ほむら「落とし神に魔法少女を攻略してもらう」桂馬「魔法少女だと」 (307)



「出た~~!! 駆け魂、勾留♪♪」


「……貴方は、何者なの……」


「――――――――僕は神。落とし神だ」


「落とし、神……」


「連れて行くよ、エンディングへ」


「さぁ、一緒に行こう」




      「神のみぞ知るセカイ」×「魔法少女まどか☆マギカ」




           『神のみぞ知る魔法少女』





SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382432415


このSSは先日VIPに投下したものの修正版になります。

宜しければ皆様に読んでいただき、多少なりとも楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、投下していきたいと思います。


エルシィ「にーさま、やりましたよ~~!!」

桂馬「どうした、そんなに今のテストが上手くいったのか?」

エルシィ「猛勉強の成果が出ました。問題文が全部読めたんですよ!!」

桂馬「……答え以前の問題だったのか……」

エルシィ「それからですね~~」

桂馬「ゲームするからどっか行ってくれ」

エルシィ「うぅ~~!!」


桂馬「…………」ピコピコ


『舞校祭で、一気に女神探しをする!!』


桂馬(……ディアナとハクアにはそう言ったが……)

桂馬(……どうするかな……)


かのん「はぁ、桂馬くん一人にならないなぁ」

アポロ『かのんよ。テストというのに集中しなくていいのかぞよ』

かのん「それは、そうなんだけど。でも気になって」

アポロ『本当にあの人間に相談するんじゃな?』

かのん「うん、きっと桂馬くんなら相談に乗ってくれるよ」

アポロ『ふふん、そうは言ってもわらわには分かっておるぞよ』

かのん「えっ?」

アポロ『本当は、愛しの桂木桂馬と話したいだけじゃろ?』ニヤニヤ

かのん「そ、そんなことーー!!」

アポロ『アッハハハハ!!』




かのん「もうアポロは……」

アポロ『まぁ確かにあの時はわらわも驚いた。普通の人間の気配とは違っておったしの』

かのん「うん。それに、とても悲しい眼だった。あの女の子――――」


アポロ『こりゃ、かのん。フラフラするでない、もうすぐかのんの家ぞ!!』

かのん「アポロ、今日は歌にドラマにラジオで、本当に疲れたからフラフラもするよぉ……」


???「西原……いや、この世界では、中川かのん……」


かのん「わっ!?」

???「…………」

かのん「えっと……ファン、の人ですよね……?」

かのん(……家の場所バレちゃった。また岡田さんに怒られる……)

???「…………」

かのん「あの……」


???「中川かのん、貴方は狙われているわ」

かのん「えっ?」


???「気をつけて」

サッ


かのん(……でも、あんな事、相談出来ないか……)

アポロ『かのん?』

かのん(……私、フラれたんだから……)

かのん(……桂馬くんとはもう、関係ないんだ……)


アポロ『かのん、何か変ぞよ。わらわ達を見ている者がおるぞ』

かのん「見ている者……?」


生徒達「かのんちゃ~~~~ん!!!!」


かのん「アポロ、あんな事があったからって気にし過ぎだよ」

アポロ『違う、違うぞよ。この視線は……』


???(……間違いない。あいつの中に女神がいるわ……)


教師「中川、携帯しまえ~~。テスト始めるぞ~~」

かのん「は、はい」

かのん(……き、気のせいだよね。昨夜のガラスが勝手に割れたのも……)

かのん(……アポロやあの女の子が変なこと言うから気にし過ぎてるだけ、そうよ……)


???「…………」


かのん「ッ!?」

ガタッ、タッタッタッ、ドンッ


桂馬「ん? は? か、かのん!?」

かのん「桂馬くん……」ギュ


「えぇぇぇぇーーーー!?!?!?」

歩美「!?!?!?」

ちひろ「!?!?!?」


桂馬「お、おい、これは何のマネだ……」

かのん「私、桂馬くんしか頼れる人いない……。私、忘れてないよ……!!」


桂馬「ちょ、ちょっとこっちに来い。ん? 忘れてない、忘れてないのか!?」

かのん「全部、覚えてるよ」

桂馬「キ、キスしたこともか……?」

かのん「うん……。桂馬くんも忘れてなかったんだ……」

桂馬「かのん、本当に覚えてるのか……」

かのん「私、桂馬くんが好き!! ずっと、ずっと、言いたかった」

桂馬「は、はい……?」


「こ、告白ぅぅぅぅーーーー!?!?!?」


桂馬「と、とにかく、ここはダメだ。場所を変えるぞ」

ダッダッダッ

かのん「桂馬くん聞いて。私、誰かに狙われているみたいなの!!」

桂馬「狙われている? 誰に?」


キィィン

アポロ「おぉ、入れ替わった。力も少し戻ったぞよ」


アポロ「ここからは人間の出る幕ではないぞよ」

桂馬「輪!?」

アポロ「無関係な者を巻き込むワケには、いかんからの!!」

タッタッタッ


桂馬「待て!! かのん!!」

桂馬「僕は……無関係じゃないぞ」


エルシィ「にーさま~~!! かのんちゃんどうしたんですか~~!?」

桂馬「女神だ……。かのんの中に、女神がいた」

エルシィ「えぇーー!?」

桂馬「かのんを捜すぞ。エルシィは向こうを、僕はこっちだ」

エルシィ「は、はい~~!!」


桂馬(……かのん、どこだ。どこにいる……)

タッタッタッ


「そこで転んだところを生駒先輩に見られちゃって……」

「まどかは相変わらずドジだねぇ」

「もうっ、さやかちゃん、本当に恥ずかしかったんだから」

ドンッ

まどか「きゃっ」

桂馬「っと、ごめん。急いでるんだ」

タッタッタッ


さやか「なんだあの先輩……」

まどか「どうしたんだろうね。ん、キュウべぇ?」

QB「…………」

まどか「知ってる人なの?」

QB「いや、全然知らない」

さやか「なぁんだ。何かあるのかと思ったよ」


QB「何でもないよ、何でもね」


アポロ「なんで地獄の者がわらわを狙う!? 地獄を救ったのはわらわ達ぞ!?」

???「救う? 余計な事をして……。女神のいる限り良き地獄の復活はない!!」

アポロ「地獄の復活? お前は何者じゃ!?」


???「私は……『正統悪魔社<ヴィンテージ>』のフィオーレよ!!!!」


ダダッ


カキィィン!!


フィオ「なっ、盾!?」


ほむら「女神をやらせはしないわ」




フィオ「またお前か!! 昨夜も今日も邪魔してくれるわね……!!」

ほむら「どうするの、人が集まってきたわよ」

フィオ「くっ……」

タッタッタッ


ほむら「…………」

アポロ「お主はあの時の……」


桂馬「かのーーん!!」

エルシィ「かのんちゃ~~ん!!」


桂馬「かのん!!」

アポロ「おぉ、これはこれは、かのんの想い人殿」

ほむら「…………」

桂馬「かのんが狙われているって、この子から……?」

アポロ「あぁ違うぞよ。この者はわらわの命の恩人ぞ」


「中川~~~~!!!!」


ほむら「貴方達を捜しに教師達が集まってきたわね」

桂馬「これだからはリアルは困る。重要なイベントの大切さが分かってない」

エルシィ「にーさま、どうします?」

桂馬「かのん、これから僕の家に来てくれ。聞きたいことが沢山あるんだ。それに、お前も」

アポロ「無関係かと思ったら何か知ってそうじゃの。分かったぞよ」

ほむら「分かったわ。それに、私からも話があるのよ」

桂馬「エルシィ、ハクアとディアナを呼んでくれ」

エルシィ「は、はい~~!!」


ディアナ「お久しぶりです、アポロ姉さま」

アポロ「お主が、ディアナ……?」

ディアナ「お互い変わり果てた姿ですが、お会い出来て嬉しいです」

アポロ「堅苦しい挨拶はなしじゃ、それよりディアナ」

ディアナ「はい、状況の説明ですね」

アポロ「わらわ達で古悪魔<ヴァイス>を封印したと思ったら、こんな所におる。なぜじゃ?」

ディアナ「そうですね、全てお話します。それには先ず、この方達を紹介しないといけませんね――――」


アポロ「――――旧地獄は新地獄に、古悪魔<ヴァイス>は駆け魂に、なるほど、分かってきたぞよ」

桂馬「さて、自己紹介も終わったし現在の状況も分かっただろ?」

アポロ「あぁ、桂木。そして、新悪魔のエルシィ殿にハクア殿」

エルシィ「よ、よろしくお願いします」

ハクア「女神……本当だったんだ……」

桂馬「アポロ、そろそろ教えてくれ。何があったのか、誰に狙われているのかを」


アポロ「――――そして、そこで助けてくれたのが」

ほむら「……暁美ほむら」

アポロ「ほむら殿というワケじゃ」


桂馬「正統悪魔社<ヴィンテージ>か……」

ハクア「そんな……駆け魂隊の中に裏切り者がいるなんて……」

エルシィ「ハクア……」


桂馬「……………」

ほむら「……………」


ほむら「そろそろ私の話を始めてもいいかしら」

桂馬「その前に、一つだけ聞かせてくれ。お前は何者なんだ?」


ほむら「私は、魔法少女よ――――」


桂馬「――――魔法少女、だと……?」


ほむら「――――――――こんな話、信じられないでしょうね」


桂馬「魔法少女、魔女、ワルプルギスの夜、か」


ほむら「今は信じてもらえなくてもいい」


ほむら「ただ、私が言えることは一つ。舞校祭最終日の前夜、ワルプルギスの夜が来るわ」


ほむら「あの夜を越えるためには、全ての女神と魔法少女の力がいる」


ほむら「全ての条件を揃えることが出来る人間は……」




ほむら「――――落とし神、桂木桂馬――――」




ほむら「貴方だけよ」




ディアナ「……そんな話を信じろというのですか」

アポロ「こりゃディアナ、ほむら殿はわらわとかのんの命の恩人ぞ!!」

ディアナ「そ、それは分かってますが……」


桂馬「分かった。ほむら、女神を全員見つければいいんだな?」

ほむら「えぇ」

エルシィ「に、にーさま、そんな簡単に~~!!」

桂馬「始めから舞校祭で女神捜しはするつもりだったんだ。何の予定の変更もないよ」

ハクア「……信じるの?」

桂馬「悪魔がいるんだ。そりゃ魔法少女だっているだろ」


桂馬「さて、一番始めにやることは……。アポロ、かのんに代わってくれ」


かのん「桂馬くん……?」


桂馬「かのん、今日から僕の家に住んでくれ」


かのん「け、桂馬くん、そ、そそ、それって、プ、ププ、プロポー……」

桂馬「えっ?」

ハクア「い、いい、いきなり何を言うのよ桂木!?」

ディアナ「桂木さん!? あなたは天理がいるのになんてことを……!!」

エルシィ「にーさまどうしたんですか!? ん? でも、にーさまとかのんちゃんが……」

エルシィ「そうしたら、かのんちゃんが、ねーさま……いいかも……」

ハクア「ちょっとエルシィ!? 何言ってんのよ!!」


ほむら「……………」ガチャ、ジャッキン


桂馬「おい、その物騒な物をしまってくれ。お前達は何を勘違いしてるんだ……」

桂馬「かのんはヴィンテージにアポロがいることを知られているんだぞ」

桂馬「今までの話を統合するとヴィンテージは旧地獄復活の為に女神を抹殺するつもりだ」

桂馬「女神がやられればワルプルギスの夜は倒せない」

桂馬「僕達は、女神を守らないといけないんだ」


ディアナ「確かに、桂木さんの家なら私の家が隣ですから何かあったときに対処出来ますが……」

桂馬「そういうことだ。それから、かのんの仕事中の護衛はハクアにやってもらう」

ハクア「えぇ!? なんで私が!?」

桂馬「人間界に来れるのは駆け魂隊の新悪魔だけ、だがヴィンテージはこの世界にいる」

ハクア「そうよ……。駆け魂隊の中に、裏切り者が……」

桂馬「ならもう駆け魂隊も悪魔も信用出来ない。信じられるのはお前だけだ、ハクア」

ハクア「ッ!? ……あーー、もう、私はまだ魔法少女なんて信じてないわよ」

桂馬「それでいい。頼むぞ」


かのん「あっ、もうこんな時間!? 仕事に行かないと……」

ハクア「って、早速仕事か……。いいわ、連れて行ってあげる。さぁ、行きましょう」

かのん「お、お願いします……」

桂馬「かのん、ちゃんと泊まる準備してから帰って来いよ」

かのん「け、桂馬くん、本気だよね……?」

桂馬「ん? あぁ、もちろん」


ほむら「……話もまとまったようだし、私は学校に戻るわ」

桂馬「待て、お前にはまだ聞きたいことが」

ほむら「私にはどうしてもやらなくてはいけないことがある。ここに留まることは出来ないわ」

桂馬「お、おい!!」




エルシィ「ほむらさん、行っちゃいましたね」

ディアナ「行かせてよかったのですか?」

桂馬「目の前からいきなり消えるような奴をどうやって引き止めるんだよ……」


桂馬「それにしても、魔法少女、魔女、ワルプルギスの夜、情報が少なすぎる」

桂馬「魔法少女のことは置いといて、僕は女神捜しに専念するしかないか……」

桂馬「ディアナ。女神の名前、特徴、何でもいい、教えてくれ――――」


桂馬「――――天理、気をつけろよ」

天理「うん。私も、狙われてるんだよね……」




エルシィ「にーさま、大変なことになりましたね……」

桂馬「あぁ、まさかこの首輪に殺される前に、魔女に殺されるかもしれないなんてな」

エルシィ「あ、あの、いいんでしょうか……」

桂馬「は? 何が?」

エルシィ「えっと、今回のことは地獄や人間界や女神の命運がかかってるんですよね?」

桂馬「ほむらの言っていたことが全て本当ならな」

エルシィ「そ、そんな重大なことなら、神さまの近くには、優秀なハクアのほうが……」

桂馬「?? ハクア? 僕の協力者<バディー>はお前だろ、エルシィ」


エルシィ「に、にーさま……。そうでした、私達は、最強の協力者<バディー>です!!」


桂馬「おかしなこと言ってないで女神捜しの作戦を考えるぞ、エルシィ」

エルシィ「はいっ、にーさまっ!!」


ほむら(……いつからだろう、まどかが見滝原から隣町の舞島の生徒になったのは……)

ほむら(……もう覚えていない。でも、少しずつこの舞島に集まった……)

ほむら(……今では家族、友人、まどかを取り巻く者は全てこの舞島に集まっている……)


ほむら(……まるで、何かに引き寄せられるように……)




『――――――――エンディングへ』




ほむら(……まさか、ね……)


ほむら(……まどかがどこの生徒でも関係ない……)

ほむら(……今回こそ救ってみせる……!!)


ほむら(……たとえ、あの人や女神を利用することになっても、必ず……!!)




かのん「お、お邪魔します……」

麻里「かのんちゃん!! 桂馬とエルちゃんから聞いたわよ~~!!」

かのん「え? え?」

麻里「なんでも実家の建て直しとマンションの改装工事と、あと何だっけ? 重なったって!!」

かのん「え、えーと……」

桂馬「……いいから口裏を合わせろ。後はこっちで何とかする」ボソボソ

かのん「そ、そうなんですよ~~!!」

麻里「大変ね~~。エルちゃんのお友達ならウチは大歓迎だから、気にせず泊まってね」

かのん「あ、ありがとうございます」


かのん(……本当にそんな事になったら事務所の人に頼むけど、今は仕方ないよね……)


桂馬「何か変わったことは?」

ハクア「別に何も。何もなさ過ぎてアイドルの仕事って大変だな~って思ったぐらいよ」

桂馬「そうか」


桂馬(……ヴィンテージは、かのんの女神のことを知っている……)

桂馬(……すぐにまた襲撃して来ると思ったが、ほむらを警戒しているのか……?)

桂馬(……それとも、女神を重要視していない? いや、それはありえないか……)

桂馬(……それか、女神の存在を知っているのは少数か……)


ハクア「桂木、本当にあの魔法少女の話を信じてるの?」

桂馬「今はまだ半分だな。この先のルート次第だ」

ハクア「私は、まだ信じられないわ……。地獄でも魔法少女の話なんて聞いた事ないもの」

桂馬「あぁ、その地獄で一つ頼むことがあったんだ」

ハクア「ちょ、ちょっと私は、私の仕事に女神の護衛もあるのよ!?」

桂馬「簡単な調べ物だ。なんなら時間があいたときでいい」

ハクア「新地獄で調べ物……?」


かのん「い、いただきます……」

桂馬「見た目は悪いが味は案外悪くない。食べてみれば分かるよ」

かのん「う、うん……」

パク、モグモグ、モグモグ

かのん「お、美味しい!!」

エルシィ「かのんちゃんが私の手料理を食べて美味しいって言ってくれました~~!!」

麻里「良かったわねエルちゃん」

エルシィ「えへへ~~」

桂馬「…………」ピコピコ、モグモグ

かのん「――――――――」

エルシィ「かのんちゃん、どうしたんですか?」

かのん「えっと、晩ご飯はいつもスタッフの人とか打ち上げとかで食べるので、こういうのは久しぶりで」

エルシィ「かのんちゃん……」

麻里「かのんちゃ~~~~ん!!!! いつまでもウチにいていいのよ~~~~!!!!」

桂馬「……おいおい……」


桂馬(……隠れている女神、狙われている女神、僕に何が出来る……?)

桂馬(……女神と魔法少女か……)

桂馬(……願いを一つだけ叶えてもらい、魔法少女になって魔女と戦う……)


桂馬(……よくある設定だ。でも、なぜ今頃、この設定、何か……)


エルシィ「……に、にに、にーさま……」

桂馬「なんだエルシィ、風呂に入ってた、の、か……」


かのん「――――――――――――――――」


「きゃああああああああああああああああああああ」


桂馬(……そうか、かのんと一緒に暮らすんだからこういうこともあるのか……)


桂馬「女神は、僕の攻略相手の中のいる」

エルシィ「え、えぇ!? にーさま本当ですか!?」

桂馬「根拠もあるが、今はまだ仮説だ」


ちひろ「あっ、ごめーーーーん、手がすべった」

歩美「桂木くん、どいてよ!!!!」


桂馬「うごごご……」

エルシィ「ちひろさんも歩美さんも、なんだかかなり怒ってますね~~」

桂馬「これで二人とも女神候補だ」

エルシィ「にーさま、どういうことですか?」

桂馬「エルシィにも分かるように具体的に言うとだな――――――――」


桂馬「――――歩美、ちひろ、月夜、栞、結。この五人の中に四人の女神がいる」

エルシィ「はぁ~~、長瀬先生もみなみさんもお元気そうで良かったです~~」ウットリ

桂馬「って、おいエルシィ!! 聞いてるのか!?」

エルシィ「あわわわ、す、すみませーーん!!」

桂馬「……全く、こっちがお前の為に説明しているというのに……」

エルシィ「でも大丈夫ですよ~~」

桂馬「何が?」

エルシィ「歩美さん達の中に女神がいるんですよね。さぁ、女神捜しに行きましょう!!」

桂馬「僕が自分で言うのもなんだが、こんな突拍子もない設定と話をお前は信じるんだな」

エルシィ「?? 私はにーさまを信じてますから、にーさまの言うことは信じますよ?」


桂馬「――――そ、そうか。舞校祭で魔女が来るまでに女神を捜すぞ、エルシィ」


エルシィ「はいっ、にーさま!! ところで今日はどうするんですか?」

桂馬「……女神候補は揃った、後は女神を出す方法を考えないとな……」

桂馬「だが、今は魔女、いや魔法少女の情報が欲しい。もう一度ほむらに会うぞ」


桂馬「エルシィ、僕が言った通りにほむらを駆け魂センサーに登録してるんだろうな?」

エルシィ「任せて下さい!! でも、ほむらさんって変なんですよね~~」

桂馬「なんだ?」

エルシィ「いきなり遠くの場所に移動したりするんですよ。場所から場所へ魔法みたいに」

桂馬「魔法少女らしいからな。それも魔法なんじゃないか」

エルシィ「それならいいんですけど。もし駆け魂センサーが壊れてるなら困ります~~」

桂馬「おいおい頼むぞ。今はその駆け魂センサーが頼りなんだ」

エルシィ「だ、大丈夫です。今は○○病院の近くにいるみたいですよ」


桂馬「病院? まぁいい、行くぞエルシィ」


ほむら「貴方には、女神捜しに専念してもらうようにお願いしたはずだけど」

桂馬「女神捜しはやってるよ。だけど、敵の魔女の情報が少なすぎる」

ほむら「情報?」

桂馬「いきなりあんな設定を話されて、そっちも全て信じてもらえると思ってないだろ?」


ほむら「――――つまり、魔法少女も魔女も自分の目で確かめないと信用出来ない、と」


桂馬「まぁ、そういうことだな」


ほむら「……一度だけ。一度だけ魔法少女と魔女の戦いを見せてあげるわ」


エルシィ「わ~~、またほむらさんの魔法少女姿が見れるんですね、にーさま!!」

桂馬「落ち着け、エルシィ」


ほむら「――――――――魔法少女は、貴方達が思ってるようなモノではないわ」


ほむら「桂木桂馬、桂木エルシィ、私から絶対に離れないで」


エルシィ「こ、ここ、これが魔女空間ですか……」ガクガクブルブル

桂馬「……悪魔が怖がるな。だが、まぁ確かに無気味な空間だな」

ほむら「――――隠れて」

桂馬「え?」

ほむら「隠れて、いいから早く」

エルシィ「に、にーさま、羽衣の中に」

桂馬「あ、あぁ」




マミ「また貴方ね、暁美ほむら」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「今度の獲物は私が狩る。巴マミ、貴方にはこの魔女は倒せない」

マミ「だから手を退けって言うの? 信用すると思って?」

シュルシュルシュル、シュバッ


ほむら「なっ!? う、動けな……!? こんな事やってる場合じゃ……!!」


マミ「怪我させるつもりはないけど、あんまり暴れたら保証しかねるわ」

マミ「行きましょう、鹿目さん」


エルシィ「うぅ~~!! ダメです、全然取れませーーん!!」

桂馬「これも魔法の力か、ゲームなら魔法の捕縛は使用者を倒さないといけない展開だが……」

ほむら「…………」

エルシィ「えーと、羽衣を刃物のようにするには……」

エルシィ「確か、こうだっけ、あ、違うか。こ、こういうのはハクアが得意なんですけど」

桂馬「おいおい……」


ほむら「桂木桂馬、この先に魔女がいるわ」

桂馬「そうみたいだな。でも、よく知らないがもう一人の魔法少女が倒すんじゃないか?」

ほむら「それは無理よ。あの人はここで死ぬわ」

桂馬「し、死ぬ……!? どういうことだ!?」

ほむら「言葉のままよ。今から誰かが助けに行かない限り、巴マミは死ぬわ」

桂馬「そ、そんな……。くっ、エルシィ、ここは任せたぞ!!」


ほむら(……私だって、あの人が死ぬところは見たくない。でも、貴方ならきっと救える……)


ほむら(……あの時のように……)


マミ「ティロ・フィナーレ!!!!」

ドゴーン!!


まどか「あぁ!!」

さやか「やったぁ!!」


??「――――――――油断するな!!!! そいつはまだやられてないぞ!!!!」


マミ「えっ? くっ……」

サッ

魔女「!!!!!!」ガチン


マミ「この……ティロ・フィナーレ!!!!」

ドゴーン!!


魔女「!?!?!?」シュウウゥゥ


??「……全く、シューターならステージクリアの文字が出るまで気を抜くなよ」

マミ「あ、貴方は……」




桂馬「ボスの第二形態は基本中の基本だぞ」




QB「――――――――――――――――」

さやか「マミさん!!」

まどか「大丈夫ですか!?」

マミ「え、えぇ、私は大丈夫よ。それより、貴方、舞島の高等部の制服ということは……」

桂馬「僕は高等部二年の桂木桂馬だ」

まどか「わ、私は、中等部二年の、鹿目まどかです」

さやか「私も中等部二年、美樹さやか」

マミ「私は中等部三年の巴マミです。桂木先輩、どうやってここへ……」


エルシィ「にーーさまーー!!」

ほむら「…………」


マミ「そう、なるほどね、彼女の仲間か。一般人を巻き込むなんてどういうつもりかしら?」

ほむら「その後ろの二人を連れている貴方が言うことではないわ、巴マミ」

マミ「お互い様ってワケ? それとも――――」


ドロドロドロ!! ドロドロ……ドロ……ドロ?


