まどか「まどか☆マギカ MEGA☆MAX!」(273)


数え切れないほどのループを繰り返し、私――

いえ、私たちはとうとう崩壊するワルプルギスの夜をこの目に焼き付けることができた。

杏子「崩れていくぞ……!」

さやか「やった!」

マミ「ふう……私たちみんなの勝利よ!」

ほむら「やった……ついにやった!」

まどか「ほむらちゃん!みんな!」タッタッタッ

さやか「まどか!」

まどか「やったの?やったんだね!?みんな!」

まどか「やったぁー!ほむらちゃーん!」ダキッ

ほむら「きゃ!ま、まどか!///」

マミ「もう、鹿目さんたらはしゃいじゃって」

杏子「ったく、調子狂うよな」

 ピーポーピーポー

さやか「ん?パトカーの音?」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃん?どうしたの?」

警官「暁美ほむら!その場を動くな!」

まどか「え!?」

杏子「どういうことだ!?おい!」

マミ「暁美さん、これって……!」

ほむら「いいのよ、みんなは離れていて」

まどか「ほむらちゃん!どういうことなの!?」

警官「その少女から離れて両手をゆっくり上に上げろ!」

さやか「ほむら!こんなやつら私たちが……!」

杏子「そうだ!あたしらが蹴散らしてやる!」

ほむら「やめなさいさやか!杏子!相手は一般人よ」

まどか「ほむらちゃん……いや……こんなのってないよ!」

ほむら「これでいいのよ、まどか」

マミ「そんな!……こんなのいいわけないじゃない!」

ほむら「みんなが無事なままワルプルギスの夜を倒せたんですもの。安い代償よ」

警官「不法侵入と窃盗の容疑で逮捕する!」

ほむら「私はもうどこにも逃げたりしない」

まどか「ほむらちゃぁぁああああん!」

~~~

裁判所

 カンカン!

裁判長「ゴホンッ……」

裁判長「その、魔女とやらの話が仮に――仮にだ。真実だったとしよう」

裁判長「人々を守るために戦ったとして――」

裁判長「その行いによって、被告人の罪を帳消しにすることはできない」

杏子「なんだそりゃ!ふざけんじゃねぇぞ!」ガタッ

さやか「ほむらがいなきゃ、あんただって死んでたんだから!」グワッ

マミ「ちょっと佐倉さん!美樹さん!落ち着いて」

まどか「ほむらちゃん……」

裁判長「静粛に!」

裁判長「傍聴人は次にやったら退廷です。分かりましたね?」

裁判長「以上のことを鑑みた結果、当裁判所の判決を申し渡す」

裁判長「被告人暁美ほむら」

裁判長「あなたは私有地または自衛隊駐屯地に不法に侵入し、銃刀の類を不当に持ち出した」

裁判長「よって懲役15年の刑とする。執行猶予は認めない。以上」

裁判長「閉廷!」

無数のループを経て私は最高のエンディングを手に入れた。

まどかが契約することなく、ワルプルギスの夜を倒した。

しかし現実はエンドロールの後も続くのだ。

それでも私は後悔なんてしていなかった。

私はみんなを――まどかを守ることができた。

そのための代償ならいくらでも払うつもりだった。

さやか「意義ありぃ!!」

杏子「おい、そこの偉そうなおっさん!聞いてんのか!?」

みんな……ありがとう。

私はオレンジ色の囚人服を着せられ、護送バスに乗せられた。

そのバスの中で、凶悪犯罪者たちと共に揺られながら、私はみんなの顔を思い出していた。

マミさん……あなたとは敵対したこともあったけれど、私にとっては永遠の憧れのそんざいよ。

あなたがいなければ、みんなをまとめあげることなんてできなかった。

さやか……あなたのことはずっとずっと苦手だったけど、最後には友達になれて本当に良かった。

実はとっても友達想いで、みんなのムードメーカーだったわ。

杏子……ぶっきらぼうなところもあるけど、本当はとってもやさしい子。

あなたの協力なしではこのループを繰り返すこともできなかったでしょうね。

まどか……。

きっとあなたは泣いているでしょうね。

心優しいあの子のことだもの。

ごめんなさい。もうあなたとは一緒にはいられない。

でも、みんながいるから私がいなくても平気よね。

みんななら、まどかのことを安心して任せられる……。

さようなら……まどか。

まどか「……ほむらちゃん!……」

ほむら「え!?」

囚人1「おい!なんだありゃ!?」

囚人2「黒塗りの自転車だ!」

囚人3「自転車で追いかけてくるやつらがいるぜ!」

ほむら「……まさか!」

 ギコギコギコギコ!

さやか「まどか!しっかり捕まってて!飛ばすよ!」ギコギコギコギコ

まどか「うん!」

杏子「オラオラオラ!なんだこのとろいバスは!遅すぎるぜ!」ギコギコギコギコ

マミ「さあ、ゲームスタートよ!」ギコギコギコギコ

まどか「ほむらちゃぁーん!今助けるからね!」

ほむら「まどか!?何やってるのあの子たち!」

さやか「行くよ!奇跡も魔法もあるんだよ!」


マミ「フォームチェンジ!」

 ウィーンガコンガコンガコン

囚人1「自転車が車に変身した!」

囚人2「どうなってんだ!」

http://www.youtube.com/watch?v=G-5h7aPIi68

「「「「「まどか☆マギカ MEGA☆MAX!」」」」」ドーン!


~~~

TVアナ「本日、凶悪犯罪者を乗せたバスが、国道17号線で襲撃に合い横転しました」

TVアナ「バスから逃亡した囚人の多くはすでに警察によって逮捕されていますが――」

TVアナ「暁美ほむらだけが現在も逃走中とのことです」

TVアナ「この華麗な逃走劇を実行した犯人グループは――」

TVアナ「巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子、鹿目まどかの4名であることが判明しております」


~~~

私はまたまどかに助けてもらったのだ。

護送バスを脱出した後、私たちは警察の手から逃れるためにバラバラに分かれて逃げることにした。

私はまどかと共に見滝原から逃れた。

流れ着いた先は伊勢崎の地だった。

まどか「ほむらちゃん大丈夫?歩ける?」

ほむら「ええ、大丈夫よ。あなたこそ無理しないで、まどか」

まどか「ティヒヒ、ありがとうほむらちゃん」

ほむら「……お礼を言わなきゃいけないのはこっちの方よ」

ほむら「助け出してくれてありがとう。それとごめんなさい」


ほむら「私のせいでまどかまで犯罪者に――」

まどか「いいんだよ。ほむらちゃんのいない世界なんていやだもん」

まどか「私はほむらちゃんのためなら、なんだってしちゃうよ!ティヒ!」

ほむら「私も、あなたを守るためならこの身を捧げるわ」

まどか「ほんとに?うれしいな///」

まどか「こっちだよ。この家」

ほむら「この家に誰がいるの?」

 ガチャ……

仁美「いらしたんですのね」

まどか「うん」

ほむら「志筑仁美……」

仁美「さぁお二人ともお入りになって?ここは我が家の別荘ですわ。今は私しかおりませんの」


