ジャン「もう一人の親友」(325)


今日の訓練はいつにも増して疲れた。


はじめて立体機動装置を使った森での訓練。

俺はどうやらこの訓練との相性は悪くないらしい。

それでも木にぶつからないようにするので精一杯だったが。

他の奴らは木にぶつかったり怖がって中々飛び出せない…と言うのが多かった。

…いつか死人が出そうだな。

そんな中、羽が生えたように自在に立体機動装置を使いこなしていたのはやっぱり…

美しい黒髪をなびかせたミカサだった。


―――

訓練が終わるとミカサがきょろきょろと周りを見回していた。

いつもの事だ。

きっと死に急ぎ野郎でも探してるんだろう。

羨ましい…

そんな事を考えてるとミカサは人目を避けるように森の中に消えてしまった。

死に急ぎ野郎はアルミンと談笑していた。

なんだ、死に急ぎ野郎を探していたわけじゃないのか。

何をしに森に入って行ったんだ?

…俺は好奇心に抗えずミカサの後をこっそりつけてしまった。


ミカサは俺に気づいた様子もなくずんずんと森を進んで行く。

この森で訓練を行ったのは今日がはじめてだ。

訓練でこの森を一通り見たものの、なんとなくしか道は覚えていない。

というか上から見下ろす森と地面を歩く森では全然印象が違う。

…俺は帰りに迷わないかと心配になった。

しかしミカサはそんな俺の心配とは裏腹に迷いなく進んでいくのである。


しばらく後を追いかけているとミカサは立ち止まり、再び辺りを見回し座り込んだ。

見つからないように距離をとってるのもあり何をしているのかよく見えない。

うずくまっているようにも見える。

まさか…まさか…!

見てはいけない光景が目に浮かび、罪悪感と後悔が胸に広がった。

引き返すべきか…でも迂闊に動くと気配に敏感なミカサに気付かれないか?

っていうか今までよく気付かれなかったな…


―パキッ

…その時、俺は間抜けにも枯れ木を踏んでしまう。

枯れ木は音を立て真っ二つに割れ、渇いた音が響いた。

「誰!?」

ミカサの声が響く。

「わりぃ…何してるのか気になって後をつけちまった」

「ジャン…」

そっけないミカサの声。

少しばつが悪そうだ。


「もうすぐ飯の時間だしはやく行かないと食いっぱぐれるぞ」

「わかってる。すぐ行く」

「べ、便所なら寮にもあるだろ?なんでこんな所でわざわざ…」

「な、何を勘違いしているの!?」

珍しく顔を赤らめて俺に食って掛かるミカサ。

そうか…便所じゃなかったか…

やばい…かわいい。


「私は土を見に来ただけ!」

「土?」

「これ…」

ミカサは胸ポケットに手を突っ込み中の物を俺に見せた。

「種?」

「そう。野菜の種。今日の立体機動の訓練の時にこの種が育ちそうな土が見えたから…」

…今日の訓練中にそんな余裕があるとは…

俺は木にぶつからないようにする事で精一杯だったのに…

さすがミカサだ…


「どうしたんだその種?」

「荷物を整理したら出てきた」

山育ちで野菜を作っていた事、両親がいた事、住んでいた家の事などポツポツとミカサは俺に語った。

ミカサが自身の事を語る事などなく、そもそも俺と話す事はあまりない。

…死に急ぎ野郎との仲裁として話す事はあるが。

今日のこの幸運に感謝した。


「私はこの種を育ててエレンとアルミンに食べさせたいと思ってる」

…まぁ結局はそこに行きつくんだけどな。

「そうか。でもなんで隠れてこそこそしてるんだよ」

「……驚かせたいから」

そう言うとミカサは盛大に照れた。

ちらりと俺を見る。

「らしくないと思うでしょう?」

「いや、そんな事ねぇよ!」

ミカサに見とれていたのを誤魔化すように大げさに否定する。


「それじゃあこの事は秘密で」

ミカサは口元に手を持って行き人差し指を立てた。

少しだけ微笑む。

「お、おう…秘密だ」

ミカサって意外とお茶目なところがあるんだな…

頬を赤らめたままぼんやりと考えていた。

見切り発車しちゃった
後、園芸などの知識が皆無なのでその辺はフィーリングで。
そして色々模索中。

ミカサの小便ポーズ…ゴクリッ

期待!


―――

ミカサと共有する秘密ができた。



『それじゃあこの事は秘密で』



思い返す度に顔がにやけてしまう。

ミカサが死に急ぎ野郎にかまってるのを見ても心が軽い…

もう何も恐くない!


「何にやけてんだ?」

「うぉ!いきなり話しかけんじゃねーよ!」

声をかけてきたのはユミルだった。

チラリと俺の視線の先にあった人物を見る。

「エレンか!?おまえホモか!仲の悪いふりをしながら実は…ってか?ロマンチックだね~」

あごに手をやりふむふむ言っている。

…からかう獲物を見つけた、とでも言いたげだ。


「あのなぁ…」

「わかってるよ、わかってる」

ゲラゲラと笑う。

もう少し女らしく笑えないのか…

「ミカサだろ?」

「え、ああ、まぁそうだけど…」

ストレートに言われると恥ずかしい…


「なんだ、尻でも見てたのか?それとも胸か?噂の腹筋か?」

「あのなぁ…なんでそういやらしい事を考えてるって思うんだよ。俺はな、昨日森で…」

「ジャン」

いつの間にかそばに居たミカサに会話を遮られた。

体温が下がった気がした。

「珍しいな、ミカサがジャンに話しかけるなんて」

ユミルが怪訝な顔をする。

なんかくやしい…


「会話が聞えた。ジャン、私のお尻を見てたの?」

「な!違う!ユミルが勝手に言ってただけだ!!」

「ミカサの尻は安産型だなぁとか言って興奮してたぞ。親父くせぇよなぁ」

ユミルが悪乗りをする。

…こいつ覚えてろよ…

「そう、ジャン最低」

「はうっ」

ミカサの背後で俺に指を指して笑いを押し殺しながらユミルが震えていた。


「ユミル!」

「いてぇ!」

突然現れたのはクリスタだった。

クリスタから頭突きをくらったユミルはよろける。

「一部始終話を聞いてたけどジャンは別にいやらしい事言ってなかったでしょう!」

なんという女神。

クリスタは本当に女神。

何度も言う。女神。


「ジャンごめんね、ユミルが余計な事言っちゃって。私からきつく言っておくから」

「そうか~クリスタは私とジャンが仲良くしてるのに嫉妬しちゃったんだな」

ユミルはガバッとクリスタを抱きしめる。

「大丈夫だ。私はクリスタ一筋だからな~」

もがくクリスタを抱きしめながら二人はどこかに行ってしまった。

俺とミカサは無言で見送った。

なんだったんだ一体。


「ジャン」

「はいなんでしょうっ」

思わず敬語になってしまった。

「昨日秘密と言ったはず」

あぁそっちか…ちゃんと聞いてたんだ…

お尻云々はミカサの冗談だったらしい。

わかんねーよ!

「種が育つまで誰にも言わないでほしい。もし誰かに知られても分けてあげる事が出来ないから」

盗まれる、とかは考えないんだな。

詰めが甘いんじゃないか?

昨日からミカサの意外な一面ばかり見ている気がする。


「ああ、悪ぃ…」

「約束」

そういうとミカサは小指を出してきた。

「?」

「ジャンも小指を立てて」

俺は言われるがままに小指を立てた。

するとミカサは自分の小指と俺の小指を結んだ。


「いい!?」

「指きりげんまん 嘘ついたら 針千本飲ます 指切った」

「…なんだそれ」

結んだ小指が熱い。

「私もよくわからないけど東洋に伝わる約束の証」

「へー…なんか変な証だな」

昨日からの幸運がまだ続いているようだ。

「意味は要約すると『約束を破ったら削ぐ』と言う事」

…訂正、死亡フラグが立ってしまった。


指きりげんまん はメジャーなのだろうか。

なぜかいつもユミクリが出張ってしまう。

指切りにメジャーもなにもあるのか?
ミカサなら本当にやりそうで怖いな

おおおおおおこれは期待!


―――

この時間、図書室内は静かだった。

当たり前か。もう消灯時間も近い。

俺は特別座学が得意と言うわけではない。

そして特別熱心というわけでもない。


キョロキョロとお目当ての本を探す。


「ん………はっ!」

突然声が響いた。

声の主の方を見た。

アルミンだ。

「やばい…寝てた…」

「びっくりした…」

「あれ?ジャン?珍しいね。どうしたのこんな時間に」

「おまえこそどうしたんだよ」

「ちょっと色々本を読んでたらこんな時間になっちゃって…

やっぱり訓練の後は疲れてるから寝ちゃうね」


アルミンは体力が無い。

立体機動も対人格闘も不得手である

いつも訓練の時はみんなから遅れる事が多い。

悪いが俺に言わせればこいつは落ちこぼれだ。

「今日、教官から色々な本を新たに入れたって聞いて気になってね」

そんなアルミンだが座学の成績はトップだ。

過酷な訓練の後、こうやってわざわざ本を読みにやってくると言う変わり者である。

「訓練の後によく字なんて読めるな。その分の体力を訓練に使えよ」

「あはは、そうかもしれないね」

などと笑う。

俺のちょっとした嫌味に気付かないのか、それとも流しているのか。


「ジャンはどうしたの?珍しいよねこんな時間に…っていうかこんな所に」

なんだかんだとこの部屋に訓練兵がやってくるのは大体座学テスト前くらいである。

後、ちょっとした調べ物など。

…そう、俺は調べ物をしに来たのである。

「いや、なんとなく…」

そう言えなかったのはその本の内容である。

大丈夫だろうとは思っているが察しのいいアルミンだ。

もし探している本の内容でミカサとの約束が破られる事になったら大変だ。


「?なんとなくでこの部屋に?」

アルミンが怪訝な顔をする。

「いや、ちょっと座学に目覚めたんだ!何かおもしろそうな本がないかと思ってな!」

「そ…うなんだ。じゃあこの本とかどうかな!おすすめなんだ!」

アルミンはしばらく考え込んだ後怪訝な顔から笑顔になった。

これ以上何か聞くのが面倒なのか、単純に俺の答えに納得したのか、それとも俺の様子をうかがっているのか。

…こいつ、意外と何考えてるのかわからねぇ。

そんな事を思ってる間にアルミンのおすすめとやらがどっさり積まれていた。


「もうすぐ消灯時間だよ。戻らないと」

「ん?ああそうか、先に帰っていいぞ」

「そう?じゃあ先に帰るよ」

そう言うとアルミンは部屋を出て行った。

俺は積まれたアルミンのおすすめの本をみてげんなりしてしまう。

これ…何冊あるんだ…?


