みたいな?
グラハム「空から眺める青い海というのは格別だが……」
グラハム「船上で目にする海もまた良いものだな、カタギリ」
ビリー「おや、意外だね。君がそんな風に考えているとは思わなかった」
ビリー「軍上層部から突然の転属命令、しかも空から急に海での仕事だ」
ビリー「空を奪われて腹に据えかねているんじゃないかって、こっちはいらない心配してたんだよ」
グラハム「ふっ……確かにその気持ちはあった。しかし私は軍人だ」
ビリー「たまには命令に忠実に、ってところかな?」
グラハム「たまには、は余計だ」
ビリー「それよりグラハム、僕たちはどこへ向かっているんだったかな?」
グラハム「私の軍人としての適正を試す心づもりか? 流石に把握しているとも」
グラハム「ここに指令書もあるからな」ペラッ
ビリー「ははは、ごめんごめん」
グラハム「我々は経済特区日本に存在するチンジュフとやらへ向かっている」
グラハム「そこで何をするのかは、まだ私の知るところではないが」
ビリー「ふむ……わからないことが多すぎて何とも言えないね」
グラハム「何故私が選ばれたのか、何故海なのか、何が待ち受けているのか」
グラハム「疑問は尽きないが、全ての答えを探す余裕はないな……」
グラハム「こうなれば大人しく流れに身を任せる他はあるまいよ」
ビリー「そうだね。着けばわかるさ……おっと、あれがチンジュフってやつかな?」
グラハム「む……? ああ、そのようだな……」
《鎮守府》
グラハム「ここがチンジュフか」
ビリー「やけに、寂れているね」
グラハム「……軍施設とは思えない荒廃ぶりだな」
???「……無理ないわ。戦果を挙げられないから予算は削減、それが数年続けばこのザマよ」
グラハム「少女の声……?」
ビリー「グラハム、あそこ」
グラハム「む」
???「……あんたが新しく配属されたって言う司令官?」
グラハム「司令官……柄ではないがその予定だ。君は?」
???「新参なら、まずは自分から名乗るのが常識ってものじゃない?」
グラハム「フッ……それは失礼。私はグラハム・エーカー……暫定的に少佐だ」
???「……そう。じゃあメリケンが司令官ってのは誤情報じゃなかったワケね」
叢雲「……私は叢雲。あんたの秘書艦よ」
グラハム「秘書艦……? カタギリ、何の事かわかるか」
ビリー「いや、まったく」
叢雲「ハァ? あんたここに来るってのにそんなことも知らないの?」
グラハム「怠慢と罵られても仕様がない、が……こちらも詳細はまったく知らされていないのでな」
叢雲「……上は相変わらず秘密主義か。人知れず沈んでいく船の事も何も、見ないふりってわけね」
叢雲「まったく素敵な上層部じゃない。こんなとこに飛ばされるなんてあんたもお先真っ暗ね、同情してあげるわ」
グラハム「謹んで辞退しよう。それよりも君はここをよく知っているようだ」
グラハム「このチンジュフとやらの存在意義……私の職務……そして君が何者なのか」
グラハム「全て教えて貰いたい」
叢雲「自分で勉強しろって言いたいところだけど……まあいいわ」
ビリー「ははは、なかなか上官に強気な子だね」
叢雲「……そういえばあんたは誰よ。司令官の金魚の糞?」
ビリー「うぐっ……」
グラハム「彼はビリー・カタギリ技術顧問だ。私が特に請うて連れてきた」
グラハム「私への罵倒は甘んじて受けよう。だがカタギリへの誹謗中傷は一切容赦せん」
叢雲「…………」
グラハム「……何かおかしい事を言ったか」
叢雲「……いや、何でもないわ。それより鎮守府についてだけど」
叢雲「立ち話も何だから、あんたの仕事場に案内するわ」
グラハム「仕事場?」
叢雲「執務室よ」
《鎮守府・執務室》
叢雲「ここよ」
ビリー「ここがグラハムの仕事場か……」チラッ
グラハム「破れた壁紙、割れた窓、散乱したダンボール」
グラハム「これだけ酷い部屋は、久方ぶりに見た」
叢雲「ま、前任が全員ほっぽっていったから」
ビリー「やっぱり前任はいたのかい」
叢雲「もちろん。……ま、結果はお察しよ」
グラハム「劣悪な環境に耐えきれずに逃亡……といったところかな」
叢雲「半分は正解」
グラハム「……ほう?」
叢雲「半分は……まあ仕事内容のせいね」
ビリー「……いやはやなんだか良くない予感がするよ」
叢雲「じゃ、説明するけど」
ビリー「……信じられないな」
叢雲「信じなくても結構。だけどこれが現実よ」
ビリー「……そもそも君のような女の子が戦うだなんて……」
グラハム「これを秘匿する上のやり方は気にくわないな」
叢雲「ふふ、そういう感想を抱いていられるのも今のうちよ」
叢雲「今に深海棲艦の恐怖に心を砕かれるんだから……みんなそうだったしね」
グラハム「フッ……当然ながら信頼されてはいないか」
叢雲「そもそもメリケンって時点で歩み寄れる気はしないわ」
グラハム「……艦娘、だったか。かつて……相当昔の大戦で日本軍の艦船として戦ったのが、君たち艦娘……」
叢雲「そうよ」
グラハム「なるほど、その時の記憶が残っているのならば、その態度にも無理はない……」
グラハム「ならば私は、必ず君たちに勝利をもたらせてみせよう。乙女座に誓って」
叢雲「……乙女座? 意味がわからないんだけど」
グラハム「む」
グラハム「深海棲艦と相対するのが我々の職務である事はわかった」
グラハム「そして君たち艦娘が、深海棲艦への唯一の対抗手段である事も」
ビリー「MSでも効果がないってのは恐ろしい敵だね……」
グラハム「……それで現状、我らの保有する戦力は?」
叢雲「駆逐艦が一隻」
ビリー「それってもしかしなくても……」
叢雲「もしかしなくても私ひとりよ、技術顧問殿」
ビリー「……絶望的じゃないか」
グラハム「フッ……我々は苦境に立たされてこそだ、カタギリ」
グラハム「現状を嘆くだけでは何も変わらない。小さな事から進めていこう」
グラハム「保有戦力は君、叢雲がひとり……」
グラハム「まずは戦力の拡充を図らなければならないだろうな」
グラハム「……街に出て艦娘をスカウトでもしてみるか?」
叢雲「艦娘が街中歩いてるわけないでしょうが。艦娘は建造するのよ」
グラハム「ちょっとした冗談だ。……それで、建造か」
ビリー「うん、鎮守府のフロアマップを見てるんだけど……どうやら大きい工廠が併設されているようだね」
ビリー「この工廠で一定の資源と引き替えに新たな艦娘を建造する……っていうシステムらしい」
グラハム「……」ジッ
叢雲「なによ」
グラハム「君のような少女が生まれてくると言うわけか……神秘だな」
叢雲「……システムについては私たちだってよくしらないわよ」
グラハム「ははは、すまない。それでは早速工廠に向かうとしよう」
グラハム「案内してくれ、叢雲」
叢雲「……あんた、よく笑ってられるわね」
グラハム「何が言いたい?」
叢雲「私から説明を受けた前任は、みんな顔面蒼白だったわよ」
叢雲「明確な終わりが見えないこんな任地に飛ばされたら、まず軍人としてのキャリアもおしまいだしね」
叢雲「でも、あんたからそういう悲壮感を感じられないから」
グラハム「フッ……。センチメンタリズムな運命は感じているよ。いや、だからこそかな」
グラハム「心踊りこそすれ、悲嘆に暮れる必要性は感じないのさ」
叢雲「……変人ね。あるいは変態」
ビリー「手厳しいねぇ」
《工廠》
ビリー「おお……おお……!」
ビリー「ズタボロの外装に反して中は素晴らしいよ!」
ビリー「最新鋭の機材が一通り揃っている!」
ビリー「超テクノロジーの結晶であろう艦娘建造のために必要ってわけかい!」
ビリー「最高だよグラハム! こいつはいい!」
叢雲「……なにあいつ。最高に気持ち悪いんだけど。酸素魚雷喰らわせるわよ」
グラハム「カタギリは技術畑の人間だ。思うところがあるのだろう」
叢雲「……」
グラハム「……それで、建造はどうやって行うのかな?」
叢雲「鎮守府が所有している資源を消費して行うわ。だけど決まった艦娘が建造されるわけじゃない」
叢雲「資源の配分調整で、誰が建造されるかがランダムに決定される」
叢雲「戦力拡充には戦艦か空母がいて欲しいところだけど、狙い撃ちってのは不可能ね」
グラハム「そうか……ならばカタギリ! 建造に関しては君に全て一任させて貰おう!」
ビリー「ガッテン承知だよ!」
叢雲「ハァ!?」
叢雲「あんたねえ、そんなんでいいと……」
グラハム「君の懸念は尤もだ叢雲。だが私はカタギリを、私の盟友を信頼している」
グラハム「適材適所という言葉がある。今、謹んでこの言葉を贈らせて貰うよ」
叢雲「……資源は出撃のためにも、兵装開発のためにも、とにかく鎮守府運用には必要不可欠の要素よ」
叢雲「無駄に使えば、それは即ち私たちの終わりを意味する……」
叢雲「よくよく覚えておきなさいよ……技術顧問殿」
ビリー「勿論だ。僕もグラハムと同じで、君たちの勝利のために全力を賭す心づもりだ」
叢雲「フン……」
グラハム「話は纏まったな。ではカタギリ、早速一人建造をお願いしたい」
ビリー「ああ、わかったよ。ところで叢雲、前任たちの建造データとかって残ってないかな」
叢雲「歯抜けだけどあるにはあるわ。それが?」
ビリー「資源配分による建造結果の傾向を掴みたいと思ってね」
叢雲「……」
グラハム「言っただろう。私の盟友は信頼に足るのさ」
叢雲「後で持っていくから、それまでここの整理でもしといて」
ビリー「ああ、そうしよう。僕の城にしちゃっても良いかな」
