメなのかな…?」


岡部「…だからこそ、かもしれんな」

岡部「お前はいつも、ただ俺のそばに居てくれた。俺も、お前を守ってやりたいと思ってきたんだ。俺にとってお前は………」



まゆり「オカリン!!!!!」


岡部「ッ!」ビクッ



まゆり「そういうんじゃないって、言ってるのに!なのに、なのに……」グスッ…


まゆり「だからオカリンはまゆしぃに優しいんだよね、オカリン、まゆしぃにはすっごく優しいよね」

まゆり「でもそれが……」

まゆり「時々、すっごく寂しいのです…」

岡部「……まゆり」

岡部「お前は、俺の人質だ」

岡部「いつまでも、俺の人質なんだ」

まゆり「………そっかあ、

まゆしぃは、オカリンの、人質なんだね。


それじゃあ、仕方ないね……」





あの日のように、そう呟いて。
まゆりは空に手を伸ばした。スターダストシェイクハンド。

そうしているまゆりを見ると、いつも、まゆりが消えてしまうんじゃないかという不安と焦りが生まれる。


岡部(でも、俺は………)


岡部(まゆりを抱き締めてやる資格なんて、なくなってしまったのだろうか……)


これから先、まゆりに優しくすることは、まゆりを傷つけることになるのだろうか。



まゆり「ねえ、オカリン」

岡部「……?」

背を向けていたまゆりが、こちらを振り返る。

まゆり「オカリンはね、まゆしぃの彦星さまだよ」

まゆり「手が届かなくってもね、まゆしぃは、ずっとお星さまを見てるんだよ。昼も夜も、晴れの日も、雨の日も。お星さまはね、そこにあるんだよ」


目にうっすらと涙を浮かべたまま、まゆりは微笑んだ。


まゆり「だからね、まゆしぃは、きっと大丈夫なのです」


fin

だめだもう思い付かん
終わりにしますすみません
支援ありがとうございました

一週間後

紅莉栖「ねえ岡部、あの日以来、まゆり一度もラボに来ていないけど…」

岡部「ああ……」

紅莉栖「あれから、連絡は…?」

岡部「いや……」

紅莉栖(心配だけど……私から声をかけたって、きっと逆効果よね…)

トントン…ガチャ

るか「あ、あの…こんにちは…」

紅莉栖「あら、漆原さん。久しぶりね」

るか「はい、お久し振りです…」

岡部「ああ…、るか子か。どうした?浮かない顔をして」

るか「あの…今日はおか…狂真さんたちに、お訊きしたいことがあって…」

岡部「…なんだ?言ってみろ、るか子よ」

紅莉栖「………」

るか「はい…あの、まゆりちゃんのことなんですけど…」

紅莉栖(やっぱり、か…)

岡部(まゆり、あのことをるか子に話したのだろうか…)

岡部「まゆりがどうしたのだ?」

るか「はい…学校で夏期講習があったんですけど、まゆりちゃん、一度も来ていないんです…
一緒に宿題をやろうって約束も、急に出来なくなった、って言われて…」

紅莉栖「まゆり、なにか理由を言っていた?」

るか「いえ、何も…心配で一度電話をしたんですけど、大丈夫だからって繰り返すだけで…」

るか「なんだか落ち込んでいる様子だったので、何かあったのかと心配で…ラボには来ているかもしれないし、岡部さんたちなら何か知っているかと思って…」

岡部「…………」

るか「……何か、あったんですね…」

岡部「ああ…、すまないな、俺が原因だ…」

るか「…詳しいことは聞かない方が良いとは思いますけど、僕に何かできることがあれば…」

岡部(まゆりを励ましてやってくれ、なんて、そんなこと俺が言えたものではないな…)

岡部(そもそも、あいつはるか子にも相談せず一人で閉じ籠っているのだ…)

紅莉栖(………岡部…)

トントンガチャッ!

バタン!

フェイリス「きょーまっ!?一体全体どういうことニャッ!?」

岡部「フェ、フェイリス!?どうしたのだ、そんなに興奮して…」

フェイリス「どうした、はこっちの台詞ニャ!落ち着いてなんていられないニャ!」フー!フー!

フェイリス「まゆしぃに何があったのかニャ!?」

岡部「ま、まゆりに何かあったのか!?」

フェイリス「それをこっちが聞いてるんだニャ!どうしてまゆしぃはメイクイーンを辞めるのニャ!?」

岡部「まゆりが…!?メイクイーンを辞める…だと…!?」

フェイリス「知らなかったのニャ!?イベントの日の仕事が終わって以来、まゆしぃはずっと欠勤してるニャ!まゆしぃが理由も話さずに休むニャんて、それだけでも心配ニャのに~…」

