あかり「言えない言葉」(68)
~冬の街~
あかり「ホワイトクリスマスかぁ……」
あかり「上手くいったかな、京子ちゃん」
雪がしんしんと降るクリスマス・イブ。
浮かれた恋人たちを祝福するように、街は白い薄化粧を纏い始めていた。
あかり「うぅ、さむい」ハァ
寒さに手足がかじかんで、感覚なんてとっくに朧気だ。
することも、したいことも見つからなくて、ただ通り過ぎる人々を見ていた。
あかり「賑やかで楽しいなぁ」エヘヘ
外は溜息さえ凍りついて、冬枯れの街路樹に風が吹きつける。
それでも街には活気が溢れて、イルミネーションが聖夜の幸せを彩る。
あかり「……もう少しだけ」
行き交う人波は、私を置き去りにしていくけれど。
この赤煉瓦の停車場で、来るはずのない誰かを待っている。
~回想 帰り道~
京子「でさ、そこでね、ミラクるんが……」
あかり「あれ、面白かったね」ニコニコ
今日は珍しく、京子ちゃんと二人で下校中だ。
ごらく部ではいじられ役になるので、京子ちゃんとの普通の会話は久しぶりな気がする。
ポタッ ポタポタ
京子「おっ、雨だ」
あかり「どうしよう、傘なんて用意してないよ」
京子「うーん、どうしよっかな」
あかり「濡れたら風邪引いちゃうよ、京子ちゃん」アワアワ
京子「走るよ、あかり」グィ
あかり「え?」
京子「ほらっ!」
あかり「ふぁっ」
アシウゴカシテ!
チョットマッテ、キョーコチャーン
「雨宿りした方がいいと思う」なんて言葉が喉元までせり上がる。
それでも、手に感じるぬくもりに抗えなくて、帰り道を駆け抜けた。
雨の中ではしゃぐ京子ちゃんは楽しそうで、それが何より嬉しかった。
ポタ…
京子「あれ?雨止んだみたい」
あかり「よかったぁ!でも、既にずぶ濡れだね」アハハ
京子「正直、すまんかった」
あかり「いいよ、あかりも楽しかったもん」
京子「そっか」ホッ
あかり「そうだよ」エヘヘ
通り雨は直ぐに止み、残されたのは水溜まりと濡れ鼠な私達だった。
それが何だか滑稽で、京子ちゃんと笑い合った。
あかり「服が気持ち悪いけど、何か清々しい気分」ニコニコ
京子「あかりって変な感性してるよね」
あかり「えっ」キョトン
京子「服を着たままお風呂入ったりしてない?」
あかり「そんなことしないよぉー!」ムッ
水滴がプリズムとなって、光が砕け散る。
雨の匂いがしっとりした和らぎをくれて、ほっとする。
京子ちゃんと一緒にいると、そんなおセンチな感動も吹っ飛んじゃうみたい。
京子「」クシュッ
あかり「大丈夫?」
京子「流石にずぶ濡れはやばいかな」
あかり「じゃあ、あかりの家で着替えていってよ」
京子「いいの?それじゃ遠慮なく!」ニパッ
あかり「京子ちゃんの場合、風邪の方が逃げ出しそうだね」アハハ
京子「何か言った?」ジトー
あかり「なんでもなーい」ニコニコ
想いを伝えられないまま時は流れて、ありふれた言葉が浮かんでは消えてゆく。
君があんまり素敵だから、ただ好きと言えない私は微笑んだ。
~赤座家~
あかり「京子ちゃん、このタオル使って」ハイ
京子「これはかたじけない」
あかり「お風呂沸かしてくるねっ」
京子「待って、あかりまだ濡れてるじゃん」
あかり「えっ?」
京子「先に拭いてあげるから、こっちおいで」
あかり「でも、それじゃあ京子ちゃんが」ワタワタ
京子「いいのいいの、ほれ、はやく」
あかり「……うん」
こんな時だけ気を遣うなんてずるい。
京子ちゃんが人たらしなのは、きっとこういうギャップに好感が持てるからだ。
京子「お団子解くよ」パサッ
