P4の真犯人バレしてますネタバレ注意
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TV《世間を騒がせていた八十稲羽市での連続殺人事件での犯人として足立透(27)容疑者が先日逮捕されました。足立被告は最初の二件の殺人についての犯行を全面的に認めており、手口に関する証言については曖昧なところもあるものの、事件は収束を迎えていきそうです…》
服部「確か4月頃に起きたアンテナや電柱に死体が逆さ吊りにされていた猟奇殺人でしたな」
古美門「手口などどうでもいいんですよ服部さん。模倣犯の久保、誘拐犯の生田目と誤認逮捕を続けただけでも大失態だというのに真犯人がよりにもよって警察関係者。警察側からしたら大恥です。できるだけ大事にはしたくないでしょう、まあ無理でしょうけどね」
服部「まったくそのとおりでございます」
古美門「この裁判の弁護を引き受ける弁護人なんているんでしょうかね。ま、僕には関係ありませんけど。それより服部さん、そろそろ新しいテレビを買いましょうよぉ~。超大型の3Dとかどうです、体がすっぽり入りそうなくらいの」
タッタッタッタッタッタッ
バンッ
黛「先生、八十稲羽の連続殺人事件の弁護をとってきましたよ!」
古美門「何をやってるんだこのガニ股ポンコツ朝ドラ女ぁぁぁあ!」
>>拘置所
黛「どうもはじめまして担当の弁護士になりました黛と古美門です」
足立「はあ」
黛「それで裁判の方針の話ですが、貴方の意志を最大限に尊重した上でお互いに」
足立「あのさあ、言うようなんだけど、おたくらテレビ見てないの? ニュースでも言ってない? 全部僕がやったんだって」
黛「で、ですけどまだ判明していない事柄も多くありますし、刑を軽くすることは十分に可能で…」
足立「だから2人共僕が殺したんだって。ムカついたから殺したの。それでいいでしょ。せっかく来てもらったところ悪いんだけどさ」
黛「手口だって曖昧なままの情況証拠だけで有罪なんていくらなんでもやり過ぎです! なんのために裁判があると思って…」
古美門「いくらだ」
足立「?」
古美門「いくら払うと聞いているんだ田舎に飛ばされ挙句の果てに殺人までしちゃった元エリートさん」
足立「…言うねえ、あんた」
黛「ちょ、ちょっと…!」
足立「というか別に頼んでないし。あんたの言うとおり飛ばされて親にも縁切られたし払う当てないし、別に弁護してもらわなくても結構」
古美門「よし、帰るぞ」
黛「ちょちょちょ、ちょっと!?」
>>留置所外
黛「断ってどうするんですか!?」
古美門「どうするもなにも依頼人が弁護の必要がないと言ってきたんだ」
黛「でもあの人手口だけはなにも話さないんですよ!? 反省したにしては出頭してきた時期もおかしいですし、何より逮捕直前に救急車で搬送って、絶対何かありましたよ。それがわかっていないのに頑なに犯人だって言い張っていて…」
古美門「そう犯人だと言いはっているこれこそが最も面倒なところだ。依頼人が有罪を主張しているのなら我々にすることは何もないこのまま裁判が開けばあの男は真犯人としてバツを受けるだろう本人もそう望んでいる」
黛「で、でも…」
古美門「それから金も払えないような奴を私は弁護したりしない最低でも2000万は用意してもらわないとなァ!」
黛「絶対そっち本音でしょう! いいですよだったら私がやります! 彼、担当の弁護士が決まる見立てすらないんすよ」
古美門「そういうことは少しはカネになる仕事を見つけてからやるんだな朝ドラ女!」
?「…ん、あんたらは…?」
黛「へ?」
堂島「まさか受けてもらえるとは…堂島だ」
黛「! 足立さんの弁護の依頼に来た!」
古美門「誰だこいつは」
黛「足立さんの上司の刑事さんらしいです。形式的には足立さんからなんですけど、実質この仕事を依頼してきてくださったのは堂島さんなんですよ」
堂島「だめもとだったんだがな…あのヤロウ態度は模範的だが自分は犯人だの一点張りで担当の弁護士がなかなかきまらないときた」
黛「そこなんですよね。先生、何かあったに違いないんですよ。出なきゃこんな妙なことにはなってません。真実を暴かないと」
古美門「堂島さん、貴方ならいくら払えますか? 私は高いですよなにせ無敗の弁護士ですからね」
堂島「…それは…色んなとこに頼み込んで多めに見積もって1000万くらいまでなら…」
古美門「全然足りません最低2000万だ譲れないね」
堂島「…そうか」
黛「…」
堂島「…『テレビに人を入れて殺した』っつったら信じるか?」
古美門「は?」
堂島「俺自身信じられない話だが、生田目も足立も『テレビに人を入れた』らしい。突拍子もないはなしだろう。だから話さないんだ」
古美門「…失礼、もう一度」
堂島「テレビに人を入れて殺し…」
古美門「テレビで殺し? じゃあ撲殺に決まりですかねぇ!」
堂島「…おい」
古美門「信じられるわけ無いだろう! テレビに人が入る? それで死ぬ? 意味がわーかーらーなーい」
黛「ちょっと先生そんな言い方」
古美門「黛くん、だったら君は信じるのかこんな話!」
黛「それは…」
堂島「…いや、こっちこそ悪かった。妙な話をしたな」
黛「あっ、待ってくださ……行っちゃった。で、どうします」
古美門「帰るぞ」
黛「話だけでも聞いてみませんか! もし足立さん本人もテレビに入れたと言うのなら、やっぱりきちんと調べるべきだと思います!」
古美門「ああそうじゃあかってにやれ!」
黛「わかりましたじゃあ一人でやります!」
>>裁判第一審
裁判官「これより八十稲羽市で起きた連続殺人事件の裁判第一審を行います」
黛「…」
古美門「~♪」
黛「…なんでここにいるんですか」
古美門「どうした相手の事務所がどこだかわからないのか」
三木「」ギリギリ
黛「めっちゃこっち睨んでますよわかりますよ見れば誰だか! 私が言いたいのはどうせやるなら最初からやればいいのにっていう話で…!」
古美門「時に黛くん。君はこの裁判どう攻めるつもりだった?」
黛「それは…足立さんの証言を元に色々調べてきましたからそれを言うつもりでした。八十稲羽にはマヨナカテレビという噂もあって…」
古美門「だから君はダメなんだポンコツガニ股節穴女、廃れた地方局に映って放送してもらってネット上で一部の人間にチヤホヤされるといい少しはましになるだろう。見ておけこうするんだよ」
黛(嫌な予感しかしない)
証人「小西さんはとてもやさしい人だったのにどうして…」
三木「ありがとうございます。こちらの主張は以上です」
裁判官「弁護側、反対尋問はありますか」
古美門「ところで裁判官少しよろしいでしょうか!」
三木「異議あり、相手側は無意味な話で裁判を惑わそうとしています!」
裁判官「却下します。無意味かどうかは私が判断します」
古美門「裁判官ありがとうございます。それでは少しお話しましょう」
古美門「この事件も妙なことだらけでしたが、被告人の主張はもっと妙だとそう感じたことはありませんか?
相次ぐ誤認逮捕の末の真犯人。自身は犯行を認め、真犯人しか知り得ないような事実をいくつも口にし、質問には何でも答え、拘置所での態度も非常に模範的な態度を崩さない被告が唯一口を開かない手口。
一体なぜなのでしょう? なぜそこだけ隠す必要がある? 自分が犯人だという事実、「ムカついたから殺した」という動機、隠したいものなら他にもっといくらでもあったはずなのに頑なに手口だけをはぐらかしている。
では逆に考えてみましょう。なぜ手口だけは言えないのか? そこにどうしてもバレてほしくない何かがあるからではないか? ではその事実とはなにか」
古美門「誰かをかばっているからだとしたら?」
「「「「!!??」」」」
三木「異議あり、事件当時被告人は転勤下ばかりで親しい友人はほとんどいなかったはずです。誰かをかばうことはありえません」
古美門「当時は確信を持っていなかっただけだったとしたら?」
裁判官「意義を却下します。続けて」
古美門「被告人は事件当時怪しい現場を目撃してしまった。もしくはそれを悟ってしまった。だから真犯人しか知り得ないような情報も持っていた。しかし自信がなかったのです。そのうちに月日は流れ12月、ついに彼は真相を知ってしまいました。ああやはりあの人が犯人だったのだと。しかし心優しい被告はその人を断罪することができなかった、なぜならその頃にはとても親しい人物になってしまっていたから!」
三木「そんな人物…」
古美門「確かにいるはずないと思いますよね。被告と12月までに親しくなり、被害者ともある程度の接点があり、事件が起こっている間だけ八十稲羽に滞在していたような人物なんて!
ところで足立被告が原因不明の疲労で救急車で搬送された際、それを保護したという高校生グループがいましたね。そいいえばその中に該当する人物がいました」
古美門「鳴神悠。事件当時17歳。ひょっとしたら彼こそが真の犯人なのかもしれません!」
黛(うわあ…)
今日はここまでです。
何で刑事事件の裁判で弁護士対弁護士になってるんですかね…
>>19 うわあうっかりしてた。今からウィンウィンに変えてもいいだろうか
>>9 からちょっと修正
>>裁判第一審
裁判官「これより八十稲羽市で起きた連続殺人事件の裁判第一審を行います」
黛「…」
古美門「~♪」
黛「…なんでここにいるんですか」
古美門「ちょっと気が変わっただけだよ黛くん。それに相手は君と違って有能な羽生くんだからねえ、第一戦目の相手として裁判のやり方を手ほどきしてやろうと思ったんだよ」
羽生「」ニコニコ
黛「頑張れ羽生くんこんな悪徳弁護士倒してしまえー!ボソッ」
古美門「君はどっちの味方なんだ」
黛「それより私が言いたいのはどうせやるなら最初からやればいいのにっていう話です! 大体貴方はそんな理由で金にならない仕事を受ける人じゃありません。一体こんどはどんな悪巧みを…!」
古美門「時に黛くん。君はこの裁判どう攻めるつもりだった?」
黛「へ? それは…足立さんの証言を元に色々調べてきましたからそれを言うつもりでした。八十稲羽にはマヨナカテレビという噂もあって…」
古美門「だから君はダメなんだポンコツガニ股節穴女、廃れた地方局に映って放送してもらってネット上で一部の人間にチヤホヤされるといい少しはましになるだろう。見ておけこうするんだよ」
黛(嫌な予感しかしない)
証人「小西さんはとてもやさしい人だったのにどうして…」
羽生「ありがとうございます。こちらの主張は以上です」
裁判官「弁護側、反対尋問はありますか」
古美門「ところで裁判官少しよろしいでしょうか!」
裁判官「発言を許可します」
古美門「それでは少しお話しましょう」
古美門「この事件も妙なことだらけでしたが、被告人の主張はもっと妙だとそう感じたことはありませんか?
