花村「なぁ…里中」里中「…あによ?」(315)

落ちたね

一応最初から貼っていくは

―ジュネス八十稲羽店―
フードコート。

難航した連続殺人事件も、勇気ある少年達の活躍により、ついにその幕を閉じた、12月某日。

小さな町に、祝福の雪が降り積もる中、彼らはいつもの“特別捜査本部”に集合していた。

――――――


花村「…しっかしさ。事件が終わって、まだこんなトコに集まってくるのも、なんか、不思議な感じっつーか」

天城「そうだね。でも、やっぱり変に落ち着くよね、此処」

直斗「推理を重ね合わせた場所……周りの方にはどうか解りませんが、僕らには間違いなく…」

完二「…ああ、“特別な場所”だぜ」


言葉少なに、椅子にもたれたままで、少年達は空を仰いだ。

事件解決の安心感と、使命を果たした達成感が齎した平和に包まれていても、何か、ポッカリと開いた心の隙間。

何処かに何かを置き忘れた様な、そんな、感覚。

久慈川「…すごい不謹慎だけど、さ。…あの事件があって、みんなに出会えた。それはやっぱ、嬉しいなって思うの」

鳴上「……」

花村「まぁな。数奇な…っつーか、奇妙な巡り合わせだよな」

里中「よく考えたら、あたしら学年もクラスもバラバラだから、あの事件が無かったら知り合いにもならなかったかも!」

直斗「僕が警察から派遣されてくる事も、無かったでしょうね」

クマ「カンジの“アブない男色説”も無かったクマ~」

完二「!?おまっ!ちげぇっつってんだろボケ!!このクマ公が!」

クマ「クマッ!?カンジの顔が赤いクマ!?」

完二「てててててテメー!!へっ、変な事言い出すんじゃねぇー!!!」


何処かしんみりとした空気を、クマの一言があっさり破壊すると、続いて始まった完二とクマのやりとりが、仲間達に笑いを生んだ。

鳴上「(…皆が素顔で、笑顔で、)」


天城「…いいね、楽しいね、鳴上君」
ニコッ

鳴上「ああ…そうだな」
ニッコリ



花村「(…………)」


花村「…よっしゃぁ!」
ガタッ

里中「わっ…!ちょっと花村!急に何よ!?」

花村「なぁ、クリスマスイブって皆何してんだ?どっか行っとかね?思い出作ろうぜ!ね、ね?」


こんな素晴らしい仲間達と、冬を過ごせたらどんだけ楽しーんだろう。

単純に、花村陽介はそんな思いから一同に提案した。
その裏に暗いムードを完全に断ち切ろうとする意図を含ませて。

もちろん皆も、花村の意図する辺りは理解していたのだが…

鳴上「……」

天城「う…」

完二「あー…」

久慈川「うーん…」

直斗「……」

直斗「……」

里中「…」

クマ「クマー…」


花村「…あ…アレ?」


その提案に賛同の声は上がらなかった。

花村「…もしかしてお前ら、予定あんの…?」


何かを考え込む様に、皆は視線を下に向け始めた。


花村「な、鳴上は!?」

鳴上「実は、長瀬と一条に呼ばれて」


花村「そっ…そっか。なら仕方ねぇな…ははっ。か、完二は!?」

完二「すんません。俺ぁ先に尚紀に先約があっちまって」

花村「天城は!?」


天城「あー…行きたいのは山々なんだけど…クリスマスに旅館に来る家族連れのお客さんって結構多くて…」

花村「ああ…り、りせは?」


久慈川「あたしとクマは、直斗くんの実家に行くの」

直斗「すいません、花村先輩。毎年クリスマスはおじいちゃんと過ごす事になっていて、それをお二人に話したら…どうしてもと煩いので…」

クマ「楽しみクマー」


花村「そ…そっかー…」」

直斗「……あ、良かったら先輩も」

花村「あー…いや、俺も遊ぶとしても、直斗の実家って超遠いらしいじゃん?バイトもあるし、俺もそこまで遠くへは行けねぇんだよな…ワリぃ」

直斗「そうですか、残念ですね…」


花村にとって、それはまさかの展開だった。

何だかんだで、集まる時はパッと集まっていた面子に、まさかこんな事態が起こるとは…

だがしかし、例の、忌ま忌ましい事件は、もう終わったのだ。

今までに比べ、個々のプライベートも、多少は集まりに影響してくる事を、そろそろ理解しなくてはならない。

少し寂しい気がすんなぁ。

たった一日一緒に過ごせなくなる事で、そんな風に考えてしまう程、花村にとって、いや、ここで俯く全員にとって、目の前の仲間達は大切で…大事な存在であった。

花村「ハァ…まさかの全員予定アリかよ…ま、いっか。んじゃ遊べる時は遊ぶぞ。絶対だかんな」

鳴上「ああ、もちろんだ」


皆が一様に頷いた、その時だった。

♪~♪~


天城「あ…ごめん、メール」


天城雪子の携帯に一通のメールが届いた。

旅館の従業員からの様だ。


天城「ごめん…旅館、大変みたいで…私、帰らないと…」

花村「相変わらず、大変だなぁ天城…気ぃつけてな」

完二「あー…俺もそろそろ帰らねぇとお袋が煩いんで…」

鳴上「俺もそろそろ家庭教師の時間だな…」

クマ「クマ眠い…」

