ちなつ「あかりちゃんの手って小さくてかわいいね」 (41)

あかり「そう?」

ちなつ「さわっていい?」サワサワ

あかり「くすぐったいよぉ」

ちなつ「じっとしてて、あかりちゃん」ムニムニ

あかり「ち、ちなつちゃーん」

ちなつ「細くてきれいな指だね」

あかり「ちなつちゃんの指もきれいだよぉ」

ちなつ「あかりちゃん静かにしてて、集中したいの」プニプニ

あかり「ええ~っ!」ガーン

ちなつ「あかりちゃん、爪がとってもきれい」

あかり「いつもお姉ちゃんに切ってもらってるんだ~」

ちなつ「ふーん」

あかり「お姉ちゃんは上手なんだよ」

ちなつ「そういえば、私も小さいころはお姉ちゃんにやってもらってた」

あかり「……あかり、まだお姉ちゃんに切ってもらってるの、子供っぽいかな?」

ちなつ「ううん。そんなことない。うらやましいよ」

あかり「そっかぁ。よかったぁ」

ちなつ(お姉さんが、ね)

ちなつ「ふーむ」プニプニ

あかり「ちなつちゃん、まだ?」

ちなつ「わかりました」プニプニ

あかり「なにが?」

ちなつ「あかりちゃんの指はすごくやわらかいです」プニプニ

あかり「ちなつちゃんのも柔らかくてきもちいよぉ」

ちなつ「……」プニプニ

ちなつ「私がもっと柔らかくしてあげるわ」ムニ~

あかり「やめて~」

ちなつ「ずっと触ってたいから、あかりちゃんの手貰ってもいい?」ニッコリ

あかり「こっ、怖いよー!」

ちなつ「冗談だよ」

ちなつ「一つもらうね」

あかり「え?」

スパッ

あかり「!!!! っああああああああああああああああ!!!!!!!」

ちなつ「すごいでしょ? このナイフすごくよく切れるの」

あかり「あぁぁぁあああぁぁぁぁぁ!!!!!」

ちなつ「他の指ももらっていいよね?」

あかり「やだ・・・・いやああああああああああああ!!!!」

あかり(ずっと手を握られてて、ちょっと汗ばんできちゃった……)

ちなつ「あかりちゃん」

あかり「なあに?」

ちなつ「あかりちゃんの手、型とっていい?」

あかり「んん!?なんで!?」

ちなつ「あかりちゃんの手って存在感ないから、模型にしていつも近くに置いてないと忘れちゃいそうで」

あかり「あかり、手の存在感ないとか言われたのはじめてだよ!!」

ちなつ「冗談だよ」

あかり「もおっ!……さっきはかわいいって言ってくれたのにぃ」

ちなつ「うんうん、かわいいかわいい」ナデナデ

あかり「ちなつちゃんのいじわるぅ……」

あかり(ちょっとこの部室さむいなー)

ちなつ「あかりちゃん。こうやって二人で手を握りあってると、ドキドキしない?」

あかり「はっくしゅっ」

ちなつ「……」

あかり「えへへ……京子ちゃんと結衣ちゃん遅いねー」

ちなつ「あかりちゃんは」

あかり「ん?」

ちなつ「あかりちゃんは子供っぽいっていうか、子供だよね」

あかり「ええ!?」

ちなつ「あかりちゃん、寒いの?」

あかり「ちょっと」

ちなつ「ふーん」

あかり「でもちなつちゃんのおかげで手は暖かいよ」

ちなつ「ねえ、あかりちゃん」

あかり「なぁに、ちなつちゃん」

ちなつ「キス……してみる?」

あかり「」

ちなつ「……」

あかり「…………………れ、練習するの?また……」(一気に手汗が増えちゃったよぉ!)ダラダラ

ちなつ「えっと」ドキドキ

京子「ちなつちゃーん!!……あっかりー」ピシャーン

あかりちなつ「」ビクッ

結衣「戸はもっと静かに開けろよ」ガラガラ

京子「あれ?二人とも手なんか握り合って何してたの?」

ちなつ「べ、べつになんでもないです」パッ

京子「ふーん」

ちなつ「結衣先輩、すぐお茶淹れますね」

結衣「あ、うん。ありがと」

京子「私のはー?」

結衣(あかりとちなつちゃん、まさか部室でキスとか……ってまさかな)

京子「あかりー。ちなつちゃんとチューでもしてたの?」

あかり結衣「!?」

ドンガラガッシャーン!