相次ぐ誤認逮捕の末の真犯人。自身は犯行を認め、真犯人しか知り得ないような事実をいくつも口にし、質問には何でも答え、拘置所では非常に模範的な態度を崩さない被告が唯一口を開かない『手口』。
一体なぜなのでしょう? なぜそこだけ隠す必要がある? 自分が犯人だという事実、「ムカついたから殺した」という動機、隠したいものなら他にもっといくらでもあったはずなのに頑なに手口だけをはぐらかしている。
では逆に考えてみましょう。なぜ手口だけは言えないのか? そこにどうしてもバレてほしくない何かがあるからではないか? ではその事実とはなにか」
古美門「誰かをかばっているからだとしたら?」
「「「「!!??」」」」
羽生「異議あり、事件当時被告人は転勤したばかりで親しい友人はほとんどいなかったはずです。誰かをかばう可能性は低いんじゃないでしょうか」
古美門「当時は確信を持っていなかっただけだったとしたら?」
裁判官「異議を却下します。続けて」
古美門「被告人は事件当時怪しい現場を目撃してしまった。もしくはそれを悟ってしまった。だから真犯人しか知り得ないような情報も持っていた。しかし自信がなかったのです。そのうちに月日は流れ12月、ついに彼は真相を知ってしまいました。ああやはりあの人が犯人だったのだと。しかし心優しい被告はその人を断罪することができなかった、なぜならその頃にはその人ととても親しくなってしまっていたから!」
羽生「そんな人物…」
古美門「確かにいるはずないと思いますよね。被告と12月までに親しくなり、被害者ともある程度の接点があり、事件が起こっている間だけ八十稲羽に滞在していたような人物なんてそうそういるはずがない!
…ところで足立被告が原因不明の疲労で救急車で搬送された際、それを保護したという高校生グループがいましたね。そいいえばその中に該当する人物がいました」
古美門「鳴上悠。事件当時17歳。ひょっとしたら彼こそが真の犯人なのかもしれません!」
黛(うわあ…)
>>第一審終了後
黛「先生一体あれはどういうことですか! いきなり関係ない人に容疑を向けるなんて…」
古美門「関係なくはない、鳴上悠は立派な容疑者の一人だ」
黛「突然過ぎます。それにあんな推論だけで…」
古美門「推論だけで言うはずないだろう。鳴上悠は事件前日に街に来て、殺人事件と並行して発生した誘拐事件の被害者とピンポイントに親交を深めている。怪しさは十分だ。何より足立透を犯人たらしめる数少ない物的証拠の脅迫状は、鳴上悠が犯人だった場合は証拠ではなくなる」
黛「それは…」
古美門「同じ田舎に不可抗力でやって来た者同士親近感があっただろう。堂島警部を介さない交友もあったそうだ。それも夕食に誘うほどのだ。足立透がその鳴上悠という気の置けない友人をかばっていることを否定するものはどこにもない」
黛「じゃあもしかして足立さんは本当にその少年をかばって…!?」
古美門「いやあいつはどう考えても殺してるよ」
黛「いままでの嘘ですか!? よく堂々と言えますね! ちょっと泣きそうになったじゃないですか!」
古美門「君ほど単純に説得させられるのなら楽だがねぇ、裁判官にそう思わせられれば我々の勝利だ」
黛「…」
古美門「ところで、検察側がこの事件で最も迎えたくない結末とは何だと思う?」
黛「へ? えーっと…足立さんが無罪だったとか」
古美門「その先だ」
黛「その先…足立さんが無罪なら別に犯人がいるってことだから……そうだ、『誤認逮捕』!」
古美門「そう、「また警察が誤認逮捕したのか」という評価こそ向こう側が最も忌避するものだ。こっちがその可能性を提示した以上検察側は全力で足立透の犯人説を押し通してくるだろう。今まで曖昧なまま立件されようとしていた手口が議論の鍵になる。
それに本人が自供したこちらに不利な動機からある程度目が反らせる。普通の弁護士なら決して選ばない危険な道だが私なら大丈夫だ」
黛「なるほど。じゃあ鍵はその手口の調査…って、あの人本当にやってるんですよね。だったらこのまま彼を無実にしたら鳴上っていう子が罪をかぶるはめになっちゃんじゃ…」
古美門「はーっはははは!」
黛「この鬼! 悪徳弁護士! 詐欺師!」
古美門「黛くん今すぐ八十稲羽へ行く手配をし給え」
黛「分かりましたよ!」イーだ!
>>鳴上悠の手紙
背景、菜々子。
お兄ちゃんは、裁判所というところに行かなければならなくなりました。
夏休みはそちらに帰れそうにありません。ごめんなさい。
>>ジュネスのフードコート
花村「相棒が連続殺人事件の犯人容疑で裁判所から呼び出されたぁ!?」
りせ「うん、ホントみたい。菜々子ちゃんのところにきた手紙にも書いてあったらしいし」
里中「どうして鳴上くんが捕まっちゃうわけ? だって犯人は足立さんでしょ?」
天城「事情を知らない人たちにとったら、私達のしてたことが怪しく見えちゃったのかも」
白鐘「…いえ、たしかにそれもありますが。古美門弁護士がそう仕向けたのかもしれません」
花村「古美門弁護士ぃ? 誰だソレ」
白鐘「僕達の業界では有名な人物なので。今まで裁判で負けたことがない凄腕の弁護士です」
里中「なにそれすっご…! でもその人が鳴上くんとどう関係あるの?」
天城「その弁護士さんって足立さんについてるんだよね。その無敗ってもしかして…」
花村「あのヤローを無実にして勝利するために相棒を犯人に仕立てあげようってつもりなのか!? 罪償うとか言っておいてなんつう弁護士呼んでんだよ!?」
クマ「ヨヨ?! それホントクマか…?」
白鐘「その可能性が高いでしょう。彼は火のないところに煙を立たせる天才だ、とおじいちゃんも言っていました」
巽「…よーし、ようするにその古美門ってやつをぶっ飛ばせばいいんだな?」
クマ「クマの爪が唸るクマよ!」
白鐘「落ち着いてください。しかしこのまま先輩をほうって置くのもまずいでしょう」
里中「じゃああれだね!」
天城「うん、そうだね」
里中「私達で鳴上くんの容疑を晴らそう! だって彼が無実なのは私達が一番良く知ってるんだし!」
りせ「さんせー!」
花村「よしっ、じゃあ自称特別捜査隊一時再結成ってところだな!」
里中「鳴上くんを助けるぞ、おー!!! …って、あれ、私だけ? みんなも合わせてよー」
巽「や、タイムラグなさすぎて言えるもんも言えないっす」
花村「なんつーか閉まらねーけど、とりあえず作戦会議だな!」
>>八十稲羽 MOEL石油
ガソスタ店員「らっしゃっせー!」
黛「すみませんお手洗い貸していただけませんか…」
古美門「どうして田舎の道はこうも凸凹してるんだ今すぐ業者を呼べこの街のすべての道路を舗装しなおせ! おぇええええっ」
ガソスタ店員「だ、大丈夫? トイレはあっち行って右だよ」
黛「すみません…」
ガソスタ店員「ガソリン入れときますねー。ところであなた、他所から来られたんですか? やー、ここなにもないっしょ。観光できるようなところなんてほとんどなくて都会の若者にはつまんないかもしれないよ」
黛「いいえ、今日は仕事で。それにいいところじゃないですか。自然がいっぱいですし、都会と違って町の人もどこか親しげですし」
ガソスタ店員「そう? なんか褒められると僕まで照れちゃうな、はは」
スッ
黛「?」
ガソスタ店員「僕なんかが言うのもちょっと変かもしれないけど…。この街へようこそ」
黛「あっ、握手ですか。よろしくお願いしますね」
ガシッ
黛「……?」
古美門「あー、スッキリした」
黛「もうちょっとなんですから今度は酔わないでくださいね…」フラッ…
古美門「どうした?」
黛「いや、ちょっとフラットしただけなんで大丈夫です」
ガソスタ店員「大丈夫ですか?」
黛「大丈夫です。そうだそれから…」ゴソゴソ
ガソスタ店員「? 名刺? ええっ、君弁護士さんだったの? ひょっとして去年の事件で…?」
黛「弁護士の、黛と古美門です。もし何か気になることがあればどんな小さいことでもいいのでお伝え下さい」
ガソスタ店員「僕で良かったらいくらでも。頑張ってねー」
>>ジュネス 家電売場
黛「はあ、つかれたー。色々回ってみたけど、やっぱり警察から聞いてた以上の新しい情報はなしか。…でも足立さんの人柄を良く言ってくれる人がいたのはよかった。それ以上に鳴上くんのことを聞かれたのは意外だったけど。どれだけ交友関係広いのよあの子」
黛「…うーん、ダメだ、やっぱりちょっと疲れたのかな。ふらついてる。いつの間に家電売場なんかに…」
ガヤガヤ
黛「高校生くらいのグループかな? テレビの前に集まってるなんて…最近の高校生はテレビを買ったりするのかな。時代は変わるなあ…。
テレビ…『テレビに入れて殺した』かぁ。本人も言ってたし、生田目さんも言っていた。そしてマヨナカテレビなんてこの地域だけに広がってる噂…。絶対に何かある。あの高校生にも聞いてみようか…。あのー!」
?「はいっ!? なんでしょう!?」
?「花村、なんで焦んのよ!」
?「なんのようですか?」
黛「私は弁護士の黛と申します。八十稲羽の連続殺人事件のことで調べているのですが…って、あれ、なんか急に雰囲気が…」
?「…その弁護士ってのは古美門ってやつと関係あんのか?」
黛「古美門先生と…?」
?「はっきり言えっつってんだよゴラァ!!」
黛「ヒィッ!?」
?「巽くん落ち着いてください…!」
黛「や、その、別に悪いことをしているわけではなくて! 私は古美門事務所所属だけどどっちかって言うと敵というかなんというか」
?「すみません。我々が知っていることならできるだけお話します。その代わりにあなたにも少し話してもらいたいことがあります」
黛「えーっと、それじゃあ…鳴上悠くんって子は知ってる?」
?「センセイはセンセイクマ! 悪いことなんてしないクマ」
黛「クマ?」
?「…先輩は殺人とかそういうことする人じゃありませんから。残念ですけど」
黛「はあ…じゃあマヨナカテレビって噂は知ってる? 他にテレビに人が入るって噂とか」
?「!?」
?「あ、あんたどうして…俺達がいるからか?!」
黛「へ? …ってきゃああああ!? 手が、テレビに入ってる!? 入った!? なにこれ!?」
?「ここに入れる人がまだいたのか…!?」
黛「意外と広い…もしかしてテレビに人が入るってこれのこと…!? でもなんで突然…」
?「おいおい! 人が来ちまったぞ! ここに上半身テレビに突っ込んでる人いるんですけど! ちょっと、たしか黛さん!?」
黛「へ?」
?「すみません一旦入ってください!」
ドン
黛「!? きゃあああっ!」
………………
…………
………
…
…
………
…………
………………
黛「痛っあー! ここどこ…?」
?「マジスミマセン! とりあえずこっちも説明するから…!」
黛「さっきの高校生! ここはどこなの?」