あかり「うぅ、あかりの特徴が」
京子「気にすることないって」
京子「そんなのなくても、あかりは魅力的な女の子なんだからさ」
あかり「あっ、ありがと……」
京子「あっ照れた?照れた?」
あかり「もぅ、京子ちゃん!」
京子「怒らない怒らない」
何時からか、京子ちゃんは明るく振舞う人気者になった。
それでも根っこの部分は変わってないって、あかりにはわかるんだ。
あかり「京子ちゃん、お先にお風呂どうぞ」
京子「一緒にお風呂、入ろっか」
あかり「え?」
京子「だってあかり、先に入る気ないみたいだし」
あかり「お客様が先に入るものだって、確かお母さんも言ってたよ?」オロオロ
京子「たまにはいいでしょ」ガシッ
あかり「でも、」ワタワタ
京子「それに、あかりが風邪引いたら看病が面倒だし」
あかり「そういう心配!?」ガーン
気持ちは有難いけど、ちょっと身の危険を感じるかも。
京子ちゃんの裸は見慣れているから、耐性があるんだけどなぁ。
~お風呂~
京子「いい湯だなぁ……」チャポン
あかり「あったまるね」エヘヘ
京子「しかし、あかりもあんまり成長してないね」
あかり「……えっと、どこ見てるのかな」ジトー
京子「んー、この部分」ムニムニ
あかり「い、いくら自分のだからって破廉恥だよぉ、京子ちゃん」モジモジ
胸を揉むなんてえっちなこと、人前でしないでほしい。
目の前で堂々とされると、逆にこっちが恥ずかしくなる。
京子「大きくなりそうにないんだよな、これ」ハァ
あかり「あかりたちの成長はこれからだよ」
京子「揉んだら大きくなるって本当かな」ムニムニ
京子「そうだ!」ピコーン
京子「あかりの揉んであげようか?」
あかり「」ビクッ
京子「……そんなに怯えられると、ちょっと傷つく」
あかり「……京子ちゃんの冗談はきわどすぎて、あかりには難しいよ」
チャポン
あかりの中のドロドロしたものが、些細な触れ合いに過剰反応する。
京子ちゃんのくれる親愛に、よこしまな期待をしてしまう。
それはきっと、イケナイモノで。
カポーン
京子「ところで、あかりさん」
あかり「どうしたの?」
京子「着替えどうしよう」
あかり「あっ」
京子「びしょびしょで着られないよね、私の服」
あかり「しかも乾燥機にかけておくの、忘れてた……」
京子「あらま」
そこまで考えていなかった。
どうしよう。
~リビング~
京子「どう?」キラーン
あかり「京子ちゃん可愛い!」
京子「うっ、なんか照れる」
あかり「本当に似合ってるよ」ニコニコ
京子「そうかな?」
京子ちゃんに私の服を着てもらった。
下着まで私のものだと悪いので、そっちは新品のものを用意した。
何故か最近は下着がなくなるので、予備を買っておいてよかった。
ピィー
あかり「あっ、やかん沸いたからいってくるね」
京子「はいよ」
あかり「おまたせ、煎茶でよかった?」コトッ
京子「ありがと」
あかり「少し冷ましてあるから、すぐに飲めるよ」
京子「あかりはいいお嫁さんになるだろうなぁ」
あかり「それほどでも」イヤー
京子ちゃんをおもてなしすると、とっても喜んでくれて気分がいい。
上手く動かされているとも言えるけど、それでも構わないと思えるくらい。
京子「一家に一台って感じ!」
あかり「冷蔵庫の扱いだったんだ」ドヨーン
京子「あっ、いや、褒め言葉のつもりだったんだよ」
京子「それくらいあかりに居て欲しいなって」
あかり「……結衣ちゃんと、何かあったの?」
時折見せる影、最近は京子ちゃんにそれを見ることが多い。
その原因はきっと、結衣ちゃんなんだろう。