フェイリス「昨日、突然辞めるって連絡があったんだニャ…」

岡部「そんな……ことが…」

フェイリス「きょーまも事情を知らないのかニャ…?フェイリスはてっきり、きょーまなら何か知ってるのかと……」

紅莉栖「フェイリスさん、まゆりはメイクイーンを辞める理由は何も話さなかったの?」

フェイリス「具体的な理由は何も聞いてないニャ。だから心配してるんだニャ!まゆしぃはご主人様たちにも人気だし、メイクイーンでのお仕事を楽しんでくれてると思ってたのに…」

フェイリス「それニャのに、もうアキバには来たくニャいニャんて……」

紅莉栖「えっ…?」

岡部「アキバには来たくない…!?まゆりがそう言ったのか!?」

フェイリス「そうニャ…まゆしぃはアキバが嫌いになったのかニャ…?そんなの悲しいニャ……」

岡部(まゆり…フェイリスにも何も話さず、メイクイーンまで辞めるだと…?)

岡部(しかも、アキバには来たくない…?まさかあいつ、このまま……)

るか「岡部さん……まゆりちゃんと、何があったんですか…?」

岡部(そんなはずは、そんなはずはない!あいつはいつだって、そうだ、今までも、これからも、俺のそばに……)

フェイリス「きょーま…?」

紅莉栖(…………岡部)



ドタドタドタ…ガチャッ

ダル「ふいぃ~、オ、オカ、オカリ、オカリ、」ゼーハーゼーハー

岡部「な、なんだダル、むさ苦しいな、」

ダル「で、デブの発汗なめんなお!急いで走ってきたんだお、少しは労るべき!」フゥ、フゥ、

フェイリス「ダルニャン、お水どうぞだニャ」

ダル「おお~、フェイリスたん!?なんでラボにいるんだお!?サプライズすぐる~!しかも疲れてる僕に真っ先に水を差し出すとか、流石はフェイリスたんだお!」ゴキュッゴキュッ

岡部「そ、それで、どうしたのだ?ダルよ」

ダル「ふいぃ~生き返ったお~。そうだお!オカリン、まゆ氏に何かしたん?喧嘩したなら一刻も早く謝るべきと思われ!」

岡部「………まゆりに、何か、言われたのか…?」

ダル「さっきまゆ氏からメールがあったんだお。もうラボには来れないって」

岡部「そんっ……な…馬鹿な……」

ダル「僕も驚いたけどさ、オカリンと牧瀬氏には僕から伝えてくれって。それ以降返信しても返って来ないんだよね」

岡部(嘘だろ…?そんなはずはないんだ、だってあいつは、まゆりは、言ったんだ!)

岡部(ずっと俺を見ていると!俺の人質だと!だからまゆりは!)

岡部(いつだって笑って、いつまでだって…俺のそばを離れるはずが……)


岡部「は、ハハ…ハハハハハハ…!」


ダル「お、オカリン…?」

るか「岡部さん…?」

フェイリス「きょーま…?」


 

岡部「俺はなんて勝手な奴なんだろうな……なんて愚かなのだ……!」

何を言おうと、どんなことをしようと、人質であるあいつは俺から離れない?

今までずっと、そのことで安心しきっていたのは、俺の方ではないか!



紅莉栖「……岡部。行きなさい」

岡部「紅莉栖……」

紅莉栖「まゆりは、私たちを見て、わかってる、って言ったわよね。でも私は、その先の、本当にあるべき形をわかってる」

紅莉栖「私はあの日の結果を、素直に受け入れていなかったのよ。それはまゆりに申し訳ないとか、そんなんじゃないわ」

紅莉栖「きっとまゆりには勝てない、ううん、はじめからどちらが共にいるべきかわかってたもの、そんな気持ちすらなかったのかもしれない」

紅莉栖「あんたたち二人が積み重ねてきたもの、それが当たり前すぎて気付かなくなっていたのよ」

紅莉栖「本当の答えがわかったのなら、今からでも遅くないわ」

岡部「ああ……ありがとう、紅莉栖」


ダダダダッバタン!