桂馬「エルシィ、こんな時になんだ。まさか駆け魂か?」

エルシィ「あわわ、あれ、変ですね。駆け魂の反応じゃないみたいですけど……」

桂馬「ならなんで駆け魂センサーが鳴ったんだ?」

エルシィ「分かりません、この前に間違えて料理と一緒に煮込んだからやっぱり壊れたのかも……」

桂馬「おいおい……」


マミ「な、何だったの……」

さやか「あーー!! やっぱりそうだ!!」

まどか「さ、さやかちゃん!? どうしたの!?」

さやか「この人!! 今学園で噂になってる中川かのんの彼氏のオタクメガネ先輩だよ!!」

まどか「オ、オタク……?」

マミ「メガネ……?」


桂馬(……噂は順調に中等部まで広がっている……よし……)


QB「――――結界が解けたみたいだ」

桂馬(……この白い猫みたいなのが、ほむらの言っていたキュゥべえか……)

桂馬(……少女と契約して、魔法少女にするマスコットキャラ……)

桂馬(……魔法の国から来たってところか、ゲームではよくある設定だ……)


QB「僕のことが見えるみたいだね。――――落とし神、桂木桂馬」


桂馬「!? ……僕の事を知っているのか?」

QB「人間界の中で本気で『神』を名乗る人間なんて滅多にいないからね」

桂馬「…………」


マミ「とにかく、助けてもらったことのお礼は言っておきます。桂木先輩、ありがとうございました」

ほむら「巴マミ……」

マミ「暁美ほむら、貸しが出来たなんて思わないことね。それじゃ」


ほむら「――――これで信じてもらえたかしら」

桂馬「あぁ、魔法少女も魔女のことも信じる」

ほむら「そう、それなら良かったわ」

桂馬「……いつも、死ぬかどうか分からない戦いをしているのか?」

ほむら「今日のは特別だけど、そう思ってもらって構わないわ」

桂馬「そうか……」


ほむら「今日のことで、もう一つ頼みたいことが出来たわ」

桂馬「なんだ?」

ほむら(……私一人では無理な場面がある。それに私はまどかに専念したい……)

ほむら「魔法少女の力は心の強さ、絶望した状態では力は出せない」

桂馬「あぁ、前に魔法少女の説明をしてくれたときにそれは聞いたが……」

ほむら「ワルプルギスの夜までに巴マミが絶望しないように」


ほむら「桂木桂馬、貴方に巴マミを落としてもらいたい」


桂馬「な、なんで僕がそんな事を!? これ以上ゲームする時間を減らす気か!?」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒す為には女神の力がいる」

ほむら「それに全力の魔法少女が加われば勝てる確率は上がるわ」

桂馬「それならお前がやればいい。同じ魔法少女なんだし共感出来るだろ」

ほむら「……私だって、貴方にこんな事を頼みたくないわよ……」ボソ

桂馬「えっ?」

ほむら「なんでもないわ」


ほむら「――――私は、やらなければならないことがあるのよ」

エルシィ「いいじゃないですか、にーさま」

桂馬「は?」

エルシィ「ほむらさん、マミさんが悲しいときに助けてあげればいいんですよね?」

ほむら「えぇ、そうよ。魔法少女が絶望しないように」

エルシィ「それなら任せて下さい!! にーさまの得意分野ですから!!」

桂馬「ちがぁぁああうう!! 僕が得意なのはゲームでリアルじゃねぇぇええ!!」


ハクア「お疲れ様。もう今日は桂木の家には帰れそうにないから、エルシィに連絡しといたわ」

かのん「そうですね、もうこんな時間なら事務所に泊まります」

ハクア「大変なのね、アイドルって」

かのん「確かに大変なんですけど、その分やりがいもありますから」

かのん「それに今はハクアさんが守ってくれてるって分かってるから、安心して歌えます」

かのん「ハクアさん、ありがとうございます」

ハクア「わ、私は別に、桂木に頼まれたから仕方なく……」


ハクア「はぁ、ハクアでいいわ。私もかのんって呼ぶから」

かのん「――――はい、分かりました。よろしく、ハクア」

ハクア「えぇ、よろしく、かのん」


ハクア「というか、一つ聞きたいことがあったんだけど、桂木のどこがいいのよ?」

かのん「え、え、えぇーー!? もしかしてハクア、桂馬くんのこと……」

ハクア「わ、私は、あんな男なんて……!!」


エルシィ「にーさま、今日はどうするんですか? 女神候補から女神を出すんですか?」

桂馬「いや、女神を出すより、もっと大切なことがあるよ……」




歩美「――――な、ななな、なに言ってんのよ!? 頭おかしいんじゃないの!?」


ちひろ「――――よるな、ゴキブリ男」


月夜「――――も、もう顔も見たくないのですね!!」




エルシィ「攻略女子とまた恋をして女神を力を増やすというのは分かったんですが、これは……」

桂馬「……怒りは持続してる、悪くないな……」

エルシィ「にーさま、私には怒られてるようにしか見えなかったんですが……」

桂馬「甘いぞエルシィ。怒りやすれ違いを乗り越えてのキス、まさにトゥルーエンド!!!!」

エルシィ「し、信じてますから、にーさま……」

桂馬「よし、次は栞だ。また厄介な相手だが、行くぞ」


桂馬「貸し出しお願いします」

栞「…………」ススス

桂馬(……どうやら栞は、僕を覚えてはいるようだ……)


結「やぁ、桂木くん。僕は五位堂結、よろしく」


桂馬(……次に行こうと思っていたのに向こうから来るだと!? しかも自己紹介!?)

桂馬「あ、あぁ、よろしく。それじゃ」


結「行かないでよ。僕、桂木くんのことをもっと知りたいんだ」

グイッ、ドサッ…


結「僕、君が好きだ」

桂馬「!?!?!?」


ほむら「――――桂木桂馬、なにをやってるのかしら」


さやか「いや~~、マミさんって勉強教えるのも上手いんですね!!」

マミ「そんなこと言って、今度からは宿題はちゃんと自分の力で……鹿目さん?」


まどか(……♂×♂……♂×♂……♂×♂……)ソワソワ

栞(……♂×♂……♂×♂……♂×♂……)ソワソワ


結「君は?」

ほむら「中等部の後輩よ。まさか先輩にそんな趣味があったなんて知らなかったわ」

桂馬「ほ、ほむら!! そんなこと言ってないで助けてくれーー!!」


マミ「あの人は、この間の桂木先輩よね……?」

さやか「相手は男!? しかも転校生まで割り込んでるし、どうなってんの!?」


エルシィ「ゆ、結さん!!」

結「あ、エルシィ。今日のバンドの練習は? 本番も近いのにズル休みはダメだよ!!」


栞「……と、とと、図書館では、静かにしろい……」ボソ


桂馬「ハァ……ハァ……。なんとか逃げ切れたな……」

エルシィ「だ、大丈夫ですかにーさま?」

桂馬「こ、怖かったよ~~エルシィ~~。もう今日の攻略はやめよう……」


エルシィ「あっ!! にーさま、向こうの歩道に」

桂馬「マミとまどかとさやかの三人か」


桂馬「ほむらは、マミが絶望しないようにとか言ってたけど大丈夫そうだな」

エルシィ「いつも三人で帰ってるなんて仲がいいんですね~~!!」

桂馬(……確か、まどかとさやかも魔法少女候補だったな……)

エルシィ「どうしたんですか?」

桂馬(……今のうちから情報を収集しておくか……)


桂馬「エルシィ、あの三人の後を追うぞ。羽衣の準備だ」


マミ「それじゃ、また明日」

まどか「さやかちゃん、またね~~!!」


さやか「さーて、あたしも行きますか」


エルシィ「さやかさん、別れましたね」

エルシィ「マミさんとまどかさんは自宅の方向へ向かってます」

桂馬「この先は、病院か……」

桂馬「そういえば前にもこの辺りで会ったな」

エルシィ「さ、ささ、さやかさん病気なんでしょうか!?」

桂馬「元気で活発少女が実は病弱? ギャルゲー的になくはないが……」

エルシィ「にーさま、どうします?」


桂馬「……病院は特殊なイベントだ。このルートはさやかを選ぶぞ」


桂馬「まさか病院の中でさやかを見失うとは……」

エルシィ「す、すみませーーん!!」

桂馬「さやかを探すぞ。ここは重大なイベントの可能性がある」

エルシィ「は、はい。それじゃ私は向こうを探します~~!!」


桂馬(……魔法少女候補か……それなら、願い事は……)




さやか「あれ、オタメガ先輩、そんな所でなにやってんの?」

桂馬「!? えっと、美樹さん、だったかな」

さやか「図書館での彼氏はもういいんですかぁ?」

桂馬「み、見てたのか!?」

さやか「あのかのんちゃんが彼女なのに、まさか男の彼氏もいるんだからね~~」

桂馬「思い出させるな~~!! やめてくれ~~!!」


さやか「っと、そういえばオタメガ先輩は転校生の仲間か」

桂馬「…………」

さやか「あんまり仲良くは出来ないよね」


桂馬「一つだけ聞かせてほしい」


桂馬「美樹さんはこの病院で何を?」

さやか「あたし? あたしは恭介の見舞いで来てるのさ」

桂馬「お見舞い……? それ、僕も行っていいかな」

さやか「えっ!? あー……なんだオタメガ先輩、恭介のファンだったのか」

桂馬「は……? いや、あぁ、そうだね」

さやか「それなら任せてよ!! あたしが恭介に会わせてあげるからさ!!」


さやか「――――で、その変わった先輩が、どうしても恭介の見舞いに行きたいって言うから」

恭介「僕は別に構わないよ」

桂馬「……どうも」ピコピコ

恭介「……さやか、ゲームしてるんだけど……」

さやか「噂は本当だったんだ……」


さやか「あ、恭介。今日もCD持ってきたからさ、後で聴いてね」

恭介「……さやかは、僕をいじめてるのかい……?」

さやか「えっ……」

恭介「もう聴きたくないんだよ!!!! 自分で弾けもしない曲なんて!!!!」




桂馬「その腕を振り下ろせば、天才ヴァイオリニストは気が晴れるのか?」




恭介「なっ!?」

桂馬「お前のことは先ほど聞かせてもらったよ」ピコピコ

さやか「…………」

桂馬「事故で手が動かなくなった天才ヴァイオリニスト、上条恭介」


桂馬「お前の最善のルートはそれか?」


桂馬「自分を想ってCDを買って来た彼女のプレゼントを壊すことが」

恭介「そ、それは……」

桂馬「お前の最善のルートを探せ、なければ作れ、どんな時もルートはある」

恭介「ぼ、僕は……」

桂馬「どうした、天才ヴァイオリニストはここで諦めるのが一番のルートか?」


さやか「……っっ!!」


パァン!!


恭介「さやか!?」


さやか「出てって……出てってよ!!!! 恭介のこと何にも知らないくせに!!!!」


さやか「――――ごめん恭介、あんな最悪な先輩連れて来て……」

恭介「いや、いいんだ。僕のほうこそごめん、さやかに酷いことをしようとした」

恭介「……諦めろって言われたのさ。今の医学ではどうしようもないって……」

さやか「そんな……そんなこと……」


QB(……桂木桂馬、本当に酷い男だったね。さやか)


さやか(……キュゥべえ……?)


QB(あんな事しか言えないのに、神を名乗るなんて、どうかしてるよ)

QB(さやか、分かってるね? 君の願いを叶えられるのは、偽りの神じゃない、僕さ)


恭介「……でも、そうか。今の医学がダメでも、きっと未来なら、そんなルートも……」


さやか「大丈夫だよ!! 恭介はすぐに治るよ!!」

恭介「さやか……。そんなの、奇跡か魔法でもない限り、神様でもないと……」




さやか「――――――――神なんか、いないよ。でも、奇跡と魔法は、あるんだよ」




桂馬(……アレで当分の間はさやかは魔法少女にはならない……)

桂馬(……女神捜しがある以上、見張るのはマミだけで手一杯だ……)


エルシィ「も~~、にーさま!! なんであんなヒドイこと言ったんですか!?」

桂馬「エルシィ、病院では静かにしろ」

エルシィ「あんなこと言われたら誰だって怒りますよ~~!!」

桂馬「いいんだよアレで。前にも言ったろ、好きと嫌いは――――」


ドロドロドロ!! ドロドロ……ドロ……ドロ?


エルシィ「か、駆け魂!? ……あれ? 違うみたいです。また変な反応……」

桂馬「おいおい、その駆け魂センサー早く修理してくれ」

エルシィ「調べたんですけど、どこも壊れてなかったんですよ~~」


桂馬「…………――――――――――――」


桂馬「とにかく、お前はそれが使えないとポンコツ小悪魔じゃなくてスクラップ小悪魔になるぞ」

エルシィ「うーー!! にーさま、やっぱりヒドイですぅ~~!!」


エルシィ「ほ、本当に出来るんですよね、にーさま……」

桂馬「あぁ、女神候補と一斉下校イベントだ!!!!」




月夜「――――晴れた夜なら……」


歩美「――――わ、私、あんた相手してるほど、ヒマじゃないの!!」


ちひろ「――――なんで私あんたとこんな話してんの、気持ち悪いなぁ!!」


栞「――――あの、星雲『合成ネギ』ラーメン、です……」


結「――――大丈夫、愛があれば乗り越えられるよ!!」




エルシィ「にーさま、予定通り全員の好感度は5ずつ上がりましたかね?」

桂馬「な、なんとかな……!!」


ほむら「……美樹さやかが、魔法少女になったわ……」

エルシィ「えぇぇーー!? 本当ですかーー!?」

桂馬「なんだ、結局魔法少女になったのか。あの後にフラグが分岐するイベントがあったみたいだな」

ハクア「桂木、よかったの?」

桂馬「さやかは叶えたい願いがあって魔法少女になったんだ、僕達が無理に止めることは出来ないよ」

ハクア「それは、そうだけど……」

桂馬「まぁ女神捜しと並行して魔法少女の絶望回避をしないといけないのは厄介だが……」

かのん「その子も、大事な願い事を一つ叶えてもらって魔法少女になったんだよね」

ほむら「えぇ、そうなるわね」


桂馬「ほむらの話だと、魔法少女になることのデメリットは魔女狩りや縄張り争いらしいが」

ほむら「………………………………」

桂馬「この街には魔法少女の先輩のマミがいる、だが友人関係のさやかと争うとは考え難い」

桂馬「さやかはマミと協力して上手くやれるはずだ、さやかのことは心配いらないよ」


桂馬(……ほむらの話が本当なら、な……)


エルシィ「はーーい!! 私考えました!! みんなで魔法少女になるのはどうでしょう!?」

桂馬「は……?」

エルシィ「みんなで魔法少女になれば、そのワルプルギスというのを倒せるのではないでしょうか!?」

ハクア「エルシィ、私達は悪魔でしょ」

エルシィ「え~~、ハクア、悪魔でも魔法少女になれるかもしれないよ~~!?」

桂馬「……なるほど。ポンコツな意見かと思ったが、女神の力を超える魔法少女の人数を用意すれば……」


ほむら「…………ゃ、めて…………」


かのん「え、え、もしかして私も……!?」

エルシィ「かのんちゃんの魔法少女姿なんて絶対カワイイですよ~~!!」

かのん「魔法少女……なんだか私いつかやるような気が……」


桂馬「女神捜しなんてせずにゲームが出来る!! リアル女がみんな魔法少女になってしまえば――」

ほむら「やめてっっ!!!!」

桂馬「……ほ、むら……?」


ほむら(――――貴方から、そんな言葉、聞きたくなかった……)


QB「いやぁ、まさか君が来るとはね」

杏子「なんだよ、面白いことになってるって聞いてわざわざ来たんだけど」

QB「あぁ、その件だけど、さっき契約して新しい魔法少女が増えたんだ」

杏子「はぁ? 話が違うじゃんか?」

QB「それでこの土地には三人の魔法少女がいることになるね」

杏子「へぇ、ここが絶好の縄張りなのは知ってたけど、そいつは確かに面白いな」


QB「どうするんだい杏子?」


杏子「決まってんじゃん。まずはルーキーのヒヨっ子をブッ潰す」

杏子「それから他の魔法少女も潰して、全部あたしのモンにするさ」


QB(極めつけのイレギュラー、暁美ほむら。それと『特異点』桂木桂馬)

QB(この二人が手を組むなんて、何をするつもりなのか僕にも予想しきれない)

QB(……計画の妨げになる前に……)


桂馬「……三日で下校イベントまでこなしたが、進みは遅いな……」

エルシィ「にーさま、今日はどうしますか?」

ハクア「ちょっと桂木、しっかりしてよね」


ノーラ「はぁい、久しぶり☆」

桂馬「……」 エルシィ「……」 ハクア「……」


桂馬「おい、ノーラだぞ!? どういうことだ!?」ボソボソ

エルシィ「さ、さぁ? 私はかのんちゃんのことは報告してませんよ~~」

ハクア「な、何の用かしら? かのんの女神のことは知らないはずだけど……」


ノーラ「ちょっと、無視しないでよ。新しい駆け魂隊の悪魔の紹介に来たんだから」

エルシィ「新しい、悪魔ですか?」

フィオ「エルシィ、ハクア、よろしく。極東地区は初めてで不安だったけどホッとしたわ」

ハクア「フィオ!?」


桂馬(……アポロの話ではかのんを襲った奴はフィオーレと名乗ったと言ってたな……)

ハクア(フィオがここにいるってことは、あの女神の話は本当でフィオはヴィンテージ!?)


エルシィ「こ、これから一緒に頑張りましょ~~!!」

フィオ「……そうね。色々頑張らないといけないわ」


桂馬「と、とにかく帰らせろ。僕の家でかのんを匿ってることがバレるといけない」ボソボソ

ハクア「わ、分かったわ……。ノーラ、フィオ、ごめん。私達これから出かけるから」


ノーラ「えーー、お茶ぐらい出しなさいよ。裏の情報教えてあげないわよ」

エルシィ「裏の情報? ノーラさん、それは何ですか?」

ノーラ「法治省からの新しい指令『人間界に潜伏する天界人の捜索』よ」

ハクア「何よその指令!? 聞いてないわ!?」

ノーラ「発令は明日よ。とうとう女神の噂が現実になった訳よね。それじゃ帰るわ」

フィオ「女神……まったく見当もつきませんね……」

桂馬「女神ってなんのことですかぁ?」

ノーラ「お前には関係ねぇ!!」

ドゴッ


桂馬「……なんとか、やり過ごせたか……」

エルシィ「どうしましょう!? 明日から悪魔も女神捜しを始めますよ~~!?」

桂馬「落ち着けエルシィ。僕達の方針は変わらない」


ハクア「フィオ……」


桂馬「あのフィオーレがヴィンテージなら僕達のやっていることが知られる訳にはいかない」

桂馬「エルシィ、ハクア、上手く誤魔化してくれ」

エルシィ「はい、にーさま!!」

ハクア「わ、分かってるわよ」

ハクア(……フィオ、何かの間違いよね……)


桂馬(……誰が来ても関係ない。エンディングを見るのは……)




桂馬(……僕だ!!!!)




桂馬(――――すごく面白かったよ!! 続きが読みたいな!!)カキカキ

栞(――――これからも、私の話、読んで下さい……)カキカキ


桂馬「一応、あの答えで良かったのか……」

桂馬「まぁ、仕方ない。完成が何より大事なんだ……」


桂馬(……多少時間は押したがイベントをこなさないと……)

桂馬(……エルシィ達はまだバンドの練習中か。さて、次は誰に行くか……)


マミ「…………」


桂馬(……あれは、マミか。まどかもさやかもいないが、どこに行くんだ……?)


マミ「はぁ……こんな広い屋上の掃除を一人でなんて、無理よね……」

桂馬「なにやってるんだ?」

マミ「っっ!? って、桂木先輩ですか」

桂馬「その掃除用具、そうか、中等部は舞高祭の前に大掃除をするんだったな」

マミ「そうですよ。今から掃除するので先輩はどこかに行って下さい、邪魔です」

桂馬「他のクラスメイトはどうした、屋上掃除の班にお前だけということはないはずだが」

マミ「そ、それは……みんな、サボって……」


桂馬「…………」パシッ、ザッザッ


マミ「な、なにを……」

桂馬「何って、屋上を掃除するんだろ? 一人だと日が暮れても終わらないぞ」

マミ(……どういうこと、また私を助けて貸しを作るつもり?)

マミ「やめてもらえるかしら。暁美ほむらの仲間に、また助けられる訳にはいかないわ」

桂馬「なら助けたときの貸しを返してくれ。僕はマミを手伝いたい、これで貸し借りはなしだ」


マミ(……な、何なの、この人……)


桂馬「ふぅ、これでやっと半分か。いつもは気にしてなかったがここの屋上は広いな……」

マミ「……桂木先輩、一つだけ答えて。これは暁美ほむらの差し金なのかしら?」

桂馬「ほむら? いや、ほむらは関係ない。これは僕個人でやっていることだ」

マミ「そ、そう……」

桂馬(……まぁ、そのほむらに頼まれて攻略まがいのことをやっているワケだが……)

桂馬(……絶望させないようにと言われても、エルシィの言うとおりこの方法しか……)

桂馬(……それに、僕の仮説が正しいなら……)


ドーン!!


桂馬「おいおい、屋上の掃除って言っても、こんな重たいベンチを動かさなくても……」

マミ「そ、そんなこと言ってる場合じゃないわよ!! な、なにこれ……」

桂馬「ベンチが、浮いて……」


フワフワ、ドーン!!


桂馬「おわ!? 単なる超常現象じゃない、僕を狙ってる!?」


桂馬(……落ち着け、これは人間の力じゃない……)

桂馬(……悪魔、ヴィンテージ、いや、僕が狙われる理由はない……)


桂馬「マミ!! これは魔法少女、いや、魔女の仕業か!?」

マミ「私は魔力を全く感じなかった、これは魔女の力じゃないわ!!」

桂馬「……それなら、こいつは……!!」


??「私は、ウルカヌス。貴様ニ警告スる、屋上カら出て行ケ」


マミ「人形が喋ってる!?」

桂馬(……ルナ、月夜の人形、女神!!)


ルナ「月夜ノところには行かせナイ!!」


桂馬「月夜ーーーー!!!! そこにいるんだろ!? 話しを聞いてくれーー!!」


月夜「あなたなんて知らない、大キライ。ルナ、その人を追い払って!!」


ドゴーン!! ドゴーン!! ドゴーン!!

マミ「ちょっとこれどういうこと!? 説明してもらえるかしら!?」

桂馬「マミ、説明は後だ!! 今は避け続けろ!!」


桂馬「月夜!! 何でこんな事をする!? 僕が何をした!?」


ルナ「!?!?!? なんで、ダト?」

ルナ「かのんトいう歌手と浮気して、今もそこノ後輩と仲良くシテいた不届き者が!!」

桂馬「そんなのは知らない、何かの間違いだろ」

ルナ「お前のヨウな嘘ツキ男はベンチで潰してヤル!!」


桂馬(……女神出現という大きなイベント……)

桂馬(……マミのいるこの状況で同時攻略ルートは……。考えろ、落とし神……)


桂馬(……悪い状況は重要なステップになる、ここは勝負してもいい時だ!!)


マミ「桂木先輩、このまま避け続けてもいつかは逃げ切れなくなるわよ」

桂馬「マミ、魔法少女の力で僕を援護してくれ」

マミ「ど、どういうこと?」

桂馬「僕はあの遠くにいる月夜までの一直線上を走る。ルナが投げる障害物を撃ち落としてくれ」

桂馬「それでこの問題は解決する。合図したら行くぞ」

マミ「ちょ、ちょっと待って」

桂馬「なんだ?」


マミ「で、出来ないわ……。もし、私が外したら先輩はベンチの下敷きに……」


桂馬「――――外さない、マミなら出来るよ」


マミ「な、なな、なんでそう言い切れるの!?」

マミ「私は、暁美ほむらの仲間の貴方を敵対視してたのに、なんでそこまで信用出来るのよ!!」


桂馬「マミは魔法少女になって、この街を守っていたんだよな」

マミ「な、なにを……言って……」

桂馬「そんな君なら出来る。僕は信じているよ」


桂馬「行くぞ!!」

ダッダッダッ


ルナ「なンだ? 捨て身ノ特攻か? ベンチで潰してヤル!!」

パァン!! ボロボロ…

マミ「そうはさせないわ!!」

ルナ「その姿は!? 普通ノ人間ではナイのか!?」

マミ「貴方が何者かは知らないけど、私は魔法少女よ!!」

ルナ「くっ……月夜に近付けハさせナイ!!」

パァン!! パァン!! パァン!!

ルナ「……ヤルな、魔法少女!!」


マミ「信じてくれている先輩に、カッコ悪いとこ見せられないもの!!」


桂馬「月夜ーーーー!!!!」

月夜「やっと、忘れられそうだったのに……」


桂馬「仕方ない、僕らが出会ったのは、運命なんだから……」ギュ

ドゴォ

月夜「何が運命よ!! そっちが勝手に近づいてきたくせに!!」

桂馬「もっと痛めつけてくれていい、どんな罰を受けてもいい……」

月夜「桂馬……?」

桂馬「あと少しの間だけ、僕を好きでいてくれ。じゃないと月夜を守れない」

月夜「私は、桂馬を信じていいの?」

桂馬「雨が降っても、ベンチが降っても、僕は月夜の場所まで行く」

桂馬「僕は死んだって月夜を守るよ」

ギュ

月夜「……んん……あ、ああっぁぁ!!」

桂馬「月夜!? 大丈夫か!?」

月夜「あ、あぁ……」バサァァァァ


マミ「――――という事は、詮索はするなということかしら」

桂馬「あぁ、そういう事になる」

桂馬(……ここはまだマミに女神の話をする場面じゃない、何とか切り抜けるぞ……)

マミ「九条先輩からは魔力を感じないし、魔女に操られてることもなさそうだけど……」

桂馬「その心配はいらない」

月夜「魔力? 魔女? 何の話か分からないのですね」

マミ「まぁ、こっちも魔法少女のことをバラされるワケにはいかないから、詮索は止めるわ」

月夜「巴マミ、聞き分けのいい後輩なのですね」

桂馬(……助かった、か?)


マミ「ただし、一つだけ条件があるわ」

桂馬(……やはりか、何を聞かれるか。僕とほむらの目的? いや、正直に言うことは……)


マミ「この荒れた屋上の修復と掃除、手伝ってもらいます」

桂馬「あ……」
月夜「あ……」


ウル「――――なるほど、大体の事は把握した」

ディアナ「お互い、変わり果てた姿ですが、これも人間界のため……」

アポロ「わらわ達が集まれば、ワルプルギスの夜とかいう魔女など余裕で倒せるぞよ」


ウル「ほむらといったな。我らユピテルの姉妹、お前に力を貸そう」

ほむら「えぇ、お願いするわ」


ディアナ「……ところで、ウルカヌス姉様には翼が生えてますね……」

アポロ「おぉ、そういえばそうじゃな」

ディアナ「何か特別な愛のやりとりでもしましたか!?」

桂馬「してないしてない」

ウル「これ、私の妹とはいえ、月夜以外の女性と話さぬように」


エルシィ「なんだか賑やかになってきましたね~~!!」

ハクア「……そう思ってるのはエルシィだけよ」


ディアナ「――――私と、キスしませんか?」

桂馬「は、はぁ!?」




ウル「――――ときに桂木。まさか女神の宿主は全員お前の恋人なんてことはないな?」

桂馬「さぁ、まだ他の女神に会ったことないからな」




桂馬(……女神を出したが、力が全部戻った訳じゃない。女神攻略はまだ続いている……)


桂馬(……女神は、残り三人……)


桂馬(……僕は、やるべきことを、やるだけだ!!)




桂馬「――――うっぷ、ケーキバイキングのせいで吐き出しそうだ……」

桂馬「結……。強力なプレイヤータイプだが、僕にも考えがある」

桂馬「神になるんだ……。落とされ神に……!!」


エルシィ「か、神にーさま……。そ、その格好は……?」

桂馬「エルシィ、練習に着てみたんだ。どこかおかしな所はないか?」


ほむら「――――桂木桂馬。まさか女装の趣味まであったとは知らなかったわ」


桂馬「ほむら!? お前いつからそこに!?」

ほむら「貴方が『女の子の格好でケーキを食べに行きたい』と言ったところからよ」

桂馬「言ってねぇぇええーーーー!!!!」


ドロドロ、ドロドロ

エルシィ「に、にーさま!! 天理さんが!!」


天理「……ディアナ。やっぱりここ、変だよ……」

ディアナ(やはり何かの結界のなか、悪魔と似た力を感じます)

天理「桂馬くんに貰ったタグを切ったから、知らせはいってるよね……」

ディアナ(あまり女神の力を使うワケにはいきませんから、仕方ありませんね)


使い魔「!?!?!?」

使い魔「!!!!!!」

天理「あ、ああ……ディアナ……」

ディアナ(……な、何なんですかこの者達は……。しまった、囲まれている!?)


ザシュ!! パァン!! ドゴーン!!

さやか「魔法少女さやかちゃん!! ただいま参上!!」

マミ「まだ使い魔がいるわ、油断しないで」


まどか「大丈夫ですか!?」

天理「あ、あなた達は……」


天理「あ、あの……ありがとう、ございました……」

さやか「気にしない気にしない。私達お礼を言われたくてやってるんじゃないんで」


??「……はぁ、なんかさぁ、新人が大元から勘違いしてるよねぇ」


さやか「だ、誰!?」

まどか「魔法、少女……?」

マミ「杏子!? どうしてここに……」


杏子「さっきの使い魔にそいつを喰わせれば、魔女になってグリーフシードを孕むってのに」

さやか「な……!? アンタ、魔女に襲われてる人を見殺しにしろって言うの!?」

杏子「弱い人間を魔女が喰う、魔女を私達が喰う。それが食物連鎖でしょ?」

杏子「まさかとは思うけど、正義や人助けで魔法少女やってるんじゃないよねぇ?」


ガキィィィィン!!