京子「そういうわけでもないんだけど」
京子「ちょっとね」
歯切れの悪い口調で、京子ちゃんは話し始めた。
京子「最近さ、結衣を見ているとドキドキするんだ」
京子「ずっと結衣のことが頭から離れないの」
京子「胸が熱くなって、何がなんだか分からなくて、それで怖くて……」
京子「私、どうしちゃったのかな?」
「……あかり?」
あかり「……なんでもないよ」ニコッ
何となく、覚悟はしていたから。
京子「本当に?具合が悪いならn」
あかり「それは、恋じゃないかなぁ」
京子ちゃんを応援するって、昔から決めてたから。
京子「へっ?」
あかり「恋だよ、京子ちゃん」
京子「恋って、私も結衣も女の子だし、違うんじゃない?」
あかり「そうかな?」
京子「そうだよ」
あかり「じゃあ京子ちゃんは、恋ってなんだと思う?」
京子「ん……、わかんない」
京子ちゃんは余計な知識ばっかり仕入れて、そういうところは純粋だったりする。
いつか勘違いした人に襲われそうで、ちょっと心配だなぁ。
あかり「あかりにも、はっきりとはわからないけど」
あかり「ずっと一緒にいたくて、離れたくない」
あかり「そういう単純な感情のことを恋って、そう呼ぶんじゃないかって思うの」
あかり「結衣ちゃんに感じる気持ちは、ただの友情とは違うんでしょ?」
京子「……うん」
あかり「焦らないで、ゆっくり考えてね」
京子「……いや、何かわかった気がするよ」
京子「私はずっと、結衣が好きだったんだ」
あかり「そっか」
明日になれば、きっと今より君を好きになる。
この胸がちくちくと痛むけど、京子ちゃんの力になれるなら躊躇わない。
京子「結衣に顔向けできないや」ハァ
あかり「どうして?」
京子「親友が自分に恋してました、なんて普通は冗談でも笑えないよ」
あかり「……そうかもしれないね」
京子「忘れようかな」
あかり「なんでそう思うの?」
京子「だって、これは許されない気持ちだよ」
あかり「誰がそんなこと決めたの?」
京子「そりゃ、……世間とか?普通に考えたらそうなるじゃん」
それはあかりも考えたことがある。
今だって、京子ちゃんを、皆を裏切ってるんじゃないかって、悩む時もある。
それでも、想いは止められない。
あかり「そんなこと気にするなんて、らしくないよ」
京子「……そうかも」
京子ちゃんは挑戦する前から諦めてしまった、そんな顔をしている。
見守ることを決めたあかりに言えることじゃないけど、そんなの認められない。
あかり「大丈夫だよ、京子ちゃん!」
京子「あかり?」
あかり「もうすぐクリスマスだから、その日に告白してみようよ」
あかり「きっと、上手くいくよ」ニコッ
京子「でも……」
昔のように、不安そうにぎゅっと手を握り締める京子ちゃん。
あかりが引っ張ってあげるから、勇気をだしてよ。
京子ちゃんは、いつだって元気で、笑顔じゃなきゃ駄目なんだから。
あかり「そうだ、一緒にマフラーを編もうよ」
京子「へ?」
あかり「プレゼントすれば、結衣ちゃんも喜ぶんじゃないかな」
京子「編み物なんてやったことないし」
あかり「あかりも京子ちゃんと一緒に頑張るから、ね?」
京子「あかり……」
あかり「やっぱりダメかな?」
京子「ううん」フルフル
あかり「頑張ってみる?」
京子「うん、今からプラン、考える」エヘヘ
あかり「よかった!」
京子ちゃんの笑顔を見てるだけで、この胸がぽかぽかしてあったかい。
あかりはこんなに幸せなんだ。
あかり「明日は休みだし、今日は泊まっていく?」
京子「えっ、いいの」パァ
あかり「お母さんは泊まってもいいって」