京子「うお!ちなつちゃんがコケた!」

~翌日・一年の教室~


ちなつ「ねえ、ひまわりちゃんって、手袋は作れる?」

向日葵「まあマフラーよりは難しいですけど、なんとか」

ちなつ「そっか!あのね、よかったらまた作り方教えてほしいなって……」

向日葵「ええ、いいですわよ」

ちなつ「ありがとう向日葵ちゃん!」

向日葵「前にマフラーを編んだ吉川さんですから、手袋ならもっと短い期間でできると思いますわ」

ちなつ「うんっ。よろしくね!」

向日葵(吉川さん、また娯楽部の先輩にでもプレゼントするのかしらね)

櫻子「なになに~」

あかり「どうしたの?向日葵ちゃん、ちなつちゃん」

ちなつ「べべべ、別になんでもないよっ」

あかり櫻子向日葵「?」

~放課後~

あかり「ちなつちゃん、部室行こっ」

ちなつ「ね、手……つないでいかない?」

あかり「手?」

ちなつ「その……手を繋ぐ練習」

あかり「そっかぁ。いいよ」ギュッ

ちなつ「……えへへ」

あかり「最近寒くなってきたから、手をつなぐと嬉しいね」アッカリアッカリ

ちなつ「うん」グイグイ

あかり「……ちなつちゃん、あかりの手ひっぱりすぎだよぉ」

ちなつ「おっと、偶然こんなところにあったメジャーがあかりちゃんの手にあたってしまったわ」

あかり「明らかにちなつちゃんが積極的に当てて来てるよ!?」

ちなつ「ふむ、やっぱり小さいなあ……」シゲシゲ

あかり「ちなつちゃん、メジャーが冷たいよぉ」

ちなつ「あっ、ごめんね!」

あかり「ううん。でもどうしてメジャーなんて持ってるの?」

ちなつ「れ、練習!」

あかり「練習?」

ちなつ「結衣先輩とデートしたときに手の大きさを図るための練習なの!」

あかり「……」

ちなつ(しまったーっ!さすがに無理があったわ!)

あかり「そっか、練習かぁ」アッカリアッカリ


ちなつ(ご、ごまかせた……?)

あかり(ちなつちゃんはほんとに結衣ちゃんのこと好きなんだなぁ)

~部室~

あかり「京子ちゃん、結衣ちゃ~ん」

ちなつ「こんにちはです」

京子「あー!ちなつちゃんとあかり、また手ーつないでるー!」

ちなつ「!」パッ

あかり「あっ…」

京子「なんだなんだー?二人は付き合ってるのかー?」ヒューヒュー

ちなつ「そんなんじゃないですって!」ワタワタ

京子「くそー、あかりのくせにズルいぞ~!」

あかり「きょ、京子ちゃん。これは違うんだよぉ」

結衣「おいコラ、あんまり下級生をからかうなよ」

京子「はーい」

ちなつ「もうっ!京子先輩は!」

あかり「……」

あかり(そうだよね)

あかり(これは違うんだから)

あかり(あかりとちなつちゃんはそんなんじゃない)

