布団娘「えへへ、今日もお疲れ様」 (96)
男「あ~今日も残業。あのブラック会社め、定時にさっさと帰せよ。
それと無能糞上司たちも飲み会とか言って人に仕事押し付けてんじゃねえよ」
男「……はぁ、疲れた。とりあえず家に帰ってきたし、風呂は明日にしてさっさと寝よ」ガチャッ
布団娘「あっ……男さんが帰ってきたっ!」
男「つかれた~」ボフッ
布団娘「キャッ!? ちょ、ちょっと男さんってば帰ってきて急に倒れ込んでこられても……」テレテレ
男「ああ、布団娘……お前だけが俺の唯一の癒しだ」スリスリ
布団娘「ひゃっ、んっ、ッゥ……。そんな顔を胸元に押し付けないでください。
くすっ、ぐったい……」ビクビク
男「今日家を出る前にお前を太陽に当てておいて正解だったな~。いい匂いがする~」
布団娘「やぁッ……そ、そんなに匂いを嗅がないでください。この匂いは私についていたダニ汚れさんの残りカスで、私はまだ綺麗になってないのにぃ……」
男「そうか? けど、この汚れた匂いもまたそそるものがあるけどな~」
布団娘「――ッ! 男さんの変態! これは汗みたいなものなんですよ! その匂いを嗅いでそそるだなんて」カァァ
男「いい匂いはいい匂いなんだ。仕方がない……だろう」ウトウト
布団娘「もう……今日もお疲れなんですから早く寝てくださいよ」
男「うぅ……仕事してるからこうやって帰ってきてから眠るまでと朝起きてから少しの時間しか一緒にいられないのに……」コクリ、コクリ
布団娘「いいんですよ、それが私の役目なんですから。ほら、抱きしめてあげますから」ファサッ
男「ううっ、温かい。この暖かさで睡魔が……」スースー
布団娘「ふふっ、寝ちゃった。男さんってば寝つき早いですね。よっぽど疲れていたんでしょう。
さてと、こうして男さんが眠っている間に凝り固まった身体を少しずつ解して……」モミモミ
布団娘「むむむ……。今日は手ごわいですね、コリも酷いですし疲労も中々抜けていきません。体温も低いみたいですし……。
春になったとは言え、このままだと風邪を引きますね」ジーッ
布団娘「し、仕方ありません。ここは私の肌についている保温機能を上昇させてっと」ピトリ
布団娘「み、密着してますけれど疚しい気持ちはないんですからね! 本当ですよ、男さん!」
男「わかった……うん」ムニャムニャ
布団娘「キャッ! そんな、急に体勢を変えないでくださっ!? あっ、だめっ! そんなに抱きしめられたら私の身体火照っちゃいます」モフモフ
男「……スー、スー」ポカポカ
布団娘「やっ、ひゃんっ、ちょ、男さんどこ触って……いやあああああああああああ」
……
…
――翌朝――
チュン、チュン
男「はっ! やべっ! 今何時!? ……って、なんだまだ五時か。
あ~焦った。目覚ましかけずに寝て起きたから寝過ごしたかと思ったじゃねえか」ホッ
男「……って、布団娘そんなに隅っこに行ってどうしたんだ?」
布団娘「うっ、ううっ……。人のことを散々弄んでおいて、挙げ句の果てにはこんな隅っこに蹴っ飛ばしておいて言うことですか?」ウルウル
男「うっ……またやっちまったか。寝相悪いからな~俺」
布団娘「本当ですよ! せっかく私が風邪引かないように全身を包んであげていたのに。もうしりません!」プイッ
男「悪かったって。まだ時間あるし、今度はそんな風に乱暴にしないからさ。
ほら、もう一度一緒に寝よう? 今度は優しく抱きしめるから」
布団娘「本当……ですか? 私のこと蹴飛ばしませんか?」ジッ
男「しないしない。だから、おいで」
布団娘「む~。しょうがないですね。そこまで頼まれたら私も断れませんし……」スススッ
男「あ~布団娘はあったかいな」ギュッ
布団娘「えへへっ。そ、そうですか? そう言ってもらえると布団冥利に尽きますね」デレデレ
男「ヤバイ……さっそく眠くなってきたかも。風呂入らなきゃいけないのに」ウトウト
布団娘「お風呂はもう一眠りしてからでも大丈夫ですよ、きっと。まだ時間もありますし。
それに、なんだか私も眠く……。昨日は私、頑張りましたから。今日も太陽さんの日差しが入ってきて気持ちいいですね」ポカポカ
男「ああ……そう、だな。とりあえずあと一時間は余裕だし、十分だけ……」スースー
布団娘「……」クー
男「……」
男「……」パチッ
男「……」キョロキョロ ハッ!