叢雲「あんたね……」
グラハム「構わん、許可する」
叢雲「ちょっと……もう、なんなのよ、あんたたちは!」
《執務室》
グラハム「建造はカタギリに任せた。それでは私たちは部屋の掃除でも行うとしよう」
叢雲「……まあ、この汚い部屋じゃね」
グラハム「中身も伴わないのに繕うだけ、そんな行為に価値はないが……せめてもの限度というものはある」
叢雲「はいはい。いちいち回りくどい事言ってないでとっとと掃除するわよメリケン」
グラハム「そのメリケンというのはいい加減止めて貰いたいものだな……」
叢雲「あんたたちに撃沈させられたのはつい昨日の事のように思えるから。無理ね」
グラハム「やれやれ……いつか君の凍り付いた心も溶かして見せるがね」
叢雲「……酸素魚雷喰らわせても良い?」
グラハム「フッ……怖い顔だ」
《数時間後》
グラハム「見違えたな」
叢雲「……疲れた」
グラハム「ああ。よく働いてくれた。感謝しよう叢雲」
叢雲「はいはいどうも……」
ビリー『……グラハム、入っても良いかな』
グラハム「遠慮はいらないぞカタギリ」
ビリー「ありがとう。で、だね。新しい艦娘を紹介しにきたよ」ガチャッ
グラハム「ほう、建造出来たか」
ビリー「きっと僕たちと上手くやれる子だよ」
叢雲「何が言いたいのよ」
???「つまり――」
金剛「――私もまた、提督と同じく異国の生まれだということネー!」
グラハム「なんとっ!」
金剛「英国生まれの帰国子女、金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」
グラハム「なるほど、AEU出身か……」
ビリー「金剛は区分が戦艦だから、大きな戦力になるよ」
グラハム「ああ、よくやってくれたカタギリ。……そしてよく来てくれた、金剛」
グラハム「私はグラハム・エーカー少佐。君の活躍に期待する」
金剛「イェス! ご期待に応えて見せますヨー!」
叢雲「一気に五月蠅くなった……」ゲンナリ
ビリー「仲良く出来そうじゃないか」
叢雲「頭痛くなってくるわ」
グラハム「金剛がやってきて、戦力は戦艦1の駆逐艦1」
グラハム「……我らが鎮守府の正面海域は、敵の大規模な侵攻に晒されてはいない」
グラハム「精々がごく少数の偵察部隊……」
グラハム「さて、そこで問いたいのだが……叢雲、金剛、出撃は可能か?」
叢雲「……できるわ」
金剛「体を動かしたくて仕方がなかったネー! 行けマース!」
グラハム「フッ。その言葉を待っていた。ならば出撃の準備だ!」
《鎮守府正面海域》
叢雲「準備は万全よ」
金剛「弾薬も燃料もフルチャージ完了デス!」
グラハム「ならばよし。目標は鎮守府正面海域に居座る敵偵察部隊だ」
グラハム「艦隊旗艦は……叢雲、君に任せる」
叢雲「……は? 戦艦の金剛がいるんだから金剛で良いでしょうが」
グラハム「いや、叢雲、君だ」
叢雲「……あとでクレーム入れないでよ」
グラハム「フッ、入れんよ」
金剛「……って、ちょっと待ってくだサイ! なんで提督が着いてきてるんですカ!?」
叢雲「……私も言ったけど、どうしても着いてくるって聞かないのよこのバカ」
グラハム「なに、戦場の風……肌触りを感じねばならんと思ったまでさ」
グラハム「そうでなくては、いつまで経っても私は君たちと同列には立てない」
叢雲「同列に立つ必要がないでしょうが。あんたは司令官、こっちはその指示で動く艦船」
叢雲「生身の人間がいちゃこっちが動きにくいってのよ。とっとと鎮守府に帰ってなさい」
グラハム「心配、痛み入る。しかし、聞く耳持たん!」
叢雲「心配なんかしてないっての!!!」
金剛(オゥ、予想以上に凸凹デース)
グラハム「君たちに迷惑はかけん。いざとなれば泳いで帰るさ」
叢雲「もう既に迷惑かけてんのよ」
金剛「まぁまぁ、叢雲、落ち着きまショー」
金剛「テートクがどーしても着いてくるなら、私たちが全力で守ればOKネ!」
叢雲「…………」
グラハム「金剛。年頃のお姫様を宥めてくれた事、感謝する」
金剛「おやすいご用ネー!」
叢雲「この……異国被れどもぉ……」グギギ
グラハム「ふむ……」キョロキョロ
叢雲「何してんのよ。集中出来ないから少しくらい動き止めてなさい」
グラハム「索敵中だ。君たちは警戒を厳に。いつでも主砲発射は出来るようにな」
金剛「……あ、艦影発見!」
グラハム「くっ、先を越されたか……!」
叢雲「何を悔しがってんのよこのバカ! 指示は!?」
グラハム「待て。よし、予想通り駆逐艦のようだな。資料を頭に入れていて正解だ」
グラハム「そのまま前進、丁字を狙う」
叢雲「……了解」
グラハム「金剛、君は敵が射程範囲に入ったら、主砲斉射だ」
グラハム「砲塔の角度調整は私が指示しよう」
金剛「もう少しで射程圏内……そろそろ行けますヨ、提督!」
グラハム「よし、撃てェ!」
金剛「Fire!」ドォン
グラハム「む……! 外したか……」
叢雲「金剛、次弾装填!」
金剛「オーケイでス!」
グラハム「よし、もっと腹に力を込めろ金剛! グラハムファイヤーだ! 叫べ!」
金剛「え!? ぐ、グラハムファイヤー!」ドォォォォン
叢雲(何言ってんのコイツら……)
~~~
駆逐イ級「 」全弾命中
~~~
金剛「全弾Hit! 敵艦轟沈!」
グラハム「よくやった! それでこそだ、ガンダム……では、なかったな」
金剛「ちゃんと声出しした結果が出ましたネ!」
叢雲「……グラハムファイヤーのお陰ね。まったく司令官様々だわ」
グラハム「フッ、そんなに褒めて貰っては困る」
叢雲「皮肉よ、バカ」
金剛「敵は一隻だけ……艦隊からはぐれたんでしょうカ?」
グラハム「かもしれん。……この勢いを止めたくはない、このまま進軍するぞ!」
叢雲「了解」
グラハム「次はおそらく君の出番もあるだろう。心しておくように」
叢雲「……はいはい」
グラハム「グラハムファイヤー……忘れるなよ」
叢雲「今すぐにでも忘れてやるわ」
戦闘は考えたら負けよ
スト魔女みたいに艦娘が空飛んで周りの兵装をばかすかぶっ放す感じなら想像するに難しくないけど艦船が空飛んだら駄目だろう(アメコミは除く)
《数時間後》
叢雲「司令官。まだ敵は見つからないの?」
金剛「さっきからずーっと水平線ばかり眺めてる気がしマース……」
グラハム「……そろそろ会敵してもおかしくはないと思うのだが」
叢雲「さっきの駆逐艦、鉄砲玉だったんじゃないの」
グラハム「かもしれないな。さて二人とも、弾薬は兎も角、燃料の残量はどうかね?」
叢雲「まだ半分以上残ってるわ。もう少し進んだ先で会敵しても鎮守府には余裕で戻れる」
金剛「私も同じデース!」
グラハム「そうか。ではもう少し進んでみよう」
金剛「日が落ち始めてきましたネー」
グラハム「夕暮れ時の海は良いものだな」
叢雲「……綺麗ね」
グラハム「空から見る夕の海は筆舌に尽くしがたい」
金剛「空。デスか?」
グラハム「ああ。ここに廻される前は、私はこの空を駆けていたのだよ」
グラハム「しかし何の因果か、空から引き摺り下ろされた私は海にいるというわけさ」
叢雲「……」
グラハム「フッ、その事で君たちを恨むなどという事はないよ。断じて」
叢雲「そんな心配、していないわ」
グラハム「ならばよし」
金剛「……しっかし、敵に会いませんネー」
グラハム「進んで交戦したいわけではないが……」
叢雲「日が沈みきったら索敵も面倒になるわよ。適当に見切りを付けた方が良いんじゃないの」
グラハム「それもそうだな……では全艦180°回頭だ」
金剛「了解!」
グラハム「……むっ!?」
叢雲「なに?」
グラハム「艦影多数発見……11時の方向だ。いつの間にか通り過ぎていたのか……不覚!」
金剛「あ……ホントーでス」
グラハム「敵影3。駆逐艦2隻、そしておそらくは軽巡洋艦1隻」
グラハム「やれるな?」
叢雲「当然」
金剛「問題ナッシング!」
グラハム「ならば前進だ、君たちの奮闘に期待する!」
《交戦開始》
金剛「戦艦の長射程の怖さ、思い知らせてあげマース!」
金剛「Let's Go! Graham Fire!!」ドォォォォン
~~~
駆逐ロ級「――? !???」全弾命中
~~~
グラハム「着弾確認! よくやった金剛!」
金剛「グラハムファイヤーのお陰ネー! 次弾装填急ぎマース!」
叢雲「距離を詰めるわ!」
グラハム「よし!」
叢雲「敵軽巡が射程距離に入ったわ! 喰らいなさい!」ドォン
~~~
軽巡ホ級「――――」 miss
~~~
叢雲「チッ、外した……!」
グラハム「意識を逸らすな! 敵が撃ってくるぞ!」
叢雲「ぁッ!?」
金剛「至近弾! 大丈夫ですカ!?」
叢雲「だ、大丈夫、戦闘に支障はない!」
グラハム「無理はするなよ! 君に何かあってからでは遅い!」
グラハム「敵がこちらに向かってくるなら、すれ違い様に撃つ他はない!」
叢雲「反航戦ね、やってやるわ!」
金剛「装填完了、外しはしませン!」
グラハム「だが、ただすれ違い様に撃つのでは砲撃の命中率は低い」
叢雲「だったらどうするのよ」
グラハム「フッ、よくぞ聞いてくれた……」
グラハム「グラハム・スペシャルしかないッ!」
金剛「ぐ、Graham Special!?」
叢雲(コイツら戦闘中だってわかってんのかしら……)
グラハム「金剛は敵駆逐艦を狙え。叢雲、君はまだ待機だ」
金剛「りょ、了解デース……」
叢雲「ちょっと、なによそれ! 私がさっき外したから待機ってこと!?」
グラハム「違う」