さやか「……このぉぉーー!!」


杏子「何すんのさ。頭冷やせよ、トーシロがぁぁーー!!」


マミ「二人とも!! 止めなさい!!」


まどか「……どうして、味方同士で戦わなきゃならないの!?」

まどか「ねぇ、止めさせてよ、キュゥべえ!!」

QB「あの戦いに割り込めるのは同じ魔法少女だけだ、僕には出来ない」

QB「だけど君にはその資格があるんだよ、まどか」


杏子「これで……終わりだよ!!!!」

さやか「ぐっ……あ……」


まどか「――――わ、私……!!」


??「それには及びません」

??「それには及ばないわ」


杏子「……な、アタシが外した!? テメェ等か!?」

さやか「て、転校生と、さっきの人……」


ほむら「女神ディアナ……」

ディアナ「暁美さん……。今、どうやって……」


エルシィ「天理さーーん!! 大丈夫ですかーー!?」

桂馬(……この状況、どうなってるんだ……)


桂馬「ディアナ、大丈夫なのか? 天理は?」

ディアナ「私も天理も無事です。そこの魔法少女の皆さんに助けてもらいました」

ディアナ「それより桂木さん、女神の力を使ってしまって、すみません」

桂馬「無事ならそれでいい。なんとかヴィンテージに見つかってないといいが……」


杏子「……あぁ、そうか。アンタ達が噂のイレギュラーか!!」

さやか「誰だって関係ない……。私の邪魔すんなぁぁーー!!」


ディアナ「止めなさい、人間同士で争ってどうするのです!!」

マミ「そうよ、二人とも止めて!!」

まどか「さやかちゃん……」


桂馬「……さやか。お前は魔法少女のことが人にバレてもいいのか?」

さやか「は? オタメガ先輩、何を言って」

桂馬「周囲を見ろ、魔女の結界が消えている。こんな大騒ぎをしていたら通報されるぞ」


ほむら「冷静ね、桂木桂馬。貴方はどうかしら、佐倉杏子」

杏子「ッ!? なんで名前を……マミのやつか……?」

ほむら「さぁね。ただ一つ言えることは、私は冷静な人の味方よ」

杏子「チッ、アンタ達、何者だよ……」


杏子「まるで手札が見えないとあっちゃねぇ。今日のところは退いた方が良さそうだ」


さやか「ま、待て……!!」ガクッ

まどか「さやかちゃん!!」

マミ「人が集まる前に、私達も退いた方が良いわね」


まどか「あ、あの、お姉さんとほむらちゃん。助けて、もらったんですよね」

ディアナ「いえ、私は争いを止めようとしただけで、何も――」

ほむら「言ったわよね、鹿目まどか」

ほむら「貴方は関わってはいけないと、もう散々言い聞かせたわよね……!!」

桂馬(……ほむら、どうしたんだ……?)

ほむら「どこまで貴方は愚かなの!?」

まどか「……ほむらちゃん……」


エルシィ「ほ、ほむらさん……?」

桂馬「お、おい、何もそこまで……」


ほむら「……人が集まってきてるわ。私達も早く行きましょう」


エルシィ「――――結さんと女装した神にーさま、楽しそうでした~~!!」

桂馬「お前には、結と下着の話をしてる僕が楽しそうに見えるのか……」グッタリ

桂馬(……まぁ、結のほうは、なんとか上手くいってる……)


桂馬(……今は、魔法少女のほうを考えないと……)

桂馬(あの後ほむらはすぐに消えるし、ディアナの話だけでは情報が少ない)

桂馬(新しく現れた魔法少女も僕が攻略しないといけないのか!?)

桂馬(ディアナの話だと、かなり好戦的な様だが、話が通じる相手なのか……?)


ディアナ『あのさやかという少女、とても不安定なものを感じました』

桂馬(……さやか、何かあったのか……。とにかく情報が少な過ぎる!!)


桂馬「エルシィ、さやかが今どこにいるか分かるか?」

エルシィ「えーと、さやかさんなら高速道路の近くの大きな鉄橋の方へ歩いてますよ」

桂馬「確かあの辺りは何もなくて、人通りも少ないはず、何を……まさか……」


杏子「それで、ここに来るまでに考えは変わったかい?」

さやか「この魔法の力で恭介を、なんて……。私はお前を許さない!!」

杏子「そうかい。それなら、いっちょ派手にやろうじゃん!!」


マミ「杏子!! 美樹さん!!」

まどか「さやかちゃん!! 駄目だよ、こんなの絶対おかしいよ!!」

さやか「マミさん、まどか、ごめん。でも、私はコイツだけは許せないから」


杏子「またマミとその仲間か。ウザい奴にはウザい仲間がいるもんだねぇ」

ほむら「……貴方はどうなのかしら。昼間の話と違うわ、佐倉杏子」

杏子「げっ……。分かってるよ。ワルプルギスの夜を倒すまでコイツ等と協力しろ、だろ?」

ほむら「えぇ、そうしてくれれば巴マミのこの土地を貴方の縄張りにするのを手伝うわ」

杏子「でもよ、今回はあっちからふっかけて来たんだぜ?」

ほむら「それでもよ。ここは私が相手をするわ」


さやか「な、なめんじゃないわよ……!!」

まどか(……ママ、私……)

まどか「さやかちゃんごめん!!!!!!」パシッ

まどか「えいっ」ポイッ

ほむら「……ッ!!!!」

さやか「まどか!? あんたなんて事を――――」ドサッ…


まどか「さやかちゃん? どうしたの?」

QB「……やれやれ。友達を放り投げるなんて、どうかしてるよ、まどか」

まどか「なに? なんなの?」

杏子「……おい、どういうことだ。コイツ、死んでるじゃねぇーかよ!!!!!!」




桂馬「エルシィ!! ハクア!!」

エルシィ「はい、にーさま。あれを取ってくればいいんですね!?」

ハクア「行くわよエルシィ!!」


QB「――――ということさ。ソウルジェムは君達の魂なんだよ」

杏子「てめぇ、それじゃあたし達はゾンビにされたようなもんじゃないか!!」

マミ「キュゥべえ……嘘、よね……」

まどか「酷過ぎるよ……」

QB「どうして人間はそんなに魂の在り処に拘るんだい? 訳が分からないよ」

QB「むしろ便利だろう? それを砕かれない限り君達は無敵だよ」


桂馬「……確かにそうだな。リアルは不便なことばかりだ」


まどか「桂木、先輩……?」

マミ「どうして、ここに……」

杏子「あの時にいたヤツか……」


QB「まさか、君と意見が合うとは思わなかったよ。桂木桂馬」


ハクア「エルシィ!!」

エルシィ「うん、ハクア!!」


「「羽衣!!!!」」


運転手「う、うわっ!?」

キキィィーー

運転手「な、なんだぁ……。タイヤに何か引っかかったような……」

運転手「……別になんともなってねぇか、おかしいなぁ」


ほむら「はぁはぁ……」


ほむら「…………」ギュ


ほむら「貴方達、どうしてここに……」

エルシィ「にーさまが」


桂馬『全く、これだからリアルは困る。大事なモノは捨てられないように設定してないのか』


エルシィ「って言ってました!!」


ハクア「お前がここまで追いかけて来たってことは、大事なモノ、なんでしょ?」

ほむら「えぇ、そうよ」


エルシィ「さぁ、ほむらさん、早く戻りましょう!! 皆さん待ってますよ!!」

ほむら「……そうね」


ほむら(……貴方に、全て知られることになるわね……)


さやか「――――騙してたのね、あたし達を。なんで教えてくれなかったの?」

QB「聞かれなかったからさ。別に知らせなくても何の不都合もないからね」

さやか「なんで……どうして……!!」

QB「君達はいつも決まって同じ反応をする。でも今回は、理解者もいるようだね」


桂馬「あぁ、確かにリアルはクソゲーだ」

桂馬「僕はゲームだけをやっていたいのに、食事も睡眠もしないといつかは倒れてしまう」

QB「人体は弱点だらけだからね」


桂馬「学校にも行かないといけない、リアルは理不尽なことばかりだよ。……でも……」

さやか「……オタメガ、先輩……?」


桂馬「でも、だからと言って、好き勝手に魂を抜かれたいとは思わないな」

QB「…………」


桂馬「まるで、悪魔だな」

QB「……それは、僕のことかい?」

桂馬「あぁ、契約内容を説明せずに契約する所なんてそっくりだよ」


エルシィ「えへへ、懐かしいです~~」

ハクア「エルシィ、褒められてないわよ」


さやか「あ、悪魔……?」

桂馬「そう、僕は悪魔と契約した。ある事をやり遂げないと、この首輪が僕を殺すんだ」

まどか「そ、そんな……」

桂馬「でも僕の契約者の悪魔は、律義にも自分の命も僕と対等にかけてくれたよ」

桂馬「そういう意味では、お前は悪魔より悪魔らしいな、キュゥべえ」


QB「……悪魔、か。僕のことをなんと呼んでくれても構わないよ」

QB「でも、君達には戦いの運命を受け入れてまで叶えたい望みがあったんだろう?」

QB「それは間違いなく実現したじゃないか、さやか」


ディアナ「――――そんな、それなら魔法少女達は……」

アポロ「……うむ、信じたくない話じゃが……」

ウル「信じるしかなさそうだ……」


ハクア「私は初めから魔法少女の話もキュゥべえとかいうのも胡散臭いと思ってたのよ」

エルシィ「ハクア、さやかさん達だって騙されたくて騙されたんじゃないんだよ~~!!」

ハクア「分かってるわよ、でも、私達にはどうする事も……」

エルシィ「うん……」


ディアナ「それはそうと、桂木さんと暁美さんが見当たりませんね」

アポロ「!?」 ウル「!?」 ハクア「!?」

エルシィ「そういえばそうですね~~。にーさま、どこに行ったんでしょう?」


ほむら「――――桂木桂馬。私を自室に連れ込んで何をしようというのかしら」


桂馬「……どうして隠してた?」

ほむら「質問の意図が分からないわ」

桂馬「魔法少女の魂のソウルジェム化。ほむら、お前は知ってたんだろ」


ほむら「…………。えぇ、知ってたわ」

桂馬「知っていて、あえて、僕に隠してたんだな」


ほむら「それを貴方が知れば、貴方は美樹さやかが魔法少女になるのを絶対に阻止していた」

桂馬「…………」

ほむら「女神捜しを放棄してでも。貴方はそういう人よ」

桂馬「それは……」

ほむら「でも、ワルプルギスの夜を倒すには美樹さやかも女神も必要なのよ」


ほむら「もう後戻りは出来ないわ。美樹さやかは、既に人間ではないのだから」


桂馬(……あれだけフラグがあったのになぜ気付かなかった……)

桂馬(……僕のせいだ……さやか……お前を……)


天理「……桂馬くん」

桂馬「天理? さっき帰ったんじゃなかったのか」

天理「桂馬くんに手品を見てもらおうと思って、それで笑ってくれるかなって」


桂馬「僕は、大丈夫だよ。でも、ありがとう」ニコッ

天理「……あの、無理に笑わないでいいよ」


桂馬「…………」

桂馬「そうだな。それでも、前に行かなきゃ終わらない」

天理「桂馬くん?」




桂馬(……さやか。僕はお前を、攻略する……!!)




さやか(……こんな身体になっちゃって、あたし、学校になんか行けないよ……)

さやか(……マミさんも真実を知ってツライんだろうけど……でも、あたしは……)

さやか(……どんな顔して恭介に会えばいいのかな……)


??(いつまでもショボくれてんじゃねーぞボンクラ!!)


さやか「ッ!?」


さやか「あっ……」


杏子(ちょいと面貸しな、話がある)


杏子「――――それで親父は壊れちまった。あたしの祈りが家族を壊しちまったんだ」

さやか「あたし、あんたのこと色々と誤解してた。その事はごめん、謝るよ」

杏子「いいさ。さて、そろそろ出て来たらどうだい? それとも最後まで盗み聞きか?」

さやか「えっ……?」


桂馬「…………」


さやか「オタメガ先輩……。また、どうしてここに……」

杏子「暁美ほむらの仲間だかなんだか知らないが、折角あたしの話を聞かせてやったんだ」

杏子「何か目的があるみたいだが、もう魔法少女に関わるのは止めろ」

杏子「希望は後悔しか生み出さない、分かっただろ?」


さやか「……あたしは、そうは思わない」


さやか「後悔なんてしてないし、この力は使い方次第で素晴らしいことが出来る筈だから」

杏子「なっ、バカ野郎……!! なんでアンタは……!!」

さやか「そのリンゴ、どうしたの? お金は? あたし、そのリンゴは貰えない」


杏子「バカ野郎……」

桂馬「後は、僕に任せてくれ」

杏子「お、おい……。チッ、どいつもこいつも……」




桂馬「――――さやか!!」

さやか「何? ついて来ないでよ」


さやか「……あっ、そうだ。まどかとマミさんから聞いたよ」

さやか「ソウルジェムを取りに行くのを助けてくれたって。その事は、お礼を言う。ありがとう」

桂馬「あぁ、でもそんな事は気にしてないよ」

桂馬(それに助けたのは正確にはエルシィとハクアだが、まぁいいか)

さやか「でも、恭介の病室で叩いた事は謝らないから」

桂馬「それでいい。それもフラグの一つになる」

さやか「は……?」

桂馬「これからどうするんだ?」

桂馬「学校は休んだみたいだし、時間はあるんだろ?」


さやか「そんなの、先輩には関係ないでしょ」


桂馬「いや、関係ある。なぜなら……」




桂馬「僕とさやかは今からデートに行くからだ」




さやか「――――強引にもデゼニーシーの入り口まで連れて来られたワケだけど……」

さやか「はぁ、あたし何やってんだろ……。そりゃ魔女捜しまで時間はあったけどさ」

さやか「なんであたしがオタメガ先輩なんかと、デ、デデ、デートなんて……」

さやか「それにあたしには恭介が……」

さやか「……って、退院した事も教えてもらえないあたしは、恭介の何でもないか……」


桂馬「ブツブツ何を言ってるんだ?」


さやか「オタメガ先輩!! 準備があるとか言って、いつまで待たせ――――」

桂馬「どうした?」

さやか「そ、その格好は……?」

桂馬「これは秘密兵器だ」

さやか「やっぱり女装が趣味なんだ……」


結「桂木くーーん!! 待たせちゃったかな?」


さやか「オタメガ先輩、これは何? 何なの?」

桂馬「だから、今からこの三人でダブルデートだ」

さやか「ダブルデートの意味違うし」


結「桂木くん、この女子は?」

桂馬「結、聞いてくれ」

桂馬「僕には遊園地の知識はない。でも、結との初めてのデートで失敗したくないんだ」

桂馬「だから、遊園地に詳しそうな友達のさやかを連れて来たんだ」

さやか「いや友達って……なった覚えないんだけど……」

さやか(……まぁそんな事だろうと思ってたけどさ。変人で有名なオタメガ先輩だし)

結「なんだ、そういう事かぁ」


結(……初めてのデートが恥ずかしくて友達を連れて来るなんて、桂木くんはカワイイなぁ!!)

マルス(……良かったのか? あんなに二人のでぇとを楽しみにしていたのに)

結(それは確かに残念だけど、それならそれで、このデートで僕をアピールするだけさ!!)


結「僕は五位堂結。桂木くんと同級生だよ」

さやか「えっと、あたしは美樹さやか。中等部でも話題の男装の五位堂先輩ですよね」

結「やっぱり中等部にも知られてるんだ……」

さやか「オタメガ先輩と五位堂先輩……。あっ、図書館のときの!!」

結「えっ? あぁ、僕と桂木くんの関係を知っているんだね」

桂馬「変な言い方するんじゃねぇぇええ!!」


さやか「あの、あたしお邪魔みたいなんで帰るんで」

桂馬(……!? 不味いな、今さやかを帰すワケには……)

結「えぇ!? 美樹さん、折角ここまで来たんだ。一緒に遊ぼうよ!!」

グイグイ

さやか「え、え、あ、ちょっと」

結「ここまで来て帰るなんて勿体無いよ!! さぁ、行こう!!」


桂馬(……さ、流石だな結。強力なプレイヤーだ……)

桂馬(……僕より先に結の方がさやかを攻略しそうだぞ……)


さやか「――――それで、誘っておいてなんで先輩達二人が先にへたばってるんですかねぇ」

結「……僕はこないだまでお嬢様だったんで、こういうアトラクションは慣れてなくて……」

桂馬「……ギャルゲーで遊園地イベントは重要だが、キャラは大変だったんだな……」


さやか「ほら早く早く!! さやかさんのオススメはまだまだありますからね~~!!」


結「桂木くん、良かったね。美樹さん笑顔になってくれたみたいだ」

桂馬「…………。何の事だ?」

結「桂木くんからデートに誘ってきたのに、おかしいとは思ってたんだ」

結「何があったか知らないけど、初めて会った美樹さんはとても悲しい顔をしてた」

結「だから、きっと桂木くんは美樹さんを元気付けようとしてるんだろうと思ったのさ」

桂馬「……考えすぎだよ、結」

結「それなら、そういう事にしておくよ」

マルス(……うむ、なかなか気配りの出来る美しい娘だな。お前に似合いの相手だ)


桂馬(……結。その高いプレイヤー能力で、僕の用意したイベントで僕を攻略してもらうぞ!!)


結「へぇ、これがその桂木くんが一番入りたいアトラクションなんだ?」

桂馬「最近出来たみたいで紹介されてて、面白そうだったからな」

さやか「このお城はあたしもまだ入ったことないなぁ」


結「うん、面白そうだ。きっと楽しいよ!! 行こうよ!!」




『ローズ王子のミステリーウォークにようこそ~~!!』


従業員A「三名様、良かったわね。本日最後なので今から特別なイベントよ」

さやか「おぉ、なにやらラッキーだったみたい」

結「やっぱり入って良かったね」

従業員B「はい!! そうですよ結さ――」

桂馬「結!!」


結「えっ、何? 桂木くん?」


桂馬「このアトラクションは、一人だけ先に最上階に行って人質役をやらないといけないんだ」

さやか「ここに書いてあるよ。なになに、悪い魔王に捕まったお姫様、か……。ベタだなぁ」

結「そうか、それなら誰か行かないといけないね」

さやか「あ、あたしはお姫様なんてガラじゃないよ!?」

結「僕も、もう捕らわれのお姫様は遠慮したいんだけど……」


桂馬「僕が行くよ」


さやか「えっ、オタメガ先輩いいの? これやりたかったんでしょ?」

桂馬「あぁ、別に気にしないから。二人で楽しんできてくれ」


結「桂木くん、本当にいいの?」

桂馬「僕は、結が助けに来てくれるのを信じて待ってるよ」

結「……!!!!」


結(……あれ、頭が……。何だろう、何かが出てきそうな……)


結「へぇ、服も着替えるんだ!! 凝ってるなぁ、何を着よう」

さやか「色んな種類のコスプレがありますねぇ」


さやか「うわっ、これあたしの魔法少女の服にそっくりだ……」


結「――――美樹さん着替えた?」

さやか「は、はい」

結「わーー!! 美樹さん、とってもカワイイよ!!」

さやか「えぇ!? いやいや、その、いつも着てる服なんで。他のは恥ずかしくて……」

結「????」

さやか「五位堂先輩は、騎士、ですか?」

結「そう、僕のお姫様を助けに行くんだから、やっぱりナイトさ!!」


結「さぁ、美樹さん、桂木くんを助けに行こう!!」


妖精『音楽に合わせて二人同時にボタンを押すのよ!!』


結「せーのっ」ポチッ

さやか「おりゃ」ポチッ


魔物『ぐはぁぁーー!! やられたぁぁーー!!』


結「よし、この階の魔物も倒したぞ!!」

さやか「五位堂先輩、張り切ってますねぇ」

結「それはそうだよ、だって桂木くんが人質なんだ」

結「僕の好きな人が困ってるんだよ」


さやか「……好きな人が、困って……」


結「それを助けたいと思うのは当然だよね」

さやか「うん、分かる。……あたしも、好きな人を助けたいと願ったから……」ボソ


結「美樹さん、後は魔王を倒すだけだ。もうすぐ最上階だよ、頑張ろう!!」


魔王『ぐっ……。私は倒されても、また必ず戻って来るぞーー!!』


結「よし、魔王を倒したぞ!! 桂木くんは!?」


桂馬『結ーー!!』


結「あ、桂木くん!! お姫様姿!? カ、カワイイーー!!」

桂馬『う、うるさいうるさい』

結「待ってて、すぐ助けに行くよ!!」


さやか「あれ、でもまだ最後の扉が開かない。なんでだろ?」


王様『よくぞ魔王を倒してくれた、二人の騎士よ!!』

王様『だが姫の結婚相手は一人だけ。姫に相応しい騎士は二人の決闘の勝者とする!!』


さやか「えぇ!? 決闘!?」

結「そういうことか、よーし」


妖精『騎士様、このスポンジソードを手に取って!!』


さやか「この剣が、あたし達が着ている服に当たると反応して勝敗を決めるのかぁ」

結「だから着替えさせられたんだね、よく出来てる」

さやか「でも、五位堂先輩いいの? あたし、実は剣の扱いは慣れてるんですよねぇ」

結「僕だって昔から、お母様に武道はやらされてたんだ。嫌々だったけど……」

さやか「手加減はいらないってことですか?」 カチャ…

結「そういうことさ。美樹さん、行くよ!!」 ダッ




桂馬「始まったか……」

ハクア「ここまでは桂木の計画通りね。悪趣味にも程があるけど」

エルシィ「後は私とハクアが、ヴィンテージの真似をして倒されればいいんですよね?」

桂馬「あぁ、僕を取り合う形から一変して、結とさやかには協力してもらう」

桂馬「このダブルデート攻略、どちらの好感度も下げずに女神を出すぞ!!」


キィン、キィン、カキィン

結「美樹さん、このまま僕の勝ちにさせてもらうよ!!」

さやか「くっ、まだまだぁぁ!!」


さやか(……なんで、あたし、負けてる……。あっ、そっか……)

さやか(……そうだよね。あたし、マミさんやまどかみたいに才能ないし……)

さやか(……別に負けてもいっか、オタメガ先輩とかどうでも……)


さやか(……好きな人を、人に譲る、か……)


『ソンナコト、デキナイ』
『イヤダ、マケタクナイ』
『キョウスケ、アタシ……』


さやか「う、うああぁぁぁぁーーーー!!!!」

結「な、なに!?」


桂馬「さやか、その格好は……。黒い、魔法少女!?」


さやか「さぁ、先輩、続きやろうよ。あたしは負けないからさ」

結「み、美樹さん……? なっ!?」


ドゴォォォォン


結「あ、ぁ……」

さやか「なに? 先輩、もう終わりですかぁ?」


マルス(……あの力、どうなっている。邪悪は我々が封印したはずだ……!!)


さやか「これで終わりだよ、五位堂先輩!!」


マルス(……人間が恋にうつつを抜かす平和な世界に、その力は不要……!!)


カキィィィィン


マルス「このマルスが、お前を倒して正気に戻す!!!!」


エルシィ「さ、さやかさん!? にーさま、さやかさんはどうしたんですか!?」

ハクア「ちょ、ちょっと桂木、どうなってるの!?」

桂馬「お、おお、落ち着け。そして僕を放せ」


桂馬(……これで僕の仮説がまた一つ……)


ハクア「桂木、不味いわよ」

ハクア「結界や錯覚魔法でこの階は隔離してるけど、あんなに暴れられたら……」

桂馬「まさかスポンジソードで建物を壊されるとは思ってなかったからな……」

桂馬「とにかく、さやかの様子もおかしいし計画は中止するぞ」


桂馬「僕は二人のところへ行く。エルシィ、ハクア、羽衣で隠れてついて来てくれ」


ドーン、ドーン、ドゴォォォォン

さやか「あはははは!! 先輩、まだまだ楽しませてくれるんだぁ!!」

マルス「その程度では、邪を罰する戦士マルスを倒すことは出来んぞ!!」


桂馬「結ぃぃーー!! さやかぁぁーー!!」


桂馬「さやか、どうしたんだ!? 大丈夫か!?」

さやか「……アタシノ、ジャマ、スルナァァーー!!」


結(…………!!!!)
マルス(…………!!!!)


