勇者と魔王がアイを募集した (969)



--??--

今より約十九年前、魔王を倒すために命懸けで戦った者達がいた……。


パーティリーダーをつとめるのは、赤の少女。
出身地は下水道、保護者は白いワニ、最終学歴はサーカス団員という貧乳オブ貧乳……勇者(27歳)。


家柄は上流貴族で有名大卒。回復のエキスパート眼鏡にしてヒッキーポークビッツ……賢者。


かつてはいじめられっ子だったが、血の滲むような修行(肛門の)を経て、猛々しい肉体を手に入れた、心優しきホモォ……闘士。


グラマラスな肉体、長く美しい髪を持つ麗しの裸族。最近になって実は水虫だったんじゃないか疑惑がある……踊子。


そして、
罠やスキルを駆使し、実力が上の相手でも勇敢に立ち向かうような男ならよかったよね。どう頑張っても目玉が取れちゃう役立たずニート

……盗賊。


彼ら五人は長き旅路の果てに、ついに魔王を倒す偉業を成し遂げる。


これは、それから十九年後のお話……。

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--北の王国、城壁--

チチッ、チチチッ

北の老兵「ふぁあ……えぇ、天気じゃ」

老兵は見張りもろくにせずに、城壁に腰をかけて空を眺めていた。

ガチャガチャ

北の新兵「む」

北の老兵「はぁ……心休まるのぉ」

北の新兵「おいじいさん! あんた仕事しないで何やってんだ!」

北の老兵「んん……またうるさいのが来おったか」

北の新兵「うるさいじゃねーよ! 俺らの仕事は見張りだっていうのに何サボってんだよ!」

北の老兵「別にサボってるわけじゃないわい。仕事はしとる。敵の気配はせん」

北の新兵「けっ! 何が気配だよ! 勇者討伐戦争を生き抜いたかなんだか知らないけどよ、仕事はきちっとこなしてくれよっ!」

ったく、と呟いて北の新兵はその場から去っていった。



--北の王国、城壁--

北の老兵「……まったく。老骨のいたわり方を知らんやつだ……」

老兵は、一年中雪が積もっている北の大地に目をやった。

北の老兵「この国も大きくなったものよの……」

老兵は、北の王国の建国の日を思い出す。

ず……

北の老兵「ん……? 影?」

北の大地を巨大な影が覆っていく。

北の老兵「これほどの影を作るほどに、大きな雲があったかいの」

老兵は空に視線を戻した。

ずず……

北の老兵「!……なんじゃあれは……」



--北の王国、城壁--

ずずず……

北の老兵「鳥、いや……モンスターか……?」

ずずずず……

北の老兵「!? ち、違う!! あれは城なのか!? まさか!!」

老兵が目を凝らすと、空飛ぶ城の周りをモンスターの群れが飛んでいた。

北の老兵「!!」

老兵は立ち上がり、撞木を手に取ると力一杯鐘を鳴らした。

ガーン!!!!

北の老兵「敵襲だーー!! モンスターが来たぞーー!!」

ガーン!!
ガーン!!
ガーン!!



--北の王国、城内--

ガーン!!
ガーン!!
ガーン!!

北の衛兵「!!」

北の兵長「警鐘!? 敵襲か!!」

ガチャガチャガチャガチャ!!

兵士達は慌ただしく外へと走り出す。



--北の王国、東地区--

ズンッ!!

その時、北の王国に何かが墜落した。

しゅううぅう

北の幼女「きゃあああ!!」

ざわざわざわざわ

北の青年「な、なにが落ちてきたんだ!?隕石か!?」

しゅううぅう

?「ウゴォ……」

町に墜落し、クレーターを作り上げた落下物が声を発した。

?「ウゴォォォォ!!」

北の女性「!?」

鼓膜が破れんばかりの咆哮。そしてソレは立ち上がった。

北の兵士(で、でかい!)

巨大な異形なる者。

ゆらっ

?「オ、オデ!」



--北の王国--

ガーゴイル「ギュルルルラアアア!!!!」

きゃーきゃー!わーわー!

北の衛兵「化物め! くらえっ!!」

ザシャ!!

ガーゴイル「ギャアアアア!!」

北の衛兵「くっ……数が多すぎる! どれだけ降ってくるんだこのモンスターどもは!!」

衛兵の槍と鎧は、モンスターの血によって真っ赤に染まっている。

北の上級兵「!? 衛兵!! 後ろだ!!」

北の衛兵「え?」

グシャッ!

キメラ「がぉぉ!!」

衛兵は後ろから接近してきたキメラに上半身を噛みちぎられてしまう。

北の上級兵「ッ!! う、うおぉぉ!!」

きゃーきゃー!!うわぁぁぁ

次々に飛来するモンスター達によって、北の王国は蹂躙されていた。



--北の王国、西地区--

ジリジリ

??「……」

北の兵達は各々が武器を構えて、異形たるソレを包囲していた。

??「……」

北の下級兵「はーっ! はーっ!……こいつが、魔族か!?」

北の近衛兵「絶対に奴の目を見るんじゃないぞ!! 奴は魔王軍の幹部、カト」

ビシィッ!!

近衛兵が喋りきる前に、一瞬で兵達は石像へと変貌してしまう。

??「……残念ですが、私の魔眼は開いているだけで効果を発揮するんですよ」

大きな眼球を持つソレは、動かなくなった兵達の横を擦り抜けていく。



--北の王国、南地区--

北の中級兵「ぎゃああああ!!」

北の弓兵「あがっ、あぐあぁぁぁ!!」

???「あははは〜。一体貴方たちはどんな素敵な夢を見ているのでしょうね〜」

発狂し、頭を抱えて痙攣している兵達と、その真ん中で狂ったように踊る異形の者が。

???「あははは〜。これも全て報いですよ〜。私たちを裏切って〜、あの子の想いを踏み躙ったのですから〜」

北の剣兵「あごごご!!」

全身の至るところから血を垂れ流し、苦悶の表情を浮かべる兵士達。

???「あははは〜……懺悔したならおっ死ね」

グシャッグシャッグシャッ!!

一斉に兵士達の頭が爆発し、辺りを血と脳漿で塗りつぶした。

???「……なんて楽しいんでしょ〜」

10

--北の王国、北地区--

ザシュ、ブシャッ!!

北の盾兵「ぎゃああああ!!」

北の上級兵長「なんだ!? 一体何が起こってるんだ!?」

援軍にかけつけた上級兵長は混乱していた。

ズブッ!

北の斧兵「ふぐぁっ!!」

北の上級兵(なんだ……? 敵はどこにもいないのに、兵達が何かに斬られている!?)

ザシュッ!ズバッ!ザキュッ!

聞こえてくるのは兵達の断末魔のみ……。

北の上級兵長(何に斬られているというのだ!! こんなにも恐ろしい速度で!!)

ズバシャッ!!

北の上級兵長「!!!!」

上級兵長がソレに気付いた時には、自分の背中が大きく切り裂かれたあとだった。

????「わりぃな。あんたで最後だ」

北の上級兵長「」

上級兵長は、倒れながら風の囁く声を聞いた。

11

--北の王国、城壁--

わーきゃー

北の老兵「北の……王国が……」

人々の悲鳴とモンスター達の蛮行……燃える北の王国を見た老兵は崩れ落ちた。

北の老兵「魔王軍がまさかここまで攻めてくるだなんて……ライン9が突破されていたのか……」

ズズーン!!

空を飛んでいた城が王国に着地し、地響きが起こる。

北の老兵「ぐっ!! む、無茶苦茶しよる!!」

ぎぎぎ……

そして城の天辺から……

北の老兵「!?……な、なんだと……あいつは……見たことがある……いや、だがそんな……ありえん」

?????「……」

空中に漂う赤髪の少女。
黒い鎧を身に纏い、幼い体つきに不釣り合いな大きな角を二本持ち、そして

北の老兵「ぐっ!?」

見ているだけで息がつまるような、圧倒的な威圧感を持っていた。

12

--北の王国、城壁--

北の老兵「ば……かな……」

北の老兵は壁に手を掛けなんとか立ち上がろうとするが、それは叶わない。

北の老兵「あの時に……死んだんじゃ……なかったのか……?」

?????「……」

角を持つ少女が手を天に掲げると、漆黒の大剣が出現する。

北の老兵「勇者討伐戦争で……死んだのでは……ないのか?」

?????「……」

少女が手にする大剣に、強大な魔力が集まる。

北の老兵「見間違いでは……ない……あの胸の平らさ……見間違えるもの、か……十九年前の戦場で見た……あれを!!」

強大な魔力は重力すら狂わせ、地面に転がる石や瓦礫や人間などが、空に浮かび始める。

北の老兵「『赤き絶壁』!!」

13

--北の王国、城内--

召喚士「かっー!! 何やってるでやんす!! さっさと逃げるでやんすよ!! あいつらは北の王国の戦力だけじゃ対抗出来ないでやんす!!」

タッタッタッ!

北の王「召喚士!! 状況はどうでっか!?」

召喚士「王!? まだ避難してなかったでやんすか!?……被害は甚大、万が一にも勝ち目は無いでやんす!! だから王は逃げるでやんすよ!」

北の王「なんてこった……狩人と人形師が留守な時に限って……」

召喚士「……ぶっちゃけいても無理だと思うでやんす」

北の王「……そうでんな……国民の避難は?」

召喚士「このままじゃ間に合わないでやんすね……だから今からおいらが足止めをしてくるでやんす」

北の王「……」

北の王は召喚士のわき腹に巻かれた包帯の血の滲みを見た。

14

--北の王国、城内--

北の王「避難完了までどれくらいかかると思いまっか?」

召喚士「そうでやんすね。少なく見積もっても二時間はかかるでやんすかね」

北の王「ほな、召喚士は二時間も時間稼ぎが出来ますのん?」

召喚士「っ……」

召喚士は言葉に詰まってしまう。

北の王「ほな私も行きますさかい」

召喚士「!? はっ!?」

北の王「一人じゃ無理でも二人ならなんとかなるかもしれまへん」

召喚士「ならんでやんす!! というか王がいなくなったら北の王国は本当に終わりでやんすのに、貴方が逃げなくてどうするでやんす!!」

北の王「……どのみちここを退いた時点で北の王国は終わりや……。それにダチ公が死のうとしてるんやから、一人で死なすわけにはあかんやろ」

召喚士「ッ王!?」

北の王「この戦力差や。召喚士一人じゃどうにもならへんようやし、それなら国民が逃げる時間を稼ぐために死んだほうがかっこええやろ」

15

--北の王国、城内--

召喚士「……お、王は戦闘力皆無じゃないでやんすか!」

北の王「そうや。だから命の全てを燃やし尽くし、召喚士の外部魔力になったるで」

召喚士「!? 魔力供給……でやんすか」

北の王「そや。召喚士、人生最後の大戦やで。おまはんの奥義をやっこさんにぶちこんでやるんや!!」

召喚士「……」

北の王「ん?」

召喚士「その手法で行くと……王を蘇生することは出来ないでやんすよ……?」

北の王「んなこたぁ、わかってるでー」

召喚士「……了解でやんす。そのお命……お借りするでやんす」

16

--北の王国、城内--

ズズズ

その時外で、角の生えた少女が大剣を呼び寄せだ。

召喚士「!! このケタ違いの魔力は……!」

北の王「あやや、どうやら早くしないとあかんみたいでっせ」

召喚士「……っく」

北の王「自分が想像する最強のイメージを召喚する奥義……生きてる間に見てみたかったがぁ、こればかりはしょうがありまへんな」

北の王はカラカラと笑うと、自身の体を魔力に変換し始めた。

ぽぅ

北の王「魔力変換レベル4、さらに魔力供給レベル3」

びゅわわわ

徐々に北の王の体は、霞がかかったように薄れていく……。

北の王「あとは……頼みましたで……人形師にもよろしく言っといて……ってそりゃ無理でんな」

しゅ……

笑ったまま北の王は消滅した。

召喚士「はい、でやんす……奥義、幻想召喚!!」

17

--北の王国--

?????「!」

その時少女は地面が黄金に輝くのを見た。

?????「……」

ゴゴゴゴゴ……

?????(何か……くる)

少女が視線を送った場所、北の城の中から二つの人影が現れた。

召喚士「……」

ゴゴゴゴゴ……

黄金王「ほう。あれが貴様の言う敵か?」

召喚士「そうでやんす」

黄金王「……ふん、成る程。見るに耐えぬ醜悪な魂の在り方よ」

18

--北の王国--

召喚士「黄金王、あんたの逸話は幼い頃から耳にタコが出来るほど聞かされていたでやんす。この奥義の強さは思い込みの強さ……あんたならやってくれると信じてるでやんす!」

黄金王「無論だ。あの程度の塵芥共訳はない。だが、貴様ごときに我の魔力を捻出出来るとも思えぬ」

召喚士「……承知の上でやんす。この命燃やし尽くす所存でやんすが、それでもどれだけ持ちこたえられるか……」

黄金王「……貴様如何様にして我を召喚した?」

召喚士「え?」

黄金王「貴様ごときの器では、我を召喚した時点で絶命するのが道理であろうが。我を現界させるための魔力、一体どこから捻りだした?」

召喚士「あぁ、そういうことでやんすか……それは……我が主君であり友である、おいらの一番大切な人を犠牲にしたのでやんす」

黄金王「……」

召喚士「情に訴えるわけではないでやんすが、あんたに嘘をつくわけにはいかないので素直に話したでやんすよ。……これで召喚自体に魔力を割くことはなく、あんたの現界維持だけに全ての魔力を注ぐことが出来るでやんす。それでもあんたには不便させるでやんすけど、なんとかして欲しいのでやんす」

召喚士は黄金王に深々と頭を下げた。

黄金王「……ふん。そこまでしなくては民も守れないとは……弱さとは悪と知れ」

召喚士「すまんでやんすよ。ちとあまりに想定外だったもので」

困ったように召喚士は笑った。

19

--北の王国--

黄金王「……貴様の脆弱な魔力では、話をしているこの時間すら惜しいではないか、たわけが」

召喚士「あんたは気分屋さんらしいでやんすから、やる気にさせるまでが一番大事なんだと思ったでやんすよ」

黄金王「なんだと……? 痴れ者が! 貴様ごとき塵芥が我の心を操れるとでも思うたか!!」

黄金王はそう言いつつも視線を少女に向ける。

黄金王「……だがまぁ、今回に限り不問にしてくれる。我もあれに興味が出たからな」

?????「……」

黄金王「我をあのような目で見てくる者など、あってはならぬことだ」

ブゥン

黄金王の右手に大剣が、左手には三股の槍が出現する。

黄金王「せっかくの現世ということもある。気の済むまで暴れてくれる」

20

--北の王国、跡地--

………………




パチパチっ

召喚士「は……は……北の王……貴方にお仕え出来て……光栄でした」

ドサリ

黄金王「ふん」

燃える北の王国。

ゴォオ

辺りは瓦礫と化し、雪の白に覆われていた世界は、今や炎の赤に支配されている……。

黄金王「……力尽きたか」

黄金王は、後方で全ての魔力を振り絞って死んだ召喚士を眺めている。

黄金王「とはいえ……中々楽しませてもらった……礼を言うぞ塵芥」

21

--北の王国、跡地--

?????「……」

黄金王の前には角の生えた少女と四体の魔族が立っていた。

黄金王「貴様らにもな」

黄金王の体が溶けるように消えていく。

黄金王「如何に全力を出せぬ身とはいえ、この我が滅ぼしきれぬとはな。この世は腹の立つことばかりだ」

ぼひゅ

黄金王は光の粒となって消滅する。

?????「……」

?「お、おで」

??「……恐ろしい強さでしたね。正直魔王様のルールが無ければこちらが危うかったです」

???「は〜? 何言ってますか〜。結局こっちは誰もやられずに済んだんです〜。私達の完全勝利じゃないですか〜」

????「でもたった一人に半日も粘られたんだ。純粋な戦闘力だけだったら危なかったと思うぜ」

22

--北の王国、跡地--

?????「……フランケン」

?改めフランケン「お、おで!」

?????「……カトブレパス」

??改めカトブレパス「はい」

?????「……ニンフ」

???改めニンフ「はい〜?」

?????「……ウェンディゴ」

????改めウェンディゴ「ん?」

?????「……私は……間違ってると思うか?」

カトブレパス「どうでしょうね。人側の視点で見たら良いこととは言えないでしょうね」

ウェンディゴ「だが俺達はもう、人側に立って考える必要もない」

ニンフ「そうですよ〜。あんな薄情で卑怯な生き物、私は昔から嫌いだったですよ〜」

フランケン「お、おで!」

?????「……」

23

--北の王国、跡地--

ニンフ「……貴女の好きにしたらいいと思いますよ〜? 何せ貴女は一度はこの世界を救った身なんですから〜」

カトブレパス「そうですね。いや懐かしい。かつて勇者パーティとして旅をしたのがもう十九年も前のことだなんて」

フランケン「お、おで」

ニンフ「あれはあれで楽しかったですけど〜今思うとホント」

ウェンディゴ「無駄なことだった。魔王討伐だなんて」

?????「……」

少女は燃える世界を眺めている。

?????「みんな……私は世界を滅ぼすよ」

フランケン「お、おで!」

カトブレパス「はい。今度は最後まで貴女についていきます」

?????「もう二度と悲しいことが起こらないように」

ニンフ「我々こそが正義の使者ですからね〜星に巣くうチャバネゴキブリどもを一掃してくれます〜」

ウェンディゴ「行こう。魔王勇者」

?????改め魔王勇者「私は……全ての人を滅ぼしてみせる」



    勇者と魔王がアイを募集した
         第一部
        リスタート

こんばんは!はじめまして!これからのんびりとやって行きたいと思います。よろしくお願いします。

このssについて

・このssは勇者と魔王系のssです。

・読みやすさを重視して、少しだけ地の分があります。

・パロディ要素を含みます。

・ルート分岐の選択肢があったりします。

こんなところでしょうか。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

次回は明日を予定しています。

それでは二日目、いきますーー

24

--砂漠--

配達屋「えっと、この辺のはずなんですけど……」

ユニコーン「ひひーん」

砂漠の真ん中で古ぼけた地図を見ている少女。
傘を差し、帽子を被った少女は大きなリュックサックを背負ってユニコーンにまたがっている。

配達屋「おっかしいなー。ユニちゃん、ユニちゃんの目なら何か見えます?」

ユニコーン「ぶひるん」

配達屋「見えないですかー」

ユニコーン「ひひん」

配達屋「え? お水?……あぁ、そういえば喉渇いちゃったね。近くにオアシスとか町とか無いかなぁ」

配達屋が地図に視線を落としても、近くにそんな印は無かった。

配達屋(というか数時間前からどこを進んでいるのかもわからないこの現実)

25

--砂漠--

ユニコーン「ひひん!」

配達屋「ん? どうしたのユニちゃん」

ユニコーン「ひひん」

配達屋「何かが近づいてくる?」

ゴゴゴゴ……

地鳴りと共に砂の地面が揺れる。

配達屋「……やーなよかーん」

どばぁっ!!

巨大蠍「キシャアアアアア!!」

全長二十メートルはあろうかという巨大な蠍が、砂を撒き散らして出現した。

配達屋「んきゃぁぁぁぁ!?」

26

--砂漠--

巨大蠍「キシャアアアアア!!」

配達屋「ユニちゃん走って!!」

ユニコーン「ひひーん!!」

ダカッダカッダカッダカッ!!

走り出すユニコーン、だが当然のように巨大蠍は追ってくる。

配達屋「どうしよう……お腹ぺこぺこで水分皆無……逃げ切れるかなぁ」

ダカッダカッダカッダカッ!!

巨大蠍の攻撃を華麗にかわして走るユニコーン。

配達屋(いつまでも逃げれるわけじゃないし、何か手を打たないと。手〜手〜)

巨大蠍「キシャアアアアア!!」

27

--砂漠--

配達屋「お! あれに見えるは!」

配達屋が見つけたのは大きな亀裂。

配達屋「なんて言ったけ? クレパスだ! 行こうユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!!」

ユニコーンはクレバスに方向転換する。

ダカッダカッダカッダカッ!!

巨大蠍「キシャアアアアア!!」

巨大蠍の足も速く、その凶悪な鋏が少女の頭を砕こうと幾度となく振り下ろされた。

ズガァン!!

配達屋「あぁ怖い怖いぃー……ユニちゃんがんばですー!」

ユニコーン「ひひーん!!」

ダカッダカッダカッダカッ!!

28

--砂漠--

配達屋「!!……このクレパス思ったより……おっきい」

徐々に見えてきたクレバスの全貌、向こう側まで五十メートルはあろうか。

配達屋「……」

ダカッダカッダカッダカッ!!

巨大蠍「キシャアアアアア!!」

巨大蠍の鋏が少女目がけて振り下ろされ

配達屋「……勝った! いっけーユニちゃん!!」

ユニコーン「ひひーん!!」

ダンッッ!!

ユニコーンは力いっぱい踏み込み、跳躍した。

29

--砂漠--

巨大蠍「」

ゴォオ!

配達屋「うわー! 空飛んでるみたいー!!」

帽子を押さえながら少女は絶叫する。

ユニコーン「ひひん」

配達屋「いやーうちのユニちゃんは脚力自慢で良かったですよ。ユニちゃんだからこそ取れる戦法でした」

ユニコーン「……ひひん」

配達屋「え? なに? この後どうするのかって? 配達を続けるに決まってるじゃないですか。あ、オアシス探すのが先だっけ?」

ユニコーン「ひひん……」

配達屋「そんな話じゃない? 今? どうやって着地するのかって? そんなのユニちゃんの四本足でドカッと」

ユニコーン「……ひひん」

配達屋「……届かなかった?」

丁度クレバスの真ん中で失速している少女とユニコーン。

配達屋「……さすがに遠かったと?」

ユニコーン「ひひん……」

配達屋「……あちゃー」

どーん……

30

--砂漠--

配達屋「あー死ぬかと思いました。本当死ぬかと思いました」

ユニコーン「ひひーん」

配達屋「あっ! まだ文句言いますか? 丁度川が流れててよかったじゃないの。喉の渇きを癒せたし、胃袋もパンパン、水筒ちゃぷちゃぷ」

ユニコーン「ひひーん……」

配達屋「何? 退職したい? バカなこと言っちゃいけませんよ、ユニちゃんと私は一心同体、言うなれば運命共同体、さらに言うなら半導体です」

ユニコーン「……」

配達屋「……機嫌なおして下さいな。帰ったら可愛い牝馬さんをご紹介しますから」

ユニコーン「ひひん?」

配達屋「本当です。私は嘘をつきません」

ユニコーン「ひひーん……」

配達屋「あれ? 何かいますね……まさかまたさっきの巨大な蠍さんじゃ」

ドドドド

配達屋が見たのは馬車とそれを馬で追う見るからに悪役な人間。

配達屋「トラブルぽいですね。ユニちゃん行きましょうか」

ユニコーン「ひひーん」

31

--砂漠--

ダカッダカッダカッダカッ!!

悪役「おらぁ馬車止めろ!!」

商人「ひぃ!! 止められるか!! 止めたら荷物奪うだろうが!!」

悪役「当たりめぇだ!! あちきはこの砂漠をねじろにしている、史上最強の盗賊団、砂漠の風の一員だぞ!? 盗賊が物奪わなくてどうすんだ!!」

商人「さ、砂漠の風!? くそっ! 砂漠の風は善良な市民からは奪わないんじゃねえのかよ!!」

悪役「ちっ、めんどくせぇな……馬車ごと奪おうかと思ってたがめんどくせぇ、風属性攻撃魔法、レベル2!!」

ユユン

商人「!?」

ドガァァン!!

悪役が放つ風の弾丸が馬車の後輪を破壊する。

32

--砂漠--

ギギー!!

商人「うお、おああー!!」

ドザガシャー!!

バランスを崩した馬車は横転し、商人は砂漠に投げ出された。

商人「てっ……てて……む、無茶しやがる……」



ダカッダカッダカッダカッ

配達屋「あっ、馬車が大変なことにー」

ユニコーン「ひひーん」

配達屋「そうですよ? 困った時は助けてあげませんと」

33

--砂漠--

がさっ

悪役「ふん、まぁこれだけあらぁいいか」

馬車から荷物を背負った悪役は、さっさと馬に乗って行ってしまう。

商人「ぐ、くそぉ……取られちまった……」

ダカッダカッダカッダカッ

商人「……?」

ユニコーン「ひひーん!」

配達屋「どうどうー。もし、そこのお方、怪我は大丈夫ですか?」

商人「あ、あぁ……幸いそれほど深刻じゃあ無さそうだ。回復アイテムも一応持ってるし……だが荷物を奪われちまった……」

配達屋「ふむ、そのようですね」

34

--砂漠--

商人「……くそ、砂漠の風がこんなことしてくるだなんてよ……」

配達屋「……砂漠の風?」

商人「あぁ。本当かどうかは知らないが奴は自分でそう言ってやがった……」

配達屋「なんとまぁ偶然。ユニちゃん」

ユニコーン「ひひん」

ユニコーンの向きを悪役が向かった方向に変えた。

商人「? おいあんたまさかあいつを追う気じゃ」

配達屋「怪我は大したこと無さそうですし一人でも大丈夫ですよね。私はあの人を取っ捕まえてきます」

商人「!? ば、バカ言うな!! あいつは砂漠の風の一員かも知れないって言っただろうが!!」

配達屋「拝聴しました。ですがどのみち私には用があるのです。砂漠の風に」

商人「……はっ!?」

配達屋「ごめんやっしゃ」

ダカッダカッダカッダカッ!

商人「……ば、バカ野郎」

35

--砂漠--

ダカッダカッダカッダカッ

悪役「ふふん、ちょろかったなぁ。これだから商人を襲うのはやめられねぇ」

……ダカッダカッ

悪役(! 何かくるか)

悪役が振り替えると、後ろから馬に乗って手を振りながら近づいてくる者がいた。

悪役(……なんだあいつ)

配達屋「おーい! 待って下さいよー」

ぶんぶん

悪役「なんだてめー! あちきに何か用でもあんのかー!?」

配達屋「はいー! 商人さんから奪った荷物の返還をお願いに来ましたー!」

悪役「……は?」

にこやかに笑いながら配達屋はそう言った。

36

--砂漠--

悪役「……バカにしてんのかおめー」

配達屋「はい? なぜにそうなります?」

悪役「ッ! 盗賊が盗んだものを簡単に返すと思ってんのか!?」

配達屋「あー……沽券に関わりますか? それともプライド?」

悪役「」

悪役は話が通じないと判断し、会話をやめて馬の速度をあげた。

ダカッダカッダカッダカッ!!

配達屋「あーちょっとー……もう仕方ないですね」

ユニコーン「ひひーん」

配達屋「はい。こうなってしまっては実力行使しか無さそうです」

配達屋は背負ったリュックの中からパチンコを取出して狙いをつけた。

37

--砂漠--

ぎりぎり

配達屋「んんー……えいっ!」

ぱちんっ

配達屋が放ったパチンコ玉は大きな弧を描いて、

ひゅるる、こん

悪役「……なんだ今の」

悪役の頭に当たった。

配達屋「やった当たりました! さすが私」

悪役「……石でもぶつけてきたのか? んなことしたってなんにもなりゃしないのに」

配達屋「条件達成! レベルアップ!」

配達屋はリュックから傘を取り出して、まるで騎乗兵のように槍を持つ構えを取る。

38

--砂漠--

ダカッ

悪役「頭がいかれちまったか?」

ダカッ

悪役「!?」

悪役は目を疑った。

ダカッダカッ

ユニコーンが一歩、また一歩地面を踏みしめる度に、ユニコーンの体に鎧が現われたのだ。

ダカッダカッダカッ!

それはユニコーンに乗っている配達屋も同様。さっきまで傘だったものは、今や彫刻の入ったランスになっていた。

配達屋「レベル2、騎士!!」

39

--砂漠--

ダカッダカッダカッダカッ!!

悪役(!? はえぇ!!)

先ほどよりも確実に重くなっているはずなのに、なぜか数段速くなっていた。

悪役(……騎士スキルによる速度補正か? つかこいつ……何をしたんだ?)

ダカッダカッダカッダカッ!!

ランスを構えて迫る配達屋。
それを迎え撃とうと、悪役は馬上でナイフを握り締める。

悪役(リーチに差があんな……戦闘中にジョブチェンジなんてそんなもんありかよ……!)

ダカッ!!

配達屋「はいやー」

ガギィン!!

跳躍とともに繰り出された槍を、悪役はナイフで弾いてみせる。

悪役(ぐっ! 見かけだけじゃない! この打ち込みは本物だ!!)

40

--砂漠--

配達屋「っと。やりますね! はいーっ!」

ガギィン、ガガギィン!!

悪役「ぬっ、くっ!」

馬上での攻防、槍とナイフの打ち合い。そんなもの槍が断然有利に決まっていた。

ズキィン!!

悪役「!!」

悪役のナイフは弾かれて宙を舞う。

ユニコーン「ひひーん」

配達屋「ふぅ、勝負ありですね。どうです? これ以上やるのも面倒くさいですし、降参していただけませんか?」

悪役「……ちっ!」

ダカッダカッ……

悪役は馬を止めると、奪った荷物を配達屋に差し出した。

41

--砂漠--

配達屋「おぉ! 物分かりがいい人で助かりました。こちらとしては荷物を返して頂いた後に、あの商人さんにぺこりと頭を下げて謝罪と賠償をしていただければ何も問題は」

バッ!

配達屋の手が荷物に触れる瞬間、悪役はそれを自分たちが来た方向に投げ捨てた。

悪役「荷物は仕方ねぇが後のことはごめんだね!!」

ダカッダカッダカッダカッ!!

そう言って全速力で走っていく。

配達屋「……やられました。荷物を取るべきか犯人を追うべきかの二択……そんなもの、荷物に決まっていますよね」

ユニコーン「ひひーん?」

配達屋「何を言っていますか、面倒くさいから追わないなんてことあるわけないでしょう?」

配達屋は荷物の傍まで行くと馬を降りて荷物を手に取った。

配達屋「ふぅ。ミッションコンプリートです」

「ぎしゃあああああ!!」

その時何かの鳴き声を聞いた。

42

--砂漠--

配達屋「!? この鳴き声!」

悪役「う、うわぁぁぁ!?」

巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

配達屋「さっきの巨大モンスター!? 私を追ってきたんですね……!」

配達屋は荷物を放り出してユニコーンにまたがる。

ユニコーン「ひひーん?」

配達屋「えぇそうですよ。私は犯人より荷物を優先します。ですが荷物より人命なのです」

ダカッダカッダカッダカッ!!

悪役「く、くそついてねぇぞ……こんなのがこの辺りに来てたなんて!」

悪役はなんとか逃げようとするが、

巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

巨大蠍の凶悪な鋏が、

悪役「ひっ!?」

振り下ろされた。

ガギィィィン!!

43

--砂漠--

巨大蠍「ぎっ!?」

ザザザザー

悪役「……?……あれ? 生きてる……」

ザン!

悪役の前に立っているのは、

配達屋「こうなってはいたしかたありませんね。先程ストーキングされた憤りをぶつけさせていただきましょう」

ユニコーン「ひひーん!」

悪役「……は? さ、さっきの攻撃……防いだのか?」

配達屋「はい。犯人である貴方に死なれると、商人さんの馬車の修理代を請求出来ないだろうと思いまして」

悪役「ば、バカ言いやがって! さっさと逃げろ! こいつはこの砂漠のボスクラスだぞ!? お前一人で適うか!!」

配達屋「かもしれませんがそうじゃないかもしれません。今さっき蠍さんの攻撃を弾くことが出来ましたし」

巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

配達屋「っと話をしている場合じゃありませんでした。どうやら無事に標的が私に代わったようですね。ユニちゃん!」

ユニコーン「ひひーん!」

ユニコーンは巨大蠍に向かって走りだした。

44

--砂漠--

ダカッダカッダカッダカッ!!

巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

配達屋「ユニちゃん適当に回避」

ずしゃー!

ユニコーンは巨大蠍の鋏をかわして、伸ばしたその腕を駆け登る。

ダカッ!!

悪役「お、おいおい」

配達屋「てやー」

ギギィン!

配達屋「あー……駄目ですね硬いですね。私のランスが跳ね返されてしまいます」

ヒュン!

今度は巨大蠍の尾が配達屋とユニコーンを狙う。

ギィシン!

配達屋「あ、あぶな……こらユニちゃん、適当に回避してくださいと言ったでしょうに」

ユニコーン「ひひーん!」

45

--砂漠--

ガギィン、ガガァン!!

悪役「巨大蠍の上で戦ってやがる……」

配達屋(しかしこれでは埒があきませんね……かくなる上は)

配達屋達は、一度巨大蠍の身体から降りて距離を開けた。

巨大蠍「ぎしゃあ……」

巨大蠍の身体の向きが配達屋達に向けられる。

配達屋「氷属性攻撃力上昇魔法、レベル2」

ビキーン!

配達屋は、構えた槍の攻撃力を魔法で強化する。

悪役「!! ば、バカ!! ちょっと強化したくらいで貫けるか!! 逃げろ!」

配達屋「ユニちゃん……ゴーですよ」

ユニコーン「ひひーん!」

ダカッダカッダカッダカッ!!

46

--砂漠--

巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

ダカッダカッダカッカッ!!

配達屋「重ねて申し上げます。氷属性攻撃力上昇魔法、レベル2」

ビキキーン!!

悪役「な!?」

ダカッダカッダカッダカッ!!

ユニコーンは巨大蠍の鋏と尾を掻い潜り、

配達屋「更に重ねて申し上げます。氷属性攻撃力上昇魔法、レベル2!!」

ヴィキヴィキ!!

悪役「三重!?」

ダカッ!!

ユニコーンは巨大蠍の顔目がけて跳躍する。

配達屋「はああぁー!」

魔力で練り固められた氷の槍が、

ズブッ!!

巨大蠍「ッ!!」

巨大蠍の頭部に突き刺さった。

47

--砂漠--

巨大蠍「ぎしゃあああああああああああああ!!」

ズ……ズズーン!!

断末魔とともに崩れ落ちる巨大蠍。

配達屋「はっ、はっ……なんとか……やれました?」

ユニコーン「ひひーん」

パキィン

配達屋とユニコーンを覆っていた鎧が砕け散る。

配達屋「レベルアップタイムの効果時間ギリギリでしたか……ひゃー危ない危ない」

悪役「ま、まじか……」

悪役は大地に寝そべる巨大蠍を見て唾を飲んだ。

悪役(あいつ……まじで倒しやがった……隊長レベルじゃないと無理だと思ったのに……)

48

--砂漠--



配達屋「犯人さん、お怪我は大丈夫ですか?」

ユニコーン「ひひん」

悪役「……あぁ」

配達屋「それはよかっです。あのぉ、これから商人さんの所に戻ろうと思うのですが、来て、いただけますね?」

悪役「……」

配達屋「なにぶん今の戦闘で疲れちゃったので、自主的に来てもらえると嬉しいかな、って」

悪役「……あっ!?」

配達屋「どうかしました? って注意をそらして逃げる気でしょう!? いけませんよー」



悪役「ち、ちげぇって! 後ろ後ろ!!」

49

--砂漠--

ズズ

配達屋「そんな古典的な手段で私を騙せると思っているなんて。遺憾の意を表明します」

ズズズ

配達屋「あら? おっきな影……雲で太陽が隠れたんですねきっと」

ズズズズ

悪役「いいから後ろ向けーッ!!」

配達屋「くるり」

巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

そこには倒したはずの巨大蠍がいた。

配達屋「……あらまぁ」

巨大蠍「ぎしゃあああああ!!」

悪役「い、怒り狂ってやがる……! おいお前! さっきの変身しろよ!!」

配達屋「私、もう魔力がガス欠でして……」

ユニコーン「ひひーん」

配達屋「……これは終わったかもわかりませんね」

50

--砂漠--

巨大蠍「ぎしゃああああああああああ!!」

チン

その時、小さな金属音が鳴った。

巨大蠍「……ぎゃ、ぎゃ……」

ズル

配達屋「……あれ?」

巨大蠍の身体が左右でズレている。

巨大蠍「ぎゃ、ぎしゃあああああ!!」

ブッシャー!!

巨大蠍は真っ二つに別れて崩れ落ちた。

ズズーン!

配達屋「……いっ、一体何が起きたのでしょう……」

ザリッ

?「おやおや。たまには散歩もしてみるもんでござるな。何もない辺鄙な所だと思っていたのに、まさかこんな麗しき女性と出会えるだなんて」

刀を持った男が巨大蠍の死骸越しに話し掛けてきた。

悪役「!! 侍隊長!!」

saga3て何さ!!というわけでこんばんは!!

初回限定版三日連続更新ということで明日も参る予定です。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは! 三日連続更新最終日です!!
それではさっさと投下していきます。

51

--砂漠--

?改め侍隊長「おやおや、こんな所にいたでござるか。占隊長が探していたでござるよ? アジトを抜け出してなにをしているかと思えば……」

侍隊長は場を見渡して状況を推測する。

侍隊長「何やら善くないことをしていたようでござるな」

悪役「!? そ、それは」

配達屋「助けていただきありがとうございます。あの、どちらさまです?」

侍隊長「おぉ、申し遅れましてござる。拙者砂漠の風の隊の一つを預かる者、侍隊長でござるよ」

配達屋「……砂漠の風の……隊長さんですか」

じり

配達屋は侍隊長との距離をあける。

侍隊長「あ〜ご心配無く、我ら一般人には危害を加えないでござるゆえ」

配達屋「え、そうなんですか?」

配達屋は侍隊長の全身を見る。

侍隊長「ござる」

52

--砂漠--

配達屋「……ではあの方が強盗を働いてみせたのにも然るべき理由があると?」

侍隊長「どうなんでござる?」

悪役「えっ、えっと……」

口籠もる悪役。

侍隊長「むぅ……。どんな組織にも例外はあるということで一つ……」

配達屋「はは……」

配達屋の乾いた笑い。

配達屋「あっ、そうだ、すっかり忘れていました」

配達屋はリュックを下ろし、ごそごそと何かを探り始める。

ごそごそ

侍隊長は悪役に、説明してもらうとでも言いたげな表情を向ける。

悪役(あ〜……終わったぞあちき)

53

--砂漠--

配達屋「ありましたありました。砂漠の風さんにお手紙が一通届いてまして……あ、名前の所が滲んでる」

配達屋が取り出したのはよれよれの手紙。

侍隊長「とすると貴女は郵便関係の方でござったか」

配達屋「あっ、すいません。名乗っていただいたのに自己紹介がまだでしたね」

配達屋は深々と頭を下げた。

配達屋「私は中央郵便局所属の配達屋と申します」

顔をあげる配達屋はにこりと笑う。

侍隊長「……うら若き女子の笑顔汗ばみバージョン……ごくり……はっ!? 拙者の真打ちが反応してしまってござる!?」

慌てて蹲る侍隊長。

配達屋「? どうしました?」

侍隊長「えっ!? い、いやなんでもないでござる!! 絶対になんでもないでござる!!」

54

--砂漠--

配達屋「大丈夫ですか? どこか具合でも?」

侍隊長「いやむしろ快調な勢いでござる!!」

配達屋「今までのどこに《モナリザの手を見た吉良吉影》になる要素が?」

侍隊長「あぁばれてたッ!! というかうら若き女子がそんな単語を口にするなんてッッ!!」

配達屋「いえ……そもそも私に話し掛けてきた時点で貴方のそれはフル《モナリザの手を見た吉良吉影》でしたし……」

侍隊長「そんな状態で自己紹介してしまったとは!!」

侍隊長は砂に顔を押しつける。

配達屋「いっそ清々しくて、見るからに《モナリザの手を見た吉良吉影》なんだけど実は《モナリザの手を見た吉良吉影》じゃない何かなんじゃないかと自分を疑いました」

侍隊長「それは……気を悪くさせてしまったでござろうな……拙者何の申し開きもござらん」

配達屋「申し開かれても困りますもの」

侍隊長「……全く……我ながら情けない……最近の拙者は若い女子を見るだけで《モナリザの手を見た吉良吉影》してしまうのでござる」

配達屋「健康な身体をお持ちのようで」

55

--砂漠--

侍隊長「拙者にとって女とは戦場のようなものでござる。戦場を眼にして刀を抜かずにはいられぬでござるのよ!!」

配達屋「いっそ出家しましょう?」

侍隊長「それが拙者両刀なので……」

配達屋「なら去勢しましょう?」

侍隊長「武士が刀を手放すことなどあってはならんでござる!!」

配達屋(というかそれは若い人がいる場所では常にたちっぱということになるのではー……)

侍隊長「あ、そうそうその封筒、拙者が預かるでござるよ。が、拙者今両手が塞がっているゆえ口にくわえさせて欲しいでござる」

配達屋「もう何がなんだか……」

配達屋はそれでも封筒を持って侍隊長に近づき、そっとグシャグシャにして口の中に押し込んだ。

侍隊長「あぐ。あ、あとよければ口汚く罵りながら顔を踏んで貰えると捗るでござる」

悪役(何が捗ると!?)

配達屋「だそうですユニちゃん」

56

--砂漠の風アジト--

侍隊長「全く、コソドロの真似事とは……砂漠の風の名が泣くでござるよ?」

顔に馬蹄の跡がある侍隊長は険しい表情で悪役を嗜める。

悪役「……申し訳ありません」(さっきのあんたの行動は号泣もんだけど……)

ざり

悪役「あれ、どこへ行くんですか? 隊舎はこっちですよ?」

侍隊長「いやちょっとパンツ汚しちゃったから」

悪役「馬に蹴られていったの!?」

侍隊長「くやしいでも感じちゃうみたいなでござる」

悪役(恐ろしい……てかタフだなこの人。こんな所で強いことアピールしなくても)

57

--砂漠の風アジト--

侍隊長「あ、あとこの封筒を」

べちょ

悪役「うわ……」

唾液でぐしょ濡れの封筒を悪役は手で受け取る。

侍隊長「うちの副部隊長に渡しといてくれでござる」

悪役「! わ、わかりました!」

侍隊長「……おやおや? 何か急にやる気になった感が……」

悪役「そ、そんなことないですよ! じゃあこのばっちぃの渡して来ます!」

侍隊長「それを渡し終えたらボスのとこで待ち合わせでござる」

悪役「……………………はい」

58

--砂漠の風アジト--

悪役「……」

悪役は副隊長の部屋の前まで来ていた。そわそわしていて何やら落ち着かない様子……。

悪役(だ、大丈夫かな。あちきまだろくに喋ったことないからな……)

悪役は深呼吸を繰り返し、

悪役(ええいままよ!)

コンコン

??「はい」

悪役「!!……あ、あの、占隊長の部隊の者なんですがっ、さ、侍隊長からお渡しするようにと仰せつかったものがありましてっ!」

??「侍隊長から……? わかりました今開けます」

……トントントン

悪役(はわ、はわわ)

59

--砂漠の風アジト--

ガチャ
ギィ

悪役「ひっ!?」

現れた男は胸元がはだけたワイシャツ姿。灰色の髪の毛からは水が滴り落ちていた。

悪役「はわ、はわわ!」

??「すいませんシャワーを使っていたものですから……で、うちの隊長から一体何を?」

美形で高身長でおまけに紳士。完璧だった。

悪役「あ、ああ、あの! これ受け取って下さいっ!!」

まるでラブレターでも渡すかのようにそれを渡す。

??「ぐ、ぐしょぐしょ……? なんなんだろうこれ」

男はそっと中身を取り出して見てみる。

??「闇競り市の商品一覧……?」

数百に渡る闇の商品の名前がそこにびっしりと書き込まれている。

60

--砂漠の風アジト--

??「侍隊長は何と言ってこれを?」

悪役「いえ特には……ただ見てみればわかる、と」

??「……」

男にはわからなかった。

??(クルタ族の目玉を奪ってこいとかそういうことじゃあ無さそうだし……あ)

一つだけアンダーラインが引かれた商品があった。

??「麗しの姫人形?」

悪役「あ、あの! それじゃ私はここで!」

??「あぁ、わざわざありがとう」

男は悪役に笑みを向ける。

悪役「し、失礼しますっ!!」

タタタッ

??「……麗しの姫人形……?」

61

--砂漠の風アジト、ボスの部屋--

鬼姫「成る程……」

砂漠の風のボスである鬼姫は、高そうなベッドに横になって話を聞いていた。

侍隊長「なので拙者と副隊長に個別行動させて欲しいのでござる」

鬼姫「はー……まぁ元々がそうだったっすもんね。となるとやっぱりもう帰ってこない感じすよね?」

侍隊長「拙者はここに残る所存でござるが……彼は……」

鬼姫「……ん」

侍隊長「鬼姫殿」

鬼姫「んー……まぁしつこい女は嫌われちゃうっすからねぇ。仕方ない……っすかね」

鬼姫は毛布にぐるりと包まった。

侍隊長「恩に着るでござるよ、鬼姫殿」

鬼姫「いいっていいって。君たちはこの三年間身を粉にして働いてくれたっす。このくらいの要望はオッケーすよ」

ごろろん

62

--砂漠の風アジト、ボスの部屋--

鬼姫「ただし、最後のミッションとして行って貰うっす」

侍隊長「え? 最後のミッション?」

鬼姫「そうっす。あの闇競り市は結構なお宝がざっくざくっす。しかも悪いやつらが非合法に手に入れたものばかり……」

侍隊長「……」

鬼姫「全部奪うっす」

侍隊長「さ、さすがに拙者ら二人だけでは……」

鬼姫「二部隊まで持って行っていいっす、そのかし失敗したら退団は取り消しっす」

鬼姫は八重歯を見せて笑う。

侍隊長「うーん。ただでは起きない御人にござるよ。了解したでござる。拙者の命にかえてもそのミッションはたしてみせるでござる」

63

--砂漠の風アジト--

ギィ

??「あ、侍隊長。お疲れ様です」

部屋に侍隊長が入ってくるのを確認すると、男は立ち上がって頭を下げる。

侍隊長「さっきの書類、目を通したでござるか?」

??「えぇ……なぜ侍隊長は私にこれを?」

侍隊長「……見てもわからないでござるか? アンダーラインが引かれた商品の説明を見ても」

??「……すいません。よくわかりませんでした」

侍隊長「そうでござるか」

??「侍隊長……今日は泊まっていけるのですか?」

侍隊長「いや今日はそんなつもりで来たのではないのでござる。泊まるけど」

??「よかった。今コーヒーを入れますね」

侍隊長「……本当に……それを読んでなんとも無かったのでござるか?」

64

--砂漠の風アジト--

??「はい……」

がしっ

侍隊長は男の右腕を掴む。

侍隊長「それには拙者達の大事なものが書かれているのでござる……」

??「そうなんです、か」

男の後ろに回る侍隊長。

??「ですが侍隊長」

侍隊長「ん……?」

??「僕が一番大事に思っているのは侍隊長……貴方だけです」

侍隊長「……」

ベーコンでレタスな感じしかしない。

65

--砂漠の風アジト--

侍隊長「やれやれ……都合上仕方が無かったとはいえ……ここまででござるな」

侍隊長は腕を放し、懐から一枚の写真を取り出した。

侍隊長「記憶を……取り戻す時が来たのでござるよ」

??「!!……い、いやです」

男は侍隊長の胸に飛び込んだ。

侍隊長「こ、こら」

??「僕は……怖いんです。最初は記憶の無いことに恐怖がありましたが、今は……今の生活は幸せなんです。もし記憶を取り戻して……それで……それで貴方への想いまで……失ってしまったらと考えると」

侍隊長「……光栄でござる……だが、いつかは記憶を取り戻さねばならぬのでござるよ」

??「い、いやです! 侍隊長!!」

侍隊長「今なら力がある……!! さぁ記憶を取り戻すのでござる!! アッシュ殿!!」

侍隊長が突き付けた写真は、ツインテールにしている見た目美少女のお風呂盗撮写真だった。

??改めアッシュ「!? こっこれは!!!! あ、あぐあぐあああ!! あ、頭が!!頭が!!」

66

--砂漠の風アジト--

アッシュは頭を抱えて叫ぶ。

侍隊長「愛を取り戻せでござる!!」

アッシュ「ぐあああ!! あああああ!!」

アッシュの頭の中にいろんな場面が浮かんでは消える。

『……くん』

誰かの懐かしい声が。

アッシュ「ぐぅぅぅああ!!」

『ッシ……くん』

大事な人の声が頭に響く。

アッシュ「はにゃあああああ!!」

アッシュの髪の色が、徐々に紫に変わっていく。

『アッシュくん』

アッシュ「んあああああああああああああああああ!!!!」

がくっ

激しい叫びの後、アッシュは床に倒れ込む。

67

--砂漠の風アジト--

侍隊長「アッシュ殿!!」

アッシュ「ツイ……ンテ」

そう呟いてアッシュは涙した。

侍隊長「!! 取り戻したんでござるな!! 記憶を!!」

侍隊長はアッシュを抱えて立ち上がらせる。

侍隊長「いやぁよかった! うまくいくか五分五分でござったが、いい方向に転んだでござるなぁ」

アッシュ「……おい」

侍隊長「ほにゅん?」

アッシュ「触んッじゃねーよクソがッ!!」

びくっ!

侍隊長「あ、アッシュ殿……?」

アッシュ「貴様……お、俺が記憶を失ってる間に……間に!!」

ドゴッ!

侍隊長「あげふっ!!」

68

--砂漠の風アジト--

ズダーン!

殴り飛ばされる侍隊長。

アッシュ「貴様というやつァ……!」

アッシュは指を鳴らしながら侍隊長に殺意の視線を送る。

侍隊長「ぬ……やっぱりこの三年間の記憶は上書きされずに残ったでござるか……ユーはショック!?」

アッシュ「うるせーよ!!」

げしげし!

侍隊長「い、致し方なかったのでござる!! 戦闘でのダメージと仲間を失ったショックから記憶をなくしたアッシュ殿は、純粋無垢な雛鳥に見えたのでござる!! 小姓にするしか無かったでござる!!」

アッシュ「っざけんなっ!! 記憶をなくした奴によくもあんなことをォォ!!」

げしげし!

侍隊長「うぐぅん! の、のっぴきならない事情があったのでござる!!」

アッシュ「貴様がおもちゃにしたかったっていう事情か!?」

侍隊長「アッシュ殿は記憶を失っていなければ死んでいたでござろうからな」

69

--砂漠の風アジト--

ぴた

アッシュ「な……なに」

侍隊長「ふー……アッシュ殿もこの三年間の記憶があるならわかってるでござろう? 鍛練に鍛練を重ねた今のアッシュ殿は、強い」

アッシュ「ッ……!」

侍隊長「……アッシュ殿は仲間がやられたとあれば、遮二無二突っ込んで行ってしまうお方でござる。三年前の弱い時に記憶が戻っていたなら、アッシュ殿は無駄に命を散らしていたでござろう」

アッシュ「……」

侍隊長「アッシュ殿を鍛え上げるには、記憶を失ったままにしておくべきと考えたのでござるよ」

アッシュ「……記憶が上書きされたらどうするつもりだったんだ?」

侍隊長「それでも身体は覚えているはずでござる」

キュッ、と菊が閉まるのを感じるアッシュ。

70

--砂漠の風アジト--

侍隊長「機は熟せり。アッシュ殿は強くなり、仲間の生き残りの居場所も判明してござる……!! アッシュ殿、行こうでござる!!」

アッシュ「……そうか」

アッシュはくるりと背を向けた。

アッシュ「……確かにお前の言うとおりだ……記憶を失う以前の俺なら、お前の訓練を真面目に吸収したとも思えないしな……礼を言う」

侍隊長「礼には及ばぬでござる……全てはダイヤの原石を磨き上げたいと拙者が思ったことでござれば」

アッシュ「しかし」

侍隊長「む?」

ドゴッ!!

アッシュの回し蹴りが侍隊長の鼻を折る。

侍隊長「あっひょひょわー!!」

71

--砂漠の風アジト--

アッシュ「……俺を小姓にしてBL三昧する必要はないわけだが……」

侍隊長「そ、それはその……レッスン料と言うか」

アッシュ「」

アッシュはナイフを抜く。

侍隊長(!! やられる!!)

強くなったアッシュが放つ殺意は、侍隊長でさえ危機を感じるレベルである。

アッシュ「お前のせいで……俺のケツがガバガバじゃないかーー!!」

どかーん



悪役「け、ケツ!?」

扉に耳を付けて盗み聞きしてた悪役。

72

--砂漠の風アジト--

アッシュ「ってわけだ、俺は退団する」

占隊長「うぅ性格が真逆に……可愛くていい子だったのに……」

筋隊長「うはは! そいつぁ淋しいなぁアッシュ!」

忍隊長「抜け忍は切り捨てるのみ……」

鯱隊長「み、水……」

蜂隊長「どうするのブーン? 女王様」

部隊長達の視線が鬼姫に集まる。

鬼姫「……砂漠の風のナイフを持ってここに来た日が三年前っすか……懐かしいっす」

侍隊長「ははは。まさかアジトを指し示す方位磁石の役割もしてようとは、思いもしなかったでござるなぁ」

鬼姫「いずれこうなることはわかってたっす。退団は許可するっすよ」

73

--砂漠の風アジト--

アッシュ「おう」

アッシュと鬼姫は数秒間見つめ合った。

アッシュ「……世話になった」

そう言ってアッシュが頭を下げると、さっさと部屋から出ていってしまう。

鬼姫「……みんな、退団パーティーの準備っす」

ざわ!

蜂隊長「なっ!? あ、あれを……やるつもりブーン!?」

占隊長「占い結果……大凶……」

忍隊長「主のためなら死地にゆくのもまた……」

筋隊長「うははっ! うはっ……ははっ……」

鯱隊長「」

侍隊長「?一体何が始まるんです?」

74

--砂漠の風アジト、外--

その夜。

鬼姫「奇跡のカーニバルの始まりだ!!」

ワー!