久慈川「あっ!私もおばあちゃんに頼まれてたものあったんだ!」

直斗「僕もそろそろ…」

花村「なんだなんだ、みんな帰宅かよ…気ぃつけて帰ろよー」


鳴上「ああ、花村、また明日な」
天城「それじゃあ、ね」

久慈川「バイバイ先輩!またあそぼっ」

完二「ウィース」

クマ「ヨースケ!先にひとっ風呂浴びて待ってるクマー!」

花村「おう。じゃあなお前ら!にしても…ったくあのクマ遠慮がねぇな…マジで」

少し名残惜しげな顔で、陽介は帰宅する面々に別れを告げた。

皆も同じ気持ちなのだろう。離れても、見える限りは度々振り向いて手を振ってくれる。

その背を見送りながら、陽介が孤独感を感じだした頃。


「ちょっと、花村」


花村「うわ!里中!…お前まだ居たのかよ!?」

背後から声が掛かる。
里中だった。

里中「アンタが途中からあたしをスルーし続けてたんだろーが!な ん で あたしにはクリスマスの予定聴かないのよ!」


花村「あ、あっははは。忘れてた、スマンwwww…!?えぶふぅッ」

里中の繰り出した急所蹴りは、見事にクリティカルをたたき出した。

花村「さ…流石は足技オンリーでシャドウを撃退せしめるだけの…女じゃぁ…ぐふぅ…」

里中「本当、花村はバカなんだから!」


プンプンと頬を膨らませて怒る里中を前に、花村はダンゴ虫の様に丸まってうずくまった。

花村がしばらく、そのまま苦悶に堪え続けていると、里中は吃り調子で口を開いた。

里中「……わよ…」

花村「…は?」

里中「だから!私は……その」

花村「その?」

里中「…//」

花村「お前、顔赤いぞ…なんか、悪ィもん食ったか??」

里中「」

ズドンッ!

花村「はおッ!?」


再びその急所に鋭い蹴りが命中する。まさに1more…


花村「お、おおお、おお、お…」

里中「私…あ、空いてるからッ!」

花村「へ」

里中「く、クリスマス!!空いてるからね、私!暇なら…なんかおごってくれても…その…//」

花村「え、里中…そそ、それって…デー」

里中「!//」

ドスンッ

花村「嫌あああああッッ」

三度、クリティカルが発生した。
むろん、急所である。


里中「いいい、良いから!暇なら、ちゃんと誘ってよね!ばいばい!!」

ダッ…


とうとう口から泡を吹き出した花村を置き去り、里中千枝はその場を走り去ってしまった。


花村「ぐぐ……さ、さと…なか…サン…?」

そして日は過ぎ…

ークリスマスイブ 前日ー


花村は自室で、携帯を握りしめたまま、部屋の中をぐるぐると周り続けていた。


花村「やべぇよ……おいおい、マジやべぇよ…!」

花村「まだ心臓バックバクだよ!なんだよ里中!なんなんだよ、里中サン!」


花村は先日の里中の台詞を回想し続けては、高鳴る胸の鼓動を必死に抑えつけていた。

花村「クリスマスイブよ!?しかもなんたってその……二人っきりってやつだし…!え!?なにそれ?」


花村は思わず、駆け出したくなる様な衝動に駆られるも抑え、変わりに窓を開け放った。

大きく息を吸い込むと、叫ぶ。



「それってデートじゃないっすかあああああああああああああああああああああ」

一方その頃…

ー里中千枝の自室ー


里中「うわ…うわ……うーわああああああああああああ」


こちらも叫んでいた。


里中「ぁあああ、あたし、なに誘ってんだろ!?いや、誘ってきたのはアイツ…アイツよね!?あたしじゃないよね!?」


錯乱に似た現実逃避行の真っ最中であった。

里中「お、落ち着かなきゃ、その…は、花村だし!いつも遊んでるし!たまに二人っきりで帰るし!」


里中「そうそう、二人っきり、で……」


里中「………」


里中「わああああああああん」

里中「無理だよぉぉ!!雪子ヘーーールプ!!!!」

里中「ど、どうしよう……花村、嫌がらないかな…」

里中「で、電話してみよう!」

千枝が携帯に手を伸ばしたその時、ふと考えが頭を過ぎる。

里中「でもでも、このタイミングで電話って……確実に明日の話になるよね?あたし、ちゃんと話す自信とかないんですけど…」


里中「はぁ…どうしよう」




里中「何、着て行こう…」

………………………
…………………
……………

ー再び、花村陽介の自室ー


花村は一人座禅を組み、テーブルに置いた携帯電話を見つめていた。

花村「……やっぱ、まだわかんねぇよな…だって、里中だもん」

花村「アイツの事だから、忘れちゃったー、とか言いだし兼ねないし…」

花村「………」

花村「…おっし…電話しよう!まずは、確認しなきゃな」


指先の震える手で、すっと手を伸ばして携帯電話を掴む。


花村「……そういえば」


アドレス帳を開いた時、ふと花村の脳内に、懐かしい記憶が蘇った。

……………………………
……………………
……………

それは、鳴上が転校してくる、その半年前。
一足先に、花村が都会から転校してきた、その日の事である。


花村(なんもねー…町)