男「八時……半だと? 会社間に合わねえええええええええええええ!」
布団娘「……」クークー
……
…
布団娘「梅雨です!」
男「ああ、そうだな」
布団娘「太陽さんが出ていないので私の身体が冷たいんです、男さん。もう少しギュッてして暖かくしてくださいよぉ」ウルウル
男「え~やだよ。だって今のお前ロクに身体洗えてないし、湿気臭いもん」
布団娘「ひ、ひどいっ!」ガーン
男「この時期の晴れ間は貴重だからな~。あ~早く晴れねえかな。布団娘が臭くてかなわん」
布団娘「そんなに臭い、臭い言わなくてもいいじゃないですかぁ」ウルウル
男「仕方ないだろ、事実だし」
布団娘「あっ! でもでも、そんな口ぶりでも私を抱きしめてくれるのはやっぱりその~愛情があるから……なんて」テレッ
男「いや、単に雨降り過ぎて寒いだけだし。ってか、梅雨過ぎたらいよいよ夏か~こりゃそろそろあいつを呼ぶかな」
布団娘「えっ!? えっ!?」
男「たしか……押入れに監禁して……」ギィィ
毛布娘「あっ……」ポッ
タオルケット娘「あぁっ!?」ツンッ
炬燵娘「や、やほ~」ノホ~ン
男「なんだよ、そんな一斉に見つめるなよ」
毛布娘「もしかして……出番?」
炬燵娘「えへ~とうとう私の季節が来たか~。今年も一緒にみかん食べよ~」
男「いや、お前たちはもっと後」
毛布娘「そう……」シュン
炬燵娘「そっか~。それじゃあしょうがないね」クスン
男「ああ。また時期が来たら出してやるから大人しくしてろよ」ナデナデ
毛布娘「我慢、する」
炬燵娘「うん、待ってるね~」
男「さて、と。とりあえず今用があるのはお前だ」
タオルケット娘「お前言うな! ちゃんと名前で呼びなさいよ!」
男「え~。だってお前の名前長いし。略していい?」
タオルケット娘「よくない!」
男「とりあえずタオル娘で」
タオル娘「なんでよ! よくないっていってるでしょうが!」
男「いいから早く出てこいって」グイッ
タオル娘「あっ……!? こら、急に手引っ張るんじゃないわよ」
男「しょうがないだろ、こうでもしないとお前動かなさそうだし」
タオル娘「だ、だいたいね。虫が良すぎるのよ、あんたは。一年の、それも決まった時期しかあたしの相手しないくせに」プイッ
男「いや~。だってさ、この時期くらいじゃないとお前だけじゃ心もとないし」
タオル娘「ま、まあその分他の娘たちと一緒にならないからいいけれど……。
でも、よ。もう少し他の季節にもあたしの相手してくれてもいいじゃない」シュン
男「そうしてやりたいのは山々なんだが、何せ他の奴らの方がぬくいもので」ジーッ
タオル娘「……って!? どこ見て言ってるのよ!」ジロッ
男「いや、どこってそりゃ……」
タオル娘「なによ、言いたいことがあるのならいいなさいよ!」プンプン
男「う~ん、それじゃあ。お前、いつ見ても薄っすいな~」シミジミ
タオル娘「……悪かったわね! あたしだって好きでこんなに薄いわけじゃないわよ!」
男「分かってるよ、季節に合わせたらそんな身体になったんだろ? でも、もう少しな~」
タオル娘「ッッ~! いいわよ、そんな風に馬鹿にするなら。今年の夏はあたし抜きで過ごしなさいよ!」プイッ
男「ん~そうか。そんなに嫌がるなら仕方ないな」
タオル娘「えっ?」
男「お~い、布団娘。今年は梅雨過ぎてもしばらくお前に相手してもらうことになるけれど大丈夫か?」
布団娘「どうせ私なんて……私なんて湿気臭いですよ」イジイジ
男「あ~完璧にいじけてやがる。ちょっと冗談の度が過ぎたな」
布団娘「でも、そんなに言うほど臭いかな……。男さんの馬鹿ッ。
私だって陽の光が当たればまた温かくていい匂いになるのに……」ブツブツ
男「こら、人の話を聞け」
布団娘「へっ!? あ、はい! ごめんなさい。なんでした? 私やっぱり押入れ行きですか?」
男「いや、実は頼みがあって。今年の夏なんだけどさ梅雨過ぎてもそのまま俺と一緒に寝てくれないか?