「はぁー…とりあえず探すか…」

俺は植物の育て方について書いてある本を探しに来たのだ。

…ミカサには種から野菜を育てる事を誰にも言わないでおいてほしいと言われ、約束をしただけだ。

特に俺に何か協力してほしいと言われたわけでもない。

が。

これはどう見てもチャンスである。

ミカサは以前山育ちで野菜を作っていた事を聞いた。

きっと野菜つくりに詳しいのだろう。

このチャンスをものにするためには俺は知識を得なければならないのだ。

そう、ミカサの野菜つくりを手伝って好感度を上げる!

これこそ真の神様の与えてくれた幸運なのだ。

「がんばるぞっ!」

小声で拳を握った。

原作だど、ジャンはミカサの過去知らないからな。知ったらどうなるんだろう

ジャン頑張れ
ただ、タイトル的には恋愛は報われないのかな…

―――


訓練後にミカサが森に入って行くのが見えたのでこの間のようにこっそりとついて行った。

「ジャン」

…あっさりと気付かれてしまった。

前回森に入った時気付かれたのはきっとミカサは浮かれていたんだろう。多分。

「お、おう」

「どうしたの?」

「あー…何か手伝える事はないかと思ってな」


間抜けな話だが俺は図書室で野菜の育て方についての記述のある本を見つけられなかった。

図書室にそもそもそんな本が置いてなかったのか、それとも誰かが借りて行ったのか。

…考えてみるとミカサはなんの種を植えようとしたのかすら知らなかった。

やる気が見事に空回りしていた。

もうこれは直接に本人に聞いてサポートしよう、と言う事に思い至ったのである。

はじめからそうしていればよかった。

アルミンのおすすめの本がプレッシャーになっただけである。


「どういう風の吹きまわし?」

「俺、実は野菜を育てる事に興味があったんだ。せっかくのチャンスなんで教えてもらおうかと思ったんだ」

嘘と本当を織り交ぜてみる。

野菜を育てる事に別に興味はなかった。嘘だ。

でもこのチャンスをものにしたいというのは本当だ。

「そう、意外」

どうやら納得したらしい。

意外だと思ったのはこっちだ。

…下心を見破られないように気をつけないとな。


―――


「結構離れた場所に種を撒いてしまったからはやく戻らないと」

今日は種に水を撒いただけだった。

俺とミカサは急ぎ足で歩く。

前も思ったけど結構足場が悪かったり、生い茂る草に道を阻まれたりするのだがミカサはまるで意に介さず進んでいく。

正直ミカサのスピードについて行くのは中々難易度が高い。


「痛っ」

どうやら草で手を切ったようだ。

少しだけ血が出る。

「大丈夫?」

先を行っていたミカサが引き返してきた。

多少切って血が出た程度。

大した痛みではなかったが少し驚いて声を出してしまっただけだ。

訓練の時などもっとひどいケガをしたりする。


「座って」

そう言われ、俺は素直に座る。

ミカサは種の水やりに使った残りを俺の手にかけた。

「傷口はしっかり洗わないとだめ」

ミカサが俺の手を腕を掴んでる。

「…すまねぇ。後で自分で消毒するから大丈夫だ」


一刻も早くミカサの手から離れたかった。

上がった体温に気付かれたくない。

…俺の下心が泣いてそうだ。

「消毒はしない方がいい」

そう言うとどこからともなく絆創膏を取り出した。

「人間の皮膚には常在菌がいる。常在菌は化膿する菌の増殖を防ぐ。でも消毒薬を使うと死んでしまうらしい。
ので、消毒をせず絆創膏を貼る」

そう言うとぺたりと絆創膏を貼った。

「後、乾燥させない方がいいらしい。…とアルミンが言っていた。アルミンの受け売り。」

ミカサは少し微笑む。


「そ、そうなのか。勉強になるな…」

もっと気の利いた事が言えないのか…

「アルミンはなんでも知ってる」

少し自慢げだ。

ミカサは死に急ぎ野郎に対する執着ばかり目につくが、実はアルミンにも執着している。

もちろん死に急ぎ野郎ほどではないが。

見ていて絶対の信頼を置いている事はわかる。

…ミカサは死に急ぎ野郎を家族と言う。

じゃあ


「アルミンはミカサにとってなんなんだ?」

ポロリと言ってしまった。

聞く気はなかったのに。

ミカサは少し驚いた顔をしていた。

「アルミンは幼馴染。…うーん…違う。そうだけど…」

考え込んでいるようだ。

「家族に近い…親友。」

…ミカサの一番になるには越えなければならない壁が多い。

>>35 見切り発車しちゃったんで何も考えてないんだ。
ぼんやり最後を考えてたけどどうなるかわからん。

乙!
そうなのか。
まあ思うままに書いてくれ。
ジャンが報われると嬉しいが。笑

焼き芋の人かな?
ジャンの書き方に愛を感じる。乙。


***

きっかけは荷物を整理したら見つけた種だった。

種を育てて野菜を作りエレンとアルミンに食べてもらう。

そんなサプライズを企画していたのだがジャンに知られてしまった。

それを黙ってるよう約束した。

だがジャンは野菜を育てるのに興味があったようだ。

少し意外だった。

…それからジャンと一緒に行動する時間が増えた。


「今日は俺達が当番だな」

ジャンとサシャと私は厩舎の前に立っていた。

調査兵団の馬の世話を私達訓練兵も時々訓練の一環として手伝っている。

馬は調査兵団に欠かせない大切な存在だ。

この馬にエレンの命がかかっていると思うと馬の世話にも気合いが入るというもの。


「この馬食べたらおいしいんですかねー。馬刺しって知ってます?」

「おまえは食う事しか興味ないのか…」

…なんだか少し空しくなった。


「サシャ、ブラッシングはもう少しやさしくした方がいいんじゃない?」

「そうですか?いつもこれぐらい強くやってるんですけど…」

私とサシャは馬のブラッシングをしていた。

私達がしなければいけない事はブラッシング、馬糞で汚れた藁の取り換え、水桶とエサ桶の洗浄である。

私とサシャはブラッシングと水桶とエサ桶の洗浄。

藁の取り換えはジャンが買って出た。

もちろん後で手伝うつもりだが。

…一番の重労働を買って出るジャンは実はいい人なのかもしれない。

『エレンに突っかかる面倒な奴』と言う印象を持っていたが改めなければ…


「じゃあちょっと水を汲んできますね。すぐに戻ります」

そう言ってサシャは井戸の方へ行った。

「ミカサ」

サシャが厩舎から離れた後こそこそとジャンが私を呼んだ。

「なに?」

「どこかで聞いた事あるんだけど、この馬糞とか肥料にならねぇのか?」

ジャンは馬糞をしげしげと見つめていた。

「どうなんだろう…馬糞を肥料にするやり方はあるみたいだけど詳しく知らないから…」

「でも冷静に考えるとうんこが肥料になって植物が育ってまた口に入るって嫌だな」

「昔エレンも同じ事を言っていた」

「あんな死に急ぎ野郎と一緒にするなよ」

…などといつの間にか談笑していた。


「サシャ?」

気がつくとサシャが入り口で隠れるように私達を見ていた。

「どうして入って来ないの?」

「お邪魔…じゃないですか?」

「なぜ?厩舎の掃除をするのにあなたの力が必要」

「いや…そうじゃなくて…その…」

サシャはジャンと私を交互に見る。

「なんでもありません」


それからしばらく掃除に集中していた。

桶の洗浄や、ブラッシングも終わりジャンに手伝うと言ったが一人でやると断られてしまった。

ジャンが藁の取り換えが終わるまで手持無沙汰になってしまった私とサシャはもう一度馬のブラッシングをしていた。

「ミカサ、ミカサ」

サシャがこそこそと顔を寄せて話しかけてきた。

「どうしたの?」

「いつの間にジャンと仲良くなったんですか?」

「そんなに仲良く見える?」

「ついこの間までまともに会話してるのを見た事なかったですよ」


言われてみれば私はジャンとあまり会話してなかった。

…視線を感じる事はあったが。

サシャは私達が森でこっそり野菜を作っている事を知らない。

だから急に仲良くなったように見えたのだろう。

「サシャが見ていなかっただけ。ジャンはいい人」

「そうですか」

サシャはブラッシングを再開する。

「藁の取り換え終わったぞぉ…」


「お疲れ様です」

「お疲れ様、ジャン」

なぜかジャンは嬉しそうだ。

きっと厩舎掃除の達成感に酔いしれているんだろう。

今日ジャンはすごく頑張っていたから。

「ミカサは罪な女ってやつですねきっと」

…サシャの言っている事がよくわからなかった。

ミカサはジャンの死に急ぎ野郎発言には原作でもつっこまないけど、不思議に感じてしまう


男の子だもん!かっこつけたいよね☆

見てる人と自分の思う『報われる』が一緒とは限らないけどが自分なりにジャンが報われてほしいと
思って書き始めたSSです。

>>47 焼き芋はわからないけどジャンメインは今回が初めて。

>>56 死に急ぎ野郎というところには同意してるからでは?