華やかな大都会から引っ越してきた花村にとって、それは余りにも窮屈な、八十稲羽の町であった。

引っ越してすぐの翌日には、すぐに八十神高校に入学。

途端に忙しくなるというのに、花村のやる気や期待は、此処へ至るまでの道のりに置き忘れてきたらしい。

とにかく、彼にとって退屈の絶望感の方が大きかったのだ。


その日、担任教師の紹介の中で、教室に向けて語った花村の自己紹介は、その面を隠すような明るさを全面に押し出しての挨拶になった。


「ってなワケで!青春しようぜ!みたいな!なんつって!」


なんとか悪い印象を与える事だけは避けられたらしい。
クラスの人間はみな笑顔で出迎えてくれた。

なんだ。ちょろいな。

作り笑顔で、与えられた席に腰かける。
その後はボヤけた眼でダラダラと授業を受けて、あっという間に放課後を迎えた。


花村「(…つまんねぇ)」


校門を出るまで作り笑顔を保ち、トボトボと歩きだす。

花村「(こんなのが、あと二年か…俺、生きていけんのか…)」

ある意味期待通りの退屈さを全身に感じながら、帰路をただ歩き続けていると、不意に背後から肩を叩かれた。


花村「!?」

振り返ると、そこにはセーラー服の代わりに緑のジャージを着込んだ、単発の少女が立っていた。

里中であった。

花村「あー、えっと…里…中さんだっけ?」

里中「おっ?すっげー。もう覚えてくれてたんだ?」

花村「あぁ…だってホラ、目立つじゃん?そのジャージ」

里中「かっこ良いだろう!!」

花村「いや褒めてねー」

里中の席は、花村の右斜め前。

前の席は空席だったので、里中の姿が嫌でも視界に入りやすい。


里中「どうよ、この町慣れた?」

花村「え?あー…いや、まだ昨日越してきたばっかだから」

里中「だよね、だと思った」

じゃあ聴くなよ…と、突っ込みたくなる花村だったが、不思議と里中と喋っていると素で居られる様な…不思議な感覚がした。

それは、誰にでも分け隔てのない少女の性格がそうさせているのだと、しばらく話しながら帰る内に花村は理解した。

里中「あ、じゃあさ!まだ名物とか知らないっしょ?」

花村「名物ぅ?」

里中「ビフテキ!そう肉!お肉!みんな大好き青春の主食!」

花村「ハハ…なんだそれ。ビフテキねぇ、旨いのか?」

里中「もち!超うまいよ!」

花村「ふぅん」

里中「よぉっし!町の先輩として、後輩くんをビフテキの旨い店に連れていってあげようじゃないの」

花村「え、マジで?うわ、なんか…ちょっと楽しみだわ」

里中「そうと決まれば……ほい!」

里中はポケットから携帯電話を取り出すと、花村に突き付けた。

里中「番号交換ね!よろしく!」

花村「え!?あ、ああ。おっけ」

花村も携帯電話を取り出すと、千枝の携帯を身ながら、慣れない様子でアドレス帳にそのアドレスを書き込んでいった。

花村「あー…ワリぃ。まだ携帯変えたばっかで使い慣れてねぇから遅いわ…」

里中「ならあたしやるよ。貸してみー」

半ば強引に花村の携帯を奪い取ると、素早く登録を完了させていった。

花村「はえー…」

里中「でしょ?はい!あ、ごめん。それと、アドレス帳に勝手に組分け作っちゃった」

花村「え?」

見ると、アドレス帳の欄に“クラスメイト”の組分けが追加されていた。

里中「あたし、その組分けの中の1番だから!へへ、誰よりも早いぜ!みたいなね」

花村「あ…ああ、あんがと」

里中「ま、いつでも電話してよ!……んじゃ、いこうか」

花村「は!?い、今からか!?」

里中「つべこべいわず行くよ、花村!」

花村「あ!……ま、待てっつーの」

………………………………
………………………
………………

花村「…………」

花村「…つか、今思えば、赤外線使えば良かったじゃんな」

花村「…でも、ま…」

アドレス帳のクラスメイト。
その1番目を見ていると、そこはかとなく嬉しくなった。

花村「これはこれで、いっか」


花村「さて…電話するか」


何処か落ち着いた表情で、花村は通話ボタンを押した。

ー里中千枝の自室ー


里中「どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう」

花村同様、千枝は自室をぐるぐると歩き回っていた。

里中「電話なんか出来ないよー…つーか、ウザがられてるかもだし…」

ついにはベッドに飛び込んで、ジャックフロストのぬいぐるみを抱き抱えて転がりだす始末だった。

里中「はぁ…」

もう、いつもの調子で忘れてましたで終わらせよう……

そう考えた、まさにその時。



♪~♪~


里中「!!?」

携帯が鳴った。
着信音で、すぐ花村からの着信と気付く。

慌てて携帯を取ると、過度な深呼吸をして、なるべく平静を装いつつ…

里中「出ないってのは…ダメだしね、うん…」

通話ボタンを押した。

程なく、聞き慣れた声が耳に飛び込んでくる。



花村『……あ、もしもし…里中?』

里中「う、うん。ど、どーしたの花村?」


花村『…あのさ、明日の事なんだけど…』

里中「(き…きき、来た…)」

里中「あーアレね!うん!!あ、えっとホラ、嫌だよね?ってか嫌だったら良いよ?ホラ!なんか…そのアレは…あの時の勢ry」

平常心など、やっぱり保ってなんか居られない。

走り出した千枝のテンパり超特急は、全てを無かった方向へ向かおうと言の葉を進めていたのだが…

それは、千枝にとって意外な、花村の一言でせき止められた。


花村『あのさ、なんつーか…俺、その…期待していいんだよな…?』


里中「…え…?」

と、ここまで書いてる内に落ちたのれす
続きダラダラ書いてくるでゲソ!