マルス「我が友の想い人を傷つける事は許さん!!!!」


さやか「!? は、はや……。うわああぁぁぁぁーーーー!!!!」


さやか「…………」


桂馬「さやかは?」

結「大丈夫、気を失ってるだけみたいだ」


桂馬「結、助かった。でも、あんまり無茶なことはやめてくれ」

桂馬「ヒロインに助けられるなんて、僕は嫌なんだよ」




結「そんなことないよ」




結「かよわい男の子のお姫様を助けるのが、騎士の女の役目さ」




さやか「っ……。あ、あれ、あたし、何して……」


桂馬「さやか? 大丈夫か!?」

結「美樹さん大丈夫!?」


さやか「あぁ、そっか……。あたし、負けたんだ……」


桂馬「さやか?」


さやか「……先輩、あたし帰るよ」


タッタッタッタッ


桂馬「お、おい!!」


桂馬「さやか……」


マルス「――――なるほど、大体の事情は分かった。しかし古悪魔が逃げ出したとはな」

ディアナ「そして魔女、ワルプルギスの夜……」

ウル「一度は命を捧げた我々が再び出会った。数奇な運命だがまた力を合わせるのだ」

マルス「やりましょう。姉様達と一緒ならこの聖戦も勝利してみせます」

アポロ「話はまとまったようじゃの」


桂馬「…………」

結「桂馬くん、安心して。魔女だろうがヴァイスだろうが僕が守ってあげるからね」ギュ

天理「!?」
かのん「!?」

桂馬「うわーー!? ゆ、結、いきなり僕に触るなーー!!」

月夜「ご、五位堂!! 桂馬から離れるのですね!!」


桂馬「はぁはぁ……」

桂馬(……結とマルス。このコンビは威勢が良すぎて怖いな……)


さやか「悪いね仁美、プリント届けてもらって。それにお見舞い品まで」

仁美「いえ、それよりさやかさん風邪はもう大丈夫ですの?」

さやか「あ、あぁ、ちょっと風邪っぽかっただけだから、大丈夫。もう平気」

さやか「それで仁美、さっき言ってた話ってなに?」


仁美「……実は、前からさやかさんに秘密にしてきたことがあるんですの」

仁美「私、ずっと前から上条恭介くんのことをお慕いしてましたのよ」

さやか「そ、そうなんだぁ。あはは、恭介のヤツも隅に置けないなぁ」

仁美「私、もう自分にウソはつかないって決めたんですの」

仁美「さやかさん、あなたは本当の気持ちと向き合えますか?」

さやか「な、何の話をしてるのさ……」


仁美「私は抜け駆けも横取りするような事もしたくありません」

仁美「ですから、一日だけお待ちしようと思いますの」

仁美「私、明日の放課後に上条くんに告白します」

仁美「それまでに後悔なさらないよう決めて下さい。気持ちを伝えるべきかどうか」


さやか「あはははははははははは!!!!!!」

さやか「……あははっ、本当だぁ」

さやか「キュゥべえの言ったとおりだよ」


QB「そうだろう?」


さやか「その気になれば、痛みなんて完全に消せるんだぁ」


さやか「これなら負ける気がしないわ、五位堂先輩にも誰にも」


さやか「あははっ」


さやか「あはははははははははは!!!!!!」


QB「…………」ニヤァ


さやか「…………」フラフラ


まどか「さやかちゃん!? さやかちゃん!!」

さやか「あ? なんだ、まどかとマミさんか」

まどか「どうしたの、いつもの集合場所にいなかったから心配したんだよ!?」

マミ「美樹さん、その消耗の仕方は……。まさか一人で魔女狩りをしてたの……?」

さやか「うん、だって、あたしは魔法少女だからね」

まどか「そ、そんなの駄目だよ。みんなと協力しないと、さやかちゃんの為にならないよ!!」


さやか「……あたしの為ってなに……?」

さやか「仁美に恭介を取られて……」

さやか「魔法少女の力を使って、ただの人間の五位堂先輩にも勝てない才能のない私に……」

さやか「何が為になるって言うの!? だったらアンタが戦ってよ!! 才能あるんでしょ!!」

タッタッタッ


まどか「さやかちゃん待って!!」

マミ「美樹さん待ちなさい!!」


さやか(……バカだよあたし、なんてこと言ってんの。もう救いようがないよ……)


桂馬「――――ほむら。お前の目的も何を隠しているのかも追求はしない」

ほむら「…………」

桂馬「ただ一つだけ、確認したい事が出来た」

ほむら「……何かしら……?」

桂馬「ほむらは前に魔法少女は絶望すると力が出せなくなると言ったな」

ほむら「えぇ、そうよ」


桂馬「それなら絶望の先に何があるんだ? 魔法少女の辿り着く場所は?」


ほむら「それは……」

桂馬「……それは、魔法少女が魔法少女ではなくなるんじゃないのか?」

ほむら「ッ……なんで、それを……」

桂馬「突然僕の前に現れた魔法少女の設定……。似ている、いや、似過ぎていたんだ」

ほむら「何を、言って……」


麻里「桂馬~~!! お客さんよ~~!!」


まどか「桂木先輩!! さやかちゃん、さやかちゃんの場所知りませんか!?」

ほむら「まどか、どうしてここに……」

ほむら(……まさか、美樹さやかが……。いつもより早い、一体何が……)

まどか「ほむらちゃん!? ほむらちゃんこそなんで……」


桂馬「どうした? さやかに何かあったのか?」

まどか「さやかちゃんの様子がおかしくて、ケンカしちゃって、それで……」

まどか「家にも帰ってなくて、どうしたらいいか分からなくなって……!!」

桂馬「まどか、落ち着くんだ。それで?」

マミ「私が、桂木先輩なら何か知ってるかもって言ったのよ」

桂馬「なるほど、僕の知らない所でイベントが起こったか。……エルシィ!!」


エルシィ「はーーい!! さやかさんの居場所ですね!!」

エルシィ「って、あわわわわ、駆け魂センサーに反応が、あ、ありません!!」


桂馬「……そういうことか」

桂馬「さやかを手分けして探すぞ。誰よりも早く僕達が見つけるんだ」


杏子「――――待ちな、美樹さやかを探してるんだろ?」

マミ「杏子!?」

ほむら「佐倉杏子……」


杏子「今日のアイツはヤバイ。そこらの魔女をボッコボコにしながら徘徊してる」

まどか「そんな……さやかちゃん……」

杏子「あのバカ、強情張ってグリーフシードも使ってないみたいだ」

マミ「危険だわ。早く美樹さんを探さないと」

杏子「チッ、さやか、とっとと見つけてやるさ」

ほむら「意外だわ、貴方が協力してくれるなんて」

杏子「……フン、色々とアイツが思い出させてくれたんだよ」


まどか「あの、手伝ってくれて、ありがとう。……私、鹿目まどか」

杏子「……はは、調子狂うなぁもう。佐倉杏子だ、よろしくね」


乗客A「女ってバカだからさぁ、油断するとすぐ籍入れたいだの言い出すからねぇ」

乗客B「捨てるときが本当にウザイっすよね~~」


さやか「……ねぇ、その女の人の話、もっと聞かせてよ」


さやか「その女の人はあんたの為に頑張ってたんでしょ? ありがとうって言わないの?」

乗客A「なんだコイツ、知り合い?」

乗客B「いや……」

さやか「ねぇ、この世界って守る価値あるの? あたしは何の為に戦ってきたの?」

さやか「教えてよ、でないとあたし、どうにか――――」グイッ


ディアナ「美樹さん!! 何をしようとしてるのです!?」

さやか「なっ……!? は、放せ……!!」


乗客A「お、おい、行くぞ」

乗客B「そ、そうっすね」


ハクア「――――そ、そんな話、聞いたことないわよ!?」

桂馬「だが今までのフラグから言って、この設定の可能性が一番高い」

ハクア「そんなバカなこと……」

桂馬「バカなことだが反証もないだろ」

エルシィ「でも、にーさま、その話が本当なら今さやかさんは……」

桂馬「僕の仮説通りなら今のさやかは危険だ。早く見つけるぞ」


ドロドロドロ!!

エルシィ「あ、天理さんから連絡です~~!!」


ディアナ『もしもし、桂木さんですか?』

桂馬「ディアナ? さやかを見つけたのか?」

ディアナ『はい、美樹さんは舞島駅にいました。ですが様子がおかしく逃げられてしまって』

桂馬「舞島駅、分かった。ディアナ、すぐにそこから離れてくれ、理由は後で説明する」

ディアナ『……桂木さんには何か考えがあるようですね、分かりました』


桂馬「エルシィ、ハクア、舞島駅に向かってくれ。それからほむら達に連絡を」


桂馬「ほむら!! それに、全員揃ってるな」

タッタッタッ


ほむら「桂木桂馬。美樹さやかが、この舞島駅にいるというのは本当なの?」

桂馬「あぁ、確かな情報だよ」

まどか「ここに、さやかちゃんが……」

マミ「それなら手分けして捜しましょう」

杏子「手こずらせやがって、さっさと見つけてやるさ」


ザザッ


???「…………」 ???「…………」 ???「…………」

???「…………」 ???「…………」 ???「…………」


まどか「きゃっ!?」 マミ「な、なに!?」

杏子「か、囲まれた……!?」 ほむら「くっ、ここでも……」


桂馬(……ヴィンテージ、か……? これで仮説は証明される……)


???「……邪魔は……させない……」


杏子「何者だよコイツらは……。使い魔、って感じじゃないよねぇ」 カチャ

マミ「魔女でもない、でも、強い力を感じるわ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「鹿目まどか、私から離れないで」


桂馬「……ほむら、マミ、杏子。一瞬でいい、突破口を開いてくれ」


杏子「チッ、馴れ馴れしい奴だけどさ、一体何をする気だ?」

桂馬「僕はさやかの場所まで走り抜ける、この先にさやかがいるんだ」

まどか「そ、それなら私も……!!」

桂馬「まどか、さやかの事は僕に任せてくれ。……信じてほしい、必ず、さやかを助けるよ」

まどか「桂木、先輩……」


杏子「本当にあんな奴に任せて大丈夫なのかい?」

マミ「私は、信じるわ。信じてもいいって思えてる」

ほむら「桂木桂馬、貴方の言うとおり隙を作るわ。美樹さやかを……助けて……」


さやか(――――あぁ、もうどうでもよくなっちゃった……)

さやか(……結局あたしは何が大切で何を守ろうとしてたのか、分かんなくなっちゃった……)

さやか(……誰かの幸せを祈ったぶん、他の誰かを呪わずにはいられない……)

さやか(……魔法少女って、そういう仕組みだったんだね……)


さやか「……あたしだって何人か救ったよ……。だから、誰かあたしを助けてよ……」


さやか(……誰か……恭介……恭介、は、そういうガラじゃないか……)

さやか(……あれ、恭介の顔、思い出せないや……)




QB「――――この国では、成長途中の女のことを『少女』と呼ぶんだろ?」

QB「だったら、やがて『魔女』になる君達のことは、『魔法少女』と呼ぶべきだよね」


ダッダッダッダッ


QB「……そんな、まさか……」


さやか(……はは、何でだろ……。こんな時、助けに来てくれる人は……)

さやか(……もしかしたら、あんな人なのかな、なんて……)


さやか「……今なら解るよ。あの時、先輩は恭介の為に言ったんだよね……」


さやか「……叩いた事、謝っとけば良かったなぁ」




さやか「――――――――あたしって、ほんとバ」




「さやかぁぁっっ!!!!」




さやか「……オタメガ、先輩……? な、なんで、ここに……」

桂馬「なんでって、さやかがいなくなったって聞いて、心配で捜してたんだよ」

さやか「心配で……そっか……。先輩、悪いね、手間かけさせちゃって」

桂馬「みんながお前を待ってる。さぁ、帰ろう」

さやか「帰れないよ……。もう、あたしの居場所はないからね……」

桂馬「……何かあったのか?」

さやか「あたしは、一番大事な友達さえ傷つけて……」

さやか「好きな人も取られちゃったよ……。もう、終わったんだ……」


さやか「……あたしの恋は、終わったんだよ……」


桂馬「……ないよ」


さやか「えっ……」




桂馬「――――恋に、終わりはないよ」




さやか「……せ、先輩……」


桂馬「また始めるんだ、新しい恋を」


グイッ


さやか「……あっ……」




桂馬「僕と一緒に……」




桂馬「今度は、終わらない恋を――――」




さやか「んっ……」




エルシィ「で、で、出た~~~~!!!!」

ハクア「黒い、駆け魂……!?」


ハクア「エルシィ、この駆け魂は危険よ!! 一緒に勾留ビンを!!」

エルシィ「う、うん、ハクア!!」


ゴゴゴゴ、ズズズズ


ポンッ


エルシィ「やりました~~!! 駆け魂、勾留♪♪」


ハクア(……桂木の言ったとおり、魔法少女から駆け魂が出てきた……)

ハクア(……どういうこと……?)


まどか「さやかちゃん!!!!」

さやか「…………」

桂馬「大丈夫。気を失ってるだけだ」

まどか「よ、よかったぁ……」




ほむら「どうやら、上手くいったようね」

杏子「なんでそんなこと分かるんだよ?」


マミ「杏子、美樹さんのソウルジェムを見て」

杏子「あっ……」




マミ「――――雲ひとつない蒼穹より、澄んだ空色をしているわ」




ハクア「――――桂木、昨日の事を説明してもらうわよ」

桂馬「昨日の事? 何の事だ?」

ハクア「魔法少女から駆け魂が出てきたことに決まってるでしょ!!」

エルシィ「駆け魂センサーに反応しない黒い駆け魂……。そんな話は聞いた事ありません」

ハクア「桂木、教えてよ。一体どうなってるの?」

桂馬「あぁ、そっちか。それならまだ説明出来ない、まだ仮説の段階だ」

ハクア「な、何よそれーー!!」


桂馬「それよりも今は女神だ。あの駅にいた奴等がヴィンテージなら、女神が危険だぞ」

エルシィ「あ、確かに羽衣のようなモノを使っていましたね~~」

桂馬「ほむら達は魔女や使い魔ではないと言っていた。なら可能性は高い」

ハクア「駆け魂隊の中に、ヴィンテージがあんなに……。でも、なんで……」

桂馬「引き続きハクアはかのんの護衛を頼む。エルシィ、栞に会いに図書館に行くぞ」

エルシィ「はい!! にーさま!!」


栞(……栞です。私は今、得体の知れない怪異に取り憑かれているのです……)


桂馬「君の小説、読みに来たよ。昨日は来られなくて、ごめん」

栞(……お、覚えててくれたのか……)


藤井寺「栞~~。ここにいたか」

栞「い、委員長!?」

藤井寺「この中等部の子が調べ物があるらしいんだ」

まどか「す、すみません……」

桂馬「まどか……!?」

まどか「桂木、先輩?」

栞(……知り合い……?)

藤井寺「栞はまだいるんだろ? 時間外だけど、面倒見てやって。私は帰る」

栞「……そ、それで……何を……」

まどか「えっと、魔法少女について書いてある本って、ありますか……?」

桂馬(……そういうことか……)


栞「……魔法、少女、ですか……」

まどか「は、はい……」

栞「それなら、568冊あります。今から持ってきます」

まどか「えっ……」


桂馬「――――まどか、さやかはあれからどうしてる?」

まどか「おかげさまで、さやかちゃん元気になりました」

まどか「今日もマミさんや杏子ちゃんと特訓だって張り切ってましたよ!!」

桂馬「そうか、それならいい」

まどか「あの、桂木先輩……。ありがとうございました、さやかちゃんを救ってくれて」

桂馬「僕は、僕のやらないといけないことをしたに過ぎない。気にしないでくれ」

まどか「それでも……!! 本当は、友達の私が、魔法少女になってでも止めないと、って……」

桂馬「……させない」

まどか「えっ」


桂馬「もう誰一人、魔法少女にさせない」


まどか「でも、いつも誰かに戦わせて何もしない私って、卑怯ですよね……」

桂馬「あの時のまどかの役回りは、傷つかず、ほむら達に守られる事だった」

桂馬「そして、まどかはそれをやり遂げた。それはお前にしか出来ない事だよ」

まどか「桂木、先輩……」


栞(……何の話なんだろ……)


栞「……魔法少女の本、持ってきました……」

まどか「あ、ありがとうございます。汐宮先輩」


栞「……何か、あったんですか?」

桂馬「えっ?」

栞(……ずわっ!? 立ち聞きの内容を聞くなんて、バカバカ!!)

桂馬「あの日、屋上で地獄の使いが僕の前に現れて以来、常識と非常識の境界はとうにない……」

桂馬「悪魔、女神、魔法少女、魔女、僕はこのまま現実にズタズタにされてしまうのだろうか……」


栞(……何をヌカしてるの、この男……)


桂馬「……つまんない話して、ごめん。帰るよ」

栞「あ、あの、話、もう少し聞かせて下さい」

キンコーン

桂馬「あれ、もうこんな時間、閉館だ。話は帰りながらでいい?」

栞「あっ……」


栞「……あ、あの、閉館なので……」

まどか「はい、ありがとうございました」ペコリ


桂馬(……さやか達は特訓って言ってたな。今まどかを一人にするのは、危ない、か……)


桂馬「栞、まどか、これも何かの縁だ。三人で一緒に帰らないか?」

栞(……名前で呼ばれた!? って、なんで!?)

栞(……でも男子と二人で帰るなんて絶対ムリ!! それなら三人のほうがマシ……)

まどか「えっと、私はいいですけど……」


栞「……あ、あ、あの、あそこ、行きませんか?」

桂馬「ラーメン!?」

まどか「あ、でも定休日みたいですけど……」

栞(……なんですとーー!? 今日こそネギラーメンを注文出来ると思ったのに!!)


桂馬「別の店にしようか」

まどか「ラーメンだったら……私、イイお店知ってますよ!!」




桂馬「――――まさかとは思ったが『すみれや』か……」

まどか「あれ? やっぱり桂木先輩も知ってたんですね!!」

栞「……ここが、今話題の甘ラーメンのお店……」

まどか「ちょっと前にさやかちゃんに教えてもらったんですけど、美味しいんですよ~~」

栞「……い、行きましょう……。話題のラーメンというのを、食べてみたい、です……」


まどか「ん~~、おいひい~~」

栞(……あ、甘い!! けど、美味しい!! 生きててよかったーー!!)


スミレ「あれ、お客さん……」

桂馬「な、なんだ……?」

スミレ「両手に花だね~~!!」

桂馬「なんだそれ……」


桂馬(……記憶はない、か……。いや、これでいいんだ……)


栞(……こんな不思議な人、どんな本の中にもいなかった……)


栞「……あの、あなたのこと、主役にして書いていいですか? か、書きたいんです……」

桂馬「ん? い、いいけど……」

栞「あ、ありがとうございます。明日、図書館に来て下さい、書いてきますから……」


まどか「桂木先輩、家まで送ってもらって、ありがとうございました」

桂馬「いや、もう遅かったからな。それに下校イベントは基本中の基本だ」

まどか「き、基本……? でも、今日は久しぶりに楽しかったから、お礼が言いたくて」

桂馬「そうか。まぁ、それならそれでいい」




エルシィ「にーさま、栞さんはアレでよかったんですか?」

桂馬「あぁ、これで栞の小説が完成すれば、好感度はマックスだ!!」

桂馬「いよいよエンディングが見えたぞ!! 久々!!」

エルシィ「久々です~~!!」


杏子「……騒がしい奴等だねぇ」


桂馬「杏子!?」




桂馬「杏子、さやか達と特訓していると聞いていたが……」

杏子「あ~、それか、そういうのはマミの得意分野さ。あたしの役割じゃないよねぇ」

桂馬「……それで、僕に何か用か?」

杏子「ま、まぁ、そんな大そうなモンじゃないんだけど……」

桂馬「ん?」

杏子「昨日は世話になった、魔法少女のバカなことに付き合わせちまったからね」

桂馬「そんなことか……。別に気にしてない」

杏子「そうはいかないんだよ、あたしは貸し借りが嫌いなんだ」

桂馬(……意外に律義なんだな……)

杏子「何でもいい、あたしに出来る事があるなら言ってくれよ」


桂馬(……魔法少女の攻略は後回しで、女神を優先するつもりだったが……)

桂馬(……この流れ、悪くない。僕なら出来る、同時攻略だ……!!)


桂馬「杏子、そこまで言うなら一つやって貰いたい事がある」


杏子「――――それで、何でカフェの手伝いなんだよ!?」

桂馬「今日は休日で朝から客も多い、しかし、エルシィはバンドの練習でいない」

杏子「それはさっき聞いたっての。でも、だからって……」


麻里「それにしても杏子ちゃんが来てくれたから助かるわ~~!!」

杏子「えっ、あ……はは……」




桂馬「……杏子」

杏子「何だよ? 3番テーブルのコーヒー出来たのか?」

桂馬「いや、その、ウェイトレス姿、似合ってるなって思って」

杏子「は、はぁ!? な、なに、言ってんだよお前……」


桂馬(……今は、杏子の好感度はここまででいいか……)


桂馬(……そろそろ時間だな。栞の所へ行かないと……)


栞「――――もう少し、なんですけど……」

桂馬「もう少しって白紙じゃねーかよ!! どーすんですか栞先生ーー!!」


桂馬「栞。今日は祝日、時間はある。だから、二人で図書館でカンヅメしよう」

栞「……!?」


桂馬「――――ゴチャゴチャ考えてないで書けよ。書けばいいよ」

桂馬「簡単だよ。栞のことを、書けばいいんだよ。僕が読みたいのは栞の話さ」

栞「……私の話なんて、つまんないです……」




桂馬「……書けるはずだ。栞が覚えていれば……」




栞「……あれ、いない? か、桂木くーーん……」


栞「…………」カリカリ、カリカリ




エルシィ「栞さん、書いてますね~~!!」

桂馬「これで栞は大丈夫だろ」

エルシィ「栞さんの女神、出てきますかね!?」

桂馬「あぁ、それ以外のシナリオは僕の想定にない」


桂馬「それよりエルシィ、バンドの練習は終わったんだよな?」

エルシィ「はい、終わりましたよ~~」

桂馬「よし、それなら僕を家まで送ってくれ。杏子の攻略に戻る」


桂馬「な、なんだあれは……!?」

エルシィ「あわわわ、家の前で行列が出来てます~~!!」


杏子「桂馬、どこでサボってやがったんだよ。てめぇがいなくなって大変だったんだぞ」

桂馬「杏子、これは一体……」

杏子「なんか客が増えてきたから助っ人を呼んだらさ、余計に客が増えてよ」


さやか「はーーい、ご注文はこのさやかちゃんが聞いちゃいますよ~~!!」

まどか「さ、さやかちゃん……。えっと、はい、こちらは……」


ほむら「……なんで私がこんな格好でこんなこと……」

マミ「あら? 結構似合ってるわよ」


杏子「いきなり客が増えてよ、なんでだろうな?」

桂馬(……ウチの客層って……)


杏子「……慣れないことはするもんじゃないねぇ、魔女狩りより疲れたよ」

桂馬「そうか? 楽しんでたように見えたんだが」

杏子「ったく、そんな事あるワケねぇだろ」


桂馬「これ、母さんから。今日のバイト代だ」

杏子「はぁ!? あたしはお前に借りを返す為にやったんだ、いらねーよ」

桂馬「受け取ってもらえないと僕が怒られる、だから受け取ってくれ」


桂馬「僕に、借りを返してくれるんだろ?」

杏子「……なんだよそれ……。チッ、今回だけだからな」


桂馬「……杏子。明日も、来てくれないか……?」

桂馬「毎日、杏子に会いたいんだ」

杏子「な、なな、このバカ、何を言って……。じゃ、じゃあな!!」


桂馬(……この短期間で、杏子の好感度は上げれるだけ上げれたか……)

桂馬(……そろそろ栞の小説が完成するかもしれないな。図書館に戻らないと……)


――――――――そして私は、桂木君が好きです。


キィィィィン

ミネルヴァ「……あ、あれ……」

桂馬「お前は、女神か?」

ミネルヴァ「わたし、みねるば……」

桂馬「ミネルヴァ、栞に代わってくれるか?」


桂馬「話、出来たんだな。僕はこれが一番好きだよ」

栞「……あの、最後のは本気じゃなくて、もう帰って来ない気がしたから……」


桂馬「僕はどこにも行かない。僕と栞の物語はまだ終わらない」

栞(……え、え、それは告白的な、答えでいいの……)


桂馬「栞、これから僕の家に来てくれ」

栞(……えぇ!? そ、そ、それは、まさか、早い、早すぎるわよ……!!)


杏子「……フン。自分で稼いだ金で買ったリンゴか……」

ガブッ

杏子「……まぁまぁ、美味いじゃねぇか」


??「――――困ったね。まさか君まで偽者の神に堕落させられるとは」


杏子「だ、誰だ!? どこにいる!?」


??「これ以上エネルギーを奪われるワケにはいかないんだ」

??「君の中で育てた魂は、強制的に回収することにするよ」


杏子「何の話を……くっ、なんだ、この黒い霧は……!?」




??「せっかく回収するんだ。魂度<レベル>を上げないと勿体ないじゃないか」




ミネルヴァ「――――わ、分かったよ、ねーさま……。わたしも、がんばる」

ウル「ミネルヴァ、お前は我々の力を何倍にも出来る。魔女との戦い、頼むぞ」

ミネルヴァ「…………」コクコク


栞(……世界の危機で、私の女神の力がいるって超展開は理解出来ましたが……)

栞(……それ以上に……私の最後の言葉、見たんでしょう。キスがその答えでいいの?)

栞(……今、私の目の前にいるアイドルとは何でもなかったの?)


かのん「……? 栞さん、どうかしましたか?」

栞「えっ、あの、な、何でも、ないです……」


栞(……絶対ムリ!! 私とこんな可愛いかのんさんを比べるなんて未来永劫やりたくない!!)


桂馬(……これで女神はあと一人。候補は残り二人。つまり……)


ほむら「……桂木桂馬、ちょっといいかしら」


エルシィ「あっ、ほむらさんです~~!!」

桂馬「……ほむら、お前は本当に突然現れるな……」

ほむら「そんな事より、佐倉杏子の場所を知らない?」

桂馬「杏子? いや、知らないが、何かあったのか?」

ほむら「そう……。待ち合わせ場所に来ないから、こっちかと思ったのだけれど……」


桂馬「…………。エルシィ、羽衣で杏子の場所は分かるか?」


エルシィ「はい、にーさま!! ……あれ……杏子さんの反応ありませーーん!!」

ハクア「エルシィ、落ち着いて。登録しているなら羽衣のログで確認出来るはずよ」

エルシィ「そうか、さすがハクア!!」

エルシィ「……えっと、ですね……杏子さんを最後に確認したのは教会跡地です~~!!」


桂馬「教会跡地? ……そうか。行くぞ、僕達もそこへ」


マルス「……ダメだ、教会のどの入り口も閉ざされている……」

ウル「この力は……。今の非力な我々の力では壊せないか……」

ミネルヴァ「この結界、すごく強いよ。多分、簡単に壊すのは難しいと思う」

桂馬「どうにかならないのか? この教会の中に杏子がいるはずなんだ」

ミネルヴァ「えっと……今のわたしの力でも、一人だけなら中に送れるかも……」

桂馬「本当か? ミネルヴァ、それなら僕を教会内部に入れてくれ」

さやか「ちょ、ちょっとオタメガ先輩!? 危ないよ!!」

マミ「そうよ、危険だわ。中で何が起こってるか分からない以上、私達魔法少女が」


桂馬「杏子が僕を待っている気がするんだ。……僕を、行かせてくれ」


まどか「桂木先輩……」

桂馬「大丈夫。杏子も必ず助けるよ」


桂馬「エルシィ、準備はいいな。ミネルヴァ、やってくれ」

エルシィ「はい!! にーさま!!」

ミネルヴァ「は、はじめるよ……」


QB「…………」


「…………」 「…………」 「…………」


杏子「親父……みんな……。はは、なんだ、そんな所にいたのかい」


杏子「え? そうだねぇ、相変わらずこっちは独りさ」


杏子「あぁ、独りぼっちは寂しいもんな」


杏子「そっちに? 行けばいいのかよ?」


杏子「……いいよ、一緒に行くよ……」




「杏子っっ!!!!」




QB「……!?」




杏子「け、桂馬!?」


桂馬(……この黒い空間、檜のときと同じだ。それならここは杏子のココロ……)


桂馬「杏子、行くって、どこに行くつもりだ?」

杏子「どこって……。親父達が呼んでるんだよ、あたしも行かないとさ」


杏子「頼むよ神様。こんな人生だったんだ、最期くらい、幸せな夢で終わらせてよ……」


桂馬「……終わらせない、絶対に……。杏子のエンディングはこんな所じゃない!!」

杏子「な……」

桂馬「僕は、杏子にいてほしい。僕の近くに、いてほしいんだ」


杏子「そんなの、信じられるかよ……。もう誰も、人は信じないって決めたんだ……」




桂馬「――――それなら、神を信じてみないか。……落とし神の、僕を……」




杏子「……ったく、今更なんだよ、神様…………んっ……」




エルシィ「で、で、出た~~~~!!!!」


ゴゴゴゴ、ズズズズ、ポンッ


エルシィ「駆け魂、勾留♪♪」




桂馬「――――」杏子「――――」


さやか「杏子ぉぉーー!! ん? な、なな……」

マミ「二人で手を繋いで気絶してるなんて、何をしてたのかしらねぇ」

まどか「きょ、杏子ちゃん……」

ほむら「桂木桂馬……」


ルナ「桂木ィィ、やはり貴様、他の女とも仲良くしているではないかァァ!!」

ミネルヴァ「……栞の……栞の……」

マルス「何があったか詳しく聞かないといけないな」

アポロ「同感じゃな」

ディアナ「桂木さん、貴方という人は……」


エルシィ「に、にーさま、寝起きの顔が凄い事になってますけど、大丈夫ですか?」

桂馬「昨日は酷い目にあった……。寝るまで女神と魔法少女に質問攻めだ……」

エルシィ「私の部屋まで聞こえてました~~」

桂馬「……全く、今はそんな事をしている場合じゃないだろ」


桂馬(……杏子には先手を取られた。向こうも形振り構わなくなったか……)

桂馬(……女神も大切だが、魔法少女の攻略も優先しないと……)


桂馬「今日は、中等部はテスト明けで休みか……」

桂馬「確かマミ達がウチのカフェのバイトに来ることになってたな」


桂馬(……どうする。学校に行って女神捜しか、それともウチで魔法少女攻略か……)

桂馬(……待てよ。別に学校に行かなくてもイベントは起こせるじゃないか……!!)