紅莉栖「……ふう」

フェイリス「なーるほどニャあ。そういうことだったんだニャ」

るか「牧瀬さん…、素敵です…」

紅莉栖「ふふ、サンクス、漆原さん」

ダル「えっ?えっ…?どういうことだお?」

フェイリス「悔しいけど、きょーまとまゆしぃは、めでたくリア充ってことだニャン」

ダル「なぬー!?なんだおその急展開!爆発しろお!!!」

タッタッタッタッ…

岡部「ハァ、ハァ……まゆり……!」

まゆりがいなくなるなんて、考えもしなかったこと。

だから、気付けなかった。

大切だ大切だと思いながらも、こうして失いかけないと、気付けなかった種類の気持ち。

岡部「俺は…ッ、まゆりが………!」

幼馴染みとして。家族のような存在として。ラボメンとして。そして、一人の女の子として……

岡部「誰よりも失いたくない存在なのだ……!」

まゆりに連絡をして確認を取ったわけではない。
それでも、今までまゆりと積み重ねてきたものが自信となり、俺は迷うことなくその場所へ向かった。

まゆりの祖母の墓。


まゆりはそこに一人立っていた。
空を見上げて、高く手を伸ばして。

一秒でも早く、まゆりのところへ。
俺は全力で駆け寄り、今にも消えてしまいそうなまゆりを、


岡部「ーーーまゆりっ!!!」

まゆり「オカ……リン…?」


きつく抱き締めた。

まゆり「オカリン……?なんで?なんで…?」

岡部「まゆり、すまなかった…一人にして、すまなかった」

岡部「お前に笑っていてほしいのに、笑顔でそばにいてほしいのに、それを俺が壊してしまった」

まゆり「なんで、オカリン、だって、まゆしぃは……」

まゆり「まゆしぃ、我慢しなきゃって。オカリンとクリスちゃんのこと、応援しなきゃって。でも、でもどうしても苦しくて……二人の姿を見るのが、つらくて…」

まゆり「嫌な子だって、わかってた。でも、どうしてもダメだったから…」

まゆり「それに、オカリンはもうまゆしぃがいなくてもきっと大丈夫だから、まゆしぃがいなくなれば、オカリンも、クリスちゃんも、気を遣うことないでしょ…?」

岡部「違うんだ、まゆり、お前がいなければ駄目なんだ」

岡部「お前が安心して俺のそばにいるであろうことに、俺は安心していたんだ」

岡部「誰よりも、お前が大切であり、失いたくないんだ」

まゆり「オカリン……ほんとに…?」

岡部「ああ。気付くのが遅くなって、ごめんな…まゆり」

まゆり「グスッ…でも、でも…、」


涙声で何かを言おうとするまゆりの言葉を俺は遮り、



岡部「お前は、俺の人質なんだ…!人体実験の、生け贄なんだ…!そして…」

岡部「これからは、俺の恋人なんだ…!手放すことが、あってたまるか!」


そう言い切った。




まゆり「そっかあ…

まゆしぃは、オカリンの、人質なんだね。

………まゆしぃは、オカリンの、恋人なんだね。

それじゃあ、仕方ないね。」


まゆりは、目にうっすらと涙を浮かべたまま、笑顔でそう言った。


fin

今度こそ終わりにしますすみませんでした

数日後

ブラウン管工房前



鈴羽「あっ!おーい、橋田至ー!」

ダル「おっ、阿万音氏じゃん!最近ブラウン管工房閉まってたっしょ、阿万音氏の姿も見なかったけどどしたんー?」

鈴羽「いやー、店長と綯が旅行行ってて店閉めてたんだよね。本当は様子見に来るように頼まれてたんだけど、こんな店に泥棒なんて来るわけないしさー、あはは」

ダル「そ、それバレたらまずいんじゃね?」

鈴羽「へーきへーき!それよりさ、橋田至!あの二人、どうなってるわけ?」

ダル「あの二人?なんのこと?」

鈴羽「岡部倫太郎と椎名まゆりだよ!昨日さ、見ちゃったんだよね~、なんか今までと違う様子でさ、二人で手なんか繋いじゃってたよ!」

ダル「うおー!手繋ぐとかエロすぎだろ!!!うらやまけしからん!」

鈴羽「えっ、二人ってそういう関係なわけ?あたし全然知らなかったんだけど!」

ダル「まあいろいろあってそういうことになったらしいお」

鈴羽「へえ~、やるねえ、岡部倫太郎!」

ダル「阿万音氏もどう?僕はいつでもウェルカムなわけだが」

鈴羽「あっ、あれ、桐生萌郁じゃない?おーい!」

ダル「ぐはっ、スルーかお!だがそんな冷たさがたまらんおお!」


萌郁「………今日は……これ……スクープを………」

鈴羽「んっ?なになに?写真?」

ダル「ん?写真?」

カツカツカツ

紅莉栖「ハロー。ちょっとみんな、なにそんなところに群がって…」

萌郁「…アツアツな……二人を激写……」

鈴羽「わーお…」

紅莉栖「oh...!」

ダル「うおおおおおおお!!!!オカリンの奴、調子乗りやがって!!!許さない、絶対にだ!!!」



鈴羽「あ、噂をすれば……」

トットットッ…


まゆり「トゥットゥル~♪みんな何してるの~?」

岡部「なんだ、お前たち、そんなところで……………ん?」


鈴羽、紅莉栖「………………(ニヤニヤ)」

萌郁「………………(カチカチ」

ダル「オカリン、別世界の住人になったオカリンを僕は許さないお!末長く爆発しろおおお!」

岡部「い、一体なんだと…む、メール?シャイニングフィンガーか」

萌郁『もっと早く報告してくれればいいのに~、岡部くん、水くさいぞっ♪【キス写メ添付】』


岡部「な、な、なんてことを…っ!」

まゆり「えっへへ~、まゆしぃ恥ずかしいのです…♪」


おしまい

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