ジャック「何だ、先月より少ないではないか」
カーリー「ご、ごめんなさい。今月はちょっと厳しくて……」
ジャック「ふん、まあいい。とりあえずこれは貰っておいてやる」
ジャック「俺はもう行くぞ。カーリー、ここのコーヒー代は任せたからな」
カーリー「任されたんだから!」
…………
ジャック(とりあえずコーヒー代は幾らか抜いてと……)
ジャック「クロウ、今月の分だ。先月より多少は少ないが取っておけ」
クロウ「おお、ありがとうな。いや、ようやくお前も働いてくれてこっちも大助かりだぜ」
ジャック「フッ、この程度の金、俺が本気を出せば造作もないわ」
クロウ「頼もしいじゃねえか」
遊星「しかし一体何処で稼いで来ているんだ?」
ジャック「何処でもよかろう。俺に合った仕事が見つかった……ただそれだけだ」
ジャック(しかしやはり今月は少ないな。クロウに渡した分を引いたらとても来月までコーヒー代がもたんぞ)
ジャック(仕方ない、深影の所にでも行くか。確か今奴は仕事場に居るはずだな)
ジャック「さて、もうひと頑張りしてくるか。出掛けてくるぞ」
クロウ「あんまり無理するなよ~」
…………
ネオ童実野シティ・セキュリティ本部……
受付(あ、また来た)
ジャック「狭霧深影を呼んでくれ。ジャック・アトラスが来たと伝えろ」
受付「少々お待ち下さい……あ、狭霧課長ですか? 受付に元キングがお見えになってます」
ジャック「元キングだと!?」
深影「はぁ、はぉ……アトラスさま? どうしたのですか?」
ジャック「遅い。この俺を待たせるとは随分と偉くなったものだな、深影よ」
深影「も、申し訳ありません。部下と明日の会議の打ち合わせをしていたもので……それでどうしてここに?
まさか私の顔を見に来て下さったんですか?」ドキドキ
ジャック「そんな訳なかろう。さあ、四の五を言わずに俺に金を渡せ」
深影「え、お小遣ですか? それなら先週お渡ししたばかりでは……?」
ジャック「貴様……この俺を、ジャック・アトラスを誰だと思っている! あの程度のはした金、すでにブルーアイズ・マウンテンとなって俺の胃袋の中だ!」
深影「も、申し訳ありません!」
深影(ああ、こんな時でも悪びれた様子は見せず、むしろ堂々とした態度……そしてそこから感じる王者の風格!
アトラスさま、やはり貴方は今でも私のキングです)キュンキュン
深影「分かりました。ただ手持ちが少ないので今から銀行で下ろして来ます。申し訳ありませんがもうしばらくお待ちになって下さい」
ジャック「俺とて暇ではない。急げよ」
深影「分かりました! ちょっと受付、ぼーとしてないでアトラス様にコーヒーくらいお出ししなさいよ!!」
受付「あ、はい」
ジャック「何だ、このコーヒーは? 安物のインスタントではないか! ブルーアイズ・マウンテンはないのか、ブルーアイズ・マウンテンは!!」
受付「ありません」
ジャック「まったく……しかしもう10分も経ったぞ? 深影はまだ戻らないのか?」ズズッ
牛尾「ん、ジャック。こんな所で何してんだ?」
ジャック「牛尾か。ふん、見ての通り待ち合わせの席でまずいコーヒーを飲んでいる。それが何か問題か?」
牛尾「いや、別に……それより深影さん知らないか? 明日の会議の打ち合わせしてたんだが急に飛び出しちまってよぉ」
ジャック「深影なら今銀行に行ってるぞ」
牛尾「銀行? おい、まさかお前また深影さんに金をたかりに来たんじゃねえだろうな?」
ジャック「たかりに来たとは人聞きが悪いな。仮にもしそうだとしてお前には関係あるまい」
牛尾「お前なぁ、いい加減にしとけよ? 何時までも深影さんに甘えてんじゃねえよ」
ジャック「何だ、いきなり。この俺に説教でもするつもりか?」
牛尾「……ジャック、お前や遊星達のおかげでこの町は救われた。サテライトとシティは繋がり、ネオ童実野シティは大きく発展した。その事に感謝はしている」
牛尾「だがその分人も増え、犯罪も増えてる。俺達セキュリティは市民を守る為……恩着せがましく言うつもりはないが、寝る間も惜しんで働いてる」
牛尾「深影さんがお前に渡している金はな、そういう苦労をして得た金だ。血と汗と涙の結晶なんだよ」
ジャック「……何が言いたい?」
牛尾「金は本来そう簡単に手に入るもんじゃねえって事だよ。
これは俺達セキュリティだけの話じゃねえ……この世界で生きてるみんなに言える事だ」
ジャック「…………」
牛尾「お前、深影さんが何も言わないとはいえ、無償で金を貰う事に対して何も思わないのか?」
ジャック「……ああ」
牛尾「……ジャック、俺は知ってるぞ。お前は深影さんからだけでなくカーリーからも金を貰っているそうだな」
ジャック「…………」
牛尾「後、遊星からこんな話も聞いた。お前がようやく働き家に金を入れる様になったと。
まあ実際は職になんか就かず、深影さんやカーリーから貰った金を渡しているだけだろうが」
ジャック「……何が言いたい?」
牛尾「なぜ貰った金だと言わず、働いて得た金だと嘘をつくんだ?