桂馬「エルシィ、今日は『お見舞いイベント』を仕掛けるぞ!!」


エルシィ「そ、そういえば今日はにーさまが風邪で大変なんですよ~~」

歩美「……へぇ、そうなんだ?」

ちひろ「オタメガも風邪引くんだねぇ」

京「だから今日休みなんだね」


エルシィ「し、しかも今日は、私もお母様も用事で帰りが遅くて困りました~~」

京「それじゃ家でオタメガ一人なんだ、それは心配ね」


歩美「…………」

ちひろ「…………」




桂馬(……エルシィのヤツ、ちゃんと僕の説明通りにやってるんだろうな……)

桂馬(……まぁダメでもエルシィの携帯を使って、歩美、ちひろの順番で呼び出すか……)

桂馬(……そして、その時間までカフェのバイトで魔法少女達とイベントを重ねる……)

桂馬(……マミ達の好感度を上げれるだけ上げるぞ……!!)


麻里「け、桂馬、風邪は? 起きて大丈夫なの?」

桂馬「あぁ、もう治ったよ。それより僕も店の手伝いをしようと思って」

麻里「え、えぇ!? そ、それは嬉しいけど……」


さやか「あれ? オタメガ先輩、元気になったんだ?」

ほむら「桂木桂馬、病み上がりとはいえ仕事をして貰うわよ」

杏子「何でか今日も客が多くて大変なんだよねぇ」


桂馬(……今日はメイド服か……。浅はか、の一言だな……)


桂馬「へぇ、マミは紅茶を淹れるのが上手いんだな」

マミ「桂木先輩!? わ、私の趣味ですから……」


麻里「やっぱり桂馬から手伝おうなんて、まだ風邪を引いてるとしか思えないわ」

まどか「え、えぇーー……」


桂馬「…………」

桂馬(――――――――そろそろ、か……)


ガタッ


桂馬「……うっ……」

マミ「せ、先輩!?」

桂馬「す、すまん、マミ、少しフラついた」


麻里「もう、やっぱり風邪治ってないじゃない。桂馬、部屋に戻って」


桂馬「あぁ、そうするよ。マミ、すまないがそのまま肩を貸してくれないか」

マミ「は、はい」

麻里「ごめんね、マミちゃん。桂馬の部屋は二階だから」


桂馬「……ありがとう、マミ」

マミ「いえ、これくらい……」


マミ「お、男の人の部屋って、こんな感じなんですね」

桂馬(……本当はエルシィの部屋なんだが……)

マミ「それじゃ、私は戻りますね」


桂馬「……マミ。もう少し、ここに居てくれないか」

マミ「えっ……。私は、いいですけど……」


マミ「……風邪のときって、誰かにそばにいて欲しいですよね」

マミ「私も、一人暮らしだから風邪のときはいつも寂しくて、だから分かります」


桂馬「……僕は、マミだから、居て欲しいんだ」

マミ「そ、そんなこと……」


マミ「――――私達、聞いたんです。暁美さんから」

桂馬「……何を?」

マミ「いえ、薄々気付いていたんです、私も杏子も」

マミ「魔法少女の仕組みが分かったときから、魔女との関係性に……」

桂馬「…………」

マミ「でも、もし本当に、ソウルジェムが魔女を生むなら……」


マミ「みんな、死ぬしかないじゃないですか……!! 私も、あの子達も……!!」


桂馬「そんな事はさせないよ、絶対に」


桂馬「マミ、僕は必ず魔法少女を救ってみせる」

マミ「桂木、先輩……」


ピンポーン


マミ「あ、お客さんみたいですね。私が出ましょうか」

桂馬(……客? いや、まさかな、まだ呼び出しの電話はしてないぞ……)

ガバッ

桂馬(……あ、あれは、歩美ぃぃぃぃ!? なぜ歩美が!?)

桂馬(……不味いぞ。今マミと歩美が遭遇すればフラグが滅茶苦茶になる……!!)


桂馬「マミ、大丈夫だ。来客は僕が対応するから、マミはカフェに戻ってくれ」

マミ「えっ、でも先輩は風邪なんですから、そのまま寝てて下さいね」

桂馬「だ、大丈夫だ!! それより手伝いに戻らないと、向こうは今もきっと大変だぞ!!」

マミ「それは、そうですけど……」

桂馬「来客なんてどうせセールスマンだ、今の僕でも何とかなる!!」

マミ「そうですか? それなら、はい……」


桂馬(……これでよし。予定とは違うが、お見舞いイベント開始だ!!)


歩美「……誰もいない」

歩美(……カフェの方には行列が出来てるから営業してるんだよね……?)

歩美(……エリーから聞いてた話と違う……)


歩美「やっぱ……帰ろ」


桂馬『うわ~~~~、誰か~~、誰かいないのか~~?』


ガチャ


歩美「桂木!? 大丈夫!?」

桂馬「あれ、歩美?」

歩美「あのさ、エリーから聞いたんだけど、家に誰もいないの?」

桂馬「あぁ、母さんはカフェの仕事が忙しくて、エルシィも用事でな」

歩美「そ、そうなんだ……。もう、仕方ないなぁ!!」


歩美「――――しっかり……持たなきゃダメだよ」

桂馬(……思った以上の好展開だ。このまま、行けるとこまで行くぞ!!)


ピンポーン


歩美「……鳴ったよ?」

桂馬「出るの面倒、居留守。……ん……?」

桂馬(……また客? いや、そんなまさか、またなんてことは……)


ガバッ


桂馬(……ち、ちひろォォォォ!?!?!?)

桂馬(……歩美もちひろも呼び出してないのに、好感度を読みきれてなかったか!?)


桂馬(……何とかするんだ!!)

桂馬(……このダブルお見舞いイベント、僕なら上手くやれるぞ!!!!)


麻里「それじゃマミちゃん、このお水を桂馬の部屋まで持っていってあげてね」

マミ「は、はい、分かりました」


マミ(……桂木先輩、ちゃんと寝てるのかしら……)




ちひろ「――――――――私さ、あんたのこと、好きなんだ」




マミ「!?!?!?!?」




マミ(……こ、告白!? 咄嗟に隠れられたけど、今の『告白』よね……?)


マミ(……それはそうか、アイドルと噂になる程だもの……)

マミ(……桂木先輩を好きな女子が一人や二人いても不思議ではないわ……)


マミ(……ちょっと待って、なんで私がこんなにドキドキしてるの!?)

マミ(……ずっと私は魔法少女だったから、告白とか恋愛に慣れてないからよね……)


マミ(……まさか、私が気付いてなかっただけで、私はあの時に助けれたときから……)


マミ(……本当は、先輩のこと……)


エルシィ「にーさま、歩美さんとちひろさんはどうしたんですか?」

桂馬「二人とも帰ったよ。何とか鉢合わせは回避出来たが……」


桂馬(……ちひろの奴、まさか告白とは……。予想外の展開だ……)


ハクア「はい注目、お知らせがあるわよ。羽衣録画再生、っと」

桂馬「あれ、マミ? ……ちひろの告白をマミに見られていたか……」


ハクア「こんな場面を見られたのに本当に巴マミの攻略が出来るの?」

桂馬「いや、これでいい。むしろ都合が良くなったよ」

桂馬「今まで貯めてきたマミとのフラグを、いつ恋愛フラグに変換するか考えてはいたが」

桂馬「ちひろの告白を目撃したことによって、今マミの頭の中は恋愛の事で一杯だ」

桂馬「攻略するなら今しかない。計画通り進めるぞ」


ミネルヴァ「……攻略って、なに……?」

ディアナ「ミネルヴァは知らなくていい不道徳なことです」


桂馬「……そろそろマミが帰る時間だ。よし、それじゃ始めるぞ」

桂馬「ミネルヴァは偽装の魔女結界の準備を、ディアナはミネルヴァの護衛だ」


ミネルヴァ「……う、うん、がんばる……」

ディアナ「はぁ、女神の力をこんな事に……」


桂馬「エルシィ、ハクア、羽衣人形で魔女を作ってくれ」

エルシィ「分かりました~~!!」

ハクア「また冗談の危機なんて悪趣味なこと、よく考え付くわね」

桂馬「舞校祭まで時間がない、スピード攻略には特別なイベントが必要なんだよ」


桂馬(……マミ、お前は僕の用意したイベントで攻略する……!!)

桂馬(……他のプレイヤーに先手は取らせない……!!)


まどか「それじゃ、マミさん」

さやか「また明日~~!!」

マミ「えぇ、また明日」




マミ(……そういえば、成り行きで始まったカフェのバイトはいつまでやるのかしら……)

マミ(……私も紅茶の勉強になるし、ずっと続けるのもいいかも……)

マミ(……それに、先輩にも会えるし、って、また私なにを……)


エルシィ「マ、マミさ~~ん!!」

マミ「エルシィさん? どうかしたんですか?」

エルシィ「た、大変なんです!! にーさまが魔女に連れて行かれました~~!!」

マミ「えっ!? か、桂木先輩が!?」

エルシィ「とにかく付いて来て下さい~~!!」


エルシィ「こ、ここです~~!!」

マミ「これは……。確かに魔女結界だけど、今まで見たことのないタイプだわ……」

エルシィ「それでは、私はさやかさんや杏子さんも呼んで来ます~~!!」


マミ(……どうしよう。どんな魔女なのか見当もつかないわ……)

マミ(……そうだわ、キュウべぇなら何か知ってるかも……!?)

マミ(……ダメね。最近キュウべぇは姿を見せないし、もう信用することは……)


ズズズズ


マミ「け、結界の入り口が閉じようとしてる!?」


マミ「そんな、早すぎるわ……。今までこんな事は……でも……!!」


マミ「……桂木先輩……!!」


桂馬「なぁ、これは一体何の魔女なんだ?」

ハクア「さぁ? エルシィは消防車の魔女って言ってたわよ」

桂馬「消防車の魔女……。いるのか本当に……」

ハクア「私が知るわけないでしょ。お菓子の魔女がいるぐらいならいるんじゃない?」


ハクア「っと、無駄話は終わりよ。巴マミが来たみたいだわ」

桂馬「……よし。攻略を、始めるぞ」




タッタッタッタッ


マミ「か、桂木先輩!!」


桂馬「……うぅ……。マ、マミか……?」


マミ「今すぐ助けます、先輩!!」

桂馬「ダメだ!! マミ!!」

マミ「えっ!?」


桂馬「……この魔女は、誰かが近づくと僕を殺そうとするみたいなんだ」

マミ「そ、そんな……」

桂馬「エルシィも僕を助けようとしてくれたがダメだった……」

桂馬「だけど、方法はある。近づかずに倒せばいいんだ」


桂馬「この魔女を倒すには、その離れた場所から、そのマスケット銃で撃つしかない」


桂馬「マミ、君にしか僕は助けられない」


マミ「わ、私、だけ……」


マミ「む、無理です……。もし外して魔女が凶暴化でもしたら先輩が……」

マミ「もし、先輩に当たったりでもしたら……!!」


桂馬「大丈夫。マミなら出来る、僕は信じてるよ」

ハクア(……外しても羽衣魔女が自分から当たりにいくからでしょ……)


マミ「……桂木先輩は、私のこと、何も知らないから……」

マミ「私、本当は凄く弱いんです。戦うのが怖くて、いつも泣いてばっかり」


桂馬「知ってるよ」


マミ「えっ……」

桂馬「まどか達の為に、無理矢理カッコつけて先輩を演じてること」

桂馬「知ってるよ。僕は、マミのことを見ていたから」


桂馬「だって、僕は君のことが……」


マミ「せ、先輩も……私を……」


魔女「!?!?!?!?」


マミ「魔女が動き出した……!?」


桂馬「マミなら出来るよ」

桂馬「君は、君が思っている以上に強いんだ、僕は知ってる」




桂馬「――――――――撃ってくれ、マミ」




マミ(……私、もう何も怖くない……)


マミ(……だって、好きな人がいるんだもの……!!)




ハクア(……あの距離を一発で仕留めるなんて、結構やるじゃない……)


桂馬「マミ、泣かないでくれよ」

マミ「……だって、だって、もし、先輩に当たってたらって想像したら、それだけで……」

桂馬「僕はここにいる、マミが助けてくれたんだ」

マミ「せ、せんぱぁぁい!!」

ギュ

桂馬「助けてくれて、ありがとう、マミ」

マミ「……先輩……。わ、私は……!!」




桂馬「――――――――マミは、もう独りじゃない」




マミ「はい……。先輩…………んっ……」




エルシィ「で、で、出た~~~~!!!!」


ゴゴゴゴ、ズズズズ


ポンッ


エルシィ「黒い駆け魂、勾留♪♪」




マミ「――――――――」

ハクア「マミは? 大丈夫なの?」

桂馬「泣き疲れたのと駆け魂が出た影響で寝てるよ、大丈夫だろ」


桂馬(……これで、さやか、杏子、マミ、三人の駆け魂は出した……)


桂馬(……後は……)




ハクア「あぁそうだ。桂木、私達ちょっと出かけてくるわ」

エルシィ「すみません、にーさま」

桂馬「どこに行く?」

ハクア「地区長は定期的に報告会があるのよ。これは出ないと怪しまれるわ」

エルシィ「私は地区長ではないんですけど、何故か呼び出しがかかりました~~」

ハクア「エルシィは頑張ってるから、もしかしてまた勲章でも貰えるんじゃない?」

エルシィ「そんなの絶対ないよ~~」

桂馬「エルシィが呼び出し……。いつ帰ってくるんだ?」

ハクア「早く帰って来てほしい?」

桂馬「はぁ? 今は女神捜しと魔法少女攻略の最中だぞ、人手がいるんだよ」

ハクア「そんなこと言ったって、最近は駆け魂隊もゴタゴタしてるから時間かかるかもね」


桂馬「…………。エルシィ、地獄に帰る前にノーラを呼んでくれ」

エルシィ「ノーラさんですか? わ、分かりました」

ハクア「ノーラ? なんでノーラを……」


ノーラ「――――まさか人間の中に、その事に気付ける奴がいるなんてねぇ」

ノーラ「いいわ、取引してあげる。でも、こっちが危ないと思ったら即刻寝返るわよ」

桂馬「それでいい。取引成立だな」


ハクア「……ちょっと桂木!! ノーラと二人っきりで何を話してたのよ!?」

桂馬「別に何でもないよ、ちょっとした交渉だ。少し手伝ってもらう為のな」

ハクア「なんで私に言わないのよ……。私が何にも出来ない悪魔みたいじゃない……」

桂馬「そんな事はない」

ハクア「じゃあなんでノーラなんて仲間にするの!?」

桂馬「ノーラのほうが適役だっただけだ。お前はお前で必要だよ」

ハクア「……もっと、はっきり言ってよ。私が必要だって……!!」

桂馬「ん?」


ノーラ「ハクア!! エルシィ!! 報告会に遅れるでしょ、早く行くわよ!!」

エルシィ「は、はい~~!! それでは、にーさま、行ってきます~~!!」


ハクア(……桂木、私も、すごいと思ってるよ。だから、私だって……!!)


桂馬「――――ほむら、いるんだろ?」

ほむら「……気付いていたの、桂木桂馬」

桂馬「何となく、お前がいるのが分かるようになったよ」


ほむら「それで、私に何か用かしら?」

桂馬「聞いてのとおりだ。エルシィもハクアも地獄に帰っていったよ」

ほむら「そのようね」

桂馬「女神捜しと魔法少女攻略、僕一人では手が足りない」

桂馬「お前に手伝ってもらうしかない」

ほむら「私には、私のやらなければならないことが……」

桂馬「悪いが、ここは『はい』以外なしだ」


桂馬「――――ほむら、僕の協力者<バディー>になってくれ」


ほむら「……は……はい……」




ほむら(……なんで私は、桂木桂馬の家のお風呂に入ってるの……)

ほむら(……強引にも成り行きで桂木エルシィの部屋で暮らすことになってしまった……)

ほむら(……でも確かに、中川かのんの護衛や女神捜しの手伝いをするなら都合はいい……)

ほむら(……今のところ、女神復活も魔法少女の絶望回避も全てが上手くいっている……)

ほむら(……後は、ワルプルギスの夜を倒せば、今度こそ、まどかを救える……!!)


ほむら(……まどかには絶対に戦わせない。それが私の……)


かのん「……暁美さん?」


ほむら「中川かのん? 何かしら」


かのん「あ、あの、私も一緒に、お風呂入ってもいいですか?」


ほむら「?? 別に、私は構わないわ」


ほむら「……それにしても、こんな時間まで仕事なんてアイドルは大変ね」

かのん「確かに疲れるし大変だけど、楽しいよ……ふふ」

ほむら「なに?」

かのん「あっ、その、ハクアにも同じこと言われたの思い出して」

ほむら「そう」

かのん「……私、暁美さんに、お礼が言いたかったの」

ほむら「お礼?」

かのん「うん、刺されそうになったときに助けてくれたでしょ、だから」

ほむら「あれは、女神アポロの力が必要だったから、貴方の為じゃないわ」

かのん「それでも、助けてもらったのは変わらないよ。だから、ありがとう!!」

ほむら「……貴方がトップアイドルになれた理由が、分かった気がするわ……」


ガラッ


桂馬「……攻略を覚えてないのに僕の事が好き……? 何故だ……」ブツブツ


桂馬「……僕としたことが、またこのルートに入ってしまうとは……」


かのん「――――――――――――――――」

ほむら「――――――――――――――――」


かのん「きゃああああああああああああああああああああ」


ほむら「……そう、なるほどね……」

ほむら「こういう事が目的だったとは、予想外だわ桂木桂馬」

ガチャ、ガチャン


桂馬「ちょ、ちょっと待て!! 出てく!! 出てくから!!」

桂馬「というかほむら、なんて物騒なモンを風呂場に持って入ってるんだ!?」


かのん「……桂馬くんにまた見られた……また見られた……また見られた……」




桂馬(……舞校祭。今まで僕には一切関係ないイベントだったが、今年は違う!!)

桂馬(……歩美、ちひろを攻略し、女神を出して魔女を倒す最重要イベントだ!!)


桂馬(……ちひろは僕を好きと言った、つまり記憶がある。ちひろ=女神だ)

桂馬(……しかしそうなると分からないのが、歩美だ。攻略してないのに好感度……?)


ほむら「……それで、私は何をすればいいのかしら? 覗き神、桂木桂馬」

桂馬「おい、昨日あれだけ謝っただろ。蒸し返すな」


桂馬「ほむら、やってもらう事は簡単だよ」

桂馬「僕が女神捜しをしている間に、僕と魔法少女が接触しないようにしてくれればいい」

ほむら「それだけ……?」

桂馬「歩美とちひろ、今この二人に僕と魔法少女が会っているのが見つかるといけない」

桂馬「これ以上の三角関係は複雑になり過ぎるからな」

ほむら「なるほどね、分かったわ」


桂馬(……二人に振り回されるな……。フラグを、制圧するんだ……!!)


歩美「――――――――私がミスコン!? なんで!?」




ちひろ「――――私と、キャンプファイアー行かん?」




桂馬「――――僕は、ちひろと仲良くなりたい。教えてくれよ、歩美」

歩美「よ、よーし桂木!! 一緒にちひろのハートを掴むわよ!!」




歩美「桂木と前夜祭デートするんでしょ? しっかりやれよ~~!!」

ちひろ「……なんで知ってる……?」




歩美「ちひろは一見ひねくれてるけど、すっごい乙女だからね」

歩美「優しくしてあげないとダメだよ!!」

桂馬「それはケースバイケースだろ。そもそも攻略とは……」


マミ「あ、桂木先輩。こんな所で会えるなんて奇遇ですね」


桂馬「マ、マミ!?」

桂馬(……なぜここに!? ほむら、何やってる!?)


歩美「……誰? 後輩?」


マミ「た、高原先輩……? あっ、この間の大会、おめでとうございます」


歩美「えっ!? あ、ありがとう」

桂馬「ん? 歩美って有名人なのか?」

歩美「わ、私が知るワケないでしょ」


マミ「そういえば高原先輩、中等部のほうでも先輩のポスターが貼り出されてましたよ」

歩美「えぇ!? ミスコンの!? ちょ、ちょっと見てくる!!」

ダッダッダッダッ


桂馬「お、おい!! 歩美!! は、速い……」

マミ「桂木先輩……」

桂馬(……不味いぞ。今マミと二人の所をちひろに見られるワケにはいかない……)


マミ「あの、その……私と、キャンプファイアー行きませんか?」


桂馬「!?!?!?!?」

桂馬(……先手を取られた!? ダメだ、とにかく今はマミから離れないと……!!)

桂馬(……だが、イベントを断わる行為は好感度に直結する、どうする……!?)


ほむら「……巴さん、向こうで貴方の担任が呼んでたわよ」


マミ「暁美さん? そう、分かったわ、ありがとう。……桂木先輩、また後で」


桂馬「……助かったよ。でも遅かったな、何かあったのか?」

ほむら「私には桂木エルシィのような羽衣はないの、無理な場面だってあるわ」

ほむら「同じクラスの鹿目まどかと美樹さやかは見ていられるけれど、巴マミは学年が違うのよ」

桂馬「そうか、そうだな」

ほむら「佐倉杏子は貴方の家でバイト中なのが、せめてもの救いね」

桂馬「それなら……ん!? ほむら、隠れろ」


歩美「はぁ……ミスコン終わるまでポスター取り外せないなんて……。恥だ……」


桂馬「歩美?」

歩美「桂木、あれ? さっきの後輩は?」

桂馬「え? あぁ、自分のクラスに戻ったんじゃないか?」

桂馬「あの後輩とは少し話した事があるだけで、僕とは全く関係ないからな」

歩美「ふーん、そうなんだ……。あ、来た来た。桂木、こんな話は知ってる?」

桂馬「なんだよ?」


歩美「あのね……。行って来ーーーーい!!!!」ドガッ


ちひろ「――――使い古しで悪いけど、それ、持っといてよ」

桂馬「これ、ギターのピック、だっけ」




歩美「――――ホラ、私の作戦成功じゃん」

桂馬「歩美はもう、怒らないのか?」




桂馬「――――僕は今日、ちひろとキスするつもりだ。怒るなら今だぞ」

歩美「どーして私が怒るのよ。ちひろと仲良くやりなよ!!」




桂馬(……どちらにせよ、僕のやる事は変わらない……。今夜、女神を出す!!!!)




エルシィ「――――あれ? ハクア、もう報告会終わったの?」

ハクア「えぇ、これでいつも通りよ。往復の時間の方が長いぐらいだわ」

エルシィ「へぇ~~」


エルシィ「あ、今にーさまのお土産選んでたんだ、ハクアはどれがいいと思う?」

ハクア「そうね、この駆け魂隊オリジナルスナック『勾留ビーン』でいいんじゃない?」

ハクア「これなら甘くないからアイツでも食べそうだし大丈夫よ」

エルシィ「そっか~~、そうだね!! それにするよ~~!!」


ハクア「それでエルシィ、呼び出しは何だったのよ?」

エルシィ「これから室長室に行くことになってるよ~~」

ハクア「……それ、私もついて行っていい?」

エルシィ「別に大丈夫だと思うけど……ハクア?」


ハクア(……地獄は新しくなった。私は、正しい事をするわ……!!)


エルシィ「室長~~!! 来ましたよ~~!!」

ハクア「失礼します」

ドクロウ「なんだ二人して、呼び出したのはエルシィだけの筈だが……。まぁいいか」


ハクア「すみません室長。少し、お時間いただけませんか」

ハクア「ヴィンテージのことで、お伝えしたいことがあります」


ドクロウ「……ん? 何か言ったか?」


エルシィ「ハ、ハクア……」

ハクア「そ、その……駆け魂隊の中に、ヴィンテージがいると聞きました」

ハクア「室長は、このことをご存知なのですか?」

ドクロウ「駆け魂隊に入るには厳しい審査がある、そんな事はありえない」


ハクア「……私、実際に見ました」

ハクア「魔法少女と呼ばれる人間に入っている黒い駆け魂を守るヴィンテージの隊員を」


ドクロウ「魔法、少女……だと……?」


ドクロウ「プーーッッ、ハクア、お前そういうのが好きだったのか!!」

ハクア「真面目な話ですーーーー!!!!」


ハクア「もう、エルシィ!! アレ出して!!」

エルシィ「ダ、ダメだよハクア。アレは、にーさまが誰にも見られないようにしろって……」

ハクア「室長はアルマゲマキナの英雄よ、ここで報告するべきだわ」


エルシィ「……わ、分かった……」ゴソゴソ


ハクア「……これが、魔法少女から出た黒い駆け魂です」

ドクロウ「…………」

ハクア「はぐれ魂でもなく、駆け魂センサーにも反応しない、黒い駆け魂……」

ハクア「ヴィンテージはこの黒い駆け魂と関連があるはずです。これを、室長に……」

ドクロウ「……魔法少女、黒い駆け魂、私もそれは初耳だ。よく知らせて渡してくれた」

ドクロウ「このことは内密で頼む」


ハクア(……それだけ……? もっと詳しく聞かないの……?)