アッシュ「……何が始まったコレ……」

男は全て女装状態。

占隊長「砂漠の風の退団式はね……いっつもこうなのよ」

山盛りの食事に樽で積まれる酒。

鬼姫「さーさー! 今日はとことん酔いつぶれてもらうっすよ!! アッシュ君!!」

アッシュ「あれ? 俺って飲んでいいんだっけ?」

鬼姫「大丈夫大丈夫、この作品の登場人物は18歳以上ですって言っておけばなんとかなるっす」

アッシュ「エロゲじゃないのよ!!」

75

--砂漠の風アジト、外--

筋隊長「がはははー!! めでたいぞー!! 皆で舞えー!!」

ブラジャーのみで踊っている筋隊長。

どんちゃんどんちゃん

アッシュ「……」

侍隊長「……少し、名残惜しいでござるか?」

一人飲んでいたアッシュの元にセーラー服を着た侍隊長がやってくる。

アッシュ「……」

アッシュはグラスを傾ける。

侍隊長「あのパーティと負けず劣らず、いい人ばかりでござったろう?」

アッシュ「……」

わははははーー

アッシュ「……あぁ」

侍隊長「……」

アッシュ「だがそれでも、俺には助けたい仲間がいる。護りたいものがある」

スク水姿のアッシュは決め顔でそう言った。

76

--荒野--

日付が変わり、またも照りつけるような太陽が現れた。

かっぽかっぽ

配達屋「いやぁ、本当砂漠を抜けただけでも天国に感じますね。例え何もない荒地であっても」

ユニコーン「ひひん」

配達屋「無事配達物も渡せて万々歳でした。さて、ちゃっちゃともう一つの重要配達物を届けにあがりましょうか」

配達屋は新しい地図を広げてるのだが頭を傾げる。

配達屋「うーん……最近出来たばかりで……わかりづらいですね」

ユニコーン「ひひん?」

配達屋「いや、王国の入り口は確かにここら辺のはずなんですが、それらしきものはどこにもあらず……はて……」

ユニコーン「……ひひん」

ぶるる、っとユニコーンは進行方向を変えた。

配達屋「え、なんです? そっちじゃありませんよユニちゃん。そっちは崖」

ぱからっぱからっ

ユニコーンは制止を無視して走りだした。

77

--荒野--

配達屋「え、えぇ!? ユニちゃん何やってますか!? そっちはあかんですよぉ!? 反抗期っ!?」

ダカッ

ユニコーンはためらうことなく跳躍した。

配達屋「死にました」

潔いまでに諦めるのが早い配達屋。

ダカカッ

配達屋「とっ、あれ?」

しかし、なぜかユニコーンは空中に着地した。まるで見えない足場があるかのように。

配達屋「こ、これはまさか……カイジ的な!?」

かっぽかっぽ

そのまま空中を進むユニコーン。顎がとがる配達屋。そして、

びゅうん

配達屋「!……わぁ」

あるラインを越えると、幻想的な光景が辺りを塗り潰すかのように出現した。

78

--魔法王国--

配達屋「成る程……妖精の隠れ里と同じ手法で隠していたんですか……すごい……」

飛び回る妖精、魔法をかけられた家具や変わった姿の生き物が歩いていた。

魔法王国門番兵「お嬢さん、何しに我が魔法王国に?」

配達屋「あ、はい。私はお届けものがあって参りました。これがその手紙です」

魔法王国門番兵「ふむ……む! あの方に……成る程、こちらで渡しておきましょう」

配達屋「できればそうしていただけると助かるのですが、そうもいかないのです。その手紙の印を見て下さい」

魔法王国門番兵「印?……これは、第二級重要書物の印!」

配達屋「そうなんです。というわけで中立である私がそのまま渡さなくてはならないんです。なので入国許可と一日滞在許可を発行して頂きたく……」

魔法王国門番兵「成る程、わかりました。見ればお疲れのご様子ですし……休まれていって下さい」

門番兵は赤い石を配達屋にかかげて反応を見ながらそう言った。

門番兵「ん、大丈夫なようですね。ではようこそ魔法王国へ。夢のような一時をお過ごし下さい」

配達屋(テーマパークみたい)

ユニコーン「ひひん」

かっぽかっぽ

配達屋は魔法王国の門を潜る。

79

--魔法王国、魔法学校--

ガヤガヤ

講堂に集まった学生達は、講師が来るのを今か今かと待っている。

チャラ学生「おいお前聞いたか? 次の授業の講師のこと……」

眼鏡学生「もちろんです。まだ授業を通じて会ったことは無いですが、あの人を知らないほうがモグリと言うものですよ」

筋肉学生「何を隠そう、私はあの人の授業を受けたいがために、この魔法王国の学生となったのだ」

チャラ学生「ちぇ、なーんだみんな知ってんのかよ」

眼鏡学生「最年少で魔法学士就任、魔法属性変換の研究、錬金術における数多の発見……あの人の業績は素晴らしいものです。この国の人間でなくても知っていて当たり前でしょう」

チャラ学生ははんっ、と鼻を鳴らす。

筋肉学生「くぅぅ〜……やっと、やっとあの人に教鞭をふるって貰えるのだなぁ!! 感激!!」

筋肉学生は涙を流して喜んだ。

ヤモリ学生「うっわ、きっしょ……」

女学生の冷たい言葉の刃が筋肉学生を切り付ける。

80

--魔法王国、魔法学校--

チャラ学生「うっせーぞ亜人が!」

眼鏡学生「こらこら……口を謹みたまえチャラ学生君。その発言は差別的意味を含んでいる」

筋肉学生「うん、差別はダメだぞ差別は。亜人はもう人と同じ地位にいるんだからな」

ヤモリ学生「ふんっ」

チャラ学生「ちっ……お前のために言ったのによ」

眼鏡学生「誰のためでもです。亜人は人と並ぶ優秀な友人なのですから。それに亜人を悪く言うとあの人も機嫌を悪くされるでしょう」

ガララッ

チャラ学生、眼鏡学生、筋肉学生、ヤモリ学生「「「!!」」」

その時教室のドアが開かれた。

カッカッカッカッ

すました顔で入ってきたスレンダーな女性。

眼鏡学生(雪とみまちがうばかりの美しい白色の髪……)

筋肉学生(見るものの心を射ぬく赤き瞳……)

ヤモリ学生(足なっが)

チャラ学生「……猫耳」

?「みんな席に着くにゃ」

ミニスカで黒タイツで眼鏡で猫耳な講師が現れた。

あと0秒経てば書けるようになるです。っておかしいです!!

というわけで初回限定版三日連続更新でした。
申し訳ありませんが、次からはきっと毎週月曜日の週一更新に戻ると思います……。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。投下に来ました。
色々リンクを貼っていただいたり説明していただいたりとありがとうございます!!

えとご察しの通りこのssには前作、前々作がございます。なるべくこのssだけでも楽しめるようにしたいとは思っていますが、前のを読んでるとほんのすこし楽しくなれるかもしれません。

あと、≪このssで出てくるなんか見たことあるようなキャラ≫がいるかと思いますが、そのキャラをモチーフ(パクリ?)にしているだけでそのキャラと完全に同じ性格だったり口調だったり強さだったりするわけじゃありません。ご了承ください。

81

--魔法王国、町--

ぱかっぱかっ

配達屋「は〜……初めて来ましたがすごいもんですねぇ」

ユニコーン「ひひーん」

配達屋「魔法に特化するとここまで国の様子が変わるものなのですね、勉強になりました」

かぽっかぽっ

飴売り「そこの可愛らしいお嬢さん、魔法飴買っていかないかい?」

そう言って屋台の飴売りは、棒付きの大きな飴を配達屋に差し出した。

配達屋「魔法飴……? そうですね、いただきましょうか。例えよそで売っている飴と何ら変わらないのに名物っぽく売っているだけの商品だとしても」

飴売り「ひでぇ!?」

お金を渡して飴を受け取る配達屋。

82

--魔法王国、町--

飴売り「言っておくけど……魔法飴は読んで字のごとく魔法飴だ。心して舐めるんだな」

配達屋「何をおっしゃいますやら」

ぺろ

配達屋「!? これは青酸カリ!?」

ざわ

町を歩く人達が一斉にこちらに視線を送る。

飴売り「営業妨害だ!?」

配達屋「なんてね。なんてことないおいしい飴ちゃんです」

ぺろぺろ

配達屋「!」

しかし、舐めていると飴が光り出したではないか。

83

--魔法王国、町--

飴売り「ふふ……ここからが真骨頂だぜお嬢さん……うちの魔法飴には色んな魔法がかかっていてな」

ぽぅっ

飴が強く輝き始める。

飴売り「一定回数舐めると魔法が発動するのさ!! 売ってる俺にもどれがどれだかわからねぇが、そ」

バツン

ユニコーン「」

魔法町娘「」

魔法町青年「」

魔法町おじいさん「」

魔法町蟻「」

配達屋「……」

配達屋の服が弾けて粉々に。

飴売り「……トラブる飴だったみたいだな」

配達屋「訴訟」

84

--魔法王国、魔法学校--

カッカカッカッカカッ

黒板に錬金術の方式を書いているゴーレム。

?「という理由から一般的にはこちらの手法を優先することが多いにゃ。でもこれはそこまで時間をかけるようなプロセスとは思えないのにゃ。だからこっちの——」

眼鏡学生(くぅ……どの説明にも経験に裏打ちされた確かなものを感じます……)

筋肉学生(錬金術師は基本的に前線に立たないものだからな……異色の経験がここまでの技術を生んだのか)

ヤモリ学生(なるほどね……戦闘時には速くて効果的なものがいいものね……言われてみると確かにいらないものだと思えてくる)

カリカリカリカリ

チャラ学生「……」

チャラ学生はずっと講師を見ていた。
椅子に座って足を組み、ただ本に目を通しながら喋っているだけの講師。それが本当に優秀なのかと。

チャラ学生(まぁ……同時に三体もゴーレムを作り上げて操ってるのを見るとあながち嘘じゃないんだろうけど)

一体のゴーレムは黒板に文字を書き続け、一体のゴーレムは魔力の流れを模型で説明し、一体のゴーレムは講師の肩を揉んでいた。

85

--魔法王国、魔法学校--

チャラ学生(というか自立稼動にしたって、ここまで繊細に操るなんてそれはまるで人形師じゃねぇか)

眼鏡学生「チャラ学生君、ノートを取らないのかい? これだけの講義、ちゃんと記録しておかないと後で後悔するよ?」

チャラ学生にひそひそ声で話し掛ける眼鏡学生。

チャラ学生「……よし」

チャラ学生は輪ゴムで小さな弓を作り始める。そして鉛筆の芯を削り出して矢を作成。

眼鏡学生「ちょっと何をするつもりですか」

チャラ学生「まぁ見てろよ」

チャラ学生はお手製の弓に魔力を流す。

眼鏡学生「そんな弓矢でも魔力による強化でそこそこ威力がでます。いたずらにしては過ぎてますよ」

チャラ学生「それほど優秀ならこんなもの目を瞑ってたって避けれらぁな」

びっ、ガシッ

チャラ学生、眼鏡学生「「!?」」

発射した矢は講師に届くどころか、放った瞬間、チャラ学生の机から腕が生えてきて矢を掴んだ。

86

--魔法王国、魔法学校--

チャラ学生「なっ……」

材質は机と同じ木。

眼鏡学生「この距離にあるものを……一瞬で錬成したのですか?」

ざわざわ

チャラ学生「はっ!」

チャラ学生が気付いた時にはゴーレムに首根っこを捕まれていた。

?「おいたをするほど元気があまっているにゃら、実技の手伝いをしてもらおうかにゃ」

とんっ

ゴーレムはふわりと跳躍して講師の横に着地する。

?「そうだにゃ……人体を錬金術で改変してみるかにゃ?」

チャラ学生「ひっ、ひぃ!?」

ルビーのような赤い眼に見つめられ、チャラ学生は恐怖を覚えた。

87

--魔法王国、魔法学校--

こんこんっ、がちゃ

人形師「失礼しまぁす。先生、ちょっとこちらへぇ」

?「あ、はい。なんですかにゃ?」

講堂のドアを開け、人形師は手招きしている。

人形師「こちらの女性が貴女に配達物があるとかでぇ」

配達屋「……」

そこにはタオルで身体を隠す痴女がいた。

?「……一体……」

配達屋「これを……どうぞ……」

?「?……」

差し出された手紙を受け取った講師は魔力を流して開封した。

?「……!? これは!!」

88

--魔法王国、魔法学校--

カッカッカッカッ

早足で廊下を行く二人。

人形師「どうしたんですかぁいきなりぃ。授業ほっぽっていくだなんてぇ」

?「急ぎの用事が出来ましたにゃ人形師先生」

人形師「急ぎの用事ぃ?」

?「と……」

講師はくるりと振り返り人形師に頭を下げた。

?「先に言っておきますにゃ。人形師先生、三年間ご指導ありがとうございましたにゃ」

人形師「? なんです急にぃ……まさか貴女ぁ、ここを出ていくおつもりでぇ?」

?「はい」

人形師「むぅ……それほどの用事となると……あれですかぁ。いえ礼にはおよびませんよぉ、貴女を育てることは北の王国の意志であり、北の王国のためにもなりますからぁ」

?「はい……」

人形師「自分の信じる道をいきなさぃ。後悔なきように」

人形師は顔をしわくちゃにして笑った。

89

--魔法王国、町--

配達屋「やれやれ、この職についてからずっと使っていたお気に入りの服でしたのに……まぁでも損害賠償でふんだくったお金もありますし、新しくていい服が買えるとプラス思考でいくことにしましょう」

ユニコーン「ひひーん」

配達屋「あなたに服なんていらないでしょー? 年がら年中全裸なんだし。局部丸だしだし」

ユニコーン「ひひーん」

配達屋「いいんです。お馬さんなんですから存分にちんちんぶらぶらさせちゃってください」

取りつく島もなく、配達屋は一人で服屋に入っていった。

服屋店員「いらっしゃいませお客様。何をお求めでしょうか?」

配達屋「ぱんちらしただけで男を魅了できるようなパンツを所望します」

その客は来店した直後、タオル一枚でそう言った。

90

--魔法王国、魔法学校--

カッカッカッカッ

?「!」

疾風「とっ、なんや……あんたたちも魔導長に用があるん?」

曲がり角から早足で歩いてきた疾風とぶつかりそうになる。

?「うん。話したいことがあるにゃ。疾風もかにゃ?」

疾風「そうなんよー。丁度空き時間できたからお昼いこーって思っとったのに急に呼び出されてなー」

残念そうな顔で疾風は肩を落とす。

人形師「ふぇっふぇっふぇっ。食べてばかりいるとすぐ太ってしまいますぞぉ」

疾風「なっ!? れ、レディに向かってなんてこと言うんやこのじい様は!!」

?「……例え多少太るんだったとしてもここに行くならそれもいいにゃ……」

講師は自分の胸を揉みながら切なそうな顔をした。

疾風「全く。ほなら一緒にいこか」

91

--魔法王国、魔法学校--

コンコン、ガチャ

疾風「失礼しますー。どうしたんや魔導長ちゃん。何かあったん?」

?「失礼しますにゃ」

人形師「なぜかわしも失礼しますぅ」

魔導長「なぜ呼んでない二人まで来ちゃったの?……まぁいっか。それがね疾風ちゃん、まずいことになったなの……北の王国が落とされたなの」

人形師「!?」

?「!!」

疾風「なんやてッ!? そんな……じゃ、じゃあ魔王軍は」

魔導長「うん……これから各国の王で話し合いが行われるなの。私はこれから黄金王国に行ってくるから留守は頼んだなの」

疾風「そ、それはわかったけれど……」

疾風は振り返って二人を見た。

疾風(この二人は北の王国出身やったな確か……)

92

--魔法王国、魔法学校--

人形師「……北の王や残りの三隊長、それと国民はどうなったんですかぁ?」

魔導長「詳しくはまだわからないなの。でも国民のほとんどは脱出に成功してるらしいなの」

人形師「そう、ですかぁ。不幸中の幸いですなぁ」

?「……人形師先生」

人形師「きっと王と召喚士と狩人が上手くやったのでしょうなぁ……」

人形師はさびしそうな目で、窓の外の空を見る。

疾風「……ッ」

魔導長「酷だとは思うけど感傷に浸っている時間はないの。これから貴方は我が国に所属してもらうなの。そして北の王国の難民の受け入れの指揮を貴方に頼みたいの」

人形師「! ……そうですなぁ。北以外ではここに一番住んでいたわけですしぃ、貴女達には恩がありますしぃ……しかと了解いたしましたぁ」

魔導長「うん。これからもよろしく頼むなの。じゃあ私はちょっと行ってくるなの」

ガララ

魔導長は窓を開けて箒に跨り飛んで行った。

?「……!? し、しまったにゃ!! 言うの忘れたにゃ!!」

93

--魔法王国、魔法学校--

ガガァン!ギィギィン!

迅雷「っ! こ、こら待ちなさい!! ちゃんと授業に出なさい!!」

??「もー、こんなことしてらんないんだってばー。私は早く戦場に戻りたいんだから」

逃げる少女と追う女性。両者の共通点は両手に剣を握っていること。

チィギィアン!!

迅雷「ダメ! まだ貴女はここで学ぶことがあるよ!!」

学園の屋根の上を駆ける二つの光。

??「仕方ないなぁ。今日こそは迅雷お姉ちゃんを倒して出ていくから!」

ズガァァン!!

迅雷「っ!!」

ガガガガガァン!!

雷の剣と火の剣による猛烈な打ち合いは神速の域にある。

94

--魔法王国、魔法学校--

??「っ! やるじゃん迅雷お姉ちゃん」

迅雷「なっ!……貴女に剣技を教えたのは誰だと思っているの!」

ギィンギィンギィンギィン!!

迅雷が振るう剣の速度が先程のそれを越える。

??「っくあ! それでこそ迅雷お姉ちゃん!!」

ギッギギギギン!!

しかし、それを全て捌く火の剣の使い手。

??「ねぇ、奥義は使って来ない、のっ!?」

ギィン!!

迅雷「っぐ!? あ、貴女に使うわけがないでしょ!?」

95

--魔法王国、魔法学校--

??「……ふーん」

ギィアン!!

??「じゃあ負けちゃうかもよっ!!」

ギシアン!

迅雷「っ!! いい加減にしなさい!! 雷属性移動速度上昇魔法、レベル3!!」

バチバチバチ!!

??「おっ!」

迅雷が雷を纏ったと思った瞬間、

ズバッ!!

??「」

少女は雷の剣によって斬られていた。

96

--魔法王国、魔法学校--

迅雷(……!? この感触は!!)

??「残念でした!!」

迅雷が振り替えるより速く、

ボッ

火炎の球が迅雷にヒットする。

迅雷「ぐっ!!」

ボボボッ!!

追撃の火炎球、先の一撃で衣服を焼かれながらも、迅雷は冷静にそれらを弾く。

迅雷(く……今日はいつもと違う……? この子いつの間にこんな……)

??「さぁ行くよ迅雷お姉ちゃん、決着をつけちゃおう」

ボッ!

少女の双剣が燃え上がる。

迅雷(こんなところ魔導長に見られたら大変なのに……早く決着をつけなきゃ!!)

97

--魔法王国、魔法学校--

?「そこまでにゃポニテ」

??改めポニテ「へっ?」

小さなポニーテールを揺らしてポニテが振り向くと、

ぎゅるる

ポニテは魔法の紐で縛り上げられてしまう。

ぎゅるる

ポニテ「あっ! トラブるになっちゃう!!」

たわわに実った乳に巻き付く紐。

?「うるさいにゃデカ乳」

98

--魔法王国、魔法学校--

ポニテ「もー、せっかく面白くなってたとこなのにー。てか授業中じゃなかったのレンちゃん?」

?改めレン「それどころじゃ無くなったんだにゃ」

レンはそう言うと一枚の手紙をひらひらと振るう。

ポニテ「!! それって!」

バチュ!

ポニテは拘束していた紐を破壊するとレンに駆け寄った。

迅雷(!! 拘束魔法をいともたやすく……)

ぺら

ポニテ「!!……これがそうなんだよね?」

レン「多分間違いないにゃ」

ポニテ「……」

ポニテの顔つきが真剣に変わる。

99

--魔法王国、魔法学校--

迅雷「……? それは一体」

魔導長「なんの手紙なの?」

ポニテ、レン「「!?」」

二人に気付かれることなく、彼女らの上空にいた魔導長。

迅雷「!? ま、魔導長!?」

ポニテ「っ!」

レン「……そんな、出て行っちゃったかと思ったのに」

魔導長「忘れ物を取りに来たの。それでそれは一体なんの手紙なの?」

再度聞きなおす魔導長。

ポニテ「……大事な友達の行方だよ」

魔導長「……」

レン「……だからレン達はすぐにでもここを出ていかせてもらうにゃ」

迅雷「へ、へ!?」

100

--魔法王国、魔法学校--

レン「さっき言おうと思ったんだけどタイミングが悪くてこんなことになっちゃったにゃ……ごめんにゃ」

魔導長「……少し勝手すぎるなの」

ポニテ「ごめん魔導長お姉ちゃん、でも私達はこの日が来るのをずっと待ってたんだ!!」

魔導長「……なるほどなの。私達を利用して強くなるのが目的だったの……この国の為に役立ってくれるものだとばかり思っていたの……」

レン「……結果的にはそうなるにゃ」

迅雷「ちょ、ちょっとみんな! 何を言ってるの!?」

制止に入る迅雷。

魔導長「レンちゃんは優秀だから学園長になってもらいたかったの……ポニテちゃんには次の魔導長になって貰おうと思ってたの……」

迅雷(あれ!? 魔導長の職は私か疾風じゃないんだ!?)

ポニテ「ごめん……」

レン「ごめんなさいにゃ」

ヴキヴキヴキ

ポニテ、レン、迅雷「「「!!」」」

魔導長から魔力が溢れだす……不可思議な魔力……何も感じ取れないがゆえの、無色の恐怖。

魔導長「少し、頭冷やそうか」

闇の炎に抱かれて消えろ!

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

以後月曜更新になりそうです。

  ( ゚д゚)  「さぁて今日も投下するか……ん?145?」
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ 
  \/    /

     ̄ ̄ ̄


 
  ( ゚д゚ )
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_ 
  \/    /
     ̄ ̄ ̄



シノビン……なんちゅうことをしてくれたんや…なんちゅうことを…



以下強引後付け修正

・なぜあの時東の王国の証明書を持っていたのか?
シノビは東の王国が定めた勇者のパーティの一員だったのだが、東の勇者の命令で十代目を暗殺しに出向くが、十代目に惚れこんでしまい東の勇者パーティを脱退、十代目パーティに加入したのでした。
つまりシノビンはうっかり屋さんなので間違えて昔の証明書を出してしまったのです。(見直したら丁度地震があった頃なんですね。もうそんなに前のことだったとは……)

・なぜ北の王国の証明書が二パーティ分あるのか?
北の王国内部深くにまで入っている亜人保護団体が、亜人の勇者を認めさせるために強引に作りあげたのです(国の意向とは関係無く)。違法ですが勇者の力は本物になってしまったという話で……。



というわけで謝って!! シノビンのせいだから謝って!!


シノビ「……わかった」
http://wktk.vip2ch.com/upload.cgi?mode=dl&file=598
パス971


という茶番なんですが、ご指摘本当にありがとうございます。自分としても矛盾などがありましたら出来る限りこじつけてでも改善したいと思っているので、また何かありましたらよろしくお願いいたします。そのつどそのキャラに詫びさせますので(ゲス顔)

今回は本当に申し訳ございませんでした!!



そしてすぺしゃるさんくす友人

あ、↑は15禁?くらいになるかと思います。どうぞ自己責任でご観覧くだしあ

101

--魔法王国、魔法学校--

ディン!!!!

世界がピンクに染まった。

ポニテ、レン「「!?」」

ポニテとレンの体が拘束魔法を受け、身動きが取れなくなる。

迅雷「!! ま、魔導長!! いくらなんでもそれは!!」

魔導長「……」

ヴキヴキヴキ

世界中から魔力を吸い上げる魔導長の人差し指。

ポニテ「……ふ、ふふふ!!」

レン「なるほどにゃ……受けてたつにゃ」

ババチッ!!

拘束魔法を引きちぎり迎撃準備に入る二人。

102

--魔法王国、魔法学校--

迅雷(くっ、私が護るしか!!)

二人に駆け寄ろうとした迅雷だったが、

魔導長「降れ、降らせ星の光よ。奥義、星光破壊砲」

迅雷「え」

それよりも早く星の光は結集し、強烈な魔力砲が放たれた。

ズムッ

ポニテ「」

レン「」

ドギョギョgyゴヨギョギョギョギョギョギョgyゴyゴyゴyゴyゴyゴyゴygーー!!!!!!!!!!!!!!

103

--魔法王国、魔法学校--

迅雷「ぐっ!」

衝撃波で迅雷すら近寄ることが出来ない。それを途切れることなく二人は浴びせ続けられている。

ギャギャギャギャギャ!!

魔導長「……?……!?」

しかしポニテとレンはその中で動いていた。

ギャギャギャギャギャ!!

迅雷「!! 魔力障壁間に合ったのか!!」

とはいえ完全に押し負けていて、立つこともままならない。

ポニテ「ッ!」

レン「っ……っ」

104

--魔法王国、魔法学校--

ギャギャギャギャギャ!!

ポニテ(な、長い……!)

レン(重いにゃ……でも!)

ポニテの両剣が少しずつ持ち上がっていく。

魔導長「……」

レンがガクガクと震えながら立ち上がる。

迅雷「ポニテ……レン……」


  ポニテ、レン「「あの時の、心の痛みに比べたらへでもない!!」」


レンはポニテの魔力でできた剣を強化する。

バシュッ!!

それはまるで黄金でできているように輝きを発した。

105

--魔法王国、魔法学校--

レン「いくにゃ!! ポニテ!!」

ポニテ「はぁああああああああああああああ!!」

ドババババババアアアアアアア!!

ポニテの一振りは魔導長の魔力砲撃を切り裂いた。

ドッドォォン!!

二手に別れた魔力の束はポニテとレンの両脇を破壊し、大きな煙があがる。

ポニテ「……」

レン「……」

魔導長「……」

ポニテ「し、しまった学校が」

魔導長「……まさか斬るなんて思わなかったの」

106

--魔法王国、魔法学校--

シュウウウ……

レン「大丈夫にゃ。そんなこともあろうかとゴーレムを下に待機させてたにゃ」

魔導長「!……レン」

レン「魔導長、お世話になったにゃ。あの戦争の後拾ってくれて無かったなら、この国で匿ってくれて無かったなら、レン達はきっと死んでいたにゃ」

魔導長「……」

迅雷「レン……」

ポニテ「今があるのは魔導長お姉ちゃん達の……ううん、この王国のみんなのおかげだよ」

魔導長「……」

ポニテ「でも行かなきゃいけない……生き残った仲間の手がかりを見つけたんだ!」

レン「……あの子は……私達みたいに幸運がついていなかったんにゃ……」

107

--魔法王国、魔法学校--

魔導長「……」

ポニテ「助けだす。例え何を犠牲にしようとも」

レン「仲間以外で、にゃ。また繰り返すことになるにゃよ?」

魔導長「……」

ふぅ、とためいきをついて、

魔導長「……仕方ないなの。奥義を使ってもノックダウン出来なかったんだから、あなたたちに無理やり言うことを聞かせることは出来ないなの」

ポニテ「!?」

レン「それじゃ!!」

魔導長「外出許可をあげるなの」

ポニテ「へ?」

レン「外出?」

魔導長「そう外出……だから……」

魔導長は仕方なさそうに微笑んだ。

魔導長「全てが終わったらまたここに帰ってきてなの。絶対死んだらダメなの」

108

--魔法王国、魔法学校--

迅雷「……魔導長」

ポニテ「……うん! わかったよ魔導長お姉ちゃん……」

レン「心得たにゃ……」

魔導長「ちなみにどこに行く予定だったの?」

ポニテ「……えっと」

ポニテはレンの方を見る。

レン「暗黒森林にゃ」

魔導長「!!」

迅雷「!? な、なんだってそんな所に……!」

魔導長「……そう……そうなの……そのお友達は……」

ポニテ「うん……世界一の無法地帯で行われる闇競売に出品されるみたいなの」

魔導長「おい語尾」

迅雷「!!……な、なんてこと……」

レン「だから早く助けにいかなきゃいけないのにゃ!!」

109

--暗黒森林、屋敷--

大カバ亜人「ぶふー。このワインも飽きたみゃー」

大きな洋館の一室でくつろいでいた大カバ亜人は、召使に酒をぶっかける。

召使「きゃっ」

大カバ亜人「うっく……うぅ……忌々しい政府役人共め……金を握らせているくせに最近はえらく調子づきおって……おかげで収入が下がっておるでみゃあか」

大カバ亜人はクラッカーを汚く食い散らかす。

大カバ亜人「おかげで色々とコレクションを手放さなきゃいけなくなったみゃ……くそっ!」

ダン!

召使「ひっ!?」

打ち付けた大カバ亜人の右腕は、いともたやすく金属でできたテーブルをひしゃげた。

大カバ亜人「見納めでもするかみゃあ。おらお前達!! さっさとあれらを持ってくるみゃ!」

110

--暗黒森林、屋敷--

召使「っ……」

召使達は急いで隣の部屋から荷物を取ってきた。

大カバ亜人「ふみゅう……」

大カバ亜人はコレクションを見渡す。

大カバ亜人「この絵はバカな商人が死ぬほど大事に持っていたものだったんだみゃあ。死ななきゃ手放さないなんてまったく頭が悪すぎみゃあ」

次に触れたのは赤い壺。

大カバ亜人「これは……あー、思い出した、どこかの部族に伝わっていた呪いの壺みゃぁ。村から持ち去った者には不幸が訪れるっちゅう話だったがぁ、呪いを解除しちまえばいいだけの簡単な話だったみゃあ」

部族と運び屋は全員死んだっけ、と続ける。

大カバ亜人「……そして」

?「……」

大カバ亜人が近寄ったのは水色の髪を持つ美しい少女。

111

--暗黒森林、屋敷--

大カバ亜人「ぐっ……この生ける宝石! 麗しの美顔!!……くぅ……我が人生最大の屈辱みゃあ!!」

バチッ

大カバ亜人が顔に触れようとすると見えない何かに弾かれる。

大カバ亜人「あぎゃっ!……むぅぅ! 触れることも出来ぬのならいらぬみゃあ!!……だが……実に名残惜しい……」

?「……」

光の無い瞳。動かない表情。眼を半開きにしたままでいるそれは、それは……まるで人形だった。

大カバ亜人「……いい拾い物をしたと……思っていたのに……」

大カバ亜人は心底悔しそうな表情で唸る。

?「……」

112

--魔法王国、魔法学校--

疾風「あぁほんまに行ってしもたんやなぁ。寂しうなるなぁ」

迅雷「うん……ポニテ大丈夫かな。あの子ろくに授業も出てなかったから……心配だ……」

迅雷は紅茶の入ったカップを見つめている。

疾風「へ?……いや迅雷ちゃん、あの二人の実力ならなんも心配ないやろ? あの二人にタイマンで勝てるのなんて、よくて三強レベルや」

迅雷「レンはそうかもしれないけどポニテは……」

疾風「いやいやポニテもや……って、なんや迅雷ちゃん気付いてへんかったの? ポニテはかなり強いで? なんせこの三年間のほとんどを迅雷ちゃんとの模擬戦に費やしてたんやし」

迅雷「……模擬戦? 何それ?」

疾風「……ほんまに気付いてなかったんや……ポニテは脱走するふりをして、追いかけてくる迅雷ちゃんとバトルしたかったんよ」

迅雷「!? ……そ、そんなの言われたらいつでもやってあげたのに……」

疾風「模擬戦だと優しい迅雷ちゃんは本気になれない、ってのがわかってたんやろな〜」

迅雷「……」

113

--魔法王国、魔法学校--

疾風「あと今だから言っちゃうと、ポニテは授業にこそでていなかったけれど、自室でちゃんと魔法の勉強していたよ」

迅雷「……えっ!? えっ!?」

疾風「おかげでよく夜に呼び出されてたもんで、寝不足が絶えなかったわぁ……ふわぁ」

迅雷「……」

疾風「ん? なんでそんな怖い顔しとるんや?」

迅雷「……なんでそのこと知ってて私達に言わなかったの?」

疾風「気付いとるかなーって思ってたしなぁ。あえて言うこともないかと」

迅雷「……」

疾風「魔導長ちゃんは気付いてたみたい……だし」

迅雷「……むきーーーーっ!!」

迅雷は疾風に飛び付いた。

114

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

がこぉん

召使「さぁ身体を拭く時間ですよ」

?「……」

ごそ、しゅる

召使は少女の服を優しく脱がし、タオルで拭いていく。

ごしごし

召使「残念だわ。いつかあなたと会話出来る日が来たらいいなと、ずっと思っていたのに」

?「……」

ごしごし

召使「……きっとものすごく辛いことがあったのね……生きる気力を無くしてしまうほどに……」

?「……」

ごしごし

115

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

召使「いつかきっといいことがあるわ、晴れの日はくるのよ」

?「……」

ごしごし

召使「なんて……奴隷の私が言っても説得力のかけらも無いかしらね」

?「……」

ごしごし……

召使「はいおしまい。……寂しいわ……明日からはあなたはいなくなってしまうのね……」

?「……」

しゅる

召使は少女に服を着せていく。

116

--暗黒森林、屋敷、地下牢--

召使「……ここよりいいところだといいのだけれど……それも難しいわね……闇競売に来る奴なんて、よくてド変態だし……」

?「……」

しゅる……

召使「……ありがとう。私、あなたの世話が出来て本当によかったわ」

ぎゅっ

?「……」

召使はそっと少女を抱き締めた。

召使「あなたとこうしているだけで……っと言っても一方的にお喋りしてるだけだけど、どれほど私が救われたか……」

?「……」

召使「ありがとう……お別れよ」

すっ

召使は少女から離れて檻から出ていく。

召使「またどこかで出会えたら……いいわね」

117

そして二日が立って……。

118

--暗黒森林--

アッシュ「……あれか」

サム「あれでござろうな。薄暗い森の中にあるのは少々不釣り合いでござる。あの金でできた門は」

アッシュとサムは隊員達を引きつれて暗黒森林に到着する。

サム「さぁアッシュ殿、下調べはしていてわかると思うでござるが、あの門をくぐるには所持金が一千万を越えてないといけないでござる。どうするでござる?」

アッシュ「……いや何それ」

サム「あれ?……まさか調べてない感じ?」

アッシュ「てっきりお前が全部調べて必要な用意も全部してあるものだと」

サム「はっはっはっ。拙者旅行の荷造りも当日に行うような人間でござるぞ。そんなの無理無理」

アッシュ「……」

サム「さてどうやって一千万を手に入れるでござる?」

アッシュ「……」

アッシュにはなんとなくわかっていた。これはサムが作り出した試練なのだと。

アッシュ「とりあえずお前、臓器全部売ってこい」

サム「こわっ!?」

119

--暗黒森林--

どんな状況でも道を切り開いていけるようにと、この三年間サムはアッシュに難題をふっかけ続けていたのだ。

アッシュ「……ふん、この道を通る者から頂くことにする」

サム「ふむ。ここにくるほどの金持ちが、生半可な護衛をつけているとは思えないでござるよ?」

アッシュ「俺も生半可ではない」

サム「」

あくまで当たり前のようにさらりとアッシュは言った。

がしゃがしゃ

アッシュ「ん」

その時馬車がアッシュ達の目の前にあらわれた。

アッシュ「スキル、透視眼」

ヴン

アッシュの眼は馬車の中身を透視する。

120

--暗黒森林--

アッシュ「……」

中にいたのは、いかにも成金らしい肥えた男と、眼を瞑った護衛らしき男。

護衛「!」

その護衛は馬車の中にいたにも関わらず、アッシュの視線に気付いたようだ。

アッシュ(なるほど外で守っていないだけはある)

護衛「雇い主よ! 外に」

たっ

距離にして約三十メートル。それをアッシュは一瞬で、

ズブッ

護衛「!?」

アッシュ「……面倒なのは嫌いでね」

つめた。そして、

ブシュー!!

成金「ひっ!? ひぃ!?」

護衛「がっ……!」

護衛の首を切り落とす。

アッシュ「俺個人としての恨みはないが……アンタ悪さしてそうな顔だな。金を奪わせてもらう」

成金「ひ!? ひぃ!?」

その様子を遠くから観察するサム。

サム「……まぁ……殺すのが一番手っ取り早いでござるか」

操り人形にする予定だったのにとサムはため息をつく。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは! お待たせいたしました。

今週分の投下を開始したいとおもいます。

121

--暗黒森林--

ポニテ「……なんでこんなことに」

ジャラ

ポニテはみすぼらしい服を着させられて、鎖のついた首輪をしている。

レン「仕方ないにゃ。闇競売会場は変な人間が入りこまないように、資格がいるのにゃ。それは一千万円の所持、何かを買う意志があるものだけ」

レンは変装の為にフードを被っている。

ポニテ「むしろ変な人間しかいないと思うんだけど。でもさ、それとこれとどんな関係があるの? ってゆうかレンちゃん錬金術師なんだから金錬成したらよくない? そのための錬金術じゃないの?」

レン「金錬成は錬金術の道理に反するにゃ」

ポニテ「え? 錬金術師って何のための存在なの? バカなの?」

122

--暗黒森林--

レン「……というのは半分冗談だとして、金錬成は実は非常に難しいにゃ。たくさんの材料と時間を使うにゃ。だから闇競売までに一千万円分も作ることは出来ないにゃ」

ポニテ「ふむ」

レン「だから、さっきの問いの返答になるにゃが、ポニテを奴隷として売ろうと思うにゃ」

ポニテ「ふむ……ふむ!?」

レン「A級競売は段取りがあるにゃろうから今から出品しても遅いにゃろうが、B級なら大丈夫だろうにゃ」

ポニテ「私を売るとか鬼畜猫!!」

レン「だから少しでも査定で高く見てもらわにゃ困るにゃ。む……ちとスカートが長い気がするにゃ」

ポニテ「え? 膝上十センチなんだけど」

シャッ!

レンはナイフを錬成しポニテのスカートを切った。

ぱらり

ポニテ「!? ちょっ、ちょっとちょっとレンちゃん!? これ短すぎるよ! てかワカメちゃん状態だよ!?」

123

--暗黒森林--

わぁお(おきまりの効果音)

パンツが丸見えになったポニテだった。

レン「うん、アピールとしては完璧にゃ」

ポニテ「私女だから男の人のそういう感覚わからないけどさ、丸出しって逆にひくんじゃない……?」

レン「大丈夫にゃ。レンに任せるにゃ」


--暗黒森林、査定室--

査定中。

右審査員「じー」

中審査員「じー」

左審査員「じー」

ポニテ「うわっ…私のパンツ、見られすぎ…?」

124

--暗黒森林、過去--

レン『それじゃポニテは商品として中で待機にゃ。バイにゃ』

ポニテ『えぇっ!? ご飯は!? 私の晩ご飯は!?』

レン『知らんにゃ。いくらお腹空いたからって商品は食べちゃいけないにゃよ?』

ポニテ『お、おにー! あくまー!! ぬこー!!』

レン『ぬこにゃ』

ポニテ『う……うわーーん!!』


--暗黒森林--

レン「なんて言って別れて来たにゃけど、心配にゃ……おっと」

レンは酒場に入る前に、鼻から上が隠れるような仮面を作り出して被った。

かぽ

レン(フードをしたままじゃ食べづらいし、かといって正体をばらすのは面白くないにゃ)

結構有名になっちゃったし、とレン。

レン(……念のためもう一つ)

ぱしゅっ

125

--暗黒森林、酒場--

ギィ

ごろつき「ん……?」

レンが酒場に入ると中にいた人間が一斉にレンを見た。

コッ、コッ、コッ、コッ

ごろつき「ひゅ〜……」

酒飲み「足がグンバツの女だぁ……」

コッ、コッ、コッ、コッ、ポスっ

オヤジ「……なんにするんだ姉ちゃん」

レン「ミルク」

酒飲み「定番かよ!」

126

--暗黒森林、酒場--

オヤジ「あいよ」

この暗黒森林において覆面は決して珍しいことではない。どっかのお偉いさんが、お忍びで法に触れる代物を買いに来ることなどしょっちゅうだからだ。
それゆえに顔を隠すのは暗黙のルール、レンが注目を集めているのは女としての魅力と、

外法者「ちっ、亜人か」

猫耳尻尾。

レン「あと適当に食事頼むにゃ。あ、でも油っこいのは少なめでサラダ多めに。もしお肉をいれるのなら鳥系で。皮は取って欲しいにゃ。あとあまり辛い味付けはダメにゃ。塩分も少なめで頼むにゃ」

オヤジ「適当じゃなくない!?」

ガンッ!!

外法者は、レンのすぐ横で酒の入ったジョッキを叩きつけた。

127

--暗黒森林、酒場--

ぴちゃ

レン「……」

外法者「ふん……亜人ごときが随分とまぁ、でかいつら出来るようになったじゃねぇか」

外法者が絡んできた。

オヤジ「お、おいお前」

レン「レ……私はむしろ小顔にゃ。あんたのほうが顔でかいにゃ」

酒飲み「……」

ごろつき「……」

オヤジ「……」

外法者「……」

酒飲み「……ぷ」

酒場全体「「「だぁーはっはっはっ!!」」」

一人を除き、酒場で飲んでる者全員が笑いだす。

128

--暗黒森林、酒場--

ごろつき「ちげぇねぇや!! ちげぇけど!!」

がはははは!

オヤジ「……はっ……ほら、お前もやるなら楽しくやってくれよ。ここは酒場なんだからよ」

外法者「……てめぇ!!」

すちゃ

外法者はナイフを取り出した。

ざわ…

外法者「こけにしやがって……!! そのこぎたねぇ耳と尻尾切り取ってケツの穴に詰めてやるぜ……!!」

レン「オヤジ、ミルクおかわり」

オヤジ「お、おかわりってアンタ!」

レンは一度たりとも外法者の方を見ようとしない。

129

--暗黒森林、酒場--

外法者「こ、この人モドキが!!」

外法者がナイフを突き出そうとした瞬間、

ボグッ!

レンと外法者の間に出現したゴーレムが、外法者の顔面に拳をたたき込んだ。

ドグッシャアアア!!

外法者「げふぅぅぅ!!」

外法者は宙を飛び、壁に突き刺さる。

ずぼーん

レン「ふん……時代遅れの差別野郎にゃ」

ごろつき「い、一体何が今……起きたんだ?」

ゴーレムは一瞬で現れ、一瞬で消えていた。

130

--暗黒森林、酒場--

競売警備長「ちょぉっくらごめんなさいよぉ」

ギィ

ごろつき「!?」

酒飲み「競売警備長!? な、なんであんたがこんなとこに」

競売警備長「なぁに。寝る前にちょぉっくら酒でもやろうかと思ってよぉ。そしたらなんだか物騒な物音がするからよぉ」

オヤジ「お、おいアンタおとなしくしてな……あいつは本気でヤバイ奴だから」

とオヤジはレンに小言で囁く。

レン「それより早くご飯欲しいにゃ」

競売警備長「おぉっとぉ……オヤジぃ、あんた思い切った装飾したなぁおい。人間が壁に突き刺さってるじゃないっ?」

競売警備長は外法者の足を掴んでぷらぷらと揺らす。

競売警備長「これ、オヤジがやったのかい?」

オヤジ「い、いや、そんなわけないだろ」

131

--暗黒森林、酒場--

競売警備長「だよなーだよなー、そんなわきゃないよなー。じゃあ……一体誰がやったんだろぉ」

競売警備長は酒場全体を見回した。

ざわ

競売警備長「ん?……おおっーとぅ!? 普段のむさい面子の中に一人美人さんが紛れ込んでるじゃないのー!」

競売警備長はスキップしながらレンに近づくと、レンの耳を上下左右にいじりながら、

競売警備長「こっんにっちはー! ねっこちゃん」

としゃべりかけてきた。

レン「……いきなりレディの体に触ってくるなんて教養が無い男にゃ」

ごろつき(!? ひ、ひい!! 競売警備長に逆らうんじゃねぇよ!!)

競売警備長「これはこれはごめんなさいよぉ! 教養なんて高尚なもんはお袋さんの中に置いてきちゃったもんでねぇ」

レン「なら取りに戻るといいにゃ」

ざわざわ

132

--暗黒森林、酒場--

競売警備長「あはは! こいつぁいい! こいつぁいい猫ちゃんだぁ!」

わさわさ!

競売警備長はレンの頭を乱暴に撫でる。

レン「……二度目はないにゃ」

シュン!!

一瞬で現れたゴーレムの攻撃が、

ふっ

競売警備長「おっとぉ」

いとも簡単に避けられた。

競売警備長「なんだろうねぇこいつぁ……ゴーレム? 錬成? 錬金術師ぃ?」

バゴォ!!

競売警備長の拳がゴーレムを砕く。

133

--暗黒森林、酒場--

バラバラ

レン「……」

競売警備長「……つら見せな亜人の雌猫」

レン「なんでにゃ?」

競売警備長「俺の勘がな? お前はここにいちゃいけねぇやつだとおもうのさ」

レン「いちゃいけない? おかしなことを言うもんだにゃ。ここはどんな人間がいようと関係ない場所のはずにゃ。公になったらまずい有名人がごろっごろしてるから、見てみぬふりがここでの暗黙の了解じゃあないのかにゃ?」

競売警備長「通常なら、だ。だがここにだって例外はぁ存在するさ。例えば……うち≪闇競売≫に敵対する意志を見せた、魔法王国の人間とか、さ」

オヤジ「!?」

レン「……」

競売警備長「他の国とは持ちつ持たれつでなんとかなってるがよぉ、魔法王国だけはいけねぇ……あそこは闇競売なんて非人道的だなんてぬかしてやめさせようとしてやがる……んなこたぁだれもがわかってるっていうのによぉ」

134

--暗黒森林、酒場--

レン「……」

競売警備長「だから魔法王国の息のかかった奴だけはこの地域に入れちゃあなんねぇんだよ……何されっかわからねぇからなぁ雌猫よぉ!!……いや、魔法王国最上位戦力、レン!!」

ざわざわ!!

ごろつき「な、なんだと!?」

酒飲み「お、俺らを一掃しにきたのか!?」

途端に酒場の連中がざわつき始める。

レン「……人違いにゃ」

競売警備長「あんたのさっきの錬金術……見事だったなぁ。超高速の錬成……そんなことが出来るのはこの世界でたったの一人しかいねぇ!!」

ガバッ!

競売警備長はレンの肩をつかみ強引に後ろを向かせると、仮面に手をかけた。

レン「いっ」

競売警備長「化けの皮をひんむいてやるぜぇぇ!!」

ガッ!!

135

--暗黒森林、酒場--

カンっ、カンっカララララ

オヤジ「っ!」

酒飲み「!」

ごろつき「なっ、なんてぇこった……」

酒場の床を転がる仮面。

競売警備長「……なんだと」

そして仮面を取って現れたのは……醜悪な顔。

レン「……」

カエルのように離れた眼は、聖人君子であれ嫌悪感をあらわにするほどだった。

酒飲み「お、おれぁ見たことねぇんだけど、そのレンってやつは……こんな顔してんのか?」

136

--暗黒森林、酒場--

ごろつき「そ、そんなことないだろ……俺が聞いた話じゃあ美しさのあまり、ついたあだ名が≪白雪猫姫≫‏だとか……ど、どうなんだ競売警備長」

競売警備長「……違う……」

レン「……だから言ってるにゃ……」

レンは仮面を取り戻すと顔に付けなおした。

競売警備長「だ、だがあの錬成速度はレン以外ありえない……」

レン「……私は錬金術師じゃないにゃ」

競売警備長「な、何言ってやがるんだ! あれはまごうことなく」

ぴょこ

レンの上着の中からゴーレムが一体飛び出した。

競売警備長「なっ……」

レン「職業は人形師、にゃ」

レンの前でゴーレムは華麗に踊る。

137

--暗黒森林、酒場--

オヤジ「こ、こんだけ物体を操れるのは人形師くらいなんだろ? 錬金術じゃあねぇ」

競売警備長(……確かに錬成したものをここまで操ることは無理なはずだ……それなら人形師の上位互換になっちまう……だが)

競売警備長は険しい表情でレンを見る。

競売警備長(あの時も死角から出てきたのを見過ごしただけなのか? 俺は空中にいきなり出現したように見えたんだが……)

レン「オヤジ、サンドウィッチ作ってにゃ。部屋に戻って食べることにするにゃ」

オヤジ「お、おう」

競売警備長「ま、まて、あの猫亜人稀少種の白雪がそう何匹もいるとは思えねぇ! こんな出来すぎた話」

レン「……私は純粋に闇競売を楽しみに来た客にゃ。まだそんないわれのないことで私の気分を害すつもりかにゃ?」

バッ!

レンは競売出品票を見せた。

競売警備長「ぐっ!!」

レン「アンタの言う魔法王国の手先が、わざわざ出品までするのかにゃ?」

138

--暗黒森林、酒場--

オヤジ「……競売警備長もうやめとけって。ほら猫の譲ちゃんサンドウィッチ出来たぞ」

レン「ありがとうにゃ」

すっ

レンはオヤジに多めに支払う。

レン「騒ぎを起こしてすまなかったにゃ。これは店の修理代とみんなへの詫びにゃ。みんなに好きな酒飲ませてやってくれにゃ」

オヤジ「!? ちょっ、こ、こんなにかい!? これは……たまげたなぁ」

う、ウオー!!

途端に盛り上がる酒場。

酒飲み「まじかよーー!! 姉ちゃん! 見てくれはあれだが太っ腹だな!!」

ごろつき「ひゅー!! おらおら引っ込め競売警備長!! もう用が済んだだろ!?」

競売警備長「ぐっ……!!」

139

--暗黒森林、酒場--

レン(……ふぅ、危なかったにゃ。顔の皮膚の上にもう一層顔の皮膚を錬成しておいてよかったにゃ)

ギィ

レンはさっさと酒場を後にした。

レン(けど、眼をつけられたにゃ。面倒くさいことにならなければいいにゃが)

どん

レン「にゃっ!」

アッシュ「とっ、すまない。大丈夫か?」

レン「こちらこそ申し訳ないにゃ。考えごとをしていたにゃ」

アッシュ「俺もだ。……ん?」

アッシュは仮面を被ったレンを見つめる。

アッシュ(……なんだ? なんだか懐かしい感じが)

レン(すん……懐かしいような匂いが一瞬したように思えたけど、この人のつけてる香水のせいでよくわからないにゃ)

アッシュ(……透視眼で見てみたが……こんな奴は知らないな)

二人は会釈して別れた。

140

--暗黒森林、酒場--

競売警備長(くそ……俺の勘が外れたのか?)

ギィ

競売警備長が苛立ちながら酒場のドアを開けると、

競売警備長「ん……!? お、お前は!!」

アッシュ「ん?」

入ってこようとしていたアッシュとすれ違う。

競売警備長「さ、砂漠の風の灰色狼!?」

アッシュ「……だったらなんだ」

ざわざわ!!

競売警備長「い、いや言ってみただけ」

アッシュ「……わけわからん」

競売警備長(……むぅ……なんぼなんでも砂漠の風にいちゃもんつけるわけにゃあいかないよね)

友人の召喚は課金制で、召喚すると私の財布が寒くなりますのであまり召喚できません!!

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

あ、すいません忘れていました。
皆さんがssを見ている手段を教えていただけると嬉しいです。出来たらOSあたりも教えて下さると助かります。

こんばんはー!!投下日です。

あ、教えていただきありがとうございました。大変参考になりました!!

141

--暗黒森林--

かぽっかぽっかぽっ

配達屋「はぁ……まさか夜になってしまうとは……先に酒場に行って食事するくらいは許されますよね」

ユニコーン「ひひん」

配達屋「えーえーわかってますわかっていますとも。でも今回は仕方がないではないですか。まさか地図が無くなっちゃうなんてショック

です」

ユニコーン「ひひん」

配達屋「今回の配達が終わったら一度本部に戻らなくてはなりませんね。まぁ次が最後の配達物ですから元々帰る予定でしたし」

がさがさ

配達屋「ん?」

おいはぎ「おい女! 持ってるもんは全部おいてけ!」

おぎ「いぇい! いぇい!」

やはぎ「おぅおぅ!」

三人の盗賊が木々の間から現れて配達屋をとり囲んだ。

142

--暗黒森林--

配達屋「……ユニちゃん。あーた接近してくるものがいたら私に教えてくださいと言ったでしょーが」

ユニコーン「ひひん」

配達屋「め、面倒くさいってなんですか! 職務放棄しないでください!」

おいはぎ「おぅおぅ聞いてんのか女! このナイフが見えないってのか!? あん!?」

おぎ「いぇいいぇいいぇいいぇいいぇい!」

やはぎ「うおぅうぉううおぅうぉううぉう!」

配達屋「え、俺の夜のナイフが見えないのかって思いっきり下ネタ……うわー」

おいはぎ「言ってねぇよ!!」

おぎ「いぇいいぇいいぇいいぇいいぇい!」

やはぎ「うおぅうおぅうぉううぉううぉう!」

143

--暗黒森林--

配達屋「やれやれ。ともかく私はあなた方に構っていられるほど時間があるわけじゃありません。本当はものすご〜〜く怠いから嫌なんですけど、もし通してくれないと言うのであれば相手になるしかないですね」

おぎ「いぇいいぇいいぇいいぇいいぇい!」

やはぎ「うおぅうおぅうぉううぉううぉう!」

配達屋「さっきからうるさいよ!!」
おいはぎ「さっきからうるせぇ!!」

おぎ「サッバイバルダンス! サッバイバルダンス!」

やはぎ「トラーイアルダンス!」

配達屋「……」

おいはぎ「……」

配達屋「わかりました。なんだかもうめんどくさいしむかつくので殺します」

おいはぎ「こわっ!?」

144

--暗黒森林--

ちーん

配達屋「全く……いらぬ時間を消費してしまいました……」

かぽっかぽっかぽっかぽっ

おいはぎ「ぐっぐ……つ、つぇえ……」

おいはぎ達は血だらけになりながら地面の上でのたうちまわっている。

おぎ「喧嘩……ばかり……だよ」

やはぎ「あの頃も……今だって」

おいはぎ「……」

おぎ「……」

やはぎ「……」

おいはぎ「……相変わらずの笑い声」

145

--暗黒森林、牢屋--

ポニテ「ひもじい……」

奴隷の服を着させられたポニテは、牢屋のような商品部屋で冷たい床に寝そべっている。

見張り「ごくり」

ポニテ「ん?」

視線を感じ振り替えると、見張りの男が食い入るようにポニテの太ももを見ていた。

見張り(ムチムチやないすかームチムチやないすかー)

ポニテ(なんだ……全く、人が飢えに苦しんでいるっていうのに……ってそうだ)

くねっ

ポニテは色っぽいポーズを取った。

見張り「ファッ!?」

146

--暗黒森林、牢屋--

ポニテ「ねぇねぇお兄さん。私さぁ、さっきの食事じゃあ全然足りなかったんだ……もっと何か食べるものないかな? そしたらお礼にぃ」

ちらり

すでにわかめちゃん状態だけど。

見張り「!! わ、わかった! い、今何かとってきてやる!!」

ダダダダ

ポニテ「ちょろいっ」

ダダダダ

見張り「ほ、ほら持ってきたぞ!! パンに果物にチーズにハムにワイン!!」

樽いっぱいの食料を持ってきた見張り。

147

--暗黒森林、牢屋--

ポニテ「わぁ!! いっぱいだぁ! わかってるー!!」

見張り「し、しかしこんだけいっぱいだと搬入口から入れるのは無理だな……と、扉を開けちまわないと」

ポニテ「そうだねぇ入ってきてよ」

見張り「よ、よし!」

ガチャ、ギィ

見張りは食料を持って中に入った。

見張り「ほ、ほら食え! たくさん食え!」

ポニテ「わぁーいっ。いっただきまーすっ」

ペロ

見張り「うんうんいっぱい食べなさ、あれっ!? 食料が消えた!? ど、どこに消えた!?」

ポニテ「げぷ」

148

--暗黒森林、牢屋--

見張り「えっえっ!? 一瞬で食ったの!?」

ポニテ「うんっ。味は可もなく不可もなく。ご馳走さまでした」

両手を合わせてお辞儀するポニテ。

見張り「あっ、うん、そう、ははっ、そうなんだ? 早い、ねっ、うん」

ポニテ「さてさて」



見張り「!?」

ポニテは見張りにそっと近寄った。

ポニテ「それじゃまぁ……デザートの方を」

舌なめずりするポニテ。

149

--暗黒森林、牢屋--

見張り「!? う、うおぉ!? しゃ、しゃあああ!!」

めっちゃ興奮する見張り。

ずぼっ

その見張りの首にポニテの指が四本刺さる。

見張り「いたっ!……え、え?」

ポニテ「にこり」

ズギュウゥン!!