それはお前にこれがやましい事だと思う気持ちがあるからじゃないのか?」
ジャック「!」
牛尾「そもそもお前は男だろ? 女に頼ってばかりいる自分が恥ずかしいとは思わないのか?」
ジャック「黙れ!!」ユカドン
牛尾「おい、ジャック。俺はお前の為を思ってだな……」
ジャック「余計なお世話だ! こんな不愉快な思いは初めてだ……帰る!!」
牛尾「ジャック……」
ジャック(なぜ俺がこんな不快な気分にさせられないといけないのだ!)
ジャック(カーリーも深影も嫌だとは言っていない……遊星やクロウも資金が入って喜んでいる)
ジャック(そうだ、俺は何も間違ってはいない!)
ジャック「……少し熱くなりすぎたな。ブルーアイズ・マウンテンでも飲んで落ち着こう」
深影「申し訳ありません、アトラスさま! 銀行が混んでいて……って牛尾君? アトラスさまは?」
受付「牛尾さんが怒らせて帰りました」
牛尾「なっ、受付この野郎!?」
深影「はあ? 牛尾、てめえ私のアトラスさまに何したんだよ!?」
牛尾「ち、違うんです、深影さん! これは……ぎゃあああああ!!」
…………
カーリー「それじゃあ取材の方、行って来ますね!」
チーフ「最近張り切ってるな、カーリー。しかし最近顔色が優れないみたいだが大丈夫か?」
カーリー「平気です! それに元気は私の取り柄ですから!!」フンス
カーリー(ジャックが私を必要としてくれている……私を頼ってくれている……)
カーリー(さあ、ジャックの為に稼いで稼いで稼ぎまくるのよ、カーリー!!)
翌月……
ジャック(カーリーの奴遅いな……まったく、この俺を待たせるとは後で説教だな)
女「あのぅ……」
ジャック「む、誰だ貴様」
女「貴方ジャック・アトラスさんですよね? 元キングの?」
ジャック「元キングだと!? くっ、確かにジャック・アトラスはこの俺だがそれがどうした」
女「良かった。私、カーリーと同じ職場で働いている者です。実は……」
ジャック「カーリーが倒れただと!?」
女「はい、仕事中に突然血を吐いて……今はネオ童実野シティの総合病院に入院しています」
ジャック「馬鹿な……この前会った時は元気だったはずだぞ!?」
女「働き過ぎで身体を壊したみたいなんです。どうも最近お金が必要らしくて毎日無理してたから……」
ジャック「………」
女「後これを。カーリーから貴方に渡してくれと頼まれました」
ジャック(封筒……金か)
女「それと『今月はこれだけしかなくてすまない』っと」
ジャック「…………」
女「では確かに渡しました。私は仕事がありますからこれで」ペコリ
ジャック「…………」
ジャック「…………」カサッ
ジャック「……本当に少ないな」
黒薔薇の魔女さん、制裁のお時間です
…………
ジャック(あの後、カーリーが入院している病院を訪れたが、絶対安静という事で面会は出来なかった)
ジャック(だが医者の話によると命には別状はないらしい。一先ず安心した)
ジャック(それよりも今の問題は今月のコーヒー代をどうするかだ。これだけではクロウに渡す分だけで尽きてしまう)
ジャック(今月は貰えなかった事にするか? そうだな、ここ数ヶ月きちんと納めて来たんだ。一月くらい……)
クロウ「おお、ジャック。帰ってたのか」
ジャック「!?」ビクッ
ジャック「ク、クロウか。何だ、今日は早いではないか」
クロウ「飯食いに帰っただけだよ。またすぐ仕事に戻るさ。遊星とブルーノは?」
ジャック「あ、ああ。遊星は近所の会社までパソコンの修理に行ってる。ブルーノはその手伝いだ」
クロウ「そっか。ん、その封筒は……?」
ジャック「あ、いや、これは……」
クロウ「おお、そういや今日はお前の給料日か。どれ」ヒョイ
ジャック「ち、違……」
クロウ「ひい、ふう、みいと……よし、確かに受け取ったぜ。毎月お勤めご苦労様♪」
ジャック(お、俺のコーヒー代が……)
クロウ「責任持って銀行に入れとくからな~」
ジャック(まずい。非常にまずいぞ)
ジャック(俺の残金は残り僅か800円……これではブルーアイズ・マウンテンが一杯も飲めない!)