―――

「ジャン」

立体機動の訓練の待機中にミカサが話しかけてきた。

…ちょっと嬉しい。

「後で例の場所にきて」

相槌を打つとミカサは訓練に戻った。

なんなのだろうか。


「最近ミカサと仲がいいんだな」

死に急ぎ野郎が話しかけてきた。

「そ、そうか?」

少し顔がにやけそうになる。

我慢だ!

「まぁ、ミカサに俺とアルミン以外で仲がいい奴ができるのはいい事だけど…」

なにやら複雑そうな顔だ。

何が言いたいんだ?

おまえはいつも俺がほしいもの―ミカサの好意を当然のものとしていた。

鬱陶しがって遠ざけようとして。

俺はおまえがそうやって好意を無下にしている間にミカサと仲良くなるチャンスを得た。

ありがとうよ!


「この馬面じゃあなぁ…」

「あぁ?なんだよ悪人面がよぉ!」

「ちょ…やめなよ二人とも…」

アルミンが諌める。

「喧嘩するとミカサが飛んでくるよ。今立体機動装置持ってるし」

遠くにいるミカサがこっちを見ていた。

人間離れした動きをして一瞬の内に距離を詰め、喧嘩を仲裁するミカサの姿が容易に想像できる。

あぶねえ…

こんなくだらない事でこいつと喧嘩してミカサの印象を悪くするのは嫌だ。

「ちっ…」

死に急ぎ野郎もそっぽを向いた。


「最近エレンは機嫌が悪いんだ」

「へー」

対して興味はない。

「何が原因なんだろうね」

と言いつつアルミンはわざとらしくミカサの方を見ていた。

……こいつはおもしろがってるんだろうか?

表情からは何も読み取れない。

考えてる事がわからない。

「僕はね、エレンがミカサをどう思ってるのかわからない」

(そう言えばそうだな)

「もしミカサが誰かとくっついたりしたらエレンはどうなるんだろうね」

「………」

アルミンは俺をチラリと見た。

「まぁエレンも失ってから自分大事なものに気付く、って言うのも恋愛小説的でおもしろいよね」


図書室で借りたアルミンのおすすめを思い出した。

結構な量があったが『何かおもしろい本がないか』と探していた手前律儀にすべて読んだ。

おすすめの本とやらは大体が効率の良い体の動かし方や筋肉のつけ方の本などわかりやすくためになるものばかりであった。

…余談だがおすすめした本人の体にあまり反映されていないのが気になった。

一冊だけ、恋愛小説が混ざっていた。

内容は幼馴染の男女の恋愛が書かれていた。

まだ途中までしか読んでいない。


「次!」

教官の声が響いた。

俺とアルミンは木の上から飛び降りた。


―――


なんだかんだと今日も一日の訓練を終えた。

約束通り例の場所へ行く。

「見て、芽が出てきた。今日の朝気付いた」

嬉しそうな顔でミカサは言った。

って、朝も行ってたのか…。

そんな事を思いながらミカサの指差した方を見ると確かに芽が出ていた。

思えば訓練の後にミカサと二人で水をやったり肥料を撒いたり。

…力になれてたのかわからないけど。

「おお、やったな!ミカサ!」

「ジャンのおかげでもある」

それでも自分の事のように嬉しかった。

俺はミカサの手を掴みブンブン上下に振った。


あ…

「うわ、悪い!」

パッと手を離す。

「どうして?喜びは分かち合うもの」

今度はミカサが俺の手を掴みブンブンと上下に振った。

なんかよく分からない状況になったが幸せだ。

…無意識にやってしまったとはいえ俺がミカサの手を掴んでしまうなんて…

これは距離が縮まっている証拠だ。


「ジャンの手は思ってたより大きい」

突然ぴたりと止まり、マジマジと俺の手を見る。

「そうか?」

ミカサの手は思ってたより柔らかい。

言わないけど。


「エレンと同じくらい」

あー…死に急ぎ野郎入りましたー…

テンションが下がる。

ミカサは死に急ぎ野郎の手を握ったりするもんなー

知ってた。

「アルミンの手も実は大きい」

本当どうでもいい情報である。


「…ミカサは本当にあいつらの事が好きなんだな」

知ってるけど。

そもそもミカサとこんな風になったのはあいつらのおかげでもあるとも言える。

「ええ、とても」

恥ずかしげもなく言う。

ミカサは死に急ぎ野郎の事をどう思ってるんだろうか。

好きなのはわかる。

それは恋愛的な好きなのか、家族愛の好きなのか。

…できれば後者であってほしい。


「そうだ、芽に名前をつけよう」

突然ミカサが変な事を言い出した。

食うのに名前つけたって仕方がないだろ…

「こっちの芽はなんだかアルミンっぽいからアルミン」

そのまんまだ。

「この芽がエレン。目つきがするどい感じが似ている」

目つきってなんだ。

「これは…ジャンで。雰囲気がなんとなく似ている」

雰囲気ってなんだ。


…なんだか照れくさかった。

いいよいいよー!

かなり期待

このミカサは可愛い、すごく可愛い

ジャンに似てる芽が気になって眠れません
続きが楽しみ


***

女子寮


今日は雨が降っていた。

風も強い。

台風というやつらしい。

色々と訓練が予定されていたが中止になり、休日となった。

雨だけでは中止にならないが風が強いので、ということらしい。

どんな状況でも適応できるように風が強いこの日も訓練すべきだが力量不足の訓練兵では大けがしかねない。


(エレンはどうしてるだろうか)

エレンは人一倍訓練を頑張る。

時々無理をしていると思う。

いつかの訓練の時、私についてこようとして大けがをしそうになった。

幼い時から私に対する競争心みたいなものを感じていたがそれが明確になってきたのは訓練兵になってからだ。

そしてエレンと少し距離ができたような気がする。

(いや、エレンはやさしい…)

色々と考えてしまい、頭がごちゃごちゃになる。

…とりあえずこの思いがけない休日はありがたい。

体を休めよう。


(そういえばアルミンはどうしているだろうか)

アルミンもエレンとは少し違うがやはり無理をする。

エレンは自分を顧みないがアルミンの様子はよく見ている。

アルミンもエレンの事をよく理解している。

以前世話を焼こうとするとアルミンが『やめた方がいい』と忠告してくれたりした。

その時男にしかわからない事があると言っていた気がする。

…私が男だったらエレンやアルミンとこんな時一緒にいられたのだろうか。

男生まれたらよかったのに。


その時風で窓が音を立てる。

風がさらに強くなったようだ。

木が大きく揺れているのが視界に入る。

…そういえば芽は大丈夫だろうか。

エレンとアルミンとジャンと名付けた。


そういえばなんであの時私は芽にジャンと名付けたのだろう。

雰囲気が似ていた。ちょっと縦に長い感じが。

それだけだろうか。


……………

…………

消灯時間の後にでもこっそり見に行こう。


―――

昨日の台風が嘘のように今日は太陽が眩しい。

思いがけない休日を満喫し今日は体が軽い。

「クシュン!」

視界の端でミカサがくしゃみをしていた。

「おい大丈夫かよ」

「ちょっと顔が赤くない?」

「私は大丈夫。それより昨日は少し冷えた。ちゃんと布団をかぶって寝た?」

「子ども扱いするな」

「あはは」


「エレン、寝癖が…」

「ああー!もういいって!」

死に急ぎ野郎はミカサの手を乱暴に払う。

ミカサは少しシュンとなった。

いつもの光景だ。

死に急ぎ野郎はミカサに冷たい。

ミカサはあんなに死に急ぎ野郎を…

…俺がもしあいつの立場だったら…もっとミカサに優しくするのに。

最近そんな事ばかり考えてしまう。


「訓練はじめ!」

教官の声が響いた。

「じゃあ俺がならず者をする」

「よろしく、ジャン」

今日はアルミンと組むことになった。

視界の端でミカサはサシャと、死に急ぎ野郎はベルトルトと組んでいた。

今日は珍しい組み合わせが多い。


「うわっ!」

アルミンを地面に叩きつける。

土埃が舞う。

「おいおい大丈夫かよ?」

俺は倒れ込んだアルミンに手を差し出した。

「っ…大丈夫」

アルミンは俺の手を掴まなかった。


「おまえ本当に弱いよな。少しはミカサを見習ったらどうだ?」

ミカサを見る。

「…そうだね。僕も頑張らないと」

以前ちょっとした嫌味を言った時アルミンは笑っていたが今は笑わない。

最近わかった事だがこいつは助けてもらう事、足手まといになる事を拒む。

なよなよした奴だと思っていたが…男なんだな。


「そういえばミカサはサシャと組んでるんだね…今日体調悪そうじゃなかった?」

「そうか?くしゃみしてたけどいつも通りだったと思うが…」

ミカサをみつめる。

「ミカサはエレンと僕の事心配したりするんだけどいつも自分の事を後回しにしちゃうんだ」

「………」

「自分の体調不良も隠したりするから心配だ」


ミカサはサシャと距離をとっている。

どうやらサシャがならず者をしているらしい。

…サシャが地面に叩きつけられる未来しか見えない。

ふと気付くと教官がこっちを見ている。

「そろそろ教官がきそうだから再開しよう」


アルミンの声で訓練に戻ろうとした。



「あ…」



その時ミカサの体が揺れた。

サシャと距離はとったままだ。

ミカサ頭から、力なく後ろに倒れる姿が目に映る。

まるでスローモーションだ。

それでも俺の体は動かなかった。


ドサッ

「…あぶねー」

力の抜けたミカサの体をいつの間にそこにいたのか。

死に急ぎ野郎が抱きとめていた。

額に手を当てる。

「やっぱり熱あるじゃねーか」

そう言うとミカサの体を抱き抱える。

「重いなおまえ」

「エレン…」

「おんぶにするからな」

死に急ぎ野郎がミカサを背負った。


「すいません、こいつを医務室に連れて行ってもいいですか?」

「許可しよう」

そのまま死に急ぎ野郎はミカサを背負って行った。

俺はそれを見送った。

周りにいた女子たちが色めき立つ。

まるで「王子様」のようだと。


冷たくして、素っ気無いふりして、興味ないふりして…

おまえ…ずるいだろ…

死に急ぎ野郎を間違えて死に急ぎ太郎と打ちそうになるなど…

ジャン、頑張れ…
俺は君がミカサとくっつくことを祈ってるよ

死に急ぎ太郎wwってw

ジャンミカは苦手だけど このSSはいけそう ので期待

ジャンに似てる芽に続き死に急ぎ太郎…www
今日も気になって眠れません
続き楽しみにしてます乙乙

ジャン切ねぇなぁ…支援支援

いい!とても!
乙です

死に急ぎ太郎の語呂のヤバさ…

死に急ぎ太郎wwww

続き期待してます

一字違うだけなのに 死に急ぎ太郎の破壊力の凄まじさといったら…

なんでか法被にねじり鉢巻きのエレンが、
威勢よく巨人に向かって行く絵面が 浮かんで仕方がない


>>98 こんな感じ?
http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org4630976.jpg.html