見張り「かっは!?」

ポニテ「なじむ 実に! なじむぞ フハハハハハ」

見張りから指先で血液を吸い上げるポニテ。

150

--暗黒森林、牢屋--

見張り「なっ、あがっ」

ズキュンズキュン

みるみるうちに見張りは干からびていく。

ポニテ「食べちゃうぞ(物理)」

見張り「い、いや、食べちゃうぞは、元から物理だけど」

がくっ

ポニテ「ふぅ。まぁまぁお腹も膨らんだし、寝るかな」

ごろん


ぴよぴよぴよぴー

翌朝。

髭見張り「あ、あの野郎ーっ! こんなに干からびるまで楽しみやがったのか」

151

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

時間前後して夜。


ぴっち『故郷の妖精王国が懐かしいっぴ〜』

ぱっち『妖精パンが食べたいっぱな〜』

小さな牢屋に小さな鎖で繋がれた妖精達。

ぴっち『うぅ……明日にもぼくらは売り飛ばされちゃうっぴね……しくしくっぴ』

ぱっち『いたずらサイコロの旅なんてやってなきゃよかったっぱ……あっ!!』

ぴっち『!? どうしたっぴぱっち!?』

ぱっち『私の……私の鎖が……』

ぴっち『ぱっちの鎖が!? ぱっちの鎖が!?』

ぱっち『壊れてるっぱ』

152

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

からん

ぱっちは鎖が柱にくっついてないことを見せた。

ぴっち『……』

ぱっち『じゃあ後は頑張ってっぱ』

ぴっち『置いてくなっぴ!! ぼくの鎖も取ってくれっぴ!!』

ぱっち『無理っぱ』

ぴっち『やる前から諦めちゃいけないっぴ!! 何事もチャレンジすることが大事なんだっぴ!! もしかしたらなんかの拍子に取れるかもしれないっぴ!! ぼくら二人ならなんでも出来、もういないっぴ!!(怒)』

ぱっちは既に姿を消していた。

153

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

ぴよぴよぴよぴよ

ぱっち『んなたるいことやってられるかっぱ。今の時代時間が何よりも大事っぱよ時間が』

ぱっちは出口を探して牢屋の中を飛び回る。

ぱっち『いやはやしかしひどいところっぱ……金銀財宝、人間、動物、モンスター……そんなもんが欲しいのかってもんまであるっぱ』

ぱっちは牢屋に入っているものを確認している。

ぱっち『これが人の持つ最強の力、欲っぱか……お、出口見ーっけ!』

月の光が差し込んでいるのを見つけたぱっちはその牢屋の中へ。

?「……」

そこに入っていたのはペンダントをつけたツインテールの少女。

154

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

ぱっち『うわびっくりした!? 気配がなんもなかったっぱ。って……これはまた綺麗な奴隷さんっぱね〜』

ぱっちは逃げることも忘れ、月明かりに照らされた美しい顔に引き寄せられた。

ぱっち『……眼が半開きっぱ……人形だったのかっぱ?』

ぱっちは胸に手を当ててみる。

ぱっち『当ててんのよ!……っていや何を言ってるかっぱ。同じ言葉でも触る側が言うと意味不明っぱ』

トクントクン

ぱっち『生きてるっぱ。人形じゃなかったっぱ。……いやそれにしても綺麗なお顔っぱ〜。幼いながらも憂いを秘めた目元、ましゅまろのような頬っぺた、艶のある唇、そしてツインテールにしている水色のウェーブのかかった髪』

ん? ツインテール? とぱっちは頭を傾げる。

155

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

ぱっち『……』

?「……」

ぱっち『……』

?「……」

ぱっち『……つ、つつつつつ』

?「……」

ぱっち『ツインテ様じゃんこれっ!!』

ぱっちは驚きの声をあげた。

ぱっち『え、ええ!? なんでなんで!? ツインテ様がなんでここに!?』

?改めツインテ「……」

156

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

ぱっち『え、なんで!? なんで無口っぱ!? どうしちゃったっぱ!? ツインテ様私のこと忘れちゃったっぱ!?』

ツインテ「……」

ぱっち『ていうか……なんで……なんで……』

ツインテ「……」

三年前と全く同じ姿なのっぱ、とぱっちは小さな声。

ぱっち『……成長期だろうに、なんで少しも成長していないっぱ……』

ぱっちは悲痛な表情でツインテの胸をさする。

ぱっち『……あれ? なんだか同族の匂いがするっぱ……』

クンクン

ぱっち『あぁ思い出したっぱ。確か先客がいたんだっぱ! おーい姿を見せてくれっぱ』

157

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

するとペンダントは光り出して、

ふゆふゆ

中から仙人のような妖精があらわれた。

??『ふぉああぁ。何用じゃ若いの。わしはこの所忙しくて眠いのじゃっぷ』

ぱっち『ジャップ!?……なんだかいきなりすんごい年寄りでてきたっぱねぇ〜。あんたずっとこのペンダントに入ってたっぱ?』

??『あんたとは失礼なやつじゃなっぷ。わしの名はぷっち。かつてメイドインヘヴンを用いてげふげふん!!……まぁなんじゃ。ずっとこのペンダントに入っておったよ』

ぱっち『……ようわからんやつっぱ。ねぇねぇツインテ様がこんなことになってる理由、知ってるっぱ?』

??改めぷっち『この子のことを知っておるのか?……あぁそういや何年か前に見たことがあるような無いような……無いかなっぷ』

ぱっち『思い出せっぱ』

158

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

ぷっち『歳を取るとどうにも記憶が曖昧で……まぁいい。妖精はいたずらはするが嘘はつかない種族じゃからな』

ぱっち『すまん、私嘘つきまくってるっぱ。種族の面汚しっぱ』

ぷっち『いやぁわしもよく嘘つきまくっておるから気にするなっぷ』

ぱっち『ならなんで種族がどうとか言ったっぱ!? ってそんなことはいいっぱ!! 早くツインテ様がこうなった原因を教えてくれっぱ!!』

ぷっち『ふむ……そうじゃな』

ぷっちはぱっちの顔をじっと見ている。

ぷっち(妖精がここまで人間のことを気にかけているとは中々不思議なこともあるもんじゃっぷ。それだけこの子がいい子じゃったという

ことっぷかのぉ)

ぱっち『おいじじい!!』

ぷっち『わかったわかった。教えてるやるっぷ。言いづらいことじゃが……だがわしがこの子についていて幸いだったということじゃっぷ』

159

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

ぱっち『? どういうことなのかさっぱりわからないっぱ。低学歴の私でも理解できるように一から全部説明しろっぱ』

ぷっち『うわ低学歴怖い。……わしはの、下卑た者どもから持ち主を守る力を持っておるのだっぱ。故にこの子は無事でいるのだっぱ』

ぱっち『下卑た……って』

ぱっち『深い居眠りから覚めたあの日以来、わしはこの子を守り続けておる』

ぱっち『……あの日って』

ぷっち『あの日……戦に敗れたあの日じゃ』

ぱっち『戦……? 戦ってこの近年で起こったのはあの亜人解放戦争かっぱ?』

ぷっち『そうじゃ。この子は戦に敗れた。体は傷つき、精神も壊れかけ、何もかも失おうとしていたあの時、神は助けではなく、よりにもよって邪悪な者を近づけたのじゃっぱ』

ぱっち『邪悪な者って?』

ぷっち『この鎖をつけた者よ』

160

--暗黒森林、屋敷、地下牢、過去--

ぱっち『……そいつは奴隷商人っぱね?』

ぷっち『そんなところじゃろうな。抗うまでに回復していなかったこの子にあやつは手をかけようとしていた。じゃがこの子にはわしがおったのじゃ。醜いあの男の毒牙から護るためにわしは力を使った。そのおかげでこの子は今日に至るまで綺麗な体でいられておるのよ』

ぱっち『……なるほど』

ぷっち『しかし最大の誤算は奴のクレイジーさよ……。奴は手をふれることができないと知ると、視覚によるいたぶりにでたのじゃよ』

ぱっち『え……』

ぷっち『いやまじぱねぇ変態だよアイツ。あげぽよ』

ぱっち『うん……えッ!?』

ぷっち『……中々に凄惨な光景じゃった。いやぁまじぃパナくてぇ。もう次から次へと? 激アツな? ヤバイ性癖メドレー+グロで? まじパナすぎっすわ。そんで仲間を失ったショックで? チョーボロボロになっていたこの子の心が? すでに許容量をオーバーランしてみたいな? そんである日を境に考えることをやめてしまったのカーズ? みたいな?』

ぱっち『何語喋ってんのお前』

ぷっち『マジパナソニック』

ぱっち『おいじじいいいいいいいいい!!』

首だろぉ……いつも打ち間違いばっかで申し訳ないです。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは!!ジョジョ人気ですね!!

パーティメンバー数について。
えっと、ドラクエをベースにしてる勇者系のssが多いと思うのですが、当の私はドラクエをろくにやったことがありません(でした)。
普通のパーティ人数は4人らしいのですが、このssでは人間のメンバー数のMAXは5人です。これはこれでありかなー?って感じで我慢していただきたいなと思います。

161

--暗黒森林、競売会場--

司会「そーれでは皆様方ー? 次はB級商品の競売を始めたいと思います。張り切っていきましょー!!」

パチパチパチパチ

盛り上がる場内。

レン「……」

熱気に包まれた会場の中で、冷めた視線を送るフードとマスクを被ったレン。

レン(A級は最後の目玉として出されるにゃ。ってことはB級はその前に全部売られちゃうってことにゃ。つまり……ポニテはどうなってしまうんにゃ?)

他人事のようにポップコーンを貪るレン。

レン(まぁいっか)

司会「次の商品はこちら! 黄金王国の王族が使用していたとされる黄金の猫じゃらし!!」

レン「!?」

162

--暗黒森林、競売会場--

がたっ!!

レンは勢いよく立ち上がる。
しっぽはうねうねと動き、ハートの形に変わった。

司会「それではこちらの商品は千円からスタートさせていただきます。どうぞ!」

レン(こ、これは買うしかないにゃ!!)

レンは右腕をあげて、

レン「一万え」

富豪「59兆」

レン「」

しかし隣の人間の一言を耳にして石のように固まるレン。

レン「……いっ、一体どゆことにゃー!!」

163

--暗黒森林、競売会場--

司会「えー続きましてー。おっとこれは飛び入り参加のようですね……出身地不明の赤髪の奴隷でーす!」

ポニテ「いやー、どうもどうも」

あははと笑いながら客席に手を振るポニテ。

こわもて成金「な、なんだ……妙に明るい奴隷だな」

あごひげ富豪「なぜこんなに堂々としているんだ……? 奴隷らしくもない」

紳士金持ち「むぅ……おぱんちゅ」

競売品のポニテを見た参加者達は、険しい表情でそれぞれ呟いた。

司会「えっと彼女はレアスキル持ちということです。我々で審査もしたので間違いありません。そのスキルというのは」

ポニテ「待って」

司会「はい待ちます……て、え?」

司会は思わぬ発言に目をぱちくり。それもそのはず、今まで競売品が話し掛けてくることなどなかったのだから。

164

--暗黒森林、競売会場--

ポニテ「私のスキルは私を買った人だけが知ればいいと思うなぁ……」

何やら妖艶な雰囲気のポニテ。

司会「……そんなことが許されますか、どんな品なのか包み隠さずアピールするのが私の仕事なのですよー?」

そうだそうだー競売品が何いっちょまえの口聞いてんだー、と観客席からやじが飛ぶ。

ポニテ「なんで? くじみたいで楽しくない? 当たりかハズレかやってみるまでわからないのが乙だと思うけど……」

ポニテはなんかちょっと、あの、なんていうか……モデルっぽい立ち方になる。

こわもて成金「く、くじだってぇ?……ふん……そこまで言うからにはさぞ立派なレアスキルなんだろうなぁ……」

あごひげ富豪「ろくでもないスキルだった時には、出品者共々一生こきつかってやるからな!」

紳士金持ち「お……お……おぱんちゅ」

険しい表情のまま右手の人差し指をくわえる紳士富豪。

165

--暗黒森林、競売会場--

ポニテ「ふっふーん。期待しちゃっていいかも?」

ポニテは胸を寄せてアピール。

司会「さ、さぁこれはおかしなことになってまいりましたぁ! 競売品がお客様方をあおっております!! こんなことは闇競売の歴史の中でも初めてのことです!!」

わー!!

ヒートアップする会場。

レン(相変わらずにゃね……ポニテにかかればどんな空気でもぶっ壊されちゃうにゃ……)

司会「それでは参りましょう!! 開始価格は、にひゃ」

ポニテ「じゅーおくえーん!!」

ワー!!

レン(ポニテはこの三年間でいわゆる……処女ビッチになってしまったのにゃ!!)

166

--暗黒森林、競売会場--

わーわー!!

次々に手が上がる中、レンは会場の隅に目をやる。

バッ!!

茶髪の大男「八十億だ」

さっ!

切れ目の女性「八十五億よ」

わーわー!!

ポニテ「だーめー!! まだたりないよー!?」

レン(……しかしツインテ達が今のポニテを見たらなんていうかにゃー)



アッシュ「あ、これ食える茸」

サム「まじで!」

その頃アッシュ達は辺り一帯の地形を探っていた。

167

--暗黒森林、競売会場--

司会「もういませんか〜? いませんね〜? それでは、二百二十七億で落札です!!」

カン!

司会「すごい額です!! これはA級並の落札価格です!?」

ポニテ「ふ〜む……まぁまぁな値段かな。ちと物足りない気もするけれど」

壇上でポニテはにこやかに手を振っている。

レン(さて、無事売れたことだし何か食べるものでも探すかにゃ)

レンは立ち上がって会場を後にした。

ポニテ「……ん? この後私どうなんの?」

レン「はむはむ……来た時は物価やべぇ! って思ったにゃけど、まぁ一度お金が入ればこんなもんにゃ」

どさ

レンは食べ物を抱え込んでテーブルに着いた。

168

--暗黒森林、競売会場--

レン「あむ」

どさ

レンの真後ろに誰かが座る。

???「……ぎゃはは。よく来てくれた」

白いフード付きのコートの人物が話し掛ける。

レン「なに、あの子の奪還はレン達の望みでもあるにゃ。手紙、感謝するにゃ」

レンはパクパクと食べ物を口に放り込んでいる。

レン「でもあんたはレン達のことずっと嫌いなんだと思っていたにゃ」

???「他に頼れる人物がいないんだ、仕方ないぎゃはは」

レン「そっか……もう王国のバックアップはないんにゃもんね」

???「あの大臣のせいで全てがむちゃくちゃだぜ。……新王様と妃様まで」

レン「ツインテのパパとママかにゃ……」

169

--暗黒森林、競売会場--

???「……」

レン「……どうしたにゃ?」

???「あの少年と一緒じゃないのか?」

レン「……アッシュのことを言ってるのかにゃ? アッシュはだって三年前の……アッシュって生きてるのかにゃ!?」

???「しっ……。居場所は占師様に占ってもらったんだぎゃはは。占師様の占いは外れない……だから手紙が届いているならきっとこの場所のどこかに来ているはずだ」

レン「なるほど占師様かにゃ……。で、どこにいるってなってたのにゃ?」

???「……砂漠の風」

レン「!?」

レンは目を丸くして驚く。

レン「そんな……なんでアッシュが……そうかアジトを示すナイフを持ってたのは……でもよりにもよって砂漠の風……」

170

--暗黒森林、競売会場--

???「レン、あんたも聞いたことがあるだろ?砂漠の風のニューフェイス、灰色狼。それがアッシュらしいんだぎゃはは」

レン「!!……なるほどにゃ。とすると新しく部隊長になった侍隊長ってのはサムのことかにゃ」

???「恐らく……」

レン「やれやれ……犯罪組織に入団しているとは想定外だったにゃ。どうりで普通に探しても見つからないわけにゃ」

死んだものと諦めてたにゃ、とレンはぼそりと呟いた。

???「これで……このメンバーであの子を救い出すぎゃはは」

レン「正直レンとポニテでお釣りがくるレベルにゃがね」

???「……へ?」

レン「なんでもないにゃ」

???「そして実はもう一人、来る予定なんだぎゃはは」

レン「もう一人……?」

171

--暗黒森林--

かっぽかっぽかっぽかっぽ

配達屋「はぁ困りました……。まさか暗黒森林についたとたんに、最後の手紙が私宛に変わるだなんて……トリックレターなんて初めて見ました」

配達屋はうなだれながらユニコーンに乗っている。

ユニコーン「ひひん」

配達屋「いやですよぉ……何が書いてあるのかわからないんですよぉ?もしかしたら私にえっちな絵を見せて私がどんな反応をするのか見たいがために送りつけてきた変態さんが物陰から見ているかもしれませんし」

ユニコーン「ねぇだろ」

配達屋「喋った!?……気のせいですかね。もしくはブラクラである可能性もあります。私嫌なんですよねぐろっちぃの。ぐろっちぃのはいけないと思います」

ユニコーン「ひひーん」

172

--暗黒森林--

配達屋「はぁ……わかってますよぉ、配達屋は運ぶのが仕事ですし、これもおまんまのためと割り切りますよ。じゃあ行きますよ?」

なぜかユニコーンに聞く配達屋。

配達屋「せやっ!」

バッ!

配達屋「ん……お?」

ユニコーン「ひひん?」

配達屋「競売品……麗しの人形姫を盗み出してこのポイントまでって……配達屋の仕事じゃなーーい!!」

ゴトン

その時金塊が落ちた。

配達屋「……へ? なんですかこれ……手紙が開封されると出現するように……? 前金……?」

173

--暗黒森林--

ユニコーン「ひひん」

配達屋「……仕方がありません。とりあえず様子をみましょう」

配達屋は金塊を拾って袋にしまい、再びユニコーンにまたがると、前方から二人の男が歩いてきた。

配達屋(……今の金塊を見て盗みに来たんでしょうか……それとも手紙のこと……?)

????「おい譲ちゃん、ここはあぶねぇ場所だ。金なんて見せびらかしてたら捕まって悪いことされっぞ」

?????「僕達の目が届く範囲なら助けますがそれ以外なら保証できません」

ざっざっ

中年の男性と太い眉毛の青年は配達屋の横を通り過ぎていった。

配達屋「ご、ご丁寧にどうも〜……」

ざっざっ

配達屋は二人の後ろ姿を見ている。

174

--暗黒森林--

?????「しかしすいません。剣豪様をこんなところの警備なんかで使ってしまって」

????改め剣豪「あー、気にすんな。どうせ暇だったんだからよ。てか三強のお前の方こそやる仕事じゃねぇだろ、隠蔽兵」

?????「いえ、剣豪様ばかりにお手を患わせるわけには……それと今の僕の名前は魔剣使いです間違えないでください」

剣豪「はっ……かってぇな相変わらず」

?????改め魔剣使い「硬くないです。ふにゃふにゃです」

ザッザッ

配達屋(うわぁ……あんな人達まで警備にいるとか……超無理ゲ〜)

ユニコーン「ひひーん」

175

--暗黒森林、競売会場--

司会「さて……A級競売も半分が過ぎましたが……皆様のお目当ての品はまだでていないのではないでしょうか?」

ざわざわ

アッシュ(来るか)

ポニテ(ツインテちゃん……)

レン(いよいよにゃ)

サム(おや、あの観客の女性は……)

ポニテ以外は観客席で既にスタンバイ。アッシュとサムはレンのようにフード付きコートを着用している。

司会「わかっております……お待たせいたしました。今回のメインと言っても過言ではないでしょう! それでは!」

スモークの中から出てきたのは、

司会「我らが同士、大カバ亜人様ご提供による、麗しの姫人形の競売に移らせていただきます!!」

わーーー!!

水色の美しいドレスに身を包んだツインテだった。

176

--暗黒森林、競売会場--

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

サム「」

精気を失った表情はまさに人形。
だがそれが逆に、異常なまでに美しかった。

アッシュ(どういう……ことだ)

ポニテ(生きてる感じがしない……)

レン(いやそれよりも……なぜ)

サム(あの頃から全く成長していないのでござる……)

四人は、あまりに予想外な出来事に直面し、固まった。

177

--暗黒森林、競売会場--

司会「——血統は明らかになっていませんが、ここだけの話、どこかの王族だという情報も入っております」

おぉー、と観客。

???「初めて……見た時は本当に……驚いたぎゃは……」

彼女は会場の外で声だけを聞いている。

???「ツインテちゃん……一切成長してないだもん……それに優しくていつもニコニコしていたのに、あんな……に、なっちゃって」

静かに涙を流す。

???「よっぽど辛いことがあったんだね……今……絵師お姉ちゃんが助けてあげるから!」

絵師は倒れた警備の体に絵を描いていく。

???改め絵師「スキル、人体ペイント!!」

ビシャアアアアアアアアア!!!!

178

--暗黒森林、競売会場--

ざわざわ

司会「——とまぁ、若干、いやかなり精神は壊れてしまっていますが」

司会はツインテのベロを引っ張りながら言う。

わははは

アッシュ「ッ!!」

サム「やめるでござる」

飛び出しそうになるアッシュを力で押さえ込むサム。

サム「もう少し様子を見るでござるよ。この競売の警備に誰が来ているのかだけでもわからなくては」

アッシュ「ッ……わかっている」

サム「いくら強くなったとはいえ、拙者とアッシュ殿だけでは闇雲に突っ込めないでござるからな」

アッシュはサムの言うとおりにおとなしく座った。

179

--暗黒森林、競売会場--

ブチッ

サム「……」

アッシュは唇を噛み切った。

サム(……つらいでござろうなぁ……やるせないでござろうなぁ……大切な仲間が、あんな目にあわされては……)

サムの眼が暗くなる。

サム(……状況によっては撫で切りでござる)



ポニテ(まだなの……!? レンちゃん!!)

ポニテはステージの裏から覗き込んでいる。
カーテンを握りしめ歯を食い縛りながら、今か今かとレンを見ている。

鼻毛成金「おぉどうした奴隷よ、ちこうよれ」

鼻毛成金は落札したポニテに手を伸ばす。

180

--暗黒森林、競売会場--

レン(まだにゃ……まだ絶好の好機とは言えないのにゃ!)

槍兵(あーあ、俺ってばこんな仕事ばっか……期待されてねぇんかな)

レン(あいつらが睨んでいるうちは)

アッシュ(現在確認している限りでも、西の槍兵)

ポニテ(黄金の突撃長に)

サム(東の剣豪と魔剣使い……全く、どこの国も裏ではズブズブでござるな)

レン(恐らくそれだけじゃないにゃ、これは)

配達屋「危険すぎますねぇ」

レン「!」

配達屋「あ、すいません声にでちゃいました。考えごとをしていたもので」

おほほほ、と隣に座っていた配達屋は笑って誤魔化した。

配達屋(でもこれなんてムリゲー? 命が何個あったってこんなもん無理ですよ……)

はぁ、と配達屋はため息をついた。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

それでは今週の分を投下していきます。

181

--暗黒森林、競売会場--

虎男「……あの競売品……どっかで見たことがあるような気がするがお」

虎男は腕組みをしながら、ステージ上のポニテを裏から見ている。

司会「それでは落札スタート! 五十億からです!!」

わぁぁぁぁ!!

一斉に腕を振りまわし声をあげる観客達。
その中で、

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

サム「……」

配達屋「ふわぁ」

アッシュ達だけが微動だにせず、好機を伺っていた。

182

--暗黒森林、競売会場--

槍兵「……?」

そして野性の感でアッシュ達に注意を向ける槍兵。

剣豪(あいつら、競売をやりにきたって構えじゃねぇな……てかフード被ってりゃみんな怪しいよね)

わーわー

周囲が騒ぐ中、じっとその時を待つアッシュ達と、武器を手にしてアッシュ達を見張っている警備隊。

わーわー

司会「でました七百億! もういませんか!? あ、はい! 七百二十!」

アッシュ「……」

わーわー

さすがに値段が値段なので、徐々に人数が絞られてくる。

183

--暗黒森林、競売会場--

ポニテ「……」

剣豪「……」

……おぉ……

司会「はい! 八百四十! 八百五十五!!」

わーわー

レン「……」

サム(……機は熟せりでござるぞ)

槍兵(ん……いつ飛び掛かろうか考えてやがるな……? さぁ来てみろよ……俺らは準備万端だぜ……?)

……おおぉ

司会「千億です!! さぁいらっしゃいませんか!? 他にはいらっしゃいませんか!?」

184

--暗黒森林、競売会場--

ざわざわ

周囲が騒つく中、

配達屋「ふあぁあ」

配達屋が欠伸をした。

おおぉ……

司会「決着ゥゥゥーッッ!! 麗しの姫人形は一千億円で決着です!!」

ざっ!!

その瞬間勢いよくサムが立ち上がった。

槍兵「!!」

剣豪「!!」

警備達の目がサムに集中する。

槍兵(来るか!!)

185

--暗黒森林、競売会場--

バキャ

剣豪「……なっ!?」

その時、


おおおおおおおぉぉ!!


会場の壁が破壊された。

突撃長(えっなんですじゃ!?)


おおぉおおぉおおぉおおぉ!!


レン(決た!!)

ごろつき「ぐぉぉん!!」

身体中に絵が描かれている人間達が会場に押し寄せてきた。

186

--暗黒森林、競売会場--

ゴシャゴシャゴシャ!!

槍兵(づっ!! やられた! やつらがあからさまに目立っていたのは、自分たちに注意を向けさせるためか!!)

わー!きゃー!

競売会場は大混乱、まさにコミケの如し。

絵師「奥義、サマーウィンター……今助けるよ、ツインテ!!」

どばあぁ!!

見張り「あぁああ!!」

ゾンビの群れのように、彼らは無我夢中で行進する。

187

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!

剣豪「」

槍兵「」

魔剣使い「」

虎男「」

しかし押し寄せる人の波に注意を向けることはなく、剣豪達は弾けるように飛び出した。

ダッ!!!!

剣豪(ちっ! 奇襲は受けちまったが)

槍兵(おまえらは逃がさねぇ!!)

目を付けていた人物たちが猛然と走ってきていたのだ。

188

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!

剣豪(まずは一匹!!)

シャッ!!

斜め後ろから懇親の力を込めて振り下ろした刀は、

ガギィィン!!

剣豪「っ!!」

小さいが頑丈なナイフに受けとめられてしまう。

はらり

剣風によりフードが取れ、中から顔を出したのは、

アッシュ「ふん、簡単には行かせちゃくれないか」

剣豪「……!!……お前……その顔はまさか……生きていたのか」

189

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!

サム(……!)

ギィギィアン!!

サムは何も無いはずの空中に刀を振るい、何かを弾く。

ジジッ

魔剣使い「……衰えていませんか、その剣技」

不可視の状態から姿を見せる魔剣使い。

サム「……いやー……これでも維持するのに大変なのでござる」

チャキ

サム(まずいでござる……これは……ちょっと……勝てないでござるな……)

サムは成長した太い眉の青年を見て汗を流す。

190

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!

槍兵「りゃあああ!!」

突撃長「ほぁぁ!!」

レンに突っ込んでくる二人。

レン「レンだけ二人とか、モテモテなのも困るにゃー」

バシュッ

レンは瞬時に槍を作り出し、槍兵と突撃長の接近に備えて走る。

槍兵「! 俺相手に槍とは、かましてくれるぜぇ!!」

ドグシッ!!

槍兵「!?」

突撃長「がっ!?」

しかし彼らはレンに接触することなく、真横から現れた人物に殴り飛ばされる。

191

--暗黒森林、競売会場--

茶髪の大男「ごっご」

切れ目の女性「ががご」

槍兵(!! まだ仲間が……いやこれは生き物じゃねぇ……ゴーレムか!!)

ひゅるる

突撃長(人間そっくりに作った精巧なゴーレムを、観客に既に紛れ込ませていたのですじゃ!?)

ドッガアァアアン!!

吹き飛ばされ壁に激突する二人を横目で確認し、一人ツインテのもとに走るレン。

レン(これで終わる相手じゃないにゃ。次のが来るかもしれないし、さっさと連れて逃げるにゃ!!)

わー!ぎゃー!!

192

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!!

鼻毛成金「やれやれ……貧乏人どもが騒ぎでも起こしたでおじゃるか? さっさと引いた方がお利口さんでおじゃるな。さ、早く競売品を連れてまいろう」

鼻毛成金は立ち上がりポニテに手招き。

ポニテ「あ、ごめんそういうのもう終わりね」

バキッ

ポニテは鎖を軽々と引きちぎった。

鼻毛成金「いっ!?」

鼻毛成金は鼻水をたらしながらポニテを見ている。

ポニテ(ツインテちゃん今行くよ!!)

ポニテは自分の首についている鋼鉄の首輪をねじ切って口に放り込むと、ツインテのもとへ走りだした。

鼻毛成金「ど、どこにいくでおじゃる!? てか今さりげなく食べた!?」

193

--暗黒森林、競売会場--

ザッ!

ポニテ「!!」

ポニテの前に立ちはだかるのは……

虎男「……お前さんを競売で見た時から、吾輩何かを感じていたがお」

ポニテ「げ」

虎男「ふしゅぅぅう」

バキッボキッ

骨を鳴らしながら虎男はポニテに近づいていく。

ポニテ「……何かを感じていただなんて、そんな時代遅れの告白じゃぁいまどき女の子は落ちないよ?」

虎男「ふん。ならば意識を落とさせてもらうがお!!」

194

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!!

配達屋「これは……ギャングか何かの抗争が始まっちゃった感じなのでしょうか……いや考えようによってはチャンスですねこれ」

配達屋は人の波を掻い潜りながらツインテに近づこうとした。
が、

ドガァン!!

配達屋「ふにゃっ!!」

飛ばされてきた突撃長が配達屋に激突、二人はがれきに突っ込んだ。

配達屋「あ、あたたたたー……もう! 痛いじゃないですか!」

突撃長「こ、これは申し訳ないですじゃお嬢さん」

配達屋「全く……こんな所にまで越させられたり、競売品盗めなんて無理難題押しつけられたり、おじいちゃんにサイコクラッシャーされたり! もうさんざんです!」

突撃長「本当に申し訳ないですじゃ! 立ち上がれるですじゃ? さぁお手を……え? 競売品を盗む?」

配達屋「……」

突撃長「……」

配達屋「あ、条件達成してたからレベルアップしちゃえっ。てへっ」

195

--暗黒森林、競売会場--

剣豪「ふん……そのなり……砂漠の風か」

ザザっ!!

その時砂漠の風の隊員達が競売会場に現れた。

小太り隊員「アッシュ副隊長!! 私達はどうしますか!?」

アッシュ「お前達は先に行け、あれを盗み出せ」

小太り隊員「は、はい!!」

剣豪「いや、誰も通さんよ」

ザブシュ

アッシュ「!?」

剣豪が振りぬいた刀に、かすりもしないほど離れた位置にいた小太り隊員が……斬られた。それも真っ二つに。

アッシュ(斬撃を飛ばした……? あの刀には風属性でもついているのか)

剣豪「やれやれ、早くも手の内を一つ見せてしまった。あぁ、だが心配するな、お前にも何か一つ見せろと迫るわけではない」

アッシュ「……」

剣豪「俺にはそれだけあまりある実力があるからな」

196

--暗黒森林、競売会場--

剣豪「……」

アッシュ「……」

剣豪は下段の構えをしたまま少しずつアッシュとの距離を縮める。
アッシュは左手のナイフを前に出し、右手を後ろに下げた構えをとる。

剣豪「……ふぅむ」(できる。どうやらスピードではあちらのほうが上のようだな)

剣豪は、アッシュの軸足への体重の乗せ方や筋肉の付き方を見てそう判断した。
何の確証もない、ただの勘である。

剣豪「……」

ただの一度も外れたことのない勘に過ぎない。

剣豪(様子見に撃っておくか)

剣豪は手首を捻り、切り返す。
すると

シャッ!!

目に見えぬ風の刃がアッシュを襲った。

アッシュ「……」

バシィン!!!!

アッシュが何かを払うようなしぐさをする。ただそれだけでその攻防は終わった。

197

--暗黒森林、競売会場--

剣豪「!!」(こいつ、目に見えぬ風の刃に対応したか……しかも避けるでは無く斬りはらうとは……それもいともあっさりと)

アッシュ「……」

アッシュは睨みあいの中で、右手でそっと地面に手を触れる。

剣豪(……毒か。目に見えぬ所を見ると……毒ガスか?)

剣豪は魔法効果を低下させるアイテムを多数所有しているので、毒魔法などたやすくかき消してくれるだろう。しかし物には有限が付きまとう。もし何十回も毒ガスで攻撃されては、さすがにそのアイテムでも持たないだろう。

剣豪(それに会場全体が人質に取られているような状況だしな……早めに仕掛けたほうがいいか)

剣豪が刀の切っ先を相手に向ける中段の構えにした瞬間、

アッシュ「っっ!!」

アッシュが剣豪に向かって駆けだした。

198

--暗黒森林、競売会場--

アッシュ「ぬっ!!」(この一瞬をついてくるか!)

アッシュの急接近に一手遅れてしまう。

剣豪(この思考時間を生み出すためだけの行動だったか!!)「ちぇぇい!!」

剣豪は突進してくるアッシュに突きを繰り出す。

アッシュ「っづ!!」

ギリリリリリりリリ!!!!

盗賊王は左手のナイフで突きの軌道を逸らすも左肩を抉られる。

ブッ!

アッシュ(完全な体勢からの突きじゃないはずなのにこの威力、逸らしきれなかった)

剣豪(かわした!! これはま)

ドシュ

アッシュは魔力で強化した右手の手刀で剣豪の右ひざを切り裂いた。

199

--暗黒森林、競売会場--

剣豪「ぬぅぅっ!?」

ガクガク

アッシュ(剣豪の剣技には強烈な踏み込みを必要とするのか、ここの部分だけ異様に弱くなっている……)

アッシュはいつのまにかスキルを発動させていた。

グラッ

剣豪はバランスを崩されて倒れ込もうとしている。

剣豪(勝機!! 足のふんばりが無くとも、この刀の切れ味なら)

剣豪は倒れながら体を捻り、

剣豪「シャッ!!」

アッシュの首筋目がけて刀を振るう。

200

--暗黒森林、競売会場--

剣豪「!?」

しかし剣豪の刀は空を斬る。そこにいると思ったアッシュは、既に数メートルの距離を置いていた。

剣豪「な、なぜ……」

ドサリ

剣豪「そこは追撃で勝ちを取りに来るところだろうに……」

アッシュ「……俺は今回あんたと戦いに来たわけじゃない。ツインテを盗みに来たんだ」

剣豪「……足止めが目的だったと言うのか……俺は、俺は命をかけた仕合を!!」

アッシュ「あんたと殺す気でやったら俺は無事ではいられない。こんな場所じゃあんたのほうが有利だろ」

ビリっ

剣豪の体に即効性の神経毒がまわる。。

剣豪「腰ぬけが……なら……どちらの利も無いところで……いつか」

アッシュ「……それまであんたが現役ならな」

今期は新世界よりがおもしろいですね!!

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんはー!

アッシュvs剣豪はあの時のあの戦闘を連想させるものとしたいので使ったのですが、色々誤植しちゃったりで申し訳ないです……。
それでは投下していきます。

201

--暗黒森林、競売会場--

ガガガガガ!!

虎男の拳が、蹴りが、

ガガガガガ!!

ポニテの肘鉄が、膝が、

虎男「ぬぅぅぅん!!」

ポニテ「はぁぁぁ!!」

ドギシィィン!!

互いを削り合う。

鼻毛成金「な、なにが起こってごじゃる……」

シュバババババ!!

鼻毛成金は目の前で巻き起こる嵐のような攻防を前に、ただ目を丸くすることしか出来ない。

202

--暗黒森林、競売会場--

ガァン!

虎男「ぬぅっ!」

ドォン!

ポニテ「がはっ!」

魔力を練り上げた強烈な拳で二人は殴り合う。

虎男(ふはっ! 見事なまでに高まっているがお!!)

虎男は獰猛な笑みを浮かべてポニテに拳を振るう。

ズッ、ブチブチブチ!!

ポニテ「つっ!」

虎男の拳をそらすために触れたポニテの腕の肌が引き千切れていく。

ポニテ(ただのパンチが恐ろしい威力だ、ね!)

ズムッ!!

虎男「!?」

攻撃後の隙をついたポニテ、その左拳は虎男のみぞおちにめり込んだ。

203

--暗黒森林、競売会場--

虎男「っぎゅふぅ!!……連虎拳」

ボボボッ!!

ポニテ「!?」

マシンガンのように放たれた拳のラッシュがポニテを襲う。

ポニテ「……けほっ、あいたた」

ポニテは口まわりの血を舌でなめ回す。

ポニテ「やっぱ……」

虎男「……」

ポニテ「面白いや」

ポニテは、笑う。

ポニテ「久々に楽しめそうだね!」

204

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!

突撃長「ふぐっ!!」

配達屋「あらまぁ、おじいちゃん大丈夫? ぎっくり腰ですか?」

大きな盾を持った配達屋は立つことのできない突撃兵を見ている。

突撃長「あたた……寄る年波には勝てぬですじゃ……若さが羨ましい」

配達屋「大変ですねぇ……あ、じゃあ私は用事があるのでこの辺で」

そそくさと突撃兵の横をすり抜けようとするのだが、

ガシャ

突撃長「お嬢さん、ここは通行止めだと言いましたですじゃ」

斧が配達屋の進行方向を塞ぐ。

配達屋「……あ〜やっぱりです?」

突撃長「ふふ……このおいぼれにも誇りがあるですじゃ。任務を失敗すれば姫様に合わせる顔が」

ガイーン

立ち上がろうとしていた突撃長の頭を盾で叩く配達屋。

ドサリ

配達屋「いいから邪魔なので寝ててくださいね〜」

205

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!!

ぱっち『ほら! あんたもいつまでも捕まってないで手伝うっぱ!!』

ぴっち『好きで捕まってるんじゃないっぴ!!』

がちゃり

ぴっち『! よしゃあ! 自由の身っぴ!』

ぱっち『早く! ツインテ様を助けるのだっぱ!!』

わー!ぎゃー!!

司会「た、大変だぁ……と、そうだ、この商品だけでも引っ込めないと!!」

司会はツインテに手を伸ばす。

バチッ

司会「あいたっ!?」

しかしその手は弾かれる。

206

--暗黒森林、競売会場--

ぷっち『……どうやらこの子の仲間が助けにきたようじゃっぷ……ならもう一踏張りするしかないっぷ』

姿を現した妖精ぷっち。

司会「よ、妖精!?」

ぴるるるる

ぱっち『じいさん! 私達も手伝うっぱよ!!』

飛んできた妖精の二人は司会の周りをぐるぐると回る。

司会「あいたっ!……す、すごい貴重な妖精が三匹も!!」

ぴこっぽこっ

司会は捕まえようとするたびに妖精に攻撃される。

ツインテ「……」

207

--暗黒森林、競売会場--

ギギギギギン!!

ゴーレム「おおおぉぉ」

わらわらわらわら

槍兵(くそっ!! こいつこんなにゴーレムを潜ませてやがったのか……観客全体の二割越えてるんじゃねぇか……!)

四方八方から襲い掛かる人の形をしたゴーレム、それを紙一重で交わし的確に弱点を貫いていく槍兵。

レン「やっぱり、接近戦のみの職業は不便にゃね」

レンは槍兵から目を逸らしてツインテの元に行こうとする。

槍兵「ッッ!!」

ドガガガガガッ!!

槍兵「……おいこらまだおわってねえぞ!!」

208

--暗黒森林、競売会場--

槍兵は全方向への突きのラッシュでゴーレム達を粉砕し、レンへ向けて槍を投てきする。

ビョッ!!

レン「……」

レンの頬をかすった槍は、そのまま飛んでツインテの頭上を通過した。

ビィイン……

レン「……」

ぱら

レンのフードが取れて、醜い顔があらわになった。

槍兵「それは俺の知ってる顔じゃねぇが……もうバレバレだぜ? お前の正体」

レン「そうにゃろうね」

209

--暗黒森林、競売会場--

にゅる

レンは顔を元の形に戻して眼鏡をかけた。

カチャ

槍兵「……魔法王国上位戦力、大錬金術、レン!!」

槍兵は仕込み槍を組み立てて穂先をレンへと向ける。

レン「……やれやれ困ったにゃ。用意してた策を突破されちゃったら、補助職業じゃバリバリの戦闘職業には勝てないにゃ」

槍兵「……本気で言ってるようには聞こえねぇな」

レン「本気で言ってるように聞こえたのかにゃ?」

槍兵「……」

レン「……」

槍兵(……ちぃ、まずいぜ。余裕じゃねぇか)

210

--暗黒森林、競売会場--

ジリジリ

槍兵は少しずつレンとの距離を縮めていき、そして、

槍兵「はぁあ!!」

槍兵は槍を突き出す。

チィギィン!!

槍兵「!!」

しかしそれはレンがいつのまにか手にしていた剣で弾かれた。

槍兵「……おいおい一体いつのまに錬成しやがったん、だぁ!!」

ギィギィン!!

今度は錬成した槍でその攻撃を防ぐ。

槍兵(ちっ……こいつ俺の攻撃を防げるレベルにまで体術があがってやがるのか!)

レン(さすがに防ぐことしか出来ないにゃが!)

211

--暗黒森林、競売会場--

ガガガガガ!!!!

槍兵(!! 乱れ突きにも反応しやがるか!)

亜人特有の反射神経、猫の敏捷性がその槍の嵐を全て叩き落とす。

槍兵「だが!!」

クン

レン「」

槍兵は一つフェイントを入れる。それに引っ掛かったレンは、

槍兵(がら空きだぜ!!)

槍兵の槍を叩き落とすことが出来ない。

ガァン!!

212

--暗黒森林、競売会場--

槍兵「!?」

が、

レン「危ない危ない」

槍はレンの顔と鼻の先に作られた盾によって防がれた。

すっ

そしてレンが腕をあげると前方向に盾がどんどん錬成されて槍を押し退けていき、

ボボボボボボボボボボ!!

レン「無限パンチにゃ」

槍兵「うっお!?」

ドガァァァン!!

槍兵を壁に叩きつけた。

213

--暗黒森林、競売会場--

パラパラ

レン「……」

槍兵「ちっ、くそったれ……」

ガァン

盾を蹴っ飛ばし、瓦礫の中からあらわれる槍兵。

槍兵「なんだよ……随分とまぁ、やりがいのある奴になったじゃねぇか!」

槍兵は嬉しそうに笑う。

レン「やりがい……セクハラにゃ」

バシュバシュ

ジト目のレンは次々にアイテムを錬成する。

レン「移動速度上昇靴、槍破壊の剣、跳ね返しの盾、重量低下のペンダント」

レンはすっかり重武装に。

214

--暗黒森林、競売会場--

レン「これだけやれば本気でやってくれるかにゃ?」

槍兵「!……へっ」

槍兵は姿勢を低くし、筋肉に魔力を流す。

槍兵(嬉しいぜぇ、俺にそんなことを言う奴がいるなんてよぉ!!)

ギュン!!

レン「!」

先ほどとは比べものにならない速度で槍兵が突っ込んできた。

ガガガガガ!!

レン「ッ!!」

レンの槍破壊の剣は斬り付けるだけで槍を破壊する力がある。
跳ね返しの盾はタイミングを合わせれば攻撃をそのまま跳ね返すことが出来る。
だが今は、剣を当てることもタイミングを合わせることも出来ない。

レン「ッ、ッ!!」

盾で防ぐのが精一杯だった。

215

--暗黒森林、競売会場--

槍兵「おらおらおらぁ!!」

ガガガガガ!!

槍兵(つっ! かてえな……仕方ねぇ)

ガァン!!

槍兵はレンを盾ごと凪ぎ払い、更に突進する。

ザシャ!

レン(そのくらいじゃ倒れないにゃよ!)

踏ん張り槍兵の追撃に備えるレン。

槍兵「スキル、大爆槍!!」

槍兵は走りながら、全身のバネを使って槍を投擲した。

ギュン!!

216

--暗黒森林、競売会場--

レン「っ!!」

かっ

ドゴァァン!!

盾に接触した瞬間、槍は爆発する。

カン、カラァン

レン(なんとか衝撃は前に跳ね返せたにゃ、でも槍兵は槍を)

ぞくっ

土埃の中レンは後ろから気配を感じた。

ギィアン!!

槍兵「これに反応するかぁ!! さすが猫!!」

レン(いつのまにかステージの所に来させられていたにゃ……槍兵は自分の槍を回収することを考えて戦ってたのかにゃ!)

217

--暗黒森林、競売会場--

ギン、ガガガガァン!!

槍兵(しかしこれは中々突破できねぇな……下手なスキルじゃスピードがたりねぇから跳ね返されちまう……あれ? なんでも跳ね返す盾と、盾ならなんでもぶっ壊すスキル……どっちが適応されんだ?)

槍兵は息をつく間もない攻防の中でそんなことを考えている。

ガガッ、チィギィ!

槍兵(さすがにこれまで失うのはきついしな、下手はできねぇ……!?)

その時、槍兵は背後から迫る気配を察知する。

槍兵「」

ドォン!!

振り下ろされた拳を間一髪で避けた槍兵。

槍兵「げほっ……」

ゴーレム「ぐも」

ビコーン

それは額に2の数字の入ったゴーレム。

218

--暗黒森林、競売会場--

ズザザ……

槍兵(いつこんなもんを錬成しやがった……ん?)

槍兵が辺りに目をやると、槍兵を壁に叩きつけた無数の盾が無くなっていた。

ゴゴゴゴ

槍兵(……そういうこと、かっ)

ズボゾボ!!

地面から出てきた腕から逃れる槍兵。

シュタッ

レン「……まるで獣みたいな動きにゃね。あんたも亜人なんじゃないかにゃ?」

地面から這い出てきたのは4の数字の入ったゴーレム。

219

--暗黒森林、競売会場--

レン「再利用は基本にゃ。行け二号機、四号機!」

二号機「ぐもー」

四号機「ごもー」

二つのゴーレムは槍兵に向かって走っていく。

槍兵(……あの錬成の速度、材料の調達……これは召喚術に似てやがる)

ガインギイン!!

槍兵(そしてこいつらの動き、俺の槍にまで反応している……。細かく機敏な動作が可能なのは、後ろからレンが補助しているからだ……そう、まるで人形師のように)

レン「……」

槍兵(なるほど……この数年間、北の二人が代わりばんこに魔法王国に行っていたのはこういうことか)

ギィイン!!

槍兵(……まさしく、北の至宝だな)

ガァアアアン!!

槍兵は二体のゴーレムを弾き返す。

槍兵「だがこのくらいじゃまだ俺には遠いぜ!」

220

--暗黒森林、競売会場--

レン「四号機変形、呪いの槍」

ぐぎゅる

槍兵「……は?」

四号機は変形し、銀色に輝く槍と化した。

槍兵「な、なにぃー!?」

その輝き、そのまがまがしさは確かに呪いの槍だった。
かつての自分の奥義だったからこそ、槍兵が見間違うことはない。

レン(今にゃ)

ドガッ!!

槍兵「がっ!」

ドサッ

完全に平常心を失った槍兵はあまりに無防備で、二号機に後頭部を殴られて気絶した。

レン「ふぅ……一体撃破にゃ」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは!また一週間が始まりましたね!ファッキン月曜日!

この世界では魔力の総量をあげる手段は一部を除いてありません。レンにゃんは酒場四部の後半で手に入れた力を駆使しているので、魔力の総量自体はさほど変化していません。

それでは投下いきます。

221

--暗黒森林、競売会場--

虎男「ぶぉうっ!!」

ドシィン!!

虎男の重い裏拳がポニテにヒット、ポニテはそれをガードし、弾き飛ばされることなくカウンターを放つ。

ギャギャ!!

虎男「ぬ!?」

ポニテ「いーね、痺れるいい一撃だ」

ドギャギャギャギャ!!

虎男「ぐっ!!」

乱打。虎男も応戦するも、明らかにポニテの方が手数が多い。

虎男(そして……重い!)

222

--暗黒森林、競売会場--

ズズ……

虎男は少しずつ押されていく。

虎男「ふ……ふはははは!!」

ポニテ「」

虎男は劣勢の状態で笑う。

虎男「亜人王、変化師、聖騎士殿以外に、この虎男と素手で渡り合えるものがいようとは!!」

人ではない猛獣の目付きへと変貌していく。

ポニテ「……ちぇ、やっぱ本気じゃなかったか」

虎男「本気だったがお」

虎男はその巨体に似合わぬ機敏さでポニテの懐に潜り込むと、

ポニテ「は」

虎男「『殺さぬレベル』では。スキル、虎拳!!」

223

--暗黒森林、競売会場--

ドガッ!!!!

放たれた一撃必殺の拳。
ポニテは両腕で防御するも、骨を打ち砕かれ、肉を引きちぎられ、両腕を失いながら後方に吹き飛んだ。

ドッゴォォォン!!

虎男「……なまじガードなんかするから無惨な姿になるんだがお」

ぱらぱら……

虎男は拳についた血を払い、ポニテに近づいていく。

虎男「……ん?」

ゆらり

土煙の中に揺らめく影が一つ。

ポニテ「あ は は は は は は」

224

--暗黒森林、競売会場--

虎男「!? なんだと!?」

ポニテ「やっぱり三強レベルは強いね、さすがさすが。疾風お姉ちゃんや迅雷お姉ちゃんよりも強いや」

ぼたぼたたっ

両腕を失い、大量に出血しながらもポニテは立ち上がる。

ポニテ「でも……さすがに虎ちゃんよりも魔導長お姉ちゃんの方が強いかな?」

虎男「……生きていたのは誉めてやるがお。だがもう戦闘は無理がお、諦めて投降するがお」

ポニテ「虎ちゃん」

虎男「虎ちゃん!?」

ポニテ「これから全力で行くから虎ちゃんも全力で来てね」

ミシッ

虎男(な、なんだこのプレッシャー……しにぞこないの少女の一体何を恐れると言うのか)

ポニテ「私も自分の力を測ってみたいから」

225

--暗黒森林、競売会場--

ギャギャギャギャ!!

サム「」

ズバン!!

見えない剣に右腕を切り落とされるサム。

サム「づっ!! があっ!!」

ボタッボタッ

魔剣使い(信じられないことだが我らの方が押されている……? 早々に決着をつけて加勢に行かないと)

ザシャ!ジパッ!

魔剣使いの剣はサムの防御を掻い潜り、確実にサムを切り裂いていく。

サム(ぐ、予想を遥かに越えている!! 全盛期の拙者でもこれは!!)

226

--暗黒森林、競売会場--

サムは残る左手で刀を振るうも、

ズバッ!

サム「」

その手を落とされてしまう。

ドサッ、ドクドク

魔剣使い(両腕を取った、これで……)

サム(ふっ! 待ってたでござるよ!!)

サムは一度腰を沈めて、見えない魔剣使いに右足の側刀を放つ。

ヒュン、ドズッ!!

魔剣使い「!? がはっ!!」

227

--暗黒森林、競売会場--

サム(! この手応え、みぞおちか!!)

サムは右足を引いて追撃の左を放つ。

ドガガッ!!

二発の蹴りを受けた魔剣使いは地面を転がり、その姿をあらわした。

サム(はっ、はっ……あえて斬りやすそうに見せれば、残る左腕を狙ってくるのは道理でござった)

ザリ

サム(あとは斬られた角度からの逆算、幼少の頃から修行と称して斬られ続けた拙者にとっては朝飯前のこと)

魔剣使い「……」

サム(しかし……見えない敵がこうも厄介とは。的確に急所を狙うこと、が)

ズン

228

--暗黒森林、競売会場--

魔剣使い「……」

ポタッ、ポタッ

サム「な、に!?」

サムの腹部から突き出たのは時代を感じさせる大剣。その剣を突き刺したのは、

魔剣使い「……出来れば殺さずに捕らえたかったのですが」

サム「!……手加減を、していたとでも言うでござるか?」

魔剣使い「……そういうんじゃないです」

ズブブっ

サム「!! がっ!!」

魔剣使い「貴方への敬意ですよ」

ドボボボ

大剣を引き抜くと傷口から大量の出血が。

サム「……無念」

229

--暗黒森林、競売会場--

ザッ

フォーゼ「この騒ぎ、一体どうなってやがんだこるぁっ!」

離れた場所で警備をしていたフォーゼが会場に駆け込んでくる。

配達屋(ひぃ……あんな人まで来てるんですかぁ……? あんなのと戦うなんてことにならないように目立たないようにしなくちゃ)

フォーゼ「……てめぇそのじいさんぶっ倒したのかこるぁ!!」

配達屋「え、なんで私の方にだけ向くんです!? い、いやぁ……違います違います。このおじいさんは勝手に倒れちゃって私が介抱を……」

フォーゼ「でけぇ盾もってんじゃねぇぞこるぁ!! 問答無用だこるぁ!!」

配達屋「ひぃ!!」

230

--暗黒森林、競売会場--

ギィガン!!

フォーゼ「ぬっ!?」

その時一つの影がフォーゼに飛び掛かった。

絵師「こいつは私がやるぎゃは! お前は早く行くぎゃはよ!」

それは全身に魔法の絵が描かれた絵師。

配達屋「ふぇ!?……よ、よくわからないし誰だかわからないけど、お言葉に甘えさせてもらいますね」

組み合った二人を尻目に配達屋はその場を離れる。

ギリギリ

フォーゼ「……」

ギリギリ

絵師「……」

231

--暗黒森林、競売会場--

フォーゼ「一瞬誰かと思ったが……あんた……元先輩じゃねぇっすかこるぁっ!! 久しぶりだこるぁっ!!」

絵師「! ぎゃはは! お久しぶりだねぇ!」

フォーゼ「いやお久しぶりじゃねぇっすよ! 三騎士やめさせられたからって、こんなとこで何やってんだこるぁっ!!」

ギリギリ

フォーゼの指が絵師の手にめり込む。

絵師「……!!」

ギリギリ

フォーゼ「……落ちぶれたなあんた……こるぁっ!!」

フォーゼが腕に力を込めると絵師の両拳が

メキャッ!

砕けた。

絵師「!!……ぐ!!」(絵スキルで強化しているのに!!)