京子「ちょっと電話借りていい?」
あかり「うん」
バタバタ
プルルルルル アッ、オカアサン、アノネ…
パタパタ
京子「おっけーだって!」バーン
あかり「嬉しいなぁ」ニコニコ
人を柔らかく包む風のような、そんな存在でいられるなら、あかりは本望だよ。
君が羽ばたくための翼にだって、なってみせるから。
~就寝中~
京子「」スヤスヤ
京子ちゃんは、まるで薬箱みたい。
楽しい会話とさりげない気遣いで、私を癒してくれるの。
あかり「おやすみ、京子ちゃん」エヘヘ
今日は疲れてしまったのか、京子ちゃんが先に眠りに入った。
普段は見られない寝顔に、優しい感情が溢れてくる。
あかり「いい夢が見られるといいなぁ……」ウトウト
きっと私は、この人を守るために生まれてきたんだ。
眠った横顔に震えるこの胸は、私を何よりも勇敢にしてくれる。
だから結衣ちゃんの代役しか出来なくても、あかりは傍にいるよ。
~翌朝~
「……り」
「…かり」
「あかり」
京子「あかり、朝だぞ」ユサユサ
あかり「ん……」モゾモゾ
京子「おはよう」
あかり「おはよぉ」ネムネム
ええと、昨日は京子ちゃんと一緒に寝たんだっけ。
たくさんおしゃべりして、その途中でぐっすり眠っていたみたい。
京子「顔洗いに行くよ」
あかり「うん……」ポケー
京子「今日は皆で雪遊びだぞ」
あかり「そうだったね……」ゴシゴシ
京子「ほら、つかまって」
あかり「ありがと」
私に恋を教えてくれた、君のぬくもり。
このまま天使の心だって感じられるような、そんな気がするんだ。
ジャー パシャパシャ
あっ、結衣ちゃんにクリスマスの予定を空けてくれるように頼まなきゃ。
~雪遊び~
京子「よっ、皆さんお揃いで」
結衣「ちょっと遅刻だぞ」
京子「いやー、あかりがさぁ」
あかり「のんびりしてたのは京子ちゃんだよね!?」
結衣「またか」ハァ
ちなつ「結衣先輩とお話できましたから、多少の遅刻はいいですよ」
京子「ごめんごめん」
こうして四人で集まることが、もう当たり前になってきた。
ちなつちゃんは冷たいようで実は優しい子なので、京子ちゃんとの相性も良かったりする。
そんなことをいうと照れて怒られるけど。
京子「今日はあかりのパンツ借りたんだぞ、いいでしょ」ヘヘ
ちなつ「は?」
結衣「」ポカーン
ちなつ「なっなな、なにをしてるんですか、京子先輩!」
あかり「その言い方は誤解を招くよ、京子ちゃん」
京子「ああ、そっか、使ってない新品のカニさんパンツだよ」
結衣「びっくりさせるな」コツン
京子「すんません」
ちなつ「カニさんパンツなんだ」ジィー
あかり「うぅぅ」
なんだろう、あかりのパンツの趣味がばれて恥ずかしいよ。
京子「お返しに新しいパンツ買ってプレゼントするね」
あかり「いいよ、そんなこと気にしなくても」
京子「あっ、私の使用済みがよかった?」ニヤニヤ
結衣「おいこら」ガシッ
ナニスルンダヨー
コッチノセリフダ、バカ
ちなつ「……あかりちゃんも、はっきり言っていいんじゃない?」
あかり「いいの」
あかりはこれでいい、このままがいいんだ。
京子「雪だるま作ろう!」
結衣「はいはい」
京子「ノリが悪いぞ!」
結衣「はいはい」
ギャーギャー
ちなつ「こんな感じかな」フゥ
あかり「ちなつちゃん、それ……」
ちなつ「かわいいでしょ?」ニコニコ
あかり「う、うん、かわいいね」ダラダラ
新種のエイリアンみたいで。
京子「結衣!」
結衣「何?きょうk」
京子「ほれっ」
結衣「わっ、冷たいだろ」
京子「あはは、悔しかったらここまでおいで」