確か10分近くだったような

自ら保守もするでゲス

花村『いや…そのさ、なんつーか。随分と久しぶりじゃん?二人ってのも』


里中「あ…う、ん。そだね。そーいえば…」


千枝も、漸く思い出した。

事件前、親友の雪子が旅館の手伝いで時間が取れない時、よく花村と二人で遊んでいた事。

ここ最近の事件関連で、常に多くの仲間達に囲まれて過ごす中で、忘れていた頃があった事。

他愛ない話も織り交ぜながら、明日の時間、場所などが定まった頃、電話の終わりに花村の一言が入る。


花村『それじゃ、また明日な、里中』

千枝は、マヨナカテレビを見た直後の連絡網以外で、久しぶりに花村の“また明日”を聴いた気がするなぁ、と、何処か変に感動した。

里中「うん。それじゃね」

ごめん
>>94と順番入れ替えで


里中「(…そっか…初めてじゃ無かったっけ…)」


花村『だろ?だからさ、その…色々と話したい事も、二人だから話せる事も、きっとさ。あるんじゃねぇかなって』

里中「うん。そーかも」


千枝は、いつの間にか平常心を取り戻していた。

ごく自然な会話の様に、二人の間にクリスマスイブの予定は築き上げられていく。

ツー…ツー…


終話音が響き、電話は切れた。

急に音声の途切れた静かな部屋の中、千枝は花村の言葉を思い出していた。


里中「……二人だから話せる事……」


里中「…………」


里中「……まさか、ね」


…………………………
……………………
……………

―花村陽介の自室―


花村「良かった…とりあえず、ドタキャンはねーみたいだな…」


無事に電話が終わり、ホッと胸を撫で下ろす。


花村「全く、里中の奴…明日OKとかマジで本当どういうつもりだよ…」

花村「…………どういう……」


花村はしばらく無言で、俯いていた。

だが、次第にその表情は赤く染まりだし、居ても立っても居られなくなった衝動が、再び窓から放たれた。


「うおおお!!!!!!!!夢じゃねえええぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!ヒャッホー!!!!」