~~~

仁美「まどかさん、ほむらさん、お疲れになったでしょう」

仁美「ここでゆっくりとお休みになるといいですわ」

まどか「ありがとう仁美ちゃん」

仁美「いいえ。私の大切なお友達のためですもの。これくらいは」

ほむら「お言葉に甘えさせていただくわ。でもまどか――」

ほむら「いつまでもここに隠れてはいられない」

ほむら「すぐに警察がここを嗅ぎ付けてくるわ」

仁美「逃走のためにはお金が必要ですわ」

まどか「でも……そこまで仁美ちゃんには迷惑かけられないよ」

仁美「ええ、鹿目さんならそう仰ると思いましたわ」

仁美「ですから自分たちの手で稼いではどうでしょうか?」


ほむら「稼ぐ?」

仁美「明日、バイパスを1台のトラックが通りますわ」

仁美「そのトラックにはまだ発売前の美少女フィギュアが積まれています」

仁美「白昼堂々とそのトラックを襲いますわ」

まどか「え!でもそんなことって……」

仁美「ここは伊勢崎です。盗難フィギュアも黒いお店で高価買取していだけますわ」

仁美「まどかさんとほむらさんは、トラックがガソリンスタンドに寄ったタイミングで、荷室に忍び込んでくださいな」

仁美「その後トラックがバイパスを走行中に、私が車を付けます」

仁美「そうしたら走っている間にフィギュアを私の車へ移し変えます」

仁美「トラックの運転手は、荷物を盗まれていることなど気づきもしませんわ」

まどか「仁美ちゃん……」

ほむら「本当に上手く行くの?」

仁美「ご安心ください。これはイージーマネーですわ」


~~~

私たちは仁美の計画に乗ることにした。

まどかと共に逃亡を続けるにはどうしても現金が必要だ。

それにすでに追わる身となった今では、犯罪に手を染めることも抵抗が少なかった。

翌日、そのトラックは予定通りのガソリンスタンドで給油に立ち寄った。

私とまどかは、こっそりとそのコンテナ型の荷台に忍び込んだ。

まどか「わあ、箱がいっぱい積んであるね」

ほむら「これが発売前の新作フィギュアなのね」

ガタンゴトンとトラックが動き出す。

ほむら「私たち……これからどうなるのかしら……」

まどか「ほむらちゃん……」

まどか「大丈夫だよ!二人で力を合わせてがんばろう?」


ほむら「ごめんなさい……私なんかのために……まどかまで逃亡犯になってしまって」

まどか「私なんかなんて!」

まどか「そんなこと言わないで……」

まどか「私は後悔なんかしてないよ」

まどか「ほむらちゃんのいない生活なんて嫌だよ。ずっとそばにいて」

ほむら「私で……いいの?」

まどか「ほむらちゃんじゃないと駄目なんだよ!だって――」

まどか「……ううん、なんでもない」


まどか「この仕事でお金が手に入ったら、桐生に逃げよう?あそこは犯罪者の天国だもん」

まどか「そこから122(ワンツーツー)でわたらせ沿いに逃げたら足尾だよ」

まどか「古い鉱山しか残ってない寂れた町がある。そこなら警察の目から隠れられるよ」

ほむら「いつまでも逃げてはいられないわ」

ほむら「必ず警察の手が伸びてくる」

まどか「そうしたらまた逃げよう」

まどか「そんなエキサイティングな人生もいいかもよ?」ティヒ


~~~

仁美「しばらくぶりですわね」

さやか「まあ、いろいろとあってね」

仁美「あなたなら来て頂けると思いましたわ」

さやか「まあ、まどかのためだし。私も何かと厄介ごとを抱えてんのさ」

さやか「仁美こそ私たちに協力してくれるんだ」

仁美「まどかさんもさやかさんも私の大切なお友達ですわ。それはずっと変わりません」

さやか「そうなんだ。私はてっきり嫌われてるかと思ってたよ」

仁美「そんなことより、そろそろ時間ですわ。行きましょう」

さやか「うん!よろしくね!」


さやか「って、あんた車運転できるの!?」

仁美「あら、みくびっていただいては困りますわ。女だってたまにはワイルドになりたいものですわよ」

仁美「NOS付きのホンダ・シビックフェリオです。スピードには自信ありますの」

仁美「さあ、お乗りになって」

 ガチャ、バタン

仁美「え~っと、まずはアクセルを踏めばいいんでしょうか……?」

仁美「おかしいですわね。壊れているのかしら?」ヘコヘコ

さやか「まずはエンジンをかけようよ……」

仁美「ち、ちょっと忘れていただけです!///」

さやか「はいはい」


 ブオーン!

仁美「行きますわよ!」

 ギュオオオオオオ!!!

さやか「ちょっと!急に飛ばしすぎ!」

仁美「もたもたしていたので遅れてしまいますわ!」

さやか「ぎゃー!信号!赤!赤!」

仁美「赤信号くらい突っ切れます!映画で見ましたもの!」

さやか「これ現実!現実だから!うわあ!危ない!」

 ブッブー

 アブネーゾ キィツケロ!

仁美「ほぅら、無事に信号無視できましたわ」

さやか「死ぬかと思った……」


仁美「見えましたわ!あのトラックです」

仁美「真後ろにつけます!」

さやか「それでどうするの?」

仁美「後ろにカギ付き銃があります。サンルーフからあのトラックに撃ってください」

さやか「うわ~マジで犯罪じみてきたよ」

さやか「でもやるっきゃない!まどかのためだ!」

~~~

トラックの中。

まどか「もう目印のMOVIXを通り過ぎたよ……」

ほむら「志筑仁美……本当に大丈夫かしら」


 ガチャン!

ほむら「外で何か音が!」

まどか「仁美ちゃん!?」

 ドバアーーン!!

コンテナのドアが外から何か大きな力に引っ張られて大きく開いた。

眩しい外の光が中に差し込んでくる。

トラックの後ろにロープで連結された車。

そのボンネットには二人の少女が立っていた。

まどか「あ……!」

ほむら「あなた……」

さやか「ジャジャーン!さやかちゃん参上!」


仁美「お待たせいたしました」

まどか「さやかちゃん!来てくれたんだ!」

さやか「可愛い嫁のためなら地球の裏側でも飛んでいますよ~」

ほむら「全く、さやからしいわね」

仁美「再会を喜んでいる暇はありません。早くブツを回収しましょう」

私たちはフィギュアの箱をシビックに移し替えていった。

盗みは順調に運んでいると思われた。

しかし私は仁美の不穏な行動に気がついた。

仁美「……これでもない……」ブツブツ

仁美「それならこっちの箱に……ああ違います!」ガサゴソ

仁美「あった!……ありましたわ!……」


ほむら「何をしているの志筑仁美?」

仁美「はっ!」

ほむら「その『巴マミ・ティロフィナーレ人形』がどうかしたの?」

仁美「いいえ何も……」

ほむら「それを必死に探していたようだけど?」

仁美「これは特に高く売れますわ。だから……」

ほむら「それならそれも車に積むのね。渡しなさい」

仁美「……」


さやか「ん~、そこの二人どうした?」

まどか「ほむらちゃん?」

仁美「これは私が持ちます」

ほむら「それはどうしてかしら?」

仁美「それはお話できません」

さやか「仁美どうしたの?」

仁美「……」

さやか「訳があるなら話してよ、仁美」

ほむら「貸しなさい!」ガシッ

仁美「あっ……」

ほむら「まどか。このフィギュアを持って車に移って」

まどか「え……でも……」


仁美「……」

仁美「まどかさんごめんなさい!」ガバッ

まどか「きゃあ!」

仁美「お二人とも、離れてください。さもないと、まどかさんを刺します」

さやか「仁美!あんた!」

ほむら「くっ、やっぱりあなた!」

まどか「仁美ちゃん……なんでこんなこと……」

仁美「私は本気ですわよ。その人形をこちらにお渡しなさい」

ほむら「……仕方ないわね」

その瞬間私とさやかはテレパシーを使って意思の疎通を取った。

取った作戦は簡単だ。

仁美は片手でまどかの体を取り押さえ、片手でナイフを握っている。

人形を受け取るにはその体勢を崩さなければいけなかった。


ことは一瞬で片付いた。

さやかが仁美にタックルをかけ、私がその手からナイフを奪い取った。

そしてすぐに床に落ちた人形をまどかに持たせ、車のボンネットの上に飛び降りさせた。

あまりに急いでいたので降りさせたというより、まどかを突き落とすようなかたちになった。

さやかが仁美を取り押さえている間に、車とトラックを連結しているロープを切断した。

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「あなたはその人形を持って逃げなさい!」

まどか「ほむらちゃーん!」

勢いを失った車はまどかを乗せたまま後方へと遠ざかっていった。

さやか「仁美!あんたいったいどういうつもりよ!まどかを人質に取るなんて!」

仁美「あなたたちにはお話できません!」


仁美「えい!」キック

さやか「ぐほっ」

仁美は横にあるドアを開けてトラックの屋根の上に逃げた。

さやか「逃がすか!」

ほむら「さやか!変身するわよ!」

 バシューン

変身してトラックの上に上がると、仁美がボディの上を這って運転席に近づこうとしていた。

ほむら「仁美!そこまでよ!もう逃げ道はないわ」

さやか「仁美!どうしてこんなことするの?訳を話して!」

仁美はゆっくりと立ち上がってこちらを向いた。


仁美「何もかもあなたたちのためですの」

仁美はそう言って何かキラキラと光る砂のようなものを空中に投げた。

それは無数のまきびしだった

それがトラックの進行方向前方にばら撒かれた。

私とさやかはすぐに次に起こることを予想し、跳躍してトラックの上から逃げた。

まきびしを踏んだトラックはタイヤがパンクして、派手に横転した。

周囲一体にフィギュアのパッケージが散乱し、仁美の姿はもうどこにもなかった。