あかり(だから、あかりのこの気持も……)ズキッ


ちなつ「あかりちゃん?」

あかり「んっ?な、なあに?」

ちなつ「お茶、淹れたよ」

あかり「あ、うん。ありがとぉちなつちゃん」

あかり「いやぁ、お茶が美味しいな~」

ちなつ「??」

京子「美味シーラカンスだね」

あかり「」ゴホッゴホッ

結衣「……」

~翌日・放課後~

あかり「ちなつちゃん、部室行こっ」

ちなつ「ごめん、あかりちゃん!今日はちょっと用事があって」

あかり「そうなの?」

ちなつ「ほんとごめんね……先輩たちにも言っておいて」

あかり「うん!じゃあまた明日ね!」

ちなつ「また明日!……行こっか、向日葵ちゃん」

向日葵「ええ。まずはお店に毛糸を買いに行きましょう」

ちなつ「金色の毛糸とかあるかなぁ……」

向日葵「金色ですの!?」

あかり「……」

あかり「部室行こっと」

~一週間後……通学路~

ちなつ「ふっふっふ、とうとう完成したわ、チーナ特製手袋!」ピョンピョン

ちなつ「あかりちゃん、喜んでくれるかなあ」


アッカリアッカリ


ちなつ「…! あかりちゃん!」

あかり「ちなつちゃーん、おはよう!」

ちなつ「うんっ、おはよ!……あれ」

あかり「どうしたの、ちなつちゃん?」

ちなつ「あかりちゃん…………その、手袋」

あかり「うん、お姉ちゃんが買ってくれたんだぁ」

ちなつ「……かわいいね、その手袋」

あかり「うん!」

ちなつ「それに暖かそう」

あかり「もうこれなしではいられないよぉ」

ちなつ「すごく、あかりちゃんに似合ってるね」

あかり「ありがとう」

ちなつ(私の作った手袋なんかより、よっぽどいいじゃない)

あかり「……ちなつちゃん?」

ちなつ「え、な、なに、あかりちゃん」

あかり「なにか悲しいことあったの?ちなつちゃんが悲しい顔してると……あかりも」

ちなつ「悲しい顔なんて……」ポロッ

あかり「!」

ちなつ「悲しい顔なんて……してないよ」ポロポロ

あかり「ちなつちゃん涙が出てるよぉ!」オロオロ

ちなつ「あ、あれっ。おかしいな、私……」ポロポロ

あかり「ち、ちなつちゃん?」

ちなつ「あ、あかりちゃんの……」

ちなつ「あかりちゃんのバカー!!!!!」ダッ

あかり「あっ、待って!!ちなつちゃんっ!!!」

ちなつ「うわーん!!!あかりちゃんのバカバカ!!あかりちゃんのお姉ちゃんデベソーっ!!」

あかり「しょ、小学生!?」

ちなつ「はぁっ……はぁっ……」ゼーゼー

ちなつ「……バカみたい」

ちなつ「約束してたわけでもないのに、勝手にやつあたりして……」

ちなつ「あかりちゃん、怒ってるかな……」

ちなつ「………これ、どうしよ」

ちなつ「くやしいけど、こんなんじゃ、あんないい手袋に、敵うはずないよ……」グスッ

ちなつ「……あかりちゃんのばか」

 
………


あかり「はっ……はっ……ちなつちゃん、どこ行っちゃったんだろ……」

あかり「あれ、あのバッグ……ちなつちゃん?」

あかり「これって……手袋?……だよね……てぶくろ……?」

あかり「す、すごい色だよぉ」

あかり「でもこれ、絶対ちなつちゃんのだよね。この手袋(?)……」

あかり「捨てちゃったのかな、この手袋(らしきもの)……」

あかり「もしかしてこれって……」

~公園~

ギィギィ

ちなつ「はぁ……学校サボっちゃった」

ちなつ「……今日は寒いな」

ちなつ「もう帰っちゃおうかな」


<ちなつちゃーん!

ちなつ「!」


あかり「ちなつちゃん、やっと見つけたよぉ」

ちなつ「……」

あかり「待って!行かないで、ちなつちゃん!」

あかり「えっと……。これ、落としたよ。ちなつちゃんのだよね」

ちなつ「捨てたの」

あかり「そっ、そうなの?」アセアセ

ちなつ「……」

あかり「違ってたらごめんね。ちなつちゃん、これひょっとしてあかりに…」

ちなつ「違うよ」

あかり「でも、ここに『A.A』ってイニシャルが……」

ちなつ「アイラブユー結衣先輩、愛してますの略だもん」

あかり「『アイ』は『I』だよぉ!」

ちなつ「……知らないもん」

あかり「あのね、あのね、これ、よかったらあかりが貰ってもいい?」アセアセ

ちなつ「あかりちゃんにはお姉さんの手袋があるでしょ」

あかり「あ、うう……」

ちなつ「せっかく貰った手袋、使わなきゃお姉さんがかわいそうだよ」

あかり「両方使うよ!」

ちなつ「そんなことしたら厚すぎて手が動かせないよ」

あかり「うう、じゃあ毎日交互に使うよ!」

ちなつ「……」

あかり「ううう~っ!」アセアセ

ちなつ「…………」

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