ジャック(どうすれば……今月は我慢するしかないのか?)
ジャック「…………」
ジャック「……無理だ!」カベドン
ジャック(一ヶ月もブルーアイズ・マウンテンを我慢するなんてとてもできん!
むしろ我慢しなければと考えた途端、無償にブルーアイズ・マウンテンが飲みたくなってきたぞ!!)
ジャック「飲みたい……今すぐブルーアイズ・マウンテンが飲みたい!」グググ
ジャック(こんな事なら先月深影から借りるべきだった。今からでも借りに行くか?)
ジャック(いや、また牛尾に会ったら不愉快な気分にさせられる可能性がある……くっ、忌ま忌ましい奴め)
ジャック(なら喫茶店のステ、ステ……ステなんとかから借りるか? いや、しかし……)
ジャック「くっ、金! 何処かに金は落ちていないのか?」ガサゴソ
ジャック(一万とは言わん。五千円だけで……ん、これはカードショップ広告か?)
『レアカード、高価買い取り』
ジャック(これは……しかしこういう所は意外と足元を見る。余程のレアカードでなければ二束三文の金にしかならん」
ジャック(俺が持っているレアカードといえば……)
レッド・デーモンズ・ドラゴン「」
ジャック(駄目だ! いくらブルーアイズ・マウンテンの為とはいえ、我が魂を売る事などできない!)
ジャック(しかしレッド・デーモンズに並ぶレアカードを俺は持ってはいない……どうすれば……)
ジャック「もはや打つ手なしか……ん、あの机の上に置いてあるのはもしや?」
ジャック「これは遊星のデッキ……エクストラデッキも入っているな。となると」ガサゴソ
スターダスト・ドラゴン「」
ジャック「…………」
ジャック「……まったく、遊星の奴め。デュエリストの癖にデッキを置いていくとは」スッ
ジャック「これではカードを奪われても文句は言えんぞ」
…………
龍亞「遊星~遊びに来たよ~。って、何これ!?」
龍可「部屋の中が無茶苦茶じゃない!!」
ブルーノ「ああ、龍亞と龍可か。帰ったらこうなっていたんだ」
龍亞「酷いな~。もしかして泥棒?」
ブルーノ「そうかもしれない。でもDホイールもパソコンも無事だし、この家で他に盗むものなんて……」
遊星「……ない」
3人「え?」
遊星「俺のスターダストが……ない」
…………
ジャック(俺は……なんて事をしてしまったんだ)
ジャック(いくらブルーアイズ・マウンテンの為とはいえ、友の魂のカードを売って金に換えてしまうとは)
ジャック(この胸の痛み……苦しみ……牛尾、今ならお前の言葉の意味が分かるぞ)
ジャック(確かに金を稼ぐ事は……容易では無い!)