夏本番になれば天候も晴れが多くなるだろうし、日に当たるのも楽だろ。まあ、一緒に寝るときは多少暑苦しいから距離取るかもしれないけれど……」
布団娘「えっ……それって」
男「うん、布団娘さえよかったらもうしばらく一緒に寝ようって誘い。タオル娘が寝るの嫌がってさ」
布団娘「そ、そうなんですか!? そ、それじゃあ押入れ行きはなし。男さんともまだしばらく……いや、これなら初の年中同衾!
それに、距離を取るって言ってもさすがに夜は少しは冷えるでしょうし……も、もしかして添い寝でしょうか?
手と手が触れ合うくらいの距離。時にはそっと私の事を抱き寄せてくれたりなんて……」ハァハァ
男「お~い、布団娘。帰ってこ~い」
布団娘「いつもの密着の体勢もいいですけれど、たまにはお互いを意識し合うような初々しい距離感も必要ですよね。
えへへっ、楽しみだな~。ある程度距離が離れていれば蹴っ飛ばされて隅に追いやられる心配もありませんし。
あっ……でも、男さんが寝相悪かったらすぐに手が離れちゃうなんてことも。
ううっ、これは対抗策を考えなければ」ブツブツ
男「……駄目だこりゃ」
タオル娘「……」クイクイ
男「ん? どうしたタオル娘」
タオル娘「そ、その……さっきは言いすぎたわ。別に今年もあんたと一緒に寝てやっても……」
男「なに? よく聞こえないな。一緒に寝てやっても……なんだって?」ニヤニヤ
タオル娘「~~ッ! だから! 一緒に寝てやってもいいって言ってるのよ! だいたいね、あんな厚い身体付きしたやつと一緒に寝てみなさいよ!
朝起きる頃には汗で服がびしょびしょになるわよ! ただでさえあんたに離れまいとするような奴なんだから」
せめて一年分はしてください!
>>34
やりたいんだけれど、布団娘と毛布娘による密着で睡魔がヤバイ
男「え~でも適切な距離をとればそう問題でもないしな~」ニヤニヤ
タオル娘「ああ~もう! いいから、あたしの言うこと聞きなさいよ!」ポカポカ
男「いたい、いたい。ちょ、こら、やめろって」
タオル娘「この! この!」
男「ごめん、悪かった! 今年の夏もお前と一緒に寝るよ! 布団娘は押入れに入れるから!」
布団娘「えへへ~えへへ~。……えっ!?」ビクッ
タオル娘「ホント?」ジーッ
男「ホント、ホント。全く、いつもながらタオル娘は素直じゃないな」
タオル娘「ふんっ! 大きなお世話よ」
男「はいはい」ナデナデ
タオル娘「そんなんでご機嫌取ろうったってそうはいかないわよ」プイッ
男「とか言いながらそっぽ向いたフリしてニヤケ顔隠してるくせに」ニヤニヤ
タオル娘「そ、そんなわけないじゃない」デレデレ
男「そういうことにしておくとするかね」
布団娘「……あ、あの~男さん?」
男「ん? どしたの」
布団娘「えっと、私って今夏はこのまま一緒に寝るんですよね?」
男「あ、その話だけどやっぱナシで。それじゃあ、タオル娘も出てきて素直になったことだし……」
布団娘「やっ、いやっ!」
男「布団娘は押入れに行こうか~」
布団娘「いやあああああああああああああああああ」ジタバタ
タオル娘「ふん、いい気味よ。しばらく押し入れに引きこもってなさい」
男「さて、と。とりあえず布団娘は押し入れに入れたけど、今日も雨だな。出てきたばかりでなんだが、今日は特にやることもないし一緒に寝るか?」
タオル娘「いいの? あたし、ずっと押し入れにいたからホコリ臭いよ?」
男「ん~まあ少しくらいなら別に気にならん。それに久しぶりに一緒に寝るからな」
タオル娘「そ、そう……。ありがと、男」
男「おっ! ようやく名前呼んだな。ほら、来いよタオル娘。大体一年ぶりくらいだし今日は可愛がってやるぞ」
タオル娘「ちょ、そんな急に……。って去年もそんなこと言っておいて、あんたすぐに寝たじゃない!」
男「あれ? そうだったか?」
タオル娘「そうよ、まったく。夏場はまだ先だってのにもう頭おかしくなったの?