エルシィ「それで室長、なんで私は呼び出されたんですか?」

ドクロウ「…………。あぁ、またDVDを頼もうと思って呼び出したの」

エルシィ「えぇ~~!? それだけですか~~!?」


ドクロウ(……エルシィ、ハクア……。お前達は実に良き悪魔だ……)


ハクア「さ、帰りましょ、エルシィ。早く帰らないとアイツが無茶してるかもしれないし」

エルシィ「うん、そうだね、ハクア。にーさま、ちゃんとご飯食べてるか心配だよ~~」

ハクア「わ、私は別に心配してるワケじゃないわよ!?」


公安部A「エリュシア・デ・ルート・イーマ殿」

公安部B「ハクア・ド・ロット・ヘルミニウム殿」


エルシィ「えっ……?」

ハクア「な、なに!?」


公安部C「公安部です。お二人に違反の告発がありました。同行お願い致します」


ハクア「公安部!? わ、私達、何にもしてないわ!!」

エルシィ「は、離して下さい~~!!」


公安部C「これは逮捕ではありません。事実確認が目的なので、ご安心を」


エルシィ「出して下さい~~!!」

ハクア「何の理由もなく拘束なんて酷いじゃない!!」

ハクア(……どうしてなの……これ完全に罪人扱いじゃない……)


ガシャン

ノーラ「はぁい☆」

エルシィ「ノーラさん!?」

ハクア「ノーラ!?」


ノーラ「毎度バカな奴等ねぇ、室長に妙なこと話すからよ」

ハクア「わ、私は、ヴィンテージや魔法少女のことを報告しただけよ」

ハクア「室長にいつか言わなきゃダメでしょ!? 他の誰に言えばいいのよ!!」


ノーラ「じゃ、室長がヴィンテージなんでしょ」


ハクア「室長がヴィンテージ!? バカなこと言わないで!!」

ノーラ「シンプルな話よ。それなら辻褄が合うじゃない」

ハクア「そ、そんな……」


ノーラ「それに、魔法少女から駆け魂を出すなんて……」


ノーラ「アレは角突きの悪魔の中でも禁忌中の禁忌、お前達がかかわっていい事じゃないのよ」


ハクア「ど、どういうこと……? ノーラ、何か知ってるの……?」

ノーラ「これ以上は私からは言えないわ。という訳で、じゃーーねーー」


エルシィ「ノ、ノーラさん!? 助けて下さい~~!!」


ノーラ「お前達みたいなバカを助けて、どうすんのよ」

ハクア「ちょ、ちょっと、ノーラ!! 桂木の仲間になったんじゃないの!?」

ノーラ「アイツとは魔法少女の情報を交換しただけ、別に仲間になったワケじゃないわよ」

ノーラ「それに私、ヴィンテージにつかせてもらうから☆ 向こうの方が良さそうだもん」

ハクア「ノ、ノーラ……」

ノーラ「あ、そうそう。アイツ、殺されるわよ」

ノーラ「魔法少女から駆け魂を出したのがアイツだってヴィンテージにバレたら、ジ・エンド」

ノーラ「まぁ、覚悟しとけば?」

ガシャン


エルシィ「に、にーさまが……。そんなこと、させませーーん!!」

ハクア「どうしたらいいの……。早く、桂木のところへ帰らないと……!!」


リューネ「――――ねぇ、このエルシィとハクアって娘達の行動ログ、ちょーだい」

??「行動ログ……?」

リューネ「そう、行動ログ、全部よ全部。ちょっと気になることあるから」

??「それは別に構わないけど、リューネ、分かってるよね?」

リューネ「分かってるよ。あと少し我慢して事が終われば、人間殺し放題なんでしょ」

??「そういうことだよ。君の自由にはさせるけど、勝手は許さないからね」

リューネ「はいはい、大丈夫だって」




??「――――さて、僕らのエネルギー回収ノルマは達成までもうすぐだ……」


??「エンディングは、すぐそこまで来ているよ?」


??「どうするんだい、桂木桂馬――――――――」




ちひろ「――――桂木、ごめんごめん。待った?」

桂馬「いや、舞校祭もやっと盛り上がってきたとこだよ。行こう」




桂馬「――――本当に歩美って人気あるんだな、高等部でも中等部でも」

ちひろ「何よ、知らなかったの? ……別んとこ行かん?」




桂馬「――――グラウンドの看板、見に行かない?」

ちひろ「いいよ、そうしよ。じゃ、い、行こうか」




桂馬(……よし、誰もいない所に連れ込んで、キスするぞ……!!)




ちひろ「囲碁部VS将棋部? どうやって対決するんだろ」

桂馬(……ダメだ、ここはまだ人が多い。どこか人気のない所は……)キョロキョロ


さやか「……あれ、オタメガ先輩じゃん」

まどか「桂木先輩、こんばんは」


桂馬(……さやか!? それに、まどかも……!?)


ちひろ「……オタメガに後輩なんていたんだ……」

桂馬「あ、あぁ、僕にだって後輩ぐらいいるさ」

ちひろ「部活も委員会もしてないのに?」

さやか「まぁ先輩とあたしは、ただの先輩後輩じゃないからねぇ、だって」


ほむら「――――美樹さん、中等部のミスコンがもう始まるわよ」


さやか「えっ、もうそんな時間!? 恭介と仁美が出るから絶対見に行かないと!!」

まどか「うん、仁美ちゃんも頑張るって言ってたよ。さやかちゃん、早く行こうよ」

さやか「それじゃオタメガ先輩、また後でね~~!!」


桂馬(……ほむら、よくやった。よし……)


ちひろ「後輩と、仲いいんだね、桂木」

桂馬「ちひろ、ここの裏に行ってみようよ」

ガシッ

ちひろ「ちょ!? 桂木!?」

桂馬(……強イベント中だ。多少強引でも、さやか達の話題はスルーして進める……!!)




桂馬(――――ダメだ、人が多い。流石に仕切り直しだ……)

桂馬「グラウンド、戻ろうか」

ちひろ「……いいよ。人のいないとこ、行こうよ……」




――――ちひろは攻略を覚えてない。ちひろに女神は、いない。


ちひろ「――――好きになるのに、理由なんてないよ!!」

ちひろ「気がついたらもう、好きになってたのさ!!」


ちひろ「桂木は、私のこと、好き……?」

桂馬「……好きなワケ、ないだろ」

ちひろ「桂木……?」

桂馬「くだらない、僕は」




ほむら「――――そう、ならその女とのデートは終わりでいいのよね、桂馬」




桂馬「ほ、ほむら……!?」

ちひろ「だ、誰さ!!」


ほむら「私は中等部の暁美ほむら。桂馬の次のデート相手よ」


桂馬(……ほむら、何を……)




ちひろ「……どういうことさ」

ほむら「貴方も、桂馬と中川かのんの噂は知ってるでしょ?」

ちひろ「そりゃ知ってるよ、それが何なのさ!?」

ほむら「貴方も私も、中川かのんも、騙されていたのよ」

ちひろ「騙されて……?」

ほむら「桂馬はこの前夜祭で、大勢の女子とデートの約束をしていたの」


ちひろ「……なんで、そんなこと……。ウソ、ウソだよね、桂木……」


桂馬「……僕が、現実女を本気で好きになるとでも思っていたのか?」

桂馬「いつも僕のことをバカにしてるから、現実女共に思い知らせてやったんだよ」


桂馬「でも、もういいよ。もう僕に、近づくな」


ちひろ「……っ……」

タッタッタッタッ


桂馬「…………」

歩美「……桂木。なんで、あんなこと言ったのよ」

桂馬「歩美!? なんで!?」

歩美「その子の言ってること、本当なの?」


ほむら「…………」


桂馬「それは……」

歩美「どうしてそんなヒドイことしたの!?」

桂馬「た、確かめたかったんだ……。僕の本当に大切な人が誰なのか……」

桂馬「でも、やっと気づいた。分かったんだ、それが誰なのか、それは……」

ゴズッ

歩美「……あんたって最低!! ……最低だよ……」




桂馬「……本当、最低だ……」


ほむら「最低なのは……私よ……」




桂馬「――――――――」

ほむら「……桂木桂馬」

桂馬「ほむら、か? 何のようだ、風呂を覗かれた仕返しに覗きに来たのか」

ほむら「茶化さないで。……謝罪に来たのよ……」

桂馬「謝罪?」

ほむら「貴方の女神攻略を邪魔したことよ。その事を謝ろうと思って」


桂馬「あの時、ちひろに女神がいない事は分かってた……」


桂馬「お前の機転のおかげで、ちひろから歩美にルート変更出来たんだ」

桂馬「僕の協力者<バディー>としてやったことなんだろ、なら、謝る必要はない」


ほむら「……いえ、私は協力者として、ではなく、個人の意思で邪魔したのよ」


桂馬「なに……?」


ほむら「貴方のあんな顔を、また見ることは……私には……」

ガチャ

桂馬「お、おい、本当に中に入って来るのか!?」

ほむら「ま、待って、誰か来たわ。ここでやり過ごさせて」


ディアナ「……桂木さん」

桂馬「ディ、ディアナか? 何しに来た、家にいろって言ったろ」

ディアナ「予定では、明日の夜に魔女が来るそうですね」

桂馬「あぁ、僕もそう聞いてる。でも女神も残り一人、それで終わりだ」

ディアナ「一人じゃありませんよ、後二人です。わ、私の翼も出して下さい」


ディアナ「――――私、桂木さんを愛してしまったみたいです!!」


桂馬「はぁ!?」

ディアナ「もう一刻も待てません。これ以上私が好きになる前に天理を愛して下さい!!」

ガチャ

天理「えっ……桂馬くん!? 暁美さん!?」

ほむら「……困ったわね。女神と宿主が愛の力の奪い合いなんて……」

ディアナ「あ、暁美さん!? どうしてここに!? 桂木さん説明して下さい!!」


桂馬「もう出て行ってくれーー!! まったく、何やって……何やってんだよ……」


天理「桂馬くん……?」


保安部A「――――押収したお前達の羽衣には改ざんの跡があった、本当は何をしていたんだ?」


ハクア「きゃぁぁ!! ……サボってたのを隠してただけよ……」ビリビリ

エルシィ「や、やめ……。私達、何も悪い事してませーーん!!」ビリビリ


保安部B「それなら、この黒い駆け魂はどこで勾留したんだ? 報告が来ていないぞ」

エルシィ「それは……はぐれ魂だと思って勾留したんです~~。私は何も知りませ~~ん!!」

ハクア「報告忘れなんて誰でもあるわ。そんな事でこんな尋問なんて法律違反よ!!」

保安部C「まぁ、隠しても分かることだ。そろそろデータの復元も出来る頃だろう」


ガチャ、ギィ

フィオ「……まさか、魔法少女から駆け魂を出したのがハクアとエルシィだったなんてね」

ハクア「フィ、フィオーレ!? どうしてここに!?」

エルシィ「なんで、その事を……。やっぱりヴィンテージなんですか……!?」

フィオ「羽衣のログで、私が女神を襲った事がお前達に知られてるって分かったからよ」


フィオ「もう隠す必要もないわ。それでヴィンテージに頼んで尋問役を代わってもらったのよ」


ハクア「フィオ!! ヴィンテージなんて間違ってるわ、考え直して!!」

フィオ「……ハクアはこんな状況でも正々堂々としてるわね。それって、一番の余裕?」


フィオ「――――私は、あんたの一位を認めてないわよ!!」

ハクア「フィオ……。どうして……」

フィオ「不純な新悪魔の世界なんて必要ない。旧地獄は復活しないといけないのよ!!」


ハクア「そんな事、させない……。私が許さない!!」


フィオ「許さない……? どうやら自分の立場が分かってないようね、ハクア」

フィオ「ハクア、エルシィ、お前達は駆け魂隊をクビになったのよ?」

エルシィ「!?」 ハクア「!?」


フィオ「これが辞令よ。ドクロウ・スカール、間違いなく室長の署名ね」

ハクア(……室長も、敵……。なんてバカなのよ、私は……!!)


エルシィ「……わ、私そんな話は信じません……。私は、室長を信じます~~!!」

ハクア「エルシィ……」

フィオ「別に信じなくてもいいわよ。どうせこれからお前達はヴィンテージの技術で洗脳されるんだから」

フィオ「今日からお前達は私の子分よ。子分には、子分らしい名前をつけないとね」

フィオ「ハクアは鉛筆!! エルシィは箒よ!!」

エルシィ「そ、そんな~~。私そんな名前じゃありませ~~ん」


フィオ「リューネ様の読み通りに、この羽衣のデータで女神が特定出来れば……」

フィオ「ワルプルギスは、より確実に……」


ハクア(……ワルプルギス……? ほむらの言ってた魔女のこと……?)


保安部A「大丈夫ですか? あいつ等に聞かれますよ?」

フィオ「大丈夫よ、どうせ今から洗脳するんだからね。さぁ、やって」

保安部B「はいっ」


エルシィ「に、にーさま……」

ハクア(……桂木、ごめん……。女神も魔法少女もバレちゃった……)


保安部B「…………」カチャカチャ、ガチャ

エルシィ「えっ……」

ハクア「拘束が、外れた……?」


フィオ「ちょ、ちょっとお前、何してるのよ!?」


保安部B「時間がありません、応援を呼ばれる前に倒して下さい」


エルシィ「あわわわ~~!! 倒してと言われましても~~!!」

バタバタ、バタバタ、ドカッ


フィオ「ハクア……。たかが新悪魔に私は倒せないわよ」

ハクア「退いてフィオ。私達は行くわ、ヴィンテージの企みを阻止する為に!!」

フィオ「ヴィンテージを止めることは不可能よ、女神達に未来はない!!」


エルシィ「あわわわ~~!!」ドタバタ、ドタバタ

フィオ「な、なに!?」

ガスッッ

フィオ「あ、あぁ…………」

ハクア「余所見なんて、魔学校の時よりヴィンテージに入って集中力落ちたんじゃない?」


ドクロウ「むう、さすが天才悪魔、蹴りのキレがよい」


エルシィ「室長!?」 ハクア「室長!?」


ドクロウ「さぁ急げ、人間界へ帰るのだ。エルシィ、ハクア」

ドクロウ「あ、そいつは勾留ビンにでも入れとくのだ。少しは時間稼げるでしょ」


エルシィ「わ~~!! 室長、助けに来てくれたんですか~~!?」

ドクロウ「遅くなってすまん、エルシィ、ハクア」

ハクア「待ってエルシィ。室長、何しに来たのよ、私達のことクビにしたくせに!!」

ドクロウ「すまんなぁ、私は公式にはヴィンテージの味方ってことになってるのだよ」

ハクア「こ、公式? どういうこと?」

エルシィ「やっぱり室長は室長だったんですね~~!!」

ドクロウ「とにかく今はゴミ捨て場に行け。船を作っておいた、これで地獄の外に出られる」




エルシィ「――――これが旧地獄の地表……。初めて見ました~~」

ハクア「これ、要は密出国ってことよね。まるで犯罪者ね……」

ドクロウ「いやー、反逆罪で解雇だし、マジ犯罪者だよ~☆」

ハクア「クビにしたのお前でしょ!! もう、何を信じていいのか……」


ハクア「……もう分かんないわよ。地獄も悪魔も、魔法少女も魔女も、私は何も知らない……」

エルシィ「ハクア……」




ドクロウ「エルシィ、ハクア……。ヴィンテージと、いや、インキュベーターと闘うのだ」




ドクロウ「――――だが、努力で一番になった。ハクア、魔学校の長い歴史で初めてのことだったのだ」

ハクア「……室長……」


ドクロウ「エルシィ。お前はバカだが、その優しさと素直さと一途さ、他の悪魔にはないものだ」

エルシィ「し、室長……?」

ドクロウ「だからこそ、私は『特異点』の協力者<バディー>にお前を選んだ」

エルシィ「にーさまを……」


ドクロウ「お前達のような者が上に立つ世、それが私の夢だ!!」


ドクロウ「ハクア、これを。お前の証の鎌に私の力を加えておいた。最後の魔女との闘いで、きっと役に立つだろう」

ドクロウ「エルシィにはこれ。この羽衣はお前の姉が使っていたモノだ」

エルシィ「お姉様の、羽衣……」

ドクロウ「いつかこのような日が来たときに、エルシィに渡すように頼まれていた」

ドクロウ「その羽衣の中に、ヴィンテージ、黒い駆け魂、魔法少女や魔女の情報が入っている、後で見ておくのだ」




ドクロウ「エルシィ、ハクア、自分達の力で切り開け。お前達は新地獄の、新しい未来だ!!!!」




ハクア「分かりました。私達で、新地獄を守ります!!!!」

エルシィ「が、頑張ります~~~~!!!!」




生徒A「今朝も地震凄かったね、大丈夫だった?」

生徒B「うん、大丈夫。でも本当に最近地震多いよね~」


ほむら「――――桂木桂馬、分かってるとは思うけど」


桂馬「心配ないよ。今日中に歩美から女神を出して、女神攻略は終わりだ」

桂馬「それで今夜、全ての女神と魔法少女でワルプルギスの夜を倒す、そうだろ?」

ほむら「えぇ、そうよ」


桂馬(……だが、本当にそれで終わりなんだろうか……?)

桂馬(……魔法少女、魔女、キュウべぇ、黒い駆け魂……)

桂馬(……十年前の大量の駆け魂、女神、ヴィンテージ……)


ほむら「桂木桂馬、私の胸を凝視しながら考え込むのは止めてもらいたいわ」

桂馬「……ほむら、その制服……。女神の、校章……?」

ほむら「なに? この舞島の制服が何かあるの?」


桂馬「…………」


桂馬(……女神の校章の学校、この土地は女神に関係してるのか……?)

桂馬(……杏子が言っていた、この土地は魔法少女の絶好の縄張りだと……)


桂馬(……色々な事が、結び付きそうな気がする……)


桂馬「…………」


桂馬「……そうか。お前は、お前達は……」


桂馬「この場所で今、とてつもない何かを起こそうとしてるんだな……」




ほむら「……桂木、桂馬?」


桂馬「ほむら、歩美の攻略は僕一人でやる」


桂馬「お前には、女神と魔法少女に伝言を頼む」


歩美「――――ちひろに謝れ!! もう私、あんたの顔も見たくないの!!」




桂馬「――――じゃ、そろそろ開店」




ちひろ「――――何話してたの? 意外とさ、仲良いんだよね、あんた達」




歩美「――――私、ずっと、桂木のこと考えてたんだ……」


メル「答えは、もう出てるんだよ」




桂馬「――――ちひろ、僕と組まないか?」


ちひろ「それ以上しゃべるな!! このカス!!!!」


ちひろ「やほほーー。探したよ、明日のメンバー紹介どんな風にしようか?」

歩美「ちひろ……。私、もう、一緒にバンド出来ないよ……」


桂馬(……歩美、くそっ、ちひろに先を越された……)

桂馬「あぁ、やっと見つけた!! 二人に話があるんだ、聞いてくれ」




QB「――――それは丁度良かった。僕も君達に話があったんだ」




桂馬「キュウべぇ……!?」

歩美「か、桂木、と、猫……?」

ちひろ「猫が喋ってるーー!?」

桂馬(……二人にキュウべぇが見えてるということは、もう隠す気はないということか……)

桂馬「……久しぶりだな。最近見なかったが、何かあったのか?」


QB「桂木桂馬……。君が色々やってくれた件で忙しくてね、計画の修正が大変だったよ」


ほむら「……どんな計画でも阻止してみせる。思い通りにはさせないわ、絶対に」

桂馬「ほむら」

ほむら「貴方の言うとおりにしてきたわ、桂木桂馬」


QB「……阻止? 暁美ほむら、もう此方の準備は整っているんだよ」

ザッ、ズン

??「…………」??「…………」??「…………」??「…………」


桂馬(……ヴィンテージ、か……!?)


シュバッ、ズズズズ、ズズズズ


ちひろ「な、何よこれーー!?」

歩美「やめてよーー!!」

桂馬「歩美ーー!! ちひろーー!! ほむら、頼む、何とかしてくれ!!」

ほむら「そ、そんな……なんで、魔法が、時間停止できな……」


リューネ「……これで良いの?」

QB「あぁ、そうさ。僕の思ったとおりの展開だ」




まどか「――――キュウべぇ!! こっちでいいの!?」




ほむら(……まどか!? 駄目、騙されないで……そいつは……!!)




QB「まどか!! 大変だよ!!」

まどか「ほむらちゃん!? 桂木先輩も!? みんな閉じ込められてる……」

QB「これは魔女の仕業だよ、早く助けないと危険だ」

まどか「そ、そんな……。さ、さやかちゃん達を呼んで来ないと……!!」

QB「まどか、時間がない。このままだと全員が魔女に取り込まれて死んでしまうよ」

まどか「そんなの……どうしたら……」

QB「簡単だよ、まどか」




QB「――――僕と契約して、魔法少女になればいいんだ」




まどか「魔法、少女に……」

QB「そうすれば、暁美ほむらも桂木桂馬も死ぬ事はない。君が助けるんだ」

まどか「先輩を、助けられる……私が……」




まどか「――――私、魔法少女になる!!!!」


まどか「魔法少女になって、皆を助けたい!!!!」




ほむら『まどかぁぁぁぁ!!!! 駄目ぇぇぇぇーーーー!!!!』

桂馬『ほむら……。くっ……』


QB「さぁ、受け取るといい。それが君の運命だ」


まどか「……キュウべぇ。なんで、魔法少女になれないよ……!?」


QB「ありがとう、まどか。君の心のスキマの大量なエネルギーは受け取ったよ」

まどか「どういう、こと……?」

QB「これで『ゲート』を完全に開く事が出来る」

まどか「キュウべぇ!! 私、魔法少女になったんだよね!?」

QB「魔法少女? まさか!! そんなの本当に存在するワケないじゃないか!!」

まどか「えっ……な、なに、言って……」




リューネ「それで、こいつ等はどうすんの? 女神は生かしとくんでしょ?」

QB「そうだね。後はリューネの好きにしていいよ」

リューネ「……あは、それじゃ、ヤッちゃおうか……ん?」


ザザッ、ザシュッッ


ハクア「……ヴィンテージ、ここはお前達の居場所じゃないわよ!!」

エルシィ「に、にーさま!! ほむらさん、歩美さんもちひろさんも、大丈夫ですか!?」

歩美「私達は……」

ちひろ「大丈夫だけど……」

まどか「ほむらちゃん!!」

ほむら「……まどかっっ……!!」


ハクア「――――桂木……。帰るの遅くなって、ごめんね」

桂馬「いや、助かったよ」


QB「……その証の鎌の力……。なるほど、裏切った、いや初めから、かな……」

QB「君達は、駆け魂隊だね?」

ハクア「いいえ、私達は、新悪魔の誇りを守る者!!」

エルシィ「です!!」


ハクア「こんなに堂々と人間界のエネルギーを回収し始めたということは、その時は近いって事かしら?」


ハクア「正統悪魔社<ヴィンテージ>最高幹部の一悪魔、インキュベーター!!!!」




QB「……そう呼ばれるのは久しぶりだよ」




まどか「……悪魔……?」

ほむら「どういう、こと……」


桂馬「全ての始まりから、少女に希望を与える存在なんていなかったんだ」


QB「いつから気付いていたんだい?」

桂馬「さやかのときに聞いた、お前は少女の魂を抜き取りソウルジェムにしていると」

桂馬「それなら、魂があった場所、心には何が入るのか、その空っぽの心の中に……」


エルシィ「あっ……」


桂馬「似ている、いや、似過ぎているよ。駆け魂の悪魔を転生させるシステムと」

桂馬「お前は少女の心のスキマにつけこみ、悪魔の力で願いを叶えたように見せた」


桂馬「実際にはお前が、少女達に心のスキマが出来るように手配してたんだろうが……」


桂馬「そうして、魔法少女の大義名分のもとにお前は黒い駆け魂を心に入れた」

桂馬「魔法少女が使っている魔法は、駆け魂の、悪魔の力が源なんだ」


ほむら「この力が……悪魔の……」

まどか「そんな……」


まどか「で、でも、キュウべぇは宇宙から来たって……」

QB「まどか、人間にいきなり地獄の話をしても分かるわけないだろう?」

QB「それに人間にとっては宇宙も地獄も同じように未知の領域だ」

ほむら「また、騙してたのね……」

QB「認識の相違だよ。説明のし易さで地獄を宇宙と呼んだだけさ」


QB「それに、二人ともそれを信じてたじゃないか」


ハクア「そうやって魔法少女を騙して、エネルギーを回収していった……」

ハクア「魔法少女に魔女を狩らせ、ソウルジェムを濁らせ駆け魂を育てる……」

ハクア「黒い駆け魂からはお前の分身が生まれ、ソウルジェムから魔女が生まれる……」

ハクア「この絶望の永久機関……。これが、ヴィンテージのお前の計画……!!」


ハクア「その目的は、この人間界で地獄を復活させること……!!」


QB「よくそこまで調べたね。それとも、その羽衣のおかげかな?」

エルシィ「あ、あわわわ~~」


桂馬「ヴィンテージが旧地獄を地上で復活させようとしている……」

桂馬「その計画を阻止されないように女神を抹殺しようとした……?」

QB「それは違うね。女神を排除する必要があるなら、僕は中川かのんの存在を知ってる」

桂馬「だろうな。かのんに護衛をつけたが、あれ以来襲われた事はない」

QB「今の非力な女神なんて、僕達の計画を阻止する事は出来ないからさ」

ハクア「それなら駆け魂隊に女神捜しをさせようとしたのは何故!?」

リューネ「ま、偉い人は何でも欲しがるからね。仕方ないか、悪魔だし」


リューネ「そろそろ、かな」

ギラ『リュ、リューネ様!!』

リューネ「ギラか、こっちはちょっと手こずってるけど、そっちは順調?」

ギラ『す、すみません……。失敗、しました……』

リューネ「は?」




桂馬「……お前みたいなカンのいい奴がいるかと思って、先手を取らせてもらった」

桂馬「僕より先にルートを行かせる事は、させない」


リューネ「……へぇ、お前、いい感じだよ」




タッタッタッタッ

七香「あ、鮎川!! さっきの黒い人達ブッ飛ばしてホンマにアンタ捕まるで!?」

ディアナ「その事は後で説明します!! とにかく今は私について来て下さい!!」



美生「な、何よ、あんた達……。パンが欲しいんなら、ちゃんと並んで……」

杏子「……おい、テメェ等、今パン踏んだよな? 殺すぞ?」



栞(……ど、どど、どうしよう。いきなり押しかけて、絶対に驚いてるよね……)

ミネルヴァ「……ついて来て」

みなみ「ち、縮んだ!?」



スミレ「ちょ、ちょっと、もう閉店だって言ってるでしょ!?」

ズバッッ

さやか「魔法少女さやかちゃん登場!! さ、お姉さん、一緒に行こ!!」



ダッダッダッダッ

檜「せっかく楠のミスコン見るために日本に帰って来たのに、何よこれーー!!」

ウル「すまぬな、運ばせて」

楠「いや、それは別に。とにかく今は舞島学園に行けばいいのか?」

ウル「うむ、そこで桂木が待っている」



ピンポーン

長瀬「オー客さんかな?」

かのん「初めまして。私、長瀬先生の教育実習クラスの生徒だった、中川かのんです」

長瀬「か、かか、かのんちゃん!?!?」

かのん「一度も先生の授業は受けれませんでしたけど……。今は私の話を聞いて下さい」



マミ「これだけ探しても、その倉川先輩を見つけられないなんて……」

結「……仕方ない。言われたとおり、僕達も舞島学園に向かおう!!」



リューネ「……風向き、変わっちゃったかな」

QB「ここは一旦退いたほうが良さそうだね」

リューネ「いいの?」

QB「予定通り、まどかの心のスキマのエネルギーは回収して、力のない駆け魂を入れたんだ」

QB「どうせ後一日で全てが終わる」

QB「残されたのは、駆け魂を出して力を殆ど失った魔法少女と、非力な女神達……」

QB「女神の回収なんて後で幾らでも出来る。今はそれよりワルプルギスだよ」

スゥ、ザッ




桂馬「……助かった、か……」


歩美「か、桂木ーー?」

ちひろ「そっち危なくないーー?」


桂馬「よーーし!! いいショーになって来たぞ!! これでお前らは一番の話題になる!!」

エルシィ「に、にーさま!?」

ハクア「えぇ!?」

桂馬「……話を合わせろ。今はまだ歩美の攻略中だ」


歩美「――――はぁ、私、帰るよ」

ちひろ「歩美? 話があるんじゃないの?」

歩美「後で、電話するよ。じゃね」


ハクア「ちょっと、歩美が帰ったわよ!?」

桂馬「ハクア、歩美に気付かれないように護衛についてくれ」

ハクア「……分かったわ。エルシィ、桂木のこと、頼んだわよ!!」

エルシィ「う、うん、ハクア!!」


ほむら「……まどかぁ……まどかぁ……」

まどか「ほむら、ちゃん……?」

ほむら(……まどかを、魔法少女にしてしまった……。もう、こんな世界なんて……)