フォーゼ「こっちは四日前に新しい獲物食ったばっかで力有り余ってんだ……手加減しねぇぞこるぁっ!!」

232

--暗黒森林、特等席--

わー!ぎゃー!

???「やーこれはすごいねっ! これもなんかの出し物だったりするのかい!?」

競売管理長「い、いえこれは不測の事態でして、決してそのような……」

???「うーん、なんだか僕も参加したくなってきてしまったなぁ!!」

競売管理長「は!?」

特等席の区切りを乗り越えようとし、やめる男。

???「あはは冗談だよ冗談。それじゃあ僕はここいらで退散させてもらうとしようかな。行くよ護衛姉、護衛妹」

爽やかな笑顔で言い放つ男。

護衛姉「了解」

護衛妹「いたしました」

ザカッ

そして脇に控えていた双子が男の後ろについていく。

233

--暗黒森林、特等席--

競売管理長「お、お待ちください! 亜人保護団体代表様!!」

???改め代表「ん〜? なんだい? どうかしたかい?」

競売管理長「こ、今回は邪魔が入りましたがまた半年後に開催したいと思うのです。その時はまた我々にお力をお貸しいただきたく……」

深々と頭を下げる管理長。

代表「ん〜……そうだね。難しいかな」

競売管理長「えっ!?」

代表「これだけの騒ぎが起きちゃうとねぇ……。今までだってどこの国も利益があるから見てみぬふりをしていただけだし。……それに魔法王国は厄介ですよ正直」

うんうん、と代表は頷く。

代表「色々かぎ回ってるっぽいんだよねぇ、この闇競売のことも。だから完全にけつが焦げ付く前に僕達はトンズラするのさ」

234

--暗黒森林、特等席--

ほんと魔導長さんは一直線だから、と代表はため息。

競売管理長「そ、それはあまりにも無責任ですぞ代表様!!」

代表「何言ってんだい、自分一人で立つ事も出来ない人間が。今までだって上手くいってきたのは僕達のおかげでしょうに?」

競売管理長「し、しかし!!」

代表「はっはっはっ。お尻は自分で拭くのだ。じゃあね!」

代表は手をひらひらとさせて去っていく。

競売管理長「……」

コッコッコッ

競売管理長(……なんて、いつかはこうなると思っていたよ)

競売管理長が自分の影に目配せすると、

ずるり、と影が動いた。

235

--暗黒森林、特等席--

競売管理長「殺せ、カメレオン亜人」

カメレオン亜人「しゃあああ!!」

影に姿を変えていたカメレオン亜人が短刀を握りしめ、代表に遅いかかる。

フォンっ、ブシャア!!



ぽたっぽたたっ

代表「ん? なんか背中がぬるっと……ってうわ、なんだこいつ。カメレオン?」

カメレオン亜人「ッぎ!?」

カメレオン亜人は短刀を握った右腕を切り落とされ、心臓を刀で貫かれていた。

236

--暗黒森林、特等席--

競売管理長「なっ、なっ!?」

代表「ふむふむー。なるほどね。こんな短刀じゃあ、彼女らの刀には勝てないね」

ぽいっ

護衛姉「……」

護衛妹「……」

代表「更に言わせてもらうと、カメレオン亜人を潜ませていたのは実に面白い発想ではあるが」

ブシャグシヤ!!

二人の護衛に切り刻まれるカメレオン亜人。

カメレオン亜人「ぎっ!?」

代表「カメレオンがライオンに勝てるわきゃないね」

ぴょこぴょこと護衛の二人の耳が動く。

237

--暗黒森林、特等席--

競売管理長「な、なっ……」

代表「さて……いけない人だあなたは。ビジネスパートナーを後ろから斬りつけるだなんて。……古今東西、暗殺に失敗したものの末路は至ってシンプルだ……」

すらつ

護衛姉が競売管理長に刀を向ける。

代表「もちろん聡明なあなたのことだ。全部わかった上で、覚悟の上でやったことなんでしょ?」

にっこりと笑う代表。

護衛姉「……」

護衛妹「……」

競売管理長「あ、ああああ!!」

ズブシャア!!

238

--暗黒森林、特等席--

ポタッポタッ

代表「やれやれ大事な服が血塗れだ……染みになる前に帰らないとなぁ」

代表は頭をかきながらため息をつく。

ザッ

熊亜人「代表様……避難経路確保しましたぐま」

そこに屈強な体つきの亜人が森から出てきた。

代表「おお待ってたよ熊君。ご苦労。それじゃあおさらばするとしようか」

わー!ぎゃー!

護衛姉「……」

護衛妹「……」

代表「次のビジネスの場所へ」

239

--暗黒森林、競売会場--

わー!ぎゃー!

魔剣使い「……はっ!?」

サムを倒した魔剣使いがステージに目を向けると、

ゴゴゴゴゴゴ

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

魔剣使い「しまった!」(他の人達は全員敗北したのか!?)

ツインテ「……」

出会ってはいけない四人が邂逅していた。

240

--暗黒森林、競売会場--

アッシュ「……なんだお前ら……生きてたのか」

鬱陶しそうな表情のアッシュ。

ポニテ「それはこっちのセリフだよ〜。生きてたんならなんで今まで表舞台に出てこなかったのさー」

けろっとした顔で髪をかきあげるポニテ。

レン「それを言うならポニテも出てないにゃ。てかレンは有名人になったんだからアッシュはレンのことは知ってるべきにゃ」

ハンカチで眼鏡を拭いているレン。

アッシュ「……こっちにも色々あったんだよ。サムなら知ってっかもしれないが」

わー!ぎゃー!

アッシュ「……助けだしにきたのか?」

ポニテ「愚問だよ。まぁ付け加えるなら」

レン「ツインテをこんな目に合わせたやつらを叩きのめしに、なんてオマケな理由もあるにゃ」

アッシュ「ふん……」

アッシュは嬉しそうに鼻を鳴らす。

ザッ

アッシュとポニテとレンがツインテに歩み寄る。

ぴっち『こ、この人達はまさかツインテ様の取り巻きっぴ!?』

ぱっち『あの頃と見違えるほど強くなってるっぱ……!!』

ぷっち『……じゃっぷ』

ドン!!

次回ちょっとした(?)選択肢がありそうです。よかったらよろしくお願いします。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは!! 

ちなみにフォーゼは、フォーゼ→リーゼント→ヤンキー→ということで東方仗助をイメージしていたり……

今回の安価は5分以内に多かった方を選択していきます。突然ですし票が入らなければこちらで進めます!ノリです!

それでは投下していきたいとおもいます!!

241

--暗黒森林、競売会場--

アッシュ「ツインテ……」

ツインテ「……」

ツインテはほんの少し顔をあげ、アッシュの顔を見る。

アッシュ「ツインテ……」

1、助けにきた。
2、……。

242

--暗黒森林、競売会場--

2、アッシュ「……」

アッシュは無言でツインテを眺めている。

ツインテ「……」

ツインテは人形のように俯いている。

ポニテ「ツインテちゃん!」

1、助けにきたよ。
2、……。

243

--暗黒森林、競売会場--

2、ポニテ「……」

ポニテは無言でツインテを眺めている。

ツインテ「……」

ツインテは人形のように俯いている。

レン「ツインテ」

1、助けにきたにゃ。
2、……。

244

--暗黒森林、競売会場--

2、レン「……」

レンは無言でツインテを眺めている。

ツインテ「……」

ツインテは人形のように俯いている。

アッシュ、ポニテ、レン「「「ツインテ!」」」

1、手を差し伸べる。
2、……。

245

--暗黒森林、競売会場--

1、手を差し伸べる。

ぴっち『ツインテ様……』

ぱっち『……』

ツインテ「……」

ぷっち『ふむ……よかったなお嬢ちゃん。もう一人じゃないっぷ』

ツインテ「……」

それでもツインテは動かない……。



スッ

だが、一筋の涙を流した。

246

--暗黒森林、競売会場--

そして

シュバッ!

配達屋「うわ軽」

アッシュ「!?」

ポニテ「あ!!」

レン「にゃっ!?」

横から現われてツインテを掻っ攫って走っていく配達屋。

ダダダダダダ!!

配達屋(漁夫の利漁夫の利〜。各国の三強を倒しちゃうような化物なんかと戦ってなんかいられないですもの〜)

247

--暗黒森林、競売会場--

アッシュ「こるぁふざけんな!!」

ポニテ「まてぇぇ!!」

レン「ふにゃああぁぁ!!」

それを見た三人が鬼のような形相で配達屋を追っかける。

ダダダダ!!

配達屋「ひぃ!! やっぱりそうなっちゃいますよねぇ……」

ぴっち『な、何するっぴ!! ツインテ様から手を離すっぴよ!!』

配達屋「いた、いたた? なにこれぇ」

配達屋の頭の上を飛びまわる妖精の二人。

ぱっち『そうだっぴ!! ほらじいさん!! 手を弾く力使ってくれっぱ!!』

ぷっち『いやでもこの人にわしの感覚が反応しなくて』

248

--暗黒森林、森--

ポニテ「くっ! よぉし、火属性攻撃魔法、」

アッシュ「! バカか!? ツインテまで巻き込むぞ!!」

レン「以前とは違うにゃ、安心して見てろにゃアッシュ」

ポニテ「レベル2!!」

ボッ

ポニテが作り出した炎は、細長い槍のような形状に変化する。

ヒュボッ!!

それは正確に配達屋の右足に飛んで行った。

ボヒュッ!!

配達屋「ッ……!!」

しかしそれは配達屋の盾で防がれてしまう。

ポニテ「!! 結構いい盾だね……ツインテちゃんにダメージを与えずに貫くのは無理かも!」

249

--暗黒森林、森--

アッシュ「ふん……なら俺が行く!!」

ザザザッ!!

アッシュが速度をあげる。

……ゥン

魔剣使い「」

アッシュ「!?」

ガィン!!

そこに飛び込んで来たのは魔剣使い。

ギリギリギリギリイィアアン!!!!

アッシュ「貴様ッ!……サムを倒したのか!!」

魔剣使い「……これ以上お前らの好き勝手にはさせない」

250

--暗黒森林、森--

ザザザ

レン「アッシュ!」

アッシュ「お前達は追え! 見失うな!」

ポニテ「オッケー、頼んだよ!!」

アッシュと魔剣使いの横を擦り抜ける二人。

ギリギリ……

アッシュ「なんだ、随分すんなりと通してくれるんだな」

魔剣使い「……お前ら三人を同時に足止めなど不可能だ」

アッシュ「……なるほど、な!!」

ガィン!!

アッシュ(サムを倒してこの余力、俺らの力を冷静に分析する場慣れ具合……ふん、だが)

ブキブキブキ

アッシュの右腕が紫色に変色していく。

アッシュ「俺すら止められないということを教えてやる!」

251

--暗黒森林、森--

ダダダダダ!!

配達屋(やっぱ追ってきますよねぇ……あーしんど)

ぴっち『離すっぴ馬鹿ー!!』

ぱっち『この盗人ー!!』

ぽかぽかと配達屋の頭をたたく二人。

配達屋「……あんまりにうざいから食べちゃおうかな」

ぴっち、ぱっち『『ぴ、ぱっ!?』』

ザザザザザ!!!!

ポニテ「今だレンちゃん!!」

レン「わかってるにゃ」

252

--暗黒森林、森--

ぎゅぎきぃんん!!

レンが一瞬で作り出したのは細身のゴーレム。

レン「飛び掛かれ!!」

ゴーレム「も!!」

ゴーレムは言われた通り跳躍し、配達屋の盾に飛び掛かる。

ヒュるるる

配達屋(ガード……いや、なんとな〜く、触りたくないですね……)

そう考えた配達屋は盾をゴーレムに投げ付ける。

ヒュン、ガンッ!!

ゴーレム「も!!」

253

--暗黒森林、森--

ゴーレム「ごも、も」

ドサッ

レン「!? ……盾を捨てた!? あれが無くちゃ防御できないんじゃないのかにゃ……? それともこっちの企みを?」

ポニテ「どうでもいいことだよ!! 盾が無いのなら余裕じゃん、私の魔法で」

???「ターゲット捕捉」

ポニテ「」

ポニテが上を向くより早く。

???「ファイア」

ガガガガガガガ!!

ガトリングが掃射され、

ビチビチチビッ!!

ポニテの体がバラバラに千切れ飛んだ。

254

--暗黒森林、森--

レン「!?……くっ……この攻撃はテンテンかにゃ!」

ビュオオオオおおお

???改めテンテン「……」

空中を飛行するテンテンはその銃口をレンに向ける。

ガキンッ

テンテン「……ぬすっとは競買品を背負った状態、移動は速くない。なら先に排除すべきは、レン、貴女」

レン「!……覚えててくれたのかにゃ。ありがたいにゃ」

テンテン「……レンは可愛いけど、ミッションとは関係ない」

ズビ

テンテン「……?」

引き金を引こうとしたテンテンの体を赤い槍が貫いた。

255

--暗黒森林、森--

ポニテ「あはは、ダメだよロボ子ちゃん。あなたの相手はまだ私だよ」

テンテン「!?」

声のする方を見るテンテン。
そこには、バラバラにされたはずのポニテが一切の傷も無く立っている。

テンテン「バカな!……く」

テンテンは体に刺さった槍を引き抜こうとするが、

ガシガシガシ

かえしが大量に出現し、抜くことができない。

テンテン「……!!」

バチチッ

ポニテ「生物だったら今ので終わりなんだけどな」

256

--暗黒森林、森--

レン「……ポニテ、あとは任せたにゃ!」

ダッ!!

テンテン「! いかせない!!」

ポニテ「邪魔させない!!」

ガイン!!

テンテン「!!」

ポニテは、空中にいたテンテンの懐に一瞬で移動し、地面に叩き落とした。

ドォン!!

テンテン「……く!」

ポニテ「……」

ザッ

ポニテの右手には炎で出来た剣が、

ザッザッ

ポニテの左手には血で出来た剣が。

ポニテ「虎ちゃんとやったダメージもあるから、さっさと終わらせるよ」

257

--暗黒森林、森--

ダダダダダ!!

配達屋「ひーっ、ひーっ、も、もう限界ですぅ〜……」

配達屋は息も絶え絶えになっていた。

ガッ!!

配達屋「!!」

その足元に斧が刺さる。

レン「はっ、はっ、はっ」

振り向くと五十メートル後ろにまでレンが追い付いていた。

配達屋「は、はや……さすが猫さん……恐れ入りました」

レン「返してにゃ……ツインテは、レン達にとって、はっ、大事な、人なんにゃ!」

258

--暗黒森林、森--

配達屋「……そうは言いましても……私既に前金を貰っちゃってる手前、投げ出すわけにはいかなくて……」

レン「お金なら倍払うにゃ」

配達屋「うーん……信用ってものがありますし」

レン「……なら実力で奪い返すにゃ!!」

レンの瞳が本気になる。

ガタゴト、キキーッ!

大カバ亜人「こらあぶないではないか!! むっ!? 配達屋、こんな所でなにをやっているのだ!?」

配達屋「! 所長こそなぜこんなところに!?」

レン「……あれは」

そこに丁度馬車で現われたのは大カバ亜人。

259

--暗黒森林、森--

大カバ亜人「何ってちょっと所用があって……む!?」

大カバ亜人は配達屋が背負っているツインテが目に入る。

大カバ亜人「こ、これは!?……ふむ……でかしたぞ配達屋!! よくぞそれを連れてきた!!」

レン「! いけない!!」

ザッ!

レンは配達屋との距離をつめるために駆け出した。

配達屋「え、よくぞ連れてきたって……もしかしてこれ所長の依頼だったんですか〜?」

大カバ亜人「そ、そうだ、ほれ、早くこちらに渡せ! ほれ!」

ザザザッ!

配達屋「も〜……最初から素直にご命令くだされば……けどなんでまたこんな子を?」

大カバ亜人「理由は帰ってから話す! そいつを頼んだぞ!!」

ガタゴト!!

馬車はツインテを乗せると勢いよく走りだす。

260

--暗黒森林、森--

ガタゴト!!

配達屋「もー……あとでお給料に上乗せですからねぇ」

レン「邪魔にゃ!!」

レンが一瞬で作り出した剣は、

配達屋「……え?」

ズバッ!!

配達屋の肩から腰までずっぱりと切り裂いた。

配達屋「ごふっ!!」

レン(!! まだあれくらいの距離なら!!)

配達屋「じょっ、条件達成……レベルアップ」

血を吐きながら倒れる配達屋は、パチンコを二つポケットから取り出した。

ゴッ!!

レン(!? なんにゃ魔力が増加したにゃ!?)

獣のごときスピードで振り向くレン。

バキューン!

レン「……」

レンの頬を銃弾がかすめ、白い肌に赤い線が一筋入る。

配達屋「……」

カウガールのような衣装に身を包んだ配達屋が、二丁拳銃を構えていた。

配達屋「レベル3、銃士!!」

これはwwww
予想外でした。中々おもしろいことになるかもしれませんね……


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは!!

レベルについて色々あったので少し。


≪新世代の職業レベルについて≫
レベルとは、戦闘中にレベルアップ条件を達成し、職業を変換しながら闘う職業です。
あまりに型破りなため使う人が少ない(というか適正がない)ため、まだ世界で三人くらいしかいません。
全六職業。
レベルアップタイムが終了すると強制的にレベル1に戻ってしまいますが、その間ならレベルアップ、レベルダウン、ルートチェンジを駆使して色んな戦局に対応できます。


レベル1    レベル2   レベル3  レベル4
     A →騎士  ⇔  ??
配達屋      ↑↓  X  ↑↓   →???   
     B →盾兵  ⇔  銃士


レベル2A騎士へのレベルアップ条件はファーストヒット。
レベル2B盾兵へのレベルアップ条件はファーストダメージ。

レベルが低いうちは条件が簡単ですが、レベルが高くなると条件が厳しくなります。が、それに見合った戦闘力を得ることができます。



それでは投下していきます。




261

--暗黒森林、競売品置き場--

ジャラ

まっちょ奴隷「おおいここだぁ!! 俺も逃がしてくれぇ! なぁ!」

ガシャガシャガシャ!

牢屋が破壊され、解放された奴隷達が走って行くのを見て、まっちょ奴隷は叫んだ。

まっちょ奴隷「なぁ頼むよ! 同じ牢屋にいる奴が変なやつなんだよ! 俺も連れてってくれよ!」

まっちょ奴隷は、身体中をベルトで拘束されて蓑虫のようになっている男を見る。

まっちょ奴隷「……くそっ、なぁ! 誰か!」

???「……うるせぇよ、おっさん」

まっちょ奴隷「ひぃっ!?」

蓑虫が喋った。

262

--暗黒森林、競売品置き場--

???「黙って聞いてりゃぴーちくぱーちく……誰が変なやつだって……?」

まっちょ奴隷(お、お前だよ!!)

まっちょ奴隷は声を出さずに後退る。

???「はあ〜……おっさん、外に出てぇんのか?」

まっちょ奴隷「……あ、当たり前だ」

???「ふん。なら出してやるよ。このベルトをとってくれたらな」

まっちょ奴隷「は!?……な、何言ってんだこんちくしょう! お、お前なんかに何が出来るってんだ!……」

???「やれるさ。よく見ろよ、俺はこうまで念入りに封じなきゃならないほどの人間なんだぜ? 牢屋を破壊するくらいわけもない、ほらさっさとやれよ」

まっちょ奴隷「……C級競売のくせに……お前みたいなやつの言うことなんて誰が聞くかよ!!」

263

--暗黒森林、競売品置き場--

???「おいおい口の聞き方に気を付けろよおっさん。これはチャンスなんだぜ? それをむざむざ逃すのか? それとも頭ん中まで筋肉でそれすらわからねぇのか? クズ」

まっちょ奴隷「!! 何がチャンスだぁ! お前なんかがなぁ!!」

ドボッ!

まっちょ奴隷は蓑虫を思い切り蹴りあげる。

???「がほっ!」

まっちょ奴隷「このっ! てめっ!」

ドガっ、ガッ!

???「ぐほっ! があっ!」

まっちょ奴隷は何度も何度も蹴り続けた。

まっちょ奴隷「おらおらぁっ!」

ガッ!ガッ!

264

--暗黒森林、競売品置き場--

まるで今までの鬱憤を晴らすために。

まっちょ奴隷「あは、はははは!」

ガッ!ガッ!

まるで恐怖から逃れるように。

バキッ

まっちょ奴隷「!あっ……」

何かが壊れた音がした。まっちょ奴隷が蹴りで破壊したのは……

ブチ、ブチ

まっちょ奴隷「あ……あぁ」

最終安全装置であるベルトの鍵。

265

--暗黒森林、競売品置き場--

パラ、パラ

???「ふぅ……」

まっちょ奴隷(まさか……蹴られているふりをして俺の蹴りを……利用した?)

???「あーいってぇ……」

ベルトと布を取って素顔をさらす。

ファサッ

???「俺肌よぇーからベルトの跡が残っちまってる」

色白で細く、腰にまで届きそうな黒髪の長髪の少年。

???「まぁいいか。とりあえずは」

まっちょ奴隷「はっ、はっ……!」

まっちょ奴隷はなぜか恐怖を感じている。体格的には自分よりはるかに劣る肉体の少年に。

266

--暗黒森林、競売品置き場--

まっちょ奴隷「はーっ、はーっ」

まっちょ奴隷は元々名のある冒険者だった。なまじ実力があったからこそ、

まっちょ奴隷「はっ……はっ……」

ゴゴゴゴゴ

???「……こっから出るか」

少年の危険性を感じとった。

???「世話になったなおっさん」

少年がまっちょ奴隷に手を伸ばすと、

ビシィ

まっちょ奴隷の動きが封じられてしまう。

267

--暗黒森林、競売品置き場--

まっちょ奴隷「はーっ、はーっ!!」(な、なぜだ!? ぴくりとも体を動かせない!?)

ゴゴゴゴゴゴ

???「てめぇはこれより……あれ? 俺名前なんだっけ」

少年は首をかしげる。

???「ちっけぇ頃から随分長い間つっかまえられてたからなぁ……そうだな……じゃあ、奴隷王……でいいか」

まっちょ奴隷「はっ! はっ!」

まっちょ奴隷は全身から汗が噴き出していた。

???改め奴隷王「今よりてめぇはこの奴隷王の奴隷だ。喜びやがれ」

268

--暗黒森林、森--

ガガガガガァン!!

レン「くっ!」(銃はやっかいにゃ……実力差があっても簡単にその差を埋めてしまうにゃ)

レンは頭部に3と書かれたゴーレムの後ろに隠れて銃弾の嵐を凌いでいる。

配達屋(それでもまぁ……ぶっちゃけ足止めくらいしか出来ないでしょうねぇ……てかかったいな〜)

スチャ

配達屋が二つの拳銃を縦に連結させる。

ガッキィイイン!!!

銃の形状が細長く変化する。

配達屋「スキル、アンチマテリアルライフル」

ディイイイイイイイアッカアアアアアアア!!

レン「!?」

ボゥッ、ドガァァン!!

269

--暗黒森林、森--

一瞬早く危険を察知したレンはその場を離れるが、ゴーレムはバラバラに砕け散ってしまう。

レン(中々強力なスキルにゃ……! 恐れいったにゃ……これが新世代の職業、レベル!!)

レンは配達屋が持つ銃を凝視する。

レン「……」

ピクピク

すると何かの声がレンの耳に届いた。

銃『……ん? なんだ僕の声がわかる人か……。なるほど、銃について知りたいみたいだね』

レン「……」

銃『でも悪いけど銃の仕組みは教えられないよ。僕はこの子の味方だからね』

270

--暗黒森林、森--

レン(……物が人を慕っている……ってことはこの子はそんなに悪いやつじゃない、ってことにゃ……よし)

バシュッ、ザザザッ!

土煙の中から姿を現したレンは配達屋に突っ込んで行った。

ザザザザっ!!

配達屋「やぶれかぶれですか、そういうのはふっつーに困ります」

レン「錬成、銃!」

配達屋「ふぇっ!?」

バシュッ!!

レンは一瞬で二丁の拳銃を錬成した。

配達屋「そんな」

構える二人。

271

--暗黒森林、森--

ガガガガガン!!

レン「」

配達屋「」

ガガガガガン!!

両者による激しい撃ち合い。

レン「ッ!!」

しかし被弾したのはレンのみ。

バスバスッ

レン「ぐっう!!」

配達屋(驚きました……まさか速攻で銃なんて複雑なものを錬成しちゃうなんて……でも職業的に考えて、本職である私に銃の腕前でかなうわけもなく)

ザザザッ!

しかしレンは倒れない。

272

--暗黒森林、森--

配達屋「!? なんで!?」

ザザザッ!

レン「……」

配達屋が放った弾丸はレンの肩や脚に打ち込まれている。そしてその弾丸からは麻痺毒がにじみ出ているのだ。

配達屋(なのに倒れない……毒に耐性があるの……?)

ザザザっ!!

レン(動きが鈍くなっちゃったけど、肌の下に防御壁を錬成しておいて正解だったにゃ!)

配達屋「っ!!」

配達屋は薬莢を捨て新たに弾丸を込める。

273

--暗黒森林、森--

レン「ツインテを、また失うわけにはいかないのにゃああああああああ!」

ガガガガ!

配達屋「……」(この人、本当にあの子のことを大事に思ってる……)

キィンキィン、ガガガガ!

レンの足や腕に的確に弾丸が撃ち込まれていく。

レン「っ!!」

ガガガガ!!

その衝撃でレンは体勢を維持できなくなり後ろに吹っ飛ばされる。

ゴロゴロゴロ!!

274

--暗黒森林、森--

バシュッ!!

レンが地面に手を置いて錬成を行うと砂埃が舞う。

配達屋(煙幕!)

レン(人間の感覚器官じゃあ辛いだろうにゃ!!)

レンは音を立てずに回り込む。

配達屋「けほっ……」

レン(錬成、鎌!)

そして鎌を作り上げ襲いかかる。

配達屋「スキル、ロックオン」

ぎゅい

レン「!?」

銃口がいきなり真後ろを向き、レンの頭部に照準を合わせていた。

275

--暗黒森林、森--

レン「なっ」

配達屋「うわ、いきなり後ろに? さすが猫ちゃん」

バキューン! キィン!

どさ、ごろごろ

かろうじて反応したレンだったが防御に使った鎌はへし折れてしまう。

レン(こ、こいつ!)

配達屋(やばいレベルアップタイムが)「スキル、爆発弾」

ボッ

レンの足元に打ちこまれた弾丸が、

カっ!!

レン「!?」

ドオオオオオオオオオン!!

276

--暗黒森林、森--

シュウゥウ……

配達屋「……これで終わりにしたいところなんですけど……」

シュウゥウう

レン「……ぐっ」

配達屋「うぅ……やっぱり耐えてる……どんだけ強いんですかこの人」

そうは言ってもレンは両手両足に大ダメージを受けているようだった。

ぽたっぽたたっ

レン(……うぅ……無理しすぎたかにゃ……ただでさえ今回はきつかったしにゃ……)

ザっ

配達屋「もう……終わりってことでいいですよね? 降伏してくださいません?」

配達屋はレンに銃口を向けながら話しかける。

277

--暗黒森林、森--

レン「……そんな話しをもちかけるだなんて、とんだお人よしさんにゃね」

配達屋「そんなことありませんよ、私はお仕事をちゃっちゃとこなすためならば誰であれ倒しますし」

嘘っぽいやる気のない顔で言う配達屋。

レン「……さっきだってレンのことを仕留められたのに、あえて致命傷にならないようにしていたにゃ」

配達屋「だってそんなことしたら町まで貴女のことを運ぶ手間が増えちゃいますから。五体満足なら自分で歩いていけるじゃないですか」

にこりと笑う配達屋。

レン「嘘が下手にゃ」

配達屋「失敬な、私嘘なんかついたことありません」

配達屋の服が点滅し始めている。

278

--暗黒森林、森--

カチャ

配達屋「……そこまでして、あの子を手に入れたいんですか?」

配達屋はボロボロになったレンの体を見る。

レン「……当たり前にゃ……ツインテはレンの大切で大事なかけがえの無い、仲間にゃ。……レンの家族なのにゃ」

配達屋「!!」

レンはほろりと涙を流す。

レン「レン達がふがいないせいでこの三年間ツインテには不自由をさせたにゃ。だから、レン達が必ず救いださなければいけないのにゃ!」

配達屋「……」

配達屋はじっとレンの顔を見ていた。

279

--暗黒森林、森--

カチャ

配達屋「……」

配達屋は静かにトリガーに手をかける。

レン(くっ……やられる!)

レンが目をつぶった瞬間、

配達屋「……レベルアップタイム、終了〜」

ぱしゅ

配達屋の武装が解除される。

レン「……え?」

配達屋「あー……魔力切れちゃいました〜。もう戦えないですねぇ」

レン「え……」

280

--暗黒森林、森--

配達屋「あーららー。魔力が切れちゃったんじゃぁもう戦えないですねー」

レン「二回言った!」

手をひらひらさせる配達屋。

レン「……いいのかにゃ?」

配達屋「よくよく考えたら配達を終えた段階で私の仕事は完了してるわけですし。私所長のこと好きじゃないですし。あのセクハラカバ……なんか思いだしたら無性に腹がたってきました」

ちゃり

配達屋は回復アイテムを取りだしレンに投げて渡す。

配達屋「仕方ないのでそれあげます。今回は私の負けってことにしておいてあげるので……」

レン「……名も知らぬ人……」

配達屋「さ、仲間と一緒に姫様を助け出しにさっさと行っちゃってください」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

配達屋の後方にボロボロになったアッシュとポニテが立っていた。

配達屋(あぶねー。途中で彼らの接近に気付かなかったら二人にふるぼっこにされるとこでした……!)

wiki……!! そうですよね絵もなしでこの登場人物の多さじゃわかりづらいですよねぇ。
wikiかぁ……欲しいと思ってるんですが時間が……考えておきます。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

>>406 乙!
絵……描いてみようかな……
描いたことないけど

おつです!
ひとつ、Qw0さんについて質問させてください
俺はQw0さんを「くわぜろ」さん、「くうぜろ」さん、「きゅーだぶりゅーぜろ」さん
こんな感じに読ませてもらってるんですが、皆さんやQw0さん自身はどんな風に思っているのか聞かせてもらいたいですww

それと、wikiをつくるのであれば、俺たちが中心になるべきだと思います。
Qw0さんがSSと併行してやるには負担が大きいし、俺としてはSSに専念していただきたいです。

こんばんは……やっと帰ってこれました。

>>409 絵はいつでもウェルカムです! というかなんでもウェルカムです!

>>411 私自身は くわお くぅお と呼んでたりしますが、なるほど、ひとそれぞれ呼び方が違って面白いですね!
え……wikiを作ってくださる……あぁありがたいです本当……。
面倒だとは思いますがやってくださる方がいるのならば、本当に感謝としか言いようがないです!

それでは投下していきます!

281

--暗黒森林、森--

魔剣使い「ち……逃がしたか……」

アッシュと同じくらいボロボロになっている魔剣使いは、剣を地面に突き刺したまま仰向けで倒れている。

魔剣使い「……もし仮に奴が決着をつけるまで戦い続けていたらどっちが勝ったのか……」

むくっ

魔剣使いは起きあがると脚の縫合を開始した。

魔剣使い(……早かった……そしてあの眼……魔剣の上を行くのか……? なら私はどうすれば……)


--暗黒森林、森--

テンテン「機能停止、機能停止ー。ガガーピー」

一方、達磨状態のテンテンは鳥の巣になりかけていた。

282

--暗黒森林、森--

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「アッシュ、ポニテ」

配達屋(……なんで無言なんでしょうか……もしかして結局私抹殺?)

配達屋は怖くて後ろを向くことができない。

アッシュ(……こいつ……一時的にだがレンと渡り合ってやがった)

ポニテ(面白い職業だねぇ……それにまだ力隠してるみたいだし)

レン「ぷはっ! アッシュ、ポニテ!! 行こうにゃ、この先にツインテがいるにゃ!」

レンは回復薬を飲み二人を招く。

283

--暗黒森林、森--

アッシュ「ああ……だがその前に」

アッシュは配達屋に近づくと、

がしっ

配達屋「はいっ!?」

配達屋を抱き抱え肩に担いだ。

配達屋「え、え、何してるんですか?」

アッシュ「……」

配達屋「無言こわっ! 無言で抱きかかえるとかこわっ!!」

アッシュ「……行くぞポニテ、レン。ツインテを奪還する」

ポニテ「おぉー!」

レン「うんにゃ!」

配達屋「!? だからなんで私担がれたんですー!?」

284

--暗黒森林、森--

ガタゴトガタゴト!

大カバ亜人「はぁ、はぁ……と、とんだオークションだった……」

ツインテ「……」

大カバ亜人「だが幸運にも再びこれが私の所に……ふふふ」

ぴっち『こるぁー! ツインテ様を離すっぴー!』

ぱっち『ツインテ様怒らしたら鬼のように怖いんだっぱよ!?』

大カバ亜人「ふん……うるさいやつらだ。希少な妖精だからと言って丁重に扱われると思ったら大間違いだぞ!」

ガバァ!


ぴっち『!?』

ぱっち『ぱっ!?』

大カバ亜人は大きく口を開けてぴっちとぱっちを食べてしまう。

285

--暗黒森林、森--

ゴクン

大カバ亜人「ふふぅー。腹を空いていたし一石二鳥だがははは」

大カバ亜人は満足そうに自らの肥えた腹を撫でる。

大カバ亜人「……この触れないバリアも近いうちに必ずどうにかしてみせる……そして」

醜悪に歪む大カバ亜人の顔。

大カバ亜人「ぬっふっふっふっふっ〜……」

キキィー!

その時馬車が急停車。

大カバ亜人「むぉっ!? こ、こら気をつけんか!」

馬車は完全に沈黙し、運転手からも返事がない。

286

--暗黒森林、森--

大カバ亜人「これ何しておる! 急がないか!」

ガチャ

大カバ亜人「はっ!?」

大カバ亜人がドアを開けて直接どなりつけようとすると、

アッシュ「……」

ポニテ「やほー」

レン「返してもらうにゃ」

配達屋「何で私まで……」

そこにはアッシュ達が待ち構えていた。

大カバ亜人「な、き、きさまらオークションを襲撃した族共……と配達屋!」

287

--暗黒森林、森--

アッシュ「年貢の納め時だぜカバ野郎」

ザっ

大カバ亜人「き、きさまぁ〜! 部下のくせにわしを裏切ったのかぁ!?」

配達屋「いやいや必死に戦いましたよ私。でもこの三人相手じゃどうにもこうにも……」

大カバ亜人「五体満足で何を言ってるか!! まったく使えないやつよ!」

大カバ亜人はつばを飛ばしながら激怒する。

配達屋「うわ、ひどー」

ザリ

アッシュ「……あんたがツインテをずっと可愛がってくれてたんだってな」

大カバ亜人と配達屋の間にアッシュが入る。

大カバ亜人「ごクッ!」

288

--暗黒森林、森--

大カバ亜人「!?……そ、そうだ! はは、実の娘のように可愛がって育てたのだ! このわしが!」

大カバ亜人は作り笑いを浮かべてアッシュやポニテ達の顔を見た。

ポニテ「そういう意味じゃないことくらいわかってるでしょ……?」

その言葉に大カバ亜人の顔がひきつる。

大カバ亜人「ひ、ひぃ!」

レン「レンタル料金払ってもらうにゃ」

ごごご

アッシュ「じゃあ延滞料金もだな」

ごごごご

ポニテ「こらこらツインテちゃんを物みたいにしないの!……私は医者料を」

ごごごごご

レン「漢字違うにゃ」

289

--暗黒森林、森--

大カバ亜人「ひ、ひぃー!」


大カバ亜人の絶叫が聞こえる馬車の中、

ぷっち『……今度こそ仲間のお迎えじゃっぷ』

ぷっちが再びその姿を現した。

ツインテ「……」

ぷっち『わしはどうやらここまでのようじゃ。最後にお前さんに出会えてよかったよ』

ぷっちは虚ろな瞳のツインテに笑いかけた。

ツインテ「……」

ぷっち『じゃあ……の』

しゅう

そしてぷっちは光の粒となって消えた。

ツインテ「……」

290

--暗黒森林、森--

ガチャッ

ポニテ「ツインテちゃん大丈夫?」

馬車のドアからポニテがひょっこり顔を出す。

ツインテ「……」

ツインテはぷっちが消えてしまった場所から目を動かさない。

ポニテ「……ごめん、遅くなっちゃった。でも迎えに来たよ、さぁ行こう!」

ツインテ「……」

ポニテは腕を伸ばし、ツインテはポニテの方に向き直る。

ぎゅっ

ポニテの手がツインテに触れる。

291

--暗黒森林、森--

ズズ

ポニテ「!?」

バッ!!

触れた瞬間、ポニテは自分の腕が腐り落ちるビジョンを予感して、即座にツインテから手を離した。

ズズズズ

アッシュ「」

ギャーギャー 

突如周辺の木々は枯れ始め、森の動物達は一目散に逃げ出した。

バサバサバサ

レン「」

292

--暗黒森林、森--

心の中で恐怖と不安が大きくなっていく。

ポニテ「この、感覚」

ぎゃあぁあぁぁあぁあぁあぁぁぁ!!

耳を覆いたくなる断末魔のような絶叫とともに辺りが闇に支配された。

とぷん……

お……おぁあ……おぉお

そして血に濡れた死者の腕が地面から大量に出現し馬車を取り囲んでいく。

ズズズズズズズズ

配達屋「な、なんですかこれ……!!」

アッシュ「まさか……このタイミングで……!」

293

--暗黒森林、森--

闇の中でも更に深く暗い部分が渦を巻き、

レン「嘘……にゃ」

ズズズズ

そこから流れ出る地獄の臭いとともに、

ズズズズズズズズズ

?「ずっと……会いたかったよ、お姉ちゃん」

漆黒の闇から禍々しき者が生まれ出でる。

アッシュ「……フォーテ」

?改めフォーテ「ふふふ」

死と闇を纏い、髪を四つに分けて束に纏めた絶世の美女がそこにいた。
美女じゃないけど。

294

--暗黒森林、森--

フォーテ「やぁお久しぶりだねっ、お姉ちゃんのお仲間さん達」

アッシュたちを見ているはずなのに全く視線は合わない。
何を見ているのかわからないその瞳は恐怖そのもの。

アッシュ「目的はツインテか」

しかしアッシュは声を発した。

ポニテ「久しぶりだねフォーテちゃん。暫くみないうちに大きくなっちゃって」

レン「やっぱり姉妹だけあって似ているにゃね」

フォーテ「」

フォーテは少し面食らっていた。

フォーテ「ふぅん」

三人が並外れたフォーテの存在感に飲まれていないことに。

295

--暗黒森林、森--

配達屋(な、なんですかこの人……尋常じゃない……)

配達屋は出現したフォーテを一目見ただけでその異常性に気付く。そして何もできなくなってしまう。

フォーテ「……回答一、愚問だよ灰色のお兄ちゃん。僕は目的も何もかもツインテお姉ちゃん関連以外のことじゃ動かない。頭の中はいつだってツインテお姉ちゃんでいっぱいだもん」

アッシュ「……」

フォーテ「質問されたわけじゃないけどその二、火のお姉ちゃん達だって大きくなったじゃない。大きくなってないのは死人とツインテお姉ちゃんだけ」

ポニテ「……」

フォーテ「その三、当たり前だよぉ猫のお姉ちゃん。僕とお姉ちゃんは唯一無二の絶対不滅の究極の姉妹なんだから」

フォーテは恍惚とした表情を浮かべている。
姉妹じゃないけど。

296

--暗黒森林、森--

レン「……」

フォーテ「ねぇ? お姉ちゃん」

バキバキ

血濡れの腕が容赦無しに馬車を破壊する。

アッシュ「!?」

グシャグシャグシャ

ポニテ「……」

そして中からツインテを大事そうに取り出した。

ツインテ「……」

フォーテ「お姉ちゃん……」

297

--暗黒森林、森--

ツインテを見た瞬間にフォーテの瞳から涙がこぼれ落ちる。

フォーテ「お姉ちゃん久しぶり……本当に会いたかったよ……本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に本当に」

フォーテはツインテを強く抱きしめた。

アッシュ「キマシタワー!」

ポニテ「なぜか私はホモォって思ってしまったんだ」

レン「え、ギャグいれられんの?」

まさかの空気。

フォーテ「すぅはぁすぅはぁ……お姉ちゃんの匂い好きぃ……ふふふふ……お姉ちゃんお人形さんみたいだね……」

涙と鼻水と涎を垂れ流しながら満面の笑顔でツインテの頬に頬を合わせる。

フォーテ「辛いことあったんだね……誰も助けてくれなかったんだね……可哀想に……可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想可哀想」

フォーテはツインテの頬をペロペロしちゃう。

298

--暗黒森林、森--

アッシュ(ちっ……こいつじゃなきゃぶちのめしているところだ……)

ポニテ(恐ろしいね……こんな状況だけど一手間違えた瞬間、即バッドエンドだ)

レン(今は耐えるしかないにゃ……)

フォーテ「ごめんね助けてあげられなくて……でも僕はやることがあったんだ……この三年間してきたことは全てお姉ちゃんのためなんだよ……? 誉めてお姉ちゃん」

フォーテはツインテの腕を掴み自分の頭を撫でる。

がしがしがし

フォーテ「嬉しいなぁ! 嬉しいなぁ!」

アッシュ(ツインテ並に可愛いくせに、なぜか嫌悪感しか抱かんな)

ポニテ(表情、仕草、言動……どれも狂気に満ちているね)

レン(……ツインテ)

配達屋(な、なんなんですかね……この人本当)

フォーテ「でも災い転じてってやつだよ……お姉ちゃん……僕と同じような位置にまで堕ちてきたんダネ……」

アッシュ「!?」

フォーテ「人を……世界を憎み怨み呪う。そんな、力が芽生え始めてる……」

299

--暗黒森林、森--

ポニテ(そんな……)

フォーテ「ふぅん。もしかして全く姿が変わってないのって……」

レン(……フォーテは何かを知っているにゃ?)

ズズズズズ

フォーテ「まぁいいやっ。これからは姉妹水入らず、ずっとずっとずっと一緒だよ」

がぱっ

闇が口を開け、ツインテを飲み込もうとしている。

アッシュ「!!」

ポニテ「くっ……!」

レン「ツインテ……!」

ズブズブ

フォーテ「……あれ? てっきり抵抗してくるのかと思ったのにっ。以外だねっ。もしかしてお兄さん達……ツインテお姉ちゃんのこと好きじゃないの……?」

闇の眼球が光る。

アッシュ「好きだ」

ポニテ「好きだよ」

レン「大好きにゃ」

配達屋「即答!?」

300

--暗黒森林、森--

アッシュ「……だがここで無理に取り返すのは得策じゃねぇ……悔しいが強くなった今でもお前には勝てねぇ」

ぽたっぽたっ

アッシュは握りこぶしに力を入れすぎたため地面を血で濡らす。

ポニテ「だから行かせてあげるよ。もっとも見逃してもらうのは私達の方だけど」

レン「勇気と無謀は違うにゃ。この状況でやれば被害はでかい……だから次のチャンスに……必ず助け出すにゃ」

フォーテ「……」

ズズズ

予想外の反応を見せたのでフォーテは一種目を丸くした。

フォーテ「……へぇ……なるほどねっ……」

ずぷん

闇はツインテを飲み込んだ。

フォーテ「成長なのかなっ、これは。でも……なんか好きじゃないな」

ズッ!!!!!

闇が強烈な力を発し始める。

アッシュ(!! なんだこれは!!)




あ9-pw8-4gjkはおろgかえ
w-
あれdがえrがろg-8いじ-ゃおれいwj
ごあんrどgなおrfdg
あ-お-れ8ぎうあ9れwjごふぁlkj-でぎおうあhんdlkgfks--jhんkvjんしlf--じゃぃすdhgかdfjvmがいれうghばkdg----
あldしghじ-ゃお--いdjgぃあjd
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あろぎおsれいgj0934lzg  りgtじょあいr4 −− 

dg

-


ズズズズズ

1、あッシュが首ヲネジ切られて死亡。蘇生不可。
2、ポニ手が内蔵を引きずりダされテ死亡。蘇生不可。
3、れンガ脳をカき回されて死亡。蘇生不可。
4、パーてィ全滅。蘇生不可。
5、人類全滅。やリ直し不可。


フォーテ「ふふっ、僕だってあの頃とは違うんだよーっ? 僕は新しい力『ルート』を手に入れたんだ……さぁ、どれを選ぶのかなっ?……どちらにせよ……魂ごと破壊してあげるねっ!!」

フォーテは邪悪な笑みを浮かべた。

ガチキチヤンデレシスコン見た目美女男の娘、フォーテちゃん参上!!
さぁどういったルートを辿るのか……皆様次第です。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

一行目翻訳 
ちよほせてゆほうきまのくちらすおあきのちい

フォーテ「でも災い転じてってやつだよ……お姉ちゃん……僕と同じような位置にまで堕ちてきたんダネ……」

フォーテ「人を……世界を憎み怨み呪う。そんな、力が芽生え始めてる……」

フォーテ「ふぅん。もしかして全く姿が変わってないのって……」

これ、ツインテが勇者→魔王、じゃね?

それか人造勇者の踊り子の血が入ってるから
擬似勇者→擬似魔王化
かな?

研究員ならクローンいけそうだな
月がない→ツキがない→ツイてない→ツインテない とか考えたけどよく分からん

>>460
どんな翻訳したのか聞かせてくれww

>>462
そこまで考えてたら半端ないなww

翻訳はそれぞれローマ字にして、キーボードの日本語に対応させただけ(^p^)
意味なかったけどw

お前ら無駄にレスするなよ、馴れ合いが嫌いな人だっているからね

>>465 なるほど!その発想はなかったww
>>466 おk、了解した!


--サイバー--

ジャージ男「やっぱりタイトルは大事なものだし、ここは俺も使わせてもらおうかな……『ルート』の力を!! Qw0さん、wikiのタイトルを決めてくれ!ww」


1. Qw0の募集三部作wikiwiki
2. Qw0の募集シリーズwikiwiki
3. Qw0の募集物語wikiwiki
4. Qw0さんの自由枠

http://hinnyu27.cswiki.jp/
ID yuusya

ジャージ男「いずれにせよ、Qw0さんが決めてくれるならみんな納得でしょwwPASSはもーちょい待ってくれww」

ジャージ男は柔らかな笑みを浮かべた。


それと、Qw0さんに許可をもらえるなら、ブログへのリンクをつくろうと思っています。以上、よろしくお願いしますm(__)m

むしろ敬意を払っていますww
あたりまえだけど、みんな好きなときにやって下さい。
やってみるとなかなか面白いすよww

クリスマスが憎い……ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!! 
こんな日は魔王化してしまっても仕方がないと思いますこんにちは……。今日は一日歌う声優三昧を聞きながらこのssでも見ていただければと思いまして投降させていただきます……。

って今までで一番書き込み量が多い! これは思わぬ嬉しいクリスマスプレゼントとなりました……
あぁ!! wikiを作っていただけたのですか!? クリスマスプレゼントばっかり!!

ルートですか?
それじゃあ

2. Qw0の募集シリーズwikiwiki
ということにしていただいてもよろしいでしょうか?? 皆様がよろしければですが。

あ、リンクとかこちらこそお願いします!!

それでは投下していきます!!

301

--暗黒森林、森--







ズズズ

……ミス!
ズズズ選択肢は、
選択肢以外ハえらベナイ!
20面だいスによるダイスろール発生、11。

ズズズ



11、



ズズズ

302

--暗黒森林、森--

ズズズズズズズズズズズズズズズズズズ!!!!!

大気が震え、世界が冷たくなっていく……。

アッシュ(やばい……! 絶対的にこの能力はやばい!)

ポニテ(どんな力なのかよくわからないけれど、きっと絶望しかない!)

レン(あの魔力の質と量、間違いなく危険にゃ!)

配達屋(あわわ死ぬこれ絶対死にます!)

大カバ亜人「あ、あひぃいいいいいいいいいいいい!!」

ズズズ……

フォーテ「僕はねっ?……ずっとお兄さん達が憎かったんだぁっ。ツインテお姉ちゃんの右腕のこともあるしねっ!」

オオォォオオォ……

死者の腕が稲穂のように揺れる。

303

--暗黒森林、森--

地面に苦痛にゆがむ人の顔が無数に映し出される。

ズズズ

息をするたびに霧状の血を取りこんでいる気分になる。

ズズズズ

体が重く筋肉が悲鳴をあげている。

ズズズズズ

フォーテ「じゃあね、お姉ちゃんに無理をさせた役立たずの皆さんっ!」

ババババババ!

空間を漆黒に染め上げるフォーテの強大かつネジ曲がった魔力。
フォーテが掌に集めた魔力の珠はまるで黒い太陽のよう……。

304

--暗黒森林、森--

アッシュ(くっ!)

ポニテ(結局、駄目なの!?)

レン(ツインテーっ!)

配達屋「し、死にたくねーです!」

黒い太陽に口が出現しにやりと笑ったその時、

ガシッ!

フォーテ「……え?」

フォーテの後ろの闇の渦の中から、綺麗な肌の左腕が出てきてフォーテの右腕を掴んだ。

ぐい

フォーテ「! な、なんで……」

ズズ……

305

--暗黒森林、森--

アッシュ(あれは……)

ポニテ(死人の腕じゃない……)

レン(あの見覚えのある腕は……)

配達屋「……」

ズズズズ

フォーテはそのまま闇に吸い込まれていく。

フォーテ「なんで……え……わかったよ、わかった……今、いくからっ」

ずぷん……

フォーテは完全に闇の中に……。

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

配達屋「いーやーだー」

306

--暗黒森林、森--

すーっ

辺りから闇の臭いが引いていく……。

アッシュ「ちっ……なんとか助かったか……」

アッシュは汗だくになっていた。

ポニテ「……ツインテちゃん奪われちゃったけどね……くそー……」

ポニテは膝から崩れ落ちる。

レン「ツインテ……」

レンは目を瞑り空を見上げた。

配達屋「あ……おっかない奴消えてます……死亡フラグ回避ですか……?」

三人は死ぬほど悔しがり、一人は安堵の息をつく。

大カバ亜人「ぶくぶく……」

307

--暗黒森林、森--

アッシュ「……仕方ねぇ、次のチャンスにかけるか」

ポニテ「そうだね……はぁ……三年も待ったのに」

レン「ツインテの方が辛いはずにゃ……しかも最後に出てきたあの腕は……」

アッシュ「……」

ポニテ「……」

配達屋(……よくはわかりませんが、今のうちに逃げても大丈夫ですかね?)

ザっ

競売警備長「だーはっはっ! 盗人どもめ! ここにいたのかぃ!」

そんな時にうるさい高笑いが聞こえてくる。

ざっざっ

隊列を組み前進してくる警備の兵達。

308

--暗黒森林、森--

競売警備長「逃がさねぇよ逃がさねぇよ? 大錬金術師レン! やっぱあんたじゃねえかよぉ!」

ひきつったような笑みを浮かべる競売警備長。

アッシュ「……なんだ知り合いかレン」

ポニテ「もしかしてレンちゃんの彼氏?」

レン「ふざけるなにゃ。知らないにゃあんな変な奴」

競売警備長「なっ!? 酒場で会っただろうがい!?」

配達屋「うわぁ……よくわからないけれどストーカーなんですか?」

309

--暗黒森林、森--

競売警備長「ふん……随分とまぁ調子こいたこといってくれるぜ。あんたらにはこの兵達が見えねぇのかな!?」

そう言って競売警備長は兵達をアピールする。

アッシュ「いや見えるだろ」

ポニテ「それなんかの隠語?」

レン「見えるに決まってるにゃ。馬鹿かにゃ?」

競売警備長「なっ!?」

配達屋「うわぁ……」

数百人はいる兵達を前にだるそうな表情の三人。

アッシュ「はぁ」

おまけにため息とかついちゃう。

310

--暗黒森林、森--

競売警備長「あんたら……こけにしやがって……! いけぇぇお前らぶち殺しちまぇ!」

うおぉぉぉ!

兵達が一斉に走り出す。

ザザザザ

アッシュ「やれやれ……ただでさえ今は気が立っているっていうのに」

ポニテ「空気を読むのは大切なスキルだよ?」

レン「ある意味彼らは空気を読んでるかもしれないにゃ」

配達屋「あわわ」

ザザザザ!

311

--暗黒森林、森--

アッシュ「なるほど、わざわざ俺らの鬱憤を晴らしにきてくれたというわけか」

アッシュは指を鳴らす。

ポニテ「わーどっえむー」

顔は笑ってないポニテ。

レン「じゃあ一人百人ずつくらいで」

眼鏡を拭くレン。

ザザザザ!

配達屋「わー……余裕そー」

312

--暗黒森林、競売会場--

わーわー

騒ぎはだんだんと収まって来ている。

絵師「……」

びくっびくっ

絵師は原形をとどめないほど痛めつけられていた。

フォーゼ「ちっ……最後まで抵抗しなければ……こるぁ」

フォーゼは折れた右腕を押さえている。

絵師(配達屋は……ツインテをアッシュ達と一緒に逃がせたかな……)

フォーゼ「……」

絵師(後は任せたよ……)


剣豪「ふぅ……」

剣豪は治療を受けながら一服。

剣豪「ふん……小僧、若いのにやるじゃねぇか……俺もそろそろ引退かなぁ」

313

--暗黒森林、森--

ズバッ

競売警備長「ぐっ……ば、ばけも……の……め」

どさっ

アッシュ「ふん」

アッシュはナイフから血を弾いてナイフケースにしまう。

ポニテ「あーお腹減った」

ぐー

ポニテはのびをしながらお腹を鳴らす。

レン「ちょっと今日は連戦し過ぎたにゃ。そのわりには……ツインテ助けられなかったし……」

レンは残念そうに落ち込んでいる。

配達屋(わー、まじで三人で全部倒しちゃったー)

配達屋は目の前の惨状を前にして笑うしかなかった。

314

--暗黒森林、森--

アッシュ「まぁ全く収穫がなかったというわけでもないがな」

ポニテ「そうだね。またみんなと集合できたし。それに」

レン「新しい仲間がふえたにゃ」

三人はじっ、と配達屋を見る。

配達屋「……へ?」

アッシュ「ようこそ勇者仮パーティへ。仕方ないから歓迎してやる」

配達屋「へ!?」

ポニテ「まぁツインテちゃんが奪われた原因の一つにこの子が噛んでるのも事実だしね。償いは必要だよね」

配達屋「へ!?」

レン「腕もそこそこたつみたいにゃし」

配達屋「へ!? へ!?」

315

--暗黒森林、森--

配達屋はあわてふためく。

配達屋「ぱぱぱぱぱ、パンティ!?」

レン「パーティにゃ」

配達屋「パーティ!? な、なにいってるんですか! 私そんな面倒なこと絶対にしませんよ!?」

アッシュ「面倒て」

配達屋「何が悲しくて化け物パーティの中に入ったりしますか! それに私は配達屋という定職についてるんです! そんなことは私が許してもお上が許しません!」

ポニテ「じゃあ仕事ならいいんだね?」

レン「にやり」

配達屋「……へ?」

アッシュ、ポニテ、レン「「「じゃあオレ<私、レン>達をツインテ<ちゃん>のところにまで運べ<運んで、運んでにゃ>」」」

いーい笑顔で三人は配達屋を取り囲んだ。

配達屋「……い……いや……いやーーー!!」

いやーー
いやー
いやぁ

森に悲鳴がこだました。

316

--暗黒森林、森--

大カバ亜人「……」

ブリュリ

ぴちゃっ

ぴっち『……』

ぱっち『……』

ぐちゃぬちゃ……

ぴっち『……僕たち一体どこからでてきたっぴ?』

ぱっち『聞くな』


アッシュ「そういやサムはどうなったのか」

ポニテ「死んだんじゃない?」

レン「うん」


    勇者と魔王がアイを募集した
         第一部
        リスタート 完

317

--ライン10--

十代目勇者「はっ、はっ……」

ゴォォオ

荒廃した雪の降る町に彼らは立っている。

鎧使い「あーもうっ! 一体どーなってんのよー!」

戦士「ふん……想像通りじゃないといいな、うすっ!」

僧侶「きゃははは! わらえなーい!」

忍「僧侶、笑ってる……」

十代目勇者「はぁ……まさかそんなことまで可能なのか」

ゴオオオオオォォ

??「……」

黒煙の中にうっすらとシルエットが浮かび上がる。

??「……やんす」

???「行きなさい、ガーゴイル」

はい、というわけで第一部が終わりました。

最後の選択肢についてですが、今回のはちょっとドキドキしてもらうためのいじわる選択肢でした。申し訳ないです。
というのも、既に前の選択肢、助けに来た ですでにルートは決定しています。
詳しくはいいませんが、あの時1を選んだ数だけ優しいルートになっていた、と思っていただければと思います。
最後の選択肢まで2だったら……バッドエンドにして謎の第四章がスタートするところでした。
でも今回は伏線張って無かったのでひどい選択肢でしたね。反省します!