続き書いてくるクマ


がんばるは

やがて、夜は過ぎ…

―クリスマスイブ―


花村「…おっせぇなぁ」


時刻は、夕方も過ぎ19時台の頃。
約束の八十稲羽駅前に一人、花村陽介の姿があった。

予定の時刻は18時半のはずだった。
此処に至るまで何度もメールで確認したんだから、まず間違いない。

花村「……早く、来ないかな」


やがて、花村の鼻から例のアレがコンバンワしてきた時、漸くの声が掛かった。


里中「お、お待たせ!花村」

花村「ばっ!おま!おせーっつっ………!?」


花村は驚愕した。

まさにアバドンの様な口を開いたまま、じっと里中に魅入っていた。

里中「…へ、変なら変って言えば?あたしだって、本気だしゃ凄い…んだから」

里中は………なんと化粧をしていた。

かなり薄い化粧だが、ごく自然に、その高い素材に溶け込むように、旨く魅力だけを引き立たせている。


花村「お、お前…里中…?」

千枝「当たり前じゃん!」

花村「うわっ……化けんな、お前ってば…」

千枝「どうよ!」

花村「うん。スッゲー可愛い」

千枝「可愛っ!?」

まさかのドストレートな褒め言葉に、思わず顔に灯が燈る。

千枝「ちょ、アンタ。何言い出してんのー!///」
バスッ

花村「んぶばッ!!」

…股k(ry

千枝「バカ言ってないで、早く電車乗るよ、花村」

花村「ふごう」

うずくまる花村の腕を無理矢理引っ張って、二人は改札を出た。


花村「……なぁ、里中…」

千枝「…あによ?」

花村「さっき自分で言ってたけどお前…本気、出してくれたのか?」

千枝「う、うっさいなー。たまにだす日が、たまたま、今日だっただけだから…!変な勘違いとか止してよね!」


花村「ですよねー」

電車は隣町へと二人を運ぶ。

降車駅の改札をくぐると、巨大な商店街が姿を現す。

花村「ったくお前ってば、クリスマスイブなのに肉食いたい食べ歩きしたいって…普段すぎるだろ…」

里中「いいじゃんクリスマスなんだし」

花村「…ま…いいけど。で、どうすんだ?この町、俺あんましらねーぞ?」

里中「あーたしが知ってるから任せとけって!既にリサーチ済みですぜ大佐…フッフッフ」

花村「なんだよ大佐って……んじゃ行くぞ里中」

里中「アイアイサー!!肉っ!肉肉~♪!ぐつぐつ煮込み~ハンバーグー♪」

花村「やめろ唄うな…」

まず、千枝の要望は“肉が喰いたい”だった。

花村「いきなりかよ…」

と、言いつつも時間は夕飯時。
腹も空いていたのでレストランへ。

千枝「よーし食うぞー…!」

花村「おう。あー腹減った…」

千枝「すいまっせーん!!」

花村「ばっ、おまっ、速ぇよ!まだ決めてねぇよ俺?!」

ウェイトレス「お伺い致します」

千枝「あ、えっとこのメニュー表の肉コーナー全部下さい」

花村「!?」

ウェイトレス「かしこま…え!?全部…ですか?失礼ですが、その大丈夫…ですか…?」

千枝「はい!余裕です!胃袋丈夫なんで!」

ウェイトレス「か、かしこまりました(金銭的にって意味だったんだけど)」

花村「余裕です!じゃねぇよ!」

結局肉メニューは全部テーブルに並べられてしまい、その全てを肉吸収のステ持ちの里中は平らげた。苦悶の色は一切伺えず、のっけから花村は呆気に取られた。


~会計にて~


千枝「ありがと花村!おいしかった!」

花村「お前会計中に既に外に出やがって…払わせる気まんまんじゃねぇかチクショウ…チクショウ…」

涙無くして語れない花村の財布事情がそこにはあった。

疲れた

次は、花村が名乗りを挙げた。

払わせられるだけ払わせられて、行きたいトコも行けねーとか、あり得ないんだよ。

と、いう主張を覆す事叶わず、千枝も大人しく同行した。

里中「でさ、どこ行きたいの?」

花村「クリスマスって言えば、やっぱ綺麗なライトイルミネーションだろ!」

里中「うわー…女の子趣味だねアンタって」

花村「…お前が男趣味すぎんだっつの!」

里中「そんなの見たってお腹膨れないっすよ?」

花村「……お前な…たく…良いから行くぞ。さっき調べておいたから」

里中「わっ、ちょ、花村!置いてかないでよ!」


クリスマスロード。

名の通り、組合によって植え込まれたモミの木に、毎年豪華絢爛な飾り付けが目を引く、聖夜のデートコースには持ってこいのプレイス。

およそ1kmに及ぶ長さでありつつも、一つ一つ全く別の装飾が施されているツリーの数々は、見るものを飽きさせない。

花村「うおーー!!やっべーー!!」

里中「アンタは子供か!はしゃぎすぎだっつの!」

花村「だって見ろよ!超キレイじゃね!?組合さん頑張りすぎだろ!?スッゲーよおお!!!」

里中「全く…」

里中「……でも…ちょっとカワイイかも…」


花村「あん?」

里中「な、何でもないよー?あはははーはは…」

花村「なぁなぁ里中!このツリーをバックにして写真!写真撮ろうぜ!一緒にさ!」

里中「は!?一緒に?!」

花村「いいから写れって!♪」

里中「えちょ、は、花村近いって…!//」

花村「はいチーズ」

里中「…//」

決めた
必ず完結させるでゲソ

全く、子供っぽいんだか大人なんだか…

花村のはしゃぎっぷりを前に、今度は千枝が保護者ばりの達観視でその隣を歩く。

里中「(むっかしからこうだけどさ。…互いが互いに、そういう部分があるって。なんか…)」

花村「…お似合いだよなー」

里中「!?」

花村「ホラ、前のカップル二人だよ」

里中「…なーんだ」

花村「何、俺らだと思った?」

里中「ばっ!バカ言ってんなっつの!はったおすよ!?」

花村「わ、ワリィ…」

里中「全く…」


その会話をせき止めに、しばらく会話が出て来ない。

こんなクリスマスロードを歩いていると、周りはカップルだらけなのだ。

冷静に考えると、落ち着かないし…やっぱり何処か照れてしまうのだった。

花村「(…よし)」

花村「さ、里中さ…」

何かを決した様に、花村が口を開いた。

少しほてった顔で千枝はそれに応える。

里中「な、なに?」

花村「俺らってさ、周りから見たら…やっぱさ、カップルに見えてんのかな?」

里中「…」

里中「…そりゃ、こんなトコ歩いてたら…そう、なるんじゃん…?」

花村「…だよな」

里中「(……//)」

花村「(……//)」


やっぱり、言葉ってむつかしいわ。
聴きたい事すら、聴く方法がわからねぇ。

いや、違う。解ってる。
解っちまってるのが、激しく問題だ。

なぜなら解ってるなら、答えがあるなら、それを導かないといけない。

このまま悶々して、バイバイって…どーよ…シチュエーション的に…

…って、これも違うか。

シチュエーションうんぬんじゃなくて、そう…隠れんぼ決め込んでる、恥ずかしくてどうしようもねぇ、“素直な気持ち”的にって奴だ。

花村「……な、なぁ里中?その、自然体で聴いて欲しいんだけど」

千枝「…なに?」

花村「前さ、みんなで勉強してた時に、あっさりと俺の事“恋愛非対象”って言ってたじゃん?」


千枝「なっ」


花村「アレってさ、その…マジ…?かな?って…いやその何となくなんだけ」


里中「んなわけないじゃん!!」

花村「…!え…?」

里中「ハッ…!いや、その!んなわけないってか、そんな酷い事言うわけないとか、いや、ま、そんな意」

花村「じゃ…じゃあさ!!」

里中「なに!なんですか!」

花村「もし、もしもだぞ!?」

里中「はい!」

花村「お、俺が里中の事、す、す、す…すすすすす」

里中「(あわわわわ!?)」


里中「ばばばばっかじゃないの!!ば、ばっかじゃないのー!?」

花村「なっ、誰がバカだバーカ!」

里中「うっさい!バカバカバーカ!」

里中「第一!アンタがあたしを好きになるとかないじゃん!!ないじゃんバーカバカバカ!」

花村「さ、里、中…?」

里中「花村はなんだかんだ頼れて、実はいっつも助けてくれて、実はいっつも我が儘付き合ってくれて、実はスッゲー大好きとか!!!バカじゃんよ!!超バカだよ!有り得ないよ!」