桂馬「――――ほむら。まだだ、まだルートはある。どんな時でもルートはあるんだ」


ほむら「……け、桂馬……」

桂馬「エルシィ、ちひろ、まどか、ほむら。今は、僕と一緒にシアターに行くぞ」


ディアナ「桂木さん!!」

桂馬「皆揃ってるか? 全員無事か、良かった」


マミ「桂木先輩、その、倉川先輩はどこにもいませんでした」

桂馬「……そうか。いや、そんな予感はあった。マミ、気にしないでくれ」

桂馬(……灯、無事でいてくれ……)


ウル「……話は、ほむらのソウルジェムを通して聞かせてもらった」

マルス「インキュベーターめ!! 姿形を変えて人間界に潜伏していたとは、許せん!!」

アポロ「そして、人間界で地獄の復活とはのぉ。しかし、どうやってじゃ?」

エルシィ「……それは、舞島の海にある一本岩、アレが『ゲート』なんです!!」

桂馬「一本岩が『ゲート』?」


エルシィ「人間界と地獄は、時空を挟んで隣り合ってます。あの岩の裏側は……」


エルシィ「アルマゲマキナ最終決戦の地、グレダ東砦……」


エルシィ「ヴァイスの最終兵器、ワルプルギスが封印されている場所です!!」




ディアナ「……私達は、その場所を知っています……」

ディアナ「古の悪魔達が女神を抹殺する為に最後に用意した、最悪の悪魔……」

ディアナ「それを使われる前に、私達女神で封印したのですが……」

ほむら「それが、本当のワルプルギスの正体……?」

ミネルヴァ「……あう、やっぱり……」

ウル「偶然にも同じ名前なだけではなかったか……」




エルシィ「ヴィンテージは、沢山のエネルギーを使って『ゲート』をこじ開けて……」

エルシィ「ワルプルギスで人間界を滅ぼして旧地獄を作るつもりなんです!!!!」

桂馬「……その計画、いつ始まるんだ?」

エルシィ「それが明日なんです~~!!」

桂馬「だろうな。ヤツの口振りからそうだと思ってた」


桂馬「それにしても、よくそこまで情報を集められたな。お前が調べたのか?」

エルシィ「えへへ~~。私のお姉様のこの羽衣に情報が全部入ってました~~!!」


桂馬「……お前が調べたのかと思った僕がバカだった。これでまたお前と羽衣に差がついたな」

エルシィ「うぅ~~!! どういう意味ですか~~!? にーさま酷いです~~!!」


ほむら「兄妹漫才はその辺で止めてもらえるかしら……どうするつもり?」

桂馬「どうする、だと? 決まってる。僕は、歩美を攻略する!!」

ディアナ「メルクリウスを出すのですか!?」

桂馬「ほむら、僕と出会ったときに言ったな、女神と魔法少女で魔女を倒すと」

桂馬「プランは今までと変わらない。前に女神全員で封印出来たなら今回もやってもらうだけだ」

桂馬「迷ってる場合じゃない。僕は、女神全員揃えるルートにかける」




美生「ちょ、ちょっとそこの庶民達、少しは私達にも説明しなさいよ!!」

七香「うち達もアホやない。あの黒い人達に狙われとるんは分かったわ、どうなっとるんや!?」

桂馬「すまない、美生、七香。今は説明してる時間はないんだ」

桂馬「最終的に、皆を巻き込む事になってしまった……。でも、もう少しの我慢だから」

桂馬「このシアターに女神と女神候補で立て篭もってくれ、魔法少女がヴィンテージから守ってくれる」


桂馬「……僕は必ず、最後の女神を出して戻って来るよ」


長瀬「か、桂木君……?」

みなみ「あの人……あの時の……」


マミ「こ、これって……まさか……」

杏子「あぁ……マズイねぇ……」


桂馬「どうした?」


マミ「桂木先輩、急に舞島の町中に使い魔の反応が……。こんな事は初めてだわ……」

エルシィ「きっとヴィンテージの仕業です!! ワルプルギスを動かすにはエネルギーが必要なんですよ!!」

エルシィ「女性を襲って心のスキマで魔女を産み出してエネルギーにするつもりなんです~~!!」

さやか「そ、そんな……。早く助けに行かないと!!」




亮「……待ちなよ。女性を助けるなら、やっぱり僕みたいなイケメンのほうがいいよねぇ?」


ノーラ「町中のヴィンテージと使い魔は、私の駆け魂隊と他の地区の魔法少女に任せてもらうわ」


マミ「他の地区の魔法少女? こ、これは……魔法少女の反応が増えていく……!?」




桂馬「……上手くやってくれたみたいだな、ノーラ」

ノーラ「本当にお前のやり方エグいわね、私好みよ」

エルシィ「ノ、ノーラさ~~ん!!」

ハクア『……ノーラ……』

ノーラ「勘違いしないでよ。ただ私の地区でヴィンテージが暗躍してたのがムカつくのよ」

桂馬「選択肢はこれでいい、舞島の町のほうはノーラに任せる」


ちひろ「か、桂木もエリーも……。さっきから何の話してんの……?」

桂馬「ちひろは一緒に来るんだ。僕の知らないところで歩美と連絡されると困る」

チャラチャラチャー

ちひろ「わわっ、携帯か」

パシッ

桂馬「もしもし、歩美だな? 今からお前に……告白しに行く!!」

歩美『えぇっ!? か、桂木!?』

ちひろ「な、何よそれ!? 歩美に何するつもり!?」


桂馬「エルシィ、ほむら、行くぞ」

エルシィ「え? ほむらさんもですか?」

ほむら「桂木エルシィ。実は、今は私が桂木桂馬の協力者<バディー>なの」

エルシィ「えぇ!? にーさま!! どういうことですか~~!?」


エルシィ「に、にーさまのバディーは私です~~!! ほむらさんには負けません!!」


桂馬「……それから、まどか……。まどかも一緒に来てくれ」

まどか「わ、私ですか……?」

桂馬「あぁ、そうだ」

エルシィ「まどかさんには普通の駆け魂しか入ってません、魔法少女になれないんですよ!?」

ほむら「どういうこと? まどかには戦う力はない、シアターの方が安全よ」


桂馬「…………」


ほむら「…………そう、何か考えがあるのね。分かったわ」


ほむら「まどか、私のそばから離れないで」

まどか「ごめんね、ほむらちゃん……。私、また守られてばかりで……」

ほむら「……いいえ、まどかには絶対に戦わせないわ。それが私の……」

まどか「ほむら、ちゃん……?」




桂馬(……舞台は整った。エンディングまで、一直線だ!!)




桂馬「ハクア、ちゃんと用意出来てるんだろうな?」

ハクア「お、お前!! あれ本気だったの!? や、やるわけないでしょ!!」

桂馬「おい、この攻略の重要性はお前も分かってるだろ。仕方ない、エルシィ、行け」

エルシィ「わ、私ですか~~!? うぅ、後で歩美さんになんて謝ろう……」




ちひろ「――――そ、それでさっきから、桂木は歩美を誘惑してんの?」

エルシィ「そ、そうなんです~~!!」

まどか「……その話の通りなら、ほむらちゃん、桂木先輩は」

ちひろ「……エリー、桂木は」


まどか「世界を救おうとしてるんだよね?」
ちひろ「世界を救おうとしてるんだよね?」


桂馬「パンツを使うべきか、使わざるべきか……」シュッ、シュッ


ほむら「えぇ……」

ハクア「そうよ」




桂馬(――――くそ、使い魔のせいで、いい場所もセリフも次々なくなる……!!)



京「――――え? 今下にいんの? 歩美? 桂木!? エリーも!?」

ちひろ「やっほーー。明日のライブ考えると落ち着かなくてさ、遊びに来たぞーー!!」



ちひろ「――――歩美ってさ、桂木のこと好きだったんだね」



ちひろ「――――歩美を落としたいなら、本気で歩美を好きになれ!!」



桂馬「――――歩美。僕について来てくれ!!」



歩美「――――わ、私、桂木が好き!!」



歩美「――――ロマンチックな場所で結婚したいんでしょ!! 私、待ってるからね!!」



桂馬「エルシィ、さっき確認してもらった場所はこの先か?」

エルシィ「はい!! そうですよ、にーさま」

桂馬「……よし。ちひろ、ほむら、先に歩美がいるところへ行ってくれ」

ちひろ「はぁ!? 急いでるんじゃないの!?」


ほむら(――――この先は……確か……)


ほむら(……そう。そうね、私は言ったわ。『魔法少女を攻略して』と……)

ほむら(……貴方は、どんな状況でも、『落とし神』なのね……)


ほむら「少し待って、桂木桂馬。……まどかと二人で話させて」

桂馬「あぁ、分かった」




ほむら「……まどか。私がまどかの魔法少女化を阻止していたのを不思議に思ってたわね」

まどか「う、うん……。ほむらちゃん、だって初めて会ったときも……」

ほむら「初めてじゃないのよ」




ほむら「――――私ね、未来から来たんだよ」




ほむら「何度も何度もまどかと出会って、それと同じだけ死ぬ所も見てきたの」

まどか「……ほむら、ちゃん?」

ほむら「ごめんね、わけ分かんないよね、気持ち悪いよね……」

ほむら「でも、どうすれば貴方を救えるか、その答えだけを探して何度もやり直して……」


ほむら「私を救ってくれた大切な人さえ、騙して利用して……」

ほむら「いえ、多分あの人は気付いてた……。それでも今、まどかを救おうとしてる」


ほむら「『まどかを救う』……その気持ちは私も同じ。それが私の最初の気持ち」

まどか「ほむらちゃん……」


ほむら「今となっては、たった一つだけ最後に残った道しるべ」


ほむら「――――お願い。私に、私達に、貴方を守らせて」




桂馬「……ほむら、もういいのか?」

ほむら「えぇ、いいわ」


ほむら「悪魔ハクアが護衛してるとはいえ高原歩美が心配よ。小阪先輩、行きましょう」

ちひろ「そ、そうだけどさ……」


まどか「……桂木、先輩……」

桂馬「この先の避難所に、この異常気象と地震でまどかの家族達が避難してる」

まどか「えっ、ママ達が!?」

桂馬「まどかもそこに避難してくれ」

まどか「そ、そんな……。わ、私が魔法少女なのに何の役にも立たないからですか……!?」

桂馬「いや、違う」

まどか「きっと私にも出来ることがあります!! 私も連れて行って下さい!!」


桂馬「――――まどかに出来ること、まどかにしか出来ないことがあるよ」


まどか「えっ……あっ……」

桂馬「僕やほむら達が帰って来るのを待つことだ。まどかが待ってくれてる、だから僕は頑張れる」

桂馬「……だって君は、僕の大切な人だから……」


桂馬「絶対に君を救ってみせる。だから、待っていてくれ、僕を」


まどか「桂木先輩……。わ、私も、先輩のこと…………んっ……」




エルシィ「――――――――駆け魂、勾留♪♪」




杏子「――――どうしたさやか、流石にこの使い魔の量は新人にはキツイかい?」

さやか「そういう杏子こそ、さっきから足が止まってるんじゃないの?」

杏子「へっ、言うじゃねぇか、まだまだ大丈夫そうだねぇ」

パァン

マミ「二人とも大丈夫!?」

杏子「チッ……悪魔も使い魔も幾らでも湧いてきやがる……」

さやか「このままだと……」

ザザッ

ヴィンテージ「!!!!!!」

杏子「さ、さやか!!」

さやか「えっ?」

カキィィン


マルス「――――古悪魔め、我が友を傷つけることは許さん!!」


ヴィンテージ「!?!?!?」


マミ「ちょ、ちょっと、女神が狙われてるのに貴方達が出て来たら意味ないじゃない!!」

ウル「だからと言ってだな」

月夜『仲間を見捨てることなんて出来ないのですね』

マミ「……仲間……。九条先輩……」

アポロ「それに、わらわ達も守られっぱなしなのは性に合わんぞよ」

ディアナ「私達は女神。本来なら人間を守るのが役目です」




マミ「……九条先輩!! 使って!!」

ジャキン、ズララララ

ウル「……よし……」

マミ「ティロ!!!!」

ウル「フィナーレ!!!!」




マルス「はぁぁぁぁ!!!!」

ズバッッ、ズバッッ

マルス「我が太刀に合わせるとは……やるようになったな、さやか」


さやか「あたしだって修業してたんだから、まぁ、マルスにはまだまだ敵わないけどさ」


アポロ「――――しかし、これは本当に終わりが見えてこんぞよ。ウル姉?」

ウル「……仕方ない。ここは一度態勢を立て直そう」

ウル「我々と魔法少女もシアターに立てこもり、ミネルヴァの結界でシアターを覆うのだ」

ウル「ミネルヴァ、お前に我々の力を送る。頼むぞ」

ミネルヴァ「……が、がんばる……」




杏子「――――おいおい、シアターの周りにどんどん集まって来てやがる……」

さやか「やっぱりあたし達が出ないと!!」

マミ「駄目よ、まだみんな回復してないわ」


ミネルヴァ「……あぅ……うぅぅぅぅ!!」

ディアナ「ミネルヴァ!?」


美生「……う、ん? な、なに、頭が……」

楠「……なんだ、この感覚は……!?」


ウル「なんだ? 何が起こっている?」

アポロ「いきなり苦しみだしたぞよ!!」


ディアナ「……まさか……」


ウル「ディアナ?」

マルス「娘達は大丈夫なのか!?」

ディアナ「大丈夫だと思います。しかし……」

アポロ「しかし、なんじゃ?」


ディアナ「……ミネルヴァの結界は、悪魔の力を退かすもの……」


ディアナ「彼女達は悪魔の力で記憶操作されていた……」


ディアナ「その悪魔の力がなくなれば……」




ディアナ「彼女達の、記憶が戻る――――」




みなみ「……なんで、先輩のこと、忘れて……」

長瀬「……そうよ、桂木くんは、あの桂木くんよ……」


ミネルヴァ「あぅ……」

ディアナ「ミネルヴァ!?」

ウル「悪魔の力に反応して、女神の力を使い過ぎたか……」

アポロ「ミネルヴァは限界じゃ、これ以上は結界を張れんぞよ!!」

ウル「我々だけで小さな結界を張り、少女達と脱出するか、しかし……」

マルス「私が突破口を作ります!! その隙に姉様達は行って下さい!!」

マミ「もう外は悪魔と使い魔で囲まれてるわ……」

杏子「チッ、逃げ場はねぇってか……!!」


キィィィィン


天理「……逃げ場は……逃げ道は、あるよ……」


ディアナ『天理……? あっ……』


天理「……皆さん、私に、ついて来て下さい……」




アポロ「――――それで、この洞窟はどこまで続いてるんぞよ?」

天理「……舞島海浜公園の……人口浜まで……」

ウル「入り口には結界を張り偽装もした、これなら時間も稼げるだろう」


檜「……さてと、それじゃそろそろ説明してもらおうかな」

楠「姉上の言うとおりだ。私達も今回の事件にかかわっているなら知る権利があるはず」

スミレ「それに……なんで桂馬のこと忘れてたの……。何か知ってるなら教えてよ!!」


マミ「私達も、詳しく女神や悪魔のことは知らないのよね……」

杏子「確かにねぇ……。出口まではまだまだあるんだ、話してもらおうかい」


ディアナ『……分かりました、それなら私が』

天理「……いいよ、ディアナ……。私が、話すから……」

ディアナ「天理?」

天理「……桂馬くんが、何をしてるのか……。皆に、何をしたのか……」


天理「……これまでのこと、これからのこと、話すよ……」


桂馬「――――歩美、手を取ってくれ。僕が連れて行くよ、エンディングへ」




ちひろ(――――私も、自分で決めたんだ……!!)




歩美「――――私と、結婚しなさい!!!!」




桂馬「で、出た!! メルクリウス!!!!」


エルシィ「やりました!! にーさま~~!!」


ほむら「最後の女神……。これで、ワルプルギスは封印される……」

ハクア「そして、ヴィンテージの野望も阻止出来るわ」




美生「桂木が、悪魔から私達を助けるためにって……。あの馬鹿、告白のぞき庶民のくせに……」

七香「世界の滅亡って……。桂馬のヤツ、水くさいやん、まずうちに相談しいや……」


ディアナ『……そろそろ、出口のようですね』


女神達「!?!?!?!?」

アポロ「今のは……!!」

ウル「間違いない、メルクリウスだ」

ディアナ「あの船からメル、それに桂木さん達の気配も感じます。皆さん行きましょう」




ディアナ「――――桂木さん、ありがとうございます。メル、よく目覚めました」

桂馬「ディアナ!? それに皆も!? どうしてここに……」

ディアナ「それは説明すると長くなるのですが、それより……」


楠「桂木!! この軟弱者が!! なぜ私に黙っていた!!」


ワーワーキャーキャー


桂馬「……これは、どういうことだ……?」


桂馬(……そうか……。記憶、戻ったのか……)




ワーワーキャーキャー

桂馬「お、おい、みんな落ち着け。今はこんな事してる場合じゃ」




QB「――――お手柄だよ桂木桂馬。よくやってくれた」




桂馬「キュゥべえ……!!」

QB「この短期間で女神を全員揃えるとは、流石は落とし神と言ったところかな?」

マルス「インキュベーター!! 私や姉様達が目覚めた今、貴様の野望はここで終わりだ!!」

アポロ「そういうことじゃな。そろそろ観念するぞよ」

QB「終わり? 観念? 君たち女神は何か勘違いしてるようだね」

桂馬「……やはり、僕に、女神を集めさせていたんだな……」

QB「桂木桂馬、気付いていたんだね」

桂馬「古悪魔は一度女神にやられてる、それなのに女神を重要視しないなんてありえない」

QB「分かっていながら女神を集めたのかい?」


桂馬「僕にはこのルートしかないからな。だが、このルートはお前のものじゃない」


桂馬「――――――――僕のルートだ」




桂馬「目的はなんだ? 何故女神が集まるのを見過ごしていた?」

QB「目的? そんなの決まってるじゃないかぁ」

ディアナ「どんな目的があろうと関係ありません。私達女神が集まったのですから」

ウル「もうお前の好きなようにはさせないということだ」

QB「だから言ったじゃないか、君たち女神は勘違いしているとね」


ズンッッ、ググググ


ハクア「な、何よ、これ……!!」

エルシィ「か、身体が動きませーーん!!」

QB「女神が揃おうが、新悪魔だろうが魔法少女だろうが、僕に敵うはずないじゃないか」

ミネルヴァ「……この力……昔と、変わってない……」

QB「アルマゲマキナの決戦。彼女と相打ちでお互い体をなくしたが、僕は力を失ったワケじゃない」


QB「君たちは女神が揃えば世界は救われると思ってたんだろう?」


QB「人類最後の希望の女神は僕に殺されるんだよ。最高の希望から最悪の絶望への相転移……」


QB「僕はかつてない大量のエネルギーを手に入れるはずだ」


詢子「――――おい、どこに行こうってんだ?」

まどか「…………」

詢子「言えねぇってのか」

まどか「……桂木先輩もほむらちゃんも、ここで待っててって言ってた、でも……」

まどか「ママ、私、みんなのために行かなきゃならないの」

詢子「警察と消防に任せろ。外は怪物が徘徊してるって噂もあるんだ」

まどか「私でないと、ダメなの」

パァン!!

詢子「あのなっ、周りがどんだけ心配すると思ってんだ!!」

まどか「分かってる。どれだけパパとママに大切にしてもらってるかもよく分かってる」

まどか「それでも!! 私の出来ることをやらなくちゃいけないの!!」

まどか「私の中の『私』が言ってるの、今行かないといけないんだって!!」

まどか「……ママはさ、私を信じてくれる? 私を正しいと思ってくれる?」


詢子「……絶対に下手打ったりせず、帰って来い」




まどか「――――――――ありがとう、ママ」




QB「――――君の言葉を借りるなら、ここがエンディングだよ、桂木桂馬」

桂馬(……ここまで……なのか……くそ……)


ググ、グググ


QB「なんだ……? 僕の力を押し返している……?」

QB「誰だ、誰が、そんな力を残していたんだい。女神? それとも新悪魔?」




「――――――――絶望で、終わらせたりしない」




QB「ま、まどか!? その姿は…………『魔法少女』!?!?」



まどか「私の、私達のエンディングに絶望なんて必要ない!!!!」



QB「完全に押し返されている……僕の力を……!?」



QB「あ、ありえない……こんな事は……」

QB「まどかの駆け魂は出されている、そもそも悪魔の力で僕に敵うはずがない……」


ほむら「ま、まどか……!!」


QB「……なるほどね。さやか達が駆け魂を出されて何故魔法少女になれるのか不可解だった」

QB「駆け魂の後遺症なんかじゃない、ほむらの数多の平行世界横断が原因だったんだ……」


QB「ほむらが何度も繰り返した数だけ、因果線が繋がってしまった……」

QB「絡まるはずのない因果線が、この時間軸のまどか達に力を送っている……」


QB「平行世界の自分自身に……!!」




――――――――『がんばって』




まどか「キュゥべえ…………!!!!」




QB「数多の平行世界の自分の力を合わせて……魔法の力に……!?」

QB「悪魔の力を借りずに……人間の力だけで……」


QB「こんなの……本物の『魔法少女』じゃないか…………!!!!」




ほむら(……あぁ……私の旅は、無駄ではなかったのね……)




QB「……何故この時間軸が特別なんだい……何か理由が……」


桂馬「か、身体が……動く……?」


QB「そうか……。平行世界のまどか達の絶望の結末、その最期の瞬間に祈った神への希望……」

QB「その祈りが『特異点』のいる時間軸のまどか達に……落とし神を通じて流れている……」

QB「このルートなら、希望があると信じて…………」




QB「――――気が変わったよ、桂木桂馬」




QB「僕はこんな希望に満ち溢れた絶望のエネルギーは回収したくないんだ」


QB「……リューネ」

リューネ「はいはい」

ザッ

ちひろ「な、なに!? ちょ、ちょっと、は、放してよ!!」


桂馬「ちひろ!?」


QB「……桂木桂馬、一つ言い忘れていたよ。実は君が駆け魂を出したせいで計算が変わってね」


QB「ゲートを完全に開くには、あと一人、魔法少女が必要なんだ」




桂馬「おい、まさか……!!」


QB「桂木桂馬、ゲームをしようじゃないかぁ。君は得意だろう?」

QB「あの一本岩のゲートの最深部で、僕は君を待とう」

QB「夜明けまでに君が来れたら小阪ちひろは解放するよ」

QB「しかし、来れなければ小阪ちひろは、普通ではいられなくなるというわけさ」


エルシィ「そ、そんな事させませーーん!! ちひろさんを放して下さい!!」

QB「新悪魔に言っておこう。あそこには魂度4以上の駆け魂を大量に用意してあるんだ」

ハクア「魂度<レベル>4以上……!?」


QB「ほむら、君や魔法少女が戦ってきたワルプルギスは、本物のワルプルギスじゃない」

ほむら「……どういうことよ……?」

QB「ワルプルギスの強大すぎる力がゲートから溢れ出て具現化したモノがワルプルギスの夜だったのさ」

QB「もちろん、そんな具現化と本物では比べられない程の差があるけどね」

ほむら「それじゃ今まで私が戦ってきたのは……偽物……そんな……」




QB「どうだい桂木桂馬? 進めば進むほど絶望するゲームさ」


QB「それじゃ、僕は待っているよ……」スゥー




桂馬「…………」


ディアナ「わ、私が行きます……。女神の誇りにかけて、あの少女を助けます……」ガクッ

ウル「ディアナ、お前も先程のインキュベーターの攻撃から少女達を守る結界を張ったのだ」

マルス「くっ、人間の少女達が押し潰されぬように、かなりの力を使ってしまった……!!」

アポロ「わらわ達の力はもう限界じゃぞ……。女神といえど、これ以上は無理ぞよ……」


ハクア「私が行くわ。これは地獄の戦争なんだから、私だけでも行かないと……!!」

エルシィ「む、無茶だよハクア!!」


マミ「……駄目だわ、魔法少女に変身出来ない……」

杏子「さっきの変な攻撃で、あたし達の力を奪いやがったか……」

さやか「奇跡も魔法もあって、神様もいるのに、今のあたし達は戦えないなんて……」

まどか「ほむらちゃん、ごめんね……。『私』の力も使い切ったみたい……」

ほむら「いいのよ、まどか……。あとは私がやるわ」


桂馬(……今までのルートに間違いなんてない。この先のルートも絶対ある、絶対だ……!!)


キィィィィン

天理「――――大丈夫だよ……桂馬くん……」


桂馬「天理……?」

天理「大丈夫……。だって、ここにいる人達はみんな一緒、同じ気持ちだから……」

桂馬「同じ気持ち……?」


天理「……みんな、桂馬くんのことが、大好きなんだよ。だから、大丈夫……」


桂馬「だ、だいす……。て、天理、何を言って」




ウル「……同じ気持ち……そうか……その手があったか」

マルス「女神の力のエネルギーは愛……!!」

アポロ「わらわ達の宿主と、この少女達の愛は全て同じ桂木への気持ちじゃ!!」

ミネルヴァ「……みんなの、想いを繋げて、シンクロすれば……」

ディアナ『……愛が、大きければ大きいほど、力になる……!?』




ディアナ「メル、しっかりして下さい」

メル「寝起きでこんな大がかりな儀式はキツイなぁ……」

ウル「人間の少女達よ。桂木を中心に円を組み、手を繋ぐのだ」

アポロ「その後は桂木を想うだけでいいんじゃ、他は全てこちらでやるぞよ」

ミネルヴァ「……想いを……繋げて……」


長瀬「桂木くん……」

みなみ「先輩……」

マミ「桂木先輩……。えっ、な、なに、ソウルジェムが光って……!?」

杏子「桂馬……。なっ、ソウルジェムがあたし達の身体に、心に戻っていく……!?」




かのん『――――――――想いを、一つに……』




桂馬「っっ!? ま、眩しい……何も見えないぞ……」

桂馬「お、おい、本当に大丈夫なのか!?」




ウル「…………成功だ」




マルス「……凄い……。これ程までの女神の力は感じたことがない」

アポロ「これだけの力があれば新しく封印をすることも出来そうぞよ!!」


杏子「……成功したのはいいさ、確かにすげぇ力を感じる……」


杏子「だけど、この翼と!! このヒラヒラした服はなんだよ!? これで戦えってか!?」

楠「……同感だ。このようなドレスでは戦えないぞ……。か、かわいいとは思うが……」

さやか「えぇ!? いいじゃん杏子、ウェディングドレスに女神の翼、似合う似合う!!」

檜「そうそう、みんな似合ってるよ。楠だって本当はこういうの好きなくせに~~」


ディアナ「……姉様、これは?」

ウル「……うむ、どうやら繋がる儀式で我々女神の力が少女達に流れたようだ」

ウル「一時的ではあるが、人間の少女達も女神と同等の力を使えるだろう」

七香「うち達も……」

スミレ「女神に……」


結「歩美のウェディングドレスのイメージが流れて、みんなこの格好になったんだね」

歩美「そういう結はなんでタキシードなのよ。それより結、この状況を説明してほしいんだけど」


美生「まぁ、生地は庶民的だけど、デザインは悪くないわね」


栞(……確かに高原さんのウェディングドレスいいなぁとは思ったけど……)

栞(……こんな大勢の前でドレスに女神の翼って、どないせいっていうのよーー!!)