それでは健やかなクリスマス、そしてよいお年をお過ごしください。(もしかしたら年内にもう一回くるかもですが)




          次回予告


トリガー「よしぴこー! よしぴこー!」

盗賊「いや……その僕、ヨシヒコじゃないんすけど」

勇者「なんで私が紫ポジションなんだよぉ!! 私は勇者なんだからヨシヒコポジションのはずだろぉ!!」

魔法使い「いやぁwwwだってwwwそのwww胸ないしwwwそんな当たり前のことを言ってしまう私だよwwww」

盗賊、勇者「「きのこ頭はお前かよ!! しかも初期verの喋りでかよ!!」」

闘士「お、おで!!」

盗賊、勇者「「お前はある意味ではオネエだけども!!」」

トリガー「ほっとけ」


  次回、「勇者ゾクヒコと魔王の城」

うぉぉ、今日は早いですねwwおつです!!
とりあえず、あいつらが無事でよかった!ww
じゃ、俺からのプレゼントだぁwwwwww

PASS 2ww

いやー、こっちも2になってくれるとはww
まだまだ、ヒナ型です。リンクの件、了解いたしました!

あと、タイトルの変更は可能ですので、必要でしたら言ってください!

>>492さん
wiki拝見させていただきました。あんなにたくさん……大変だったでしょう。
本当にありがとうございます!!

いえ、俺も礼代わりなんで気になさらんで下さいww

あけましておめでとうございます!! 
今年こそ完結させたいと思っております。本年も何卒よろしくお願い申し上げますm(__)m

あ、投下は申し訳ないのですが、もう少し待ってください……。

改めまして新年明けましておめでとうございます。
2013年初投下させていただきます。

>ジャージ男さん
wiki色々とありがとうございます!コメントも見させていただきました。
わかりました、間違えてネタバレしちゃわない程度に手を加えていこうとおもいます。
あとwikiってバックアップとかって取ってあるんでしょうか? ここまで素敵なものが消えちゃったらと思うと不安になってしまって……

今後何かしらの展開があったら素敵ですね……夢のようです……

それでは投下していきます。



--南の王国近辺の村--

カーカー

?「……」

ギィギィ

ロッキングチェアーに揺られながら、褐色肌の女性は夕焼けを見ている。

?「……」

疲れた表情で、その瞳は遥か彼方を見ている、

タタタタタ

??「ママー!」

???「こら気を付けて走るバウよ」

ボールを持った幼児が女性に駆け寄り、その後ろを大型の犬が追う。



--南の王国近辺の村--

??「ママー! おなかすいたー!」

幼児は汚れているのにも構わずに女性に抱きつく。

?「あらあら……じゃあ急いでご飯用意しなくちゃね」

????「今日は私がすると言ったでしょ? でございます。もうすでにできてるでございます」

窓から顔をだしたメイド姿の女性が答える。

?「あ……そうでしたね」

???「大丈夫バウか? ブラ」

?改めブラ「えぇ……この所調子はいいんですけれど……。それよりすいません、遊んでもらっちゃって。番犬さん」

???改め番犬「気にするなバウ。これも番犬のつとめバウ」

??「わんっちゃあああん!!」

がばっ

幼児は嬉しそうにはしゃいで番犬に抱きついた。



--南の王国近辺の村--

????「はぁ。あの番犬が今ではすっかりかたなしでございますですね」

?????「ございますですー!!」

窓から全身を出す小さなメイド。

番犬「う、うるさいバウよメイド!! ……ってちびメイド、今日は外に料理を運ぶバウ」

?????改めちびメイド「ふぇ?? なんででございますですー?」

番犬「今日は流星群が見えるそうバウ。それなら外のテーブルで食べた方がいいというものバウ」

ちびメイド「流星群!? 楽しみでございますですーー!! わかったでございますですよー!!」

嬉しそうに鍋を運ぶちびメイド。

ガチャガチャ

????改めメイド「あ、こら! 気を付けて運ぶでございます!」



--南の王国近辺の村--

かちゃかちゃ

ブラ「おいしい……メイドさん、本当に料理が得意になりましたね」

メイド「残念ながら他にやることがないもんででございます……あ、ほらほらほっぺたにご飯ついてるでございますよ?」

??「あうー?」

メイドは幼児のほっぺたについたご飯粒をとって食べる。

かちゃかちゃ

番犬「なんでわしだけ下で犬食いせなあかんバウ」

メイド「犬畜生が何言ってるでございます」

番犬「ひでぇ!!」

ブラ「……」



--南の王国近辺の村--

メイド「……」

番犬「……」

??「あー! それとってーちびめいどー!」

ちびメイド「おしょーゆでございますです? はいでございますです!」

??「ありがとー!」

ブラはその光景を見てほほ笑んでいる。

メイド「……一体いつまでこれが続くんでございます」

メイドは番犬にしか聞こえない大きさの声で話しかける。

番犬「仕方ないバウ……ヤミ様が何者かに連れ去られた今、やれることはないバウ」

メイド「……はがゆいでございます」

ブラ「ほら、落ち着いて食べるのよ? やみ」

??改めやみ「うん!!」



--深い森--

ホーホー

ぴっち『こっちだっぴ。余所見すると入れないっぴよ?』

ぱっち『妖精郷を甘く見るんじゃないっぱ!』

ザッザッ

配達屋「はぁ……なんだって私がこんな目に……」

かっぽかっぽ

ユニコーン「ひひん」

配達屋達は妖精に導かれて森を歩いている。

アッシュ「これで嘘だったら承知しないからな」

ポニテ「うん、食べちゃう」

ぴっち『ひ、ひでぇ!』

ぱっち『善意で言ってあげてるのにっぱ』



--深い森--

レン「まぁ……しっきりなしに三強に襲われることを考えたら、これが最善策な気はするにゃ」

ぴっち『猫ちゃんわかってるー!』

ぱっち『そうっぱ! 妖精郷は妖精に導かれたものしか入れない幻想郷! これ以上安全な場所なんてないんだっぱから!』

びゅういん

その時、突然景色が切り替わる。


--妖精郷--

http://file.sssukidesuuu.side-story.net/32577433.jpg

配達屋「! うわぁ凄い……これが妖精郷……」

夜であるのにも関わらず、優しい光で満たされた世界。
ほんのりと光を発する妖精が飛び回り、妖精郷全体を流れる水も眩しくない程度に輝いていた。

ポニテ「綺麗だねぇ……」

アッシュ「あぁ……ツインテにも見せてやりたかった」

レン「死んだ風に言うなにゃ」

ぴっち、ぱっち『『ようこそ! 妖精郷へ!』』



--妖精郷--

ぱたぱたぱたー

配達屋達の前に妖精達が飛んできた。

ぺっち『お前達だれですっぺ? 余所者は入っちゃダメですっぺ』

ぽっち『そうっぽ。いーけないんだー、いけないんだー。精霊様にー言ってやろーっぽ』

ぴっち『待ってくれっぴ! 僕はぴっちだっぴ! 元々この郷のものっぴ!』

ぺっち『ぽっち、知ってるっぺ?』

ぽっち『うんや、知らないっぽ』

ぴっち『思い出せっぴ! ほら、小六の時の給食の時間にうんこもらした……』

ぺっち『……あ、ああー! くそ漏らしのぴっちっぺかぁ!』

ぽっち『あぁいたいたー。そのまま不登校になったやつっぽ!』

ぴっち『ふぅ、思い出してもらえたっぴ』

きゃっきゃきゃっきゃ

アッシュ「それでいいのか」

ポニテ「外見は可愛いのに」



--妖精郷、ぴっちの家--

ぴっち『さぁさ、今日はお腹いっぱい食べていくといいっぴ!』

ポニテ「え!? なにそれおごり!?」

ぱっち『妖精郷は精霊様の魔力の恩恵のおかげで食べ物が豊富にあるんだっぱ。だから外の世界みたいに買ったりする必要はないんだっぱよ。そこら辺から取ってきたり趣味で作ってるやつから貰えばいいだけの話なのだっぱ。だから好きなだけ食べていいのっぱ』

ポニテ「わぁい食べ放題。ポニテ食べ放題大好き。私ずっとここに住むー」

アッシュ「おい頼むからツインテのことを思い出せ」

レン「レン、ツインテと一緒にここで永遠に住みたいにゃ。そういえばIPS細胞というので同性の間でも子供ができるらしいです」

わいのわいの

配達屋(濃いなぁこの人達……一般人の私は浮きまくりですねー)

ユニコーン「ひひん」

ぴっち『じゃあ今ご飯もってくるっぴ』

10

--妖精郷、ぴっちの家--

アッシュ「……なんだこれ」

ぴっち『? 何ってご飯っぴ?』

配達屋達の前に置かれたものは……

ぱっち『しかもかなり豪勢な部類っぱよ』

ポニテ「こっちのは……蜜であってるんだよね?」

ぴっち『いえすっぴ』

レン「なるほど、じゃあこれは?」

ぱっち『ドラゴンうんこっぱ』

ポニテ「私うんこ嫌い!」

ダンッ!

テーブルを思い切り叩くポニテ。

アッシュ「待てポニテ! 嫌いとかそういう問題じゃないぞ!」

真顔で突っ込むアッシュ。

11

--妖精郷、ぴっちの家--

レン「何おもてなし雰囲気で、さりげなくスカト○プレイに持ち込ませようとしてるにゃ、このくそ妖精」

メンチ切るレンにゃん。

ぴっち『ま、待つっぴ! 誤解だっぴ! 汚れなき妖精である僕らが、そんな異常な性癖の持ち主であるはずないだろっぴ!』

ポニテ「私超絶美少女なんだよ!? 世が世なら私の同人誌いっぱい出されていてもおかしくないレベルの美少女なんだよ!? なんでそんな美少女な私がうんこなんて食べなきゃならないの!?」

アッシュ「突然何言い出したの!?」

ポニテ「顔は小顔で可愛いしお目目ぱっちりだし唇ぷるるんだし髪の毛さらさらだしおっぱいぼいんだし腰はきゅっだしお尻むっちりだし足長いし! なんでそんな美少女な私がうんこなんて食べなきゃならないの!?」

ものすごく悔しそうな表情で泣きながら言うポニテ。

レン「腹減りすぎておかしくなったにゃ」

ポニテ「それとも何!? そういう同人誌あんの!? うんこ喰う奴!!」

12

--妖精郷、ぴっちの家--

アッシュ「おいさっきから同人誌同人誌って……」

ポニテ「違うでしょ!? そういうのよりエッチな方が需要あるでしょ!? 『ふふ……食いしん坊め……やっと食い物に仕込んだ睡眠薬が効いてきたか……』とかそういうのの方のがいいでしょ!?」

ぱっち『実に同人誌ぽいセリフっぱ』

ポニテ「『いやしいやつめ……こっちの口も食いしん坊なのかな……?』とかいってぐったりしてる私を犯したいんだろ!?」

アッシュ「もういいやめろポニテ! ここには年端のいかない読者様もいるかもしれないんだぞ!?」

ポニテ「うるさい! アッシュ君は今のをツインテちゃんに置き換えて妄想してろ!!」

アッシュ「!?……ツインテ……こんなとこで寝ちゃまずいぞ……おーい?……寝てるな……? よし!」

ぴっち『何がよしだっぴ!!』

ポニテ「いいよ犯せよ! でも言っとくけど私超強いからね!? 同人誌みたいにあっさり弱そうなおっさんとかに負けないからな!? 『おいしそうに咥えこんじゃって』って、私の場合は本当の意味で喰うからな!?」

レン「もうこれ最低にゃ」

13

--妖精郷、ぴっちの家--

ポニテ「ううぅレンちゃぁん……私がっかりだよぉ……! 私凄くお腹すいてたからめっちゃ期待してたのに……憤慨だよ! この代償にぴっちちゃん達の身体で払ってもらってもいいんだよ!?」

レン「この三年間で一通りの物は食べれることが実証されちゃったにゃ」

ぴっち『待つっぴ!! 騙されたと思って食べてみるっぴ!! このドラゴンうんこは超美味い絶品料理なんだっぴ!!』

ポニテ「何が料理だよ!! 体内を巡りまわってきたことを調理って言うな!!」

ぱっち『いいから喰えって言ってるっぱ。それとも三年間経っても狭い所でしか物をかんがえられないのかっぱ?』

ポニテ「む」

ぱっちの一言でポニテは少し冷静さを取り戻した。

ぴっち『さぁ食べてみるっぴ。きっと気にいるっぴ』

レン「……これを食うとか正気の沙汰じゃないにゃ。でもどうするにゃポニテ?」

ポニテ「……仕方ないから食べてみる」

レン「まじか」

14

--妖精郷、ぴっちの家--

レン「それはうんこぞ、それはうんこぞ」

ポニテはドラゴンうんこを手に取る。

ぬむりゅ

ポニテ「うひっ!? この手に取った時の感触ぅ……」

ぴっち『さーさー!! ひと思いに一気に!!』

ポニテ「ぐぅ……なむさん!!」

ポニテは覚悟を決め口を開いた。

ぴっち、ぱっち『『あー……』』

その様子を嬉しそうに破顔させて見ている妖精たち。

ポニテ「! な、なにその顔」

ぴっち『い、いや? なんでもないっぴ』

ぱっち『ほんとそう。なんでもないからさっさと食べちゃうっぱ』

ポニテ「……」

15

--妖精郷、ぴっちの家--

ポニテ「……ドッキリだったら燃やすからね。魂ごと」

ポニテの瞳が光り始める。

レン「ポニテ、無理することないんにゃよ?」

ポニテ「こ、ここまできたら意地だよ! もう触っちゃってるしね!!」

再びポニテがドラゴンうんこを口に運ぼうとすると、

ぴっち、ぱっち『『あー……!』』

嬉しそうにそれを見ているぴっちとぱっち。

ポニテ「やっぱこれドッキリだろ!!」

ぱっち『ち、ちがうってぱ』

ポニテ「う〜〜!! うんこは投げ捨てるもの!!」

ポニテはドラゴンうんこをブン投げる。

レン「動物園のゴリラか!」

16

--妖精郷、ぴっちの家--

べちゃ

ポニテ「!」

しかし妖精たちには当らずに、ドラゴンうんこはアッシュの顔面に当たった。

ポニテ「ひぃっ!?」

ぬちゃ

アッシュ「な、なんだなんだ、もうちょっとで妄想の中のツインテと……ちっ。喰い物を粗末にするんじゃねぇぞ」

ぺちゃ

アッシュは顔についたドラゴンうんこをなめる。

レン「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」

アッシュ「な……なんじゃこりゃ」

ガクガクと震えるアッシュ。

ポニテ「ご、ごめんよアッシュ君!! そんな趣味はないの!」

17

--妖精郷、ぴっちの家--

アッシュ「美味い! 美味いぞこれ! なんだこれ!」

ポニテ「へ?」

アッシュは自分の顔にくっついてるドラゴンうんこをかき集めて口の中に放り込む。

アッシュ「んぐんぐ。このまったりとしていてまったりとしていないようなこの、なんか、すごいいい味がたまらん!!」

レン「ば、馬鹿な……アッシュが食糞に目覚めたのかにゃ……?」

ポニテ「……ほ、本当に美味しいの?」

アッシュ「あぁ! やばいぞ!」

ポニテ「……ごくり」

ポニテは再びドラゴンうんこに手を伸ばした。

ポニテ「あのちょっと食にはうるさいですよの称号を持つアッシュ君がここまで言うなんて……よっぽど」

ポニテは再びドラゴンうんこを掴む。

ぬめりゅぶ

ポニテ「うひぃ!」

18

--妖精郷、ぴっちの家--

ポニテ「でも……外見とか固定概念だけで決めつけちゃだめだってことは……学んだんだ」

ポニテはうんこを前にして真面目な表情。

レン「ぽ、ポニテ!」

ポニテ「いたっ、だきっ、ます!!」

バクッ!!

ポニテは決心が鈍る前にと、思い切ってドラゴンうんこを口に入れた。

もちゃっ、くちゃっ

ポニテ「……」

ぬちゅっ、ぐりゅる、ぶちゅ

レン「ど、どうかにゃ……?」

ゴックン

ポニテ「……」

レン「……ぽ、ポニテ?」

ポニテ「……うんこうめぇ」

19

--妖精郷、ぴっちの家--

レン「!! な、なんだってーっ!?」

ポニテ「うめぇ!! うんこうめぇ!! レンちゃん!! すごいよ!! このうんこうまいよ!!」

アッシュ「え……」

ぴっち『ねー!!?? 言った通り美味しいでしょっぴー!? でもうんこだけど』

ぱっち『めっちゃうまくてめっちゃ体にいいんだからっぱー!! でもうんこだけど』

ポニテ「やばいよ!! しかも食べる度に魔力が充足する気がするよ!! 細胞が喜んでる気がするよ!!」

レン「そ、そこまで……?」

レンもテーブルに置かれたドラゴンうんこを見てつばを飲む。

レン「な、ならレンも一個だけ……」

レンはそう言ってドラゴンうんこに手を伸ばした。

ぬぶるるぶりゅっ

レン「ひあっ!?」

20

--妖精郷、ぴっちの家--

レン「もぐっ……!! お、美味しいにゃ!!」

ポニテ「でしょー!?」

アッシュ「くっ!! まさかこれがうんこだったとは……し、しかし手が止まらん!!」

バクバクバクバクバク!!

ぴっち『喜んでもらえてよかったっぴー』

ぱっち『まー、妖精郷にあるものでまずいものなんかないんだけどねっぱ』

配達屋「……」

ぴっち『ぴ? そういや静かなお姉さん、お姉さんは食べないっぴ? 無くなっちゃうっぴよ?』

配達屋「あー……私はそんなにお腹が空いてないのでおかまいなくー」

ばくばくばくばくばく!!

配達屋(……どこまで言ってもうんこはうんこですよ。私は蜜だけいただこうっと)

ユニコーン「ひひん」

あと最近なんですが、部と章の使い方がおかしいことにきづきました……困りました。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m


そういえばまおゆうのアニメ始まりましたね! 自分はssを読むのより先にアニメで内容を知ることになりそうです! 楽しみにしたいと思います!!

            次回予告

魔王「この我のものとなれ、勇者よ」

勇者「え……ロリコン……?」

盗賊(自分でロリって認めちゃったよ……)

こんばんはー! 遅くなりました。
挿絵は毎週どっかに挟む感じでやりたいなぁと考えていたのですが、描いてくれてる友達のパソコンがぶっ壊れちゃったみたいでこれからあるかわかりません……。

それとは別にwikiの方にある要望があったので、wiki設立のお礼ということも含め、絵を! 頼みました……


劇中、勇者最大のライバル(乳的な意味でも)のサッちゃんです!
http://file.sssukidesuuu.side-story.net/34b99d71.jpeg


それでは投下を開始します。

21

--ジャングル--

姫「おーいっ! 賭博師ちゃん賭博師ちゃんー!」

賭博師「はいはい、どうしましたか姫ちゃん様」

姫「新しい柵を作るのを手伝って欲しいのだっ!」

賭博師「あー……」

元気よくトンカチを振り回している姫。

賭博師「あ、私がやっておきますんで。姫ちゃん様は休んでてくださいよ」

姫「えーっ!? 姫ちゃんもやるよっ! やりまくるよっ!!」

賭博師「いや正直バカにやらせても時間の無駄なんすよ」

姫「バカってゆったっ!?」

22

--ジャングル--

とんてんかん

姫「おぉー!!」

賭博師「ふぅ……これでよしっと。どんなもんでしょう姫ちゃん様」

賭博師は出来あがった柵を姫に見せる。

姫「うんっ!! すごいすごいよっ!! 賭博師こんなこともできちゃうんだねっ!!」

賭博師「ははっ。まぁバカとは違いますんで」

姫「今バカってゆったっ!?」

賭博師「いや、誰も姫ちゃん様のことをバカ呼ばわりしたわけじゃないですよ。バカ姫ちゃん様」

姫「そっかぁ……えへへ、姫ちゃんちょっと勘違いしちゃっ、今バカってゆったっ!!」

賭博師(アホだなぁ)

23

--ジャングル--

姫「じゃあその調子であと50メートル分だね!」

賭博師「はいはい、了解でぇす」

賭博師は道具を持って移動する。

姫「……」

とことことこ

その後ろに黙ってついていく姫。

賭博師「……どうしました姫ちゃん様」

姫「んー……」

とことことこ

賭博師(なんだ? まだなんか用があんのかな? 正直うろちょろされると作業の邪魔だし……仕方ない)

賭博師は姫の方に振りかえろうとする。

姫「ここ何年も一緒に暮らしてみて思ったわけだけど、とても人身売買をやっていた人間とは思えないね」

賭博師「!?」

24

--ジャングル--

賭博師「……」

普段と変わらないはずのその表情に、なぜかまったく違うものを見ているかのような気分になる。

姫「優しいし教養はあるしお世話好き。それが嫌々やってるわけでもなければ打算的にやってるわけでもなさそうだし。そんな人間が人身売買なんてやるのかな?」

賭博師「……」

ごくり、と賭博師はつばを飲む。

賭博師(全てを、見透かされているような、気がする)

それほど姫の瞳は美しかった。

賭博師「あ、」

そしてなぜかさらさらと胸の内を口に出してしまう。

賭博師「俺が……いや、ただの言い訳なんですが……あの時の俺達は術にかかっていたような、気がするんです」

姫「……」

賭博師「確証があるわけじゃないし、過去の罪から逃れようっていうわけでもない……でも俺達は……あいつに会った時から……捻じ曲げられていたような、気がする……」

25

--ジャングル--

調教師「あ、賭博師様と……姫ちゃん様? 何の話をしていらっしゃるんだろう」

農作物を抱えた調教師は、遠くで立って話している賭博師と姫を発見した。



賭博師「東の王国から亡命する時に……俺達には協力者が必要だった。だからあの館を出てすぐに、俺はそいつに連絡を取った……」

姫「そいつって……?」

賭博師「東の王国の黄金世代は……サム、選抜兵、通信兵、医師、そして俺の五人なんだが……実は同期でもう一人いるんだ」

姫「……」

賭博師「裏で潜伏して活動することを得意とする、俺達の、親友……今じゃそれも怪しいが」

姫「名前は?」

賭博師「……亜人保護団体、代表。あいつの言葉は、人を狂わせる」

26

--協議会場--

代表「がー、すー、がー、すー」

代表は椅子に腰かけ、顔にタオルをかけて寝ていた。

護衛姉「代表様、そろそろ」

護衛妹「お時間でございます」

両方向からゆさゆさと代表を揺らす護衛姉妹。

代表「おっと……いやいや、ついつい寝てしまいましたか」

んー、っと背伸びをする代表。

護衛姉「どうぞ」

姉が差し出したのは暖かいタオル。

代表「おっ! 気がきくねぇ。ありがとーぉ!」

タオルでごしごしと顔を拭き、代表は立ち上がる。

代表「よっし、じゃあいっちょやりますか」

熊亜人「……」

27

--協議会場--

ギィ

ハゲ犬幹部「ぬ!」

円卓に座る8人の幹部の目が、一斉に代表に集まる。

代表「いやいやお待たせいたしました幹部の方々」

にこりと笑いながら代表は自分の席につく。

蝶幹部「貴様……最も歳が若いくせに我らを待たせおって!!」

もじゃ幹部「あげくのはてにその軽々しい態度!! 我らを甘くみているのだな!?」

代表「いえいえめっそうもありませんよ! あなた方の後押しあってこそ、私は今この席に座っていられるのですから」

頭をペコペコと下げて笑う。

でぶ猫幹部(……相変わらず何を考えているのかわからないやつだ)

鎧幹部「……」

代表「じゃあ、始めましょうか」

28

--協議会場--

蛙幹部「それじゃあまずは、西の王国在住の亜人達に特別階級所得を与えるために予算をさこうと思うのだが」

もじゃ幹部「うむ。人間などより我らは優遇されるべきじゃからな!!」

でぶ猫幹部「ふぉっふぉっ」

さっ

代表「あの〜」

代表は話を遮って手をあげる。

鼠幹部「なんだちゅぅ若いの!! 大事な話の流れを切りおって!!」

代表「そんなことよりも早急にことを進めなくてはならない問題があるんですよ」

がたがた!!

蝶幹部「なんだと!? 貴様!! 我らが同胞の大事な問題をそんなことだと!?」

代表「あ〜……もっとお金欲しいのはわかりますけれど、そういうのは後にして欲しいんですよねぇ」

29

--協議会場--

でぶ猫幹部「!!」

ハゲ犬幹部「貴様!! 人間の分際でなんて口の聞き方だ!!」

蝶幹部「今お前らの発展とその裕福さは我ら亜人がいてこそなりたっているのだぞ!?」

鼠幹部「これだから人間を調子づかせるとろくなことにならないちゅ!!」

幹部達は怒りをあらわにする。

代表「あ〜……」

鎧幹部「……」

蛙幹部「謝罪しろ!! 我らに!! 地面に頭をこすりつけて!!」

蛙幹部が代表に掴みかかったその時に、

代表「『沈まれ』」

ビタっ!!!!

30

--協議会場--

ハゲ犬幹部(な、なんだ!? こ、声が、でない!?)

でぶ猫幹部(はーっ、はーっ……それだけじゃあない……なんだ? なぜ我が、あんなひょろっちい人間なんぞに)

蛙幹部(恐怖を抱いている!?)

代表「やっぱ難しいんですよねぇ、人並みの知能がない方達を相手に話し合うのって。ちょっと努力してみようかとおもったけれど、結局こうするしかないんですよねぇ」

カッカッカっ

代表は円卓の真中に立つ。

鎧幹部(なんだ……何を始めるつもりだ……?)

蝶幹部(動くことも……できぬ!!)

代表「すーっ」

代表は深呼吸をし、そして


代表「諸君、私はおっぱいが好きだ」


そう言い放った。

31

--亜人保護団体本部--

ぶぅん

事務員「おわっ!! な、なんだこれ……いきなり鏡に何かが映って……え? 代表……?」



--魔法王国--

ぶぅん

魔法王国民「お! な、なんだあれ! 空を見てみろよ! 人が映ってるぞ! なんかの新魔法か?」

ざわざわ

魔導長「! ……これは」



--東の王国--

東の王「これは……」



--西の王国--

秘書「! 西の王、こちらへ」



--南の王国--

南の王「この顔は……」


--王国--

中央の王「……くくっ」


--ジャングル--

姫「!」

賭博師「な、代表……」

世界中でその映像が映し出された。

32

--協議会場--

代表「諸君、私はおっぱいが大好きだ」


代表「無乳が好きだ 貧乳が好きだ 微乳が好きだ 美乳が好きだ 普乳が好きだ 豊乳が好きだ 巨乳が好きだ 爆乳が好きだ 魔乳が好きだ」


代表「電車で 街中で 部屋で 職場で 雪山で 森林で 海辺で 体育倉庫で 学校で プールで」


代表「この地上に存在するありとあらゆるおっぱいが大好きだ」


代表「テーブルの上にならべたおっぱいがむにゅっとなってるのが好きだ。空中高く放り上げられたボールをおっぱいが跳ね返した時など心がおどる」


代表「自転車の後ろに女の子を乗せておっぱいをむぎゅっとくっつけてくるのが好きだ。運動をしている時に服の隙間から飛び出してきたおっぱいをちらみした時など胸がすくような気持ちだった」


代表「四つんばいになった時におっぱいが垂れるのが好きだ。縄跳び状態の女の子が息も絶え絶えにおっぱいを何度も何度もたゆんたゆんしている様など感動すら覚える」

33

--協議会場--

代表「おっぱいを紐で吊るし上げていく様などはもうたまらない。仰向け状態で寝ている時にグラヴィティに負けておっぱいの形がつぶれているのも最高だ」


代表「自分のおっぱいに自信を持てない女の子が手で隠しながら涙目上目遣いになっているのを見た時など絶頂すら覚える」


代表「露助のおっぱい師団に滅茶苦茶にされるのが好きだ。必死に守るはずだったのおっぱい達がイケメンに掻っ攫われていく様はとてもとても悲しいものだ」


代表「おっぱいの物量に押し潰されて殲滅されるのが好きだ。英米の巨大おっぱいに追いまわされ害虫の様に地べたを這い回るのは歓喜の極みだ」


代表「諸君、私はおっぱいを天国の様なおっぱいを望んでいる」


代表「諸君、私に付き従う大隊紳士諸君。君達は一体何を望んでいる?」


代表「更なるおっぱいを望むか? 情け容赦のない餅の様なおっぱいを望むか? ぷにぷにの限りを尽くし三次元世界の男を殺す嵐の様な

おっぱいを望むか?」

34

--協議会場--

幹部達『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! 』


--魔法王国--

『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!』


--東の王国--

『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! チハヤ! おっぱい! おっぱい! おっぱい!』


--西の王国--

『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!』


--南の王国--

『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!』


--王国--

『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!』


--黄金王国--

『おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい! おっぱい!』

35

--協議会場--

代表「よろしい。ならばおっぱいだ」


代表「我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとするわきわきした手だ。だがこの暗い部屋の中で四半世紀もの間堪え続けてきた我々にただのおっぱいではもはや足りない!!」


代表「大おっぱいを!! 一心不乱の大おっぱいを!!」


代表「我らはわずかに一個大隊、千人に満たぬ紳士に過ぎない。だが諸君は一騎当千の古紳士だと私は信仰している。ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の軍集団となる」


代表「我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけているリア中共を叩き起こそう。おっぱいをつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう。連中に母乳の味を思い出させてやる。連中に我々の甲高い声を思い出させてやる」


代表「おっぱいの谷間には一般人の哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる。一千人の紳士の戦闘団で世界を揉み尽くしてやる」


代表「紳士の大隊大隊指揮官より全紳士艦隊へ」


代表「目標コミケ会場上空!!」


代表「第二次おっぱいぱい作戦 状況を開始せよ」

36

--東の王国--

東の王「こ、これは……こいつ……まさか」

うぉおおおおおお!!

東の王「!! 城の外で民衆が……くっ!! こんな時にっ!!」



--西の王国--

西の王「一体どうしたんだ秘書。こんな暗がりに連れてきて」

秘書「申し訳ありません。ですが、あれを王に見せるわけにはいきませんでした」



--南の王国--

うぉおおおおおおお!!

南の王「こ、こんなことが!!」



--王国--

中央の王「くくく。さぁやりましょう代表さん。世界は我らのものですよ……」



--魔法王国--

魔導長「ぐっ……正式な王じゃない私じゃあ完全には防げなかったなの……これは」



--ジャングル--

賭博師「独裁者クラススキル、独裁者の言……王の言と効力はさほど変わらないが……」

姫「……これが世界中に流されたとしたらまずい!!」

37

--競技会場--

代表「ぷぅ……つーかれった」

護衛姉「お疲れ様」

護衛妹「でした」

護衛妹は冷たいお茶を差し出した。

代表「おお! 気がきくねぇ、ありがとー!」

代表はコップを受け取ると一気に飲み干した。

代表「ぷはー!! 身にしみるねぇ!!」

熊亜人「……代表様、あの文章はもっとどうにかならなかったぐま?」

代表「なになに不満かい熊君? あんな素敵な演説、きっと他では聞けないぞ? 何せおっぱいは浪漫だ。夢だ」

熊亜人「ぐま……」

38

--競技会場--

蝶幹部「……」

幹部達は放心状態のまま立っている。

代表「まぁ熱く語れればなんでもよかったのさ。こちらに熱意さえあれば、あとは何を喋ったところで一緒さ」

代表はワイシャツのボタンを外してネクタイを取る。

代表「私の言葉を聞いたものは、私の心の声に支配される」



--東の王国--

東の王「本気で行う気なのか……」


--南の王国--

南の王「この世界から」


--魔法王国--

魔導長「回復魔法と蘇生魔法を……」


--ジャングル--

姫「消滅させる……」

39

--過去--

裸足の少年『なんですぐ来てくんなかったんだよ!! 隣の村ばっかひいきしてさ!!』

泥だらけの女性『け、警備隊が来るまで離れるわけには、いかなくて……』

裸足の少年『バカ! バカァ!!』

裸足の少年は上半身だけの父親とおぼしき人に抱きついて泣いていた。



--競技会場--

代表「……」

代表は閉じていた目を開く。

代表「これでまた一歩、人は平等に近づくんだ」

護衛姉「……」

護衛妹「……」

熊亜人「……」

40

--競技会場--

代表「私は常々こう思っている。この世最大の悪は魔王でも魔族でもない。それは不公平だということ」

護衛姉「……」

スッ

護衛姉がひざまづく。

代表「家族を蘇生されて喜ぶ人の傍らには、蘇生されることなく絶望を味わっている人たちがいるんだ」

護衛妹「……」

スッ

護衛妹がひざまづく。

代表「ただでさえ親しい人を失って悲しんでいるというのに、その上その不平等さを妬み恨まなくてはならないなんて、社会の大きな損失だ」

熊亜人「……」

スッ

熊亜人がひざまづく。

代表「さあ諸君、天国を作るぞ」

わー、これ年内に終わるんかなぁ……

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m






勇者「……」←サっちゃんの画像を見てる

さすさす

勇者「おっぱい……」(´;ω;`)ウッ



こんばんはー!


はい、あの絵は友人に描いてもらいましたー!

!? 561さん支援絵ありがとうございます!! もしや以前描いてくださった方でしょうか??


それではご機嫌に投下していきます!!

41

--東の王国--

ざっ、ざっ、ざっ

十代目「……今回はかなり厳しかったな……」

十代目は肩を揉みながら歩いている。

鎧使い「うぅ……なんとか、ライン10にまで押し戻したけど……これじゃ時間の問題じゃない!」

鎧使いは憤慨し、

シノビ「……」

シノビは無言。

戦士「しばし休養をもらいたい気分だ。うすっ!」

戦士は回復させきれなかった傷を数えている。

僧侶「きゃははは! あれ? なんだか慌ただしいねぇ」

城下町についた十代目一行は、溢れ変える人々を目の当たりにする。

ガヤガヤガヤガヤ

42

--東の王国--

鎧使い「ねぇ、なにかあったの?」

鎧使いは目の前を通りすぎようとする青年に話しかける。

王都青年「あぁ! 勇者様方、これは良いところに帰ってこられました。実はこれからある祭りが開催されるんですよ」

鎧使い「え! 祭り!? 素敵! 後で出店見にいこシノビン!」

シノビはこくりと頷く。

戦士「ん? この時期に東の王国で祭りなんてあったか……?」

十代目(魔王軍に攻められている状況で……?)

十代目は訝しげに話を聞いている。

王都青年「えぇ、とても素晴らしい日が始まるんですよ!」

43

--東の王国--

僧侶「あ」

その時僧侶は、人々の中に黒い修道服を着た人間が混じっているのを確認する。

十代目「どうかしたか僧侶」

僧侶「きゃははは……元同僚」

鎧使い「! 僧侶の元同僚って!」

十代目「黒十字教会か」

シノビ「……」

鎧使い「そんなのがこんなところに紛れ込んでいるなんて……これは東の王に聞くしかないわ!」

44

--東の王国--

ダダダダダっ

兵達が行き交う慌ただしい城内。

十代目「すまない。ちょっといいか?」

近衛上級兵「こ、これは十代目様! 御帰還に気づくことが出来ず申し訳ありません! 何分緊急事態でして……」

近衛上級兵は申し訳なさそうに頭を下げる。

十代目「いや、いい。それより東の王様に謁見を取り次いでほしい」

近衛上級兵「はい、かしこまりました! しばしお待ちください」

バタン

近衛上級兵は部屋に入って行った。

45

--東の王国--

鎧使い「……ねぇ、どう思う? あれ完全に洗脳されてるわよね」
鎧使いは外に視線を送って言う。

僧侶「きゃははは! でも洗脳なら決められた行動以外できない。国民達はあまりに普通に生活してる」

シノビ「……調べたけどダメージ履歴に何もなかった……」

十代目「ふむ……言……しかないな」

鎧使い「え?」

十代目「王の言か独裁者の言。人の心に楔を打ち込むスキルだ。強制させるほどの力は無いが、これだけの人数だ、集団意識も相まって自発的に行動させてしまえるんだろう」

戦士「!……やっかいなスキルだ……」

鎧使い「ほんとね」

46

--東の王国--

鎧使い「そういえばさ、町の中に黒十字教会の人がいたけど……あれって」

僧侶「きゃは……危険だね。あれは蘇生を禁忌とする宗教きゃは」

シノビ「……蘇生を出来なくさせるスキル……」

戦士「死者が生き返るのは自然の摂理に反してるので蘇生を禁ず……だったか」

鎧使い「……これから一体何が起きようとしているのかしら」

十代目「わからない」

ガチャリ

近衛上級兵「お待たせいたしました、東の王がお会いになるそうです」

47

--東の王国--

東の王「ラインの維持、ご苦労だったな」

十代目「いえ。ですが増兵をお願いします。魔王軍の進行は日に日に強くなっています。このままではラインを維持し続けることすら……」

東の王「ふむ……」

東の王は渡された書類を見ながら深刻な表情。

東の王「しかし今は中々それも難しくてな……見ただろう? この国の現状を」

十代目「はい。一体何があったんですか?」

東の王「それはな……」

東の王は説明を始める。

48

--東の王国--

十代目「……なるほど。それで黒十字教会が国内に……」

東の王「! もう国内に来ていたか……そうだ、やつらと利害が一致する。恐らく手を組んだのだろう」

鎧使い「そんな……狂ってる」

戦士「回復手段を潰されたら魔王軍と戦うどころではないぞ……うすっ」

十代目「……事態は急を要しますね……どうします? 我々が行って討伐しましょうか?」

僧侶「!」

鎧使い「え!? でもそれじゃラインの維持が!!」

東の王「その必要は無い。現状でのお前達勇者の仕事はライン維持だ。それをやってくれればいい」

シノビ「でも……もし回復手段を封じられたら魔王軍との戦いが……」

東の王「わかっている。お前達が戦闘を行うよりも早く、奴らを倒す。そのためのメンバーを既に選抜した」

49

--東の王国--

十代目「メンバー……?」

戦士「お言葉ですが東の王様、亜人保護団体と黒十字教団を相手にするのは骨が折れるとおもいますが」

東の王「心配するな。総戦力で見ればお前達より上だとさえ私は思っている」

僧侶「きゃは!! 私達以上のパーティなんているのかな??」

コンコン

東の王「来たか。入れ」

ギィ

鎧使い「!! この人達は!!」

ザっ

50

--王国、牢獄--

中央の王「まさか……お前達がいながらなんということだ……!!」

ダンっダンっ!!

中央の王はもぬけの殻になった牢獄を見て地団太を踏んでいる。

軍師「ふーむ……中々の手際だぜぃ」

フォーゼ「ちっ! せこせことずっけぇやつらだこるぁっ!!」

オーズ「国が慌ただしくなった所を、すぱっと盗んでいくとはすごいおっ!」

三騎士は牢獄に残された痕跡を探すが何も見つからない。

軍師(痕跡すら無いとは一体どれだけの手練だぜぃ……でもまともに体を動かせないあいつに一体どんな利用価値があるのかだぜぃ)

軍師は鎖を触りながら目を細くする。

51

--???--

ぺたぺた

フォーテ「ふんっ、ふふーんっ♪」

一糸纏わぬ姿のフォーテは鼻唄を歌いながら歩いている。

フォーテ「久しぶりのお姉ちゃんとのお風呂だーっ」



ちゃぷ

ツインテ「……」

狐娘「はい、足は終了こん。次左腕洗うこんから出してこん」

52

--???--

ツインテ「……」

真っ白く広い部屋の中に、白いバスタブがぽつんと置いてある。
壁全体とも言える大きなガラス張りの外には真っ暗な世界が広がっている……そして青の球体が。

ぺたっ

ツインテはそのバスタブに張られた湯に浸かり、狐娘に身体を洗われている。

ぺたっ

フォーテ「狐娘ーっ、もういいよっ、後は僕がやるからっ」

狐娘「そう? じゃあ私は退散こん。後はお二人でごゆっくりこん」

53

--???--

フォーテ「えー? 狐娘も一緒に入っていけばいいのにっ」

狐娘「そんな狭いバスタブに三人も入れないこん。それにせっかくの姉妹水入らず、邪魔したくないこんよ」

狐娘はしっぽをふりふりしながら部屋から出ていく。

フォーテ「あはっ」

ぺたぺた

狐娘「……それにしても変な姉妹こん」

フォーテ「えっ? なにが?」

狐娘「それこん」

狐娘はフォーテの股を指差す。

狐娘「フォーテの股、なぜか昔から笑い男マークがあるせいで見えないこん」

54

--???--

フォーテの股関の部位は笑い男マークで隠されている。

狐娘「それ、なんかの魔法かと思ってたこんが、お姉ちゃんの方も似たような感じこん。脱がしてからというものの、なぜか光がさして確認できなくなっちゃったこん」

フォーテ「レーザー級だねっ!」

狐娘「? まぁ、だから二人して変だなって。やっぱり姉妹なんだなって、そう思ったこん」

フォーテ並の人間が二人もいるなんて考えたくないけど、と狐娘はそう呟いて去っていく。

フォーテ「……んふっ」

ちゃぷちゃぷ

ツインテの入っているバスタブにフォーテは入る。
二人が入るにはいささか小さいのだが、フォーテはお構い無しだ。

55

--???--

ぱちゃっ

フォーテ「はぁ……お姉ちゃん……」

ツインテ「……」

ぱしゃ

フォーテはツインテに抱きつく。

ツインテ「……」

ぴたっ

フォーテ「お姉ちゃんの肌すべすべで気持ちいい……」

フォーテの指がツインテの肌をなぞる。

フォーテ「お姉ちゃんの匂い、フォーテ大好き」

フォーテはツインテの首もとに顔を埋める。

56

--???--

ツインテ「っ」

フォーテ「だーめ、逃がさない……」

ぱしゃぱしゃ

足を絡ませフォーテはツインテとの接触部分を増やしていく。

フォーテ「お姉ちゃんの濡れた髪の毛が額に張り付いてるのなんて、もう芸術と言っていいよね」

フォーテはツインテの額に舌を這わした。

れろっ

ツインテ「……」

フォーテ「……ふふっ。でも君は僕の好きなお姉ちゃんじゃないんだよね」

ツインテ「!……」

57

--???--

フォーテ「お姉ちゃんの秘密は知ってるよぉ? 否、お姉ちゃんのことなら何であろうと知ってるよ? 何を食べて生きてきたのか。何を思って生きてきたのか。誰と戦ってきたのか。中にどんな人格があるのか」

ツインテ「……」

フォーテ「お姉ちゃんの心を守るために出てきてくれたんだよね? 確かに君ならどんなことにも耐えられる」

フォーテがツインテの顔に手をつける。

ツインテ「……あの子は今会えない」

ついにツインテが口を開いた。

フォーテ「そんなに悪いの?」

ツインテ「……回復しきるまで表には出さない」

フォーテ「回復って、三年間もあったのに回復してないのに?」

ツインテ「!」

58

--???--

フォーテ「そのままやってても良くならないよっ。だって回復役はお姉ちゃんなんだから」

ツインテ「……」

フォーテ「だから出して」

フォーテはツインテの顔に接近する。

ツインテ「……ダメ」

フォーテ「……」

ツインテ「君もあの子を大事に思うならそっとしておいて」

フォーテ「……」

ツインテ「いくら君でも私は突破できな」

フォーテ「ん」

フォーテは自らの唇でツインテの唇を塞ぐ。

ツインテ「んぶっ!?」

59

--???--

フォーテ「んー」

ぱしゃぱしゃ

ツインテ「んっ、くっ……!」

フォーテ「んふふー」

ぱしゃぱしゃ

ツインテ「……ん……ん」

フォーテ「ぷあ」

はー、はー、と息を荒げるツインテ。
ツインテとフォーテの唇から唾液の糸が伸びる。

ツインテ「はぁ……」

ぱあん

ツインテの髪止めがゴムからリボンに変化し、ウェーブがかかっていた髪の毛はストレートになる。

60

--???--

フォーテ「おはようっ……お姉ちゃんっ!!」

ツインテ「はー、はー……え? フォーテちゃん……?」

虚ろな瞳のツインテはフォーテを見て驚いた。

フォーテ「そうだよっ! フォーテだよっー!」

ばしゃっ

余程嬉しいのかフォーテは更にツインテを抱きしめる。

ツインテ「え? え? ……な、なにが起こってるの……?」

フォーテ「もう離さないからねっ、お姉ちゃん!」

んふふー、とフォーテはツインテの顔に頬擦り。

ツインテ(な、なんで……ボクは戦争に参加して……それで)

フォーテ「お姉ちゃんはみんなに捨てられたんだよ」

ズキッ

ツインテ「……え」

フォーテ「……お姉ちゃん。落ち着いて聞いてねもうあの戦争から三年たってるんだよ」

フォーテはツインテの瞳を優しく見て言った。

絵面的には百合百合なのにホモォっていう……

久しぶりにブログの拍手確認したら色々書きこんであってほんわかしました!まさかwikiwikiというタイトルにそんな意味が……
あ、あとwikiwikiの方で質問がありましたけれど、スピンオフ全然構いませんので。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m



遅くなりました……また忙しくなってきました……寝れない。

wiki公開はそうですね。簡単では無い問題ですね。あれだけ立派なものを作って頂いたので荒らされてはこまりますし。では皆様の意見を仰ぐことにします!

1pass解除
2pass解除はもっと後ででいいよ


というわけで投下していきます。

61

--???--

ズキっ

ツインテ「……嘘」

口ではそう言うものの、フォーテの成長を目の当たりにしたツインテは頭の中では理解していた。

ズキッズキッ

フォーテ「戦争でボロボロになって、奴隷としてひどい目にあって、記憶に支障が出るほど苦しんでいたツインテお姉ちゃんを、誰も助けようとしなかったんだよ」

ツインテ「そ、んな……」

ぽたっ

ツインテではなくフォーテがボロボロと涙を溢す。

フォーテ「はが……ゆかった……よぉ……フォーテは……ずっと知ってたのに……ひっ……助けに……いけなくて……っ」

62

--???--

ツインテ「フォーテ……ちゃん」

フォーテ「まいにち本当につらかったんだよぉ……お姉ちゃんが可哀想でお姉ちゃんが大好きでお姉ちゃんが辛そうでお姉ちゃんが大好きでお姉ちゃんが寂しそうでお姉ちゃんが大好きでお姉ちゃんが悲しそうでお姉ちゃんが大好きで」

ぱしゃ

フォーテ「でも、でも……無事に助け出せてよかったよぉっ」

笑顔とともに一筋の涙を流す。

ツインテ「そう……だったんだ……ありがとうフォーテちゃん」

ツインテはフォーテの頬に優しく触れて涙を拭う。

フォーテ「うぅん、妹なら当たり前のことだよっ! お姉ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ!」

ツインテ「ん、だめ」

凶悪バランスブレイカーに唯一ツッコミをいれられるツインテだった。

63

--???--

フォーテ「あ、それ、不便だよね」

フォーテが指差したのはツインテの右腕の部分。

ツインテ「あ……そうか。戦争の時にで義手取っちゃったんだっけ」

フォーテ「じゃあそんなのより、もっといいのあげるよっ!」

フォーテがにこやかに笑うと、

ズズズ

闇が渦巻く。そしてそこから無数の白い腕が生えてきた。

ズズズ

ツインテ「!」

フォーテ「どれがいいかなーっ。あれからボクお姉ちゃんに似合う腕を見つけては回収してたんだーっ」

ケラケラと笑うフォーテの横顔はあまりに無邪気。

64

--???--

ツインテ「い、いいよボクは。今のままでも」

フォーテ「だぁーめっ。あ、これいいよっ!」

れろり

引きずり出した腕を舐めるフォーテ。

フォーテ「さぁ、ツインテお姉ちゃんっ!」

ズズズ

ツインテの右腕の切断面に黒い渦が出現する。そしてツインテに有無を言わさず、

ずきゅ

ツインテ「あ」

それはツインテの身体と合体した。

65

--???--

フォーテ「それは勇者もどきの……なんとかってやつの腕だよっ! 名前は忘れちゃったけど」

ツインテ「えっ!?」

フォーテ「あぁ、大丈夫ーっ。持ち主はもういないから。東の王国でのことみたいにはならないよっ」

ツインテ「な!?……なんでそれを知って!」

フォーテ「ふふ、内緒っ。どう? 僕からのプレゼントだよお姉ちゃん。これでツインテお姉ちゃんも全属性が解放されたねっ!」

ツインテ「……」

ズズズ

ツインテ(なんだろう……これ気持ちいい……頭の中がぼーっとして、思考が纏まらない)

ツインテは右腕を動かしてみる。

66

--???--

????「いやいや、絶世の美少男の娘達二人のお風呂シーンは絶景だね」

ツインテ「!?」

ぱしゃ

フォーテ「あーっ。覗きはいけないんだよっトリガー」

????改めトリガー「ごめんごめん。ついね」

巻角の青年は和やかな笑みを浮かべている。お風呂シーンを覗いておいてこの表情である。

ツインテ(……この人……何か違和感を感じる……)

トリガー「二人に着替えを」

Q「かしこまりましター」

右目に傷のある掃除用ロボットが車輪を回して走っていく。

ツインテ「……っ」

トリガー「あぁ、構えなくていい。僕は君の味方だよ」

67

--高原--

ガタンガタン

馬車は高原を行く。

?「やれやれ、東の三強のうち二人もでなきゃいけないなんてな。俺らがいなくて東の王国の警護は大丈夫かね」

??「私達がいなくても魔剣使いが残っているじゃないですか。なんとかなりますよ」

???「ござる」

????「しかし……久々ですね、我ら五人が揃うのは」

?????「いやー……ははは……な、なー! 久々だよなー! 元気してたー? 侍ー?」

???改め侍「え!? ご、ござるよ! えっと……な、医師!」

??改め医師「え? あぁ……そうですね」

?「そうだなぁ。国から逃げてったのが二人いるせいで久しぶりになっちまったんだっけなぁ」

侍、?????「「ぎくっ!」」

68

--高原--

医師「符術師、もうそれは言わない約束じゃないですか」

?改め符術師「だって納得いかねぇもん。なぁ、通信師」

????改め通信師「そうですね。侍と賭博師は私達との約束を破ったあげく、二人揃って犯罪者になってましたからね」

侍、賭博師「「ぎくぎくっ!」」

医師「……はぁ」

医師は頭を抱えている。

侍「い、いやしかし立派でござるよ二人とも! まさか同期から三強が二人もでるなんて、なぁ!」

賭博師「いや本当本当! 同期として鼻高々だぜ!」

侍と賭博師は嫌な汗を流しながら話を盛り上げようとする。

符術師「……なー。上層部も見る目ないよなー。俺なんかより侍のほーが強いのになー」

侍「ぐふ!」

69

--高原--

通信師「そうですねぇ。賭博師も逃げていなければ、今頃東の王国の王にして三強だったでしょーねー」

賭博師「うぐぅ!」

女二人によるネチネチした攻撃が二人を攻める。

符術師「今の俺らが三強になれたのもこいつらが席を譲ってくれたおかげだぜ? な、通信師」

通信師「えぇ、実力で劣る私達が、三強になれたのもひとえに二人がいなくなってくれたからです。感謝してますよ」

ニコニコと不思議な笑顔な二人。

医師「……侍も賭博師も皮肉で三強就任のことを言ったのではないと思いますよ……? 単純にあなた方が昇進したのが嬉しくて……」

符術師「あぁ? こいつらを庇おうってか医師の分際で」

通信師「……そういえばいましたねぇ、せっかく三強の座に推されたのにも関わらず、自ら辞退した人が」

医師「ぎくっ!」

符術師「あぁいたなぁそんな奴……まったく男共はそろって約束を破りやがる……」

通信師「えぇ。ほんと馬鹿ばっかりです」

いつのまにか三人は椅子から降りて正座している。

70

--高原--

符術師「で、結局侍の眼はどうなんだ?」

医師「よくありませんね。侍のことです、適切な治療を受けぬままずっと無理をし続けていたんでしょう。……完治は不可能に近いかと」

侍は眼を包帯で覆っていた。

侍「はっはっ。何が原因かと聞かれると、思い当たる節がいっぱいありすぎてわからんでござる」

侍は笑う。

賭博師「……そんなんでこの任務にあたれるんかね」

侍「心配ご無用でござるよ。拙者のスキル、探知と心眼を使えば視力の無さを十二分にカバー出来るでござる」

ふん、そうだな、と符術師。

符術師「何はともあれ今は戦力を分散出来る時じゃねぇ。俺らはたった五人で、亜人保護団体と黒十字教会を倒さなきゃいけないんだ」

71

--高原--

侍「うーん。一体一人何人計算なら倒しきれるのでござろうか」

賭博師「ひいぃ〜……。全く重労働にも程があるぜぇ。労働法違反してんじゃないの?」

医師「こんな非常時に法が助けてくれるわけありません」

通信師「まったくですね」

ガタンガタン

侍「……いや、でも、夢みたいでござる。またみんなと一緒に戦える日が来るなんて」

侍は少年のように喜んだ。

通信師「……」

72

--高原--

賭博師「そういえばツインテ様はどうなったんだ?……」

侍「! ……助かっているといいんでござるが」

符術師「……死体が発見されたっていう連絡は無かった。ってことはとりあえずはなんとかなってるんじゃないか?」

賭博師「うぅん……まぁツインテ様がそう簡単に殺されるわけもないし、大丈夫かぁ」

侍「そうでござるな。兵士レベルがツインテ殿を殺せるわけが無いでござるもんなぁ!!」

通信師「い、言いたい放題言ってくれますね……」

ガタンガタン

符術師「見えてきたな、お喋りはここまでだ。もう着くぜ」

窓の外を確認する符術師は四人に喋りかける。

符術師「黄金世代パーティの力、見せてやる」

73

--妖精郷--

ポニテ「しっかしここはいいとこだねー。食事は美味しいし不思議なことばかりで飽きもこないし」

しっち『きゃはははは!』

アッシュ「至るところでこいつらにちょっかい出されるがな」

アッシュは、何かのうんこを持って自分の周りを飛ぶ妖精にデコピン。

レン「……しかしどうしたものかにゃ。外敵の心配無く作戦を練られるのはいいけれど、相手がフォーテとなると……」

アッシュ「まぁ、候補の一つで考えちゃいたけどな」

ポニテ「さすがアッシュ君! 作戦考えたら俺はすごいよの異名を持つだけはあるね!」

アッシュ「ねーよそんな異名」

74

--妖精郷--

ポニテ「で? どうやって助け出すの?」

アッシュ「いや、一番悪い可能性として考えていただけで……」

ポニテ「……あぁ」

レン「前途は多難にゃ……」

配達屋「お痒いところはございませんかー」

シャッシャッ

ユニコーン「ひひん」

配達屋はユニコーンにブラッシングをかけていた。

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

三人はその姿をジーっと見ている。

75

--妖精郷--

配達屋「はわっ? な、なんですか皆さん……?」

配達屋は三人の視線に気づいて身構える。

アッシュ「おいハイ、お前の力もっかい見せてみろ」

配達屋改めハイ「え? 私の力ですか? ……って、なにその名前、ってあれ? 心なしか名前が変わったような??」

混乱するハイと、立ち上がり埃を払うアッシュ。

パンッパンッ

アッシュ「パーティの実力を理解しておかないと戦闘に支障が生じるからな」

ポニテ「わー、ハイちゃんの戦闘ちゃんと見るの初めてだー! 楽しみー!」

レン「ふふ、驚くにゃよ? こんな隙だらけに見せておいてかなりの実力者にゃ」

ハイ「……したくないです」

アッシュ「うるさい。さっさと支度しろ」

ハイ(絶対勘違いしてますよねぇ……まぁそれを理解させるいい機会だと思うべきでしょうか……)

ユニコーン「ひひん」

76

--妖精郷--

五分後。

ハイ「ぐふ」

ぴくぴく

アッシュ「……」

ポニテ「……」

レン「……」

ユニコーン「ひひん……」

ぼろ雑巾のようになって地面を転がっているハイ。

アッシュ「ど、どうなってんだ……? 俺は軽く掌打を放っただけなんだが……」

ポニテ「演技じゃないね……お腹にヒットした瞬間のあの歪んだ顔、およそ女の子がしていい顔じゃなかったもん」

レン「あ、あれ……?」

三人は汗を足らす。

ハイ「だから言ったのに……おなかいたい」

77

--妖精郷--

アッシュ「すると何か? 今の状態はレベル1で、レベル1状態だと何の戦闘力も無いのか?」

ハイ「はい。何かを運ぶことしか能がないです」

ダメージが抜けたハイは、普段通りのジト目でお茶をすする。

ポニテ「え、じゃあそれ弱くない? レベルアップする前に倒されちゃうじゃん」

ハイ「はい。最も難しい職業と言われる所以はそこですねぇ」

レン「なるほど……レンと戦った時は既に高レベルだったのかにゃ」

ハイ「はい。レベル3でした」

アッシュ「なんだレン、そのこと知っていたんじゃないのか?」

レン「戦闘中に職業を変える職業ってことしか知らなかったにゃ。なにせ幻の職業にゃ」

ポニテ「うーん……地力はかなり差があるねー」

ハイ(やりました、皆さん落胆してやがります。これで私も晴れて自由の身に……)

78

--妖精郷--

アッシュ「……レベル4ならどうなんだ?」

ハイ「へ?」

アッシュ「レベル4ならどれほど強い?」

アッシュの真剣な表情。

ハイ「さぁ……まぁでも皆さんにはかないませんよ」

ハイはにっこりと笑って言いきった。

アッシュ「……嘘か」

ハイ「ファッ!?」

ポニテ「嘘だね」

ハイ「!!」

レン「嘘にゃ」

ハイ「!!!」

料理屋「嘘だな」

ハイ「誰!?」

四人の横で屋台をしている男が話に加わった。

79

--妖精郷--

じゅぅーー

ポニテ「! いい匂いー! おっちゃん、これ何!?」

料理屋「ソース焼きそばだよおめぇ。知らないのか?」

ポニテ「知らん! とりあえず四人前頂戴!」

料理屋「あいよ、まいどっ」

ジャージャー

ハイ(よし話が逸れた)

アッシュ「話を戻すぞ」

ハイ(うあー)

80

--妖精郷--

アッシュ「ハイ、レベル4になったらかなり強いと思っていいんだな?」

ハイ「……」

アッシュとレンの真剣な表情にハイも観念する。

ハイ「はい。一応私の奥の手ですから、自分的にはそこそこ」

アッシュ「なら決まりだ」

ハイ「はい。解雇ですねわかります」

レン「レベルアップ条件を満たすまでに力尽きないよう特訓にゃ」

ハイ「……は?」

アッシュ「まずは腹ごしらえだ。おいポニテ」

ポニテ「ずぞるるーー。ん? 自分たちの分は自分で頼んでね?」

アッシュ「全部食いやがった!?」

レン「まぁいつものことだけれど!」

す、睡眠時間が無い!(挨拶)

そんな暇はないですが、なぜか急に版権もののssをいつかやってみたいなと思うようになってきました。メダロットとかいいですねぇ……。
あと大勇者時代のssも……。
あとハーレム系のssも……。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m



やる気無し腹黒ジト目っ娘、ハイちゃんの髪型をどうしようか考え中だったりします。チラッ




こんばんは、投下しにまいりました。

wikiのpassの件はしばらく保留にした方がよさそうですね。しばらくは現状維持ということでよろしくお願いします。

ハイちゃんが中々可愛い設定が付け足され初めていい感じですね! もっと皆様の手でパワーアップさせてあげてください。
それでは始めます。

81

--亜人保護団体本部--

うじゃうじゃ

賭博師(うわー。まじでウジャウジャいんじゃねぇかぁ……)

医師(そりゃそうですよ。大変ですね)

侍(スーパー他人事でござるなぁ)

医師(そりゃあ私は攻撃能力皆無ですからね。皆にがんばってもらうしかないですよ)

通信師(こらこら無駄会話しないで下さい。スキルだってただじゃないんですからね)

賭博師(えっ!? 金かかんの!?)