~~~

仁美「はぁ……はぁ……」

QB「ずいぶんとボロボロだね仁美」

仁美「はぁ……キュウべぇ……」

QB「人形は取られちゃったみたいだね」

仁美「大丈夫ですわ……必ず取り返します」

QB「できるだけ早くしてくれよ。じゃないと取り返しの付かないことになるよ」

仁美「分かっています……」


QB「みんなを助けたいんだろう?」

仁美「約束ですわよ。皆さんの罪を帳消しにしてくださるって――」

QB「ここの県政も警察も僕のいいなりだからね。そのくらい造作もないことさ」

QB「それじゃあ頼んだよ」ヒョイ

QB(仁美はもう頼りになりそうもないな。こちらも手を打とう)

需要あんのかこれ……
メシ買ってくる


~~~

まどか(とりあえず仁美ちゃんの別荘に戻ってきたけど)

まどか(これからどうすればいいだろう……)

まどか(仁美ちゃんの様子はおかしかったし、もし仁美ちゃんがここに帰ってきたら……)

まどか(もし警察がこの隠れ家に気づいたらどうしよう)

まどか(不安だよぅ……)

まどか(ほむらちゃん……!)

 ガチャ

まどか(誰か入ってきた!)


まどか(どうしようどうしよう!)

まどか(私魔法少女じゃないし……何か武器になるもの!)

まどか(とりあえずこのフライパンで……!)

まどか(誰が入ってきたんだろう?)ソォ~

ほむら「まどか!まどか!」

まどか「ほむらちゃん!」

まどか「ほむらちゃぁーん!」ダキッ

ほむら「まどか!良かった!ここにいたのね!」

まどか「うぐっ、すっごく不安だったよぉ~」

ほむら「ごめんなさいね。一人にしちゃって」

まどか「ばかぁ~」


さやか「もう~まどかったら甘えん坊さんなんだから」

まどか「さやかちゃん!」

まどか「良かったぁ。二人とも無事で」ギュウ

さやか「よしよし」

まどか「ひ、仁美ちゃんは?」

ほむら「どこかへ逃げたわ」

さやか「仁美、絶対何か隠してるよ」

ほむら「まどか、あの人形は?」

まどか「うん。ちゃんと持ってるよ」


さやか「その人形が何か特別なのかなぁ~?」

ほむら「もしかしたら大切なのはこの人形そのものではないのかも」キュポッ

まどか「あ、首取っちゃった」

さやか「でも中に何か入ってるよ!」

ほむら「パソコンで使うメモリーカードね。きっと仁美が欲しがっていたのはこれよ」

さやか「トップシークレットな情報が入ってるってこと?」

ほむら「この家のパソコンを借りて見てみましょう」


~~~

さやか「これって地図?」

まどか「ところどころに印が付いてるね」

ほむら「これは隠し場所よ」

さやか「何の?」

ほむら「ブリーフシードと書いてあるわ。それも大量の」

まどか「グリーフシード!?なんでそんな情報がこれに?」

ほむら「こんなに大量のグリーフシードを集められる魔法少女なんていないわ」

ほむら「きっとこのメモリーカードはキュウべぇのものだわ」

さやか「キュウべぇがこんなに集めていたの?」

ほむら「私たちはいつも汚れきったグリーフシードをキュウべぇに食べさせていたでしょう?」


ほむら「それは奴らにとっては充電しきった電池なのよ」

ほむら「そしてエネルギーを使い切った電池はまた空になる」

さやか「!……ということはこのグリーフシードって全部!」

ほむら「汚れの無いグリーフシードよ」

まどか「それがあれば、魔女になる心配もなく暮らせるんじゃない!?」

さやか「確かに一生あっても使いきれないほどの量だよ」

ほむら「これさえあれば――」

 ガシャァアアン!

さやか「何!?」

警官「警察だ!全員その場を動くな!」

ほむら「くっ!逃げるわよ!」


~~~

私とさやかはすぐさま変身し、まどかの手を引っ張ってその場を逃げ出した。

屋根の上をジャンプして移動する私たちに、警察は付いてこれるはずもなかった。

さやか「ふぅ~、ここまで来ればもう大丈夫だね」

まどか「はぁ……はぁ……」

ほむら「まどか、大丈夫?」

まどか「うん……大丈夫だよ」

さやか「私たち3人じゃ逃げるのも大変だよ」

ほむら「そうね。ここはまた別れて逃げることにしましょう」

まどか「ダメだよ!」

さやか「まどか?」


まどか「ダメ。みんなで一緒じゃなきゃダメなの」

ほむら「またすぐに会えるわ。ここはいったん別行動をして――」

まどか「私妊娠してるの」

ほむら「――え?」


さやか「まどか……こんな時に何言ってんの?」

まどか「本当だよ。今私のお腹には赤ちゃんがいるの」

ほむら「ま、まどか……?」ガクガク

ほむら「誰なの!?あなた一体誰とそんな――!」ユサユサ

まどか「あわわわわわ」ユラユラ

さやか「ほむら落ち着いて!」

ほむら「うう……まどかぁ……」ウルウル

まどか「相手はほむらちゃんだよ」

ほむら「まどかぁ……え?」


さやか「え?」

さやか「ほむら……あんたまさかとは思ってたけど、まどかを……!」

ほむら「ばっ、バカ!私はまだ一度もそんなこと!」

まどか「ほむらちゃん、奇跡も魔法もあるんだよ」

まどか「この命は私とほむらちゃんが起こした愛と魔法の奇跡」

ほむら「本当なの……?本当に私達の?」

まどか「だから、家族は離れ離れになっちゃいけないの」

まどか「私たち四人ずっと一緒じゃなきゃいけないの」

さやか「四人って、私も入ってます?」


まどか「だって私はさやかちゃんのお嫁さんなんでしょ?さやかちゃんも家族だよ」

さやか「まあ、確かにそうは言ったけどさ」

まどか「ね、ほむらちゃん、さやかちゃん」

ほむらさやか「……」

 ぎゅっ

ほむら「分かったわまどか。私たちこれからもずっと一緒よ」

さやか「もう、まどかったらこういうところで強引なんだから」

まどか「ティヒヒ、みんなありがとね」