京子「…ぁ」
結衣「……ッ京子!」
ギュッ
転びそうになった京子ちゃんを、結衣ちゃんは抱き寄せた。
抱き合った二人はとてもお似合いで、まるで恋人同士のようだった。
結衣「まったく、京子ときたらいつも注意が散漫でs」
京子「んっ」ビクッ
結衣「あ……」
京子「ど、どこ触って」ワタワタ
結衣「そのっ、ごめん」
京子「いや、その、ありがと……」モジモジ
ちなつ「なに甘い空気になってるんですか!」
あかり「二人とも大丈夫?」
結衣ちゃんには敵わないなぁ。
あかりには無理なこと、あっさりやっちゃうんだから。
イシヤーキイモー
京子「や、焼き芋、美味しそうだから買ってくるね!」
ちなつ「あっ、私もいきます」
パタパタ
結衣「………」
あかり「結衣ちゃん、顔真っ赤だよ」
結衣「なんでもない」
あかり「……そっか」
嘘、つかないでよ。
あかりもちなつちゃんも、そのくらい分かるんだから。
あかり「………」モグモグ
二人の小指には赤い糸が繋がっていて、それにお互いが気付くのは時間の問題かな。
……あかりがその糸を切らなければ。
結衣ちゃんはともかく、精神的に脆い京子ちゃんになら多分効果がある。
二人の仲を取り返しのつかないものにして、京子ちゃんを振り向かせることも出来るかも。
京子「焼き芋うめぇ!」
あかり「美味しいね」
結衣「確かに美味しい」
あかり「ねぇ、結衣ちゃん」
結衣「どうしたの、あかり」
あかり「クリスマスの予定、空いてる?」
でも、あかりが見ていたいのは、
京子ちゃんの天真爛漫な笑顔で、結衣ちゃんの優しい微笑みなんだ。
~クリスマスパーティー~
パンパーン
京子「ちょっと早いけどメリークリスマス!」
結衣「メリークリスマス」
あかり「メリークリスマス、京子ちゃん、結衣ちゃん!」
時の流れは早いもので、もう今日が24日になる。
ちなつちゃんは家の都合で残念ながら欠席だ。
京子「これ、あかりにプレゼント!」ハイ
あかり「わーい、ありがとー」
結衣ちゃんの家にお邪魔して、パーティーをさせてもらうことにした。
クリスマスの趣旨を考えれば、家族と静かに過ごすことが望ましいけど、我侭を言った。
あかり「あけていい?」ワクワク
京子「うん」
ガサッ
あかり「これ絵本?ひょっとして手描き?」
京子「まあね」
結衣「随分と凝ってるな」
京子「なかなか大変だったよ」イヤー
あかり「ありがとう、大事にするね」
表紙にはシンプルに、一人の女の子が描かれている。
水溜まりがあることから察するに、雨上がりのシーンかな。
ペラッ
京子「あっ、その、恥ずかしいから、家で読んでくれないかな?」アタフタ
あかり「?うん、じゃあ今晩読むね」
こんなに慌てるなんてどうしたんだろう。
余計に内容が気になったけど、そういうことなら帰ってゆっくり読もう。
パタン
京子「それで、これ、結衣に」
結衣「ありがとう」
結衣「……このマフラー、自分で編んだの?」
京子「うん、不格好でごめん」モジモジ
結衣「そんなことない、ずっと、大切にする」
京子「そっか」エヘヘ
結衣「京子もやればできるんだなぁ」
京子「失礼な、私はいつもできる子です!」
頑張ってきた甲斐があって、やっぱりプレゼントは成功したみたい。
お姉ちゃんもあかりの編んだマフラーを喜んでくれたから、上手くいくと思った。
あかり「ねぇ、京子ちゃん、結衣ちゃん」
京子「ん?」
結衣「なに?」
あかり「あかりは何があっても、ずっとずっと二人の友達だよ」
京子「……何か照れくさいな」アハハ
結衣「ありがとう、あかり」