通信師(一文字につき百円です)

賭博師(ひでぇ……)

通信師(五百円です)

賭博師(三点リーダーまで文字数にカウントしやがった!!)

通信師(二千三百円です)

賭博師(漢字の変換までわかるの!?)

82

--亜人保護団体本部--

賭博師(おいおいこれじゃあろくに話もできやしないじゃないか)

通信師(二千五百円です)

侍(おっぱい揉みたい)

通信師(八百円です)

もみ

通信師(きゃあっ!? な、何をするんです!!)

侍(え、だっておっぱい八百円で揉ましてくれるって……)

通信師(とんちですか!!)

医師(あ、おしっこしたくなってきました)

通信師(千六百円です)

医師(まるでおしっこするのにもお金が発生するようです!?)

賭博師(……あぁ、そういうプレイなんだと思った)

符術師(てめぇら遊び過ぎだろ)

83

--亜人保護団体本部--

もそもそ

符術師(さぁて、ここまでは敵に見つからずにこれたわけだが)

侍(相変わらず運スキルは便利でござるな。エンカウント率を変動させられるとは)

通信師(馬鹿に真珠ですよね)

賭博師(おい間違ってるぞ! あっててもけなされてるがな!)

侍(馬鹿にもんじゅ?)

医師(一気に危険なオイニーが)

符術師(んー……さてさて、ここからはなんぼなんでもすり抜けは無理だな)

通信師(ですね。私も索敵をしましたが、すり抜けられるスペースはないですね)

符術師(……よし、じゃあ俺が引き付ける。お前らは先に行け)

84

--亜人保護団体本部--

医師(え……)

符術師(賭博師は運で通信師と医師をカバー、近寄ってきた敵は侍が斬れ)

侍(……)

通信師(符術師、あなた)

符術師(全部を相手になんか出来るか。頭を殺れば勝ちなんだ)

賭博師(でもあいつら蘇生不能攻撃使ってくるぜぇ?)

符術師(死ななきゃいいだけの話だろ。ほれ始めるぞ)

しゅぱ

符術師(ドロー、……ふん、運スキルの影響で引きたいカードが都合よく出てきやがった)

85

--亜人保護団体本部--

符術師は立ち上がり駆け出した。

教団兵「!?」

女教団兵「!! 曲者!?」

ダダダダ!

符術師「来い! 爆弾なめくじ!」

キィン、ドバァ!

大量のなめくじが兵達に降り注ぐ。

教団兵「う、うわぁぁ!?」

ドガン、ドガガーン!!

86

--亜人保護団体本部--

代表「あれあれ、もう来ちゃいました? まだ具体的に何をするとも言ってないのに早いなぁ」

代表は高い塔の窓から下を見下ろした。
そして襲撃してきた人物を確認する。

代表「……へぇ。よりによって彼らを選んできたかぁ。東の王様は性格ひねくれてるなぁ」

代表は声を出して笑う。

代表「ふーむ……計画を前倒ししちゃおうかな」

カっ

護衛姉「代表様」

護衛妹「いかがなさいます?」

護衛姉妹が代表に意見を仰ぐ。

87

--亜人保護団体本部--

代表「そうだね。護衛君たちにも迎撃を頼もうかな」

護衛姉「わかり」

護衛妹「ました」

熊亜人「……」

代表「そうだね。……耳を潰してきてくれないか?」

護衛姉、妹「「はっ!!」」

護衛姉妹はその場から姿を消した。

熊亜人「……俺はどうすれば?」

代表「君はここにいなくちゃだめだよ熊くん。もし敵が僕の前に現れたら僕瞬殺されちゃうよ」

熊亜人「ぐ、ぐるぅ……」

88

--亜人保護団体本部--

髭長司祭「こいつ……! 一体いつの間に侵入したんだ! 火属性攻撃魔法レベル2!!」

ボゥッ!

火球が唸りをあげて符術師を襲う。

符術師「ドロー! 装備品、海亀甲羅!」

ドジャアァ!

出現した甲羅で火の球を防ぐ符術師。

髭長司祭「!!」

細目司祭「符術師か! ならばこれはどうです!?」

細目司祭はククリ刀を四つ投げつけた。

ヒュンヒュンヒュンヒュン!

ククリ刀はそれぞれ弧を描いて符術師に迫る。

89

--亜人保護団体本部--

金歯司祭「ふははは! 受けよ我が槍ぃ!!」

ドドドドド

更に正面からは槍を持った金歯司祭が突撃を開始する。

細目司祭(くくく。いまだかつて破られたことのないこの協力攻撃)

金歯司祭(盾の一つや二つで防げるかな!)

符術師「ドロー、強制転移」

符術師は引いた札を金歯司祭に投げつけると、一瞬で符術師と金歯司祭の位置が入れ替わる。

金歯司祭「あ、あれ?」

ヒュンヒュンヒュンヒュン、ズガッ!!

金歯司祭は四つのククリ刀に切り裂かれる。

90

--亜人保護団体本部--

符術師「ドロー、装備品、剣」

髭長司祭、細目司祭「「あれ?」」

ズバババッ!!

髭長司祭「!!」

細目司祭「がっ!!」

目の前にいきなり現れた符術師になすすべもなく二人の司祭は血の海に沈む。

上位教団兵「!! し、司祭様達がいっぺんに三人もやられなすった!?」

若教団兵「おのれ!! 東の三強めぇ!!」

ズン!!

符術師「!!」

そこに二人の大男が姿をあらわした。

91

--亜人保護団体本部--

右大司教「ふしゅるるる」

左大司教「貧弱者どもめ……」

符術師(お早い登場だ……大司教レベルがもう出てくるか)

大司教達はそれぞれ祈るように両腕を動かしていく。

スゥゥゥ

その滑らかさは残像を作り出し、増えたかのように見える。

符術師「……っ! 幻覚か!」

べギィ!!

右大司教「……ほっほっ」

ギリ

符術師「」

既に横にまで接近していた右大司教の拳が、符術師のあばらを砕いた。

92

--亜人保護団体本部--

ドザッ、ザザー!

右大司教「ふしゅるるる……死に至る一撃ぞ。苦しみながら死んでゆけ」

左大司教「罪人にはそれがふさわしい」

符術師「ぐっ、がはっ!!」

符術師は地面にうずくまったまま立ち上がれない。

符術師(い、いってぇ……)

左大司教「賊がこれだけとは思えぬ。探す」

ズパッ

左大司教「、のだ?」

次の瞬間、左大司教の顔が上下半分に別れて飛んだ。

93

--亜人保護団体本部--

ブシャーーー!!

侍「うん、やはり見えないが特に問題無いでござるな」

ヒュンヒュン

侍は二三度刀を振るい鞘に納める。

しゅららら、ちんっ

右大司教「ぬぅ!?」

符術師「!? お、おいお前ら! 作戦が違うじゃないか!!」

侍「はっはっ。堅いこといいっこ無しでござる。そんな捨て身の戦法、拙者らが納得できるはずが無いでござるよ」

符術師「っ! ばかやろう!」

右大司教「!! き、きさまよくも!!」

賭博師「あんたは俺の相手をしなさいよ」

右大司教「!?」

94

--亜人保護団体本部--

賭博師「スキル、クリティカル」

ドガァァァ!!

右大司教「がはぁ!?」

賭博師の右ストレートが右大司教の腹部に入る。
が、

右大司教「づっ……!」

賭博師「……あれ? 嘘、倒しきれなかった?」

右大司教「こ、このぉ!!」

賭博師「俺の攻撃力がないのかおっさんの防御力が硬すぎなのか……多分両方?」

シュパッ!

右大司教「」

侍「クリティカルヒットが出れば相手に硬直が生まれる。それだけでも十分でござるよ」

95

--亜人保護団体本部--

右大司教「あ、れ?」

今度は右大司教の身体が左右に切り開かれた。

ズズーン!

賭博師「……。あれ? 大司教レベルって三強も苦戦するレベルじゃなかったっけ?」

通信師『馬鹿賭博師。それはタイマンの話です。私達は今、一人で戦っているんじゃないんですよ』

通信師の声が頭の中に響く。

侍「そうでござる。パーティスキルのバックアップがあればこそでござる」

ざわざわ

上位教団兵「だ、大司教様方がやられた……!?」

中位教団兵「そんな! 今まで一度も死ねない戦線で戦い続けた大司教様達が!!」

教団兵達は驚きを隠せない。

96

--亜人保護団体本部--

賭博師「おーい、立てますかー」

賭博師は符術師に近寄って手を伸ばす。

符術師「ふん……余計なことしやがって」

スッ

符術師は既に引いていた符を山札に戻した。

医師「どれ見せて下さい。まだ回復魔法が使えると思いますから」

符術師「ぐっ……」

ぽわぁあ

魔法教団兵「く、く! 撃てー!! 大司教様の仇を取るのだー!」

ボヒュッ!ボヒュッボヒュッ!!

放たれた風と水の弾丸が賭博師達を襲う。

97

--亜人保護団体本部--

賭博師「ふん、そんなもん運スキル、」

ズパパパ!!

侍「……スキル、魔力斬り。こういうのは拙者がやるでござる。賭博師は運をとっとくでござるよ」

賭博師「あ、そう? ……じゃあ、そうするわぁ」

魔法教団兵「ぐ、ぐぐ! レベル3魔法を苦もなく……!!」

医師「はい、治療終わりです」

符術師「……仕方ねえやつらだなまったく」

立ち上がる符術師。

符術師「もうこのまま暴れるしかねぇな!!」

不適に笑う符術師。

98

--亜人保護団体本部--

賭博師「まぁ即死は俺が運でなんとか防ぐから」

賭博師はコインを掌の上で回している。

侍「拙者は敵を斬るでござるよ」

侍は首の骨を鳴らす。

医師「多少の怪我なら魔法を使わなくても治せますよ」

医師は医療箱を抱えて立ち上がる。

通信師『私は表に出ませんけどねー』

……姿は見せず声だけの通信師。

符術師「うし、黄金世代の力、見せてやる!!」

符術師の瞳に力が宿る。

99

--亜人保護団体本部--

代表「魔力エンジン起動」

ドゥルルル

脳亜人「問題なーし。いつでもやれますよぉー大将」

代表「よしちゃっちゃと行こう。物事はスピーディーにいかなきゃいけない。マントルに書きこんだ極大魔方陣を起動してください」

脳亜人「発車おーらいー」

ギギキン!!



その瞬間、世界中に用意した黒い鉄塔が地面に潜る。
そして世界は赤く光った。

ゴゴゴゴゴ

符術師「な、なんだ!?」

侍「これは一体……」

ゴゴゴゴゴ

賭博師「……ち、遅かったみたいだな」

100

--亜人保護団体本部--

医師「っ!!」

ゴゴゴゴゴゴ

通信師『そんな……もう既に準備は整っていたって言うんですか!?』

賭博師「あいつが表だって動くときはもうなにもかも終わってたもんだ。こんなのは想定範囲の内に入る。……問題なのはそれをどうぶち壊すかだ」

侍「……しかしこれだけ大規模なことを秘密裏にやるとは……さすがは代表」

ゴゴゴゴゴゴ

通信師『ほとんどの国のお偉いさん方を金で抱き込んでますからね……にしてもここまで大がかりなものだとは思いませんでしたよ』

符術師「……これからは回復魔法も蘇生魔法も無しか。ハードモードだな」

医師「そのための私です」

あまりに厳しい状況が続きます。もしかしたら……

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは!
名前変えた表示をしていませんでしたね。

選抜兵→符術師。
通信兵→通信師。
医師は医者だとか医師だとか統一してなかったので医師に。
サム→侍。

こんな感じですね。それでは投下していきます。

101

--妖精郷--

ハイ「はー。はー……も、もうダメ……」

仰向けになって息を荒げているハイ。

アッシュ「ち、もう無理とは……仕方ない十分休憩だ」

ハイ「はい……はーっ、はーっ。アッシュ先輩……ハゲシスギマス」

アッシュ「レン、ちょっと付き合え」

アッシュはレンに来い来い。

レン「別にいいにゃけど、ポニテじゃなくていいのかにゃ?」

アッシュ「……」

レン「?」

102

--妖精郷--

アッシュ「……俺もこの二年間で相当強くなったつもりだが……なんだあいつは。化物じゃないか」

アッシュは焦りを浮かべた表情でレンを見る。

レン「レンもそう思うにゃ。……正直今のポニテには勝てる気がしないにゃ」

アッシュ「……」

レン「……」

ハイ「はーっ、はーっ」

アッシュ「一体どんな修行をしたらあそこまで……。なんかこの前の暗黒森林でも三強クラスのを二体倒したんだろ? しかも虎男とテンテンっつー、トップレベルのを」

レン「レンはかろうじて一人、しかも次やったら負けるかもしれないってレベルにゃ……」

アッシュ「俺は落ち目のじいさんが相手だったしな。魔剣使いとは互角に近かったし……」

ハイ「はーっ、はーっ」

103

--妖精郷--

アッシュ「……ぱねぇ」

レン「にゃ……あ、修行のことだけど、ポニテには魔導長直々に指南してたにゃ。あと三砲の二人」

アッシュ「五柱か……盗賊、暗殺者系統の五柱はいないからなぁ」

アッシュは残念そうに呟く。

レン「こればかりはどうしようもないにゃ、生まれも育ちも実力のうちにゃ。そういえば前の勇者パーティには結構強い盗賊の人がいたって聞いたけれど……」

アッシュ「……」

二人は真剣な表情で意見を交わしている。

ハイ「はーっ、はーっ」(あなたたちが生まれ持った素質を羨むとかどんだけー……)

ハイはジト目で二人を見ていた。

アッシュ「む、休憩終了。しごくぞこるぁっ!」

ハイ「えぇっ!?」

104

--妖精郷--

ユニコーン「ひひん」

ハイ「ひっ、ひぃい……全身の筋肉が悲鳴をあげています……」

ドサっ

力なく倒れ込むハイ。

ポニテ「おっつかれーい! お疲れのハイちゃんっ、後で私が全身揉みほぐしてあげるよ!」

ハイ「あ……本当ですか? じゃあ、お願いしてもいいですか?」

レン「やめたほうがいいにゃよハイ。余計疲れるにゃ」

ハイ「え?」

ポニテ「うわ、ひどいよレンちゃーん」

レン「事実にゃ」

ユニコーン「ひひん」

105

--妖精郷--

ポニテ「しっかしちょっと硬いねハイちゃん。ダメだよー、女の子なんだから体はやわらかくしておかないとー。戦闘でもそうだけどいざという時に困るよー??」

大人な目つきなポニちゃん

ハイ「は、はぁ……今までは生きるのが精いっぱいだったので、女の子らしさを磨く時間がなかったというか……」

ハイはポニテの頭の天辺から足の爪先までじっと観察する。

ハイ「……それに比べて先輩は女女してますね。スタイルいいし髪の毛綺麗だし」

ポニテ「え、えへへ!! そ、そっかなぁ〜」

ポニテはさりげなくおっぱいを寄せてみる。

レン「ファック!!」

ハイ「私なんて、男性とろくに会話したことも無かったですから。ポニテ先輩はそっちの経験も豊富なんですか?」

ポニテ「え!? ……え、えへへ!! ば、ばれちゃったかー!! そうなんだよー、もうあれだよー入れ食いだったねー私くらいになるとー!! 仙人斬りとかしちゃったかなー!?」

レン「誰を斬ってるにゃ」

ハイ「へぇやっぱりもてるんですねぇ」

106

--妖精郷--

ハイ「あ、つ……家まで乗っけてってくださいユニちゃん。ん、あたた……足が持ち上がらない」

ポニテ「……」

必死になってユニコーンに乗ろうとしているハイを、ポニテはジーっと見ている。

ハイ「? どうかしました? ポニテ先輩」

ポニテ「いや、毛並み綺麗だなーって。乗ってみたいなーって」

じゅる

ユニコーン「ひひん!?」

何か恐ろしいものを感じるユニコーン。

ハイ「ユニちゃんに乗りたいんですか? 別に構いませんけれでも、でも」

ポニテ「え!? いいの!? やたー!!」

ポニテはハイの言葉を遮って猿のようにユニコーンの背中に登った。

107

--妖精郷--

ガバッ

ハイ「あ!」

レン「……」

ポニテ「うおぉお! たかーい! なんかすごーい! 股間痛ーい!」

アッシュ「なんで喜んでんだよ」

ポニテ「ただ高いだけじゃない…生き物に乗ってるからかな…高いのに地面とつながってる感じがする…」

ユニコーン「ひひん」

ハイ「あ……あれ……?」

ポニテ「ん? どうかした? ハイちゃん? 私なんか乗り方間違えちゃってる?」

ハイ「いや、そうじゃないんですけれど……おかしいなって」

ハイは頭を傾げながら唸っている。

108

--妖精郷--

ユニコーン「ひひん」

ポニテ「ん? 何がおかしいの?」

ハイ「そもそもユニコーンが背に乗せるのは」

レン「処女だけだからにゃ」

ポニテ「」



口を大きく開けるポニテ。
そして、すっ、と音もなくユニコーンから降りる。




ポニテ「しょ、処女とかちゃうし」

ダラダラダラ

滝のように汗をたらしながら目を泳がせるポニテ。

109

--妖精郷--

アッシュ「さっき千人切りがどうとか言ってなかったか」

ばっ

両手で顔を隠すポニテ。

ポニテ「やっ!」

レン「なんだっけ? 昔聞いた話だと好きな体位は大外刈りとか言って無かったかにゃ?」

アッシュ「柔道じゃねえかそれ」

ポニテ「やんやん!」

顔を隠したまま顔を左右に振るポニテ。

アッシュ「……自称ビッチがこれですよ」

レン「背伸びしたい年頃だったのにゃね」

ポニテ「うううう!!」

レン(そもそもポニテは修行が忙しくて、そんなことしてる暇なんて無かったのにゃ。レンは知ってるのにゃ)

ポニテ「……」

ハイ「あ! いつのまにか片手で目線だけ隠してる! ちょっとエッチ!」

110

--妖精郷--

ポニテ「はい怒りましたもう怒りましたー」

アッシュ「嘘が露見して怒りやがったぞ。糞ヤロウだな」

ポニテ「はい今から修行しまーす」

ハイ「……えぇ!?」

ポニテ「元はと言えばハイちゃんがいけないんじゃないっ!!」

ハイ「えっえぇえ!?」

レン「ないわー」

ポニテ「とゆわけで、はい、このミニスカに着替えてきて!」

ハイ「……え?」

ポニテはひらひらした可愛らしいスカートを提示する。

ハイ「な、なんでですか? 配達用の作業ズボンの方がいいんですけど」

ポニテ「黙りなさい処女のくせに!」

アッシュ「お前が言うな」

111

--妖精郷--

ポニテ「修行なんだからつべこべ言わずにはきかえなさい!」

ハイ「わ、わかりました。着替えてきます……」

レン「あーあー」

アッシュ「押し切られちゃったかー」


少女着替え中。


レン「でもポニテ、あのミニスカを装備させることで一体何の修行になるのにゃ?」

ポニテ「着せてみたかった」

アッシュ「……ん?」

ポニテ「ハイちゃんに合いそうな可愛い服持ってたから着せて見たかったの」

レン「……」

112

--妖精郷--

トボトボ

ハイ「あの……これでいいですか?」

そこに現れたミニスカハイ。

ポニテ「! おぉう……」

ごくっ

つばを飲むポニテ。

ハイ「私……先輩達みたいにスタイルよくないからちょっと恥ずかしい……」

照れくさそうにスカートの裾を持つハイ。

ポニテ「い、いやグーよグー!! 似合ってるーフゥ〜ッ!」

アッシュ「お洒落なれてない感じが素朴でいいよね」

レン「……あ、今のレンに言ったの? そんな同意求めてくるとは思わなかった」

113

--妖精郷--

ポニテ「じゃあ次の段階に行きます」

ハイ(第一段階かよ。そして今のでクリアかよ)

ポニテ「次はパンツを脱いでもらいます」

アッシュ「……」

レン「……」

ハイ「……」

ユニコーン「ひひん」

三人はしばらく無言でポニテを見つめて、

ハイ、アッシュ、レン「「「はぁ!?」」」

ポニテ「(パンツを脱げと言ったのが)聞こえんかったのか?」

114

--妖精郷--

ハイ「はいぃ!? い、いやぁ、いきなり何をおっしゃっているのか私にはさっぱりですよ! ぱ、パンツですよパンツ!!」

アッシュ「そうだぞポニテ、お前一体何を考えているんだ! おぱんつが修業にどう関係してくるっていうんだこのぉ!」

レン「後輩いじめも大概にするにゃ」

ポニテ「うるせぇ黙ってろお前ら!! 殺すぞ!!」

アッシュ「ひっ!?」

レン「にゃんっ!?」

ポニテに凄まれた二人は寄り添って抱き合う。

ジリジリ

ポニテ「いいから脱げよぉ、うりうり脱げよぉ」

ポニテはハイに駆け寄ると中腰の姿勢になってスカートの下に手を伸ばす。

ハイ「っ!?」

フェイントをかけたりして結構本気な顔なポニテ。

キュッキュキュ

アッシュ「こら! やめろポニテ! ハウス!」

レン「バスケのディフェンスみたいな動きするのやめろにゃ!」

115

--妖精郷--

ポニテ「ハイちゃん。貴女強くなりたくないの?」

突如見下した感じの冷たい目つき。

ハイ「え……そりゃまぁ強くはなりたいですけれど……」

ポニテ「なら、私の言うことを聞くべきだと思うよ……? 私が伊達や酔狂で後輩のパンツをマジで脱がしにかかってると思っているの!?」

ハイ「っ!……」

アッシュ「俺は思うなぁ」

レン「レンも」

ハイ「!?」

ポニテ「黙れっ!!」

ボッ!!

アッシュ「あああああああああああああああああああああああああああああ」

レン「アッシュが、燃えたっ!」

116

--妖精郷--

ポニテ「とにかく、今は信じられないと思うけど信じて。後できっとわかる時がくるから」

ハイ「ごくり」

ポニテのあまりに真剣な表情を見てハイは息を飲む。

ハイ「……で、でも」

ポニテ「ハイちゃん」

ハイ「……」

ハイは小さく頷いた。

ポニテ「よし、わかったならパンツ脱ごう?」

こんなに真面目な顔でこんなことを言われるとは思わなかったハイ。

ハイ「わ……わかりました」

アッシュ「わかっちゃったの!?」

レン「何を感じとったのにゃ!」

117

--妖精郷--

ハイ「じゃあ……その木陰で脱いできます」

ポニテ「ノン!」

それを制止するポニテ。

ハイ「え……?」

ポニテ「ここで脱ぎなさい」

ハイ「……ハイぃぃぃ!?」

ポニテ「それも修行なの!! ほら! 早く脱ぎなさい!!」

ハイ「ちょ、ちょちょちょっと、いくらなんでもそれは!!」

ポニテ「しゅ・ぎょ・う!! しゅ・ぎょ・う!!」

ポニテは手を叩きながら伝説のコールを始める。

アッシュ「な! これは!!」

レン「服を脱がせる強力なスキルD・V・D!!」

118

--妖精郷--

ハイ「あ、あうあう」

ガクガクと震えるハイ。

アッシュ(バカな……! ポニテのやつこんなスキルまで取得していたのか!!)

レン(恐ろしい奴にゃ……だけど)

アッシュ「しゅ・ぎょ・う!! しゅ・ぎょ・う!!」

レン「しゅ・ぎょ・う!! しゅ・ぎょ・う!!」

ポニテ「!?」

驚いた表情で振り向いたポニテ。それをアッシュとレンは不敵に笑う。

アッシュ(ふんっ、お前だけが手にいれてると思ったら大間違いだ!)

レン(レンを、見くびらないで欲しいにゃ!)

ポニテ(さすがだよ二人とも……! それでこそ……それでこそ勇者パーティだよ!)

119

--妖精郷--

ハイ「う、ぐぅ」

眼をぐるぐると回しているハイ。

ハイ(な、にこれ……頭がふわふわしちゃって)

ハイは完全に混乱している。

ポニテ「おパンツだよ早く!!」

ハイ「は、はい…」

スッ

アッシュ「は…ハイさん」

シュル

ハイ「せ…先輩達やっぱりやめましょう。こんなこと…ね」

アッシュ「ダメだ!! だったらツインテ取り返して来てよ!」

アッシュ、ポニテ、レン「「「しゅ・ぎょ・う!! しゅ・ぎょ・う!!」」」

ハイ「うう」

レン(これ前もやったにゃ)

120

--妖精郷--

シュル、パサッ

アッシュ(……しまった)

レン(ついノリで後輩のぱんてーを脱がさせてしまったにゃ)

ハイ「っ……っ」

ハイは涙目になり静かに震えている。

ポニテ「……」

それを静かに見ているポニテ。

ポニテ「……いいね!」

アッシュ「よくなーい!」

ポニテ「……ってなんでアッシュ君まで脱いでるの!?」

アッシュ「!? っく……スキルがあまりに強力すぎてその余波が!?」

レン「さいってーだにゃ」

シリアス回の予定が……

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばん……は

最近7年くらい使ってるpcがぶっ壊れそうです。皆さんはどんなpc使ってます?

それでは投下を開始します。

121

--妖精郷--

ホーホー

アッシュ「いやしかしついノリでやっちまったがこれは犯罪だろう! ほらハイを見てみろ! あんなに恥ずかしそうに……」

ハイ「……」

スカートを押さえて下唇を噛み締めているハイ。

アッシュ「……いいね」

レン「!?」

ポニテ「はい、じゃあ脱いだおぱんてーは私が回収しまーす」

ハイ「!?」(ど、どんだけですかこの人……でも……このまま修行とやらが進まなかったら脱ぎ損に……)

ハイ「……はい」

122

--妖精郷--

ハイはふるふると震えながら手に握っていたそれをポニテに手渡した。

ふわっ

ポニテ(……温かい!)

真剣な表情でポニテは、

しゅる

ポニテ「ではこれより修行に入るよ」

アッシュ「ナチュラルにポケットにしまうな!!」

レン「もうなにこれ」

ハイ「ははは……」

123

--妖精郷--

ポニテ「それじゃハイちゃんにはこれから私のパンチを避けてもらうよ」

ハイ「……はい? このミニスカノーパン状態で……ですか?」

ポニテ「うん。だからこそ意味があるんだよ」

ハイ「……そんな……こんな格好で運動したら見えてしまいます……」

ポニテ「うん。だからなるべく中身を見せないように避けてね」

アッシュ(……なるほど)

レン(ふむ)

ハイ「み、見せないようにって言われましても……」

ポニテ「つべこべ言わない、いくよ! まずは魔力によるブースト無し状態で」

ひゅっ

124

--妖精郷--

ハイ「っ!」

しゅっ

ハイはポニテの攻撃をかわす。

ポニテ「だめー!!」

ハイ「へ?」

ポニテ「手でスカート押さえちゃだめでしょー!?」

ハイ「そ、そんなこと言われても……」

ポニテ「それじゃ修行にならないよ! 敵に襲われてもそんな格好で戦うの!?」

ハイ(まずノーパンで戦わねぇです……)

125

--妖精郷--

ポニテ「ほら次!」

ひゅっ

ハイ「ッ!」

ふわり

アッシュ「見えた!」

レン「見えた!」

ポニテ「私も!」

ハイ「うぅ……うわーんなにこれー」

ハイはぼろぼろ涙を溢す。

126

--妖精郷--

ポニテ「いい、ハイちゃん。スカートがめくれるってことは無駄な動きだからなんだよ」

ハイ「……え」

ポニテ「敵の攻撃は最善の最速の最小の動きで避けるんだ。ハイちゃんはレベルがあがれば強くなるみたいだけれど戦闘経験は少ないんだろうね、そういう基本的なことが甘いかな」

ハイ「……!!」

アッシュ「ポニテもあまり避けるタイプじゃなかったような気がするが」

アッシュはハイのスカートに目が釘付けになっている。

レン「これは攻撃にも防御にも、全てのことに関わってくるにゃ。ようはおっかなびっくりで敵の力量を正確に図れていないことと、必要以上に体力を使ってしまうのが問題だと言うわけなんにゃ」

ハイ「……」

ポニテ「つまり、ハイちゃんには力量を見極める力と、身体の効率的な動かし方を身体で学んでもらうってことなんだよ!」

127

--妖精郷--

ポニテ「ハイちゃんはレベルアップしなくちゃいけない。レベルがあがる前に致命傷になっちゃいけないんだ。だからせめて1の状態でも最低限のことをできるようにならなくちゃね」

尤もらしいことをドヤ顔で言うポニテ。

ハイ「……」

否、多分ドヤ顔。
なんせ今のポニテは変態仮面のようにハイのパンツを被っているから。

ハイ「……でもノーパンなんですよね?」

ポニテ「だからこそノーパンなんだよ!!」

ハイ「……他にも方法があるような」

ポニテ「ノーパンだからこそ出来ることもあるんだよ!!」

128

--妖精郷--

アッシュ、ポニテ、レンはハイを取り囲むようにして立っている。そしてハイに正拳突きを繰り出す額に5の数字の入ったゴーレム。

ひゅっ!

ハイ「ん!」

ふわり

避けるハイとめくれるスカート。

アッシュ「桃尻!」

ばっ!

アッシュは旗をあげる。
そしてゴーレムはまた正拳突きを放つ。

ひゅっ!

ハイ「ひぁ」

ふわり

避けるハイとめくれるスカート。

レン「プリケツ!」

レンは旗をあげる。

129

--妖精郷--

ひゅっ!

ハイ「うぐっ」

ふわり

避けるハイとめくれるスカート。

ポニテ「!! 審議!」

ポニテはアッシュとレンを集めて審議を始める。

ハイ「……はぁ、はぁ」

ポニテ「……」

ポニテ達はお互いの顔を見たあと頷いて、

ポニテ「一本!」

ハイ(柔道の試合みたいになってる……)

130

--亜人保護団体本部--

どかーん、どかーん!

イモリ亜人「くっそ! なぜたった五人にこうまで振り回されるイモ!!」

符術師「はぁああ!」

ダダダダダ!!

槍や剣、魔法による攻撃を恐れずに突進してくる五人。

医師「……」

ぎぃぃん

スキル鑑定眼による次行動予測……鑑定眼は敵や物などを注意深く観察し、手がかりや隠しているものなどを見つける時に役立つスキルである。戦闘時に使うと僅かな癖や初動を見抜き、次に何をしようとしているのか予測することが可能になる。

131

--亜人保護団体本部--

通信師「」

それを言葉にするよりも早く、思考した瞬間に他のメンバーに送る役割が通信師。パーティスキルの共有効果も相まって、パーティ全体が行動予測の恩恵を受ける。

符術師「おらぁぁあ!!」

攻撃防御補助妨害を一手に担うのは符術師。札による多様な戦術はもはやパーティの便利屋さん。

侍「ふんっ!」

その札を掻い潜ってきた、もしくはうち漏らした敵を侍が斬る。視力を失えど、侍の一撃は万全の状態でなければ防ぐことすらままならない。

ボボッ!!

賭博師「あ、あちっ! あ、あぶねぇ……」

そして全ての行動の成功率と、攻撃の辺りどころを良くしているのは賭博師の運スキル。結果的に、彼のおかげで五人は生き長らえていると言える……。

132

--亜人保護団体本部--

代表「いやぁ素敵なパーティだ。進んだ道は違えども、そこはかつて同じ釜の飯を食べた者同士、抜群のコンビネーションだ」

代表は静かに快進撃を見守っている。

代表「……」

ズシン

???「ふふふ……小蝿に苦労されているようねぇ」

代表「あ、賢帝さん、いつのまに降りてこられたんです?」

???改め賢帝「ふふふ、今来たところよ。だってなんだか騒がしいんだもの、気になって来ちゃったわぁん」

ゴゴゴゴゴ

八本の腕を持った筋肉質なハゲは口に手をあてて笑っている。

133

--亜人保護団体本部--

代表「申し訳ありませんー。ちょっとうちの団員だけじゃ対抗出来ないかもしれませんねぇ」

賢帝「嘘おっしゃいな。……まぁでもいいわ、暇だったから遊んでこようかしら私」

代表「え、そんな賢帝様自らのお手を煩わせるなど」

賢帝「いいのよ気にしないで。それに……美味しそうな子がいるのよ」

禍々しい表情でしたなめずり。

代表「……そうですか。いや助かります、正直困っていたんですよ」

ははは、と笑う代表。

賢帝「ふふふ。じゃあ黒十字教団の指揮も一旦貴方に預けるわ、後はよろしくやっておいて頂戴」

代表「はい、かしこまりました」

ばたん

134

--亜人保護団体本部--

ドカーン、ドカカカーン!

護衛姉「困ったです」

護衛妹「隙を見せません」

物陰から静かに狙う護衛姉妹。

しゅたっ

その時戦場の真ん中に一人の男が現れた。

賢帝「んふっ」

護衛姉「!」

護衛妹「賢帝様!?」

135

--亜人保護団体本部--

シーン

辺りが一旦静まり返り、そして

おおー!!

沸き立つ。

符術師「!! 来やがったか、黒十字教団の教祖にして五柱が一角!」

侍「賢帝殿……」

賢帝「ふふふ。お久しぶりね侍ちゃん。そのおめめやっぱり見えなくなっていたのね、可哀想」

侍「……お陰様で」

賭博師「ん? なんだ五柱と顔見知りなのか?」

通信師『一時期噂になってたんですよ。教団に忍び込んだ砂漠の風の一員が賢帝と交戦したと』

136

--亜人保護団体本部--

医師(暗黒森林での事件の後診察してわかったことですが、数年前に侍は視神経にダメージを受けていました。実に巧妙な技でした……回復不能攻撃でギリギリまで視神経を削り、激しい運動を繰り返せば取り返しがつかなくなる……そんな技でした)

侍「……」

医師(徐々に具合が悪くなる……しかし治すことのできないもどかしさ。そんな苦痛を与えて喜んでいるゲスがいるのです)

賢帝「ふふふ。そんな状態じゃあ私と戦うのは無理じゃないかしら? だって万全な状態ですら私に歯がたたなかったのに」

符術師「!?」

医師(侍ほどの実力者が眼にダメージをもらうということはそういうことになります……)

賭博師(まぁ腐っても五柱ってこった)

通信師『聖騎士を頂点とした五柱、長、皇、王、帝……聖騎士を除けば彼が一番やっかいな相手なのは間違いないでしょうね』

符術師(腐りきってんな。自分で宗教立ち上げてこれだもんよ)

137

--亜人保護団体本部--

ゴゴゴ

賢帝「ふふふ」

賢帝の威圧感には凄まじいものがあった。

符術師(多腕族……)

それはまるで仏像のようにポーズを取っている。

侍「……さぁ……わからないでござるよ」

賢帝の問いに、長いためを入れた侍が答える。

侍「あの時とはなにもかもが違うでござる」

侍は臨戦態勢に入る。

賢帝「ふふふ。面白い子ねぇ。やっぱりいいわ貴方。私のコレクションに加えてあげるわ」

侍「……拙者両刀でござれども、オカマは無理でござる」

138

--亜人保護団体本部--

賢帝「」

護衛姉「あっ」

護衛妹「まず」

賢帝「ふっふっふっ……ふふふふふふふふふふふふふふふ、あーはっはっはっ!」

ゴゴゴゴ

符術師「来るぞ!! 構えろ!!」

侍(悪いでござるが一人でやらせてもらいたいでござる)

賭博師(はっ!? 何言ってんだよ侍! 今は回復も使えない状況なんだぜぇ!?)

侍「武士の一分でござる」

通信師『……はぁ。五体一でさえ負ける確率の方が高いだろうというのに……』

医師(……侍は一度言い出したら聞かないですからね)

139

--亜人保護団体本部--

符術師(……)

賭博師(まじか納得しちまうんか……ちぇ、じゃあいいよ、さっさと負けちまえ)

侍「恩に着るでござるよ」

侍は賢帝と睨みあう。

ゴゴゴゴ

賢帝「仲間とのこそこそ話は終わったのかしら?」

侍「あぁ。すまないでござるな待たせてしまって」

賢帝「ふふ……じゃあ、始めましょうか!!」

賢帝が円を描くように八本の腕を動かしていく。

140

--亜人保護団体本部--

符術師(あ、さっきのじゃねぇか)

まるで大司教の、いやそれ以上の動きがそこにはあった。

侍「……」

賭博師(だが侍は今眼が見えない。幻覚なんて効かないぞ)

賢帝「これは元々私なりの呼吸法なのよ。あまりの美しさに周りが勝手に幻覚にかかっているだけ……」

賭博師(!?)

賢帝「んふっ。あなた達が考えていることなんて手に取るようにわかるわよぉん」

侍「……」

侍は抜刀の構えから動かない。

賢帝「いくわよ……千手神拳、」

侍「!」

ボボォ!!

賢帝は八本の腕に炎を纏う。

侍「」

ダンっ!

侍は刀を抜いた。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m


次回予告

次々に地球に襲来するクトゥルフ型メダロット達。彼らの目的とは?
倒される外宇宙メダロッターXと浸食されるクロトジル。
メダロッター達を絶望の淵に叩き落とす、ブラックアークビートル。
ヒカルとイッキが所属するMIAとは?

次回、メダロットSAN

やりたいけれどやれそうにない!

こんばんは。本当にお久しぶりです!
約束を違えてしまってごめんなさい。非常にのっぴきならない状況が続き、もしかしたらまた何度か休みがあるかもしれません……本当にごめんなさい。

そんなことをしているうちにこのssもとうとう通算で3周年に……! 
皆さんのコメントのおかげです。ありがとうございます!m(__)m!!

http://file.sssukidesuuu.side-story.net/3a.jpg
というわけで記念絵。


それでは、投下していきます。

141

--亜人保護団体本部--

が、ががががが!!

賢帝「おほほほほ! いいじゃない、やるようになったじゃないの!」

侍「っ」

ががががが!!

侍は迫る火の手刀を全て叩き落としていく。

医師(!! あれだけ流麗で鋭いと思っていた侍の攻撃が……)

賭博師(賢帝の動きの前じゃ荒々しく見えやがる)

符術師(スローで大降りな動きにしか見えないのに、侍より速い!)

ががががが!!

142

--亜人保護団体本部--

通信師『それでも全部の腕を弾いています。隙をつかれないための体捌き、とても目が見えないとは思いません』

賢帝「でもそれが何になるのかしら」

ずしっ!

賢帝が放った右の手刀は侍のガードを押しのける。

侍「」

メリメリ

侍「っッ!」

侍の中を壊す音が聞こえた。

っっどがーん!!

そしてそのまま壁に叩きつけられてしまう。

143

--亜人保護団体本部--

ぱら

賭博師「侍!!」

ぱらぱら

侍「ぐ……」

賢帝「弱いわぁ。防がれても力で持っていけちゃうくらいに……防ぐだけじゃわたしには勝てないわよ?」

侍「……あぁ、まったくもってその通りでござるな」

符術師「おいもうやめろ侍、お前じゃ敵わない! 相手はあの五柱だぞ!?」

侍「うるさいでござる。手出し無用でござるぞ」

ダンッ!

侍は地面を蹴って駆け出す。

144

--亜人保護団体本部--

賢帝「うふふふ、いいわぁ。その愚直なまでの真っ直ぐさ、まるで若いときの剣豪ちゃんみたい」

ガガァン!

侍「その名を口にするなでござる!」

賢帝「うふふふ、不仲なのね」

ががががが!!

そしてまた始まる高速の攻防。
だが、

侍「がっ!」

メキメキ

賢帝「……」

今度は完全に賢帝の一撃が入ってしまう。

145

--亜人保護団体本部--

ズ、ズーン!!

賢帝「……なによ、さっきのダメージのせい? 今度は普通に受けきれてないじゃないの」

侍「がはっ……」

ぱたたっ

侍は頭部から出血し、ふらふらになりながら立ち上がろうとする。

符術師「侍っ!!」

侍「ふ、ふふ……」

刀に体重を乗せがくがくと震えながら立ち上がる侍。

医師(くっ、さすがです……医療系の頂点と呼ばれるだけはあります。たった二撃で侍をここまで……)

医師は汗を垂らしながら賢帝を見ている。

146

--亜人保護団体本部--

符術師(あぁ、凄い威力だな。ただでさえ動きが読みづらいっていうのにあの威力じゃ……)

医師(いえ、違いますよ。単純に威力が問題なのであれば、あの侍なら流しきれます)

符術師(え)

賢帝「んふっ」

医師(彼は医療のスペシャリストゆえ、人体の構造、稼働域を完全に把握しています。だからどんな動きをさせれば身体がもたないか全部わかっているんです……。そして高い観察力で相手を研究し、最もダメージが与えられる場所に手刀を運ぶ……)

通信師『……下手すりゃ一撃必殺ですね』

医師(実際一撃必殺の類いでしょう。その点では侍はうまくやりましたが……)

侍「がふっ」

ボタタタッ

147

--亜人保護団体本部--

賢帝「やだ、もう終わりなの? まだ準備体操だってのに……」

賢帝がゆっくりと侍に近づいていく。

侍「……」

符術師(おい!もういいだろ侍! お前本当にしんじまうぞ!)

侍「……」

医師(もしかしたら既に手傷を負っていた侍は、あえて自分が犠牲になることで賢帝の突破口を見出ださせようとしたのかもしれない……)

通信師『メインアタッカーがいなくて勝てますか!!』

賭博師(……違うぜ)

通信師『え?』

賭博師(あいつは死ぬために戦うやつじゃない)

148

--亜人保護団体本部--

侍「……」

侍はテレパシーのやりとりを聞いてにやりと笑う。

賭博師(あいつは勝つためにあそこに立っている)

賢帝「安心して、殺しはしないわよ。ただおいたはできないように腕はもらうけど」

賢帝が腕を構える。

スッ

賢帝の腕は滑らかに円を描いた。

侍(符術師、リーダー権利を賭博師に譲渡してくれでござる!)

符術師(!!)

侍「スキル、逆境剣!!」

ズバッ!!

149

--亜人保護団体本部--

賢帝「!!」

ブシュッ!!

侍の刀は、攻撃してきた賢帝の腕を弾きつつ、賢帝の胸を斬り裂いた。

ばたったっ

賢帝の血がフロアを濡らしていく。

賭博師(あれ? リーダー変えた意味が)

団体兵「け、賢帝様が……!」

どよめく兵達。
五柱である賢帝が大ダメージを負ったのだ。しかも回復魔法を封じた矢先に。

賢帝「……あら、そんなスキルまで持ってたのね。ふふ。やるじゃないの」

賢帝は胸の傷口に手を当てて血を口に運ぶ。

150

--亜人保護団体本部--

侍「……」

医師(さすが賢帝、攻撃が当る寸前に身を捻ってダメージを軽減してますね)

通信師『辛いですね、今ので決めたかった所でしょうに』

ぽたぽた

符術師(いや決まりだろ。あの傷で戦闘続行は無理だ。手当をしなきゃ死んじまうぞ)

賢帝「火属性回復魔法、レベル4」

ボッ!!

医師「!? なっ!!」

賢帝の傷口が柔らかな火で覆われたと思うと、次の瞬間、傷口は一切無くなっていた。

賢帝「ふふ……」

符術師「は、はぁ!? 回復魔法は封じられたんじゃなかったのかよ!!」

151

--亜人保護団体本部--

賢帝「ん? そうね、そうよ。ふふふ」

医師「……そうか、そういうことか!!」

賭博師(なに、どうゆうことよ)

医師「この回復、蘇生魔法の封印の目的はその力の独占にあったんですよ! この魔法陣の効果を無効化する術を彼らだけが持っているんです!!」

通信師『!!』

医師「これで彼らだけが今までと同じように回復できる……これはつまり」

符術師「ちっ、回復蘇生をビジネスにするつもりかよ!!」

ざわざわ

教団僧侶「!? そ、それでは我々の教義と違う! 出鱈目を言うんじゃない侵入者共!!」

教団槍使い「でも……賢帝様は今回復を……」

152

--亜人保護団体本部--

ざわざわ

侍「……」

賢帝「そうよ。わたしはこれをビジネスにしようだなんて思っちゃいないわ」

賭博師「……」

ざわざわ

賢帝「わたしがあの子の手を貸してまで回復魔法を封じようとしたのは、他に使うものがいなくなればわたしが神になれるからよ」

ざわざわ!!

教団魔法使い「け、賢帝様!?」

賢帝「もういいわあなた達。最初の予定と変わってしまったのは残念だけれど……これを知ってついてくる子達はいないでしょうからね」

ぼっ

賢帝の全ての腕に炎が宿る。

153

--亜人保護団体本部--

教団僧侶「け、賢帝様!! 教主様!! 何をなさるおつもりですか!!」

賢帝「ゴミ掃除よん。火属性範囲殲滅魔法、レベル3」

ボッ、ゴオォォオッ!!!!

侍「!!」

符術師「な!?」

どばあああああああああああああああああああん!!

護衛姉「きゃっ!!」

護衛妹「あうっ!!」



代表「おやおやもう切っちゃうんですか? 少々早い気もするけど……」

代表は下の惨劇を見ながら独り言を続ける。

代表「まぁうちの部下達は全部撤収済みだからいいですが」

154

--亜人保護団体本部--

ゴオオォォオ

賢帝「ほほほ。よく耐えたわねぇあなたたち」

炎の海の中、立っていたのは賢帝と符術師達。

符術師「こ、こいつ……平然と部下を焼き払いやがった」

賢帝「ふふふふ。神の考えは凡人にはわからないのよぉ。ふふふ。わかるだなんて勘違いされるのもいやだしねぇ」

炎をバックに八本の腕を持った賢帝はゆっくりと五人に近づいていく。

ずしっずしっ

侍「……」

符術師「おい侍、これでもまだ手を出すなって言うのかよ」

侍「……そうでござる」

符術師「!?」

155

--亜人保護団体本部--

賢帝「やれやれ、あなたって本当に男らしいわぁ侍ちゃん。でも」

賢帝の腕が回る。

賢帝「まだ力量の違いがわからないだなんてちょっと失望しちゃったわぁ」

侍「スキル、空振り!」

ドシュッ!!

賢帝「」

バシィン!

飛んできた斬撃を軽々と弾く賢帝。

符術師「おい侍!!」

賭博師「いいからやらしとけよ」(リーダーを変更したんだぜ? まだわからないのか?)

符術師(え)

156

--亜人保護団体本部--

ダダダダ!

侍は駆けだした。

賢帝「……浅はかねぇ」

ヒュッ

接近してきたところを賢帝の手刀が狙う。

ゥン

賢帝「!?」

しかし、それを侍は軽々と避けた。

賢帝「な!!」

賭博師(約100人に1人の割合でしか発現しないパーティスキル、リーダースキル。俺がリーダー時はパーティ全体の回比率を三割あげる)

157

--亜人保護団体本部--

ドッ!!

侍の剣撃を左腕で防ぐ賢帝。

侍「っ! 取ったと思ったでござるが!」

賢帝「ぬぅ……! あんた何かしたわね!」

ボッ!!

今度は左の手刀が侍を狙うが、

スッ

またしても当らない。

賭博師(いやー、三割をよく二回連続で引けたなーあいつ)

符術師(……そういうことか)

侍(はっはっ、すまんでござるな。敵を騙すにはまず味方から……元より拙者一人で勝てる相手だなどと思ってないでござるよ)

賢帝「ふぅ……」

158

--亜人保護団体本部--

通信師『まぁ……結果的に侍だけということで油断してましたからね。回復魔法さえ使われなければ勝敗は決していたかもしれませんし』

医師(私達は全員リーダースキル持ち……後ろでリーダー権をころころ変えてるだけで侍のステータスを変えることができますからね。侍の孤軍奮闘のスキルのことを考えたら……全員で突撃するのと結果は変わらないかもしれない)

符術師(まぁ、そう考えたら侍の単騎突は効率的にいいのかもしれないけれど、なんかなぁ)

侍(医師にリーダー権を!)