~~~

赤城山から見滝原を見下ろす3人。

ほむら「キュウべぇが溜め込んでるグリーフシードを奪い取ってやるわ」

さやか「でもどうやって?きっと厳重に保管されてるよ」

ほむら「仲間が必要ね。魔法少女の仲間よ」

ほむら「まずはパワー重視の魔法少女。攻撃的でいて、心には熱いハートを秘めているような」

さやか「それならアテがあるよ」

ほむら「次にベテランの魔法少女。経験豊富で、後輩の面倒を見れる器の大きい人物」

さやか「それもオッケー!」


ほむら「それと一般人の協力も必要だわ。器用で才能にあふれた男気のある人」

さやか「任しといて!」

ほむら「あとはコンビネーションが取れた最高の魔法少女が二人必要だわ」

さやか「もういるよ。ここに!」

ほむら「ええそうね!」


~~~

上条家。

 チュンチュン

恭介(あれからさやかからの連絡が全くない……)

恭介(心配だ。さやかにもしものことがあったら僕は――!)

恭介(何も出来ないなんてこんなに辛いことはないよ)

上条父「恭介、郵便受けに新聞取ってきてくれ」

恭介「うん、分かったよ」

 ガチャ

恭介「新聞、新聞」

ほむら「何故時間が止まらないの……!?」

???「俺も極めつけのイレギュラーだからさ!」

みたいな感じだと思った


恭介「ん?手紙が来てる」

恭介「これは、さやかからだ!」

恭介「中身は……!?これは地図?」

上条父「どうした~?新聞は?」

恭介「父さん!ちょっとドゥカティ借りるよ!」

上条父「え?おい恭介どこに行く!?」

 ブオーーン!!

恭介「ちょっと行って来る!」


~~~

 ブロロロロ……

恭介「地図によればここに来いってことだけど」

恭介「駅前のイトーヨーカドーじゃないか。ていうかしばらく来ないうちに潰れていたとは」

恭介「もう廃墟になってるんだな。中は薄暗い……」

杏子「おや~、こんなところに白ウサギちゃんが迷い込んでるようだ……」

恭介「誰だ!?」

杏子「いきなり失礼なやつだね。自分から名乗りもしないで」

恭介「僕の名前は上条恭介だ。君はさやかの知り合いかい?」

杏子「へぇ~あんたがあの恭介か……」


杏子「ムカつく。チョームカつく!」ジャキィィイン

杏子「こんなやつ、やっちゃうしかないよねぇ!」

恭介「なっ!」

マミ「佐倉さん、からかうのもその辺にしてあげたら?」カツ、カツ

恭介「あなたは、確かさやかの先輩の……巴さん」

マミ「覚えていてくれたのね。嬉しいわ。そっちのは佐倉杏子よ」

杏子「そっちってなんだよ、そっちって」


ほむら「みんな揃ったようね」

杏子「その声は――」


マミ「久しぶりね、みんな」

まどか「良かった。みんな無事でいてくれて」

さやか「さあ、挨拶も済んだようだね」

恭介「さやか!」

 ダッ、ぎゅっ……

さやか「ちょ、ちょっと!恭介!///」

恭介「どれだけ心配したことか!」

さやか「ごめんね……。警察から逃げてて連絡する暇なくて」

恭介「これからは君を離さないよ。僕がさやかを守ってみせる」

さやか「恭介ったらもう~///」

杏子「おーおー、お熱いね~」

マミ「見てるこっちが恥ずかしいわ」

まどか「さやかちゃん、良かった」


杏子「それで、わざわざこんな街中に呼び出してどういうつもりだい?」

ほむら「仕事よ」


~~~

マミ「見滝原の地図ね」

ほむら「メモリーカードの地図にマークされていた場所を、この地図にもマークしたわ」

ほむら「少しの間しか地図を確認できなかったから、これ以外にもマークのつく場所はあるはず」

さやか「この一箇所ずつに、グリーフシードが隠されてるんだね」

杏子「これだけのグリーフシードがありゃ、私たち一生……」

ほむら「一生魔女になることもなく安心して暮らせるわ」

ほむら「私たちの人生を取り戻せるチャンスよ」


杏子「やるしかねぇ……やるしかねぇよ!」

マミ「そうね……これが私たちに残された最後の道しるべなのかもしれないわ」

恭介「僕も手伝うよ。さやかとみんなのために役に立ちたい」

さやか「決まりだね」

杏子「それで作戦はどうするんだい?そうやすやすと盗ませてくれるとは思えねぇけど」

マミ「それに一箇所を襲えば他の場所は警備がより厳重にされるでしょうね」

ほむら「考えがあるわ」

ほむら「隠し場所は市役所とか図書館、学校なんかの公共施設ばかり」

ほむら「まずはこの市立図書館を襲うわ」


~~~

市立図書館。

「あの~、すみませーん」

係員「はい、なんでしょう?」クルッ

係員「ひぃぃ!」

係員(覆面を被った人が3人!)

さやか「ほらあんた!秘密の地下部屋があるでしょ!」ジャキィ

係員「け、拳銃!?」

ほむら「死にたくなかったらそこのドアを開けなさい!」

係員「分かりました!撃たないでください!」

マミ「おらおら!さっさとする!」グリグリ


~~~

恭介「さやかたち大丈夫かな」

まどか「心配だね……」

杏子「向こうはあいつらに任せてりゃ大丈夫さ」

杏子「それよりこっちはこっちの仕事をするよ」

杏子「あたしが幻惑の魔法でこの図書館にゴジラを出現させる」

まどか「私と上条君は一般人が全員逃げられるように誘導するよ」

杏子「ああ頼んだよ」

杏子「さあ、暴れてやれ!私の魔法の怪獣!」

マミ「オラオラ!さっさとする!」フニフニ

係員「(お、おっぱい…)」


~~~

秘密の地下部屋。

マミ「図書館の人たちはみんな縛り上げたわ」

さやか「ここにあるグリーフシードも全部集めた。これで全部だよ」

館長「あんたら……魔法少女か。こんなことしてキュウべぇ様が黙ってるわけがない!」

館長「グリーフシードを盗み出しても、何にもならないぞ!」

ほむら「盗んでなどいないわ」

さやか「あんたそれって……」

ほむら「爆弾よ。1分後にセットしたわ」

さやか「おい!」


ほむら「キュウべぇに伝えなさい。他の場所も襲うと」

館長「ぐっ……」

ほむら「マミ、リボンで職員を地上に逃がしてやって」

マミ「全く、無茶苦茶なことをするわね。ハァ!」シュルシュル

ほむら「私たちも逃げるわよ」


~~~

まどか「あ、みんなが出てきたよ!」

杏子「おーい、上手くやったかー?」

ほむら「ええ。それより一般の人は逃がしたでしょうね?」

恭介「もう誰もいないよ」

杏子「それより中はどうだったんだ?」

ほむら「もう1分たつわ。みんな伏せて!」

 ドゴォォオオオン!

恭介「うわぁああ!」

杏子「図書館が!てめぇなんてことを!」

まどか「ほむらちゃん……本当にこれでいいの?」

マミ「これでもう後戻りはできないわよ」

ほむら「ええ、これで大丈夫よ」

さやか「なんか不安になってきた……」


~~~

群馬県庁。

県知事(今日も暇だな~)

県知事(2chでSSでも投下するか……)

QB「仕事は順調かい?大澤正明」

県知事「この声は!ハハ~」ゲザァ

QB「頭を上げてくれ。君に僕の姿は見えていない。土下座の向きが全然違うよ」

県知事「申し訳ありませんキュウべぇ様!」

QB「まあいい。昨日君の町の市立図書館が襲われたね」

QB「僕が隠しておいたグリーフシードが爆弾で吹き飛ばされた」

県知事「まことに遺憾です……!」

QB「早く手を打たないと大変なことになる。頼んだよ」

県知事「はい!直ちに対策を!」

QB「僕を失望させないでくれよ」


~~~

事体は私の作戦通りに進んだ。

キュウべぇは各地に点在するグリーフシードを別の場所に移し始めたのだ。

私はイトーヨーカドーの屋上から見滝原一帯を見渡していた。

 プルルルルル

 ピッ

ほむら「こちらほむほむ」

さやか『こちらさやか。市役所で動きあり。車でグリーフシードを運んでるみたい』

要所にはみんなを配置して動きを監視させていた。

 プルルルルル

マミ『こっちの小学校と女子高からトラックが出て行ったわ』


杏子『杏子だ。こっちの警察署から黒いワンボックスが出た』

杏子『それと文化会館にも隠してあったみたいだぜ。トラックに何か積み込んでる』

これで地図上にマークしそこねていた隠し場所のグリーフシードもあぶり出すことが出来た。

ほむら「トラックがどこに行くのか追ってちょうだい」

杏子『了解』

ほむら「キュウべぇのやつ、グリーフシードを別の場所に移そうとしているわ」

まどか「やったね、ほむらちゃん。これが狙いだったんだ」

ほむら「どうやらどの車も一つの場所に向っているようね。都合がいいわ」

恭介「なるほど。一ヶ所に集まれば盗む方としては都合がいいわけだ」