叢雲「だったら私にも撃たせなさいよ! 私が旗艦なんでしょ?」
叢雲「私を旗艦にって、あんたが指名した! このままで終われないじゃない!」
グラハム「……そうとも。君が旗艦だ。そしてこのまま終わらせるつもりはない」
グラハム「わかるかな叢雲。切り札というものは最後まで取って置くものだ」
叢雲「……!」
叢雲「……へぇ、甘い言葉で釣ろうってワケ……。でもいいわ、釣られてやるわよ」
グラハム「フッ……」
《反航戦》
~~~
軽巡ホ級「――――」
駆逐ロ級「――――」
~~~
グラハム「来たぞ。外すなよ金剛」
金剛「大丈夫。ノープロブレムですヨ!」
叢雲「……」
グラハム「――よし、すれ違うぞ! グラハム・スペシャルだ金剛!」
金剛「Yes Sir!」
金剛「Graham Special!!!!」ドォォォォン
叢雲(グラハムファイヤーがスペシャルに置き換わっただけじゃないの……)
~~~
駆逐ロ級「 」着弾
~~~
グラハム「着弾確認、敵駆逐艦は大破炎上! 」
グラハム「さあ叢雲、君の出番だ! 勢いは殺さずに全力で180°回頭!」
叢雲「ハァ!? 勢い殺さずにってあんた――」
グラハム「やれないのか叢雲!」
叢雲「――その挑発、乗るわよ! こんのぉぉぉぉぉぉぉぉ!」グルゥッ
金剛「一気に曲がった!? って、私だけどんどん離れていきマース!!」
グラハム「これが……グラハム・スペシャル――アンド・リバースだッッッ!」
叢雲「無茶させてくれるじゃない……」
グラハム「よくやった叢雲。後はこの距離なら……雷撃戦が可能だろう?」
叢雲「――!」
叢雲「酸素魚雷の出番ってことね!」
グラハム「そうだ。あの軽巡に目にもの見せてやれ」
叢雲「そういうことなら……遠慮なく行かせてもらうわ!」
叢雲「さぁ、全弾持っていって、沈みなさいッッッ!」ババババババ
~~~
軽巡ホ級「―――――――!!!」魚雷命中
~~~
叢雲「やったわ! やった!」
叢雲「……あ、な、ないわ」
グラハム「よし。見事だった、叢雲」
叢雲「まあ……当然の結果じゃない」
グラハム「フッ……勝利して当然とは、やはり見事だよ」
叢雲「あんた……ちょっとバカにしてるでしょ」
グラハム「まさか。それよりも先ほどの至近弾での損傷、問題はないか?」
叢雲「ああ、そうね。ただのかすり傷。鎮守府には戻れる」
グラハム「私のボートに乗るといい。無茶をさせたくはない」
叢雲「いらないわよ」
グラハム「上官命令といったら?」
叢雲「パワハラって奴かしら。……感謝はしないわよ」
グラハム「いらんよ。活躍してくれた旗艦に対するただの私の我儘さ」
《鎮守府》
金剛「あーっ! 私一人だけ置いていって酷いデス二人とも!」
グラハム「置いていったつもりではないのだが……よく戻っていてくれたな」
金剛「燃料も弾薬も心許なかったから、戻る他なかったデース……」
金剛「それより二人とも大丈夫なんですカ? 軽巡ハ?」
叢雲「私の魚雷で沈めてやったわ」
金剛「Oh! 完璧な勝利ですネー!」
グラハム「ああ、そうだ。私たちの初陣は完全勝利に終わったというわけだ」
グラハム「本当に良くやってくれた」
金剛「提督のために、もっと頑張る所存デース!」
叢雲「……ま、悪くはなかったと思うわ、司令官」
グラハム「フッ……」
叢雲「……あーでも、グラハムリバースだったっけ? あれで無茶して少し疲れたわ」
金剛「潮風は気持ちいいけど髪も傷みまス。お風呂とかでさっぱりしたいところですネー」
グラハム「風呂……そのような場所はあるのか?」
叢雲「入渠用のドックがそれよ」
グラハム「そうか。では二人とも今日はゆっくり休むと良い。本日はこれにて解散!」
金剛「叢雲、案内お願いしまス!」
叢雲「はいはい、着いてきなさい」
グラハム「……」
グラハム(深海棲艦……あのような化物に、彼女らのような少女が立ち向かうのか)
グラハム(そして私が、彼女らを指揮する。彼女の生殺与奪は我が手の内……)
グラハム(重いな。……重いが、背を向けるわけにはいかない)
グラハム「彼女たちを知ってしまった以上は、な――」
今日はここまで
乗っ取りなのに呼んでくれてる人はありがとう
戦闘が酷いのはひとえに>>1の技量不足です めんご
では
《執務室》
グラハム「さて……今日の出撃について書類を纏めておかなくてはな……」
コンコン
グラハム「鍵は開いている。どうぞ」
ビリー「やあグラハム、おかえり」ガチャッ
グラハム「ただいま、と言わせてもらおう」
ビリー「初めての出撃は疲れたろう。君も休まなくちゃダメだよ」
グラハム「承知している。結果は聞かないのか?」
ビリー「聞くまでもないよ。君が僕を信頼してくれてるのと同じように、僕も君を信頼してるんだ」
ビリー「君が負けるなんて、露とも思っちゃいないよ、僕は」
グラハム「フフフ……私は良い友を持った」
グラハム「……だが感傷に浸る前に、君に意見を聞きたい事がある」
ビリー「奇遇だね。僕も君に聞きたい事があって来たんだ」
グラハム「……深海棲艦の事か?」
ビリー「実際に相対した君の意見を聞きたくてね。装備や性能、その他諸々」
グラハム「それは今報告書として纏めようと思っていたところだ」
ビリー「あ、そうなのかい。じゃあ邪魔をしないように退散していようか」
グラハム「……」
ビリー「グラハム?」
グラハム「カタギリ、少し私の想像に口を出していってくれないか」
ビリー「それは勿論構わないけど……」
グラハム「私が考えていたのは深海棲艦の正体だ」
ビリー「随分踏み込んだ考察だね。聞かせて貰うよ」
グラハム「今日の戦闘で私は索敵を行っていた。360°ぐるりと見渡しながらな」
グラハム「当然海に障害物などはない。島影も何も。だから何かが居ればすぐにわかるはずだった」
グラハム「だが……敵を発見した時、何故か敵が私たちの後方に陣取っていた」
グラハム「つまり、行き違いになった形になる。しかし私は誓って索敵を疎かにはしていないし」
グラハム「なにより深海棲艦らは一発でそれとわかる姿だ。少し視界に入れば意識に止めないはずもない」
グラハム「だが、現に奴らは私たちの後ろにいた。……これは海の底から現われた、という事になるのかな?」
ビリー「……ふむ、なるほど。確かに深海棲艦という名を鑑みれば、あり得ない話じゃないね。というかきっとそうなんだと思うよ」
グラハム「では深海棲艦が海の底から現われるモノと仮定しよう」
グラハム「……それで、この鎮守府は今までに何人の艦娘を喪ったのだろうな」
ビリー「え?」
グラハム「……残っていた艦は叢雲ただ一人。では他の艦はどうなったのか、ということさ」
グラハム「別の任地へ向かったのか、解体されたのか、あるいは撃沈され海の底か……」
ビリー「いや、まさか……」
グラハム「叢雲はこう言っていたな。『奴らは何故か鎮守府を目指してやってくる』」
グラハム「自らの故郷へ戻りたいと願うのは、ごく自然な感情ではないか」
グラハム「例えどのような姿になっていようとも――」
ビリー「――待ってくれ、待ってくれよグラハム。それは想像に過ぎない。そして想像にしてはあまりに残酷だ」
グラハム「……あ、ああ……そうだな。すまない、つい熱が入ったか」
ビリー「考えすぎだよ。考えすぎると、人の頭ってのは鈍くなるんだ」
ビリー「決断が鈍れば、それだけ多くのものを失う事になる」
ビリー「今はこの貧乏鎮守府の運用に集中すべきだよ。あるいは、風呂に入ってさっぱりするとか」
グラハム「……ああ、そうかもしれないな……」
ビリー「実は資源について話さなくちゃいけない事もあってね。忘れてたんだけど、聞いてくれるかな」
グラハム「ああ……」
ビリー「うーん……とりあえず、風呂に入ってきたらどうかな。熱いお湯を浴びればすっきりするよ」
グラハム「そうか……では、そうするかな」
ビリー「廊下にマップがあるから、それを辿っていくと良いよ」
グラハム「わかった。感謝するカタギリ」
ビリー「いやいや」
《廊下》
グラハム「迷いに迷ったが、ここが風呂か……」
グラハム「ジャパニーズ・ユブネも完備とは……流石だな、鎮守府!」
グラハム「では、いざ尋常に――」ガラッ
叢雲「――――ぇ?」
グラハム「……!?」
叢雲「な、あ、あん、た…………」ワナワナ
グラハム「や、柔肌を晒すとは……破廉恥だぞ叢雲!!」
叢雲「――破廉恥はそっちでしょうがッ!」
グラハム「くっ、これは不可抗力だ。私はマップに従ったに過ぎん……! ここが風呂ではないのか!?」
叢雲「風呂よ! でも御託は良いから出てけ! 出て行きなさい! 酸素魚雷をぶち込まれたいの!?」
グラハム「ま、待て叢雲、そう言いながら既にその手に握られているのは魚雷ではないのか!?」
叢雲「ええそうよ今すぐにでも変態覗き鬼畜米兵を誅殺する心づもりよ文句あるわけ!?」
グラハム「よ、よせ、話せばわかる!」
叢雲「あんたに話す舌は持たないわよッ、このバカッ!」ドガシャァァン
グラハム「ぬおおおおッ!?」
《翌日・執務室》
グラハム(何故だ……何故か昨日の……夜あたりから記憶がない)
グラハム(目が覚めた時には何故か風呂場の脱衣所で横になっていた)
グラハム(慣れぬ環境に適応出来なかったというのか……軍人たる者が何と情けない)
グラハム(……だが……なんというのか……えらく美しいものを見た記憶がある……)
グラハム(なんだったのだろう……幻か……?)
