【シュタゲSS】ラボに帰ると紅莉栖が真っ赤だった (19)

初SSです。大目に見てください。
赤面必至のゴシップの続編みたいなものですが、まぁ聴かなくても大丈夫なはず。
展開まったく考えてないから期待しないで。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419853976

2011年の8月某日――、灼熱の秋葉原を歩いている。
額から零れ落ちる汗は、漆黒のアスファルトと交わり、消える。
例え完全に存在が消えなくとも、誰の目にも見えなくなれば、それは消えたのと同じだ。
それを身をもって知っているからこそ、俺は今をこうして――。

まゆり「ねーねーオカリン。今気付いたんだけどね、オカリンの白衣、袖のところ破れちゃってるよ?」

む、せっかく俺が感傷的な気分に浸っているというのに。だがしかし、確かに見てみると、少し袖が破れているようだ。
そう思った瞬間、突然一つの情景が、頭の中に浮かんだ。


コインランドリー……紅莉栖……ソーイングセット……白衣……。


一体、これはなんだ?
α世界線で、紅莉栖にラジ館で白衣を縫ってもらった覚えはあるが、コインランドリーで縫ってもらった記憶などないのだが。

まゆり「どうしたの? オカリン、大丈夫?」

心配そうに、まゆりが俺の顔を覗き込む。
人質の分際でこの俺を心配しおって。

岡部「フッ、何の問題もない。さぁまゆり、ラボへの道を急ぐぞ」

まゆり「了解なのです」

今日も俺はこうして生きている。
隣で、まゆりが笑っている。
そしてラボに帰れば――そこには、紅莉栖がいるのだ。

まだ、誰も死んでいない。シュタインズゲート世界線で――。


そう、この時の俺は、考えてもいなかったんだ。
まさか、まさかだぞ。信じられるか、いや、そんなはずはない。
こんなことが予測できてたまるものか。

まさか、まさか……ラボに帰った瞬間に、紅莉栖から、真っ赤な顔をして「お帰り、倫太郎」と言われるなんて――。


岡部「なっ、なっ、なっ、何を言うか!! 気でも狂ったかクリスティーナッ!!」

まゆり「うわー、ラブラブさんだねぇ。あ、フェリスちゃんにダルくんに萌郁さん! トゥットゥルー!」

フェイリス「まゆしぃに狂真! 遅かったのにゃ!」

岡部「猫娘! 貴様の仕業だな! でなければ助手はこんなこと……」

フェイリス「にゃにゃ? にゃんのことかにゃー? それに、最終的に言ったのは、クリスティーニャンの意思なのにゃー!」

ダル「そーだお! フェイリスたんを責めるなんて、僕が許さないお!!」

くっ……、ついに猫娘とピザヲタの手中に落ちてしまったか、天才変態少女よ。
ということは、すでにあんなことやこんなことまで……。

紅莉栖「何もされとらんわ! というか誰が変態だ!」

岡部「おやぁ? 一体何のことを話しているのだあ? 一体何を想像したのか、ご高説願おうではないかぁ」

紅莉栖「そのネタは何回目だ! と、と、というか、お、おかえりって言ったんだから、言う言葉があるだろーが!!」

なおも顔が真っ赤な紅莉栖。正直、ちょっと――いや、だいぶかわいい。

岡部「え、あ、お、おぅそうだなぁ。た、ただいま帰ったぞ、助手ぅ」

紅莉栖「誰が助手だ誰が!!」


まゆり「ちょっとオカリン? 紅莉栖ちゃんが頑張って名前で呼んだんだから、オカリンも呼んであげなきゃだめだよぉー」

フェイリス「まゆしぃの言うとおりなのにゃ! 凶真、さぁその名を呼ぶのにゃ!」

紅莉栖「へっ? べ、別に、私は名前で呼んでほしいなんて、思ってなくもないこともないこともないけど……」

ダル「キター! 牧瀬氏のデレキターーー!」

紅莉栖「う、うるさい橋田!」

岡部「ふん、お前らが何と言おうと、俺は聞かぬぞ。何と言っても、この俺は、狂気のマッドサイエンティストなのだからな! フゥーハハハ!!」

とは言ったものの、少し呼びたかった気がせんでもない。
が、そんな素振りは見せてはならない。こいつらにそんなところを見せたが最後、奴らと小一時間話をしなければならなくなるだろう。