みなみ(……こんなに綺麗なウェディングドレスなのに、私はボサ髪であります……)

栞みなみ(……恥ずかしい……)


長瀬「私こんな格好、大丈夫かなぁ……」

かのん「似合ってますよ、長瀬先生」


まどか「ほむらちゃん、そのリボンは……」

ほむら「まどかと繋がったときに感じたわ、『まどか』が力を送ってくれたのよ」


マミ「……準備は整った、といったところかしら?」

月夜「そのようなのですね、後は……」

美生「まさかここまで来て、危ないから待ってろなんて言わないわよね、桂木!!」




桂馬「……いや、そんな事は言わないよ」


桂馬「世界を救うのも、ちひろを助けるのも、みんなの力が必要だ」



桂馬「――――僕に、みんなの力を貸してくれ」



桂馬「――――全員一緒に、行こう、エンディングへ!!」




ワーワーキャーキャー




桂馬(――――――――見えたぞ…………)


桂馬(――――――――最高のエンディングが…………!!!!)




エルシィ「あわわわわ~~!! にーさま、一本岩の周りにあんなにヴィンテージが!!」

桂馬「くそっ、今は構ってる時間はないぞ……!!」




灯「――――桂木、ヴィンテージの相手は駆け魂隊が引き受けよう」




桂馬「あ、灯!?」

灯「舞島の町のことは安心してくれ、私とノーラの指揮する駆け魂隊が上手くやってくれている」

桂馬「……灯、だよな……?」

灯「後は女神がワルプルギスを封印出来れば全てが終わるのじゃ。桂木、頼んだぞ」




檜「――――わお、突入出来たのはいいけど、早速強そうなのが二人も出て来たわよ~~」

楠「姉上、やはり先陣は私たち戦える者が行きましょう」


楠「桂木、私はお前に女子一人助けられない軟弱な修行をさせたつもりはないぞ。早く行け」

檜「早く帰っておいで桂馬、そしたらご褒美にまた悩殺してあげるわよ!!」




桂馬「主将……楠!! 檜!! ……頼む、無茶しないでくれよ……!!」




美生「――――さてと、そろそろ私達の出番ね!!」

桂馬「……美生、長瀬、みなみちゃん、スミレ、七香……」

桂馬「ヴィンテージを目を引き付けるだけでいい、危ないと思ったらすぐに逃げてくれ」


桂馬「……みんな、頼むぞ……」




ハクア「――――この反応……この先から、かなり広い空間になってるわ!!」

マルス「ということは……!!」


マミ「――――こ、これが……ワルプルギス……」

エルシィ「あわわわわ……」

杏子「で、でけぇ……」




ほむら「……また、会ったわね……いえ、初めまして、かしら」




ウル「我々女神はすぐにワルプルギス封印の儀式を始めるのだ!!」

アポロ「魔法少女達はわらわ達を援護してほしいぞよ、頼むのじゃ!!」


杏子「へっ、任せろ。 行くぞ!! さやかァ!!」

さやか「ちょ、ちょっと、杏子!? あーー、もう!!」


まどか「ほむらちゃん、エルシィさん、ハクアさん、ここは私達に任せて行って下さい」


ほむら「ま、まどか? だ、駄目よ!! コイツは貴方達だけでは……」

まどか「大丈夫だよ、ほむらちゃん。『今』はみんながいるから大丈夫!!」

まどか「それより、キュゥべえから小阪先輩を救ってあげてほしいんだ」

ほむら「まどか……」


まどか「もう誰一人、魔法少女を絶望なんてさせたくない!!」


まどか「だから、行って、ほむらちゃん」


リューネ「……どこ行くの?」




ほむら「くっ……」

カチッ、ドガーン!!

リューネ「……へぇ、お前もいい感じだよ。楽しませてよ、アハッハハハハ!!」

ほむら「ごめんなさい、まどか。そう簡単に進めそうにないわ」


ハクア「ほむら!!」

フィオ「お前の相手は私よ!! ハクアーー!!」

ハクア「フィ、フィオ!?!?」

フィオ「よくも私を勾留ビンなんかに閉じ込めてくれたわね!!」

ハクア「こんな時に……!!」

フィオ「たかが新悪魔に私は倒せないわよ!!」

ハクア「こ、の……。桂木!! エルシィ!! 行って!!」


エルシィ「ハ、ハクア……!!」

ハクア「エルシィ!! 新悪魔の誇りにかけて、インキュベーターを止めるのよ!!」


エルシィ「い、行きましょう!! にーさま!!」

桂馬「……ほむら……ハクア……!!」




ちひろ「――――ど、どんな願い事も……?」


QB「そう、僕は何でも叶えてあげられるんだ。だから……」




QB「――――――――僕と契約して、魔法少女になってよ!!」




ちひろ「な、何でも……叶えて……」


QB「小阪ちひろ、君には何がいいかなぁ?」

QB「中川かのんのようなアイドルになるなんてどうだい? 憧れていただろう?」

QB「それとも、君の告白を拒否した男を全員自分のモノにするのもいいんじゃないかなぁ?」


ちひろ「わ、私は……私の……望みは……」




ちひろ「……私の、望みは……」


ちひろ「ないけど」


QB「は……?」


ちひろ「望みなんてないって言ったのさ、白い化け猫」

QB「何を言ってるんだい……平凡な君に望みがないワケが……」

ちひろ「へ、平凡言うなーー!!」




ちひろ「私の人生、私がボーカルなんだ……」


ちひろ「あんたが用意した曲と歌詞とステージで歌っても、私は輝けないんだよ!!」




QB「……訳が分からないよ」




檜「――――ほらほら、この奥に行きたいなら私達姉妹に倒さないとダメよ~~!!」

楠「その通りだ!! ここを通りたければ私達を倒してから行くのだな!!」

檜「……へぇ、楠もノリノリじゃない」

楠「お姉ちゃ……あ、姉上、何を言ってるのですか……」

檜「アッハッハッハッ!!」

楠「私は……今こうして、世界のために姉上と背中合わせで戦えることが誇らしいです」

檜「私もだよ、楠」




七香「――――これで、王手やーー!!」

ドゴーン!!

七香「うーん、うちの魔法、うちの周りの将棋の駒からビーム出るのは強いけど地味やなぁ」

スミレ「いいじゃない七香は!! 私の魔法なんてラーメン丼が爆発するだけなのよ!?」

美生「ちょっとそこの庶民達!! 七香もスミレも今は言い争ってる場合じゃないでしょ!!」


美生(……桂木、そっちは大丈夫でしょうね……)




カキカキ、カキカキ

みなみ「ミネルヴァさんに習った召喚獣の魔方陣、これでいいよね……」

みなみ「ええい、強いの出て来てであります!!」

ボワン、シュウゥゥ……


召喚獣「バード、お呼びかい? あとは俺に任せな……」ムキムキ、ムキムキ


みなみ「え、え、えぇーー!? に、似てるであります……」


召喚獣「フンッッッッッッッッ!!!!!!!!」

ヴィンテージ兵A「~~~~~~ッッッッ!!!!」

ヴィンテージ兵B「~~~~~~ッッッッ!!!!」




長瀬「――――あいたたたた…………」

二階堂「……長瀬、何をやっている……?」

長瀬「いや、その、桂木くんに理想を貫けと言われて、壁を貫いてしまいました……」

長瀬「って、なんで二階堂先輩が!? 先輩も桂木くんの攻略相手だったんですか!?」

二階堂「馬鹿を言うな。それより、桂木はどこだ?」

長瀬「桂木くんならこの奥に……。もしかしたら、そろそろ最深部に着く頃かも……」




QB「――――まさか本当にここまで来るなんてね。君には驚かされるよ、桂木桂馬」

ちひろ「…………」フラフラ、フラフラ


桂馬「ちひろ!!」

エルシィ「ちひろさーーん!!」


QB「でもちょっと遅かったね。小阪ちひろがツマラナイことを言うから実験してしまったよ」

桂馬「……ちひろに……何をした……!?」

QB「彼女の素質は素晴らしかったよ。本当にお手柄だね、桂木桂馬」

QB「なにせ今の彼女には心のスキマ、いや、とても大きな心の穴が開いていたからね」

桂馬「……僕は、ちひろに何をしたのか聞いているんだ、キュゥべえ……!!」

QB「ちょっとした実験だよ、人間の少女の心に僕の駆け魂がどれだけ入るのかの実験さ……」


QB「一匹、二匹、三匹…………誰かのおかげで穴が大きくてね?」


QB「何匹入ったのか数え切れなかったよぉ」


エルシィ「そ、そんな事したら……ちひろさんの心が……壊れ……」


ちひろ「…………」




桂馬「ちひろ…………!!!!」

ギュ

ちひろ「…………」




QB「無駄なことを……。やっぱり人間は訳が分からないね」


QB「あと数分で小阪ちひろは魔女になり、その時のエネルギーでゲートは完全に開くよ」


QB「君の負けだよ、桂木桂馬――――――――」




桂馬「……ちひろ、聞いてくれ……」

ちひろ「…………」


桂馬「ちひろ、ごめん……。僕はあの時、あんなこと言うつもりじゃなかったんだ……」

ちひろ「…………」


桂馬「ちひろ、僕があかね丸で言ったこと覚えてるか?」

桂馬「いや……ちひろは覚えてないんだよな……でも、僕が覚えてるよ」

桂馬「だから、もう一度言うよ。『いつでも僕が助けてやる』」


ちひろ「……っ……」


桂馬「こうして僕は、お前を助けに地獄の底まで来たぞ」

桂馬「こんな場所が、僕達のエンディングなはずがない」




桂馬「――――――――ちひろ、愛してる」




桂馬「一緒に帰ろう、僕達のセカイへ――――――――」




ちひろ「…………んっ…………」




エルシィ「い、い、いっぱい出た~~~~!!!!」

エルシィ「お姉様の勾留ビンなら……!!」


ゴゴゴゴ、ズズズズ、ポンッ


エルシィ「駆け魂、い~~っぱい、勾留♪♪」




ちひろ「…………桂木、まだ三回目だよ? もっと優しくしてよね」

桂馬「ちひろ!!」




QB「ふ、不可能だよ……。心のスキマを残さず駆け魂を限界以上に入れたのに……」

QB「どうやって心にエネルギーを入れたんだい……」

QB「外からどんなに入れても、溢れるはずじゃないか……!!」

エルシィ「外から入れたんじゃありません、にーさまは内から心を満たしたんです!!」

QB「内側、から……?」

エルシィ「インキュベーターさん。これが、新悪魔の私と……」


エルシィ「神にーさまの攻略です!!!!」




アポロ「――――ダメじゃ!! ワルプルギスが人間界に近づき過ぎておる!!」

ディアナ「このままでは封印の儀式が発動出来ない……」

ウル「あと少し……ほんの少しでいい、ワルプルギスを押し返すのだ」


杏子「……ハァハァ……そうは言ってもよ……こっちも大技連発でねぇ……」


ワルプルギス「キャハ…………キャハハハハ!!!!」


マミ「ま、また回復してる……!? これが悪魔……こんなの本当に悪夢じゃない!!」

さやか「……くっ……あたし達は、負けない……!! でも、どうしたら……」




まどか「――――あきらめるのは、まだ早いよ!!」




さやか「まどか!?」

杏子「まどか!!」


まどか「女神と魔法少女はさ、夢と希望を叶えるんだから!!」


まどか「私の矢は、まだ一本残ってる……。今、これを……!!」


リューネ「――――やらせると思ってんの?」




キィィン、カキィィン

リューネ「!?」

杏子「お前こそ、そう簡単にやれると思ったのかよ」

さやか「あたし達を忘れてもらっては困るんだよね!!」

リューネ「邪魔」

ブンッ、ドゴーン!!

杏子「チッ……」

さやか「ぐはっ……」

パァン!!

リューネ「ッ!?」

マミ「貴方の相手は、私達よ!!!!」

リューネ「……アッハッ……アハハハハ!!!!」




まどか(……この矢に、残ってる女神の力を全て込める……)


バサッバサッ、バサッ……


まどか(……え!? つ、翼が動かない!? どうして!?)




まどか(……この矢に全て込めたから!? だ、だめ、飛べない……)


まどか(……堕ちていく……。ごめんなさい、ママ……。先輩……)


まどか(……やっぱり私は、一人では何も出来ない子だったみたい……)


バサッバサッ、バサッバサッ、ガシッッ




「――――あきらめるのはまだ早いと言ったのは貴方よ、まどか」




まどか「……ほ、ほむらちゃん……!?」

ほむら「言ったでしょう、私の使命は『まどかを救う』ことだと。行くわよ」


まどか(……私一人では出来ることは少ないのかもしれない……)

まどか(……でも私には、さやかちゃん、マミさん、杏子ちゃん、そして、ほむらちゃん……)


まどか(……最高の友達のみんながいる……!!)




ほむら「まどか、貴方は私が支えるわ。まどかはその一矢だけに集中して」


まどか「うん、ほむらちゃん」




まどか「私達の希望の矢……いっけぇぇぇぇーーーー!!!!」




まどか(……今の私には……私にしか出来ないことがあるんだ!!!!)





フィオ「……そ、そんな……たかが新悪魔に、ヴィンテージの技術が負けるはずが……」

ハクア「闇に還りなさい、フィオーレ。ここはお前の居場所じゃないわ」


リューネ「……風向き、完全に変わっちゃったかな」

QB「どうやらワルプルギスとゲートの封印が始まったようだね」


桂馬「…………」


QB「僕の負けのようだ、桂木桂馬。今回は大人しく封印されることにしよう」

QB「でも、覚えておいてほしいんだ。いつか人間界は旧地獄に変わるということを、ね」


ディアナ「――――そんな事はさせませんよ。人間界に、私たち女神と……」


ほむら「私たち……」

まどか「魔法少女と!!」


ハクア「私たち新悪魔と……」

エルシィ「神さまがいる限り!!!!」


桂馬「おいエルシィ。このバグ魔、いつから僕が人間界の神になった。僕はゲーム世界の神だぞ!!」

エルシィ「うぅ~~!! せっかく私が締めたのに……にーさま酷いです~~!!」




QB「…………次が楽しみだよ」




ドガーン!! ガラガラ、ガラ……

桂馬「な、なんだ!? どうした!?」


二階堂「――――桂木、何をしている」


桂馬「に、にに、二階堂!? 灯も……どうしてここに……」

二階堂「いつか気が向いたら説明してやる、それより脱出だ」

灯「すでにゲートの崩壊は始まっておる、急ぐのじゃ」

桂馬「崩壊!? ヤツの最期の悪足掻きか、どこまでもお約束な展開だな……!!」

桂馬「だがダメだ、僕達だけで逃げる事は出来ない」

二階堂「他の娘達なら安心しろ、もう私が全員を外に逃がした」

桂馬「なっ……エルシィ、本当か?」

エルシィ「は、はい~~!! ゲート内部には皆さんの反応はありません!!」


桂馬「…………よし、脱出しよう」




灯「……姿が見えぬから、どこで何をしておるのかと思えば……。お前は心配性じゃな」

二階堂「担任教師とは、そういうものなんだよ」




ちひろ「…………」

桂馬「……ちひろ?」


桂馬「行くぞ、ちひろ」

エルシィ「ちひろさーーん!!」


桂馬「何してる、早く僕の手を取ってくれ、時間がないんだ」

ちひろ「わ、分かってるって!!」




桂馬「――――僕とお前には翼がないんだ。なら、こうするしかないだろ?」




ちひろ「う、うん……」


ギュ


ちひろ(……翼がなくても、この手が繋がるなら、私は……)




桂馬「――――ん……? 日の出、か……」

ほむら「…………終わったの、よね…………」

ハクア「えぇ、終わったわよ、全て…………」




歩美「……ちひろ、なんで桂木と手繋いでんの?」

ちひろ「あ、歩美!? こ、これは逃げるときに仕方なく……」

エルシィ「ちひろさんズルイです~~!! 私もにーさまと手を繋ぎたいです~~!!」

桂馬「このバグ魔は……朝から何を訳の分からないことを言ってるんだ……」


杏子「ん……? 朝? おいおい、カフェのバイトに遅れるじゃねぇかよ!!」

スミレ「あ、朝の仕込み~~!!」

長瀬「だ、大学行かないと!!」

まどか「さ、さやかちゃん、仁美ちゃんが通学路で待ってるよ!!」

さやか「やばっ、早く行かなきゃ。それじゃ先輩!! また後でね~~!!」




エルシィ「皆さん行ってしまいました~~」


桂馬「……おい、エンディングっていうのは、もっとじっくりゆっくりとだな……」




桂馬「……これだからリアルは……」




ちひろ「歩美!! 私達も今日ライブだよ!?」

歩美「本当だよ!! 準備しないと!!」


桂馬「……歩美、ちひろ……。今日は、ありがとな」


歩美「……キモい」

ちひろ「うん、キモい」

桂馬「おい」


ちひろ「……桂木。私達の歌、聴いてよ。凄い音、聴かせてやるからさ!!」

桂馬「あぁ、聴くよ、必ず」




ちひろ「それじゃ、桂木、またね――――――――」


桂馬「――――――――また、な」




ほむら「……会場に行かなくていいの?」

桂馬「この屋上からでも、よく見えるし、よく聴こえるよ」

ほむら「そうね」


『あーー!! 学食のおばちゃん遅いよ~~!! ささ、ステージ上がって上がって!!』

『えーー、では聴いて下さい。「キャッチ・ザ・レインボー」!!』


ほむら「……楽しそうね」

桂馬「今日の為にあれだけ練習してたんだ、楽しくもなるだろ」


『おばちゃんさぁ、オムそばパンいつも売り切れてんじゃん』

『すまないねぇ』


ほむら「……桂木桂馬。私は……貴方に、謝罪と感謝の言葉を――――」


桂馬「――――必要ない」


ほむら「えっ……」

桂馬「謝罪も、感謝も、必要ないと言ったんだ。僕はなすべきことをしたにすぎない」


ほむら(……本当に貴方は、どの世界でも変わらないのね……)




『「初めて恋をした記憶」』


――――変わりゆく日常に飲み込まれたまま

『まどか……!!』

『ほむらちゃん、やっと名前で、呼んでくれたね……』



――――恋愛なんてしないと思ってた

『貴方は、何者なの……』

『僕は神。落とし神だ』



――――もう一度動き出す、淡く愛しい日々

『ほむらちゃん?』
『どうした転校生』
『暁美さん?』
『おい、ほむら?』



――――傷つく事ばかり考えて、止まっていたんだ

『貴方に私の何が分かるって言うの!!!!』

『分かるよ。お前みたいな主人公のゲームを僕は何本も知ってる』



――――二度ない瞬間と感触は、消えていたけれど、心にまだ残る純粋と

『約束するよ。僕が必ず連れて行く、エンディングへ』

『……桂馬…………んっ…………』




――――――――――――――――初めて恋をした記憶




ほむら「……約束、守ってくれたのね……」ボソ


桂馬「約束? 平行世界の僕が、そう言ったのか?」

ほむら「……いつから、気づいていたの」

桂馬「はじめから。お前は知り過ぎていたよ、まるでクリアしたゲームをもう一度やるような行動だった」

ほむら「いいえ、クリアなんて一度もしたことがないわ。貴方が初めてクリアしたのよ、桂木桂馬」

桂馬「ほむら……」

カチャカチャ、ガッシャン

桂馬「……おい。今の会話の流れで何故そんな物騒なモノを取り出した」

ほむら「目を閉じなさい、桂木桂馬」

桂馬「い、嫌だ……。僕が何をしたって言うんだ!?」

ほむら「いいから早く閉じなさい」

桂馬「ぐっ……。おい、まさか風呂場のことをまだ怒ってるのか? あれは……んん!?」

ほむら「……んっ、動かないでほしいわね……上手く、出来ないじゃない……」

桂馬「お、おい、ほむら!? 今、何を……」


ほむら「わ、私にだって……クリア特典があってもいいと思うの」




ほむら(……前回の貴方は、小阪ちひろを深く傷つけた……)

ほむら(……つらそうな貴方を見ていられなくて、私は時間を戻した……)

ほむら(……初めて、まどか以外の人のために時間を戻した。貴方の、いえ、私のために……)

ほむら(……でも、今なら分かるわ……)

ほむら(……貴方は、きっと、あの後もエンディングへ辿り着いたんでしょうね……)




さやか「――――あっ、こんな所にいた!! おーーい、オタメガ先パーーイ!!」


桂馬「さやか? それに、まどか、マミ、杏子も」


マミ「……暁美さん、なぜ先輩と二人で屋上にいたのかしら?」

ほむら「べ、別に何でもないわ」


まどか「桂木先輩!! 決めたんです、私達、魔法少女を女神にします!!!!」


桂馬「は、はい?」

杏子「おいおい、まどか、それじゃ何にも伝わらないよねぇ?」

まどか「えへへ、ごめん、杏子ちゃん」


桂馬「どういうことだ?」

マミ「……女神の力。他の先輩達は失ったようなんですけど、私たち魔法少女には残ったんです」

さやか「あたし達の心の中のソウルジェムに、女神の力が残り続けてる」

まどか「この希望の力を、他の魔法少女にも分けて女神に変えるんです!!」

桂馬「そんなこと……出来るのか……?」




ディアナ「――――出来ますよ。まどかさん達には愛の力があるのですから」




桂馬「ディアナ? それに、他の女神まで……」


ウル「この少女たちの力は、すでに女神の愛の力ではない、人間の愛の力だ」

アポロ「もはや女神のわらわ達も予測出来んぞよ、人間の愛の力は無限大じゃからのぉ」

ディアナ「ですから、他の魔法少女に女神の愛の力を分けても問題はありません」


マルス「……うむ、彼女達は魔法少女ではなく、女神少女ということだな」

アポロ「いやいや、魔法少女ゴッデスフォームというのはどうじゃ」

ミネルヴァ「……せんす、わるい……」

ディアナ「名前など別に何でもいいではないですか。女神として、彼女達を応援しましょう」




まどか「そして、魔女になった魔法少女も女神に変えてみせます」

桂馬「魔女も……本当に、出来るのか……」

杏子「まだ分からねぇよ。でもよ、そういうもんじゃん?」


杏子「最後に愛と勇気が勝つストーリーってのはさ。ゲームでもそうだろ、桂馬」


桂馬「……杏子……そうだな」


さやか「でもさ、まどかを見てたら確かに出来るような気がしてくるんだよねぇ」

マミ「なぜか私も……。この希望の光、九条先輩達とは違う、女神の力……?」

ほむら(……まどか……)




まどか「先輩、私達で魔法少女のルールを変えるんです。それが、私の願い……」

まどか「そしていつか、世界中の魔法少女と魔女が女神になれば、絶望はなくなる」


まどか「もう誰も呪わなくていいセカイ。そうなったら、それはとっても嬉しいなって」

桂馬「まどか……」


まどか「えへへ、私一人では何にも出来ないかもしれませんけど……」


まどか「先輩とほむらちゃん達がいるから、私はこれからもずっと頑張れます!!」




エルシィ「あ~~!! にーさま、やっぱりここにいました~~!!」


桂馬「……エルシィとハクア? それに、僕が攻略した女子達、なんで……!?」


ドタバタ、ドタバタ、ワーワー、キャーキャー


歩美「だーりん、私の手作りカロリー食べてよ☆」

ちひろ「か、桂木!! ちゃんと私の歌、聴いてたの!?」


桂馬「エルシィ、ハクア、これはどうなってる、どういう状況だ!?」

エルシィ「皆さんが、にーさまの場所を聞くので連れて来ました~~!!」

桂馬「そんな事を聞いてるんじゃない!! 地獄の記憶操作はどうなってるって聞いてるんだ!!」

ハクア「地獄の記憶操作……? 今回はそれはないわよ」

桂馬「は……?」

ハクア「当たり前じゃない、今回は駆け魂とは関係ない事件なんだから」

桂馬「そ、そんな……それじゃ、このまま、だと……!?」


ワーワー、キャーキャー


エルシィ「わ~~、にーさまのやってるゲームみたいです~~!!」


桂馬「冗談じゃない!! うわ~~!! 僕に触るな~~!!」




エルシィ「私とハクアも駆け魂隊に復帰しましたし、これでハッピーエンドですね、にーさま!!」

桂馬「駆け魂隊……? 駆け魂を封印してた女神が復活したんだから必要ないだろ?」

ハクア「そんな簡単な話じゃないのよ」


ウル「我々女神は、ワルプルギスとゲートの封印に全ての力を使ったのだ」

アポロ「世界中に散らばった古悪魔の魂を封印する力など残ってないぞよ~~」

メル「当分は、そんな大規模な儀式は出来ないなぁ」

マルス「悔しいが、仕方ない」

ディアナ「そういうことです、桂木さん」

ミネルヴァ「……うん、うん……」


桂馬「……と、言うことは……」


ハクア「またヴィンテージが何か始める前に、捕まえないといけないってことよ、桂木!!」


エルシィ「それでは行きましょう!! にーさま!!」




エルシィ「 駆 け 魂 狩 り に!!!!」




桂馬「い、嫌だ~~~~僕はゲームをするんだ~~~~!!!!」




桂馬「……おい、さっきから笑い過ぎだろ、ほむら」


ほむら「ご、ごめんなさい。でも、楽しくて、嬉しくて……」


ほむら「本当、最高のエンディングだわ、桂木桂馬――――」


桂馬「……最低なエンディングだよ……」




――――そうだな、この最高で最低なリアル世界も――――


このエンディングも、僕が選んだ、僕しか知らない、僕だけの……


――――――――  僕の、セカイだ  ――――――――






 「神のみぞ知るセカイ」×「魔法少女まどか☆マギカ」


      『神のみぞ知る魔法少女』


            完






ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。

それでは、HTML化の依頼をしてこようと思います。


他にも神のみSSはこのようなスレタイで立てたことがあります。


エルシィ「にーさまを攻略女子の水着で落としてみせます~~!!」

エルシィ「この人達みんな駆け魂が入ってますーー!!」夜空「ん?」

梓「………」 「ドロドロドロ」 エルシィ「!?」



神のみとは関係ないですが、こんなSSスレも立てました。


アーク「リーザをデートに誘いたい?」エルク「こ、声が大きいって」

来夏「喜翆荘?」緒花「合唱時々バドミントン部?」

うしお「……聖杯戦争?」

うしおとシオン



もし興味がありそうなスレがありましたら、読んでいただけたら嬉しく思います。

それでは、ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。



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