金剛「グッモーニン、提督ゥ! 今日も一日元気に行きまショー!」ガチャッ
グラハム「金剛か……おはようの挨拶を送らせてもらおう」
金剛「ハイ、おはよーでス!」
グラハム「……」
金剛「提督、なんか寝ぼけてる感じですネー。夜更かししちゃいましたカ?」
グラハム「いや、そうではない。……軽い記憶喪失だ」
金剛「キオクソーシツって全然軽くナイと思いマス……」
グラハム「フッ……なに、心配はいらんよ。それより何か用かな」
金剛「ハイ。今日の出撃予定とか聞こうと思ってましタ! あと補給もして欲しいデース!」
グラハム「ああ、そうか……燃料と弾薬の補給をしなければならないのだったな」
金剛「そーデース!」
グラハム「見た目は普通の少女なのだが……やはり不思議なものだな、艦娘とは」
金剛「あんまり褒めないでくださいネー! 照れちゃうヨー!」
グラハム「フッ……その明るさ、好意を抱くよ」
金剛「私も提督の事好きでス! もちろん、まだ『Like』ですけどネ!」
グラハム「む、そうか……」
グラハム「それで……どれだけ補給しなくてはならないかというのは自分でわかるものか?」
金剛「ハイ! この感じだと……これくらい欲しいでス!」カキカキ
グラハム「…………え? こんなに、なのか」
金剛「え?」
グラハム「え?」
金剛「テートク。私、戦艦ですヨ?」
グラハム「……そうだったな、戦艦だったな」
グラハム(……いくら敵を屠ったところで、これでは鎮守府の資源が底を突く方が早いぞ)
グラハム「すまないがカタギリを呼んできてくれないか。あと可能なら叢雲も」
金剛「お安いご用デース!」
グラハム「頼んだぞ……」
グラハム「さて、どうしたものかな……」
ビリー「やあ、呼んだかいグラハム。理由は察しがつくけど」
叢雲「……」
グラハム「二人ともよく来てくれた。早速本題に入りたいのだが」
ビリー「資源の事だね」
グラハム「ああ……」
叢雲「私、昨日注意しなかったかしら? 資源は何においても優先すべき要素だって」
グラハム「それについては、反論の余地もない」
ビリー「過去の統計から戦艦建造の資源投入量を導き出したまでは良かったけど」
ビリー「ランニングコストについては実数値のデータがなかったからね……僕のミスだ、すまないグラハム」
金剛「なんだかすみません、みなさン……」
グラハム「金剛、君に非は全くない。だから決して卑屈になるな。これは命令だ」
グラハム「問題は私とカタギリの認識が甘すぎた事なのだ。……そこで叢雲、君の知恵を借りたい」
叢雲「……」
グラハム「……あの、叢雲?」
叢雲「……何も覚えてないわけ?」
グラハム「私が昨晩の記憶を無くしている事、君に話したかな?」
叢雲「なんでもない……。でも次はないわよ」
グラハム「……? わかった。よく記憶しておこう」
叢雲「それじゃ資源の事だけど。資源を手に入れる手っ取り早い方法は二つ」
叢雲「艦隊を遠征に出して、資源地から持ち帰ってくる事」
叢雲「もう一つは、上から出される任務をこなして、報酬として受け取る事」
叢雲「ただ上からの任務ってのは結構無茶なものも多いから、艦隊遠征の方が現実的ね」
グラハム「遠征には複数艦が必要か?」
叢雲「遠征の内容によるわ」
叢雲「近海なら少なくても良いし、少し遠いところだったり護衛任務とかならそれなりの数がいる」
叢雲「……私と金剛だけじゃきついわね。それに遠征した後にも補給は必要だし」
ビリー「真綿で首を絞められてるようだね……」
グラハム「……カタギリ。建造だ」
ビリー「え」
叢雲「本気?」
グラハム「金剛には少し補給を我慢して貰わねばならないが、な」
金剛「大丈夫、いくらだって待ちますヨー!」
グラハム「ありがとう。……カタギリ、遠征に出せる艦娘を何人か建造してくれ」
グラハム「叢雲は少人数で遂行出来、なおかつ危険度の少ない遠征を見繕った後、私に提出。頼んだぞ」
ビリー「わかった。任せてくれよグラハム」
叢雲「ま、やってやるわよ」
金剛「えっと……、私は……。そうだ、紅茶を入れますネー!」
グラハム「む? ああ、どうもありがとう」
今日はここまで
次回新艦娘登場なるか
では
金剛「パックしかないだなんて……」ズーン
グラハム「茶葉から、というわけにはいかんのだろう。この鎮守府の台所事情ではな」
金剛「うぅ……でも紅茶がないよりはマシですから、パックでも我慢しまス……」シクシク
グラハム「ははは……君はよほど紅茶が好きなのだな」
金剛「ハイ! 私英国生まれですカラ! イギリス人は紅茶と相場が決まってマース!」
グラハム「まあ、間違いではないか……些か短絡的な気もするが」
金剛「テートクは、紅茶をよく飲まれるんですカ?」
グラハム「いや、私はもっぱら珈琲が多いな」
金剛「Oh……泥水……」
グラハム「おっと、聞き捨てならんな……」
金剛「わわっ、じょ、ジョーダンですヨー! 本音が漏れたとかじゃないでス!」アセアセ
グラハム「少し教育が必要か。叢雲が遠征案を纏めるまでの間、少し時間があるし、な」
金剛「ひぇ~……」
叢雲「入るわよ」ガチャッ
金剛「ひぃ……もう飲みたくないデス……」
グラハム「遠慮するな金剛。まだまだおかわりはたくさんあるぞ」
金剛「うぅ……酷いです、酷すぎまス……」
叢雲「……何やってんのよ?」
グラハム「叢雲か。いやなに、金剛が珈琲を泥水というのでな、少し教育を施していた」
金剛「叢雲ぉ……ヘルプミー……」
叢雲「……まあなんでもいいけど、はいこれ、遠征案」ヒョイ
グラハム「ありがたい。……ふむ。ちゃんと私の要求に添ってくれたようだな」
叢雲「結構探したけど、どれも大抵、軽巡1隻、駆逐艦2隻が必要ね」
グラハム「駆逐艦は1隻クリアしているから、残りは軽巡と駆逐艦か」
叢雲「技術顧問殿がちゃんと建造してくれればいいけどね」
グラハム「その点に心配はない。カタギリは必ずやり遂げる」
叢雲「……あんたたちって、ホントに信頼し合ってるのね」
グラハム「この私と唯一友人を続けられる男だぞ? 信じないわけがない」
叢雲「説得力あるわ」
グラハム「そこは方便でも良いから否定が欲しいが……まあいい」
グラハム「ここでずっと待っているともいうのもつまらん。工廠へ向かおう」
叢雲「建造現場を見学ってワケね」
グラハム「金剛、ティータイムの後の散歩だ。行くぞ」
金剛「全然ティータイムじゃなかったでス……」
グラハム「後で茶葉を買ってやる」
金剛「ワォ! テートク、大好きでス!」
叢雲「餌付けされてるって気付いといた方が良いわよ……」
《工廠》
ビリー「ふふふふふふ」
ビリー「燃料、鋼材の投入量を増やし、弾薬とボーキサイトは減らそう」
ビリー「ボーキサイトを抑える事によって空母系列の建造率を落とすんだ」
ビリー「弾薬は増えすぎれば重巡、戦艦などに化ける可能性がある……排除だね」
ビリー「ふふふふ、考えれば考えるだけ奥が深いねぇ、建造ってやつは」メガネキラン
叢雲「なんか見ちゃいけないものを見た気がする」
グラハム「う、うむ……」
金剛「怖いでス……」
ビリー「おや……やあグラハム、ようこそ僕の城へ」
グラハム「あ、ああ、精が出て何よりだカタギリ……」
グラハム「それで、調子はどうだろうか」
ビリー「うん、今一人目の建造を開始したところだよ。おそらく……軽巡洋艦かな」
叢雲「あら、やるじゃないの」
ビリー「ありがとう」
金剛「二人目はどーするんですカー?」
ビリー「駆逐艦を目指した方が良いんだよね?」
グラハム「そうだな。軽巡と駆逐が建造出来れば、叢雲が提出してくれた遠征をこなせそうだ」
ビリー「じゃあ駆逐艦だね。オーケー、任せてくれよ」
グラハム「……」
叢雲「……」
金剛「……暇ですネー」
叢雲「思ってても言わなかったのに」
ビリー「はは、確かにただ待ってるだけじゃあ暇かな」
グラハム「建造には時間がかかるものなのだな」
ビリー「高速建造材を使えばすぐなんだけどね。金剛の時はそうだったんだけど」
叢雲「駆逐艦や軽巡洋艦くらいなら、使うほどの長さじゃないのよね……」
グラハム「そうか。では待とう……」
金剛「……」
グラハム「……」
叢雲「……」
グラハム「暇だな」
金剛「暇でス」
グラハム「カタギリ、まだ艦娘は建造し終えないのか?」
ビリー「やだなあグラハム、こらえ性がないんじゃないのかい?」
グラハム「私は我慢弱く落ち着きもない男だ。よくよく熟知しているだろう?」
叢雲「サイアクじゃないのよ。……とは言っても、確かにここで突っ立ってるのも暇ね」
金剛「茶葉ー……茶葉を買いに行きたいデース……」
ビリー「おやおや……でも安心してくれよ。もうすぐこの軽巡は建造終了だ」カチャカチャ
ビリー「どんな子が出てくるのか、実に楽しみだねえ」
グラハム「ふむ……」
《~建造完了~》
叢雲「完了のようね」
金剛「!」
グラハム「刮目させてもらおう……新たな仲間を!」
ビリー「さあ、どんな子が来るのかな?」
???「はーい、お待たせ!」
夕張「兵装実験軽巡、夕張。ただいま着任よ!」
ビリー「兵装実験!?」ガタッ
金剛「!?」ビクッ
夕張「あら、ご存じない? 兵装のデータ取りなら、私にバッチリ任せてね!」
ビリー「グラハム! これは天啓かな!?」
グラハム「あ、ああ……カタギリと話が合いそうな艦娘だな……」
夕張「提督さんはどっち? あなたかしら」
グラハム「うむ。私はグラハム・エーカー。この鎮守府で君たちの指揮を執る」
夕張「じゃあこっちは」
ビリー「ビリー・カタギリ技術顧問だよ。君とは長い付き合いになりそうだね、よろしく」
夕張「あら……確かに、同じ匂いを感じます」
ビリー「ふふふ」
夕張「うふふふふ」
叢雲「なんかシンクロしてるわね……」
夕張「すごい! こんなにたくさんの機材が転がってるなんて、ここは天国かしら!」
ビリー「そう思うだろう? そう思ってくれるだろう? ここならデータ取りもばっちりさ」
夕張「ドック自体、誰が見ても使いやすいように整理されているわ……顧問、これはあなたが?」
ビリー「まあね。ちょっとこの分野にはうるさいんだ、僕は」
夕張「素敵です! あなたのような技術屋と共に働けるなんて光栄だわ!」
ビリー「僕こそ君のような艦娘と出会えて嬉しいよ。ところでこっちのこれを見てくれないかな」
夕張「これは……」
ビリー「廃材で造り上げた装置なんだけどこれの良さをわかってくれそうな人がここにはいなくてね」
夕張「廃材!? これがですか!?」
グラハム「……疎外感を感じる。とてつもない疎外感を」
叢雲「安心なさい。私もよ」
金剛「私もデース……」
夕張「それで早速新装備の実験がお仕事なんでしょうか?」
ビリー「そうだね、それも悪くないな。ちょっとここに試作連装砲が……」
グラハム「待て、待てカタギリ。話が盛り上がるのは良いが暫し待つんだ」
ビリー「おっ、と……そうだった、いやあごめんグラハム、趣味が合うってのはいいもんだね」
グラハム「それは何よりだが……夕張、君には早速だが仕事を頼まねばならん」
夕張「なんですか? 何でもお任せ下さい!」
グラハム「うむ。そこの叢雲と、もう一人建造できるはずの駆逐艦を連れて遠征に出て欲しい」
夕張「遠征……?」
叢雲「この鎮守府の台所事情は火の車なのよ」
グラハム「だから資源を回収してきて欲しいのだ。頼めるかな?」
夕張「なるほど、資源がなければ兵装の開発も出来ませんしね!」