すると、さっきまで赤面だった紅莉栖が、ふと真剣な目に戻り、俺の方を見てきた。
いや、正確には、俺の白衣を見てきた。

紅莉栖「あれ、また破れてる……?」

また……だと?
まさか、紅莉栖はα世界線でのことを覚えているというのか?
あの雨の日のラジ館でのことを――。

しかし、すぐに紅莉栖はハッとしたように、

紅莉栖「そうか、あれはなかったことに……」

とつぶやいて、俺の方に手を伸ばしてきた。

岡部「い、一体何の真似だ」

紅莉栖「失礼ね、ほら、白衣貸しなさい。袖のところ、縫ってあげるから」

岡部「あ、あぁ。すまない」

そういいながら白衣を紅莉栖に渡すと、紅莉栖はソーイングセットを取り出し、ソファに腰かけ、俺の白衣を縫い始めた。

ダル「うはーー! 突然の夫婦劇が始まるなんて、リア充爆発しろーー!」

フェイリス「あれ、ダルニャンがそれを言うのかにゃ?」

ダル「あ、いや、話戻さなくて結構です。マジサーセンした」


岡部「ふむ、しかし、白衣を脱ぐと、どうにも落ち着かんな。はて、余りの白衣はあっただろうか」

そういって、白衣を探そうと一歩足を出したとき、急に紅莉栖が立ち上がり、またも顔を赤らめた。
一体なんだというのだろうか。

紅莉栖「岡部、そこを動くなよ!」

そういうと紅莉栖は、何やら自分の鞄の方まで走り、ゴソゴソと探り、そうしてまた俺の方を向いた。

紅莉栖「そ、そ、それなら、こ、これを着ても、い、いいんだぞ」

そういいながら紅莉栖が差し出したのは、白衣だった。

岡部「これは……?」

紅莉栖「た、たまたまサイズが余ってたから、もらってきただけだから! べ、別にあんたが喜ぶプレゼントはなんだろうなーって考えたりとか、そんなことで悩んでる時にあんたとイチャイチャする想像をしてたりとか、そんなことないから!!」

ダル「うわぁ……」

フェイリス「クーニャン……」

まゆり「かわいいねえ紅莉栖ちゃん。まゆしぃはとっても笑顔なのです」

萌郁「……。……、……」

岡部「そ、そ、そういうことなら、まぁ、貰ってやらんこともないがな。あ、ありがたく頂戴するとしよう」

そういうと、紅莉栖は赤面しながら、また白衣を縫い始めた。
だが、その顔はどこか笑顔だったような気がする。


萌郁「私……そろそろ……バイト戻らないと……」

萌郁が、相変わらずのボソボソ声で言った。
メールでなく、言葉で話している分、以前よりは成長している……のか?

岡部「ふむ、そうか。また、いつでもラボを訪れるがいいぞ?」

萌郁「……ありがとう」

まゆり「萌郁さんまたきてねー!」

まゆりの元気な声を背中に、萌郁は下のブラウン管工房へと戻っていった。
にしても、まさか萌郁がミスターブラウンの元でバイトをしているとは……今でも、少し、驚きがある。


フェイリス「ニャニャ! そういえば、ダルにゃんの話のせいで、すっかり忘れてたけど、もうひとつ聞きたいことがあったのにゃ!」



岡部「ん? 一体ダルに何を聞いていたというのだ?」

紅莉栖「阿万音さんとのことを聞いていたのよ……よし、できた。白衣、ここに置いておくわよ」

そういいながら、紅莉栖は縫い終わった白衣を机の上に置いた。
いやしかし、ダルと阿万音由季のことか。
そうえいば、最近ダルがついに阿万音由季と知り合ったと聞き、萌郁に情報を入手しておくよう言っておいたのだった。
何と言っても、鈴羽の誕生にかかわるのだからな。