?「…テレビの中の世界です」
黛(テレビの中の世界→テレビの中に入れられた→『テレビに入れて人を殺す』)
ポク ポク ポク
チーン
黛「殺される!?!?」
?「殺しませんだから話を聞いてください!!!」
今日はここまで。
>お互い事情を説明し合った…
>自称特別捜査隊からは昨年起こった八十稲羽連続殺人事件についての事情を聞いた…
>曰く、テレビの中の世界は入ったものの心を反映する世界で、その時生まれる抑圧された意識「シャドウ」を否定してしまうと事件被害者のように霧の日に逆さ吊りになって遺体で発見され…
>彼らのように受け入れることのできた者達は「ペルソナ」というもう一人の自分の力を手に入れ、テレビの中に自力で入れるようになるということだった。
黛「そんなことがこの街で…」
天城「警察に話してもきっと信じてもらえないだろうから、私達は独自に動いて調査してたんです」
黛「確かに信じられないようなことだけど、さっき私はテレビの中に間違いなく入っていた。これが「テレビに入れて殺す」の真実なのね」
りせ「そうです! 先輩は捕まえた側であって、間違っても犯人扱いされていい人じゃないんですー!」
クマ「これで納得できたクマ?」
黛「…事情は分かりました。でも…」
白鐘「やはり、証明するのは難しいですか」
黛「ええ、テレビに入れたという真実はわかったけれど、そのまま言ってもとてもじゃないけど裁判で信じてもらえるとは思えない」
白鐘「「手口」が論点になったのに、警察は絶対に科学的に手口を証明できない。うまくこじつけた方の勝ち。これでは古美門弁護士の独壇場です。弱りましたね…」
花村「警察じゃ捕まえられねーから俺達が頑張って捕まえたってのに、そのせいで相棒が捕まったりしたら本末転倒ってレベルじゃねーよな」
里中「このままじゃその古美門って人が鳴上くんを犯人に仕立て上げちゃうんでしょ?」
天城「どうしたらいいんだろう…。私達、何もできないのかな…」
巽「要するにその古美門ってやつを止めりゃいいんすよね?」
花村「おい、やめろ。暴力は良くないぜ」
巽「まだ何も言ってねーんすけど」
花村「違うのか?」
巽「先輩は犯人じゃないのは確かなんだから、直接説得して止められねーのかってことっすよ」
黛「説得…だめだ、あの人を説得するくらいなら裁判で「テレビに入れて殺した」なんてオカルトを認めさせるほうが百倍簡単に思えてきた…」
りせ「そんなに!?」
>話し合いは行き詰まってしまった…
黛「私は、真実を明らかにすることは何よりも大切だと思っています。その上今回は刑事裁判だからますます間違った人が裁かれるなんて事態は避けないといけない。もちろんあなた達の言うことを全て鵜呑みにはできないけれど、鳴上くんの扱いに関しては特に慎重にするよう古美門先生を説得してみます」
花村「それってできるんですか?」
黛「…正直難しいとは思う。でも、依頼者の証言と異なるような方向に裁判を進めることだけはできません。鳴上くんを犯人にはさせないと誓います」
白鐘「その依頼者と言うのは足だ…、!? そういえば!」
里中「どうしたの?」
白鐘「クマ、久慈川さん、この周辺にシャドウの反応はありますか!?」
りせ「ん…ないと思う」
クマ「クマの鼻にも反応ないクマ」
白鐘「黛さん、貴方はテレビの中の世界に入ったのは初めてですよね?」
黛「もちろんそうだけど…」
天城「! そっか、なんで出ないんだろ」
クマ「出ないって何がクマ?」
白鐘「我々は長時間テレビの中で話し合っていました。それなのに…どうして黛さんのシャドウが出てこないのですか?」
「「「!!」」」
白鐘「それだけじゃない。彼女はペルソナ能力を得る前にテレビに手を入れていた。まるで、足立や生田目のように」
花村「正確には鳴上もだ。あいつ、入ってからペルソナ召喚してたしな」
クマ「それクマも見てた」
黛「それって変なことなの?」
白鐘「おかしいんです。僕達が戦ったアメノサギリという存在は、ペルソナ能力を持つものにテレビに入る力を与えたと言いました。しかしペルソナ能力を発現できるのはテレビの中だけ。それだけなら事件はそもそも起きないはずなんだ。それなのに先輩、生田目、足立、そして黛さんという例外が4人も存在している」
天城「4人を例外にした何者かがいるってこと?」
りせ「そいつが黒幕…?」
白鐘「まだ事件は解決していなかったようですね。おそらくこの街のどこかに黒幕がいます」
巽「よっしゃぁ! 絶対捕まえてやっぜ!」
クマ「クマもやったるで~!」
花村「黛さんはこっち来てから誰か変なやつに会ったりしませんでしたか?」
黛「いろんな人に聞き込みに行ったしなぁ…うーん、明日会えるならその時までにリストアップしてして渡せるけど…」
天城「今日の宿泊先ってひょっとして天城屋旅館ですか?」
黛「そうだけど、知ってるの?」
天城「そこ、私の家なんです。でしたらメモは朝に受け取りに行きますね」
黛「ええっ! そうだったんだ…!」
白鐘「では、僕達も黒幕を探すため調査してみます。聞き込みもてつだいますよ。地元に住んでいる僕達のほうが聴きやすい情報もあるでしょうし」
黛「ありがとう。すごく助かります」
里中「じゃあこんどこそやろう! 私が手をあげたら「おー!」だかんね! それじゃあ…」
里中「絶対黒幕見つけて、鳴上くんを助けるぞー!」
「「「「「おーっ!!!!」」」」
>>天城屋旅館
古美門「なるほどなるほど、今日一日聴きこみをして、テレビの中の世界を発見し、そこに住んでいる怪獣に被害者は襲われ死んだことがわかったと。なるほどなるほど冗談もいいかげんにしろよ」
黛「本当です! ほら、今私テレビの画面に手が入ってるでしょう! こっち見て下さいよ!」
古美門「「テレビに入れる」はまだしも怪獣に殺されたとは何だ。そういうのはマンガやアニメの中だけにしておけ」
黛「…意外ですね、「テレビに入れる」を「まだしも」と言うなんて」
古美門「当然だろう、あのあと依頼者に再度直接会いその証言は聞き出してある。だから私はこの依頼を受けたんだ」
黛「は? なんで……。もしかして先生このよくわからない現象に利権問題を持ち込む気だったんですか…?」
古美門「違うね、何らかの組織が絡んでるんじゃないかと思ったんだよ。危険はゴメンだが、「テレビに入れた」という話題を広げれば口止め料としていくらか金が手に入ると思っていた」
黛「最低ですね」
古美門「でも何もなかったなぁ! あったのは文句をいうだけで具体的な行動を取らない廃れた商店街や、一体なんの肉かわからない商品を自慢気に売る店や、獣臭い参拝客のいない神社、無駄に全国展開された量産品のださいショッピングモールだけだあーイヤダイヤダ帰りたい都会に帰りたいぃぃ!」
黛「なんてこと言うんですか!? いいところですよ! この旅館だって素敵です!」
古美門「どこがだ! 夕食を見ただろう「摘みたて山菜料理」などとうまいこと言ってるが要はそこら辺の雑草なんだよそれを高い金を払ってわざわざ食うようなやつの気が知れないね!」
黛「雑草の何が悪いんですか美味しかったじゃないですか雑草!」
古美門「君はどっちの味方なんだ」
黛「ゴホンッ とにかく! 鳴上くんを犯人に仕立てあげようとする今の方向性を変えてください!」
古美門「どうしたちょうちんパンツ、そのガキどもの戯言に感化されて青臭さ2割増しか」
黛「青臭いとかそういう話じゃありません! そもそも足立さんは殺したと主張しているんです! それを弁護士が全否定してどうするんですか!? 先生が依頼人のことを信じろと言ったんじゃないですか!」
古美門「君はこの世に嘘をつかない人間がいると思っているのか? 自分自身の意志を正しく理解した人間ばかりだと思っているのか? だとしたら飛んだお花畑だな義務教育からやり直してあのガキどもとくだらないヒーローごっこでもやっていろ!」
黛「彼らはヒーローごっこなんて半端な気持ちではありませんでした! 立派な子たちです!」
古美門「いいや所詮ごっこ遊びだね。その後のことを考えない自分の行動に責任を持てない、奴らは何かを青春の糧にしなければ生きていけないハッピーエンド主義者なんだよ。その後のことを考えない行動は全て自己満足だ。君は誰の弁護士なんだ?」
黛「それは…」
古美門「依頼人が必ず全て本心を明かすとは限らない。それでも我々はそれを察し行動に移さなくてはならない。でないと敵に足を救われる。だからお前はいつまでたっても半人前なんだよ朝ドラ」
黛「…確かにそうかもしれません
…もしかしたらあの子達が嘘をついていて、正義のためなんて嘘っぱちで私は騙されてるだけなのかもしれません。でも一つだけ確かな事があるんです。『テレビの中の世界』はあったんです。調べればまだまだ色々なことがわかると思います」
古美門「だからその調べたことをそのまま裁判で主張するのか? テレビに人が入ると? そのシャドウとやらに山野アナと小西早紀が殺されたとそう主張するのか?」
黛「はい。私は弁護士として、真実を暴く義務があります。それは決して鳴上くんを犯人に仕立て上げて、依頼人を虚偽の無実にすることではありません」
古美門「真実を暴くことなど誰にもできない。それは弁護士の仕事ではない」
黛「でも限りなく近づくことはきっとできます。真実を暴いて、正しい采配を導くために働くのが我々弁護士の仕事です」
古美門「………」
黛「「テレビに入れる」ことはできるんです。私にこの街で起こったことを証明させてください」
>>裁判 第二審
黛(色々わかったことがある。あの街で起こったこと。それぞれの思惑。テレビ。…未だに鳴上くんが犯人ではないと決定づける物的証拠はなかったけれど。でもそれは足立さんも同じ)
黛(正直彼は黒だと思う。本人もそう言っている。だったら弁護士として私ができることは…)
黛(ううん、今はこっちに集中しないと。正直テレビに入れて殺したということを証明するのは難しい。でも実際はいるんだから、なんならこの場で見せてみればいい。鳴上くんはあの子達のリーダーとして行動していたらしいから、同意はもらえるはず。打ち合わせはできなかったけれど、それは検察側も同じだということはわかってる。大丈夫、きっと行ける…)
鳴上「~~~~~、私は虚偽の証言をしないことを誓います」
裁判官「では検察側、尋問を開始してください」
羽生「はい。それでは鳴上さん、はいかいいえでお答えください。よろしいですか?」
鳴上「はい」
羽生「単刀直入に聞きましょう」
羽生「貴方はテレビの中に入れますね?」
鳴上「!?」
黛「!?」
今日はここまで。
正月忙しくて投下遅れました。ごめんね。
―――
黛(どうして羽生くんがそのことを…もしかして彼も調べてて気づいたの?)