プレゼント交換も終わって、一通りの遊びは済ませた。
楽しくてこのまま居座りたくなるけど、もうそろそろ頃合かな。
あかり「あかりは用があるから、先に帰るね」
京子「えっ?あかりも一緒に」
あかり「残念だけど、外せない用事なの」ニコッ
あかり「じゃあ行ってくるね」
結衣「いってらっしゃい」
京子「…うん、また明日」
京子ちゃん達が二人きりになるために、必要なことだから。
あかりはいない方がいい、それがきっとお互いのためになるんだ。
あかり「ウィンドウショッピングを楽しもうかな」
オレンジの光が街に輝いている。
不器用すぎる二人も季節を超えて、まだ見ぬ幸せな日に巡り逢ってゆくのだろう。
心配はしていない。
だって、結衣ちゃんは京子ちゃんが大好きだから。
あかり「頑張ってね、京子ちゃん」
このまま二人は結ばれるのだろう。
あかりも伊達に、二人の幼馴染をやっているわけではないのだ。
あかり「夕日が眩しいなぁ」
この胸にぽっかりと空いた穴なんて、優しい気持ちで埋めてしまいたい。
幸せを祈る気持ちが、喪失感に負けないように。
~回想終了 冬の街~
あかり「……雪が綺麗」
赤煉瓦のタイルはいつの間にか真っ白に染まっていた。
もう数メートル前も見通せなくて、視界は白一色に染まる。
あかり「あかりの恋は叶わなかったけど」
あかり「二人の幸せが、ずっと続くといいなぁ」
聖なる鐘の音が響く頃に、私は最果ての街並みを夢に見る。
粉雪が夜空から降りて来て、春が来る前に冬の微笑みをくれたから。
あかり「………」ギュ
孤独に心が折れないように、冷えた体を抱きしめる。
辛い毎日はやがて優しいものに変わるから、希望を胸に抱いていよう。
あかり「そろそろ帰ろうかな」
時計の針は夜を指し示し、人通りも少なくなってきた。
これ以上帰りが遅くなると、お姉ちゃんに心配をかけてしまいそうだ。
あかり「馬鹿みたいだよね」
私の待ち人は来ない、そんなことずっとわかってた。
届かない想いで、信じても叶わない願いだって、わかってて待ち続けた。
カッコつけたって、現実はそんなものだ。
上辺では割り切っていても、どうしても心の奥の部分が納得してくれない。
これが最後だからと、有りもしない可能性に縋ってしまう。
あかり「………」
君の幸せを願うほど、この胸に我侭が増えてくよ。
あなたを癒せるたった一人になりたくて、少し我慢し過ぎたかなぁ。
あかり「結局、言えなかったなぁ」
いつだって君を見てた。君なんだってそう感じてた。
言葉になんてできないくらい、好きだった。
あかり「苦しいな……」
悪戯な瞳が焼き付いて、頭から離れない。
頬笑む君の面影が、この胸を空回りして苦しいよ。
「さよなら」
雪がしんしんと降る。
私の姿を隠すように、静かに降り積もる。
ちぎれた氷の欠片が風に揺られて、夜空を染めて舞い落ちる。
汚れない純白に飾られて、私の足跡もゆっくりと消えていく。
頬を伝う涙は、溢れる端から凍りついた。
~???~
『こんなところでどうしたの?』
『……だれ?』
ペラッ
『この絵、とってもかわいい!』
『そうかな……』
ペラッ
『きょうもいっしょにあそぼうよ!』
『うん!』
ペラッ
『いたっ……』
『大丈夫?いたいのいたいのとんでいけー!』
ペラ…
『えっと、あのね』
『なあに?』
『大きくなっても、おともだちでいてくれる?』
『いつまでもずっと、ともだちだよ!』
パタン
おわり
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