~~~

杏子「こりゃ都合が悪いな」

私たちは車を追跡していた他のメンバーと合流した。

グリーフシードを乗せた車はどれもある一つの施設に入っていった。

マミ「グリーフシードはあの建物に集められたようね」

まどか「でもあれって――」

さやか「群馬県庁……だよね」

ほむら「……」

恭介「あそこは武装した警官がウヨウヨしてる。あそこを襲うなんてできっこないよ」

マミ「図書館の何倍も強固な警備よ」


杏子「おいどうすんだよほむら!状況悪化してんじゃねーか!」

さやか「いくら魔法少女でも銃を持った警官と戦うなんて……」

まどか「ほむらちゃん……!」

ほむら「いいえ。恐れることはないわ」

ほむら「あそこからグリーフシードを盗み出すのよ」

マミ「でもどうやって……」

杏子「どうすんだよ?おいほむら!」

ほむら「……ここは恭介の出番ね」


~~~

まどか「思い切ってスカート履かせちゃおっか」

マミ「うふふ、そうね。カツラも被せないと」

まどか「あとお化粧してお顔きれいにしなきゃ!ティヒ」

マミ「はい完成!」

恭介「君たちは僕をいじめてるのかい?」

恭介「どうして女装なんか!しかも婦人警官て!」

ほむら「仕方ないでしょ。顔が割れてないのはあなたしかいない」

杏子「ギャハハハハ!マジ似合う!マジ受ける!wwwwww」

恭介「笑うな!」


まどか「恭子ちゃんだね!」ティヒ

杏子「おいそれはやめろ」

さやか「恭介……」

さやか(か、かわいい///)ニヨニヨ

マミ「美樹さん……顔が気持ち悪いわよ」

ほむら「それじゃあ、変装も済んだことだし行ってもらおうかしら」

まどか「気をつけてね上条君」

恭介「うん。行ってくるよ、さやか」

さやか「う、うん///」


~~~

県庁

恭介(というわけで、婦人警官に変装して県庁に潜入した)

恭介(それにしても、中にも銃を持った警官がたくさんいるなぁ。警戒が厳重だ)

恭介(そんなことより、グリーフシードの隠し場所を探らなきゃ)

恭介(きっと隠し場所を知っているのは、県庁職員の中でも上層部だけだろう)

恭介(お、あのおっさんがすごく偉そうだな。近づいてみよう)

 コンッ

恭介「あっ、躓いちゃった!」フラフラ

恭介(転びそうな振りをして――)

恭介(おっさんの胸に飛び込む!)

知事「おっと、だいじょうぶか?」


恭介「あっ、す、すいません。転んじゃって///」

知事「えっ、あっ、気を付けたまえ///」

知事(やべー、こいつ超かわいい)

恭介「あの、このご恩をお返しするにはどうすれば……?」

知事「いや、ご恩なんてそんなたいしたことは……」

恭介「いえ、私の気が済まないんです。どこかで二人きりになりませんか?」

知事「ええっ!二人きり!?」

恭介「はい。他の人に邪魔されないで二人きりになれる場所」

知事「じゃあ、私の部屋に……」

恭介「それじゃあ、来客で邪魔が入ってしまいます」

知事「え?じゃあトイレとか……」

恭介「声が聞こえてしまいます」

知事「ええー……それじゃあ……」


恭介「秘密の部屋か何かがいいです。何か重要な物を隠しておくような」

知事「う~ん……そうか!分かった!」ピキーン

~~~

ギィイイ~

知事「さあ、お入り」

恭介「ここはどこですか?」

知事「地下のロック付きの倉庫だよ。ここなら誰にも邪魔されない」

恭介「へぇ~そうですか」キョロキョロ

恭介(一見普通の倉庫だけど)

恭介(やや!あそこにすごく重要そうな巨大金庫がある)


恭介「あれは何ですか?」

知事「ああ、あれはグリーフシードを全部詰め込んだ金庫だよ」

恭介(あれが!よし、この蝶ネクタイ型カメラで撮影しておこう)カシャ

恭介(これで僕の任務は完了だ)

知事「それじゃあ、早速始めようか」

恭介「え?始めるって……」

知事「何を今更言ってるんだ。人目の付かないところに連れ込んで、やることと言ったら一つだろう」グヘヘ

恭介(やべ……僕終わりました。僕今ここで終わりました)

知事「いっただっきまーす!」


 ガチャン!

警官「知事!知事!」

恭介「助かった!」

知事「ん?何だこんなところに」

警官「上がとにかく大変なことになってます!今すぐ行ってください!」

知事「チッ。なんなんだ一体。君、ちょっと待ってておくれ。すぐに戻るから」タッタッタッ

恭介「はぁ~。危なかった」

警官「本当に私が来ていなかったら大変なことになっていましたわ」

恭介「あ!君は!」

仁美「お久しぶりですわね、上条さん」


~~~

恭介「ただいま……」

さやか「恭介!良かった無事だったんだね!」

仁美「……」

さやか「あっ!あんた!」

まどか「仁美ちゃん!」

ほむら「志筑仁美!どうしてここに!」

さやか「あんたなんで恭介と一緒にいるの!?」

恭介「待ってくれ!仁美は僕を助けてくれたんだ!」


さやか「え?」

恭介「仁美が助けてくれなかったら、今頃僕は(自主規制)なことに……!」

さやか「そう……だったの……」

仁美「あの、さやかさん、私――」

さやか「ありがとう仁美」

仁美「でも、私まどかさんに酷いことをしてしまいました」

まどか「何とも思ってないよ!仁美ちゃん!」

まどか「だってきっと、事情があってのことだって、仁美ちゃんが本当はそんなことするわけないって分かってるから!」

仁美「まどかさん……」


ほむら「仁美」

仁美「はい、ほむらさん」

ほむら「あなたも手伝いなさい」

仁美「いいんですの?」

ほむら「あなたも私たちの仲間よ」

仁美「ありがとうございます……みなさん」ポロポロ


~~~

恭介「僕が県庁で見てきたことを話すよ」

恭介「グリーフシードは、全て地下の倉庫に集められている。そこに置かれた金庫の中に入っているようだ」

ほむら「恭介が撮ってきた写真を解析して、金庫の型番を調べたわ」

ほむら「外国製の手紋ロック付きの金庫よ。重さは10トン」

さやか「10トン……」

杏子「あたしらの中で重いものを運べる魔法を使えるのは――」

マミ「いくら私のリボンでも10トンは厳しいわね。でもみんなの魔力を私に集めてくれればなんとかなるかもしれないわ」

仁美「それなら試してみましょう」


まどか「試すって……」

仁美「実は県庁にその金庫を納品したのはお父様の会社ですの」

仁美「なのでサンプル用の同型品があります。たった今持って来ましたわ」バサッ

さやか「いつのまに……」

まどか「すごい重そうな金庫だね」

マミ「それじゃあやってみようかしら」シュルシュル

マミ「金庫をグルグル巻きにして……ふんっんんんんん」

さやか「マミさん頑張って!」

マミ「はぁ、はぁ、リボンが大丈夫でも私が引っ張れないわ」ゼェゼェ

杏子「それじゃあ、みんなで引っ張ろう!」


マミ杏さやほむ「いっせーの!」グゥウウウ

 ズズズズ……

まどか「すごい!動いたよ!」

マミ「ふぅ……四人なら結構楽勝ね」

杏子「そうだな。これなら行けるんじゃねぇか?」

ほむら「まあ1キロくらいなら全力疾走できそうね」

ほむら「でもこれを何十キロも引っ張って逃げるのは魔力も体力も足りないわ」

さやか「確かに……警察も追ってくるだろうし」

恭介「何か車で運べないかな?」

ほむら「車……ちょっと調べてみるわ」


仁美「もし運べたとしても、金庫を開けるのが問題ですわ」

仁美「持ち主の手紋がなければこの金庫は絶対に開きません」

恭介「げっ、手紋てまさかあの県知事のおっさんの……?」

ほむら「それはないでしょうね。キュウべぇが人間を信用するとは思えないわ」

マミ「きっとキュウべぇ自身の手紋でしょうね」

仁美「それなら私に任せてくださいな。キュウべぇの手紋を取ってくればいいんですのね」

恭介「志筑さん1人で大丈夫かい?なんなら僕も一緒に――」

さやか「え?」

さやか「いや待て待て!私が一緒に行く!」

杏子「プークスクス、こいつ必死だなwww」

さやか「うるさい!」ドカッ

杏子「ぶげほっ」