ダル「それで、聞きたいことって、なんなん?」

フェイリス「それはズバリ、凶真とクーニャンのことなのにゃ!!」

紅莉栖「わ、私と岡部??!! そ、その話なら、さっきしたじゃないの!」

岡部「な、なに! 勝手に何を話したのだ! このスイーツ(笑)め!!」

紅莉栖「だ、誰がよ!? っていうか、別に何も話してないからあ!」

フェイリス「まぁまぁ、夫婦喧嘩はいいとして、フェイリスが聞きたいのは、そう、あの空白の時間のことなのにゃ」

岡部「空白の時間……だと?」


岡部「それはまさか、あの七選帝侯を破った後、消息不明となり過ごした、あの日々のことか!?」

フェイリス「違うニャ」

うぐっ……いつもならフェイリスがのってきて、かわせるというのに。
こういうときだけ真面目ぶりおって。

フェイリス「ふっふっふ、フェイリスは見ていたのにゃ。あの、屋上でのバーベキューパーティの夜、突然どこかへ行ったクーニャンの後を追いかけて行った、凶真の姿を!!」

岡部「なっ! あ、あれは……ちがっ……」

フェイリス「ハッ! まさか凶真、あのまま夜のネオン街へと消えて、あんなことやこんなことを……ニャッ」

岡部「そんなわけあるか! この淫乱ピンクが! あ、あれはそういうのではなくてだな……」

紅莉栖「そ、そうよ。あれは、その、別に、変なことをするためじゃなくて……、そのたまたま……」

ダル「たまたま追いかけて、イチャコラするわけですね。分かります」

岡部「だぁー! 違うといってるだろうが! そんなんではなく、真面目な、崇高な話をしていたのだ」

フェイリス「じゃあ、変なことは何もなかったというんだニャ?」

岡部「あ、当たり前だろう。べ、別に何も……、あっ」

フェイリス「ん、その、あ、はなんだにゃ? もしかして、まずいことでも……」

岡部「べ、べ、べ、別に、な、何もないぞ! なあ紅莉栖」

紅莉栖「え、ええ。別にいろいろあって悲しくなった私が岡部に抱き着いたりとか、キスをしたとか、そんなことないから!」

フェイリス「ニャーー」ニヤ

ダル「つーか、オカリンが牧瀬氏のことをナチュラルに名前で呼んだ件」

岡部「ぐはぁ! く、紅莉栖! じゃなかった、助手! 何をいっとるんだ!」

紅莉栖「ちょ、岡部。動揺し過ぎよ。ここは動揺するとすべて真実だとばれてしまうわ。すべて冗談だったようにふるまうのよ。いいわね」

ダル「全部聞こえてる件」

まゆり「二人はとっても仲良しさんなんだねえ」


その後、俺たちは、ひたすらに尋問のような質問責めにあった。
フェイリスがひたすらに言葉を浴びせかけ、ダルが後ろからいちいち返答にツッコミをし、まゆりが楽しそうに微笑んでいる。

俺は、顔を激しく赤らめる紅莉栖の横で、必死に言葉を放ち続ける。
幸せで、平凡な日常が流れていく――。



それからしばらくして、夕刻になると、フェイリスはメイクイーンへと帰って行った。
いや、別にフェイリスがあそこに住んでいるわけではないが。
それにつられるというか、引っ付くような形で、ダルもメイクイーンへと向かう。
すると、まゆりも気を利かせたのか、ラボを出て行ってしまった。