これはもうあたしがしっかりと面倒を見なきゃだめね」ハァ
男「それじゃ、お言葉に甘えて今年もよろしくお願いするな。タオル娘」
タオル娘「はいはい。わかったわよ……もう」クスッ
……
…
タオル娘「そろそろね……」
男「おう、今年もありがとな」
タオル娘「別に、普通にしてただけよ。ああ、そうそう。あんた衣服乱したままこれから寝ないでよ。エアコンも付けたままにしない。
寝る前にはしっかりと身体を温めておくこと。夜ふかしはあんまりしないこと。
あとは……」
男「そんなに心配するなよ。お前がいるときくらいしかできないから普段はしないってば」
タオル娘「本当に~?」
男「ホント、ホント。長い休みもこれからはそんなにないし」
タオル娘「そ、そう? ならいいけど。とりあえず体調には気をつけるのよ? あんたになにかあったら……」
男「わかったってば、心配してくれてありがとな」ナデナデ
タオル娘「……うん」ギュッ
男「にしてもお前ホントひと夏の始まりと終わりで態度逆転するよな」
タオル娘「そ、それは……だって、私だけあんたに会える期間が少ないし。
ずっと放っておかれるから、その間に不満や鬱憤が溜まって、また会えた時には素直になれないのよ」
男「それが今やベッタリのデレデレだもんな~。いや~ひと夏を経た娘の変貌ぶりは怖い」
タオル娘「もしかして……迷惑だった?」ジッ
男「ううん、一度に二つ性格の相手が出来てむしろ得した気分」
タオル娘「よかった」ホッ
男「とりあえず、そろそろ押入れ開けるけどいいか?」
タオル娘「……うん。今年のあんたの温もりは十分すぎるほどもらったわ」
男「それじゃ、次はまた来年だな。よし、開けるぞ」ギィッ
毛布娘「……あ」
炬燵娘「あっ! 今度こそ!?」
男「ごめん、もうちょい後」
毛布娘「そう……そう」ズーン
炬燵娘「あはは~さすがにもうそろそろ相手してもらいたいかも」
男「ごめんな~。今年は早めに出してやるからな」
タオル娘「ほら、二人とも男もこういってることだし。もう少し我慢したら?」
毛布娘「……出て行く前は文句ばかり言ってたくせに」
炬燵娘「『今年は絶対に一緒に寝てやんない!』なんて言ってたのにね~。毎晩、毎晩声を抑えながら気持ちよさそうな声を出して何してたんだろうね~」
タオル娘「なっ!?」
毛布娘「扱いやすい女」ボソッ
タオル娘「なんですって? 聞こえてるわよ、毛布娘」
毛布娘「文句なんて口ばっかりのくせに。ずるい女」
タオル娘「……ふ、ふ~ん。まあいいけれどね。何言われてもあんたと違ってあたしはもう男に相手してもらったから」
毛布娘「だから? どうせあと少しで私たちも外に出られる。でも、その間あなたはここで一人お留守番」
タオル娘「そ、そう。別に構わないわよ。一人でいるのくらい何度も経験してるし」
毛布娘「強がっちゃって。ぷぷー」
タオル娘「あんた……喧嘩売ってるでしょ、そうでしょ」
炬燵娘「あ~二人とも盛り上がってるところに水を差すみたいだけどさ~」
毛布娘「なに?」
タオル娘「なによ!」
炬燵娘「さっそく布団娘が男に手出してるよ」
布団娘「男さん、男さん。お久しぶりです!」スリスリ
男「出てきて早々に擦りつくな鬱陶しい!」ガシガシ
布団娘「ああ、痛い! でも……今は痛みより久しぶりの男さんの感触に感動してしまいます」ウットリ
男「駄目だこいつ。なんか変な属性を手に入れてる」
布団娘「えへへ~。長いこと待ちましたけれどようやく私の時代が戻ってきました。
秋です! 私の時代、到来です!」
男「お前二回目だから省略な」
布団娘「そんなッ!?」
……
…
すまん寝る
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