金剛「価値観が兵装優先デス……」
夕張「それでもう一人の駆逐艦というのは?」
ビリー「現在建造中さ。あと少しで完了だよ」
夕張「なるほど! じゃあそれまでそこの試作連装砲を積んでみても良いですか?」ガチャガチャ
ビリー「もちろんだよ。時間は有効に使わなくちゃね」ガチャガチャ
金剛「来たばかりなのに仲良しですネー」
叢雲「まあ技術顧問殿には良かったんじゃない?」
グラハム「技術追求の思いが行きすぎなければよいがな」
叢雲「戦場に出てくる無謀な司令官殿には言われたくないでしょうよ」
金剛「そうデス! 生身の人間が戦場に出るなんて無茶も良いところネー!」
グラハム「生身といえば君たちもそう変わらないように見えるがね」
叢雲「私たちはまず中身が違うのよ。人じゃないんだから」
グラハム「フッ、それは失礼した」
グラハム(人じゃない、か……)
《~建造完了その2~》
グラハム「……今度はやけに早いのだな」
叢雲「駆逐艦は建造終わるのも速いのよ」
金剛「どんな仲間が出てくるんでショー! 楽しみですネー!」
グラハム「……」
???「お待たせしました」
不知火「陽炎型駆逐艦二番艦、不知火。ただいま着任いたしました」
グラハム「ほう」
金剛「マジメそーでス」
不知火「……あなたが司令ですか?」
グラハム「ああ。グラハム・エーカーだ」
不知火「了解です、司令。ご命令を」
グラハム「フッ……軍人然としているな。しかし気を張りすぎるなよ」
不知火「性分ですので。しかしご命令ならばそうしましょう」
グラハム「堅いな。しかしその初々しさ……好意を抱くよ」
叢雲「金剛、夕張、不知火……私上手くやってけるのかしら……」
金剛「なんデそのくくりに私も入ってるのヨー」
叢雲「自分の胸に手を当ててよく考えてみなさい」
今日はここまで
夕張とカタギリの組み合わせは乗っ取り当初から考えてたので
不知火は単に好み
では
《艦隊が遠征に出発しました》
夕張「それでは行ってきますね」
不知火「不知火にお任せを」
叢雲「ま、期待はせずに待っときなさいな」
グラハム「よろしく頼む」
金剛「よろしくネー」
夕張「それではしゅっぱーつ! みんな、私に着いてきて!」
不知火「……」
叢雲「……」
夕張「……」
不知火「不知火、出ます」
叢雲「叢雲、行くわ」
夕張「ちょっとぉ!」
金剛「行っちゃいましたネー」
グラハム「ああ。彼女らの無事を願おう」
金剛「ハイ。……でもちょっと罪悪感を感じマス」
グラハム「?」
金剛「私のせいで困った事になってるのに、当人は鎮守府で待機でス」
金剛「みんなには悪い事していまス……」
グラハム「……そう思ってしまうのも無理はないと思うが」
グラハム「しかし我々の初陣を勝利で飾れたのは、君の尽力あってこそだ」
グラハム「気に病む事はないよ」
金剛「でモ……」
グラハム「ならば彼女達には、戦場で報いれば良い。君にはそれが出来るはずだ、金剛」
金剛「……戦場で、報いル……」
グラハム「実際目の当たりにして感じたが、戦艦の破壊力というのは文字通り桁が違う」
グラハム「君のような戦艦は戦場の華。艦隊戦の主役だ」
グラハム「適材適所という言葉があるのは知っているな。君の舞台は戦場なのだよ、金剛」
金剛「…………」
グラハム「そうやって悩むのも、勿論悪いことではないがね」
金剛「……ハイ、そうですネ。もっとポジティブに考えまス!」
グラハム「その意気だ。……さて、遠征部隊が戻るまでには時間がある」
グラハム「先の約束を果たすとしようか」
金剛「ヤクソク?」
グラハム「茶葉を買いに行くと言っただろう?」
金剛「!」
《鎮守府正門前》
ビリー「聞いたよグラハム、金剛と出かけるんだって?」
グラハム「ああ。茶葉を買いにな。何か他に必要なものはあるか?」
ビリー「あっはっは、おつかいだなんて、そんなヤボな事は頼まないよ」
グラハム「?」
ビリー「……いや、まあ……わかってないなら良いんだ、別に」
グラハム「ハッキリ言ってくれないとわからんな」
ビリー「まあ気にしないで。……おっと、主賓の登場か。それじゃ僕は工廠に籠もっているから」
グラハム「根を詰めすぎるなよ」
ビリー「兵装の試作第二号がもうすぐ出来上がるんだ。止まっちゃいられないさ。じゃあね」
金剛「――テートク、お待たせでス!」
グラハム「ん? ああ……」
グラハム「…………」
金剛「どうしましタ? 紅茶が私を呼んでいマス! 止まっては居られませン!」
グラハム「フッ……艤装を外せばただの少女、か……」
金剛「えっ?」
グラハム「なに、独り言だよ」
金剛「気になるネー……」
グラハム「単なる感想さ。可憐さに磨きがかかっている」
金剛「…………」
金剛「…………」
金剛「……もゥ!」
金剛「提督ってバ、そんなことばかり言って、見かけ通り色男だったんですネー!」バシバシ
グラハム「いたたた……見かけ通りとはどういうことかな……」
金剛「プレイボーイってことですヨー!」
グラハム「まさか……」
金剛「サ、行きまショー、テートク! 茶葉が待ってるヨー!」
グラハム「わかったわかった……」
>>3です
あけましておめでとうございます。
多忙で秋イベントは参加できず、クリスマスと正月でようやく久々の艦これでした
大型建造の運に恵まれているらしく、大鳳→矢矧と連続でツモったのでとりあえず打ち止めですはい
大鳳も矢矧も可愛いですね。
ぼちぼちまた書き始めます
【店】
金剛「うーン、この茶葉にすべきか……あるいはこっちか……」
グラハム(まるで違いがわからないが……黙っておこう)
金剛「テートク、どっちがいいと思いますカ!?」
グラハム「む、そこで私に振るのか……しかし私は紅茶に関してはずぶの素人なのだが」
金剛「それでも構いまセーン! むしろ下手に知識があるよりよっぽど参考になりますカラ!」
グラハム「そういうものかね」
金剛「ハイ!」
グラハム「……ではこちらで」
金剛「アッサムですネー!」
グラハム「アッザム?」
金剛「ア・ッ・サ・ム・!」
グラハム「そ、そうか、すまない」
金剛「ミルクティーにぴったりヨ!」
グラハム「ほう。では君に淹れてもらうのを楽しみにしていよう」
金剛「任せてヨ! コーヒーなんか二度と飲めなくなりますカラ!」
グラハム「ははは、それは困る……よし、では買ってこよう」
金剛「テートク、アリガトーございまス!」
グラハム「フッ……君の活躍への前払いだよ」
金剛「ハイッ!」
【海が見える公園】
グラハム「公園か……」
金剛「公園ですネー」
グラハム「少しのんびりするかね」
金剛「えっ、イイんですカ?」
グラハム「どの道叢雲たちが戻ってくれなければ私たちに仕事はないからな」
金剛「……ちょっと、悪い気がしますケド」
グラハム「先も言ったはずだ。君は戦場で報いるのだと」
金剛「……そう、デスネ。そうデシタ」
グラハム「不知火もだったが、君もなかなか気を張りすぎだ」
グラハム「少し肩の力を抜くといい」
金剛「……」
グラハム「……」
金剛「私は戦艦ですカラ……皆を引っ張るだけの活躍をしなくちゃっテ」
金剛「工廠で建造されたあと、すぐ、そう心に誓ったんデス」
金剛「デモ、私が大食らいだから鎮守府に迷惑かけてるヨ……」
金剛「それが、心苦しくテ……」
グラハム「君は……真面目だな」
金剛「エヘヘ……英国仕込みの淑女ですもノ」
グラハム「しかし、真面目すぎていつか壊れてしまうのではないかと、それが怖く感じる」
金剛「……」
グラハム「君が常に気を張っていなければならないほど、私は頼りないかね?」
グラハム「叢雲は信頼に値しないかな? 無論、まだ私とて出会って間もなくはあるが……」
グラハム「しかしその短い間でも、彼女が信頼に足る艦娘であることはわかるよ」
金剛「それハ、もちろん……」
グラハム「ならば、答えはもう出ているではないか」
グラハム「叢雲を頼り、私を頼れ。カタギリでも、夕張でも、不知火でも」
グラハム「もっともっと頼るんだ。卑屈にはなるな。一人で立とうと思うな」
グラハム「君には私たちがついている。戦友とは共に支えあうものだ」
金剛「……私、絶対甘えちゃいマス」
グラハム「フッ……愚問だな」
グラハム「君のような娘ひとり甘えさせられないようで、何が男だ」
金剛「テートク……」
どうぞどうぞ
>>169
そうか。じゃあやってみよう。
ビリーの性格が違和感無くなるように最初から読み直してみたがやっぱり面白いな、このスレ。
ビリー「それにしてもグラハムたちは帰ってくるのが遅いな。いったいどこに行っているんだろう」
《艦隊が遠征から戻ってきました》
夕張「ただいま帰投しました」
ビリー「おお、夕張くん、叢雲くん、不知火くん、待っていたよ! 成果はどうかな?」
夕張「もちろん成功よ! ・・・まあ、練習航海ですからね。失敗するほうが珍しいわ」
ビリー「ふむ、弾薬を獲得したようだね。消費した燃料は・・・ふーむ、ふむふむ」
不知火「・・・不知火に何か落ち度でも?」
ビリー「落ち度なんかあるものか! 収支計算をしていただけさ」
夕張「遠征で獲得した資源の量より遠征で消費した資源の方が多いと、逆に赤字になっちゃうからね。収支は考えないと」
ビリー「やはり難度の低い遠征だと得られる資源の量もすくないか。消費燃料のことを考えたら、練習航海は少し割に合わないな・・・」
夕張「叢雲さん、前任者は遠征のデータなど残していなかったのかしら?」
叢雲「あったはずよ。ちょっと待ってて」
ビリー「もっと"割のいい"遠征があるはずだ。それを見つけることが出来れば・・・」
叢雲「持って来たわよ。さっさと読みなさい」バサッ
ビリー「ありがとう。どれどれ・・・」
叢雲(目をキラキラさせているわ)
ビリー「いくつかの遠征の成功事例から判断するに、「海上護衛任務」というのが、我々が選択できる遠征の中で最も効率が良いようだね」
叢雲「はやっ! ・・・アンタ、これだけの資料をもう読んだの?」
ビリー「何かおかしいかい?」
叢雲(変態だけど仕事は出来るのよね、コイツ)
夕張「それで、副司令。私たちの次の遠征は海上護衛任務に?」
叢雲(副? まあいいけど)
ビリー「うーむ、そうしたいのは山々なのだが、遠征の成功ラインを見るに、もう一人駆逐艦娘が必要のようなんだ」
夕張「そうですか・・・グラハム司令が不在の現在、私たちだけで建造を行うのは・・・」
ガシャンッ ブーーーーーン
叢雲「なにごと!?」
ビリー「あっ、工廠のクレーンが動いてる!」
夕張「誰!? 勝手に建造ボタンを押したのは!」
不知火「・・・不知火に何か落ち度でも?」
ビリー「君か・・・」
ビリー「しかたない、グラハムには後で事後承諾を貰うことにしよう。どうやら建造は最低の資源量で行ったようだし、遠征で獲得できる資源を考えれば収支はプラスになるはずだ。だが不知火くん、今度からは許可を得るようにしてくれ」
不知火「了解です」
夕張「どんな娘が来るのかしら? 楽しみだわ」
叢雲「どうやら私たちと同じ駆逐艦のようね」
ビリー「それにしても不思議だな」
叢雲「何が?」
ビリー「あの建造クレーンだよ。ボタンを押せば自動で動き出す。見たところ、高度な自立制御機能はついていないようなのだが」
叢雲(…やっぱり、この男でも見えていないのね)
ビリー「少し時間が必要なようだ。空いている時間で何かできないかな?」
夕張「それじゃあ兵器開発しましょう! はい、開発データです!」バサァッ