~~~

 スタスタ……

仁美「……」

さやか「……」

 スタスタ……

さやか「……あのさ仁美」

仁美「なんでしょうかさやかさん」

さやか「えーっと、恭介のこと助けてくれてありがとうね」

仁美「いいえ、大切なお友達を助けるのは当然のことですもの」

さやか「友達……」

さやか「仁美はさあ……今でも恭介のこと……」

仁美「今でもお慕いしております」


仁美「そう言ったらどうしますか?さやかさん」

さやか「……渡さないよ」

仁美「そう怖い顔をしないでください。私はもうなんとも思っていませんわ」

仁美「いいえ、最初から好きではありませんでした」

さやか「仁美……」

さやか(それって本当なの?)

仁美「さあ、ここからは私1人で行きます」

仁美「さやかさんは見つからないようにしていてください」

さやか「うん」


仁美「キュウべぇさん、どこにいますの?」

QB「呼んだかい?」

||さやか(仁美のやつどうするつもりなんだろう……)

仁美「お願いがありますの。私を魔法少女にしてください!」

QB「君からそんなことを言ってくるなんて」

QB「君はもうなる気はないと思っていたけど、どういう風の吹き回しだい?」

仁美「私は私の手でお友達を助けたいだけですわ」

QB「まあ、この状況じゃ、そうするしかないと考えるのも分かるよ」ヒョイ

仁美(近づいてきましたわね……)

QB「さあ、君の願い事はなんだい?」


仁美「誰にも聞かれたくありませんの。もっとこっちへ来てください」

 トットットッ

QB「さあ言ってごらん」

仁美「もっと近くで……私の腕の中においでなさって」

QB「やれやれ」ピョン

QB「これでいいかい?」

仁美「ええ、これでいいですわ」

QB「さあ願い事を言うんだ」

仁美「申し訳ありません。私やっぱりやめますわ」

QB「……」


QB「やれやれ。人間の心変わりというのは本当に唐突だよ」

QB「また契約したくなったらいつでも言っておくれ」ヒョイ、タッタッタッ

仁美「……」

仁美「さやかさん、もう行ったみたいですわ」

さやか「仁美!びっくりしたよ!魔法少女になりたいなんて言い出すから!」

仁美「ごめんなさい。でもこれで」ヌギヌギ

さやか「ちょ、ちょっと!何急に脱いでんの!?」

仁美「この服にキュウべぇの手紋が付いていますわ」

さやか「え?ああ~なるほど、そういうことだったのか……」

仁美「もう、さやかさん、今頃お気づきになったんですか?」

さやか「あっはっはっはっは。いや~すいません」


~~~

さやか「ただいま~」

まどか「おかえりさやかちゃん、仁美ちゃん!」

杏子「それで!上手くいったか!?」

仁美「ええ、計画通りでしたわ」

さやか「ジャーン!この仁美の服を見なさい!」

マミ「美樹さん……まさか志筑さんから無理やり服を……?」

杏子「お前男がいるのに、とうとう女にまで手を!」

さやか「ってぇ!そんなわけないでしょ!この服にキュウべぇがバッチリタッチしたんだよ!」


ほむら「どうやら手紋は手に入ったようね」

ほむら「こっちも今調べ事が終わったわ。これを見てちょうだい」

まどか「これって群馬県警のホームページ?」

ほむら「そうよ。ご存知の通り、群馬は事故数ナンバーワンを常に争う強豪県」

ほむら「警察は交通違反者を取り締まるために新型のパトカーを導入したわ」

ほむら「2011年型ダッジ・チャージャーFAST5エディションよ」


Fast 5 Edition 2011 Dodge Chargers Sweepstakes
http://www.youtube.com/watch?v=B7WDj1HHct4


ほむら「このMEGA MAXな車なら金庫を引っ張って走れるのは証明済みよ。映画でね」

杏子「でもパトカーって……そんなの貸してもらうわけにもいかないだろ?」

マミ「盗むにしても警察署に忍び込むのは大変よ」

ほむら「大丈夫よ。この車が4台、今イベントのために貸し出されているわ」

ほむら「そして今夜は一晩イベント会場の敷島公園に置きっぱなしになる」

さやか「そうかそれなら簡単に盗みだせる!」


~~~

その夜、私たち魔法少女組の4人は敷島公園に乗り込んだ。

ほむら「警備は手薄だけど、みんな用心して」

さやか「わかってるって」

杏子「楽勝楽勝」

マミ「なんだか楽しくなってきたわ」

ほむら「油断しちゃダメよ。みんな気をつけて」

私たちは予定通り4台の新型のパトカーを盗み出すことに成功した。


帰り道の信号で4台は横一列に並んだ。

さやか「ねぇ、レースしない?」

ほむら「はぁ?何言ってるのさやか。私たちそんなことしている場合じゃないでしょ」

杏子「おもしれぇ。やってやろうじゃん!」ブォオオン

さやか「勝ったらまどかを嫁にする権利を得ます!」

杏子「よっしゃあ!まどかは俺の嫁!」

マミ「あらあら。鹿目さんは私のものよ。誰にも渡さないわ」

ほむら「何を馬鹿なことを。私はやらないわ」

さやか「おやおや~もしかして私に負けるのが怖いのかな~?」


ほむら「何を言っているの。まどかは私の嫁よ。あの子のお腹には私の子供が」

さやか「いや~無自覚に孕ませちゃうあんたより、私の方がまどかを幸せに出来ると思うけどな~」

ほむら「」イラッ

ほむら「そう。それなら勝負しましょう」

さやか「そうこなくっちゃ!次の青でスタートだよ」

信号「位置に付いて~、よ~い」

杏子「ぃやっほーい!」ブォオオオオオ

ほむら「ちょっとフライング!」

信号「スタート!!!」

さやか「いっきまーす!」ブワァアアア

マミ「行くわよ!」ギャギャギャギャ

ほむら「しまった出遅れた!」


~~~

レース結果……

1位ほむら

2位さやか

ほむら「やった!やったわ!」

ほむら「これでまどかは私の嫁!私の嫁!」

ほむら「ぃやっふぅーーー!!!」

ほむら「ホァ、ホァァァァアアアアア!!!」

さやか「落ち着けよ」

ほ、ほむっ!?