はじめてどっとうpろだ使ったから見れるかな?パスはeren


―――

エレンに背負われた私は医務室に連れてこられた。

この部屋の主は丁度席を外しているらしく誰もいなかった。

少し乱暴にベッドに降ろされた。

ギシリと揺れる。

横たえられ毛布を被せられた。

「誰もいないな」

そう言うとエレンは部屋を物色しはじめた。


…エレンに助けてられてしまった…

自分が情けなかった。

私はエレンを守らないといけないのにこの様だ。

こんな事ではいけない。


べシャ

そんな事を考えていると顔の上に何かを乗せられた。

「ぷはっ!」

水を大量に含んだ布だ。

あまり絞っていないので枕が濡れた。

熱さましに持ってきてくれたのだろう。

気遣いが嬉しい。

「とりあえず寝てろよ。誰か来るまでここにいるから」


エレンは私の寝ているベッドの傍にイスを持ってきて座った。

足を組んで頬づえをつく。

「……………」

「……………」

「………あの…エレン…そんなに見つめられると落ち着かない…」

エレンは私を見つめていた。

ひどく居心地が悪い。


「…おまえが風邪ひくなんて珍しいな」

「そう…?」

………

会話が続かない。

エレンは何か怒ってるような…気がする…

いつもと少し違う。

思いがけず一緒にいられて嬉しいが、今日は誰か来てほしいと思ってしまう。

……アルミン………………ジャン。


「最近ジャンと仲いいよな」

今思い浮かべた人物の名前が出てきて驚く。

「ジャンは友人だから」

友人と言うカテゴリに勝手に入れてしまったがよかっただろうか?

一緒に種を…芽を育ててるんだ。

きっと問題ないだろう。


「おまえが風邪をひいたのとジャンは関係あったりするのか?」

「なぜ?」

「例えば……」

エレンの顔が赤くなる。

「夜に逢引…してるとか…」

エレンにしては珍しくゴニョゴニョと語尾が聞えない。

逢引とは相愛の男女が人目を避けて会うことである。

どうしてそうなるんだろう。

エレンは何か勘違いしているようだ。

「ジャンは―…」


ハッとする。


ここでジャンの名前を出すのはよくない。

―ジャンと逢引しているわけではない。

―じゃあ風邪の原因はなんだ?

―昨日台風の夜に森に言ってた。

―どうして?

―芽の様子が気になったから。

―芽って何の芽だ?

と言うような流れになりそうだ。


私は嘘をつくのが下手というわけではないが特別うまくもない。

ちょっとした事でばれたら今までの苦労が水の泡だ。

…色々と付き合ってくれてるジャンにも申し訳ない。

「えっと………その……」

言葉を濁してしまう。

どういう風に言えばいいのか思いつかない。


ガラッ

「あれ、あなた達どうしたの?」

この部屋の主が帰ってきた。

「アッカーマン訓練兵が訓練の時倒れそうになったので連れてきました」

エレンが答える。

少しホッとした。

「そう、丁度部屋を空けてたの。ごめんなさいね。…あら?」

「あなたどうして雑巾を額にのせてるの?」

「………」

「………」

しばらくちまちましか投下できないと思うけど
よかったら付き合ってやってください

雑巾とかイジメやないか乙

乙!
そんでもって自分は>98なんだがありがとう!まさにこんなカンジだwww
このエレンなら巨人難なく駆逐出来そうだw
つか、絵も描けるって多才だなぁ、裏山

しかしジャン、あかんフラグが立ちかけとるがな……

乙!
ミカサさん そこで言葉を濁したら絶対勘違いするよw

絵うまいなwそしてワロタ
不穏になってまいりましたね

雑巾www

良スレの予感


―――

今日の訓練が終わった。

あれからミカサと死に急ぎ野郎はどうなったんだろうか。

死に急ぎ野郎が訓練に戻ってきた様子はなかった。

…ミカサはきっとあいつに惚れ直したりするんだろうな。

最初から勝ち目はないってわかってたのに…

最近変に運がよかったから。

どんどん欲張りになってしまった。


森の方をチラリと見る。

今日までは訓練の後、あそこに行くのが楽しみだった。

…ミカサがいたから。

もしかして…と淡い期待を抱く事が出来たから。

本当に現金な奴だ。

最低だ。


ミカサが倒れて俺もあそこに行かなければあの芽は枯れてしまうのだろうか?

いや、ミカサだって何日も寝込まないだろう。

長引いて2、3日くらいか?

その間俺があそこに行っても行かなくても変わらない。

水をやらなくても、雑草をむしらなくても問題ないだろう。

その程度なんだ。

俺は。


…そんな事を考えてたはずだが。

俺の足はいつもの場所に向かって歩いていた。

習慣になってしまっていたらしい。

悲しいよ本当に。

どうせ行っても誰もいないのに。

いたとしても俺に振り向いてくれるわけでもないのに。


誰も見えなくなったところで俺は走り出した。

全力で走った。

訓練の後に何やってるんだ。

…何も考えたくなかった。

ああ、なんか青春してるじゃねーか。

しょっぱい。

しばらく走るといつもの場所に着いた。

最初はここに辿り着くまで時間がかかったりちょっとした擦り傷、切り傷などができたものだ。

だが今日はそんなに時間がかからず、傷もできなかった。

…時間がかからなかったのは走ったからだけど。


芽の前に座り込んだ。

無性に全部引っこ抜いてやりたい。

引っこ抜いてぐちゃぐちゃに踏みつけてそれをミカサに見せつけてやりたい。

どんな顔をするんだろうか?