ビリー「用意がいいね。ふむ…金剛くんに46cm砲を装備させてあげたいものだが」
叢雲「消費する資源の量が半端じゃないからやめといたほうがいいわ。…不知火、アンタ言われたそばからまた!」
不知火「まだボタンは押していません」
ビリー「やはり叢雲くんや不知火くん、君たち駆逐艦や夕張くんに装備できるものから始めるのがいいね。」
叢雲「まずは最低値でやってみたら?」
ビリー「そうだね。消費資源を設定してこのボタンを押すだけでいいのか…」ポチ
パァアッ
ビリー「何か出来たようだぞ。…うわぁっ、なんだこれは!?」
ビリー「へ、兵器を開発したはずなのに、何故かナマモノができてしまった。…これはいったい何なんだろう…」
叢雲「兵器開発が失敗したのよ。それは通称"ペンギン"と呼ばれる謎のナマモノね」
ビリー「ど、どうすればいい? 僕はナマモノが苦手なんだ!」
不知火「ナマモノは海に捨てましょう」ポイッ バシャーン
ビリー「いともたやすくえげつないことを」
叢雲「気にしないでいいわ。海に帰っていったのよ」
ビリー「ふーむ、最低値だとあんなものなのか。次は、少し鋼材を増やしてみよう」ポチ
パァアッ
ビリー「…今度はナマモノではないものが出来たぞ。しかしこれは…」
叢雲「どう見てもただのドラム缶ね」
不知火「ではさっそく…」
夕張「ちょっと待って! その装備(?)は置いておくと後々いいことがあるみたい!」
ビリー「本当かい?」
夕張「前任者のメモにあるわ。"今日もドラム缶が出来なかった…もう疲れた、寝る"」
ビリー「その口ぶりだと、ドラム缶を欲しがっていたみたいだね。ふーむ、こんなものが役に立つのか…?」
不知火「とりあえず倉庫に仕舞っておきましょう。スペースは充分余っています」
叢雲「あ、そろそろ建造が終了するみたいよ」
ビリー「結局つくれたのはドラム缶一個か…」
今回はここまで。>>3司令の帰還を願いつつ。
《「工廠」で、建造が完了した艦があります》
吹雪「世界を驚愕させた特型駆逐艦、吹雪です! 司令官、よろしくお願いします!」
ビリー「ようこそ! …なんだか普通の子だな」
夕張「いらっしゃい。…普通の駆逐艦娘ね」
叢雲「よく来たわね、クイーン・オブ・普通」
不知火「ザ・普通」
吹雪「普通連呼しないでください! これでも、ワシントン条約制限下で速力を維持しながら攻撃力・航続距離を充実させて世界中を驚かせ、その後の日本海軍の駆逐艦のスタンダードとなった画期的な駆逐艦なんですよ!」
ビリー「その三つを鼎立させるのは難しいものだ。詳しく話を聞かせてもらいたいが、ひとつ訂正しておくことがある」
吹雪「なんでしょう、司令官?」
ビリー「その司令官という呼称さ。僕はビリー・カタギリ。この鎮守府の司令官は僕の友人のグラハム・エーカー少佐で、僕は技術顧問。いまグラハムは出掛けていて留守を預かってる」
吹雪「じゃあ…司令官代理?」
ビリー「どう呼んでくれても構わないが、ビリーと呼んでくれるのが一番楽だね」
吹雪「そんな! 男の人の名前を呼び捨てにするなんて! じゃあ…ビリーさんでいいですか?」
ビリー(奥ゆかしい娘だな)「かまわないよ」
吹雪「それで、私は何をすればいいんですか?」
ビリー「うん、夕張くんを旗艦に遠征艦隊に加わってもらいたいんだが、出会ってすぐというのも味気ない」
ビリー「時間もいい頃合だし、お昼御飯にしないか? 何でも好きなものを御馳走しよう」
夕張「はいッ! 私、おそばがいいです!」
ビリー「僕もそうしようかな」
叢雲「私も、蕎麦でいいわ」
吹雪「同じものを頂きます」
不知火「では私はカツ丼を」
叢雲「マイペースな駆逐艦ね」
不知火「蕎麦屋で食べるカツ丼は…意外と美味しい…」
ビリー「残念だが、これでも留守を預かる身。司令部を空けるわけにはいかないよ。出前を頼もう」
不知火「あの店内に満ちる和の空気が好きなのですが…致し方ありません」
《出前が到着しました》
夕張「出前かあ…。ヒラガ博士におそば、食べさせてあげたかったな」
ビリー「君たち艦娘のオリジナル艦の多くを設計した技術者だね」
夕張「はいっ! 博士の設計する船は、船体の強度や復元力を重視しつつ攻守両面の能力を兼ね備え、おまけにバランスの取れた美しい艦形に仕上がるという、素晴らしい技術者だったんです!」
ビリー「機能を追求したら美しいデザインにまとまるというが…技術が起こす一つの奇跡だね。私もいつか、そのような兵器を設計したいものだ」
不知火「このカツ丼の美味しさも一つの奇跡ですね」
叢雲「駆逐艦がカツ丼を食べてるってのがすでに奇跡よ」(蕎麦湯を飲みながら)
夕張「じゃあ海上護衛任務、行きますか!」
吹雪「私の初陣です!」
ビリー「ところで、君たちが護衛する船団というのはどこにいるんだい?」
叢雲「この地図を見なさい」
ビリー「この鎮守府周辺の地図だね」
叢雲「ここが司令部、ここが軍港。こっちのほうが市街地で、お蕎麦屋さんはここ。で、軍港から少し離れた所に民間の港があるわ」
ビリー「市街地からの交通の便が良いところだね」
叢雲「だけど深海棲艦の襲撃が始まったせいで海上輸送が激減し、寂れる一方だったのよ。…アンタたちが来るまでは」
ビリー「僕たちが着任してから何か変わったのかい?」
叢雲「アンタたちが深海棲艦と一戦交え、勝利したおかげで、途絶えていた海上輸送に復活の兆しが見えているの」
ビリー「グラハムの戦功だね」
叢雲「航路を艦娘が護衛するとなれば、海上輸送が復活するわ。海上輸送の輸送量は陸路・空路を遥かにしのぐ。物流の活性化は経済に好影響を与えるでしょう」
ビリー「責任重大だね」
叢雲「だから、報酬として得られる資源の量も多いのよ。いい? みんな、心してかかりなさい?」
夕張・不知火・吹雪「ええ!」「了解」「はいっ!」
《艦隊が遠征に出発しました》
ビリー「…さて、彼女たちが出払ってしまったら僕の仕事が本格的に無くなってしまったぞ」
ビリー「秘書艦がいないと建造も開発もできないようだし…資料の整理でもするか。でも、散らかってるように見えて、どこに何があるかは把握してるんだよね」
ビリー「だから資料の整理は必要ない。さて…」
ビリー「うん、疲れて帰ってくるであろう彼女たちのために、夕飯の支度でもしておくか」
ビリー「調理というのは、論理的に行動しないとうまくできない作業だ」
ビリー「調理作業の手順を考え、効率的に、無駄のない行動で食材を一番美味しい状態に仕上げる。設計と似たところがある」
ビリー「意外に思うかもしれないが、僕は実は料理上手なんだよ」
ビリー「…別に生活力に乏しい女性と同棲していたからではないよ?」
今回はここまで。ビリーは何をつくるんだろう。
ビリーのことを再確認するため色々調べていたら、OVAで誰か別の人とくっつくみたいね。
ちなみに自分は二期が終わったあとくらいのビリー&グラハムを想像してた。明確な時期って言明されてたっけ?
《艦隊が遠征から戻ってきました》
夕張「ただいま帰投しました」
ビリー「やあ、お帰り」
叢雲「…誰、アンタ?」
不知火「白いコック帽をかぶり、花柄エプロンを甲斐々々しく身にまとった長身の男性がいます。どう見ても不審者」
ビリー「ああ、エプロンを付けたままだった。君たちの夕食を作っていたんだよ」
吹雪「男子厨房に入るべからず、ですよ、ビリーさん!」
ビリー「君たちのようなお嬢さんが働いているんだ、そんな戒めからは卒業しよう」
叢雲「ふん、まあいいわ。それで、何をつくったというの? しょうもないものを作って食材を無駄にしてたら許さないんだから」
ビリー「ああ、まずは定番の肉じゃが。ほうれん草のおひたしに、季節の食材として菜の花をてんぷらにしてみた」
ビリー「自分でもこの揚げだし豆腐はうまく出来たと思う。白菜の浅漬けに白いご飯。そしてあさりのお味噌汁。これで全部だ」
吹雪「すごい! ビリーさん、主婦みたい!」
不知火「実に私好みの和食です。皆さんいただきましょう」
《艦隊の夕食が終わりました》
叢雲「…燃料と弾薬があれば私たちの補給は充分なんだけど」
吹雪「やっぱり真心のこもったお食事を頂くと嬉しいですね!」
夕張「もう一品、おそばがあればなあ」
不知火「それにしても司令官と金剛は遅いですね、どこに行っているんでしょう」
夕張「司令と金剛さんのぶんのお食事は作っていないみたいだけど、大丈夫なのかしら」
ビリー「ははは、技術者にはね、「こんなこともあろうかと」という便利な魔法の言葉があるんだよ」
夕張「メタ発言はやめましょう」
ビリー「それで、遠征の結果を聞こうか」
夕張「もちろん成功です! 獲得した資源の目録はこれです。資源は搬入しておきました」
ビリー「おお、さすが海上護衛任務! 大量の燃料と弾薬が入手できたね。少量だが鋼材やボーキサイトまで」
ビリー「ふむ…護衛任務を安定して行えるようになると、僕たちの補給事情はだいぶ改善するようになるな…」
ビリー「金剛さんのような戦艦娘を気軽に出撃させられるほどじゃないけど、君たちのような駆逐艦娘や軽巡洋艦娘を出撃させるぶんには、問題ないレベルだ」
ビリー「それじゃあこの後は自由時間にする。みんな休息をしっかり取って、明日に備えてくれ。僕は資料を読みこんでおくよ」
夕張「明日の予定は? 海上護衛任務でしょうか?」
ビリー「いや、明日は、今までやっていなかった「演習」を実施してみようと思う」
不知火「ほう…楽しみです」
吹雪「それじゃあしっかり休息しないとね! 叢雲ちゃん、一緒に寝よ!」
叢雲「ハァ!? なんで私があなたと」
吹雪「私、叢雲ちゃんのお姉ちゃんだよ?」(特型駆逐艦・1番艦)
叢雲(特型駆逐艦・5番艦)「ぅぐう…」
不知火「お姉ちゃんに存分に甘えるといいでしょう」
夕張「私、同型艦いないのよねえ」
今回はここまで。次回、演習します。
ビリー「気持ちの良い朝だね。演習日和だ」
夕張「副司令たちが鎮守府に着任されてから初めての演習ですけど、副司令は演習について何か御存知ですか?」
ビリー「前任者が残していったメモを見たけど、実際に行ってみるまではね」
ビリー「演習を行うには当然対戦相手が必要だが、君たちと同じような艦娘の艦隊が他にもいるのだろうか」
夕張「いえ、そういう形での演習は行いません」
ビリー「すると軍事シミュレーションのようなものかな。見たところ、敷地内にシミュレーションルームは存在しないようだけど」
夕張「私たちの演習に、そんなものは必要ありません。副司令、こちらへどうぞ」
ビリー「軍港のそばの入り江にやってきたけど…これからどうするのかな?」
夕張「見ていてくださいね」
夕張「たかあまはらにかむづまりますかむむすめ、かむろぎかむろみのみこともちてすめみおやかむいざなぎの…」
ビリー「(なんだ? 空が急に暗く…)」
叢雲「(いま集中してんだから邪魔すんじゃないわよ!)」
夕張「やをよろづのかみたちともにきこしめせとかしこみかしこみまをす、いざいでよあまつかみくにつかみのかむむすめ!」
ビリー「うわっ、まぶしいっ!」
ビリー「な、なんだ!? 海上に黒々とした影…! 吹雪くんのようだが、少し違う!?」
夕張「来たわ! 司令、陣形を!」
ビリー「えっ、く、とりあえず一列に単縦陣を!」
夕張「行くわよ、叢雲、吹雪、不知火、私に続いて!」
夕張「さあ、試してみてもいいかしら!?」
BANG BANG!