花村「えあの意味がちょっと」

里中「…あームカつくムカつく!!花村バーカ!」

花村「さ、さとなか…ちょ、ちょっと落ち着け?な?」

里中「う゛ー…」


周りの視線が痛い。
かなり注目されてしまっているようだ。

里中はいつの間にか、その瞳には涙を溜めていて、とにかく花村は彼女を落ち着かせて、何処か話をできる所へ…そう考えたのだが…

次の瞬間、千枝は、驚くべき言葉を呟いた。

里中「ぐすっ…お腹空いた…」

花村「!はいぃ!?おまっ、なんちゅうタイミングで…」

里中「…肉…」

花村「さ、さっき食ったばっかじゃねぇのよ…」

里中「…ならケーキ」

花村「ああ、まぁそれなら……んじゃ、レストラン行くか?と…とにかくさ、一旦落ち着けよ?な?」

里中「……がいい」

花村「なんだ?やっぱ肉か?あーもう、この際行きたいとこ行ってやる。なにが喰いたいんだよ?」

里中「……花村の、家がいい…ぐす…」


花村「なんですとおおおお!!!!!!!!????????」

花村「えちょ無理無理無理無理無理無理無理無理だって!!色々と無理だって!」

里中「行きたいとこ行ってくれるって…言ったじゃん嘘つきー花村バカバカバーカ!!!!ジライヤもバカモーン!ひっく…」

花村「あーもう、だから叫ぶなって!…あとジライヤは関係ねぇ…畜生…なんで告るタイミングでこんな事に…」

里中「こんな事って何クマかー!?わあああああん!」

花村「クマかお前は!……しょ、しょうがねぇなぁ…」

里中「連れてってよ花村…人、今要らないし…それに、話たいの」

花村「わーったよ……んじゃ行くか…」

泣き止まない千枝の手を、割と不可抗力の形で引いて、二人は電車に乗った。

揺れる車内の中、何度か千枝に話かけてみるが、「バカバカ…」ばかりで話にならない。

対して花村は、突如肩に感じる重みに戸惑いと歓喜の複雑な心を感じながら、それでも心臓のオーケストラの演奏はこれでもか、とホール一杯を揺らしつづけている。

到着した八十稲葉の駅を出て、ぎりぎりの終バスに乗り込み、花村家へと近づいていく。

途中コンビニに寄って、里中希望のケーキを買い上げると、気づけば二人は既にその玄関目の前であった。

花村「(今日に限って両親共に留守とか……どんだけご都合主義だよこのSS…)」

ごめん2時間くらい寝るは…
文字が見えなくなってきた

見てくれる人は無理しない程度に保守お願い…

無理っぽい人は無理せず寝てくれ…堕ちてもいいので

保守ありとう
7時ちょいまで書き溜めるは

―花村陽介の自室―

花村「言っとくけど、片付けてねーからな。まさか家来るとは思わねーし…」

里中「…大丈夫…ごめん。我が儘言った」


千枝は漸く冷静さを取り戻してきて、涙ももう止んでいる様子だった。

花村「別に、つかお前の我が儘なんて聞き慣れてるっつの」

里中「だよね、ごめん…」


花村「…あ、ワリィ。そんなつもりじゃないから、さ」

里中「……」

花村「……」


冷静になったらなったで、さっきのクリスマスロードの出来事を思い返してしまって、千枝は俯きっぱなしだ。


花村「里中」

花村「…なんか飲むか?俺、適当に持ってきてやるよ」


座っていた腰を上げ、リビングの冷蔵庫へ向かおうとした花村の袖は、千枝の女の子らしい小さな手に掴まれてしまう。

花村「あん?」

千枝「…私、急にどうしたんだろ」

花村「は?」

千枝「急に好きとか言いだしてさ…」

花村「……」

花村「ハハハッ、その話なんだけど…俺、未だに実感がねーんだよな…」

千枝「え?」

千枝「……そっか。やっぱ、そうだよね…」

千枝「ってか、私もさ、正直花村の事、単に友達以上って感じだと思ってたんだけど……なんか、やっぱ今更二人きりって、色々と考えてる内に、急になんか、爆発したみたいにさ」

花村「………」

千枝「私…やっぱ勘違いしてたのかも、花村はやっぱ…大事なおトモダ…」

花村「…どうでもいんだよ」


里中「!」

花村「いいか、この際もうどうでもいんだよ里中。…俺の事、お前が実際どう思ってるかなんて。だから、ぶっちゃけ関係ねーんだよ。クリスマスロードのカミングアウトも…今こうして、お前の心の中の話されてんのも、今の俺には、全く重要じゃねぇ!」