『そう…』

そっけない顔をするか。

『金輪際私に話しかけないで』

絶交を言い渡されるか。

『………』

無言で何も言わないか。

それとも泣くのだろうか。

ミカサの泣き顔が見たい。


…そんな事できるわけがなかった。

好きな女を醜い嫉妬で泣かせたいとか何考えてるんだよ。

馬鹿か。

以前ミカサが『ジャン』と名付けた芽に軽いデコピンを食らわせた。

特に意味のない行動だった。

ジャン…

いいねいいね
ミカサ可愛すぎるな

ジョン…


>>126ジョンって誰やねん

惚れた女の幸せを祈れるジャンはいい男!
続き待機

支援

***

風邪をひいて3日寝込んでしまった。

その間にたくさんの人が見舞いに来てくれた。

純粋な見舞いではなく珍しい物見たさで来た人も何人かいたが。

…とにかく嬉しかった。

自分で思っていたより人間関係良好なのかもしれない。

中でも特に嬉しかったのはサシャだ。


なんとサシャはパンを私に持ってきたのだ。

あのサシャが。

途中でよく食べなかったと感心したものだ。

そう言うとサシャは「私だってこれくらいしますよ!」などと言ってプリプリと怒っていた。

差し出されたパンは4分の1ほどだったがサシャにしてはすごい事だ。

なぜかその場にいた人から拍手が巻き起こった事が忘れられない。

すごく楽しかった。


風邪が治った今日、一日訓練しないと三日分は他の人に置いて行かれると思えと教官に言われた。

ごもっともである。

その事をエレンに話すと「おまえが寝込んでる間に立体機動がうまくなったんだぞ!」と勝ち誇った顔をしていた。

…そんなエレンがかわいい。

アルミンは笑っていたが直後にエレンに向かって「僕もだよ!」と背中を叩いて言った。

アルミンにしては珍しい行動だった。

こっちは微笑ましい。


その時教官から集合の合図があった。

訓練兵が集まり列を作る。

ふと気付くと前の列にジャンがいた。

背中を伸ばして立っている。

…たった3日だがジャンを見たのは久しぶりのような気がした。


ジャンは私の見舞いに来なかった。

…別に来る理由はないのだが…

なんとなく寂しかった。

エレンは家族なのでアルミンしか友人と呼べる人はいない。

他の人の事はわからないが友人が倒れたら見舞いに来る、と言うのが当たり前なのかと思っていた。

私が一方的にジャンを友人と思っていたのかもしれない…

風邪が治ったばかりなのに胸の奥が痛い。

「次、アッカーマン!」

そんな思考は教官の声にかき消された。


「あー!今日も疲れた。薄いスープと固いパンが待ってるぜ」

「そんなテンション下がるような事言わないでよー」

訓練でかいた汗をぬぐいながらエレンとアルミンが話していた。

私はキョロキョロと辺りを見回す。

ジャンの姿はなかった。

着替えて食堂に行ったか、それともあの場所にいるのか。


「おい、ミカサ。どこに行くんだよ」

「少し忘れ物をした」

「晩飯に遅れたらサシャに持ってかれるぞ」

「わかっている。大丈夫」

私は手を振りエレンに気取られないように少しだけ遠回りをした。


「なぁ、アルミン。最近ミカサの奴おかしくねーか?」

「…………気のせいじゃない?」

「そうだよな…気のせいだよな…」


……………

………

息を切らしていつもの場所にやってきた。

…少しだけ期待をしていた。

ここにジャンがいる事を。

会わなかったのはたまたまであると思いたかった。


ふと目線を落とす。

3日ぶりに見たのもあり芽は、随分成長してるように感じた。

私がいない間水をやってくれてたのがなんとなくわかる。

雑草も綺麗に取り払われていた。


…よくわからない。

私に言語力がない事を自覚している。

知らないうちに私はジャンを怒らせてしまったのだろうか。

それでも水やりなどをしてくれるのはどう意図なのだろうか。

「はぁー…」

私は大きくため息をついた。

話があまり動かない。

仕事の修羅場とイベントの原稿で遅くなってしまった…
もう少しちまちますると思う。

支援ありがとうー
落ちてるかもと思ってたからありがたい。

忙しいとこ乙です!
好きな作品だから書いてくれて嬉しい
公私大変そうだけど無理せずにな

エレンちょっぴり不安になってるなwww

ジャンお前って奴は本当に…支援

良スレ発見
すごく好きな雰囲気だ
続きが楽しみ
ので、完結まで頑張ってほしい

きてた!乙!
続き期待


――――

あの場所に行かなくなって何日か経った。

今日も訓練の後ミカサがこっそりとあの場所に行くのを見た。

その時にふと目線があったが俺はすぐにそらしてしまった。

…なんてあからさまな態度をとってしまったんだ…

ミカサにしたら知らぬ間に俺に避けられるようになって落ち込んでるだろうな…


いや、落ち込んでない。

きっと落ち込んでない。

そもそもなんで俺に避けられて落ち込むんだよ。

ミカサにとって俺は村人Aだ。

いや、村人Bか村人Cか…どうでいいな…

いずれにせよ俺はミカサにとって名も無きモブなのだ。

死に急ぎ野郎とアルミンがいればそれでいいんだ。

俺がこういう状況になったのも二人がいたからだ。

期待するな。

何も期待するな。

期待するほど現実との落差にやられてしまう。


それでも―…

あの場所に行くのが楽しみだった。

楽しそうに野菜をそだてるミカサの横顔がかわいかった。

どうやって野菜を料理するか語るミカサの楽しそうな声が心地よかった。

微かに笑いかけてくれるミカサが…………好きだった。


ああ、俺の足はあの場所に向かって駆け出していた。


ミカサの後ろ姿が見えた。

芽に…いやもう『苗』か。

水をやっているところだった。

最近ミカサを避けていたのでどう声をかけていいのかわからない。

しばらくその後ろ姿を見つめる事になった。


「ジャン?」

俺の気配に気づいたミカサが振り向く。

「よ、よう…」

我ながらぎこちない挨拶だ…

「…………………」

「…………………」

気まずい沈黙。

切り出したのはミカサからだった。


「もう来ないかと思ってた」

「いや、色々考えてて…な」

「そう…」

ミカサが地面に視線を落とす。

俺の顔を見なかった。


「私は…」

「え?」

「ジャンを怒らせてしまったの?」

「何の話だ?」

「ジャンが避けていたのに気付かないほど私はバカじゃない。知らない間にジャンを傷つけていたの?

それとも何か気に障った?どうか答えてほしい。私に悪いところがあったのなら直す努力をする」

ミカサが一気にまくし立てる。

普段口数の多くないミカサ。

こんな風になるとは予想外だった。

「ち…ちょっと落ちつけよ…」


「別にミカサを避けて――…はいたけど、俺の勝手な嫉……都合なんだ。ミカサが悪いとかそんなんじゃない」

言葉選びに慎重になる。

ああ、心拍数が上がっているのがわかる。

「俺の方こそ悪かった。…ミカサがそんな風に考えてたとは思わなかった」

「そう、それならよかった。安心した」

ミカサがホッと胸を撫で下ろした。

少し微笑んでいるのがわかる。


さきほどのネガティブな思考がすべて吹っ飛んでしまう程の破壊力を目の前のミカサは秘めていた。

かわいい……

ああ、幸せだ…

なんて幸せなんだ…

これ以上の幸せがあるわけない!

もしこれ以上の幸せがあるなら俺の体はどこかに吹っ飛んでしまう。

何を言ってるんだ…

ふわふわする。


「ジャン」

ミカサが俺の名前を呼んだ。

「ジャンがいなくて少し寂しかった」

次の瞬間俺の体は吹っ飛んだ。

いや、正確にはミカサに背を向け全力疾走していた。

ミカサがぽかんとした顔で俺を見ている。

風を切るこの瞬間の俺は世界中の誰よりも早い気がした。


きっとミカサは大した意味で言っていない。

多分いいところで「友人として」だろう。

それでも俺はいい。

今はそれでいいんだ。

ジャンフィルター!

完結はさせるよ。
事故って死なない限りはそのつもり。
後あんまりプレッシャーかけるなよ!
嬉しいだろうが!バカ!

うおお!きてた!
ジャンさんもただの一人の恋する少年なんや…
少年は似合わないか
続き凄く期待

ジャン可愛いな
よく考えたら中高生だもんな、純情な年相応の反応なんだろう
こんな良い話を読めるならバカで良かった~
乙です
事故らずお元気で書いてくだされ続き楽しみ!

とてもいい


***

家族であるエレンや幼い頃から一緒だった親友のアルミン以外と深い関わりを持った事がなかったが

訓練兵になり、少しだが人間関係と言うものができた。

エレンが一番である事、その次がアルミンと言う事は変わらないがここで得た人間関係を大切にしていきたいと思った。

中でも最近関係が深くなったと思うのはジャンだ。

ジャンの第一印象は『エレンに絡んで余計な事をする鬱陶しい人』だった。

だが、彼と接していくうちに彼の誠実さや、努力をしている事、意外な知識欲など、ジャンの人間性を目の当たりにした。

彼に対する認識を改めねば…と思った。


先日の事だがジャンとの関係に亀裂が入るという事があった。

その時この心地よい人間関係が壊れるかもしれないと言う恐怖を感じた時、

ジャンが私にとって素晴らしい友人だったのだと思い知った。

エレンとは「家族」という絶対の結びつき、アルミンとは幼い頃からある信頼関係があったが

ジャンとは何もない事に気がついた。

そして友人関係とは脆いものだと思ったものだ。

その後私はジャンに自分の素直な気持ちを言った。

色々と私の勘違いがあったらしいが元の友人関係に戻る事ができた。

他人であり、友人である人との『仲直り』は初めてだったので嬉しかった。


「ミカサ」

訓練前の待ち時間、声をかけてきたのはアルミンだった。

挨拶もそこそこアルミンは私の隣に立つ。

何か言いたげな様子だ。

「どうしたのアルミン?」

私から話題を振った。

「最近ジャンと仲がいいよね。エレンも言っていたよ」

前にも言われた事があった。


「ジャンと友人になったから」

「そっか。ミカサはエレンや僕しか交友関係がないと心配してたから少し安心したよ」

アルミンが柔らかく微笑む。

…その笑顔はいつも私に安心をくれる。

「でも…少しだけ寂しいな」

「どうして?」

「いや、これは僕のわがままだから」

そう言うとアルミンはもう一度微笑んだ。

その笑顔は少し固い。


「そういえば知ってる?エレンが女の子に告白されたらしいよ」

アルミンは唐突にそんな話題を振った。

心臓がドキンと跳ねた。

その割に心臓が自分の体から離れた所にあるような感覚。

「やっぱり上位組になるとモテるんだね。将来性とかかな?」

「そう…。エレンの魅力を知ってもらえるのはいい事」

私は精一杯強がった。

そう、人間関係が広がる事はいい事なのだ。

私自身がそう思ったから間違いない。

醜い嫉妬でエレンの人間関係を邪魔するわけにはいかない。

…絶対と思っていた「家族」という結びつきは意外と脆いものだと思ってしまった。


「エレンはどう返事するんだろうね」

「…私はエレンが幸せならそれでいいと思う」

「…強がってるよね」

「強がってない」

「嘘だ」

「嘘じゃない」

「だって泣きそうな顔してるじゃない」


アルミンに指摘をされた。

鏡を見なくてもわかる。

顔の筋肉が引きつっている。

人に見せられるような顔じゃない。

…アルミンの前だからこんな顔をしてしまうんだろう。


「僕は…少し寂しいんだ。おかしいよね。エレンもミカサも新しい人間関係を作って…」

「喜ぶべきなのに素直に喜べないんだ。…ひどい話だろ?」

「僕も僕で新しい人間関係が出来てる。友人も増えた」

「その分だけ二人と離れていってしまうような感覚になるんだ」

「兵団に入ってからは倍に近い速度を感じる」

「いい事の筈なのに…ね…」


アルミンが淡々と話しているのを聞いていた。

「私は…」

―カンカン

言葉が訓練を告げる鐘に遮られた。


―さきほどのアルミンとの会話が頭から離れない。

新しい人間関係が出来る事によって私達の距離は開いているのかもしれない。

自分が楽しいだけで、嬉しいだけで、考えた事もなかった。

その間アルミンはそんな事を考えていたのだ。


訓練後。

女子寮のドアに手をかけた。

「あいつうざくない~?」

中から声が聞えた。

漏れ出る声から中で2、3人が会話しているんだろうと言う事がわかる。

…人の悪口の最中に部屋に入るのは気まずい。

少し時間をおいて戻ってこよう。

「ミカサでしょう?」


自分の名前があがっていた。

時間をおいて戻ろうと思ったものの、やはりその内容が気になったので聞き耳を立ててしまう。

「この子、エレンに振られたんだって。多分ミカサのせいだよ」

「嘘~信じらんない。××はこんなにかわいいのに」

この部屋の中にエレンに告白した人がいるのか…

そして『振られた』という事に安堵している自分がいた。


「ミカサは主席候補だからっていつも威張っててさ」

「何考えてるかわかんないよいね」

「いつもエレンにベッタリだし…」

「案外エレンに私以外の女と仲良くしないでとか言って脅したんじゃない?」

「あり得るあり得る!」

聞くに堪えない事実無根の噂話だった。

…私はそんな事をした覚えはない。

新しい人間関係が増える一方でこう言った話の的にされてしまう。

難しいものだ。

しかし、幸いな事に的にされているのは私だけ。

それなら別に構わない。


「アルミンもミカサの事好きだったりするのかな?」

「どうだろ?アルミンって気弱そうだし成績も悪いし将来性なさそうー」

「座学の時だけだよね。元気そうなの」

「やだ~オタクって奴~?」

「ミカサにつまみ食いとかされてたりしたら笑えるよね!」

「『僕にはエレンが…!やめて…!ミカサ…!』とか?」

「ホモじゃん!」

ぎゃはぎゃはと聞える下品な笑い声に耳を塞ぎたくなる。

…悪口がアルミンにまで及んでしまった。

どうしてアルミンの事何も知らないのに勝手な妄想で悪く言うの?