鳴上「…それは」
羽生「もしもの話ですが、もしも…もしも彼がイエスと答えた場合、我々は彼を精神鑑定にかける必要が生じ最悪証言に信ぴょう性が失われる可能性もあります。突拍子もない質問ですが、慎重に、よく考えて正直にお応えください」
黛(まずい、この聞き方は明らかに誘導してる…ここで鳴上くんに否定されたら、証明どころの話じゃなくなる…!)
鳴上「…はい。俺はテレビに入れます」
黛「!」
羽生「…! なるほど、ありがとうございます。妙な質問をして、皆様疑問に思っていらっしゃるかもしれません。説明させてください」
古美門「……」
羽生「テレビに入れるかどうか。妙な質問です。多くの方は質問の意味そのものが理解できなかったことでしょう。だって、ありえないことです。なのに鳴上さんは、はっきりと肯定した。これは何らかの確信もしくは理由がなければできないことです。これは決して単なる思いつきから来た質問ではないのです。
そもそもどうして僕がこんな質問をしたのか。こちらのパネルを御覧ください」
黛(パネル? 何かの映像…)「って、あああっ!!?
羽生「大型百貨店ジュネス八十稲羽支店の家電売場の監視カメラの映像です」
>特別捜査隊がテレビに入っていく映像だ…!
>黛の姿も一緒に写っている…!?
羽生「これはすごい。まさにテレビに入っていく瞬間の映像です。それにこれは…黛弁護士ですね。見知った顔の方がテレビに入っていく映像には余計に驚きが増します」
黛(羽生くんはもしかしてこのことを知ってるの? それで同じようにそれを証明するために…!)
黛「あの、」
羽生「それでは一週間前の同じカメラによる映像を御覧ください」
>…!?
>写っている場所がまったく違う!
黛「!?」
羽生「これは全く同じ監視カメラによる映像です。ですが、写っている場所がどうやら違うようだ。
テレビに人が入っている映像の前後1周間の同時刻の監視カメラの映像をリストアップしたものです。この映像が撮影された1週間前から、とつぜん写っている方向が変えられているのがわかると思います。テレビの画面がよく見えるように変えられた、ように見えますね」
黛「ど、どういう…!?」
羽生「なぜこんな奇妙なことが行われたのでしょうか。そして、なぜ黛先生までもがこのカメラに写っているのでしょうか」
羽生「…あまり考えたくはありませんが、僕はひとつ嫌な考えが浮かびました。
弁護側は証拠の捏造を行っているのではないでしょうか?」
黛「異議あり!」
裁判官「異議を却下します。続けて」
羽生「この監視カメラは本来こちらかの方向を向いていました。なぜこの日に限ってこの方向を向いていたのでしょう。しかも黛先生も含んだメンバーが。これが捏造されたものだとしたら何もかも辻褄が合います。事実、古美門弁護士には…あまり信じたくはないのですが、黒い噂も流れています」
鳴上「いや、違います」
羽生「質問したことに対してのみお応えください。鳴上さん、貴方はなぜテレビに手が入るかと聞かれ、戸惑うことなくハイと答えたのですか?」
鳴上「…本当に、手が入るからです」
羽生「そう、彼がそう言うだけの何かがあるのです。彼は、テレビに入れるかどうかという質問に対して確実に事前知識を持っていた。もしかすると…古美門弁護士から持ちかけられた話なのかもしれない」
黛「異議あり、我々は第一審以降鳴上さんと接触はしていません! 記録にも残っています。大体鳴上さんに利益がありません」
羽生「第一審以前は? 鳴上くんの存在を持ち出してきたのはそちら側です。第一審以前に接触し口裏を合わせている可能性はゼロじゃない」
鳴上「彼女たちとは、今ここで初めて出会いました」
羽生「でも僕は君を疑っているわけじゃないんだ。むしろ君は無実だと、心優しい少年だと信じている。だからこそこの裁判所という厳格な場で君はこんな証言をしているんじゃないだろうか」
鳴上「…?」
羽生「サウジアラビアにこんなことわざがあります。「醜いらくだの肉は旨い」。意味はよくわかりませんが、一見そうは思えないことにこそ、おもいやりや優しさ、美しさが存在していることは多々あります。
鳴上さん、弁護側は第一審で「足立被告が鳴上悠をかばっている」と主張してきました。事実貴方は足立被告と親しい関係にあったそうだ。そう疑われてしまうのも仕方ないことかもしれない。
現にそれを聞いて僕は、意外かも知れませんが「そうかもしれない」と思ってしまいました。今までその発想に至れなかったのが悔しかったくらいだ。
だから僕はもっと深く、考えて見ることにしました。そして僕はある仮説を思いつきました。
『足立被告が貴方をかばうかもしれないのと同様に、鳴上さんも足立被告をかばうかもしれないんじゃないだろうか?』」
鳴上「?」
羽生「貴方が古美門弁護士らに味方する理由は本来皆無です。味方すれば自分が殺人犯になってしまいかねないのだから当然だ。ですが…もしも、もしも鳴上さんの優しさに漬け込まれているのだとしたら、話は変わってくる。鳴上さんが罪を肩代わりすれば足立被告は無実になります。それを望むほど、君はやさしいのかもしれない」
鳴上「いや、違い…」
羽生「否定したくなる気持ちもわかります。ですが、ここは裁判所。真実を追求する場だ。優しさは美しいものですが、時には真実を覆い隠す霧にもなりますよ」
鳴上(裁判って捏造合戦の場だったっけ)
羽生「本来裁判所で虚偽の証言をした場合、それなりの罰が与えられます。しかし思い違いならば…記憶違いならよくあることです。あなたに罪はありません」
鳴上「……」
黛「い、異議あり! あの映像は捏造ではありません! 何ならこの場で実際に…」
羽生「厳正な裁判所でそんな手品をする気ですか? リスペクトが足りていない、モラルに反する行為だ。
…もっとも、僕がこんなことを考えたのは、この映像があったからにすぎません。
もしも弁護側がこれを用いて向こう側に有利な展開に持って行こうとしない限りは、これもまた光景無糖な妄想に過ぎないでしょう。その場合は深く謝罪したいと思います。
これ以上テレビに入れるなどと言わない限り」
黛「それはっ」
古美門「これ以上は今はやめておけ」
黛「でも、これじゃあ」
古美門「羽生くんはわざわざ警告してきているんだ。これ以上その話題を出すな、今なら妄言で済ましてやると」
黛「どうして……」
羽生「鳴上さん、貴方は予想犯行時刻当時、自宅にいましたね?」
鳴上「…はい」
羽生「あなたは山野さん、小西さん両名の殺害に加担しましたか?」
鳴上「…いいえ」
羽生「提出書類を御覧ください。事件発生時の彼の目撃証言です。学校に登校している間は、距離の関係から見ても鉄壁のアリバイですし、それ以外のものも全て事件現場から離れた場所でのものであり、彼に犯行は不可能だと思われます。以上です」
裁判官「弁護人、反対尋問をどうぞ」
古美門「それはどうでしょう? 鳴上さんは保護者の堂島警部から深夜は外出しないように言いつけられていましたが、その時間帯に鳴上さんと過ごしたという人が大勢いるようですが?」
鳴上「効率的に絆を深めるためです」
古美門「長い、夜を、二人っきりで、共に過ごして絆を深め合う! なんて男子高校生らしく生臭いただれた日常なんでしょう!」
羽生「異議あり! 表現が不適切です!」
古美門「失礼、なんてワイルドでハイカラなプレイなんでしょう」
黛「………」
…………
………
‥
>>裁判所外
黛「…なんとか第三審には持ち込めましたね。でも、羽生くんはどうしてあんなことを」
古美門「考えられる理由はいくつかあるが、今回の場合は明らかに警告だ」
黛「警告…さっきも言ってましたけど、一体何に対する警告何でしょう?」
古美門「そんなことも分からんのか朝ドラ、大型ハドロン衝突型加速器の中に忍び込んで分子レベルで衝突して実験の糧となるがいい少しはましになるだろう。警察に決まっている。羽生くんは「テレビに入れることを証明しようとしたら警察上層部が潰しにかかってくる」とわざわざ警告してくれたんだよありがたいことだ。まさにゆとりの国の王子様じゃないか」
黛「でもそういった裏組織による隠蔽はなさそうだと先生自身がおっしゃったんじゃないですか」
古美門「隠蔽されてたんだよ、私に対しては下手に圧力をかけるよりしらを切ったほうが最終的に被害が小さくなると踏んでいたんだろう。最もゆとりの国の王子のおせっかいのお陰でその作戦はパーになったようだが」
黛「そうだったのね…羽生くん、私達を守るためにわざわざ独断で」
古美門「有難いねぇ~、これでやる価値も、手段も同時に出来たわけだ」
黛「手段って、どうやるんですか? 犯行の手口を証明できないのに…鳴上くんを犯人にするなんてもっての外ですよ!」
古美門「あの男はもうどうでもいいんだよ。それより今からもう一度会いに行くぞ」
黛「会いに、って誰にですか」
古美門「決まってるだろう、今回の依頼人にだ」
>>拘置所前
黛「あ、あれって」
堂島「…おう、あんたたちか」
黛「お久しぶりです」
堂島「足立の野郎の弁護を引き受けてもらってすまないな。助かった。…もっとも俺は悠を牢屋に入れてくれとは言ってないんだけどな」
黛「それは…本当…申し訳ありませんでした…」
堂島「聞いたよ。もう容疑は晴れたんだろう。ならいいさ。俺だってあいつらのことは一時期怪しんだぐらいだしな」
古美門「確かにそうでしたね。シロクロどっちにしろ鳴上悠、花村陽介、里中千枝、天城雪子、巽完二、久慈川りせ、白鐘直人、あと戸籍のない熊田とか言う少年の8名は、明らかに事件に深く関わっている」
堂島「…そこまで言い切るか。腕は確かみたいで安心した。よろしく頼むよ」
古美門「当然です。必ずや本人の「望み通り」にして差し上げましょう」
堂島「望み通り、な」
黛「今回の事件は不明な点が多すぎます。その解明をしながら、全力で弁護させていただきます」
堂島「…ありがとうございます」
堂島「…俺は足立の犯行に気づけなかった。俺と足立の関係は知ってるだろう」
黛「はい。上司と部下、そして相棒同士と…」
堂島「俺の捜査は偶然を消すところから始まる。当然あいつだって容疑者の一人だ。疑ってなかったわけじゃなかった。あいつに裏があるのはわかっていたからな」
黛「裏…?」
堂島「うまく猫かぶってやがったが、仮にもあの本庁で数年戦ってきたやつだぞ。キャラ作ってやがることくらいすぐ分かった。…それなのに、アイツの事を一番近くで見てて知ってたのは俺だったはずなのに、気づけなかった」
古美門「ご自分の無能さをアピールですか?」
黛「先生、言い方がひどいです」
堂島「ははは、そうだな。俺はな、あいつは人を殺せるような人間じゃないと思っていた。少なくとも、絶対に誰にもばれないような状況だとしても奴は十の引き金を引けないやつだ。そう思っていたから見逃しちまったのかもしれないな。情けねえ」
古美門「……」