賭博師(あいよ)

医師(リーダー変わりました、私のリーダーパーティスキル、常時回復が発動します)

駆ける侍の傷が少しずつ回復していく。

賢帝(! 回復魔法は使えない状況なのに……そう、回復アイテムを使ったわけでもないのなら、祝福か呪いを受けたアイテムを所持しているのか、もしくはパーティスキルってことね)

シャシャシャ!!!

賢帝は侍のスピードに追いつけない。

侍(このまま逃げ続けていれば全回復でござる。兵達を一掃したのは失策でござるな)

159

--亜人保護団体本部--

賢帝(でも今回復が始まったってことはやっぱりパーティスキル……いやリーダースキルか。なるほど、リーダーを交換したのね!!)

賢帝は四人の方に向き直る。

賢帝「なるほど。こそこそ電波で喋ってるだけかと思ったらそういうこと」

賢帝は走り出した。

賢帝「ならそっちから倒してあげるっ!!」

侍(! 賢帝を囲むように逃げてくれでござる!! そしてリーダーを拙者に!)

医師(わかりました!!)

賢帝「ふん、ばらばらに逃げたからって誰かが死ぬのには変わりないのよぉ!!」

侍「」

ばちっ!!

賢帝「……!?」

160

--亜人保護団体本部--

侍「拙者のリーダースキルは一発型でござるからな」

侍が居合の構えを取ると、符術師達も全員居合の構えになる。

ばちばち!

そして各々の属性の魔力で作られた刀が出現する。

侍「くらうでござるよ!!」

シャッ

5人に囲まれた賢帝に逃げ場はない。

どばっ!!

賢帝「ぐぁっ!?」

5つの飛ぶ斬撃が賢帝を襲った。

最初から読み始めたらここにおいつくまでに一体どれくらいかかってしまうんでしょうか……。

本来は勇者募集、酒場募集、アイ募集のヒロイン三人の記念絵になる予定でしたが伝達ミスで酒場時代のヒロイン3人絵になりました!ありがとう!


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは、もう二年経ったんですね……早いものです……。


ふぇぇ…あ、アイ募のヒロインはハイちゃんですよぉ(震え声)
http://file.sssukidesuuu.side-story.net/63cae64d.jpeg
というわけでさっそく絵になりました。

それでは投下していきます!

161

--亜人保護団体本部--

しゅううう……

侍「タフでござるな……」

賢帝「ぬぅぅうぅう……!!」

土煙の中から傷だらけの賢帝が顔を出す。

通信師『……驚きました……まさかあれで体力を三分の一も減らせないとは……』

符術師「このリーダースキルって、1発1発が対単体攻撃魔法レベル2,5相当じゃなかったっけ……?」

しゅうぅうう

賢帝「うぐう……」

賢帝はボロボロになりながらも立っていた。

162

--亜人保護団体本部--

賢帝「あんたたちぃ……許さないわよぉ……」

めき、めききっ!!

賢帝の傷は完全に修復される。そして筋肉が肥大化を始めた。

賢帝「神であるこの私にぃたてついたことを後悔させてやるぜぇ……!!」

めきめきめきっ!!

符術師「なっ!! か、身体がどんどんでかく……三メートル以上あるぞ!?」

ゴゴゴゴゴ

医師「まさか……奥義を使うつもりですか!?」

医師は一筋の汗を流す。

163

--亜人保護団体本部--

賢帝「……ふ、ふふふ。あんたたち虫けら程度に奥義なんて使うはずが無いじゃないの……でもそうね……」

ぼっ!!

その状態で全身に炎を纏う。

ぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!!!!

賢帝「あんたたちにはちょっとむかついちゃったし……いいわぁ……そこまで言うのなら、秘にして火の、究極の我が奥義を見せてアゲル」

ぼぉぉ!!

炎が竜巻のように回転し熱風が吹き荒れる。
辺り一帯を焼き付くさんとするその様は、比喩でもなんでもなく天災そのものだった。

侍「ば、ばかな!! 奥義発動前の段階でこのパワーだと!? ……し、信じられんでござる……!」

プッ
ゴゴゴゴゴ

164

--亜人保護団体本部--

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

護衛姉「ちょ、ちょっと!!」

護衛妹「そんなもんぶっぱなされたら!!」

物陰から見ている護衛姉妹は慌てて身構える。



代表「あー……こりゃすごい。本部消し飛ぶね」

熊亜人「代表! 急いで避難するぐま!!」

代表「いやいや避難するにはもう遅いでしょう。あれの攻撃範囲は広いよ? 恐らく」

165

--亜人保護団体本部--

賢帝「感謝なさい。特別に強力な方にしてアゲル……これを使ったのは今までで二回しかないんだから!!」

ゴゴゴゴッッゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

賭博師「まだ魔力があがるってのか!?」

大地が揺れる。

プッ

通信師『……』

大気が震える。

符術師「こんなの……勝てっこない……」

ガタガタ

気丈な符術師が震えながら涙を流す。

166

--亜人保護団体本部--

ジュッ!!

汗などは一瞬で蒸発してしまう。
それほどまでに強大なエネルギーを……賢帝は発していた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

世界の始まりと終わり。
それを可能にするだろうと思わせる破壊の力……。

それが指向性を持って、今、

賢帝「ふふふ……じゃあね、おばかさんたち。奥義いいいいいいいいいいいい!!!阿修r」



侍「はい、じゃあ奥義崩しうちまーすwww」

ズドドドッドバシャーン!!!!!!

賭博師、通信師、医師、符術師「「「ですよねーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」」」

賢帝「ごびょふっ!!!???」

賢帝が纏っていた魔力を根こそぎ粉砕し、賢帝を真っ二つに両断する侍ちゃんでした。

デデーン

167

--亜人保護団体本部--

ぷすぷす……

賭博師「いやー、あいつまじばかーwww調子にのらせたらマジ使ってやんのーwwwウケルーwww」

通信師『医師も名演技でしたよねwwwなにが、「まさか……奥義を使うつもりですか!?」キリッ よ。ぷぷーwww』

医師「正直笑いをこらえるのがやっとでしたよ。符術師なんて笑いまくって涙流してましたし」

符術師「ぎゃはははは!! だってもうみんなの演技がうまくてさwwwwし、しかもあいつすげぇかっけぇセリフばっか言いやがるからwwww」

侍「拙者笑い我慢してたせいで何度か屁がもれたでござるよ」

わははははくせーくせー

168

--亜人保護団体本部--

護衛妹「た、倒しちゃったの? あんな化け物を……」

護衛姉「はわ、はわわわ」

ガタガタガタガタ

頭を押さえて泣きじゃくってる護衛姉。

護衛妹「ね、姉さん大丈夫みたいですよ? ほらもう熱くないでしょう?」

護衛姉「はわわわ。も、もう燃えない?」

もふもふ

護衛姉は頭の上の自分の耳をもふもふ触りながら心を落ち着かせようとしている。

169

--亜人保護団体本部--

護衛妹「はい。ですからそんな隅っこに隠れてないで出てきてください」

護衛姉「……うん」

よちよち

護衛妹の服をしっかり握りしめながらフロアの様子を覗く。

護衛姉「……」



わーっはっはっはっはっ

符術師「じゃあさっさと残りをぶったおして帰ろうぜぇ」

ガシッ

医師「ん?」

医師の足首を何かが掴む。

170

--亜人保護団体本部--

賢帝「」

医師「!?」

医師の足首をつかんだのは上半身だけの賢帝だった。

符術師「な、こ、こいつまだ生きて!!」

賢帝「ごぼっ、許さない……もう絶対に許さないわっっ!!」

ガシッ

符術師「がっ!!」

賢帝は二本の腕で立ち上がると、符術師と医師の足を掴んだまま振り回した。

ブンブンブンブン!!!!

171

--亜人保護団体本部--

侍「ちぃ!」

賢帝「」

どごっ!

突っ込んできた侍に医師をぶつける。

侍「がっ!!」

医師「ぐっ!」

符術師「て、てんめぇ!!」

振り回されながら札を引こうとした符術師だったが、

賢帝「」

ブンッ!!

その前に思い切り賭博師に投げつけられた。

172

--亜人保護団体本部--

ドッ!!

賭博師「ぐほっ!!」

符術師「っ!!」

侍「……くっ!」

ガシガシガシガシ!!

四人が体勢を崩している間に、賢帝は自分の下半身の所にまでたどり着く。

賢帝「火属性回復魔法レベル4」

ぼっ……しゅううう

医師「……一瞬で上半身と下半身をくっつけるとは……」

符術師「こ、こいつ……不死身か!?」

173

--亜人保護団体本部--

ゴゴゴゴゴ

賢帝「ふしゅーるるる……」

侍「……」

チャキっ

符術師「……ドロー」

ビッ

通信兵『気を付けて下さい……』

ザザっ

賭博師「……って言われてもなぁ」

ぼりぼり

医師「……」

六人は間合いを測っている。

174

--亜人保護団体本部--

賢帝(今すぐこいつらをブチ殺してやりたい……けど、奥義発動を無効化されて消費しちゃった魔力の量……辛いわね……)

賢帝は平静を保とうとしているが、かなり疲弊していた。

賢帝(まぁそれでもこの五人相手なら勝てると思うけど……その後が怖いわね)

賢帝はちらりと上を見る。

賢帝(というかなんであの子手を貸してくれないのかしら。私が五柱だからその戦いに水をさしちゃいけない、とかそんなロマンチックな考えを持った子じゃあないでしょう?)

賢帝は涼しい顔をしている代表と目が合った。

賢帝(……そう。やっぱり私のこともいつか出し抜くつもりだったようね……ふふふふ)

175

--亜人保護団体本部--

賢帝「……はぁ、いいわ。あんた達見逃してあげるわ」

侍「!?」

符術師「はっ!?」

通信師『!』

医師「え!!」

賭博師「……」

賢帝「私ももう若くないしね。しばらく前線から退いてたせいで鈍ってたわ……」

ごきっごき

賢帝はため息とともに肩を鳴らす。

176

--亜人保護団体本部--

侍(……こんだけ強くて鈍ってたとか言われてもござる)

符術師(まぁ……色々はっちゃけた伝説持ってるしなこの人)

医師(五柱ですしねぇ)

賢帝「だから疲れちゃったの。私帰るわ。後のことは好きにしなさい」

賭博師「あ、まじすか。じゃあ……お疲れ様です」

賢帝「うん、あんた達も気をつけるのよ」



護衛姉「ちょっと仲良くなってる!」

護衛妹「先輩後輩みたいになってる!」

177

--亜人保護団体本部--

侍「……本当にどっか行っちゃったでござる」

符術師(通信師。嘘かもしれねぇからちゃんと確認しておけよ)

通信師『もちろんです。でももう心配ないかもしれません。すでに5キロ離れちゃいましたし』

賭博師(はやっ!!)

医師(小回りはきかないみたいですが……本物の化物ですね。あれだけ強くなっちゃうと人間の座に満足できなくなるのも無理はないのかも……)

符術師(ま、いいや。それじゃあ俺らの本当の目標である代表を倒しにいくぞ)

侍(うえー。今のが前哨戦とかやってられないでござる)

賭博師(ほんとな)

178

--東草原--

ザザザザザザザ!!!!

賢帝(まぁいいわ。例え代表ちゃん達が倒されちゃったとしても、また何年かかけて……ん? この魔力……)

賢帝は前方から飛んでくる何かを感知した。

賢帝「……ちょっとちょっと……なんであんたがここにいるのよ……」

ひゅおおおおおおおおおおおおお!!

それは猛スピードで飛んできたかと思うと、空中で急ブレーキをかけた。

ふわっ

魔導長「やぁ賢帝ちゃん。お久しぶりなのっ」

賢帝「……本当そうね……」

賢帝は魔導長を見て身構える。

賢帝(ちっ……ここは東の王国領土の目と鼻の先よ。なんで魔法王国の長が……)

179

--東草原--

賢帝「あなた、一体なんでこんなところにいるの?」

魔導長「ん? 賢帝ちゃんを倒しにだよっ」

賢帝「!?」

魔導長の全身から無色の魔力があふれ出る。
それは戦闘体勢に入ったということ……。

賢帝「な、なんでなの!? なんで私があなたに倒されなくちゃならないのよ!?」

魔導長「児童誘拐」

賢帝「!?」

魔導長「人身売買、魔力強化ドラッグ・ブーストの栽培及び密売、犯罪組織との密接な関係etcetc……それと今回のはとびっきりの大重罪なのっ!!」

賢帝「!!……くっ」

魔導長「……倒される理由なんていくらでもあるんだよ」

180

--東草原--

賢帝(ま、まずいわよ……い、今の私の魔力がこの子の魔砲には……!!)

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

賢帝「!! う、わ……」

先ほど賢帝の奥義で使われた魔力量が可愛く見えるほどに……魔導長の魔力は遥かに凶悪だった。

ビビビビビビビビビビビ!!

魔導長「悪はすべからく倒される……」

ヴキヴキヴキヴキヴキ!!!!

賢帝「あ、あぁ……あぁああああっっっ!!」

魔導長が杖を掲げると、世界の全てから魔力を吸い上げ始めた。
そして、自らの強大な魔力にそれを上乗せする。

ギイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!

魔導長「リミッター全解除」

賢帝「」

魔力が満たした完全無音の世界。
賢帝は、その最後の音を聞く。

魔導長「全力全開!! 奥義、星光破壊砲おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

カっ

Q・魔導長の本気の星光破壊砲はどれくらいの威力があるの、っと。
A・国が消える。



それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅く……なりました……こんばんは。ゲッソリ

え! (すべからくにそんな約束事が……! 最遊記の予告ってあれはどうなんだろ)教えていただきありがとうございます!!

新ポニテ&レンにございます、どうぞお納めくださいm(__)m
http://file.sssukidesuuu.side-story.net/3e1f4328.jpeg
http://file.sssukidesuuu.side-story.net/e01f38dc.jpeg

それでは投下していきます!

181

--東草原--

しゅううううううう……

賢帝「ぎ、ぎぎ、ぎ」

魔導長「……やれやれ、初めてなの。こんなガンジョーな人間……逆に私の自信てやつがブッこわれそうなの……」

爆心地で燃えカスのようになりながらも生きている賢帝。

魔導長「さすがは落ちぶれても五柱なの。でも」

魔導長が杖を向けると賢帝の体を魔力で出来た縄が締め付ける。

賢帝「はうんっ!!」

魔導長「捕獲完了なの」

182

--東草原--

ぴょろろー

ばさっばさっ

魔導長「ん、伝達鳥なの?」

伝達鳥は魔導長の差し出した杖に止まると何やら喋り始めた。

伝達鳥「わたしは東の憲兵と申します。貴女様は五柱が一柱、魔導長様とお見受けいたします。今回は自国にて待機しているようにて連絡がいっていると思いますが……」

魔導長「来てたの。でもそんなこと知らないの」

伝達鳥「なっ!? こ、困ります……。貴女様のような強大な戦力を持つお方がそのような軽率な行動を取られては……」

魔導長「それは聞いていた情報だけだったらまだ納得してあげてもよかったの」

伝達鳥「……」

魔導長「五柱がこの件に絡んでいたとなっては話は別なの。五柱のことは、五柱がかたをつける」

183

--東草原--

伝達鳥「……」

魔導長「もう用は済んだの。ここから出て行くからいいでしょなの」

伝達鳥「……はっ」

魔導長「じゃあちょっとこの子を借りるなの」

ばち

魔導長が伝達鳥に触れるとピンク色の魔力が弾ける。

魔導長「五柱に欠員がでたの。なら次の五柱を決めなくちゃなの」

ぽう

魔導長「残りの三人に急いでこのことを伝えて欲しいの。推薦したい子がいるの」

184

--???--

トントントン

小気味良い包丁の音が響く。

ツインテ「と、鍋は大丈夫かな?」

ツインテはスプーンで一掬いして口に運ぶ。

ツインテ「……うん。よし」

フォーテ「お姉ちゃんっ朝ごはんまだっ!? フォーテぇ、高貴なお姉ちゃんの手で作られた手垢まみれのご飯が早く食べたいのっ!!」

ツインテ「そ、そんなに手垢……あるのかな」

しゅん

185

--???--

フォーテ「あ!? ごごごごめんお姉ちゃん!! 神聖で清浄なお姉ちゃんに垢なんてあるはずないのに!! 僕は一体なんてことを言っちゃったんだっ!」

ボロボロと大粒の涙を流しながらフォーテは大声で泣き出した。
そしてツインテの指をぺろぺろちゅぱちゅぱ。

ツインテ「えっ、ちょ、ちょっとフォーテちゃん」

ツインテは慌ててフォーテの頭をなでる。

ツインテ「よしよし……ボクは気にしてないから大丈夫だよ。さ、みんなで朝ごはん食べよ? お腹すいたよね?」

フォーテ「ぐすっ……うん」

ツインテ「うん。じゃあフォーテちゃんにもテーブルに運ぶの手伝ってもらうね?」

フォーテ「っ!! うん! 僕ツインテお姉ちゃんのお手伝いする!!」

ズズズ

186

--???--

アアアアアア

ツインテ「びくっ!?」

あああああぁああああ

ガチャガチャガチャ

フォーテは闇から死者の腕を引きずり出し、お皿を全て持たせて走っていった。

フォーテ「それー!!」

ダダダダダダダダ

ツインテ「あ、ずるいっ……もう」

187

--???--

フォーテ「みんなー! ご飯だよー!!」

?「ア、ゴハンー!? マッテタヨー!!」

天井に張り付いている蜘蛛のような物体が喜びの声をあげる。

??「銀蜘蛛さんはいつもどこにご飯が入ってるんだろって、私思っちゃったりしてます」

ピンクの髪の亜人の少女はニコニコと笑っている。

???「ツインテ、作る、食事、上手い」

茶色の肌の男は片言。

????「はははいつも茶肌さんは美味しそうに食べてますからね(がっつきすぎだくそ)」

爽やかな笑顔を浮かべる美青年。

188

--???--

?????「……」

無言のまま椅子に座っている金髪の青年。

??????「び、美少女のご、ごはん! う、嬉しい! ひひっ」

興奮したりきょどったり忙しい小柄な少年。

???????「あー、フォーテ坊主。運ぶのは私の仕事なのにー」

制服を着ている女性は不満をもらす。

????????「はっはっはっ! 朝飯前にしっかり筋トレしてきたぞ! 俺は腹いっぱい食うぞぉ!」

上半身裸の男は汗まみれ。

魔王勇者「脳筋、汗臭い」

魔王勇者は鼻を摘まむ。

189

--???--

トリガー「うん……ちょっとこれたまらん臭いだよね」

トリガーは嗚咽。

Q「ピピッ。凶悪な臭気を感知ピピッ」

ロボは異常を感知して走り回る。

ツインテ「……はははっ……」

フォーテ「ほらぁ! みんなテーブルからどいてよぉっ! お皿テーブルに並べるんだからっ!!」

あああああああああああああああああああ

トリガー「……死者の腕に運ばせるなんて衛生面的にどうなんだろう」

ああああああああああああああああああああああああああああああ!!

トリガー「あ、ごめん。怒らないでよ」

190

--???--

かちゃかちゃかちゃ

フォーテ「んー!! おいしいー!! やっぱりお姉ちゃんの食事は最高だよっ!!」

?「ウン! ホント、サイコウダヨー!! オイシスギテ、メカラオイルデチャウ!!」

どばー

??「わっ。食事中にオイルはちょっと、って私思っちゃったりしてます」

???「せっかくの、ツインテの、ご飯、まずく、なる」

????「ははは。(マナーってもんをしらねぇのかくそがっ!!)」

?????「……」

かちゃかちゃかちゃ

191

--???--

かちゃかちゃかちゃ

??????「おいしい、おいしい、ひひひっ」

???????「うん、本当に。ねぇ今度作り方教えてよツインテ坊。私も料理やってみたい」

????????「いや……お前はやめた方がいいかな……」

トリガー「うんボクもそう思う……」

Q「危険! 危険! 超危険!」

???????「なぁんですってー!?」

かちゃかちゃかちゃ

ツインテ「……」

192

--???--

フォーテ「? どうしたのお姉ちゃん。世界を滅ぼすほど美味しいのに全然食べてないね……はっ!? もしかしてお姉ちゃんどこか具合悪いの!? 直す!? 治す!?」

あああああああああああああああ

???????「こらフォーテ坊! 食事中にそれ出すんじゃないって言ってるだろ!?」

???「ツインテ、どこも、悪い所、ない」

?「ピピピ。ウン、サーチシタケド、イジョウハナイネ」

ツインテ「あ、具合悪いとかそういうんじゃないんです。ただ……ちょっと気になることがあって」

フォーテ「……もしかして、お姉ちゃんの従者のこと……?」

ツインテ「うん……皆さんは今ごろなにやってるんだろ、って。ボクがいなくてもちゃんとしたもの食べてるかな、って」

フォーテ「……」

ツインテを見るフォーテの瞳に光は無かった。

193

--妖精郷--

バクバクバク!!

ポニテ「あ! アッシュ君!! そのうん◯私のだよ!?」

アッシュ「ふん! 手の届く範囲にある◯んこは全部早い者勝ちだ!」

レン「もきゅもきゅ。このう◯こ旨いにゃ!」

ハイ「……はぁ」

194

--妖精郷--

ポニテ「よし、今日も一緒にお風呂入りに行こうかハイちゃんっ!」

ハイ「は、はい……」

レン「嫌なら嫌っていいにゃよハイ。ポニテはセクハラ魔神にゃ。出るとこ出たら確実に勝訴にゃ」

ポニテ「まっ、私出るとこ出てるからねっ!!」

ぷるんっ

アッシュ「……オヤジギャグ……」

ハイ「うわ……相変わらずおっきい」

レン「タンクローリーで引いて平にしてやるにゃ」

ゴゴゴゴゴゴ

195

--妖精郷--

かっぽーん

ポニテ「ほんとどこにでもあるねーおんせーん!」

レン「この世界は何かがおかしいにゃ」

ハイ「……」

じーっ

ハイ(ほんと……この二人スタイルいいな……)

ハイはタオルで体を隠しながら二人の裸体を観察している。

レン「む。熱い視線を感じるにゃ。もしかしてハイってそっち系なのにゃ……?」

ハイ「違います!」

ポニテ「うひひ。私は別にそれはそれでいけなくも」

涎を垂らしながらハイに近づくポニテ。

196

--妖精郷--

ぷるんぷるん、ぷるるーん

ハイ(お、おっきい!!)

レン「後輩いじめは止めるにゃ!」

ばちっ

レンは水でゴーレムを作り上げる。

ポニテ「!」

そしてポニテにチョップ。

ばっしゃーん!!

ポニテ「あぶぶ……ぶはっ!! こっの〜やったなレンちゃん!」

レン「くっくっく」

ハイ(ダメージ無し……?)

197

--妖精郷--

レン「そう言えばハイはいくつなのにゃ? 小柄だから幼く見えるにゃけど」

ハイ「あ、はい。今年で27になります」

ポニテ「……」

レン「……」

ハイ「はい」

ポニテ、レン「「えええええええええええええ!? と、年上!?」」

ハイ「あ、やはりそうでしたか。そうだろうとは思ってましたが、皆さん大変若くてうらやましいです」

ポニテ「まじかにゃ……てっきり年下だと思ってたにゃ。高校一年生くらいにしか見えないにゃ」

レン「おい」

ハイ「よくそう言われます。別段何か気を付けているわけでもないんですが」

198

--妖精郷--

ハイ「今日を生きるためにと仕事に精を出し続けてはやウン十年……人並みの恋も、遊びも、幸せも味わうことままならず今に至ります……はぁ。青春を生きる若人、うらやましい……」

ずぅん

レン「うっ、そ、そんな落ち込んじゃだめにゃ。その、ハイ、さん」

ハイ「そんな敬語なんてよして下さい。レンさん達の方が、このパーティでは先輩であることに変わりはないんです」

ポニテ「ハイちゃん……」

ハイ「はい?」

もみゅ

ハイ「は、はいいいいいいいいいい!?」

ポニテ「はぁあああ。やっぱりおっぱいいいなぁ」

もみ、もみ

ハイ「えっえっえっ!?」

ポニテ「ツインテちゃんは皆無だし、レンちゃんもあって無いのと変わらないし。パーティ内でおっぱい揉めるようになって私幸せだよぉ!!」

レン「湯船からでなビッチ」

199

--妖精郷--

ハイ「や、やめてください、別に私の胸は立派なもんじゃないですよ……どこにでもある普通の大きさです」

ポニテ「そう普通……だがそれがいい。っていうかハイちゃんの反応がいい」

ポニテはハイの首筋を1ぺろり。

ハイ「ひゃんっ!!」

ポニテ「胸は普通、腰のくびれも普通、肉付きはむっちりはしてないしすらっともしてない。肌もツインテちゃん並にきめ細やかなわけではない……」

ハイ「ぐさっ!?」

ポニテ「だがそれがいいんだよ!!!! この素朴さがいいんだよ!!!! なんでわからないかなぁ!!!! 結局最強なのはなんに特化してるってことじゃないんだよ!!!! 普通こそ最強なんだよ!!!! 感度いいしね!!!!」

レン「黙れにゃ!!」

200

--妖精郷--

かぽーん

アッシュ「……」

女湯の騒いでいるのを聞きながらアッシュは一人目を瞑る。

アッシュ「……また男一人に戻っちまったか」

なぜかハーレムを喜べない男アッシュであった。

ぴっち『女湯覗きに行ってきやしょーかぴっ?』

アッシュ「いい。覗きたいのいないし。まぁいてもそいつの裸見たら殺すけどね」


--妖精郷、入口--

ぎち

アッシュ達がゆっくり温泉に浸かっている頃、何者かが妖精郷に侵入しようとしていた……。

えー、今回の投下でですね、Qw0独自のカウントの仕方でですね……シリーズ全部で100万字になりましたー!
やったー!目標の一つだったのですが嬉しいやら長いやら……。


それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こ、こんばんは。遅くなりました。

カウントはなんかカウントしてくれるサイトではかりました!

それでは投下していきます。。


201

--妖精郷--

ハイ「はぁ。いいお湯でした」

湯上りぽやぽやのハイは涼んでいる。

すたすた

アッシュ「ん、お前だけかハイ」

そこにコーヒー牛乳を飲みながら現れるアッシュ。

ハイ「はい。ポニテ先輩とレン先輩はお夜食を食べに行かれました」

アッシュ「はぁ……一体あいつはどれだけ食うつもりなんだ。付き合わされるレンも不憫だな」

ハイ「あはは……」

アッシュ「じゃあお前にやるか」

ハイ「え?」

そう言ってアッシュは牛乳のビンをハイに差し出した。

202

--妖精郷--

ハイ「え? これを……私に、ですか?」

アッシュ「妖精のいたずらのせいで間違って買っちまったんだ、俺普通の牛乳好きじゃないのに。いらねぇか?」

ハイ「い、いえ! ありがとうございます……」

ハイはアッシュからビンを受け取る。

ハイ「……」

アッシュ「? どうした? 飲まないのか?」

ハイ「あ、いえ……男の人から何かを貰うのなんて初めてだったもので……」

アッシュ「ふーん」

ハイ「……」

203

--ハイ脳内--

ぽやぽやぽやぽやぽやーん

ハイ1「はーい! これよりハイちゃん脳内会議を始めまーす!」

ハイ2「おおー!!」

ハイ3「やんややんや」

ハイ1「さてアッシュ先輩から素敵な贈り物を貰ったわけですがこれをどう思いますか?」

ハイ4「うーん。間違って買っちゃったとかいかにもベタすぎます! 嘘だと思います! これは最初からハイちゃんにあげようと思って買ったんだと思います!」

ハイ5「そ、それはいくらなんでもどうなんだろう……」

ハイ6「でも好きでも何でもない女の子に贈り物なんてするだろうか……」

ハイ1「ふむふむほうほう。なるほどなるほど。それでは脳内会議の結果……」

ダカダカダカダカダン!!

ハイ3「ドキドキドキドキ」

ハイ1「アッシュ君はハイちゃんのことが好き! という方向で!!」

わー

204

--妖精郷--

アッシュ「おいハイ。聞いてるか?」

ハイの顔を覗き込むアッシュ。

ハイ「あひゃぁ!? な、なんでしゅか!?」

ジュル、と垂れてた涎を慌ててすするハイ。

アッシュ「いや……とっととそれ飲んで湯冷めしないうちに寝ろよ?」

ハイ「あ、はい」

アッシュ「じゃあ俺もう寝るから。また明日な」

そう言ってアッシュは自分の部屋へと戻って行く。

ハイ「……アッシュ先輩の牛乳」

顔を赤らめるハイちゃんだった。

205

--妖精郷--

がつがつむしゃむしゃ

料理屋「おいおいちょっと、いくらなんでも食べすぎなんじゃないのかぁ?」

ポニテ「いやいやなんの! おっちゃんおでんも美味しいね! 次がんもどきね!」

料理屋「……まぁ金払ってくれるならいいけどよ」

レン「まったく下品な食い方だにゃ」

がつがつむしゃむしゃ

料理屋「……」

レン「……?」

料理屋「見るからに……お譲ちゃん達は冒険者なんだよな?」

レン「まぁ一応そういうことになってるにゃ」

206

--妖精郷--

料理屋「それも魔王討伐を目的とした勇者パーティ、だったり?」

ポニテ「!?」

レン「!!」

料理屋「……みたいな雰囲気はあるけど、そんなわけないよなぁ」

ポニテ「……おっちゃん……何者?」

料理屋「何者でもないさ。ただの料理人さ」

レン「ただの人間は妖精郷には入れないにゃ」

料理屋「……」

レン「……」

料理屋「なるほどね」

207

--妖精郷--

ポニテとレンは心の中で戦闘へと切り替えて行く。

料理屋「いやいやまったまった、俺は君らと戦ったりしないよ。俺はただの料理人だよ。昔は東の王国の勇者候補なんてやってたけどさ」

レン「え!」

ポニテ「なぬ!? 脳内でじゃなくて?」

料理屋「ちげぇよぉちゃんとしたやつだよ」

レン「なら勇者証明書見せてみるにゃ」

料理人「だから昔の話だって。そんなもんとっくに回収されたさ」

ポニテ「……あ、そう言えば私達の勇者証明書って今どこ?」

レン「……」

208

--妖精郷--

ハイは一人部屋の中、布団に横たわり外の景色を見ている。

ハイ(え、え、で、でも……アッシュ君こんなおばちゃんでいいのかな)

ハイは股の間に布団を挟んでごろごろ。

ハイ「やんやんやーん///」

レン「何をしているにゃ」

ハイ「ひゃっ!?」

気配を消してこっそり近づいていたレンは耳元でぼそりと呟く。

ハイ「い、いつからいたんですか!?」

ポニテ「ど、どうしよう……こんな身体でもいいのかな……? くらいかな?」

ハイ「そんなこと言ってません!!」

ポニテ「言ってないなら言わせるまでよ……!」

ポニテはハイに飛びかかる。

209

--妖精郷--

ポニテ「まぁまぁ飲みねぇ飲みねぇ!!」

ポニテは手に入れて来たお酒のビンを、ハイの口に突っ込んで傾ける。

ハイ「ん、んんー!!」

ごきゅごきゅごきゅ

強引に飲ませられて苦しそうなハイ。

レン「中々いい飲みっぷりにゃ。ひっく」

ハイ「ぷぁっ!! げほっごほっ……い、いきなり何をするんです!?」

ポニテ「あははー。だってこれから女子会やるんだししらふじゃだめっしょー??」

ハイ「しょ、しょんな……ひっく。わらしおしゃけよわいにょに……ひっく」

ポニテ「はやっ!!」

210

--妖精郷--

ハイ「えへへへ〜。気持ひぃぃ」

完全な酔っ払いと化したハイ。目はうつろで顔は真っ赤になっている。

レン「レンも弱いとは思ったけど、ハイはそれ以上にゃね……」

ポニテ「おおぉういいねいいねエロいね!!」

レン(相変わらずレアスキルのおかげで一切酔わないのにゃねポニテは)

ハイ「うぅう〜!! わらひらって恋とかしたかっらんれすよぉお!!」

ポニテ「うぉう!? なんか言いだしたよレンちゃん!!」

レン「あかん匂いがするにゃ。酔わせちゃいけないタイプの人間にゃこれ」

ハイ「わらひらってー……てをつないれ、れーととかしたりー、りょこうとかいきたかったんれすよぉー」

ハイは布団にのの字を書きながら語り出す。

ポニテ「面白くなってきたー!!(゚∀゚)」

211

--妖精郷--

ハイ「わらひまだ、ちゅーらってしたことないのに……」

ハイは段々と涙目になっていく。

ポニテ「あははー。大丈夫だってー、ハイちゃん可愛いんだからすぐにいい人見つかるってー!」

ハイ「いいひと……?」

レン「そうにゃ。いいひとにゃ」

ハイ「けっこん、してくれるかな?」

ポニテ「いけるいける! 絶対いけるよ!!」

ハイ「ふぇ……でもわらひまだちゅーしたことない……」

ぐずりだすハイ。

ポニテ「可愛くなってきたー!!(゚//∀//゚)」

212

--妖精郷--

ポニテ「ハイちゃんちゅーしたいの?」

ハイ「……うん」

レン「うわなにこれちょっとっこれやだもうっ!!」

レンちゃんがにやけっぱなしになる。

ポニテ「そっかーじゃあ……お姉ちゃんとちゅーしよっか!」

レン「ポニテの方が年下じゃないかにゃ!」

ハイ「……うん、する」

ポニテ「え」

ハイは目をつぶってポニテの方を向く。

ハイ「んー……」

レン「……」

ポニテ「何この可愛いいきものーー!!(○////∀////○)」

レン「どけ、レンがするにゃ」

213

--妖精郷--

ポニテ「けどダメなんだよハイちゃん。私達はちゅーできないんだ」

ハイ「ふえぇ……? ちゅーしてくれないの?」

うるうる涙目になるハイ。

ポニテ「はうぅ!? ぐぅ……ツインテちゃんの時以来だよこんなに可愛いのは……。ダメなの、ハイちゃん。初めてのちゅーは好きな人としかしちゃいけないんだよ!!」

ハイ「……? わらひ、ポニテしぇんぱい、すき」

ポニテ「ぶっ」

ポニテは鼻血を噴出する。

ぼたぼたぼた

ポニテ「ち、違うんだよ、そういう好きじゃないんだよハイちゃん……。ハイちゃんにはいないの? 本当に好きな男の子とか」

ハイ「はっ……」

ハイは口を開けて何かを考える。

たらり

また涎が垂れた。

214

--妖精郷--

ハイ「あ……あしゅ」

ポニテ「え? 何?」

ハイ「あ、アッシュしぇんぱいが、きになりましゅ」

ポニテ「っっあの残念イケメン野郎!!」

がばっ!!

ポニテが憤怒の表情で立ち上がる。

レン「なんでにゃ。なんで怒るにゃ」

しゅるるる

レンは拘束具を錬成してポニテを縛り上げる。

ポニテ「ぐっ!! こ、こんな可愛い後輩に好かれてるだなんて!! それだけで許し難いんだよ!!」

レン「女のポニテが嫉妬かにゃ」

ポニテ「ムカつくんだよ!! 顔のいい男が!! 顔のいい男が!! 顔のいい男が!!!」

215

--妖精郷--

レン(しかしこれはレンとしてはチャンスかもしれないにゃ……何せあの毒坊やはツインテのことを……。しかしここでハイとくっついちゃえばツインテはレンだけのものにゃ!!)

レンはいやらしい笑みを浮かべる。

レン「ポニテ、さっき自分で言ったにゃ。初めてのちゅーは好きな人と、って。ハイが好きな人がアッシュだとするならば、その願いを叶えてやるのが先輩というものにゃ」

ポニテ「う、うぐぅ……」

ハイ「……」

ポニテ「……わ、わかった。でもハイちゃん一つ教えて……。一体どうしてアッシュ君のこが好きになったの?」

ハイ「……」

てれてれ

ハイ「さ、さいしょにあったときにね?」

レン(あの森で?)「うん」

ハイ「だっこされたの」

ポニテ「ちょろーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

216

--妖精郷--

レン「しかも抱っこっていうか担ぎあげられたっていうか」

ポニテ「待って待って!! え、なに、それでハイちゃんアッシュ君のこと好きになっちゃったの?!!」

ハイ「そ、それできになってて……そしたら、さっき」

レン「さっき?」

ハイ「さっき……ね?」

もじもじしているハイちゃん。

ポニテ「さっき? さっきなに?」

ハイ「……ぎゅ」

レン「ぎゅ?」

ハイ「ぎゅうにゅう……くれたの」

レン「ちょろーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

217

--妖精郷--

レン「もはやだからなんだというレベルにゃ……言いがかりになっちゃうにゃ」

ポニテ「男の子に優しくされたことが無いとこうなっちゃうもんなの……? 男で不自由したことないポニテちゃんわかんない!!」

レン「ほざくなにゃ」

ポニテ「でもそっか……じゃあ……夜這いしかないわな!!」

レン「っ!? いきなり何段かスッ飛ばした気がするにゃよ?」

ポニテ「いいよいいよ、なんとかなるよハイちゃん可愛いし」

レン「そっか。可愛いはジャスティスだったにゃ」

ポニテ「そうそう。じゃあ今から既成事実の作り方を教えてあげるねっ!」

レン「しかし恐ろしい正義もあったものにゃ」

218

--妖精郷--

ぎしっ

アッシュ(……ん?)

ぎしっ、ぎしっ

アッシュ(誰だ?)

アッシュは部屋に入って来たものを感知し、即座に忍ばせていたナイフに手を伸ばす。

ぎしっ、ぎしっ

アッシュ(音と歩幅から察するにハイか。一体何の用だ?)

すっ

ハイはアッシュの傍に来るとしゃがんだ。

アッシュ(……ポニテとレンがうるさくて眠れないからこっちに避難してきたのか……? しかし普通男の部屋に来るか? なんとも不用心なやつだな)

ハイ「……」

219

--妖精郷--

もぞもぞも

アッシュ(……だが近くに来すぎてやしないか? 背中に当たってるぞ)

ハイ「はぁっ……はぁ」

アッシュ(耳元に口を近づけ過ぎてやしないか? か細い息が耳に当たってるぞ)

もぞもぞ

アッシュ(はぁ……これがツインテだったらどれだけ嬉しいか……)

ハイ「アッシュ……先輩」

アッシュ(何だもう寝たのか。寝言を言いだした)

ハイ「……………………しゅき」

アッシュ(え? なんだって?)

がばっ!!

220

--妖精郷--

アッシュ「うおぉ!? な、なんだなんだ!?」

ハイに襲いかかられるアッシュ。

ハイ「アッシュしぇんぱいぃ……」

ハイは肌をはだけさせてアッシュにまたがった。

アッシュ「こら! 寝ぼけてんじゃねぇぞ!! 上からどけ!!」

ハイ「アッシュしぇんぱい……しゅき。はんこどこですか?」

アッシュ「え? なんだって!?」

まさかの難聴である。

アッシュ「く……一体何しに来たんだハイ。寝に来たんじゃないのか!?」

ハイ「え、えと……牛乳の……お礼に来ました」

そう言ってハイは潤んだ瞳でアッシュを見つめている。

アッシュ「…………ちょろーーーーーーーーーーーーーーーい!!!!」

結婚したい系の女性って可愛いですよね。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

はっぴーめりーえいぷりるふーる!(無駄にテンション高い)

皆様にお知らせがございます。毎年のことなので今年もなにかエイプリル的な何かをやるのでは? と思ってくださってる方も中にはいらっしゃるかもしれませんが、今年は本当に忙しいため何も用意出来ていません。
それどころか今週の更新も無理そうです……すいません。他の所で楽しんで来てください……それではまた来週お会いしましょう!!m(__)m










ザっ

ザザー

えー、今更な感じではありますが、私このssやめます!!


というわけでこっちで書きます!!

よろしくお願いします!!!

男子高校生「え? なんだって?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1364827121/)

すいませんしょうもない嘘なうえに間に合わなくてごめんなさい。滑り込みセーフと言うことにしておいてください!!


http://sdrv.ms/10oYDcS

こんばんは。
あれはあまりお口にあいませんでしたでしょうか?

それでは投下していきます。

221

--妖精郷--

ちゅんちゅん

ハイ「……」

ハイは両手で顔を隠しながら朝の食卓についている。

ポニテ「いやぁ……昨日は楽しかったねぇ……ははっ!」

レン「うざいにゃ。ものまねやめろにゃ」

アッシュ「……」

ぱっち『なんで気まずい感じの雰囲気なのっぱ?』

ハイ「……あ、あんな姿を見られてしまうなんて……もうお嫁にいけない」

じわぁ

222

--妖精郷--

ぴっち『そうだ四人とも、精霊様がお呼びだっぴ』

ポニテ「え? 精霊? 誰それ」

レン「妖精郷を治める王様みたいなものにゃ。いや、母と言ったほうが正しいかもにゃ」

ぱっち『そうっぱ。僕達妖精を生み出した偉大なる母にして乳だっぱ。その精霊様が四人に会いたいって言ってるっぱ』

アッシュ「……なぜ俺達なんかに?」

ハイ「確かに……そもそも精霊は人間のことが嫌いだから、妖精郷を作り出して引きこもってるっていう話を聞いたことがあります」

ぴっち『それソースあるっぴ?』

ハイ「……ソースはないですけど」

ぴっち『まぁ詳しいことはぼくたちもわからないんだけどっぴ』

アッシュ「わかんねぇのかよ」

ぱっち『でも妖精が気にいった人物なら連れてきてもいいことになってるっぱ。それに会いたいなんて言ってきたのは始めてかもしれないかもっぱ』

223

--妖精郷--

アッシュ「まぁじゃあ折角だし会いにいってみるか」

ポニテ「人様の領土で勝手に暮らしちゃってるしねぇ」

レン「菓子折り持って行くかにゃ」

ハイ「レン先輩それうんこ……」

がたたっ

四人は立ちあがる。

ぴっち『じゃあ案内するっぴ。ついてきてくれっぴ』

224

--亜人保護団体本部--

どかーんどかーん

団体兵「く、くそぉ!! このままでは最上階まで突破され!!」

ざしゅぃん

団体兵「ぐああああああああああ!!」

侍「ふむ、この分だと手ごたえのある奴はもういないのでござるかね」

賭博師「さぁね。いないほうが楽でいいじゃねぇか」

符術師「かーっ! 強いやつと戦いたいって気持ちがねぇのか賭博師はよぉ!」

医師「……もう十分強いやつと戦ったんだからいいじゃないかっていう」

通信師「正直奥義うってくれなかったらゲームオーバーでしたよね」

五人は快進撃を続ける。

225

--亜人保護団体本部--

ダダダダダダ

通信師「……」

通信師はしきりに後ろに視線をやっている。

通信師「ねぇ……」

侍「わかっているでござるよ通信師。後ろの二人でござろう?」

通信師「!……さすが。気付いていたのですか。ならなぜさっさとやらないのですか?」

侍「二人とも中々機敏でござってな。一度さりげなく近づこうとしたのでござるが、速攻で離れられたでござる。あの二人を倒すにはどれだけの鬼ごっこをやらなくてはならないのかわからんでござる」

通信師「なるほど……でもずっとつけられているのも気持ちのいいものじゃないですよ?」

侍「承知。射程範囲に入ったら始末するでござる。どのみちこのまま進めば彼女らが攻めてくるのは道理」

通信師「あれ? 彼女達って、それまでわかるんですか?」

侍「おにゃのこの臭いがするの」

通信師「……うわー」


--東の王国--


東の憲兵「む!? この気配は!!」

226

--亜人保護団体本部--

ズザザザー

賭博師「……ここが最上階か? 誰もいないぞ?」



侍「いや、いるでござる!!」

ぎゃりぃいん!!

熊亜人「ぐまっ!?」

物陰に潜んでいた熊亜人の強襲を防ぐ侍。

符術師「くっあぶねぇ!!」

とっとと

熊亜人は一瞬で距離を置き五人を見回す。

熊亜人「さすがぐま。簡単にはいかないようぐまね」

227

--亜人保護団体本部--

通信師「どうやら彼が亜人保護団体の最高戦力のようですね。ですが」

賭博師「強いには強いんだろうけど、侍一人でどうにかなりそうだな」

医師「そうだね」

侍「え? ちょっ、いきなりそんな///拙者のことをあげあげしたってちんちんしか出ないでござるよ?」

ぽろり

符術師「ぎゃあああああああああああ!!」

賭博師「侍……お前よぉ」

通信師「全世界に配信してやろうか……」

侍「是非に」

医師「露出狂すぎる!!」

熊亜人「……」

228

--亜人保護団体本部--

ぱちぱちぱち

符術師「ぬ」

??「相変わらずの強さだね君達は」

拍手をしながら五人の前に現れたのは、

??改め代表「やぁ久しぶり。みんな元気そうだね」

笑顔の代表。

通信師「……お久しぶりです代表。今回は随分と派手なことをやらかしてくれましたね」

符術師「だが、もう終わりだ。素直に諦めやがれ」

ざっ

代表「おや? それはなぜだい?」

229

--亜人保護団体本部--

符術師「は?」

代表は頬をぽりぽりとかきながら余裕の表情で符術師を見ている。

符術師「……もうろくに戦えるのがいないだろうが。お前は戦闘力皆無だし、残るはそこの熊一匹だ」

熊亜人「ぐま!?」

通信師「匹カウントは亜人への差別ですよ」

侍「……」

代表「ふむ……よくわからないな。残りの戦力が熊君だけだとして、それでなぜ僕は終わりになるのかな?」

符術師「!?」

代表「例えば今ここで僕が君達全員を説き伏せる可能性とか」

通信師「残念ですが貴方のスキルへの対策はうってますよ」

代表「あ、そう? じゃあ、もっとシンプルに。例えば……熊君一人で君達全員を倒すこともありえるんじゃないかな?」

230

--亜人保護団体本部--

符術師「ふざけんじゃねぇぞ!! お前は昔から俺らをなめすぎなんだよ!! ドロー!!」

代表「なめてなんかいないよ。熊君」

符術師「来い!! デッドアイズブラッドドラゴン〈死眼の血竜〉召喚!!」

デッドラ「フランクさん!!(鳴き声)」

通信師「い、いきなり切り札ですか! 容赦ないですね符術師も」

ゾクッ!!

侍「!! い、いかん!! やめるでござる!!」

代表「さぁ熊君、それ被ってみちゃってくれ」

熊亜人は隠し持っていた王冠を被る。

デッドラ「ぎゃおー!!」

ずん!!

231

--亜人保護団体本部--

びちゃ

符術師「!? で、デッドラ!?」

デッドラは熊亜人の右腕によって貫かれていた。

デッドラ「ぎゃ、ぎゃお」

ごごごごごごご

侍「なん、でござるか」

王冠を被った熊亜人の全身を黒いもやのようなものが包んでいた。

熊亜人「が、ごあい8うぇがえwrg」

熊亜人はデッドラから腕を引き抜くと頭部を踏みつけた。

がっ!!

デッドラ「ぎゃ、ぎゃおー」

代表「大丈夫だ熊君。君ならそれを扱うことができる」

代表は笑顔で熊亜人に話しかける。

熊亜人「ふー! ふー!」

賭博師「……てめぇ、まさかそれは」

代表「君ならその、魔王の骨をね」

232

--亜人保護団体本部--

賭博師「ッ!!」

熊亜人「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

どがあああああああああああああああん!!

熊亜人の方向でフロア部屋が吹き飛びそうになる。

代表「おっとと!! ちょっと加減してくれないと困るよ熊君。まだ僕がいるんだから」

熊亜人「ぐ、GUま」

代表「じゃあ僕は先に屋上に行って船に乗ってるから。君らも終わったら来てくれ」

通信師「!! な、なんですかこれ!!」

熊亜人「グンマー!!」

ゴゴゴゴゴゴ

黒い鎧をつけた熊亜人がそこにいた。

賭博師「……こいつ、昔みたことがあるぞ。これは、魔王化か?」

233

--亜人保護団体本部--

賭博師「全員気を引き締めろ!! こいつはさっきと状況が変わったぜ!!」

侍「承知でござる!!」

五人は熊人からの攻撃に備えて戦闘体勢にうつる。

熊亜人「が、GAぁああ!!」

ドッ!!

侍「!!」

ギィアアン!!!!

猛烈な突撃。侍はなんとか対応するが、

どがぁっ!!

侍「ッッッ!!!!」

そのまま塔の外に放り出されてしまう。

234

--亜人保護団体本部--

符術師「しま」

追撃。

ドッ、ガっ、ずがっ、どふっ

尻尾のような黒いもやで四人はそれぞれ吹き飛ばされてしまう。

符術師「がはっ!!」

賭博師「ッ!!」

通信師「きゃぁあ!!」

医師「あぐっ!!」

どがしゃぁああん!!

熊亜人「不ー! ふー!」

235

--亜人保護団体本部--

侍「ぐ、く……」

侍は刀を塔の壁に突き刺すことでどうにか落下せずにたえていた。

侍(やられた……いつのまに魔王の骨なんてものを手に入れていたのか。これでは)

ぐるん

侍は刀に乗り、体勢を立て直すと再び元の階へ。

どすっ

通信師「……え」

侍「」

復帰した侍の眼に映ったものは……

通信師「う、あ」

どぽ

護衛姉妹の刀によって胸部を貫かれた通信師だった。

236

--亜人保護団体本部--

護衛姉「耳を潰せというミッション」

護衛妹「コンプリート」

ずるぅり

通信師「」

どさ

符術師「」

一同は言葉を失う。
何せ現在、回復魔法と蘇生魔法は、

賭博師「医師いいいい!! 早く治療しろおおおお!!!」

医師「わかってます!!」

封じられているのだから。

237

--亜人保護団体本部--

侍「賭博師は運補正を!! 符術師は医療道具を出すでござる!!」

だッ!!

侍は刀を構えて駆けだした。

護衛姉「!? ひっ」

護衛妹「こ、怖いです!!」

ぉおん

熊亜人「」

どぎいいいいいいいいいいいいん!!!!

侍の全力を込めた一撃を間に入った熊亜人が爪一本で受け止める。

侍(治療の間だけでも!! この三人を止めねば!!)

ギィン!! ギギッ!! ガギィン!!

238

--亜人保護団体本部--

通信師「げほっごほっ」

どくどくどくどく

医師(!! こ、これでは)

傷穴から大量に出血している通信師を見て医師の手が震える。

賭博師「医師! 諦めるな!! 俺の運補正で多少のことなら奇跡を起こせる!!」

医師「っぐ!! は、はい!!」

通信師「い、いいですよ、もう」

符術師「!? つ、通信師ふざけたこと言ってんじゃ」

通信師「私だって、初めて、死ぬわけじゃないんですよ? この感覚は、ダメなやつです」

医師「」

ギィン!! ガキィン!!

239

--亜人保護団体本部--

通信師「私より、任務のほうが、ごほっ!!……た、大切、なんです。だから……もう行ってください」

侍「うおおおおおおおおおおおお!!」

ガガガガ!!

護衛姉「こ、この人!! 眼も見えないのに」

護衛妹「私ら三人とやりあえてる!?」

しかし互角というわけではなく、一合打ち合う度に侍は大きく深い傷をつけられている。

ズシャッ!!

通信師「ほら……終わった私なんかに構ってたら、侍まで……げほげほっ!!」

賭博師「だ、だからって」

通信師「……バカばっかですね」

通信師は力なくほほ笑んだあと、

どす

隠し持っていたナイフで再び自分の胸を刺した。

240

--亜人保護団体本部--

賭博師「!?」

通信師「本当、バカでやさしいんだから……区切りが、つけられないなら、足手まといになるくらいな、ら」

通信師は自らの手で自分に止めをさした。

     後は、まかせました

護衛姉「くっ!! 任務は成功しました!! もう下がりますよ!! 船がでちゃいます!!」

護衛妹「熊亜人さん!! 長時間の使用は危険です!!」

護衛姉妹が熊亜人からむりやり王冠を外した。

バッ!!

熊亜人「ぐ……ぬ」

侍「はぁ、はぁ……」

侍はすでに追うこともできず、振り返ることもできなかった。

侍「はぁ……はぁ……ッ」



--亜人保護団体本部、屋上--

代表「やれやれやっときましたか。遅いですよ」

熊亜人「す、すいませんぐま」

代表「……いえ、よくやってくれました。それではいきましょう。我らの宿敵を倒しに」

三人が代表とともに船に乗り込むと、それは空へととびだった。

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

遅くなりました……それでは投下していきいます

241

--飛行船--

熊亜人「はっはっはっ!」

護衛姉「だ、大丈夫」

護衛妹「ですか?」

熊亜人「これは思った以上にきついぐま……何度も使える手じゃないぐま」

熊亜人は護衛姉妹から水とタオルを渡される。

代表「うーん。各国の三強と比べて遜色の無い熊君でもきついか……困ったな。後一回いけるかい?」

熊亜人「無論ですぐま!! 我らは、そのために来たんですぐま!!」

護衛姉「こくっ」

護衛妹「こくっ」

代表「……そうだね。じゃあ今は休んでもらうよ。竜骸の渓谷まで十時間はかかるからね」

242

--草原の宿--

賭博師「24時間だ。24時間以内にこの魔法陣を解除して通信師を蘇生させる」

侍「あぁそれしかないでござるからな」

符術師「お前ら手当は終わったな? アイテム持てるだけ持っていくぞ」

ザン!