「そういえばあいつ、最近ジャンとも仲いいよね」

「あー…そういえばそうだわ」

「女の友達いないの?」

「男しか友達にしませーん!」

「なにそれミカサのモノマネ?うけるー」

「ジャンもとんだピエロだよね」

「どうせミカサはエレンしか見てないのに」

「ミカサマジビッチ!」

…ビッチってなんだろう。今度アルミンに聞いてみよう。

どこか頭の一部分。

冷静な自分が遠くでそんな事を考えていた。


「誰かいるの!?」

気付かないうちに物音を立ててしまったらしい。

私は急いで柱の影に隠れた。

ドアが激しく開かれる。

「…誰もいない…気のせいか」

ゆっくりと閉じられた。

今度こそ私は女子寮を後にした。

久しぶりに風邪をひいた。
ので、誤字脱字があったら風邪のせいです(震え声)


モブっ子の悪口書くのが楽しかったとか言えない…
そろそろ話を畳む準備を始めます。
もう少しミカサ視点が続くんじゃよ

このミカサは本当にいい子

ジャン頑張って欲しいジャン

すごく面白い
次投下期待

このモブスの強烈な憎らしさったら…!
乙乙続き楽しみにしてます

ジャンミカ万歳

ジークジャンミカ

楽しみ

ジャンの事考えると濡れてくるわ

ジャン頑張れ。
依存と家族愛と恋愛が違うことを教えてやるんだ

惨劇から生まれた暗示を解くのはジャンの役目だ

もう子供が生まれたら名前をジャンにするわ

>>187
田中じゃん? 高橋じゃん? 杉本じゃん? 豆板じゃん?

***

「あれ?おまえ、まだ着替えてないのかよ」

声をかけてきたのはエレンだった。

「ちょっと女子寮に戻りづらくて…」

「? 何かあったのか?…元気なさそうだけど」

ぶっきらぼうな声ではあったがエレンの気遣いを感じる。

なんだかんだでエレンは私の事を見てくれてる。

少し心が軽くなった気がした。

「…特に何もない。…少し一緒にいてもいい?」

適当な場所に腰をかけた。

隣にエレンが座っている。

最近は食事以外で隣にいる事が少なかった気がした。

やはりエレンの隣が一番安心する。

私はエレンの事が好き――………


『エレンに振られたんだって』

先程の話を思い出した。

近くに居すぎてエレンが誰かに好意を寄せられている事など考えた事がなかった。

エレンが突然遠くに行ってしまう事もあるかもしれない。

…私はずっとエレンを守りたいと思っている。

この先もそれは変わらないだろう。

もしエレンが誰かを選んだら私は身を引かなければならないんだろうか。

「そういえばエレン…女の子に告白されたの?」

「ぶっ!!…なんで知ってるんだよ…」

「アルミンから聞いた」

「くそっ…口止めしとけばよかった…」

「…………どう、返事したの…?」

答えを知っているのに聞いてしまう。

「おまえには関係ないだろ」

「……………そう」

「…………今は誰かとどうこうなってる暇はないって言った」

私の沈黙をどう受け止めたのかエレンが答える。

「…おまえこそどうなんだよ」

「え?」

「俺たちに何か秘密にしてる事があるんじゃねーのか?」

「秘密にしている事…」

私が二人に秘密にしている事。

それは野菜を作っている事。

驚かせて、そしてそれを食べてもらって…笑顔がみたい…。

「…家族にも言えない事か?」

「そういうのじゃない」

「…ジャンか?」

「ジャン?」

「お前ら…付き合ったりとかしてんじゃねーの?」

「? どうしてそうなるの?」

「訓練後にこっそり二人で何かしてるじゃねーか」

「それは……」

――二人の笑顔がみたい

ただそれだけを考えていた。

だが、そのせいで色々な亀裂が走っている気がした。

「別におまえらが何してても驚かないから」

突き放すような声のトーンだ。

「応援してるぞ」

そう言ってエレンは腰を上げた。

今度こそ物理的にも精神的にもエレンが遠くに行ってしまった気がした。

―――

早起きは三文の徳と言う。

健康に良いし、訓練に向けてのウォーミングアップになる。

何よりあそこに行けば…ミカサに会える。

ミカサは朝も苗の様子を見に行っているらしい。

最近無性にミカサの顔が見たくなる。

俺の希望通りミカサはそこにいた。

「ミカ…」

声をかけようとするとミカサが泣いてる事に気付いてしまう。

振り上げた手が中途半端な場所で動きを止める。

「ジャン…おはよう」

ミカサが目元を拭いながら振り向く。

この場所で会うようになって色々なミカサの表情を見るようになったと思った。

だが泣き顔を見るとは思わなかった。

正直どうしていいのかわからない。

「…どうしたんだよ。死に急ぎ野郎と喧嘩でもしたのか?」

「……嫌われたかもしれない」

どこか自嘲気味に言う。

「私は…エレンとアルミンに笑ってほしいって、そう思ってこの野菜を育てようと思った

単純だけどおいしい物を食べたら笑顔になるってそう思った。

でもそれは二人との間に秘密が出来てしまって………距離が出来てしまった」

黙ってミカサの話を聞く。

俺の知らない間に何があったのか。

「ジャンと友人になれたのも嬉しかった。

でも私と友人になったせいでこ悪口を言われていた。

ジャンもとんだピエロだって。私は『びっち』らしい。意味はわからないけれど」

ピエロか。

叶わない恋に一喜一憂してそれでも諦められない事を言うのなら…その通りなのかもしれない。

「思えば私が二人の笑顔を見たい、こんな風に野菜を育てる事…秘密を作らなければ

エレンとアルミンと距離が出来る事もジャンが馬鹿にされたりする事もなかった…」

悲しそうにそんな事を言う。

心の奥底が冷えて行く気がした。

なんだよ。

おまえは俺の嬉しい気持ち、愛しい気持ち、…幸せを全部否定するのかよ。

「だったらこんな事やめちまえよ」

多分予想外であっただろう俺の言葉にミカサははっと顔を上げた。

「目の前の苗を引っこ抜いてぐしゃぐしゃに踏み荒らせばいい」

「ミカサに出来ないなら俺が代わりにやってやる」

そういってズンズンと苗の前に進む。


いつも思っていた。

『俺ならあいつよりもミカサに優しくするのに』

まるで優しくできないじゃないか。

「あ………待って…!!」

ミカサが俺の腕を掴んだ。

目から涙がポロポロと零れ落ちている。

「ごめんなさい…私…やっぱり…二人に喜んでもらいたい…!だから…」

俺はわざとらしく大きなため息をついた。

「最初からそのつもりだったんだろ。最後まで頑張れよ」

どさくさに紛れてミカサの髪を撫でた。

はじめて会ったときから好きだった美しい黒髪。

…役得ってやつだ。

「本当にごめんなさい…私は少し弱気になっていた」

「ミカサでもそう言う事あるんだな」

そう言うとミカサは微笑む。

俺もつられて笑った。

…なんかいい雰囲気じゃねーかこれ?

「そういえば話の流れからわかったけど厳密に『ピエロ』とはどういう意味なんだろう」

「ああ、多分俺がミカサの事好きだけどミカサは死に急ぎ野郎の事しか見てないから滑稽って意味じゃないか?」

「………………」

「………………」

「………………え?」

「………………あ…」

久しぶり。
どういう風にしようか悩んでたりその気晴らしに別スレ立てたらなんかそっちの方がはかどったりで大分日が空いてしまった。

結局グダグダ何が書きたいのか微妙ですまん。

もうすぐ終わるはず。

おっしゃ更新キテター
ジャンうっかりすぎジャン…
しかしミカサはどこ行っても可哀想な役回りだなあ

ジャン言っちゃったじゃん

乙乙
更新嬉しい

久々の更新おつ
エレン、アルミンには言ってたんだな

良かったらもうひとつ書いてるスレ教えてほしい

ジャンはいつもそんな役回りだ。
このスレでは報われてほしいが…

楽しみダナーダナー

ジャン直球投げすぎだw

―――

~回想~

「そういえば話の流れからわかったけど厳密に『ピエロ』とはどういう意味なんだろう」

「ああ、多分俺がミカサの事好きだけどミカサは死に急ぎ野郎の事しか見てないから滑稽って意味じゃないか?」

「………………」

「………………」

「………………え?」

「………………あ…」

~回想終わり~

そう、何日か前俺はミカサに間抜けな告白めいた事を言ってしまった。

言うつもりなんてなかった。

その時俺の心臓は別の生き物になったんではないかと思う程激しく存在を主張した。

せっかくミカサから「友人」と言うありがたいお言葉をもらったりどさくさに紛れて憧れの黒髪を撫でたりした。

そんな幸せがこの告白によりすべてがぶっ壊れたと思った。

…が。

「おはよう、ジャン」

「お、おうミカサ…おはよう」

「さっき教官がジャンを探していた」

「そ、そうか…」

「? どうしたの?」

「いや…別に…」

…普通の態度であった。

それはもういたって普通すぎる態度であった。

ミカサの態度は何も変わらなかった。

俺の浅い知識では女は男から告白されたら少なからず動揺して顔を赤らめたりぎこちない態度をとったり…

そんな事が起きると思っていた。

もしかして俺は友人なので男として見られていないのか?