里中「…花、村…」

花村「俺は…もう嫌なんだ。何も伝えられずに、何も伝わらずに、俺の前から誰かが去っていくのは…」

里中「…」

花村「…お前があの日、誘ってくれた夜、俺眠れなかった。何回も自分ひっぱたいて、夢なんじゃねぇか?って」

花村「お前が電話に出てくれた日、こんなクリスマスイブに二人きりで遊べるなんて、マジで嬉しかった。死ぬレベルでバカみたいにはしゃぎ回って」

花村「俺なんかと遊ぶ為に、わざわざ化粧までしてきてくれちゃうし」


花村「今更なのは、俺の方だよ。里中、お前やっぱ超可愛いっつーの。ちくしょー」

里中「…」

花村「…お前の意思は関係ねぇ、ただよく聴いてくれ。それだけでいい」

花村「俺はきっと、事件が起きて…何かが動きだしたあの瞬間から…」

花村「1番に…お前の事、守りたくて仕方なかったんだと思う」

里中「…花村…」

花村「…俺は、お前を守りたい。
叶うなら、ずっと先も。

シャドウなんかが相手じゃなくたって、もし先々ペルソナが使えなくなったって…関係ない」

花村「間違いない。
俺は、お前が好きになっちまったんだ」

里中「は…はな、む…ら」

花村「…あー…言っちまったよ…チキショウ。もう逃げらんねーな」

里中「…」

花村「…なぁ、俺は答えが欲しい。イエスもノーも、どんなものでも、今なら何だって受け止められる気がしてんだ」

里中「…」

花村「…」

里中「……ばか」

花村「…へ?」

里中「……花村のくせに…かっこいいじゃん…ばか」

花村「…なんだよ、花村のくせにって…」

里中「…き」

花村「…え?」

里中「…すき。うん。…花村?」

花村「…」

里中「…すき。ちゃんと、すき…」

里中「あはは…結局、勘違いじゃ、ないじゃんね…ちゃんと、最初っから…素直だったみたい…」

花村「里中…」


里中「…いつからか、なんて正直わかんない。けど…今、うん。今目の前のアンタが……やばいくらい…すきです…」

花村「」

里中「わっ…わた、わたし…なに言って、嫌、えっとでも本当だから!…勢いなんかじゃ…ないよ?」

花村「…ぷっはー!」

里中「な…なによ!?」

花村「…やっべぇ。お前ってば、マジやべぇよ…」

里中「…はぁ!?どういう」

花村「…可愛いすぎて息出来なかったわ」

「磯野ー!野球しようぜー!」


昼下がりの静かな時間。

いつもの声が、いつもの通りに、部屋の窓から聴こえてくる。


「お、中島か…まったく、堂々と呼ぶんじゃないよ」


隠していた先日のテストの結果を姉に見つけられてしまい、カツオは現在、机、教材と睨み合いの最中である。

あんな大声を出して…姉さんが来ちゃうじゃないか。


「中島、悪い!今は勉強中なんだー!」


「ちぇー。わかったよー!」


始末の悪そうな声が窓から返ってくる。

その足音が遠くなっていくのを確認しつつ、
カツオは引き出しからグラブと、壁に立て掛けたバットに手を伸ばした。


「悪いな中島。ウチは頭を使わないと、野球に行きづらいんだよ」

ごめん誤爆った

本当すまんこ

書き溜め終わったからまたダラるは

花村「これは…死ぬな…」

里中「うん…心臓ばくばく…」

花村「…」

里中「ね、あたしら…」

花村「あ、ああ…そっか、そうだった」

里中「後悔しない?」

花村「する要素がないな」

里中「…うん」

里中「………」

里中「…あ、あのね!」

花村「うん?」

里中「なんてか…その…まだ実感なくって…」

花村「なんだよ、まだなんか不安?」

里中「…とかじゃないけど、最初だから…いや、っと…最初だからね、今の内に…その、欲しいのが…」

花村「…肉?」

里中「ちげーっつの!」

花村「なんだよ、言えよ…き、気になるじゃんよ…」

里中「…」

里中「……す」

里中「き…す…的、な?」

花村「ああキス?なんだキスか……」

花村「…………はあああああああああああああああ!???????
ちちちちちちちチッスっスかあああああああああ!!!??」
里中「大きい声で言うなああああああああ!!!!」

花村「でっ、できるわけねーだろ!ハードルたけぇよ!やべぇって!」

里中「あ、あたしだって!!」

里中「………」

里中「…けど、良いじゃん」

花村「…い、良いのかよ…」

里中「い…良いし!花村だし!」

花村「なにそれ死ねる」

里中「と、とにかく……あたし目つぶってるから…は、早くね?」

花村「うぉあ…!マジすか!?