医師「……え」

賭博師と侍と符術師はドアを開けて部屋から出て行こうとする。

医師「な、何を言ってるんです……? まさかまた彼らのところへ……?」

医師は振り向かないまま問いかける。

賭博師「あったりまえだろうが。このまま終わらせられるかっての。通信師はなんとしても生き返らせる」

医師「場所も……わからないのにですか?」

符術師「場所はわかるぞ。あの姉妹に札をつけておいたからな。転移札もつけてるが……射程距離外だろうなぁ」

医師「……さっきの戦闘力を見るに、今の私達だけではとても敵いませんよ」

侍「もう一回やってみなきゃわからないでござるよ」

医師「っ……一回でわかるでしょ。貴方達はバカですか!」

賭博師、侍、符術師「「「あん、バカだよ」」」

243

--草原の宿--

医師は静かに立ち上がる。

医師「……そんなことは許しません。むざむざ死ににいくような行為は。ちゃんと国に戻って援軍を申請してからでなければ行かせません」

賭博師「医師、通信師の体任せたぞ」

符術師「通信札渡しとく。まぁ魔法陣解除出来たらこっちでもわかると思うけど」

医師「や、止めて下さい!!」

突然の医師の大声に三人は眼を丸くする。

医師「すぐに解除できる保証なんて無いんですよ……それなのに……今貴方達まで無理をして死なれるのは嫌なんですよ」

侍「……」

符術師「……時間の無駄だ。行くぞお前ら」

符術師は二人を促して部屋の外へ。

医師「ッ!! ま」

符術師「俺は通信師がいなくなる方のが嫌だ」

244

--草原の宿--

医師「ッ……」

かつんかつんかつん

ギィ

外に出た三人。

侍「しかしそうは行ってもどうやって追いつくでござるか」

符術師「む……確かに空飛ぶ船に追いつくのは俺たちじゃ無理だな」

賭博師「……え? 何か考えがあってのあの啖呵だったんじゃないの?」

侍「拙者もてっきり符術師がなんかの手段で運んでくれるものとばかり……」

符術師「ば、ばかやろう!! いくら俺だからって何でも出来ると思うなよ!!」

その時、

ぶわぁ

風が吹いた。

?「事情は聞いてるなの。私が運んであげようかなの?」

245

--精霊宮--

ぱっち『精霊様、人間達を連れて来ましたっぱ』

ぴっち『我らの友達ですっぴ』

土の精霊「もぐ」

妖精郷の地下世界、そこには巨大なモグラがいた。

アッシュ「でけぇ……」

ポニテ「おっきぃもぐらー!!」

レン「精霊相手に随分な態度にゃ。まぁもう相変わらずだけど」

ハイ「精霊様……初めてみました」

土の精霊「君達が魔王討伐パーティもぐ?」

アッシュ「……今は俺達どうなんだ?」

横にいるポニテに話をふるアッシュ。

ポニテ「今? 今は……レンちゃん?」

レンに話をふるポニテ。

レン「ツインテ奪還パーティにゃ」

246

--精霊宮--

ハイ「……」

土の精霊「あれ? 魔王討伐パーティって聞いてたけど違うもぐ?」

ぴっち『あ、あれぇ? 魔王を倒すために旅をしてた勇者パーティじゃなかったでしたっけぴ?』

アッシュ「……もうこの世代の勇者は他にいるからな」

ポニテ「ま、ツインテちゃんを取り戻したらまた勇者候補パーティに戻るつもりだけどね!」

レン「もちろんにゃ。魔王討伐があくまで目標にゃ」

ハイ「え!? 私聞いてないです!?」

土の精霊「ふむ……」

土の精霊はじろじろと四人を見ている。

土の精霊「そこそこ才能はありそうもぐね」

アッシュ「そこそことはなんだそこそことは。たっぷりあるわ!」

247

--精霊宮--

土の精霊「大抵あんまないやつほど言うことでかいもぐ」

アッシュ「なんだと!?」

ぴっち『ささささっきから無礼っぴよ!!』

ぱっち『精霊様はぱっち達の偉大なる王なんだっぱよ!?』

ポニテ「ねぇー、で、なんの用なのー? もうお腹空いちゃったんだけどー」

土の精霊「……」

土の精霊はポニテをまじまじと見ている。

ポニテ「え? どうした、の?」

土の精霊「ふぅん……なるほど。君がそうなのか」

ポニテ「え?」

248

--精霊宮--

ポニテ「何? なんかいやらしい目しちゃって。えっち」

土の精霊「そんな目してないもぐ!! 人間にそんな感情抱かないもぐ!!」

じだんだじだんだ

アッシュ「もぐもぐもぐもぐうるせぇ奴だな。何か食べながら喋るんじゃねぇ」

土の精霊「これは語尾だもぐ!!」

ぴっち『す、すげぇ……世界を管理する精霊の一柱相手にこんな……』

ぱっち『ばかなのかすごいのか……』

レン「ばかにゃ。まちがいなく」

ハイ(恐ろしいですね……この人達は)

249

--精霊宮--

土の精霊「まぁ……じゃいいや、ほら、そこの土属性の子。ちょっとこっちきてもぐ」

レン「? レンのことかにゃ?」

とてとて

土の精霊「確かにちょっとは見込みあるからもしかしたら魔王討伐も夢じゃないかももぐ。力貸してあげるもぐ」

レン「え」

土の精霊のひげがレンの頭を軽く叩く。

ぽわぁん

ぴっち『!? あ、あれは!!』

ぱっち『精霊の祝福!? そんな大層なものこんなやつらにはもったいないっぱ!!』

アッシュ「さっきから聞こえてんぞ妖精ども」

ポニテ「それは遠まわしに食べて♪って私に言ってるんだよね」

ぴっち、ぱっち『『ひっ!?』』

250

--精霊宮--

ぼわぁん

レン「これ、は」

土の精霊「土属性の魔法を強化してあげたもぐ。具体的に言うと、土属性魔法の魔力消費量を五分の一、威力精度アップ、更に君の大地参照を強化してあげたモグ」

レン「!?」

アッシュ「え。またあいつだけパワーアップ? やだー」

ポニテ「レンちゃんばっかりずるいよねー」

レン「うっせ」

ハイ(あれだけ強いのにまたパワーアップとかどれだけ化物に……)

土の精霊「僕もあいつには困ってるんだもぐ。だから……」

ハイ(……? あいつ?)

ピシッ

アッシュ「」

ポニテ「」

レン「」

土の精霊「ぬ……この気配は」

251

--妖精郷--

ばりっばりばりばり

フランケン「お、おで」

カトブレパス「やれやれ。中々硬い結界でしたね。随分と骨が折れました。大丈夫ですかフランケン君」

フランケン「だ、だいじょうぶ」

ビッ

親指を立てるフランケン。

???「……」

その後ろに控えるは魔王軍の軍勢だった。

カトブレパス「ここの進行を私達に任せてくれた魔王勇者さんのためにも失敗はできません。わかってますね? 西の女王。いや、ケンタウロスさん?」

???改めケンタウロス「……御意」

252

--精霊宮--

ハイ「? いきなりどうしたんですか皆さん?」

アッシュ「何かが無理やり妖精郷に入ってきやがった」

ぴっち『え!? そんなのありえないっぴ!! 妖精郷の結界はそんじょそこらの結界とはわけが違うのだっぴ!!』

ぱっち『そうっぱ! 土の精霊様自ら結界を張ってるのだっぱ!! 最高の防御力を誇る土の精霊様の結界を突破するなんて無理だっぱ!!』

土の精霊「つまりそんじょそこらのくせものじゃないってこともぐ」

ハイ「!?」

土の精霊「人間達よ。頼みがあるもぐ」

アッシュ「ふん。わかってる。そんくらいお安いご用だ」

ポニテ「かくまってくれた恩もあるしねー!」

レン「よし、行くにゃよ。敵はかなりの大所帯、油断はできないにゃ」

ざっ

ハイ(私の戦う番きちゃうのかな……)

253

--妖精郷、川--

ザザザザザ

ゴブリン「ぐおおおおおおおおおおお!!」

妖精『も、モンスター達が攻めて来たっぴょー!!』

ドカーン!!どどーん!!

わああああああああ!!!!

ぺっち『な、なんで、なんで魔王軍が妖精郷に入ってこれるかっぺ!!』

わぁああああああああああ!!

濁流のように迫るモンスター達。

ぽっち『お、おしまいだっぽ……妖精郷はおしまいだっぽ!!』

トロール「あごごごがああああ!!」

モンスター達は妖精郷を踏み荒らし、蹂躙する。

254

--妖精郷、川--

しゃん

トロール「」

そこに一筋の閃光が舞い降りる。

ぶしゃあああああああああああああああ

トロール「があああああああああああああああ!!」

ズズーン

血の海に沈むトロール。切り裂いたのは

アッシュ「ふん。雑魚どもめ。数だけうようよいやがって」

ぽっち『!!?? お、お前は人間!?』

ぺっち『ぼ、僕達を助けてくれるっぺ!?』

アッシュ「……ただたんに通り道なだけだ。じゃまだ、下がってろ」

アッシュはマントを翻す。

ぺっち『か、かっけぇ!!』

じゃり

カトブレパス「まさか……人間がこんな所に……」

アッシュ(!……こいつ……魔力がケタ違いだ……これが魔族というやつか?)

255

--妖精郷、平地--

どどーん!!

フランケン「お、おでえええええええええええ!!」

フランケンは地面を抉るほどのパワーで辺りを破壊してまわる。

どかどかどか!!

フランケンが走り回るだけで世界が歪む。

どどどどどどどど!!

ぴえっち『ひ、ひええええええ!? こ、こっちにくるっぴえ!? 塔が倒されちゃうっぴぇ!!』

どどどどどどどど!!

しゃっ!

フランケン「!?」

がぎいいいいいん!!

風のように現れたポニテは、塔とフランケンの間に割って入り、その重い突撃を受け止める。

ポニテ「ッ!! すっごいパワー!! なんだか懐かしいかんっ」

フランケン「」

ポニテ「じーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

そしてブン投げた。

フランケン「お、おで!?」

256

--妖精郷、草原--

巨大蛇「きしゃああああああ」

巨大トマト「とまああああああ」

巨大鳥「ぴよおおおおおおお」

レン「……」

レンの眼前には巨大なモンスターが三体。

レン「……ちぇ。折角強くなったから力を試してみたかったのに……ただのでかい雑魚かにゃ」

巨大蛇「雑魚? 雑魚だとぉ!?」

巨大トマト「我らはモンスター数百体からなる合成モンスター」

巨大鳥「魔族に最も近い」

どぱっ!

巨大鳥の顔面が吹き飛んだ。

レン「よわっちい……たった数百だからなんだというのにゃ」

257

--妖精郷、砂地--

ハイ「早く逃げてくださいねー! 戦闘に巻き込まれる前に逃げてくださいー!」

ハイは妖精達を先導している。

ハイ(いやぁでもこういう役割で本当よかったです。いきなり魔族なんかと戦闘になったら)

どおおおおおおおおおおおおおおおんん!!

ハイ「……はい?」

爆炎。世界が一瞬で赤く染まる。

ゴゴゴゴゴゴゴ

ケンタウロス「やれやれ。私様がこんな下っぱみたいなことをしなきゃならないとはね」

かぽっかぽっ

ユニコーン「ひひん!」

ハイ「あ、あぁ」

かぽっかぽっ

上半身は人、下半身は馬、そして右腕はガトリングガン……そんな魔融合な生物がいた。

258

--妖精郷、砂地--

ハイ「な、ななな!?」

ケンタウロス「人間がなんでこんなところにいるんだ? まぁ丁度いい、精霊の居場所を教えてもらおうか?」

その女はそう言って、

バルルルルルルル!!

ガトリングガンを撃ち放つ。

ハイ「ひぃ!?」

チュンチュンチュン!!

ハイの周囲を黒い弾丸が穴をあけていく。

しゅううぅうう

ハイ「こ、殺す気じゃないですかぁ。居場所を聞くんじゃないんですかぁ?」

がたがたがたがた

ケンタウロス「早く答えないからだ。ほら、生きていたいのならさっさと答えるがいい」

バルルルルル!!

259

--妖精郷、砂地--

ハイ「ひいいい!!」

だだだだだだ

ハイは頭を抱えて逃げ惑う。

ケンタウロス「ん? ははは、なんだ、わざわざ道案内してくれるのか?」

バルルルルル!!

ハイ「ひー! ひー!」

ユニコーン「ひひん!!」

ハイ「え!? む、むりに決まってるじゃないですかぁ! あんなのに勝てませんよ!!」

ケンタウロス「はっはっはっ、逃げ惑え人間!」

バルルルルル!!

260

--妖精郷、荒れ地--

ハイ「……」

ケンタウロス「ジグザグに走りやがって……ちゃんと私様を案内してるのか?」

バスッ

ハイ「」

ガトリングの射線がハイの左足をなぞる。それだけでハイの左足が吹き飛んだ。

ハイ「あ、ああああああああああああ!!」

どざざざざー

足を抱きしめ地面を転がるハイ。

ユニコーン「ひひーん!」

かぽっかぽっ

ケンタウロス「ほらまだ立てるだろ? 立ち上がれそして私様を精霊の元に導け」

ハイ「……」

がたがたがた

ケンタウロス「……ち。この程度で震えるのかい? 軟弱な女よ!」

ケンタウロスのガトリングがハイの顔面に迫る。

ハイ「……なんちゃって」

ケンタウロス「!?」

ばっ

ハイの衣装が瞬時に変わる。巨大な盾を持った鎧姿に。

ハイ「……ここで、そんなに走れ回れますか?」

今期は進撃の巨人やはたらく魔王様をチェックしていきたいなんておもってます。(見れるのか?)

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

こんばんは!

はたらく魔王さまおもしれぇ……それでは早速投下していきますー。

261

--妖精郷、川--

アッシュ「……」

カトブレパス「ん……中々の実力者のようですね。貴方達は相手にしなくていいです。精霊を見つけに行きなさい」

トロール「あぎゅおおお」

ドスンドスン

アッシュ「……」

カトブレパスの指示通り、アッシュの横を通り過ぎて行くモンスター達。

アッシュ「……はいそうですかと通すと思っているのか!」

びしっ

アッシュ「!?」

カトブレパス「……ふふ」

ドスンドスン

アッシュはぴくりとも動かなかった。そして目の前のカトブレパスから一瞬たりとも目を離すことができない。

アッシュ(ぐ……なんだ……頭の中で血の臭いがしやがる)

巨大な眼球を持つ魔族、カトブレパス。
ただ立っているだけなのに不穏な空気を発していた。

262

--妖精郷、川--

アッシュ(ッ、敵を束縛する能力か?……ぐぐぐぐっ!!)

シャリン

アッシュは全身の力を振り絞りナイフを抜く。

カトブレパス「ん……?」

ずぱ!!

カトブレパス「」

そして次の瞬間にアッシュのナイフはカトブレパスの喉を切り裂いていた。
一瞬の斬撃。
またたく間に距離を縮め反応する間もなく切り捨てる暗殺者の刃。

アッシュ「……ッ!?」

しかしカトブレパスの傷口から血は……


カトブレパス「タイミングを破壊するスキル、ですか? 怖い怖い。用心していなければ大ダメージ必須ですね」

アッシュ「なに!?」

切り裂いたと思っていたアッシュのナイフは空を切っていた。

263

--妖精郷、川--

びきびき

カトブレパス「ふふふ。苦しいかな?」

アッシュ「ぐ……」

アッシュの体が震える。

アッシュ(ぐ……完全に、動けない!?)

カトブレパス「生前僕は魔力を操作するのが得意だったんだ」

ず、ずず

カトブレパスはゆっくりとアッシュに近づいてくる。

カトブレパス「遠距離から相手の魔力にアクセスして、コントロールを不能にさせる技術。これを攻撃に転用したのが魔力暴発。非力で回復型の僕が持つ唯一の攻撃手段だったんだ」

アッシュ「……」

ギシッ

アッシュ(幻覚どころじゃない……体が本当に動かせないっ!)

カトブレパス「無駄だよ少年。僕の眼に見られてしまった時点で、君の体中の魔力細胞は僕の支配下にある。体の内側から魔力で体をがんじがらめにしているんだ」

ず、ずず

アッシュ「……」

264

--妖精郷、川--

カトブレパス「僕はいたぶったりする趣味はないんだ。だから苦しむ間もなく殺してあげよう」

アッシュ「……ふ、ふふははははは」

カトブレパス「ん? 気でもふれたのかい? 体が動かないのは確かにつらいよね」

アッシュ「はははは……いやそういうんじゃないさ。俺がお前の相手でよかった。他の奴なら即ゲームオーバーだったろうよ」

アッシュは不敵に笑う。

カトブレパス「なんだって……? その状態から一体何が出来るっていうんですか……もはや指一本動かせないというのに」

アッシュ(確かに俺の体はもう動かせないが……お前がまだ見ていない俺の右目は)

ぐるん

アッシュの右目が裏返る。

アッシュ(俺のものじゃない)「スキル、人殺し!」

カトブレパス「!? そのスキルは受付さんの!?」

アッシュ「更に、スキル、反転」

ぎゅりり

カトブレパス「なっ!?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴ

カトブレパスはこのとき初めて、アッシュから恐怖を感じた。

アッシュ「魔殺モード」

265

--妖精郷、川--

みし、びき、びききっ!!

カトブレパス「な、なんだこれは……い、一体!?」

アッシュ「あああああああああああああああああああ!!」

ばりぃいいいん!!

アッシュはカトブレパスの呪縛を破る。

カトブレパス「まさか……視線を斬り裂いたのですか!?」

アッシュ「……」

ひゅんひゅん

軽やかにナイフを回すアッシュ。

アッシュ「今の俺は、どんな魔族にも負けねぇ」

右目は赤く燃えている。

カトブレパス(たいした使い手じゃないと思ったら!)「スキル、目光線!」

どびいいいいいいいいいいいいい!!

アッシュ「!」

266

--妖精郷、平地--

ガギィイイイン!!

ポニテ「ふっ!! ……このパワー……西の王国の墓地で戦った時に似てる……!」

ギギィン!!

フランケン「お、おで!!」

ポニテの剣は硬いフランケンの肌に弾かれ、ポニテは空中に投げ出される。

フランケン「つ、土属性攻撃力上昇魔法、レベル4!!」

ビキキっ!!

フランケンの右腕に石や宝石が纏わりつく。

ポニテ「っ!」

フランケン「す、スキル、正拳!!」

ドゴオオオオオオオオオ!!

避けようの無い攻撃がポニテをとらえた。

267

--妖精郷、平地--

ドガっ、ごっ、ドドーン!!

吹き飛ばされて地面を転がるポニテ。

しゅぅううう

ポニテ「い、いててー……つ、つえー!!」

しかしポニテは喜んで立ち上がる。

フランケン「! た、耐えた?」

防御に使った剣は折れてしまっていたのでポニテはそれに魔力を通す。

ポニテ「武器生成魔法、ブラッドセイバー!!」

ブォン!!

赤く光る剣が二振り出現する。

フランケン「す、スキル、空拳!!」

ぼっ!!

離れた距離から放たれた一撃を

ウォン!! どびゃあああああああ!!

ポニテの剣が弾く。

268

--妖精郷、平地--

ポニテ「はあああああああ!!」

ダダダダダダ!!

フランケンに向かって走るポニテ。それをフランケンはスキルで迎撃する。

フランケン「す、スキル、振動波!!」

ドォン!!

フランケンは地面を全力で叩く。するとその振動は地面を揺らす。

ビビビビビ!!

ポニテ(! これは)

ダッ!!

振動が伝わる前にポニテは空中へと逃げる。

フランケン「! か、かわした!?」

フランケンは拳を引き迎撃態勢に移る。

269

--妖精郷、平地--

が、フランケンの動きよりもポニテの攻撃の方が早かった。

ポニテ「はぁああ!!」

ウォン、オォン!!

フランケン「ぐっ!」

ドッ!!

ポニテの剣はフランケンの腕の強化を斬り裂いた。

フランケン「ッ……!」

ポニテ(いける! この剣なら切り裂ける!!)

オォン、ォォン!!

赤い閃光がフランケンを攻める。

フランケン「ぬ、ぐ!」

ポニテの攻撃を防御するも削られるフランケン。

フランケン「ぬ、ぬうぅ」

ポニテ「よし! これで!」

その時フランケンの体を緑色の魔力が覆う。

フランケン「身体強化、獣化、獅子!」

270

--妖精郷、草原--

レン「……」

巨大蛇「」

巨大トマト「」

巨大鳥「」

ちーん

レン「……えー。まだ私やりたいことあったのにー」

271

--妖精郷、荒れ地--

ガガガガ!! キキキキン!!

ケンタウロス「ちっ、あの盾めんどくせぇなぁ!」

ハイ「……」

ガガガガ!! キキキキン!!

ハイ(銃連射されちゃったら、動けなくしてもあんま関係ない、ですね)

ダンっ!!

ケンタウロスは地面を踏みしめる。

ケンタウロス「ちっ……地面が荒れてたって……水属性攻撃魔法、レベル4!!」

ハイ「あっ!」

どばあああああああああああああああああああああああああああああ!!

ケンタウロスが左腕に持ったランスの先から、水流が放たれる。

ハイ「ぶっ!」

ばばばああああああ!!

ハイ「ごぼっごぼぼ!!」(こんなの盾じゃ防げないです! このままじゃ流されちゃう!!)

272

--妖精郷、荒れ地--

ばしゃああ、ばしゃしゃっ!!

ユニコーン「ひひん!!」

ばちゃばちゃ!!

ユニコーンはだいぶ流されているハイの元に駆け寄った。

ハイ「!! そうでした、ユニちゃん力を貸してもらいます!!」

ユニコーン「ひひん!!」

ハイの手がユニコーンの頭部に触れると眩いばかりの魔力の光が。

ぱあああああ!!

ケンタウロス「! なに……?」

ゴゴゴゴゴ

ばっしゃあああああああああああああああああああ!!

ケンタウロス「!?」

ケンタウロスの放った水が全て逆流する。

273

--妖精郷、浅瀬--

ケンタウロス「がはっ!? な、なんだこりゃ!?」

どどど

ケンタウロス(こっちの攻撃が、跳ね返されてる!……!?)

ケンタウロスが見たものは、

ユニコーン『ひひん』

ハイ「よぉーしいいですよぉ。そのまま押し流しちゃってください!」

盾に変形したユニコーンの姿だった。

ケンタウロス(幻獣は……変化できるのか? ぐっ!!)

ばっしゃあああああんん!!

ハイ「やりました! ユニちゃんシールドで跳ね返せないものなんてないですからね!」

274

--妖精郷、浅瀬--

ぱしゃっ

ハイ「はっ!」

ゴゴゴゴゴ

ケンタウロス「……」

ハイ(あ、あれ〜? ご存命でいらっしゃる……?)

ケンタウロス「めんどくさいな……お前。吹き飛ばしてやった足もなぜかくっついてるし」

ハイ「あ、あははは」

ケンタウロス「腑抜けた顔しやがって……抹殺してやるよ!! スキル、地形効果無効」

ぶぅん

ケンタウロスの体を魔力が包み込む。

ハイ「!」

だからっだからっだからっ!!

そしてランスを構えて突進する。

ハイ「! ユニちゃん!! ルートチェンジ!!」

ユニコーン『ひひん!!』

275

--妖精郷、浅瀬--

ユニコーンは元の姿に戻り、ハイは衣装が変わる。

ザンッ!!

ケンタウロス「!」

ハイ「ルートチェンジ、レベル2、騎士!!」

ハイが背中から抜き取った傘はランスとなる。

ハイ「ユニちゃん、足場は悪いけど、がんばってください。最善の道を探れる貴方ならきっと大丈夫なはずです!」

ユニコーン「ひひん!」

だからっだからっだからっ!!

ケンタウロス「……けったいな技を使いやがって!!」

ケンタウロスは全てを踏み砕く力強い走りで悪路をものともしない。

ハイ「……ユニちゃん、GO−です!!」

ユニコーン「ひひーん!!」

だからっだからっだからっだからっ!!!!

ハイとユニコーン、そしてケンタウロスは一直線に駆け抜ける。そして、

ガギィイイイン!!

交差し火花を散らす。

276

--妖精郷、荒れ地--

ハイ「きゃあっ!!」

ケンタウロス「ぐあ!!」

ざざ、ざざざざーー!!

お互いの攻撃の衝撃で弾かれる二人と一匹。

ハイ「なんて強烈な打ち込み……ユニちゃん大丈夫ですか!?」

ユニコーン「ひひん!!」

ケンタウロス「ぐ……この威力……冗談で馬に騎乗してるわけじゃないみたい、ねっ!!」

だからっだからっ!!

一回転して再びハイに向かうケンタウロス。

ハイ「ユニちゃん!」

ケンタウロス「今度はコレも使うぜ!」

がちゃ、バルルルルルッ!!

ハイ「!」

277

--妖精郷、荒れ地--

ぎぎぎきききん!!

ハイ「くっ!」(騎士の時は鎧もあるし左手の盾もあるけどこれじゃ心もとないし、なにより)

だからっだからっ!!

ハイ(攻撃に集中できない!!)

ケンタウロス「はぁあああああああああ!!」

ハイ「っ!!」

ガギィンン!!

ケンタウロスの強烈な突き刺しは、

ユニコーン「ひひーん!!」

ハイの盾と鎧をたやすく貫き、ハイをユニコーンの上から弾き飛ばした。

ハイ「ご、ごぶっ!」

278

--妖精郷、荒れ地--

ケンタウロス(胸にどでかい穴ぁ空けた。致命傷間違いなしだ!)

だからっ

ケンタウロスは走りながら後ろを振り向いた。

ハイ「」

きりもみ回転しながら血を撒き散らすハイが宙を漂う。
だが、

ハイ「ッ」

ケンタウロス「!?」

ハイの眼は死んでいなかった。

ハイ「じょう、けん達成! レベルアップ」

ユニコーンは何を言われるでもなく変形を始める。

ぴしゅあああ

279

--妖精郷、荒れ地--

ケンタウロス「なんッ」

ハイ「レベル3、銃士!!」

パァーン!

地面に落ちようとしているハイは一瞬で衣装を変え、巨大な大砲に姿を変えたユニコーンはハイの手元に飛び込んだ。

がしぃっん!!

ハイ「食らってください、ユニコーンバスター!!」

ドッ

ケンタウロス「だとぉおお!?」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!

280

--妖精郷--

ズズウゥウン……

ぴっち『! 何かすごい魔力が衝突したっぴ……アッシュぴか?』

ぱっち『これだけのパワーをだせるのはきっとポニテに間違いないっぱ!』



--精霊宮--

ズズウゥウン……

土の精霊「お、おぉ。揺れる揺れるもぐ。魔法攻撃に換算すれば対単体レベル4相当……あの白い猫ちゃんの攻撃もぐか?」



--妖精郷、荒れ地--

しゅううううううう

ケンタウロス「」

ハイ「はっ、はっ、はっ……」

ぺたん

ハイ「はっ、はっ……」

動かなくなったケンタウロス。

ハイ「……勝利っ、ですっ! ぶい!」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m



カトブレパス「あ、大学で同じゼミだった田中君? あぁ久しぶりだねぇ、元気にしてた? うん、うんうん。そっかぁ相変わらず大変みたいだね。実家は農家なんだっけ? あ、そっかぁ……え? 今なにやってるのかって? えっと……今は魔族やってます」


次回 カトブレパス同期に飲みに誘われるの巻

連絡もせず遅くなってしまってごめんなさい! 反省しています!



……皆さんはGW楽しめましたか? 私はGW中にぶっ倒れるのがもはや恒例行事となっています……。

それでは投下していきます!!

281

--妖精郷、荒れ地--

しゅぅぅ……

ハイ「けれど今ので全魔力を出し尽くしてしまいました。皆さんの援護には向かえませんね……」

ハイは横たわるケンタウロスを見る。

ハイ「……いきなり襲ってきたから対応したけれど、これ、魔族です、よね?」

ケンタウロス「……まさか私様がこんな小娘に負けるとは」

ハイ「!?」

驚き跳ねるハイ。ケンタウロスにはまだ意識があった。

ケンタウロス「ふん……もう何も出来ないわ。心配しなくても私様の負けよ」

ハイ「え」

ケンタウロス「この分じゃ……三本角のあいつらも」

ケンタウロスは起き上がろうとするのだが、

ぶじゅぅ

ハイ「ひっ!?」

体中が腐り始めていた。

282

--妖精郷、荒れ地--

ケンタウロス「例の副作用ってやつか……人造魔族っていうのも大したことないわね」

ケンタウロスは冷静に崩れゆく自分の体を観察していた。

ハイ「な、ななななな!!」

ケンタウロス「……けれどそのおかげで、最後の最後で自我を取り戻せたわ」

ぼたっ

ケンタウロスは腕が腐り落ちたというのに、つき物でもとれたかのような表情をする。

ハイ「っ……」

じゅるじゅる

ケンタウロス「ねぇ小娘、貴女どこの国出身?」

ハイ「……わ、わかりません」

ケンタウロス「……」

ハイ「……」

283

--妖精郷、荒れ地--

ケンタウロス「ごまかしてる顔じゃないわね。そう……じゃあいいわ、貴女に覚えて欲しいことがある」

ハイ「……え?」

ケンタウロス「これからの戦い、絶対に死んじゃだめよ」

ハイ「? あ、はい」

ケンタウロス「それと、東の王国を信用しちゃだ、め」

ぶしゅぅうううう

ハイ「んっ!」

強烈な腐臭とともにケンタウロスは消滅した。

ハイ「……一体……どういう?」

284

--妖精郷、川--

きゅいん、きゅいきゅいん!!

カトブレパスは目からビームを放つも、その全てをアッシュにかわされてしまう。

カトブレパス(くっ! この子速い!!)

しゅんしゅんしゅんしゅん!!

地面を蹴るたびに加速するアッシュ。

アッシュ(いけるっ!! 俺は魔族相手にも戦える!!)

チギィアアアアアン!!

アッシュ「!」

猛攻を潜り抜けカトブレパスにナイフを振るったアッシュだったが、そのナイフは空中で弾かれる。

アッシュ(っ魔力障壁か!)

カトブレパス「止まったね? 魔力暴発、レベル3」

バグオオオン!!!!

285

--妖精郷、川--

ドシャッ、ザザー!

突然カトブレパスの周囲が大爆発。

アッシュ「、っぐ……」

ぼた、ぼたたっ

カトブレパス「さすがの超反応ですね。回避と防御でダメージを最小限にしている……君を見ていると盗……ウェンディゴ君を見ているようですよ」

アッシュは左腕が出血していた。

アッシュ(ち……俺の魔力に干渉出来ないとわかるやいなや、自分の魔力障壁を爆発させやがった。しかもあの距離で魔力暴発だと? 普通なら自分にも被害が出るだろうよ)

しゅぅう……

アッシュ(障壁を二重に張ってやがったのか)

286

--妖精郷、川--

きゅいんきゅーん!!

アッシュ「っ!」

照射されるビームと前転でそれを回避するアッシュ。

カトブレパス「貴方の力はかなりの脅威です。が、僕ならなんとかなりそうですね」

びぃいーー!きゅいーん!

アッシュ(硬い上に高威力の魔力攻撃……とんだ移動砲台だな!)

ぼたっぼたたっ

アッシュは大量の血を地面にたらしながら逃げている。

カトブレパス「目光線で捉えられないのは少し困りました……なら」

びぃいーーん!!

アッシュはその攻

どぐぉおおん!!

アッシュ「!? なっ」

紙一重で避けたはずのビームが爆発する。

287

--妖精郷、川--

ボチャーン!

アッシュは吹き飛ばされて川に着水。

カトブレパス「僕は魔力暴発の使い手です。僕の放つ魔力攻撃は全て警戒しなくちゃいけないですよ?」

ゴゴゴゴゴ

アッシュ「ぐ……」

ばしゃっ

川の中で立ち上がるアッシュ。

びぃーーん!!

そして休むまもなく放たれるビーム。

どごおおおおん!!

288

--妖精郷、川--

アッシュ「がはっ!!」

ズザザー!!

対岸に着地するアッシュ。

アッシュ「……うぐ」

カトブレパス「防御は紙ですね。そんなところまでウェンディゴ君そっくりだ」

ぽたっ

アッシュ(幻覚などの補助魔法に加え、二重の防御壁(そのうち外側の障壁は魔力暴発に使うことも出来る)、高威力高速の魔力攻撃(好きなタイミングで爆発させることが可能)……こいつは……強すぎる)

カトブレパス「生前は裏方に徹していましたが、中々楽しいものですね攻撃も」

アッシュは巨大な眼球に見つめられる前に物陰に隠れようとする。

カトブレパス「残念、僕の射程は長いんです」

びぃーん!!

アッシュ「」

どぼごおおおおおん!!

アッシュ「ちんちんはちっちゃいくせにーーーー!」

カトブレパス「!? なぜ貴方が知ってるの!?」

289

--妖精郷、川--

しゅうううううぅ

カトブレパス「……また上手く致命傷は避けたみたいですね」

アッシュ「はっ、はっ、はっ……」

カトブレパス「どれ、近づいて最大威力の一撃をお見舞いしてあげますか」

ざっ

アッシュ「」

ぴたっ

カトブレパス「といきたいところなんですが、どうも臭いですね」

アッシュ「!?」

カトブレパス「貴方、逃げながら何かをしているような気がします。ウェンディゴ君に戦闘スタイルが似ているというのなら罠でもしかけている可能性が」

踏み出そうとした足を戻すカトブレパス。

290

--妖精郷、川--

カトブレパス「それに僕の射程範囲からしたら」

ぎゅぎゅぎゅ

カトブレパスの眼球に魔力が集まり圧縮される。

カトブレパス「この程度じゃ減衰しないんですよ」

アッシュ「……ぐ」

カトブレパス「おさらばですよ、少年。魔族一体の戦闘能力は、勇者パーティのそれと同じと言われているのに……よく一人でがんばりました」



カトブレパス「」

発射する瞬間、カトブレパスは自分の体の違和感に気付いた。

カトブレパス(あれ、何か感覚が鈍く)

アッシュ(あの目が魔力攻撃の発射口だとするのなら、やつはビームを撃つ瞬間魔力障壁に穴を開けて撃っているはずなんだ)

ぎゅ

アッシュ「ならほんの少しの操作ミスで勝手に自爆してくれるわけだろ?」

カトブレパス「な、なぜ!?」

どっごおおおおおんん!!!!

アッシュ「……毒は触れさせなくても匂いで十分なんだよ。スキル、毒血・麻痺」

291

--妖精郷、平地--

ドォン!!ドゴオォン!!

フランケン『ふーっ! ふーっ!』

ポニテ(くっ! ライオンぽくなってからめっちゃ)

フランケン『ぐおおおおおおおおおおおおお!!』

ぎぃんぎぃぎぎぎぃん!!

ポニテは両の剣で幾度も斬りつけるも、

ががおおん!!

フランケンの爪による一撃で弾かれてしまう。

ポニテ「きゃあああああああああ!!」

ずずーん!!

292

--妖精郷、平地--

ぱらっ

ポニテ(おっきいしつよいしかたいし……)

ひゅん

フランケン『』

ポニテ「!!」

巨体でありながらフランケンは一瞬で距離をつめる。

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

ポニテ「あぐっ!!」

そして躊躇することなく拳を振り下ろした。

ぼごごごごご!!

あっという間に巨大なクレーターが出来上がり、その中心にはボロボロになったポニテがいた。

293

--妖精郷、平地--

フランケン『こ、ころしたくは、ない』

ポニテ「がふ……」

フランケン『だ、だがこれも、ゆ……まおさんのため!』

ぎりり

フランケンはポニテの細い首を巨大な指で締め上げる。

ポニテ「!? きゅっ!!」

ぎりぎりぎりぎりぎり

ポニテ「」

ぎぃん!ぎぃん!

欠けた剣でフランケンを突くが、一ミリたりとも皮膚を貫くことはできない。

294

--妖精郷、平地--

ぎぃん!

ぎりぎりぎり

ぎぃん

ぎりぎりぎり

……ぎん

ぎりぎりぎり

……

ぎりぎりぎり

……

ぎりぎりぎり

……からん

295

--妖精郷、平地--

ポニテ「な、んて、ね」

ぼひゅっ!!

フランケン『!?』

想像もしないことが起きる。フランケンが握っていた首は水のように一切の抵抗を無くし弾けた。

フランケン『な、なんだ!?』

くすくす

くすくすくすくす

世界が笑う。

フランケン『!? こ、これは……』

首を無くした体がいつのまにか消えていた。

くすくすくす

296

--妖精郷、平地--

フランケン『はっ!?』

その時フランケンは、自分の真上に太陽がある気がした。

がばっ

ポニテ「……」

ぼっぼっぼっ

頭上には

ポニテ「……」

ぼっぼっぼっ

炎を纏ったポニテが腕を組んで浮かんでいた。

ポニテ「死の光 炎の翼の改良型」

ぼっぼっぼっ

ポニテ「奥義、SOF<スピリットオブフレイム>」

297

--妖精郷、平地--

フランケン『!』

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

地表を炎が多い尽くす。

ポニテ「ここが私とおじさんの戦場だよ。出る時はどちらかが敗北する時……」

フランケン『っ』

フランケンは話の途中で跳躍し、宙に浮かぶポニテに拳を叩き込む。

ふわっ

フランケン『!?』

しかし、その拳は何の抵抗も無く通り過ぎる。

ぼっぼっぼっぼっ

ポニテ「物理攻撃は効かないよ。なぜなら今の私は魔力体、精霊化しているからっ!」

298

--妖精郷、平地--

ぼぼぼっ

ポニテ「はああああああああああああああ!!」

どがぁあああん!!

フランケン『ぐっ!?』

精霊化したポニテの蹴りがフランケンを襲う。

フランケン『ぬ、ぬ!? ぶ、ぶつりこうげきがきかないなら、そっちもできないはずじゃ!?』

ポニテ「精霊は魔力で出来てるんだよ。魔力はただのエネルギー、魔力を物理で破壊することは出来ないけれど、魔力は確かにそこにある!」

ぼぼぼ!!

ポニテの両足から火がジェットのように噴射する。

フランケン『!! っく!』

迎撃しようとフランケンは拳を突き出すが

ふわん

ポニテ「残念! 魔力体の時は引き裂かれたってへっちゃらなんだよ!!」

どががっ!!

299

--妖精郷、平地--

フランケン『ッッ!!』

巨躯のフランケンが、

ぼぼっ!!

硬い外皮を持つフランケンが、

どぼぼぼぼ!!

ポニテ「あああああああああああああああああ!!」

ががががががががががががが!!!!

フランケン『ッッぐ!! がっ!!』

ポニテの乱打を受けて、甚大なダメージを受けていた。
現魔王の魔族の一体が、少女一人になすすべも無く。

ドッごおおおお!!!!

フランケン『ッ』

ずっずーん!!

嘘のように吹き飛ぶフランケン。

ポニテ「……」

あれだけの攻撃を加えたのに息一つ乱さないポニテ。それもそのはず、今のポニテに呼吸は必要ない。魔力体に疲れなど存在しない。

300

--妖精郷、平地--

フランケン『……ぐ、ぐうう』

ポニテ「しぶといねおじさん。でもこれはどうかな」

ぎゅん!

ポニテは空に掌をかざす。

ぎぎ、ぎぎぎぎ!!

フランケン『!!』

すると巨大な火の塊が出現する。

ポニテ「火属性対単体攻撃魔法レベル4。おじさんは強いから……ここで完全に倒しておかないと、今後私の仲間に害をなすことになるかもしれないよね?」

フランケン『……ごく』

少女から発せられる静かな意思と強固な覚悟。

ゴゴゴゴゴ

ポニテ「……じゃあね」

短い別れの言葉と共にポニテは火球を放つ。

ドッ!!

それは大気を震わせフランケンに直進する。



しゃん



ポニテ「」

フランケン『』

トッ

……しかし突然現れた風が二人の間を通り過ぎると、火球は何事も無かったかのように消滅した。











ウェンディゴ「よっ、今度は間に合ったな」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m

   次回予告

——その日、人類は思い出した。
奴らに支配されていた恐怖を。鳥籠に囚われていた屈辱を……。

レン「にゃー!」

調教師「うにゃー!」

十代目「にゃ、にゃあ……」


  次回、進撃の亜人

こんばんは! やった……蘭子が!!

それでは投下していきますー。

301

--妖精郷、平地--

ざっ

ウェンディゴ「ふぅ〜……あちちっ」

ウェンディゴは体についた火を手ではらう。

ポニテ「な……レベル4攻撃魔法を……消した?」

フランケン『う、ウェンディゴ……』

ウェンディゴ「おう、なんだよお前、結構苦戦してんじゃん」

姿を見せない何かが軽い口調でフランケンに話しかけている。

ポニテ「!……これ……」

フランケン『な、なんでおまえがここにいるんだ? こ、ここはおでたちがまかせられたんだぞ?』

ウェンディゴ「魔王勇者さんがやっぱり心配だから見てきてくれってよ」

フランケン『ぐ、ぐ……おでたちのこと、しんらいしてくれてないのか』

フランケンは効果が切れたのか元の姿にしぼんでいく。

ウェンディゴ「信頼がどうとかじゃなくて、心配の方が上回ったんだろ」

302

--妖精郷、平地--

ポニテ(姿が見えない。声も風でかすれてよく聞き取れない……でもこれは魔族がもう一体いるってことだよね)

ポニテは気を引き締めた。

フランケン「せ、せいれいは」

ウェンディゴ「あぁ、精霊は俺がもう始末しといたから」

ポニテ「!?」

あまりに軽々ととんでもないことを言うウェンディゴ。

ウェンディゴ「フランケン達が騒ぎを起こしておいてくれてたおかげで簡単だったよ。さぁ長居は無用だ、帰ろうぜ」

ポニテ「に、逃がすわけないでしょっ!!」

ぼぼぼぼっ!!

ポニテはフランケンに向かって飛翔。

フランケン「こ、このこはここでたおしておかないと、こんごきょういになるぞ!!」

ウェンディゴ「えぇー……? 正直かなり骨が折れるぞこれは。やめようぜ?」

303

--妖精郷、平地--

ポニテ「はぁああ!! 火属性攻撃魔法レベル3、連射!!」

ドゥン、ドドオゥン!!

ポニテはフランケン達目掛けて魔法を放つ。

ドッゴオオオン!!

フランケン「ぐ、ぐおっ!」

ウェンディゴ「!」

一発はウェンディゴが弾くのだが、フランケンは防御に失敗してしまう。

ウェンディゴ「ほれ! 今のお前じゃきついだろうが! ここは引くぞ!! いいな!?」

フランケン「ぐ、ぐぐ……!」

しゅぅううう

ウェンディゴ「ばかっ! 生き残ってなんぼだろ! 俺は誰一人として欠けて欲しくないんだよ!! 誰一人としてな!」

ウェンディゴの熱の篭った叱咤にフランケンは、折れる。

フランケン「わ、わかった、すまない……お、おでたちのひとりでもしねば、ゆ、まおうゆしゃさんはかなしむもんな」

ウェンディゴ「……あぁ」

304

--妖精郷、平地--

ポニテ「逃がさないって、言ってるでしょー!?」

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

ウェンディゴ「!?」

フランケン「!!」

ぼおぉおぉ……

ポニテは膨大な魔力を右手と左手にそれぞれ結集、そのどちらもが先ほど放ったレベル4魔法に相当した。

ウェンディゴ「……まっず」

ポニテ「あああああああああああ!!」

ぼっ!!

ポニテが拝むようにそれらを融合させると、

フランケン「な、なんと」

ボッゴゴォオオ!!

白い太陽が産まれた。

305

--妖精郷、平地--

ウェンディゴ「空間設置魔法罠、ディフェンスタイプ」

ウェンディゴの宣言とともに、周囲に赤く光る道が出現する。それはここら一帯に描かれた魔方陣のように見える。

ポニテ「! どんな小細工をしたってぇえええ!!」

ギュウウイイイイイイイイイイイン!!

白い太陽が高速で回転し、けたたましい音で唸る。

フランケン「うぇ、うぇんでぃご!!」

ウェンディゴ「まぁ……なんとかなるんじゃねぇの?」

ポニテ「火属性対単体攻撃魔法、レベル、5!!」

カッ!!

ウェンディゴ「」

フランケン「」

ドッギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!

306

--妖精郷--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

ぴっち『あ、あわわわわ!! 揺れる!! 揺れるっぴ!!』

ぱっち『てゆうか、こんな魔力攻撃なんかしたら妖精卿吹っ飛んじゃわないかっぱ!?』



--妖精郷、川--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

アッシュ「な、なんだこの馬鹿でかい魔力は!?……って、あいつしかいねぇか。後先考えてやれってんだまったく」

カトブレパス「……」

ずる……



--妖精郷、荒れ地--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

ハイ「な、なんなんですかぁ!? 地震なんですかぁ!?」

ユニコーン「ひひぃん」



--妖精郷、草原--

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!

レン「……ポニテが全力で攻撃……? それほど危険な相手がいるのかにゃ?」

307

--妖精郷、平地--

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!

空中から注がれる白い地獄の炎。ありとあらゆる生命の存在を許さぬ天からの一撃。

ウェンディゴ「……あっち」

ポニテ「ファッ!?」

しかし、ウェンディゴ達は死滅していなかった!

ポニテ「う、うそ!? なんで!? なんでっ!?」

ギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャギャ!!!!

攻撃はなおも続いている。
だが、ポニテの攻撃は何かに防がれてウェンディゴ達にまで到達できずにいた。

ウェンディゴ「うし、じゃあ俺らもう行くから。じゃぁな」

フランケン「お、おで」

ポニテ「え、えぇええ!?」

しゅん

ウェンディゴ達の気配が消えた。

308

--???--

魔王勇者「んん……」

トントントントン

テーブルを指で叩く魔王勇者。

ツインテ「どう、したんですか? 魔王勇者さん」

ツインテは落ち着きの無い魔王勇者を見て話しかけた。

魔王勇者「!! べ、別に……なんでもないけどっ?」

魔王勇者は髪をかきあげながら窓の外に視線をやる。

ツインテ「……ふふ」

ことっ

ツインテは紅茶のカップとクッキーの乗ったお皿をテーブルに置く。

ツインテ「心配なんですね。魔族さんたちのこと」

とぽぽぽ

ツインテは魔王勇者のカップに紅茶を注ぐ。

309

--???--

魔王勇者「ん……ありがとツインテ」

注いでもらった紅茶を口にする。

魔王勇者「……おいしい。それにあったまる……」

ツインテ「北の王国は寒いですからね。よかったらクッキーも食べてみてくれませんか?」

ふんわり笑顔のツインテ。

かりっ

魔王勇者「……うん、紅茶によく合うわ。おいしいよ」

ツインテ「そうですか! それはよかったです!」

魔王勇者「……」

じーっとツインテの顔を見つめる魔王勇者。

ツインテ「え? ど、どうしたんですか?」

魔王勇者「はぁ……なんでもない……ありがと。少し落ち着いたわ」

310

--???--

ツインテ「そう言えばボク、魔王勇者さんの部下さん達を見たことが無いんですけど、どんな人たちなんですか?」

魔王勇者「へ? 会ったこと無かったっけ? あー……ここは最深部だもんね、魔族の入室は禁止だった」

コトッ

魔王勇者は飲みかけのカップをテーブルに置いた。

魔王勇者「んー、なんて言ったらいいかなぁ……頼りになる……いや、なるのかなぁ」

ツインテ「あれ?」

ツインテが思った以上に魔王勇者は考えていた。

魔王勇者「昔だって私が一人でダンジョン全部制覇したしなぁ。ほんとあの時はなんで私こんなのとパーティ組んでるんだろう、って思ったなー」

ツインテ「あ、あれれ?」

魔王勇者「そうね、一言で言えば変なやつらだね!」

ツインテ「え、えぇえー!?」

311

--???--

魔王勇者「草原にいた雑魚モンスターに殺される奴もいれば、いきなりパーティから離脱してすっきりして帰ってくる奴もいたし、ずっと笑ってる奴いたし、ホモォいたし、女同士なのにやたら私の体を触ってくるやついたし!!」

ツインテ「あ、あはは……」

魔王勇者「お風呂覗かれるわ過去を見られるわホモりだすわ頼んでもいないのに勝手に盾になるわ……それで死んじゃうわ……」

ツインテ「……」

魔王勇者「……」

魔王勇者はカップの中の紅茶を揺らす。

魔王勇者「本当どうしようもない役立たずだよ……でも……不思議と、一緒にいると心が休まった」

ツインテ「……いい人たちなんですね」

魔王勇者「い、いい人!?」

ツインテ「魔王勇者さんの表情を見てればわかりますよ!……ボクも……ボクもすごいいい人たちと旅をさせていただきました」

魔王勇者「……」

312

--???--

魔王勇者「今、行方不明なんだっけ?」

ツインテ「……はい。ボクを助けにあの場所まで来てくれていたんだそうです」

魔王勇者「暗黒森林の競売か……あそこで暴れたとなると指名手配されてるだろうね……」

ツインテ「っ!!……」

魔王勇者「……私も同じような目にあったよ。その時私は、助けてもらった」

ツインテ「……」

魔王勇者「大丈夫、ツインテの仲間は絶対に見つけ出して助けてみせる。あんな奴らに好き勝手させない」

ツインテ「……あの」

フォーテ「あああああああぁあああ!! お姉ちゃんみっっーけたぁあ!!」

ダダダダダダダ!!

ツインテ「! フォーテちゃん走り回ったらだめ!」

フォーテ「きゃふー!」

そのままツインテに飛びつくフォーテ。

どさーん!

313

--???--

魔王勇者「もうっ、大事な話をしてたのに!」

フォーテ「大事な話?? 何々っ!? フォーテも気になるっ!!」

ツインテ「んんっ……フォーテちゃんどいて、重いよぉ」

フォーテ「あ、ごめんお姉ちゃん!! 女神にも等しいお姉ちゃんの綺麗な体に覆いかぶさるだなんて僕は一体なんてことを!!」

がくがくと震えながらツインテの上からどくフォーテ。

ツインテ「お、おおげさだよ」

魔王勇者「また始まった……ほらフォーテ、その女神が作ったクッキーと紅茶があるから食べていきなさい」

フォーテ「えっ!? お姉ちゃんのクッキーと紅茶!? 食べる食べるっ!!」

わーい、と喜びながらぴょんぴょん跳ねるフォーテ。

ツインテ「こ、こらテーブル周りで飛び跳ねちゃだめだよ!」

フォーテ「えへへー! 魔王勇者お姉ちゃん、あーん!」

魔王勇者「……仕方ないなぁ」

魔王勇者はフォーテにクッキーを食べさせてあげる。

314

--???--

フォーテ「んん〜!! おいしぃおいしい!!」

ぴょんぴょん!!

ツインテ「ちゃんと席につきなさいフォーテちゃんっ!」

フォーテ「あ、はーいっ」

ああぁあああああああ

死人の声とともに血塗れた腕が現れてフォーテの椅子をひく。

ツインテ「あ、またっ! 腕さんもフォーテちゃんを甘やかさないで下さい!」

あぁああああぁ

手のひらを合わせてごめんのポーズの腕。

フォーテ「お姉ちゃんお姉ちゃん! 僕にも紅茶頂戴っ!!」

ツインテ「っもうっ」

あぁあああぁああ

ひらひらと手を振って腕は深淵に帰っていく。

315

--???--

魔王勇者「っと、そうだ。ねぇツインテ、このクッキー、下の研究室に持って行ってあげてくれない? 昨日から腹黒がずっと篭ってるのよ」

ツインテ「……そう言えば今朝の食事にもでてこられませんでしたね……わかりました、台所に残りがあるのでそれを持っていきますね」

フォーテ「んほぉっ!? ふぉっはひふふぁら、ふぉふふぉふひへふ!」

リスのように頬にいっぱい食べ物をつめたフォーテがもぐもぐ喋る。

ツインテ「食べ物を口に入れて喋っちゃだめですよ」

すたすた

フォーテ「ごっきゅっ! ぷはぁ……どっかいくなら僕もついてくっ!」

ツインテ「大丈夫ですよクッキー持って行くだけですから。フォーテちゃんはここでおやつ食べてていいんですよ?」

フォーテ「やだやだっ!! フォーテ、お姉ちゃんと一緒がいいのっ!!」

ツインテ「仕方ない子です……じゃあフォーテちゃんにも手伝ってもらいますよ?」

フォーテ「うんっ!!」

あぁあああぁあああ

ツインテ「自分の手でですっ!」

あぁああぁああ……

親指を立てたままゆっくり闇に戻っていく腕さん。

316

--???--

カツンカツンカツン

地下へと続く階段。そして行き着いた場所には大きなドアが。

ツインテ「腹黒さん、ツインテです。こんをつめても毒ですし、お菓子でもいかがですか?」

フォーテ「……」

鉄でできた大きなドアに話しかけるも、何もおきなかった。

ツインテ「あの、聞こえてませんか……?」

フォーテ「こらぁっ!! お姉ちゃんのことを無視するなぁっ!!」

……ぷしゅー

腹黒「すいませんツインテさん……丁度作業中だったもので気付くのが遅れました(ちっ、忙しいのになんのようだくそがっ)」

ツインテ「あの、お食事にも来られていなかったのでお腹、空いてるんじゃないかなって」

そういってツインテはバスケットを差し出す。

317

--???--

腹黒「あぁ……そういえば食事のことをすっかり忘れていました。これは助かります(はっ、気付くのがおせぇんだよいい子ちゃんが)」

フォーテ「ふぅ〜」

フォーテは腹黒に対して敵意を向けている。

ツインテ「あの、紅茶も持ってきたので中に入ってもいいですか?」

腹黒「本当ですか? それは楽しいお茶会になりそうだ。どうぞ、汚いところで恐縮ですが(ちっ、めんどくせぇな。渡してさっさと帰れよ)」

ツインテ「おジャマします」

しゅぅうう

その部屋ありとあらゆる研究を可能とする、書物と魔法道具にあふれた部屋……。

ツインテ(う……換気が必要ですね)

フォーテ「フォーテ腹黒嫌いー」

318

--???--

ごぅんごぅん

腹黒「すいません、ろくに椅子もないんでこの本に腰掛けてください(はぁ、せっかくの魔道書がよぉ)」

ぬちゃ

ツインテ「ひゃっ!? ……な、なんかこの本……独特な質感、ですね」

腹黒「あぁ、それは特注品なんですよ(人間の皮で作ったな)」

フォーテ「むぅ……」



ごぅんごぅん

ツインテ「はい、どうぞ」

ツインテはカップを差し出し、それを腹黒が受け取る。
両者ともに満面の笑みである。

腹黒「ありがとうございます。いやぁ、これはおいしそうだ(ちっ、あちいだろがっ!!)」

319

--???--

ずず

ごぅんごぅんごぅん

ツインテ「……あの、質問させてもらってもいいですか?」

腹黒「はい、なんでしょう?(うざってぇな……いつまで居座る気だよ)」

ツインテ「ここで何をやっているんですか?」

腹黒「……」

ずずっ

腹黒は飲み干したカップをテーブルに置いた。

腹黒「そう、ですね。端的に言ってしまえば……モンスターや魔族が使用する魔法の改良、魔法薬の精製、肉体組織の研究……」

ごぽぽっ

ツインテ「ひっ!?」

水音の先にあったものはモンスターのホルマリン漬け。

腹黒「そして、人造魔族の作成ですか」

320

--???--

ツインテ「人造……魔族?」

腹黒「はい。魔王軍も補充していかなければ減少する一方ですから(てめぇらが不甲斐ないから余計に俺様ががんばらなきゃいけねぇんだぞ)」

ツインテ「……それは、人為的に魔族を、作り上げるってことですか?」

腹黒「そうです。あっと、私達は人ではないですから……魔造魔族と言うべきなんですかね」

ツインテ「……」

ビッビイーーー!!

その時巨大な機械音が部屋中に鳴り響いた。

ツインテ「ひっ!! な、なんです!?」

腹黒「お、さっそくもう一体完成したようですよ」

ぷしゅぅーー……

ぺたっ

フォーテ「……」

ぺたっぺたっ

ツインテ達の前に姿を現したのは、

スライム「……」

腹黒「やぁおはよう。名前なんだっけ? たしか……」

腹黒はわざとらしく考えるそぶり。

ツインテ「……あれ? この人って……」

腹黒「あぁ思い出した、斧女、だったっけ」

それでは本日の投下はここまでになります。
疑問、質問等がありましたら、気軽に書きこんでおいてください。
読んでいただきありがとうございました!m(__)m


  次回予告、アイドル勇者、シンデレラガールズ!

勇者「属性はどういうわけかたするの?」

盗賊「巨乳、普乳、貧乳」

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