堂島「おっと、長話しちまったな。それじゃあまた。足立のことよろしく頼みます」
黛「はい、こちらこそ。それでは」
古美門「……」
黛「先生?」
古美門「よし、これも使おう」
黛「は?」
古美門「さあさっさと行くぞ、ドン臭い動きしてるんじゃない」
黛「ドン臭いって、運動神経ないのは先生のほうじゃないですか! 待ってくださいってば!」
今日はここまで。
>>拘置所
足立「だーかーらー、僕は知らないって言ってるでしょ!」
巽「いい加減なこと抜かしてんじゃねえぞゴラァ!」
足立「だいたい君たちの話じゃ、鳴上くんの容疑はほぼ晴れたんでしょ? だったらいいじゃない。もう終わったことじゃない」
花村「全然すんでねーよ。そもそも百戦錬磨だとかいう弁護士を雇ってる時点反省なしじゃねえか!」
足立「依頼したの僕じゃないし。…ねえ、これ何回言ったけ?」
天城「…その古美門って人、どんな人なのかな」
里中「黛さんはいい人っぽかったけど…」
クマ「マチコチャン元気してるクマかねー」
>>拘置所
足立「だーかーらー、僕は知らないって言ってるでしょ!」
巽「いい加減なこと抜かしてんじゃねえぞゴラァ!」
足立「だいたい君たちの話じゃ、鳴上くんの容疑はほぼ晴れたんでしょ? だったらいいじゃない。もう終わったことじゃない」
花村「全然すんでねーよ。そもそも百戦錬磨だとかいう弁護士を雇ってる時点反省なしじゃねえか!」
足立「依頼したの僕じゃないし。…ねえ、これ何回言ったけ?」
天城「…その古美門って人、どんな人なのかな」
里中「黛さんはいい人っぽかったけど…」
クマ「マチコチャン元気してるクマかねー」
足立「はあ…いいよなお前はテレビに手が入らなくて」
花村「えっ?」
足立「お前だって俺より先に手が入ってたら入れてたさ、ただ僕にはできて君にはできなかった。だから君は今そっちにいるの。わかる? それだけの違いなのによくここまで僕のこと責められるよね。あの七三弁護士が勝手にやってるだけだって何回も言ってるのにさあ」
花村「何を…!!」
古美門「私の前髪は8:2だ。そこらへんの平凡で没個性的な分け目と一緒にしないでもらおう!」
鳴上「! あなたは…」
巽「!? なにもんだてめえ!?」
足立「うわあ…でた」
黛「えーっと、みんな、ひさしぶり?」
クマ「噂をすればマチコちゃん! 久しぶりクマ!」
りせ「えーっと、もしかしてその男の人が噂の古美門弁護士?」
古美門「単刀直入に伺います。足立さん、貴方はこの裁判でどうなりたいですか?」
足立「その質問いまさらすぎない? 散々勝手にやっておいてよく言うよね」
鳴上「あの、古美門さん? 貴方は足立さんを無罪にするつもりなんですか?」
りせ「えっと、依頼されたらクロでもシロにする弁護士だーって聞いたんですけど」
古美門「君たちは口出ししないでくれたまえ。君たちは正しかったから勝ったんじゃない、ただこの男よりも人数が多かっただけなんだから」
鳴上「…どういうことですか」
古美門「黛くんから一連の流れは聞いたよ。君たちはこの男に現実と向き合えと言ったそうだね。だがどうしてこんな所まで来て文句たれてるんだ?」
花村「そりゃ鳴上を犯人に仕立てあげようとするから…」
古美門「それはもう終わった話だろう何が不満なんだ」
花村「もう終わった話って…!」
白鐘「気を悪くされたのなら謝罪します。僕達が今日ここに来た理由は、貴方が評判通りの人物なら、足立刑事が正しく裁かれないかもしれないからです。彼は罪を認めました。心変わりしたにしろ、貴方の独断にしろ、詳しい事情を知っておきたかったんです」
古美門「はっはっは」
巽「…んだてめえ」
古美門「いやいや失礼、あまりにもおかしかったもので。正しい裁きとはいったいなんです?」
鳴上「それは…」
古美門「私がこの件から手を引けば、この男はお前たちの望みどおり犯人として捕まっていずれ世間からも忘れられるだろう。
クズみたいな理由で2人殺した犯罪者として、君たちが望んだ通りこの男は殺人鬼として罰せられる。
手口は曖昧なままだけれど、全部こいつのせいにしよう。
死体をアンテナに逆さ吊りにしたのはこいつではないけれど、全部こいつのせいにしよう。
こいつはどうしようもないクズだから。自分たちの犯人探しごっこの結末をスッキリさせたいから。だから全部こいつのせいにしよう。
それはお前たちの言う正しい裁きとやらよりも重い罰かもしれないけれど、証明の仕様がないんだから仕方ない!」
鳴上「違いますっ、俺たちは犯人がきちんと捕まり、罪を償ってほしいと思って行動し始めました。正しく裁かれてほしかったから、やり直せるはずだから、足立さんをテレビの中の世界から連れて帰ってきたんです」
古美門「足立透の言い分を信じよう、君たちの言い分を信じよう。だがそれに法律は適応しきれない。どう考えても想定外の事態だからだ。
お前たちの話が全て真実だったとして、お前たちは具体的にこの男にどうなってほしいんだ。傷害罪か? 殺人罪か? 死刑になれば満足か?
日本では2人殺せば死刑にできるぞ。お前らが金を払うなら私は今からでもこいつを有罪にして死刑送りにだってしてしよう。必要以上の刑かもしれないけれど、別にかまわないじゃないか。お前らは鳴上悠が捜査線上に登らなければ考えることも放棄したままだったんだからな」
天城「そんなつもりじゃ…そこまで言ってません!」
古美門「はははそうかもしれない。でもそうじゃないと言い切れるか?」
里中「私達は相応の罰を受けて欲しいだけで…」
古美門「違うね。お前たちが望んだのは都合のいい真実だ。自分たちの青春の糧としてふさわしいだけの罰、都合のいい虚構だろう」
鳴上「都合のいい虚構なんかじゃない。僕たちは真実を求めてここまで来たんだ」
古美門「だからお前らはガキなんだ。
その真実とやらを追求したところでこいつは「正しく」裁くことはできない。司法に最終決定を任せた時点でわかりきっていたことだろう。
警察はテレビの中の世界の存在を表ざたにしたくないらしいからな。いくら理想を振りかざしたところで現実は変わらない」
花村「…だからあんたが今してるようなむちゃくちゃな弁護で足立を無罪にするってか!? 俺達は何のためにこいつを捕まえたんだよ!? 小西先輩はどうなるんだ!? 山野アナだってそうだ! こいつにふざけた理由で殺されたのに、我慢してろってのかよ!?」
古美門「残念ながらその点に関しては私と君は一生合いなれないだろう。なぜなら私はこの男の弁護士で、お前は限りなく遺族に近い存在なんだからな。
でもお前らは司法に任せるという結論を出したんだろう?
中立の立場のつもりだったんだろう? だったら現実と折り合いをつけろ」
花村「……」
鳴上「でも、足立さん自身だって罰を受けると決めました。足立さんは無実ではありません。それを弁護士が否定する気なんですか」
古美門「本当にそうだろうかねえ。足立さん、あなたはどうしたいんですか?」
>全員の視線が足立に向けられた…。
足立「僕は…あの時罪を償うって決めて…」
古美門「本当に? その場の雰囲気に流されたのではなく? 貴方は仮にも本庁のエリートだったんだ、刑法に関しての知識は人並み以上だったでしょう。自分の行いと、刑法と、特殊すぎる事例と、それを決して認識しない司法。その矛盾はよくわかっていたはずだ」
巽「テメエ、いったい何を…!?」
足立「…確かにさ、罪悪感はまだ感じられてない。でもそれを感じるために俺は罪を償って、自信にけじめをつけようと…思ってた」
鳴上「思ってた…」
足立「でもさぁ、こうやってここでいろいろ考えて、あげくこんなクソみたいな裁判になって、ある意味で神格化してたかもしれないガキどもの矛盾目の前で見せられてさあ、つまんねーって思ってるのも事実だ。
ああそうさ、俺はテレビに入れただけなんだよ。誰だってやってしまうくらい危うい凶器を与えられて、それを使わないほうがおかしいだろ!?」
花村「って、めえは…!」
古美門「自分は悪くないと?」
足立「そうだねえ、そう考えなかった日はないね。だから、もしテレビに入る力を与えた神様ってのがいたとしたら、死ぬほど殺したい」
鳴上「足立さん…」
古美門「だ、そうだ。私は彼の弁護士だからねえ、彼の意見を尊重しなければ」
里中「そんなのって…!」
クマ「アダッチーが犯人クマよ?!」
古美門「お前らの大好きな真実は決して世間には認められない。このままでは、無罪か、行き過ぎた罰かの二択だ。相応の罰などありえない」
里中「だったらどうしろっていうのよ…」
黛「古美門先生、いくらなんでも今回のはやり過ぎです。刑事裁判なんですよ!? 人が死んでるのに…!!」
古美門「だったらどうするってんだ! 真実など誰にも分からないぞ」
黛「それは…テレビの世界を公にすることなく、そしてその力を与えた存在もまた罰します」
古美門「どうやって?」
黛「…新しい真実を、作り出す」
鳴上「真実を作る…?」
古美門「正解だ」
古美門「帰るぞ。もうここにいる必要はない」
黛「えっ、ちょっと!」
白鐘「待ってください」
古美門「なんだ」
白鐘「あなたはまだその黒幕が誰なのかわかっていない。違いますか?」
古美門「……」
白鐘「我々もこの件についてはまだ捜査を続けていました。その際、「最近バイトをとっかえひっかえしている青年がいる」という情報も得ています。そしてそれがまだ続いていることも。貴方の諜報員ではありませんか?」
古美門「…これだから田舎は嫌いなんだよなあ」
白鐘「我々はすでにその黒幕――神様が誰なのかすでに特定しています」
古美門「!」
黛「本当なの!?」
巽「おい! それ言っていいのかよ!?」
白鐘「それを伝えても構いません。ただし条件があります」
古美門「うちの諜報員は優秀だ、いずれ突き止めるさ」
白鐘「断るなら今からその神様に会いに行って「テレビの中で問題を解決」しに行きます」
黛「それって…」
白鐘「そうすればどちらが勝利したにせよ、「神様」は潜伏もしくは消滅し、あなたたちは一生情報が得られなくなるでしょう」
黛「そんな…条件っていうのは?」
白鐘「条件は…先輩が決めてください。貴方は我々のリーダーだ。決める権利があります」
鳴上「ありがとう。直人がいなかったらきっと交渉にすら持ち込めなかったと思う」
りせ「先輩…」
鳴上「俺達は犯人探しにばかり夢中でその後のことを考えてこなかった。現実と向き合えと言ったけれど、それが法律でどういう風に適応されるべきかなんてよくわかっていなかった。だから、そう言ったものの責任として、手伝います。みんな、構わないか?」
巽「先輩が、そう言うんなら」
りせ「正直、妥協点って感じなのかな…」
天城「ここまできたんだもの。とことん付き合うよ」
里中「仕方ないのかなあ…」
クマ「クマはいいクマよ」
鳴上「花村は?」
花村「…別にかまわねえよ」
足立「……」
>足立は鳴上から目をそむけている…
鳴上「みんな、ありがとう。