かくして、ラボには、俺と紅莉栖の二人っきりになってしまった。


紅莉栖「ふぅー、みんな帰っちゃったわね」

といいながら、紅莉栖がこちらに寄ってくる。近づいてくる。ソファーに座っている俺の隣に腰を下ろす。密着してくる。若干体が触れ合っている。
でれでれかよ。

岡部「そ、そうくっつくではない! あ、暑いではないか!」

紅莉栖「あら、照れてるの?狂気のマッドサイエンティストさんも、なかなかかわいいわね」

岡部「なにぃ? この俺様にかわいいなどとは、笑わせてくれる!」

紅莉栖「さっきだって、せっかくおかえりって言ったのに……」

といいながら、俯き気味に顔を赤らめる紅莉栖。やばい、超かわいい。

岡部「そ、それはすまなかったな。だが、いきなり言われて、心臓が止まるかと思ったぞ」

と言いながら、紅莉栖の頭を優しくなでる。するとさらに頬を赤らめる紅莉栖。というか、にやけてるのバレバレだぞ。


岡部「そういえば……紅莉栖」

紅莉栖「なに? り ん た ろ う ☆」

岡部「お、お前! それをやめんか! それに最後の☆はなんだ!」

紅莉栖「ふふっ、冗談よ。で、何?」

岡部「あぁ、いや、さっきのことなのだがな。俺の白衣が破れているのをみて……また破れてる、と言わなかったか?」

そういうと、紅莉栖は少し黙り込んだ。
この、また破れている、という言葉。俺の記憶の中には、このまた、という言葉が指す状況は、あのα世界線のラジ館での出来事しかない。まさか、彼女は以前の世界線の記憶を、すべて取り戻してしまったのか――。

岡部「紅莉栖、まさか、α世界線のラジ館での出来事を、思い出したのではあるまいな……?」

だが、そういうと、紅莉栖の顔から張りつめたような緊張が解け、少し不思議そうな顔でこちらを見てきた。

紅莉栖「α世界線……? ラジ館……? ……なるほど、それがデジャブの正体ってわけね」

岡部「デジャブ? 一体何の話だ?」

紅莉栖「オーケー。説明するわ。実はね、私が一度タイムリープしてきた、っていうのはいいわよね?」

岡部「あぁ。たしか、シュタインズゲート世界線からR世界線へ飛ばされた俺の為に一度タイムリープをし、そこで鈴羽に会い、一度はタイムスリップを拒否したものの、結局実行。しかし俺は救えずに、さらにもう一度タイムスリップ。その結果、俺はR世界線へ飛ばされることなく、この世界線に留まることができている……だったな?」

紅莉栖「えぇ、ファーストキスの相手が私というのが、そんなに効いたのね」

そういうと、紅莉栖はニカッと白い歯を見せる。
だが、俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真。そんなものスルーするとしよう。


紅莉栖「それでね、その、タイムリープ前に、コインランドリーであんたに会ってね。そこでも、あんたの白衣が破れてたのよ。そこで、聞いた。前の世界線でも同じようなことがあったって」

岡部「そ、そうだったか……」

ほっとしたような、なんだか残念なような。いや、不必要な干渉を与えないためには、これでよかったのだろう。

紅莉栖「それで、そのときは、なんでラジ館なんかで縫ってあげたわけ? 人いっぱいいるんじゃないの?」

岡部「いや、その日は雨が降ってきてな。色々あって、ラジ館の中にも人はいないときだったのだ。あのころは大変だったぞ。紅莉栖が突然、下着びしょ濡れ宣言をしてだな……」

紅莉栖「なっ、そ、そんなことするか! このHENTAI!!」

岡部「いや、事実なのだがな」

そう、すべて事実だ。あの頃顔を赤らめた紅莉栖の姿も、怒っている顔も、すべて覚えている。
他の世界線の話をしてはいけない、そう頭では考えていても、つい口からこぼれてしまう。

岡部「そのあと、だな。何百回、何千回とタイムリープを繰り返してた頃、紅莉栖、お前に助けてもらったのは。本当に礼を言いたい。ありがとう」

だが、そういってから、俺は失敗をしてしまったことに気付いた。
そうだ、これはやってはいけないことだったのだ。

紅莉栖「……岡部は、やっぱり、前の世界線の私が好きなの? 牧瀬紅莉栖という、今の私を見てくれているんじゃないの?」

涙目になりながら、紅莉栖がこっちを見てくる。
しまった――そういう意味ではなかったのだが――。

岡部「いや、そういう意味では……」

紅莉栖「……ごめん」

そういうと、紅莉栖はラボから出て行ってしまった。

そのときに、ようやく、先ほどまでの晴れは姿をひそめ、しとしとと雨が降っていることに、俺は気付いた。

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