~~~

まどか「みんなおかえり~」

ほむら「ええ、今帰ったわまどか!」テカテカ

まどか「え、うん、おかえりなさい」

まどか「ねぇさやかちゃん、ほむらちゃん何かあったの?」ヒソヒソ

さやか「あああれ?気にしなくていいんじゃない?」

まどか「でもなんだか様子が変だよ」

さやか「いつもあんな感じじゃない?アハハハ」


ほむら「美樹さやか!」キリッ

ほむら「今日でようやく決着が付いたわね。もう二度とまどかを『嫁』だなんて言わないでちょうだい」

さやか「は、はぁ……」

まどか「もう、ほむらちゃん///」

マミ「もう暁美さんたらはしゃいじゃって」

杏子「ああ全くだぜ。さやかが最後にアクセルを緩めたことも知らずに」

ほむら「うふふふふ」ニヤニヤ

ほむら「なんですって?」

ほむら「嘘でしょ?」

さやか「さぁ~どうだか」♪

あんあん


~~~

翌日、私たちは盗んだパトカーに乗って出発した。

先行部隊の杏子、マミ、恭介が2台に分乗して先に出発した。

残りのまどか、さやか、仁美、そして私は次の2台に乗って後から出発した。

まどかは私が魔力で運転する車に乗った。

まどか「うまく行くかな?」

ほむら「ええ、きっと上手く行くわ」

まどか「これでみんな幸せになれるんだよね?」

ほむら「ええそうよ」

まどか「本当にそうかな。私みんなを信じたいのに……」

まどか「全然大丈夫って気持ちになれない。私みんなのことを信じたいのに……」


ほむら「まどか、少し不安になっているのよ。当然だわ」

ほむら「私たちは一番危険で難しい仕事に取り組んでいるんですもの」

まどか「分かってる……だからみんなのことが心配で――」

ほむら「信じるのよ」

まどか「でも、私何もできないし……」

ほむら「あなたは最高の奇跡を起こしているじゃない」

ほむら「私たちの赤ちゃん。魔法少女にもできなかった本当の奇跡」

ほむら「あなたの祈りが私たちを導いているのよ。今までも、これからもずっと」


ほむら「だから信じて。私たちを」

まどか「ほむらちゃん……うん、分かった」

 ピーポー!!

警官「止まれ!警察だ!」

ほむら「警察!」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「突破するしかない!」

道路が警察によって封鎖されていた。

私はその封鎖を突破しようとしたが、周り中がパトカーに囲まれていた。

私たちの車はその真ん中に止まるしかなかった。

ほむら「まどか!降りて逃げるわよ!」

まどか「うん!」


車から降りた私とさやかはすぐに戦闘体勢に入った。

さやか「ほむら!」

ほむら「仕方ないわ!さやか、殺しちゃだめよ!」

さやか「分かった!」

ほむら「まどかと仁美は私たちの後ろへ!」

私たちは人を攻撃しないように周りのパトカーを破壊した。

まどかと仁美を庇いながらの戦いは苦戦を強いられた。

仁美「きゃあ!」

気が付くと、仁美が警官に腕を掴まれていた。

仁美「離してください!いやぁ!」


ほむら「仁美!」

さやか「仁美、今行くから!うわぁ!」

私もさやかも警官に取り囲まれていた。

私はなんとかまどかを自分の背後に隠していた。

さやかも剣を振り回して警官を威嚇しているが、相手の数が多過ぎて仁美の元へは行けそうもなかった。

ほむら「仁美!」

仁美は取り押さえようとする警官の腕の中で暴れた。

仁美「いやぁ!」


警官の腕が仁美の足に伸びる。

そしてその手は華麗にそのスカートを払った。

仁美「きゃあ見ないでください!」

めくれたスカートの中に、クマの絵柄のパンツがはっきりとその姿を現した。

さやか「仁美ぃぃいいいい!」

警官「Oh……」

仁美のパンツが大勢の男たちの前で晒された。

おまわりさんがおさわりまん…?


杏子「何鼻の下伸ばしてんだぁぁああああああ!」

 ドガガガガガ!

衝撃波と共に仁美の回りの警官が吹き飛ばされた。

ほむら「杏子!」

マミ「私もいるわよ!」

マミのリボンが警官とパトカーを次々に縛り上げ、動きを拘束する。

私たちはなんとかその場から逃げ出すことができた。

この日の作戦は失敗になった。

私たちはパトカーを2台失った。


~~~

イトーヨーカドーに戻った私たちは、心身共に疲れきって地面に腰を下ろした。

県庁に近づくことすらできず、何もできずに終わってしまった。

今回の大失敗はみんなの心に重くのしかかった。

恭介「まだ……まだ続けるのかい?」

さやか「恭介……」

杏子「やっぱり最初から無理だったんだ」

まどか「でも……」

ほむら「いいえ。まだ諦めないわ」

杏子「みんな仁美と同じになるぞ!」

仁美「うぐっ……もうお嫁にいけませんわ」シクシク

マミ「こうしてみんな公衆の面前でパンチラされて、ソウルジェムが濁って魔女化するわ」


ほむら「それでも私は続けるわ」

ほむら「やめたい人はここを立ち去りなさい。止めないわ」

杏子「やってられるか!」

まどか「……杏子ちゃん!」

さやか「私はやるよ」

マミ「美樹さん……」


さやか「私はキュウべぇの思い通りになるなんて嫌だ」

さやか「私はあいつに人生を潰されたくない。だからやるよ、ほむら」

ほむら「ありがとうさやか」

ほむら「他のみんなは?どうするの?」

杏子「……」

マミ「……」


~~~

翌日。作戦決行日二日目。

パトカーとばれないように残った2台を黒塗りに変えた。

私とさやかが運転して県庁に向う。

まどかは無線で逃走経路の指示を出させるために残してきた。

ほむら「さやか、無線は通じてる?」

さやか「アイアイサー!聞こえてるよ」

ほむら「覚悟はできてる?」

さやか「あんたこそビビってんじゃないの?」


ほむら「それなら行くわよ!」

私たちは入り口のバーを突破してそのまま地下駐車場へと入った。

ほむら「出番よ杏子!」

杏子「はい、りょーかい!」

杏子「ったく、ああ言われちゃ付き合ってやるしかねーじゃん!」

杏子「うおりゃあああああ!」

 ドガガガガガ!

杏子が私たちの車に先行し、駐車場の壁を破壊した。

ていうか無線使う必要なかったなこいつら


壁一つ隔てた先には金庫が置かれた倉庫になっていた。

倉庫に車ごと進入し、金庫のすぐ近くに止めた。

ほむら「マミ!」

マミ「任せて!」シュルシュル

マミのリボンが車と金庫を結んだ。

マミ「あとは頼んだわよ!」

ほむら「ええ!」

さやか「任せてください!」


杏子「おい急げ!警官どもが押し寄せてきたぞ!」

マミ「ここは私たちが食い止めるわ。早く行きなさい!」

アクセルを全開にする。

二台の黒いダッジが、10トンの金庫を引っ張って動き始めた。

さやか「いっっけぇえええええ!」

私たちは杏子とマミをそこに残したまま、金庫を引っ張って外に出た。

後ろからは大量のパトカーが追いかけてきた。


ほむら「こちらほむほむ!金庫を持ち出すことに成功したわ!」

まどか『そのまま県庁の前の道を真っ直ぐ進んで、50号に入って』

ほむら「さやか、アクセル全開で行くわよ!」

さやか「オーケイ!」

金庫は火花を散らして道路上を引き摺られていった。

二台のダッジは金庫を引っ張っているとは思えないほどのスピードで走った。

それでも、さすがにパトカーを振り切れるほどのスピードは出せなかった。


さやか「くっそ~、振り切れないよ!」

ほむら「魔法を使ってエンジンパワーを強化して!」

さやか「よぉーし、じゃあマジカルターボスイッチ!」

ほむら「行くわよさやか!」

さやか「オン!」

 ばびゅーーーーん!

これでパトカーを大きく引き離すことができた。


さやか「ほむら!前方に警察の封鎖!」

ほむら「突破するのよ!」

さやか「そんな無茶な!」

杏子「あたしたちに任せな!」

ほむら「杏子!」

マミ「もう、速すぎて追いつくのに苦労したわ」

杏子「あんなパトカーの封鎖なんて蹴散らしてやるぜ!」

 ドババーーン!

杏子の槍と、マミのリボンで前方の障害物は取り除かれた。


ほむら「行くわよ!」

さやか「おう!」

まどか『後ろのパトカーと今10秒差だよ!』

さやか「よし!このまま逃げ切ろう!」