ステファニー「ジャック、難しい顔して何か悩み事?」
ジャック「何でも無い。それよりブルーアイズ・マウンテンをおかわりだ!!」
2日後……
アキ「遊星のスターダストの行方、まだ分からないの?」
ブルーノ「それがさっぱり……荒らされた部屋も僕達以外の指紋は見つからなかったし」
遊星「俺が悪いんだ……俺がデッキをきちんと持ち歩いていないから……」
ジャック「まったくだ!」
クロウ「いや、悪いのは盗んだ奴だ! くそ、見つけたらとっちめてやる!!」
龍亞「でもこれだけ探しても見つからないなんて……」
龍可「あ、もしかしてイリアステルの仕業じゃないかしら?」
一同「!?」
クロウ「そうか、その可能性は十分にあるぜ!」
ブルーノ「イリアステルがやりそうな事だよ」
龍亞「あいつら、遊星に勝てないからって何て卑怯な手を……」
ジャック「おのれ、イリアステル!」
アキ「許せないわね、イリアステル!」
牛尾「お~い、お前。ちょっと良いか?」ガチャ
遊星「牛尾?」
イリアステルめ
これはイリアステルに歴史を修正されますわ
牛尾「全員来ているのか。ちょうどいいな」
ジャック「何だ、牛尾。今俺達は忙しいのだぞ」
牛尾「……遊星、これお前のだろう」スッ
遊星「これは……スターダスト・ドラゴン!」
ジャック「!」
クロウ「おい、何で牛尾が持ってんだよ!?」
龍亞「まさか牛尾のおっちゃんが盗んだの!?」
牛尾「違えよ。この近くのカードショップが偽造カードを作ってるっていうタレコミがあってな、今日ガサ入れに行ったんだよ」
牛尾「で、案の定山ほど偽造カードが出て来たんだが……その中に本物のスターダスト・ドラゴンが見つかったんだ」
アキ「スターダストは遊星しか持ってないカード……もし本物ならそれは遊星のカードね」
クロウ「だがなんで遊星のカードがそのカードショップにあったんだよ?」
ジャック「…………」
龍亞「まさかイリアステルが売ったのかな? 資金調達の為とか?」
龍可「いくらなんでもそれは無いと思うけど」
ジャック「いや、分からんぞ。実は奴らはコーヒーを飲む金すらないのかも……」
牛尾「当然店の店主に聞いた。そしたら2日前にある男が売りに来たと教えてくれたよ」チラッ
牛尾「ジャック……お前が売りに来たってな!」
ジャック「なっ!?」
一同「!?」
アキ「ジャック、本当なの!?」
龍亞「嘘だよね、ジャック!?」
ジャック「お、俺は……」
クロウ「おいこら、牛尾! てめえいい加減な事言ってんじゃねえぞ! ジャックが俺達を裏切る様な真似をするはずねえじゃねえか!!」
牛尾「信じられないのも無理は無い。俺だって信じたくねえよ。だが本当なんだ……ここにスターダストの買い取り書がある」
龍可「あ、名前の欄にちゃんとジャック・アトラスって書いてあるわ!」
牛尾「すでに筆跡鑑定もしている……スターダストを売ったのはジャック、お前だな?」
ジャック「ぐぬぬ……」
遊星「…………」
クロウ「ジャック、何でこんな真似を……最近は真面目に働いていたじゃねえか!?」
ブルーノ「まさか今まで稼いだお金も何処かからレアカードを盗んで売っていたんじゃ……」
ジャック「ち、違う! あれは……」
牛尾「カーリーや深影さんから貰っていたんだよな?」
ジャック「牛尾、貴様!!」
牛尾「そしてお前自身は働きもせず、毎日カフェでコーヒーを飲んでいた……そうだな?」
アキ「そんな、働いてもいなかっただなんて……」
遊星「…………」
龍亞「ジャック……」
龍可「これはさすがに庇いきれないよ……」
ジャック「違うんだ! これには訳が……」
牛尾「言い訳は見苦しいぞ、ジャック。そしてお前がやった事は紛れも無く犯罪だ」
牛尾「だから俺はお前を逮捕しなくちゃいけない」
ジャック「なん……だと?」
牛尾「おい、お前達。容疑者を確保しろ」
警官達「ハッ!」
ジャック「おい! こら、離せ! お前達も何とか言ってくれ!!」
一同「…………」
牛尾「見苦しい真似は止すんだ、ジャック」
ジャック(そんな……俺は、俺は見捨てられたというのか?)