ビリー「全部外れた!」
??「雪風は沈みませんっ!」
ビリー「不知火くんに被弾!」
不知火「くっ…不知火を怒らせたな」
吹雪「当たってー!」
BANG BANG!
ビリー「命中!…したけど、全然効いてないみたいだな」
??「五連装酸素魚雷、行っちゃってー!!」
吹雪「きゃう!」
ビリー「魚雷といいつつ砲撃してるぞ!? しかし吹雪くんが中破…!」
叢雲「くっ…! 沈みなさい!」
BANG BANG!
ビリー「命中! しかし効いてないな…」
夕張「さあ、雷撃よ! どーお、この攻撃は!?」
SPLASH !
・・・・・
BAAAAAAN!
ビリー「対戦相手の幾人かを行動不能にしたぞ!」
夕張「提督、相手艦隊はまだ半分が健在です。我が方がいくらか優勢ですが、追撃しますか?」
ビリー「いや、とりあえずここは矛をおさめよう。それより聞きたいことがある」
夕張「では、戦果を判定しましょう。…我が方の優勢勝ちですね、戦術的勝利というものです」
夕張「新鋭艦に使う兵装は、私がきっちりチェックするからね!」
夕張「えっ? 足が遅いって…? しょ、しょうがないじゃない!装備が重いんだもん!」
ビリー「なにを言っているんだ、君は」
不知火「勝ち名乗りというものです。夕張さんの魚雷が相手艦隊の旗艦を行動不能にしたようですから」
《演習に勝利しました》
ビリー「で、さっきのアレはいったい何だったんだ? どこから現れた? 彼女らは何者なんだ」
夕張「よく分かりません、あはは」
ビリー「分からないって」
叢雲「アレはね、私たち艦娘の固有の能力で、異世界の扉を開いて幻影を見せているという説や、」
不知火「パラレルワールドの私たちと交信して、一時的な精神融合を果たしているとか様々な説があります」
吹雪「正確なことは、私たち自身にもよく分かっていません」
夕張「確実に分かっていることは、アレを呼べるのは一日に二回が限度」
叢雲「そして、アレと戦ってもダメージは受けないけど、体力は消耗するってことね」
夕張「でも、副司令も見ての通り、かなり実戦に近い経験をするので、実戦と同じように経験を積めるってことですね」
吹雪「なんだかレベルが上がったような気がします!」
ビリー「なるほど…夕張くん、一日二回が限度とのことだが、もう一度出来るかい?」
夕張「ん…精神の、普段あまり使わない部分を使うので、今すぐには無理ですね」
夕張「あと半日…おやつを食べたころなら、大丈夫だと思います」
叢雲「疲れたわ。何か食べたいのだけど」
ビリー「ああ、気がつかないでごめん。こんなものしか用意してないけど、いいかな?」
叢雲「ラムネね。まあ、無いよりはマシだわ」
吹雪「頂きます!」
《補給が完了しました》
不知火「これは美味しいラムネですね、感謝します」
叢雲「今度からはアイスクリームも用意しておきなさいよ」
叢雲「で、これからどうするの? まだ時間はあるけれど」
ビリー「叢雲くんにも、アレは呼べるのかい?」
叢雲「ま、当然、ね」
ビリー「じゃあ、お願い出来るだろうか」
叢雲「了解よ」
叢雲「開け、ゴマ!」
ビリー「さっきの祝詞みたいなのはどうしたんだ」
夕張「艦娘によって違うんですよ」
ビリー「ふむ、対戦相手が現れたな。…なんだ…なんだか、ものすごくゴツい艤装の子が」
叢雲「やば…! 当たりを引いちゃったみたい」
ビリー「なんだい、当たりって」
叢雲「すぐに分かるわ」
BOOOOOOM…
ビリー「わっ! 空襲だ!」
夕張「回避行動!」
吹雪「きゃあっ!」
??「敵艦捕捉、全主砲、薙ぎ払え!」
FLASH !
ビリー「うわぁああっ!」
夕張「きゃああっ!」
《演習に敗北しました》
ビリー「大敗北だったね」
夕張「全員行動不能にされちゃいましたから」
叢雲「時々、ああいうバケモノみたいな艦娘の艦隊を呼んでしまうことがあるのよ」
ビリー「あんな艦娘も、この世界のどこかにいるのかな。それとも、異世界の艦娘なんだろうか?」
叢雲「さあ、いるんじゃない?」
ビリー「…なんだか、不機嫌そうだね」
叢雲「…私たちは非力だわ。それを思い出しただけ」
今回はぁー、ここまで。
Q:えっ、グラハムたち、ひょっとして朝帰り?
A:たとえばお昼の3時ごろに買い物に出かけたとして、
5時に帰ってくればおよそ2時間の外出をしていたことになり、まったく問題ありません。KENZENです☆
グラハム「さて……少々長居が過ぎたようだ。戻ろうか金剛」
金剛「あ、ハイ……」
グラハム「どうしたね」
金剛「いえ……テートクと、もっと話したいなっテ」
グラハム「いくらでも話そうじゃないか」
グラハム「鎮守府には皆がいる。私も、カタギリも、叢雲も、皆がな」
金剛「ううん、ちょっと、違うかモ」
グラハム「?」
金剛「……今はまだ、はっきりしないケド」
グラハム「すまない、私にはわかりかねる」
金剛「イイんでス!」
グラハム「フッ……そうか。それでは帰ろう」
金剛「ハイ!」
【鎮守府】
グラハム「カタギリ、戻ったぞ……っと、ぬおっ!?」
吹雪「お帰りなさい、司令!」ドタドタドタ
金剛「ワォ、新顔ネー!?」
グラハム「見たところ駆逐艦のようだが……いったい君は……?」
吹雪「はい! 世界を驚愕させた特型駆逐艦、吹雪です! 司令官、改めてよろしくお願いします!」
グラハム「ふむ、カタギリが上手くやったのかな。何にせよよろしく頼む、吹雪」
吹雪「はいっ!」
金剛「イイんですか? テートクの許可ない建造……」
グラハム「構わないさ。私とカタギリとでは得意な領分が違う」
グラハム「それに我が友が私に不利益を与える選択を取るとは思えないのでね」
金剛「信頼してるんですネ、顧問のこと」
グラハム「無論。私の友を務めることができるのだからな」
金剛「まるでテートクには友達が少ないみたいな言い方……」
グラハム「フ……そうだな。俗に人に嫌われるタイプであることは否定しようがない」
金剛「そ、そんなコトないデス! 嫌いにはなりませン! ぜったい!」
グラハム「あ、ああ……そうか、嬉しいことを言ってくれる」
吹雪「ふむふむ……さあさあお二人とも、皆さんがお待ちかねですよ!」
グラハム「フッ……また賑やかになったものだな」
金剛「……」
グラハム「どうした金剛。いかないのか?」
金剛「……テートク。テートクも、自分を卑下するのはやめてくだサイね?」
グラハム「む? ああ……」
金剛「ゼッタイよ!」
グラハム「わかった。乙女座に誓って」
金剛「ハイ! 私ももう、卑屈にならないカラ! 乙女座に誓って、ネ!」
ビリー「やあ、おかえりグラハム!」
叢雲「なんだかふた月ぶりくらいに顔を見た気がするわね……いや、それ以上か」
グラハム「何を言っているのだか皆目見当がつかんが……」
グラハム「謹んでただいま、と言わせてもらおう!」
叢雲「あー暑苦しい……この感覚は司令官だわね」
不知火「無事のご帰還、なによりです。司令」
グラハム「ああ。……気を張りすぎだな、不知火」ポンッ
不知火「性分ですので。……頭に手をおいた意味はお有りですか?」
グラハム「フッ……すまない、ついな」
不知火「そうですか」
金剛「むー」
夕張「……あら? あらあらあら?」
不知火「…………?」
グラハム「どうかしたか、夕張」
夕張「私に聞くのではなく、金剛さんに聞いたらいかがですか?」
金剛「ほ、ほわっつ!?」
グラハム「どういうことだね?」
ビリー「ふふふ……二人きりの買い物……なるほどねえ」
叢雲「下らない……」
吹雪「叢雲ちゃんも混じりたいの?」
叢雲「なんでそうなんのよ」
グラハム「何かあるのか金剛? 調子が悪いか」
グラハム「不調を感じたらすぐに伝えて欲しい」
金剛「い、いえ、なんでもないでス!」
グラハム「ふむ……そうか。ならばよいが……」
グラハム「君も気張るなよ、金剛」ポンッ
金剛「あっ……えへへ、ハイッ!」パァァ
不知火「……?」
夕張「あらあら、何があったんでしょうねえ買い物」
叢雲「さあね」
ビリー「ははは、賑やかになってきた。いいことだ」
叢雲「さて司令官。話があるわ」
グラハム「そうだな。……『グラハム・エーカー』の仕事は、本日はここまでだ」
叢雲「執務室に来なさい。遠征、演習、建造の報告があるから」
グラハム「了解した。金剛は補給をしておくように」
グラハム「夕張、カタギリ、金剛を頼む。吹雪と不知火は待機」
吹雪「はいっ」
不知火「任務了解」
夕張(自爆しないわよね不知火)
グラハム「では行くか。……ああ、金剛」
金剛「ハイ?」
グラハム「今夜私の部屋に来るように」
一同「!?」
金剛「お、オゥ……ゴーインですネー、提督……デモ……」ポッ
ビリー「ちょ、ちょっとグラハム一体何があったんだい本当に!」
夕張「ま、まさか一線を……!」
吹雪「ねえ叢雲ちゃん、部屋に行って何をするのかな?」
叢雲「わ、私に聞くんじゃないわよ!」
不知火「……」
グラハム「何を皆狼狽えているのだ?」
夕張「狼狽えもします!」
叢雲「いい年した男が、いい年した女を部屋に誘ったんじゃね」
金剛「ま、まだ出会ったばかりですケド……もしかしテ、これがDestiny……」
グラハム「デスティニー? ……ガンダムか?」
夕張「あ、これは何にもわかってないみたいね。はい、解散」パンッ
ビリー「……早とちりだったか。まあ、そうだよね」
叢雲「あほらしい……」
吹雪「結局わかんないまんまなんだけど……」
グラハム「……何故か私だけおいてけぼりだな」
不知火「私もです、司令」
グラハム「ははは、そうか」
《鎮守府・執務室》
叢雲「――以上が、あんたが席を外してた間の報告よ」
グラハム「報告、感謝する」
叢雲「良いわよ別に。仕事だし」
グラハム「吹雪の建造、海上護衛任務の達成、そして演習による練度の向上」
グラハム「フッ……これでは提督の名を返上せねばならないかな?」