それともあの発言を告白として捉えられてないのだろうか?

思えば告白と言うには微妙な気もする…

変わらないならいいか…

振られた場合の気まずさ、1割の確率で付き合ったりとかそんな…

色々な未来を想像した。

安心したと同時に残念でもあった。

―夕方

夕食をとるため食堂に行くとミカサと死に急ぎ野郎とアルミンが座っていた。

忘れていたがミカサは二人と「距離ができた」と嘆いていたが周りからみていつもと変わらなかった。

でも俺にはわかる。

やはりミカサの言っていたようにどこか距離があり、ぎこちない。

アルミンは3人の中である意味中立なのかもしれない。

それなりにうまく立ち位置を守ってる。

問題は…死に急ぎ野郎だ。

絶妙にミカサを避けている。

やはり周りの人間は気付かないだろう。

死に急ぎ野郎は演技派なのかもしれない。

どうもひねくれた思考を持つ俺は「家族の問題を他人に干渉されたくない」

と言ってるように見えて腹立たしい。

そんな死に急ぎ野郎を見ているとミカサの泣いてる姿ばかり思いだしてしまう。

いつもなんでも涼しい顔でこなすミカサだったからこそ人間関係で泣く姿が想像できなかった。

だからこそ余計に頭から離れないんだ。

恥ずかしくなる話だが俺はミカサのために優しく…何が出来るだろうか、とかそんな事を真剣に考えていた。

「ミカサちょっといいか」

夕食後俺はミカサに声をかけた。

周りの人がいなくなるまで待つ。

みんなが寮に戻った後の食堂は静かだった。

「なに?」

「まだ死に急ぎ野郎と距離があるままなのか」

「…………」

「一度腹を割って話せばいいんじゃないか?」

「…………」

ミカサは黙ったままだった。

「少し…怖い…」

ポツリと呟いた。

「私が伝えたい事をすべて伝えたら…エレンは家族でいてくれなくなるかもしれない」

ミカサは最初死に急ぎ野郎とアルミンに野菜を食べてもらい喜んでもらいたいと言った。

それがどうしてこうなってしまったのか。

ああ、どうして俺はこう…

大きく息を吸い込み、そして軽く吐き出す。

心臓が大きな音を立てている。

「ミカサ、聞いてくれるか?」

「?」

顔を上げたミカサは俺の目を見て戸惑ってるだろう。

俺も戸惑ってる。

生まれてこの方、ここまで真剣な目をした事はなかった。

「俺はお前の事が好きだ」

―――

どうしてこのタイミングで言ってしまったのか。


――俺はおまえの事が好きだ


そんな想いを告げた場所はひなびた食堂で薄暗かった。

俺が昔思い描いていたのは青い空、白い雲、明るい太陽の下。

長い髪をなびかせ真っ白なワンピースを着たかわいい女の子に告白する未来だった。

正反対だった。

…かわいい女の子って所は当てはまるか。

ミカサはきょとんとしていた。

何を言われたかわからず突っ立っている。

「俺はおまえが好きだ」

目を覚ますようにもう一度言ってやった。

「好きだ」

さらにもう一度言う。

「え…あ…その…」

ミカサが戸惑っているのがわかる。

スカートをギュッと握り視線を宙に泳がせていた。

「もう一回言うぞ」

すぅ…と息を吸い込む。

「いや、もういい!聞いているから…何度も言わなくても…いい…」

ミカサは真っ赤な顔をして小さく叫んだ。

ミカサの目を見つめる。

一向に目を合わせてくれないが…

「で…」

決意を込めて言う。

これを聞かなければ意味がない。


「おまえは俺をどう思ってるんだ?」

ミカサは思い出したように顔を上げた。

そしてまた視線を地面に落とす。

手はスカートからマフラーに移りギュッと握っていた。

口元を隠して表情はあまり見えない。

「…それは…私が恋愛対象と言う事…?」

「そうだ」

俺は迷いなく答える。

「そんな事言われたのはじめてで…どう答えていいかわからない…」

相変わらず視線を落したままだ。

「…ごめんなさい」

そう言って駆け出した。

何に対しての謝罪なのかわからない。

「ちょ、待てよ!」

それを聞くために俺はミカサの手を掴んだ。

…が、その直後世界が反転した。

どうやら俺はミカサに吹っ飛ばされたらしい。

いつか死に急ぎ野郎がアニにされたような体勢になっていた。

そのまま駆けて行くミカサ。

この体勢ならスカートから下着が見えそうだ…

などと不埒な事を考えていた。

かっこ悪ィ…

ジャンよく言った!!男やでぇ!

次で終わりのはず…

>>208 エレン「歪んでしまった」ってのを書いてる。
こっちはエレミカだけど。後、気持ちエロ描写あるので苦手だったら気をつけて。

>>231
道理でそっちのSSも大好きなわけだよ!
どっちも更新期待して待ってます

ジャン!がんばったな!!
男やで(/_;)

ジャンお前…!本当に男だよ!

―――

「ミカサ」

「サシャが呼んでるので…」

「ミカサ」

「雑用を頼まれたので後で…」

「ミカサ」

「少し散歩をしたい気分なので後で…」

…………

避けられている…

今度こそ避けられている。

この間俺はミカサに告白をした。

俺の中では一世一代の告白だ。

ミカサの目を見て。

俺の気持ちが少しでも伝わるように誠実に。

どうやらミカサに告白として認識されたようだ。

一度目の告白はやはり伝わってなかったらしい。

事故みたいなものだったけど。

俺を避けるミカサを見て寂しい半面やはり嬉しい。

俺は男として認識されたのだから。

問題はまともに口を聞いてもらえない事。

答えを聞けない事だ。

その答えを聞いたら俺はもう引き返せない。

俺を待っているのは明るい未来か絶望か。

そんな事を考えてると誰かが俺の隣に立った。

…死に急ぎ野郎だ。

死に急ぎ野郎はチャックを下ろすと用を足す。

そう、ここは男子便所である。

俺も色々考え事をして忘れてたが用を足しに来たのだ。

俺もチャックを下ろす。

こいつと並んで用を足すとか…不思議な状況である。

「おい、死に急ぎ野郎…俺、ミカサに告白したぜ」

丁度すべてを出し終えた死に急ぎ野郎がちらりと俺を見た。

「そうか。あいつを頼むな」

短い返事だった。

素っ気無く言う。

俺の中の何かがプツリと切れた気がした。

「おまえはそれでいいのかよ」

やめろ。

「俺がミカサと付き合うの指加えてみてろ」

やめろって。

「思ってたほどおまえ根性ねぇな」

その辺にしとけって。

死に急ぎ野郎は俺の胸倉を掴み壁に叩きつけた。

「俺は根性無しじゃねーよ!!」

そこかよ!

一番重要なとこじゃねーからそこ!


「それにミカサがおまえと付き合うわけねーだろ!」

「ミカサが好きなのは俺だからな!!」

便所に荒々しい死に急ぎ野郎の声がこだまする。

人がいなくてよかった。

いつものお前らしい気がした。

俺はどうしてわざわざライバルを焚きつけるような真似をしてしまったのか。

理由はひとつだ。

…ミカサの泣き顔がちらつくんだ。

今のままだとだめなんだ。

俺は…ドMなのかもしれないな。

苦笑した。

―――

「ミカサ、いるんだろ?」

早朝の森の中。

視界には誰もいなかった。

気配もなかった。

でもなんとなくわかった。

「どうしてわかったの?…気配は消した筈なのに」

木の陰からのそりとミカサは出てきた。

気配も自由自在なのか…。

「なんとなく…か?」

「…そう」

沈黙が流れる。

「答えを聞きに来た」

沈黙を破ったのは俺だ。

ミカサの体がビクリと反応する。

「改めて、俺はお前の事が好きだ。よかったらその…恋人になってもらえると嬉しいです!」

…なぜか敬語になった。

3度目(一度目は事故)なのに改めて言うと緊張する。

ミカサを見るとやはり顔を赤らめていた。

熱いのか頬に手を持っていく。

なんて女の子らしい仕草だ…!