条件は一つだけです。足立さんが悪意を持って彼女たちを死に追いやりかねない世界に入れたのは紛れもない事実です。だから、決して無罪にはしないでください。正しい罪、正しい裁き、それらは俺達には判断できません。けれど無罪でないことだけはたしかですから」
>>裁判 第三審
裁判官「それでは弁護側」
古美門「裁判官! 事前に連絡していた証人を召喚させていただきたい」
羽生「証人?」
古美門「ええ、とても重要な方です。その証言で事件はひっくり返りますよ」
羽生「…また、テレビに入るなどといった妙なことをおっしゃるつもりですか?」
古美門「いやいやとんでもない! テレビに入る? そんなこと「ありえない」じゃありませんか!」
羽生「……」
古美門「ではどうぞ、よろしくお願いします」
ガソスタ店員「あっ、はい。分かりました」
黛「……」ゴクリ
今日はここまで
P4に生田目とらっしゃっせーコミュがないのはきっと何かのバグ
よく調べたら第三審って表現とか色々おかしかったけど見逃して
投下します。
古美門「貴方はガソリンスタンドMOEL石油で長年働いていらっしゃるそうですね。一年前の3月下旬、足立被告に会いましたか?」
ガソスタ店員「はい、会いましたよ」
古美門「だ、そうですよ羽生くん」
羽生「事件犯行時刻とは大きくずれているようですが。今の質問に意味はあるのでしょうか?」
古美門「ええ。それはもちろん。ではもう一つ質問を。生田目元議員は八十稲羽では実家の運送業を手伝っていたそうです。その際彼とも接触していますね?」
ガソスタ店員「…今日は、最初の証言のみという話でしたよね?」
古美門「これは申し訳ありません。では最後にもう一つだけ」
ガソスタ店員「……」
古美門「貴方は八十稲羽にやってきた鳴上悠少年とも当日に接触していますね?」
ガソスタ店員「…何ですか、この質問?」
黛「裁判官! 私もこの質問は話がそれているのではないかと思いましたが、後々関係してくるのかもしれません! ひとまず聞いてみましょう!」
ガソスタ店員「意味が分からないんだけど」
古美門「ご冗談を。当日、鳴上少年とともにガソリンスタンドに寄ったと堂島菜々子さんも確かに証言されています」
ガソスタ店員「それで? それが何か事件と関係あるんすか?」
古美門「関係大有りです。テレビに入ったなどと妄言を吐いた全員が、貴方と会ったと確信をもって証言されているのですから!」
古美門「八十稲羽の死体逆さ吊り連続殺人事件。死体が発見されたのは、必ず雨が続いた日の明けた、霧の深い日でした。おや、妙ですね。貴方は雨の降った日にしかシフトに入っていらっしゃらないようだ」
ガソスタ店員「そう? たまたまじゃないですか?」
古美門「八十稲羽お住まいの鳴上悠さん「雨の日に日課のガチャガチャをしに行くとき、必ずその姿をみた」、八十稲羽商店街近辺お住まいのマーガレットさん「雨の日には彼がいるからマリーは外に出せない」、八十神高校現二年生の白鐘直人さん「晴れの日はガソリンスタンド前でよく待ち合わせをしていたが彼と出会ったことはない」…他にも聞かれますか?」
ガソスタ店員「そうかな。雨の日しか入らないというか、僕の入った日が雨になるのかもね。こういうの雨男っていうの?」
羽生「異議あり! 弁護側の質問は明らかに証人召喚の域を超えています! 貴方も、これ以上めちゃくちゃな理論を押し通す気なら…!」
古美門「むちゃくちゃ? いえいえ、私は当たり前の話をしているつもりですが」
羽生「しかし、今テレビに入るという証言を認め…」
古美門「はあ!? 何をおっしゃっているんでしょうか? テレビに入る? あーりーえーなーいーでーしょーうー? そういうのはご自身の頭のなかだけに止めといてくださいませんかねえ!」
ガソスタ店員「…へえ。じゃあ、僕は何したって言うつもりなの?」
古美門「事件関係者の中にはテレビに入れて人を殺すなどと妄言を履いた方もいらっしゃいますが、そんなことは現実的にありえない。でも、入れたと錯覚させたものがあったとしたら?」
羽生「!」
古美門「実際入るかどうかなんてどうでもいい。そう思った者がいるという事こそ大切なのです。そしてそう錯覚させたものこそ…」
ガソスタ店員「僕、って言いたいわけね。…なーんかすっげー買いかぶられてる感? よくわかんないんだけど」
羽生「…鳴上さんの時のように、また他人に罪をなすりつけて真実を有耶無耶にする気ですか?」
黛「いいえ、真実を有耶無耶になんてさせる気はありませんよ、羽生くん」
羽生「真知子、君まで第三者に罪をなすりつける気なのか」
黛「…足立被告は無実ですよ」
羽生「自供もしてる。彼は、殺したんだ。罰を受けなくちゃならない。あれを世間にのさばらせてはいけないんだ」
黛「そうでしょうか。さっき古美門弁護士がおっしゃられたように、テレビに入れると錯覚されかねないものが存在していたのは、証言者の数からして明らかです。足立被告は殺してなんていません。「テレビに人を入れただけ」なのです!」
羽生「入れただけって、実際死んでるじゃないか…」
黛「しかしわざわざアンテナや電柱に引っ掛けるでしょうか? あれだけのことをして模倣犯の久保少年のように証拠をのこしたりもせずに? そんな体力も、動機も彼にはありません。あったとしたら、それは不幸な事故なのです!」
羽生「君は何を言っているのかわかっているのか!?」
黛「わかってますよ。足立被告は殺意など微塵も持っていなかった。偶然、ただ、テレビに入れた。そう錯覚しただけだったのです。しかし偶然は二度も続かない! 彼は二人目の被害者が出た時、さすがにその関連性に気づき、犯行をやめました。だから被害者は2名のみに収まったのです。
足立被告は苦悩したことでしょう。己の行動の重要性も理解せずに、人を2人も殺してしまったと。しかしある時彼は見てしまいます。被告の上司の甥であり、親しくなった少年がジュネスの家電売場からテレビの中に入っていくのを!」
羽生「そんなこと!」
黛「もちろん錯覚です。でも足立被告にはそう見えた、それが大切なんですよ。そして被告は悟ります。「今まで僕は自分がテレビに入れたから2人は死んだと思っていたけど違ったんだ! 甥っ子くんたちが、僕が入れた2人を殺して逆さ吊りにしたんだ!」と」
黛「実際は、彼らは生田目元議員がテレビに入れた――そう錯覚していただけですが――誘拐された被害者たちを助けに行っていただけでした。しかしお互いの誤解が解けることはなかった。そして足立被告は己の罪の意識から、そして鳴上くんたちを守るためにこういったのです。「僕が殺した」と。
羽生「それは都合のいい妄想です!」
黛「そうでしょうか? 八十稲羽の人々はとても素晴らしい人たちばかりです。私にはこれこそ最も自然な真実だと思われますが。
しかしお互いがお互いを真犯人だと錯覚したまま今を迎えてしまったのです。足立さんが鳴上くんを、鳴上くんが足立さんをかばっている。羽生検事がおっしゃった説はまさに真実だったのです! まったくなんてファンタジックで感動的で、誤解しあってしまった末の悲しい物語なのでしょう!」
羽生「そんなはずないだろう! だったら脅迫状はどうなる? 足立被告と、鳴上少年、保護者の堂島氏の指紋しか残っていないあの脅迫状の「コレイジョウタスケルナ」という文面は、貴方の発現と明らかに矛盾しています」
黛「矛盾なんて見当たりませんね。生田目元議員は、マヨナカテレビという都市伝説にに写った人物を「救済」しようとテレビに入れたと証言しています。全くの善意からの行動でしたが、その「救済」は被害者を殺すことだと長らく誤解されてきました。少年らの「救済」行為が、足立被告には狂気の沙汰に見えていても何らおかしくありませんよ?」
羽生「っ、だったら、傷害致死だ。2度めの時点で関連性に気づいていないというのがおかしい。彼は殺意を持って間接的に人を殺した!」
黛「それはどうでしょうか! こちらを御覧ください!」
>黛は2つの円グラフが描かれたボードを掲げた…
黛「こちらはランダムに選んだ100人にとった街頭アンケートです。『この殺人事件の遺体はどうやって高所に逆さ吊りにされたと思いますか?』高いところから落とした43名、頑張って運んだ17名、ロープなどを使った28名、よくわからない7名、無回答5名。どこにも『テレビに入れたから』などと回答した方はいらっしゃいません!」
ガソスタ店員「へえ…」
黛「コチラは『テレビに入れたらどうしたいか?』という質問です。夢だと思う20人、友達に自慢する29人、アニメキャラに会いに行く32人、ゴミを捨てる8人、面白そうだから冒険してみる6人、質問の意図がよくわからない及び怖いからそっとしておくが5人でした。誰一人として『アンテナに逆さ吊りになるかもしれないから入らない』という回答は得られませんでした。そんなこと、想像できなくて当たり前なんですよ!!」
羽生「その質問は、的を射ていないっ! 実際に起こった前提条件が違うだろう!?」
黛「だったらそのための証拠及びアンケートでも最終形してください」
羽生「それは…」
黛「彼は、テレビに入れただけ。そしてそれは傷害致死ですらありません。なぜなら彼は自身の行為と殺人事件の関連性に気づいていませんでしたし、実行犯は別にいたのですから。足立さんでも鳴上さんでもない真犯人、それは貴方です」
ガソスタ店員「面白い話だね。でも、僕はやってないよ。第一そのー、逆さ吊りっての? 僕にだってできないって。テレビに入れると錯覚させるって話も、僕個人がたったって言うの? さすがにそれは…」
黛「…それは、」
古美門「では質問を変えましょう! 失礼ですが、貴方お名前は?」
黛「!」
ガソスタ店員「あれ、言ってませんでしたっけ? それとも忘れちゃいました?」
古美門「失礼ですが少々身元を調べさせてもらいました。しかし結果は大ハズレ。我が事務所の優秀なる調査員は貴方の素性の一切を調べられないまま今日を迎えてしまいました。嘆かわしいことです」
ガソスタ店員「……」
古美門「八十稲羽市内の小中高等学校及び専門学校、会社、商店街。ありとあらゆる場所を調査しましたが、MOEL石油以外の場所で貴方の痕跡を発見することはできませんでした。
これは貴方の銀行口座です、長年お勤めのようですが、おやおや? どうしてほとんど引き出しされていないんでしょうか?」
ガソスタ店員「……」
古美門「驚きました! これだけ長くお努めなのに、口座は一週間前の一回、同僚と沖奈に遊びに行ったときしか動いていないだなんて! 有所ある家柄でもなく、他に仕事をなされているわけでもない。いやー、どうやって過ごされてきたんです?」
ガソスタ店員「……」
古美門「お応えください。貴方、何者ですか?」
ガソスタ店員「……ふふっ」
>>傍聴席
鳴上「これは…!?」
花村「おいおい、ここ室内だろ!?」
>裁判所内に霧が発生している…!?