ジャック「うっ、うおおおおおおおぉぉぉぉ!!!」
遊星「……待ってくれ、牛尾」
遊星「ジャックは犯罪なんてしてはいない」
ジャック「なっ!?」
アキ「遊星?」
牛尾「何を言っているんだ? ジャックは元にお前のカードを盗んで……」
遊星「確かにジャックはスターダストをカードショップに売った。それは事実だ」
遊星「だが売って欲しいと頼んだのは俺だ」
一同「!?」
遊星「牛尾、知っての通り俺達の生活は決して豊かでは無い。特に今月は色々と物入りの時期で生活も苦しかったんだ」
遊星「だから生活費の為にスターダストを売った。勿論すぐ買い戻す気ではあったが、まさか偽造カードを作っていた店だったとは……お前が回収してくれて助かったよ、牛尾」
ジャック「遊星……」
牛尾「遊星よぉ、お前ほどのデュエリストが生活の為とはいえ自分の魂のカードを売るはずがないだろう? そんな見え見えの嘘は……」
遊星「嘘じゃない。本当だ」
遊星「俺が頼んだんだ。ジャックに、スターダストを売ってくれと……だからジャックは盗みなんてしていないんだ」
牛尾「…………」
遊星「…………」
牛尾「……そんな嘘をついても、ジャックの為にはならねえぞ」
遊星「嘘じゃない。これが真実だ」
遊星「頼む、信じてくれ」
牛尾「…………」
牛尾「……ちぃ、分かったよ」
遊星「感謝する」
ジャック「…………」
…………
遊星「アキ達は?」
ブルーノ「帰ったよ。それより良かったのかい?」
遊星「何がだ?」
ブルーノ「ジャックの事だよ。カードを盗んだのは間違いなく彼だ。それなのに何であんな見え透いた嘘を?」
遊星「牛尾は俺の話を納得して帰った。それで良いじゃないか」
遊星「それにもし本当にジャックが俺のカードを盗んでいたとしても俺は気にしない……こういう事をされるのは慣れているからな」
ブルーノ「……それ、あんまり笑えない話だね」
遊星「……もしかしたら、俺のやり方は間違っているのかもしれない」
遊星「だがそれでもジャックは俺の仲間だ」
遊星「俺はどんな時でも仲間を見捨てる事は出来ない……そういう性分なんだ」
ブルーノ「……遊星がそう言うなら僕はもう何も言わないよ」
遊星「ああ」
ブルーノ「さて、僕はもう寝るよ。遊星は?」
遊星「もう少し作業をしてから寝るよ」
ブルーノ「あまり無理はしないでね。じゃあお休み、遊星」
遊星「お休み、ブルーノ」
…………
遊星「…………」カチャカチャ
遊星「…………」カチャカチャ
ジャック「…………」
遊星「…………」カチャカチャ
ジャック「……遊星」
遊星「……何だ?」カチャカチャ
ジャック「……礼は言わんぞ」
遊星「ああ……言われる理由もないからな」カチャカチャ
ジャック「……ふん」ドアバン
遊星「…………」カチャカチャ
ブルーアイズマウンテンの中毒性怖い
数日後……
クロウ「ジャックがバイトを始めた?」
ブルーノ「うん、近所のカードショップに。勿論この前事件が起きたショップとは別のショップだよ」
クロウ「本当だろうな。また何処かの女から金貰っているんじゃねえだろうな?」
遊星「その心配はない。面接には俺も着いて行った」
クロウ「……本当にそうだとしても、俺はまだ許してないからな」
クロウ「あいつは俺達を裏切ったんだ。真面目に働きだしたからって簡単に許せるかよ」
ブルーノ「クロウ……」
クロウ「……仕事行って来る」
遊星「ああ、気をつけてな」
ブルーノ「……溝は深そうだね」
遊星「こればかりはな。だがクロウもジャックの仲間だ」
遊星「そして俺達の絆はそう簡単に崩れない……俺はそう信じている」
ブルーノ「そうだね」
…………
店長「バイト君~。倉庫から新しいカードのボックス出して来て~」
ジャック「貴様、この俺に命令する気か!」
店長「店長だからね。クビになりたくなかったら文句言わず働きなよ」
ジャック「くっ、仕方あるまい……」
店長「それ終わったら昼休みに入って良いから。近所のカフェでコーヒーでも飲んで来たら?」
ジャック「……コーヒーはいい」
店長「あれ、コーヒー嫌いなの?」
ジャック「嫌いでは無い……だからこそ飲まない」
ジャック「それが俺のケジメだ」
店長「ふ~ん、良く分かんないけど……あ、スリーブの在庫確認お願い」
ジャック「まとめて言え!!」
おわり
乙~
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