~~~

QB「また派手にやってくれているようだね……」

QB「逃げ切れるわけないじゃないか」

QB「そのグリーフシードをこのまま取られるわけには行かないんだよ」

QB「君たちにもいつかは絶望してもらわなきゃいけないんだから」


~~~

パトカーの数は増えていく一方だった。

そして私たちの車もスピードが落ちていた。

ほむら「ダメ!パトカーが多すぎる!」

さやか「やばいよ!だんだん魔力が消耗してきた」

ほむら「まだよ!まだ行けるわ!」

さやか「ほむら、あんただけでも逃げて!」

ほむら「何を言っているの!?」

さやか「このままじゃ二人とも捕まっちゃう!」

ほむら「ダメよさやか!」


さやか「あんたにはまどかも赤ちゃんもいる」

さやか「あんただけでも逃げて!」

ほむら「あなた恭介はどうするの!?」

さやか「へへっ、ゴメンって謝っておいて」

さやかは私の車のリボンだけ切断した。

ほむら「さやか!バカ!」

金庫を引っ張っているのはさやかの車だけになった。

さやかの車はUターンし、向ってくるパトカーに突っ込んでいった。

さやか「魔法少女さやかちゃんの意地を見せてやる!」


警官1「おい!こっちに向ってくるぞ!」

警官2「車を止めろ!道を塞ぐんだ!」

さやかは車の屋根に立って、魔法で車を操った。

警官1「突っ込んでくる気だ!」

警官2「うわぁ!逃げろ!」

さやか「食らえー!マジカルカーアタック!」

車はパトカーの封鎖に突っ込んだ。


~~~

私がさやかを助けに戻ったとき、さやかは地面に倒れていた。

さやかのダッジと10トンの金庫が突っ込み、パトカーはメチャクチャになっていた。

 ブロロロロロ……
 ガチャ、

ほむら「さやか!」

私は傷ついたさやかを抱き上げた。

さやか「げほっげほっ、なんだほむら、逃げろって言ったじゃん」

ほむら「あなた!こんな無茶をして!」

さやか「無茶はどっちよ。ったく……」

QB「初めから分かっていただろうに」


ほむら「……キュウべぇ!」

QB「こんなのは無理だって」

ほむら「グッ……」

QB「そこまでして魔力も消費していったいどうするんだい?」

QB「この作戦のために魔女狩りもしてないし、回復するためのグリーフシードももうないんじゃないかな」

QB「まあ、あの金庫の中のグリーフシードがあればいくらでも回復できるだろうけど」

QB「でも金庫は置いていってもらうよ」

QB「警察に捕まりたくなかったら、さっさとこの場から立ち去った方がいい」


ほむら「……あなたっ」

さやか「ほむら、もういい、行こう」

ほむら「……」

 ガチャ、バタン
 ブオオーーーン

QB「やれやれ行ったか」

QB「彼女たちが魔力を失って魔女化するのも時間の問題だろう」

QB「おや……金庫の扉が開いてる……」

 ギィイイイ……

QB「こっ、これは!どういうことだ!」


QB「ない!」

QB「訳がわからないよ!どうして空っぽなんだ!」

QB「はっ!まさか!」

~~~

回想。

まどか『後ろのパトカーと今10秒差だよ!』

パトカーとの差が開いたとき、私たちはこっそりと本物の金庫と、仁美が持ってきたサンプルの金庫を入れ替えていた。

偽の金庫は仁美と恭介に、ゴミ収集車に偽装したトラックで運んできてもらっていた。

私たちは道路上を走ったまま、金庫のすり替えを行ったのだ。

だから、本物の金庫は今頃……


~~~

さやか「ばんざーい!」

杏子「イエーイ!」

私たちはアジトのイトーヨーカドーで本物の金庫と対面していた。

まどか「やった!やったよ、ほむらちゃん!」ダキッ

ほむら「ええ!私たち全員の勝利よ」

マミ「今ごろキュウべぇはどんな顔をしているかしらね」

恭介「一時はどうなるかと思ったよ」

仁美「でも良かったですわ。みなさんご無事で」

さやか「さあ早く開けてよ!」

杏子「早く早く~」


ほむら「ほらほら落ち着きなさい」

恭介「はい、キュウべぇの手紋をフィルムに転写したものだ」

恭介「僕が一晩で作っておいたよ。暁美さん開けて」

ほむら「じゃあ、開けるわよ」

 キィイイイイ……

全員の視線がその分厚い扉に注がれた。

期待の眼差しだった。

次の瞬間、その場は歓喜の声であふれ返った。

金庫からは数え切れないほどのグリーフシードがこぼれ出した。

みんな互いに抱擁し、喜びを分かち合った。

さやか「よーし!行こうブラジルに!」

ほむら「ブラジル!?」


~~~

ブラジル・リオデジャネイロ

ビーチの脇に立てられた木造のコテージにほむらとさやかはいた。

砂浜では、まどかと恭介が、イスに座って談笑していた。

まどかのそのお腹はもうかなり大きくなっていた。

その姿を見つめる私の表情は幸せそのものであるに違いない。

さやか「やっと落ち着いたね」

ほむら「そうね」

さやか「いろいろあったけど、これが幸せってやつなのかな」

ほむら「そうよ。みんながいて。みんな笑ってる」

さやか「そうだね」


 ガチャ

コテージの中から他のみんながバーベキューの道具を持ってぞろぞろと出てきた。

杏子「よーし、始めるぞー、みんな手伝えー」

マミ「人数が多いから、たくさんお肉を用意したわよ」

仁美「さやかさん、ほむらさん、これ運ぶの手伝ってくださいな」

さやか「行こうほむら!みんなが呼んでる」

ほむら「ええ」

みんなで楽しむビーチでのバーベキューもこれで何度目だろうか。

戦いの日々を抜けてきた私にとっては、これ以上にない贅沢な時間だった。


QB「やあセニョリータ!」

まどか「わぁ!」

さやか「き、キュウべぇ!?」

ほむら「あなた!とうとうここまで!」

QB「おいおい、やめてくれよ。僕は君たちに何もしない」

杏子「てめぇ、グリーフシードを奪い返しに来たんじゃねぇだろうなぁ?」

QB「ブラジル版の僕はそんなことしないよ。君たちがグリーフシードをどうしようが君たちの勝手だ」

ほむら「でもあなたたちはみんな自我を共有しているはず」

ほむら「日本のキュウべぇも、あなたも同じなんでしょう?」

QB「まあ普通ならそうだけどね。日本の彼はちょっとした病気だったんだよ」

マミ「病気?」


QB「彼は人間社会に干渉しすぎた。治療のために本国に送還されたよ」

まどか「じゃあ、もうあなたたちは、私たちを追いかけたりしないの?」

QB「まあね。君たちもこの辺の魔女狩りは一応やってくれているみたいだし」

QB「見滝原にはもう新しい魔法少女がやって来ているよ」

QB「一応誤解があるといけないから、今日説明しに来たんだ」

杏子「まあ、こいつら嘘はつかないしな……」

まどか「良かったね、みんな!」

さやか「なんかこれでやっと思う存分遊べるぞー!」

マミ「もう、美樹さん今までも充分はしゃいでたわよ」

さやか「あれれー?そうだっけ?」

まどか「もう、さやかちゃんたら」ウェヒヒ

ほむら「全く能天気なあなたがうらやましいわ」


さやか「言ったなぁほむら!」

さやか「あっ、そうだ!あの時のレース!私手加減してあげたんだからね!」

ほむら「負け惜しみは見苦しいわよ」

さやか「何を~」グギギギ

ほむら「それならもう一度勝負しましょう?」

さやか「望むところだ!」

まどか「もう~、二人ともしょうがないなぁ」

杏子「おっ、いいぞ!やれやれ~」

マミ「二人とも勝負もいいけど、ほどほどにしておきなさいね」

最愛の友達、最高の日々、それが今ここにある。

私はそれだけで充分だった。

今最も熱い都市リオデジャネイロへおいでませ。


おわり

Don Omar - Danza Kuduro ft. Lucenzo
http://www.youtube.com/watch?v=7zp1TbLFPp8

乙乙
ってかまどっちの処女受胎についてkwsk

まどか映画化記念に、まどか×ワイルドスピードで書きました
まどかとワイスピの新作が当分の生きる糧です

>>271
愛と奇跡の結晶です

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