巽「ちょ、先輩これ! メガネメガネ!」
りせ「わっ、見通せる。やっぱりこの霧…」
クマ「この霧、テレビの中のやつと同じやつクマ!」
里中「じゃああの人が黒幕…」
白鐘「ここまで引き出すまで、大変でしたね」
雪子「でも、ここからうまく法的に裁ける…のかな」
鳴上「ここからが、正念場なんだろうな」
ガソスタ店員?「ふふっ、驚きましたよ。かつて力で私に挑んできたものは数あれど、このような挑み方をしてきた人の子はいなかった」
古美門「おや、もう猫かぶらなくていいんですかー?」
ガソスタ店員?「そういえば、私の名を問うていましたね。真実をねじ曲げるものよ、教えてやろう」
イザナミ「私は人の望みを叶えるもの…イザナミ…伊邪那美大神だ」
今日はここまで。
一手ミスると大惨事が待っているぞ
あれ、水晶もらったっけ?
>>115
このSSの番長は真実を歪めてでも現実をすり合わせることを選択したので持ってない。
別の謎アイテムとかならもらってるかもしれないけど少なくともこのSSではでないよ。
投下します。
黛(この人浮いてる…!?)
古美門「では聞きましょう、自称イザナミさん。貴方は足立被告、鳴上少年、生田目元議員の三名にテレビの中に入れると錯覚させるように何か行動されましたね?」
イザナミ「あくまでその主張を貫きますか。私は三人…いや、四人に、ほんの少し後押しをしただけです。希望、絶望、虚無。そして現実。しかし今、希望と現実の因子はその役割を超えて動いている。あまつさえ私に挑もうなどと愚か極まる行為だ」
古美門「その力を授けられたのは事実で?」
イザナミ「サギリたちはもともと私の一部だったもの。それを与えただけに過ぎません」
古美門「なるほど、ですからご自分は悪く無いと…………………痛ッッぁあああい!」
「「「!?」」」
黛「ああっ! こんなところにハサミが!」
古美門「誰だーこんな者をここにおいたのはッ! 危うく私の手が切れてしまうところだったじゃあないかぁ!」
黛「すみません! ついうっかり私が…」
>>傍聴席
鳴上「なんだこれ」
花村「茶番だろ」
鳴上「ですよね」
古美門「君はこれが危険だと理解していながら監督できなかったんだ! 危険物取り扱い能力に欠けている! 罪だ! 減給だぁ!!!」
黛「そんなあ、殺生なあ…でも、こんなところにおいておいた私がしかたないですもんね…しくしく…反省します…」
イザナミ「……」
古美門「申し訳ありません、うちのバカがやらかしたみたいで。厳重注意しておいたので、かんべんしてやってください。…ところで、これと似たようなことをした者が、ここにいましたね?」
イザナミ「茶番はすんだか。なるほど、すべての責は私にあると?」
古美門「危険と分かっているものを譲渡した時点で当たり前だろう! あなたが因子を渡さなきゃあ、こんな大惨事は起きなかったのさ! あんなことをする度胸、一般市民にあるわけないだろう!? 少なくとも足立被告にはなかったね!」
羽生「…ちょっと待って下さい。さっきから、イザナミだの、テレビだの、因子だの。どんなオカルトですか」
古美門「では、自称イザナミさんが嘘をおっしゃっていると?」
羽生「信じられるわけがない。とんだカルトじゃないか!」
イザナミ「神道です」
黛(ですよね。イザナミだもんね)
古美門「落ち着いてください羽生検事。確かにこの方は少々宗教的なしゃべりをされてます。高い読解力をもって聞かなければなりません。我々の言葉とは違うものを指しているんですよ。羽生検事は「テレビに手が入る」ことを前提に聞いてらっしゃいませんか? 違うんですよ。
自称イザナミさんは『自分が足立さんに被害者をテレビに入れたと錯覚させ、殺し、被害者を逆さ吊りにした』とおっしゃっているんです」
イザナミ「……」
古美門「貴方のお言葉は少々あいまいで宗教的すぎますからねえ。現実に則した常識的な反論があるのなら、どうぞ」
イザナミ「……」
イザナミ「…人は愚かだ。真実を見ようとせず、霧の中に隠し曖昧なままにしようとする。霧は人が産んだもの。強いて言うのならば、人の望みが人自身を呪い殺したのだ」
鳴上「!!」
>バチバチと火花が飛び散っている…
>イザナミのジオ系の技の前兆だ…!
古美門「……」
巽「くそっ!」
鳴上「落ち着け! むやみに突っ込むんじゃない」
巽「あんなの生身で当たったらやべえだろ!? 俺のペルソナなら雷耐性があるっすから…!」
里中「ここテレビの中じゃないでしょ!?」
クマ「テレビの中と同じ霧が出てるから…もしかしたらいけるかもしれないクマ」
天城「でも危ないよ…!」
りせ「ちょっと、みんなあれ見て!」
鳴上「落ち着いてしっかり見ろ」
巽「…! あれって、雷耐性?」
>黛が古美門をかばうように立っている…
>黛には雷属性の攻撃が効いていないようだ…
白鐘「…そういえば黛さんもほか三人と同様に因子を渡された者でしたね。シャドウと対面しなくても、ペルソナはだせるようです。もっともテレビの中ではありませんから、不完全な身体強化と属性耐性のみにとどまっているようですが」
花村「助かったな」
イザナミ「…真実をねじ曲げる者よ。昨年私は3人のものに因子を授けた。真実を見つけられない絶望。真実を見ようとしない虚無。真実を追い求める希望。そして希望の因子を持つものが、最も善き人の可能性を見せた。故に私は貴様らと接触した際、真実をねじ曲げる貴様ではなく、真実を生み出す現実へと授けた。
つまり―――貴方では、霧は晴らせないのですよ」
古美門「……」
鳴上「いいや、晴れるさ。霧に閉ざされた世界なんて、誰も望んじゃいない。そんな未来はまっぴらだ」
黛「鳴上くん!」
イザナミ「おや、この者の味方をしますか。真実を追い求める者と捻じ曲げる者の相性は悪い。理解し得ないだろうに」
鳴上「確かに、理解はできない。でも法で裁くと決めたからな。
一人ではできないこともみんながいるからやってこれたんだ。お前が霧を産んだ。味方をする理由はそれで十分だ。
人は理解し合えなくても、共に絆を育むことはできる」
イザナミ「その人が望んだからここに霧が存在しているのですよ」
古美門「…なるほど。霧が民意だと。みんなが望むから山野真由美と小西早紀の両名を殺したと、そうおっしゃるのですね」
黛「……」
古美門「冗談じゃない。お前は、ここをどこだと思っている? ここは裁判所だぞ?」
イザナミ「それがどうかしましたか」
古美門「みんなが望むものの形が人自身を殺すのは当然のことだ。だって民衆は愚かなんだから!
人のうわさばかりする他人。
自己顕示欲ばかりが暴走する引きこもり。
自分に都合のいい理解しかしない大人。
最終的な決定を他人に委ねるガキども。
真実ばかり追いかけて足元がお留守になる夢想家。
すぐに意見を変えるどうしようもないクズ!
ああそうだ、世の中はクソだ! そのとおりだよ! お前は何も間違ったことは言っちゃいない! 人間なんてみんな馬鹿なんだよ!!
だから裁判所には民主主義は持ち込まれない。真実を、裁きを、全てを決めるのは、我々でも民意でも、ましてや神ですら無い!
裁判所は、人が人を裁くために、そして貴方のおっしゃる民意という化け物から人自身を守るために生み出された人類の英知の一つだ。
自称イザナミ。人のためと謳うのならば、裁かれろ、裁判所に。これが、人の生み出した「可能性」だよ」
イザナミ「……」
イザナミ「…ずいぶんと、色々なものを棚に上げた意見ですね。だがしかし、なるほど、君たちが人の可能性を示したことには相違ない。ならば見守らせてもらおうか」
黛「…!」
鳴上「……」
イザナミ「構えずとも結構。あなた方に敬意を評し、私はひとまず人の英知を味わうこととしましょう」
古美門「……」
イザナミ「人の子よ、見事なり―――!」
>…!
>いつの間にか霧が消えている…!