里中「……」

里中「んっ……」


花村「(…ゴクッ)」

花村「……い、良いんだな…よし」

花村「//…じゃあ俺も目つぶります」


花村「……」

里中「……」

花村「な、なぁ…お前の顔が見えねぇ…」

里中「二人して目つぶってたら見えないに決まってっしょー!!バカだね全く!」

花村「そ、そっか!そうだよなうんうん…」

花村「…よし…今度こそ…」

里中「い、意外と顔上げつづけるの疲れるから…は、早くね」
里中「……んっ」

花村「(…行くぞ、行くぞ…やれ花村陽介…!)」」

意を決した少年の奮える手が、意図せず少女の首筋をなぞる。

里中「!…ひあっ、ん…//ちょ、ちょっと//」

花村「うわっ!?ワリ!ってか変な声だすなよ、色々やべぇだろーが!!」

里中「しょ、しょーがないじゃんバカ!!」

花村「なんか、先に進む気がしねーんだけど…」

里中「ちょっと花村!こんなトコでヘタレないでよ…あたし一人恥ずかしいじゃん…」

お前ら…まだ読んでたのか…

こりゃ続けねば

花村「おっけ…んじゃいくぜ…!」

里中「ばっちこい!てやんでぃ!」


里中「………」

花村「………」

見れば見るほど、みずみずしくも弾力に富んだ里中の唇は魅力的で、少し赤らむ頬がその魅力を何倍にも掻き立てている。

こうして、眼を閉じれば思い出す、数々の思い出。

なんだ。
何だかんだで、俺達って仲良かったんじゃんか。

思い出す、場面の一枚一枚。

心が、揺れる。
優しく…でも、激しく揺れる。

此処でこうして過ごす事に、最早迷いはない。

そして重ねた瞬間から始まるであろう、新しい未来へのスタートライン。


…ま、望むところっつーの?


俺達なら、大丈夫だ。
そうだろ?

花村「…」
里中「…」


漸く重なった二つの幸せの形。

どこと無く無骨な部分もまた、よく似ている。

重ねた数秒間、起きながら夢を見ていたような、それも、飛び切りハッピーな夢を見ていたような。

ゆっくりと眼を開けて、その現実の愛らしさに、花村の心はなおも強く揺れた。


里中「…長いって、ば」

花村「なんか…信じらんねー…」

里中「あたしも…」

花村「いや、夢かもしんない。って思ったら、ホラ…もったいなくって…」

里中「ばか…」

里中「…」

里中「その…また、すればいいじゃん…夢なんかじゃないし?」

花村「………」

花村「(……やべぇ…もう…もう……)」

花村「さ………里中あああ!」

…ダメだ、もうダメだ。
我慢とか無理!無理です!

思わず、抱きしめる。


里中「のあっ!?ひゃっ!ちょっ、花村!?」

花村「ワリぃ……里中…俺、もう限界っ」

里中「ま、待って待って…!流石にソレは、まだ早…っ!」

花村「…!」

里中「ひゃんっ!?」


抱きしめる腕により一層の力が篭る。
壊してしまわない様に、程よい圧力で。

身体は窮屈なのに…

心は…あれ…?


里中「(しあわせ…かも)」

花村「…!」

ついには押し倒してしまう程の、愛情の力が、千枝からナニカを奪い去っていく。

…ああ、良いかも。
だって、花村だし…

早いとか、早くないとかじゃなくて、うん…

こーいうのって、そっか。
求めたら、それが始まりなんだ。

なら、求め、そして受け止めなきゃ。

大丈夫。この人なら、大丈夫。

里中「…花村…」

花村 「…え?」

里中「……」

里中「あたし…花村で、良かった」

花村「…」

花村「…俺も、里中で…スッゲー嬉しいんだけど…」



里中「…責任、とんなさいよ?」

花村「もち…楽勝」

きっと、今日みたいに。
多くの事を許しあって…

そして、いつもの様に。
小さな事で言い争って…

楽しくて、幸せで、満ち足りた毎日が待っている。

妄想なんかじゃない。

もう、そうとしか想えないのだから。


花村「……なんか緊張する」

里中「言うな…」

花村「んじゃ……失礼して…」


花村の右手が、ジャージのファスナーを下へ下へと導いていく。

その純潔を守る一枚目の壁はあっさりと崩れ去り、薄いインナーが姿を現す。

花村「…」

臍のあたりから、一気にその胸の辺りまでたくし上げると、そこから望む控えめな双丘に手を伸ばす。

里中「…ん…」

刹那に…それも、僅かに触れただけで、その愛らしい唇から、甘い吐息混じりの声が漏れる。

花村「…里中…」

里中「は…はなむら…//」


自身に向けられる熱い視線によって臨界点を突破した理性が、花村から言葉を奪い去る。


もう後にはひけねぇ。
…つーか、引く気もねぇけど。

そして、ついにその丘にかかる不粋なソレを取ろうと、花村は里中の背中に手を伸ばした。






…まさに、その時だった。

バタンッ!



花村&里中「!?」



開くはずのないドアが開き、有り得ない事態が部屋に飛び込んできた。



クマ「ヨースケー!!今帰ってきたクマー!!あと、センセイ達が、やっぱり遊びたいって来てくれたクマよー!!……って…!?」

鳴上「意外と早く皆引けたから、来たん…!?」

天城「旅館、抜け出してき…!?」

完二「先輩がさみしがってると思って来てやったっスよ」

久慈川「はなむら先輩っ、やっぱ皆で過ごしたくて来ちゃっ…!?」

直斗「えぇ。おじいちゃんも快諾してくれたのでお邪魔させてもらいに来ま…!?」


花村「お、おま、おまえら…!?」

里中「!?!?!?!?!」



一同「………………!?!?」



花村&里中「ううううわああああああああああああああああ」


……………………………
………………………
………………

クリスマスのイブは更けていく…

おし終わり
保守してくれた人ら、あじゅじゅじゅした

↓以下ペルソナ語りスレ

ちなみに俺は一時期ゲームで節子ルート一択だった

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