叢雲「馬鹿言ってんじゃないわよ。建造、任務遂行、演習、全部司令官の許可がいんのよ」
叢雲「正直言えば私たちのやってたことは軍紀違反。あんたの一声で裁判が開かれても文句は言えない」
グラハム「裁かれたいのか?」
叢雲「事実を述べただけよ」
グラハム「なれば私から君たちに伝えるべき事も一つだな」
叢雲「なによ」
グラハム「私が不在の間、ご苦労だった」
叢雲「……本当に変わってるヤツね、あんたって」
グラハム「熟知している」
叢雲「……」
グラハム「さあ、明日の朝は早いぞ。仕事は程ほどに自室に戻ると良い」
叢雲「あんたは?」
グラハム「金剛を待ちつつ書類と睨めっこだ」
グラハム「階級が上がると煩わしいことも増えるな。フッ……」
叢雲「……」
グラハム「戻らぬのか?」
叢雲「秘書艦が司令官を置いてひとり寝に戻れると思ってんの?」
グラハム「生真面目な部下だらけだな、ここは」
叢雲「上官の変人さ加減で釣り合いとれてるんじゃない?」
グラハム「かもしれないな」
叢雲「……書類、よこしなさいよ。報告書の草案くらいなら書けるわ」
グラハム「そうか。ではこれを頼もう」
叢雲「了解、上官殿」
叢雲「……」カキカキ
グラハム「…………」ペラッ
叢雲「…………」カキカキ
グラハム「…………」ペラッ
叢雲「……ねえ、あんた」
グラハム「ふむ……私には一応グラハム・エーカーという名があるのだが」
叢雲「じゃあ司令官」
グラハム「距離を感じるな」
叢雲「まあどうでもいいけど、あんたさっき煩わしいことが増えるって言ったわよね」
グラハム「言ったな」
叢雲「それって……。……いや、何を言おうと……全く」ブンブン
グラハム「……本当に、私の部下は生真面目に過ぎる」
叢雲「……悪いけど忘れて頂戴」
グラハム「いいか叢雲。君の案ずることはない。断じてだ」
叢雲「何も言ってない」
グラハム「言わずともわかる」
叢雲「……っ」
グラハム「……しかし、君たちのようないたいけな少女を不安がらせるようではいけないな」
叢雲「……」
グラハム「どうした」
叢雲「何でもないわ。ホントに変なヤツ」
コンコン
金剛『て、テートク、金剛デース……』
叢雲「あら」
グラハム「金剛か。入りたまえ」
ガチャッ
金剛「失礼しマース……って、叢雲?」
叢雲「失礼? 密会にはお邪魔だったかしらね?」
金剛「ち、ちがっ、そんなんじゃないネー! もゥ!」
金剛「な、なんにモ、期待とか、ないんだカラ!」
金剛「テートクも、勘違いはノー! なんだからネ!」
グラハム「フッ……期待してはいけなかったかな――」
金剛「だっ、えッ、やっ、でモ」
グラハム「――君の紅茶には」
グラハム「やはり珈琲には勝てないと、君はそう言いたいのか……」フッ
金剛「んなッ……! 目ェ見開いて見とくと良いヨ! 泥水になんテ負けナイ!」
グラハム「よく言った、金剛!」
叢雲「……あんた楽しんでるでしょ」ジトーッ
グラハム「……おや、何のことかな」
《翌日》
グラハム「諸君、謹んで朝の挨拶を送らせて貰おう」
グラハム「おはようだ!」
吹雪「お、おはようございます!」
夕張「おふぁようございまーす……ふわぁ」
不知火「……」ウツラウツラ
叢雲「おはよう」
ビリー「おはよう……ふわぁあああ」
グラハム「……うむ。各自早めに覚醒しておくように」
グラハム「では今日の仕事を始めるとしようか」
グラハム「……と、待て。金剛はどうした」
叢雲「金剛なら昨日の茶会の後部屋に戻って……」
ドドドドドド
吹雪「あっ、あそこ!」
金剛「――お、遅れてッ、申し訳、ないネー!」ドタドタドタ
ビリー「やぁ、早いねえ。流石は高速戦艦だ」
グラハム「陸の上で通じる話なのか?」
叢雲「さあ……」
金剛「せ、セーフ!? 遅刻じゃナイ!?」ゼェハァ
叢雲「ギリギリ」
金剛「よ、よかったァ……グッモーニン、提督!」
グラハム「ああ、おはよう。それでは全員揃ったので改めて今日の話だ」
グラハム「我々はこの鎮守府正面海域を突破するに足る戦力は有しているが……」
グラハム「どうしても保有資源の乏しさが弱点となる」
グラハム「よって、資源の確保を最優先で動きたいと思う」
グラハム「海上護衛任務の報酬が資源確保に有効だという報告は、叢雲から受けている」
グラハム「叶うことであれば数隊で他の遠征もこなしたいところであるが……」チラッ
叢雲「保有艦隊の拡張には上がそれを認めるに足るだけの戦果を上げなくちゃならないわよ」
グラハム「承知した。では夕張、叢雲、不知火、吹雪は海上護衛を遂行」
夕張「了解です」
グラハム「カタギリと金剛、そして私は、我々だけでもこなせる「上からの任務」に取り掛かろう」
金剛「ハイ!」
グラハム「では各自、よろしく頼む」
今日はここまで
叢雲は可愛いなぁ!
《執務室》
グラハム「……カタギリ、金剛、何か我々だけで遂行可能な任務は見つかったか?」
ビリー「いいや。全然だねぇ」
金剛「秘書艦の叢雲がいればパッと見つけてくれるんデショーけど……」
グラハム「彼女は優秀な秘書だな。私には勿体ないくらいだ」
ビリー「いやいや。バランスが取れてるって言うんだよ、そういうのはね」
金剛「そうデス。提督も私と同じ、戦場で輝くタイプでショ?」
グラハム「なるほど、確かに。私のあり方としては最も適当だ」
ビリー「……おや?」
グラハム「何かあったか、カタギリ」
ビリー「うん、前任たちの通信記録だよ」ペラッ
金剛「ワォ! 色々とヒントになりそうですネ!」
グラハム「手分けして読むとしよう。カタギリ、半分こちらに寄越してくれ」
ビリー「了解」
グラハム「……感謝する。ふむ……」ペラッ
『晴れて、念願の提督としてこの鎮守府に着任することとなった』
『深海棲艦との決戦に備え、身命を賭す心づもりだ』
グラハム(……これは、通信記録なのか?)ペラッ
『提督には艦娘の中から一人、秘書艦がつくらしい。楽しみだ』
グラハム「…………」ペラッ
『私の秘書艦は駆逐艦、叢雲。第一印象は……怖い』
グラハム(……叢雲)ペラッ
ビリー「……うーん、これは資源のレシピか」
金剛「こっちハ解体記録デース……見たくないネー……」
ビリー「艦娘を解体……か。解体するといったいどうなるんだろうね?」
金剛「間違っても試そうなんテ思わないでヨ!」
『初の実戦、叢雲は旗艦として実に良くやってくれた』
グラハム「…………」ペラッ
『彼女は実に優秀だ。公私共々助けられている』
グラハム「…………」ペラッ
『……新たに――の建造に成功した。我が鎮守府の戦力もより高まることだろう』
グラハム「…………」ペラッ
『彼女は実に可憐だ。私は心奪われてしまった』
『彼女のためなら全てを投げ打っても構わないとさえ思える』
グラハム「…………」ペラッ
『……沈した。――が、私のミスで。彼女は海の底へ消えた。もう二度と戻っては来ない』
グラハム「…………」ペラッ
『空母である。そう簡単に建造できる艦娘ではない』
『……旗艦であれば沈むことはなかったのだ。叢雲と旗艦を交代していれば』
グラハム「…………」
『……最近の素行を叢雲に咎められた。鬱陶しいヤツだ。なぜ彼女が沈み、お前が』
グラハム「……」
ビリー「……グラハム、どうかしたかい? 酷い顔だよ」
金剛「ひと睨みで人を殺せそうでしタ……。あ、私は全然、ノープロブレム、ネ!」
グラハム「……すまない。少し、な」
グラハム「……これも含め、不必要なものは焼却するとしようか」
ビリー「うん? ま、紙媒体はどうしてもかさばるよねえ……」
《執務室》
グラハム「……」
金剛「提督、元気ないですネ……。さっきの記録見てカラ、何か変ヨ?」
グラハム「君たち艦娘は人にしか見えないが、人ではないと……」
グラハム「叢雲がそう言っていたのを思いだしていた……」
金剛「そりゃー、人間よりもパワー溢れる艦娘ですもノ!」
グラハム「フッ……そうだな……」
金剛「でも、馬力が違うだけヨ」
グラハム「ん?」
金剛「ハートの中身は、おんなじネ! 楽しいこと、悲しいこと、悔しいこと、色々あるし」
金剛「人を愛するのだって、おんなじでショ!」
グラハム「……ほう」
金剛「だから私……もうちょっとテートクのこと、知りたいッテ――」
グラハム「良いことを言うな、金剛」
金剛「聞いてナイ……」
グラハム「我々は姿形、出自、何もかもが違うが、仲間であることに疑う余地は何も無い」
グラハム「これから先、どう転がるとしても、今立ち止まることはない」
金剛「……よくわからないケド、役に立ちましタ?」
グラハム「とても」
金剛「イェス! テートクの役に立てたらオッケーね!」
グラハム「フッ……君はいつでも元気だな。好意を抱くよ」
グラハムちょっと思い悩むけどすぐに立ち直るの巻
叢雲は悲運のヒロインが似合うと思う(小並感
このSSまとめへのコメント
続きを! 早く続きをォ!
まだなのかぁ!?
楽しみ過ぎるだろwww
はよ続き!
グラハム好きなんでうれしい
後叢雲ってのも俺得やぁ...
続き見てゃい
書き手が上手いというのもあるけどグラハムとビリーは何故こうも色んなクロスと親和性が高いのか。
続きが楽しみです
早く書いて頂きたい!
こういうSS大好きです!
私は我慢弱い
続きはよ。今、この言葉を謹んで送らせてもらおう
続きを早く見たいいなぁー…
アッサムとアッザムのネタすごくおもしろかったです!
早く続き見たいです!!
これは…良いものだ~!
わくわくしてます。
待ちかねたぞ!ガンダムッ!!
続きすっごい楽しみです!
続きはよ!楽しみにしてるぞー
私は我慢弱い
このssを待ち続ける理由などナンセンスだな!
期待してるぞ!ガンダム!
超期待‼︎
戦国時代の一流の武将たちはみんな台所へ首を突っ込んでいる、とビリーさんに言って欲しかった……作家の池波正太郎先生は男子厨房に~を言う人を半可通とまで言ったみたいだから、ビリーさんの味方だろう