ガソスタ店員「…すんません。ボクっすよ、やったの。あーあ、ばれちゃったかあ…」
黛「…」
>イザナミは裁きを受けるつもりのようだ…
>>傍聴席
花村「こう、神様ってよくわかんねーよな」
鳴上「…そうだな」
花村「これでよかったんだよな…?」
鳴上「少なくとも最善だったとは思う」
裁判官「それでは判決を言い渡します。足立透被告の罪状、傷害罪。よって15年の懲役50万円の罰金を命じます。また、あらたなる容疑者の浮上とともに、この事件に関しての再調査を申し付けます」
羽生(くそ、…やはり、古美門先生に勝たないと今の裁判は)
黛「勝ちましたよ! やりましたね古美門先生! 一時はどうなるかと思いましたけど、というか今でも何起こってたかイマイチわかんなかったんですけど、勝ちましたよ!」
古美門「……」
ガソスタ店員「あ、ちょっと、君。伝言頼まれてくんない?」
黛「はい?」
ガソスタ店員「軽く呪っておいてやるから死ね」
黛「…はい?」
ガソスタ店員「じゃーねー」
黛「…なにそれ。何だったんでしょうね、先生」
古美門「……」
黛「先生?」
古美門「…おしっこ、もらしちゃった」
黛「」
>>古美門事務所
蘭丸「あああっ!!??」
黛「どうしたの蘭丸くん?」
蘭丸「なにこれありえないっしょ!? なんで、ゲホッゴホッ」
黛「ちょっと、体調不良なんだからおとなしくしといたほうがいいんじゃない?」
蘭丸「ゲホッゲホッウエッ」
古美門「これ以上私の事務所で病原体を撒き散らすようなら今すぐ帰れ」
服部「まあまあ、蘭丸殿は今回の裁判で一番の…いえ、先生についでの功労者ですから。少しいたわって差し上げてもよろしいのではないかと」
黛「そうですよ。蘭丸くんが頑張ってイザナミさんを連れて来なかったら、今回の裁判そもそもできなかったようなものなんですよ」
蘭丸「それはともかく、これひどくないっ!?」
>蘭丸は小さな紙のようなものを見せた…
黛「なにこれ…プリクラ?」
古美門「一人プリクラとは寂しいやつだな」
黛「というかよく一人で入れたね。これがどうかしたの?」
蘭丸「一人プリクラじゃないんだって!! これナミちゃんとのツーショット! なんかよくわかんないけどナミちゃんの姿だけ消えてんの!」
黛「ナミちゃん?」
蘭丸「ナミちゃん」
黛「…もしかしなくても、それってイザナミさん?」
蘭丸「そう言ってたね」
黛「…そっかあ…プリクラかあ…あの人プリクラとか行くんだ…よく男二人で入れたね…」
蘭丸「えっ、ナミちゃん女の子でしょ?」
黛「えっ?! そ、そういえば自称神様モードみたいな感じになった時は女性的だったと言われればそんな気も…」
蘭丸「せっかく沖奈行ってコーヒー飲んで服買ってゲーセンよって映画見てカラオケ行って帰ってきた時の思い出なのに意味分かんない…」
古美門「どこまで仲良くなってるんだお前ら」
蘭丸「でもちゃんと仕事はしたじゃん。口座とかそういうのはその時調べといたでしょ!」
黛(そういえば…)
―回想―
ガソスタ店員「あ、ちょっと、君。伝言頼まれてくんない?」
黛「はい?」
ガソスタ店員「軽く呪っておいてやるから死ね」
黛「…はい?」
ガソスタ店員「じゃーねー」
―回想終わり―
黛(蘭丸くんだ! 絶対蘭丸くんあての伝言だ! わざと近づいて、法廷に行くよう勧めたり口座調査したりしたことに怒ってる!? めっちゃ恨まれてる!? 呪われてる!? 祟られてるのこれ!? もしかして蘭丸くんの体調不良って呪い!? あの自称って本当に神様だったの!? 蘭丸君死んじゃう!!??)
古美門「まああの口座に入ってたほとんど手の付けられてない給料は賠償金代わりにもらえたし、こっちとしては文句なしの結末だがな」
黛「あの、先生。あの人自称っていうか、本物の神様だったんじゃ…」
古美門「あーあーあーあーあー! 聞こえないね! 神様なんているわけないだろう常識的に考えてぇ!」
黛「たしかに、祟りなんてあるわけ…いや、でもテレビには手が入ったし…」
古美門「あんなの錯覚に決まってるだろー!」
黛「でもあの裁判の霧とか雷とかそういうのは…」
古美門「あんなもん全部幻覚だー! そんなもん知るかー! 私がそうだと言ったらそうなんだよ! 私が真実だ!」
蘭丸「はあ…ナミちゃんとのせっかくのプリクラがなんで消えてるのさ。先生これってプリクラ会社とかに訴えられない?」
足立「でもそのイザナミってババアでしょ? クイーンオブババアでしょ? だったらどうでもよくない? きみストライクゾーン広すぎでしょ」
蘭丸「えー、でもかわいいじゃん? 俺、かわいい女の子ならだれでも好きだよ」
足立「でもやっぱりババアじゃない。なんか面倒くさそうな性格してたし。それに神話のイザナミとイザナギのいざこざって要は色恋沙汰じゃん。とばっちりうけたこっちの身にもなってほしいっての」
黛「……」
古美門「……」
黛「何であなたがここにいるんですか!?」
服部「は、申し訳ありません。何やら先生にご用件がおありの様子だったので、勝手ながらあげさせていただきました」
足立「ねえ、雇ってよ」
古美門「今すぐ帰れ」
足立「あんなに裁判が盛り上がっちゃったから雇ってくれるとこないんだよね。もとはと言えば君たちが僕を無罪にしてくれたせいだし、責任とって雇用してくれない?」
黛「よくそこを棚に上げて発言できますよね。両親とか、あの堂島さんって方は頼れないんですか?」
足立「親とは縁切られたって言ったじゃん。堂島さんもなあ…その、もう会えないでしょこれ」
古美門「自伝でも書いたらどうです? 今なら売れると思いますよ?」
足立「大丈夫大丈夫、僕優秀だしさ。だから雇ってよ」
古美門「左遷されるようなポカをやらかす使えない人材はうちの事務所にはいらないね」
足立「えー、でもさあ、そこの女の子よりは優秀だと思うよ? 少なくとも金になる仕事探してきたって点ではさ」
>足立は一枚の書類を見せびらかした…
古美門「……」
黛「…えっ、ちょ、この仕事は…。いくらなんでもあなたの弁護の直後にその仕事は人としてどうかと…」
古美門「よし、今すぐ行くぞ!」
黛「やっぱりぃ!」
>>ジュネスのフードコート
>久々に事件関係なくみんなで集まった…
里中「…これでよかったのかな」
花村「わかんねーよ。俺に聞くなよ」
天城「それにしても、よくイザナミは刑を受けたよね。てっきり逃げちゃうかと思ったんだけど」
鳴上「マリーがイザナミに会いに行ったって。彼女たちの寿命は人よりずっと長いから、ゆっくり楽しむって言ってるってさ」
りせ「なんかそれ根本的な解決を後回しにしただけのような…?」
里中「法律を神さまに適応しちゃったんだよね…なんかすごくないこれ?」
白鐘「確かに前代未聞でしょうね。僕達だけではこうは行かなかった。現実で権力を持つ者との差を見せつけられた気がします」
巽「しっかし、この裁判一番の被害者は小西先輩と山野アナの遺族っすよね。その、尚紀んとこの親父、あの判決のせいか荒れてるらしくって」
りせ「それあたしも聞いたよ。小西先輩のお父さん、なんか今もとはといえばジュネスがあるから悪いとかいって、商店街のみんなとジュネスの反対運動激化させてるって」
里中「なにそれ、八つ当たりじゃん」
花村「まあ八つ当たりしても仕方ないような裁判の結果だったしな…」
クマ「クマ…これで良かったはずなのに、もっと何かできたんじゃないかって思えて仕方ないクマ」
りせ「センパーイ、私汚れちゃいました…慰めてー!」
鳴上「落ち着け」
鳴上「ところでみんな、進路とかって考えてるか?」
花村「うおっ、今それを聞いちゃう!?」
天城「私は実家があるから。そこを継ぐよ」
里中「ふふっ、私は警察官目指して今頑張ってるんだよー! これでも勉強してるんだからね!」
花村「そうだよなあ、俺たちもう三年だもんなあ…あー、やっぱ俺ジュネスに就職すんのかな…?」
クマ「そういうセンセーはどうするクマ?」
鳴上「俺は、法学部を目指すことにしたよ」
巽「…ひょっとしてそれって」
鳴上「ああ。俺、弁護士を目指そうと思う。あの人達を見て、弁護士って職業に憧れたんだ」
「「「「ええええええっ!?」」」」
花村「おいおいおい! あの裁判のどのあたりに弁護士に憧れる要素があったんだよ!?」
鳴上「去年の事件で俺たちは世の中には妙なことがあるって知っただろ。でも、それが一般に認知されてないからいろいろ大変なことも起こった。オカルトと現実のすり合わせがどれだけ難しいのか、身をもって知った。
今回の采配は確かにすばらしかったと思う。少なくともイザナミを法的に裁けたという点では文句のつけようがない。でもみんなが感じてたようにこれは「足立さんの罪が軽いより」で「被害者遺族が報われないより」の結末だ」
天城「確かに。もうちょっとうまくできなかったのかなって思っちゃうよね」
クマ「でもクマに具体案はないクマよー!」
鳴上「俺もだ。だからそのもうちょっとができるような弁護士になりたいんだ。もともと人の相談に乗るのは好きだしな」
里中「…うん! すごくいいよ! キミならきっと素晴らしい弁護士になれるって!」
りせ「うんうん! 応援しちゃうからね! センパイの夢がかなった暁にはあたし専属の弁護士にしちゃおっかなー」
巽「んで、あの弁護士をぶっ倒してくださいよ!」
鳴上「た、倒す?」
足立「へー、悠くんもいろいろ考えてたんだねえ」
「「「!?」」」
巽「なんでてめーがここに!?」
足立「え、だって罰金もう払ったし」
巽「よくここに顔だせたなっつってんだよ…!」
足立「まあねー。でも僕もついてくと心象悪くなるから待ってろって言われてさ。堂島さんに会ったらどうしようかとひやひやしてるよ」
白鐘「…それはどういう意味ですか?」
足立「ああ、僕今ね、古美門事務所で雑用してんの」
鳴上「えっ」
足立「ちょっとちょっと。ジュネスの子。君、これから大変だろうけど頑張りなよ~?」
花村「は? 頑張れって何を?」
りせ「まさかあの七三…」
古美門「私の前髪は八対二だ! 没個性的な髪形と一緒にしないでもらおうか!」
里中「うわっ、でた!」
クマ「噂をすればクマ!」
花村「なんの用だよあんたまで…」
古美門「花村君、一緒に頑張りましょうね!」
花村「は?」
古美門「裁判ですよ裁判! 商店街側の過激な反対運動にジュネス側が民事裁判を起こしたんですよ! ですがご安心くださいこの私が弁護について差し上げますので!」
花村「…って、昨日の今日でなんつう裁判引き受けてんだよ!? この前の裁判の被害者遺族だぞ!?」
巽「てめえに良心はねえのかよ!?」
里中「ははは…よく、その仕事受け入れられるよね…タフっていうかなんていうか」
天城「それをいうなら面の皮が厚い、じゃないかな」
里中「うん、それ」
花村「悠! 今すぐ弁護士になれねえの!?」
鳴上「いや、無理だろ」
古美門「さあ、ともに憎き商店街をぶっ潰して更地にしてやりましょう! 再起不能になるまでコテンパンに叩き潰す! 容赦はしない! 依頼料の分はしっかり働きますよ!!」
花村「この悪徳裁判官! 最低クソヤロウ! やっぱ俺こいつのことだけはぜってー認めねーからなあぁぁ!!!」
足立「悠くん、あの弁護士見て、まだ憧れる?」
鳴上「…ちょっと自信なくなりました」
テッテレッテーレッテレッ♪
リーガルハイッ!!
完結です。
足立って実際どんな刑受けるのがふさわしいのか、というあたりからクロスを思いつきました。
P4とリーガルハイの真実への価値観は、比べてみると面白いと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
このSSまとめへのコメント
面白かった。でもこの作者さん検察と弁護人と裁判官の役割がごっちゃになってるなw