「その…あの…私は…」

しどろもどろと言う。

視線は地面に向けられていた。

言語力は残念だがミカサは、はっきりとしている。

…こんなに悩んでくれてるのかと思うと嬉しい。

でも――

「ごめんなさい…」

ああ、やっぱりな。

正直もう最初からこうなると思っていた。

「そうか」

やばい。

目からなんか出そう。

「ジャンの事は大切な友人で…一緒にいたいと思ってる…でも…」

「死に急ぎ野郎…だろ?」

「!  …そう」

「まぁ最初から答えは予想済みだったんだけどな!」

ははっ…と笑ってごまかす。

目の奥の何かが徐々に存在を主張してきやがる。

「エレンは大切な家族で…誰よりも大切で…」

「ちょっと待て」

俺の声にミカサが顔を上げた。

「ミカサは死に急ぎ野郎をどう思ってるんだ?」

「え…だから大切な家族で」

「家族って言葉で誤魔化そうとするな」

「前に言ってた『伝えたらエレンが家族でいてくれなくなるかもしれない』事ってなんだ?何を伝えたいんだ?」

ミカサが俺から目を逸らす。

「目を逸らすなよ。俺は…ちゃんと伝えたぞ」

少しだけ強い口調で言う。

「!」

はっとした表情でミカサは俺を見る。

………

しばらく沈黙があったがミカサは口を開いた。

「私は…エレンの事が好きで…家族として……その男として…好きで…」

途切れ途切れに言葉を発しながらポロポロと涙を流す。

ちくしょう。

泣きたいのは俺の方なのによぉ…

「ずっと傍にいたい…」

「そうか、じゃあそれを死に急ぎ野郎に言えよ」

俺は出来る限りの笑顔で言った。

…ちゃんと笑顔になってるかはわからないけど。

「……言ったら気持ち悪がられるかもしれない…一緒に居られなくなるかもしれない…」

俺は深いため息をついた。

ミカサに一歩近づく。

「おまえは俺に告白されて気持ち悪かったのか?」

ミカサはふるふると首を振った。

「振られた俺は友人としても傍にいれないのか?」

またミカサはふるふると首を振る。

「死に急ぎ野郎もきっと同じだ …俺が出来た事をミカサが出来ないわけないだろ?伝えて来いよ」

ぎこちなくミカサは首を縦に振った。

「………うん」

ミカサは俺の服の裾を掴む。

「…ありがとう」

そう言ってミカサは歩きだした。

徐々にミカサの背中が遠ざかっていく。

左右に揺れる黒髪がやはり美しい。

朝日を受けて尚更。

…はじめて会った頃に比べて考えられないほどに距離が縮んだ。

まぁ最後の最後で届かなかったけれど。

「ミカサ!」

俺の声にミカサが振り向く。

「こんだけおまえのためにあれこれしたんだ。せめて友人よりもう少しいい扱いをしてくれよな!」

声を張り上げる。

そうだ。ここまでして普通の友人程度なんて納得できねぇよな。

「ええ。あなたは私の大切な…もう一人の親友」

ミカサが微笑む。

「もう一人の親友か…まずはアルミン超えしないとな!」

俺は歯を見せながら笑う。

少しでも気を緩めると泣いてしまいそうだ。

「ミカサ!好きだからな!」

最後っ屁とばかりに大声を張り上げた。

手をぶんぶんと左右に振る。

ミカサは顔を赤らめ走って行った。

背中が見えなくなるまで見送った。

「もう一人の親友…か…」

そんなんで満足できるわけねぇよ。

でも好きな女の幸せを祈れる俺はここにいる誰よりカッコいいんじゃないか?

そんなカッコいい俺を振ったんだぞミカサ。

いつか後悔させてやろう。

そう思うと涙はでなかった。

エレンさんはミカサがエレンが好きだって気づいてんだ。

足元にある苗を見る。

もう花が咲いていた。

実をつけるのはいつ頃だろうか。



おわり

くぅ~疲。
駆け足になって申し訳ない。
最後もう一回アルミン書きたかった…
長々とお付き合いありがとうございました
こんなに長くなったのはじめて…

最初はかっこよく振られるジャンを書こうと思って途中でくっつけようかと思ってやっぱり最初に戻った感じ
ジャン視点にしぼりたかったけど無性に女子に陰口叩かれるミカサを書きたくなってミカサ視点ができたとか…
後予想以上にエレンが出張った

もし気が向いて需要があればジャンとミカサがくっつくグッドエンド的な物もおまけで書きたい
どこから分岐させるべきか…

その前に放置スレなんとかする…


このジャンになら掘られてもいい

>>260 気づいたって言うか当然だろ的な…?

全俺が泣いた。
ミカサの幸せをそこまで考えられるジャン、お前は真の男だよ…

乙!とても良かった
グッドエンドもみたい

グッドエンド需要ありまくりです!

乙!!泣いた。
グットエンド需要ありです

おつ!よかった!
もうひとつの方も待ってるよー

むしろグッドエンドこそを待っていた

すまん、あげちまった

よかった!ジャンあんた漢やで!
グッドエンドも首長くして待ってます!
あんかけラーメンの中の麺みたいに伸びきる前になにとぞ…
それまで仕事がんばっとく!ありがとう!!

ジャンかっこよかったぜ・・・
頑張れよ

グッドエンド見もたいです

早く続き書こうか

早く続き書けコラ

ゆっくりでいいから待ってる

クリスマスプレゼントはよ

まってる

まってる

これは…キモい。BADエンドするべきだな

保守あげ

保守

保守

なんでおわったのに保守してるの?

グッドエンド書きたい、その前に放置スレなんとかするって言ってるからだろ
次はここが放置されてるけどな

うん…色々な方面から考えて、エルヴィンの後釜はジャンだな、と思った。
→(安直)

ごめん1です
放置申し訳ない
もう少しリアルを色々頑張ったら書きたい
その時までこのスレが残ってればよろしく
落ちたら忘れて

人によっては忙しい時期だろうからな
待ってるよ

保守

待ってる
保守

何度読んでも面白いけどなんか死にたくなってくる

保守

そうっすねぇ、荒れ始めた年末でやっぱ止めときゃ良 かったよ 最近ここにいたっぽい方が支部で見かけたのであちらに 行きますかね

集団感染より前っつうか、アニメ始まったあたりからチ マチマ書いてたけどもう無理だ 1年弱の間ありがとよー、さらはだ深夜

秘密の恋人より後に書いたのは ミカサ「…アニ、覚えてる?」 ベルトルト「秘密の」ユミル「約束」 キース「104期の問題児」 と、このスレで。

さらばー

よそのスレのレス転載して何がしたいのか

保守

ほす

>>293が本物なのかが少し疑問
話し方がちがう

>>297
>>294

待ってる

再びごめん1です
色々忙しいのもそろそろなんとかなりそうでまた書きたいと思ってる
>>287から1ヶ月たってるとかマジかよと言うくらい時間がたつのがはやい…
保守ありがとう

まだ見てる人いたらどの辺りから分岐したらミカサとジャンがくっつけそうかよかったら意見ください。参考にさせておくれ
その通りにいくかわからないけど

ジャンミカとか大好きです。
待っているのでぜひ完結させてくださいね

>>1待ってた!!
早いけど>>83からなんてどうだろう
この辺からどんどん親友ルートに行っちゃってる気がする
さ、参考にはしなくていいんだからねっ

保守

すほ

まだかなまだかな

ん保ぉ

ほす

お久しぶり
>>83から分岐のジャンとミカサがくっつくルート
エレンの霊圧が消えるかもしれない


「そういえばミカサはサシャと組んでるんだね…今日体調悪そうじゃなかった?」

「そうか?くしゃみしてたけどいつも通りだったと思うが…」

ミカサをみつめる。

「ミカサはエレンと僕の事心配したりするんだけどいつも自分の事を後回しにしちゃうんだよね」

「………」

「自分の体調不良も隠したりするから心配だ」

俺にはミカサが普段と変わらないように見えた。

しかし、アルミンには思うところあるようだ。

「………悪い、ちょっと…」

「?」

「…ミカサの近くでそれとなく様子を見てくる」

悔しいがアルミンの言う事は当たっているような気がする。

思い返すと顔がいつもより白かった気がする。

…アルミンとミカサの付き合いの長さを感じた。

それとなく近くに来るとミカサはサシャと距離をとっていた。

どうやらサシャがならず者をしているらしい。

普段ならサシャが地面に叩きつけられる未来しか見えないが…

「あ、ミカサ!?」

サシャの叫び声が上がる。

それと同時に俺は飛び出した。

ミカサが頭から倒れる様子がまるでスローモーションのように映った。

「ぐっ!!」

微妙に間に合わなかった俺はミカサの体の下に体を滑り込ませた。

全身の力の抜けたミカサの体重がすべて俺にのしかかる。

「ジャン…」

「っ…大丈夫かミカサ」

後ろから抱き抱えるような体制だ。

想像してほしい。

目の前に憧れた美しい黒髪が広がっていて体が密着している俺の心情を!

ミカサの体は思ってた以上に重くそして…痛い。

「教官、ミカサを医務室に連れて行ってもいいですか?」

「許可しよう」

「ジャン、私は大丈夫だから…一人で医務室まで行けるから…」

「何言ってんだよ。一人で立ち上がれない癖に」

「でも…」

「自分の事くらい冷静に判断しろ!」

少し強い口調で言うとミカサは何か言おうとしたが大人しく俺に身を任せた。

「ごめんなさい」

消え入りそうな声が聞えた。


俺以外の誰かがミカサを受け止めたのならもっとスマートでかっこいい構図になったのだろうか。

ミカサを抱えながらそんな事を悶々と考えていた。

―――

ベッドにミカサを下ろし横たえた。

掛け布団をミカサの胸の辺りまで引き上げると俺は額にあてる布を探す。

どうやらこの医務室の主人は不在らしい。

「ジャン、もう大丈夫だから訓練に戻って」

ミカサが顔の辺りまで掛け布団を引きあげ、こっちを見ていた。

熱に浮かされたような赤い顔。

頼れるのは俺しかいないこの現状。

普段ならこのありえないこのシチュエーションに少し不埒な事を考えしまった。

「訓練をサボるいい口実が出来たからいいんだよ」

誤魔化すように言う。

「…訓練をさぼるのはよくない」

「いいから大人しく寝てろよ」

ミカサはムスッとした顔で俺から視線を外し天井を見た。

沈黙が流れる。

俺が布を探してゴソゴソと動く音だけが響く。

「うーん…見当たらないな…お、これは…雑巾だ」

薄汚れた布を摘みあげる。

こんな何を拭いたのかわからないものを額に乗せられたらたまったもんじゃねぇ。

「ふふっ」

鈴を転がすような笑い声が聞えた。

その声に振り向くとミカサが微笑んでいた。

「それ、部屋に入った時に見つけて熱さましに使われたらどうしようかと思っていた」

何がツボに入ったのかわからないが、ミカサは尚も笑っている。

その姿がかわいくてボーっと見つめていた。

こんなに笑うミカサをはじめて見た。

「は、早く寝た方がいいんじゃないか?」

そう言うと俺は自分の手を濡らした。

…今思うとなんでそんな事をしたのかわからない。

笑っているミカサがかわいくて動揺したとしか思えない。

「ん!」

そう、俺はミカサの額に水で濡らした掌を当てた。

「…冷たくて気持ちいい」

俺の冷たくなった手がミカサの体温を吸い取っているようだ。

掌が熱くて仕方がない。

燃えているようにさえ感じた。

何度かそれを繰り返した。

「ミカサ」

名前を呼んでも返事はなかった。

代わりにすぅすぅと寝息が聞こえた。

みんな……保守した甲斐があったな…!

やった!続き期待。

期待。

明太子

楽しみにまってる…いつまでも

期待

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